裁決事例 源泉徴収
要旨
ストリップショウは、通常出演者が観客の前で音楽に合わせて踊りながら、次々に衣裳を脱いでいく演芸であるから、所得税法施行令第320条第4項に規定する舞踊に含まれる。したがって、当該ストリツプショウの出演者の役務に対して支払われる出演料は、所得税法第204条第1項第5号に規定する報酬又は料金に該当する。
ソフトウエアに係る著作権を侵害したとして外国法人に対し支払った金員は、所得税法第161条《国内源泉所得》第7号ロに規定する著作権の使用料に当たるとした事例
裁決事例集 第66集 200頁
要旨
所得税法161条7号ロに規定する「著作権」とは、著作権法上の著作権と同義に解することが相当であるところ、「著作権の使用料」とは、所得税基本通達161-23のとおり、著作物の複製その他著作物の利用につき支払を受ける対価の一切をいうものと解され、その対価には、所得税基本通達161-7のとおり、当該対価等として支払われるものばかりでなく、当該対価等に代わる性質を有する損害賠償金その他これに類するもの(その支払が遅延したことに基づく遅延利息等に相当する金額も含む。)も含むと解することが相当である。
これを本件についてみると、[1]本件和解金は、請求人が過去に本件ソフトウエアの著作権を侵害したことに対して支払われたものであること、[2]和解金には、ソフトウエアの新規購入分が含まれていないこと、[3]本件和解金は、本件ソフトウエアの単価×使用数の1.3倍で算出され、使用料を基礎としていることなどから判断すると、本件和解金は、著作権者に対して著作権の侵害により生じた著作権の使用料(本来、本件著作権者が得ていたであろう利益の喪失分)として支払われたものと解することが相当である。
したがって、本件和解金は、実質的には、著作権の対価等に代わる性質を有するものと認められ、所得税法161条7号ロに規定する著作権の使用料に該当し、国内源泉所得となるから、所得税法212条1項の規定により所得税の源泉徴収の対象となる。
要旨
企業支配に係る対価の額は、新たに他の企業を支配するために通常の価額を超えて支出される金額のほか、既に支配している企業に対する支配力を維持又は強化するために通常の価額を超えて支出される金額もこれに含まれると解されるところ、本件の場合、請求人が新たに取得した株式は、既に請求人が40パーセント強の株式を所有している会社の株式ではあるが、企業支配を更に強化することを目的として、発行済株式の100パーセントの株式を保有するべく取得したものであるから、これを株式の所有者によって企業支配の対価の有無を区別する理由はなく、同時に同一単価で請求人の役員から取得した株式についても、一般株主から取得した株式と同様に、その取得価額のうち通常の1株当たりの株式の価額を超えて支出した金額は、企業支配の対価と認めるのが相当である。
したがって、当該役員からの本件株式の取得は、高価買入れに当たらない。
要旨
合資会社の無限責任社員が死亡した場合、法定退社事由が生じ、その社員は退社するが、その有していた社員権は持分払戻請求権に転換し、これを相続人が承継取得することとなるところ、当該持分払戻請求権に含まれる所得税法第25条第1項第2号に規定するみなし配当は、死亡社員について社員権が持分払戻請求権に転換した時点において発生するものである。
また、同法(昭和63年法律第109号による改正前のもの)第9条第1項第20号に規定する非課税所得は、相続人の相続及び受贈者の受贈自体による利得並びに相続人等が原始取得する利得で、相続、贈与財産とみなされるものに限られ、持分払戻請求権は、これに核当しない。
したがって、退社社員の相続人に対し、払戻金を支払う会社は、それに含まれるみなし配当相当額について源泉徴収義務を負うこととなる。
役員に対し、使用人分の退職金を支給するに当たり、使用人兼務役員の期間中も自社の退職給与規定の対象となると誤解して支給した場合において、当該部分の支給は、根拠を有さないもので、支給されたものとみることはできないとして、源泉所得税の納税告知処分を当該部分につき取り消した事例
裁決事例集 第47集 340頁
要旨
請求人は、本件役員らに支給した退職金の一部は、部長兼務取締役であった期間も従業員を対象とした就業規則が適用されると誤解した錯誤によって支給したもので、この部分に係る源泉所得税の納税告知処分は違法である旨主張する。
請求人は、本件役員らについて上記兼務期間中も本件退職給与規定の対象となるものと解し、退職金を算定したと認められ、また、同規定は兼務期間は適用されないものと認められる。
ところで、本件退職金の支給は本件退職給与規定によっているのであるから、その支給が誤解によるものであって、同規定に合致しない場合には、当該部分の支給は、錯誤に該当するか否かを問わず、根拠を有さないものとなると解される。したがって、本件役員らに支給した退職金のうち兼務期間に係る金額は、支給されたものとみることはできないので、本件納税告知処分はこの兼務部分の金額については違法である。
所得税法第212条《源泉徴収義務》第3項の「支払」の意義については、これを実質的に解し、現実に金銭を交付する行為のみならず、その支払債務が消滅すると認められる一切の行為を含むものと解するのが相当であるとして、形式的意味における清算人会の決議に基づく必要があるとする請求人の主張を排斥した事例
裁決事例集 第50集 215頁
要旨
- 所得税法第25条第1項第3号の規定は、形式的には、法人の利益配当ではないが残余財産の分配等の方法で、実質的に利益配当に相当する法人利益の株主等への帰属が認められる行為が行われたときに、これを配当とみなして株主等に課税する趣旨である。
したがって、法人の当該行為が残余財産の分配に当たるか否かについては、商法等の定める手続きを経ているか否かだけでなく、当該行為のもつ経済的効果をも勘案して実質的見地から判断すべきである。 - 上記の趣旨からすれば、所得税法第212条《源泉徴収義務》第3項の「支払」についても実質的に解し、現実に金銭を交付する行為のみならず、その支払債務が消滅すると認められる一切の行為を含むものと解するのが相当である。
- 協同組合における残余財産の分配は、清算人会が決定することとされている[中小企業等協同組合法第36条の2(理事会)]が、みなし配当として源泉徴収義務が発生する残余財産の分配(支払)のために、常に清算人会の決議が必要と解すると仮に法人の利益が何かの機会に組合員に移転した場合でも、形式的には決議がなければ課税されないことになるが、これは所得税法の解釈として妥当でない。上記中小企業等協同組合法の規定は、組合員や債権者保護のための手続規定であり、決議以前に法人の利益が組合員に移転したような例外的場合における所得税法の解釈にまで影響を及ぼすものではないと解するのが相当である。
- 本件残余財産の分配の時期
- 平成3年12月の分配
11組合員に対する貸付金を仮払金と振替処理した平成3年12月10日に当該組合員に対して残余財産の一部442,895千円が分配され、その限度において請求人の残余財産の支払債務が消滅したものと認められる。 - 平成4年1月の分配
平成4年1月13日付の「組合清算金一部仮払いにつきお願いの件」と題する書面を交付した上、同日にG社に対し33,570,000円、同月21日にF社に対し23,535,000円支払っているのは、残余財産の一部の分配であり、各支払時点で請求人の支払債務が一部消滅したものと認められる。 - 平成4年8月及び9月の分配
請求人が、平成4年8月4日、同月20日及び同年9月21日に本件組合員に支払った金員は、同年7月17日の清算人会の承認に基づき本件念書記載のとおり、残余財産の一部を分配したものと認められる。
- 平成3年12月の分配
源泉徴収の対象となる匿名組合契約に基づく利益の額の計算上、契約内容の異なる別個の匿名組合契約に係る損失の額及び別途支払うこととされている管理費用の額を控除することはできないとした事例
裁決事例集 第90集
ポイント
本事例は、源泉徴収の対象となる支払には、現実に金銭を交付する行為のほか、支払の債務が消滅する一切の行為が含まれるから、新たな匿名組合契約に係る出資金等への充当は支払に当たるとするのが相当であるが、当該充当後の残額の支払は翌月に行われているから、本件匿名組合契約の利益の全額が当月に支払われたとして行われた納税告知処分の一部を取り消したものである。
要旨
請求人は、自己を営業者とする匿名組合契約(本件匿名組合契約)に基づく利益の分配の額の計算上、本件匿名組合契約は、本件匿名組合契約の締結前に締結していた匿名組合契約(旧匿名組合契約)と実質的に同一の匿名組合契約であるから、旧匿名組合契約による事業から生じた損失の額及び旧匿名組合契約に基づいて営業者に支払うこととされていた管理費用の額は、本件匿名組合契約の利益の額から控除すべきである旨主張する。
しかしながら、本件匿名組合契約と旧匿名組合契約とは契約内容が同一であったと認めることはできず、また、旧匿名組合契約は契約に定められた期間にそれぞれ終了し、当該契約に従って行われた運用結果報告により返還される出資金の額が通知されたことが認められ、これらによれば、本件匿名組合契約と旧匿名組合契約とは形式的にも実質的にも別個の匿名組合契約としてそれぞれ締結され、終了したものと認めるのが相当である。そうすると、当該損失の額及び当該管理費用の額は、旧匿名組合契約に係るものであるから、本件匿名組合契約に基づく利益の分配の額の計算上、利益の額から控除することはできないというべきである。
参照条文等
請求人の子会社が複数の外国法人と締結した契約の当事者が、当該子会社ではなく請求人であるとはいえないとした事例( 平成25年4月1日から平成26年3月31日までの事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、 平成25年4月1日から平成26年3月31日までの課税事業年度の復興特別法人税の更正処分、 平成25年6月から同年12月までの各月分及び平成26年2月から同年8月までの各月分の源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の各納税告知処分並びに不納付加算税の各賦課決定処分・ 棄却、 全部取消し)
裁決事例集 第104集
ポイント
本事例は、請求人の子会社が複数の外国法人と締結した契約に係る契約書はいわゆる処分証書に該当し、作成の真正に争いがなく他に特段の事情も認められないことからすれば、契約当事者を請求人であるとすることはできないとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人の子会社(本件子会社)が複数の外国法人と締結した商材の販売(本件事業)に係る契約(本件契約)について、①請求人と本件子会社との間で締結した本件子会社の名義を借用する契約(本件許諾契約)に基づき、請求人が本件子会社の名義を使用して本件事業を行い、その収益を請求人に帰属させていること及び②請求人と本件子会社との間で締結された業務委託契約(本件業務委託契約)に基づき、本件契約に定められた本件子会社の業務を請求人の従業員が実際に行っていること等を理由として、本件子会社は名目上の契約者にすぎず、請求人が実質的な契約当事者である旨主張する。
しかしながら、本件契約に係る契約書は、いわゆる処分証書に該当し、他に特段の事情がない限り、作成者によって記載どおりの行為がなされたものと認めるべきであるところ、本件子会社は事業を営む実体のある法人であり、その法人格を否認する特段の事情は認められず、本件契約の当事者が本件子会社であることを他の契約当事者が合意した上で本件契約を締結したことが認められ、あえて契約当事者を請求人であるとする特段の事情も認められない。また、本件許諾契約及び本件業務委託契約は、本件契約とは当事者が異なる別個の契約であり、それぞれの契約の締結には合理的な理由があると認められるから、これらの契約の存在を度外視して、本件契約と本件許諾契約及び本件業務委託契約をいわば不可分一体のものとみて、本件契約の当事者が請求人であるとすることはできない。
参考判決・裁決
最高裁昭和45年11月26日第一小法廷判決(裁Web) 最高裁昭和32年10月31日第一小法廷判決(民集11巻10号1779頁)
要旨
請求人は、事業協同組合の組合員の死亡脱退により、死亡した組合員の相続人が支払を受ける持分払戻金は、死亡退職金と同様、所得税を課税せずに相続税のみを課税する相続財産として取り扱われるべきであるから、原処分庁が、当該持分払戻金のうち、出資金額を超える部分についてみなし配当であるとして行った源泉所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分を取り消すべきである旨主張する。
しかしながら、本件の脱退組合員持分払戻金(以下「本件払戻金」という。)は、組合員D及びE(以下、DとEを併せて「本件各組合員」という。)が死亡によって請求人を脱退し、出資持分の払戻金として支払われたものと認められるが、死亡による脱退であっても社内に蓄積された利益積立金が払戻しにより社外に流出するという点では他の脱退の場合と同じであり、本件払戻金のうち本件各組合員の出資金の額を超える部分の金額(以下「本件金額」という。)は、「みなし配当」に当たると認めるのが相当である。
また、請求人の定款には、組合員が脱退したときには、組合の財産についてその出資口数に応じて算定した金額を限度として払い戻すものとする旨を定めていることから、本件各組合員の死亡時において、本件各組合員は組合を脱退し、出資持分に係る払戻しを受けることが確定するため、その時点において本件払戻金の払戻請求権(以下「本件払戻請求権」という。)が発生したと解するのが相当であるから、本件払戻金は出資者である本件各組合員に帰属すると認めるのが相当である。
なお、本件金額は、本来は「みなし配当」として本件各組合員に支払われるべきものであるが、本件各組合員の死亡によって本件払戻請求権が一旦本件各組合員に帰属し、その後遺産として本件各組合員の相続人に承継されたことにより、当該相続人に支払われたものであり、相続人の相続税と本件各組合員の所得税が二重課税になるというものではない。また、本件払戻金は、相続税法第3条第1項各号に規定する相続又は遺贈により取得したものとみなす財産のいずれにも該当しないから、相続税法上のみなす財産とされる死亡退職金等と同列の財産ということもできない。
役職に変動がなくても労働条件等に重大な変動があり、単なる従前の勤務関係の延長とみることはできないとして、退職手当等としての性質を有する給与に該当すると認定した事例(平成24年5月分の源泉徴収に係る所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分・全部取消し)
裁決事例集 第97集
ポイント
本事例は、形式的な役職の変動ではなく実質的な勤務実態や支給に至った経緯等を総合勘案し、実質的に退職したのと同視し得る状況にあったと認定し、所得税法第30条の「(退職手当・・・その他の退職により一時に受ける給与及び)これらの性質を有する給与」に該当するとしたものである。
要旨
原処分庁は、学校法人である請求人が設置、運営する幼稚園(本件幼稚園)の園長兼請求人の理事長である者(本件園長)に対し退職金として支払われた金員(本件金員)について、本件園長は、引き続き他の職員と同様に出勤し請求人から給与を受領していることから、勤務関係が終了したとは認められないこと、また、本件園長が請求人の理事長としての業務を引き続き行っており、本件園長の勤務時間及び給与等の減少割合からしても、本件園長の勤務関係の性質、内容及び労働条件に重大な変動があったものと認めることはできないことから、本件金員に係る所得は給与所得に該当する旨主張する。
しかしながら、本件園長並びに本件幼稚園の副園長及び事務長の答述その他関係資料等によれば、本件園長の行う職務全体に占める理事長としての職務の割合は、本件幼稚園の園長としての職務に比べてごく僅かであったと認められること、また、実質的な園長としての職務のほとんどを副園長に引き継ぐことにより、その職務内容は量的にも質的にも大幅に軽減され、その実態に即するように基本給の額を減額するなど労働条件も大きく変動したものと認められ、本件園長の勤務関係は、その性質、内容及び労働条件等において重大な変動があって、形式的には継続している勤務関係が実質的には単なる従前の勤務関係の延長とみることができない特別の事実関係があるというべきであるから、本件金員は、所得税法第30条《退職所得》第1項に規定する退職所得に該当する。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和58年9月9日第二小法廷判決(民集37巻7号962頁) 最高裁昭和58年12月6日第三小法廷判決(集民140号589頁)
要旨
懲戒解雇した従業員に対して、地位保全仮処分申請に係る裁判所の決定の履行として支払った金員は、当該決定が懲戒解雇の意思表示の効力を雇用関係存在確認訴訟事件の本案判決確定に至るまで停止させるとともに、本案判決確定まで請求人は当該従業員に対して毎月所定の金員を支払うよう命じていることなどから、請求人と当該従業員との間に雇用関係の存在することが認められるので、所得税法第28条第1項に規定する給与所得に該当するものとすることが相当である。
要旨
請求人は、マネージャーは請求人の商品の外交販売に従事せず、その者自身が雇用する委託販売に請求人の商品を外交販売させ、その取扱数量又は取扱金額に応じて販売手数料を受領する者であり、請求人の下請業者又は特約店の事業主であると主張するが、マネージャーは、請求人との委託契約により、[1]請求人の指定する商品の割賦販売契約等の勧誘及び委託販売員の指導等の業務の委託を受け、[2]電話使用料等の経費相当額を負担し、[3]継続的に請求人と顧客との商品の売買契約を媒介する役務の提供を行っているもので、[4]請求人は、その商品の販売高に応じてあらかじめ定められている手数料をマネージャーに支払っているものと認められるから、所得税法第204条第1項第4号に規定する外交員に該当し、請求人にはその源泉徴収義務がある。
非居住者である請求人が行っている国内不動産の貸付けが所得税法上の事業に該当するとはいえないから、当該不動産の賃貸料等は、代理人等を通じて行う事業に帰せられる国内源泉所得には該当せず、源泉徴収の免除の要件を満たさないとした事例(平成27年7月30日付の非居住者に対する源泉徴収の免除証明書を交付できないことの通知処分・棄却)
裁決事例集 第105集
ポイント
本事例は、非居住者に適用される源泉徴収の免除に関する規定(平成26年法律第10号による改正前の所得税法第214条第1項第3号)における「事業」の意義は、所得税法の他の規定における事業と同一の概念に解するのが相当としたものである。
要旨
請求人は、所得税法に「事業」についての一般的な定義規定が置かれていないことからすれば、所得税法(平成26年法律第10号による改正前のもの)第214条《源泉徴収を要しない非居住者の国内源泉所得》第1項第3号にいう「事業」とは、家事活動に対する経済活動を意味するものにすぎず、請求人が国内で不動産を貸し付けている以上、当該貸付けにより支払を受ける不動産の賃貸料等は、代理人等を通じて行う事業に帰せられる国内源泉所得に該当する旨主張する。
しかしながら、所得税法は、居住者の所得金額を計算するに当たって、事業から生ずる所得と、事業に至らない所得とを明確に区分して規定しており、これらの規定は非居住者にも準用されているところ、非居住者に適用される源泉徴収の免除に関する規定における「事業」の意義についても、所得税法の他の規定における事業と同一の概念に解するのが相当であって、これと異なる解釈をすべき理由は見当たらないから、所得税法第214条第1項第3号に規定する「事業」の意義については、所得税法における事業の概念をそのまま当てはめることが妥当である。そして、所得税法における事業の意義については、営利性・有償性の有無、継続性・反復性の有無、自己の危険と計算における企画遂行性の有無、その取引に費やした精神的肉体的労力の程度、人的・物的設備の有無、その取引の目的、その者の職歴、社会的地位・生活状況などの諸点を総合して、社会通念上事業といい得るか否かによって判断されるべきものと解するのが相当であるところ、請求人による不動産の貸付けの規模や態様からすれば、社会通念上事業といい得る経済活動とみることは困難である。したがって、請求人による不動産の貸付けは、所得税法上、事業とはいえないことから、請求人が当該貸付けにより支払を受ける賃貸料等は、代理人等を通じて行う事業に帰せられる国内源泉所得に該当しない。
参照条文等
所得税法(平成26年法律第10号による改正前のもの)第161条第3号、第164条第1項第3号、第212条第1項、第214条第1項第3号
要旨
- 請求人が外国人芸能タレントの招へい業者に支払った芸能タレントの報酬額及び源泉所得税額相当額については、請求人と当該招へい業者との間には芸能タレントの出演請負契約があること、芸能タレントの報酬額及び源泉所得税額相当額の区分は明確になっておらず、その区分は当該招へい業者へ支払う報酬の算定根基にすぎないこと、現行の源泉徴収制度は、報酬の支払先に源泉徴収を依頼するような制度にはなっていないこと等からみて、請求人において源泉徴収を要する。
- 請求人が外国人芸能タレントに対して芸能タレントの売上成績に応じて支払った、いわゆるドリンク・バックは、当該芸能タレントのホステス業務に対する対価であること、ホステス業務に関する請求人と芸能タレントとの関係は請負と認められること、ホステス業務は国内店舗で行われていること等からみて、国内源泉所得に該当するから、源泉徴収の対象になる。
定年年齢を超えて勤務していた医師に支払った一時金は、退職を原因として給付されたものと認められるから、退職所得に該当するとした事例(令和4年3月分の源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分並びに令和4年12月分の源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の納税告知処分・全部取消し)
裁決事例集 第140集
ポイント
本事例は、病院等を運営する請求人が、雇用する医師の定年を定める旨の就業規則の改正を行い、当該改正時、既に定年に達していた医師らに対して退職金として支払った一時金について、所得税法第30条第1項に規定する退職手当等に該当するとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人が運営する病院等で勤務する医師ら(本件医師ら)に対し退職金の名目で支払った金員(本件一時金)について、請求人と本件医師らの間には、退職及び再雇用という実質がなく、従来の勤務関係がそのまま継続していたことが推測され、本件医師らは、再雇用とされた前後で賃金が同水準であり、その役職も変動がなかったと推認されること等から、勤務関係が終了したとも、勤務関係の性質、内容及び労働条件等において重大な変動があって、形式的には継続している勤務関係が実質的には単なる従前の勤務関係の延長とはみられないなどの特別の事実関係があったとも認められず、また、本件一時金が合理的な理由による退職金支給制度の実質的改変により精算の必要があって支給されたものとも認められないから、本件一時金は所得税法第30条《退職所得》第1項に規定する退職手当等に該当しない旨主張する。
しかしながら、請求人の理事を兼務する医師(本件兼務医師)を除く本件医師らについては、新たな雇用契約(本件各雇用契約)に至る経緯及び内容を踏まえると、雇用形態の法的性質は大きく異なっており、請求人を取り巻く状況などを踏まえると、本件各雇用契約の前後で業務内容及び賃金等の変動がないことをもって従来の勤務関係が終了していないとみるのは相当でなく、請求人の本件各雇用契約締結の目的も合理的な理由を有するから、従来の勤務関係の終了があったと認められる。また、本件兼務医師については、理事の身分に変更がないから請求人における勤務関係が終了したとはいえないが、使用人としては他の医師らと同様に従来の勤務関係が終了したと認められ、本件兼務医師に係る本件一時金は、理事としての職務に対するものではないこと等から、使用人としての関係においては、実質的にみて所得税法第30条第1項に規定する「退職により一時に受ける給与」というための各要件の要求するところに適合し、課税上、これと同一に取り扱うことが相当であり、同項に規定する「これらの性質を有する給与」に該当すると認められる。したがって、本件一時金は、所得税法第30条第1項に規定する退職手当等に該当する。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和58年9月9日第二小法廷判決(民集37巻7号962頁) 最高裁昭和58年12月6日第三小法廷判決(集民140号589頁)
従業員地位保全・金員支払仮処分申請に係る裁判所の決定に係る給付金支払債務について、その金額につき差押えを執行された場合においても源泉徴収義務があるとした事例
裁決事例集 第24集 67頁
要旨
従業員としての地位保全と賃金の仮払いを求める仮処分の決定の支払命令に基づく本件給付金員支払債務について、その金額につき差押えを執行されたため所得税の源泉徴収をする機会がなかったと請求人は主張するが、本件給付金員に係る給与に対する源泉所得税は、その支払者が所得税法第222条の規定に基づきその後の給与等の支払分から控除するか、又は受給者に対して当該税額に相当する金員の請求ができることになっている以上、給与支払者たる請求人の源泉徴収義務には何ら影響がない。
源泉徴収に係る所得税の算出において、請求人が源泉徴収に係る所得税を負担することを合意したものとは認められないと判断した事例( 平成29年10月、平成30年3月、平成30年6月、平成30年7月、平成30年11月、平成31年1月から令和元年10月まで、令和元年12月から令和3年7月まで、令和3年9月、令和3年10月及び令和3年12月から令和4年3月までの各月分の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分及び不納付加算税の各賦課決定処分(平成30年6月、平成30年7月及び令和元年5月の各月分については各訂正告知処分及び不納付加算税の各変更決定処分後のもの) 平成30年1月及び令和元年11月の各月分の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分・ 一部取消し、棄却)
裁決事例集 第132集
ポイント
本事例は、請求人がインド法人に支払った金員は「技術上の役務に対する料金」と認められるものの、請求人と支払先法人との間で、請求人が源泉徴収に係る所得税を負担することを合意したものとは認められないとして、源泉徴収に係る所得税の算出においてグロスアップ計算を認めなかったものである。
要旨
請求人は、インドに所在する外国法人3社(J社、K社、L社)に対して支払った各金員(本件各支払金)について、①J社はインドの法律に基づき設立されたリミテッド・ライアビリティー・パートナーシップであるから請求人の支店的な存在であり、支払った金員は、J社の維持・管理に必要な資金の送金又は給与で、業務を委託した対価ではないこと、②請求人とK社との契約(本件K社契約)によれば、支払った金員はソフトウエアの譲渡対価であること及び③L社に支払った金員はウェブサイト及びアプリケーションのデザインの対価であり、デザインはコンピュータプログラムとは関係ないことから、それぞれ、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とインド共和国政府との間の条約(日印租税条約)第12条第4項に規定する「技術上の役務に対する料金」に該当しない旨主張する。
しかしながら、①インドの法律上、J社は、請求人とは別個の法的主体であり、かつ、請求人と協働でソフトウエア開発業務を行っていると認められることから、当該開発業務に係る役務は、日印租税条約第12条第4項に規定する「技術的性質の役務」に該当すること、②本件K社契約は、請求人がK社に対してソフトウエアの開発の支援を依頼し、K社は当該開発に関して定義された範囲の業務を行い、対価の最終支払までに当該定義された範囲の業務の全てを完了させ、当該開発に関する全てのソフトウエア等を請求人に引き渡す旨定めた契約であり、これらの業務に係る役務は、同項に規定する「技術的性質の役務」に該当することからソフトウエアの譲渡対価ではないと認められること、及び③同項は、「技術上の役務に対する料金」についてその範囲をプログラミングサービスの提供に限定しておらず、L社が行った役務は、同項に規定する「技術的性質の役務」に該当すると認められることから、本件各支払金は、同項に規定する「技術上の役務に対する料金」に該当する。
ただし、原処分庁は、K社に対する支払金の額について、源泉徴収の対象となるものの支払額が税引手取額で定められているものとして源泉徴収に係る所得税の額を算出する計算(グロスアップ計算)により当該所得税の額を算出しているところ、原処分庁がグロスアップ計算の根拠として掲げる本件K社契約の条項は、本件K社契約の履行に際し、契約違反や第三者からの訴訟等に備えて契約書に盛り込まれる条項であり、請求人が源泉徴収に係る所得税を負担することを合意したものとは認められないから、K社に対する支払金について当該所得税の額をグロスアップ計算により算出することは認められない。
参照条文等
所得税法第161条第1項、第162条第1項、第212条第1項 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とインド共和国政府との間の条約第12条
要旨
請求人は、請求人が取得した自己株式の取得価額について、税法上の適正価額(時価)に比して高額であり、当該高額な部分は本件株式の取得の対価ではなく、請求人にとっては売主に対する寄附金であり、売主にとっては法人からの贈与であるから一時所得になり、みなし配当部分はないから、原処分庁の行った納税告知処分等は違法であると主張する。
しかしながら、その自己株式の取得価額は、①第三者間における合意に基づく売買として成立したものであること、②平成16年当時の請求人の株式の純資産価額は、取得価額より若干低い程度であったこと及び③その自己株式の購入の約1か月前に関連会社から自己株式をおおむね同額で購入していることから、正常な取引に基づく時価、すなわち適正価額と認められ、当該高額な部分はなく請求人の主張は採用できない。
要旨
請求人は、韓国の居住者である芸能人に対し、国内における芸能人としての人的役務の提供に対する報酬を支払っていたが、本件報酬は、日韓租税条約第6条(1)に規定する「産業上又は商業上の利得」に該当するところ、本件芸能人は請求人を代理人としているところから、同条約第4条(4)及び(5)により、請求人という独立の地位を有する代理人を通じて国内で役務提供をしている場合には国内に恒久的施設を有しないこととされるから、同条約第6条(1)により、本件報酬はわが国において免税となる旨主張する。しかしながら、本件報酬に係るわが国における課税権の有無は、本件報酬に係る別個の条項である日韓租税条約第12条(4)に規定する要件により判断するのであり、第6条(1)に規定する要件により判断すべきではないところ、第12条(4)によれば、わが国における恒久的施設の有無は要件とせず、役務提供が国内で行われ、その報酬の額が一定額を超えることを要件にわが国における課税権を認めていることから、請求人の主張は採用できない。
また、本件報酬は芸能人が芸能人として自らの人的役務を提供することにより取得する報酬であるから、上述のとおり第6条(1)は無関係であり、第4条(4)(b)(ii)に規定する「第12条(4)に規定する芸能人の役務」を提供する場合とは、芸能プロダクション等が芸能人の人的役務を他者に提供することにより取得する所得の場合のみの規定であるから、同条項は本件報酬のわが国における課税権の有無の判断には無関係である。
要旨
請求人が支払った報酬は一人親方に対するものであって、外注費として取り扱うべき旨請求人は主張するが、本件報酬について、各職人の労務の提供は、職人個々の独立した事業として行われたものとは認められず、かつ、その労務の提供の対価は基本賃金のほか時間外勤務手当等の支払基準により支払われていることからして、請求人と職人との間の雇用契約書の作成はないものの、その実質は請求人がこれら職人を雇用の上、その就労の対価、すなわち給与等として支払ったものと解するのが相当である。また、仮にこれら職人が請求人主張の一人親方に当たるとしても、その支払う報酬が当該親方の危険と計算によらず、請求人の指揮監督の下に提供された労務の対価としての性質を有するものであれば、所得税法第28条第1項に規定する給与等に当たるとみるのが相当である。
要旨
本件保険契約は、万一の場合の保障と貯蓄との二面性のある養老保険契約であって、保険金受取人である従業員は、保険事故の発生又は保険期間の満了の際には当然に保険契約上の利益、すなわち保険金請求権を自己固有の権利として原始的に取得するものであり、請求人はその報酬として保険者に対し本件保険料を支払い損金に算入していることから、当該従業員は本件保険料相当額の経済的利益を亨受していると認めるのが相当であり、本件保険料の額を給与所得の収入金額と認定し、源泉所得税の納税告知をした原処分は違法とはいえない。
請求人の代理店は、請求人との販売委託契約書に基づき請求人の扱っている商品について、請求人と顧客との販売契約の申込みの勧誘等の業務委託を受け、請求人と顧客との売買契約の締結を媒介する役務を請求人に提供していることから、所得税法第204条に規定する外交員に該当するとした事例
裁決事例集 第57集 206頁
要旨
請求人は、請求人の代理店は、[1]自己の責任で顧客との契約を行っていること、[2]自己が負担すべき車代、本代及びアルバイト代等を負担していること及び[3]一定の期間において継続して請求人の扱う商品の販売活動を行っている者はほとんどいないことから、代理店は独立した営業者であり、外交員には該当しない旨主張する。
しかしながら、外交員とは、事業主の委託を受け、継続的に事業主の商品等の購入の勧誘を行い、購入者と事業主との間の売買契約の締結を媒介する役務を自己の計算において事業主に提供し、その報酬が商品等の販売高に応じて定められている者をいうと解されている。
これを本件についてみると、[1]請求人と代理店との間で本件販売委託契約が締結されていること、[2]請求人の仕入先との本件販売契約書において顧客との取引がクーリングオフされた場合には、請求人が責任をもってその処置に当たることとされていること、[3]クレジット申込書の販売店欄に請求人の別称の記載がされていることからすれば、本件商品の顧客との売買契約の当事者となるのは、代理店ではなく請求人と認められ、代理店はその当該契約の媒介を行っているものと認められる。
また、本件販売委託契約書の内容に照らせば、代理店は本件販売委託契約書に基づき、請求人から請求人の扱う商品について、請求人と顧客との間の売買契約の申込みの勧誘及び媒介業務の委託を受け、請求人と顧客との間の売買契約の締結を媒介する役務を請求人に提供しているものと認められる。
さらに、代理店が請求人から受領する本件委託販売手数料は、代理店が販売した商品ごとにあらかじめ手数料率に基づき売上金額に応じて算定されており、本件販売委託契約書には契約期間の定めがあることから、代理店は請求人とその契約期間内において継続的な関係を有しているものと認められる。
そうすると、代理店は、請求人との本件販売委託契約書に基づき、請求人の指定する商品について請求人との間の売買契約の申込みの勧誘及び媒介業務の委託を受け、本件経費相当額を負担して継続的に請求人と顧客との商品の売買契約を媒介する役務の提供を行っているものであり、その役務の提供に対する対価の額は、販売した商品ごとに請求人があらかじめ定めた手数料率に基づき、売上金額に応じて支払われていることが認められるから、これらの事実によれば、代理店は外交員に該当し、本件委託販売手数料は外交員報酬に該当するものと認められるから、請求人には所得税法第204条第1項に規定する所得税の源泉徴収義務があると解するのが相当である。
なお、平成8年3月分の源泉所得税の額に誤りが認められるので、当該部分に係る納税告知処分はその一部を取り消すべきである。
衣料品の輸入販売業を営む請求人が海外の取引先に支払った金員は、所得税法第161条第7号イに規定する工業所有権等の使用料に該当し、源泉徴収に係る所得税の納税告知処分は適法であるとした事例
裁決事例集 第61集 293頁
要旨
請求人は、海外の取引先から提供を受けるデザイン画等の対価として契約に基づき支払った金員について、[1]当該デザイン画等は鑑定、調査の結果が図面化されたものにすぎず、[2]取引先のデザイン画等の作成の実費相当額を支払ったものであり、また、[3]当該デザイン画等を基に製作される衣料品はイタリアで製造され、請求人の日本国内業務に該当しないから、所得税法第161条第7号イに規定する使用料に該当しないと主張する。
しかしながら、当該金員は、[1]デザイナーの創作によるデザイン画等の対価であり、[2]契約書等から実費相当額とは認められず、[3]請求人が日本国内で販売するための衣料品製作に係るデザイン画等の提供の対価であると認められる。
したがって、当該金員は同号イに規定する使用料と認められるから、原処分庁が行った源泉徴収に係る所得税の告知処分は適法である。
要旨
請求人の専務理事らが横領、流用した金額を請求人からの貸付金であると認定するには、[1]専務理事らが請求人の資金を使用したことにつき、請求人から借り受ける趣旨の意思を表示したかどうか、[2]金利ないし利率、返済期限、担保などについて専務理事らがどのように認識していたか、また、[3]請求人の側においても、専務理事らに対する貸付けの認識があるかどうか、更にその債権管理方法をどのようにしているかなどの事実に照らして請求人と専務理事らとの間に金銭消費貸借契約(ないし準消費貸借契約)が成立し、請求人が貸付金債権を取得したかどうかを判定すべきであるところ、本件において、専務理事らが上記[1]の借受けの意思を表示したことを認め得る証拠はなく、また、金銭貸借において通常定められる上記[2]のような借入れの条件が定められたものと認識していたことを示す証拠もなく、金銭消費貸借契約が成立したことは認められないから、請求人が専務理事らに対し貸付けをなしていたとはいえず、したがって、貸付金に係る利息は発生しない。
不動産売買業を営む法人が、土地売買により生じた簿外収益の一部を同法人の実質的代表者に賞与として支給したものと認定し、源泉徴収に係る所得税の納税告知処分をしたことは適法であるとした事例
裁決事例集 第39集 332頁
要旨
不動産売買業を営む法人である請求人は、土地の売買により生じた簿外収益の一部とその収益を預け入れた簿外の請求人名義の普通預金の払戻金との合計金員3,200万円余を請求人の会計帳簿に計上せず、かつ、当該土地取引の代金の授受及び簿外普通預金の管理をしていた請求人の代表取締役の夫は、その使途を説明しないのであるが、[1]代表取締役の夫は、請求人の業務の指揮・監督をするなど実質的に請求人の経営の一切を支配しており、かつ、当該土地取引の代金の授受及び簿外普通預金の払出しを自ら行うなど、本件金員を自由に処分できる立場にあったこと、[2]本件金員は、その用途が明らかでないこと、及び[3]本件金員が請求人の費用等に充てられたとする証拠資料はないこと等の事実を総合すれば、本件金員は代表取締役の夫が個人的に費消したものと推認され、したがって、請求人は同人に対し賞与を支給したものと認められるので、その賞与について源泉徴収に係る所得税の納税告知処分をしたことは適法である。
弁護士である破産管財人に支払われた破産管財人報酬は、所得税法第204条第1項第二号に規定する弁護士の業務に関する報酬に該当し、破産者の源泉徴収義務及び納付義務に関する手続は破産管財人が負うものとした事例
裁決事例集 第63集 212頁
要旨
請求人は、破産管財業務が弁護士法第3条に規定する官公署の委嘱に基づく法律事務に該当しないので、破産管財人報酬は所得税法第204条第1項第2号に規定する弁護士の業務に関する報酬ではない旨主張する。
しかしながら、もともと破産管財業務には法律的判断を伴う事務を行うことが予定されている上、本件破産事件において破産管財人に選任された請求人自身弁護士であり、かかる破産管財人には弁護士の中から選任されているのが破産実務の現状であること、本件破産管財業務をみると、売掛金請求訴訟や集合債権譲渡担保権者に対する否認権行使訴訟を提起するなど法律行為が含まれていることなどを総合考慮すると、請求人が行った破産管財業務は弁護士法第3条第1項に規定する官公署の委嘱に基づく法律行為に該当するものであるから、かかる破産管財人報酬は弁護士の業務に関して支払われた報酬であると認めるのが相当である。
請求人は、破産管財人報酬は共益費用の性質を有する上、破産者は破産財団に属する財産に対して何ら権利を有しないことから、破産者に源泉徴収義務はない旨主張する。
しかしながら、破産管財人の報酬は、財団債権として破産財団から支払われるが、この破産財団は破産者の財産であることには変わりがないことから、破産管財人の報酬の支払に伴う経済的出捐の効果が最終的に帰属する者は破産者であり、この意味において所得税法204条1項にいう支払をする者とは、破産者を指すものといわざるを得ない。ただ、破産宣告により破産財団に対する管理処分権は破産管財人に専属することになるところ、租税の申告納付は破産財団の管理処分の一環とみることができるのであるから、破産者の源泉徴収義務及び納付義務に関する手続は、破産管財人が負うものと解するのが相当である。
請求人は、異議決定により本件納税告知処分の原因である「給与」の支払がないとされたのであるから、本件納税告知処分は違法である旨主張する。
ところで、国税通則法36条2項は、納付すべき税額、納期限及び納付場所を納税告知書に記載すべきものとするにとどまり、受給者名、支払年月日など個々の源泉所得税を識別するに足りる事項の記載までは要求していないから、たとえ法定納期限、所得の種類等に誤りがあったとしても、告知額が正当であるときは、それだけの理由で当該納税告知処分が違法となるものではないと解すべきである。ただ、当該納税告知処分が源泉所得税の納税義務の履行を求めるものであることからすれば、当該納税告知書に記載された所得の種類、法定納期限、年月ごとの本税額等の事項から、客観的にこれに包含されるものと認識できる範囲(同一性が認められる範囲)を超えることは許されないと解するのが相当である。本件について判断すると、本件管財人報酬という同一の支払に係る同一の法定納期限の未納の源泉所得税が告知処分時に客観的に存在しており、所得の種類及び告知額の記載事項に誤りがあるものの、異議決定により減額された本税額等は再納税告知処分等の告知額の範囲内であることなどを考慮すると、本件においては、客観的にその対象となる支払が包含されているものと認識できる範囲(処分の同一性の範囲)にあると認められるから、請求人の主張は採用できない。
要旨
請求人が、外国法人の出向元法人の依頼により、外国人出向者の日本における租税を日本の税務官署に納付し、これを出向元法人への立替金として経理処理しても、この立替金は、請求人が居住者である外国人出向者に対して給与等を支給したことになるから、請求人はこれに係る源泉徴収義務がある。
マネキン報酬について、日額表乙欄、丙欄のいずれを適用するかは、正社員の勤務状況に比較して当該マネキンが継続して2月を超えて就労していたかどうかにより判定すべきであるとした事例
裁決事例集 第43集 277頁
要旨
請求人は、マネキンに支払った金員について、マネキンの雇用期間が継続して2月を超えないことから、税額表は日額表丙欄を適用すべきである旨主張するが、当該マネキンの雇用期間の延長又は再雇用により継続して2月を超えて雇用されているものと認められるか否かは、マネキンが一つの契約に係る就労を開始する日現在において、過去2月間に就労しない日が月当たりおおむね2週間以上ある場合は、雇用期間は継続していないものと判断して日額表丙欄を適用し、それ以外の場合には、それ以後明らかに雇用関係を打ち切ったものと客観的に認められる空白期間がない限り、依然として雇用は継続しているものと判断して日額表乙欄を適用するのが相当である。
要旨
請求人がA社の代表者B男を招へいするに際し、対価の支払に代えて、本件借入金を肩代わりしたのであるから、B男に対する対価の支払も同時に履行されたというべきであり、よって、請求人が毎月支出している強化費は、請求人自身の債務を弁済しているにすぎず、原処分庁が主張するB男に対する契約金の分割払には当たらない。
したがって、所得税法第204条に規定する所得税の源泉徴収義務はない。
養老保険契約に加入し支払った保険料について、請求人は、所得税基本通達36-31の(3)に該当すると主張するが、当該保険契約は、被保険者が主任以上という基準であり、全従業員がその恩恵に浴する機会が与えられているとは認められず、給与に該当するとした事例
裁決事例集 第46集 177頁
要旨
請求人は、本件養老保険契約に係る被保険者について、[1]勤続年数15年以上、[2]年齢40歳以上、[3]定年までの定着度の各要件を総合勘案して、各職種より選定した旨主張するが、1名のやむを得ない例外を除いては主任以上の全従事員が被保険者となっており、保険加入の対象者として主任以上の基準を設けていたことが推認される。
ところで、請求人においては、主任とは役職名の一つであって、役職の任免は請求人の業務運営上の必要に応じて行われるものとされており、必ずしもすべての従事員が主任以上の役付者になれるとは限らず、また、課長又は主任に任命されていない者で勤続年数15年以上かつ年齢40歳以上の者が3人認められることからみると、全従事員がその恩恵に浴する機会を与えられているとは認められない。
したがって、本件保険契約については、全従業員がその恩恵に浴する機会が与えられているとは認められず、支払った保険料は、被保険者に対する給与とすることが相当である。
タクシーによる旅客運送業を営む法人について、休日乗務手当、嘱託乗務員の乗務手当の源泉徴収につき、支給額等を認定し、適用税率を是正し、税額を算定した事例
裁決事例集 第48集 335頁
要旨
請求人は、[1]原処分庁は、[イ]請求人の源泉徴収税額の計算の基礎とした各月分の給与の額には、社員乗務員に支給した休日乗務手当の額及び嘱託乗務員に支給した乗務手当の額を除外するという誤りがあり、また、[ロ]他にも源泉徴収税額に誤りがあるとして納税告知等をしたが、[2]処分庁の計算等は誤っており、特に上記[ロ]については請求人に誤りはなく、納税告知等は一部取り消すべきであると主張する。
当審判所が検討したところ、[1]上記[イ]については、原処分庁及び請求人の計算にはいずれも誤りがあり是正する必要があり、[2]上記[ロ]については請求人の主張は相当である。
また、適用税率表等を是正して、各月分の源泉徴収税額を計算すると、いずれも原処分に係る額を上回るから、原処分は適法である。
請求人が負担した本件慰安旅行の参加従事員1人当たりの費用の額は、平成5年分192,003円、平成6年分449,918円及び平成7年分260,332円と、社会通念上一般的に行われている福利厚生行事としてはあまりにも多額であるから、当該従事員が受ける経済的利益は、給与所得として課税するのが相当とした事例
裁決事例集 第55集 248頁
要旨
福利厚生行事が社会通念上一般的に行われているものと認められる範囲内のものである場合には、当該福利厚生行事の経済的利益については課税しないこととするのが相当と解されるところ、請求人の負担した本件慰安旅行に参加した役員及び従業員各人の1人当たりの費用(各人の家族等分を含む。)の平均額は、平成5年5月分が192,003円、平成6年5月分が449,918円及び平成7年5月分が260,332円であることから、社会通念上一般的に行われていると認められる範囲内の福利厚生行事としては、あまりにも多額であり、また、従業員等の家族等が参加し、その旅行費用までほとんど全額負担していることを考慮すると、本件慰安旅行が社会通念上一般的に行われていると認められる範囲内の福利厚生行事と同程度のものとは認められない。
したがって、請求人は本件慰安旅行の実施によって、本件旅行参加者に対して経済的利益を供与したものと認められるので、本件旅行費用は、本件旅行参加者に支給した所得税法第28条に規定する給与等と認めるのが相当である。
単身赴任者に支給した帰郷交通費は、職務を遂行するための旅行でなく、帰郷に要する交通費の負担を軽減するために支給されたものであるとして、当該単身赴任者に対する給与所得に該当するとした事例
裁決事例集 第55集 273頁
要旨
請求人は、単身赴任者に支給した帰郷交通費は、所得税法第9条第1項第4号に規定されている非課税とされる旅費である旨主張するが、当該帰郷交通費は、請求人が受給者の帰郷に要する交通費の負担を軽減するため、その費用の一部を補助する目的で給与関係内規の別居手当の一部として支給したものと認められることから、職務を遂行するための旅費には当たらず、同号に規定する非課税とされる旅費には当たらない。
要旨
請求人の元理事長が請求人の営む事業に係る人件費及び給食材料費等を架空又は水増し計上するなどの方法によりねん出した資金を簿外口座預金に預け入れた後、当該口座から元理事長名義預金に入金した金員、並びに元理事長の個人的費用に充てるための資金を立替金勘定に計上した後、雑費勘定に振替計上した金員について、請求人は、元理事長がその地位を利用して請求人の資金を不正に引き出したものであり、請求人が賞与として支給したものではない旨主張する。
さらに請求人の元専務理事が、転換社債等を換金して同人名義の預金口座に入金した金員について、請求人は、元専務理事が請求人の資金を不正に引き出したものであるから、請求人が退職金として支給したものではない旨主張する。
しかしながら、元理事長は請求人の設立者として理事長に就任し、退任後も自ら会長と称していたこと、また、自らの親族等を理事長等の役員に就任させていたことからすれば、設立以来、請求人の全運営についての権限を有しその地位等を利用してねん出した簿外資金を簿外口座で管理し、本件簿外口座から元理事長名義預金口座に入金した金員について、元理事長個人の借入金の返済資金等に支出されたと認められるほか、請求人の事業遂行のために使用されたとする証拠もないことからすれば、これを個人的費用に費消していたと認められる。また、雑費勘定に振替計上した金員は、元理事長が個人的な目的のために費消していたことは明らかである。仮に、本件金員及び本件立替金が不正に引き出されたとしても、所得税基本通達36-1が給与所得として収入すべき金額は、その収入の基因となった行為が適法であるかどうかを問わない旨定めており、その取扱いが相当であること、返還義務があるとしても所得税法上の所得とは、これを専ら経済的面から把握すべきであると解されるところ、実際に返還されない限り本件金員及び本件立替金は所得を構成するのであるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
そうすると、これらの金員は所得税法第28条に規定する給与(賞与)所得と認められるので、請求人は、同法第183条第1項に規定する所得税の源泉徴収義務がある。
また、請求人の元専務理事は、[1]平成5年3月31日に請求人を退職したこと、[2]長年にわたり請求人において理事として経理責任者であったこと及び[3]転換社債等を換金した金員を一時金として退職日の直前に受け取っていたことが認められるから、当該金員は退職所得に該当し、当該所得に対する源泉徴収義務者は請求人であると認定するのが相当である。
そして、仮に転換社債等を換金した金員が不正に引き出されたとしても、元専務理事が現実に支配管理しているのであるから、所得税基本通達36-1が退職所得の金額の計算上収入すべき金額は、その収入の基因となった行為が適法であるかどうかを問わない旨定めているのであるから、請求人の主張には理由がない。
そうすると、これらの金員は所得税法第30条に規定する退職所得と認められるので、請求人は、同法第199条第1項に規定する所得税の源泉徴収義務がある。
要旨
請求人は、本件普通預金からの払戻金の使途は、請求人の代表者Gに対する借入金の返済である旨主張するが、[1]Gが請求人の代表者としてその経営の全般を掌握していること、[2]G自らが本件普通預金を管理して預入、払戻しを行っていたこと及び[3]請求人の帳簿に本件普通預金に係る入出金が記載されておらず、本件普通預金の払戻金をGからの借入金の返済に当てたとする経理処理をしていないことなどの事実から、給与等の支払いとしてなされたものと解するのが相当である。
すべての使用人に対して、雇用されている限り毎年誕生月に支給している誕生日祝金について、その支給形態等が、広く一般に社会的な慣習として行われているとは認められないとして所得税法第28条第1項に規定する給与等に当たるとした事例
裁決事例集 第66集 212頁
要旨
請求人は、本件誕生日祝金を請求人の誕生祝実施要領に基づき、各使用人の誕生月に独身者は10,000円、既婚者は15,000円を現金で支給しており、誕生日祝金の支給は、使用者と使用人との間に限らず広く一般に社会的な慣習として行われているので、本件誕生日祝金は、所得税基本通達28-5のただし書きに定める給与等として課税しなくて差し支えない結婚祝金品等に該当する旨主張する。
しかしながら、ある金品の交付が、所得税基本通達28-5による例外的取扱いが認められるためには、少なくとも、その金品の交付が広く一般に社会的な慣習として行われていることを要するところ、本件誕生日祝金は、すべての使用人が、請求人に雇用されている限り、毎年誕生月に支給されるものであって、その支給形態等において、広く一般に社会的な慣習として行われているとは認められない。
したがって、請求人の主張は採用できない。
遠洋漁業を行う船舶に乗船させた外国人漁船員の人的役務の提供の対価は国内源泉所得に該当するから、当該対価の支払の際に源泉徴収する義務があるとした事例
裁決事例集 第71集 349頁
要旨
請求人は、自らが所有し遠洋漁業を行う船舶(以下「本件船舶」という。)に乗船させた外国人漁船員とは雇用契約書を取り交わしておらず、外国人漁船員の手配等を行うH社から派遣されたものであるから、本件船舶に乗船させた外国人漁船員の人的役務の提供の対価(以下「本件対価」という。)は所得税法第161条第8号イに掲げる国内源泉所得に該当せず源泉徴収義務はない旨主張する。
しかしながら、本件船舶に乗船させる外国人漁船員は請求人の意思でその採否を決定していること、請求人は外国人漁船員の船員手帳の交付申請に際し外国人漁船員の雇用(予約)証明書を提出していることなどからすれば、請求人と本件船舶に乗船させた外国人漁船員とが直接の雇用契約書を取り交わしていないとしても、請求人と当該外国人漁船員との間には雇用関係があると認めるのが相当である。したがって、本件対価は、請求人との雇用契約によるものであるから、所得税法第161条第8号イに規定する国内源泉所得に該当する。
そして、請求人は本件対価をH社の国内預金口座に振り込む方法により支払っており、また、外国人漁船員が本件船舶に1年以上の期間乗船していたとしても、本件船舶は当該外国人漁船員にとって勤務地であって住所や居所には該当せず、当該外国人漁船員は非居住者に該当するから、所得税法第212条第1項の規定により、請求人は本件対価の支払の際に源泉徴収義務がある。
なお、本件納税告知処分には、各月分の納付すべき源泉所得税の額及び法定納期限の認定に誤りが認められるが、法定納期限の認定の誤りは、国内源泉所得の支払地が国内か国外かによるものにすぎず、既に自動的に確定している各月分における源泉所得税に係る国税債権に影響するものとは認められず、また、正当な法定納期限後の日付をもって本件納税告知処分をしたことが請求人の利益侵害とも認められないから、当該誤りをもって本件納税告知処分を取り消すことは相当ではないと認められるが、本件納税告知処分のうち正当に計算した本件対価の支払に係る各月分の納付すべき源泉所得税の額を超える部分は違法となり取り消すべきである。
要旨
請求人は、源泉徴収義務者が源泉所得税を徴収しなかったとしても、受給者がその所得を確定申告し、納税すれば源泉所得税相当額が国庫に歳入される以上、その時点で源泉徴収義務は消滅する旨主張する。
しかしながら、源泉所得税の納税義務を負う者は、源泉徴収の対象となるべき所得の支払者であって(所得税法第183条第1項、第204条第1項)、その納税義務は、その所得の受給者に係る所得税の納税義務とは別個のものとして成立、確定し、これと並存するものであり(国税通則法第15条)、所得税法第221条、第222条及び国税通則法第36条の各規定からしても、源泉所得税の納税に関し、国と法律関係を有するのは徴収義務者のみで、その所得の受給者との間には直接の法律関係を生じない。
また、「源泉徴収をされた又はされるべき所得税額」がある場合には、所定の税率を適用して算出された所得税の額からこれを控除した金額が所得税の確定申告書の記載事項(所得税法第120条第1項)とされているところ、この「源泉徴収された又はされるべき所得税額」については、所得税法の源泉徴収の規定に基づき正当に徴収された又はされるべき所得税の額を意味するものであって、確定申告の際に、源泉所得税自体の過不足額の精算を行うことを予定しておらず、その所得の受給者が徴収されるべき源泉所得税を確定申告により納税することはできない。
したがって、受給者の確定申告によって請求人の源泉徴収義務が消滅することはない。
要旨
請求人は、零細企業で、賞与を支給できる財務内容ではなく、請求人の代表者(以下「本件代表者」という。)が自由に費消できる資金などは全くないこと、また、請求人には本件代表者に対して賞与を支給する意思はなく、同人も賞与を受けた認識はないことから、請求人が仕入れ等のために振り出した小切手を本件代表者が現金化し、同人が所持していた現金(以下「本件各現金」という。)を本件代表者への賞与とする納税告知処分は取り消されるべきである旨主張する。
しかしながら、①本件代表者は、請求人の事業経営及び経理の実権を有する唯一の者であると認められること、②請求人は、青色申告法人であり、取引に関係する帳簿の記録及び資料の保存が必要であるところ、本件各現金の使途を明らかにする帳簿の記録や資料等の保存が一切なく、当該小切手を現金化した後の本件各現金の使途が不明であること、及び③本件代表者が、当該小切手を現金化した後に本件各現金に相当する金員を会社のために支出した事実が認められないことからすれば、本件各現金は、本件代表者が取得したとみるほかなく、請求人から本件代表者に対して支給された臨時的な給与、すなわち役員賞与に当たるものと認められる。したがって、本件各現金を本件代表者に対する賞与とした原処分は適法である。
家族を外国に居住させ、自らは国内に住民票を置き、出入国を繰り返している請求人代表者を所得税法第2条第1項第3号の「居住者」に該当すると判断した事例
裁決事例集 第76集 228頁
要旨
請求人は、請求人代表者が、家族をD国に居住させ、自らも同国での住所を有したまま、同国での勤務に加え日本での勤務も行い、D国と日本を行き来する生活を送っていることから、その住所地は、所得税基本通達3-1に定める船舶又は航空機の乗組員の住所の判定と同様に、「その者の配偶者その他生計を一にする親族の居住している地」、すなわちD国にあり、代表者は、所得税法第2条第1項第5号に規定する「非居住者」に当たると主張する。
しかしながら、請求人代表者は、出入国を繰り返しているものの、日本国内における居住地以外に、生活の本拠としての実態がある場所もなく、請求人の代表者として活動していることからも、請求人を中心とするグループ企業の実権を掌握し、その地位に照らしても相当期間にわたり国内に存在することを必要としていたもので、その住所は国内にあり、所得税法第2条第1項第3号に規定する「居住者」に当たる。
要旨
請求人は、各関係会社名義を用いての源泉所得税の納付であったものとしても、それは請求人が法定期限内に納付していたものであるから、請求人による納付があったものと扱うべきである旨主張する。
しかしながら、租税法は、源泉徴収義務者本人が第三者名義で源泉所得税を徴収・納付することを予定していないというべきであり、これが外観上一見して源泉徴収義務者本人の通称ないし別名と判断できるような場合でない限り、源泉徴収義務者本人の徴収・納付としての法的効果は生じないものと解するのが相当である。本件における請求人の各関係会社は、それぞれが、①商業登記された法人であること、②給与支払事務所等の開設届出書を提出し、本件関係各社名で源泉所得税が納付されていること、及び③法人税及び消費税等の申告をしていることが認められ、これらのことからすれば、請求人による当該各関係会社の名義を用いた源泉所得税の徴収・納付は、外観上一見して請求人の通称ないし別名でなされたと判断することはできないから、本来の源泉徴収義務者である請求人自身の徴収・納付としての法的効果を生じないものと解される。
救急病院等に勤務する医師等に対する宿直料は、本来の職務に従事したことに対する対価であるから、所得税基本通達28-1ただし書は適用できないとした事例
裁決事例集 第77集 222頁
要旨
請求人は、所得税基本通達28-1に定める宿直料又は日直料の一部非課税の取扱いについて、宿直料が実費支弁の性格を有するので、宿直における仕事の内容及びその責任の軽重などにかかわらず一律4,000円までを非課税とするものであり、宿直とは夜間勤務のことをいうのであるから、請求人が設置する救急病院等に勤務する医師等に対する宿直料は4,000円まで非課税とすべきである旨主張する。
しかしながら、所得税基本通達28-1が、ただし書において、課税しない宿日直料の対象となる宿日直勤務から①本来の職務として行ったもの、②通常の勤務時間に行ったもの、③代日休暇が与えられるもの及び④給与比例額により支給されるものを除いていることからすると、同通達の取扱いの適用対象とされる宿日直勤務とは、所定労働時間外または休日において、本来の業務に従事しないで行う構内巡視、文書等の収受又は非常事態に備えての待機などをいうものと解され、夜間行われる勤務であるからといって直ちに同通達の適用対象とされる宿日直勤務に該当するということはできず、また、同通達が夜間の勤務1回について一律4,000円までを非課税とする旨を定めたものであると解することはできない。よって、請求人の主張は採用できない。
要旨
請求人は、外国人研修生等に支払った研修手当等について、研修生等は、現に「研修」又は「特定活動」の在留資格を有しており、中華人民共和国政府及び日本国政府が認めた研修生又は実習生であり、また、実際に水産加工における包丁の技術、日本語などの研修を行っているから、本件研修生が受領した研修手当等は、日中租税条約第21条に規定する所得税の免税の適用がある旨主張する。
しかしながら、日中租税条約第21条の事業修習者等は、在留資格をもって日本に滞在している者であり、許可された在留資格に応じたそれぞれの活動を行うことができるのであるから、技術等の修得をする活動を行う「研修」などの資格をもった者はその在留資格の基準に適合する活動を行わなければならず、たとえ、在留を許可され滞在している者であっても、在留資格の基準に適合しないような活動を行っている者にあっては、日中租税条約第21条に規定する事業修習者等には該当しないと解されるところ、請求人は、水産加工品梱包方法など研修計画書に記載された研修を行っていないことなどからすれば、本件研修生は、「研修」等の在留資格の基準に適合するような活動を行っている者とはいえず、日中租税条約第21条に規定する事業修習者等には該当しないので、研修手当等について、日中租税条約に規定する租税の免除の適用はない。
要旨
請求人は、本件家具等は、請求人が宗教活動の用に供するために取得し、装飾や請求人の来客用等として本件マンション内に設置され、直接的あるいは間接的に宗教活動の用に供されるものであって、代表者に貸与したものではない旨主張する。
しかしながら、本件マンションの間取りは居住用であり、代表者が一人で居住していることや宗教活動の用に供された事実がないことなどからすると、本件マンションは、その全体が専ら代表者の居住の用に供されていたと認められ、そうすると、本件マンション内に設置されている本件家具等は、請求人が、代表者が使用する目的で購入して代表者に貸与し、これを代表者が専属的に使用していたものと認めるのが相当である。
そして、代表者は、請求人に対し、本件家具等の使用料名目での金員の支払をしておらず、また、本件マンションの賃貸料にも、本件家具等の使用料は含まれていないというべきであるから、本件家具等は、請求人から代表者に対して無償で貸与されていると認められ、代表者はこれにより通常支払うべき対価に相当する利益、すなわち本件家具等の使用に係る経済的利益を享受しているというべきである。
要旨
請求人は、請求人が従業員等を参加者として実施した海外への社員旅行(本件旅行)は、①実施日程が2泊3日であること、②従業員のほぼ全員が参加していること及び③従業員には経済的利益を受けることについての選択性が認められないものであること等から、所得税基本通達36-30《課税しない経済的利益……使用者が負担するレクリエーションの費用》(本件基本通達)にいう社会通念上一般的に認められる範囲内のレクリエーション行事であるから、請求人が負担した本件旅行の費用は、従業員に対する経済的利益(給与)として課税されるべきではない旨主張する。
しかしながら、レクリエーション行事として行われる旅行が本件基本通達にいう社会通念上一般的に行われていると認められるものに当たるか否かの判断に当たっては、当該旅行の企画立案、主催者、旅行の目的・規模・行程、従業員の参加割合、使用者及び参加従業員の負担額、両者の負担割合等を総合的に考慮すべきであるが、少額の現物給与は強いて課税しない(少額不追求)という本件基本通達の趣旨からすれば、従業員の参加割合、参加従業員の費用負担額ないし両者の負担割合よりも、参加従業員の受ける経済的利益、すなわちレクリエーション行事における使用者の負担額が重視されるべきであるところ、請求人が負担した従業員一人当たりの本件旅行の費用の額は、海外への社員旅行を実施した企業の一人当たりの会社負担金額を大きく上回る多額なものであるから、少額不追求の観点から、強いて課税しないとして取り扱うべき根拠はないものといわざるを得ない。
したがって、本件旅行については、社会通念上一般的に行われているレクリエーション行事の範囲内と認めることはできない。
参照条文等
派遣医に支払う給与等の源泉徴収につき、勤務した日ごとに定額の給与を支給していた場合であっても、月間の給与総額をあらかじめ定めておき、これを月ごとに又は派遣を受ける都度分割して支払うこととするものとして月額表の乙欄に掲げる税額を源泉徴収すべきとした事例
裁決事例集 第83集
ポイント
所得税法上、居住者に対し支払う給与等につき源泉徴収すべき税額を求める際に適用すべき税額表は、支給期が毎月、毎半月、毎旬及び月の整数倍ごとと定められているものは月額表、支給期が毎日と定められているものは日額表とされており、求めるべき税額は、扶養控除等申告書の提出の有無に応じ、それぞれ、甲欄、乙欄に掲げる税額とされている。また、労働した日又は時間によって算定され、かつ、労働した日ごとに支払われる給与等で一定のものは、日額表の丙欄に掲げる税額とされている。
この事例は、いわゆる派遣医に対して支払う給与について、派遣医との契約内容等に応じ、月額表又は日額表の乙欄、あるいは日額表丙欄が適用されると判断したものである。
要旨
原処分庁は、請求人に大学から派遣される医師(大学派遣医)及び請求人と医師個人との契約等により勤務する医師(個人契約医)に請求人が支払う給与について、源泉徴収税額表の日額表が適用される旨主張し、これに対し請求人は月額表が適用される旨主張するところ、大学派遣医については、大学との間で勤務1回当たりの額という形で給与の額を定め、勤務予定については四半期ないし半年という期間ごとに一応決定されていたものの、実際に勤務する医師が誰であるか勤務直前になるまで分からないのであるから、勤務回数が一定の期間で何回になるか事前に確定しているとはいえない。したがって、勤務した日ごとに支払っている大学派遣医の給与は、勤務した日ごとに定められているということができ、「給与等の支給期が毎日と定められている場合」に該当すると認められるから、日額表の乙欄に掲げる税額を源泉徴収すべきである。
また、勤務日を毎週木曜日として1年間継続して請求人に勤務する旨の契約を取り交わし、その後勤務を続け、平成17年3月から同年12月までの間は、継続して第2及び第4木曜日に勤務していた個人契約医は、請求人との間において、毎月一定日数勤務することをあらかじめ取り決めてあったということができ、同人の給与については、「月間の給与総額をあらかじめ定めておき、これを月ごとに又は派遣を受ける都度分割して支払うこととするもの」と認められるから、月額表の乙欄に掲げる税額を源泉徴収すべきである。
一方、請求人の病院に継続して勤務する取決めはなく、請求人の依頼に基づいて臨時的に勤務していた個人契約医は、勤務1回当たりの給与についてもその都度取り決めていたというのであるから、日日雇い入れられる者に対して労働した日によって算定した額を労働した日ごとに支払っている給与であると認められるので、日額表の丙欄に掲げる税額を源泉徴収すべきである。
参照条文等
ポイント
所得税法第8条において、非居住者から居住者になった場合など、個人が年の中途で納税義務者の区分に異動を生じた場合には、その者がその年においてそれぞれの納税義務者の区分であった期間に応じ、それぞれの期間内に生じた所得税法第7条第1項に掲げる所得に対し、所得税を課することとされている。
この事例は、国外勤務を終えて日本に帰国した社員の国外勤務中の給与に係る外国所得税額を請求人が負担したことによる経済的利益について、非居住者期間内と居住者期間内のいずれに生じた所得かが争われたものである。
要旨
請求人が国外勤務を終えて帰国した海外出向社員ら(本件海外出向社員ら)の外国所得税額(本件外国所得税額)をその帰国後に納付したことについて、原処分庁が居住者に対する給与等の支払に当たるとして、源泉所得税の納税告知処分等をしたのに対し、請求人は、海外出向社員の外国所得税額を請求人が負担することは海外勤務規定においてあらかじめ定められており、また、本件外国所得税額は、本件海外出向社員らが非居住者であった外国で勤務していた期間に支給された手取給与の額を基礎にグロスアップ計算されたものであり、当該手取給与と一体不可分であるから、所得税基本通達181~223共-4《源泉徴収の対象となるものの支払額が税引手取額で定められている場合の税額の計算》の考え方に従い、本件海外出向社員らの非居住者期間中に生じた所得として取り扱うべきである旨主張する。
しかしながら、請求人の海外勤務規定には、請求人が海外出向社員の外国所得税額を負担する時期についての規定はないところ、本件海外出向社員らは、使用者である請求人が同人らに代わって本件外国所得税額を納付した時に請求人から租税債務の消滅による経済的利益の供与を受けたものと認められ、また、当該納付が本件海外出向社員らの帰国後に行われていることからすれば、当該経済的利益は本件海外出向社員らが居住者となった以後の所得となる。
参照条文等
要旨
請求人は、2名の役員に新株予約権を割り当てたことについて、当該新株予約権は、所得税法施行令(平成18年政令第124号による改正前のもの)第84条《株式等を取得する権利の価額》第4号に規定する有利な発行価額により新株を取得する権利には当たらない旨主張する。
しかしながら、請求人の株式は、非上場株式で気配相場のない株式であり、売買事例及び類似する他の法人の株式の価額があるとは認められないから、所得税基本通達23-35共-9《株式等を取得する権利の価額》の(4)に定める権利行使日等又は権利行使日等に最も近い日におけるその株式の発行法人の1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額により評価すべきところ、その評価方法は、必要な修正をした上で財産評価基本通達178《取引相場のない株式の評価上の区分》から189-7《株式の割当てを受ける権利等の発生している特定の評価会社の株式の価額の修正》までの例によって評価することが相当と認められるので、これにより、請求人の新株の発行価額を決定した日における請求人株式の1株当たりの価額を算定すると、当該新株の1株当たりの発行価額を大きく上回るから、当該新株予約権は、所得税法施行令第84条第4号に規定する有利な発行価額により新株を取得する権利に該当する。
参照条文等
所得税法施行令第84条第4号(平成18年政令第124号による改正前のもの) 所得税基本通達23~35共-7(平成18年12月19日付課個2-18ほかによる改正前のもの)、23~35共-9(平成19年6月22日付課個2-11ほかによる改正前のもの)
参考判決・裁決
最高裁平成17年11月8日第三小法廷判決(判タ1198号121頁)
要旨
原処分庁は、請求人が代表者個人を貸主とする金銭消費貸借契約に基づく貸付けに係る送金を行ったことついて、①請求人は当該送金が代表者個人の貸金債権に係るものであることを認識していながら送金をしていること、②請求人と代表者との間で当該送金に係る金銭の返済に関する取決めが行われた事実は認められないことからすると、請求人は代表者に対して返済を求める意思を有さずに当該送金をしたものと認められることから、代表者に対して経済的な利益を供与したことになる旨主張する。
しかしながら、請求人は当該送金した額について仮払金として経理していることからすると、請求人が代表者に代わって立て替えて送金をしたものと認めるのが相当であり、また、当該仮払金と経理した金額について貸倒処理を行うまでの間、請求人の帳簿上、依然として仮払金として計上していたことからすると、請求人において、代表者に対し当該送金の額の返済を免除するなどの明示的又は黙示的な行為を行った事実は認められないから、請求人が当該仮払金の額について、代表者に対して経済的な利益を供与したということはできない。
参照条文等
使用人等に対する食事の支給による経済的利益の供与について、「使用人が購入して支給する食事」として評価するのが相当であるとした事例(平成20年1月~平成22年10月の各月分の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分及び不納付加算税の各賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第95集
ポイント
本事例は、請求人が使用人等に提供した食事については、請求人が給食委託業者に支払った委託料等を加算したところにより評価すべきであるとして請求人の主張を排斥しているものの、原処分庁における経済的利益及び源泉所得税額の算定に一部誤りがあったため、原処分の一部を取り消したものである。
要旨
請求人は、請求人が給食業者(本件受託業者)に委託して調理させ従業員等に対して支給した食事は、所得税基本通達36-38《食事の評価》(1)に定める「使用者が調理して支給する食事」として食事の材料費相当額により評価すべきである旨主張する。
しかしながら、当該食事の材料は本件受託業者が調達しており、請求人はこれらの材料の明細及び内容を関知しておらず、その在庫を請求人の帳簿書類にも記載していなかったことに鑑みれば、自己の計算に基づき材料の調達及び管理を行っていたのは本件受託業者であるということができるから、請求人が材料を提供し当該食事の調理のみを委託していたとみることはできない。また、請求人は従業員等から徴収した食券代金を集計し本件受託業者に支払っていたところ、当該金額は、あらかじめ本件受託業者との間で定めたメニューごとの材料費相当額に基づき計算されてはいたものの、食事の材料費そのものとはいえないから、請求人が材料費を負担していたとみることもできない。そして、請求人は、従業員等が購入した食券代金を従業員等の給与から差し引いて預り金として経理し、本件受託業者に支払う際には預り金勘定から減額処理をしていたことからすると、請求人は本件受託業者が従業員等から直接受領すべき食事代金を本件受託業者に代わって徴収していたと認められ、請求人が本件受託業者に対して毎月一定額の給食業務委託料及び副食費を支払っていた事実を併せ考慮すると、請求人は、従業員等が本件受託業者から食事を安価で購入できるよう、給食業務委託料等を負担し、食事の購入代金の補助をしていたとみるのが相当である。したがって、当該食事は所得税基本通達36-38(2)に定める「使用者が購入して支給する食事」と同様に、食券代金、副食費及び給食業務委託料の合計額をもって評価するのが相当である。
参照条文等
キャストに支払った金員は給与等に該当するとした事例( 平成26年4月、平成26年10月、平成26年12月、平成27年3月から平成27年5月まで及び平成27年7月の各月分の源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の各納税告知処分並びに平成26年10月分の重加算税の賦課決定処分、 平成26年4月1日から平成27年3月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の賦課決定処分、 平成26年3月、平成26年5月から平成26年9月まで、平成26年11月、平成27年1月、平成27年2月及び平成27年6月の各月分の源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の各納税告知処分並びに平成26年3月から平成26年9月まで及び平成26年11月から平成27年7月までの各月分の不納付加算税及び重加算税の各賦課決定処分並びに平成26年10月分の不納付加算税の賦課決定処分、 平成25年4月1日から平成26年3月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の賦課決定処分、 平成23年4月1日から平成24年3月31日まで、平成24年4月1日から平成25年3月31日まで、平成25年4月1日から平成26年3月31日まで及び平成26年4月1日から平成27年3月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の各通知処分・ 一部取消し、 ~ 棄却)
裁決事例集 第110集
ポイント
本事例は、給与所得とは雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいい、とりわけ、給与所得については、給与支給者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、その対価として支給されるものであるかどうか、いわゆる労務の提供等の従属性が重視されなければならないとして判断したものである。
要旨
請求人は、請求人が営むキャバクラ店において接客業務に従事する女性(キャスト)は請求人から時間的、空間的な拘束を受けておらず、営業で必要な費用(携帯電話代金等)を負担しているから、キャストへの支給額(本件支給額)は所得税法第27条《事業所得》第1項に規定する事業所得に該当する旨主張する。
しかしながら、キャストは接客業務に従事するに当たり、請求人との間で、給与体系、勤務時間及び店舗規則などの勤務条件について合意していたこと、請求人はキャストの勤務時間又は接客時間を管理していたこと、キャストは指名客以外の客に対しても店長の指示により接客していたことが認められるから、キャストは入店から退店までの間は請求人の管理下にあったと認められ、請求人から空間的、時間的な拘束を受け、継続的又は断続的に労務又は役務の提供をしていたとみることができる。そして、キャストが営業のために必要な費用の一部を負担しているとの請求人の主張を考慮しても、本件支給額は接客時間等を基準に各種手当て及びペナルティの有無を勘案して算出されていること、採用後1、2か月間は一定の時給が保証されていること、キャストは客に対する売掛金を回収する責任を負っていなかったことからすれば、キャストは自己の計算と危険において独立して事業を営んでいたものとみることはできない。以上によれば、本件支給額は、キャストと請求人との雇用契約に基づき、請求人の指揮命令に服して提供した労務の対価であるから、所得税法第28条《給与所得》第1項に規定する給与等に該当する。ただし、本件支給額に係る源泉所得税の額の計算等に誤りが認められるから、納税告知処分及び重加算税の賦課決定処分の一部を取り消すべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和56年4月24日第二小法廷判決(民集35巻3号672頁)
請求人の取締役が請求人から不正に取得した金員は、請求人が当該取締役に支給した給与等には該当しないとした事例(平成21年12月、平成23年11月、平成23年12月、平成24年3月、平成24年8月から平成24年10月まで及び平成24年12月の各月分の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分及び重加算税の各賦課決定処分、平成25年12月分の源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の納税告知処分、平成25年3月から平成25年8月まで、平成25年11月、平成26年1月から平成27年10月まで、平成27年12月、平成28年2月及び平成28年3月の各月分の源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の各納税告知処分並びに重加算税の各賦課決定処分・全部取消し)
裁決事例集 第111集
ポイント
本事例は、代表者以外の役員が横領により法人の金員を不正に取得した場合に、当該役員が法人経営の実権を掌握し法人を実質的に支配していたとは認められないから、当該金員は当該役員に対する給与等には該当しないとして、源泉所得税等の納税告知処分等を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、請求人の取締役(本件役員)が請求人から不正に取得した金員(本件金員)について、①本件役員は請求人の業務において影響力を有していたと認められること及び②経理業務の重要な部分を任されていたと認められることからすると、その地位に基づいて支給されたのであるから、所得税法第28条《給与所得》第1項に規定する給与等に該当する旨主張する。
しかしながら、①本件役員は、法律上請求人の業務執行等を決定する地位にあったとは認められず、事実上もそのような地位にあったことを認めるに足りる証拠はないのであって、本件役員が請求人の業務において影響力を有していたとは認められない。また、②本件役員の職務内容についての申述などからは、本件役員が経理業務の重要な部分を任されていたとは認められない。したがって、本件役員が、請求人の経営の実権を掌握し、請求人を実質的に支配していたとは認められないから、本件役員がその地位及び権限に基づいて請求人から本件金員を得たものとは認められず、本件金員は、請求人が本件役員に支給した給与等には該当しない。
参照条文等
参考判決・裁決
仙台高裁平成16年3月12日判決(税資254号順号9593)
人間ドック等の補助に係る経済的利益について、本件におけるカフェテリアプランは換金性のあるプランとは認められないから、源泉徴収義務はないとした事例(平成28年7月から同年12月まで及び平成29年5月から同年7月までの各月分の源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の各納税告知処分、平成29年1月から同年4月までの各月分の源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の各納税告知処分並びに不納付加算税の各賦課決定処分・全部取消し)
裁決事例集 第118集
ポイント
本事例は、財形貯蓄補助金メニューが含まれていることをもって、換金性のあるカフェテリアプランであることにはならないとしたものである。
要旨
原処分庁は、本件におけるカフェテリアプラン(本件プラン)には財形貯蓄補助金メニューが含まれており、本件プランは換金性のあるプランと認められ、本件プランにおける各経済的利益(本件各経済的利益)の全てが源泉所得税等の課税対象になるから、請求人の被合併法人であるA社には人間ドック等の補助に係る経済的利益について源泉徴収義務がある旨主張する。しかしながら、本件プランにおいて、①各使用人が本件各経済的利益として受ける額は、各使用人の職務上の地位や報酬額に比例して異なるものではなく、福利厚生費として社会通念上著しく多額であるとは認められず、②当該財形貯蓄補助金メニューは、各使用人のうち一定の期間内に財形貯蓄をした使用人に対してその補助として金銭が支給されるものであり、何ら要件なく各使用人に付与されたポイントを金銭に換えることを内容とするものとは認められず、③当該財形貯蓄補助金メニュー以外の各メニューについても、一定の要件を充足しなければ補助等を受けられないものであり、自由に品物を選択できるとか、何ら要件なく金銭や商品券等の支給を受けることを選択できることを内容とするものではなく、残ポイントがある場合に当該残ポイントに相当する金銭が支給されるものでもない。以上のことからすると、本件プランは、ポイントを現金に換えられるなど換金性のあるプランとは認められず、本件各経済的利益については、各使用人が選択した現に受ける補助等の内容に応じて、課税対象となるか判断することになる。したがって、A社には当該人間ドック等の補助に係る経済的利益について源泉徴収義務はないと認められる。
参照条文等
所得税法第28条第1項、第36条第1項、第183条第1項 所得税基本通達36-29、36-30 国税庁質疑応答事例「カフェテリアプランによるポイントの付与を受けた場合」
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