裁決事例 国税通則法関係
不服申立期間徒過を理由とした異議決定を取り消す旨の判決においてされた、送達が適法に行われたとは認められない旨の判断に必要な事実認定は、関係行政庁を拘束するとした事例
裁決事例集 第81集
要旨
原処分庁は、①異議決定を取り消す旨の本件高裁判決は、不服申立期間の起算日の認定に係る判断であり、本件決定処分等自体の効力を認定するための判断ではないから、本件決定処分等自体の効力について、原処分庁を拘束するものではない旨、②請求人がEを納税管理人に選任し、同人を納税管理人として認識していた旨、③本件決定処分等に係る通知書(本件通知書)の送達に瑕疵があるにしても、個人情報保護法に基づく本件決定処分等に係る決議書の開示請求により、請求人がその決議書の写しを入手した時点において、送達の趣旨、目的である納税者に処分の内容を了知させることはできており、当該瑕疵は治癒した旨主張する。
しかしながら、取消判決の拘束力の及ぶ範囲は、判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたるものと解されることから、本件高裁判決により、Eを請求人の納税管理人とみることはできず、請求人がEを納税管理人として認識していたと認められないという事実認定に拘束力が生じ、この事実認定を前提とするほかなく、社会通念上、Eの住所地に本件通知書が送達されることにより請求人が本件決定処分等の存在を了知し得たとは認められないから、平成18年9月22日にEの住所地に本件通知書が送達されたとしても、これをもって本件通知書が適法に請求人に送達されたということはできない。
したがって、原処分庁による上記①の主張については、本件決定処分等自体の効力を直接的に拘束するものではないとしても、行政処分の効力発生要件に関する事実認定については関係行政庁を拘束するものであること、上記②の主張については、本件高裁判決は、本件通知書送達当時において、請求人がEを納税管理人として認識していたと認めることもできない旨判断しているのであり、本件高裁判決の拘束力に抵触するものであることから、いずれも採用することができない。また、上記③の主張については、送達とは、国税に関する法律の規定に基づいて税務署長が発する書類の到達に関する方法であり、その告知そのものがなされていないときに、単に納税者が個人情報保護法に基づく権利行使により、処分の内容を了知したからといって、これによって告知としての送達の瑕疵が治癒したということもできないことから、その主張には理由がない。
参照条文等
ポイント
本事例は、国税通則法第74条の9《納税義務者に対する調査の事前通知等》の調査は税目と課税期間によって特定される納税義務に係る調査を一の調査とみるべきであることを明らかにしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人に対し、平成24年中に平成21~23年分の所得税の調査(当初調査)を開始しているところ、平成24年分の調査は、当初調査の対象年分に追加したものであるから、平成25年1月1日前から引き続き行われている調査に該当し、経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律の附則第39条《当該職員の質問検査等に関する経過措置》第3項の規定により、国税通則法第74条の9《納税義務者に対する調査の事前通知等》第1項の適用はない旨主張し、一方、請求人は、平成24年分の調査は、改正国税通則法施行後に開始されたものであり、同法第74条の9第1項の事前通知が必要であったにもかかわらず、調査担当職員は、電話で「平成24年分の調査を行います。」とのみ通知しただけで、その後においても、改正後の国税通則法に則って通知が行われていないことから、平成24年分の調査は必要な手続要件を満たしておらず、違法である旨主張する。
しかしながら、調査は、納税義務者について税目と課税期間によって特定される納税義務に関してなされるものであるから、当該納税義務に係る調査を一の調査とみるべきであり、請求人に対する平成24年分の調査は、独立した一の調査となり、平成25年1月1日前から引き続き行われている調査には該当せず、国税通則法第74条の9第1項の適用があると認められる。一方、調査担当職員は、調査の対象税目及び調査の対象期間に加えて、調査の開始時期、調査の場所、調査の目的及び調査の対象となる帳簿書類を請求人に対し通知していると認められ、請求人に対して平成24年分の所得税の調査を行う旨の通知しか行われていないとはいえない。そうすると、平成24年分の調査の事前通知については、国税通則法第74条の9第1項の適用があるところ、調査担当職員は、同条同項の規定に沿った事前通知を行っており、調査手続に違法とすべき点はない。
参照条文等
二次相続に係る本件更正処分は、一次相続に係る裁決における取消し理由と同じ理由で行なわれたものではなく、また、一次相続に係る処分とは別個の二次相続に係る処分であるから違法ではないとした事例
裁決事例集 第67集 115頁
要旨
国税通則法第102条第1項に規定する裁決の拘束力とは、取消し又は変更の裁決の実効性を保障するために認められるものであるから、その効力は、裁決の主文及び主文と不可分一体をなす理由について生ずるものであり、裁決で排斥された原処分の根拠以外の別個の理由があるときは、原処分庁は、当該裁決にかかわらず、当該別個の理由に基づいて再更正処分をすることができるものと解される。
本件において、請求人は、一次相続に係る再更正処分及び二次相続に係る本件更正処分は、裁決の拘束力を埒外とした違法な処分である旨主張する。
一次相続に係る裁決は、原処分庁における本件保証債務の額の認定誤りのほか、共同相続人間でその負担額が確定していないとして法定相続分に基づいて本件保証債務を負担すべきと判断し、一次相続に係る更正処分の一部を取り消したものであるところ、原処分庁は、当該裁決後において、さらに別の保証債務に係る金額を本件保証債務の金額に追加認定し、本件保証債務の金額の一次相続に係る共同相続人間の負担額は、実際の弁済額により確定したとする事実認定に基づき一次相続に係る再更正処分を行ったもので、これらは、一次相続に係る裁決で排斥された原処分の根拠以外の別個の理由であるといえるから、一次相続に係る再更正処分は違法ではない。
また、一次相続に係る再更正処分と二次相続に係る本件更正処分とは無関係なものではないが、当該再更正処分が違法な処分でなく、また、本件更正処分は一次相続に係るものではなく、二次相続に係る別個の処分であることは明らかであるから、本件更正処分は違法ではない。
要旨
更正通知書が、住民登録がされ、かつ、確定申告書に記載された住所に送達されることなく、これと異なる居所(マンション)に送達されたとしても、当該住所には送達時において、家屋から電力供給設備のすべてが撤去されているなど請求人の居住の事実が認められず、また、原処分庁の職員は、当該居所において請求人が居住している事実を当該マンションの管理人の答述により確認しているから、当該更正通知書は適法に送達されたものと認めるのが相当である。
共同審査請求に関する通知及び口頭意見陳述に関する連絡は、処分についての審査請求の適用除外に該当するとした事例(「口頭意見陳述の開催について」別紙「連絡事項」に記載の総代を解任する旨の行政処分及び「審査請求の総代として認められない旨のお知らせ」記載の行政処分・却下)
裁決事例集 第136集
ポイント
本事例は、共同審査請求に関する通知は、総代の権限を制限することを確定する行為であり、また、口頭意見陳述に関する連絡は、口頭で意見を述べる地位を与えないことを確定する行為であるから、いずれも処分に該当するものの、審査請求の適用除外によって不服申立てができない処分であるとしたものである。
要旨
請求人らは、請求人らに対して行われた各配当処分の取消しを求める各審査請求で、請求人の一人が他の一人を総代として選任していたところ、所轄庁が行った、①所轄庁が請求人の一人に送付した書面に記載された「総代を解任する旨の行政処分」及び②所轄庁から送付された口頭意見陳述の開催に関する書面に記載された総代としての出席は認められない旨の「行政処分」の取消しを求めて本件審査請求を行っている。
しかしながら、上記①については、請求人の一人の総代の権限を制限することを確定する行為であり、また、上記②については、請求人の一人に口頭で意見を述べる地位を与えないことを確定する行為であることから、いずれも国税通則法第75条《国税に関する処分についての不服申立て》に規定する「処分」に該当することとなるが、同法第8章第1節《不服審査》の規定による処分であって、同法第76条《適用除外》第1項の規定によって同法第75条第1項の適用が除外される処分に該当することから、不服申立てができないものである。
参照条文等
要旨
共同相続人の納付義務の承継割合は、民法に規定する相続分の割合によることとなっており、たとえ遺産分割の協議で特定の相続人のみに相続させることとしても、納付義務の承継割合には影響を及ぼさない。
要旨
異議申立てが不服申立期間を徒過してなされていることについて、請求人は、本件充当処分には重大かつ明白な瑕疵があって無効であり、無効な行政処分は時間が経過しても無効のまま瑕疵が治癒されないから、本件異議申立ては、不服申立期間の制限を受けない旨主張する。
しかしながら、国税通則法上の不服申立てにおいては、納税者が処分の無効を理由として課税処分や徴収処分の取消しを求めた場合であっても、同法の不服申立手続に則っていることが前提となるというべきであるから、同法第77条第1項に規定する不服申立期間を遵守せずにされた異議申立ては、原則として不適法であり、これが適法となるのは、同条第3項に規定する天災その他その不服申立期間内に不服申立てをしなかったことについてやむを得ない理由があり、かつ、その理由がやんだ日から7日以内に審査請求をした場合に限られる。
そうすると、不服申立期間を徒過してなされた本件異議申立ては、その期間内に異議申立てをしなかったことについてやむを得ない理由があるとは認められないから、不適法なものである。
原処分庁が行った第二次納税義務の納付告知処分時の滞納者の住所は、原処分庁が管轄区域とする住所ではないことから、原処分庁は徴収に係る処分をする権限を有しないとした事例
裁決事例集 第92集
要旨
原処分庁は、原処分庁が滞納者(本件滞納者)の滞納国税を徴収するために請求人に対して行った国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に規定する第二次納税義務の納付告知処分(本件納付告知処分)は適法である旨主張する。
しかしながら、国税通則法第43条《国税の徴収の所轄庁》第1項は、国税の徴収は、その徴収に係る処分の際におけるその国税の納税地を所轄する税務署長が行う旨規定しているところ、各証拠によれば、本件納付告知処分時における本件滞納者の住所は、原処分庁が管轄区域とする住所ではない。したがって、原処分庁は、本件滞納者についてその徴収に係る処分をする権限を有せず、権限を有しない原処分庁が行った本件納付告知処分は違法なものとして取り消されるべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和50年8月27日第二小法廷判決(民集29巻7号1226頁) 最高裁平成9年8月25日第二小法廷判決(集民184号1頁)
要旨
国税通則法第27条にいう当該職員の調査とは、特定の国税につき調査権限を与えられている職員の調査をいうのであり、現行制度上これに該当する職員としては、国税庁及び各国税局に置かれる国税調査官のみであるから、国税査察官の調査は、同条にいう「国税局の当該職員の調査」には該当しない。
要旨
請求人は、給料債権差押処分について不服申立て中であるにもかかわらず、それに続行する債権の取立て及び配当処分を強行したことは違法であると主張するが、国税通則法第105条第1項第1号の規定によれば滞納処分の手続の続行は、差し押さえた財産を換価する場合を除いては妨げられないとしており、この換価とは、公売、随意契約又は国による買入れにより差押財産を金銭化することであって、差押債権の取立て及び取り立てた金銭の配当は、上記法条の換価に当たらないと解されるから、原処分に違法はない。
要旨
原処分庁保管の文書発送に関する簿書等の記載は、国税通則法第12条第3項所定の要件を満たしており、同条第2項の規定に基づく到達の推定を履す特別な事情も存しなかったと認められるから、本件更正通知書は、請求人の住所に通常到達すべきであった時に送達があったものと推定され、その時において本件更正の効力が生じたものというべきである。
要旨
国税通則法第46条第2項の規定に基づく納税の猶予制度は、一定の事由により納付困難となった納税者を救済するものであるとしても、それは他の一般の納税者との租税負担の公平の実現の上において認められる納税者救済制度であるから、納税の猶予を申請した納税者が、他の一般の納税者からみても、納税の猶予を相当とする程度の状態にあることが必要であると解するのが相当であり、同項第4号が「著しい損失を受けたこと」と規定していることも併せ考えると、同項第5号に規定する「第4号に該当する事実に類する事実」について定めた猶予取扱要領の第2章第1節1の(3)のヘの(ハ)にいう「売上げの減少等」とは、その売上げの減少等が著しい状態にあることが必要と解される。
これを本件についてみると、原処分庁における審査過程において、請求人の妻は原処分庁に対し、平成17年1月から平成18年3月までの各月別の売上金額に関する資料を提出しているが、平成16年分の売上金額に関する資料は提出していないことから、原処分庁は、提出された資料では売上金額が前年より減少した事実を確認することができないので、同項第4号に類する事実がないと判断したものであり、その判断は当審判所においても相当と認められる。
また、請求人から当審判所に提出された資料によれば、売上金額は前年より増加しており、売上げが減少している事実が認められない以上、猶予取扱要領の第2章第1節1の(3)のヘの(ハ)にいう「売上げの減少等の影響を受けた」と認めることはできない。
要旨
国税通則法第65条第3項に規定する「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税についての更正があるべきことを予知してされたもの」の意義は、正当な権限を有する収税官吏の当該納税義務者又は徴収義務者に対する所得税、法人税その他直接税に関する実地又は呼出し等の具体的調査により、当該所得金額等に脱漏があることを発見された後になされた申告を指すものと解されるから、国税査察官による請求人の法人税法違反けん疑のための調査により当初申告の所得金額に脱漏が発見された後に提出された修正申告書はこれに該当するので、当該修正申告書による増差税額に重加算税を賦課決定した原処分は相当である。
国税通則法第70条第2項による法人税の純損失等の金額に係る更正は、納税者の有利なものか不利なものかにかかわらず、法定申告期限から7年を経過する日まですることができるとした事例
裁決事例集 第75集 147頁
要旨
請求人は、国税通則法第70条第1項が、法人税に係る更正について、法定申告期限から5年を経過した日以後においてはすることができない旨規定しているのは、法定申告期限から5年を経過した事業年度における税法上の過誤処理に起因して、租税債務が増加することはないという保証を納税者に付与するものであり、同条第2項の規定の適用にあたっても納税者の権益として保護されるべきであるから法人税の法定申告期限から5年を経過した日以後において、同条第2項第3号に規定する更正をすることができるのは、納税者有利になる場合に限られる旨主張する。
しかし、平成16年度税制改正により、国税通則法第70条第2項第3号が改正され、法人税の純損失等の金額に係る更正の期間制限が5年から7年に延長されたが、これは、法人税に係る欠損金の繰越期間が5年から7年に延長されたことに伴い、繰越期間内の欠損金額に誤りがあれば更正できるようにするために、法人税の純損失等の金額に係る更正の期間制限も5年から7年に延長することとされたものであり、その更正が納税者にとって有利になるか不利になるかにかかわらず、法定申告期限から7年を経過する日まですることができる。
要旨
国税還付金の振込通知は、既存の法律関係に基づく国税還付金の額を特定の金融機関に振り込んだ旨を知らせるものであって、直接請求人の権利義務に影響を及ぼす法律効果を生じさせるものではないから、国税通則法第75条第1項に規定する国税に関する法律に基づく処分には当たらない。
土地処分益計上の期ずれにより前年度分が減額更正、後年度分が増額更正となった場合、前年度分の過誤納金を後年度分の延滞税に充当したことは適法であるとした事例
裁決事例集 第41集 1頁
要旨
法人税法は、各事業年度ごとに確定する税額であるから、後年度分の本税の延滞税額について前年度分の過誤納金を充当したことは適法である。
要旨
地方税法附則第9条の10第3項及び同条第4項の規定によれば、還付金等の還付及び延滞税の納付の効果は、同条第3項の規定に該当する要件を充足することにより、法律上当然に生ずるものであって、税務署長が委託納付することにより生ずるものではない。換言すれば、委託納付は既に法律効果の生じている納付の事実を事務手続上明確にするための内部的処理にすぎないのであるから、所轄庁のなした本件委託納付を、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定する処分とみることはできない。
したがって、本件委託納付に対する審査請求は、国税通則法第75条1項に規定する国税に関する法律に基づく処分についての不服申立てということはできない。
要旨
建売業者に土地を譲渡するに当たり、当該業者と建物の工事請負契約書及び新築建物と土地を一括譲渡する売買契約書を取り交わし、これに基づいて租税特別措置法関係通達63(2)-4“新築した建物を土地等とともに一括譲渡した場合の対価の区分の特例”に定める142パーセント基準を適用して土地重課税の申告をした場合において、請求人が契約に係る建物を新築した事実は認められず、実際は土地だけの取引であること、請求人の代表取締役は土地重課制度の知識を有することから、本件建物に関する各契約書は、同通達に定める特例の適用を受けることによって土地重課税の一部を免れるため故意に作成されたものであると認めざるを得ず、本件建物に関する取引及び請求人の経理は、いずれも国税通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺい又は仮装に該当するものであり、重加算税を賦課決定したことは相当である。
要旨
国が滞納国税の徴収のために滞納者の第三債務者に対する債権を差し押さえた場合、国は、被差押債権の取立権を取得するが、第三債務者が任意にこれを履行しない限り、第三債務者に対しては訴えを提起するなどして債務名義を得た上で強制執行をするほかはなく、これに対し、第三債務者は、滞納者に対して有する一切の抗弁事由を主張して対抗することができ、また、自ら債務不存在の確認訴訟を提起してこれを防御することもできるので、第三債務者たる請求人は、本件差押処分によって滞納者に対する従来の地位よりも不利益に陥るわけではないから、弁済期の未到来又は債務の不存在を理由として本件差押処分の取消しを求める法律上の利益はない。
要旨
主債務者たる納税者の延納税額について最終納期限及び分納税額が従前と比較して有利に変更された場合には、変更前になされた主債務者に係る請求人の保証債務も、当然に、主債務と同様の内容をもって存続しているものというべきである。
要旨
国税通則法第38条第1項は、同項第1号に規定する納税者の財産につき強制換価手続が開始された場合において、納付すべき税額の確定した国税でその納期限までに完納されないと認められるものがあるときは、その納期限を繰り上げ、その納付を請求することができる旨を規定しているところ、原処分庁が、本件更正等により納付すべき税額等を請求人がその納期限までに完納することは、請求人の資力の状況等から困難であると認め、本件繰上請求処分を行ったことは、[1]請求人の所有不動産の一部について債権者の申立てにより裁判所が登記原因を競売手続開始とする強制競売申立ての登記をしていること、[2]裁判所は、原処分庁に対し請求人の所有不動産について競売開始を決定したことを原因として、租税債権の有無等の申出を認める催告をしていること、[3]請求人の所有資産にはすべて国税に優先する抵当権が設定されていることなどの各事実に照らし相当であり、手続上の違法は認められない。
所得税法第216条の納期の特例の承認を受けた者(納期の特例適用者)の納税告知に係る不納付加算税の計算の基礎となる税額は、その法定納期限までに納付されなかった税額、つまり、1月から6月まで及び7月から12月までの各期間に支払われた給与等に係る未納の源泉所得税額の合計額となるとした事例
裁決事例集 第53集 106頁
要旨
請求人は、納期の特例適用者であっても、各月の徴収税額を各期間の属する最終月の翌月10日ではなく、それぞれの月の翌月の10日に納付することもでき、各期間の属する最終月の翌月10日までに納付しない月があった場合には、各月ごとの未納源泉所得税額を基礎として不納付加算税額を計算すべきであるとし、請求人の不納付加算税額を各月の源泉所得税額を基礎として計算すると、各月の源泉所得税額は40,000円、不納付加算税の額は各月の源泉所得税額に不納付加算税の割合100分の10を乗じて計算した4,000円となり、同額は国税通則法第119条(国税の確定金額の端数計算等)第4項により全額が切り捨てられることになるので、本件不納付加算税の賦課決定処分は違法である旨主張する。
しかしながら、納税告知に係る不納付加算税の額は納税告知処分によって納税を告知された税額に100分の10の割合を乗じて算出されるのであって、このことは納期の特例適用者であっても異なるところはなく、納期の特例適用者について不納付加算税の計算の基礎となる税額の算定について異なる扱いをする旨定めた規定はなく、所得税法第216条(源泉徴収に係る所得税の納期の特例)は、同法第183条(源泉徴収義務)第1項に規定する法定納期限である徴収月の翌月の10日に代えて、1月から6月まで及び7月から12月までの各期間の属する最終月の翌月10日をもって法定納期限と規定したものであり、法定納期限として各月の翌月の10日を選択できることを意味するものではないと解される。本件端数計算規定は、税負担の公平に反しない限度において計算等の簡易化を図り、税務行政の能率化及び経済化に資しようというものにすぎないから、納期の特例の承認を受けているか否かで本件端数計算規定の適用を受けられるか否かに違いが生じることがあっても、そのことをもって公平さを欠くとまでは言い難く、納税告知処分に係る不納付加算税の額は納税告知処分によって納税を告知された税額に100分の10の割合を乗じて算出すべきであるとした原処分は相当である。
要旨
給与所得者であった請求人は、年の中途において退職し、その後その年の12月末までに所得がない場合には、退職前の請求人の扶養親族を請求人及び他の納税者のそれぞれの扶養親族としても違法ではないと信じて確定申告書を提出したものであり、扶養控除の額を過大に申告し、不正に所得税額の還付を受ける意思は全くなかったこと、つまり、確定申告書の提出に当たり請求人が所得税法の規定を知らなかったこと、また、原処分庁が請求人に対しその説明をしなかったことをもって、国税通則法第65条第2項に規定する正当な理由となり得ないことは明らかであるから、扶養控除額の減額に基づく修正申告に係る納付すべき所得税額に対して過少申告加算税を賦課決定した原処分は相当である。
要旨
国税通則法第65条第3項に規定する「更正があるべきことを予知して」とは、課税庁が当該納税申告書に疑惑を抱き、調査の必要を認めて、現実に納税者に対する質問、帳簿調査等の実地調査又は呼出調査等により当該申告が適正でないことを把握するに至ったことを前提として、納税者が修正申告書を提出する時点で更正のあることを察知していたことを指すものと解すべきであるところ、本件においては、原処分庁の調査担当者が電話で調査日時の取決めをした日後2日を経過して修正申告書の提出があり、更に2日を経過した後に調査があった事実などからみて、請求人は、本件修正申告書を提出する時点で、原処分庁がその調査によって請求人の当初の申告が適正でないことを既に把握していたことを察知していたと認めることはできないから、本件修正申告は、国税通則法第65条第3項に規定する「更正があるべきことを予知して」なされた申告ではない。
要旨
延滞税の額は、国税通則法第15条第3項第8号の定めるところにより、納税義務の成立と同時に特別の手続を要しないで確定するものであるから、請求人が督促状により、延滞税を納付すべきことを初めて知ったとしても、そのことは延滞税の納税義務の成立及び納付すべき税額の確定には何らの影響を及ぼすものではない。
また、本件更正は、通常必要と思われる調査の所要日数等から考えても特に遅延しているとも認められない。
要旨
請求人は、更正通知書の相続税の総額の計算明細に係る3年以内の贈与加算額の更正額に更正前の金額と同額を記載するという誤記があることから、更正を取り消すべきであると主張するが、本件更正通知書の、[1]納付税額の計算明細に係る課税価格及び納付税額の更正額は、正当な額が記載されていること、[2]相続税の総額の計算明細に係る課税価格の合計額及び相続税の総額の更正額は、正当な額が記載されていること、[3]農業投資価格に基づく相続税の総額の計算明細に係る3年以内の贈与加算額の更正額は、本件贈与加算額に対応するものであるところ、その金額は正当な額が記載されていること等から判断すると、本件更正通知書の誤記は、更正の手続上軽微なかしにとどまり、処分の効力に影響がないと認めるのが相当である。
要旨
受遺者の一人が遺贈の一部を放棄したことによって、相続人たる請求人が相続財産を取得し、相続税の申告書を提出した場合には、その申告書に記載された相続税の課税価格のうち、受遺者が遺贈の一部を放棄したことによって初めて取得したと認められる部分については、相続税法第30条に規定する期限後申告書の性格を有しているものと認めるのが相当であり、請求人には当該部分を申告期限内に申告すべき義務はなかったというべきであるから、期限内申告書の提出がなかったことについて国税通則法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由があると認められる場合に該当する。
要旨
外部から認識することのできる面接調査等が行われておらず、申告案内書及び申告書用紙の送付を受けたにとどまる請求人の期限後申告書の提出は、「調査があった」ことにより決定があることを予知してなされたものであるとすることはできない。
要旨
相続税に係る重加算税賦課決定通知書が、受領能力のない相続人たる未成年者にあてて送達されたとしても、国税通則法が通知書を納税者に送達するとした目的は、納税者に処分の内容を知らしめ、不服申立ての機会を与えることにあるから、その法定代理人である親権者が未成年者と同居して通知書を受領し、内容を了知し得る状態におかれていれば、その送達は有効である。
要旨
棚卸資産に計上漏れとなった土地は、決算直前に請求人が購入者の希望により、1区画を2つの区画に分割して売買契約をした残りの一方の土地である。しかし、現場責任者から経理担当者に渡された現場見取図が不完全である等のため、経理担当者が、売買契約された一方の土地を旧区画の全部と誤認したため他の一方が計上漏れとなったものであり、本件土地は税務調査前において翌事業年度の売上げに計上されているものであるから、その計上漏れを仮装又は隠ぺいによるものであるとして重加算税を賦課決定したことは相当でない。
要旨
差押処分を行うに当たって、滞納者が一部でも納付の意思を表示すれば差押処分ができなくなる旨や滞納者の了解を得なければならない旨を定めた法令の規定はない。
また、徴収担当職員は、過去から再三にわたり納付指導及び取引先への売掛債権の差押処分を行う旨の予告を行っており、本件滞納国税の一部を請求人が納付したとしても、残額の早期完納が見込まれる具体的な納付計画もないから、本件滞納国税の早期完納が実行されないと認められ、本件差押処分を行ったものである。
したがって、原処分庁が国税徴収法第47条第1項第1号の規定に基づいて本件差押処分を行ったことは、請求人が民事再生中といえども本件滞納国税を徴収するために必要なものであり、原処分庁の本件差押処分をもって職権濫用とは認められない。
要旨
請求人に係る法人税法犯則事件判決は、検察官が修正申告と同額で主張、立証した課税標準に対して判断がなされたものであるから、国税通則法第23条第2項第1号にいう「判決」に該当し、同項に規定する「次の各号の一に該当する場合」に当たるとの請求人の主張について、同判決は、法人税法違反被告事件に対する刑事判決であって、課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについてなされたものではなく、また、課税権の存否、範囲を確定する効力を有するものでもないので、同判決の理由で示された事実の認定が請求人が主張するような事情の下でなされたかどうかを判断するまでもなく、同項第1号にいう「判決」には該当しない。
要旨
積雪寒冷地においては、冬季の天候不順による航空機の遅延・欠航等は通常発生し得るものであり、少なくとも週に一度以上航空機を利用する請求人にとっては、このことを考慮して、あらかじめ法定納期限内に納付できるよう必要な措置を家族ないし事務所員に指示しておくことは、社会通念上当然のことと認められるから、請求人が航空機の遅延によって源泉所得税を法定納期限までに納付できなかったことについては、国税通則法第67条第1項に規定する正当な理由がある場合に当たらない。
要旨
請求人は、清算結了登記が行われ法人格が消滅した後にされた税務調査及び更正処分等は、責任を持って対応できる者がおらず調査自体に問題があり、更正処分等は無効である旨主張する。
しかしながら、会社法第476条《清算株式会社の能力》の規定により、清算をする株式会社(清算株式会社)に、課されるべき国税又は納付すべき国税債務などの租税債務が存在する場合は、清算事務は未だ終了しておらず、清算株式会社は清算の目的の範囲内においてなお存続し、その法人格は消滅しないというべきである。そして、請求人には、清算結了登記後においても、課されるべき国税又は納付すべき国税債務などの租税債務等が存在するので、清算の目的の範囲内において請求人はなお存続し、法人格は消滅していないと認めるのが相当である。また、清算事務が終了していない以上清算人の職務も完了していないと認められること、清算人には清算結了登記の時から10年間は清算株式会社の帳簿・書類を保存する義務があること及び清算人は代表清算人として登記されていることから請求人の清算人は請求人の税務調査について責任を持って対応できる者であると認められる。
したがって、更正処分時において請求人の法人格は消滅していたとは認められず、また、原処分庁は、請求人の清算人に対して質問検査権を行使して調査を行った上で本件更正処分等を行っていることから、本件更正処分等は無効であるとは認められない。
参照条文等
要旨
源泉徴収に係る所得税の不納付について、請求人は、ストリップショウの出演料について源泉徴収の必要はないとの税理士の説明をいったん信じたが、その後、同税理士独自の法解釈について疑義が生じたので、「ストリップショウの出演者に対する支払報酬、料金が所得税法第204条第1項第5号に規定する報酬、料金に該当するかどうかの取扱いが所轄税務署により異なることについて」なる上申書を原処分庁に提出していること等から、国税通則法第67条第1項に規定する正当な理由があると認められるので、本件不納付加算税の賦課決定は、これを取り消すのが相当である。
要旨
請求人は、形式的審査義務のみを負う源泉徴収義務者において、年末調整における従業員の住宅借入金等特別税額控除額(本件控除額)が過大となったことに気づくことは極めて困難であり、源泉徴収義務者の責めに帰すべき事由がないから、平成23年12月分の源泉所得税の不足額を法定納期限後に自主納付(本件自主納付)したことは国税通則法第67条《不納付加算税》第1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当し、平成24年7月分の源泉所得税の期限後納付について国税通則法第67条第3項が適用される旨主張する。
しかしながら、源泉徴収義務者として従業員から提出された事項に関して通常程度の注意ないし確認等を行いさえすれば適切に本件控除額の計算を行うことができたと認められるから、本件控除額が過大になったことについて、請求人の責めに帰すべき事由があるというべきであり、「正当な理由があると認められる場合」には該当しない。そうすると、本件自主納付は、国税通則法施行令第27条の2《期限内申告書を提出する意思等があったと認められる場合》第2項に規定する場合に該当せず、平成24年7月分の源泉所得税の期限後納付について、国税通則法第67条第3項の規定は適用されない。
参照条文等
要旨
原処分庁は、請求人が法定納期限を徒過して源泉所得税等を納付したことについて、当該納付は調査担当職員が実地調査の日程調整を依頼した際に行った源泉徴収義務の存否に関する発言(本件発言)を起因としたものであり、その後の調査が進行すれば告知に至るであろうことを予知して行ったものであるから、国税通則法第67条《不納付加算税》第2項に規定する「当該国税についての調査があったことにより当該告知があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当しない旨主張する。
しかしながら、当該規定の適用に係る判断に当たっては、調査の内容・進捗状況、それに関する納税者の認識、納付に至る経緯、納付と調査の内容との関連性等の事情を総合考慮して判断するのが相当であるところ、調査担当職員が署内調査を行い、実地調査の日程調整を依頼した時点では、その後の調査の進行により、やがて納税の告知に至る可能性が高い状況にあったといえるものの、本件発言からは、具体的な取引内容や調査対象期間も示されず、そのため、請求人は署内調査の内容・進捗状況を具体的に認識していないと認められ、さらに、請求人が当該納付を自主的に行ったと認められるから、当該納付と署内調査との関連性も乏しいと言わざるを得ない。したがって、当該納付は、同項に規定する「当該国税についての調査があったことにより当該国税について当該告知があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当する。
参照条文等
源泉所得税等還付金を相続税延納分の未納利子税額に充当した後に、所得税の修正申告により納付すべき税額が生じても、当該納付すべき税額が納期限までに納付されなかったことにより行った本件督促が違法となるものではないとした事例
裁決事例集 第49集 1頁
要旨
請求人は、源泉所得税等還付金は、修正申告により納付すべき所得税の一部に充当されるべきことは法令上も当然に予定されているのであり、請求人に他の租税債務があったとしても、これに充当することは許されない旨主張する。源泉所得税等還付金が発生した場合には、その年分の未納の所得税で修正申告書の提出により納付すべきものがあるときは、その他の未納の国税に優先して充当するものであるところ、請求人には、源泉所得税等還付金の発生時にこれらの事実はなく、原処分庁は、その他の未納の国税である相続税延納分の未納利子税額に充当したことが認められる。そうすると、当該充当の後に所得税の修正申告があっても、充当が違法となるものではなく、所得税の修正申告により納付すべき税額が納期限までに納付されなかったことにより行った本件督促は適法である。
要旨
請求人は、無申告加算税の賦課決定に当たって国税通則法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由に該当するかどうかの調査が行われていないと主張するが、同項ただし書の規定は、期限内に申告書の提出がなかったにもかかわらず無申告加算税を課さない例外的規定であるから、無申告加算税の賦課決定に当たって正当な理由の存否の調査は要しないと解される。
要旨
請求人は、信用保証協会からの債務免除益につき、同協会が代位弁済した日の翌日以後の損害金は仮計算によって算出されたものであるから、債務免除益に該当しない旨主張する。(請求人は、この免除損害金を雑収入としたところで、確定申告を行なっていた。)
しかしながら、損害金は本件委託契約書第6条(求償権の範囲)に基づいて計算され、かつ、残高通知書に損害金残高として記載されて請求人に通知され、請求人は、各事業年度の決算に当たり、残高通知書の総求償権残高により借入金を計上し、また、損害金を支払割引料として損益計算書に計上していたと認められる。そして、一般に、債務の免除は、債務者の意思にかかわりなく、債権者の債務者に対する一方的な意思表示によってなされるものであり、当該意思表示が相手方に到達したときに効力を生ずるものであるから、信用保証協会が損害金残高から本件土地の譲渡代金のうち元金の弁済に充てた後の残高を控除した金額を減免額として請求人に通知し、これを請求人において受領した以上、この部分は債務免除益となるものである。
要旨
原処分庁の申告指導により、昭和52年分の分離短期譲渡所得の金額について、譲渡資産の取得に要した借入金の利子を取得費に算入しないで確定申告をしたところ、その後の通達の改正により当該借入金利子は取得費に算入することに変更されたことに伴い、当該確定申告は過誤のあるものとなったが、その過誤につき請求人に何らの過失はなく、したがって、本件更正の請求は国税通則法第23条第2項の規定に基づく適法なものであるとすべきであり、仮に、当該更正の請求が期限後によるもので不適法であるとしても、原処分庁には申告の過誤を是正すべき職責があり、これをしないのは違法又は不当である旨の主張について、請求人の主張するような抽象的な基準の変更等の場合は、同項各号に規定するいずれの事由にも該当しないものと解されるから、当該更正の請求は不適法というべく、また、職権による更正を求めることは請求人の権利ではなく、これに応じない場合であってもそれが著しく正義公平に反するものでなければ、その不作為をもって直ちに違法とすることはできないものと解すべきであり、原処分庁が行った申告指導は、その当時においては、その解釈、取扱いは多数の判例によって支持されていたところであり、また、その後の改正による通達も、「今後処理するものからこれによることとする。」と定めており、それ以前の解釈、取扱いについては、それなりに正当なものであるとして肯定しているところであるから、原処分庁が職権による更正をしないとしても著しく正義公平に反する場合に該当せず、違法又は不当ではない。
要旨
請求人が、固定資産の取得に係る固定資産税精算金を損金の額に算入して申告したところ、原処分庁は、同精算金は取得した固定資産の取得価額に算入すべきものであり、損金算入できないとして更正処分を行った。これに対して、請求人は、当該申告に際して本来損金算入できる登録免許税及び不動産取得税を固定資産の取得価額に算入したことは会計処理の選択誤りであったとして、当該登録免許税等の額のうち更正処分の額について損金算入を求める更正の請求をしたものである。
しかしながら、請求人は、登録免許税等を固定資産の取得価額に算入することを確定申告において選択しており、当該会計処理に誤りはなかったというべきであり、さらに、請求人が主張する会計処理の選択誤りは、国税通則法第23条第1項第1号により更正の請求が認められる場合に当たらないことは明らかであるから、いずれにしても請求人の主張には理由がないことになるから、当該更正の請求に対する更正すべき理由がない旨の通知処分は適法である。
要旨
請求人の代理人が相続を原因とする所有権の移転登記に係る登録免許税を不動産所得の金額の計算上必要経費に算入して申告をしたことについては、当該代理人が他の納税者の代理人として本件と同じく必要経費に算入することを求めた更正の請求に対して、原処分庁がそれを認めた更正をしたこと及び必要経費に算入した申告について是正がなされていないことから、登録免許税を必要経費に算入することが正当なものと信じてなしたことが認められ、このような事情の下にあっては国税通則法第65条第2項に規定する正当な理由があったものというべきである。
要旨
請求人が他の相続人との間で共有持分確認請求訴訟の維持に追われていたために申告書の提出が期限内にできなかったこと及び原処分庁が申告期限までの間に申告手続についての連絡をしなかったことは、国税通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由がある場合」には当たらない。
相続財産の一部について、相続人がその存在を認識しながら申告しなかったとしても、重加算税の賦課要件は満たさないとした事例(平成27年4月相続開始に係る相続税の重加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第117集
要旨
原処分庁は、請求人の亡母(本件相続人)が、当初申告において計上していなかった相続財産の一部である被相続人名義の預金(本件預金)について、その存在を知りながら関与税理士に伝えなかったことは、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する隠ぺい又は仮装の行為に当たる旨主張する。
しかしながら、本件相続人が本件預金の存在を関与税理士に伝えなかったことは認められるものの、本件相続人が本件預金を相続財産であることを認識した上で、あえて関与税理士に本件預金の存在を伝えなかったとまで認めることはできず、また、本件相続人は、本件預金を原処分庁が容易に把握し得ないような他の金融機関や本件相続人名義以外の口座などに入金したのではなく、本件預金の口座と同じ金融機関の本件相続人名義の口座に入金し、調査日現在においても当該口座を解約していなかったことからすると、原処分庁をしてその発見を困難ならしめるような意図や行動をしているとは認められないから、本件預金を故意に当初申告の対象から除外したものとまでは認め難い。したがって、本件相続人が、相続税を当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたものと認めることはできないから、国税通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装の行為に当たるとは認められない。
参照条文等
参考判決・裁決
要旨
督促についての異議申立ては、当該処分後に納税地の異動があった場合においても、当該督促をした税務署長に対してしなければならず、当該税務署長に対してなされていない本件異議申立ては不適法であるから、本件審査請求も不適法である。
要旨
請求人が貸付先に対して利子を支払った事実を秘匿するように要求し、また、受領した利子の一部を架空名義預金口座に預け入れている事実があり、かつ、これら利子の収入を所得税の確定申告書に記載していない以上、偽りその他不正の行為によって、一部の税額を免れようとしたものと認められるので、更正の期間制限を5年(現行7年)とするのが相当であり、また免れようとした税額に対し重加算税を賦課決定したことも相当である。
要旨
税理士の使用人が、独断で、事業所得の計算の基礎となる収入金額を圧縮したところにより決算書及び確定申告書を作成、提出したものであり、請求人本人は当該使用人からその内容説明を受けず、また、収入金額を記帳した帳簿との対査等も行っておらず、当該申告が所得金額を過少に申告したものであることを知らなかったから、請求人には仮装又は隠ぺいの意図がなかった上、そのような行為もしていない旨主張するが、その主張が信用できない状況では、請求人と申告書作成等の受任者との間にいかなる事情が存したにせよ、また、このことについて受任者がどこまで関与したかにかかわらず、請求人本人が記帳し、保存している帳簿に基づく収入金額を不正に操作し、これによって所得金額を過少に表示した決算書及び確定申告書を作成し、請求人が押印して最終的に完成させた上、提出したことは、国税の課税標準の計算の基礎となる事実の一部を隠ぺい又は仮装したところに基づいて納税申告書を提出したことに該当する。
要旨
請求人は粉飾決算を行い所得金額を過大に申告していたとして除斥期間の5年を超える事業年度の確定申告額の減額更正をすべき旨主張するが、国税通則法第70条第2項の規定により、法定申告期限から5年を経過した以後においては更正をすることはできないのであり、また、同法第71条の規定は裁決等による原処分の異動に伴い、対象となった年分以外の年分等について更正決定すべきときなどの特例であって、本件の場合はこれらに該当しないから同条の規定を適用することはできない。
要旨
繰越控除の対象となる青色欠損金額は各事業年度の欠損金額であって、誤って記載された申告書別表一(一)の翌期繰越欠損金欄の金額を基に控除することはできないとした事例
裁決事例集 第63集 1頁
要旨
請求人は、法人税申告書別表一(一)の翌期繰越欠損金欄の記載金額そのものが更正処分の対象となる純損失等の金額であるから、たとえ、誤って記載された金額であっても、それが更正されていなければ、翌期繰越欠損金として確定し、翌期以降の事業年度において、前期から繰り越された欠損金額として控除できる旨主張する。
しかしながら、更正の対象となる純損失等の金額とは、法人税の場合、その事業年度以前の法人税申告書別表一(一)の欠損金額欄に記載された金額のうち、法人税法の規定により、翌事業年度以後の事業年度分の所得の計算上順次繰り越して控除できる金額であり、その金額は翌期繰越欠損金欄の記載金額に影響されるものではないから、誤って記載された金額を基に控除することはできず、請求人の主張には理由がない。
なお、法人税法57条によれば、繰越控除の対象となる青色欠損金額を法人税申告書に記載することは、その適用要件とされておらず、当該金額は各事業年度の正当な欠損金額を基として算定されるものであり、翌期繰越欠損金欄の記載は以後の所得計算の便宜のものにすぎないと認められる。
要旨
過年度の益金の額に算入した受取利息のうち、制限超過利息を本件調停により残存元本に充当したことに伴い受取利息の額を減額したことが、国税通則法第23条第2項第1号に規定する更正の請求ができる後発的事由に該当する旨の主張について、同項の規定は国税一般についての更正の請求の手続を一般的に定めたものであり、同項各号の一に該当することを理由として更正の請求がなされた場合には、個々の税法の課税要件の実体規定に基づいて課税標準等の変動をどのように取り扱うことが法律の規定に合致するか、その内容をよく吟味して判断すべきであるところ、現行の法人税法は、期間損益課税を建前とし、同法第22条第4項の規定により、一般に公正妥当な会計処理の基準に従って各事業年度の所得の金額の計算をするものとされ、後発的事由が生じた場合には、その事由の発生した事業年度の特別損失として「前期損益修正」の項目で会計処理をすることになり、一般にこの処理が定着しているものとみられるから、このような会計慣行を前提とする法人税法においては、後発的事由が生じたとしても、過年度にさかのぼって所得の金額を修正すべきではないと解するのが相当である。
調査結果の説明に瑕疵があったとしても、原処分の取消事由とはならないとした事例(平成22年9月相続開始に係る相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・棄却、却下)
裁決事例集 第99集
ポイント
本事例は、証拠収集手続に影響を及ぼさない手続の違法は課税処分の取消事由とはならないものと解されるから、国税通則法第74条の11《調査の終了の際の手続》の調査結果の説明に瑕疵があったとしても、原処分の取消事由とはならないことを明らかにしたものである。
要旨
請求人らは、本件相続に係る相続税の調査(本件調査)には、国税通則法(通則法)第74条の9《納税義務者に対する調査の事前通知等》第1項に規定された事前通知及び通則法第74条の11《調査の終了の際の手続》第2項に規定された調査結果の説明がいずれもなされていない違法があるから、原処分は取り消されるべきである旨主張する。
しかしながら、まず、本件において、通則法第74条の9第1項所定の事前通知は、本件調査の担当職員の答述及びこれを裏付ける原処分関係資料によれば、当該職員によって適法になされているものと認められることから、この点に関する請求人の主張には理由がない。次に、調査の手続の違法が課税処分の取消事由となるのは、課税処分の基礎となる調査を全く欠く場合のほか、課税処分の基礎となる証拠資料の収集手続(証拠収集手続)に重大な違法があって調査を全く欠くのに等しいとの評価を受ける場合に限られ、他方、証拠収集手続に影響を及ぼさない他の手続の違法は課税処分の取消事由とはならないものと解されるから、証拠収集手続に違法があるとは認められない本件においては、証拠収集手続に影響を及ぼさない手続である調査結果の説明に瑕疵があったとしても、原処分の取消事由とはなり得ないものというべきである。したがって、この点に関する請求人の主張にも理由がない。
参照条文等
請求人が原処分庁からの指摘に従い修正申告をしたところ、原処分庁が過少申告加算税の賦課決定処分をしたことについて、確定申告書を提出した際に、原処分庁が行政指導を行わずに過少申告加算税を賦課したことは不当ではないとした事例(令和4年10月1日から令和5年9月30日までの課税期間の消費税及び地方消費税に係る過少申告加算税賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第136集
ポイント
本事例は、原処分庁が行政指導を行わずに調査を行い、過少申告加算税の賦課決定処分をしたことにつき、過少申告加算税の賦課決定やその額の計算について、原処分庁に裁量権が付与されたものとは解されず、本件賦課決定処分について処分の不当性を検討する前提が欠けるから、本件賦課決定処分は不当ではないとしたものである。
要旨
請求人は、原処分庁が行政指導を行わずに調査を行い、過少申告加算税の賦課決定処分(本件賦課決定処分)をしたことは不当である旨主張する。しかしながら、処分の不当とは、処分を行うにつき法の規定から処分行政庁に裁量権が付与されていることを要するものと解されるところ、国税通則法第65条《過少申告加算税》第1項及び第2項は、過少申告加算税の賦課決定やその額の計算について、原処分庁に裁量権が付与されたものとは解されず、本件賦課決定処分について処分の不当性を検討する前提が欠けるから、本件賦課決定処分は不当ではない。
また、請求人は、仮に原処分庁が行政指導を行わずに本件賦課決定処分をしたことが不当ではなかったとしても、課税売上高に変動がなく、仕入税額控除の計算方式を本則課税制度から簡易課税制度へと変更するのみの修正申告で、納付すべき税額が調査を開始する前から確定しているような場合には、過少申告による納税義務違反に該当しないから、過少申告加算税に同項により計算した金額(加重分)が加算されることは不当である旨主張する。
しかしながら、過少申告加算税は、過少申告による納税義務違反の事実があれば、原則としてその違反者に対して課されるものであり、加重分は、同条第1項の規定に該当する場合において、修正申告による納付すべき税額が期限内申告税額に相当する金額と50万円とのいずれか多い金額を超えるときに一律に課され、加重分のみが不適用となる場合の規定は存在しないところ、修正申告書を提出したことにより、新たに納付すべき税額が生じたのであるから、請求人には過少申告による納税義務違反の事実があったと認められ、そして、当該新たに納付すべき税額は期限内申告税額に相当する金額を超えるから、加重分を加算した過少申告加算税が賦課されることは不当ではない。
参照条文等
国税通則法第65条第1項、第2項、第5項、第74条の14 行政手続法第3条第1項第6号、第14号、第15号、第16号、第4条第1項、第32条ないし第36条の2
参考判決・裁決
東京地裁平成19年11月16日判決(税資257号順号10825)
要旨
所得税の申告等の期限の延長は、国税通則法第11条及び同法施行令第3条により、災害その他やむを得ない理由が生じた場合に認められるものであり、ここでいう災害その他やむを得ない理由とは、自然的災害、人為的災害、交通途絶等客観的にみてその申告ができないような状態をいうものと解されるところ、請求人の主張する、未分割の相続財産を売却したため売却年分の所得税の法定申告期限までに請求人に帰属すべき収入金額が確定しなかったというような、いわば主観的な理由はこれに当たらない。
請求人は、特定株式の移転の日において、K国の居住者であり、当該特定株式の移転に係るみなし譲渡益は、日本国政府とK国政府との租税協定の規定により、K国に課税権があるとし所得税の更正の請求をしたのに対し、原処分庁がした更正をすべき理由はないとの通知処分は適法であるとした事例(所得税及び復興特別所得税の更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分・棄却)
裁決事例集 第108集
ポイント
本事例は、特定株式の移転に係るみなし譲渡益のうち、請求人が日本国の居住者であったときに、新株予約権を行使したことにより生じた権利行使益については、日本国政府とK国政府との租税協定による制限を受けず、国内法の規定により、国内源泉所得として課税を受けることとなると判断したものである。
要旨
請求人は、新株予約権の行使により取得した株式に係る租税特別措置法第29条の2《特定の取締役等が受ける新株予約権等の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等》第4項の規定により譲渡とみなされるもの(本件みなし譲渡)のうち、同条第1項に規定する経済的利益(本件権利行使益)については、本件みなし譲渡の全てが株式の保有によって生じた値上がり益、すなわち株式譲渡益と考えるのが相当であり、また、請求人は同条第4項に規定する特定株式の移転の日においてK国の居住者であるから、本件権利行使益は、日本国政府とK国政府との租税協定(本件協定)の規定が適用され、K国に課税権がある旨主張する。
しかしながら、本件みなし譲渡に係る譲渡所得は、所得税法第161条《国内源泉所得》第1号に規定する資産の譲渡により生ずる国内源泉所得であるから、租税特別措置法第37条の12《恒久的施設を有しない非居住者の株式等の譲渡に係る国内源泉所得に対する課税の特例》第1項の規定により、その全体について15%の税率を適用して分離課税の対象になるところ、この国内法上の課税関係が本件協定上受ける制限についてみると、本件みなし譲渡に係る譲渡所得のうち本件権利行使益は、請求人が内国法人であるF社から付与を受けた新株予約権を日本国の居住者である時に行使することにより生じたものであるから、本件権利行使益に係る日本国の課税権については、本件協定による制限を受けないことになり、同項に基づいて15%の税率で分離課税の対象となる。したがって、本件権利行使益については、国内法の規定により、国内源泉所得として日本国で課税を受けることになる。
要旨
昭和49年に行われた本件宅地の贈与は、受贈者が贈与者である養父と同居して扶養することを条件とし、かつ、その同居及び扶養をしなくなったときは、その贈与はいつでも解除することができるという解除権留保付きの贈与契約に基づいてなされたものであったところ、請求人がその同居及び扶養をしなくなったことから、当該契約に基づいて昭和59年に当該贈与契約が解除され、本件宅地は養父の相続人に返還されたものであるから、その解除を理由としてなされた贈与税の更正の請求には、国税通則法第23条第2項第3号に定めるやむを得ない理由がある。
過去5年以内に国税通則法第66条第6項の適用を受けていることを知らなかったとしても、同項に規定する「期限内申告書を提出する意思があつたと認められる場合」には該当しないとした事例
裁決事例集 第79集
要旨
請求人は、平成18年分の所得税の確定申告書の提出について国税通則法第66条第6項の規定が適用され、無申告加算税が課されなかったことを知らなかったから、平成20年分の所得税の確定申告書の提出について、「期限内申告書を提出する意思があつたと認められる場合」に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人は、平成20年分の所得税の確定申告書が提出された日(平成21年3月18日)の前日から起算して5年前の日(平成16年3月18日)までの間において、平成18年分の所得税の確定申告書に係る所得税について国税通則法第66条第6項の規定の適用を受けているから、平成20年分の所得税の確定申告書の提出について国税通則法第66条第6項に規定する「期限内申告書を提出する意思があつたと認められる場合」には該当せず、同項の規定は適用されない。
また、「期限内申告書を提出する意思があつたと認められる場合」に該当するかどうかは、国税通則法施行令第27条の2第1項の各要件を満たすかどうかによって決せられ、請求人が平成18年分の所得税の確定申告書の提出について国税通則法第66条第6項の規定が適用されていた事実を知っていたか否かはその判断を左右するものではない。
参照条文等
要旨
租税特別措置法(平成3年法律第16号の改正前のものをいい、以下「措置法」という。)第70条の6第1項の特例の規定の適用を受ける農業相続人の納付すべき税額は、措置法第70条の6第2項第2号の規定により、[1]農業相続人の納税猶予税額及び[2]農業相続人の申告期限までに納付すべき税額の合計額とされている。
そうすると、本件の場合の過少申告加算税を課する税額は、上記[1]、[2]の税額の合計額となる。
要旨
国税通則法第72条第3項において準用されている民法上の時効の中断事由となる裁判上の請求には、債務者が提起した債務不存在確認訴訟において債権者が自己の債権を主張して応訴する行為も含まれるものと解されているところ、本件過少申告加算税の基因となった相続税の更正の取消訴訟においては、本件加算税も争われ、これについて原処分庁も応訴し、当該訴訟が現在裁判所において審理中であることは明らかであるから、本件加算税についての徴収権の消滅時効は中断すると解するのが相当である。
要旨
法定申告期限前に提出された還付申告書に係る更正の請求については、法定申告期限前に提出された還付申告書以外の納税申告書に係る更正の請求の取扱い並びに国税通則法施行令第25条“延滞税の計算期間の起算日の特例”第3号及び第29条“還付金に係る決定等の期間制限の起算日”の各規定における還付申告書の取扱いとの均衡からみて、還付申告書以外の納税申告書の場合と同様に、法定申告期限から1年以内はこれを行うことができるものと解するのが相当である。
還付金の還付は公的見解の表示に当たらないから、本則課税による確定申告に係る還付金の還付後、簡易課税によるべきであるとした本件更正処分は信義誠実の原則に反せず、また、同申告に正当な理由があるということはできないとした事例
裁決事例集 第64集 17頁
要旨
請求人は、関与税理士の事務員が、請求人の消費税の申告方式について原処分庁に確認したところ、原処分庁の職員は本則課税である旨回答し、また、平成8年課税期間から平成11年課税期間の本則課税による確定申告が受理され、平成8年課税期間及び平成10年課税期間については、申告書に記載された還付金が還付されているなど、請求人の消費税の申告方式につき、原処分庁が本則課税であるとの公的見解を表示していたものであるから、本件更正処分は信義誠実の原則に反し、また、平成10年課税期間に係る申告(本件申告)には国税通則法第65条第4項所定の「正当な理由」がある旨主張する。
しかしながら、原処分庁が請求人に対してその主張するような回答を行ったことは認められず、還付金の還付についても、消費税の申告方式が簡易課税であることを看過してなされたものであり、それをもって、当該申告書の記載内容が適正であるとの公的見解の表示ということはできないため、本件更正処分は信義誠実の原則に反しない。
また、請求人は、平成元年課税期間から平成3年課税期間まで簡易課税を適用した確定申告書を提出しており、消費税の申告方式を十分熟知していたと推定され、そして、請求人の関与税理士の交代に際し、消費税の申告方式についての確認がされていないことなどからすると、請求人は、平成8年課税期間につき本則課税として申告し、消費税が還付されたことから、直ちにその申告方式が適正と認められたものと誤解し、平成9年課税期間以降も申告方式を誤ったまま申告したものと認めるのが相当であるため、本件申告に国税通則法第65条第4項所定の「正当な理由」があるとは認められない。
要旨
国税通則法第77条第2項において審査請求をすることができる期間は、「異議決定書の謄本の送達があった日の翌日から起算して1月以内にしなければならない」旨規定されており、「送達があった日」とは、書類が社会通念上送達を受けるべき者の支配下に入り、その内容を了知し得る状態になったと認められる時をいうと解されており、送達を受けるべき者が現実に書類の内容を了知していなくても送達の効力が生じることとなる。
郵便規則第90条によれば、郵便物の受取人があらかじめ当該配達を受け持つ郵便局に旅行その他の事由によって不在となる期間(30日を限度とする。)を届け出ている場合には、その期間の郵便物を当該郵便局に留め置くことになっているものの、受取人が当該郵便局に出向けばいつでも自由に受領できる取扱いとなっており、当該郵便局に郵便物が留め置きされた時以後、その郵便物は受取人がいつでも受領可能であることからして、受取人は当該郵便物をその支配下に置き、その内容を了知し得る状態になったものと認められるから、郵便物が郵便局に留め置かれた時に送達の効力が生ずるものと解される。
要旨
原処分庁は本件賞与が架空の賞与であり、国税通則法第68条第1項に規定する重加課税の課税要件を充足することは明らかであるから、当該規定に基づいて算定される重加算税に相当する額までの範囲内でされた過少申告加算税の賦課決定は正当である旨主張するが、仮装又は隠ぺいに係る事実認定に基づき別途重加算税の賦課決定を行うのはともかく、過少申告加算税の賦課決定の適否が争われている場合において、重加算税の賦課要件の存在することを理由に過少申告加算税に代えて重加算税の額を認定することは許されない。
要旨
請求人は、確定申告書につき関与税理士が無断で作成し、提出したものであると主張するが、[1]当該関与税理士は、請求人から法人設立以来引き続き各事業年度の決算書及び法人税申告書の作成等を委任されている者であること、[2]当該関与税理士は、代表者に対し、当該確定申告書及びその申告書に係る決算書について説明し、一応納得させた上で、当該確定申告書を提出していること、[3]当該関与税理士は、当該確定申告書を提出した月の顧問料及び決算報酬を受領していること、[4]当該確定申告書に係る税額の全部を納付していること及び[5]更正の請求に際し、当該確定申告書について、特に虚偽の申告である旨の主張をしていないこと等の事実から、当該確定申告書は、請求人の意思に基づいて提出したものと認めるのが相当である。
1月4日は国税通則法第10条第2項に規定する「その他一般の休日」に該当しないとして、審査請求人の年始の営業開始日である平成12年1月5日(水曜日)に提出された消費税及び地方消費税の確定申告書は期限後申告に該当するとしてなされた無申告加算税の賦課決定処分を適法と認定した事例
裁決事例集 第62集 16頁
要旨
請求人は、請求人をはじめとする出版業界では、年始の1月4日までを休日としており、1月4日は一般国民が慣行上休日としている一般の休日に該当するので、平成12年1月5日に提出した本件確定申告書は期限内申告である旨主張する。
しかしながら、一般の休日とは、日曜日、国民の祝日以外の全国的な休日をいい、1月2日及び3日は、この一般の休日に該当すると解されるが、1月4日については、年始の休日としている企業等が見受けられるとしても、行政機関及び金融機関等においては必ずしも休日とはされていないのであり、一般国民の慣行上の休日には当たらないと解されるので、国税通則法第10条第2項に規定する一般の休日には該当しないというべきである。
したがって、本件確定申告書の法定申告期限は、消費税法第45条第1項及び通則法第10条第2項の規定により、平成12年1月4日であるから、同月5日に提出された本件確定申告書は期限後申告書に該当する。
要旨
請求人は、更正の申出に対してその更正をする理由がない旨のお知らせ(以下「更正の申出に対するお知らせ」という。)の取消しを求めて審査請求をしている。
しかしながら、更正の申出の手続は、更正の請求とは異なり、法令上の根拠に基づくものではないから、更正の申出に対するお知らせは、直接納税者の権利義務を形成し又はその範囲を確定するものではなく、単に、納税者からの減額更正を求める申出を契機として、税務署長が当該納税者の納税申告書に記載された課税標準等又は税額等を更正する理由がない旨を知らせるものに過ぎない。
したがって、更正の申出に対するお知らせは、国税通則法第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第1項に規定する「国税に関する法律に基づく処分」に該当せず、その取消しを求める本件審査請求は不適法である。
不動産賃貸借契約の合意解除は国税通則法施行令第6条第1項第2号に規定する「当該契約の成立後生じたやむを得ない事情によって解除されたこと」に該当せず、更正の請求をすることはできないとした事例
裁決事例集 第52集 1頁
要旨
国税通則法第23条第2項第3号を受けた同法施行令第6条第1項第2号に規定する「当該契約の成立後生じたやむを得ない事情」とは、法定の解除事由がある場合、事情の変更により契約の効力を維持するのが不当な場合(契約内容に拘束力を認めるのが不当な場合)、その他これに類する客観的理由がある場合を指すものと解されるところ、本件においては契約の効力を維持したとしても不当とはいえず、他に契約を合意解除せざるを得ない客観的理由があったとは認められないから、請求人の主張する合意解除の事情は、「当該契約の成立後生じたやむを得ない事情」に該当せず、国税通則法第23条第2項に基づく更正の請求をすることはできない。
事前通知なし調査について争われた事例( 平成22年分~平成23年分の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分、 平成24年分の所得税の更正処分、 平成24年分の所得税の過少申告加算税の賦課決定処分、 平20.1.1~平24.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに無申告加算税の各賦課決定処分・ 一部取消し、 棄却)
裁決事例集 第100集
ポイント
本事例は、質問検査権の行使を行っていなければ、事前通知なく納税者方に赴いても違法にはならないとしたものである。
要旨
請求人は、原処分に係る調査の担当職員(本件調査担当者)が請求人の自宅兼事業所に臨場(本件臨場)する前に請求人に対し、国税通則法第74条の9《納税義務者に対する調査の事前通知等》第1項に規定する通知(事前通知)をしなかったことが、原処分を取り消すべき事由に該当する旨主張する。
しかしながら、本件調査担当者は、本件臨場において、事前連絡をしないで請求人の自宅兼事業所を訪れ、請求人であることを確認した上で、身分証明書と質問検査章を提示し、所属と氏名を述べ、税務調査のために来訪した旨を伝えているが、請求人の課税標準等を認定する目的で、請求人に質問し、又はその事業に関する帳簿、書類その他その調査事項に関連性を有する物件の検査をした事実は認められず、質問検査権の行使を行ってはいないから、本件臨場の前に請求人に対し事前通知をしなかったことは、原処分を取り消すべき事由には該当しない。
要旨
休業中の請求人が土地譲渡収入を代表者の個人名義預金に入金していたが、原処分庁からの照会に対して請求人名義で譲渡先、譲渡金額等を記入した回答書を提出していることは、譲渡代金が請求人に帰属していることを実質的に回答したものであり、係官の調査に対しても譲渡代金の預金先を回答している。また、確定申告書を法定申告期限までに提出しなかったことについても、請求人が休業後相当の期間を経過していてその間帳簿等の整理も十分でなかった等のためであることが認められるので、土地等を譲渡した事実を隠ぺいして確定申告書を提出しなかったとして重加算税を賦課決定したことは相当でない。
住民票を異動したり、郵便受箱を撤去するなどした行為は、通知書の送達を回避することを意図してなされたものであり、請求人の住所は本件住所にあるとして、差置送達の効力を認めた事例
裁決事例集 第54集 4頁
要旨
請求人は、平成8年3月14日にその住所を移転しており、本件通知書が送達された同月15日においては本件住所に請求人の住所はなかったのであるから、本件通知書の送達は無効である旨主張する。
しかしながら、住所がどこにあるかについては、その場所に生活の本拠と認められるべき実質的な生活関係があるか否かによって判断すべきであるところ、具体的には、その者及び配偶者等家族構成員らの生活状況、その住所への移転目的その他の諸事情を総合的に勘案し、社会通念に照らして判断するのが相当である。本件は、請求人が住民票を異動したり、郵便受箱を撤去するなどした行為は、本件通知書の送達を回避することを意図してなされたものと認められ、請求人の住所は本件住所にあると認めるのが相当である。また、本件通知書は、透明なビニールケースに入れて密封した上、門柱に貼り付ける方法により送達されていることが認められるところ、同通知書はこれをもって請求人の了知し得べき状態に置かれたものとみるのが相当であり、かつ、同時点をもってその効力が生じたものと判断される。
以上のことから、本件通知書は適法に送達されており、有効であると認められる。
要旨
請求人は、本件譲渡価額を十分承知しており、また、請求人は、事実を仮装した本件売買契約書を自ら作成し、本件物件譲渡に関し2種類の契約書が作成されていることについても十分承知していた。
したがって、たとえ申告相談の際に本件売買契約書を取り違えて持参したという事情があったとしても、これに基づいて申告した本件においては、過少申告の意図をもって本件売買契約書を提示したか否かにかかわらず、国税通則法第68条第1項の要件を充足する。
加算税の賦課決定処分に当たり、その計算の基礎とした「更正処分により納付すべき税額」には、更正により増加する部分の納付すべき税額のほか、更正により減少する部分の還付金の額に相当する税額が含まれ、当該税額の還付を受けたか否かを問わないとした事例
裁決事例集 第50集 1頁
要旨
請求人は、過少申告加算税の基礎となる更正処分等により納付すべき税額には、「納付義務が存在するところの」という限定をつけて解釈すべきであるとし、本件課税期間の確定申告書に記載した還付金の額に相当する税額である控除不足還付税額の還付を受けていないので、本件更正処分により「減少する部分の税額」となった当該控除不足税額については、納付義務が存在しないこととなり、国税通則法第65条第1項に規定する納付すべき税額ではないことになるから、これを過少申告加算税の計算の基礎として賦課決定処分する根拠はない旨主張するが、同法第65条第1項は、更正等に基づく過少申告加算税は、同法第35条第2項の規定により課される旨規定しているところ、同項及び同法第28条第2項の規定内容から、当該「納付すべき税額」には、同法第28条第2項第3号イの更正により増加する部分の納付すべき税額のほか、同号ロの更正により減少する部分の還付金の額に相当する税額が含まれることは明らかであるから、当該税額の還付を受けたか否かを問わないと解するのが相当である。そうすると、更正により更正前の還付金の額に相当する税額がなくなり、納付すべき税額が生じた場合、過少申告加算税の計算の基礎となる税額は、その更正により生じた税額と、なくなった(消滅した)還付金の額に相当する税額を合計した税額となるところ、本件賦課決定処分は、更正処分により納付すべき税額と消滅した還付金の額に相当する税額を合計した税額を過少申告加算税の計算の基礎としており、請求人の主張には理由がない。
原処分庁が法定申告期限内に地価税の申告書が提出されていないことを内部資料によって確認した上、請求人の関与税理士事務所員に対し電話で問い合わせた直後に地価税申告書が提出された場合は、国税通則法第66条第3項にいう「調査があったことにより決定があるべきことを予知してされたものではないとき」に該当せず、同条第1項に規定する「納付すべき税額」とは法定申告期限後に提出された申告書に記載された納付すべき税額を指し、税の納付とは直接関係がなく、無申告加算税の基礎となる税額の計算において法定申告期限内に納付された税額を控除すべきではないとした事例
裁決事例集 第54集 72頁
要旨
国税通則法第66条第3項にいう「調査」とは、実地調査等の納税者に対する直接的かつ具体的な、いわゆる外部調査はもちろんのこと、申告指導のような納税者が課税庁における検討を認識することができる程度の手続も調査の範囲に含まれ、「決定があるべきことを予知してされたものではないとき」に当たるためには、課税庁の調査を納税者が認識できる以前に自発的な意思に基づいて期限後申告書を提出した場合をいうものと解するのが相当である。
請求人は、請求人関与税理士が法定申告期限前に作成した平成7年分の地価税の申告書について、内容を了解した上で記名押印して本件地価税申告書の作成を了し、提出方を請求人関与税理士に依頼して交付しており、当該申告書に係る地価税額の全額を法定納期限内に納付しているものの、原処分庁は、請求人の同年分の地価税の課税価格を請求人に係る資料等から算定した結果、申告義務があると見込まれたことから法定申告期限前に地価税の申告書等の用紙を請求人に送付し、法定申告期限内に同年分の地価税の申告書が提出されていないことを内部資料によって確認した上、請求人関与税理士事務所員に対し電話で同年分の地価税について申告書の作成を請求人から委任されているか、また地価税の申告書を提出しているか問い合わせを行っており、本件地価税申告書が提出されたのは、原処分庁から請求人関与税理士が当該問い合わせを受けた直後であることからすると、「調査があったことにより決定があるべきことを予知してされたものではないとき」に該当せず、「予知してされた」と認められる。
国税通則法第66条第1項によれば、期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があると認められる場合以外は、無申告加算税が賦課されることとされており、無申告加算税は納税申告書を法定申告期限までに提出しなかった者に対する行政制裁であるから、同条の規定は納付すべき税額が法定申告期限内に納付されていたとしてもその適用が左右されるものではなく、同条の規定する「納付すべき税額」とは、法定申告期限後に提出された申告書に記載された納付すべき税額を指し、税の納付とは直接関係がなく、無申告加算税の基礎となる税額の計算において法定申告期限内に納付された税額を控除すべきではないと解するのが相当である。
原処分庁が請求人の所得区分及び必要経費を否認して更正処分をした事案について、必要経費性を否認する支出を特定していない理由の提示に不備があると判断した事例(平成21年分~平成23年分の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第96集
ポイント
本事例は、支出の必要経費性を否認して更正処分をする場合、更正通知書に記載する理由には、否認する支出を特定して記載しなければならないとしたものである。
要旨
原処分庁は、更正通知書に記載された処分の理由は行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与えるという行政手続法第14条《不利益処分の理由の提示》第1項本文の法の趣旨が求める程度に記載されていると認められるからその記載に不備はない旨主張する。
しかしながら、更正通知書に記載された必要経費該当性の判断に係る理由のうち旅費交通費及び新聞図書費の一部の費用が必要経費に該当しない旨の理由の記載については、当該必要経費として認められない費用がどの費用(あるいは費用の一部)であるかが特定されておらず、当該費用の内容すら理解できないものであって、要件該当性をおよそ判断できないものであり、摘示された事実からは更正の理由を検証し、その適否について検討することはできない。そうすると、上記記載が行政手続法第14条第1項の法の趣旨目的を充足する程度に具体的に根拠を明示したとは評価できないから、これらの理由の記載には不備がある。
参照条文等
行政手続法第14条
参考判決・裁決
最高裁平成23年6月7日第三小法廷判決(民集65巻4号2081頁) 最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決(民集39巻3号850頁) 最高裁昭和47年12月5日第三小法廷判決(民集26巻10号1795頁)
要旨
課税処分の適否は、客観的な課税標準等の額が原処分において認定した額を上回るか否かにあること、また、行政手続において証拠能力の制限規定が設けられていないこと等に照らすと、仮に原処分の認定根拠とした資料の収集過程に違法があったとしても、その違法が刑罰法規に抵触するなど、著しい違法性を有する場合はともかく、そうでない場合には課税処分を取り消す必要はないと解すべきであるところ、本件資料は、収税官吏が裁判官の許可状を得て行った国税犯則取締法に基づく強制調査により収集したものであって、その強制調査に当たって行ったガラス戸の破壊や警察官の立合い・援助等の行為は、同法に基づく臨検・捜索・差押に際しての正当な行為であると認められ、その他当該収税官吏の行為が著しい違法性を有するとする証拠は認められない。
要旨
請求人と買受人との間の本件土地売買契約は有効に成立し、履行され、更に買受人は、引渡しを受けた本件土地の造成工事を行っていることから、当該契約に関して取消し又は解除すべき事由は認められないので、本件土地売買契約を解約し、同時に再度売り渡す契約を締結する旨の請求人及び買受人間の訴訟上の和解の実質は、本件土地の売買を確認し、追加金を買受人が請求人に支払う合意が成立したものと解せられる。したがって、本件和解は本件土地譲渡所得金額の計算に影響を及ぼさない。
要旨
保証人(会社)が多額の債務超過となり、裁判所からの更生手続開始決定を受ける等の事情にある場合には、その資力が延納許可時に比べて著しく減少したため、保証人として請求人の国税の納付を担保することができないものと認められるので、原処分庁のした増担保の要求処分は正当である。
要旨
譲渡担保財産である滞納者の居宅の公売公告処分に対し、譲渡担保権者である請求人は、本件滞納者の生活に係る事情を考慮すべきことを理由として、その取消しを主張する。
ところで、審査請求は、違法又は不当な処分によって侵害された不服申立人の権利利益の救済を図るものであることから、自己の法律上の利益に関係のない違法を審査請求の理由とすることはできないと解するのが相当である。
そして、請求人にとって本件滞納者の生活に係る事情は、請求人に何ら直接的な影響をもたらす事柄ではないから、請求人が当該事情の考慮を求めることは、自己の法律上の利益に関係のない違法を主張するものにほかならず、審査請求の理由とすることのできない理由を主張するものである。
要旨
原処分の通知書を受け取った者が、小学校6年生の子であったとしても、年齢、小学校の教育課程の状況からみて、その子は、書類の受領につき事理を弁識する能力を有すると認められるから、原処分の通知書の送達は有効である。
差押えによる国税の徴収権の時効の「中断の事由が終了した時」とは、差押処分に係る財産の換価手続が終了した時又は差押えが解除された時をいうものと解するのが相当であるとした事例
裁決事例集 第79集
要旨
請求人は、差押えがされれば、いくら放置しても時効が進行しないというのであれば、甚だしく不当な結果になる上、差押権者による一方的な意思でなされる差押えは、比較的短期間で完了するのであるから、差押えによる時効中断の事由が終了した時を差押処分の手続自体の終了時である差押登記がされた時と解すべきであると主張する。
しかしながら、国税の徴収権の時効は、国税通則法第73条第1項各号掲記の事由又は民法第147条各号掲記の事由があった時に中断し、国税通則法第73条第1項各号に定める期間を経過した時又は時効中断の事由が終了した時から更に進行することになるところ、差押えにより国税の徴収権の時効が中断された場合、当該差押処分の効力が存続している間は、時効中断事由としての差押えが継続しているのであるから、差押えによる国税の徴収権の時効の「中断の事由が終了した時」とは、当該差押処分に係る財産の換価手続が終了した時又は差押えが解除された時をいうものと解するのが相当である。また、差押財産の換価の時期については、原処分庁の合理的な裁量にゆだねられていると解される上、大量かつ反復的に生じる滞納国税の徴収に当たり、画一的に差押え及び換価を実施することが必ずしも望ましいとはいえないこと、差押財産が有する様々な要因等から、差押財産を直ちに換価することが困難な場合もあること、差押財産を公売に付しても公売が成立しない場合もあること、滞納者は財産の差押えを受けたことによって国税の納付が禁止されるわけではなく、財産の差押えを受けた場合であっても早期に完納することが求められることからすれば、差押処分の効力が存続している間は時効が進行しないことをもって、甚だしく不当な結果を滞納者に招来するものであるということはできず、これを根拠に差押えによる時効中断の事由が終了した時を差押処分の手続自体の終了時である差押登記がされた時と解する請求人の主張は採用できない。
参照条文等
当初申告に係る物納申請についてされた徴収猶予の効果は、その後に提出された修正申告に係る物納申請に対する徴収猶予には及ばないことから、修正申告に係る延滞税の納税義務があるとした事例
裁決事例集 第54集 59頁
要旨
- 原処分庁は、請求人の更正の請求に基づき、納付すべき税額を931,345,100円とする更正処分を行った。
その後、請求人は、物納土地の面積の増加を避けるためか、納付すべき税額が310,389,500円増加する本件修正申告をしたものであり、これに附帯する本件延滞税については、国税通則法第60条第1項第2号及び同条第3項の規定により、これを納付する義務がある。
また、国税通則法第29条第2項及び同法第20条の規定により、本件減額の更正処分の結果、当初申告に係る物納申請額は1,318,860,400円が931,345,100円へと減額になり、この減額後の金額の範囲内で徴収猶予の効果は存続しており、当初申告の物納申請に対してなされた徴収猶予の効果は、本件修正申告により納付すべき税額には及ばない。 - 請求人の主張するように、本件修正申告には本件更正の請求を上回って減額された(減額更正)金額が含まれているとしても、これが修正申告及び延滞税の納税義務には何ら影響を与えるものではなく、また原処分庁は減額の更正をしているのであるから、本件修正申告をしょうようするはずはなく、仮に、原処分庁が物納土地の増加を避けるための一方法として修正申告の方法がある旨を示唆したとしても、本件修正申告をするか否かは請求人の判断と責任においてされたものであるから、本件修正申告を適法でないとする理由とは認められず、本件延滞税を免除すべき事由に該当しない。
- 本件更正処分は極めて不公正であり、本件督促処分の違法性にも影響を及ぼす旨主張するが、督促処分は本件延滞税に係る処分であり、本件延滞税の納税義務は請求人が本件修正申告をすることに伴って生じているのであるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
所得税の納税地とは、生活の本拠をいうと解されるところ、各地に住居を有していると認められる納税義務者の生活の本拠は、単に住民登録が異動していることやそこに住居があるといったことのみによることなく、納税義務者の資産の所有状況及びその所在、家族の居住状況、夫婦の同居の推認及び職業等の客観的な事実を総合して判定するのが相当であり、また、国税に関する税務署長の発する書類の送達の効力は、その書類が社会通念上送達を受けるべき者の支配下に入ったと認められる時、すなわち、書類の名あて人がその書類を了知し得る状態になった時にその効力が生ずるとした事例
裁決事例集 第53集 1頁
要旨
所得税の納税地とは、所得税法第15条(納税地)第1項により、国内に住所を有する納税者にあってはその者の住所地とされており、さらに、その住所とは民法第21条に規定する住所の意義である生活の本拠をいうと解されるところ、所得税法の解釈上、各地に住居を有していると認められる納税義務者の生活の本拠がいずれの土地にあると認めるべきかは、単に住民登録が異動していることやそこに住居があるといったことのみによることなく、納税義務者の資産の所有状況及びその所在、家族の居住状況、夫婦の同居の推認並びに職業等の客観的な事実を総合して判定するのが相当であって、これらの事情を総合判断すれば、請求人が住民登録を異動したことは認められるが、納税地が異動したとはいえない。
国税通則法第12条(書類の送達)第1項により、書類を交付送達すべき場所はその送達を受けるべき者の住所又は居所(事務所及び事業所を含む)とされ、原処分に係る通知書(本件通知書)の送達場所が請求人の妻の事業所であることが認められるから、本件通知書の交付送達は当該規定に抵触する意味で違法である。しかし、国税通則法において送達に関する規定を設けた趣旨は、国税に関する税務署長の発する書類が、名あて人のもとに確実に、かつ速やかに送達され、その送達によりじ後の手続が適正に進行することを確保することにあるものであって、その書類が社会通念上送達を受けるべき者の支配下に入ったと認められる時、すなわち、書類の名あて人がその書類を了知し得る状態になった時に、書類送達の効力が生ずるものと解されるところ、調査担当職員が請求人の次男に交付した本件通知書は請求人のもとに確実に、かつ速やかに送達されたこと、本件店舗は請求人の妻が請求人と同居している住所地と同じ町内のすぐ近くに所在し、その敷地は請求人の所有名義の土地であることが認められるから、送達に関する瑕疵は極めて軽微なものにとどまり、本件通知書の送達の効力に影響を及ぼすものではなく、原処分の取消事由にはならない。
所有者を被相続人の孫とする登記がなされているなど家屋に係る相続税の申告以前の状況からすると、相続税の申告において請求人が当該家屋を申告しなかったことにつき国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由が認められるとした事例
裁決事例集 第123集
ポイント
本事例は、相続財産と認められる家屋について、①相続開始前に当該家屋の登記上の所有者が被相続人から同人の孫に名義変更されていたこと、②請求人自身が関与税理士として当該家屋の売買に係る譲渡所得の申告を行っていること、③上記①の名義変更以前から当該家屋に被相続人は居住しておらず同人の孫が居住していたことなどの理由から、相続税の申告において当該家屋を申告しなかったことにつき国税通則法第65条第4項所定の「正当な理由」があると認められるとしたものである。
要旨
原処分庁は、相続開始時点において被相続人(本件被相続人)の孫(本件孫)名義となっていた家屋(本件家屋)について、本件被相続人や共同相続人らの各預金口座等を調査すれば、本件家屋の売買代金が実質的に支払われておらず、本件被相続人と本件孫との間の当該家屋に係る売買契約が成立していないことを確認できたのであるから、本件家屋が被相続人に帰属する財産であることを把握することは可能であったにもかかわらず、その確認を怠った請求人には国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する「正当な理由」は認められない旨主張する。
しかしながら、前述するとおり、相続開始時点において本件家屋の登記上の名義は本件孫名義であり、請求人自身が関与税理士として本件家屋の売買に係る譲渡所得の申告を行っていたことに加え、当該売買以前から本件家屋には、本件被相続人ではなく譲受人である本件孫が居住していたことからすると、請求人は、本件家屋に係る本件被相続人と本件孫との間の売買契約が有効に成立し、本件家屋の所有権が本件孫に移転したと誤信せざるを得ない事情があったといわざるを得ない。加えて、本件家屋の売買代金が実質的に支払われていないことを把握し得た時点が、相続税の申告期限後であったことを併せ考えれば、請求人が本件家屋について申告しなかったことにより相続税の申告が過少申告となったことにつき、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお請求人に過少申告加算税を賦課することは不当又は酷であって、請求人には「正当な理由」があったと認められる。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成18年4月20日第一小法廷判決(民集60巻4号1611頁)
要旨
請求人は、原処分庁は既に差押えをして滞納国税を確保しているのであるから、更に充当をすることは重複処分となって違法であると主張するが、請求人には平成3年5月15日現在本件滞納国税が存在しており、たとえ本件差押えによって、原処分庁が既に本件滞納国税の徴収を確保していたものであるとしても、それにより本件滞納国税が完納されたというわけではない。また、充当は滞納国税につき差押えがなされているかどうかにはかかわりなく行われるものであり、かつ、差押えとは別個の規定に基づく内容を異にしたものであるから、本件充当を重複処分で違法であるということはできない。
要旨
請求人がその事業を法人に組織替えをする際、引き続き法人に勤務する従業員に対し退職金を支給することとして、その額を必要経費に算入するとともに、未払退職金として法人に引き継いだ場合において、法人が当該未払退職金を支払っていないにもかかわらず、これを支払ったかのように仮装経理しているときは、もともと請求人に当該退職金を支払う意思があったとは認められないから、当初の未払退職金の設定行為そのものが事実を隠ぺい又は仮装したことに当たるとしてなした重加算税の賦課決定は相当である。
本件延滞税は、原処分庁の職員が確定申告書の収受時にその誤りを見逃したことに起因し、また、原処分庁の内部事情によりその誤りの指摘が遅延したことにより発生したものであるから課すべきではないとの請求人の主張を排斥した事例
裁決事例集 第64集 44頁
要旨
請求人は、本件延滞税の計算期間について、原処分庁の内部事情により確定申告書の記載誤りの指摘が遅延したことにより設定されたもので、請求人の何ら関知しない期間であるから全く根拠がなく、本件延滞税の計算の起算日は、本件修正申告書を提出した日の翌日とすべきであり、また、本件延滞税は、原処分庁の職員が確定申告書の収受時に誤りを見逃したことに起因し、原処分庁にも責任があるので課すべきではない旨主張する。
しかしながら、本件延滞税の計算期間は、法律の規定に従った適法なもので、確定申告書等の内容審査については、いつまでに了さなければならないとする法令の規定もなく、課税庁の裁量にゆだねられているなど、延滞税の計算期間に差異が生じたとしても、違法、不当となるものではなく、請求人が主張する延滞税の起算日は、請求人独自の見解で採用できない。
また、確定申告書は、納税者自身の判断と責任において正しく記載の上、法定申告期限までに提出し、その記載内容については納税者自身がその責任を負うべきであるところ、原処分庁の職員が確定申告書の収受時にその内容をチェックしなかったとしても、それによって請求人が本件延滞税を免れる理由とはならない。
要旨
請求人は、法人税について法人税法第75条の2の申告書提出期限の延長の特例を受けており、消費税についても消費税法第45条による提出期限までに決算が確定しないから、[1]この状況で確定申告書を提出すると、決算確定後、修正申告又は更正の請求等事務負担が増加することになり、また、[2]法定申告期限内に納付税額を納付しているから、期限内申告できないことについて無申告加算税を賦課しないこととする正当な理由が存すると主張する。
しかし、消費税の納税義務は、課税資産の譲渡等の時に成立しており、継続して事業を行っている事業者は、その課税期間を通じて各日ごとに取引があり、その取引ごとに消費税相当額を受領し、消費税を転嫁しているのであるから、確定した決算に基づくことは、消費税の確定申告書を提出する上での要件となるものではなく、消費税法にも提出期限の延長を認める旨の規定は設けられていない。また、法人税の申告期限の延長の適用の有無が消費税の確定申告期限に影響を及ぼすものではない。
したがって、決算が確定していないことは、真にやむを得ない理由に該当せず、国税通則法第66条“無申告加算税”に規定する期限内申告書の提出がなかったことについて、正当な理由があると認められる場合には該当しない。
また、請求人主張の[1]、[2]の理由は、いずれも、真にやむを得ない理由に該当しない。
要旨
国税通則法第70条第2項第4号に規定する「偽りその他不正の行為」とは、正当な納税義務を免れる行為で社会通念上不正と認められる一切の行為を含むのであって、殊更に所得金額を過少に記載した内容虚偽の確定申告書を提出するいわゆる過少申告行為もこれに該当する。
したがって、請求人が本件土地の譲渡行為を自己の有利に、譲受人と共同取得した土地を分割したにすぎないと解して、当該譲渡に係る短期譲渡所得の金額を確定申告書に記載しなかったことは、偽りその他不正の行為によって一部の税額を免れようとしたものに該当するので更正の期間制限は5年(現行7年)とするのが相当である。
要旨
還付を求める確定申告書について誤りがある場合には、法定申告期限内に納税者が訂正できるよう措置を講じ、適切な指導をすべきであるのに原処分庁はこれを怠ったとの主張について、申告納税制度の下における所得税の確定申告は、本来、納税者自身の判断と責任においてなされるべきであり、当初の確定申告に誤りがあったとしても、それは納税者自身の責任であり、これについて原処分庁が法定申告期限内にその誤りにつき請求人に適切な指導をしなかったからといって、過少申告したことにつき国税通則法第65条第2項に規定する正当な理由があるとは認められない。
要旨
原処分庁は、請求人が賃借する店舗及びその敷地(本件店舗等)の賃貸人が非居住者となった日以後に支払った賃借料についての源泉徴収に係る所得税(源泉所得税)を法定納期限後に納付したことについて、請求人には本件店舗等の賃借料の支払の都度、当該賃貸人が居住者か非居住者かを確認する義務があり、請求人は、単にその確認を怠ったものであると認められるから、国税通則法第67条《不納付加算税》第1項ただし書の「正当な理由があると認められる場合」には当たらない旨主張する。
しかしながら、不動産の賃貸借等において、賃借料の支払の都度、居住者・非居住者の別を確認することを義務付けた明文の規定はなく、また、本件のように、賃貸人等との接触をほとんど必要としない取引について、そのような煩雑な手続を採ることが必要であるとするのは合理的でないというべきであるところ、請求人は、本件店舗等の賃貸借に係る取引において、当該賃貸人が非居住者に該当することになったことを直ちに知り得る状況になかったと認められ、源泉所得税の納付が法定納期限後となった原因は、当該賃貸人からの連絡が遅れたためであると認められるから、請求人には、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があったというべきであり、源泉所得税を法定納期限までに納付しなかったことについて、「正当な理由があると認められる場合」に該当するとするのが相当である。
参照条文等
要旨
原処分庁は、滞納処分があったことを請求人が知った日は、納税者が請求人に対し納税資金の金策を依頼した日であると主張するが、金策の依頼をした事実は認められるものの、この事実をもって滞納処分を知らしめたことにはならない。
そうすると、原処分庁の担当職員が請求人と面接し不服申立ての教示をした事実からみて、その面接日の2、3日前に納税者からの連絡により滞納処分があったことを知ったとする請求人の答述を採用するのが相当であるから、その日から2月以内になされた異議申立ては期間を徒過していない。
滞納法人の破産管財人から債権譲渡の否認を求める訴訟が提起されたことは、国税通則法第77条第3項の「やむを得ない理由」には当たらないとした事例(譲渡担保権者の物的納税責任に関する各告知処分及び債権の各差押処分・却下)
裁決事例集 第97集
要旨
国税通則法第77条《不服申立期間》第1項は、不服申立ては、処分があったことを知った日(処分に係る通知を受けた場合には、その受けた日)の翌日から起算して2月以内にしなければならない旨規定するところ、請求人の審査請求は、同項所定の不服申立期間が経過した後に行われたものであり、また、請求人の主張する、訴訟中であることは同条第3項の「やむを得ない理由があるとき」に、徴収担当職員の「全て終了した時点で連絡してもらえば結構です。」との発言は同条第6項の「誤って法定の期間より長い期間を不服申立期間として教示した場合」にそれぞれ当たらないことから、請求人の審査請求は、法定の不服申立期間を経過した後に行われた不適法なものである。
参照条文等
現金主義による所得計算の特例(所得税法第67条の2)を適用して事業所得の計算をした者が発生主義による所得計算と比較して税負担が不利益になるという理由による更正の請求をすることは認められないとした事例
裁決事例集 第33集 1頁
要旨
現金主義による所得計算の特例の制度は、小規模な個人事業者のうちには発生主義によって所得金額を計算することになじめない者が多く、青色申告の帳簿書類の簡素化とあいまって設けられたもので、納税者の税負担の軽減を目的としたものではない。また、同特例を選択することは納税者の任意であるが、所得税法施行令第197条第2項により、その適用を受けることをやめようとする場合には、その年の3月15日までにその旨の届出書を提出しなければならない旨規定されているから、同特例を選択した場合、その適用をやめる手続を踏まなければ発生主義による所得計算をすることができないところ、請求人は係争年分について上記手続をしていない。したがって、請求人が係争年分の事業所得の金額を現金主義により計算したことは、所得税法の規定に基づいた適法な計算であり、当該計算に誤りがあったことも認められないから、更正の請求には理由がない。
要旨
相続税の納税猶予は、相続人が相続等により取得した農地を農業の用に供していく場合には、一定の要件の下にその農地の価額のうち、農業投資価格を超える部分に対する相続税の納税を猶予し、その相続人が死亡した場合等にその猶予分の相続税を免除する制度であるが、相続人の死亡等の前に農地を譲渡したり、農業を廃止した場合には、その納税猶予の期限が確定することとされている。請求人は、納税猶予の適用を受けたものの、その後において農業経営を廃止したことにより、租税特別措置法第70条の6第1項の規定に基づき納税猶予の期限が、特別の手続を必要とせずに当然に確定したものであって、「猶予期限が確定した相続税額の通知書」は、納税猶予の期限が確定した旨を念のため通知したものにすぎないから、この通知は、審査請求の対象となる処分ではない。
相続税法第32条第3号に規定する更正の請求をすることができる期間の起算日は、遺留分減殺請求訴訟の和解が成立した日であり、適法な期間内に提出された更正の請求を前提とした同法第35条第3項第1号の規定に基づく原処分も適法であるとした事例
裁決事例集 第54集 109頁
要旨
請求人は、相続税法第32条第3号に規定する更正の請求をすることができる期間の起算日は、同条に定める「遺留分による減殺の請求があったこと」を知った日であり、本件においては、既に期間が徒過してなされた違法な更正の請求であることから、このような違法な更正の請求を前提としてなされた原処分も違法である旨主張する。
しかしながら、同条に定める「遺留分による減殺の請求があったこと」を知った日の期間の起算日は、遺留分減殺請求訴訟の和解が成立した日と解されることから、本件更正の請求は適法な更正の請求であり、原処分庁が、本件更正の請求があったことにより相続税法第35条第3項第1号の規定に基づき原処分を行ったことは適法である。
租税特別措置法第37条の2第2項の規定による修正申告書の提出が「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に当たらないとした事例
裁決事例集 第41集 5頁
要旨
(1)請求人は、修正申告書の提出以前においては、課税標準が未確定というべきであるから、所得金額に対する調査が行われることはあり得ないと主張するが、租税特別措置法第37条第4項の適用を受けた場合においては、買換資産の取得価額の見積額によって譲渡所得の金額を計算して確定申告をすることによって課税標準は確定すると解すべきであるし、また、同法第37条の2の規定は、修正申告書の提出以前において所得金額に対する調査ができない旨を規定したものではないこと、及び、(2)[1]原処分庁は、本件調査を行う時点において、本件譲渡物件について、請求人が確定申告書に添付した売買代金を700,000,000円とする売買契約書のほかに、売買代金を800,000,000円とする売買契約書が存在することを把握しており、[2]調査担当職員は、本件調査において[1]の事実を念頭において本件譲渡物件の取引経過及び売買契約書の作成経過並びに譲渡代金の受領経過等の調査を行っていることから、本件譲渡物件の分離課税の長期譲渡所得の金額についての調査があったと認めるのが相当であるし、また、売買代金を700,000,000円とした売買契約書に基づき、本件譲渡に関する売買契約書の作成経過等を調査されたことによって、請求人は、調査担当職員の調査が進行するに従い、本件譲渡物件の譲渡価額を除外して確定申告した事実が発覚し、やがて原処分庁によって更正されることを認識したと認めるのが相当であること等から、本件修正申告書の提出は、「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に当たらないというべきである。
要旨
源泉所得税の納付が遅延したのは、原処分庁から当納期分に係る納付書の送付がなく、また、納付書用紙は税務署等の窓口に備え付けてあることを全く知らなかったためであるから、国税通則法第67条第1項ただし書にいう「正当な理由」に該当するとの主張について、請求人へ送付した「年末調整用紙の配付及び年末調整説明会のお知らせ」状における記事及び請求人の代表者が自発的に原処分庁へ赴き、関係用紙の交付を受けたことがあること、さらに、原処分庁において通常実施している関係諸用紙の送付事務は、源泉徴収義務者に対するサービスの一環として行われているものであることからすると、請求人の「正当な理由」に当たるとする主張は失当である。
要旨
審査請求によって処分の取消しを求めるには、請求人にその取消しを求める利益があることが必要であるところ、本件国税の本税は既にその全額が納付されている上、延滞税についても、本件換価の猶予によって、納税の猶予が許可されたとした場合の免除額に相当する額が免除されていることから、請求人には原処分の取消しを求める利益はないといわざるを得ず、したがって、本件審査請求は請求の利益を欠く不適法なものである。
要旨
請求人は帳簿の記帳及び決算、預貯金の管理等の経理事務を長年にわたって妻に委任しており、経理事務には関与していないので、所得税調査に基づく修正申告のしょうようの際、調査担当者からの在宅要請にもかかわらず、請求人は、事業所得の計算根基については私よりむしろ妻の方が熟知しており、妻に話をしてほしい旨を言って外出し、その場に同席せず、妻も私が話を聞く旨申し立てた。
そこで、調査担当者は、調査した結果を妻に十分説明して修正申告書の提出方のしょうようを行ったところ、妻はそれに応じて署名押印し修正申告書を提出している。
これらの事実を総合判断すると、修正申告書は、妻が提出したものであるが、妻は請求人の経理及び税務上の全般の事務の処理について請求人から任されている者であって、請求人に代わって作成、提出したものと認められるから、当該修正申告書を無効とする理由はなく、請求人の主張には理由がない。
要旨
相続人が国税通則法第5条の規定により被相続人の国税の納付義務を承継する場合において、相続人が2人以上あるときは、同条第2項の規定により各相続人の国税の承継額は民法第900条から第902条までの規定によるその相続分によりあん分計算することとなっているが、被相続人が外国人である場合には、法令第25条の規定により相続は被相続人の本国法によるものであるから、国税通則法第5条第2項の規定の適用については、被相続人の本国法による相当規定により承継額を計算することが相当である。
裁判所の関与なくなされた当事者間の合意は、国税通則法第23条第2項第1号の更正の請求の事由(判決と同一の効力を有する和解その他の行為)には該当しないとした事例
裁決事例集 第42集 1頁
要旨
国税通則法第23条第2項第1号の「判決と同一の効力を有する和解その他の行為」とは、国家機関としての裁判所がする私人間の紛争の法律的解決のための民事訴訟手続等におけるものを意味し、かつ、これに限定されている。
要旨
請求人は、滞納国税を徴収するために行われた不動産の差押処分に対して、[1]課税処分に対して審査請求中であること、[2]差押不動産は、農業者である請求人が所有する先祖伝来の土地であり、また、相続財産でない農地も含まれていること、[3]差押えに当たって事前に連絡がなかったことを理由として原処分が違法又は不当である旨主張する。
しかしながら、次のとおり、原処分を違法又は不当とする理由は認められない。
(1) 国税徴収法第47条第1項第1号は、滞納者が督促を受け、その督促された国税をその督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しないときは、徴収職員は、滞納者の財産を差し押さえなければならない旨規定しているところ、請求人は、督促日現在、本件滞納国税を完納していなかったのであるから、原処分は適法である。
なお、請求人が課税処分の取消しを求めた審査請求については、平成14年6月27日付で裁決がされているが、課税処分の一部が取り消されたにすぎないから、原処分の適法性に影響を及ぼすものではない。
(2) 国税通則法第105条第1項は、国税に関する法律の基づく処分に対する不服申立ては、その目的となった処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない旨規定しており、課税処分に係る審査請求中であっても、その課税処分の効力は妨げられないから、納付すべき税額は確定し、その国税が納期限までに完納されなければ、差押処分をすることは妨げられない。
(3) 農地については、国税徴収法第78条第1号において、滞納者がその国税の全額を徴収することができる財産で、換価が困難でなく、かつ、第三者の権利の目的となっていないものを提供したときは、その選択により、差押えをしないものとする旨規定されているが、請求人が、同条に規定する財産の提供を行った事実は認められない。
また、差押えの基礎となる滞納国税が相続税の場合に、相続財産以外の滞納者の所有財産を差し押さえてはならない旨を定めた法令の規定はない。
(4) 徴収職員が滞納者の財産を差し押さえるに当たり、滞納者に対し事前に連絡しなければならない旨を定めた法令の規定はない。
請求人がした青色申告承認申請書の提出期限の延長申請に関し、原処分庁が先にした同延長申請の承認を取り消した処分について、請求人が青色申請を期限までにすることができなかったことに通則法第11条規定の「災害その他やむを得ない理由」はなく、同承認は同条に適合しないにもかかわらずされたものだから、同取消処分が適法とした事例(災害による申告、納付等の期限延長申請の承認取消処分・棄却)
裁決事例集 第133集
ポイント
本事例は、原処分庁が先にした青色申告承認申請書の提出期限の延長申請についての承認処分について、当該延長承認の要件を満たさないことから、職権で取り消したことが適法と判断したものである。
要旨
請求人は、「新型コロナウイルスによる外出自粛の影響で提出が遅れました」と記載した青色申告承認申請書(本件青色申請書)の提出が提出期限後となったのは、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言や自治体の外出自粛要請を受けて外出自粛等をしていたためであり、これらの事情は、国税通則法第11条《災害等による期限の延長》に規定する「災害その他やむを得ない理由により、国税に関する法律に基づく申告、申請、請求、届出その他書類の提出、納付又は徴収に関する期限までにこれらの行為をすることができないと認めるとき」に該当するから、原処分庁が、上記記載による同申請書の提出期限の延長申請に係る承認(本件延長承認)を後日取り消した処分(本件取消処分)は違法である旨主張する。
しかしながら、本件取消処分の適否を判断するに当たっては、本件延長承認がされた時点における事情に照らし、本件延長承認に違法等が認められるか否かを審理判断すべきであり、具体的には、本件延長承認が国税通則法第11条に適合するものであったか否かを検討すべきであるところ、本件青色申請書の提出が提出期限後になったのは、提出期限後になって特別償却の適用を受けるために青色申告の承認を受けようとしたという理由によるものであり、新型コロナウイルスの感染拡大を理由とするものではないから、「災害その他やむを得ない理由により、国税に関する法律に基づく申告、申請、請求、届出その他書類の提出、納付又は徴収に関する期限までにこれらの行為をすることができないと認めるとき」には該当しない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成28年12月20日第二小法廷判決(民集70巻9号2281頁)
請求人は国税通則法第25条に規定する納税申告書を提出する義務があると認められる者には該当せず原処分庁は同条を根拠とする決定処分を行うことはできないとした事例
裁決事例集 第63集 11頁
要旨
原処分庁は、本件決定処分は国税通則法第25条の規定に基づき行ったものである旨主張する。
しかしながら、国税通則法第25条には、税務署長は納税申告書を提出する義務があると認められる者が当該申告書を提出しなかった場合には、当該申告書に係る課税標準等及び税額等を決定する旨規定されており、また、所得税法第121条には、その年中に支払を受けるべき給与等の額が2,000万円以下である給与所得を有する居住者で、一の給与等の支払者から給与等の支払を受け、かつ、当該給与等の全部について同法第183条及び同法第190条の規定による所得税を徴収された又はされるべきものは、同法第120条第1項に規定された申告書を提出することを要しない旨規定されているところ、請求人は、所得税法第121条に規定された確定申告書の提出を要しない場合に該当し、国税通則法第25条に規定する納税申告書を提出する義務があると認められる者には該当しないことから、原処分庁は同条を根拠とする決定処分を行うことはできないので原処分は取り消すのが相当である。
譲渡した土地の共有者である兄が売買契約書を仮装し、他の共有者である弟の譲渡所得について過少に申告したことは、弟にも仮装行為があったことになるとした事例
裁決事例集 第21集 13頁
要旨
請求人は、譲渡した土地の共有者である兄に当該土地の売却先の決定、売買契約の締結及び売買代金の受領等の行為を依頼したこと、また、当該土地の譲渡所得に係る確定申告から納付行為までの一連の行為をすべて兄に行わせていたことが認められ、請求人としては兄が当該土地の譲渡に関して仮装行為をし、その所得を過少に申告した行為について否認できない関係にあったことが認められることから、請求人がこれを関知していなかったかどうかを判断するまでもなく、国税通則法第68条第1項の規定に該当するとして重加算税を賦課決定した原処分は相当である。
要旨
請求人は、前回調査担当者の指導内容に反する本件更正処分は、信義則の適用により取り消されるべき旨を主張する。
しかしながら、課税処分について、信義則を適用し租税法規に適合する課税処分を違法なものとして取り消すのは、納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしても、納税者の信頼を保護しなければならないという特別な事情がある場合と解すべきところ、[1]本件更正処分は、消費税法に基づいた適正な処分であり、その結果、請求人は正当な税額を負担することになったにすぎないこと、[2]本件更正処分に伴う加算税の賦課決定処分は、前回調査担当者の指導に誤りがあったことを理由に取り消されていること、[3]仮に、本件更正処分を取り消した場合には、請求人だけが正当な課税を免れ、かえって租税平等の原則に反する不当な結果を生ずることとなることからみれば、本件においては、納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしても、納税者の信頼を保護しなければならないという特別な事情があるとは認められず、本件更正処分を、信義則の適用によって取り消すのは相当ではない。
過誤納金全額を請求人に還付しながら、その2年後に延滞税の督促処分をしたことは信義則に反するとの請求人の主張に対して、請求人が特段の不利益を受けたわけではないとして、これを排斥した事例
裁決事例集 第59集 56頁
要旨
国税通則法第37条第1項は、納税者がその国税を納期限までに完納しない場合には、税務署長は、その納税者に対し、督促状によりその納付を督促しなければならない旨規定する。
ところで、本件延滞税の額は、本件相続税の法定納期限の翌日である平成8年2月20日から、本件修正申告に係る相続税の納期限である同年11月6日までの期間の日数261日に応じ、当該修正申告により納付すべき本税の額380,000円(ただし、国税通則法第118条第3項の規定により10,000円未満の端数を切り捨てた後の金額)に年7.3%の割合を乗じて計算した19,800円(ただし、同法第119条第4項の規定により100円未満の端数を切り捨てた後の金額)であること、そして、上記納期限を経過した後の平成11年6月25日現在、この19,800円の全額が未納であったことが認められるから、当該金額について同日付でなされた本件督促処分は適法ということになる。
もっとも、請求人は、国税通則法第57条第1項の規定によれば、原処分庁は本件過誤納金を本件延滞税に充当すべきところ、これに反して当該過誤納金の全額を請求人に還付しながら、それから2年も経過した後に本件督促処分をしたのであって、このことは信義則に反する旨主張する。
確かに、国税通則法第57条第1項は、税務署長は、還付金又は国税に係る過誤納金(以下、「還付金等」という。)がある場合において、その還付を受けるべき者につき納付すべきこととなっている国税があるときは、還付に代えて、還付金等をその国税に充当しなければならない旨規定するところ、請求人には、上記のとおり、平成9年9月18日現在、納付すべきこととなっている本件延滞税があったのであるから、原処分庁としては、本件誤納金を本件延滞税に充当すべきであり、にもかかわらず、当該過誤納金を請求人に還付したことは上記規定に反すると言わざるを得ないのであるが、過誤納金の還付と督促処分とは別個のものであるから、当該還付が違法に行われたからといって、本件督促処分が当然に違法、不当となるわけではない。
また、信義則が租税法律関係にも適用される法原則であるとしても、本件過誤納金を本件延滞税に充当することなく、これを請求人に還付したからといって、これをもって、原処分庁が、当該延滞税の納付を督促しない旨を公的に表明し確約したものということはできないし、請求人も、本件督促処分によって、本来納付すべき本件延滞税を納付しなければならないというにすぎず、当該延滞税の納付の督促はないと信頼し、これに基づいて何らかの行為をしたために特段の不利益を受けたわけでもないのであるから、本件においては、租税法律主義の原則や納税者の平等、公平の要請をおいてまで、請求人の利益を保護すべき特段の事情はないというべきである。
したがって、請求人の主張には理由がない。
前事業年度に係る更正処分について訴訟係属中であっても、当該更正処分が無効と認められる場合でない以上、当該更正処分の結果に基づきなされた本件更正処分は適法であるとした事例
裁決事例集 第68集 50頁
要旨
一般に行政処分に重大かつ明白な瑕疵があり、そのため行政処分が無効と認められる場合であれば格別、そうでない以上、たとえ瑕疵があっても行政処分の安定を図る意味から、同処分が取消権限のある行政庁又は裁判所によって取り消されるまでは有効なものとして扱われると解されている。
これを本件についてみると、前事業年度に係る更正処分については当審判所は裁決によって適法である旨の判断を既に示しているところであり、また、当該更正処分に係る訴訟は現在においても係属中で、当該更正処分の取消判決もなされていない。
よって、原処分庁が前事業年度の更正処分の結果に基づき本件更正処分を行ったことに何ら違法はない。
要旨
加算税の賦課決定につき、原処分庁が異議決定で維持した処分の一部を審査請求の継続中に取消し又は変更することは、国税通則法第32条第2項の規定に基づきされたものであり、かつ、当該賦課決定は、当初の賦課決定において納付すべき税額が過大であったため、無申告加算税を過少申告加算税に変更するとともに重加算税の一部を減額したものであるから、これに係る審査請求にはその請求の利益がない。
原処分庁が、請求人自身の面接を経ずに無申告加算税の賦課決定処分をした事案について、国税通則法第66条第5項の「調査」は、机上調査も含む広い概念であることを明らかにした事例
裁決事例集 第96集
ポイント
本事例は、国税通則法第66条《無申告加算税》第5項に規定する「その提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について…決定があるべきことを予知してされたものでないとき」の「調査」の意義について明らかにしたものである。
要旨
請求人は、国税通則法(通則法)第66条《無申告加算税》第5項に規定する「調査」とは、外部から認識することができる面接調査、すなわち質問検査権の行使をすることであり、部内資料の収集のような手続は「調査」には当たらない旨、また、この点をおくとしても、原処分庁の担当職員(本件担当者)は、請求人の代わりに税務署を訪れた税理士(本件税理士)に税務代理権限証書を提出させていないので、面接時には、本件税理士が請求人に代理して本件担当者の質問調査権の行使を受けたことにならないから、請求人に対する「調査」があったとは認められない旨主張する。
しかしながら、通則法第66条第5項に規定する「調査」とは、課税庁が行う課税標準等又は税額等を認定するに至る一連の判断過程の一切を意味し、課税庁の証拠書類の収集、証拠の評価あるいは経験則を通じての課税要件事実の認定、租税法その他の法令の解釈適用を経て決定に至るまでの思考、判断を含む包括的な概念であり、税務調査全般を指すものと解されるところ、①原処分庁の職員は、署内資料の検討等により、請求人の贈与税の申告が必要であると見込まれると判断していること、②本件担当者は、請求人の贈与税の申告について、本件税理士に面談し、資料の交付や説明をしていることなどが認められるから、これら一連の行為は、課税庁が行う課税標準等又は税額等を認定するに至る一連の判断過程であると認められる。また、面接時には、本件税理士が請求人に代理して本件担当者の質問調査権の行使を受けたことにならないという点については、請求人の本件税理士への連絡、本件税理士と本件担当者の面接の状況等からすると、少なくとも、本件税理士が、請求人に係る贈与税の申告の要否についての税務署での面接において、請求人に代理又は代行して応答し、面接の内容を請求人に報告するという内容の委任契約が成立していたものと認められる。以上のことから、本件においては、通則法第66条第5項に規定する「調査」があったと認められる。
参照条文等
参考判決・裁決
東京高裁平成17年4月21日判決(訟月52巻4号1269頁)
原処分時において資料の提出がないため納付困難であるか否かの判断ができなかったとしても、審判所の調査によって納付困難な税額が算定され、国税通則法施行令第15条第2項第3号に規定する場合でないことは明らかであるから、納税の猶予申請書の納付計画欄の記載は納税の猶予申請手続の必須条件とはいえないとした事例
裁決事例集 第75集 50頁
要旨
原処分庁は、請求人から聴き取った内容を裏付ける資料の提出がなかったことから、納付困難であるか否かの判断ができなかった旨主張するが、当審判所の調査によれば、猶予該当事実に基づく納付困難な税額が算出されるのであるから、納税の猶予不許可処分は違法であり、取り消すべきである。
また、原処分庁は、納税の猶予申請書の「納付計画」欄の記載がなく、その後も請求人は納付計画を明示していないことをもって納税の猶予申請は認めることができない旨主張するが、国税通則法施行令第15条第2項第3号は、分割納付の方法により当該猶予を受けようとする場合には、納付計画を記載することとなっているが、本件はそのような場合でないことは明らかであるから、納付計画の記載が納税の猶予申請手続の必須条件とはいえない。
要旨
売上金額の一部を除外し、これを正規の帳簿に記載のない代表者名義の預金口座に預け入れるとともに当該預金に係る受取利息も収益に計上せずに、所得の金額を過少に記載した確定申告書を提出したことは、偽りその他不正の行為によって、一部の税額を免れようとしたものと認められるので、更正をすることができる期間を5年(昭和56年5月27日以後に法定申告期限が到来するものは7年)とするのが相当であり、また、免れようとした税額に対して重加算税を賦課決定したのも相当である。
外国人であり日本で翻訳・通訳業に従事する請求人について、納税地特定のための住所の認定、各課税通知書及び繰上請求書を差置送達の方法で送達したことの適法性、請求人への繰上請求の適法性、差押処分の適法性などについて、請求人の主張を排斥した事例
裁決事例集 第71集 1頁
要旨
本件においては、(1)請求人は、本件各課税処分を免れるために一時的に外国人登録上の住所のみを変更していたと推認することができ、請求人が本件住所以外に転居したとは認められないから、請求人の生活の本拠は本件住所であると認められ、(2)請求人が出国して本件住所にいなかったとしても、本件各課税通知書及び本件繰上請求書は、請求人の納税地である本件住所に差置送達されたことで請求人の支配下に入ったものといえるから差置送達は適法である、(3)調査担当職員が平成16年12月に請求人に対して調査額の提示を行った後に、請求人が、[1]原処分庁への連絡を絶って外国人登録を本件住所から他へ移し友人宅などを転々と移動していること、[2]請求人名義の銀行口座から短期間に多額の預金を引き出していること、[3]本件住所の不動産の請求人の区分所有権を弟名義に変更していることなどは、請求人が本件課税通知書に係る滞納処分の執行を免れるために行ったものであると認められ、またこれらの事実から、納期限まで待っていては、国税債権の満足な実現を図られないおそれがあり、国税通則法第38条第1項第5号に該当する、[4]国税徴収法第144条に規定する同居の親族でない者を捜索に立ち会わせたこと及び本件捜索調書謄本の納期限と本件繰上請求書に記載された納期限が異なっていたとしても、本件差押処分は、本件捜索により判明した資料に基づいて行われたものではなく、本件捜索以前に既に原処分庁が把握していた資料に基づいて行われたものであるから、本件捜索の適否が本件差押処分の適法性に影響を与えるものではない。
実地の調査に係る手続に原処分を取り消すべき違法又は不当は認められないとした事例( 平成26年分から令和2年分までの所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに重加算税の各賦課決定処分、 平成26年1月1日から平成30年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに重加算税の各賦課決定処分、 平成31年1月1日から令和2年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分・ 棄却)
裁決事例集 第131集
ポイント
本事例は、原処分庁が、その保有する情報及び請求人の確定申告書の記載内容から売上除外を想定し、原始記録及び帳簿書類等の保全のために国税通則法第74条の10《事前通知を要しない場合》に規定する事前通知を要しない場合に該当すると判断したことに、裁量権の逸脱又はその濫用は認められないことから、違法又は不当はないとしたものである。
要旨
請求人は、原処分庁が国税通則法第74条の10《事前通知を要しない場合》に規定する要件に該当しないにもかかわらず、請求人に対して無予告無通知で調査を行ったことから、原処分を取り消すべき違法又は不当がある旨主張する。
しかしながら、原処分庁は、把握していた情報及び請求人の確定申告書の記載内容から売上除外等が想定され、事前通知をすることで請求人が売上げに係る原始記録及び帳簿書類等を破棄するなど不正取引の把握を困難にするおそれがあると認められたため事前通知を要しない場合に該当すると判断したものであり、その判断に全く事実に基づかず明白に合理性に欠けるなど裁量権の範囲を超え、又はその濫用があったとは認められないことから、事前通知をしなかったことに違法又は不当はない。
また、請求人は、請求人から国税通則法第74条の11《調査の終了の際の手続》第2項に規定する調査結果の内容の説明(調査結果説明)を受けることについての同意を受けた代理人税理士(本件税理士)に調査結果説明を行えなかったのであれば、原処分庁は、他の代理人税理士に調査結果説明をすべきであり、調査結果説明がないまま行われた原処分には取り消すべき違法がある旨主張する。
しかしながら、原処分庁は、本件税理士に対して相当の回数、調査結果説明をするために連絡を試みており、本件税理士がこれに応じなかったことは、その機会を自ら放棄したものと認められることから、調査結果説明がなかったことについて、原処分の取消事由となる違法があるとは認められない。
参照条文等
参考判決・裁決
東京高裁平成3年6月6日判決(訟月38巻5号878頁) 平成27年7月21日裁決(裁決事例集No.100) 平成27年5月26日裁決(裁決事例集No.99)
要旨
請求人が本件家屋の所在地に住民登録したのは、住宅公団の地元居住者優先分譲を受けるためであって、本件申告書に添付するために住民登録を異動させたものでないことが認められ、また、譲渡する前に本件家屋に一時的に仮住まいしていたので租税特別措置法第35条の規定に該当すると信じて、住民票の写しを添付したことがうかがわれることから、請求人に仮装の意図があったとは認められず、したがって、重加算税を賦課することは相当でない。
要旨
請求人は、原処分庁が確定申告の早期審査の責任を果たさず、請求人の確定申告の審査及び修正申告のしょうようを遅延したもので、これは国税通則法施行令第26条の2に規定するいわゆる「人為による災害又は事故」に該当するから、修正申告をするまでの期間に対応する延滞税を免除すべきである旨主張し、延滞税に係る督促処分の取消しを求めている。
しかしながら、本件延滞税は、適法に確定し、かつ、完納されていないから、本件督促処分は適法であって、違法、不当な点はない。
仮に、請求人の主張どおり、延滞税を免除することができる場合に該当し、免除しないことが違法であるとしても、当然に免除の効果が発生するわけではないから、現実に免除がされておらず本件各延滞税が存在する以上、原処分の適法性に何ら影響はない。
なお、確定申告の審査事務の処理の時期及び方法は税務署長の裁量にゆだねられており、少なくとも法定の更正の期間制限内の是正処理は法が当然予定しているところと解され、審査等を遅延したという請求人の主張には理由がない。また、国税通則法施行令第26条の2の「人為による異常な災害又は事故」は、当該災害又は事故が納税者の責に帰すべき事由により生じたものである場合は除かれるところ、本件では、請求人自身が誤った確定申告書を作成して提出したことから、原処分庁による指摘が必要となったものであり、そもそも請求人の責に帰すべき事由により生じた事態であるから、請求人の主張することは「人為による災害又は事故」に該当しない。
新賃借人が旧賃借人の敷金を承継することを賃貸人が承諾した等の特段の事情がある場合、敷金返還請求権は新賃借人に承継され、新賃借人が目的物を明け渡した時に、新賃借人に対する被担保債権を控除した残額について発生するところ、原処分庁は敷金返還請求権の取立てを完了していることから、差押処分は消滅しているとした事例(各敷金返還請求権の各差押処分・却下)
裁決事例集 第95集
要旨
原処分庁が行った各敷金返還請求権(本件各敷金返還請求権)の各差押処分(本件各差押処分)について、本件各敷金返還請求権は、旧賃借人である滞納法人から新賃借人である請求人に承継することを賃貸人が承諾した等の特段の事情があることから、滞納法人から請求人に承継され、請求人が目的物を明け渡した時に、請求人の被担保債権を控除した残額につき発生するものである。そして、本件各敷金返還請求権は、既に原処分庁が取立てを完了していることが認められ、本件各差押処分はその目的を完了して消滅している。ところで、行政処分の取消しを求めるについて、その取消しを求める処分の効力が現に存在していることが必要であるところ、本件各差押処分は上述のとおりその目的を完了して消滅している。したがって、請求人には、本件各差押処分の取消しを求める法律上の利益はなく、本件各差押処分に対する審査請求は、請求の利益を欠く不適法なものである。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和48年2月2日第二小法廷判決(民集27巻1号80頁) 最高裁昭和53年12月22日第二小法廷判決(民集32巻9号1768頁)
更正の請求を提出することができる者は、納税申告書を提出した者に限られ、第三者が債権者代位権又は取消権の行使として、更正の請求を提出することはできないとした事例(平成24年分贈与税に係る更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分・棄却)
裁決事例集 第111集
ポイント
本事例は、国税通則法第23条第1項は、更正の請求をすることができる者として、納税申告書を提出した者と規定しており、その趣旨は、申告納税方式では、納付すべき税額は課税要件に関する事実関係に最も通じている納税者自らの申告により確定することが原則とされており、その税額が過大であった場合の是正手続も、納税申告書を提出した納税者自らが行うことが申告納税方式に適合するからであると解されるとしたものである。
要旨
請求人らは、贈与税の申告書を提出した者に対し有する金銭債権を保全するため、債権者代位権又は取立権の行使として、更正の請求をすることができる旨主張する。
しかしながら、国税通則法(平成27年法律第9号による改正前のもの)第23条《更正の請求》第1項は、更正の請求をすることができる者として納税申告書を提出した者と規定しており、その趣旨は、申告納税方式では、納付すべき税額は課税要件に関する事実関係に最も通じている納税者自らの申告により確定することが原則とされており、その税額が過大であった場合の是正手続も、納税申告書を提出した納税者自らが行うことが申告納税方式に適合するからであると解される。また、納税者の債権者等の第三者が更正の請求をすることができるとすると、更正をした場合には納税者の課税標準等又は税額等に係る情報を当該第三者に知らせることになり、国税通則法第126条及び国家公務員法第100条《秘密を守る義務》第1項に規定する守秘義務に抵触することとなるが、その解除を規定した法令は存在しない。したがって、国税通則法は更正の請求をすることができる者を、納税申告書を提出した者に限定していると解するのが相当である。
参照条文等
期限内又は期限後申告にかかわらず、当初の申告書が提出された場合には、その後に帳簿書類が押収されたとしても、国税通則法施行令第6条第1項第3号に規定する「やむを得ない事情」に該当しないとした事例
裁決事例集 第53集 78頁
要旨
一般的に、国税通則法第23条(更正の請求)第2項第3号及び同法施行令第6条(更正の請求)第1項第3号は納税申告書を提出した者又は同法第25条(決定)による決定を受けた者が、帳簿書類の押収等の事情により、課税標準等又は税額等を計算することができなかった場合において、その後(ただし、納税申告書を提出した者については、同法第23条第1項所定の期間経過後に限る。なお、上記の者による上記期間経過以前の更正の請求は、同項によりすることができる。)、帳簿書類の押収等の事情が消滅した時は、同項の規定にかかわらず、上記事情消滅の時から2か月以内に更正の請求をすることができると規定しているのであって、上記規定は、納税申告書を提出した者については、その提出前に帳簿書類の押収等の事情が生じていたことを前提としており、その後(同法第23条第1項所定の期間経過後)、押収されていた帳簿書類の還付等により上記事情が消滅して、帳簿書類等に基づいて課税標準等又は税額等を計算することによって、帳簿書類に基づく計算をすることができなかった当初の申告に係る納付すべき税額が過大であったこと等が初めて判明した場合に、帳簿書類等に基づき計算した課税標準等又は税額等に従った更正の請求をすることを認めたものであり、期限内又は期限後申告にかかわらず、当初の申告書が提出された場合には、その後に帳簿書類が押収されたとしても、国税通則法施行令第6条第1項第3号に規定する帳簿書類の押収その他やむを得ない事情に該当しない。
期限後に提出された申告書は還付請求申告書に該当するので、更正処分により賦課すべき加算税は過少申告加算税になるとして無申告加算税の賦課決定処分の一部を取り消した事例
裁決事例集 第61集 39頁
要旨
書類の提出等に係る効力の発生時期については、一般には、その書類が税務官庁へ到達した時(いわゆる到達主義)に効力が生ずると解されるところ(民法第97条第1項参照)、納税申告書については、郵便事情等を考慮し、また、納税者と関係税務官庁との地理的間隔の差異に基づく不公平を是正するために、到達主義の例外として、国税通則法第22条で、「納税申告書が郵便により提出された場合には、その郵便物の通信日付印により表示された日にその提出がされたものとみなす。」と規定されているものである。
請求人は、通信日付印が平成12年3月16日であったとしても、同月15日中に郵便ポストに投かんしたものを期限内申告書として取り扱わないのは不合理である旨主張するが、一方で、本件封筒には平成12年3月16日の通信日付印が押印されることを知っており、さらに、国税通則法第22条の規定により、本件申告書が通信日付印の日である平成12年3月16日提出されたものとみなされることを知りながら、本件申告書を本件郵便ポストに投かんしたと認められる。また、当該郵便局では、平成12年3月15日及び同月16日において、平常どおりの業務が行われており、誤って同日の通信日付印が押印された事実は認められない。
そうすると、本件申告書は、国税通則法第22条の規定により、本件封筒の通信日付印により表示された平成12年3月16日に提出されたものとみなすのが相当であり、本件申告書は期限後申告書となるので、本件更正処分は適法である。
なお、請求人は、申告書を3月15日中に郵便ポストに投かんした場合も、時間外収受箱に投かんした場合と同様に、期限内申告書として取り扱うべきである旨主張するが、本件申告書は郵便により提出されたものであるから、原処分庁が、国税通則法第22条の規定に従い、本件申告書を期限後申告書として取り扱ったことは相当であり、この点に関する請求人の主張には理由がない。
本件申告書は期限後申告書であるが、国税通則法第65条第1項に規定する還付請求申告書に該当し、かつ、本件更正処分も還付金の額に相当する税額を減額するものであるので、本件更正処分により賦課すべき加算税は、同項に規定する過少申告加算税ということになる。
ところで、本件更正処分に伴い、国税通則法第66条の規定に基づき賦課した無申告加算税の賦課決定処分については、その適用条文を誤ったものであるが、無申告加算税又は過少申告加算税は共に無申告又は過少申告による申告義務違反の発生を防止する趣旨で課される税であり、本質において変りはないと解される(最高裁昭和40年2月5日第二小法廷判決参照)ことから、無申告加算税の賦課決定処分のうち過少申告加算税相当額を超える部分を取り消すのが相当である。
要旨
本件和解は、申告に係る課税標準等又は税額等の基礎となる事実に異動が生じたといえる内容ではないから、国税通則法第23条第2項第1号に掲げる「和解」には該当しない。
法人の欠損金の繰戻しによる還付金の充当適状日は、税務署長が還付の決定をした日であるから、同日までの日数に応じた延滞税を含む滞納国税への充当処分をしたことは適法であるとした事例
裁決事例集 第47集 16頁
要旨
請求人は、法人の欠損金の繰戻しによる還付金の充当適状日は、請求人が還付請求をした日とすべきであるから、同日以後の延滞税を含めた滞納国税に還付金を充当したことは違法である旨主張するが、税務署長が法人税法第81条第6項の規定に基づき還付請求についての調査に基づいて還付の決定をした日を充当適状の日として、本件還付金の一部を当該日までの延滞税を含む滞納国税に充当した原処分は相当である。
また、請求人は、原処分庁に対し口頭により、欠損金額の内容及び欠損金の繰戻しによる還付金の発生についての説明を行っていることから、滞納国税に係る納税の猶予の要件は充足しているので、延滞税の一部は免除すべきである旨主張するが、請求人は、納税の猶予の申請書を提出していず、納税の猶予の要件を満たしていないので、延滞税の免除の適用はない。
要旨
請求人は、[1]本件確定申告書が期限後申告となったのは、税務職員の誤指導によるものであるから、国税通則法第66条第1項ただし書の「正当な理由」に該当する、[2]期限後申告が誤指導によるものであり、本件消費税等の税額を法定申告期限内に納付していることを考慮すれば、無申告加算税を課することは、請求人に酷すぎるものであり、同項ただし書の「正当な理由」に該当する、[3]本件消費税等の税額を法定申告期限内に納付しているのであるから、租税債権として確定することが可能であり、無申告加算税を賦課することは申告の適正を担保し申告納税制度を確保するために行政上の制裁として設けられた制度の趣旨からも不当である旨主張する。
しかしながら、請求人が主張するような誤指導の客観的な事実を認めることができないこと、期限後申告となったのは、請求人が税務申告を委託した会計事務所職員が消費税について申告期限延長制度がないことを知らず、請求人の法人税の申告期限の延長が承認されていることから消費税等についても申告期限延長制度があるものと誤認していたためであり、消費税法の不知又は誤認であることから、「正当な理由」に該当しない。
また、申告納税方式においては、確定申告書の提出が納税義務を確定させるために重要な意義を有することから、納税者の法定申告期限内の申告書提出義務の不履行に対して、同項の規定により、行政上の措置として、一律に無申告加算税が賦課されるものであり、当該申告書に係る税額が法定申告期限内に納付されたか否かにより、同項の規定の適用が左右されるものではない。
申告もれの土地譲渡について具体的に指摘した来署依頼状の送付後になされた修正申告書の提出は、国税通則法第65条第5項に規定する調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたというべきであるとした事例
裁決事例集 第52集 31頁
要旨
請求人は、本件修正申告書の提出が国税通則法第65条第5項に規定する調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたものではないと主張するが、同法第65条5項の「調査」とは課税庁が行う課税標準又は税額等を認定するに至る一連の判断過程の一切を意味するものであり、課税庁の証拠書類の収集、証拠の評価あるいは経験則を通じての課税要件事実の認定、租税法その他の法令の解釈適用を経て更正処分に至るまでの思考、判断を含む極めて包括的な概念であり、課税庁が確定申告書を検討して納税者の過少申告を把握し、これを当該納税者に連絡したような場合には「調査があったこと」に該当する。本件では申告もれの土地譲渡について具体的に指摘した来署依頼状の送付後に修正申告書が提出されているから、修正申告は調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたというべきである。
異議審理手続において異議審理庁が原処分の理由を追加した事案で、原処分庁の手続に違法、不当がないとした事例(平成21年分及び平成22年分の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第96集
要旨
請求人は、異議申立てに係る審理は、争点主義を採用し、納税者が違法であると主張している争点についてだけ審理・判断を行うべきであるのに、異議審理庁が異議決定において、新たに、原処分では争いがなかった請求人の不動産所得の金額を算定し、総所得金額が原処分を上回るから原処分は適法であるとして棄却したことは、原処分を取り消すべき不当な事由に当たると主張する。
しかしながら、審査請求の対象は原処分であり、裁決は、原処分が違法又は不当であるときにこれを取り消すものであるところ、異議申立ての審理・判断に仮に瑕疵があったとしても、それは原処分に対する不服申立手続において生じた原処分後の事情であって、そのことによって原処分それ自体が違法又は不当となることはないから、原処分を取り消す理由とはなり得ない。なお、原処分は、行政手続法第14条《不利益処分の理由の提示》に規定する理由の提示に欠けるところはなく、また、原処分庁が原処分の理由と異なる理由を審査請求で主張することにつき、これを制限する法令はなく、審判所がこれを審理することは、当事者の主張(争点)を審理の対象とするものであるから、争点主義的運営にも反するものではない。
参照条文等
行政手続法第14条
要旨
国税通則法第65条“過少申告加算税”第4項の「正当な理由」とは、過少申告が真にやむを得ない理由によるものであって、納税者に過少申告加算税を賦課することが不当若しくは酷になる場合をいうものと解され、それが納税者の税法の不知や誤解に基づく場合は、これに当たらない。
相続人間において相続財産の帰属について係争中であっても、[1]本件各株式が相続財産に含まれることが明らかであること、[2]請求人がこれを認識していること、[3]相続人の一人であるB女は本件各株式を相続財産に含めて申告していることなどからすれば、請求人に過少申告加算税を賦課することが不当若しくは酷になるとは到底いえず「正当な理由」はない。
要旨
相続税法第34条《連帯納付の義務》第1項の連帯納付義務は、本来の納税義務(租税債務)を担保するため、相続人に課された特殊な義務であり、租税債権が消滅しない限り、これを担保するために存続するものと規定されている点等を考慮すると、担保される租税債権と別個に時効消滅することは法の予定するところではないというべきである。そして、同様の趣旨から、独立の時効消滅を認めていない民法第457条《主たる債務者について生じた事由の効力》第1項が類推適用されるべきである(大阪高等裁判所平成14年2月15日判決、最高裁判所平成14年9月13日第二小法廷決定)から、本来の納税義務者に対して生じた時効の中断の効力は、連帯納付義務者にも及ぶと解するのが相当であり、また、連帯納付義務が、相続税徴収の確保を目的として、相続人に課された特殊な義務であることからすれば、本来の納税義務者に対する徴収の猶予の効果は、連帯納付義務者にも及ぶと解するのが相当である。
参照条文等
相続税法第34条第1項 国税通則法第72条第1項、第73条第1項第4号、第4項 民法第457条第1項
破産法人がその取締役の滞納国税のために破産宣告前にした納税保証は、適法有効な担保提供手続(保証契約)によるものであり、破産手続の開始によって何らの影響も受けないとした事例
裁決事例集 第52集 18頁
要旨
- 請求人は、本件保証契約の存在を明らかにする書面の不存在を理由に、株式会社Fを保証人と認めることはできない、又は保証契約は無効と主張するが、その主張に係る担保提供書、納税保証書及び取締役会議事録写しは、いずれも所定の手続に従って作成され原処分庁に提出されていることが確認でき、また、担保提供手続に瑕疵は認められないので、本件保証契約は有効に成立していると認めることができる。
また、取締役会の承認決議は、議事録写しの記録、内容及び印鑑証明書等の添付書類から適法有効になされていることが認められるから、請求人の主張はいずれも理由がない。 - 本件保証契約締結において、株式会社Fには破産手続が開始されたときの本件保証国税の優先配当権につき法律行為の要素の錯誤があるから保証契約は無効と主張するが(本件保証国税に破産手続における優先配当権を主張する効力はない。)、保証国税に優先配当権があるかどうかは、当然には本件保証契約の意思表示の内容の主要部分を成すものではないから、錯誤に基づく本件承認決議及び契約締結行為は無効であるとする主張は採用することができない。
- 請求人は、原処分庁に信義則義務違反がある旨主張するが、本件保証契約が締結された時点において、原処分庁はもとより、滞納者又は株式会社Fのいずれにおいても、株式会社Fが破産を宣告されるという事態に至ることを予測していたとは認められない。
したがって、原処分庁は破産という特殊な事態を想定して、破産手続における保証国税の効力について株式会社Fに知らしめるべき信義則上の義務を負っていたとする主張は採用することができない。
租税特別措置法第35条の居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用を受ける旨の確定申告書を提出した者が、その後に、住宅取得等特別控除の適用を受けるため、居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用を受けない旨の修正申告書を提出することは認められないとした事例
裁決事例集 第50集 13頁
要旨
請求人は、租税特別措置法第35条の居住用財産の譲渡所得の特別控除を適用して確定申告書を提出したのは錯誤に基づくものであり、当該特別控除の適用を受けないこととした修正申告書は国税通則法第19条により適法であるから、翌年分の住宅取得等特別控除の適用を認めるべきである旨主張するが、請求人の居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用を受ける旨記載した確定申告書は、当該特別控除の適用要件を具備した適法なものであるから、その後において、修正申告書によってその適用を受けない旨に変更することはできず、当該確定申告書の提出に錯誤は認められないから、翌年分については、租税特別措置法第41条第6項の規定により住宅取得等特別控除の適用はない。
要旨
請求人は、昭和62年に調査を受けて、印刷設備の減価償却費の計算誤りがあったなどとして修正申告をしたが、その際、その時点における修正申告のしょうように関する具体的状況は明らかでなく、仮に、請求人の主張するとおりの指導があったとしても、修正申告のしょうようをもって、直ちに納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示したとはいえず、また、請求人がその後毎年提出した確定申告書が、原処分庁によって受理され、これまでの調査において中古の印刷設備の耐用年数について何ら是正を求められなかったからといって、原処分庁が請求人の減価償却費の計算方法について積極的に是認したとはいえず、信頼の対象となるべき公的見解が表示されたとも認められない。
さらに、本件各更正処分は、本件各中古印刷設備の耐用年数の適用誤りがあったことから行われた適正な課税処分であり、その結果、請求人は、法律の規定に従って正当な法人税額を負担することになったにすぎず、請求人が本件各更正処分を受けたことにより、特に経済的不利益を被ったとは認められない。
以上のことからすれば、本件各更正処分には、信義則に反するとして取り消すような違法は認められない。
要旨
請求人が買換資産である車両を請求人の代表者が事業の主宰者となっている甲社及び乙社から取得する際に、実際の取引当事者でないディーラーに協力を求めて、ディーラーから高価で買い入れたごとく架空の売買契約書を作成して、当該売買価額があたかも通常取引される価額であるかのように仮装し、これに基づいて圧縮限度額を過大に計算して損金の額に算入した上、過少に確定申告をした行為は、国税通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺい又は仮装に該当する。
納税申告書をその法定申告期限に郵便ポストに投函して郵送したが、郵便の取り集め時間後であったため納税申告書の通信日付が翌日となり、期限後申告となった場合は、国税通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由」がないとした事例
裁決事例集 第53集 88頁
要旨
本件納税申告書は、平成8年3月29日には作成されており、法定申告期限内に税務署に提出できる状況下にあったにもかかわらず、[1]請求人の代表者から本件納税申告書を提出するよう指示を受けた使用人が、職務多忙のため提出することを失念していたこと、[2]請求人は、従来どおり、郵便局から書留扱いで郵送するべきところを失念し、本件ポストに表示されていた郵便物の取り集め時間の確認もしなかったこと、[3]郵便局における郵便物の平日の窓口引受時間は午後7時、速達便に限り同8時であること、[4]本件納税申告書を事務所から距離的に本件ポストと変わらない郵便局から郵送することに何の支障もなかったにもかかわらず、本件ポストに投函して郵送したこと等の状況から判断すると、本件納税申告書が期限後申告書となった事情は、請求人が、本件納税申告書を提出するに当たり当然払うべき注意義務を怠ったことによって生じたものであり、真にやむを得ない事情は認められず、国税通則法第66条(無申告加算税)第1項ただし書に規定する「正当な理由」があるとは認められない。
要旨
請求人が更正の請求の根拠とする確定判決は、請求人の納税義務に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となる共有持分の範囲、譲渡の有効性、代金等について何ら判断していないことが明らかであり、国税通則法第23条第2項第2号に定める「判決」には当たらないから、更正の請求には理由がない旨の通知処分に違法はない。
課税土地譲渡利益金額の計算上控除される譲渡経費の算定方法につき、確定申告において概算法を採用したときには、後日、実額配賦法を採用して更正の請求をすることはできないとした事例
裁決事例集 第38集 1頁
要旨
請求人が、課税土地譲渡利益金額の計算上控除される譲渡経費の額の計算に当たって概算法又は実額配賦法のいずれの方法を用いて申告するかは、専ら請求人の自由な選択にゆだねられているところ、請求人は、確定申告時において概算法を選択しているのであるから、仮に、その後、実額配賦法の方が譲渡経費の額が多くなるとしても、概算法による計算に誤りがない以上、国税通則法第23条第1項第1号に規定する「課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと」又は「当該計算に誤りがあったこと」のいずれの要件にも該当せず、したがって、同条に定める更正の請求をすることはできない。
請求人が主張していない行政手続法第14条に基づく理由の提示につき、審判所の調査の結果、理由の提示に不備があったと認定した事例( 平18.9.1~平19.8.31までの事業年度以後の法人税の青色申告の承認の取消処分、 平19.9.1~平20.8.31、平21.9.1~平22.8.31、平23.9.1~平24.8.31の各事業年度の法人税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分、 平19.9.1~平20.8.31、平21.9.1~平22.8.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分、 平18.9.1~平19.8.31、平20.9.1~平21.8.31の各事業年度の法人税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分、平22.9.1~平23.8.31の事業年度の法人税の更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、 平18.9.1~平19.8.31、平20.9.1~平21.8.31、平23.9.1~平24.8.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分、平19.9.1~平20.8.31、平21.9.1~平22.8.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の重加算税の各賦課決定処分、平22.9.1~平23.8.31の課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分・ 棄却、 一部取消し)
裁決事例集 第97集
要旨
原処分庁は、所得の金額の計算上、法人税の確定申告書において損金の額に算入していた青色欠損金額(当期控除額)を加算されることが更正通知書(本件通知書)に示されていないことについて、当期控除額を加算する理由(本件理由)は、青色申告の承認の取消処分に伴うものであり、法文の規定上明らかであることから、請求人においても容易に認識でき、理由の提示不備の違法はない旨主張する。
しかしながら、行政手続法第14条《不利益処分の理由の提示》第1項本文が、不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは、名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解されることから、更正処分をする際は、当該更正通知書自体に法の要求する程度にその理由を示す必要がある。よって、本件通知書は、本件理由の提示がなく、本件通知書自体から当期控除額を所得金額に加算する旨を特定し得る程度の理由を示していないことは明らかであるから、本件理由の提示不備の違法があると判断するのが相当である。なお、本件通知書は、本件理由の提示のないことが更正処分全体の理由の提示を不備なものとする程度に至るとは認められず、また、他に更正処分に係る理由の提示に不備があるとも認められない。
参照条文等
行政手続法第14条
参考判決・裁決
最高裁平成23年6月7日第三小法廷判決(民集65巻4号2081頁)
要旨
- 調査担当職員の行為は、社会通念上合理的な裁量の範囲を逸脱したものとは認められないから、質問検査権の範囲を逸脱したものではなく、請求人の主張は採用できない
- 請求人は、その余の部分については明確に主張しないが、原処分関係資料に基づき、その当否について検討すると次のとおりである。
- 平成元年分の譲渡所得の金額についてみると、原処分庁は譲渡所得の特別控除額を控除していない。したがって、平成元年分の更正処分はその一部を取り消すべきである。
- 重加算税の賦課決定処分についてみると、請求人は、取引先は2社のみであるとして、両者のみに係る帳簿等を提出しているが、請求人には両社以外に7社の取引先がある。
したがって、原処分庁が重加算税の賦課決定処分をしたことは相当である。
しかしながら、原処分庁は、青色申告の承認取消しに伴い増加した所得以外の金額について、すべて重加算税の対象としているが、重加算税の対象所得金額は、収入金額を故意に除外していたと認められる7社の収入金額を限度とすべきである。
そうすると、重加算税の賦課決定処分はその一部を取り消すべきである。
請求人に対する決定処分は、違法な調査に基づいて行われたものではないとした事例(平成21年分所得税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分並びに平成25年分所得税及び復興特別所得税に係る無申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第103集
ポイント
本事例は、先物取引の差金等決済に係る損失の繰越しのみを求めるための申告書を提出できる期限は、その申告書を提出することができる日から5年を経過する日までとした申告指導等に誤りはないとしたものである。
要旨
請求人は、原処分庁の行った平成21年分の所得税の決定処分(本件決定処分)は、①国税通則法(通則法)第74条の11《調査の終了の際の手続》第2項に規定する調査結果の説明を口頭で行っていないなど、調査終了の際の手続が不十分であること、②平成20年分の所得税につき、少なくとも法定申告期限から7年間は期限後申告が可能であったにもかかわらず、原処分庁が請求人に対して、法定申告期限から5年間が期限後申告書を提出できる期限であるとの指導(本件申告指導)をし、請求人は、不当な本件申告指導により、平成20年分の所得税の期限後申告書の提出を制限され、結果、平成21年分の所得税において、前年分の先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除が不可能な状態を強いられ、その後に本件決定処分がなされたという事情があることから、通則法第25条《決定》に基づく適法な調査によるものとはいえず、取り消されるべきである旨主張する。
しかしながら、上記①の主張について、本件における調査手続には、課税処分を取り消すべき違法な点はなく、また、上記②の主張について、請求人の平成20年分の所得税の期限後申告書は、その申告書を提出できる日から5年を経過する日が提出できる期限であると解されるところ、本件申告指導を行った時点において、既に当該期限を経過していたのであるから、本件申告指導により平成20年分の期限後申告を行う権利を制限されたとする請求人の主張はその前提を欠く。したがって、本件決定処分は、通則法第25条に規定する「調査」に基づいて適法に行われたものであり、取り消すべき違法はない。
参照条文等
参考判決・裁決
富山地裁平成19年3月14日判決(税資257号順号10655) 名古屋高裁金沢支部平成19年9月12日判決(税資257号順号10773) 水戸地裁平成21年2月17日判決(税資259号順号11142)
請求人に相続による納付義務の承継があったことを前提として行われた本件差押処分について、請求人が相続放棄をしているから違法である旨の主張が認められなかった事例
裁決事例集 第55集 1頁
要旨
請求人は、被相続人の死亡当時被相続人と住所を同じくしており、また、請求人が被相続人の死亡当日に死亡届出を行っているのであるから、被相続人の死亡の日にその事実を知ったものと認めるのが相当である。
また、請求人らがJセンターへ売却した不動産は、被相続人の死亡により相続財産となり、平成7年3月31日受付で相続を原因として請求人の法定相続分とは異なる持分による所有権移転登記がなされているから、請求人は、遅くとも当該登記受付の日までに、遺産分割協議書に署名捺印することにより被相続人が死亡した事実を知ったことになる。
以上のとおり、請求人は民法第921条第2号に規定する同法第915条第1項の期間内に相続の放棄をしなかったときに該当するから、請求人がW家裁に相続放棄申述書を提出してなした相続の放棄は、同家裁の受理審判にかかわらず、それが効力を有するための実体的要件を欠いて無効であり、同法第921条の規定により単純承認したものとみなされる。
したがって、請求人は、民法第920条の規定により、無限に被相続人の権利義務を承継し、相続人として国税通則法第5条第1項及び第2項の規定に基づき、法律上当然に被相続人の滞納国税のうち請求人の法定相続分である4分の1の額725,825円を承継し、この納付義務を負う。
また、本件差押処分の手続に違法な点はない。
請求人の常務取締役として経営に参画し、担当部門に係る取引全般を総括的に委任されている者の行った仕入金額の架空計上は、たとえそれを請求人の代表者が知らなかったとしても、請求人の隠ぺい又は仮装行為と同視すべきであり、重加算税の賦課決定は適法であるとした事例
裁決事例集 第40集 8頁
要旨
請求人は仕入金額の架空計上は、請求人の常務取締役であるA男に全面的に任せている部門に係るものであり、しかもそれはA男が私欲に基づき行ったもので、請求人の代表者はその不正経理を知らなかったから、その架空計上は請求人の行為には当たらず、これに重加算税を賦課するのは違法であると主張するが、重加算税の賦課の目的は、隠ぺい又は仮装に基づく過少申告による納税義務違反の発生を防止し、申告納税制度の信用を維持するところにあることから、隠ぺい又は仮装の行為者が法人の代表者に限定されるものではなく、その役員及び家族等で経営に参画していると認められる者の行為は、法人の代表者がそれを知らなかった場合であっても当該法人の行為と同視されるべきものであり、A男は請求人の常務取締役として経営に参画し、担当部門に係る取引全般を総括的に委任されている者であることから、A男の行った仕入金額の架空計上は請求人の行為と同視すべきものであると認められ、これに重加算税を賦課したのは適法である。
請求人の異議申立ては、不服申立期間の経過後になされた不適法なものであるから、国税通則法第75条第3項の規定により、本件審査請求も不適法であるとした事例
裁決事例集 第56集 92頁
要旨
請求人は、原処分庁に提出した異議申立ては、国税通則法第77条第1項に定める不服申立期間を経過しているが、同条第4項ただし書で定める正当な理由に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人は、平成6年10月16日に原処分に係る通知を受けていることが認められ、当該処分に係る通知を受けた日の翌日から起算して2月を経過する日(平成6年12月16日)が、処分のあった日の翌日から起算して1年を経過する日(平成7年10月16日)以前に到来していることからすると、国税通則法第77条第4項の規定が適用される余地はなく、本件の異議申立てが適法なものと認められる不服申立期間は、「天災その他やむを得ない理由」がない限り、同条第1項の定めにより、当該処分に係る通知を受けた日の翌日から起算して2月を経過する日である平成6年12月16日までとなる。
国税通則法第77条第3項に規定する「天災その他やむを得ない理由」とは、不服申立人が不服申立てをしようとしても、その責に帰することができない事由により不服申立てをすることが不可能であると客観的に認められるような事情が存する場合をいうと解されているところ、請求人の主張する事情は、それに当たらない。
不動産売買契約の解除に伴う損失は当該契約解除のあった日の属する事業年度の所得金額の計算上、損金の額に算入すべきものであって、国税通則法第23条第2項の規定により、そ及して所得金額を減額修正することはできないとした事例
裁決事例集 第46集 6頁
要旨
国税通則法第23条第2項の各号に該当する後発的事由が発生しても、個々の税法の課税要件の実体規定に基づき、課税標準等の変動をどう処理すべきかその内容を検討し判断すべきであり、後発的事由が同項の各号に該当することのみをもって当然に更正の請求ができると解すべきでない。
不動産売買契約の解除に伴う損失は、法人税法第22条第4項の規定による一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従い、当該契約解除のあった日の属する昭和54年4月期の所得金額の計算上、損金の額に算入すべきものであるから、国税通則法第23条第2項の規定を適用し、当該売買契約が締結された昭和49年4月期にそ及して所得金額を減額修正すべきものではない。
要旨
請求人は、原処分が違法である理由として、[1]本件各申告書をその法定申告期限内にA社に引き渡しているのであるから、本件各申告書は期限内申告書であること、[2]国税通則法第66条の規定の趣旨は、納税者に正しい税額の計算と期限内納税を行わせるためのものであるところ、請求人は本件各申告書に記載した納付すべき税額を法定期限内に完納していること、しかも、同条の規定自体が、納税額がある者だけに課されるなど不合理なものであり法改正されてしかるべきであること、を主張する。
しかしながら、納税者から納税申告書が提出された場合、いつの時点をもって提出日とするかについては、原則として申告書が税務官庁に到達した日(到達主義)と解されており、また、この到達主義の例外として、国税通則法第22条は、納税申告書が郵便又は信書便により提出された場合には、その通信日付印により表示された日に提出されたとみなす旨規定しているところ、本件各申告書の提出日については法定申告期限の翌日に原処分庁に到達していることが認められ、また、A社は信書便事業者ではないので信書便により提出された場合に該当しないことから、本件各申告書を法定申告期限内に提出したとする請求人の主張には理由がない。
次に、無申告加算税の規定は、納税申告書の提出が期限内にされなかった場合の行政上の制裁として設けられたものであるから、納税申告書に記載された納付すべき税額が法定納期限内に完納されたか否かということで、その適用が左右されるものではなく、この点に関する請求人の主張は採用できない。
なお、国税通則法第66条の規定は合理性がないもので法改正されてしかるべきものである旨の主張については、当審判所の権限外のことであり審理の限りでない。
修正申告書の提出について、国税通則法第65条第5項に規定する「更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当しないとして、これを排斥した事例
裁決事例集 第60集 62頁
要旨
本件修正申告書の提出は、請求人が本件確定申告書の提出に当たり配偶者特別控除の規定の適用を誤ったことに起因し、かつ、当該誤りを是正するために行われたものであって、当初適正であった申告につきその後の事情の変化により過少申告となったことによりされたものではないことは明らかであり、国税通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」がある場合には該当しないというべきである。
また、所得税法は、いわゆる申告納税制度を採用しており、この制度の下では、納税者が自己の判断と責任において、課税標準等及び税額等を法令の規定に従い計算し、適正な申告をすることが求められているのであるから、原処分庁が申告の誤りを確定申告書の提出後直ちに指摘しなかったとしても、そのことで法令の適用を誤った請求人の責任が原処分庁に転嫁されるものではなく、この点に関する請求人の主張には理由がない。
そして、原処分庁は、本件確定申告書の内容を検討した結果、請求人には配偶者特別控除の規定が適用されず、結果として過少申告になっていることを把握し、その是正を行うために請求人に本件はがきを送付し、来署を依頼したこと、その後、原処分庁は、請求人が来署しないため、修正すべき内容を記入した本件修正申告書用紙を請求人に送付し、請求人はこの本件修正申告書用紙に署名押印して原処分庁に提出したことが認められる。
以上の事実によれば、本件において納税者宅に赴く等の直接的な調査までは行われていないが、原処分庁が確定申告書を精査検討して過少申告の事実を把握した事実が認められ、このことは国税通則法第65条第5項に規定する「調査」に該当すると認められるし、また、本件修正申告書の提出は、修正すべき内容を記入した本件修正申告書用紙の原処分庁からの送付を受け、本件確定申告書の誤りを原処分庁から指摘されたことによるものであり、同項に規定する「更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当しないというべきである。
催告後6か月以内にされた承認によっても、民法第153条が規定する催告による時効中断効が生じるとした事例( 第二次納税義務の納付告知処分、 不動産の差押処分・ 棄却)
裁決事例集 第107集
ポイント
本事例は、催告後6か月以内にされた承認によっても、民法第153条が規定する催告による時効中断効が生じると解するのが相当であるとしたものである。
要旨
請求人は、滞納者(本件滞納者)の滞納国税(本件滞納国税)に係る債務の承認によって催告による時効中断の効力が生じるとする原処分庁の民法第153条《催告》の解釈は誤っており、本件滞納国税の徴収権の時効は中断していない旨主張する。
しかしながら、民法第153条は、債権者の催告について、債権者が正規の中断事由によって補強することにより時効中断の効力を認めるものであって、正規の中断手続をとるのが遅れることにより時効が完成するのを防ぐ便法として機能することを期待して定められたものと解され、債権者の催告について、債務者の行為による正規の中断事由である承認を、債権者の行為による正規の中断事由と区別する理由はないというべきであるから、催告後6か月以内にされた承認によっても、民法第153条が規定する催告による時効中断効が生じると解すべきである。
これを本件についてみると、本件滞納者の行った承認は、原処分庁が差押予告書(本件差押予告書)の送達によって行った本件滞納国税についての催告後6か月以内にされたものであるから、当該承認によって、本件差押予告書による催告の時効中断の効力が生じたものと認めるのが相当である。
参照条文等
国税通則法第72条第1項、第3項 民法第147条、第153条
参考判決・裁決
大阪高裁平成18年5月30日判決(判タ1229号264頁) 大審院昭和4年6月22日判決(民集8巻597頁) 最高裁昭和43年6月27日第一小法廷判決(民集22巻6号1379頁)
要旨
請求人は、譲渡物件を一括して譲渡したにもかかわらず、これを年を異にして譲渡した旨の契約書を作成し、さらに、受領した代金のうち2分の1を超える金額を譲受人からの借入金であるとする仮装の借用証書を作成するなど、真実の取引に基づかない契約書等を基に所得金額等を算定して申告していることは、国税通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺい又は仮装に該当する。
出資口の譲渡について、売買契約の要素に錯誤があるとして契約解除したことが、国税通則法第23条第2項に規定する「やむを得ない理由」に該当しないとした事例
裁決事例集 第65集 9頁
要旨
請求人は、保有していた同族会社の出資口の譲渡について、本件売買契約に当たっては、譲受人に新たな課税関係が生じないことが重要な要素となっていたのであるから、重要な要素に錯誤があり、当該契約を解除したことが国税通則法第23条第2項に規定する後発的な理由に該当し、更正の請求ができる旨主張する。
しかしながら、当該契約の要素の錯誤は、[1]当該契約は口頭で行なわれ、請求人の主張する事情が売買契約の条件として表示されていたものとは認められないこと、[2]当該契約の背景には次世代への事業承継及び経営基盤の安定があったものと認められること、[3]出資口の時価の算定方法は財産評価基本通達に明示されていることから、当該契約を成すに当たっての動機が民法第95条の規定により、当該契約の重要な要素として保護しなければならないものとまで解することはできない。そして、当事者の無効確認は、[1]価額があまりにも低いと贈与税等の問題が起きると認識しながらも財産評価基本通達によって評価をしていないのであるから、近隣の法人及び同業種の法人の株価などを参考にして実際の評価の7分の1の価格にしたことは評価方法の不知による個人的判断に基づく計算方法の誤りであって、[2]譲受人に新たな課税関係が発生しないことが本件売買契約の最重要な関心事であったとするならば不正確であることを自認しながら著しく低い価格で当該契約を成したのは法の不知であり、[3]原処分庁からの指摘後に当該契約無効の主張をしていることから、譲受人の贈与税の負担を免れるために行なわれた親族間における当事者の合意による契約解除であると認めるのが相当である。
そうすると、この合意解除は請求人の個人的、主観的な事由によるものであって、国税通則法施行令第6条第1項第2号に規定する「当該契約成立後生じたやむを得ない事情」に当たらない。したがって、国税通則法第23条第2項第3号に規定する「やむを得ない理由」には該当せず、更正の請求ができる場合には当たらない。
要旨
国税通則法第23条第2項第1号の「判決」は、申告等に係る課税標準又は税額等の計算の基礎となった事実についての、私法行為又は行政行為上の紛争を解決することを目的とする民事事件の判決を意味し、犯罪事実の存否範囲を確定するにすぎない刑事事件の判決は含まれない。
原処分庁が、請求人が租税特別措置法(平成7年法律第55号による改正前のもの。)第70条の10第8項第1号の規定による取下書を提出しない時期に、請求人が相続税の本税として納付した額を、請求人にまったく連絡することなく、相続税に係る利子税に充当したのは違法であるとして、充当処分が取り消された事例
裁決事例集 第57集 21頁
要旨
請求人が特例物納の一部取下書を提出したことから、第2回分納税額の納期限(当初納期限平成6年6月10日)及び第3回分納税額の納期限(当初納期限平成7年6月12日)は、租税特別措置法第70条の10第8項の規定により本件一部取下書を提出した平成9年7月8日の翌日から起算して1月を経過する日まで延長され、いずれも平成9年8月8日となる。
一方、請求人が平成8年4月15日付で納付した相続税は過誤納金となるため、第2回及び第3回の分納税額にそれぞれ充当する場合の充当適状日は、当該過誤納金の生じた平成8年4月15日と当該分納税額の納期限である同9年8月8日のいずれか遅い日であるから、同9年8月8日となる。
そうすると、原処分庁が平成8年4月15日を充当適状日とした当該充当処分は、充当適状日が法令の規定のとおり処理されていないこととなり、違法であるから取り消すことが相当である。
また、請求人が平成9年7月15日付で納付した相続税は過誤納金となるため、第2回の分納税額に充当する場合の充当適状日は、同9年8月8日となる。
そうすると、原処分庁が平成9年7月15日を充当適状日とした当該充当処分は、充当適状日が法令の規定のとおり処理されていないこととなり、違法であるから取り消すことが相当である。
原処分庁が納税の猶予の適否の判断に必要な事実確認等を行おうと努めたにもかかわらず、請求人自らが要件が充足されていることを明らかにしていく姿勢がうかがわれなかったのであるから、納税の猶予を受ける権利を侵害した事実はないとした事例
裁決事例集 第77集 13頁
要旨
請求人は、本件徴収担当職員が本件納税の猶予の適否の判断に必要な質問検査を行わず、また、請求人の用意した本件納税の猶予申請に関する資料を見ないで帰ってしまい、請求人に説明の機会を与えなかったことは、請求人の納税の猶予を受ける権利を侵害するものであるから、本件納税の猶予不許可処分に係る手続は不当である旨主張する。
しかしながら、納税の猶予の要件を充足することについての立証責任は納税の猶予の申請をした納税者にあり、その納税者が進んで税務署長等に納税の猶予の要件が充足されていることを明らかにしなかったため、当該税務署長等において納税の猶予の要件が充足されていることを認定判断できなかったとして納税の猶予不許可処分を行った場合、当該税務署長等の判断に誤りはないというべきであるとともに、その調査手続が違法又は不当であるということもできないと解するのが相当であるところ、本件徴収担当職員が本件猶予申請に係る事実確認を行おうと努めたにもかかわらず、請求人は第三者の立会いの下での調査に固執し、自らが進んで納税の猶予の要件が充足されていることを明らかにしていく姿勢がうかがわれなかった本件においては、請求人が主張するような納税の猶予を受ける権利を侵害した事実はないと認められ、この点において、本件不許可処分が違法又は不当であるということはできない。
原処分庁に所属する職員が原処分に係る各通知書を歯科医院を営む請求人の自宅兼事業所に持参した際に、請求人が診療中であり対応することができないとして各通知書を受け取らなかった事情は、国税通則法第12条《書類の送達》第5項第2号に規定する「正当な理由」には該当しないとした事例
裁決事例集 第121集
ポイント
本事例は、国税通則法の送達に関する規定の趣旨を紐解き、その趣旨に照らせば、受送達者が診療中であったとしても、送達場所におり、原処分庁職員が交付送達のため来訪したことを現に認識していた場合には、(法が、その診療終了を待って出会送達をすることや、再度の送達を行うことまでを求めていると解することは困難であるとして)差置送達を行うことができると判断したものである。
要旨
請求人は、原処分庁に所属する職員が原処分に係る各通知書を自宅兼事業所に持参した際、歯科医師として診療中であり対応することができなかったから、国税通則法第12条《書類の送達》第5項第2号に規定する「正当な理由」に該当するため、原処分庁が差置送達を行ったことは同条に規定する差置送達の要件に該当しないから、原処分を取り消すべき違法がある旨主張する。
しかしながら、差置送達は、書類の送達を受けるべき者等が送達すべき場所にいない場合、又はこれらの者が正当な理由がなく書類の受領を拒んだ場合に行うことができる送達方法であり、差置送達の制度が認められた趣旨に照らせば、請求人の診療中であるという事情は、国税通則法第12条第5項第2号に規定する「正当な理由」には該当しないと解すべきであるから、原処分庁による差置送達は法令上の要件を満たしたものであるから、原処分庁が差置送達を行ったことにつき、原処分を取り消すべき違法はない。
参照条文等
参考判決・裁決
東京地裁平成23年10月25日判決(税資261号順号11796)
妻子と同居していた家屋とは別に、1年余の期間断続的に居住し、通勤に利用していた家屋を居住用財産であるとしたことについて、事実の隠ぺい又は仮装は認められないとした事例
裁決事例集 第31集 7頁
要旨
請求人が譲渡前1年1か月にわたり断続的に居住し、そこから通勤もしていた本件家屋は、水道、電気及びガスの消費量が極めて少量であること、従前、妻子を同居し、引き続き妻子が居住している別の家屋の水道等の消費量にさしたる変動がないことなどの事実に照らし、本件家屋は請求人の従たる住居とみるのが相当であり、居住用財産には該当しないから租税特別措置法第35条の規定の適用はないが、本件家屋が請求人の1年余にわたる生活の場の一つであったことは確かであるから、そこに住民登録を移したことを不自然な行為であるとすることはできず、住民登録の異動をもって事実の隠ぺい又は仮装があったとすることは相当でない。
要旨
いわゆる少額配当等を有する者が、少額配当等に係る配当所得の金額を除外したところにより総所得金額を計算して所得税の確定申告書を提出している以上、租税特別措置法第8条の5“確定申告を要しない配当所得”第1項の規定を適用したものとして取り扱われることとなるから、請求人が確定申告において、少額配当等に係る配当所得の金額を失念して申告額に含めなかったことは、国税通則法第23条第1項に規定する「申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったこと」という場合には該当しないこととなる。
したがって、原処分庁が本件少額配当等に係る部分の配当について請求人からの更正の請求を認めなかったことは相当である。
帳簿を作成していない青色申告事業者に対する更正処分の理由付記の程度について、帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合に該当することから、理由付記制度の趣旨目的を充足する程度に記載すればよいとした事例( 平成17年分、平成19年分、平成22年分及び平成23年分の所得税の各更正処分並びに重加算税の各賦課決定処分、 平成18年分、平成20年分及び平成21年分の所得税の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、 平20.1.1~平20.12.31、平22.1.1~平23.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各決定処分並びに無申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第98集
要旨
請求人は、青色申告者である請求人に対する所得税の更正処分(本件所得税更正処分)に係る通知書(本件更正通知書)には、調査による計数上の記載や処分の結果のみが記載されているだけで、原処分庁の判断根拠が全く記載されておらず、本件更正通知書の理由付記には、本件所得税更正処分を取り消すべき不備がある旨主張する。
しかしながら、請求人は、請求人の事業所得を生ずべき業務について、集計表等を作成するだけで日々の取引を記録する帳簿を作成していないことから、本件所得税更正処分は、帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合に該当するところ、原処分庁は、本件更正通知書において、事業所得に係る総収入金額については取引先ごとに取引期間及び年間の売上金額を一覧表で明らかにしており、必要経費については計上漏れとして認定した仕入金額等の支払先及び年間の支払合計金額などを記載していることからすれば、本件更正通知書に記載された理由は、原処分庁の恣意抑制及び納税者の不服申立ての便宜という理由付記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的な記載がされていると認められることから、本件所得税更正処分を取り消すべき不備はない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決(民集39巻3号850頁) 最高裁昭和38年5月31日第二小法廷判決(民集17巻4号617頁) 最高裁平成23年6月7日第三小法廷判決(民集65巻4号2081頁) 平成26年9月1日裁決(裁決事例集No.96)
年末調整を受けた給与所得者が、扶養親族に該当しない親族を給与等の支払者に扶養親族として届出て扶養控除の適用を受けていた場合において、当該給与所得者は納税申告書を提出する義務のある者には該当しないから、扶養控除を否認する決定処分は違法であるとした事例
裁決事例集 第72集 25頁
要旨
請求人は、請求人の母親は請求人とは同居していないが、請求人が母親に住宅を提供し、費用を負担していることは、請求人が母親に対して月額約10万円程度の家賃相当額を援助していることになり、母親は請求人の扶養親族として認められるべきであるから、本件決定処分は違法である旨主張する。
一方、原処分庁は、①請求人は、住宅の固定資産税及び火災保険料の負担はしているものの、生活費の送金は行っていないことから、請求人と母親とは生計を一にするものとは認められず、母親は請求人の扶養親族に該当しないこと、また、②請求人は平成17年2月にA社を退職しており、各年分の扶養控除誤りをA社において是正し、徴収不足税額を徴収することができず、この場合には所得税基本通達194~198共-2のただし書により、A社に徴収不足税額の徴収を強いて追求しないものと考えられることから、請求人は、国税通則法第25条に規定する「納税申告書を提出する義務があると認められる者が当該申告書を提出しなかった場合」に該当し、本件決定処分は適法である旨主張する。
しかしながら、所得税法第121条第1項には、その年中に支払を受けるべき給与等の額が2,000万円以下である給与所得を有する居住者で、一の給与等の支払者から給与等の支払を受け、かつ、当該給与等の全部について同法第183条又は同法第190条の規定による所得税を徴収された又はされるべき場合において、給与所得及び退職所得以外の所得金額が20万円以下であるときは、同法第120条第1項の規定にかかわらず同項の規定による申告書を提出することを要しない旨規定されている。
また、源泉所得税と申告所得税との各租税債権の間には同一性がなく、源泉所得税の納税に関しては、国と法律関係を有するのは支払者であって、国と受給者との間には直接の法律関係は生じないものとされており(最高裁平成4年2月18日判決)、源泉所得税の徴収、納付に不足がある場合には、税務署長は、所得税法第221条の規定に基づき源泉徴収義務者たる支払者からその不足分を徴収することになる。
なお、所得税基本通達194~198共-2のただし書の取扱いは、あくまでも扶養控除等申告書等の記載事項に誤りがあったことによる徴収不足額の強制徴収に関するものであって、同取扱いの適用を受けることをもって、上記の給与所得者について確定申告を要しない場合の規定が排除され、所得税法第120条の規定が代替的に適用されるものではない。
したがって、もともと所得税法第121条第1項の規定の適用を受ける者について国税通則法第25条を適用する余地はない。
これを本件についてみると、請求人の各年分における所得税については、所得税法第121条第1項に規定する確定申告を要しない場合に該当することから、請求人につき国税通則法第25条に規定する納税申告書を提出する義務があるとは認められず、同条を根拠とする決定処分を行うことはできない。以上のことから、請求人の母親が請求人の扶養親族に該当するか否かについて判断するまでもなく、本件決定処分は違法であり、いずれもその全部を取り消すべきである。
担保物処分(国税を担保する抵当権の実行)のための差押処分につき抵当不動産の第三取得者に対して民法第378条[滌除の意義]以下に定める抵当権の実行通知をはじめとする諸手続をとらないことに違法はないとした事例
裁決事例集 第60集 36頁
要旨
請求人は、贈与税の納税義務を負っている者から、同人の贈与税額を担保するために、大蔵省が抵当権を設定している不動産を購入した第三取得者の立場にある。
請求人は、原処分庁が右の贈与税を徴収するためにした、担保物処分(国税を担保する抵当権の実行)としての担保不動産の差押処分について、民法第378条[滌除の意義]以下に定める抵当権の実行通知をはじめとする諸手続を行っていない違法があるとして、その取消しを求める旨主張する。
しかしながら、国税担保のための抵当権の実行手続については、国税通則法第52条第1項で「滞納処分の例により処分する」と規定されているのみであり、国税通則法、国税徴収法及びその他滞納処分に適用される法令には、滌除に関する民法の規定を適用ないし準用する旨の規定が置かれていないこと及び右の「滞納処分の例により処分する」の規定の趣旨は、租税の徴収については、租税のもつ特殊性から、迅速かつ能率的に行うため自力執行制度としての滞納処分手続がとられ、民事執行手続によらないとされており、その延長として国税の担保物の処分による徴収も同じ手続で行うことを定めたものと理解でき、国税担保のための抵当権については、滌除に関する民法の規定が適用ないし準用されないものと解することに合理性が認められること等から、原処分は適法である。
更正の後、租税特別措置法第37条の2“特定の事業用資産の買換えの場合の更正の請求、修正申告等”第2項に基づき、いわゆる義務的修正申告をした場合、当該更正に対する不服申立ての利益は失われるとした事例
裁決事例集 第43集 15頁
要旨
更正の後にその処分に係る課税標準等又は税額等を上回る修正申告がなされた場合、更正により一応確定していた税額はこれに吸収されて一体のものとなり当該更正は独立の存在を失い、当該修正申告書に記載された額に修正され確定する。
したがって、当該更正に異議申立て等の不服申立てがなされていても、その後に修正申告書の提出があった場合には、当該更正の取消しを求める利益は失われる。このことは、租税特別措置法第37条の2第2項の規定による修正申告の場合も同様に解すべきである。
期限後申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について決定があるべきことを予知してされたものでないとした事例( 平成23年分及び平成24年分の所得税に係る無申告加算税の各賦課決定処分、 平成25年分及び平成26年分の所得税及び復興特別所得税に係る無申告加算税の各賦課決定処分・ 全部取消し、 一部取消し)
裁決事例集 第108集
ポイント
本事例は、請求人が行った期限後申告書の提出は、調査の内容・進捗状況、それに関する請求人の認識、期限後申告に至る経緯、期限後申告と調査の内容との関連性の事情を総合考慮して判断した結果、国税通則法第66条《無申告加算税》第5項に規定する「決定があるべきことを予知してされたものでない」ことに該当するとしたものである。
要旨
原処分庁は、調査担当職員(本件調査担当職員)が、請求人の配偶者の所得税に係る調査(本件調査)において、請求人名義の不動産から生じる不動産所得が当該配偶者の所得として申告され、請求人が申告していない事実を把握し、請求人の所得税の課税標準等又は税額等を認定するために税理士(本件税理士)に質問を行ったのであるから、本件調査後の期限後申告書(本件期限後申告書)の提出は国税通則法第66条《無申告加算税》第5項(平成28年法律第15号による改正前のもの。)に規定する「決定があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当しない旨主張する。
しかしながら、「決定があるべきことを予知してされたものでない」ことは、調査の内容・進捗状況、それに関する納税者の認識、期限後申告に至る経緯、期限後申告と調査の内容との関連性の事情を総合考慮して判断すべきところ、請求人は、本件調査に応じた本件税理士を通じて請求人の所得税に係る調査を認識したものの、本件調査とは別の契機により不動産の名義どおりに申告をやり直したいとの申出を行い、期限後申告を行ったのであるから、本件期限後申告書の提出は「決定があるべきことを予知してされたものでない」ことに該当する。その結果、納付すべき税額に5%を乗じて計算した無申告加算税の額が5,000円未満となった年分は処分の全部を、その他の年分は上記5%相当額を超える部分につき処分の一部をそれぞれ取り消すことが相当である。
参照条文等
要旨
請求人は、本件修正申告書は、原処分庁の度重なるしょうようによって、本件工事が個人的取引であると認識しつつも、請求人の無知によって誤って提出したものであるから無効である旨主張する。
しかしながら、本件工事に係る請求人の前代表者は本件調査に立ち会っており、また、修正申告のしょうようの際、原処分庁は現代表者と前代表者が同席しているところで、本件工事に係る売上及び原価が計上漏れとなっていることを指摘している事実が認められる。
さらに、本件修正申告書は調査終了後相当期間経過した日後に提出されていることから、請求人において十分に検討の上提出したものと認められる。
以上のとおり、請求人は、本件工事に係る売上及び原価が請求人に帰属することを十分認識して本件修正申告書を提出したものと認めるのが相当であり、本件修正申告書を提出したことについて明白かつ重大な錯誤があるとは認められないから、本件修正申告書は無効ではない。
残高不足により本税が口座振替によって納付されなかった場合に、納付すべき延滞税の額の計算の始期を口座振替日の翌日ではなく法定納期限の翌日として算出した当該本税に係る延滞税の督促処分を適法とした事例
裁決事例集 第75集 37頁
要旨
請求人は、残高不足により口座振替納付日に振替できなかったからといって法定納期限にさかのぼって延滞税が課されるのは納得できず、当該延滞税により行った督促処分は、違法である旨主張する。
しかしながら、延滞税は、私法上の遅延利息ないしは遅延損害金の性質を有し、法定納期限内に納付すべき国税が完納されなかった場合に、その納税者にこれを負わせることにより、法定納期限までに国税を完納した者との権衡を図るとともに、もって国税の期限内における適正な納付を担保しようとするものであると解され、納付遅延行為に対する制裁的意味合いが認められるとしても、そのことのみによって延滞税の制度が設けられていると解することはできない。また、口座振替納付の方法は、納税者が預貯金先に出向いてその払戻しを受け、その金銭を再び国税として金融機関に提出するという二重の手数を省略するという便利な方法であるが、納付する国税の納期限が申告期限と同一日である場合は、税務署長による金融機関への納付書の送付、金融機関における振替手続等に要する日時を考慮すれば、実際問題として期限内に口座振替納付ができないことになるので、国税通則法第34条の2第1項は、このような国税について口座振替期日に口座振替納付がされた場合には、口座振替期日が納期限後であっても、特に期限内納付とみなすこととしているものと解される。したがって、納税者の事情で預金不足等により振替不能となったときは、この特例の適用はなく、原則どおり期限内納付した者との権衡を図るため、本来の納期限から完納される日までの間、延滞税が課されることになるものと解するのが相当である。これを本件についてみると、請求人が納付すべき税額は、口座振替の手続が行われたものの、請求人が指定した預金残高が当該税額に不足していたことから振替納税がされなかったため、後日、請求人が自ら納付したものであり、国税通則法第34条の2第2項により、口座振替を選択している者において振替納付期日に口座振替による納付が行われなかった場合には、法定納期限後に自ら納付したとしても、法定納期限に納付されたとみなされないことから、請求人は、法定納期限の翌日から自ら納付した期間に応じた本件延滞税を納付しなければならないこととなる。
要旨
[1]本件簿外売上げを行った請求人の取締役は、木製建具部門の責任者であり、代表取締役の父であること、[2]本件簿外売上げに係る取引のすべてが請求人名義で行われていること、[3]取引先も請求人を取引の相手方と認識していることが認められ、これらを総合して判断すると、当該取締役の行為は請求人の行為と同視すべきものであり、本件簿外売上げに係る行為は、請求人の行為に当たるとみるのが相当であるところ、請求人が本件簿外売上げに係る収益の額を所得金額の計算上益金の額に算入しなかったことにより、法人税の税額の全部又は一部を免れたことは、国税通則法第70条第5項に規定する「偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れた場合」に該当する。
法律の規定に不備がある旨の主張は採用できないとした事例(平成28年分から平成30年分までの所得税及び復興特別所得税の各決定処分及び無申告加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第129集
ポイント
本事例は、先物取引等の全取引期間における損益の通算を認めないなどの現行の法律の規定には不備がある旨の請求人の主張は採用できないとしたものである。
要旨
請求人は、原処分について、国税に関する法律に基づいて実施された処分であることを認める一方、先物取引や株式の譲渡取引の各損益が、各取引を実施した全ての期間の損益を通算してそれぞれ赤字となる場合には、先物取引の差金等決済に係る損失や上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除が認められる3年を超える期間であっても通算をそれぞれ認めるべきであり、また、先物取引の損益と株式譲渡の損益の間でも通算を認めるべきであるから、このような取扱いのない現行の法律には不備がある旨主張する。
しかしながら、審判所は、原処分庁が行った処分が違法又は不当なものであるか否かを判断する機関であって、その処分の基となった法令自体の適否又は合理性を判断することはその権限に属さないことであるので、請求人が主張する点については、当審判所の審理の限りではない。
消費税及び譲渡割に係る加算税の基礎となる税額は、それぞれに係る「納付すべき税額」を計算し、次いで、各々の「納付すべき税額」を合計した額であるとした事例
裁決事例集 第64集 53頁
要旨
請求人は、地方税法附則第9条の9第1項の規定に基づき、本件更正処分により納付すべきこととなる消費税額と還付される譲渡割額とを差引計算した額を加算税の基礎とすべきである旨主張するが、加算税の計算に当たっては、まず、同法附則9条の4第1項の規定に従い、消費税及び譲渡割それぞれについて国税通則法第65条第1項に規定する「国税通則法第35条第2項の規定により納付すべき税額」を計算し、次いで、それらの合計額を加算税の計算の基礎とすべきものと解されるから、本件のように、消費税の「差引納付すべき税額」と譲渡割の「差引減少する譲渡割額」が同額である場合における加算税の計算の基礎となる税額は、消費税に係る「差引納付すべき税額」に相当する金額となる。
相続放棄の申述をした請求人に対して、原処分庁が相続放棄の無効を前提として行った不動産の差押処分について、相続人である請求人の口座に振り込まれた被相続人の顧問料相当額を引き出した事実は法定単純承認事由となる相続財産の処分に該当しないとした事例
裁決事例集 第119集
ポイント
本事例は、法定単純承認事由となる相続財産の処分がされたか否かについて、請求人及び関係者の答述並びに帳簿等の広範囲な証拠に基づき、請求人が相続財産を費消(処分)したと認められるか否か、総合的かつ慎重に認定し、相続放棄の申述が有効であると判断したものである。
要旨
原処分庁は、①請求人名義の金融機関の口座(本件口座)に振り込まれた金員(本件金員)は、請求人の配偶者(本件被相続人)と本件金員の支払者との間の委任契約(本件委任契約)に基づき、本件被相続人に対する未払報酬が請求人名義の本件口座に振り込まれたもので、相続財産に該当するところ、請求人が本件金員を受領、出金及び返納した行為は、いずれも民法第921条《法定単純承認》第1号に規定する相続財産の「処分」に該当する旨、②請求人名義の土地及び建物(本件各不動産)の取得資金は、本件被相続人が出捐し、又は本件被相続人の意思により関係会社等が支出していることから、本件各不動産は本件被相続人に帰属する財産であり相続財産に該当するところ、請求人が本件各不動産について、同条第3号に規定する「隠匿」及び同条第1号に規定する「処分」に該当する行為をしている旨、上記①及び②の事実は法定単純承認事由に該当するから、請求人の相続放棄は認められず、請求人は本件被相続人の納付義務を承継する旨主張する。
しかしながら、①については、本件金員が相続財産に該当することが認められるものの、本件金員が本件委任契約に基づいて本件口座に振り込まれたものにすぎず、請求人が出金した本件金員を一部でも費消した事実は認められないこと、請求人が振込名義人あてに送金したのは相続放棄の申述が受理された後であることから、これらはいずれも相続財産の処分には該当しないこと、②については、本件各不動産が本件被相続人に帰属する財産であることを認めるに足りる証拠はなく、相続財産に該当すると認められないことから、本件金員及び本件各不動産について、請求人に法定単純承認事由に該当する事実はなく、請求人の相続放棄の申述は有効であり、請求人は本件被相続人の納付義務を承継しない。
参照条文等
国税通則法第5条第1項、第2項 民法第921条第1号、第3号、同法第938条、同法第939条、家事事件手続法第201条第5項、第7項
参考判決・裁決
最高裁昭和42年4月27日第一小法廷判決(民集21巻3号741頁) 大審院昭和5年4月26日判決(大審民集9巻427頁)
要旨
請求人は、本件相続税の法定申告期限の数か月前には、相続税の基礎控除額を超える財産を把握しており、しかも、本件相続財産のほぼ全容を知っていたのであるから、本件相続財産の内容を知ったのは法定申告期限の前日であったとの請求人の主張に理由がなく、請求人は相続財産の全容を把握していない以上、期限内申告書を提出できないと認識していたとも考えられるが、そうだとしても、請求人は法定申告期限の数か月前には、相続税の基礎控除額を超える財産を把握していたのであるから、少なくともこれらの財産を基に期限内申告書を提出することは十分可能であったといえるから、期限内申告書の提出がなされなかったことについて国税通則法第66条(無申告加算税)第1項ただし書に規定する「正当な理由」があるとはいえない。
要旨
請求人は、当初申告が税務署の相談担当職員の指導に基づいて作成されたものであるから正当な理由があり、過少申告加算税を賦課すべきでないと主張するが、相談時点では修正申告の原因となった事実を担当職員が知り得る状況になく、その後の調査によって明らかになったものであるから、「正当な理由」には当たらない。
請求人が不在の場合に請求人の勤務先へ郵便物が転送されるように手続をしていた場合、請求人が原処分に係る通知を受けた日は、原処分に係る通知書が請求人の勤務先に配達された日となり、その翌日から2か月を経過した日にした異議申立ては法定の不服申立期間を経過した後にされたものであるとした事例
裁決事例集 第64集 122頁
要旨
請求人は、平成14年4月26日から休暇中であり、原処分のあったことを知った日は休暇明けの同年5月7日であるから、同年7月5日にした本件異議申立ては法定の不服申立期限までにされている旨主張する。
しかしながら、国税通則法第77条第1項に規定する「処分に係る通知を受けた」とは、社会通念上、通知を了知できると認められる客観的状態に置かれることをいうと解され、郵便による場合には、郵便物が名あて人の住所等に配達されることがこれに当たると解される。
したがって、請求人が原処分に係る通知を受けた日は、本件通知書が請求人の勤務先に配達された日となり、原処分に対する異議申立てに係る法定の不服申立期間は、その翌日から起算して2月以内である同年6月26日までとなるから、本件異議申立ては、法定の不服申立期間を経過した後にされたものということになる。
ポイント
本事例は、請求人が確定申告書に記載した「還付される税金」を原処分庁が一旦還付した後に更正処分をしたことについて、当該申告書は請求人の妻が作成し、郵送で提出されていること及び税務官庁が当該申告書の作成を指導した事実が確認できないことから、当該申告書の作成について税務官庁が請求人に対して信頼の対象となる公的見解を表示したとは認められず、租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお当該更正処分に係る課税を免れしめて請求人の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情はないことから、信義則を適用する余地はないとしたものである。
要旨
請求人は、原処分庁が確定申告書(本件申告書)に記載された「還付される税金」と同額を還付しているなど、本件申告書の記載内容は適正であるとの公的見解を表示したものであるから、原処分庁の行った更正処分(本件更正処分)により新たに納付すべきことになった税額のうち、すでに還付した税額(本件還付金)に係る処分は信義誠実の原則(信義則)に反し違法であり、本件更正処分のうち本件還付金の部分は取り消されるべきである旨主張する。
しかしながら、本件申告書は、請求人の妻がパンフレットを見ながら作成し、郵送で提出されていること及び税務官庁が本件申告書の作成を指導した事実が確認できないことから、本件申告書の作成について税務官庁が請求人に対して信頼の対象となる公的見解を表示したとは認められない。また、原処分庁は、所得税法第138条《源泉徴収税額等の還付》第1項及び所得税法施行令第267条《確定申告による還付》第4項の規定に従い本件還付金を還付し、国税収納金整理資金に関する法律の規定に基づき国税還付金振込通知書を送付したに過ぎず、これらの事実をもって、税務官庁が請求人に対し本件申告書の記載内容は適正であるとの公的見解を表示したとは認められない。よって、請求人には、租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお本件更正処分に係る課税を免れしめて請求人の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情はなく、信義則を適用する余地はない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和62年10月30日第三小法廷判決(税資160号542頁)
要旨
請求人は、本件不正経理行為については、[1]従業員が自己の窃盗又は横領行為の発覚を防止するために行った不正行為であること、[2]請求人が通常の調査をしても発見できない方法で本件売上等圧縮行為が行われ、また、記帳や現金管理を任せ切りにした事実もないこと、[3]請求人の取締役が従業員に対して本件棚卸圧縮行為を指示した事実はないことから、請求人に結果責任を課すべきではなく、課税主体である請求人の隠ぺい又は仮装行為に該当しない旨主張する。
しかしながら、重加算税を課すためには、納税者において、過少申告を行うことの認識を有していることまで必要とするものではないから、隠ぺい又は仮装の行為は、納税義務者たる法人の代表者に限定されるものではなく、従業員を自己の手足として経済活動を行っている納税者においては、隠ぺい又は仮装行為が代表者の知らない間に従業員によって行われた場合であっても、その従業員の行為を納税者の行為と同一視することが相当である場合には、法人自身が当該行為を行ったものとして重加算税を賦課することができるものと解するのが相当である。そして、本件においては、[1]従業員は請求人の経理事務を担う重要な地位にいたこと、[2]不正経理行為は請求人の課税申告に直接反映していること、[3]不正経理行為は長期に及び、現金出納帳などの確認をすれば容易に把握できたと認められるところ、[4]請求人はそれらの確認を行っていないことを総合勘案すれば、本件不正行為は請求人の行為と同一視すべきと認められるから、本件重加算税の各賦課決定処分はいずれも適法である。
顧問契約を締結している税理士が、重加算税の課税要件を満たす過少申告をした場合、これを請求人が認識していたか否かにかかわらず、請求人は重加算税を負うとした事例
裁決事例集 第42集 13頁
要旨
税理士が、請求人に代わって行った税務申告等の行為は、納税義務者である請求人が行ったと同様に扱われるべきであるから、これに付随する重加算税の責任も、請求人が本件確定申告について不適正であることを認識していたか否かにかかわらず、当然請求人が負うと解すべきである。
このまま申告しなければやがて決定されるであろうとの認識の下で期限後申告書を提出したとは認められないとして、無申告加算税の賦課決定処分を取り消した事例(平成26年12月相続開始に係る相続税の無申告加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第110集
ポイント
本事例は、請求人が、相続税の申告及び納付を決意した後、原処分庁所属の職員との申告相談を経て期限後申告書を提出したものと認められるとして、無申告加算税の賦課決定処分の一部を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、原処分庁所属の職員(本件職員)は、請求人に対し、相続税に係る調査の事前通知をした上で当該調査を行う旨説明したほか、調査結果の内容の説明とともに期限後申告を勧奨しており、請求人は、調査があったことを認識し、期限後申告をしなければやがて決定されるであろうことを認識することができたものと認められるから、請求人が提出した期限後申告書(本件期限後申告書)は、国税通則法第66条《無申告加算税》第5項に規定する「決定があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当しない旨主張する。
しかしながら、請求人は、請求人の母と本件職員との間で行われた請求人の相続税に関する相談結果を契機として、相続税の申告及び納付を決意し、その後、本件職員との申告相談を経て本件期限後申告書を提出したものと認められるから、請求人が、このまま申告しなければやがて決定されるであろうとの認識の下で本件期限後申告書を提出したとは認められず、そもそも本件期限後申告書の提出に至るまで、相続税に関する調査を受けていたとの認識を有していたとも認められない。したがって、本件期限後申告書の提出は、同項に規定する「決定があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当する。
参照条文等
要旨
請求人は、ゆうメールにより提出した所得税の確定申告書(本件確定申告書)について、国税通則法第22条《郵送等に係る納税申告書等の提出時期》の規定が適用される旨主張する。
しかしながら、租税法が私法上の概念を特段の定義なく用いている場合には、私法上の概念と同じ意義に解することが、租税法律主義や法的安定性の確保に資するところ、国税通則法第22条は、「郵便」及び「郵便物」と規定し、同法上にその定義規定を置いておらず、郵便法上の「郵便」及び「郵便物」と別意に解すべきことが国税通則法の明文又はその趣旨から明らかであるなどの事情も認められない。かえって、国税通則法第22条は、郵便及び信書便が郵便法又は信書便法の規定に従って配達されるため紛失する可能性が低いことなどの事情を考慮し、また、納税者と関係税務官庁との地理的間隔の差異に基づく不公平を是正する必要性も勘案して、特に郵便又は信書便により提出された納税申告書等については、民法上の到達主義の原則を緩和するものであることなどに照らせば、国税通則法第22条の「郵便」及び「郵便物」は、郵便法上の「郵便」及び「郵便物」と同じ意義に解するのが相当である。そして、郵便法第68条《郵便約款》に基づき定められた内国郵便約款及びゆうメールについて定めるポスパケット約款によれば、ゆうメールによる役務の提供は、荷物の運送であって、郵便法上の「郵便」には該当しない。したがって、ゆうメールによる本件確定申告書の提出について、国税通則法第22条の規定は適用されない。
要旨
国税通則法第70条第5項の規定は、「偽りその他不正の行為」によって国税の全部若しくは一部を免れた納税者がある場合、これに対して適正な課税を行うことができるように、同条第1項各号に掲げる更正又は賦課決定の除斥期間を同項の規定にかかわらず7年とすることを定めたものであるが、「偽りその他不正の行為」によって免れた税額に相当する部分のみにその適用範囲が限られるものではないと解されている。そうすると、「偽りその他不正の行為」によりその税額を免れていた本件リベート収入のみならず「偽りその他不正の行為」に基づかずにその税額を免れていた本件給与についても、その法定申告期限から7年を経過する日まで更正できることは明らかである。
ポイント
本件は、滞納者や第三債務者による、被差押債権の不存在又は消滅を理由とする差押処分の違法又は無効の主張は、不存在又は消滅が明らかであるような事情、あるいは徴収権の濫用と認められる等の事情が無い限り、認められないと解されるとしたものである。
要旨
請求人は、請求人が有する保証金の返還請求権(本件被差押債権)の差押処分(本件差押処分)時において、本件被差押債権は既に消滅しており存在しなかったから、本件差押処分は違法又は無効であり、滞納国税の徴収権の消滅時効は、本件差押処分によって中断していない、したがって、不動産差押処分時において滞納国税の徴収権は時効により消滅している旨主張する。
しかしながら、被差押債権の存在を滞納処分による債権差押処分の要件とする旨の規定は存在せず、また、仮に滞納処分による債権差押処分を行った場合に被差押債権が存在せず又は既に消滅していたとしても、それは結果的に債権差押処分の執行が功を奏しなかったというだけにすぎず、権利者による権利行使がなされたことに変わりはない。したがって、仮に本件被差押債権が消滅しており存在しなかったとしても、そのことによって本件差押処分が違法又は無効になるものではないことから、滞納国税の徴収権の消滅時効は、本件差押処分によって中断している。
参照条文等
国税通則法第72条 民法第147条
参考判決・裁決
東京地裁平成12年12月21日判決(判時1735号52頁) 大阪高裁昭和37年6月18日判決(訟月8巻8号1351頁) 平成18年3月30日裁決(裁決事例集No.71)
債権差押処分に対して、被差押債権が請求人に帰属しないことを理由とする審査請求は、原処分の取消しを求めることに法律上の利益を有しないとして却下した事例
裁決事例集 第64集 114頁
要旨
請求人は、原処分庁が差押処分を行った債権(預金)のうち、請求人名義ではない一部の債権は、請求人に帰属しない債権であり、当該差押処分は違法であるとして、その取消しを求めている。
しかしながら、差押処分等の国税に関する処分に対し審査請求をすることができる者は、その処分の取消しを求めることに法律上の利益を有する者、すなわち当該処分によって直接自己の権利又は法律上の利益を侵害された者に限られる。この点、請求人は、本件個人名義債権が請求人に帰属しないことを理由として、原処分の取消しを求めるものであるが、請求人に帰属しない債権につき差押処分がなされたとしても、これにより権利又は法律上の利益が侵害されるのは当該債権の真正な帰属者であるとされる第三者であり、請求人が原処分により権利又は法律上の利益の侵害を受けるわけではない。
したがって、本件個人名義債権の帰属に争いがあるというだけで、請求人が原処分の取消しを求めることに法律上の利益を有することにはならず、他に請求人が当該法律上の利益を有するとすべき事情も認められないのであるから、本件審査請求は不適法であるといわざるを得ない。
免税事業者が控除不足額の記載をして提出した還付申告書は、国税通則法第24条に規定する納税申告書に該当し、かつ、課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったときに該当するものであるから、仕入れに係る消費税額の控除不足額がないものとしてされた更正処分は適法であるとした事例
裁決事例集 第79集
要旨
請求人は、課税事業者選択届出特例承認申請の却下通知処分が取り消されないのであれば、請求人は免税事業者であることになるから、申告そのものが認められないはずであり、本件更正処分がされること自体が誤りである旨主張する。
しかしながら、国税通則法第24条は、納税申告書(還付金の還付を受けるための申告書を含む。以下同じ。)の提出があった場合において、その納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったときは、当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正する旨規定している。
そして、免税事業者については、消費税法第30条第1項及び同法第52条第1項の規定の適用はなく、課税仕入れに係る消費税額を控除することはできないから、当該申告書に仕入れに係る消費税額の控除不足額の記載があっても、当該不足額に相当する消費税額の還付を受けることはできないところ、請求人が提出した本件還付申告書は、国税通則法第24条に規定する納税申告書に該当し、かつ、課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったときに該当するものであるから、仕入れに係る消費税額の控除不足額がないものとしてされた本件更正処分は適法である。
参照条文等
ポイント
本事例は、処分通知書に記載すべき理由は、行政庁の恣意の抑制及び処分の名宛人の不服申立ての便宜という理由提示の制度趣旨を充足する程度に記載すれば不備はないとしたものである。
要旨
請求人は、相続税の更正処分に係る通知書(本件通知書)に記載された処分理由には、課税価格に加算される本件他の相続人らの相続時精算課税適用財産及び歴年課税分の贈与財産(本件贈与財産)の価額のそれぞれの合計額が記載されているものの、その明細が記載されておらず、かかる記載内容では、処分の基礎となる具体的な事実を知りえず、不服申立ての便宜を図った行政手続法第14条《不利益処分の理由の提示》の理由提示の趣旨に反することから、原処分を取り消すべき違法がある旨主張する。
しかしながら、本件贈与財産の課税価格の合計額への加算に係る提示理由には、本件贈与財産について、それぞれ合計額が記載されているところ、本件贈与財産の合計額が分かれば、課税価格の合計額を算出することができるのであるから、当該記載により、原処分庁が相続税額を算出した過程を示したものといえる上に、そもそも、課税庁は、相続時精算課税適用財産の価額及び暦年課税分の贈与財産の価額を課税価格の合計額に加算するに当たっては、他の共同相続人等から提出された申告書の記載又は同人等に対する更正処分の内容等を基に相続税額の計算をするのであるから、この点に課税庁の恣意が入り込む余地は乏しく、合計額のみの記載であっても、行政庁の恣意抑制という見地から欠けるところはない。さらに、相続時精算課税適用財産の価額及び暦年課税分の贈与財産の価額については、それぞれの合計額が記載されていれば、納税者は課税価格の合計額を算出することが可能であり、記載された合計額と納税者が認識しているこれらの合計額とを比較して、不服申立ての要否を判断することが可能といえるから、処分の名宛人の不服申立ての便宜という見地からも欠けるところはない。したがって、本件通知書に記載された処分理由は、理由提示の趣旨目的を充足する程度に処分の理由を具体的に明示したものと認めることができ、行政手続法第14条第1項本文の要求する理由提示として不備はないから、原処分を取り消すべき違法はない。
参照条文等
行政手続法第14条
参考判決・裁決
最高裁平成23年6月7日第三小法廷判決(民集65巻4号2081頁) 東京地裁昭和48年2月20日判決(税資69号461頁)
分離長期譲渡所得等について、保証債務の履行のための譲渡に関する課税の特例を適用すべきであるとしてなされた更正の請求に対し、確定申告書にその旨の記載がなく、また、その旨の記載がなかったことについてやむを得ない事情があるとは認められないとして、当該特例を適用することはできないと判断した事例
裁決事例集 第68集 23頁
要旨
所得税法第64条第3項及び第4項によれば、同法第152条の規定による更正の請求をする場合を除き、確定申告書に保証債務の特例の適用を受ける旨の記載がある場合に限り本件特例の適用があり、確定申告書にその旨の記載がない場合にも、その旨の記載がなかったことについてやむを得ない事情があると認められるときは、本件特例を適用することができる。
これを本件についてみると、本件申告書に本件特例の適用を受ける旨の記載がなく、また、その旨の記載がなかったことについてやむを得ない事情があるとは認められないから、本件特例を適用することはできない。
そうすると、債務保証の事実、求償権行使不能の事実等の本件特例の適用を受けるための実体的要件の有無を判断するまでもなく、本件申告書に記載された課税標準等若しくは税額等の計算は、国税通則法第23条第1項第1号に規定する「国税に関する法律の規定に従っていなかったこと」又は「当該計算に誤りがあったこと」のいずれにも該当しないから、本件更正の請求には理由がない。
国税の収納機関たる日本銀行歳入代理店となっている金融機関の窓口で納税資金を預金口座から引き落として当該代理店に納付手続を依頼した日と当該金融機関が収納手続をした日が相違する場合、収納手続をした日が納付日であるとした事例
裁決事例集 第77集 1頁
要旨
請求人は日本銀行歳入代理店であるA銀行B支店が平成20年1月21日の営業時間内に本件源泉所得税を弁済受領しており、弁済者が弁済受領権限のある者に対して既に弁済を完了しているのであるから、弁済日は翌日ではなく弁済当日の平成20年1月21日となる旨主張する。
しかしながら、請求人の従業員Cは、平成20年1月21日の16時30分ころ、同支店において本件源泉所得税の納付手続を行ったと認められるところ、同銀行の内部規定では、15時から17時までに税公金の払込みを受付する場合は、当日払込資金を受け入れ、国税については、翌営業日付取引の依頼として預かり、受取証兼引換証を交付することとされており、同支店の窓口担当者がCに交付した本件受取証兼引換証は、複写式の一連の冊子に基づいて作成されたものであって、実際に同銀行に本件受取証兼引換証と一連となる書類が保管されていることに照らせば、上記窓口担当者が、上記内部規定に基づき本件受取証兼引換証を交付したことが推認でき、平成20年1月21日に本件源泉所得税を納付したのであれば、同日に領収証書が交付されるべきところ、本件においてはこれに代えて本件受取証兼引換証に、「預り日」として平成20年1月21日が、「手続ご指定日」として同月22日が別々に記入されていることからすれば、同支店は、一金融機関として翌営業日に納付手続を行う目的で金銭及び納付書等を預かったものであり、同支店は平成20年1月22日に本件源泉所得税を国庫金として収納したと認められるから、平成20年1月21日に納付は完了しておらず、平成20年1月21日に納付があったとはいえない。
要旨
- 請求人は、本件更正の請求は、国税通則法第23条(更正の請求)第2項第1号及び相続税法第32条(更正の請求の特則)第1号の両規定に基づく請求であり、それらの請求ができることとなった日は本件和解の成立した日の翌日からであるから、その請求の期限は、国税通則法第23条第2項の規定によるのではなく、請求人の有利な相続税法第32条第1号の規定によるべきである旨主張する。
しかしながら、国税通則法第23条第2項第1号に規定する更正の請求事由と相続税法第32条第1号に規定する更正の請求事由は、その請求事由を異にしていることが認められ、また、相続税法第32条第1号に規定する更正の請求の特則は、相続税法特有の事由であることから、国税通則法第23条に規定する更正の請求の期限後においても後発的事由に基づき更正の請求を認めるために特例的に設けられた特別規定であることからみても、これらの規定は、それぞれ異なった事実関係において適用されるべきものであり、両規定に基づく更正の請求ができると解するのは相当といえない。 - 請求人は、本件土地を相続財産から除外すべきであると主張するが、本件土地を相続により取得した財産であるとした当初申告を是正するための更正の請求は、国税通則法第23条第2項第1号の規定に基づくものであり、本件更正の請求は、請求期限を徒過してなされた不適法なものであるから、相続税の課税価格の計算に当たっては、本件土地が相続により取得した財産であることを争い得なくなったことになる。
居住の用に供していない土地建物の所在地に住民登録を移し、その住民票の写しを確定申告書に添付する等により居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用を受けようとしたことは、事実の隠ぺい又は仮装に該当するとした事例
裁決事例集 第27集 1頁
要旨
請求人は、従来から継続して貸借している現住所の建物を生活の本拠としており、また、不動産業者に本件物件の売却を依頼した後に、住民登録を本件物件の所在地に移していること等から、本件物件の所在地が請求人の生活の本拠たる住所となり得る余地がなく、このような状況下で、当該所在地に住民票上の住所を移転させ、その旨の住民票の写しを確定申告書に添付した請求人の行為は、居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用を受ける目的でしたものとみるほかはないので、課税標準の計算の基礎となるべき事実の隠ぺい又は仮装に該当する。
本件修正申告書は、原処分庁があらかじめ用意した修正申告書に押印を強要され、わずか30分程度の間に提出したもので、任意の意思に基づくものではない旨の請求人の主張を排斥した事例
裁決事例集 第65集 1頁
要旨
請求人は、本件各修正申告書は、原処分庁があらかじめ用意していた請求人の住所・氏名が記入された修正申告書に押印を強要され、わずか30分程度の間に提出したもので、請求人の任意の意思に基づくものではないことから、当該修正申告は無効である旨主張する。
しかしながら、調査担当職員の答述は、各認定事実から見ても、十分信ぴょう性が認められるから、請求人が調査担当職員の強要により本件各修正申告書を提出したという事実は認められず、請求人自らが当該修正申告書に署名、押印して、それを提出したと認めるのが相当である。また、これに反する証拠も認められないことから、請求人の主張は採用できない。したがって、請求人の本件各修正申告に係る納付すべき税額は、税法上有効に確定していることが認められる。
法定申告期限から3年を経過した後に提出された修正申告書は、更正があるべきことを予知して提出されたものでないとして、過少申告加算税の賦課決定処分の全部を取り消した事例
裁決事例集 第63集 20頁
要旨
原処分庁は、請求人が調査により修正申告が必要であることを指摘されて本件各修正申告書を提出したものであり、過少申告加算税を賦課したことに違法はない旨主張する。
しかしながら、本件修正申告書は法定申告期限から3年を経過した後に提出され、原処分庁において「偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れた」ことの立証がされなければならないところ、原処分庁からはこの点について具体的な主張がなく、証拠資料の提出もない。
したがって、本件修正申告書の提出は、国税通則法第65条第5項に規定する「更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当すると認められ、過少申告加算税の賦課決定処分については、その全部を取り消すのが相当である。
要旨
請求人は、消費税及び地方消費税の確定申告書を法定申告期限内に提出しなかった事情として、[1]原処分庁が申告書用紙を送付せず、申告の必要性を知らせなかった、[2]課税事業者の届出書は原処分庁の指導に従っただけであり、その内容を理解していなかった、[3]前年の課税売上高3,000万円以下で無税であったので、本年の課税売上高も3,000万円以下であったため申告の必要がないと考えていたと主張する。
しかしながら、事業者は、消費税法第45条に規定するとおり消費税及び地方消費税については税務署長からの通知、案内等の有無に関わりなく、税額等を記載した申告書を法定申告期限内に提出しなければならないものであり、申告書用紙の送付がないことをもって法定申告期限内に申告書を提出できなかったことの正当な理由にはならないし、課税事業者の届出書の内容を理解せず原処分庁の指導に従って提出したとの主張も正当な理由にはならない。
また、期限後申告書は原処分庁が提出をしょうようした後に提出されたものであるから、「決定があるべきことを予知してされたものではないとき」にも該当しない。
無申告加算税を賦課決定すべきところ誤って過少申告加算税を賦課したため、これを零円とする変更決定処分をした後、改めて無申告加算税の賦課決定処分を行った場合に、変更決定前の過少申告加算税の賦課決定処分について異議申立てがされているときには、無申告加算税の賦課決定処分について異議申立てをせずに審査請求をすることができる「正当な理由」があるとした事例
裁決事例集 第76集 60頁
要旨
請求人は、異議審理庁の担当職員による異議申立ての補正要求に従い、平成17年分の贈与税に係る無申告加算税の賦課決定処分に該当する箇所に丸を付し、異議申立ての補正をしたことが認められ、本件審査請求の前置である異議申立ての当初の段階から本件決定処分に基づく加算税の賦課決定処分に不服があることが明らかで、当該補正の時点において、第1次賦課決定処分に対する異議申立ては適法に行われたものと認めるのが相当である。原処分庁は、第1次賦課決定処分の加算税の表記に係る瑕疵の是正を図るべく、請求人に対し当該加算税の額を零円とする変更決定をし、第1次賦課決定処分を取り消した上、新たに加算税の額を第1次賦課決定処分のそれと同額とする第2次賦課決定処分を形式的には別個の処分として請求人に課したが、その実質は、「過少申告」から「無申告」への表記変更を行ったものにすぎず、先行の第1次賦課決定処分と後行の第2次賦課決定処分とは事実上同視できるものといえるものであり、争点が共通することは明らかで、その証拠資料の共通性及び判断の斉一性という観点からして、請求人において異議申立てをする必要がないと判断してもやむを得ない面があるといえる。さらに、原処分庁の一連の手続により、請求人には第1次賦課決定処分という不服申立ての対象がなくなる一方、原処分庁が新たに第2次賦課決定処分を課したものの、請求人はこれに対する異議申立てをしなかったことから、結果として本件第2次賦課決定処分に対する審査請求が異議申立前置手続を欠くに至ったもので、かかる結果に至ったのには、原処分庁の行為等がその一因となっているものということができる。以上のとおり、第2次賦課決定処分に対する審査請求については、請求人が異議申立てをせず直接審査請求をしてきたとしても、実質的には異議申立てをしていたのであるから、改めて異議申立てを前置させる必要はなく、原処分庁の行為等がかかる事態を生じさせた一因となっていることからすれば、国税通則法第75条第4項第3号に規定する「正当な理由があるとき」に該当すると解するのが相当であり、原処分庁の主張を採用することはできない。
要旨
請求人は、①請求人自身も共同相続人の一人であると信じたことにより他の相続人である滞納者の相続税の延納につき請求人所有不動産を担保提供することに承諾する意思表示をしたこと、②しかしながら、被相続人と請求人との養子縁組が訴訟により無効とされ遡及的に相続人ではなかったことになったこと、③したがって、その担保提供を承諾する意思表示は動機の錯誤により無効であることを主張して、原処分庁がした請求人所有不動産に対する担保物処分のための差押えの取消しを求めている。
しかしながら、請求人の養子縁組の効力については請求人が担保提供に同意する以前から争いがあったことなどの事実の下においては、請求人は、少なくとも、担保提供の承諾の時において自己の相続人としての地位がその争いの帰趨によっては失われる可能性があることを認識していたものと推認するのが合理的である。また、請求人と被相続人との関係が、実体上、養親子関係にないことは、そもそも請求人自身において当然に熟知していたものというべきである。
そうすると、請求人は、本来は相続人でないところ、担保提供の承諾をした当時、相続人でないことの可能性は十分に認識していたというべきであるから、相続人でないのに相続人であると認識していたというような動機の錯誤があったとまでは認めることができないというべきである。したがって、請求人の主張には理由がない。
特定記録郵便により発送された処分に係る通知書は、配達完了の記録がされた日に納税者がその通知書を了知し得る客観的状態になり、送達されたものとなるとした事例(令和元年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・却下)
裁決事例集 第130集
ポイント
本事例は、処分に係る通知書が特定記録郵便により発送された場合には、その通知書は、その配達が完了した旨が記録された日に請求人の支配下に入ってその内容を了知し得る状態に置かれたものと評価でき、同日に送達されたと認められるとしたものである。
要旨
請求人は、原処分に係る通知書(本件通知書)を受け取った日からすれば、本審査請求は、不服申立てをすることができる期間内にされたものである旨主張する。
しかしながら、本件通知書は、特定記録郵便により請求人の住所に発送されているところ、本件通知書が返戻された事実はなく、当審判所の調査の結果によっても本件通知書が誤配達されたこと等をうかがわせる証拠は見当たらないことからすると、その配達が完了した旨が記録された日に送達を受けるべき請求人の住所に設置された郵便受箱に配達されたと認められ、同日に請求人の支配下に入ってその内容を了知し得る状態に置かれたものと評価できるから、本件通知書は、同日に請求人に送達されたと認められる。そうすると、本審査請求は、本件通知書が送達された日の翌日から起算して3月を経過した後にされたものであり、また、請求人が法定の不服申立期間内に本審査請求をしなかったことについて、国税通則法第77条《不服申立期間》第1項ただし書に規定する正当な理由があるといえる事情は認められないから、本審査請求は、不服申立てをすることができる期間を経過した後にされた不適法なものである。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和52年2月17日第一小法廷判決(民集31巻1号50頁) 最高裁昭和55年1月11日第三小法廷判決(税資110号1頁) 最高裁平成3年12月12日第一小法廷判決(税資187号334頁)
相続税の確定申告書において、租税特別措置法第69条の3の適用を受けるために、いったん宅地を適法に選択した以上、後日、他の宅地への選択替えを求めて更正の請求をすることはできないとした事例
裁決事例集 第46集 1頁
要旨
国税通則法第23条第1項第1号に規定する更正の請求は、納付すべき税額が、納税申告書に記載した課税標準等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと等により過大であるときになしうるものであるから、所得計算の特例等の規定で、納税者に一定事項の申告及び選択等を条件としてその規定の適用を受けることをゆだねている場合に、いったん自由な意思でこれらの規定に従い、かつ、適法な計算に基づいて申告書を提出し税額を確定させたものは、後日その一定事項の申告及び選択等の内容を変更することを理由に更正の請求をすることはできないと解すべきである。
したがって、相続税の確定申告書において、租税特別措置法第69条の3の適用を受けるために、いったん宅地を適法に選択した以上、後日、他の宅地への選択替えを求めて更正の請求をすることはできない。
融通手形の受取人の倒産による手形債務の負担が、請求人に帰責性があるということはできず、不測の事態によって資金繰りが困難になったという点で、売掛金等の回収が不能になった場合と同視できることから、国税通則法第46条第2項第1号に掲げる事実に類する事実に当たるとした事例
裁決事例集 第78集 15頁
要旨
国税通則法第46条第2項各号に掲げる事実(以下「猶予該当事実」という。)とは、納税者の責に帰すことのできない金銭納付を困難ならしめる事実をいうものと解するのが相当であるところ、請求人が取引先C社に対して振り出した本件各手形は、経営困難に陥った当該取引先の資金調達のため、請求人とC社との間で手形の原因行為なくして振り出されたいわゆる融通手形であると認められるものの、これは、請求人の主要な取引先であるC社が倒産すれば同社に対する売掛債権が全額回収できなくなることなどから、やむを得ず振り出したものと認められるので、本件各手形の振出し及びC社の倒産による手形債務の負担について、請求人に帰責性があるということはできず、不測の事態によって資金繰りが困難になったという点で、同項第1号に類する事実として納税の猶予等の取扱要領に例示されている売掛金等の回収が不能になった場合と同視できるので、猶予該当事実に当たると解するのが相当である。
請求人が収受した立退料等に関する納税申告の適否に端を発して関与税理士が請求人を相手として提起した慰謝料請求等事件に係る判決の言渡し(請求人敗訴)があったことを理由に、当該立退料等につき租税特別措置法第37条の適用があるとしてなされた更正の請求には、理由がないとした事例
裁決事例集 第47集 1頁
要旨
本件慰謝料請求等事件に係る控訴審判決は、請求人が収受した立退料等に関する納税申告の適否に端を発して、関与税理士が請求人を相手として提起した慰謝料請求等の訴訟に対する判決であるから、請求人の昭和59年分所得税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となった本件立退料等に係る和解の効力ないし本件立退料等の性格について判断しているものではなく、国税通則法第23条第2項第1号に定める「申告に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった訴えについての判決」に当たらない。
したがって、本件更正の請求には、理由がない。
請求人の代表取締役として実質的に経営の主宰者と認められる者の行った売上金額の除外、個人名義預金等への留保は、請求人の隠ぺい又は仮装行為と同視すべきであるとした事例
裁決事例集 第46集 15頁
要旨
請求人は、売上金の一部除外、個人名義預金等への留保は、専ら専務取締役個人の背任行為であって、請求人の代表者は、関知さえしていなかったから、請求人に隠ぺい又は仮装の意思及び事実はなく、重加算税の賦課決定は違法であると主張するが、行為者は請求人の専務取締役であり、かつ、実質的に経営の主宰者と認められることから、本件事実は、代表者がそれを知っていたかどうかにかかわらず、請求人の行為と同視するのが相当であるから、重加算税の賦課決定処分は適法である。
要旨
請求人は、過少申告の原因は単なる計算誤りであり隠ぺい仮装の行為はない旨主張する。
しかしながら、請求人は、出面帳に毎日の業務及び売上金額等を記載し、また、預金通帳で入金状況をチェックしてその入金状況を更に出面帳に記すなどし、日頃から収入の管理に努めており、自己の収入金額を正しく把握していたものと認められるところ、7年にわたりほぼ連続して、各収支内訳書の「上記以外の売上先」欄のみ過少に記載することにより多額の収入を申告せず、さらに、調査当初において過少である理由について曖昧な説明に終始していたものである。そうすると、請求人は、作為的に収入金額を過少に記載した各確定申告書及び各収支内訳書を提出して多額の収入を意図的に申告せず、更には調査当初において過少申告の意図を隠そうとしていたものと認められる。したがって、請求人の過少申告は、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で行われたものといえるから、重加算税の賦課要件を満たすと認めるのが相当である。もっとも、必要経費については、本人所得率を基に算出した必要経費の額が、当初申告額を下回る年分と上回る年分があり、このような必要経費の額の動きをみると、特段、請求人において必要経費を過大に計上しようとした意図を推認することはできず、他に必要経費につき、請求人に同意図を認めるに足りる証拠もないから、必要経費部分に関する請求人の過少申告行為は、重加算税の賦課要件を満たさない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
適正な申告を行えなかったことが、申告書の作成を依頼した税理士の過失に起因するとしても、国税通則法第65条第4項の「正当な理由」には該当しないとした事例
裁決事例集 第44集 36頁
要旨
請求人は、自らの意思と責任において本件相続に係る相続税の申告をB男に任せ、B男は、請求人の代理人としてA税理士に本件当初申告書を作成させ、これを提出したものである以上、たとえA税理士の過誤によって本件当初申告が過少申告となったとしても、本件当初申告書は請求人の責任において提出されたものであり、かつ、過少申告となったことについて正当な理由があるとは認められない。
還付を受けるための申告書を提出した者が更正を受けたときには、その者が消費税の課税事業者でない場合であっても、国税通則法第65条第1項にいう「納税者」に該当するとした事例
裁決事例集 第67集 1頁
要旨
請求人らは、国税通則法第2条第5号は、「納税者」とは「国税に関する法律の規定により国税を納める義務がある者をいう」と規定しているところ、消費税の課税事業者でない者は、消費税法第5条に規定する「納税義務者」には該当しないことから、当該「納税者」には当たらず、国税通則法第65条第1項の「当該納税者」にも当たらないので、請求人らに過少申告加算税を課することはできない旨主張する。
しかしながら、国税通則法上、納税者とは、国税に関する法律の規定により国税を国に納付しなければならない者とされ、また、更正を受けた者は、「その更正前の還付金の額に相当する税額がその更正により減少するときは、その減少する部分の税額」を国に納付しなければならないとされているから、還付金の還付を受けるための申告書を提出した者が更正を受けたときには、その者は国税通則法第65条第1項にいう「当該納税者」に該当することになる。
また、国税通則法第2条第5号の「納税者」は、「国税に関する法律の規定により国税(源泉徴収による国税を除く。)を納める義務がある者」と規定されており、この「国税に関する法律」には国税通則法も含まれることから、この「納税者」が消費税法第5条の「納税義務者」でなければならないとする請求人らの主張は採用できない。
要旨
国税通則法第46条第5項及び国税徴収法第152条には、税務署長等が換価の猶予をする場合には担保を徴さなければならない旨規定されており、国税通則法第50条には、担保の種類として第3号に土地が、第6号に税務署長等が確実と認める保証人の保証が掲げられている。
また、国税通則法施行令第16条第2項は、担保として土地を提供しようとする者は、抵当権を設定するために必要な書類を国税庁長官等に提出しなければならない旨、同条第3項は、保証人の保証を担保として提供しようとする者は、納税保証書を国税庁長官等に提出しなけれならない旨規定している。
これを本件についてみると、次のとおりである。
原処分庁は、請求人から約束手形の提供を受けて換価の猶予をしていたが、その後、さらなる担保として土地の担保の提供において必要とされる抵当権設定登記承諾書等の書類の提出を受けて換価の猶予期間を延長したこと、及び本件訴訟においてこれらの書類の真偽について争われたが真正に作成されたものと認定されたことから、原処分庁のした抵当権の設定に係る手続は適法に行われていると認められる。
また、本件判決において抵当権設定行為が否認されたのは、物上保証人が抵当権を設定するに際して請求人から債務の免除を受けるなどの経済的利益を受けていないことによるものであって、納税保証書を徴さなかったことではないのであるから、原処分庁の手続上の瑕疵によるものとは認められない。
なお、納税保証書は担保提供者たる請求人の意思により提出するものであると解されるところ、既に担保の提供を受けている原処分庁が徴さなければならない理由も認められず、物上保証人による滞納者の租税債務の負担を証する合意書を徴さなければならないとする法令上の規定もない。
要旨
隠ぺいされ、相続財産として申告されていなかった無記名定期預金の原資は、被相続人及び相続人ら一族の不動産の賃貸料収入等であるから、その預金のうちに被相続人に帰属すべき金額があるにもかかわらず、本件無記名定期預金が無記名であったことを奇貨として被相続人の遺産から除外して相続税の申告書を提出した場合には、本件無記名定期預金を管理していた相続人は重加算税の課税要件を満たすが、本件無記名定期預金の存在を了知していなかった他の相続人は、重加算税の課税要件を備えていないので、重加算税を賦課した原処分は相当でない。
要旨
原処分庁は、請求人の異議申立て(本件異議申立て)は異議申立書(本件異議申立書)の記載不備を期限までに補正しなかったため、不適法であるとして却下の決定(本件却下決定)を行っていることから、請求人は国税通則法(通則法)第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第3項に基づき審査請求をすることはできず、請求人の審査請求(本件審査請求)は不適法なものとして却下されるべきである旨主張する。
しかしながら、本件異議申立書の記載不備は、原処分庁が職権で補正事項を補正しなければならなかった軽微なものであるし、また、本件異議申立ては、原処分庁の行った債権の差押処分があった日の翌日から起算して1年を経過した後になされているが、通則法第77条《不服申立期間》第4項ただし書の「正当な理由」があると認められることから、本件却下決定は違法であり、本件審査請求は適法な異議申立てを経たものである。
参照条文等
参考判決・裁決
福島地裁昭和29年12月6日判決(行集5巻12号2831頁)
不動産売買契約の和解に伴う損失は、当該和解のあった日の属する事業年度の所得金額の計算上、損金の額に算入すべきものであって、国税通則法第23条第2項の規定により、そ及して所得金額を減額修正することはできないとした事例
裁決事例集 第54集 46頁
要旨
法人の所得の計算につき、法人税法第22条第4項は法人の当該事業年度の収益の額及び費用、損失の額について、いわゆる権利確定主義を採っており、それが一般に公正妥当と認められる会計処理の基準であるから、法人の所得の計算については、当期において生じた損失は、その発生事由を問わず、当期に生じた益金と対応させて当期において経理処理すべきものであって、その発生事由が既往の事業年度の益金に対応するものであっても、その事業年度にさかのぼって損金として処理しないというのが一般的な会計処理であるということができる。
本件和解によって本件譲渡物件に係る譲渡代金が減額されたとしても、その損失額は、本件和解のあった日の属する平成7年10月31日から平成8年9月30日までの事業年度の損金の額に算入すべきものであり、本件事業年度の経理処理及び納税義務には何ら影響を及ぼさないことになるから、本件更正の請求は、課税標準等又は税額等が過大であるとの更正すべき実体要件を欠くものといわざるを得ない。
要旨
請求人は債権償特別却勘定の設定に関する税務署長の認定が相当期間なされなかったことから、原処分庁の事務処理の怠慢を理由に、過少申告加算税の賦課決定が不当である旨主張するが、更正により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
ポイント
この事例は、法人税の更正処分及び源泉所得税の納税告知処分が調査手続を欠く違法なものか否かが争われたところ、適法な調査手続に基づいて行われた処分であり違法はないと判断したものである。
なお、本件処分にはホステス報酬に係る納税告知処分が含まれており、ホステス報酬に係る源泉所得税額の計算については、最高裁平成22年3月2日第三小法廷判決が、所得税法施行令第322条《支払金額から控除する金額》にいう「当該支払金額の計算期間の日数」は当該期間に含まれるすべての日数を指すものと判断し、ホステスの実際の稼働日数を指すという課税庁の主張を退けたことから、この事例でも、これに従ってホステス報酬に係る源泉徴収税額を再計算し、納税告知処分の一部を取り消している。
要旨
請求人は、原処分庁が本件査察調査をもって請求人に対し調査をしたとし、改めて調査を行わなかったのであるから、調査をすることなく行った本件各告知処分等及び本件各再更正処分は、適正な手続を欠く違法なものである旨、また、一度減額したものをいかなる理由があろうとも再度増額の処分をすることは権利の濫用である旨主張する。
しかしながら、課税庁が内部において既に収集した資料を基礎として正当な課税標準を求めることも「調査」の範囲に含まれるものと解されるところ、本件各告知処分等及び本件各更正処分は、①請求人の源泉所得税について、当初告知処分に係る請求人の源泉徴収簿等の関係資料及び源泉所得税の納付事績等の既に収集した資料等を改めて照合及び検討した上で、また、②請求人の法人税について、当初減額更正処分の関係資料、法人税の確定申告書及び同付属書類等の既に収集した資料等を改めて照合及び検討した上で行われたものであるから調査手続を欠く違法な処分とは認められない。また、課税庁は、自ら行った処分に瑕疵を発見したときは、その瑕疵が実体的なものであれ、手続的なものであれ、適正な課税の確保実現を図るため、これを取り消して新たな処分をなし得るとものと解すべきであるから、原処分庁が国税通則法第36条《納税の告知》第1項第2号の規定に基づき請求人に対して本件各告知処分等を行ったことに違法は認められない。
参照条文等
参考判決・裁決
新潟地裁平成11年7月15日判決(税資256号12頁) 最高裁平成22年3月2日第三小法廷判決(民集64巻2号420頁)
各更正通知書に添付された各別表から算出される金額と当該各更正通知書に記載された金額とが不一致である場合において理由の提示に不備があると判断した事例(平成28年12月1日から平成29年11月30日まで、平成29年12月1日から平成30年11月30日まで、平成30年12月1日から令和元年11月30日まで及び令和元年12月1日から令和2年11月30日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・全部取消し)
裁決事例集 第133集
ポイント
本事例は、各更正通知書に添付された各別表から算出される控除対象仕入税額の減少額と当該各更正通知書に記載された控除対象仕入税額の減少額とが不一致である場合において、当該各別表に記載のどの部分が課税仕入れと認められなかったのかが判別できないことから、理由の提示に不備があると判断したものである。
要旨
原処分庁は、各更正通知書に記載された処分の理由には不利益処分の根幹部分をなす事実関係が明示されており、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与えるという行政手続法第14条《不利益処分の理由の提示》第1項本文の法の趣旨に反するものではないから、各更正処分の理由の提示に不備はない旨主張する。
しかしながら、当該各更正通知書に添付された各別表に記載された金額から算出される控除対象仕入税額の減少額と当該各更正通知書に記載された控除対象仕入税額の減少額とは一致しておらず(本件不一致)、本件不一致は当該各別表中の一部の取引について原処分庁が請求人の仕入税額控除の対象と認めた金額(本件差額)があるために生じたものであるところ、当該各更正通知書に、本件差額に係る記載がないことにより、当該各別表を含む当該各更正通知書の記載だけでは、請求人において本件差額の存在さえ知ることができず、また、当該各別表に記載のどの部分が課税仕入れとして認められなかったのか判別することもできないため、不服の有無を判断することができない。そうすると、当該各更正通知書は、各更正処分の全体について、原処分庁の判断過程を逐一検証し得る程度の更正の理由の記載があるとは認められず、原処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という趣旨目的を充足する程度に具体的に更正の根拠を明示したものと評価することはできないから、当該各更正処分は、その理由の提示に不備があり、違法である。
参照条文等
行政手続法第14条第1項、第3項
参考判決・裁決
最高裁平成23年6月7日第三小法廷判決(民集65巻4号2081頁) 東京高裁昭和50年6月27日判決(訟月21巻13号2799頁) 平成26年9月1日裁決(裁決事例集No.96)
国税を担保するために抵当権が設定された後に当該担保不動産上に築造された建物について原処分庁が行った差押処分は、国税通則法第52条第4項に規定する「なお不足があると認めるとき」にされたものではないとして取り消した事例(不動産の差押処分・全部取消し)
裁決事例集 第109集
ポイント
本事例は、国税を担保するために抵当権が設定された後に当該担保不動産上に築造された建物についての差押えは、国税通則法第52条第4項に規定する「なお不足があると認めるとき」の要件を充足する必要があるとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人の国税を担保するため抵当権が設定された各担保不動産(本件各担保不動産)上に、抵当権の設定後に築造された請求人の建物(本件建物)に対して行った国税徴収法第47条《差押の要件》第1項第1号に基づく差押処分(本件差押処分)は、国税通則法第52条《担保の処分》第4項に規定する「なお不足があると認めるとき」になされたものではないが、抵当権の設定後に抵当地に築造された建物を抵当地とともに競売できる旨を定めた民法第389条《抵当地の上の建物の競売》第1項の規定に照らせば、許容されるべきである旨主張する。
しかしながら、国税の担保の処分においても民法第389条第1項が適用されると解する余地はあるが、その場合であっても、抵当権の設定後に抵当地に築造された建物を抵当地とともに公売するための差押えは、担保権の実行である以上、国税通則法第52条第1項に基づく担保物処分のための差押えとして行うものであり、国税徴収法第47条第1項第1号に基づいてなされた本件差押処分は、国税通則法第52条第4項の「なお不足があると認めるとき」になされたものではないから、違法である。
参照条文等
民法第389条第1項 国税通則法第52条第4項第1号 国税徴収法第47条第1項第1号
土地の譲渡につき、当該土地の前所有者の買戻しの予約完結権を侵害したとして、損害賠償の訴えがあり、これを認める判決があっても、当該判決は、国税通則法第23条第2項に規定する「課税標準等又は税額等の基礎となった事実に関する訴えについての判決」には該当しないとした事例
裁決事例集 第47集 8頁
要旨
請求人は、本件土地をBから購入価額と同額での買戻し条件付で購入したにもかかわらず、本件土地をCに売却し、そのためBから本件訴訟を提起されたところ、裁判所において、請求人がBの予約完結権を侵害したとして、Bが予約完結権を行使した場合に得ることができた利益相当額(時価から購入価額を控除した額)の損害賠償金を支払う責めがあるとのBの請求を認める本件判決があったものである。
請求人は、本件判決により、損害賠償金を支払ったことにより、Cへの譲渡による利益を失ったのと同視すべきとして、国税通則法第23条第2項第1号に基づき更正の請求をした。
しかし、本件訴訟の請求の趣旨及び本件判決は、Cへの譲渡に何ら影響を及ぼすものではないから、国税通則法第23条第2項第1号に規定する「課税標準等又は税額等の基礎となった事実に関する訴えについての判決」に該当せず、更正の請求は要件を欠くものである。
外国子会社合算税制に係る所得が無申告であった者に対する無申告加算税の賦課決定処分において、内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律第6条《国外財産に係る過少申告加算税又は無申告加算税の特例》第2項を適用したことを適法とした事例
裁決事例集 第122集
ポイント
本事例は、請求人が、外国子会社合算税制に係る所得の基因となる外国子会社の株式を記載した国外財産調書を提出していなかった場合において、原処分庁が、当該所得に係る無申告加算税の賦課決定処分を行う際に内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律第6条第2項の加重措置を適用したことは適法と判断したものである。
要旨
請求人は、平成27年12月31日、平成28年12月31日及び平成29年12月31日において、その価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有していたと認められるから、平成27年分から平成29年分までにつき、内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(国送法)第5条《国外財産調書の提出》第1項本文に規定する国外財産調書の提出義務があったにもかかわらず、これらをいずれも法定提出期限内に提出しなかったと認められる。
したがって、上記各年分の無申告加算税の金額につき、国税通則法第66条《無申告加算税》並びに国送法第6条《国外財産に係る過少申告加算税又は無申告加算税の特例》第2項の規定に基づいて計算すると、いずれも原処分の各金額と同額となるから、本件の無申告加算税の各賦課決定処分は、いずれも適法である。
参照条文等
内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律第2条第7号、第5条第1項、第6条第1項、第2項、同法施行令第11条、同法施行規則第13条
要旨
請求人は、[1]消費税等の確定申告についても、法人税と同様に確定申告期限までに請求人の決算が確定しないし、法人税と消費税等の確定申告相互間には両輪若しくは一体の概念があることから、法人税の確定申告書の提出期限の延長が認められた以上、消費税等の確定申告書の提出期限も延長されるべきであり、[2]本件納付税額は、法定申告期限内に納付しており、国に何らの損害も与えていないし、[3]原処分庁は、請求人が法人税の確定申告書の提出期限延長に関する指導を受けた際、消費税等に関連した説明を何ら行っておらず、また、本件納付税額を納付した際においても、原処分庁は納付の事実をもって確定申告書との照合が可能であり、照合の結果、本件確定申告書がその時点で提出されていないのであるから、期限内に提出するよう指導すべきであったにもかかわらず、何らの指導も行っておらず、原処分は信義誠実の原則に反し、不当な処分である旨主張する。
しかし、[4]消費税の納税義務は、課税資産の譲渡等の時に成立しており、確定した決算に基づくことは、消費税等の確定申告の要件とはなっておらず、また、消費税法には、確定申告書の提出期限の延長を認める旨の規定も設けられていない。さらに、法人税法と消費税法とは別個の規定であるから、法人税の確定申告書の提出期限の延長適用の有無が、消費税等の確定申告書の提出期限に影響を及ぼすものでもない。
また、[5]申告納税方式を採用する国税においては、納税申告が納税義務を確定させる重要な意義を有することから、国税通則法第66条第1項の規定は、申告の適正を担保し申告納税制度を確保するために、納税義務者に課せられた税法上の義務の不履行に対する行政上の措置として無申告加算税を課すものであり、このことは、納付すべき税額が法定納期限内に納付されたことにより左右されるものではない。さらに、[6]請求人は、原処分庁が消費税等に関しては確定申告書の提出期限の延長はない等の適切な指導を行っておれば、本件確定申告書を法定申告期限内に提出しており、原処分を避けることができた旨主張するが、申告納税制度の下における確定申告は、本来、納税者自身の判断と責任においてなされるべきであることから、指導がなかったとしても原処分を違法とすることはできない。租税法規に適合する課税処分について法の一般原理である信義誠実の原則の法理の適用により課税処分を取り消すことができる場合があるとしても、租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては、信義誠実の原則の法理の適用については慎重でなければならず、信義誠実の原則に反するというには、租税法規の適用における納税者間の公平平等という要請を犠牲にしても、なお当該課税処分を免れさせて、納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合でなければならないと解される。
これを本件についてみると、請求人の主張をもって、上記した特別な事情が存するとは認められない。
したがって、原処分が信義誠実の原則に反し不当であるということはできない。
要旨
請求人がいったん一括比例配分方式を選択適用して申告した場合には、仮に、その後において個別対応方式によって計算した仕入控除税額の方が一括比例配分方式によって計算した仕入控除税額を上回り、その結果、消費税の納付すべき税額が少なくなることが判明したとしても、請求人の本件申告書における仕入控除税額は、消費税法第30条(仕入れに係る消費税額の控除)の規定に従って誤りなく計算されたものである以上、国税通則法第23条(更正の請求)第1項第1号にいう「課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律に従っていなかったこと」又は「当該計算に誤りがあったこと」のいずれの要件にも該当せず、したがって、同条に定める更正の請求をすることはできない。
特定退職金共済制度の導入に伴う過去勤務債務分を特別賞与として損金に算入し、従業員の代表者名義の預金を設定した行為が所得金額の隠ぺい又は仮装に当たらないとした事例
裁決事例集 第45集 53頁
要旨
期末に一部の従業員に対し特別賞与として損金に算入した金額は、請求人が特定退職金共済制度に加入したことにより、退職金支給時に勤務年数の長い従業員が不利になるという問題が生じたので、一時金として支給することとし、それを一部の従業員名義の預金としていたものであるが、[1]算定基準が従業員の入社等の経緯におおむね見合ったものと認められること、[2]一般従業員にもおおむね周知されていたことが推認できること、[3]預金を他の用途に支出した事実がないことから、本件預金が法人税の課税を免れるために設定されたと認定するまでの証拠はないといわざるを得ない。
したがって、請求人が所得金額の計算の基礎となるべき事実を隠ぺい又は仮装したとは認められない。
相続税の連帯納付義務を免れるためになされた遺産分割協議の合意解除は、後発的な更正の請求事由の一つである「やむを得ない事情によって解除」された場合には当たらないとした事例
裁決事例集 第86集
ポイント
この事例は、私法上、遺産分割協議の合意解除は認められているが、その目的が相続税の連帯納付義務を免れるためのものである場合には、後発的な更正の請求を認めた趣旨に照らして国税通則法施行令第6条第1項2号に規定する「やむを得ない事情」に当たるとは到底解することはできないと判断したものである。
要旨
請求人らは、被相続人に係る遺産について、代償分割の方法による当初の遺産分割協議(本件当初分割)を行い、代償財産を取得することとなったものの、代償債務を負う者がその債務の履行をせず、更に請求人らに当該代償債務を負う者に係る相続税の連帯納付義務が課されたことから、債務不履行解除の意思表示をして本件当初分割を解除(本件解除)した上で、再度の遺産分割協議を行った結果、請求人らは何らの財産も取得しないこととなったことからすると、本件解除は、国税通則法施行令第6条《更正の請求》第1項第2項に規定する「解除権の行使によって解除され」た場合又は「契約の成立後生じたやむを得ない事情によって解除され」た場合に該当するから、本件各更正の請求は、国税通則法第23条《更正の請求》第2項第3号に規定する事由に基づくものである旨主張する。
しかしながら、遺産分割協議は、債務不履行解除をすることができないから、本件解除は「解除権の行使によって解除され」た場合には該当しない。また、本件においては、本件当初分割を解除する合意と同時に再度の遺産分割協議を行ったということができるところ、本件解除は、請求人らにおいて、上記代償債務を負う者に係る相続税の連帯納付義務を免れることを目的としたものといわざるを得ず、このような合意をもって、国税通則法第23条第2項に規定する後発的な更正の請求が認められるならば、相続税の連帯納付制度そのものを否定するに等しいというべきであり、同項及び国税通則法施行令第6条が連帯納付義務を免れる目的でされた合意に基づく更正の請求を「やむを得ない事情によって解除」された場合として認めているとは到底解することはできないから、「契約の成立後生じたやむを得ない事情によって解除され」たものと認めることはできない。したがって、本件各更正の請求は、国税通則法第23条第2項第3号に規定する要件を満たさないものである
。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成元年2月9日第一小法廷判決(民集43巻2号1頁) 最高裁平成2年9月27日第一小法廷判決(民集44巻6号995頁) 東京地裁平成11年2月25日判決(税資240号902頁)
納税者本人の申告行為に重要な関係を有する部門(経理部門等)に所属し、相当な権限を有する地位(課長等)に就いている者の隠ぺい又は仮装の行為は、特段の事情がない限り、納税者本人の行為と同視すべきであり、重加算税の賦課決定処分は適法であるとした事例
裁決事例集 第50集 25頁
要旨
請求人は、棚卸資産の減額は、請求人の経理課長が行ったものであり、請求人の代表取締役その他の役員は全く関知していないし、過少申告の事実も知らされていなかったとして、重加算税の賦課決定は違法であると主張するが、納税者本人の申告行為に重要な関係を有する部門(経理部門等)に所属し、相当な権限を有する地位(課長等)に就いている者の隠ぺい又は仮装の行為は、特段の事情がない限り、納税者本人の行為と同視すべきであるから、重加算税の賦課決定は適法である。
要旨
給与所得として請求人が源泉徴収義務を負う従業員慰安旅行の費用について、[1]実際は海外旅行であるにもかかわらず、国内旅行を行ったとする架空の書類を旅行社に作成させたこと、[2]上記[1]で作成させた架空書類に基づき、国内旅行を行ったとして、福利厚生費を計上する経理をしたこと、[3]原処分の調査担当職員に対し国内旅行を実施したと虚偽の説明をしたことは、単なる過失や記帳誤り等とは認められず、故意に源泉所得税に関する事実を仮装したものと認めるのが相当である。
要旨
請求人は、先輩からの言い伝えを信じて申告したにすぎず、ほ脱の意思をもっていなかったのであるから、請求人の行為は、国税通則法第70条第5項に規定する「偽りその他不正の行為」に該当しない旨主張する。
しかしながら、当審判所の調査の結果によれば、請求人は、各年分の確定申告に当たり、実際の給与等の収入金額を給与明細書等により承知し得たにもかかわらず、多額の金額を除外した後の金額を各年分の確定申告書の給与収入金額欄に記載し、その結果、多額の税額を免れていたことが認められる。
さらに、請求人が、過去に日本の法人に勤務していたことからして、同人において、800万円をも上回る金額が、非課税所得分の支給額として不相当に高額であると認識し得なかったとは到底認められず、同人は、合理的な根拠もなく恣意的に給与等の収入金額を除外して申告したものと認めるのが相当である。
これらのことからすれば、請求人が正当な税額を免れる目的で、所得金額をことさらに過少に記載した申告書を提出したことは明らかであり、請求人の行為は、本件規定における「偽りその他不正の行為」に該当する。
要旨
請求人は、滞納処分による債権の差押えに対して、[1]滞納者に対して被差押債権を超える債権を有しているので相殺すべきであること、[2]差押えの前に本件債権を元従業員に譲渡したとする債権譲渡通知書が届き、当該債権譲渡は本件差押処分に先行するから滞納者に対する債務が存在しない旨主張して差押処分の取消しを請求する。
しかしながら、差押処分等の国税に関する処分に対し、審査請求ができる者は、その処分の取消しを求めることに法律上の利益を有する者に限られると解されている。本件差押処分によって、国は滞納者に代わって債権者の立場に立つにとどまり、国と第三債務者たる請求人との関係は、私法上の債権者、債務者という関係にすぎないことになる。
そうすると、請求人が任意に当該債務を履行しない場合は、国は、民事訴訟法に定める手続により被差押債権に係る債務名義を得たうえで、強制執行の手続を踏むほかはなく、請求人は、国が被差押債権取立てのための訴えを提起したときには、当該債務の不存在等差押え前から滞納者に対して有する一切の抗弁を主張して対抗することができるのであるから、債権者が滞納者から国に交代したことに伴い、法律上の不利益を受けることはない。
したがって、被差押債権に係る債務が存在しないことを理由として本件差押処分の取消しを求める本件審査請求は、法律上の利益を欠いた不適法なものである。
要旨
請求人は、本件修正申告書の提出が国税通則法第65条第5項に規定する「調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当する旨主張するが、原処分に係る調査担当者が請求人の申告内容を精査検討の結果、請求人の関与税理士に対して、電話により質問及び指摘しており、その後に本件修正申告書が提出されていることからすれば、本件修正申告書の提出は、調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたというべきであり、過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。
請求人について、売上げの減少や経費の増加の程度が著しいとは言い難く、利益については赤字の状態に陥ったとは認められないから、国税通則法第46条第2項第5号に規定する同項第4号に類する事実(事業についての著しい損失に類する事実)があったとは認められないとした事例
裁決事例集 第78集 30頁
要旨
請求人は、①国税庁が定める納税の猶予等の取扱要領(以下「猶予取扱要領」という。)第2章第1節1の(3)のヘの(ハ)では、「納税者に事業上の著しい損失に類する事実があったこと」とは、「従前に比べ売上げの減少等の影響を受けたこと」と定めているから、比較の対象は調査日前1年間(調査期間)の直前の1年間(基準期間)より広いことは明らかであり、売上げの減少等の程度が著しいことまでを要件とするものではないところ、②平成19年分と平成13年分を比較すると、売上金額及び粗利益金額が明らかに減少した事実があるので、国税通則法第46条第2項第5号に規定する同項第4号に類する事実(以下「5号該当(4号類似)事実」といい、第4号で規定する事実を「4号該当事実」という。)がある旨主張する。
しかしながら、猶予取扱要領にいう「従前」とは、4号該当事実の原則的な判定方法と例外的な判定方法の基礎となる期間を示していると解するのが相当であり、5号該当(4号類似)事実とは、自己の責に帰すことができないやむを得ない事由による著しい売上げの減少や著しい経費の増加をいい、利益の現象による5号該当(4号類似)事実があるというためには、著しい赤字の状態が生じたとまではいえないが、それに近い赤字の状態が生じていることが必要であると解されるところ、本件調査期間と本件基準期間を比較すると、売上げの減少や経費の増加の程度が著しいとは言い難く、利益については赤字の状態に陥ったとは認められないから、請求人には、5号該当(4号類似)事実があるとは認められない。
請求人は、確定申告に係る一連の手続について兄に包括的に委任していたというべきであり、その委任の効力は、その後の修正申告にも及ぶと解すべきであるから、当該確定申告及び当該修正申告は有効と認められるとした事例
裁決事例集 第80集
要旨
納税申告は、原則として納税義務者本人が申告書を提出して行うこととされているから、納税義務者以外の者が、本人の承諾なく勝手に納税義務者の申告書を作成し、提出した場合には、その納税申告は無効であると解される。もっとも、納税義務者以外の者が申告書を作成し提出した場合であっても、その者が、納税義務者から明示又は黙示に当該申告行為をする権限を与えられている場合は、その納税申告は有効であると解される。
請求人は、あらかじめ兄が用意し所得金額等が記載された本件確定申告書に自ら署名しており、本件確定申告書には、署名欄のすぐ上に、大きく「平成9年分の所得税の確定申告書」と印刷されていること、請求人が当時20歳で、意思能力等に問題があったことを窺わせる証拠がなく、請求人は、調査担当職員に、本件確定申告書は、自身で住所と名前を記載し提出した旨を説明していること、還付金の振込先として説明した口座が、還付金が振り込まれた口座と一致していることに照らすと、請求人は、自己が署名した書類が、所得税の確定申告書であることを認識していたものと認められ、また、本件確定申告書には、還付金の受取場所(振込先)として、請求人名義の口座が記載されていたと推認することができ、請求人は、その記載も認識していたと認めることができる。そして、請求人は、これら本件確定申告書の記載内容及びこれを提出することについて、何ら異議を述べていないことなどに照らすと、請求人は、本件確定申告に係る一連の手続について、兄に包括的に委任していたというべきであり、上記委任の効力は、その後の、本件確定申告の内容を是正する手続である本件修正申告にも及ぶと解すべきである。そうすると、請求人の兄が、本件確定申告書を提出し、また、本件修正申告書に請求人の氏名等を記載して提出したとしても、本件確定申告及び本件修正申告はいずれも有効というべきである。
参照条文等
国税通則法第17条第1項 民法第99条
還付申告書の提出による還付金を受け取っていない場合であっても、修正申告により還付金の額に相当する税額が減少する場合は過少申告加算税賦課の対象になるとした事例
裁決事例集 第84集
要旨
請求人は、還付申告書の提出による還付金を受け取っておらず、その後、修正申告により税額がマイナスから○○○○円になったにすぎないから、国税通則法第65条《過少申告加算税》第1項に規定する「納付すべき税額」は生じていない旨主張する。
しかしながら、国税通則法第65条第1項は、期限内申告書(還付請求申告書を含む。)が提出された場合において、修正申告書の提出があったときは、当該納税者に対し、その修正申告に基づき過少申告加算税を課する旨規定しているところ、同法第35条《申告納税方式による国税等の納付》第2項第1号の規定により、単に納付すべき税額が増加する場合に限らず、還付金の額に相当する税額が修正申告により減少する場合も、その減少する部分の税額について、過少申告加算税賦課の対象としていることが明らかであることから、請求人の主張は採用できない。
参照条文等
参考判決・裁決
大阪高裁平成16年9月29日判決(訟月51巻9号2482頁) 札幌地裁平成17年11月24日判決(税資255号順号10208) 平成22年1月7日裁決(裁決事例集No.79)
要旨
請求人は、平成9年分の所得税に係る重加算税の賦課決定処分が審査請求中であり、充当適状に至っていないから、当該重加算税に平成10年分の所得税の純損失の繰戻しによる還付金等を充当した本件充当処分は違法である旨主張するが、通則法第105条第1項は、国税に関する法律に基づく処分に対する不服申立ては、その目的となった処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない旨を、また、課税処分と充当処分とは、それぞれ別個の目的及び法律効果を有する独立した行政処分であり、その間に違法性が承継されるものではないから、請求人の主張には理由がない。
重加算税の額の基礎となる税額は、過少申告加算税の基礎となるべき税額から、その税額の基礎となるべき税額で隠ぺいし、又は仮装されていない事実に基づく税額を控除した税額となるところ、控除後の税額は零となることから、過少申告加算税の額を超える部分の金額は違法であるとした事例(平22.7.1から平23.6.30までの事業年度の法人税に係る重加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第102集
ポイント
本事例は、請求人が当初申告において組合損益に架空経費を計上し、これを基に組合損益の分配額を計上していたが、更正処分においては、組合損益の分配割合は零と認定され、この分配割合の変更については隠ぺい又は仮装の事実はないことから、重加算税の基礎となる税額は零と計算されるとしたものである。
要旨
請求人は、組合事業に係る組合損益の分配割合につき、更正処分においては当該組合事業に係る不動産の登記名義の割合を用いて算定しているところ、重加算税賦課決定処分においては、架空雑費(本件雑費)の金額を各組合員の出資金額の割合を用いて算定しており、計算方法の一貫性を欠くと主張する。
しかしながら、請求人は本件雑費を含む組合損益を本件雑費の割合(本件雑費割合)に応じて各組合員に分配した損益分配表に基づいて申告したのであるから、原処分庁が本件雑費を各組合員に割り付けるに当たり、本件雑費割合をよりどころとしたこと自体は何ら不合理ではない。
もっとも、国税通則法第68条《重加算税》第1項括弧書及び同法施行令第28条《重加算税を課さない部分の税額の計算》第1項の規定により、重加算税の計算の基礎となる税額は、増差税額全体から隠ぺい又は仮装されていない事実のみに基づいて更正があったものとした場合の納付すべき税額を控除して算出するとされているところ、損益の分配割合に誤りがあったことについては、隠ぺい又は仮装は認められないため、①「更正処分に基づく増差税額全体」から②「損益の分配割合に誤りがあったことのみに基づいて更正があったものとして算出した税額」を控除して計算することとなるが、①と②は同額であることから、重加算税の計算の基礎となる税額は零円となる。したがって、増差税額の全部が過少申告加算税の賦課対象となり、これを前提に請求人の加算税額を計算すると原処分額が過大となるから、当該過大部分は違法である。
参照条文等
修正申告のしょうように至るまでの過程において、原処分庁が当初保有していた情報とは異なる申告漏れが判明した事情がある場合において、修正申告は更正があるべきことを予知してなされたものであると認めた事例
裁決事例集 第74集 27頁
要旨
課税庁が申告内容について調査を行い、その結果に基づき修正申告のしょうようをした後に、修正申告書の提出があった場合には、自発的な修正申告があったとはいえないから、かかる修正申告書の提出は国税通則法第65条第5項に規定する「更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に当たらない。
本件では、①原処分庁は請求人の所得税に関する調査を行うために呼び出したこと、②その日に請求人に対する調査が行われたこと、③その結果、その場で配当所得の申告漏れになっていた正しい事実が明らかになったこと、④調査担当職員が調査の経過に照らし、上記配当所得以外の申告漏れは見込まれないと判断したことが認められ、修正申告のしょうようがあったものといえる。
そして、原処分庁は、本件調査日以前に何度か請求人に対してC社との取引内容を明らかにする文書を提出するように求め、当初入手情報の存否の当否を確認するよう努めており、また、調査担当者は、本件調査日において、D社の株式に係る配当金が本件取引口座に入金されているにもかかわらず、当該収入が申告されていなかったという正確な情報を把握した上で修正申告をしょうようしたのであるから、請求人の主張は前提を欠いており理由がない。
共同して提出する申告書に署名した者又は記名された者に押印がない場合においては、その申告書がその提出時点において、署名した者又は記名された者の申告の意思に基づいて提出されたものと認められるか否かによって、押印のない者の申告の効力を判断すべきであるとした事例
裁決事例集 第80集
要旨
請求人は、請求人が法定申告期限までに申告の意思を有していたことを前提として、他の共同相続人が請求人の氏名を記名して提出した相続税の申告書(本件第1申告書)は、請求人の押印はされていないが、請求人の納税申告書としての形式的な記載要件を満たしているのであるから、請求人の申告の意思に基づく有効な申告書である旨主張する。
しかしながら、本件第1申告書が請求人の申告書であるといい得るためには、単に請求人が申告の意思を有していたのみでは足りず、本件第1申告書が申告の意思に基づいて提出されたものであるか否かの観点から判断すべきところ、本件第1申告書を作成した税理士は、他の共同相続人の依頼に基づきこれを作成し提出したものであり、その作成に関し請求人から依頼されていないこと及び請求人が、法定申告期限内に相続税の申告ができなかった理由を記載した書面を原処分庁に提出していることなどからすれば、本件第1申告書は請求人の意思に基づいて提出されたものとはいえない。
参照条文等
内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律第6条第2項の規定は国税通則法第65条第5項の規定の適用がある修正申告書にも適用されるとした事例(平成26年分の所得税及び復興特別所得税に係る過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第108集
ポイント
本事例は、更正を予知せずにされた修正申告書であっても、内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律第6条第2項の規定に基づく過少申告加算税は課されるとしたものである。
要旨
請求人は、内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(国送法)第6条《国外財産に係る過少申告加算税又は無申告加算税の特例》第2項の規定は、国税通則法(通則法)第65条《過少申告加算税》第5項の規定が適用される請求人の修正申告書(本件修正申告書)には適用されない旨主張する。
しかしながら、国送法第6条第2項は、通則法第65条の規定の適用がある場合に過少申告加算税を加重する旨規定しており、同条第5項の規定の適用がある場合を除く旨規定しているものではない上、同項の規定の適用がある修正申告書にも国送法第6条第2項の適用があると解することは、同条第1項及び第2項の規定の趣旨とも整合する。したがって、国送法第6条第2項の規定は、通則法第65条第5項の規定の適用がある修正申告書にも適用されると解するのが相当であるから、本件修正申告書についても国送法第6条第2項の規定は適用される。
参照条文等
同一相手方との間で土地を低価譲渡及び低価取得したことは、税負担の公平を害するといわざるを得ないが、この契約自体を虚偽仮装のものとみることは相当ではないとした事例
裁決事例集 第46集 137頁
要旨
取引の相手方が、550百万円で取得した土地を240百万円で請求人に売却したことにより巨額な損失を生じる取引であっても、逆に請求人から600百万円で取得した土地を転売して利益を得ていることからすれば、本件各取引を不合理な取引ということはできない。
原処分庁が本件土地の譲渡価額を910百万円と判断したことは必ずしも不当とはいえず、600百万円を計算の基礎とすることは税負担の公平を害するといわざるを得ない。しかし、上記の各取引の合意は明確に成立している事実が認められ、910百万円とする契約が存在し、それをあえて600百万円に偽装仮装した契約を作成したとは認定できない。
したがって、本件取引について、国税通則法第70条第5項に規定する偽りその他不正の行為があったとは認定できないので、法定申告期限から3年を経過してなされた本件更正処分は違法であり、原処分は、その全部を取り消すべきである。
ポイント
本事例は、国税を担保するために抵当権が設定された後に当該担保不動産上に建物が築造された場合には、当該担保不動産及び当該建物を一括して公売するために、国税通則法第52条第1項及び民法第389条第1項の規定に基づく担保権の実行として当該建物を差し押さえることができるとしたものである。
要旨
請求人は、滞納国税(本件滞納国税)を徴収するためには、本件滞納国税を担保するための抵当権が設定された各不動産(本件各不動産)の差押えで十分であるなどとして、当該抵当権の設定後に当該各不動産上に築造された請求人の物置(本件物置)に対する差押処分(本件差押処分)は違法である旨主張する。
しかしながら、民法第389条《抵当地の上の建物の競売》第1項は、民事執行における競売手続において、土地利用権のない建物の存続を図る形で売却することにより社会経済的損失を回避するとともに、競売手続の円滑な運営を目的として、土地の抵当権に内在する換価権を建物に拡大したものと解される。そして、かかる要請は、滞納処分における公売手続においても当てはまると解され、また、国税を担保するために設定された抵当権であっても、当該抵当権に内在する換価権の及ぶ範囲については実体法である民法に委ねていると解するのが相当であることからすると、国税の担保の処分においても民法第389条第1項が適用されると解される。そうすると、本件差押処分は、国税通則法第52条《担保の処分》第4項の規定に基づき行われたものではなく、本件各不動産及び本件物置を一括して公売に付すために同条第1項及び民法第389条第1項に基づく担保権の実行として行われたものであって、担保として提供された財産の処分の代金を滞納国税等に充ててなお不足があると認めることを要件とするものではないから、本件差押処分は適法である。
参照条文等
民法第389条第1項 国税通則法第52条第1項
参考判決・裁決
要旨
請求人は、国税通則法第70条5項の規定については、更正決定等の期間制限が5年から7年に改正された昭和56年の衆参両議院大蔵委員会において「今回の改正により延長された更正、決定等の制限期間における調査に当たっては、高額かつ悪質な脱税者に重点を置き、中小企業者を苦しめることのないよう特段の配慮をすること」との附帯決議がなされているところ、原処分庁は、本件調査において中小企業者に対し過度の調査を行い、また、僅少な金額についてまで課税しており、本件更正処分は附帯決議に反している旨主張する。
しかしながら、本件附帯決議は、調査に当たって尊重する趣旨のものであるところ、本件において、原処分庁は、請求人の取引先から本件公表外銀行預金口座に振込みが行われている事実等から、大口又は悪質な不正計算が想定されたので、本件各事業年度についての調査が必要であると判断したというものであり、その判断は相当と認められる。また、本件更正処分は、請求人の行為が国税通則法第70条第5項の規定における偽りその他不正の行為に該当するからなされたものであることが明らかであるから、本件更正処分に違法な点はなく請求人の主張は理由がない。
土地譲渡益重課制度の適用除外に該当する旨の申告をしなかった場合には、同制度を適用して法人税額を減額することを求める旨の更正の請求は認められないとした事例
裁決事例集 第55集 16頁
要旨
国税通則法第23条第1項第1号に規定する更正の請求は、納税申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと等により過大であるときになしうるものであるから、所得計算の特例等で、一定事項の申告等を条件に所得金額、税額の減免をすべきものとされているものについて、その申告等をしなかった者は、後日その特例の適用を求めるために更正の請求をすることはできないと解すべきである。
したがって、確定申告に際し、租税特別措置法第62条の3第4項又は第5項に規定する優良住宅地等のための譲渡等に対する土地譲渡益重課制度の適用除外に該当する旨の申告等をしなかった場合には、後日それらの規定を適用し、法人税額を減額すべきであるとする旨の更正の請求は認められない。
年の中途で死亡した被相続人の所得税の確定申告書を、相続人がその法定申告期限までに提出しなかったことについて、国税通則法第66条第1項に規定する「正当な理由」があるとは認められないとした事例
裁決事例集 第66集 40頁
要旨
請求人らは、所得税法第125条の規定により所得税の確定申告書を提出すべき被相続人が年の中途で死亡した場合の申告期限が相続開始を知った日の翌日から4か月以内であることを知らなかったことは税務官庁の広報不足によるものであることから、無申告加算税を賦課しない場合の「正当な理由」に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人らの主張は、税法の不知を理由とするものであるから、国税通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由」があると認められる場合には該当せず、また、申告は、本来、納税義務のある者が自らの判断と責任においてなすべきものであるから、無申告加算税を賦課しない場合の正当な理由があると認められるか否かが税務官庁の広報活動の有無により左右されるものではない。
そして、本件申告書が法定申告期限後に提出されるに至ったのは、相続人の一人が法定申告期限を誤解していたことによるものと推認されるから、「正当な理由」があると認められないことは明らかである。しかも、原処分庁には、確定申告の期限が掲載された各種の広報資料なども常備されており、請求人らにおいて申告等に疑問な点があれば,最寄りの税務官庁に問い合わせることもできたものである。
以上のことからすると、請求人らの主張する当該事情は、「正当な理由」があると認められる場合に該当しない。
建造引当権に関する国税庁長官通達は、法令にない取扱いを新たに示したものとすることはできず、法令の不知、誤解は通則法第65条第4項の「正当な理由」があるとは認められず、調査担当者の具体的な指摘前に修正申告をしたとしても同法第65条第5項に該当しないとした事例
裁決事例集 第45集 9頁
要旨
請求人は建造引当権に関する国税庁長官通達は法令に当たらず、請求人において不知のものであったから過少申告をしたことにつき通則法第65条第4項の「正当な理由」がある旨主張するが、同通達は措置法第65条の7第1項に掲げる表の第16号又は17号にいう「船舶」に関して、建造引当権が船舶に当たらないとの解釈を示したもの(解釈通達)とみるのが相当であり、国税庁において法令にない取扱いを新たに示したものと見ることはできないし、同通達に従った税務処理は納税者が税法の規定に従って当然になすべき処理と一致している。また、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」とは、災害その他納税者の責めに帰することができない真にやむを得ない事由をいうものであり、納税者の法令の不知や誤解はこれに当たらないものと解されるから、本件においては、上記「正当な理由」があるとはいえない。
さらに、請求人は調査担当者の具体的な指摘前に自発的に修正申告をしたから通則法第65条第5項に該当する旨主張するが、同項にいう「調査」とは所得金額の計算の基礎となった事実や法令の解釈適用に係る誤りの個別具体的な指摘を意味するものでなく、これらの有無を確認する目的でする質問、検査等のすべてを意味するもの、すなわち調査全般を指すものであり、本件においては、調査担当者が請求人の関与税理士に請求人の法人税の調査を行う旨事前通知し、請求人の本店において請求人の帳簿の検査等を行った事実があるから上記「調査」があったことになる。また、本件においては上記帳簿の検査のみならず、建造引当権の処理についての問答がなされている事実及び請求人が建造引当権に係る正当な税務処理を承知していた事実が認められるから、請求人は「更正があるべきことを予知して」いたと推認でき、通則法第65条第5項の規定は適用できない。
当該和解は、当事者間に権利関係の争いがあったことを起因としてなされたものではないから、国税通則法第23条第2項第1号に規定する「判決と同一の効力を有する和解」には当たらないとした事例
裁決事例集 第51集 489頁
要旨
請求人は、当初遺産分割協議に法律行為の要素に重要な錯誤があったので、本件起訴前の和解をしたのであるから、当該和解は、国税通則法第23条(更正の請求)第2項第1号に規定する「判決と同一の効力を有する和解」に該当するものであり、したがって、本件更正の請求は認められるべきであると主張するが、当初遺産分割協議は、請求人を含む相続人らの自由意思に基づき適正に行われたものと認められ、また、本件起訴前の和解は、もっぱら当初遺産分割協議後の当事者の事情によってなされたものであって、当事者間に権利関係の争いがあったことを起因としてなされたものではないことが認められるから、上記の条項に規定する「和解」には当たらない。
後発的事由(判決)に基づく更正の請求に対して、請求人が申告当時、課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に変更を来すことを予想し得たとして、重加算税の賦課決定処分を認容した事例
裁決事例集 第59集 1頁
要旨
国税通則法第23条第1項に規定する期限徒過後に、課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えに対する判決により当該事実が申告と異なることとなった場合、納税者において、申告当時に、課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に変更を来すことを予測し得た場合においては、同条第2項第1号に規定する判決には当たらないと解すべきである。
これを本件についてみると、請求人は、相続財産である宅地及び建物を単独相続するに当たり、未分割の相続財産である本件小作権を将来解約する場合には、これに係る本件補償金を相続人全員に分配することを他の相続人らに約束し、さらに本件補償金を受領した当時においては、これを他の相続人らに分配する意思があったにもかかわらず、それを誠実に履行しなかったために、他の相続人らから本件小作権に係る遺産分割の調停の申立て及び不当利得返還請求等各訴訟が順次提起され、本件判決が確定して、本件補償金のうちの他の相続人らの相続持分に相当する金員を支払ったものであると認められる。
そうすると、本件補償金に係る譲渡所得の確定申告時である平成3年3月の時点において、請求人は、本件補償金は他の相続人らにも分配しなければならないことをすでに認識していたこと及び本件小作権に係る訴訟が係争中であったことなどからみると、請求人は、本件補償金のうち、自己の相続持分に相当する金額のみが自己に帰属するものであることを十分に認識していた上、仮に、本件補償金の全額が自己に帰属するものとしてこれに係る譲渡所得の確定申告をすれば、後日、当該申告に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に変更を来すことを確定申告時には十分に予測し得たものと認められるから、本件判決は、国税通則法第23条第2項第1号に規定する判決には当たらないといわざるを得ない。
したがって、本件判決を理由として本件更正の請求はできないから、本件通知処分は適法である。
支払手数料及びロイヤリティについて、その支払義務がないにもかかわらず支払の事実を仮装したものとして重加算税を賦課した原処分は相当であるとした事例
裁決事例集 第36集 120頁
要旨
請求人が支払手数料として計上した金額は、請求人の代表者の個人的投資行為に関連するものであって、請求人の業務に関連しないものであるから損金の額に算入することは認められず、また、コンサルティングフィ及びロイヤリティについても、それぞれ親会社の負担すべき費用及び支払義務のないものを損金の額に計上したものであり、損金の額に算入することは認められない。
支払手数料及びロイヤリティについては、その支払義務のないものを支払義務があるかのようにその事実を仮装して損金の額に計上したものであるから、重加算税の賦課の対象としたことは相当である。
ポイント
本件は、納税義務者以外の者による納税申告について、納税義務者が明示又は黙示に当該納税申告をする権限を与えていたとは認められないものの、納税義務者が、当該納税申告について追認していると認められるとしたものである。
要旨
請求人は、所得税の更正処分に係る通知書(本件更正通知書)には、請求人が匿名組合契約の出資者である外国法人(本件外国法人)との間で締結した参加利益契約(本件参加利益契約)は配当を受ける旨を約す契約であり、請求人と本件外国法人との間の本件買戻合意(本件参加利益契約に基づく匿名組合契約に係る利益の分配を受ける権利を本件外国法人が買い戻すことなどの合意)は本件参加利益契約を解除する契約であると認定した根拠となる具体的な事実が摘示されておらず、また、原処分庁においてその法的評価の判断に至った過程自体を明示したものではないから、本件更正通知書に附記された理由は、更正処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由附記制度の趣旨から著しく逸脱した違法なものである旨主張する。
しかしながら、本件更正通知書には、更正処分の理由として、①本件参加利益契約は、請求人が本件外国法人に対して出資を行い、当該出資額に応じた配当を受ける契約であったと認められること、②本件買戻合意は、本件参加利益契約を解除するものであったと認められるとして、原処分庁において当該合意を権利の譲渡ではないと捉えていることが明らかであり、また、③請求人が本件参加利益契約に基づき支払った拠出金と本件買戻合意に基づき受領した金員との差額である損失額は、資産の譲渡により生じたものではないことが示されており、本件更正通知書には原処分庁の判断の過程が明示されており、同通知書に附記された更正処分の理由に不備はない。
参照条文等
国税通則法第74条の14第1項 行政手続法第14条
参考判決・裁決
最高裁平成23年6月7日第三小法廷判決(民集65巻4号2081頁)
本件充当処分時において、滞納国税に係る更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分は取り消されておらず、また、本件青色申告承認取消処分及び本件更正処分が無効とは認められないとして、滞納国税に対する還付金の充当処分は適法であるとした事例
裁決事例集 第61集 13頁
要旨
請求人は、本件青色申告承認取消処分及び本件更正処分には重大かつ明白な瑕疵が存在しており無効であるから、本件更正処分等に係る滞納国税に還付金を充当した本件処分は違法である旨主張する。
しかしながら、課税処分と充当処分とは、同一の効果を実現するための一連の手続きを構成するものでなく、それぞれ別個の目的及び効果を有する独立した行政処分であるから、仮に、課税処分が違法であるとしても、それが取り消されるか、又は無効でない限り、充当処分が違法となるものではないところ、本件充当処分時において、本件更正処分は取り消されておらず、また、本件青色申告承認取消処分及び本件更正処分は、いずれも無効な処分と認められないため、本件充当処分は適法である。
無申告加算税賦課決定処分に理由不備はなく、期限後申告は同決定を予知したものではないときに該当しないとした事例(令和元年分から令和5年分の所得税及び復興特別所得税に係る無申告加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第141集
ポイント
本事例は、原処分庁が請求人に実地調査の事前通知をし、実地調査前に期限後申告がなされ、その後の実地調査を経て所得税等に係る無申告加算税賦課決定処分がなされたことに関し、原処分に理由不備はなく、期限後申告は同決定を予知したものではないときに該当しないとしたものである。
要旨
①請求人は、原処分に係る通知書に記載された理由には、実地の調査(本件実地調査)前に原処分庁が行ったとする調査内容の記載がないから、原処分の理由の提示には重大な瑕疵がある旨主張する。
しかしながら、原処分の理由には、無申告加算税が賦課されることの基礎となる事実として、対象年分の所得税等の期限後申告書(本件各期限後申告書)の提出年月日、賦課決定の根拠となる法令及び無申告加算税の金額を挙げる等、原処分庁による判断結果並びにその基礎とされた根拠法令及び事実関係の内容が具体的に明示されており、行政庁の判断の慎重と合理性を担保して、その恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らしめて不服の申立てに便宜を与えるという行政手続法第14条《不利益処分の理由の提示》第1項の趣旨を充足する程度に具体的に明示されたものといえるから、原処分の理由の提示に不備はない。
②請求人は、本件実地調査に係る事前通知(本件事前通知)を受けた後、本件実地調査開始前に本件各期限後申告書を原処分庁に提出しており、原処分庁は、本件各期限後申告書が提出される前に請求人に対して課税標準等又は税額等について何ら示していないから、請求人の本件各期限後申告書の提出は、国税通則法(通則法)第66条《無申告加算税》第1項括弧書に規定する「調査があったことによりその申告に係る国税について決定があるべきことを予知してなされたものでないとき」に該当する旨主張する。
しかしながら、原処分庁は、請求人に勤務先からの給与(本件給与)及び取引先からの報酬(本件報酬)が支払われていること及び請求人の本件各年分の所得税等の確定申告がされていないことを把握した上で、請求人に対して、本件報酬に係る資料を提出するよう依頼するとともに、質問調査等を実施するための日程調整等を行ったこと等からすれば、請求人が本件報酬について確定申告をしていない不適正なものであることが発覚し、決定に至るであろうということが客観的に相当程度の確実性をもって認められる段階に達していたというべきである。また、請求人は、同取引先に対する実地の調査に係る取引先調査において、税務署職員から、同取引先との取引状況等を聴取されていた上、原処分庁から本件事前通知を受けた際に、本件実地調査の目的が請求人の所得税等の納税義務の有無の確認であることの説明を受け、本件給与以外の所得の有無を問われていたこと等からすれば、やがて決定に至るべきことを認識した上で本件各期限後申告書を提出したものと認められる。よって、本件各期限後申告書の提出は、通則法第66条第1項に規定する「調査があったことによりその申告に係る国税について決定があるべきことを予知してなされたものでないとき」に該当しない。
参照条文等
行政手続法第14条第1項 国税通則法第66条第1項第1号
参考判決・裁決
最高裁昭和38年5月31日第二小法廷判決(民集17巻4号617頁) 最高裁平成23年6月7日第三小法廷判決(民集65巻4号2081頁) 東京高裁平成14年9月17日判決(訟月50巻6号1791頁) 令和5年12月7日裁決(裁決事例集No.133)
被差押債権の第三債務者は、当該差押処分に対して審査請求ができる法律上の利益を有するが、当該差押処分の取消しを求める理由として被差押債権の不存在を主張することは認められないとした事例
裁決事例集 第71集 43頁
要旨
- 「不服がある者」とは、当該処分によって直接自己の権利又は法律上の利益を害された者をいうと解する。
これを、国税徴収法に基づく債権の差押処分に係る第三債務者についてみるに、同法第62条第2項が、徴収職員は、債権を差し押さえるときは、第三債務者に対しその履行を禁止しなければならない旨規定していることからすると、差押処分によりその債務の履行を禁止される第三債務者は、同処分によって自己の権利又は法律上の利益を直接害されることになる。
したがって、原処分によって本件債権の履行を禁止された第三債務者たる請求人は、原処分について「不服がある者」に当たるというべきである。 - 審査請求は、違法または不当な処分によって侵害された者の権利利益の救済を図るものであるから、当該処分の取消しを求めるに当たっては、当該審査請求人の「法律上の利益に関係のない違法」を理由とすることはできないと解する(行政事件訴訟法10条1項参照)。
そして、第三債務者は、被差押債権の存否について、国の提起する当該差押債権の取立訴訟等においてこれを主張することができ、被差押債権の全部又は一部が存在しないときは、その部分につき執行が功を奏しないことになるだけであって、そのような債権につき差押処分がされても第三債務者が法律上の不利益を被ることはない。そうすると、第三債務者は、債権の差押処分の取消しを求めるに当たり、被差押債権の不存在を理由とすることはできないというべきであるから、被差押債権の不存在は、第三債務者の「法律上の利益に関係のない違法」であると解するのが相当である。
これを本件についてみると、本件債権の債権者は本件組合ではないという請求人の主張は、本件債権の不存在をその内実とするものであるから、請求人の「法律上の利益に関係のない違法」を理由とするものである。
請求人について、「著しい損失」は認められないものの、売上金額は著しく減少し、赤字の状態に陥っているから、国税通則法第46条第2項第4号に掲げる事実に類する事実があるとした事例
裁決事例集 第78集 43頁
要旨
原処分庁は、①本件の調査期間と基準期間の損益及び売上げと②本件の特定調査期間と特定基準期間の損益及び売上げを比較すると、いずれも事業についての著しい損失及び著しい売上げの減少は認められないから、請求人には国税通則法第46条第2項第4号及び同号に掲げる事実に類する事実は認められない旨主張する。
しかしながら、請求人に取引先の都合による販売委託契約の解除という損失原因が認められ、当該損失原因が発生した日が特定できるから、請求人の猶予該当事実の有無を判断するために用いる調査期間及び基準期間は、本件特定調査期間及び本件特定基準期間とすることが相当である。
そこで、請求人が現金主義会計を採用し、決算期末に決算修正及び整理事項の調整を行っていることを考慮して、本件特定調査期間及び本件特定基準期間の経常損益等の金額を算出すると、請求人には、「著しい損失」は認められないものの、売上金額は著しく減少し、赤字の状態に陥っているから、請求人には国税通則法第46条第2項第4号に掲げる事実に類する事実があると認められる。
請求人の取引先8社との16の取引について、本件事業年度中に納品あるいは役務の提供がなされておらず、また、請求人の各担当者は、その事実を承知した上で、経費等の根拠となる納品書、請求書等の発行を取引先に依頼し、これを提出させ、あたかも本件事業年度中に納品等を行ったごとく装ったものであり、当該担当者の積極的な行為によって故意に事実を仮装したものであるとした事例
裁決事例集 第56集 1頁
要旨
- 重加算税を課すには、課税標準又は税額等の計算の基礎となる事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺい、仮装を原因として過少申告の結果が発生したものであれば足り、それ以上に申告に際し、納税者において過少申告を行うことの認識を有していることまでを必要とするものではないと解するのが相当である。
本件各取引において、請求人の購買手続、納品書及び請求書の発行手続についての商慣行等に照らせば、当該担当者が行為の意味を認識していなかったとは到底認められず、むしろ、当該担当者の積極的な行為によって故意に事実を仮装したものと認めるのが相当である。 - 隠ぺい又は仮装の行為者については、納税者本人の行為に限定すべき理由はないから、広くその関係者の行為を含むとしても違法ではなく、従業員の自らの利得を目的として行われた隠ぺい又は仮装による過少申告のような場合はともかくとして、納税者の簿外資産等を蓄積するために売上金額を除外して仮名預金を設けたり、納税者の利益調整のために棚卸資産を仮装して簿外棚卸資産を作出するような従業員の行為については、納税者本人の行為と同視すべきであると解するのが相当である。
本件各取引に係る隠ぺい、仮装行為は、納品書等を取引先に作成させる等の方法により、所得金額の計算上、架空の損金を作出して請求人の利益を調整する結果となっていることからすれば、各担当者の行為は請求人の行為と同視すべきであり、本件取引から生じた過少申告の責任は請求人が負うべきである。
要旨
自らの事業により多額の所得を得、その所得を十分かつ正確に認識しながら、その認識した真実の所得をあえて秘匿し、それが課税の対象となることを回避することを意図し、実際の所得を把握できる関係書類等に依拠した申告をすることなく、殊更に関係書類に基づかずに所得金額を低く記載した内容虚偽の確定申告書、修正申告書を提出して申告する行為は、所得税の税額計算の基礎となる所得の存在を隠ぺいし、その隠ぺいしたところに基づいて納税申告書を提出したことに該当する。
他人による確定申告書の作成・提出について、国税通則法第24条の「納税申告書の提出があった場合」に該当するとした事例(平成28年分から令和2年分の所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第135集
ポイント
本件は、納税義務者以外の者による納税申告について、納税義務者が明示又は黙示に当該納税申告をする権限を与えていたとは認められないものの、納税義務者が、当該納税申告について追認していると認められるとしたものである。
要旨
請求人は、請求人名義の納税申告書は、他人が成りすまして提出されたものであり、当該納税申告は無効であるため、国税通則法第24条《更正》に規定する納税申告書を提出した場合に該当しない旨主張する。
しかしながら、納税義務者以外の者が申告書を作成及び提出した場合であっても、その者が納税義務者から明示又は黙示に当該申告行為をする権限を与えられている場合や、納税義務者が当該申告行為を追認した場合は、その納税申告は有効となると解されるところ、請求人は、明示又は黙示に当該納税申告をする権限を与えていたとは認められないが、権限なくされた他人による当該納税申告を当該納税申告書が提出された後に追認したと認められるから、当該納税申告は有効となり、当該納税申告書の提出は、同条の納税申告書を提出した場合に該当する。
参照条文等
参考判決・裁決
高松高裁昭和58年3月9日判決(税資129号467頁) 平成22年8月23日裁決(裁決事例集No.80)
要旨
請求人は、国税通則法第70条第5項は、不正行為の場合における期間制限の延長であり、仮に本件立退き料が譲渡費用に当たらないとしても、本件立退き料は悪意をもって申告したわけではないから、本件立退き料に係る更正処分は既に時効が成立しており、不適法な処分である旨主張する。
しかしながら、偽りその他不正の行為を行なった者には、納税者本人のみならず、納税者の委任等を受けた者も含まれると解されているところ、請求人の委任を受けたGは偽った契約書に基づいて譲渡所得の申告を行なっており、申告の効果及び責任は請求人に帰属するから、国税通則法第70条第5項に該当するというべきである。
また、国税通則法第70条第5項は、偽りその他不正の行為によって国税の全部又は一部を免れた納税者がある場合、これに対して適正な課税を行うことができるよう、更正の除斥期間を7年と定めたものであり、偽りその他不正の行為により免れた税額に相当する部分のみに限らず、当該年分の所得の全部を更正の対象として同条第5項を適用することができると解するのが相当である。
債権差押処分の名あて人である請求人は不服申立適格を有するが、差押処分の対象となった債権が自己に帰属しない旨の主張は、自己の法律上の利益に関係のない違法をいうものであり理由がないとした事例
裁決事例集 第72集 70頁
要旨
国税通則法第75条に規定する国税に関する法律に基づく処分に不服がある者とは、その処分によって直接自己の権利又は法律上の利益を侵害された者であることを要すると解される。この点、請求人は、本件差押処分の名あて人であり、本件差押処分によりその法律上の効果を受ける者であるから、本件差押処分の取消しを求めることができることは明らかである。
しかしながら、審査請求が違法又は不当な処分によって侵害された不服申立人の権利利益の救済を図るものであることから、差押処分を違法とする理由が自己の法律上の利益に関係のない違法を理由とするものである場合は、かかる違法理由を審査請求の理由とすることはできないと解するのが相当である。
そうすると、請求人は、本件被差押債権が請求人ではなく第三者に帰属するものであるから本件差押処分が違法であると主張するが、仮にそのような事実があったとしても、本件差押処分によって不利益を受けるのは当該債権の真正な帰属者であるとされる第三者であって請求人ではなく、請求人は本件差押処分によって何らの影響も受けないのであるから、結局、請求人がかかる事実を違法であると指摘することは自己の法律上の利益に関係のない違法を主張するものにほかならない。
したがって、請求人の主張は、審査請求の理由とすることのできない理由を主張するものであるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
共同相続人が連帯納付責任を果たしてなお不足がある場合のみに納税保証人に納付義務が発生する旨の規定はなく、納税保証人に生じた還付金を、その保証に係る国税に充当することを制限する規定は存しないから、本件充当処分は適法であるとした事例
裁決事例集 第64集 35頁
要旨
請求人は、滞納者の共同相続人が相続税法第34条の連帯納付の責任を果たしてもなお不足がある場合のみ、自己の相続税の納税保証人としての納付義務が発生するから、請求人の所得税還付金を納税保証に係る相続税の滞納国税に充当した処分は違法である旨主張する。
しかしながら、国税通則法第52条において、納税保証人に対して国税を納付させるための要件が規定され、また、同法第57条において、還付を受けるべき者につき納付すべき国税があるときは、還付金を国税に充当しなければならない旨規定されている一方で、租税法上、共同相続人が連帯納付責任を果たしてなお不足がある場合のみに納税保証人の納付義務が発生する旨の規定はなく、連帯納付義務について本来の租税債務と別個に確定手続をとることは予想されていないからといって、共同相続人が連帯納付の責任を果たしてなお不足がある場合にのみ納税保証人の納付義務が発生するとは解されない。
国外財産又は財産債務に係る過少申告加算税等の特例による加重措置の対象となる「重要なものの記載が不十分であると認められる場合」は、国外財産調書又は財産債務調書の記載内容により判断すべきとした事例(令和2年分の所得税及び復興特別所得税に係る過少申告加算税の賦課決定処分、令和元年分から令和3年分の所得税及び復興特別所得税に係る過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第133集
ポイント
本事例は、確定申告書の内容等から国外財産調書又は財産債務調書に記載すべき財産が特定できる場合であっても、納税者が提出した国外財産調書又は財産債務調書の記載内容から当該財産の特定が困難なときは、国外財産又は財産債務に係る過少申告加算税又は無申告加算税の特例による加重措置が適用されるとしたものである。
要旨
請求人は、請求人がした修正申告(本件修正申告)の基因となった財産(本件財産)から生ずる所得について確定申告をしていたことや、原処分庁所属の調査担当職員から本件財産について確認があったことなどからすると、本件財産は既に特定済みであるため、本件修正申告による過少申告加算税は、令和4年法律第4号による改正前の内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(国送法)第6条《国外財産に係る過少申告加算税又は無申告加算税の特例》第3項又は第6条の3《財産債務に係る過少申告加算税又は無申告加算税の特例》第2項の規定(加算税加重措置)により加算税の額が加算されることとなる国外財産調書又は財産債務調書に記載すべき事項のうち重要なものの記載が不十分である場合には該当しない旨主張する。
しかしながら、加算税加重措置の適用の可否の判断は、国外財産調書又は財産債務調書の記載内容から行うべきであるところ、請求人が提出したこれらの調書には本件財産に係る記載事項に誤りや記載漏れがあり、その記載内容からは本件財産の特定が困難であると認められる。したがって、当該記載内容は、国送法第6条第3項第2号又は第6条の3第2項第2号に規定する「記載すべき事項のうち重要なものの記載が不十分である」ものと認められるから、修正申告に係る過少申告加算税について加算税加重措置が適用される。
参照条文等
国税通則法第65条第1項 内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(令和4年法律第4号による改正前のもの)第6条、第6条の3 内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律施行規則(令和4年財務省令第27号による改正前のもの)第12条、第15条、別表第一、別表第三 内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(国外財産調書及び財産債務調書関係)の取扱いについて(法令解釈通達)6-3、6の3-3
要旨
請求人らは、無道路地に誤って付された路線価に基づき相続税の申告をしたため納付すべき税額が過大となったのであるから、請求人がこの誤りを知ったことをもって通則法第23条第2項に規定する後発的事由による更正の請求を認めるべきである旨主張する。
しかしながら、通則法第23条第2項においては、第1号及び第2号で判決、和解、更正、決定といった外部的ないし客観的な事由を規定し、同項第3号の「やむを得ない理由があるとき」をこれらに類するものとしていることなどから、納税者の主観的な事由をもって、同項の後発的事由に該当すると解釈することはできないというべきである。したがって、「本件土地に平成9年分以降路線価が付されていないことを請求人が知った」という主観的な事由は、通則法第23条第2項のいう「後発的事由」に当たらないから、請求人の主張には理由がない。
国税通則法第38条第1項各号に掲げる繰上請求事由があるときは、納税の猶予申請に係る国税がその猶予期間内に完納されることが確実であるとか、当該国税の徴収確保の上で全く支障がないなどの特段の事情がない限り、納税の猶予は認められないとした事例
裁決事例集 第79集
要旨
納税の猶予申請時点において、既に納税の猶予取消事由がある場合には、猶予に係る国税の確実な徴収ができなくなるおそれがあるのであるから、その猶予期間内に猶予に係る国税が完納されることが確実であるとか、徴収確保の上で全く支障がないなどの特段の事情がない限り、納税の猶予は認められないと解するのが相当であるところ、本件の納税の猶予申請時において、請求人には、国税通則法第49条第1項が規定する納税の猶予の取消事由としての同法第38条第1項第6号に該当する事実があり、上記の特段の事情は認められないから、本件の納税の猶予申請は認められないというべきである。
参照条文等
要旨
請求人は、[1]代金請求時に重量計算の誤りがあり、代金の一部を返還したのであるから、更正の請求は認められるべきである、[2]原処分庁は法人税基本通達2-2-16を適用して更正をすべき理由がないとしているが、代金の返還は国税通則法施行令第6条第1項第2号に該当するから、更正の請求は認められるべきである旨主張する。
しかしながら、[1]返還金を支払うことを確定したのは翌事業年度であるから、返還金に相当する損失は翌事業年度の損金の額に算入すべきであり、更正の請求の要件を欠くこと、[2]法人税基本通達2-2-16は、当期に発生した損失は既往の事業年度の益金に対応するものであっても当期の損失に計上するという、一般に公正妥当な会計処理の基準の考え方を表したものであることから、更正の請求の要件を欠いており、請求人の主張には理由がない。
要旨
請求人は、自己が雑所得の金額の計算の基礎とした本件収入に関し、請求人の勤務先が法人税の課税標準の適否をめぐって提起した法人税更正処分等取消請求事件の訴訟において、本件収入は勤務先の取引先から同社が返還を受けたものと同視できるため、法人税の計算に当たっては同社の収入であると判示され本件判決が確定したことから、本件収入について請求人と勤務先との二重課税の状態を解消するため本件更正の請求をしたものであるが、国税通則法第23条第2項第1号に規定する判決とは、請求人の申告した課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実の得喪変更に関する訴訟に係る確定判決を意味するところ、本件判決は請求人の勤務先が提起した訴訟に係るものであるから、本件判決によって、請求人が本件収入について各年分の雑所得の金額の計算の基礎として申告している事実そのものが影響を受けるものではなく、同条の規定による更正の請求をすることはできない。
滞納法人の代表者である請求人の実印が押なつされた納税保証書は、請求人の同意もなく従業員によって作成、提出されたものであって、無効であるとの請求人の主張に対し、請求人に納税保証をする意思が認められるとした事例
裁決事例集 第120集
ポイント
本事例は、納税保証書の真正な成立について、請求人から、いわゆる二段の推定における請求人の意思に基づくことの反証がされたところ、納税保証書の作成時の請求人の実印の保管状況等や、滞納法人の従業員に請求人の実印を冒用すべき理由があるか、納税保証書提出後に請求人が徴収職員に自らが保証人であることを自認する言動をしていたかを認定した上で、関係人の答述の信用性を評価し、判断したものである。
要旨
滞納法人の代表者である請求人は、請求人が滞納国税(本件滞納国税)を納税保証する旨が記載された納税保証書(本件保証書)について、滞納法人の従業員が請求人の印章を無断で使用してこれを作成したものであり、請求人が当該従業員やその他の第三者にこの作成を指示したことがなく、請求人の同意なく提出されたものであることから、当該納税保証は無効であり、これを前提とする納付告知処分は違法である旨主張する。
しかしながら、私文書中の印影が本人又は代理人の印章によって顕出された事実が確定された場合には、反証がない限り、当該印影は本人又は代理人の意思に基づいて成立したものと推定されるところ、請求人にこれを覆すべき反証はなく、また、本件保証書の提出後、請求人自身が保証人であることを自認する言動を繰り返していたことからすれば、請求人は本件滞納国税について納税保証をしたと認められる。
参照条文等
国税通則法第50条第6号、第46条第5項、第52条第1項、2項(平成26年法律第10号による改正前のもの) 国税通則法施行令第16条第3項(平成20年政令第219号による改正前のもの) 国税通則法基本通達第54条関係1、6 国税徴収法第151条第1項、第152条(平成26年法律第10号による改正前のもの) 民事訴訟法第228条第4項
参考判決・裁決
最高裁昭和39年5月12日第三小法廷判決(民集18巻4号597頁)
納税相談に際し、請求人は買換えであることを申し出ていない等の状況の下で、担当職員が請求人提示資料中の、登記済権利証添付書類の内容についてまで十分検討しなかったとしても、国税通則法第65条第4項に規定する過少申告加算税を賦課しない場合の正当な理由があるとは認められないとした事例
裁決事例集 第47集 22頁
要旨
租税特別措置法第37条第1項の事業用資産の買換え特例の適用に関し、請求人は同特例の適用ができないとの原処分庁の指摘を受け、修正申告をした。これに伴う過少申告加算税の賦課決定処分に関し、請求人は、納税相談に際し、担当職員に対して本件農地の譲渡に関する一切の資料を提示して譲渡所得金額の適否について指導を受けたものであり、その資料の一部である登記済権利証には「農地の買替え」の文言が記載されていたことから、税の専門家である担当職員は、請求人から相談のなかったことについても当然すべての資料を詳細に検討して指導する義務があるのにこれを怠ったものである旨主張する。しかし、[1]請求人が本件農地は買換資産であることを申し出なかったことは明らかであること、[2]請求人が提示した売買契約書及び譲渡費用の領収書等により譲渡所得金額を算定することができたこと等から、担当職員が登記済権利証の添付書類の内容まで十分に検討しなかったとしても、そのことをもって原処分に取消しを免れないほどの違法、不当があったとはいえず、国税通則法第65条第4項に規定する過少申告加算税を賦課しない場合の正当な理由があるとは認められない。
調査手続の違法は修正申告の効果に影響を及ぼさないと判断した事例( 平成20年分、平成21年分及び平成24年分の所得税に係る重加算税並びに平成19年分の所得税に係る過少申告加算税並びに平21.1.1~平21.12.31の課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分、 平成18年分~平成21年分、平成23年分及び平成24年分の所得税の各修正申告並びに平18.1.1~平18.12.31及び平21.1.1~平23.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各期限後申告・ 棄却、 却下)
裁決事例集 第98集
要旨
請求人は、原処分に係る調査担当職員(本件調査担当職員)が行った調査につき、①国税通則法第74条の9《納税義務者に対する調査の事前通知等》第1項に規定する調査対象期間の説明並びに同法第74条の11《調査の終了の際の手続》第2項及び第3項に規定する調査結果の内容の説明や法的効果の教示がなかったことから調査手続に違法があったこと及び②調査対象期間の説明及び調査結果の内容の説明がなかったため、どのような内容か分からない修正申告書及び期限後申告書(本件各修正申告書等)に署名押印して修正申告及び期限後申告(本件各修正申告等)をしたものであり錯誤があったことから、本件各修正申告等は調査手続の違法又は錯誤により無効である旨主張する。
しかしながら、そもそも調査手続の違法は、それのみを理由として修正申告及び期限後申告の有効性に影響を及ぼすものではないと解されるから、たとえ調査手続に違法があったとしてもそのことのみで修正申告及び期限後申告が無効となることはない。また、本件各修正申告書等には、請求人の署名押印がされていることから、本件各修正申告等が請求人の意思に基づいて行われたとの推定ができるところ、①修正申告書及び期限後申告書は具体的な納税義務を発生させるものであるから、内容を確認しないで署名押印をすることは通常あり得ないこと、②本件調査担当職員は調査期間中に調査対象となる税目と年分を請求人に伝えていると認められるから、請求人は調査対象期間を認識していたこと並びに③本件調査担当職員は請求人に調査結果の内容の説明を行ったと認められるから、請求人は調査結果の内容を知っていたと認められ、これらを総合すると、請求人は、税目、年分を認識した上で本件各修正申告書等に署名押印し提出したと認められるのであって、錯誤があったとは認められず、本件各修正申告等は無効とならない。
調査開始前に、請求人から関与税理士に従業員の横領行為発覚に伴う修正申告書の作成を依頼し、調査初日、同税理士から調査担当者に対して事実関係を説明するなどした後の修正申告書の提出は、「更正があるべきことを予知してされた」修正申告書の提出には当たらないとした事例
裁決事例集 第79集
要旨
原処分庁は、第一次修正申告書の提出は、国税通則法第65条第5項に規定する「調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたものではないとき」には該当しない旨主張する。
しかしながら、①請求人は、請求人に対する税務調査の開始日の約4か月半前ころには、経理担当者による横領の事実を把握し、関与税理士に当該事実を報告し、その約半月後には当該横領に係る資料を当該関与税理士に提出して当該横領に関する修正申告書の作成作業を依頼するなどして、納税者本人において、その申告が不適正であることを発見しあるいはその端緒となるべき資料等を把握し、その後、②当該関与税理士は、事実関係の確認及び修正申告書の作成作業に時間を要していたところ、③当該関与税理士及び請求人代表者は、当該調査の開始日には、調査担当職員が帳簿調査を開始する前に、当該調査担当職員に対し、当該横領資料の写しを交付し、当該横領に係る事実関係を説明し、当該調査担当職員から当該横領の解明作業を当該関与税理士が行うことの了承を得たもので、税務当局の調査着手後、早期の段階において、納税者から修正申告書を提出する旨の申出がなされたということができる。一方、④当該調査担当職員は、当該調査の開始前において当該横領につながるような資料は保有しておらず、帳簿調査において、当該横領行為の一部について確認するにとどまり、その全容について確認していなかったところ、⑤当該調査により、当該横領に関する事実関係が新たに明らかになったものはなかったものと認められる。
以上によれば、上記申出を受けた当該調査担当職員は、当該申出に係る部分を除いて調査を行ったものであり、当該調査担当職員の調査により更正がなされることを予知されたと評価すべき事実を認めることはできず、第一次修正申告書は当該調査があったこととは別に自主的に提出されたものであり、調査があったことに基づいて提出されたと認められないことから、更正があるべきことを予知してされた修正申告書の提出には当たらない。
参照条文等
請求人が経営するパチンコ店のフロアー責任者及び経理責任者として実質的に経営に参画していた従業員が行った売上除外による隠ぺい行為について、それが横領目的であったとしても請求人の行為と同視すべきであるとして、重加算税の賦課決定処分を認容した事例
裁決事例集 第58集 9頁
要旨
重加算税の賦課要件たる隠ぺい又は仮装の行為者は、納税義務者たる法人の代表者に限定されるものではなく、その役員又は従業員等で経営に参画していると認められる者が隠ぺい又は仮装をし、かつ、代表者がそれに基づき過少申告した場合は、当該法人が重加算税の負担を受けるべきであり、このことは、当該法人の代表者が納税申告するに当たり、隠ぺい又は仮装行為を知っていたか否かによって左右されるものではない。
ところで、売上データを改ざんし、売上金の除外をした本件従業員は、請求人が経営するパチンコ店のフロアー責任者として、同店のコンピュータの操作、台の入替え、景品の管理、従業員の採用及び給与の計算等の一切を任され、確定申告書等の「経理責任者自署押印」欄に記名・押印していること、請求人の代表者はP市内在住の医師であって、パチンコ業については全くの素人であり、同店所在のQ市には年に1ないし2回程度しか来ていないことが認められる。
以上のことから、本件従業員は経理責任者等として請求人の経営に参画していたものと認められ、このような地位にあった従業員が売上金等の管理を担当し、故意に売上金の一部を除外したものである以上、それが同人の私的利益を図るために行われたものであり、また、それを代表者が知らなかったとしても、当該従業員の行為は、請求人の行為と同一視すべきであって、請求人に対して重加算税を賦課した原処分は適法である。
請求人は、法定申告期限内に相続財産の把握に努めていれば、その全容を把握できたと認められるところ、そのために必要な調査を尽くしていないから、相続財産の額が基礎控除額を上回ると認識していなかったことについて「正当な理由があると認められる場合」に該当しないとして、無申告加算税の賦課決定処分が適法であるとした事例
裁決事例集 第67集 33頁
要旨
請求人は、本件相続税の申告書を法定申告期限までに提出できなかったのは、他の共同相続人が相続財産の内容を明らかにせず、遺産を調査する術がなかった事情によるものであるから、国税通則法第66条第1項ただし書きに規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当する旨主張する。
しかしながら、同項ただし書きに規定する「正当な理由があると認められる場合」とは、無申告加算税を課することが不当または酷と認められる特別な事情、例えば、災害、交通・通信の途絶等、納税者の責めに帰することができない外的事情によるなど、法定申告期限内の提出を不可能にするもので真にやむを得ない理由がある場合がこれに該当するものと解されている。
相続税法第27条第1項の規定に基づき適正な申告をするためには、相続財産の全容を正確に認識していることが前提となるが、その全容が把握できない場合においても、直ちに法定申告期限内に申告できなかったことにつき真にやむを得ない理由があるとはいえず、相当の努力を払って調査しても基礎控除額を上回る額の相続財産を把握することができなかったと認められる場合に初めて国税通則法第66条第1項ただし書きにいう「正当な理由があると認められる場合」に該当すると解するのが相当である。
本件において、請求人は、相続開始後の財産整理等を通して相続財産である預金や自宅マンション以外の不動産の存在を認識し得たとみるのが相当であり、また、法定申告期限内に相続財産の全容を解明する努力をしておらず、相続財産の額が基礎控除額を上回ると認識していなかったことについても、必要な調査を尽くさなかった結果であるというべきであるから、国税通則法第66条第1項ただし書きに規定する「正当な理由があると認められる場合」には該当しない。
請求人は本件譲渡代金のうち少なからぬ部分を債務の弁済に充てていない上、相当の価値を有する不動産等を所有しており、資力喪失に伴う資産の譲渡とはいえないが、隠ぺい仮装の故意は認められないとした事例
裁決事例集 第48集 7頁
要旨
請求人は、[1]本件譲渡代金は全額請求人の借入金の返済に充てられており、[2]本件譲渡時の請求人の財産は無価値であること、[3]他に3,000万円の債務を有しており、高齢で他に収入の当てもないとして、本件譲渡に係る所得は所得税法第9条第1項第10号、同法施行令第26条の規定に該当する非課税所得であると主張する。
ところで、所得税法施行令第26条の要件としては、[1]資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であること、[2]放っておけば強制執行が避けられない状態にあること及び[3]その譲渡に係る対価が債務の弁済に充てられたことが規定されている。
これを本件譲渡についてみると、強制換価手続の執行が避けられないと認められる場合における譲渡には該当するが、譲渡代金から、借入金及び譲渡費用を支払った残額約430万円は債務の弁済に充てたとは認められないから、上記[3]の要件に当たらない。また、請求人には、他に債務はなく、一方、不動産及び債権を有しており、この点からも所得税法施行令第26条の要件に当たらない。
しかし、請求人には、所得税法第9条第1項第10号に規定する非課税所得に該当しないことを認識していたと認めるまでの証拠はなく、隠ぺい仮装の故意はなかったというべきであり、重加算税は過少申告加算税の額を超える部分につき取り消すことが相当である。
ゴルフ会員権を購入した者からの届出債権が破産債権として債権表に記載されたことは国税通則法第23条第2項第1号に該当するとしてなされた更正の請求につき、当該届出債権は不法行為に基づくものであるから、同号に規定する「課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決」には該当しないとした事例
裁決事例集 第61集 1頁
要旨
請求人(破産管財人)は、破産前の請求人(ゴルフ会員権販売代行業)を介して会員権を購入した会員がその購入代金相当額を裁判所に届け出、その届出債権が破産債権として確定した旨請求人及びゴルフ場経営会社双方の債権表に記載され、確定判決と同一の効力を有することになったこと(破産法第241条、第242条、第287条)は国税通則法第23条第2項第1号に規定する「課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決」に該当する旨主張するが、当該届出債権は会員からの不法行為による損害賠償に基づくものであるから、当該届出債権を裁判所に届け出た行為をもって、請求人と当該ゴルフ場経営会社との間で締結された会員募集業務委託契約等、課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実の存否、効力等を直接審判の対象とした訴えがされたと見ることはできないため、そもそも、その事実は国税通則法第23条第2項第1号に規定する「課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決」に該当せず、請求人の主張には理由がない。
要旨
国税通則法第68条第1項は、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出したときは、過少申告加算税に代え、重加算税を課する旨規定している。
そして、重加算税は、納税義務違反の発生を防止し、徴税の実を挙げるため違反者に対して課される行政上の処置(措置)であり、代理人等の第三者を利用することによって利益を享受する者は、それによる不利益をも甘受すべきであるとの原則が適用されるべきであるから、第三者に申告を一任した場合には、その者の申告行為は納税者自身がしたものと取り扱われ、その者が国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部の隠ぺい又は仮装を行った場合には、納税者本人にもその効果が及ぶと解される。
これを本件についてみると、代理人である税理士の行為は、平成7年分の不動産所得について、本件青色決算書に架空の必要経費を多額に計上することにより、不動産所得に多額の損失があったごとくに見せかけ、その結果として不正に所得税を免れていたと認められることから、税理士に申告手続等を一任した請求人が、課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出したというべきである。
住宅借入金等特別控除の適用を意図して、住民票上の住所の記載を居住の事実がない住宅の所在地とするべく住民票上の異動を繰り返し、確定申告書に当該住宅の所在地等を記載し税務署長に提出した請求人の行為は、偽りその他不正の行為であると認めた事例
裁決事例集 第80集
要旨
請求人は、①平成12年12月の住民票異動時には請求人が取得した本件住宅に住むつもりであったこと、②少なくとも平成12年分の所得税の確定申告時には住宅借入金等特別控除の適用がないことを知らなかったこと及び③当該確定申告時の税務相談において住宅借入金等特別控除の適用ができる旨を告げられたためこれに沿った申告をしたとの事情から、請求人の住民票上の住所を異動させた行為等は偽りその他不正の行為には該当しない旨主張する。
しかしながら、請求人は、本件住宅を「自己の居住の用」に供していないことから住宅借入金等特別控除の適用を受けることができないにもかかわらず、住宅借入金等特別控除の適用を意図して、課税庁に対し請求人が本件住宅所在地に居住しているように装うため、請求人の住民票上の住所の記載を本件住宅所在地とするべく住民票上の異動を繰り返し、平成13年分、平成14年分及び平成16年分の所得税の確定申告書には本件住宅所在地等を記載し税務署長に提出して住宅借入金等特別控除の適用を受けたのであり、このことは、住宅借入金等特別控除の要件の一つである「自己の居住の用に供した」事実について虚偽の外形を作出する等の偽りその他不正の行為をしたものと認められるのであるから、上記①又は②の主張をもってしても、請求人の上記各年分における偽りその他不正の行為の存在が左右されるものではなく、また、上記③の主張である相談担当者が請求人に対して居住の事実がなくとも住宅借入金等特別控除の適用がある旨の指導等を行ったと認められる証拠もない。
参照条文等
国税通則法第70条第5項 租税特別措置法(平成13年3月法律第7号による改正前のもの。)第41条第1項
修正申告のしょうようがあった後になされた修正申告書の提出は、国税通則法第65条第5項に規定する調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたというべきであるとした事例
裁決事例集 第47集 31頁
要旨
請求人は、本件修正申告書の提出が国税通則法第65条第5項に規定する調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたものではないと主張するが、調査担当職員が請求人の青色申告決算書等を検討し、請求人等に対し電話により質問した上で、修正申告をしょうようしていることからすれば、本件修正申告書の提出は、調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたというべきであり、過少申告加算税の賦課決定処分は相当である。
要旨
請求人は、充当処分は裁量行為であると解され、処分権者が充当処分を行うに当たっては、納税者個々の生活状況に配慮する必要があるとし、本件充当処分には、請求人の経済的な貧窮の訴えについて正しく認識しないで行われている違法がある旨を主張する。
しかしながら、国税通則法第57条第1項及び第2項の規定は、その文理上、還付金等と納付すべきこととなっている国税とが同一の納税者について存在し、かつ、これらが充当適状にある場合には、納税者の意思にかかわりなく、還付金等を納付すべき国税に充当することを税務署長に義務付けているものと解するべきであり、裁量行為ではないから、請求人の主張は採用することができない。
売上除外等の不正行為は従業員が行ったものであり、請求人がその不正行為を知ったのは原処分調査時であるから、国税通則法第68条第1項に規定する「隠ぺい又は仮装」に該当しないとの主張を排斥した事例
裁決事例集 第37集 22頁
要旨
請求人は、売上除外等の不正行為は従業員が請求人に無断で行ったものであり、請求人の代表者等は関与していなかったから、重加算税を賦課することは不当である旨主張するが、当該売上除外に係る簿外銀行預金の払戻しの状況、同預金の預金通帳や印鑑の保管状況、真正な売上げを記載した売上メモの保管状況等から、請求人の代表者等も売上除外行為を知っていたものと認められるから、重加算税を賦課したことは相当である。
平成8年分の所得税の確定申告において、措置法第36条の6第1項の特例の適用を受けた結果、8年分と10年分の所得税の合計額が、適用を受けなかった場合の合計額よりも過大になったとしても、更正の請求はできないとされた事例
裁決事例集 第60集 1頁
要旨
請求人は、平成8年分の所得税の確定申告において特定居住用財産の買換えの特例(以下「本件特例」という。)の適用を選択し、平成10年において本件特例の適用を受けた買換資産を譲渡したが、本件特例の適用を受けた場合の平成8年分と平成10年分の納付すべき税額の合計額が本件特例の適用を受けなかった場合の納付すべき税額の合計額に比較して過大となるから、更正の請求を認めるべきである旨主張するが、本件特例の適用を受けたことにより納付すべき税額が過大であったとしても、このことは、通則法第23条第1項第1号に規定する更正の請求事由に該当しない。
押印が漏れている相続税の申告書について、納税申告書としての効力が認められるとした事例(平成25年1月相続開始に係る相続税の無申告加算税の賦課決定処分・全部取消し)
裁決事例集 第99集
ポイント
本事例は、納税申告書としての他の要件を具備している限り、押印がないことのみをもって納税申告書としての効力がないものとはいえないとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人が法定申告期限内に提出した相続税の申告書(本件申告書)について、請求人の押印がなく国税通則法(通則法)第124条《書類提出者の氏名及び住所の記載等》第2項の規定を充足していないこと、加えて、本件申告書の書面等から請求人の申告の意思を認めることができず本件申告書が有効なものと認められないことから、通則法第17条《期限内申告》に規定する期限内申告書には該当しない旨主張する。
しかしながら、納税申告書の効力については、押印がない場合であっても、単なる押印漏れであることも考えられるので、納税申告書として他の要件を具備している限り、押印がないことのみをもってその効力がないものとはいえず、このような場合には、当該納税申告書が押印のない者の申告の意思に基づいて提出されたものと認められるか否かによって、その効力を判断すべきである。そして、申告の意思に基づいて提出されたものかどうかの判断に当たっては、納税申告書の作成経緯や原処分庁への納税申告書の提出状況及び納税の状況等を総合考慮すべきと考える。これを本件についてみると、①本件申告書は遺産分割協議で成立した内容を基に共同相続人の総意により作成されたものであること、②請求人は共同相続人である長女に本件申告書の原処分庁への提出を任せ、長女が現に提出したものであること、③請求人が申告納税義務を認識し相続税を納期限内に全額納付したことなどがそれぞれ認められることから、本件申告書は、請求人の意思に基づいて提出されたものと認めるのが相当である。また、本件申告書は、押印箇所を除き納税申告書としての要件を具備しているものと認められる。したがって、本件申告書に請求人の押印のないことについては、単なる押印漏れにすぎず、本件申告書の納税申告書としての効力には影響しないというべきであるから、本件申告書は、通則法第17条に規定する請求人の期限内申告書に該当する。
参照条文等
参考判決・裁決
支払利息に係る借入金が総勘定元帳に記載されておらず、支払利息の経費算入割合が各年で異なる等の事実は存するが、これをもって、隠ぺい又は仮装を認定することはできないとし、重加算税賦課決定処分の一部を取り消した事例
裁決事例集 第49集 9頁
要旨
原処分庁は、請求人が必要経費の額に算入した支払利息につき、[1]当該支払利息に係る借入金が総勘定元帳に記載されていないこと、[2]請求人は当該借入金が事業用資金でない旨申述していたこと、[3]支払利息の経費算入割合が係争各年で異なることから、事業所得に係る必要経費として支払利息の額を過大に付け込んだものであって、国税通則法第68条第1項に規定する「隠ぺい又は仮装」に該当する旨主張するが、請求人には事業所得及び不動産所得に係る借入金があること、当該借入金の一部は事業所得及び不動産所得に係る業務の用に供されていること、支払利息の経費算入割合が異なるのは借入金の使途についての記帳が不十分であったためであることが認められるから、上記[1]ないし[3]をもって、事実を隠ぺい又は仮装したとまでいうことはできず、支払利息に係る税額に対する各年分の重加算税の賦課決定処分をしたことは相当でない。
期限内申告書の提出がなかったことについて、申告書を提出できないほどの病状等にあったとは認められず、国税通則法第66条第1項に規定する「正当な理由があると認められる場合」には該当しないと判断した事例
裁決事例集 第67集 46頁
要旨
請求人は、[1]退院後も意思能力、判断能力のない状態が続いていたので、相続の開始があったことを知ったのは被相続人死亡後3年余を経過した日であること、[2]相続税法第27条第1項に規定する「相続の開始があったことを知った日から10月以内」の期間には意思能力、判断能力が停止していた期間を控除すべきであること、[3]本件申告書を法定申告期限内に提出できなかったのは、意思能力、判断能力が停止していたためであり、国税通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当すること、[4]本件申告書は自主的に提出したものであるから、国税通則法第66条第3項の規定に該当すると主張する。
しかしながら、[1]請求人は、被相続人の死亡から1月以内までに、被相続人から遺贈を受けた不動産の移転登記手続を遺言執行者Eに自ら依頼していることから、それまでには、被相続人の死亡事実と自己が受遺者となったことを認知していたものと認められる。また、[2]請求人が手術後の経過や後遺症のため通院、加療していたことは認められるが、請求人は移転登記手続を依頼するに当たり普通どおりの受け答えができる状態であったとのEの答述や、法定申告期限までの間において請求人自ら預金取引を継続して行っていた事実によれば、請求人は法定申告期限までに本件申告書を提出できないほどの病状にあったとか、あるいは、同居中の長女Gや税理士等に申告を依頼するなどの意思表示すらできない状態にあったとも認められない。そして、他に法定申告期限までに本件申告書の提出を不可能にするような特段の事情も認められず、単に請求人の失念や税法の不知や誤解に基づき期限後申告となったものと認められる。よって、期限内申告書の提出がなかったことについて、正当な理由があると認められる場合には該当しない。
また、本件申告書は、調査担当職員による調査及び申告のしょうように基づき提出されたものであることは明らかであり、請求人自身がその調査を契機とせず、自発的に提出したものであるとは認められない。
要旨
国税通則法第46条《納税の猶予の要件等》第2項第5号に規定する同項第4号に類する事実(5号該当(4号類似)事実)とは、事業についての著しい損失と同視できるような著しい売上げの減少等であって、納税の猶予を申請した納税者の責めに帰すことができないやむを得ない事由によって生じた国税の納付を困難ならしめるものをいうものと解される。そして、事業についての著しい損失の有無は、納税の猶予の始期の前日である調査日前1年間(調査期間)と直前の1年間(基準期間)の損益を比較して、基準期間の利益金額の2分の1を超えて損失が生じていると認められるかどうかにより判定することとし、例外的に、調査期間以内において、損失原因があり、その損失原因が発生した日が特定できる場合には、その日以降調査日までの間に生じた損失金額と基準期間の利益金額のうち損失原因の生じた日以降調査日までの期間に対応する期間の利益金額を比較して判定することとしている昭和51年6月3日徴徴3-2及び徴管 2-32の国税庁長官通達「納税の猶予等の取扱要領の制定について」の定めが相当であることからすれば、5号該当(4号類似)事実の有無を判定するに当たっても、同様に判定することが相当である。
これを本件についてみると、請求人の月別の売上金額の推移をみても、平成20年1月やその前後には大きな変動はなく、請求人には損失原因が発生したとは認められず、請求人が法人成りにより役員報酬を受け取ることとなったことも損失原因とは認められないから、上記の例外的な判定方法と同様の方法によって5号該当(4号類似)事実の有無を判定することは相当でなく、請求人は平成20年3月に法人成りしているので、本件調査日(平成21年3月31日)を基準とする調査期間及び基準期間の売上金額を比較することもできない。また、請求人が主張する平成20年1月から同年3月までの売上金額と平成19年1月から同年3月までの売上金額とを比較して著しい売上げの減少の有無を判定することを相当とする根拠もなく、仮に、それぞれの売上金額を比較しても、その減少の程度が著しいとは認められない。さらに、法人成りにより請求人が役員報酬を受領することになったことは、請求人自らの選択によるものであるから、このことによって個人事業における売上金額に比較して、役員報酬の額が減少したとしても、それは請求人の責めに帰すことができないやむを得ない事由によって生じたものとは認められず、法人成りによって設立された法人の決算報告書によれば、請求人は、請求人の判断によって、役員報酬の一部を当該法人に貸し付けたものと評価できるので、これが、請求人の責めに帰すことができないやむを得ない事由によって生じたものとも認められない。
参照条文等
国税通則法第46条第2項 昭和51年6月3日徴徴3-2・徴管2-32「納税の猶予等の取扱要領の制定について」
ポイント
この事例は、元事務員による給与支給額の水増しを把握した請求人が、原処分庁に事前説明に赴いたことを契機として税務調査がされ、修正申告に至ったことについて、請求人の具体的な事前説明に、請求人が自発的に修正申告を提出する決意を有していたと認めることができると判断して、加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、本件修正申告書は、調査において調査担当職員が請求人の元事務員による給料支給額の水増し(本件水増し)を確認した結果判明した横領の事実に基づき提出されたものであり、また、調査に先立つ事前説明時には請求人が横領の事実を確定的に認識していたとは認められず自発的に提出されたものではないから、国税通則法第65条《過少申告加算税》第5項に規定する「調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」には該当しない旨主張する。
しかしながら、請求人は、少なくとも事前説明時までに本件水増しのすべてを把握して修正申告をする決意をし、事前説明の際には面談職員らに対して本件水増しについて説明した上で調査を求めており、それに基づいて調査が行われたと認められることから、請求人は自発的に修正申告書を提出する決意を有しており、その決意は事前説明において客観的に明らかになったものということができる。そうすると、本件修正申告書の提出は、調査があったことにより更正があるべきことを予知してされた修正申告書の提出には当たらない。
参照条文等
財産債務調書に、有価証券の種類別にまとめて用途、所在等が記載され、その銘柄及び数量等の記載がない場合は、「重要なものの記載が不十分であると認められる場合」に該当して財産債務に係る過少申告加算税等の特例による加重措置の対象となるとした事例( 令和3年分の所得税及び復興特別所得税に係る過少申告加算税の賦課決定処分、 過少申告加算税の変更決定処分・ 却下及び棄却、 却下)
裁決事例集 第134集
ポイント
本事例は、財産債務に係る過少申告加算税等の特例による加算税の対象となる「重要なものの記載が不十分であると認められる場合」に該当するか否かの判断は財産債務調書の記載自体から行うべきであり、財産債務調書以外の書類の記載や調査の際に確認できる事項を加味してこれを判断すべきではないとしたものである。
要旨
請求人は、修正申告(本件修正申告)の基因となった有価証券(本件有価証券)について、①請求人が提出した財産債務調書(本件財産債務調書)に本件有価証券の銘柄の記載はないものの、種類別、用途別、所在別に記載され、財産の価額も一括で記載されていること、②本件財産債務調書に一括で記載されている価額と証券会社が発行した残高報告書に記載されている残高が一致するため本件有価証券を容易に特定できること、③令和4年法律第4号による改正前の内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律第6条の3《財産債務に係る過少申告加算税又は無申告加算税の特例》第2項第2号に規定する重要なものの記載が不十分であると認められる場合に該当するか否かは、調査の際に、銘柄ごとの区分ができ、残高が一致することが確認できればいいことなどから、本件修正申告による過少申告加算税の計算において、同項の規定による加重措置は適用されず、むしろ同条第1項の規定による軽減措置が適用される旨主張する。
しかしながら、加算税の加重措置及び軽減措置の適用の可否の判断は、財産債務調書の記載内容自体から行うべきであるところ、本件財産債務調書には、本件有価証券の銘柄及び数量の記載がないため、本件財産債務調書の記載内容からは本件有価証券を特定することは困難であると認められる。したがって、本件財産債務調書の記載は同号に規定する重要なものの記載が不十分であると認められる場合に該当し、過少申告加算税の計算において加重措置が適用され、軽減措置は適用されない。
参照条文等
国税通則法第65条第1項 内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(令和4年法律第4号による改正前のもの)第6条の3 内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律施行規則(令和4年財務省令第27号による改正前のもの)第15条、別表第三 内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(国外財産調書及び財産債務調書関係)の取扱いについて(法令解釈通達)6の3-3
参考判決・裁決
要旨
贈与税の連帯納付義務は、贈与税の徴収確保のために、当該贈与税の課税価格のうちに占める贈与者の贈与財産の価額の割合を乗じて計算した金額に相当する贈与税について、贈与財産の価額に相当する金額を限度として納付責任を負わせるものであり、贈与税についての課税処分によって主たる納税義務の税額が過大に認定されれば当該連帯納付義務の範囲も過大となる可能性がある一方、主たる課税処分の全部又は一部がその違法を理由に取り消されれば、当該連帯納付義務が消滅又は減少し得る関係にあるのであるから、国税徴収法第39条所定の第二次納税義務者と同様に、贈与税の連帯納付義務者も主たる課税処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれがあり、その取消しによってこれを回復すべき法律上の利益を有すると解するのが相当である。
参照条文等
遺贈の効力は認められるものの、請求人がその効力の有無について疑問を抱いたとしてもやむを得ない客観的な事情が認められるとして、遺贈に関する調停の成立により国税通則法第23条第2項第1号の規定による更正の請求を認めた事例
裁決事例集 第59集 14頁
要旨
- 本件遺言は、その文言からみる限りでは、[1]財産を与える旨の具体的な記載がないこと、[2]相続財産に属する特定の財産の処分でないこと、[3]本件遺言書の文言からみると継続的に金銭を給付する金銭債権の遺贈ともみられるが、必ずしも十分な記載がないこと、[4]仮に、継続的に金銭を給付する金銭債権の遺贈だとしても、いつまで金銭を交付すればよいのか、何ら給付期間に関する記載がないこと等遺贈としての効力を巡って、判断の分かれる余地が大きいものであると認めざるを得ない。
ところで、遺言の解釈に当たっての基本的な考え方(最判昭和58年3月18日)を踏まえて本件遺言に係る遺言者である被相続人の真意を推認すると、被相続人は、本件受遺者に恩義を感じ、感謝の気持ちから、本件受遺者に相当額の財産を遺贈する意思を有していたことは確実であり、本件遺言は、本件受遺者を信頼し、屋敷、墓等の管理を依頼するため、将来にわたり受遺者の生活を安定させ得る程度の金銭を取得させる意図の下に記載されたものと認めるのが相当である。
したがって、このような被相続人の真意を踏まえれば、本件遺言は、単なる被相続人の希望の表明と解するのは相当でなく、毎年金銭を継続的に給付することを内容とする金銭債権の遺贈と解するのが相当である - 請求人は、相続税の期限内申告の時点で既に承知していた本件遺言書の内容に基づき、本件受遺者に対して実現すべき金銭債権の相続開始時の価額を評価し、それを相続財産の価額から控除して課税価格を計算すべきであったにもかかわらず、これをしなかったにすぎないのであるから、本件調停の成立によりその具体的な内容が確定したことを理由として、当然に国税通則法第23条第2項第1号の規定による更正の請求ができると解するのは相当ではない。
しかしながら、遺言の解釈において、結果的には遺贈の効力を認めるべきではあるものの、納税者がその効力の有無につき疑問を抱いたとしてもやむを得ないと認められる客観的な事情が認められることにより、申告等の時点において、遺贈の実現義務の負担を確実には予想し得ず、相続財産の価額からその義務の金額を控除しないところにより課税価格を計算したことにつき納税者に責めを負わせることが酷と認められる事情が存する場合には、国税通則法第23条第2項第1号の規定による更正の請求を認めるのが相当である。
本件遺言については、文言からみる限りでは、遺贈としての効力を巡って、判断の分かれる余地の大きいものであると認められ、原処分庁も、不確実なもので、そもそも遺言としての効力はないとの判断にたっていることを踏まえれば、請求人が、期限内申告の時点において、遺贈の実現義務の負担を確実には予想し得なかったとしてもやむを得なかったものと認められる。
したがって、本件更正の請求は、国税通則法第23条第2項第1号に該当し、適法なものと解するのが相当である。
「調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたものでない」ことの判断は、調査の内容・進捗状況、それに関する納税者の認識、修正申告に至る経緯、修正申告と調査の内容との関連性等の事情を総合考慮して行うべきであるとした事例
裁決事例集 第86集
要旨
請求人は、本件各修正申告書の提出が国税通則法第65条《過少申告加算税》第5項に規定する「調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に当たる旨主張する。この点、「調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたものでない」ことの判断は、国税通則法第65条第5項の文言及び趣旨からすると、調査の内容・進捗状況、それに関する納税者の認識、修正申告に至る経緯、修正申告と調査の内容との関連性等の事情を総合考慮して行うべきであるところ、本件においては、請求人は、調査担当職員からの国外送金に係る確認依頼を発端として修正申告を決意したものであり、請求人の国外における所得に関する調査が進行するなかで、当該所得について更正される可能性が高まったことを認識し、その認識した調査の内容と関連性を有する修正申告を行っているから、本件各修正申告は調査を受けたことを原因として更正される可能性があるとの認識によってされたものと認めることができる。したがって、本件各修正申告書の提出は、「調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に当たらない。
参照条文等
公的年金等に係る雑所得の金額を算出するに際し、いわゆる「雑所得速算表」を誤認した結果、所得税の確定申告が過少申告となった場合において、誤認したのは請求人の過失によるものと認められ、また、原処分庁から指摘があれば訂正するつもりで法定申告期限前に申告書を郵送したところ、期限内に指摘されなかったとしても、国税通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」に当たらないとした事例
裁決事例集 第58集 1頁
要旨
請求人は、公的年金等に係る雑所得の金額を算出する際に、「所得税の確定申告の手引き」に記載されている公的年金等に係る雑所得の速算表(以下「雑所得速算表」という。)を誤認しただけであり、このような単純な誤りについては過少申告加算税を課すべきではない旨主張する。
しかしながら、雑所得の金額を算出するに当たって、雑所得速算表を用いて計算する場合、同表には具体的な計算方法も例示されており、請求人が通常の注意を払えばその計算方法を認識できたと認められ、雑所得の計算方法を誤認したのは請求人の過失によるものであるから、当初申告が過少となったことについて真にやむを得ない理由があったとは認められない。
また、申告納税制度の下での所得税の確定申告は、本来納税者自身の判断と責任において法定申告期限までに提出されるものであるから、原処分庁が法定申告期限内に雑所得の金額の誤りを指摘しなかったからといって、そのことを理由に不当とすることはできない。
したがって、原処分庁の行った過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。
合併無効の判決が確定しても遡及効はないから当該合併により発生したみなし配当には何ら影響がなく、更正の請求の要件を充足していないとして、請求人の主張を排斥した事例
裁決事例集 第59集 28頁
要旨
商法第110条は、「合併を無効とする判決は合併後存続する会社又は合併に因りて設立したる会社、其の社員及第三者の間に生じたる権利義務に影響を及ぼさず」としており、合併無効の判決が将来に向かって合併を無効とする効力を有するに止まり、合併のときにさかのぼって合併を無効とするものではないことを規定している。
そして、当該判決によって、合併後存続する会社又は合併によって設立した会社は、無効判決確定のときに将来に向かって合併前の数社に分けられ、同時に合併により消滅した会社は、将来に向かって復活することになる。
また、上記規定は、商法第415条第3項において、株式会社に準用する旨規定しているから、ここにいう社員には株式会社における株主が含まれると解されている。
これを本件についてみると、本件合併は、本件判決により無効とされ、そのことが確定したのであるが、本件判決の確定日の前日である平成11年4月3日までは有効であったのと同様にその効力を保持していたものであり、当該確定日以後において、合併前の状態に回復され、解散会社も当該確定日から将来に向かって復活するにすぎないのである。
そうすると、本件合併は、合併の日にさかのぼって無効となるのではないから、当該合併に基づき行われた株式の割り当て交付及びそれによって発生した本件みなし配当には何ら影響がないといえる。
したがって、本件判決の確定は、国税通則法第23条第2項第1号にいう「その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定した」ことには該当せず、更正の請求の要件を充足していないというべきである。
国税通則法第46条第2項第4号の「事業につき著しい損失を受けたこと」に該当する事実の有無は、一定期間における損益計算を行うことにより判定することが相当であり、生活費等を控除して利益金額を算定すべきとする請求人の主張は採用できないとした事例
裁決事例集 第85集
ポイント
この事例は、国税通則法第46条第2項第4号の「事業につき著しい損失を受けたこと」に該当する事実の有無の判定において、納税の猶予は納税者を救済するものであるが、徴収手続における他の納税者との公平の観点から、当該事実の有無は、一定期間における損益計算を行うことによって判定することが相当であり、所得金額が生活費等すら捻出できない利益金額に落ち込んでいる場合には納税の猶予の要件に該当するとの請求人の主張は、法令上の根拠がなく採用できないと判断したものである。
要旨
請求人は、請求人の各年分の所得金額及び青色事業専従者給与の金額の合計額から生活費等を差し引いた利益金額がいずれも赤字となるから国税通則法第46条《納税の猶予の要件等》第2項第4号で規定する事実(4号該当事実)がある旨主張するが、請求人の所得金額及び青色事業専従者給与の金額の合計額から生活費等を差し引くという法令上の根拠がなく、独自の見解というべきである。
また、請求人は、昭和51年6月3日付徴徴3-2・徴管2-32「納税の猶予等の取扱要領の制定について」(猶予取扱要領)は、国税通則法第46条第2項第5号で規定する事実(5号該当(4号類似)事実)の有無を判定する比較期間を「従前に比べ」と定めているから、納税の猶予の始期の前日である調査日前1年間(調査期間)の直前の1年間(基準期間)に限定すべきではなく、平成21年分の売上金額は、平成13年分の売上金額と比べて減少した旨主張する。
しかしながら、猶予取扱要領は、4号該当事実の有無の原則的な判定方法として、調査期間と基準期間の損益を比較して判定する旨定め、例外的に、調査期間以内において、資材の高騰等の損失原因があり、損失原因の発生した日の特定ができる場合には、その日以降調査日までの間に生じたと認められる損失金額と基準期間の利益金額のうち損失原因の生じた日以降調査日までの期間に対応する期間の利益金額又は損失金額とを比較して判定しても差し支えない旨定め、これを受けて、5号該当(4号類似)事実について、「従前」と比べて判定する旨定めているのであるから、ここでいう「従前」とは、4号該当事実の原則的な判定方法と例外的な判定方法の基礎となる期間を示していると解するのが相当である。そして、4号該当事実に該当する損失とは、単なる利益の減少ではなく、赤字が生じていると認められる場合のことをいい、5号該当(4号類似)事実とは、著しい損失に類似する事実をいうのであるから、5号該当(4号類似)事実としての売上げの減少等とは、著しい損失と同視できるような売上げの減少等をいい、売上げの減少等があれば全てが5号該当(4号類似)事実に当たるということはできない。また、平成21年分の売上金額の減少については、調査期間の売上金額は基準期間の売上金額より減少しているが、その減少の程度が著しいとは言い難い。
参照条文等
国税通則法第46条第2項 昭和51年6月3日付徴徴3-2・徴管2-32「納税の猶予等の取扱要領の制定について」
参考判決・裁決
名古屋高裁平成23年5月26日判決(裁Web) 平成22年11月18日裁決(裁決事例集No.81)
要旨
請求人は、納税者(本件滞納者)の滞納国税を徴収するため行われた不動産(本件公売不動産)の公売公告処分及び最高価申込者の決定処分(本件各公売処分)について、本件公売不動産の所有権は本件滞納者ではなく請求人に帰属しているとして、本件各公売処分は違法である旨主張する。
しかしながら、本件公売不動産の所有権は本件滞納者に認められ、請求人は本件各公売処分によって直接自己の権利又は法律上の利益を侵害された者でなく、本件各公売処分の取消しを求める法律上の利益を欠いているから、本件審査請求は、請求の利益を欠く不適法なものである。
参照条文等
要旨
請求人は、青色申告者からの更正の請求が認められない場合には、国税通則法第23条第4項及び所得税法第155条第2項の規定の精神を酌み、通知書に理由を附記すべきである旨主張する。
しかしながら、国税通則法第23条第4項によれば、税務署長は、更正の請求があった場合には、調査の結果、更正をすべき理由がないと判断したときは、請求者にその旨を通知すれば足り、更正をすべき理由がない旨の通知書に理由を附記すべきことを定めた法令の規定はないから、本件通知処分に係る通知書に理由の附記がないことに違法はない。また、本件通知処分は、所得税法第155条第2項が前提とする同条第1項の更正処分とは法的に全く異なり、実質的にみても、所得税法第155条第2項が青色申告書に係る更正処分に理由附記を要求している趣旨は、納税者が提出した申告書の誤りを税務署長が指摘するときに理由附記を義務付けることにより、その慎重な処分を期するとともに、不服申立てに際しての判断材料を与えようとする点にあると解されるところ、国税通則法第23条第4項に基づく更正をすべき理由がない旨の通知処分については、納税者の更正の請求に対する応答としてなされるものであるから、上記の趣旨が当てはまるものではないと解される。
したがって、請求人の主張は、法の要請を超える独自の見解であり、採用できない。
また、請求人は、住宅借入金等特別控除の適用要件を実質的に満たしているから、国税通則法第23条第1項にいう課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったことに該当する旨主張する。
しかしながら、申告納税方式における納税義務者は、申告行為によって具体的な租税債務を負担することになるが、納税者が申告をした後、その申告内容に変更を加える必要の生ずる場合があることは否定できず、このような場合にはその修正を認めるべきであるが、あらゆる場合にこれを自由に認めることは、申告の性格に照らして適当といえないのみならず、納税義務の具体的内容を不安定にさせ、行政を混乱に陥れる弊害もあるから、国税通則法第23条第1項は、これに一定の制限を加え、一定の期間内に限り特定の手続によってのみ是正することができるものとしたと解される。このような見地からすると、一定事項の申告等を条件に所得金額、税額の減免をすべきこととされているものについてその申告等をしなかった者が、後日その特例の適用を求めるために更正の請求をすることは、許されないと解することが相当である。それは、上記一定事項の申告等を付さないでした納税の申告といえども、法律の規定に従っていなかったり、計算に誤りがあったりしたわけではなく、実体的に不当であるとはいえないからである。
これを本件についてみるに、住宅借入金等特別控除は、申告等を条件に適用され、所得税額が減免される規定であるところ、請求人は、平成17年分の所得税の確定申告を行うに当たり、同控除の適用を申告しておらず、本件更正の請求は、申告後に同控除の実体的要件を満たしているとして、その適用を求めようとしているものであるから、国税通則法第23条第1項による更正の請求ができる場合に該当せず、その理由がないというべきである。
海外に送金した事業資金の一部をドル預金に設定し又は為替の売買等に運用し、その収益を会社益金に計上しなかったことは、事実の隠ぺい又は仮装に該当するとした事例
裁決事例集 第38集 7頁
要旨
請求人が仮払金として海外に送金した多額の資金は事業資金等であって、代表者が管理・運用しており、請求人は、仮払金に係る運用収益が発生していることを十分に承知していたにもかかわらず、運用収益の発生事実を帳簿上明らかにせずに、これをあたかも代表者個人に帰属するものであるかのごとく処理して、当期の収益に計上していないのであるから、重加算税を賦課したことは相当である。
要旨
請求人は、自己の滞納国税を納付するため国税通則法第55条の規定に基づき約束手形1葉を納付委託するとともに、本件納付誓約書に基づき毎月分割納付を履行している最中であるにもかかわらず、原処分庁が、一方的に本件充当処分及び本件各委託納付を行ったのは、権利の濫用である旨主張する。
しかしながら、本件充当処分は国税通則法第57条第1項の規定に基づくものであり、同項は、税務署長に対し、還付金等と納付すべきこととなっている国税とが同一の納税者について存在する場合に、還付金等を納付すべきこととなっている国税に充当することを義務付けるものである。また、納付委託により事実上納税が猶予されている滞納国税について、還付金等の充当を制限する旨の法律上の規定はないことから、本件充当処分について原処分庁がその権利を濫用したとは認められない。
また、委託納付とは、納税者が、税務署長に対し、その受領すべき還付金等により未納の国税等の納付を委託したものとみなされ、同委託に基づき税務署長が同還付金等を同未納国税等に収納する手続を行うことをいい、これにより、法律上当然にその委託納付に相当する額の還付及び納付があったものとみなされる。そうすると、納付委託の効果は、法律上擬制される納税者自らの委託に基づくものであって、税務署長等による公権力の行使によるものではないから、「国税に関する法律に基づく処分」には該当しない。したがって、本件各委託納付に対する審査請求は不適法なものである。
被相続人の死亡を保険事故とする生命保険金の支払が確定していなかったため相続税の期限内申告書を提出しなかったことについて「正当な理由」があるとはいえないとした事例
裁決事例集 第71集 29頁
要旨
請求人は、本件相続税の法定申告期限において、本件各保険会社に対する保険金請求訴訟が係属中で支払が確定していなかった本件各生命保険金を相続財産として申告しなかったことは、国税通則法第66条第1項の「正当な理由」に当たる旨主張する。
しかしながら、同項にいう「正当な理由」とは、例えば災害、交通・通信の途絶など、期限内申告ができなかったことについて納税者の責めに帰すことができない外的事情など、無申告加算税を賦課することが不当又は酷と考えられる真にやむを得ない理由をいい、相続財産に属するとみなされる特定の財産を相続税の計算の基礎としないがゆえに期限内に申告をしなかった場合において、当該財産が相続財産に属するとみなされないか又は属するとみなされる可能性が小さいことを客観的に裏付けるに足りる事実を認識して期限内に申告書を提出しなかったことを納税者が主張立証したときは、「正当な理由」があると解すべきところ、[1]請求人は、被相続人の死亡により、本件各保険金請求権を取得していること、[2]請求人は、各保険会社に対し本件相続開始後まもなく生命保険金の支払請求をしていること、[3]本件各生命保険金と保険事故事由を同じくする3件の生命保険金は、被相続人死亡後まもなく支払われていること、[4]本件各保険会社は、被相続人の行為の公序良俗違反等を理由に本件各生命保険金の支払を拒絶したため、請求人は、同理由が抽象的で、確たる証拠を欠き推測の域を出ないものでしかないとして、本件各訴訟を提起していること、[5]本件各訴訟において、請求人の本件各生命保険金の請求を認容する判決が確定していることが認められ、これらの本件相続の発生から各訴訟の確定までの一連の推移を総合考慮すると、請求人が、本件において、本件各生命保険金が相続財産に属するとみなされないか又は属するとみなされる可能性が小さいことを客観的に裏付けるに足りる事実を認識して期限内申告書を提出しなかったとは認められず、請求人に「正当な理由」があったとはいえないといわざるを得ない。
要旨
請求人は、取締役営業部長が行った架空仕入れが請求人の行為とみなされたとしても、請求人は、仕入先が請求人に対して正規の請求書で請求を行ってきたことから、その請求に基づいて仕入代金の決済を行ったのであり、本件各事業年度等に係る各確定申告書を税額を免れる意図をもって提出したものではないから、国税通則法第70条《国税の更正、決定等の期間制限》第5項の規定の適用はない旨主張する。
しかしながら、国税通則法第70条第5項の趣旨は、「偽りその他不正の行為」を行った者への制裁を目的としたものではないから、納税者の補助者又は代理人によるものであっても、納税義務の確定手続において客観的に「偽りその他不正の行為」によって税額を免れた事実が存在する場合には、納税者が具体的な偽りその他不正の行為を意図し、又は指示したか否かを問うことなく、同項の規定の適用があると解すべきであり、「偽りその他不正の行為」とは、税の賦課徴収を不能又は困難にするような何らかの偽計その他の工作を伴う不正な行為を行っていることと解される。
請求人の取締役営業部長が行った架空仕入れに係る各行為は、税の賦課徴収を困難とする偽計その他の工作を伴う不正な行為といえ、請求人はこれにより、虚偽の事実が記載された会計帳簿等に基づき、本件各事業年度等に係る確定申告をしていたことになるから、請求人が不正の行為を認識していたか否かにかかわらず、請求人の納税義務の確定手続において、客観的に偽りその他不正の行為によって税額を免れた事実が存在するといえる。
参照条文等
請求人の申告行為に重要な関係のある相当な権限を有する地位に就いている従業員の行った売上除外について、請求人の行為と同一視すべきであるとして、重加算税の賦課決定処分を認容した事例
裁決事例集 第66集 49頁
要旨
重加算税制度の趣旨からすれば、隠ぺい又は仮装行為については、その行為者は納税者たる法人の代表者に限定されるものではなく、法人の代表者がその事実を知らなかったとしても、役員や従業員等で経営に参画していると認められる者及び納税者の申告行為に重要な関係のある相当な権限を有する地位に就いている者が事実を隠ぺいし又は仮装し、かつ、代表者がそれに基づき過少申告した場合は、当該法人の代表者が納税申告をするに当たり、隠ぺい又は仮装行為を知っていたか否かに左右されることなく、当該法人の行為と同一視されると解される。
本件について判断すると、請求人の経理業務を任され、広範な経理業務に従事していた従業員Nは、売上げ及び売掛金については、「売掛残高一覧表」に真実の売上げを記載していたにもかかわらず、売上代金として受け取った手形の一部をNが開設した請求人名義の預金口座で取り立て着服する一方で、取引先に係る売上げ及び売掛金の入金の各金額を過少に記載し、経理帳簿を仮装していたことが認められる。
そして、Nは、請求人の印鑑、通帳だけでなく、請求人の代表者の私印についても預けられるなど、その信頼は厚かったのであり、請求人の経理業務全般について任された上、決算や確定申告に関わる経理帳簿等の作成等に従事するとともに、請求人の確定申告書の「経理責任者自署押印」欄に自分の氏名を記名、押印し、これを提出していることからすると、請求人の申告行為に重要な関係のある相当な権限を有する地位に就いている従業員であると認められる。
そうすると、Nは、請求人の申告行為に重要な関係のある相当な権限を有する地位に就いている従業員であり、同人の行為は請求人の行為と同一視すべきであるといわざるを得ない。
重加算税の賦課要件を充足するためには、過少申告行為とは別に隠ぺい又は仮装と評価すべき行為の存在を必要としているものであると解されるところ、原処分庁は隠ぺい又は仮装であると評価すべき行為の存在について何らの主張・立証をしておらず、隠ぺい又は仮装の事実を認めることはできないとした事例
裁決事例集 第54集 94頁
要旨
国税通則法第68条第1項の規定によれば、重加算税の賦課決定処分については、納税者が国税の課税標準又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺい又は仮装し、その隠ぺい又は仮装したところに基づき納税申告書を提出したことが要件となっている。これは、重加算税の賦課要件を充足するためには、過少申告行為とは別に隠ぺい又は仮装と評価すべき行為の存在を必要としているものであると解される。
原処分庁の主張は、請求人が意識的な過少申告を行ったものであるというにすぎず、隠ぺい又は仮装であると評価すべき行為の存在について何らの主張・立証をしておらず、また、当審判所の調査その他本件に関する全資料をもってしても、本件貸付金について隠ぺい又は仮装の事実を認めることはできない。
したがって、重加算税の賦課決定処分のうち、争いのある部分については重加算税を賦課することは相当ではない。
単発的で少数の売上伝票の欠落があることのみでは、売上除外があったとまではいえず、国税通則法(平成23年法律第114号による改正前のもの)第70条第5項に規定する「偽りその他不正の行為」に当たらないとした事例
裁決事例集 第87集
要旨
原処分庁は、①従業員等が店舗で使用していた一綴りの売上伝票は、品名及び単価等を記載すると筆圧痕として次の伝票に当該記載内容が残る場合があるところ、当該筆圧痕に対応する売上伝票のうち数枚が存在しないこと、②従業員等が売上伝票を集計し、売上伝票を入れる封筒の表にその日の売上金の合計額等を記載すると、封筒内の売上伝票等に筆圧痕として当該合計額が残ることがあるところ、当該筆圧痕の金額が売上げとして請求人が記帳した金額を上回ることなどから、請求人は、売上伝票を破棄する方法により売上除外している旨主張する。
しかしながら、売上伝票の欠落が単発的で少数である場合には、売上伝票の破棄による売上金額の一部除外があったと認定することはできず、国税通則法(平成23年法律第114号による改正前のもの)第70条《国税の更正、決定等の期間制限》第5項に規定する偽りその他不正の行為があったとすることはできない。
参照条文等
国税通則法(平成23年法律第114号による改正前のもの)第68条第1項、第70条第5項
参考判決・裁決
最高裁平成18年4月25日第三小法廷判決(民集60巻4号1728頁) 東京高裁平成16年11月30日判決(税資254号順号9841)
取引及び登記等に事実の隠ぺい又は仮装が認められず、調査時にも事実の把握を困難にさせるような特段の行為が認められないなどとして、重加算税の賦課要件は満たしていないとした事例
裁決事例集 第55集 25頁
要旨
原処分庁は、請求人が3区画の土地を譲渡したにもかかわらず、1区画分のみを確定申告し、調査時の指摘により修正申告したのは、その譲渡代金の使途目的があって計画的に行われたこと及び3区画分の譲渡所得に係る所得税の納付資金不足に起因したものと認められ、意図的に行われた過少申告であるとして重加算税の賦課決定処分をした。
しかしながら、請求人に当該土地の譲渡に関する売買契約書の作成、所有権移転登記、譲渡代金の授受及び使途等について、何ら隠ぺい又は仮装の行為は認められず、また、確定申告後においても調査による事実の把握を困難にさせるような特段の行為は一切認められない上、請求人には資金ねん出方法として、原処分庁が指摘する方法以外にも多種多様の方法が可能であり、本件物件の譲渡に係る所得税の納付資金が不足しているとはいえず、さらに、請求人が本件申告等を任せていた次男において、譲渡の事実を隠ぺいする意図の下に1区画分のみを申告したものと認めるに足りる証拠はなく、本件においては、請求人に国税通則法第68条第1項に規定する仮装・隠ぺいの具体的事実が認められないことから、重加算税の賦課決定処分は、過少申告加算税の額を超える部分を取り消すべきである。
要旨
国税通則法第23条第2項第1号に規定する「判決」は、当事者間に権利関係の争いがあり、その後の判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により申告等があった当時の権利関係と異なった権利関係が生じたような場合の判決を指し、請求の認諾があった場合もそれが調書に記載されると確定判決と同一の効力を有するので同様であるが、請求の認諾による結果が訴訟当事者間で当初から予定されていたもので、専ら租税負担を回避する目的で実体とは異なる内容のものは含まれないと解されるところ、本件の請求の認諾は、本件贈与税更正処分により、請求人及び贈与者が贈与契約の際に予定していたものより重い納税義務が生ずることが判明したため、本件贈与を実質的に合意解除し、専ら租税負担を回避する目的で錯誤を理由とする本件の贈与の無効確認訴訟を提起したうえで得たもの、すなわち実体とは異なるものであると認めるのが相当であり、また、本件贈与により請求人に生ずることとなった賃貸収入等の経済的利益が請求の認諾があっても消滅していないことも踏まえれば、本件の請求の認諾は、国税通則法第23条第2項第1号に規定する「判決」に該当せず、本件の更正すべき理由のない旨の通知処分は適法である。
土地がいわゆる公図混乱地区に所在し、その地積の確定は測量が完了するまではできなかったとしても、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由に当たらないとした事例
裁決事例集 第59集 37頁
要旨
請求人らは、本件更正処分による納付すべき税額の計算の基礎となった事実が当該更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったのは、やむを得ない事情によるものであり、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由がある旨主張するところ、本件土地が公図混乱地区にあったため、その地積の確定には相当の時間を要し、現に原処分庁が本件更正処分をした時点において、本件土地の測量が完了していなかったことは認めることができる。
しかしながら、過少申告加算税が、過少な申告という事実のみをもって賦課されるものであることに照らすと、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があると認められる場合とは、税法の解釈に関して申告当時に公表されていた見解がその後改変されたことに伴い修正申告をした場合など、申告当時に適法とみられていた申告が、その後の事情の変化により、納税者の故意過失に基づかないで過少申告となった場合のように、過少申告をしたことが真にやむを得ない理由によるもので、かかる納税者に過少申告加算税を課すことが不当又は酷になる場合を意味するものと解するのが相当である。
本件において、請求人らは、当初、本件土地の一部について、その登記名義が被相続人であるにもかかわらず、これを相続財産として申告しなかったばかりか、本件土地の地積は不動産登記簿上の地積とも、本件貸付台帳上のそれとも異なることを認識しながら、あえて当該貸付台帳上の地積等に基づいて本件申告をしたのであり、本件土地が公図混乱地区にあり、また、その地積を確定した上で修正申告をする予定である旨を調査担当職員に告げていたとしても、請求人らは、本件申告時において、本件土地の地積が本件申告に係る地積の範囲内であり、これを超えるものではないことを客観的に裏付ける事実を認識していたものということはできないのであるから、正当な理由があるとは認められない。
要旨
請求人が債務控除の対象となる債務に該当するとして申告した借入金は、[1]被相続人が借り入れたとする金員についての異動の形跡が認められないこと、[2]被相続人は、生前無職で、高齢かつ病弱であったものであり、一方、請求人は、貸金を業とする者であること、[3]請求人が主張する貸金返還請求訴訟は、相続税対策上提起されたことは疑いを入れる余地がないこと等の事実から、被相続人の借入金として存在したとは認められず、あたかもその借入金が存在するがごとく仮装して、相続税の課税価格の計算をして相続税の申告を行ったのであるから、重加算税の賦課決定をしたことは適法である。
要旨
請求人は、請求人から帳簿の記帳を委託されていた者(以下「記帳担当者」という。)に仮装行為を指示した事実はなく、仮装行為を容易に発見できる専門的知識もないから、請求人の行為と同一視すべきではない旨主張するが、記帳担当者は、実際の現金及び預貯金の出し入れには一切関与しておらず、仕入等の架空計上による利益はもっぱら請求人が受けるものであって、記帳担当者には何らのメリットもないこと、請求人の収入金額は、年々減少していたが、平成11年分は一転して増額に転じていること、記帳担当者の申述は、具体的内容を持つものであり、他の事実から検証しても真実性の高いものであるといえることからすると、記帳担当者は、請求人の指示又は依頼に基づき本件架空計上を行ったものと認めることができる。
したがって、請求人が国税通則法第68条第1項に規定する「事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装した」ということができる。
更正の申出に対してなされた減額の更正処分に対する審査請求は審査請求の利益を欠き不適法であるとした事例(平成22年分の所得税の更正処分及び無申告加算税の賦課決定処分・棄却、却下)
裁決事例集 第93集
要旨
本件更正処分は、納付すべき税額を減少させる更正処分であるから、請求人の権利又は利益を侵害するものとはいえない。
なお、請求人は、本件更正処分に先立って更正の申出をしているが、更正の申出の手続は、更正の請求とは異なり、法令上の根拠に基づくものではないことからすれば、原処分庁は、単に、請求人からの減額更正を求める申出を契機として、調査に基づき減額更正処分を行ったにすぎず、本件更正処分が請求人が求める減額の全ての金額ではなかったとしても、請求人の権利又は利益を侵害するものとはいえない。
したがって、本件更正処分の取消しを求める審査請求は不適法である。
株主総会において支給が確定した退職金の一部を受領しなかったのは、相続人たる請求人らが退職金の支払義務の一部を免除したものであるから更正の請求は認められないとした事例
裁決事例集 第76集 1頁
要旨
請求人らは、相続税の課税財産として申告した退職手当金等について、その算定根拠に誤りがあったことから相続税の法定申告期限後に減額され、一部しか受領していない旨主張する。
しかしながら、株主総会における本件被相続人に係る退職金及び弔慰金の本件支給決議は、その議事録等から、定款の定めに従って満場一致で承認されていると認められる。また、取締役会議事録には本件被相続人に対する退職金の金額の計算根拠に誤りがあったと記載されているもののその誤りについて具体的な記載がなく、請求人らからも本件支給決議の際の意思表示に要素の錯誤があった等の主張はされておらず、当審判所の調査によっても、本件支給決議を無効ならしめるような事由は認められない。そうすると、D社が本件被相続人に係る退職金及び弔慰金を支給すること並びにその額は、本件支給決議によって確定したとするのが相当である。
そして、請求人らが退職金の一部しか受領しなかったことについて、請求人らによる債務免除の意思表示があったとすれば、いったん有効に確定した退職金を遡及的に訂正して減額するのではなく、新たな法律行為により請求人らがD社の退職金の支払義務の一部を免除したものであると解するのが相当である。
消費税等の確定申告書を法定申告期限(平成18年1月4日)の8日前である平成17年12月27日に宅配便業者の宅配便を利用して発送したところ、同宅配物が平成18年1月5日に到達したことにつき、「正当理由が認められる場合」に該当するとの請求人の主張を排斥した事例
裁決事例集 第72集 33頁
要旨
無申告加算税は、申告納税方式を採用する国税において、納税者が自己の判断と責任においてすべき確定申告が納税義務を確定させる重要な意義を有することから、期限内申告書が提出されなかった場合に、適法にこれを提出した者とこれを怠った者との間に生じる不公平を是正することにより、申告納税制度の信用を維持し、もって適正な期限内申告の実現を図ることを目的としたものと解される。このような無申告加算税の目的からすれば、国税通則法第66条第1項の期限内申告書の提出がなかったことについて「正当な理由があると認められる場合」とは、無申告加算税を課すことが不当又は酷と認められる特別な事情がある場合をいうものと解するのが相当である。
これを本件についてみると、請求人が本件宅配物の配達を依頼した平成17年12月27日は、年末年始の時期であるから、宅配物については、交通事情や予期されない集配量の増加等の要因により通常期よりも配達期間を要するなど、集配業務の遅れや混乱といった不測の事態が生ずる可能性があるが、こうした事情はいずれも利用者にとって相当程度知られていることである。しかも、税務署等の官公庁が12月29日から翌年1月3日までの間閉庁となるため、受取者の押印又はサインが得られなければ持ち帰ることになっている宅配物については、この間、税務署に配達しようとしても受領されることがないため、結局宅配物による提出物は収受されないことになる。
それにもかかわらず、請求人は、本件確定申告書の重要性及びこれが法定申告期限である平成18年1月4日までに必着すべきものであることを十分認識しながら、本件宅配物をA社の担当者に依頼する際に、特に配達日の指定や配達予定日の確認といった、自ら容易にすることができる注意や配慮をせず、漫然とこれを配達依頼し、本件宅配物が請求人の予期に反し、同月5日に配達されたものであるから(仮に本件宅配物に配達日指定シールが貼付された経緯が、A社側の事情によるとしても、それは、請求人が配達日の指定や配達予定日の確認等を容易に行えるにもかかわらず、本件宅配物が確実に配達される手立てをとらなかったことによるものである。)、法定申告期限までに本件確定申告書の提出がなかったことにつき、上記特別の事情があったとは認められず、したがって、「正当な理由があると認められる場合」には該当しないというべきである。
ポイント
本事例は、滞納後に発生した請求人の猶予該当事実(請求人の母の入院加療に伴う支出)を、滞納国税を一時に納付することができなかった事実と認め、国税通則法第46条第2項第5号(第2号類似)に該当するとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人が請求人の母の入院加療に伴う支出を行う以前から税金を滞納しているのであるから、国税通則法第46条《納税の猶予の要件等》第2項第5号(第2号類似)の猶予該当事実に基づいて、滞納国税を一時に納付することができなくなったとは認められない旨主張する。
しかしながら、納付困難税額がある一方で、猶予該当事実に基づく支出又は損失がある場合には、その支出又は損失の額が納付困難の原因となっているものとみるのが相当であるところ、請求人には納付困難税額と猶予該当事実(請求人と生計を一にしない母の病気)に基づく支出とが、それぞれ存在することから、請求人は猶予該当事実に基づき、滞納国税を一時に納付することができなかったと認められ、また、国税通則法第46条第2項に規定するその他の要件も充足していると認められるから、当該猶予該当事実と納付困難の原因との間の基因関係の不存在を理由とする原処分は違法というべきである。
参照条文等
税務署における資料の調査により請求人の給与所得の申告が漏れているものと判断した上で、尋ねたい事項や持参を求める書類を具体的に明記した文書を送付するなどの一連の過程から、国税通則法第65条第5項の「調査」があったと判断した事例
裁決事例集 第86集
要旨
請求人は、税務署への来訪を案内する文書(本件文書)には「調査」である旨の記載がない上、税務相談であればよいと断った上で面接に応じたものであり本件修正申告書を提出する前に「調査があった」とはいえないから、本件文書を受け取った後、自ら申し出た上での本件修正申告書の提出は、「その提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当する旨主張する。
しかしながら、原処分庁所属の調査担当職員は、税務署における資料の調査により、請求人の給与所得の申告が漏れているものと判断し、その判断に基づいて、尋ねたい事項及び持参を求める書類を具体的に明記した本件文書を請求人に送付し、その後の電話でも本件文書と同じ内容を告げており、これらの一連の過程は、証拠書類の収集、証拠の評価あるいは経験則を通じての課税要件事実の認定、租税法その他の法令の解釈適用を経て決定に至るまでの判断過程の一端であるから、「調査」があったと認められる。そして、請求人は、調査があったことを端緒として、給与所得についての修正申告をしなければ、調査が進行し、やがて原処分庁が請求人に対する更正処分を行うであろうことを予知し、その上で本件修正申告書を提出したものと認められるから、本件修正申告書の提出は、「その提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当しない
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参照条文等
参考判決・裁決
東京高裁平成17年4月21日判決(訟月52巻4号1269頁) 平成14年2月25日裁決(裁決事例集№63・37頁)
ポイント
この事例は、財団不足の場合においても、破産手続によらずに、破産手続開始決定後に確定した還付金等を国税通則法第57条の規定により、財団債権である未納国税に充当することができるとしたものである。
要旨
請求人は、財団不足の場合に財団債権となる租税債権に還付金等の充当をすることは、財団債権者間の優先順位を変更することとなるので、最優先の財団債権である破産手続費用、破産管財人報酬の全額支払が確実になり、各財団債権者に対するあん分支払額が確定するまで還付を留保し、その後、破産管財人からあん分支払額が通知されてから、その通知額に従い充当処理を行うべきである旨主張する。
しかしながら、破産債権は、破産法に特別の定めがある場合を除き、破産手続によらなければ行使できないが、財団債権は、破産手続によらないで破産財団から随時弁済を受けることができる債権であり、破産債権に先立って弁済されるものであるから、破産債権に優先して満足を受けられる債権である。これに財団不足の場合であるか否かを問わず、破産債権となる租税債権に還付金等を充当することができることを併せて考えると、財団債権となる租税債権に還付金等を充当できると解するのが相当である。
ところで、委託納付とは、納税者が、税務署長等に対し、その受領すべき還付金等により未納の国税等の納付を委託したものとみなされ、同委託に基づき税務署長等が同還付金等を同未納国税等に収納する手続を行うことをいい、これにより、法律上当然にその委託納付に相当する額の還付及び納付があったものとみなされるところ、委託納付の効果は、法律上擬制される納税者自らの委託に基づくものであって、税務署長等による公権力の行使によるものではなく、「国税に関する法律に基づく処分」には該当しないことから、本件各委託納付に対する審査請求は不適法なものである。
参照条文等
国税通則法第57条第1項 地方税法附則第9条の10第1項 破産法第2条第7項、第100条第2項2号、第152条
参考判決・裁決
大阪地裁平成15年2月14日判決(税資253号順号9283)
偽りその他不正の行為が認められないとして処分を取り消した事例(平成17年分~平成23年分の所得税に係る過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、平18.1.1~平23.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税に係る過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分・全部取消し)
裁決事例集 第94集
要旨
原処分庁は、平成17年分の売上金額の一部を隠ぺい又は仮装行為に基づく申告漏れと認定しているが、当該隠ぺい又は仮装行為に基づく申告漏れに対応する所得金額は異議決定により算出されないとしたから、それに対応する所得税額は存在しない。
そうすると、平成17年分の所得税の修正申告により納付すべき税額は、平成17年分の売上金額の残部(上記売上金額の一部以外の部分)の申告漏れに係るものであると認められる。
ところで、国税通則法第70条《国税の更正、決定等の期間制限》第4項は、納税者が「偽りその他不正の行為」により国税を免れた場合の加算税の賦課決定の除斥期間を7年と規定しているところ、当審判所が上記申告漏れの態様を調査した結果によれば、平成17年分の売上金額の残部が申告漏れとなったことについて、請求人が自らに帰属しないような外形を作出したとか、本件調査において、請求人が真実の所得を秘匿するため、虚偽の資料を作成し又は領収証の控えつづりを秘匿するなどして、これらの申告漏れが発覚し難い状況を作出したとかの事実を認めることはできず、請求人が平成17年分の所得税の賦課徴収を不能又は困難にするような何らかの偽計その他の工作を伴う不正な行為を行ったとはいえないから、平成17年分の売上金額の残部の申告漏れに係る行為は、国税通則法第70条第4項に規定する「偽りその他不正の行為」には該当しないというべきである。
参照条文等
原処分庁の調査担当職員が請求人の消費税に係る経理処理を是正しなかったとしても、国税通則法第65条第4項及び第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由」に当たらないとした事例
裁決事例集 第61集 20頁
要旨
請求人は、税務調査において、調査担当職員から、外航航路に就航している航空機(以下、「外航機」という。)のハンドリング業務について消費税の免税に該当する旨回答を受けたと主張する。
この点について、本件調査担当職員は、当審判所に対し、税務調査の際に、請求人から外航機のハンドリング業務に係る消費税について、元請先の航空会社の指導に基づき免税の経理処理をしているとの説明を受け、それ以上の確認を行わないまま、調査を終了した旨答述している。
ところで、税務官庁が、税務調査において、納税者の経理処理について、特に指摘をしなかったからといって、当該経理処理を公的あるいは確定的に是認したものでないことは明らかであり、その後の税務調査において、当該経理処理の誤りが判明した場合に、その是正を求めることはむしろ当然である。
そうすると、本件調査担当職員が請求人の消費税に係る経理処理を是正しなかった事実のみを持って、請求人に対して誤った指導を行ったというのは相当でない。
売上げの一部を隠ぺいしたことにより過大に繰り越された欠損金額があった場合には、これを損金の額に算入した事業年度において事実の隠ぺい又は仮装があったことになるとした事例
裁決事例集 第39集 22頁
要旨
前々期の欠損事業年度において売上げの一部を隠ぺいにより脱漏させ、これに基づき翌期以降に欠損金を過大に繰り越す確定申告書を提出し、本件事業年度において欠損事業年度から繰り越されてきた架空の欠損金を損金の額に算入して過少な申告書を提出したのであるから、そのことは本件事業年度において税額等の計算の基礎となるべき事実を隠ぺい又は仮装したことになるというべきである。
要旨
審査請求によって処分の取消しを求めるには、請求人に取消しを求める利益のあることが必要であるところ、請求人が取消しを求める委託売却による売却通知処分については、原処分庁が本審査請求がされたことを理由に当該委託売却を中止し、当該委託売却に係る売却実施期間が経過したため、当該売却通知処分に基づき請求人の財産が売却されることはなくなり、同処分の効力は消滅したので、本審査請求は不服申立ての利益を欠く不適法なものである。
参照条文等
参考判決・裁決
神戸地裁昭和46年2月19日判決(裁web)
建物の使用状況が記載された売買契約書に基づき確定申告書を提出したことのみをもって、重加算税の賦課要件(隠ぺい又は仮装)に当たるということはできないとした事例
裁決事例集 第56集 78頁
要旨
原処分庁は、請求人が本件2階建部分を請求人の居住の用に供されていたかのごとく装ったものと認定した。
しかしながら、本件2階建部分が措置法の特例の適用対象となる居住用家屋の範囲に含まれないとしても、賃借人が実際に本件2階建部分をほとんど使用せず、請求人が賃借人ヘの賃貸前と同じように本件2階建部分を使用していたことからすれば、請求人が本件2階建部分を居住用部分として認識していたとしても無理もないと認められ、まして、その認識に基づき本件売買契約書に本件2階建部分を居宅及び応接室として使用している旨の記載をしたことのみをもって、仮装行為とまでいうことはできないから、過少申告加算税相当額を超える部分の重加算税の金額を取り消すべきである。
要旨
請求人は、請求人の贈与税及び相続税の申告書はいずれも請求人が関知しないものであるなどとして、これらの申告書による各申告は無効であるから、贈与税及び相続税の更正の請求を認めるべきである旨主張する。
しかしながら、贈与税及び相続税の更正の請求については、国税に共通の更正の請求の規定である国税通則法第23条第1項及び第2項と、贈与税及び相続税に特有の更正の請求の規定として相続税法第32条が規定されており、それ以外には規定はないところ、国税通則法第23条第1項各号に規定する更正の請求が認められる事由は、いずれも当該申告書に記載した、課税標準等若しくは税額等(第1号)、純損失等の金額(第2号)及び還付金の額に相当する税額(第3号)の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったこととされており、当該申告書及びその申告自体が無効であることは更正の請求の事由とされていない。
また、国税通則法第23条第2項各号に規定する事由も、その申告の基礎となった事実に関する訴えについての判決等により当該基礎となった事実が申告と異なることとなったこと等であり、いずれも、その申告自体が無効であることは更正の請求の事由とされていない。
さらに、相続税又は贈与税の申告書を提出した者に係る更正の請求の特則である相続税法第32条に規定する更正の請求が認められる事由も、同条各号のいずれかに該当する場合であって、かつ、その申告に係る課税価格及び相続税額又は贈与税額が過大となったときとされているので、その申告自体が無効であることは、更正の請求の事由とされていない。
したがって、請求人が主張する「申告の無効」はこれら更正の請求の事由には該当しないので、「申告の無効」を事由とした更正の請求はいずれも不適法であり、請求人の主張は採用することができない。
参照条文等
相続により取得した財産に係る相続開始前における賃借権の取得時効の完成、賃借権の取得という事実が判決により後発的に確定した場合、当該判決は、取得時効の完成の確定という意味において、国税通則法第23条第2項1号にいう「判決」に当たり、当該事情は当該財産の評価上、しんしゃくすべきであるとした事例
裁決事例集 第64集 1頁
要旨
本件において、請求人は、相続により取得した本件土地に係る立退請求訴訟において、同土地の耕作者から賃借権の取得時効を援用されたがそれを争い、同土地を何らの負担のない自用地として評価し、申告していたところ、相続開始前における賃借権の取得時効の完成を認定し、賃借権の取得を認容した本件判決が確定したものであるから、同判決は、請求人が申告に当たり本件土地の評価の基礎とした事実(何らの負担のない)と異なる事実、すなわち、相続開始時に取得時効が完成していたという事実が確定されたという意味において、国税通則法第23条第2項第1号にいう「判決」に当たり、そして、当該事情は、本件土地の評価上、しんしゃくされるべきであるから、本件判決が同号の「判決」に当たるとしてなされた本件更正の請求には、理由がある。
要旨
請求人は、納税の猶予の申請を許可するか否かは納税者の事業実態として納税を困難にしている事実の存否により判断されるべきところ、請求人には当該事実が存在し、国税通則法第46条《納税の猶予の要件等》第2項第5号の要件を充足していたとして、原処分庁が納税の猶予を不許可とした処分(本件不許可処分)には裁量権の範囲の逸脱又は濫用があり、違法である旨主張する。
しかしながら、納税の猶予の許否は税務署長の裁量的判断に委ねられていると解するのが相当であるところ、当該裁量基準を示した「納税の猶予等の取扱要領」(猶予取扱要領)の定めが合理性を有するものである場合には、税務署長の判断が当該取扱要領の定めに従っている限り、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとの評価を受けることはない。これを本件についてみると、本件に関する猶予取扱要領の定めは合理的であり、当該定めに従えば、請求人には国税通則法第46条第2項第5号(第4号類似)に該当する事実があったということはできないから、本件不許可処分をした原処分庁の判断に、裁量権の範囲の逸脱又は濫用があったと認めることはできない。
参照条文等
参考判決・裁決
名古屋地裁平成22年1月18日判決(裁Web)
請求人がした修正申告書の提出は、通則法第65条第5項(令和4年法律第4号による改正前のもの)の「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合において、その申告に係る国税についての調査通知がある前に行われたもの」に該当しないとした事例(平成29年分から令和2年分の所得税及び復興特別所得税に係る過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第133集
ポイント
本事例は、いわゆる更正の予知の判断枠組みにつき「税務職員がその申告に係る国税についての調査に着手してその申告が不適正であることを発見するに足るかあるいはその端緒となる資料を発見し、これによりその後の調査が進行し先の申告が不適正で申告漏れの存することが発覚し更正に至るであろうということが客観的に相当程度の確実性をもって認められる段階に達した後に、納税者がやがて更正に至るべきことを認識した上で修正申告を決意し修正申告書を提出したものでない」か否かにより判断するとした上で、その該当性については、調査の内容・進捗状況、それに関する納税者の認識、修正申告に至る経緯、修正申告と調査の内容との関連性等の事情を総合考慮して判断すべきとしたものである。
要旨
請求人は、原処分庁所属の調査担当職員(本件調査担当者)が、請求人に対して、調査又は行政指導の行為のいずれの事務として行うかを明示していないから、国税通則法第65条《過少申告加算税》第5項に規定する「調査」があったとはいえないため、修正申告書(本件修正申告書)の提出が、同項に規定する「その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合」に該当する旨主張する。
しかしながら、本件調査担当者は、請求人が勤務する法人の親会社から受けたインセンティブ報酬(本件報酬)が記載された資料の内容と請求人の確定申告書の記載内容とを比較検討することにより、本件報酬に係る給与所得の申告金額が計上されていないことをあらかじめ確認した上で、請求人に本件報酬を確認する旨の電話連絡(本件電話)をしたと推認され、これらの行為は本件調査担当者の課税標準等又は税額等を認定するに至る一連の判断過程であると認められるから、同項に規定する「調査」があった場合に該当すると認められる。そして、調査の内容・進捗状況、調査の内容・進捗状況に関する請求人の認識、修正申告に至る経緯、修正申告と調査の内容との関連性に係る各事情からすれば、修正申告の時点において、本件調査担当者による調査は、その後の調査が進行し確定申告が本件報酬を計上しない不適正なものであることが発覚し更正に至るであろうということが客観的に相当程度の確実性をもって認められる段階に達していたというべきであり、また、請求人は、本件電話を受けてから税理士に依頼し、修正申告していることから、やがて更正に至るべきことを認識した上で修正申告を決意し修正申告書を提出したものと認められる。したがって、本件修正申告書の提出は、「調査があつたことにより更正があるべきことを予知してされたものではない場合」に該当しない。
参照条文等
国税通則法第65条第5項(令和4年法律第4号による改正前のもの)
参考判決・裁決
東京地裁平成24年9月25日判決(判時2181号77頁)
請求人の平成17年分の所得税の確定申告につき期限後申告となったのは、請求人が平成18年3月9日から同月19日まで入院中であったためであり、「正当な理由」があるとの主張を排斥した事例
裁決事例集 第73集 56頁
要旨
国税通則法第66条第1項に規定する無申告加算税は、納税申告制度の秩序を維持するためには、納税者により期限内に適正な申告が自主的になされることが不可欠であることにかんがみて、申告書の提出が期限内になされなかった場合の行政上の措置として課されるものであるから、同項ただし書きの「正当な理由」とは、例えば、災害、交通・通信の途絶など、期限内に申告できなかったことについて納税者に責められる事由がなく、このような行政上の措置を課することが不当又は酷となるような真にやむを得ない事情をいうものと解するのが相当である。
これを本件についてみると、請求人が会計事務所に本件確定申告書の作成を依頼したのは平成18年2月ころであり、そして、入院の翌日である同年3月10日ころには、本件確定申告書ができあがっていたこと、請求人の入院は、突発的な事態によるものでなく、毎年定期的に受けていた術後検査を受けるためのものであり、実際にも入院中は、定期的に血液、肝機能等の身体全般の検査を受けるという状況にあったこと、入院期間は予め一週間ないし10日程度と見込まれていたもので、同月19日に退院していること、請求人は、本件確定申告書の作成を本件会計事務所に依頼していたことから、計算過程などについては確認することなく、納税額を確認したところで本件確定申告書に押印していること、請求人は、請求人が代表取締役を務めるC社の経理課長から、法定申告期限が平成18年3月15日であることを知らされた際、申告期限にはこだわらず、本件確定申告書を退院後に提出する意思を有していたことが認められる。
これらのことからすると、請求人が本件確定申告書の期限内提出の必要性ないし重要性を十分に認識していたとすれば、請求人は、平成18年3月9日から入院することになるという事情を本件会計事務所に説明して本件確定申告書の作成を早め、入院する前に本件確定申告書の内容を確認することに支障はなかったということができ、さらには、入院中において、請求人は「納税額」の確認ができないほどの病状下にはなかったもので、上記経理課長から電話があった際(同月10日ころ)、請求人が確認を要すると考えていた納税額を同人に尋ね、それを確認することは容易なことであったと認めるのが相当である。
したがって、請求人が本件確定申告書を法定申告期限までに提出できなかったことについて国税通則法第66条第1項ただし書きに規定する正当な理由があったとは認められない。
要旨
納税者が、第三者に申告手続を委任した場合、第三者が同委任に基づいて行った行為の効果は納税者に帰属するものであり、自己責任の原則からしても、第三者を利用することによって得られる利益とともに、それによる不利益も当然納税者が享受すべきであり、また、その第三者の行為の結果、不正な申告が行われた場合に申告納税制度の適正な確保を困難ならしめる可能性があることからすると、納税者から委任を受けて第三者が不正な申告を行った場合には、納税者本人がその不正な申告について具体的な認識を欠いていたとしても、納税者が行った行為と同一視し、その責任を負うと解するのが相当である。
請求人らは本件相続に係る相続財産の調査及び本件相続税の申告手続を共同相続人であるFに委任したと認められることから、同委任を受けたFの相続財産の隠ぺい行為に基づく過少申告の結果は請求人らに帰し、また、Fの当該隠ぺい行為は請求人らの行為と同一視され、本件申告に係る過少申告の責任は請求人らも負うべきであることから、請求人らに国税通則法第68条第1項の規定に基づき重加算税を賦課することは相当であると認められる。
6年前から居住の用に供していない土地建物の所在地に引き続き住民登録をしていたことを奇貨として、その住民票の写しを確定申告書に添付するなどにより居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用を受けようとしたことは、事実の隠ぺい又は仮装に該当するとした事例
裁決事例集 第40集 16頁
要旨
請求人は、本件建物にかつて居住していたとはいえ、6年前から譲渡の時まで、他人に貸し付けていたにもかかわらず、本件土地建物の所在地に引き続き住民登録をしていたことを奇貨として、その住民票の写しを確定申告書に添付し、また、本件建物の2階を請求人が占有使用していた旨を記載した借主の同意書を申告期限前に作成し、借主からその署名押印を拒絶されたにもかかわらず、その後の調査の際に、借主以外の者が署名押印したと認められる借主名の同意書を提出し、居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用を受けようとしたことは、事実の隠ぺい又は仮装の行為に該当すると認められるから、重加算税の賦課決定をしたことは相当である。
個別対応方式における用途区分の方法に誤りがあったとしてされた更正の請求について、確定申告において採用した用途区分の方法に合理性がある場合には、国税通則法第23条第1項第1号の適用はないとした事例
裁決事例集 第82集
要旨
請求人は、消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第2項第1号の規定(個別対応方式)の適用に当たり、医薬品の課税仕入れに係る消費税額の用途区分の方法について、課税資産の譲渡等と課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等に共通して要するものに区分すべきところ、課税仕入れの都度、課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等にのみ要するものに区分した上で、課税期間の末日の決算修正により、当該課税期間の医薬品に係る課税売上げの額に基づいて課税資産の譲渡等にのみ要するものと課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等にのみ要するものとに区分したために、納付すべき消費税及び地方消費税の額を過大に算定する誤りがあったのであり、国税通則法第23条《更正の請求》第1項第1号の規定の適用がある旨主張する。
しかしながら、個別対応方式が適用される場合に、用途区分の方法に誤りがあったとして同号の規定が適用される場合とは、申告当時に納税義務者が採用した用途区分の方法に合理性がなく、合理性のない用途区分の方法を採ることによって納付すべき消費税等の税額が過大となる場合をいい、他の合理的な用途区分の方法を採っていた場合と比較して単に納付すべき消費税等の税額が過大となる場合をいうものではないと解するのが相当であるところ、請求人が行っていた用途区分の方法は、医薬品の課税仕入れについて、その課税売上対応分を個別に把握可能な課税売上げに係る医薬品名及び数量又は金額を基準として、売上実績に基づいて区分する方法であり、合理性があると認められることから、国税に関する法律の解釈適用についての誤りがあった場合には該当せず、また、当審判所が請求人の納付すべき消費税等の税額を算出したところ、その計算過程に誤りがあった場合にも該当しない。したがって、国税通則法第23条第1項第1号の規定の適用はない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和62年11月10日第三小法廷判決(昭和60年(行ツ)第81号) 平成22年5月17日裁決(裁決事例集No.79)
土地の時効取得に係る一時所得の収入金額の発生時期について時効を援用した平成9年分としたことは、課税要件明確主義及び合法性の原則から逸脱したものとはいえないし、税法の不知、誤解等は、国税通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」に当たらないとした事例
裁決事例集 第61集 30頁
要旨
請求人は、修正申告の基因となった土地の真実の所有者は現在訴訟中で不確定であるから、当該土地の時効取得に係る一時所得は、租税法律主義からいえば課税要件明確主義及び合法性の原則から逸脱しているし、時効を援用した時が一時所得の収入金額の発生の時であるとの判断は税理士や弁護士等の法律の専門家でも知らないのであるから、一般市民には対処のしようもなく、このような場合にまで過少申告加算税を賦課することは不当若しくは酷であると主張する。
しかしながら、時効による権利の得喪の効果は時効を援用した時に確定的に生ずると解されており、請求人は本件土地に係る調停申立書において、時効取得を原因とする所有権移転登記を求める旨の主張をしているのであるから、本件土地の時効取得に係る一時所得の収入金額の発生時期を時効を援用した本件年分としたことは、課税要件明確主義及び合法性の原則から逸脱したものとはいえないし、税法の不知、誤解等は、国税通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」には該当しないことから、請求人の主張には理由がない。
徴収担当職員から、再三再四、預金通帳の提示を求められたにもかかわらず、請求人が預金通帳を一切提示しなかったことは、帳簿書類その他の物件の検査を拒んだものと認められるとして、納税の猶予の不許可事由に該当するとした事例(納税の猶予不許可処分、督促処分・棄却)
裁決事例集 第110集
要旨
請求人は、請求人がした納税の猶予の申請(本件猶予申請)につき、原処分庁が、国税通則法第46条の2《納税の猶予の申請手続等》第10項第2号に該当する事実があるとして不許可処分をしたのに対し、徴収担当職員から提示を求められた預金通帳については元関与税理士法人から返却されなかったため提示できなかったものであって、徴収担当職員の検査を拒んだり、妨げたり、忌避したりしてはいない旨主張する。
しかしながら、原処分庁は、本件猶予申請に係る事項を明らかにするため、預金口座の状況を調査する必要があったと認められるところ、請求人は、徴収担当職員から、再三再四、預金通帳の提示を求められたにもかかわらず、預金通帳を一切提示しなかったのであり、請求人は、徴収担当職員による帳簿書類その他の物件の検査を拒んだものと認められる。また、仮に、請求人が主張するように、元関与税理士法人が請求人の所有する預金通帳を返却していないとしても、請求人は、預金通帳を発行した金融機関に対して、預金通帳の再発行の手続や預金口座の異動履歴状況の分かるものの発行の手続をすれば、預金通帳その他預金口座の状況を証する書類を容易に取得できるのであるから、所有する預金通帳の提示を求められた請求人が、上記各手続をせずに、預金通帳その他預金口座の状況を証する書類の提示をしないことは、徴収担当職員の検査を拒んだものといわざるを得ない。
参照条文等
株式の売買代金が時価相当額より低額であるとして類似業種比準価額方式により評価し、売主に対して所得税更正処分等、買主に対して法人税更正処分等がそれぞれなされた場合において、売主側が提起した所得税更正処分等取消訴訟において当該処分等の取消判決が確定しても、買主側は国税通則法第23条第2項第1号に基づく更正の請求をすることはできないとした事例
裁決事例集 第66集 9頁
要旨
請求人は、株式の売主側が提起した所得税更正処分等取消訴訟において株式の評価方法が否定されて取消判決(以下「本件判決」という。)が確定したことから、本件判決が国税通則法第23条第2項第1号に規定する判決に該当するとして本件更正の請求をしたものであるが、同項に規定する判決とは、申告等に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実の得喪変更に関する訴訟に係る判決を意味するところ、本件判決は、株式の売主側が提起した所得税更正処分等取消訴訟についてなされた判決であり、本件判決によって、株式の買主である請求人に対する法人税更正処分等に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実そのものを左右するものではないから、同項の規定による更正の請求をすることはできない。
異議申立て時には存在していなかった処分が、異議決定までになされた場合には、その時点で異議申立ての対象とされた「処分」が存在するに至ったのであるから、それ以降、当該異議申立ては適法なものとなり、異議申立て固有の瑕疵は治癒されたものと解するのが相当であるとした事例(売却決定処分、公売公告・棄却、却下)
裁決事例集 第101集
要旨
原処分庁は、不動産等の売却決定処分(本件売却決定処分)に対する異議申立ては、異議申立ての時点で存在しない「処分」を対象とするものであって、明らかに不適法である旨主張するが、異議申立ての対象とされた本件売却決定処分が、異議申立てについての決定がされるまでになされた場合には、その時点で異議申立ての対象とされた「処分」が存在するに至ったのであるから、それ以降、当該異議申立ては適法なものとなり、異議申立て固有の瑕疵は治癒されたものと解するのが相当である。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和30年9月2日第二小法廷判決(民集9巻10号1197頁)
納税者が納税申告を第三者に委任した場合において、当該納税者は当該第三者に対する選任、監督上の注意義務を尽くしていないとして、重加算税の賦課決定処分を認容した事例
裁決事例集 第70集 20頁
要旨
請求人は、源泉徴収票を交付して、第三者に申告手続の代行を委任したものの、当該第三者が作成した確定申告書、収支内訳書及び報酬・料金等の支払調書は、請求人の了解を得ず、不正な還付請求申告をするために作成されたものであるので、請求人の意思に基づかず、当該確定申告書は無効であり、当該第三者がした隠ぺい・仮装行為の効果は請求人には及ばないので、重加算税の賦課決定処分は取り消されるべきである旨主張する。
しかしながら、納税者自らの判断と責任で自主的に申告納税する申告納税制度の下において、納税者の判断とその責任において、申告手続の代行を第三者に一任し、その者が納税者に代わって申告した場合には、その申告は、そのまま申告名義人である納税者が行った申告として取り扱うべきものと解されるところ、請求人は、友人を介して、申告手続の代行を当該第三者に一任しているので、請求人が申告内容を承知しているか否かにかかわらず、当該確定申告は、申告名義人である請求人の行った申告として取り扱うべきであって、その効果は請求人に及ぶ。
また、納税者が納税申告を第三者に委任した場合において、当該第三者がした隠ぺい・仮装行為に基づく申告について、納税者がどこまで責任を負うべきかについては、納税者と当該第三者との関係、当該行為に対する納税者の認識及びその可能性、納税者の黙認の有無、納税者が払った注意の程度等に照らして、個別的、具体的に判断されるべきものであり、納税者が当該第三者に対する選任、監督上の注意義務を尽くすことにより、当該第三者の隠ぺい・仮装行為を防止することできた場合には、当該第三者の不正行為を納税者の行為と同一視し得るものとして、その防止を怠った当該納税者に対し、重加算税を賦課することができると解すべきであるところ、請求人は、当該第三者に対する選任、監督上の注意義務を尽くさなかったと認められることから、当該第三者による隠ぺい・仮装行為は、請求人の行為と同一視し得るものとして、請求人に対し重加算税を賦課することができる。
したがって、請求人の主張にはいずれも理由がない。
被相続人の共同相続人の1人に対する「相続させる旨」の遺言には、同人に、請求人に対し5,000万円の代償金の支払債務を負担させる旨の記載があり、請求人は、当該遺言によって代償金の支払請求権を相続により取得したものと認められるから、期限後申告書に記載された課税価格のうち当該部分については、期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があるとは認められないとした事例
裁決事例集 第75集 78頁
要旨
和解調書には、他の共同相続人の一人が請求人に対して遺留分の価額弁償金として本件金員を支払う旨及び請求人が本件金員を受領する一方、その他の請求を放棄する旨記載されており、一見、遺言に基づく代償金の請求を放棄するとも読み取れるものの、請求人及び他の共同相続人の一人の供述にもあるように、請求人が本件和解前に本件代償金の支払請求を放棄した事実も本件訴訟において本件代償金の存在が否定された事実もない状況において、本件代償金を超える本件金員が支払われるということからは、本件金員の一部をもって本件代償金の支払がなされたと認めるのが相当であって、本件金員は、本件相続の開始により本件遺言書に基づき請求人が取得した代償財産(本件代償金)5,000万円に加え、本件和解の成立により遺留分に対する価額弁償金として1,500万円を取得したものであり、結果として本件和解により本件相続税における請求人の取得財産が5,000万円から6,500万円に増加したものであると解するのが相当である。
そうすると、請求人は、本件被相続人の死亡と同時に相続により本件代償金を取得したことにより、本件法定申告期限までに期限内申告書を提出しなければならない者に該当するから、本件和解の成立により新たに相続税法第27条第1項に規定する申告書を提出すべき要件に該当することとなった者には当たらず、本件期限後申告書は、同法第30条第1項の規定による期限後申告書には該当しないとともに、本件代償金は遺留分減殺請求に基づく価額弁償金の確定に伴い取得したものではなく、請求人が本件相続により取得したものであり、本件法定申告期限までに申告すべきものであるから、本件期限後申告書に記載された課税価格のうち5,000万円の部分については、国税通則法第66条第1項ただし書に規定する「期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があると認められる場合」に該当して申告されたものとは認められない。
請求人が木材の輸入取引において仕入に計上した取引額の一部に、本事業年度以外の事業年度の損金の額に算入すべきものがあるが、当該金額については、架空、金額の水増し又は重複計上などによって過大に計上したものとは認められず、損金算入時期の誤りによるものと認められるから、重加算税の賦課要件たる事実を隠ぺい仮装したことには当たらないとした事例
裁決事例集 第59集 47頁
要旨
原処分庁は、請求人の木材輸入取引について[1]請求人の輸入先会社に対する送金は、木材の輸入時期、数量、金額のいずれとも密接に関係しておらず、その実質は「貸付金」と認められるが、請求人はこの貸付金を公表帳簿に計上していない。[2]請求人は輸入先会社から、「貸付金」の一部を「調整金」の名目で返金させこれを簿外預金に預け入れているが、これを公表帳簿に計上していない。これらの取引はいずれも請求人の公表帳簿に計上することなく行われた取引であり、請求人は、これにより真実の所得金額を隠ぺいしたことが認められる旨主張する。
しかしながら、本件輸入取引については、[1]輸入先会社に対する送金は、いずれは請求人の公表帳簿に「仕入」として計上されるものであり仕入代金の前渡金と見るのが相当であること[2]本件事業年度の仕入計上額は過大となっている事実は認められるが、これは、架空、水増し又は重複計上などによって過大となったものとは認められず、かつ、意図的な計上時期の操作及び原始記録の改ざん等の不正が行われているとは認められないこと[3]請求人が輸入先会社から、「調整金」の名目で返金させこれを簿外預金に預け入れている事実は認められるが、この簿外預金なるものも結果において、その資金の出所たる借入金の返済に当てられており、また、当該預金の果実たる受取利息も本件事業年度の収益に計上済であること、などから、請求人が所得金額の計算の基礎となるべき事実を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺい又は仮装したところに基づいて申告書を提出したとは認め難い。
要旨
認定事実を総合すれば、請求人は、自己の有価証券の継続的取引により多額の所得を得、しかもその所得があることを十分認識しており、かつ、申告の必要があることを十分認識していながら、それが課税の対象となることを回避するため、殊更それを除外して過少な所得金額を記載した内容虚偽の確定申告書を提出して本件雑所得のすべてを故意に秘匿したということができる。
そうすると、請求人は、税額計算の基礎となるべき事実を隠ぺいしその隠ぺいしたところに基づいて納税申告書を提出したというべきである。
国税通則法第65条第4項にいう「正当な理由があると認められるものがある場合」には、過少に税額を申告したことが納税者の税法の不知又は誤解であるとか、納税者の単なる主観的な事情に基づくような場合までを含むものではないとした事例
裁決事例集 第64集 65頁
要旨
請求人は、原処分庁は本件確定申告書提出時点において、既に生命保険等の支払に関する調書の提出を受けていたのであるから、請求人に対して法定申告期限までに本件確定申告書の内容に誤りがある旨指摘し、それを是正するよう指導すべきであったのに、法定申告期限後相当期間を経過してから本件修正申告書の提出しょうようをしたもので、原処分庁の事務処理が遅かったことが原因であるから、国税通則法第65条第4項の「正当な理由がある場合」に該当する旨主張する。
しかしながら、申告納税制度のもとにおける所得税の確定申告は、納税者自身の判断と責任においてなされるべきであるから、請求人自身の判断と責任において作成され提出された本件確定申告書の内容に誤りがあったことは、請求人自身の責任であるというべきである。
また、請求人の場合、本件解約保険金等を平成10年分の一時所得の総収入金額に算入せず確定申告したことが真にやむを得ない理由によるとはいえず、過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になるともいえないから、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
要旨
原処分庁は、請求人が提示した書類等だけでは、社会保険労務士報酬(本件金員)が事業所得の総収入金額と給与所得の収入金額とに二重計上されていること、及び請求人の事業所得の金額がいくらであるかを認定することができないから、更正の請求は認められない旨主張する。
しかしながら、当審判所の調査の結果によれば、本件金員が事業所得の総収入金額と給与所得の収入金額とに二重計上されていること、及び本件金員が事業所得に係る収入金額であることが認められ、当審判所において請求人の総所得金額及び還付金の額に相当する税額を算定すると、総所得金額は更正の請求の額と同額となり、還付金の額に相当する税額は更正の請求の額を上回るから、本件通知処分はその全部を取り消すべきである。
参照条文等
要旨
原処分庁は、請求人が、A社から入金した工事代金を、過入金と判断して本件事業年度の売上げに計上しなかったことについて、[1]本件事業年度末までに適正に処理されていれば、当該過入金は当然発生しないこと及び[2]翌事業年度に当該過入金を売上げに計上した際に、小口に区分処理しただけでなくその対応する原価として他の工事原価を計上したことは、通則法第68条第1項の隠ぺい、仮装に当たるとした。
しかしながら、請求人は、本件過入金を本件事業年度においてA社からの売掛金の入金として経理しており、また、翌事業年度には売上げに計上していることから、利益が繰り延べられていることをもって通則法第68条第1項の隠ぺい、仮装に当たるとまでは認められない。また、請求人が、工事原価を付け替えた処理については、当該処理が本件事業年度に係るものでなく、この点については理由がない。
以上により、重加算税の賦課決定処分は、過少申告加算税相当額を超える部分の金額について取り消すのが相当である。
ポイント
本事例は、差押財産が自己に帰属するものではないとの請求人の主張は、「自己の法律上の利益に関係のない違法」(行政事件訴訟法第10条第1項)を主張するものであるから、差押処分の取消しを求めることはできないとしたものである。
要旨
審査請求は、違法又は不当な処分によって侵害された不服申立人の権利利益の救済を図るものであることから、自己の法律上の利益に関係のない違法を審査請求の理由とすることはできないと解するのが相当である。請求人は、差し押さえられた財産は自己に帰属する財産ではないから差押処分(本件差押処分)は違法である旨主張するが、仮にそのような事実があったとしても、本件差押処分によって不利益を受けるのはその財産の真正な帰属者であって、請求人は本件差押処分によって何らの影響も受けないのであるから、結局、請求人がかかる事実を違法であると指摘することは自己の法律上の利益に関係のない違法を主張するものにほかならない。したがって、差押財産が自己に帰属するものではないことを理由として本件差押処分の取消しを求めることはできない。
参照条文等
行政事件訴訟法第10条第1項
要旨
請求人は、本件申告書を法定申告期限までに提出しなかったのは、①消費税等に係る申告義務等については知らなかった、②原処分庁へ赴き、担当職員から本件開業届出書などを提出するよう指導を受け、それぞれ提出したが、その際、請求人の本件課税期間に係る消費税等の申告に関する説明は全くなかった、③原処分庁が事前に消費税等の申告書用紙を送付すべきであったのにこれを行わなかったことによるものであり、これらのことはいずれも国税通則法第66条第1項ただし書にいう「正当な理由があると認められる場合」に該当する旨主張する。
しかしながら、国税通則法第66条第1項ただし書にいう「正当な理由があると認められる場合」とは、災害、交通・通信の途絶など、期限内に申告ができなかったことについて、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、無申告加算税の趣旨に照らしても、なお、納税者に無申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当であるところ、①納税者が税法を知らなかったことや誤解していたことに基づく場合など納税者自らの責任によるものはもちろんのこと、②原処分庁の担当職員が請求人に対し消費税等の説明をしなかったこと、③申告書用紙の送付がなかったことをもって、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情がある場合に当たるとすることはできない。したがって、請求人が本件申告書を法定申告期限までに提出しなかったことについて、国税通則法第66条第1項ただし書にいう「正当な理由があると認められる場合」に該当するとは認められない。
参照条文等
社会福祉法人の理事が県等から不正受給した補助金の一部を当該法人からの賞与とした所得税の申告について、当該不正受給に係る刑事事件の判決の確定を理由として更正の請求をすることはできないとした事例
裁決事例集 第66集 19頁
要旨
A会の理事であった請求人は、請求人を被告とする刑事事件の判決が、請求人がA会の施設建設工事費を水増し請求し、県等から補助金を不正に受給した疑いについての審理を訴因とするものであり、原処分庁が当該補助金の一部を請求人が受領したことについて、賞与と認定したことと繋がるものであるから、当然に国税通則法第23条第2項第1号に規定する判決に該当するので、更正の請求を認めるべきである旨主張する。
また、請求人が補助金を不正に受給したことは、刑事事件の判決により公序良俗に反するもので無効であるとされ、それにより、請求人は、私的に受領した補助金の返還をA会から請求されているのであるから、正に請求人に行った本件不正受給等の経済的成果がその行為の無効であることに基因して失われたものであり、このことは、取り消すことのできる行為が取り消されたものでもあるから、所得税法施行令第274条第1号及び第2号に規定する事由が生じ、所得税法第152条に規定する更正の請求の特例に該当するので、更正の請求を認めるべきであると主張する。
しかしながら、国税通則法第23条第2項第1号にいう判決とは、申告等に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実についての私法行為又は行政行為上の紛争を解決することを目的とする民事事件の判決を意味し、犯罪事実の存否範囲を確定するに過ぎない刑事事件の判決はこれに含まれないと解するのが相当であるところ、本件判決は請求人を被告人とする刑事事件の判決であるから、同号に規定する判決には該当しないことは明らかである。
また、本件判決は、請求人の不正受給についての犯罪事実の存否範囲を判断したに過ぎず、認定賞与として課税した処分の計算の基礎となった事実である請求人の本件金員の受領について、民事上無効な行為であるか又は取り消すことができる行為であるかを判断したものではない。また、請求人は、A会から本件金員の返還を請求されているが、当審判所の調査の結果によっても、請求人が本件金員を返還した事実は認められないことから、請求人の本件金員の受領による経済的成果は未だ失われていないというべきである。しかも、同様に、請求人の本件金員の受領が取り消された事実も認められない。
したがって、所得税法施行令第274条第1号及び第2号に規定する事由が生じたとは認められないので、この点に関する請求人の主張には理由がない。
要旨
請求人は、請求人が業務及び管理を委託したD社の取締役であるEが行った車両売却による横領行為をその事実を了知していない請求人の行為と同視することはできない旨主張する。
しかしながら、Eは、請求人の代表取締役であるXと遠縁に当たり、D社の株主の中においては、Xに準ずる株式数を有し、D社の取締役として新車購入の見積りや車両売却処理などを含め車両に関する業務に従事していたことからすると、D社と密接な関係にあり、業務の運営上、D社において重要な地位・権限を有し、重要な役割を果たしていたものと認められる。
また、請求人は、その業務の大部分をD社に委託し、それにより経済活動を行っていたと認められるところ、Xは、売却される車両の車種や売却額などの内容を把握せずにEに処理を任せていた。
また、当該車両売却処理のほかには原始資料なしに起票するような経理処理は一切行われていない中で、D社の経理担当者らの間で同経理処理について疑問や注意が提起され、話題に上がっていたのであるから、D社の代表取締役であり請求人の代表取締役でもあるXにおいて、直接、Eや売却の相手方に具体的な売却額を聞き、確認を取れば容易に横領行為が発覚するものであり、請求人においてEが隠ぺい仮装行為を行ったことを容易に認識することができ、申告期限までにその是正や過少申告防止の措置を講ずることができたにもかかわらず、かかる横領行為を防止するための措置を講じた事実も認められない。
以上の各事実に照らし合わせると、Eによる隠ぺい行為は、D社の行為と同視できることはもちろん、業務の大部分をD社が行うことで経済活動を行っていた請求人の行為とも同視できるものと認めるのが相当である。
参照条文等
アドバイザリー業務に係る契約書の契約締結日が真実と異なる記載であったとしても、契約締結日は課税仕入れの時期の判定要素となるものではないから、役務提供の真実の完了を仮装したことにはならないとした事例
裁決事例集 第67集 103頁
要旨
原処分庁は、本件アドバイザリー業務の役務提供完了日が本件契約書の契約締結日である平成14年11月25日であるにもかかわらず、請求人は、契約締結日を同年10月1日にバックデートして本件契約書に記載し、その本件契約書に基づいて本件アドバイザリー報酬の額に係る消費税額を本件課税期間(平成13年11月9日から平成14年10月31日)の控除対象仕入税額に含めていることから、このことは仮装行為に当たる旨主張する。
課税仕入れを行った日がいつであるかは、原則として引渡基準によるのが相当であると認められ、本件アドバイザリー業務は役務の提供を行うことを目的とするものであるから、本件アドバイザリー業務に係る課税仕入れの時期については、役務の全部を完了した日であると解することが相当である。そして、本件課税期間においては、役務提供の全部が完了していないことについて、請求人及び原処分庁は争わず、当審判所においても相当であると認められ、本件アドバイザリー報酬の額に係る消費税額は本件課税期間の課税仕入れに該当しないことは明らかであるところ、本件契約書の契約締結日が真実の契約締結日と異なっていたとしても、本件契約書の契約締結日は課税仕入れの時期の判定要素となるものではないから、請求人が真実の契約締結日を本件契約書に記載しなかったことをもって、役務提供の真実の完了日を仮装したものと認めることはできない。
したがって、本件修正申告書により増加した所得に相当する部分ついては、重加算税の賦課要件を満たさないことは明らかであり、本件重加算税の賦課決定処分については、過少申告加算税を超える部分の金額につき取り消すのが相当である。
一人の扶養親族につき、重複して扶養控除を受けている事実を知ることができなかったとしても、それは請求人の単なる主観的な事情であるから、国税通則法第66条第1項の正当な理由があると認められる場合に当たらないとした事例
裁決事例集 第87集
要旨
給与所得者である請求人は、同じく給与所得者である請求人の元妻と重複して、同人らの長女について扶養控除を受けていたことから、この重複を解消するための確定申告書を提出したところ、無申告加算税の賦課決定処分がなされたことについて、請求人の元妻と別居して完全に連絡が途絶えており、元妻と重複して扶養控除を受けていることを知ることができなかったのであるから、国税通則法第66条《無申告加算税》第1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人が元妻と別居して完全に連絡が途絶え、元妻と重複して扶養控除を受けていることを知ることができなかったとしても、それは、請求人の単なる主観的な事情に基づくものであり、請求人が長女を扶養控除の対象としない旨の確定申告書を提出するのであれば、その法定申告期限までに提出しなければならないのであって、真に請求人の責めに帰することのできない客観的な事情があるとはいえず、無申告加算税の趣旨に照らしても、なお、請求人に無申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合とはいえないから、「正当な理由があると認められる場合」に該当しない。
参照条文等
ポイント
この事例は、①使用人の詐取行為に係る損害賠償請求権は損失発生と同時に益金算入されるが(法法22)、②同人の隠ぺい、仮装行為は請求人の行為と同視できず、国税通則法第68条の適用はないとし、他方、③同人の行為は同法第70条第5項に規定する偽りその他不正の行為に該当することから同項が適用されるとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人の使用人が行った詐取行為における隠ぺい、仮装行為については、①当該使用人は勤務する工場の所属課において仕入先から発行される納品伝票の事務処理を事実上一任され、その事務処理をチェックする者が他におらず、当該使用人の指示に基づき仕入先から発行された虚偽の納品伝票の処理が請求人の会計処理として反映される状況にあったこと、②当該工場において、仕入先に対して購入した品名と異なる品名を記載した納品伝票を発行させるなど不適切な経理処理が慣行的に行われており、当該使用人による事務処理を請求人自身による処理としてみなさざるを得ない状況にあったものといえることから、当該使用人の隠ぺい、仮装行為は請求人の隠ぺい、仮装行為と同視することができる旨主張する。
しかしながら、①当該使用人は、当該工場の所属課に配属されて以後、退社するまで同課において職制上の重要な地位に従事したことがなかったこと及び請求人の経理帳簿の作成等に携わる職務に従事したこともなかったこと等から単に資材の調達業務を分担する一使用人であったと認められること、②当該詐取行為は、当該使用人の私的費用を請求人から詐取するために同人が独断で取引先に依頼して行ったものであることを総合考慮すると、請求人が取引内容の管理を怠り、請求人から隠ぺい仮装するための当該使用人の仮装行為を発見できなかったことをもって、仮装行為を請求人自身の行為と同視することは相当ではない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和62年5月8日第二小法廷判決(集民151号35頁) 東京高裁平成21年2月18日判決(訟月56巻5号1644頁)
要旨
請求人らは、国税通則法第23条第2項第1号にいう「判決」をもって、いわゆる「主文」を指すものと限定的に解釈すべき必然性はなく、理由中において本件土地譲渡が無効であることを確認した本件判決も同号にいう判決に該当する旨主張する。
しかしながら、同号にいう判決とは、当事者間に権利関係の争いがあり、その後、判決により申告等があった当時の権利関係と異なる事実関係が生じた場合の判決をいうと解するのが相当である。
これを本件についてみると、土地譲渡の有効性については、既に当事者間で和解の成立により解決が図られており、また、本件判決の理由中において、土地譲渡の無効が確認されたとしても、そのことは、土地譲渡の当事者間の法律関係に何ら影響を及ぼし得ない以上、本件判決が同号にいう「判決」に当たるということはできない。
換価代金等の配当処分の取消しを求める審査請求は、換価代金等の交付期日が経過し、換価代金等の交付が終了した後においても不服申立ての利益が認められるとした事例(配当処分・棄却)
裁決事例集 第113集
ポイント
本事例は、税務署長は、配当処分の取消しにより、再度適法な配当処分をすべき地位に置かれることになることから、換価代金等の配当処分の取消しを求める審査請求は、換価代金等の交付期日が経過し、換価代金等の交付が終了した後においても不服申立ての利益が認められるとしたものである。
要旨
原処分庁は、配当処分(本件配当処分)は、換価代金等の交付期日に配当が実施され、その効力が消滅していること、処分の効力が消滅した後において、処分の取消しによって得られる実益がないことから、本審査請求は不服申立ての利益を欠く不適法なものである旨主張する。
しかしながら、換価代金等の交付期日が経過し、換価代金等の交付が終了すると、配当処分はその目的を完了して処分の効力が消滅したと解されるが、その場合であっても、配当処分の取消しにより、税務署長は、再度適法な配当処分をすべき地位に置かれることになると解されるから、処分の名宛人は、配当金額の交付を受け得るべき地位を回復することとなり、処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有するということができる。したがって、請求人は、換価代金等が交付された後においても、本件配当処分の取消しを求めるにつき不服申立ての利益を有するから、本審査請求は適法なものである。
参照条文等
要旨
請求人は、本件譲渡物件は契約書に記載された金額で中間譲受人に譲渡した旨主張するが、[1]中間譲受人のうちの一人は、脳出血の後遺症で自宅療養を続けており、不動産取引に従事できる状況にはなかったこと及び言語障害があり、また、度々、喘息の発作を起こして、死亡する直前の1年間は特に激しく、そのため同人の妻が常時介護していたが、その間、不動産取引を行った事実は認められないこと、並びに[2]他の中間譲受人は、譲渡人である被相続人から連帯保証債務の免除を条件に、中間譲受人となることを依頼され、不正取引に加担していることを申述していること等からすると、中間譲受人を介在させて、取引の事実を仮装し、その譲渡所得金額を隠ぺいしたものである。
要旨
請求人は、本件賦課決定処分は、本件確定申告書の提出から1年も経った後に一方的になされたものであるから不当である旨主張する。
しかしながら、過少申告加算税は、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由がある場合を除き、単に過少申告であるという客観的事実のみによって課されるものであるところ、請求人は、過少申告をしたものであり、また、請求人の主張する事情は、本件修正申告書の提出により納付すべき税額の計算の基礎となった事実とは何ら関係がないから、これが同項に規定する正当な理由に該当しないことは明らかであり、さらに、請求人の場合、他に同項に規定する正当な理由があるとは認められない。
したがって、本件賦課決定処分を不当ということはできず、この点に関する請求人の主張には理由がない。
給与を返還した場合には源泉徴収の規定により正当に徴収された又はされるべき所得税等の額も減少するとした事例( 平成28年分の所得税及び復興特別所得税の更正の請求に対する理由なし通知処分、 平成29年分の所得税及び復興特別所得税の更正の請求に対する理由なし通知処分・ 一部取消し、 棄却)
裁決事例集 第131集
ポイント
本事例は、給与の返還に伴って源泉徴収の規定により正当に徴収された又はされるべき所得税等の額が減少した場合には、その減少後の正当に徴収された又はされるべき所得税等の額を超える金額を算出所得税額から控除し、又は還付を受けることはできないとしたものである。
要旨
請求人は、役員給与につき源泉徴収された所得税等(本件各源泉所得税)について、当該役員給与を一部返還したことにより過大となったにもかかわらず、源泉徴収義務者が源泉徴収税額の精算をしない場合には、源泉徴収義務者が請求人に役員給与を支払う際に徴収した源泉所得税を国は収納し利益を得ているのであるから、所得税法(平成31年法律第6号による改正前のもの)第120条《確定所得申告》第1項第5号の「源泉徴収された又はされるべき所得税の額」は、実際に源泉徴収された所得税等の額と解するのが相当であり、請求人は、本件の各更正の請求により本件各源泉所得税の額の還付を受けることができる旨主張する。
しかしながら、同号にいう「源泉徴収をされた又はされるべき所得税の額」とは、所得税法の源泉徴収の規定に基づき正当に徴収をされた又はされるべき所得税等の額を意味するものであり、役員給与が減額された以上、源泉徴収の規定により正当に徴収された又はされるべき所得税等の額も減少するのであるから、請求人が主張する事情があったとしても、請求人は、本件の各更正の請求において、本件各源泉所得税の額のうち、「正当に徴収された又はされるべき所得税等の額」を超える金額を算出所得税額から控除し、又は還付を受けることはできない。
なお、原処分庁は、請求人の源泉徴収による所得税等の額は原処分庁ではなく源泉徴収義務者が再計算すべきものであり、また、請求人は源泉徴収義務者が発行した訂正後の源泉徴収票又はこれに代わる書類を提出していないから、源泉徴収義務者によって再計算された請求人の給与所得に係る源泉徴収された所得税等の額や所得控除の額を確認することができない旨主張する。
しかしながら、所得税法第120条第1項第5号の「正当に徴収された又はされるべき所得税等の額」の意味を踏まえると、請求人が本件の各更正の請求に関して提出した資料から正当に徴収されるべき所得税等の額が計算できる場合には、その計算をした所得税等の額を基に確定申告書に記載された納付すべき税額が過大となっているか否かを判断することが相当である。
参照条文等
国税通則法第23条第1項 所得税法第120条第1項第5号(平成31年法律第6号による改正前のもの)
参考判決・裁決
最高裁平成4年2月18日第三小法廷判決(民集46巻2号77頁) 東京高裁昭和55年10月27日判決(訟月27巻1号211頁) 平成24年12月20日裁決(裁決事例集No.89)
公売処分の取消請求において、国税徴収法上、土地の差押手続は土地の地番ごとに行うより他なく、差押処分の効力も当該地番の土地にしか及ばないから、公売不動産の隣接地所有者である請求人は、当該隣接地の所有権を主張する者にとどまり、差押えに係る財産について所有権を主張していないこととなり、したがって、請求人適格は認められないとした事例
裁決事例集 第121集
ポイント
本事例は、公売不動産の隣接地所有者が公売不動産の一部について所有権を有していると主張する審査請求において、請求人は、「差押えに係る財産について所有権を主張する者」には該当せず、したがって、請求人適格はないと判断したものである。
要旨
請求人は、公売不動産の隣接地の実質所有者は請求人であり、当該隣接地の一部が公売不動産に含まれているため、請求人の権利が侵害されていると主張する。
しかしながら、国税通則法第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第1項は、国税に関する法律に基づく処分に不服がある者は、不服申立てをすることができる旨規定しており、この者とは、その処分によって直接自己の権利又は法律上の利益を侵害された者であることを要すると解される。また、国税徴収法第89条《換価する財産の範囲等》第1項の規定では、公売処分は、差し押さえた財産について行うものであるところ、差押処分の効力は、嘱託登記により差押登記が付された地番以外の土地に及ぶと解することはできず、当該地番の土地にしか発生しないことから、公売処分もまた、公法上の一筆の土地を対象として行われることとなる。そうすると、差押処分で特定された地番の土地に、請求人が所有する公売不動産の隣接地の地番の土地が含まれることは法律上あり得ないことから、請求人は、公売処分によって直接自己の権利又は法律上の利益が侵害された者とは認められず、国税に関する法律に基づく処分に不服がある者に該当しない。
参照条文等
国税通則法第75条第1項 国税徴収法第68条第3項、第89条第1項 不動産登記法第16条第1項、第34条第1項第2号
国外居住親族に係る書類の添付等がなく扶養控除の適用がないとして更正の請求ができる場合に該当しないとした事例(平成29年分の所得税及び復興特別所得税の更正をすべき理由がない旨の通知処分・棄却)
裁決事例集 第137集
ポイント
本事例は、請求人が国外居住親族に係る送金関係書類を更正の請求書に添付等しておらず、当該親族に係る扶養控除の適用がないため、更正の請求ができる場合に該当しないとしたものである。
要旨
請求人は、国外に居住する請求人の母、叔母及び姉(本件各親族)が高齢や病気により銀行に行くことができないこと、また、一人一人に送金することによる銀行送金手数料を節約することができることから、請求人の兄らにまとめて送金をしていたにすぎず、当該送金が、本件各親族を含む国外に居住する親族全員の生活費及び医療費に充てることを目的とするものであることは明らかであり、本件各親族に係る扶養控除の適用が認められるべきであるから、国税通則法第23条《更正の請求》第1項第3号に規定する更正の請求ができる場合に該当する旨主張する。
しかしながら、国外に居住する親族に係る扶養控除の適用を受けるためには、所得税法施行令(令和2年政令第111号による改正前のもの)第262条《確定申告書に関する書類等の提出又は提示》第3項第2号に規定する書類(送金関係書類)を添付等しなければならないところ、請求人が提出した送金明細は、当該兄らを送金の受取人とするものであり本件各親族に係る送金関係書類とは認められず、請求人は本件各親族に係る送金関係書類を更正の請求書に添付等していないから、本件各親族に係る扶養控除の適用はない。したがって、国税通則法第23条第1項第3号に規定する更正の請求ができる場合に該当しない。
参照条文等
要旨
請求人らは、本件各執行不能調書をもって、国税通則法第23条第2項第1号に規定する「申告等に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決」に該当する旨主張するが、本件各執行不能調書は、民事執行規則第13条第1項第7号及び執行官規則第17条に基づくもので、民事訴訟に係る判決ではなく、当該調書について判決と同一の効力を有する旨の規定がなく、また、本件各執行不能調書に記載されている内容は、本件債務者等に対する強制執行の結果であり、申告等に係る課税標準等の基礎となる事実、すなわち、本件相続開始日における現況には変更がないのであるから、国税通則法第23条第2項第1号の判決又は判決と同一の効力を有する和解その他の行為には該当しないものと認められる。
居住の用に供していない譲渡物件の所在地に住民登録をしていた者が、納税相談時に担当職員に虚偽の申立てをする等し、申告書を作成させ提出したことは、隠ぺい又は仮装の行為に該当するとした事例
裁決事例集 第45集 24頁
要旨
請求人は、購入直後の約1年間を除いて譲渡した本件家屋を居住の用に供していなかったにもかかわらず本件家屋の所在地に住民登録をしていたが、納税相談時に相談担当職員に対して、本件家屋の利用状況について、全所有期間を通じてその4分の3相当部分を居住の用に供していた旨の虚偽の申立てをして関係書類に虚偽の事実を記載させ、かつ、これを基礎として計算した申告書を作成させた上でこれを提出しており、このような請求人の行為は、隠ぺい又は仮装の行為に該当する。
当初から所得を過少に申告するとの意図を外部からうかがい得るような特段の行為をしたとまでいうことはできないとして重加算税の賦課要件を満たさないとした事例
裁決事例集 第76集 42頁
要旨
原処分庁は、FX取引に係る所得の申告義務等については、FX取引先の顧客に対する周知状況からみて、請求人は認識し得る状況にあったこと、FX取引に係る雑所得の金額が、請求人の各年分の給与所得の金額の約14倍から16倍と請求人にとって多額の金額となること、及び請求人は平成18年分の給与所得者に係る年末調整に際し、住宅借入金等特別控除申告書の「年間所得の見積額」欄を空欄のまま勤務先に提出していることなどの一連の行為をもって、請求人が、本件FX取引に係る真実の所得金額を隠ぺいすることを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行為をし、その意図に基づいた過少申告をしたとし、これらの行為を総合勘案すれば、重加算税の課税要件を充足している旨主張する。
しかしながら、請求人はFX取引に係る所得の申告義務について、FX取引先からの利用マニュアル及びホームページ上において知ることが可能であったこと、また、請求人のパソコンでFX取引事績を確認すれば売買損益を知ることができたことから、FX取引に係る所得の申告義務及び多額の所得があったことについては認識していたのではないかという疑いも存するものの、FX取引に係る税務上の取扱いについて、請求人が税理士等の専門家に相談したといった事実は認められず、また、当審判所の調査等により把握した本件事実関係の下においては、当初申告当時、請求人は、FX取引に係る所得について、株式の売買等の場合と同様に、源泉分離課税であると誤解していた可能性も否定できず、請求人が当初から所得を過少に申告する意図を明らかに有していたことまでは認められない。
また、請求人が、年末調整に際し、住宅借入金等特別控除申告書の「年間所得の見積額」欄を空欄のまま勤務先に提出した行為についても、仮に請求人がFX取引に係る所得が源泉分離課税であると誤解していたとすれば、同欄を空欄にして提出する可能性もあり得るのであり、そのような事実をもって、当初から所得を過少に申告するとの意図を外部からうかがい得るような特段の行為をしたとまでいうことはできない。
そのほか、請求人には、原始資料等をあえて散逸したり、虚偽の答弁、虚偽資料を提出するなど調査に非協力であったという事実もないことからすれば、原処分庁が主張する事実をもって、直ちに、請求人が当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行為をした上で、その意図に基づいて過少申告をしたものということはできない。
さらに、当審判所の調査その他本件に関する資料をもってしても、請求人に真実の所得を隠ぺい又は仮装したものと評価すべき行為や事実の存在があったものと認めることはできず、他にこれと異なる認定をするに足る証拠もない。
したがって、請求人が、国税通則法第68条第1項に規定する「国税の課税標準等又は税額の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出」した場合には該当しないというべきである。
被相続人の妻が被相続人の財産内容を開示しなかった等の事情は、相続人間の主観的事情にすぎないから、期限内申告書の提出がなかったことについて、国税通則法第66条第1項ただし書の「正当な理由」があるとは認められないと認定した事例(平成20年3月相続開始に係る相続税の無申告加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第97集
要旨
請求人は、亡弟(本件被相続人)の相続(本件相続)に係る亡父の相続税の納付義務を承継しているところ、①亡父は、本件被相続人の相続財産の全てを管理していた本件被相続人の妻に対して、相続税法第3条《相続又は遺贈により取得したものとみなす場合》第1項各号に規定する財産(みなし相続財産)を含む相続財産の全容を把握するための明細の提示を依頼したが応じてもらえず、また、②本件被相続人の妻が申し立てた遺産分割調停に係る遺産目録等にはみなし相続財産が記載されていなかったが、記載された財産等に基づいて本件相続に係る相続税の課税価格を計算すると課税価格は基礎控除額を下回ることとなったことから、亡父が相続税の期限内申告書を提出しなかったことについて、国税通則法第66条《無申告加算税》第1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人が主張する上記①の事情は、相続人相互の人間関係に基因する事情であり、また、上記②の事情は、相続人相互の人間関係によりみなし相続財産の確認ができなかったが、亡父がみなし相続財産を課税価格に加えないことを自己判断して課税価格を計算した結果、課税価格が基礎控除額以下になったというものであるから、相続人相互の人間関係を前提とした亡父の自己判断に係る事情といえる。そうすると、請求人が主張する事情は、亡父を含む相続人間の主観的事情にすぎず、亡父が相続税の期限内申告書を提出しなかったことについて、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があったということはできないから、国税通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当しない。
参照条文等
参考判決・裁決
大阪高裁平成5年11月19日判決(裁Web)
請求人の従業員が、架空の請求書を作成して請求人に交付した一連の行為は、請求人による行為と同視できないとした事例( 平成27年4月1日から平成28年3月31日まで及び平成28年4月1日から平成29年3月31日までの各事業年度の法人税に係る重加算税の各賦課決定処分、 平成27年4月1日から平成28年3月31日までの課税事業年度の地方法人税に係る重加算税の賦課決定処分、 平成28年4月1日から平成29年3月31日までの課税事業年度の地方法人税に係る重加算税の賦課決定処分、 平成27年4月1日から平成28年3月31日まで及び平成28年4月1日から平成29年3月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分・ 全部取消し、 一部取消し)
裁決事例集 第117集
ポイント
本事例は、従業員による行為は仮装行為に該当し、請求人による当該従業員への管理・監督が十分ではなかったものと認定したものの、当該従業員の地位・権限や行為態様等からは請求人の行為と同視できないと認定したものである。
要旨
原処分庁は、請求人の従業員(本件従業員)が行った金員の詐取を目的とした仮装行為(本件仮装行為)について、法人の従業員の業務に関連する行為は、当該法人の活動領域内の行為として自己の行為の一部分とみることができるから、従業員の行為が納税者である法人の行為と同視できないといえるような特段の事情がない限り、請求人に国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実がある旨主張する。
しかしながら、①本件従業員は、請求人の経営に参画することや、経理業務に関与することのない一使用人であったと認められ、②本件仮装行為は、請求人の業務の一環として行われたものではなく、本件従業員が私的費用に充てるための金員を請求人から詐取するために独断で行ったものであると認められる。一方、③請求人においては、一定の管理体制が整えられていたものの、本件仮装行為のような詐取行為を防止するという点では、管理・監督が十分であったとは認められない。もっとも、職制上の重要な地位に従事せず、限られた権限のみを有する一使用人が、独断で請求人の金員を詐取したという事件の事情に鑑みれば、本件従業員に対する請求人の管理・監督が十分ではなく、本件仮装行為を発覚できなかったことをもって、本件仮装行為を請求人の行為と同視することは相当ではない。したがって、以上の点を総合考慮すれば、本件従業員による本件仮装行為を納税者たる請求人の行為と同視することはできないと判断するのが相当であり、同項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があるとは認められない。
参照条文等
譲渡所得の金額の計算を誤ったのは、譲渡した土地は亡父が生前に事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例を適用して取得した買換資産であることを知らなかったためであること、また、老後の生活のため売却したものであること等の事情を課税処分において考慮すべきであるとの請求人の主張には理由がないとした事例
裁決事例集 第64集 78頁
要旨
請求人は、譲渡した土地が亡父から相続した土地であったため、本件土地が買換資産であり、本件土地の譲渡時に別件土地の取得価額を引継価格として譲渡所得の金額が計算されることを知らなかったこと、及び家族の老後の面倒をみるという経済上の事情があることを考慮し、情状酌量により原処分の全部を取り消すべきであると主張する。
しかしながら、租税法律主義の下、現行の租税法には課税処分において情状酌量をすべきとの規定はないことから請求人の主張には理由がない。
また、本件更正処分は、請求人が確定申告書の提出に当たり、譲渡所得の金額の計算上、取得費に誤りがあったことに基因し、かつ、当該誤りを是正するために行われたもので、当初適正であった申告につきその後の事情の変更により過少申告となったことによるものではないことは明らかであるから、国税通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」がある場合には該当せず、賦課決定処分は適法である。
所得を過少に申告するという確定的な意図について、請求人には外部からもうかがい得る特段の行動があったとは認められないから、隠ぺい又は仮装があるとはいえず重加算税を賦課することは相当でないとした事例
裁決事例集 第82集
要旨
原処分庁は、請求人が本来行うべき仮受金勘定から売上勘定への振替処理を行っていなかったことについて、①税理士から仮受金勘定の増加原因の解明を求められながらこれを行わなかったこと、②現金出納帳に虚偽の記載をしたり、同税理士にあえて説明しなかったこと及び③同税理士に特定の帳簿を提出しなかったことなどからすると、この行為は隠ぺい若しくは仮装に当たる又は所得を過少に申告する確定的な意図を外部からうかがい得る特段の行動であるなどとして、請求人の経理処理が隠ぺい又は仮装に当たる旨主張する。
しかしながら、③同税理士に特定の帳簿を提出しなかったとしても、そのことを容易に知り得るだけの資料を提出していたこと、②請求人が取引内容の具体的説明を同税理士にしなかったからといって、それが故意の隠ぺい又は仮装の行為であるなどとはいえないこと、①仮受金勘定の増加原因の解明について同税理士と請求人との間に認識の相違や意思疎通の欠如があったとしても、請求人が積極的な意思をもってあえて適正な経理処理を行うことなくこれを放置したとまで認めるに至らなかったこと等からすれば、請求人に故意の隠ぺい又は仮装の行為や過少申告の確定的意図を外部からうかがい得る特段の行動があったとまではいうことはできない。したがって、重加算税を賦課することは相当ではない。
参照条文等
更正の請求ができる場合に当たらず、租税特別措置法第41条第10項に規定する省エネ住宅特別控除を適用することはできないとした事例(令和5年分の所得税及び復興特別所得税の更正をすべき理由がない旨の通知処分・棄却)
裁決事例集 第140集
ポイント
本事例は、請求人が租税特別措置法第41条第1項に規定する住宅借入金等特別控除を適用した確定申告書について、国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことには該当しないから、更正の請求ができる場合に当たらず、同条第10項に規定する省エネ住宅特別控除を適用できないとしたものである。
要旨
請求人は、租税特別措置法(令和6年法律第8号による改正前のもの)第41条《住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除》第1項に規定する住宅借入金等特別控除(一般の住宅借入金等特別控除)を適用した確定申告(本件確定申告)をしたものの、請求人が取得した家屋は同条第10項に規定するエネルギー消費性能向上住宅に該当するから、国税通則法第23条《更正の請求》に規定する更正の請求により、一般の住宅借入金等特別控除ではなく租税特別措置法第41条第10項に規定する住宅借入金等特別控除(省エネ住宅特別控除)を適用することができる旨主張する。
しかしながら、一般の住宅借入金等特別控除及び省エネ住宅特別控除の各要件をいずれも充足する場合には、そのいずれを適用するかを選択して確定申告をすることができるところ、本件確定申告の内容は、一般の住宅借入金等特別控除の適用要件を満たすものであり、その計算にも誤りがないことからすると、本件確定申告は、客観的にみれば税法の規定に従ったものであるから、国税通則法第23条の要件に該当せず、省エネ住宅特別控除を適用することはできない。
参照条文等
国税通則法第23条第1項 租税特別措置法(令和6年法律第8号による改正前のもの)第41条第1項、第10項
参考判決・裁決
東京高裁平成23年7月29日判決(税資261号順号11724)
要旨
請求人は、原処分庁が、本件返品は課税仕入れとして計上が認められるとの相談担当者の回答を無視して更正を行ったもので、信義誠実の原則に反するものであるから重加算税の賦課決定は違法である旨主張する。
請求人は、架空の取引である本件返品が課税仕入れに該当しないことを十分知りながら、架空の取引に係る対価の額30,000,000円を課税仕入れに係る支払対価の額に加算したところで、課税仕入れに係る消費税額を過大に計上して本件課税期間の消費税の確定申告書を提出し、過大に消費税の還付を受けたものと認められる。
相談担当者は、請求人に対して、消費税の適用が開始される以前に販売した商品が返品された場合には、控除できない旨回答しており、請求人が主張するような事実も認められないから、国税通則法第68条第1項の規定に基づいてされた重加算税の賦課決定処分は適法である。
要旨
請求人らは、相続回復請求権は実質的にみて被相続人の遺産であるから、請求人らが本件和解の成立時に現に取得した相続回復請求権の範囲内で課税すべきであって、本件和解の結果、回復できなかった相続回復請求権に相当する額について、相続税の課税標準等に異動が生じたといえるから、更正の請求を認めるべき旨主張する。
しかしながら、相続回復請求権の趣旨、請求人らの相続回復請求の訴えの内容からすれば、当該訴えは、相続人であった者(以下「僣称相続人」という。)が占有・管理している被相続人の遺産全部を請求人らに返還するよう求めたもので、遺産の帰属が争われているものではないこと、請求人らと僣称相続人との間の本件和解は、僣称相続人の資力等にかんがみ、相続回復請求権に基づいた和解金を超える請求権を和解期日以降放棄する旨のものであり、請求人らが相続開始時点に取得した相続財産を増減させるものでなく、単に相続回復請求権の一部を和解期日以降放棄したに過ぎない。そうすると、本件和解は、新たな権利関係等を創設する趣旨で行われたものと解するほかないから、これにより、請求人らが原処分庁に提出した相続税の申告書に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実関係にさかのぼって異動を来すものではないと認めるのが相当である。したがって、本件和解は、国税通則法第23条第2項第1号に規定する「和解」には該当しないというべきである。
相続税の法定申告期限までに判明した相続財産のみでも、遺産に係る基礎控除を超える場合には、その把握した相続財産に係る期限内申告書を提出しなかった場合、国税通則法第66条《無申告加算税》第1項ただし書に規定する「正当な理由」はないとした事例(平成27年9月相続開始に係る相続税の無申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第107集
ポイント
本事例は、相続税の法定申告期限までに判明した相続財産だけで遺産に係る基礎控除を超える場合、相続税の期限内申告書を提出しなければならないと解するのが相当であり、全ての相続財産を反映した相続税の申告書を作成できなかったとしても、「正当な理由」には該当しないと判断したものである。
要旨
請求人らは、期限内申告書を提出しなかったのは、法定申告期限において、被相続人が受け取るべき損害賠償金の額が確定しておらず、全ての相続財産を反映した相続税の申告書を作成することができなかったためであるから、国税通則法第66条《無申告加算税》第1項ただし書に規定する「正当な理由」がある旨主張する。
しかしながら、納税者が相続財産の全容を把握するため、種々の調査をし、情報入手の努力をした結果、法定申告期限までに相続財産の一部しか判明しなかったとしても、その判明した部分だけで遺産に係る基礎控除額を超える場合には、納税者は、判明した相続財産につき期限内申告書を提出しなければならず、納税者が、法定申告期限までに把握した相続財産の価額が遺産に係る基礎控除額を超えることによって相続税の申告書の提出を要すると認識し、又は認識し得た場合において、その把握した相続財産に係る期限内申告書を提出しなかった場合には、同項ただし書に規定する「正当な理由」があるとは認められないと解するのが相当であるところ、請求人らは、法定申告期限までに、相続税の申告について相談した税理士から相続税の申告が必要である旨の説明を受けるとともに、相続した土地の価額のみで基礎控除額を超えることを認識していたのであるから、相続税の申告が必要であることを認識していたものと認められる。したがって、請求人らが期限内申告書を提出しなかったことについて、同項ただし書に規定する「正当な理由」があるとは認められない。
参照条文等
参考判決・裁決
大阪高裁平成5年11月19日判決(税資199号834頁)
社会福祉法人に土地を贈与し、国税庁長官に租税特別措置法第40条の規定に基づく承認申請をした場合において、これに対する不承認通知が所得税の法定申告期限までになかったことが国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由に該当しないと判断した事例
裁決事例集 第65集 26頁
要旨
請求人は、法定申告期限内に適正な確定申告ができなかったのは、本件承認申請に対する国税庁長官からの不承認通知が法定申告期限までになかったからであり、また、通知が法定申告期限までにない場合は、原処分庁が請求人に対し、譲渡所得の申告が必要であることの指導をすべきであるが、その指導もなかったのであるから、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があると認められるものがある場合に該当する旨主張する。
しかしながら、法人に対する資産の贈与は、所得税法第59条の規定により譲渡所得の課税対象であることが認められ、譲渡所得の申告が必要なことは明らかである。そして、請求人が租税特別措置法第40条の規定に基づく承認申請書を国税庁長官に提出したからといって、譲渡所得が非課税となるものではなく、国税庁長官の承認を受けたものについて非課税となるにもかかわらず、請求人は、譲渡所得の申告をしなかったことが認められる。請求人が法定申告期限までに譲渡所得の申告を行わなかったのは、不承認の通知があるまで譲渡所得の申告は必要がないとの請求人の誤った税法解釈に基づくものであり、また、当初の申告に誤りがあったとしても、それは納税者自身の責任においてされたものであり、これについて原処分庁が請求人に申告内容を正すという指導をしなかったからといって、請求人の納税義務に影響を及ぼすものではなく、正当な理由には該当しない。
請求人の主張は、審査請求の理由として取消しを求めることができないものであるから、この点に関する請求人の主張には理由がなく、差押処分は国税徴収法所定の要件を充足しており適法であるとした事例(債権の差押処分・棄却)
裁決事例集 第138集
ポイント
本事例は、被差押債権が第三者に帰属するという請求人主張の事実が存在したとしても、本件差押処分によって不利益を受けるのは当該第三者であり請求人ではないとして、違法事由の主張制限をしたものである。
要旨
請求人は、原処分庁による債権(本件債権)の差押処分時には、本件債権が第三者に帰属しているから、当該差押処分(本件差押処分)は無効である旨主張する。
しかしながら、審査請求が違法又は不当な処分によって侵害された不服申立人の権利利益の救済を図るものであることからすれば、不服申立人は、自己の権利又は法律上の利益に関係のない違法を審査請求の理由として取消しを求めることができないと解するのが相当である。これを本件についてみると、仮に本件債権が第三者に帰属するという請求人の主張する事実が存在したとしても、本件差押処分によって不利益を受けるのは当該第三者であって請求人ではなく、請求人がかかる事実を違法事由として主張することは、自己の法律上の利益に関係のない違法を審査請求の理由とするものであるから、請求人の主張は審査請求の理由として取消しを求めることができないものである。
参照条文等
行政事件訴訟法第10条第1項
参考判決・裁決
平成30年6月19日裁決(裁決事例集No.111) 平成19年11月28日裁決(裁決事例集No.74) 平成18年10月16日裁決(裁決事例集No.72)
ポイント
本事例は、代表取締役以外の取締役による行為を、当該取締役の業務内容、地位・権限等から請求人の仮装行為と認定した事例である。
要旨
請求人は、国税通則法第68条《重加算税》第1項は、隠蔽又は仮装の主体を納税者と規定していることから、専務取締役(本件専務)が外注先業者に対して架空の請求書を発行するよう依頼した行為(本件仮装)を請求人の行為と同視できないのであるから、同項の規定は適用できない旨主張する。
しかしながら、法人が納税義務者である場合、代表者自身が隠蔽又は仮装した場合に限らず、法人内部において相応の地位と権限を有する者が、その権限に基づき、法人の業務として行った隠蔽又は仮装であって、全体として納税者たる法人の行為と評価できるものについては、納税者自身による行為と同視されると解するのが相当である。本件専務は、常務取締役又は専務取締役として対外的な営業業務を行っていたこと、請求人の他の営業担当者に対して営業方法を指導する立場にあったこと、請求人の営業利益の大部分を占める業績があり、代表者に次ぐ報酬を得ていたことから、大きな影響力を有する地位にあったと認められ、また、代表者は取引先との取引の詳細な内容まで把握しておらず、本件専務は、代表者から取引先との交渉を一任されていたことからすると、本件専務は、取引先の選定及び取引内容を確定する権限があったと認められる。そうすると、本件仮装は、上記のような地位及び権限に基づき、請求人の業務として行われた行為であると認められ、請求人において本件仮装を防止するための措置を講じたとも認められず、全体として請求人の行為と評価できる。したがって、本件仮装は納税者である請求人による行為と同視でき、請求人が事実を仮装したものと認められる。
参照条文等
参考判決・裁決
広島高裁平成26年1月29日判決(税資264号順号12401)
e-Taxにより確定申告データを法定申告期限内に送信しておらず期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由はないとした事例(令和4年分の所得税及び復興特別所得税に係る無申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第137集
ポイント
本事例は、請求人がe-Taxにより確定申告データを法定申告期限内に送信しておらず期限内申告書を提出しなかったことについて、国税通則法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由があると認められる場合に該当しないとしたものである。
要旨
請求人は、国税電子申告・納税システム(e-Tax)により確定申告書及び財産債務調書等(本件調書)のデータを送信するつもりであったが、結果として本件調書のデータしか送信できておらず、このような誤操作が生じてしまうe-Taxにはシステム上の問題があるといわざるを得ないこと、上記送信後に完了画面が表示されたことにより、請求人が確定申告書のデータも正常に送信できたと認識したことはやむを得ないことから、期限内申告書の提出がなかったことについて、国税通則法(令和4年法律第4号による改正前のもの)第66条《無申告加算税》第1項ただし書に規定する正当な理由があると認められる場合に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人の期限内申告書の提出がなかったのは、請求人がe-Taxの操作を誤って本件調書のデータの送信しか行っていなかったにもかかわらず、本件調書のデータの即時通知を見て、確定申告書のデータも送信されたと誤って認識したという請求人自身の主観的な事情によるものにほかならない。したがって、期限内申告書の提出がなかったことについて、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があったとはいえず、無申告加算税の趣旨に照らしても、なお、納税者に無申告加算税を課することが不当又は酷になる場合に当たるとはいえないから正当な理由があると認められる場合には該当しない。
参照条文等
ゴルフ会員権を買戻し条件付で譲渡(取得価格の10分の1で譲渡するとするもの)したこととし、譲渡費用を加えた損失金額につき、給与所得と損益通算して所得税の還付申告をしたことは、国税通則法第68条第1項の隠ぺい、仮装に当たるとした事例
裁決事例集 第51集 1頁
要旨
請求人は、ゴルフ会員権(本件会員権)の売却により譲渡損失を生じさせれば損益通算ができることを承知の上で、本件会員権の売却、買戻しを行い、本件会員権の売買により、実質的な損失は生じていないことを十分承知しているにもかかわらず、計算書の作成をもって損失が生じたとして申告しているのであり、このことは、損益通算を行うための目的で本件会員権の譲渡取引があったかのような仮装をしたことに基づき申告したことにほかならないものである。そうすると、国税通則法第68条(重加算税)第1項に規定する「課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき」に該当するものというべきである。
会社員である請求人が、勤務の傍ら個人的に行った取引に係る事業所得の申告を怠ったことに関して、当初から当該事業所得を申告しないとの意図を外部からもうかがい得る特段の行動は認められないとした事例
裁決事例集 第82集
要旨
会社員である請求人が、勤務の傍ら個人的に行った取引に係る事業所得があるとして、所得税の期限後申告書を提出したところ、原処分庁は、請求人が当初から当該事業所得を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づき法定申告期限までに申告しなかったものであり、国税通則法第68条《重加算税》第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たす旨主張する。
しかしながら、原処分庁が上記「特段の行動」に当たるとした、①請求人は、勤務先等に当該取引が露見しないようにするため、取引先の従業員に対して、リベートと称する金員を支払ったこと、②請求人は、勤務する営業所の売上げを記載した「請求書明細」を週1回本社に報告する際に、当該取引を記載せずに報告したことについては、請求人が当該取引を秘匿することを意図して行ったものとはいえず、ほかに請求人が当該取引及びこれに係る事業所得を隠ぺい又は仮装したと評価すべき事実は認められないことから、原処分については、無申告加算税相当額を超える部分の金額を取り消すのが相当である。
参照条文等
国税通則法第68条第2項 《参考判例・裁決》 最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
原処分庁が行う配当処分による配当権者には該当しないとしても、当該配当処分に係る差押債権は自らに帰属する旨主張する第三者は、当該債権に係る換価代金等の交付が終了した後においても、審査請求を行うことができるとした事例(配当処分・全部取消し)
裁決事例集 第140集
ポイント
本事例は、換価された財産が滞納者に帰属していたことを前提にして配当処分がされているところ、同処分の対象となった財産が仮に第三者に帰属していた場合、当該配当処分は違法であり、第三者の基本的権利である財産権を直接的に侵害していることとなるから、処分の名宛人ではない第三者であっても国税通則法第75条第1項に規定する「不服がある者」に当たり、換価代金等の交付が終了した後においても不服申立ての利益が認められるとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人には、配当処分(本件配当処分)における配当権者となる事実が存在していないため、取消しを求める法律上の利益を有しておらず、審査請求は不適法である旨主張する。
しかしながら、滞納法人が有するとして原処分庁が差し押さえた支払請求権(本件債権)が仮に請求人に帰属していたとすると、請求人は、本件配当処分により自己の財産権を侵害され又は必然的に侵害されるおそれがある者に当たる。またその場合、帰属を誤った差押えによって原処分庁に生じた利得を保持すること自体が請求人の権利を侵害している状態を継続することにほかならず、原処分庁は当該利得を請求人に交付する必要があるほか、請求人は国に対する不当利得返還請求の前提として、本件配当処分の公定力を排除する必要があると解すべきである。したがって、請求人は、本件配当処分の効力が消滅した場合であっても、本件配当処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有するから、本件配当処分について、国税通則法第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第1項に規定する「不服がある者」に当たると認められ、審査請求は適法である。そして、本件債権は、請求人と第三債務者との間で成立したと認められる売買契約に基づいて発生したと認められるから、本件配当処分は、滞納者に帰属しない財産を換価した代金等を配当したものである。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和53年3月14日第三小法廷判決(民集32巻2号211頁) 最高裁令和2年6月26日第二小法廷判決(民集74巻4号759頁) 平成30年10月29日裁決(裁決事例集№113)
要旨
国税通則法第23条第2項第1号の規定は、納税者において、申告時には予測し得なかった事態が後発的に生じたため、課税標準等又は税額等の計算の基礎に変更をきたし、税額の減額をすべき場合に、法定申告期限から1年を経過していることを理由に更正の請求を認めないとすると、帰責事由のない納税者に酷な結果となることから、例外的に更正の請求を認めて納税者の保護を拡充しようとしたものと解される。上記規定の趣旨及び国税通則法第23条第2項各号の列挙事由の内容にかんがみれば、同項第1号の「判決」に基づいた更正の請求が認められるためには、判決を得るための訴訟が申告等に係る課税標準等又は税額等の基礎となった事実の存否、効力等を直接審判の対象とし、判決により課税標準等の基礎となった事実と異なることが確定されるとともに、納税者が申告時において、課税標準等の基礎となった事実と異なることを知らなかったことが必要であると解される。
これを本件についてみると、請求人は、被相続人が死亡するまで、V社の経営に全く関与しておらず、本件売買契約にも全く関与していなかったものと認められる。他に請求人が申告時までに本件土地の売買の目的や経緯、ないしは本件売買契約が仮装であること等を知っていたと認めるに足りる証拠はない。そうすると、請求人は申告時において本件売買代金債権が存在しなかったことを知っていたとは認められない。
申告相談担当職員による誤った指導等はなく、国税通則法第65条第4項に規定する「正当な理由があると認められるものがある場合」には該当しないと判断した事例
裁決事例集 第67集 17頁
要旨
「正当な理由があると認められるものがある場合」とは、例えば、確定申告の申告相談等において、納税者から十分な資料の提供等があったにもかかわらず、税務職員が納税者に対して誤った指導を行い、納税者がその指導に従ったことにより過少申告になった場合で、かつ、納税者がその指導を信じたことについてやむを得ないと認められる事情がある場合のように、過少に税額を申告したことが納税者の責めに帰することができない客観的な障害に基因する場合など、その申告が真にやむを得ない理由によるものであり、納税者に過少申告加算税を課すことが、不当又は酷になる場合を意味するものであって、その過少申告が納税者の不知又は誤解であるとか、納税者の主観的な事情に基づくような場合までを含むものではない。
請求人の従業員が工事業者と通謀して虚偽の工事完了日を記載した工事完了報告書等を作成した行為は、事実の仮装に該当するところ、当該従業員の行為は、請求人の行為と同視でき、重加算税の賦課要件を満たすとした事例(令和2年4月1日から令和3年3月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第134集
ポイント
本事例は、請求人の従業員がした仮装行為について、同従業員の地位・権限は一使用人として限定されたものであったが、同行為は、請求人から付与された権限の範囲内において行われたものであり、請求人が不正の事実を把握して是正措置を講ずることは可能であったと認められ、また、請求人における管理・監督体制が十分であったとは認められないことからすれば、請求人の行為と同視できるとしたものである。
要旨
請求人は、請求人の従業員(本件従業員)が工事業者と通謀して虚偽の工事完了日を記載した工事完了報告書等を作成した行為(本件行為)は、事実の仮装に該当するが、①本件従業員は、請求人の一使用人として限定的な地位・権限を有していたにすぎないこと、②本件行為は、本件従業員の独断的な不正行為であったこと、③請求人は、本件従業員に対して一定の管理・監督を行っていたことなどから、本件行為を請求人の行為と同視することはできない旨主張する。
しかしながら、本件従業員の地位・権限は一使用人として限定されたもので、また、本件従業員による本件行為は、本件従業員が自身の業務負荷の増大を避けるための独断的な行為ではあるものの、本件行為は、請求人から付与された権限の範囲内において行われたものであり、請求人が不正の事実を把握して是正措置を講ずることは可能であったと認められ、また、請求人における管理・監督体制が十分であったとは認められない。以上の点を総合考慮すれば、本件行為を納税者たる請求人の行為と同視することができると判断するのが相当である。
参照条文等
参考判決・裁決
公共事業施行者が誤って発行した公共事業用資産の買取り等の証明書等に基づいて、租税特別措置法第33条の4第1項の規定による特例を適用して確定申告したことが、国税通則法第65条第4項に規定する「正当な理由があると認められるものがある場合」には該当しないと判断した事例
裁決事例集 第67集 25頁
要旨
収用に伴う移転補償金が、収用交換等の場合の譲渡所得等の特別控除の特例の適用の対象となるのは、租税特別措置法第33条第1項又は同条第3項に該当する場合である。
そうすると、収用に伴う移転補償金が本件特例の適用の対象となるか否かは、公共事業施行者との契約、移転補償の対象となった資産の所在地及び資産の取壊し等の事実によって検討すべきであるところ、請求人は、公共事業施行者が誤って発行した公共事業用資産の買取り等の証明書等をもって、本件特例に該当するものとして確定申告を行ったが、これは、法の誤解あるいは判断の誤りであると認められること、また、その他請求人には、正当な理由がある場合に該当すると認めるに足りる証拠はないことから、国税通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」がある場合に該当しないと認めるのが相当である。
居住の用に供していない土地建物の所在地に住民票を移し、その住民票を添付して相続税法第21条の6の特例の適用を受けようとしたことが、事実の隠ぺい又は仮装に該当するとした事例
裁決事例集 第51集 12頁
要旨
請求人は、請求人の夫から夫所有の土地建物の持分(本件資産)の贈与を受け、この贈与に係る贈与税について相続税法第21条の6(贈与税の配偶者控除)の特例を適用して贈与税の期限後申告をしているところ、請求人は本件資産を居住の用に供していないにもかかわらず、申告書に贈与の特例を適用する旨記載し、これに実際の住所とは異なる内容が記載された住民票を添付したものであるから、国税通則法第68条(重加算税)第2項に規定する課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装し、その隠ぺいし又は仮装したところに基づき納税申告書を提出したときに該当する。
相続により取得した財産に係る相続開始前における所有権の取得時効の完成、所有権の取得という事実が判決により後発的に確定した場合、当該判決は、国税通則法第23条第2項第1号にいう判決に当たり、当該事情を財産の価額に与える影響要因として考慮した場合には、その財産の価額は零円とみるのが相当とした事例
裁決事例集 第74集 1頁
要旨
請求人らは、本件相続に係る相続税の申告に当たり、本件相続開始日において、本件土地は相手方に対して使用貸借により貸し付けているという事実、換言すると、相手方による取得時効の完成が認められないという事実を基礎とし、そのため本件土地を自用地としての価額で評価して申告したが、その後の本件判決によって、本件相続開始日前には既に所有権の取得時効の期間が満了し、本件土地の取得時効は完成していたという事実が確定したものであり、このことは、申告の基礎とした事実と本件判決で確定した事実とに相違があるといえる。
また、本件判決で確定した事実は、本件相続開始日において、本件土地には、時効の援用以外の取得時効の要件が満たされており、請求人らの意思いかんにかかわらず、相手方の時効の援用があれば一方的に所有権を時効取得される状態にあったということであり、これは、本件土地の価額に影響を及ぼすべき事情として、相続税の課税標準、ひいては税額の計算に影響を与えるものといえる。
そして、その財産の評価に当たっては、その財産の価額に影響を及ぼすべきすべての事情を考慮するものであり、本件土地については、相続開始時において既に時効期間が経過しており、相続人にとっては、所有権を確保すべき攻撃防御方法がないために、相手方に時効を援用されれば所有権の喪失を甘受せざるを得ない状態の土地であることが本件判決の確定によって明らかとなったところ、このような状態の土地は、相続人が所有権を確保しようとすれば、時効を援用する相手方に対し、課税時期現在における当該土地の客観的交換価値に相当する金員の提供を要するのが一般的である土地ということができるから、そのことを価額に影響を与える要因として考慮すると、土地の価額と提供を要する金額が同額であるから、結局のところ、その財産の価額は零円になると理解するのが相当と認められる。
ポイント
この事例は、相続税の申告に当たり、相続財産の一部である被相続人名義の株式について、請求人がその存在を認識しながら申告に至らなかった事情について個別に検討したところ、請求人が当初から相続財産を過少に申告することを意図した上、その意図を外部からうかがい得る特段の行動をしたとまでは認められないとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人が、当初申告において計上していなかった被相続人名義の株式(本件株式)を相続財産であると認識していたにもかかわらず、関与税理士に対しその存在を秘匿し、過少な申告額を記載した本件相続税の申告書を作成させ、これを原処分庁に提出したものであるから、当初から相続財産を過少に申告することを意図した上、その意図を外部からうかがい得る特段の行動をしたもので、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する隠ぺい又は仮装の行為に当たる旨主張する。
しかしながら、確かに、請求人は、法定申告期限前に本件株式の存在を相続財産として認識していたと推認できるものの、原処分庁の主張する①請求人が関与税理士から証券会社の残高証明書を入手するように指示されたにもかかわらず、それに従わなかったこと、②請求人が関与税理士から申告書案記載の財産について個々に説明を受けていたにもかかわらず、本件株式の記載漏れを指摘しなかったこと、③本件相続税の調査の際、請求人が虚偽答弁を行ったことについては、それぞれ、①請求人が、本件相続税の申告に当たって、関与税理士が本件株式を把握するために必要な資料を既に所持しており、改めて提出する必要がないと考えた可能性を否定しえないこと、②請求人は、関与税理士から申告書案記載の財産について個々に説明を受けていたとは認められず、また、申告書案に本件株式が相続財産として当然記載されていると誤認したまま、記載内容を十分に確認せず、その誤りに気付かなかったという可能性を否定しえないこと、③請求人が虚偽答弁を行ったと認めるに足りる証拠がないことから、これらのことをもって、請求人が当初から相続財産を過少に申告することを意図した上、その意図を外部からうかがい得る特段の行動をしたとまでは認められない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
相続財産の総額を確定できなかったことが無申告加算税の正当な理由に当たらないとした事例(令和3年2月4日相続開始に係る相続税の無申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第138集
ポイント
本事例は、相続税において通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」とは、通常の納税者を基準として、課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額を超えない又は超える可能性が極めて小さいことを客観的に裏付けるに足りる事実を認識して期限内申告書を提出しなかった事実が認められる場合をいうとしたものである。
要旨
請求人は、贈与者である被相続人(本件被相続人)から金員(本件金員)の死因贈与を受けただけであり、本件被相続人の法定相続人ではないことから、相続財産の総額を知ることはできず、本件被相続人の相続人ら(本件相続人ら)から相続財産の総額の回答を拒否されており、相当の努力を払って調査しても遺産に係る基礎控除額を超える額の相続財産を把握することができなかったのであるから、請求人が法定申告期限までに本件被相続人に係る相続税の申告書(本件申告書)を提出しなかったことに、国税通則法(令和4年法律第4号による改正前のもの)第66条《無申告加算税》第1項ただし書に規定する正当な理由がある旨主張する。
しかしながら、請求人は、本件被相続人の職業などを踏まえると、本件被相続人には請求人が管理している本件被相続人の預金口座以外にも預貯金や不動産などの財産があったと認識できたと推認される。また、請求人が、上記推認を妨げる、本件相続人らがそれぞれ取得する財産が、本件金員よりも少ない可能性があると認識していたと認めるべき特段の事情は認められず、請求人は、本件被相続人の相続財産に係る課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額を超えると認識できたと認められる。そうすると、通常の納税者を基準として、請求人において、本件被相続人の相続財産に係る課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額を超えない又は超える可能性が極めて小さいことを客観的に裏付けるに足りる事実を認識して期限内申告書を提出しなかったとは認められず、請求人が法定申告期限までに本件申告書を提出しなかったことにつき、国税通則法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由があるとはいえない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成11年6月10日第一小法廷判決(判タ1010号233頁) 最高裁平成18年4月20日第一小法廷判決(民集60巻4号1611頁) 大阪高裁平成5年11月19日判決(税資199号順号334) 広島地裁平成2年2月28日判決(税資175号順号943) 神戸地裁平成26年1月28日判決(税資264号順号12398) 東京地裁平成31年2月1日判決(判タ1474号210頁) 平成29年6月15日裁決(裁決事例集№107) 平成26年11月7日裁決(裁決事例集№97)
各年分の収入金額は、請求書控え及び預金通帳で十分把握し認識することができたにもかかわらず、毎月の収入金額をすべて600,000円に圧縮し、その金額を上回る部分を除外したところで、過少な課税標準額を記載した内容虚偽の申告書を作成して提出した行為は、事実の隠ぺいに該当するとした事例
裁決事例集 第54集 83頁
要旨
- 請求人は、みなし法人課税を選択し、平成4年分までその適用を受けていたものである。
みなし法人課税の制度は、所得が連年一定であれば、事業主報酬の金額を調整することにより、節税が可能であるものの、所得の変動が多い場合には、税額の負担割合は通常より高くなる可能性を含んでいる。
したがって、この制度を選択するに当たっては、自己の事業を的確に予測する能力と通常以上の適正な記帳が必要となり、申告に当たっては高度な計算手続が要求される。
ところが、請求人は、収入金額を定額の月600,000円としか記帳しないのみならず、4年間にわたって総収入金額を7,200,000円と記載した確定申告書及び所得税青色申告決算書を提出していたことが認められる。このことは、確かに請求人が主張するように二重帳簿ではないけれども、実際の総収入金額を計上した場合には、請求人の負担が高くなることを認識していたと認められる。
しかも、計上した収入金額と実際の収入金額との差額の総収入金額に占める割合は、平成4年分22.2パーセント、平成7年分では34.2パーセントに達する。
以上のことから、7,200,000円を超えた金額は、請求人の主張するような単なる計上ミスというより、売上除外とみるのが相当であり、請求人が4年間の長きにわたって行った経理処理は、過少の申告が発生することを認識して行っていたものと認められ、事実の隠ぺいに該当する。 - 収入金額の3割程度の給与所得控除相当額を収入金額から控除して記帳するものと誤解していたとの請求人の主張は、4年間の総収入金額が7,200,000円と一定であることからすると不自然であり、また、税務調査の際に、税務職員の質問調査を受忍して帳簿書類等を提示するのは、法に定められたことであるから、請求書控えや預金通帳を提示したことをもって仮装、隠ぺいがないとはいえない。
- 重加算税の賦課決定処分をするに当たり、その理由を納税者に説明しなければならない旨定めた法令の規定はなく、説明するか否かは調査権限を有する税務職員の合理的な判断に委ねられていると解するのが相当であるから、請求人の主張する違法はない。
なお、本件調査は、所得税法234条の規定に基づく質問検査権の行使であり、行政手続法の適用除外に該当する。
相続財産の一部は被相続人の遺産ではないこと及び被相続人と他の相続人との死因贈与契約は有効であるとした判決は、国税通則法第23条第2項第1号に規定する「判決」に該当するとした事例
裁決事例集 第75集 1頁
要旨
原処分庁は、請求人は本件被相続人の遺産として本件被相続人名義の土地及び本件被相続人名義の預金のうち59,055千円(本件被相続人名義の土地と併せて「本件H名義資産」という。)を申告しており、相続人Kの被相続人に係る相続税の申告内容からも、本件H名義資産が被相続人の遺産であることについては、共同相続人の間で争いがなかったものと認められる旨主張するが、請求人は、本件訴訟において本件H名義資産は亡き実父Gの遺産であると主張し、Kは、本件H名義資産はすべて本件被相続人の遺産であると主張しており、両者がこのような主張を行うのは、請求人にとっては本件H名義資産が本件被相続人の遺産であると認められると、死因贈与契約公正証書が有効であるとの前提にたてば当該資産はすべてKに死因贈与され、請求人の相続分がなくなることとなり、また、Kにとっては、本件H名義資産が実父Gの遺産であると認められると、当該遺産は実父Gの共同相続人間で分割することになるため、Kが一人で本件H名義資産を取得することができないこととなるからである。そうすると、本件H名義資産の帰属について争いがあったと認めるのが相当であり、本件判決は、馴れ合いによる判決ではないことが明らかであるので、その実質において、客観的、合理的根拠を欠くような判決ではないことが認められる。
原処分庁は、本件H名義資産の購入資金が実父Gから出えんされていることを請求人は知っていたものと認められることなどから、国税通則法第23条第1項の規定による更正の請求が可能であり、同条第2項による更正の請求をすることはできない旨主張するが、請求人は、本件H名義資産には亡き実父Gの遺産が含まれている可能性があると考える余地はあったものの、請求人が具体的にその確証を有していたとは認められず、本件H名義資産をその名義のとおり本件被相続人の遺産として申告したとしても何ら不自然なものではないとするのが相当であり、請求人の申告時には予測し得なかった事由が後発的に生じたと認めるのが相当である。
原処分庁は、本件訴訟については、本件H名義資産の購入資金及び原資の出えん者がだれであるかを争ったものであり、本件判決はこれが示されたものであるから、本件H名義資産の権利関係の帰属を明確にするものではない旨主張するが、本件判決により、本件H名義資産は実父の遺産であることが確認され、さらに本件被相続人の遺産としての預金債権の帰属についても併せて判示されているのであるから、本件判決は、本件被相続人の遺産の範囲を確認するための権利関係の帰属に関する判決であり、本件判決により確定した内容は、申告に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実と異なるものであることが認められる。
要旨
請求人は、相続財産である現金、貯金及び出資金の申告漏れについて、現金については相続税申告時に手元になく失念したためであり、また、貯金及び出資金については、その存在を知らなかったためであるから、隠ぺい又は仮装の行為はなかった旨主張する。
しかしながら、重加算税は、その制度の趣旨にかんがみれば、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要と解するのは相当でなく、納税者が当初から財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合には、重加算税の賦課要件が満たされるものと解すべきであるところ、請求人は、現金については、その保管状況等からみてその存在を認識していたものと認められるにもかかわらず、申告書作成の際に関与税理士に対してその存在を秘匿する虚偽の説明をしていること、また、貯金については、請求人の取引への関与の状況からしてその存在を認識していたものと認められるにもかかわらず、申告書作成の際に関与税理士から金融機関の残高証明書の入手依頼があったのに入手手続を行わず関与税理士にその存在を知らせなかったことからすれば、これらの財産の申告漏れについては、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からうかがい得る特段の行動をした上でその意図に基づく過少申告をしたものと認められるから、重加算税の賦課要件を満たしているといえる。一方、出資金の申告漏れについては、申告前に請求人がその存在を認識していたとまでは認められないから、重加算税の賦課要件を満たしているとはいえない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
贈与により取得した株式を株式発行会社の法人税の確定申告書に記載された所得金額等を基に評価したことにより贈与税の過少申告をしたことについて正当な理由はないとした事例
裁決事例集 第70集 9頁
要旨
国税通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」とは、過少に税額を申告したことが納税者の責めに帰すことができない客観的な障害に起因するなど、その申告が真にやむを得ない理由によるものであり、納税者に過少申告加算税を課すことが不当若しくは酷になる場合を意味するものと解される。請求人は、本件贈与税の申告に際し、D社の法人税の確定申告書に記載された所得金額等を基に同社の株式の価額を算定したものであるが、その所得金額等は、その後同社による修正申告によって増加するに至ったのであるから、そもそも誤った内容のものであったのであり、これは同社の法人税の申告が適正に行われていなかったことによるものであるところ、請求人は、上記確定申告書の提出時において同社の代表取締役の地位にあったのであるから、同社の税務申告の最終責任者であると認められ、また、本件贈与税の申告時においても同じく代表取締役の地位にあったのであるから、上記法人税の確定申告書の記載内容が適正であるかどうか確認できる立場にあった。これらのことを考慮すると、その誤りを看過し、本件では、過少申告となったことが、真にやむを得ない理由によるもので、請求人に過少申告加算税を課すことが不当若しくは酷になる場合に当たるとは認め難い。
本件出資口数の売買契約が錯誤により無効である旨を確認した判決があったとしても、そのことにより国税通則法第23条第2項第1号に該当することとなったとは認められないとした事例
裁決事例集 第76集 15頁
要旨
請求人らは、別件判決(平成18年)において錯誤無効の主張が是認されたことから、国税通則法第23条第1項所定の期間内に更正の請求をしなかったことにつき「やむを得ない理由」があり、また、本件判決(平成19年)により本件売買契約が錯誤により無効であったことが確認されたのであるから、国税通則法第23条第2項第1号に規定する「更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決により、その事実が当該計算の基礎となったところと異なることが確定したとき」に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人らは、当該錯誤無効を理由に本件決定処分等及び別件通知処分に係る争訟手続を行い、外形的にも錯誤無効の主張に沿うようにB社の出資口○○○○口をAに戻すなどの原状回復を行っていることからすると、請求人らの間では平成13年当時において既に本件売買契約が無効であるという事実関係は形成されていたと認められ、また、本件訴訟においても請求人らの間に本件売買契約が錯誤無効であるとの事実関係の外形自体に争いはないことから、本件判決によって初めて本件売買契約が無効と確認され更正の請求の要件を満たすこととなったわけではないから、本件判決をもって、国税通則法第23条第2項第1号に規定する「課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとき」に該当するとは認められない。
被相続人名義の普通預金等の存在を承知した上で、税理士にこれらに相当する金額を含めて納付すべき税額を計算させ、その後、同税理士から資料の提示を求められると、残高証明書等を所持していたにもかかわらず、ない旨の回答をし、本件預金等の存在を明らかにしないで本件確定申告書を作成、提出させた行為は、事実の隠ぺいに当たるとした事例
裁決事例集 第56集 34頁
要旨
請求人は、本件各預金が被相続人の相続開始日現在において存在し、それが被相続人名義であることを承知した上で、M税理士事務所に勤務するT税理士に指示して、いったんは本件各預金とも思われる金額を含めて納付すべき税額を算定させ、その後、同税理士から当該金額に係る資料の提示を求められると、本件残高証明書及び本件各預金のうち定期預金証書を所持していたにもかかわらず、当該資料がない旨の回答をして、同税理士に本件各預金の存在を明らかにせずに本件申告書の作成を依頼し、同申告書をE税務署長に提出したことが認められる。
請求人の上記行為は、国税通則法第68条第1項に規定する「隠ぺい」に該当するから、本件重加算税の賦課決定処分は相当であり、請求人の主張には理由がない。
要旨
原処分庁は、請求人が平成19年分の所得税について無申告であったことにつき、eワラント取引に係る申告義務及び申告方法について熟知していたにもかかわらず、①請求人の夫において申告していない夫自身のeワラント取引による利益を原資として請求人個人のeワラント取引を開始し、②eワラント取引について、損失が生じた場合にのみ所得税の申告をし、利益が生じた場合には申告をしていないこと及び③eワラント取引に係る取引残高報告書等を保存せず散逸するに任せていたことは、当初から所得を申告しないことを意図し、その意図を外部からうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき法定申告期限までに申告書を提出しなかったものと認められるから、国税通則法第68条《重加算税》第2項に規定する隠ぺい又は仮装の行為に当たる旨主張する。
しかしながら、上記①については、請求人のeワラント取引に関する認識を直接に示す事情ではなく、上記②については、請求人は、平成20年分の所得税については、eワラント取引から生じた利益を法定申告期限までに申告しているのであるから、請求人がeワラント取引によって損失が生じた場合にのみ申告をしていたとはいえず、また、上記③については、証券会社に有価証券取引用の口座を開設し、インターネットを経由して当該証券会社を通じて当該取引をした場合には、当該取引のデータは、一定期間、インターネットを経由して当該証券会社から入手することができるのであるから、請求人が、eワラント取引に係る証拠書類を保存せず散逸するに任せていたと評価するのは相当でない。したがって、原処分庁が主張する請求人の行為は、いずれも上記にいう特段の行動と評価することはできない。
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
過少申告となった原因は、単なる記載誤り及び法律に明示されていない事項の解釈誤りによるものであり、悪意がないから、社会通念的には「正当理由がある場合」に該当する旨の請求人の主張を排斥した事例
裁決事例集 第71集 21頁
要旨
過少申告加算税は、単に過少申告であるという客観的事実のみによって課される性質のものであると解され、国税通則法第65条第4項に規定する「正当な理由があると認められるものがある場合」とは、申告時においては、その当時の諸状況に照らして適法と認められるべきであった申告がその後の事情の変更等により、納税者の故意過失に基づかないで当該申告が過少となった場合のように、当該申告が真にやむを得ない理由によるものであり、納税者に過少申告加算税を課すことが、不当又は酷になる場合を意味するものと解され、その過少申告が納税者の税法の不知又は誤解によるなどの納税者の主観的な事情に基づくような場合までを含むものではないと解される。よって、請求人の主張には理由がない。
本件和解は、本件不動産の持分2分の1が被相続人の相続開始日にさかのぼって利害関係人に帰属することを認めたものと解する余地はなく、将来に向かって新たな権利関係等を創設する趣旨のものであることから、国税通則法第23条第2項第1号にいう「和解」に当たらないとした事例
裁決事例集 第78集 1頁
要旨
請求人らは、①本件和解調書には、利害関係人に対する本件死因贈与契約を無効である旨の一条項があるものの、実質的には本件不動産の持分2分の1が、相続人たる請求人らではなく、利害関係人に帰属することを認めたものというべきである、②仮に本件和解条項の文言のとおり、本件死因贈与契約が無効であるとしても、本件和解により請求人らが利害関係人に支払う解決金は、療養看護の対価であり、被相続人が負担すべき債務として相続開始日において存在したものというべきであると主張し、本件和解により、申告に係る課税標準又は税額の計算の基礎となった事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したと主張する。
しかしながら、本件和解条項は、本件死因贈与契約が無効であること及び本件不動産が請求人ら及び共同相続人Jに帰属することを確認したものであることが明確であり、これは、請求人らが申告の基礎とした事実と同一であり、本件和解条項を、本件不動産の持分2分の1が被相続人の相続開始日にさかのぼって利害関係人に帰属することを認めたものと解する余地はない。また、本件解決金は、請求人ら及び共同相続人Jが、利害関係人に対し、同人が被相続人の療養看護をしてきたことを認めて支払うことを合意したものであって、被相続人が、相続開始時において、利害関係人に支払うべきであったものとは認められない。したがって、本件和解により、申告に係る課税標準又は税額の計算の基礎となった事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとは認められない。
要旨
請求人らは、被相続人は○○症という病にり患しており、本件修正申告書等を提出した平成18年11月15日には既に判断能力がなかったと思われるから、同申告書等を提出した行為そのものが無効であると主張する。しかしながら、たとえ○○症であったとしても、そのことだけで意思能力が直ちに失われるものではなく、本件調査における調査担当者への質問に対する被相続人の回答・対応に異常は認められず、「聴取書」の作成に当たっても、その内容に不自然不合理な点も見受けられない。また、本件調査に基づいて行った修正申告は、調査担当者が実額及び一部推計で算出した所得と同額であり、その内容が理解できずに実際の所得金額と異なる不合理なものであったということもできない。これらを総合して判断すると、被相続人が、本件修正申告書等を提出した当時に興奮状態ないし幻聴などの症状により、本件修正申告書等の内容を認識し、判断できる能力を欠いていたと認めることはできない。
また、請求人らは、被相続人が○○症を発病した以降においては、国税通則法第65条第4項及び同第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由がある場合」に該当する旨主張する。しかしながら、「正当な理由がある場合」とは、真に納税者の責めに帰すことのできない客観的な事情があり、加算税の趣旨に照らしても、なお、納税者に加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうのであって、加算税が、当初から適法に申告し納税した者との不公平を是正し、適正な申告納税の実現を図り、納税の実を挙げようとする行政上の措置であることからすれば、これらの正当な理由とは、当該加算税に係る本税の確定申告期限までに存在した事情であることが必要であり、被相続人においては、上述のとおり本件修正申告書等の提出時において判断能力がないとはいえず、このことは確定申告期限以前においても同様と認められる。また、その他、審判所の調査においても納税者の責めに帰すことのできない客観的な事情は認められないことから、請求人らの主張は採用できない。
要旨
原処分庁は、請求人が、申告していないのに市役所の職員に青色申告していると話した事実、徴収職員から申告していないことを指摘されたにも関わらず申告していない事実などから、請求人は、所得税の確定申告をすべきこと及び所得金額を十分に認識していた上、消費税等についても、確定申告をすべきことを十分に認識していたにも関わらず、申告をしなかったものであり、重加算税の賦課要件を満たしている旨主張する。
確かに、請求人は、確定申告の必要性を認識しており、調査年分の確定申告をしなかった理由の一つとして租税の負担を免れるという点があったことは認められるものの、原処分庁が指摘する事実などは、それらのいずれによっても、積極的な隠ぺい、仮装行為が存在し、これに合わせて納税申告書を提出しなかったものとはいえず、租税負担を免れる意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったともいえない。また、請求人は、本件調査において、保存されていた全ての書類を提示し、終始協力的であったこと、調査年分の事業所得の金額を算定する上で必要となる書類等のうち作成保存していないものについて、請求人が意図的にこれらを破棄したことなどをうかがわせる事実も認められないことからしても、所得税及び消費税等について、請求人が納税申告書を提出しなかったこととは別に、積極的な隠ぺい、仮装行為が存在し、これに合わせて納税申告書を提出しなかったものとは認められず、租税負担を免れる意図を外部からもうかがい得る特段の行動があるとも認められないので、重加算税の賦課要件が満たされているとはいえない。
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
請求人は、調査担当者から指摘されて提出した被相続人名義の有価証券等について、相続開始後にその利息及び償還金をすべて受領し、現金化して費消していることなどからすると、本件有価証券等の存在を知りながらこれを除外し、過少な相続税の申告書を作成・提出したものと認められ、当該行為は、事実を隠ぺいした場合に当たるとした事例
裁決事例集 第56集 45頁
要旨
請求人は、調査担当者から申告漏れの株式が存在する旨の指摘を受けて、家の中を捜してみた結果、初めて被相続人が使用していたたんすの中にあったアタッシュケースの中から有価証券等を把握したのであるから、隠ぺい又は仮装の事実はない旨主張する。
しかしながら、請求人は、[1]株式の知識をもっていること、[2]相続開始後、被相続人の遺産を一括管理・運営していたこと、[3]本件株式・抵当証券の利息及び償還金をすべて受領し、現金化して費消していること、[4]定期貯金の満期を迎えたものについて、孫の名義に変えていること、[5]本件申告書提出後の所得税の確定申告において、配当金の支払通知書の写しをすべて保存していたにもかかわらず、申告済み株式に係る配当金のみを申告したことが認められ、以上によれば、請求人は、本件有価証券等の存在を知りながらこれを隠ぺいし、過少な本件申告書を作成・提出したもので、その行為は、相続税法第19条の2第5項及び国税通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺいに該当する。
原処分庁が事実の隠ぺい又は仮装の行為によって過大に計上したとする貸倒損失額は、更正処分をした事業年度において所得金額に加算することはできないから、当該事業年度には当該貸倒損失額に係る重加算税の計算の基礎となる税額が生じないとした事例
裁決事例集 第86集
要旨
原処分庁は、M社に対する貸付金が架空であることを認識していながら当該貸付金の全額を貸倒損失とした請求人の行為は、事実の隠ぺい又は仮装に当たる旨主張する。
しかしながら、請求人のM社に対する債権債務の推移からすれば、原処分庁が更正処分をした事業年度の前事業年度では、損金の額に算入されない貸倒損失の計上が認められるものの、当該更正処分をした事業年度においては、原処分庁が過大に計上したとする貸倒損失額について所得金額に加算できないのであるから、当該貸倒損失額に係る重加算税については、その計算の基礎となる納付すべき法人税額は生じない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和58年10月27日第一小法廷判決(民集37巻8号1196頁)
本件相続開始直後、請求人自らが被相続人名義の証書式定額郵便貯金を解約して、新たに開設した請求人ら名義の通常郵便貯金口座に預入し、その存在を確知しているにもかかわらず、後に開設した相続財産管理口座には被相続人名義の通帳式郵便貯金を解約した金額のみを預入し、証書式定額郵便貯金を除外して相続税の確定申告をした請求人の行為は、事実を隠ぺいした場合に該当するとした事例
裁決事例集 第57集 36頁
要旨
請求人は、被相続人名義の証書式定額郵便貯金(以下「本件定額貯金」という。)が申告漏れとなったのは単純なミスによるものであって、隠ぺいしたものではない旨主張する。
しかしながら、請求人は、[1]本件相続開始後に自ら本件定額貯金を解約し、その存在を確知していること、[2]本件定額貯金の解約を一両日中に実行したにもかかわらず、5箇所の郵便局で解約手続をとっていること、[3]被相続人名義の通帳式郵便貯金(以下「本件通帳式貯金」という。申告済み分。)の一部払戻金額に一致させた金額2,310,000円を新たに開設した請求人ら名義の通常郵便貯金口座から払い戻し、それを相続財産管理口座に預入していること、[4]同様の6,556,456円を請求人ら名義の上記口座から払い戻し、それを相続財産管理口座へ預入していること、[5]それ以外の請求人ら名義の上記口座からの払戻金は相続財産管理口座へ預入せず、うち、2,543,192円については費消していること、[6]本件申告をするに際して、本件通帳式貯金についてはその金額を相続財産として本件申告書に記載したが、本件定額貯金については記載しなかったことが認められる。
加えて、請求人ら名義の通常郵便貯金は、それらの貯金の利息を除けば本件定額貯金と本件通帳式貯金の解約金のみをその預入源泉としており、請求人が相続財産を集約し、整理しようとするのであれば請求人ら名義の通常郵便貯金口座の全額を払い戻して残さず相続財産管理口座へ預入するのが簡単かつ自然であるにもかかわらず、上記のとおり、本件通帳式貯金の払戻金額に一致させた金額だけを請求人ら名義の通常郵便貯金口座から払い戻して相続財産管理口座に預入している。
さらに、請求人は、請求人らに対する税務調査の際には本件通帳式貯金以外の郵便貯金の存在を否定し、後日になってそれを認めている。
以上の事実からすれば、請求人は本件定額貯金について秘匿することを意図し、その意図に基づいて過少申告したことが認められ、請求人のかかる行為は、重加算税の賦課要件たる事実の隠ぺいに該当する。
要旨
請求人は、E社が発行する株式及び新株予約権等に投資することを目的とする民法上の組合である本件組合の非業務執行組合員であるが、本件組合契約における出資金1口当たりの単価は、本件組合が新株予約権の発行に際して払い込みをなすべき額と、その行使に際し払い込みをなすべき額との合計額と同額であり、一方請求人を含む各組合員は、当初本件組合に払い込むべき出資金を払い込み、その後各組合員が個々に新株予約権の行使を希望する都度に残額を払い込むことが求められ、さらに、本件組合は、出資金の全額が払い込まれた場合には、組合財産の運用、組合財産の分配についての業務執行組合員の判断にかかわらず、新株予約権を直ちに行使し、発行された株式を当該組合員に現物分配することとされ、実際にもそのように現物分配していることからすれば、本件組合への新株予約権の割り当て時点において、事実上その出資口数に応じた新株予約権にかかる権利義務が請求人に帰属したものと認められる。
新株予約権の取得に係る利益は、既に確定している請求人の出資口数に相当する新株予約権と一体となった利益で、請求人に帰属する固有の利益であり、本件組合からの分配を経由しない利益として法人税法第22条第2項に基づき益金の額に算入すべきであり、法人税基本通達14-1-1の2が定める組合事業に関する利益金額又は損失金額のうち分配割合に応じて利益を受けるべき金額又は損失の負担をすべき金額(帰属損益額)に該当するものではない。
したがって、新株予約権の取得に係る利益について、法人税基本通達14-1-1の2ただし書きが適用される余地はなく、請求人が同通達ただし書きの適用があると理解し、当該利益を新株予約権を取得した事業年度の益金の額に算入せず確定申告をしたことは、税法の不知や法令解釈の誤解など請求人自身の事情に基づくものであるから、国税通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」があるとは認められない。
被相続人の遺産を構成しないことを確認する和解は、国税通則法第23条第2項第1号に規定する判決等に当たるとした事例(平成21年11月相続開始に係る相続税の更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分・全部取消し)
裁決事例集 第95集
ポイント
本事例は、請求人が当事者となっている訴訟に関して成立した裁判上の和解が、いわゆる「馴れ合い訴訟」の結果であるとはいえないとしたものである。
要旨
原処分庁は、受遺者である請求人が被相続人から遺贈により取得したとして相続税の修正申告に計上した各土地(本件各土地)について、請求人、R社及び相続人の間で成立した、平成13年頃に被相続人からR社に譲渡されたもので被相続人の遺産を構成しない旨を確認した裁判上の和解(本件和解)は、当事者が租税回避目的等から馴れ合いと評価されるような和解をしたにすぎず、国税通則法第23条《更正の請求》第2項第1号かっこ書に規定する和解に該当しない旨主張する。
しかしながら、①本件各土地の一部には請求人の兄名義の居宅が存在すること、②平成13年にR社を権利者とする所有権移転請求権仮登記がされていること、③売買代金に相当する金員が貸付金名目でR社等から被相続人に交付されていることからすれば、本件各土地が、被相続人の遺産を構成しないことを確認した本件和解の内容について、証拠等からうかがわれる客観的事実関係に明らかに反していると認めるに足らない。そうすると、本件和解は、相続開始時に所有権の帰属に関して当事者間に争いのあった本件各土地について、平成13年頃に被相続人からR社に対して譲渡されていたことが相応の根拠をもって認められ、実質的にみても客観的、合理的根拠を欠くということはできない。したがって、本件和解は、国税通則法第23条第2項第1号かっこ書に規定する和解に該当するというべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
名古屋高裁平成2年7月18日判決(税資180号85頁)
多額の不動産所得を申告すべきことを認識しながら、関与税理士に資料を提出せず、かつ、虚偽の説明をするなどして、過少な申告書を作成させて提出した行為は、重加算税の賦課要件に該当するとともに更正等の期間制限に係る偽りその他不正の行為に該当するとした事例
裁決事例集 第57集 50頁
要旨
請求人は、多額の不動産所得を申告すべきことを認識しながら、関与税理士から不動産所得の金額について質問を受け、資料の提示を求められたにもかかわらず、同席者の虚偽の説明をあえて否定せず、あるいは自ら前年と同様である旨虚偽の説明をし、また、何らの資料も提示しないで多額の不動産所得のあることを秘匿し、税理士に過少な申告を記載した確定申告書を作成させて提出し、真実の所得金額の大部分を申告しなかったことが認められる。
このことは、請求人が当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行為をした上、所得金額をことさら過少にした内容虚偽の確定申告書を提出した場合に該当し、請求人の行為は、国税通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺい及び同法第70条第5項に規定する偽りその他不正の行為をした場合に当たる。
法人税法施行令(平成22年政令第51号による改正前のもの)第72条の5に規定する使用人に対する賞与の支給額の通知につき、国税通則法第68条第1項に規定する仮装は認められないとした事例
裁決事例集 第87集
要旨
原処分庁は、請求人が本件事業年度の損金の額に算入した使用人に対する未払賞与の額に関し、法人税法施行令(平成22年政令第51号による改正前のもの)第72条の5《使用人賞与の損金算入時期》第2号の「各人別に、かつ、同時期に支給を受けるすべての使用人に対して」なすべき通知を、翌事業年度の決算賞与支給明細書の交付により行ったにも関わらず、取締役会議事録及び人事総務部長から部下職員に対する電子メールの案内文に、これと異なる記載をするなどして、上記の通知を本件事業年度終了の日までにしたかのように事実を仮装したと認められるから、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する事実の仮装に当たる旨主張する。
しかしながら、上記の取締役会議事録及び案内文に記載された日付は、人事総務部長が従前からの事務処理手順を踏襲して年内最後の営業日としたことがうかがえる上、その記載内容は、従業員に決算賞与の支給を案内するにとどまり、各人別の通知の日を記載したものではないことなどからすれば、請求人が上記の通知の日を仮装したとは認められない。
参照条文等
国税通則法第68条第1項 法人税法施行令(平成22年政令第51号による改正前のもの)第72条の5
1. 請求人が架空の必要経費を計上し、多額の所得金額を脱漏したばかりか、調査担当職員に帳簿書類の保存がない等の虚偽の答弁をしたことは、国税通則法第68条第1項に規定する「隠ぺい又は仮装」に当たるとされた事例 2. 更正処分により賦課される事業税の額を見込額で必要経費に算入すべきとの請求人の主張が排斥された事例 3. 請求人が会計データを保存していたフロッピーディスクに不具合が生じ、出力不可能となったこと等を理由に帳簿書類等を提示しなかったことは、青色申告承認取消事由に当たるとされた事例
裁決事例集 第58集 107頁
要旨
請求人は、税理士でありながら、総勘定元帳・決算書に虚偽の記載をして架空の必要経費を計上し、多額の所得金額を脱漏したばかりか、その能力を有しながら帳簿書類の備付け等をせず、また、原処分庁の調査担当職員に対し帳簿書類の保存はない等の虚偽の答弁をし、さらに、異議審理庁による調査の際にも虚偽の資料を提出するなどしている事実が認められる。これらの事実に照らすと、請求人は、課税標準又は税額等の計算の基礎となる事実を仮装し確定申告書を提出したというべきであり、また、少なくとも申告当初から、真実の所得金額を隠ぺいしようという確定的な意図の下に、必要に応じ事後的に隠ぺいすることをも予定しつつ、多額の所得金額を脱漏し、所得金額をことさら過少に記載した内容虚偽の確定申告書を提出したというべきであって、本件確定申告書の提出は、単なる過少申告行為にとどまるものではなく、国税の課税標準等の計算の基礎となる事実について、隠ぺいしたところに基づき確定申告書を提出した場合に該当するから、原処分庁が国税通則法第68条第1項に基づいてした重加算税の賦課決定処分は適法である。
ポイント
本事例は、請求人が、出張日の記載がなく、旅行業者が通常使用する書式と相違する請求書(本件各旅費請求書)に基づき、翌事業年度に行われる旅行費用を繰上計上していたところ、当該費用は支払われ、当該出張は実施されており、また、旅行業者の側に別の書式を使用せざるを得ない合理的な理由があり、本件各旅費請求書に単に出張日の記載がないのみであって、事実と異なる出張日を記載した、あるいは、出張日を隠ぺいした事実はないから、本件各旅費請求書は、虚偽の証ひょう書類とはいえないとして、重加算税の一部を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、請求人が旅行費用(本件各旅行費用)を前倒し計上したことについて、旅行業者が通常使用する書式と相違する請求書(本件各旅費請求書)を使用したこと及び本件各旅費請求書に出張日を表記させなかったことなどから、本件各旅費請求書が、請求人代表者と相手先との通謀によって作成された虚偽の証ひょう書類に該当する旨主張する。
しかしながら、本件各旅費請求書の発行経緯に不自然な点は認められず、本件旅行費用は旅行業者に支払われ、旅行も実施されており、本件各旅行費用の計上に際し請求人が旅行業者と通謀の上本件各旅行請求書を発行させた等の事実を推認する証拠は見受けられず、請求人がそれらの計上に際し、事実を隠ぺいした、又は事実を仮装したと評価すべき行為を行ったことは認められない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
要旨
原処分庁は、請求人の会計処理が、請求書をもって納品があったものとみなして行われていたところ、請求人が、パンフレットの納品前に、取引先に対して請求書の発行を依頼したことは、通謀による虚偽の証ひょう書類の作成に当たり、また、当該課税期間内に納品されないこととなったにもかかわらず、あえて課税仕入れに係る支払対価の額から除かなかったことは、帳簿書類の意図的な集計違算に当たるから、請求人がパンフレットの製作費を当該課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額に含めたことについて、隠ぺい又は仮装の行為がある旨主張する。
しかしながら、請求人は、パンフレットの納品時に納品書を受領しており、当該請求書は前払いを求める書類として作成を依頼したもので納品の事実を示す書類として受領したものとはいえず、また、当該請求書に虚偽の記載もないのであって、通謀による虚偽の証ひょう書類の作成があったとはいえない。また、納品されないこととなったにもかかわらず課税仕入れに係る支払対価の額から除かなかったのは、単に請求人の会計処理を行う部署において納品の事実の確認を怠っていたことによるものであって、これをもって隠ぺい又は仮装と評価すべき行為をしたともいえない。したがって、請求人が当該パンフレットの製作費を当該課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額に含めたことについて、隠ぺい又は仮装の行為があったとは認められない。
参照条文等
請求人が開設者等として名義貸しした診療所の事業所得が記載された請求人名義の所得税確定申告書の効力及び隠ぺい仮装行為の有無が争われ、請求人の主張を排斥した事例
裁決事例集 第60集 96頁
要旨
確定申告は、納税者の判断とその責任において、申告手続を第三者に依頼して納税者の代理又は代行者として申告させることもできるが、その場合であっても、納税者が第三者に申告手続を一任した以上、その者がした申告は納税者自身が行ったものとして取り扱うべきである。
請求人は、平成5年分については、源泉徴収票を本来の当該診療所事業者(以下、「事業者」という。)らに渡し、平成6年分については、すでに勤務先の病院を退職しているにもかかわらず、確定申告書の用紙及び源泉徴収票を事業者らに渡しているのであって、請求人は、その確定申告手続の代行を事業者らに一任したものといわざるを得ない。
請求人は、事業者らに依頼したのは、その給与所得の申告手続のみであり、本件事業所得の申告手続は依頼していない旨の主張もするが、請求人は、本件事業所得の金額も記載された平成6年分所得税の更正の請求書を提出している上、本件事業所得の申告により高額となった住民税を事業者らに負担させていること、さらに、所得税法第232条第1項の規定により財産及び債務の明細書を提出しなければならないのは総所得金額及び山林所得金額の合計額が二千万円を超える場合に限られるところ、請求人は、平成6年分の所得税について、本件事業所得の金額が加算されたことにより総所得金額が二千万円を超えたとして財産及び債務の明細書を提出していることからすると、やはり請求人は本件事業所得の申告手続についても事業者らに依頼していたというべきである。
請求人は、当該診療所の実質的な経営者ではないにもかかわらず、事業者から開設者及び管理者となることを依頼されて、これを承諾し診療所の開設届を提出して、自ら本件事業所得が請求人の所得であるかのように装っただけでなく、請求人から確定申告手続の依頼を受けた事業者においても、本件事業所得が事業者自身の所得であることを承知の上、当該診療所の事業に係る収入及び経費の管理並びにこれらの入出金を請求人名義の銀行口座を使用して行い、請求人名義で発行された支払基金からの支払調書を添付して、本件事業所得が請求人の所得であるように装って、これに基づき還付金に相当する税額を過大に申告しているのであって、これらのことは、本件各年分において国税通則法第68条第1項に規定する場合に該当する。
不動産取引に当たり売買価額を分散させるために虚偽の売買契約書等を作成し事実を仮装したとの原処分庁の主張を排斥して重加算税の賦課決定処分の一部を取り消した事例(平22.9.1から平23.8.31の課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第93集
要旨
原処分庁は、請求人が購入した土地及び建物(本件不動産)の取引について、不動産売買契約書に記載された本件不動産の売買契約代金は虚偽の表示と認められ、また、本件不動産の取引に係る業務委託契約(本件業務委託契約)は、本件不動産の売主が売買契約代金を別途受領するために締結された実体のないものであり、請求人も実体のない本件業務委託契約書の作成に携わっていたと認められ、請求人は、本件不動産の売買価額を分散させたものであることを了知していたにもかかわらず、その分散させた金額が消費税等の確定申告書に適正に反映しているか否か何ら確認することなく、確定申告をしたのであるから、請求人の行為には、事実の仮装がある旨主張する。
しかしながら、本件業務委託契約の各委託先は、本件不動産の根抵当権を抹消するための債務の弁済額の交渉や本件不動産の見分及び図面等の閲覧の段取り等を行っており、これらの業務内容は本件業務委託契約書に記載された業務の内容に符合するものであって、請求人が当該各委託先に対して支払った金員は、本件業務委託契約に係る役務の提供に対する対価と認められるから、本件不動産の売買価額を分散したとは認められず、ほかに、請求人が本件不動産の購入に関し、何らかの事実を仮装したと認めるに足る客観的な証拠もないから、本件不動産の購入に関する行為について、事実の仮装はなかったと認められる。
要旨
請求人は、本件売上金が計上漏れとなったのは、請求人の事務員が本件売上金を請求人会社の代表取締役からの借入金として誤って経理処理をしたことによる旨主張する。
しかしながら、(請求人の代表取締役名義の)個人預金口座に振り込まれた顧客からの売上代金をそれぞれ請求人貯金口座に振替入金しているが、平成8年1月18日に個人預金口座に入金された本件売上金は請求人の平成8年1月期の売上げに計上しないで、しかも、平成8年2月2日に請求人貯金口座に振替入金後、平成9年1月期において、これを請求人の代表取締役からの借入金として経理処理している。
このことは、請求人が本件売上金が個人預金口座に入金されたことを奇貨として、平成8年1月期においてこれを売上げから除外し、平成9年1月期において借入金に仮装して経理処理したものと解するのが相当である。
ところで、原処分は、請求人の平成10年1月期の修正申告により増加した所得金額を対象としているが、これは、請求人が、[1]平成8年1月期において本件売上金を売上げから除外し、[2]これに基づき、平成9年1月期以降に欠損金を過大に繰り越す確定申告書を提出し、[3]また、上記[1]の行為に基づき、平成10年1月期において、平成8年1月期から繰り越されてきた過大な欠損金を損金の額に算入して過少な所得金額の確定申告書を提出したのであるから、このことは、平成10年1月期において税額等の計算の基礎となるべき事実の一部を隠ぺい又は仮装したところに基づき確定申告書を提出したということができる。
したがって、原処分庁が平成10年1月期を対象として重加算税の賦課決定をしたことは相当である。
代理権のない請求人の父に請求人名義の署名・押印をさせ、提出させた本件各修正申告書は無効で重加算税の取消しを求めるとの請求人の主張を認めず、請求人の父の納税申告手続全般にわたる代理権の存在及び同人による隠ぺい仮装行為を認定した事例
裁決事例集 第60集 119頁
要旨
請求人は、調査担当職員が、請求人から代理権を授与されていない請求人の父をして、本件修正申告書に請求人名義の署名、押印をさせ、これを提出させたものであるから、本件修正申告書は無効である旨主張する。
しかしながら、請求人と請求人の父は、平成6年分以降、農業者年金を受給するため、農業所得の申告者の名義を請求人の父から請求人に変えたものの、農作業の従事の状況等確定申告に係る農業所得の金額の計算も、請求人の父が従前と変わらず行っているものというべきであり、さらに、請求人の父は、調査担当職員に対し、請求人名義の貯金通帳を提示し、請求人の各年分の所得税の確定申告書を町役場に赴いて作成、提出し、各年分の確定申告が過少申告となっていたことを自認し、請求人に迷惑を掛けたくないとして、請求人名義の署名、押印をしたこと、本件調査の全過程において請求人の父が対応していたこと、請求人は、農業について父に任せている旨述べたことからすれば、請求人の父は、請求人から、農作業及び確定申告に限って任されていたものとは考えられず、むしろ、農業に係る作業、申告に係る計算並びに確定申告及びその修正までを含めた税務上の全般の事務を任されており、請求人に代わってこれらを行っていたと認めるのが相当であるから、請求人の父が本件修正申告書に請求人名義で署名、押印をして、これを原処分庁に提出した行為の効果は、請求人に帰属するというべきである。
重加算税の制度は、納税者が過少申告をするについて、隠ぺい、仮装という不正手段を用いていた場合に、過少申告加算税よりも重い負担を課することによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとする行政上の措置であり、納税義務者本人の刑事責任を追及するものではないことからすれば、その合理的解釈としては、隠ぺい、仮装の行為に出た者が納税義務者本人でなく、その代理人、補助者等の立場にある者で、いわば納税義務者本人の身代わりとして同人の課税標準の発生原因たる事実に関与し、同課税標準の計算に変動を生ぜしめた者である場合を含むものであり、かつ、納税義務者が納税申告書を提出するに当たり、その隠ぺい、仮装行為を知っていたか否かに左右されないものと解すべきである。
これを認定した各事実に照らし判断すると、請求人の父の行った一連の行為は、国税通則法第68条に規定する隠ぺい、仮装に該当するというべきである。
従業員からの預り金及び当該預り金を返還しないこととした事実が帳簿書類に記載されていないことにつき仮装隠ぺいの事実は認められないとした事例(平16.11.1から平23.10.31の各事業年度の法人税の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分・全部取消し)
裁決事例集 第94集
ポイント
本事例は、請求人が従業員からの預り金を返還しないこととしたことについて、そもそも請求人は収益に計上すべきとの認識を有していなかったと認められるとし、これを故意に帳簿書類に計上しなかったとか、預り金を返還しないこととなった事実を隠ぺいしたなどの証拠は認められず、当該収益(雑収入)の計上漏れは単なる過少申告に該当するとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人が、従業員からの預り金(その1)及び預り金(その2)を当該従業員に対し返金しないこととしたという雑収入発生の事実を帳簿書類に記載せず、また、雑収入発生の事実を裏付ける資料(本件資料)を関与税理士に提示せずに請求人代表者の机の引出し内に管理していた行為は、国税通則法第68条《重加算税》が規定する「隠ぺい又は仮装」の行為に該当する旨主張する。
しかしながら、当審判所の調査の結果によれば、預り金(その1)に関しては、請求人に雑収入発生の事実を認めることができない以上、請求人に「隠ぺい又は仮装」の行為を認めることはできず、また、預り金(その2)に関しては、請求人に雑収入発生の事実を認めることができるところ、当該事実を帳簿書類に記載していないものの、本件資料が請求人代表者の机の引出し内に管理されていた事実のみをもって、請求人が雑収入発生の事実を「隠ぺい」したとは認めることはできないし、その他請求人が雑収入計上漏れの事実を故意に帳簿書類に記録せずに「隠ぺい」したと見受けられる証拠はなく、そもそも、請求人は収益が実現したとの認識を有していなかったと認められるから、請求人に「隠ぺい又は仮装」の行為を認めることはできない。
要旨
請求人は、売上計上漏れがあったとして修正申告書を提出しているが、重加算税の賦課決定に対して、[1]売上計上漏れに係る預金口座は本人名義であり、二重帳簿は作成していないこと、[2]税金をごまかす意思はなく単に小遣い稼ぎをしようとしたものであること、[3]調査担当職員に公表外預金口座はないと申述したのは、調査時点では当該預金口座は解約済であったこと、[4]関係書類を全て破棄したとするが、調査担当職員はその事実を確認していないことを理由として、隠ぺい仮装の事実はない旨主張する。
しかしながら、請求人は、[5]得意先に対する請求書を自ら作成して売上金の一部を当該預金口座に入金しており、売上金であることを十分認識していながら記帳担当者に報告していなかったこと、[6]その結果として納税額が過少になることを認識していた、[7]公表の預金口座とは別に請求人名義の預金口座を開設して公表外で管理し、そこに売上金の一部を入金していたことが認められることから、請求人は故意に売上金の一部を隠ぺいしていたというべきであり、原処分は相当である。
請求人が、法定申告期限までに相続税の申告書を提出しなかったことについて、国税通則法第68条第2項の重加算税の賦課要件を満たしているとはいえないとした事例(平成23年4月相続開始に係る相続税の重加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第95集
ポイント
本事例は、請求人は相続財産を過少に記載したお尋ね書の回答を提出しているものの、そのことのみをもって、「相続財産について申告をしない意図を外部からもうかがい得る特段の行動」と評価することはできないとして、重加算税の賦課要件を満たさないとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人が、基礎控除額を超える相続財産の存在を認識しながら、「相続についてのお尋ね」(お尋ね書)に一部の財産のみを記載し、遺産総額が基礎控除額以下であるから、申告は不要と思っているとして、お尋ね書を原処分庁に対して提出したことは、「隠ぺい、仮装と評価すべき行為」又は「相続財産を申告しないとの意図を外部からもうかがい得る特段の行動」と認められる旨主張する。
しかしながら、お尋ね書の提出は、相続税の申告をすべきことを知りながらこれをしなかったこと(認識ある無申告)と同等の行為と評価することができ、無申告行為そのものとは別に、「隠ぺい、仮装と評価すべき行為」をしたものと認めることはできない。また、お尋ね書は、課税庁が、申告の要否を確認する趣旨で、納税者に対して提出を求める書面であるところ、お尋ね書には金額の記載のないものを含めれば、基礎控除額を超える相続財産の記載があり、原処分庁として、請求人が申告義務を有することを十分に予想することができたものといえるから、お尋ね書を提出したことをもって、「相続財産を申告しないとの意図を外部からもうかがい得る特段の行動」と評価することはできない。
参照条文等
請求人が行った「ゴルフ会員権を会員権業者を介して知人に譲渡した取引」は、請求人が譲渡損失を作り出して所得税の軽減を図ることを目的とした仮装取引であると認められるから、重加算税の賦課決定処分は適法であるとした事例
裁決事例集 第61集 47頁
要旨
請求人は、会員権業者を介在させたゴルフ会員権を請求人の知人へ譲渡した本件取引において、請求人が知人の購入代金を立て替えるとともに担保として会員権を預かっていたとしても、何ら不自然なことはなく通常の取引であるから、仮装取引の認定は誤っている旨主張する。
しかしながら、[1]本件一連の取引後も、本件会員権は、その名義も保管形態もその取引前と変わらず請求人名義のまま同人によって保管され、請求人が本件ゴルフ場でメンバーとしてプレーし、年会費の支払いも請求人が負担していたことから、譲渡の実体を認めることができないこと、[2]取引の相手方である知人は、当該取引を実体のないものと認識していること、[3]請求人が立替金と称して支出した現金は、売却代金として請求人に還流したものであって、本件の一連の取引は経済的合理性に反するものであることから、本件会員権の譲渡に係る一連の行為は、譲渡損失を作り出して所得税の還付を受けるためになされた仮装行為と認めるのが相当である。
輸入貨物に係る消費税及び地方消費税の申告につき、意図的に過少申告することを認識した上で、正規の価格を示す書類を隠匿したものとは認められないと認定した事例(輸入申告に係る消費税及び地方消費税に係る重加算税の賦課決定処分・全部取消し)
裁決事例集 第97集
ポイント
本事例は、貨物の輸出者から送付されたインボイスに記載された貨物の価格が本来の価格に比し著しく低い金額であったため、輸入貨物に係る消費税等の申告が過少申告になったのであるが、かかる過少申告に事実の隠ぺいは認められないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、請求人が、機械部品(本件貨物)の輸入に際し、本件貨物の課税価格が輸出者から受領した各書類(本件各書類)に記載された金額であることを認識し、また、本件貨物に係るインボイス(本件インボイス)に記載された金額が現実に支払う金額より著しく過少であり、本件インボイスが課税価格の決定のための資料として不十分であることを認識していたにもかかわらず、本件貨物の輸入申告手続を依頼した通関業者(本件通関業者)に対して本件インボイスのみを送付し、あえて本件各書類を送付しなかったことは書類の隠匿に該当し、さらに、請求人にはこのことが事実を隠ぺいする行為であるとの認識があったのであるから、事実の隠ぺいがあったと認められる旨主張する。
しかしながら、請求人が本件インボイスを本件貨物の輸入申告手続に必要な書類と判断し、本件インボイスのみを本件通関業者に送付したとしても不自然な行動であったとは認められず、また、請求人が本件通関業者が作成する本件貨物の輸入に係る申告書の記載内容を意識した上で本件インボイスのみを送付したとまでは認められない。さらに、請求人が、本件の調査担当者に対し、本件インボイスのみならず、本件貨物の課税価格が記載された本件各書類も提示していたことを併せ考慮すると、請求人が本件通関業者に対し本件各書類を送付せず、本件インボイスのみを送付したことをもって、事実の隠ぺいがあったとは認められない。
参照条文等
仕入先との間の契約の解除に伴う解約料として支払った金員の額を損金の額に算入したことについて、隠ぺい又は仮装の行為があったとは認められないとした事例(平20.12.1から平21.11.30までの事業年度の法人税の重加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第99集
要旨
原処分庁は、請求人が、仕入先からの棚卸資産の購入に係る取引に関し、当該仕入先との間の契約の解除に伴う解約料として支払った金員の額(本件解約料)を損金の額に算入したことについて、請求人と当該仕入先との間に解約の合意はなく、契約が存続したまま当該棚卸資産の購入が継続されているにもかかわらず、請求人は、当該仕入先と通謀して虚偽の解約契約書及び関係書類を作成し、本件解約料を当該棚卸資産の取得価額に含めず期末棚卸高を算定したことに隠ぺい又は仮装の行為が認められる旨主張する。
しかしながら、請求人と当該仕入先との間では解約の合意は成立し、当該解約の合意に基づき当該金員が支払われたものと認められ、解約契約書は当該合意に基づき作成されたものと認められること、また、解約合意後に請求人と当該仕入先との間で行われた当該棚卸資産に係る取引に係る契約条件が当該解約の合意の時点では合意されておらず、その後に締結された新たな契約に基づき行われていることからすると、請求人が、本件解約料を当該製品の取得価額に含めず期末棚卸高を算定したことについて隠ぺい又は仮装の行為があったとは認められない。
参照条文等
要旨
請求人は、本件給料については、外注工賃に科目を変えていたため、経理担当者が単純に誤って源泉徴収を行わず、消費税及び地方消費税の申告の際にも、本件給料を課税仕入れとしていたものである旨主張する。
しかしながら、本件給料の経理に当たり、意図的に科目を偽り、外注工賃として継続的に処理することが企図されているのであるから、むしろ、本件給料について所得税の源泉徴収が行われず、あるいは課税仕入れとして税額控除の処理がなされることは、請求人において当然に予定されていたものとみるのが自然であって、当審判所の調査によっても、代表者が経理担当者に対して、税務上は本件給料を外注工賃勘定から給料手当勘定に訂正計上し、真実の給料支給の額に見合った源泉所得税を納付するなど、適法に処理するよう特段の指示をしたというような形跡もうかがわれない。
そうすると、経理担当者の単純な誤りによって、法定納期限までに源泉所得税が納付されず、また、消費税及び地方消費税の申告が過少申告となっていたとする請求人の当該主張は、採用することができない。
収支内訳書に虚偽記載をしただけでは、隠ぺい仮装があったとは認められないと判断した事例( 平成20年分から平成23年分の所得税の重加算税の各賦課決定処分、 平21.1.1から平23.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の重加算税の各賦課決定処分、 平成22年分の所得税の過少申告加算税の賦課決定処分、 平21.1.1から平23.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の無申告加算税の各賦課決定処分・ 一部取消し、 棄却)
裁決事例集 第100集
要旨
原処分庁は、請求人が、過少申告の意図に基づき、①得意先に対する売上金額を記載したメモの一部を破棄したこと、②平成18年分の所得税額を試算した際のメモと同様の原処分に係る各年分のメモを破棄したこと、③正確な収入金額等を容易に確認できたにもかかわらず、収支内訳書に根拠のない額を記載したことという一連の行為は、当初から所得等を過少に申告する意図であったことを外部からもうかがい得る特段の行動に当たり、重加算税の賦課要件を充足する旨主張する。
しかしながら、請求人に過少申告の意図があったことは認められるものの、上記①のメモについては、売上金は全て振り込まれ、しかもその入金のあった預金口座の通帳は保存されていたこと等からすると、請求人は当該メモ書を保存する必要がなくなったから廃棄した可能性が十分に考えられること、上記②のメモについては、そのようなメモを作成していた事実が認められないこと、上記③については、収支内訳書に根拠のない額を記載する行為は過少申告行為そのものであることから、原処分庁が主張する請求人の行為は、当初から所得等を過少に申告する意図であったことを外部からもうかがい得る特段の行動には当たらず、重加算税の賦課要件を充足しない。
要旨
請求人は、重加算税は故意に脱税の目的で積極的な不正行為をもって所得税をほ脱している場合に課されるものであり、売上げを除外した資金で取得した事業用資産の取得価額等を立証できなかったために修正申告した場合は、積極的な不正行為があったとはいえず、重加算税を賦課すべきでない旨主張する。
しかし、請求人は、売上除外に係る売掛帳及び請求書控等を別管理として関与税理士に提出せず、代金決済後に破棄し、除外売上金の決済手段として受領した約束手形又は小切手の一部を公表外預金口座で取り立てていることなどから、賦課要件となる事実を隠ぺいし、これに基づき納付すべき税額を過少に記載して、申告書を提出したものと認められ、国税通則法第68条第1項の規定に該当する。
なお、請求人は、原処分庁が除外売上金の使途について立証責任を負っているのであるから、事業用資産が存在しないこと又は個人的に費消したことを明らかにすべきである旨主張するが、除外売上金で事業用資産を取得していたか否かについては、その支出の支払先等が明らかになってはじめてその当否が判断できるのであるから、請求人が修正申告と異なる必要経費の存在を主張するからには、請求人自らがその必要経費に関し具体的な立証を行うべきである。
原処分庁は、被相続人が各同族会社に対する債権を放棄していないのに、各同族会社の(実質的)経営者である請求人が債権放棄があったとする経理処理をした上で相続財産からこれら債権を除外して相続税の申告をしたとして重加算税を賦課したが、上記債権の一部は被相続人が実際に債権放棄をした可能性が認められるとして、原処分庁の事実認定を否定した事例(平成23年12月相続開始に係る相続税の重加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第101集
要旨
原処分庁は、請求人は各同族会社(本件各会社)の経理処理を自由にできる自身の立場を利用して、被相続人からの債務免除等の事実がないにもかかわらず、本件各会社の帳簿において事実に基づかない各仕訳を行い、被相続人からの借入金の帳簿上の残高を減少させたものと認められるから、請求人のこのような行為は、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する「納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し」たことに該当する旨主張する。
しかしながら、請求人と被相続人との間で請求人が答述するような協議があった可能性を十分に認めることができることを前提にすると、当該各仕訳の一部は、当該借入金の額を減少させるという被相続人の意思に基づき行われた可能性が十分に認められることから、当該各仕訳に係る請求人の行為は、相続税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実を隠ぺいし、故意に脱漏し、あるいは故意にわい曲したものであるとまでは認められない。
参照条文等
要旨
請求人は、本件仕入れ等は事実であり修正申告書を提出したのは本意でなく、隠ぺい又は仮装により課税仕入れに計上したとする重加算税等の賦課決定処分は取り消すべきであると主張する。
しかしながら、本件仕入れ等の仕入先は請求人の代表者が実質的に経営していた法人であり、仕入を計上した時点でその仕入先は営業を停止し同社の工場も閉鎖されていたこと、仕入先の元従業員は、同工場が閉鎖された際に請求人の代表者が仕入先の重要書類や機械等を持ち出したと申述していることからすると、請求人が本件仕入れ等をするのが不可能であったと認められ、請求人は架空の本件仕入れ等を記載した納品書等をもって課税仕入れに計上し、消費税等の還付を受けたものと認められる。
無申告加算税に代えてなされた重加算税の賦課決定処分につき、事実を隠ぺいし、その隠ぺいされたところに基づき法定申告期限までに申告書を提出しなかったものとは認められないとして、同処分を全部あるいは一部取り消した事例(平成24年3月相続開始に係る相続税の 更正処分及び無申告加算税の賦課決定処分、 重加算税の賦課決定処分・ 全部取消し、 一部取消し)
裁決事例集 第102集
要旨
原処分庁は、原処分に係る調査時の被相続人の子ら(本件子ら)の申述等を根拠に、本件子らの間では、遅くとも法定申告期限までに、相続税の申告をしない旨の合意が成立しており、かかる合意に基づき、法定申告期限までに申告書を提出しなかったものであるから、請求人らが、事実を隠ぺい又は仮装し、その隠ぺい又は仮装したところに基づき法定申告期限までに申告書を提出しなかったことは明らかである旨主張する。
しかしながら、本件子らの申述等を含む本件の全証拠を総合しても、本件子らの間で、法定申告期限までに相続税の申告をしない旨の意思の合致があったとはにわかに認め難い。また、本件子らには、事前通知後、原処分庁の調査に積極的には協力しない旨の漠然とした合意が形成されていたことが認められ、調査の際、被相続人が証券会社との取引があった事実を秘匿するため、虚偽の答弁や香典メモの破棄行為という明らかな証拠隠滅行為に及んだことなど、相続財産を隠ぺいし、相続税を無申告で済ませようとする意図をうかがわせる一定の事情が認められるが、これらの事情は、いずれも、法定申告期限から約1年8月が経過した後の調査時点における言動等であって、事前準備を要するような計画的なものではなく、とっさにとった行動とも評価し得るものであり、その後直ちに証券会社との取引の事実を認め、遅滞なく期限後申告に応じていることから、相続財産を隠ぺいする態度、行動をできる限り貫こうとしたとまではいえない。したがって、請求人らが、相続税を申告しない意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき法定申告期限までに申告書を提出しなかったとまでは認められないから、事実を隠ぺい又は仮装し、その隠ぺい又は仮装したところに基づき、法定申告期限までに申告書を提出しなかったものとは認められない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁) 平成26年4月17日裁決(裁決事例集No.95)
請求人が専従者給与を支給したとして事業所得の金額の計算上必要経費に算入したことに隠ぺい・仮装の事実があったとして行った重加算税の賦課決定処分は適法であるとした事例
裁決事例集 第63集 63頁
要旨
請求人は、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する仮装、隠ぺいの事実は全くなく、重加算税の賦課決定処分は違法であり取り消されるべきである旨主張する。
しかしながら、請求人の妻が本件期間において請求人の事業に従事した時間がきん少であったことは、配偶者である請求人にとって明白な事実であり、請求人は、請求人の妻が専ら請求人の事業に従事していないこと及び本件専従者給与が本来請求人の妻に支給されるものではないことを十分認識した上で、請求人自身が開設したと認められる同人の管理する請求人の妻名義の預金口座に専従者給与相当額を振込み、請求人の妻に本件専従者給与を支払ったとして請求人の事業の必要経費に算入して所得金額を過少に計算し、確定申告を行ったものというべきであり、このことは、租税を不当に免れる目的をもって、故意に課税標準額等の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装したことに該当することは明らかである。
また、請求人が請求人の妻に支払ったとする本件専従者給与は、支給された側の請求人の妻自身も知らないものであり、請求人の妻の知らない口座に振り込むなどして請求人が実質的に預金等を管理し、運用を図っていたものと認められることからしても、請求人の妻への仮装の本件専従者給与の支給を作出したものであることは明らかである。
したがって、原処分庁が、国税通則法第68条第1項の規定に基づき行った各年分の所得税に係る重加算税の賦課決定処分は適法である。
生命保険金及び生命保険契約に関する権利の一部を故意に相続税の申告の対象から除外したものとは認め難いとした事例(平成24年12月相続開始に係る相続税の 重加算税の賦課決定処分、 更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・ 一部取消し、 全部取消し)
裁決事例集 第103集
ポイント
本事例は、請求人が生命保険金等の一部を申告しなかったことについて、相続税を当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたものとは認めることができないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、請求人が、生命保険金及び生命保険契約上の権利が相続税の計算の基礎となる財産であることを十分に認識しながら、生命保険契約の一部のみを申告した一方、関与税理士に対して5口の保険契約(本件各保険)に関する書類を提出せず、これらを申告しなかったことは、当初から課税標準等を過少に申告することを意図して、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をし、その意図に基づく過少申告をしたものと認められる旨主張する。
しかしながら、請求人は、①本件各保険の契約締結に関与していないこと、②相続開始の約4か月後に保険会社から教示を受けるまでは、本件各保険の2口について、相続に起因する保険金の支払請求手続ないし契約者等の変更手続の必要性を認識しておらず、保険会社から促されて受動的にこれらの手続を行ったものとみられること、③当初申告後に保険会社から連絡を受けるまでは、本件各保険の3口の存在を認識していなかったことがうかがわれることに加え、④当初申告書の作成過程で関与税理士に対し相続財産の計上漏れを指摘して訂正を求めるなど、正確な申告を行う姿勢を示していたこと、⑤原処分庁の調査担当職員から本件各保険の申告漏れを指摘された後、遅滞なく修正申告に応じていることに照らせば、請求人が、本件各保険を故意に当初申告の対象から除外したものとは認め難い。
したがって、請求人が、相続税を当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたものとは認めることができない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
被相続人が所得金額をことさら過少に申告した行為が国税通則法第70条第5項及び同法第68条第1項に該当し、被相続人の国税の納付義務を承継した請求人らが更正処分及び重加算税の賦課決定処分の対象となることを認めた事例
裁決事例集 第63集 86頁
要旨
請求人らは、被相続人には偽りその他不正の行為は存在しないから法定申告期限から3年を経過して行われた更正処分は違法であり、また、被相続人には仮装、隠ぺいの事実はないから重加算税の賦課決定処分は違法である旨主張する。
しかしながら、被相続人は、各月分の収入金額等を記載した書類から真実の所得金額を申告すべきことを十分認識しながら、当初からこれを過少に申告する意図の下、同書類上に印をするなどして特定した月分の合計金額のみを収入金額として記載した確定申告書を提出し、真実の所得金額の大部分を申告しなかったものと認められ、被相続人のこの行為は、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行為をした上、その意図に基づき所得金額をことさら過少にした内容虚偽の確定申告書を提出した場合に該当するから、被相続人の国税の納付義務を承継した請求人らに対する更正処分及び重加算税の賦課決定処分は適法である。
死亡保険金の一部を故意に相続税の申告の対象から除外したものとまでは認め難いとした事例(平成24年9月相続開始に係る相続税の 重加算税の賦課決定処分、 更正処分及び重加算税の賦課決定処分・ 一部取消し、 全部取消し)
裁決事例集 第103集
ポイント
本事例は、請求人が死亡保険金の一部を申告しなかったことについて、相続税を当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたものと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、請求人は、11口の死亡保険金を自ら受領しそのうち4口は当初申告しており、これらの死亡保険金全てを相続税額の計算の基礎とすべきことを認識していたと認められるから、その余の7口の死亡保険金(本件各無申告保険金)を受領した事実を隠ぺいする意図があったと推認されることや、調査担当職員に対し、本件各無申告保険金についても申告したと認識していた旨の虚偽の申述をしたことなどを総合考慮すると、本件各無申告保険金を当初申告から除外したことは、課税要件事実を隠ぺいしたところに基づくものである旨主張する。
しかしながら、請求人は、本件各無申告保険金をいずれも請求人名義の預金口座への振込送金により受領した上、調査の際には、調査担当職員からの求めに応じて、当該預金口座に係る預金通帳等を逡巡なく提示しているのであって、本件各無申告保険金の発見を困難ならしめるような意図や行動はうかがわれない。また、請求人が、調査担当職員から本件各無申告保険金の申告漏れを指摘されると、特段の抗弁をすることなく当該事実を認めており、修正申告の勧奨に応じて遅滞なく修正申告をしていることにも照らせば、本件各無申告保険金を故意に当初申告の対象から除外したものとまでは認め難い。これらによれば、請求人が、相続税を当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたものと認めることはできないから、本件各無申告保険金を当初申告の対象に含めなかったことが、課税要件事実の隠ぺい、仮装に基づく過少申告であるとは認められない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
要旨
請求人は、本件送金額につき、正当な取引価額に上乗せして本件取引先から支払を受けた預り金を返金したものであり、それを売上及び販売手数料にしたとしても課税標準額に影響せず、また、本件仲介契約書は、不慣れな担当者が社内説明のために作成したもので、脱税の目的のために作成されたものではないから、本件金員に係る重加算税の賦課(原処分)は違法である旨主張する。
しかしながら、本件取引に係る売買契約書、当時の取引担当者の答述等によると、請求人は、本件送金額について、本件取引の仲介の対価でなく、本件取引先の関係人個人に対して支払われる謝礼金であるとの認識を持ちながら、虚偽の仲介契約書を作成することにより、あたかも販売手数料を支出したかのように装って損金経理し、その結果、確定申告において交際費課税を免れたものと認められ、請求人のこれらの行為は、隠ぺい又は仮装の事実に基づいて納税申告書を提出していたときに該当するため、原処分は適法である。
太陽光発電設備の引渡しを受けた日を仮装したと認めることはできないとした事例(平25.4.1~平26.3.31の課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第103集
ポイント
本事例は、太陽光発電設備に係る請求書を請求人が作成したことについて争いはなく、その請求書の欄外に工事完了は課税期間の末日までとする旨記載されていたとの事実関係の下、請求人がこのような請求書を作成したことをもって太陽光発電設備の引渡しを受けた日を仮装したとはいえないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、請求人が太陽光発電設備の取得費を課税仕入れの対価の額に含めたことについて、請求人は、課税期間内に太陽光発電設備の設置工事(本件工事)が完了しないことを十分認識していたにもかかわらず、本件工事が課税期間の末日である平成26年3月31日までに完了する旨記載した内容虚偽の請求書(本件請求書)を作成したのであるから、太陽光発電設備の引渡しを受けた日を仮装したものというべきである旨主張する。
しかしながら、本件請求書は、飽くまで本件工事の代金を請求する書面であって、太陽光発電設備の引渡しに係る書面ではない上、本件請求書が平成26年1月31日付で作成されていることからすれば、「工事完了は3月31日までとする」との記載は、工事完了の予定日が記載されたものとみるほかなく、請求人が本件請求書を作成したことをもって太陽光発電設備の引渡しを受けた日を仮装したと認めることはできない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
要旨
請求人は、原処分庁が仮装、隠ぺいについて故意の存在を立証することなく重加算税を賦課していること、本件修正申告書が本件調査において推計の方法により算定された売上除外金額に基づいて提出されたものであることから、本件賦課決定処分は違法である旨主張する。
しかしながら、請求人の妻は、売上金、売上伝票等からほぼ正確な売上金額を把握していたにもかかわらず、従業員に仮にレジを締めさせその後の売上を除外するなどの方法により、売上金額を過少に記載した日計表を作成していた旨申述しており、当該申述は従業員の申述とも符合し信ぴょう性が認められる上、請求人は、平成2年以降継続して公表外給料を支払っていたこと及び直近5年分の売上除外割合等により推計の方法で算定された本件各年分の売上除外額について、その事実を認めて修正申告書を提出していることを併せ考えると、直近5年分と同様に、従業員に仮にレジを締めさせ、その後の売上を除外した日計表を作成し、それに基づき過少申告していたと認めるのが相当である。そうすると、請求人は、売上を除外する意図の下に事実を隠ぺいし、これに基づき納付すべき税額を過少に記載して、内容虚偽の確定申告書を提出したものと認められ、請求人のこれらの行為は、国税通則法第68条第1項に該当する。
また、同項には、その適用に当たって推計による課税標準等を除くことが規定されていない以上、課税標準等が実額計算によるものか推計計算によるものかを問わないものと解するのが相当である。
相続財産である各預金口座を隠ぺいし、秘匿しようという確定的な意図、態勢の下に、計画的に相続税の申告書を提出しなかったとまではいえないとした事例(平成24年11月相続開始に係る相続税の重加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第103集
ポイント
本事例は、請求人が、相続に関する原処分庁の照会に対して被相続人名義の各預金口座の存在を回答せず、相続税調査の初期においても上記回答に沿った申述するなど、当該各預金口座の存在を隠した事実は認められるものの、これらの行為をもって、隠ぺい又は仮装の行為と評価することは困難であるなどとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、被相続人が、生前、同人名義の各預金口座の存在を原処分庁に容易に知り得ない状況を作出するとともに、請求人に対して当該各預金口座は申告する必要はないと指示しており、請求人が、その意図を十分に理解して、当該各預金口座を記載しない「相続についてのお尋ね」(本件お尋ね回答書)を原処分庁に提出するとともに、原処分庁所属の職員に対しても、その記載に沿った申述を行った後、その存在を把握されるに至って、当該職員から指摘された口座についてのみ段階的にこれを認める行為を繰り返したのであるから、国税通則法第68条《重加算税》第2項に規定する隠ぺい又は仮装の事実がある旨主張する。
しかしながら、無申告加算税に代えて重加算税を課す場合、法定申告期限の前後を含む、外形的、客観的な事情を合わせ考えれば、真実の相続財産を隠ぺいし、秘匿しようという確定的な意図、態勢の下に、計画的に納税申告書を提出しなかったときには、重加算税の賦課要件を満たしていると解するのが相当である。これを本件についてみると、請求人は、相続税の法定申告期限後において、当初、当該各預金口座の存在を隠す申述をしているものの、当該職員から指摘されるとその存在を認めており、当該各預金口座を隠す態度を一貫していたとはいえない上、当該各預金口座が発見されるのを防止するなど積極的な措置を行っていないことからすれば、本件お尋ね回答書の提出及び当該各預金口座を隠していたことを、隠ぺい又は仮装と評価するのは困難である。そして、このほか、請求人が、法定申告期限の前後において、積極的な隠ぺい又は仮装の行為を行っていないことからすれば、法定申告期限経過時点において、相続税の調査が行われた場合には、積極的な隠ぺい又は仮装の行為を行うことを予定していたと推認することはできない。
したがって、請求人は、当該各預金口座を隠ぺいし、秘匿しようという確定的な意図、態勢の下に、計画的に相続税の申告書を提出しなかったとまではいえないから、重加算税の賦課要件を満たさない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成6年11月22日第三小法廷判決(民集48巻7号1379頁)
請求人に帰属する歯科医業に係る所得を、請求人の親族に帰属するがごとく装うために親族名義の確定申告書及び決算書を税務署長に提出したことが、国税通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装に当たると判断した事例
裁決事例集 第67集 57頁
要旨
本件事業は、請求人の親族の名義で行われているが、当該親族は、医院の経営に関与せず、毎月定額の報酬を受領しているのみで、本件事業から生じた収入金額を費消したとは認められず、一方、請求人は、本件事業の遂行上生じた収入金額を請求人名義の預金口座に入金し、この金員を費消していることから、請求人が本件事業を経営し、その収益を享受していると認められるので、本件事業の遂行上生じた所得は、請求人に帰属すると認められる。
請求人は、収入金額の一部を隠匿し、また、架空の経費を計上することにより所得金額を過少に申告したことに加え、本件事業の遂行上生じた所得が自己に帰属するにもかかわらず、親族に帰属するがごとく装うため同人に秘して、同人名義の所得税の確定申告書及び所得税青色申告決算書を税務署長に提出したことは、本件各年分において税額を免れる意図の下に事実を隠ぺいし、又は仮装したところに基づき申告したものと認められる。
当初から所得を過少に申告する意図を有していたと認められるものの、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動を認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例(平成19年分から平成24年分までの所得税並びに平成25年分の所得税及び復興特別所得税の重加算税の各賦課決定処分、平成19年1月1日から平成25年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の重加算税の各賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第104集
ポイント
本事例は、事業所得を秘匿した内容虚偽の所得税の確定申告書の提出など、当初から所得を過少に申告することを意図して行われたものと認められるものの、請求人が事業所得を秘匿するためにあえて帳簿を作成しなかったとまでは断定し難い上、請求人の営む事業に関するその余の行為においても、過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動を見いだすことはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、請求人は、請求人の営む事業(本件事業)で多額の利益が生じており、当該利益は帳簿書類を作成し確定申告をすべき金額であることを十分に認識していながら、債務弁済や利殖のために税を免れることを意図し、その意図に基づいて本件事業に係る帳簿書類をあえて作成せずに、7年間にわたって本件事業に係る多額の収入金額を一切記載しない内容虚偽の所得税等の確定申告を行うとともに、消費税等についてあえて申告していなかったものと認められるのであって、これら請求人の一連の行為は、請求人が当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき過少申告等をしたものと認められるから、請求人は、国税通則法第68条《重加算税》第1項及び第2項に規定する課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部の隠ぺいを行った旨主張する。
しかしながら、請求人が、所得税等の確定申告に際し、本件事業に係る所得を全て秘匿して、給与所得及び株式等に係る譲渡所得等のみを記載した内容虚偽の確定申告書を提出し、本件事業に係る所得を申告しなかったこと、また、本件事業に係る収入等につき消費税等の申告をしなかったことは、当初から所得を過少に申告する意図、又は法定申告期限までに申告しないことを意図して行われたものと認めるのが相当であるものの、請求人が本件事業に関する正当な収入金額、必要経費及び所得金額を秘匿するためにあえて帳簿を作成しなかったとまでは断定し難い上、審判所の調査によっても、本件事業に関する請求人のその余の行為において、過少申告等の意図を外部からもうかがい得る特段の行動などを見いだすことはできない。
したがって、原処分庁が主張する請求人の行為は、過少申告等の意図を外部からもうかがい得る特段の行動とは評価することができないものであり、請求人の所得税等及び消費税等について、重加算税を賦課することはできないものといわざるを得ない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
隠ぺい行為と評価できる状況を是正する措置が採られた前後の期間があるにもかかわらず、是正する措置を採らなかった期間分について、隠ぺい行為と評価できる事実に基づき申告書を提出した場合に、重加算税の賦課要件を満たすとした事例
裁決事例集 第69集 31頁
要旨
請求人は、前回対象期間と同じく、本件期間においても、車検代行手数料が請求人の益金の額になるものであることを十分認識しながら、顧客から収受する車検費用(自賠責保険料、自動車重量税および請求人の収益である車検代行手数料の合計額)の大半が顧客からの預り金であること、また車検代行手数料を請求する請求書と主たる事業収入である整備売上げの請求書とが別葉で収受の形態が異なることなどの取引の特異性を利用し、意図的に、これを収受した事実を請求人の経理処理に反映することなく、収益の額に計上したかったものであり、このことは隠ぺい仮装と評価すべき行為を行っていたものと認めるのが相当であるところ、請求人は、本件申告書を提出するまでに過少の状況を是正しようとすればそれが可能であったのに、上記隠ぺい仮装により生じた状況を是正するための具体的な方策及び措置をとった事実はみとめられず、よって、本件申告書は隠ぺい仮装したところに基づき提出されたものと認めるのが相当である。
収入金額の一部が計上されていない試算表を作成した行為は、隠ぺい、仮装と評価すべき行為に該当するとは認められないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例( 平成25年分の所得税及び復興特別所得税の重加算税の賦課決定処分、 平成25年1月1日から平成25年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の重加算税の賦課決定処分・ 一部取消し)
裁決事例集 第107集
ポイント
本事例は、一部の業務に係る収入金額を除く一方当該業務に係る必要経費の一部を加えて作成された試算表は、確定申告義務が生じないことの説明資料として作成されたものとは認められないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、請求人は、建築設計業務のほか風俗業を営むことによって多額の利益が生じていることを認識しつつ、風俗業を行っていた複数の店舗のうちの一部の店舗に係る業務(本件独自業務)について、その収入金額を除く一方必要経費の一部を加えた試算表(本件試算表)を作成しているところ、本件試算表は、本件独自業務に係る収入金額を除外するともに、本件独自業務以外の業務において損失が生じているという虚偽の内容を記載することにより、所得金額が生じていないという状況を意図的に作出し、確定申告義務がないことの説明資料として作成されたものといえるから、請求人は、本件独自業務に基因する事業所得の金額を隠ぺいして確定申告書を提出しなかったものと認められる旨主張する。
しかしながら、本件試算表は、請求人が顧問契約の締結を検討していた税理士法人(本件税理士法人)によって作成されたものであるところ、請求人は、本件独自業務に係る売上げを記載した手帳の提示などをせず、本件税理士法人に試算表を作成させたと認められるものの、その後原処分調査までの間に、本件税理士法人に対して本件独自業務を行っていることを述べていることや、原処分調査の際、自ら進んで本件試算表を示して確定申告義務がないとの説明をしたこともなかったことなどを考慮すると、本件独自業務に係る収入金額を申告しないという意図を有していたとか、所得金額が生じない状況を意図的に作出したものとは認められず、本件試算表の作成は、請求人による隠ぺい、仮装と評価すべき行為に該当するとは認められない。
参照条文等
本件相続税の申告に際し、当初から財産の過少に申告することを意図した上、その意図を外部からもうかがい得る特段の行為をしており、重加算税の賦課要件を満たすとした事例
裁決事例集 第69集 46頁
要旨
請求人は、[1]被相続人の預貯金の通帳、印鑑等の保管場所及びその金額を請求人の妻から聞いて知っていたこと、[2]被相続人の死亡の2日前に、請求人の妻に現金出金を指示して2,000万円を引き出していること、[3]本件申告の約2か月前ころのほぼ同一時期に、本件相続財産である被相続人の他の預貯金6口座とともに残高証明を入手し、その後まもなくの時期に、本件定期預金の存在を依頼した税理士に知らせないまま、本件定期預金の漏れを是正する再三の機会があったにもかかわらず是正しないまま同税理士を含めて他の共同相続人と遺産分割協議をなし、本件申告に至った事実が認められ、本件定期預金が被相続人の相続財産として存在すること、および本件定期預金が申告書に記載されていないことを十分認識していたことが認められる。このことは、請求人が、当初から相続財産を過少に申告することを意図した上、その意図を外部からもうかがいえる特段の行動をしたものであり、その意図に基づいてなした請求人の本件過少申告行為は、国税通則法68条第1項の重加算税の賦課要件である「納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたこと」に当たる。
当初から所得を過少に申告する意図を有していたと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例( 平成22年分の所得税に係る過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、 平成23年分から平成26年分の所得税等に係る重加算税の各賦課決定処分、 平成22年1月1日から平成22年12月31日までの課税期間の消費税等に係る重加算税の賦課決定処分、 平成23年1月1日から平成26年12月31日までの各課税期間の消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分・ 全部取消し、 一部取消し)
裁決事例集 第108集
ポイント
本事例は、請求人が当初から所得を過少に申告する意図を有していたことを推認させるものとまではいえず、その他、請求人の上記意図を認めるに足りる証拠はないとして、重加算税の賦課要件を満たさないと判断したものである。
要旨
原処分庁は、請求人が、①特定の取引先(本件取引先)からの報酬等(本件収入)が請求人の事務所名義の預金口座(本件預金口座)に入金されていたと認識していたにもかかわらず、関与税理士に対し、本件預金口座に係る通帳(本件通帳)を提示しておらず、また、②調査担当職員から本件収入の申告漏れを指摘されるまで、調査担当職員に対して本件通帳を提示しなかったことからすると、請求人は、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたものと認められるから、重加算税の賦課要件を満たす旨主張する。
しかしながら、請求人は、①本件取引先が源泉徴収を行った後、本件収入は本件預金口座以外の預金口座に振り込まれているとの誤解の下、関与税理士に対し、手持ちの源泉徴収票及び支払調書に加えて本件通帳以外の通帳を提示することにより、本件収入についても適正に申告していると誤解していたものと考える余地があり、また、②調査担当職員に対して本件預金口座の存在を殊更隠ぺいしようとしたとは考え難く、本件通帳以外の通帳を提示すれば問題ないと考えて本件通帳を提示しなかったものとみる余地があるから、原処分庁が主張する事情は、請求人が当初から所得を過少に申告する意図を有していたことを推認させるものとまではいえず、その他、請求人の上記意図を認めるに足りる証拠もないから、重加算税の賦課要件を満たさない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
納税者と関与税理士との間において、課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実を隠ぺいし又は仮装することについての意思の連絡があったものと認められるとして、重加算税の賦課決定処分を認容した事例
裁決事例集 第70集 34頁
要旨
請求人は、航空貨物運送に関する清算業務等に係る経費を繰上計上したこと及び割戻料収入の計上を繰り延べたことに関して、証ひょう書類を改ざんした事実など、国税通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装の事実はなく、法人税の重加算税賦課決定処分は違法である旨主張する。
ところで、国税通則法第68条第1項の「事実を隠ぺいする」とは、納税者がその意思に基づいて、課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実を隠匿しあるいは脱漏することをいい、「事実を仮装する」とは、納税者がその意思に基づいて、所得、財産あるいは取引上の名義に関し、あたかも、それが真実であるかのように装うなど、事実をわい曲することをいうと解され、また、納税者が納税申告を第三者に委任し当該第三者が隠ぺい・仮装行為に基づく申告をした場合において、納税者と当該第三者との間において、その国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装することについての意思の連絡があったものと認められれば、納税者に対する重加算税の賦課要件を充足するものというべきである。
そうすると、請求人の代表者は、関与税理士に平成15年3月期(以下「本件事業年度」という。)の所得金額の操作を依頼し、関与税理士は、この依頼に基づき、平成16年3月期の当該費用をあたかも本件事業年度の経費であるかのごとく、事実を仮装した上で繰上計上し、また、割引料収入が本件事業年度の収益となるべき事実を隠ぺいした上で、当該割引料収入を平成16年3月期の収益に繰り延べたものであり、請求人と関与税理士との間において、当該経費及び割引料収入に係る事実を隠ぺい又は仮装することについての意思の連絡があったものと認められる。
したがって、請求人が、関与税理士を介して、当該経費を繰上計上したこと及び当該割引料収入の計上を繰り延べた上で、本件事業年度の法人税の確定申告書を提出したことは、国税通則法第68条第1項の規定に該当することとなり、請求人の主張には理由がない。
当初から申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかったものと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例(平成27年分の所得税及び復興特別所得税に係る重加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第110集
ポイント
本事例は、請求人が、換地不交付に対する清算金を受領した事実を秘匿するため、あえて当該清算金に係る書類を確定申告会場へ持参しなかったとの事実を認めることはできないなどとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、請求人が、土地区画整理組合から受領した換地不交付に対する清算金(本件清算金)について、確定申告をしなければならないことを十分認識していたにもかかわらず、原処分に係る調査において、本件清算金を受領した事実を秘匿するためにあえて本件清算金に係る書類を確定申告会場へ持参しなかった旨申述していることなどからすれば、当初から課税標準等及び税額等を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかったものと認められる旨主張する。
しかしながら、請求人の当該申述の内容は、合理性、具体性に乏しく、審判所の調査及び審理の結果によってもこれを裏付ける客観的な証拠は認められず、請求人が本件清算金を受領した事実を秘匿するためにあえて本件清算金に係る書類を確定申告会場へ持参しなかったとの事実を認めることはできないなど、請求人が、当初から申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかったものと認めることはできない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
所得税の申告に際し、あたかも土地を有償により譲渡したかのように事実を仮装し、その仮装した事実に基づき架空の譲渡損益を計上し、納付すべき税額を過少に記載した内容虚偽の確定申告書を提出したことが重加算税の賦課要件を満たすとした事例
裁決事例集 第70集 73頁
要旨
本件両土地に係る売買代金等の決裁は、金融機関からの請求人の妻及び長女名義の借入金によりそれぞれ行われているところ、当該借入金は、請求人名義の当座預金から振り出された小切手により預け入れられた定期預金を担保として借り入れられたものであり、さらに当該借入金は、請求人が、請求人の預金が化体した請求人の妻名義の定期預金を解約するなどして返済している。そうすると、本件両土地の売買代金等の決裁は、単に請求人が自己の資金を請求人の妻及び長女名義で使用した取引で還流させることにより創出したものであり、本件両土地の売買に関して代金の授受はなかったものと認められより預け入れられた定期預金を担保として借り入れられたものであり、さらに当該借入金は、請求人が、請求人の預金が化体した請求人の妻名義の定期預金をる。また、本件両土地の取引については、請求人自らの意思のみに基づき本件土地合意書を作成し、かつ本件両土地の購入代金に係る金融機関との借入れ、返済の事実関係を請求人がすべて現出させ、さらに本件両土地の管理状況等も取引の前後において変化がなく、乙土地の収益を自己の所得として確定申告していることが認められる。
したがって、請求人は、あたかも本件両土地を有償により譲渡したかのように事実を仮装し、その仮装した事実に基づき架空の譲渡損益を計上し、納付すべき税額を過少に記載した内容虚偽の確定申告書を提出したものと認められる。
よって、本件過少申告行為は、国税通則法第68条第1項の重加算税の賦課要件である「納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたこと」に当たる。
相続税の申告に際して、相続財産である被相続人名義の投資信託を申告しなかった行為について、当初から相続財産を過少に申告することを意図した上、その意図を外部からもうかがい得る特段の行為をしており、重加算税の賦課要件を満たすとした事例
裁決事例集 第72集 41頁
要旨
納税者が申告に際し、自己が依頼した税理士に対して必要資料等を秘匿した場合も、「当初から財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をした場合」に当たると解される。
本件において、請求人は、相続税申告書の作成依頼先である税理士から資料の提出を指示されていたのであるから、同税理士に相続財産を示す適切な資料を提供するべき立場にあり、また、請求人は本件被相続人の相続財産として本件投資信託が存在したことを確実に認識していたと認められ、かつ、四半期ごとの本件投資信託の取引残高報告書の送付、本件投資信託の名義変更、遺産分割協議及び遺産分割協議書の作成という各出来事ごとに、同税理士に対して、本件残高証明書を渡す機会があったと認められるから、本件残高証明書を同税理士に渡さなかった請求人は、同税理士に提出した資料に係る財産が相続財産のすべてであり他にはないかのように装うことによって、同税理士をして本件投資信託を漏らして過少な相続税額が記載された本件当初申告書を作成させたものと認められる。
したがって、請求人は、当初から財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたものというべきであって、重加算税の賦課要件は充足されている。
税理士交付用として相続財産の一覧表を作成した行為は隠ぺい又は仮装の行為に当たらないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例(平成26年5月相続開始に係る相続税の重加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第110集
ポイント
本事例は、相続税の申告に当たり請求人が税理士へ交付した相続財産の一覧表は、あえて相続財産の一部を記載せずに作成されたものと推認することはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、請求人は、相続財産を正確に把握していたにもかかわらず、あえて一部の保険金(本件各無申告保険金)及び遺族一時金(本件遺族一時金)を記載せずに相続財産の一覧表(本件税理士提出用一覧表)を作成し、相続税の申告に当たってこれを税理士に交付したものであり、請求人が本件税理士提出用一覧表を作成した行為は、国税通則法第68条《重加算税》第2項に規定する隠ぺい行為に当たる旨主張する。
しかしながら、本件各無申告保険金及び本件遺族一時金が振り込まれた請求人名義の各口座は、いずれも原処分庁においてその存在を容易に把握し得るものであることに加え、本件税理士提出用一覧表は上書入力を繰り返し行ったために本件遺族一時金の記載が消えてしまった旨の請求人の説明は、一応合理的であることなどからすれば、請求人が、あえて本件各無申告保険金及び本件遺族一時金を記載せずに本件税理士提出用一覧表を作成したとの事実を推認することはできず、ほかにこの事実を認めるに足りる証拠はない。したがって、請求人が本件税理士提出用一覧表を作成した行為は、同項に規定する隠ぺい又は仮装の行為に当たらない。
参照条文等
当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったことをうかがわせる事情は見当たらないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例(平成27年5月相続開始に係る相続税の重加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第110集
ポイント
本事例は、請求人らが、相続手続等を依頼した弁護士に対し、法定申告期限前に相続財産の内容等が記録されているUSBメモリを交付していたと認められるなどとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、請求人らは、有価証券及び現金預貯金等を相続財産として申告しなければならないことを十分認識していたにもかかわらず、相続手続等を依頼した弁護士(本件弁護士)に対し、相続税を安くする目的で相続財産の内容等が記録されているUSBメモリ(本件USBメモリ)を交付せず、また、請求人らが相続開始直前に被相続人の預金口座から出金した現金(本件現金)の存在も伝えなかったのであり、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づき過少申告をしたものと認められるから、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たす旨主張する。
しかしながら、請求人らは、本件弁護士に対して法定申告期限前に本件USBメモリを交付していたものと認められ、また、本件現金の存在を本件弁護士に秘匿するためにその事実を伝えなかったと評価することはできず、その他、当審判所の調査及び審理の結果によっても、請求人らに、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったことをうかがわせる事情は見当たらないから、同項に規定する重加算税の賦課要件は満たさない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁) 平成27年10月2日裁決(裁決事例集No.101)
所得税の重加算税の賦課決定について、納税申告書の提出等の時点において、納税者が課税庁等に対し、自己が行った隠ぺい又は仮装の事実を知らせていたとしても、重加算税の課税要件には何ら影響しないとした事例
裁決事例集 第73集 64頁
要旨
請求人及び請求人の親族が本件物件を居住の用に供していないにもかかわらず、請求人は本件特例を適用する意図を持って、本件物件に居住しているAらの住民登録のみを異動させた旨自認し、また請求人及びEの住民登録を本件住所に異動し、住民票の除票等を本件確定申告書に添付することにより、本件物件を自己の居住用と仮装したことが認められ、これらの行為は、国税通則法第68条第1項に規定する「隠ぺい又は仮装」に該当する。
なお、請求人は、本件譲渡所得に関する相談の際に、Eが本件相談担当者に対し、請求人及び請求人の親族が本件物件に居住していなかったこと及び本件特例を適用するために請求人及びEの住民登録を本件住所に異動したことを説明しているから、国税通則法第68条第1項に規定する「隠ぺい又は仮装」の事実はこの時点でなくなったものであると主張する。
しかしながら、重加算税については、「隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出した」という国税通則法第68条第1項所定の課税要件を充足することにより成立するのであり、たとえ、納税申告書の提出時点において、納税者が課税庁等に対し、その隠ぺい又は仮装の事実を知らせていたとしても、重加算税の課税要件に何ら影響を与えるものではないから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
要旨
請求人は、N社が施行した建築工事等に係る本件建物附属設備等の見積金額を同社から調達する器具・備品等の見積金額に上乗せさせる方法で、リース取引の目的とする資産の全てが器具・備品等であるかのように事実を仮装した内容のリース会社用各見積書等を同社に作成させることにより、リース不適格資産(リース取引により売買があったものとされる資産)をリース適格資産(リース取引により賃貸借があったものとされる資産)に仮装し、その内容で各リース会社とリース契約を締結してリース料を損金の額に算入し、また、消費税の仕入税額控除をしていたものである。
したがって、請求人の行為は、国税通則法第68条第1項にいう「課税標準の計算の基礎となる事実に一部を仮装した」ことに該当するというべきである。
また、請求人は、リース取引の目的とした資産の金額に本件建物附属設備等の金額が含まれていること等を知りながら損金算入や仕入税額控除に及んだのであって、隠ぺい又は仮装の故意があることは明らかであり、それ以上に請求人が過少申告を行うことの認識まで有していることは重加算税の賦課要件ではないから、税金を不当に軽減する意図はなかったから故意がないとする旨の請求人の主張には理由がない。
支払った金員に係る領収証の名目を書き直させた行為は、当該金員が譲渡費用に該当しないことを認識していたと認めるに足りる証拠はないから隠ぺい又は仮装をしたものとはいえないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例( 平成26年分の所得税等の修正申告に係る重加算税の賦課決定処分、 平成26年分の所得税等の更正処分、 平成26年分の所得税等の重加算税の賦課決定処分・ 一部取消し、 棄却)
裁決事例集 第110集
ポイント
本事例は、請求人が農地の借主(本件借主)に支払った金員(本件金員)について、譲渡費用に該当しないことを認識していたことを認めるに足りる証拠はないから、本件借主に本件金員に係る領収証の名目を離農補償金と書き直させたことは、隠ぺい又は仮装をしたものとはいえないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、請求人が農地の借主(本件借主)に支払った金員(本件金員)について、譲渡費用にならないことを認識しながら、領収証の名目を離農補償金と書き直させたことは、国税通則法第68条《重加算税》第1項にいう隠ぺい、仮装に当たると主張する。
しかしながら、請求人が本件借主に農地法上の耕作権がないことを知っていたとしても、そのことをもって直ちに、本件借主との間の貸借状態解消のために支払った本件金員が譲渡費用にならないことまで認識していたとはいい難い。また、その他、請求人が本件金員が譲渡費用に該当しないことを認識していたことを認めるに足りる証拠はないから、請求人が同項にいう隠ぺい又は仮装をしたものとはいえない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成23年6月7日第三小法廷判決(民集65巻4号2081頁) 最高裁平成18年4月20日第一小法廷判決(集民220号141頁) 最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁) 最高裁昭和41年10月27日第一小法廷判決(民集20巻8号1649頁) 東京地裁平成17年9月9日判決(訟月52巻7号2349頁)
委託した工事が課税期間中に完了していないことを認識していたにもかかわらず、工事業者に対して課税期間中の請求書の発行を依頼した上、工事が課税期間中にあったものとして消費税等の納付すべき税額を算出していた場合に、税額の基礎となる事実を仮装していたものと認定した事例
裁決事例集 第75集 93頁
要旨
請求人が工事業者に依頼した請求書は納品書を兼ねていること、請求人において契約した工事は、通常、完了する前に当該工事に係る請求書を受け取ることはないことなどを併せ考えれば、本件各請求書については、請求人における経理処理上、単に工事業者に対する金銭の支出の基準となる書類であるのみならず、本件各工事が完了したかどうかの判定の基準となる書類、すなわち、消費税の課税仕入れの帰属時期を確定する際の必要かつ重要な証ひょう類でもあったと認められる。
請求人の本件各現場担当者が本件各工事の担当者に本件各請求書の発行を依頼した目的は、請求人における経理処理上、本件各工事の完了時期の判定基準となる書類である本件各請求書を平成17年3月31日までに徴することにより、同日までに本件各工事を完了したものとして処理し、請求人の平成16年4月1日から平成17年3月31日までの事業年度における本件各工事に係る予算を消化することにあったと容易に推認できる。
これらのことからすると、本件各現場担当者が、本件各工事が明らかに完了していないことを認識していたにもかかわらず、本件各工事業者に対し、本件課税期間中の日付の請求書の発行を本件各工事に係る予算を本件事業年度内に消化させようとする明確な意図に基づいて依頼したことは、本件各工事が平成17年3月31日までに完了してなかった事実を同日までに完了したごとく仮装したものと認めるのが相当である。
そして、請求人は、受領した本件各請求書が本件各工事の完了日を仮装したものであるとの認識のもと、これに基づき本件各工事について課税仕入れを行った日が本件課税期間中にあったものとして消費税等の納付すべき税額を算出し、過少申告となる本件確定申告書を提出したものと認められる。
当初から相続税を過少に申告する意図を有していたと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例( 平成26年2月相続開始に係る相続税の各修正申告に係る重加算税の各賦課決定処分、 平成26年2月相続開始に係る相続税の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、 平成26年2月相続開始に係る相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、 全部取消し、 一部取消し、 棄却)
裁決事例集 第110集
ポイント
本事例は、請求人らが当初から相続税を過少に申告する意図を有していたとか、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとは認められないとして、重加算税の賦課要件を満たさないと判断したものである。
要旨
原処分庁は、請求人らは、請求人らが相続開始直前に被相続人名義の預貯金から引き出した金員(本件金員)について、相続財産であることを十分認識していながらこれを遺産分割協議書に記載せず、また、相続税の申告書(本件申告書)を作成した税理士(当初申告代理人)に対し、被相続人名義の預貯金通帳の提示等をすることなく、本件申告書に記載された各預金口座の残高証明書のみを提示することにより、過少な相続税額が記載された本件申告書を作成させてこれを提出したものと認められるから、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づく過少申告をしたと認められる旨主張する。
しかしながら、請求人らが、本件金員が被相続人の財産であることを十分認識していたと認めるのは困難である上、当該遺産分割協議書及び本件申告書の作成に当たり、当初申告代理人に対し、被相続人名義の預金口座の残高証明書のみを提示したのは、当初申告代理人から預貯金通帳の提示や本件相続開始前後の入出金についての説明を求められなかったからであり、このことにより、過少な相続税額が記載された本件申告書を作成させたとは認められず、原処分庁の主張を根拠付ける証拠も見当たらない。そうすると、請求人らが、当初から過少に申告する意図を有していたとか、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとは認められず、その他、当審判所の調査によっても、請求人らについて、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する隠ぺい又は仮装の行為があったとは認められない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
課税負担を軽減する目的で兄弟会社に対する債務引受による債権放棄を行ったとしても、直ちにその経済的利益の額は寄附金の額とはならないことから、確定申告が事実を隠ぺい又は仮装をしたものとはいえないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例(平成24年3月1日から平成25年2月28日まで及び平成25年3月1日から平成26年2月28日までの各事業年度の法人税に係る重加算税の各賦課決定処分、平成25年3月1日から平成26年2月28日までの課税事業年度の復興特別法人税に係る重加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第111集
ポイント
本事例は、いわゆる兄弟会社において、その債務を引き受けたことによる債権放棄をして貸倒損失として損金の額に算入したことについて、請求人が課税軽減目的を有していたからといって、法人税基本通達9-4-1によれば、兄弟会社の債務引受等であっても相当の理由がある場合には寄附金の額に該当しないことから、直ちに請求人が計上した貸倒損失について寄附金の額に該当すると認識していたとは認められないことを理由として、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、請求人がいわゆる兄弟会社(本件分割法人)の債務を引受け、当該債務引受けによる債権を放棄して貸倒損失として損金の額に算入したことについて、請求人における課税負担を軽減する目的で、本件分割法人の解散、請求人による債務引受けや債権放棄、本件分割法人の特別清算などの一連の行為(本件分割法人整理)を検討したことなどからすると、請求人は当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づいて法人税の確定申告(本件確定申告)をしたから、本件確定申告は事実を隠ぺい又は仮装したところに基づくものである旨主張する。
しかしながら、法人税基本通達9-4-1《子会社等を整理する場合の損失負担等》によれば、兄弟会社の債務引受け等であっても、そのことについて相当の理由があると認められる場合には、その債務引受け等により供与する経済的利益の額は、寄附金の額に該当しないことから、支援者が課税負担を軽減する目的で当該債務引受け等を行ったことのみをもって、直ちに当該債務引受け等により供与する経済的利益の額が、寄附金となるものではないというべきであり、原処分庁が主張する本件分割法人整理に係る上記各事実をもって、直ちに請求人が計上した貸倒損失について寄附金の額に該当することを認識していたとは認められず、その他、請求人にそのような認識があったことを認めるに足りる証拠はないから、本件確定申告は、事実を隠ぺい又は仮装したところに基づくものであるとは認められない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193号)
要旨
請求人は、K等の屋号による取引については自分の取引であると認めていない旨主張するが、ダンボール箱の仕入数量と請求人屋号での使用数量の開差からして請求人が請求人屋号以外で露地果物Uの取引を行っていることは明らかであり、請求人屋号による取引に係る出荷伝票とK等の屋号の取引に係る出荷伝票の筆跡は同一であると認められるほか、請求人はM社からの仕入口座を2口座に分けて取引を行っている理由について合理的な説明をしないこと及び請求人は、当審判所に対して、仮名取引はないとはいえない旨答述していることなどを総合して判断すると、K等の屋号による取引は請求人が行った取引であると認められる。
そうすると、K等の屋号による取引は請求人が行った仮名による取引と認められ、その売上げを請求人の収入金額とせず、過少に納税申告書を提出していた事実は国税通則法第68条第1項及び第2項に規定する課税標準等又は税額等の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときに該当する。
第三者が作成した内容虚偽の確定申告書の作成行為について、請求人の行為と同視することはできないとした事例(平成27年分の所得税及び復興特別所得税に係る重加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第112集
ポイント
本事例は、請求人が不動産を購入する際、その不動産販売を代理した法人の従業員が不動産の取得時期等について、事業年度の異なった確定申告書等を作成し、請求人が当該申告書等に押印をして原処分庁に提出をしたところ、当該法人の従業員の行為は請求人の行為と同視することはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、請求人の不動産購入の販売代理をした法人の従業員ら(本件従業員ら)が作成して請求人が提出した内容虚偽の確定申告書等(本件申告書等)について、請求人が本件従業員らにこれらの作成を持ちかけた、そうでなかったとしても、これらに請求人が押印し提出したものであり本件従業員らの行為は請求人の行為と同視できることなどを理由に、重加算税の賦課要件を満たす旨主張する。
しかしながら、請求人は、本件従業員らに対し本件申告書等の作成を持ちかけた事実は認められず、また、請求人が本件従業員らにより虚偽の内容の本件申告書等を作成した行為を追認したことはもとより、本件申告書等に事実と異なる内容が記載されていることを認識していたとか、それを予想することができたとは認められず、本件従業員らの行為は請求人の行為と同視することはできないから、重加算税の賦課要件を満たすとはいえない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成18年4月20日第一小法廷判決(民集60巻4号1611頁)
要旨
請求人は、事業所得の金額の計算上総収入金額に算入しなかった金属スクラップの売却収入及び産業廃棄物等の収集運搬収入について、これらの取引の原始記録となる計量伝票や請求書の控えなどの保存の重要性を認識していなかったため、これらの原始記録を所得税の確定申告書の作成前に誤って処分したものであり、請求人には隠ぺいはない旨主張する。
しかしながら、請求人及び請求人の子であり事業専従者であるHは、金属スクラップの売却収入に係る精算書及び仕切書並びに産業廃棄物等の収集運搬収入に係る請求書の控えを確定申告前に故意に廃棄し、収入の事実を隠ぺいしていたものと認められる。
参照条文等
当初から所得を過少に申告することを意図していたと認めることはできないとして、重加算税の賦課要件を満たさないとした事例(平成27年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第112集
ポイント
本事例は、請求人らは、譲渡した土地の全てに居住用財産の譲渡所得の特別控除を適用できるものと誤解し、確定申告をした可能性があるといわざるを得ず、当初から所得を過少に申告することを意図していたと認めることはできないとして、重加算税の賦課要件を満たさないと判断したものである。
要旨
原処分庁は、①請求人らが譲渡した土地(本件土地)のうちの一部のみが租税特別措置法(平成28年法律第15号による改正前のもの)第35条《居住用財産の譲渡所得の特別控除》第1項の規定(本件特例)の適用対象となることを認識していたにもかかわらず、本件土地の全てに本件特例を適用して所得税等の確定申告書を提出していたこと、②税理士に対する申告前の相談の際、本件土地及びその土地上の3棟の建物(本件各建物)に係る具体的な資料を提示しなかったこと、③請求人らに対する調査(本件調査)の際、調査担当職員に対し、虚偽の答弁をしたことなどから、請求人らが、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと認められ、国税通則法(平成28年法律第15号による改正前のもの)第68条《重加算税》第1項及び第2項に規定する賦課要件を充足する旨主張する。
しかしながら、請求人らは、本件調査の際、本件各建物のうち請求人らが日常生活を営んでいた建物(本件母屋)以外の2棟の建物(本件各別棟)は譲渡直前において物置として利用していた旨を一貫して述べていること、本件各建物の各居宅は物置として利用していたと認められることなどからすると、請求人らは、本件各別棟を物置として利用していれば、本件土地の全てに本件特例を適用できるものと誤解し、確定申告をした可能性があるといわざるを得ない。したがって、当初から所得を過少に申告することを意図していたと認めることはできない。また、請求人らは、確定申告時点では税理士に関与を依頼しておらず、調査の際の請求人らの答弁が虚偽であると認めるに足る証拠などもないことから、重加算税の賦課要件を充足するとは認められない。
参照条文等
国税通則法第68条第1項、第2項 租税特別措置法第35条第1項 租税特別措置法施行令第20条の3第2項、第23条第1項 租税特別措置法通達31の3-12、35-5
参考判決・裁決
最高裁平成6年11月22日第三小法廷判決(民集48巻7号1379頁) 最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
請求人は、当初から課税標準等及び税額等を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたものといえるので、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかったことにつき、重加算税の賦課要件を満たすとした事例
裁決事例集 第83集
ポイント
この事例は、無申告加算税に代えて課される重加算税につき、最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決と同様の法令解釈を行うとともに、法定申告期限までに納税申告書を提出しなかった請求人の行動を総合勘案し、その賦課要件を満たすと判断したものである。
要旨
請求人は、法定申告期限までに所得税並びに消費税及び地方消費税(消費税等)の各確定申告書を提出しなかったことについて、所得税については申告する意思があってその準備をしていた、消費税等については、経理業務の委託先が申告してくれるものと誤認していた、などとして、重加算税の賦課要件を満たさない旨主張する。
しかしながら、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在しない場合であっても、納税者が、当初から課税標準等及び税額等を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかった場合には、重加算税の賦課要件が満たされるものと解するのが相当であるところ、請求人は、法定申告期限から7年を経過すれば所得税等の納付から免れることができるとの認識を持った上、請求人の経理業務の委託先から確定申告手続の税理士への委任の要否を問われて、これを断り、連年にわたり多額の収入金を得ていながら無申告を続けていたことなど、当初から課税標準等及び税額等を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたものといえるから、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかったことについては、国税通則法第68条《重加算税》第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たすというべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
免税事業者であるにもかかわらず課税事業者であるかのように装い、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えている旨の虚偽の記載をして修正申告書を提出した行為は、重加算税の賦課要件である「隠ぺい又は仮装の行為」に当たるとした事例
裁決事例集 第83集
ポイント
この事例は、重加算税の賦課要件である「隠ぺい又は仮装の行為」の該当性の判断に当たり、平成12年7月3日付課消2-17ほか5課共同「消費税及び地方消費税の更正等及び加算税の取扱いについて(事務運営指針)」の第2のⅣの5の趣旨を明確にした上で、その該当性を認めたものである。
要旨
請求人は、基準期間の課税売上高は、当該課税期間の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実ではないから、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えているかのように装った同期間の修正申告書を提出した行為は、重加算税の賦課要件である隠ぺい又は仮装行為に当たらず、また、平成12年7月3日付課消2-17ほか5課共同「消費税及び地方消費税の更正等及び加算税の取扱いについて(事務運営指針)」の第2のⅣの5の定め(本件留意事項)に準じて解釈すれば、本件は「重加算税を課すべきこととならない」ときに該当するから、重加算税の賦課決定処分は違法である旨主張する。
しかしながら、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する事実の隠ぺいとは、売上除外、証拠書類の廃棄等、課税要件に該当する事実の全部又は一部を隠すことをいい、事実の仮装とは、架空仕入れ、架空契約書の作成、他人名義の利用等、存在しない課税要件事実が存在するように見せかけることをいうと解するのが相当であるところ、請求人が免税事業者であるか課税事業者であるかは、消費税等の納税義務者に該当するか否かという課税要件事実そのものであり、不正に消費税の還付を受けるため、免税事業者であるにもかかわらず課税事業者であるかのように装って確定申告書を提出した行為は、重加算税の賦課要件を充足する。
なお、本件留意事項は、基準期間の隠ぺい又は仮装行為が、客観的にみて課税期間の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の隠ぺい又は仮装行為と評価できない場合には、重加算税の賦課要件を満たさないことに留意すべき旨を定めたものにすぎないと解すべきであり、基準期間の課税売上高の仮装行為が、課税期間の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の仮装に該当すると評価できる本件は、本件留意事項が定める場合とは前提を異にするというべきである。
参照条文等
国税通則法第68条第1項 平成12年7月3日付課消2-17ほか5課共同「消費税及び地方消費税の更正等及び加算税の取扱いについて(事務運営指針)」
当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったものと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例(平成27年2月相続開始に係る相続税の重加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第113集
ポイント
本事例は、各共済契約に係る権利及び出資金を相続財産として申告しなかったことについて、相続税を当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたものとは認めることができないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、請求人が各共済契約について、①関与税理士(本件税理士)からの指示に基づき解約返戻金相当額等証明書を取得したこと、②被共済者等の名義を請求人に変更したこと、また、出資金については、③払戻請求を行ったことなどの各手続等(本件手続等)を行ったにもかかわらず、本件税理士に各共済契約及び出資金の存在を一切伝えなかったことは、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する隠ぺい又は仮装の行為に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人が行った本件手続等は相続により財産を取得した相続人が通常行う手続と外形上何ら異なるものではないこと、さらに、上記各共済契約のうち満期共済契約の返戻金及び上記出資金の払戻金が相続財産として申告されている貯金の解約金の入金口座と同一の口座に入金されていることからすれば、請求人が本件税理士に各共済契約及び出資金の存在を一切伝えなかったとしても、請求人が当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づく過少申告をしたとは認められない。したがって、請求人に通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装の行為があったとは認められない。
参照条文等
参考判決・裁決
売上金額を脱漏する目的で、取引先に依頼し、決済方法を変更したなどの事実があったとは認められないとして重加算税の賦課決定処分を取り消した事例( 平成27年6月1日から平成28年5月31日までの法人税の重加算税の賦課決定処分、 平成26年6月1日から平成27年5月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の重加算税の賦課決定処分・全部取消し)
裁決事例集 第114集
ポイント
本事例は、原処分庁が主張する売上金額を脱漏する目的で、取引先に依頼し、決済方法を変更した事実は認められず、国税通則法第68条第1項に規定する隠ぺいの事実は認められないとの判断をしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人の代表者(本件代表者)は銀行振込みでなければ売上げに計上されないことを認識した上で、取引先に決済方法を銀行振込みから小切手に変更するよう依頼して、請求人の売上げを脱漏したのだから、その行為は国税通則法(平成28年法律第15号による改正前のもの)(通則法)第68条《重加算税》第1項に規定する事実の隠ぺいに該当する旨主張する。
しかしながら、決済方法が銀行振込みから小切手に変更されたのは、当該取引先の事情によるものであり、本件代表者が当該取引先に対して決済方法の変更を依頼した事実が確認できず、また、その他の証拠においても、本件代表者が売上代金を銀行振込みされなければ売上げに計上されないと認識していたことを裏付ける証拠も認められないことから、請求人に通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺいがあったとは認められない。
参照条文等
役務の提供等の完了前に請求書の発行を受ける等、通常と異なる処理を行った行為は、事実を仮装したものと認めた事例( 平23.2.1~平24.1.31の事業年度の法人税に係る重加算税の賦課決定処分、 平23.2.1~平24.1.31の課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の賦課決定処分・ 棄却、 一部取消し)
裁決事例集 第97集
要旨
請求人は、翌期の経費として計上すべき修繕工事等の費用及び備品等の購入費用を当期の経費として計上したことについて、単なる経理処理の誤りで、修繕工事等の一部は事業年度末までに役務の提供が完了しており、また、修繕工事等の費用及び備品等の購入費用が翌事業年度に支払われていることなどからすると、帳簿書類の虚偽記載等には該当しないから、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する事実を仮装したものではない旨主張する。
しかしながら、事業年度末までに役務の提供が完了していないにもかかわらず、修繕工事等の役務の提供や備品等の引渡しの完了より前に請求書の発行を受ける等、通常と異なる処理を行うことにより故意に事実をわい曲した請求人の行為は、事実を仮装したものと認められる。なお、修繕工事等の一部は事業年度末までに役務が完了していることから、当該完了部分については、事実を仮装したものとは認められない。
参照条文等
個人名義のクレジットカードにより支払われた飲食店等に対する支出について、請求人代表者の個人的な飲食等にかかる金額であるとは言い切れないから、請求人に仮装をした事実は認められないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
裁決事例集 第115集
ポイント
本事例は、請求人会社の代表取締役がその個人名義のクレジットカード等を用いて、飲食店で飲食したことについて、原処分庁の職員の調査を受けて、交際費勘定等に計上した費用は損金の額に算入されないなどとして法人税等の修正申告を提出したところ、原処分庁は、当該費用は代表取締役の個人的な飲食等の費用であることを認識しながら損金の額に算入したという隠ぺい又は仮装の事実があったとして法人税等の重加算税の賦課決定処分をしたことについて、代表者がそのような認識をしていたとは認められないことを理由として、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、請求人が交際費勘定等(本件費用勘定)に計上し、損金の額に算入していた飲食等代金(本件飲食等代金)について、請求人の代表者(本件代表者)が、本件飲食等代金は請求人の業務に関連するものではなく、本件代表者が一人で飲食したものや知人との飲食に係るものである上、個人で飲食等をした代金であると申述(本件申述)していることから、請求人は、本件飲食等代金が費用として計上できないものと認識しながら、その全部又は一部を損金の額に算入し、そのことが隠蔽又は仮装の事実に該当する旨主張する。
しかしながら、本件申述は、本件飲食等代金について概括的に述べたものであり、個々の支出について言及したものではなく、具体性が乏しい上、その内容を裏付ける客観的証拠は認められず、また、本件代表者が、本件飲食等代金が個人的な飲食等に係る金額であることを認識しながら、当該金額を本件費用勘定に計上したとする仮装の事実が認めるに足りる証拠もないことからすれば、本件飲食等代金を本件費用勘定に計上したことに隠蔽又は仮装の事実は認められない。
参照条文等
請求人の法定申告期限経過前の行為及び調査に対する虚偽答弁、虚偽証拠の提出を総合判断すると、本件では、隠ぺい仮装があったと認めることができ、無申告加算税に代わる重加算税の賦課要件を充足すると認定した事例( 平成18年分~平成24年分の所得税の各更正処分、 平成18年分、平成20年分及び平成22年分の所得税の重加算税の各賦課決定処分、 平成19年分、平成21年分、平成23年分及び平成24年分の所得税の重加算税の各賦課決定処分、 平20.1.1~平22.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各決定処分並びに無申告加算税の各賦課決定処分、 平23.1.1~平24.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各決定処分並びに重加算税の各賦課決定処分・ 棄却、 一部取消し)
裁決事例集 第101集
要旨
請求人は、法定申告期限までに所得税の確定申告書を提出しなかったのは請求人の税知識の不足により失念していたからであり、請求人は外国人研修・技能実習制度の送出し機関であるK社の従業員であるから、原処分庁の前回の調査結果に従って、K社から証明書の交付を受けた上で給与所得等に係る所得税の期限後申告書を提出しているなどとして、当該期限後申告書の提出並びに原処分庁の今回の調査に基づく更正について、重加算税の賦課要件を満たさない旨主張する。
しかしながら、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在しない場合であっても、納税者が当初から課税標準等及び税額等を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかった場合には、重加算税の賦課要件が満たされると解するのが相当であるところ、請求人は、自身が事業主体であったにもかかわらず、①当該事業から生ずる収入を、K社の肩書が付された口座に振込入金させた上で毎月ほぼ全額を現金で出金し、金員の流れを容易に把握できないようにすることによって、K社に帰属するものであると装い、②多額の事業収入を得ていながら5年間にわたり無申告を続け、③原処分庁の前回調査を受けても、K社に内容虚偽の証明書を作成・提出させるなどの工作を行って、事業主体は飽くまでK社にあり自身は給与を得ていたと装うなどしていることからすると、請求人は、当初から課税標準等及び税額等を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたといえるから、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかったことについては、国税通則法第68条《重加算税》第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たすというべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成6年11月22日第三小法廷判決(民集48巻7号1379頁)
ポイント
本事例は、請求人の意思によって提出されたと認められる内容虚偽の住民税申告書は1年分に限られ、また、請求人の電話答弁を虚偽であると評価することもできないことから、請求人が当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からうかがい得る特段の行動をしたと評価することはできないとしたものである。
要旨
原処分庁は、個人で事業を営む請求人が、調査年分に係る所得税等及び消費税等の各確定申告書を各法定期限までに提出していなかったことについて、請求人が、確定申告の必要性を認識した上で、①自らの収入金額及び所得金額を零円とした虚偽の住民税申告書を提出したこと(本件各住民税申告)、及び②原処分庁の調査担当職員からの電話に対し、会社員である旨の虚偽の答弁をしたこと(本件電話答弁)は、請求人が、当初から所得税等の申告をしないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと評価できるから、国税通則法第68条《重加算税》第2項に規定する「隠ぺいし、又は仮装し」に該当する旨主張する。
しかしながら、本件各住民税申告のうち請求人の意思によって提出されたと認められるのは1年分にとどまるものであり、かつ、それが直接原処分庁に対してなされたものではないことから、仮に請求人が所得税等の確定申告の必要性を認識していたとしても、当該1年分の住民税の申告のみをもって、請求人が、当初から所得税等の申告をしないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと評価することはできない。また、本件電話答弁については、本件電話答弁時の状況からすれば、社会通念に照らして不合理ではなく、当時の請求人が給与を得ていた事実を併せ考えれば、請求人が、当初から所得税等の申告をしないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと評価することはできない。さらに、原処分庁が作成した質問応答記録書の内容は、請求人の本件各住民税申告書の提出の動機に係る申述が不自然かつ不合理であり、重要な部分に関する解明が不足しているため信用できない。したがって、請求人に国税通則法第68条《重加算税》第2項に規定する「隠ぺいし、又は仮装し」と評価すべき行為があるとは認められない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
相続財産である家族名義預金を申告せず、税務調査においても根拠のない答弁を行った納税者について、国税通則法第68条に規定する重加算税の賦課要件を満たすとした事例(平成23年8月相続開始に係る相続税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分・一部取消し、棄却)
裁決事例集 第101集
要旨
請求人らは、被相続人の子名義の定期預金11口(本件各定期預金)は被相続人が生前に被相続人の子供ら(本件子供ら)に贈与したものであり、これを申告しなかったことにつき、隠ぺい又は仮装行為は存しない旨主張する。
しかしながら、被相続人の妻(本件妻)は、本件各定期預金を相続財産と認識しながら、これを関与税理士に告げず、本件各定期預金の記載がない遺産分割協議書を添付して相続税の過少申告を行い、その後の税務調査においても、本件各定期預金が、被相続人の生前既に贈与されたものであるなどとする根拠のない申述をして、真実の相続財産を隠ぺいする態度を貫こうとしたものである。このような行為は、当初から相続財産を過少に申告することを意図した上で、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告を行ったものと認められる。また、本件子供らは、相続財産の調査、申告を本件妻に委任していたが、本件各定期預金のうちそれぞれの名義の定期預金が相続財産であることを認識しながら、これを関与税理士に告げず、本件妻とともに相続税の過少申告を行っており、かつ、本件子供らに受任者である本件妻の選任及び監督に過失がないと認められる特段の事情はないから、本件子供らは、本件各定期預金の全部の隠ぺいがあったと認められる。
参照条文等
参考判決・裁決
神戸地裁平成14年1月10日判決(税資252号順号9046)
ポイント
本事例は、売上金額の一部とそれに対応する必要経費の金額を含めなかったほか、適当な金額を記載した収支内訳書を作成したことについて、請求人に当初から過少申告の意図があったと認められるものの、隠ぺい仮装と評価すべき行為とは認められず重加算税の賦課要件を満たさないとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人が、過少申告の意図に基づき①売上金額が1,000万円を超えないように調整した過少な売上金額を算出するためのメモ(本件売上メモ)を請求人の妻に作成させたこと、①本件売上メモに基づいて算定した過少な売上金額を収支内訳書に記載したこと、③所得税等の確定申告をした後に、本件売上メモを廃棄したこと、④申告した売上金額は、請求人の事業に係る総収入金額の半分以下の金額であったこと、⑤除外した売上金額に対応する経費が毎年合計600万円以上ありながら、収支内訳書に必要経費の金額として計上しなかったことという一連の行為は、国税通則法第68条《重加算税》第1項及び第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する行為又は過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動に該当し、重加算税の賦課要件を満たす旨主張する。しかしながら、請求人には、過少申告の意図があったことは認められるものの、上記①ないし③の本件売上メモについては、作成及び廃棄の事実が認められないこと、上記④及び⑤については、請求人が本件従業員分の売上げや費用の存在を認識しつつこれらを本件各収支内訳書に計上せず、過少の申告をしたというだけでは、隠蔽又は仮装の行為があったということはできないことから、原処分庁が主張する請求人の行為は、「隠蔽し、又は仮装し」に該当する行為又は過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動とは認められず、重加算税の賦課要件を満たさない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁) 平成27年7月1日裁決(裁決事例集No.100) 平成28年9月30日裁決(裁決事例集No.104)
相続財産である現金の申告漏れについては、過少申告の意図を外部からもうかがい得る請求人の行為の結果としてなされたものと認定した事例(平成24年10月相続開始に係る相続税の過少申告加算税及び重加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第103集
ポイント
本事例は、相続財産である現金の申告漏れについて、請求人は、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づく過少申告をしたものと認められるとして、重加算税の賦課要件である「隠ぺい」によると判断したものである。
要旨
請求人は、関与税理士に対し、現金の存在及びその大まかな額の分かる資料を提出しており、申告すべき現金の額について関与税理士の税務的な判断に任せていたことから、重加算税の賦課要件である「隠ぺい」といわれるような行為はなかった旨主張する。
しかしながら、請求人は、被相続人の財産を管理しており、相続開始日における多額の現金が相続財産に当たることを知っていたことなどから、当初から現金を過少に申告することを意図し、その意図に基づき多額の現金の存在につき関与税理士に敢えて秘匿し、手元に残っていた現金は存在しない旨を示す書面を関与税理士に提出するなどして、その結果、関与税理士に現金を過少に記載した申告書を作成させて原処分庁に提出したものである。したがって、請求人は、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づく過少申告をしたものと認められるから、現金に関する申告漏れについては、重加算税の賦課要件である「隠ぺい」によるものと認められる。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
取引先と通謀して検収書に虚偽の検収日を記載した事実は認められないと判断した事例( 平成28年4月1日から平成29年3月31日までの事業年度の法人税に係る重加算税の賦課決定処分、 平成28年4月1日から平成29年3月31日までの課税事業年度の地方法人税に係る重加算税の賦課決定処分、 平成28年4月1日から平成29年3月31日までの課税期間に係る消費税及び地方消費税に係る重加算税の賦課決定処分・ 一部取消し)
裁決事例集 第116集
要旨
原処分庁は、請求人の従業員(本件従業員)が平成29年3月20日時点において、手書き図面のデータ化に係る役務の提供が完了していないにもかかわらず、本件検収書に同日を検収日として記載して事実を仮装した行為は、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する事実の仮装に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人は、検収日に、手書き図面の電子データ化がされた図面をまとめたファイルの納品を受けており、本件従業員は、当該ファイルが納品された時点で役務の提供が実質的に完了しているとの認識の下、本件検収書に検収日を記載したものと認められることから、本件従業員が意図的に本件検収書に虚偽の検収日を記載したとはいえないため、請求人に同項に規定する事実の仮装があったとは認められない。
参照条文等
当初から過少申告及び無申告を意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づき、所得税等については過少申告をし、消費税等については期限内に確定申告書を提出しなかったと認定した事例(平成21、22、24年分の所得税並びに平成25年分の所得税及び復興特別所得税に係る重加算税の各賦課決定処分、平成21年1月1日から平成24年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第104集
ポイント
本事例は、請求人が、消費税等の負担を免れるため、長年にわたり、農産物等の販売金額を過少に記載した下書用の収支内訳書を作成し、これを市の申告相談で市職員に提示することにより、同職員をして販売金額を過少に記載した収支内訳書及び確定申告書を作成させ続けていたとして、重加算税の賦課要件を満たすとしたものである。
要旨
請求人は、自身が下書用の収支内訳書を作成した行為は単なる過少申告行為であり、隠ぺいしようという確定的な意図の下に行った申告ではなく、隠ぺい又は仮装に該当する行為はないから、国税通則法第68条《重加算税》第1項及び第2項に規定する重加算税の賦課要件は満たされない旨主張する。
しかしながら、請求人は、消費税等の負担を免れるため、7年間という長期間にわたり、農産物及び肉用牛(農産物等)の販売年間取引実績表等によってその販売金額の合計額が1千万円を超えていることを認識していたにもかかわらず、その合計額が1千万円を超えないよう、農産物等の販売金額を過少に記載した下書用の収支内訳書を作成し、これを市の申告相談で市職員に提示することによって、同職員をして農産物等の販売金額を過少に記載させ、その合計額がいずれも1千万円以下となる収支内訳書及び確定申告書を作成させ続けていたものと認められる。したがって、請求人は、当初から過少申告及び無申告を意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づき、所得税等については過少申告をし、消費税等については期限内に確定申告書を提出しなかったと認められるのであるから、国税通則法第68条第1項又は第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たすというべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁) 平成23年6月3日裁決(裁決事例集No.83)
当初から法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとは認められないとして重加算税の賦課決定処分を取り消した事例(平成27年4月1日から平成28年3月31日までの事業年度の法人税の決定処分及び重加算税の賦課決定処分、平成27年4月1日から平成28年3月31日までの課税事業年度の地方法人税の決定処分及び重加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第117集
ポイント
本事例は、請求人が法定申告期限までに申告書の提出が必要であったことを認識しながら、これをしなかったことが認められるものの、調査の開始当初においては質問調査や書類の提示要請に応じるとともに、請求人が支出の存在を主張し所得が生じていないと認識していた可能性があることを否定できないことから、請求人が当初から法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと評価することはできないとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人が、所得金額を容易に把握できたにもかかわらず、申告をせず、調査において書類提示を拒否したなどの行為は、申告すべき所得金額及び納付すべき税額が生ずることを明確に認識していながら確定的な意思に基づいて無申告を貫いたものであって、当該行為は、当初から課税標準等及び税額等を法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたものと認められることから、その意図に基づき法定申告期限までに法人税及び地方法人税(法人税等)の確定申告書を提出しなかったことは、国税通則法第68条《重加算税》第2項に規定する事実の隠蔽又は仮装に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人は、法定申告期限までに法人税等の確定申告書の提出が必要であったことを認識しながら、これをしなかったことは認められるものの、調査の開始当初においては質問調査や書類の提示要請に応じるとともに、調査の開始当初から事業に関連する支出の存在を主張し所得が生じていないと認識していた可能性を否定できないことから、無申告行為そのものとは別に、請求人が当初から法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をとったとはいい難い。したがって、請求人に国税通則法第68条第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」と評価すべき行為があるとは認められない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁) 平成30年9月27日裁決(裁決事例集No.112) 平成23年6月3日裁決(裁決事例集No.83)
消費税の課税を免れるため売上金額を調整した行為が事実の隠ぺい又は仮装に当たるとした事例( 平成21年分の所得税に係る重加算税の賦課決定処分(再調査決定により過少申告加算税相当額を超える部分が取り消された後のもの。以下 及び において同じ。)、 平成22年分及び平成24年分の所得税に係る重加算税の各賦課決定処分、 平成23年分の所得税に係る重加算税の各賦課決定処分、 平成25年分から平成27年分までの所得税及び復興特別所得税に係る重加算税の賦課決定処分、 平成21年1月1日から平成27年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分、 平成23年分の所得税及び平成23年1月1日から平成23年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の各更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の各通知処分・ 全部取消し、 ~ 棄却・平成30年12月4日裁決)
裁決事例集 第113集
ポイント
本事例は、請求人が、消費税の課税事業者にならないようにする目的で、各取引先に対する売上金額を集計した表を調整して、事業所得の売上金額を1,000万円以下に減額して所得税等の申告をしたとして、国税通則法第68条《重加算税》に規定する「事実の隠蔽又は仮装」に当たるとしたものである。
要旨
請求人は、各取引先に対する各月の売上金額等を集計した年次の集計表(本件年次集計表)は決算時のメモでありこれに基づく申告等を行っていないのであるから、各年次の本件年次集計表の作成は税額計算の基礎となる事実についての隠ぺい又は仮装に当たらない旨主張する。
しかしながら、請求人は、消費税等の課税事業者にならないようにする目的で、売上金額を1,000万円以下に減額して所得税等の申告をすることとし、本件年次集計表において、丸印や下線を付すなどして売上金額の合計が1,000万円以下になるように調整したものと認められ、このような調整は、調整後の金額のみ申告すれば足りるかのように装うとともに、消費税等の納税義務が無いかのように装うという隠ぺい又は仮装と評価すべき行為であり、請求人は、当該調整後の金額を収支内訳書に転記して所得税等の申告をしたものと認められ、このような事実は、国税通則法第68条《重加算税》第1項又は第2項に規定する「事実の隠蔽又は仮装」に当たる。
なお、平成21年分の所得税については、偽りその他不正の行為により売上に加算されなかった金額を上回る必要経費の認容により、同年分の偽りその他不正の行為に係る所得金額は零円となり、請求人は、国税通則法第70条《国税の更正、決定等の期間制限》第4項第1号に規定する偽りその他不正の行為により所得税を免れたものとはいえないことから、同年分の重加算税の賦課決定処分(再調査決定により過少申告加算税相当額を超える部分が取り消された後のもの)については5年を超えて行うことはできず、本件はこれを超えていることからその全部が取り消されるものである。
参照条文等
国税通則法第68条第1項及び第2項 国税通則法第70条第1項第3号及び第4項1号
請求人が法定申告期限までに相続税の申告をしなかったことについて、国税通則法第68条第2項の重加算税の賦課要件を満たしているとはいえないとした事例(平成28年11月相続開始に係る相続税の重加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第117集
ポイント
本事例は、請求人が相続財産を過少に記載したお尋ね文書を提出しているものの、そのことのみをもって、国税通則法第68条第2項の重加算税の賦課要件は満たさないとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人が意図的に「相続についてのお尋ね」と題する文書(本件お尋ね文書)に虚偽の記載をしてこれを提出したなどとして、国税通則法第68条《重加算税》第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たす旨主張する。
しかしながら、当審判所に提出された証拠資料等を精査しても、請求人が本件お尋ね文書に意図的に虚偽の記載をしてこれを提出したことなどを裏付けるに足りる証拠は存在せず、また、請求人が当初から相続税を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたなどとも認められないことからすれば、同項に規定する重加算税の賦課要件を満たしていない。
参照条文等
参考判決・裁決
過去の事業年度における仮装経理について、修正の経理を行わず、当事業年度の実際の材料仕入高を水増しした材料仕入高により帳簿書類を作成したことは、仮装に該当するとした事例(平成21年8月1日から平成22年7月31日まで、平成22年8月1日から平成23年7月31日まで、平成23年8月1日から平成24年7月31日まで、平成24年8月1日から平成25年7月31日まで、平成25年8月1日から平成26年7月31日まで、平成26年8月1日から平成27年7月31日まで及び平成27年8月1日から平成28年7月31日までの各事業年度の法人税の各更正処分、平成21年8月1日から平成22年7月31日まで、平成22年8月1日から平成23年7月31日まで、平成23年8月1日から平成24年7月31日まで、平成26年8月1日から平成27年7月31日まで及び平成27年8月1日から平成28年7月31日までの各事業年度の法人税の重加算税の各賦課決定処分、平成23年8月1日から平成24年7月31日まで、平成26年8月1日から平成27年7月31日まで及び平成27年8月1日から平成28年7月31日までの各事業年度の法人税の過少申告加算税の各賦課決定処分、平成27年8月1日から平成28年7月31日までの課税事業年度の地方法人税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分並びに平成21年8月1日から平成22年7月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第114集
ポイント
本事例は、請求人が、材料仕入高の水増し計上について、過去の事業年度における仮装経理の「修正の経理」として行った旨主張するが、当該仮装経理の金額を任意の金額で各事業年度に分けて材料仕入高を水増し計上することによって損金に算入したものであって、「修正の経理」の手続によらずに行ったものであるとしたものである。
要旨
請求人は、請求人が各事業年度の損金の額に算入した材料仕入高は、過去の事業年度における仮装経理の「修正の経理」であるから、国税通則法(平成28年法律第15号による改正前のもの)第68条《重加算税》第1項に規定する「隠ぺいし、又は仮装し」に該当する事実はない旨主張する。
しかしながら、請求人の代表取締役は、各事業年度において、実際とは異なる水増しした材料仕入高により帳簿書類が作成されていたことを認識していたと認められ、当該認識の下で請求人が水増しした材料仕入高を帳簿書類に計上したことは、行為の意味を理解しながら故意に事実をわい曲したものということができ、仮装したものというべきであるから、国税通則法第68条第1項に規定する「隠ぺいし、又は仮装し」に該当する。
参照条文等
国税通則法第68条第1項、第70条第4項、第74条の9第4項 法人税法第37条、第130条第2項 行政手続法第14条第1項
当初から過少申告及び無申告を意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づき、所得税等については過少申告をし、消費税等については期限内に確定申告書を提出しなかったと認定した事例
裁決事例集 第115集
ポイント
本件は、平成26年分ないし平成28年分については請求人が、正当に申告すべき収入金額等を認識した上で、真実の所得金額よりも大幅に少なく偽った所得金額を申告する目的で、メモを作成し、そのメモに基づいて所得金額を大幅に偽った収支内訳書を作成して過少申告行為を継続的に行っていたものであり、これら一連の行為は、請求人が当初から所得を過少に申告する意図を有し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動と認めることができるとした一方、平成25年分については、上記特段の行動が認められないとしたものである。
要旨
請求人は、外注費に相当する金額は請求人の収入金額を構成しないとの誤解により収入金額を過少に申告したものであるから、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」た事実はない旨主張する。
しかしながら、請求人は3年間にわたり、多額の所得を継続的に過少に申告しており、作成したメモの状況とあいまって、当初から所得を過少に申告する意図があったと認められる。そして、請求人の事業における関係書類の作成及び外注先への支払の状況を踏まえれば、請求人は収入及び外注費のおおよその金額を認識していたと認められるところ、平成26年分においては、当該認識に沿う主要な売上先に係る売上金額及び外注費等の実額が記載されたメモを作成し、また、その後の平成27年分及び平成28年分においては、申告準備段階において事実とは異なる申告すべき金額を記載したメモを作成し、これらを相談会場に持参し、真実の所得を大幅に下回る金額を記載するなど所得金額を少なく偽った収支内訳書を作成し、所得税等の申告をしていたものである。これら一連の行為は、請求人が外部からうかがい得る特段の行動をしたものと評価することができ、重加算税の賦課要件を満たすものである。もっとも、平成25年分はメモの作成は認められず、収支内訳書の記載状況からするとその過少申告の形態がこれ以外の各年分と異なることが認められるから、重加算税の賦課要件を満たすとはいえない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
請求人が法定申告期限までに法人税及び消費税等の申告をしなかったことについて、国税通則法第68条第2項の重加算税の賦課要件を満たしているとはいえないとした事例(平成24年12月1日から平成25年11月30日まで、平成25年12月1日から平成26年11月30日まで、平成26年12月1日から平成27年11月30日まで、平成27年12月1日から平成28年11月30日まで及び平成28年12月1日から平成29年11月30日までの各事業年度の法人税の重加算税の各賦課決定処分、平成24年12月1日から平成25年11月30日まで及び平成25年12月1日から平成26年11月30日までの各課税事業年度の復興特別法人税の重加算税の各賦課決定処分、平成26年12月1日から平成27年11月30日まで、平成27年12月1日から平成28年11月30日まで及び平成28年12月1日から平成29年11月30日までの各課税事業年度の地方法人税の重加算税の各賦課決定処分並びに平成25年12月1日から平成26年11月30日まで、平成27年12月1日から平成28年11月30日まで及び平成28年12月1日から平成29年11月30日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の重加算税の各賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第118集
ポイント
本事例は、請求人には、申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったと認めるに足る事実はなく、国税通則法第68条第2項の重加算税の賦課要件は満たさないとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人が、所得金額を容易に把握できたにもかかわらず、申告をせず、調査において書類提示を拒否したなどの行為は、申告すべき所得金額及び納付すべき税額が生ずることを明確に認識していながら確定的な意思に基づいて無申告を貫いたものであって、当該行為は、当初から課税標準等及び税額等を法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたものと認められることから、その意図に基づき法定申告期限までに法人税及び地方法人税(法人税等)の確定申告書を提出しなかったことは、国税通則法第68条《重加算税》第2項に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人は、法定申告期限までに法人税等の確定申告書の提出が必要であったことを認識しながら、確定申告書を提出しなかったことは認められるものの、調査の開始当初においては質問調査や書類の提示要請に応じるとともに、調査の開始当初から事業に関連する支出の存在を主張し所得が生じていないと認識していた可能性を否定できないことから、無申告行為そのものとは別に、請求人が当初から法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をとったとは言い難い。したがって、請求人に国税通則法第68条第2項に該当するとは認められない。
参照条文等
当初から過少申告及び無申告を意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づき、所得税等については過少申告をし、消費税等については期限内に確定申告書を提出しなかったと認定した事例(平成23年分から平成29年分の所得税等に係る重加算税の各賦課決定処分及び平成23年課税期間から平成29年課税期間の消費税等の各重加算税賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第118集
ポイント
本事例は、請求人が、事業所得の金額を正確に把握していたにもかかわらず、収入金額を1,000万円を下回るように調整して極めて過少な所得金額を記載した所得税等の確定申告書を長年にわたり継続的に提出し続け、調査の際にも、調査担当者に対し、帳簿書類の存在を秘し、事後的に作成した虚偽の帳簿書類を複数回提示したことなどが認められ、これらの一連の行為によれば、請求人は、重加算税の賦課要件を満たすとしたものである。
要旨
請求人は、確定申告書に誤りがあったのは勘違いや集計誤りを原因とするものにすぎず、故意に多額の所得を脱漏したのではなく、また、請求人に対する調査(本件調査)の際に請求人の行う事業(本件事業)に係る帳簿書類を隠したこともないから、国税通則法第68条《重加算税》第1項又は第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たさない旨主張する。
しかしながら、請求人は、本件事業において収入に係る帳簿書類の作成・保存、経費に係る支払、収入が入金される口座の管理等を自ら行うなどしていることからすれば、事業所得の金額を正確に把握していたといえ、それにもにもかかわらず、請求人は、7年もの長期間にわたって収入金額を1,000万円を下回るように調整して極めて過少な所得金額を記載した確定申告を継続的に提出し続けていたものと認められる。そして、請求人は、調査に際しても真実の総収入金額が容易に判明する帳簿書類の存在を秘しただけではなく、事後的に虚偽の帳簿書類を複数回作成し、本件調査の担当者に提示するなどしており、このことは真実の所得の調査解明に困難を伴う状況を作出し真実の所得金額を隠蔽しようという確定的な意図の下に、隠蔽のための具体的な工作を行い、真実の所得金額を隠蔽する態度、行動をできる限り貫こうとしたと評価せざるを得ない。以上のような請求人の一連の行為によれば、請求人が、当初から所得を過少に申告する確定的な意図を有し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき過少申告をしたような場合などに該当する。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成6年11月22日第三小法廷判決(民集48巻7号1379頁) 最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
翌事業年度に計上すべき本件修繕費の完了日を仮装したとまではいえないとした事例(平成29年4月1日から平成30年3月31日までの事業年度の法人税の重加算税の賦課決定処分、平成29年4月1日から平成30年3月31日までの課税事業年度の地方法人税の重加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第118集
ポイント
本事例は、翌事業年度に計上すべき本件修繕費について、施行業者が発行した請求書の納品日欄に本件事業年度内の日付が記載されていたことをもって仮装行為に該当するとまでは認められないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、請求人代表者が翌事業年度に計上すべき本件修繕費について、本件事業年度に修繕工事が開始しておらず、本件修繕費を損金の額に算入できないことを認識した上で、施工業者に依頼して納品日欄に本件事業年度内の日付を記載した請求書を発行させ、本件修繕費を損金の額に算入したことが仮装行為に該当する旨主張する。しかしながら、施工業者は事業年度内に施工に向けた準備を行っていることから、請求人代表者から依頼されて施工業者が本件事業年度内の日付の請求書を発行しても不自然とまでは言い切れず、請求書の納品日欄についてもシステムの便宜上入力された可能性を否定できない。また、請求書の納品日欄に記載された日付が修繕工事の完了日を示すと認めるに足る証拠もなく、請求人代表者が施工業者に対し請求書の納品日欄の日付を修繕工事の完了日として記載するよう依頼したことを示す証拠もない。加えて、請求人代表者は入出金に係る会計伝票を作成するにとどまり、本件修繕費のような未払金に関する会計伝票は作成しておらず税務代理人が会計処理を行ったものであり、請求人代表者に本件修繕費を本件事業年度の損金の額に算入できないとの認識があったとまでは認められない。したがって、本件修繕費を本件事業年度の損金の額に算入したことにつき、仮装の行為があるとは認められない。
参照条文等
要旨
原処分庁は、請求人の実質経営者である元代表者が、役務の提供がないことを認識していたにもかかわらず、関与税理士に指示して、不動産仲介業者に対する役務提供の対価(本件金員)を支払手数料勘定に計上させたことが、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する「事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し」に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人と不動産仲介業者との間で複数の不動産取引を共同事業として行う目論見書が作成されていたことなどからすれば、元代表者が本件金員を支払う必要があると認識していた可能性が否定できない。そして、当審判所の調査によっても、元代表者が本件金員を支払う必要がないことを認識した上で本件金員を支払手数料勘定に計上させたと認定する証拠は見当たらず、その他仮装と評価すべき行為を認めるに足りる証拠もない。したがって、本件において認定される事実のみからは、請求人に、国税通則法第68条第1項に規定する「隠ぺいし、又は仮装し」に該当する事実があったものとして同項を適用することはできない。
参照条文等
請求人が不動産の売買取引及び不動産の売買の仲介取引に関し、各取引の存在を把握し当該所得金額等も含め申告すべきことを認識しながら、これを申告しないことを意図し、これらを除外した収支内訳書の下書を作成して、それを提示して税務相談し、その結果に基づき確定申告をしたことなどから、隠蔽又は仮装が認められるとした事例(平成29年分から令和2年分の所得税及び復興特別所得税に係る重加算税の各賦課決定処分、平成29年1月1日から令和2年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第130集
ポイント
本事例は、請求人が、一部の取引に係る所得金額等を申告すべきことを認識しながら、意図的にこれを除外した収支内訳書の下書を作成して税務相談し、その結果に基づき確定申告をしたことなどの諸事情から、国税通則法第68条第1項及び第2項に規定の事実の隠蔽又は仮装が認められるとして、同条該当性を認めたものである。
要旨
請求人は、主たる業務である不動産賃貸の仲介の収支を管理する業績管理表実績と題する表(本件業績管理表)は、請求人の事業全部に係る帳簿書類ではないことから、同表に不動産の売買取引(本件売買取引)及び不動産の売買仲介取引(本件売買仲介取引)に関する記載がないとしても内容虚偽の帳簿書類の作成に当たらず、これらの取引の申告をしないことを意図したものではないから、国税通則法(通則法)第68条《重加算税》第1項及び第2項に規定する事実の隠蔽又は仮装に当たらない旨、また、これらの取引の申告をしない意図をうかがい得る特段の行動もしていない旨主張する。
しかしながら、本件売買取引に関しては、請求人は、同取引の帳簿書類たる売買計算表を作成して利益を把握しており、同表により算出した本件各売買取引に係る所得金額等も含めて申告すべきであると知りながら、これを申告しないことを意図して、本件業績管理表のみに基づいて、本件売買取引に係る収入金額等を除外した内容虚偽の収支内訳書の下書を作成し、税務署での申告相談に、本件売買取引に係る書類を一切持参せず、対応した職員に同下書を提示して相談した上で、その結果に基づいて、所得金額等を意図的に過少に記載して確定申告をしたと認められるから、通則法第68条各項に規定する隠蔽又は仮装が認められる。また、本件売買仲介取引に関しては、請求人は、仲介手数料収入についての申告の必要性を認識していたと推認できること、本件売買仲介取引に関する収支の記録が存在しないのは、本件売買仲介取引に係る所得金額等を申告する意図がなかったことに起因すると認められること、前記申告相談の際に、対応した職員に対し、本件売買仲介取引に係る所得について何も明らかにしていないこと、調査の当初の言動は、本件売買仲介取引を隠蔽する意図に基づくものと推認できることからすると、当初から申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったと認められ、同各項に規定する隠蔽又は仮装が認められる。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
ポイント
本事例は、相続税の重加算税を賦課する場合の殊更過少な相続税申告書を提出したか否かの認定に当たっては、請求人や税理士の証言の一部分をもって判定するのではなく、その証言内容を裏付けるに足る事情の存在を含めて判定すべきとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人が一部の生命保険金について相続税の申告すべき財産であることを十分認識していたにもかかわらず、関与税理士に対してその存在を殊更に秘匿したことなどに照らせば、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たす旨主張する。
しかしながら、同税理士は関係資料等の提出時や申告書の作成時に請求人に対して具体的な確認等をしていなかった上、その他に、請求人が同税理士に対して殊更にその存在を秘匿したと裏付けるに足りる事情も存在しないことなどに照らせば、請求人が当初から過少申告を意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合に該当するとまでは認められないから、同項に規定する重加算税の賦課要件を満たすとはいえない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
請求人は、会計伝票等を捨てることで、故意に真実の本件各年分の本件事業に係る売上金額及び必要経費を隠匿し、かつ、故意に真実の本件各課税期間に係る課税売上高を隠匿したといえるとして、国税通則法第68条第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったとした事例(平成27年分から令和3年分までの所得税及び復興特別所得税並びに平成27年課税期間から令和3年課税期間までの消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第134集
ポイント
本事例は、無申告加算税に代えて課される重加算税の課税等要件に係る主観的要件について、法令解釈の上、具体的にその該当性に係る事実認定をしたものである。
要旨
請求人は、請求人には税務に関する相応の知識がなく、事業に係る売上金額は概算で把握していたにとどまり、本件事業に利益があったとは認識しておらず、帳簿書類等を作成せず、各会計伝票、感染拡大防止対策協力金に係る支払決定通知書及び事業に関する支払に係る領収書等(各会計伝票等)を保存せずに廃棄していたのは、ひとえに請求人の無知が招いた結果であり、意図的に申告をしなかったのではないから、請求人には国税通則法(令和4年法律第4号による改正前のもの)第68条《重加算税》第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実はなかった旨主張する。
しかしながら、請求人は、青色申告に係る帳簿の備付け、記録及び保存をしていなかった上、各会計伝票等を保管することなく全て捨てることで、各年分の事業に係る売上金額(雑収入を含む。)及び必要経費の金額を不明にしていたところ、請求人自身、当該各会計伝票等を捨てることで、各年分の事業に係る売上金額及び必要経費の金額を不明になることを認識していたといえるから、故意に真実の各年分の事業に係る売上金額(雑収入を含む。)及び必要経費を隠匿し、かつ、故意に真実の各課税期間に係る課税売上高を隠匿したというべきであり、「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったと認められる。
参照条文等
当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったものと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
裁決事例集 第122集
ポイント
本事例は、請求人が、みなし相続財産である死亡保険金の申告漏れに関し、その存在を一旦は認識していたものの、申告までの間に失念等した可能性を直ちには否定できず、また、請求人が、当初から当該死亡保険金をあえて申告から除外することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたともいえないことから、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する重加算税の賦課要件は充足しないとしたものである。
要旨
原処分庁は、申告漏れとなっていた死亡保険金(本件死亡保険金)について、請求人が、自身でその支払請求手続を行ったこと、原処分庁の調査担当職員に本件死亡保険金の存在を伝えなかったことなどから、本件死亡保険金の存在を認識しつつ、それをあえて申告していないから、過少に申告する意図を有していたといえ、また、本件死亡保険金の存在を関与税理士等に説明せず、関係資料の提示もしなかった行為は、本件死亡保険金を相続税の申告財産から除外するという過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動に該当するものとして、重加算税の賦課要件を充足する旨主張する。
しかしながら、請求人が当初は生命保険契約に係る申告すべき保険金は同じ保険会社の別件の申告済の保険金(本件申告済保険金)のみであると誤認していたことに加えて、本件申告済保険金及び本件死亡保険金の請求手続は、請求人が仕事で多忙な中でその合間に行われたものであることなどからすると、請求人が、本件死亡保険金について、その存在及び申告が必要な相続財産であることを一旦認識したものの、相続税の申告までの間に、本件死亡保険金の存在とこれについても申告が必要であることを失念ないし誤認した可能性を直ちに否定することはできない。さらに、関与税理士等とのやりとりの経過等を見ても、請求人が当初から本件死亡保険金をあえて申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたともいえないため、重加算税の賦課要件は充足しない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
消費税の申告納税義務を免れることを積極的に意図し、収支内訳書等に過少な記載を行って免税事業者であると装い続けたことは仮装隠蔽行為に該当すると判断した事例( 平成27年1月1日から同年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の決定処分、 平成28年1月1日から令和元年12月31日までの消費税及び地方消費税の各決定処分、 平成27年1月1日から令和3年12月31日までの消費税及び地方消費税の重加算税の各賦課決定処分・ 一部取消し、 棄却)
裁決事例集 第135集
ポイント
本事例は、請求人による継続した収支内訳書等の過少記載行為は、消費税の申告納税義務を免れることを積極的に意図して免税事業者であることを装い続けたものであり、仮装隠蔽行為に該当するとしたものである。
要旨
請求人は、①請求人による消費税等の認識ある無申告は無申告行為そのものであることや、②何ら根拠のない収入金額及び必要経費の額を収支内訳書に記載することは、過少申告行為そのものであって、隠蔽行為又は仮装行為に該当せず、特段の行動に当たるとも評価できない旨主張する。
しかしながら、請求人は、何ら根拠のない収入金額等を収支内訳書に記載したのではなく、課税期間に係る基準期間の売上げが1,000万円以下となれば、消費税等の申告義務を負わないと認識した上で、平成25年以降比較的長期間にわたって、消費税等の申告納税義務を免れることを積極的に意図し、故意に事業所得の総収入金額が1,000万円を超えないように所得税等の確定申告書及び収支内訳書に過少な収入金額を記載して原処分庁に提出することで、課税標準等の計算の基礎となるべき事実である、基準期間中における課税資産の譲渡等の対価の額を故意に脱漏し、課税期間において消費税法上の免税事業者であることを装い続け、本件の各課税期間の消費税等の確定申告をしなかったのであるから、かかる行為は隠蔽又は仮装と評価すべき行為であり、単なる無申告行為や過少申告行為そのものと評価することはできない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成6年11月22日第三小法廷判決(民集48巻7号1379頁)
個人事業者である請求人が所得税等の確定申告書等に過少な総収入金額を記載して消費税等の免税事業者であるかのように装った行為について国税通則法第68条第2項に規定する重加算税の隠蔽・仮装に該当すると判断した事例( 令和元年分から令和4年分までの所得税及び復興特別所得税に係る重加算税の各賦課決定処分・一部取消し、 令和3年1月1日から同年12月31日まで及び令和4年1月1日から同年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第139集
ポイント
本事例は、個人事業者である請求人が消費税等の申告納税義務を免れることを認識しながら所得税等の確定申告書等に過少な総収入金額を記載して消費税の免税事業者であるかのように装った行為について国税通則法第68条第2項に規定する重加算税の隠蔽・仮装に該当するとしたものである。
要旨
請求人は、消費税等の課税事業者になることを免れたいと考え、所得税等について過少申告したものの、当該行為は所得税等の過少申告行為にすぎないことから、国税通則法第68条《重加算税》第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する行為があったとはいえない旨主張する。
しかしながら、請求人は、各年分の所得税青色申告決算書(一般用)及び所得税等に係る確定申告書(本件確定申告書等)を作成し提出する時点において、請求人の事業に係る売上金額が1,000万円以下となるように調整した本件確定申告書等を提出すれば、消費税等の納税義務がないかのように装うことができると認識した上で、売上金額を1,000万円以下となるように調整した本件確定申告書等を提出して、消費税等について、法定申告期限までに確定申告書を提出しなかったものと認められる。したがって、請求人の所得税等に係る申告における一連の行為は、消費税法第9条《小規模事業者に係る納税義務の免除》第1項の適用を受けることで消費税等の納税義務がないかのように装うものであるから、消費税等について隠蔽又は仮装したと評価すべき行為に該当する。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和62年5月8日第二小法廷判決(最高裁判所裁判集民事151号35頁) 熊本地裁昭和57年12月15日判決(訟務月報29巻6号1202頁) 最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁) 東京地裁令和2年10月9日判決(訟務月報69巻9号989頁) 東京高裁令和3年4月28日判決(訟務月報69巻9号970頁) 平成23年4月19日裁決(裁決事例集No.83) 平成30年12月4日裁決(裁決事例集No.113) 令和6年4月23日裁決(裁決事例集No.135)
当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったものと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
裁決事例集 第122集
ポイント
本事例は、請求人が、みなし相続財産である死亡保険金の申告漏れに関し、当該死亡保険金の存在を税理士に伝えなかったことをもって、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとまではいえないことから、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する重加算税の賦課要件は充足しないとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人が、自身が支払を受けた2口の死亡保険金のいずれもが相続税の課税対象であることを理解しながら、そのうちの1口の死亡保険金(本件保険金)に関する資料を税理士に交付せず、本件保険金を含めない申告書を当該税理士に作成・提出させたことは、当初から財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたといえるから、重加算税の賦課要件を充足する旨主張する。
しかしながら、請求人及び被相続人が受けた本件保険金を扱う銀行の担当者の説明によると、請求人は、本件保険金が相続税の課税の対象とならないものと誤解した可能性が否定できず、この誤解に基づいて、本件保険金の存在を税理士に伝えなかった可能性も否定できない。また、請求人は、調査の初日に本件保険金の入金事績が記録された請求人名義の銀行口座に係る通帳を原処分庁の調査担当職員に提示するなど、本件保険金の入金の事実を調査担当職員に対して隠そうとはしていなかったことが認められ、この事実は、上記誤解があった可能性を高める事実といえる。
したがって、請求人が本件保険金の存在を税理士に伝えなかったことをもって、請求人が当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとまではいえず、重加算税の賦課要件は充足しない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
ポイント
本事例は、第三者が何ら根拠のない金額を必要経費として記載した試算表は、当該第三者が請求人の確定申告書を作成するためだけの一時的な補助資料の域を出るものではなく、その作成が、過少申告行為とは別の隠ぺい又は仮装行為に該当すると認めることは困難であるから、重加算税の賦課要件を満たさないとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人の申告書を作成した第三者が、何ら根拠のない金額を必要経費として記載した試算表(本件試算表)を作成した上で、それを基に作成した確定申告書を提出したことは、請求人の事業所得に係る必要経費の計上について、過少申告行為とは別の隠ぺい又は仮装行為であり、重加算税の賦課要件を満たしている旨主張する。
しかしながら、当該第三者は、本件試算表を使用して確定申告書を作成した後には、本件試算表を保存しておくことなく、不要なものとして処分しており、また、請求人を含む他者に見せることもなかったものである。そうすると、本件試算表は、当該第三者が確定申告書を作成するためだけの一時的な補助資料の域を出るものではなく、その作成が、過少申告行為とは別の隠ぺい又は仮装行為に該当すると認めることは困難であるから、重加算税の賦課要件を満たさない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
請求人が取得した金員に係る所得を、当初から申告しないという確定的な意図の下、請求人がした金員の取得行為及び取得後の一連の行為は、隠蔽又は仮装行為に該当するとした事例(令和3年分、令和4年分の所得税及び復興特別所得税の各決定処分並びに令和3年分の重加算税の賦課決定処分、令和4年分の無申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第139集
ポイント
本事例は、請求人は取得した金員について当初から申告する意図はなく、請求人がした金員の取得行為及び取得後の一連の行為は、国税通則法第68条《重加算税》第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当するとして、同条該当性を認めたものである。
要旨
請求人は、自身が取得した金員(本件金員)の全ては請求人の口座で管理しており、請求人に国税通則法第68条《重加算税》第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する行為はない旨主張する。
しかしながら、請求人は、本件金員について所得税等の確定申告が必要であることを認識していながら、請求人の勤務先の関係法人(本件法人)において、本件金員に相当する金額を本件法人が消耗品費として購入先に支払ったとする架空の仕訳を計上し、それに見合った架空の請求書等を作成するなどの行為を行い、情を知らない第三者である本件法人を利用して内容虚偽の確定申告をさせ、本件金員に係る所得が発覚しないようにするとともに、当該所得を申告しなかったものと認められる。したがって、これらの請求人の一連の行為は、当初から所得を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき法定申告期限までに納税申告書を提出しなかったものであると評価でき、国税通則法第68条第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当すると認められる。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
ポイント
本事例は、第三者が何ら根拠のない金額を必要経費として記載した試算表は、当該第三者が請求人の確定申告書を作成するためだけの一時的な補助資料の域を出るものではなく、その作成が、過少申告行為とは別の隠ぺい又は仮装行為に該当すると認めることは困難であるから、重加算税の賦課要件を満たさないとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人の申告書を作成した第三者が、何ら根拠のない金額を必要経費として記載した試算表(本件各試算表)を作成した上で、それを基に作成した確定申告書を提出したことは、請求人の事業所得に係る必要経費の計上について、過少申告行為とは別の隠ぺい又は仮装行為であり、重加算税の賦課要件を満たしている旨主張する。
しかしながら、当該第三者は、本件各試算表を使用して確定申告書を作成した後には、本件各試算表を保存しておくことなく、不要なものとして処分しており、また、請求人を含む他者に見せることもなかったものである。そうすると、本件各試算表は、当該第三者が確定申告書を作成するためだけの一時的な補助資料の域を出るものではなく、その作成が、過少申告行為とは別の隠ぺい又は仮装行為に該当すると認めることは困難であるから、重加算税の賦課要件を満たさない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
ポイント
本事例は、相続税の課税価格の計算上債務控除していた被相続人の請求人からの借入金について、実際に被相続人が請求人から借り入れることとなった経緯が認められ、金銭借用証書の表題の記載からしても借入れが不自然とはいえないことや、当時、被相続人が意思能力に欠ける状態であったとは認定できず同借入れを否定する事情もないなどとして、同借入金がなかったと認めることはできないとして国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定の仮装に該当する事実があったとは認められないとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人が相続税の申告において相続税の課税価格の計算上債務控除をしていた被相続人の請求人からの借入金は、請求人から被相続人ヘ直接送金されておらず、十分な金額の預貯金を有する被相続人が請求人から借り入れする必要も認められないこと等から、借入金が存在しないにもかかわらず、あたかも当該借入金が存在したかのように装って金銭借用証書を作成したことが事実の仮装行為に該当し、国税通則法第68条《重加算税》第1項所定の重加算税の賦課要件を満たす旨主張する。
しかしながら、①被相続人の土地の購入資金に係る信用金庫からの融資がとん挫し、請求人が代わりに被相続人に対し金員を貸し付けることとなった経緯が認められ、金銭借用証書の表題に一時的な貸付けであることを意味する「一時」と付されていること等からすれば、請求人が被相続人に同金員の貸付けをしたとしても不自然とはいえないこと、②暫定的に請求人から被相続人に対する貸付けが行われた可能性があるから、請求人から被相続人に直接送金されていないことをもって直ちに被相続人の請求人からの借入れがなかったとはいえないこと、③同金員の貸付けについて被相続人の了解を得ていたことを否定する事情もないことからすれば、被相続人の請求人に対する借入金が存在しなかったとはいえず、請求人が金銭借用証書を作成して、存在しない債務を実際に存在するかのように仮装していたとは認められないから、請求人に国税通則法第68条第1項の「仮装」があったとは認められない。
参照条文等
参考判決・裁決
ポイント
本事例は、相続税の申告書の作成を依頼した税理士からの質問に対して請求人がした回答が、同税理士の質問を誤解して回答した可能性を否定できず、故意に虚偽の事実を説明したものとは認められないとして、かかる回答をしたことをもって、請求人が、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、請求人が、被相続人が締結していた各建物更生共済契約(本件各共済契約)に関する権利(本件各権利)を相続税の課税財産として申告する必要があると認識していながら、税理士(本件税理士)に対して本件各共済契約は掛け捨て型のものであると故意に虚偽の説明をし、本件税理士に相続税の課税財産として申告すべき損害保険契約に関する権利はないとの誤解を生じさせた上、本件税理士に本件各権利の存在を一切告げなかったことは、当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動に当たり、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定の隠蔽又は仮装の行為が認められる旨主張する。
しかしながら、本件税理士の請求人に対する質問の文言からすれば、請求人の「共済は掛け捨てに移行している」旨の回答は、本件税理士の質問の趣旨を誤解してなされた可能性があり、実際に建物更生共済契約から掛け捨ての損害保険へと移行されたものもあることからすれば、必ずしも虚偽であるとまではいえない。また、請求人が本件税理士に預けた各普通貯金通帳の中には本件各共済契約に係る共済掛金の支払が確認できるものもあることからすれば請求人が本件税理士に対して本件各権利を秘匿しようという意図があったとまで認めることはできない。したがって、請求人が本件税理士に対して故意に虚偽の説明をしたものと認めることはできず、請求人が本件税理士に当該回答をした事実をもって、請求人が、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと認めることはできないから、国税通則法第68条第1項に規定の隠蔽又は仮装の行為があったということはできない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
隠蔽仮装行為の始期に関する請求人の申述は信用できず、そのほかに隠蔽仮装行為の始期を示す証拠や請求人によって隠蔽仮装行為がなされたことを示す証拠もないから、請求人に隠蔽仮装の行為があったとは認められないとして、重加算税の賦課決定処分等を取り消した事例
裁決事例集 第123集
ポイント
本事例は、請求人の行った隠蔽仮装行為(伝票を意図的に廃棄し、売上金額を過少に記載した日計表の作成)の始期について、請求人が争う年分及び課税期間の初年である旨の請求人の申述は信用性がなく、そのほかに、始期が同年と認める証拠はなく、また、同年分及び同課税期間において、他に請求人が隠蔽仮装行為を行ったことを示す証拠がないとして、隠蔽又は仮装に該当する事実は認められないとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人は、事業に係る正しい売上金額を把握していたにもかかわらず、真実の売上金額を記載した売上メモ及び伝票を意図的に廃棄し、売上金額を過少に記載した日計表を商工会に提示することにより、売上げの一部を故意に申告していなかった旨主張する。
しかしながら、請求人は、調査担当職員による質問の当初、隠蔽仮装行為の始期について、曖昧な申述にとどまっていたことなどからすれば、同始期に関して、明確な記憶を持っておらず、その記憶は曖昧なものであったと認められる。そして、隠蔽仮装行為の始期に関する請求人の申述は、自発的な申述をしたのではなく調査担当職員の教示に沿う形で申述した程度にすぎず、客観的事実とも整合せず、不自然であるともいえ、直ちに信用できない。また、そのほかに隠蔽仮装行為の始期を示す証拠や請求人によって隠蔽仮装行為がなされたことを示す証拠もないから、請求人に、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったとは認められない。
また、隠蔽又は仮装の具体的事実や開始時期を特定できない本件において、他に何らかの偽計その他の工作を伴う不正の行為があったと認めるに足る証拠もないから、請求人には国税通則法第70条《国税の更正、決定等の期間制限》第4項に規定する「偽りその他不正の行為」に該当する事実があったとは認められない。
さらに、更正の請求では、納税者側において売上金額が過大であることの立証をすべきであるところ、請求人から提出された資料等では、修正申告書に記載された売上金額が過大であるとは認められない。
参照条文等
請求人が生命保険金を含めずに所得税等の確定申告をしたことについて、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例(令和元年分の所得税及び復興特別所得税に係る重加算税賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第127集
ポイント
本事例は、請求人が、生命保険金等の存在や申告の必要性を一旦は認識していたものの、確定申告時にその存在や申告の必要性を直ちに認識していたとまではいえず、当初から当該生命保険金等を申告しないことを意図していたとはいえない上、請求人が、過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとも認められないことから、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する重加算税の賦課要件は充足しないとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人が生命保険会社から振り込まれた保険契約に基づく一時金及び定期支払金(本件一時金等)を含めずに所得税及び復興特別所得税(所得税等)の確定申告(本件確定申告)をしたことについて、請求人が、本件一時金等が課税の対象となることを十分に認識しながら申告書の作成を補助した請求人の親族に本件一時金等が振り込まれた預金口座の通帳を提示しなかったことや、本件一時金等の支払明細等を廃棄したことは、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をした場合に当たるから、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たす旨主張する。
しかしながら、請求人は、上記保険の取扱代理店である銀行の担当者から、上記一時金についての課税関係の説明を受け、上記支払明細等の送付を受けていたことから、本件一時金等の存在や申告の必要性を一旦認識することができたものと認められるが、過去5年間のうち一度しか所得税等の確定申告をしておらず、本件確定申告についても、金地金の売却利益について申告が必要である旨記載された税務署からのお知らせが届いたことを動機として行ったものであり、遺族年金を含めて申告するなど、請求人に確定申告の経験や税務の知識が豊富にあったとはいえないこと、上記説明が口頭により行われていた上、同説明があったのは本件確定申告の時点から約1年以上も前で、上記支払明細等の送付も本件確定申告の時点から9か月以上前であったことなどからすれば、請求人が、本件確定申告の時点において、本件一時金等の存在や申告の必要性を直ちに認識していたとまではいえず、請求人が本件一時金等を申告しないことを意図していたとはいえない。また、請求人が親族に本件通帳を提示しなかったことについては、請求人が親族に申告書の作成の補助を依頼した際のやり取りが不明であること、上記支払明細等を破棄したことについても、意図的に廃棄したとは認められないことから、これらをもって、請求人が過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとは認められない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁) 広島高裁岡山支平成22年10月28日判決(税資260号順号11542)
請求人が相続財産の一部の貯金のみを申告していなかったことについて、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例(平成30年11月相続開始に係る相続税の重加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第127集
ポイント
本事例は、申告漏れとなっていた貯金について、相続税の申告からあえて当該貯金のみを除外する意図が請求人にあったものとは認められない上、他の預貯金とは異なり残高証明書の発行依頼をしなかったことが故意によるものとは認め難く、また、請求人が、申告書の作成を依頼した会計事務所に対し当該貯金の存在を故意に伝えなかったと認めることもできないとして、当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと評価すべき事情は認められないとしたものである。
要旨
原処分庁は、申告漏れとなっていた貯金(本件貯金)について、請求人が被相続人名義の預貯金のうち本件貯金についてのみ残高証明書を取得することなく相続手続を行うという特異な行動をしていること、及び請求人が本件貯金の存在を認識していたにもかかわらず、これを相続税の申告書の作成を依頼した会計事務所(本件会計事務所)に対して伝えていないことが、請求人の当初から相続財産を過少に申告する意図を外部からもうかがい得る特段の行動であり、請求人には国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があった旨主張する。
しかしながら、相続税の申告からあえて本件貯金のみを除外しようとする意図が請求人にあったものとは認められない上、請求人が訪れた金融機関における貯金の一般的な相続手続などからすると請求人が誤解や失念により本件貯金の残高証明書を取得しなかった可能性も否定できないから、請求人が本件貯金についてのみ特異な行動をしたと断ずることはできず、本件貯金の残高証明書の発行依頼をしなかったことは故意によるものとは認めがたく、また、請求人が本件会計事務所に対して本件貯金の存在を故意に伝えなかったと認めることもできないから、請求人の一連の行為において当初から相続財産を過少に申告する意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたものと評価すべき事情は認められない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
請求人が相続財産の一部の株式を申告していなかったことについて、隠蔽の行為そのものであるとか、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例(平成29年11月相続開始に係る相続税の重加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第127集
ポイント
本事例は、申告漏れとなっていた株式について、申告書提出前後の請求人の行為や言動に鑑みると、その銘柄、株式数等を記載したノート等を関与税理士に提出しなかったことをもって、国税通則法第68条第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったとみることは困難であり、また、当該事実につき過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動に該当するものとも認められないとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人自らが銘柄、株式数及び配当金額等を2冊のノート(本件各ノート)に記載しながら、被相続人の相続に係る相続税の申告書(本件申告書)に計上されなかった被相続人名義等の株式(本件株式)について、被相続人の相続財産である旨を十分認識していたにもかかわらず、関与税理士(本件税理士)に本件各ノートを含む本件株式に係る資料等を渡さずに本件税理士をして本件株式を計上しない本件申告書を作成、提出させたのであるから、請求人には、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があった旨主張する。
しかしながら、請求人は、本件税理士から株式については証券会社から残高証明書等を取得して提出するよう指示を受け、当該指示のとおりに証券会社から残高証明書等を取得して提出していたため、本件株式についても本件申告書に計上されていると思い込んでいた可能性等が否定できない。また、本件各ノートは、その記載状況からみて、請求人の単なる備忘メモ的なものとして使用されていたと考えられ、請求人が、本件税理士を含む第三者に提出する目的で本件各ノートを作成したものではないと推認できること、請求人は、相続税の調査の際に、原処分庁所属の調査担当職員に自ら本件各ノートを提出したことなどに鑑みると、本件各ノート等の資料を本件税理士に提出しなかった行為について、隠蔽の行為そのものであるとか、当初から過少申告をすることを意図した上で、過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動に該当するものと認めるに足る事情はないから、「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実はないといわざるを得ない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
請求人の母が相続財産の一部の株式を申告していなかったことについて、隠蔽、仮装に該当する事実があると認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例(平成29年11月相続開始に係る相続税の重加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第127集
ポイント
本事例は、請求人が相続税の申告書を作成するための資料収集等を委任していた請求人の母が申告漏れとなっていた株式を当初申告の相続財産に含めなかったことについて、国税通則法第68条第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったとは認められず、請求人についても、「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があるとは認められないとしたものである。
要旨
原処分庁は、被相続人の相続に係る相続税の申告書(本件申告書)に被相続人の名義の株式の一部等が計上されていないことについて、請求人の母(本件母)に国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があり、請求人が本件申告書を作成するための資料収集等を本件母に委任し、請求人にはその選任及び監督につき過失がないとする特段の事情はなく、請求人は本件母と同視可能である者と認められることから、請求人にも、国税通則法第68条第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があった旨主張する。
しかしながら、本件母が、隠蔽の行為そのものであるとか、当初から相続財産を過少に申告することを意図した上、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとは認められないことから、本件母に「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実はなく、請求人についても、「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実はないといわざるを得ない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
請求人が法定申告期限までに申告書を提出しなかったことについて、隠蔽又は仮装に該当する事実はなかったとして重加算税の賦課決定処分を取り消した事例( 平成25年4月1日から平成26年3月31日までの事業年度の法人税に係る重加算税の賦課決定処分、 平成26年4月1日から平成31年3月31日までの各事業年度の法人税に係る重加算税の各賦課決定処分、 平成25年4月1日から平成26年3月31日までの課税事業年度の復興特別法人税に係る重加算税の賦課決定処分、 平成27年4月1日から平成31年3月31日までの各課税事業年度の地方法人税に係る重加算税の各賦課決定処分、 平成29年4月1日から平成31年3月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分・ 全部取消し、 一部取消し)
裁決事例集 第128集
ポイント
本事例は、請求人は調査の際に一定の書類を提示しており、提示しなかった段ボール箱の中に特段重要な書類があったとの証拠はなく、請求人が破棄したとする書類がいかなるものか明らかではないこと、一部の通帳を提示しなかったのは、その存在を失念していたからである可能性が否定できないことなどから、請求人に仮装又は隠蔽に該当する事実があったとは認められないとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人は、①請求人には申告すべき所得金額が発生しており、申告が必要であるとの認識があったこと、②事業に関する書類を段ボール箱に入れて保管していたにもかかわらず、原処分に係る調査(本件調査)の際に提示せず、請求人の代表者(本件代表者)が事業に関する帳簿や書類は破棄した旨申述したこと、③多額の売上が入金された預金口座(本件口座)に係る通帳を提示しなかったこと、④総勘定元帳等の帳簿を作成しなかったことから、国税通則法第68条《重加算税》第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があった旨主張する。
しかしながら、請求人には利益が出ており、申告が必要であるとの認識があったことは認められるものの、帳簿を作成していなかったことそれ自体は隠蔽とも仮装ともいえない。また、本件代表者は、本件調査において一定の書類を提示しているところ、本件調査の際に提示しなかったという段ボール箱の中に特段重要な書類があったという証拠はなく、本件代表者の書類を破棄した旨の申述については、提示した書類以外にいかなる書類が存在し何を破棄したのか明らかではない。さらに、本件口座に係る通帳を提示しなかったことは認められるものの、本件口座以外の5つの口座に係る預金通帳は提示しており、その中には本件口座と同じ銀行、支店の請求人名義の別の口座が含まれていたことなどからすると、通帳の存在を失念するなどして提示しなかった可能性を否定できない。これらのことなどからすると、請求人に、隠蔽、仮装と評価すべき積極的な行為が存在し、これに合わせた無申告行為があったとは認められず、また、請求人の無申告行為が、当初から課税標準額及び税額等を法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき法定申告期限までに申告をしなかったような場合に当たるとも評価することはできず、請求人に「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったとは認められない。
参照条文等
請求人が、インターネット販売に係る売上げを隠蔽し又は売上げが請求人に帰属しないかのごとく取引名義を仮装したとは認められないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例( 平成26年分及び平成27年分の所得税及び復興特別所得税に係る無申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、 平成28年分から令和2年分の所得税及び復興特別所得税に係る重加算税の各賦課決定処分、 平成27年1月1日から平成27年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税に係る無申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、 平成28年1月1日から令和2年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分・ 全部取消し、 一部取消し)
裁決事例集 第130集
ポイント
本事例は、請求人が、インターネット販売の出品者プロフィール画面に実在しない会社名や親族の名前を記載していたものの、請求人自身がネット販売を行っていることを示す行動をし、商品の仕入れにおいて請求人の実名で取引を行っていたことなどから、国税通則法第68条第2項に規定する隠蔽又は仮装の事実があったとは認められない旨判断したものである。
要旨
原処分庁は、請求人が、インターネット販売(本件ネット販売)において、出品者プロフィール画面に実在しない会社名や親族の名前を記載するなどして、取引名義を仮装することにより、本件ネット販売を行っていた事実を隠蔽した行為は、国税通則法第68条《重加算税》第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人は、出品者プロフィール画面に請求人の携帯電話番号を表示するなど顧客に対して、請求人自身が本件ネット販売を行っていることを示す行動をしていること、商品の仕入れや売上代金の回収において、一貫して、請求人の実名で取引を行い、請求人名義の口座を用いていたことからすると、商品の出品の段階において、請求人の親族の氏名などを記載していたことをもって、直ちに請求人が本件ネット販売を行っていることを隠したなどと評価することはできない。そうすると、請求人は、商品の仕入れから売上代金の回収までの本件ネット販売における取引の各段階において、本件ネット販売の取引上の名義に関し、あたかも請求人以外の者が取引を行っていたかのごとく装い、故意に事実をわい曲するなどの仮装行為を行っていた又は請求人に帰属する本件ネット販売の売上げを秘匿する等の隠蔽行為を行っていたとは認めることはできないから、「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったとは認められない。
参照条文等
請求人が、工事代金の一部が申告漏れとなったことについて、課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実について、隠匿あるいは故意に脱漏したとまでは認められないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例(令和2年1月1日から令和3年12月31日までの各事業年度の法人税に係る重加算税の賦課決定処分、令和2年1月1日から令和3年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分・全部取消し)
裁決事例集 第133集
ポイント
本事例は、請求人の取締役が、申告漏れとなっていた現金での受領に係る工事代金について、領収証を故意又は過失により発行しなかったか、その控えを故意又は過失により破棄したものと認められるものの、故意に領収証を発行しなかったこと、あるいはその控えを故意に破棄したことなどにより、故意に帳簿に記載しなかったことを裏付ける証拠はないとして、国税通則法第68条第1項に規定する「隠蔽」に該当するとは認められない旨判断したものである。
要旨
原処分庁は、請求人が現金で受領した工事代金(本件工事代金)について、請求人の取締役が請求人に帰属する金員と認識して受領した上で帳簿に記載せず、個人的に費消したと認められ、請求人も修正申告において取締役に対する役員賞与を支出したとして追認していることから、これらの行為は故意であり、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する「隠蔽」に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人が領収証の控えが存在しながら帳簿に記載しなかったことをうかがわせる証拠はないことから、本件工事代金が帳簿に記載されていなかったのは、請求人が本件工事代金に係る領収証を故意又は過失により発行しなかったか、その控えを故意又は過失により破棄したものと認められるところ、取締役の申立てからは過失により本件工事代金に係る領収証を発行しなかった事実は認められるものの、故意に領収証を発行しなかったこと、あるいは、領収証の控えを故意に破棄したことなどにより、故意に帳簿に記載しなかったことを裏付ける証拠は見当たらない。また、取締役が本件工事代金を個人的に費消したと取り扱われても仕方ない旨申し立てたことや、請求人が本件工事代金相当額を修正申告で役員賞与の取扱いをしたことは認められるものの、取締役が自らの所持金と混同するなどにより本件工事代金を個人的に費消した可能性を否定できず、請求人に帰属する金員と認識した上で個人的に費消したと認める証拠もない。そうすると、請求人が課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実について、隠匿あるいは故意に脱漏したとまでは認められない。
参照条文等
請求人の代表者が故意に売上げの一部を除外した会計仕訳をしたり、当該売上げに係る資料を税理士法人に提出しなかったとは認められないとした事例(令和2年4月1日から令和3年3月31日まで及び令和3年4月1日から令和4年3月31日までの各事業年度の法人税に係る重加算税の各賦課決定処分、令和2年4月1日から令和3年3月31日まで及び令和3年4月1日から令和4年3月31日までの各課税事業年度の地方法人税に係る重加算税の各賦課決定処分、令和2年4月1日から令和3年3月31日まで及び令和3年4月1日から令和4年3月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第140集
ポイント
本事例は、請求人の代表者らと税理士法人の担当者らでなされたメールの内容等を踏まえると、請求人の代表者が故意に売上げの一部を除外した会計仕訳をしたり、当該売上げに係る資料を税理士法人に提出しなかったとは認められないとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人の古物等の売上げ(本件売上げ)について、請求人の代表者(本件代表者)が、自身で総勘定元帳の基となる会計仕訳を入力していたところ、本件代表者が、故意に、本件売上げの会計仕訳を入力せず、また、本件売上げに係る資料を請求人の確定申告書を作成した税理士法人(本件税理士法人)に渡さなかったのであるから、当該各行為は、国税通則法第68条《重加算税》第1項又は第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する旨主張する。
しかしながら、本件代表者が、本件売上げの会計仕訳をしなかったとまでは認められない。また、本件売上げに係る資料の一部は、請求人から本件税理士法人に提出されていると認められ、その余の提出された事実が明らかではないものについても、少なくとも本件代表者が故意に提出しなかったとは認められない。したがって、本件代表者が、故意に、本件売上げに係る会計仕訳を入力しなかったこと及び本件売上げに係る資料を本件税理士法人に渡さなかったことはいずれも認められないから、請求人に、同条第1項又は第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったとは認められない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成6年11月22日第三小法廷判決(民集48巻7号1379頁) 和歌山地裁昭和50年6月23日判決(税資82号70頁) 名古屋地裁昭和55年10月13日判決(税資115号31頁) 最高裁昭和62年5月8日第二小法廷判決(集民151号35頁) 令和6年3月25日裁決(裁決事例集№134)
請求人に重加算税の賦課要件を満たす行為があったとは認められないとした事例(①平成28年分及び平成29年分の所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに重加算税の各賦課決定処分、②平成30年分から令和3年分までの所得税及び復興特別所得税に係る重加算税の各賦課決定処分、③平成30年分から令和3年分までの所得税及び復興特別所得税の各更正処分、④令和元年分の所得税及び復興特別所得税に係る過少申告加算税の賦課決定処分、⑤令和4年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに無申告加算税の賦課決定処分、⑥平成31年1月1日から令和3年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各決定処分並びに重加算税及び無申告加算税の各賦課決定処分(重加算税の各賦課決定処分については、いずれも各変更決定処分により無申告加算税相当額を超える部分が取り消された後のもの)、⑦令和4年1月1日から令和4年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の決定処分並びに無申告加算税の賦課決定処分・①全部取消し、②一部取消し、③~⑦棄却)
裁決事例集 第141集
ポイント
本事例は、原処分庁が国税通則法第68条《重加算税》第1項又は第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たすとして主張する事情によっては、請求人が、隠蔽又は仮装に該当する積極的な行為を行ったとは認められず、また、当初から過少申告等を意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき過少申告等をしたとも認められないとして、請求人に重加算税の賦課要件を満たす行為があったとは認められないとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人が、①取引先(本件法人)からの売上げ(本件売上げ)を請求人の妻名義である預金口座(本件口座)に振り込ませていたこと、②本件売上げに係る手書きの請求書を作成していたこと、③実際の収入金額を把握しており、申告した収入金額がそれより少ないことを認識していたこと、④申告に当たっては、まず経費の合計額を算出し、当該合計額に所得控除額を加え、納税額が支払える金額になるように収入金額と所得金額を決めていたことからすれば、請求人には、隠蔽又は仮装に該当する積極的な行為がある、又は、請求人が、当初から過少申告等を意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき過少申告等をしたものと認められることから、国税通則法第68条《重加算税》第1項又は第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たす旨主張する。
しかしながら、上記①についてみると、請求人の売上先は本件法人のみであり、請求人は本件口座に振り込まれた本件売上げについて過少であったとはいえ申告していたことからすると、上記①の行為により本件売上げの存在を隠蔽又は事実をわい曲したとはいえない。また、上記②ないし④については、請求人が意図的に過少申告をしたことを示す事情に該当すると認められるものの、請求人が何らの基準や根拠のない「支払える金額」を納税額として申告書に記載して過少申告をし続けたと評価できるにとどまる。したがって、請求人は、隠蔽又は仮装に該当する積極的な行為を行ったとは認められず、また、当初から過少申告等を意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき過少申告等をしたとも認められないことから、請求人に重加算税の賦課要件を満たす行為があったとは認められない。
参照条文等
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