裁決事例 財産の換価等
要旨
原処分庁は、滞納者への公売の通知を欠いた公売は無効であるとして請求人に対する最高価申込者の決定を取り消したが、公売の通知は滞納者等に事前に権利行使の機会を与えるため法定されたものであるから、公売の通知を欠いたかしは公売手続を当然に無効とする程度のものと解すべきでなく、ある場合にはその効力が取り消されることがある程度のものと解すべきところ、本件においては滞納者への通知は正しいあて先に送られ、公売の日までに返戻を受けていなかったこと及び滞納者は公売公告により公売通知の内容を事前に予知していて、公売通知がなかったことに対して異議申立てをしていないことが認められ、したがって、本件のような公売通知に係る形式的な方法を欠いたにとどまる軽微なかしを理由として善意の第三者たる請求人に対する最高価申込者の決定を取り消した原処分は違法である。
要旨
原処分庁の見積価格の決定に当たって基礎とした鑑定評価額は、[1]不動産鑑定基準により、本件土地の地域要因及び指定容積率から、中層ビルが標準的使用であること、[2]近隣地域における中層ビル敷地としての標準画地に、本件土地の間口、奥行、地積の個別格差率の相乗積を採用して算定していること、[3]地下鉄敷設による地上権阻害率を適用して算定していること、[4]借地権の付着する土地として、収益方式及び借地権相応分控除方式により算出した底地価格の平均値で底地価格を算定しており、それぞれ減価要因を考慮したものである。
そして、本件鑑定評価額は、近隣地域4件の売買実例に基づく比準価格を算出し、市場動向や収益性の調整率を乗じて計算した標準画地価格から、上記減価要因となる金額を控除して算出されており、また、公売の特殊性を控除した見積価額であり、適正であると認められる。
なお、[1]適正価格は2億4千万円であること、[2]隣接地の平方メートル当たりの単価は1千万円であること、及び[3]過去の鑑定評価等から見て安価である、とする請求人の主張はすべて認められない。
要旨
請求人は、原処分庁が任意売却の申出を認めずに請求人の居住用財産である本件建物の公売処分を強行したことは、権利の濫用に当たる旨主張する。
しかしながら、差押財産を換価するときは、公売によって行うこととされており、納税者の居住用財産を換価する場合に、納税者の事情を考慮した換価手続を行わなければならない又は公売以外の方法により換価しなければならないとする法令上の規定は存在しない。そして、公売は、差し押さえた財産を買受希望者の自由競争に付し、その結果形成される最高価額により売却価額及び買受人となる者を決定するための一連の手続であり、強制換価手続である国税滞納処分の手続の公正を維持しながらも、なるべく高価で納税者に有利な売却を行うことをある程度まで制度的に保障しようとする手続であると解される。本件において、原処分庁が請求人からの任意売却の申出を認めずに公売を行ったことは、法令上の規定に従ったものであり、また、請求人の申出に係る任意売却による買受希望者が公売に参加し最高価で入札することもできたのであるし、さらに、強制換価手続において納税者の権利利益も保護しようとする上記の公売の趣旨及び目的に反する事実は見当たらないから、本件公売公告処分が権利の濫用に当たり違法又は不当ということはできない。
要旨
請求人は、会社倒産後は生命保険料の支払もできない状態になり、生命保険会社が未払いの保険料を立て替えていたにもかかわらず、差押えた本件債権を10年余りも解約執行せず放置したことから、解約返戻金が減少することとなったものであり、差押え直後に解約返戻金を滞納税額に充当しておれば、これほどの滞納税額にならなかったことから、本件配当処分を取り消し、差押え時点に遡って解約権を行使し配当処分をすべきである旨主張する。
しかしながら、本件生命保険契約は、65歳の保険料払込満了後になっても、請求人が死亡した場合には、死亡保険金受取人からの普通死亡保険金支払請求ができる契約となっており、原処分庁は、解約権を行使して取立てを行う行為は、将来発生すると予測される受取人の普通死亡保険金支払請求の権利を奪うこととなり、受取人に影響を及ぼすおそれがあったことから慎重に行うこととし、請求人自らが円満に納付できるよう努力を行っていたにもかかわらず、請求人が原処分庁に連絡した事実はない。
また、本件生命保険契約の解約返戻金が減少した理由は、請求人が保険料の支払いを怠ったためであり、その責任は請求人にあると言わざるを得ない。
さらに、原処分庁が行った一連の徴収手続に違法性はなく、差し押さえた債権の取立てをしなければならない期間について規定した法律はないことから、請求人の主張には理由はない。
公売手続の取消しを求める本件審査請求は、国税徴収法第171条第1項第3号に規定する不服申立期間を徒過しているが、公売通知書に不服申立期間の教示を欠いたため瑕疵があり救済されるべきであるとの主張が排斥された事例
裁決事例集 第59集 461頁
要旨
請求人らは、公売通知書及び最高価申込者決定通知書に不服申立ての期間等の教示をしなかったから、国税徴収法第171条1項第3号の期限を徒過しても本件審査請求は適法である旨主張する。
しかしながら、[1]公売通知はそれ自体として納税者の権利義務その他法律上の地位に影響を及ぼすものではないから、行政処分には当たらないと認められること。[2]最高価申込者の決定処分自体は公売の場所で終了し、かつ出席している関係人に口頭で告知されているのであって、滞納者等に対する通知は、納税者に対し、原処分庁が買受け適格のある申込者に最高価申込者の決定をしたという事実行為を通知したものにすぎないこと。したがって、これらは、行政不服審査法第57条第1項に規定する行政処分を書面ですることが要求されている場合に当たらないから、教示の必要はない。
要旨
請求人は、再公売に係る公売財産の見積価額が不当に低い価額となっている旨主張する。
しかしながら、原処分庁が、先行公売に際して見積価額の決定に当たり基礎とした不動産鑑定士による鑑定評価額は、評価時点における客観的時価として適正であり、その後2回の公売が入札者がなく不成立となったことから、減価要因として時点修正及び新たに把握した個別要因等による減額を、鑑定評価額から控除したことは相当である。
そして、これら減価額を控除した後の金額は、本件公売時点における客観的時価として適正であって、これから公売の特殊性を考慮して20%を控除した本件見積価額は相当であると認められる。
要旨
国税通則法第105条第1項ただし書は、国税に関する法律に基づく処分に対する不服申立てがあったときは、その国税の徴収のため差し押さえた財産の滞納処分による換価は、その財産の価額が著しく減少するおそれがあるとき、又は不服申立人から別段の申出があるときを除き、その不服申立てについての決定又は裁決があるまで、することができない旨規定しているところ、本件では、原処分庁が当初ないし第4次の各公売公告において、売却決定の日時を定めたのに対し、その都度請求人から不服申立てがなされ、同不服申立てについての決定又は裁決がなされる前に、予定されていた売却決定の日時が経過したため、売却決定が行われなかったものであり、その過程に何ら違法な点はない。そして、本件公売公告は、第4次公売公告等に対する不服申立手続についての裁決がなされた後、売却決定の日時等を変更する旨を公告したものであるから、適法である。
これに対し、請求人は、異議申立てにより前回までの売却決定が中止されたことから、本件公売公告も違法であると主張するが、本件不動産の売却決定が行われなかったのは、上記のとおり、国税通則法第105条第1項ただし書の規定によるのであって、公売処分に違法性があるためではない。また、請求人は、前回までの売却決定の中止決定等がなされていないとも主張するが、このような場合に中止決定等をしなければならない旨の規定はない。
また、請求人は、見積価額が低廉であるから本件公売公告が違法であるとも主張するが、本件見積価額公告及び決定処分はいずれも適法なものとして存在しているところ、本件公売公告は、売却決定の日時及び買受代金の納付期限を変更したものであり、見積価額の適否は、本件公売公告の適否に影響しない。
参照条文等
差押財産の公売において、買受勧奨がなかったことにより、最高価申込価額が差押財産の所有者等の期待する価額に達しなかったとしても、そのことによって最高価申込者の決定処分が違法となることはないとした事例(最高価申込者の決定処分・棄却)
裁決事例集 第109集
ポイント
本事例は、差押財産の公売において、買受勧奨がなかったことにより、最高価申込価額が差押財産の所有者等の期待する価額に達しなかったとしても、そのことによって最高価申込者の決定処分が違法となることはないとしたものである。
要旨
請求人は、原処分庁に対して公売財産の購入希望者の存在を伝えていたにもかかわらず、原処分庁が当該購入希望者に公売に参加するように連絡(買受勧奨)をしなかった結果、当該購入希望者が公売に参加せず、請求人の期待した価額より低廉な価額で最高価申込者の決定処分(本件最高価決定処分)がされたとして、当該決定処分は違法である旨主張する。
しかしながら、国税徴収法第104条《最高価申込者の決定》第1項は、徴収職員は、見積価額以上の入札者等のうち最高の価額による入札者等を最高価申込者として定めなければならない旨規定し、また、見積価額の決定につき、同法第98条《見積価額の決定》第1項は、国税局長は公売財産の価格形成上の事情を適切に勘案するとともに、差押財産を公売するためのものであることを考慮しなければならない旨規定しており、国税徴収法は、これらの規定をもって、最高価申込価額が時価と比し著しく低廉となることを防止し、もって最低売却価額を保障しようとしたものと解される。また、国税徴収法には、公売公告は国税局の掲示場その他国税局内の公衆の見やすい場所に掲示して行う旨の規定(国税徴収法第95条《公売広告》第2項)は存在するものの、買受勧奨に関する規定は存在しない。
これらのことからすると、最高価申込価額が時価より著しく低廉でない場合には、最高価申込価者の決定処分がその価額の点から違法になることはないから、買受勧奨がなかったことにより、最高価申込価額が公売財産の所有者等の期待する価額に達しなかったとしても、そのことによって最高価申込者の決定処分が違法となることはないと解される。したがって、買受勧奨の有無が、本件最高価決定処分の適法性に影響を及ぼすことはない。
参照条文等
要旨
原処分庁は、本件公売中止申立書は単に公売を中止してほしいとの申立てであり、これを異議申立書と解することはできない旨主張する。
しかしながら、請求人らは、当審判所に対し、本件公売中止申立書は異議申立書である旨の意思表示をしていることから、本件公売中止申立書を異議申立書として取り扱うことが相当と認められる。
そして、本件公売中止申立書は、国税通則法第81条第1項に規定する記載事項のうち、「異議申立てに係る処分」、「異議申立てに係る処分があったことを知った年月日」及び「異議申立ての趣旨及び理由」についての記載がなされていないことから、当審判所において、異議申立ての対象とする処分等について、請求人らに対して補正を求めたところ、請求人らは、本件公売通知に対する本件公売処分の執行の中止の申立てである旨回答しており、この回答内容から、本件公売中止申立ては、本件公売通知に対してその取消しを求めるものと解される。
要旨
(1)本件見積価額と前回見積価額との開差は、原処分庁が本件公売財産を適正に評価した結果によって生じたものと認められる。
イ 本件の時点修正額は、本件公売財産の近隣にある本件公示地の価格を基準として、それぞれの算定時点の間における下落率(価額変動率)を基に算定されていることから、合理的かつ適正に求められた金額であり、原処分庁がこれを控除したことは相当である。
ロ 敷金の返還額は、本件公売財産の買受人の債務負担額となるから、これを控除したことは相当である。
ハ [1]本件土地については、第三者所有の建物があり、土地の利用、用途等が制約されるなど特殊な要因を含んだ市場性に極めて乏しい物件であると認められ、[2]過去10回の公売を実施し、見積価額を2度見直したにもかかわらず入札者がなかったことも、特殊な要因が影響したものと考えられることから、原処分庁が、これらの特殊な要因を考慮し、市場性減価額を控除したことは、合理的かつ適正なものといえる。
ニ 公売に当たっては、財産の所有者が任意に処分する場合よりも、市場性が極めて制限され、見積価額が低廉となるのが通例であるから、原処分庁が公売の特殊性を考慮したことは相当である。
なお、原処分庁は、公売の特殊性による減価率を前回見積価額の算定時の20%から30%に変更しているが、これは評価通達に定めた公売の特殊性の調整限度の範囲内において減額したものと認められる。
(2)請求人は、原処分庁が本件公売通知書に不適切な記載をしたために、過去10回の公売において入札者がいないという結果となったのであるから、これを根拠に本件公売財産を市場性に極めて乏しい物件であると判断したのは誤りであると主張する。
しかしながら、本件公売通知書は、本件公売財産の概要及び利用状況等を正確に記載していると認められるから、誤認等の生じる余地はないと考えられる。
(3)請求人は、原処分庁の見積価額の決定に係る評価算定基準に問題があるから、公売の特殊性を参酌する必要は認められない旨主張する。
しかしながら、原処分庁が決定した本件見積価額は、不動産鑑定士によって算定された本件鑑定価額を参考としており、請求人が主張する算定方法によって算定された評価額を基礎としたものといえる。そして、本件見積価額の算定に当たり、本件鑑定評価額から減価額を控除したことは、前記のとおり適正であるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(4)当審判所が、財産評価基本通達に定める路線価の下落率を用いて、本件土地の公売時点の時価を算定すると、17,115,837円となる。そして、この金額は、本件見積価額の算定過程において原処分庁が算出した本件土地の時価、すなわち、本件鑑定評価額から時点修正額、本件敷金及び市場性減価額を控除した後の金額(公売の特殊性による減価額を控除する前の金額)である16,950,000円とほぼ同額となる。
このことは、本件見積価額が本件土地の公売時の時価を反映し、同時に、原処分庁の本件公売財産の算定が適正に行われていたことを裏付けるものであるといえる。
ポイント
この事例は、主たる主張として国税徴収法第95条第1項に規定する公売公告において「第三者が使用している」旨を記載したことの適否が争われたものであるが、その他に、権利関係の調査が不十分であること、また、調査手続に違法があるとして公売公告処分の取消しが求められ、それに対して財産調査が公売公告処分の要件とはならないことを理由に違法はないと判断したものである。
要旨
国税徴収法第95条《公売公告》第1項が公売に先立って公売公告事項を公告しなければならない旨規定している趣旨は、公売に先立って、公売財産(公売に付す差押財産)を特定するとともに、売却決定日時や公売保証金の要否、買受代金の納付期限及び公売財産の権利関係などの買受人の負担等を広く周知することによって、公売財産の需要を喚起し、高価での買受申込みを誘引するとともに、買受希望者に対して入札するか否かの判断資料を提供することにあると解される。
本件においては、公売財産上の賃借権等の権利の内容として、「第三者が使用している」旨の記載の程度については、本件公売公告処分の時点において、複数の第三者が本件各不動産の一部をそれぞれ使用しており、土地の所有権の移転について、第三者の一人は農地法第3条《農地又は採取放牧地の権利移動の制限》の許可を得ているにも関わらず、所有権の移転登記が経由されておらず、登記簿上の所有者は請求人のままであること、また、賃借権の設定について農地法第3条の許可がされていることからすれば、原処分庁は本件各不動産を使用する権原が明らかでなかったことにより「第三者が使用している」と記載したものと考えられ、その記載の程度が公売公告事項として適切でないということはできない。そうすると、その他の公売公告事項についても国税徴収法第95条第1項の規定に基づき適切に記載されていることから、本件公売公告処分に記載不備の違法はない。
参照条文等
売却決定処分に係る見積価額が時価より著しく低廉であり違法であるとの請求人の主張に対し、売却決定価額と時価(基準価額)とを比較し、低廉ではないと判断した事例(不動産の売却決定処分・棄却)
裁決事例集 第116集
ポイント
本事例は、売却決定価額の低廉性の判断においては、売却決定価額と時価(基準価額)を比較するのが相当であり、見積価額の低廉性の主張に対しても、結果として売却決定価額が著しく低廉でない限り、低廉による違法の認定はないと判断したものである。
要旨
請求人は、請求人が所有する土地(本件土地)の時価については、少なくとも不動産販売会社による簡易査定価格を下回らないから、本件土地の見積価額(本件見積価額)は時価より著しく低廉であり、時価より著しく低廉な見積価額で公売された場合の売却価額は、見積価額が時価相当額であった場合と比べて当然に低廉となる旨主張する。
しかしながら、公売財産の見積価額は、その財産の時価に相当する基準価額を求めた上、公売の特殊性を考慮し、基準価額からそのおおむね30%程度の範囲内の公売特殊性減価を行い算定することから、時価を相当に下回るのが通常であるところ、公売財産の見積価額が時価より著しく低廉であり、その結果、売却価額も時価より著しく低廉となった場合には、見積価額の決定が最低売却価額の保障をすることにあるという趣旨に反することとなるから、この場合の売却決定処分は違法になると解すべきである。本件では、本件土地の基準価額に公売特殊性減価(減価率20%)をした額を本件見積価額として決定し、本件土地の売却価額は、本件土地の時価と認められる本件土地の基準価額の約85%に相当する価額であったことから、時価より著しく低廉でないと認められる。
参照条文等
要旨
請求人は、原処分庁が行った公売公告処分(本件公売公告処分)について、当該公売に係る公売財産(本件公売財産)の見積価額が低廉であるから、本件公売公告処分は比例原則に違反し違法である旨主張する。
しかしながら、見積価額公告は、法令上、公売公告処分の後にされることが予定されているところ、かかる見積価額公告の内容いかんによって公売公告処分の適否が左右されることはないと解され、見積価額の適否は、公売公告処分の取消しを求める審査請求において取消理由となり得ない。したがって、請求人は、本件公売財産の見積価額が低廉であることを理由として本件公売公告処分の取消しを求めることはできない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和39年10月29日第一小法廷判決(民集18巻8号1809頁)
要旨
請求人は、[1]本件公売財産の見積価額は低廉であり、本件見積価額の決定(公告)処分は違法、不当であること、[2]本件公売通知は、滞納国税の一部納付後の残額を免除するという徴収担当職員の約束があったにもかかわらず、何ら免除されないままなされたこと、及び請求人の意思を確認することなく一方的になされたことから、違法、不当であること、を主張する。
しかしながら、原処分庁が本件公売財産の見積価額の算定の基礎とした本件鑑定評価額は、取引事例比較法により査定した本件土地の更地価格から本件建物の取壊し等費用相当額を控除して算定しており、この評価方法を不相当とする理由があるとは認められない。また、原処分庁が本件鑑定評価額から10%の減額をしたのは、本件鑑定評価額の鑑定時と公売予定月とに隔たりがあり、その間に価格変動があったため、本件鑑定評価額を公売予定月の価格に時点修正したものであると認められるから時点修正による減額は相当である。さらに、本件鑑定評価額から上記時点修正による減額をした後の金額から、更にその20%を減額しているが、これは公売の特殊性に伴う調整として行われたものと認められ、この調整を不相当とする理由があるとは認められない。したがって、本件公売財産の見積価額は適正に算定されたものと認めるのが相当である。
そして、請求人はその主張する売却価額について具体的な説明及びこれを証する証拠を提出していないことから、その売却価額は請求人の希望する価額に過ぎないと認めるのが相当であり、また、公売財産の見積価額は客観的な時価を下回るのが通例であることからすれば、低廉であることをもって本件公売財産の見積価額を直ちに違法であるとすることはできないところ、上記のとおり本件公売財産の見積価額は適正なものと認めるのが相当である。
また、公売の通知は、国税局長が公売した場合において、滞納者に対して最後の納付の機会を与えるため、公売の日時、場所、公売保証金の金額、買受代金の納付の期限等、公告すべき事項等を通知するものにすぎず、それ自体として納税者の権利義務その他法律上の地位に影響を及ぼすものではなく、行政処分には当たらないと解されており、本件公売通知は国税通則法第75条第1項に規定する国税に関する法律に基づく処分に該当しない。
ポイント
この事例は、見積価額の低廉性は公売公告処分の取消原因にはならないと解するのが相当であり、また、公売財産の所有者等は、見積価額が低廉であることを理由に、その後の売却決定の取消しを求める不服申立てをすることを妨げられないので、公売財産の所有者等の権利が害されるともいえないと判断したものである。
要旨
請求人は、国税徴収法第95条《公売公告》第1項に規定されている公売公告すべき事項に見積価額の決定が含まれていないとしても、原処分庁は、公売公告と見積価額の公告を同日、一体のものとして実施しており、実務上も両者は一体のものとして扱われているから、見積価額が著しく低廉である場合には、公売公告処分の違法事由となる旨主張する。
しかしながら、税務署長は、差押財産を公売に付するときは、公売の日の少なくとも10日前までに公売公告しなければならないとされ、公売財産が不動産であるときは、税務署長は、公売の日から3日前までに見積価額を公告しなければならないとされているが、公売財産の見積価額は、公売公告事項とされていない。このことからすれば、見積価額公告は、公売公告の後にされることが予定されているということができ、見積価額の決定も公売公告の前に予定されていると解することはできない。そして、後にされた行政行為に何らかの瑕疵があったとしても、そのことゆえに先行の行政行為が違法となることはないと解されるから、見積価額が仮に低廉であったとしても、そのことが公売公告処分の取消原因にはならないと解するのが相当であり、また、そのように解したとしても、公売財産の所有者等は、見積価額が低廉であることを理由に、その後の売却決定の取消しを求める不服申立てをすることを妨げられないので、公売財産の所有者等の権利が害されるともいえない。
参照条文等
ポイント
本事例は、見積価額は、公売公告事項ではなく、公売公告とは別個独立に公告されることが予定されている上、見積価額の公告は、公売公告がされた後においてもすることができることとされていることから、見積価額の適否は、公売公告処分の適法性には影響しないと判断したものである。
要旨
請求人は、公売財産に係る見積価額が低廉であるから、公売公告処分(本件公売公告処分)は違法であり取り消されるべきである旨主張する。
しかしながら、見積価額は、徴収法第95条《公売公告》第1項に規定する公売公告事項ではなく、公売公告とは別個独立に公告されることが予定されている上、見積価額の公告は、公売公告がされた後においてもすることができることとされている。この点、本件公売公告処分と見積価額公告は同時にされたことが認められるものの、徴収法の定めに鑑みると、法的には、別個独立の公告が同時にされたものと評価するほかないものである。そうすると、見積価額の適否は、徴収法上、見積価額公告の後に行われることとなっている最高価申込者の決定処分又は売却決定処分の違法事由を構成し得るものの、公売公告処分の適法性には影響せず、本件公売公告処分の違法事由を構成し得ないというべきである。したがって、請求人は、公売財産に係る見積価額が低廉であることを理由として本件公売公告処分の取消しを求めることはできない。
参照条文等
参考判決・裁決
東京高裁平成28年1月14日判決(裁web)
公売公告処分は、原処分庁が分割納付誓約期間内に公売に付したという時期の判断において、その裁量権の行使が差押財産の換価に関する制度の趣旨・目的に照らして合理性を欠く不当な処分であると判断した事例(公売公告処分・全部取消し)
裁決事例集 第132集
ポイント
本事例は、請求人の自主納付の見込み、公売による換価額、差押財産の公売による請求人への影響等の諸般の事情をも考慮すると、公売に付した時期の判断において、その裁量権の行使が差押財産の換価に関する制度の趣旨・目的に照らして合理性を欠く不当な処分であると判断したものである。
要旨
原処分庁は、差押財産を公売に付すべき時期については、国税の徴収の所轄庁の合理的な裁量に委ねられていると解されており、請求人が所有する各不動産(本件各不動産)の公売公告処分(本件公売公告処分)は、公売に付すべき時期について裁量権の範囲内で合理的に行われたものであるから、違法又は不当な処分ではない旨主張する。ところで、換価に関する時期の判断に当たっては、滞納者の個々の実情を踏まえ、国税の効果的な徴収に向け、個々の滞納事案における自主納付の見込み、公売による換価額、差押財産の公売による滞納者への影響等諸般の事情をも考慮して判断することが相当と解されるところ、本件は、請求人には自主納付による完納の見込みがないこと、本件各不動産の換価額として相応の金額が見積もられていたこと、本件各不動産の公売が必ずしも請求人の事業の継続を不可能にするものではないことなどの事情があり、これらの事情を考慮すれば、本件各不動産を公売に付する時期について、原処分庁に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があったとは認められないから、本件公売公告処分は適法である。
しかしながら、原処分庁の裁量権の行使が、差押財産の換価に関する制度の趣旨・目的に照らし合理性を欠く場合には不当と判断すべきであるところ、本件は、請求人が提出した分割納付誓約書の誓約期間(本件分割納付誓約期間)内に、納付計画どおりの自主納付をする蓋然性が高く、また、本件分割納付誓約期間内に本件各不動産を直ちに換価することで、換価額の下落の回避又は換価額の相対的な価値の維持ができたなどの徴収上有利となる事情がない。また、原処分庁の徴収担当職員が、本件分割納付誓約期間内に本件各不動産が公売に付されることはないとの請求人の期待を排斥しなかったことにより、本件各不動産の代替土地を確保し得る機会及び期間が事実上なくなり、公売による請求人の事業に対する影響がより大きくなったことなどの事情があり、これらの事情を考慮すれば、本件公売公告処分は、公売に付する時期の判断において、その裁量権の行使が、差押財産の換価に関する制度の趣旨・目的に照らして合理性を欠く不当な処分であるといえる。
参照条文等
参考判決・裁決
東京地裁平成30年9月6日判決(金融法務事情2119号86頁)
当初の基準価額から再公売による市場性減価及び公売特殊性減価の上算出した見積価額による最高価申込者決定処分について、減価は徴収法基本通達の範囲内で行われており、合理性を欠くものとは認められないことから、見積価額が時価より著しく低廉であるとは認められず、最高価申込者決定処分も違法なものとはいえないとした事案(最高価申込者決定処分・棄却)
裁決事例集 第116集
要旨
請求人は、請求人が所有する土地(本件土地)の最高価申込価額(本件最高価申込価額)は、請求人が任意売却を申し入れた際の金額や本件土地の近隣の土地の販売価格よりも低廉であるため、最高価申込者決定処分は違法である旨主張する。しかしながら、本件最高価申込価額と同額の公売時見積価額は、国税徴収法(平成30年3月法律第7号による改正前のものをいう。)第98条《見積価額の決定》第1項や国税徴収法基本通達第98条関係2《公売財産の評価》、同3《見積価額の決定》、同通達第107条関係1-2《見積価額の変更》を根拠として、不動産鑑定士による鑑定評価額を基に、期間経過に伴う価格変動を時点修正し、公売において需要がなく公売が不成立となった事実を根拠に市場性減価し、公売が強制売却であること等による公売特殊性減価した上で算出されたものであり、算出過程に不合理な点は認められないから、本件最高価申込価額も公売財産の時価より著しく低廉であるとは認められない。
参照条文等
国税徴収法第98条、第104条第1項、第107条第1項 国税徴収法基本通達第98条関係2、3 国税徴収法基本通達第107条関係1-2
ポイント
本事例は、公売実施の判断について、滞納整理の経緯、納付状況、差押財産の換価の見込額等を考慮すると、その裁量権の行使が租税公平主義に反しているとは認められないと判断したものである。
要旨
v請求人は、原処分庁がした公売公告処分(本件公売公告処分)について、同処分に先行して行われた差押処分(本件差押処分)に違法があるから、本件公売公告処分に係る財産のうち、買受申込みがないまま買受申込期間が満了した財産又は買受申込期間満了後に最高価申込者が買受申込みの取消しをした財産についても、当該処分の取消しを求める請求の利益がある旨主張する。
しかしながら、これらの各財産を再び公売するには改めて買受申込期間を定めて公売公告以下の公売手続を踏まなければならないから、本件公売公告処分に係る財産のうち、当該各財産に係る部分はその法的効果を失い、その取消しを求める法律上の利益は消滅したものというべきである。
また、請求人は、徴収法第48条《超過差押及び無益な差押の禁止》第2項の無益な差押えとは、差押時における対象財産の処分予定価額が滞納処分費及び優先債権額の合計額を超える見込みがない場合だけでなく、差押財産の見積価額が分割納付額に満たない場合も含むと広く解釈されるべきであり、そうすると本件差押処分は無益な差押えの禁止に反し違法であるから、これに続く本件公売公告処分は取り消されるべきである旨主張する。
しかしながら、差押えの対象となる財産の価額がその差押えに係る滞納処分費及び優先債権額の合計額を超える見込みのないことが一見して明らかでない限り、直ちに当該差押えが違法となるものではないと解するのが相当であるところ、本件差押処分当時、その対象となる財産の処分予定価額が滞納処分費及び優先債権額の合計額を超える見込みのないことが一見して明らかではないことから、本件差押処分に無益な差押えの禁止に反する違法はない。
おって、請求人は、徴収法に公売をしなければならない旨の規定があるが、実際にそのとおりに行われているわけではなく、滞納国税を完納する目途が立っている場合には公売をしないという基準があるはずであるから、本税が完納となっており、延滞税等も最長でも6年以内の完納の目途が立っていたにもかかわらず行われた本件公売公告処分は、この基準に反し、租税公平主義に反する違法がある旨主張する。
しかしながら、公売の実施については、滞納整理の経緯、納付状況、差押財産の換価の見込額等を踏まえた上での税務署長等の合理的な裁量に委ねられているから、差押財産について公売が一律に実施されるわけではない。加えて、換価事務提要において、本税が完納で延滞税等も完納の目途が立っている場合には公売をしないという基準は存在せず、本件公売公告処分に関する原処分庁の判断は、換価事務提要の合理性を有する定めに従ったものであるから、租税公平主義に反するものではない。
参照条文等
参考判決・裁決
高松高裁平成11年7月19日判決(租税判例年報11・791頁) 東京地裁平成30年9月6日判決(金法2119号86頁) 東京地裁平成28年12月21日判決(租税関係行政・民事判決集(徴収関係)平成28年1月~平成28年12月順号28-42) 名古屋地裁平成25年4月26日判決(税資(徴収関係判決)平成25年順号25-17)
請求人は差押通知を受けるべき者に当たらず、また、借地権に関する記載が不十分であるとは認められないことから、公売公告処分は違法又は不当ではないとした事例(公売公告処分・棄却)
裁決事例集 第136集
ポイント
本事例は、請求人は、借地権者ではあるが借地上の建物に所有権の登記をしていないことから、差押通知を受けるべき者に当たらず、また、請求人の借地権については、公売の買受人がこれを引き受けないから、公売公告において、土地上に借地権を主張する者がいること等の記載をもって、買受人がその現況を把握できる程度に記載されたものということができるとした事例である。
要旨
原処分庁は、請求人が借地権(本件借地権)を有する土地(本件土地)について、請求人は本件借地権の登記をしておらず、また、本件土地上に請求人名義で登記されている不動産を所有したこともないことから、このように借地権についての対抗要件を具備していない請求人は、そもそも権利を保護するに値しないのであり、公売公告処分(本件公売公告処分)により、直接自己の権利又は法律上の利益を侵害されることはないから、本件公売公告処分について、不服申立てをすることができる者に当たらない旨主張する。
しかしながら、請求人は、本件公売公告処分に基づく公売の結果、本件借地権を失うことになることから、自己の権利を侵害されるおそれのある者というべきであり、したがって、請求人は、本件公売公告処分について不服申立てをすることができる者に該当する。
請求人は、請求人が本件借地権を有する本件土地について、原処分庁が差押処分をした際に、国税徴収法第55条《質権者等に対する差押えの通知》の規定による通知を受けておらず、また、本件土地の公売公告において、本件借地権の目的となっていることが明確に記載されていないことから、請求人に不利な内容となっており、本件公売公告処分は違法又は不当である旨主張する。
しかしながら、請求人は、本件借地権の登記をしておらず、また、本件土地上に請求人名義で登記されている不動産を所有したこともなく、対抗要件を具備していないことからすると、国税徴収法第55条の規定による通知を受けるべき者には当たらず、また、本件借地権に関する記載が不十分であるとは認められないことから、本件公売公告処分は違法又は不当ではない。
参照条文等
公売公告処分は、差押通知を欠いたまま行われ、また、公売公告処分に、「公売に関し重要と認められる事項」に係る記載が漏れていることから、公売公告処分には取り消し得べき瑕疵があるとした事例(公売公告処分・全部取消し)
裁決事例集 第136集
ポイント
本事例は、事前手続である差押通知を欠いたまま後続処分である公売公告処分がされた場合には、同処分には取り消し得べき瑕疵があり、また、公売対象の土地上に買受人が引き受けるべき借地権が存在する場合には、公売公告において、借地人が対抗要件を備えていることを記載することを要するとした事例である。
要旨
原処分庁は、請求人が借地権(本件借地権)を有する土地(本件土地)について、請求人は本件借地権の登記をしておらず、また、本件土地上に請求人名義で登記されていた不動産は、公売公告処分(本件公売公告処分)より前に取り壊された上、滅失登記がされているところ、その後、借地借家法第10条《借地権の対抗力》第2項が規定する掲示等による対抗措置をしていないことから、このように借地権について対抗要件を具備していない請求人は、そもそも権利を保護するに値しないのであり、本件公売公告処分により直接自己の権利又は法律上の利益を侵害されることはないから、本件公売公告処分について、不服申立てをすることができる者に当たらない旨主張する。
しかしながら、請求人は、原処分庁が行った本件土地の差押処分に際して、本件土地の借地権者として国税徴収法(徴収法)第55条《質権者等に対する差押えの通知》の規定による通知を受けるべき者に該当するにもかかわらず、当該通知を受けておらず、また、請求人は、徴収法第50条《第三者の権利の目的となっている財産の差押換》の規定による差押換請求権を有する者であるにもかかわらず、差押換えを請求できる機会を与えられなかったことから、本件公売公告処分について、不服申立てをすることができる者に該当する。
また、原処分庁は、請求人が本件借地権を有する本件土地の差押処分に際して、請求人は徴収法第55条に規定する通知を受けるべき者に当たらず、また、公売公告には、徴収法第95条《公売公告》第1項各号所定の事項が不備なく記載されており、賃貸借契約の内容として賃貸借契約書を添付していることから、本件公売公告処分は適法であり、不当でもない旨主張する。
しかしながら、請求人は徴収法第55条に規定する通知を受けるべき者に該当するところ、当該通知の趣旨は、利害関係人に滞納処分が開始されたことを了知させ、徴収法第50条の規定による差押換請求権を行使する機会を与えることにあり、利害関係人の権利を保護するための重要な意義を有しているにもかかわらず、本件公売公告処分は、当該通知を欠いたまま行われており、また、本件借地権は買受人に対抗することができる権利であるにもかかわらず、公売公告にはその旨が明記されておらず、よって、徴収法第95条第1項第9号の「公売に関し重要と認められる事項」に係る記載が漏れていることから、本件公売公告処分には取り消し得べき瑕疵がある。
参照条文等
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