裁決事例 所得税法関係
1. 請求人が架空の必要経費を計上し、多額の所得金額を脱漏したばかりか、調査担当職員に帳簿書類の保存がない等の虚偽の答弁をしたことは、国税通則法第68条第1項に規定する「隠ぺい又は仮装」に当たるとされた事例 2. 更正処分により賦課される事業税の額を見込額で必要経費に算入すべきとの請求人の主張が排斥された事例 3. 請求人が会計データを保存していたフロッピーディスクに不具合が生じ、出力不可能となったこと等を理由に帳簿書類等を提示しなかったことは、青色申告承認取消事由に当たるとされた事例
裁決事例集 第58集 107頁
要旨
請求人は、税理士でありながら、総勘定元帳・決算書に虚偽の記載をして架空の必要経費を計上し、多額の所得金額を脱漏したばかりか、その能力を有しながら帳簿書類の備付け等をせず、また、原処分庁の調査担当職員に対し帳簿書類の保存はない等の虚偽の答弁をし、さらに、異議審理庁による調査の際にも虚偽の資料を提出するなどしている事実が認められる。これらの事実に照らすと、請求人は、課税標準又は税額等の計算の基礎となる事実を仮装し確定申告書を提出したというべきであり、また、少なくとも申告当初から、真実の所得金額を隠ぺいしようという確定的な意図の下に、必要に応じ事後的に隠ぺいすることをも予定しつつ、多額の所得金額を脱漏し、所得金額をことさら過少に記載した内容虚偽の確定申告書を提出したというべきであって、本件確定申告書の提出は、単なる過少申告行為にとどまるものではなく、国税の課税標準等の計算の基礎となる事実について、隠ぺいしたところに基づき確定申告書を提出した場合に該当するから、原処分庁が国税通則法第68条第1項に基づいてした重加算税の賦課決定処分は適法である。
a国で出資・設立したリミテッド・パートナーシップ(LPS)を介して請求人が得た損益は、当該LPSが利益の処分として行ったものではないから配当所得に当たらず、また、当該LPSが不動産賃貸を目的とする民法上の組合ということができず、請求人が主体的に本件不動産を賃貸に供していたと認められないので不動産所得に当たらないとし、請求人が当該LPSから得た分配金は出資金に対する果実であるから、雑所得に当たるとした事例
裁決事例集 第71集 118頁
要旨
請求人は、a国のリミテッド・パートナーシップ(以下「本件LPS」という。)を介して得た損益について、本件LPSは民法上の組合に類似するものであってそれが行う不動産賃貸事業に係る損益が請求人自身に帰属するから不動産所得に該当する旨主張し、原処分庁は本件LPSが法人に該当するから本件LPSからの利益の分配は配当所得となる旨主張する。
しかしながら、本件LPSは法律上の権利義務の帰属主体となり得るものの、本件LPSの活動から生じる損益は、本件LPS契約に基づいてパートナーである請求人に配分されているものであり、それは、本件LPSが利益の処分として行ったものではないから、請求人の得た所得は所得税法第24条が規定する配当所得に当たらない。本件LPSは不動産賃貸を目的とする民法上の組合ということができず、請求人が主体的に本件不動産を賃貸に供していたと認められないので、請求人の得た損益は不動産所得に該当せず、請求人が本件LPSから得た分配金は出資金に対する果実であるから、雑所得と認められる。
いわゆるエスクロー契約により、株式及び新株引受権の売買契約によって生ずる売主の補償責任の履行を担保するため売買代金の一部を第三者に1年間預託する方法で取引がされた場合、当該預託された売買代金相当額は、株券等の引き渡し時の総収入金額に計上すべきこととされた事例
裁決事例集 第59集 99頁
要旨
請求人らは、本件エスクロー資金は売主の補償責任を担保するため第三者に預託されたものであり、エスクロー期間が終了する平成10年3月14日まで受け取ることができる金額が確定しないから、平成9年分の譲渡所得に係る総収入金額に該当しない旨主張するが、所得税法第36条第1項による総収入金額の計算上、資産の譲渡に基づく収入金額は、当該資産の所有権その他の権利が相手方に移転した日の属する年分の総収入金額に算入すべきものと解するのが相当とするところ、請求人らが認めるように、本件株券は、買収契約書により平成9年3月14日に買主に引き渡されているのであるから、本件エスクロー資金を含む譲渡価額の総額は、平成9年分の譲渡所得に係る総収入金額に該当する。
要旨
災害等により山林に被害があった場合におけるその災害等による損失の金額の計算単位は、所得税法における山林所得の金額の計算に関する規定及び同法第51条第3項の規定を合理的に解釈するならば、その山林が成長過程にある未成木から成っている場合には、その立木の集団である林分ごとに行うべきであるが、その山林が既に成長を遂げて標準伐期齢に達した立木又はこれに近い立木から成っており、かつ、その立木ごとの原価の額の計算が可能である場合には、その被害立木ごとに行うべきである。
要旨
有限会社の減資の対償として交付を受けた資産(土地)について、当該会社の負債に係る抵当権が設定されていても、抵当権はその目的物の不動産等の担保価値を把握し、被担保債権の優先弁済を受けることを本質とするものであって、仮に、債権者による抵当権実行の段階に至っているとしても、譲受人としては抵当不動産の第三取得者として代位弁済(民法第500条)等の方法により、これを避けられるほか、譲渡人が担保的権利による制限がある場合の売主の担保責任(民法第567条)を負っており、いずれにしても譲渡人に対して求償権を有することとなるので、抵当権が設定されている当該資産の経済的価値には影響がないと解するのが相当である。
したがって、当該資産の交付によるみなし配当の収入金額を算定するに当たり、当該資産の時価から抵当権による被担保債権額を控除することはできない。
要旨
請求人は、本件ゴルフ会員証はゴルフ場のオープン記念として贈与されたものであり、当該会員証は、入会金を払い込めば会員権を取得できるというゴルフ会員権購入選択権を証するものであるので、一時所得に該当する旨主張する。
しかし、本件ゴルフ会員証は、[1]ゴルフ場を経営するJ社は、請求人が本件ゴルフクラブの理事長等の選任に尽力したこと等に対する謝礼として提供したものであり、[2]同社は、請求人に対し名誉会員証とは別に本件証書を提供していることから、請求人が第三者に本件証書を売却することを前提として提供しているものと認められ、当該証書を継続的に売却したことにより実現した本件所得は雑所得に該当すると解するのが相当である。
要旨
ストリップショウは、通常出演者が観客の前で音楽に合わせて踊りながら、次々に衣裳を脱いでいく演芸であるから、所得税法施行令第320条第4項に規定する舞踊に含まれる。したがって、当該ストリツプショウの出演者の役務に対して支払われる出演料は、所得税法第204条第1項第5号に規定する報酬又は料金に該当する。
ソフトウエアに係る著作権を侵害したとして外国法人に対し支払った金員は、所得税法第161条《国内源泉所得》第7号ロに規定する著作権の使用料に当たるとした事例
裁決事例集 第66集 200頁
要旨
所得税法161条7号ロに規定する「著作権」とは、著作権法上の著作権と同義に解することが相当であるところ、「著作権の使用料」とは、所得税基本通達161-23のとおり、著作物の複製その他著作物の利用につき支払を受ける対価の一切をいうものと解され、その対価には、所得税基本通達161-7のとおり、当該対価等として支払われるものばかりでなく、当該対価等に代わる性質を有する損害賠償金その他これに類するもの(その支払が遅延したことに基づく遅延利息等に相当する金額も含む。)も含むと解することが相当である。
これを本件についてみると、[1]本件和解金は、請求人が過去に本件ソフトウエアの著作権を侵害したことに対して支払われたものであること、[2]和解金には、ソフトウエアの新規購入分が含まれていないこと、[3]本件和解金は、本件ソフトウエアの単価×使用数の1.3倍で算出され、使用料を基礎としていることなどから判断すると、本件和解金は、著作権者に対して著作権の侵害により生じた著作権の使用料(本来、本件著作権者が得ていたであろう利益の喪失分)として支払われたものと解することが相当である。
したがって、本件和解金は、実質的には、著作権の対価等に代わる性質を有するものと認められ、所得税法161条7号ロに規定する著作権の使用料に該当し、国内源泉所得となるから、所得税法212条1項の規定により所得税の源泉徴収の対象となる。
要旨
マンション建築用地の開発に当たり、都市計画法等の関係法令及び市の指導要綱に基づき、本件土地を無償提供しているが、土地の無償提供が本件開発行為における実質的な許可条件とされており、また、請求人が本件土地を提供したことにより開発行為の許可を受けられること自体、所得税法第78条第2項第1号かっこ書所定の「特別の利益がその寄付をしたものに及ぶ」と認められる場合に該当するから、本件土地の無償提供は、所得税法第78条第2項に規定する地方公共団体等に対して特定寄付金を支出した場合に当たらない。
ライブチャットサービス業務を行う請求人が主張する各費用のうち、少なくともパソコン等の購入費及びインターネット接続料金については必要経費に算入するのが相当であるとした事例(平成19年分~平成23年分の所得税の各決定処分及び無申告加算税の各賦課決定処分・一部取消し・平26年5月22日裁決)
裁決事例集 第95集
要旨
請求人は、インターネットのウェブサイト上で、当該サイトの男性会員にウェブカメラで撮影した映像を見せながら会話を行う等のいわゆるライブチャットサービス(本件業務)を行って報酬を得ていたところ、本件業務に使用するパソコン、ウェブカメラ、衣服、水着、ソファー、カーテン等を購入した費用及び美容費は、全て本件業務の遂行上必要なものであるから、必要経費に算入されるべきものである旨主張する。
ところで、請求人がいかなる態様で本件業務を行っていたとしても、少なくともパソコン及びウェブカメラを使用し、インターネットへ接続することは本件業務の遂行上必要不可欠なことと認められるから、請求人が本件業務の用に供したパソコン及びウェブカメラの購入費並びにインターネット接続料金については、減価償却費、消耗品費、備品費又は通信費として必要経費にそれぞれ算入するのが相当である。
しかしながら、上記各費用のうちパソコンの購入費等以外の各費用については、請求人から本件業務をどのように行っていたのかを明らかにする動画や静止画等の客観的な証拠の提出はなく、当審判所の調査の結果によっても、これを確認することはできない。そうすると、請求人の当該各費用の必要経費該当性については、業務関連性に関する各答述等から合理的に判断していくほかないところ、各答述は、総じて終始場当たり的で一貫せず、不自然かつ不合理な内容や本件業務に無理に関連づけて述べるものと認められるから信用できない上、請求人が提出した当該各費用に関する書類の内容及び本件業務との関連性を記載したメモ書き等からみても、いずれの費用も客観的にみて本件業務と直接の関係を有し、かつ、本件業務の遂行上必要なものとは認められない。
参照条文等
要旨
請求人は、機械等のリース・販売等を営み、リースの用に供していた減価償却資産を譲渡したことによる所得は、[1]本件リース用機械の販売に関し、不特定多数の顧客に広告宣伝を行った事実はなく、当該機械を販売するための人的・物的設備は不要であること、[2]当該機械の販売は、臨時的・偶発的に行われたものであること等から、譲渡所得に該当する旨主張する。しかしながら、請求人のリース業の性格上、そのリース用機械を取得してリースの用に供した後に当該リース用機械を譲渡したとしても、その譲渡行為は、リース用機械に係る所有権の行使の一態様として、これを譲渡したにすぎないものと認めることが相当であり、リース業に付随して経常的に派生していることからしても、請求人は営利を目的として継続的にリース用機械の譲渡を行ったものと認められることから、本件リース用機械を譲渡したことによる所得は、譲渡所得には該当せず、事業所得に該当する。
要旨
家事関連費が必要経費として控除されるためには、業務上の必要性及びその必要である部分が客観的に明らかでなければならないものと解されるところ、請求人においてロータリークラブの例会を中心とする各種会合に参加し、各種職業の経営者と懇親を深め、社会的信用を高めることは、請求人の公認会計士としての業務に何らかの利益をもたらすであろうことは否定できないが、ロータリークラブに入会したこと及びその例会に参加することが主として業務上の必要性に基づくものであると客観的に認めることはできないので、本件ロータリークラブ年会費の額を事業所得の金額の計算上必要経費の額に算入することはできない。
ポイント
本事例は、司法書士業を営む請求人が支出したロータリークラブの入会金及び会費は、請求人が当該クラブの会員として行った活動を社会通念に照らして客観的にみれば、その活動は、司法書士の業務と直接関係するものということはできず、また、その活動が司法書士としての業務の遂行上必要なものということはできないため、事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできないとしたものである。
要旨
請求人は、所得税法第37条《必要経費》第1項に規定する「販売費、一般管理費及びその他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」とは、文理解釈する限り、業務と直接の関係を持つものである必要はなく、客観的にみて所得を生ずるのに必要なものであれば足りるとして、加入するロータリークラブ(本件クラブ)の入会金及び年会費(本件各諸会費)は必要経費に算入できる旨主張する。
しかしながら、事業所得の金額の計算上、必要経費が総収入金額から控除されることの趣旨は、投下資本の回収部分に課税が及ぶことを回避することにあると解されるところ、日常生活において事業による所得の獲得活動のみならず、所得の処分としての私的な消費活動も行っている個人の事業主における事業所得の金額の計算に当たっては、事業上の必要経費と所得の処分である家事費とを明確に区分する必要があり、それらを踏まえて所得税法第37条1項、同法45条《家事関連費等の必要経費不算入等》第1項及び所得税法施行令第96条《家事関連費》第1号の各文言に照らせば、所得税法第37条第1項のいう費用とは、単に業務と関連があるというだけではなく、その支出が業務と直接の関係を持ち、かつ、業務の遂行上必要なものに限られると解するのが相当であり、その判断は、単に業務を行う者の主観的な動機・判断によるのではなく、当該業務の内容や、当該支出の趣旨・目的等の諸般の事情を総合的に考慮し、社会通念に照らして客観的に行われなければならないと解される。以上のことから、請求人が本件クラブの会員として行った活動を社会通念に照らして客観的にみれば、その活動は、登記又は供託に関する手続について代理することなど司法書士法第3条《業務》第1項各号に規定する業務と直接関係するものということはできず、また、その活動が司法書士としての業務の遂行上必要なものということはできないため、請求人が支出した本件各諸会費は、請求人の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできない。
参照条文等
一括して支払った本件土地の取得費のうち、その内容が明らかでない部分についても、本件土地の当時の状況等を総合的に判断すると、取得のために支出したものと推認されるとした事例
裁決事例集 第43集 142頁
要旨
本件譲渡に係る取得費は、①本件土地の当時の状況が、建物の撤去及び埋土等の造成工事が必要であったこと並びに②仲介業者が介入しており、その費用に充てる必要があったことなどから、複数の契約により総額を一括して支払い、これを青色申告の帳簿に計上していたものと認められ、本件取得費のうちその内容が明らかでない部分は、取得費として認められないとした原処分は、その全部を取り消すべきである。
一時所得の金額の計算上、生命保険契約の契約者貸付けによる借入金に係る利息を控除することができないとした事例(令和2年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第136集
ポイント
本事例は、生命保険契約の契約者貸付けによる借入金に係る利息が、当該保険契約に係る解約返戻金に係る一時所得の金額の計算上、所得税法第34条第2項に規定する「その収入を得るために支出した金額」に含まれないとしたものである。
要旨
請求人は、生命保険契約(本件保険契約)に係る契約者貸付け(本件契約者貸付け)による借入金(本件借入金)に係る利息(本件利息)は、請求人が受領した本件保険契約に基づく解約返戻金(本件解約返戻金)と相殺されたことなどから、本件解約返戻金に係る一時所得の金額の計算上、所得税法第34条《一時所得》第2項に規定するその収入を得るために支出した金額に含まれる旨主張する。
しかしながら、本件利息が同項に規定するその収入を得るために支出した金額に含まれるというためには、本件保険契約に係る保険料の支払に本件借入金が充てられたものであることが必要であるところ、請求人は、本件契約者貸付けを利用する前に本件保険契約に係る保険料を完納しており、本件借入金が本件保険契約に係る保険料の支払に充てられていないことは明らかであるから、本件利息は、本件解約返戻金に係る一時所得の金額の計算上、同項に規定するその収入を得るために支出した金額に含まれない。
参照条文等
一時払いの生命保険契約上の権利を退職金の一部として受領し、その後当該生命保険契約を解約したことにより解約返戻金を受領した場合の一時所得の金額の計算上控除する金額は、一時払いした保険料に限られず、退職所得として課税された退職時における当該生命保険契約の解約返戻金相当額であるとした事例
裁決事例集 第62集 161頁
要旨
原処分庁は、請求人が法人役員を退任した際に生命保険契約上の権利を退職金の一部として一時払いの生命保険契約の契約者及び受取人の名義を請求人に変更することにより受領し、その後当該生命保険契約を解約したことにより解約返戻金を受領した場合、所得税法第34条第2項に規定する一時所得の金額の計算上控除する金額は、所得税法施行令第183条第2項に規定するとおり法人が一時払いした保険料に限られ、請求人が退職所得として課税された退職時における当該生命保険契約の解約返戻金相当額ではない旨主張する。
しかしながら、所得税法施行令第183条第2項は、生命保険契約等に基づく一時金に係る一時所得の金額の計算方法を完結的・網羅的に規定したものではなく、同項第2号は、生命保険契約等に基づく一時金に係る一時所得の金額の計算上、保険料総額のみしか控除できない旨を規定した特例規定ではないものと解され、当該一時金に係る一時所得の金額の計算に当たっては、保険料総額以外に所得税法第34条第2項に規定する収入を得るために支出した金額がある場合には、その支出した金額を一時所得に係る総収入金額から控除できるものと解される。
一時所得の金額の計算上控除する金額については、一般には保険料の額と解するのが相当であるとしても、本件においては、本件退職時解約返戻金相当額が保険料総額を上回っており、その上回った金額を含めて退職所得課税の対象となっていることから、その上回った金額は、所得税法第34条第2項に規定する一時所得の金額の計算上収入を得るために支出した金額に含まれると解するのが相当である。
三者間で行った本件土地の交換は、所得税基本通達33-6の6《法律の規定に基づかない区画形質の変更に伴う土地の交換分合》に該当し、譲渡がなかったものとして取り扱われるとした事例
裁決事例集 第62集 130頁
要旨
原処分庁は、所得税基本通達33-6の6《法律の規定に基づかない区画形質の変更に伴う土地の交換分合》(以下、「本件通達」という。)にいう土地の区画形質の変更とは、一団の土地の登記地番及び所有権に基づく区画に対して、道路その他の公共施設の整備、不整形地の整理等によって区画を適正にし、土地の形状・土質を改良して適正な宅地を造成することをいうとの解釈に基づき、本件交換は、本件一団の土地全体について造成が行われておらず、請求人らがそれぞれ所有する各画地について行った造成工事は、区画形質の変更に際して行われたものではないので本件通達に定める交換分合には該当しない旨主張する。
しかしながら、本件通達の取扱いは、その経済実態から、土地所有者相互間における相隣関係の問題として単に土地の境界線を整理しただけとか不整形地であったところに道路を付け区画を整理するというのであれば、その土地の交換分合が土地所有者相互間において必要最小限の範囲内で行われた場合には、税務上はその交換分合による土地の譲渡はなかったものとする趣旨であり、本件通達にいう土地の区画形質の変更とは、土地の区画を整理し、又は土地の形状及び土質を変更し、利用しやすい土地にすることをいうと解され、必ずしも土地の形質の変更を伴わなければならないというものではない。
本件交換は、本件通達に定める、一団の土地の利用増進を図るために行う土地の区画形質の変更に際し、相互にその区域内に所有する土地の交換分合を行った場合に該当し、四囲の状況からみて必要最小限の範囲内で行われた交換分合にも当たると認めるのが相当である。
そうすると、本件交換は本件通達に定める交換分合に該当し、譲渡がなかったものとされるから、本件更正処分はその全部を取り消すべきである。
要旨
不動産仲介業を営んでいた個人が、その事業を法人に組織替えした後において、個人事業当時に、棚卸資産として取得し、法人に引き継がれなかった土地を売却した場合には、その限りにおいて個人事業が継続しているとみるべきであり、その売却による所得は、固定資産の売却による譲渡所得とみるべきではない。
不動産共有持分権の買取り及び施設利用権の解約は、不動産共有持分権、施設利用権及び保証金返還請求権の三つの権利が渾然一体となった施設利用権の譲渡に当たる旨の請求人の主張を排斥した事例
裁決事例集 第71集 246頁
要旨
請求人は、不動産売買契約及び施設相互利用契約から生じる権利を買取制度に基づき譲渡したことについて、本件不動産の共有持分権と本件施設利用権と預託金返還請求権の三つの権利が渾然一体となった施設利用権を譲渡したものであることから、そのすべてが資産の譲渡に該当する旨主張する。
所得税法第33条第1項にいう資産は、原則として、それぞれの権利ごとに一つの資産としてみるが、法律上あるいは事実上不可分一体あるいは分離不可能な権利である場合には、複数の権利等を例外的に一つの資産と判断することになると解される。そして、不動産売買契約及び施設相互利用契約から生じる権利は、上記三つの権利から構成されているものと認められ、不動産共有持分権は、独立した権利として法律上認められた権利であること、一般的には、売買契約に基づき取得する不動産の共有持分権は、独立した権利として市場流通性を有し取引の対象となり、本件施設利用権を有しているか否かにかかわらず、固定資産税などの負担が生じることが認められる。これらを踏まえれば、上記三つの権利は、法律上も事実上も不可分一体あるいは分離不可能なものとはいえないから、これらの権利が譲渡される場合において、これらを一つの資産として譲渡所得の対象となる資産と取り扱うことは相当ではない。
そして、請求人が解約合意により、本件不動産共有持分権を会社に譲渡し、譲渡代金を受け取ったことは、所得税法第33条第1項に規定する資産の譲渡に該当するが、請求人は、自己の意思により、本件施設利用契約を解約して本件施設利用権を消滅させ、これに伴い本件保証金返還請求権に基づき保証金の返還を受けたと認められ、このことは、本件保証金返還請求権を譲渡したものでも、本件施設利用権の消滅の対価として本件保証金を受け取ったものでもなく、単に金銭債権を行使したことによるものであると認めるのが相当である。したがって、本件解約合意に基づく本件施設利用権の消滅及び本件保証金返還請求権に基づく保証金の返還は、所得税法第33条第1項に規定する資産の譲渡には該当しない。
要旨
貸付不動産は遠隔地に散在し、賃貸料についても固定資産税、管理費、減価償却費等所要の経費を賄ってなお相当の利益が生ずるようになっており、賃貸料の集金、名義書換え及び契約更新の交渉等についても長年の経験と知識をもって専従者(母)が行っており、かつ、毎月収支明細表を作成し、資金の収支を整然めいりょうに記載する等財産的管理が十分に行われている状況からみて、不動産の貸付けが事業として行われているとみるのが相当である。
したがって、請求人の不動産所得の金額の計算上、青色事業専従者給与の金額の必要経費算入を否認した原処分は取り消すべきである。
不動産所得の基因となる資産の取壊しにより生じた損失の金額が、所得税法第51条第4項に該当し、本件損失を不動産所得の必要経費に算入しないで計算したところの不動産所得の金額を限度として必要経費に算入されるとした事例
裁決事例集 第61集 118頁
要旨
不動産の貸付けが不動産所得を生ずべき事業といえるか否かは、社会通念上、事業と言い得るか否かによって判断するのが相当と解されているところ、請求人の不動産貸付けは、[1]貸付物件は本件不動産のみで、その貸付先は請求人が主宰するK社のみであること、[2]本件不動産の賃貸料は請求人の預金口座に振込入金されており、賃貸料収入の受領等に係る役務の提供は極めてきん少であること、[3]本件建物の日常の清掃は、K社の従業員が行っていること、また、本件不動産に係る必要経費についても、本件建物の減価償却費以外には固定資産税があるのみで、その支払については、請求人の預金口座からの自動引き落としになっていることから、本件不動産に係る維持管理の程度は極めて低いと認められること、[4]本件建物の取壊しは、K社の営業方針に基づくものであると認められること、[5]請求人は生活の資金の大部分をK社の給与から得ていることなどを総合して判断すると、社会通念上、事業と称するに至る程度のものとは認められない。
したがって、その業務の用に供されていた本件建物の取壊しによる資産の損失の金額は、所得税法第51条第4項の規定が適用され、本件損失を不動産所得の必要経費に算入しないで計算したところの不動産所得の金額を限度として必要経費に算入される。
要旨
請求人は、請求人の父は所得を有し生活費も毎月負担しており、同人と生計を一にしていないから、父に支払った本件地代は、不動産所得の金額の計算上、必要経費として認められるべきである旨主張する。
しかしながら、請求人は、父と同一の家屋内に起居していること及び食事を共にするなど日常の生活を共にしていることからすれば、同人が所得を有し生活費を負担していたとしても、請求人と父が明らかに独立した生活を営んでいるとは認められず、また、本件全資料及び当審判所の調査によっても、請求人と父との間で家事上の共通経費について実費の精算が行われていること並びに事実上の支出に関して親族間における債権債務の発生及び決済の状況が明らかであることを認めるに足りる証拠資料はない。
そうすると、請求人と父は生計を一にしているとみるのが相当であるから、本件地代は、所得税法第56条の規定により不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入されないことになる。
要旨
不動産会社に勤務する請求人が、同社所有の不動産を顧客に販売した場合に、その契約高に比例して支給される金員は、請求人が自ら独立の事業として同社に提供した役務の対価とは認められず、請求人が同社に雇用されている営業社員として、会社の就業規則に基づく給与規定による能率給として支給されるものであるから、給与所得の収入金額とするのが相当である。
要旨
請求人は、請求人が不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した本件ゴルフ代の支出に関し、賃貸物件の補修の必要性や家主である請求人に対するクレーム等を把握し、これらに対応することで、賃貸物件を優良なテナントに長く貸し付けることができるよう、テナントの代表者等に対するゴルフ接待を行うとともに、種々の情報を得て不動産の購入を容易にし、また、購入資金の融資の点でも有利になるよう、かつての勤務先である銀行の後輩等に対するゴルフ接待を行っていた旨主張する。
しかしながら、本件ゴルフ代についてみると、請求人が接待の相手方であると主張する者のうち、①請求人の主宰法人が所有する不動産のテナントについては、請求人の不動産所得に係る業務の遂行とは直接関係がなく、②請求人が所有する不動産のテナントの関係者についても、請求人が賃貸物件の補修の必要性や家主である請求人に対するクレーム等を把握するために、これらの者とゴルフをする必要があったとは認め難く、③かつての勤務先である銀行の後輩については、間接的に、請求人の不動産貸付業に有益な情報が得られる場合があるとしても、これらの者とゴルフをすることが、業務の遂行上直接必要であったとまではいい難く、さらに、④請求人はゴルフクラブの会員として、本件各年分を通じて、毎年相当の回数のプレーをしており、その大半を女子プロゴルファーと2人でプレーしている上、請求人が接待交際費に該当すると主張する上記各相手先とのゴルフについても、いずれも上記女子プロゴルファーを同伴させていることからすれば、本件ゴルフ代は、結局のところ、請求人の趣味・し好としてのゴルフプレーのために支出された家事上の経費であると評価せざるを得ず、家事費に該当するから、請求人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないというべきである。
参照条文等
要旨
請求人は、不動産賃貸に係る土地と建物(マンション)を一括購入し、[1]その減価償却資産となる建物本体の取得価額は、一括購入価額から路線価を基に算出した土地の実勢価額及び建物附属設備の価額を控除した額とし、[2]建物附属設備の取得価額は、一括購入価額から路線価を基に算出した土地の実勢価額を控除した額の30%相当額と主張し、原処分庁は、[3]建物本体の取得価額は、土地と建物の固定資産税評価額の比を一括購入価額に乗じて算出した額とし、[4]建物附属設備の取得価額は、建物本体に含めて計算すると主張する。
審判所において調査したところ、本件賃貸物件は新築マンションと中古マンションであり、新築マンションについては、売主等において土地と建物とに区分経理されているから、建物の取得価額はその金額によることが相当と認められ、また、建築時の工事費の割合が把握できることから、建物本体及び建物附属設備の取得価額は、その工事費の割合を基に計算することが相当と認められる。
次に、中古マンションについては、土地と建物の価額の区分について、その売主等においても把握できず、また、類似譲渡事例等もないところ、相続税評価額や固定資産税評価額等を基に合理的と認められる価額を見積もる必要があるが、固定資産税評価額は同一の機関で土地及び建物の評価を行うものであることなどから、本件においては、土地と建物の固定資産税評価額の比を一括購入価額に乗じて建物の価額を算出し、建物本体と建物附属設備のそれぞれの取得価額については、建築時の工事費の割合が把握できることから、その工事費の割合を基に計算することが相当と認められる。
要旨
原処分は、故障を原因として低額で譲渡した機械装置を、直ちにスクラップ化した資産の譲渡とみて、帳簿価額と譲渡価額の差額を「資産損失」としている。しかし、譲渡した機械装置は、その後多額な修繕を要することもなく使用されていることから、スクラップ化しているものではなく、この原処分は相当ではない。
この場合において、その譲渡時の適正価額を評価した上、帳簿価額と当該適正価額との差額は「資産損失」、当該適正価額と譲渡価額との差額は「譲渡損失」とすべきである。
要旨
被相続人の病院事業を相続した請求人らが、当該病院事業を廃止するため、事業廃止に伴う入院患者に対する転院の通告あるいは通院患者に対する事業所閉鎖の通知等必要な業務を行わず、当該事業の発展を図るため、病院を人格なき社団に改組した場合には、被相続人の事業が直ちに廃止されたものと認められないから、現実に退職者がいないのに退職金の名目で支払われた金員は、所得税法第63条に基づいて被相続人の事業所得の計算上必要経費に算入することはできない。
事業開始前に事業の用に供する資産を借入金によって取得した場合において、事業開始前に支出した当該借入金の利子は繰延資産である開業費には該当しないとされた事例
裁決事例集 第57集 138頁
要旨
請求人が事業を開始するに当たり借入金を原資として事業用の本件建物等を取得し、事業開始前に支払った当該借入金に係る本件利子について、請求人は、所得税法施行令第126条に規定する付随費用には含まれず、同条に規定する減価償却資産の取得価額を構成しない等の理由から、所得税法施行令第7条第1項かっこ書きに規定する「資産の取得に要した金額とされるべき費用」に該当しないので同項第1号に規定する開業費に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人は本件建物等の工事代金の支払のため銀行から借入れを行い、本件利子を支払っており、本件利子は、請求人が本件建物等を取得することを基因として支出したものと認められること、及び固定資産の取得のための借入金の利子で事業開始前の期間に対応するものは、当該固定資産の取得価額に算入するという所得税基本通達38-8の定めは相当と解されることから、本件利子は所得税法施行令第7条に規定する「資産の取得に要した金額とされるべき費用」に該当すると認められので同条に規定する開業費には当たらず、本件建物等の取得価額に算入すべきである。
交換により取得した土地について、交換の相手方が取得してから1年未満で、かつ、譲渡土地の額の20パーセント相当額を超える借地権部分であることから、交換の特例の適用はないとした事例
裁決事例集 第29集 39頁
要旨
交換の相手方から取得した土地には、当該相手が取得してから1年に満たないため交換の特例の対象となり得ない借地権部分が含まれており、かつ、その部分を交換差金とみるとしてもその価額が本件譲渡土地の価額の20パーセント相当額を超えるとして所得税法第58条の適用を否認した原処分について、請求人は、同条は借地権についてこのような取り扱いを明文をもって規定しているわけではなく、少なくとも善意の第三者を保護するために不動産登記がされている借地権のみこのような取扱いをすべきであると主張するが、同条は借地権それ自体独立して交換の特例の対象となる資産である旨を規定し、登記がされている借地権のみ交換の特例の対象になるとは解し得ないから、請求人の主張には理由がない。
要旨
請求人は、長男の交通事故を基因とした自動車総合保険契約に基づく死亡保険金を取得したが、当該保険契約に係る保険料は、請求人の給料から天引きされて支払われているものの、死亡した長男の手帳等の記載内容からみて、長男が全額を負担していたことが認められることから、本件死亡保険金は、一時所得ではなく、みなす相続財産に該当する旨主張する。
そこで、長男の手帳等の記載内容、長男の資力及び保険契約の経緯等を総合的に判断したところ、支払った保険料のうち一部については長男が負担したと認められ、本件死亡保険金のうち長男が負担していた保険料に対応する部分は、みなし相続財産に該当するから、原処分はその一部を取り消すべきである。
なお、一時所得の金額の計算上控除する保険料の金額は、請求人が負担していた保険料のうち一時所得の収入金額に対応する部分の金額となる。
他に所得があるため控除対象配偶者となり得ない者が支払を受けた青色事業専従者給与の額は、支払者が事業所得の必要経費に算入したか否かにかかわらず、給与所得に係る収入金額になるとした事例
裁決事例集 第30集 55頁
要旨
請求人は、眼科医を営む請求人の夫から青色事業専従者給与として支払を受けた金員につき、夫が事業所得の金額の計算上必要経費に算入していないことをもって、請求人の給与所得の収入金額にはならないと主張するが、請求人は、青色事業専従者給与のほかにも所得があって、仮に、この事業専従者給与がなかったとしても、控除対象配偶者になり得ない者であり、同人は青色事業専従者の適格要件を満たしているとともに、その青色事業専従者給与の額も相当であると認められているので、当該金員は、夫の確定申告において事業所得の必要経費に算入されているか否かにかかわらず、請求人の給与所得の収入金額となる。
要旨
支出した費用が譲渡所得の金額の計算上控除すべき譲渡費用に当たるか否かは、資産の譲渡との関連において、その資産の値上がり益を実現させるための費用性があるか否かによって判断すべきものと解されるところ、他に有利な条件で譲渡するために、いったん締結した土地、建物の売買契約を解約し、その解約に伴って支出した違約金に係る借入金利子は、その元本に当たる支出違約金と同様に本件譲渡との関連において、費用性を有するものというべきであり、譲渡所得の金額の計算上、違約金主体とその支払のために要した借入金利子とを区別して取り扱う理由がない。
したがって、支出違約金に係る借入金利子の額は、本件譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上、譲渡費用の額に算入すべきである。
要旨
請求人は、「未分割財産である本件土地家屋を占有していた他の共同相続人に対して遺産分割の調停に基づいて支払った和解金は、立退料的和解金であるから本件土地建物の譲渡取得の金額の計算上譲渡費用として控除すべきである。」と主張するが、本件和解金は、遺産の代償分割に伴って請求人が負担することになった代償債務の履行として支払われたものであるから、本件土地家屋を譲渡するために要した費用には当たらない。
代物弁済によって取得した土地の取得費は、代物弁済によって消滅した債権金額がその取得時における時価相当額を著しく超えるときは、その時価相当額にとどまるとした事例
裁決事例集 第32集 59頁
要旨
代物弁済により資産を取得した場合には、その弁済により消滅した債権の額がその資産の取得に要した金額となるのであるが、その代物弁済により消滅した債権の額が代物弁済により取得した資産の価額を大幅に超えることとなる場合において、その超える部分の金額について債権者がその弁済を求めないこととしたときは、当事者の認識又は契約にかかわらず、その超える部分の金額についてその債務を免除し、又は債務の弁済が不能であると判断したものと解すべきであるから、これに当たる部分の金額には資産の取得費性はなく、したがって、代物弁済により取得した資産の取得に要した金額とはならず、当該資産の代物弁済時の時価をもって取得に要した金額とすべきである。
仮に、本件現物出資に係る錯誤が民法第95条にいう錯誤に当たるとしても、本件現物出資の無効の主張は、訴えをもって行うべきであって、本件審査請求において、直接このような主張をすることは許されないとした事例
裁決事例集 第45集 75頁
要旨
請求人は、本件現物出資は錯誤による無効なものであり、そうでないとしても、現物出資を撤回して本件現物出資相当額の金銭出資を行っているから、譲渡所得は生じなかったとみるべきであると主張するが、仮に、本件錯誤が民法第95条にいう錯誤に当たるとしても、本件現物出資の無効の主張は、有限会社法の規定に基づく訴えをもって行うべきであって、審査請求において直接このような主張をすることは許されないというべきであり、また、本件現物出資の撤回と解したとしても、相当期間有効に存続し、かつ遡及的に消滅したとする事由のない本件現物出資について、所得税法第33条第1項に規定する「資産の譲渡」に当たるとするのは当然のことである。
要旨
企業支配に係る対価の額は、新たに他の企業を支配するために通常の価額を超えて支出される金額のほか、既に支配している企業に対する支配力を維持又は強化するために通常の価額を超えて支出される金額もこれに含まれると解されるところ、本件の場合、請求人が新たに取得した株式は、既に請求人が40パーセント強の株式を所有している会社の株式ではあるが、企業支配を更に強化することを目的として、発行済株式の100パーセントの株式を保有するべく取得したものであるから、これを株式の所有者によって企業支配の対価の有無を区別する理由はなく、同時に同一単価で請求人の役員から取得した株式についても、一般株主から取得した株式と同様に、その取得価額のうち通常の1株当たりの株式の価額を超えて支出した金額は、企業支配の対価と認めるのが相当である。
したがって、当該役員からの本件株式の取得は、高価買入れに当たらない。
要旨
請求人は、強制消却の場合と異なり、任意消却における株式の買入れは、株式の消却とは別個の独立した株式の売買行為であるから、その所得は譲渡所得に該当すると主張するが、任意消却における株式の買入れの本質、支払われる金銭等の経済的実質からすると、強制消却の場合の効果と同様に、任意消却において売株主に対して支払われる金銭等は、株式の消却により交付される金銭等に当たると解するのが相当であり、その所得はみなし配当所得に該当する。
要旨
請求人は公認会計士の開業登録は行っているが、会社勤務の余暇を利用して顧客の勧誘をしたのは数社であり、それも単なる勧誘で、固定的な顧客の獲得はなく、当該業務契約の締結に至ったもの及び公認会計士の業務に係る収入金額が皆無である。このような状況においては、請求人の当該業務は社会通念上、いまだ所得税法上の事業と認めるには足りないものとみるのが相当である。
要旨
領収証に記載された住所につき住民登録がなされていない者に対する外注費の支払は架空のものであるとして否認した原処分について、その者は実在し、外注費の支払は事実であるとする請求人の主張に基づき所在調査を行った結果、実在を確認でき、外注費支払の事実が認められるので、原処分の一部を取り消すのが相当である。
使用人兼務役員として勤務する会社の適格退職年金制度の廃止に伴い、年金信託契約の受託者から受領した一時金は、所得税法第31条に規定する退職手当等とみなす一時金ではなく一時所得に該当するとした事例
裁決事例集 第75集 183頁
要旨
60歳定年後も引き続き、使用人兼務役員として勤務していた請求人が、勤務先の適格退職年金制度が確定拠出年金(企業型年金)制度に移行する際、新制度に移換されなかった請求人に対して支給された本件一時金は、定年に達した後引き続き勤務する使用人に対し、その定年に達する前の勤務期間に係る退職手当等として支払われた給与であるから、所得税基本通達31-1の(3)が引用する同通達30-2の(4)に掲げる事由に該当し、所得税法第31条第3号に規定するみなし退職所得に該当すると主張する。
しかしながら、所得税法第31条第3号は、みなし退職所得となる企業年金等から支給される一時金を「加入者の退職により支払われるものその他これに類する一時金として政令に定めるもの」に限定している。また、所得税基本通達31-1の(3)は、適格退職年金契約に基づいて支払われる退職一時金等のうち、同通達30-2の(2)及び(4)から(6)までに掲げる退職に準じた事実等が生じたことに伴い加入員としての資格を喪失したことを給付事由として支払われる一時金も、みなし退職所得となる旨定めている。これを本件についてみると、請求人は、本件一時金の支給後も本件労働契約に基づき使用人兼務役員として本件会社に勤務しており、退職の事実はなく、本件一時金は所得税法第31条第3号には該当しない。また、本件一時金は本件年金信託契約が解除されたことにより、本件旧年金規程第24条に基づき信託財産の残余金が分配されたものであって、加入者としての資格を喪失したことを給付事由として支払われたものではないから、所得税基本通達31-1の(3)にも該当しない。
要旨
遺産分割が家事審判に基づく競売による価額分割の方法により行われ、当該分割の対象となった土地の競売代金のうちから取得した遺留分相当額の金員については、相続財産として取得したものであり、譲渡所得の課税対象とはならない旨の主張について、譲渡所得の課税は、譲渡所得の基因となる資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として、その資産の所有者の支配を離れて他に移転するのを機会にこれを清算して課税する趣旨のものであり、当該金員については、家事審判に基づく競売による価額分割がなされたことによって、その値上がり益の清算が行われたものと認められるから、所得税法第33条第3項に規定する譲渡所得に係る収入金額に該当するものであり、したがって、原処分は相当である。
要旨
原処分庁は、保証債務の金額を履行した請求人(物上保証人兼連帯保証人)は、他の連帯保証人に対する求償権の行使が可能であるから、当該履行のためにした本件譲渡には所得税法第64条第2項の規定は適用されないと主張するが、請求人が他の連帯保証人に対する求償権を放棄した当時、その連帯保証人は、[1]所得資産はないこと、[2]月505,000円の給与収入のみで生活費にも事欠く状況であったこと、[3]賃貸マンション業を開業(求償権を放棄し約1年3月経過後に開業)する企画をしていなかったこと及び今後とも、[1]当該マンションに係る収益の好転は見込めないこと、[2]借入金の返済も続くこと等から、同人には支払能力があると認めることはできない。
要旨
請求人が所有する建物を賃貸した事情は、請求人が負担している保証債務を履行するための資金を得ることを目的としたものと認められるが、請求人の負担した保証債務は、当該不動産所得を生ずべき事業の遂行上生じたものではないから、保証債務の履行に伴う求償権の行使不能額は所得税法第51条第2項及び同法施行令第141条第2号に規定する必要経費には当たらない。
要旨
保証債務の履行に係る求償権の放棄について、主たる債務者は、[1]設立以来、現在まで事業を継続していること、[2]ここ数事業年度の決算では毎期純利益を計上し、繰越欠損金は減少しており、また、不良債権であるという売掛金も回収不能であると認めるに足る証拠はないこと、[3]請求人以外の者からの借入金は、返済、借入れを繰り返しながら全体に減少し、請求人が求償権を放棄した事業年度においても借入金を返済していること、[4]求償権を放棄した翌事業年度には、請求人に対し新たな貸付けを行っていること等を総合勘案すると、請求人の主たる債務者に対する求償権の放棄について、その行使ができないために行ったものと認めることは相当でない。
要旨
本件保証債務を履行するために譲渡した資産は居住用及び非居住用の二つの使用区分からなっているとしても、同一人に対し同一時期に同一契約により一括して譲渡しており、本件資産の譲渡に係る求償権が行使できない保証債務の履行額及び譲渡費用の額は共通的なものとして支出しているので、これらの金額を、本件資産の居住用及び非居住用の用途別の譲渡代金の比によりあん分するのが相当と認められる。
要旨
保証債務を履行したことにより生じた本件損失は、現在経営する病院を設立する過程における事業活動の一環として生じたものである旨請求人は主張するが、本件損失は、請求人が連帯保証をし保証債務を履行した経緯、現在経営する病院の設立及び運営の状況に照らすと、現在経営する病院の設立及び運営に伴い生じたものと認めることはできず、事業の遂行上生じたものとはいえないから、必要経費に算入することはできない。
個人で病院を営む請求人が同族会社に支払った管理委託料は、当該同族会社と類似同業者の収受する管理委託料に比準して算定した適正管理料に比して不当に高額であるとして所得税法第157条の規定を適用した原処分は相当であるとした事例
裁決事例集 第37集 100頁
要旨
請求人は、各年分の所得税の負担を不当に減少させるために同族会社を設立し、管理委託料を支払ったものではなく、また、所得税第157条に規定する「不当に」の判断は、同法第59条第1項第2号の規定に基づく同法施行令第169条の規定を準用して2分の1の額に満たないかどうかによるべきであるから、管理委託料を支払ったことによって各年分の所得税の負担を不当に減少させたものとはならないと主張するが、同法第157条に規定する「所得税の負担を不当に減少させる結果となる」と認められるか否かは、同族会社の行為又は計算に基づいて算出された税額と通常あるべき行為又は計算に引き直して算定された税額とのかい離によって判断すべきであり、しかも、そのかい離は、画一的な線を引くことなく、具体的事案ごとに判断すべきものと解されるところ、請求人が同族会社に対して支払った管理委託料についてみると、類似同業者に比準して算定した適正管理料の額をはるかに超えた異常なものであり、殊更に高額な管理委託料を支払うべき合理的な理由も認められず、また、管理委託契約に基づく行為又は計算によって算出された請求人の所得税の負担は、適正管理費の額によって算出された請求人の各年分の所得税の負担に比し、各年分ともかい離していることが認められるから、その高額と認められる部分の金額は、必要経費の額に算入することはできない。
借地権の更新料が土地の時価の10分の5以下である場合には、当該更新料が地代の年額の20倍に相当する金額を超えるとしても、譲渡所得には該当しないとされた事例
裁決事例集 第57集 75頁
要旨
請求人は、本件土地の借地権の更新料は、当該土地の地代の年額の20倍に相当する金額を超えるものであるから、所得税法施行令第79条第3項の規定により譲渡所得の収入金額に該当する旨主張する。
ところで、所得税法施行令第79条第1項では、借地権の設定のうち、当該設定が建物若しくは構築物の所有を目的とする借地権等の設定である場合において、当該設定の対価として支払をうける金額がその土地の更地価額の10分の5に相当する金額を超えるときは、当該設定行為を資産の譲渡とみなす旨規定している。同条第3項では、その設定により受ける金額が、その設定により支払を受ける地代の年額の20倍に相当する金額以下である場合には、資産の譲渡には当たらないものと推定する旨規定しているが、この規定は、同条第1項にいう資産の譲渡とみなされる行為に当たるか否かを判定する上での推定規定であるから、当該行為が資産の譲渡に当たるか否かを同項により判定した場合には、同条第3項の規定を適用する余地はないものと解される。
そこで、本件土地の更地価額と借地権の更新料を検討すると、本件更新料は土地の更地価額の10分の5以下であると認められることから、当該更新料の金額が地代の年額の20倍に相当する金額を超えていたとしても、本件更新料は不動産所得の総収入金額に算入されるべきものである。
要旨
請求人は、形式上は売買であるが現にその物件に居住しており、かつ、その後に債務を弁済しているから譲渡担保であると主張するが、[1]債務の弁済を証する領収証に信ぴょう性がなく、相手方に入金経理の事実もないこと、[2]譲渡家屋の取壊しを前提として売買したと認められ、現に相手方が自己資金で家屋を新築しており、請求人は借家人にすぎないこと及び[3]月額地代の実質は借入金利息であると主張するが、その年利率は通常の利息に比し極めて低率であることから、譲渡担保としての要件に該当しない。
共同宅地造成によって生じた面積の減少部分の土地は、公共用地として地方公共団体に無償で供与されたものであり、当該土地についての譲渡所得はないものと認定した事例
裁決事例集 第27集 100頁
要旨
共同宅地造成によって生じた面積の減少部分の土地は、公共用地として地方公共団体に無償で供与されたものであるが、地方公共団体が所有する公道等は私人としてこれを所有してもあまり意味のない無価値のものであって、仮に所有権の移転が行われたとしても対価として収入する金額はないものと考えられること、また、所有地の一部を無償で供与することによって、所有面積は減少しても、残地については反射的利益として公共用地の利用便益を享受することになり、その価値は高まるので、供与者としては減少する土地についての対価を得ようとの認識はないことから当該供与部分の土地については譲渡所得はないものと認めるのが相当である。
要旨
所得税法第72条第1項に規定する災害に該当する人為による異常な災害とは、社会生活上通常予見し得る単なる不法行為によって発生した損害ではなく、予見及び回避不可能で、かつ、その発生が劇的な経過を経て発生した損害であることを要するものと解されるところ、離婚に際して夫婦の共有建物を調停で定めた分割線で分割するに当たり、当該分割線を超えて請求人の部分の一部が取り壊されたために生じた損害は、請求人がその部分の取壊しについて承諾しなかったとしても、分割線に近い柱を基準としてその柱の手前部分で取り壊すことが、建物の構造上の特性からみて首肯されるものであるから、通常生起する不法行為の一形態による損害にすぎす、当該建物の取壊しによる損害は、同項に規定する災害による損害に当たらない。
要旨
請求人は、10年以上にわたり内縁の夫と同居し生計を一にしていること、請求人が加入している健康保険組合において内縁の夫が請求人の扶養配偶者と認定されていること、遺族年金が内縁の配偶者にも支給されること、所得税法の配偶者控除に係る条文に内縁関係の者は除外するとは記されていないことから、内縁の夫を控除対象配偶者と認め、配偶者控除を認めるべきである旨主張する。
しかしながら、所得税法第83条第1項は、居住者が控除対象配偶者を有する場合、配偶者控除を適用する旨規定している一方で、同法は上記配偶者についての定義規定を置いていないが、身分関係の基本法は民法であるから、所得税法上の配偶者については、民法の規定に従って解するのが相当であるところ、民法は、婚姻の届出をすることによって婚姻の効力が生ずる旨を規定し(民法第739条第1項)、そのような法律上の婚姻をした者を配偶者としている(民法第725条、第751条等)から、所得税法上の配偶者についても婚姻の届出をした者を意味すると解するのが相当であり、所得税法上の配偶者の意義については、民法上使用されている配偶者の意義と同様に、戸籍法の定めるところにより市区町村長等に届出をした夫又は妻を指し、内縁の夫はこれに含まれないことになる。
そして、これを本件についてみると、請求人は、内縁の夫を世帯主とする住民登録上、請求人の続柄として「妻(未届)」と登録されており、また、請求人の戸籍及び内縁の夫の戸籍のいずれにも、請求人及び内縁の夫に係る婚姻の記録はないことからすれば、内縁の夫が、請求人の民法の規定による配偶者であったとは認められない。
したがって、内縁の夫は、請求人の所得税法上の配偶者に該当しないから、控除対象配偶者には該当せず、請求人は、配偶者控除を適用することはできない。
要旨
営利を目的とする継続的行為に当たらない一時的な資金の貸付けであり、かつ、利息の定めがない場合においても、その貸付けの時点において、その貸付先の資金の運用により相当額の利益の分配があることを予測し得る状態におかれ、かつ、これを予期して貸付けを行ったと認められるときは、その貸付金の元本額を超えて返済を受けた部分の金額は、所得源泉を有しない臨時的な所得である一時所得ではなく、雑所得とするのが相当である。
要旨
請求人は、請求人が貸し付けている不動産は貸付けを目的として取得したものではなく当初から利益の発生が期待できないものであり、当該不動産の貸付けは所得税法第143条に規定する不動産所得を生ずべき業務に当たらないから、平成18年10月に請求人が個人事業を開始した事実は同法第144条に規定する「新たに業務を開始した場合」に該当する旨主張する。
しかしながら、所得税法第26条及び第37条第1項の規定からすると、同法第26条第2項は、不動産の貸付けによる所得の金額はその年中の不動産の貸付けに係る総収入金額から不動産の貸付けに係る総収入金額を得るために直接に要した費用の額及びその年中における不動産の貸付けによる所得を生ずべき業務について生じた費用の額を控除した金額と解される。そうすると所得税法における「不動産所得を生ずべき業務」とは、不動産の貸付けによる所得を生ずべき業務、すなわち、不動産の貸付けをいうものと解するのが相当であって、このほかに、同法には「不動産所得を生ずべき業務」に該当しない不動産の貸付けが存することをうかがわせる規定はなく、また、同法第26条第1項は、不動産所得は不動産の貸付けによる所得とのみ規定し、同法には不動産の貸付けに至った事情又はその利益の有無によって、所得の種類等が左右されるとする規定もないから、請求人が行う不動産の貸付けは、当該貸付けが当初から利益の発生が期待できない貸付行為であったとしても、同法第143条に規定する「不動産所得を生ずべき業務」に該当し、請求人が個人事業を開始した事実は同法第144条に規定する「新たに業務を開始した場合」に該当しない。したがって、請求人の主張には理由がない。
また、請求人は、請求人の青色申告の承認申請について、平成18年12月31日までに承認又は却下の通知がなかったのであるから、所得税法第147条の規定により青色申告の承認があったものとみなされる旨主張する。
しかしながら、所得税法第144条に規定する青色申告の承認申請書の提出期限は、青色申告の承認の申請の適法要件であるので、同法第146条及び第147条に規定する青色申告承認申請書の提出があった場合とは、文理上、青色申告承認申請書が法定の提出期限内に提出された場合と解するのが相当であり、青色申告承認申請書が法定の提出期限に遅れた場合には、同法第146条及び第147条の適用の余地はないというべきであるところ、請求人が提出した青色申告の承認申請書は、その法定の提出期限である平成18年3月15日までに提出されていないから、同法第147条の規定により青色申告の承認があったとものとはみなされない。したがって、請求人の主張には理由がない。
勤務する内国法人と資本関係がない外国法人から請求人に対し付与された株式購入選択権の行使に係る経済的利益が、所得税法第35条に規定する雑所得に該当するとした事例
裁決事例集 第65集 238頁
要旨
請求人は、同人の勤務する内国法人L社の業務委託先である米国K社から付与されたストック・オプションの行使に係る経済的利益は、[1]米国K社と雇用関係がなく、また、L社と米国K社は資本関係がないこと、[2]提供した労務の質及び量と相関関係がない偶発的所得であること等から、一時所得に該当する旨主張する。
しかしながら、当該経済的利益は、請求人が、L社の代表取締役としての地位に基づき、それとともに、個人の責任において本件個人保証を行うことにより、米国K社に対して役務の提供をすることを前提に、米国K社の株式を購入することができる権利を米国K社から付与され、米国K社に対して一定期間役務の提供をすること(本件個人保証を継続すること)により、これを行使して得たもの、換言すれば、請求人の役務の提供の対価としての性質をもった所得ということができることから、一時所得に該当せず、雑所得に該当すると解するのが相当である。
したがって、請求人の主張は採用できない。
勤務先から、専務取締役であった勤続期間に係る役員退職慰労金として支給された一時金について、請求人が所得税基本通達30-2の(3)に定めるその職務の内容又はその地位が激変した者に該当するとして、退職所得に該当するとした事例
裁決事例集 第65集 181頁
要旨
原処分庁は、請求人が合併による役員改選により、存続会社の専務取締役から、合併後の法人の代表取締役に就任したことは、役員に再任されただけであって、実質的に退職したと同様の事情にあると認められないことから、合併時に役員退職慰労金として支給された一時金は、退職に基因して一時に受ける給与に該当せず、役員としての地位に基づき一時に受ける給与に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人の場合、代表取締役ではあるが、社長や専務等の役職はなく、会長や社長には他の取締役が就任し、社内の決裁権限もなく実質的に一時的かつ形式的な代表取締役就任と認められ、勤務の性質、内容に重大な変動があり、単なる従前の勤務関係の延長とは認められないと判断されることから、所得税基本通達30-2の(3)に定めるその職務の内容又はその地位が激変した者に該当し、専務取締役であった勤続期間に係る役員退職慰労金として支払われた一時金は退職所得に該当すると判断される。
要旨
所得税法上、譲渡所得には、棚卸資産(これに準ずる資産を含む。)の譲渡、その他営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡によるものは含まれないから、土地に区画形質の変更を加えたり、水道その他の施設を設けて宅地等として譲渡した場合には、その所得の全部が事業所得又は雑所得に該当するものと解されるところ、譲渡所得に対する課税の本質は、資産の値上がりにより所有者に帰属する増加益を所得として、その資産の所有権の移転を機会にこれを清算して課税する趣旨のものであり、したがって、区画形質の変更等を加えた土地の譲渡であっても、その土地が極めて長期間引き続き所有されていたものであるときは、その譲渡による所得には、本来の譲渡所得の本質を有する部分も含んでいるとみるべきであるから、このような場合は、資産の譲渡による所得を譲渡所得と事業所得又は雑所得とに区分して課税することが相当である。
要旨
いわゆる土地付建売住宅を販売する目的で土地を取得し、取得後6か月にわたり、土盛、給排水工事、石垣及び道路取付け等の区画形質の変更を加えた上、同土地の上に数戸の建物を建築して土地付建売住宅として販売している事実が認められるので、これによる所得は、単に不動産の値上がり益の実現に基因する所得とはみられず、宅地造成、あるいは土地付建売住宅の建築等の行為の対価として収受したことによる所得であり、雑所得に当たると認められる。したがって、その土地を取得するための資金調達を目的とする借入金に係る支払利子は、雑所得の金額の計算上必要経費に算入するのが相当である。
協議離婚無効確認請求訴訟に係る弁護士費用として支払った金員は、当該訴訟に関してなされた和解に基づいて、妻と共有する土地から分割して取得した土地の譲渡による所得金額の計算上控除すべき取得費に当たらないとした事例
裁決事例集 第37集 80頁
要旨
請求人は、本件土地は請求人の提起した協議離婚無効確認請求訴訟に係る和解に基づいて妻との共有土地から分割し、請求人固有の財産となったものであるから、当該訴訟に係る弁護士費用として支払った金員は、本件土地の譲渡所得の金額の計算上控除すべき取得費に該当すると主張するが、当該訴訟の本来の目的は、協議離婚を前提とした上で妻の提起した財産分与請求に対抗して自己の財産を防御するにあったというべきであるところ、共有土地の請求人の持分も財産分与の請求の対象とされ、請求人の持分を妻に財産分与しなければならない可能性があったこと、また、当該訴訟において、財産分与の請求の対象となった財産をどのように分与するかといった紛争があったことは否定できないとしても共有土地の所有権等の帰属に関する紛争はなかったことが明らかであり、請求人は、当該和解に基づいて共有土地を分割し、請求人の持分に対応する本件土地を確保したにすぎないものというべきで、請求人は何ら資産を取得したものとはいえないので、本件弁護士費用は取得に関し争いのある資産につき所有権等を確保するために直接要した訴訟費用等とはいえず、したがって、本件弁護士費用は譲渡所得の金額の計算上控除すべき資産の取得費には該当しない。
厚生年金基金の解散に伴う残余財産の分配金について、当該分配金には将来支給を受ける加算年金の額が含まれているが、当該加算年金の額は、退職に基因して支払われたものでないとして一時所得であるとした事例
裁決事例集 第66集 134頁
要旨
年金受給者である請求人は、本件基金の解散に伴う本件分配金には、請求人が本件基金から受給する加算年金のうち、既に受給した加算年金を除き、将来支給をうける加算年金の額(以下「本件加算年金受給残額」という)が含まれ、本件加算年金受給残額は、退職に基因して支払われた一時金に当たり、退職所得である旨及び退職所得として本件分配金の額から控除すべきである旨主張する。
しかしながら、本件分配金は、本件基金の解散に基因して支払われるものであること及び既に退職した者でなく、引き続き勤務している者であっても支払われるものであることからすれば、退職に基因して支払われたものでないというべきである。また、本件分配金が本件基金の解散に伴う残余財産を分配したものであるのに対し、請求人の主張する本件加算年金受給残額は、請求人の最終基本給を基に算定されており、その計算の算定方法が全く異なる上、関連性のないことが認められる。
したがって、本件分配金は、本件基金の解散という偶発的事由を発生原因とする一時金であり、請求人の退職に基因して支払われたものでなく、将来の年金給付の総額との関連性を有していないものであることからすれば、所得税法第30条第1項に規定する退職手当等とみなすことはできない。
また、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものであることからその全額が一時所得に当たることとなる。
原処分庁が請求人に帰属すると認定した所得のうちの一部について、請求人に帰属するとは認められないとした事例( 平成21年分の所得税の更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の賦課決定処分、 平成22年分の所得税の更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の賦課決定処分、 平成24年分ないし平成27年分の所得税等の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分・ は全部取消し、 一部取消し、 各更正処分は一部取消し及び重加算税の各賦課決定処分は全部取消し、その他は棄却)
裁決事例集 第111集
ポイント
本事例は、所得の帰属、重加算税賦課要件の充足性及び更正の期間制限に関する「偽りその他不正の行為」の有無が争点となったものであるが、原処分庁が請求人に帰属すると認定した所得のうちの一部について、名義人に帰属するとの判断がされたため、これに伴い、原処分の一部又は全部を取り消したものである。
要旨
請求人は、原処分庁が請求人に帰属すると認定した①請求人が代表権を有する法人から請求人の家族に支給された給与(本件各金員)、②請求人の元妻名義の不動産の賃貸料(本件賃貸料)及び③同妻に支給された個人年金(本件年金)は、いずれもその名義人に帰属する旨主張する。
このうち、本件各金員については、請求人の家族に役務提供等をした事実はなく、また、本件各金員が請求人において開設し、管理していた当該家族名義の預金口座に振り込まれていたことなどからすると、いずれも請求人に帰属すると認められる。しかし、本件賃貸料については、対象不動産の名義人及び賃貸借契約の貸主名義人はいずれも請求人の元妻であり、当該不動産の取得資金も当該妻の借入れにより賄われていたこと、また、本件年金については、その契約名義人及び受取人がいずれも当該妻であることからすると、これらについては、いずれも請求人の元妻に帰属すると認めるのが相当である。なお、原処分庁は、請求人が本件賃貸料及び本件年金を元妻の所得であるかのように事実を仮装し、あるいは偽りその他不正の行為により税額の一部を免れたとして、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する重加算税を賦課し、同法第70条《国税の更正、決定等の期間制限》第4項第1号の規定を適用して平成21年分及び平成22年分の所得税の各更正処分をしたが、本件賃貸料及び本件年金はいずれも請求人の元妻に帰属する所得と認められるから、この点について、請求人に隠蔽又は仮装の行為はなく、偽りその他不正の行為によって税額の負担を免れた事実もない。
参照条文等
要旨
起業者が請求人に支払った補償金は、公共事業に伴う地上物件移転期間の一時的な営業休止の損失を補償するための営業補償金として支払われたものであり、永久的な事業縮小に対する補償ではなく、また、この補償金の額は請求人の提出に係る営業決算調書記載の数額を基礎として計算された数か月分の営業休止に見合う損失補償金であり、3年以上の事業所得の補償とは認められないから、所得税法施行令第8条第3号の臨時所得には当たらない。
取引先から入金された金員が貸付金の返済であるとする請求人の主張を認めず、事業所得の収入金額に該当するとした事例( 平成20年分から平成24年分までの所得税の各決定処分及び重加算税の各賦課決定処分、 平成25年分から平成26年分までの所得税及び復興特別所得税の各決定処分並びに重加算税の各賦課決定処分、 平成22年1月1日から平成26年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各決定処分並びに重加算税の各賦課決定処分・ 一部取消し、 棄却)
裁決事例集 第106集
ポイント
本事例は、請求人が業者から受領した金員について当該業者の貸付金の返済に該当するものではなく、請求人と当該業者との間で締結した飲料水等の自動販売機設置契約に基づき、手数料として支払われたものと判断したものである。
要旨
請求人は、自動販売機設置業者から入金された金員(本件入金)が請求人の当該業者に対する貸付金の返済であり、当該貸付金の元本部分について所得税法第36条《収入金額》第1項の収入すべき金額ではない旨主張する。
しかしながら、本件入金は、請求人と当該業者との間で締結した契約に基づき、請求人が当該業者に飲料水等の自動販売機を設置させ、飲料水等を販売させることにより、当該業者から販売本数に応じた手数料として請求人に支払われたものであるから、外部からの経済的価値の流入である収入に該当し、その全額が請求人の収入すべき金額となる。また、請求人と当該業者との間で、当該契約以外に金銭授受を伴う契約が締結された事実は認められないことから、本件入金は、当該業者に対する貸付金の返済であるとは認められない。
参照条文等
取引相場のない株式について、純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)を参酌した価額と取引価額の差額に相当する金額を経済的利益として一時所得と認定した事例
裁決事例集 第66集 155頁
要旨
請求人は、請求人が代表取締役となっているE社の株式をF社から取得した本件取引は、利害関係のない第三者間の自由な経済取引であり、このような取引において成立した価額は客観的交換価値である時価そのものといえるから、請求人には経済的利益は発生しない旨主張する。
ところで、所得税法第36条第1項に規定する経済的利益には、資産を低い対価で譲り受けた場合におけるその資産のその時における価額、すなわち時価とその対価の額との差額に相当する利益が含まれると解される。また、時価とは、その時点における客観的交換価値を指すものと解すべきであり、この交換価値とは、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間において自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額であって、いわゆる市場価格をいうものと解される。
ところが、E社の株式は、取引相場のない株式であり、かつ、適正と認められる売買実例及び類似法人で株式等の価額がある株式とは認められないので、所得税基本通達23~35共-9により純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額を算定するのが相当であり、その価額の具体的な算定に当たっては、財産評価基本通達178以下の例によるのが相当である。
そして、財産評価基本通達により算定したE社株式の時価と本件取引価額との差額に相当する金額については、経済的利益として享受したものと認められ、この経済的利益に係る所得は、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得のいずれにも該当せず、かつ、営利を目的とする継続的な行為から生じた所得以外の一時の所得であって、労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものであるから、所得税法第34条第1項に規定する一時所得に該当する。
要旨
原処分庁は、本件生命保険契約の契約者は請求人であり、保険料の負担者も請求人であるから、本件受取生命保険金は請求人の一時所得に係る総収入金額に該当すると主張するが、被相続人(請求人の夫)は過去に保険解約歴があり、同人を保険契約者とすることができなかった事情があったこと、本件生命保険契約は被相続人が自ら締結していること、また、請求人が保険料を支払っていたことを裏付ける資料はなく、むしろ被相続人が、同人の営んでいた事業の収入の中から保険料を支払っていたとみるのが相当であることから、本件受取生命保険金は、相続税法第3条第1項第1号に規定する保険金に該当するというべきであるので、これを請求人の一時所得に係る総収入金額に該当するとしてした課税処分は取り消すのが相当である。
要旨
請求人は、台湾で納めた本件土地増値税は土地の譲渡に基因して納付する税であり、我が国の譲渡所得に係る税と類似性があるので外国税額控除の対象となる外国所得税に該当する旨主張する。
しかしながら、台湾の土地増値税は、無償譲渡の場合は受贈者、有償譲渡の場合は譲渡者、質権設定の場合は質権設定権者が納税義務者となること、所有者に対して10年ごとにその所有期間の評価差額に対して課するという基本概念があること、及び有償譲渡の場合の課税標準は現に獲得した利得ではなく譲渡時の評価額から所有開始時の評価額及び当該土地に改良のため支出した費用を控除した後の金額とされていることから、我が国の譲渡所得の所得税に相当する税には当たらないものと認められるので外国税額控除の対象となる外国所得税には該当しないと判断するのが相当である。
要旨
合資会社の無限責任社員が死亡した場合、法定退社事由が生じ、その社員は退社するが、その有していた社員権は持分払戻請求権に転換し、これを相続人が承継取得することとなるところ、当該持分払戻請求権に含まれる所得税法第25条第1項第2号に規定するみなし配当は、死亡社員について社員権が持分払戻請求権に転換した時点において発生するものである。
また、同法(昭和63年法律第109号による改正前のもの)第9条第1項第20号に規定する非課税所得は、相続人の相続及び受贈者の受贈自体による利得並びに相続人等が原始取得する利得で、相続、贈与財産とみなされるものに限られ、持分払戻請求権は、これに核当しない。
したがって、退社社員の相続人に対し、払戻金を支払う会社は、それに含まれるみなし配当相当額について源泉徴収義務を負うこととなる。
要旨
甲土地の借地権の一部と同土地の底地の一部を交換し、また、甲土地と地続きの乙土地を売買契約により取得した場合において、原処分庁は、実質上、これらを一体とする交換契約が締結され、乙土地の売買代金はその交換差金に当たるとみるべきであり、当該交換差金の額が所得税法第58条第2項所定の割合を超えるから、交換の特例は適用されない旨主張するが、両土地はそれぞれの利用方法、地価、地代及び借地権割合等の評価に懸隔があってその経済的効用を異にしており、一体となって一つの効用を有するものとは認められないこと、並びに前記各契約当事者間においても経済的効用を異にする物件として認識され、かつ、単に事務処理の便宜上の理由から両契約がたまたま同日に締結されたにすぎないことなどの事実が認められるから、本件交換契約は実質的にも前記売買契約とは別個に成立しているものであり、同条第1項に規定する固定資産の交換の特例の適用を認めるのが相当である。
同族会社に対する本件委託業務は、不動産賃貸業の遂行上必要な業務とは認められず、かつ、同族会社が当該業務を履行したとする客観的な資料も認められないことから、請求人が本件契約に基づき不動産管理料を支払ったとしても、必要経費には算入されないとした事例
裁決事例集 第55集 43頁
要旨
本件契約業務の具体的内容を検討すると、[1]当初から不動産管理業務を委託している不動産管理会社との交渉業務等を含む経営全般に関する知的判断業務は、請求人個人の責任と判断において行うべき性質のものであり、同族会社であるH社が当該業務を履行したとする客観的な資料がないこと、[2]その他の業務については、不動産管理会社への委託業務において十分可能であり、当該業務をH社に委託する必要性があるとは認められず、また、H社においてこれらの業務を行ったと認めるに足りる証拠がなく、当該業務を履行するために要した費用の計上も認められないことから判断すると、H社との本件契約業務は本件不動産賃貸業の遂行上必要な業務とは認められず、かつ、履行したとする客観的な資料も認められないことから、請求人が本件契約に基づき本件管理料を支払ったとしても所得税法第37条第1項に規定する必要経費には算入されない。
要旨
請求人の商品先物取引は、取引回数、取引数量等からみると、営利性・有償性及び継続性・反復性が認められるが、それが事業というためには、更に事業としての社会的客観性を要するものと解されるところ、商品の先物取引は投機性の強いものであって本来事業になじみ難い性格を有すること、請求人は生活の資のほとんどを畳製造業からの所得により得ていたこと、商品先物取引は商品取引所取引員所属の外務員の勧奨を受けて始め、その助言を受けて行っていたこと、商品の先物取引を行うために特別の人的物的施設を設けていなかったこと、必要経費も当該取引に直接要した費用以外に通常事業に付随する必要経費をほとんど要しなかったこと等の諸点を総合勘案すると、請求人の商品の先物取引程度のものは、一般社会通念に照らし、いまだ事業とは認められないものと解するのが相当である。
国内に住所及び居所を有しなくなった後に納税管理人の届出書が提出されても、所得税法上の出国をしたことになるから、出国後に提出された確定申告書は期限後申告とされるとした事例
裁決事例集 第64集 196頁
要旨
請求人は、国税通則法第117条には納税管理人の届出期限が定められておらず、請求人は国内に住所及び居所を有しないこととなった時の後ではあるが、納税管理人の届出書を提出し、翌年3月15日までに確定申告書を提出しているのであるから、所得税法上の出国をしたことにならず、当該確定申告書は期限内申告書である旨主張する。
しかしながら、所得税法上の出国に当たるか否かは、所得税法第2条第1項第42号の規定により、請求人が国内に住所及び居所を有しないこととなった時までに納税管理人の届出書が提出されたか否かで判断すべきであるところ、請求人はその時までに当該届出書を提出しなかったのであり、所得税法上の出国をしたことになるから、出国後に提出された本件申告書は期限後申告書である。したがって、請求人の主張は採用できない。
また、請求人は、国内に住所及び居所を有しないこととなる時までに納税管理人の届出書が提出されるよう会計事務所に手配したが、会計事務所の担当者がたまたま出勤していなかったため、当該届出書は請求人が国内に住所及び居所を有しないこととなった時の後に提出されたとして、期限後申告となったことには国税通則法第66条第1項ただし書きの正当な理由がある旨主張する。
しかしながら、請求人の主張する事情は、請求人と担当者又は会計事務所との間の問題にすぎず、申告書を法定申告期限までに提出することを不可能とする真にやむを得ない理由に該当するとは認められないから、請求人の主張は採用できない。
要旨
請求人が本件土地の譲渡に伴い隣接地を道路用地としてA市に対して無償で提供することとしたのは、本件土地に道路の幅員拡張のため道路用地を付加することにより本件土地の利用価値を高めるものであり、その付加した道路用地の対価に相当する金額は、本件土地の譲渡価額に含めて請求人が収受したものとみるのが相当であり、請求人が道路設置の念書に基づいて道路用地として本件隣接地を市へ無償で提供すること自体は、本件隣接地を買主に引き渡すことに代えて市に提供したにすぎないと認められることから、道路用地とした隣接地の取得費に相当する金額は譲渡原価となるにとどまるものと解すべきであり、隣接地の売却可能価額に相当する金額を本件土地の譲渡に係る譲渡費用の額に算入すべきであるとの主張には理由がない。
要旨
農地法第5条第1項第3号に規定する届出をする上で有利になるという理由で、本件土地を便宜賃貸したところ、本件土地の譲渡に際し、借地人(会社)から借地権を主張されたので底地価額で当該借地人に譲渡した旨の主張は、[1]賃貸の時において借地人が既に倒産していること、[2]当該借地人との間で作成された売買契約書の売主の署名が買主(借地人)の従業員によってなされていることなどの事実に照らし理由がなく、請求人が本件土地を形式上当該借地人から転得したことになっている者に対し直接譲渡したと認めるのが相当である。
要旨
賃貸料の額に関する係争に起因する供託金の不動産所得の総収入金額の収入すべき時期に関して、当該供託金は、不法供託の上賃借人を被告とする貸料増額要求訴訟が解決するまで還付を受けることができない未確定債権であるから原処分の認定した収入時期には誤りがあるとの請求人の主張について、当該供託金は、請求人と貸借人との間においては、本件土地の賃貸借契約についての争いはなく、その賃貸料の増額について当事者間に協議が整わないことから、貸借人が供託したものであることが認められ、手続的には適法になされていることが認められること、また、請求人は当該供託金を当該訴訟係属中に還付を受けており、その際、供託所に対し供託金額を超える部分の賃料について留保の意思表示をしていることが認められること、しかし、土地等の賃貸借契約の存否については争わず、賃料の額の多寡についてのみ争われている場合の供託金については、その供託された賃貸料相当額に係る不動産所得の総収入金額の収入すべき時期は、[1]賃貸料の額として確定している部分の金額については契約等により支払日として定められている日、[2]不確定な部分の金額については賃借人が賃貸料の弁済のため供託した日と解されるから、原処分庁の認定した収入時期については誤りはない。
要旨
請求人は、本件和解金が、本件譲渡を実現するために既に締結していた贈与契約を解除するために支払ったものであり、その譲渡価額を増加させるために支出した費用であるから、本件譲渡に係る譲渡費用に該当する旨主張するが、本件和解金は、二重譲渡による贈与契約の履行不能を原因とする損害賠償金である以上、本来の債務と同一性を有することになり、土地による贈与を金銭による贈与に変更したにすぎず、その支払の有無によって、実現した当該譲渡及びその譲渡価額から左右されるものではないことから、本件和解金は、本件譲渡との関係において何ら費用性はないとするのが相当である。
要旨
請求人は、自己が代表取締役となっている会社の借入金等につき債務保証をしていたところ、同社の業績が悪化し、借入金等の返済が困難となったので、同人所有の土地を譲渡し、その代金のほとんどを同社に提供し、同社はその資金で債務の弁済に充てたものであるから、これは実質的に保証債務を履行するための譲渡に該当すると主張するが、弁済は期限前に行われており、債権者から請求人に保証債務の履行の請求はなく、債権者は請求人から返済を受けたという認識がないので、請求人は譲渡代金を同社に単に貸し付けたにすぎず、本件譲渡は、保証債務の履行のための資産の譲渡とは認められない。
要旨
請求人は、土地区画整理組合から交付を受けた「宅地整備補償金」について、[1]過大な減歩により生じた保留地の処分を起因としたいわゆる余剰金の返還で、過大減歩部分について現物で返還を受ける代わりに金銭を受領したものであるから課税関係は生じない、[2]仮に課税関係が生じるとしても土地区画整理法第94条“清算金”に規定する清算金と実質異ならないから、租税特別措置法第33条の4“収用交換等の場合の譲渡所得等の特別控除”の特例の適用を認めるべきである旨主張するが、当該補償金は、土地区画整理組合が保留地を売却したことにより生じた余剰金で、土地区画整理法第94条に規定する清算金とは異なる補償金であるので措置法第33条の4の特例の適用はなく、法人から交付を受けたものであるから一時所得の収入金額とするのが相当である。
要旨
請求人が不動産所得の基因となる土地を取得するために借り入れた資金の利子は、各年分の不動産所得の金額の計算上必要経費の額に算入するか、又は当該土地の取得価額に算入するかのいずれかによるべきであると解されるが、上記利子のうち当該土地がいまだ業務の用に供されていない期間に対応する支払利子については、当該期間における請求人の不動産所得の収入金額が皆無であるので必要経費の額に算入する余地はなく、当該土地の取得価額に算入するのが相当である。
したがって、当該土地を業務の用に供したその後の年分の不動産所得の金額の計算上、当該利子を必要経費に算入すべきであるとする請求人の主張は認められない。
要旨
請求人の所有していた土地及び建物(以下「本件物件」という。)の所有権名義は、不法行為により転々と移転し、最終的に請求人と登記名義人との間で、和解が成立した。これによると、請求人は本件物件の真実の所有者であるにもかかわらず、無効又は不正な登記を経て登記名義人となった者に対して真正な登記名義の回復を請求しないまま、示談金の名目で対価の支払を得て所有権を移転し、本件物件を引き渡したことが認められる。
このことは売買とは何ら異なるところはないものであるから和解に基づく示談金は、所得税法第33条第1項の規定による資産の譲渡に係る収入金額とするのが相当であり、租税特別措置法第31条を適用した原処分は相当である。
要旨
土地賃貸借契約の存否に係る裁判上の和解により請求人が受け取った慰謝料名義の金員は、賃借人が第一審で全面敗訴するなどしてきたにもかかわらず、賃貸人たる請求人が和解に応じて再び賃貸借契約を許諾したことから慰謝料名義としたもので、請求人がその契約に応諾をしなければ、取得できなかったものであるから、その実質は、貸地の権利金であると認められる。
要旨
交換により請求人が取得した土地は、交換の相手方である地方公共団体が公共的施設の建設用地に充てることを予定していたもので、他に売却することを目的とすることなく所有していた固定資産であり、かつ、請求人は当該取得土地を譲渡資産の直前の用途と同一の用途に供していることから、当該取得土地が棚卸資産に該当するとして、所得税法第58条第1項の交換の特例の適用がないとした原処分の認定は失当である。
要旨
執行官がその職務の執行につき、執行官法第7条及び第10条の規定により旅費、宿泊料として受ける金額は、一般の国家公務員がその職務につき支給される旅費、宿泊料とは全く性格を異にし、事業遂行上の対価として事業所得の「収入金額とすべき金額」に該当すると同時に、旅費、宿泊料として現に支払うべき金額については「所得を生ずべき業務について生じた費用」として必要経費に該当する。
要旨
執行官は特別職の国家公務員であるが、俸給制度によらず手数料制度を採用し、その職務の執行は反復継続性を有し、かつ、執行官自身の計算において独立的に経営されているものであって、自由職業と認められ、その所得は所得税法上「その他の事業」から生ずる所得に当たるものと解すべきである。
要旨
裁判上の和解により、両当事者は譲渡所得課税(原処分)の基となった売買契約の無効を確認し、この和解条項のとおり、いったん受領した譲渡代金の返済、所有権移転登記の抹消をしているので、原処分を取り消すのが相当である。
要旨
請求人の代表者は、外国に住所の登録をなし、同地を拠点として、市場調査、契約の確保等のため世界各地に出張していることから同人は所得税法上の居住者に該当しないと請求人は主張するが、所得税法第2条第1項第3号にいう国内に住所を有する個人とは国内の生活の本拠を有する個人をいい、生活の本拠については客観的事実によって判定されると解されるところ、同人は国内に、土地、建物を所有し、そこに妻子を居住させ、請求人の代表取締役としての職務に従事していること及び代表者が住所を登録している外国の滞在日数は年間を通じ10日程度にすぎないことから、同人は国内に住所を有するものであって、所得税法上の居住者に該当するというべきである。
要旨
請求人らは、所得税法第23条の規定は、飽くまでも法律の施行地内にある金融機関からの受取利子についてのみ利子所得としているものであるから、P国の市中銀行であるK銀行の預金利子に係る所得は、利子所得ではなく雑所得に該当する旨主張する。
しかしながら、所得税法施行令第2条に規定する「銀行その他の金融機関」には国外の金融機関も含まれ、また、所得税基本通達2-12の「法律」には外国の法律も含まれると解されるころ、K銀行は、P国において、P国の銀行法の規定により預金又は貯金の受入業務を行うことが認められている市中銀行である。
そうすると、P国内に所在するK銀行に有する預金も、所得税法第2条第10号に規定する預貯金に該当し、当該預金の利子は、同法第23条第1項に規定する預貯金の利子に該当することから、当該預金の収入に係る所得は利子所得に該当する。
参照条文等
所得税法第2条第1項第10号、第23条 所得税法施行令第2条 所得税基本通達2-12(平19課個2-27による改正前のもの。)
要旨
請求人と関連会社である外国法人との間の債権債務の相殺残高について、[1]当該残高は、いずれの取引に係わる債権と債務を相殺するのかを特定しないまま相殺した後の残高であること、[2]当該残高に対しては、外国法人が本国で資金調達をする際の通常利率により計算した利息が毎月付されていること、[3]当該残高の大部分は、外国法人からの資金援助によって占められていることなどから、当該残高は、実質的には外国法人の請求人に対する貸付金であり、本件利息はこの貸付金について計算されたもので、当該外国法人の国内源泉所得に該当する。
外国為替証拠金取引における反対売買により決済が行われるまでの持高ないしは保有高について、営業日ごとの評価替により生じた為替差損益は、その時点で損益が確定するとした事例
裁決事例集 第77集 91頁
要旨
請求人は、本来、外国為替証拠金取引は、一定の証拠金を預託して外貨保有の権利を取得し、それを反対売買することにより損益が確定するものであるから、本件清算型ロールオーバーにより営業日ごとに生じる本件為替差損益は確定しておらず、当該損益は所得税法上実現した収益に該当しない旨主張する。
しかしながら、本件FX取引は、請求人の未決済ポジションにつき営業日ごとに評価替が行われ、当該評価替によって生じる本件為替差損益は本件取引口座において営業日ごとに清算がされ、営業日ごとに行われる本件清算型ロールオーバーにより、評価益が生じた場合には取引会社には評価益相当額の支払義務及び請求人には評価益相当額を受け取る権利が確定し、これとは逆に評価損が生じた場合には取引会社には評価損相当額の支払を受ける権利及び請求人には評価損相当額を支払う義務が確定することから、本件清算型ロールオーバーが行われた時点において、本件為替差損益が確定し、これについて現実に収入があった又は収入の原因たる権利が確定的に発生したというほかなく、そうすると、原処分庁の主張は理由があり、請求人の主張は採用することができない。
要旨
人的役務の提供による収入金額の収入すべき時期は、原則として人的役務の提供を完了した日であるが、弁理士業務のうち外国特許事務に係る報酬については、慣習として現地代理人を通じて出願事務を行い、現地代理人の諸経費をも含めて請求しているので、依頼者の検収が終了した時点において請求額が確定するものと解するのが妥当であり、また、請求人は継続してこの計算基準を採用しているので、その計算を認めるのが相当である。
要旨
請求人が外国に所在する土地等を譲渡したことに係る譲渡所得の金額について、請求人は、①当該土地等の取得及び譲渡の各取引は外貨によって行っており、当該土地等の取得から譲渡までの間、円と外貨との交換が行われていないことから、本件において所得税法第57条の3の規定は適用されないこと、並びに②当該土地等の取得時及び譲渡時の各為替相場をもって取得価額及び譲渡価額をそれぞれ円換算するという原処分庁の採用した方法によれば、実現していない為替差益に課税することとなって許されないことなどを理由に、当該譲渡所得の金額は、外貨建てで算出した譲渡所得の金額を当該譲渡時の為替相場によって円換算して算出すべきである旨主張する。
しかしながら、譲渡所得に対する課税は、資産が譲渡によって保有者の支配を離れるのを機会に、その保有期間中の増加益、すなわち、当該資産の取得時と譲渡時の客観的価額との増差分を清算して課税しようとするものであり、これらの価額の算出に当たり、国内法である所得税法はその計算を円により行うことを前提としていることから、総収入金額又は取得費等の中に外貨で支払が行われる外貨建取引が含まれている場合には、当該取得時から当該譲渡時までの間に円と外貨との交換が行われていたか否かにかかわらず、当該外貨建取引の額について、当該取引を行った時における為替相場で円換算した上で計算するのが相当であり、所得税法第57条の3の規定はこの円換算方法について法令上明確化したものと解される。また、このような円換算によって算出した当該譲渡所得の金額には必然的に為替差益が含まれるところ、当該為替差益は、当該土地等の譲渡によって所得として実現したと解するのが相当である。
参照条文等
要旨
大学教授が他大学での非常勤講師としての地位は、これら他大学の定めたカリキュラムに従い、特定の学科を担当し、一定期間継続して労務を提供するものであるから、その対価として得た報酬は雑所得ではなく、給与所得と認めるのが相当である。
要旨
工場建物の敷地に約6トンに及ぶコンクリートをもって3台の圧延機及び熔解炉を定着させ、これに各附属機械を連結させた一個の有機的機能をもたせた工場据付機械は、経済的にみて独立の価値があるものと認められ、民法第86条“不動産、動産”の規定による土地の定著物の一種と認められるから、その賃貸料収入は不動産所得に係る総収入金額とするのが相当である。
要旨
請求人が支出したとする弁護士費用は、その支出の事実が認められ、かつ、本件家屋の所有者から提起された明渡しを求める訴訟において、弁護士によって請求人の立場が有利になるように訴訟が進められ、和解に際し立退料の支払が行われたものと認められるから、その収入を得るために直接要した支出と認められる。
要旨
請求人は、戸籍法上婚姻はしていないが事実婚をして離婚しており、所得税法第2条が規定する寡婦の定義には戸籍法のことは書かれておらず、また、母子法、生活保護法には事実婚を認める規定もあるから、寡婦控除は認められるべきである旨主張する。
しかしながら、所得税法(平成16年法律第14号による改正前のもの。以下同じ。)第2条第1項第31号によれば、「夫と死別し若しくは夫と離婚した後婚姻をしていない者又は夫の生死の明らかでない者」、あるいは「夫と死別した後婚姻をしていない者又は夫の生死の明らかでない者」に該当することが「寡婦」たる要件の一つとされているところ、ここでいう「夫」の意義については、所得税法及び租税特別措置法(平成16年法律第14号による改正前のもの。)において格別の定義規定が設けられていないことからすれば、身分法の基本法たる民法が定める婚姻関係(以下「法律婚」という。)にある男子を意味するものと解するのが相当である。
また、母子及び寡婦福祉法第6条第1項及び生活保護法による保護の実施要領には、事実婚の配偶者を法律婚の配偶者と同様に取り扱うものとする旨が定められているが、これらは、事実婚と法律婚とを同様に取り扱うこととする特別の定めであるから、それらの定めが存在することをもって、請求人が主張するように解することはできない。
したがって、請求人の主張は採用できない。
要旨
保証債務を履行するために資産を譲渡した場合、その履行に伴う求償権の行使ができないときには、所得金額の計算上、譲渡がなかったこととする特例が所得税法上規定されているが、営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡による所得については、この特例の適用はない。
したがって、本件のように請求人が1,500ヘクタールもの山林を保有し、営利を目的として継続的に山林の伐採譲渡を行っている山林経営者である場合には、山林の伐採譲渡の所得であっても、所得計算の特例の適用はないものとするのが相当である。
要旨
市の宅地開発指導要綱に基づく開発負担金は、現実に開発された宅地等の売買契約成立の時に市に納入されるものであるが、開発された宅地等を将来使用するものが恩恵を受けるべき公共施設の整備に要する資金に充てられるべきものであるから、当該宅地等の経済的価値に付加されるべきものであると認められる。したがって、これを譲渡費用とすべき理由はなく、原処分庁がこれを本件宅地の開発に付随する改良費に当たるものとしてその取得費に含めたことは相当である。
要旨
原処分庁が、青色申告者である請求人の昭和47年所得税について調査する必要があると認められたので調査を行ったところ、請求人は第1回の調査に際して金銭出納帳1冊を提示したが、その後の7回に及ぶ調査に際しては、原処分庁職員の帳簿書類の提示の求めに応ぜず、帳簿書類を提示しないことについては正当な理由が認められない。したがって、その提示しない時において請求人には帳簿書類の備付け、記録又は保存がないといえるから、その事実は所得税法第150条第1項第1号に掲げる青色申告の承認の取消し事由に該当するものである。
年の中途で死亡した被相続人に係る納付すべき所得税の額のうち、請求人が承継する納付すべき税額は、遺留分減殺請求により修正された相続分によりあん分して計算した額であるとした事例
裁決事例集 第85集
ポイント
この事例は、本件遺言(相続させる旨の遺言)は、遺言書に請求人の相続分に関する記載がないものの、請求人の相続分を零と定めたものと解するのが相当であり、また、本件遺言により指定された請求人の相続分は、遺留分減殺請求により修正されたと解されるから、請求人が承継する納付すべき税額は、被相続人に係る納付すべき所得税の額のうち、当該修正された相続分によりあん分して計算した額であると判断したものである。
要旨
請求人は、本件遺言により遺産の割当てから完全に排除されているから、当該遺言は、請求人の相続分を零とする指定もされたものと解すべきであるとし、被相続人に係る納付すべき所得税の額のうち請求人が承継する納付すべき税額は零円であり、原処分はその全部が取り消されるべきである旨主張する。
また、原処分庁は、本件遺言は、特定の財産を請求人以外の他の各相続人に対して相続させる趣旨のものであるから、相続分の指定をしたものではなく、被相続人に係る納付すべき所得税の額のうち請求人が承継する納付すべき税額は、請求人の法定相続分(10分の1)によりあん分して計算した額であり、原処分は適法である旨主張する。
しかしながら、本件遺言は、被相続人が自己の所有する財産全部について、請求人を除く他の各相続人のいずれかの者に確定的に帰属させるという遺産の分割の方法を定めるとともに、当該他の各相続人に対し、法定相続分とは異なる相続分を定めたものと解するのが合理的であり、遺言書に請求人の相続分に関する記載はないものの、被相続人が、請求人の相続分を零と定めたものと解するのが相当である。そして、請求人は、自らの遺留分が侵害されたとして、他の各相続人に対し遺留分減殺請求をしたのであるから、当該減殺請求により、自らの侵害された遺留分の限度(20分の1)で被相続人の残した財産に関する持分を取得し、その結果、本件遺言により指定された請求人の相続分は20分の1に修正されたと解される。
したがって、被相続人に係る納付すべき所得税の額のうち、請求人が承継する納付すべき税額は、本件遺言により指定された相続分(20分の1)によりあん分して計算した額であるから、原処分は、その一部を取り消すべきである。
参照条文等
所得税法第125条 所得税法施行令第263条 所得税法施行規則第49条 国税通則法第5条第1項、第2項、第25条 民法第900条~第902条、第908条、第1028条
参考判決・裁決
最高裁昭和41年7月14日第一小法廷判決(民集20巻6号1183頁) 最高裁昭和51年8月30日第二小法廷判決(民集30巻7号768頁) 最高裁昭和58年3月18日第二小法廷判決(最高裁判所裁判集民事138号277頁) 最高裁平成3年4月19日第二小法廷判決(民集45巻4号477頁)
要旨
請求人は、本件建物利用権はその取得の経緯(預託した保証金の額が通常の建物賃貸契約における保証金と異なり分譲価額に相当する程度に高額であることなど)及び契約内容(建物利用権設定契約において、地代家賃の支払はなく、「自己の持家と同様に」専用使用ができ、相続等の包括承継の対象になる等記載されていることなど)からみて所有権と同等に扱われるべきであると主張する。
しかしながら、請求人は本件建物利用権設定契約に基づき本件建物に利用権を有するもので、請求人は本件建物の所有権を取得しているのではないことは明らか(この点については請求人も自認している)であるから、本件建物利用権は租税特別措置法第31条第1項に規定する土地建物等には該当せず、本件建物利用権の譲渡による所得は所得税法第33条に規定する総合長期譲渡所得に該当する。
建物貸付けは、同族会社2社及び親族に対する限定的かつ専属的なものであり、貸付けに係る維持管理等の程度が実質的には相当低いとして、不動産所得を生ずべき事業に当たらないとした事例
裁決事例集 第74集 37頁
要旨
請求人は、①資産の取得に係る投資額(借入金)の多寡を重要視すべきであること、②事業とは、社会通念に照らして事業と認められるものすべてを含み、事業所及び人的・物的要素を結合した経済的組織を必ずしも必要とせず、本件貸付けは十分に自己の危険を持ち得る事業といえること、また、③総合ビジネスを視野においた事業を行うという計画を基に建築、事業経営を行っているという現状にかんがみると、本件貸付けは不動産所得を生ずべき事業に該当すること、さらに、④東京高裁平成13年7月11日判決の中で挙げられている事業規模の判断基準に照らし合わせた場合、本件貸付けは事業に該当するとも主張する。
しかしながら、不動産貸付けが不動産所得を生ずべき事業に該当するか否かは、①営利性・有償性の有無、②継続性・反復性の有無、③自己の危険と計算における事業遂行性の有無、④取引に費やした精神的・肉体的労力の程度、⑤人的・物的設備の有無、⑥取引の目的、⑦事業を営む者の職歴・社会的地位・生活状況などの諸点を総合して、社会通念上事業といい得るか否かによって判断するのが相当と解される。
本件貸付けについては、営利性、継続性、人的・物的設備など部分部分としてみた場合は直ちに事業ではないということはできない要素も認められるが、本件貸付けは、本件同族会社2社及び親族に対する限定的かつ専属的なものであり、平成5年借入金は、請求人の税理士事務所等として使用することを目的とした本件建物の建設資金等であったこと及び本件借入金の年間返済額は、本件貸付けの年間賃貸料収入を上回っており、本件貸付けに係る賃貸料収入以外の収入も原資となっていること、また、本件同族会社2社の賃貸料は、それぞれの法人の収入及び人員割合が計算の根拠となっていることからすると、請求人における事業遂行上その企画性は乏しく、危険負担も少ないと認められる。また、本件建物は、その構造からみて他に賃貸が可能である等の汎用性が少ないなど、これらの点における請求人の自己の危険と計算による事業遂行性は希薄であると認められる。
さらに、本件建物の設備等の管理・修理点検等は請求人が行っているものの、清掃及び冷暖房設備点検、ビルの防犯・火災のセキュリティ契約等は本件同族会社2社が行っていること、賃貸料の集金等はインターネットバンキングにより振替処理されていること、また、本件貸付物件は本件同族会社2社及び親族に継続して貸し付けられていることから、請求人にとって賃借人の募集等をする必要はなく、賃貸料の改定交渉等の業務の煩雑さもなく、ビル管理業務等の負担も軽微であることから、本件貸付けに費やす精神的・肉体的労力の程度は、実質的には相当低いと認められる。
これらの諸点を総合勘案すると、本件貸付けは、社会通念上事業と称するに至る程度のものとは認められないと判断するのが相当である。
要旨
弁護士報酬を土地で取得した場合、その評価の基準とすべき日は、当該土地につき再換地指定の効力が発生した日であり、地積は再換地後のものによるべきであって、また、その評価額は、本件土地に近接し、条件の類似すると認められる土地の取引価額に時点修正等を加味して評価するのが相当である。
役員に対し、使用人分の退職金を支給するに当たり、使用人兼務役員の期間中も自社の退職給与規定の対象となると誤解して支給した場合において、当該部分の支給は、根拠を有さないもので、支給されたものとみることはできないとして、源泉所得税の納税告知処分を当該部分につき取り消した事例
裁決事例集 第47集 340頁
要旨
請求人は、本件役員らに支給した退職金の一部は、部長兼務取締役であった期間も従業員を対象とした就業規則が適用されると誤解した錯誤によって支給したもので、この部分に係る源泉所得税の納税告知処分は違法である旨主張する。
請求人は、本件役員らについて上記兼務期間中も本件退職給与規定の対象となるものと解し、退職金を算定したと認められ、また、同規定は兼務期間は適用されないものと認められる。
ところで、本件退職金の支給は本件退職給与規定によっているのであるから、その支給が誤解によるものであって、同規定に合致しない場合には、当該部分の支給は、錯誤に該当するか否かを問わず、根拠を有さないものとなると解される。したがって、本件役員らに支給した退職金のうち兼務期間に係る金額は、支給されたものとみることはできないので、本件納税告知処分はこの兼務部分の金額については違法である。
要旨
請求人は、必要経費の計算について、青色申告書以外の申告書の提出者(いわゆる白色申告者)との権衡上、実額計算が可能である場合であっても、白色申告者に適用される経費率による推計計算が有利であると認めるときは、その選択により、推計計算が許されるべきであると主張するが、所得税法では、実額計算が原則であり、推計計算は実額計算ができない場合にやむを得ず許される補完的な計算方法であるから、実額計算が可能である場合には、推計計算は許されない。
したがって、請求人は、青色申告者であり、事業所得に関する所定の帳簿書類を備え、継続記録を有しており、事業所得の金額計算について実額計算が可能であるから、請求人の主張は採用できない。
要旨
請求人は、源泉徴収制度は、徴収義務者が一定の所得税額を天引徴収して納付する手続であり、源泉徴収によって納付された所得税は、原則的に確定申告によって清算され、給与等の支払者が誤って過大に徴収納付した金額は、所得税法第120条第1項第5号に規定する「源泉徴収をされた又はされるべき所得税の額」に含まれると解することに法文上の支障はなく、このように誤った徴収納付がされた場合には、納税義務者は確定申告において清算調整することができると解すべきである旨主張する。
しかしながら、源泉所得税と申告所得税との各租税債務の間には同一性がなく、源泉所得税の納税に関しては、国と法律関係を有するのは支払者のみで、受給者との間には直接の法律関係を生じないものとされていることからすれば、所得税法第120条第1項第5号の源泉徴収税額の控除の規定は、申告により納付すべき税額の計算に当たり、算出所得税額から源泉徴収の規定に基づき徴収すべきものとされている所得税の額を控除することとし、これにより源泉徴収制度との調整を図る趣旨のものと解されるのであり、その税額の計算に当たり、源泉所得税の徴収・納付における過不足の清算を行うことは所得税法の予定するところではない。のみならず、給与等の支払を受けるに当たり誤って源泉徴収をされた(給与等から不当に一部天引控除された)受給者は、その不足分を即時かつ直接に支払者に請求して追加支払を受ければ足りるのであるから、このように解しても、その者の権利救済上支障は生じない。
そうすると、所得税法第120条第1項第3号に掲げる算出所得税額から控除すべき同項第5号に規定する「源泉徴収をされた又はされるべき所得税の額」とは、所得税法の源泉徴収の規定に基づき、正当に徴収された又はされるべき所得税の額を意味するものであり、給与その他の所得についてその支払者がした所得税の源泉徴収に誤りがある場合に、その受給者が、所得税の確定申告の手続において、支払者が誤って徴収した金額を算出所得税額から控除し又は誤徴収額の全部若しくは一部の還付を受けることはできないと解するのが相当であり、この点に関する上記の請求人の主張は、独自の見解であって採用できない。
所得税法第212条《源泉徴収義務》第3項の「支払」の意義については、これを実質的に解し、現実に金銭を交付する行為のみならず、その支払債務が消滅すると認められる一切の行為を含むものと解するのが相当であるとして、形式的意味における清算人会の決議に基づく必要があるとする請求人の主張を排斥した事例
裁決事例集 第50集 215頁
要旨
- 所得税法第25条第1項第3号の規定は、形式的には、法人の利益配当ではないが残余財産の分配等の方法で、実質的に利益配当に相当する法人利益の株主等への帰属が認められる行為が行われたときに、これを配当とみなして株主等に課税する趣旨である。
したがって、法人の当該行為が残余財産の分配に当たるか否かについては、商法等の定める手続きを経ているか否かだけでなく、当該行為のもつ経済的効果をも勘案して実質的見地から判断すべきである。 - 上記の趣旨からすれば、所得税法第212条《源泉徴収義務》第3項の「支払」についても実質的に解し、現実に金銭を交付する行為のみならず、その支払債務が消滅すると認められる一切の行為を含むものと解するのが相当である。
- 協同組合における残余財産の分配は、清算人会が決定することとされている[中小企業等協同組合法第36条の2(理事会)]が、みなし配当として源泉徴収義務が発生する残余財産の分配(支払)のために、常に清算人会の決議が必要と解すると仮に法人の利益が何かの機会に組合員に移転した場合でも、形式的には決議がなければ課税されないことになるが、これは所得税法の解釈として妥当でない。上記中小企業等協同組合法の規定は、組合員や債権者保護のための手続規定であり、決議以前に法人の利益が組合員に移転したような例外的場合における所得税法の解釈にまで影響を及ぼすものではないと解するのが相当である。
- 本件残余財産の分配の時期
- 平成3年12月の分配
11組合員に対する貸付金を仮払金と振替処理した平成3年12月10日に当該組合員に対して残余財産の一部442,895千円が分配され、その限度において請求人の残余財産の支払債務が消滅したものと認められる。 - 平成4年1月の分配
平成4年1月13日付の「組合清算金一部仮払いにつきお願いの件」と題する書面を交付した上、同日にG社に対し33,570,000円、同月21日にF社に対し23,535,000円支払っているのは、残余財産の一部の分配であり、各支払時点で請求人の支払債務が一部消滅したものと認められる。 - 平成4年8月及び9月の分配
請求人が、平成4年8月4日、同月20日及び同年9月21日に本件組合員に支払った金員は、同年7月17日の清算人会の承認に基づき本件念書記載のとおり、残余財産の一部を分配したものと認められる。
- 平成3年12月の分配
所得税法第62条第2項の規定(保証債務)の適用に当たっては、確定申告書等にその適用を受ける旨の記載が必要とされているところ、その記載がないことを理由に棄却した事例
裁決事例集 第61集 235頁
要旨
請求人は、本件譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上、所得税法第64条第2項の課税の特例を適用すべき旨主張するが、本件特例は、保証債務を履行するために資産を譲渡し、その履行に伴う求償権の全部又は一部を行使することができなくなった場合において、[1]求償権を行使することができなくなった事実が確定申告前に生じているときには、確定申告書に本件特例の適用を受ける旨の記載がある場合、又は、[2]その事実が確定申告後に生じた場合には、当該事実が生じた日から2月以内に、当該事実が生じた日を記載した更正の請求書により更正の請求をする場合に適用を受けることができるものと解される。
これを本件についてみると、求償権の行使が不能か否か明らかでないところ、請求人は、上記[1]及び[2]のいずれの手続もしていないから、本件譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上、本件特例を適用することはできない。
所有不動産を売却する目的の甲売買契約が相手方都合により解約されたので、買換資産を取得する目的の乙売買契約をやむを得ず解約したとしても、両契約の売買物件、売主、買主、解約事情等は異なるから、甲売買契約の解約と乙売買契約の解約とは別々の行為と認められ、乙売買契約に係る解約違約金は甲売買契約に係る解約違約金収入を得るために支出した金額には該当しないとした事例
裁決事例集 第40集 33頁
要旨
請求人は、その所有不動産を売却する目的の甲売買契約を締結するとともに、その売却代金で買換資産を取得する目的の乙売買契約を締結したところ、甲売買契約が相手方都合により解約されたので、やむを得ず乙売買契約を解約したが、甲売買契約と乙売買契約とは関連して発生した取引で因果関係があるから、甲売買契約の解約により受領した違約金3,700万円の一時所得としての課税上、乙売買契約の解除に伴い支払った1,000万円をその総収入金額から控除すべきである旨主張するが、甲売買契約及び乙売買契約をみるに、たとえ請求人が甲物件の売却代金を乙物件の購入資金に充てることを予定していたとしても、それぞれの契約の売買物件、売主、買主、解約された事情等が異なるから、甲売買契約の解約と乙売買契約の解約とは別々の行為であると認められ、支払った解約違約金が甲売買契約を解約するため又は甲売買契約の解約に伴い直接必要であったとは認められず、乙売買契約に係る解約違約金は甲売買契約に係る解約違約金収入を得るために支出した金額には該当しない。
要旨
抵当権付きの土地を譲渡して、その代価をもって債権者に弁済した場合に、[1]請求人一家の収入は家族の生計を維持するのが限度であって、負債の返済はもちろん、その利息を支払うに足りる資金調達の目途が全くなく、近い将来においてもその資力を回復することができない状態にあったこと、[2]抵当権者の一部から本件土地を競売して債務及び利息の返済をするよう強く迫られていたこと等が認められるから、本件土地の譲渡による所得は、資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であり、かつ、強制換価手続の執行が避けられない場合の資産の譲渡による所得に該当し、非課税所得となる。
支払能力・意思のない者に対し、これを知らず、土地を売却し、当該土地の転売後において、残代金の回収不能を知り、売買契約を取り消した上、不法行為による損害賠償の判決を得た場合につき、当該損害賠償請求権は実質的に土地の譲渡の対価と評価されるから、譲渡所得がなかったことにはならず、また、非課税所得にも該当しないが、債務者には弁済能力はなく、回収は事実上不可能と認められるので、所得税法第64条第1項を適用すべきであるとした事例
裁決事例集 第48集 100頁
要旨
請求人は、Aとの間で、本件土地につき本件売買契約を締結し、手付金を受領した上、所有権移転登記に必要な登記委任状及び印鑑証書等をAに交付し、同日残代金として白地小切手を受領したが、Aは残代金を支払う意思も能力もなかったにもかかわらず、これを秘し請求人を誤信させたことが認められる。
Aは、本件土地につき、登記を自己に移転した上、第三者に譲渡し、登記も移転した。請求人は、Aに対し、本件売買契約を取り消す旨の意思表示をし、次いで、損害賠償請求訴訟を提訴した結果、売買残代金相当額の支払(「本件損害賠償請求権」)の判決を得た。
以上により判断すると、本件売買契約の取消しにより、本件土地の売買はなかったことになるが、本件損害賠償請求権の取得は実質的には本件土地の譲渡の対価と評価されるから、譲渡所得がなかったことにはならず、また、本件損害賠償請求権は、所得税法第9条第1項の非課税所得にも該当しない。
しかし、Aは、詐欺罪で服役中であり、資産もない等の事実が認められる。資産の譲渡代金が回収不能であるというためには、法律上債権が消滅した場合がそれに当たることは当然であるが、所得税法が実質的な担税力に着目して課税要件を定めていることに照らせば債務者の資産状況、支払能力等からみて債権の回収が事実上不可能である場合もこれに該当するというべきである。
請求人が、不法行為に基づく損害賠償として取得した売買残代金相当額の本件損害賠償請求権については、請求人が本件損害賠償請求権を放棄していないことから、同請求権は法律上消滅したということはできないが、Aには同請求権を弁済する能力はなく、同請求権の回収は事実上不可能と認めるのが相当である。
したがって、本件の所得計算においては、所得税法第64条第1項の規定を適用し、当該金額はなかったものとみなし、原処分の一部を取り消すのが相当である。
要旨
時効の効果については、訴訟において時効の援用があって初めて時効による権利の取得を生ずるものと解せられるところ、請求人は土地所有権移転登記手続を求める訴訟の提起以前に時効を援用した事実はなく、訴状提出の日に初めて時効の援用をしたものと認められるから、取得時効により請求人が取得した土地に係る一時所得は、時効を援用した日の属する年分の所得とすべきである。
要旨
有価証券の売買は、継続的に行われているが、売買の実態を総合的に勘案すると、その所得は事業所得ではなく雑所得とすることが相当である。
期末にたな卸しすべき株式の評価に当たり、信用取引の決済に充てられるべき株式の買付けについては、期中の他の株式の取得に関係させることなく、個別に当該買付け株式の取得に要した金額により評価すべきものとした事例
裁決事例集 第40集 56頁
要旨
請求人は、期末に有する有価証券(株式)の評価額の計算につき、総平均法に基づく低価法によるべき旨主張するが、請求人は期末直前において現物株式の買付けの約定とあわせて、同一銘柄の株式の同株数、同価格の信用売付けの約定をし、さらに現株渡しによる決済の約定をしているところ、所得税法施行令第119条の規定によれば、信用取引等の方法による株式の売買にあっては、1個の買付けと売付けを単位として個別に期末評価額を算定すべきことになる。
これを本件に即していえば、信用取引の決済手段に充てられるべき期末買付け株式のうち、期末においてその決済期日が到来していないものは、信用取引の未決算勘定の一つとして、期中に売買が完了した株式とは別個に、当該買付け株式の取得に要した金額により評価するのが相当である。
要旨
請求人は、相続財産の分割については現在係争中で所有権の帰すうは全体として不安定であるから、不動産所得の納税義務は発生していない旨主張するが、未分割の相続財産の賃貸から生ずる不動産所得は、年の経過とともに実現し、各共同相続人の法定相続分に応じて各相続人に帰属するものと解するのが相当である。
要旨
一般に相続財産は、相続人が数人いる場合には相続開始と共にその共有に属し、かつ、その共有持分は法定相続分によるものとされており、また、分割前の相続財産の処分については、他の相続人の同意が必要とされ、かつ、その同意を得て特定物を処分したときは、当該物件に対するそれぞれの法定相続分につきこれがなされたものと解されるところ、請求人は、本件処分の対象となった山林所得及び譲渡所得は未分割の相続財産の売却によるものであるから、その売却時においては請求人のこれらの所得に係る収入金額は確定していないと主張するが、請求人ら共同相続人が本件未分割財産を第三者に対して適法に売り渡している以上、請求人の法定相続分により、その売却時の年分において、これらの所得金額計算上の収入金額が確定しているものといわざるを得ない。
要旨
請求人は、請求人がゴルフ会員権をK社に売却し、K社が本件会員権を同日に同額でL社に売却し、請求人が4日後に本件会員権を同額でL社から買い戻したことにより、請求人の所得税が軽減されることは請求人にとって経済的合理性を有するものであり、合理的な方法によって支払税額の軽減を図ることは国民の権利として当然許容されるべきであるとともに、有価証券市場において認められる翌日買戻取引が、ゴルフ会員権の売買において認められないということは考えがたく、一般的にゴルフ会員権の売買における翌日買戻取引は不自然な取引ではないとみなされるべきであり、本件会員権の譲渡は譲渡所得に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人は[1]本件取引の約定を行うとともに本件売却計算書が発行された日のわずか4日後に本件買戻しの約定を行い、[2]本件取引の売買代金を受け取った翌日に本件買戻しに係る売買代金を支払っているが、[3]それらの代金の額は同額であり、[4]当該代金は2日の間にK社から請求人及びL社を経てK社に還流しており[5]本件一連の取引に伴う本件各会員権の名義変更ができず、あるいはそれを行っておらず、[6]請求人が手数料を負担したことを除けば本件一連の取引の前後の状況に変わりなく、[7]本件一連の取引は本件各会員権の譲渡損失を作り出すことを目的としたものと認められる。
したがって、本件一連の取引は形式的な取引であって、実体の伴わないものであり、真に売買があったと認めることができないので、本件取引は所得税法第33条第1項に規定する資産の譲渡があったことにはならない。
本件寺院は人格のない社団に該当すると認められるから、信徒が伽藍新築工事のために寄附した金銭は寺院に帰属するとして、当該金銭を住職の事業所得として課税した原処分を取り消した事例
裁決事例集 第62集 37頁
要旨
原処分庁は、本件寺院は法人格もなく、権利能力なき社団にも該当しないことから、本件寺院の信徒が伽藍新築工事のために寄附した金銭は、本件寺院の住職である請求人の事業所得に係る総収入金額を構成する旨主張する。
しかしながら、本件寺院の寺院規則及び運営状況等から判断するに、本件寺院の実態は、[1]共同の目的、[2]組織、[3]団体の存続、[4]運営、[5]財産の管理等において、実質的に権利能力なき社団の要件を備えていることから、本件寺院は、税法上の人格のない社団等に該当すると認められる。
したがって、信徒が寄附した金銭は、本件寺院に帰属することから、原処分庁の主張は採用できない。
要旨
請求人所有の本件建物の一部は居住の用に供されているとして、その部分に係る固定資産税及び減価償却費の額は必要経費に算入することができないとした原処分について、本件建物は、その利用状況からみて請求人及びその家族の居住を主目的として利用された事実はなく、請求人の歯科診療所として利用されているので、当該建物全部に係る固定資産税及び減価償却費の額は事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである。
要旨
請求人の保有する競走馬の頭数は各年分とも極めて少なく、また、競走馬の保有等に係る所得は、請求人が自らこれを申告し始めた年分以降、損失を計上するのみであったことからみると、請求人が競走馬の保有等により継続的に相当程度安定した収益を得ていたものということはできず、むしろ請求人が代表取締役を務める会社からその地位に基づいて受ける給与収入により生計を賄っていたことが明らかであること等からすると、請求人の競走馬の保有等は、事業所得の基因となる事業といえるための諸要素を欠くものというほかなく、いまだ所得税法施行令第63条第12号の定める「対価を得て継続的に行う事業」とはいえないというべきである。
要旨
株式会社の増資払込みに際し、当該会社の全株式を所有する親会社が、割当てを受けた新株引受権を失権したため、親会社の社長が株主である地位に基づかないで、当該新株引受権を与えられて払込みを行った場合には、新株引受けによって額面価額を上回る経済的利益を受けているのであるから、この経済的利益は収入金額となり、一時所得として課税することが相当である。
要旨
請求人は、商法第205条“株式の譲渡方法”第1項の規定によれば、株式を譲渡する場合には株券の交付を要するものとされているところ、本件株式の場合は株券の発行がないから、請求人は株券を交付しておらず、したがって本件株式譲渡の効力は生じていない旨主張するが、そもそも同条項は、同法第226条“株券発行の時期”第1項の規定に基づき会社が遅滞なく株券を発行している場合に適用があるものと解され、会社はその設立以来、特段の合理的な理由もなく株券を発行していなかったものであるから、その譲渡に株券の交付を必要せず、本件株式の譲渡は売買契約成立の日にその効力が生じたものとみるべきである。
要旨
借入金によって新設法人の株式を取得し、当該法人の代表者となることによって、代表者が経営する個人事業の利益が増大することになったとしても、当該借入金は株式取得のためのものであり、その利子は当該個人事業経営上の必要経費として認めることはできない。
要旨
請求人は、本件建物等の譲渡所得の金額の計算上取得費から控除する償却費の額の累積額には、不動産所得の金額の計算上必要経費の額に算入された新築貸家住宅等の割増償却費の額は含まれないと解すべきであると主張するが、所得税法第38条第2項第1号の規定により、譲渡所得の取得費の計算上控除される資産の売却費の累積額には、その資産の減価償却費の額の計算について租税特別措置法第14条第1項の規定により割増償却の適用を受けている場合には、同項の規定の適用を受けた期間に係る割増償却費の累積額が含まれると解するのが相当である。
要旨
所得税法施行令第98条の規定により、故意又は重大な過失によって他人の権利を侵害したことによって支払う損害賠償金は必要経費に算入されないが、ここに掲げる「重大な過失」とは、ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態をいうものと解されるところ、請求人の過失はこの「重大な過失」に当たるものとは認め難いので、請求人が業務遂行中に起こした交通事故に関し、被害者に支払った損害賠償金は、事業所得の必要経費とするのが相当である。
歯科医師が実施した歯科技工に関する研修及び研究開発等に関係会社の歯科技工士等が参加協力したことに対して支出した金品は当該歯科医師の事業所得の金額の計算上必要経費に該当するとした事例
裁決事例集 第31集 28頁
要旨
歯科医師である請求人が実施した歯科技工に関する研修及び研究開発等に対して自己が役員をしている関係会社の歯科技工士等が参加協力したことは、その目的及び内容からして当該歯科技工士等の歯科技工に関する知識及び技術が高まるなど当該歯科技工士等自身のため及び当該関係会社の本来の業務に寄与する要素もあることも否定できないが、歯科技工士等を参加させて行う当該研修及び研究開発等は歯科医師が業務の一貫として実施するのが業界の通例であることから、主として、請求人が請求人本来の業務に当該歯科技工士等を参加協力させたと認めるのが相当である。
したがって、請求人が実施した当該研修及び研究開発等に参加協力した当該歯科技工士等に対して支出した金品は、その参加協力に対する謝礼であり、それは請求人の業務と関連性、必要性からみて、収入と相当の因果関係を有し、有益かつ、有効なものであり、また、その支出目的、支出の相手、支出金額も社会通念からみて不相応なものではなく、合理性が認められるから、当該歯科医業務に係る事業所得の金額の計算上必要経費に算入するのが相当である。
死亡保険金に係る一時所得の金額の計算上、借入金利息の支払のための借入金及び当該借入金に係る抵当権設定費用等は収入を得るために支出した金額に該当しないとした事例
裁決事例集 第79集
要旨
請求人は、①各変額保険契約の保険料の支払に充てる目的で借り入れた本件借入金の利息の支払のために締結した本件当座貸越契約に係る第二借入金は、当該各変額保険契約と別個独立のものではなく、一体のものとして捉えるべきであること、②本件借入金に係る本件長期総合ローン契約及び本件当座貸越契約の各融資契約につき本件借入金から支出した抵当権設定費用等は、当該各融資契約をしなければ変額保険契約に基づく本件保険金等を受け取ることができなかったものであるから、いずれも本件保険金等を得るために必要不可欠な支出であり、所得税法第34条第2項に規定する「その収入を得るために支出した金額」に該当する旨主張する。
しかしながら、所得税法第34条第2項が、一時所得の金額の計算における控除の対象を、「収入を得るために支出した金額(その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る。)」と規定している趣旨は、一時所得に係る支出には、収入が得られた時はその控除項目としての意味をもつと同時に、一種の消費支出としての側面があることから、一時所得に係る収入、支出については、収入を生じた各行為又は各原因ごとに個別対応的に計算し、その反面、収入を生じない行為又は原因に係る支出は控除項目から除外することにあると解される。
このような趣旨にかんがみれば、「その収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額」とは、収入を得るために直接支出した金額など収入を生じた各原因ごとに直接支出した金額に限られると解するのが相当である。
そうすると、本件当座貸越契約は、本件長期総合ローン契約とは別個独立の契約であり、本件当座貸越契約に係る利息債務は、本件当座貸越契約を前提として発生する債務であるから、本件当座貸越契約に係る利息の支払は、収入を生じた原因の発生、すなわち、本件保険金等に係る変額保険契約の締結とは直接の関連性を有しないというべきである。
また、抵当権設定費用等は、いずれも、当該各融資契約の実行のために支出したものであり、これは、収入を生じない行為又は原因に係る支出であるから、そもそも控除項目に該当しないというべきである。
参照条文等
法人の成立は、その本店の所在地において設立登記を行うことにより初めて法人としての権利能力を取得し法人として存在することとなる。したがって、法人設立期間中の損益は、請求人に帰属するとした事例
裁決事例集 第43集 45頁
要旨
請求人は、法人の設立を決議した設立発起人会の決議の日の翌日をもって事業を法人に継承したものであるから、同日以後法人設立登記の日までの期間に生じた損益についても法人に帰属すると主張するが、法人の設立期間中に生じた損益については、[1]当該法人は、請求人が営んでいた建築設計業を引き継いだものであること、[2]当該法人は、その本店の所在地において設立登記をすることにより初めて法人としての権利能力を取得したものであること、[3]請求人備付けの現金出納帳には、請求人に対する事業主報酬及び青色事業専従者給与の支払いの事実が認められることから、請求人に帰属するとするのが相当である。
なお、原処分庁が認定した総収入金額には、建築主から依頼された近隣住民の同意を得るための交渉費用が含まれており、これは、将来における実費精算を予定した仮払金であることが認められ、請求人の預り金であるとするのが相当である。
満5年ごとに支給される退職金名義の金員は賞与であって、当該金員を受給後間もなく退職の事実が生じても、これをそ及して退職所得とすることはできないとした事例
裁決事例集 第27集 78頁
要旨
請求人は従業員に就職後5年ごとに雇用期間満了による退職金名義の金員を支給しており、それは給与所得たる賞与に当たるとされているが、その受領後間もなく実際に退職した場合には、そ及して退職所得として取り扱うべきであると主張するが、請求人と受給者との間の従前の雇用契約はそのまま継続しているものと認められること等から当該金員の支払は勤務関係の終了によって支給される退職金ではなく、給与所得たる賞与に当たり、当該金員を受領した従業員がその後確定的に退職したとしても既に確定した所得の性質が後発的な事情によって変わるものではないから、法令の根拠なくしてそ及して退職所得とすることはできない。
源泉徴収の対象となる匿名組合契約に基づく利益の額の計算上、契約内容の異なる別個の匿名組合契約に係る損失の額及び別途支払うこととされている管理費用の額を控除することはできないとした事例
裁決事例集 第90集
ポイント
本事例は、源泉徴収の対象となる支払には、現実に金銭を交付する行為のほか、支払の債務が消滅する一切の行為が含まれるから、新たな匿名組合契約に係る出資金等への充当は支払に当たるとするのが相当であるが、当該充当後の残額の支払は翌月に行われているから、本件匿名組合契約の利益の全額が当月に支払われたとして行われた納税告知処分の一部を取り消したものである。
要旨
請求人は、自己を営業者とする匿名組合契約(本件匿名組合契約)に基づく利益の分配の額の計算上、本件匿名組合契約は、本件匿名組合契約の締結前に締結していた匿名組合契約(旧匿名組合契約)と実質的に同一の匿名組合契約であるから、旧匿名組合契約による事業から生じた損失の額及び旧匿名組合契約に基づいて営業者に支払うこととされていた管理費用の額は、本件匿名組合契約の利益の額から控除すべきである旨主張する。
しかしながら、本件匿名組合契約と旧匿名組合契約とは契約内容が同一であったと認めることはできず、また、旧匿名組合契約は契約に定められた期間にそれぞれ終了し、当該契約に従って行われた運用結果報告により返還される出資金の額が通知されたことが認められ、これらによれば、本件匿名組合契約と旧匿名組合契約とは形式的にも実質的にも別個の匿名組合契約としてそれぞれ締結され、終了したものと認めるのが相当である。そうすると、当該損失の額及び当該管理費用の額は、旧匿名組合契約に係るものであるから、本件匿名組合契約に基づく利益の分配の額の計算上、利益の額から控除することはできないというべきである。
参照条文等
無効な行為により生じた経済的成果がその行為の無効であることに基因して失われたことによる返還債務は、それが現実に返還されるまでは担税力があり、現実に返還したときに必要経費に算入されるとした事例
裁決事例集 第78集 152頁
要旨
請求人は、所得税法施行令第141条第3号の規定する「無効な行為により生じた経済的成果がその行為の無効であることに基因して失われ」とは、それまで正当な権利行使の結果として得ていたはずの経済的成果が無効の法理によって一転して不当利得であるとされ、不当利得返還義務が生じることを意味するから、現実に返還したときと解する余地はないと主張する。
しかしながら、事業所得に対する課税は納税者の担税力に着目してなされるものであるところ、当該所得が無効な行為により得られた利得であるときであっても、少なくともそれが現実に返還されるまでは担税力を有するものであり、その担税力が失われるまでは損失が生じたということはできないことから、上記の政令に規定する「無効な行為により生じた経済的成果がその行為の無効であることに基因して失われ」とは、それが現実に返還されたときと解するのが相当である。
物納した土地上の賃貸用建物に係る本件解約損害金及び本件取壊し費用は、不動産所得を生ずべき業務について生じた費用には該当せず、譲渡費用に該当するとした事例
裁決事例集 第57集 96頁
要旨
請求人は、物納した土地上の賃貸用建物に係る本件解約損害金及び本件取壊し費用は、本件賃貸借契約の解約及び本件建物の取壊しに要した費用で、不動産所得を生ずベき業務について生じた費用であるから、所得税法第37条第1項の規定により、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべきであり、また、本件資産損失についても、同法第51条第1項の規定により不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである旨主張する。
しかしながら、本件解約損害金及び本件取壊し費用が、その年分における不動産所得を生ずべき業務について生じた費用に当たるとするためには、請求人が本件各土地を当該業務の用に供する意図を有しているというだけでは足りず、近い将来において確実に当該業務の用に供されるものといえるような客観的な状態にあることを必要とするものと解されるところ、請求人は、従前建築された賃貸マンションと同様の建築計画及び資金計画で新たにビルを建築することを企図していたとはいえ、当該ビルの具体的な建築計画及び利用形態等を確定するには至らず、業者にその建築を打診することもなかったというものであって、これらの事情に照らすと、上記のような客観的な状態にあったとは認められず、本件解約損害金及び本件取壊し費用を不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべきであるとの請求人の主張には理由がない。
請求人は、物納の許可を受けるため、本件賃貸借契約を解約し、本件建物を取り壊して本件各土地を更地にしたもので、そのための費用は物納に直接必要なものと認められ、物納も公法上の代物弁済として譲渡の一態様であることに照らすと、本件解約損害金及び本件取壊し費用は、譲渡費用に該当すると解される。
特定口座内で譲渡した上場株式等の取得費を概算取得費とすることはできないとした事例(令和元年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第135集
ポイント
本事例は、特定口座内で譲渡した上場株式等の取得費については、当該特定口座内における当該上場株式等の受入れに係る記録を基礎として金融商品取引業者等において当該上場株式に関する固有の計算方法により一元的に計算されることを予定しているのであって、納税者が申告するに当たり概算取得費とすることはできないとしたものである。
要旨
請求人は、①源泉徴収選択口座に係る特定口座内保管上場株式等の譲渡所得の金額を申告するに当たり、租税特別措置法第37条の11の3《特定口座内保管上場株式等の譲渡等に係る所得計算等の特例》第1項が特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額とそれ以外の株式等の譲渡による譲渡所得の金額とを区分して、これらの金額を計算する旨規定したのは、特定口座創設の趣旨等からすれば、投資家の所得計算の負担を軽減するために金融商品取引業者等が計算を代行したにすぎないから、納税者が確定申告において取得費等を含めて譲渡所得の金額を再計算することができる旨、②租税特別措置法関係通達(措置法通達)37の11の3-14《株式等に係る譲渡所得等の課税の特例に関する取扱い等の準用》は計算代行者である金融商品取引業者等の計算等に関する定めであって、納税者が概算取得費を譲渡所得に係る取得費として譲渡所得の金額を計算することは妨げられない旨それぞれ主張する。
しかしながら、①特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額の計算上取得費に算入する金額は、当該上場株式等の特定口座への受入れに係る記録を基礎として金融商品取引業者等が固有の計算方法により一元的に計算することが予定されており、②措置法通達37の11の3-14が、概算取得費による取得費を認める旨を定めた措置法通達37の10・37の11共-13《株式等の取得価額》を準用していないのは、特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額の計算に当たり、概算取得費を取得費とすることを認めない趣旨であると解すべきであるから、納税者が源泉徴収選択口座に係る特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額を申告するに当たり、概算取得費を取得費とすることはできない。
参照条文等
所得税法第48条第3項 所得税法施行令第118条第1項 租税特別措置法(令和2年法律第8号による改正前のもの)第37条の11の3第1項、第3項 租税特別措置法施行令(令和3年政令第119号による改正前のもの)第25の10の2第1項
要旨
現物出資は金銭に代えて現物を提供して株式ないしは持分を得るという有償双務契約による譲渡であって、譲渡所得計算上の収入金額は、その資産の現物出資により取得した株式ないしは持分を時価とするのが相当である。
要旨
本件手数料収入は、保険募集の取締に関する法律に準拠して請求人とT生命保険との間で締結された「募集代理店委託契約」に基づく代理店手数料収入であるが、[1]請求人は、本件代理店契約をした当時L社に勤務していたところ、本件代理店契約は、H社が複数の生命保険会社と代理店契約を締結することが法律上できなかったため、請求人とT生命保険との間で締結されたものであること、[2]請求人は、本件代理店契約締結後、H社との間で締結された本件労働契約書では、本件代理店契約に係る報酬はすべてH社に帰属する旨記載されていること、[3]請求人は、代理店であれば当然に行うべき保険募集業務のすべてをH社に委任し、代理店業務に係る帳簿も作成していないこと、[4]本件手数料収入の振込先である本件口座についての預金通帳やその印鑑は、H社が管理していたこと、[5]H社は、所轄税務署から指摘を受けるまで、本件手数料収入及び本件源泉所得税額を同社の益金として経理し、法人税の申告において本件源泉所得税額に係る税額控除を受けていたこと、[6]請求人の平成4年分ないし平成6年分の確定申告書には、本件手数料収入はH社に帰属すべきもので請求人の所得にならない旨記載されていることが認められる。
所得税法第12条は、資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であって、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益はこれを享受する者に帰属するものとして、所得税法の規定を適用する旨規定しているところ、本件代理店契約における請求人の名義は形式上のものにすぎず、実質的には当該契約に係る業務はすべてH社が行い、その収益を享受していたのはH社であったというべきである。
生計を一にする親族について、請求人と請求人の夫がいずれもその扶養親族として申告している場合には、所得税法施行令第219条第1号に規定するところにより、いずれの扶養親族に該当するかを判断すべきであるとした事例
裁決事例集 第37集 95頁
要旨
請求人と請求人の夫がいずれも長男を扶養親族として申告している本件において、請求人の夫は、請求人及び長男と別居し、生活費の一部にすぎない月額20,000円を長男の養育費として送金しているのみであるのに対し、請求人は、長男と起居を共にし、生活費の大部分を負担しているのであるから、長男に係る請求人の扶養控除を認めるべきであると主張するが、[1]請求人と夫は離婚していないこと、[2]住民登録、国民健康保険の加入状況、国民健康保険料の負担及び当該保険証の利用状況などが別居以前と変わったところはないこと、[3]経済的にも、夫は、別居後も毎月定額の婚姻費用のほか、引き続き国民健康保険料を負担していることなどを総合すると、夫と長男は別居中とはいえ、同一の生活共同体に属して日常生活の資を共通にする、生計を一にする親族であると認めるのが相当であり、長男は、所得税法上、夫及び請求人のいずれの扶養親族にも該当するというべきであるから、請求人の夫が給与所得者の扶養控除等申告書において長男を扶養親族として申告し、請求人が確定申告書において長男を扶養親族として申告している本件の場合は、所得税法施行令第219条“二以上の居住者がある場合の扶養親族の所属”第2項第1号に規定するところにより、長男は請求人の夫の扶養親族とされ、請求人の扶養親族として扶養控除の適用を受けることはできない。
要旨
請求人は、病院等の非常勤医師として受けた金員は給与所得ではなく雑所得の収入金額であると主張するが、[1]非常勤医師としての服務は、病院長等の管理監督の下に一定期間労務を提供していたものと認められること、[2]請求人の行う診療行為は高度の専門的知識を必要とするのであって、診療過程において医師としての主体性が発揮されることは認められるが、診療に必要な人的、物的設備は病院等が提供していること等からみて請求人の行った労務の提供に独立性があるとは認められないことから、当該金員は所得税法第28条に規定する給与所得の収入金額に当たる。
要旨
既に取得した資産について、その登記名義を真正な所有権者の名義に変更するための訴訟費用を支払うために借り入れた借入金の利子は、間接的には資産の所有権を確保するための支出であっても、資産を取得するために直接要した費用ではないから、所得税法第38条に規定する資産の取得費に含めることはできない。
相続により取得した土地に係る譲渡所得につき、その土地の値上がり益のうち相続時までの増加額という経済的価値が相続税の課税対象額とされていたとしても、その増加額を含めて所得税の課税対象額とすることは許されるとした事例
裁決事例集 第85集
ポイント
この事例は、相続時までの土地の値上がり益という同一の経済価値に対する相続税と所得税の課税(譲渡所得課税)が容認されるか否かにつき判断したものである。
要旨
請求人は、相続により取得した土地の値上がり益のうち相続時までの増加額という経済的価値については、相続税の課税対象額とその後の譲渡所得の課税対象額に二度含まれることになり、同一の経済的価値に対する相続税と所得税の二重課税が生じることとなるから、所得税法第9条《非課税所得》第1項第15号により非課税とされるところ、非課税所得に該当した場合は、税法の適用上その所得がないものと同等に扱われるべきであるから、これを譲渡所得の収入金額に含めるべきではない旨主張する。
しかしながら、所得税法第60条《贈与等により取得した資産の取得費等》第1項は、居住者が同項第1号所定の相続(限定承認に係るものを除く。)により取得した資産を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算について、その者が引き続き当該資産を所有していたものとみなす旨規定し、いわゆる取得価額引継方式を採用しているところ、同条により、相続後に相続人が当該資産を譲渡した場合には、当該資産の譲渡による収入金額から被相続人の取得費を控除したいわゆる値上がり益について所得税が課されることになり、この値上がり益には、被相続人が当該資産を取得してから相続開始に至るまでの値上がり益部分も含まれていることからすれば、同条第1項は、当該値上がり益部分についてもまた、所得税を課すことを容認しているものと認めるのが相当である。
参照条文等
所得税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)第9条第1項第15号、第60条第1項
参考判決・裁決
最高裁平成22年7月6日第三小法廷判決(民集64巻5号1277頁) 最高裁平成17年2月1日第三小法廷判決(訟月52巻3号1034頁) 最高裁平成4年11月16日第一小法廷判決(判時1441号66頁)
要旨
請求人は、不動産貸付業及び農業の用に供されている本件土地の相続を原因とする所有権移転の登記に係る登録免許税は、課税の対象とされる収益を生ずる業務の用に供する資産に係るものであり、また、事業遂行上の第三者対抗要件を具備するためのものであるから必要経費に算入されるべきであると主張するが、本件土地は、相続により被相続人から承継したもので、本件登録免許税は、相続に伴い付随して生じたものにすぎず、単なる家事上の費用に属するものというべきであるから、所得税法第37条に規定する必要経費には当たらない。
要旨
請求人は確定申告書を作成するに当たり、固定資産を交換した場合の課税の特例の適用を受けるべく、[1]請求人の関係する団体事務員と相談の上、特例適用条文を所得税法第58条第1項と記載すべきところ、誤って租税特別措置法第33条の2と記載し、これが誤っていることに気付かずに提出したが、確定申告書に特例の適用を受ける旨の何らかの記載さえあれば、課税の対象とはされないものと信じていたこと、また、確定申告書には譲渡所得の計算明細等同条の適用を受けるための必要な書類のすべてが添付されていること、[2]請求人が[1]のように誤信したことについては、原処分庁の納税相談の機会を利用しなかったことなど請求人としても反省すべき点はあるが、税法の知識に乏しい請求人としては無理からぬことでもあり、さらに、確定申告書の作成について相談した団体事務員の税法に関する知識を過信した請求人のみにその責を負わせるのもいささか酷であると考えられることから、本件においては、所得税法第58条第1項と記載しなかったことについて、やむを得ない事情があったと認めるのが相当である。
社会保険診療報酬に係る不正請求金を、事業廃止後に支払った場合の更正の請求は、国税通則法第23条に該当せず、所得税法第152条による更正の請求をすべきであるとした事例
裁決事例集 第53集 115頁
要旨
請求人は、社会保険診療報酬に係る不正請求について、不正請求金の返還請求と納入通知を受けた段階で債務が確定したのであるから、国税通則法第23条(更正の請求)第2項及び同法施行令第6条(更正の請求)第1項第1号又は第2号に該当し、返還請求を受けた全額について平成3年分及び4年分の更正の請求を認めるべきである旨主張する。
無効な行為により経済的成果が失われた場合には、所得税法第51条(資産損失の必要経費算入)第2項及び同法施行令第141条(必要経費に算入される損失の生ずる事由)第3号の規定により資産損失に該当し、当該損失の生じた日が事業廃止後である場合は所得税法第63条(事業を廃止した場合の必要経費の特例)及び同法施行令第179条(事業を廃止した場合の必要経費の特例)の規定により、これをまず事業を廃止した年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入し、なお控除しきれない金額については所得税法第152条(各種所得の金額に異動を生じた場合の更正の請求の特例)により前年分にさかのぼって更正の請求ができることとされている。
請求人は、事業廃止後に不正請求金の一部を返還しており、現実に返還した金額については、まず平成5年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入し、なお控除しきれない金額については所得税法第152条の規定を適用して平成4年分について更正の請求をすべきである。
租税特別措置法第37条の11第1項に規定する上場株式等の譲渡による譲渡利益金額は個々の取引に係る譲渡利益金額であり、その支払がされる際に所得税を源泉徴収されることにより課税が終了し、確定申告をすることはできないとした事例
裁決事例集 第45集 132頁
要旨
請求人は、租税特別措置法第37条の11第1項の規定(本件特例)の適用を受けて課税された所得税は、所得税法第120条第1項第5号に掲げる源泉所得税に該当するため、確定申告において、同項第3号に掲げる所得税の額から控除することができ、上場株式等の譲渡による譲渡利益金額は年間を通じての損益の通算もできる旨主張するが、本件特例に関しては、請求人が主張するような精算のための申告手続等についての別段の規定が存しないし、本件特例は暦年の所得金額いかんについてはこれを重要視することなく、源泉徴収のみをもって課税関係の終了を意図したものとみるのが相当であり、本件特例に規定する譲渡利益金額は個々の取引に係る譲渡利益金額と解すべきであって、これを年間を通じての譲渡利益金額等と解する余地はなく、その支払がされる際に所得税を源泉徴収されることにより課税が終了し、確定申告をすることはできないと解されるから、請求人の主張は採用できない。
要旨
請求人は、C社から請求人に対し漁業共同組合を通じて支払われた空港建設事業に係る漁業補償金の配分額のうちには、漁業に従事する長男に帰属する金額が含まれていると主張するが、[1]漁業協同組合の配分は、同漁協の配分委員会で、組合員等について個々に決定され、それぞれ受領していること、[2]漁業補償金の配分額の訂正は、請求人のし意に基づき行われたこと、[3]請求人は、漁業者であるが、長男は、配分額の決定前は請求人の扶養親族であり、刺網漁業の許可を受けたのは組合員への配分額が確定する直前であること、[4]配分額は請求人が受領しており、その中から長男に支払った事実がないことから、請求人に帰属する本件漁業補償金は、配分委員会で決定された配分額であると認めるのが相当である。
要旨
競輪の予想業者が、競輪の廃止に伴い、地方公共団体から支給された補償金は、競走事業廃止対策審議会条例による廃止対策措置基準に準拠し、売上収益を基にして算定した見舞金として支給されたものであって、予想業者の業務の遂行により生ずべき所得に係る収入金額に代わる性質を有するものと認められるから、この見舞金は、その業務の所得金額(所得税法施行令第8条第3号に規定する臨時所得)に係る収入金額とみるのが相当である。
要旨
自己の営む事業を遂行するため加入したA管工事協同組合に出資と合わせて納付した加入金は、[1]組合が加入金を資本準備金に繰り入れていること、[2]脱退組合員に持分の払戻しをするほか退会慰労金の名目で金員を支払っていること、[3]加入金の額は組合の正味財産額を基礎として算出した旨の説明があることなどの事実を総合して判断すると、本件加入金は組合員の地位を取得するに当たり、既組合員の持分とを調整するために徴収されたものと認められ、権利金としての性格を有するものとは認められないから、本件加入金は、事業所得計算上の必要経費ではなく、持分の取得費として有価証券の取得価額に含めるのが相当である。
米国で出資・設立したリミテッド・ライアビリティ・カンパニー(LLC)の事業につき生じた損失は、当該LLCの構成員である請求人に帰属するのではなく、外国法人たる当該LLC自体に帰属するとした事例
裁決事例集 第61集 102頁
要旨
請求人は、米国の事業体であるリミテッド・ライアビリティ・カンパニー(LLC)は、法人格を有しないことは米国の解説マニュアルからも明らかであることなどから、本件LLCにつき生じた損失は、民法上の組合又は匿名組合に準じて構成員らに直接帰属する旨主張する。
しかしながら、本件LLCは、[1]商行為をなすを業とする目的でニューヨーク州LLC法に従った設立手続を経て設立されていること、[2]契約、財産の所有、裁判、登記等の当事者となる資格が与えられていること、[3]ニューヨーク州LLC法で「LLCは(構成員とは別個の)独立した法的主体である」と規定されていること、また、[4]本件LLCの事業活動の実態面でも本件LLCは構成員とは異なる権利義務の主体として活動していることなどからして、本件LLCは設立準拠法であるニューヨーク州LLC法の下で法人格を付与された事業体であり、係る法律上の資格と実態を有する本件LLCは我が国の租税法上の外国法人に該当し、本件LLCが行う事業から生じる損益は、本件LLCに帰属すると認めるのが相当である。
要旨
所得税法第140条第1項は、青色申告書を提出する居住者は、その年において生じた純損失の金額がある場合には、当該申告書の提出と同時に、所得税の還付を請求することができる旨規定し、この規定に関し、基本通達140・141-3では、還付請求書が青色申告書と同時に提出されなかった場合でも、同時に提出されなかったことについて税務署長においてやむを得ない事情があると認めるときは、これを同時に提出されたものとして所得税法第140条第1項の規定を適用して差し支えない旨定めている。
この通達にいう「やむ得ない事情」とは、納税者の責めに帰すことのできないような特別な事情により、青色申告書の提出と同時に還付請求をなし得なかったと合理的に認められるような例外的な場合をいうのであって、いわゆる法の不知を含まないものと解するのが相当である。
ところで、請求人は、[1]純損失の繰戻しによる還付請求が可能な期間を5年間であると考えていたことを及び[2]平成3年12月26日から平成4年4月上旬までA国に滞在していたため、平成3年分の確定申告期間中は日本国内にいなかったことから、還付請求書を同時に提出できなかったのであり、基本通達にいう「やむ得ない事情」に該当すると主張する。
しかしながら、還付請求が可能な期間を5年間であると考えていたという請求人の法の不知は、上記のとおり「やむ得ない事情」に当たらず、また、上記の期間A国に滞在していたため、平成3年分の確定申告期間中は日本国内にいなかったという事情についても、請求人は、長男Cから純損失の繰戻しによる還付の制度があること、また、その制度の適用を受けるためには確定申告と同時に還付請求書を提出しなければならない旨の連絡を受けていながら、何らの確認や問い合せもしなかったことが認められるから、請求人の責めに帰すことのできないような特別な事情とは認められない。
要旨
純損失の繰越控除は、所得税法第70条第1項、第22条第2項及び同法施行令第201条第1項第2号イの規定から明らかなように、純損失の生じた年の翌年以降3年内の各年において発生する総所得金額から順次控除するものであり、その純損失の生じた年以降3年内であれば、金額的処理方法には任意選択性があるとしてなした請求人の純損失の繰越控除は相当でない。
要旨
本件自動車は、給与所得である請求人が主として勤務先へ通勤する際に利用していたものであり、それに基づいて通勤手当の支給を受けていたことからすれば、同人にとって生活に通常必要な動産であったと認めるのが相当であり、その譲渡による損失の金額は、所得税法第9条第2項第1号の規定によりないものとみなされ、給与所得の金額から控除することはできない。
給与所得者の特定支出(受講する研修)について、その活動の実態は、現地において教授陣と討論会を行ったり、国際会議に出席するなど、専ら、自らの調査研究のためと認められるところから、特定支出には該当しないとした事例
裁決事例集 第42集 54頁
要旨
所得税法第57条の2第2項第3号でいう「受講する研修」とは、第三者が自己の有する技術又は知識を不特定多数の者に習得させることを目的として開設されている講座等において、その第三者から訓練又は講習を受けることにより、その技術又は知識を習得する、いわば受動的立場での研修をいうと解するのが相当である。
請求人の海外における諸活動は、当初から定められたカリキュラム等に従っていたものではなく、地域的にも相当広範囲に行動しているなど、全体として、第三者が自己の有する技術又は知識を不特定多数の者に習得させることを目的として開設されている講座等において、その第三者から訓練又は講習を受けることによりその技術又は知識を習得するためのものとは認定できず、更に、請求人が海外の諸活動において習得した技術又は知識は、訓練又は講習を受けることにより習得できるものではないと認められるから、請求人の海外における諸活動は、本件研修には該当しないと認めるのが相当である。
職務発明・考案に係る権利の譲渡の対価として支払われた和解金については、職務発明に関する「相当の対価」の追加分として受け取ったものと認められることなどから、譲渡所得に該当せず、雑所得に該当するとした事例
裁決事例集 第77集 72頁
要旨
請求人は、職務発明の対価支払請求訴訟における和解により得た和解金は和解調書の記載のとおり、請求人が和解当日までにF社でした職務発明・考案に係る権利を同社に譲渡した対価として受領したものであり、このような権利の譲渡により得た所得は譲渡所得に該当する旨主張する。
しかしながら、①請求人は本件職務発明につき「特許を受ける権利」をF社に承継し、出願報償金を受け取ったこと、②請求人が同社を被告として提起した相当の対価の支払請求訴訟は同社から受領した本件職務発明についてのロイヤリティ報償金及びクロスライセンス報償金が特許の実施開始以後に同社が得たロイヤリティ収入及びクロスライセンス収入のうち本件職務発明に関して請求人が得るべき「相当の対価」の額に満たないとしたものであり、その和解が成立し本件和解金が支払われたことが認められることなどから、本件和解金は、本件職務発明に関する「特許を受ける権利」の譲渡後に、同社がこの権利を独占的に利用するなどして得た利益の実績等を前提にして、両者が合意の上で定めた金額による本件職務発明に関する「相当の対価」の追加分相当の金員であると認めるのが相当である。
また、F社がこの権利を独占的に利用するなどして得た利益の実績等に基づいて算定された使用料と同様のものであるから、本件和解金に係る所得は、雑所得となる。
自己が勤務する法人の親会社から付与されたストック・オプションに係る経済的利益は、請求人の非独立的ないし従属的な人的役務の提供の対価としての性質を有するから給与所得に該当するとした事例
裁決事例集 第62集 92頁
要旨
請求人は、自己が勤務しているK社の親会社であるG国法人H社から付与されたストック・オプションに係る経済的利益は、H社と雇用関係にないこと等から、一時所得に該当する旨主張する。
しかしながら、本件ストック・オプションは、H社のストック・オプションプランに基づき、請求人へストック・オプション付与契約書により付与されているところ、本件プラン及び本件付与契約書に記載された各規定のとおり、本件プランの目的として、人材の確保と当該人材に対する追加的インセンティブの供与が掲げられていること、本件ストック・オプションは、請求人が本件従業員等(H社及びH社の子会社の役員及び従業員をいう。)であることを前提に、対価として付与されたものであること、その行使は、請求人の本件従業員等としての一定期間の勤務をもって可能となること、その譲渡等は原則として禁止されていることが認められる。
これらのことからすると、本件利益は、請求人が本件従業員等たる地位に基づき、H社の株式を購入することができる権利を同社から付与され、本件従業員等として一定期間勤務することにより、これを行使して得たものであるということができる。換言すれば、本件利益は、請求人が、専らK社に勤務することに基づいて得られた経済的利益、すなわち、請求人の非独立的ないし従属的な人的役務の提供の対価としての性質をもった所得ということができるから、給与所得に該当すると解するのが相当である。
要旨
請求人が、自己所有の土地を譲渡して得た代金により、B農協から自己名義で借り入れた債務を弁済した場合において、同債務の借入れについて、[1]請求人は、農業協同組合法の規定により農業協同組合が組合員以外のものに融資することはできないこととされているため、A法人の設備資金等に充てるための融資を受けるに当たり、自己がB農協の組合員であることから自己名義で借り入れるに至ったこと、[2]請求人は、当該借入金の担保のため本件土地に根抵当権を設定し、その後これを売却しその代金により本件借入金に係る債務を弁済していること、[3]請求人は、借入れ後直ちにこれをA法人に貸し付け、かつ、これに伴い利ざやその他の金利に相当する金銭等を収受していないこと、[4]A法人は、請求人からの借入れについて、B農協から直接借り入れた場合と同様の経理処理をしていることなどの事実が認められる場合には、請求人の前記債務は、請求人がA法人の債務を補償することに代えて自己名義で借り入れた債務というべきであるから、所得税法第64条第2項の規定の適用については、これを同条項にいう保証債務と同等のものと認めるのが相当である。
要旨
請求人は、営業者と請求人との間の匿名組合契約の営業者の事業が航空機リース事業であり、所得税法第26条の不動産所得(損失)に該当するから、請求人の所得も営業者と同じ不動産所得(損失)である旨主張する。
しかしながら、本件匿名組合契約により営業者から請求人に配分される損益の内容を吟味すると、請求人が自ら又は営業者と共同して主体的に本件航空機を賃貸していたとか、それによる収益の稼得や費用の負担を行っていたとはいえず、請求人は、本件航空機リース事業に対する単なる出資者という立場で、本件匿名組合契約に基づいて営業者から損益の配分を受けるものであると認められる。そうすると、営業者から請求人に配分される損益は、営業者への出資に対するもので、請求人が不動産等を利用に供したことにより生じる所得であるとはいえないから、不動産所得に該当するものではなく、また、利子所得、配当所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しないことから、雑所得に該当する。
次に、請求人が本件各年分の確定申告において本件航空機リース事業に係る不動産所得の損失としている金額は、営業者から送付された本件各期間の会計報告書の記載に基づくものであって、本件航空機リース事業に係る損失について、本件匿名組合契約に基づき、請求人が分担するものとして出資割合に応じて配分されたものである。そして、ここでいう損失とは、本件各期間における本件匿名組合契約の各年分における財産の減少額のことであり、損失の分担があることによって、請求人の営業者に対する出資額が計算上その分担する損失の額だけ減少することを意味しているにすぎず、現実の支払によってこれを補てんするものではない。そうすると、請求人に配分された損失は、現実の負担ではなく計算上のものであり、課税上は、本件各年分においていまだ確定しているとはいえないから、請求人の本件各年分の雑所得とすべき金額はない。
要旨
請求人(大学教員)の長男の入学金及び授業料等につき、大学に設けられている学費減免規定に基づき、減額免除されたことによる利益は、使用者である同大学から勤労者の地位にある請求人が受けた経済的利益であるから、当該経済的利益に係る所得は、所得税法第28条第1項にいう給与所得に該当する。
要旨
被相続人が死亡したため相続人がその事業を承継した場合において、両者に継続雇用されている従業員に係る当該死亡時までの期間の退職金相当額は、その事業が継続し従業員について退職の事実もないところから、相続開始時に存在し、かつ、確定した債務に該当しないと認められ、死亡した事業主の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。
被相続人の死亡によりいったん相続登記(2人各2分の1)がされた土地について、調停がされ、その結果、相続人間で、一方が当該土地を取得し、他方(請求人)が金銭を受領した場合において、旧相続登記は共同相続人全員の遺産分割協議に基づいたものとは認められず、一方、調停による新相続登記と金銭の授受は、代償分割と認められ、請求人が土地の共有持分を他の相続人に譲渡したものではないとした事例
裁決事例集 第49集 110頁
要旨
原処分庁は、被相続人(父)からの相続に係る旧相続登記(兄弟2人各2分の1)に際し、請求人の母が請求人の妻に、登記に必要な印鑑の預託及び登記費用の負担を請求しており、請求人の妻はその事実を請求人に説明していることから、請求人はそのことを承知しており、また、本件土地についてなされた旧相続登記に無効ないし錯誤の要因は認められず、本件土地の錯誤登記による所有権の抹消は、いったん有効になされた遺産分割のやり直しによる請求人の共有持分の譲渡と認めるのが相当であると主張する。
しかしながら、[1]被相続人の遺産について、共同相続人の答述等からも遺産分割協議をした事実を確認できないこと、[2]請求人の妻も三文判しか渡していないと認められること及び[3]遺産分割協議書の存在が確認できないことから、旧相続登記は被相続人の遺産について共同相続人全員の遺産分割協議に基づいて行われたものとは認められず、したがって、本件土地は、請求人と弟の間において分割前の共有の状態であったといわざるを得ない。
本件調停書に基づき、弟が本件土地を取得し、その代償として請求人が弟から250,000,000円を受領したことは、代償分割そのものであって、請求人が本件土地の持分2分の1を弟に譲渡したと認定することはできない。
要旨
請求人は、暴力団の配下組員と共謀の上、大量の覚せい剤を密輸入・密売し、係争年分中に多額の利益を得ていたにもかかわらず、これを申告しなかったものであり、請求人に対する所得の決定及び重加算税の賦課決定は適法である。
要旨
本件山林は裁判上の和解に基づいて譲渡したものであるところ、和解の譲渡価額算定の基になった鑑定書に立木の評価がなく、現況も立木としての価値が見いだせず、譲受人も立木に価値を認めておらず、近隣の売買実例によれば、すべて土地のみの価額で取引されているから本件山林の立木に経済的価値は認め難く、山林所得に係る収入金額とは認められない。また、本件訴訟の目的は境界確認を求めるものであり、結果的に譲渡を内容とする和解で該当紛争の解決をしたにすぎないので、和解の譲渡価額算定のための鑑定料以外の弁護士費用及び訴訟費用は譲渡費用に該当しない。
診療所開設遅延に係る本件和解金は、請求人の心身、資産に加えられた損害を補てんする性質のものではなく、本来所得となるものや得べかりし利益を喪失した部分を受領したもので、請求人の業務の遂行により生ずべき事業所得に係る収入金額に代わる性質を有するものと認められるとした事例
裁決事例集 第57集 127頁
要旨
請求人は、請求人を開設者とする診療所の開設が遅延した場合にはGが請求人に損害賠償金を支払う旨の合意書に基づき、請求人が和解により受領した本件和解金は、請求人の精神的苦痛及び肉体的苦痛に対する対価として算定されたものであるから、所得税法第9条第1項第16号及び同法施行令第30条の規定により非課税とされる損害賠償金に該当する旨主張する。
しかしながら、本件合意書に定める損害賠償金の積算根拠は、[1]本件診療所の開設に伴う医療機器のリース料及び借入金の元利返済金、[2]光熱費、修繕補修費、家具及び看護婦・医師等の人件費並びに[3]請求人の得べかりし収入及び税金負担分であり、請求人は、本件訴訟において、この損害賠償金の積算根拠及び本件診療所に代えて第三者を開設者とする診療所を開設せざるを得なかったことによる医療収入の実際の損害の内容を明らかにし、これに基づいて和解したものと認められ、請求人の答述及び和解金の支払者の申述からも精神的苦痛及び肉体的苦痛の対価として和解したとは認められず、また、これを証する証拠書類の提出もないことから、本件和解金は、請求人の心身、資産に加えられた損害を補てんする性質のものではなく、本来所得となるものや得べかりし利益を喪失した部分を受領したもので、請求人の業務の遂行により生ずベき事業所得に係る収入金額に代わる性質を有するものと認めるのが相当である。
要旨
証券外務員はその勧誘の実を上げるために、取引先に対して資金を貸し付け、又は株式を貸与して融資の便を図るようなことを通常行っていると認められるところから、これらの行為に係る債権を回収することができないこととなった金額は、事業所得の金額の計算上、これを貸倒損失として必要経費に算入するのが相当である。
要旨
請求人が医療法人の退社に伴い収受した金員について、請求人は、医療法人に対する出資金の譲渡、すなわち、有価証券に化体された資産の譲渡代金であるから、所得税法第9条第1項第11号に規定する有価証券の譲渡に当たると主張するが、払戻しを求める請求文書、医療法人の臨時社員総会における出資金の減資分についての出資の取決め等からすると、有価証券の譲渡ではなく、出資金の払戻しに該当すると認定すべきものであるから、その出資額を超える部分の金額が配当所得の収入金額とみなされるとして行った原処分は相当である。
要旨
請求人は、本件養老生命共済契約の締結及び共済掛金の支払は、いずれも長男の親権者としての監護行為として行ったものであり、共済掛金の負担者は、長男であるから、本件共済金は長男の相続財産であると主張するが、[1]共済証書の契約者名は、請求人名義であること、[2]契約申込書に、請求人が長男の法定代理人として契約に同意する旨の表示はなく、一方、商法第674条第1項の被共済者の同意について、請求人が法定代理人として記名押印していること、[3]共済掛金を、長男の普通預金口座から支払ったとする事実は認められないこと、[4]その他共済契約及び共済掛金の支払について親権者としての監護行為であるとする事実は認められないことから、共済掛金の負担者は請求人であり、請求人が受領した本件共済金は、請求人の一時所得の収入金額であるとした原処分は相当である。
要旨
請求人が従前勤務していた法人(以下「本件法人」という。)において加入していた適格退職年金制度の掛金等の負担について、退職手当規程上、当該退職年金制度の加入者が定年により退職した場合、退職手当の金額からその基準額の全額を控除すると規定されているのみで、基準額と退職年金制度の原資との関係について明文で定めた規定は見当たらない。
しかしながら、[1]基準額は年金の原資に「移行」することとされていること、また、年金月額の算定方法が基準額の算定方法と相応していることからすると、当該退職年金制度の加入者についてみる限り、その基準額に相応する金額が年金の原資として本件法人により継続的に拠出され年金資産となっているものと解されること、[2]請求人の署名、押印のある退職年金給付申請書をみても、年金についての従業員の拠出総額を零円と記載していること、[3]本件法人の経理処理上も基準額相当額については会社拠出金として処理されていること、[4]そもそも適格退職年金制度においては、退職の際、当該制度の加入者の退職年金の原資となる掛金が加入者に帰属しないことを前提として、退職年金の実際の支給時に課税されていることを考え併せると、本件の年金原資の拠出者(負担者)は請求人でなく、本件法人であると認めるのが相当であり、請求人が受領している退職年金は雑所得の収入金額となる。
請求人が合名会社を退社するに当たり受領したみなし配当所得の収入すべき時期は、退社することについて総社員の同意があった日であり、年賦で支払われるものであっても、その全額が一括して課税されるとした事例
裁決事例集 第63集 123頁
要旨
請求人が合名会社を退社するに当たり受領したみなし配当所得の収入すべき時期について、請求人は、同社社員総会において退社に関する総社員の同意があった平成11年5月28日であると主張し、原処分庁は、請求人が平成10年8月4日に同社を退社した旨の変更登記がされていることから、退社の事実があった日は同日であると主張する。
ところで、請求人が同社代表社員との間で作成した公正証書には、請求人が平成10年7月2日付で同社を退社することについて総社員が同意した旨の記載があり、本件公正証書の記載内容は真正かつ有効なものと認められるから、本件総社員の同意があった日は、同日と認められる。
そうすると、請求人の退社事由は同社定款に定める総社員の同意に基づくものであることについては争いがなく、所得税基本通達36-4(3)イに定める請求人の退社の事実のあった日は、平成10年7月2日と認めるのが相当であり、同日が配当所得の収入すべき時期である。
請求人は、合名会社を退社するに当たり受領したみなし配当所得は、平成10年から同18年まで9年間の年賦で支払われる予定の収入であるから、みなし配当所得の金額を平成10年分の所得として一括課税することは違法である旨主張する。
しかしながら、所得税法第36条第1項に規定する「その年において収入すべき金額」とは、権利確定主義を原則としているところ、請求人の退社の日は平成10年7月2であり、この日に本件払戻金の額を受領する権利を確定的に取得したものと認めるのが相当であるから、本件みなし配当所得の金額が配当所得の収入すべき金額となり、平成10年分の所得として課税した原処分は相当である。
要旨
請求人は、税理士事務所においては、税理士、従業員(補助)税理士、従業員及び顧問先と税理士事務所独自のノウハウ等が一体となって税理士事務所の運営がなされていることに着目して営業権あるいは企業権というものを認識することができ、請求人はこの営業権という資産を譲渡したものであるから、その対価として受領した金員に係る所得は、所得税法第33条に規定する譲渡所得に該当する旨主張する。
しかしながら、①税理士と顧問先との関係において、税理士のノウハウや顧問先との信頼関係は、当該税理士個人に帰属し、一身専属性の高いものであり、税理士とその顧問先が両者の委任契約の上に成り立っていることからすれば、当該税理士を離れて営業組織に客観的に結実することにはなじまないこと、②補助税理士及び従業員と顧問先との関係において、請求人の補助税理士は、請求人から事業を承継する税理士Aのみであり、かつ、事業承継時においてAに引き継がれた従業員はいなかったのであるから、当該事業承継では補助税理士及び従業員と顧問先との関係は生じないこと、③税理士事務所独自のノウハウ、これと税理士や従業員等が一体となって行われる運営、その他、超過収益を稼得できる無形の財産的価値を有していた旨の請求人の主張については、請求人から具体的な主張や証拠の提出はなく、また、請求人が経営していた税理士事務所に超過収益を稼得できる無形の財産的価値があったと客観的に認めることができないことから、請求人が経営する税理士事務所において、譲渡所得の基因となる資産としての営業権若しくはこれに類する権利が存在していたことを認識することはできない。
参照条文等
請求人が平成25年中に行った外国通貨建預金の払出しにより生じた為替差損益の金額は、同年分の収入すべき金額に該当するとした事例(平成25年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第103集
ポイント
本事例は、本件における為替差損益については、外国通貨を円貨に交換して口座から払い出した時に所得税法第36条《収入金額》第1項にいう収入すべき金額が実現したものとして所得を認識するとしたものである。
要旨
請求人は、平成25年分における請求人の外国通貨建預金(本件外貨預金)の払出しにより生じた為替差損益(本件為替差損益)の金額は、請求人名義の本件外貨預金の口座を開設した平成21年から最終払出日の平成25年までの間にわたり継続して行われた取引であるから、この期間を基礎として計算されるべきである旨主張する。
しかしながら、本件為替差損益については、外国通貨を円貨に交換して本件外貨預金の口座から払い出した時に所得税法第36条《収入金額》第1項にいう収入すべき金額が実現したものとして、所得を認識する必要がある。したがって、請求人の平成25年分の雑所得の金額の計算上総収入金額に算入すべき金額は、請求人が平成25年中に外国通貨を円貨に交換して本件外貨預金の口座から払い出した時に生じた各為替差損益の額の合計額とされるべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
東京地裁平成23年1月26日判決(税資261号順号11599)
要旨
請求人は、F社に雇用されているにすぎず、F社からの収入は給与所得に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人とF社の間の請負基本契約及び当事者間の取決めによれば、①請求人は、業務の遂行に関して、自己の責任において代替者を手配でき、その者が代替して業務を遂行できること、②請求人は、不可抗力により損害が生じた目的物に係る報酬をF社に請求できないこと、③請求人は、作業の方法や進行の段取りに関して、F社の指揮監督下にないこと、④請求人は、業務の遂行に関して、F社から時間的な拘束を受けていないことが認められ、⑤F社が請求人に無償で材料を支給し、用具等を貸与していることについては、合理的な理由が存することが認められる。
以上の諸要素を考慮すれば、請求人の業務は請負契約に基づくものであり、請求人は、自己の計算と危険において独立して業務を遂行していたものと認められるから、当該業務に係るF社からの収入は事業所得に該当する。
参照条文等
請求人が得た構造計算適合性判定業務などに係る収入は、支払先との契約関係及び労務提供の態様から給与所得に該当するとした事例(平成30年分から令和元年分の所得税及び復興特別所得税の更正の請求に対し更正をすべき理由がない旨の各通知処分並びに令和2年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分・棄却)
裁決事例集 第139集
ポイント
本事例は、請求人の構造計算適合性判定業務などに係る収入について、支払先との間に雇用契約及び委任関係があることを前提に、支払先の指揮命令の下で、空間的、時間的な拘束を受けて業務を行っていたと認められるから、当該収入は給与所得に該当するとしたものである。
要旨
請求人は、請求人が取締役を務める法人(本件法人)から建築基準法第6条の3《構造計算適合性判定》第1項に規定する構造計算適合性判定に係る業務(本件判定業務)などの対価として得た収入(本件各収入)は、自己の計算と危険において独立して営まれた業務によるものであるから、本件各収入に係る所得が所得税法第27条《事業所得》第1項に規定する事業所得に該当する旨主張する。
しかしながら、①請求人は、本件法人の本件判定業務を行う部署の本部長の肩書で、本件判定業務を行うとともに取締役会で議決権を行使し、また、本件法人は、本件各収入を給与として源泉徴収に係る経理及び事務を行っていたのであるから、請求人と本件法人との間には従業員としての雇用契約及び取締役としての委任契約が成立していたと認められる。そして、②請求人は、本件法人の建物で、内部規定に定める業務時間に本件判定業務を行っていたのであるから、本件法人の指揮命令下で、空間的、時間的な拘束を受けていたと認められるほか、③本件各収入は、本件判定業務の成果にかかわらず毎月定額であるから、請求人が報酬面でのリスクを負担していたとは認められず、請求人は自己の計算と危険によって本件判定業務を行っていたとはいえない。そうすると、本件各収入に係る所得は、事業所得に該当せず、所得税法第28条《給与所得》第1項に規定する給与所得に該当する。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和56年4月24日第二小法廷判決(税資117号316頁) 福岡地裁平成28年10月14日判決(税資266号順号12916) 令和3年11月9日裁決(裁決事例集No.125)
請求人が立替払したと認められる金額は、全て総収入金額から除外したとの原処分庁の主張を一部排斥した事例( 平成23年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、 平成24年分の所得税の更正処分及び無申告加算税の賦課決定処分、 平成25年分の所得税及び復興特別所得税の再更正処分並びに無申告加算税の賦課決定処分、 平成22年1月1日から平成22年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに無申告加算税の賦課決定処分、 平成24年1月1日から平成24年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに無申告加算税の変更決定処分、 平成25年1月1日から平成25年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに無申告加算税の賦課決定処分・ 一部取消し、 棄却、 却下)
裁決事例集 第104集
要旨
原処分庁は、所得税の事業所得の総収入金額の算定に当たっては、請求人が取引先の支払を立替払したと主張する金額のうち、立替払したと認められる部分については既に総収入金額から除外しており、その他の部分については立替払したとは認められない旨主張する。
しかしながら、取引先への文書照会に対する回答内容等によれば、請求人が取引先の支払を立替払したとして原処分庁が認めたもののほかに、取引先一社分について立替払した金額があったにもかかわらず、当該金額を当該総収入金額から除外していなかったことが認められる。
請求人が組合員となっている民法上の任意組合からの船舶の賃貸事業に係る損益であるとする金額は、所得税法第26条第1項に規定する不動産所得の金額の計算上、総収入金額又は必要経費に当たらないとした事例
裁決事例集 第67集 165頁
要旨
請求人は、本件船舶の賃貸事業は、請求人が投資商品の販売者から船舶の共有持分権を購入し、これを民法上の任意組合L及びケイマン諸島のリミテッド・パートナーシップPを通じて行っているのであるから、L組合の船舶賃貸事業を通じて得られる所得は、不動産所得に当たる旨主張し、原処分庁は、本件船舶の賃貸事業は、[1]請求人が本件事業に係る業務執行権を有さず、経営に参画していないこと、[2]請求人が本件船舶を実質的に保有していないこと、[3]請求人の負う本件事業のリスクが出資した船舶の持分を限度とするものであること等の理由により、請求人ら組合員の共同事業であるとは認められないから、L組合の船舶賃貸事業を通じて得られる所得は、不動産所得に当たらない旨主張する。
しかしながら、[1]G社が企画した船舶に係る投資商品は、G社から一体の投資システムとして請求人らに示されていたものであり、[2]その内容を構成する各一連の行為において、本件船舶の売却を切り離した場合には、本件船舶の賃貸事業は収益面で全く成り立ち得ない一方で、[3]L組合の出資者には、実質的に組合への事業参加の機会は全く予定されておらず、[4]しかも、不動産投資に伴う通常のリスク負担も予定されていないことから、当該投資商品は、本件船舶の賃貸とその売却とが一体不可分にセットされ、それらに係る収入金額から投資資金が回収され、収益の分配を受けるという経済的成果をもたらすものであることが明らかである。
したがって、L組合の船舶賃貸事業は、船舶の賃貸借という法形式に伴う実質的な経済的成果が発生していないと認められることから、本件船舶の賃貸事業に係る損益は、請求人の不動産所得とすることはできない。
請求人が耐用年数の短縮を求める理由は、本件建物自体の構造等に変化が生じて物理的、客観的に使用可能期間が短くなったという事由ではなく、取壊しの行われることが将来予定されているという本件契約当事者の取決めを理由とするものであるので、所得税法施行令第130条第1項に掲げる事由には該当しないとした事例
裁決事例集 第49集 100頁
要旨
請求人は、本件建物は、賃貸借期間が10年に限定され、賃貸借期間終了後取り壊されるものであることから、本件建物の耐用年数は、法定耐用年数の40年ではなく、賃貸借期間に応じた10年となるとして、耐用年数の短縮を承認すべきである旨主張するが、所得税法施行令第130条第1項が耐用年数の短縮を認める特別な事由を列挙しているのは、耐用年数の短縮は、減価償却資産の使用可能期間が法定耐用年数よりも物理的ないし客観的に短くなるという事由が現に発生しているような場合に限って認める趣旨によるものと解するのが相当である。
本件建物についてみると、請求人が耐用年数の短縮を求める理由としている「賃貸借期間(10年)満了に伴う本件建物の取壊し」は、本件建物自体の構造等に変化が生じて物理的、客観的に使用可能期間が短くなったという事由ではなく、取壊しの行われることが将来予定されているという本件契約当事者双方の取決めを理由とするものである。
当審判所の調査によっても、本件建物の構造その他からみて、本件建物について、所得税法施行令第130条第1項に掲げられている耐用年数の短縮を認めなければならない特別な事由があるとも認められないので、請求人の主張は採用することができない。
要旨
請求人は、自宅内に造作した茶室の移築費用は、本件譲渡に際して支出した費用であるから、所得税法第33条第3項に規定する譲渡費用に該当する旨主張する。
しかしながら、譲渡費用については、法令上特段の定めはないが、譲渡所得の課税が譲渡資産の値上がりによる増加益について譲渡行為によって実現したときに所得として課税するものであることから、譲渡のために直接要した費用をいうものと解され、このほか、資産の譲渡価額を増加させるため譲渡に際して支出した費用も含まれると解されるところ、本件茶室は本件譲渡の対象資産ではないから、本件茶室の移築費用は本件譲渡に直接要した費用には該当せず、また、本件移築費用は、本件茶室の保存のため、新住居に設置するための一連の工事費であり、本件譲渡のための支出ではなく、このことによって本件譲渡資産の譲渡価額に影響するものでもないから、本件譲渡に係る資産の譲渡価額を増加させる費用にも該当しない。
ポイント
本事例は、請求人が行った社債の換金手続(redemption)は、目論見書の定めに基づいて行われたものであり、目論見書の定めから、社債の譲渡に当たらず、社債の償還と認めるのが相当であるとして、当該換金手続(redemption)による所得は、雑所得に該当すると判断したものである。
要旨
請求人は、保有する社債(本件社債)の換金手続(redemption)に係る請求人の申込みに基づく取引(本件取引)は、満期償還に伴う償還手続に従ってされたものではなく、請求人が、当該社債の発行会社のホームページに公表されている買入価格を基に売却の意思決定を行い、その旨の請求人の申出に同社が同意して行われたものであるとみることができるから、本件取引は、同社による社債の任意買入れにほかならず、租税特別措置法(平成22年法律第6号による改正前のもの)第37条の15《公社債等の譲渡等による所得の課税の特例》第1項第1号の社債の譲渡に当たる旨主張する。
しかしながら、本件取引は、本件社債の目論見書(本件目論見書)の定めに基づいて行われた社債の「redemption」であると認められるところ、本件目論見書の定めから、本件取引である「redemption」は社債の償還と認めるのが相当であり、また、本件目論見書には、社債保有者による譲渡に当たる場合を想定していたと認められる記載があるものの、本件取引がこの場合における取引ではないことが明らかであるから、社債の譲渡には当たらない。
参照条文等
所得税法第35条第1項 租税特別措置法(平成22年法律第6号による改正前のもの)第37条の15第1項第1号
請求人が請求人の青色事業専従者を共済契約者とする小規模企業共済掛金を支払っていたとしても、請求人の小規模企業共済等掛金控除の対象とはならないとした事例
裁決事例集 第65集 268頁
要旨
請求人は、所得税法第75条《小規模企業共済等掛金控除》第1項の規定は「居住者が、各年において、小規模企業共済等掛金を支払った場合には、その支払った金額を、その者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する。」としていることから、請求人が支払っている以上、請求人の青色事業専従者の小規模企業共済掛金も同法の規定に該当し、請求人の所得控除の対象とすることができる旨主張する。
しかしながら、同法の規定は、居住者が、各年において、自己が契約した小規模企業共済法の共済契約に基づく掛金を支払った場合に、その支払った金額について所得控除を認めるものであり、請求人が請求人の青色事業専従者を共済契約者とする小規模企業共済掛金を支払っていたとしても請求人の小規模企業共済等掛金控除の対象とはならない。
請求人と請求人の夫が2分の1ずつ共有する店舗をゲーム場とし、請求人の夫がB会社とゲーム場の運営に関する契約を締結してそのゲーム場から生じた所得は、請求人の夫に帰属する事業所得であるとした事例
裁決事例集 第43集 33頁
要旨
請求人と請求人の夫A男が2分の1ずつ共有する店舗をゲーム場とし、A男がB社と本件ゲーム場の運営に関する契約を締結して本件ゲーム場から生じた所得について、[1]本件契約によれば、A男は本件ゲーム場経営に対する危険負担及び責任負担のあることが認められること、[2]A男は、本件ゲーム場に係る収益享受の権利及び費用負担の責任のあることが認められること等から、本件ゲーム場はA男とB社とが共同経営していたものと認めるのが相当であるから、本件ゲーム場に係る所得は、不動産所得ではなく、事業所得に該当するというべきである。更に、A男は、本件ゲーム場設置のゲーム機の選定、変更につき承認を与えるなど本件ゲーム場の経営に実質的に関与している等の事実からすると、A男については、本件ゲーム場の事業主と認めるのが相当であるのに対し、請求人は、本件契約に基づき分配を受けた収入金及び経費の支出等の記録並びに本件ゲーム場内に設置されている公衆電話に係る収入金の回収を行っているにすぎず、本件ゲーム場の経営方針の決定に支配的影響力を有しているとは認められないから本件ゲーム場の事業主ではなく、A男の経営する事業の従事者とみるのが相当であり、したがって、本件ゲーム場に係る所得は、A男に帰属するものというべきである。
要旨
請求人は、請求人と雇用関係がないA社から付与された本件新株予約権の行使に係る本件権利行使益は、役務その他の労務の対価ではなく、一時的、偶発的な所得であるから、一時所得に該当する旨主張する。
しかしながら、本件新株予約権の付与に当たって、具体的な役務の提供が明示的に合意されていたとはいえないとしても、請求人は、A社に対する社外協力者として同社の必要に応じて協力し、仮に、将来転職する場合には同社への入社を優先するなどの義務を負う社外協力者としての地位にあり、同社は、このような義務を伴う地位に就いていることを継続することの見返りとして本件各新株予約権を付与ないし割り当てたものということができる。
そして、本件新株予約権については、その権利を譲渡し又は処分等することはできないものとされており、請求人は、これを行使することによって、初めて経済的利益を受けることができるものとされているのであるから、A社は、請求人に対し、本件新株予約権に係る付与契約により本件新株予約権を付与し、その約定に従って所定の権利行使価格である株式を取得させたことによって、本件権利行使益を得させたものということができる。
したがって、本件権利行使益は、A社から請求人に与えられた給付に当たるものというべきで、本件各新株予約権を行使して得た本件権利行使益は、労務その他の役務の提供の対価としての性質を有するというべきである。
以上によると、本件権利行使益は、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得のいずれにも該当せず、また、労務その他の役務の対価として供与されたものであるから、一時所得には該当せず、雑所得に該当する。
請求人に支払われた弁護士費用賠償金に係る遅延損害金は、元勤務先の不法行為によって、請求人が支出を余儀なくされる弁護士費用という財産的損害を補てんするための賠償金であるから、非課税所得であるとした事例
裁決事例集 第79集
要旨
原処分庁は、弁護士費用賠償金に係る遅延損害金は、請求人が弁護士費用を支払わなければ得られたであろう利益(利息に相当する額)を補てんしているといえるから、所得(雑所得)を構成する旨主張する。
しかしながら、弁護士費用賠償金及び弁護士費用賠償金に係る遅延損害金は、判決において、請求人の元勤務先会社の不法行為と相当因果関係のある損害と認められて同社の負担とされ、同社に対し請求人への支払を命じられ、請求人は、その支払を受けたことにより、担税力を増加させる経済的利益を得たといえ、請求人の所得を構成するが、請求人は、同社の不法行為により、弁護士に訴訟の提起とその追行を委任することを余儀なくされたことによって、当該訴訟に係る弁護士費用の支払をしたことが認められる。
そうすると、弁護士費用賠償金及び弁護士費用賠償金に係る遅延損害金は、同社の不法行為によって、請求人が支出を余儀なくされる弁護士費用という財産的損害を補てんするための賠償金であるから、所得税法施行令第30条第2号に規定する非課税所得であると認められる。
参照条文等
所得税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)第9条第1項第16号 所得税法施行令(平成22年政令第50号による改正前のもの)第30条第1号及び第2号
要旨
請求人は、請求人の夫はピアノ調律師としての事業を行っているが、請求人の司法書士業務にも、年を通じて6か月以上従事しているから、青色事業専従者に該当すると主張するが、請求人の夫は所得税法施行令第165条第2項第2号に規定する「他に職業を有する者」に該当し、しかも、自己の事業に年間240日以上従事している等の事実が認められるから、請求人の事業に専ら従事する者には該当しない。
請求人の子会社が複数の外国法人と締結した契約の当事者が、当該子会社ではなく請求人であるとはいえないとした事例( 平成25年4月1日から平成26年3月31日までの事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、 平成25年4月1日から平成26年3月31日までの課税事業年度の復興特別法人税の更正処分、 平成25年6月から同年12月までの各月分及び平成26年2月から同年8月までの各月分の源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の各納税告知処分並びに不納付加算税の各賦課決定処分・ 棄却、 全部取消し)
裁決事例集 第104集
ポイント
本事例は、請求人の子会社が複数の外国法人と締結した契約に係る契約書はいわゆる処分証書に該当し、作成の真正に争いがなく他に特段の事情も認められないことからすれば、契約当事者を請求人であるとすることはできないとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人の子会社(本件子会社)が複数の外国法人と締結した商材の販売(本件事業)に係る契約(本件契約)について、①請求人と本件子会社との間で締結した本件子会社の名義を借用する契約(本件許諾契約)に基づき、請求人が本件子会社の名義を使用して本件事業を行い、その収益を請求人に帰属させていること及び②請求人と本件子会社との間で締結された業務委託契約(本件業務委託契約)に基づき、本件契約に定められた本件子会社の業務を請求人の従業員が実際に行っていること等を理由として、本件子会社は名目上の契約者にすぎず、請求人が実質的な契約当事者である旨主張する。
しかしながら、本件契約に係る契約書は、いわゆる処分証書に該当し、他に特段の事情がない限り、作成者によって記載どおりの行為がなされたものと認めるべきであるところ、本件子会社は事業を営む実体のある法人であり、その法人格を否認する特段の事情は認められず、本件契約の当事者が本件子会社であることを他の契約当事者が合意した上で本件契約を締結したことが認められ、あえて契約当事者を請求人であるとする特段の事情も認められない。また、本件許諾契約及び本件業務委託契約は、本件契約とは当事者が異なる別個の契約であり、それぞれの契約の締結には合理的な理由があると認められるから、これらの契約の存在を度外視して、本件契約と本件許諾契約及び本件業務委託契約をいわば不可分一体のものとみて、本件契約の当事者が請求人であるとすることはできない。
参考判決・裁決
最高裁昭和45年11月26日第一小法廷判決(裁Web) 最高裁昭和32年10月31日第一小法廷判決(民集11巻10号1779頁)
請求人の本件不動産の譲渡による所得は、営利を目的として継続的に行ったものと認めるのが相当であるから、譲渡所得に該当せず、かつ、その売買は、社会通念上事業と認めるに足りないので、事業所得ではなく雑所得に該当するとした事例
裁決事例集 第37集 48頁
要旨
請求人は、本件不動産は不動産賃貸業の用に供していたものであり、また、本件不動産を譲渡したのは、より条件の良い賃貸物件の取得及びローンの負担の軽減を図るためであり、その結果として売買回数が多くなり、所有期間が短くなったにすぎず、したがって、本件不動産の売買は、売買による営利を目的としたものではなく、賃貸経営を目的としたものであるから、本件不動産の譲渡による所得は譲渡所得とすべきであると主張するが、請求人は、[1]いわゆるワンルームマンションを主とする不動産の購入及び売却をして売買利益を得ており、また、受領した売却代金の大部分と多額の借入金で新規の不動産を購入するなどして、相当数の不動産の売買を繰り返していること、[2]売却した物件の所有期間は極めて短期間であること等から、営利を目的として継続的に本件不動産の譲渡を行ったものと認めるのが相当であるから、本件不動産の譲渡による所得は、所得税法第33条第2項第1号の規定により譲渡所得に該当せず、事業所得又は雑所得に該当するところ、請求人は、不動産の売買取引のあっせん及び仲介をしたことがなく、その取引の仲介を不動産業者に依頼していること、不動産取引のための雇人及び物的施設も有していないこと、別会社の代表取締役の地位にあることを総合勘案すると、請求人が行った不動産の売買は、社会通念上事業と認めるに足りないので、雑所得に該当すると解するのが相当である。
請求人の絵画の売買に係る業務については、人的、物的設備が備わっておらず、請求人が本件絵画業務に費やす精神的、肉体的労力は低く、自己の危険と計算における企画遂行性にも乏しいことが認められ、また、その営利性も極めて乏しいことから、本件絵画業務は事業所得を生ずべき事業としての社会的客観性を備えたものには該当しないとした事例
裁決事例集 第55集 53頁
要旨
請求人は、請求人の絵画の売買に係る業務が開業以来赤字であるのは、事業戦略上の判断を誤ったため損失を招いただけであり、特定の画廊を通じて業務を行っているのはその方が効率的であったからであること等から、本件絵画業務は事業所得を生ずべき事業に該当する旨主張する。
しかしながら、本件絵画業務についてみると、[1]絵画を販売、展示するための店舗を有していないこと、[2]購入した絵画は美術品ロッカーに保管されたままになっていること、[3]絵画業務の事務について専任の従業員を置かず、請求人の経営する法人の役員に行わせ、しかもその対価も支払っていないことから、本件絵画業務には、人的、物的設備が備わっているとは認められず、本件絵画業務に関する広告宣伝活動を一切していないことや画廊業者の同業者団体に加入していないこと及び古物営業法の営業許可を得ていないことから、外形的にも事業としての実態が認められない。
また、絵画の購入から売却まですべて特定の画廊に任せて取引をしており、請求人が本件絵画業務において、精神的、肉体的労力をほとんど費やしていないものと認められ、自己の危険と計算において企画遂行しているとは認められない。
さらに、本件絵画業務は、業務の開始当初の高額な絵画の購入に伴う借入金の利息等の負担が大きいにもかかわらず、[1]絵画の売買回数が極めて少なく、その売買点数も少ないこと、[2]平成4年以降の絵画の購入価額は少額のものがほとんどで、その売買差益もきん少なものであること、[3]業務を開始してから毎年損失となっていることなどから、相当期間継続して安定した収益を得ているとは認められず、その営利性も極めて乏しい。
以上のことから、本件絵画業務は事業所得を生ずべき事業として社会的客観性を備えたものには該当しないと判断するのが相当である。
請求人は、本件先物取引は取引員に欺もうされた取引で無効あるいは取り消し得る取引であるとしているが、請求人の自己の意思と判断に基づく取引であるので、本件先物取引から生じた所得は請求人に帰属するとした事例
裁決事例集 第54集 115頁
要旨
請求人は、本件先物取引は取引員に欺もうされて行ったものであり、無効あるいは取り消し得る取引であるので、本件先物取引から生じた所得は請求人に帰属しない旨主張する。
しかしながら、[1]請求人が先物取引会社に対して差し入れている書面、[2]先物取引会社が請求人に対して取引成立の都度送付している売買報告書等、[3]請求人は先物取引会社の求めに応じて委託証拠金等の金員を支払っていること及び[4]失物取引会社は請求人から請求があった都度委託証拠金や帳尻金を支払っていることから、本件先物取引は、請求人が自己の意思と判断の下で先物取引会社に委託して行ったものと認められ、本件先物取引から生じた所得は請求人に帰属すると判断するのが相当である。
請求人らが土地の譲渡に際して支払ったコンサルタント料等は、譲渡所得の計算上譲渡費用に当たらないとした事例(平成23年分の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第95集
要旨
請求人らは、共同住宅(本件建物)の敷地の用に供していた土地(本件土地)を譲渡した際に、親族が主宰する不動産仲介業等を営む法人(本件法人)にコンサルタント料として支払った金員(本件金員)は、当該法人が、①本件土地の取得に反対していた請求人らの親族の説得、②本件土地を譲渡するために取り壊した本件建物の長期にわたる改良行為、③トラブルが予想される賃借人への対応等、④請求人らの本件土地の譲渡先選定に関する助言等の諸行為に係る対価であるため、本件土地の譲渡に係る譲渡所得の取得費又は譲渡費用に該当する旨主張する。
しかしながら、①本件土地の取得のための親族の説得行為は、その取得自体に必要なものであったということはできず、取得のための付随費用ともいえないから本件土地の取得費には該当しない。また、②請求人主張の本件法人が行ったとする本件建物の各種改良行為は一般の修善又は維持管理行為と認められること、③本件建物の賃借人への各種対応は、本件土地を譲渡した6年以上前のことであること、④譲渡先選定に関する本件法人の助言によって、本件土地の譲渡先が決定されたものではないことなどからすると、このような各行為に係る対価は、本件土地の譲渡を実現するために必要な費用とは認められない。よって、本件金員は本件土地の譲渡費用に該当しない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成18年4月20日第一小法廷判決(裁Web)
請求人らが限定承認により相続した不動産を債務弁済のために譲渡したところ、原処分庁が所得税法第59条第1項の規定を適用して被相続人についてみなし譲渡所得の課税を行った処分が適法なものとされた事例
裁決事例集 第58集 97頁
要旨
請求人らは、限定承認により相続した不動産を債務弁済のために譲渡したところ、原処分庁は、所得税法第59条第1項の規定を適用し、被相続人についてみなし譲渡所得の課税を行った。
請求人らは、本件においては、本件譲渡に係る譲渡所得課税のみを行うこととするほうが本件共同相続人の利益になることから、相続人の保護という限定承認の趣旨に立ち返って本件法規定を解釈し、被相続人に係るみなし譲渡所得課税は行われるべきではない旨主張する。
しかしながら、本件法規定は、被相続人の所有期間中における資産の値上がり益を被相続人の所得として課税し、これに係る所得税額を債務として清算することにより、限定承認をした相続人が相続財産を超えて負担することがないように規定されているものであり、本件法規定にいう限定承認の意義については民法の規定と同義に解することが相当であって、請求人らは限定承認によって本件不動産を取得しているのであるから、被相続人についてみなし譲渡所得課税が行われたのである。
なお、請求人らは、本件法規定が適用される結果、適用されない場合よりも納付すべき税額の点で不利益となり、限定承認により保護される相続人の利益が保護されないこととなるとも主張するが、限定承認の制度は、被相続人の債務等の額自体を縮減することによってではなく、相続によって得た財産の限度において当該債務等の弁済の責任を負わせることにより、相続人の保護を図ろうとするものであって、納付すべき税額の多寡は限定承認の機能とは別個のものであるから、請求人らの主張には理由がない。
次に、請求人らは、仮に本件法規定が文言のとおり適用されるとしても、本件譲渡は、相続債権者への公告及び催告もせず、また、民法が定める換価手続である競売にもよらずに譲渡している上、譲渡代金のうち債務弁済後の残額を自己のために消費しているので、民法第921条第3項に規定する「私にこれを消費」に該当し、単純承認したものと見なされるから本件法規定を適用することはできない旨主張する。
しかしながら、競売によらずに任意売却等したとしても、これらは単に手続違反にとどまり、限定承認の効力には影響を及ぼさないものと解されており、また、本件譲渡は債務弁済のために行った正当なものであって、債務弁済後の残額を共同相続人間で分配したものであるから、「私にこれを消費」したことには該当しないと解され、請求人らの主張は採用することができない。
請求人(弁護士)が妻(税理士)に支払った税理士報酬の額は必要経費に算入されず、請求人の必要経費の額は、妻がその税理士報酬を得るために要した費用の額となると判断された事例
裁決事例集 第59集 75頁
要旨
所得税法第56条の規定により、請求人が営む弁護士業から請求人と生計を一にする親族である税理士業を営む妻に支払われた税理士報酬の額は請求人の事業所得の計算上必要経費に算入されず、請求人の事業所得の計算上必要経費に算入される金額は、妻が請求人から本件税理士報酬を得るために要した費用の額となる。
なお、本件の場合、その費用の額が明らかでないが、その金額は、妻の事業所得の必要経費の額に、その総収入金額に対する本件税理士報酬の額の占める割合を乗じて算出した金額を請求人の弁護士業に係る必要経費と認定することが相当である。
請求人(眼科医院)の妻はコンタクトレンズ等の販売に係る事業の収益を事業所得として所得税の確定申告をしているが、その収益は請求人に帰属すると認定された事例
裁決事例集 第59集 67頁
要旨
請求人は、医療法及び薬事法の規制により、請求人の営む眼科医院とコンタクトレンズ等の販売事業とを分離し、その経営者及び申告名義を請求人の妻としたのであるから、租税回避を目的として制定された所得税法12条の適用はなく、本件販売事業の収益は請求人の妻に帰属する旨主張する。
しかしながら、本件販売事業は、眼科医院と明確に分離されているとは認められず、請求人がその経営方針の決定等について支配的影響力を有していること、また、所得税法第12条は、その基礎となる所得の帰属について表見的な他の法律上の形式又は効果にかかわらず、実質的な経済効果に着目し、その効果を現実に享受する者を税法上の所得の帰属者として課税しようとするものであり、他の法律上無効又は取り消し得べき行為であっても、その行為に伴って経済効果が発生している場合には、その効果を現実に享受する者について課税することは何ら妨げられないと解すべきであるから、本件販売事業の収益は、請求人に帰属する。
要旨
本件は、第三者の借入金について、担保として提供した土地を譲渡し、当該借入金の返済に充てたにもかかわらず、当該第三者が所在不明で無財産のため求債権を行使することができなかったものであるが、これは、保証債務を履行し求債権を行使できなかったものとして、その行使することができなかった金額を譲渡所得の金額の計算上なかったものとすることが相当である。
譲渡担保として提供していた土地の受戻しは、資産の取得に該当しないので、その土地を受け戻すために要した和解の費用及び弁護士費用は、土地の取得費に当たらないとした事例
裁決事例集 第32集 67頁
要旨
一般に、債務者が自己所有の物件を譲渡担保に供した場合には、債権者は当該物件の担保的価値を把握するにとどまり、同物件についてその他の権能は引き続き譲渡担保設定者が保有しているのであるから、譲渡担保権の実行により目的物件が確定的に債権者に帰属する前に設定者が同物件の受戻しをしたときは、これをもって所得税法にいう資産の取得があったということはできないし、それゆえ、その受戻しをするために設定者が支払った金員は、たとえそれが何らかの事情により本来弁済すべき被担保債務額を超えて支払うことを余儀なくされたものであっても、これを資産の取得に要した費用とみることはできない。
本件の和解に基づき支払った金員及び弁護士に支払った金員は、いずれも請求人において譲渡担保に供していた土地を自己に受け戻すために要した費用であることが明らかであるから、所得税法第38条第1項所定の資産の取得に要した金額に当たらない。
要旨
所得税法第33条第3項に規定する譲渡取得の金額の計上総収入金額から控除すべき「資産の譲渡に要した費用」とは、譲渡を実現するため直接必要な経費(測量費、仲介手数料等)を指すものと解するのが相当であるところ、請求人が資産の譲渡に要した費用に当たると主張する請求人が支払った金員についてみると、金額的な区分は必ずしも明確ではないが、元本である借入金に対して本来支払うべき支払利息及び延滞損害金部分と本件土地等に係る抵当権の抹消手続をスムーズに行うための支出金部分を合わせたものということができるが、このうち、利息及び延滞損害金部分は、本件譲渡の有無にかかわりなく、借入れの際の約定に基づいて請求人が支払の義務を負うものであり、借入金の使途に応じて、その使途に係る業務の所得計算上必要経費に算入するなどの措置を講ずれば足りるのであって、その支払が本件譲渡を機になされたとしても、これを本件譲渡に係る譲渡費用とみる余地はなく、また、抵当権の抹消手続をスムーズに行うための支出金部分についても、抵当権を抹消することが本件譲渡の前提として事実上必要であり、これを促進するために支払われたものであるとしても、このことをもって、本件譲渡のために直接必要な経費に当たると解することはできない。
要旨
請求人が取得した不動産については、その取得及び維持管理に関し配偶者の寄与、貢献があったとしても、当該不動産は名実ともに請求人の取得した財産であると認められているので、同人の特有財産であったというほかはない。
したがって、請求人が離婚に伴う財産分与の調停に基づく債務を履行するために、本件不動産の所有権を配偶者に移転したことは所得税法第33条第1項に規定する資産の譲渡に当たるとした原処分は相当である。
要旨
請求人は、貸店舗併用住宅の譲渡をし、その譲渡について特定の事業用資産の買換えの特例と居住用財産を譲渡した場合の特別控除の特例の適用を併せて受ける場合に、その貸店舗の賃借人を立ち退かせるために支払った立退料は、建物全体の立退きのために支払ったものであるから、譲渡資産のうち事業用部分(貸店舗部分)と居住用部分の双方に配賦すべきであると主張するが、所得税法上資産を譲渡するための立退料は譲渡費用に該当するものの、それが事業用資産に係るものか、他の資産に係るものかについてはその支払の基因となった資産が事業の用に供されているかどうかによって判定し、仮に支払の間接的効果が他に及ぶとしても、その間接的効果は判定上格別の考慮を要せず、本件立退料が不動産貸付業の用に供されている資産について支払われたものであるから、全額事業用部分のみに配賦すべきものである。
要旨
建物等の存する土地をその建物等と共に取得した場合において、その取得後おおむね1年以内に当該建物の取壊しに着手するなど、その取得が当初からその建物等を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるときは、当該建物等の取得に要した金額及び取壊しに要した費用の額の合計額は、当該土地の取得費に算入するものと解されているところ、請求人は昭和56年8月18日に本件土地建物を取得し、昭和57年6月21日付で9階建のビルの建築確認申請書を提出し、昭和57年9月27日に本件建物の賃貸借契約の解除を行って立退料を支払っており、建築確認申請書及び同付属書類によれば、本件土地の敷地を含めた土地全部が同ビルの建設予定敷地とされていること等からみて、請求人の本件土地建物の取得は、当初から本件建物を取り壊した上、本件土地をビルの敷地に供する目的であったといわざるを得ないから、本件立退料相当額は、不動産所得の必要経費ではなく、本件土地の取得費に算入すべきである。
要旨
土地の賃貸契約に係る紛争について和解が成立し、当該土地の明渡しを受けるために支払った金額は、損害賠償金ではなく借地権の買戻しと認められ、また、訴訟に要した弁護士費用もその価額に加算すべき性質のもので、いずれも所得税法上の資産の取得費であり、不動産所得の金額の計算上控除される必要経費とは認められない。
質問検査に至る前段階として必要な情報収集の方法は、社会通念上相当な限度にとどまっていると認められるので、合理的な裁量の範囲を逸脱するような違法は認められないとした事例
裁決事例集 第78集 257頁
要旨
請求人は、原処分に係る調査を担当した職員が身分を明らかにせず客になりすまし請求人の承諾を得ることなく従業員に対して事業内容等を質問した行為は、所得税法第234条第1項及び同法第236条に違反し違法である旨主張する。
しかしながら、税務官署として更正・決定の場合のみならず、それ以外の場合にあっても、一定の処分をするか否かを認定判断する必要がある場合には、税務職員にはそのために必要な範囲内で質問検査によることなく職権による調査をすることもできると解されるところ、その具体的な手法は、その調査の必要性と相手方の私的利益との比較衡量において、質問検査に至らない範囲で、かつ、社会通念上相当な限度にとどまる限り、調査を担当する税務職員の合理的な裁量に任されているというべきであり、本件においては、調査担当職員は、請求人の経営する店舗に臨場する日の前に、客として同店舗に訪れ、従業員との話の中から1日の客数や従業員数等の業務様態についての情報等を収集したものであるが、これは調査担当職員が、請求人の正しい所得を把握するため、質問検査に至る前段階として、必要な情報を収集したというべきものであり、その情報収集の方法は、社会通念上相当な限度にとどまっていると認められ、これについて合理的な裁量の範囲を逸脱するような違法は認められないから、調査が違法であるとの請求人主張は採用できないというべきである。
農地の一部を宅地に造成し分譲した際に取り付けた公衆用道路の取得費(道路用地の取得費及び工事費)は、分譲宅地に係る譲渡所得の金額の計算上、総収入金額から控除する取得費に該当するとした事例
裁決事例集 第39集 81頁
要旨
一団地の宅地を造成して分譲する場合、団地経営に必要な道路等は、現実には地方公共団体に容易に採納されず、分譲したものが名目的に所有せざるを得ないことが多く見受けられる。このような場合、その道路等の経済的価値は、すべて分譲された土地の効用に吸収されているとみることができ、その費用は、その道路等が地方公共団体に寄付されたと同様に、分譲宅地の取得費に算入すべきであると解される。
本件道路は、本件分譲宅地に不可欠かつ必要最小限のものであり、公衆用道路として一般通行の用に供されるものであって、これを譲渡し、その取得費を回収することが期待できない点を考慮すると、その経済的価値は、分譲宅地の効用に吸収されたというべきであり、地方公共団体に寄付したと同様に、本件道路の取得費は、分譲宅地の取得費に算入するのが相当である。
また、本件道路は、分譲宅地の価値を高めていると同時に、残地たる農地の価値をも高めているから、本件道路の取得費は、分譲宅地及び残地の面積比に応じてあん分すべきであるとの原処分庁の主張については、本件残地は、宅地転用の予定のない農地であり、現に耕作されていること、残地と公道との間には農道があること等を考慮すると、本件道路の設置により本件残地の価値が高められたとしても、それは本件宅地造成により付随的にもたらされたものにすぎす、その取得費を本件残地に配賦すべき理由に乏しく、採用することはできない。
要旨
請求人は本件交換により取得した土地は、農地として耕作する目的で取得したものであり、その取得後、公共事業施行者により買収されたことと本件交換とは別個の取引であるから、本件取得土地は交換直前の用途と同一の用途に供したことになると主張するが、本件交換は、本件取得土地が公共事業施行者により買収されることを承知の上で行われたものと認められ、たとえ交換後における現況が田であったとしても、それは公共事業施行者による買収があるまでの間、一時的に田であったにすぎず、交換直前の用途と同一の用途に供したとは認められないから、所得税法第58条第1項に規定する固定資産の交換の特例の適用要件を欠き、同条の適用はないとするのが相当である。
要旨
請求人は、土地の買収金額には、請求人に支払義務のない農地転用金が含まれており、農地転用金相当額は実質的には土地の売却収入にはならないから、譲渡所得の計算上、総収入金額から除外すべきであると主張するが、[1]農地転用金の支払義務は、請求人にあると認められること、[2]土地の買収金額に農地転用金が含まれて支払われている事実が認められないこと、[3]譲渡所得の総収入金額は、別段の定めがあるものを除き収入すべき金額によると規定されていることから、譲渡所得の計算上、農地転用金を土地の売却収入から除外する理由がなく、本件土地の譲渡により現実に収受した売買代金43,352,100円を譲渡所得の収入金額であると判断して行った、更正をすべき理由がない旨の通知処分は適法である。
要旨
原処分庁は、請求人の破産手続によって、役員退職年金に係る債権が債権回収会社へ債権譲渡されたとしても、当該年金に係る所得は請求人に帰属する旨主張する。
しかしながら、本件退職年金における債権は、差押禁止財産に該当せず、請求人における破産財団に属する債権であるところ、本件退職年金について定めた内規には、本件退職年金の譲渡を禁止する特約等はなく、管理処分権を有する破産管財人から債権回収会社へ適法に譲渡されていること、また、本件退職年金は役員としての功労に対する報賞の性格を有するものであって、労働の対償として支払われるものではないから、労働基準法第11条に規定する「賃金」には該当せず、同法第24条第1項の賃金等の労働者への直接払の義務規定も適用されないことから、請求人の本件退職年金に係る債権は、本件譲渡により失ったものと解され、当該年金に係る所得は全額が請求人に帰属しないから、原処分の一部は取り消されるべきである。
要旨
国家公務員共済組合法(以下「共済組合法」という。)による年金の受給権は、同法第41条第1項によりその権利を有する者が、年金受給権の確認を求める請求をし、その決定を経ることによって確定され、給与法の改訂がなされた場合の新給与法による年金増額改訂は、同法第73条第3項により当初決定額について所要の改定を行うことにより確定されるものである。
また、年金の支給時期は、同法第73条第4項によれば、毎年3月、6月、9月、12月にそれぞれ前月までの分を支給するものと定められている。そして、年金の収入金額の「収入すべき時期」は、所得税法第36条第1項の規定により収入すべき権利が確定した時と解すべきであって、本件においては、その年金の支給の基礎となる共済組合法により定められた支給日がそれに当たると解するのが相当である。したがって、たとえ増額改訂通知及び年金振込通知が翌年になされたとしても、請求人の退職年金について、支給対象月分の支給額が共済組合法に定める支給日に給与所得の収入すべき金額として確定するとした原処分は相当である。
退職手当金の一部を一時金で受領せず従前の勤務先が営む年金制度の原資に振り替えて受給する年金は公的年金等に該当し、振り替えた原資部分の金額については、雑所得の金額の計算上控除できないとした事例
裁決事例集 第53集 193頁
要旨
退職手当金の一部を一時金で受給せず、従前の勤務先が営む年金制度の原資に振り替えて受給する本件年金のうち、原資部分の金額は退職時に一時に受給したものではないので、所得税法第30条(退職所得)に規定する退職手当等の収入金額に該当せず、本件年金は、退職手当金相当額の一部を原資として、請求人の従前の勤務先の退職積立金規程に基づいて支給されるものであるから、所得税法第35条(雑所得)第3項第2号に規定する「過去の勤務に基づき使用者であった者から支給される年金」であり、同条第2項に規定する公的年金等に該当する。さらに、所得税基本通達35-5に、受給者が年金の原資をきょ出している場合の課税対象額は、当該きょ出額相当額を控除した後の金額とされているが、これは受給者が年金の原資をきょ出している場合の定めであるところ、退職手当金の年金原資への振替えは「きょ出」には該当しないことから、雑所得の金額の計算上原資部分の金額を控除することはできない。
適格退職年金契約の解約により生命保険会社から支払われた一時金は、請求人の退職により支給された一時金ではないから、所得税法第34条並びに同法施行令第183条第2項及び第3項第3号の規定により一時所得に当たるとされた事例
裁決事例集 第68集 71頁
要旨
請求人は、生命保険会社から支払われた金員は、請求人の退職により支払われたもので退職所得に該当し、一時所得には該当しない旨主張する。
しかしながら、当該金員は、請求人が勤務するF社の適格退職年金契約の解約請求に伴い、生命保険会社から請求人に支払われた一時金で、適格退職年金契約の解約により支払われたものと認めるのが相当であり、請求人の退職により支給された一時金ではないから、生命保険会社から支払われた金員は、所得税法第34条並びに同法施行令第183条第2項及び第3項第3号の規定により一時所得に該当する。
要旨
本件家屋の明渡しに際し受領した金員は、請求人が適法な賃借人としてではない居住者として受領したものであるから、その金員は立退料であり、これは営利を目的とする継続的行為から生じたものでなく一時的性質のもので、しかも労務その他の役務の対価たる性質も有しないものであるから、一時所得に係る収入金額に該当する。
要旨
相続により取得した資産は、所得税法第60条第1項の規定により相続人が引き続き所有していたものとみなされるから、当該資産について譲渡所得の金額の計算上控除される取得費は、被相続人がその資産を取得したときの購入代金及び取得に要した費用等の合計額である。
したがって、遺産分割に関する調停の結果、相続財産の分割に代え、他の共同相続人に対し債務を負担することによって相続財産を取得する代償分割の場合においても、その取得資産は相続によって取得したものにほかならないから、当該資産の譲渡による譲渡所得の金額の計算上、他の共同相続人に対して負担した債務をその資産の取得費に算入すべきであるとする請求人の主張には理由がない。
要旨
遺留分減殺請求に基づく遺留分権利者に対する価額弁償が遺産の譲渡代金でされた場合、受遺者は減殺の結果生じた現物の返還業務を免れ、遺留分の減殺請求の目的物に係る受遺者の所有権は遺留分権利者に移転しなかったことになると解されているから、譲渡所得があるとして遺留分権利者に対して所得税を課税した原処分は違法であり、取消しを免れない。
要旨
請求人は、本件訴訟に係る判決の確定に伴い受領した本件各還付加算金は、不当利得に対する損害賠償金的性格を有し、本件各過納金と一体不可分のものであること、また、本件訴訟費用等及び本件借入金利息等は投下資本に該当することは明らかであり、原資の維持に必要な部分として、所得を構成しないことから、本件訴訟費用等は、本件各還付加算金を得るために直接要した費用として必要経費に算入できる旨主張する。
しかしながら、本件訴訟は本件各還付加算金を得るために提起されたものではなく、本件訴訟の結果として本件各還付加算金が発生したにすぎないことから、本件各還付加算金が本件各過納金と一体不可分のものとはいえず、また、還付加算金は、過納金の発生の原因にかかわらず支払われるものであって、過納金に付される一種の利子であることから、損害賠償の性格を有していない。
また、本件において、還付加算金を得るための行為は、請求人にとって業務とはいえず、所得を生ずべき業務について生じた費用ともいえないから、本件訴訟費用等は雑所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。
要旨
還付加算金は、過誤納の原因となった賦課徴収手続のかし等それ自体を原因として、その賠償として支払うという性質のものではなく、納税者を当該過誤納がなかったものと同じ経済的立場におこうとする配慮及び納税者が国税を滞納した場合に延滞税が課せられることとのバランスを考慮して支払われるものと解するのが相当であり、これを所得税法第9条第1項第21号に規定する非課税所得に該当しないとして行った原処分は相当である。
要旨
配偶者分べん費が、健康保険法第50条第1項の規定に基づき支給される分べん費と同一の法的性質を有することは明らかであるところ、その分べん費については、健康保険法の立法時の国会の審議において、その性質は分べんに対する費用であると説明されており、また、その後の数次にわたる法律改正の都度その額が増額された理由は当時の国会審議の過程からみても明らかであるとおり出産に係る医療機関への支出額が年々の社会的経済的生活環境の変化に伴って増加していることを考慮してなされたものであるところからみても、分べん費は専ら出産に伴って医療機関等に支出される費用を補てんするために支給されるものであると認められるから、これと同じ性質を有する配偶者分べん費も同様と認められ、医療費控除の対象となる医療費を補てんする保険金、損害賠償金その他これらに類するものに該当する。
配当所得の金額の計算上収入金額から控除すべき負債利子については、名義書換えをしていない株式に係る負債利子であっても、当該負債により取得した株式以外の配当収入金額からも控除することができるとした事例
裁決事例集 第47集 97頁
要旨
所得税法第24条第2項は、「株式その他配当所得を生ずべき元本を取得するために要した負債の利子(事業所得又は雑所得の基因となった有価証券を取得するために要した負債の利子を除く。)でその年中に支払うものがある場合は、その元本を有していた期間に対応する部分の金額の合計額を控除する」旨規定している。
配当等の収入金額から控除すべき負債利子については、その負債によって取得した株式の配当収入金額からだけでなく、他の株式の配当収入金額からも控除できると解され、当該株式の名義書換えをしているか否かではなく、当該株式を所有しているか否かで判断するのが相当である。
したがって、本件株式を取得するために要した負債の利子は、その名義書換えの有無にかかわらず、他の株式の配当収入金額から控除することができる。
要旨
請求人が株主たる地位に基づかないで増資新株の割当てを受けたことについては、当該新株につき額面金額による買戻しの約定又は譲渡制限があったとしても有利な発行価額による経済的利益の享受があったとみるべきであり、当該経済的利益の額の計算の基礎となる新株の価額については、本件株式の所有の実態からみて利益配当がどの程度期待できるかということが主要な価値的判断要素となるから、配当金を一定の利率で還元して元本たる株式の価額を求める配当還元方式により評価するのが客観的で合理的であると認められるところ、その配当率については、増資前2年間の平均175パーセントという高い配当率は、増資後もそのまま継続するという保証のないものであって適当でなく、増資後4年間の平均20パーセントという一般的で将来も期待し得る配当率によるのが相当である。
要旨
金銭貸付けに係る所得について、請求人は、貸金業者として登録しており、営業チラシの配布により広く一般の顧客を求めるとともに、人的・物的設備を備えて事業として金銭を貸し付けているので、事業所得に該当する旨主張する。
しかしながら、本件における特定の法人に対する金銭貸付行為は、[1]請求人と当該法人とが特殊の関係にあること、[2]担保を徴していない若しくは担保が形式的で実質を伴わないこと、[3]貸付金利が低すぎること、[4]請求人は、当該法人が市中から借り入れる際に、保証料を得ることなく連帯保証人となっていること、[5]当該法人は自力で市中銀行から融資を受けられる状況になかったこと等を勘案すると、社会通念に照らして営利を目的とした事業として行われているとは認められない。
また、特定の法人以外の者に対する金銭貸付行為は、[6]平成7年分は7名延べ8件の1,600千円であり、平成8年分及び平成9年分は新たな貸付けがないこと、[7]その請求人の平成8年分受取利息の総額は49,497円と少額であること、[8]請求人は、主に給与収入により生活を維持していることなどからすると、貸付口数の多寡、反復継続性等を客観的にみて、いまだ事業規模に達していないとするのが相当である。
したがって、本件金銭貸付けに係る所得(損失)は、所得税法第27条に規定する事業所得には該当せず、同法第23条[利子所得]から第34条[一時所得]までに規定するいずれの所得にも該当しないことから、同法第35条に規定する雑所得に該当し、また、この雑所得の金額の計算上生ずる損失の金額については、同法第69条第1項の規定による損益通算をすることはできない。
要旨
資本的支出と修繕費の区分は、支出金額の多寡によるのではなく、その実質によって判定するものと解されるところ、本件建物の外壁等の補修工事のうち、外壁等への樹脂の注入工事等は建物全体にされたものではなく、また、塗装工事等は建物の通常の維持又は管理に必要な修繕そのものか、その範ちゅうに属するものであるから、これらに要した費用は修繕費とするのが相当である。また、外壁天井防水美装工事は、補修工事に伴う補修面の美装工事であって、塗装材として特別に上質な材料を用いたものではないことが認められるから、これに要した費用も修繕費とするのが相当である。
要旨
請求人が長男に係る異常とすべき態様による債務の弁済を4年間にわたり繰り返し行い、かつ、その求償権を放棄することは、通常第三者では到底なし得ないところであり、これをあえて行ったのは、請求人が長男の更生を期待するためにした利益の供与(贈与)というほかはなく、長男に弁済能力がないことを知りながらあえてこれを行ったものであり、所得税法第64条第2項の規定を適用する余地はない。
要旨
請求人は、小児科医開院に際して受領した祝金は、個人又は法人からの贈与であり、非課税所得又は一時所得に該当する旨主張する。しかしながら、民法は私人間の法律関係を規律するという見地に基づいた定めであるのに対し、租税法は、収入の経済的実質を重視し、担税力に応じた課税の実現を期するものであることから、租税法上の贈与の概念は民法上の贈与の概念とは別異に解すべきであるところ、本件祝金は、請求人が新たに事業として医療保健業を開業したことに伴い、請求人の事業関係者から受領したものであることから、経済的実質からみれば事業の遂行に付随して生じた収入というべきであり、租税法上、このような収入についてまで贈与と解するのは担税力に応じた公平な税負担の見地からも相当でなく、請求人の主張する非課税所得又は一時所得には該当せず、事業所得に該当するから、事業所得とした原処分は相当である。
関係会社の資金繰りの用に供するため担保に提供した株式が回収不能となった場合に、当該回収不能相当額を、他の株式の譲渡に係る雑所得の収入金額から控除したりあるいは必要経費に算入したりすることはできないとした事例
裁決事例集 第41集 145頁
要旨
請求人は、担保に提供した株式が担保流れとなった時点で、[1]株式の譲渡があったとみて所得税法第64条第1項の規定を適用し、当該回収不能相当額を他の株式の譲渡に係る雑所得の収入金額から控除するか、[2]貸付けに係る株式に損失が生じたとみて同法第51条第4項の規定を適用し、当該損失相当額を他の株式の譲渡に係る雑所得の必要経費に算入すべきであると主張するが、請求人は、本件株式を、当時利害関係を有していた請求人に立場上、資金繰り上の担保に供するため、関係会社に預けていたものであって、株式を譲渡したり貸し付けたりした事実は認められないから、請求人の主張は前提そのものを誤っており、当該回収不能相当額あるいは当該損失相当額を他の株式の譲渡に係る雑所得の収入金額から控除したり、あるいは必要経費に算入したりすることは認められない。
要旨
原処分庁は、請求人が役員を務める各関連法人(本件各関連法人)が支払った請求人の経営するコンビニエンスストアに係る経費(本件経費)は、役員である請求人が個人で支払うべき費用を本件各関連法人が負担したものであるから、所得税法第36条《収入金額》第1項の経済的な利益に該当する旨主張する。
しかしながら、上記コンビニエンスストア事業に係る損益は、本件各関連法人に帰属するものではなく、その全てが請求人に帰属するものと認められること及び当該コンビニエンスストア事業に係る入出金が本件各関連法人において仮受金等として処理されていた状況などを踏まえると、本件各関連法人が支払った当該コンビニエンスストア事業に係る経費は請求人が行う当該コンビニエンスストア事業に対する本件各関連法人の立替金とみるのが相当であり、当該コンビニエンスストア事業に係る損益のうち本件経費についてのみ、請求人が役員として経済的な利益を享受したと認めることはできない。
参照条文等
雑所得の基因となった金融商品を外貨で取得するに当たり支出した金額のうち、通貨交換の際に適用された電信売相場と電信売買相場の仲値との差額に相当する部分の金額は、雑所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないとした事例
裁決事例集 第73集 216頁
要旨
請求人は、本件差額相当額は、円をドルに交換するために銀行に支払った手数料であり、商品Dを取得するために必要な費用であるから、本件利息収入を得るための必要経費に算入されるべきである旨主張する。
しかしながら、所得税法第37条第1項に規定する必要経費とは、売上原価等の直接の費用はもとより、販売費や一般管理費等の間接の費用もこれに含まれるが、それはあくまでも費用に限定されるのであって、費用に当たらない支出は、必要経費に含まれない趣旨と解すべきであるところ、本件差額相当額は、商品Dを取得する際の投資金額の一部分であって、当該投資金額は満期時に返金される金員であるから、同相当額は商品D取得時に費消されておらず、それを費用ということはできない。
また、通貨交換を行う金融機関にとっては、本件差額相当額が手数料としての性格を有するものであるとしても、顧客が円をドルに交換する際には、あくまでも電信売相場が適用されるのであって、電信売買相場の仲値が適用されるのではないから、同相当額の部分のみをとらえて手数料に当たるというのは相当ではない。
したがって、本件差額相当額は、本件利息収入に係る雑所得の必要経費には当たらない。
ポイント
非居住者が日本国内で行う事業から生じた所得には、国内に恒久的施設がない限り日本における所得税は課されない。
この事例は、非居住者である請求人が行うインターネット販売において、輸入した商品の発送業務等を行うアパート及び倉庫が恒久的施設に当たるか否かが争われたものである。
要旨
請求人は、請求人が事業の用に供していた本件アパート及び本件倉庫は、在庫商品を保管し、倉庫業務を行うとともに、発送業務を行うことのみを目的とした「準備的又は補助的な性格の活動」を行う場所であるから、恒久的施設に該当しない旨主張する。
しかしながら、請求人が行う輸入販売の取引は、顧客の注文に応じてその都度商品を仕入れて輸入販売する形態のものではなく、あらかじめ輸入しておいた在庫商品を顧客の注文に応じて販売する形態のものであるところ、請求人が本件アパート又は本件倉庫を賃借してまで上記のような在庫販売形態を採用したのは、そうすることによって顧客の発注から納品までの期間を短縮させて顧客の需要に応えるとともに、輸入配送費用を節減することにあったものと認められるから、本件アパート及び本件倉庫は、事業の遂行及びこれによる利得の実現にとって不可欠の機能を果たすものであったということができるとともに、顧客に発送すべき商品に日本語版取扱説明書等の添付という経済的付加価値を付与する機能を有するということからすると、これらは、顧客に販売するための商品の在庫の保管という単なる倉庫の機能に留まるものではなく、事業の遂行による利得の実現にとって重要かつ必要不可欠の機能を有しているということができるのであって、本件アパート及び本件倉庫において行われる活動の全体は、本件事業にとって準備的又は補助的な範囲を超えるものというべきであるから、恒久的施設に該当する。
参照条文等
所得税法第164条第1項第1号、第165条、第168条 日S租税条約第1条、第5条、第7条
非常勤医師である従兄弟に支給した報酬のうち、他の非常勤医師に支給していた日給相当額を超える部分は過大であり、また、親族及び親族の家政婦に支給した給与等の額は、請求人の業務に従事した事実が認められないから、いずれも必要経費の額に算入できないとした事例
裁決事例集 第44集 152頁
要旨
- 請求人は、従兄弟には他の非常勤医師の勤務のほか、緊急時における指導、助言及び当直医を依頼した大学病院の医師への連絡等の援助を受けていたと主張するものの、その報酬は、勤務内容からみて不相応に高額と認められ、請求人が、このような高額な報酬を支給していたのは、従兄弟が請求人の親族であったことによるものと認められる。
近隣の医療機関の常勤医師で年齢及び医師としての経験が従兄弟と類似していると認められる者の給与の一日当たりの平均額は、他の非常勤医師に支給する日給を上回るものではないから、原処分庁が、従兄弟が勤務した日数に他の非常勤医師の日給額を乗じて算出された額を超える額を必要経費の額に算入しなかったことは相当である。 - 請求人は、親族(従兄弟である事務長の妻)及び親族の家政婦は事務の補助及び掃除婦として請求人の業務に従事していたと主張するが、事務長及び関係者の答述並びに事務長の自宅及び同人の母の自宅に出入りしている者を調査したところによれば、親族は事務長の自宅の家事に、親族の家政婦は事務長の母の自宅の家政婦としての仕事に専念していることが認められ、請求人の業務に従事していた事実は認められない。
したがって、原処分庁が当該報酬を必要経費の額に算入しなかったことは相当である。
要旨
請求人は、所得税法第7条第1項第2号に規定する国外源泉所得で国外から送金されたものの金額の算定に当たっては、非永住者が国外から送金された金額をその年中に国外に返金した場合、当該返金額を控除すべきである旨、また、仮に控除が認められないとしても、その翌年において、再度、当該返金額を国外から送金した場合、当該返金額が二重に課税所得の対象とされることになるから、当該送金額のうち、当該返金額に達するまでの金額は国外源泉所得に係る所得を送金したとはいえない旨主張する。
しかしながら、所得税法第7条第1項第2号の規定が、国内で支払われ、又は国外から送金されたことを、非永住者の国外源泉所得を課税所得とするための要件としているのは、送金を課税権を行使する契機としたものというべきであり、さらに、所得税法施行令第17条第1号の規定が送金の内容に特段の限定を付していないことにも照らせば、いったん国外払の所得が国外から国内に送金された事実があれば、特段の限定なくこれらの規定による送金があったということができるというべきである。非永住者であっても、国外源泉所得自体を課税所得とする点では、非永住者以外の居住者と変わりはないのであって、請求人が主張するように、同一年中に送金額を返金した場合は、これを送金額から控除できると解すべき理由はない。また、国外からの送金額を返金し、再度、その翌年に当該返金額を送金したとしても、当該送金額は国外から送金されたものとして、その翌年の課税所得の対象となることに対し、請求人は当該返金額が二重に課税所得の対象とされることになると主張するが、その年とその翌年の各年分の国外源泉所得に課税したものであって、同一の所得に二重に課税したものではないから、請求人の主張には理由がない。
要旨
事業所得とは、自己の計算と危険において対価を得て継続的に行われる業務から生ずる所得をいい、また、給与所得とは、雇用関係又はこれに準ずべき関係に基づく非独立的労務の対価をいい、両者の異同は、所得の生ずる業務の遂行ないしは労務の提供が、前者は自己の計算と危険において独立性をもってなされるのに対し、後者は対価支払者の支配、監督に服して非独立的になされるとともに自己の計算と危険を伴わないものであるところ、[1]請求人は自己の名による法律事務所を有し、使用人を使い継続的に弁護士業務を営んでいること、[2]本件顧問契約は、法律相談に応じて法律家としての意見を述べることの債務を負担しているものの、勤務時間、勤務場所の定めがなく、常時、数社と契約していること、[3]顧問契約の具体的内容とその履行の態様は、随時質問してくる法律問題について、依頼の都度請求人の事務所において専ら電話により口頭で応ずるものであること等の事実から、本件顧問契約に基づく労務の提供は、独立性を有し、請求人の計算と危険において営む弁護士業務の一環としてなされたものと認められるので、当該顧問料収入は、給与所得ではなく事業所得の収入金額に該当する。
ポイント
本事例は、LPSから分配される収益金(LPS収益金)に係る所得について、LPSが、我が国の租税法上の法人に該当し、出資者の地位に基づいて分配を受ける剰余金であって、配当所得に該当するのか、又は我が国の民法上の組合と同様のものであって、不動産所得に該当するのかが争われ、その法律的経済実質的関係を個別具体的にみて、雑所得に該当するとしたものである。
要旨
原処分庁は、米国においてリミテッド・パートナーシップ契約(LPS契約)によって組成されるLPSは我が国の租税法上の法人に該当するから、請求人は出資者としての地位にあり、また、請求人がこの地位に基づいて分配を受けるLPS収益金は、本件各LPSの剰余金であるから、配当所得に該当する旨主張する。一方、請求人は、LPS収益金は、本件各LPSに帰属せず、民法上の組合と同様、損益分配割合に応じて配分され、請求人に直接帰属するから、不動産所得に該当する旨主張する。
しかしながら、配当所得とは、法人から受ける剰余金の配当、利益の配当及び剰余金の分配等に係る所得で、剰余金又は利益の処分として配当又は分配したものだけでなく、出資者に対しその出資者である地位に基づいて供与した経済的な利益も含まれると解され、法人に帰属する利益の処分としての性質を有するものである。これを本件についてみると、本件各LPS契約における収益金定義条項及び分配額保証条項によれば、その分配額は毎年所定の額となることを保証されており、計算上の分配可能な額が保証された金額に満たない場合にも、毎年所定の額の分配を受けられるものとされているところ、現に、請求人は、この分配額保証条項に基づいて毎年所定の額のLPS収益金の分配を受けているのであるから、LPS収益金に係る所得は、本件各LPSに帰属する利益の処分としての性質を有するものでないことが明らかであり、配当所得には該当しない。また、LPS収益金は、請求人が、本件各LPS契約における分配額保証条項に基づいて毎年所定の額の分配を受けているものであり、請求人が、自ら、又は本件各LPSないしオーナーLPSを自らの代理人として、主体的に本件各物件を賃借人に対して賃貸し、それによる収益の稼得や費用の負担を行っているということはできず、LPS収益金に係る所得は、請求人が、不動産所得を生ずべき業務(不動産等の貸付業務)の遂行により、あるいはそれに伴い得た所得とはいえないから、不動産所得には該当しない。したがって、LPS収益金は、本件各LPS契約における分配額保証条項に基づいて分配を受けているものであるから、LPS収益金に係る所得は、利子所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当せず、雑所得に該当する。
参照条文等
所得税法第2条第1項第6号、第7号、第24条、第26条、第35条 民法(平成18年法律第50号による改正前のもの)第33条、第43条
要旨
請求人は、余剰容積移転のための対価として受領した金員について、所得税法第33条第1項の資産の譲渡に該当することから、譲渡所得として課税されるべきである旨主張する。
しかしながら、余剰容積移転の対価は、土地所有権の一部譲渡を意味するものではなく、移転側が、移転を受ける側に対して自己の土地を建築上利用させるために、その土地における建築上の利用制限を受けることに対する対価であると解するのが相当であることから、「土地を使用させる行為」に当たり、原則不動産所得に該当し、所得税法第33条かっこ書及び所得税法施行令第79条第1項に該当する場合に限り、譲渡所得として課税されることになる。
そうすると、本件余剰容積利用権は、建築基準法第86条第2項に規定する連担建築物設計制度の適用により容積率が事実上緩和されたことに基づいて発生したものであり、私法上の契約形態としては不作為地役権を設定する方式によっていることから、所得税法第33条かっこ書及び所得税法施行令第79条第1項のいずれにも該当せず、不動産所得と解するのが相当である。
要旨
請求人は某会社に勤務しながらアパートを所有し、その賃貸に係る不動産所得について青色申告書の提出をしているが、[1]本件アパートは、請求人の住居と同一の敷地内にあり、その規模は独立した部屋数が4で、入居者も3名程度の小規模な貸付けであること、[2]その貸付けから生ずる賃貸料は、固定資産税、管理費、減価償却費等所要の経費にも満たない金額であること、[3]請求人は某会社に勤務して安定収入を得、生活費の資の大部分は給与収入によって賄っていることから、本件アパートの貸付けは、社会通念上事業と称するに至る程度の規模とは認められず、したがって、本件アパートの貸付けによる不動産所得の計算上、請求人が青色事業専従者として請求人の妻に支払ったとする給与の額は所得税法第57条の規定による青色事業専従者給与の額に該当せず、必要経費に算入することができない。
要旨
本件建物を所有者として優先的に使用する権利を確保した上でホテル経営者に客室用として賃貸することにより損失が生じたとしても、[1]本件建物は保養地に所在し、請求人はこれを自己及び家族の保養のために利用していること、[2]本件の場合は、本件建物を管理してもらうことを兼ねて賃貸されたものであること、[3]本件建物の賃貸に係る収益は、減価償却費等の必要経費をかなり下回ることなどに照し、当該損失の金額は、所得税法第69条第2項の規定により生じなかったものとみなされるから、他の所得金額と損益通算することは認められない。
要旨
原処分庁は、隣接土地の堀削と集中降雨を原因とする災害損失の金額は、請求人がマンション工事業者を相手方として提起した損害賠償請求訴訟において裁判所が認定した損害額の40パーセント相当額であり、その全額につき損害賠償を受けることにより、損失の全部が補てんされているから、雑損控除の対象となる損失の金額はないと主張するが、原処分庁の主張するところの損失の金額は、請求人の過失分を相殺し、マンション工事業者に請求し得べき金額にすぎず、すなわち、裁判所が認定した損害額によるのが相当である。
要旨
請求人とバスガイドとの間で、[1]労務提供の期間と1か月の基準従事日数、[2]ガイド料としての契約金額、早朝・深夜手当の額、[3]契約金額を契約月数で除した月割額の支払日、[4]従業員と同程度の食事代、宿泊料の支給に関する約定があり、また、契約期間中は請求人以外の労務には従事していないこと及びガイドプランの失敗に伴い損害賠償の責任はないこと等の実情からみて、本件ガイドは、雇用契約に基づき、請求人の指揮命令に従い、非独立的に労務を提供しているものと認められ、その対価としての金員は所得税法第28条第1項に規定する給与等に該当する。
ポイント
本事例は、いわゆる一般口座で保管していた上場株式が株式としての価値を失ったことによる損失の金額は、当該上場株式を含む株式の譲渡による所得が事業所得又は雑所得に該当する場合には、当該事業所得又は雑所得の計算上、必要経費に算入できるとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人の所有していた民事再生法の規定による再生計画に基づき平成21年中に無償で消滅した株式(本件株式)の取得金額は、譲渡所得の金額の計算上、取得費として控除できない旨主張する。
しかしながら、所得税法においては、株式が株式としての価値を失ったことにより損失が生じた場合、①その株式が事業所得の基因となるものであるときは、所得税法第37条《必要経費》第1項の規定に基づき、売上原価の計算を通じて自動的にその株式の取得価額相当額がその損失の発生した年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入され、また、②その株式が雑所得の基因となるものであるときは、所得税法第51条《資産損失の必要経費算入》第4項の規定に基づき雑所得の金額を限度として、その株式の取得価額相当額が資産損失としてその損失が発生した年分の雑所得の金額の計算上必要経費に算入され、③その株式が譲渡所得の基因となるものであるときは、その損失は所得金額の計算上考慮されないところ、請求人の上場株式等の譲渡による所得は、事業所得又は雑所得と認められることから、本件株式が株式としての価値を失ったことによる損失の金額は、平成21年分の株式等の譲渡による事業所得又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入できることになる。
参照条文等
要旨
請求人は、不動産の貸付先であり、請求人の弟が代表取締役である会社に対して有していた貸付金の貸倒れによる損失について、本件貸付金は、請求人が同社に対して賃貸している不動産を同社の仕入先に対する担保として提供していたところ、同社が倒産するおそれがあったため、賃貸不動産の維持確保を図るために同社に貸し付けたもので、不動産所得を生ずべき業務の遂行上貸し付けた貸付金であるから、その貸倒れによる損失は不動産所得の必要経費になると主張するが、同社に対する担保提供の経緯等からみて、当該担保提供は弟を援助する目的のものと認められ、また、賃貸料と貸付金の額との関係をみても、金銭の貸付けが不動産貸付業の遂行上必要であったとは認められないから、本件貸倒損失は不動産所得を生ずべき事業の遂行上生じたものとは認められず、したがって、本件貸倒損失は不動産所得に係る必要経費とは認められない。
要旨
不動産の賃貸借契約に係る保証金のうち、当該契約の解除に伴い返還を要しないこととされた金額は、今後の家賃減収及び設備等の遊休陳腐化によって生ずる損失等を補てんするものであり、その実質は所得税法施行令第94条第1項第2号にいう不動産所得を生ずべき業務に係る収益補償類似のものであって、不動産所得の収入金額に該当するとともに、当該返還を要しないこととされた金額は、当該契約に基づく賃貸料月額とその契約解除後新たに締結した賃貸借契約に基づく賃貸料月額との差額の3年分以上であること等から、臨時所得に該当する。
中途解約に伴い賃借人に対し返還不要となった敷金及び建設協力金は、不動産所得の収入金額に当たるとするとともに、当初申告で平均課税の適用をしていないことに「やむを得ない事情」があると認められないとした事例
裁決事例集 第67集 135頁
要旨
請求人は、中途解約に伴い返還不要となった敷金及び建設協力金のうち不動産所得の収入金額とされるのは、賃料の減収による損失及び解約に伴う諸費用の実費弁償等としての補償額等に限定され、その余は一時所得に該当する旨、また、仮に不動産所得の収入金額となるのであれば、臨時所得に該当し平均課税の規定が適用される旨主張する。
しかしながら、中途解約の合意内容等によると、返還不要の敷金及び建設協力金は、賃料の減収によって生ずる損失等、その後の不動産貸付業務に係る収益の減収に対する補償として取得したものと認められ、不動産賃貸業務の遂行によって生ずる収入金額に代わる性質を有するものであることから、その全額が不動産所得に係る収入金額であると認められる。
また、当初の確定申告で、臨時所得に該当する金額がなかったのは、請求人が、税法の解釈を誤って、返還不要の敷金及び建設協力金を一時所得として申告したためであり、これは、客観的にみて納税者の責めに帰すことのできない事情とはいえず、「やむを得ない事情」があると認められないことから、平均課税の規定の適用を受けることはできない。
要旨
請求人は、事業協同組合の組合員の死亡脱退により、死亡した組合員の相続人が支払を受ける持分払戻金は、死亡退職金と同様、所得税を課税せずに相続税のみを課税する相続財産として取り扱われるべきであるから、原処分庁が、当該持分払戻金のうち、出資金額を超える部分についてみなし配当であるとして行った源泉所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分を取り消すべきである旨主張する。
しかしながら、本件の脱退組合員持分払戻金(以下「本件払戻金」という。)は、組合員D及びE(以下、DとEを併せて「本件各組合員」という。)が死亡によって請求人を脱退し、出資持分の払戻金として支払われたものと認められるが、死亡による脱退であっても社内に蓄積された利益積立金が払戻しにより社外に流出するという点では他の脱退の場合と同じであり、本件払戻金のうち本件各組合員の出資金の額を超える部分の金額(以下「本件金額」という。)は、「みなし配当」に当たると認めるのが相当である。
また、請求人の定款には、組合員が脱退したときには、組合の財産についてその出資口数に応じて算定した金額を限度として払い戻すものとする旨を定めていることから、本件各組合員の死亡時において、本件各組合員は組合を脱退し、出資持分に係る払戻しを受けることが確定するため、その時点において本件払戻金の払戻請求権(以下「本件払戻請求権」という。)が発生したと解するのが相当であるから、本件払戻金は出資者である本件各組合員に帰属すると認めるのが相当である。
なお、本件金額は、本来は「みなし配当」として本件各組合員に支払われるべきものであるが、本件各組合員の死亡によって本件払戻請求権が一旦本件各組合員に帰属し、その後遺産として本件各組合員の相続人に承継されたことにより、当該相続人に支払われたものであり、相続人の相続税と本件各組合員の所得税が二重課税になるというものではない。また、本件払戻金は、相続税法第3条第1項各号に規定する相続又は遺贈により取得したものとみなす財産のいずれにも該当しないから、相続税法上のみなす財産とされる死亡退職金等と同列の財産ということもできない。
要旨
請求人は、平成3年1月に甲土地(昭和28年取得、時価187,825万円)とF社所有の乙土地(昭和63年取得、時価159,660万円)を交換し、28,165万円の差金(時価の20%以内)を取得したのであるから、交換の特例の適用対象資産に該当する旨主張する。
所得税法第58条に規定する交換特例は、それぞれ1年以上所有する固定資産である同種の資産(交換のために取得したと認められるものを除く)と交換し、交換取得資産を交換譲渡資産と同一の用途に供した場合には、譲渡所得の計算上、交換譲渡資産の譲渡がなかったものとみなされる。
ところで、審判所が原処分関係資料等を調査したところ、次の事実が認められる。
- F社の開発事業部が昭和61年7月に発議して社内決裁を了した乙土地の取得に係る稟議書によれば、乙土地は商業ビルの請負工事条件付の転売目的で取得する旨記載されていること。
- F社の昭和63年3月期の貸借対照表によれば、乙土地は棚卸資産として計上されていること。
- F社のK総務部長は、乙土地は購入当初から交換時まで棚卸資産であり、固定資産としての利用計画及び固定資産として利用した事実は一切なかった旨記載した確認書を国税局の調査官あてに提出していること。
以上の事実によれば、F社所有の乙土地は棚卸資産と認めるのが相当であるから、所得税法第58条に規定する交換特例の適用対象資産に該当しないとした本件更正処分は適法である。
要旨
譲受人が本件農地の開発許可を受けるに際し提出した書類には、請求人の同意書があり、その開発に当たり地目を宅地に変更する登記をしているから、本件土地は譲受人に引き渡され、所有権が完全に移転していると認められ、また、売買契約書に代替地提供を条件とする条項はなく、覚書には、代替地の提供ができない場合には売買代金と同額で売り戻すとされているから、請求人の譲受人に対する売買代金と同額の金員の支払は、売買契約の解除によるものではなく、再売買によるものであるという原処分について、前記覚書以外の覚書によると代替地の提供が売買契約の条件であったと認められ、その契約時には、所有権移転登記ではなく、譲受人を権利者とする所有権移転請求権仮登記がされているところからみて、譲受人が所有権を確定的に取得したことはなかったことが明らかであるから、仮登記の抹消とともになされた前記金員の支払は、当該土地の再売買によるものではなく、本件譲渡契約を解除したことに伴う返還であると認定するのが相当であるから、原処分は取り消されるべきである。
要旨
請求人と相手方との交換契約はその後仮換地の指定変更があったので、実質上は、仮換地指定後の土地の交換であると認められる。したがって、請求人が仮換地の指定変更に伴い相手方から収受した金銭については、名目上整地費、擁壁費となっていても、その実質は、交換差金と認められ、その所得は譲渡所得に該当するものと解するのが相当である。
要旨
持分共有で取得した低湿地を2~3メートル盛土して譲渡した場合において、[1]本件土地は取得後放置されていたことからゴミ捨場のようになり、市当局等から所有者の管理責任を問われたため、通常の管理行為として埋立てをしたものと認められること、[2]埋立工事に要した金額が過少で、後日、本件土地の取得者が宅地造成するために多額の金額を要していること、[3]埋立工事は、2~3メートルの盛土をしているが表面をならしただけで、下水道工事はもとより、隣接地との境界に対する擁壁工事、石垣積み等の工事をしておらず、その境界は土盛りのまま傾斜地となっていたため雨水等によりくずれ落ちる危険性が高く、そのまま宅地として使用できる状態でなかったなどの事実が認められ、これらを併せ考えると、本件土地は、宅地ないし宅地に近い状態にまで区画形質の変更が加えられて譲渡したものとは認められないから、その譲渡による所得は譲渡所得に該当し、雑所得に該当するとした原処分は相当でない。
住宅ローンの連帯債務者が、団体信用生命保険に加入していた他の連帯債務者の死亡により住宅ローン債務が消滅したことにより受けた経済的利益は、一時所得に当たるとした事例
裁決事例集 第72集 218頁
要旨
請求人は、請求人の父の死亡に伴い、G銀行との間で請求人及び父を連帯債務者とする住宅ローン契約(以下「本件ローン契約」という。)の締結の際にG銀行が加入した、G銀行を保険契約者及び保険金受取人、父を被保険者とする団体信用保険契約(以下「本件団信保険契約」という。)により、本件ローン契約に係る債務は消滅したが、請求人と父との連帯債務の負担割合は、父が10割、請求人が零であるとする暗黙の合意(特約)があったから、請求人が負担すべき債務は一切存在せず、請求人には経済的利益は全くなく、一時所得は発生しない旨主張する。
また、原処分庁は、①本件ローン契約により、請求人には負担すべき債務がある、②団体信用保険制度は、死亡事故を基因として、死亡時における賦払償還債務相当額の保険金が保険会社から債権者である金融機関に対して直接支払われるものであり、債務者が一旦保険金を受領し債務の返済に充てるものではないから、当該債務の消滅は債務の返済ではなく金融機関から債務免除を受けたものと解され、当該債務が連帯債務である場合には、被保険者を除く各連帯債務者が実質的に債務を負っている部分について債務免除を受けたことによる経済的利益(債務免除益)が生じたものとみるのが相当であるから、請求人がG銀行から受けた債務免除益相当額は、法人からの贈与により取得したものであり一時所得に該当する旨主張する。
しかしながら、①請求人と父との間の負担付贈与契約は、債権者であるG銀行は当該負担付贈与契約を了知していないことから免責的債務引受とみることはできず、請求人と父との間でのローン債務の負担割合を変更したにとどまると認められ、また、②G銀行は本件団信保険契約に係る保険料を全額負担していること、G銀行は受け取った保険金は必ず被保険者の債務に充当するとしていること、被保険者は保険料を負担せず死亡による保険金を受け取る権利を有していないことなどからすれば、本件団信保険契約はG銀行の確実な債権回収を目的とした保険であると認めるのが相当である。
したがって、被保険者の死亡時点における本件ローン契約の残債務全額に相当する経済的利益は、連帯債務であるという当該債務の性質により、各連帯債務者間における負担割合に応じて生じるものであって、債務免除によるものではなく、また、請求人は父の死亡時点において10割の負担割合を有する連帯債務者であると認められるから、請求人は本件ローン契約の残債務の全額に相当する経済的利益を享受したといえ、当該経済的利益は、営利を目的とする継続的行為から生じたものではなく、役務等の対価性もないから、一時所得に該当する。
要旨
請求人は、所得税法上国内に住所を有するかどうかは、所得税法施行令第14条第1項の継続1年以上の居住基準によってのみ判定すべきであり、請求人の前代表者は国内に継続して1年以上居住した事実がないから居住者に該当しないと主張するが、同項の規定は国内に住所を有するか否かが明確でない個人について適用される推定規定であって、国内に住所を有することが明らかな者についてまで適用されないことは明らかであるところ、請求人の前代表者は、国内に土地、家屋を有し、そこに妻が永年居住していること、関連企業の総帥として永年にわたり国内に居住することを必要とする職業に従事していること及び請求人はその本店所在地以外の場所における同人の勤務を出張扱いとして出張費用の内部処理をしていることなどの事情を考え併せると、同人は、同項各号の住所推定規定によるまでもなく国内に住所を有することとなり、所得税法上の居住者に該当する。
使用貸借により長男の事業兼居住の用に供していた建物及びその敷地を譲渡する場合に支払った立退料等のうち、長男が建物に投下した建物改造費用の現存価額並びに閉店及び移転に要した費用は、譲渡費用に当たるとした事例
裁決事例集 第38集 72頁
要旨
請求人は、使用貸借により長男が事業兼居住の用に供していた建物及びその敷地を譲渡する際、その建物から長男を立ち退かせるために立退料等の金員を支払ったが、使用貸借においては借主に借家権があるとは認められないので、本件立退料のうち借家権の消滅の対価の額に相当する金員については、これを支払う理由はなく、譲渡費用に該当しない。しかし、借主が借受物件に投下した有益費については、使用貸借においても借主が借受物件を返還する際に、貸主は償還業務を負うとされており、その有益費の額は現存価額とされているところ、本件においては、借主である長男は、建物改造費用を負担していることが認められるから、本件立退料のうちその残存価額に相当する部分の金額については譲渡費用とするのが相当である。また、営業補償名義の金員については、長男がチラシ、ポスター等の作成費用等閉店のために支出した費用の実費を補てんするため、請求人が長男に支払ったものと認められるから、これを譲渡費用とするのが相当である。
保証債務の履行に伴う他の連帯保証人に対する求償権については、当該他の連帯保証人は債務超過の状態にあり、求償権の行使は不可能であると認定して、所得税法第64条第2項の適用を認容した事例
裁決事例集 第56集 156頁
要旨
原処分庁は、請求人が本件土地を譲渡したことによる収入金額から主たる債務者に係る保証債務を履行するためにM信用金庫に支払った1,000万円は、Wと共同で保証人となっていることから、Wが負担すべき500万円を請求人が保証債務として履行したとしても、所得税法第64条第2項の規定は適用されない旨主張する。
しかしながら、本件債務の連帯保証人であるWが所有する不動産には、他の債権者により競売開始決定に基づく差押えがされており、他の不動産も相続税評価額を大幅に上回る金額の抵当権が設定されていること等から、Wは債務超過の状況が著しいものと認められ、同人に対する求償権の行使が不可能であると認めるのが相当である。
したがって、請求人が、本件譲渡代金からM信用金庫に保証債務を履行するために支払った1,000万円については、その全額について所得税法第64条第2項の規定の特例を認めるべきである。
保証債務の履行をC銀行からの借入れで行い、その後本件資産を譲渡した後にD銀行から借入れを行ってC銀行に対する借入金を返済した上、分割受領した本件資産の譲渡代金でD銀行に対する借入金を分割返済した場合には、所得税法第64条第2項の適用がないとした事例
裁決事例集 第39集 133頁
要旨
所得税法第64条第2項の規定が適用されるためには、資産の譲渡と保証債務の履行との間に強い因果関係が必要であるというべきであって、保証債務の履行と資産の譲渡とが、たまたま時期を同じくして行われたとしても、保証債務の履行が保証人の譲渡代金以外の資金、信用によって行われたときは、同条項の適用がないものと解すべきであり、ただ、保証債務の履行を求められたため、やむを得ず譲渡代金を受領するまでのつなぎ資金として、一時的に借入金でその保証債務を履行しておき、その後短期間のうちに資産を譲渡して、その譲渡代金をもって遅滞なくその借入金を返済するなど、資産の譲渡と保証債務の履行との間に強い因果関係があると認められる場合にも同条項の適用があるものと解する。
本件については、分割受領した譲渡代金の流れ等からみて、資産を譲渡した後に借り入れた資金は本件土地の譲渡代金を受領するまでの一時的なつなぎ資金であるとは認められず、土地の譲渡と保証債務の履行との間に強い因果関係があるとは認められないから、所得税法第64条第2項の適用はない。
個人事業主の死亡は当然に雇用契約の終了事由、事業廃止原因であるから、従業員に支給する退職金の必要経費算入を認めるべきであるとの請求人の主張が排斥された事例
裁決事例集 第58集 36頁
要旨
請求人らは、工具類販売業を営んでいた被相続人の所得税の事業所得の金額の計算に当たり、個人事業主の死亡は当然に雇用契約の終了事由、事業廃止原因であり、退職金規程に事業主死亡が退職金支給事由として明記されていなくとも退職金支給債務が発生したとして、従業員6名に対する退職金の必要経費への算入を認めるべきである旨主張する。
しかしながら、被相続人の事業は被相続人の一身に専属する性質のものではなく、相続の対象となり、雇用契約は相続人に承継されるから、被相続人の死亡は雇用契約の終了原因にはならない。
また、当該従業員らは被相続人死亡後も引き続き勤務し、勤務条件、勤務内容に重大な変更はなく、被相続人の事業は、相続人に承継されており廃止されていないから、雇用契約は終了していない。
したがって、本件退職金は確定した債務とはいえず、請求人らの主張には理由がない。
要旨
所得税法第64条第2項に規定する「保証債務の履行」とは、その実質において、債務者の債務等を保証人が肩代わりして弁済することをいうものであるところ、債務者の債務等とは、主たる債務及び主たる債務に従属する利息、違約金等保証債務の履行として債権者に対して弁済しなければならないものをいい、保証人が保証債務を履行するための借入金の利息、抵当権設定費用等債権者以外の者に対して支払ったものは含まれない。したがって、同項に規定する「その履行に伴う求償権」とは、保証債務の履行により同時に生ずる求償権をいうものであって、その求償権の額は保証債務の履行の額と同額であるはずであるというべきところ、民法上、債務の履行のための関連費用についての求償権があるとしても、これらの関連費用の額に相当する金額は同項に規定する「その履行に伴う求償権の額」に含まれると解することはできない。
要旨
請求人が借り入れた資金の一部をもって定期預金を設定していた場合に、当該借入れが具体的な不動産事業の拡張計画に基づいてなされ、しかも、この資金調達が物件の取得に先行してなされたとしても、それが著しく不合理でなく、その計画が順次実行されており、また、本件借入金を効率的に運用する一方法として定期預金を利用したにすぎないと認められることから、本件借入金が定期預金を設定するためのものとみるのは不相当であり、したがって、本件借入金に係る支払利息を事業上の必要経費に算入すべきである。
元本と利子からなる債務の総額の減額がされたことにつき、本件減額はまず利子相当額からなされたものとして、所得税法第161条第6号に規定する貸付金の利子の支払額を認定するべきであるとした事例
裁決事例集 第28集 149頁
要旨
外国法人との間の穀物の先物取引により生じた損失の決済に当たり、取引の当時者の合意によりその決済金額の一部が減額されたことにつき、原処分庁は、本件減額はその決済金額の積上げ計算上の元本と利子との金額の割合に応じて行われたものであると主張するが、通常取引における値引等の場合には原価相当部分を確保し、利益相当額部分を減額する一般取引慣行があることから、その減額はまず利子相当額からなるものとして所得税法第161条第6号に規定する貸付金の利子の支払額を認定すべきである。
勤務先の株式報酬制度に基づいて支給された株式に係る給与所得の収入すべき日は、当該報酬制度による株式を無償で取得する権利(アワード)に係る株式が口座に入庫された日が相当と判断した事例
裁決事例集 第88集
ポイント
所得税法第36条第1項は、現実の収入がなくても、その収入の原因となる権利が確定した場合には、その時点で所得の実現があったものとしてその権利確定の時期の属する年分の課税所得を計算するという建前(いわゆる権利確定主義)を採用したものと解される。
本事例は、株式報酬制度による株式を無償で取得する権利(アワード)に係る株式が口座に入庫された日において、権利が確定し、当該株式に係る株主としての地位を取得したと認められるから、アワードに係る利益の収入すべき日は入庫日とするのが相当と判断したものである。
要旨
原処分庁は、請求人が元勤務先の属する企業グループの株式報酬制度に基づき株式を無償で取得する権利(本件各アワード)を付与されたことによる利益の収入すべき日について、アワードステイトメントに本件各アワードのベスティング日が平成19年8月1日と記載され、元勤務先の税務の担当者の申述によれば、請求人が株式を受領する権利を得たのは同日であると認められることからすると、当該利益の収入すべき日は、同日である旨主張する。
しかしながら、請求人が最終的に支払を受けるのは株式の現物及び端株に相当する金額の金員であるところ、ベスティング日においては、請求人に実際に支給される株式の株数及び後日支給を受ける金員等の額は具体的に確定していないことに加え、請求人が当該株式の発行会社の株主としての地位を取得したことを裏付ける証拠も見当たらず、かえって当該株式が請求人の口座に入庫された日(平成19年8月17日)に株主としての地位を取得したと認められることからすれば、ベストされた本件各アワードの最初の決済日である入庫日に、現物株式を無償で取得したことによる利益及び金員の支給等を受ける権利が確定し、担税力のある所得が実現したとするのが相当である。
参照条文等
医師が医院建築資金を銀行から借り入れる際に締結した生命保険契約に係る支払保険料は、家事上の経費に該当し、事業所得の金額の計算上必要経費とはならないとした事例
裁決事例集 第29集 30頁
要旨
整形外科医師である請求人が銀行から医院建築資金を借り入れる際に銀行の要請によって締結した本件生命保険契約は、保険金受取人を請求人の妻及び子としており、仮に保険事故が発生し保険金が支払われた場合、請求人の妻子に継承される債務を減少させるとともに、連帯保証人でもある妻の債務の負担を免れ又は軽減させることになるものであり、もって請求人の妻子の生活を安定させるために締結されたものであるから、これに基づく本件生命保険料は、所得税法施行令第96条第1号及び第2号に規定する経費とは認められず、同法第45条第1項第1号に規定する家事上の経費というべきであり、同法第37条に規定する必要経費に該当するものではない。
原処分庁は、各店舗の水道光熱費を基礎として同業者比率法により各店舗ごとの所得金額を算定しているが、各店舗の水道光熱費の合計金額を基礎とする推計方法がより合理的であるとした事例
裁決事例集 第83集
ポイント
請求人が原処分庁と異なる推計方法を主張した場合には、裁決において、いずれがより合理的な推計方法であるかを判断し、他に、より合理的な推計方法があればそれを採用することとしているところ、この事例は、請求人が主張する推計方法により所得金額が算定できるか否か、また、どのような推計方法(何を推計の基礎とするか)がより合理的であるかを判断したものである。
要旨
請求人は、所得金額の推計方法は資産負債増減法によるべき旨主張し、一方、原処分庁は、請求人と同業種であると認められる個人事業者のうち、水道光熱費の金額が請求人の各店舗ごとに0.5倍以上、2倍以下である青色申告者を類似同業者として抽出し、当該類似同業者の水道光熱費の総収入金額に占める割合の平均値(平均水道光熱費率)を求め、請求人のそれぞれの店舗ごとの水道光熱費の金額を平均水道光熱費率で除して店舗ごとの総収入金額を算出し、さらに類似同業者の所得率の平均値(平均所得率)を乗じて算出する方法によるべきである旨主張する。
しかしながら、請求人から提出された貸借対照表は請求人の資産をすべて網羅したものであるとは認められないから、当該貸借対照表に基づいた資産負債増減法による推計の方法を採用することはできない。
また、原処分庁は、店舗ごとに水道光熱費を推計の基礎として所得金額を算出して合計する方法を採っているが、請求人は、近接する地域内の各店舗において「スナック」という同一の業種を営んでいるから、請求人が営む事業全体を事業規模の判断要素とし、それとの近似性という観点から、各店舗の水道光熱費の合計金額を基礎として、これにより「スナック」を営む同業者の中から類似同業者を選定し、当該類似同業者の平均水道光熱費率及び平均所得率を適用して、請求人の総収入金額及び事業所得の金額を算定する方法がより合理的である。
参照条文等
参考判決・裁決
東京地裁昭和61年5月26日判決(税資152号192頁)
要旨
所得税法第56条にいう「生計を一にする」とは、同一の生活共同体に属して日常生活の資を共通にしていることをいい、親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる特段の事情があるときを除き、これらの親族は生計を一にするものと解される。
本件においては、請求人と妻の父母とは同一の家屋に居住していると認められ、また、家事上の共通経費についての実費精算が行われているとする事実が認められないことから、請求人らと同父母とが、互いに独立した生計を営んでいると認められる特段の事情は認められない。
そうすると、原処分庁が、同父母に支払った給料及び地代を必要経費の額に算入しなかったことは相当である。
なお、退職金の支給額、修繕費の計上漏れ等を必要経費の額に算入する等の結果、原処分の一部を取り消すべきである。
同族会社に支払った不動産の管理料について、所得税法第157条《同族会社等の行為又は計算の否認》を適用せず、同族会社は管理行為を行っていないとして、所得税法第37条《必要経費》により、その全額の必要経費算入を認めなかった事例
裁決事例集 第71集 205頁
要旨
請求人は、所得税法第157条第1項の適用に当たっては、経済的合理性を欠く行為や異常な取引形式に基づき、所得税の負担を不当に減少させる結果となることが要件となるが、請求人が不動産の管理を本件不動産管理会社に委託した行為は経済的合理性を欠く行為でも異常な取引形式でもなく、また、本件管理料は、本件不動産管理会社に委託した管理業務の内容及び事業規模並びに収益の状況等個々の実態に応じて算定しており、恣意性が介入する余地はなく、不動産収入を得る上での役務の対価として相当な金額であるから、本件管理料は不動産所得の金額の計算上必要経費に算入されるべきである旨主張する。
これに対し、原処分庁は、請求人が本件不動産管理会社に管理を委託しているアパート及びマンション(以下「本件賃貸不動産」という。)に係る管理料は、委託する管理業務の程度が異なるにもかかわらず、全ての不動産に一律に不動産年間賃貸料の10%としているが、その算定根拠は明らかでなく、通常の商取引においては考えられない異常な取引形式であり、また、本件賃貸不動産については、M社等に管理を委託しているにもかかわらず、さらに本件不動産管理会社にも管理を委託する行為は、同社が同族会社であるがゆえになし得る行為であり、純経済人の行動としては極めて合理性を欠く行為であるから、所得税法第157条第1項が適用される旨主張する。
しかしながら、本件賃貸不動産については、[1]本件不動産管理会社の管理業務とされる定期的な清掃業務等は、別途、M社等の不動産管理会社に委託している管理業務と同一のものであり、M社等において本来の業務として行われていることから、当該管理業務を本件不動産管理会社に委託する客観的必要性は認められないこと、[2]本件賃貸不動産の敷地内の看板には、M社等の社名が明示されており、本件不動産管理会社が賃借人及び第三者の窓口等となっている事実は認められないこと、[3]本件不動産管理会社においては、管理業務を実施した記録がなく、同社が管理業務を実施したことを客観的に認めるに足る証拠は認められないことなどからすれば、同社が本件賃貸不動産に係る管理業務を行ったことを認めることはできない。
したがって、請求人が本件不動産管理会社に委託した業務は、いずれも請求人の不動産所得を生ずべき業務遂行上の必要性が認められず、また、本件不動産管理会社が管理委託契約に基づく業務について履行したことを客観的に認めるに足る証拠も認められないことから、本件管理料のうち、請求人の所得税法第37条第1項に規定する不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、○○○○円とすることが相当であり、所得税法第157条第1項の規定を適用する余地はなく、当事者双方の主張を採用することはできない。
要旨
請求人は、本件商品先物取引に係る所得は、[1]営利性、有償性、[2]継続性、反復性、[3]自己の危険と計算による企画遂行性、[4]精神的、肉体的労力の程度、[5]人的、物的設備、[6]資金調達方法及び[7]職業、経歴及び社会的地位からみて事業所得であると主張するが、請求人の社会的地位(商品先物取引が禁止されている登録外務員であり、かつ、商品先物取引業を営む会社の役職ある地位にある)及び商品先物取引が一般的に極めて投機性の強い射こう的な取引であって、元来、事業としてなじみ難い取引であること等から総合的に判断すれば、本件商品先物取引は所得税法にいう対価を得て継続的に行う事業とは認められず、本件商品先物取引に係る損失は、雑所得に属する。
商品先物取引による所得は請求人に帰属すると認められ、また、年末における建玉に係る値洗い損の額は単なる計算上の金額に過ぎず、これを必要経費に算入することはできないとした事例
裁決事例集 第61集 83頁
要旨
請求人は、本件商品先物取引の委任契約は請求人の手仕舞いの依頼により終了したというべきであるから、当該取引に係る所得は請求人に帰属しない旨主張するが、本件委任契約は、当該取引に係るすべての決済が終了した日まで継続しており、それまでの間の当該取引が一任売買であるということもできず、仮に一任売買であったとしても、請求人が当該取引から生じた利益を現実に享受している以上、当該取引に係る所得は、請求人に帰属すると認めるのが相当である。
また、請求人は、仮に、本件商品先物取引に係る所得が請求人に帰属するとしても、年末における建玉に係る値洗い損の額は、雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである旨主張するが、値洗い損の額は単なる計算上の金額にすぎず、その年において債務が確定したということはできないから、雑所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。
商法第349条第1項に規定する反対株主の株式買取請求に基づき株式発行法人が自己の株式を取得した日は、株式買取価格の決定の申請に係る和解成立の日であるとした事例
裁決事例集 第70集 105頁
要旨
請求人は、商法第349条第1項に規定する反対株主の株式買取請求に基づき、株式発行法人が自己の株式を取得した日は、株主等が発行法人との間で能動的に行った契約の成立ないし法律行為の日、すなわち反対株主が株式買取請求権を行使した日であり、その日は商法等の一部を改正する等の法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律第44条第2項(本件経過措置)に規定する施行日(平成13年10月1日)前であるから、所得税法第25条第1項第5号に規定する自己の株式の取得を事由とするみなし配当課税は適用されない旨主張する。
しかしながら、同号に規定する自己の株式の取得とは、株式発行法人がする証券取引所の開設する市場における購入による取得等以外の自己の株式の取得であり、本件自己の株式の取得は、反対株主の株式買取請求に応じて売買により取得したものであるから、本件自己の株式の取得の日については、売買の効力が生じたときがいつであるかに帰着するところ、売買では代金は重要な要素であるから、代金額が定まっていない場合には、売買の効力は生じないと解される。本件は、当事者間において株式買取価格が調わず、裁判所に商法第245条の3第3項の規定に基づき価格の決定を申請し、和解により株式買取価格が決定し、それに基づき株式発行法人が請求人に対して株式買取代金を支払い、請求人は株式発行法人に株券を引き渡したものであるから、その和解の日に、売買契約の効力が生じ、当事者双方が契約を履行したといえる。そうすると、本件における自己の株式の取得の日は、本件経過措置に規定する施行日以後となるから、所得税法第25条第1項第5号の規定が適用される。
なお、最高裁昭和48年3月1日決定は、反対株主が株式買取請求権を行使したときは、法律上当然に会社と株主の間に売買契約が成立したのと同様の法律関係が生ずると判示するが、この法律関係とは、会社が株主から将来決定する価格で株式を買い取る義務を負い、株主が会社に同価格で株式を売り渡す義務を負うという法律関係をいうのであって、売買契約の効力が生じたことまでをいうものではない。
ポイント
本事例は、風俗店の受付事務所の賃貸借契約、風営法に係る所定の届出書の提出並びに開廃業に関する届出書及び確定申告書の提出が請求人自身の名義により行われているものの、当該風俗店の経営者として営業を支配管理し、その収益を自己に帰属させている者は請求人ではないから、当該風俗店に係る所得は請求人には帰属しないとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人は風俗店の営業に当たり、請求人自身の名義で、当該風俗店の受付事務所を賃借するとともに風営法所定の届出書を提出している他、当該風俗店の開廃業に関する届出書及び確定申告書を原処分庁に提出していることを総合すれば、本件各年分の当該風俗店の収益は請求人に帰属する旨主張する。
しかしながら、これらの届出名義や契約名義等にも関わらず、当該風俗店における事業の経営者として営業を支配管理し、その収益を自己に帰属させていたのは、請求人ではなくKであると認められ、所得税法第12条《実質所得者課税の原則》及び消費税法第13条《資産の譲渡等を行った者の実質判定》から、各年分の当該風俗店に係る所得はKに帰属し、また、各課税期間の当該風俗店に係る資産の譲渡等の対価を享受する者はKであると認めるのが相当である。
参照条文等
参考判決・裁決
名古屋地裁平成17年11月24日判決(判タ1204号114頁)
国が請求人所有土地を駐留軍用地として10年間強制使用するについて請求人に対し損失補償金として一括で支払われた10年間の地代の収入すべき時期は、収用裁決に基づく請求人所有土地明渡しの日及び損失補償金全額の受領の日の属する年分であるとした事例
裁決事例集 第41集 78頁
要旨
国が請求人所有土地を駐留軍用地として10年間強制使用するについて請求人に対して支払われた損失補償金の収入すべき時期について、請求人は、損失補償金は10年間の地代の一括前払であり前受収益に該当するものであるから、損失補償金を収受した昭和62年分の不動産所得の総収入金額とされる金額は収用裁決に基づく請求人所有土地明渡しの日である昭和62年5月15日から同年末までの期間に対応する金額とされるべきである旨主張するが、請求人は土地明渡しの時期において損失補償金の全額についてその支払を請求し得ることとなったものと認められ、また、請求人は、昭和62年3月25日、損失補償金の全額を受領したことから、請求人はその受領の時点で当該利得の全額を現実に支配管理し、自己のためにこれを享受しているというべきであり、したがって本件損失補償金はその全額が昭和62年分の不動産所得の総収入金額に算入されるべきである。
要旨
請求人は、本件土地の取得費は、昭和55年12月20日に支払った600万円だけではなく、この価額に昭和56年1月28日に支払った600万円を加えた1,200万円であると主張し、その理由として、[1]昭和56年1月28日に600万円を支払ったことは登記原因の日付が昭和56年1月28日となっていることからも明らかであり、[2]本件土地の取得に当たっての譲渡代金を600万円とする売買契約書は、印章の押印がなく、売買契約書としての効力がなく、請求人が保管していた前所有者自筆の売渡契約書こそ印章の押印もあり、真実の書類であって、[3]隣接地が昭和61年5月に坪当たり5万円で売買されていることからみて、本件土地の昭和55年頃の坪当たり単価は約4万円が相当であると主張する。
しかしながら、[1]登記原因の日付が昭和56年1月28日となったのは農業委員会の所有権移転の許可が昭和56年1月27日であったことからと認められ、登記原因の日が残金の支払いの証拠とはいえず、[2]売買契約書には契約の日付の記載がなく、買主欄に請求人の押印はないものの、2か所の訂正箇所には売主、買主双方の押印がされていることからすると、実態を反映しないものとは認められず、昭和56年1月28日に600万円を支払ったことを証明する領収書はなく、請求人が自ら原処分庁に600万円で買い入れたと回答していることなどから売渡契約書が真実の契約書であるとの請求人の主張は採用できず、更に、[3]請求人の売買事例は取得から5年以上経過後のもので、物件の形状なども異なっており事例として不適当であり、地価事情が類似し、かつ、取引年月日が近い売買実例価額は、1平方メートル当たり5,952円であることなどから、本件土地の取得費は600万円と認めるのが相当である。
ポイント
この事例は、請求人が同人の夫の父の後妻名義の土地を取得したことにつき、①請求人の夫から相続により取得したものか、時効により取得したものか、②仮に、時効により取得した場合には、訴訟追行のための弁護士費用等は、一時所得の金額の計算上、総収入金額から控除できるか否かが争われたものである。
なお、①については、請求人の夫から相続により取得したものではなく、時効の援用により取得したものとして一時所得に該当すると判断している。
要旨
請求人は、所有権移転登記請求訴訟(本件訴訟)により、時効取得が認められた土地の取得が一時所得に該当する場合、本件訴訟に係る弁護士費用等は、一時所得の金額の計算上収入を得るために支出した金額に当たる旨主張する。
しかしながら、時効取得による一時所得の金額の計算上、総収入金額から控除できる金額は、取得時効の援用の意思表示を相手方へ明らかにするために直接要した費用のみであるところ、本件訴訟に係る弁護士費用等は、登記の変更を求めるためのもので取得時効を援用するために直接要した費用とは認められないから、一時所得の収入を得るために支出した金額には当たらない。
参照条文等
参考判決・裁決
東京地裁平成4年3月10日判決(訟月39巻1号139頁) 静岡地裁平成8年7月18日判決(行集47巻7・8号632頁、裁Web)
土地取得後これを利用することなく譲渡した場合には、その土地の取得に要した借入金の利子及び抵当権設定費用等は当該土地の取得費に算入すべきであるとした事例
裁決事例集 第17集 27頁
要旨
- 資産の利用を目的として資産を取得した場合におけるその資産の取得のための借入金の利子の性格は、当該資産を供した利用目的のための費用と観念するのが通常であって、その利用によって収入を得た場合においては、当該利子は、不動産所得の金額の計算上控除すべき必要経費に該当し、他方、資産を譲渡することにより値上がり益を得ることを目的として資産を取得した場合においては、資産取得のための借入金の利子のうち、譲渡の日までの部分に対応する金額は、譲渡収入を得るための通常、かつ、必要な費用と考えられ、資産の取得に要した金額に該当するものと解される。
- 資産の取得の目的は、取得者の内心に係る事柄であり、第三者がその真意を知ることは困難であること及び取得時の取得目的がその後において変更されることが少なくないことを考慮すると、資産の種類、性質、形状その他外形的に判断できる利用の結果等からみて、客観的にその目的及び目的の変更を認定するのが合理的であるから、たとえ個人がその内心においては業務の用又は居住等の用に供する目的で資産を取得した場合であっても、何らの用に供することなく譲渡した場合には、当初から値上がり益を得ることを目的として取得したものとして、取得のために要した借入金の利子は取得費に算入し、また、内心においては値上がり益を得る目的で資産を取得した場合であっても、その後において目的を変更して業務の用又は居住等の用に供した場合には、その時以後の期間に対応する借入金の利子は、業務上の必要経費又は家事費に当たると解するのが、それぞれ租税負担の合理性、衡平性の観点からみて相当である。
- 借入金の担保のための抵当権設定費用及び借入金債務返済契約の公正証書作成費用は、借入金債務に付随する費用であって借入金利子と同性質のものであるから、借入金利子が資産の取得費を構成するのと同様の理由によって資産の取得費に含まれると解するのが相当である。
要旨
契約対象物件の全部の引渡しが完了していない場合における譲渡所得の課税に当たって、[1]契約対象物件の大部分の引渡しが行われていること、[2]引渡物件に見合う対価を収受し、請求人の事業資金等に使用されていること、[3]引渡未了物件は第三者所有の物件で、請求人がそれを取得して契約の相手方に引き渡すことは事実上不能であること、[4]契約対象物件の一部を引き渡さなかったことを原因とする当該契約の解除がなされた事実はないことからみると、本件売買契約は、黙示の合意による変更がなされ、当事者双方が履行をなしたところをもって契約の部分的完結がなされたものと認められるので、一部の引渡しを了していないので課税適状にはないという請求人の主張は相当でなく、また、引渡未了分を含めた売買契約書に基づき譲渡所得の金額を算定した原処分も相当でない。
外国に所有するマンションに係る譲渡所得を申告しなかったため平成16年分の所得税の更正処分を受けた請求人が外国税額控除の適用があるとして同処分の取消しを求め、また、外国税額控除が平成16年分の所得税において適用されないなら、平成17年分において適用すべきとの主張を排斥した事例
裁決事例集 第74集 98頁
要旨
請求人は、A国に所在する不動産を平成16年に譲渡した所得は日本とA国の両方で課税対象となっており、二重課税の状況にあることから平成16年分の所得税において外国税額控除を適用すべきであり、また、平成16年分の所得税において外国税額控除が適用されないのであれば、平成17年分の所得税において外国税額控除を適用すべきであるから、請求人の更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消すべきである旨主張する。
しかしながら、請求人の場合、A国で納付すべき外国所得税の額が確定したのは平成17年中であり、平成16年中に納付する外国所得税の金額はないから、平成16年分の所得税額の計算において外国税額控除の適用を認める余地はなく、平成16年分の所得税の更正処分は適法である。
また、請求人が提出した平成17年分の所得税の確定申告書及びこれに添附された外国税額控除に関する明細書には、適法に計算された金額が記載されているから、更正の請求に理由がないとする当該通知処分は適法である。
外国法人の株主として受けた当該法人の子会社の株式の分配は、同法人が同法人の株主に対して同法人の利益剰余金を原資に、株主の所有株数に応じて分配したものと認められることから、所得税法第24条第1項に規定する利益の配当に該当するとした事例
裁決事例集 第65集 84頁
要旨
請求人は、外国法人であるH社の株主として、H社から受けたH社の子会社であるJ社株の分配(以下、「本件株式分配」という。)は、親会社を通じて間接的に所有していた子会社の株式を直接所有することに変わったものにすぎないことから、配当にも所得にも当たらないこと、また、本件株式分配は、企業分割に伴う株式分配であるから、所得税法第24条に規定する配当にも、同法第25条に規定するみなし配当にも該当しない旨主張する。
しかしながら、本件株式分配は、親会社が同社の株主に対して同社の利益剰余金を原資に、株主の所有株数に応じて子会社の株式を分配したものと認められることから、請求人が本件株式分配によって取得した子会社の株式は、所得税法第24条第1項に規定する「利益の配当」に該当するものと認められるので、請求人の主張には理由がない。
ポイント
所得税法は、不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金であっても、課税されるべき所得に係る収入金額に代わる性質を有する休業補償や収益補償等を非課税所得から除くこととし、それ以外の本来課税することが適当でない実損害を補てんするための損害賠償金を非課税所得としている。
この事例は、外国為替証拠金取引の取扱業者らから支払われた金員が、当該取扱業者らの不法行為により、請求人に相当額の実損害を被らせたことにより支払われた損害賠償金であるか否かが争われたものである。
要旨
原処分庁は、本件金員(請求人が、外国為替証拠金取引の取扱業者らに対し、不法行為による損害賠償金の支払を求める訴訟を提起し、同訴訟の裁判上の和解により得た金員)は、本件FX取引(請求人が行った店頭外国為替証拠金取引(店頭FX取引)及び取引所FX取引)による売買損益を補てんする機能を有するものであるから、雑所得に係る総収入金額に算入すべきものである旨主張する。
しかしながら、所得税法第9条第1項第16号《非課税所得》及び所得税法施行令第94条《事業所得の収入金額とされる保険金等》第1項第2号は、不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金について、課税されるべき所得に係る収入金額に代わる性質を有する休業補償や収益補償等以外の本来課税することが適当でない「実損害を補てんするための損害賠償金」を非課税所得としているところ、本件FX取引においては、説明義務違反及び誠実義務違反というH社らの不法行為により請求人の資産に損害が加えられたものと認めるのが相当であることからすると、本件金員は、H社らの不法行為により請求人の資産に加えられた実損害(本件FX取引において証拠金として預託した金銭の一部を失った損害)を補てんするために支払を受けた損害賠償金、つまり「実損害を補てんするための損害賠償金」に該当するものと認められる。したがって、本件金員は非課税所得に該当するから、これを雑所得に係る総収入金額に算入すべきとする原処分庁の主張は、採用できない。
参照条文等
所得税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)第9条第1項第16号 所得税法施行令(平成22年政令第50号による改正前のもの)第30条第2号、第94条第1項第2号
参考判決・裁決
名古屋高裁平成22年6月24日判決(先物取引裁判例集60号40頁) 福岡高裁平成22年10月12日判決(先物取引裁判例集61号59頁)
夫婦の財産関係についていわゆる別産制を前提とする場合、夫婦が婚姻中に相互の協力、寄与等によって得た資産であっても、いずれか一方の名義となっている財産は、単なる名義貸しによるものであることが明らかである場合を除き、当然に共有とはならず、その名義人を所有者として取り扱うのが相当であるとした事例
裁決事例集 第58集 47頁
要旨
請求人らは、本件不動産の所有権は、被相続人とその妻であるHの離婚前においてその全部若しくは2分の1がHに帰属している旨主張する。
ところで、民法第762条によれば、夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中に自己の名で得た財産はその特有財産とし、夫婦のいずれかに属するか明らかでない財産はその共有に属するものと推定する旨規定されており、夫婦の財産関係について、いわゆる別産制をとっていると解されるから、夫婦が婚姻中に得た所得やそれによって取得した財産の全てが、当然に夫婦の共有となるものではない。
そうすると、夫婦が婚姻中に相互の協力、寄与によって得た資産であっても、いずれか一方の名義となっている場合には、その取得資金の拠出等の事実に基づき、他方の特有財産であることが明らかであるとき若しくは夫婦の共有財産であることが明らかであるときなど、当該名義が単なる名義貸しによるものであることが明らかである場合を除き、その名義人を当該資産の所有者として取り扱うのが相当である。
これを本件についてみると、請求人の提出資料からは、Hが本件不動産の取得資金の全部又は一部を拠出した事実若しくは被相続人からHに事業を引き継いだ時点で本件不動産の所有権がHに移転している事実を認定することはできず、また、原処分関係資料及び当審判所の調査によっても同様である。
したがって、本件不動産は、被相続人が婚姻中に自己の名義で取得しているのであるから、民法第762条の規定により被相続人の特有財産であり、被相続人とHの共有となるものではないところ、その名義が被相続人名義となっていることについて、単なる名義貸しによるものであることが明らかであるとは認定できず、Hに所有権が移転したとする事実も認められないことから、被相続人をその所有者として取り扱うのが相当である。
ポイント
本事例は、妻と使用人との労務提供の程度の差違が従事時間に現れる程度であり、これを前提に適正給与相当額を検討したところ、妻に対する青色専従者給与額は著しく高額であり、当該青色専従者給与額のうち適正給与相当額を上回る部分の金額は、事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないとしたものである。
要旨
請求人は、青色事業専従者である妻に対して支払った給与の金額(本件青色専従者給与額)は、妻の労務の性質及びその提供の程度からすれば、その全額が妻の労務の対価として相当額(適正給与相当額)であると認められるべきである旨主張する。
しかしながら、適正給与相当額として認められるためには、所得税法施行令第164条《青色事業専従者給与の判定基準等》第1項に規定する①労務に従事した期間、労務の性質及びその提供の程度、②その事業に従事する他の使用人が支払を受ける給与の状況及びその事業と同種の事業でその規模が類似するものに従事する者が支払を受ける給与の状況、③その事業の種類及び規模並びにその収益の状況の3つの要素を総合勘案して、青色事業専従者の労務の対価として相当であると客観的に認識できるものでなければならないところ、当審判所の調査の結果によれば、請求人の妻の労務の性質は、請求人の事業に従事する各使用人(本件各使用人)のそれと大きく異なるものではなく、妻の労務の提供の程度は本件各使用人のそれと従事時間に現れる程度の差異があったと認められるから、これを前提として、上記②の各方法により適正給与相当額を検討したところ、本件青色専従者給与額は、著しく高額であり妻の適正給与相当額であるとは認められない。そうすると、本件青色専従者給与額のうち適正給与相当額を上回る部分の金額は、事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。
参考判決・裁決
名古屋地裁平成13年5月30日判決(税資250号順号8910) 山口地裁平成7年6月27日判決(税資209号1167頁) 名古屋地裁平成5年11月19日判決(税資199号819頁)
要旨
本件譲渡は、妻の銀行からの借入金に係る保証債務の履行のためのものであるが、妻は資産を所有しており、求償権の行使ができないこととなった場合に当たらないので所得税法第64条第2項を適用することはできず、また、請求人は、本件譲渡時において所有する資産が負債を上回っており、請求人が資力を損失したとはいえないことは明らかであるから、同法第9条第1項第10号にも当たらない。
要旨
請求人は、船舶の一部の貸付けによる所得も不動産所得に含まれること、○○国船籍の客船(本件船舶)の一船室の貸付け(本件業務)は、本件船舶に係る居住権の貸付けでありこれは船舶の上に存する権利の貸付けであること、本件業務に係る所得は資産性所得であること、そして、役務の提供は僅かであることなどの理由から本件業務に係る所得は不動産所得であると主張する。
しかしながら、請求人はレンタル利用者に対し単に一船室を利用させているだけではなく相当程度のサービスと一体となったクルーズを提供しているというべきであり、本件業務に係る所得がほとんど又は専ら船舶を利用に供することにより生じたものとはいえないことから、本件業務に係る所得は不動産所得には該当せず、また、本件業務は営利性・有償性及び継続性・反復性を具備しているものの、本件業務の目的は毎年の維持管理費用を少しでも回収すること、請求人は年に4回程度外国送金依頼書に署名するのみであること、本件業務に係る従業員を雇用せず事務的設備を整えていないこと、医療法人の理事長として給与等を得ており生活の資の大部分をこれらの法人から得ていたこと、そして、自己資金の範囲内で本件業務を行っていることなどから、一般社会通念に照らし、本件業務は事業とは認められず、本件業務に係る所得は雑所得に該当する。
参照条文等
要旨
青色申告者の帳簿書類の備付け等とは、単に帳簿書類が物理的に存在するというだけでなく、担当職員の求めに応じてそれを提示することを当然の前提としており、担当職員から帳簿書類の提示を求められたにもかかわらず正当な理由がなくしてこれを提示しない場合には、帳簿書類の備付け等がないものとみるべきであると解されているところ、原処分庁の担当職員が請求人の所得税の調査のため必要であるとして請求人に帳簿書類の提示を求めたことに対し、請求人が具体的な調査理由が開示されてないとの理由でその提示を拒否しているが、これは帳簿書類の不提示の正当な理由にはならないから、帳簿書類の備付け等がないものとして、所得税法第150条第1項第1号を適用して青色申告の承認の取消しをおこなったことは相当である。
年の中途で死亡した者の控除対象配偶者に該当するかどうかは、死亡時の現況により見積もったその年の1月1日から12月31日までの配偶者の合計所得金額により判定すべきであるから、配偶者控除は適用できないとした事例
裁決事例集 第78集 193頁
要旨
請求人らは、所得税法第85条第3項において、年の中途において死亡した居住者の配偶者がその居住者の控除対象配偶者に該当するかどうかの判定は、死亡の時の現況による旨規定しており、居住者が死亡の時まで配偶者を扶養していたか否かによって判断されるから、当該判定に係る配偶者の合計所得金額の計算期間はその年の1月1日からその居住者の死亡の日までとなる旨主張する。
しかしながら、合計所得金額を構成する所得税法第23条から第35条までの各種所得金額は、いずれも「その年中の」、すなわち、1月1日から12月31日までの収入金額又は総収入金額を基礎に計算されることから、それらの合計である合計所得金額についても1月1日から12月31日までの期間で計算されることとなる。そして、このことは、配偶者控除を受けようとする居住者が年中に死亡していたかどうかによって異なるものではない。
要旨
所得税法第30条及び同法第31条の立法趣旨等を踏まえれば、厚生年金保険法第9章の規定により定められた厚生年金基金規約に基づき厚生年金基金から受ける一時金のうち、退職金としての性質を有している一時金、すなわち、①元の雇用主が払い込んだ掛金、保険料が給付の原資の大部分を占めているものであり、かつ、②退職金規程に定められた退職金に含まれる年金制度からの一時金であるなど、給与所得者であった者が退職日以後に過去の勤務に基づいて支給される一時金で加入員の退職に基因して支払われたと認められるものは、所得税法第31条第2号に規定する一時金で「加入員の退職に基因して支払われるもの」に該当し、税法上、退職所得として取り扱うと解するのが相当である。
そして、厚生年金基金から支払われる年金のうち退職金としての性質を有している一時金に相当する部分(以下「一時金相当部分」という。)は、加入員、雇用主及び厚生年金基金の合意の下、一定年齢に達した際に、加入員の老後の生活の糧とするために、厚生年金基金に委託することにより、退職金の性質を持つ金員を年金という形式で加入員に分割して支払われるものとみることもできることから、一時金相当部分については、原則、退職時において退職所得としての権利が確定しているとして課税を行うべきものとみることもできるが、所得税法は、当事者の意思及び分割され年金として支払われる支払実態などにかんがみ、同法第35条第2項及び第3項の規定において公的年金等として雑所得である旨規定し、一時金相当部分は、それが分割され年金として支払われている限りは退職所得として課税せず、年金として支払われた年分において雑所得として課税するという、年金としての課税を行うものであると解される。
そうすると、現に厚生年金基金から、退職金としての性質を有する一時金の一部を年金として支払を受けていた者が、自らの意思に基づき、今後年金として支払を受ける権利に代えて一時金として受け取ることを選択した場合にあっては、前述した老後の生活の糧とするために分割して受け取るという当事者の意思及び分割して支払われる支払実態など、年金として課税すべき考慮要素が消滅するから、当該一時金の本来の性質に基づき、退職所得として課税することが相当であると解される。
したがって、所得税法第31条第2号に規定する「加入員の退職に基因して支払われるもの」とは、退職金としての性質を有する一時金が退職時に支払われた場合のみならず、この一時金の一部を年金として厚生年金基金から支払を受けていた年金受給者が、自らの意思により、今後年金として支払を受ける権利に代えて一時金として受け取った場合も含まれると解するのが相当である。
本件の事実関係によれば、本件一時金は、A厚生年金基金規約に基づいてA厚生年金基金から支給される加算年金に対応する終身までの年金給付の総額に代えて支払われたものであり、また、加算年金の掛金は事業主が負担したものであり、さらに、本件一時金は、勤務先を退職し、加算年金の給付を受けている者しか受け取ることができず、請求人が自らの選択により一時金として受け取ったものと認められることからすれば、本件一時金は、所得税法第31条第2号に規定する退職手当等とみなすものとして、退職所得であると認めるのが相当である。
そして、本件一時金は、請求人が平成7年にB社(現A社)を退職したことに伴い受け取った退職一時金と同一の勤務先における過去の勤務に基づいて支給されたものであり、一の支払者から二以上の退職手当等の支払を受けるのと同様の事情があると認められるから、同法施行令第77条の規定により、請求人の退職日の属する年分である平成7年分の退職所得と認めるのが相当である。
店舗を立ち退く際に受領した立退料について、その支払者に精神的損害を補償する意思は認められず、また、資産損失を補償するものとは認められないことから、その全額が一時所得に係る収入金額に該当するとした事例
裁決事例集 第44集 97頁
要旨
請求人は、店舗を立ち退くに当たって受領した立退料の一部について、[1]所得税法施行令第30条第3号に規定する精神的慰謝料に該当するから非課税所得である、[2]顧客に係る営業権の滅失に伴い受け取ったものであり、所得税法第51条第1項の資産損失を補償するものであるから所得は生じない旨主張するが、当該立退料は総額で合意したものであり、[1]については、家主が請求人に対し精神的な損害を補償する意思を有していたものとは認められず、[2]については、有償で取得した営業権の存在は認められず資産損失の対象となる資産はないことになるので、請求人の受領した立退料の全部が一時所得に係る収入金額に該当する。
要旨
借入金によって建築した賃貸用ビル(マンション)の一部が前年までに分譲され、この分譲代金収入と賃貸料収入とをもって借入金の一部が返済されている場合において、分譲代金収入と賃貸料収入との合計額に対する分譲代金収入の割合を返済された元本額に乗じて得た金額が、前記返済元本額のうち分譲した部分の建築資金に係る借入金の額を超えているところから、分譲代金収入によって前記分譲した部分の建築資金に係る借入金は返済済みであると解しても不相当ではないので、当年分に残存する借入金はすべて賃貸用部分の建築資金に係るものと解することができ、当年分の借入金利子のうち、たまたま請求人の個人の用とした一室の建築資金に係るものを除き、賃貸料収入による不動産所得の必要経費と認めるのが相当であって、原処分の全部を取り消すべきである。
要旨
請求人がその役員及び使用人に対して与えた休暇帰国のための旅行は、一定期間(約3年)を超える勤務の後に従来からの慣例に従い、請求人の業務を兼ねて行われたものであり、本人の業績によって休暇帰国の認否及び旅費の支給額が左右されるような報償的性格を持つものではなく、また、その支給内容は、直行往復の航空券の現物交付であること等の事実が認められるもので、休暇帰国のための旅費については、役員等の分はもとより、その家族分をも含め、請求人の業務上の支出として認めるのが相当である。
要旨
請求人は、株式会社の代表取締役であったが、同社の株主総会の決議に基づき役員報酬を返還したことは、所得税法施行令第274条第2号に規定する事実に該当し、更正の請求ができる旨主張するが、当審判所の調査によれば、本件役員報酬の支給につき、一定の場合は、これを減額し、又は返還するなどの特段の定めがあったとは認められず、結局、請求人は経営上の事情から任意に本件役員報酬を返還したものであり、これは、請求人が会社に対し、その財務体質を改善するため私財を提供する旨の新たな合意がなされたことによるべきであるから、請求人が本件役員報酬を返還したことは、取り消すことのできる行為が取り消されたことによるものとはいえず、同号に規定する事実に該当する旨の請求人の主張には理由がない。
役職に変動がなくても労働条件等に重大な変動があり、単なる従前の勤務関係の延長とみることはできないとして、退職手当等としての性質を有する給与に該当すると認定した事例(平成24年5月分の源泉徴収に係る所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分・全部取消し)
裁決事例集 第97集
ポイント
本事例は、形式的な役職の変動ではなく実質的な勤務実態や支給に至った経緯等を総合勘案し、実質的に退職したのと同視し得る状況にあったと認定し、所得税法第30条の「(退職手当・・・その他の退職により一時に受ける給与及び)これらの性質を有する給与」に該当するとしたものである。
要旨
原処分庁は、学校法人である請求人が設置、運営する幼稚園(本件幼稚園)の園長兼請求人の理事長である者(本件園長)に対し退職金として支払われた金員(本件金員)について、本件園長は、引き続き他の職員と同様に出勤し請求人から給与を受領していることから、勤務関係が終了したとは認められないこと、また、本件園長が請求人の理事長としての業務を引き続き行っており、本件園長の勤務時間及び給与等の減少割合からしても、本件園長の勤務関係の性質、内容及び労働条件に重大な変動があったものと認めることはできないことから、本件金員に係る所得は給与所得に該当する旨主張する。
しかしながら、本件園長並びに本件幼稚園の副園長及び事務長の答述その他関係資料等によれば、本件園長の行う職務全体に占める理事長としての職務の割合は、本件幼稚園の園長としての職務に比べてごく僅かであったと認められること、また、実質的な園長としての職務のほとんどを副園長に引き継ぐことにより、その職務内容は量的にも質的にも大幅に軽減され、その実態に即するように基本給の額を減額するなど労働条件も大きく変動したものと認められ、本件園長の勤務関係は、その性質、内容及び労働条件等において重大な変動があって、形式的には継続している勤務関係が実質的には単なる従前の勤務関係の延長とみることができない特別の事実関係があるというべきであるから、本件金員は、所得税法第30条《退職所得》第1項に規定する退職所得に該当する。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和58年9月9日第二小法廷判決(民集37巻7号962頁) 最高裁昭和58年12月6日第三小法廷判決(集民140号589頁)
要旨
懲戒解雇した従業員に対して、地位保全仮処分申請に係る裁判所の決定の履行として支払った金員は、当該決定が懲戒解雇の意思表示の効力を雇用関係存在確認訴訟事件の本案判決確定に至るまで停止させるとともに、本案判決確定まで請求人は当該従業員に対して毎月所定の金員を支払うよう命じていることなどから、請求人と当該従業員との間に雇用関係の存在することが認められるので、所得税法第28条第1項に規定する給与所得に該当するものとすることが相当である。
所得税法第64条第1項に規定する資産の譲渡代金が回収不能となった事実は、後発的事由を理由とする更正の請求をした日の2か月以上前に生じており、更正の請求は認められないとした事例
裁決事例集 第57集 181頁
要旨
請求人は、本件農地を譲渡した相手方であるHが本件覚書に基づく代替農地の提供を履行しないで行方不明になったことから、同人の所在及び所有財産の調査を行い、本件譲渡代金の一部が回収不能となった事実が生じたことを平成9年10月9日に確認したのであるから、更正の請求は、所得税法第152条で規定する期限内に提出されている旨主張する。
ところで、所得税法第64条第1項で規定する資産の譲渡代金の一部が回収不能となった事実が生じた日がいつであるかの判定は、客観的にみて当該譲渡に係る債権の回収の見込みがないことが確実となった日をもって判定すべきであるから、請求人の行った債務者の調査及び確認の作業が終了した日をもって、本件土地の譲渡代金が回収不能となった事実が生じた日に当たるとすることは相当でなく、本件にあっては、本件契約において請求人の本件譲渡に係る所得税はHが負担することになっていたのを平成9年4月25日に当該所得税を請求人自らが納付せざるを得なくなった段階で、請求人は、Hが請求人に対する債務を履行する資力がないと自認したものと認められるから、同日以前に回収見込みがないことが確実になったというべきである。
そうすると、本件の更正の請求は、本件譲渡代金の一部が回収不能となった事実が生じた日の翌日から二月を経過してなされたことは明らかであるから所得税法第152条の適用は認められない。
要旨
所有不動産について負担する固定資産税等が、不動産所得を生ずべき業務について生じた費用となるためには、一般的には、当該不動産が貸し付けられ、不動産所得を生ずべき業務の用に供されていることを要するものというべきであるところ、本件土地は、貸付けに係る業務のために保有されているものとは認められず、新たに貸し付けるための準備等がされているにすぎないから、本件土地に係る固定資産税は不動産所得を生ずべき業務について生じた費用とはいえない。
新株予約権の行使に伴い生じた経済的利益は雑所得に該当し、また、新株予約権の取得についての情報提供者に支出した手数料は雑所得の金額の計算上必要経費に算入されるとした事例
裁決事例集 第76集 136頁
要旨
請求人は、民法上の組合を通じて取得した新株予約権の行使による経済的利益は一時所得に該当する旨主張する。しかしながら、新株予約権を有利発行した法人は、その新株予約権の発行に当たり、事業拡大等のための資金調達のほか、投資家による新規事業への支援も計画し、これらの確実な実現を図るために本件組合を引受先とし、また、本件組合の出資者の投資リスク等も考慮して有利発行したものと認められることから、当該経済的利益は出資の対価としての性質を有しているといえる。したがって、当該経済的利益は、対価性が認められることから一時所得には当たらないことになり、また、請求人は、当該法人の役員等でもないことから給与所得にも当たらず、営利を目的とする継続的行為から生じた所得ではないから事業所得にも当たらず、さらには利子所得、配当所得、不動産所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得のいずれにも当たらないので、雑所得となる。
また、原処分庁は、請求人が本件組合を通じた新株予約権の取得についての情報提供者に支出した手数料は、株式の譲渡と密接に関連した費用であり、上場株式等の譲渡所得の金額の計算上、譲渡費用となる旨主張する。しかしながら、請求人が本件手数料を支払わなければ、当該株式の売却ができなかったわけではなく、また、情報提供者において、当該株式の売却に関与した事実も認められないことから、本件手数料は、請求人にもたらされた投資情報に基づき、当該組合に対する出資により、結果的に、請求人が得た経済的利益について生じた費用であると解するのが相当である。そして、当該経済的利益は雑所得に区分されるから、本件手数料は、雑所得の金額の計算上必要経費に算入される。
要旨
株式の取引が事業に当たるか否かは、一般社会通念に照らして判断するほかはないが、そのためには事業としての社会的客観性が問われるべきであり、この観点からすれば、その取引の種類、取引におけるその者の役割、取引のための人的、物的設備の有無、資金の調達方法その他諸般の状況等を総合勘案して判断すべきものであり、単に所得税法施行令第26条第2項各号に規定する株式の売買回数及び売買株数を充足しているだけでは足りず、株式のために投下若しくは動員された資金の額及び人的物的設備等が相当程度の規模によっていることを要すると解されるところ、請求人の株式取引のために費やした精神的、肉体的労力の程度、取引のための資金調達の方法、その人的、物的設備の組織的な利用状況、請求人の社会的地位等から判断して、本件の株式取引は事業に当たるとする社会的客観性を有しているものとは認められないので、当該株式取引から生じた損失の額を、雑所得を生ずべき営利を目的とした継続的行為から生じた損失の額と認定した原処分は適法である。
本件保証債務については、いずれもその保証を行うことが請求人の税理士等の事業の遂行上必要であったと客観的に認められる特段の事情はないとみるのが相当であるから、所得税法第51条第2項及び同法施行令第141条にいう「その事業の遂行上生じた保証債務」には該当しないとした事例
裁決事例集 第49集 62頁
要旨
請求人は、自己の顧問先であるE社及びF社(以下、これらを併せて「両社」という。)の借入金を保証したのは、会計事務所としてのマネ-ジメントサ-ビスによる報酬額の増加及び事業経費の削減を図るためのもので、税理士等の事業の遂行上必要なものであるから、本件保証債務の履行による損失の金額については、所得税法第51条第2項及び同法施行令第141条の規定に該当し、事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべきであり、また、本件利子割引料の額については、本件保証債務の履行に伴う借入金に係る支払利息の額であるから、事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである旨主張する。
しかしながら、本件保証債務については、いずれもその保証を行うことが請求人の税理士等の事業の遂行上必要であったと客観的に認められる特段の事情はないとみるのが相当であるから、所得税法第51条第2項及び同法施行令第141条にいう「その事業の遂行上生じた保証債務」には該当しないというべきである。
また、本件保証債務の履行による損失の金額は、請求人の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないと認められるから、本件保証債務の履行に伴う借入金の利子割引料の額についても所得税法第51条第2項及び同法施行令第141条の規定を適用することはできず、請求人の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。
本件土地は、請求人が代償分割により単独で取得したものであり、代償金は、請求人にとっては相続税の課税価格の計算上控除すべきものであり、遺産分割後の譲渡の際の所得金額の計算上控除すべきものではないとした事例
裁決事例集 第49集 224頁
要旨
- 遺産分割についての家事調停において、調停調書が作成され調停が成立したが、当該調書には[1]本件土地は、請求人が単独で取得する、[2]請求人は、その代償として他の相続人に代償金を支払う、[3]代償金の支払が遅延したときは、遅延損害金を支払う旨記載されている。
そうすると、本件土地は、請求人が取得し、その代償として他の相続人に金員を支払ったものと認められる。
また、請求人が本件土地を譲渡しているが、他の相続人が当該譲渡に関与した事実は認められないから、分割の済んだ本件土地を、請求人が単独で譲渡したものと認められる。 - 請求人は、本件調停の経緯からみて、本件調停による分割は、実質上の換価分割である旨主張するが、代償金の額は当時の買付け予定価格に比べ少ない額で取り決められており、各相続人の持分に応じた換価分割の結果によるものとは認められないこと、通常の換価分割では発生しないと認められる損害金の支払があることなどから、本件調停による分割は、換価分割によるものではなく、実質的にも代償分割によるものと認められる。
- また、請求人は、代償金であっても、譲渡所得の計算上控除が認められるべきである旨主張するが、代償金は、請求人にとっては相続税の課税価格の計算上控除すべきものであり、遺産分割後の譲渡の際の所得金額の計算上控除すべきものではない。
要旨
請求人は、本件競走馬の保有に係る所得は事業所得に該当すると主張する。
しかしながら、競走馬の保有に係る業務が所得税法第27条第1項にいう事業に該当するかどうかは、単に、その営利性、有償性、継続性、反復性の有無のみならず、業務に費やした精神的・肉体的労力の程度、業務のための人的・物的設備の有無、投下資本の調達方法、その者の職業(職歴)、社会的地位、生活状況及び当該業務から相当程度の期間継続して安定した収益が得られる可能性が存するか否か等を総合的に検討し、一般社会通念に照らして判断するのが相当であるところ、平成6年から平成10年までの間における請求人の保有する本件登録馬の頭数は、登録期間が6月以上のものは1頭ないし3頭と少数である上、請求人は、本件競走馬の保有に当たり、特別な事業所や設備は設置していなく、請求人は、専属の従業員も雇用しておらず、その管理運営は専ら第三者に委託していること、請求人は、主として建設工事業の業務に基づく所得により生計を賄っていたこと、請求人の本件競走馬に係る所得は、平成10年分こそ利益を計上したが、平成5年分ないし平成9年分は専ら損失の金額を計上するのみであったこと等からすると、本件競走馬の保有は、事業所得の基因となる事業といえるための諸要素を欠くものというほかなく、いまだ所得税法施行令第63条第12号に規定する「対価を得て継続的に行う事業」とは認められないというべきである。
要旨
歯列矯正施術料の収入金額の計上について、請求人は、過去の診療実績に基づき3年間に配分すべきであると主張するが、本件矯正施術料は、請求人と患者との間において締結された治療契約により、歯列矯正装置を装着した時に患者に請求し、受領しているから、矯正装置を装着した時に収入すべき権利が確定したものと認めるのが相当である。
法人に対して譲渡した本件土地の価額は、その近傍の土地の売買実例価格の2分の1を超えているので低額譲渡に当たらないとする請求人の主張に対し、当該近傍の土地は本件土地と立地条件等が大きく異なり、その売買実例価格は本件土地の時価を示すものとはいえず、請求人は本件土地を時価の2分の1に満たない金額で法人に譲渡したものと認められるとした事例
裁決事例集 第67集 350頁
要旨
- 請求人は、本件土地の法人に対する譲渡について、譲渡者である請求人と譲受法人とは、恣意的に利益を得ることを目的として譲渡価額を決定したものではないので、所得税法第59条の低額譲渡に該当しない旨主張する。
しかしながら、低額譲渡に該当するか否かは、譲渡価額が時価の2分の1に満たないか否かによって判断すべきであるから、当事者の具体的な意図、目的及び恣意性の有無を問わず、この規定が適用されるものである。 - 請求人は、本件土地と譲受法人が別途譲渡した近傍土地とは、所在する区域、利用価値、形状等の条件に差異はなく、また、当該近傍土地は第三者である仲介業者が複数介在して取引されたものであるから、その売買実例価額が本件土地周辺の時価を示しているものである旨主張する。
しかしながら、本件土地と近傍土地とは、同じ市街化調整区域内に所在し、国道を隔てた極めて至近距離に存することが認められるものの、本件土地はそのすべてが既存宅地の確認を受けているのに対して、近傍土地は、その一部は宅地であるものの、他は宅地化の許可が受けられていない雑種地及び原野であり、また、国道に面する間口距離が相異するなど、その立地条件、利用価値、区画形状等が大きく異なるので、近傍土地の売買実例価額は本件土地周辺の時価を示すものとはいえない。 - 請求人らは、原処分庁提示の売買実例は、具体的な所在も不明で本件土地周辺の時価を適正に示しているとはいえず、譲受法人が近傍土地を売買した経緯等を参考にすると、原処分庁が依頼した不動産鑑定士が評価した価額では本件土地は売買できず、また、本件土地は賃貸されていており、自用地より地価が安くなるので、低額譲渡には該当しない旨主張する。
しかしながら、原処分庁は、本件土地と時間的、場所的及び物件的、用途的同一性の点で類似した物件の売買実例3件を採用し、各種格差を考慮の上、1平方メートル当たりの価額を算出しており、当審判所においても相当と認められる。
また、不動産鑑定士による鑑定評価額について、その鑑定方法及び価額は当審判所においても相当と認められる。さらに、本件土地はその地代等の状況から借地権の設定のある土地とは認められず、更地としての価額を減ずるべき理由はないと認められる。
以上のとおり、本件土地の時価の算定に当たり、原処分庁が採用した売買実例に基づいて算定した価額と鑑定評価額が同程度の価額であること、原処分庁が買い進みや売り急ぎの事情や安全性を考慮し、鑑定評価額をもって本件土地の価額と認定したことは相当であり、請求人は、本件土地を時価の2分の1に満たない価額で法人に譲渡したと認められるから、請求人の主張は採用できない。
要旨
請求人は、繰延資産として償却していた医師会への入会金及び開業時負担金について、償却期間が終了する前に個人事業を廃業(法人成り)した場合の未償却残額は資産損失に該当する旨主張する。
しかしながら、繰延資産の未償却残額に資産損失が生じたか否かは、その繰延資産に係る支出の効果に予定外の減少又は消滅があったかどうかにより判断するのが相当であると解される。
そうすると、請求人は、個人事業を廃業した後も引き続き医師会の会員であり、医師会から従前と同様の各種の教育・サービスを受けていると認められるので、請求人が医師会から受ける便益は変わらないのであるから、個人事業の廃業により入会金及び開業時負担金に係る支出の効果には予定外の消滅や減少があったとは認められず、資産損失が生じたとは認められない。
したがって、入会金及び開業時負担金のうち個人事業の廃業時における未償却残額については、所得税法第51条第1項に規定する「その他の事由により生じた損失の金額には該当せず、事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。
要旨
請求人は、シンガポール共和国に所在する外国銀行に預け入れた金銭(本件Deposits)は、当該銀行から融資を受けるために締結した契約に基づく信用供与目的による担保預金として資金融通したものであり、本件Depositsから生じた利子は、借入れと担保提供とが一体である預金担保付金銭消費貸借契約に基づく取引から生じたもので、実質的には、貸付金の利子に準ずるものであることから、本件Depositsから生じた利子及び借入金の支払利子の差損益は雑所得に当たり、当該差損益の通算の結果、所得金額は生じていないなどと主張する。
しかしながら、預金とは、銀行その他の金融機関が不特定多数の相手方、すなわち預金者に対して返還を約して預託を受けた金銭であり、銀行その他の金融機関を受寄者として消費寄託された金銭としての性質を有するものをいうと解され、また、預金の経済的な意義としては、銀行その他の金融機関が、預託を受けた金銭を一定期間運用して利益を上げる一方、通常、預金者に対しては、一定の割合の利子を支払うものであると解されるところ、本件Depositsは、当該銀行が不特定多数の相手方(預金者)に対して返還を約して預託を受けた金銭であり、当該銀行を受寄者として消費寄託された金銭としての性質を有するものと認められ、所得税法第2条《定義》第1項第10号にいう「預貯金」に当たり、同法第23条《利子所得》第1項にいう「預貯金」に該当するものということができる。そして、本件Depositsから生じる利子は、本件Depositsの預託を受けた当該銀行が、一定期間これを運用して利益を上げる一方、これを預金者である請求人に支払う金銭と認められることから、同項にいう「預貯金の利子」に当たり、利子所得に該当する。
ポイント
本事例は、請求人が、日本国内の勤務先からシンガポールのグループ会社に赴任し、退職した後も引き続きシンガポールに滞在している間に、勤務先の親会社の株式を取得し、その後帰国して再就職した場合において、当該株式の取得日を含む退職後の期間の事情のみならず、退職前の事情をも含め、客観的諸事情を総合的に勘案し、当該株式を取得した日において、請求人の生活の本拠は、シンガポールにあったと認めるのが相当であると判断したものである。
要旨
原処分庁は、請求人が勤務先の親会社から付与されたリストリクテッド・ストック・ユニットの権利確定により同親会社の株式を取得した日における請求人の居住形態について、請求人は日本国内の勤務先からシンガポールのグループ会社に赴任した後、その後の事情の変更により退職したが、引き続きシンガポールに滞在していたものの、当該滞在期間のうち、当該退職後の期間における日本及びシンガポールでの各滞在日数、両国での各住居、退職後の職業活動(就職活動等)、生計を一にする配偶者その他の親族の居所及び資産の所在等の客観的諸事情を総合的に判断すると、当該退職後の期間中である当該株式を取得した日においては、請求人は、所得税法第2条《定義》第1項第3号に規定する「居住者」に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人がシンガポールに赴任してから退職後を含め同国に滞在していた期間における上記の各客観的諸事情を総合的に勘案すると、請求人は、当該退職するまでの期間においては、シンガポールに赴任した当初から、シンガポールに生活の本拠を移し、同国において客観的に生活の本拠たる実体を具備していたものと認められるから、「非居住者」に該当し、当該退職後の期間においても、①日本とシンガポールでの各滞在日数に大差がないものの、日本に帰国するまで引き続きシンガポールの住居を生活及び職業活動の拠点とし、退職前後においてシンガポールでの生活状況に変わりがないこと、②就職活動等の結果、日本での就職が決まったものの、日本に帰国するまで無職のままであったこと、③日本国内に生計を一にする親族はいないこと、及び④両国での資産の保有及び管理等の状況を総合的に勘案すれば、当該退職後の期間における請求人の生活の本拠は、退職前と同じくシンガポールにあったと認めるのが相当である。したがって、請求人は、上記親会社の株式を取得した日において「居住者」には該当せず、「非居住者」に該当する。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和29年10月20日大法廷判決(民集8巻10号1907頁) 最高裁昭和32年9月13日第二小法廷判決(集民27号801頁、裁Web) 最高裁昭和35年3月22日第三小法廷判決(民集14巻4号551頁) 最高裁平成23年2月18日第二小法廷判決(集民236号71頁、裁Web)
海外の顧客との商取引は請求人の売買取引ではないから、海外から送金を受けた金額は請求人の収入になるものではなく、コミッション相当額のみが収入金額であるとの請求人の主張が排斥された事例
裁決事例集 第35集 31頁
要旨
認定事実によれば、A社と請求人との間の仕入取引は通常の売買取引にほかならず、したがって、当該取引に係る商品(タイプライター)の所有権はA社から請求人に移転するものであり、次いで、請求人は、その所有権を取得した商品をD社等(外国法人)に送付するとともに、その対価として、D社等から、請求人において自由に設定した金額を記載したインボイス記載額の送金を受け、これにより多額の差益を得ていたものであり、しかも、請求人は、過大送金額を請求人個人の用途に費消したり、過大送金額の一部を請求人名義の定期預金にしたりするなど通常請求人の収入金額でなければできないようなことをしてきたものであって、請求人とD社等との間の取引も売買取引にほかならないということができ、したがって、請求人がインボイスに基づきD社等から送金された金額はすべて商品の輸出売上代金であって、その全部が請求人に帰属する収入金額であるというべきである。
海苔養殖業を営む請求人が事業の用に供する全自動乾海苔製造装置等は、耐用年数省令別表第二の「食料品製造業用設備(耐用年数10年)」ではなく「水産養殖業用設備(耐用年数5年)」に該当するとした事例
裁決事例集 第125集
ポイント
本事例は、耐用年数省令別表第二の機械・装置の業用設備の判定は、請求人の業種ではなく、資産の使用状況等から社会通念に照らし、これが日本標準産業分類によるいずれの業種用として通常使用されているかにより判定すべきとしたものである。
要旨
原処分庁は、海苔養殖業を営む請求人が使用する「全自動乾海苔製造装置」等の設備(本件償却資産)について、耐用年数の適用等に関する取扱通達1-4-2《いずれの「設備の種類」に該当するかの判定》及び同1-4-3《最終製品に基づく判定》の定めに従い、本件償却資産が製造する最終製品は乾海苔であり、乾海苔は水産食料品に該当することは明らかであるとして、本件償却資産は、日本標準産業分類の中分類「09-食料品製造業」の業種用に通常使用されていると認められるから、減価償却資産の耐用年数に関する省令の別表第二《機械及び装置の耐用年数表》の番号1「食料品製造業用設備」に該当する旨主張する。
しかしながら、本件償却資産は、請求人が自家取得した原藻を自宅敷地内作業場において、乾燥させて漁業協同組合へ出荷できる乾海苔にするために、海苔養殖業従事者のみに通常使用されていると認めるのが相当である。そして、海苔養殖業者が漁業協同組合へ出荷する乾海苔は直ちに食用に供されるものではなく、食用に加工し流通させるのは漁業協同組合から乾海苔を購入した流通業者であることからすれば、乾海苔が水産食料品であることが明らかであるとして、本件償却資産が食料品製造業用として通常使用されていると認めることは困難である。したがって、本件償却資産は、日本標準産業分類の大分類「B-漁業」の中分類「04-水産養殖業」の業種用として通常使用されていると認められるから、別表第二の番号28「水産養殖業用設備」に該当する。
参照条文等
減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表第二 耐用年数の適用等に関する取扱通達1-4-2、1-4-3
満期生命保険金に係る一時所得の計算上、受取人以外の法人が負担した保険料は、受取人が実質的に負担したものではないから、収入を得るために支出した金額には含まれないとした事例
裁決事例集 第71集 299頁
要旨
請求人は、契約者及び死亡保険金の受取人を法人とし、満期保険金の受取人を請求人とする養老保険契約の満期保険金に係る一時所得の計算において、所得税法第34条《一時所得》第2項、同法施行令第183条《生命保険契約等に基づく年金に係る雑所得の金額の計算上控除する保険料等》第2項第2号及び所得税基本通達34-4《生命保険契約等に基づく一時金又は損害保険契約等に基づく満期返戻金等に係る所得金額の計算上控除する保険料等》の規定等の文理から解釈して、所得税法第34条第2項に規定する「収入を得るために支出した金額」とは、所得者である請求人自らが負担した金額であるか否かは問わず、支払保険料の総額であるから、保険契約者である法人が支払い費用処理した保険料(以下「本件費用処理保険料」という。)を当該「収入を得るために支出した金額」に算入すべきである旨主張する。
しかしながら、[1]所得税法第34条第2項が「収入を得るために支出した金額」を「その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る」としているのは、一時所得に係る収入に関連して、あるいは収入があったことに起因して所得者が負担したようなものは収入を得るために支出した金額とするものであると解され、このことは、個人を納税義務者とし、当該個人の収入から支出を差し引いた純所得に課税するという所得税の本旨からすれば、条理上当然であると認められること、[2]所得税法施行令第183条第4項においては、所得者自らが負担したと認められる保険料等に限って「収入を得るために支出した金額」に算入することとしていること、及び[3]所得税基本通達34-4は、一時金の支払を受ける者(所得者)以外の者が保険契約者として保険料等を負担した場合も、当該所得者である使用人が実質的にその保険料相当額を負担しているときには、当該保険料等は当該所得者の収入を得るために支出した金額と認めるという趣旨で定められたものと解されることからすると、本件費用処理保険料を所得税法第34条第2項の「収入を得るために支出した金額」に算入できるか否かについては、本件費用処理保険料を請求人自らが負担したかどうかにより判断することが相当である。
本件費用処理保険料は、保険契約者である法人の「保険料」として費用処理され、当該金額を請求人に対する経済的利益として(給与)課税した事実もないことから、請求人自らが負担したものとは認められず、所得税法第34条第2項に規定する「収入を得るために支出した金額」に算入することはできない。
ポイント
本事例は、法令解釈を基に、源泉徴収選択口座の制度を利用することを選択した者は、同制度において前提とされる計算と異なる日を選択して申告することは予定されていないと解すべきであると判断したものである。
要旨
請求人は、源泉徴収の選択をした特定口座(源泉徴収選択口座)を通じて行われた上場株式の譲渡(本件譲渡)について、本件譲渡に関する契約の効力発生の日(約定日)を本件譲渡に係る譲渡所得の収入すべき時期として申告を行うことは可能であると主張する。
しかしながら、源泉徴収選択口座の制度を利用することを選択した者は、譲渡をした日を基準に金融商品取引業者等が収入金額及び必要経費等の計算を行うことを前提に同制度を選択したものと解されるため、同制度において前提とされる計算と異なる日を選択して申告を行うことは予定されていないと解すべきであり、本件においては、特定口座内において処理される収入金額等の額が受渡日を基準に計算され、その状況により特定口座年間取引報告書も作成され請求人に報告されていること、また、特定口座源泉徴収選択届出書の提出期限が、特定口座内保管上場株式等の譲渡に係る決済日であること、さらに、本件譲渡に係る所得税等の源泉徴収は、受渡日に行われていることから、金融商品取引業者等は、受渡日を基準として所得計算等を行っていたといえ、金融商品取引業者等の行う所得計算等に基づき申告を行うことを選択した後において、約定日を本件譲渡に係る譲渡所得の収入すべき時期として申告することはできない。
参照条文等
租税特別措置法第37条の11の3第1項、第3項及び第7項、第37条の11の4第1項及び第2項 租税特別措置法通達(株式等譲渡所得等関係)37の10-1、37の11の3-14
ポイント
本事例は、破産手続中であった株式会社の株式を相続により取得し、当該株式に係る分配見込額を時価として相続税の課税対象とされたものについて、その後、当該株式の発行会社から交付を受けた残余財産分配金のうち剰余金の配当とみなされる金銭は、所得税法第9条《非課税所得》第1項第16号の非課税所得には該当しないとしたものである。
要旨
請求人らは、各みなし配当金(請求人らが相続によって取得した株式の発行会社から交付を受けた残余財産分配金のうち、剰余金の配当とみなされる金銭)は、所得税法第9条《非課税所得》第1項第16号の非課税所得に該当する旨主張する。
しかしながら、①上記規定にいう「相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの」とは、相続を直接の原因として相続人の下で実現した所得に限られ、相続後に相続とは別の原因で相続人の下で実現した所得は該当しないと解するのが相当であるところ、本件において、各みなし配当金を取得したことによって請求人らに帰属した所得は、相続後3年以上の期間が経過してから、相続とは別の事由、すなわち、上記会社の清算手続において、債務を完済し、残余財産が最終的に確定したことによって、初めて請求人らの下で実現したものであり、また、相続の開始時には各みなし配当金の支払原因となる具体的な残余財産分配請求権は確定的に発生していなかったから、相続を直接の原因として実現があったものとできないことや、②上記各みなし配当金が「相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの」に該当するためには、各みなし配当金の額に相当する経済的価値が、相続開始時における上記株式の価値に相当する経済的価値と同一のものと評価できることが必要となるところ、上記会社については、相続の開始後に収支及び資産の状況に種々の変動があり、当該変動後の最終的な清算価値を具現化した残余財産分配金の額に相当する経済的価値は、当該変動前の清算価値に基づいて評価された上記株式の価額に相当する経済的価値と同一と評価できないことからすれば、上記各みなし配当金が「相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの」に該当すると認めることはできない。
参考判決・裁決
最高裁平成22年7月6日第三小法廷判決(民集64巻5号1277頁)
要旨
請求人は、公共事業の施行に伴いM市から建物等の移転補償金として交付された金額のうち、移転先土地に要した造成費は、移転先土地が田であり、宅地造成しなければ移転できない事情を考慮し、所得税法第44条に規定する資産の移転等の費用とみるべきであり、一時所得に係る総収入金額に算入されない旨主張するが、本件造成費は、工事内容及び工事費の額並びに移転先土地の状況に照らすと、田を宅地化するという土地の価値を高める工事に当たり、結果的にも移転先土地の価値の増加をきたしたものと認められるから、本件造成費は資本的支出に当たるとみるのが相当であり、移転補償金をその交付の目的に従って資産の移転等の費用に充てた以外の金額となり、一時所得の総収入金額に算入される。
税法の改正により減価償却資産の耐用年数が短縮された場合の減価償却費の処理方法については、明文の規定がなく理論により決するほかないとの請求人の主張が排斥した事例
裁決事例集 第62集 49頁
要旨
請求人は、税法の改正により減価償却資産の耐用年数が短縮された場合の減価償却費の処理方法については、明文の規定がなく理論により決するほかない旨主張する。
しかしながら、所得税法第49条、所得税法施行令第120条、第129条、第131条、耐用年数省令第1条、第4条及び平成10年改正省令附則第2項等の規定が存在するのであって、これらの規定によれば、税法に規定する耐用年数とは、その期間内で償却を完了させるということを意味するものではなく、減価償却費の額を算定するために必要な償却率を算出するための基礎となるものにすぎないと解するのが相当であり、このことは、税法の改正により耐用年数が短縮された場合においても何ら変わるものではないから、原処分庁が、本件建物の期首帳簿価額に、本件改正後の耐用年数に対応する償却率を乗ずることによって本件減価償却費の額を算定したことは適法である。
要旨
所得税法第51条第2項に規定する「事業の遂行上生じた貸付金」は、当該事業所得の基因となる事業の範囲に属する事由によって生じたもの、つまり、当該事業所得を得るために通常必要とされる貸付金がこれに該当すると解されるところ、税理士である請求人は貸金を業としていないこと及び税理士業務の範囲に関与先に対する貸付金の貸付けは含まれていないことから、当該貸付金の貸付けが請求人の事業所得の基因となる事業の範囲に属する事由によって生じたものと認めることはできないし、また、事業所得を得るために必要な貸付けであったと認めることはできないので、当該貸付金は当該事業所得を生ずべき事業の遂行上生じた貸付金に該当しない。
したがって、当該貸付金の貸倒れによる損失の金額は、事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできない。
要旨
請求人は、H社の企業年金プランのうち、米国内国歳入法第401条k項に規定する年金プランに加入し、掛金を拠出しているが、[1]当該掛金は、内国歳入法においては拠出時の給与の減額とされ、将来の年金受給時に課税されるものであること、[2]当該掛金は、請求人に現金等で支給されず、請求人が管理、支配できない給付に該当するものであること及び[3]請求人が将来米国の居住者として受給する年金の一部である掛金に課税することは、日米租税条約第23条(1)及び同条約の目的である「反二重課税」に反することから、我が国においては拠出時の給与として課税すべきではない旨主張する。
しかしながら、401kプランの掛金として拠出するか又は給与として現金で受け取るかは請求人の任意であること、更に401kプランの掛金とする場合であっても、拠出割合及び投資対象については請求人の判断と責任において選択することとされていることなどから判断すると、本件掛金は、請求人がH社の使用人としての地位に基づいて役務の提供の対価として受け取った給与を請求人の意思と判断により、401kプランの掛金として拠出したものと認めるのが相当であり、本件掛金相当額は、所得税法第36条の規定により、各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額に該当し、同法第28条第1項の規定により、給与所得に該当するものと認められる。
職務発明に係る特許を受ける権利を勤務先に承継させた者の相続人が、特許を受ける権利の対価に係る訴訟上の和解により取得した金員は、その相続人の雑所得に該当するとした事例
裁決事例集 第78集 172頁
要旨
請求人は、E社との和解によって受領した金員は、請求人の死亡した子Dがした職務発明による特許を受ける権利のE社への承継に際し一時に受けるべき対価の修正追加支払額であることから、Dに帰属し、Dの当該権利の承継が行われた年分の譲渡所得であるので請求人には課税されない旨、及び、請求人に所得税が課税されるとしても、発明者の相続人である請求人にとっては対価性がなく、訴訟により請求人が獲得したもので継続性がないから、当該金員は一時所得に該当する旨主張する。
しかしながら、当該職務発明に係る対価請求権のうち、特許を受ける権利を使用者等に承継した後に支払われる不足額部分については、承継時には、対価の額は未実現(未確定)であるため、直ちにその全部について権利行使(権利の実現)することは困難であり、このような段階では、当該対価請求権は法的には発生していても、いまだ権利実現の可能性を客観的に認識することができるとはいえず、当該金員は、和解成立時に収入の原因となる権利が確定したと認められるから、請求人の平成19年分の所得とみるのが相当である。
また、対価性とは、専ら、当該給付が役務行為又は資産と対価性があるか否かによって定められるべきであり、当該役務行為又は資産の譲渡の主体が相続人たる請求人であるか被相続人であるかはその判断に影響を与えるものではない。
そうすると当該金員は、特許法第35条第3項の相当の対価の不足額を求めた訴訟により金額が確定した金員であり、特許を受ける権利を使用者に承継したことに伴い、使用者が当該権利を独占的に利用する権利を取得し、その金額は承継後に使用者が獲得した利益の実績に基づいて算定されるべきものであり、その実質は使用者に承継した特許を受ける権利の対価であることに疑いはないから、対価性があると認められ、これを一時所得と解することは相当でない。
したがって、当該金員は、利子所得ないし一時所得のいずれにも該当しない所得であるから、雑所得に該当する。
要旨
原処分庁は、請求人は執筆を業としていないこと、請求人の執筆行為は事業所得を生ずべき事業に該当しないこと及び本件印税収入が事業所得の付随収入に該当しないことから、本件印税収入は、雑所得に係る総収入金額に含まれる旨主張する。
しかしながら、弁護士としての所得の稼得形態は、弁護士法第3条第1項に規定する弁護士の職務(以下「本来の弁護士の職務」という。)を行うことによるものだけに限られているものではないから、弁護士業に係る事業所得の総収入金額には、本来の弁護士の職務を行ったことに伴い支払われる報酬のほか、講演料、出演料、印税、原稿料等の収入であっても、その講演等が弁護士の立場で行われたもの、あるいは、その内容が弁護士としての知識や経験等に基づくものであって、本来の弁護士の職務と直接の結び付きが認められるものは、所得税法上、事業所得以外の各種所得に係る収入金額又は総収入金額として特に明示されているものを除き、これに含まれると解するのが相当である。
本件印税収入に係る本件著書の内容は、現に弁護士業を営む請求人の弁護士としての知識と経験に基づくものであり、本来の弁護士の職務との直接の結び付きがあると認められ、また、本件印税収入は、所得税法上事業所得以外の各種所得に係る収入金額又は総収入金額として特に明示されているものとも認められない。
そうすると、本件印税収入は、請求人の事業所得に係る総収入金額に含まれると解するのが相当である。
被相続人が生前に行った譲渡が所得税法施行令第26条に規定する「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合」の譲渡には該当しないとした事例
裁決事例集 第77集 31頁
要旨
所得税法第9条第1項第10号の趣旨が、譲渡所得が発生した際に納税資力がない者に対して租税を免除するものであることからすると、所得税法施行令第26条に規定する債務を弁済することが著しく困難である場合に該当するかどうかは、譲渡所得が発生した際に、債務者の債務超過の状態が著しく、その者の信用、才能等を活用しても、現にその債務の全部を返済するための資金を調達することができないのみならず、近い将来においても調達することができない場合をいうと解される。そして、上記のとおり、同条第1項第10号の趣旨が納付困難な納税者に対して租税を免除するものであることからすれば、資力を喪失して債務の弁済が著しく困難である場合に該当するか否かの判断は厳格に行われるべきであり、弁済可能な金額を客観的、かつ、具体的な金額をもって算定し、その上で、さらにどれだけの返済資金を調達することができるかについて認定していくことが所得税法第9条第1項第10号の趣旨にかなうものである。
これを本件についてみると、被相続人の資産の価額の評価に当たり、譲渡物件については、譲渡時において、譲渡の対価、すなわち譲渡価額として弁済可能な金額が客観的、かつ、具体的な金額として把握できるのであり、譲渡物件は譲渡以前においても譲渡価額と同額の価額を有していたと認めるのが相当であることから、譲渡価額に相当する価額で評価すべきである。そうすると、請求人らの主張する負債の額の合計額は464,853,670円であるところ、本件譲渡物件の譲渡価額は、520,000,000円であるから、負債に係る請求人らの主張を全て認めたとしても、資産の額が、負債の額を上回ることは明らかである。したがって、被相続人は、所得税法施行令第26条に規定する資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合には当らない。
要旨
原処分庁は、被相続人の死亡により、同人の税理士業に係る事業所得の金額の計算上必要経費に算入した未払退職金は、その支払債務が発生、確定しておらず、また、事業税等は、所得税法第63条《事業を廃止した場合の必要経費の特例》に規定する事業の「廃止」があったとはいえないから、いずれも必要経費に算入することはできない旨主張し、請求人らは、被相続人の死亡により、未払退職金については、被相続人の税理士事務所の従業者は退職しており、また、事業税等については、被相続人の税理士業は廃業となり同法第63条の規定が適用されることから、いずれも必要経費に算入される旨主張する。
しかしながら、未払退職金については、被相続人の死亡当時、未払退職金発生を根拠付けるような労使慣行が成立していたとはいえず、被相続人の死亡により未払退職金の支払債務が発生、確定していたとはいえないから、必要経費に算入することはできない。また、事業税等については、被相続人の死亡により関与先との間の委任契約が税理士である子に承継されることなく終了していること、被相続人の税理士登録が抹消され、子の税理士名簿に登録された事務所の所在地が被相続人の事務所内であることを表記しないものに変更されたことからすると、子は、被相続人の税理士業務を承継し、被相続人と同一内容の事業を行っていたとは認められず、このような被相続人の死亡後の法律関係及び事実関係を社会通念に照らして判断すれば、被相続人の税理士業は廃業したものと認められ、所得税法第63条の規定が適用されることから、必要経費に算入されることとなる。
参照条文等
要旨
請求人は、裁判上の和解(本件和解)により取り消された配当(本件配当)について源泉徴収された所得税の額(本件源泉所得税)は、所得税法第181条《源泉徴収義務》の規定に基づいて適法に徴収・納税されたものであるから、適法に源泉徴収された年金について受給者が申告等の手続で精算することを認めた最高裁平成22年7月6日第三小法廷判決(本件最高裁判決)を準用し、申告等の手続によって精算できる旨主張する。
しかしながら、本件和解により本件配当が取り消された後は、本件配当はその支払の時点まで遡って無効となるのであるから、所得税法第181条の源泉徴収義務の適用対象とならず、本件源泉所得税は、同法第120条《確定所得申告》第1項第5号の「源泉徴収をされた又はされるべき所得税の額」には該当しない。また、本件最高裁判決は、生命保険契約等に基づく年金に係る源泉徴収義務について判断したものであり、源泉徴収義務についての法令の根拠がなくなった源泉所得税についてまでも申告等の手続においてその精算を認めたものではない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成4年2月18日第三小法廷判決(民集46巻2号77頁) 最高裁平成22年7月6日第三小法廷判決(民集64巻5号1277頁)
要旨
不動産の売買契約に関する約定を当事者双方が履行しなかったことを原因としてなされた裁判上の和解により買主である請求人が支払を受けた和解金は、売買契約の合意解除に伴うものと同視できるから、本件不動産の売戻しがあったとして譲渡所得とすることは相当でなく、また、係争期間中の賃料及び金利相当分の損失を補てんするものであり、その実質は所得を得たのと同一の結果に帰着するから非課税とすることも相当でなく、その所得区分については、本件和解金が予期しない事情の発生により生じた一時的なもので、かつ、労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しない臨時的、偶発的なものに当たることからして一時所得に該当する。
要旨
請求人は、自己が勤務している内国法人の親会社である外国法人から付与されたファントム・ストック・アプリシエイション・ライト(現実に株式の支給をしないが、付与時の時価を基に定められた当初価格と権利行使時の株価の差額を現金で受け取る権利)の行使に係る経済的利益は、同社と雇用関係がないこと等から、一時所得に該当する旨主張する。
しかしながら、当該経済的利益は、当該内国法人の役員たる地位に基づき、当該外国法人からファントム・ストック・アプリシエイション・ライトを付与され、当該内国法人に勤務する期間において、これを行使して得た利益、すなわち、請求人の非独立的ないし従属的な人的役務の提供の対価としての性質をもった所得であるから、給与所得に該当する。したがって、請求人の主張は採用できない。
ポイント
本事例は、請求人の事業所得の必要経費の計上漏れがあったとして提出した更正の請求について、原処分庁が請求人からの必要経費の内容を示す資料の提出を待たずに原処分を行ったことは違法であるとの請求人の主張は排斥しているものの、請求人が審査請求において提出した資料等から、請求人が支払った金員は、事業所得の金額の計算上必要経費に算入されるとして、原処分の一部を取り消したものである。
要旨
請求人は、事業所得の必要経費となる租税公課の計上漏れなどがあったとして提出した更正の請求について、原処分庁からの当初申告に係る租税公課の内容を確認するための資料等(本件資料等)の提出の求めに対して、請求人が本件資料等を提出する意思を示しているにもかかわらず、原処分庁が、本件資料等の提出を待たずして、その未提出を理由に更正の請求の一部を認めないとする原処分を行ったことは、違法又は不当な処分である旨主張する。
しかしながら、調査担当職員は、約1年間、電話ないし文書により再三にわたり本件資料等の提出を求めたにもかかわらず、請求人からは本件資料等が提出されなかったため、調査を打ち切ったのであり、原処分庁が本件資料等の提出を待たずに原処分を行ったことは、原処分庁の合理的な裁量の範囲を超えておらず、違法又は不当であるとは認められない。なお、請求人は審査請求においてb町町費等の金員(本件金員)を請求する旨が記載された文書を提出したところ、当審判所が調査審理した結果、当該文書は請求人が所有する農地の所在するb町区長などが発行したものであり、当該文書に示された本件金員は、b町区などにおいて農地等の面積を賦課基準として徴収され、その用途は主に農地等の保全に係るものであると認められるから、本件金員は請求人の事業所得の金額の計算上必要経費に算入されるべきである。
参照条文等
要旨
請求人は、領収証等をもらえなかったなどの現金仕入れがあり、当該現金仕入れがあることは、請求人と同規模、同業者の利益率よりも請求人の利益率が高いことからして明らかであるから、原処分庁が必要経費として認めなかった現金仕入れ等の金額は、必要経費に算入される旨主張する。
しかしながら、納税者が、税務署長が合理的と認められる方法により把握した必要経費以外の必要経費が帳簿外に存在すると主張する場合には、当該納税者においてその存在及び価額を具体的に立証する必要があると解するのが相当であるところ、本件においては、原処分庁が認定した必要経費の内容及び金額は合理的であると認められる一方、請求人が原処分調査担当者及び当審判所に対し提示又は提出した資料からは、請求人の主張する上記現金仕入れ等を確認することができず、当該現金仕入れ等の有無それ自体明らかでないなど、請求人は、原処分庁が認定した必要経費を超える必要経費が帳簿外に存在することについて、何ら具体的内容を明らかにしていないから、請求人が主張する上記現金仕入れ等の金額を必要経費に算入することはできない。
請求人が、支給された賞与から支払った寄付金である旨主張する金額は、勤務先法人がその関連法人に寄付すべき金額を請求人の賞与に上乗せしたものであり、請求人の寄付金控除は認められないとした事例
裁決事例集 第45集 122頁
要旨
請求人は、請求人が勤務先法人より支給された賞与から勤務先法人の関連法人に寄付したものであるから、寄付金控除を認めるべきであると主張するが、次の事実から請求人の主張する寄付金は勤務先法人が直接寄付したものと認められる。
- 勤務先法人の賞与の明細書の交付状況をみると、支給明細書が2通あり寄付金相当額を含めた明細書は、勤務先法人の税務調査時に交付している。
したがって、退職した従業員は、寄付金相当額を含めた明細書の交付は受けていないこと。 - 寄付金の額は、勤務先法人において基本賃金を基準にして算定しており、請求人は寄付申込書を白紙で勤務先法人に提出している。また、寄付に応じなかった従業員はその計算がなされていないこと。
- 勤務先法人は、請求人が寄付申込書を提出する前に、寄付金相当額を預り金として経理していること。
したがって、請求人の賞与は、寄付金相当額を含めない金額となり、所得税法第78条に規定する寄付金控除はないものとされた本件更正は適法である。
請求人が売却した車両は「使用又は期間の経過により減価する資産」に該当するとした事例(令和元年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第139集
ポイント
本事例は、請求人の売却した車両の価値が、その属する類型の資産に求められる本来的な目的・効用とは異なる面に置かれていることが社会通念上確立しているといえるような例外的な場合には該当しないから、当該車両が「使用又は期間の経過により減価する資産」に該当するとしたものである。
要旨
請求人は、①売却した車両(本件車両)は、請求人が専ら観賞用に取得し、メンテナンスをせずに製造当時の状態のまま保管していたことなどから、自動車の本来の効用を果たさなかったことが客観的に明らかであること、②本件車両は、希少価値を有し、かつ、代替性のないものであること及び③本件車両のようなスーパーカーはその希少性に基づく価格がその価値として定着し、著しく高い価格で取引されることが社会通念化していることから、本件車両は、所得税法第38条《譲渡所得の金額の計算上控除する取得費》第2項に規定する「使用又は期間の経過により減価する資産」に該当しない旨主張する。
しかしながら、①車両の機能は、経年や使用によって一般的・類型的に逓減すること、②本件車両の価格は、その希少性だけでなく自動車本来の機能にも価値が置かれて形成されていることは明らかであること及び③本件車両は製造から28年程度しか経過しておらず、本件車両と同種の車両の価格推移は未だ不確定な面があることからすると、鑑賞以外の実用的な目的又は機能が想定される本件車両が、「骨とう」に類するといえる程度の長期間を経てもなお確立した高い価値を維持しているような場合に当たると解することはできず、その価値が、当該類型の資産に求められる本来的な目的・効用とは異なる面に置かれていることが社会通念上確立しているといえるような例外的な場合には該当しないから、本件車両は「使用又は期間の経過により減価する資産」に該当する。
参照条文等
参考判決・裁決
東京地裁令和5年3月9日判決(訟月70巻11号1255頁) 東京高裁令和5年11月30日判決(訟月70巻11号1223頁)
要旨
原処分庁は、請求人の取引先である冠婚葬祭業者の関連組合から請求人に対して給与として支払われた金員(本件金員)があり、給与所得の課税は適法である旨主張する。
しかしながら、本件金員は、請求人が葬祭業務を行うに際し、寝台車を運転するためには社会保険の加入が必要であったため、請求人の代理店収入の一部の金額を取引先が差し引き、この金額に相当する金額を取引先の関連組合を経由して請求人に給与という名目で支払うという形式を採ったものであると認められ、他方、請求人と同関連組合の間において、雇用契約その他これに類する契約の締結及び労務その他役務提供が行われた事実は認められず、また、請求人が葬祭業務を行うに当たって、同関連組合から具体的に指示を受けた事実も認められないから、本件金員は、給与所得としての要素を有するものとは認められず、その実質は取引先からの代理店収入の一部と認めるのが相当である。
したがって、原処分庁の主張には理由がなく、取引先からの代理店収入の一部の金額を給与所得として課税したことは相当ではない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和56年4月24日第二小法廷判決(民集35巻3号672頁) 最高裁平成4年2月18日第三小法廷判決(民集46巻2号77頁)
要旨
請求人は、L社との外国為替証拠金取引(本件FX取引)において円と外国通貨との金利差から生じる本件スワップポイントに係る収入金額を雑所得の金額の計算上総収入金額に算入すべき時期は、①本件スワップポイントが未実現評価損益と同様であること、②L社から請求人への支払は余剰の証拠金の返還であること、③スワップポイントに係る利益損失はFX取引が決済された時でなければ確定しないことから、本件FX取引が決済された時である旨主張する。
しかしながら、①請求人がL社との間で合意した約款には、L社に開設した請求人の本件取引口座が益勘定となった場合は、請求人がその利益金を預り証拠金に振り替えるか、請求人の指定銀行口座に振り込むかを選択をすることとなっていること、②L社の取引ガイドによれば、スワップポイントは、外貨と円との金利差であり、この金利差額が本件取引口座に積み立てられること、③L社のパンフレット及び商品取引概要には、1か月分のスワップポイントの合計額が翌月10日に顧客の口座に振り込まれることが記載されていたこと、④実際にも、本件スワップポイントの1か月分の合計額が、請求人に定期的に通知され、請求人の預金口座に振り込まれており、この事実は、上記のパンフレットや商品取引概要の内容に合致することからすると、本件FX取引の内容は、請求人がL社との間でFX取引を行い、その際、1日当たり一定の割合の本件スワップポイントの受払を合意し、日々計算された本件スワップポイントの額が本件取引口座に累積された後、請求人名義の銀行預金口座に振り込まれる内容の契約とみることが相当である。そうすると、本件スワップポイントに係る収入は、日々計算され本件取引口座に累積された時に確定的に生じたものと認められる。
以上のことから、本件スワップポイントについては、日々計算され本件取引口座に累積された時に収入の原因たる権利が確定したというべきであり、本件スワップポイントに係る収入金額を雑所得の金額の計算上総収入金額に算入すべき時期は、日々計算され本件取引口座に累積された時であると認めるのが相当である。
参照条文等
請求人が行った本件ゴルフ会員権の売却及び再取得に関わる一連の行為は、請求人が、所得税の軽減を目的として、虚偽の売却計算書等を作成させ、売買取引の外形を仮装した実態のないものと認められるから、本件譲渡に係る損失の発生及びこれに係る損益通算を認めなかった更正処分並びに重加算税賦課決定処分は適法であるとした事例
裁決事例集 第61集 175頁
要旨
請求人は、本件ゴルフ会員権の相場が購入価額の半額となり、更に下がると考えられたこと等からそれを売却し、その後の事情から同会員権を再取得したものであるから、本件譲渡により譲渡損失が生じている旨主張する。
しかしながら、会員証及びネームプレートの交付がされていないこと、請求人が売却から再取得の間にメンバーとして2回にわたりプレーしていること、年会費の清算がされていないこと等の事実からすると、本件売却及び再取得は、所得税の軽減を目的としてされた、実態のない仮装のものであるから、本件譲渡によって損失が発生したものと認めることはできない。
また、請求人による本件ゴルフ会員権の売却から再取得に至る一連の行為は、所得税の軽減を目的として、本件買取計算書及び本件売却計算書により売買取引の外形を仮装したものであり、そして、請求人は、仮装した本件買取計算書に基づき、本件ゴルフ会員権の譲渡によって損失が生じたとして、他の各種所得の金額と損益通算した確定申告書を提出したものであるから、本件重加算税賦課決定処分は適法である。
請求人が行った賃貸用マンションのシステムキッチン等の取替工事に係る費用は、当該マンションの価値を高め、その耐久性を増すことになると認められるから、修繕費ではなく資本的支出に該当するとした事例(平成21年分及び平成22年分の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第95集
ポイント
本事例は、新たなシステムキッチン及びユニットバスの取替えに要した費用が、賃貸用マンションの通常の維持管理のための費用、すなわち修繕費であるとは認められず、新たにシステムキッチン及びユニットバスを設置し、台所及び浴室を新設したことによって、当該マンションの価値を高め、又はその耐久性を増すことになると認められることから、その全額が資本的支出に該当するとしたものである。
要旨
請求人は、築17年を経過した賃貸用マンション(本件建物)の一部の住宅内の台所及び浴室の各設備等を取り壊し、新たなシステムキッチン及びユニットバスに取り替えた工事(本件各工事)について、居住用機能を回復させるために必要な工事であり、本件建物の規模からすれば、同建物の基礎及び柱等の躯体に影響を与えるものでなく、その価値を高めるものでもなく、その目的は現状維持することであるから、本件各工事に係る費用のうち新たなシステムキッチン及びユニットバスの取替えに要した費用(本件各取替費用)については、所得税法施行令第181条《資本的支出》に規定する金額及び所得税基本通達37-10《資本的支出の例示》の定めに例示された金額のいずれにも該当せず、修繕費に該当する旨主張する。
しかしながら、ある支出が修繕費又は資本的支出のいずれに当たるかは、その支出した金額の内容及び支出効果の実質によって判断するのが相当であるから、本件各工事によって本件建物の住宅の居住用機能を回復させる目的があったとしても、本件建物の規模との比較のみによって判断するものではない。そして、本件各工事は、単に既存の台所設備及び浴室設備の一部を補修・交換したものではなく、本件建物の各住宅内で物理的・機能的に一体不可分の関係にある台所及び浴室について既存の各設備等を全面的に取り壊し、新たにシステムキッチン及びユニットバスを設置し、台所及び浴室を新設したものであり、このことは、本件建物の各住宅を形成していた一部分の取壊し・廃棄と新設が同時に行われたとみるべきものである。そうすると、本件各取替費用は、修繕費とは認められず、台所及び浴室を新設したことによって本件建物の価値を高め、又はその耐久性を増すことになるものと認められるから、本件建物に対する資本的支出に該当する。
参照条文等
参考判決・裁決
東京高裁平成17年10月27日判決(税資255号順号10178) 広島地裁平成5年3月23日判決(税資194号867頁) 平成2年1月30日裁決(裁決事例集№39)
要旨
原処分庁は、借地人(P社)から請求人に支払われた協力金名目の金員については、P社から請求人に対する貸付金とする契約を締結しているが、実質は、P社に返還を要しない金員であり、請求人の不動産所得に係る総収入金額に算入すべきであるとし、また、貸付金に仮装したものであると主張する。
しかしながら、本件は、請求人が請求人の土地をP社に賃貸するに際し、当該土地の上に存する請求人の関係会社(M社)が所有する建物の取壊費用等をP社が負担することとしたものであり、当該費用等は協力金として請求人を介してM社に支払われたものと認められ、当該協力金は、M社に帰属し請求人には帰属しない。
要旨
請求人は、保証債務が存在していたことは、[1]本件譲渡の話が進んだ平成3年12月に作成した返済予定表及び返済予定表を基に作成替えした連帯借用証書があること、[2]債権者から貸金の返還訴訟等を提起され判決等を受けたこと、[3]保証債務を借入金7,000万円及び譲渡代金3,700万円で返済したこと及び[4]債権者、主たる債務者等の陳述書等があることからも明らかであり、本件譲渡代金は、その全額が直接保証債務の履行に充てられていないが、最終的には本件譲渡代金が保証債務の履行に充てられており、本件特例が適用されるべきである旨主張する。
しかしながら、[5]返済予定表及び連帯借用証書は、本件土地の譲渡の話が平成5年5月にまとまっていることからすると、いずれも日付をさかのぼって作成されたものであり、その連帯借用証書も保証人欄の氏名が追加記載されるなど、その信憑性に欠けるものであること、[6]判決等は、訴訟が欠席裁判であり本件借入金の存在を実質審理されたものではなく、保証債務の存在を仮装するためのものと認められること、[7]保証債務を履行するための借入金については、その調達先が原処分段階から二転三転しており、その決済を現金と主張するのみで具体的に裏付ける証拠書類がないこと及び[8]関係人のいずれの陳述も具体的な証拠書類に基づくものではないことからすると保証債務が存在していたとは認められない。
したがって、請求人のその余の主張を判断するまでもなく本件特例は適用できない。
請求人の建物建築工事を請け負った建築工事会社から、請求人の施設長(理事)の預金口座に振り込まれた金員は、請求人が水増工事代金の返金として受領すべきであるところ、施設長の寄付金の原資として調達された資金であると認められるから、請求人の理事である施設長に対する経済的利益の供与であるとされた事例
裁決事例集 第56集 184頁
要旨
請求人は、請求人の建物建築工事を請け負った建築会社J社から、請求人の施設長Hの預金口座に振り込まれた本件金員については、Hが建築工事会社の代表者から借り入れたものであり、本件金員をHからの寄付金として受け入れた後、工事代金の残金として支払っており、工事契約には水増契約は存在しないことから、請求人が建築工事会社から水増工事代金の返金を受け、Hに経済的利益を供与する理由及び事実もないと主張する。
しかしながら、[1]Hが借り入れたとする事実が認められないこと、[2]工事契約に係る正式な指名競争入札が実施されていないこと、[3]Hは、原処分庁の調査担当者に、「本件金員相当額を水増しした工事契約を締結し、水増工事代金は建物工事費の減額として返納された。」旨を申し立てていたことから、工事契約は本件金員相当額が水増しされたと認められ、また、[4]請求人は本件金員をHからの寄付金として受け入れ、同額を建築工事会社に支払った旨の経理処理を行っていること、[5]本件金員の資金の流れから、本件金員はHの請求人に対する寄付金の資金ねん出のため工事契約金額の水増しが当初から計画されたスキームであると推認される。
したがって、本件金員は、請求人が水増工事代金の返金として受領すべきであるところ、Hの寄付金の原資として調達された資金であると認められるから、請求人の理事であるHに対する経済的利益を供与したことに当たる。
そうすると、Hは理事の職務にあり、法人税法上役員に当たり、請求人が本件金員相当額をHに交付していると認められることから、Hに対して賞与を支給したとみるのが相当である。
請求人の有する所得税法第2条第1項第29号に規定する特別障害者である扶養親族は、当該請求人と「同居を常況としている者」に当たらないので、租税特別措置法第41条の16第1項に規定する同居の特別障害者に係る扶養控除の特例の適用は認められないとした事例
裁決事例集 第65集 274頁
要旨
請求人は、本件特例の適用に関し、毎年、数日間とはいえ、妹(特別障害者)の介護を行い、生活を共にしているのであるから、年に5日以上の同居の実態があれば、それは本件特例に定める「同居を常況にしている」に該当する旨主張する。
しかしながら、本件特例は、特別障害者が家庭において家族と一緒に生活できるように配慮し、在宅において特別障害者が介護されることを税制面でも促進し、福祉対策にも資する等の趣旨で設けられたものであり、その意味で、本件特例に定める「同居を常況としている」とは、特別障害者が介護施設などに入居せず、在宅により介護等を受けている場合をいうものと解されることから、請求人の妹が、本件施設に入居後、そのほとんどの期間を本件施設で過ごしており、その間の同人に対する介護は、本件施設の職員が行っていると認められ、仮に、平成13年中において請求人が主張する期間、請求人の妹と起居を共にしていたとしても、それは一時的なものというべきであって、そのことをもって請求人の妹が請求人と「同居を常況としている者」に該当するとは認められない。
したがって、請求人の主張に理由がなく、原処分は相当である。
要旨
請求人の経営する会社への本件建物及び土地の提供は、当該会社について営業の不振を理由として債務者から和議の申立てがあり、裁判所の認可に係る和議条件において債権者に対する一定金額の債務の弁済につき請求人が保証債務を負うものとされ、その債務の弁済を担保するために行われたものであるから、本件建物及び土地の譲渡は、保証債務を履行するための資産の譲渡で、かつ、求償権の行使ができなかったものに当たることが明らかである。
ポイント
所得税法第70条第1項及び第4項の規定によれば、総所得金額の計算上純損失の金額を控除するには、純損失の金額が生じた年分において、青色申告書をその提出期限内に提出しなければならないとされているところ、第4項かっこ書において、やむを得ない事情があると認められる場合には、その提出期限後に提出した場合を含むとされている。
この事例は、青色申告書を提出期限までに提出しなかった請求人の事情がこの「やむを得ない事情」に当たるか否かが争われたものである。
要旨
請求人は、平成20年分の所得税の青色の確定申告書をその提出期限後に提出したのは、顧問税理士の業務用パソコンが故障したことに基因しており、このような事情は所得税法第70条《純損失の繰越控除》第4項の「やむを得ない事情」に該当する旨主張するが、「やむを得ない事情」とは、天災、交通や通信の途絶等、納税者の責めに帰すことができない外的事情など、その提出期限までに確定申告書を提出することを不可能とする真にやむを得ない客観的事情をいうものであり、請求人が主張するパソコンの故障は、請求人及び顧問税理士の個人的事情又は主観的事情にとどまるものであって、その提出期限までに確定申告書を提出することを不可能とする真にやむを得ない客観的事情には該当しないというべきである。
参照条文等
請求人は、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した一部の経費について、不動産賃貸業の遂行上直接必要であった部分を明らかにしていないことから、当該経費を必要経費に算入することはできないとした事例
裁決事例集 第82集
ポイント
この事例は、請求人が、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべきと主張する経費について、必要経費についての立証責任は、原則として原処分庁にあるとした上で、原処分庁が具体的な証拠に基づき一定額の経費の存在を明らかにし、これが収入との間に合理的対応関係を有すると認められる場合には、請求人は、経費の具体的内容を明らかにし、ある程度これを合理的に裏付ける程度の立証をしなければならない旨を明示したものである。
要旨
必要経費についての立証責任は、原則として原処分庁にあると解すべきであるが、一般に必要経費は請求人にとって有利な事柄であり、請求人の支配領域内のこととして証拠資料を整えておくことが容易であるから、原処分庁が具体的な証拠に基づき一定額の経費の存在を明らかにし、これが収入との間に合理的対応関係を有すると認められる場合は、これを超える額の必要経費は存在しないものと事実上推定され、請求人は、経費の具体的内容を明らかにし、ある程度これを合理的に裏付ける程度の立証をしなければ、上記推定を覆すことはできないと解されるところ、請求人が、飲食代及び交通費が必要経費に当たることについて、経費の具体的内容を明らかにし、ある程度、これを合理的に裏付ける程度の立証をしたと認めることはできないから、必要経費に算入することはできない。
参照条文等
参考判決・裁決
東京地裁平成5年10月4日判決(税資199号1頁)
請求人は、株式譲渡契約に係る債務不履行を理由に約定解除権を行使した後、相手方との合意によりそれを撤回したと認められるから、その解除による違約金の取得に係る一時所得の収入すべき時期は、解除権行使の効力が生じた日であると判断した事例
裁決事例集 第62集 145頁
要旨
請求人は、本件解除通知書の送付後も、本件株式譲渡契約に係る交渉が譲受人との間で継続されていたもので、その後における、本件覚書の作成時に同契約を解除した旨主張する。
しかしながら、当該交渉は、本件株式譲渡契約の法律関係を維持するために継続されていたというよりも、新たな譲受人に本件株式を譲渡するための契約締結の準備行為として行われていたものと認められ、そして、本件覚書による合意は、請求人による解除権の行使及び違約金の取得が有効にされたことを前提として、双方の合意により、その解除の意思表示を撤回したものと認められるから、本件解除により取得した違約金は一時所得の収入金額に当たり、その収入すべき時期は、本件解除通知書が譲受人に到達した日(解除権行使の効力が生じた日)である。
要旨
金銭の貸付行為が所得税法上の事業に該当するか否かは、その貸付先との関係、貸付けの目的、貸付金額、貸付利息の収入状況、担保権設定の有無、貸付資金の調達方法、貸付けのための広告宣伝の状況その他諸般の事情を総合して判断すべきであると解されるところ、請求人は貸金業の登録はしているものの、[1]貸付先は、請求人が大株主で代表取締役をしている同族法人2社のみであり、担保権の設定等貸付金の保全措置を講じていないこと、[2]貸付金に係る受取利子の金額よりも当該貸付資金調達のための借入金に対する支払利子の金額が多額であること、[3]事業所と称する程度の店舗を有していないこと及び[4]金融業の看板の掲示及び広く一般に顧客を求めるための広告宣伝を行ったことを証明するに足る証拠がないことから、請求人の金銭の貸付行為は、所得税法上の事業には該当しない。
ポイント
本事例は、請求人を代表取締役とする同族会社の収入として計上された不動産の賃貸料について、当該不動産の真実の所有者及び賃貸借契約における真実の賃貸人はいずれも請求人であると認められるから、請求人に帰属するとしたものである。
要旨
請求人は、賃貸物件である各建物(本件各建物)の登記名義人及び賃貸借契約(本件各賃貸借契約)の賃貸名義人は請求人となっているが、本件各建物は請求人から請求人を代表取締役とする同族会社(本件法人)に譲渡したものであり、本件各建物の実質的な所有者は本件法人であるから、本件各賃貸借契約に基づく賃貸料収入(本件賃貸料収入)は本件法人に帰属する旨主張する。
しかしながら、本件各建物の所有権の登記名義人を本件法人とすることができない特段の事情はなく、本件各建物の真実の所有者は請求人であるとの推定を覆す合理的な根拠も見当たらない上、本件各建物の本件法人への譲渡もその取引としての実態が存在しない。また、本件各賃貸借契約の賃貸名義人を本件法人とせず、請求人として締結しており、本件各賃貸借契約の賃貸人を本件法人に変更できない特段の事情も見当たらないことから、本件各賃貸借契約の真実の賃貸人は請求人であると認められる。したがって、本件各建物の真実の所有者及び本件各賃貸借契約における真実の賃貸人は、いずれも請求人であると認められるから、本件賃貸料収入は請求人に帰属する。
参照条文等
要旨
請求人を共有名義人の一人とするマンションの譲渡所得につき請求人に帰属する金額はないと請求人は主張するが、[1]本件購入資金のうち、その5分の3に相当する金額が請求人を名義人とする住宅ローンによって調達され、当該住宅ローンの返済金を請求人が負担していると推認されること、[2]請求人が本件マンションの譲渡代金の約63パーセント相当額を他に購入したマンションの購入資金の一部に充てていることを併せ考えると、本件マンションの5分の3に相当する持分は同人の所有に帰すべきものと認めるのが相当であり、本件マンションの譲渡による所得の帰属につき請求人の共有持分を5分の3とした原処分は適法である。
要旨
請求人は、相続した本件土地を各共同相続人均等の相続登記をした上で譲渡したことについて、共同相続人間における遺産分割協議の内容は代償分割であり、当該譲渡により請求人が取得した代金には他の共同相続人から受け取るべき代償金が含まれているから、請求人の譲渡所得に係る総収入金額は、本件土地の譲渡代金に請求人の当該相続登記による持分を乗じて算定すべきであると主張するが、[1]共同相続人間において、被相続人の遺産は各共同相続人が全体として均等に分割することとし、本件土地は売却換価して、その代金を分割することに合意していること、[2]各共同相続人は、その合意事項に基づき本件土地の売買契約を締結し譲渡代金を確定させたこと、[3]譲渡代金の確定後、遺産分割協議により各相続人が具体的に受領する代金の額を定めており、当該遺産分割協議の内容は調停条項に反映されていること、[4]合意事項、遺産分割協議及び調停条項において、財産(現物)を取得した相続人が他の相続人に対して代償債務を負担するという合意はなされていないこと、及び[5]請求人以外の共同相続人は換価分割として譲渡価額を算定していることを総合すると、本件土地はいわゆる換価分割の方法により分割されたものと認められるから、請求人の譲渡所得に係る総収入金額は、同人が換価分割により取得した換価代金とすべきである。
要旨
請求人は、マネージャーは請求人の商品の外交販売に従事せず、その者自身が雇用する委託販売に請求人の商品を外交販売させ、その取扱数量又は取扱金額に応じて販売手数料を受領する者であり、請求人の下請業者又は特約店の事業主であると主張するが、マネージャーは、請求人との委託契約により、[1]請求人の指定する商品の割賦販売契約等の勧誘及び委託販売員の指導等の業務の委託を受け、[2]電話使用料等の経費相当額を負担し、[3]継続的に請求人と顧客との商品の売買契約を媒介する役務の提供を行っているもので、[4]請求人は、その商品の販売高に応じてあらかじめ定められている手数料をマネージャーに支払っているものと認められるから、所得税法第204条第1項第4号に規定する外交員に該当し、請求人にはその源泉徴収義務がある。
買主に本件土地の所有権移転登記を了した後、当該土地の元所有者の相続人から提起された訴訟に係る弁護士費用は、譲渡費用に当たらないとして、請求人の主張を排斥した事例
裁決事例集 第51集 139頁
要旨
請求人は、平成元年12月に本件土地の元所有者の相続人から提起された当該土地の所有権移転登記抹消請求訴訟(本件訴訟)に係る弁護士費用9,087万円のうち4,336万円は、当該土地の買主に完全な所有権の引渡しを履行するためにも不可欠なものであるから、譲渡費用に該当する旨主張する。
ところで、所得税法第33条(譲渡所得)第3項によれば、譲渡所得の計算上、控除される譲渡費用は「その資産の譲渡に要した費用の額」とされており、この費用は、資産の譲渡を実現するために直接必要な支出を意味し、資産の維持・管理費用は含まれないと解されるところ、本件訴訟は、昭和21年の本件土地の贈与が虚偽表示又は錯誤により無効であるか否かであり、まさしく所有権の帰属に関するものと認められるから、本件訴訟に係る弁護士費用は、本件土地の所有権を維持するための支出であって、本件土地の譲渡を実現させるために必要な費用ではないと判断するのが相当である。
なお、最高裁判所は、本件訴訟について、平成○年○月○日の判決で昭和21年に本件土地の贈与事実があると認定している。
賃借した建物の明渡しに際して建物所有者から補償金として受領した金員は、その性質及び使途等について特定されていない金員であると認められることから、一時所得の収入金額に該当するとした事例
裁決事例集 第86集
ポイント
この事例は、建物の一部を賃借し転貸を行っていた請求人が、当該賃借部分の明渡しに際して建物所有者から受領した金員について、その使途、賃貸借契約の解約合意に至る交渉の経緯等の事実により、所得区分を判断したものである。
要旨
原処分庁は、建物の一部を賃借し転貸を行っていた請求人が、当該賃借部分の明渡しに際して建物所有者から受領した金員(本件受領金員)は、転借人に明渡し補償金として支払った金員(本件支払金員)を補償するための金員及びその他これに類するものであることから不動産所得の収入金額となる旨主張する。
また、請求人は、本件受領金員は、請求人が退去するための単なる明渡し料等であることから一時所得になる旨主張する。
しかしながら、本件受領金員のうち本件支払金員に相当する金員は、請求人の不動産所得の必要経費を補填する金員であるから、不動産所得の収入金額となる。他方、本件受領金員と本件支払金員に相当する金員との差額の金員(本件差額金員)は、請求人の不動産所得に係る業務の収益若しくは本件支払金員以外の必要経費の補償等ではなく、その性質及び使途等について特定されていない金員であると認められることから、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得であり、労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものに該当し、一時所得の収入金額に該当する
。
参照条文等
要旨
請求人は、平成11年中に支払った通勤費相当額は、給与収入を得るために必ず発生する必要な費用であるから、非課税所得として給与収入から除外するべきである旨主張する。
しかしながら、非課税所得となる通勤手当は、給与所得を有する者で通勤するものがその通勤に必要な交通機関の利用又は交通用具の使用のために支出する費用に充てるものとして通常の給与に加算して受ける通勤手当のうち、一般の通勤者につき通常必要であると認められる部分として政令で定めるものと規定されているところ、請求人が勤務する派遣会社は請求人に対して、このような通勤手当を支給していないため、請求人が平成11年中に支払った通勤費相当額があるとしても、これを非課税所得として給与収入から除外することはできない。
要旨
所得税法第157条にいう「所得税の負担を不当に減少させる結果となる」か否かは、同族会社の行為又は計算に基づいて算出された税額と通常あるべき行為又は計算に引き直して算定された税額とのかい離によって判断すべきであり、また、その判断に際しては、納税者が当該同族会社の役員として受領した報酬額及び当該同族会社の法人税の額を考慮すべきものではないと解されるところ、認定によれば、原処分庁の算定した同業者の不動産管理料割合は適正と認められ、これを基に算出された適正管理料の額に基づいて計算した請求人の所得税額は請求人の申告所得税の額に比べ著しくかい離していることが明らかであり、本件不動産管理委任契約に基づく行為又は計算は、請求人の所得税の負担を不当に減少させる結果となっていると認められるから、請求人の不動産所得の金額を所得税法第157条の規定を適用して算定した原処分は相当である。
要旨
請求人は、適格退職年金制度から確定拠出年金制度への移行に際し支払われた本件一時金は、①所得税基本通達30-2《引き続き勤務する者に支払われる給与で退職手当等とするもの》の(1)の定めは、内部積立方式による退職一時金制度を改廃した場合とは示していないから、適格退職年金制度を改廃したことによって引き続き勤務する従業員に対して支払われた本件一時金についても同通達を適用すべきであること、②転籍とは、請求人が籍を有していたA社と合併し存続会社となったB社との雇用関係を解消しC社との新たな雇用契約を結ぶということであり、A社の適格退職年金はC社へ継続されず、本件一時金はB社からの退職に基因して支払われたものであるから、所得税法第31条《退職手当等とみなす一時金》第3号の規定に該当すること、③過去の勤務期間が継続されない退職金前払い制度の選択により、勤務期間の通算の優遇措置がなくなることから、本件一時金は退職所得に当たる旨主張する。
しかしながら、①本件一時金は、外部拠出型の退職金制度から支払われたものであるため給与としての性質を有しておらず、所得税法第30条《退職所得》第1項に規定する「これらの性質を有する給与」に当たらないので、所得税基本通達30-2の(1)の適用はなく、退職所得とは取り扱われないと解されること、②C社は、同社への転籍前にB社の適格退職年金制度の加入者であった者については、B社の勤続年数を通算する旨を退職慰労金規定において定め、転籍者に係る同制度の年金資産を退職年金規約に基づきD信託銀行(運用機関)に移換しており、請求人には、転籍によるB社との雇用関係の解消は認められるが、B社の適格退職年金制度に基づいて支給を受ける一時金の受給権は発生せず、転籍後は、C社の適格退職年金制度が適用されることとなったことから、本件一時金は、転籍によるB社との雇用関係の解消に基因して支払われたものではないから、退職所得には当たらないこと、③本件一時金は、適格退職年金契約の解約に基づく分配金が退職金前払い制度を選択したことにより支払われたものであるから、退職所得には当たらないことから、請求人のいずれの主張にも理由がない。
以上のとおり、本件一時金は、請求人の退職により支給された分配金ではないから、所得税法第30条第1項及び同法第31条第3号の規定には当たらず、C社の適格退職年金契約の解約に伴い、D信託銀行から支払を受けたものであるから、所得税法第34条《一時所得》並びに同法施行令第183条《生命保険契約等に基づく年金に係る雑所得の金額の計算上控除する保険料等》第2項及び第3項第3号の規定により一時所得に該当する。
遺産の代償分割に当たり他の相続人に支払った金額は、当該代償分割によって取得した資産の譲渡所得の金額の計算上、譲渡資産の取得費の額に算入できないとした事例
裁決事例集 第21集 72頁
要旨
いわゆる代償分割の方法により遺産分割を了して相続した資産を譲渡した場合、その代償分割に際して負担することとなる債務は、相続人相互における各取得財産の価額を調整する目的で負担するものであって、その相続により取得した資産の取得代価として負担したものではないから、その債務の額を譲渡所得の金額の計算上取得費の額に算入することはできない。
要旨
所得税法第38条第1項に規定する「資産の取得に要した金額」には、当該資産の客観的価格を構成すべき取得代金の額のほか、登録免許税、仲介手数料等の当該資産を取得するために通常必要と認められる付随費用の額も含まれると解するのが相当であり、当該資産の維持管理に要する費用その他日常的な生活費ないし家事費に属するものはこれに含まれないと解するのが相当である。
そして、居住者が相続により取得した資産を譲渡したことにより、所得税法第60条第1項を適用して譲渡所得の金額を計算する場合において、相続人が当該資産を取得するために通常必要と認められる費用、例えば、相続の場合の被相続人から相続人への名義変更に係る不動産登記費用も、同法第38条第1項に規定する「資産の取得に要した金額」に該当すると解される。
もっとも、遺産分割の際に支出した訴訟費用、弁護士費用等は、一般には相続人間の紛争を解決するための費用であることから、相続人が当該資産を取得するために通常必要と認められる費用とはいえない。したがって、遺産分割の際に支出した訴訟費用、弁護士費用等は、所得税法第38条第1項に規定する「資産の取得に要した金額」に含まれる付随費用には該当しない。
本件弁護士費用は、本件共同相続人が本件相続に係る遺産分割を求めて申し立てた本件各遺産分割事件において、被相続人の代理人を務めた弁護士に対し、委任契約の報酬として支払われたものの一部である。
そうすると、本件弁護士費用は、遺産分割の際に支出した弁護士費用であるから、被相続人が本件土地を取得するために通常必要と認められる費用とはいえず、所得税法第38条第1項に規定する「資産の取得に要した金額」には該当しない。
要旨
配偶者出産費は、地方公務員共済組合法第63条第3項の規定に基づき給付されるものであり、また、配偶者出産費の付加金は、同法第54条及び同法施行令第23条の規定を受けて定められたA共済組合定款の規定に基づいて、組合員が配偶者出産費を受けることができるときにこれに付加して支給されるものであるから、その給付の原因及び目的は配偶者出産費と同様であって、出産費の支出の事由を給付原因とし、出産に伴う支出を補てんする目的をもって支給されるものであると認められ、所得税法第73条第1項かっこ書に規定する「保険金、損害賠償金、その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額」は、法定給付である配偶者出産費の額に限られ、同付加金の額は該当しないという請求人の主張は相当でない。
要旨
税法上、保険金受取人の取得した保険金が、一時所得として所得税の課税対象となるのか、相続財産とみなされて相続税の課税対象となるのかは、その保険金に対応する保険料の負担者が何人であるかによって判定されるべきものであり、その保険料負担者とは単に保険契約者をいうのではなく、実質上の負担者をいうものと解されるところ、長男の死亡に伴い父親(請求人)が受け取った本件生命保険金は、長男を被保険者とし、父親を保険契約者及び保険金受取人とする生命保険契約に基づくものではあるが、その保険料は、親せきなどから被保険者である長男に贈られた就職祝金をもって長男が全額負担したものと認めるのが相当であり、相続税法第3条第1項に規定する相続財産とみなされる場合に当該するというべきであるから、一時所得に当たるとした原処分はその全部を取り消すべきである。
要旨
請求人は、本件金員は、雇用主であるP市が全額を負担した労働の対価であること、勤務関係が終了したことによって初めて生じた給付であること及び一時金として支払われたことから、請求人が退職により一時に受ける給与であり、退職所得に該当する旨主張する。
しかしながら、本件金員が退職により一時に受ける給与に当たるというためには、それが、①退職すなわち勤務関係の終了という事実によって初めて給付されること、②従来の継続的な勤務に対する報償ないしその間の労務の対価の一部の後払の性質を有すること、③一時金として支払われること、との要件を備えることが必要であると解されるところ、本件金員は、従事員会が退会せん別金の給付に関する事業を廃止することに伴い従事員会から支払われたものであること、また、請求人と従事員会との間には雇用関係がないことからすれば、勤務関係の終了という事実によって初めて給付されるものと認められないから、退職所得には該当しない。
本件金員のうち、①退会せん別金相当額は従事員会が退会せん別金の給付に関する事業を廃止することに伴い従事員会から一時に支払われた清算金であり、②特別加算額は早期希望離職者の募集に応じたことに伴い従事員会から一時に支払われた金員であると認められることから、①及び②から成る本件金員は、臨時的・偶発的な所得であり、一時所得に該当する。
参照条文等
要旨
請求人は、離婚に伴う財産分与として本件土地の所有権を被分与者に移転したことにつき、その実質は共有財産中の所有地を特定し、真正な登記名義を回復したにすぎず、仮に本件土地が請求人の特有財産であったとしても、財産分与は対価を伴わない無償譲渡であり、被分与者の潜在的持分に着目して共有財産を分割するという清算的性格を有するものであるから、財産分与に譲渡所得の概念を持ち込むことには無理がある旨主張するが、本件土地の取得について被分与者が何らかの形で貢献していることは否定できないとしても、そのことをもって本件土地が直ちに被分与者との共有になるものとはいい得ず、本件土地は、請求人の特有財産であったものと認められ、また、夫婦の一方がその特有財産である不動産を財産分与として他方に譲渡した場合、そこに資産の移転が存することは明らかであって、その譲渡は、分与義務の消滅という経済的利益の享受を伴うものであるから有償の譲渡と認めるのが相当であり譲渡所得課税の対象となる。
要旨
請求人の妻である専従者は、他に勤務していた期間中も請求人から専従者給与の支給を受けているところ、[1]専従者が他に勤務すれば、その業務に従事した期間及び労務の提供の程度は減少するのであるから、給与の額も従事の減少分に対応して減額するのが相当であること、[2]同業者の年間を通して従事している専従者の平均給与額と当該専従者の給与額はほぼ同額であることから、少なくとも同人が他に勤務していた期間に対応する給与は、労務の対価として不相当に高額であると認められ、また、請求人が専従者であると主張する請求人の父及び母は、事業に従事していたとは認められないから、前記高額と認められる部分及び父、母に支給した給与額は必要経費に算入されない。
要旨
請求人は、青色申告の承認を受けているのに平成5年中に青色申告の対象となる所得を生ずべき業務を行っていなかったことのみをもって、純損失の繰戻しによる還付請求を認めないのは不合理であり、還付すべきである旨主張する。
しかし、請求人の平成5年分以後の所得税については、平成5年中に賃貸用不動産を譲渡した後は不動産所得を生ずべき業務を行っていた事実はなく、また、同年末日までに事業所得等に係る業務を開始した事実も認められないことから、請求人の青色申告の承認は平成5年分以後その効力は失われており、同年分の純損失につき繰戻しによる還付請求をすることは認められない。
非居住者である請求人が行っている国内不動産の貸付けが所得税法上の事業に該当するとはいえないから、当該不動産の賃貸料等は、代理人等を通じて行う事業に帰せられる国内源泉所得には該当せず、源泉徴収の免除の要件を満たさないとした事例(平成27年7月30日付の非居住者に対する源泉徴収の免除証明書を交付できないことの通知処分・棄却)
裁決事例集 第105集
ポイント
本事例は、非居住者に適用される源泉徴収の免除に関する規定(平成26年法律第10号による改正前の所得税法第214条第1項第3号)における「事業」の意義は、所得税法の他の規定における事業と同一の概念に解するのが相当としたものである。
要旨
請求人は、所得税法に「事業」についての一般的な定義規定が置かれていないことからすれば、所得税法(平成26年法律第10号による改正前のもの)第214条《源泉徴収を要しない非居住者の国内源泉所得》第1項第3号にいう「事業」とは、家事活動に対する経済活動を意味するものにすぎず、請求人が国内で不動産を貸し付けている以上、当該貸付けにより支払を受ける不動産の賃貸料等は、代理人等を通じて行う事業に帰せられる国内源泉所得に該当する旨主張する。
しかしながら、所得税法は、居住者の所得金額を計算するに当たって、事業から生ずる所得と、事業に至らない所得とを明確に区分して規定しており、これらの規定は非居住者にも準用されているところ、非居住者に適用される源泉徴収の免除に関する規定における「事業」の意義についても、所得税法の他の規定における事業と同一の概念に解するのが相当であって、これと異なる解釈をすべき理由は見当たらないから、所得税法第214条第1項第3号に規定する「事業」の意義については、所得税法における事業の概念をそのまま当てはめることが妥当である。そして、所得税法における事業の意義については、営利性・有償性の有無、継続性・反復性の有無、自己の危険と計算における企画遂行性の有無、その取引に費やした精神的肉体的労力の程度、人的・物的設備の有無、その取引の目的、その者の職歴、社会的地位・生活状況などの諸点を総合して、社会通念上事業といい得るか否かによって判断されるべきものと解するのが相当であるところ、請求人による不動産の貸付けの規模や態様からすれば、社会通念上事業といい得る経済活動とみることは困難である。したがって、請求人による不動産の貸付けは、所得税法上、事業とはいえないことから、請求人が当該貸付けにより支払を受ける賃貸料等は、代理人等を通じて行う事業に帰せられる国内源泉所得に該当しない。
参照条文等
所得税法(平成26年法律第10号による改正前のもの)第161条第3号、第164条第1項第3号、第212条第1項、第214条第1項第3号
要旨
非開業の医師である請求人が関与先病院等から受ける報酬は、対価支払者の指揮、監督に服して非独立的になされ、かつ、自己の計算と危険が伴わない労務提供の対価であるから、給与所得に該当するものであり、また、これらの報酬は、[1]関与先病院等は請求人が設立した法人に業務委託をしたことはないこと、[2]関与先病院等における請求人の従事内容は、客観的にみて請求人個人においてのみなし得るものであること等から、その報酬は個人に帰属する。
要旨
請求人は、ゴルフ場の倒産に伴うゴルフ会員権の価値の減失損の金額を、ゴルフ会員権の譲渡による損失と同様に他の各種所得の金額から控除すべきであると主張するが、所得税法第69条第1項の規定により他の各種所得の金額から控除することとされている損失は、不動産所得、事業所得、山林所得又は譲渡所得の金額の計算上生じた損失とされているところ、ゴルフ場の倒産に伴うゴルフ会員権の価値の減失損は会員権の譲渡による損失ではないから、その損失の金額を他の各種所得の金額から控除することはできない。
要旨
請求人が外交員として勤務する不動産販売会社を売主、請求人を買主とする本件売買契約書は、請求人がノルマを履行して高率の歩合の支給を受ける一方、同社も歩合は支給するものの本件土地の販売権限を請求人にゆだねる趣旨で作成されたものと解されるところ、請求人は、結局本件土地を顧客にあっせんすることができなかったのであるから、本件売買契約書の作成に伴って同社から請求人に支給された金員は、歩合の前払金であり、請求人の事業所得に係る収入金額とすることはできない。
主たる債務者はいまだ求償権を行使しても回収の見込みのないことが確実な状況にまで立ち至ったとは認められないので保証債務の履行に伴い求償権が行使できない場合に該当しないとした事例
裁決事例集 第32集 86頁
要旨
保証債務の履行に係る求償権の放棄について、主たる債務者は、[1]経営の合理化と銀行側の協力とによって引き続きその事業を継続していること、[2]借入金の残高は年々減少していること、[3]本件求償権を放棄した直後の決算期には利益金を計上していること、[4]債務免除を受けたのは本件求償権だけであることなどから、請求人が求償権を行使しても直ちにこれに応ずることができない状況にあったとしても、いまだ求償権を行使しても回収の見込みのないことが確実な状況にまで立ち至ったとは認められないので、本件求償権の放棄はその行使ができないために行ったものと認めるのは相当でない。
要旨
請求人は、借入金による所得税等の納付は、事業資金として保有している預金によって本件所得税等を納付し、借入金をもって当該預金を補てんした場合と実質的には異ならないから、本件借入金を事業上の借入金とみて本件借入金の利子を事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである旨主張するが、本件借入金の使途は、本件所得税等の納付に充てられており、本件所得税等は所得税法第37条第1項の別段の定めに当たる同法第45条1項第2号及び第4号に規定されているとおり、必要経費とすることのできないものである。また、これらの号において、必要経費に算入しないとしているのは、当然のことを確認する意味から規定しているもので、同条の規定がなくとも所得税等を必要経費に算入することはできないものと解される。
したがって、本件借入金が必要経費とすることができないものに充てられていることから、本件借入金の利子を事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。
ポイント
本事例は、不動産業等を営む請求人が、あたかも不動産の売買等があったかのように装い、収入金額、取得費及び関連費用等を、事業所得の金額の計算上、総収入金額及び必要経費に算入していたものである。
要旨
請求人は、事業所得の金額の計算上、総収入金額及び必要経費に、①妻に対する自宅の売却による収入金額並びに自宅の取得費及び取得に要した費用、②競売により取得した土地及び建物の前所有者に対する引越費用、③土地を売却したことによる収入金額及び当該土地の取得費及び取得に要した費用、④建物に係る修繕工事費用等を事実に基づき算入した旨主張する。
しかしながら、①及び④については、金銭の授受がないこと、②については、領収証記載の金銭の授受がないこと、③については、所有権移転の登記の事実がないこと等から、いずれも事実とは異なり、これらの金額については、総収入金額及び必要経費への算入は認められない。
要旨
二つの物件について、譲受人から一括しての買申込みがあったことに対し、請求人としてはその代金を一時に入手する必要がなく、かつ、税負担の考慮から譲渡年分を変えることとして、一つの物件については売買契約を締結し、他の一つ物件については売買予約の覚書を作成し、同覚書に基づき売買予約の仮登記をした場合に、請求人と譲受人との間においては、当該覚書作成の時において、既に、他の一つの物件の売買代金の額について合意が成立していて、譲受人は請求人からの要求に基づき、当該覚書作成の日の翌日にその売買代金の全額を支払うことによって買主としての義務を完全に履行しているから、本件土地に関する所有権移転の登記手続を翌年1月以降に行ったとしても、請求人には、前記目的以外にその所有権移転を直ちにすることができないとする事情は認められず、したがって、売買当事者間においては、譲受人が実質的にその売買代金の全額を請求人に支払った日において、その譲渡があったものと認定するのが相当である。
要旨
請求人が支払った代償金は遺産分割調整金債務であって、被相続人の他の債務が相続税の課税価格の計算上控除されるので相続財産の取得費を構成しないのと同様、消極財産(遺産債務)として調整済みであるから、譲渡所得の計算上取得費の額に算入できない。
また、代償金の原資となった借入金に係る支払利息も同様である。
要旨
請求人は、請求人の代表者が海外のプラント工事に従事した期間は、同人は非居住者に該当し、かつ、同人は、元請会社の現地支店の支配人下に入り使用人として常時勤務しているから、同人に支払った報酬は国内源泉所得に該当しないと主張するが、[1]請求人の代表者が、使用人と同様の勤務をしていたとしても、それ自体は、代表者としての業務執行に従事しているものというべきであり、これを使用人としての労働とみることはできず、また、[2]代表取締役の地位にあっては、国外勤務の期間中もその勤務は、所得税法施行令第285条第1項第1号かっこ書に規定する使用人として常務する役員としての勤務には該当しないから、請求人の代表者に支給した報酬は、国内源泉所得に該当する。
要旨
雑損控除は納税者等の意思に基づかない法定原因によって資産に損失が生じた場合に認められるもので、雑損控除が適用され得る損失は、当該法定原因によって生じた損失に限られると解するのが相当であるところ、本件損失は、保証債務の履行に係る求償権の行使不能によって生じたものであって、上記法定原因によるものでないことは明らかであるから、雑損控除の対象となる損失には該当しない。
要旨
所得税法第64条第2項に規定する「保証債務の履行」とは、その実質において主たる債務及び主たる債務に従属する利息、違約金、損害金等を保証人が肩代わりして弁済することと解すべきであって、保証債務の履行に関連して支出した訴訟費用、弁護士費用及び不動産鑑定料については、民法上求償権の行使ができるとしてもそのことをもって同条項にいう求償権と同一に解されなければならないというものではなく、それらに係る求償権を同条項にいう「その履行に伴う求償権」の額に含めることはできない。
保険契約に係る保険料の負担者は死亡者であり、死亡保険金は相続税の課税対象とされるべきである旨の請求人主張の事実は認められず、一時所得に該当するとした事例
裁決事例集 第51集 149頁
要旨
請求人は、本件保険契約に係る契約者及び保険料の負担者は、いずれも死亡者である長男であるので、本件死亡保険金は相続財産として相続税の課税対象とされるべきであると主張する。
しかしながら、[1]第1回の保険料は長男が支払った事実はあるものの、請求人の妻がその支払いの直後に長男に小遣いを渡していることから、同人が当該保険料を実質的に負担したとは必ずしもいえないこと、[2]長男の預金口座から本件保険料が支払われている事実は認められないこと等から、本件保険料の負担者が長男であるとは認められない。
したがって、本件の死亡保険金は、相続財産には該当せず、一時所得に該当するものと認めるのが相当である。
前年分の確定申告書に記載されていない退職所得に係る所得税の額を、純損失の繰戻しによる還付金の額の計算の対象とすることはできないとした事例(平成25年分の純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求の一部に理由がない旨の通知処分・棄却)
裁決事例集 第101集
要旨
請求人は、所得税法第140条《純損失の繰戻しによる還付の請求》は、純損失の繰戻しによる還付金の額の計算の対象となる所得税の額について、純損失が生じた前年分の確定申告書に記載した所得に係るものであることを要件とはしていないことから、前年分の確定申告書に記載されていない退職所得に係る所得税の額も対象となる旨主張する。
しかしながら、純損失が生じた前年分の確定申告について青色申告書の提出が要件とされていることからすると、当該青色申告書に記載されていない退職所得に係る所得税の額を純損失の繰戻しによる還付金の額の計算の対象とすることはできない。
参照条文等
要旨
請求人が支払った医師等に対する謝礼並びに入院時の新聞購読料、牛乳代金及びテレビ賃借料は、医師による診療等の対価若しくは診療等の直接必要な費用とは認められないから、これらの金額は、所得税法上の医療費とすることはできない。
ポイント
裁決においては、請求人が特に推計方法に合理性がない旨を主張していない場合であっても、必ずその合理性につき判断することとしているところ、この事例は、争点とはなっていなかったが、同業者比率法による推計の合理性について審理し、原処分庁の選定した類似同業者以外にも、請求人の事業所得の金額を推計する際に選定されるべき類似同業者の存在を認めたものである。
要旨
原処分庁は、請求人の本件各年分の事業所得の金額を、総収入金額に類似同業者の平均特前所得率(類似同業者の青色申告特典控除前の事業所得の金額を総収入金額で除した数値の平均値)を乗じて推計の方法により算定しているところ、およそ業種、業態に類似性のある同業者にあっては、特段の事情がない限り、同程度の収入に対して同程度の所得を得るのが通例であり、このことは請求人の営む事業の場合にあっても例外ではなく、かつ、請求人に特段の事情があるとは認められないから、原処分庁の用いた推計方法には合理性があると認められる。
ところで、原処分庁は、国税局管内に事業所を有し、請求人と同業種の者で、かつ、その年分の総収入金額が請求人のそれの0.5倍以上2倍以下であるなど事業規模の類似する事業を営む青色申告者を類似同業者として、本件各年分について各5件を選定しているところ、原処分庁の類似同業者の選定方法についてその適否を審理した結果、類似同業者の選定漏れが平成18年分については1件、平成19年分及び平成20年分については各6件認められることから、本件各年分の平均特前所得率を再計算すると、いずれも原処分庁の主張する率を下回ることとなる。
参照条文等
参考判決・裁決
東京地裁昭和61年5月26日判決(税資152号192頁)
取引先から受領した約束手形については、債務者が和議の取下げをした時点において債権の回収が不能になったと認められることから、貸倒損失として必要経費の額に算入すべきであるとした事例
裁決事例集 第44集 118頁
要旨
請求人が取引先から受領した約束手形に係る貸倒損失については、当該手形の債務者は、[1]後に取り下げてはいるものの和議の申立てを行っていること、[2]主要な営業種目である宅地建物取引業者の免許を取り消されていること、[3]残余財産もなく債務の弁済ができないような状況にあること等から、遅くとも債務者が和議の取下げをした時点において債権の回収が不能になったと認めるのが相当である。
取引相場のない株式の譲渡に係る所得税法第59条第1項の「その時における価額」につき、所得税基本通達59-6に定められた方法により算定した価額によることが相当であるとした事例(令和3年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第140集
ポイント
本事例は、発行法人(本件法人)の支配株主と厳しく対立していたとの請求人の主張する事情をもって、所得税基本通達59-6の定めに従った評価方法によっては、本件法人が発行した取引相場のない株式の時価を適正に算定することはできない特別の事情と認めることはできないとしたものである。
要旨
請求人は、取引相場のない株式(本件株式)の発行法人(本件法人)の支配株主と厳しく対立していたため、本件法人を支配していたとはいえず、支配力を制限された「中心的な同族株主」であって、所得税基本通達59-6《株式等を贈与等した場合の「その時における価額」》の定めによる評価方法では本件株式の客観的交換価値を適正に算定することのできない特別の事情があるから、当該評価方法によるべきではない旨主張する。
しかしながら、(同通達で借用されている)財産評価基本通達(評価通達)が「同族株主」あるいは「中心的な同族株主」の範囲を形式的に支配従属関係が及ぶとされる一定の範囲のものとし、画一的に同族関係者の範囲を定めることとしているのは、評価を行う者の恣意性の排除及び回帰的かつ大量に発生する課税事務上の迅速な処理の要請並びに課税の公平を確保するという観点からむしろ合理的であるというべきであり、請求人の主張する事情をもって、評価通達の定めに従った評価方法によっては本件株式の時価を適正に算定することのできない特別の事情と認めることはできない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和43年10月31日第一小法廷判決(集民92号797頁) 最高裁昭和47年12月26日第三小法廷判決(民集26巻10号2083頁) 最高裁令和2年3月24日第三小法廷判決(集民263号63頁) 東京高裁平成28年9月8日判決(税資266号順号12898) 東京高裁令和3年5月20日判決(税資271号順号13564)
受領済の役員報酬につきそ及して減額する旨取締役会で決議したことにより、給与所得の収入金額が過大であるとしてされた更正の請求は、同決議に基づき受領済の報酬の一部を返還しても、請求人の既に確定した給与所得の収入金額には影響を及ぼさないから、更正をすべき理由がない旨の原処分は適法であるとした事例
裁決事例集 第56集 111頁
要旨
請求人は、[1]本件減額決議は、多額の累積欠損金を抱えたE社の再建を目的として、取締役全員の合意に基づいて行ったもので、同社は、平成8年9月に開催した定時株主総会において財務諸表の承認を得ていること、[2]役員と法人との間の委任契約は、当該委任契約の存する決算期間内であれば、そ及して変更することは可能であることから本件役員報酬の減額を認めるべきである旨主張する。
しかしながら、E社は請求人の役員報酬の金額(月額)及びその支給日を毎月20日と定めていたと認められ、請求人は平成7年においてその定めどおりに役員報酬を受領していたと認められるから、請求人の平成7年分の給与所得の収入すべき金額は請求人が確定申告をした金額になる。
また、本件減額決議をした本件取締役会及び株主総会を開催した日は、いずれも平成8年7月期の事業年度終了の日以後の請求人が現実に報酬を受領した後であり、その支払時点では経営委任の業務執行の対価として正当に支払われたものであり、請求人の平成7年分の給与所得の収入金額は、収入すべき時期である支給日において既に具体的に確定していたと認められるから、本件減額決議をした日に収入すべき金額が確定したとみることはできず、請求人が本件決議に基づいて受領済の役員報酬の一部を返還しても、請求人の給与所得の収入金額に何ら影響を及ぼすものではないと解するのが相当である。
したがって、更正すべき理由がないとした本件通知処分は適法である。
要旨
請求人名義の土地の譲渡を、たとえ、同人の子が無断で行ったものであるとしても、その後、当該土地の面積及び売買価額を改める変更契約書を請求人、買主及び当該子が協議して作成していることから、請求人は本件譲渡を追認していると認められること、請求人が無断譲渡に関して法的手段に出ていないこと、譲渡代金は当該子が受領済みであることなどから、請求人が本件土地を譲渡したものとして行った原処分は適法である。
土地の賃貸に当たって行われた造成工事等の費用を不動産所得の必要経費に算入することはできないとの原処分庁の主張を排斥した事例(平成24年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第102集
ポイント
本事例は、賃貸用土地の造成等の工事に係る費用が、当該土地の改良費として取得費に算入されるか、当該土地の賃貸業務に係る費用として必要経費に算入されるかについては、当該造成等の工事の具体的な内容に従って判断する必要があるとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人の所有する賃貸用土地(本件土地)に関して行われた造成等の工事(本件造成等工事)に係る費用は、その全てが改良費に該当し本件土地の取得費に算入すべきものであるから、請求人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないと主張する。
しかしながら、本件造成等工事の具体的な内容は、①外構造成工事(掘削、埋戻し、整地等)、②土留め工事(隣接地との境界ブロックの撤去及び積み直し)、③乗入側溝改修工事(本件土地に接する県道の歩道部分の切下げ、復旧等)、④境界等整備(隣地との境界の明確化等)、⑤土壌汚染調査(土壌内の有毒物質の有無の調査)に区分されるところ、それぞれについて検討すると次のとおりである。①外構造成工事は、本件土地の形質を変更し改良する工事であるから改良費に該当する。②土留め工事、④境界等整備及び⑤土壌汚染調査は、いずれも本件土地を改良したり、その価値を増加させるものではないから改良費には該当せず、不動産所得の必要経費に算入される。③乗入側溝改修工事は、請求人の所有する土地に係る工事ではないが、請求人は当該工事により便益を受け、その効果が費用の支出後1年以上に及ぶので、繰延資産に該当し、所定の償却費の額が必要経費に算入される。
参照条文等
地方公共団体への土地の寄付が、所得税法第78条第2項第1号に規定する「その寄付をした者がその寄付によって設けられた設備を専属的に利用することその他特別な利益がその寄付をした者に及ぶと認められるもの」に該当するとした事例
裁決事例集 第66集 170頁
要旨
特定寄付金とされる所得税法第78条第2項第1号の「国又は地方公共団体に対する寄付金」のうち、「その寄付をした者がその寄付によって設けられた設備を専属的に利用することその他特別な利益がその寄付をした者に及ぶと認められるもの」を除く旨の規定は、その寄付をした者が形式的には寄付したものであっても、それにより特別の利益を受ける場合には、実質的にみて寄付とはいえないので、かかるものを除く趣旨であると解される。
請求人は、側溝をまっすぐに改修してもらうよう本件土地を買い上げ、P市に寄付したものであり、所得税法第78条に規定する寄付金控除に該当する旨主張する。
しかしながら、本件寄付があり市道が拡幅されることとなったため、請求人の要望どおり、側溝の設置工事が行われており、また、旧市道が拡幅及び舗装されたことにより、主として当該市道を日常的に利用する請求人及び近隣住民の通行等の利便性が従来に比べ向上し、特に、自宅への進入路が狭くなっていた請求人は、市道として拡幅、舗装された部分に接する自宅玄関側敷地に新たに出入り口を設けるなど、本件寄付前に比べ利便性が向上したことが他の利用者以上に顕著であり、本件寄付の利益を最も享受しているといえることから、所得税法第78条第2項第1号に規定する「その寄付をした者がその寄付によって設けられた設備を専属的に利用することその他特別な利益がその寄付をした者に及ぶと認められるもの」に該当し、特定寄付金には該当しない。
要旨
- 請求人が外国人芸能タレントの招へい業者に支払った芸能タレントの報酬額及び源泉所得税額相当額については、請求人と当該招へい業者との間には芸能タレントの出演請負契約があること、芸能タレントの報酬額及び源泉所得税額相当額の区分は明確になっておらず、その区分は当該招へい業者へ支払う報酬の算定根基にすぎないこと、現行の源泉徴収制度は、報酬の支払先に源泉徴収を依頼するような制度にはなっていないこと等からみて、請求人において源泉徴収を要する。
- 請求人が外国人芸能タレントに対して芸能タレントの売上成績に応じて支払った、いわゆるドリンク・バックは、当該芸能タレントのホステス業務に対する対価であること、ホステス業務に関する請求人と芸能タレントとの関係は請負と認められること、ホステス業務は国内店舗で行われていること等からみて、国内源泉所得に該当するから、源泉徴収の対象になる。
要旨
請求人は、請求人が行った外国為替証拠金取引(本件各FX取引)により生じた利益及びスワップポイントについては、ロスカットを防止するため本件各FX取引の各取引口座から証拠金を出金することができなかったこと、また、本件各FX取引における未決済の取引については、評価損が評価益を上回っている状態にあったことから反対売買による差益を本件各FX取引の各取引口座から引き出す権利がなかったので、本件各FX取引については、本件各年分の年末において収入すべき金額が発生していない旨主張する。
しかしながら、所得税法第36条《収入金額》第1項が、その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において「収入すべき金額」とする旨規定しており、これは、現実に収入がない場合においても、その収入の原因となる権利が確定した場合、その時点で所得の実現があったものとして課税所得を計算するという、いわゆる権利確定主義を採用しているものと解されているところ、本件各FX取引におけるロスカットや請求人の出金可能額は、請求人と本件各FX取引の取引業者との間の取決めにすぎないから、本件各FX取引における反対売買による差損益及びスワップポイントについては、反対売買による決済をした時、又はロールオーバーがあった時に、それぞれ収入の原因となる権利が確定したこととなる。
契約期間を満了して退職する期間契約社員に対し慰労金名目で支給された金員は、退職により一時に受ける給与というための要件を満たしているから、退職所得に該当するとした事例
裁決事例集 第83集
ポイント
この事例は、契約期間を満了して退職する期間契約社員に対し支給された慰労金名目の金員につき、その支払者が給与所得に該当するとして所得税の源泉徴収をしたものの、その支給基準、支給実態からみて、最高裁昭58.9.9第二小法廷判決(民集37巻7号962頁)で示された、退職所得に当たるというための三つの要件を満たしていると判断したものである。
要旨
原処分庁は、F社の期間契約社員就業規則によると、F社は、期間契約社員に対する退職金を支給しないこととされていることなどから、慰労金名目で支払われた金員(本件慰労金)に係る所得は給与所得に該当する旨主張する。
しかしながら、ある金員が、「退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与」に当たるというためには、それが、①退職、すなわち勤務関係の終了という事実によって初めて給付されること、②従来の継続的な勤務に対する報償ないしその間の労務の対価の一部の後払の性質を有すること、③一時金として支払われることの各要件を備えることが必要であると解されるところ、本件慰労金のうち、労働慰労金として支給された金員は、請求人が契約期間を満了して退職するという事実によって支給され、請求人が契約期間における出勤すべき日数の90パーセント以上を出勤し、勤務成績が良好な者に該当するとして、契約期間における勤務日数に応じて一時に支給されたこと、有給休暇手当金として支給された金員は、請求人が契約期間を満了して退職するという事実によって支給され、契約期間中に生じる有給休暇について請求人がこれを取得しなかったことを支給の根拠として一時に支給されたことからすると、本件慰労金は上記①ないし③の各要件をいずれも満たすものと認められることから、退職所得に該当する。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭58.9.9第二小法廷判決(民集37巻7号962頁)
定年年齢を超えて勤務していた医師に支払った一時金は、退職を原因として給付されたものと認められるから、退職所得に該当するとした事例(令和4年3月分の源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分並びに令和4年12月分の源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の納税告知処分・全部取消し)
裁決事例集 第140集
ポイント
本事例は、病院等を運営する請求人が、雇用する医師の定年を定める旨の就業規則の改正を行い、当該改正時、既に定年に達していた医師らに対して退職金として支払った一時金について、所得税法第30条第1項に規定する退職手当等に該当するとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人が運営する病院等で勤務する医師ら(本件医師ら)に対し退職金の名目で支払った金員(本件一時金)について、請求人と本件医師らの間には、退職及び再雇用という実質がなく、従来の勤務関係がそのまま継続していたことが推測され、本件医師らは、再雇用とされた前後で賃金が同水準であり、その役職も変動がなかったと推認されること等から、勤務関係が終了したとも、勤務関係の性質、内容及び労働条件等において重大な変動があって、形式的には継続している勤務関係が実質的には単なる従前の勤務関係の延長とはみられないなどの特別の事実関係があったとも認められず、また、本件一時金が合理的な理由による退職金支給制度の実質的改変により精算の必要があって支給されたものとも認められないから、本件一時金は所得税法第30条《退職所得》第1項に規定する退職手当等に該当しない旨主張する。
しかしながら、請求人の理事を兼務する医師(本件兼務医師)を除く本件医師らについては、新たな雇用契約(本件各雇用契約)に至る経緯及び内容を踏まえると、雇用形態の法的性質は大きく異なっており、請求人を取り巻く状況などを踏まえると、本件各雇用契約の前後で業務内容及び賃金等の変動がないことをもって従来の勤務関係が終了していないとみるのは相当でなく、請求人の本件各雇用契約締結の目的も合理的な理由を有するから、従来の勤務関係の終了があったと認められる。また、本件兼務医師については、理事の身分に変更がないから請求人における勤務関係が終了したとはいえないが、使用人としては他の医師らと同様に従来の勤務関係が終了したと認められ、本件兼務医師に係る本件一時金は、理事としての職務に対するものではないこと等から、使用人としての関係においては、実質的にみて所得税法第30条第1項に規定する「退職により一時に受ける給与」というための各要件の要求するところに適合し、課税上、これと同一に取り扱うことが相当であり、同項に規定する「これらの性質を有する給与」に該当すると認められる。したがって、本件一時金は、所得税法第30条第1項に規定する退職手当等に該当する。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和58年9月9日第二小法廷判決(民集37巻7号962頁) 最高裁昭和58年12月6日第三小法廷判決(集民140号589頁)
小作権を消滅させ、新たに建物の所有を目的とする借地権を設定したことによる権利金については、旧小作権部分と旧底地部分に係る収入金額とに区分して、長期・短期のそれぞれの譲渡所得金額を計算することが相当であるとした事例
裁決事例集 第55集 155頁
要旨
請求人は、A土地の小作権を消滅させるための離作料を支払い、その直後に、A土地に隣接するB土地を含めた土地に建物の所有を目的とする新たな借地権を設定したことの対価として受領した権利金に係る譲渡所得の金額の計算に当たっては、離作料の額と同額の権利金を受け取って新借地人との間で本件借地権を設定したものであり、その経済的実質は、旧借地権者から新借地権者への借地権の移転とみることができ、借地権の内容に何らの変更がないのであるから、本件借地権取引によって所得は発生していない旨主張する。
しかしながら、本件土地の賃貸借契約においては、A及びB土地の全体が新たな借地権の目的とされ、実際に建築された建物も本件土地全体を利用する状況にあることが認められ、A土地とB土地を格別区分して借地権が設定されたものではないことは明らかであるから、本件権利金を収入金額として区分するに当たっては、A土地とB土地の面積の比率により按分するのが相当である。
また、請求人が主張するように、本件権利金のうちに占める離作料の額の割合が明らかであるとしても、それは本件権利金の使途の問題にすぎず、本件権利金が本件土地全体に借地権を設定することの対価として授受されたものであると解される以上、その割合が直ちにA及びB土地の収入金額に区分する際の割合にならないことは当然である。
居住用兼賃貸用資産の譲渡代金と借入金とをもって居住用兼賃貸用資産を取得した場合における借入金利子のうち、賃貸用部分に対応する金額は不動産所得の金額の計算上必要経費に該当するとした事例
裁決事例集 第22集 55頁
要旨
居住用兼賃貸用資産を譲渡し、その譲渡代金と借入金をもって居住用兼賃貸用(貸店舗)資産を取得した場合における当該借入金に係る支払利子については、請求人により特にその賃貸用部分の取得代金が借入金によって賄われたことが具体的に立証されない限り、その全額を不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできず、当該取得資産のうち賃貸用部分と居住用部分の占めるそれぞれの床面積の割合に基づいて支払利子をあん分し、そのうち賃貸用部分に対応する支払利子の金額のみを不動産所得の金額の計算上必要経費とするのが相当である。
要旨
請求人は、相続により取得した建物の減価償却費の計算について、所得税基本通達49-1において、所得税法施行令第120条第1項第1号に規定する「取得」には、相続による取得を含む旨定めているが、法律又は政令で明確に規定がない限り、その「取得」には相続による取得は含まないこと、所得税法第60条第1項は、相続により取得した資産の取得費について、その者が引き続きこれを所有していたものとみなす旨規定していることから、減価償却資産の償却の方法も承継が認められるべきである旨主張する。
しかしながら、不動産の取得とは、その所有権の取得にほかならず、民法は、その取得原因(取得方法)として、売買や贈与などの契約及び相続などの承継取得、また、時効取得などの原始取得についても規定していることから、相続についても売買等の契約と同様に取得原因になりうると解される。
また、所得税法第60条第1項の規定は、単純承認に係る相続による資産の移転について、被相続人がその資産を保有していた期間中に発生した値上がり益をその相続人の所得として課税しようとする趣旨のもので、その相続人の譲渡所得の金額の計算上控除すべき取得費について、被相続人がその資産を取得した時から相続人がその資産を所有していたものと擬制して取得費の計算を行うために設けられたものである。そして、減価償却資産の取得価額について規定した所得税法施行令第126条第2項において、相続により取得した減価償却資産の取得価額について、相続人が被相続人の取得価額を引き継ぐ旨規定しているが、その規定は、減価償却資産について、被相続人が選定していた償却の方法を相続人が引き継ぐことまで規定したものではなく、償却の方法については、同法施行令第120条に規定するとおりであるから、請求人の主張にはいずれも理由がない。
したがって、平成14年1月4日の相続により取得した本件建物の償却の方法については、所得税法施行令第120条第1項第1号ロの平成10年4月1日以後取得した建物に該当するので、本件建物の償却の方法は定額法となる。
要旨
請求人と請求人が雇用されている会社との給与に関する契約は年俸契約であり、単身赴任手当や通勤手当等は一切支給されていないところ、請求人は、単身赴任費相当額又は通勤費相当額は所得税法第9条第1項第5号の課税されない通勤手当に類するものであるから、給与所得の金額は、これらの金額を給与等の金額から控除した後の金額を基礎として算出すべきである旨主張する。
しかしながら、所得税法第9条第1項第5号は、給与所得を有する者で通勤するものがその通勤に必要な交通機関の利用又は交通用具の使用のために支出する費用に充てるものとして通常の給与に加算して受ける通勤手当(これに類するものを含む。)のうち、一般の通勤者につき通常必要であると認められる一定の部分を非課税所得とする旨規定しており、この規定の「これに類するもの」とは、現金支給に代えて支給される通勤用定期乗車券の現物等がこれに当たるものと解されているところ、請求人にあっては、給与等のほかに通常の給与に加算して受けるものは一切なく、本件非課税規定による通勤手当は存在しないのであるから、請求人の主張には理由がない。
なお、給与所得の金額の計算上収入金額から控除すべき金額は、所得税法第28条の規定による給与所得控除額及び所得税法第57条の2の規定による特定支出の額の合計額が給与所得控除額を超えたときの超えた部分の金額とされているところ、本件単身赴任費相当額は、特定支出の控除の対象となる特定支出とは認められず、本件において給与所得の収入金額から控除できる金額は、給与所得控除額のみである。
要旨
本件土地は、建物建築の請負代金の現物決済として支払に充てられたものであるが、契約当時当事者双方とも土地価額の動向が予知できず、その現物決済として予定していた土地を当初予定の価額で他に転売することが不可能なことが明らかとなったので、請負人は請負に係る建物の質を下げて工事を施行せざるを得なかった事情があり、当該建物の新築工事は当初見積りのとおり施行されているとは認められない。したがって、当該現物決済に係る土地の譲渡所得の金額の計算上収入金額とすべき金額を請負契約書に記載された請負代金によるべきであるとした原処分は不相当であり、その金額は請求人が取得した建物の鑑定評価額によることが相当である。
要旨
請求人は、事業所得であるというためには、「給付」をなす者に対する「役務の提供」という対価関係があることが必要であるところ、本件援助金は、請求人と弁護士会の間に役務行為が存在しない対価性のない無償行為に対して支払われたものであるから、一時所得に該当する旨主張する。
ところで、所得税法第27条第1項に規定する事業とは、自己の計算と危険において利益を得ることを目的として継続的に行う経済活動のことをいうと解され、そして、同条項が事業所得を「事業から生ずる所得」と規定しているのは、事業が総合的な活動であることに着目して、本来の事業活動による収入のほかに、事業の遂行に付随して生ずる収入も事業所得の総収入金額に含める趣旨と解するのが相当である。
また、一般に弁護士の弁護士業務に係る所得区分は事業所得であると認められる。
これを本件援助金についてみると、①請求人は、国選弁護人として弁護士会の推薦を受け、裁判所から選任され、被告人の弁護活動を行うことでその支払を受けたこと、②請求人は、弁護士会に本件援助基金規則に基づき援助申請を行い、弁護士会の「刑事弁護援助基金支払証書」には「刑事被告人の弁護費用として金75万円支出する。」旨の記載があること、③弁護士会は、国選弁護人としての遵守事項を定め、また、当該事件についての報告を求めるなど、請求人が行った弁護活動について極めて密接な関係を持つものであることなどからすると、本件援助金は、弁護士活動に付随して生じた収入ということができ、事業所得の総収入金額に含まれると解するのが相当である。
したがって、本件援助金は、事業所得に該当すると認められることから、一時所得には該当しない。
従業員地位保全・金員支払仮処分申請に係る裁判所の決定に係る給付金支払債務について、その金額につき差押えを執行された場合においても源泉徴収義務があるとした事例
裁決事例集 第24集 67頁
要旨
従業員としての地位保全と賃金の仮払いを求める仮処分の決定の支払命令に基づく本件給付金員支払債務について、その金額につき差押えを執行されたため所得税の源泉徴収をする機会がなかったと請求人は主張するが、本件給付金員に係る給与に対する源泉所得税は、その支払者が所得税法第222条の規定に基づきその後の給与等の支払分から控除するか、又は受給者に対して当該税額に相当する金員の請求ができることになっている以上、給与支払者たる請求人の源泉徴収義務には何ら影響がない。
扶養親族に該当するための所得要件である合計所得金額の計算においては、租税特別措置法第37条の12の2《上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除》第1項の規定は適用されないとした事例
裁決事例集 第73集 250頁
要旨
請求人は、租税特別措置法(平成17年法律第21号による改正前のものをいい、以下「措置法」という。)第37条の12の2第4項は、同条第1項の規定(以下「本件繰越控除規定」という。)の適用がある場合における、同法第37条の10(第7項以外)の規定による「株式等に係る譲渡所得等の金額」は、本件繰越控除規定の適用(控除)後の金額であることを明確にしたものであって、原処分庁が主張するような、「合計所得金額」を計算する際に総所得金額等に加算する「株式等に係る譲渡所得等の金額」の計算に当たり本件繰越控除規定の適用の排除を意味するものではないから、適法に繰り越した「上場株式等に係る譲渡損失の金額」を有する場合における「合計所得金額」を計算する際には、本件繰越控除規定が適用され、当年分の「株式等に係る譲渡所得等の金額」から適法に繰り越した「上場株式等に係る譲渡損失の金額」を控除することは明らかである旨主張する。
しかしながら、措置法第37条の12の2第4項において、第1項の規定の適用がある場合の、第37条の10及び第37条の11の各規定(第37条の10においては第7項を、第37条の11においては第4項をそれぞれ除く。)の適用に当たっては、それぞれの第1項の「計算した金額」をいずれも「計算した金額(第37条の12の2第1項の規定の適用がある場合には、その適用後の金額)」と読み替えて適用する旨規定しており、措置法第37条の10第7項又は同法第37条の11第4項の各規定の適用(合計所得金額の計算)の場面においては、各条第1項の規定は上記のとおり読み替えられずに適用されることになる。
また、前年から繰り越された「上場株式等に係る譲渡損失の金額」を有する場合の「株式等に係る譲渡所得等の金額」については、「課税標準」の計算の場面においては本件繰越控除規定を適用して計算し、扶養親族の所得要件となる「合計所得金額」の計算の場面においては本件繰越控除規定を適用しないものとして計算することになる。
すなわち、居住者が、所得税額の計算上、本件繰越控除規定を適用して控除すべき「上場株式等に係る譲渡損失の金額」を有しているとしても、その「合計所得金額」の計算に当たっては、本件繰越控除規定を適用して、「株式等に係る譲渡所得等の金額」を計算することができないことは、法律上明らかである。
持分会社の社員の死亡退社に伴う持分払戻請求権の価額相当額のうち、出資した金額を超える部分はみなし配当に該当するとした事例(平成28年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第127集
ポイント
本事例は、持分会社の社員が死亡退社した場合には、その社員の有していた社員権が死亡と同時に持分払戻請求権に転換し、その転換した時点において、持分払戻請求権の価額のうち元本(出資)を超える部分が、所得税法第25条第1項の規定により剰余金の配当等(みなし配当)として当該死亡社員の所得を構成すると判断したものである。
要旨
請求人らは、持分会社の社員(本件被相続人)の死亡退社に伴う持分払戻請求権(本件払戻請求権)について、その払戻額を零円とすることが持分会社の総社員による同意で決定されており、相続人である請求人らに対し金銭その他の資産の交付はされていないから、所得税法第25条《配当等とみなす金額》第1項の規定によって配当等とみなされる金額はない旨主張する。
しかしながら、当該持分会社の定款には会社法第608条《相続及び合併の場合の特則》第1項に規定する持分の承継に関する定めがないことからすれば、本件被相続人は死亡退社により本件払戻請求権を取得したものと認められ、本件被相続人が有していた社員権(出資)が本件払戻請求権に転換した時点、すなわち、相続開始日において本件払戻請求権の価額相当額の経済的価値が本件被相続人にもたらされたといえる。したがって、当該価額相当額のうち、出資に対応する部分の金額を超える金額は、本件被相続人のみなし配当と認められる。
参照条文等
所得税法第24条,第25条第1項第6号 会社法第607条第1項第3号、第608条第1項、第611条第1項、第2項
参考判決・裁決
神戸地裁平成4年12月25日判決(税資193号順号7054) 東京地裁平成20年7月15日判決(税資258号順号10990)
日本法人及び国外に所在する外国法人の役員を務める請求人は、日本の居住者に当たり、また、請求人には租税回避の意図がなく、外国法人の課税対象留保金額に係る金員を現実に得ていないことはタックスヘイブン課税の適用除外要件に該当しないとしてタックスヘイブン課税を適用した事例
裁決事例集 第71集 97頁
要旨
請求人は、F国その他諸外国を本店所在地とする内国法人の関係法人の代表取締役等の地位にあり、F国を拠点として相当期間国外に居住することが必要であっため、平成13年は194日間、同14年は122日間国外に滞在し、うちF国に滞在した日数は、平成13年は92日、同14年は71日であり、F国滞在中は同地にあるマンションに居住していたことなどから、請求人の住所はF国にあり日本の居住者には該当しない旨主張する。
しかしながら、請求人は、我が国においても内国法人の代表取締役の地位にあり、その職務を遂行するために我が国に居住する必要があり、実際に我が国において請求人が所有する自宅に配偶者とともに居住しているのであるから、我が国においても職業上及び私生活上居住する必要があったと認められる。請求人の日本国内滞在日数は、平成13年は171日、同14年は247日であり、F国に滞在した日数は、平成13年は29日、同14年は40日と、請求人が生活の本拠地であると主張するF国の滞在日数を我が国に滞在した日数が大幅に上回ることからすれば、相対的に見て我が国に滞在する職業上又は私生活上の必要性が優っていたと認められ、更に、生計を一にする配偶者が我が国に生活の本拠を有することや請求人が我が国に自宅及び賃貸用不動産を所有する一方、F国においては不動産を所有していないことなど客観的事実を総合的に勘案すれば、請求人は、我が国に生活の本拠を有しており、各年分において居住者であると認められる。
また、請求人には、租税回避の意図はなく、原処分は正常な海外投資活動を阻害すること、課税対象留保金額に係る金員を現実に得ておらず、担税力もないことなどから、請求人は、G国を本店所在地とするH社に係るタックスヘイブン課税を適用されない旨主張する。
しかしながら、請求人は、租税特別措置法第40条の4第1項第1号の居住者に該当し、H社は、租税特別措置法第40条の4第2項第1号に規定する外国関係会社及び同法第40条の4第1項に規定する特定外国子会社等に該当すると認められる。また、H社は、株式保有を主たる事業としているからタックスヘイブン課税の適用除外規定の適用がないことは明らかであり、請求人の主張する事項は、租税特別措置法第40条の4第3項のいずれにも該当しないから、タックスヘイブン課税の適用に何ら影響を与えない。
したがって、請求人の主張には理由がない。
要旨
一定の具体的取引行為が「事業所得を生ずべき事業」に該当するか否かは、結局一般社会通念に照らし当該取引が事業として行われているか否かによって決せられるべきものであるが、有価証券の売買及び商品先物取引は投機性の強いものであるから、その判断においては、単に当該取引の営利性、有償性、継続性及び反復性の有無のみならず、事業としての客観性の有無が問題とされるべきであり、この観点からは、当然にその取引のための人的・物的設備の有無、資金調達方法、取引に費やした精神的、肉体的労力の程度、その者の職歴、社会的地位などのほか、当該取引によって相当期間継続して安定した収益を得られる可能性があるかどうかについて考察せざるを得ないものというべきである。
本件において、請求人が、長期間にわたって有価証券の売買及び商品先物取引を大規模、かつ、継続的に反復して行っていたことが認められ、取引に費やした精神力、肉体的労力の程度も軽視し難いものがあったことは認められるものの、請求人は大規模な病院を経営し、その傍ら本件有価証券の売買及び商品先物取引を行っていたものであり、結局、請求人の趣味と実益を兼ねた投機により損失を被ったにすぎないから、本件有価証券の売買及び商品先物取引は、いまだ社会通念上事業と認められるに足りるものとはいえず、所得税法上の事業には該当しないものというべきであり、したがって、本件有価証券の売買及び商品先物取引から生じた損失を雑所得を生ずべき業務から生じた損失の額と認定した原処分は適法である。
要旨
請求人は、本件租税公課等は買換資産の取得価額に算入すべきである旨主張するが、個人の場合、その意思によりこれらの租税公課等の会計処理の選択を許すことは相当ではなく、これを業務上の必要経費とする所得税基本通達は合理的なものであるから、請求人の主張は採用できない。
法人の代表取締役である請求人が、当該法人から契約上の地位を譲り受けた生命保険契約を解約したことにより受領した解約払戻金に係る一時所得の金額の計算上、当該法人が支払った保険料を一時所得の金額の計算上控除することはできないとした事例(平成22年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第99集
要旨
法人の代表取締役である請求人は、同人が当該法人から契約上の地位を譲り受けた生命保険契約を解約したことにより受領した解約払戻金に係る一時所得の金額の計算上、当該法人が支払った保険料を含む当該生命保険契約に係る保険料の総額を控除すべきである旨主張する。
しかしながら、一時所得に係る支出が所得税法第34条《一時所得》第2項にいう「その収入を得るために支出した金額」に該当するためには、それが当該収入を得た個人において自ら負担して支出したものといえる場合でなければならないと解するのが相当である。なお、所得税法施行令(平成23年6月改正前のもの)第183条《生命保険契約等に基づく年金に係る雑所得の金額の計算上控除する保険料等》第2項第2号についても、以上の理解と整合的に解釈されるべきものであり、同号が一時所得の金額の計算において支出した金額に算入すると定める「保険料…の総額」とは、保険金の支払を受けた者が自ら負担して支出したものといえる金額をいうと解すべきであって、同号が、このようにいえない保険料まで上記金額に算入し得る旨を定めたものということはできない。したがって、当該解約払戻金に係る一時所得の金額の計算上、当該法人がその名義により支払った保険料は、これを控除することはできない。
参照条文等
所得税法第34条第2項 所得税法施行令第183条第2項第2号(平成23年6月政令第195号による改正前のもの) 所得税基本通達34-4(平成24年2月10日付課個2-11・課審4-8による改正前のもの)
参考判決・裁決
最高裁平成24年1月13日第二小法廷判決(民集66巻1号1頁)
法人成りしたことに伴い個人事業を廃止した年分の必要経費に算入した従業員退職金(預り金経理)は必要経費に算入できないとする原処分庁の主張を排斥した事例
裁決事例集 第62集 76頁
要旨
原処分庁は、請求人が個人事業を廃止していわゆる法人成りしたことに伴い個人事業を廃止した年分の必要経費に算入した従業員退職金について、退職金支給規定の支払事由に法人成りの定めがないこと及び労使協定書に従業員の有する全ての権利義務が法人へ承継される旨規定されていることから、従業員退職金の支払債務は法人成り後の退職金支給規定に規定された支給事由が生じたときに初めて発生すると解するべきであり、また、請求人らが預り金として会計処理した従業員退職金は実質的には未払金であり、長期にわたる未払いは経済的合理性を欠くものであるから、従業員退職金の債務は成立しておらず、必要経費に算入することはできない旨主張する。
しかしながら、関係者の答述及び従業員全員が請求人らに提出した退職所得の受給に関する申告書から、従業員退職金の支払について、労使間で事前の協議が整い、従業員にその協議内容を周知し、請求人らは従業員の了解の下に退職所得の受給に関する申告書の提出を受けたものと認められるから、従業員退職金の支払債務は成立していると判断するのが相当であり、退職金支給規定の記載内容の一部のみを取り上げて従業員退職金の債務が成立していないと判断することはできないから、従業員退職金を必要経費に算入できないとした更正処分はその全部を取り消すのが相当である。
消費税等の修正申告書の提出により納付すべきこととなった消費税等の額は、消費税等の修正申告書を提出した日に具体的に納付すべき税額が確定したといえるから、当該納付すべき消費税等の額は、修正申告書を提出した日の属する年分の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入されるとした事例(令和2年分及び令和3年分の所得税及び復興特別所得税の各更正処分・棄却)
裁決事例集 第138集
ポイント
本事例は、消費税等は、申告納税制度を採用しており、納税者のする申告により税額が確定することから、修正申告書の提出により納付することとなった消費税等の額の必要経費の算入時期は、修正申告書を提出した日の属する年分となるとしたものである。
要旨
請求人は、消費税等の修正申告により新たに納付すべきこととなった消費税等の額(本件消費税額)について、事業所得の金額の計算上、債務の確定がなくても必要経費に算入される場合があること及び本件消費税額は、所得税法第37条《必要経費》第1項が規定する「その年中の総収入金額を得るために直接に要した費用」に該当するなどとして、本件消費税額は、消費税等の修正申告に係る課税期間と同一年分の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入すべきである旨主張する。
しかしながら、本件消費税額は、所得税法第37条第1項に規定する「その年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」に該当すると解されるところ、同項は、必要経費の算入時期について、債務の確定を要求しており、本件消費税額は、消費税等の修正申告書を提出したことにより納付すべきことが具体的に確定したといえ、請求人の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入すべき時期は、請求人が消費税等の修正申告書を提出した日の属する年分となるから、本件消費税額は、消費税等の修正申告に係る課税期間と同一年分の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできない。
参照条文等
源泉徴収に係る所得税の算出において、請求人が源泉徴収に係る所得税を負担することを合意したものとは認められないと判断した事例( 平成29年10月、平成30年3月、平成30年6月、平成30年7月、平成30年11月、平成31年1月から令和元年10月まで、令和元年12月から令和3年7月まで、令和3年9月、令和3年10月及び令和3年12月から令和4年3月までの各月分の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分及び不納付加算税の各賦課決定処分(平成30年6月、平成30年7月及び令和元年5月の各月分については各訂正告知処分及び不納付加算税の各変更決定処分後のもの) 平成30年1月及び令和元年11月の各月分の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分・ 一部取消し、棄却)
裁決事例集 第132集
ポイント
本事例は、請求人がインド法人に支払った金員は「技術上の役務に対する料金」と認められるものの、請求人と支払先法人との間で、請求人が源泉徴収に係る所得税を負担することを合意したものとは認められないとして、源泉徴収に係る所得税の算出においてグロスアップ計算を認めなかったものである。
要旨
請求人は、インドに所在する外国法人3社(J社、K社、L社)に対して支払った各金員(本件各支払金)について、①J社はインドの法律に基づき設立されたリミテッド・ライアビリティー・パートナーシップであるから請求人の支店的な存在であり、支払った金員は、J社の維持・管理に必要な資金の送金又は給与で、業務を委託した対価ではないこと、②請求人とK社との契約(本件K社契約)によれば、支払った金員はソフトウエアの譲渡対価であること及び③L社に支払った金員はウェブサイト及びアプリケーションのデザインの対価であり、デザインはコンピュータプログラムとは関係ないことから、それぞれ、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とインド共和国政府との間の条約(日印租税条約)第12条第4項に規定する「技術上の役務に対する料金」に該当しない旨主張する。
しかしながら、①インドの法律上、J社は、請求人とは別個の法的主体であり、かつ、請求人と協働でソフトウエア開発業務を行っていると認められることから、当該開発業務に係る役務は、日印租税条約第12条第4項に規定する「技術的性質の役務」に該当すること、②本件K社契約は、請求人がK社に対してソフトウエアの開発の支援を依頼し、K社は当該開発に関して定義された範囲の業務を行い、対価の最終支払までに当該定義された範囲の業務の全てを完了させ、当該開発に関する全てのソフトウエア等を請求人に引き渡す旨定めた契約であり、これらの業務に係る役務は、同項に規定する「技術的性質の役務」に該当することからソフトウエアの譲渡対価ではないと認められること、及び③同項は、「技術上の役務に対する料金」についてその範囲をプログラミングサービスの提供に限定しておらず、L社が行った役務は、同項に規定する「技術的性質の役務」に該当すると認められることから、本件各支払金は、同項に規定する「技術上の役務に対する料金」に該当する。
ただし、原処分庁は、K社に対する支払金の額について、源泉徴収の対象となるものの支払額が税引手取額で定められているものとして源泉徴収に係る所得税の額を算出する計算(グロスアップ計算)により当該所得税の額を算出しているところ、原処分庁がグロスアップ計算の根拠として掲げる本件K社契約の条項は、本件K社契約の履行に際し、契約違反や第三者からの訴訟等に備えて契約書に盛り込まれる条項であり、請求人が源泉徴収に係る所得税を負担することを合意したものとは認められないから、K社に対する支払金について当該所得税の額をグロスアップ計算により算出することは認められない。
参照条文等
所得税法第161条第1項、第162条第1項、第212条第1項 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とインド共和国政府との間の条約第12条
物上保証人である請求人が債務額を代位弁済した場合の所得税法第64条第2項の規定の適用上、物上保証人である請求人は代位弁済額のうち自己の負担割合を超える部分について連帯保証人に対して求償権を取得し、連帯保証人のうち償還をなす資力のないものがある場合においても、その償還資力がない者の負担部分も他の連帯保証人の間で分割負担されるものとして、求償権行使可能額を計算すべきであるとした事例
裁決事例集 第41集 160頁
要旨
物上保証人であった請求人は、その所有する土地を譲渡し、その譲渡代金をもって保証債務額35,392,179円を代位弁済したとして、その弁済額全額について所得税法第64条“保証債務の履行のための譲渡の場合の課税の特例”第2項の規定を適用すべきであると主張するが、本件金銭消費貸借には、物上保証人のほかに連帯保証人が三名存し、物上保証人である請求人と連帯保証人との間には保証に際しての負担部分の特約が存在しないことから、物上保証人・連帯保証人相互間においてはその頭数に応じて平等に負担することになり、請求人は代位弁済額のうち自己の負担割合である4分の1に相当する部分を超える部分について連帯保証人に対して求償権を取得し、そして、連帯保証人のうちに償還をなす資力のない者がある場合においても、その償還資力がない者の負担部分も他の連帯保証人の間で分割負担することとされているから、結局、請求人の求償権行使可能額は、代位弁済額35,392,179円のうち自己の負担部分である4分の1に相当する額8,848,044円を控除した残額26,544,135円とするのが相当であり、同金額については保証債務の履行のための譲渡の場合の課税の特例の規定の適用はない。
要旨
原処分庁は、甲土地及び乙土地のそれぞれの譲渡代金の比によって保証債務が履行されたと主張するが、乙土地とともに甲土地を一つの契約により同一人に対して一括譲渡したのは、譲受人の都合により、乙土地のみでは売却できなかったという特殊事情によるものであること、また、主たる債務者に係る和議条件によれば、乙土地の譲渡代金で本件保証債務を弁済するものとされていることから、本件保証債務は、乙土地の譲渡代金より履行されたものとみるのが相当である。
要旨
請求人は、A国での所得に係る税金を故意に逃れたわけではなく、A国での所得が日本で課税の対象となることを知らなかっただけであるから、所得税法第95条第7項に規定する「やむを得ない事情」があったといえる旨主張する。
しかしながら、所得税法第95条第7項に規定する「やむを得ない事情」とは、例えば、外国所得税を課されたことを証する書類を添付しようとしたが、外国政府の事務処理上の都合でこの書類の作成が遅れ、期限までに入手できず確定申告書に添付できなかった場合など、納税者の責めに帰すことのできない客観的事情をいい、納税者の法の不知や事実の誤認などの主観的事情はこれに当たらないと限定的に解するのが相当である。
本件の場合、請求人において、確定申告書に外国税額控除を受けるべき金額の記載及び外国税額控除に関する書類の添付のいずれもしなかったのは、同人がA国での所得が日本で課税の対象となることを知らなかったことに基因するものであるところ、このことは、請求人の税法の不知という主観的な事情によるものであるから、請求人の責めに帰すことのできない客観的事情によるものということはできない。
要旨
請求人は、給与等の収入金額から支出した通勤費、宿泊費、衣服費、交際費、新聞雑誌費などの金額(以下「本件支出」という。)を必要経費として実額計算で控除すべきである旨主張するが、給与所得の算定に当たって実額で給与所得を求めるべきものとする法令の定めはないから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
また、請求人は、本件支出が給与所得者の特定支出の控除の特例(以下「本件特例」という。)に該当するのであれば、その該当部分について本件特例を適用し、給与所得控除額を超える部分の金額を控除すべきである旨主張するが、本件確定申告書には、本件特例の適用を受ける旨及び特定支出の額の合計額の記載がなく、かつ、領収を証する書類その他の当該支出の事実及び金額を証する書類の添付もない上、本件確定申告書の提出の際にこれを提示した事実もないなど、本件支出は、本件特例の適用要件を満たしていない。
なお、請求人は、形式的判断で課税をするのではなく、常識的に必要な費用であるという実態を理解してほしい旨主張する。
しかしながら、給与所得の算定に当たって実額で給与所得を求めるべきものとする法令の定めがないことは先に述べたとおりである。
また、本件特例の控除の対象とされる特定支出の範囲もサラリーマン特有の支出として限定的なものとされているところ、本件支出のうち該当すると見る余地がある支出は旅費交通費と自家用車諸費用及びタクシー利用等の支出の合計額に限られるが、仮に当該金額が本件特例の要件に該当するとしても、当該金額が請求人の給与等に係る給与所得控除額を超えないことは明らかであるので、いずれにせよ本件特例を適用することはできない。
要旨
- 不動産所得とは、所得税法第26条第1項において、不動産、不動産の上に存する権利、船舶又は航空機の貸付けによる所得をいう旨規定され、その「貸付け」には、同項かっこ書において、地上権又は永小作権その他他人に不動産等を使用させることを含む旨規定されている。すなわち、所得税法第26条第1項の「貸付け」には、他人に不動産等を使用させる一切の場合を含むものとされている。
これを本件についてみると、本件契約は、請求人が自己の農地を県に使用させるという内容のものであるから、本件契約に基づいて本件農地を使用させることも、所得税法第26条第1項の「貸付け」に当たる。
そして、本件損失補償金は、県が本件農地を使用することによって生じる損失を「正当な地代又は借賃」をもって補償したものであることが認められる。
そうすると、本件損失補償金は、請求人が本件農地を県に使用させたことによって得た所得であるといえるから、所得税法第26条第1項の「貸付けによる所得」に該当し、不動産所得に当たるとするのが相当である。 - 請求人は、本件契約は営利を目的とした継続的な土地使用契約でないので、本件損失補償金は不動産所得に該当しない旨主張する。
しかしながら、所得税法第26条第1項の「貸付け」には、他人に不動産等を使用させる一切の場合を含むとされており、営利を目的とした継続的な土地使用契約に限っておらず、請求人の主張には理由がない。 - 請求人は、本件損失補償金は、土地使用について生じる損失の補償であるとともに、「休耕による減収補償」、「土地の返還後の地味回復に関わる経費」及び「収益回復までの収益減収に関わる補填費」などであって、地代のような単なる土地使用の対価でないことは明らかであり、休耕による減収補償等は、農家の事業収益若しくはそれに代わる収入と認めるべきものであって、地代収入などとは明らかに性質が異なるものであるから、不動産所得に当たらない旨主張する。
しかしながら、本件損失補償金を算定するに当たり、請求人が主張するような要素が考慮されていることが認められるが、農地を使用させたことの対価を算定する際には、一般に、かかる要素が考慮されるべきものであり、そのことをもって、本件損失補償金が県に土地を使用させたことによる所得であることを否定するものではないから、請求人の主張には理由がない。 - 請求人は、本件農地の提供は、災害による河川の復旧工事に協力したものであって、もし請求人らが協力しなければ事業に重大な支障となり、土地収用法の適用もあり得たものであるから、本件農地の提供が公共工事のための半強制的な土地提供であることからすると、本件損失補償金は税負担の少ない一時所得とすべき旨主張する。
しかしながら、本件農地の提供が公共工事のために半強制的な土地提供であったとしても、そのような土地提供に係る損失補償金を一時所得とする旨定めた法令の規定はないから、請求人の主張には理由がない。
要旨
請求人は、請求人が取得した自己株式の取得価額について、税法上の適正価額(時価)に比して高額であり、当該高額な部分は本件株式の取得の対価ではなく、請求人にとっては売主に対する寄附金であり、売主にとっては法人からの贈与であるから一時所得になり、みなし配当部分はないから、原処分庁の行った納税告知処分等は違法であると主張する。
しかしながら、その自己株式の取得価額は、①第三者間における合意に基づく売買として成立したものであること、②平成16年当時の請求人の株式の純資産価額は、取得価額より若干低い程度であったこと及び③その自己株式の購入の約1か月前に関連会社から自己株式をおおむね同額で購入していることから、正常な取引に基づく時価、すなわち適正価額と認められ、当該高額な部分はなく請求人の主張は採用できない。
請求人が代表取締役を務める内国法人が外国法人と締結した業務委託基本契約に基づく業務委託手数料は、請求人の給与には当たらず、当該内国法人に帰属するとした事例(平成21年分~平成23年分の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・全部取消し)
裁決事例集 第96集
ポイント
本事例は、請求人が外国法人との間で雇用契約を締結して給与を受領するのと同時に、請求人が代表取締役を務める内国法人と当該外国法人との間で業務委託基本契約を締結して、当該内国法人が業務委託手数料を受領していることについて、当該業務委託基本契約は通謀虚偽表示により仮装されたものである旨の原処分庁の主張に対し、当該業務委託基本契約について通謀虚偽表示は成立しないから、同契約は有効に締結されたものとして、同契約に基づく当該業務委託手数料は、請求人の給与には当たらず、当該内国法人に帰属するとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人が外国法人(本件外国法人)との間で雇用契約を締結して給与を受領するのと同時に、請求人が代表取締役を務める内国法人(本件法人)と本件外国法人との間で業務委託基本契約(本件業務委託基本契約)を締結して、本件法人が業務委託手数料を受領していることについて、本件業務委託基本契約は通謀虚偽表示によりなされたもので無効であるとして、本件外国法人から本件法人に支払われた業務委託手数料の全部が請求人の給与に当たる旨主張する。
しかしながら、本件業務委託基本契約において合意されている内容は、本件法人が、その代表者である請求人に、本件外国法人の下で、当該外国法人の副社長としての業務を行わせ当該外国法人が本件法人にその対価を支払うというものであり、本件法人が本件外国法人に対して、請求人の労働力を提供することを債務とするものと認められ、実際、同契約に基づき、本件法人は、その債務を履行し、本件外国法人から業務委託手数料を受領している。そして、当審判所の調査によっても、本件業務委託基本契約が通謀虚偽表示により仮装されたものであることを基礎づける証拠は見当たらず、原処分庁からも提出されていない。したがって、本件業務委託基本契約に基づく業務委託手数料は、請求人の給与には当たらず、本件法人に帰属する。
参照条文等
民法第94条
請求人が在職中に勤務先の親会社から同社のリストリクテッド・シェア(譲渡等制限付株式)を付与されたことによる所得は、退職所得ではなく、給与所得に当たるとした事例
裁決事例集 第82集
ポイント
請求人に付与されたリストリクテッド・シェア(譲渡等制限付株式)とは、その付与日に議決権及び配当受領権を取得するものの、株券の受渡しは行われず、売却、名義書換、譲渡及び担保への差入れができないという譲渡等制限が付されたものであり、一定期間の勤務又は一定期間の勤務後退職し、かつ、勤務先グループの業務と競合する業務等を行わないという条件を満たした場合にその譲渡等制限が解除されるが、条件に反した場合には没収されるというものである。
この事例は、在職中に上記リストリクテッド・シェアを付与された請求人が、その後退職し、譲渡等制限が解除されたという事実関係の下で、このリストリクテッド・シェアに係る所得の区分及び収入計上時期につき判断したものである。
要旨
請求人は、勤務先の親会社から在職中に当該親会社のリストリクテッド・シェア(譲渡等制限付株式)を付与されたことによる本件所得について、①特別な退職に際してのみ株式を支給するものであるから、本来退職しなかったとしたならば支払われなかったものであること、②勤務年数及び年齢を支給基準としており、永年の勤務に対する報奨としての意図が明白であること、及び③退職後は同業他社で働かないという条件を課すことで、実質的に引退することを強いており、請求人は現実に退職したことにより株式を支給されたのであるから、生活保障的な最後の所得でもあること等を理由として、退職後の年分の退職所得に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人が付与されたリストリクテッド・シェアは、①退職の事実の有無にかかわらず請求人が在職期間中に付与されたものであり、請求人が、仮に退職しなかったとしても条件を満たせば、没収されることなく本件所得を得ることができたことからすると、本件所得は、退職という事実によって初めて給付されたものとは認められず、また、②親会社が、請求人の前年の業績に応じて賞与の一部として付与したものであり、請求人の継続的な勤務に対する報償ないしその間の労務の対価の一部の後払の性質を有するものとみることもできないから、本件所得は退職所得には該当せず、給与所得に該当する。
なお、本件所得の収入計上時期については、親会社がリストリクテッド・シェアを没収しないことを決定してその権利を確定し、譲渡等制限を解除した日において、請求人の株主としてのすべての権利が確定するから、その日の属する年分となる。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和56年4月24日第二小法廷判決(民集35巻3号672頁)、最高裁昭和58年9月9日第二小法廷判決(民集37巻7号962頁)、最高裁昭和53年2月24日第二小法廷判決(民集32巻1号43頁)
要旨
原処分庁は、請求人が時効取得した各土地(本件各旧国有地)が譲渡されていることからすれば、本件各旧国有地を含む売買物件の各売買代金を基に面積按分により算出した金額が一時所得の収入金額(本件各旧国有地の時価)である旨主張する。
しかしながら、本件各旧国有地は公共用財産たる里道・水路等のうち、その機能を喪失したもの(旧法定外公共物)で、単独利用が困難な土地であるから、当該土地をその隣接所有者が時効取得した場合の時価については、当該土地を含む一団の土地としての価額を基礎として面積按分するだけでは十分な評価をしているとはいえず、また、単独利用が困難な旧法定外公共物については、原則として、隣接土地所有者に対してのみ随意契約により売却され、その売却価額が適正な対価(時価)を求めるための基準である国有財産評価基準に従って評価されることからすれば、私人間での取引事例が一般にほとんど見受けられないことに照らしても、本件各旧国有地の価額も同基準に準じて評価するのが相当であり、同基準に基づき評価した本件各旧国有地の価額が一時所得の収入金額と認められる。
参照条文等
要旨
LLCの構成員である請求人は、オフショア投資ファンドから当該LLCに対して配分されたインセンティブ再配賦額につき請求人に配分されたインセンティブ配分額は当該LLCの内部計算にすぎず、配当支払請求権として独立した債権として成立するものではないから、当該インセンティブ配分額のうち現実に払戻しを受けた金額のみが請求人の配当所得の収入金額となる旨主張する。
しかしながら、①請求人はその年分に配賦を受けるインセンティブ配分額の見込額等につき毎年当該LLCの担当者から連絡を受けること、②通知されたインセンティブ配分額については、たとえ投資ファンドの成績が悪化したとしても返還する義務はないこと、③請求人は通知を受けたインセンティブ配分額について確定額の範囲内であれば払戻金額を自由に設定することができ、申し出る金額に上限はないこと、④請求人が払戻しを要求した額について送金に応じられなかったことはないことなどの事実が認められ、これらを併せかんがみれば、請求人には、当該インセンティブ配分額の全額について払戻しを受ける権利が生じたというべきである。
要旨
請求人は、請求人が行った外国為替証拠金取引はその取引回数が約1,400回で、取引金額にすると130,000,000円を超える規模であり、1日に費やす時間も平均15時間に及ぶことからみて事業所得を生ずべき事業に該当する旨主張する。
しかしながら、ある経済的行為が所得税法施行令第63条第12号の「対価を得て継続的に行う事業」に該当するか否かは、当該経済的行為の営利性・有償性の有無、継続性・反復性の有無のほかに事業としての社会的客観性の有無が問題とされるべきであり、この観点からは、当該経済的行為の種類、自己の役割、人的・物的設備の有無、資金の調達方法、費やした精神的・肉体的労力の程度、その者の職業・社会的地位などの諸点を検討する必要がある。そして、一定の経済的行為が反復・継続して行われることによって事業として社会的客観性が認められるには、相当程度安定した収益を得られる可能性がなければならない。
これを本件についてみると、①一般に外国為替証拠金取引は投機性の高い取引であり、継続的に相当程度安定した収入が得られる可能性が乏しく、本来事業になじみがたい性格を有するものであること、②請求人は、自らが代表取締役を務める法人2社からの役員報酬により生計を立てていること、③請求人は、インターネット情報などを参考に取引を行っているが、外国為替証拠金取引の企画遂行に当たって相当程度の精神的・肉体的労力を要していると認められないこと、④外国為替証拠金取引のための積極的な資金調達が認められないこと、及び⑤外国為替証拠金取引を反復継続して行うための人的物的設備を有していないことが認められ、これらのことを考慮すると、請求人が行った外国為替証拠金取引は、事業として社会的客観性がいまだ認められず、「対価を得て継続的に行う事業」に該当するということはできない。
参照条文等
ポイント
この事例は、職務発明をした従業員等が使用者等に特許を受ける権利等を承継させたときに保障される「相当の対価の支払を受ける権利」(特許法第35条第3項)に基づき、裁判上の和解により支払われた和解金の所得区分につき、請求人が、当該和解金のうち外国特許に係る部分は譲渡所得に該当すると主張したのに対し、特許を受ける権利が通常同一の職務発明から生じるものであることを説示した最高裁平成18年10月17日第三小法廷判決を参考に、この事例における社内規定の内容から、当該和解金の全部が譲渡所得には当たらない旨判断したものである。
要旨
請求人は、国内特許と外国特許とに係る相当の対価の支払を請求する権利は、それぞれ別個の請求権であって、F社から外国特許に係る承継の対価は一切受け取っておらず、F社に対し、在職中の職務発明について特許を受ける権利をF社に承継させたことにつき、特許法第35条《職務発明》第3項の規定に基づき、相当の対価の支払を求めて提起した訴訟において成立した訴訟上の本件和解によって得た本件和解金によって当該外国特許に係る承継の対価を初めて受け取ったのであるから、少なくともその部分に関しては譲渡所得に該当する旨主張する。
しかしながら、我が国又は外国の特許を受ける権利の基となる職務発明は、共通する一つの技術的創作活動の成果であり、当該職務発明については、その基となる雇用関係等も同一であって、これに係る国内外の特許を受ける権利は、社会的事実としては、実質的に1個と評価される同一の職務発明から生じたものということができ、そして、F社の発明考案取扱規定(本件規定)は、F社が日本国及び外国での職務発明に係る特許等を受ける権利等を承継する旨定めており、その趣旨は、国内外の特許を受ける権利の上記のような性格等に鑑み、当該権利の基となる職務発明をした従業者等とF社との間の当該発明に関する法律関係を一元的に処理しようとしたものであるということができる。このことに加えて、本件規定において、出願数は国内出願の件数により認定し、複数の出願に基づく国内優先権出願及び外国出願は全てこれを一つの出願とみなす旨規定していることを併せ考えると、本件規定が定める出願補償金、登録補償金及び実績報償金は、いずれも、国内における特許を受ける権利と外国における特許を受ける権利のいかんを問わず、本件規定の定める一つの出願に対するものとして規定されているものと解するのが相当である。そうすると、F社から請求人に対して支払われた出願補償金及び登録補償金は、職務発明に係る国外の特許を受ける権利の承継の対価を含むものというべきであるから、本件和解金に係る所得は譲渡所得には当たらない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成18年10月17日第三小法廷判決(民集60巻8号2853頁) 東京(知財)高裁平成21年2月26日判決(判時2053号74頁・判タ1315号198頁) 平成21年4月23日裁決(裁決事例集77号72頁) 平成21年10月9日裁決(裁決事例集78号172頁)
要旨
請求人が調停離婚により前配偶者に分与した不動産は、その取得に関して前配偶者の協力があったとしても、当該不動産は名実ともに請求人の名で取得した財産であるから、同人の特有財産であったというほかなく、したがって、共有財産の譲渡には当たらないので、その資金の全部について請求人が譲渡したこととなる。
請求人が貸付債権の担保として根抵当権を設定していた土地を、自ら競売の申立てを行い、客観的価額を大幅に上回る貸付債権相当額で落札・取得して譲渡した場合において、当該落札による価額は、譲渡所得の金額の計算上控除する資産の取得に要した金額には当たらないとした事例
裁決事例集 第57集 169頁
要旨
請求人は、競売に付された不動産を取得しようとする者が、どうしてもその物件を手に入れたいと思えば競売価額は時価よりも高額になるのはやむを得ないことであり、仮に時価を上回る金額が取得費を構成しないとしても、本件落札価額でなければ本件土地を確実に取得できないと判断したのであるから、当然に譲渡所得の計算上控除される取得に要した金額に含めるべきであることは所得税法の規定からも明らかである旨主張する。
しかしながら、請求人が貸付債権の担保として根抵当権を設定していた本件土地に係る競売において、入札したのは請求人のみであり、しかも落札価額は貸付債権額と同額であること、競売に際しH地方裁判所が決定した本件土地の最低売却価額は、105,000円であり本件落札価額はその約230倍であること、また、落札により取得してから約半年後に113,000円で譲渡したことには経済的合理性が認められないこと等から、本件土地の譲渡所得の金額の計算上、収入金額から控除される取得価額は、請求人が主張する落札価額ではなく、取得時の客観的価額とするのが相当である。
請求人が開業費として計上した平成10年1月~5月の地代家賃等は、平成10年1月の開業後に支出したものであるから、平成15年分の事業所得の計算上当該開業費の償却費を必要経費に算入することはできないとした事例
裁決事例集 第73集 148頁
要旨
請求人は、平成9年中に行った各種の届出等は形骸的なものであって、請求人の真の開業時期は平成10年6月ころであるから、本件費用は開業費であり、開業費の償却費として平成15年分の事業所得の計算上必要経費に算入されるべきである旨主張する。
しかしながら、請求人は、平成9年末に、本件クリニックの賃貸借契約、医療機器のリース契約等の名義を請求人に変更し、平成10年1月以降、本件クリニックの看板を付け替えた上で、本件クリニックに係る社会保険診療報酬及び自由診療収入を請求人名義の預金口座に入金させるなどするとともに、平成10年分の所得税について平成10年1月診療分以後の収入及び支出を確定申告していることからすれば、遅くとも平成10年1月には、請求人自身の計算と危険において独立して、本件クリニックに係る事業を実質的に開始したものと認められる。
そうすると、本件費用は、いずれも本件クリニックに係る事業を開始した後に発生した費用であるから、所得税法施行令第7条第1項に規定する「事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用」である開業費には該当せず、また、本件費用の内訳は、地代家賃、修繕費及び消耗品費であり、その支出の効果が翌年以降に及ぶものであるとは認められず、所得税法施行令第7条第1項に規定する開業費以外の繰延資産にも該当しない。
請求人の勤務する会社が属するグループを支配する外国法人から、請求人に無償で同法人の株式を取得できる権利が付与されたことに基づいて生じる経済的利益は、当該権利が確定する諮問委員会の決定日が収入すべき日であり、雇用契約又はこれに類する原因に基づき提供された非独立的な人的役務の提供の対価として給付されたものとして、給与所得に該当するとした事例
裁決事例集 第72集 89頁
要旨
(1) 請求人は、請求人の勤務する会社(内国法人)が属するグループを支配する法人であるH社(外国法人)から、同グループの従業員持株制度に基づき、請求人に無償でH社の株式を取得することができる権利(以下「本件アワード」という。)を付与されたことに基づいて生じる経済的利益(以下「本件経済的利益」という。)は、請求人が株式の売却申請を行った日に実現するから、当該売却申請を行った日が収入金額とすべき時期である旨主張する。
しかしながら、本件アワードは、請求人の年間給与金額などに応じてH社から請求人に無償で付与され、条件が満たされると、グループの従業員持株制度の実施と管理を行う諮問委員会が決定する日(以下「本件決定日」という。)に権利確定するとしており、同日以後においては、請求人は受益所有権を有するH社の株式(以下「本件株式」という。)をいつでも売却することができ、本件アワード付与の基準日である適格日から本件決定日までに係る配当が支払われ、本件決定日以後の配当を受ける権利及び本件株式に係る議決権を行使できる権利も請求人に移転することが認められることから、本件経済的利益は、本件決定日に権利が具体的に確定したと認めるのが相当である。
そして、請求人が本件決定日に得たものは、本件株式の同日における時価相当額の経済的利益(以下「本件権利確定益」という。)と認めるのが相当である。
なお、請求人が行った本件株式の売却申請は、本件決定日以後に請求人が有することとなった本件株式に関する各種の権利のうち、本件株式を処分できる権利について、請求人が自らの投資判断に基づき、これを行使すべく手続をしたものにすぎないから、請求人の主張は採用できない。
(2) 請求人は、H社との間に直接雇用又は委任の契約関係はなく、また、本件経済的利益の発生原因は株価の上昇によるものであり、請求人の精勤とH社の株価の上昇とは直接関係せず、偶発性を有することから、一時所得に該当する旨主張する。
しかしながら、①本件アワードは請求人がH社傘下のS社ないしはT社(以下「勤務会社」という。)の従業員等であることを理由に付与されたものであること、②本件アワードの権利確定は勤務会社の従業員等として一定期間の勤務をしたことによって可能となること、③本件アワードは請求人に対し付与されたものであり、他人に譲渡することは禁止されていることからすれば、請求人は、勤務会社の従業員等たる地位に基づき本件株式を取得することができる権利を付与され、勤務会社の従業員等として一定期間勤務することにより本件権利確定益を得たものと認められるから、本件権利確定益は、請求人が専ら勤務会社に勤務することに基づいて得られる経済的利益であり、請求人の非独立的ないし従属的な人的役務の提供の対価としての性質をもった所得と認められる。さらに、本件権利確定益は、勤務会社からではなくH社から与えられたものであるものの、本件アワードは、グループ各社の従業員等の意欲を引き出すことなどを企図して設けられており、H社は請求人が勤務会社において勤務しているからこそ、請求人に対して本件アワードを付与したものであって、本件権利確定益は、請求人が職務を遂行したことに対する対価としての性質を有する経済的利益であることは明らかというべきである。
したがって、本件権利確定益は、所得税法第28条《給与所得》第1項に規定する給与所得に該当するというべきである。
なお、経済的利益を受けた者と当該経済的利益を給付した者に直接の雇用関係又は委任の契約関係がないことのみをもって給与所得該当性が否定されるものではなく、また、給与所得該当性の判断における人的役務の提供の対価性の問題は、従業員等の地位又は職務に関連してその労務の提供の見返りとして経済的利益を受けたものとされる関係があれば足り、人的役務の提供の質や量と給付との間に数量的な相関関係があることまでを要するものではなく、請求人が得るべきこととなった経済的利益の多寡が人的役務の提供の内容と関係ない要素によって左右されたとしても、本件権利確定益の給与所得該当性を否定する事情とはならないから、請求人の主張は採用できない。
請求人の子が代表取締役を務める法人は、賃貸の目的物に係る管理業務を行っているから、同法人に対して支払った管理費は、請求人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入されるとした事例
裁決事例集 第83集
ポイント
この事例は、請求人の子が代表取締役を務める法人の業務を認定し、請求人が当該法人に対して支払った管理料相当額の必要経費算入及び課税仕入れを認めたものである。
要旨
原処分庁は、店舗用建物たる本件建物及びその敷地たる本件各土地を併せた本件各土地建物に係る管理全般についてN社が行っており、請求人の子が代表取締役を務める本件法人は、請求人ら及びN社に対する金銭の支払行為を行っているものの、本件建物に係る共有持分(本件建物持分)及び本件各土地の一部である本件土地の管理業務を行っているとはいえないため、本件法人に請求人が支払った管理費相当額(本件管理費)は請求人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入できない旨主張する。
しかしながら、ある支出が不動産所得における必要経費に該当するためには、業務関連性がなければならないとともに、その必要性の判断においても、単に事業主の主観的判断のみによるものではなく、客観的に必要経費として認識できるものでなければならないと解されるところ、請求人の不動産所得の総収入金額に算入すべき金額は、賃借人をK社として本件建物を賃貸する旨の本件契約に係る賃料であることから、必要経費に算入すべき金額も本件契約に関して支出された費用に限られることとなる。そして、本件法人は、請求人らから本件建物持分及び本件土地の管理業務を受託し、本件契約の更新及び補修工事等に係る各種連絡を受けてK社及びN社と協議し、本件法人名議で本件契約に係る各種の支払を行うなどしてこれらに対処している事実が認められることから、本件建物持分及び本件土地に対する管理業務を行っているものと認められる。
そうすると、請求人から本件法人に対して支払われた本件管理費は、請求人のN社に対する本件建物持分の賃貸業務の遂行上必要な支出であると認められることから、請求人の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入されるものと認められる。
参照条文等
請求人の従業員は、青色事業専従者である配偶者のみであるところ、従業員等のレクリェーションのため慰安旅行をし福利厚生費として処理したが、サラリーマン家庭が行う通常の家族旅行と何ら異なる点は認められないとして否認した事例
裁決事例集 第42集 44頁
要旨
請求人は、本件慰安旅行費用のうち、請求人及び事業専従者である配偶者に要した費用は、従業員等のレクリェーション費用として必要経費の額に算入される旨主張するが、[1]本件旅行は、家族4人のみで毎年8月に、配偶者及び子女の都合・希望を聞いて実施されており、サラリーマン家庭が行う通常の家族旅行と何ら異なる点は認められないこと及び[2]本件以外にも同様の旅行を実施しているのに、本件旅行費用のみ必要経費になるとした理由も明らかでないことから、本件旅行は、他の企業が実施している従業員のための慰安旅行と変わらないという請求人の主観的理由のみで事業に関連性を持たせ、必要経費に該当すると判断したにすぎず、客観的にみて事業遂行上必要なものであるかが明らかでなく、通常の家族旅行との相違点も認められないため、家事上の経費と判断するのが相当である。
請求人の青色申告の特典控除前の所得金額に、同業者の青色申告の特典控除前の所得金額に占める妻の青色事業専従者給与の額の割合の平均値を乗じて算定した金額を必要経費に算入できる額としたことは、合理的な認定方法であるとした事例
裁決事例集 第43集 127頁
要旨
所得税法第57条第1項及び所得税法施行令第164条第1項は、必要経費に算入できる青色事業専従者給与額は、[1]事業の種類、規模及び収益の状況、[2]他の使用人に係る給与の支給状況及び[3]同業者の従業員に係る給与の支給状況に照らして判断すべき旨を規定しているところ、原処分庁が、請求人の青色申告の特典控除前の所得金額に同業者の青色申告の特典控除前の所得金額に占める妻の青色事業専従者給与の額の割合の平均値を乗じて算定した金額をもって、必要経費に算入できる青色事業専従者給与額としたことは、請求人の事業の収益状況をより反映させるものであり、合理的な認定方法として容認できる。
要旨
原処分庁は、①請求人が平成17年にした本件不動産による代物弁済はねつ造された金銭消費貸借契約証書に基づく債権債務を前提とするものであり、②平成20年にされた本件不動産の売買契約(本件売買契約)の当事者は、形式的には請求人の長男が主催する法人(本件法人)となっているとしても、実質的には本件不動産の真実の所有者である請求人であるから、③本件売買契約に係る売買代金(本件売買代金)は、請求人に帰属するものであり、請求人には、本件売買代金を収入金額とする平成20年分の譲渡所得が発生した旨主張する。
しかしながら、本件売買契約を締結するに至った経緯等によれば、実際買主と交渉を行っていたのは請求人の長男であり、請求人が本件売買契約に関与した事実を認めることはできないし、原処分庁の上記①の主張は、民法上他人物売買が有効とされていることを正解しないものなどであって、採用することはできない。また、本件法人における本件売買代金の使途などからすると、請求人が本件売買代金を享受したと認めることはできない。したがって、請求人は、本件売買契約において本件不動産を譲渡した実質的な当事者ではなく、また、本件売買契約において本件法人を単なる名義人として利用し、その収益を享受した事実も認められないから、請求人には平成20年分の譲渡所得が発生したとは認められない。
参照条文等
要旨
請求人は、本件土地は遺産分割協議に基づき共同相続人がそれぞれの持分により取得したものであるから本件土地の譲渡収入金額はその持分に応じて各共同相続人に帰属すると主張するが、[1]請求人のみが所持している本件遺産分割協議書には、請求人以外の4名の共同相続人のうちの3名の共同相続人は本件土地につき持分を取得するが、その譲渡代金のうち可処分代金の全額を請求人に支払う旨が記載されていること、[2]請求人は、これら3名の持分に相応する譲渡代金を自己に帰属せしめていること等から、本件土地の譲渡によって生じた譲渡所得金額のうち共同相続人3名の持分に応じる部分の金額についても請求人に帰属すると認めるのが相当である。
要旨
請求人は、相続財産の管理を委託していたJに、同人への債務を返済するため本件土地を譲渡したところ、同人が、相殺後の残代金を支払わないまま死亡し、その相続人も相続放棄をしたため、本件未収金が回収できなくなったから、所得税法第64条第1項の規定(本件特例)を適用すべきである旨主張する。
しかしながら、請求人は、相殺後の残代金の決済について何年も具体的な取決めをせず、即時に精算を求めていないことからすれば、本件譲渡代金の残代金についてもJに引き続いて管理を委託していたとみるのが相当である。仮に、Jが、請求人名義で預金を管理していたことを請求人が知らなかったとしても、前記認定を覆すものとはいえず、かえって、請求人は、J及びその請求人に対し、貸付金又は預け金として返済を求めていることが認められる。
したがって、本件未収金は、譲渡代金そのものが回収不能となったと見ることはできず、請求人がJに対して有する貸付金ないし預け金の返還請求権について、行使不能となったと認めるのが相当であるから、本件特例を適用する余地はない。
要旨
請求人は、本件土地の寄附に基因してされた譲渡所得の課税は、その後、本件土地の所有権移転登記を抹消すべき旨の確定判決があったから取り消されるべきである旨主張する。
しかしながら、本件判決は、原告と被告が親類関係にあるなどの状況下においてなされ、また、本件登記が無効となるべき事実は認められないから、本件判決があったとしても譲渡所得の課税処分を取り消すべき理由にはならない。
譲渡所得の計算上、資産の取得のための借入金の利子のうち、当該資産を居住のために使用開始した日の後の期間に対応する部分の金額は、資産の取得費に該当しないとした事例
裁決事例集 第47集 160頁
要旨
居住のために使用する資産を取得するための借入金の利子のうち、その借入れの日から当該資産を居住のために使用開始する日までの期間に対応するものは、資産の取得に要した金額に該当し、当該資産を居住のために使用開始した日後当該資産を譲渡する日までの期間に対応するものは、資産の取得に要した金額に該当しないと解するのが相当である。
本件についてみると、請求人が本件物件を居住のために使用開始した日は、昭和57年4月2日であると認めるのが相当であり、本件利子のうち昭和57年4月3日以後の期間に対応する部分の金額は、日常的な生活費ないし家事費にすぎないものと解されることから、資産の取得に要した金額に該当しない。
賃借人から土地賃貸借契約の終了に伴い原状回復費用名目で受領した金員は、その土地賃貸借契約の終了した日の属する年分の不動産所得の収入金額であると認定した事例
裁決事例集 第67集 264頁
要旨
請求人は、賃貸していた甲土地の原状回復工事については、本件合意書を交わすまでには賃借人であるB大学と何度も協議を重ね、解約に関する真意を基礎に本件合意書を交わしたものであり、B大学が甲土地の原状回復義務の履行を請求人に委任するに際し、本件合意金に過不足が生じたとしても精算を行わないこととしたのは、B大学側の諸般の事情及び強い意向を汲んで、請求人が承諾したものであり、本件合意金については、B大学が行うべき原状回復工事の費用を、同大学の都合から預ったものであるから、甲土地の原状回復工事が完了した平成14年7月31日までは、預り金とすべきであり、平成13年分の不動産所得に係る総収入金額とはならないと主張する。
しかしながら、請求人及びB大学が、保証金と本件合意金とを相殺し、請求人が同大学に対しその過不足額を支払ったことにより、B大学は、本件合意金の支払義務を履行したことが認められるが、本件合意書の内容によれば、本件合意金の支払義務履行によりB大学の原状回復義務は消滅し、請求人に対し甲土地を現況の状態に復し、返還したことになり、また、請求人とB大学との間には何らの債権債務も存しないのであるから、請求人には、本件合意金の返還義務はないことになる。
したがって、本件合意金をB大学からの預り金であるとするのは相当ではなく、平成13年中に確定したものとして、平成13年分の不動産所得に係る総収入金額として計上すべきものと認められる。
賃貸借契約の中途解約に伴い賃借人に対し返還不要となった敷金及び建設協力金に係る所得は、3年以上の期間の不動産所得の補償に当たらないから臨時所得に該当せず、平均課税は適用されないとした事例
裁決事例集 第73集 265頁
要旨
請求人は、解約合意書に補償対象期間の具体的な記載はないものの、賃貸借契約書には契約期間が明記されていることから賃貸借契約の終期までの残存期間である9年9か月を本件返還不要敷金等が補償の対象としているとみるべきである旨主張する。
しかしながら、臨時所得の範囲として、所得税法施行令第8条第3号は、不動産貸付業務に係る「3年以上の期間の不動産所得の補償として受ける補償金に係る所得」と規定しているところ、所得の補償とは、中途解約に伴い生じた逸失利益、すなわち不動産貸付業務を継続すれば得られたであろう所得の額を補償するものであり、その所得を得るために継続して生ずる費用、例えば、減価償却費、租税公課等の費用の額を併せて補償することが必要であると解するのが相当であるから、所得の額と費用の額の合計額、すなわち収入金額に相当する金額を補償して初めて所得の補償といえる。
これを本件についてみると、本件返還不要敷金等は、違約金名目ではあるが、その実質は、①解約後の収益補償として支払われるもの及び②解約に伴う諸費用の実費弁償として支払われるものから成っていると考えられるから、本件返還不要敷金等に係る所得が、臨時所得となる3年以上の期間の補償に該当するか否かを判断するためには、本件返還不要敷金等の金額のうち、上記①に係る金額について、1年当たりの収入金額に相当する金額で除して補償対象期間を算定するのが合理的であると認められる。
そこで、本件返還不要敷金等の金額の全額を上記①に係る金額と仮定して、本件返還不要敷金等の金額(18,111,800円)を1年当たりの収入金額に相当する金額(9,864,792円(中途解約時の月額賃貸料822,066円×12月))で除して補償対象期間を計算すると、約1年10か月となり、3年以上の期間の不動産所得の補償には当たらない。
したがって、本件返還不要敷金等に係る所得は臨時所得に該当しないことになるため、平均課税の方法により所得税の額を計算することはできない。
要旨
請求人は、請求人の父母が所有する土地(本件土地)及び本件土地上の請求人名義の建物(本件建物)に係る賃貸料収入について、平成16年までの賃貸借契約及び平成17年以降の賃貸借契約のいずれも賃貸借契約の目的物は本件土地であるから、当該各賃貸料収入は父母に帰属する旨主張する。
しかしながら、①平成16年までの賃貸借契約においては、賃借人は、本件建物を店舗として使用し、本件土地は、商品の展示場又は来客用駐車場として建物の使用に必要な限度で一体として使用されていることからすると、当該契約の目的物は本件建物と解するのが相当であり、また、②平成17年以降の賃貸借契約においては、本件土地に借地権を設定する旨記載されているものの、賃借人は、本件建物を改装して使用する一方、本件土地上の建物を所有していないことからすると、当該契約は、借地権の設定契約と解するのは相当ではなく、賃借人が、本件建物を事務所等として使用し、本件土地は、来客用駐車場として建物の使用に必要な限度で一体として使用されていることからすると、賃借人は、本件建物の使用を目的として賃借していると解するのが相当であり、当該賃貸借契約の目的物は本件建物となる。そうすると、本件建物の所有者は請求人であることから、本件建物に係る賃貸料収入は請求人に帰属する。
参考判決・裁決
ポイント
本事例は、贈与を受けた債券(元利均等償還が行われる社債)の利子に係る所得は、年金受給権に関する相続税と所得税の二重課税についての最高裁平成22年7月6日第三小法廷判決の射程等が及ばないと判断したものである。
要旨
請求人は、父から贈与を受けた本件債券(元利均等償還が行われる社債)に係る第1回目の償還額(本件償還額)のうち、当該債券に係る償還予定表において利息相当額とされる部分(本件金員)について、本件債券に係る贈与税及び所得税の課税関係は、年金受給権に関する相続税と所得税の二重課税についての最高裁判所判決(平成22年7月6日第三小法廷判決・民集64巻5号1277頁。(本件最高裁判決))の射程に含まれるものであり、同判決の内容に沿った課税処理がなされるべきであるから、本件金員は、その一部が所得税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)第9条《非課税所得》第1項第15号に規定する非課税所得に該当する旨主張する。
しかしながら、本件債券は、本件最高裁判決における年金受給権とは、ある期間定期的に金銭の給付を受けるという形態は類似するものの、①当該年金受給権は相続税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)第24条《定期金に関する権利の評価》に規定する「定期金給付契約に関する権利」に該当するものであるのに対し、本件債券は「社債」に該当するものであり「定期金給付契約に関する権利」に該当しないものであること、②当該年金受給権は元本部分と運用益部分とが区分されていないものであるのに対し、本件債券の各償還額は元本部分と利息(運用益)部分とが約定において明確に区分されているものであることからすれば、その権利の性質・内容が明らかに異なるものというべきである。そうすると、本件債券及び本件償還額について、本件最高裁判決の解釈をそのまま当てはめて、本件最高裁判決の示した課税関係と同様の課税処理をするのは相当ではない。そして、本件債券は、第1回目の償還日から最終回の償還日まで各元本の償還額及び各利息額等があらかじめ元利均等償還となるように組成され、発行時に償還予定表によってそれらの各金額を明示した金融商品であるから、本件金員は、本件債券(元本)に対する利息であり、運用益に相当するものであるから、非課税所得に該当しない。
参照条文等
所得税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)第9条第1項第15号 相続税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)第24条 財産評価基本通達197-4
参考判決・裁決
最高裁平成22年7月6日第三小法廷判決(民集64巻5号1277頁)
遅延損害金の定めのない貸付金にあっては、約定利率と同じ割合で遅延損害金が日々発生しているものと解すべきであり、本件はこれを新たに消費貸借の目的としたものと認められることから、当該遅延損害金が回収不能になったとしても所得税法第64条第1項の規定の適用はないとした事例
裁決事例集 第49集 34頁
要旨
- 遅延損害金の定めのない本件貸付金にあっては、約定利率と同じ割合である年8パーセントの利率による遅延損害金がその元本が返済されるまで日々発生し、発生と同時に弁済期が到来して収入すべき金額が確定するものと解すべきである。
- 平成3年8月16日に両者の間で、平成2年5月25日から平成3年8月16日までの利息額等についての金銭借用証書を取り交わしていることからすると、新たに両当事者間に準消費貸借契約が成立したものと認められる。そうすると、法律上、既存債権である本件利息及び遅延損害金に係る債権は消滅し、その額について消費貸借上の債権が新たに発生したことになるから、所得税法第64条第1項に規定する「各種所得の計算の基礎となる収入金額」は、法律上もはや存在せず、これに相当する金額が仮に一定の事由により回収不能になったとしても、同項の規定の適用はないと解すべきである。
遅延損害金債務の債務免除益について、「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」に該当しないとして、所得税基本通達36-17《債務免除益の特例》は適用されないとした事例
裁決事例集 第73集 127頁
要旨
所得税基本通達36-17にいう「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」とは、単に債務超過の状態にあるだけでは足りず、債務超過の状態が著しく、その者の信用、才能等を活用しても、現にその債務の全部を弁済するための資金を調達することができないのみならず、近い将来においても、調達ができないと認められる場合をいうものと解される。
これを本件についてみると、請求人は、債務免除の前後において安定的な賃貸収入を稼得し、上記借入金の弁済に充てており、しかも同借入金以外の債務についても、債務免除の前後において弁済をしていた。そして、請求人の収入から借入金の返済額その他の支出額を控除した請求人の生活費として消費可能な所得は、総務省の家計調査における一世帯当たりの年間消費支出を上回っていることなどからすれば、債務免除の時点において、現にその債務の全部を弁済するための資金を調達することができないとは認められない。
さらに、請求人の資産・負債の状況についてみても、請求人は、主要な資産である自宅及び賃貸用不動産を処分することなく保有しており、また、上記の請求人の支払能力からすれば、債務全額について弁済が不可能となるほどの著しい債務超過があったとはいえないから、「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」に該当するとは認められない。
要旨
所得税法第157条に規定する同族会社の行為又は計算の否認は、同族会社たる法人の選択した行為又は計算が実在し、それが私法上有効なものであっても、その私法上許された形式を濫用し、異常な取引形式を選択した場合において、それが所得税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合には、実質課税の原則及び租税負担公平の原則の見地から税務計算上これを否認し、通常あるべき行為又は計算に引き直して税法を適用するものである。
ところで、原処分庁が算定した同業者の不動産管理料割合は適正と認められ、これを基に算出された適正管理料の額に基づいて計算した請求人の所得税額は請求人の申告所得税の額に比べて著しくかい離していることが明らかであり、本件不動産管理委託契約に基づく行為又は計算は、請求人の所得税の負担を不当に減少させる結果となっていると認められるから、請求人の不動産所得の金額を所得税法第157条を適用して算定した原処分は相当である。
適格退職年金制度の終了に伴い信託銀行が供託した年金基金の分配金として支払われる一時金に係る収入すべき時期は、当該制度の終了に関する裁判上の和解が成立した日ではなく、年金信託契約が解除された日であるとした事例
裁決事例集 第80集
要旨
請求人は、本件における年金受給権は、退職時点におけるH社との個別的な合意に基づいて発生したものであるが、H社が行った適格退職年金制度の終了及びこれに伴う措置は、H社と請求人との間の給付内容の変更であるから、請求人の同意がない限りその効力は発生しないところ、本件においては、請求人が平成19年3月○日に本件和解をした時点で初めて請求人が上記変更に同意をしたものと評価できるから、請求人に分配される一時金の受給権は平成19年に発生したものである旨主張する。
しかしながら、当該一時金は、適格退職年金制度の終了に伴って年金信託契約が解除されたことにより、当該年金信託契約に係る年金基金がH社における退職年金規定の定めに従って請求人に分配されたものであるところ、当該年金信託契約は、所得税法施行令第183条《生命保険契約等に基づく年金に係る雑所得の金額の計算上控除する保険料等》第3項第3号に規定する「退職年金に関する信託、生命保険又は生命共済の契約」に該当することから、当該一時金は、同条第2項に規定する生命保険契約等に基づく一時金に該当する。
したがって、当該一時金の収入すべき時期は、所得税基本通達36-13《一時所得の総収入金額の収入すべき時期》に定める「その支払を受けるべき事実が生じた日」である当該年金信託契約が解除された日、すなわち、平成17年4月1日であり、当該一時金は、請求人の平成17年分に帰属する所得であると認められる。
参照条文等
要旨
請求人の所有に係る本件土地は、都市計画法の規定による近隣商業地域内にあり建築基準法等の規定による中高層建築物の高さについての制限も受けていないことから、本件建物の建築により具体的な土地の利用価値が低下したとする因果関係の存在は、明確でなく、仮に若干の土地の利用価値の低下があったとしても社会通念上、この程度のものは受忍すべき範囲内であると考えられ、また、建築業者と請求人との間に当該金員の授受の合意が行われるに際して日照阻害に基因する具体的な損害の予測やその額の見積りを行っていない事実から、隣接地のマンション建築工事に伴い授受した補償料の金員は本件建物の建設に反対を受けた建築業者が請求人の同意を受けるために支払った一種の紛争解決金とみるのが相当であり所得税法第34条に規定する一時所得に該当する。
要旨
請求人の関係する会社が刑事訴迫を受けるおそれがあったため、請求人が帳簿書類を破棄したことは、青色申告者たる請求人が負っている帳簿書類の備付け、記録又は保存を免責させるような特段の事由には該当しない。
ポイント
本事例は、ゴルフ場の事業譲渡後に請求人が譲渡した旧ゴルフ場経営会社が発行した旧ゴルフ会員権は、新・旧ゴルフ場経営会社の間の取り決めにより、その譲渡の時点までの間、旧ゴルフ会員権に基づくプレー権が維持されていたことから、請求人が譲渡したゴルフ会員権は旧ゴルフ会員権であると判断したものである。
要旨
原処分庁は、請求人の有していた旧運営会社に対する①旧ゴルフ場の優先的施設利用権(プレー権)及び②預託金返還請求権などから成る契約上の地位(旧会員権)については、旧運営会社から新運営会社への事業譲渡(本件事業譲渡)により、上記①のプレー権が消滅したものと認められ、また、旧会員権を有する会員(旧会員)に対しては、上記①のプレー権とは別の権利である暫定的プレー権が付与されたものと認められるから、本件事業譲渡後における旧ゴルフ場の会員権は、上記②のみを内容とするものであり、当該会員権の譲渡は、譲渡所得の基因となる資産の譲渡に該当しない旨主張する。
しかしながら、本件事業譲渡に際しては、旧運営会社と旧会員との間の旧会員権に係る権利義務関係の処理について、(イ)旧会員のうち本件事業譲渡後も引き続き、新運営会社に対する新ゴルフ場のプレー権及び預託金返還請求権などから成る契約上の地位(新会員権)の保有を希望する者に対しては、旧会員権そのものを会員権管理会社に取得させるのと引き換えに、新会員権を付与させ、また、(ロ)新会員権の取得を希望しない旧会員についても、上記(イ)の旧会員権の取得及び新会員権の付与に係る手続が完了するまでの間、旧会員が新ゴルフ場を利用することができるよう、新運営会社の親会社であるスポンサー会社が旧会員の優先的施設利用を承認することを取り決めたものと認めるのが相当であるから、本件事業譲渡において、新会員権の取得を希望する旧会員から会員権管理会社に対する譲渡の対象とされたのは、上記①のプレー権及び上記②の預託金返還請求権から成る契約上の地位としての旧会員権そのものであって、旧会員権の譲渡時においてプレー権の存在が前提とされていたものといわざるを得ない。したがって、新会員権の取得を希望する請求人は、旧運営会社に対するプレー権を含む契約上の地位としての旧会員権を会員権管理会社に譲渡したものと認められるから、譲渡所得の基因となる資産を譲渡したものと認められる。
参照条文等
馬券の的中によって得た払戻金に係る所得について、請求人の一連の馬券購入行為をもって一体の経済活動の実態を有するものとはいえないから、営利を目的とする継続的行為から生じた所得とは認められず、一時所得に該当するとした事例( 平成24年分の所得税の更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分、 平成25年分及び平成26年分の所得税及び復興特別所得税の各更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の各通知処分・棄却)
裁決事例集 第110集
要旨
請求人は、競馬の勝馬投票券(馬券)の的中によって得た払戻金に係る所得(本件競馬所得)は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得として雑所得に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人は、馬券を自動的に購入するソフトを使用してインターネットを介して多数回かつ頻繁に馬券を購入していたと認められるものの、請求人による一連の馬券の購入行為は、その損益の状況をみると、確定申告をした各年で大きく変動しているのみならず、そのうちの1年は損失が発生しており、また、請求人は、的中確率が低い反面、一口で高額の払戻金が得られる可能性のある五重勝単勝式勝馬投票法に係る馬券を多数回購入し、その的中による利益が当該損益の額に一定割合を占めるなどしていることからすると、その期間、頻度、購入規模の大きさなどの点を考慮してもなお、客観的にみて多額の利益が恒常的に上がると期待し得る行為であったとは認められない。加えて、個々の購入馬券の種類やその金額の全てが明らかにされていない以上、請求人が主張する独自の条件設定と計算式に基づき個々の馬券の的中に着目しない網羅的な購入をしていたものと認めることはできない。したがって、請求人による一連の馬券の購入行為をもって一体の経済活動の実態を有するとまではいえないから、本件競馬所得は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるとは認められず、また、労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないから、一時所得に該当する。
参考判決・裁決
最高裁平成27年3月10日第三小法廷判決(刑集69巻2号434頁)
要旨
請求人は、韓国の居住者である芸能人に対し、国内における芸能人としての人的役務の提供に対する報酬を支払っていたが、本件報酬は、日韓租税条約第6条(1)に規定する「産業上又は商業上の利得」に該当するところ、本件芸能人は請求人を代理人としているところから、同条約第4条(4)及び(5)により、請求人という独立の地位を有する代理人を通じて国内で役務提供をしている場合には国内に恒久的施設を有しないこととされるから、同条約第6条(1)により、本件報酬はわが国において免税となる旨主張する。しかしながら、本件報酬に係るわが国における課税権の有無は、本件報酬に係る別個の条項である日韓租税条約第12条(4)に規定する要件により判断するのであり、第6条(1)に規定する要件により判断すべきではないところ、第12条(4)によれば、わが国における恒久的施設の有無は要件とせず、役務提供が国内で行われ、その報酬の額が一定額を超えることを要件にわが国における課税権を認めていることから、請求人の主張は採用できない。
また、本件報酬は芸能人が芸能人として自らの人的役務を提供することにより取得する報酬であるから、上述のとおり第6条(1)は無関係であり、第4条(4)(b)(ii)に規定する「第12条(4)に規定する芸能人の役務」を提供する場合とは、芸能プロダクション等が芸能人の人的役務を他者に提供することにより取得する所得の場合のみの規定であるから、同条項は本件報酬のわが国における課税権の有無の判断には無関係である。
ゴルフ会員権の平日会員権から正会員権に転換するための資金の借入金利子は、本件転換に必要な準備費用に該当するものとして、使用開始の日までの期間に対応する部分について取得費に該当するとした事例
裁決事例集 第56集 121頁
要旨
ゴルフクラブの会員資格が平日会員から正会員に転換することは、従前の平日会員のゴルフ場の施設を利用する権利の範囲が拡大することである。
そうすると、本件転換を行うための本件追加金は、当該拡大した部分を取得するために要した費用であり、客観的価格を構成すべき取得代金として認められ、本件譲渡所得の金額の計算上控除される取得費に算入することは相当である。
したがって、本件借入れは本件追加金を支払うために行ったものであり、これに伴う本件借入金利子は、本件転換に必要な準備費用に該当するものとして、使用開始の日までの期間に対応する部分について、本件平日会員権のゴルフ場の施設を利用する権利の拡大した部分の取得費に該当するものと認められる。
本件の使用開始の日は、本件正会員権の本件追加金の払込日の翌日とみるのが相当である。
なお、本件抵当権設定費用は、本件借入れの担保提供に係るものであり、取得費に算入するのが相当であり、本件抵当権抹消費用は、本件借入れに伴う借入金を返済したことに基づく抵当権抹消登記の手続費用であるから、借入金返済後の担保資産の管理費用であると認められ、取得費に該当するとは認められない。
要旨
請求人は、不動産所得の金額の計算上、相続税の延納に係る利子税について、所得税の確定申告税額の延納に係る利子税及び延払条件付譲渡に係る所得税額の利子税を除き附帯税を必要経費として認めていないが、その目的及び趣旨は、附帯税でも罰則的なものとか家事関連的なものについては必要経費として認めないということであるから、事業に対応する利子税については必要経費として認めるべきであると主張するが、所得税法第45条(家事関連費等の必要経費不算入等)第1項第3号は、利子税のうち同法第131条(確定申告税額の延納に係る利子税)第3項又は同法第136条(延払条件付譲渡に係る所得税額の延納に係る利子税)に規定する利子税に限って例外的に必要経費への算入を認めているにすぎず、相続税の延納に係る利子税はこれに該当しないから、必要経費として認められない。また、相続税の延納に係る利子税は、相続に付随して生じたものであるから、業務の遂行ないしこれと直接の関連をもつものと解することはできない。
主たる債務者が会社であるか、会社の代表者であるかが借用書上定かでない借入れについて、債権者が弟達で、借入れに事情があることや会社の経理等の念査から、本件借入れの債務者は会社で、会社の代表者がこれを保証したものと認定し、所得税法第64条第2項の適用を認めた事例
裁決事例集 第45集 110頁
要旨
借入れは会社の資金の確保のためであること、仮領収書は会社から債権者である弟達に発行されていること、借入金に係る利息も会社から債権者に支払われていること、同一債務に係る借用書が4通あるがいずれが事実のものか、あるいはいずれも虚偽のものか判断し難いことからすると、借用書が会社の代表者である被相続人の名義で発行されていることを根拠に主たる債務者は被相続人であるとする原処分庁の主張は採用できず、そうすると、主たる債務者は実質的に会社とみるのが相当である。
債務の保証について、債権者から、債権者と被相続人との間で「U町の土地」を担保とする保証契約をした旨の答述があり、これは、4通の借用証のうちの2通にU町の土地を担保にする旨の記載があることと符合し、当事者の真意が認められる。このことから、債権者と被相続人の間には本件債務に関して被相続人が保証する旨の合意が成立していたと認めるのが相当である。
要旨
原処分庁は、租税特別措置法第37条の規定の適用に係る買換資産の取得資金はまず譲渡資産の譲渡代金が充てられたものとすべきであるから、当該買換資産を借入金により取得したとしても、その借入金の利子の全額を不動産所得の必要経費と認めることはできない旨主張するが、同条の適用に係る買換資産であるからといって、その取得資金には、まず譲渡代金が充てられたとみるべき理由はなく、買換資産の取得資金に借入金が充てられ、譲渡資金の譲渡代金が充てられないことが明らかな場合において、その買換資産を不動産所得の基因となる貸付けの業務の用に供しているときは、当該不動産所得の金額の計算上その借入金の利子は全額必要経費に算入すべきである。
要旨
人材派遣業を営むA社の派遣社員である請求人は、同社から支払われた給与のうち、請求人が負担した自宅から派遣先までの通勤費相当額は、非課税とすべき旨主張する。
しかしながら、A社は、請求人に対して通勤手当を給与に加算して別途支給しておらず、請求人に所得税法第9条第1項第5号にいう「通常の給与に加算して受ける通勤手当」に該当するものがあるとは認められない。この他、請求人が負担した通勤費相当額を非課税所得とする規定はないから、これを非課税所得として、各年分の給与所得の金額の計算上、給与等の収入金額から除外することはできないとした本件各更正処分はいずれも適法である。
要旨
譲渡した土地建物のうち、土地の譲渡価額は、地価公示法に規定する公示価格及び国土利用計画法に規定する標準価格を、相続税財産評価基準の路線価で除して求められる、公示価格比準倍率及び標準価格比準倍率を用いて算出した土地の価額の2分の1に満たないから、低額譲渡に該当する。
したがって、当該土地建物の譲渡によって生じた損失の金額は、所得税法第59条“贈与等の場合の譲渡所得などの特例”第2項の規定により、なかったものとみなされる。
値下がりしている保有株式を売却すると同時に、同一銘柄の株式を同株数、同価額で購入する取引によって生じた売却損について、これを租税回避行為として否認することはできないとした事例
裁決事例集 第39集 106頁
要旨
値下がりしている保有株式を売却すると同時に、同一銘柄の株式を同株数、同価額で購入する取引によって生じた売却損について、原処分庁は、かかる取引は手数料等の実損を生じるだけ積極的な利益追求としてのメリットは全くない、株式売却損を発生させ、他の売買益と通算して税負担を減少させる目的で行ったものと認められるから、所得税法に内在する実質課税の条理に基づき、本件取引はなかったものとして雑所得の金額を計算すべきである旨主張する。
しかし、[1]本件売却損は、保有株式の値下がりによる損失を現実の売却により顕在化させただけであって、意図的に作り出したものではないから、結果として損失が生じたとしても、不自然、不合理なものとはいえないし、[2]保有株式の値下がりによる損失を顕在化させる目的で本件取引をしたものであっても、株式取引が極めて経済的危険の多い取引であり、所得税が経済取引上考慮されるべき経済的負担であることを考えると、そのような目的があるからといって、これを不自然、不合理として否定することはできず、[3]現実の取引によって値下がり損失を実現している以上、評価損と同視することはできず、仮装ないし不自然な取引とはいえないから、その行為は租税回避行為に当たらない。
共同施行による土地区画整理事業の施行者は、いわゆる「人格なき社団」ではなくその構成員個人であるから、その事業に伴い保留地を処分した場合には、各構成員個人に譲渡所得の課税関係が生ずるとした事例
裁決事例集 第37集 31頁
要旨
本件共同施行による土地区画整理事業は、その規約において構成員を事業の施行者とした上で、[1]規約の変更に関すること、[2]事業計画の変更に関すること、[3]仮換地の指定に関すること及び[4]換地計画に関することについては、施行者全員出席の上、全会一致で決する旨定めており、その根幹をなす重要な部分の運営につき、構成員たる施行者各人の個別の意思が色濃く作用する仕組みになっていて、多数決原理に基づく一個の団体意思の働く余地は全くないと認められるから、その事業主体が社会的にみて請求人ら構成員を超えて別個にその存在が認識される「人格なき社団」の域に達しているというのは困難であり、せいぜい個人どうしの事業を共同施行契約によって実行したものと認めるのが相当であるから、本件土地区画整理事業に伴って保留地を処分した場合には、当該構成員個人に譲渡所得の課税関係が生ずることとなる。
要旨
農地を2筆に分筆して同一人に対し昭和52年8月と昭和53年2月に売買契約を締結し、それぞれの売買契約が成立した日に譲渡があったかどうかについて、原処分庁は、農地の所有権の移転に係る農地転用届出の効力は他の財産上の手続に対し特別の地位にあることを理由に、その届出の効力が生じた昭和52年8月に本件農地が一の取引に基づいて一括して譲渡されたものと認定しているが、農地転用届出の受理は農地の所有権を移転する私法上の行為を補充してその法律上の効力を完成させるにすぎない行政行為であり、私法上の行為そのものの効力を確定させるものではないところ、本件土地及び隣接地の各売買契約は、[1]売買約書の内容、[2]譲渡代金の授受の状況、[3]不動産業者、司法書士等に対する仲介手数料、報酬の支払状況等の事実に照らし、昭和52年8月と昭和53年2月にそれぞれ時期を異にして別個独立に締結されたものと認められるから、原処分の一部を取り消すのが相当である。
勤務先の株式報酬制度に基づいて支給された上場株式に係る給与所得の収入すべき日は、当該報酬制度による約束(ストック・ユニット)が株式にコンバートされた日であるとした事例
裁決事例集 第86集
要旨
請求人は、勤務先が属するE社グループの株式報酬制度に基づいて支給されたE社の上場株式(E社株式)に係る給与所得の収入金額の収入すべき日は、E社グループの従業員等の金融取引に関する取引方針(従業員等取引方針)の定め(所定の期間以外はE社グループ各社の発行した株式の譲渡を制限する旨)によりE社株式の譲渡が制限されていたから、E社株式が請求人の証券等取引口座に振り替えられ、かつ、当該譲渡制限が解除され譲渡が可能となった日(従業員等取引方針により譲渡できる期間の初日)である旨主張する。
しかしながら、当該株式報酬制度の内容等を総合すると、請求人は、同制度による約束(ストック・ユニット:将来の指定された日(コンバート日)に、ストック・ユニット1単位に対してE社の普通株式1株を支給する旨の無保証の約束)が株式にコンバートした日において、E社株式の支給を受けて、当該株式に係る株主としての地位を確定的に取得したものと認められるから、同日をもって、当該支給に係るE社株式に係る給与所得の収入すべき日とするのが相当である。また、従業員等取引方針は、従業員の不正行為等の防止を目的として、E社グループの全ての従業員等による証券等の各種取引を規制対象とするものであり、当該株式報酬制度とはその目的や対象等を異にする別の制度であることからすると、請求人に支給されたE社株式は、請求人の立場により自由に譲渡できる期間を限定されているとはいえ、市場に流通するE社株式と同じ経済的価値(客観的交換価値)を有するものであるから、請求人が、上記コンバート日において既に、上記のような価値のあるE社株式の支給を受けて、当該株式に係る株主としての地位を取得している以上、同日に当該株式に係る所得が実現したというべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和53年2月24日第二小法廷判決(民集32巻1号43頁) 東京地裁平成17年12月16日判決(訟月53巻3号871頁) 大阪高裁平成20年12月19日判決(訟月56巻1号1頁)
医師の診療契約に基づく診療報酬債権は、患者に対して診療を行う都度、役務の提供が完了するものであり、医師が患者に対して診療を行った時期にその権利が確定すると解されるから、医師の事業所得の金額の計算上、診療報酬債権は、医師が診療を行った時期の属する年分の収入金額として計上すべきであるとした事例
裁決事例集 第67集 280頁
要旨
請求人は、労働災害の認定を申請している患者及び公務災害の療養補償の支払の一時差止め決定を受けている患者に対する診療報酬債権は、労働災害が認定され、又は、差止め決定が取り消されて療養補償の支払が再開されるまでは診療の対価を請求し得る状況になったとはいえず、診療行為時に確定しているとはいえないから、診療を行った時期の属する年分の収入金額に計上すべきでない旨主張する。
しかしながら、医師の診療契約に基づく診療報酬債権は、患者に対して診療を行う都度役務の提供が完了するものであり、医師が患者に対して診療を行うことにより、直ちに当該診療行為に相当する金額が定まる性質の権利、すなわち、役務の提供が完了した時点で当該役務に係る対価の額が確定し、それを請求することが可能となる権利であるから、診療行為時点で、医師が直ちに患者に対して診療報酬を請求するか否かによって、診療報酬債権の確定する時期が影響されるものではない。
したがって、医師の診療報酬債権は、診療行為が属する年分の収入に計上すべきものであるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
土地・建物を一括して譲渡した場合において、それぞれの取得価額が不明なときには、[1]先ず建物の取得費をN調査会が公表している着工建築物構造単価から算定し、[2]次いで土地の取得費は、譲渡価額の総額から建物の取得費を控除し、土地の譲渡価額を算定した上で、譲渡時に対する取得時の○○価格指数(住宅地)の割合を乗じて算定した事例
裁決事例集 第60集 208頁
要旨
請求人は、分離の課税長期譲渡所得金額の計算上、本件建物と本件宅地を一括して譲渡し、そのいずれの取得価額も不明である場合の取得日の算定について、次の通り主張する。
本件建物、本件土地及び農地を一括して3,000万円で取得したが、本件建物は老朽化と傷みによってその価値はなく、また農地も利用価値に乏しい無価値のものであり、よって取得価額の全てが本件宅地の価額である。
しかしながら、当審判所の調査によれば、本件建物のうち昭和55年に建設された新建物については、築後4年の経過で損傷もさほど認められないから、価値は現存し、大正6年に建築された旧建物は価値はないが、一部改築部分については、改築を請け負った工務店の金銭出納帳に記載された金額が取得費の額と認められる。
なお、請求人が主張する本件宅地の取得費は、その支払先・支払金額を確認することができず、請求人の主張は認められない。
これらのことから、本件建物の取得費は、取得時期は判明しているが取得価額が不明なもの(新建物)については、N調査会(以下「調査会」という。)が公表している着工建築物構造単価から算定する。また、本件宅地については、譲渡価額の総額から建物の取得費を控除して宅地の譲渡価額を算定したうえで、譲渡時に対する取得時の六大都市を除く市街地価格指数(住宅地)の割合を乗じて算定する。
上記の算定方法は、調査会が公表した数値であり、市場価格を反映した近似値の取得費が計算でき、合理的であると認められる。
要旨
譲渡所得計算上の譲渡費用は、資産の譲渡のために直接かつ通常必要な費用又は資産の譲渡価額を増加させるために譲渡に際して支出した費用と解されている。
本件農地転用決済金(以下「決済金」という。)は、[1]土地改良法第42条第2項の定めにより、土地改良区の組合員たる資格の喪失に際して、組合員が有していた土地改良区の事業に関する権利義務が新たな権利者に移転がない場合に、その権利義務を清算するために徴収されるものであって、土地の譲渡とは直接関係がないことは明らかであり、[2]本件決済金の内訳は、長期借入金の返済に充当すべき将来の負担金や維持管理費といったいずれも本件土地の譲渡とは直接の対応関係がない、いわゆる期間対応費用であり、土地の譲渡のために直接かつ通常必要な費用とは認められず、[3]本件決済金は、土地改良区の決済金徴収規程に基づいて徴収されたものであり、請求人が本件決済金を支払ったことをもって、本件土地の譲渡価額が増加したとは認められないから、いずれにしても、譲渡費用には当たらない。
要旨
請求人は、請求人が本件土地の売買代金を受領していないから所得税法第64条第1項に規定する特例を認めるべきである旨主張するが、本件売買契約の買主を本件訴訟の被告に加えていないこと、また、買主に対して、本件土地の売買代金の支払を求めて訴訟提起をしていないだけでなく、本件土地の売買代金の請求を一切していないことからすると請求人と買主との間において本件土地の売買代金の決済を終わっているものと認めざるをえない。
そうすると、請求人の買主に対する土地の売買代金の全部若しくは一部が回収することができない場合に当たらないことは明らかである。
さらに、請求人は請求人の代理人には売買代金を受領する権限がないのであるから、売買代金の授受行為が民法第478条に規定する債権の準占有者に対する弁済として有効であるとしても、あるいは無効であるとしても請求人が売買代金を受領したことにはならない旨主張する。
しかしながら、買主から請求人の代理人への支払が有効になるのであれば、請求人の買主に対する売買代金債権は民法第478条の規定により消滅しているのであるから、当該売買代金の回収不能という問題が生じないことは明らかであり、また、代理人への支払が無効になるのであれば、請求人は買主に対する本件売買代金を請求することができるのであるから、いまだ回収不能となっているわけではないことになる。
結局、本件は請求人と買主との間における本件売買契約の代金決済が終わった後の売買代金の使途に関することであり、所得税法第64条第1項に規定する譲渡代金の回収不能とは異なる問題であるというべきであるから、これらの点に関する請求人の主張には理由がない。
要旨
請求人は、商品取引上の損失についての支払のために、商品取引の委託を業とする会社に土地を譲渡する旨の契約を一度は締結したものの、当該土地の引渡し等に係る紛争についての訴訟上の和解の結果、請求人は、買受人に対し紛争解決金を支払って両者間の売買契約は実質的に解消されていること、本件土地の引渡し、所有権移転登記等が一度も行われないまま請求人がその所有権を確保していることに照らし、結果的に売買契約が法的に有効なものとしては存在しないことを確認したのと同様の内容の和解が成立したものと解されることから本件土地についての譲渡所得はないことになり、原処分を取り消すのが相当である。
外国法人から支払われる国外給与が外貨建て円払い取引に該当せず、円換算を要しないと判断した事例( 令和元年分から令和3年分の所得税及び復興特別所得税の各更正処分、 令和2年分から令和3年分の所得税及び復興特別所得税に係る過少申告加算税の各賦課決定処分・ 一部取消し、 棄却)
裁決事例集 第136集
ポイント
本事例は、雇用契約の定めに従って国外給与を日本円で支払うために作成された所得明細に基づいて日本円で送金された給与につき、当該所得明細に記載された支給総額を給与所得の収入金額とすることが相当であって、当該所得明細は日本円で表示されているから、当該国外給与の支給は外貨建て円払い取引には該当せず、その収入金額の算定に当たって円換算は要しないと判断したものである。
要旨
原処分庁は、外国法人が請求人に交付した税額計算書(本件計算書)には、請求人の給与(本件国外給与)が外国通貨で記載されており、本件国外給与が請求人の口座に日本円で入金されていることから、いわゆる外貨建て円払い取引に該当するとして、本件国外給与に係る給与所得の収入金額は、所得税基本通達57の3-2《外貨建取引の円換算》の注5の定めに基づき、外貨建取引に準じた方法で本件計算書の総支給額を円換算する必要がある旨主張する。
しかしながら、本件計算書は、外国法人が請求人から源泉徴収した税金を外国の国税当局に納付する際に使用する書類であって、外国法人は、請求人との雇用契約の定めに従い、請求人に本件国外給与を日本円で支払うため、日本円で算定した所得明細(本件所得明細)を請求人の給与明細として作成し、本件所得明細に基づき、本件国外給与を請求人の口座に日本円で送金していることから、本件国外給与の支給は外貨建て円払い取引には該当せず、本件国外給与の各月の収入金額は、日本円で算定された本件所得明細に記載の総支給額であることから、本件国外給与に係る給与所得の収入金額を算定するに当たり、円換算する必要はない。
参照条文等
ポイント
本事例は、外国法人の事業分割に伴い日本の居住者に交付された株式について、当該事業分割は法人税法第2条第12号の9に規定する分割型分割によるものに当たらず、所得税法第24条第1項に規定する剰余金の配当に該当するとしたものである。
要旨
請求人は、自らが株式を保有していた米国法人が事業分割(本件事業分割)し、2社の独立した法人となったことにより、新たに事業を承継した法人の株式(本件株式)の交付を受けたことについて、当該米国法人の事業分割前の株価と事業分割後の米国法人2社の株価の合計額とがほぼ同等であり、当該分割の前後において、全体としての株式の価値の増減は見られないこと、本件事業分割について、米国の課税上、米国法人2社双方の株主が非課税扱いとされていたことからすれば、本件株式の交付により請求人は所得を得ておらず、我が国の所得税法第24条《配当所得》第1項に規定する剰余金の配当に該当しない旨主張する。
しかしながら、本件株式は、当該米国法人の株主としての地位を有する者に対し、当該米国法人の利益剰余金を原資として交付されたものと認められる。また、米国における課税上の取扱いが我が国の課税上の取扱いに影響を及ぼすことはない。加えて、本件事業分割は、我が国の会社法上の分割に相当する法的効果を具備するとはいえず、法人税法第2条《定義》第12号の9に規定する分割型分割には当たらないというべきであるから、本件株式の交付は所得税法第24条第1項に規定する剰余金の配当に該当する。
参照条文等
参考判決・裁決
東京地裁平21年11月12日判決(判タ1324号134頁)
外国法人の標章及びシンボル・マークをサングラス・眼鏡枠に不正に使用したことを理由とする損害賠償請求訴訟事件に関して、請求人が外国法人に支払った和解金が、国内源泉所得として源泉徴収の対象となるとした事例
裁決事例集 第47集 360頁
要旨
請求人は、本件和解金は、不正競争防止法に基づく損害賠償請求訴訟に係る裁判上の和解に基づいて、営業上の損害が生じたことを主な理由として支払った損害賠償金であり、標章等自体の使用権等の侵害を理由として支払ったものではなく、また、本件和解金は、商標使用料を基礎に算定しているが、商標使用料は、あくまでも損害賠償額を算定する一つの資料にすぎず、使用料の請求を認めたものではないと主張する。
しかし、不正競争防止法による損害賠償金には、商品等表示等の使用料に相当する額を含むものであることは、明らかであり、また、所得税法第161条第7号イに規定する工業所有権等の使用料には、登録されている特許権、商標権等の権利だけでなく、登録されていなくても法令により保護されているこれからに類する権利等の使用料も含まれ、また、使用料に代わる性質を有する損害賠償金その他これに類するものが含まれると解するのが相当する。
標章の混同による営業上の損害としては、[1]標章の使用料のいっ失による損害、[2]同一又は類似の標章を使用する類似の商品の販売等の減少による損害及び[3]標章の混同による信用ないしイメージ等の低下等による損害が考えられるところ、本件損害賠償金の算定方法は、使用料を根拠としていることから、本件損害賠償金は、上記[1]に該当すると判断され、また、外国法人は昭和56年8月27日までの請求人による標章の使用につきやむを得ない事情があるとしていることから、同法人に上記[3]の損害の認定があったことは認められず、同法人が自らサングラス等の製造・販売をしていないことは明らかであるから、同法人の損害は上記[1]の使用料のいっ失による損害のみであると認めることが相当である。
したがって、本件損害賠償金は、その金額が所得税法第161条7号イの工業所有権等の使用料に相当し、国内源泉所得に該当する。
要旨
請求人は、外国法人が運航する遠洋鮪漁船に1年を超えて乗り組む乗船員であり、所得税法施行令第15条の規定により非居住者である旨主張する。
しかしながら、外国航路に就航している船舶の乗組員にとって、その乗船する船舶は単なる勤務場所にすぎないと解されることから、これらの者については、その生活の本拠はその者の配偶者その他生計を一にする親族の居住している地あるいはその者が勤務外の期間中通常滞在する地にあるところ、請求人の場合、配偶者が居住している地、勤務外の期間中通常滞在する地のいずれも国内であることから、請求人の住所は国内であると認められ、居住者に該当する。
要旨
請求人は資産の取得資金を得るため、本件山林の譲渡を営業担当に委託し、その譲渡代金をもって資産の売買契約に係る支払をし、当該資産の預り証券を取得しているから、本件山林の譲渡代金について横領の事実は認められないので、所得税法第72条第1項に規定する雑損控除の対象とすることはできない。
要旨
長期間所有していた山林を宅地造成して譲渡した場合の譲渡所得の収入金額とすべき宅地造成着手前の土地の価額について、原処分においては、当該土地の近隣地域等に所在する土地の通常の取引価額に各種の地域要因等を参酌して算定(1平方メートル当たり3,333円)しているが、本件の場合は、本件共同造成地内の山林を宅地造成着手直前に売買した事例があるので、これにより、当該土地の価額を算定(1平方メートル当たり3,939円)することが合理的である。
要旨
請求人は、請求人が相続した本件各建物の取得日は、被相続人の取得日を引き継ぐべきものであるから、本件各建物の減価償却の方法は定率法によるべきである旨主張する。
しかしながら、[1]所得税法施行令第120条第1項第1号イにいう「取得」に、相続による承継取得が含まれない旨の明文の規定はなく、また、これが含まれないと解すべき合理的理由もないこと、[2]民法上、相続は不動産の取得原因の一つとされていることから、その「取得」は、文理解釈上、相続による承継取得は含むと解すべきである。
したがって、請求人は、本件各建物を平成10年4月1日以後に相続により取得しているから、所得税法施行令第120条第1項第1号ロの規定により、本件各建物の償却の方法として選定できるのは定額法のみである。
建物を同族会社に賃貸して、同族会社が又貸しによって得た収入に比し極めて低額又は零円の賃貸収入を得ている場合において、所得税法第157条を適用して行為・計算を否認してされた更正は、適法であるとした事例
裁決事例集 第47集 169頁
要旨
請求人は、その所有する本件建物を同族会社であるA社及びB社に賃貸しているところ、[1]A社、B社とも、当該賃貸部分を各1社に又貸ししており、[2]両社の売上げは、いずれも、この又貸し料収入がすべてであり、[3]請求人に支払っている賃借料は、A社は又貸し料収入の半額以下、B社は零円であることが認められる。
両社の又貸し料収入から両社が支払った管理費実費負担額及び請求人に支払った賃借料を控除した金額を管理料相当額とし、その又貸し料収入の額に対する割合を管理料相当額割合として、比準同業者の平均管理料割合と比較すると、前者は後者をはるかに超える異常なものと認められるところ、請求人とA社、B社との間の賃貸借契約は、同族関係者であるが故に可能な行為又は計算であり、経済人としては不合理、不自然なものといわざるを得ない。
そこで、請求人の各年分の所得税額について比準同業者の平均管理料割合等により算出して計算した所得税額と請求人の確定申告による所得税額とを比較すると、両社の所得税額には著しいかい離があり、請求人の所得税の負担を不当に減少させる結果となっていると認められる。
したがって、所得税法第157条を適用して行為・計算を否認してされた更正は適法である。
要旨
請求人らは、F総合法律事務所は、会社法務に関する業務に対する高い評価と信頼は独占性をもった経営手腕、ノウハウとなっていること、長年にわたる人間関係の繋がりと業務遂行に対する高い評価により顧問先との強い信頼関係が構築され、請求人らの夫ないし父であるF弁護士が弁護士会等の要職を歴任し社会的信用及び知名度が高められてきたこと、さらに、F総合法律事務所の後継者であるG弁護士がFという名称を継続使用していることはF弁護士が蓄積した社会的信用等を継続使用する経済的・社会的価値を認めている証左であることから、これら経営手腕、ノウハウ並びにFという看板の信用度及び知名度こそが営業権に該当し、F弁護士が廃業に際しG弁護士から受領した金員(以下「本件金員」という。)は、営業権の譲渡の対価に当たる旨主張する。
ところで、営業権譲渡における営業とは、一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産をいうが、営業上のノウハウや暖簾、得意先関係等のいわゆる財産的価値のある事実関係は、常に譲渡の対象となる営業権となるものではなく、それが個々の主観的要素を離れて営業組織に客観的に結実した形で表象された場合にはじめて営業譲渡の対象となる。
そして、弁護士の業務は、個々の弁護士の経験、知識、法律的技能、また、依頼者との間の個々の信頼関係を基礎として成り立っているものであり、一身専属性の高いものであるから、このように、一身専属性の認められる弁護士業において、弁護士のノウハウ、依頼者との信頼関係等は、当該弁護士個人に帰属するものであり、当該弁護士を離れて営業組織に客観的に結実することにはなじまないものである。
本件においても、F弁護士の社会的信用やノウハウ等は、F弁護士個人に帰属するものであり、F総合法律事務所という組織として客観的に結実したものとは認められないから、営業権は存在しないと解するのが相当であり、この理は当事者の主観によって左右されるものではない。
したがって、本件金員は、営業権譲渡の対価であるとは認められない。
そして、本件金員のうち、賃借権の継承及び備品の引継ぎに係る部分以外の部分は、業務等の引継ぎの経緯等からすれば、F弁護士がG弁護士と共同経営していたF総合法律事務所の経営から離脱するに当たり、顧問先との契約のうちF弁護士の持分の清算金の趣旨であるものと認められるから、事業所得となる。
従業員であり請求人の母親である者の死亡に伴い支出した弔慰金及び香典は、事業と直接の関連を有し、客観的に通常かつ必要な費用であるとは認められないことから、必要経費に算入することはできないとした事例
裁決事例集 第54集 141頁
要旨
請求人は、従業員であり請求人の母親である者の死亡に伴い支出した本件弔慰金及び本件香典は、事業所得金額の計算上必要経費に算入すべきである旨主張する。
しかしながら、本件弔慰金については、その理由があいまいであり、かつ、その金額の計算方法も不動産所得の基因となる建物の管理等の労務の対価及び建築後の経過年数を用いているなど合理性、整合性がないことから、事業と直接の関連を有し、客観的に通常かつ必要な費用であるとは認められない。
また、本件香典については、葬儀費用の負担者は喪主である請求人であり、本件香典を手向けた者と本件香典の受取人は請求人自身であると認められることから、香典として経理処理等をしたことをもって、事業遂行上客観的に通常必要な費用であるとは認められない。仮に業務関連部分があるとしても、家事関連費とみるのが相当であるところ、業務遂行上必要である部分を明らかに区分することができず、所得税法施行令第96条に規定する経費に該当しない。
よって、本件弔慰金及び本件香典はその全額について必要経費に算入することはできない。
従業員名義で経営していた店舗に係る経営上の行為の状況、利益の享受状況及び出資の状況等から当該店舗の事業に係る所得の帰属先は請求人であると認定した事例( 平成18年分~平成21年分の所得税の各決定処分及び重加算税の各賦課決定処分、 平成22年分~平成24年分の所得税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分、 平20.1.1~平24.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各決定処分並びに重加算税の各賦課決定処分、 平成22年12月~平成24年12月の各月分の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分、 平成25年1月分の源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の納税告知処分、 平成25年2月~平成25年6月の期間分の源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の納税告知処分並びに不納付加算税の賦課決定処分・ 、 ~ 棄却、 一部取消し)
裁決事例集 第98集
要旨
請求人は、風俗店4店舗(本件各店舗)の経営者はP11であり、本件各店舗の事業に係る所得の帰属先は請求人ではない旨主張する。
しかしながら、請求人が本件各店舗の法律行為等について自らの名義又は自ら決定した借名を用いて行い、従業員を雇用、監督し、収支を管理し、本件各店舗から生じた利益を享受していたこと、また、本件各店舗に係る開店及び移転の各費用並びに出資に係る資金の負担者が請求人であったことから、本件各店舗の経営者は請求人であったと認められ、本件各店舗の事業に係る所得の帰属先は請求人である。
参考判決・裁決
名古屋地裁平成17年11月24日判決(判タ1204号114頁)
所得税法第90条に規定する平均課税を適用せずに確定申告が行われた後、平均課税の適用を求めてなされた国税通則法第23条第1項に基づく更正の請求が認められないとした事例
裁決事例集 第74集 88頁
要旨
請求人は、国税通則法第23条に規定する更正の請求は確定申告書の誤りを申告後に変更するための制度であり、確定申告書自体を訂正する意味を持つため、本件規定を適用せずに本件確定申告書を提出しても、本件更正の請求により本件規定の適用が認められるべきである旨主張する。
しかしながら、本件規定の適用を受けるには、所得税法第90条第4項において確定申告書に本件規定の適用を受ける旨及び平均課税の計算明細を記載することが要件とされているところ、本件確定申告書にはこれらの記載はなく、請求人は本件規定を適用せずに税額計算を行ったということとなる。そうすると、本件確定申告書において本件規定を適用せずに税額計算を行ったことは、そのこと自体法律の規定に反するものではなく、また、その計算に誤りはないと認められることから、本件確定申告書には、国税通則法第23条第1項に規定する課税標準等若しくは税額等の計算が国税の法律に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったとは認められないため、請求人の主張には理由がない。
要旨
請求人は、妻の扶養親族となっている子らについて、妻の所得控除の合計額が総所得金額を大きく上回っており、実質的に妻の総所得金額から扶養控除の額が控除されていないから、子らを請求人の扶養親族として、請求人の総所得金額から子らに係る扶養控除を控除すべき旨の更正の請求には理由がある旨主張する。
しかしながら、所得税法施行令第219条第1項は、納税者の意思を尊重してその年分に係る同令第218条第1項に規定する申告書等における納税者の選択により扶養親族の所属を決定できることとし、また、扶養親族の所属の変更する方法を、当該申告書等に後続する申告書等に限定しており、更正請求書による扶養親族の変更を認めていない。そうすると、既に妻に所属する扶養親族として適法に確定している子らを請求人の扶養親族に変更することができないから、たとえ請求人の主張するような事情があるとしても、子らを請求人の扶養親族として扶養控除すべき旨の請求人の主張には理由がない。
要旨
請求人と共同保証人の地位にある長男は、継続して会社の取締役の職にあるほか、他の会社にも勤務して相当の収入を得ており、これに同人の妻が得ている給与収入を加えると、生活費を賄う資力もないほど困窮していたとは認められず、また、長男の財産関係をみると債務超過の状況にあり、その債務の返済も相当長期にわたることが認められるものの、その債務の内容及び返済の状況などを個別にみると、結果として財産が皆無になるなどの特別の事情が生ずるとは認められず、将来においても長男が請求人の求償に応じる見通しが立たないとまでいうことはできないから、当時求償権を行使しても回収できる見込みがないことが確実な状況に至っていたとは認めることはできない。
生命保険契約に係る保険料の負担者は被相続人であり、死亡保険金は相続税の課税対象とすべき旨の請求人の主張は認められず、請求人が保険料の負担者であるとして一時所得に該当するとした事例
裁決事例集 第56集 144頁
要旨
請求人は、本件保険契約に係る保険料の負担者は死亡した妻であり、また、保険契約者が請求人となっていたことは知らなかったので、本件死亡保険金は相続財産として相続税の課税対象とすべきである旨主張する。
しかしながら、[1]死亡した妻は無収入であること、[2]請求人は妻に対する労務の対価を支払ったことの事実を証する帳簿書類を提出しないこと、[3]妻名義預金には、労務の対価としての定期・定額の入金はなく、請求人の営む事業に係る収入金が入金されており、かつ、当該預金からの出金には、本件保険料のほか、請求人に係る国民年金の掛金や家電製品の支払があること等を勘案すると、当該預金は請求人の家事費等の支払の一部に充てるために、請求人の営む事業に係る収入金の一部を入金していたものと推認され、妻に対する労務の対価を入金していたものとは認められないから、当該預金は、名義は妻であったとしても請求人に帰属する預金であると認められる。また、請求人は本件保険契約に係る保険会社から自ら保険契約者であることを証明の上、借入れを行っていることから本件保険契約の保険契約者が請求人であることを認識していたことが認められる。
したがって、請求人の主張にはいずれも理由がなく、妻名義預金から支払われていた本件保険料の実質負担者は請求人と解するのが相当であり、原処分庁が本件保険金を請求人の一時所得として所得税の課税対象としたことは相当と認められる。
要旨
請求人が支払った報酬は一人親方に対するものであって、外注費として取り扱うべき旨請求人は主張するが、本件報酬について、各職人の労務の提供は、職人個々の独立した事業として行われたものとは認められず、かつ、その労務の提供の対価は基本賃金のほか時間外勤務手当等の支払基準により支払われていることからして、請求人と職人との間の雇用契約書の作成はないものの、その実質は請求人がこれら職人を雇用の上、その就労の対価、すなわち給与等として支払ったものと解するのが相当である。また、仮にこれら職人が請求人主張の一人親方に当たるとしても、その支払う報酬が当該親方の危険と計算によらず、請求人の指揮監督の下に提供された労務の対価としての性質を有するものであれば、所得税法第28条第1項に規定する給与等に当たるとみるのが相当である。
被相続人が宗教法人の敷地に接する市道の改修工事に係る費用を負担したことは、宗教法人に対する寄付に当たり、市に対する寄付に当たらないとして寄付金控除の適用を認めなかった事例
裁決事例集 第75集 243頁
要旨
請求人は、市職員の指導誤りにより本件承認申請の名義が宗教法人D寺になったこと、本件決定に係る通知書には、本件工事で設置された工作物等が市に帰属する旨明記されていること、本来、工事費用はP市が負担すべきであること等から、特定寄付金に該当するのは明らかである旨主張する。
しかしながら、道路法第24条は、私人などが自らの必要に基づいて道路に関する工事又は維持を行う必要が生じた場合、道路管理上支障がなければそれを許可することができるようにするために設けられた規定であり、このように道路管理者の積極的な意思に基づかず、第三者が自己の利便のために行う工事等であるから、道路法第57条は、承認を受ける第三者にその費用負担を義務付けたものである。
そして、本件決定の承認条件として、道路敷に設けた工作物及び施設が、工事完了検査後市に帰属する旨定められた理由について、P市の担当課長は、「本件工事後の工作物等は道路の従物であり、工事費用を負担した者の所有のままにしておくと、その後の道路管理に支障を来たすため市に帰属させる必要があることから、『市に帰属する』という条件を付したもので、市が寄付を受けるとの意味ではない。」旨回答しており、工作物等をP市に帰属させることで、道路管理に支障が生じないように、D寺に義務として課したものであるということができる。
したがって、本件工事の費用負担、本件工事により設けられた工作物及び施設をP市に帰属させることのいずれもが、本件決定で承認を受けた者に課せられた義務であるから、それを履行したことが、国等に対する寄付に該当するとはいえない。このことは、仮に被相続人が本件承認申請をしたとしても同様である。
請求人が、同人の母に対して、複数年の間に行った金銭の貸付けに係る利息について、その履行期の到来する平成23年において収入すべき金額は、平成23年分の期間に対応する部分の金額のみであるとした事例( 平成23年分の所得税の更正処分、 平成23年分の所得税の過少申告加算税の賦課決定処分・ 一部取消し、 全部取消し)
裁決事例集 第96集
要旨
原処分庁は、利息債権については、その履行期が到来すれば、権利が確定し、所得税法第36条《収入金額》第1項に規定する「収入すべき金額」に当たるものと解され、所得税基本通達36-8《事業所得の総収入金額の収入すべき時期》(7)(本件通達)における「その年に対応するもの」とは、同項の規定によりその年に権利が確定したものをいうとの解釈を前提として、請求人が母親に対して貸し付けた金銭の利息(本件利息)については、その履行期にその全額が確定したものであるから、本件通達により、同日が本件利息の全額の収入すべき時期となる旨主張する。
しかしながら、貸付金利息については、元本使用の対価であって、元本が返還されるまで日々発生するものであるから、特段の事情のない限り、現実の支払の有無を問わず、期間の経過により直ちに利息債権が発生し、収入の原因となる権利が確定するものと解するのが相当であり、また、本件通達は、期間対応計算を採用したものであるから、「その年に対応するもの」との文言については、その年における利息の計算期間の経過に対応するものと解するのが相当であり、本件利息に係る収入金額のうち、各年中の期間に対応する部分の金額に係る収入すべき時期は、それぞれの年の末日であり、貸付期間の終了した平成23年の期間に対応する部分の金額に係る収入すべき時期は、貸付期間の終了した平成23年である。
参照条文等
所得税法第35条第1項、第36条第1項 所得税基本通達36-5、36-8(7)、36-14(2)
参考判決・裁決
最高裁昭和49年3月8日第二小法廷判決(判タ309号255頁) 最高裁昭和53年2月24日第二小法廷判決(判タ361号210頁)
請求人がふるさと納税を行ったことにより各地方公共団体から送付を受けた各返礼品に係る経済的利益の価額は、当該各地方公共団体の評価額によるのが相当であるとした事例( 平成29年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、 平成30年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・ 棄却、 一部取消し、棄却)
裁決事例集 第126集
ポイント
本件は、ふるさと納税に係る経済的利益の額は、地方公共団体が謝礼として供与する経済的利益の額であるから、地方公共団体が謝礼のために支出した金額(返礼品調達価格)をその算定の基礎とすることが相当であるとしたものである。
要旨
請求人は、請求人の受けたふるさと納税の返礼品(本件各返礼品)について原処分庁が算定した経済的利益の価額(原処分庁認定額)は適正な金額ではなく、その収入すべき時期にも誤りが認められる旨、また、仮に一時所得の金額を計算するとしても、その経済的利益の価額は、事業の広告宣伝のための賞金を受けた場合の評価に関する課税実務上の取扱いに基づき原処分庁認定額に60%を乗じた価額とすべき旨主張する。
しかしながら、ふるさと納税をした個人は地方公共団体からの贈与により返礼品を取得すること、ふるさと納税制度における返礼品の提供が当該個人に対する謝礼であることからすれば、本件各返礼品に係る経済的利益の価額は、地方公共団体が謝礼(返礼品の調達・提供)のために支出した金額(返礼品調達価格)をその算定の基礎とすることが相当である。そして、通常、地方公共団体が返礼品等をその調達時における時価を超えて調達することはないと考えられ、また、本件において、本件各返礼品が不当に高額又は低額で取引されたといった事情は認められない。
これらのことからすると、返礼品調達価格は、地方公共団体が本件各返礼品を調達した時における返礼品の客観的交換価値を示すものと評価できるから、請求人は、本件各返礼品を取得することにより、本件各返礼品につき返礼品調達価格に相当する経済的利益を得たことになる。したがって、本件各返礼品に係る経済的利益の価額は、本件各返礼品の返礼品調達価格によるのが相当である。
この点、原処分庁認定額については、その価額及び収入すべき時期の認定に一部誤りがあると認められたものの、返礼品調達価格を基にして算定されたものであるから、原処分庁認定額が適正でない点に関する請求人の主張は理由がない。また、本件各返礼品はそもそも事業の広告宣伝のための賞品ではないから、当該賞品の評価に関する課税実務上の取扱いに基づいて本件各返礼品を評価すべき旨の請求人の主張を採用することはできない。
参照条文等
請求人が不動産を実体的に所有するとともに、その利得を支配管理し、自己のために享受していると認められるから、当該不動産の賃貸に基因する所得は請求人に帰属するとした事例(平成21年分の所得税の更正処分及び無申告加算税の賦課決定処分並びに平成22年分及び平成23年分の所得税の各決定処分及び無申告加算税の各賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第95集
要旨
請求人は、各不動産の賃貸に基因する所得は実父に帰属する旨主張する。
しかしながら、請求人は、①各不動産のうち一部を夫と持分2分の1ずつで共有しているほかはその余の不動産を単独で所有し、登記に係る所有名義もその所有の実態に即していること、②各不動産の賃借人は、請求人が所有する口座等に賃借料を振り込む方法で支払っていること、③建物の管理費のほか、不動産に係る固定資産税や管理費などの経費と認められる金額を請求人名義の口座から振替により支払っていること、④請求人の実父は、同人名義で賃貸借契約が締結されている事情を知らず、請求人らから各不動産の賃貸に係る収支又は損益に係る説明を受けていないこと、加えて、⑤結局、請求人の実父は、請求人から各不動産の賃貸に基因する所得の分配を受けたことがなく各不動産の賃貸業に何ら関係していないことが認められる。以上のことから、請求人が各不動産(ただし、夫と共有のものについては、その2分の1)を実体的に所有するとともに、本件各年分において、現に、実父名義等で賃貸借契約がされたものを含めてその利得を支配管理し、自己のためにそれを享受していると優に認めることができるから、本件各年分の各不動産の賃貸に基因する所得は、請求人に帰属すると認めるのが相当である。
参照条文等
請求人が不動産所得の必要経費として主張する各支出に係る証拠書類等の提出は十分ではなかったものの、審判所の調査により追加で認容すべき必要経費の額を認めた事例( 平成23年分及び平成24年分の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分、 平成25年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・ 一部取消し)
裁決事例集 第105集
ポイント
本事例は、請求人が、原処分に係る調査においてそれを裏付ける証拠書類等の提示及び説明を行わず、審査請求においても証拠書類等の提出がほとんどなく、具体的な説明も行わなかったため、審判所において調査・審理を行ったところ、原処分において認定された金額のほかに追加認容すべき必要経費の額を認めたものである。
要旨
請求人は、修繕費等及び旅費・交通費等の各支出は、それぞれ不動産所得の金額及び雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである旨主張する。
しかしながら、請求人は、不動産所得について、主張を裏付ける証拠書類等の提示及び説明を原処分調査時及び異議調査時にもしておらず、また、当審判所の再三の求めにも応じず、主張を裏付ける証拠書類等をほとんど提出しなかった。このような状況の下、当審判所としては、修繕費等及び旅費・交通費等について各支出の事実の有無、当該各支出が請求人の不動産所得を生ずべき業務と直接の関係を持ち、かつ、業務の遂行上必要なものであるか否か、その他必要経費に算入すべき支出の有無について主に原処分関係資料に基づいてその適否を判断するほかないところ、これらの資料等を調査した結果、請求人の主張する各支出は、原処分額算定において誤りがあった一部を除き、必要経費に算入できない。また、雑所得の必要経費についても原処分庁認定額を不相当とする理由はない。
参照条文等
請求人が必要経費に算入した開業費の償却費、接待交際費及び旅費交通費の各費用は、業務の遂行上必要なものとは認められず、必要経費に算入することはできないとした事例
裁決事例集 第92集
要旨
請求人は、必要経費に算入した開業費の償却費、接待交際費及び旅費交通費の各費用は、業務の遂行上必要なものであるから、必要経費に算入されるべきである旨主張する。
しかしながら、所得税法第37条《必要経費》第1項に規定する「販売費、一般管理費及びその他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」は、単に業務と関連があるというだけでなく、客観的にみてその費用が業務と直接の関係を持ち、かつ、業務の遂行上必要なものに限られると解するのが相当であるところ、請求人が必要経費であると主張する上記各費用は、業務の遂行上必要なものと認められないから、必要経費に算入することはできない。
参照条文等
請求人が敷金を返還した事実は認められないから、当該敷金相当額は請求人の不動産所得の金額の計算上、総収入金額に算入すべきである旨の原処分庁の主張を排斥した事例
裁決事例集 第101集
要旨
原処分庁は、請求人が賃貸物件の賃借人から受け取った敷金(本件敷金)を返還した事実は認められないこと等から、本件敷金相当額は請求人の不動産所得の金額の計算上、総収入金額に算入すべきものである旨主張する。
しかしながら、本件敷金について、賃借人は、賃貸物件の賃料を滞納して請求人からその明渡し等を求められ、①賃貸借契約を合意解除すること、②所定の期限までに物件を明け渡すこと、③明渡し後の残置動産の処分には異議を申し立てないこと等を主な内容とし、他に何らの債権債務がないことを相互に確認する旨のいわゆる清算条項が付された和解に応じ、これにより請求人の賃借人に対する敷金返還債務は存在しないことが確認されているところ、当該和解の内容を考慮すると、本件敷金は、実質的には全て賃借人が負担すべき賃料、賃料相当損害金その他賃借人が負担すべき費用に充てられたものと認めることができ、本件敷金について、請求人に経済的利益はないから、総収入金額に算入すべきとはいえない。
参照条文等
請求人が業務の用に供するために取得した土地建物に係る借入金の利子について、当該土地建物は放置したまま何ら業務の用に供されていないから必要経費に算入されないとした事例
裁決事例集 第35集 52頁
要旨
請求人(税理士)は、事務所付併用住宅の建設用地として取得した本件不動産は、業務の用に供するために取得したことが明らかであるから、その取得に要した借入金の利子等は必要経費に算入されると主張するが、利用目的が多岐にわたる土地が業務用資産であるかどうかは、当該土地の取得目的や取得者の主観的意思において業務の用に供される資産であるというだけでは足りず、その土地の具体的利用計画及び使用状況等から客観的に業務の用に供することが明らかであるかどうかで判断するのが相当であり、係争年分中に本件不動産を放置したまま何ら業務の用に供していた事実が認められない本件の場合には、少なくとも建物(事業所)の建設工事の着手日前は業務用資産とはならないと解されるから、本件借入金の利子は、請求人の業務に係る所得の計算上、必要経費とは認められない。
請求人が管理業務を委託した同族会社は、請求人が必要経費に算入すべきと主張する管理費の額に見合う管理業務を行っていたと認められることから、その全額を必要経費に算入すべきであるとした事例
裁決事例集 第84集
ポイント
この事例は、請求人が同族会社に委託した管理業務のうち、当該同族会社が他社に再委託した業務以外の部分について、当該同族会社が行っていたことを認定し、必要経費に算入すべき金額の範囲を判断したものである。
要旨
原処分庁は、請求人が賃貸及び事業の用に供している建物等について、請求人らが役員を務める本件同族会社が管理業務を行っていたとする証拠がなく、仮に行っていたとしても請求人が主張する行為は管理業務とは評価できないから、請求人の不動産所得及び事業所得の必要経費に算入すべき管理費の額は、本件同族会社が再委託先に支払った再委託料の額の一部に限られる旨主張する。
しかしながら、本件同族会社は、自ら当該建物等の管理業務を行っていたと認められることから、請求人が本件同族会社に支払った管理費の額うち、必要経費に算入すべきと主張する額(請求人主張管理費額)は、その全額が、請求人の不動産所得及び事業所得に係る業務と直接の関係を持つ費用であり、かつ、本件同族会社の行った管理業務の内容からみて、各業務の遂行上必要な費用であると認められる。したがって、請求人主張管理費額は、請求人の不動産所得の金額及び事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである。
参照条文等
請求人が行った株式の譲渡による所得は、資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合における資産の譲渡による所得には当たらないとした事例(平成22年分の所得税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第100集
要旨
請求人は、資産を譲渡した時(本件譲渡時)において、資産を譲渡することとなった原因と密接に関連した請求人を被告とする損害賠償請求訴訟(本件訴訟)が係属中であり、敗訴の可能性が高かったことからすれば、本件譲渡時の現況において、当該資産の譲渡による所得は、所得税法第9条《非課税所得》第1項第10号に規定する資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合の資産の譲渡による所得に該当する旨主張する。
しかしながら、本件訴訟は、本件譲渡時において係属中であり、請求人の本件訴訟に係る債務については、その存否も額も明らかではなく、債務として確定していないから、かかる未確定の債務をもって債務超過の状態が著しいと認めることはできないし、また、課税しても結果的に徴収不能となることが明らかな場合に譲渡所得等を非課税とする上記規定の趣旨に照らしても、これを考慮することはできないというべきであるから、請求人の主張には理由がない。
参照条文等
参考判決・裁決
東京高裁平成23年2月23日判決(訟月58巻1号193頁、ジュリ1455号132頁)
要旨
請求人が貸倒れとなったと主張する債務者3名に対する貸付金は、いずれも請求人の営む不動産仲介業に関して生じた貸付金ではなく、かつ、請求人は貸金業を営んでいないこと等の理由から、請求人の事業遂行上生じた貸付金と認めることはできず、当該貸付金に係る貸倒損失を事業所得の金額の計算上必要経費の額に算入することはできない。
請求人が返還を求めている土地を使用(占有)している者から受領した金員について、請求人が本件土地を自ら使用収益することができなくなったことの対価として支払われたものとするのが相当であることから、所得税法施行令第94条第1項第2号の規定に該当するとして、不動産所得の総収入金額とした事例
裁決事例集 第70集 87頁
要旨
- 争点
(1)請求人が、その所有する土地を権原なく使用(占有)する者から損害賠償金として金員を受領している場合に、それが課税所得に該当するか否か。(争点1)
(2)請求人に対する課税処分が違法であることを理由に督促処分の取消しを求めることができるか否か。(争点2) - 請求人の主張
(1)争点1について
E社は、請求人とE社との間の本件土地に係る賃貸借契約が終了したにもかかわらず、長年にわたり使用(占有)し続けている。そのため、請求人は、本件土地を自由に使用することができない状況となり、多大な損害を被り、また、長年にわたり重い身体的負担を負い、心身に対して深刻な損害を受けている。本件金員は、E社が本件土地を明け渡すまでの間、請求人がE社から受けている損害に対する賠償金である。
したがって、本件金員は、所得税法第9条第1項第16号に規定する非課税所得の損害賠償金に該当するから、本件金員を不動産所得の総収入金額であるとしてされた、本件課税処分は違法である。
(2)争点2について
上記(1)のとおり、本件課税処分は違法であるから、本件課税処分に基づく本件督促処分は違法である。 - 審判所の判断
(1)争点1について
イ 所得税法第9条第1項第16号、同法施行令第30条及び第94条の趣旨は、損害賠償が他人の被った損害を補てんし、損害がないのと同じ状態にすることを目的とするものであって、その間に所得の観念を入れることが酷であるから、これを非課税所得とし、他方、損害賠償金の名目で支払われたとしても、そのすべてが非課税所得になるわけではなく、本来所得となるべきもの又は得べかりし利益を喪失した場合にこれが賠償されるときは、喪失した所得(利益)が補てんされるという意味においてその実質は所得(利益)を得たのと同一の結果に帰着すると考えられるから、それを非課税所得としないとするものである。
ロ これを本件についてみると、[1]請求人は、E社に対して、損害賠償金を請求するに当たって、本件土地をE社が使用(占有)することによる経済的損失に対する損害賠償の部分と精神的苦痛に対する損害賠償の部分とを明らかにしないで請求していること、[2]E社は本件和解において合意した賃貸借契約期間満了後も継続して本件土地を駐車場として使用し、請求人に対して、その使用の対価と称して本件金員を支払っていること、[3]請求人は、E社が支払う上記[2]の対価を損害賠償金として受領し、その増額を数度にわたり要求していること、[4]E社は、請求人に対して、本件和解に基づく賃貸借契約期間中は月額15万円を支払い、当該賃貸借契約期間満了後も毎月の送金を継続し、その金額を徐々に増額して、平成13年5月以降は月額35万円としていること、及び[5]E社は請求人の損害賠償金の増額要求に対して、送金している金額が周辺の土地事情からみても決して低い額ではない旨回答していることが認められる。
上記[1]ないし[5]のとおり、本件金員の支払を求めた請求人の請求方法、本件金員の額及びその金額の変遷、本件金員の支払態様、支払者であるE社の認識などの事実を総合すると、請求人がE社から支払を受けている本件金員は、請求人がその心身に受けた損害を賠償するためのものでも、資産に加えられた損害につき支払を受ける見舞金でもなく、請求人の本件土地に対する使用収益を妨げて請求人の得べかりし利益を喪失させて生じさせた経済的損害を賠償するためのものであると認めるのが相当である。
そうすると、本件金員は、損害賠償金ではあるが、本来所得となるべきもの又は得べかりし利益を喪失した場合にこれを賠償するためのものであるから、喪失した所得(利益)が補てんされるという意味においてその実質は所得(利益)を得たのと同一の結果に帰着すると考えられ、それは課税所得となるものというべきである。
ハ そして、所得税法施行令第94条の規定によれば、本件金員は、請求人の業務の遂行により生ずべき不動産所得に係る収入金額に代わる性質を有するものというべきである。
ニ 以上のとおり、本件金員は、所得税法第9条第1項第16号に規定する非課税所得の損害賠償金には該当せず、請求人の不動産所得の金額の計算上総収入金額に算入されることから、この点に関する請求人の主張を採用することはできない。
(2)争点2について
本件課税処分が適法であることは、上記(1)のとおりであり、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、本件督促処分は、本件滞納国税がその納期限である平成16年9月30日までに完納されなかったことから、国税通則法第37条第1項の規定に基づいて行われたものと認められるので、本件督促処分は適法である。
ポイント
この事例は、割箸の仕入本数を推計の基礎項目とする原処分庁主張の推計方法が必ずしも合理的とはいい難いとして、水道光熱費の金額を推計の基礎項目とし、事業所得の収入金額及び課税資産の譲渡等の対価の額を推計したものである。
要旨
原処分庁は、焼肉店を営む請求人の事業所得の収入金額を推計する方法として、割箸の年間仕入本数から客数への反映のない本数を5%として控除した本数を推定客数とし、客1人当たりの平均単価を乗じて算定する方法が合理的である旨主張する。
確かに、来客数が増加すれば、割箸の消費量も増加し、それに伴い収入金額も増加することから、店舗で費消された割箸と当該店舗の収入金額には、一定の相関関係があるといえる。このことから、推計課税において割箸を効率項目として用いる計算方法は、一応の合理性が認められる。
しかしながら、原処分庁が採用したロス率(5%)それ自体について合理的な算定根拠を確認することができないのみならず、割箸の仕入れの態様等にもかんがみると、ある年における割箸の実際の費消本数とその年の割箸の年間仕入本数(1,000本単位での仕入れがされている。)との間の相関関係は概括的、近似的にしか把握し得ないのが通常であると考えられるから、割箸の年間仕入本数のうちその年の客数に反映しない本数を当該年間仕入本数に基づいて割合的に把握する推計方法自体が必ずしも合理的とはいい難い。
飲食店営業の場合、類似同業者にあっては、特段の事情がない限り、同程度の水道光熱費の割合に対し、同程度の収入を得、同程度の収入に対し、同程度の所得を得るのが通例であり、請求人の営む事業についても上記特段の事情はうかがわれないことからすれば、請求人の事業所得の金額を算定するに当たっては、請求人の水道光熱費の金額を類似同業者の収入金額に対する水道光熱費の金額の占める割合の平均値で除すことにより、収入金額を算定し、同業者所得率を乗じる方法が、他により合理的な推計の方法が見当たらない本件においては合理的であるということができる。
参照条文等
要旨
請求人は、青色申告者で不動産貸付業及び理容業を営み、その妻が[1]不動産管理台帳の記載、[2]賃貸料の受領及び領収書の発行、[3]賃貸料未納者に対する督促及び集金、[4]現金領収した賃貸料の預金への預入れ、[5]賃借人との使用契約書の作成、[6]無断駐車の有無の見回り、[7]駐車場の草取り、[8]理容業用タオルの洗濯及び床清掃などの業務に従事しているから、その妻は青色事業専従者に該当する旨主張する。しかしながら、[1]駐車場の駐車可能台数、[2]賃貸料の銀行振込みの数、[3]賃貸料の現金領収の数、[4]賃借人の交替した数、[5]無断駐車の見回りの回数、[6]駐車場の路面の状況、[7]理容店の客数などからみると、その妻が請求人が主張するような業務に現に従事し、又は従事していたとしても、その事務量は僅少であると認められ、請求人の事業に専ら従事していたとはいえないから、その妻は青色事業専従者の要件を満たしていない。
請求人は、本件宅地を売買により取得した旨主張するが、売買ではなく贈与により取得したと認めるのが相当であるから、分離長期譲渡所得の金額の計算上、収入金額から控除する取得費を当該収入金額の100分の5に相当する金額で算定して原処分は相当であるとした事例
裁決事例集 第44集 174頁
要旨
請求人は、本件土地の譲渡に係る分離長期譲渡所得の金額の計算上控除される取得費について、本件土地の取得時の登記原因が売買となっていること等を理由に、売買による取得価額2,524,000円とすべきであると主張するが、売買契約書もなく代金の授受もないこと及び取得時に贈与税の申告をしていることから、贈与により取得したと認めるのが相当である。
請求人の主張する取得費は、贈与税の課税価格を取得費としたものであって、本件取得費には当たらず、所得税法第60条第1項及び措置法(平成3年法律第16号による改正前のもの)第31条の5第1項を適用して取得費を算定した原処分は相当である。
請求人ほか3名が相続した不動産の共有持分から生ずる賃料収入について、当該賃料収入の全額が請求人に帰属するものである旨の原処分庁の主張を排斥した事例( 平成18年分以後の所得税の青色申告の承認の取消処分、 平成18年分の所得税の更正処分、 平成19年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、 平成20年分~平成23年分の所得税の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、 平成24年分の所得税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分、 平18.1.1~平24.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分・ 棄却、 全部取消し、 一部取消し、 一部取消し、棄却)
裁決事例集 第99集
要旨
原処分庁は、請求人ほか3名の相続人らが相続した不動産の共有持分から生ずる賃料収入について、請求人が他の相続人ら3名に渡しておらず、また、その全額を請求人の不動産所得として申告していたことなどからすれば、当該賃料収入の全額が請求人に帰属するものである旨主張する。
しかしながら、相続開始から遺産分割までの間に共同相続に係る不動産から生ずる金銭債権たる賃料債権は、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し、その帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないものと解するのが相当であるから、当該賃料収入は、その全額が請求人に帰属するのではなく、法定相続分に応じて請求人ほか3名の相続人らにそれぞれの割合で帰属するものと認めるのが相当である。
参考判決・裁決
最高裁平成17年9月8日第一小法廷判決(民集59巻7号1931頁)
譲渡代金によって弁済したのは自己の債務であって、保証債務ではないとして、保証債務を履行するために資産を譲渡した場合の譲渡所得の特例の適用を認めなかった事例
裁決事例集 第60集 315頁
要旨
請求人は、本件土地の譲渡代金で返済した借入金について、主たる債務者名義は請求人となっているが、借入金を費消したのも、弁済していたのも請求人の長男であり、実質的な主たる債務者は長男であるから、本件土地の譲渡は保証債務を履行するために行われたものであると主張するが、[1]金銭消費貸借証書上、主たる債務者は請求人となっていること、[2]請求人の長男自身が主たる債務者となることも可能であったのに、そうしていないこと、[3]債権者は請求人に対して貸し付けたものであると答述していることから、この借入金は、請求人が主たる債務者であると認められる。したがって、本件土地の譲渡代金から返済したのは自己の債務であって、保証債務の履行による弁済ではないので、所得税法64条2項の規定を適用することはできない。
要旨
妻の実家に近在する産婦人科病院への転院は、医療上の必要に基づくものであり、その転院のための旅費交通費は医療費に含まれるとの請求人の主張について、その転院は医療上の必要に基づくものとは認められず、当該旅費交通費は出産の前後における準備又は育児等の見地から便宜であるとの理由で妻の実家のある市の病院で診療等を受けるための帰郷の旅費交通費にすぎないものと認められるので、所得税法施行令第207条に規定する医療費控除の対象となる医療費には該当しない。
要旨
青色申告に係る年分の所得金額の更正を行う場合における、更正の理由付記の程度としては、納税者の申告のいかなる点にどのような誤りがあり、また、更正された数値がどのようにして算定されたものであるかが理解できる程度であれば足り、それ以上に事実関係の細部にわたり法的評価及び判断の根拠となった事実関係までも記載することは要しないものと解されるところ、本件においては、原処分庁は、請求人が同族会社に支払った本件建物の賃料の額及び医薬品の仕入れ金額の支払事実を否認して更正したものでなく、その支払金額が極めて高額であり、これらの行為又は計算に基づいて事業所得の金額を計算することは、請求人の所得税の負担を不当に減少させるものであると認定した上、所得税法第157条の規定を適用してその一部請求人のを事業所得の金額の計算上必要経費の額に算入することができないとしたものである旨を付記しており、処分の内容は特定され、その金額及びその金額の計算根拠も明示されているのであるから、請求人は、処分の理由を具体的に知ることができるものであって、本件更正通知書の理由付記の程度は、更正の理由付記として十分なものと認められる。
要旨
所得税所定の「生活に通常必要な動産」とは、家具、じゅう器、衣服及びこれらに類似する生活用動産で、通常の社会生活を営むのに必要とされる資産をいうものと解するのが相当であるところ、請求人のオートバイの使用状況をみると、1週間に1回程度しか使用されておらず、また、購入後盗難に遭うまでの間に、放送大学への通学に使用したのはわずか5日にすぎないことが認められ、この程度の使用頻度では、本件オートバイは請求人の日常生活に通常必要な動産とは認められず、さらに、本件オートバイがいわゆる大型オートバイ(400c.c.)であることからして、通常の社会生活を営むのに必要なものであるとはいえないことから、本件オートバイは、「生活に通常必要な動産」ということはできず、所得税法第72条は適用できない。
要旨
請求人は、本件建物の貸付けは、賃借人は一社のみであるが、1,500万円以上の収入があり、当該建物の二階部分も賃貸すれば、3,000万円を超える収入を得られる可能性があり、二階部分の修復、維持管理のため等に従事している専従者に支払った給与は必要経費に算入されるべきである旨主張する。
しかしながら、[1]貸付物件は、本件建物のみで、当該建物の貸付けに係る請求人等の役務の提供は極めて僅少であると認められること、[2]本件建物の一階部分の修理等は賃借人が行っていること等を総合的に判断すると、賃貸料収入が1,500万円であったとしても、社会通念上事業と称するに至る程度のものとは認められないとみるのが相当である。
したがって、本件建物の貸付けは、所得税法第57条第1項に規定する不動産所得を生ずべき「事業」に該当しないから、専従者給与の額を必要経費に算入することはできない。
事務所の移転に伴い受領した金員の一部は、請求人の事業所得に係る必要経費を補填する金額であると認められるものの、その余の部分は、事業所得の総収入金額に算入すべき金額ではなく、また、継続性及び対価性を有しないものであることから、一時所得に区分するのが相当であるとした事例
裁決事例集 第84集
要旨
請求人は、旧事務所の明渡しに際し受領した金員(本件受領金員)は、事業の遂行により生じた収入ではなく、収益補償的な意味も持たないものであって、また、継続性のない一時的な収入であるから、その全てが、事業所得の総収入金額ではなく、一時所得の総収入金額に算入すべきである旨主張する。
しかしながら、所得税法は、各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額については、それに対する補填の有無に関わらず、各種所得の金額の計算上、必要経費として控除できることとしていることに照らすと、事業所得に係る必要経費の補填金の支払を受けた場合には、その金額を事業所得の総収入金額に算入しなければ、担税力に応じた公平な課税を目的とする所得税法の立法趣旨を損なうこととなることから、事業所得に係る必要経費の補填金に相当する金額についても、事業所得の総収入金額に含まれると解するのが相当である。そして、本件受領金員の一部は、請求人の事業所得に係る必要経費を補填する金額であると認められることから、事業所得の総収入金額に算入すべき金額となり、その余の部分は、請求人の事業所得に係る収入金額又は必要経費を補填するために支払われたものであるとは認められず、また、継続性及び対価性を有しないものであるから、一時所得の総収入金額に算入すべき金額となる。
参照条文等
要旨
所得税法第37条第1項に規定する必要経費とは、その支出が「業務について生じた」ものとして、業務との関連性が要求されるとともに、その関連性には通常かつ一般的に必要と認められる客観性がなくてはならないものと解するのが相当であるところ、請求人は自らが主宰する法人に対して無利子で貸し付けた場合の原資となった借入金に対応する借入金利子の額は、請求人の事業と密接な関係にあり、当該事業を遂行する上での必要から本件貸付けを行ったものであるから、本件借入金利子は請求人の事業所得に係る必要経費として認められるべきである旨主張するが、本件貸付けは請求人の事業と当該法人の事業が相互に取引先としての業務上の密接な関係があったことに起因するとは認めがたく、当該法人の代表取締役としての地位と責任に基づいて行われたものと認められるところから、請求人の事業の遂行上必要なものとは認められないので、本件借入金利子は請求人の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。
なお、原処分は、本件貸付金の原資となった借入金の利子の額の算定額に誤りがあるとして、その一部を取り消した。
要旨
請求人は、相続した本件土地の持分の譲渡代金から支払った本件調整金は、本件土地の換価分割による支払であるから請求人の譲渡代金から控除すべきであると主張するが、[1]請求人は、相続税の修正申告において本件調整金を代償分割に基づく債務として控除していること、[2]他の相続人らは、当該金員を譲渡収入金額に含めないで確定申告していること、[3]請求人は請求人の長女の確定申告書の作成に当たって親権者として関与し、その内容を熟知しているにもかかわらず[2]と同様の申告をしていること、[4]遺産分割協議書等によれば、本件土地について各相続人の持分を定めた上で、別途、調整金として他の相続人らは各500万円の相続をすることとし、この金員は請求人の持分に相当する譲渡代金のうちから支払うこととなっており、また、被相続人のその他の財産の全部を請求人が相続することになっていたことからみれば、本件調整金は、請求人から他の相続人らへの代償分割による代償債務のための支払と認めるべきである。
したがって、本件調整金相当額を請求人の譲渡収入金額から控除することはできない。
個人年金保険契約の解約に伴い支払われた解約返戻金等を他の年金保険契約の保険料に充てた場合、その解約返戻金等が一時所得の総収入金額に算入されるか否かが争われた事例
裁決事例集 第58集 71頁
要旨
請求人は、本件解約返戻金は生命保険会社の年金契約を解約し郵便局の年金契約へ契約替えした結果生じたにすぎない等の理由から課税されない旨主張するが、所得税法施行令第183条第2項の規定により本件解約返戻金等が一時所得に該当することは明らかであり、また、現に生命保険会社から本件解約返戻金等の支払いを受けているのであるから、それを郵便局の年金保険の原資として払い込んだとしても所得が実現したことには変わりがないこと等から、請求人の主張には理由がない。
利息制限法に定める制限利率を超える部分の利息及び遅延損害金は、現実の支払があった時点において事業所得の総収入金額に算入すべきであり、未収の場合には、制限利率の部分のみ総収入金額に算入すべきであるとした事例
裁決事例集 第85集
ポイント
この事例は、利息制限法に定める制限利率を超える利率(制限超過利率)による貸付金に係る利息、遅延損害金につき、これらが不法な利得であり私法上無効であっても、それが現実に利得者の管理支配下にある場合には、課税の対象となるべきことを示した最高裁判決に則して、その収入計上時期及び収入金額について判断したものである。
要旨
利息制限法による制限利率を超過する利率をもって金銭を貸し付け、利息、遅延損害金を収受している場合の収益計上について、現実に利息、遅延損害金が収受された場合には、当事者間において約定の利息、遅延損害金として授受され、貸主において当該制限超過部分が元本に充当されたものとして処理されることなく、依然として従前どおりの元本が残存するものとして取り扱っている以上、制限超過部分をも含めて、現実に収受された利息、遅延損害金の全部が貸主の所得として課税の対象となるものと解すべきである。
また、利息、遅延損害金が未収の場合には、利息制限法による制限利率の限度においてその約定の履行期が到来する年分の収益として計上し、当該制限利率を超過する部分については、現実に受領しない限り、収益計上をすることはできない。
なお、利息、遅延損害金が未収の場合において、それ以前に利息制限法による制限利率を超過する利息、遅延損害金の支払がされているときは、現実に元本に充当していたか否かに関わらず充当されたものとして、その残額(残元本)についてのみ利息、遅延損害金を生じることとなるのであって、当該残元本を基準にした制限利率の限度において収益計上をすることとなる。
参照条文等
所得税法第33条第2項第1号、第36条第1項、第156条 消費税法第6条第1項 消費税法施行令第8条 消費税法基本通達6-1-5 国税通則法第68条第1項、第2項、第70条第5項
参考判決・裁決
最高裁昭和46年11月9日第三小法廷判決(民集25巻8号1120頁)
要旨
請求人は、収用裁決は不当であるから、当該裁決は、所得税法施行令第95条に規定する「契約が成立しない場合に法令によりこれに代わる効果を認められる行政処分」に当たらないと主張するが、収用裁決が適法な手続によってなされている以上、たとえ収用裁決の取消しを求める訴訟が提起され、これが係属中であるとしても本件補償金は当該裁決の権利取得日の属する年分の譲渡所得の収入金額に当たる。
要旨
固定資産の交換は資産の譲渡に該当し、その譲渡益は譲渡所得の課税対象となり、この場合の収入金額は、交換により取得した資産の価額によるべきところ、その価額は所得税法第36条第2項の規定においてその資産の交換の時における価額とされており、その交換における価額とは、通常の売買価額、言い換えれば客観的交換価額をいうものと解される。本件の場合、交換先における交換取得土地の取得価額については、通常の取引価額よりある程度の買進みがあったと認められるので、本件譲渡収入金額は、交換先における交換取得土地の取得価額によるのは相当でなく、当該土地と価格事情がおおむね同一と認められる状況類似地域における当該年中の売買実例7件の売買価額の平均値に、本件交換の条件として交換先に負担させた土地埋立費用を交換差金と認めてこれを加算した価額とするのが相当である。
要旨
請求人は、借入金で取得した土地のうち、未利用部分の土地は、貸付けし得る状態にあったものであるから、その部分に対応する借入金の利子は、必要経費に算入すべきであると主張するが、一般に、土地が貸付けし得る状態にあれば、それだけの理由でその土地の費用が必要経費となるものではないし、また、未利用部分の土地に隣接する部分の土地が現に貸農園として貸し付けられてはいるものの、その賃貸料は、固定資産税を賄う程度のものであること、貸農園としては、その土地に特別な施設等の設置を要しないものであることから、その貸付けは単なる空地利用の程度のものと認められるので、現に貸付けによる収入がない未利用地部分の土地の費用を必要経費に算入することは相当でない。
要旨
農地転用決済金は土地改良法第42条第2項の規定に基づき土地改良区の土地の全部又は一部について組合員たる資格の喪失に際して、土地改良区の事業に関する権利義務の移転がない場合に、当該権利義務を清算するために徴収されるものであって、組合員たる資格に係る権利の目的である土地の譲渡とは直接関係がないことは明らかである。したがって、農地転用決済金は土地を譲渡するために直接かつ通常必要な費用とは認められず、かつその支払をしたことが土地の譲渡価額を増加させることになるとも認められないから、譲渡費用には該当しない。
農地転用決済金として農地転用により農業を廃止又は縮小する組合員が将来の維持管理費に相当する費用を一括して支払うこととされていることは、組合員の減少により残存する組合員の負担が増加しないように措置する必要があるためであることが認められる。一般に土地改良区に参加した組合員は、維持管理費を毎年負担するのであるが、農地転用により農地を利用しなくなったときには、その後に支払うべき維持管理費を一括して支払わなければならないことになっているのであるから、農地転用決済金の本質は、農地という農業用資産について生じた費用とみることができるのであり、農業という業務について生じた費用として、必要経費に算入することが相当である。
また、農地転用決済金は農地転用のときに一括して債務が確定する業務上の費用といえ、当該土地が農業用資産でなくなる時に生じた清算費用たる性質を有する支出であると解するのが相当であるから、必要経費への算入時期については、平成12年分の農業に係る事業所得の必要経費に算入するのが相当である。
外国籍を有する者への不動産の譲渡対価の支払時において、譲渡人は外国へ出国しているものの、多額の資産を国内に残したままであること等から判断すると、出国は一時的なものと認められ、また、譲渡人の外国人登録は閉鎖されていず、同人の永住許可も失効しておらず、かつ、同人が数次の再入国の許可をうけていたことを勘案すれば、譲渡人は、居住者に該当するものと判断することが相当であるから、当該譲渡対価の支払者には所得税法第212条に規定する源泉徴収義務はないとした事例
裁決事例集 第49集 374頁
要旨
原処分庁は、Lマンション3室(本件不動産)の譲渡人は、[1]A国の国籍を有していること、[2]本件不動産の譲渡対価(本件譲渡対価)の支払時前の出国に先立ち、身の回り品の一切をB国の住所地(g市T町223番地)に搬出しており、その後再入国した事実は認められないこと、[3]国内に生計を一にする配偶者その他の親族を有しないのみならず、何らの職業も有していないこと及び[4]本件不動産を譲渡したことにより、本件譲渡対価の額に係る預金を除いて国内に資産を有しなくなった各事実が認められ、また、譲渡人の二男を譲渡人の代理人とする委任状によれば、譲渡人の住所地がB国(g市T町223番地)と記載されていることから判断すると、譲渡人が本件譲渡対価の支払時において非居住者であることは明らかであるから、請求人には、本件譲渡対価の支払について源泉徴収義務がある旨主張する。
しかし、[1]譲渡人が居住していたLマンション101号室(譲渡人の妻の娘であるHが所有している。)には、譲渡人が所有していた絵画、蔵書及び置物等の美術品が現存していることが確認されたこと、[2]譲渡人の家事使用人として20年間住み込みで働いていたC夫婦の答述から、譲渡人は、出国後も同夫婦を家事使用人として、引き続き雇用する意思があったものと推認されること、[3]H及びC夫婦の答述から、これらのいずれもが、譲渡人の出国は一時的であり、再入国するものと認識していたことが認められること、[4]譲渡人は、本件譲渡対価の支払時に本件譲渡対価の全額により設定された定期預金を含めて多額な預金を国内に有していたこと及び[5]Hの答述から、上記[4]の預金の一部は、納税預金として残していたものと認められることを総合して判断すると、譲渡人の出国は一時的なものであり、再入国してH所有のLマンション101号室において引き続き居住する意思があったと認められる。また、譲渡人の外国人登録は閉鎖されていず、同人の永住許可も失効しておらず、かつ、同人が数次の再入国の許可を受けていたことを勘案すれば、譲渡人は居住者に該当するものと判断することが相当であるから、請求人には、本件譲渡対価の支払について所得税法第212条に規定する源泉徴収義務はない。
なお、委任状に記載された譲渡人の住所地及び同人の荷物の搬出先の住所地がB国(g市T町233番)である旨の主張については、ここにいうところの「居住する(××語)」という用語は、[1]住んでいる又は[2]居住するということを意味するものであって、必ずしも生活の本拠たる住所地を意味するものではないから、委任状に上記の用語が使用されていることをもって譲渡人がA国に住所を有するものと断定することはできず、他方、売買契約書の「売主」欄には、譲渡人の国内における住所地が記載されているのであるから、この点に関する原処分庁の主張は採用することはできない。
外貨建借入金の借換えの際に計算される為替差損益が単に評価上のものにとどまる場合には課税の対象となる収入として認識しないとした事例(平成23年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第104集
ポイント
本事例は、借換えの前後における外貨建借入金の内容に実質的な変化が生じていない場合、当該借換えの際に計算される為替差損益は単に評価上のものにすぎず、課税の対象となる収入として認識しないとしたものである。
要旨
請求人は、金融機関から外貨建借入金を借り入れ、当初の借入れから最終的な返済までの間に借換えを繰り返しているところ、最終的な返済時だけでなく、各借換え時において計算される為替差損益も課税の対象として認識すべきである旨主張する。
しかしながら、所得税法第36条《収入金額》第1項は、収入の原因たる権利が確定的に発生した場合に、その時点で所得の実現があったものとして課税所得を計算するという建前(いわゆる権利確定主義)を採用したものと解されており、収入という形態において実現した利得のみを課税の対象としているから、外貨建借入金の借換え時に計算される為替差損益が単に評価上のものにとどまる場合には、課税の対象となる収入として認識しないこととなる。本件においては、金融機関と請求人との間で貸付与信枠に係るファシリティー契約が結ばれ、同契約に定められた貸付与信限度額、金利の計算方法及び担保等の条件に基づき、同一支店から、同一の通貨で借換えが行われており、借換えに係る既存の借入金と新たな借入金の内容に実質的な変化が生じたとは認められない。そうすると、借換え時において、既存の借入金の返済により計算される為替差損益は、単に評価上のものにすぎないから、課税の対象となる収入として認識しないこととなる。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和49年3月8日第二小法廷判決(民集28巻2号186頁)
要旨
請求人は、平成2年分土地(P市R町241田2,840平方メートル)の買主はN社で、譲渡収入金額は1億4,604万円及び平成3年分土地(P市S町1893田168平方メートル)の買主はE社で、譲渡収入金額は969万円である旨主張する。
しかしながら、次の事実によれば、請求人は、平成2年分土地及び平成3年分土地をいずれもT社に3億68万円及び1,670万円で譲渡したと認めるのが相当である。
【平成2年分土地譲渡】
- T社は、[1]平成2年6月7日K銀行e支店から引き出した6,155万円により作成した保証小切手2,900万円、現金3,100万円及びX社(仲介業者)が用意した現金100万円により手付金6,100万円を、[2]同年10月11日同支店から引き出した2億3,963万円により作成した保証小切手1億2,263万円及び現金1億1,700万円により残金2億3,968万円を支払っていること。
- 上記[1]の保証小切手は請求人名義で裏書し、[2]の保証小切手はN社(平成元年2月6日銀行取引停止)名義で裏書してJ銀行a支店のN社名義の普通預金口座に入金された後、平成2年10月中にほぼ全額が引き出され、また、同普通預金口座の開設申込書(平成2年6月7日)には請求人の電話番号が記載されていること。
- N社の代表者は、調査担当者に[1]T社との売買契約書を作成したが、代金は受領しておらず、[2]売買交渉は請求人が行った旨申述していること。
- X社の代表者は、調査担当者に[1]平成2年6月8日に請求人とT社は、譲渡価額を3億68万円とする売買契約を締結して手付金を授受したが、[2]残金の決済時に売主名を請求人からN社への変更要望があり、[3]T社は渋ったが、平成3年分の土地の購入予定があったので、要望に応じた旨申述していること。
- X社の代表者は、審判所に[1]請求人が審判所に提出したX社の代表者に対する質問調書の内容は、請求人から何とか助けてくれとの依頼により署名押印したものであって、事実と異なる虚偽のものであること、[2]平成2年6月8日付の売主を請求人、買主をT社及び譲渡価額を3億68万円とする売買契約書は、平成2年10月12日の残金決済時にT社の代表者の目前で廃棄した旨答述していること。
- T社の代表者が審判所に提出した書面には、[1]X社を仲介業者として請求人と売買契約を締結し、手付金及び残金をいずれも請求人に支払い、領収書を受領したこと、[2]手付金を現金3,200万円、保証小切手2,900万円及び残金を現金1億1,700万円、保証小切手1億2,263万円としたのは、請求人からの強い要請によるものである旨記載されていること。
【平成3年分土地譲渡】
- T社は、平成3年12月18日K銀行e支店から引き出した1,670万円により土地代金を支払っていること。
- T社とX社との間で、[1]平成3年分土地の売買契約書の作成は、売主名が決まらないという請求人の事情により遅れていること、[2]売主名を空欄の重要事項説明書を送付するので、後日補完記載の上返送して欲しい旨の文書(平成4年1月14日付)があること。
- T社の代表者が審判所に提出した書面には、[1]平成3年分土地は、平成2年分土地に継続して請求人から購入したこと、[2]平成3年12月18日に売主を請求人、買主をT社及び譲渡価額を1,670万円とする売買契約を締結し、[3]同日全額現金で支払った旨記載されていること。
- X社の代表者は、調査担当者に[1]売主をE社、買主をT社とした売買契約書は、請求人から平成4年1月頃に売主名を請求人からE社に書き替えてほしい旨の要望があったので、[2]売主名を請求人からE社に書き替えた売買契約書をT社に郵送して差し替えた売買契約書である旨申述していること。
【重加算税】
建物賃貸借契約の合意解約に伴う残存期間賃料は、中途解約に伴う賃料収入に対する補償であり、不動産の貸付けにより生ずべき収入金額に代わる経済的利益と認められるから、不動産所得の総収入金額に当たるとした事例
裁決事例集 第78集 114頁
要旨
請求人は、本件建物を処分する方法として、本件建物を売却し、その敷地について利用権を設定するとともに、請求人が支払うべき敷金及び保証金の精算をするという一連の取引を、①本件合意解約、②本件借地権付区分所有建物売買契約、③本件土地賃貸借契約という3つに分割して行ったものであるから、上記各契約を独立した取引と解釈すべきではなく、一連の取引として一体として捉えるべきであり、そうすると、本件建物賃貸借契約の合意解約に伴い生じた本件残存期間賃料は譲渡所得と見るべきであり、不動産所得には該当しない旨主張する。
しかしながら、上記①ないし③の各契約はいずれも別個の契約であり、各契約を一個の契約であると認めるべき特段の事情があるとも認められない。本件残存期間賃料は、建物賃貸借期間を20年とし、賃貸借期間中は契約解除をなし得ない旨定めていた本件建物賃貸借契約につき、両当事者の合意により、賃貸借契約期間の満了を待たずして本件建物賃貸借契約を合意解約することに伴い、その合意解約の約定において確認された残存期間賃料に相当するものである。そうすると、本件残存期間賃料の性質は、中途解約に伴う賃料収入に対する補償であり、不動産の貸付けにより生ずべき収入金額に代わる経済的利益と認められるから、本件残存期間賃料は不動産所得に該当する。
要旨
請求人は、所得税法第84条の規定は、所得を有する居住者を対象とする規定であり、請求人の夫については、本件各年分において所得を有していなかったから、同条の適用はなく、同条の適用を前提とする所得税法施行令第219条を適用する余地もなく、同人が提出した本件各年分の確定申告書の所得控除の記載は何らの記載もされていないとみるべきであり、少なくとも、平成15年分及び平成16年分について、請求人の夫は請求人の控除対象配偶者であって、請求人に養われているものが子らを扶養していると解することはできないから、請求人の夫の平成15年分及び平成16年分の所得税の申告については、所得税法第84条の規定の適用はないなどとして、本件各確定申告書の提出により、請求人が子らを扶養親族とすることを選択したことになる旨主張する。
しかしながら、所得税法第84条第1項は、「居住者が扶養親族を有する場合には」扶養控除の適用を受けることができる旨規定しており、居住者の所得金額の多寡や一方が他方の控除対象配偶者であるか否かによって同条の適用を受けることができなくなるものでないことは文理上明らかである。確かに所得控除前の所得金額の合計額が零円であれば、扶養控除の適用を受ける必要は直ちには生じないものであるが、その後に増額更正や修正申告により所得金額が増加し、それによって扶養控除の適用を受けることもあり得るのであり、そのような場合に備えて、あらかじめ扶養親族の所属を確定させることには意味があるから、所得税法第123条に規定する確定申告書において、その第二表の「所得から差し引かれる金額に関する事項」の「配偶者(特別)控除・扶養控除」欄に子らの氏名、続柄、生年月日及び控除額を記載したことが無意味であるとして何らの記載がないものとみることはできない。
要旨
本件保険契約は、万一の場合の保障と貯蓄との二面性のある養老保険契約であって、保険金受取人である従業員は、保険事故の発生又は保険期間の満了の際には当然に保険契約上の利益、すなわち保険金請求権を自己固有の権利として原始的に取得するものであり、請求人はその報酬として保険者に対し本件保険料を支払い損金に算入していることから、当該従業員は本件保険料相当額の経済的利益を亨受していると認めるのが相当であり、本件保険料の額を給与所得の収入金額と認定し、源泉所得税の納税告知をした原処分は違法とはいえない。
本件における飲食店の経営主体が請求人である旨の原処分庁の主張を排斥した事例( 平成23年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、 平成24年分の所得税の更正処分、 平成25年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分、 平成23年1月1日から平成23年12月31日まで及び平成24年1月1日から平成24年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各決定処分並びに無申告加算税の各賦課決定処分、 平成25年1月1日から平成25年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分、 平成23年1月から平成25年12月までの各期間分の源泉徴収に係る所得税等の各納税告知処分等・ 却下、 全部取消し)
裁決事例集 第104集
ポイント
本事例は、事業所得が誰に帰属するかは、当該事業の遂行に際して行われる法律行為の名義、事業への出資状況、収支の管理状況、従業員に対する指揮監督状況などを総合し、経営主体としての実体を有する者を社会通念に従って判断すべきとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人の父(父)が営むものとして申告された飲食店(本件飲食店)の事業について、①平成23年以降の法律行為の名義は全体として請求人であり、②同人が収支の管理を行い、③同人が従業員の採用や給与の決定・昇給を行っていたと認められることから、平成23年分ないし平成25年分(本件各年分)における本件飲食店の経営主体は父ではなく請求人であり、その事業に係る所得は請求人に帰属する旨主張する。
しかしながら、事業所得の帰属者の判断に当たっては、当該事業の遂行に際して行われる法律行為の名義に着目するのはもとより、当該事業への出資の状況、収支の管理状況、従業員に対する指揮監督状況などを総合し、経営主体としての実体を有するかを社会通念に従って判断すべきである。本件においては、①本件各年分における本件飲食店の店舗の賃貸借契約は、父名義で行われているほか、その事業の用に供されている物的設備等のほとんどが父の所有するものであり、②請求人は平成23年当時、本件飲食店を経営するだけの資金力を有するに至っておらず、その経営は父の資金力に大きく依存していたところ、③平成23年以降のいくつかの法律行為等に請求人の名義が用いられていることや、請求人が収支の管理を行い、従業員の採用や給与の決定・昇給を行っていたとしても、それは、請求人がいずれ本件飲食店の事業を承継することを前提に本件飲食店に勤務し始めたことから、父から店長としてかなりの裁量を持たされていたにすぎないといえ、④請求人がその生活費等を本件飲食店の事業に係る収益から享受し、父は本件飲食店の事業から収益を享受していなかったとしても、本件各年分における本件飲食店の経営状況は悪く連年損失が生じていたことからすると、父が経営者であって請求人が従業員であるとの状況を前提とすれば整合的であり、これらを総合して考慮すれば、本件飲食店の経営主体は父であったとみるべきであり、その事業に係る所得は父に帰属する。
参考判決・裁決
最高裁昭和37年3月16日第二小法廷判決(集民59号393頁) 名古屋地裁平成17年11月24日判決(裁web)
本件各土地の譲渡代金は主債務者に運転資金として貸し付けられ、主債務者が当該資金をもって本件各債務を弁済したものと認められるから、本件各土地の譲渡所得につき、所得税法第64条第2項に規定する保証債務の特例を適用することはできないとした事例
裁決事例集 第67集 383頁
要旨
請求人は、本件各土地の譲渡代金は、主たる債務者を経由して本件各債務の弁済に充てられているが、実質的には、請求人が連帯保証人として本件各連帯保証債務を弁済したものであり、本件各土地の譲渡は保証債務の特例の適用要件を備えていると主張するが、[1]請求人は、主たる債務者に対して本件各弁済の額を超える資金を提供していること、[2]当該超える金額について、主たる債務者は、人件費、役員給与等の支払に充てていること、[3]債権者から請求人に保証債務の履行の請求はなかったことなど、本件各弁済の形態等からすると、請求人は、譲渡代金の一部を主たる債務者に貸し付け、主たる債務者が当該資金をもって本件各債務を弁済したとみるのが相当であり、本件各弁済を請求人による保証債務の履行と評価することはできない。
海外で営業しているレストランの経営主体は、請求人ら個人ではなく、当該国で設立された現地法人であると認められ、請求人がレストランの経営による収入を事業所得の収入金額として申告しているものは、雑所得に係る収入金額に該当すると解されるから、雑所得の金額の計算上生じた損失の額は、他の各種所得の金額から控除することはできないとした事例
裁決事例集 第49集 243頁
要旨
請求人は、E国で営業しているレストランの開設のため現地法人を設立したのは、全くの名義のみで、レストランの実質的な経営者は、請求人及び請求人の知人である甲の両人であることは明らかであり、本件所得は事業所得に該当するから、本件所得に係る損失の金額について、所得税法第69条(損益通算)第1項の規定による損益通算を認めないで行った更正処分は違法である旨主張するが、当該現地法人はE国の法令に従って設立された合資会社であり、かつ、レストランの営業を行っている実態を有する法人であると認められるから、レストランの経営主体は現地法人であって請求人らではないといわざるを得ない。
本件所得については、レストランの営業により生じた所得は、現地法人に帰属するものと認められ、また、請求人が各年分の確定申告においてレストランに係る収入金額として申告(昭和63年分715,000円、平成元年分546,546,757円及び平成2年分零円)をしているものが、請求人の所得に係る収入金額になるとしても、雑所得に係る収入金額に該当するものと解される。
したがって、雑所得の金額の計算上生じた損失の額は、その存否について判断するまでもなく、所得税法第69条第1項の規定により、他の各種所得の金額から控除することはできないから、本件更正処分は適法である。
物上保証人と連帯保証人とを兼ねる者が債務者のために自己の出えんをもって債務を弁済した場合には、当該弁済がいずれの地位に基づくものであるかにかかわらず、他の連帯保証人に対して求償権を取得するものであり、請求人が弁済した債務額のうち、当該他の保証人に対する求償権の行使可能額に対応する部分の金額については所得税法第64条第2項の規定の適用はないとした事例
裁決事例集 第37集 87頁
要旨
請求人は、本件債務の弁済は、連帯保証人兼物上保証人である請求人が物上保証人としての地位に基づいてしたものであるから、他の2名の連帯保証人に対しては求償権は発生せず、また、仮に、請求人による本件債務の弁済が連帯保証人としての保証債務の履行に当たるとしても、両名の連帯保証は債権者の要請により単に名義を借用した形式的なものであるから求償権の生ずる余地はなく、したがって、請求人が弁済した債務額の全額について所得税法第64条第2項の規定の適用を認めるべきであると主張するが、一般に物上保証人と連帯保証人を兼務する者が債務者のために自己の出えんをもって債務を弁済した場合には、当該弁済がいずれの地位に基づくものであるかにかかわらず債権者に代位し、求償権を取得するものであり、また、債権者に差し入れている保証約定書に請求人のほか両名が連帯保証人として署名捺印し本件債務を保証している以上、両名が形式的な連帯保証人である旨の請求人の主張には理由がなく、そして、両名の負担部分について特約が存在したことを認めるに足りる証拠がないから両名の負担部分は平等であり、かつ、両名は相当の資産及び所得を有するため支払能力は十分であって、両名に対するその負担部分に係る求償権の行使は可能と認められ、したがって、請求人が弁済した債務額のうち、請求人の負担部分に対応する金額を超える部分の金額については、所得税法第64条第2項の規定の適用はない。
破産財団に属する株式に係る剰余金の配当は、強制換価手続による資産の譲渡による所得として非課税とはならないとした事例(令和2年分の所得税及び復興特別所得税の決定処分並びに無申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第130集
ポイント
本事例は、破産財団に属する株式の配当請求権を行使したことにより支払を受ける剰余金の配当は、その権利の行使により資産の帰属主体である地位や所有権が破産者から移転するとは認められないため、強制換価手続による資産の譲渡による所得として非課税とはならないとしたものである。
要旨
請求人は、破産手続において破産管財人が破産財団に属する財産の換価や処分をするための手段は、狭義の売買だけではなく、管理処分権に基づく破産法第78条列挙の処分などがあり、所得税法第9条《非課税所得》第1項第10号の規定(本件非課税規定)は、これらの手段を包括的に表現するために、処分や換価の代表的行為である「譲渡」に着目して「資産の譲渡」との名称を用いているのであるから、破産管財人が、破産財団に属する株式を売買する場合のみならず、剰余金の配当請求権を行使して支払を受ける場合も本件非課税規定の「資産の譲渡」に該当する旨主張する。
しかしながら、本件非課税規定の趣旨及び文理に照らすと、「資産の譲渡」とは、資産の帰属主体たる地位や所有権を移転させる行為を指すと解されるところ、請求人が配当請求権を行使して剰余金の配当を受けることにより資産の帰属主体たる地位や所有権が請求人から移転したとは認められないから、当該配当は本件非課税規定の「資産の譲渡」には該当しない。
また、請求人は、請求人の破産管財人(本件破産管財人)が国内において破産財団に属する株式の管理処分権の一環として国外の関連会社の取締役に就任し、その株式の剰余金の配当(本件各配当)に関する政策と実務を決定し、その資金管理や支払をしており、本件各配当の原資も国内にあるから、本件破産管財人が所得税法第181条《源泉徴収義務》第1項に規定する「支払をする者」(支払をする者)に該当することから、本件破産管財人が源泉徴収義務を負う旨主張する。
しかしながら、本件各配当は、本件破産管財人が、破産管財人としての地位に基づき行ったものであり、本件各配当の支払における本件破産管財人と請求人の関係は、直接の債権債務関係に立たないことはもとより、これに準ずるような特に密接な関係にあるということもできないから、本件破産管財人は本件各配当の「支払をする者」に該当しない。よって、本件破産管財人は源泉徴収義務を負わない。
参照条文等
所得税法第9条第1項第10号、第181条第1項、所得税法施行令第26条 租税特別措置法第9条の2第2項、租税特別措置法施行令第4条の5第1項 破産法第2条第5項及び第7項、第34条第1項、第78条第1項、第97条第4号、第148条第1項第3号、第151条
参考判決・裁決
東京高裁平成23年2月23日判決(税資261号順号11620) 平成27年7月28日裁決(裁決事例集No.100) 最高裁昭和37年2月28日大法廷判決(刑集16巻2号212頁) 最高裁平成23年1月14日第二小法廷判決(民集65巻1号1頁) 最高裁昭和43年10月8日第三小法廷判決(民集22巻10号2093頁) 名古屋高裁金沢支部平成20年6月16日判決(税資258号順号10970)
請求人から、その主張する本件譲渡土地の取得に係る裏金の支払事実を確認できる資料の提出がないとして、前所有者が有していた同土地に係る請求人との売買契約書及び確定申告額等に基づいて取得費の額を算定した原処分は適法であるとした事例
裁決事例集 第61集 190頁
要旨
請求人は、譲渡した各土地(6筆)の取得に当たって、原処分庁が認めた裏代金以外に多額の裏代金及び造成費の支払があった旨主張し、裏代金の支払いについては、請求人からそれを明らかにする証拠書類の提出があって初めてその事実を確認できるところ、請求人は、本件税務調査に際し、F土地(裏代金の支出を認めたもの)に係る領収証以外の本件土地に係る売買契約書等を提出せず、また、当審判所に対しても、その主張する裏代金及び造成費の内訳を明らかにする証拠書類を提出しないため、請求人の主張は採用できない。
請求人が代表取締役を努める同族法人に対する建物の貸付けは、使用貸借であると認められることから、建物の貸付けによる所得には該当しないとして、本件建物に係る必要経費は認められないとした事例
裁決事例集 第63集 141頁
要旨
請求人は、自らが代表取締役を努める同族法人に対して本件建物を零円で貸し付けていることについて、原処分庁が使用貸借と認定した上で、不動産所得の金額の計算上、本件建物に係る租税公課及び減価償却費を否認した更正処分は、従来の経理慣行に反するものであり、実際に法人が店舗を使用しているのであるから、違法である旨主張する。
しかしながら、本件建物の貸付けについては、[1]賃料を零円にすることについて双方の合意が有り、平成6年7月以降、請求人は賃料を受け取っていないこと、[2]請求人は、各年分の確定申告において、賃料を不動産所得の総収入金額に計上していないこと、[3]当該同族法人は、平成7年6月期以後、賃料の支払がなく、未払金の計上も行っていないことから、各年分における本件建物の貸付けが無償で行われていることは明らかであり、使用貸借の状態にあったと認めるのが相当であるので、不動産の貸付けによる所得に該当しないため、本件建物に係る租税公課及び減価償却費を否認した更正処分は適法であり、請求人の主張には理由がない。
要旨
原処分庁は、請求人の賃貸している建物等(本件各物件)の管理業務を、請求人が代表取締役を務める法人(本件同族会社)に委任する旨の契約(本件契約)を締結しているが、他に同管理業務を網羅的に委託している法人があるから、同じ業務を本件同族会社に重複して委託する必要性がないこと、また、原処分に係る調査段階では、請求人から、本件同族会社が本件各物件の管理業務を行ったことを示す資料が一切提示されなかったことなどからすれば、本件同族会社による本件各物件の管理業務が日常的に行われていたとはいえないから、請求人が本件各物件の管理委託料として本件同族会社に支払った金額(本件金員)は、請求人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべきではない旨主張する。
しかしながら、証拠によれば、本件同族会社は、請求人から本件各物件の管理業務の委託を受けて、当該各物件に係る消防・防災設備の点検業務並びに給湯設備の修理及び取替工事の発注を行うなどした事実、また、本件同族会社は、当該工事等を委託又は依頼した各業者と連絡を取り合い、工事等の実施内容や状況等の報告を受けていた事実が認められる。さらに、本件同族会社の取締役であった請求人の亡妻が、同社の業務に係る出来事をノートに記載しており、そのノートによれば、同社は随時、上記の各業者等からの連絡等を受け付け、必要な対応等を行っていたものと認められる。以上を総合すれば、本件同族会社は、本件契約に基づき、請求人から委託を受けた本件各物件の管理業務を行っていたと認めるのが相当である。したがって、本件金員は、本件同族会社が行った本件各物件の管理業務の対価であると認められるから、請求人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
請求人が債権譲渡により生じたとする貸倒損失は認められず、また、修正申告書を作成するに当たって支払ったとする決算事務手数料は、必要経費に算入されないとした事例
裁決事例集 第65集 118頁
要旨
- 請求人は、本件譲渡契約書に基づき、貸付債権を債権総額の3%でF社に譲渡したのは事実であるから、債権譲渡により生じた損失の金額は、譲渡日の属する年分の必要経費に算入すべきである旨主張する。しかしながら、F社は、本件譲渡契約書に係る貸付債権の回収額を請求人に報告し、請求人は、他の各店舗同様、F社が回収した金額について売上報告書を作成しているほか、F社が回収した金額の60%相当の額をF社に対する集金手数料として支払っていることから、本件譲渡契約書は形式的なもので、実質は債権の取立て委託とみるのが相当であり、請求人の主張は認められない。
- 請求人は、修正申告書を作成するに当たり、決算事務手数料として566,500,000円をK及びLに支払っており、これらの金額は、事業活動に直接関連する必要経費であるから、事業所得の必要経費に算入すべきである旨主張する。しかしながら、請求人は、既に関与税理士により修正申告書が作成されていたにもかかわらず、新たに修正申告書の作成をK及びLに依頼したことに対して支払われた支出であり、この支出は、請求人の営む事業の遂行上、通常かつ一般的に必要と認められる客観性を有しているとはいえないことから、事業所得の金額の計算上必要経費には算入されない。
請求人が支出した諸会費等が家事関連費に該当するとしても、業務の遂行上直接必要な部分を明らかにすることができないから、必要経費の額に算入することはできないとした事例
裁決事例集 第61集 129頁
要旨
請求人は、同人が支出した諸会費等(同窓会費、共済負担金、英会話研修費、旅費交通費、同窓会主催旅行の参加費用等)は、請求人の業務の遂行上必要な経費であるから、必要経費の額に算入すべきである旨主張する。
しかしながら、支出した経費が、業務の遂行上直接必要である場合はもちろんのこと、それが家事関連費であっても、[1]その主たる部分が業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分できる場合、及び[2]青色申告であれば取引の記録等に基づき業務の遂行上直接必要な部分を明らかにすることができる場合に、それぞれその明らかな部分を必要経費に算入することができることとされているところ、請求人の主張する諸会費等はいずれも家事費又は家事関連費と認められ、家事関連費に該当するとしても、業務の遂行上直接必要な部分を明らかにすることはできないから、これを必要経費の額に算入することはできない。
要旨
平成16年9月13日から平成18年6月8日までの期間における請求人の日本への滞在は、月に1回程度の頻度、主として週末を含む1日間から5日間にすぎないものであり、P市S町(日本)に所在する家屋は、請求人の妻が勤務先から社宅として賃借していたものであって、生活用動産が運搬されていなかったのも、妻及び子らが同所での生活に必要であったためと推認されることなどを考慮すると、当該家屋の所在地が請求人の日本滞在中の生活拠点であったことは認められるものの、請求人の生活の本拠が当該所在地にあったものと直ちに判断することまではできない。
また、各コンサルティング契約はコンサルティング業務を国外に所在する事務所内で常勤で提供することを内容とするものであったこと、請求人は契約期間の大部分を国外で過ごしていることからすると、請求人は、主として国外において当該コンサルティング契約に係る業務を提供していたものと認めるのが相当であり、請求人が対外的に上記家屋内に事業所を置くコンサルタントであり事業主であるとしていたことをもって直ちに、請求人の職業的基盤が日本にあったとまで認めることはできない。
さらに、請求人と生計を一にする妻は勤務先を休業し、一定期間子らとともに国外に滞在し請求人と起居を共にしたが、妻らの国外滞在は一時的なものであったと認めるのが相当であるから、請求人は国内に生計を一にする親族を有していたというべきであるところ、妻が休業中においても上記家屋の貸与を受けそこに居住を続けたのは、飽くまで妻の従業員としての選択・判断であると認められ、その選択・判断が、上記期間における請求人の生活の本拠を確保することを目的としてなされたものと認められないから、妻らが日本国内に居住していたことが請求人の生活の本拠が当該家屋にあったことを裏付ける重要な事実であるとまでは認め難い。
また、請求人は現金及び銀行口座の預金を除き、日本国内に資産を保有していなかったところ、通常、預金口座を管理するために日本国内に生活の本拠を置く必要性はないことから、日本国内の資産の所在をもって、直ちに請求人の生活の本拠が上記所在地にあったとまでは認められない。
上記の各点を総合勘案すれば、上記期間において請求人の生活の本拠が上記家屋にあった、又は、当該家屋に相当期間継続して居住していたと認定するのは困難であり、請求人は、非居住者に該当するといわざるを得ない。
請求人と同人が代表である法人との間で締結された請求人所有の土地の賃貸借契約について、契約書に記載された契約期間後まで契約書記載の賃料収入が維持されていたとは認められないとした事例
裁決事例集 第119集
ポイント
本事例は、請求人と同人が代表である法人との間で締結された請求人所有の土地の賃貸借契約について、当該契約に係る契約書に記載された契約期間後まで当該契約書記載の賃料収入が維持されていたとは認められず、請求人主張額の賃料収入があったと認めるのが相当であり、他方でこれを上回る賃料収入があったことを認めるに足る証拠はないとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人が同人が代表取締役である法人(本件法人)と過去に請求人所有の土地(本件土地)に係る賃貸借契約(本件契約)を締結し、本件契約に係る契約書に記載された契約期間(本件契約期間)後、本件法人が、本件土地を別法人に転貸する旨の契約を締結して賃料収入を得ていたことからすると、請求人と本件法人は本件契約を更新していたと推認することができるとして、請求人は、本件契約期間後も本件契約に定める賃料の金額を本件法人から賃料収入として得ていた旨主張する。
しかしながら、本件契約期間後の期間における契約書等の客観的証拠はなく、本件契約期間後の期間における契約が、賃料も含めて本件契約の条件と同一内容で更新されたものであったと認めることはできない一方、請求人は本件法人から得た本件土地の賃料収入について、その具体的金額等を当審判所に対し証拠として提出していることからすると、少なくとも同金額の賃料収入があったと認めるのが相当であり、他方で、これを上回る賃料収入があったことを認めるに足る証拠はない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和49年3月8日第二小法廷判決(民集28巻2号186頁) 最高裁昭和53年2月24日第二小法廷判決(民集32巻1号43頁)
ポイント
この事例は、同業者比率法による推計課税において、損失の金額が生じている同業者の所得率につき、原処分庁がこれをゼロとして計算したことには合理性がなく、当該同業者については損失率をそのまま用いて計算することが合理的であるとしたものである。
要旨
原処分庁は、①営業を開始した平成17年分ないし平成20年分のいずれの年分についても、本件店舗事業に係る売上原価の額を、同業者13件の収入金額に対する売上原価の額の割合の平均値で除して収入金額を算定し、②当該収入金額に同業者13件の収入金額に対する青色申告特別控除前の所得金額の割合(同業者所得率)の平均値を乗じて本件店舗事業に係る所得金額を算定する方法が合理的である旨主張する。
しかしながら、原処分庁が同業者所得率の算定に当たり採用した同業者のうちの一部の者について、所得金額がマイナス(すなわち、損失の金額が生じている。)であるにもかかわらず、推計の過程においてこれをゼロとしているところ、特にこれらの同業者の所得金額がマイナスとなっていることが、特殊な事情に基づくものであると認めるに足りる証拠はないことから、推計の過程においてはこれらのマイナスの所得金額はそのまま適用するのが合理的である。
参照条文等
請求人の代理店は、請求人との販売委託契約書に基づき請求人の扱っている商品について、請求人と顧客との販売契約の申込みの勧誘等の業務委託を受け、請求人と顧客との売買契約の締結を媒介する役務を請求人に提供していることから、所得税法第204条に規定する外交員に該当するとした事例
裁決事例集 第57集 206頁
要旨
請求人は、請求人の代理店は、[1]自己の責任で顧客との契約を行っていること、[2]自己が負担すべき車代、本代及びアルバイト代等を負担していること及び[3]一定の期間において継続して請求人の扱う商品の販売活動を行っている者はほとんどいないことから、代理店は独立した営業者であり、外交員には該当しない旨主張する。
しかしながら、外交員とは、事業主の委託を受け、継続的に事業主の商品等の購入の勧誘を行い、購入者と事業主との間の売買契約の締結を媒介する役務を自己の計算において事業主に提供し、その報酬が商品等の販売高に応じて定められている者をいうと解されている。
これを本件についてみると、[1]請求人と代理店との間で本件販売委託契約が締結されていること、[2]請求人の仕入先との本件販売契約書において顧客との取引がクーリングオフされた場合には、請求人が責任をもってその処置に当たることとされていること、[3]クレジット申込書の販売店欄に請求人の別称の記載がされていることからすれば、本件商品の顧客との売買契約の当事者となるのは、代理店ではなく請求人と認められ、代理店はその当該契約の媒介を行っているものと認められる。
また、本件販売委託契約書の内容に照らせば、代理店は本件販売委託契約書に基づき、請求人から請求人の扱う商品について、請求人と顧客との間の売買契約の申込みの勧誘及び媒介業務の委託を受け、請求人と顧客との間の売買契約の締結を媒介する役務を請求人に提供しているものと認められる。
さらに、代理店が請求人から受領する本件委託販売手数料は、代理店が販売した商品ごとにあらかじめ手数料率に基づき売上金額に応じて算定されており、本件販売委託契約書には契約期間の定めがあることから、代理店は請求人とその契約期間内において継続的な関係を有しているものと認められる。
そうすると、代理店は、請求人との本件販売委託契約書に基づき、請求人の指定する商品について請求人との間の売買契約の申込みの勧誘及び媒介業務の委託を受け、本件経費相当額を負担して継続的に請求人と顧客との商品の売買契約を媒介する役務の提供を行っているものであり、その役務の提供に対する対価の額は、販売した商品ごとに請求人があらかじめ定めた手数料率に基づき、売上金額に応じて支払われていることが認められるから、これらの事実によれば、代理店は外交員に該当し、本件委託販売手数料は外交員報酬に該当するものと認められるから、請求人には所得税法第204条第1項に規定する所得税の源泉徴収義務があると解するのが相当である。
なお、平成8年3月分の源泉所得税の額に誤りが認められるので、当該部分に係る納税告知処分はその一部を取り消すべきである。
請求人の父が代表取締役を務める同族会社に対し業務委託費として支払った金員は、提供される役務の価値を超えて支払われたものとは評価できないとした事例(平成19年分~平成22年分の所得税の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第93集
要旨
原処分庁は、請求人が請求人の父が代表取締役を務める同族会社に対して支払ったとする委託費(本件委託費)について、①当該同族法人は、業務委託に係る契約金額を請求人又は請求人の妻が意のままに決定することを企図して設立された会社であること、②契約金額について客観的又は合理的な算定根拠が明らかでないこと、③請求人の業務を遂行する上で業務委託を行う必要がなかったことからすれば、委託契約の金額が請求人の主観的な判断あるいは恣意的に決定されているから、本件委託費が支払われていることをもって、直ちに事業所得の金額の計算上必要経費に算入することは認められない旨主張する。
しかしながら、請求人は、業務の一環として委託契約を締結し、本件委託費を支払っていることが認められ、本件委託費は、資料に基づき、契約当事者間の話合いの結果により決定されたものであって、提供される役務の価値を超えて代金が支払われたものとまでの評価ができるものではないというべきであることから、本件委託費は、その全額が事業所得の金額の計算上必要経費に算入することができる。
参照条文等
請求人らが賃貸の用に供していた土地の上に存する当該土地の賃借人所有の建物収去のための請求人らの支出は、客観的にみて、請求人らの不動産所得を生ずべき業務と直接関係し、かつ、業務の遂行上必要なものであったといえるから、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することができるとした事例(平成28年分所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・全部取消し)
裁決事例集 第116集
ポイント
本事例は、賃貸の用に供していた土地の上に存する当該土地の賃借人所有の建物収去のための請求人らの支出について、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入できると判断したものである。
要旨
原処分庁は、請求人らが賃貸していた土地(本件土地)は、賃貸借契約により請求人らの事業の用に供されていない資産であるから、本件土地の上に存する本件土地賃借人所有の各建物(本件各建物)を収去するため請求人らが支出した費用(本件各建物収去費)は、所得税法第45条《家事関連費等の必要経費不算入等》第1項の家事上の経費に該当し、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入できない旨主張する。
しかしながら、請求人らは、一連の法的手続を執ることにより賃料を支払わない賃借人から本件土地の明渡しを受け、それと並行して新たな賃借人への貸付けに取り掛かり、また、この間、本件土地を賃貸業務以外の用途に転用したことをうかがわせる事情も認められないことからすれば、本件土地の貸付けに係る業務は、賃貸借契約終了後、本件各建物の収去に至るまで継続していたものと認められる。加えて、請求人らは、本件土地から収益を得る業務を遂行するには、本件各建物を収去する必要があり、その費用について自らが負担することを想定して上記法的手続を遂行し、本件各建物収去費を支出したところ、実際にも、賃借人は無資力であり、当該支出の時点において、請求又は事後的に求償しても、およそ回収が見込めない状況にあったのであり、客観的にみても、本件各建物収去費は、請求人らにおいて、自ら負担するほかなかったものと認められる。そうすると、本件各建物収去費の支出は、客観的にみて、請求人らの不動産所得を生ずべき業務と直接関係し、かつ、業務の遂行上必要なものであったといえるから、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することができる。
参照条文等
譲渡した土地が使用貸借により親の居宅の敷地として利用されていた場合における当該土地の所得税基本通達38ー8に定める「使用開始の日」は、両親が当該居宅に居住を開始した日であるとした事例
裁決事例集 第70集 122頁
要旨
譲渡した土地の取得費に算入される借入金の利子は、取得目的に応じた使用又は処分がされた日までの期間に対応する借入金の利子とされているが、土地の取得目的は主観的には一応定まっていても、潜在的な他の目的を排除し難い場合が多く、かつ、当初の取得目的がその後変更されることも少なくないことを考慮すると、土地の地目、形状等に照らし、客観的にみて使用の事実があったと判断されるときに、取得目的に応じた使用があったと認めるのが相当である。請求人は、親子という生活共同体の構成員として両親が居住するための建物の建築用地として本件土地を取得したものであり、本件土地は本件家屋の敷地の用に供されていることから、本件においては、請求人の両親が本件家屋を居住の用に供した日をもって本件土地を使用開始したとするのが相当である。
譲渡契約の日以降も不動産所得を生ずべき業務の用に供される建物の未償却残高について、譲渡所得の計算上、取得費として既に必要経費に算入されていることから、譲渡の日以後生ずる不動産所得の計算上、減価償却費には算入されないとした事例
裁決事例集 第74集 66頁
要旨
請求人は、建物移転補償金は、実際に建物を取り壊したときに対価補償金に当たるものとして取り扱うことができることからすると、本件建物等移転料については、本件建物を取り壊した平成16年分の所得として申告すべきであり、平成14年には本件建物の譲渡所得の総収入金額は発生していないから、本件修正申告は、申告義務のない違法な申告であり、本件各土地及び本件建物等移転料に係るいずれの譲渡所得も平成16年分となるべきである旨主張する。
しかしながら、譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は、譲渡所得の基因となる資産の引渡しがあった日によるが、納税者が当該資産の譲渡に関する契約の効力発生の日により総収入金額に算入して申告があったときは、これを認めることと取り扱われている。
そして、一の契約において、2以上の資産の譲渡が行われた場合、一部の資産について、その引渡しがあった日を譲渡の日とし、他の資産について、契約の効力が発生した日を譲渡の日として申告することは、納税者の選択により、契約の効力発生の日を譲渡の日として選択することを認めた趣旨に合致しない不合理なものであることから、認められないと解すべきである。
これを本件についてみると、請求人は、本件建物等移転料については租税特別措置法通達33-14の定めに従い、本件修正申告において、これを対価補償金として申告することを選択しており、その後、本件建物は平成16年3月下旬に取り壊されている。
また、本件建物等移転料の支払いに係る契約は、本件各土地の譲渡と一体不可分の契約であると認められ、本件各土地の対価補償金と本件建物等移転料のいずれもがこの契約により平成14年において、収入すべきことが確定した金額であると認められる。
そして、少なくとも、本件建物等移転料を対価補償金として譲渡所得の総収入金額に算入することを選択した場合には、本件各土地の対価補償金と本件建物等移転料の収入すべき金額に係る譲渡所得の収入すべき時期については、同一の基準で判断すべきであると認められるところ、請求人は本件各土地の対価補償金、残地補償金及び建物等移転料について、契約の効力発生の日の属する平成14年分の譲渡所得の総収入金額として修正申告しており、これは適法な申告であると認められる。
加えて、請求人は、本件修正申告において、譲渡所得の金額の計算上、本件建物等移転料の対象となった本件建物について、平成14年9月末現在の未償却残高を取得費として控除していることが認められ、これは所得税法第38条の規定に照らして適正なものであると認められるから、本件建物の取得に要した金額のすべては、請求人の平成14年分までの不動産所得及び譲渡所得の所得金額の計算上、その各所得の総収入金額から控除されている。
したがって、平成15年分の所得税の不動産所得の金額の計算において、本件減価償却費を必要経費とすることは、本件建物の取得に要した金額を超える金額を、所得の計算上控除することとなり、すなわち、投下資本の回収部分を超える金額を控除することになるから、本件減価償却費を必要経費に算入することは認められない。
要旨
申告納税制度においては、自ら計上記載した申告書をいったん提出した以上、その申告書に記載された所得金額が真実に反するものであるとの立証責任は、更正の請求をする者にあると解される。
資産から生ずる収益を享受する者がだれであるかは、その収益の基因となる資産の真実の権利者がだれであるかにより判定し、それが明らかでない場合には、その資産の名義者が真実の権利者であるものと推定するのが相当である。
本件物件については、その登記、本件売買契約書、本件消費貸借契約書の名義がいずれも請求人の子であるGとなっている上、本件売買契約書にはGの実印が押印されていること、本件消費貸借契約書は、E市に居住していたGがわざわざJ銀行K支店に赴いて作成したこと、Gが送付した源泉徴収票に基づいて本件物件から生じる不動産所得が確定申告されていることからすると、Gが本件物件の実質所有者であることが基本的に推認できる。
要旨
請求人は、賃借人が請求人に預託していた保証金で返還不要とされた本件返還不要保証金は臨時所得に該当するから、平均課税の適用が認められるべきである旨主張する。
しかしながら、本件返還不要保証金は、3年以上の期間の不動産所得の補償に当たるとは認められないことから、臨時所得に該当しない。また、本件申告書には平均課税の適用を受ける旨の記載等がなく、当該記載等がないことについて、やむを得ない事情は認められない。
したがって、請求人の場合、平均課税の適用を受けるために必要な要件を欠いているから、更正の請求の要件である「申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより、同申告書の提出により納付すべき税額が過大である場合」には当たらないことになる。
ポイント
本事例は、所得税法第64条第2項に規定する保証債務の特例の適用要件の一つである譲渡者の保証債務の履行のための資産の譲渡とは、資産の譲渡による収入が保証債務の履行に充てられていたというけん連関係を要求するものであるから、その収入の一部が他の用途に充てられたといった事情が存したとしても直ちに当該要件を欠くことにはならないことなどを明らかにしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人の亡父(本件被相続人)による不動産(物件1)の譲渡は、本件被相続人の亡母の相続税の納税資金を捻出するための譲渡であり、その他の不動産(物件2)の譲渡は、その譲渡の時点において、本件被相続人が連帯保証債務を返還するのに十分な資金を既に保有していたので、両不動産(物件1及び物件2)の譲渡はいずれも保証債務の履行のために譲渡したものではないから、所得税法第64条《資産の譲渡代金が回収不能となった場合等の所得計算の特例》第2項に規定する特例(保証債務の特例)は適用されない旨主張する。
しかしながら、保証債務の特例を適用するためには、①債権者に対して債務者の債務を保証したこと、②上記①の保証債務の履行のための資産の譲渡であること、③上記①の保証債務を履行したこと、及び④上記③の履行に伴う求償権の全部又は一部を行使することができなくなったことの4つの実体的要件が必要であるところ、上記実体的要件の②は、資産の譲渡による収入が保証債務の履行に充てられたというけん連関係を要求するものと解され、資産の譲渡による収入の一部が保証債務の履行に充てられていないことをもって、直ちに上記②の実体的要件を欠くことになるものではない。また、譲渡者の資産の保有状況は、保証債務の特例の適用要件であるとは解されない。
参照条文等
参考判決・裁決
さいたま地裁平成16年4月14日判決(税資254号順号9625)
要旨
請求人は、本件眼鏡等は近視及び乱視の病気を治療するための医療器具に当たるから、その購入費用については医療費控除を認めるべきであると主張するが、眼鏡の購入費用で医療費控除の対象となるものは、医師が治療上必要であると認めた眼鏡の購入に要した費用に限られるものであって、近視、乱視等の単なる屈折異常を矯正するために使用する眼鏡の購入費用は、医療費控除の対象となる医療費に該当しないと解されるところ、本件眼鏡等は、近視用及び乱視用で、請求人の眼の屈折異常を矯正するために購入したものであり、医師による眼の病気治療の必要上購入したものでないことが明らかであるから、その購入費用は医療費控除の対象となる医療費に該当しない。
要旨
原処分庁は、配偶者名義で支払われた義援金は請求人の寄附金控除の対象とならない旨主張する。
しかしながら、当該義援金の振込票には請求人の妻の氏名が記載されているところ、請求人の妻が当該義援金に係る金員は請求人から受け取った旨申し立てていること、請求人の妻は確定申告をしておらず、当該振込票以外に請求人の妻が義援金を支出したことを推認させる事情はないことに加えて、確定申告書の提出後ではあるものの、当該義援金の受付先である日本赤十字社が、当該義援金に係る受領証を請求人に宛てて発行していることなどからすると、当該義援金は請求人が支出したものと認めるのが相当であるから、寄附金控除の適用が認められる。
参照条文等
要旨
請求人は、昭和57年には事業所得を生ずべき業務を廃止していると認められるから、昭和58年以後は、所得税法第151条第2項の規定により、青色申告の承認の効力は失われていることになるから、原処分庁が行った昭和60年分以後の青色申告の承認の取消しは、事実を誤認したものである。
また、請求人は、昭和61年分の確定申告書とともに青色申告承認申請書を提出したものと推認され、昭和62年分以後は青色申告者であると認められる。したがって、原処分庁が行った昭和62年分から平成元年分までの更正通知書には、更正の理由が付記されていないので、各年分の更正は違法な処分である。
青色申告書に係る更正の理由附記に不備はなく、また、医療機器の支払リース料について、所得税法第157条“同族会社等の行為又は計算の否認”を適用して更正処分をしたことは相当とした事例
裁決事例集 第48集 119頁
要旨
- 原処分庁は、請求人(医院)の同族会社に対するリース料(「本件リース料」)の支払につき、所得税法第157条を適用して更正処分をした。
- 請求人は、更正通知書に附記された理由は、「適正な償却費」とは具体的に何を意味しているか不明であり、その額が「所得税の負担を不当に減少させる」こと、「リース料の妥当性」及び「適正なリース料の算定」とどう関係するのか、その判断過程が具体的に示されていず、不備である旨主張する。
ところで、附記された文章の表現をみると、請求人の主張するように、用語の意味及び文章の前後の関連性にやや明確性に欠ける点も認められるが、理由附記が適切であるか否かは、記載された理由全体をみて判断すべきであって、個々の用語又は文章の表現のみによって判断すべきものではない。
そうすると、本件更正の附記理由では、原処分庁が、どのような資料に基づき、どのような理由で課税処分をしたのか、その根拠、判断過程とも明らかにされているというべきであり、理由附記に不備はない。 - 各年分の適正リース料の額は、比準会社のリース料倍率を適用して算定していることが認められる。そのリース料倍率は、比準会社が、医院等を営む者に対し、リース期間5年でリースしている物件を選定して算定したものであり、その算定の基礎とした比準会社は適正に選定されており、リース料倍率及び適正リース料の額の計算過程のいずれにも誤りはない。
請求人は、比準会社の規模に類似性がない旨主張するが、本件においては、リース会社がリース物件をリースするに当たって、医院等を営む者に対し、通常行われているリース取引に係るリース料の額、つまり取引内容の類似性を判断すれば足りるのであって、リース会社の規模の類似性についてまで判断要素とする必要は認められない。
したがって、本件リース料の額の支払に関する請求人の行為又は計算が、所得税法第157条に規定する請求人の所得税の負担を不当に減少させる結果となると認定した本件更正処分は相当であり、本件リース料の額のうち、各年分の適正リース料の額を超える部分の金額は、各年分の事業所得の金額の計算上、必要経費の額に算入することはできない。
FX取引に基因して生じた差損益金及びスワップポイントに係る収入の原因となる権利の確定時期は、ロールオーバーの時であるとした事例(平成25年分及び平成26年分の所得税等の各更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の各通知処分、平成24年分及び平成25年分の所得税等の各更正処分及び無申告加算税の各賦課決定処分、平成25年分及び平成26年分の所得税等の期限後申告に係る無申告加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第108集
ポイント
本事例は、FX取引に係る約款、契約締結前交付書面の記載によれば、本件における差損益金及びスワップポイントに係る収入の原因となる権利はロールオーバーの時点において確定し、当該時点において所得の実現があったと判断したものである。
要旨
請求人は、外国為替保証金取引において、未決済建玉の乗換えにより決済日を自動的に1営業日繰り延べる取引(本件ロールオーバー)により生じた差損益金及びスワップポイント(本件差損益金等)は、損益の見込額にすぎないから、本件ロールオーバーが行われた時点において本件差損益金等の収入の原因となる権利が確定したとはいえない旨主張する。
しかしながら、請求人の行う外国為替保証金取引では、本件ロールオーバーにより未決済建玉の約定価格が更新され、本件差損益金等が発生してその金額が確定し、発生後、直ちに預託保証金に加算又は減算されるほか、これと同時に本件差損益金等が反映された預託保証金は振替可能額の範囲内で証券総合口座への振替請求が可能となるとされており、これらによれば、本件差損益金等の収入の原因となる権利は、本件ロールオーバーが行われた時点で発生すると同時にこれを法律上行使することができるようになり、権利実現の可能性を客観的に認識することができる状態になったということができる。したがって、本件差損益金等の収入の原因となる権利は、本件ロールオーバーが行われた時に確定したと認められる。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和53年2月24日第二小法廷判決(民集32巻1号43頁)
ゴルフ会員権を譲渡した時点において、当該ゴルフ場施設が競売等により他の所有になったことによって当該ゴルフ場施設優先利用権が消滅した場合には、当該ゴルフ会員権の譲渡による損失を他の所得金額と損益通算することはできないとした事例
裁決事例集 第53集 205頁
要旨
譲渡所得の基因となるゴルフ会員権は、ゴルフ場施設優先利用権と預託金返還請求権が一体となったものであるとされるところ、請求人が本件ゴルフ会員権を譲渡した時点において、本件ゴルフ場施設が経営会社から競売等により他の所有となるなどし、かつ、新所有者が本件ゴルフ会員権に係る債権債務を引き継いでいないことから、本件ゴルフ会員権に内包されていた施設優先利用権は消滅しており、その実質は、金銭債権である預託金返還請求権のみとなっていたものと認められるから、本件ゴルフ会員権の譲渡による損失は、譲渡所得の金額の計算上生じた損失には該当せず、他の所得金額と損益通算をすることはできない。
要旨
請求人は、[1]改正所基通37-5(平成17年6月24日付課個2-23ほかにより一部改正された後の所得税基本通達37-5《固定資産税等の必要経費算入》をいう。以下同じ。)の定めから、本件登記費用が不動産所得の金額の計算上必要経費になることは明らかである旨、[2]最高裁判所平成17年2月1日第三小法廷判決(平成13年(行ヒ)第276号所得税更正処分取消請求事件。以下「平成17年2月最高裁判決」という。)を受けて、所得税基本通達37-5の見直しが行われたのであるから、改正所基通37-5の遡及適用を制限する定めを設けることは違法である旨、及び[3]判例は新しいものが優先されるものであるから、最高裁判所平成12年7月17日第一小法廷判決(平成10年(行ツ)第122号更正処分等取消請求上告申立事件。以下「平成12年7月最高裁判決」という。)をもって贈与により取得した資産に係る登録免許税等が必要経費に該当しないとの判断が是認されたと主張することは的外れである旨主張する。
しかしながら、大阪高等裁判所平成10年1月30日判決(平成9年(行コ)第6号更正処分等取消請求控訴事件)においては、納税者が、被相続人から、同人が営む不動産賃貸事業の用に供していた土地の贈与を受け、不動産賃貸事業を営むようになった場合に、その土地の所有権移転登記を経由するに際し納付した登録免許税等は、所得税法第45条第1項第1号所定の家事上の経費に該当し、同法施行令第96条第1号及び第2号所定の業務の遂行上必要であった経費には該当しないと解するのが相当である旨が判断され、そして、その上告審である平成12年7月最高裁判決においてもこの判断は是認されているところ、これを本件についてみると、本件の事実関係において、本件登記費用は、所得税法第45条第1項第1号の家事上の経費に該当すると認めるのが相当であるから、請求人の平成15年分の所得税に係る不動産所得の金額の計算上、本件登記費用を必要経費に算入することはできない。
なお、平成17年2月最高裁判決は、所得税法第38条《譲渡所得の金額の計算上控除する取得費》及び同法第60条《贈与等により取得した資産の取得費等》の規定の解釈及び適用について判示したものであって、同法第37条《必要経費》及び第45条の規定の解釈及び適用について判示したものではなく、平成17年2月最高裁判決をもって、平成12年7月最高裁判決を判例変更したものということはできず、上記の請求人の主張は理由がない。
また、改正所基通37-5の改正の経緯及び理由によれば、相続等により取得した業務の用に供される資産に係る登記費用等は、事業活動と直接の関連をもつ事業の遂行上必要な費用ではなく、本来、必要経費には当たらないところ、平成17年2月最高裁判決の結果、業務の用以外の用に供される資産については、相続等により取得した場合と購入により取得した場合の登記費用等がいずれも取得費とされるのに対し、業務の用に供される資産については、相続等により取得した場合は取得費とされる一方、購入により取得した場合は必要経費に算入され、よって両者の場合の取扱いに差異が生じることとなるため、ある時期(平成17年1月1日)以降の相続等により取得した業務の用に供される資産に係る登記費用等を、購入により取得した場合の取扱いとのバランスに配慮して、必要経費に算入する取扱いにしたというものであるから、改正所基通37-5の定めを根拠にして請求人の本件登記費用が必要経費に当たるということはできない。
要旨
弁護士業を営む請求人は、大学院の修士及び博士課程の授業料等並びに米国K大学への寄付金は業務遂行上必要な支出であるから事業所得の金額の計算上必要経費に算入される旨主張する。
しかしながら、修士及び博士課程の専攻は、請求人の営む弁護士業と関連性を有していることは認められるものの、むしろ請求人の自己研鑽のため進学したものと認めるのが相当で、また、当該寄付金の支出は、請求人の善意的心情からのものと認められ、いずれも業務遂行上直接かつ通常必要なものとは認められず、事業所得を生ずべき業務について生じた費用ではないから、所得税法第37条第1項に規定する必要経費とすることはできない。
要旨
請求人が、借地上にあった請求人の所有に係る本件貸家を地主に譲渡するとともに、本件借地権を返還し、他方、地主から本件譲受土地等を時価よりも相当低い価額で譲り受けた取引は、[1]双方の取引が同一時期に行われていること、[2]請求人が、本件借地権を無償で返還する特別な理由がないこと、[3]請求人は本件譲受土地に借地権を有していないにもかかわらず、その譲受価額は借地権を有していたと同様な低価額となっているところから、本件双方の取引は別個の贈与取引ではなく、それぞれの土地に係る借地権の価額相当額を相互に相殺した有償取引であると認めるのが相当である。
債務保証をした事実はないこと及び 譲渡代金が借入金の返済に充てられていないことから、本件土地の譲渡につき、所得税法第64条第2項に規定する保証債務の特例を適用することはできないとした事例
裁決事例集 第77集 111頁
要旨
- 請求人は、C銀行等に支払った1,200万円は主たる債務者をBとする保証債務の履行である旨主張する。しかしながら、請求人は、Q市物件にC銀行等のために抵当権が設定されていることを認識しながらこれを買い受け、売主であるAらに本来支払うべき売買代金1,200万円を、抵当権消滅請求のために、C銀行等に対して支払ったにすぎないから、請求人が、AらのC銀行等に対する債務の保証をした事実はない。
- また、請求人は、本件土地を譲渡し、その譲渡代金で保証債務を履行するつもりであったが、買い手が見つからず直ちに譲渡することができなかったため、やむを得ず本件各借入金と自己資金により保証債務を履行したのであるから、本件譲渡は実質的に保証債務を履行するためのものである旨主張する。
しかしながら、所得税法第64条第2項の規定による特例を適用するためには、①債務の保証をしたこと、②保証債務の履行のために資産を譲渡したこと、③保証債務を履行したこと及び④履行に伴う求償権の全部又は一部が行使することができなくなったことの実体的要件が必要であると解される。請求人は、BのF社に対する債務を連帯保証しているから、F社の債権譲渡先であるG社に対する請求人による支払は、上記の実体的要件の①及び③を充足する。しかし、請求人は、本件各借入金のうちの550万円及び自己資金によりG社に対する代位弁済をしており、本件譲渡は上記代位弁済後になされているから、本件譲渡代金が直接保証債務の履行に充てられたわけではない。したがって、上記の実体的要件の②を充足するというためには、本件譲渡が、実質的にみて保証債務の履行のための資産の譲渡と認められることが必要である。そうすると、本件各借入金のうち550万円は本件保証債務の履行に充てられたものと認められるが、本件譲渡は、本件保証債務の履行から3年以上経過してから行われている上、本件各借入金の返済は、自己資金により行われており、本件譲渡代金が本件各借入金の返済に充てられた事実は認められない。
以上によれば、本件譲渡は、実質的に保証債務を履行するための資産の譲渡であったとはいえず、本件譲渡代金と本件保証債務の履行との間に因果関係は認められないから、上記の実体的要件の②を充足しない。したがって、本件譲渡は「保証債務を履行するため資産の譲渡があった場合」には該当しない。
ポイント
本件は、請求人の健康診断業務に係る収入について、関与先の病院等の指揮命令に服し、空間的、時間的拘束を受けて行った業務ないし労務提供の対価であると認められることから、給与所得に該当するとしたものである。
要旨
請求人は、関与先である法人との間の法律関係について、当該法人から業務を請け負って収入を得る事業所得者であることが判決(本件判決)において確定しており、契約内容や業務内容が当該法人と同様である他の法人等(本件法人等)との間でも請求人は事業所得者であるとして、請求人が本件法人等から得た自己の健康診断業務(本件業務)に係る収入により生じた所得(本件所得)は、所得税法第27条《事業所得》第1項に規定する事業所得に該当する旨主張する。
しかしながら、本件業務に係る報酬は、あらかじめ本件法人等との間で従事時間等に応じて決められた対価が支払われるものであり、また、本件法人等から業務に必要な器具等の貸与等及び交通費等の支給を受けていたことからすれば、請求人は、本件業務から一般的に生じ得る危険を負担することはなかったものと認められる。また、請求人は、本件法人等から業務内容や従事時間及び従事場所などの指定を受けていたことなどからすれば、本件法人等から本件業務について指揮命令や空間的、時間的拘束を受けていたと認められるから、本件所得は、所得税法第28条《給与所得》第1項に規定する給与所得に該当する。
参照条文等
参考判決・裁決
横浜地裁平成28年11月9日判決(税資266号順号12930)
ポイント
資産負債増減法による推計において、その納税者と生計を一にする者がある場合には、両者の資産、負債及び処分(消費)した所得を区分せずに推計の基礎として、その納税者の所得の金額を算出する方法を採ることが合理的である。
この事例は、請求人と生計を一にする親族名義の預金口座であっても、生計を一にしない者に貸していたと認められるものについては、推計の基礎から除外するのが相当としたものである。
要旨
原処分庁は、資産負債増減法を用いた推計においては、請求人と世帯を一にする者がある場合、その世帯員の資産及び負債も推計の基礎に含めて純資産の増減額を算出し、その後に、世帯員の所得金額などの請求人の所得を源泉としない純資産の増加要因について、減算することになる旨主張する。
しかしながら、請求人と生計を一にする者名義の預貯金のうち、V銀行j支店及びW銀行j支店の子の妻名義の普通預金口座はいずれも同人の兄であるSに貸していたものであり、また、Sは請求人と生計を一にする者ではないと認められることから、これらの口座は推計の基礎から除外し、これらの口座を除く各口座に係る預貯金の全てを推計の基礎とするべきである。よって、これと一致する限度において、原処分に誤りはないが、これに反する部分は、誤りである。
参照条文等
要旨
原処分庁は、台風により被害を受けた本件宅地の擁壁の工事費用の額については、原状回復のための費用と資本的支出とに明確に区分できない旨主張するが、本件復旧事業は、本件宅地と一体である市道に係る擁壁の復旧事業と同様の形状、材質により行われたことが認められ、当該復旧事業は、位置、形状、寸法、材質を変えずに原形復旧するものであることから、請求人が支出した本件宅地の擁壁工事費用の額は、その全額が原状回復のために支出したものであって、資本的支出の額はないとみるのが相当である。
外国法人の従業員であった時に付与されたストック・オプションを当該外国法人の子会社である内国法人に勤務していた時に行使して得た経済的利益が給与所得とされる場合の国内源泉所得の計算は、ストック・オプションの付与日から行使日までの期間を給与の総額の計算の基礎となった期間とするのが相当であるとした事例
裁決事例集 第64集 232頁
要旨
請求人は、自己が勤務していた外国法人からストック・オプションを付与され、当該外国法人の子会社である内国法人に勤務していたときに権利行使して経済的利益を得たが、当該経済的利益は、行使時において当該外国法人と雇用関係にないこと等から、給与所得には該当しない旨主張する。しかしながら、当該経済的利益は、本件被用者等(当該外国法人及びその子会社の役員及び重要な被用者をいう。)たる地位に基づき当該外国法人の株式を購入することができる権利を同社から付与され、本件被用者等として一定期間勤務することにより、これを行使して得た利益、すなわち、請求人の非独立的ないし従属的な人的役務の提供の対価であるから、給与所得に該当する。
請求人は、ストック・オプションに係る利益の発生原因はストック・オプションの権利行使が可能となったとき(来日前)に確定しているから、本件利益の全額が国内源泉所得に当たらず、非永住者である請求人にとって非課税である旨主張する。しかしながら、勤務が国内及び国外の双方にわたって行われた場合の所得税法第161条第8号イに規定する国内源泉所得については、所得税基本通達161-28に定める計算方式によることが合理的であり、同通達に定める「給与の総額の計算の基礎となった期間」は、本件ストック・オプションの付与日から行使日までの期間と解するのが相当であり、本件利益はその一部が国内源泉所得に当たる。
平成18年分については、請求人が養育費の送金は行っておらず長男と「生計を一にするもの」には該当しないことから、また、平成19・20年分については、元妻が請求人より先に勤務先に対し長男を扶養親族とする旨の扶養控除等申告書を提出していることから、いずれの年分も請求人において長男を扶養親族とする扶養控除の適用は認められないとした事例
裁決事例集 第83集
ポイント
所得税法第2条第1項第34号に規定する「生計を一にするもの」とは、一般に親族が同一の生活共同体に属して日常生活の資を共通にしていることをいうものと解される。また、所得税法施行令第219条第1項は、二以上の居住者の扶養親族に該当する者があるときは、その所属は原則として居住者の自由な選択に委ね、いずれの居住者の扶養親族であるか定まらない場合には同条第2項により、いずれの居住者の扶養親族であるかを決することとしている。
この事例は、離婚後、元妻と同居している長男について、請求人と生計を一にしているか、また、元妻が請求人に先立って長男を扶養親族とする扶養控除等申告書を勤務先に提出している場合に請求人の扶養親族となるか否かが争われたものである。
要旨
請求人は、裁判により本件養育費の債務を負うことが確定していることから、送金がなくても、長男は請求人と「生計を一にするもの」に該当する旨主張するが、「生計を一にするもの」とは、常に生活費等の送金が行われている場合のように、日常生活の資を共通にしているものをいうと解すべきところ、請求人が平成18年中に本件養育費を送金していない以上、長男が請求人と日常生活の資を共通にしているとはいえない。
また、請求人は、裁判離婚した元妻との間には相互に意思の連絡がないから、所得税法施行令第219条《二以上の居住者がある場合の扶養親族の所属》第2項第1号は適用されず、同項第2号を適用すべきである旨主張するが、二以上の居住者の間に意思の連絡があるか否かによって同項第1号の適用が左右されるものではない。そして、本件では、平成19年分及び平成20年分とも、元妻が、請求人より先に、勤務先に対し、長男を扶養親族とする旨の扶養控除等申告書を提出しているから、所得税法施行令第219条第2項第1号により、長男は元妻の扶養親族に該当することとなり、同項第2号が適用される余地はない。
参照条文等
参考判決・裁決
徳島地裁昭和59年5月30日判決(税資136号594頁) 平成20年10月29日裁決(裁決事例集No.76) 平成元年1月12日裁決(裁決事例集No.37)
当初売買契約の対象物件である土地の一部を分筆して引き渡した土地に係る課税年分は、当初売買契約対象物件の引渡しが完了した日の属する年分ではなく、当該引渡しがあった日の属する年分であるとした事例
裁決事例集 第29集 20頁
要旨
原処分庁は、本件土地は当初契約に基づき一括して譲渡されたものであり、その譲渡対価の額はその引渡しの全部が完了した日の属する昭和56年分の譲渡所得の総収入金額とすべきものであって、昭和55年中における本件土地の一部(本件転売部分の土地)の引渡しは、当初契約による引渡義務の一部の履行としてみなされたものであると主張するが、本件転売部分の土地については、本件土地の売買代金の総額の支払がなければその所有権は移転しないという当初契約を買主の要望によって一部変更し、本件土地の一部を分筆してその引渡しと代金の受領がなされていることから、その譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は、その引渡しがあった日とするのが相当である。
要旨
新規に土地を取得した場合において、当該土地が、事業ないしは業務の用に供する資産であるか否かは、土地の取得目的や主観的意図だけでは足りず、その土地の具体的使用状況等から、その土地が事業所得あるいは不動産所得の基因となる事業ないしは業務の用に供される場合であるか、他に明らかに事業ないしは業務の用に供されるものと推認し得る特段の事情があるかどうかにより判断するのが相当と解されるところ、本件土地については、[1]請求人が建設を予定していたとする病院の分院の建築工事が実際に行われた事実は認められず、[2]同様に請求人が貸付けを予定していたとする駐車場等の貸付けが実際に行われた事実も認められず、[3]他に明らかに事業ないしは業務の用に供されるものと推認し得る特段の事情も認められないので、本件土地の取得のための借入金利子は、事業所得あるいは不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできない。
本件土地等は、貸付けの用に供されることが客観的に明らかとは認められないから、不動産所得を生ずべき業務の用に供されている資産には該当せず、本件土地等の取得に要した借入金利子等の額は、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないとした事例
裁決事例集 第49集 23頁
要旨
請求人は、請求人が取得した本件土地等に係る不動産取得税、登記費用、固定資産税、借入金利子及び保証料(以下、これらを併せて「本件借入金利子等」という。)の額については、不動産所得の金額の計算上必要経費の額に算入すべきである旨主張するが、請求人は、平成2年6月29日に本件土地等を取得して以来、これを利用するためにホテル等の建設を計画しその建物の設計図を作成するなど、本件土地を貸付けの用に供する意思を有していたことはうかがえるものの、いまだ計画した建物の建設着工がなされていないばかりか、本件土地の上に建物を建設するために必要な開発許可の申請や建物建設請負契約の締結、既存建物の取壊し等すら行われていないことからすれば、本件土地等については、貸付けの用に供されることが客観的に明らかであるとは認められない。
したがって、本件土地等は、不動産所得を生ずべき業務の用に供されている資産には該当しないものであり、本件借入金利子等の額は、請求人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。
本件譲渡資産は、換価分割により取得したものではなく、代償分割により取得したものであるから、他の相続人に支払った代償金は譲渡所得の計算における取得費には該当しないとした事例
裁決事例集 第54集 210頁
要旨
請求人は、本件譲渡資産は、家庭裁判所の調停案のとおり、他の相続人らが相続し、これを直ちに請求人が6,000万円で買い取る旨の遺産分割の合意を見るに至ったものであるから、他の相続人らからの取得額6,000万円を本件譲渡所得における取得価額とすべきであると主張する。
しかしながら、上記の調停案は請求人が提案したものにすぎず、他の相続人らは一貫して金銭による分割を要求していたことからも係る調停案に合意していたとは認められない。
かえって、最終調停期日に作成された調停調書によれば、請求人は、被相続人の遺産のすべてを単独取得し、その代償として他の相続人らに対し、6,000万円の支払義務があることを認める旨の調停が成立したことが認められるのであるから、請求人の本件遺産分割が換価分割であるとの主張は採用できず、代償分割によるものであるとして、譲渡所得の金額の計算上、本件代償金6,000万円を取得費の額に算入しなかった原処分は相当である。
民事再生法に基づく再生計画により、預託金会員制ゴルフ会員権につきその預託金債権の全額が切り捨てられるとともに優先的施設利用権だけのゴルフ会員権を取得した場合、その優先的施設利用権だけのゴルフ会員権の取得価額はその取得時の時価であるとした事例
裁決事例集 第72集 169頁
要旨
請求人は、所有していた預託金会員制ゴルフ会員権(以下「本件旧会員権」という。)に係るゴルフ場の経営法人の民事再生法に基づく再生計画に従い、本件旧会員権に係る預託金債権の全額が切り捨てられるとともに付与された預託金債権のないゴルフ場施設の優先的施設利用権のみのゴルフ会員権(以下「本件新会員権」という。)を譲渡したが、その譲渡所得の金額の計算に当たって、本件旧会員権の取得に要した金額から再生計画により切り捨てられた預託金相当額を差し引いた価額を本件新会員権の取得に要した費用とすべき旨主張する。
しかしながら、所得税法第33条第1項の規定の内容及び譲渡所得課税の趣旨からすれば、資産の譲渡による譲渡所得の計算に当たっては、その譲渡時点と取得時点で資産の同質性が維持されている必要があり、譲渡所得の金額の計算上控除されるべき取得費とは、特段の定めがない限り、譲渡資産と同質性が維持された資産の取得に要した金額をいうものと解されるところ、預託金会員制ゴルフ会員権は、優先的施設利用権、預託金返還請求権及び年会費納入等の義務からなる契約上の地位を総称するものと解されることから、預託金会員制ゴルフ会員権の取得に要した金額が、その後のゴルフ会員権の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上取得費として控除されるには、取得時点における預託金会員制ゴルフ会員権としての上記の契約上の地位が、譲渡時点において維持されている必要があると解される。
そうすると、本件旧会員権は、優先的施設利用権及び預託金返還請求権を有する預託金会員制ゴルフ会員権であり、一方、本件新会員権は、優先的施設利用権のみで預託金返還請求権のないゴルフ会員権であることから、本件新会員権における契約上の地位(資産)は、本件旧会員権における預託金返還請求権を失ったことによりこれを要素とする契約上の地位(資産)としての同一性を失っているので、契約上の地位としての性質に変容があったものであり、本件旧会員権と本件新会員権は、別個の資産というべきである。そして、本件旧会員権の取得価額を本件新会員権の取得価額に引き継ぐ旨の所得税法上の規定もないことから、本件新会員権の譲渡所得の計算に当たって、本件旧会員権の取得価額を引き継いで計算することはできない。したがって、本件新会員権の取得価額は、その取得時の時価相当額とするのが相当である。
求償権の放棄が、主たる債務者の資産状況、経営状況からみて求償権を行使することができない状況でなされたものとは認められないので、所得税法第64条第2項の適用がないとした事例
裁決事例集 第40集 65頁
要旨
請求人は、債権者集会の決議にも相当する覚書に基づいて、保証債務の履行に伴う求償権を放棄したものであると主張するが、当該覚書は、主たる債務者、請求人及びごく限られた大口債権者2社との間で締結されたものであって、法令の規定に基づく整理手続きによらない債権者集会の協議決定等で合理的な基準により負債整理を定めたものとは認められない。また、主たる債務者は、大口債権者2社の援助を受けているにせよ、自己の有する資産の売却等により欠損金を補てんし現在に至るまで引き続き事業を継続し、しかも、債務超過の額は減少の傾向にあり、請求人が本件不動産を譲渡する直前において既に当期利益を計上している事実からすれば、請求人の求償権放棄時において、主たる債務者は求償権行使不能の状況にあったとは認められないので、所得税法第64条第2項の適用を認めなかった原処分は相当である。
要旨
請求人が、市長が亡父を特別養護老人ホームに収容を委託したことに伴い、請求人が老人福祉法第28条の規定により扶養義務者として負担した措置費の一部負担金は所得税法第73条に規定する医療費に該当すると主張するが、当該負担金は、亡父が特別養護老人ホームで受けた措置とは無関係に、市長が扶養義務者費用徴収基準によりその負担能力に応じて請求人から徴収したものであって、当該負担金のうちには、医師等により診療等の費用等に相当するものは含まれていないので、医療費控除の対象となる医療費には該当しない。
要旨
本件契約は養老保険契約であり、本件保険金は被保険者である請求人が保険期間満了日まで生存していたことによって支払を受けるべき満期保険金等であることが認められる。
また、据置契約は、本件保険金を原資として、請求人の意思によって新たに締結されたものであり、本件契約とは別個の預金契約であると認められる。
そうすると、本件保険金は、本件契約の保険期間満了後、請求人側に現実に金員が支払われることなく、新たに締結した別個の契約に引き継がれたものにすぎないと認められ、いずれも平成10年中にその支払を受けるべき権利が確定していることが認められるから、平成10年分の一時所得となり、この点に関する請求人の主張は採用できない。
ポイント
この事例は、請求人の配偶者が所有し、賃貸の用に供していた建物等を同人の死亡により請求人が相続し、これを賃貸の用に供して不動産所得を得ていたところ、当該不動産所得の金額の計算上必要経費に算入する減価償却費に係る当該建物等の耐用年数につき、いわゆる中古資産に係る簡便法による耐用年数が適用できるか否か判断したものである。
要旨
請求人は、所得税法第60条《贈与等により取得した資産の取得費等》等の取得には相続による取得が含まれることを当然の前提としている一方で、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(耐用年数省令)第3条《中古資産の耐用年数等》に規定する取得には相続を除く旨の明文の規定はないので、文言解釈の統一性の要請から、同条における取得にも相続による取得が含まれる旨主張する。
しかしながら、耐用年数省令第3条第1項は、所得税法施行令第126条《減価償却資産の取得価額》第1項の規定する取得時における当該減価償却資産の当該取得価額(購入対価等の額ないし時価相当額等)をその取得後における効用持続期間において費用化することを前提とする規定であるところ、減価償却資産を相続等により取得した場合については、所得税法第60条の規定を受けた所得税法施行令第126条第2項において、相続人等は、当該減価償却資産を被相続人等の前所有者からの取得価額により取得したものとし、相続人等と被相続人等との間でいわゆる取得価額の引継ぎを行うものとして償却費の額の計算をすることとされているのであるから、取得時における当該減価償却資産の当該取得価額をその取得後における効用持続期間において費用化することを前提とする耐用年数省令第3条第1項の規定を適用して相続等による取得後の当該減価償却資産に係る償却費の額の計算を行うことはできないというべきである。
参照条文等
税理士である請求人の、関与先への貸付金が、税理士業の遂行上生じた貸付金とは認められないから、請求人が当該貸付金に係る貸倒引当金として繰り入れた金額は、事業所得の金額の計算上、必要経費に算入できないとした事例
裁決事例集 第69集 79頁
要旨
請求人は、[1]本件貸付金は、永きにわたり主要かつ収益性のある顧問先に対し、資金の必要性を検討して金銭を貸し付けたものであり、この行為は請求人の本来の業務に付随するものであること、[2]本件顧問先に対して金銭を貸し付けることにより、本件顧問先が発展することは、請求人の職業上の利益を将来にわたり享受させるものであること、[3]税理士紀律規則第6条の2の規定があることをもって、請求人が本件顧問先に貸し付けた行為は税理士本来の業務に準ずる行為であること及び[4]所得税基本通達51ー10の(2)(以下「本件通達」という。)の「自己の製品の販売強化、企業合理化等のため、特約店、下請先等に貸し付けている貸付金」を「自己顧問契約の強化・企業合理化等のため、特約ある永年顧問先等に貸し付けている貸付金」と読み替えるべきであることから、本件貸付金は税理士業の遂行上生じたものであり、これに係る貸倒引当金については所得税法第52条が適用され、事業所得の金額の計算上、必要経費に算入される旨主張する。
しかしながら、所得税法第52条にいう「事業の遂行上生じた貸付金」とは、当該事業の遂行と何らかの関連を有する限りの貸付金のすべてをいうものではなく、その業種業態からみて、当該事業所得を得るために通常必要であると客観的に認め得る貸付金をいうものと解されるところ、[1]税理士としての請求人と本件顧問先との関係は、税理士法第2条(税理士は租税に関し税務代理、税務書類の作成、税務相談等の人的役務を関与先に提供し、報酬を得ることを業とする旨規定)に規定する業務の範囲を出ず、この範囲に金銭の貸付けが含まれないことは明らかであり、客観的にみて金銭の貸付けは、請求人の税理士としての事業所得を得るために通常必要な行為であるとは認められないこと、[2]たとえ請求人が本件顧問先に対して金銭を貸し付けることにより、本件顧問先からの税理士報酬の増加、すなわち事業所得の増加を期待し、現実に税理士報酬の増加があったとしても、それは派生的に生じた間接的結果にとどまり、本件貸付金は、税理士としての事業所得を得るために通常必要なものであると認めることはできないこと、[3]税理士紀律規則第6条の2の規定は、J税理士会が会員である税理士を対象として税理士の品位保持及び紛争防止のために慎むべき事項を定めた内部規則であり、当該規則をもって税理士に貸金行為を認める根拠であるとはいえないこと及び[4]本件通達は所得税法第51条第2項の規定の対象となる債権に限られることから、事業の遂行上生じた債権の範囲を例示したものであるところ、税理士の業務の範囲には金銭を貸し付ける行為が含まれないことは明らかであって、請求人の主張するように本件通達を解釈することはできないことから、本件貸付金については、請求人の事業の遂行上生じたものとは認められず、請求人が各年分の本件貸付金に係る貸倒引当金として繰り入れた金額は、請求人の各年分の事業所得の必要経費に算入することはできない。
衣料品の輸入販売業を営む請求人が海外の取引先に支払った金員は、所得税法第161条第7号イに規定する工業所有権等の使用料に該当し、源泉徴収に係る所得税の納税告知処分は適法であるとした事例
裁決事例集 第61集 293頁
要旨
請求人は、海外の取引先から提供を受けるデザイン画等の対価として契約に基づき支払った金員について、[1]当該デザイン画等は鑑定、調査の結果が図面化されたものにすぎず、[2]取引先のデザイン画等の作成の実費相当額を支払ったものであり、また、[3]当該デザイン画等を基に製作される衣料品はイタリアで製造され、請求人の日本国内業務に該当しないから、所得税法第161条第7号イに規定する使用料に該当しないと主張する。
しかしながら、当該金員は、[1]デザイナーの創作によるデザイン画等の対価であり、[2]契約書等から実費相当額とは認められず、[3]請求人が日本国内で販売するための衣料品製作に係るデザイン画等の提供の対価であると認められる。
したがって、当該金員は同号イに規定する使用料と認められるから、原処分庁が行った源泉徴収に係る所得税の告知処分は適法である。
要旨
原処分庁は、請求人が生計を別にする父親G(内科医)に支払った給料の額は診療従事の実態等からみて著しく高額であり、Gの診療従事の実態は非常勤医師のそれと同様である旨主張する。
ところで、所得税法第37条第1項に規定する必要経費に該当するためには、業務について生じた費用であること、すなわち、業務との関連性がなければならないとともに、業務の遂行上必要であることを要し、さらに、その必要性の判断においても、単に事業主の主観的判断のみによるのではなく、客観的に必要経費として認識できるものでなければならないと解すべきである。
これを本件についてみると、原処分庁は、客観的に必要経費として認識できる金額を算出するための方法として、非常勤医師の勤務1時間当たりの給料の額の平均を求め、これを基準として認定給料額を算定しているところであるが、Gの診療従事の実態は、原処分庁がGの適正な給与の額を算定するための比準として採用した公立病院等に勤務する非常勤内科医師のそれと類似しておらず、原処分庁の給料の額の算定方法には合理性が認められない。
さらに、当審判所において、請求人と類似する個人医院を調査したところ、請求人の収入金額に対する本件給料の額の割合は、類似する個人医院の収入金額に対する親族の従業員の給料の額の割合と比べて低く、本件給料の額が客観性を欠き不相当に高額とは認められず、また、Gの診療従事の状況に照らしても、本件給料の額が不相当に高額であるとは認められないことから、原処分の全部を取り消すのが相当である。
請求人が支出した自動車関係費等は、不動産貸付業務の遂行上必要であった部分を明らかにすることができないから、必要経費の額に算入することはできないとした事例( 平成24年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、 平成25年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分、 平成26年分の所得税及び復興特別所得税の更正の請求に対してされた更正処分、 平成24年1月1日から平成26年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに平成25年1月1日から平成25年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税にかかる過少申告加算税の賦課決定処分・ 一部取消し、 棄却)
裁決事例集 第110集
ポイント
本事例は、請求人が支出した固定資産税、自動車関係費用及び接待交際費を不動産貸付業務の必要経費に算入するためには、当該費用が、客観的にみて、当該業務と直接の関係を持ち、かつ、当該業務の遂行上必要な支出であると認められることが必要であるとしたものである。
要旨
請求人は、賃貸している駐車場に係る固定資産税等(本件租税公課)、自動車関係費用(本件自動車関係費用)及び接待交際費(本件接待交際費)について、いずれも不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額に該当する旨主張する。
しかしながら、このうち、本件自動車関係費用は、請求人が取引の記録等に基づき、業務の遂行上直接必要な部分を明らかにしているとはいえず、使用自動車が客観的にみて、業務に供されていたとも認められない。また、本件接待交際費は、その具体的な支出先等の合理的な説明や証拠の提出もなく、客観的にみて、業務と直接の関係を持ち、業務の遂行上必要な支出とは認められない。したがって、本件自動車関係費用及び本件接待交際費は、いずれも不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額に該当せず、他方で、請求人が賃貸している駐車場は家事用ではなく、賃貸専用で使用していると認められることから、本件租税公課は、請求人の業務の遂行上必要なものであり、請求人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額に該当する。
参照条文等
請求人が買い受けた不動産の売買代金の支払に代えて引き受けた債務の免除は、請求人の経済的利益に当たるから、不動産所得の総収入金額に算入するのが相当であるとした事例
裁決事例集 第78集 131頁
要旨
請求人は、債務者をT、連帯保証人を請求人及びSとした本件債務承認弁済契約が約定どおりに履行されなかった平成7年12月末日において、約定利率の年14%について契約変更があったと解すべきであり、このことは、その後の交渉において、R社から年5.7%、年1%の遅延損害金の利率が提示されていることからも明らかであること、そして、請求人とR社との交渉の結果、遅延損害金の額は最終的に1,000,000円で確定し、請求人はこれを支払っているから、債務免除による経済的利益は生じていない旨主張する。
しかしながら、本件債務承認弁済契約に係る遅延損害金の約定利率は、求償債務残元金が完済されるまで一貫して年14%であったことは明らかである。また、請求人がR社に1,000,000円を支払い、R社がTに対して有する遅延損害金の残額を免除したことにより、本件債務承認弁済契約上の債務者であるTの債務が消滅したものと認められる。そして、当該遅延損害金の債務免除によりTの債務が消滅すると、請求人が本件引受債務の履行を引き受けたことにより、Tに対して負っていた債務者の債務を履行するという債務も消滅することになり、債務者Tの債務を履行するという請求人の債務は、請求人の金銭的負担を必要とする債務であるから、この債務の消滅は請求人において経済的利益を受けたものと認められ、請求人が受けた経済的利益の額は、Tが免除された遅延損害金の額と同額である。
したがって、請求人がR社に1,000,000円を支払ったことにより、R社がTに対して有する遅延損害金の残額を免除し、これにより請求人にこれと同額の経済的利益が生じたことは明らかである。
そして、請求人が本件土地建物の売買代金の一部に代えて本件引受債務の履行を引き受け、その結果、経済的利益を受けたこと、請求人が本件建物を継続して賃貸の用に供していたことからすれば、請求人は不動産の貸付けに関連して当該経済的利益を享受していたと認められるから、当該経済的利益は不動産所得の付随収入として不動産所得の金額の計算上総収入金額に算入されることになる。
請求人が賃貸の用に供していた共同住宅(本件建物)及びその敷地の売却に伴い、本件建物の事務室を賃借していた本件建物の管理会社に対し立退料名目で支払った金員は、本件建物の譲渡に要した費用に該当しないとした事例(平成24年分所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第100集
要旨
請求人は、賃貸の用に供していた共同住宅(本件建物)及びその敷地の売却(本件譲渡)に伴い、本件建物の事務室(本件事務室)を賃借していた本件建物の管理会社(本件賃借人)に対し立退料名目で支払った金員(本件金員)は、本件譲渡に要した費用に該当する旨主張する。
しかしながら、資産の譲渡に当たって支出された費用が所得税法第33条《譲渡所得》第3項に規定する譲渡費用に当たるどうかは、現実に行われた資産の譲渡を前提として、客観的に見てその譲渡を実現するために当該費用が必要であったかどうかによって判断すべきものである。これを本件についてみると、請求人と本件賃借人との間の賃貸借契約は、遅くとも本件譲渡の日までに合意解約されたものと認められるところ、当該合意解約がされるまでの間に、本件建物及びその敷地の買主が本件事務室からの本件賃借人の退去を求めた事実を認めることはできない。そして、請求人と本件賃借人との間で本件賃借人の本件事務室からの退去に伴う本件金員の支払についての合意が成立したとする請求人の主張は主観に基づくものであり、また、当該合意が成立したことを明らかにする書面が作成された事実もうかがわれないから、当該合意の成立を認めることも困難である。そうすると、本件賃借人の本件事務室からの退去は、客観的に見て本件譲渡の実現に必要であったとは認められないから、本件金員の支払が客観的に見て本件譲渡を実現するために必要な費用の支払いであったと認めることはできない。したがって、本件金員は、譲渡費用に該当しない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成18年4月20日第一小法廷判決(税資256号順号10373)
請求人所有の本件土地上に赤字法人である同族会社に対して地上権を無償で設定した後に本件土地と地上権を第三者に譲渡した行為は、所得税法第157条に該当するとした事例
裁決事例集 第55集 175頁
要旨
請求人は、本件契約を同族会社が赤字法人であることを奇貨として譲渡代金の分散を図る目的でしたものではなく、また、原処分庁が所得税法第157条を適用したことは、借地権等の設定について、同法第59条第1項の規定の適用がないということについての納税者の予見可能性を無視したものであり、所得税基本通達59-5の趣旨に反し、著しく信頼を損なうものである旨主張する。
しかしながら、請求人及び同族会社が本件底地及び本件地上権を譲渡するに至った一連の行為の事情からして、本件地上権を同族会社に無償贈与する合理的な理由を見いだすことはできず、また、無償贈与した行為は、請求人を同族関係者とする同族会社であるがゆえになし得た行為であり、経済的合理性を欠く行為と認められ、この行為が請求人の所得税の負担を不当に減少させていることが認められる。
また、所得税法第59条第1項は、借地権等の設定について、みなし譲渡課税をする旨規定していないが、そのことをもって同法第157条の規定が適用できないとするものではない。
要旨
原処分庁は、請求人が取引先に請負に係る報酬を請求した時に、収入すべき権利が確定したといえるから、請求人の事業所得の金額の計算上総収入金額に算入すべき金額は、その年中に請求人が取引先に請求した役務の提供に係る対価の合計額となる旨主張する。
しかしながら、請求人と取引先との間の請負契約は、請求人及びその従業員が、取引先から指示されたブロックの溶接等を行うというものであるから、物の引渡しを要しない役務の提供を内容とする請負契約であると認められる。そして、取引先は、請求人の報酬を日々の作業時間から算出していたこと、また、請求人は既に完了した溶接等の報酬の支払を随時請求することができたことからすれば、請求人と取引先は、日々の役務の提供が完了するごとに報酬請求権が発生、確定する旨の請負契約を締結していたと認めるのが相当である。そうすると、請求人が取引先との間で締結した請負契約に基づく報酬請求権の収入すべき時期は、その役務の提供が完了した日の属する年分となり、本件各年分の事業所得の金額の計算上総収入金額に算入すべき金額は、それぞれ暦年の1月1日から12月31日までになされた役務の提供に係る対価の合計額となる。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和53年2月24日第二小法廷判決(民集32巻1号43頁) 大阪地裁昭和38年3月19日判決(行集14巻3号480頁)
要旨
請求人の専務理事らが横領、流用した金額を請求人からの貸付金であると認定するには、[1]専務理事らが請求人の資金を使用したことにつき、請求人から借り受ける趣旨の意思を表示したかどうか、[2]金利ないし利率、返済期限、担保などについて専務理事らがどのように認識していたか、また、[3]請求人の側においても、専務理事らに対する貸付けの認識があるかどうか、更にその債権管理方法をどのようにしているかなどの事実に照らして請求人と専務理事らとの間に金銭消費貸借契約(ないし準消費貸借契約)が成立し、請求人が貸付金債権を取得したかどうかを判定すべきであるところ、本件において、専務理事らが上記[1]の借受けの意思を表示したことを認め得る証拠はなく、また、金銭貸借において通常定められる上記[2]のような借入れの条件が定められたものと認識していたことを示す証拠もなく、金銭消費貸借契約が成立したことは認められないから、請求人が専務理事らに対し貸付けをなしていたとはいえず、したがって、貸付金に係る利息は発生しない。
貸金返済債務の遅延損害金支払債務は、弁済期を経過した日以後、日々経過するごとに必要経費に算入すべき金額が確定するとした事例( 平成28年分及び平成29年分の所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分、 平成30年分及び令和元年分の所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・ 一部取消し、 棄却)
裁決事例集 第130集
ポイント
本事例は、貸金返還債務が約定に従って弁済されない場合に生じる遅延損害金支払債務は、遅滞が生じた日以後、日々経過するごとに所得税基本通達37-2《必要経費に算入すべき費用の債務確定の判定》が定める要件の全てを満たすものと解するのが相当であり、約定に従った弁済がなされない日からその元本の弁済がされる日までの日数に応じて、約定に従った弁済がなされない貸金返還債務の金額に約定で定められた遅延損害金利率を乗じて計算した金額が、その年に債務が確定した遅延損害金支払債務の金額となるとした事例である。
要旨
請求人は、貸金返還債務の遅延損害金支払債務は、その弁済の時期や金額等の借主と貸主との合意内容によってその確定時期が左右され、分割払の合意がされた場合は、所得税基本通達37-2の2《損害賠償金の必要経費算入の時期》の注書や法人税基本通達2-1-43《損害賠償金等の帰属の時期》の趣旨に基づき、遅延損害金の必要経費算入時期は、支払った日の属する年となることから、未払遅延損害金の分割払の合意に基づき支払った金額は、当該年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額である旨主張する。
しかしながら、貸金返還債務の遅延損害金支払債務は、①その本質が債務不履行(履行遅滞)に基づく損害賠償債務であるから、債務自体は弁済期を経過した時点で成立するものの、②その元本の弁済がされるまで遅滞が積み重なることで日々給付の金額が増加することから、各日ごとに具体的な給付をすべき原因となる事実が発生しており、③遅延損害金利率と弁済期からの経過日数によりその金額が算出することができるから、遅滞が生じた日以後、日々経過するごとに所得税基本通達37-2《必要経費に算入すべき費用の債務確定の判定》の要件を全て満たすと解するのが相当である。したがって、約定に従った弁済がなされない日からその元本の弁済がされる日までの日数に応じて、約定に従った弁済がなされない貸金返還債務の金額に約定で定められた遅延損害金利率を乗じて計算した金額が、その年に債務が確定した遅延損害金支払債務の金額となり、当該年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額となるのであって、過年分に発生した遅延損害金支払債務について、弁済時期等の合意がされても、その確定時期は左右されず、弁済した年分の必要経費に算入することはできない。
参照条文等
賦払の契約により購入した固定資産に係る購入代価と賦払期間中の利息及び賦払金の回収費用等に相当する金額とが明らかに区分されている場合に該当するとして、当該固定資産の使用開始後の期間に係る利息等相当部分は取得費に当たらないとした事例
裁決事例集 第71集 273頁
要旨
請求人は、本件契約書に記載された譲渡代金の額(以下「本件譲渡代金の額」という。)は、区分できない一単位の譲渡対価であり、その額には利息は存在せず、所得税基本通達38―8の「購入代価と賦払期間中の利息及び賦払金の回収費用等に相当する金額とが明らかに区分されている場合」に該当しないことなどを理由として、本件譲渡代金の額をすべて支払った場合には、本件譲渡代金の額の全額が本件マンションの取得費に当たる旨主張する。
しかしながら、[1]本件マンションは、即金譲渡価格が31,600,000円であると認められること、[2]本件契約書の別紙に記載されている割賦金は、本件案内書の即金譲渡価格31,600,000円、一時金3,000,000円のタイプの割賦金の額と一致することが認められること、[3]本件マンションの購入代価は、即金譲渡価格31,600,000円であると認められること、[4]本件譲渡代金の額に係る利息等相当部分は、本件譲渡代金の額のうち、購入代価31,600,000円を除いた52,911,100円であると認められることから、本件マンションの購入代価及び利息等相当部分が具体的な金額として区分されており、賦払の契約により明らかに区分されている場合に当たると認められる。したがって、本件マンションの購入代価及び利息等相当部分が具体的な金額として区分されており、賦払の契約により明らかに区分されている場合に当たると認められ、本件マンションの使用開始の日後の期間に係る利息等相当部分は取得費に当たらない。
転貸の目的となった建物の賃貸借契約の終了に伴い生じた債務免除益について3年以上の期間の不動産所得の補償であるか否かを判断するに当たり、その転貸に係る賃貸人の地位を承継する場合は、その賃貸借契約終了前後の1年当たりの賃貸料の額と新たに負担することとなる修繕費の額を基礎として判断するのが相当とした事例
裁決事例集 第82集
ポイント
臨時所得となる3年以上の期間の補償に該当するか否かについて、補償の期間が契約等で示されていない場合などは、補償に至った各種事情等を総合的にみて、補償に係る金額の算定の基礎とされるべき内容及びその金額に基づき判定するのが相当と解される。
この事例は、建物の賃貸借契約の終了後も一定の賃料収入が保証された上で生じた債務免除益が3年以上の期間の補償に該当するか否かにつき、判断の基礎となる1年当たりの減収額を、当該賃貸借契約終了前の1年当たりの賃貸料の額(収入していた金額の全部)とすべきか、同契約終了前後の1年当たりの賃貸料の額の差額に、新たに負担することとなる修繕費の額を加味した額(収入していた金額の一部)とすべきかが争われたものである。
要旨
原処分庁は、債務免除により補償されたのは請求人らがF支社から受領する年間賃貸料であり、そうすると債務免除益は3年以上の期間の不動産所得の補償には当たらない旨主張する。
しかしながら、補償に係る契約等において、補償に係る金額が3年以上の期間の補償に該当するか否かの判定について、賃借人が賃借物件を転貸しており、賃貸人との賃貸借契約期間の満了後は、賃貸人が、転借人との間で新たに賃貸借契約を結び、転貸人の地位を承継することに伴い補償されたような場合で、その内容が不動産貸付業務の形態の転換に伴い減少することとなる収入の額又は新たに負担することとなる費用の額を考慮した補償と認められる場合であれば、補償に係る金額が、減少することとなる収入の額又は新たに負担することとなる費用の額の3年以上の期間に相当する金額であるか否かで、臨時所得の要件である3年以上の期間の補償に該当するのかを判定するのが相当である。
したがって、賃貸借契約の終了に伴い、賃貸住宅に係る賃貸人たる地位を承継し、賃貸借契約終了前の賃借人(転貸人)に代わって賃貸住宅の入居者から賃貸料収入を得ることができた請求人らに係る1年当たりの減収額は、請求人らの所有する住宅の賃借料の額と転貸人が入居者から受領していた賃貸料の額から転貸人が負担していた修繕費の額を控除した額との差額とするのが相当であり、そうすると、F支社が請求人らに対して行った債務免除に係る補償の期間は3年以上の期間の不動産所得の補償に該当する。
参照条文等
参考判決・裁決
昭和59年1月24日裁決(裁決事例集No.27・63頁)、平成19年3月12日裁決(裁決事例集No.73・265頁)、平成20年4月15日裁決(裁決事例集No.75・260頁)
要旨
請求人は、在日A国大使館において外交官として勤務した期間中、専らA国において所得税を課せられ、日本において課税されていなかったこと、日○租税条約第○条及びウィーン条約第34条は、双方居住者としての二重課税を防止するために、派遣先国における居住者としての税務上の地位を排除していると解されることを理由に、所得税法第2条第1項第4号の「国内に住所又は居所を有していた期間」の判定に際し、当該期間を算入することは認められない旨主張する。
しかしながら、所得税法においては、外交官について、我が国の居住者として扱わない旨の規定はなく、所得税法第9条第1項第8号の規定及び所得税基本通達9-11の定めは、外交官がそれぞれの国の主権を代表する者である点を考慮し、国際慣例に従い、所得税の課税を免除する趣旨であり、外交官として本邦に赴任している期間中、これを居住者としないことまでを定めたものではない。
また、ウィーン条約第34条及び日○租税条約第○条は、外交官に対して、派遣先国内に源泉がある個人的所得等の特定の租税、賦課金を除き、派遣先国においてすべての賦課金及び租税を免除することを定めているにすぎず、外交官が派遣先国において居住者として扱われないことまで定めたものではない。
日本国籍を有しない居住者が非永住者に該当するか否かは、過去10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下であるか否かにより決するものであるところ、請求人は、本件勤務期間中、本邦に住所を有していたと認められ、当該期間は5年を上回るから、本件期間においては、非永住者以外の居住者と認められる。
飲食店事業に係る営業許可等の名義人である請求人に当該事業から生ずる収益は帰属しないとした事例(平成24年分の所得税の更正の請求並びに平成25年分の所得税及び復興特別所得税の更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の各通知処分、平成23年1月1日から平成25年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の各通知処分・全部取消し)
裁決事例集 第105集
ポイント
本事例は、飲食店事業(本件事業)に係る営業許可及び各契約等が請求人自身の名義により行われているものの、本件事業を支配管理し、その収益を享受している者は請求人ではないから、本件事業に係る所得は請求人には帰属しないとしたものである。
要旨
原処分庁は、飲食店事業(本件事業)に係る営業許可及び各契約等の名義人が請求人であること、並びに請求人が本件事業に係る開業届出書及び所得税の期限後申告書を原処分庁に提出していることなどを総合すれば、請求人が、本件事業から生ずる収益を享受している旨主張する。
しかしながら、請求人は、ともに本件事業に従事しているGの依頼に応じて当該各契約等を自らの名義に変更したにすぎず、Gは、請求人名義に変更後も本件事業の資金管理を行い、本件事業から生ずる利益を処分し、従業員の雇用及び労務管理を含む本件事業の運営を行っており、加えて、請求人とGとの間で、Gが従業員の立場で当該運営を行う旨の特段の合意があったとは認められないことからすると、本件事業から生ずる収益を享受しているのは、請求人ではなくGであると認められる。
参照条文等
要旨
請求人は、ソープランドに勤務する女性に交付した金員が所得税法第72条[雑損控除]第1項に規定する横領による損失に該当する旨主張するが、当該金員の交付については、請求人が別途提起した損害賠償訴訟の判決において、請求人から当該女性に対する贈与である旨判示していることからすれば、当該金員は請求人が当該女性に対して贈与したものと認めるのが相当であるから、当該金員の交付が所得税法第72条第1項に規定する横領による損失に該当する旨の請求人の主張には理由がない。
一括して売買された土地及び建物の購入の対価は、合理的な基準によりあん分して算定すべきであるとされた事例(平成28年分から平成30年分までの所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第128集
ポイント
本事例は、土地と建物が一括して売買され、当該売買契約において定められた土地及び建物それぞれの価額がその客観的な価値と比較して著しく不合理なものである場合には、所得税法施行令第126条第1項第1号イにいう「当該資産の購入の代価」は、合理的な基準により算定するのが相当であると判断したものである。
要旨
請求人は、土地及び建物を一括で3物件(本件3物件)買い受けて貸付けの用に供したところ、各売買契約書に記載された土地及び建物の各価額(本件各内訳価額)は第三者間での相対の商取引において合意された価額であって合理的な価額といえるから、当該各建物に係る所得税法施行令第126条《減価償却資産の取得価額》第1項に規定する「当該資産の購入の代価」は、本件各内訳価額に基づいて算定すべきである旨主張する。
しかしながら、固定資産税評価額は一般的に適切な時価を反映しているといえるところ、本件3物件の各売買代金総額は各固定資産税評価額総額を上回るのに対し、各建物価額はその固定資産税評価額を大きく上回る一方、各土地価額はその固定資産税評価額と同様か又は下回っている。本件においてそのような評価とすべき事情は見当たらず、本件各内訳価額に係る各建物価額は、各売買代金総額から過剰に価額が配分されたものというべきであり、客観的な価値と比較して著しく不合理なものである。そして、売主が土地及び建物を一括して譲渡する場合、建物の購入の代価について、売買代金総額を土地及び建物の各固定資産税評価額の価額比によりそれぞれあん分して算定することは、一般的には合理的な基準による算定であるといえるところ、本件各内訳価額に係る各建物価額についてはいずれも上記の不合理な場合に該当し、また、本件3物件の各固定資産税評価額が適正な時価を反映しているとはいえないような事情もないから、本件3物件に係る各建物の購入の代価は、本件3物件の各売買代金総額を土地及び建物の各固定資産税評価額比によりそれぞれあん分して算定すべきである。
なお、本件3物件のうち2物件の各建物に係る取得価額に加算すべき仲介手数料の金額等及び本件3物件の各仲介手数料に係る繰延消費税額等について、いずれも計算誤りがあると認められるため、原処分はその一部を取り消すべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
大阪地裁令和2年3月12日判決(税資270号順号13395) 那覇地裁平成20年8月6日判決(税資258号順号11001) 那覇地裁平成16年9月21日判決(税資254号順号9752)
一括払いの積立普通傷害保険の保険料のうち満期返戻金等の原資となる積立保険料部分は、業務遂行上必要な費用とは認められないから、保険料支払のための借入金に係る利息のうち、積立保険料に対応する額は、事業所得の金額の計算上必要経費とは認められないとした事例
裁決事例集 第46集 21頁
要旨
請求人は、積立普通傷害保険の保険料を、借入金により支払ったものであるが、当該保険契約に係る保険料は、傷害保険料と積立保険料から構成されており、積立保険料は積み立てられ、満期返戻金及びこれに加算される契約者配当として契約者に支払われることとなる。
すなわち、本件保険料のうち積立保険料は、満期返戻金等の原資となるものであって従業員の傷害を対象とした保険に係る保険料ではない。
したがって、積立保険料の支払は、請求人の業務の遂行上、通常かつ客観的な必要性に基づくものとは認められないから業務との関連性はない。また、積立保険料は、保険期間の満了又は解約のときに受ける一時所得の収入金額から控除すべきものと認められる。よって、積立保険料を請求人の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。
そうすると、原処分庁が本件借入金のうち積立保険料に相当する借入金の利息を事業所得の計算上必要経費に算入しなかったことは相当であると認められる。
不動産売買業を営む法人が、土地売買により生じた簿外収益の一部を同法人の実質的代表者に賞与として支給したものと認定し、源泉徴収に係る所得税の納税告知処分をしたことは適法であるとした事例
裁決事例集 第39集 332頁
要旨
不動産売買業を営む法人である請求人は、土地の売買により生じた簿外収益の一部とその収益を預け入れた簿外の請求人名義の普通預金の払戻金との合計金員3,200万円余を請求人の会計帳簿に計上せず、かつ、当該土地取引の代金の授受及び簿外普通預金の管理をしていた請求人の代表取締役の夫は、その使途を説明しないのであるが、[1]代表取締役の夫は、請求人の業務の指揮・監督をするなど実質的に請求人の経営の一切を支配しており、かつ、当該土地取引の代金の授受及び簿外普通預金の払出しを自ら行うなど、本件金員を自由に処分できる立場にあったこと、[2]本件金員は、その用途が明らかでないこと、及び[3]本件金員が請求人の費用等に充てられたとする証拠資料はないこと等の事実を総合すれば、本件金員は代表取締役の夫が個人的に費消したものと推認され、したがって、請求人は同人に対し賞与を支給したものと認められるので、その賞与について源泉徴収に係る所得税の納税告知処分をしたことは適法である。
保証債務の履行に伴う求償権放棄の取消通知が、消滅時効の援用により求償権の行使不能となったとしても、所得税法第152条に規定する更正請求ができないとした事例
裁決事例集 第50集 91頁
要旨
請求人は、被相続人が昭和63年3月に行った求償権放棄(債務免除)の通知を平成5年1月に取り消したところ、平成5年6月に主債務者から消滅時効の援用により求償権の行使不能となったのであるから、所得税法第152条の規定により昭和62年分の譲渡所得について更正請求ができる旨主張する。
しかしながら、次の事実からすると、本件求償債権は、被相続人が求償権放棄(債務免除)の通知を行った昭和63年3月で既に消滅していることが明らかであるので、所得税法第152条の規定に該当しないこととなる。したがって、更正をすべき理由がないとした本件通知処分は適法である。
- 被相続人が行った求償権放棄(債務免除)の通知書には、[1]金融機関及び関係者と協議の結果、主債務者であるG社の倒産を回避して事業を継続するために被相続人所有の土地を譲渡して、G社の借入金を弁済した、[2]被相続人がG社に有する求償債権36,076千円のうち、14,500千円を放棄する、[3]この結果、G社の財務体質が改善されると思う、旨記載されていること。
- G社は、昭和63年4月期の事業年度で14,500千円を雑収入に計上するとともに、現在まで事業を継続していること。
- 民法第519条は、債権者が債務者に債務免除の意思表示をしたときは、当該債権は消滅する旨規定し、この債務免除は債権者の一方的な意思表示により成立し、この意思表示は撤回できないと解されていること。
保証債務の特例を適用するに当たり、土地の譲渡代金が主債務者を経由して債務の返済に充てられている場合など、形式的には保証債務の履行といえない場合は、実質的にみて保証債務の履行であることが客観的に明らかであることが必要であるとした事例
裁決事例集 第82集
ポイント
所得税法第64条《資産の譲渡代金が回収不能となつた場合等の所得計算の特例》第2項に規定する保証債務の特例を適用するためには、原則として、その譲渡代金をもって主たる債務者の債務の返済に充てられることが必要であるところ、この事例は、請求人が譲渡した土地の譲渡代金が主債務者の口座に入金された後、同口座から金融機関に返済されるなど、形式的には保証債務の履行とはいえない場合において、実質的にみて保証債務の履行といえるか否かを、土地譲渡の経緯、譲渡代金の流れ、金融機関の処理状況等から判断したものである。
要旨
請求人は、物上保証していた土地の譲渡代金をいったん主債務者の口座に入金したが、その後直ちに当該口座から同額が金融機関に返済されているから、当該返済は実質的に請求人が保証債務を履行したものである旨主張する。
しかしながら、主債務者の口座へ入金された資金は、請求人からの借入金と経理処理された上、主債務者から金融機関へ返済していることから、当該返済は形式的には請求人による保証債務の履行ではなく、これが実質的にみて保証債務の履行であるといえるためには、保証債務の履行であることが客観的に明らかであることが必要であると解されるところ、土地譲渡の経緯、譲渡代金の流れ、金融機関の処理状況等からみて、請求人が保証債務を履行したことが客観的に明らかであったとは認められず、また、主債務者の資力、債務の返済状況等からすると、返済時点において保証債務を履行する必要性が客観的に明らかであったとも認めることができない。
したがって、当該返済は、形式的・実質的ともに請求人による保証債務の履行であるとは認められない。
参照条文等
要旨
借地人以外の第三者が貸地の底地を買うことは、貸地の地代収受権を取得することにほかならないものであり、投資利回りの点からも有利でないことから取引事例は極めて少なく、底地の価額は低くなるものであるにもかかわらず、原処分庁がこれを借地人が底地を取得する場合と同様に考えて一般的な借地権割合を基にその底地価額を評価したことは適当でなく、借地人でない第三者に底地を譲渡する場合に通常成立すると認められる底地価額として不動産鑑定士が評価した価額を時価とするのが適当であって、所得税法第59条第1項第2号の規定に該当するものであるとした原処分は相当でない。
単純承認により相続した土地(買換資産)を譲渡した場合の譲渡所得の金額の計算において、控除できる土地の取得費は、租税特別措置法第37条の3《買換えに係る特定の事業用資産の譲渡の場合の取得価額の計算等》の規定に基づき算定した取得価額によることが相当であるとした事例
裁決事例集 第65集 228頁
要旨
請求人は、請求人の母(被相続人)が租税特別措置法第37条第1項の規定を適用して取得した買換資産について、母から相続した後に譲渡したものであるから、所得税法第60第1項の規定が適用され、母の購入金額等が取得価額となると主張する。また、租税特別措置法第37条の3に規定する「適用を受けた者」とは、買換資産を取得した被相続人であることから、請求人に適用されるものではない旨主張する。
所得税法第60条第1項は、相続等により取得した資産の取得費等の計算においては、その相続した者が引き続きこれを所有していたものとみなすと規定し、取得時期及び取得価額を引き継ぐこととしており、取得価額は、別段の定めがあるものを除き、被相続人が取得に要した同法38条に規定する「資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額」となる。
ところで、請求人が譲渡した資産は、被相続人が生前において租税特別措置法第37条第1項を適用して取得した買換資産であり、これを単純相続により取得した後に請求人が譲渡したものであるから、この場合の取得価額についても、所得税法第60条第1項の規定が適用され、被相続人の取得価額が引き継がれることとなるところ、買換資産の取得価額にかかる租税特別措置法37条の3の規定は、所得税法38条に規定する「別段の定め」に該当するものであるから、被相続人の取得価額は、租税特別措置法37条の3の規定により計算された価額となり、請求人は、この価額を所得税法60条1項の規定により、被相続人の取得価額として引き継ぐこととなる。
したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
要旨
請求人は、本件J店に係る客単価を16,000円と認定してされた原処分の推計課税は事実誤認に基づく違法なものである旨主張する。
しかしながら、基本的な料金設定について本件J店より低額であった本件L店における平均客単価が16,116円であることなどからすれば、本件J店の客単価は少なくとも基本料金のうちの最低料金相当額である16,000円を上回ることが容易に推認されるのであり、そうであるとすれば、本件J店の客単価を16,000円であるとしてされた原処分の推計方法は合理性を有すると認められる。
参照条文等
太陽光発電に係る取組が事業所得を生ずべき事業には該当しないとされた事例( 平成28年分から平成30年分までの所得税及び復興特別所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分(平成30年分については、いずれも再調査決定による一部取消し後のもの)、 令和元年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・ 棄却、 一部取消し)
裁決事例集 第129集
ポイント
本事例は、審査請求人が、太陽光発電への取組に係る損失の金額を事業所得の金額の計算上生じたものとして所得税等の確定申告をしたところ、当該取組は、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務とはいえず、事業に該当しないとしたものである。
要旨
請求人は、請求人が行った太陽光発電への取組については営利性、有償性及び反復継続性を有し、危険負担を負いつつ太陽光発電設備等の規格・規模の検討と選定を行っているなどの諸般の要素に照らし判断すると、所得税法第27条《事業所得》に規定する事業に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人は大規模な太陽光発電設備を取得しておらず、請求人の自宅屋根に設置した太陽光設備から生じる売電収入は減価償却費に満たない小規模なものであるから、同設備に係る業務は営利性及び物的設備に乏しく、加えて人的設備も存在しない。したがって、請求人の太陽光発電への取組は、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務ということができないから、所得税法第27条に規定する事業に該当しない。
なお、内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(国送法)第6条の3《財産債務に係る過少申告加算税又は無申告加算税の特例》第1項の規定による過少申告加算税の軽減措置及び同条第2項の規定による過少申告加算税の加重措置は、いずれも財産又は債務に関して生ずる所得で政令で定めるもの(国送法施行令第12条の3《財産債務に係る過少申告加算税又は無申告加算税の特例の対象となる所得の範囲等》第1項各号及び国送法施行規則第16条《財産債務に係る過少申告加算税又は無申告加算税の特例の対象となる所得の範囲》各号)に対する所得税等に関し更正があり、過少申告加算税が課される場合などに適用されるものであるところ、本件の各更正処分のうち、上記の財産又は債務に関して生ずる所得で同項で定めるものに対する所得税に関し更正があったといえるのは、請求人の不動産所得の金額の計算における青色申告特別控除額に係る更正がされた部分であり、それ以外の部分については、請求人の本件各年分の所得税等に係る各過少申告加算税の額の算定において、上記各措置は適用されない。
参照条文等
国税通則法第65条第1項 所得税法第27条第1項、第37条第1項、同法施行令第63条 内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律第5条第1項、第6条第1項及び第2項、第6条の2第1項第1号、第6条の3第1項及び第2項、同法施行令第12条の3第1項、同法施行規則第16条
建物の取壊し費用などについて不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないとした事例(令和元年分から令和3年分の所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第139集
ポイント
本事例は、建物の取壊し費用などが当該建物の所有を目的とする借地権の取得費に算入されるものであり、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないとしたものである。
要旨
請求人は、自己の所有する土地に係る借地権(本件借地権)及び本件借地権上の建物(本件建物)を訴訟上の和解により取得しており、当該和解に伴う弁護士費用(本件弁護士費用)、本件建物の賃借人に対する移転補償料(本件移転補償料)、本件建物の取壊し費用(本件取壊し費用)及び本件建物の取壊しによる未償却残高は、いずれも不動産事業に係るものであるから、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入される旨主張する。
しかしながら、請求人は、当初から本件建物を取り壊して本件借地権を利用する目的で、本件建物及び本件借地権を訴訟上の和解により取得したことが明らかであると認められ、本件弁護士費用、本件移転補償料、本件取壊し費用及び本件建物の取壊しによる未償却残高は、いずれも本件借地権の取得に関連して発生した費用であるから、所得税法第38条《譲渡所得の金額の計算上控除する取得費》第1項の資産の取得に要した費用として本件借地権の取得費に算入されるものであり、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。
参照条文等
参考判決・裁決
仙台高裁令和3年9月30日判決(税資271号順号13610) 平成元年10月6日裁決(裁決事例集No.38) 昭和48年3月31日裁決(裁決事例集No.6)
弁護士である破産管財人に支払われた破産管財人報酬は、所得税法第204条第1項第二号に規定する弁護士の業務に関する報酬に該当し、破産者の源泉徴収義務及び納付義務に関する手続は破産管財人が負うものとした事例
裁決事例集 第63集 212頁
要旨
請求人は、破産管財業務が弁護士法第3条に規定する官公署の委嘱に基づく法律事務に該当しないので、破産管財人報酬は所得税法第204条第1項第2号に規定する弁護士の業務に関する報酬ではない旨主張する。
しかしながら、もともと破産管財業務には法律的判断を伴う事務を行うことが予定されている上、本件破産事件において破産管財人に選任された請求人自身弁護士であり、かかる破産管財人には弁護士の中から選任されているのが破産実務の現状であること、本件破産管財業務をみると、売掛金請求訴訟や集合債権譲渡担保権者に対する否認権行使訴訟を提起するなど法律行為が含まれていることなどを総合考慮すると、請求人が行った破産管財業務は弁護士法第3条第1項に規定する官公署の委嘱に基づく法律行為に該当するものであるから、かかる破産管財人報酬は弁護士の業務に関して支払われた報酬であると認めるのが相当である。
請求人は、破産管財人報酬は共益費用の性質を有する上、破産者は破産財団に属する財産に対して何ら権利を有しないことから、破産者に源泉徴収義務はない旨主張する。
しかしながら、破産管財人の報酬は、財団債権として破産財団から支払われるが、この破産財団は破産者の財産であることには変わりがないことから、破産管財人の報酬の支払に伴う経済的出捐の効果が最終的に帰属する者は破産者であり、この意味において所得税法204条1項にいう支払をする者とは、破産者を指すものといわざるを得ない。ただ、破産宣告により破産財団に対する管理処分権は破産管財人に専属することになるところ、租税の申告納付は破産財団の管理処分の一環とみることができるのであるから、破産者の源泉徴収義務及び納付義務に関する手続は、破産管財人が負うものと解するのが相当である。
請求人は、異議決定により本件納税告知処分の原因である「給与」の支払がないとされたのであるから、本件納税告知処分は違法である旨主張する。
ところで、国税通則法36条2項は、納付すべき税額、納期限及び納付場所を納税告知書に記載すべきものとするにとどまり、受給者名、支払年月日など個々の源泉所得税を識別するに足りる事項の記載までは要求していないから、たとえ法定納期限、所得の種類等に誤りがあったとしても、告知額が正当であるときは、それだけの理由で当該納税告知処分が違法となるものではないと解すべきである。ただ、当該納税告知処分が源泉所得税の納税義務の履行を求めるものであることからすれば、当該納税告知書に記載された所得の種類、法定納期限、年月ごとの本税額等の事項から、客観的にこれに包含されるものと認識できる範囲(同一性が認められる範囲)を超えることは許されないと解するのが相当である。本件について判断すると、本件管財人報酬という同一の支払に係る同一の法定納期限の未納の源泉所得税が告知処分時に客観的に存在しており、所得の種類及び告知額の記載事項に誤りがあるものの、異議決定により減額された本税額等は再納税告知処分等の告知額の範囲内であることなどを考慮すると、本件においては、客観的にその対象となる支払が包含されているものと認識できる範囲(処分の同一性の範囲)にあると認められるから、請求人の主張は採用できない。
歯科矯正治療費に係る事業所得の総収入金額に計上すべき時期について矯正装置装着時とするのが相当とした事例( 平成26年分の所得税及び復興特別所得税の更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分、 平成26年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分、 平成26年1月1日から平成26年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分、 平成26年1月1日から平成26年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・ 棄却、 一部取消し)
裁決事例集 第108集
ポイント
本事例は、歯科矯正治療費に係る事業所得の総収入金額に計上すべき時期について、請求人と患者との契約実態などを踏まえた上で矯正装置の装着時とするのが相当であるとしたものである。
要旨
請求人は、歯列矯正治療に係る治療費(矯正診療費)の事業所得に係る総収入金額の計上時期について、矯正装置の装着等の時に患者(本件各患者)に対し、治療費用等を請求する旨が記載された書面(本件書面)を交付しているものの、本件書面は、矯正診療費の総額などを示して患者の便宜を図るために交付するものにすぎず、本件各患者に対して矯正診療費の支払を請求するものではないことから、当該矯正診療費を一括又は分割により支払を受けたそれぞれの日である旨主張する。
しかしながら、歯列矯正治療は、通常数年の治療期間を要すること、請求人の歯列矯正治療に対応する中核的な治療は矯正装置の装着であることに照らすと、請求人と本件各患者との間の契約の実態も踏まえて、収入の原因となる権利の確定時期を決するべきであるところ、請求人は、本件各患者が矯正診療費の金額、予定治療期間及び治療上の注意事項を承諾した後に、本件各患者に対し矯正装置を装着していること、本件各患者の矯正診療費が治療開始後の本件各患者都合により返却されることはないことなどからすれば、請求人は、本件各患者の治療開始時、すなわち、矯正装置の装着時に本件各患者の矯正診療費の全額について請求する権利を有しているものと認められる。したがって、本件各患者に係る矯正診療費の事業所得の総収入金額に収入すべき時期は、矯正装置の装着時とするのが相当である。
なお、矯正診療費に係る収入すべき時期の認定に一部誤りがあったことから一部取消しとなった。
参照条文等
特例上場株式等の特定口座への受入れの際に、証券会社に対し実際の取得価額を証明する取引報告書を提出していないことから、実際の取得価額に基づいて株式等に係る譲渡所得の金額の計算上控除すべき取得費を計算することはできないとした事例
裁決事例集 第75集 215頁
要旨
請求人は、本件株式の実際の取得価額(以下「本件実際取得価額」という。)を証明できる取引報告書を所持しているから、たとえ本件株式がA証券会社の特定口座にみなし取得価額で受け入れられていても、本件実際取得価額を取得費として認めるべきである旨主張するが、特定口座に受け入れられる特例上場株式等の取得価額を本件実際取得価額とするためには、当該取引報告書を証券会社に提出して営業所の長の確認を受ける必要があるところ、請求人は当該取引報告書を証券会社に提出していない。そうすると、請求人は、当該取引報告書を所持しているものの、同報告書に基づいて本件実際取得価額で特定口座に受入れをするための手続を履行しなかったのであるから、本件実際取得価額に基づいて本件株式に係る譲渡所得の金額の計算上控除すべき取得費を計算することはできないというべきである。
上場株式等の譲渡を行う個人投資家の特定口座制度の利用等については、その個人投資家の自由な判断にゆだねられており、請求人は、特定口座を利用せず、あるいは特定口座を設定しても本件株式を特定口座に保管の委託をせずに本件株式を譲渡することにより本件実際取得価額をもって本件株式の譲渡に係る譲渡所得の金額を計算することもできたところ、請求人が自由な判断に基づいて、特定口座制度の利用を選択し、かつ、本件株式を当該口座へ保管の委託をしたものというべきであるから、国の制度変更により本件実際取得価額に基づいて本件株式に係る譲渡所得の金額を計算することができなくなったということはできない。
要旨
請求人は、同人を契約者、その妻を被共済者とする生命共済契約により受領した死亡保険金について、本件共済掛金の負担者は妻であるから、みなし相続財産に該当し非課税所得となる旨主張する。
しかしながら、本件共済契約の契約者及び本件死亡保険金の受取人は請求人であり、本件共済掛金は請求人名義の預金口座から口座振替の方法により支払われていることは、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、特に反証のない限り、本件共済契約の契約者である請求人が、本件共済掛金の実質的な負担者であると事実上推定され、当審判所の調査によっても、この推定を覆すに足りる証拠資料は見当たらなかったから、本件死亡保険金は、みなし相続財産には該当せず、非課税所得にも該当しないこととなり、一時所得に該当することとなる。
県民住宅経営安定化促進助成制度に基づいて一括交付を受けた金員は、所得税法施行令第8条第2号に掲げる所得に類する所得に当たらず、臨時所得には該当しないとした事例
裁決事例集 第91集
要旨
請求人は、県民住宅経営安定化促進助成制度に基づいて一括交付を受けた金員(本件金員)は、不動産所得の必要経費(支払利息)を補填するために県優良民間賃貸住宅等利子補給制度に基づき交付を受けていた利子補給金の17年間分を一括で受けたものであるから、本件金員に係る所得は、所得税法施行令第8条《臨時所得の範囲》第2号に掲げる所得に類する所得に当たり、所得税法第2条《定義》第1項第24号に規定する臨時所得に該当する旨主張する。
しかしながら、本件金員は、賃借人である県住宅供給公社又は転借人である入居者に請求人の所有不動産を使用させることを約することにより受ける対価ではないところ、所得税法施行令第8条第2号に規定する資産を使用させることを約することにより受ける「対価」そのものではなく、また、当該「対価」としての性質を有するものでもないから、本件金員に係る所得は、同号に掲げる所得に類する所得に当たらない。したがって、本件金員に係る所得は、所得税法第2条第1項第24号に規定する臨時所得には該当しない。
参照条文等
確定申告において国外居住親族に係る扶養控除の適用を受ける場合には、法令に規定する書類の添付等をする必要があるとした事例( 平成28年分から令和2年分までの所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分、 平成29年分の所得税及び復興特別所得税に係る還付金の充当処分・棄却)
裁決事例集 第130集
ポイント
本事例は、確定申告において国外に居住する親族について扶養控除の適用を受ける場合には、「国外居住親族の生活費又は教育費に充てるための支払を必要の都度、各人に行ったことを明らかにするもの」の添付等をする必要があるとしたものである。
要旨
請求人は、所得税法施行令第262条《確定申告書に関する書類等の提出又は提示》第3項第2号に規定する送金関係書類の添付等は、所得税法第84条《扶養控除》第1項に規定する扶養控除の適用要件ではなく、国外に居住する親族が所得税法所定の扶養親族であることの立証がなされているのであれば扶養控除の適用がある旨主張する。
しかしながら、国外に居住する親族について扶養控除を適用するためには、法令に規定する書類の添付等をする必要があるところ、請求人から提出された書類はこれに該当しない。また、その記載内容を踏まえても、当該書類は、所得税法施行規則第47条の2《確定所得申告書に添付すべき書類等》第6項に規定する「国外居住親族の生活費又は教育費に充てるための支払を必要の都度、各人に行ったことを明らかにするもの」であるとは言い難い。したがって、扶養控除の適用はない。
参照条文等
国税通則法第57条第1項 所得税法第2条第1項第34号、第34号の2、第34号の3及び第34号の4、第84条第1項、第120条第3項第2号 所得税法施行令第262条第3項 所得税法施行規則第47条の2第6項
参考判決・裁決
平成23年4月18日裁決(裁決事例集No.83) 広島高裁昭和61年8月28日判決(税資153号581頁) 大阪高裁平成10年7月31日判決(税資237号971頁) 最高裁昭和62年10月30日第三小法廷判決(民集152号93頁)
社債と題する書面の額面金額と発行価額との差益は貸付金利息であると認められ、期間の経過により直ちに利息債権が発生し収入の原因となる権利が確定するものとした事例
裁決事例集 第115集
ポイント
本事例は、社債と題する書面の額面金額と発行価額との差益が貸付金利息であると認められ、期間の経過により直ちに利息債権が発生し収入の原因となる権利が確定するものと解されるから、当該差益のその年に対応するものについては、その年分の雑所得に係る総収入金額に算入すべきであるとしたものである。
要旨
請求人は、医療法人から発行を受けた社債と題する書面(本件債券)の額面金額と発行価額との差益(本件差益)について、本件債券の契約によると本件債券の償還日までは本件差益の支払を請求することができないから、本件差益の収入すべき時期は、本件債券の償還日である旨主張する。
しかしながら、本件債券の契約は、請求人と当該医療法人との間における当該償還日を弁済期として、請求人が払い込んだ金員(本件払込金)を貸し付けた契約(本件契約)であり、本件差益は、当該医療法人が本件契約成立時から弁済期までの間、本件払込金を使用することの対価、すなわち利息であると認められる。そして、貸付金利息は、元本利用の対価であって元本が返還されるまで日々発生するものであるから、特段の事情のない限り、現実の支払の有無を問わず、期間の経過により直ちに利息債権が発生し収入の原因となる権利が確定するものと解される。そうすると、本件差益のその年の1月1日から12月31日までの期間に対応する部分については、その年分の雑所得に係る総収入金額に算入すべきである。
なお、本件利息の計算に当たって、原処分庁は、一定の年複利率を用いて算出していないため、これにより当該総収入金額に算入すべき金額を計算すべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭53年2月24日第二小法廷判決(民集32巻1号43頁) 平成29年8月2日裁決(裁決事例集No.108) 平成26年9月1日裁決(裁決事例集No.96)
要旨
所得税法第73条第2項に規定する医療費とは、医師又は歯科医師による診療又は治療、治療又は療養に必要な医薬品の購入その他医療又はこれに関連する人的役務の提供の対価のうち通常必要であると認められるものとして政令で定めるものをいうと規定され、これを受けて所得税法施行令第207条第1号ないし第6号において、医療費たる費用が限定列挙されているところであるが、糖尿病の治療のために入院していた者が通院治療に切り替わった後も入院中と同じ食事を摂るため、医師の指導を受けて給食センターに依頼した病人食に係る食事代は、上記規定中に食事代について何ら定めがなく、また、本件食事代が医薬品の購入の対価でないことは明らかであるから、本件食事代は医療費控除の対象とならない。
要旨
請求人は、韓国の芸能人を日本国内へ招へいし、芸能人の役務提供に係る対価として芸能報酬等を韓国芸能法人に支払っているが、その芸能報酬等には、衣装代、制作費、コミッション代、航空チケット代等の経費が含まれており、源泉徴収義務があるのは、芸能人の報酬に関してのみであるから、芸能人に支払われていない実費であるところの衣装代等の経費は韓国芸能法人を経由した支払であっても、源泉所得税の対象とならない旨主張する。
しかしながら、芸能人の人的役務の提供に係る対価には、国内において当該事業を行う者が当該人的役務の提供に関して支払を受けるすべての対価が含まれ、また、源泉徴収をしなくてもよいことに取り扱われている非居住者等のために負担する旅費等にも該当しないことから、原処分は相当である。
請求人が不動産業者との間で締結した不動産売買契約は、「土地及び建物」と「賃貸人の地位」について別個に認識し、それら2つの財産を当該不動産売買契約の目的としたとみるのが相当であり、請求人が受領した売買代金の一部は、「賃貸人の地位」の譲渡の対価として受領した金員であると認められ、貸付けに起因する所得であることから不動産所得に該当するとした事例
裁決事例集 第125集
ポイント
本事例は、請求人が不動産売買契約に伴い受領した売買代金について、当該不動産売買契約に定められた契約条項の内容や、契約前後の請求人及び売買契約の対象となった不動産の借主の事情を把握し、当該売買に係る契約解釈を的確に行い、請求人が受領した売買代金の一部について「賃貸人の地位」の対価として受領したと判断したものである。
要旨
請求人は、賃貸していた不動産の賃借人が送金した金員(本件解約金相当額)は、当該不動産を含む不動産(本件不動産)の売買契約(本件売買契約)に基づく売買代金に含まれており、本件不動産の対価として請求人が譲受人から受領したものであるから譲渡所得に該当する旨主張する。
しかしながら、本件売買契約は、その特約条項によれば、本件不動産の所有権のみならず、本件不動産の賃貸借契約(本件賃貸借契約)に基づく賃貸人たる地位や、本件賃貸借契約の解約申入れに基づき賃借人から支払われる本件解約金相当額を受領する地位も移転させる趣旨のものと認められるところ、①本件解約金相当額の性質は、本件賃貸借契約に基づく中途解約金であること、②本件賃貸借契約が合意解約され、本件解約金相当額が支払われることが本件売買契約の締結より前に確定していたこと、③本件売買契約に付された不動産の価格が解約金とは別に形成されていたこと、及び④本件売買契約における売買代金から本件解約金相当額を除いた金額に相当する価格が、本件不動産の転売価格と均衡することが認められた。これらの諸事情からすると、本件売買契約は、本件解約金相当額を含む売買代金総額の全てを本件不動産の譲渡対価とする趣旨のものであったとは解し難い。また、本件売買契約の前に本件賃貸借契約が合意解約され中途解約金が支払われることが確定していた本件では、「賃貸人の地位」の交換価値が、本件不動産そのものの交換価値から独立した「本件解約金相当額を受領する地位」の価値として客観的に把握することができた。これらのことからすれば、請求人と譲受人は、売買された不動産と「賃貸人の地位」について、それぞれ別個の価格を認識し、それら2つの財産を本件売買契約の目的としたとみるのが相当であり、本件解約金相当額は、請求人が「賃貸人の地位」の対価として受領した金額であると認められる。そして、本件解約金相当額が、本件賃貸借契約が合意解約されることを前提として「残賃貸借期間の賃料の補償」として支払われることが確定したものであり、本件賃貸借契約に基づく賃貸人の地位に包含されるものであることからすると、請求人が受領した本件解約金相当額は、不動産の貸付けに起因して発生した所得であるといえ、不動産所得に該当する。
参照条文等
参考判決・裁決
福岡高裁平成30年11月27日判決(税資268号順号13213) 平成24年8月2日裁決(裁決事例集№88)
請求人が同族会社に支払った月額賃料と原処分庁が算定した類似建物月額賃料との差額が1.4倍ときん少であっても、所得税の負担を不当に減少させる結果となっているとして所得税法第157条の規定の適用をした課税処分は正当であるとした事例
裁決事例集 第55集 196頁
要旨
請求人は、仮に類似建物月額賃料を一応の基準としても、本件月額賃料は類似建物月額賃料の1.4倍程度のものであり、類似建物月額賃料との比率の開差は極めて合理的な偏差の範囲にあり、著しく過大なものではないから、本件賃料の決定行為に不当なものはない旨主張する。
しかしながら、所得税の負担を不当に減少させる結果となったか否かについては、単に基準となるべき適正な賃料との比率の開差の大小のみによって一律に判断すべきものではなく、その基準となるべき適正な賃料に基づいて算出した納付すべき税額と請求人が決定した賃料に基づいて算出した納付すべき税額とを比較し、その税額のかい離がどの程度であるかを考慮した上で判断すべきものと解するのが相当である。
請求人の場合、本件病院用建物に係る本件月額賃料の決定は、同族会社とその関係人である請求人であるがゆえになしえた行為又は計算であることが認められ、請求人のこのような行為は、純経済人の行為として不自然・不合理な行為又は計算によるものであり、その結果本件月額賃料が不当に高額なものとなっており、請求人の所得税の負担を不当に減少させているものと認められる。
請求人が支出したデジタルWEBコンテンツの購入代金等の中には、当該コンテンツの販売のあっせん活動に不可欠と認められる部分の支出があり、当該支出は、客観的にみて、請求人の事業所得を生ずべき業務と直接関係を持ち、かつ、業務の遂行上必要な費用であったといえるから、事業所得の金額の計算上必要経費に算入することができるとした事例(平成29年分の所得税及び復興特別所得税の更正をすべき理由がない旨の通知処分・一部取消し)
裁決事例集 第126集
ポイント
本事例は、デジタルWEBコンテンツの購入代金等のうち、当該コンテンツの販売のあっせん活動に不可欠と認められる部分の支出について、事業所得の金額の計算上必要経費に算入することができると判断した事例である。
要旨
請求人は、連鎖販売取引の方法によりデジタルWEBコンテンツの販売のあっせんを事業(本件事業)として営んでおり、請求人が支払ったデジタルWEBコンテンツの購入代金等(本件支出)は、本件事業を行い、本件事業に係る収入を得るためのものであり、事業所得を生ずべき業務と直接関係を持ち、かつ、業務の遂行上必要な支出であることから所得税法第37条《必要経費》第1項に規定する必要経費に該当する旨主張する。
しかしながら、デジタルWEBコンテンツの購入は、その交換価値が上昇することにより将来的に利益が得られる投機目的にあったと考えられる。もっとも、本件事業を行うためには、デジタルWEBコンテンツの販売会社の会員として会員登録をして会員IDを取得する必要があり、会員IDを取得するためには、デジタルWEBコンテンツを購入しなければならなかった。そして、デジタルWEBコンテンツの購入が連鎖販売取引の特定負担として位置づけられていたことからすると、当該購入にはデジタルWEBコンテンツの販売のあっせん活動に不可欠な会員IDを取得するための条件が含まれていたといえる。そうすると、本件支出のうち、会員IDを取得するためにした支出は、客観的にみて本件事業と直接関係を持ち、かつ、本件事業の遂行上必要な費用であると認められるので、本件支出のうち当該部分は、所得税法第37条第1項に規定する必要経費に該当する。
参照条文等
請求人が有する破産会社に対する売掛債権の貸倒損失の計上時期は、配当可能な財産がなくその全額が客観的に回収不能となったと認められる破産手続終結の決定がなされた時点であるとした事例
裁決事例集 第80集
要旨
請求人は、平成16年に取引先であるG社の破産管財人から受けたファックスにより、G社の破産終結を知り得たのであるから、所得税基本通達51-12《回収不能の貸金等の貸倒れ》の定めにより、請求人がG社に対して有する債権の本件貸倒損失の計上時期は平成16年分となる旨主張する。
しかしながら、請求人が当該ファックスの受信時にG社の破産終結を知り得た事実は認められるものの、裁判所が破産法人に配当可能な財産がないことを認めた場合には、廃止決定又は終結決定をして、当該法人の登記が閉鎖されることとされており、これらの決定がなされた時点で当該破産法人は消滅することからすると、この時点において、当然、破産法人に配当可能な財産はないのであって、当該決定等により請求人がG社に対して有する債権もその全額が客観的に回収不能となったと認めるのが相当である。よって、請求人の本件貸倒損失の計上時期は、G社の破産手続終結の決定がなされた平成14年分となる。
参照条文等
請求人が譲渡したゴルフ会員権の実質は、会員権に内包されているゴルフ場施設の優先利用権が消滅した後の金銭債権である預託金返還請求権と認められ、譲渡所得の基因となる資産には該当しないから、その譲渡による損失の金額は他の所得金額と損益通算することはできないとした事例
裁決事例集 第61集 246頁
要旨
請求人は、預託金会員制のゴルフ会員権である本件会員権に係る当該施設の優先利用権は消滅しておらず、請求人が譲渡した本件会員権はゴルフ会員権であるから、その譲渡による損失の金額は他の所得金額と損益通算を認めるべきである旨主張する。
しかしながら、本件ゴルフ場の敷地及び建物は、競売により第三者の所有となり、かつ、本件ゴルフ場経営会社の本件会員権に係る債権債務が新所有者に引き継がれていないこと等からすると、本件ゴルフ場経営会社が本件ゴルフ場の会員に対して、本件ゴルフ場施設を利用させることができなくなった場合には、当該施設の優先利用権は消滅したものと解される。
そうすると、請求人が譲渡した本件会員権の実質は、本件会員権に内包されている本件ゴルフ場施設の優先利用権が消滅した後の金銭債権である預託金返還請求権と認めるのが相当であり、譲渡所得の基因となる資産には該当しないから、本件損失の金額を他の所得金額と損益通算することはできない。
要旨
請求人は、所得税法施行令第165条第2項第2号かっこ書の規定は、他に職業を有していたとしても納税者の事業に専従者として貢献し、その職分を果たす限りは、その期間も当該事業に専ら従事する期間に含むとする趣旨であるから、請求人の妻が請求人の事業に専ら従事していた期間は、週1日だけではなく、他の病院に勤務していた週5日も含まれ、同人は青色事業専従者に該当する旨主張する。
しかしながら、同号の規定の趣旨は、他の職業を有する場合、その職業に従事する期間は納税者の事業に専ら従事することが通常あり得ないためであり、この趣旨の下で、同号かっこ書の規定は、例外的に、他に職業を有するものであってもその職業に従事する期間が短い者やその他納税者の事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者を除くとしているものと解するのが相当であるところ、本件については、同人が他の病院に勤務している期間は、請求人の事業に従事することができなかったと認められるから、同人が請求人の事業に専ら従事していた期間は週1日のみであり、同人は青色事業専従者に該当しない。
請求人の帳簿書類の備付け及び記録の不備の程度は甚だ軽微であり、申告納税に対する信頼性が損なわれているとまではいえないことから、所得税法第150条第1項に基づく青色申告の承認の取消処分は、違法とはいえないものの不当な処分と評価せざるを得ないとした事例
裁決事例集 第81集
要旨
原処分庁は、請求人は、原処分庁所属の調査担当職員に、不動産所得に係る帳簿は作成していないとして現金出納帳を提示しなかったことから、現金出納帳を備え付けていないものと認められ、この事実は、請求人の不動産所得に係る帳簿書類の備付けが所得税法第148条《青色申告者の帳簿書類》第1項に規定する財務省令で定めるところに従って行われていない場合に該当するとともに、不動産所得に係る取引を記載した伝票を提示しなかっただけでなく、その存在を明らかにしなかったことから、当該伝票について確認することができず、帳簿書類の備付け、記録及び保存が正しく行われているか否かを判断することができなかったのであるから、同法第150条《青色申告の承認の取消し》第1項第1号に規定する青色申告の承認の取消事由に該当する事実がある旨主張する。
しかしながら、青色申告の承認取消処分を行うか否かの判断に当たっては、所得税法第150条第1項第1号に該当する事実が形式的に存在するか否かだけでなく、請求人の業種業態、事業規模に応じた帳簿書類の備付け及び記録の状況、帳簿書類の提示の状況等の個々の事情をも総合的に勘案し、真に青色申告を維持するにふさわしくない場合に、取消処分を行うべきであるところ、請求人の帳簿書類の備付け、記録及び保存には、同号の青色申告の承認の取消し事由に該当する事実があるとは認められるものの、請求人の帳簿書類の備付け及び記録の不備の程度は、甚だ軽微なものと認められ、また、請求人が伝票のほか、通帳及び領収書等を集計して計算した各年分の所得金額は、十分正確性が担保されていると認められるから、帳簿書類の備付け及び記録の不備により請求人の申告納税に対する信頼性が損なわれているとまではいえない。
また、請求人が自発的に伝票の存在を主張しなかった、又は提示しなかったからといって、直ちに原処分庁が請求人の記帳状況を確認できない状態であったとも認められないことから、これらの事情を総合勘案すると、本件取消処分は、違法とはいえないものの、真に青色申告を維持するにふさわしくない場合とまでは認められないから、不当な処分と評価せざるを得ず、これに反する原処分庁の主張には理由がない。
参照条文等
ポイント
この事例は、1年間に延べ半年近くにわたりG国に滞在し取締役社長として業務を行うなどしていた請求人の生活の本拠について、請求人の国内外での①滞在日数、②生活場所及び同所での生活状況、③職業及び業務の内容・従事状況、④生計を一にする親族の居住地、⑤資産の所在、⑥生活に関わる各種届出状況等を総合的に勘案し、日本の居宅にあったと判断したものである。
要旨
請求人は、G国に設立されたH社の取締役社長として同国に長期間滞在し同社の業務に従事しているから、平成21年においては、請求人がG国で起居していたd居宅が生活の本拠である旨主張する。
しかしながら、①請求人は、平成21年中はほぼ毎月日本に入国し、その都度、半月程度又は1か月程度滞在し、年間の日本での滞在日数はG国での滞在日数を上回っている。②請求人の生活場所及び同所での生活状況を比較すると、請求人が日本での滞在中に起居していた請求人所有のb町居宅は、請求人が日本へ入国した際のH社の業務や通院のために滞在する場所であるとともに、生計を一にする妻と同居して過ごす家庭生活を営む唯一の場所でもあり、請求人の全生活との関連が深い場所であるのに対し、G国のd居宅は、請求人が同国で業務を行う都合上滞在する場所であり、b町居宅と比べて請求人の全生活との関係は希薄である。③請求人は、平成21年中延べ半年以上も日本に滞在しH社の業務を行っており、請求人のH社での業務はG国及び日本の双方で行っていたものである。④請求人の妻は継続してb町居宅に居住し同所を住民登録地としている。⑤請求人は、日本において居住用資産であるb町居宅を所有しているが、G国には不動産は所有していない。⑥請求人は住民登録地をb町居宅の所在地とし、自身の公的年金等の各支払者に対して自己の住所を同所在地として届け出ているほか、日本国内で生活する上で有用な健康保険の被保険者の資格を保有し続けている。
以上の諸事情を総合すると、客観的に請求人の平成21年中の生活の本拠(全生活の中心)たる実体を具備していたのは、G国にあるd居宅ではなく日本のb町居宅であったと認定するのが相当である。
参照条文等
所得税法第2条第1項第3号、第5号、第5条第1項 民法第22条
参考判決・裁決
最高裁昭和29年10月20日大法廷判決(民集8巻10号1907頁) 最高裁昭和32年9月13日第二小法廷判決(裁Web、最高裁判所裁判集民事27号801頁) 最高裁昭和35年3月22日第三小法廷判決(民集14巻4号551頁) 最高裁平成23年2月18日第二小法廷判決(判時2111号3頁)
譲渡した土地には建物が存するが、建物の使用が主な目的でないこと及び建物が建築されている部分は極めて僅かであること等から、所得税基本通達38-8の2の(1)のハの定めにより使用開始の日を判定することが相当であるとした事例
裁決事例集 第92集
要旨
請求人は、土地を譲渡したことによる分離長期譲渡所得の金額の計算上、当該土地(本件各土地)の上に存する建物(本件各建物)を事業の用等に供したことはないから、所得税基本通達38-8の2《使用開始の日の判定》の(1)のロの定めにより、本件各土地の取得のための借入金(本件借入金)の利子(本件借入金利子)の全額が本件各土地の取得費に該当する旨主張し、他方、原処分庁は、本件各土地には本件各建物が存するものの、本件各土地に占める本件各建物の床面積の割合は僅かであり、所得税基本通達38-8の2の(1)のロ及びハの定めにより判定することに合理性は認められないので、本件各土地の使用開始の日がいつであるかは、資産の種類、性質、形状その他外形的に判断できる利用の結果等客観的な事実に基づき総合的に判断すべきであるところ、本件借入金の借入れの日には既に本件各土地は使用されていたのであるから、本件借入金利子は本件各土地の取得費に該当しない旨主張する。
しかしながら、本件各土地は、放牧、牧草栽培を用途にしている土地であり、本件各建物の使用が主な用途であるとは認められないこと及び本件各土地の地積のうち本件各建物が建築されている部分は極めて僅かであることからすると、本件各土地は、所得税法基本通達38-8の2の(1)のハに定める建物等の施設を要しないものに該当すると認められることから、同ハの定めにより使用開始の日を判定するのが相当である。
参照条文等
譲渡所得の帰属年分は、甲契約を締結した日の属する年分ではなく、甲契約を締結して代金全額を受領するとともに、所有権移転登記を了した日の属する年分であるとした事例
裁決事例集 第36集 11頁
要旨
請求人は、昭和54年に譲渡契約を締結し、手付金を受領しているので、本件譲渡所得は昭和54年分であると主張するが、[1]昭和54年の作成日付の契約書は信用できず、昭和60年の日付の契約書が真正なものと認められること、[2]昭和60年に譲渡代金を受領し、所有権移転の登記を了していること、[3]昭和54年以降も本件土地をF社に賃貸して、不動産所得の申告をしていること、[4]昭和54年分所得税の確定申告に当たり、本件譲渡所得について総収入金額に算入していないことなどから、本件譲渡所得は昭和60年分に帰属するとした原処分は相当である。
ポイント
本事例は、請求人の営むサンゴ漁に係る所得は「漁獲から生ずる所得」として変動所得に該当するとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人が営むサンゴ漁について、①宝石サンゴは自ら移動せず水産植物と同様の生態であることや採取された宝石サンゴのほとんどは死滅した枯れ木であることなどから、所得税基本通達2-30《漁獲の意義》に定める「水産動物を捕獲すること」に当たらず、また、②宝石サンゴは他の水産動物とは異なり、天候等の自然現象によって漁獲高が変動しないことを理由に、所得税法第2条《定義》第1項第23号に規定する「漁獲」には該当せず、請求人が営むサンゴ漁に係る所得は変動所得に該当しない旨主張する。
しかしながら、平均課税制度の趣旨や変動所得に係る規定の改正経緯に照らすと、同号に規定する「漁獲」とは、水産物の捕獲又は採取を意味し海草等の水産植物の採取や養殖(水産養殖)はこれに含まれないと解されるところ、宝石サンゴは海中から採れる水産物(生物学上は動物に分類される。)であり、サンゴ漁は水産動物の捕獲又は採取にほかならないから同号に規定する「漁獲」に該当する。したがって、請求人の営むサンゴ漁に係る所得は、「漁獲から生ずる所得」として変動所得に該当するというべきである。
参照条文等
要旨
請求人は、調査担当職員の求めに応じて帳簿書類を提示したのであるから、青色申告の承認の取消処分は違法である旨主張する。
しかしながら、請求人が主張する帳簿書類の提示は代理人である税理士がレコーダーを作動又は作動させる準備がされた状況下でのことであるところ、本件調査においてレコーダーによる会話の録音が必要であったとは認められず、調査担当職員が当該録音され得る状態での帳簿書類の検査を実施しなかった措置は相当である。そして、調査担当職員が、当該税理士に対してレコーダーによる会話の録音がない状態で帳簿書類を提示するよう求めたにも関わらず、当該税理士は、レコーダーを作動させることに固執し帳簿書類を提示せず、また、請求人も、当該税理士に任せているとして帳簿書類を提示しなかったのであるから、請求人は、正当な理由がないまま帳簿書類を提示しなかったことになるのであり、このことは、所得税法第150条《青色申告の承認の取消し》第1項第1号に規定する青色申告の承認の取消事由に該当する。
参照条文等
一括して売買された土地及び建物の購入の対価は、合理的な基準によりあん分して算定すべきであるとされた事例( 平成28年分及び平成29年分の所得税及び復興特別所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分、 平成30年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・ 棄却、 一部取消し)
裁決事例集 第129集
ポイント
本事例は、土地と建物が一括して売買され、その土地及び建物の個別の購入の対価が明らかでない場合、所得税法施行令第126条第1項第1号イにいう「当該資産の購入の代価」は、合理的な基準により算定するのが相当であると判断したものである。
要旨
請求人は、国外において一括取得した賃貸用の土地及び建物(本件各物件)に係る売買契約書に売買代金総額しか記載がなかった場合、本件各物件における各土地及び各建物の購入の代価は、請求人が取得した不動産鑑定評価書における各鑑定評価額の割合で区分すべきであり、個別的な事情が捨象され、米国e州(現地)の法令等に反する方法で評価された現地の固定資産税評価額の割合で区分すべきではない旨主張する。
しかしながら、本件各物件については、建物の減価償却費の額の算出に当たり、合理的な方法によって本件各物件の土地及び建物の購入の代価を区分する必要があるところ、現地の固定資産税評価額は、同一の公的機関が同一時期に合理的な評価基準によって請求人が本件各物件の所有権を取得した時点の市場価値を評価したものであると推認され、かかる推認を妨げる特段の事情に当たると評価すべき事実があるとは認められない。したがって、本件各物件に係る建物の購入の対価を算定するに当たっては、現地の固定資産税評価額の割合によって区分して算定すべきである。
また、原処分庁は、本件各物件のうち平成30年に取得した物件の変更後の固定資産税評価額については、請求人が弁護士を通じて自身に有利になるよう査定官に働きかけ、故意に作出させた可能性が排除できないため、変更前の固定資産税評価額を用いるべき旨主張する。
しかしながら、現地では、固定資産の所有者がその固定資産税評価額に同意できない場合、その評価額の見直しを求める不服申立制度があり、一度評価された固定資産税評価額が事後に変更され得ることは予定されているため、査定官の職権により事後に変更されたことをもって故意に作出させたなどということができない。したがって、平成30年に取得した物件については、変更後の固定資産税評価額を用いるべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
東京地裁平成30年4月12日判決(税資268号順号13139)
要旨
請求人は、本件不動産を譲渡契約の相手方A女に引き渡したのは平成2年3月末日であるから、本件譲渡所得は平成2年分に帰属する旨主張し、本件譲渡所得を平成元年分の所得としていた確定申告について更正の請求をしたのであるが、本件においては、[1]本件売買契約は平成元年6月16日に締結され、本件土地建物の所有権移転登記の手続は、同年6月29日に完了していること、[2]請求人は、平成元年中に本件譲渡代金のうち約77パーセントに相当する32,300,000円を受領していること、[3]譲渡の相手方であるA女は、本件不動産を平成元年6月29日に保証委託取引による債権の担保として提供していること及び[4]請求人は、本件不動産に係る平成元年7月から12月までの家賃相当額を事業所得の必要経費に算入していることを併せ考えると、本件不動産の所有権は平成元年中にA女に移転し、また、本件売買契約に基づく経済的利益も、同年中に発生しているというべきであって、このような場合に、請求人自身が譲渡に関する契約の効力発生の日を本件譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期と認識し、本件譲渡所得を平成元年分の所得として申告している以上、これを認めるのが相当であり、譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期が資産の引渡しの日であるという理由に基づく本件更正の請求は認められない。
要旨
請求人らは、同人らが所有していた小切手及び現金を、不動産の売買を仲介した者に交付し、これを同人に不法に領得されたことにより生じた損失は、横領による損失であるから、雑損控除の対象となる損失に該当する旨主張する。
しかしながら、当該損失は詐欺による損失であると認められ、また、請求人らが横領行為によって損害を受けたとして賠償を求めた裁判の判決は、被告が口頭弁論期日に出頭せず、答弁書等を提出しないことから、原告である請求人らの請求原因事実を自白したものと擬制したものであって、証拠によって横領の事実を客観的に認定したものではないから、所得税法第72条1項の雑損控除の対象となる損失には該当しない。
他人の滞納税額のために不動産が差押えをされ、当該不動産の売却代金がその滞納税額の支払に充てられたとしても、保証契約を締結し、又は抵当権を設定したものではないから、所得税法第64条第2項の適用はないとすることが相当であるとした事例( 平成23年分の所得税の更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分、 平成23年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・ 棄却、 一部取消し)
裁決事例集 第94集
ポイント
本事例は、真の所有者が不動産の名義をあえて他人に移転したことから、その他人の滞納税額のために当該不動産が差押えをされ、当該不動産の売却代金が滞納税額の支払に充てられたとしても、虚偽の権利の外観を自ら作出したことが原因であり、民法第94条《虚偽表示》第2項の類推適用により善意の第三者に対して対抗できなくなった結果にすぎないこと等から、所得税法第64条第2項の適用はないと判断したものである。
要旨
請求人は、相続税の延納申請に係る担保として提供した土地(本件各担保土地)について、K国税局長がした差押登記は、請求人の知人が主宰するJ社の租税債権を回収するために、本件各担保土地の所有者である請求人の同意を得ることなく一方的にされたものであり、実質的には、請求人がJ社に支払能力がないと判断して債務保証をしたくないと考えても許されない状態での債務保証と同じであるから、所得税法第64条《資産の譲渡代金が回収不能となった場合等の所得計算の特例》第2項の規定の趣旨から救済されるべきである旨主張する。
しかしながら、請求人は、本件各担保土地を取得してから譲渡するまでの間、同土地の真の所有者であったが、請求人の亡父等の多額の債務に係る各債権者の請求を逃れるため、請求人が、同土地の登記名義をJ社に変更して、虚偽の外観を作出していた際に、K国税局長が同土地を差し押さえたことが認められるところ、請求人は、当該差押えにより、本件各担保土地の譲渡代金の中から一定の支払がされるといった不利益を免れないが、この不利益の原因は、請求人が同土地につき虚偽の権利の外観を自ら作出したことにあり、当該権利の外観を信頼した善意の第三者に対して、民法第94条《虚偽表示》第2項の類推適用により、当該権利の外観が虚偽であることについて、対抗することができなくなった結果にすぎない。そして、虚偽の権利の外観を自ら作出した者は、当該権利の外観が虚偽であることを善意の第三者に対抗できないことを十分に予期し得るのであり、かつ、善意の第三者に対抗できないことについて明確な帰責性が認められるのであるから、このような者を、予期に反して求償権を行使することができなくなった場合の保証人と同一の利益状況にあるということはできず、課税上の救済を図る必要性は認められない。また、債権者との契約により債務の履行を強制されるわけではない点において、保証人や担保権設定者と立場を大きく異にしており、所得税法第64条第2項の規定を適用する前提を欠くというべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
さいたま地裁平成16年4月14日判決(判タ1204号299頁) 静岡地裁平成5年11月5日判決(訟月40巻10号2549頁) 東京地裁平成元年5月15日判決(裁Web)
要旨
請求人が、外国法人の出向元法人の依頼により、外国人出向者の日本における租税を日本の税務官署に納付し、これを出向元法人への立替金として経理処理しても、この立替金は、請求人が居住者である外国人出向者に対して給与等を支給したことになるから、請求人はこれに係る源泉徴収義務がある。
ポイント
本事例は、請求人の事業所得の金額を推計により算定する場合において、原処分庁が採用した収入金額に進行年分の算出所得率(総収入金額に占める一般経費差引後の所得金額の割合)を乗じて計算した金額から提示された一部の領収証に基づく外注工賃のみを差し引いて算定するという推計方法は合理性がなく、常に外注工賃が存在すると認められる業態については、進行年分の外注工賃を考慮した所得率を用いるのが最も合理的な推計方法であるとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人が請け負っているソフトウェア等の開発業務(本件業務)について、本件各年分の収入金額に、進行年分の算出所得率(総収入金額に占める一般経費差引後の所得金額の割合)を乗じて計算した金額から、提示された一部の領収証に基づく外注工賃のみを差し引いて事業所得の金額を推計の方法で算定しているところ、本件各年分と進行年分における本件業務の内容には同一性があるとしつつ、請求人が、本件各年分の本件業務について、収支状況を明らかにする記帳をしておらず、提示した領収証以外の外注先及び支払金額等を明らかにしない以上、原処分庁の採用した推計方法は合理性がある旨主張する。
しかしながら、①本件各年分及び進行年分における本件業務の内容には同一性が認められること、②本件業務は、その内容、金額及び業務の期間等からみれば、到底請求人個人のみで行うことのできない規模であると認められること、③請求人は、本件業務を受注し預金口座に請負代金の振込みがあった都度、その振込金額の9割を超える金額を引き出しているところ、このうち進行年分については、当該引き出した金額が外注工賃の支払に充てられたことが、原処分庁の調査によって裏付けられていること、④請求人が本件業務の取引内容等について答述した内容は基本的に信用でき、これによれば、本件業務は、受注後、全てを外注し、外注先に完成品と引換えに外注工賃を支払う取引形態であったと認められることなどを総合すると、本件各年分においても、進行年分と同様に、外注工賃を支払っていたと推認することができる。そうすると、本件業務について、常に外注工賃が存在するという業態についても、本件各年分と進行年分とに同一性があると認められるから、本件各年分の本件業務に係る事業所得の金額の算定に当たっては、進行年分の外注工賃を考慮した所得率(総収入金額に占める一般経費及び外注工賃等差引後の所得金額の割合)を用いるのが、請求人の真実の所得の近似値を算定するに最も合理的な推計方法であるというべきである。
参照条文等
要旨
所得税法第37条第1項に規定する「不動産所得、事業所得又は雑所得を生ずべき業務について生じた費用」とは、事業所得に限れば「事業所得を生ずべき事業について生じた費用」と解するのが相当であり、客観的にみて、その支出した費用がその事業と直接の関連性があり、事業の遂行上必要な支出であることを要し、かつ、費用収益対応の原則からすれば、収入すべき金額を生ぜしめる事業に係る費用に限られるものと解される。
したがって、診療開始前の期間に係る借入金利子は、事業所得を生ずべき事業について生じた費用に該当しないので、必要経費に算入することはできない。
更正請求期限後においては、更正請求書に記載しなかった事由を通知処分の違法事由として新たに主張することは許されないとした事例(平成23年分の所得税並びに平成23年課税期間の消費税及び地方消費税の各更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の各通知処分・棄却)
裁決事例集 第114集
ポイント
本事例は、更正の請求に対する通知処分の取消しを求める審査請求において、更正の請求期限である5年を経過した後に、更正請求書に記載しなかった事由を違法事由として新たに主張できないとしたものである。
要旨
請求人は、原処分庁の実地調査に基づき期限後申告した平成23年分の売上げのうちの特定のものについて、金額誤りや収入計上時期に誤りがあり同年分の収入金額が過大であるから更正の請求(本件更正の請求)は認められるべきである旨主張する。しかしながら、請求人が主張する上記金額誤りや収入計上時期に誤りがあるとは認められない。
また、請求人は、本件更正の請求において更正の請求事由としなかった上記特定の売上げ以外の他の収入についても収入金額が過大である旨を本審査請求において主張する。しかしながら、当該主張は、更正請求時には主張していなかった事由を審査請求において新たに主張するものであるところ、更正の請求が、法定申告期限から5年以内の請求期限を設け、その理由等を記載した更正請求書を課税庁に提出することを求めていることに鑑みれば、租税法律関係の早期安定及び税務行政の能率的な運営等を図る趣旨から、少なくとも更正請求期限を経過した後においては、更正請求書に記載しなかった事由を通知処分の違法事由として新たに主張することは許されないと解すべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和49年3月8日第二小法廷判決(民集28巻2号186頁) 最高裁昭和53年2月24日第二小法廷判決(民集32巻1号43頁)
要旨
原処分庁は、本件契約に基因する未収リース料相当額の債権は、被相続人(請求人らの父)の事業の遂行上及び事業の遂行に付随して生じたものと認められず、同債権に係る貸倒損失の額は、事業所得の金額の計算上必要経費に算入できず、雑所得の金額の計算上必要経費に算入される金額であり、雑所得の金額を限度として必要経費に算入すべきであると主張する。
しかしながら、本件契約に係るリースは、取引先の事業に対する支援の一環として行われたものであると認められるとともに、当該リースを含む被相続人の設備・装置等の販売・設置やリース等に係る業務は、営利性、有償性を有することはもとより、反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められ、未収リース料相当額の債権に係る所得は、事業から生じる所得として、同人の事業所得に該当するものというべきであり、そして、未収リース相当額の債権は貸倒れになったと認められるから、同人の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入される。
参照条文等
所得税法第27条、第35条、第37条、第51条、第52条 所得税法施行令第63条、第144条、第184条の2(平成19年政令第82号による改正前のもの)
参考判決・裁決
名古屋高裁平成5年9月30日判決(税資198号1213頁)
要旨
保証債務に係る求償権を行使するため、その求償先である中間譲受人に相応の売却利益を得させる必要上、本件資産を中間譲受人に譲渡したと請求人は主張するが、[1]請求人自らが売買の一切を実行し、同人が得ることが可能な売却利益をあえて求償権の行使を前提として債務者を中間譲受人として介在させることにより債務者にも得させるという不自然なものであること及び[2]本件資産の譲渡代金は、最終譲受人から直接請求人が受け取っており中間譲受人との間で何らの清算もされていないこと等から、本件資産は請求人から直接最終譲受人に譲渡されたものと認められる。
要旨
請求人は、請求人の母が特別養護老人ホームに入所したことに伴い、市に対して老人福祉法第28条の規定に基づく措置費徴収金を納付したが、請求人の母は老人福祉法及び老人保健法の双方にいう老人に該当し、老人福祉法にいう特別養護老人ホームと老人保健法にいう老人保健施設とは、その機能及び運営上において区分し難い状況になっており、どの施設に入所するかは、施設側に余裕があるか否かにより決まるのであるから、老人保健施設の利用料は医療費控除の対象となり、特別養護老人ホームの措置費徴収金がその対象にならないのは、不公平である旨主張する。
しかし、特別養護老人ホームは、65歳以上で身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし、かつ、居宅においてこれを受けることが困難な者を家族に代わって介護、介助するための福祉施設であり、一方、老人保健施設は、その身体の状態及び病状に照らし施設療養の提供が必要と認められる者を入所させる施設であるから、両者を同質の施設とみることはできず、また、当該措置費徴収金の中には医師等による診療の対価は含まれていないから、請求人の主張は認められない。
要旨
原処分庁は、請求人が譲渡した土地(本件土地)及び各建物(本件各建物)の各持分の取得費の額は譲渡代金の100分の5に相当する金額(本件概算取得費額)とするのが相当であって、請求人が本件審査請求に至り明らかにした各証拠をもって直ちに取得費の額と判断することはできない旨主張する。
しかしながら、本件土地については、当該各証拠により明らかとなる金額が譲渡代金の100分の5に相当する金額を下回るから、確かに、本件概算取得費額が取得費の額となるものの、本件各建物については、当該各証拠のうち、領収書等の一部は、その宛名や作成時期が他の客観的証拠と符合することからすると、当該一部の領収書等に記載された各金額は、本件各建物の建築のために支払われたものと認められること及び当該各金額の合計額は本件概算取得費額を上回ることからすると、当該各金額の合計額をもって、本件各建物の取得費とするのが相当である。
参照条文等
所得税法第38条 租税特別措置法第31条の4 租税特別措置法関係通達31の4-1
請求人の同族会社からの建物賃貸料収入が当該同族会社の又貸し賃貸料収入に比して余りに低額であるとしてなされた所得税法第157条による更正処分が適法であるとされた事例
裁決事例集 第59集 112頁
要旨
請求人は、その同族会社からの建物賃貸料収入が当該同族会社の又貸し賃貸料収入に比して余りに低額であるとしてなされた所得税法第157条による更正処分に対し、同族会社は賃借人に対して経営指導等経済的付加価値を有する役務を提供しており、その又貸し賃貸料収入には同役務に係るコンサルタント料が含まれているから、更正処分を取り消すべきである旨主張する。
しかしながら、同族会社が賃借人に対して経営指導等をしている事実は認められず、請求人の主張には理由がない。
また、請求人の確定申告の管理料相当額割合が比準同業者の平均管理料割合をはるかに超える異常なものと認められるところ、請求人と同族会社との賃貸借契約は、請求人が当該同族会社の株主・代表取締役であるがゆえに可能な行為又は計算であり、純経済人として、不合理、不自然といわざるを得ないから、請求人の主張には理由がない。
ただ、原処分庁が認定した比準同業者の平均管理料割合の計算において、比準同業者として適当でない者が含まれており、また、その収入(又貸し料)に含めるべきでない臨時的一時的収入が含まれているので、審判所において再計算したところ、平成6年分はその一部を取り消すべきである。
要旨
請求人は、請求人が従事する業務は、いずれも夫の営む事業に包含される業務であるから、請求人は「居住者の営む事業に従事するもの」に当たり、請求人の年間従事日数及び年間従事時間は、夫の所属事務所の従業員のそれらの2分の1をはるかに超えており、かつ「その年を通じて6月を超える」こととなるから、請求人は「専ら夫の事業に従事する者」に該当するにもかかわらず、原処分庁が、請求人が従事する各業務について「夫婦間の相互扶助の範囲内のもの」とすることは、青色事業専従者給与を規定する法の沿革にも、労働には当然に報酬が支払われるべきだとする現今の社会常識にも、はたまた憲法感覚にも馴染まない違法で誤った考え方であり、このことは請求人の幸福追求権、勤労の権利、基本的人権を侵害するもので、憲法に反し違法である旨主張する。
しかしながら、原処分庁の主張は、請求人は夫の業務に従事しているが、それは「夫婦間の相互扶助の範囲内のもの」であるから無償であるべきであるという趣旨ではなく、所得税法第57条第1項及び同法施行令第165条に基づいて「専らその居住者の営む事業に従事」したか否かを判定するに際して、請求人の労務の提供は、労務の内容、所要時間ないし頻度からすれば、社会通念上、夫婦の相互扶助の範囲内の行為あるいは日常生活の一環としての行為であり、「夫の事業に専ら従事するものではない」とするものであるから、請求人の主張は前提を誤るものである。仮に請求人の主張が、そのような法令の規定自体が憲法に違反するという趣旨であるとすれば、その判断は当審判所の権限外のことであり、審理の限りではない。
そして、請求人が従事する労務の内容ないし態様、要する期間ないし時間及び頻度を見ると、請求人が主張する各業務のうち、試算表の作成等及び銀行に出向いて各種手続を行うこと以外の業務については、これに従事しているとは認められないものであり、また、試算表の作成等及び銀行に出向いて各種手続を行うことについては、請求人がこれを行っていたとしても、その労務は一時的ないし臨時的なものであって、請求人が夫の事業に専ら従事する期間がその年を通じて6月を超えるとは認められない。
したがって、請求人は、青色事業専従者とは認められない。
請求人らの代理人が譲渡代金の全額を買主から受領した後、代理人から当該代金を回収できないとしても、保証債務の特例は適用できないとして請求人の主張を排斥した事例
裁決事例集 第51集 176頁
要旨
請求人らは、代理人であるE(譲渡土地の共有者)が買主から20億7,500万円の譲渡代金の全額を受領した後、破産宣告を受け、Eから譲渡代金の回収ができなくなったのであるから、担税力を考慮し保証債務の特例を適用すべきである旨主張する。
しかしながら、所得税法第64条(資産の譲渡代金が回収不能となった場合等の所得計算の特例)第1項に規定する「収入金額の全部又は一部を回収することができなくなった場合」とは、売主が買主から譲渡代金の全部又は一部を回収できなくなった場合と解され、また、民法第646条の規定により、受任者は事務処理に当たり受領した金銭等を委任者に引き渡す義務があると解されている。
このことからすると、請求人らは、Eを通じて買主から譲渡代金の全額を受領しているので、保証債務の特例を適用すべきであるという主張には理由がない。
なお、Eが破産宣告を受けた結果、請求人らが同人から譲渡代金を回収できなくなったとしても、それは受領した譲渡代金の使途の問題であって、譲渡代金の回収不能とは別異の事実と解するのが相当である。
請求人を債務者とする金銭債権について、外国法人を担保権者とする債権譲渡担保が設定された場合において、請求人が支払った当該金銭債権に係る利子が、源泉徴収の免税証明書の交付を受けている担保設定者である外国法人の国内源泉所得として、請求人に源泉所得税の納税義務は生じないとした事例
裁決事例集 第69集 153頁
要旨
原処分庁は、外国法人に対して譲渡担保が設定された金銭債権の利子は、担保権者である当該外国法人の国内源泉所得であり、当該金銭債権の利子を支払った請求人には、源泉所得税を徴収して納税する義務があるとして、源泉所得税の納税告知処分等を行った。
しかしながら、当該債権譲渡担保においては、源泉徴収の免税証明書の交付を受けている担保設定者である外国法人が、当該金銭債権に係る元利金の収受権を保持し、かつ、実際にその利子に係る収益を享受しており、担保設定のために形式的に当該金銭債権が担保権者に譲渡されたことは明らかであるから、所得税法上、当該金銭債権の利子に係る所得は担保設定者に帰属すると解するのが相当である。
したがって、請求人が支払った金銭債権の利子は、担保権者である外国法人に対するものとは認められないから、請求人には源泉所得税の納税義務は生ぜず、原処分はいずれもそのすべてを取り消すべきである。
要旨
請求人は、本件ゴルフ会員権をゴルフ場経営法人に譲渡したと主張するが、請求人の行った一連の行為は、ゴルフ倶楽部からの退会が承認されたことにより、預託金返還請求権をその預託先であるゴルフ場経営法人に対して行使したにすぎず、資産の譲渡には該当しないから、譲渡損失を前提とした損益通算の規定の適用はないとした本件更正処分は相当である。
○○等の製造ノウハウ等の実施権許諾の対価として支払う使用料に新日米租税条約を適用してその支払の際に源泉徴収を行わなかったことについて、同条約の適用は、当該使用料の実際の支払が行われた日を基準にするのではなく、当該使用料の契約上の支払期日を基準にするとした事例
裁決事例集 第76集 212頁
要旨
請求人は、請求人が平成16年7月23日に米国のグループ企業に支払った製造ノウハウ等の使用料のうち、平成16年1月分ないし5月分の各使用料については、現実の支払の時期によって租税条約の適用の有無を判断すべきであり、新日米租税条約第12条第1項が適用されるから、所得税の源泉徴収義務はないと主張する。
しかしながら、新日米租税条約第30条第2項(a)(i)(aa)は、日本国において源泉徴収される租税に関しては、平成16年7月1日以後に租税を課される額に同条約を適用する旨規定しており、同条の「租税を課される額」とは租税を課される者にとっての課税標準と解され、これを使用料についてみると「支払を受けるべき額」を意味すると解され、これを所得の支払者(源泉徴収義務者)側からみれば源泉所得税の算出の基礎となる「支払うべきことが確定した額」と解される。そうすると、上記平成16年1月ないし5月分の各使用料は、毎暦月末を経過した時点で確定する債務であり、それらの支払期日はいずれも同年6月30日までに到来しており、その支払うべきことが確定したのは平成16年6月30日以前となるから、これに新日米租税条約は適用されず、旧日米租税条約第14条第1項が適用されるから、請求人には上記平成16年1月ないし5月分の各使用料に係る所得税の源泉徴収義務がある。
マネキン報酬について、日額表乙欄、丙欄のいずれを適用するかは、正社員の勤務状況に比較して当該マネキンが継続して2月を超えて就労していたかどうかにより判定すべきであるとした事例
裁決事例集 第43集 277頁
要旨
請求人は、マネキンに支払った金員について、マネキンの雇用期間が継続して2月を超えないことから、税額表は日額表丙欄を適用すべきである旨主張するが、当該マネキンの雇用期間の延長又は再雇用により継続して2月を超えて雇用されているものと認められるか否かは、マネキンが一つの契約に係る就労を開始する日現在において、過去2月間に就労しない日が月当たりおおむね2週間以上ある場合は、雇用期間は継続していないものと判断して日額表丙欄を適用し、それ以外の場合には、それ以後明らかに雇用関係を打ち切ったものと客観的に認められる空白期間がない限り、依然として雇用は継続しているものと判断して日額表乙欄を適用するのが相当である。
要旨
請求人は、水害により被災した請求人所有の自動車(以下「本件車両」という。)について、これを主として遠隔地の中学校に通学していた子供の送迎に使用していたから、「生活に通常必要な動産」に該当するとして、その損失の金額を雑損控除の対象とすべきである旨主張する。
しかしながら、「生活に通常必要な動産」とは「家具、じゅう器、衣服」及びこれらに類似する生活用資産であって、通常の社会生活を営むのに必要とされる資産をいうものと解するのが相当であるところ、請求人の子は請求人の妻の実家から歩いて中学校に通学していたことが認められるから、本件車両は通学の際の送迎に使用されていたとする請求人の主張を採用することはできない上、本件車両が通勤用に使用されていないこと、請求人の住所地は市の中心に位置し交通の便が特に悪いとも認められないことなどを総合的に判断すると、本件車両が通常の社会生活を営むのに必要なものであるとはいえず、本件車両は「生活に通常必要な動産」ということはできない。
同族会社への不動産賃貸料につき、無利息の保証金に係る経済的利益を加算すると、必ずしも低額でないから、所得税法第157条の適用はないとの請求人の主張が排斥された事例
裁決事例集 第60集 344頁
要旨
請求人は、本件土地の賃貸借に伴って貸付先である同族会社から無利息の保証金を受領しており、この保証金から生ずる経済的利益の額と本件土地の賃貸料を加算すれば、必ずしも低額でない旨主張するが、本件土地の賃貸料は、同地域の他の比準同業者の賃貸料に比し低額であり、請求人が主張する保証金から生ずる経済的利益の額を加えたところで判断しても、低額であることが認められ、所得税法第157条の規定を適用して不動産所得の計算をした原処分は適法である。
土地の売買契約の締結日において、前受金等として売買代金の3分の2に相当する金額が授受され、所有権移転登記に必要な書類の全てが引き渡されるとともに、同日所有権移転登記もなされている本件において、土地の引渡しは同日になされているものと認められ、当該土地の譲渡所得は、同日に発生するとした事例
裁決事例集 第47集 148頁
要旨
請求人は、[1]売買契約締結日である平成2年11月28日に受領した金員は、売買代金15億円のうちの手付金3億円、前受金7億円の合計10億円で、取引の完了を表すものではなく、譲渡の日の判断要素にはならないこと、[2]本件契約書、収益の帰属、費用の負担及び危険負担に関する約定があるが、これは、残金を受領するまでは土地の引渡しをしないことを意味するものであること、[3]本件契約書に所有権移転の時期及び引渡しの日の約定があるが、相続人間で相続争いがあり訴訟となっていることから、訴訟遂行上のテクニックで表示したものにすぎないことを挙げ、残金を受領した平成3年3月29日が本件土地の引渡し日であると主張する。
ところで、譲渡所得に係る総収入金額の収入すべき時期は、引渡しの日とするのが合理的である。これを本件についてみると、[1]請求人は、約定に基づき、前渡金等と引換えに所有権移転登記に必要な書類を引き渡し、[2]買主は、同日所有権移転登記を了し、[3]買受人との間で引渡日を平成2年11月28日とする旨の合意が成立していると認められることから、平成2年11月28日が引渡しの日と認めるのが相当である。本件契約の上記約定が、請求人の訴訟上のテクニックによるものとしても、本件契約は当事者間で定められたものであるから、合意に影響するものではなく、また、危険負担等に関する約定をもって引渡し日に係る判断を左右するものではない。
要旨
請求人は、本件資産は、被相続人が中間譲受人に譲渡したもので、最終譲受人に譲渡したものではないと主張するが、最終譲受人が、買受代金として支払った金員を全額被相続人が収受していること及び最終譲受人に対して、被相続人の都合で売主を中間譲受人とした旨の念書が差し入れられていること等から、本件資産は、被相続人が直接最終譲受人に譲渡したものである。
要旨
審査請求人は、自然医食品等は、医師がその自然医学理論に基づく独自の治療法に不可欠な治療手段として処方した処方箋に基づき購入したものであり、これを薬事法上の医薬品とみなして医療費控除を適用すべきである旨主張する。
しかしながら、自然医食品等は、薬事法第2条第1項に規定する医薬品に該当しないことが明らかであり、これを所得税法第73条及び同施行令第207条に規定する治療又は療養に必要な医薬品と解することができないから、本件自然医食品等購入費は医療費控除の対象とはならない。
請求人が主張する本件旅費交通費等は、簿外経費に係るものであり、また、請求人が提出した本件説明資料は請求人の記憶のみに基づくもので、他に同資料を裏付ける領収書等の証拠資料の提示がないことから、本件旅費交通費等の存在を認めることはできないとした事例
裁決事例集 第48集 19頁
要旨
請求人は、原処分庁が認定した簿外の旅費交通費、接待費及び慶弔費以外に、更に多額の簿外の本件旅費交通費等及び本件利子割引料を支払っているから、本件旅費交通費等及び本件利子割引料も事業所得の金額の計算上、必要経費に算入すべきである旨主張するが、本件旅費交通費等は、簿外経費であること、また、原処分庁が認定した旅費交通費等の経費率が類似同業者の平均に比し既に極めて高いことに加え、本件旅費交通費等の額は、著しく高額であることからみて、本件旅費交通費等の存在を認めるためには、請求人が資料等を提示して合理的な説明をし、その存在を明らかにする必要があるというべきである。
しかるに、請求人が提示した説明資料については、その内容に不自然、不合理な点が認められ、また、請求人は当該説明資料は請求人の記憶のみに基づくものであると自認し、他に同資料を裏付ける領収書等の証拠資料を一切提示しないことから、本件旅費交通費等の存在を認めることはできない。
また、本件借入金は、請求人の事業経理に係る帳簿に記載されていないこと等から、本件借入金が事業の用に供されたと認め難いところ、請求人は、本件借入金を事業の用に供したと認めるに足りる証拠資料を提示しないのであるから、本件借入金に係る本件利子割引料を必要経費に算入すべきであるという請求人の主張は、採用することができない。
要旨
請求人は、ホテルの一室である本件建物を不動産貸付業の用に供するために購入したものであり、生活に通常必要でない資産には該当しないから、賃貸に係る不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額については、他の各種所得の金額から控除すべきである旨主張する。
しかしながら、[1]本件建物は、著名なリゾート地に所在し、請求人が別荘等と同様に保養等の用に供し得る性質のものであること、[2]本件分譲案内書によれば、賃貸料収入が得られるほか、ホテルの利用上のメリットや節税対策になることがうたわれていること、[3]請求人は、実質的に一般客に優先して利用することができること及び[4]本件賃貸料の額は、請求人が負担した必要経費の額の2割程度であり、管理費の額にも達しておらず、経済的にみて不合理であること等の事実が認められる。
そうすると、本件建物を賃貸しているのは、単に、本件建物の管理費等の負担を軽減するために過ぎないものであり、また、本件建物の性質及び状況等の諸般の事情を総合的に勘案し、これを客観的にみれば、本件建物は主として保養等の目的で所有していたものと認めるのが相当であり、生活に通常必要でない資産に該当するから、本件損失金額は損益通算が認められない。
請求人は、所得税法第58条第5項に規定する「第1項の規定の適用を受けた居住者」に該当することから、本件土地の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上控除すべき取得費の額は、所得税法第58条第5項及び所得税法施行令第168条第3号の規定を適用して計算した金額になるとした事例( 平成23年分の所得税の更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分、 平成23年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第99集
要旨
請求人は、平成8年分の所得税の申告において、請求人の借地権(本件借地権)と相手方所有の土地(本件土地)の交換(本件交換)による本件借地権の譲渡に係る譲渡所得について、本件交換時の交換対象資産の各価額の差額を計算すると当該差額が多い方の価額の20%を超えることなどから、所得税法第58条《固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例》第1項に規定する特例(本件特例)の適用を受けていたとは認められないので、請求人は同条第5項に規定する「第1項の規定の適用を受けた居住者」に該当せず、したがって、原処分庁が、平成23年の本件土地の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上控除すべき取得費の額について、所得税法施行令第168条《交換による取得資産の取得価額等の計算》第3号の規定を適用して計算したことは誤りである旨主張する。
しかしながら、所得税法が採用する申告納税方式の下では、居住者が固定資産を交換した日の属する年分の所得税につき確定申告書に本件特例の適用を受けようとする旨を記載するなどして申告をした場合には、その申告により本件特例の適用を前提として計算された税額は確定し、修正申告又は更正により本件特例の適用が否定されない限り、そのような居住者は所得税法第58条第5項に規定する「第1項の規定の適用を受けた居住者」に該当すると解される。本件においては、請求人は、本件交換による本件借地権の譲渡に係る譲渡所得について本件土地を交換取得資産として本件特例の適用を受けようとする旨の平成8年分の所得税の申告をしたものと認められ、その後は、請求人が修正申告をした事実、あるいは原処分庁が更正処分をした事実はいずれも認められない。したがって、請求人は、所得税法第58条第5項に規定する「第1項の規定の適用を受けた居住者」に該当することとなるから、本件土地の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上控除すべき取得費の額は、所得税法第58条第5項及び所得税法施行令第168条第3号の規定を適用して計算した金額によるべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
東京地裁平成15年9月19日判決(税資253号順号9443)
資産負債増減法により事業所得の金額を算定したことには合理性があるとした事例( 平成17年分及び平成18年分の所得税の各決定処分及び重加算税の各賦課決定処分並びに平成19年分から平成23年分の所得税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分、 平20.1.1から平22.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに無申告加算税の各賦課決定処分・ 一部取消し、 棄却)
裁決事例集 第94集
要旨
請求人は、原処分庁が請求人の事業所得の金額を算定するに当たって採用した資産負債増減法は、推計の基礎事実が正確に把握されていないことなどから、その推計方法には合理性がない旨主張する。
しかしながら、原処分庁が認定した資産負債増減法における純資産の増加額、加算調整項目及び減算調整項目については、一部の加算調整項目及び減算調整項目の内容に誤りが認められるものの、これらはいずれも是正可能なものであって、その他の内容及び金額はいずれも相当と認められ、一部の誤りを是正した後の純資産の増加額、加算調整項目及び減算調整項目により算出された所得金額は、正確性が担保された計算要素に基づき算出された所得金額ということができるから、原処分庁が採用した推計方法には合理性がある。
参照条文等
青色事業専従者給与の金額については、その労務の性質及び提供の程度は他の使用人と比べて大きく異なるものではないことから、労務の対価として相当ではないとした事例
裁決事例集 第77集 42頁
要旨
請求人は、その妻を青色事業専従者として、事業所得の金額の計算上必要経費に算入した本件専従者給与の金額について、請求人の妻の労務の性質及びその提供の程度に照らし、その全額がその労務の対価として相当である旨主張する。
しかしながら、請求人の妻の労務の性質については、請求人の事業に従事する他の使用人のそれと比べて大きく異なるものではなく、また、請求人の妻の労務の提供の程度については、請求人の事業に従事した時間が最も長い使用人Hの約1.21倍程度であったものと認められることから、請求人の妻の労務の提供の程度を考慮し、請求人の事業に従事する他の使用人が支払を受ける給与の状況に基づき計算した金額と、類似同業者の青色事業専従者が支払を受ける給与の状況に基づき計算した金額の、いずれか高い金額を請求人の妻の適正給与額とするのが相当である。
そうすると、使用人Hが支払を受けた給与の金額に基づき算定した金額は、類似同業者の青色事業専従者が支払を受けた給与の平均額よりも高い金額となるので、使用人Hが支払を受けた給与の金額に基づき算定した金額が、請求人の妻の適正給与額となる。
したがって、本件専従者給与の金額のうち、適正給与額を上回る部分の金額は、請求人の妻の労務の対価として相当であるとは認められない。
青色申告に係る帳簿書類の提示を求めたというためには、総勘定元帳の保存がない場合には簡易帳簿の提示を求めるべきであったとした事例( 平成18年分以後の所得税の青色申告の承認の取消処分、 平成18年分~平成23年分の所得税の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、 平18.1.1~平23.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分・ 全部取消し、 全部取消し、一部取消し、棄却)
裁決事例集 第93集
要旨
原処分庁は、調査担当職員が請求人に対して青色申告に係る帳簿書類の提示を求めたにもかかわらず、請求人が当該帳簿書類を提出しなかったことから、所得税法第150条《青色申告の承認の取消し》第1項第1号に規定する青色申告の承認の取消事由に当たり、青色申告承認取消処分は適法である旨主張する。
しかしながら、青色申告に係る帳簿書類の提示を求めたというためには、総勘定元帳の提示を求めるのみならず、当該総勘定元帳の保存がないこと等が確認された場合には、簡易帳簿(所得税法施行規則第56条《青色申告者の備え付けるべき帳簿書類》第1項ただし書の規定を受けた昭和42年大蔵省告示第112号が定める帳簿書類)の提示を求めるべきであったところ、調査担当職員は、請求人からの簡易帳簿の要件を満たす本件各出納帳の提示の申出を拒否するなど、青色申告に係る帳簿書類の備付け状況等の確認を行うために社会通念上当然に要求される程度の努力をしたとは認められないから、請求人に係る帳簿書類の備付け等は所得税法第150条第1項第1号に規定する青色申告の承認の取消事由に当たらず、青色申告承認取消処分は違法である。
参照条文等
要旨
原処分庁は、農地等の譲渡については、農地法の許可等のあった日又は農地等の引渡しのあった日のいずれか遅い日を譲渡の日と主張し、本件土地の譲渡所得の帰属年分について、代物弁済予約の完結権を行使したことによる所有権移転登記の原因日付が平成3年4月23日であり、本件土地の農地法第3条の規定による許可申請は平成3年3月30日にされ、同年4月23日付で許可を受けていることから、平成3年分であると主張する。
しかしながら、譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は、譲渡所得の基因となる資産の引渡しがあった日によるものと解されているところ、本件土地は和解により代物弁済として債権者委員会へ引き渡されたものであり、[1]債権者委員会は昭和61年11月7日に代物弁済予約仮登記をしていること、[2]請求人は、和解による1,200万円の支払期日である昭和61年12月31日までに当該金員を返済できず、翌日から本件土地を引き渡したと認識していたこと、[3]債権者委員会は、平成元年8月ごろに本件土地を譲渡していること等から、本件土地の支配管理は昭和62年1月1日請求人から債権者委員会へ移転したものと認められるので、同日が本件土地の引渡しの日と認められる。
譲渡所得に係る総収入金額の収入すべき時期は、農地法所定の手続にかかわらず、本件土地の実体的支配の移転があった時期(引渡しの日)によることを相当とする。
したがって、所得の帰属年分に誤りがあり、その他について判断するまでもなく、課税処分の全部を取り消すべきである。
要旨
請求人は、当該支出が医療費控除の対象となるか否かについては、個々人の体質などの特殊性に応じて判断するべきであると主張する。
ところで、医療費控除の制度は、医療費が多額で異常な支出となる場合における担税力の減殺を調整する目的で創設されたものであるが、医療費控除の対象となる医療費の範囲について規定した所得税法第73条第2項では、医療費控除に該当するべき医療関係支出を政令で定める旨規定し、同条を受けた所得税法施行令第207条において第1号から第6号にかけて限定的に列挙している。
このことからすれば、これら医療費控除に係る租税法規の解釈及びその適用に当たっては、租税の公共性、課税の公平の原則を基本として社会通念に照らして合理的かつ客観的に解釈すべきものであるものの、個々の納税者の主観や価値観によって解釈を変更し、その適用範囲を拡大することを許しているものとは解されない。
そうすると、施行令第207条において規定されている医療費とは、医師等の診療等に直接必要な費用及び治療又は療養に必要な医薬品の購入費等に限られると解すべきである。
したがって、請求人の主張は採用することはできない
上記の医療費控除制度の趣旨及び法条の解釈に基づき、当該支出についての検討結果は、次のとおりである。
糖尿病及び高血圧症を持病とする請求人にとって食事療法のため医師から推薦をうけた(請求人主張)とするグァバ茶、クロレラ錠剤、お酢、梅エキス、ゆずエキス、乾燥ウコン、ウコン茶、鮫軟骨エキスなどの薬局等からの購入費用は、専ら健康の増進や体調の維持を目的とする健康食品や日常生活の用に供するものであり、医薬品には該当しない。
糖尿病の運動療法のための運動用具(請求人主張)としてガスコンロの購入及び取付費用並びに糖尿病の薬が引き起こす便秘症状解消のためのトイレの改築費用(請求人主張)として自宅の改築材料の購入費用及び施工費用は、自宅の改築費用等であり、所得税法施行令第207条に規定する医師等による診療や治療などのために直接必要な医療用器具を購入したものとは認められない。
糖尿病用の献立書の購入費用、請求人が入院中の妻の弁当代、家事雑貨品の購入費用は、所得税法施行令第207条に規定する医師等による診療や治療などのために直接必要な医療用器具を購入したものとは認められない。
請求人の妻が入院する際に購入した衣料品の購入費用は、請求人の妻が入院した際に必要となったものだとしても、医師等による診療や治療などのために直接必要な費用とは認められない。
請求人の妻が中国整体院において受けたマッサージ費用は、中国整体院の施術者があん摩師等の資格を有していないことから、所得税法施行令第207条に規定するあん摩師等に対する対価には該当しない。
眼鏡の購入費用については、義手、義足及び松葉づえ等のように医師等の治療等を受けるため直接必要なものであれば、医療費控除の対象となるが(所得税基本通達73-3)、一般的な近視や遠視の矯正のためのものは医療費控除の対象とならない。本件の場合、請求人は、老眼を矯正するために購入したものと認められるが、老眼は身体上の機能障害であるものの、眼鏡等による視力補正を行うことが常態であること、眼鏡等の使用はその障害を治療するためのものではないこと及び請求人が医師等の指示に基づいて当該眼鏡を利用した治療を受けているとも認められないことから、医師等の治療等を受けるため直接必要なものの購入の費用とはいえない。
温泉を利用した旅行のための支出については、医師が治療のため患者に対して温泉利用型健康増進施設として厚生労働大臣の認定を受けた施設を利用した温泉療法を行わせた場合の当該施設の利用料金(療養期間が1週間以上にわたる温泉療法が行われた場合に限る。)は、医師の治療を受けるため直接必要な費用として医療費控除の対象として取り扱われているが、本件の場合、請求人が医師からの指示に基づいて、病状に応じて特定された温泉地に赴いたものとは認められず、また、他に温泉を利用して何らかの治療又は療養を受けたことを裏付ける資料もないことから、これらの旅行を医師等による治療又は療養の一環として行われたものと認めることはできない。
要旨
請求人は、本件譲渡人が国内に住所を有していることは、当該土地等の売買契約書に添付された本件譲渡人の印鑑登録証明書により確認しているから居住者である旨主張する。
しかしながら、本件譲渡人の住民票(除票)の内容及び出入国状況によれば、本件譲渡人は、本件不動産売買契約に際して平成16年8月○日に帰国する直前まで国外に住所を有していたと認められる。また、本件譲渡人の住民票(除票)及び印鑑登録証明書は、同日に帰国し契約交渉後に出国するまでの滞在期間における本件譲渡人の住所が住民票記載地であったことを示す内容となっているが、実際には本件譲渡人は、当該滞在期間中、ホテルにて宿泊しており、住民票記載地において生活していたことをうかがわせる証拠はない上、本件譲渡人が住民票記載地を住所として届け出たことは、当該土地等の売買契約の締結のための一時的な事情によるものであったと認められる。さらに、本件譲渡人は、平成16年9月○日に出国するとともに、住民票も国外に転出させている。
これらの事実によれば、本件土地等の譲渡による対価が支払われた平成16年10月○日において、本件譲渡人が国内に住所を有していたとは認められない。
また、本件譲渡人は、本件売買代金が支払われた平成16年10月○日以前1年以上の間には、平成15年9月○日に日本国を出国後、再び日本国に滞在した期間は本件滞在期間(16日間)のみであることから、当該土地等の譲渡による対価が支払われた日まで引き続いて1年以上居所を有していたとは認められない。
旧ゴルフ会員権と新ゴルフ会員権には資産としての同一性があるものとは認められないため、旧ゴルフ会員権の入会時に支払った預託金等は、新ゴルフ会員権の譲渡所得の計算上、取得費として控除することができないとした事例(平成25年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第106集
ポイント
本事例は、ゴルフ場経営会社に係る民事再生手続における再生計画及び営業譲渡契約において、①新運営会社は旧運営会社の債務及び旧会員契約を承継しないこと、②ゴルフ場施設の利用を希望する会員は、新たに会員契約を締結する必要があることが定められていることから、旧ゴルフ会員権の優先的施設利用権と預託金債権はいずれも消滅していると認められ、旧ゴルフ会員権と新ゴルフ会員権とは同一性があるものとは認められないと判断したものである。
要旨
請求人は、譲渡したゴルフ会員権(本件ゴルフ会員権)は、当初取得した旧運営会社のゴルフ会員権(旧ゴルフ会員権)が民事再生手続における再生計画(本件再生計画)に基づき、営業譲渡に際して新運営会社に預託金が減額されて引き継がれたものであり、本件ゴルフ会員権の譲渡所得の計算上、当初取得時に支払った登録料及び入会保証金(預託金等)は、取得費として控除することができる旨主張する。
しかしながら、譲渡所得の金額の計算上控除されるべき取得費は、譲渡資産と同一性が認められる資産の取得に要した金額をいうものと解されるところ、本件再生計画及び営業譲渡契約において、①新運営会社は旧運営会社の債務及び旧会員契約を承継しないこと、②ゴルフ場施設の利用を希望する会員は、新たに会員契約を締結する必要があることが定められていることからすると、旧ゴルフ会員権の優先的施設利用権と預託金債権はいずれも消滅していると認められ、旧ゴルフ会員権と本件ゴルフ会員権には資産としての同一性があるものとは認められない。したがって、請求人が入会時に支払った預託金等は、所得税法第33条《譲渡所得》第3項に規定する譲渡所得の計算上、取得費として控除することができない。
参照条文等
参考判決・裁決
東京高裁平成24年6月27日判決(税資262号順号11977) 平成24年8月2日裁決(裁決事例集№88)
破産宣告を受けた法人が経営するゴルフ場に係る会員権は、譲渡所得の基因となる資産に該当しないから、その譲渡による損失の金額を他の所得金額と損益通算することはできないとした事例
裁決事例集 第67集 401頁
要旨
請求人は、預託金会員制の本件ゴルフクラブは、その経営会社が破産宣告を受けた後も引き続きプレーをすることが可能であり、本件破産宣告によって破産債権に移行するのは預託金返還請求権のみであって、「プレーをする権利」は破産債権とはならず、本件ゴルフ会員権に係る施設利用権は消滅していないから、本件会員権は譲渡所得の基因となる資産に該当する旨主張する。
しかしながら、預託金会員制のゴルフ会員権は、ゴルフ場の優先的施設利用権と預託金返還請求権とが内在しているものであるところ、ゴルフ場を所有又は経営する法人が破産した場合には、これらの権利は、破産法第15条の規定により破産宣告前の原因に基づいて生じた財産上の請求権たる破産債権として金銭債権に変更されることになるから、破産宣告後に譲渡された本件会員権は、譲渡所得の基因となる資産に該当しない。
なお、本件ゴルフクラブは、破産宣告後においても営業を継続し、その会員は従前と同様にプレーすることができるとされているが、これは、破産管財人が、破産財団となったゴルフ場を換価するまでの期間その財産的価値の保全を図ることを目的に、破産したゴルフ場の清算のための手段と手続の過程として、本件ゴルフ場を営業し本件ゴルフクラブの会員にプレーを許諾しているものにすぎず、本件会員権に係る優先的施設利用権が存するものとは認められない。
要旨
請求人がA社の代表者B男を招へいするに際し、対価の支払に代えて、本件借入金を肩代わりしたのであるから、B男に対する対価の支払も同時に履行されたというべきであり、よって、請求人が毎月支出している強化費は、請求人自身の債務を弁済しているにすぎず、原処分庁が主張するB男に対する契約金の分割払には当たらない。
したがって、所得税法第204条に規定する所得税の源泉徴収義務はない。
請求人が被った紳士録の掲載料や登録抹消料として支出した金員に係る損失は、詐欺ないし恐喝により生じたものであるから雑損控除の対象とはならないとした事例
裁決事例集 第70集 144頁
要旨
請求人は、「右翼団体系のLら(以下「本件加害者」という。)から、「人事録の掲載に係る年会費を支払わなければ、あちこちの団体が、場合によっては、勤務先や自宅に乗り込む」「人事録の木版を買い取れ」「ブラックブックという人名録の抹消料を支払え」などと次々脅迫を受け、請求人や家族の身の危険を感じ、本件損失に係る金員を支払ったものであり、自らの意思に基づいて現金を支払ったのではなく、本件加害者から抵抗不能の状態に陥るほどの暴行に等しい脅迫を受け、その結果、意思能力を欠き、現金を強取されたものであるから、本件損失は盗難により生じたものである。また、J警察署に届け出た「盗難による被害届」(以下「本件届出」という。)は、数度の事情聴取を受け被害の内容を十分承知しているJ警察署の担当刑事からの進言によるものであり、J警察署長はこれを受理し、本件届出を受理した旨の証明書(以下「本件証明書」という。)を交付しているのであるから、J警察署長は、本件損失を盗難によるものと認識しており、本件証明書はその事実を証明している。」旨主張する。
しかしながら、所得税法第72条第1項の規定から、雑損控除の対象となる損失は、「災害又は盗難若しくは横領による」ものに限られると解されるところ、請求人は、[1]電話で脅迫されて本件損失に係る金員を支払っていること、[2]J警察署は、請求人が届出をした事件を、盗難事件ではなく紳士録の掲載料や登録抹消料として現金をだまし取る詐欺ないし恐喝による事件として捜査しており、本件届出は誤って受理され本件証明書が交付されたこと、[3]請求人が受けたという脅迫の内容及び態様が請求人の主張どおりであることからすると、本件加害者が、請求人の反抗を抑圧する程度の脅迫を加えたとは認められないから、本件損失は、請求人が現金を強取されたことにより生じたものではなく、詐欺ないし恐喝により生じたものとするのが相当であって、「災害又は盗難若しくは横領による」ものとは認められない。したがって、本件損失は、雑損控除の対象とはならない。
請求人の事業所得の金額等を類似同業者の平均売上原価率を用いて推計する方法には合理性があるとした事例( 平成21年分以後の所得税の青色申告の承認の取消処分、 平成21年分から平成23年分の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分、 平21.1.1から平21.12.31の課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、 平22.1.1から平23.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・ 棄却、 一部取消し)
裁決事例集 第95集
ポイント
本事例は、原処分庁が請求人の事業所得の金額等を類似同業者の平均売上原価率等を用いて推計するに当たり、類似同業者を請求人の売上原価の0.5倍以上2倍以下であるなど、機械的に抽出しており、その抽出方法には合理性があると認められるものの、原処分庁が選定した類似同業者のうちに、立地条件等からみて必ずしも請求人と業態が類似するとは認められない者が含まれていることから、この者を類似同業者から除外して、原処分庁が採用した推計の方法により請求人の事業所得の金額等を算定することが相当であるとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人と事業内容・規模等が類似すると認められる青色申告者(平成21年分7件、平成22年分4件、平成23年分5件)の平均的な売上原価率(総収入金額に対する売上原価の割合)に基づいて、請求人の事業所得の金額及び消費税の課税標準額を推計の方法により算定しており、原処分庁の推計の方法には合理性がある旨主張する。
原処分庁は、請求人が営む店舗の所在地を管轄する税務署管内に事業所を有し、同税務署長に対し青色申告書を提出する者で、請求人と業種、業態及び事業内容が類似し、かつ、売上原価が請求人の売上原価の0.5倍以上2倍以下であるなど事業規模が類似する者を、類似同業者として機械的に抽出しており、このような抽出の方法については合理性があると認められるものの、原処分庁が選定した類似同業者のうち平成21年分の1件については、立地条件等からみて必ずしも請求人と業態が類似するとは認められないから、この者を類似同業者から除外することが相当である。
参照条文等
請求人らが同族会社から受け取る土地建物管理運営契約に基づく賃貸料につき、所得税法第157条を適用した更正処分は適法であり、同条の適用に当たっては請求人らの役員報酬を考慮する必要はないとした事例
裁決事例集 第63集 171頁
要旨
請求人らは、請求人らと同族会社との間の土地建物管理運営契約書に基づく行為又は計算は、所得税法第157条第1項が適用される著しく異常な取引といえない旨主張するが、同族会社が第三者に本件賃貸物件を転貸して得る賃貸料収入と請求人らが同族会社から受け取る地代家賃との差額は適正管理料相当額をはるかに超える異常なものと認められること、及び同族会社が請求人らに支払う地代家賃は年一回の清算で同族会社の当期利益が黒字になるように決められていることからすると、請求人らと同族会社との間の土地建物管理運営契約書に基づく行為又は計算は、請求人らが出資者かつ代表取締役あるいは取締役という関係にあるがゆえに可能な行為又は計算であり、純経済人として、不自然、不合理なものといわざるを得ない。
請求人らは、所得税法第157条第1項の適用に当たっては、同族会社から請求人らに支払われた役員報酬を考慮すべきである旨主張するが、請求人らの役員報酬は、代表取締役及び取締役としての役務の提供の対価として支給されるものであって、所得税法第157条第1項を適用した請求人らの不動産所得とは所得の発生根拠を異にする別個のものであり、同条同項の適用に当たり、請求人らの役員報酬を考慮する必要はない。
請求人らは、請求人らが法人を設立せず、個人の不動産所得として申告した場合と比較すると、本件更正処分は本来生じようもない所得に課税している旨主張するが、現行の租税法の下においては、事業者が選択した企業形態に応じてそれぞれ税法が適用され、租税額が決定されるのであって、その選択のいかんによって事業者が納付すべき租税額が異なってくることは法が当然に予定していることである。
また、「所得税の負担を不当に減少させている」との要件の判断に当たっては請求人らが選択していない企業形態によった租税額と対比、考慮する必要はない。
買主が売主に交付する金銭の額と買主が負担する売主の譲渡所得税相当額との合計額をもって土地の売買価額とする旨の特約条項付の売買契約に係る「売買価額」を一定の算式により計算し、その計算後の価額が著しく低い価額の対価の譲渡に該当するとした事例
裁決事例集 第39集 18頁
要旨
買主が売主に交付する金銭の額と買主が負担する売主の譲渡所得税相当額との合計額をもって土地の売買価額とする旨の特約条項が付されている売買契約に係る当該譲渡資産の売買価額及び売主の短期譲渡所得の譲渡所得税額は、次の算式により計算される。
売買価格=交付する金銭の額+譲渡所得税額‥‥‥‥‥‥‥‥式1
譲渡所得税額=(売買価格-取得額-譲渡経費)×税率‥‥‥式2
式1を式2に代入すると、
譲渡所得税額=
| 交付する金銭の額-取得額-譲渡経費 | ×税率‥式3 |
| 1-税率 |
本件の場合、交付する金銭の額が取得費に満たないところから、式3の譲渡所得税額がマイナスとなり、交付する金銭の額に加算すべき金額と請求人が納付することとなる譲渡所得税額とが一致する数値は存在しないこととなる。
結局、式1の交付する金銭の額7,700,000円に加算すべき金額は零という結果になるから、本件土地の売買価額は、交付する金銭の額の7,700,000円ということになる。
他方、買主は、本件契約の日の3日後に、第三者に対し18,000,000円で本件土地を転売しており、その転売価額には特別な条件が付されているとは認められないこと等から、当該転売価額は、本件土地の客観的な交換価値を示すものということができ、本件土地の時価は、18,000,000円と認められる。
そうすると、本件土地の売買価額は、7,700,000円であり、その結果、当該売買価額は、時価18,000,000円の2分の1未満となるから、本件譲渡は、著しく低い価額の対価による譲渡に該当する。したがって、所得税法第59条第1項の低額譲渡の規定を適用した原処分は、相当である。
青色事業専従者給与の支払に充てられた資金の原資が請求人の給与収入から請求人の事業に振り替えられたもの(事業主借)であることを理由に、青色事業専従者給与の支払額全額が、請求人の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入できないとした原処分庁の主張を排斥した事例(平成22年分~平成24年分の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第99集
要旨
原処分庁は、請求人には事業収入の約4倍の給与収入があり、当該給与収入が請求人の事業に資金流入され、青色事業専従者給与が支払われていることからすれば、青色事業専従者給与は事業から支払を受けていた場合には当たらず、その全額が事業所得の金額の計算上必要経費に算入できない旨主張する。
しかしながら、請求人の場合、青色事業専従者給与は、事業主借勘定に振り替えられ事業用とされた現金から支払われており、事業から支払われていたものと認められるから、労務の対価として相当であると認められる金額は、青色事業専従者給与の金額として、請求人の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することが相当である。
参照条文等
所得税法第57条第1項(平成25年法律第28号による改正前のもの) 所得税法施行令第164条第1項
1. 現物出資により取得した出資の価額を純資産価額方式で算定する場合、会社が所有する土地の価額は相続税評価額ではなく通常取引される価額によるべきであるとした事例 2. 現物出資により取得した出資の価額を純資産価額方式で算定する場合、法人税等の税額に相当する金額を控除すべきでないとした事例
裁決事例集 第41集 53頁
要旨
- 現物出資により取得した出資の価額を相続税評価通達に定める純資産価額方式に準じて算定する場合、その算定の基礎となる会社が所有する土地の価額は、相続税評価額ではなく通常取引される価額によるべきである。
- 現物出資はもともと会社の事業活動の継続を前提として行われるのであるから、現物出資により取得した資産の価額を純資産価額方式で算定する場合、相続税評価通達186-2に定める「法人税等の税額に相当する金額」は控除すべきではない。
一団の土地を取得し、順次、同一人に譲渡する旨の契約に基づき土地を譲渡した場合で、約定土地のすべてを譲渡できないときは買主の要請により買戻義務が生ずる旨の特約があっても、棚卸資産である土地の譲渡に係る収入金額を計上すべき時期は、上記特約にかかわらず、当該土地の引渡しがあった日であるとした事例
裁決事例集 第49集 145頁
要旨
- 一団の土地を取得し、順次、同一人に譲渡する旨の契約に基づき土地を譲渡した場合で、約定土地のすべてを譲渡できないときは買主の要請により買戻義務が生ずる旨の特約があっても、棚卸資産である土地の譲渡に係る収入金額を計上すべき時期は、当該土地の引渡しがあった日であり、その引渡しの日がいつであるかは、売買代金の受領状況や移転登記時期等の諸事情を総合勘案して判断するのが相当である。
- 土地を購入する契約を締結して支払った本件手付金に係る損失については、請求人が契約の支払期日までに残金債務を履行しなかったため、本件手付金を没収されたものと認められるから、残金債務の支払期日である昭和63年12月7日ないし売主から契約破棄等の意思表示のされた同月9日に確定したものとするのが相当である。
- 本件株式の評価損については、本件株式の発行会社である各社が請求人の事業に係る取引先であることを認めるに足りる証拠はなく、本件株式が請求人の事業の用に供されたとはいえないから、本件株式の評価損が生じたとしても、それを必要経費に算入することはできない。
- 請求人は、事業廃止後の費用発生額を必要経費に算入すべき旨主張するが、所得税法第63条(事業を廃止した場合の必要経費の特例)の規定に該当する事実が発生した場合には、所得税法第152条の規定により、更正の請求をすることができる旨定められているのであるから、事業廃止後の費用発生額は、所得税法第152条の規定による更正の請求により処理すべきであると解するのが相当であり、更正の請求を経ていない本件においては、これを必要経費に算入することはできない。
傭船した船舶を自己所有として減価償却費を計上していた内国法人と当該船舶を提供したM国法人との契約は、法形式及び契約内容から当該船舶の所有権留保付割賦売買契約ではなく、裸傭船契約(船舶賃貸借契約)であると認められるから、支払傭船料は国内源泉所得として源泉徴収課税すべきであり、当該船舶の減価償却費の計上は認められないとした事例
裁決事例集 第77集 161頁
要旨
請求人は、原処分庁が、①請求人がM国船籍の船舶を所有するM国法人3社と締結した本件各契約に基づいて支払った本件各金員は、所得税法第161条第3号に規定する国内源泉所得となる「船舶の貸付けによる対価」に該当するとして行った納税告知処分等、及び②本件各契約は裸傭船契約であるから、本件各船舶に係る減価償却費は計上することはできないとして行った法人税の更正処分等について、本件各契約は、裸傭船契約の書式を使用しているが、同時に船舶の買取りの権利・義務に関する覚書を締結することにより、所有権留保付割賦売買契約となるもので、本件各船舶は請求人が本件各M国法人から取得したものであるから、①本件各金員は、裸傭船料ではなく本件各船舶の取得に係る割賦代金であり、同条第3号に規定する国内源泉所得には該当しない旨、また②本件各船舶の取得価額を基に算定された減価償却費は損金の額に算入されるべきである旨主張する。
しかしながら、本件各契約は、裸傭船契約書の書式を用いて行われており、その記載内容を読む限り、裸傭船契約(船舶賃貸借契約)であると解するのが自然である。そして、請求人にとっては、本件各船舶を自ら所有して、日本船籍の船舶として使用するよりも、本件各M国法人が所有するM国船籍の船舶を借りて使用する方が、経済的にメリットがあることからすれば、請求人が、売買契約ではなく裸傭船契約の法形式を選択することには合理性がある。さらに、請求人は、裸傭船契約であることを前提とした経理処理を行っているから、請求人自身、本件各契約を、所有権留保付割賦売買契約ではなく、裸傭船契約であると認識していたといえ、また、本件各M国法人も、その経理処理からすれば、本件各契約を裸傭船契約と認識していたといえる。以上によれば、本件各契約は、所有権留保付割賦売買契約ではなく、裸傭船契約(船舶賃貸借契約)であると認められる。
したがって、原処分庁が行った納税告知処分等は適法であり、請求人が本件各契約締結時に本件各船舶を取得した事実はないため、原処分庁が行った更正処分等も適法である。
労務の対価として相当と認められる金額は、請求人が必要経費に算入した青色事業専従者給与の金額ではなく、類似同業者の青色事業専従者給与額の平均額であるとした事例(平成26年分及び平成28年分の所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第116集
ポイント
請求人が必要経費に算入した青色事業専従者給与の金額は、請求人の類似同業者に従事する青色事業専従者の給与の金額の平均額と比較すると、労務の対価として相当なものとは認められないため、請求人が必要経費に算入した青色事業専従者給与の金額のうちの労務の対価として相当と認められる金額に当たる類似同業者の青色事業専従者給与額の平均額を上回る部分は、事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないと判断したものである。
要旨
請求人は、青色事業専従者である配偶者(本件配偶者)に対して支払った給与の金額(本件青色専従者給与額)が、本件配偶者の労務の性質及びその提供の程度からすれば、労務の対価として相当と認められるもの(適正給与相当額)である旨主張する。
しかしながら、本件配偶者の適正給与相当額は、本件配偶者の労務の性質が、請求人の事業に従事する本件配偶者以外の使用人(本件使用人)とは異なる上、本件配偶者の労務の提供の程度が明らかでないことから、本件使用人の給与の金額と比較してその該当性を検討することは相当でなく、また、本件青色事業専従者給与額は、類似同業者の青色事業専従者(本件類似青色事業専従者)の給与の額の平均額と比較すると、適正給与相当額とは認められず、本件の適正給与相当額は本件類似青色事業専従者の給与の額の平均額と認められるから、本件青色専従者給与額のうち本件類似青色事業専従者の給与の額の平均額を上回る部分は、事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。なお、一部取消しは、原処分庁が採用した本件類似青色事業専従者の抽出基準の一部が相当でなかったことから、その点を見直した結果である。
参照条文等
要旨
請求人は、自己が取締役を務める同族会社との間で行った医療機器等の賃貸借契約はレンタル方式であるにもかかわらず、原処分庁は賃貸借契約に係る回収期間を経過した後の賃貸料の金額を所得税法第157条の規定を適用し、リース方式であると決めつけて当該賃貸料の金額を算出したことは、違法である旨主張する。
しかしながら、一般の賃貸業者においては、医療機器等を賃貸するとした場合、賃貸借期間経過後の賃貸料の金額を当初の契約に定められた金額の10分の1の金額としていることが認められるにもかかわらず、請求人が医療機器等の耐用年数を超えても、賃借料を減額することなく継続して当初の契約に定められた賃借料を支払っていることは、同族会社とその関係人であるがゆえになしえた経済的合理性を欠く行為又は計算であり、その結果、請求人の所得税の負担を不当に減少させていると認められるので、医療機器等の賃貸借契約がレンタル方式であるかリース方式であるかにかかわらず、所得税法第157条の規定を適用し、医療機器等ごとに、一般の賃貸業者が同種の医療機器等を賃貸する場合に賃貸借期間中に支払いを受ける賃貸料総額を月額賃貸料で除して賃貸料総額を回収する期間を算出し、当該回収期間経過後の賃貸料を当初の契約に定められた金額の10分の1に減額して請求人が支払うべき適正な賃借料を算出するのが相当と認められる。
要旨
請求人は、介護保険法第19条第1項に規定する要介護認定を受けている配偶者が、指定居宅介護事業者であるA社会福祉法人から居宅サービス計画に基づき受けている居宅サービス(通所介護、福祉用具の貸与及び食事代)が治療上有用であることは、担当医師もこれを認めていることから、所得税基本通達73ー6《保健師以外の者から受ける療養上の世話》にいう「療養上の世話を受けるために特に依頼したものから受ける療養上の世話」に該当するので、当該居宅サービスの対価は医療費控除の対象となると主張する。
しかしながら、所得税基本通達73-6は、保健師、看護師又は準看護師以外の者で療養上の世話を受けるために特に依頼したものから受ける療養上の世話も含まれる旨定め、平成12年6月8日付課所4-11「介護保険制度下での居宅サービスの対価に係る医療費控除の取扱いについて(法令解釈通達)」(以下「本件法令解釈通達」という。)は、居宅サービス計画に医療系サービス(訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、通所リハビリテーション)のいずれかが位置づけられている者を対象として、当該対象者が支出した[1]訪問介護、[2]訪問入浴介護、[3]通所介護及び[4]短期入所生活保護(以下、これらを総称して「対象居宅サービス」という。)に要する費用に係る利用者負担金を「療養上の世話を受けるために特に依頼した者による療養上の世話の対価」として医療費控除の対象とする旨を定めているが、これらの各通達は、医療の対価と評価できるものについてこれを医療費控除の対象としている法の趣旨に照らし相当であると認められるところ、請求人の支出した通所介護の対価は、その支出に係る居宅サービス計画上、医療系サービスが計画されていない対象居宅サービスに係る支出であることから、療養上の世話を受けるために特に依頼したものから受ける療養上の世話の対価とは認められず、また、福祉用具の貸与及び食事代の支払額は、対象居宅サービスにも該当しない日常生活に関する支出と認められ、いずれの支払額も医療費控除の対象とすることすることはできないから、請求人の主張には理由がない。
相続により取得した土地(本件土地)の分離長期譲渡所得の計算上、控除する取得費は、被相続人が本件土地を取得した際の売主が作成した土地台帳に記載された金額であると判断した事例(平成25年分の所得税及び復興特別所得税の更正の請求に対してされた更正処分・一部取消し)
裁決事例集 第109集
ポイント
本事例は、分離長期譲渡所得の計算上、控除する取得費は、当審判所の調査により把握された、被相続人が土地(本件土地)を取得した際の売主が作成した土地台帳記載の金額によるべきであり、請求人の主張する地価公示価格から推計した金額や、原処分庁が主張する本件土地の譲渡に係る収入金額の100分の5に相当する金額によることはできないとして、原処分の一部を取り消したものである。
要旨
請求人は、本件土地の譲渡に係る分離長期譲渡所得の計算上控除される本件土地の取得費は、地価公示価格から推計した金額によるべきである旨主張し、原処分庁は、本件土地の取得に要した金額の実額は不明であるから、本件土地の譲渡に係る収入金額の100分の5に相当する金額(概算取得費)を本件土地の取得費とすべきであると主張する。
しかしながら、当審判所の調査により把握された、本件土地を被相続人が取得した際の売主が作成した土地台帳(本件土地台帳)の記載内容の信用性は高く、記載内容どおりの事実を認定することができるから、本件土地台帳に記載された金額を本件土地の取得費と認めるのが相当である。なお、請求人の主張する本件土地の取得費の金額は推計したものに過ぎないことから採用することはできない
。
参照条文等
請求人が代表取締役である法人の従業員が、請求人の定期預金の一部を払い戻し、費消したことは横領に当たらず、その損害は雑損控除の対象となる損失に該当しないとした事例
裁決事例集 第76集 169頁
要旨
請求人は、平成16年から平成17年までの間に、銀行の貸金庫に保管していた現金を、請求人が代表取締役を務める法人の従業員に窃盗されたが、当該損失は、その事実が発覚した平成17年分の損失であり、平成17年分の雑損控除の対象となる旨主張する。そして、原処分庁は、平成17年末の時点において、請求人は当該従業員に対して損害賠償請求権を行使しておらず、当該従業員から回収できる損害賠償額が確定していないので、雑損失の額が確定していないから、平成17年分において雑損控除の対象となる盗難による損失が生じたこととはならない旨主張する。
しかしながら、所得税基本通達72-6において準用する同通達51-7によれば、損失の金額から控除すべき損害賠償金等が確定していない場合には、当該損害賠償金等の見積額に基づき損失が生じた年分の確定申告に反映させることとしており、後日、当該損害賠償金等の確定額と見積額が異なった場合には、そ及してこれを訂正する旨定めているところ、この取扱いは、損害賠償金等の確定の有無にかかわらず、損失が生じた年分において雑損控除を適用すべきであることを定めたものであり、当審判所においても、相当と認められる。したがって、盗難又は横領による損失については、損失が生じたそれぞれの年分において雑損控除を適用すべきであるから、この点に関する請求人の主張には理由がなく、当該従業員から回収できる損害賠償額が確定していない場合であっても、盗難又は横領による損失が生じた年分において雑損控除を適用するのが相当であるから、この点に関する原処分庁の主張には理由がない。
また、請求人は、請求人名義の定期預金の更新手続を請求人が代表取締役を務める法人の従業員に任せていたところ、当該従業員が本件定期預金の一部を請求人に無断で解約し、これを横領されたから、請求人には雑損控除の対象となる損失が生じた旨主張する。
しかしながら、所得税法第72条《雑損控除》第1項が規定する「横領」の概念について、所得税法に規定はなく、刑法上の横領罪にいう横領と同一のものと解するのが相当であり、本件定期預金の更新手続には、①本件定期預金の通帳、②銀行届出の印章及び③定期預金の払戻請求書が必要であるところ、本件定期預金を払い戻すために最も重要な銀行届出の印章は請求人自身が持ち歩き、本件定期預金の通常の更新手続においては請求人が更新手続後の利率を確認した上で払戻請求書に銀行届出の印章を押印していたことが認められること及び請求人が当該従業員に本件定期預金を払い戻して現金を引き出す権限を与えていたとは認められないことからすれば、請求人は当該従業員に本件定期預金の管理を任せていたとは認められないから、本件定期預金について、請求人と当該従業員との間に横領の前提となる委託信任関係が認められず、当該従業員が本件定期預金の一部を払い戻し、これを費消した行為は横領には当たらないと判断するのが相当である。したがって、請求人の主張には理由がない。
請求人の事業所得の金額等を類似同業者の平均水道光熱費率を用いて推計する方法に合理性があるとした事例( 平成21年分以後の所得税の青色申告の承認の取消処分、 平成22年分及び平成23年分の所得税の各更正処分並びに平19.1.1から平20.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各決定処分及び無申告加算税の各賦課決定処分・ 棄却、 全部取消し)
裁決事例集 第96集
ポイント
本事例は、請求人の事業所得の金額等を類似同業者の平均水道光熱費率を用いて推計する方法について、合理性があると認められるものの、推計の基礎とする水道光熱費の額の計算に当たり、原処分庁の認定誤りがあったため、これを是正し、類似同業者を選定し直した上で、改めて平均水道光熱費及び平均所得率を算出し、原処分庁が採用した推計の方法により請求人の事業所得の金額等を算定することが相当であるとしたものである。
要旨
請求人は、原処分庁が採用した類似同業者の水道光熱費率に基づく推計の方法について、類似同業者間の水道光熱費率に較差があること、また、請求人が経営する民宿(本件民宿)が所在する地区の水道料金は他の地区に比べ割高であるなどの特殊事情があるにもかかわらず、これが考慮されていないことから、原処分庁の推計の方法には合理性がない旨主張する。
しかしながら、類似同業者の水道光熱費率の平均値により推計する場合、その平均値を算出することによって類似同業者間の水道光熱費率に開差があったとしても、各類似同業者の個別性が平均化され、推計の合理性が高められるのであるから、多少の較差があるからといって、原処分庁の推計方法に合理性がないというのは相当ではなく、本件において、これを不合理ならしめる程度の較差は見当たらない。また、仮に水道料金が他の地区に比べ割高であったとしても、基礎数値である水道光熱費の額に占める水道料金の額の割合は、せいぜい10%程度にすぎないことからすれば、水道光熱費の額を基礎とする推計方法を不合理ならしめる程度に顕著な事情とはいえない。したがって、原処分庁が採用した推計の方法には、合理性があると認められる。そして、推計の基礎とする水道光熱費の額の計算に当たり、本件民宿に係る水道光熱費の額から家事費相当額を控除する計算方法は、当審判所においても相当と認められる。しかしながら、家事費相当額の計算上、請求人世帯の人員について、原処分庁の認定誤りが存するため、これを是正した上で、原処分庁が設定した抽出基準に従って、改めて類似同業者を抽出すると、誤って類似同業者に選定された者及び選定漏れの類似同業者が認められたことから、誤って類似同業者に選定された者を除外し、選定漏れの類似同業者を採用し、改めて平均水道光熱費及び平均所得率を算出して、事業所得の金額を推計することが相当である。
参照条文等
預託金返還請求権をその預託先であるゴルフ場経営法人に対して行使した場合及び預託金返還請求権を喪失した会員権をゴルフ場経営法人に返却した場合は、いずれも所得税法第33条第1項に規定する資産の譲渡には該当しないとした事例
裁決事例集 第67集 412頁
要旨
請求人は、預託金会員制ゴルフ会員権であるG会員権及びJ会員権を、それぞれ各ゴルフ場経営法人に譲渡したと主張するが、[1]G会員権については、請求人はクラブを退会し、預託金の返還を受けているが、この場合、当該ゴルフ会員権がゴルフ場施設の優先利用権を内在した状態でゴルフ場経営法人に移転するものではなく、当該ゴルフ会員権の所有者自らがゴルフ場施設の優先利用権を消滅させ、預託金という金銭債権の回収を行ったというべきであるから、所得税法第33条第1項に規定する資産の譲渡には該当せず、また、[2]J会員権については、Jゴルフ場経営法人は会社更生法による更生手続開始決定を受けたため更生債権の届出の催告を行ったが、請求人は更生債権の届出を怠り、その結果、請求人は会員たる地位等を喪失したものであるから、J会員権を譲渡した旨請求人が主張する行為は、J会員権の権利を放棄する意思の下に会員証を返却したものにすぎないため、同条項に規定する資産の譲渡には該当しない。したがって、それぞれのゴルフ会員権で発生した損失の金額を他の所得金額と損益通算することはできない。
養老保険契約に加入し支払った保険料について、請求人は、所得税基本通達36-31の(3)に該当すると主張するが、当該保険契約は、被保険者が主任以上という基準であり、全従業員がその恩恵に浴する機会が与えられているとは認められず、給与に該当するとした事例
裁決事例集 第46集 177頁
要旨
請求人は、本件養老保険契約に係る被保険者について、[1]勤続年数15年以上、[2]年齢40歳以上、[3]定年までの定着度の各要件を総合勘案して、各職種より選定した旨主張するが、1名のやむを得ない例外を除いては主任以上の全従事員が被保険者となっており、保険加入の対象者として主任以上の基準を設けていたことが推認される。
ところで、請求人においては、主任とは役職名の一つであって、役職の任免は請求人の業務運営上の必要に応じて行われるものとされており、必ずしもすべての従事員が主任以上の役付者になれるとは限らず、また、課長又は主任に任命されていない者で勤続年数15年以上かつ年齢40歳以上の者が3人認められることからみると、全従事員がその恩恵に浴する機会を与えられているとは認められない。
したがって、本件保険契約については、全従業員がその恩恵に浴する機会が与えられているとは認められず、支払った保険料は、被保険者に対する給与とすることが相当である。
E国法人に対して支払ったゲームソフトの開発委託費は、国内源泉所得である著作権の譲渡等の対価に該当し、非居住者等に対する源泉所得税の課税対象となるとした事例
裁決事例集 第78集 208頁
要旨
請求人は、原処分庁がゲームソフトの開発委託契約(以下「本件開発委託契約」という。)に基づいて請求人がE国法人に支払った金員は国内源泉所得となる所得税法第161条第7号ロに規定する著作権の使用料又は譲渡の対価に該当するとして行った源泉所得税の納税告知処分等について、当該金員は開発委託に対する対価であるから源泉所得税の課税対象となる国内源泉所得に該当しない旨主張する。
しかしながら、本件開発委託契約の目的は、E国法人が保有する原著作物を基礎とした新たなゲームソフトの開発及び販売であり、その本体をなす合意は、E国法人から請求人に対する当該ゲームソフトの二次的著作物に係る著作権の譲渡又は使用許諾であるといえるから、本件開発委託契約に基づいて支払った金員は、当該二次的著作物に係る著作権の譲渡又は使用許諾の対価にほかならないから、源泉所得税の課税対象となる国内源泉所得に当たるとみるのが相当である。
要旨
請求人は、所得税法第72条の規定の趣旨からすれば、同条に規定する「災害」とは、納税者の意思に基づかない事象をいうのであり、本件においては、本件建物の建築当時には合法であったアスベスト部材が、その後、科学的に人体に極めて有害であることが判明し、本件建物解体時にはアスベストの含有量調査及びその除去について法令により義務付けられるまでに至ったものであり、この一連の事象が納税者の意思に基づかない事象として同条に規定する「災害」に該当する旨主張する。
しかしながら、所得税法第72条に規定する「災害」の語義として、それを「納税者の意思に基づかない事象」とすることは広きに過ぎ、雑損控除の範囲を適切に画することができなくなることからすれば、「納税者の意思に基づかない事象」のみをもって同条に規定する「災害」に該当するとの考えは法解釈としては妥当ではなく、所得税法第2条第27号及び同法施行令第9条の規定からすれば、災害とは、自然界に生じた天災ないしはそれと同視すべき事象を指すものであり、また、人為によるものであっても、鉱害、火薬類の爆発など自然界に生じた天災と同視すべき劇的な過程を経て害を被る事象をいうものと解するのが相当である。
また、請求人は、上記のとおり一連の事象が所得税法第72条に規定する「災害」に該当する旨主張するが、なおあいまいで特定された主張とはいい難いところ、本件においては、いかなる事象を所得税法第2条第27号を受けた同法施行令第9条に規定する「人為による異常な災害」に該当するものとして検討するかによって判断内容は異なるものとなる。
すなわち、請求人の主張を「建物の解体の際にアスベストが発見されたことによりアスベストの除去作業等を法令により義務付けられるに至ったこと」が「災害」に該当するとの主張と解し、「人為による異常な災害」とみることができるかを検討すると、法令によりアスベストの除去作業等が義務付けられたのは、作業の過程において飛散するアスベストを作業員等が吸引することによる健康障害の発生を防止するためであり、従来建材等に広く使用されていたアスベストが、人の健康上危険視されてその使用が禁止され、除去作業等の費用負担を余儀なくされたこと自体は、予見及び回避不可能であり、納税者の責めに帰すべきものではなく、納税者の意思に基づかないものとしても、除去作業等の義務が課せられ、これを行ったこと自体は法令に基づく要請であり、かつ、その費用負担も受忍すべきものというべきであるから、かかる法令に基づき費用負担が生じたこと自体を上記「人為による異常な災害」とみることはできない。
タクシーによる旅客運送業を営む法人について、休日乗務手当、嘱託乗務員の乗務手当の源泉徴収につき、支給額等を認定し、適用税率を是正し、税額を算定した事例
裁決事例集 第48集 335頁
要旨
請求人は、[1]原処分庁は、[イ]請求人の源泉徴収税額の計算の基礎とした各月分の給与の額には、社員乗務員に支給した休日乗務手当の額及び嘱託乗務員に支給した乗務手当の額を除外するという誤りがあり、また、[ロ]他にも源泉徴収税額に誤りがあるとして納税告知等をしたが、[2]処分庁の計算等は誤っており、特に上記[ロ]については請求人に誤りはなく、納税告知等は一部取り消すべきであると主張する。
当審判所が検討したところ、[1]上記[イ]については、原処分庁及び請求人の計算にはいずれも誤りがあり是正する必要があり、[2]上記[ロ]については請求人の主張は相当である。
また、適用税率表等を是正して、各月分の源泉徴収税額を計算すると、いずれも原処分に係る額を上回るから、原処分は適法である。
原処分庁が推計の基礎とした売上原価の額に、接待交際費及び家事費などの額が含まれていることから、これらの金額を補正すべきとした事例( 平成23年分及び平成24年分の所得税の各更正処分及び無申告加算税の各賦課決定処分、 平24.1.1から平24.12.31の課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに無申告加算税の賦課決定処分・ 一部取消し、 棄却)
裁決事例集 第102集
ポイント
本事例は、推計の基礎数値の正確性を期すためには、同業者比率法による推計の基礎とした売上原価の額が合理的な根拠に基づいて算定される必要があるとしたものである。
要旨
売上原価の額を推計の基礎として同業者比率法により事業所得の金額を算定する場合、売上原価の額が合理的な根拠に基づいて算定される必要があるところ、原処分庁は、各年分の売上原価の額を、請求人から提示された領収書等により仕入金額を計算し、売上原価の額を算定している。当審判所においても、その算定方法自体は相当であると認められるが、原処分庁が算定した各年分の売上原価の額には、接待交際費及び家事費などとともに、業種の異なる店舗の売上原価が含まれていることなどから、これらについて必要な補正等を加えた後の金額を推計の基礎となる売上原価の額とするのが相当である。
参照条文等
審査請求人が営む不動産貸付けについて、同族会社1社への専属的な貸付けであり、本件貸付けの維持管理業務の程度が実質的には相当低いなどとして、不動産所得を生ずべき事業には当たらないとした事例
裁決事例集 第68集 59頁
要旨
請求人は、本件貸付けによる収入が年間700万円以上であること、また、9年間事業規模相当として申告してきたことなどを理由に本件貸付けは不動産所得を生ずべき事業に当たる旨主張する。
事業性については、[1]営利性・有償性の有無、[2]継続性・反復性の有無、[3]自己の危険と計算における事業遂行性の有無、[4]取引に費やした精神的肉体的労力の程度、[5]人的・物的設備の有無、[6]取引の目的、[7]事業を営む者の職歴・社会的地位・生活状況などの諸点を総合勘案して判断されるべきところ、本件貸付けについては、不動産貸付けの目的、営利性、継続性などを部分部分としてみた場合においては、直ちに事業ではないということはできない要素も認められる。
しかしながら、本件貸付けは、請求人が代表取締役社長を務める同族会社F社への専属的な貸付けのみであり、事務所の修理等は専ら賃借人である同社が主導的に行い、賃借料の決定は同社の業績が優先的に考慮されていることから、請求人における事業遂行上その企画性は乏しく、危険負担も少ないと認められる。また、事務所は、F社が利用しやすいようF社が所有する事務所の1階とワンフロアで一体的に利用できるよう改造されており、その構造からみて他に賃貸等が可能である等の汎用性がないなど、これらの点における請求人の自己の危険と計算における事業遂行性は希薄であると認められる。
さらに、請求人の配偶者Gが大半の時間を費やして行っている清掃などには、本来F社がその業務として行うべきものが含まれており、GがF社の取締役に就任していることに照らすと、本件貸付けにおいて貸主として本来行うべき維持管理業務の程度は、実質的には相当低いことが認められる。
これらの諸点を総合して勘案すると、本件貸付けは、社会通念上事業と称するに至る程度のものとは認められないと判断するのが相当である。
なお、請求人が本件貸付けを9年間事業規模相当として申告し、原処分庁がこれに対して是正しなかったとしても、そのことをもって本件貸付けの事業性が認められるものではない。
民事再生手続により預託金制ゴルフ会員権の預託金債権が一部切り捨てられた場合は、資産の譲渡損失に該当せず、また各種所得の必要経費に算入することもできないとした事例
裁決事例集 第69集 113頁
要旨
請求人は、請求人が所有していた預託金会員制のゴルフ会員権は、ゴルフ場経営会社の民事再生手続により、その営業権が別法人に移り、預託金債権が5%に減額され95%の損失が生じているのであるから、その損失を他の所得から控除すべきであると主張するが、民事再生手続中のゴルフ場経営会社がゴルフ場施設と預託金債務を新経営会社に譲渡した場合は、各会員は新経営会社との間で減額された預託金により契約が継続し、ゴルフ会員権としての性質は、契約の相手方を除き、営業譲渡の前後を通じて維持されることから、各会員には譲渡行為がなく、したがって、所得税法第33条第1項に規定する資産の譲渡には当たらず、また、切り捨てられた預託金債権については各種所得の金額の計算上、必要経費に該当しない。
調停に基づく離婚慰謝料として譲渡することとなったマンションの譲渡時期は、所有権移転登記のときではなく、当該マンションから請求人の資産を搬出し、当該マンションを相手方に引き渡したときであるとした事例
裁決事例集 第51集 113頁
要旨
昭和62年5月の調停に基づき離婚慰謝料として先妻にマンションを引き渡すこととなった請求人は、住所も1年以上前から他所に転出しており、翌6月中旬ころに同マンションの請求人の資産を搬出していたことが認められるので、そのころに同マンションを相手方に引き渡したものと認められるから、その時が同マンションの譲渡の時期であると解すべきである。
当該マンションの所有権移転登記が平成5年になされたのは、子供の成人を待つなどの事情があったからと認められ、かつ、請求人が当該譲渡所得について、平成5年分として申告したのは、原処分庁からの申告しょうように単純に応じたものと認められるから、いずれも当該譲渡所得が平成5年分として生じたことの理由とはならない。
請求人が相続により取得した上場株式の譲渡所得に係る取得費は、当該株式の被相続人への名義書換日を取得時期とし、その時期の相場(終値)によって算定することも合理的な取得費の推定方法であると判断した事例
裁決事例集 第117集
ポイント
本件は、請求人が相続により取得した上場株式の譲渡所得の計算上、控除する取得費に算入する金額は、当該株式の被相続人への名義書換日を確認し、当該名義書換日の終値により算定することも合理性を有する取得価額の把握方法であると判断したものである。
要旨
原処分庁は、請求人が相続により取得した上場株式(本件株式)の取得費について、できる限りの調査を尽くしたものの、有償で取得した上場株式等はごく一部であり、大部分の上場株式等の実際の取得価額は判明しなかった旨主張する。
しかしながら、名義書換日が判明している株式については、当該名義書換日を取得時期とし、その時期の相場(終値)で取得価額を算定することも、明確かつ簡便な推定方法として合理的であると解されるから、本件株式の取得費は概算取得費によらず、総平均法に準ずる方法により算定すべきである。
要旨
譲渡収入金額のあん分の基礎となる底地割合について、請求人は、本件土地の取得(昭和62年9月)後2月経過後に締結した売買契約金額を更地価額として算定した割合を基とすべきであると主張するが、[1]当該売買契約は解除され成立していないこと、また[2]当該契約金額は本件土地を取得した後2月後の価額であるから本件土地の取得時における更地価額と認めるのは適当ではない。原処分庁が更地価額として採用した鑑定評価額は、請求人が本件土地の取得資金を借り入れる際に鑑定したもので、その鑑定に至った事情からみても当該鑑定価額を本件土地の更地価額と認めるのが相当である。
要旨
- 請求人は、[1]身体障害者更生施設は医療法にいう病院又は診療所ではないが、同施設では、医師及び看護師を含む施設職員により、入所者の更生に必要な治療又は指導及び訓練が行われていること、[2]所得税法施行令第207条は医療費の範囲を規定しているだけであって、対価の明示が医療費控除を受けるための要件であることを規定しているものではないことなどから、本件利用者負担額の全額が、医療費控除の対象となる医療費に該当する旨主張する。
しかしながら、所得税法第73条第2項及び同法施行令第207条の規定によれば、実質的にみて医療費に該当すれば、又は医療費に該当するものが含まれていれば、すべて医療費控除の対象になるのではなく、法令に定められた医療費の対価と評価できるものでなければ医療費控除の対象とはならないと解されるところ、本件利用者負担額は、その中には一部嘱託医師による診療や看護師による看護等の対価が含まれていると認められるものの、当該対価以外のサービスの対価と渾然となっており、それがどの部分かについてはその区分が明確でなく、医療費に当たる部分とそれ以外のものを区分する仕組みになっていない。
したがって、医療費外のサービスの対価が混在する利用者負担額全体を、所得税法第73条第2項所定の医療費の対価ということはできない。 - また、請求人は、医療費控除の取扱いに係る法令解釈通達である平成12年6月8日付課所4ー9「介護保険下での指定介護老人福祉施設の施設サービスの対価に係る医療費控除の取扱いについて」において、指定介護老人福祉施設の施設サービスの対価の2分の1が医療費控除の対象とされていることから、この対価と性格が極めて類似する本件利用者負担額についても、最低その2分の1は医療費に該当する旨主張する。
しかしながら、指定介護老人福祉施設は、所得税法施行令第207条第3号に規定する診療所に準ずるものとして所得税法施行規則第40条の3第2項に規定された施設であることから、その施設の人的役務提供の一部が医療費とされているのであるが、身体障害者更生施設については、そのような法的措置は講じられておらず、また、指定介護老人福祉施設の利用者の負担額は、受益の程度に応じた負担を基本とする考え方に基づき算定されており、いわゆる応能原則がとられていないことにかんがみれば、本件利用者負担額と指定介護老人福祉施設の利用者の負担額を同質のものとみることはできない。
したがって、この点に関する請求人の主張は採用できない。
1. 借地権利金の全額を年内に受領している場合のその借地権利金を譲渡所得の収入金額にみなされるときにおける譲渡所得の収入すべき時期は、借地権利金の全額を受領した年分であるとした事例 2. 同族会社に支払った6億円の立退料は、譲渡費用に該当しないとした事例 3. 審査請求中に義務的修正申告書を提出しなかったことが国税通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」に該当するとした事例
裁決事例集 第53集 129頁
要旨
- 本件は、借地権利金が譲渡所得の収入金額にみなされる場合に該当するものであるところ、請求人は、A土地については、平成2年7月31日に賃貸借契約が成立しているが、B土地については、他社が使用収益中のため賃貸借契約が成立していないのであるから、同土地に係る借地権利金の収入すべき時期は、平成3年であると主張する。
しかしながら、[1]請求人は、平成2年7月31日までに両土地の借地権利金の97.5パーセントに相当する金員を受領し、同年8月10日までにはその全額を受領していること、[2]請求人及び賃借人の双方において両土地を一体のものとして取り扱っていること、[3]B土地に係る賃貸借契約が別途取り交わされていないこと、[4]B土地を使用している他社も平成2年7月31日の時点において平成3年3月31日に立ち退くことが確定していたことなどから、B土地についても平成2年7月31日の時点で賃貸借契約が成立しており、資産の増加益の利得が確定的に発生しているものと認められるから、同土地に係る借地権利金の収入すべき時期は、平成2年であると認めるのが相当である。 - 請求人は、同族会社との土地の賃貸借契約の解除に際して支払った6億円の立退料は当該土地の譲渡費用に該当すると主張するが、[1]当該土地は、当該同族会社の転貸先が建物、構築物のない状態で駐車場として使用していたこと、[2]当該同族会社から当該転貸先への立退料の支払がないこと、[3]当該同族会社に対する賃貸料の額が固定資産税相当額に近い額であり、実質的には使用貸借に近いものと認められることから、請求人が当該同族会社に対して立退料を支払う必要性は認められず、当該6億円全額を譲渡費用として控除することはできない。
- 租税特別措置法第37条の2(特定の事業用資産の買換えの場合の更正の請求、修正申告等)に規定するいわゆる義務的修正申告書を提出する場合に該当する本件の場合、当該修正申告書を提出すれば、納付すべき税額は増額された部分を含む全額が即時確定し、その限りで先になされた更正処分(原処分)は、当該修正申告に吸収されて消滅し、その存在意義を失うと解されていることから、更正処分について審査請求等の不服申立てをしている場合において、当該義務的修正申告書の提出を予定することは、法が不服申立てを認めた趣旨を結果的に没却することとなる。
したがって、このような場合において、当該義務的修正申告書を提出しなかったことについては、やむを得ない事由があったものと認められ、かかる理由は、国税通則法第65条(過少申告加算税)第4項に規定する正当な理由に該当するから、過少申告加算税の賦課決定処分はその一部を取り消すべきである。
ポイント
所得税法第72条に規定する雑損控除は、同条第1項により、「居住者又はその者と生計を一にする配偶者その他の親族で政令に定めるものの有する資産について災害又は盗難若しくは横領による損失が生じた場合において」適用するものである。
この事例は、いわゆる振り込め詐欺の被害に遭い、だまし取られた金額分の損失が、雑損控除制度の趣旨・目的に照らし「災害又は盗難若しくは横領」による損失に当たるか否か、又は「災害」による損失、「盗難」による損失若しくは「横領」による損失のいずれかの損失に当たるか否かが争われたものである。
要旨
請求人は、いわゆる振り込め詐欺の被害に遭い、だまし取られた金額分の損失(本件損失)が、雑損控除制度の趣旨・目的に照らせば所得税法第72条《雑損控除》第1項に規定する「災害又は盗難若しくは横領」による損失、又は「災害」による損失、「盗難」による損失若しくは「横領」による損失のいずれかの損失に当たる旨主張する。
しかしながら、「災害」、「盗難」及び「横領」はいずれも別個の概念であること、また、①上記詐欺の犯人が指定した口座に3回にわたり振込送金した請求人の行為(本件各振込み)自体が、請求人の意思に基づいてなされているから、本件損失は「災害」による損失に当たらないこと、②「盗難」の意義は「財物の占有者の意に反する第三者による当該財物の占有の移転」と解されるところ、本件各振込みが請求人の意思に基づいてなされているから、本件損失は「盗難」による損失に当たらないこと、③「横領」の意義は「他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をすること」と解されるところ、請求人が振り込んだ金銭に対する所有権は本件各振込みを終えた時点で、当該金銭に対する占有とともに上記詐欺の犯人側へ移転したと認められ、当該犯人はそもそも請求人の物の占有者ではないから、本件損失は「横領」による損失に当たらないことから、本件損失は、所得税法第72条第1項に規定する「災害又は盗難若しくは横領による損失」には当たらない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成19年4月17日第三小法廷判決(民集61巻3号1026頁) 京都地裁平成8年6月7日判決(税資216号511頁) 最高裁昭和24年3月8日第三小法廷判(刑集3巻3号276頁) 大審院明治42年8月31日判決(刑録15輯1097頁) 平成21年2月16日裁決(裁決事例集No.77)
要旨
医療費控除の対象となる医療費について、所得税法第73条第2項は、医師又は歯科医師による診療又は治療、治療又は療養に必要な医薬品の購入その他医療又はこれに関連する人的役務の提供の対価のうち通常必要であると認められるものとして政令で定めるものをいう旨規定し、これを受けて、所得税法施行令第207条《医療費の範囲》には、保健師、看護師又は准看護師による療養上の世話(同条第5号)等の対価のうち、その病状等に応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額がこれに該当する旨規定している。
そして、所得税基本通達73-6は、上記「保健師、看護師又は准看護師による療養上の世話」には、保健師、看護師又は准看護師以外の者で療養上の世話を受けるために特に依頼したものから受ける療養上の世話も含まれる旨定め、平成12年6月8日付課所4-11「介護保険制度下での居宅サービスの対価に係る医療費控除の取扱いについて(法令解釈通達)」は、居宅サービスの対価に係る医療費控除の取扱いについて、医療系サービスのいずれかが位置付けられている居宅サービス計画に基づいて、居宅サービスを利用する者を対象とし、当該対象者が医療系サービスと併せて利用する①訪問介護(介護保険法第8条第2項)、②訪問入浴介護(同条第3項)、③通所介護及び④短期入所生活介護(同条第9項)(以下、上記①から④までの各居宅サービスを併せて「対象居宅サービス」という。)に要する費用(介護保険法第41条《居宅介護サービス費の支給》第4項各号に規定する「厚生労働大臣が定める基準により算定した費用の額」をいう。)に係る自己負担額を、療養上の世話を受けるために特に依頼した者による療養上の世話の対価として医療費控除の対象とする旨定めている。
これら各通達の定めは、医療の対価と評価できるものについて、これを医療費控除の対象としている法の趣旨に照らし相当であると認められる。
これを本件についてみると、本件利用料のうち、通所介護に係る費用の額は、対象居宅サービスに要する費用に該当するものの、本件居宅サービス計画には医療系サービスがいずれも位置付けられていないこと、請求人の妻であるAは医療系サービスを利用していないことから、療養上の世話を受けるために特に依頼した者による療養上の世話の対価とは認められない。
また、福祉用具貸与に係る費用の額及び食費の額は、対象居宅サービスに要する費用にも該当せず、日常生活に関連する費用と認められることから、医療費控除の対象とすることはできない。
したがって、本件利用料は、その全額が医療費控除の対象とならないから、請求人の主張には理由がない。
原処分庁が選定した類似同業者の中に選定基準に該当しない事業者が含まれていたと認定した事例(平成21年分から平成24年分までの所得税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分、平成22年1月1日から平成22年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の決定処分並びに無申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、平成23年1月1日から平成23年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、平成24年1月1日から平成24年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに重加算税の賦課決定処分・一部取消し、棄却)
裁決事例集 第104集
要旨
請求人は、請求人の自宅に存したノート(本件ノート)は請求人の事業に係る売上金額が記載されたものではないから、原処分庁が本件ノートを基に請求人の事業所得の金額等を推計の方法により算定したことには合理性がない旨主張する。
しかしながら、本件ノートに記載された売掛金の額は、請求書の金額及び預金口座に振り込まれた金額と9割以上が一致していることからすると、本件ノートには、請求人の事業に係る売上金額を記載したものとして一定の信ぴょう性があると認められる。加えて、原処分庁は、請求人が営む事業と業種、業態、事業内容、規模等が類似すると認められる青色申告者の平均特前所得率(総収入金額に対する青色申告特典控除前の事業所得の金額の割合の平均値)に基づいて、請求人の事業所得の金額を推計の方法により算定しているところ、原処分庁が類似同業者を機械的に抽出すべく設定した選定基準についてみると、選定対象とした事業者は、①請求人が営む店舗の所在地を管轄する税務署及び同税務署と隣接する税務署の管轄内に納税地及び事業所を有する者に限定し、地域差による収益等のかい離を回避していること、②請求人が営む事業の営業形態との同一性に配慮が認められ、売上金額が請求人の売上金額の0.5倍以上2倍以下であり、複数店舗経営及び兼業ではなく、青色事業専従者がいないなど事業規模等の類似性を十分に考慮していること、③年中途の開廃業がない青色申告者で調査中又は不服申立て中でない者に限定することによって、収入金額等を把握する上で障害となる不安定要素を有する者が除外されるとともに、同業者に係る資料及び金額の正確性が担保されていることから、原処分庁による推計の方法自体は相当であると認められる。ただし、原処分庁が選定した類似同業者の中には、原処分庁が設けた選定基準に該当しない事業者が一部含まれていることから、これらを類似同業者から除外した上で平均特前所得率を算定することが相当である。
参照条文等
本件ゴルフ会員権は、その譲渡の時点において優先的施設利用権が消滅していたとは認められないから、譲渡所得の基因となる資産に該当し、その譲渡による損失は他の各種所得と損益通算ができるとした事例
裁決事例集 第73集 197頁
要旨
ゴルフ場経営会社F社は、ゴルフ場施設を所有するE社との間で、本件ゴルフクラブの経営並びにこれに関連する業務の一切を受託すること等を内容とする本件委任契約を締結し、ゴルフ場の経営を行っていたところ、E社が所有するゴルフ場施設用地及び建物の一部(本件競売不動産)について担保権の実行として不動産競売開始決定がなされ、K社を買受人とする売却許可決定がなされ、また、別の一部用地等(本件売却不動産)は、E社からV社に任意に売却された。
しかし、本件売却不動産についてはF社とV社の間の黙示の使用貸借契約によりF社が引き続き使用することができたと認められ、F社としては、これと森林組合等から借り受けている土地を引き続き使用することにより、本件ゴルフクラブを構成していた3つのコースのうち2コースの利用を会員に提供できたものと認められ、これら2コースを会員の利用に供すれば、社会通念上ゴルフ会員権の目的を達成することができるといえる。
そして、本件ゴルフクラブの営業は、平成17年1月○日に閉鎖されるまでの間続けられていたとの事実に照らすと、本件ゴルフ会員権の譲渡の時点(平成16年12月5日)でも、F社は、社会通念上ゴルフ場施設の利用というゴルフ会員権の目的を達成できる程度にまでゴルフ場施設をその利用に供することができていたと認められる。
さらに、本件委任契約において、F社は、E社の所有する不動産等だけではなく、自ら賃借した土地をも使用して本件ゴルフクラブを経営することが予定されていたと認められるから、本件競売不動産及び本件売却不動産の所有名義が第三者に移転し、かつ、F社において本件競売不動産の使用ができなくなったとしても、F社が第三者から土地を賃借して本件ゴルフクラブの営業を経営することが可能である以上、本件委任契約の目的が不可能になったとはいえず、また、本件委任契約には契約の終了に関する特約はなく、民法上の委任契約の終了事由も見当たらない。
また、本件ゴルフ会員権について、預託金返還請求権及び年会費納入等の義務のいずれもが、譲渡時点で消滅していたとは認められない。
以上のとおり、本件ゴルフ会員権の譲渡の時点において、預託金会員制ゴルフ会員権の内容である優先的施設利用権、預託金返還請求権及び年会費納入等の義務のいずれかが消滅し、その同質性を喪失したとは認められないから、当該ゴルフ会員権の譲渡は所得税法第33条第1項に規定する譲渡所得の基因となる資産の譲渡に該当する。
そうすると本件ゴルフ会員権の譲渡により生じた損失は、所得税法第69条第1項の規定により他の所得と通算することができるというべきであり、これを認めなかった原処分は違法であるから取り消されるべきである。
要旨
譲渡所得の基因となる資産の現物出資により取得した株式等の評価は、現物出資が会社の事業活動の継続を前提としている以上、相続という包括的、かつ、無償な財産の承継を課税対象とするという相続税法における評価ではなく、現物出資した資産の評価額から、当該価額と会社の受入価額(帳簿価額)との評価差益に対する法人税等相当額を控除しない純資産価額によるのが相当である。
要旨
請求人は、外国法人であるD社及びE社との間で締結した○○機器に係る技術導入契約に基づき、契約当初及び契約譲渡後に支払った払込金は、独占販売権の対価であり、ロイヤリティは別途販売実績に応じて支払うこととされているから、所得税法第161条第7号イに規定する「工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式若しくはこれらに準ずるもの」の使用料には該当しないから、本件納税告知処分は違法である旨主張する。
しかしながら、当該技術導入契約においてD社及びE社から請求人に対し、規制当局の承認を取得する権利や○○試験の実施、規制当局の承認の取得等のために技術情報を使用する権利が許諾され、請求人は実際にD社及びE社が独自に有する特定の技術についての情報を含む有用な情報の提供を受けていることからすると、請求人はライセンサーであるD社及びE社から開発権の許諾を受け、技術情報の提供を受けるための対価として払込金を支払っていたものとみるのが相当である。そして、提供された技術情報には○○機器の製造工程についての独自に開発された情報や特別に技術的価値を有する知識が含まれていることから、この技術情報は、所得税法第161条第7号イに規定する「特別の技術による生産方式若しくはこれらに準ずるもの」に該当し、請求人はD社及びE社から開発権の許諾に基づき技術情報の提供を受けて、当該技術情報を使用しているものと認められることから、当該払込金は、「技術等に係る実施権若しくは使用権の設定、許諾」の対価と認められ、所得税法第161条第7号イに規定する使用料に該当する。
参照条文等
所得税法第161条第7号イ 所得税基本通達161-22、161-23 日P租税条約第○条、第○条 日Q租税条約第○条、第○条
要旨
同族会社であるG社は、請求人から賃借している本件各土地をH社に転貸するなどし、それに伴う業務及び経済的負担を負うとともに、本件各土地転貸料を得ているのであるから、実質的にみれば、本件各土地転貸料と本件各土地賃料との差額が、G社が請求人から取得する本件各土地の管理の対価、すなわち管理料相当額とみることができる。
したがって、本件各土地賃料の額が不当に低額であるか否かは、当該管理料相当額が適正か否かを基準に判断すべきである(以下、この基準により適正賃料を算定する方法を「適正管理料置換方式」という。)。
そこで、審判所において選定した比準同業者の賃貸料収入の額に占める管理料の割合の平均値をもって適正管理料割合とし、当該適正管理料割合を本件各土地転貸料に乗じることにより本件各土地に係る適正管理料を算定した。
そして、適正管理料置換方式は、土地賃貸借契約を管理委託契約という契約形式に置き換えるものであるから、適正管理料の算定に当たっては、管理委託契約では生じない土地賃貸に係る保証金の差し入れを加味するのが相当であり、請求人は、G社から本件各土地賃貸借契約に基づき定期借地権の設定による保証金(2億円)を受領していることから、当該保証金の運用益相当額を算定して本件土地転貸料から控除するのが相当である。
そこで、当該保証金に係る運用益相当額を保証金の経済的利益の課税に当たって適正な利率として用いられている10年長期国債の年平均利率を用いて算定した。
以上のことから、適正管理料置換方式による本件各土地に係る適正賃料(審判所認定適正賃料)の額は、本件各土地転貸料の額から本件適正管理料の額及び本件運用益相当額を控除した後の金額であり、本件各年分に係る審判所認定適正賃料の額を本件各土地賃料の額と比較すると、後者は著しく低額であることが明らかであることから、本件各賃貸借契約は請求人が当該同族会社の株主・代表取締役という関係でなければ結ばれ得ないものであり、客観的にみて経済的に合理性を欠き、不自然・不合理であるといわざるを得ない。
なお、本件においては、G社は、請求人から賃借している本件各土地を転貸して、本件各土地転貸料を得ているところ、原処分庁においては、本件各土地の近隣において、請求人と類似の条件で土地を貸し付けていると認められる者を比準同業者として選定し、当該比準同業者の平均賃料を適用する方法により、本件各土地に係る適正賃料を算定しているので、原処分庁の主張する適正賃料に合理性を認めることはできない。
請求人が負担した本件慰安旅行の参加従事員1人当たりの費用の額は、平成5年分192,003円、平成6年分449,918円及び平成7年分260,332円と、社会通念上一般的に行われている福利厚生行事としてはあまりにも多額であるから、当該従事員が受ける経済的利益は、給与所得として課税するのが相当とした事例
裁決事例集 第55集 248頁
要旨
福利厚生行事が社会通念上一般的に行われているものと認められる範囲内のものである場合には、当該福利厚生行事の経済的利益については課税しないこととするのが相当と解されるところ、請求人の負担した本件慰安旅行に参加した役員及び従業員各人の1人当たりの費用(各人の家族等分を含む。)の平均額は、平成5年5月分が192,003円、平成6年5月分が449,918円及び平成7年5月分が260,332円であることから、社会通念上一般的に行われていると認められる範囲内の福利厚生行事としては、あまりにも多額であり、また、従業員等の家族等が参加し、その旅行費用までほとんど全額負担していることを考慮すると、本件慰安旅行が社会通念上一般的に行われていると認められる範囲内の福利厚生行事と同程度のものとは認められない。
したがって、請求人は本件慰安旅行の実施によって、本件旅行参加者に対して経済的利益を供与したものと認められるので、本件旅行費用は、本件旅行参加者に支給した所得税法第28条に規定する給与等と認めるのが相当である。
単身赴任者に支給した帰郷交通費は、職務を遂行するための旅行でなく、帰郷に要する交通費の負担を軽減するために支給されたものであるとして、当該単身赴任者に対する給与所得に該当するとした事例
裁決事例集 第55集 273頁
要旨
請求人は、単身赴任者に支給した帰郷交通費は、所得税法第9条第1項第4号に規定されている非課税とされる旅費である旨主張するが、当該帰郷交通費は、請求人が受給者の帰郷に要する交通費の負担を軽減するため、その費用の一部を補助する目的で給与関係内規の別居手当の一部として支給したものと認められることから、職務を遂行するための旅費には当たらず、同号に規定する非課税とされる旅費には当たらない。
原処分庁が用いた同業者率による推計方法には合理性が認められるとした事例( 平成24年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、 平成25年分及び平成26年分の所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分、 平成22年1月1日から平成23年12月31日及び平成25年1月1日から平成26年12月31日の各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・ 棄却、 一部取消し)
裁決事例集 第107集
ポイント
本事例は、原処分庁が請求人の事業所得の金額等を類似同業者の平均必要経費率を用いて推計するに当たり、類似同業者を請求人の総収入金額の0.5倍以上2倍以下と設定するなどして、機械的に抽出しており、その抽出方法には合理性があると認められ、原処分庁が採用した推計の方法により請求人の事業所得の金額等を算定することが相当であるとしたものである。
要旨
請求人は、原処分庁の推計の方法では、請求人のように多額の経費や設備投資等の特別な支出がある者を対象とする場合には、事業所得の金額が過大に計算されてしまい、真実の事業所得の金額を大きく上回る旨主張する。
しかしながら、請求人が特殊事情として主張する諸事情は、いずれも適切な抽出基準及び抽出方法により選定された類似同業者の平均必要経費率を採用することにより、その平均値に吸収され捨象されるべき事情に当たるというべきであり、当審判所の調査の結果によっても、当審判所が選定した類似同業者の平均必要経費率を請求人に適用することの合理性を否定すべき特段の事情は認められない。
ただし、消費税の計算において、平成26年3月31日以前の課税資産の譲渡等と認定すべきものを、同年4月1日以降の課税資産の譲渡等と認定したことから、消費税率の適用誤りがあり、消費税等の更正処分が一部取消しとなった。
参照条文等
要旨
請求人は、譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は、その資産の支配の移転の事実に基づいて判定した当該資産の引渡しの時により判定すべきところ、①請求人は所有権移転登記に必要な書類を引き渡していないこと、②契約書上、売買代金の全額の支払いと同時に所有権移転及び引渡しを行うこととなっており、また、違約条項があることから契約破棄が理論上可能であることなどから、本件土地に係る譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は平成17年ではないと主張する。
しかしながら、その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額は、その年において収入すべき金額とされているところ、譲渡者による資産の引渡しがあれば、通常、所有権も移転しているものと考えられ、かつ、譲渡者が資産を引き渡した時には、相手方に対してその譲渡代金を請求できることが確定的となり、譲渡代金相当額を収入すべき金額と認識し得る状態とみることができるから、譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は、原則として、その所得の基因となる資産の引渡しがあった日によるものと解するのが相当である。
そして、その引渡しがあった日の判定に当たっては、必ずしも売買契約書上の引渡しの時期に関する文言にとらわれることなく、本件契約と別件契約はもともと一括の契約であるか否かなどの取引諸事情、契約内容及び買主がその資産の使用を開始した時期などを総合的にみて、実質的にその資産に対する支配管理の変動があった時期がいつかという観点から判断するのが相当である。
本件買受会社は、本件土地及び別件土地を一括して買い受け、本件開発区域の一団の土地の一部として、宅地造成をすることを予定していたと認められる。また、請求人は、本件買受会社の開発行為に全面的に協力する旨を約した上で契約し、本件契約の直後に同社に開発行為施行同意書を提出していること、仮登記以後の本件土地の危険負担等は、同社が負うことになっていることからすると、請求人と本件買受会社の間では、本件契約の締結時に本件土地の支配管理が請求人から本件買受会社に移転する旨の合意があり、本件買受会社は本件土地の使用収益が可能となったものと認められる。そして、本件開発区域の造成工事は、平成17年10月初旬に着工された上、請求人ら地権者の立ち入りもできなかったことから、本件買受会社が現実に使用収益を開始し、実質的に支配管理の移転があったと認められる。
以上のことからすると本件土地の譲渡の時期は平成17年10月初旬とするのが相当である。
ポイント
この事例は、所得税法183条に規定する「国内において給与等の支払をする」の解釈を示したものである。
要旨
原処分庁は、請求人の海外事業所に勤務していた海外勤務者本人が納付すべき外国所得税について、請求人が当該海外勤務者の帰国後に同人らに代わり納付したことは、当該海外勤務者に経済的利益の供与(給与等の支払)をしたものであり、当該海外勤務者の海外事業所勤務期間中の所属先が請求人のa本社であったことからすれば、a本社において外国所得税の納付(給与等の支払)事務を行っていたことになるから、支払が国内において行われたこととなり、請求人には源泉徴収義務がある旨主張する。
しかしながら、当該外国所得税の納付に関しては、①当該海外事業所あるいは当該海外事業所からその事務を委託された現地の会計事務所が、当該海外勤務者の所得税額の計算及び申告・納税の手続を行っていたこと、②当該海外事業所の所長が納付すべき税額の確認及び支出の決定を行っていたこと、③当該海外事業所が当該外国所得税の納税の資金手当を行っていたことからすると、当該外国所得税に係る支払事務は当該海外事業所で行われていたと認めるのが相当である。そうすると、当該外国所得税の納付(給与等の支払)事務は国外において行われていたと認められるから、請求人に源泉徴収義務はないというべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
東京地裁平成18年1月24日判決(訟月54巻2号531頁) 東京地裁昭和59年10月16日判決(訟月31巻6号1448頁、行集35巻10号1636頁)
ポイント
本事例は、4種の漢方薬等がいずれも「治療又は療養に必要な医薬品」に該当せず、その購入費用は医療費控除の対象となる医療費に該当しないとしたものである。
要旨
請求人は、購入した4種の漢方薬等(本件漢方等)は、親族が治療に用いたものとして、いずれも所得税法第73条《医療費控除》第2項及び所得税法施行令第207条《医療費の範囲》第2号に規定する「治療又は療養に必要な医薬品」に該当し、その購入費用は、医療費控除の対象となる医療費に該当する旨主張する。
しかしながら、これらの規定に規定する「医薬品」は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)第2条《定義》第1項に規定する医薬品をいうものと解するのが相当であるところ、本件漢方等のうちの2種の製品については、製薬会社が健康補助食品として製造販売し、その使用目的が食用に限定されたものであること等からすると、同項に規定する「医薬品」に該当しない。また、その他の2種の製品(本件医薬品)については、薬機法第2条第1項に規定する「医薬品」に該当するものの、虚弱体質や肉体疲労の場合などの滋養強壮を効能効果として、疲労回復や健康維持のために用いられ、医師の処方せんがなくても薬局等で購入可能なものであるところ、請求人提出資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、本件医薬品は、請求人の親族の「治療又は療養に必要な医薬品」でなかったというべきである。
したがって、本件漢方等は、いずれも所得税法第73条第2項及び所得税法施行令第207条第2号に規定する「治療又は療養に必要な医薬品」に該当せず、本件漢方等の購入費用は医療費控除の対象となる医療費に該当しない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和57年9月28日第三小法廷判決(刑集36巻8号787頁)
ポイント
この事例は、請求人が同族会社に賃貸した土地で、その同族会社が①第三者に駐車場用地として転貸したもの、②第三者に賃貸するための倉庫・事務所用建物の敷地として使用したもの、③第三者に賃貸するための店舗・事務所・住居用建物の敷地として使用したものに係る賃料の額につき、所得税法第157条の規定の適用が認められるか否かを判断したものである。
要旨
請求人は、同族会社が請求人との間で合意した土地の賃貸借契約に係る賃料として収受した本件賃料額を容認しても、請求人の所得税の負担を不当に減少させる結果にはならない旨主張する。
しかしながら、所得税法第157条《同族会社等の行為又は計算の否認等》第1項の「所得税の負担を不当に減少させる結果となると認められる」かどうかは、当該行為又は計算が経済的合理性を欠くか否かにより判断すべきであり、「所得税の負担を不当に減少させる結果となる」とは、経済的合理性を欠いた行為又は計算の結果として所得税の負担が減少することをいうものと解すべきであって、土地の賃貸借契約に関していえば、立地条件、用途、規模などの貸付地の状況が類似する土地(比準貸付地)であれば、特別の事情がない限り、賃料の額は同程度となるといえるから、同族会社とその株主等との間で貸し付けられた土地と立地条件、用途、規模などが類似する比準貸付地を抽出し、その比準貸付地の平均賃料を用いて算定した適正賃料額と実際に株主等が同族会社から収受した賃料の額とを比較して、同族会社がその株主等と合意した賃料の額が経済的合理性を欠くか否かを判断することも許されるというべきである。本件賃料額は、本件各年分においていずれも適正賃料額を大きく下回り、これにより請求人の所得税の額も減少するのであるから、同族会社が請求人との間で合意した本件賃料額を容認した場合には請求人の所得税の負担を不当に減少させる結果になると認められる。
参照条文等
参考判決・裁決
浦和地裁平成13年2月19日判決(税資250号順号8839) 東京地裁平成9年4月25日判決(訟月44巻11号1952頁)
請求人は、乙農地についてはB女の所有する丁農地と等価交換したものであると主張するが、実際は、交換取引が存在しないから、所得税法第58条の規定を適用することはできないとした事例
裁決事例集 第44集 181頁
要旨
請求人は、請求人所有の甲農地を乙農地と丙農地に分筆して、丙農地についてはC男に譲渡し、乙農地についてはB女の所有する丁農地と等価交換し、その後、B女が交換により取得した乙農地をC男に譲渡したものであると主張するが、[1]各譲渡代金の決済状況、[2]各関係人の答述、[3]仲介人D男の所有する各契約書等のメモ書、[4]農地法及び登記簿上の関係書類等を総合すると、実際は、請求人が甲農地をC男に譲渡し、B女から丁農地を譲り受けたものと認められ乙農地と丁農地の交換取引は存在しない虚偽の取引であるから、所得税法第58条の規定を適用することはできない。
ポイント
本事例は、盗まれた普通預金通帳及び印鑑を使用して、預金者以外の者が行った不正な払戻しにより預金者が被った損失は、預金通帳等が窃取されたことに起因し、また、明らかに預金者の意思に基づかない事由によるのであるから、実質的にみて預金者の資産が「盗難」されたことにより生じた損失と評価し、雑損控除の対象となる「盗難」による損失に当たると解するのが相当としたものである。
要旨
請求人は、盗まれた普通預金通帳及び印鑑を使用して普通預金口座から金員が引き出されたことは盗難に該当するとして、預金通帳等が盗まれたことに伴う損失(本件損失)について雑損控除の適用をすべきであり、雑損控除を適用すれば課税所得はない旨主張する。
しかしながら、預金者以外の者が行った不正な払戻しにより預金者が被った損失は、預金通帳等が窃取されたことに起因し、また、明らかに預金者の意思に基づかない事由によるのであるから、実質的にみて預金者の資産が「盗難」されたことにより生じた損失と評価し、雑損控除の対象となる「盗難」による損失に当たると解するのが相当であるから、本件損失は雑損控除の対象となる「盗難」による損失に当たると認められるものの、当該損失の金額は、総所得金額の10分の1を超えないため、雑損控除の額は零円となる。
参照条文等
個人で事業を営む請求人が同族会社に支払った不動産賃借料について、地理的条件等の類似する不動産賃借料よりも高額であることから、所得税法第157条を適用した事例(平成23年分及び平成24年分の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分、平成25年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・一部取消し、棄却)
裁決事例集 第103集
ポイント
本事例は、不動産の賃料が、地理的条件、用途、規模、構造などの状況が類似すれば、特別な事情がない限り、その金額は同程度になることから、所得税法第157条の適用の検討に当たり、地理的条件等の類似性が確保された不動産の平均賃料と請求人が同族会社に支払った賃料を比較することには合理性があるとしたものである。
要旨
請求人は、原処分庁が所得税法第157条《同族会社等の行為又は計算の否認等》第1項の規定の適用に当たって算定した診療所(土地を含む。)の適正賃料について、その算定方法に合理性がないことから、請求人が同族会社に支払った賃料(本件賃料)を必要経費に算入したことは請求人の所得税の負担を不当に減少させる結果となるとは認められない旨主張する。
しかしながら、同項に規定する「所得税の負担を不当に減少させる結果となる」と認められるか否かは、同族会社の具体的行為又は計算が通常の経済人の行為等として経済的合理性を有しているか否かを基準として判断すべきであり、不動産の賃料は、地理的条件、用途、規模、構造などの状況が類似すれば、特別な事情がない限り、その金額は同程度になることから、請求人が本件賃料を支払ったことについて通常の経済人の行為として経済的合理性を有しているか否かを判断する際に、地理的条件等の類似性が確保された不動産の平均賃料と本件賃料を比較することには合理性があると認められる。そして、原処分における診療所の類似物件の抽出基準は地理的条件等の類似性が確保されており、本件賃料は当該基準に従って抽出した不動産の平均賃料(診療所の適正賃料)よりも高額であることから、請求人が本件賃料を支払ったことは通常の経済人の行為として経済的合理性を有していない。したがって、請求人が本件賃料を必要経費に算入したことを容認した場合には請求人の所得税の負担を不当に減少させる結果となると認められる。
なお、原処分庁による診療所の類似物件の平均賃料の算定に一部誤りがある。
参照条文等
参考判決・裁決
要旨
請求人は、請求人の取締役の役員報酬について、当該取締役は、海外において請求人の使用人としての職務である海外営業本部長等として勤務しており、所得税法施行令第285条《国内に源泉がある給与、報酬又は年金の範囲》第1項第1号に規定する「使用人として常時勤務する場合」に該当するから、当該役員報酬は国内源泉所得には該当しない旨主張する。
しかしながら、①当該役員報酬のうち、国内における取締役会や経営執行会議への出席など、当該取締役の国内業務に基因する部分は、所得税法第161条《国内源泉所得》第8号イに規定する国内源泉所得に該当することは明らかであること、②当該取締役は請求人の海外子会社の社長として勤務していたところ、当該子会社の社長としての勤務は、請求人の使用人として勤務することに当たらないことは明らかであること、③当該取締役の国外における勤務は、国外における請求人の実態、当該取締役の請求人における実質上の地位、役割、職務の内容等を併せ考えると、経営判断による企業経営といった職務に関するものであり、請求人の使用人としてではなく、役員としての勤務であったと認めるのが相当であることから、当該取締役の勤務は「使用人として常時勤務する場合」に該当しないというべきであり、当該取締役に対する役員報酬は、国内源泉所得に該当する。
参照条文等
参考判決・裁決
推計による所得税等の課税処分について、原処分庁による推計にその必要性が認められるとした事例( 平成25年分の所得税及び復興特別所得税の決定処分並びに無申告加算税の賦課決定処分、 平成26年分及び平成27年分の所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分、 平成23年1月1日から平成23年12月31日まで、平成26年1月1日から平成26年12月31日まで及び平成27年1月1日から平成27年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各決定処分並びに無申告加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第111集
ポイント
本事例は、原処分庁が推計により請求人の所得金額等を算定して課税したところ、原処分庁による推計にはその必要性が認められるほか、その推計方法、総収入金額の正確性、類似同業者の抽出方法の各点においてその合理性が認められるとしたものである。
要旨
請求人は、原処分庁による推計にその必要性がない旨主張するが、調査経緯に関する事実によれば、原処分庁としては請求人の所得金額を実額により計算することは不可能又は著しく困難というべきであり、請求人の所得を推計により算定する必要性があると認められる。なお、原処分庁による推計は、その推計方法、総収入金額の正確性、類似同業者の抽出方法の各点においてその合理性が認められる。
また、請求人は、請求人の一部の取引先(本件取引先)との間の取引は出来高払の取引であるから、原処分庁が当該取引を請負であるとしてその取引額(収入金額)を認定したことは誤りである旨主張する。
しかしながら、本件取引先から請求人が請け負った工事(本件請負工事)は、受注した工事現場ごとに契約金額が決められており、毎月分の出来高に応じて支払がされているもののこれは飽くまで内金としての支払にすぎないから、その対価を収入に計上すべき時期は、目的物の全部を完成して相手方に引渡した日又はその約した役務の提供を完了した日となる。したがって、原処分庁が認定した総収入金額にも誤りはない。
参照条文等
本件有限会社に対する上場会社株式の現物出資に係る譲渡所得の収入金額は、その出資により取得した出資持分の価額であり、この価額は、本件有限会社の状況等に照らし、純資産価額によって評価するのが相当であるとした事例
裁決事例集 第47集 105頁
要旨
本件有限会社に対する上場会社株式の現物出資に係る譲渡所得の収入金額について、請求人は、本件現物出資により取得した出資持分の価額については、[1]収益力を基準とし財産評価通達に定める類似業種比準方式に準じて評価すべきで、[2]仮に、原処分庁が主張するように、純資産価額によって評価するとしても、課税時期において時価に評価換えした価額と帳簿価額との評価差額に対する法人税等相当額を控除すべきであり、更に、[3]仮に、純資産価額(法人税等相当額を控除しない価額)によって評価するとしても、本件現物出資資産の時価を超える部分は、旧出資持分の含み益相当額であるから、所得税法施行令第84条第1項の「株主等として与えられた場合」に該当するから、課税すべきでなく、上記時価を限度とすべきである旨主張する。
しかしながら、現物出資に係る譲渡所得の収入金額は、所得税法第36条第2項の規定により、その出資により取得した出資持ち分の価額となるが、[1]本件有限会社の状況に照らし、本件取得持分の評価に当たっては、会社資産の持分としての性格に重きが置かれるべきであって、純資産価額によることが相当であり、[2]会社の事業活動の継続を前提にしていると認められる現物出資に係る出資等の評価においては、会社の解散を前提として算定される処分価額によることは合理性がなく、簿価との評価差額に対する法人税等相当額を控除することは相当でない。また、[3]「株主等として与えられた場合」とは、株主等として付与された新株引受権に基づいて株式を引き受けた場合であり、請求人は、本件現物出資資産の所有者たる地位に基づいて本件取得持分を与えられたものであるから、その価額の全部が収入金額に算入されるべきである。
病院へ通院するために要した自家用車のガソリン代、高速道路利用料金及び駐車場利用料金は医療費控除の対象となる医療費には該当しないとした事例(平成30年分から令和2年分の所得税及び復興特別所得税の各更正の請求に対する理由なし通知処分・棄却)
裁決事例集 第133集
ポイント
本事例は、病院へ通院するために要した自家用車のガソリン代、高速道路利用料金及び駐車場利用料金は、所得税法施行令第207条第3号に掲げる病院、診療所又は助産所へ収容されるための人的役務の提供の対価とは認められないことから、所得税基本通達73-3にいう通院費に該当しないとしたものである。
要旨
請求人は、所得税基本通達73-3《控除の対象となる医療費の範囲》(本件通達)は、所得税法施行令第207条《医療費の範囲》第1号に掲げる医師又は歯科医師による診療又は治療の対価にはそれに付随又は関連をする費用として通院費が含まれる旨を明らかにしたものであるから、病院へ通院するために要した自家用車のガソリン代、高速道路利用料金及び駐車場利用料金(本件ガソリン代等)も医師等による診療等を受けるための通院費として、医療費控除の対象となる医療費に該当する旨主張する。
しかしながら、通院費は病院等へ往復するための旅費や交通費であり、医師等による診療行為又は治療行為に対して支出されるものではないため、所得税法施行令第207条第1号に掲げる医師又は歯科医師による診療又は治療の対価に通院費が含まれると解することはできない。また、本件通達にいう通院費の取扱いは、飽くまで同条第3号に掲げる病院、診療所又は助産所へ収容されるための人的役務の提供の対価の解釈として許容される範囲内に限るものと解することが相当であるところ、本件ガソリン代等は、いずれも商品の購入の対価として支出されたもの又は設備若しくは施設等の利用の対価として支出されたものであり、人的役務の提供の対価とはいえないことから、本件通達にいう通院費に該当しない。したがって、本件ガソリン代等は医療費控除の対象となる医療費には該当しない。
参照条文等
参考判決・裁決
京都地裁平成24年12月26日判決(税資262号順号12124)
要旨
請求人の元理事長が請求人の営む事業に係る人件費及び給食材料費等を架空又は水増し計上するなどの方法によりねん出した資金を簿外口座預金に預け入れた後、当該口座から元理事長名義預金に入金した金員、並びに元理事長の個人的費用に充てるための資金を立替金勘定に計上した後、雑費勘定に振替計上した金員について、請求人は、元理事長がその地位を利用して請求人の資金を不正に引き出したものであり、請求人が賞与として支給したものではない旨主張する。
さらに請求人の元専務理事が、転換社債等を換金して同人名義の預金口座に入金した金員について、請求人は、元専務理事が請求人の資金を不正に引き出したものであるから、請求人が退職金として支給したものではない旨主張する。
しかしながら、元理事長は請求人の設立者として理事長に就任し、退任後も自ら会長と称していたこと、また、自らの親族等を理事長等の役員に就任させていたことからすれば、設立以来、請求人の全運営についての権限を有しその地位等を利用してねん出した簿外資金を簿外口座で管理し、本件簿外口座から元理事長名義預金口座に入金した金員について、元理事長個人の借入金の返済資金等に支出されたと認められるほか、請求人の事業遂行のために使用されたとする証拠もないことからすれば、これを個人的費用に費消していたと認められる。また、雑費勘定に振替計上した金員は、元理事長が個人的な目的のために費消していたことは明らかである。仮に、本件金員及び本件立替金が不正に引き出されたとしても、所得税基本通達36-1が給与所得として収入すべき金額は、その収入の基因となった行為が適法であるかどうかを問わない旨定めており、その取扱いが相当であること、返還義務があるとしても所得税法上の所得とは、これを専ら経済的面から把握すべきであると解されるところ、実際に返還されない限り本件金員及び本件立替金は所得を構成するのであるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
そうすると、これらの金員は所得税法第28条に規定する給与(賞与)所得と認められるので、請求人は、同法第183条第1項に規定する所得税の源泉徴収義務がある。
また、請求人の元専務理事は、[1]平成5年3月31日に請求人を退職したこと、[2]長年にわたり請求人において理事として経理責任者であったこと及び[3]転換社債等を換金した金員を一時金として退職日の直前に受け取っていたことが認められるから、当該金員は退職所得に該当し、当該所得に対する源泉徴収義務者は請求人であると認定するのが相当である。
そして、仮に転換社債等を換金した金員が不正に引き出されたとしても、元専務理事が現実に支配管理しているのであるから、所得税基本通達36-1が退職所得の金額の計算上収入すべき金額は、その収入の基因となった行為が適法であるかどうかを問わない旨定めているのであるから、請求人の主張には理由がない。
そうすると、これらの金員は所得税法第30条に規定する退職所得と認められるので、請求人は、同法第199条第1項に規定する所得税の源泉徴収義務がある。
不動産の売買価格の認定において、原処分庁が根拠とした関係人の答述等は内容に不一致が多く信ぴょう性がないとし、請求人の答述を採用し、原処分の一部を取り消した事例
裁決事例集 第48集 54頁
要旨
請求人らは、本件物件の売買価格につき、真正の価格は57,000,000円であり、売買契約書上は5,000,000円を圧縮して52,000,000,円としたものであり、本件物件の賃貸に係る預り敷金の買主の引継分1,640,000円を加算した58,640,000円が本件物件の譲渡収入金額であると主張し、原処分庁は、請求人側の仲介人であるDホームのEの申述、買主側の仲介人とされているが真実の譲受人と認めるB社のFの作成したメモ等から、売買価額は85,000,000円であり、預り敷金4,040,000円を加算した89,040,000円が譲渡収入金額であると主張する。
DホームのEは、売主側の仲介人であるにもかかわらず、その答述はあいまい、かつ、一貫性を欠いており、売買において主要な役割を果たしたB社のFのみが取引経緯につき明確な答述をし、同人のメモには売買価額が85,000,000円と記載されている。
しかし、本件物件の実際の買主は売買契約書上のNではなく、B社のTと認められるところ、Fは、本件取引の架空の中間譲渡人Nを介在させたり、その後所在不明であるなど、Fの答述は信ぴょう性を欠き採用できない。また、売買代金の決済として85,000,000円を支払ったとする証拠書類は何ら存在せず、Fのメモも証拠として採用できない。
したがって、本件物件の売買価額は、請求人の答述した57,000,000円と認定せざるを得ず、また、本件物件の譲渡に伴って最終買主に引き継がれた預り敷金の額は1,640,000円と認められるから、これらの合計58,640,000円が譲渡収入金額と認定される。
原処分庁が選定した類似同業者の中に選定基準に該当しない事業者が含まれていたと認定した事例( 平成25年分及び平成26年分の所得税及び復興特別所得税の各更正処分、 平成25年分の所得税及び復興特別所得税の過少申告加算税の賦課決定処分、 平成27年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分、 平成25年1月1日から平成25年12月31日まで及び平成26年1月1日から平成26年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分、 平成27年1月1日から平成27年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の決定処分並びに無申告加算税の賦課決定処分・ 一部取消し、 全部取消し、 棄却)
裁決事例集 第111集
ポイント
本事例は、原処分庁が請求人の事業所得の金額等を同業者比率方式に基づき推計により算定したものの、採用した同業者の中に抽出基準に該当しない者が含まれていたことから、原処分庁が採用した同業者の一部を採用せず、所得の金額の一部を取り消したものである。
要旨
請求人は、帳簿書類等を提示しなかったのは調査環境を整えようとしなかった原処分庁所属の調査担当職員(本件調査担当職員)に責任があること等から、事業所得の金額の計算上、推計の必要性及び合理性は認められない旨主張する。
しかしながら、本件調査担当職員は、請求人に対し、少なくとも3回にわたって、帳簿書類等の提示又は提示の意思確認をしたものの、請求人はいずれの求めに対しても、調査理由を説明しないことなどを理由に、帳簿書類等を提示しなかったのであり、これらの事実によれば、原処分庁は、やむを得ず、推計の方法により請求人の所得金額を算出したことが認められることから、請求人の事業所得の金額の計算上、推計の必要性があったものと認められる。また、原処分庁は、請求人の所得金額を同業者比率方式により算定し、採用した同業者(本件同業者)の抽出基準及び抽出方法自体は、一応の合理性を有するものと認められる。ただし、本件同業者の中に抽出基準に該当しない者が含まれていたことから、これらの者を本件同業者から除外した後の同業者を、推計課税に用いるべき同業者とした結果、所得税等の更正処分が一部取消しとなった。
参照条文等
同族会社に対する無利息貸付けは、所得税の負担を不当に減少させる結果となるものであると判断した事例(①平成30年分から令和2年分までの所得税及び復興特別所得税の各更正処分、②令和3年分から令和4年分までの所得税及び復興特別所得税の各更正処分、③平成30年分から令和4年分までの所得税及び復興特別所得税に係る過少申告加算税の各賦課決定処分・①一部取消し、②③棄却)
裁決事例集 第138集
ポイント
本事例は、請求人の同族会社に対する金員の無利息貸付けは、融資条件や無利息としたことの理由等の諸事情を総合的に考慮すると経済合理性を欠くものであって、請求人の所得税の負担を不当に減少させる結果となるものであると認められるとしたものである。
要旨
請求人は、同族会社(本件同族会社)に無利息で貸付け(本件貸付け)を行ったのは、役員の同族会社に対する貸付けは無利息で行われることが一般的であったこと、請求人の自己資金を用いて実行したものであること、本件同族会社は債務超過であったこと、多額の収入が見込める状況になかったこと等を考慮したものであることから、本件貸付けを無利息としたことは、所得税法第157条《同族会社の行為又は計算の否認等》第1項に規定する所得税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものに該当しない旨主張する。
しかしながら、本件同族会社の財務状況等を踏まえると、本件貸付けには、請求人が本件同族会社に対して無利息で貸付けをすることに合理的な理由を見出すことはできないから、本件貸付けを無利息としたことは、経済的かつ実質的な見地において不自然、不合理なもの、すなわち経済的合理性を欠くものであって、請求人の所得税の負担を不当に減少させる結果となるものであると認められる。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成16年7月20日第三小法廷判決(集民214号1071頁) 最高裁令和4年4月21日第一小法廷判決(民集76巻4号480頁)
ポイント
本事例は、請求人が外国法人に支払った金員には、人的役務の提供に係る対価に該当しないものが含まれているとした一方、請求人が当該外国法人に代わって支払った住宅家賃等は人的役務の提供に係る対価に含めるべきであるとして、当該外国法人に対する国内源泉所得の対価の額を算定し直した結果、納付すべき税額が原処分の額を下回る月があるから、原処分はその一部を取り消すべきであるとしたものである。
要旨
請求人は、外国法人から派遣を受けた航空機の操縦に従事する乗務員(派遣乗務員)は、派遣時において有する既存の免許及び経験だけでは請求人が運航する航空機の機長として操縦することができないから、所得税法施行令第282条《人的役務の提供を主たる内容とする事業の範囲》第3号に規定する「専門的知識又は特別の技能を有する者」(特別技能者等)には該当せず、また、仮に該当するとしても、当該外国法人は運航代行業を営んでいるものではないから、請求人が当該外国法人に支払った対価は所得税法第161条《国内源泉所得》第2号に規定する人的役務の提供に係る対価に該当しない旨主張する。
しかしながら、派遣乗務員は、①派遣時においてICAO(国際民間航空機関)加盟国であり国際民間航空条約の締約国である外国の政府が授与した航空業務の技能に係る資格を有しており、我が国において航空業務に従事するために必要な知識又は技能を一定程度有している者として評価できること、②派遣乗務員の総飛行時間は、我が国における○○運送用操縦士の資格を取得する際に必要とされる飛行時間をはるかに上回るものであり、定期運送用操縦士として一定の経験を有していると認められることなどからすれば、派遣乗務員の派遣時における航空機の操縦に関する知識又は技能は、航空機の操縦の分野に関する一般的な知識又は技能のレベルを相当程度超える高度な知識又は技能であると認めるのが相当であるから、派遣乗務員は特別技能者等に該当するというべきである。また、航空機の乗務員を派遣する事業を行う当該外国法人は、特別技能者等の当該知識又は技能を活用して行う役務の提供を主たる内容とする事業を行う者に該当するといえることから、請求人が当該外国法人に支払った対価は、所得税法第161条第2号に規定する人的役務の提供に係る対価に該当する。
参照条文等
要旨
請求人は、本件普通預金からの払戻金の使途は、請求人の代表者Gに対する借入金の返済である旨主張するが、[1]Gが請求人の代表者としてその経営の全般を掌握していること、[2]G自らが本件普通預金を管理して預入、払戻しを行っていたこと及び[3]請求人の帳簿に本件普通預金に係る入出金が記載されておらず、本件普通預金の払戻金をGからの借入金の返済に当てたとする経理処理をしていないことなどの事実から、給与等の支払いとしてなされたものと解するのが相当である。
すべての使用人に対して、雇用されている限り毎年誕生月に支給している誕生日祝金について、その支給形態等が、広く一般に社会的な慣習として行われているとは認められないとして所得税法第28条第1項に規定する給与等に当たるとした事例
裁決事例集 第66集 212頁
要旨
請求人は、本件誕生日祝金を請求人の誕生祝実施要領に基づき、各使用人の誕生月に独身者は10,000円、既婚者は15,000円を現金で支給しており、誕生日祝金の支給は、使用者と使用人との間に限らず広く一般に社会的な慣習として行われているので、本件誕生日祝金は、所得税基本通達28-5のただし書きに定める給与等として課税しなくて差し支えない結婚祝金品等に該当する旨主張する。
しかしながら、ある金品の交付が、所得税基本通達28-5による例外的取扱いが認められるためには、少なくとも、その金品の交付が広く一般に社会的な慣習として行われていることを要するところ、本件誕生日祝金は、すべての使用人が、請求人に雇用されている限り、毎年誕生月に支給されるものであって、その支給形態等において、広く一般に社会的な慣習として行われているとは認められない。
したがって、請求人の主張は採用できない。
原処分庁による推計計算の過程で、その採用した類似同業者の抽出基準に該当しない者が類似同業者として選定されていたため、更正処分の一部を取り消した事例( 平成24年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、 平成25年分ないし平成27年分の所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分、 平成24年課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに無申告加算税の賦課決定処分、 平成25年課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分、 平成26年課税期間の消費税及び地方消費税の決定処分並びに無申告加算税の賦課決定処分(再調査決定によりいずれもその一部が取り消された後のもの)、 平成27年課税期間の消費税及び地方消費税の決定処分並びに無申告加算税の賦課決定処分・平成26年分の所得税及び特別復興所得税の更正処分は一部取消し、その他は棄却・平成30年12月13日裁決)
裁決事例集 第113集
ポイント
本事例は、原処分庁が請求人の所得金額を推計計算する過程で採用した類似同業者抽出基準は、業種、業態の類似性、事業規模の近似性等の各点で合理性を有しており、その平均所得率を算定する資料の正確性も担保され、類似同業者抽出件数も同業者の個別性を平均化するに足りるものであるから、原処分庁による推計には一応の合理性があると認められるものの、その選定した類似同業者のうちに上記の類似同業者抽出基準に該当しない者が含まれていたたことから、これを除いたところで所得率の平均値を算定し、当該平均所得率をもって請求人の所得金額を算定するのが相当であるとしたものである。
要旨
請求人は、原処分庁による税務調査に可能な限り対応しており、また、必要経費に係る集計表及び領収書により必要経費の額を算定することもできるから、本件に推計の必要性はなかった旨、また、原処分庁による推計は、請求人と業態の異なる者を類似同業者とした点で合理性を欠く旨、さらに、調査の際に帳簿の提示を拒否した事実はなく、帳簿を保存していたのであるから、消費税については仕入税額控除の規定が適用されるべきである旨主張する。
しかしながら、本件における調査の経緯からすれば、原処分庁は、請求人の帳簿不提示により、その事業所得の金額を実額で算定することができす、また、請求人の提示した集計表に信用性を認めることはできないから、本件には推計の必要性があったと認めるのが相当である。また、原処分庁がその推計の際に採用した類似同業者抽出基準は、業種、業態の類似性、事業規模の近似性等の各点で合理性を有しており、平均所得率を算定する資料の正確性も担保され、類似同業者抽出件数も同業者の個別性を平均化するに足りるものであるから、原処分庁による推計には一応の合理性があると認められる。ただし、原処分庁が類似同業者として選定した者のうちに所定の抽出基準に該当しない者が含まれていたため、これを除いた所得率の平均値をもって請求人の所得金額を算定するのが相当である。
さらに、本件における調査の経緯からすると、請求人は適時に提示することが可能なように態勢を整えて帳簿及び請求書等を保存していたものということはできないから、請求人は、消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第1項に規定する仕入税額控除の適用を受けることはできない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成16年12月16日第一小法廷判決(民集58巻9号2458頁)
本件土地について、賃貸借契約時に受領した金員は、借地権設定の対価ではなく、敷金であり、譲渡の和解時に土地の対価の一部に充当されたものであると認定した事例
裁決事例集 第48集 76頁
要旨
請求人は、P地裁において、本件土地を8、000万円でGに譲渡する平成2年12月18日付の和解が成立したが、受領した金額は、本件土地を昭和53年にGに賃貸したときに借地権の対価として受け取った3,000万円を差し引いた5,000万円であるから、本件土地の譲渡収入金額は8,000万円から3,000万円を控除した5,000万円であると主張するが、[1]昭和53年に作成された本件土地の賃貸借の覚書には敷金3,000万円を支払い、後日の本件土地の売買代金に充当する旨記載されており、[2]Gが所有している領収書には敷金である旨記載されており、[3]これが権利金であることを示す証拠書類がないところから、昭和53年に受領した3,000万円は借地権の設定の対価としての権利金とは認められず、敷金であったと認められるので、本件土地の譲渡収入金額は8,000万円である。
要旨
請求人は、本件不動産はHに譲渡したものであり、Hが所有権移転登記上の譲受人であるK株式会社に譲渡したものであると主張するが、[1]請求人が売却したと主張するHは所在が不明であること、[2]K株式会社の担当者は、本件不動産の売買には請求人が立ち会っており、Hを知らないと申述していること、[3]K株式会社は、本件不動産の取得代金を小切手で支払っており、当該小切手を現金化したのは、裏書人名、現金の使途及び預金等からみて請求人であると認められることから、本件不動産は請求人から直接K株式会社に譲渡されたものと認められる。
したがって、K株式会社の支払総額に基づき本件不動産の譲渡価額を認定すべきである。
ポイント
本事例は、原処分庁が採用した推計方法について、請求人が自身の主張する推計方法の方が真実の所得金額に近似するとの主張をしたものの認められず、原処分庁の推計方法は、一応の合理性を有するものと認めたものである。
要旨
請求人は、昼営業に係る注文伝票1枚当たりの単価(昼営業伝票単価)に注文伝票の購入枚数から客の注文等を記載する以外に使用した注文伝票の枚数(伝票ロス分)を控除した枚数を乗じて売上金額を算出するという原処分庁が採用した推計方法には合理性がない旨主張する。
しかしながら、①昼営業伝票単価を推計の基礎数値に用いることは、請求人の事業専従者が主に昼営業の売上げを計上しないものとして昼営業に係る注文伝票の一部をレジ入力せず破棄していたこと及び昼営業に係る来客者数が夜営業に係る来客者数を上回る請求人の事業の実態を反映するものであること、②昼営業伝票単価及び注文伝票の購入枚数は、いずれも当該事業における正常な業務の遂行のために作成された資料から正確に把握されること、③請求人の客への飲食物の提供方法である店内飲食、持帰り及び弁当販売の3つの形態のいずれについても必ず注文伝票が作成されており、注文伝票の使用枚数と売上金額とは高い相関関係があると認められること等から、原処分庁が採用した推計方法は、一応の合理性を有する。
また、請求人は、原処分庁が採用した推計方法よりも、おしぼりのレンタル本数及び弁当箱の購入個数から客に提供する以外の用途に使用する数量を控除した数量に、客単価を乗じて売上金額を算出するという推計方法の方が真実の所得金額に近似する旨主張する。
しかしながら、①請求人の主張する推計方法は、夜営業に係る来客者数よりも昼営業に係る来客者数の方が多いという請求人の事業の実態を反映するものではなく、②おしぼりのレンタル本数及び弁当箱の購入数量について、客に提供する以外の用途に使用する数量を認定するに足る具体的な証拠はなく見積りにより算出していることに加え、おしぼりの調理使用分について使用方法が変更されていることからすると、数値の正確性・連続性に欠けるおしぼりのレンタル本数及び弁当箱の購入数量を推計の基礎とすることはできないから、請求人の主張する推計方法の方が真実の所得金額に近似するということはできない。
なお、審判所の伝票ロス分の認定等に伴い、原処分の一部を取り消した。
参照条文等
参考判決・裁決
名古屋地裁平成16年11月25日判決(税資254号順号9833)
遠洋漁業を行う船舶に乗船させた外国人漁船員の人的役務の提供の対価は国内源泉所得に該当するから、当該対価の支払の際に源泉徴収する義務があるとした事例
裁決事例集 第71集 349頁
要旨
請求人は、自らが所有し遠洋漁業を行う船舶(以下「本件船舶」という。)に乗船させた外国人漁船員とは雇用契約書を取り交わしておらず、外国人漁船員の手配等を行うH社から派遣されたものであるから、本件船舶に乗船させた外国人漁船員の人的役務の提供の対価(以下「本件対価」という。)は所得税法第161条第8号イに掲げる国内源泉所得に該当せず源泉徴収義務はない旨主張する。
しかしながら、本件船舶に乗船させる外国人漁船員は請求人の意思でその採否を決定していること、請求人は外国人漁船員の船員手帳の交付申請に際し外国人漁船員の雇用(予約)証明書を提出していることなどからすれば、請求人と本件船舶に乗船させた外国人漁船員とが直接の雇用契約書を取り交わしていないとしても、請求人と当該外国人漁船員との間には雇用関係があると認めるのが相当である。したがって、本件対価は、請求人との雇用契約によるものであるから、所得税法第161条第8号イに規定する国内源泉所得に該当する。
そして、請求人は本件対価をH社の国内預金口座に振り込む方法により支払っており、また、外国人漁船員が本件船舶に1年以上の期間乗船していたとしても、本件船舶は当該外国人漁船員にとって勤務地であって住所や居所には該当せず、当該外国人漁船員は非居住者に該当するから、所得税法第212条第1項の規定により、請求人は本件対価の支払の際に源泉徴収義務がある。
なお、本件納税告知処分には、各月分の納付すべき源泉所得税の額及び法定納期限の認定に誤りが認められるが、法定納期限の認定の誤りは、国内源泉所得の支払地が国内か国外かによるものにすぎず、既に自動的に確定している各月分における源泉所得税に係る国税債権に影響するものとは認められず、また、正当な法定納期限後の日付をもって本件納税告知処分をしたことが請求人の利益侵害とも認められないから、当該誤りをもって本件納税告知処分を取り消すことは相当ではないと認められるが、本件納税告知処分のうち正当に計算した本件対価の支払に係る各月分の納付すべき源泉所得税の額を超える部分は違法となり取り消すべきである。
要旨
請求人は、源泉徴収義務者が源泉所得税を徴収しなかったとしても、受給者がその所得を確定申告し、納税すれば源泉所得税相当額が国庫に歳入される以上、その時点で源泉徴収義務は消滅する旨主張する。
しかしながら、源泉所得税の納税義務を負う者は、源泉徴収の対象となるべき所得の支払者であって(所得税法第183条第1項、第204条第1項)、その納税義務は、その所得の受給者に係る所得税の納税義務とは別個のものとして成立、確定し、これと並存するものであり(国税通則法第15条)、所得税法第221条、第222条及び国税通則法第36条の各規定からしても、源泉所得税の納税に関し、国と法律関係を有するのは徴収義務者のみで、その所得の受給者との間には直接の法律関係を生じない。
また、「源泉徴収をされた又はされるべき所得税額」がある場合には、所定の税率を適用して算出された所得税の額からこれを控除した金額が所得税の確定申告書の記載事項(所得税法第120条第1項)とされているところ、この「源泉徴収された又はされるべき所得税額」については、所得税法の源泉徴収の規定に基づき正当に徴収された又はされるべき所得税の額を意味するものであって、確定申告の際に、源泉所得税自体の過不足額の精算を行うことを予定しておらず、その所得の受給者が徴収されるべき源泉所得税を確定申告により納税することはできない。
したがって、受給者の確定申告によって請求人の源泉徴収義務が消滅することはない。
喫茶店を経営していた土地建物の譲渡時に喫茶店の営業権等の売買も行われたとの請求人の主張に対し、営業権等は売買されていなかったと認定し、譲渡価額全額が土地建物の対価であるとした事例
裁決事例集 第49集 123頁
要旨
請求人は、本件土地建物の所在地域においては、飲食店等を譲渡する場合、その土地建物のほかに営業権の存在を認め、付随して譲渡する慣習があるとし、本件土地建物は、いわゆる「居抜き」と呼ばれるそのままの状態で譲渡したもので、売買当事者は請求人の喫茶店の営業に営業権を認めて、営業権の対価を含めて売買をしたとし、本件土地建物は180,000,000円、営業権は50,000,000円、什器備品等は20,000,000円で売買したものであると主張する。
しかしながら、売買価額が180,000,000円と記載された契約書(甲契約書)と同じく250,000,000円と記載された契約書(乙契約書)があるところ、次により、乙契約書に記載された内容が真正の契約と判断され、同契約書に記載された250,000,000円は、その全体が本件土地建物の譲渡の対価と推認される。
- 譲渡代金の総額が250,000,000円であるところ、甲契約書と営業権50,000,000円の領収書の金額を合計しても230,000,000円であるのに対し、乙契約書の金額は250,000,000円であること。
- 乙契約書には、売買物件として本件土地建物のみが表示されていること。
- 乙契約書が真正と異なるのであれば、仮に作り替えるという約束があったとしても、請求人が同契約書に署名押印することは不自然であること等。
ポイント
本事例は、推計の基礎数値である収入金額の異動により、審判所の認定額が原処分額を下回ったため、原処分の一部を取り消したものである。
要旨
請求人は、請求人の事業は自動車整備業のみで、自動車販売は附帯的に行っているだけであるから、原処分庁が、自動車整備業及び自動車販売業を営む者を類似同業者の抽出基準としていることには合理性がない旨主張する。
しかしながら、請求人は、自動車整備業だけでなく自動車の販売も行っていると認められる以上、原処分庁が、類似同業者の抽出基準において、自動車整備業及び自動車販売業を営む者を請求人の類似同業者としたことは相当である。なお、請求人の収入金額の異動により、審判所の認定額が原処分額を下回ったため、原処分の一部を取り消した。
参照条文等
要旨
請求人は、零細企業で、賞与を支給できる財務内容ではなく、請求人の代表者(以下「本件代表者」という。)が自由に費消できる資金などは全くないこと、また、請求人には本件代表者に対して賞与を支給する意思はなく、同人も賞与を受けた認識はないことから、請求人が仕入れ等のために振り出した小切手を本件代表者が現金化し、同人が所持していた現金(以下「本件各現金」という。)を本件代表者への賞与とする納税告知処分は取り消されるべきである旨主張する。
しかしながら、①本件代表者は、請求人の事業経営及び経理の実権を有する唯一の者であると認められること、②請求人は、青色申告法人であり、取引に関係する帳簿の記録及び資料の保存が必要であるところ、本件各現金の使途を明らかにする帳簿の記録や資料等の保存が一切なく、当該小切手を現金化した後の本件各現金の使途が不明であること、及び③本件代表者が、当該小切手を現金化した後に本件各現金に相当する金員を会社のために支出した事実が認められないことからすれば、本件各現金は、本件代表者が取得したとみるほかなく、請求人から本件代表者に対して支給された臨時的な給与、すなわち役員賞与に当たるものと認められる。したがって、本件各現金を本件代表者に対する賞与とした原処分は適法である。
ポイント
本事例は、原処分庁の同業者率による推計方法について、①推計基礎の正確性、②推計方法の最適性及び③推計方法の客観性があり、推計の合理性があるとしたが、類似同業者の一部の減価償却費や必要経費の算定における計算誤りがあったため、更正処分の一部を取り消すのが相当であるとした事例である。
要旨
請求人は、請求人の総勘定元帳により、請求人の所得金額を実額で計算することができ、推計の必要性がない旨、また、原処分庁による推計方法は合理性がない旨主張する。
しかしながら、請求人が提出した資料では実額で計算することはできず、本件には推計の必要性があったと認めるのが相当である。
また、推計方法については、原処分庁は、請求人の各年分の総収入金額に類似同業者の平均必要経費率(同業者比率)を用いる方法により請求人の事業所得の金額を算出しているところ、①同業者比率による推計方法については、一般に、業種・業態が類似する同業者にあっては、特段の事情がない限り、経験則上、同程度の同収入金額に対し、同程度の所得が得られると考えられており、請求人の営む事業の場合であっても例外でなく、本件において請求人に特段の事情があるとは認められないこと、②推計の基礎となる総収入金額は正確に把握されていること、③抽出基準に合理性がある上、類似同業者の抽出過程において課税庁の恣意や思惑が介在していないこと、及び④抽出件数も類似同業者の平均値を求める上で合理的であることが認められる。したがって、原処分庁による推計については、抽出した類似同業者の一部の者の減価償却費や必要経費の算定における計算誤りの部分を除いて、合理性があると判断するのが相当である。
参照条文等
譲渡の対価として代替地及び建物の交付の要求に対し、譲受人は代替地を購入して建物を建築して渡していることから、譲渡収入の金額は、代替地と建物建築価額の合計額になるとした事例
裁決事例集 第49集 202頁
要旨
請求人は、本件譲渡土地の収入金額は、M社に譲渡した際の売買契約書に記載した263,000,000円であり、この価額は不動産鑑定評価額271,841,000円に照らしおおむね妥当であるとし、また、代替資産の取得価額263,000,000円は、本件不動産鑑定評価額302,470,000円及び建物の建築価額97,349,000円の合計額399,810,000円に比べ開差はあるが、これは、取引上の駆け引きに請求人が秀でていたことによるものであり、正当な取引額というべきであると主張する。
しかし、請求人は、本件譲渡において、代替地の取得を希望したが、代替地を自分で直接購入することはせず、また、交渉の過程で代替地の面積が本件譲渡土地の面積より不足する分を別途建物を建築して引き渡すことを条件とし、さらに、金銭の負担を一切しないで本件代替資産を取得しており、このことは、本件譲渡土地の譲渡の対価として本件代替資産を取得したことにほかならない。
本件代替地の価額は、M社がB社から取得した価額455,300,000円とみるのが相当であり、本件建物の価額は設計料と建築費用の97,340,000円であるから、本件譲渡土地の譲渡収入金額は、この合計額の552,640,000円となる。
要旨
請求人は、原処分庁の所得金額の推計の算出について、①原処分庁の算出基準においては、青色申告の承認を受けた者の確定申告が適切になされたものであって、かつ、請求人の確定申告と比較しうる理由の根拠が示されていないこと、②原処分庁が請求人の所得金額の推計に用いた請求人と業種・業態が類似し事業規模が同程度であると判断した同業者(本件類似同業者)の業態が全く不明であり、原処分庁が所得率の高い同業者だけを選んで推計の基礎に用いた可能性も否定できないこと、及び③本件類似同業者の本件各年分の平均所得率は年分によってかなりの開差があることから、推計の合理性があるとはいえない旨主張する。
しかしながら、原処分庁は、本件類似同業者を抽出するにあたり、業種・業態の類似性、個人又は法人の別、事業所の所在地の接近性、資料の正確性並びに事業規模の類似性等に係る基準を設けてこれらの条件に全て該当する者を抽出したのであるから、当該抽出基準は合理性を有するものであり、また、同業者の抽出過程に原処分庁の恣意が介在したとの事実は認められない。そして、平均所得率の算出に使用した資料は、いずれも帳簿書類等が整っている青色申告者の決算書であり、その信頼性ないし正確性は高く、さらに本件類似同業者の件数も本件類似同業者の個別性を平均化するに足るということができる。したがって、本件類似同業者と請求人の間には類似性があり、原処分庁の本件類似同業者の抽出基準及び抽出方法は合理性を有するものであると認められる。ただし、原処分庁の平均所得率の計算過程において、本件類似同業者のうち1名に損失の金額が生じていたにもかかわらず、その者の所得率を0.00%で計算しているが、その者の所得率を0.00%とすべき特殊な事情は認められないことから、当該所得率は損失の金額で算出したマイナス値で計算すべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
家族を外国に居住させ、自らは国内に住民票を置き、出入国を繰り返している請求人代表者を所得税法第2条第1項第3号の「居住者」に該当すると判断した事例
裁決事例集 第76集 228頁
要旨
請求人は、請求人代表者が、家族をD国に居住させ、自らも同国での住所を有したまま、同国での勤務に加え日本での勤務も行い、D国と日本を行き来する生活を送っていることから、その住所地は、所得税基本通達3-1に定める船舶又は航空機の乗組員の住所の判定と同様に、「その者の配偶者その他生計を一にする親族の居住している地」、すなわちD国にあり、代表者は、所得税法第2条第1項第5号に規定する「非居住者」に当たると主張する。
しかしながら、請求人代表者は、出入国を繰り返しているものの、日本国内における居住地以外に、生活の本拠としての実態がある場所もなく、請求人の代表者として活動していることからも、請求人を中心とするグループ企業の実権を掌握し、その地位に照らしても相当期間にわたり国内に存在することを必要としていたもので、その住所は国内にあり、所得税法第2条第1項第3号に規定する「居住者」に当たる。
要旨
請求人は、本件土地を昭和62年10月8日Fに9,935万円で譲渡したにもかかわらず原処分庁は、請求人が同月31日G社に17,130万円で譲渡したとして収入金額を過大に認定しているので、本件更正処分及び重加算税の賦課決定処分は違法である旨主張する。
しかしながら、原処分関係資料等及び本件土地取引に関与した関係者の答述によれば、次の事実が認められる。
- 昭和62年10月8日の売買契約書に記載されている本件土地の地積は、同月10日に実測した面積であり、また、Fは、本件土地に係る短期譲渡所得の申告をしているものの、ごく一部しか納税しておらず、行方不明であること。
- [1]売主側の仲介業者であるLは、本件土地の隣接地が坪当たり1,100万円で売れたので売却を勧め、請求人の夫であるJとG社側の仲介業者であるEの間に入り4~5回交渉の上、坪当たり1,000万円と決めた。[2]Eは、Lからの依頼によりG社が坪当たり1,000万円で本件土地を購入する旨の売買契約を昭和62年10月10日W銀行の応接室で締結し、G社の代表者○○から受領した小切手8,265万円と現金8,865万円をKに渡した。[3]売買契約に立ち会った銀行員であるAは、昭和62年9月下旬にJから坪当たり1,000万円で売却するので、根抵当権の解除と売買契約時の立会いの依頼があり、立ち会った際に勘定した現金は1~2千万円程度の少額ではなく、小切手は預金、現金はJが持ち帰った旨答述していること。
以上の事実によれば、請求人は、Fを本件土地の買主として介在させ、更に、Fを売主とする虚偽の売買契約書を作成したのであるから、請求人がG社に本件土地を17,130万円で譲渡したと認めるのが相当であるので、本件更正処分等及び重加算税の賦課決定処分は正当である。
ポイント
本事例は、原処分庁が用いた資産負債増減法による推計において、請求人名義の預金口座への入金額の一部は、子名義の預金口座から引き出された金銭を原資とするものであり、請求人の事業所得を原資とするものではないから、純資産の増加額とは認められないとした事例である。
要旨
原処分庁は、原処分庁が請求人の事業所得を算定するに当たって採用した資産負債増減法において、子名義の普通預金口座(本件普通預金口座)から引き出された金銭によって請求人名義の定期預金口座が開設されたとの事実を裏付ける証拠はないことから、減算調整項目(事業外所得)として減算すべき金額はない旨主張する。
しかしながら、本件普通預金口座から合計2,000,000円が引き出された翌日に同額が請求人名義の定期預金口座に入金されたこと、本件普通預金口座に係る通帳等を同居人が管理していること、本件普通預金口座から引き出された2,000,000円が請求人名義の定期預金口座への入金以外に充てられたことをうかがわせる事情がないことなどからすれば、請求人名義の定期預金口座に入金された金銭は本件普通預金口座から引き出された金銭を原資とするものであり、事業所得を原資とするものとはいえない。
参照条文等
参考判決・裁決
本件土地の譲渡収入金額は126,160千円であり、また、G社と本件土地の売買契約の事実がないので、当該契約解除に伴う違約金の支払いがないと認定した事例
裁決事例集 第50集 56頁
要旨
- 請求人は、F社から受領した123,372千円のうち、20,000千円はG社との売買契約の解除に伴う違約金であって、本件土地の譲渡収入金額ではない旨主張するが、[1]請求人とF社との間で作成された本件土地の売買価額を126,160千円とする契約書が存在すること、[2][1]の契約書は、請求人が内容を確認した上で署名・押印したものである旨答述していること、[3]請求人は、F社から123,372千円を受領したことを自認していること、[4]G社は、請求人から本件土地を購入したことも、違約金を受領したこともない旨答述していることから、本件土地の譲渡収入金額は126,160千円であり、また、G社と本件土地の売買契約の解除に伴う違約金の支払事実がないと認定して、分離短期譲渡所得金額を24,183千円とした本件更正処分は適法である。
- 原処分庁は、請求人が不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した借入金の支払利子のうち、平成2年4月に購入したP市S町所在の貸家(本件貸家)の使用開始までの期間の支払利子は、必要経費に算入できない旨主張するが、[1]請求人は、昭和62年頃から不動産賃貸業務を行っていること、[2]本件貸家の取得も不動産賃貸業務の遂行上行われていること、[3]借入金1億円は、本件貸家の取得のためと認められるので、本件貸家の使用開始までの支払利子5,630千円は、不動産所得の必要経費に算入するのが相当であり、不動産所得の金額は△5,766千円となる。
- 以上の結果、請求人の総所得金額は△1,504千円(事業所得4,262千円、不動産所得△5,766千円)となるから、課税短期譲渡所得金額は22,679千円となり、この金額は、本件更正処分額を下回るので、本件更正処分の一部を取り消すべきである。
要旨
請求人は、各関係会社名義を用いての源泉所得税の納付であったものとしても、それは請求人が法定期限内に納付していたものであるから、請求人による納付があったものと扱うべきである旨主張する。
しかしながら、租税法は、源泉徴収義務者本人が第三者名義で源泉所得税を徴収・納付することを予定していないというべきであり、これが外観上一見して源泉徴収義務者本人の通称ないし別名と判断できるような場合でない限り、源泉徴収義務者本人の徴収・納付としての法的効果は生じないものと解するのが相当である。本件における請求人の各関係会社は、それぞれが、①商業登記された法人であること、②給与支払事務所等の開設届出書を提出し、本件関係各社名で源泉所得税が納付されていること、及び③法人税及び消費税等の申告をしていることが認められ、これらのことからすれば、請求人による当該各関係会社の名義を用いた源泉所得税の徴収・納付は、外観上一見して請求人の通称ないし別名でなされたと判断することはできないから、本来の源泉徴収義務者である請求人自身の徴収・納付としての法的効果を生じないものと解される。
要旨
原処分庁は、請求人が譲受人から売買代金とされる4,500万円を受領していることなどから、本件物件の譲渡価額が4,500万円であるとし、一方、請求人は当該金額の中には、過去の譲受人及び同人の父に対する貸付金の一部の返済金(500万円)が含まれている旨主張するので、当審判所が、本件物件が譲渡されるに至った経緯等を調査したところによれば、請求人が主張するとおり、当該金額の中には、過去の金銭貸借等の精算部分が含まれていると解釈せざるを得ないことから、本件物件の譲渡価額は、4,000万円であるとするのが相当であって、4,500万円であるとした原処分は、その全部を取り消すのが相当である。
救急病院等に勤務する医師等に対する宿直料は、本来の職務に従事したことに対する対価であるから、所得税基本通達28-1ただし書は適用できないとした事例
裁決事例集 第77集 222頁
要旨
請求人は、所得税基本通達28-1に定める宿直料又は日直料の一部非課税の取扱いについて、宿直料が実費支弁の性格を有するので、宿直における仕事の内容及びその責任の軽重などにかかわらず一律4,000円までを非課税とするものであり、宿直とは夜間勤務のことをいうのであるから、請求人が設置する救急病院等に勤務する医師等に対する宿直料は4,000円まで非課税とすべきである旨主張する。
しかしながら、所得税基本通達28-1が、ただし書において、課税しない宿日直料の対象となる宿日直勤務から①本来の職務として行ったもの、②通常の勤務時間に行ったもの、③代日休暇が与えられるもの及び④給与比例額により支給されるものを除いていることからすると、同通達の取扱いの適用対象とされる宿日直勤務とは、所定労働時間外または休日において、本来の業務に従事しないで行う構内巡視、文書等の収受又は非常事態に備えての待機などをいうものと解され、夜間行われる勤務であるからといって直ちに同通達の適用対象とされる宿日直勤務に該当するということはできず、また、同通達が夜間の勤務1回について一律4,000円までを非課税とする旨を定めたものであると解することはできない。よって、請求人の主張は採用できない。
要旨
請求人は、外国人研修生等に支払った研修手当等について、研修生等は、現に「研修」又は「特定活動」の在留資格を有しており、中華人民共和国政府及び日本国政府が認めた研修生又は実習生であり、また、実際に水産加工における包丁の技術、日本語などの研修を行っているから、本件研修生が受領した研修手当等は、日中租税条約第21条に規定する所得税の免税の適用がある旨主張する。
しかしながら、日中租税条約第21条の事業修習者等は、在留資格をもって日本に滞在している者であり、許可された在留資格に応じたそれぞれの活動を行うことができるのであるから、技術等の修得をする活動を行う「研修」などの資格をもった者はその在留資格の基準に適合する活動を行わなければならず、たとえ、在留を許可され滞在している者であっても、在留資格の基準に適合しないような活動を行っている者にあっては、日中租税条約第21条に規定する事業修習者等には該当しないと解されるところ、請求人は、水産加工品梱包方法など研修計画書に記載された研修を行っていないことなどからすれば、本件研修生は、「研修」等の在留資格の基準に適合するような活動を行っている者とはいえず、日中租税条約第21条に規定する事業修習者等には該当しないので、研修手当等について、日中租税条約に規定する租税の免除の適用はない。
本件土地の売買に際し、請求人は確定申告した売買代金以外にも金銭を受領した事実があるとしてなされた更正処分について、その事実を認めるに足りる証拠はないとして、その全部を取り消した事例
裁決事例集 第54集 180頁
要旨
原処分庁は、本件土地の売買に関する契約書として、売買価額を25,113,000円とする契約書(以下「甲契約書」という。)、売買価額を45,180,000円とする契約書(以下「乙契約書」という。)及び売買価額を60,240,000円とする契約書の3通が存在するが、本件土地の買受人の代理人の答述及び売買代金の支払等が記録されたメモ等の内容から、本件土地の売買価額は乙契約書に基づく45,180,000円と認めるのが相当である旨主張する。
しかしながら、次の事実等を照らし合わせると、乙契約書が真に本件土地の売買を表すものと認定することはできない。
- 乙契約書は、作成時期が明らかでない上、仲介手数料は異なった金額が二段書きされているなど不自然な箇所がある。
- 本件土地の買受人の代理人の答述等は、その時々により内容が異なっており信用ができず、また、提出されたメモ等の記載内容も真実のものか疑わしいと言わざるを得ない。
- 本件土地の売買代金について検証できる部分は、25,113,000円だけであり、現金で支払ったとされる20,067,000円については証拠がない。
以上から、請求人が本件土地の売買に際し、甲契約書記載の売買代金以外の金銭を受領した事実は認められず、また、ほかにもその受領の事実を認めるに足りる証拠はないので、本件土地の譲渡価額は、請求人が確定申告した25,113,000円であると認められる。
よって、請求人の平成2年分の分離短期譲渡所得の金額は、申告に係る分離短期譲渡所得の金額と同額であるから、本件更正処分はその全部を取り消すべきである。
土地建物の譲渡に際し、架空の中間譲渡人を介在させて譲渡収入金額の圧縮を計ったとして、最終買受人の購入価額を譲渡収入金額と認定した原処分を相当と認めた事例
裁決事例集 第55集 108頁
要旨
請求人は、本件土地建物を14,000,000円でG社に譲渡したものであり、さらに、G社がSに33,000,000円で譲渡したものである旨主張するが、[1]G社に譲渡したとする売買契約書は、後日、契約日付をさかのぼって作成されたものと認められること、[2]請求人がSから33,000,000円を受領した事実は明らかであり、その受領した金銭の全額を新たに取得した土地建物の取得資金に充てていることが認められることから、請求人は、G社を本件土地建物の中間譲渡人として介在させて、実体のない取引を仮装したものであり、実質は請求人が本件土地建物を33,000,000円でSに譲渡したものと認められる。
要旨
請求人は、本件家具等は、請求人が宗教活動の用に供するために取得し、装飾や請求人の来客用等として本件マンション内に設置され、直接的あるいは間接的に宗教活動の用に供されるものであって、代表者に貸与したものではない旨主張する。
しかしながら、本件マンションの間取りは居住用であり、代表者が一人で居住していることや宗教活動の用に供された事実がないことなどからすると、本件マンションは、その全体が専ら代表者の居住の用に供されていたと認められ、そうすると、本件マンション内に設置されている本件家具等は、請求人が、代表者が使用する目的で購入して代表者に貸与し、これを代表者が専属的に使用していたものと認めるのが相当である。
そして、代表者は、請求人に対し、本件家具等の使用料名目での金員の支払をしておらず、また、本件マンションの賃貸料にも、本件家具等の使用料は含まれていないというべきであるから、本件家具等は、請求人から代表者に対して無償で貸与されていると認められ、代表者はこれにより通常支払うべき対価に相当する利益、すなわち本件家具等の使用に係る経済的利益を享受しているというべきである。
要旨
請求人は、土地の譲渡に際して買受人から収受した、売却後の期間に対応する未経過固定資産税等相当額について、固定資産税等が期間コストの性質を有することを前提に、収受した金員は、実質的には立替金の清算であり、担税力を有するものではなく、このことは、未経過固定資産税等相当額について不当利得返還請求権が発生することからも裏付けられるとして、譲渡所得の総収入金額に算入すべきでない旨主張する。
しかしながら、固定資産税等は、賦課期日である毎年1月1日現在において、固定資産台帳に所有者として登録されている者に対して課されるものであり、賦課期日後に所有者の異動が生じたからといって、課税関係に変動が生じるものではないから、賦課期日後に当該資産の所有者となった者は、固定資産税等の納税義務を負担するものではなく、また、譲渡人は、譲受人に対して未経過固定資産税等の求償権を取得するものでもない。そうすると、未経過固定資産税等相当名目での金員の授受は、当事者間の契約によって初めて生じる債権債務関係に基づいてなされるものであり、その性質は売買条件の一つにほかならず立替金の清算とはいい得ない。
また、当該資産の所有関係の変動が当事者間の契約に基づいて生じた場合に、固定資産税等名目の金員の授受について、何らの取決めもなされないのであれば、当事者の意思解釈としては、そのような名目での金銭のやり取りはしない趣旨であることが通常であると思われるから、そのような場合に、当事者の合理的意思解釈に反して、不当利得返還請求権が発生する余地はない一方、固定資産税等名目の金員の授受を行うとの取決めがなされるのであれば、その授受は、まさに契約に基づいて行われるものであるから、固定資産税等名目で譲渡の際に授受された金員の性質が不当利得返還請求権の性質を有することもありえない。
要旨
請求人は、請求人が従業員等を参加者として実施した海外への社員旅行(本件旅行)は、①実施日程が2泊3日であること、②従業員のほぼ全員が参加していること及び③従業員には経済的利益を受けることについての選択性が認められないものであること等から、所得税基本通達36-30《課税しない経済的利益……使用者が負担するレクリエーションの費用》(本件基本通達)にいう社会通念上一般的に認められる範囲内のレクリエーション行事であるから、請求人が負担した本件旅行の費用は、従業員に対する経済的利益(給与)として課税されるべきではない旨主張する。
しかしながら、レクリエーション行事として行われる旅行が本件基本通達にいう社会通念上一般的に行われていると認められるものに当たるか否かの判断に当たっては、当該旅行の企画立案、主催者、旅行の目的・規模・行程、従業員の参加割合、使用者及び参加従業員の負担額、両者の負担割合等を総合的に考慮すべきであるが、少額の現物給与は強いて課税しない(少額不追求)という本件基本通達の趣旨からすれば、従業員の参加割合、参加従業員の費用負担額ないし両者の負担割合よりも、参加従業員の受ける経済的利益、すなわちレクリエーション行事における使用者の負担額が重視されるべきであるところ、請求人が負担した従業員一人当たりの本件旅行の費用の額は、海外への社員旅行を実施した企業の一人当たりの会社負担金額を大きく上回る多額なものであるから、少額不追求の観点から、強いて課税しないとして取り扱うべき根拠はないものといわざるを得ない。
したがって、本件旅行については、社会通念上一般的に行われているレクリエーション行事の範囲内と認めることはできない。
参照条文等
派遣医に支払う給与等の源泉徴収につき、勤務した日ごとに定額の給与を支給していた場合であっても、月間の給与総額をあらかじめ定めておき、これを月ごとに又は派遣を受ける都度分割して支払うこととするものとして月額表の乙欄に掲げる税額を源泉徴収すべきとした事例
裁決事例集 第83集
ポイント
所得税法上、居住者に対し支払う給与等につき源泉徴収すべき税額を求める際に適用すべき税額表は、支給期が毎月、毎半月、毎旬及び月の整数倍ごとと定められているものは月額表、支給期が毎日と定められているものは日額表とされており、求めるべき税額は、扶養控除等申告書の提出の有無に応じ、それぞれ、甲欄、乙欄に掲げる税額とされている。また、労働した日又は時間によって算定され、かつ、労働した日ごとに支払われる給与等で一定のものは、日額表の丙欄に掲げる税額とされている。
この事例は、いわゆる派遣医に対して支払う給与について、派遣医との契約内容等に応じ、月額表又は日額表の乙欄、あるいは日額表丙欄が適用されると判断したものである。
要旨
原処分庁は、請求人に大学から派遣される医師(大学派遣医)及び請求人と医師個人との契約等により勤務する医師(個人契約医)に請求人が支払う給与について、源泉徴収税額表の日額表が適用される旨主張し、これに対し請求人は月額表が適用される旨主張するところ、大学派遣医については、大学との間で勤務1回当たりの額という形で給与の額を定め、勤務予定については四半期ないし半年という期間ごとに一応決定されていたものの、実際に勤務する医師が誰であるか勤務直前になるまで分からないのであるから、勤務回数が一定の期間で何回になるか事前に確定しているとはいえない。したがって、勤務した日ごとに支払っている大学派遣医の給与は、勤務した日ごとに定められているということができ、「給与等の支給期が毎日と定められている場合」に該当すると認められるから、日額表の乙欄に掲げる税額を源泉徴収すべきである。
また、勤務日を毎週木曜日として1年間継続して請求人に勤務する旨の契約を取り交わし、その後勤務を続け、平成17年3月から同年12月までの間は、継続して第2及び第4木曜日に勤務していた個人契約医は、請求人との間において、毎月一定日数勤務することをあらかじめ取り決めてあったということができ、同人の給与については、「月間の給与総額をあらかじめ定めておき、これを月ごとに又は派遣を受ける都度分割して支払うこととするもの」と認められるから、月額表の乙欄に掲げる税額を源泉徴収すべきである。
一方、請求人の病院に継続して勤務する取決めはなく、請求人の依頼に基づいて臨時的に勤務していた個人契約医は、勤務1回当たりの給与についてもその都度取り決めていたというのであるから、日日雇い入れられる者に対して労働した日によって算定した額を労働した日ごとに支払っている給与であると認められるので、日額表の丙欄に掲げる税額を源泉徴収すべきである。
参照条文等
要旨
資産の譲渡とは、有償無償を問わず資産を移転させる一切の行為をいうものであり、売買のほか交換や代物弁済などによる資産の移転が含まれると解されるから、資産の交換は、譲渡所得の課税の対象となる。
資産の交換の場合、交換により取得した資産の額、すなわち交換に係る対価の額と交換により譲渡した資産の取得の時の価額との差額が、当該譲渡資産を所有していた間に生じた値上がり益となるから、当該譲渡資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会にその値上がり益について譲渡所得課税が行われるものであって、交換に係る対価が金銭であるかそれ以外のものであるかによってその結論が異なるものではない。
本件土地改良区の換地設計基準により土地評価処理要領に定める本件評定価格は、近傍類似の取引価格及び地域における農業収益価格を調査・検討し、農家への意向調査などをした上で算定されており、さらに、土地改良区によって一筆ごとに現地確認などの調査をした上で各土地の等位格付が定められたものであることが認められるから、その価格算定要素及び土地の個別事情が考慮された客観的かつ具体的なものということができる。
したがって、本件交換に係る譲渡所得の金額の計算上、総収入金額に算入すべき金額は、本件評定価格を基に算定するのが合理的である。
外国市場で売却した株式代金の売却約定時の邦貨換算は同日の対顧客電信買相場(TTBレート)により、代金決済時の邦貨換算は先物為替予約レートによるのが相当であるとした事例
裁決事例集 第65集 206頁
要旨
L証券が本件株式を外国証券会社に保護預かりしていないこと等から判断すると、L証券は本件株式の売却について委託の取次ぎ、委託の媒介及び代理を行ったとは認められない。同証券は本件株式に係る売却代金の受渡日の為替予約と売却代金の国内受入れから請求人の銀行口座への振込み並びに源泉分離課税の手続及び実行の国内事務を行っていたに過ぎない。
したがって、本件株式の売却に係る譲渡所得については、源泉分離課税の適用はできない。
外貨で表示されている上場株式等の譲渡の対価の額を邦貨換算するには、外貨の所有者にとってその外貨によって取得しえる邦貨の額であるとするのが妥当であるから、売却約定日時点におけるTTBレートによるのが相当である。一方、代金決済においては、請求人は実際に先物為替予約レートによって換金し、邦貨を得ているのであるから当該レートにより換算するのが相当である。
ポイント
所得税法第8条において、非居住者から居住者になった場合など、個人が年の中途で納税義務者の区分に異動を生じた場合には、その者がその年においてそれぞれの納税義務者の区分であった期間に応じ、それぞれの期間内に生じた所得税法第7条第1項に掲げる所得に対し、所得税を課することとされている。
この事例は、国外勤務を終えて日本に帰国した社員の国外勤務中の給与に係る外国所得税額を請求人が負担したことによる経済的利益について、非居住者期間内と居住者期間内のいずれに生じた所得かが争われたものである。
要旨
請求人が国外勤務を終えて帰国した海外出向社員ら(本件海外出向社員ら)の外国所得税額(本件外国所得税額)をその帰国後に納付したことについて、原処分庁が居住者に対する給与等の支払に当たるとして、源泉所得税の納税告知処分等をしたのに対し、請求人は、海外出向社員の外国所得税額を請求人が負担することは海外勤務規定においてあらかじめ定められており、また、本件外国所得税額は、本件海外出向社員らが非居住者であった外国で勤務していた期間に支給された手取給与の額を基礎にグロスアップ計算されたものであり、当該手取給与と一体不可分であるから、所得税基本通達181~223共-4《源泉徴収の対象となるものの支払額が税引手取額で定められている場合の税額の計算》の考え方に従い、本件海外出向社員らの非居住者期間中に生じた所得として取り扱うべきである旨主張する。
しかしながら、請求人の海外勤務規定には、請求人が海外出向社員の外国所得税額を負担する時期についての規定はないところ、本件海外出向社員らは、使用者である請求人が同人らに代わって本件外国所得税額を納付した時に請求人から租税債務の消滅による経済的利益の供与を受けたものと認められ、また、当該納付が本件海外出向社員らの帰国後に行われていることからすれば、当該経済的利益は本件海外出向社員らが居住者となった以後の所得となる。
参照条文等
要旨
代償分割債務を履行するために資産を無償で交付した場合における譲渡所得の収入すべき金額は、その代償分割の目的となる資産を交付した時におけるその資産の価額によると解されるところ、その場合の価額は、その交付の時における客観的な交換価値、すなわち時価をいうものと解することが相当である。
請求人は、地価の下落を理由として修正した路線価を基に、本件土地の管理状況及び他の相続人への金銭債務の支払額を考慮して本件土地の価額を算定しているが、その算定方法は客観的な時価を求めるにおいて合理的な根拠を欠くものである。また、原処分庁が採用した公示地及び基準地は、その用途地域、建ぺい率及び容積率は本件土地と異なっていることが認められるから、本件土地の価額を求めるための基礎としては合理性を欠くものである。
よって、請求人及び原処分庁の主張する価額はいずれも時価であるということはできない。
そこで、当審判所が、取引内容が明確で、かつ、資料の正確性が確保されている3取引事例を選定し、これに相当と認められる不動産鑑定評価基準及び土地価格比準表等を参考として、不動産鑑定評価における取引事例比較法と同様の手法により価格を試算し、これらを平均した金額は本件土地の譲渡時における価額と認められるところ、当該価額を基に本件譲渡所得の金額を計算すると、本件更正処分の額を上回るので、本件更正処分は適法である。
要旨
請求人は、2名の役員に新株予約権を割り当てたことについて、当該新株予約権は、所得税法施行令(平成18年政令第124号による改正前のもの)第84条《株式等を取得する権利の価額》第4号に規定する有利な発行価額により新株を取得する権利には当たらない旨主張する。
しかしながら、請求人の株式は、非上場株式で気配相場のない株式であり、売買事例及び類似する他の法人の株式の価額があるとは認められないから、所得税基本通達23-35共-9《株式等を取得する権利の価額》の(4)に定める権利行使日等又は権利行使日等に最も近い日におけるその株式の発行法人の1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額により評価すべきところ、その評価方法は、必要な修正をした上で財産評価基本通達178《取引相場のない株式の評価上の区分》から189-7《株式の割当てを受ける権利等の発生している特定の評価会社の株式の価額の修正》までの例によって評価することが相当と認められるので、これにより、請求人の新株の発行価額を決定した日における請求人株式の1株当たりの価額を算定すると、当該新株の1株当たりの発行価額を大きく上回るから、当該新株予約権は、所得税法施行令第84条第4号に規定する有利な発行価額により新株を取得する権利に該当する。
参照条文等
所得税法施行令第84条第4号(平成18年政令第124号による改正前のもの) 所得税基本通達23~35共-7(平成18年12月19日付課個2-18ほかによる改正前のもの)、23~35共-9(平成19年6月22日付課個2-11ほかによる改正前のもの)
参考判決・裁決
最高裁平成17年11月8日第三小法廷判決(判タ1198号121頁)
未経過固定資産税等相当額は、譲渡所得の金額の計算上、総収入金額に算入されるとした事例( 令和3年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、 令和3年1月1日から令和3年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・ 棄却)
裁決事例集 第134集
ポイント
本事例は、不動産の譲渡に際して買主から売主に支払われた未経過固定資産税等相当額について、譲渡所得の課税の趣旨及び固定資産税等の納税義務者の規定内容から検討し、譲渡所得の金額の計算上、総収入金額に算入されるとしたものである。
要旨
請求人は、請求人が譲渡した土地建物(本件土地建物)に課された固定資産税及び都市計画税(固定資産税等)のうち本件土地建物の引渡日からその年の12月31日までの期間に対応する固定資産税等に相当する額(本件未経過固定資産税等相当額)は、売主である請求人に納税義務はなく、本来買主が負担すべきものを請求人が立て替えているにすぎないものであることなどから、譲渡所得の金額の計算上、総収入金額には算入されない旨主張する。
しかしながら、譲渡所得に対する課税の趣旨からすると、資産の譲渡の対価として収入すべき金額については、その名目いかんにかかわらず、譲渡所得の金額の計算上、総収入金額に算入されるべきであると解するのが相当である。また、固定資産税等は、その賦課期日である毎年1月1日現在における固定資産の所有者に対して課されるものであって、賦課期日後に当該固定資産の所有者に異動が生じたとしても、新たな所有者が当該固定資産のその年の固定資産税等の納税義務を負担するものではないから、本件土地建物の売買契約における固定資産税等の負担及び清算に関する定めは、新たな債権債務関係を発生させる合意内容の一つというべきである。したがって、当該合意に基づいて買主から請求人に支払われた本件未経過固定資産税等相当額は、本件土地建物の譲渡の対価の一部であると認められることから、請求人の譲渡所得の金額の計算上、総収入金額に算入されることとなる。
参照条文等
参考判決・裁決
東京高裁平成28年3月10日判決(訟月63巻1号70頁) 平成14年8月29日裁決(裁決事例集No.64)
要旨
原処分庁は、請求人が代表者個人を貸主とする金銭消費貸借契約に基づく貸付けに係る送金を行ったことついて、①請求人は当該送金が代表者個人の貸金債権に係るものであることを認識していながら送金をしていること、②請求人と代表者との間で当該送金に係る金銭の返済に関する取決めが行われた事実は認められないことからすると、請求人は代表者に対して返済を求める意思を有さずに当該送金をしたものと認められることから、代表者に対して経済的な利益を供与したことになる旨主張する。
しかしながら、請求人は当該送金した額について仮払金として経理していることからすると、請求人が代表者に代わって立て替えて送金をしたものと認めるのが相当であり、また、当該仮払金と経理した金額について貸倒処理を行うまでの間、請求人の帳簿上、依然として仮払金として計上していたことからすると、請求人において、代表者に対し当該送金の額の返済を免除するなどの明示的又は黙示的な行為を行った事実は認められないから、請求人が当該仮払金の額について、代表者に対して経済的な利益を供与したということはできない。
参照条文等
使用人等に対する食事の支給による経済的利益の供与について、「使用人が購入して支給する食事」として評価するのが相当であるとした事例(平成20年1月~平成22年10月の各月分の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分及び不納付加算税の各賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第95集
ポイント
本事例は、請求人が使用人等に提供した食事については、請求人が給食委託業者に支払った委託料等を加算したところにより評価すべきであるとして請求人の主張を排斥しているものの、原処分庁における経済的利益及び源泉所得税額の算定に一部誤りがあったため、原処分の一部を取り消したものである。
要旨
請求人は、請求人が給食業者(本件受託業者)に委託して調理させ従業員等に対して支給した食事は、所得税基本通達36-38《食事の評価》(1)に定める「使用者が調理して支給する食事」として食事の材料費相当額により評価すべきである旨主張する。
しかしながら、当該食事の材料は本件受託業者が調達しており、請求人はこれらの材料の明細及び内容を関知しておらず、その在庫を請求人の帳簿書類にも記載していなかったことに鑑みれば、自己の計算に基づき材料の調達及び管理を行っていたのは本件受託業者であるということができるから、請求人が材料を提供し当該食事の調理のみを委託していたとみることはできない。また、請求人は従業員等から徴収した食券代金を集計し本件受託業者に支払っていたところ、当該金額は、あらかじめ本件受託業者との間で定めたメニューごとの材料費相当額に基づき計算されてはいたものの、食事の材料費そのものとはいえないから、請求人が材料費を負担していたとみることもできない。そして、請求人は、従業員等が購入した食券代金を従業員等の給与から差し引いて預り金として経理し、本件受託業者に支払う際には預り金勘定から減額処理をしていたことからすると、請求人は本件受託業者が従業員等から直接受領すべき食事代金を本件受託業者に代わって徴収していたと認められ、請求人が本件受託業者に対して毎月一定額の給食業務委託料及び副食費を支払っていた事実を併せ考慮すると、請求人は、従業員等が本件受託業者から食事を安価で購入できるよう、給食業務委託料等を負担し、食事の購入代金の補助をしていたとみるのが相当である。したがって、当該食事は所得税基本通達36-38(2)に定める「使用者が購入して支給する食事」と同様に、食券代金、副食費及び給食業務委託料の合計額をもって評価するのが相当である。
参照条文等
キャストに支払った金員は給与等に該当するとした事例( 平成26年4月、平成26年10月、平成26年12月、平成27年3月から平成27年5月まで及び平成27年7月の各月分の源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の各納税告知処分並びに平成26年10月分の重加算税の賦課決定処分、 平成26年4月1日から平成27年3月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の賦課決定処分、 平成26年3月、平成26年5月から平成26年9月まで、平成26年11月、平成27年1月、平成27年2月及び平成27年6月の各月分の源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の各納税告知処分並びに平成26年3月から平成26年9月まで及び平成26年11月から平成27年7月までの各月分の不納付加算税及び重加算税の各賦課決定処分並びに平成26年10月分の不納付加算税の賦課決定処分、 平成25年4月1日から平成26年3月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の賦課決定処分、 平成23年4月1日から平成24年3月31日まで、平成24年4月1日から平成25年3月31日まで、平成25年4月1日から平成26年3月31日まで及び平成26年4月1日から平成27年3月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の各通知処分・ 一部取消し、 ~ 棄却)
裁決事例集 第110集
ポイント
本事例は、給与所得とは雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいい、とりわけ、給与所得については、給与支給者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、その対価として支給されるものであるかどうか、いわゆる労務の提供等の従属性が重視されなければならないとして判断したものである。
要旨
請求人は、請求人が営むキャバクラ店において接客業務に従事する女性(キャスト)は請求人から時間的、空間的な拘束を受けておらず、営業で必要な費用(携帯電話代金等)を負担しているから、キャストへの支給額(本件支給額)は所得税法第27条《事業所得》第1項に規定する事業所得に該当する旨主張する。
しかしながら、キャストは接客業務に従事するに当たり、請求人との間で、給与体系、勤務時間及び店舗規則などの勤務条件について合意していたこと、請求人はキャストの勤務時間又は接客時間を管理していたこと、キャストは指名客以外の客に対しても店長の指示により接客していたことが認められるから、キャストは入店から退店までの間は請求人の管理下にあったと認められ、請求人から空間的、時間的な拘束を受け、継続的又は断続的に労務又は役務の提供をしていたとみることができる。そして、キャストが営業のために必要な費用の一部を負担しているとの請求人の主張を考慮しても、本件支給額は接客時間等を基準に各種手当て及びペナルティの有無を勘案して算出されていること、採用後1、2か月間は一定の時給が保証されていること、キャストは客に対する売掛金を回収する責任を負っていなかったことからすれば、キャストは自己の計算と危険において独立して事業を営んでいたものとみることはできない。以上によれば、本件支給額は、キャストと請求人との雇用契約に基づき、請求人の指揮命令に服して提供した労務の対価であるから、所得税法第28条《給与所得》第1項に規定する給与等に該当する。ただし、本件支給額に係る源泉所得税の額の計算等に誤りが認められるから、納税告知処分及び重加算税の賦課決定処分の一部を取り消すべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和56年4月24日第二小法廷判決(民集35巻3号672頁)
請求人の取締役が請求人から不正に取得した金員は、請求人が当該取締役に支給した給与等には該当しないとした事例(平成21年12月、平成23年11月、平成23年12月、平成24年3月、平成24年8月から平成24年10月まで及び平成24年12月の各月分の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分及び重加算税の各賦課決定処分、平成25年12月分の源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の納税告知処分、平成25年3月から平成25年8月まで、平成25年11月、平成26年1月から平成27年10月まで、平成27年12月、平成28年2月及び平成28年3月の各月分の源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の各納税告知処分並びに重加算税の各賦課決定処分・全部取消し)
裁決事例集 第111集
ポイント
本事例は、代表者以外の役員が横領により法人の金員を不正に取得した場合に、当該役員が法人経営の実権を掌握し法人を実質的に支配していたとは認められないから、当該金員は当該役員に対する給与等には該当しないとして、源泉所得税等の納税告知処分等を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、請求人の取締役(本件役員)が請求人から不正に取得した金員(本件金員)について、①本件役員は請求人の業務において影響力を有していたと認められること及び②経理業務の重要な部分を任されていたと認められることからすると、その地位に基づいて支給されたのであるから、所得税法第28条《給与所得》第1項に規定する給与等に該当する旨主張する。
しかしながら、①本件役員は、法律上請求人の業務執行等を決定する地位にあったとは認められず、事実上もそのような地位にあったことを認めるに足りる証拠はないのであって、本件役員が請求人の業務において影響力を有していたとは認められない。また、②本件役員の職務内容についての申述などからは、本件役員が経理業務の重要な部分を任されていたとは認められない。したがって、本件役員が、請求人の経営の実権を掌握し、請求人を実質的に支配していたとは認められないから、本件役員がその地位及び権限に基づいて請求人から本件金員を得たものとは認められず、本件金員は、請求人が本件役員に支給した給与等には該当しない。
参照条文等
参考判決・裁決
仙台高裁平成16年3月12日判決(税資254号順号9593)
人間ドック等の補助に係る経済的利益について、本件におけるカフェテリアプランは換金性のあるプランとは認められないから、源泉徴収義務はないとした事例(平成28年7月から同年12月まで及び平成29年5月から同年7月までの各月分の源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の各納税告知処分、平成29年1月から同年4月までの各月分の源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の各納税告知処分並びに不納付加算税の各賦課決定処分・全部取消し)
裁決事例集 第118集
ポイント
本事例は、財形貯蓄補助金メニューが含まれていることをもって、換金性のあるカフェテリアプランであることにはならないとしたものである。
要旨
原処分庁は、本件におけるカフェテリアプラン(本件プラン)には財形貯蓄補助金メニューが含まれており、本件プランは換金性のあるプランと認められ、本件プランにおける各経済的利益(本件各経済的利益)の全てが源泉所得税等の課税対象になるから、請求人の被合併法人であるA社には人間ドック等の補助に係る経済的利益について源泉徴収義務がある旨主張する。しかしながら、本件プランにおいて、①各使用人が本件各経済的利益として受ける額は、各使用人の職務上の地位や報酬額に比例して異なるものではなく、福利厚生費として社会通念上著しく多額であるとは認められず、②当該財形貯蓄補助金メニューは、各使用人のうち一定の期間内に財形貯蓄をした使用人に対してその補助として金銭が支給されるものであり、何ら要件なく各使用人に付与されたポイントを金銭に換えることを内容とするものとは認められず、③当該財形貯蓄補助金メニュー以外の各メニューについても、一定の要件を充足しなければ補助等を受けられないものであり、自由に品物を選択できるとか、何ら要件なく金銭や商品券等の支給を受けることを選択できることを内容とするものではなく、残ポイントがある場合に当該残ポイントに相当する金銭が支給されるものでもない。以上のことからすると、本件プランは、ポイントを現金に換えられるなど換金性のあるプランとは認められず、本件各経済的利益については、各使用人が選択した現に受ける補助等の内容に応じて、課税対象となるか判断することになる。したがって、A社には当該人間ドック等の補助に係る経済的利益について源泉徴収義務はないと認められる。
参照条文等
所得税法第28条第1項、第36条第1項、第183条第1項 所得税基本通達36-29、36-30 国税庁質疑応答事例「カフェテリアプランによるポイントの付与を受けた場合」
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