裁決事例 配当所得
要旨
請求人は、強制消却の場合と異なり、任意消却における株式の買入れは、株式の消却とは別個の独立した株式の売買行為であるから、その所得は譲渡所得に該当すると主張するが、任意消却における株式の買入れの本質、支払われる金銭等の経済的実質からすると、強制消却の場合の効果と同様に、任意消却において売株主に対して支払われる金銭等は、株式の消却により交付される金銭等に当たると解するのが相当であり、その所得はみなし配当所得に該当する。
要旨
請求人が医療法人の退社に伴い収受した金員について、請求人は、医療法人に対する出資金の譲渡、すなわち、有価証券に化体された資産の譲渡代金であるから、所得税法第9条第1項第11号に規定する有価証券の譲渡に当たると主張するが、払戻しを求める請求文書、医療法人の臨時社員総会における出資金の減資分についての出資の取決め等からすると、有価証券の譲渡ではなく、出資金の払戻しに該当すると認定すべきものであるから、その出資額を超える部分の金額が配当所得の収入金額とみなされるとして行った原処分は相当である。
商法第349条第1項に規定する反対株主の株式買取請求に基づき株式発行法人が自己の株式を取得した日は、株式買取価格の決定の申請に係る和解成立の日であるとした事例
裁決事例集 第70集 105頁
要旨
請求人は、商法第349条第1項に規定する反対株主の株式買取請求に基づき、株式発行法人が自己の株式を取得した日は、株主等が発行法人との間で能動的に行った契約の成立ないし法律行為の日、すなわち反対株主が株式買取請求権を行使した日であり、その日は商法等の一部を改正する等の法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律第44条第2項(本件経過措置)に規定する施行日(平成13年10月1日)前であるから、所得税法第25条第1項第5号に規定する自己の株式の取得を事由とするみなし配当課税は適用されない旨主張する。
しかしながら、同号に規定する自己の株式の取得とは、株式発行法人がする証券取引所の開設する市場における購入による取得等以外の自己の株式の取得であり、本件自己の株式の取得は、反対株主の株式買取請求に応じて売買により取得したものであるから、本件自己の株式の取得の日については、売買の効力が生じたときがいつであるかに帰着するところ、売買では代金は重要な要素であるから、代金額が定まっていない場合には、売買の効力は生じないと解される。本件は、当事者間において株式買取価格が調わず、裁判所に商法第245条の3第3項の規定に基づき価格の決定を申請し、和解により株式買取価格が決定し、それに基づき株式発行法人が請求人に対して株式買取代金を支払い、請求人は株式発行法人に株券を引き渡したものであるから、その和解の日に、売買契約の効力が生じ、当事者双方が契約を履行したといえる。そうすると、本件における自己の株式の取得の日は、本件経過措置に規定する施行日以後となるから、所得税法第25条第1項第5号の規定が適用される。
なお、最高裁昭和48年3月1日決定は、反対株主が株式買取請求権を行使したときは、法律上当然に会社と株主の間に売買契約が成立したのと同様の法律関係が生ずると判示するが、この法律関係とは、会社が株主から将来決定する価格で株式を買い取る義務を負い、株主が会社に同価格で株式を売り渡す義務を負うという法律関係をいうのであって、売買契約の効力が生じたことまでをいうものではない。
外国法人の株主として受けた当該法人の子会社の株式の分配は、同法人が同法人の株主に対して同法人の利益剰余金を原資に、株主の所有株数に応じて分配したものと認められることから、所得税法第24条第1項に規定する利益の配当に該当するとした事例
裁決事例集 第65集 84頁
要旨
請求人は、外国法人であるH社の株主として、H社から受けたH社の子会社であるJ社株の分配(以下、「本件株式分配」という。)は、親会社を通じて間接的に所有していた子会社の株式を直接所有することに変わったものにすぎないことから、配当にも所得にも当たらないこと、また、本件株式分配は、企業分割に伴う株式分配であるから、所得税法第24条に規定する配当にも、同法第25条に規定するみなし配当にも該当しない旨主張する。
しかしながら、本件株式分配は、親会社が同社の株主に対して同社の利益剰余金を原資に、株主の所有株数に応じて子会社の株式を分配したものと認められることから、請求人が本件株式分配によって取得した子会社の株式は、所得税法第24条第1項に規定する「利益の配当」に該当するものと認められるので、請求人の主張には理由がない。
持分会社の社員の死亡退社に伴う持分払戻請求権の価額相当額のうち、出資した金額を超える部分はみなし配当に該当するとした事例(平成28年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第127集
ポイント
本事例は、持分会社の社員が死亡退社した場合には、その社員の有していた社員権が死亡と同時に持分払戻請求権に転換し、その転換した時点において、持分払戻請求権の価額のうち元本(出資)を超える部分が、所得税法第25条第1項の規定により剰余金の配当等(みなし配当)として当該死亡社員の所得を構成すると判断したものである。
要旨
請求人らは、持分会社の社員(本件被相続人)の死亡退社に伴う持分払戻請求権(本件払戻請求権)について、その払戻額を零円とすることが持分会社の総社員による同意で決定されており、相続人である請求人らに対し金銭その他の資産の交付はされていないから、所得税法第25条《配当等とみなす金額》第1項の規定によって配当等とみなされる金額はない旨主張する。
しかしながら、当該持分会社の定款には会社法第608条《相続及び合併の場合の特則》第1項に規定する持分の承継に関する定めがないことからすれば、本件被相続人は死亡退社により本件払戻請求権を取得したものと認められ、本件被相続人が有していた社員権(出資)が本件払戻請求権に転換した時点、すなわち、相続開始日において本件払戻請求権の価額相当額の経済的価値が本件被相続人にもたらされたといえる。したがって、当該価額相当額のうち、出資に対応する部分の金額を超える金額は、本件被相続人のみなし配当と認められる。
参照条文等
所得税法第24条,第25条第1項第6号 会社法第607条第1項第3号、第608条第1項、第611条第1項、第2項
参考判決・裁決
神戸地裁平成4年12月25日判決(税資193号順号7054) 東京地裁平成20年7月15日判決(税資258号順号10990)
要旨
LLCの構成員である請求人は、オフショア投資ファンドから当該LLCに対して配分されたインセンティブ再配賦額につき請求人に配分されたインセンティブ配分額は当該LLCの内部計算にすぎず、配当支払請求権として独立した債権として成立するものではないから、当該インセンティブ配分額のうち現実に払戻しを受けた金額のみが請求人の配当所得の収入金額となる旨主張する。
しかしながら、①請求人はその年分に配賦を受けるインセンティブ配分額の見込額等につき毎年当該LLCの担当者から連絡を受けること、②通知されたインセンティブ配分額については、たとえ投資ファンドの成績が悪化したとしても返還する義務はないこと、③請求人は通知を受けたインセンティブ配分額について確定額の範囲内であれば払戻金額を自由に設定することができ、申し出る金額に上限はないこと、④請求人が払戻しを要求した額について送金に応じられなかったことはないことなどの事実が認められ、これらを併せかんがみれば、請求人には、当該インセンティブ配分額の全額について払戻しを受ける権利が生じたというべきである。
ポイント
本事例は、外国法人の事業分割に伴い日本の居住者に交付された株式について、当該事業分割は法人税法第2条第12号の9に規定する分割型分割によるものに当たらず、所得税法第24条第1項に規定する剰余金の配当に該当するとしたものである。
要旨
請求人は、自らが株式を保有していた米国法人が事業分割(本件事業分割)し、2社の独立した法人となったことにより、新たに事業を承継した法人の株式(本件株式)の交付を受けたことについて、当該米国法人の事業分割前の株価と事業分割後の米国法人2社の株価の合計額とがほぼ同等であり、当該分割の前後において、全体としての株式の価値の増減は見られないこと、本件事業分割について、米国の課税上、米国法人2社双方の株主が非課税扱いとされていたことからすれば、本件株式の交付により請求人は所得を得ておらず、我が国の所得税法第24条《配当所得》第1項に規定する剰余金の配当に該当しない旨主張する。
しかしながら、本件株式は、当該米国法人の株主としての地位を有する者に対し、当該米国法人の利益剰余金を原資として交付されたものと認められる。また、米国における課税上の取扱いが我が国の課税上の取扱いに影響を及ぼすことはない。加えて、本件事業分割は、我が国の会社法上の分割に相当する法的効果を具備するとはいえず、法人税法第2条《定義》第12号の9に規定する分割型分割には当たらないというべきであるから、本件株式の交付は所得税法第24条第1項に規定する剰余金の配当に該当する。
参照条文等
参考判決・裁決
東京地裁平21年11月12日判決(判タ1324号134頁)
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