固定資産課税台帳の課税地目と異なる地目に変更された土地に係る登録免許税の課税標準たる不動産の価額を地方税法第388条第1項に規定する固定資産評価基準により算出した事例(登録免許税の還付通知をすべき理由がない旨の通知処分・一部取消し)
- 令和7年2月18日裁決
- 裁決事例集 第138集
ポイント
本事例は、固定資産課税台帳の課税地目と異なる地目に変更された土地に係る登録免許税の課税標準たる不動産の価額について、当該土地の近隣に、不動産の形状、地積、間口、奥行き、利用状況、接道状況等が類似すると認められる土地が確認されなかった場合には、当該土地の時価を表さないといえるような特段の事情がない限り、地方税法第388条第1項に規定する固定資産評価基準により算出するのが相当であると判断したものである。
要旨
請求人は、固定資産課税台帳の課税地目と異なる地目に変更された土地(本件土地)に係る登録免許税の課税標準たる不動産の価額につき、本件土地の近隣にあるA土地を類似不動産として算出した価額とすべきである旨主張し、原処分庁は、本件土地と隣接し、所在地の大字、地目及び地積が一致するB土地を類似不動産として登記官の認定した価額(本件登記官認定額)とすべきである旨主張する。
しかしながら、A土地は、その地積、形状等から本件土地との類似性は認められず、本件土地の類似不動産とはいえない。また、本件登記官認定額は、B土地と本件土地とが接道状況等で大きく異なる点について考慮されていないから、本件土地の価額を合理的に算定したものとは認められない。したがって、本件土地の近隣に、不動産の形状、地積、間口、奥行き、利用状況、接道状況等が類似すると認められる土地が確認されなかった場合には、本件土地に係る登録免許税の課税標準たる不動産の価額は、本件土地の時価を表さないといえるような特段の事情がない限り、地方税法第388条《固定資産税に係る総務大臣の任務》第1項に規定する、総務大臣が定める固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続によって算出した価額とするのが相当である。
参照条文等
登録免許税法第10条 登録免許税法附則第7条 登録免許税法施行令附則第3項、第4項
裁決本文
《裁決書(抄)》
1 事実
(1) 事案の概要
本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、土地の所有権移転登記を受けるに当たり納付した登録免許税の額が過大であるとして、原処分庁に対し、所轄税務署長に対する還付通知をすべき旨の請求をしたところ、原処分庁が、過誤納の事実は認められないとして還付通知をすべき理由がない旨の通知処分をしたことから、請求人が、原処分の全部の取消しを求めた事案である。
(2) 関係法令
(3) 基礎事実及び審査請求に至る経緯
当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
本件登記に係る申請書には、課税価格○○○○円、登録免許税○○○○円との記載があり、請求人は、本件登記の申請に際し、当該登録免許税の額を納付した。
2 争点
本件登記官認定額は、登録免許税の課税標準たる本件各土地の価額として過大であるか否か。
3 争点についての主張
| 請求人 | 原処分庁 |
|---|---|
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(1) 本件各土地は、正式な進入路がなく、コンクリートの蓋が設置された用水路の上を通路として利用されており、電気の供給及び水道の引き込みが極めて困難な土地であるから、6m道路に接している本件認定土地とは、その経済的評価額が大きく異なるものである。
したがって、本件各土地の類似不動産は、本件各土地の近隣にあるd市f町○-○所在の土地(以下「本件f町土地」という。)を選択することが最も合理的であり、本件f町土地の1㎡当たりの固定資産評価格○○○○円を基に算出すると、本件各土地の価額は○○○○円となる。 |
(1) 本件認定土地は、本件各土地と隣接し、所在地の大字はもちろんその地目及び地積も一致することから、本件各土地の類似不動産である。
したがって、本件各土地の価額は、本件認定土地の1㎡当たりの固定資産評価格を基に算出するのが正当である。 なお、本件f町土地は、本件各土地と地目は一致するものの、所在地の大字が異なっていること及び地積が大幅に異なっていることからすれば、本件認定土地は、本件f町土地と比較してより近傍類似の土地といえる。 |
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(2) 令和6年1月1日現在における本件各土地の台帳登録価格の合計額(以下「本件各土地令和6年度台帳登録価格」という。)は○○○○円であり、本件登記官認定額とは評価に大きな差が生じている。
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(2) 本件各土地令和6年度台帳登録価格は、本件登記の申請の日において判明しているものではなく、後発的に判明した価格であることから比較対象とならない。
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(3) 以上のことからすると、本件登記官認定額は、上記(1)の本件f町土地の価格を基に算出した価額○○○○円及び上記(2)の本件各土地令和6年度台帳登録価格○○○○円のいずれの価額と比べても高すぎるから、登録免許税の課税標準たる本件各土地の価額として過大である。
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(3) 以上のことからすると、本件登記官認定額は、本件認定土地の1㎡当たりの固定資産評価格に本件各土地の地積を乗じて算出した正当なものであるから、登録免許税の課税標準たる本件各土地の価額として過大ではない。
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4 当審判所の判断
(1) 法令解釈
これは、不動産について特別の事情が生じ、その結果、台帳登録価格が登記の時における当該不動産の適正な時価を示しているということができず、これを登録免許税の課税標準たる不動産の価額とすることが適当でなくなった場合には、台帳登録価格を基礎とし当該事情を考慮して当該不動産の価額を算定することを規定したものと解されるところ、登記の目的となる不動産について地目の変換があり、地目の変換前の台帳登録価格を基礎として算定することが相当でない場合において、上記ロの台帳登録価格のない不動産と同様に類似不動産の台帳登録価格を基礎として、登記の目的となる不動産の価額を合理的な方法により算定することは、課税の公平や価額の均衡を図るという観点から相当であると認められる。そして、上記ロの施行令附則第3項の趣旨に照らすと、類似不動産とは、登記の申請の日において、登記の目的となる不動産との価額の均衡が図られる近傍類似の不動産を意味するものというべきであり、当該類似性の存否は、価額の均衡が図られる場合の諸事情である、不動産の形状、地積、間口、奥行き、利用状況及び接道状況、土地利用に係る行政上の規制等の内容や固定資産評価に適用される路線価等を比較して判断すべきであると解するのが相当である。
(2) 認定事実
請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
本件各土地、本件認定土地及び本件f町土地は、いずれも都市計画法第7条《区域区分》に規定する市街化調整区域内に所在する土地であり、これらの位置関係等の概略及びその周辺土地に面する街路に付設された固定資産税路線価(固定資産評価基準に定める路線価をいい、以下、単に「路線価」という。)を図示すると別図のとおりである。
(3) 当てはめ
上記1の(3)のイ及びロのとおり、本件登記の申請の日は令和5年12月8日であり、本件各土地はいずれも台帳登録価格のある土地であるから、施行令附則第3項柱書及び同項第2号により、課税標準たる本件各土地の価額は、同年1月1日現在の台帳登録価格に100分の100を乗じて計算した金額となるところ、同イのとおり、本件各土地については、同年11月28日に地目を田から雑種地に変更する旨の登記がされていることから、同号により計算した金額を課税標準の額とすることは適当でないと認められる。そのため、施行令附則第4項に基づき、上記のとおり計算した金額を基礎とし地目の変換がされたことを考慮して登記官が認定した価額が課税標準たる本件各土地の価額となるところ、地目が田である台帳登録価格を基礎として算定することは相当でないから、上記(1)のハのとおり、原処分庁が、本件各土地に係る類似不動産の台帳登録価格を基礎として、本件各土地の価額を合理的な方法により算定していると認められれば、本件登記官認定額は適法に算定されたものといえる。
また、上記(2)のハの(ハ)のとおり、本件認定土地令和5年度台帳登録価格に適用された画地計算の補正は奥行価格補正及び奥行長大補正であるところ、本件登記官認定額は、上記1の(3)のハのとおり、本件認定土地令和5年度台帳登録価格を本件認定土地の地積で除して算出した1㎡当たりの価額に本件各土地の地積を単に乗じて算出されたものであることからすると、本件認定土地と本件各土地とが接道状況等で大きく異なる点について考慮されているものとはいえない。
請求人は、上記3の「請求人」欄のとおり、本件各土地の類似不動産は本件f町土地を選択することが最も合理的である旨及び本件各土地令和6年度台帳登録価格と本件登記官認定額に大きな差が生じているから、本件登記官認定額は登録免許税の課税標準たる本件各土地の価額として過大である旨主張する。
しかしながら、上記(2)のロ及びニからすると、本件f町土地は、土地の地積、形状等及び固定資産評価に適用される路線価において本件各土地との類似性は認められないから、本件各土地の類似不動産であるとはいえない。また、上記1の(3)のロのとおり、本件登記の申請の日は令和5年12月8日であるから、施行令附則第3項柱書及び同項第2号の規定上、令和6年1月1日を基準日とする本件各土地令和6年度台帳登録価格を、登録免許税の課税標準たる本件各土地の価額とすることはできない。
したがって、請求人の主張にはいずれも理由がない。
上記イ及びロのとおり、本件各土地の価額について、本件登記官認定額及び請求人の主張する価額は、いずれも採用することができない。また、当審判所の調査及び審理の結果によっても、本件登記の申請の日において、本件各土地の近隣に、不動産の形状、地積、間口、奥行き、利用状況及び接道状況、土地利用に係る行政上の規制等の内容や固定資産評価に適用される路線価等が類似すると認められる土地は確認されなかった。
このような場合、上記(1)のニのとおり、その価額が不動産の時価を表さないといえるような特段の事情がない限りにおいて、固定資産評価基準によってその価額を算出することも相当であると認められる。そして、固定資産評価基準によって本件各土地の価額を算出するに当たり、本件要領は、固定資産評価基準の定めを具体化したものであり、当審判所においても相当であると認められるから、上記(2)のロの(ロ)の本件南北道路の西側に付設された令和5年度の路線価○○○○円に、本件要領に定める各補正率を適用して本件各土地の1㎡当たりの価額を算出し、それに本件各土地の地積を乗じて本件各土地の台帳登録価格相当額を算出すると、別表の⑩のとおり、本件各土地の価額は○○○○円となる。また、当審判所の調査及び審理の結果によれば、当該価額が、本件各土地の時価を表さないといえるような特段の事情があるものとは認められない。
したがって、本件各土地の価額は○○○○円とするのが相当であり、本件登記官認定額のうちこれを超える部分については、登録免許税の課税標準たる本件各土地の価額として過大であると認められる。
(4) 本件通知処分の適法性について
上記(3)のハのとおり、本件各土地の価額は○○○○円とするのが相当であるから、本件登記に係る登録免許税の課税標準の額は、別表の⑪のとおり○○○○円となる。そして、これを基に、租税特別措置法第72条《土地の売買による所有権の移転登記等の税率の軽減》の規定により本件登記に係る登録免許税の額を計算すると、別表の⑫のとおり○○○○円となり、これと請求人が既に納付した登録免許税の額○○○○円との差額である○○○○円については、登録免許税の課税標準又は税額の計算が国税に関する法令の規定に従っていなかったものに当たり、過誤納と認められる。
したがって、本件還付通知請求は、上記過誤納の限度で理由があり、本件通知処分のうち、上記過誤納に係る部分は違法であるから、当該部分を取り消すべきである。
なお、本件通知処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
(5) 結論
よって、審査請求には理由があるから、原処分の一部を取り消すこととする。
別表 本件各土地の価額及び登録免許税の額等(審判所認定額)(省略)
別図 本件各土地、本件認定土地及び本件f町土地の位置関係等の概略並びにその周辺土地に面する街路に付設された路線価
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