再調査審理庁が再調査決定書の謄本を税務代理人ではなく請求人本人の住所に、特定記録郵便で送達したことは適法であり、不服申立期間が経過したことに国税通則法第77条第2項の「正当な理由」はないとした事例(災害による申告、納付等の期限延長申請の却下処分・却下)
- 令和8年2月3日裁決
- 裁決事例集 第142集
ポイント
本事例は、再調査審理庁が再調査決定書の謄本を税務代理人ではなく請求人本人の住所に、特定記録郵便で送達したことは適法であり、不服申立期間が経過したことに国税通則法第77条《不服申立期間》第2項の「正当な理由」はないとしたものである。
要旨
請求人は、①再調査審理庁は、税務代理権限証書に一切の書類を税務代理人(本件代理人)が受領する旨記載されていたにもかかわらず、再調査決定書の謄本(本件謄本)を請求人本人に送達したこと、②再調査審理庁は、本件謄本の送達先を本件代理人に確認する義務があるにもかかわらずこれを怠ったこと、③再調査審理庁が特定記録郵便で本件謄本を送達したことから、本件謄本の送達は違法であり無効である旨主張する。
しかしながら、①再調査の請求人が書類の受領の代理権限を代理人に付与したとしても、再調査の請求人は、本件謄本を受領する権限を失わないというべきであり、②再調査審理庁において、代理人に送達先を確認する義務があると解すべき法令等の規定はなく、③郵便による送達については通常の取扱いによる郵便も許容されており、いかなる取扱いの郵便物としてなされたかによって送達の効力が左右されることはないから、本件謄本の送達は適法である。
また、請求人は、上記事情に加え、自身が本件謄本を現実に受領した日を「送達があった日」と考えていたことから、国税通則法第77条《不服申立期間》第2項ただし書に規定する「正当な理由」がある旨主張する。
しかしながら、請求人が本件謄本を確認してから不服申立期間が経過するまでには十分な時間的余裕があり、本件謄本が届いた日の把握も容易であったことを踏まえると、同項ただし書に規定する「正当な理由」があるということはできない。
参照条文等
国税通則法第10条第1項及び第2項、第12条第1項及び第2項、第75条第3項、第77条第2項、第84条第10項 不服審査基本通達(国税庁関係)84-16注書、84-18本文
参考判決・裁決
東京高裁昭和53年5月30日判決(訟月24巻9号1844頁) 最高裁平成3年12月12日第一小法廷判決(税資187号334頁) 東京高裁昭和53年9月28日判決(税資102号599頁) 最高裁昭和43年12月24日第三小法廷判決(民集22巻13号3147頁) 最高裁平成18年10月24日第三小法廷判決(民集60巻8号3128頁) 東京地裁昭和53年2月16日判決(税資97号206頁)
裁決本文
《裁決書(抄)》
1 事実
(1) 事案の概要
本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、新型コロナウイルス感染症の影響などにより相続税の申告等をその期限までにすることができなかったとして、災害による申告等の期限延長申請をしたところ、原処分庁が、当該申請の却下処分をしたことから、請求人が、原処分の取消しを求めた事案である。
(2) 関係法令等
(3) 基礎事実及び審査請求に至る経緯
請求人は、本件被相続人の妹であり、本件被相続人の唯一の法定相続人である。
なお、上記の申告書及び申請書には、請求人の住所が、a県b市d町○-○(以下「本件住所」という。)である旨記載されていた。
なお、原処分庁は、令和6年6月26日、本件却下処分の通知書を、簡易書留郵便により本件住所に発送したところ、請求人は、同年7月4日、上記通知書をE郵便局の窓口で受け取った。
また、請求人は、令和6年10月25日、再調査審理庁に対し、F弁護士(以下「本件代理人」という。)を受任者として、本件再調査請求に係る税理士法第2条《税理士の業務》に規定する税務代理を委任する旨の税務代理権限証書(以下「本件税務代理権限証書」という。)を提出した。本件税務代理権限証書の「税務代理の対象となる書類の受領に関する事項」欄には、「再調査請求にかかる一切の書類」と記載されていた。
なお、本件再調査請求に係る再調査の請求書及び本件税務代理権限証書に記載された請求人の住所は、いずれも本件住所であった。
なお、特定記録郵便とは、日本郵便株式会社が提供する郵便サービスの一つであり、同社は、差し出された郵便物の引受けを記録し、その引受けの記録として問合せ番号を記載した受領証を差出人に交付し、当該郵便物を受取人の郵便受箱に配達するが、受取人の受領印の押印又は署名による配達の記録は行わず、問合せ番号から当該郵便物の配達状況を同社のウェブサイト上で確認できるというものである。
なお、本件審査請求に係る審査請求書には、請求人が本件謄本の送達を受けた年月日が令和7年2月8日であると記載されている。
2 本件審査請求の適法性について
(1) 本件審査請求は、本件謄本の送達があった日の翌日から起算して1月以内にされたものであるか否かについて
そこで、本件謄本の送達があった日は、令和7年2月7日と同月8日のいずれであったと認められるかについて、以下検討する。
したがって、本件審査請求は、本件謄本の送達があった日の翌日から起算して1月以内にされたものとは認められない。
確かに、上記1(3)ニのとおり、本件税務代理権限証書の「税務代理の対象となる書類の受領に関する事項」欄には「再調査請求にかかる一切の書類」と記載されているため、不服審査基本通達(国税庁関係)84-18ただし書(上記1(2)ヘ)からすれば、原則として、本件代理人に対して本件謄本を送達することが再調査審理庁内部の事務処理上の要請であるといえる。しかしながら、再調査の請求人が書類の受領の代理権限を代理人に付与した場合に、それに伴い、再調査の請求人が本来なし得る書類の受領について、その権限が制限されるか、又はその権限を喪失すると解すべき理由はない。したがって、本件でも、請求人は、本件謄本を受領する権限を失わないというべきである。
よって、請求人の上記主張には理由がない。
この点につき、書類の受領を本件代理人に委任する旨の本件税務代理権限証書の記載に反して本件謄本を本件住所に送達するのであれば、再調査審理庁所属の担当職員としては、その旨を本件代理人に連絡するなどの措置を講じることで、当該送達により生じ得る混乱を回避することができたともいえる。しかしながら、再調査審理庁において請求人の主張する上記義務があると解すべき法令等の規定はない。これに加えて、仮に、再調査審理庁が本件代理人に送達先の確認をしなかったことにより不服申立てに支障が生じるような具体的事情があれば、通則法第77条第2項ただし書に規定する「正当な理由」として考慮する余地があることも併せ考慮すると、本件謄本の送達先の確認がされなかったとしても、送達の効力は左右されない。
よって、請求人の上記主張には理由がない。
この点、不服審査基本通達(国税庁関係)84-16注書(上記1(2)ホ)からすれば、上記1(3)ホのとおり、再調査審理庁が特定記録郵便により本件謄本を送達したことは、上記通達の定めに沿わない事務処理である。しかしながら、書類の送達について規定した通則法第12条第1項は、郵便による送達について、書類の重要度に応じて郵便物の取扱方法を区別しておらず、また、同条第2項では、通常の取扱いによる郵便によることも許容されている。これらに加え、仮に郵便物の取扱方法を原因として不服申立てに支障が生じるような具体的事情があれば、通則法第77条第2項ただし書に規定する「正当な理由」として考慮する余地があることも併せ考慮すると、書類の送達がいかなる取扱いの郵便物としてなされたかによって、送達の効力が左右されることはないと解される。
よって、請求人の上記主張には理由がない。
(2) 請求人が不服申立期間内に審査請求をしなかったことについて、通則法第77条第2項ただし書に規定する「正当な理由」があるか否かについて
しかしながら、上記①については、請求人の主張を前提としても、請求人は、本件謄本を令和7年2月8日に確認しており、不服申立期間の経過まで十分な時間的余裕があったことからすると、請求人が主張する事情は、請求人の責めに帰することができない事由により不服申立期間内に不服申立てをすることが不可能と認められるような客観的な事情であるとは認められない。
また、上記②については、請求人の独自の解釈により不服申立期間の起算日を誤解したものであることに加え、本件謄本の受領後においても本件謄本の配達状況を日本郵便株式会社のウェブサイトで確認すれば本件謄本が本件住所に届いた日を正確に把握することも可能であったことを踏まえると、請求人が主張する事情は、請求人の責めに帰することができない事由により不服申立期間内に不服申立てをすることが不可能と認められるような客観的な事情であるとは認められない。
(3) 請求人のその他の主張について
請求人がその他に種々主張する点は、いずれも上記各判断を左右するものではない。
(4) 結論
以上のとおり、本件審査請求は、通則法第77条第2項本文に規定する不服申立期間の経過後にされたものであり、また、請求人が不服申立期間内に審査請求をしなかったことについて、同項ただし書に規定する「正当な理由」があるといえる事情も認められない。
よって、本件審査請求は、不服申立期間の経過後にされた不適法なものであるから、これを却下することとする。
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