更正の請求ができる場合に当たらず、租税特別措置法第41条第10項に規定する省エネ住宅特別控除を適用することはできないとした事例(令和5年分の所得税及び復興特別所得税の更正をすべき理由がない旨の通知処分・棄却)
- 令和7年9月26日裁決
- 裁決事例集 第140集
ポイント
本事例は、請求人が租税特別措置法第41条第1項に規定する住宅借入金等特別控除を適用した確定申告書について、国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことには該当しないから、更正の請求ができる場合に当たらず、同条第10項に規定する省エネ住宅特別控除を適用できないとしたものである。
要旨
請求人は、租税特別措置法(令和6年法律第8号による改正前のもの)第41条《住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除》第1項に規定する住宅借入金等特別控除(一般の住宅借入金等特別控除)を適用した確定申告(本件確定申告)をしたものの、請求人が取得した家屋は同条第10項に規定するエネルギー消費性能向上住宅に該当するから、国税通則法第23条《更正の請求》に規定する更正の請求により、一般の住宅借入金等特別控除ではなく租税特別措置法第41条第10項に規定する住宅借入金等特別控除(省エネ住宅特別控除)を適用することができる旨主張する。
しかしながら、一般の住宅借入金等特別控除及び省エネ住宅特別控除の各要件をいずれも充足する場合には、そのいずれを適用するかを選択して確定申告をすることができるところ、本件確定申告の内容は、一般の住宅借入金等特別控除の適用要件を満たすものであり、その計算にも誤りがないことからすると、本件確定申告は、客観的にみれば税法の規定に従ったものであるから、国税通則法第23条の要件に該当せず、省エネ住宅特別控除を適用することはできない。
参照条文等
国税通則法第23条第1項 租税特別措置法(令和6年法律第8号による改正前のもの)第41条第1項、第10項
参考判決・裁決
東京高裁平成23年7月29日判決(税資261号順号11724)
裁決本文
《裁決書(抄)》
1 事実
(1) 事案の概要
本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、一般の新築住宅を取得したものとして計算した住宅借入金等特別税額控除額を控除して確定申告を行った後、エネルギー消費性能向上住宅を取得した場合における住宅借入金等特別税額控除額を控除して確定申告をすべき誤りがあったとして更正の請求をしたところ、原処分庁が、更正をすべき理由がない旨の通知処分を行ったことから、請求人が原処分の取消しを求めた事案である。
(2) 関係法令
(3) 基礎事実及び審査請求に至る経緯
当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
また、本件確定申告書には、住宅借入金等特別税額控除額を一般の住宅借入金等特別控除の計算方法により算出した旨記載された計算明細書(以下「本件計算明細書」という。)が添付されていたが、本件証明書は添付されていなかった。
なお、請求人は、同日、本件職員に対し、本件証明書を提示した上、本件確定申告書に記載した住宅借入金等特別税額控除額について、一般の住宅借入金等特別控除に基づく金額から省エネ住宅特別控除に基づく金額に変更したい旨申し出たが、本件職員は、当該変更はできない旨説明した。
2 争点
請求人が一般の住宅借入金等特別控除を適用して本件確定申告書に記載した課税標準等又は税額等について、通則法第23条第1項に規定する「国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったこと」に該当し、省エネ住宅特別控除を適用することができるか否か。
3 争点についての主張
| 請求人 | 原処分庁 |
|---|---|
|
請求人は、本件確定申告をするに当たり、住宅借入金等特別控除について相談してから申告するため、書類一式を持参して税務署に行ったが、3月のシーズンということもあったのか確認してもらえず、税務職員から、ネットで申告できるからやってみてと言われ、とりあえず自分で作成した本件確定申告書を提出した。 そして、請求人が省エネ住宅に該当する住宅を取得したことは事実であり、当該事実に即して省エネ住宅特別控除が適用されるべきである。 したがって、請求人が一般の住宅借入金等特別控除を適用して本件確定申告書に記載した課税標準等又は税額等について、通則法第23条第1項に規定する「国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったこと」に該当し、省エネ住宅特別控除を適用することができる。 |
本件確定申告書に添付された本件計算明細書には、住宅借入金等特別税額控除額を一般の住宅借入金等特別控除の計算方法により算出した210,000円とする旨が記載され、また、省エネ住宅特別控除の適用を受ける旨の記載はない。加えて、本件確定申告書の提出時に本件証明書の添付もなかったことからすると、請求人は、本件確定申告において、一般の住宅借入金等特別控除の適用を選択したことが認められる。 また、本件確定申告書の内容は、措置法第41条第1項の規定に従ったところで正しく計算された適法なものである。 そして、昭和55年12月26日付直所3-20ほか国税庁長官通達「租税特別措置法に係る所得税の取扱いについて」41-33《住宅借入金等特別控除の控除額に係る特例の規定を適用した場合の効果》は、措置法第41条第10項の規定を適用しないところにより確定申告書を提出した場合には、その後においてその者が更正の請求をしても、同項の規定を適用しない旨定めている。 したがって、請求人が一般の住宅借入金等特別控除を適用して本件確定申告書に記載した課税標準等又は税額等について、通則法第23条第1項に規定する「国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったこと」には該当せず、省エネ住宅特別控除を適用することはできない。 |
4 当審判所の判断
(1) 検討
したがって、請求人は、一般の住宅借入金等特別控除及び省エネ住宅特別控除の各要件をいずれも充足する場合には、そのいずれを適用するかを選択して確定申告をすることができることとなる。
したがって、請求人が一般の住宅借入金等特別控除を適用して本件確定申告書に記載した課税標準等又は税額等について、通則法第23条第1項に規定する「国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったこと」には該当しないから、更正の請求ができる場合に当たらず、省エネ住宅特別控除を適用することはできない。
(2) 請求人の主張について
請求人は、省エネ住宅に該当する住宅を取得したことは事実であるから、当該事実に即して省エネ住宅特別控除が適用されるべきである旨主張する。
しかしながら、上記(1)で検討したところによれば、一般の住宅借入金等特別控除と省エネ住宅特別控除の各要件をいずれも充足し、いずれを適用して確定申告するかが納税者の選択に委ねられている場合、そのいずれを選択したとしても、当該確定申告が客観的にみて税法の規定に従ったものである限り、通則法第23条第1項に規定する「国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったこと」には該当しないから、請求人の主張する上記事情を踏まえても、本件は、更正の請求ができる場合に当たらない。
また、請求人は、税務職員に申告のための書類を確認してもらえなかった旨も主張するが、申告納税制度の下における確定申告は、納税者自身の判断と責任でされるべきものであるから、仮に請求人が主張する上記事情があったとしても、上記(1)のハの判断を左右するものではない。
したがって、請求人の主張には理由がない。
(3) 本件通知処分の適法性について
以上のとおり、請求人が一般の住宅借入金等特別控除を適用して本件確定申告書に記載した課税標準等又は税額等について、通則法第23条第1項に規定する「国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったこと」には該当せず、還付金の額に相当する税額が過少であるとは認められない。
また、原処分のその他の部分について、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
したがって、本件更正請求に対し、更正をすべき理由がないとした原処分は適法である。
(4) 結論
よって、審査請求は理由がないから、これを棄却することとする。
別表 審査請求に至る経緯(省略)
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