原処分庁が行う配当処分による配当権者には該当しないとしても、当該配当処分に係る差押債権は自らに帰属する旨主張する第三者は、当該債権に係る換価代金等の交付が終了した後においても、審査請求を行うことができるとした事例(配当処分・全部取消し)
- 令和7年7月3日裁決
- 裁決事例集 第140集
ポイント
本事例は、換価された財産が滞納者に帰属していたことを前提にして配当処分がされているところ、同処分の対象となった財産が仮に第三者に帰属していた場合、当該配当処分は違法であり、第三者の基本的権利である財産権を直接的に侵害していることとなるから、処分の名宛人ではない第三者であっても国税通則法第75条第1項に規定する「不服がある者」に当たり、換価代金等の交付が終了した後においても不服申立ての利益が認められるとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人には、配当処分(本件配当処分)における配当権者となる事実が存在していないため、取消しを求める法律上の利益を有しておらず、審査請求は不適法である旨主張する。
しかしながら、滞納法人が有するとして原処分庁が差し押さえた支払請求権(本件債権)が仮に請求人に帰属していたとすると、請求人は、本件配当処分により自己の財産権を侵害され又は必然的に侵害されるおそれがある者に当たる。またその場合、帰属を誤った差押えによって原処分庁に生じた利得を保持すること自体が請求人の権利を侵害している状態を継続することにほかならず、原処分庁は当該利得を請求人に交付する必要があるほか、請求人は国に対する不当利得返還請求の前提として、本件配当処分の公定力を排除する必要があると解すべきである。したがって、請求人は、本件配当処分の効力が消滅した場合であっても、本件配当処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有するから、本件配当処分について、国税通則法第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第1項に規定する「不服がある者」に当たると認められ、審査請求は適法である。そして、本件債権は、請求人と第三債務者との間で成立したと認められる売買契約に基づいて発生したと認められるから、本件配当処分は、滞納者に帰属しない財産を換価した代金等を配当したものである。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和53年3月14日第三小法廷判決(民集32巻2号211頁) 最高裁令和2年6月26日第二小法廷判決(民集74巻4号759頁) 平成30年10月29日裁決(裁決事例集№113)
裁決本文
《裁決書(抄)》
1 事実
(1) 事案の概要
本件は、原処分庁が、納税者L社の滞納国税を徴収するため、差し押さえた債権を取り立て、その換価代金等の配当処分をしたのに対し、審査請求人(以下「請求人」という。)が、当該債権は自己に帰属するから、当該債権に対する差押えは違法であり、それに基づいてされた換価代金等の配当処分も違法であるとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。
(2) 関係法令
(3) 基礎事実
当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
請求人は、令和○年○月○日に設立された、薬局の経営、医薬品の販売等を目的とする法人であり、代表取締役には設立以降、Jが就任している。
納税者L社(以下「本件滞納法人」という。)は、昭和○年○月○日に設立された、薬局の経営、医薬品の販売等を目的とする法人であり、代表取締役には平成29年9月○日以降、Mが就任している。
(4) 審査請求に至る経緯
なお、本件徴収職員は、上記送達時に債権差押通知書の受領欄に本件第三債務者の事務長であるP(以下「P事務長」という。)の署名押印を受けた。
2 争点
本件債権は、本件滞納法人に帰属するか否か。
3 争点についての主張
| 原処分庁 | 請求人 |
|---|---|
| 次の理由から、本件債権は、本件滞納法人に帰属する。 | 次の理由から、本件債権は、請求人に帰属するから、本件滞納法人に帰属しない。 |
| (1) 令和6年4月○日に本件第三債務者に対して納品された医薬品「○○○○」1個(以下「本件商品」という。)は、同日、本件第三債務者が本件滞納法人に対して発注し、本件滞納法人の従業員が、請求人を発行者とする同日付の「納品書・請求書」(以下「本件納品書」という。)とともに同日本件第三債務者に持参して、納品されたものであるから、本件債権は本件第三債務者と本件滞納法人との間で行われた取引に係るものである。 | (1) 本件債権は、本件商品の販売代金である。 請求人は、令和6年4月○日、本件第三債務者から注文を受け、請求人の従業員が、本件納品書とともに、本件商品を本件第三債務者に持参する方法により納品した。 そして、本件商品の販売代金については、令和6年5月○日付で請求人を発行者とする「御請求明細書」(以下「本件請求書」という。)を本件第三債務者に持参し、代金を請求した。 なお、本件第三債務者から受注し、同社に納品した本件商品は、請求人がQ社(以下「本件仕入先」という。)から仕入れた上、本件第三債務者に販売したものである。 |
| (2) 取引関係の帰属を認定する上で、第三債務者の認識が重要な要素となるところ、本件第三債務者は、本件差押処分時に、本件債権の債権者が本件滞納法人であることを明記した「債務承認書」を提出した。 本件第三債務者は、一貫して、本件商品に係る取引の相手方は、本件滞納法人であり、請求人とは取引をしていないとの認識を示している。 |
(2) 原処分庁は、本件第三債務者が本件滞納法人の従業員であったR(以下「本件滞納法人従業員R」という。)から、本件滞納法人から請求人に業務移管をされた説明を受けたことを認めたにもかかわらず、本件第三債務者の事務方のトップであったP事務長の「単に本件滞納法人から請求人に名称変更しただけである」との認識だけで本件債権の帰属を判断しており、取引の実態がどうであったかの検討をしていない。 |
| (3) 令和6年4月○日、「業務移管のお知らせ」と題する書面(以下「お知らせ文書」という。)が本件滞納法人から本件第三債務者に送付され、当該書面には、本件滞納法人の医薬品卸売事業に係る一切の業務を本件滞納法人から請求人へ移管する旨が記載されていた。 しかし、本件第三債務者は、本件滞納法人の従業員から請求人に業務移管した旨の説明を受けただけであるため、請求人が単に本件滞納法人から名称変更をしただけであると認識したのであり、本件第三債務者にとって請求人は、本件滞納法人と別個の法人としては存在していない。したがって、本件第三債務者の取引の相手方が本件滞納法人であることに変わりはない。 |
(3) 請求人は、本件滞納法人と設立年月日も代表者も異なる全く別の法人であり、この点、登記事項からも確認できる。 本件債権は、本件滞納法人から請求人に医薬品の卸売業の業務移管がされた後に発生したものであるから、原処分庁は、本件滞納法人から請求人に業務移管がされた事実を確認すべきであったにもかかわらず、取引の実態を十分に検討せずに本件債権の帰属を判断した。 |
| (4) 医薬品を扱う卸売業者が医療機関等と医療用医薬品の卸売に関する取引を開始する際は、厚生労働省が公表している医療用医薬品の売買に関するモデル契約を参考に、取引契約を締結することは公知の事実であるが、請求人は、本件第三債務者との間で取引契約を締結していない。 したがって、本件第三債務者と請求人との間において直接の取引があった事実はない。 |
(4) 医薬品の卸売業において、必ずしも契約書が作成されているわけではなく、契約書の作成がないことを理由に取引の実態がないことにはならない。 |
4 当審判所の判断
(1) 審査請求の適法性について
次に、徴収法第128条以下に規定される配当処分とは、税務署長が換価代金等につき、徴収法、民法その他の法令の規定に従い、差押えに係る国税やその他配当を受けるべき債権等の配当順位及び配当額を定めて、配当計算書を作成し、その配当計算書に基づいて配当の対象となる債権者に対して配当を実施するために行うものである。そして、徴収法は、換価代金等を配当した金銭に残余があるときは、その金銭は、滞納者に交付する旨規定している(徴収法第129条第3項)ことから、換価された財産が滞納者に帰属していたことを前提としていると解され、滞納者に帰属しない財産を換価した代金等を配当することは違法となると解すべきである。
これを本件についてみると、請求人は、本件配当処分において本件債権が自己に帰属すると主張する第三者であるところ、仮に、本件配当処分において、本件債権が請求人に帰属していたとすると、原処分庁は、本件滞納法人に帰属しない財産を換価して本件配当処分を行ったこととなるため、本件配当処分は違法であり、本件配当処分は、請求人の基本的権利である財産権を直接的に侵害していると認められる。
以上のことから、請求人は、本件配当処分により自己の財産権を侵害され又は必然的に侵害されるおそれがある者に当たるといえ、当該処分により自己の権利若しくは法律上の保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者に当たり、通則法第75条第1項における「不服がある者」に当たると認められる。
上記ロのとおり、不服申立ての対象となる配当処分とは、税務署長が、債権の差押えにより第三債務者等から取り立てた金銭等を差押えに係る国税やその他配当を受けるべき債権等の配当順位及び配当額を定めて、配当計算書を作成するものである。そして、配当処分は、換価代金等の交付期日が経過し、換価代金等の交付が終了することでその目的を完了して処分の効力が消滅するに至ると解されるが、配当処分が取り消された場合には、税務署長は、違法な事実状態を排除して配当処分前の原状に回復しなければならず、配当を受けた者から配当をした金銭等の返還を受けるなどした上で、これらの金銭につき、再度適法な配当処分等をすべき地位に置かれることとなると解され、また、配当処分が取り消されない場合には、当該配当処分が公定力を有するために不当利得返還請求ができないこととなると解される。
これを本件についてみると、本件徴収職員が本件債権の帰属認定を誤って請求人の債権につき差押えを行った結果、本件配当処分により請求人の権利が侵害されたとの判断がなされ、本件配当処分を取り消す裁決がなされた場合には、原処分庁に利得が生じ、原処分庁が当該利得を保持すること自体が請求人の権利を侵害している状態を継続することにほかならず、原処分庁は、過誤納金を還付する場合などと同様に、当該利得を請求人に交付する必要があると解すべきである。また、本件徴収職員が本件債権の帰属認定を誤って請求人の債権につき差押えを行った場合には、請求人は、国に対する不当利得返還請求の前提として、本件配当処分の公定力を排除する必要があると解すべきである。
以上のことから、本件配当処分において本件債権が自己に帰属すると主張する請求人は、本件配当処分の効力が消滅した場合であっても、失われた利得の交付を受け得る地位を回復することとなり、本件配当処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有する。
(2) 争点(本件債権は、本件滞納法人に帰属するか否か。)について
請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
なお、請求人の代表取締役であるJは、請求人を設立する以前、本件滞納法人に勤務していたが、独立して請求人を設立した。
請求人は、令和5年末頃、本件事業譲渡契約を契機として、本件滞納法人から医薬品卸売業に係る業務について移管したい旨の申出を受け、これに合意した。
請求人又は本件滞納法人の従業員は、令和6年1月以降、本件滞納法人の医薬品卸売業の各取引先に対して、本件滞納法人が請求人に医薬品卸売業を業務移管したことを順次通知するなどした。請求人は、同月以降、請求人との取引に応じた各取引先に対して、請求人の取引先として医薬品卸売業に係る業務を行っていた。また、請求人は、遅くとも同年4月○日までには、本件滞納法人が使用していた医薬品の受発注用のオンラインシステム(以下「本件オンラインシステム」という。)についても、本件滞納法人から移管を受けた(以下、請求人が本件滞納法人から受けた医薬品卸売業に係る業務の移管を「本件業務移管」という。)。
なお、本件業務移管については、契約書などは作成されなかった。
本件滞納法人は、遅くとも平成27年頃から継続的に、本件第三債務者から医薬品の注文を受けその販売をしており、その受発注等は本件オンラインシステムを使用して行われていた。
上記(ロ)のとおり、請求人又は本件滞納法人の従業員は、令和6年1月以降、本件滞納法人の各取引先に対して本件業務移管について順次通知するなどしていたが、本件第三債務者に対してはその通知を失念しており、本件滞納法人従業員Rが、令和6年4月○日午後○時頃に、本件第三債務者の事務所において事務長代理であったUに対して、要旨以下の内容が記載されたお知らせ文書に基づき、本件業務移管についての説明を行った。
なお、本件滞納法人側から説明に来たのは本件滞納法人従業員Rだけであり、P事務長は説明を聞く場に同席しなかった。
A 本件滞納法人は、医薬品卸売業に係る業務の一切を請求人へ移管する。
B 本件業務移管の日は、令和6年4月○日とする。
C 取引条件の詳細に関する問合せなど、本件業務移管の担当窓口は請求人である(連絡先として、請求人の住所、電話番号及びFAX番号が記載されていた。)。
請求人は、令和6年2月○日、本件仕入先から本件商品を仕入れ、同年3月○日までの間、本件商品を在庫商品として保有していた。
本件第三債務者は、令和6年4月○日午前○時○分頃、宛先を本件滞納法人として、本件オンラインシステムを使用し、本件商品を発注した。
もっとも、上記(ロ)のとおり、令和6年4月○日までには、本件オンラインシステムが請求人に移管されていたことから、上記の発注は、本件滞納法人を宛先としていたにもかかわらず、請求人において受注された。
(A) 請求人は、令和6年4月○日、本件納品書とともに本件商品を本件第三債務者に納品した。
なお、本件第三債務者の従業員は、本件商品の検品に当たり、本件商品と本件納品書の内容を照合した上、本件納品書を複写して発行された受領書(以下「本件受領書」という。)に納品を確認したことを示す押印をした。
(B) 本件商品は、請求人に返品されなかった。
請求人は、令和6年5月○日付で、本件第三債務者に対して、本件商品の販売代金○○○○円(消費税及び地方消費税を含む。)を請求する旨が記載された本件請求書を発行し、本件商品の販売代金を請求した。
請求人は、令和6年4月○日付で、本件商品の販売代金を本件第三債務者に対する売上高及び売掛金として総勘定元帳にそれぞれ計上した。
本件第三債務者は、本件請求書の発行を受け、買掛帳の本件滞納法人の頁に、令和6年4月の仕入額として本件商品の仕入代金○○○○円を記帳した。
なお、本件第三債務者においては、上記(ハ)のとおり、本件滞納法人従業員Rからの説明を受け、令和6年4月中旬以降に、経理担当者が、買掛帳の本件滞納法人の頁の取引先名欄に記載されていた本件滞納法人の名称の上に、請求人の名称を追記した。
本件滞納法人は、本件事業譲渡及び本件業務移管に伴い、遅くとも令和6年3月○日以降、調剤薬局事業及び医薬品卸売業に係る業務を行っていないことから、同日以降、総勘定元帳の商品売上高及び調剤売上高に売上金額の計上はない。
本件第三債務者は、上記イの(ニ)のBのとおり、令和6年4月○日、宛先を本件滞納法人として、本件オンラインシステムを使用し本件商品を発注したが、上記イの(ロ)のとおり、本件オンラインシステムは、令和6年4月○日までには請求人に移管されていたため、請求人において、本件商品の受注をしたものと認められる。
そして、請求人は、上記イの(ニ)のA及びBのとおり、令和6年2月○日、本件商品を仕入れ、在庫商品として保有していたところ、本件第三債務者からの本件商品の発注を受け、上記イの(ニ)のCの(A)のとおり、令和6年4月○日、本件納品書とともに本件商品を本件第三債務者に納品し、本件受領書に本件第三債務者の従業員の受領印を受けた。その上で、請求人は、上記イの(ニ)のDのとおり、本件第三債務者に対して、令和6年5月○日付の本件請求書を発行し、本件商品の販売代金を請求した。
また、本件商品に係る取引の経理状況をみると、請求人においては、上記イの(ニ)のEのとおり、本件商品の販売代金について、令和6年4月○日付で本件商品の販売代金を本件第三債務者に対する売上高及び売掛金として総勘定元帳にそれぞれ計上している一方で、上記イの(ニ)のGのとおり、本件滞納法人の総勘定元帳には、本件商品の販売代金について売上高の計上はなかった。
このような本件商品に係る取引の経過に鑑みると、本件第三債務者は、本件滞納法人に対して本件商品を発注した認識であったが、実際にはその発注の申込みは請求人において受注されているのであるから、本件商品の売買契約は、本件第三債務者と請求人との間で成立したと認められ、また、請求人は、同売買契約に基づき、在庫商品として保有していた本件商品を本件第三債務者に対して売却し、同売買契約の目的物である本件商品を引き渡したと認められる。
この点、本件第三債務者は、本件滞納法人に対して本件商品を発注した認識であったことのほか、上記イの(ニ)のFのとおり、本件第三債務者の経理担当者が買掛帳の本件滞納法人の頁の取引先名欄の本件滞納法人の名称の上に請求人の名称を追記していたことを合わせ考えると、本件第三債務者には、上記売買契約の相手方について民法第95条《錯誤》第1項第1号に規定する錯誤があったものと認められる。しかし、本件第三債務者は、本件滞納法人従業員Rから本件業務移管の説明を受けた後も、同売買契約につき、同号に基づく取消しの意思表示をしておらず、さらに、本件商品の納品を受け、納品を受けた本件商品の返品等を行っていない上、上記1の(4)のロのとおり、本件徴収職員に本件債権の全額を給付したことから、本件第三債務者において民法第125条《法定追認》第1号の追認をしたものと認められるため、同売買契約は有効である。
したがって、請求人と本件第三債務者との間で本件商品の売買契約が成立したこと及び同売買契約が有効であることが認められ、同売買契約によって発生した本件債権は、請求人に帰属するから、本件滞納法人に帰属しない。
しかしながら、本件商品に係る取引の経過は上記イの(ニ)のとおりであり、本件商品は請求人から納品されたものである上、上記ロのとおり、本件債権は、本件第三債務者と請求人との間で有効に成立した本件商品の売買契約によって発生したものであるから、原処分庁の主張には理由がない。
この点、令和6年9月13日に本件徴収職員が行った質問調査において、P事務長は、P事務長自らが本件滞納法人従業員Rから業務移管の説明を受けており、お知らせ文書の内容は、本件滞納法人が単に名称変更をしたものであると認識していた旨申述している。
しかしながら、P事務長の申述のうち、P事務長自らが本件滞納法人従業員Rから業務移管の説明を受けたとする点については、上記イの(ハ)のとおり、当該説明を受けたのはP事務長ではなく事務長代理であったUであり、また、P事務長は、本件滞納法人が請求人へと単に名称変更をしたものであるとは申述するものの、その根拠については合理的な説明をしておらず、この点からもP事務長の申述は信用できない。
仮にこの点を措くとしても、P事務長の申述は、P事務長が本件債権の帰属先が本件滞納法人であると錯誤していたことを裏付けるにすぎず、P事務長の認識をもって、本件債権が本件滞納法人に帰属すると認定する根拠ということはできず、上記ロの本件債権の帰属の認定に影響するものではない。
そうすると、本件第三債務者が「債務承認書」を提出していたことについても、上記ロの本件債権の帰属の認定に影響するものではない。
したがって、原処分庁の主張には理由がない。
しかしながら、上記1の(3)のとおり、請求人と本件滞納法人の設立年月日や代表者が異なること、上記イの(イ)のAのとおり、請求人の代表取締役であるJが、請求人を設立する以前に本件滞納法人に勤務していたところ、本件滞納法人から独立して請求人を設立したこと、上記イの(ニ)のB及びCのとおり、請求人が本件第三債務者から注文を受けて、在庫商品として保有していた本件商品を納品している状況等から請求人と本件滞納法人は別法人であり、請求人が本件滞納法人とは形式的にも実質的にも別法人として事業活動を行っていることから、単なる名称変更であるとは認められない。
原処分庁が単なる名称変更にすぎないとする根拠についても、調剤薬局事業や医薬品卸売業を別法人に事業譲渡ないし業務移管することは十分にあり得るし、業務移管等をした法人の従業員のみがその説明をすることもあり得るため、P事務長の認識をもって、単なる名称変更にすぎないということはできない。
したがって、原処分庁の主張には理由がない。
しかしながら、医薬品の卸売業を開始するに当たり、必ずしも厚生労働省のモデル契約に沿った基本契約を締結することが必要とされているものではなく、請求人と本件第三債務者の間で当該契約を締結していなくとも、請求人と本件第三債務者との間で本件商品の売買契約が有効に成立していることは、上記ロのとおりである。
したがって、原処分庁の主張には理由がない。
(3) 本件配当処分の適法性について
上記(2)のロのとおり、本件商品の売買契約によって発生した本件債権は、請求人に帰属すると認められ、本件滞納法人に帰属しない。
そうすると、上記(1)のロのとおり、滞納者に帰属しない財産を換価した代金等を配当することは違法となることから、本件債権が本件滞納法人に帰属するとして取り立てた金銭を原処分庁に配当した本件配当処分は違法であり、その全部を取り消すべきである。
(4) 結論
よって、審査請求には理由があるから、原処分の全部を取り消すこととする。
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