裁決事例 税額控除等
原処分調査中に請求人が提示した資料は、消費税法第30条第7項の要件を充たさないので、他の証拠資料によって課税仕入れに係る支払対価の額を合理的に推認できる場合であっても、仕入税額控除は認められないとした事例
裁決事例集 第65集 937頁
要旨
請求人は、仕入税額控除に係る帳簿及び請求書等の保存がない場合であっても、請求人が提出した資料によって、原処分庁は仕入税額を把握できたのであるから、仕入税額控除をすべきである旨主張する。
しかしながら、消費税法第30条第7項の規定は、仕入税額の証明手段を法定の帳簿及び請求書等に限定していると解され、他の証拠資料によって課税仕入れに係る支払対価を合理的に推認できる場合であっても認められないこと、また、帳簿及び請求書等の保存は、法所定の保存期間の始期から全期間にわたって所持・保管を継続することを意味し、帳簿及び請求書等を保存の始期の後に取得しても、その保存の要件を欠き、仕入税額控除が認められないところ、請求人が提出した資料は、その大半が調査の開始後に取引先から取り寄せた元帳のコピーであるなど、いずれも同項に規定する帳簿及び請求書等に該当しないから、仕入税額控除の適用はできない。
要旨
請求人は、その事業は、他の事業者から購入した塗料を、性質及び形状を変更せずに、特定の事業者に販売するものであるから、卸売業に該当する旨主張するが、請求人の事業は、塗料を材料として得意先から預かった家具に塗装する家具の塗装業であり、塗料それ自体を商品として販売する事業とはいえないから、卸売業には該当しない。
帳簿等には、仕入先としてその氏名の氏に相当する部分が記載されているのみであり、また、請求人は、本件調査の際に本件仕入先を明らかにして記載不備を補完しようとしなかったことから、帳簿又は請求書等の保存がない場合に該当するとして、仕入税額控除の適用は認められないとした事例
裁決事例集 第48集 411頁
要旨
- 請求人は、[1]本件帳簿等は、消費税法第30条第8項及び第9項に規定する記載要件を充足し、かつ、それを保存しているのであるから、同条第7項に規定する仕入税額控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合には該当しない、また、[2]請求人は、本件取引の際に、仕入先に消費税を支払ったのであるから、仕入税額控除を認めるべきである旨主張する。
- 審判所の判断は、次のとおりである。
- 本件帳簿等には、仕入先としてその氏名の氏に相当する部分が記載されているのみで、住所、電話番号等の記載もないため、本件帳簿等から仕入先を特定することはできない。消費税法第30条第8項第1号のイは、明確に「課税仕入れの相手方の氏名又は名称」を記載することと規定しているのであるから、当該記載が同項の帳簿としては不備なものであることは明らかである。
- 原処分に係る調査(「本件調査」)の際に、調査担当職員が、請求人に仕入先を特定できない場合には仕入税額控除が適用できない旨説明し、本件取引の仕入先を特定するよう求めたにもかかわらず、請求人が本件仕入先を明らかにして記載不備を補完しようとしなかったことが認められるから、その時点において保存されている帳簿等は、記載不備な状態における本件帳簿等のみであることになる。
- 請求人は、当審判所に対して、仕入先が特定できるものがあっても、仕入先を明らかにすると取引ができなくなるおそれがあるため明らかにすることはできない旨答述しているが、これをもって請求人が適法な帳簿又は請求書等を保存しないことにつき災害その他やむを得ない事情がある旨主張していると解しても、そのような主張は仕入先の相手方の氏名又は名称を記載した帳簿等の保存を求める消費税法第30条第7項ないし第9項の規定の趣旨とまったくあいいれないところであるから、このような理由をもってしては、同条第7項の「その他やむを得ない事情」に該当するとはいえない。
- 本件帳簿等に記載された氏の真偽について検討するまでもなく、本件取引については、消費税法第30条第7項に規定する仕入税額控除に係る帳簿又は請求書等の保存がない場合に該当し、同条第1項の規定による仕入税額控除を適用することはできない。
- 本件取引については、消費税法第30条第7項の規定により、同条第1項の仕入税額控除の規定は適用することができないのであるから、本件取引に係る仕入れの存否、その支払対価の額、消費税相当額の仕入先への支払の有無について検討するまでもなく、仕入税額控除をすることはできない。
本件課税期間の課税売上割合が零パーセントであり、控除税額の計算方法として一括比例配分方式を選択しているから、本件課税期間に係る控除対象仕入税額は零円となるとした事例
裁決事例集 第47集 415頁
要旨
消費税法第30条第2項の規定によれば、課税期間における課税売上割合が95パーセントに満たない場合は、事業者の選択により個別対応方式又は比例配分方式のいずれかの方法により計算した課税仕入に係る消費税額を控除することとされている。
本件課税期間に係る控除対象仕入税額については、請求人が課税資産の譲渡等の対価の額は零円、控除税額の計算方法は一括比例配分方式と記載した本件確定申告書を原処分庁に提出していることから、本件課税期間の課税売上割合は零パーセントとなり、95パーセントに満たないので、消費税法第30条第2項の規定を適用して算定することとなるが、上記選択により算定すれば控除対象仕入税額は零円となる。
なお、請求人は、消費税法第33条第1項の規定により、調整対象固定資産として、仕入れた日の属する課税期間において全額控除し、第3年度で調整すればよいと主張するが、同項は、第3年度における調整の規定であり、本件課税期間においては、控除する仕入税額の調整はできない。
消費税の課税仕入れの時期は、建物建築契約にあっては目的物たる建物の引渡日と、また、建物建設に関するコンサルタント契約にあっては役務の全部の提供を受けるのが完了した日と解するのが相当とされた事例
裁決事例集 第58集 276頁
要旨
請求人は、本件課税期間に支払った建物建設工事に係る工事着手金及び当該建物建設工事に係るコンサルタント契約に基づいて支払った契約金等については、請求人において本件課税期間中に「建設仮勘定」に経理しており、このような経理を行った場合の消費税の課税仕入れの時期は当該建設仮勘定に経理した日と解すべきである旨主張する。
しかしながら、請負契約の内容が建築工事等の物の引渡しを要するものであるときの課税仕入れを行った日とは、当該建築工事等の目的物を相手方から引渡しを受けた日と解すべきであり、また、請負契約の内容が設計、作業管理、その他の役務の提供を行うことを目的とするような物の引渡しを要しないものであるときの課税仕入れを行った日とは、当該請負契約で約した役務の全部の提供を受けるのが完了した日と解するのが相当である。
本件建物建築工事の目的物たる建物の引渡しの日及び本件コンサルタント契約に基づく役務の全部の提供を受けるのが完了した日は、いずれも本件課税期間の翌課税期間に属する日と認められ、また、いずれの契約においても部分引渡しや報酬が役務の内容ごとに区分されその支払もそれぞれの部分ごとに完了した都度支払いをするなどとする契約も存しないことから、本件課税仕入れ額は本件課税期間に係る課税仕入れには該当しない。
要旨
請求人は、課税事業者が簡易課税制度を選択している場合であっても、本則課税により申告したときは本則課税による申告を認めるべきであると主張するが、いったん簡易課税制度を選択した場合は2年間はこれを継続しなければならないこととされており、請求人は、簡易課税制度選択後2年目であり、基準期間の課税売上高が5億円以下であるから、簡易課税制度を適用して確定申告をすべきである。
課税仕入れ等の税額の算出にあたり、個別対応方式による計算は、一括比例配分方式により計算することとする課税期間が2年を経過していないため、当該方式による計算はできないとした事例
裁決事例集 第49集 554頁
要旨
請求人は、原処分庁が、本件課税期間の課税仕入れ等の税額の算出にあたり、一括比例配分方式につき、同方式を継続して2年間適用していないとして本件更正処分を行ったが、前々課税期間においては、一括比例配分方式により確定申告をした後、更正の請求に基づき、原処分庁が、仕入税額控除についてその全額を控除する減額の更正処分をしているから、減額の更正があっても、仕入税額控除の計算方法が変更されたものではないことから、前々課税期間から一括比例配分方式を適用していることになる旨主張するが、請求人の前々課税期間における課税売上割合は、100分の95以上のため、消費税法第30条第2項の一括比例配分方式は適用できないところ、更正の請求に基づき、同条第1項による仕入税額控除の計算方法に基づく減額の更正をしたものであって、前々課税期間においては一括比例配分方式を適用していないことになる。
したがって、一括比例配分方式の適用開始時期は前課税期間となり、消費税法第30条第5項で規定する当該方式により計算することとする課税期間が2年を経過していないため、本件課税期間においては、個別対応方式による計算はできない。
貸倒れに係る消費税額の控除について、消費税につき無申告の請求人が、原処分調査において、貸倒れの事実が生じたことを調査担当職員に説明せず、これを証する書類を提示しなかったことをもって、同控除の適用は認められないとした事例
裁決事例集 第48集 458頁
要旨
消費税法第39条の貸倒れに係る消費税額控除の適用を受けるためには、法定申告期限を経過した日から7年間、適法な税務調査に際し、調査担当職員から帳簿又は請求書等の提示を求められたときにはこれに応じ、当該帳簿又は請求書等を当該調査担当職員が閲覧検査できる状態に置くべきことも含め、その保存を継続しなければならないと解される。
なお、確定申告書に記載があるなど明らかな場合以外は一般的に貸倒れの有無を推測することは困難であることからも、事業者がその事実を調査担当職員に説明し、これを証する書類を提示することを要すると解される。
請求人は、調査担当職員が、再三にわたり、課税標準に係る書類等及び帳簿又は請求書等の提示を求めたにもかかわらず、一切の必要書類を提示せず、また、当該期間分の消費税確定申告書を提出していない上、調査担当職員に貸倒れの事実が生じた旨の説明もしていないことが認められる。
したがって、請求人が本件調査の際に貸倒れの事実が生じたことを調査担当職員に説明せず、また、これを証する書類を提示しなかった時点において、当該書類の保存が継続していなかったといわざるを得ず、その後に至り、審判所に当該書類を提出したからといって、貸倒れに係る消費税額の控除の適用が受けられると解することはできない。
金地金が消費税法第36条第5項に規定する「棚卸資産」に該当するとした事例(令和3年3月1日から令和4年2月28日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第135集
ポイント
本事例は、金地金の売買が請求人の事業目的から離れたところで行われたものとはいえず、請求人が当該金地金を取得した時点においてこれを売却する方針を有していたことから、当該金地金は消費税法第36条第5項に規定する「棚卸資産」に該当すると判断したものである。
要旨
請求人は、金地金の売買を反復継続して行うものではないから、金地金の売買が請求人の営業に当たることはなく、請求人が消費税を納める義務が免除されることとなった課税期間の初日の前日において保有していた金地金(本件金地金)は消費税法第36条《納税義務の免除を受けないこととなった場合等の棚卸資産に係る消費税額の調整》第5項に規定する「棚卸資産」に該当しない旨主張する。
しかしながら、消費税法第36条第5項に規定する「棚卸資産」に該当するか否かについては、会計処理のみにより形式的に判断するのではなく、判断の対象とされている資産と事業者の属性及び事業目的との関係、当該資産の取得時の使用・収益・処分に係る方針等といった客観的な事実に基づき、事業者が、通常の営業過程、すなわち、その事業目的に係る業務の過程において売却することを目的として保有する資産に当たるといえるかどうかにより実質的に判断するのが相当である。そして、請求人が行う金地金の売買に係る取引額が、いずれも、請求人の事業規模に照らして大きなものである等、請求人の事業に及ぼす影響が大きいことからすると、請求人における金地金の売買は、補助ないし付随的な活動とはいえず、定款に明示的に掲げられた事業目的そのものではないとしても、事業目的から離れたところで行われているものとはいえないから、本件金地金は、請求人の事業目的に係る取引の客体にほかならないと認められる。また、本件金地金の取得から売却に至る経緯及び本件金地金を取得するための借入金を返済するためには本件金地金を売却する必要があったこと等からすると、請求人は、本件金地金を取得した時点において、将来、これを売却する方針を有していたと認められる。これらの事実に基づけば、請求人は、その事業目的に係る業務の過程において売却することを目的として本件金地金を保有していたものと認められるから、本件金地金は消費税法第36条第5項に規定する「棚卸資産」に該当する。
参照条文等
要旨
原処分庁は、請求人(コンビニエンスストア経営)が酒類小売販売の営業権を譲り受けた日は、営業権譲渡契約書に「営業譲渡期日は、酒類販売免許変更通知の日とする。」旨記載されていることから、請求人が税務署長から通知を受けた平成9年12月17日となり、営業権の譲り受けに係る消費税は、同日の属する課税期間の課税仕入れとなる旨主張する。
しかしながら、[1]営業権の譲渡者は、請求人が経営する店舗内で平成9年12月31日まで酒類を販売していたこと、[2]請求人が営業権を資産に計上した日及び営業権の譲渡者が営業権の譲渡対価を雑収入に計上した日は、いずれも平成10年1月1日以後であること、[3]店舗内の酒類の在庫の引継ぎは平成10年1月1日に行われていることが認められるから、営業権の譲渡者が店舗内で酒類の販売をしていた平成9年12月31日以前に営業権の引渡しがあったとすることは相当でなく、請求人による酒類の販売が可能となった酒類販売業免許の日である平成10年1月1日を本件営業権の引渡しの日とするのが相当である。
従業員に業績の不振の状況を示す目的で関係書類を処分し、帳簿書類等を調査担当者に対して提示できなかったことは、請求人自身の責めに帰するものであり、消費税法第30条第7項に規定する「やむを得ない事情」とは認めることはできないとした事例
裁決事例集 第68集 246頁
要旨
請求人は、帳簿書類等を保存していなかったのは、廃業状況に追い込まれており、従業員の要請に基づき事業を継続するためには人員の削減が不可欠であることから、「廃業状況にある」ことを示す目的で一部書類を処分したためであり、それほどまでに追い詰められていた経営状況であったという事実以上に、消費税法第30条第7項に規定する「やむを得ない事情」はあり得えない旨主張する。
しかしながら、請求人が業績の不振から会社を閉鎖するために、従業員にその状況を示す目的で関係書類を処分し、本件調査に際し、本件各課税期間に係る帳簿書類等を調査担当者に対して提示できなかったことは、請求人自身の責めに帰するものといわざるを得ず、消費税法第30条第7項に規定する「やむを得ない事情」とは認めることができない。
海砂を採取する権利の取得に際し、利害関係のある漁業協同組合の同意を得るために支払った漁場迷惑料は、仕入税額控除の対象となる課税仕入れの対価とはならないとした事例
裁決事例集 第48集 391頁
要旨
請求人は、A漁業協同組合に漁場迷惑料を支払ったことについて、海砂を採取する権利である資産の取得であるから、消費税法第2条第1項第12号に規定する課税仕入れに該当し、同迷惑料は課税仕入れに係る支払対価の額に該当すると主張する。
しかし、請求人が、海砂採取の許可の申請に当たり、県の指導方針により、A漁業協同組合の同意を得るため漁場迷惑料を支払った事実はあるが、海砂は国有財産であり、A漁業協同組合は海砂の所有権又は海砂を採取し若しくはこれを認める独立の法律上・慣習上の権利等を有していないと認められ、また、A漁業協同組合の有する漁業権には海砂採取及びそれに関する作業を行う権利は含まれていない。したがって、請求人が、利害関係者の同意を得るため何らかの金員を支払うことが実際上必要であるとしても、A漁業協同組合の地位は上記のとおりであるから、当該金員について、資産の譲受けの対価又は借受けの対価に該当するということはできず、仕入税額控除を適用することはできない。
簡易課税制度選択届出書の提出は錯誤によるものであるとして、本則課税を適用し、仕入税額控除をすべきとしてされた更正の請求につき、同届出書の提出は無効でなく、請求は認められないとした事例
裁決事例集 第48集 405頁
要旨
請求人は、消費税法に基づき簡易課税制度選択届出書を提出した上で、当期につき簡易課税に基づいて算出した消費税の確定申告書を提出した。
その後、請求人は、簡易課税制度選択届出書の提出は錯誤によるものであり、本則課税により仕入税額控除を適用すべきとして更正の請求をした。
請求人は、簡易課税制度選択届出書の提出は錯誤に基づくもので無効であると主張するが、同届出書の提出による簡易課税の選択が錯誤により無効となるのは、請求人の錯誤が客観的に明白かつ重大なものである場合に限られると解すべきである。請求人が提出した簡易課税制度選択届出書は、法令の規定に従い記載し提出されており、その記載には明らかな誤りは認められず、仮に請求人に錯誤があったとしても、同届出書上錯誤が表れているとはいえないから、客観的に明白かつ重大な錯誤が存在したと認定することはできない。
したがって、簡易課税制度選択届出書の提出による簡易課税の選択が無効であるという請求人の主張は採用することができず、更正の請求に理由がないとした原処分は相当である。
絵画美術品の仕入先元帳等に記載された取引の相手方の氏名又は名称について、その氏名又は名称が虚偽のものと推定されるとして、消費税の仕入税額控除を適用することはできないとした事例
裁決事例集 第48集 424頁
要旨
- 請求人は、次のとおり主張する。
- 請求人の保存する帳簿及び請求書等には、消費税法第30条第8項又は第9項に定める事項のすべてが記載されている。原処分庁は、仕入先の実在の確認とその特定が当該帳簿及び請求書等によって可能でない限り、課税仕入れに係る消費税額の控除は認められないとして原処分を行ったもので、これは、法令の規定によらない違法な処分である。
- 請求人には、取引の相手方の氏名等が真正なものであるか否かを相手方に問いただす法律上の権限は付与されておらず、請求人の取引先は遠隔地に所在するものも多いことから、請求人は、仕入先の実在の確認も特定も行い得る環境にはないというべきである。
- 請求人は、仕入れにおける後日のトラブルに備えて、当該絵画等の真実の所有者と推認される者の氏名等及び当該絵画等を持ち込んだ者と受領した領収証等の氏名等が相違する場合当該持ち込んだ者の氏名等を記載した手帳(「本件手帳」)を保有しているにすぎない。
- 原処分庁は、次のとおり主張する。
- 消費税法は帳簿方式を採っているから、帳簿によりその取引につきデータを保存し申告や調査の際に資することを求めているのは当然のことであり、その記載内容が真実であって、かつ、「課税仕入れの相手方の氏名又は名称」についても、住所等を記載するなどの方法により、相手方を具体的に特定できる状態におくことが不可欠である。
- 本件取引については、取引の相手方の実在すら確認ができず、課税仕入れの相手方の真正な氏名又は名称が記載されているとは認められないから、消費税法第30条第8項及び第9項の記載要件を具備していず、仕入税額控除をすることはできない。
- 審判所の判断は、次のとおりである。
- 仕入税額控除に関する消費税法第30条第1項の規定が適用されるためには、保存されている帳簿又は請求書等に、真実の課税仕入れの相手方の氏名又は名称が記載されていることを要し、ただ単に課税仕入れの相手方ないし書類作成者の氏名又は名称として何らかの氏名又は名称と覚しきものが形式的に記載されていれば足りるというものではないことは、明らかである。
もっとも、取引の相手側に立って交渉その他の取引に関連する行為を実際に行う者が、相手方本人なのか、その代理人にすぎないのかが判然としない場合もあり、かかる場合でやむを得ないときにおいては、取引の相手側に立って実際に行動する者の氏名又は名称の記載をもって、要件を満たすものと解し得ると認められる。 - 消費税第30条第1項の適用除外事由である法定の要件を具備した帳簿又は請求書等を保存していない事実については、事業者側が、まず、帳簿又は請求書等に課税仕入れの相手方の氏名又は名称として記載されているものが、真実の相手方のそれであることを、相当の根拠、資料に基づいて明らかにする必要があり、事業者がこれを果たさない場合には、当該課税仕入れにつき法定の要件を具備した帳簿又は請求書を保存していないことが、事実上推認されるというべきである。
- 取引の経緯等から、相手側に立って実際に行動する者から交付される請求書等に、真実の取引の相手の氏名又は名称が記載されているか否か、社会通念上要求されるところの注意の範囲内で相当程度疑われるにもかかわらず、あえて、これを確認しようとせず、漫然と当該請求書等を保存し、あるいは、当該請求書等に基づいて帳簿に記載するにとどまるときは、真実の相手方のそれであることを明らかにする必要を果たしたということはできない。
- 他方、原処分庁の主張が、相手方の氏名又は名称のみならず、その住所又は所在地も帳簿又は請求書等自体に記載されていない限り、消費税法第30条第8項、第9項の要件を充足しないというものであるとすれば、これは、明文の規定に反する解釈といわなければならない。真実の相手方の氏名又は名称の記載であることは、帳簿又は請求書以外の資料によっても明らかにし得るものであるからである。
- 本件取引については、請求人は、[1]直接請求人と接触して売買の手続を行う者(「本件持込人等」)が取引対象物件の真正の所有者である場合とない場合とが混在していることを認識しており、また、[2]本件持込人等が記載等した領収書等の書類により取引の相手方の氏名又は住所を本件仕入先元帳に記載していることを自認しているものと認められる。
- もっとも、上記Eの[2]のとおり記載していた場合でも、これが必ずしも真正でない可能性があることを考慮して、本件持込人等の氏名等を記載した書類を別途作成し、保存していた(税務職員の求めに応じて提示することを含む。)ときには、当該書類は、一種の補助帳簿として位置づけられ、帳簿に記載等をした氏名等が真正のものでないと認定された場合でも、当該書類の保存によって、仕入税額控除の適用をすることができるというべきである。
- [1]本件取引において本件仕入先元帳及び本件請求書等に記載されている住所等については、請求人もこれが真偽不明と認識しており、[2]本件持込人等が自身の氏名等を明らかにされることを回避しようとしている以上、経験則上、本件持込人等が記載した氏名等が真正の所有者等の氏名又は名称であるとは考え難く、加えて、[3]請求人は本件手帳を作成し、保管していながら、原処分の調査担当職員、異議担当職員及び当審判所のいずれにも本件手帳を提出しないとしていることが認められるから、上記記載の氏名等は真正の取引の相手先の氏名等ではないと推定され、かつ、本件持込人等の真正の氏名等でもないと推定される。
- そうすると、請求人は、当該事業を営む上で社会通念上要求されるところの相当の注意の範囲で、相手方の氏名等が必ずしも真正なものでないことを認識していたにもかかわらず、本件持込人等が記載等した氏名等を仕入先元帳に記載し、調査担当職員の要求にもかかわらず本件持込人等の氏名等を記載した手帳を提示せず、かつ、相手方の氏名又は名称は虚偽と認定されるのであるから、当該氏名等は、消費税法第30条第8項第1号イ又は同条第9項第1号イの「氏名又は名称」ということはできない。
したがって、同条第7項の「課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合」に該当し、同条第1項の規定による仕入税額控除を適用することはできない。 - 請求人は、仕入先の真正な氏名の記載がないことをもって、当該仕入れを否定することはできないと主張するが、上記判断は、本件仕入先元帳等が消費税法第30条第7項ないし第9項の帳簿又は請求書等に該当しないと判断したものであり、当該仕入れが同条第1項の課税仕入れに当たらないと判断したものではない。たとえ、同条第1項の課税仕入れに当たっても、同条第7項の要件を満たさなければ仕入税額控除はできない。
しかし、たとえ帳簿等に記載された相手方の氏名等が虚偽の場合であっても、当該事業者がこれを真正と信ずべき相当な理由があり、そのため当該帳簿等が消費税法第30条第7項の帳簿又は請求書等として保存されていると認められる場合には、同条第1項の仕入税額控除は適用される。
- 仕入税額控除に関する消費税法第30条第1項の規定が適用されるためには、保存されている帳簿又は請求書等に、真実の課税仕入れの相手方の氏名又は名称が記載されていることを要し、ただ単に課税仕入れの相手方ないし書類作成者の氏名又は名称として何らかの氏名又は名称と覚しきものが形式的に記載されていれば足りるというものではないことは、明らかである。
請求人が採用した個別対応方式における課税資産の譲渡等に要するものとその他の資産の譲渡等に要するものとの区分方法は合理的基準の一つであるとして、異議決定で採用した一括比例配分方式による計算を排斥した事例
裁決事例集 第62集 462頁
要旨
原処分庁は、請求人が不動産の賃貸収入に係る課税仕入れの消費税額を個別対応方式により計算して申告したことについて、建物の建築費が「課税資産の譲渡等に要するもの」と「その他の資産の譲渡等に要するもの」に明確に区分されていないので、一括比例配分方式により課税仕入れの消費税額を計算すべきであると主張する。
しかしながら、請求人の建物の建築費の区分方法は、当該建築費の大部分を共通の資産の譲渡等に要するものであると認識した上で、これを建物の使用面積割合で課税資産の譲渡等に要するものと、その他の資産の譲渡等に要するものに区分するというものであって、合理的な基準の一つであると認められるところ、請求人の個別対応方式による課税仕入れの消費税の計算は正当である。
要旨
請求人は、J社から帳票類を仕入れ、一切手を加えず、得意先に販売しているのみであり、また、得意先は特定の事業者であって一般の消費者ではないから、請求人の業務は、消費税法施行令第57条第2項に規定する卸売業に該当すると主張し、仕入先であるJ社と情報サ-ビス提供の契約をしているのは請求人ではなく、請求人の代表者である税理士であり、また、得意先との関係においても、請求人の業務と代表者たる税理士の業務は明確に区分されていると主張する。
しかし、請求人が行っているのは、得意先が起票した伝票等の資料をJ社の情報処理システムにより整理分析して帳簿等を作成する会計処理業務であり、請求人の主張する帳票類の販売とは、会計処理業務の成果品として作成される帳簿等を引き渡すことである。
したがって、請求人の業務は、消費税の簡易課税制度の適用上、卸売業には該当しない。
要旨
要旨
請求人は、信販会社に支払った本件手数料は、業務の対価として支払われるものであり、また、商品の販売に伴い生じた債権は本来信販会社のものであって、請求人との間においては債権の譲渡は行われていないので、非課税取引には該当せず、仕入税額控除の対象とすべきである旨主張する。
しかしながら、請求人と信販会社との間の本件手数料の支払いに関する契約によれば、請求人が商品を販売したことによる売買債権を当該信販会社に譲渡し、又は信販会社に引き継いだ後の商品の販売代金は当該会員に対して請求することはできないこととされていることからすると、当該信販各社は、請求人が有する商品販売債権を引き継いで、請求人に代わって当該債権を集金することの対価として本件手数料が授受されるものであると認められることから、本件手数料は非課税取引に当たることになる。
住宅として賃貸中の建物を譲渡目的で取得した場合には、仕入税額控除における個別対応方式では「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」に区分されると判断した事例
裁決事例集 第70集 369頁
要旨
請求人は、本件各信託不動産(土地及び建物)に係る賃貸収入(住宅の貸付けに伴う賃貸収入)は、当該各不動産の取得に伴い付随的に生じたものにすぎず、当該各不動産の取得が当該各不動産の譲渡を目的とするものであることを妨げるものではないから、当該取得に係る課税仕入れは、消費税法第30条第2項第1号(個別対応方式)の適用に当たり、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分されるべき旨主張する。
しかしながら、請求人は、本件各信託不動産を、譲渡する目的だけでなく、その賃貸収入を得る目的を併せ持って取得したものであり、また、本件課税期間において、本件各信託不動産を取得した日から課税資産の譲渡等に該当しない当該各不動産に係る賃貸収入(住宅の貸付け)が生じている以上、本件各信託不動産に係る課税仕入れにつき、個別対応方式において、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分することはできず、「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」に区分するのが相当であるから、請求人の主張には理由がない。
店頭における商品の仕入れに際し、仕入先が言うままの名称を帳簿等に記載している仕入取引については、その名称が真実のものでないと推認されるとして、消費税の仕入税額控除は適用できないとした事例
裁決事例集 第49集 490頁
要旨
- 請求人は、本件帳簿等は消費税法第30条第8項及び第9項に規定する帳簿及び請求書等の要件を満たし、保存すべき書類としては十分なものであり、本件調査においても本件帳簿等を提示していることから、仕入税額控除を認めるべきである旨主張する。
- 審判所の判断は、次のとおりである。
- 消費税法第30条第1項の適用を受けるためには、課税仕入れの真実の仕入先が記載されていることを要し、ただ単に仕入先の氏名として何らかの氏名が記載されていれば足りるというものではない。
- 仕入先が請求人の店頭に商品を持ち込み、発行者の氏名及び住所等が記載されている請求書及び領収書を持参しないという、通常一般に行われていない形の取引においては、仕入先の言うがままの氏名等が真実かどうか、社会通念上要求されるところの注意の範囲内では相当程度疑われるというべきである。
- しかるに、請求人は、取引の経路等を確認せず、仕入先の言うままの名称を本件請求書に記載していたことは明らかであり、本件帳簿等に記載されている氏名は真実のものではないと推認されるから、本件帳簿等は、氏名等の記載を欠くものと認められ、消費税法に定める帳簿、請求書に該当せず、仕入税額控除の要件とされる帳簿等の保存がなかったことになるので、仕入税額控除をすることはできない。
要旨
請求人は、その事業は、染色加工業であって日本標準産業分類によれば、製造業の中分類(繊維工業)の小分類染色整理業に該当し、請求人自らの名と責任においてすべての加工を外注先に依存する製造業であり、第三種事業に当たる旨主張するが、請求人の事業は、白生地を受注先の小売店から提供されて、それに染色等の加工をしているのであるから、「加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供事業」に該当し、第四種事業に当たる。
税務調査において消費税法第30条第7項に規定する課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等の提示がされなかったとして仕入税額控除の適用が認められないとした事例
裁決事例集 第74集 450頁
要旨
請求人は、帳簿を保存していたのに、調査担当者が第三者の立会い排除要求に請求人が応じないことを理由に帳簿を確認せず仕入税額控除を否認したのは違法である旨主張する。
しかしながら、消費税法第58条は事業者に課税仕入れ等に関する帳簿等の保存を義務付け、同法第62条は税務職員にこれらの帳簿等を検査することを認めている。このように課税仕入れ等に係る帳簿等が税務職員による検査の対象となることを前提に、同法第30条第7項は、事業者が課税仕入れ額に係る帳簿等の保存をしている場合において、税務職員がこれらの帳簿等を検査することができるときに限り、同条第1項の仕入税額控除を適用できる旨明らかにしたものである。
この趣旨からすれば、事業者が仕入税額控除の適用を受けるには、法が定める帳簿等を整理し、これらを所定の期間及び場所において、税務職員による検査に当たり適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存することを要し、事業者がこれを行っていなかった場合には、仕入税額控除は適用されないというべきである。
これを本件についてみると、調査担当者は再三にわたって、帳簿等の提示がない場合には仕入税額控除の適用が認められない旨の説明をした上で、第三者を退席させた上で帳簿等を提示することを求めていたところ、これらの提示要求に違法な点は認められない。そして、請求人が専ら立会いなしでは調査に応じられないという理由で帳簿等の提示を拒んでいたことに照らすと、請求人は、帳簿等の提示要求に応じ難いとする格別な理由がなかったにもかかわらず提示しなかったというべきである。
これらから判断すると、本件は同法第30条第7項に規定する「事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合」に当たり、原処分庁が同条第1項の規定を適用せず仕入税額控除を否認した更正処分は適法である。
販売代理店契約の解除に伴う在庫品の返品に係る消費税額を、課税仕入れ等の消費税額から控除すべき時期は、代理店契約の末日を含む課税期間であるとした事例
裁決事例集 第61集 682頁
要旨
請求人は、本件課税期間末日に終了した代理店契約に係る期末在庫品を仕入先へ引き渡したのは翌課税期間であるから、消費税等の計算に当たり、本件在庫品の課税仕入れに係る消費税額を翌課税期間の課税仕入れ等に係る消費税額から控除すべきである旨主張する。
しかしながら、本件在庫品の引き渡し時期を請求人と仕入先とで定めた規定はないことから、本件代理店契約に基づく仕入れ取引の内容、請求人の経理処理、倉庫会社に対する荷渡指図書等関係資料、関係者の認識等を総合的に審理した結果、本件課税期間末日の午後12時の時点において本件代理店契約、保険契約等が終了し、同時に本件在庫品の所有権も相手方に移転したと解するのが相当であり、本件課税期間において本件在庫品に係る消費税額を課税仕入れ等に係る消費税額から控除すべきである。
仕入税額控除に係る請求書等には、真実の仕入先の氏名等が記載されておらず、また、その仕入先が真実であると信じざるを得ない状況にはなかったとして仕入税額控除を否認した事例
裁決事例集 第63集 653頁
要旨
請求人は、[1]本件仕入取引はいずれもMから持ち込まれたもので、請求書等に記載された仕入先(以下「本件各仕入先」)が真実のものと判断して取引を開始し、本件各仕入先の納品書、請求書及び領収書を収受していること、[2]本件仕入取引は現金取引であり、請求書等の氏名等が真実であるか否かは重要な意味を持つものでなく、その実在を徹底的に追及することが商取引の実態にそぐわないことからすれば、本件各仕入先が真実の取引先であったことは明らかであるか、請求人としては、本件各仕入先を真実の仕入先と信じることに相当の理由があったから、仕入税額控除が認められるべきである旨主張する。
しかしながら、本件仕入取引については、請求人の社長がMに商品を発注し、Mから納品があった際、A氏に代金を支払うという流れであり、M以外の者が関わっていた事実はなく、本件各仕入先は存在しないか、存在しても請求人と取引があったとは認められないことからすると、本件仕入取引はMが虚偽の名義を使用して行ったものと認められ、したがって、帳簿等に真実の取引先の氏名等が記載されているとはいえない。
また、社長をはじめ請求人の社員等は、本件各仕入先の所在や業態等をMに確認することなく、当該取引を継続して行っていたものであるから、請求人が、本件各仕入先を真実の取引先であると取り扱わざるを得ない状況であったとか、そのように信じざるを得ない状況であったとは言えないため、本件各仕入先の氏名等を真実と信ずべき相当な理由があったとは認められない。
要旨
消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第2項に規定する課税仕入れ等の税額の計算を行うに当たり、原処分庁は、個別対応方式を選択して申告している請求人が、共通売上対応分とした調剤薬品等の仕入れについて、課税売上げ対応分があったとしても当該売上げは本来の目的とは別途に事後的に発生するものであり、課税仕入れを行った日の状況においては非課税売上対応分とすべきであると主張する。
しかしながら、調剤薬品等は、そのほとんどが非課税売上げとなっているものではあるが、現実的に、課税売上となる販売として[1]他の保険薬局(同業者)への小分け販売、[2]医師の指示書による販売、[3]自費診療(患者負担10割)による販売が発生していることから、その仕入れた時点における区分は、課税売上げのみに要する課税仕入れ又は非課税売上げのみに要する課税仕入れとは認められないから、共通売上対応分の課税仕入れとするのが相当である。
要旨
請求人は、受注先であるM社等に納品した製品の対価には、同社から支給された原材料の部品代金を含めた金額(製品の対価に係る消費税額を含む)を受領し、他方、M社等から製品の加工を受注するに際しては、原材料の部品の対価(製品の対価に係る消費税額を含む)をM社等に支払っていることから、消費税の課税標準額は、M社等から有償支給された原材料部品の金額を加算した金額により計算することが相当である。
帳簿及び請求書等の保存要件を充足するとして消費税の仕入税額控除の適用を認めた事例( 平成26年分以後の所得税の青色申告の承認の取消処分、 平成26年分から平成29年分及び令和元年分の所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、 平成30年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに重加算税の賦課決定処分、 平成26年分及び令和元年分の所得税及び復興特別所得税の各再更正処分、 平成29年分及び平成30年分の所得税及び復興特別所得税の各再更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分、 平成27年分及び平成28年分の所得税及び復興特別所得税の各再更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各変更決定処分、 平成26年1月1日から平成28年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、 平成29年1月1日から平成30年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに重加算税の各賦課決定処分、 平成26年1月から令和元年6月までの各期間の源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の各納税告知処分並びに重加算税の各賦課決定処分・ 棄却、 一部取消し、棄却、却下、 一部取消し、棄却、 却下、 一部取消し)
裁決事例集 第129集
ポイント
本事例は、原処分庁が調査を行った日において消費税の請求書等の保存を要する期間を経過していた課税期間について、当該課税期間の帳簿は保存されていたことから帳簿及び請求書等の保存要件を充足しているとして、当該課税期間に係る支払対価の額が3万円以上の取引についても仕入税額控除が適用されるとしたものである。
要旨
請求人は、平成26年1月1日から同年12月31日まで(平成26年課税期間)、平成27年1月1日から同年12月31日まで(平成27年課税期間)及び平成28年1月1日から同年12月31日まで(平成28年課税期間)の各課税期間(本件3課税期間)の消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第7項の規定に係る帳簿(法定帳簿)及び請求書等(法定請求書等)は、消費税等の実地の調査の初日に保存があり、調査担当職員に対し法定帳簿を提示し、また法定請求書等についても提示しようとしていたことなどから、本件3課税期間においては課税仕入れに係る支払対価の額の合計額が3万円以上の取引についても仕入税額控除が適用されるべきである旨主張する。
しかしながら、法定請求書等を実際に保存している場合において、税務職員が法定請求書等を検査することができるときに限り、仕入税額控除の適用が認められるところ、平成27年課税期間及び平成28年課税期間については、請求人は調査担当職員に対して法定請求書等を、その保存を要する期間内に適時に提示しなかったのであるから、課税仕入れに係る支払対価の額の合計額が3万円以上の取引については仕入税額控除が認められない。一方で、原処分庁は、本件3課税期間の法定請求書等の保存はない旨主張するが、平成26年課税期間の処分の適法性に関し具体的に主張しておらず、同課税期間については、調査初日において法定請求書等の保存を要する期間を経過しており、よって、平成26年課税期間の消費税等については、課税仕入れに係る支払対価の額の合計額が3万円以上の取引についても仕入税額控除が適用される。
参照条文等
参考判決・裁決
建物等の譲渡に当たって当事者間で引渡しの日を定めていたとしても、当該建物等の売買契約を締結した日に代金決済及び所有権移転登記等が完了しているのであれば、当該売買契約を締結した日が当該建物等の譲渡の時期であるとした事例
裁決事例集 第73集 519頁
要旨
請求人は、本件建物等の課税仕入れの時期について、①消費税法基本通達9-1-13ただし書において、事業者が建物その他の固定資産の譲渡に関する契約の効力発生の日を資産の譲渡の時期としているときはこれを認める旨定めていること及び②ビジネスホテル業は関係諸官庁の営業許可なしでは営業できないことから、本件建物等の引渡しの日については、本件確認書及び本件合意書で定めた日である旨主張する。
しかしながら、①請求人は、本件売買契約書を締結した日に本件不動産(上記建物及びその敷地)の売買代金の全額を売主へ支払い、同日、所有権移転登記を了しているばかりか、本件不動産の購入資金の借入先(債権者)との間において債務者及び根抵当権設定者をいずれも請求人とする根抵当権設定契約書兼代物弁済予約証書を作成するとともに本件不動産に根抵当権の設定登記を行っていることが認められること及び②本件売買契約書、本件確認書及び本件合意書のいずれにも旅館業の営業許可が下りなければ契約の効力が生じないとする旨の約定がなく、本件売買契約が旅館業の営業許可を受けることを停止条件とする契約であるとは認められないことから、本件不動産の引渡しは、本件売買契約書の契約日に完了していると認めるのが相当である。
また、本件合意書記載の合意が当事者間において真意でなされたとしても、前述した本件事実関係の下においては、本件不動産は、本件合意書に記載された引渡しの期日よりも前に引渡しが完了していることが認められることから、本件のように引渡しの日について合理的と認められる日が存在している場合には、本件不動産の引渡しの時期についての当事者間の合意があるからといって課税仕入れの時期を左右し得ないものというべきである。
消費税につき提出した「簡易課税制度選択届出書」の効力は、課税期間の基準期間における課税売上高が3,000万円以下となった場合に提出することとされている「納税義務者でなくなった旨の届出書」の提出によっては、失効しないとされた事例
裁決事例集 第58集 292頁
要旨
請求人は、消費税法第57条第1項第2号に規定する「納税義務者でなくなった旨の届出書」を提出することにより、それまでに提出していた「簡易課税制度選択届出書」の効力も同時に失効するので、その後に提出される消費税の確定申告については、簡易課税が適用される余地はなく、本則課税方式による仕入税額控除が適用されるべきである旨主張する。
しかしながら、「簡易課税制度選択届出書」の効力は「簡易課税制度選択不適用届出書」を提出しなければ失効せず、「納税義務者でなくなった旨の届出書」は、基準期間の課税売上高が3,000万円以下となったことによりその基準期間に係る課税期間について消費税の納税義務者でなくなった旨を税務署長に届出するもので「簡易課税制度選択不適用届出書」とはその目的を異にし、また、「納税義務者でなくなった旨の届出書」の提出により当然に「簡易課税制度選択届出書」の効力が失効することを定めた法令の規定も存しないことから、請求人の主張には理由がない。
請求人が、出向契約に基づいて支払った本件業務分担金は、消費税法第2条第1項第12号のかっこ書に規定する「給与等を対価とする役務の提供によるもの」に該当するから、仕入税額控除の対象にはならないとした事例
裁決事例集 第58集 265頁
要旨
請求人は、本件出向契約の実質は業務委託契約であり、請求人と本件従業員の間に雇用関係はなく、本件業務分担金は業務委託契約に基づく役務提供の対価であるから課税仕入れに該当し、したがって、仕入税額控除は認められるべきである旨主張する。
しかしながら、出向契約等に基づき支払われる分担金等であっても、その実質が出向先事業者において支払うべき給与に相当するものである場合には、当該出向先事業者における仕入税額控除の対象とはならない。本件出向契約の契約事項及び労務提供の状況等を見ると、[1]本件従業員は、業務に必要な機械及び器具の自己負担はないこと、[2]請求人の定める勤務時間内において請求人の指揮監督の下に労務を提供していること、[3]請求人は、本件従業員を請求人の従業員であるとして労災保険に加入し、給付手続きを行っていることが認められ、これらを総合すると、本件従業員は、請求人の指揮命令に服して、非独立的に労務、役務を提供しているといえるから、請求人と本件従業員との間には雇用関係があると認めるのが相当である。
したがって、本件業務分担金は、その実質が請求人と本件従業員との間の雇用関係に基づき支払われた給与に相当する金額と認められ、消費税法第2条第1項第12号のかっこ書に規定する給与等を対価とする役務の提供によるものに該当するから、仕入税額控除の対象とはならない。
いわゆる個別対応方式により課税仕入れに係る消費税額を計算する場合における「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」、「その他の資産の譲渡等にのみ要するもの」及び「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」の区分は個々の課税仕入れについて行う必要があるとした事例
裁決事例集 第73集 536頁
要旨
請求人が、本件不動産を信託財産とする信託受益権を取得し、本件不動産の取得に係る本件付随費用の消費税額について、個別対応方式により仕入控除税額を計算するに当たり、本件付随費用の総額を、本件不動産を構成する本件個々の資産の取得価額の比で本件個々の資産に配賦し、本件個々の資産の取得目的に応じ「課税対応」及び「共通対応」に区分したところ、原処分庁は、本件付随費用はいずれも「共通対応」に区分すべきであるとして消費税等の更正処分を行った。
これに対し、請求人は、消費税の課税対象となる一の取引金額の内訳又は複数の取引金額の合計の内訳について、個別対応方式における対応区分が明らかにされていれば、その明らかとなっている区分に応じて対応関係を判定すべきであり、本件付随費用は本件個々の資産にそれぞれの取得価額の比で配賦されているから、個別対応方式における区分は明らかである旨主張する。
しかしながら、課税仕入れとは、「事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供を受けること」のそれぞれの取引を指すことから、消費税法第30条第2項第1号に規定する「課税仕入れにつきその区分が明らかにされている場合」とは、課税仕入れである個々の取引についての対応区分が明らかにされている必要があるものと解される。
そうすると、請求人は、本件付随費用について、その総額を一つの単位とし、各付随費用の合計額を本件個々の資産の取得価額により按分した結果をもって「課税対応」及び「共通対応」に係る課税仕入れの額として集計したに過ぎず、個々の課税仕入れにつきその区分を判定していないことは明らかであるから、請求人の主張は採用できない。
マッサージ師に支払った外注費は、所得税法第28条に規定する給与等に該当するので、消費税法第2条第1項第12号に規定する課税仕入には該当しないとされた事例
裁決事例集 第59集 372頁
要旨
請求人は、請求人がマッサージ師に支払った外注費は、所得税法第28条に規定する給与等を対価とする役務の提供に係るものではないので、消費税法第2条第1項第12号に規定する課税仕入には該当する旨主張する。
しかしながら、請求人と各マッサージ師との契約書等によれば、各マッサージ師はマッサージ業務を遂行するに当たって[1]営業時間、施術コース及び施術料金、業務時間、服装、休憩等の各項目にわたって定められた規則に従って業務に従事していること、[2]顧客に対する事故の責任は請求人にあることなどから、請求人と各マッサージ師との間には雇用関係があるということができ、本件外注費は給与等を対価とする役務の提供に係るものに該当し消費税法第2条第1項第12号に規定する課税仕入には該当しないと認められる。
また、請求人は、請求人がマッサージ師に支払った外注費は、給与ではないから給与等に係る所得税を徴収する義務を負わない旨主張するが、上記のとおり本件外注費は給与等に該当すると認められ、請求人は、所得税を徴収する義務を負うことになる。
なお、本件源泉所得税納税告知処分等には税額計算誤りがあるのでその一部を取り消す。
要旨
請求人は、本件浜買いの相手先は、請求書、納品書等の必要性や知識に乏しく、領収書の発行すら行っておらず、浜買いの相手先に住所、氏名を問い質すことは困難であり、強行すれば商取引の危機を招き、さらに、零細漁師、半漁で他に勤めている者など多種多様であって、概ね不特定多数の部類に属し、取引金額もほとんど3万円未満が多いから、消費税法施行令第49条第2項に該当すると主張する。
しかしながら、消費税法施行令第49条第2項にいう再生資源卸売業とは、日本産業標準分類の中分類に規定されている空瓶・空缶等空容器卸売業、鉄スクラップ卸売業、非鉄金属スクラップ卸売業及び古紙卸売業等であり、また、再生資源卸売業に準ずるものとは、不特定かつ多数の者から課税仕入れを行う事業のうち、取引の実態から仕入れの相手方の氏名又は名称を確認することが不可能に近いという点で再生資源卸売業に準ずるものをいうと解されるところ、本件において、請求人がその帳簿書類に、浜買いに係る仕入れの相手先を記載していない理由は、請求人と当該相手先との関係及び請求人の営業上の問題に起因しているものであるから、本件浜買いは相手方の氏名又は名称を確認することができない取引実態にあると認めることはできず、再生資源卸売業に準ずるものに該当しない。
要旨
請求人は、簡易課税制度適用課税期間に取得した建物を、本則課税適用課税期間に売却したため、本件更正処分は、結果的に仕入税額が控除されていない不当な課税であると主張するが、請求人の場合、本件課税期間に係る基準期間の課税売上高が2億円を超えていることから、消費税法第37条第1項かっこ書の規定により簡易課税による仕入税額控除の計算を行うことはできず、同法第30条に定める本則課税の方法によらざるを得ないこととなる。
そうすると、仕入税額控除の額の計算の基礎とすべきと主張する本件建物は、本件課税期間前に仕入れられたものであるから、本件課税期間において仕入税額控除の対象とすることはできないことは明らかであり、また、簡易課税によった場合に比べて税負担が大きくなることをもって本件更正処分が不当な課税であるということもできない。
要旨
請求人は、フランチャイズチェーン本部に紳士服等の縫製加工を委託しているとはいえず、本部から購入した商品をその性質や形状を変更しないで販売しており、小売業(第二種事業)に当たる旨主張するが、請求人の事業形態は、紳士服等の縫製を現実に行うのは本部であっても、顧客との間においては、当該紳士服等の縫製は請求人の行為として行われているものであって、本部が縫製した紳士服等の製品を請求人が購入して顧客に販売しているとみることはできないことから、請求人の事業内容は、製造業(第三種事業)に該当すると認めることが相当である。
請求人が取得したマンションの売買代金の支払日、所有権移転登記をした日、抵当権が設定された日、合鍵等の引渡しの日等によれば、当該マンションは本件課税期間より前に引渡しを受けたものと認められるから、当該マンションの取得は本件課税期間の課税仕入れには該当しないと判断した事例
裁決事例集 第81集
要旨
事業者が、国内において課税仕入れ等を行った場合は、当該課税仕入れ等を行った日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除対象仕入税額を控除するところ、不動産に係る課税仕入れを行った日については、引渡しのあった日と解するのが相当であり、引渡しの有無については、登記の有無、代金の支払状況などの客観的な取引実態によって引渡しが完了し、その取引に係る経済的効果が実現しているか否かにより判断すべきであるところ、請求人が取得したマンションの売買代金の支払日、売買を原因として所有権移転登記をした日、抵当権が設定された日、合鍵等の引渡しの日等によれば、当該マンションは本件課税期間より前の平成19年9月28日に引渡しを受けたものと認められるから、当該マンションの取得は本件課税期間の課税仕入れには該当しない。
参照条文等
要旨
請求人は、本件独占販売権は、E国のG社から取得したものであるが、本件独占販売権に基づき、本件譲受け直前まで日本国内で営業活動をしていたのはG社の日本子会社H社であり、H社のノウハウ、人的資源等も引き継いでいることから「これらの権利に係る事業を行う者の住所地」は、H社の住所地(日本)であると認められ、本件独占販売権を取得した取引は、消費税法上、国内取引に当たると主張する。
しかしながら、本件支払金は、G社が保有する本件製品の独占販売店の権利の価値(独占販売により稼得することができる将来の収益)を認めてG社へ支払われたものであり、G社が本件独占販売権をH社又は請求人に付与することによって、G社自体が本件独占販売権に係る事業を行っていると認められる。そうすると、本件独占販売権の譲渡者であるG社の所在地はE国であるので国外取引となり、課税仕入れに該当しない。
消費税の控除対象仕入税額の計算方式について、一括比例配分方式を選択して申告した後に、更正の請求により個別対応方式に変更することはできないとした事例
裁決事例集 第78集 500頁
要旨
請求人は、①消費税の導入の趣旨に反して、消費税等相当額の負担を強いられていること、②一括比例配分方式は簡便法であって、個別対応方式こそが原則的な控除対象仕入税額の計算方法であること、③請求人の控除対象仕入税額は、本件税理士の責めに帰すべき事由により、請求人に不利な計算方法により算定されていることから、本件更正の請求において、控除対象仕入税額の計算方法を一括比例配分方式から個別対応方式へ変更することができる旨主張する。
しかしながら、納税者が消費税法第30条第4項の規定の適用を選択して一括比例配分方式により控除対象仕入税額を算定し確定申告をした場合には、更正の請求において、控除対象仕入税額の計算方法を一括比例配分方式から個別対応方式へ変更することはできないと解されるところ、請求人は、同項の規定の適用を選択して一括比例配分方式により控除対象仕入税額を算定し確定申告をしたものと認められることから、本件更正の請求において、控除対象仕入税額の計算方法を変更することはできない。
また、上記①については、請求人が、課税仕入れについて、用途区分を明らかにしてさえいれば、いずれの計算方法を選択するのが税負担の面で有利であるかは、法定申告期限までに容易に判明することであること、上記②については、本件両方式のいずれの計算方法により控除対象仕入税額を算定すべきかは、いずれの計算方法が原則的な計算方法であるかによって決せられるものではなく、請求人がいずれの計算方法により控除対象仕入税額を算定して確定申告をしたかによって決せられるものであること、上記③については、請求人は、自己の意思と責任において本件税理士に税務代理を委任したものである以上、受任者である本件税理士の行為は委任者である請求人の責任の範囲内の行為と認められることから、請求人の主張にはいずれも理由がない。
真実の仕入先の名称等が記載されていない帳簿等は消費税法第30条第7項に規定する帳簿保存要件を満たす帳簿等には該当しないから、これに係る消費税の仕入税額控除は認められないとした事例
裁決事例集 第77集 518頁
要旨
請求人は、軽油の仕入先G社、H社及びJ社(以下「本件仕入先3社」という。)はいずれも実在していた会社であり、取引当時の状況から本件仕入先3社を架空の会社などと疑う余地は全くなく、消費税法第30条は納税者が帳簿等の記載内容の真実性を調査し確認する義務まで規定していない旨主張する。
しかしながら、G社は、商業登記がなく、領収証と請求書の住所が異なっており、H社は、商業登記はあるが、その住所地には別人が居住しており、J社は、商業登記がなく、領収書記載の住所が住居表示上存在しないことなどから、本件仕入先3社は実体のない会社であることが認められ、請求人の帳簿等には真実の仕入先の名称が記載されていないこととなる。
そして、①軽油をとりまく業界においてはかつてから不正軽油の問題があることは公知の事実であり、取引当時も不正軽油の販売が行われていたこと、②本件仕入先3社へ注文する際の電話番号が同じであったこと、③本件仕入先3社の集金担当者が同一人物であったことなど、各仕入先の名称が真実のものかどうか、社会通念上からみて相当程度疑われる状態であったといえ、加えて、請求人と本件仕入先3社との取引は、回数も多く、金額も多額であり、すべて現金決済であることからすると、請求人が積極的に確認するのが自然であるところ、これを確認することなく漫然と請求書等を保存し、帳簿に記載していたといわざるを得ないから、請求人において、本件仕入先3社が真実のものと信ずべき相当の理由があったとはいえない。また、請求人は、真実の仕入先の名称等を記載した帳簿等の保存をすることができなかったことにつきやむを得ない事情があったという主張及び立証をしていない。
したがって、本件仕入先3社の名称が記載されている請求人の帳簿及び請求書等は、いずれも真実の仕入先の名称が記載されていないことから、消費税法第30条第8項及び第9項に規定する記載要件を満たした帳簿及び請求書等に該当せず、同条第7項に規定する帳簿及び請求書等の保存がなかったものということとなり、本件仕入先3社との取引については、同条第1項に規定する課税仕入れ等の消費税額の控除を適用することができないとした原処分は適法である。
簡易課税制度選択届出書の提出があり、その後簡易課税制度不適用届出書の提出がないので、本件課税期間については簡易課税制度を適用した更正処分等は適法であるとした事例
裁決事例集 第62集 435頁
要旨
請求人は、設備投資に係る消費税等の還付を受ける目的で、本則課税を適用して申告したものであるが、消費税等の還付が受けられないのであれば本件申告書の取り下げを認めるべきであり、簡易課税制度を適用して行った更正処分等は違法、不当であると主張するが、本件申告書は、法令の規定に従った適法なものであり、自ら自由に取り消し、撤回をすることは許されず、また、請求人は簡易課税制度選択届出書を提出しているが、その後簡易課税制度不適用届出書の提出がないので、簡易課税制度を適用して行った更正処分等は適法である。
要旨
原処分庁は、請求人が注文者として締結した工事請負契約により取得した賃貸用建物(本件建物)は、本件課税期間内には共同住宅として使用できる状態にはなく、工事が完了していたとは認められないから、請求人が本件建物の引渡しを受けた日の属する課税期間は本件課税期間ではないこととなり、本件建物の取得費用に係る消費税額を本件課税期間の消費税の計算において課税仕入れに係る消費税額として控除することはできない旨主張する。
しかしながら、本件課税期間内に本件建物の大部分は完成しており、請求人は、本件課税期間内に、①権利保全のために所有権保存登記をしていること、②金融機関との間で本件建物に抵当権を設定して自己の所有物として処分していること、③本件建物の工事請負業者に対し請負代金の全部の支払を終えたことなどを併せ考えれば、本件建物の工事に若干の工事が残存して未完成であったとしても、本件課税期間内に本件建物が完成し引渡しがあったものと同視できるから、請求人が本件建物の引渡しを受けた日の属する課税期間は、本件課税期間であると認めるのが相当である。
参照条文等
参考判決・裁決
東京地裁昭和55年6月12日判決(判タ428号208頁)
要旨
請求人は、請求人自らは印刷そのものを行っておらず、単に他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで顧客に販売しているだけであるから、卸売業に当たる旨主張するが、請求人の事業形態は、顧客の注文に応じて自己の計算と危険において外注先に印刷加工を行わせることにより、印刷物の性質及び形状を変更して付加価値を高め、完成された印刷物を顧客に納品することにより対価を受領していることから、請求人の事業内容は、印刷業(製造業)に該当すると認めるのが相当である。
控除対象仕入税額の計算方法につき個別対応方式を選択してなされた申告に対して、課税仕入れの用途区分が誤っているとして同方式により再計算して行われた更正処分につき、錯誤を理由として一括比例配分方式に選択を変更して控除対象仕入税額の再計算を行うべきとして、その違法性を主張することは許されないとした事例
裁決事例集 第79集
要旨
請求人は、課税上の選択権を行使する過程において錯誤により選択を誤った場合には、法が定める更正の請求等の救済方法以外にも先例(最高裁平成2年6月5日判決)による救済が認められるべきであり、本件においては、請求人が納付税額が少なくなる方法を選択するという内心の意思を実行する過程において、単純な計算誤りにより仕入れに係る消費税額の計算方法の選択を誤ったものであるから、請求人が錯誤に基づいてした個別対応方式の選択の是正が認められるべきであるにもかかわらず、原処分庁が、確定申告における請求人の選択のまま個別対応方式により本件更正処分を行ったことは違法である旨主張する。
しかしながら、請求人において仕入れに係る消費税額の計算で個別対応方式を選択する過程において過誤又は勘違いがあったという事情は認められるものの、仮に当該事情が錯誤に当たるとしても、国税通則法においては、納税者が自主的判断によって提出した申告納税方式による国税の確定申告書に記載した課税標準等又は税額等の是正については、まず、修正申告又は更正の請求の手続を通じて行うべきことが予定されているところ、請求人は、当該事由に基づいて一括比例配分方式に選択を変更して仕入れに係る消費税額を計算したところで修正申告も更正の請求も行っていないのであるから、原処分庁が本件確定申告書において請求人が選択した個別対応方式によって仕入れに係る消費税額を再計算した本件更正処分を違法とする理由はない。
参照条文等
横断地下道の便益は、請求人のように負担金を支払った者のみが支払っていない者に比して有利な条件で利用できるものとなっていないので、課税仕入れに該当しないとした事例
裁決事例集 第65集 920頁
要旨
請求人は、賃貸用大規模小売店舗を建設するに当たり、進入道路について国道直下を横断する地下道を設置する必要が生じたことから、F市及びM工事事務所と協議し、請求人が事業費の全額を負担したものであるから、F市に対して納入した工事負担金については、その名目が何であれ実質は工事代金で、工事負担金と地下道の設置とは明白な対価関係があり、また、F市からは課税仕入れに係る支払対価に該当する旨指導されたと主張する。
しかしながら、請求人は本件地下道工事の工事主体とも工事委託者ともなり得ないことから、やむなく「事業費の全額負担」を条件にF市及びM工事事務所に同工事の施工を要請した者であり、また、本件地下道は完成後にF市道として認定されており請求人だけが便益を受けるものとは認められない。
さらに消費税法基本通達5-5-6《公共施設の負担金等》注2に定める取扱い通知は必須条件ではないから請求人の主張には理由がない。
簡易課税制度選択事業者が、消費税の経理処理につき税抜経理方式をとっているからといって、本則課税による仕入れ税額控除が認められることにはならないとした事例
裁決事例集 第62集 444頁
要旨
新設法人で、かつ、簡易課税制度選択届出書を提出している請求人は、消費税等の経理処理について税抜経理方式をとっているから本則課税を認めるべきであると主張するが、当該届出書は本件課税期間を適用開始課税期間として適法にその効力を有しており、かつ、本件課税期間から事業を開始しているから、基準期間のない本件課税期間においては簡易課税制度を適用しなければならず、本則課税を適用する余地はない。
請求人が提示した出面帳に記載された事項のうち、法定記載要件を具備している部分については、課税仕入れ等の税額に係る帳簿に該当するとして、消費税の納付すべき税額の計算上、当該部分に係る仕入税額控除の適用を認めた事例
裁決事例集 第82集
ポイント
消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第1項は、国内において行う課税仕入れについては、課税標準額に対する消費税額から課税仕入れに係る消費税額を控除する旨規定しているところ、同条第7項において、第1項の規定は、事業者が課税仕入れの税額に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れに係る課税仕入れの税額については、適用しない旨規定している。そして、消費税法第30条第8項第1号においては課税仕入れに係る帳簿の記載事項を、また、同条第9項第1号及び第2号においては請求書等の記載事項をそれぞれ規定しているところである。
この事例は、請求人が職人に支払った対価が課税仕入れに係る支払対価に該当し、課税仕入れに係る消費税額の控除が認められるか否か等が争われたものであり、請求人の出面帳が上記消費税法第30条第8項第1号の法定記載事項を具備したものか否か、また、当該出面帳に基づく課税仕入れに係る消費税額の控除の範囲を判断したものである。
要旨
原処分庁は、本件出面帳について、その大半につき、消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第8項第1号に規定する法定記載事項のうち課税仕入れに係る支払対価の額の記載がないことから、法定記載事項が記載された法定帳簿の保存を定めた同条第7項の趣旨に照らして、これを法定帳簿と認める余地はない等と主張する。
確かに、法定帳簿については、課税仕入れに係る①相手方氏名等、②課税仕入れの年月日、③その役務等の内容及び④支払対価の額の法定記載事項の各記載が必要であり、これらの要件を欠く帳簿は法定帳簿として認めることはできないものの、本件出面帳の記載内容等を法定帳簿の保存を法が定めた趣旨に照らせば、本件出面帳のうち、法定記載事項のすべてを満たしていると認められる部分のみを法定帳簿と認めることが法定帳簿の保存を定めた法の趣旨に反するとはいえない。したがって、当該原処分庁の主張を採用することができない。
参照条文等
請求人の行っている事業は、第三種事業に該当するものではなく、加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業であり、第四種事業に該当するとした事例
裁決事例集 第53集 491頁
要旨
請求人は、消費税の簡易課税制度の適用についての事業区分において、得意先から表生地の無償支給を受け、自己調達した裏生地及び芯地材並びにその他の副資材を用いてプレタポルテを製造するものであるが、裏生地及び芯地材もプレタポルテの主要な原材料であるから、本件事業は、第三種事業に該当すると主張する。
しかしながら、裏生地及び芯地材は、あくまでも表生地に付属するものであって、プレタポルテの主要な原材料である表生地の持っている特性を増補あるいは補完することにより衣服としての価値観、機能性を高めるものであるにすぎないから、プレタポルテの主要な原材料であるとは認められないので、本件事業は、加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行なう事業に該当し、第四種事業とするのが相当である。
仕入れに係る歩引き及び売上げに係る歩引きは、金融取引(非課税取引)に該当せず、消費税法第32条第1項及び同法第38条第1項に規定する「対価の返還等」に該当するとした事例
裁決事例集 第70集 381頁
要旨
請求人は、請求人の仕入れに係る歩引き(以下「本件仕入歩引」という。)及び売上げに係る歩引き(以下「本件売上歩引」という。)は、財務取引及び金融取引であるから、消費税法第32条第1項に規定する「仕入れに係る対価の返還等」及び同法第38条第1項に規定する「売上げに係る対価の返還等」には該当しない旨主張する。
しかしながら、本件仕入歩引の額又は本件売上歩引の額は、市中金利の変動や通常の支払期日と実際に支払われた日との期間の日数の長短に対応して各月別に具体的に計算するのではなく、単に各月の取引金額に対して請求人と仕入先又は売上先との間で取り決めた歩引率を乗じて計算しているものにほかならない。
本件仕入歩引又は本件売上歩引は、請求人と仕入先又は売上先との間において、手形ではなく現金で早期代金決済を行うことに対する奨励的な意味合いのもとに、買掛金又は売掛金の一部を減額するという決済条件の一つになっているものであり、その実質が値引き又は割戻しと同様であることから、消費税法第32条第1項に規定する「仕入れに係る対価の返還等」及び同法第38条第1項に規定する「売上げに係る対価の返還等」に該当すると認められる。
歯科技工を営む者が自ら原材料等を購入して、歯科補てつ物を製作し受注先に納入している場合の消費税の簡易課税制度における事業区分は、第四種事業(サ-ビス業)に該当するとした事例
裁決事例集 第54集 493頁
要旨
請求人は、請求人の歯科技工所の事業形態は、原材料、中間材料、機械設備などをすべて自ら調達し、原材料等に物理的、科学的、機械的変化を施した歯科補てつ物を患者固有の口腔内に適合、機能できるように製作して受注先へ納入していることから第三種事業(製造業)に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人の事業をみると、もっぱら歯科医師等の受注先から補てつ物等を作成するうえでの具体的指示事項が記載されている技巧伝票及び石こうの歯形の提供を受けて歯科補てつ物等を作成して納入しているのであり、同物を何の制約等を受けることなく自由に作成できるものではない。請求人は、歯科医師が指示する形状、サイズ、材質等に従って歯科補てつ物を作成しなければならないのであり、歯科医師の指示によらず作成する歯科材料製造業等とは全く異なっている。
また、請求人の事業は誰でも自由に行い得るものではなく、歯科医師ないし歯科技工士としての国家資格が認められた者でなければ行い得ないものであって、歯科医師は歯科医師及び歯科技工士以外の誰にも事業としての歯科補てつ物等の作成を依頼することができないことから、本件事業は歯科医師の指示に基づいて歯科医療に係る知識若しくは技能、技術を提供するものであり、歯科補てつ物等の作成も歯科医療行為の一環として行っているものと解するのが相当である。
そうすると、本件事業は、歯科補てつ物等を製作する製造業としてよりも、歯科補てつ物等の製造、納入による歯科医療行為に付随するサービス提供事業である点にその本質があるものと解されることから、第四種事業(サービス業)に該当する。
要旨
請求人は、簡易課税制度選択届出書の提出に当たって、原処分庁から簡易課税に関する説明が一切なかったことから、簡易課税とは単に消費税を算出する計算過程が簡単になるという認識しかなく、その提出は錯誤によるものであり無効であるから、本件課税期間について本則課税を認めるべきであると主張する。
しかしながら、簡易課税制度選択届出書が錯誤により無効となるのは、請求人の錯誤が、客観的に明白かつ重大なものである場合に限られると解すべきところ、本件簡易課税制度選択届出書は、本件課税期間から適法にその効力を有しているものと認められ、また、請求人はグループの営業担当者から消費税等の届出書の提出について指導を受けていることから、簡易課税制度の内容については十分知りえたものと認められる。
したがって、本件簡易課税制度選択届出書の提出は、請求人自身の判断に基づいてなされたものであり、提出に当たって請求人に本件簡易課税制度選択届出書の提出が無効となるような客観的に明白かつ重大な錯誤があったとは認められないから、請求人の主張には理由がない。
要旨
請求人は、本件課税期間においては介護保険法上の指定を受けていないため、請求人が取得した認知症対応型共同生活介護を内容とする地域密着型サービス事業(本件介護事業)に対応し得る本件施設において本件介護事業を行うことは不可能であり、本件課税期間における本件施設に係る課税資産の譲渡等は自動販売機手数料のみしかなく、本件施設は飽くまで課税資産の譲渡等にのみ要するもの(課税用)として供したから、本件施設に係る課税仕入れの用途区分は課税用に区分される旨主張する。
しかしながら、消費税法基本通達11-2-20《課税仕入れ等の用途区分の判定時期》が定める、課税仕入れを行った日の状況とは、当該課税仕入れを行う目的や当該課税仕入れに対応する資産の譲渡等がある場合には、その資産の譲渡等の内容等を勘案して判断するのが相当である。
請求人は、①本件課税期間より前に本件介護事業の適正事業者の決定を受け、本件施設の新築工事に着工し、本件課税期間中にその引渡しを受けたこと及び、②本件課税期間中に介護保険法に規定する地域密着型サービス事業を行う事業所の指定を受けるための指定申請書を提出し、同期間内にその指定通知書を受理していることからすれば、請求人は本件施設の取得日において、介護保険法の規定に基づく介護事業を行う目的で本件施設を取得したものと認められる。
そして、本件介護事業に係る資産の譲渡等については原則として消費税は課されないこと、請求人は本件課税期間内において本件施設に関し自動販売機設置手数料を得ていることから、本件施設に係る課税仕入れの用途区分については、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの(共通用)に区分するのが相当である。
参照条文等
消費税法第6条第1項、第30条、別表第一第7号イ 消費税法施行令第14条の2第3項第2号 消費税法基本通達11-2-20
労働者派遣事業を営む審査請求人が派遣労働者に支払う金員は、雇用契約又はこれに類する原因に基づき、労務の対価として請求人から本件派遣労働者に支給されたものであり、所得税法第28条第1項に規定する給与等に該当するものと認められることから、 課税仕入れに当たらないとした事例
裁決事例集 第78集 488頁
要旨
請求人は、本件派遣労働者に対する業務上の指揮命令権はすべて本件派遣先にゆだねられており、また、労働者派遣法において派遣先にも一定の義務を課しているのは、請求人が本件派遣労働者に対してすべての責任を負うものではないことを裏付けたものであるから、請求人と本件派遣労働者との関係は、雇用として認識するより業務請負と考えるべきであり、本件金員は外注費(本件派遣労働者からのサービスの提供に対する対価)である旨主張する。
しかしながら、請求人と本件派遣労働者との間には雇用関係が成立しており、本件派遣労働者は、請求人との雇用関係の下に、請求人の指揮命令に従うほか、本件派遣先の指揮命令を受けて、当該派遣先のために労働に従事していたものと認められ、本件金員は、請求人と本件派遣労働者との雇用契約又はこれに類する原因に基づき、請求人の指揮命令に服して提供した労務の対価として請求人から本件派遣労働者に支給されたものであり、所得税法第28条第1項に規定する給与等に該当するものと認めるのが相当である。
したがって、本件金員を対価とする役務の提供を受けることは、消費税法第2条第1項第12号に規定する課税仕入れに当たらないので、同法第30条第1項に規定する課税仕入れに係る消費税額の控除をすることはできず、請求人の主張は、独自の見解というべきであって、採用することはできない。
要旨
請求人は、請求人の営む歯科技工所は、社会通念上、製造業というべきである旨主張する。
しかしながら、歯科技工は、免許を受けた歯科技工士でなければ業として行うことができないとされ、また、設計、作成の方法、使用材料等が記載された指示書によらなければならないとされるのは、これを行うには相当高度な専門知識、技能・技術が必要とされるためだけでなく、歯科技工士は歯科医師の補助者として歯科医療行為の一環としてこれを行うものであるから、たとえ請求人において材料を購入し、その技術を駆使して義歯を作成しているとしても、本件事業の本質は、歯科医師が患者に対してする医療行為と同様、専門的な知識、技能等を提供することにあるということができ、以上からすると、本件事業は、社会通念上もサービス業に該当すると解するのが相当である。
ポイント
個別対応方式により仕入れに係る消費税額を計算する場合において、課税仕入れを課税資産の譲渡等にのみ要するもの、その他の資産の譲渡等のみに要するもの及び課税資産とその他の資産の譲渡等に共通して要するものに区分する場合の当該区分(用途区分)は、課税仕入れを行った日の状況により行うこととなる。
この事例は、マンションの取得に際し、建物部分と水道施設利用権をそれぞれ別の時期に取得していたことから、それぞれ取得の日の状況で用途区分を判断したものである。
要旨
請求人は、本件建物の取得目的がF社に対して本件建物及びこれに付属する機械式駐車場(本件マンション)に係る信託受益権を売買することにあり、また、本件建物の取得に係る課税仕入れのあった日において、F社との間の信託受益権売買契約の法的な解除やテナントとの間の賃貸借契約の締結がされていなかったとして、本件建物及び本件水道施設利用権の取得に係る課税仕入れが課税資産の譲渡等にのみ要するもの(課税用)に該当する旨主張し、一方、原処分庁は、本件マンションの取得目的は販売及び住宅として貸し付けることであったことから本件建物及び本件水道施設利用権の取得に係る課税仕入れは課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの(共通用)に該当する旨主張する。
請求人は、本件建物の取得に係る課税仕入れのあった日において、F社による信託受益権の売買残代金の支払が事実上不可能で、F社との間の信託受益権売買契約を解消することとなり、同契約において予定されていた日に信託受益権の譲渡が行われないとの認識を有していたといえ、さらに、請求人は、F社が破産手続開始の決定を受ける以前に、本件マンションの新たな売却先を探すため、L社に本件マンションの再査定を依頼したことが認められ、本件マンションの売却先及び売却時期が未定の状況下で、請求人自らがH社との間で本件マンションの管理委託契約を締結し、入居者の募集を開始したという賃料収入を得ることを前提とした行為をしていることを考え併せると、本件建物の取得に係る課税仕入れのあった日において、請求人は、本件マンションの新たな売却先が見つかるまでの間、本件マンションを住宅として貸し付け、これによる賃料収入を得ることを予定していたと認めることができる。そうすると、本件建物の取得に係る課税仕入れを本件信託受益権の売買にのみ要する課税仕入れとして、課税用として区分したことには合理性がないというべきであり、本件建物の取得に係る課税仕入れは、共通用に該当すると認めるのが相当である。
一方、本件水道施設利用権の取得に係る課税仕入れのあった日においては、請求人に帰属すべき賃料収入が生ずる可能性は、具体的なものではなかったというべきであり、同日における状況からすれば、請求人に賃料収入が帰属することが予定されていたということはできず、本件水道施設利用権の取得に係る課税仕入れを信託受益権の売買にのみ要する課税仕入れとして、課税用として区分したことが不合理な区分とまではいうことはできないから、本件水道施設利用権の取得に係る課税仕入れは、課税用と認めるのが相当である。
参照条文等
参考判決・裁決
要旨
請求人は、送付されてきた消費税の届出書に関する案内チラシは簡易課税の選択を誘導する内容のものであったので、消費税簡易課税制度の仕組みをよくわからないまま消費税簡易課税制度選択届出書を提出したのであり、また、同届出書の「事業内容等」欄の「事業区分」の記載漏れは重要事項であるのに、原処分庁はその連絡をせず同届出書を撤回する機会を失ったのであるから、本則課税によって課税仕入れに係る消費税額を計算し、納付すべき消費税額を算出した申告は認められるべきであると主張する。
しかしながら、本件案内チラシは、簡易課税の選択を誘導するような内容ではなく、また、撤回するかどうかは、事業者本人の判断と責任においてなされるべきであり、記載漏れがあったことについて原処分庁からの連絡があったかどうかによって左右されるものでないことは明らかである。
また、いったん消費税簡易課税制度選択届出書を提出し、簡易課税を選択した以上、簡易課税の適用をやめようとする旨の届出書を提出しない限り本則課税が適用されることはないので、請求人の主張には理由がない。
住宅の貸付け等の用に供している建物を販売用として取得したとしても、課税仕入れの用途区分は、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものに該当するとした事例
裁決事例集 第86集
ポイント
個別対応方式により仕入れに係る消費税額を計算する場合において、課税仕入れを「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」、「その他の資産の譲渡等にのみ要するもの」及び「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」に区分する場合の当該区分(いわゆる用途区分)は、課税仕入れを行った日の状況により行うと解されている(消費税法基本通達11-2-20)ところ、この事例は、住宅の貸付け等の用に供している建物を販売用として取得した場合の用途区分について判断を示したものである。
要旨
請求人は、販売する目的で本件各建物を取得したのであるから、その取得に伴い住宅貸付けによる収入が発生する場合であっても、その取得は、消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第2項第1号に規定する個別対応方式による課税仕入れ等に係る消費税の控除額の計算において、「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ」に該当する旨主張する。
しかしながら、課税仕入れ等の用途区分の判定は、課税仕入れ等を行った日の状況により、当該課税仕入れ等の目的及び当該課税仕入れ等に対応する資産の譲渡等の内容を勘案して行うのであるから、本件各建物の取得は、たとえその取得目的が販売用であったとしても、その取得の時点において本件各建物は住宅の貸付け等の用に供されていたのであるから、「課税資産の譲渡等と課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ」に該当する。
参照条文等
参考判決・裁決
簡易課税制度を選択していた課税事業者が、免税事業者に該当する課税期間について課税事業者選択届出書を提出したとしても、当該課税期間において本則課税を適用して消費税の仕入れに係る消費税額を算出することは認められないとした事例
裁決事例集 第66集 341頁
要旨
請求人は、課税事業者に該当することから簡易課税制度を選択したものであり、免税事業者であれば簡易課税制度を選択することもないし、消費税法第37条は法的効力も有しないところ、請求人の本件課税期間に係る基準期間の課税売上高は3000万円以下であり、免税事業者であるにもかかわらず、本件課税期間について課税事業者選択届出書を提出することにより、消費税法第9条第1項本文の特例規定の適用を放棄して課税事業者となったのであるから、本件課税期間の仕入れに係る消費税額の計算においては、消費税法第37条の規定の適用はなく、原則計算である同法第30条の規定により行うこととなる旨主張する。
しかしながら、[1]請求人は平成7年3月23日に簡易課税選択届出書を提出した後、平成14年12月24日に簡易課税制度選択不適用届出書を提出しているが、それ以前に簡易課税制度選択不適用届出書を提出した事実は認めらないこと、[2]平成14年6月24日に適用開始日を本件課税期間の開始日とする課税期間特例選択届出書を提出した上で、本件課税期間について課税事業者選択届出書を提出していること及び[3]本件課税期間に係る基準期間における課税売上高は2億円以下であることから、期間において簡易課税制度の適用を受ける事業者であることは明らかである。
消費税法第9条第4項に規定する課税事業者選択届出書を提出した事業者は、同条第1項本文の規定の適用はないのであるから同法第37条第1項のかっこ書きにある「同法第9条第1項本文の規定により消費税を納める義務を免除される事業者を除く」の規定により同法第37条の規定が適用されないと解する余地はないといわざるを得ず、請求人の主張は独自の見解に基づくものであるから、採用することはできない。
以上のとおり、原処分庁が、請求人の本件課税期間の消費税等について簡易課税制度を適用して仕入れに係る消費税額を算出したことは相当と認められる。
要旨
請求人は、自己が営む事業につき、顧客先との間で取り交わした契約書の表題は「請負契約書」であり、その「業務の内容」の項において具体的な作業内容が明記されるとともに、請負金額は生産状況により調整する旨記載されており、この契約に基づいて役務を提供して対価を受け取っていたものであるから、製造業のうち役務の提供を行う事業に該当することとなり、消費税の簡易課税制度における事業区分上、第四種事業に該当する旨主張する。
しかしながら、消費税の簡易課税制度を公平に適用するためには、日本標準産業分類を基礎として判定することが有用であるところ、請求人が顧客先に派遣する社員は、顧客先の社員の指揮命令を受けて作業に従事していること、請求人は、顧客先との間で、別途「覚書」を交わしており、それによれば、顧客先へ請求する役務の対価の額は派遣した社員の勤務時間や時間給を基礎として算定するとされ、実際にもこれによっていること等からすれば、当該役務の対価の額は、民法第632条が規定する請負契約において予定されている仕事の結果に対する報酬でなく、派遣した社員の労働の対価と認められることから、当該取引は、形式上、請負契約の体裁をとるものの、実質的には請負といえず、日本標準産業分類の大分類「サービス業」の中分類「その他の事業サービス業」の細分類の「労働者派遣業」(派遣するために雇用した労働者を、派遣先事業所からその業務の遂行等に関する指揮命令を受けてその事業所のための労働に従事させること)に該当し、事業区分について、より合理的な他の基準がないことから、請求人の営む事業は第五種事業に区分されるサービス業に当たると認められる。
ポイント
軽油引取税は、特約業者等(地方税法第144条に規定する特約業者又は元売業者をいう。)から軽油を引き取る者に対し課される税であり、当該特約業者等が特別徴収の方法により、当該引き取る者から徴収することとなっている税であるところ、この事例は、軽油取引税名目の支払額につき、軽油の販売業者が特約業者等であるか否かによって、消費税法上の課税仕入れに係る支払対価の額に該当するか否かを判断したものである。
要旨
納税義務者の租税の支払は、課税仕入れに係る支払対価の額には該当しないから、軽油引取税を納税義務者として支払う場合には、軽油引取税に相当する金額は課税仕入れに係る支払対価の額には該当しないと解するのが相当である。
軽油引取税に関する地方税法の規定によれば、軽油引取税の特別徴収義務者である特約業者等又は特約業者等との間で委託販売契約を締結した受託販売業者から軽油を引き取る者が、当該特約業者等又は受託販売業者に支払う軽油引取税相当額は、納税義務者としての租税である軽油引取税の支払であるから課税仕入れに係る支払対価の額には該当せず、一方、当該特約業者等又は受託販売業者ではない者から軽油を引き取る者が支払う軽油引取税相当額は、課税仕入れに係る支払対価の額に該当すると解するのが相当である。
請求人の取引先の一については、上記特約業者等又は受託販売業者ではない者であり、請求人が支払う軽油引取税相当額は課税仕入れに係る支払対価の額に当たるが、他の取引先については、軽油引取税の特別徴収義務者である特約業者等に該当することから、請求人が納税義務者として軽油取引税を支払うことになり、課税仕入れに係る支払対価の額には当たらない。
参照条文等
参考判決・裁決
区分所有者たる請求人の建物管理組合に対する管理費の支払は、当該管理組合の構成員たる地位に基づいて負担するものであるから、資産の譲渡等の対価には該当しないとした事例
裁決事例集 第89集
ポイント
本事例は、区分所有者として請求人が支払ったと認められる管理費の額の算定については、当該管理費の額が建物の区画(部屋番号)に応じて計算されていることから、共有持分割合によらず、区分所有する部分に対応するものとして算定するのが合理的として、処分の一部を取り消したものである。
要旨
請求人は、請求人が区分所有する建物(本件建物)の管理組合(本件管理組合)に対して負担すべき管理費(本件管理費)は、本件管理費の額が本件建物の店舗、事務所等の使用形態による受益に応じて算定されていること及び本件管理組合は本件建物の維持管理が業務(本件管理業務)であることから、本件管理業務という役務の提供の対価として支払ったものであり、消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第1項に規定する課税仕入れに該当する旨主張する。
しかしながら、本件管理費の支払は、本件管理業務に要する費用を、請求人が本件管理組合の構成員たる地位に基づき負担するにすぎず、本件管理組合が本件管理業務を行う上において、請求人は、何らかの資産の譲渡等の反対給付として対価を支払っているものではないから、本件管理組合にとって本件管理費の収受は、資産の譲渡等の対価には該当せず、消費税法上はいわゆる不課税取引となり、請求人がこれを課税仕入れにすることはできない。
参照条文等
既製服プレス加工業は、日本標準産業分類五十音索引表の「プレス仕上げ業(既製服などの仕上げ工程として行うもの)」(大分類L-サービス業)と同一の事業を意味するものと認められることからサービス業に該当し、簡易課税制度における事業区分は第五種事業であるとした事例
裁決事例集 第67集 758頁
要旨
請求人は、本件事業は、既製服製造業者より依頼を受け、既製服製造工程の一部であるプレス加工を営むものであり、加工賃等を対価とする役務の提供を行う事業に該当するから、第四種事業となる旨主張する。
課税事業者が簡易課税制度選択届出書を届け出た場合には、実際の仕入れに係る消費税額を計算することなく、その事業者の営む事業の種類の区分に応じたみなし仕入率を乗じて計算した金額を仕入れに係る消費税額とみなして控除することができることとされているが、消費税法及び施行令には、具体的にどの業種が何業に該当することになるかについては、格別規定がないため、社会通念に照らして判定することになる。
日本標準産業分類は、統計調査の結果を産業別に表章する場合に用いる分類として定められたものであり、日本の産業に関する統計の正確性と客観性を保持し、産業統計の信頼性を高めるために広く定着しているものであるといえ、事業の範囲を判定するのに当たり日本標準産業分類の大分類に掲げる分類を基礎とする旨の消費税法基本通達13-2-4は、当審判所においても相当と認められる。
一般に既製服は、[1]裁断、[2]縫製、[3]ボタン付け、[4]マトメ、[5]検針、[6]プレス(アイロンかけ)[7]値札等の取付けの各工程を経て、商品が製造されるが、本件事業の主たる作業は、商品価値を高めるために請負元から受け取った製品のしわを取り除き、膨らみを持たせるために行う[6]プレス(アイロンかけ)による仕上げであると認められるところ、日本標準産業分類五十音索引表の「プレス仕上げ業(既製服などの仕上げ工程として行うもの)」(大分類L-サービス業)と同一の事業を意味するものと認められるから、本件事業はサービス業に該当し、簡易課税制度における事業区分は第五種事業であると認められる。
消費税の確定申告書を法定申告期限までに提出できなかったこと及び簡易課税制度選択届出書を提出できなかったことは、原処分庁の説明及び周知努力の不足のためであるから、簡易課税制度を適用して消費税等の納付すべき税額を計算すべきであり、無申告加算税の賦課決定処分も違法であるとの請求人の主張を、確定申告書の提出及び簡易課税制度の選択は請求人自身の責任と判断においてなされるべきであり、税法の単なる不知により不利益を受けたとしても、納税者自身が甘受せざるを得ないとして排斥した事例
裁決事例集 第68集 276頁
要旨
- 請求人は、簡易課税制度選択届出書を提出できなかったのは、[1]会社設立時の届出をした際に、原処分庁から簡易課税制度について説明が一切なかったこと、[2]会社設立時の届出書類一式の中に簡易課税制度選択届出書の用紙がなかったこと、[3]簡易課税制度について原処分庁が十分な周知を行わなかったことが原因であるから、原処分庁は、簡易課税制度を適用して消費税等の納付すべき税額を計算すべきである旨主張する。
しかしながら、税務署長が納税者に対して、簡易課税制度について周知しなければならないとする法令上の規定はなく、また、申告納税制度の下における消費税等の確定申告、申請及び届出等の手続は納税者自身の責任と判断においてなされるべきであり、税法の単なる不知により納税者自身不利益を受けたとしても、それは納税者自身において甘受せざるを得ないと解されるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。 - 請求人は、消費税等の確定申告書を法定申告期限までに提出できなかったのは、原処分庁が、[1]申告書用紙を送付してこなかったこと、[2]当該申告が必要であることを事前に通知しなかったことが原因であるから、これらをしないで行った本件各賦課決定処分は違法である旨主張する。
しかしながら、消費税は、税務署長からの通知、案内等の有無にかかわりなく、法定の期限内に確定申告書を提出することを義務付けられているのであり、原処分庁による申告書用紙の送付は、国民の納税義務の適正かつ円滑な履行を確保するため、行政上任意的に行われる納税者に対するサービスの一環にすぎず、消費税法その他の関係法令の規定に基づくものではないから、申告書用紙の送付がなかったからといって、それが法定申告期限内に提出ができなかったことの正当な理由にはならない。
米軍基地内における資産の譲渡等は非課税取引に該当するとした事例(平22.5.1~平24.4.30の各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第95集
要旨
請求人は、在日米軍基地内の営業店舗におけるアメリカ合衆国軍隊の構成員等に対する物品の販売(本件米軍基地内取引)については、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(日米地位協定)第15条の規定により消費税法が適用されないから、消費税法上の「国内において行った資産の譲渡等」に該当せず、また、消費税法別表第一にも掲げられていないため、課税売上割合の計算において分母及び分子のいずれにも算入されない旨主張する。
しかしながら、消費税法第2条《定義》第1項第1号が「国内」を「この法律の施行地」と定義しており、在日米軍基地が日本の領土内にあることは明らかであるから、本件米軍基地内取引は、消費税法上の国内における資産の譲渡等に該当する。そして、条約である日米地位協定は国内法である消費税法に優先して適用されることになるところ、本件米軍基地内取引は、日米地位協定第15条第2項前段に規定する諸機関による商品等の販売に該当し消費税が課されないが、本件米軍基地内取引に係る商品の購入については、同項後段の規定により消費税が課されることとなる。ところで、仕入税額控除の制度は、多段階課税である消費税の累積を避けるため仕入れに含まれている消費税額を控除するという制度であるから、消費税が課されない売上げに対応する課税仕入れに係る消費税は本来的に仕入税額控除の対象とはなり得ないものであるところ、日米地位協定第15条第2項が「諸機関による商品及び需品の日本国内における購入」には日本の租税である消費税を課する旨規定していることからすると、本件米軍基地内取引は、消費税法における仕入税額控除に関する規定の適用上、同法別表第一に掲げられているか否かとは関わりなく、国内において行った資産の譲渡等には該当するものの、国内において行った課税資産の譲渡等には該当しないものと取り扱うのが相当であり、その対価の額は課税売上割合の計算において分母に算入され、かつ、分子に算入されないこととなる。
参照条文等
消費税法第30条 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第15条
参考判決・裁決
神戸地裁平成14年7月1日判決(税資252号順号9154)
事業を廃止した場合において、簡易課税制度選択の届出の効力が失われるのは事業廃止届出書の提出があった日の属する課税期間の末日の翌日であり、事業を廃止した日の属する課税期間の末日の翌日と解することはできないとした事例
裁決事例集 第69集 402頁
要旨
請求人は、事業廃止届出書の提出がなかったとしても、事業の廃止という事実が否定されるものではないから、消費税法第37条第2項に規定する事業廃止届出書提出の有無にかかわらず、事業を廃止した日の属する課税期間の末日の翌日に、簡易課税制度選択届出書の効力は喪失すると解すべきである旨主張する。
しかしながら、消費税法第37条第2項及び同条第4項には、簡易課税制度を選択した事業者が事業を廃止した場合は、事業廃止届出書を提出しなければならず、当該届出書が提出された日の属する課税期間の末日の翌日以後、簡易課税制度選択届出書の効力が失われると規定されているのであるから、簡易課税制度選択届出書の効力が喪失するのは、事業廃止届出書の提出があった日の属する課税期間の末日の翌日と解するほかないというべきであり、消費税法第37条第2項に規定する事業廃止届出書を提出しない限り、事業を廃止した日の属する課税期間の翌課税期間以後も、簡易課税制度を適用しなければならないこととなる。
請求人は、いずれも消費税法第37条第2項に規定する事業廃止届出書等と認められる「簡易課税税制度選択不適用届出書」及び「事業廃止届出書」を平成14年8月30日に提出しており、これらの届出書はいずれも、本件各課税期間の開始の日の前日までに提出されていないことから、本件各課税期間については、本件簡易課税制度選択届出書の効力は存続しているものといわざるを得ない。
したがって、請求人の主張は、消費税法第37条第2項及び同条第4項の解釈上、採用することはできない。
請求人が行った建物のリース取引に係る課税仕入れの用途区分については、共通用に区分するのが相当であると認定した事例( 平22.9.1~平23.8.31の課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分、 平23.9.1~平24.8.31の課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・ 一部取消し、却下、 棄却、却下)
裁決事例集 第97集
ポイント
本事例は、請求人が賃借する建物の賃貸借契約に係る取引は、法人税法上売買があったものとされるリース取引に該当し、当該リース取引に係る課税仕入れの用途区分は、非課税用ではなく共通用に該当するとして、原処分の一部を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、請求人が締結した有料老人ホーム(本件物件)の賃貸借契約については、法人税法上売買があったものとされるリース取引に該当するところ、本件物件は、入居者が生活を営む場所及び日常生活を送る上で必要不可欠な場所で構成されており、その全体が住宅に該当することから、本件物件に係る課税仕入れの用途区分は、個別対応方式の計算上、非課税売上げのみに要するものに該当する旨主張する。
しかしながら、本件物件においては、入居者に対して、非課税売上げである居住スペースの貸付け及び介護サービスの提供だけでなく、課税売上げである居室清掃や洗濯等の各種サービスの提供が予定されていた上、実際にこれらの売上げに必要な設備を備えていたことが認められるから、本件物件に係る課税仕入れの用途区分は、個別対応方式の計算上、課税売上げと非課税売上げに共通して要する課税仕入れに該当する。
参照条文等
参考判決・裁決
ポイント
本事例は、百貨店の物産展において弁当の調理・販売を行っている請求人が、職業紹介事業者等を介して手配した各販売員(いわゆるマネキン)に支払った金員について、当該販売業務の具体的態様等に基づき、所得税法第28条第1項に規定する給与等に該当するとして、消費税の課税仕入れに係る支払対価の額に該当しないと判断したものである。
要旨
請求人は、マネキン紹介所等からの紹介に基づいて請求人に対する役務の提供を行った販売員(本件各販売員)に金員を支払っていたところ、当該金員に関して、㋑本件各販売員は販売のプロであること、㋺販売業務に必要なエプロン等は本件各販売員が用意していたこと、㋩本件各販売員は他者をして代わりに販売に当たらせることができること、㋥請求人は業務委託契約を締結する意思であったこと等から、本件各販売員は業務委託契約に基づき役務の提供を行っていたのであり、請求人が本件各販売員に支払った金員は給与等に該当しない旨主張する。
しかしながら、給与等とは、雇用契約又はこれに類する原因に基づき、自己の危険と計算によることなく、使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいうものと解され、具体的には、受給者が①指揮監督を受けているかどうか、②時間的な拘束を受けているかどうか、③材料や用具等の供与を受けているかどうか、④自己の責任において他者を手配して役務の提供に当たらせることが認められるものではないかどうか等の事情を総合勘案して判断するのが相当であると解されるところ、販売業務を行う際に必要なエプロン等については請求人が用意したものでなかったことが認められるが、本件各販売員は、請求人の指揮監督を受けるとともに、時間的拘束を受け、役務の提供の代替が認められていなかったこと、さらに、本件各販売員の役務提供に至る経緯等を併せ考慮すれば、本件各販売員に支払われた金員は、いずれも雇用契約に基づき、自己の危険と計算によることなく、使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として支給されたものといえ、給与等に該当すると認められる。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和56年4月24日第二小法廷判決(民集35巻3号672頁)
要旨
請求人は、自ら営む事業は、時間的観点からいえば、セキュリティ工事のうち配線工事が主であり、また、施工に必要とされるコードケーブル等の資材は自ら全部調達して配線工事を行っているから、第四種事業には該当しない旨主張する。
しかしながら、当該事業は、発注者からセキュリティ機器の提供を受け、当該機器の設置、配線、調整等を行い、セキュリティシステムを正常に稼動させるまでの工事を行うものであり、また、当該事業は、電気工事士2種以上、電話工事担任者及び消防設備士甲4類の各資格保持者の技術を提供するものであること、かつ、請求人が受領する工事代金が配線工事、機器設置工事、機器調整等の作業に対する対価であると認められることからすれば、請求人が受領する工事代金は、人的役務の提供に対する対価であると認めるのが相当である。したがって、当該事業は、他の者の原材料等に加工等を施して、当該加工等の対価を受領する役務の提供又はこれに類する役務の提供に当たり、消費税法施行令第57条《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》第5項第3号かっこ書の「加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業」に該当する事業というべきであるから、同項第5号に規定する第四種事業に該当するものと認められる。
参照条文等
消費税法第12条第1項から第4項までに規定する「分割等」として、同条第7項第3号に規定するのは、一の法人により行われる事後設立であると解するのが相当とした事例
裁決事例集 第86集
要旨
請求人は、請求人の被合併法人であるD社は、消費税の控除対象仕入税額の算定において、消費税法第37条《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》第1項に規定するいわゆる簡易課税方式を適用しているところ、D社の設立形態は、同法第12条《分割等があった場合の納税義務の免除の特例》第7項第3号に規定する分割等に該当するから、D社の本件課税期間の基準期間における課税売上高は、消費税法施行令第55条《仕入れに係る消費税額の控除の特例の適用がない分割等に係る課税期間》第1項第3号の規定に基づき、D社及び同社の親法人であるGホールディングスの課税売上高の合計額によるべきであり、そうすると、当該合計額は5,000万円を超え、かつ、同号に規定する特定要件も満たすから、本件課税期間は、同法第37条第1項に規定する分割等に係る課税期間に該当し、同法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第1項に規定するいわゆる本則課税方式を適用すべきである旨主張する。
しかしながら、消費税法第12条第7項第3号に規定する分割等は、金銭を出資する法人と資産を譲渡する法人が同一であること、金銭を出資する法人の設立時の持分割合が100%であることを要件としているから、一の法人により行われる事後設立であると解するのが相当であるところ、D社の設立形態は、金銭を出資したのはGホールディングスである一方、D社に資産を譲渡したのはGホールディングスの子会社である合併前の請求人であり、同一の法人によるものではないから、同号に規定する分割等には該当しない。
参照条文等
消費税法第30条第2項第1号の規定により控除する課税仕入れに係る消費税額を計算するに当たり、調剤薬品等の課税仕入れは、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものに区分すべきと判断した事例
裁決事例集 第116集
ポイント
本事例は、請求人が問屋から医薬品等を仕入れた日の状況等を客観的にみれば、仕入れた医薬品等を全て非課税となる売上げのために使用するとは限らず、課税となる売上げのために使用する場合もあったと認められるから、当該問屋からの課税仕入れについては、課税資産の譲渡等のみに要するものにも、その他の資産の譲渡等のみに要するものにも区分することができず、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものに区分するのが相当であると判断したものである。
要旨
原処分庁は、請求人が消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第2項第1号に基づき医薬品等の課税仕入れの用途区分を課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等(その他の資産の譲渡等)のみに要するものに区分したことは、その目的等に照らして合理的であるから、用途区分を誤っていたことを理由とする請求人の更正の請求は、国税通則法第23条《更正の請求》第1項第1号の要件を満たさない旨主張する。
しかしながら、請求人が問屋から医薬品等を仕入れた日の状況等を客観的にみれば、仕入れた医薬品等を全て非課税となる売上げのために使用するとは限らず、課税となる売上げのために使用する場合もあったと認められるから、当該問屋からの課税仕入れについては、課税資産の譲渡等のみに要するものにも、その他の資産の譲渡等のみに要するものにも区分することができず、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものに区分するのが相当である。よって、請求人が、問屋からの医薬品等の課税仕入れをその他の資産の譲渡等のみに要するものに区分したことは、消費税法第30条第2項第1号の適用を誤ったものと認められ、国税通則法第23条第1項第1号に規定する国税に関する法律の規定に従っていなかった場合に該当する。
参照条文等
請求人が土地及び建物を信託財産とする信託受益権の取得に要した手数料に係る課税仕入れの用途区分については、共通用に区分するのが相当であるとした事例(平成26年4月1日から平成27年3月31日まで及び平成27年4月1日から平成28年3月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第111集
ポイント
本事例は、請求人の信託受益権の取得時においては、信託財産である土地及び建物の事業用資産の賃貸のみではなく、当該信託受益権を譲渡することを目的としていたと認められることから、当該信託受益権の取得に要した手数料に係る課税仕入れの用途区分は、課税用ではなく共通用に該当するとしたものである。
要旨
請求人は、土地及び建物(本件各物件)を信託財産とする各信託受益権(本件各信託受益権)の取得に要した各手数料(本件各手数料)に係る課税仕入れについて、消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第2項第1号に規定する個別対応方式による用途区分の判定をするに当たっては、その用途区分は、当該課税仕入れをした事業者が有する、その課税仕入れを行った日における確定的な状況の下においての、目的、意図等をも勘案した上で、なお客観的に判断すべきであり、また、本件各物件はその取得時には事業用に賃貸されており、決算上も有形固定資産に計上しているから、本件各手数料に係る課税仕入れは課税資産の譲渡等にのみ要するものに該当する旨主張する。
しかしながら、個別対応方式による用途区分の判定は、課税仕入れを行った日の状況により行うこととされ、課税仕入れを行った日の状況とは、当該課税仕入れの目的及び当該課税仕入れに対応する資産の譲渡等がある場合にはその資産の譲渡等の内容等を勘案して判断するのが相当であり、本件各信託受益権の取得時においては、本件各物件の賃貸のみではなく本件各信託受益権を譲渡することを目的としていたと認められること及び会計上の科目の判定が課税仕入れの用途区分の判定につながるものではないことなどからすれば、本件各手数料に係る課税仕入れは、課税資産の譲渡等と課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等に共通して要するものに区分するのが相当である。
参照条文等
参考判決・裁決
名古屋地裁平成26年10月23日判決(税資264号順号12553) さいたま地裁平成25年6月26日判決(税資263号順号12241) 平成26年12月10日裁決(裁決事例集No.97)
ポイント
簡易課税制度において、2種類以上の事業を営む事業者が控除対象仕入税額を計算する場合は、課税売上高をそれぞれの事業ごとに区分する必要がある。
この事例は、請求人の売上げに係る取引の形態に応じ、日本標準産業分類の分類を基礎として事業の範囲を判定し、その事業区分に応じたみなし仕入率の適用を判断したものである。
要旨
請求人は、廃油の回収形態(有償、無償及び処分料を受領の別)にとらわれず、物(廃油)の流れを重要視して事業区分を判断すべきであり、回収した廃油をそのままの状態で販売していることから、当該廃油を事業者に販売する本件事業は卸売業に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人の売上げに係る取引の形態に応じて事業区分を判断すると、本件事業のうち、処分料を徴して廃油を収集する取引及び廃油の収集・運搬業務の委託取引は、消費税法施行令第57条《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》第5項に規定する第五種事業に、無償又は処分料を徴して収集した廃油を販売する取引は、同項に規定する第四種事業に該当する。
参照条文等
請求人が自家栽培したさつま芋を干し芋に加工して販売する事業は、消費税法施行令第57条《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》第5項第3号に規定する第三種事業(製造業)に該当するとした事例(令和2年1月1日から令和4年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第140集
ポイント
本事例は、請求人が自家栽培したさつま芋を干し芋に加工して販売する事業は、日本標準産業分類の大分類「製造業」に分類されるから、当該事業は、簡易課税制度の適用において第三種事業に分類される製造業に該当するとしたものである。
要旨
請求人は、自家栽培したさつま芋を干し芋に加工して販売する事業(本件干し芋事業)は、日本標準産業分類の大分類に掲げる「農業」に該当するから、消費税法施行令第57条《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》第5項第3号に規定する第三種事業(製造業)に該当しない旨主張する。
しかしながら、消費税法施行令第57条第5項第3号の規定により第三種事業に該当することとされている事業の範囲は、おおむね日本標準産業分類の大分類に掲げる分類を基礎として判定することが合理的であるところ、日本標準産業分類の総説には、農家が自家栽培した原材料を使用して製造活動を行っている場合は原則として農業に分類されるが、①同一構内に工場、作業所とみられるもの(作業所等)があり、かつ、②その製造活動に専従の常用従業者がいる場合には農業には分類されず製造業に分類される旨が記載されている。そして、①請求人の自宅敷地内にある建物には、干し芋の加工のための機械等が設置され、作業所等の機能を有していたといえること、②請求人が干し芋の加工時期のみ雇用し、加工作業に従事している者は、雇用期間及び作業内容からすると、本件干し芋事業の製造活動に専従する常用従業者に該当することからすれば、本件干し芋事業は、日本標準産業分類の大分類に掲げる「製造業」に該当し、消費税法施行令第57条第5項第3号に規定する第三種事業(製造業)に該当する。
参照条文等
消費税法第37条(令和6年法律第8号による改正前のもの)第1項 消費税法施行令第57条第1項及び第5項 消費税法施行令等の一部を改正する政令(平成28年政令第148号)附則第11条の2第1項 消費税法基本通達(令和5年8月10日付課消2-9ほか5課共同による改正前のもの)13-2-4
ポイント
本事例は、原処分庁が、請求人が取引先の法人から軽種馬を購入する取引に係る売買契約は、通謀虚偽表示により無効であるとして、請求人の課税仕入れに係る支払対価の額の一部を認めない旨の更正処分をしたところ、本件における売買契約は、契約内容のとおり履行されており、また、請求人と当該法人との間に通謀虚偽表示を行う十分な動機があったとまでいえない上、これを基礎付ける証拠もないから、通謀虚偽表示により無効であると認めることはできないと判断して、原処分を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、請求人が取引先の法人(本件法人)から軽種馬(本件軽種馬)を購入する取引(本件各取引)に係る売買契約は、通謀虚偽表示により無効であり、実体は、請求人が軽種馬生産に関する農業協同組合を通じて直接本件軽種馬を購入したものであるから、本件法人が当該農業協同組合から落札し購入した金額と、本件各取引に係る売買金額の差額分に相当する金額(本件各差額)は、請求人の課税仕入れに係る支払対価の額に該当しない旨主張する。
しかしながら、本件各取引に係る売買契約については、契約内容のとおり履行されており、また、請求人と本件法人との間に通謀虚偽表示を行う十分な動機があったとまでいえない上、これを基礎付ける証拠もないから、通謀虚偽表示により無効であると認めることはできない。したがって、本件各差額は課税仕入れに係る支払対価の額に該当する。
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