裁決事例 財産の評価
要旨
評価通達にいう借地権とは借地借家法第2条第1項に規定する建物の所有を目的とする地上権又は賃借権をいい、この「建物の所有を目的とする」とは、借地使用の主たる目的がその地上に建物を建築し、これを所有することにある場合をいうのであるから、借地人がその地上に建物を建築し、所有使用とする場合であっても、それが借地使用の主たる目的ではなく、その従たる目的にすぎないときは、「建物の所有を目的とする」に当たらないと解される。
これを本件についてみると、賃借人は本件敷地を含む本件土地を昭和53年ころから本件相続開始日まで引き続いてバッティングセンター経営の事業用地として利用し、本件待合フロアー等はバッティングセンターと構造上一体となっており、本件建築物はいずれもバッティングセンターの経営に必要な付属建築物として建築されたものと認められるから、本件土地の賃貸借の主たる目的は、バッティングセンターとして使用することにあると言える。
そうすると、賃借人が本件建築物を建築所有していたとしても、それは本件土地をバッティングセンターとして使用するための従たる目的にすぎないというべきであるから、本件賃貸借は、借地借家法第2条第1項に規定する建物の所有を目的とする賃借権に該当せず、したがって、本件敷地には、借地権は存在しない。
借地権の価額は、不動産鑑定士が、実際に支払われている賃料に基づく純収益を還元して得た収益価格を標準として、売買事例を基に算定した比準価格等を比較考量して算定した鑑定評価額ではなく、評価基本通達に従って評価した価額が相当であるとした事例
裁決事例集 第51集 620頁
要旨
請求人は、不動産鑑定評価基準は、賃貸されている借地権付建物の価格を求める場合について、実際実質賃料に基づく純収益を基に還元して得た収益価格を標準とし、積算価格及び比準価格を比較考量して決定すると定めており、また、バブル崩壊後の不動産の取引の実態や融資の際の担保評価をみると収益性を重視しているところから、本件借地権の価額は、実際の賃料収益を基に算定した収益価格の80パーセント相当額と近隣の取引事例に比準して算定した比準価格に見込再調達原価を基に算定した建物価格を加算した積算価格の20パーセント相当額の合計額から建物の価額を除いて算定した本件鑑定評価額により評価すべきであり、更正の請求を認めるべきであると主張する。
しかしながら、本件鑑定評価額の収益価格は、建ぺい率及び容積率を最大限まで使用していない建築後40年近くも経過し老朽化や陳腐化の激しい建物における近隣相場より著しく低廉な賃料を基に算定されたもので、借地権の最有効使用の状況における適正な賃料を基礎として算定されたものではなく、客観的な交換価値を表す価額とは認められないので、この収益価格を標準に上記のウエイトで算定した本件鑑定評価額は適正な価額とは認められない。
そこで、近隣の取引事例からみて時価相当と認められる借地権の比準価格を基に、特に不合理であるとは認められない評価基本通達に定める貸家建付借地権の評価方法に従って算定した借地権の価額は、当初申告に係る価額を超えるので、更正の請求は認められない。
要旨
協業組合の出資の評価方式について、請求人は、払込済出資価額に相当する金額又は配当還元方式により評価すべきである旨主張し、原処分庁は、財産評価基本通達196の定めを適用して純資産価額を基として評価すべきである旨主張する。
しかしながら、協業組合の活動実態は、企業組合など他の営利事業を営む中小企業等協同組合と異なり、むしろ合名会社に近いと認められることから、税法の解釈適用にも要請される租税負担公平の原則に照らし、合名・合資会社の出資に適用される収益性が法人の規模に応じて反映される併用方式(財産評価基本通達179)によって評価することが相当である。
ただし、協業組合においては、議決権等の配分が各組合員相互間の平等を原則とされていることから、零細株主等に適用される特例的な評価方式である配当還元方式及び財産評価基本通達185に定める20%評価減の特例を採用することはできない。
要旨
請求人は、相続税財産評価に関する基本通達に定められている取引相場のない株式の評価方法である類似業種比準方式の業種は、その事業の内容が広範囲であるため比準の対象とするのは不適当であるから、上場会社のうちその事業の内容が評価会社と比較的類似していると認められる会社を比準会社として評価することが適当であると主張するが、請求人が主張する比準会社の事業内容は評価会社の事業内容に特に類似しているとはいえず、請求人の主張する比準会社を株価比準の基礎としなければならない特別の理由も認められないので、評価通達に定められている類似業種比準方式により評価したことは相当である。
土地(私道)が不特定多数の者の通行の用に供されていたとは認められないからその土地の価額は自用宅地の価額の60パーセントに相当する金額により評価することが相当であるとした事例
裁決事例集 第35集 165頁
要旨
通り抜けできない道路のように、専らその道路に面する敷地の利用者のための通行の用に供される私道は、その私道又はそれに面する土地が同一人の所有に帰属することとなった場合には、その用途を変更してその隣接する土地に包含され、道路でなくなる可能性を有しており、私有物として所有者の意思に基づき処分の可能性を留保しているところから課税対象財産となるのであるが、その使用収益にある程度の制約を受けているという事情を考慮すると、その私道に面する土地の利用状況等に応じて計算した価額の100分の60に相当する金額により評価することが相当と認められる。
要旨
堅固な建物の存する他人の土地に隣接し、専らその堅固な建物の駐車場として利用されている貸地が、当該貸地が隣接する建物とその所有者を異にし、賃貸借契約において土地の具体的な使用目的の定めがないような場合においては、たとえ、その貸地の賃貸借契約の解除権及び所有権の譲渡に制限等があっても、その貸地については隣接する堅固な建物の存する土地と同一に評価することはできない。
要旨
定期預金は、一般の貸付金債権のように契約期間を通ずる約定利率が定められているのであるが、預入者が預入期間中に払戻しを受ける場合には、その預入期間に応じた所定の期限前解約利率による利子が付されることになっている。このような定期預金契約を全体としてみると、預入期間に応じて預入期間を通ずる利率が段階的に漸増していき一定期間経過時に一定利率に達する定額郵便貯金契約と、経済的実質的に同質のものと認めるのが相当である。
したがって、定期預金の既経過利子の額については、相続人が定期預金を期限前に解約したか契約期間満了の時まで契約を継続したかにかかわりなく、相続開始の時における期限前解約利率によりこれを計算すべきである。
また、法定果実である利子を実際に取得する際に、その取得者が当該既経過利子を含む利子の全額を対象とする源泉徴収に係る所得税を徴収されるという現行税制を踏まえて、一般的に、当該既経過利子の額に対応する源泉徴収に係る所得税の額に相当する額が取引価額に係る価格形成要因として認識され、当事者間の所得税の負担が調整されていることが認められる。
定期預金に係る既経過利子の額においても、この理は妥当すると認められるから、相続税における定期預金の評価に当たっては、その既経過利子の額に対応する源泉徴収に係る所得税の額に相当する額を価格形成要因として考慮すべきである。
したがって、定期預金の評価上、その預入金額に加えるべき既経過利子の額の評価については、期限前解約利率により算出し、これに対する源泉徴収所得税の額に相当する金額を控除すべきである。
要旨
実際地積が固定資産税評価額算定上の課税地積と異なる土地を倍率方式により評価する場合、固定資産税評価額を課税地積で除して得た1平方メートル当たりの金額に実際地積を乗じ、更に評価倍率を乗じて算出された金額をもってその評価額であるとすることは、課税時期の時価をもって相続財産の価額とする相続税法第22条の規定からは当然であり、実際地積は関係がないとすることはできない。
市街化調整区域内に所在する山林については、高圧線下にあることの影響は皆無であるとはいえないとしても、なおこれをしんしゃくすべき特段の理由があるとは認められないとした事例
裁決事例集 第56集 369頁
要旨
請求人は、山林については租税特別措置法第70条の6(農地等についての相続税の納税猶予)の規定のような相続税の納税を猶予して租税負担を軽減する制度がない以上、本件高圧線下の土地の価額については、同土地が高圧線下であることにかんがみて50パーセント減額すべきである旨主張する。
しかしながら、本件各契約の内容、利用状況等から本件高圧線下土地の価額について検討すると、被相続人が本件高圧線下土地を山林として使用する上では制約がないこと及び本件土地は市街化調整区域内に所在するから、本来建物の建築自体が制約されており、仮に本件高圧線下土地に建物の建築が認められた場合は、高さ10.9メートル又は12.2メートルの建物が建築できるのであるから、この高さ制限は著しい制限とは認められないことから、本件高圧線下土地を評価するに当たり、高圧線下にあることの影響は皆無であるとはいえないとしてもなおこれをしんしゃくすべき特段の理由があるとは認められない。
数筆の宅地によって形成されている本件土地の評価は、各筆ごとに行うべきではなく、また、本件ため池について、原処分庁が現況により、本件ため池の価額を宅地比準方式によって評価したことは相当であるとした事例
裁決事例集 第42集 199頁
要旨
請求人は、8筆の宅地によって形成されている一画地の本件土地の価額を評価する場合には、各筆の固定資産税評価額の合計額を基に評価する方法を認めるべきである旨主張するが、利用状況からすると、本件土地の価額は、二つの区画に区分して評価するのが相当である。
また、本件のため池について、固定資産税が非課税であるとしても、現況が「公共の用に供するため池」でなく、開発規制もないこと、更に、本件ため池の一部が相続開始後に譲渡されている事実からすると、原処分庁が本件ため池の価額を宅地比準方式によって評価したことは相当である。
本件家屋に賃借人が住んでおらず、家賃が未払等であっても、賃貸借契約は継続していると認められることから、本件家屋は貸家として評価すべきであるとした事例
裁決事例集 第78集 448頁
要旨
原処分庁は、本件家屋について①平成17年1月以降公共料金の使用実績がないこと、②賃料の支払を確認できないこと及び③請求人の被相続人の母親が死亡してからは貸しておらず空家であり、本件相続開始日において貸していない旨の原処分庁の調査担当者に対する申述をもって、賃貸されていたとは認められない旨主張する。
しかしながら、仮に賃借人が電気、ガス、水道を使用していなかったとしても、不在により使用がなかったにすぎず、本件家屋が賃貸借の目的となっていない理由とはならず、また、賃料の支払を確認できないことについては、確かに、平成10年1月以降支払われていないことが認められるが、被相続人が賃借人に対し借地借家法第26条第1項及び第27条第1項に規定する解約の申入れをした事実は認められず、借地借家法には賃料が未払である事実があれば解約されたものとみなす規定もないから家賃が未払になった後も賃貸借契約は継続していたというべきである。さらに、請求人の原処分庁の調査担当者への申述についても賃借人が平成9年7月以降平成21年4月ころまでの間も本件家屋に荷物を置いて同所を占有していたこと、賃借人が父親の死亡後に被相続人から本件家屋を賃借したものであり、請求人も平成21年4月ころ、賃借人から残置家財の放棄承諾書の送付を受けるなど同人の適法な占有を前提とする行為をもしていることと整合せず、本件家屋が本件相続開始日において賃貸の用に供されていないことを裏付けるに足りるものとはいえない。したがって、これらの原処分庁の主張は採用することはできず、本件家屋は相続開始日において賃貸借の目的となっている貸家であると認められる。
要旨
本件借地権の設定された土地は、路線価の付されていない私道に面しているところ、その評価に当たっては、本件私道と状況が類似する付近の路線に付された路線価に比準して仮路線価を評定し、その仮路線価に基づいて評価するのが相当であるから、原処分庁が本件私道の面する公道に付された路線価によって評価したことは相当とは認められない。
要旨
請求人らは、3階建共同住宅の周囲に設けられた花壇、植木及び照明灯などの緑化設備は、公共道路の植込み及び街路灯と同じ役割を担っており、不特定多数の者の通行の用に供されている私道と一体として機能しているから、その公共的な利用状況をもって、その評価額は零円である旨主張する。
しかしながら、当該緑化設備は、その一部はコンクリートブロックにより当該私道とは区分されており、また、他の一部は当該私道に面しておらず、いずれも賃貸建物である当該3階建共同住宅の敷地内に設けられた構築物であって、当該私道そのものではないから、当該緑化設備の評価に当たり、財産評価基本通達24の定めは適用されない。また、財産評価基本通達24が不特定多数の者の通行の用に供されている私道を評価しないこととしているのは、その私道の廃止又は変更が制限されるなど、一定の利用制限を余儀なくされることから、換価性が著しく低く経済的価額を評価するまでに至らないことによるものと解されるところ、当該緑化設備は、経済的価額を評価するまでに至らないものとは認められないから、財産評価基本通達により難い特別な事情があるともいえない。
したがって、当該緑化設備は、財産評価基本通達に則して、同通達97により評価すべきである。
参照条文等
相続により取得した第一種市街地再開発事業に係る施設建築物の一部の給付を受ける権利の価額は、権利変換計画において決定された変換を受けることとなる施設建築物の一部の価額の70%に相当する金額と認めるのが相当とした事例
裁決事例集 第65集 772頁
要旨
請求人らは、請求人らが相続により取得した第一種市街地再開発事業に係る施設建築物の給付を受ける権利の価額は、鑑定評価額を基に、財産評価基本通達に定める貸家として評価すべきである旨主張する。
しかしながら、当該権利については、被相続人が生前に権利変換価額に同意していること、本件相続開始後において、請求人らは、この価額を基に清算金を受領している事実があり、権利変換価額の減少は認められないこと、また、貸家とは、相続開始時の現況において借家権の目的となっている家屋をいうところ、本件相続開始時点では建築中であり、賃貸の用に供している家屋ではないことから、請求人らの主張には理由がなく、施設建築物の一部の給付を受ける権利の価額は、建築中の家屋の評価との均衡を図り、権利変換計画において定められた権利変換価額から当該価額の30%に相当する金額を控除して算出した価額が相当であると認められる。
要旨
請求人は、相続により取得した預託金制のゴルフ会員権の価額は、本件会員権の実質が預託金返還請求権たる債権にすぎないから預託金相当額によって評価すべきであると主張するが、本件ゴルフ会員権に係る会員については、[1]当該ゴルフクラブに預託金を納入した者が会員になれること、[2]会員はゴルフ場施設を利用できること、[3]退会の際には預託金の返還を受けること、[4]会員資格は譲渡することができること、また、本件ゴルフ会員権については、会員権取引仲介業者間で取引の気配が常時把握されているところから、本件ゴルフ会員権の経済的価値は、預託金返還請求権と施設利用権とが不可分一体となってこれを構成し、かつ、それ自体が換価性のあるものとなっていると解される。したがって、その価額は、客観的交換価値と解される通常の取引価格によるのが相当であり、請求人の主張は採用できない。
また、原処分庁は、ゴルフ会員権の評価通達に基づき本件会員権の価額を通常の取引価格の70パーセント相当額として評価しているが、個別の財産の客観的評価は、その価額に影響を与えているあらゆる事情を考慮して行われるべきであるから、その定めは相続財産評価の一方法というべく、原処分庁の評価額を何ら不相当とする理由はない。
要旨
請求人は、相続税の申告に当たり同族法人に対する貸付金を相続財産として申告していたが、これを相続税の申告期限前の当該法人の決算時において一部受贈益として確定させたものであるから、この部分に関してはその回収が不可能なことは動かしがたい事実である旨主張するが、債務者が弁済不能の状態にあるか否かは、一般には、破産、和議、会社更生あるいは強制執行等の手続開始を受け、又は事業閉鎖、行方不明、刑の執行等により、債務超過の状態が相当期間継続しながら、他から融資を受ける見込みがなく、再起の目途が立たないなどの事情により、事実上債権の回収が不可能又は著しく困難な状況であるこが客観的に認められるか否かにより判断すべきところ、当該法人は、本件相続開始日当時、赤字申告が続いていた事実は認められるが、債務超過の状態が継続していた事実は認められず、事業活動を継続しており、事業閉鎖等の事実、会社更生又は強制執行の申立て等を受けた事実はなく、弁済不能の状態にあったとは認められない。
また、回収不能の判断時期は、相続開始時であるから、本件相続の開始時点において、貸付金の回収が不可能又は著しく困難な状況であると認められない以上、相続開始後に起きた事実等に基づいて、貸付金の価額の評価が左右されるものではない。
要旨
本件土地の売買契約書によれば代金完済日に所有権を移転する旨の特約があり、相続開始後に代金を完済していることが認められることから、本件相続に係る相続財産は本件土地の所有権移転請求権である。また、本件土地の所有権移転請求権の価額は、その土地の売買価額が正常な取引により形成されたものであると認められる限り、その売買価額とするのが相当である。
米国e州f市に所在する不動産について、その時価をe州遺産税の申告に当たりe州税務当局により是認された鑑定価額により評価した原処分を相当と認めた事例(平成22年3月相続開始に係る相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第102集
ポイント
本事例は、e州遺産税等の適正市場価額とは、相続税法第22条に規定する時価と基本的に同義の価額を指向するものであるとし、対象不動産の鑑定価額を基にしたe州遺産税の申告がe州税務当局によって是認されていることから、同鑑定価額は客観的交換価値を表すものであり、対象不動産の時価と認められると判断したものである。
要旨
請求人らは、米国e州f市に所在する不動産17物件(本件対象不動産)の価額について、f市財産税の算定の基礎となる財産税評価額(本件財産税評価額)は、財産評価基本通達(評価通達)5-2《国外財産の評価》に定める売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価した価額であるから、本件財産税評価額から借家権として当該価額に30%の割合を乗じた金額を控除した価額が、本件対象不動産の価額である旨主張する。
しかしながら、請求人らは、被相続人に係るe州遺産税について、e州認定の鑑定人による鑑定価額(本件鑑定価額)を本件対象不動産の価額として申告しているところ、米国内国歳入法等に規定するe州遺産税における財産の価額である適正市場価額と相続税法第22条《評価の原則》に規定する時価とは同義の価額を指向するものと認められること、本件鑑定価額の算定手順に別段不合理な点は認められないこと、e州遺産税の申告がe州税務当局により是認されていることから、本件鑑定価額は相続税法第22条に規定する時価と認められる。一方で、本件財産税評価額は、収益方式によって評価されており、売買実例価額と比較して大幅に低い価額であること、財産税評価額に関する公的報告書等においても、財産税評価額が相当低額であり市場価格との相関関係が見出せない状況である旨の指摘がされていること等から、相続税法第22条に規定する時価とは認められない。また、借家権の控除は認められるべきとする点については、本件対象不動産は評価通達に定める評価方法に準じて評価することができない財産であるから、借家権の控除に関してのみ評価通達に準じて評価することを許容すべき理由はない。以上のことから、本件対象不動産の価額は、本件鑑定価額によることが相当である。
参照条文等
参考判決・裁決
自動車教習所のコースとして貸し付けられている土地に係る賃借権の残存期間は、更新されることが明らかである場合には、更新によって延長されると見込まれる期間をも考慮すべきであるとした事例
裁決事例集 第43集 369頁
要旨
賃借権の存続期間については、原則として当事者の定めた賃貸借契約に基づく賃貸借期間によるが、[1]本件賃貸借契約は昭和36年2月に契約され、当事者のいずれからも契約解除の申出のない場合には自動的に賃貸借期間を更新することとされ、これに従って過去30年近くにわたって契約が継続されてきたこと、[2]本件土地は、県公安委員会指定の自動車教習所のコースの敷地としてコンクリート舗装され、コースのほぼ中央に位置し、その利用価値は極めて高いと認められることから、契約上の賃貸借期間は3年であるが、将来にわたり更新されることが予想され、長期間にわたるものと認められるので、本件賃借権は事実上残存期間の定めのないものと認められるのが相当である。
要旨
請求人は、本件船舶の価額については、売買実例価額、精通者意見価格が明らかでないことから、財産評価基本通達136《船舶の評価》(本件定め)のただし書に基づき、原価法により評価すべきである旨主張する。
しかしながら、本件定めによれば、船舶の価額は、原則として売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価することとし、これらの価額等が明らかでない場合には、原価法により評価することを定めていることから、①売買実例価額及び精通者意見価格等が明らかな場合にはこれらを参酌して、②売買実例価額又は精通者意見価格等のいずれかが明らかな場合にはいずれか明らかな価額又は価格等を基として、③売買実例価額及び精通者意見価格等が明らかでない場合には本件定めのただし書による原価法により評価するのが相当であるところ、本件船舶については、売買実例価額は明らかでないが、合理性のある精通者意見価格が明らかであることから、当該精通者意見価格を基に評価するのが相当である。
参照条文等
参考判決・裁決
高松高裁平成19年11月29日判決(税資257号順号10837)
被相続人が生前立退料を支払うなどして借家人を立ち退かせた上、その貸家用の家屋を取り壊し、その敷地に貸家用の家屋を建築中である場合において相続が開始したときのその敷地について、貸家建付地としてではなく、自用地として評価すべきであるとした事例
裁決事例集 第40集 235頁
要旨
貸家建付地とは、相続開始時点において現に貸付けの用に供されている建物の敷地を指すものと認められる。貸家建付地は自用地に比べて低額に評価することとされているが、これは、借家人はその借りている建物の敷地に対して借地権等の権利を有しているわけではないが、借家した建物利用の範囲内でその敷地に対しても事実上の支配権を有していることから、敷地の所有者にとっては、その分その敷地の経済的な価値がこれらの権利の目的となっていない自用地に比べ低くなっていることを考慮したものと認められる。
本件は、相続開始の時においては、本件宅地の上に建築中の新建物が存在したが、当該建物はまだ現実に貸付けの用に供されておらず、かつ、立退料の支払等により終了した新建物の建築前に賃貸されていた旧建物に係る賃貸借契約と新建物に係るそれとの間には継続性も認められないから、本件宅地には貸家建付地としてその評価額算定上考慮すべき借家人の事実上の支配権は存在せず、他に本件宅地の評価額算定上考慮すべき特段の事情も認められない。したがって、本件は、貸家建付地としてではなく、自用地として評価すべきものである。
要旨
親子間の使用貸借について財産価値が認められないところ、被相続人所有の土地に相続人所有の家屋があったが、土地の使用関係については、相続人に借地権があると認めるに足る証拠もなく、単なる使用貸借関係であったことが認められるから、本件土地の相続財産の評価に当たっては、自用地として評価するのが相当である。
評価通達に定める路線価が実勢価格に70パーセントの評価割合を乗じた水準に設定されているから、鑑定評価額に70パーセントを乗じた価額を本件土地の評価額とすべきであるとの主張を退けた事例
裁決事例集 第49集 408頁
要旨
請求人らは、平成3年分の路線価は前年7月1日時点における実勢価格に70パーセントの評価割合を乗じた水準に設定されていたことは公知の事実であるとし、路線価により評価して申告した相続税について、平成2年秋以降、地価が著しく下落したのは明らかであるとして、本件相続開始時の実勢価格を不動産鑑定士の鑑定により求め、これに70パーセントを乗じた金額を基に評価をし、更正の請求をした。
これに対し、原処分庁は、本件鑑定評価額による評価により減額更正をしたが、本件鑑定評価額に更に70パーセントの評価割合を乗じる必要はないとした。
ところで、本件は、更正の請求に対し、原処分庁が本件鑑定評価額により評価して更正したのであるから、請求人は本件土地の価額がこの評価を下回ることを主張、立証することを要すると解すべきであるが、路線価が公示価格水準の70パーセント程度(評価水準)により評価しているのは、評価上の安全性を考慮した計算過程上の一要素にすぎないものであるところ、本件鑑定評価額は、鑑定人が公示価格との均衡を考慮しつつ、本件土地の特殊性をしんしゃくした上で求めた正常価格であって、これに評価水準を乗じなければならない理由はなく、また、そうしなければ課税の公平の原則に反するともいえない。そうすると、請求人の主張、立証をもって、本件土地の価額が本件減額更正に係る価額を下回ると認定することはできない。
要旨
請求人は、相続した土地区画整理事業施行中の本件土地については、相続開始時に仮換地は行われているものの、事業の遅れから使用収益ができない状況にあるから、評価基本通達24-2により仮換地に基づいて評価すべきではなく、従前の市街化調整区域に存する農地として評価すべきである旨主張する。
しかしながら、評価基本通達24-2の本文及びただし書に定める仮換地の指定がなされている土地に関する評価方法は合理性を有することが認められ、また、審判所の調査によれば、本件土地は、相続開始時点で区画整理事業が進行中で、実際に本件相続開始日のおよそ1年後に造成工事が完了し、請求人に対し使用収益の開始ができる旨通知されている事実が認められることから、同通達に定める評価方法によることは相当であり、請求人の主張には理由がない。
要旨
本件土地は、昭和9年以来、寺の墓地の用に供され、今後も引き続き墓地として永代使用させるものと推認されるので、その評価については、相続税法第23条に規定する残存期間が50年を超える地上権が設定されている土地の評価に準じて扱うのが相当であると認められる。
農業の主たる従事者の死亡により、市町村長に買取りの申出ができる生産緑地の価額は、生産緑地でないものとして評価した価額から、その価額に100分の5の割合を乗じて計算した金額を控除した価額で評価するのが相当であるとした事例
裁決事例集 第53集 442頁
要旨
請求人は、財産評価基本通達40-2(生産緑地の評価)の(2)に定める買取りの申出ができる生産緑地とは、課税時期において、被相続人が市町村長に対し生産緑地買取申出書の提出済み又は買取り申出の手続中のものに限る旨主張する。
ところで、相続税法第22条(評価の原則)は、相続により取得した財産の価額について取得時の時価と規定しているところ、生産緑地に指定された場合は、指定告示日から30年間は建築物の新築、宅地造成等の行為制限が付され(生産緑地法第8条)、指定告示日から30年経過又は農業の主たる従事者の死亡により、市町村長に対して生産緑地を時価で買取りの申出ができる(同法第10条)こととされている。
生産緑地の評価について、相続税法第22条の規定を受けて財産評価基本通達40-2の(1)は、行為制限の解除の前提となっている買取りの申出をすることができる日までの期間に応じて定めた一定の割合を減額して評価することとしており、また、主たる従事者が死亡したときは、同通達40-2の(2)により、生産緑地でないものとして評価した価額から、その価額に100分の5の割合を乗じて計算した金額を控除した価額で評価することとしているが、これは、農業の主たる従事者の死亡を前提とした買取り申出の手続を同従事者が行うことを予定したものとは考えられず、農業の主たる従事者が死亡したときは、当該生産緑地を相続により取得した相続人が買取りの申出をすることができる場合を予定したものと解されるから、請求人の主張には理由がない。
したがって、財産評価基本通達40-2の(2)に定めに基づき本件生産緑地の価額を生産緑地でないものとして評価した価額から、その価額に100分の5の割合を乗じて計算した金額を控除した価額で評価した本件更正処分は適法である。
要旨
鉄道用地下トンネルを埋設するための本件区分地上権が設定されている土地を、通常支払うべき権利金を支払わないで賃借した場合における経済的利益の額の算定に当たり、請求人は、本件区分地上権は相続税法第23条に規定する地上権に当たるから、同条の規定によって評価すべきであると主張するが、地上権といわゆる区分地上権については、民法上学説は一致して呼称及び取扱いを区分しており、両者は経済的機能及び法的支配力の面でその性格を異にする独立した別個の権利とされているところ、相続税法においても、地上権なる用語については、まず、民法上の解釈に従うのが妥当であり、さらに、実体に即しても、地上権と区分地上権の権利価額は、両者の質的差異を反映して、明らかにかい離していることが認められるから、本件区分地上権は、相続税法第23条に規定する地上権には含まれず、同法第22条の規定によりその取得時の時価で評価すべきである。
要旨
高圧線が架設されている線下地の相続税に係る財産評価に当たり、原処分庁が採用した更地価格に対する低減率は、その立地条件、高圧線の種類及び建造物に対する築造制限の内容、近傍類地の売買実例、精通者の意見、土地収用裁決例、電力会社が支払う地役権の価額等を総合判断すると、請求人等にとって決して不利なものであるとはいえず、相続税財産評価基準による更地価格をその低減率により減価した価格を基礎として、本件線下地を評価した原処分は相当である。
要旨
- 被相続人のJ社に対する貸付金が存在するか否かについて判断するに、[1]同社の平成2年5月期の決算報告書には、被相続人からの長期借入金及び短期借入金が計上されていたこと、[2]請求人らは、被相続人の同社に対する貸付金が存在することを前提として、Yや遺言執行者と遺産の分配に係る協議をしていたこと、[3]被相続人の同社に対する貸付金についての合意事項を定めた覚書はそのような協議を経て作成されたものであること、[4]同社は、相続開始後に同社の財産をもって被相続人からの借入金を返済する旨の取締役会決議をしていること、[5]当該取締役会決議に則した「仕訳」が同社の関与税理士によって作成されていること、[6]請求人らは、相続開始後に行われた税務調査で被相続人の同社に対する貸付金が申告漏れになっているとの指摘を受けた際、Yに対し、当該貸付金は合意書及び覚書によりYに帰属させたものであるから、Yが申告するべきである旨要求していることなどを総合すると被相続人の同社に対する貸付金は存在していたものと解するのが相当である。
- 仮名預金については、[1]仮名預金は、被相続人が生前架空名義で設定していた5億円の定期預金の一部であるところ、これは相続開始後に解約されているが、これら一連の手続はYにより行われていること、[2]P地裁の判決は、仮名預金について、その時期や目的はともかくとして遅くとも被相続人の死亡前に同人からYに対し、生前贈与ないし死因贈与がされたものと認められる旨判断していることから、被相続人の生前にYに贈与されたものと解するのが相当である。
- 土地については、J社の帳簿には計上されていないものの、登記簿上は同社名義となっていること、固定資産税は同社が負担していることなどが認められ、これらの事実によれば、特段の事情がない限り、土地の所有権は同社に帰属すると推認するのが相当である。
1. 本件贈与土地を評価するに当たり、過去3年分の路線価の平均額に基づいて算定することは相当ではないとした事例 2. 本件土地の使用関係は、使用貸借であると認められるから、更地と同様に評価すべきであるとした事例
裁決事例集 第43集 346頁
要旨
- 請求人は、平成元年3月30日付直資2-205、直評6の「改正相当地代通達」(例規)においては、借地権課税における相当地代の額の計算の基礎となる土地の価額は、当該土地に係る相続税評価額の過去3年間の平均額とすることを認めているのであるから、本件贈与土地についても認められるべきだと主張するが、この「改正相当地代通達」は、借地権の設定された土地について、権利金の支払に代え、相当の地代を支払うなどの特殊な場合の「相当の地代」の額を算定するためのものであり、土地自体を評価するためのものではない。
したがって、3年間の平均額ではなく、贈与年分の路線価に基づいて本件贈与土地の課税価格を算定したことには違法性はない。 - 本件土地上には贈与者の所有する建物があるが、本件土地の使用関係は使用貸借であると認められるから、原処分庁が本件贈与土地について更地と同様に評価したことは相当である。
要旨
原処分庁は、本件代償債権(被相続人が、審査請求人Fを債務者として、第一次相続で取得した代償分割に係る債権)は、返済期限等の定めがなく、Fには経常的な所得が年間約1000万円前後あるので、回収不可能とはいえない旨主張する。
しかしながら、Fが、仮に年間所得金額の全額を代償債務の返済に充てたとしても返済完了まで55年の期間を要することから、とうてい本件代償債権の全額が回収可能である債権であるとはいえない。
したがって、本件代償債権の価額の評価に当たっては、財産評価基本通達205の定めに基づき、相続開始時におけるFの正味財産の価額を限度とし、回収が著しく困難であると見込まれる当該財産の価額を超える部分の金額については、本件代償債権の元本に算入しないとすることが相当である。
要旨
請求人は、甲土地については、傾斜度が30度を超える土地であることから評価通達に定める方式ではなく個別評価が相当であり、評価額はゼロである旨、乙土地については、不動産業者の買取見積り価額1億円による評価が相当である旨主張する。
しかしながら、甲土地はその形状等により、宅地開発する場合には多額の造成費を要すると見込まれ、仮に宅地に転用したとしても十分な地積を確保することができず、宅地としての客観的交換価値があると認めることはできない。そうすると宅地比準方式により甲土地を評価することは、その結果において適正な客観的交換価値と乖離する価額を導くことになるから、評価通達を適用して評価することには特に不都合と認められる特段の事情があると解するべきである。そして、甲土地の価額は、甲土地とその状況が類似する土地で本件相続開始日に近い時点において売買された土地の正常価格がその客観的な交換価値を正しく示すものと解すべきところ、本件譲渡土地の1平方メートルあたりの価額983円に甲土地の地積124平方メートルを乗じた価額である121,892円とするのが相当である。
乙土地については、評価通達の定めを適用して評価することに特に不都合と認められる特段の事情は認められないから、[1]正面路線価、[2]広大地及び有効宅地化率、[3]宅地造成費、[4]不整形地補正率のそれぞれについて評価通達の定めを適用して乙土地の価額を算定すると、102,594,240円となる。
要旨
被相続人の死亡により本件会社(有限会社)が生命保険金を取得し、その生命保険金を原資として、被相続人に対する死亡退職手当金が支払われた場合において、仮決算を行わず、直前期末の資産及び負債を対象として純資産価額方式により本件会社の出資の価額を評価するに当たり、本件会社の負債に含まれる未納法人税額等の計算については、[1]相続税法の規定により当該退職金がみなす相続財産として課税の対象とされること、[2]課税時期において退職手当金の支給が未確定としても、将来支給の確定した日の属する事業年度には法人税法上当該退職金を損金として計算されることから、生命保険金から支払われた退職手当金を控除して算定するのが合理的であり、原処分は相当である。
要旨
本件各土地は、周知の埋蔵文化財包蔵地に該当すると認められるJ貝塚の区域内に所在し、実際にその一部に貝塚が存在していることから、宅地開発に係る土木工事等を行う場合には、文化財保護法第93条の規定に基づき、埋蔵文化財の発掘調査を行わなければならないことが明らかである。しかも、その発掘調査費用は、その所有者(事業者)が負担することになり、その金額も、発掘調査基準に基づき積算したところ約○億円もの高額になる。そうすると、上記宅地開発における埋蔵文化財の発掘調査費用の負担は、一般的利用が宅地であることを前提として評価される本件各土地において、その価額(時価)に重大な影響を及ぼす本件各土地固有の客観的な事情に該当すると認められ、本件各土地に接面する路線に付されている路線価は、周知の埋蔵文化財包蔵地であることを考慮して評定されたものとは認められず、また、財産評価基本通達上に発掘調査費用の負担に係る補正方法の定めも認められないことから、本件各土地の評価上、当該事情について、所要の検討をするのが相当である。そして、周知の埋蔵文化財包蔵地についての発掘調査費用の負担は、土壌汚染地について、有害物質の除去、拡散の防止その他の汚染の除去等の措置に要する費用負担が法令によって義務付けられる状況に類似するものと認められる。土壌汚染地の評価方法については、課税実務上、その土壌汚染がないものとして評価した価額から、浄化・改善費用に相当する金額等を控除した価額による旨の国税庁資産評価企画官情報に基づく取扱いをしているところ、これは、土壌汚染地について、土壌汚染対策法の規定によってその所有者等に有害物質の除去等の措置を講ずる必要が生じその除去等の費用が発生することなどの要因が、当該土壌汚染地の価格形成に影響を及ぼすことを考慮したものであり、この取扱いは当審判所においても相当と認められる。そこで、本件各土地に存する固有の事情の考慮は、類似する状況における土地評価方法についての取扱いを明らかにした本件情報に準じて行うものとし、本件各土地は、本件各土地が周知の埋蔵文化財包蔵地ではないものとして評価した価額から、埋蔵文化財の発掘調査費用の見積額の80%に相当する額を控除した価額により評価することが相当と認められる。
土地の一部を物納する予定につき、物納予定地と残地に分けて評価すべきであるとの請求人の主張について、物納予定の有無は本件土地の相続開始時における現況に影響を及ぼさないから区分して評価することは相当でないとした事例
裁決事例集 第49集 420頁
要旨
請求人は、本件土地の一部は物納予定地であり、物納により分離されるので、残地は地積が減少して形状も悪化することになり、この事情を無視して相続開始時の形状のままで評価するのは妥当ではない旨主張する。
しかしながら、土地を評価するに当たっては、相続開始時において物理的に一体として利用されている土地ごとに区分して評価するのが、「相続開始時における財産の現況」に即した評価と解されるところ、本件土地は、相続開始時においてE株式会社にまとめて貸し付けられ、物理的に一体として利用されており、物納予定地と残地に区分して評価するのは相当ではない。
相続により財産を取得した者が、物納するか否か及び当該財産のどの部分を物納するかについては、相続開始後において、その者の意思、行為等によって決定したり、また、変更することができるものであるから、本件土地の相続開始時における現況に影響を及ぼすものではない。
地価の急落により時価が路線価を下回る、いわゆる逆転現象が生じているとして、鑑定評価額による申告がなされたが、相続開始日における時価は相続税評価額を上回っていることが認められるとして、原処分庁が相続税評価額により評価したことを相当と認めた事例
裁決事例集 第54集 375頁
要旨
請求人は、本件各土地の存する地域は地価が急落しており、時価が路線価を下回る、いわゆる逆転現象が生じているので、不動産鑑定士の鑑定評価額による申告を認めるべきである旨主張する。
しかしながら、本件鑑定評価額には次のとおり種々の不適切な点が認められることから、本件鑑定評価額が相続税法第22条に規定する時価を表しているものとは認められない。
- 本件鑑定評価書が採用した各取引事例は、その属する地域と本件各土地の近隣地域との特性に相当の相違がみられること及び底地の取引事例を活用していることなどから、不適切なものと認められる。
- 本件鑑定評価書が採用した収益事例は、その属する地域が本件各土地の近隣地域と同一需給圏とはいえないことから、不適切なものと認められる。
- 本件鑑定評価書が採用した公示地は、その属する地域と本件各土地の近隣地域との特性に相当の相違がみられることから、不適切なものと認められる。
そこで、当審判所において本件各土地の相続開始日における価額について検討したところ、本件各土地の価額は、原処分庁が評価基本通達に基づいて評価した価額をいずれも上回っていることが認められた。
よって、原処分庁が本件各土地の価額を相続税評価額により評価したことは相当と認められる。
要旨
被相続人が、相続人所有の土地の賃借に当たり権利金等の一時金を支払わずに相当の地代を支払っていた場合、借地法等法律上借地権が設定されたことは否定し得ないとしても、経済的にみて当該借地権に財産的価値の存在を認めることは困難であると認められる。すなわち、税務上相当の地代の授受をもって権利金の授受に代えることを認めているのは、土地の収益還元評価の思想が背景にあるもので、更地の時価に比して十分の利回り採算がとれるほどの高い地代のとれる土地は借地権の設定によりその経済的価値が下落しないという考え方によるものと認められ、この考え方によれば、少なくとも相当の地代の授受が維持されている限り、土地所有者においては土地を更地のまま評価し、逆に借地人においては借地権価額が零又は無視してもよい程度に低いものとされるところ、本件借地権については、相当の地代の授受が維持されているのであるから、相続税の課税価格に算入される価額はないとするのが相当である。
要旨
相続によって取得した本件土地と県道との間には請求人所有の土地が存し、本件土地に直接沿接する道路は存しないが、本件土地と県道との間にある請求人所有の土地とは相続開始以前から請求人が一体として利用しており、本件土地が道路に直接接していないことによる利用価値の低下があるとは認められないから、本件土地は無道路地として評価額を減額すべきものには当たらない。
相続財産のうち一部の不動産については、財産評価基本通達によらないことが相当と認められる特別の事情があると認められることから、ほかの合理的な時価の評価方法である不動産鑑定評価に基づいて評価することが相当であるとした事例(平成24年6月相続開始に係る相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第107集
ポイント
本事例は、被相続人による各不動産の取得から借入れまでの一連の行為は、他の納税者との間での租税負担の公平を著しく害し、富の再分配機能を通じて経済的平等を実現するという相続税の目的に反するものであるから、各不動産について、財産評価基本通達に定める評価方法を画一的に適用するという形式的な平等を貫くことによって、かえって実質的な租税負担の公平を著しく害することが明らかであり、財産評価基本通達によらないことが相当と認められる特別の事情があると認められると判断したものである。
要旨
請求人らは、相続財産のうち一部の不動産(本件各不動産)については、財産評価基本通達(評価通達)に定める評価方法によらないことが相当と認められる特別の事情がないから、評価通達6《この通達の定めにより難い場合の評価》を適用することはできず、評価通達に定める評価方法により評価すべきである旨主張する。
しかしながら、被相続人による本件各不動産の取得から借入れまでの一連の行為は、被相続人が、多額の借入金により不動産を取得することで相続税の負担を免れることを認識した上で、当該負担の軽減を主たる目的として本件各不動産を取得したものと推認されるところ、結果としても、本件各不動産の取得に係る借入金が、本件各不動産に係る評価通達に定める評価方法による評価額を著しく上回ることから、本件不動産以外の相続財産の価額からも控除されることとなり、請求人らが本来負担すべき相続税を免れるものである。このような事態は、相続税負担の軽減策を採らなかったほかの納税者はもちろん、被相続人が多額の財産を保有していないために同様の軽減策によって相続税負担の軽減という効果を享受する余地のないほかの納税者との間での租税負担の公平を著しく害し、富の再分配機能を通じて経済的平等を実現するという相続税の目的に反するものであるから、本件各不動産について、評価通達に定める評価方法を画一的に適用するという形式的な平等を貫くことによって、かえって実質的な租税負担の公平を著しく害することが明らかであり、評価通達によらないことが相当と認められる特別の事情があると認められることから、ほかの合理的な時価の評価方法である不動産鑑定評価に基づいて評価することが相当である。
参照条文等
参考判決・裁決
東京地裁平成4年3月11日判決(判時1416号73頁、税資188号639頁) 東京地裁平成5年2月16日判決(判タ845号240頁、税資194号375頁) 東京高裁平成5年3月15日判決(行集44巻3号213頁、税資194号743頁)
相続開始日現在、都市計画案の生産緑地地区内にあった農地について、相続開始後、生産緑地として指定されたとしても、財産評価基本通達40-2を適用して評価することはできないとした事例
裁決事例集 第67集 619頁
要旨
生産緑地とは、生産緑地法第3条第1項に規定する生産緑地地区内の土地であり、生産緑地地区は都市計画法の規定による都市計画の手続により決定される。そして、都市計画の決定及び変更決定は、都市計画案の縦覧などの一定の手続を踏まえて都市計画法第20条第1項の規定による告示により決定し、その効力は、同条3項の規定により当該告示のあった日から生ずることとされている。
請求人は、本件農地は、相続開始日現在において、生産緑地地区内にある農地ではないが、被相続人が生産緑地地区とする都市計画案の同意書を提出し、縦覧対象地域として県報にも公示され、法定申告期限までには生産緑地として告示され制限が加えられているから、財産評価基本通達40-2を適用して評価すべきと主張する。しかしながら、Q都市計画生産緑地地区の効力が生じた日は平成13年11月16日であるから、相続開始日において、本件農地は生産緑地として制限がある土地とは認められないので、財産評価基本通達40-2を適用して評価することはできない。
請求人は、原処分庁の判断には平成3年4月18日参議院建設委員会の附帯決議が全く加味されておらず、違法である旨主張するが、特定市街化区域農地等に係る税制については、平成3年度の税制改正により平成4年において経過措置が講じられており、その限度を超える緩和は予定されていないものと解され、本件農地のように、当該経過措置の適用期間を経過した後に開始した相続により取得した農地等については、たとえ生産緑地の申請をしていたとしても、当該経過措置を適用あるいは準用して財産評価基本通達40-2の生産緑地の評価を適用することはできない。
自宅の庭園設備について、評価通達92《附属設備等の評価》の(3)の定めに基づいて評価するのが相当であるとした事例(平成30年9月相続開始に係る相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第130集
ポイント
本事例は、自宅の庭園設備も、評価通達92《附属設備等の評価》の(3)に定める「庭園設備」として評価することが相当であると判断したものである。
要旨
請求人は、被相続人の自宅庭園(本件庭園設備)について、個人宅の庭であり、その立地条件等からしても本件庭園設備を一体として売却できず、また、立木や庭石、灯篭等を個別に売却するとしても買取り価額は低額である上、実際に買手が見つからないことから、交換価値がなく財産評価基本通達(評価通達)は適用されない旨主張する。
しかしながら、評価通達92《附属設備等の評価》の (3)(本件通達)は、「庭園設備」について、家屋の固定資産税評価額に含まれていないことから、金銭に見積もることができる経済的価値のある全てのものが相続税法に規定する財産であることに照らし、家屋とは別に独立した財産として評価すべきであるとしたものと解するのが相当であるところ、本件庭園設備は、家屋とは別異の設備として、複数の業者によって金銭に見積もることができる経済的価値が認められているものであることからして、家屋とは別に独立した財産として評価すべきものである。また、本件庭園設備は、造園されたものであるから、庭石商の店頭におけるように、立木や庭石、灯篭等を個別に売却することを前提に評価することは相当ではなく、上記のとおり、経済的価値が認められているものである。よって、本件庭園設備の相続税の課税価格に算入される価額は、本件通達の定める方法によって評価するのが相当である。
参照条文等
要旨
請求人は、本件相続税の計算に当たり、本件被相続人の所有する本件土地に請求人の自宅を昭和52年に新築する際、被相続人と請求人との間で借地契約を締結し、これに基づき地代を支払っていたことなどから、本件土地は貸地(底地)である旨主張する。
しかしながら、本件土地の利用関係は、権利金の授受がなされておらず、かつ、地代の額が近隣の相場の半分以下であること、被相続人から請求人らに対して地代の額を上回る相当額の生活費の支払や現金の贈与がなされていることなどから、親子という特殊関係に基づく使用貸借であって、賃貸借ではないと解するべきである。
請求人が相続により取得した土地について、財産評価基本通達に定める評価方法によるべきではない特別の事情があるとは認められず、固定資産税評価額に基づいて当該通達に従って評価された価額は適正な時価を上回るものではないと事実上推認することができると判断した事例(平成28年6月相続開始に係る相続税の更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分・棄却)
裁決事例集 第133集
ポイント
本事例は、請求人が相続により取得した土地についてした、市街化調整区域内に所在することなどにより財産評価基本通達の定める評価方法によるべきではない特別の事情があるとの主張に対し、固定資産税評価額の算定において市街化調整区域の市場の特性等が考慮されており、当該事情には当たらないと判断したものである。
要旨
請求人は、相続により取得した土地(本件各土地)について、①市街化調整区域内に所在し、かつ、既存宅地でない土地であること、②本件各土地の上には被相続人等が建築した建物等(本件各建物)があり、本件各土地を売却するには本件各建物の取壊し費用等を負担することから、財産評価基本通達(評価通達)の定める評価方法によるべきではない特別の事情があるとして、本件各土地の時価は、評価通達の定める評価方法に従って算定すべきではなく、③複数の不動産業者に依頼して得た各査定額を基に、高く見積もっても評価通達の定める評価方法による本件各土地の評価額(本件各通達評価額)の2分の1に相当する金額となるから、本件各通達評価額には相続税法第22条《評価の原則》に規定する時価を上回る違法がある旨主張する。
しかしながら、本件各通達評価額は、適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有している評価通達の定める評価方法により算定されており、①本件各土地が既存宅地でない土地であることの宅地利用上の制限については、評価通達の基礎となる固定資産税評価において減価修正がされ本件各通達評価額の算定過程において考慮されていること、②本件土地の上には相続開始日において本件各建物が存在し、居宅等として使用されている状況にあって、本件各建物の取壊し費用等を本件各土地の価額に反映させるべき事情は見当たらないことから、請求人が主張する事情は、いずれも評価通達の定める評価方法によるべきではない特別な事情に該当しない。なお、③請求人が本件各土地の時価の根拠として主張する上記各査定額は、客観的な数値及び具体的な算定根拠が明らかではないから、本件各土地の時価と認めることはできない。したがって、本件各通達評価額は適正な時価を上回るものではないと事実上推認することができるから、相続税法第22条に規定する時価を上回る違法があるとは認められない。
参照条文等
財産評価基本通達196に定める評価方法は合理性を有すると認められるので、企業組合の出資の価額は同通達に定める評価方法に基づき評価するのが相当であるとした事例
裁決事例集 第64集 445頁
要旨
請求人らは、L企業組合の脱退時の払戻金額は払込済出資金額50円であり、また、組合加入時の払込金額も1口当たり50円であるから、この金額が相続税法第22条に規定する時価、すなわち客観的交換価値に相当するので、L企業組合の出資の価額は、1口当たり50円で評価すべきである旨主張する。
一般に、市場を通じて不特定多数の当事者間における自由な取引が形成されている場合には、これを時価とするのが相当であるが、本件出資のように取引相場のない資産にあっては、市場価格が形成されていないから、その時価を把握することは困難である。したがって、合理的と考えられる評価方法によってその時価を算定するほかなく、その評価方法が合理性を有する限り、それによって得られた評価額をもって「時価」を推定することに妨げはないというべきであると解されているところ、財産評価基本通達に定められた評価方法が合理的である限り、その評価方法によって評価した財産の価額は、特段の事情のない限り、相続税課税における財産の時価と認めるのが相当である。
企業組合の出資の価額は、財産評価基本通達196の定めにより純資産価額に基づいて評価することとされており、この評価方法は企業組合の実態に照らして合理性を有するものと認められる。
そして、請求人らは、当該出資の時価を立証するものとして、L企業組合定款第13条《脱退者の持分の払戻し》の定めをいうにすぎず、これによってはその立証があったと認めるには足りない(評価通達に定める評価方法によりえない特別な事情はない)から、財産評価基本通達196の定めに基づき評価するのが相当である。
貸家を建替中の敷地について相続が開始した場合、旧建物の賃借人との賃貸借契約が解除された部分に相当する宅地については、貸家建付地に当たらないとした事例
裁決事例集 第44集 284頁
要旨
相続開始の時に貸家を建替中であっても、旧建物の賃借人に立退料の支払がないなど引き続いて新建物に入居することが明らかな場合又は新築中の建物について権利金の授受が完了し賃貸契約が成立している場合には、新建物のうち当該賃借人に賃貸する部分に対応する部分の宅地は、当該賃借人の支配権が及んでいるといえる。しかし、本件宅地上の新建物はA社に賃貸する部分以外は貸付けの用に供されていないから、新建物が当初から賃貸の用に供する目的で建築されたものであっても、本件宅地のうち賃貸予定部分は貸家建付地とは認めない。
要旨
建物とその敷地を所有していた父がその土地を子に贈与し、その後父が当該土地を無償使用することとなった場合における当該土地に係る贈与価額の評価に当たっては、自用地として評価するのが相当である。
路線価の付されていない私道に接する宅地の価額は、その私道と状況が類似する付近の道路に付された路線価に比準してその私道の仮路線価を評定し、その仮路線価に基づき計算した価額によって評価するのが相当であるとした事例
裁決事例集 第42集 229頁
要旨
請求人は、本件私道に付される仮路線価は、いわゆる「基準価額」と同額とすべきである旨主張するが、この「基準価額」は、本件私道そのものが宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額であるから本件私道の仮路線価とすることは相当ではない。
そこで、本件私道の仮路線価は、本件私道と状況が類似する本件私道の北側に位置する道路に付された路線価を基として、道路の幅員、舗装の状況などの物理的状況及び上下水道、都市ガスの付設の有無などの経済的状況等を比較検討して求めるのが相当と認められる。
したがって、本件宅地の価額は、以上の方法によって求められた本件私道の仮路線価を基に算定すべきである。
路線価は、1年間適用されることとされているため評価上の安全性等を考慮して、毎年1月1日現在の公示価格水準の価格の80パーセント程度で評定されているので、路線価を1月1日から相続開始日までの地価変動率により修正した価額をもって時価であるということはできないとされた事例
裁決事例集 第51集 528頁
要旨
請求人は、更正の請求において、相続税法第22条(評価の原則)によれば、相続等により取得した財産の価額は時価による旨規定されているところ、路線価はその年の1月1日現在の価額であるから、大幅な地価の下落があった場合には、路線価を1月1日から相続開始時までの地価下落率により修正した価額を時価とすべきであると主張する。
ところで、更正の請求をする場合は、更正の請求をする者が、まず、自ら記載した申告内容が真実に反するものであることを主張・立証すべきであると解されるところ、路線価は、売買実例価額の収集等技術的な理由から1年間適用されることとされており、毎年1月1日を評価時点として、1年間の地価変動にも耐え得るものであることの必要性など評価上の安全性等を考慮して公示価格水準の価格の80パーセント程度により評定されているので、路線価を1月1日から相続開始時までの地価変動率により修正した価額は、相続税法第22条の時価であるということはできないから、請求人の主張をもって、本件土地の価額が、本件減額更正処分に係る価額を下回るという事実を証明したことにはならない。
要旨
1 地目の判断は、課税時期の現況によって行うのであり、本件雑種地は、一般的には建物の建築が制限されているとはいえ、建築がまったくできないものではなく、その状況は、宅地の状況に最も類似し、山林と明らかにその状況を異にしているから、本件雑種地の価額は、本件雑種地と状況が類似する付近の宅地を比準地として、宅地比準方式により評価するのが相当である。
2 本件雑種地の評価において、50%相当額を控除したのは、本件雑種地は、その状況が宅地に類似しているとはいえ、実際には、都市計画法に基づく利用制限があることを考慮したためであり、相当である。
1. 請求人が土地の価額に影響を及ぼすと主張する諸要因は、路線価額に折込み済みであるとした事例 2. 借地権の目的となっている宅地は、評価通達によって評価すべきであり、収受している地代を基にして収益還元法によって評価すべきでないとした事例
裁決事例集 第41集 313頁
要旨
- 請求人は、本件宅地は、下水処理場に近接し、かつ、駅から遠い等地理的条件が悪いので、路線価額の2分の1相当額で評価すべきであると主張するが、本件宅地の正面路線価とした路線価額は、隣接する路線の価額に比べていずれも相当程度低くなっており、下水処理場に近接していること等の評価に影響する諸々の事情が折り込まれていることは明らかで、請求人の主張は採用できない。
- 請求人は、貸宅地は、自用地の場合と異なり、市場性又は換金性に欠けるとともに土地の価額が上昇しても地代の値上げもできない状況にあり、また、土地所有者が地代以外の収益を受領し得るのは借地権の譲渡承諾料あるいは増改築時の承諾料であるが、いずれも何十年に1回あるかないかわからないものであるから、実際に収受している地代を基として収益還元方式で評価すべきであると主張する。
しかしながら、収益還元方式による評価は、対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益を算定するために予測される諸要素を的確に把握すること、及び収益還元率を正しく定めなければならないが、これらの諸要素を客観的に把握することが困難であることから、これによる評価額は、相続財産の取得時の時価を性格に反映しているものとは認められず、理論的にはともかく、本件貸宅地の評価方法としては採用することができない。
原処分は、本件貸宅地の価額を、評価通達及び評価基準に従って評価しているが、評価基準は、借地権及び底地部分の売買実例及び精通者の意見価格等を参考にして類似する地域ごとに定められており、特段不合理な点があるとは認められない。
要旨
被相続人が相続人たる請求人に使用貸借により貸し付け、請求人が賃貸建物の敷地として利用していた本件宅地の価額は、一般に土地使用借人の敷地利用権が権利性の薄弱なることを理由に零と評価され、借家人の敷地利用権が土地使用借人の敷地利用権に従属し、その範囲内の権能にすぎないところから、本件宅地が自用のものであるとした場合の価額により評価するのが相当である。
要旨
請求人らは、医療法人は非営利法人であり株式会社とは性格を異にすること及び相続税法9条は同族会社のみに適用すべきと解されることから本件増資に贈与税を課税することは誤っており、また、医療法人の場合、増資持分の権利は、増資後の期間に及ぶ(東京高裁平7.6.14判決)のであるから、増資により取得した持分の価額は出資額と同額となり経済的利益は生じないので、同条は適用されない旨主張する。
しかしながら、本件医療法人は、持分の定めのある社団医療法人であり、同法人の新定款全体の定めや定款の変更の可能性の有無などを総合的に判断すると、本件増資により取得した財産権たる持分の価額と本件増資に係る出資額との差額を本件増資により取得したものと認められ、相続税法9条の規定は医療法人を除く旨定めたものでもないから、同条の規定の適用があるものと解される。また、請求人の主張する判決は、事件の個別事情を考慮した判決であって、医療法の解釈として請求人の主張するような趣旨を判示したものとは認められない。
要旨
取引相場のない割賦販売会社の出資の評価に当たっては、割賦販売に係る未実現利益の金額を負債として控除すべきであると請求人は主張するが、[1]割賦販売は、契約と同時にその効力が生じるものであり、原則として、その商品等を引き渡した時に法人税法上収益が実現しているものであること、[2]割賦基準は、法人税の課税上特例として認められているものであり、相続税における出資の評価に係る純資産価額の計算についてまで認められているものではないこと、[3]取引相場のない株式又は出資の時価を純資産価額により評価するに当たっては、相続開始時においてその法人に帰属している経済的価値を純資産として評価すべきものと解され、総資産価額から控除されるのは対外負債のみであること、[4]本件会社の直前期末の貸借対照表の負債の部に計上されている未実現利益引当金は、支払先の確定した対外負債ではないことから、未実現利益の金額を負債として控除することは相当でない。
建物の賃貸借予約契約は、将来の賃貸借契約を締結させる義務を確認するものであり、事実上の賃貸借契約の締結と認めることはできないので、本件土地を貸家建付地として評価することはできないとされた事例
裁決事例集 第50集 235頁
要旨
請求人は、被相続人が建築中の本件建物について相続開始日前に賃貸借予約契約を締結し、相続開始日後に賃貸借契約を締結したが、その内容は予約契約とほとんど同じであり、予約金が敷金の一部に充当されているので、賃貸借予約契約は本件建物の竣工引渡日を賃料支払開始日とする賃貸借契約であるから、予約日に賃貸借契約が締結されたとみるべきであり、また、最終賃貸人は相続開始日までに独自で行う1階部分の造作工事の発注を行っており、本件建物に自由に立入ることが可能であったことから、少なくとも1階部分については引き渡されていたというべきであるから、本件建物の敷地は貸家建付地として評価すべきであると主張する。
ところで、貸家建付地とは、借家権の目的となっている建物の敷地として利用されている現況にある宅地でなければならず、原則として、[1]完成した建物が存在していること、[2]賃借人が建物の引渡しを受けて現実に入居していることあるいは契約上の賃貸借開始期日が到来していること及び[3]通常の賃料に相当する金銭の授受があることあるいはその権利義務が発生していること等の要件をすべて具備する建物の敷地をいうものと解することができる。
しかし、賃貸借予約契約は将来の賃貸借契約を締結させる義務を確認するものであり、事実上の賃貸借契約の締結と解することはできず、仮に、賃貸借予約契約の締結をもって賃貸借契約の締結がされたと判断しても、相続開始日現在、本件建物は完成しておらず、賃料の支払いもされていないので、上記の要件のすべてを具備していないことになる。
また、最終賃借人の造作工事の工事期間は平成3年9月1日から同年10月15日までと認められるから、相続開始日(平成3年8月10日)以前に本件建物の引渡しを受けて工事を着工していたと認めることはできず、仮に、工事会社が本件建物に立ち入っていたとしても、請求人は平成3年10月16日に本件建物の引渡しを受けたものであるから、最終賃借人が請求人から便宜の供与を受けたものとしか解せず、賃貸借に基づく占有が開始した結果とは認められない。
したがって、本件宅地を貸家建付地として評価することはできない。
急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第2条《定義》第2項に規定する急傾斜地崩壊防止施設からの排水を公共用水路に流出するための排水路の敷地の用に供されていた土地の評価について判断した事例(平成27年6月相続開始に係る相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第113集
ポイント
本事例は、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第2条《定義》第2項に規定する急傾斜地崩壊防止施設からの排水を公共用水路に流出するための排水路の敷地の用に供されていた土地の評価について、財産評価基本通達82に定める雑種地の評価方法(状況が類似する財産評価基本通達49に定める市街地山林)により評価するのが相当であるとしたものである。
要旨
急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第2条《定義》第2項に規定する急傾斜地崩壊防止施設からの排水を公共用水路に流出するための排水路の敷地の用に供されていた土地(本件排水路土地)の評価について、原処分庁は、財産評価基本通達(評価通達)24《私道の用に供されている宅地の評価》の前段に準じて、宅地の価額の100分の30に相当する価額によって評価すべきである旨主張し、請求人らは、評価通達24の後段に準じて、その価額は評価しないこととすべきである旨主張する。
しかしながら、本件排水路土地及び本件排水路土地に隣接する急傾斜地崩壊防止施設の敷地の用に供されていた土地(本件施設土地)の地目は、いずれも雑種地であると認められるところ、本件排水路土地及び本件施設土地は、その利用目的等からすれば、評価通達7-2《評価単位》の(7)に定める利用の単位となっている一団の雑種地に該当するため、本件排水路土地は、本件施設土地と一の評価単位として、評価通達82《雑種地の評価》に定める雑種地の評価方法により評価することになる。そして、本件の場合、一の評価単位の大部分を占める本件施設土地が急傾斜地であることを考慮すれば、評価通達82に定める本件排水路土地及び本件施設土地と状況が類似する付近の土地は山林と判断するのが相当であるところ、本件排水路土地及び本件施設土地は、評価通達49《市街地山林の評価》に定める急傾斜地であるために宅地造成ができないと認められるから、本件排水路土地は、評価通達49のなお書のとおり、近隣の純山林の価額に比準して評価するのが相当である。
参照条文等
要旨
請求人らは、公示価格から推定した本件土地の公示価格水準の額に80パーセントを乗じた額により本件土地の価額を算定すべきである旨主張するが、公示価格水準の額に80パーセントを乗じることは、課税庁内部の時価の評価に関する取扱いを統一するに当たり、評価上の安全性等を考慮して取り入れられているのであって、課税庁が実務上少なくともこれを乗じた額を下回ることは通常ないであろうと認めるところにより、課税処分等をするための計算過程上の一要素にすぎないものである。
一方、請求人らの主張する公示価格から推定した本件土地の価額は、公示価格との均衡を考慮しつつ、本件土地の特殊性をしんしゃくした上で求めた価額であるとするならば、これに80パーセントを乗じる理由はなく、また、そうしなければ課税の公平の原則に反するともいえないから、請求人らの主張は採用できない。
ポイント
本事例は、路線価の設定されてない道路のみに接する宅地を評価する場合において、当該道路に特定路線価が設定されているときは、当該特定路線価の評定方法に不合理と認められる特段の事情がない限り、当該道路と接続する路線に設定されている路線価を正面路線価として評価する方法よりも、当該特定路線価を正面路線価として評価する方法が合理的であることを初めて明らかにしたものである。
要旨
請求人らは、相続により取得した各土地(本件各土地)は、路線価の設定されていない位置指定道路(本件位置指定道路)のみに接面しており、本件位置指定道路は、路線価の付された市道(本件市道)に接続しているところ、本件各土地の評価に当たっては、本件位置指定道路に設定された特定路線価(本件特定路線価)ではなく、本件市道に付された路線価を正面路線価とすべきである旨主張する。
しかしながら、特定路線価を設定して評価する趣旨は、評価対象地が路線価の設定されていない道路のみに接している場合であっても、評価対象地の価額をその道路と状況が類似する付近の路線価の付された路線に接する宅地とのバランスを失することのないように評価しようとするものであって、このような趣旨からすると、特定路線価は、路線価の設定されていない道路に接続する路線及び当該道路の付近の路線に設定されている路線価を基にその道路の状況、評価しようとする宅地の所在する地区の別等を考慮して評定されるものであるから、その評定において不合理と認められる特段の事情がない限り、当該特定路線価に基づく評価方法は、路線価の設定されていない道路のみに接続する路線に設定された路線価を基に画地調整を行って評価する方法より合理的であると認められる。本件特定路線価の評定についてみると、不合理とみられる特段の事情は見当たらないから、本件各土地の価額は、本件特定路線価を正面路線価として評価するのが相当である。
参照条文等
相続土地に係る賃借関係の実態は使用貸借と解するのが相当であると認定し、また、相続財産を売却して弁済に充てることを予定している被相続人の保証債務は相続税の債務控除の対象にならないとした事例
裁決事例集 第63集 523頁
要旨
請求人らは、本件土地に係る貸借関係は建物の所有を目的とする賃貸借であるから、借地権の目的となっている貸宅地として評価すべきである旨主張するが、被相続人と本件土地を利用する団体とは、被相続人が団体の役員という特殊関係にあり、本件土地の貸借関係は、被相続人の好意及び両者の信頼関係を基盤としたもので、その実態は使用貸借と解するのが相当である。
請求人らは、相続開始時点で、相続人が相続財産の売却により代位弁済を予定している保証債務の額は債務控除の対象とすべき旨主張するが、課税時期において、主たる債務者が債務を弁済不能の状態にあるとは認められず、また、保証人である被相続人が本件保証債務を履行しなければならない状況にあったものとも認められず、本件保証債務は相続税法第14条第1項に規定する「確実と認められるもの」には当たらない。
要旨
請求人は、本件宅地の存する地域は地価が異常に下落しており、相続開始日における時価が相続税評価額を下回っているから、本件通知処分は本件宅地の時価の解釈を誤った違法な処分であり、本件宅地の価額は請求人が依頼した不動産鑑定士の鑑定評価額によるべきである旨主張する。
一方、原処分庁は、原処分庁が依頼した不動産鑑定士による本件宅地の鑑定評価額は相続税評価額を上回っているから、本件宅地の価額は相続税評価額によるべきである旨主張する。
しかしながら、請求人が提出した鑑定評価書には、鑑定評価に採用した取引事例に不適当なものがみられるなど種々の不的確な点が認められることから、当該鑑定評価額は本件宅地の価額を表しているものとは認められず、また、原処分庁が提出した鑑定評価書の写しには、その鑑定を行った不動産鑑定士の氏名が明らかにされていないことから、本件宅地の価額を証明する証拠資料として採用することはできない。
そこで、当審判所において、本件宅地と同一の用途地域内にある取引事例等を抽出し、これらの現況を確認し、土地価格比準表に準じて地域要因及び個別要因の格差補正を行う方法により本件宅地の価額を算定したところ、一部の宅地について、審判所が算定した価額が相続税評価額を下回っていることが認められたので、審判所が算定した価額を当該宅地の価額とするのが相当である。
よって、本件通知処分はその一部を取り消すべきである。
私道の評価において、一方が行き止まりのいわゆる袋小路であるにもかかわらず、不特定多数の者が通行の用に供されているとした鑑定評価額は採用できず、財産評価基本通達に定める評価額が適当であるとした事例
裁決事例集 第83集
ポイント
この事例は、評価対象地の地目は公衆用道路であるとしても、当該評価対象地は、道路交通法による位置指定道路(その維持管理は原則として所有者に任され、処分権が所有権に属し、抵当権の設定等も可能)であり、不特定多数の者の通行の用に供されていない部分の評価額は零円とはならないと判断したものである。
要旨
請求人らは、本件土地について不動産鑑定士が作成した不動産鑑定評価書(本件鑑定書)における鑑定評価額は零円(本件鑑定評価額)であって、この価額が本件土地の客観的な交換価値を示すものであるから、本件土地の価額は、本件鑑定評価額を基礎とすべきである旨主張する。
しかしながら、本件鑑定書においては、本件土地が不特定多数の者の通行の用に供されている私道であることを前提に鑑定評価が行われているが、本件土地の大部分は一方が行き止まりのいわゆる袋小路であり、専ら本件土地に隣接する土地上の居宅及びアパートの居住者という特定の者の通行の用に供されているものと認められることからすると、本件鑑定書は本件土地を評価する上で前提となる事実の評価を誤ったものであり、その内容に合理性があると認めることはできず、本件鑑定評価額が本件土地の客観的な交換価値を示しているということはできない。また、ほかに本件土地の価額を評価するに当たって財産評価基本通達の定めによることが著しく不適当と認められる特別な事情があるとは認められないから、本件土地の価額は同通達の定めにより算定される評価額をもって時価とすることが相当である。
なお、本件土地の一部については、不特定多数の者の通行の用に供されているものと認められるから、その部分の価額は評価しない。
参照条文等
評価対象地は、道路等の公共公益的施設用地の負担が必要であるとは認められないから、財産評価基本通達24-4に定める広大地に該当しないとした事例(平成23年11月相続開始に係る相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第101集
ポイント
本事例は、評価対象地について道路等の公共公益的施設用地の負担を必要としない開発想定図は接道状況を踏まえた経済的に合理的な開発想定図と認められ、道路の接続状況が評価対象地と明らかに異なる開発事例は評価に当たり比較すべき開発事例とは認められず、また、評価対象地の相続開始日後の開発形態のみにより経済的に最も合理的と認められる開発であるか否かを判断することは相当でないと判断したものである。
要旨
請求人らは、財産評価基本通達24-4《広大地の評価》(広大地通達)に定める開発行為を行うとした場合における公共公益的施設用地の負担が必要か否かの判断について、分譲が販売である以上、購入者側のニーズや需要という経済的合理性に応えた上でのものでなければならず、請求人らが相続により取得した土地(本件土地)は、請求人らの開発想定図又は分譲完了直前図のように道路を設置することにより、宅地としての財産価値が高まり、経済的に最も合理的な分譲ができることから、広大地通達に定める広大地に該当する旨主張する。
しかしながら、①本件土地について道路等の公共公益的施設用地の負担を必要としない原処分庁の開発想定図は、本件土地の広大地通達に定めるその地域(本件地域)における標準的な宅地の地積に、本件土地がその四方を幅員約6mないし約8mの公道に面している接道状況を踏まえたものであり、同図の各区画には、間口距離、奥行距離及びその形状も特段不合理とする点は認められないこと、②本件土地の所在する地域及びその周辺地域において、相続開始日前おおむね10年以内に行われた戸建住宅用地としての開発は4事例が認められ、いずれも道路の設置を伴う開発であるところ、これら開発事例の土地は公道と面していないなど道路の接続状況が本件土地と明らかに異なるとして、いずれも本件土地の評価に当たり比較すべき開発事例とは認められないことからすると、本件土地は、戸建住宅の敷地として都市計画法第4条第12項に規定する開発行為を行うとした場合に道路等の公共公益的施設用地の負担が必要であるとは認められないから、広大地通達に定める広大地に該当しない。また、本件土地は、相続開始日から約1年5か月を経過した頃に実際に道路が設置された開発が行われているが、本件土地の相続開始日後の開発形態のみにより、本件土地について相続開始日において開発行為を行うとした場合に道路の設置を伴う開発が経済的に最も合理的と認められる開発であるか否かを判断することは相当でない。
参照条文等
請求人らが相続税の申告において、不動産鑑定士の鑑定評価等(本件鑑定評価等)に基づいて評価額を算定した土地及び建物については、財産評価基本通達(評価通達)に定める評価方法に拠ることのできない特別の事情があるとは認められず、本件鑑定評価等には客観的合理性を直ちに肯定することができない部分があることから、評価通達に定める評価方法によるべきであるとした事例(平成26年12月相続開始の相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第113集
要旨
請求人らは、本件鑑定評価等による鑑定評価額等をもって相続税の申告をした土地(本件土地)及び建物(本件建物)について、本件土地は、標準的な画地の地積の2倍以上の規模があり、標準的な画地に比して市場性が劣ることなど、本件建物は、老朽化が激しく、それぞれの敷地の最有効使用の観点から取り壊すべきものであることなどの減価要因があるが、評価通達には、これらの点を反映させる定めがないことから、評価通達の定める評価方法によって評価された原処分庁が主張する評価額(原処分庁主張価額)は本件土地及び本件建物の時価を超え、原処分には本件土地及び本件建物の価額を過大に評価した違法がある旨主張する。
しかしながら、地積規模の大きな土地であっても、土地の取引価格は、最終的には取引当事者の合意によって定まるものであることからすれば、当然に当該土地の取引価格が低下するものではなく、本件建物は、一般的な合理性を肯定され、適正な時価と推認される固定資産税評価額に依拠して評価されている。したがって、請求人らの主張するような事情をもって、本件土地及び本件建物に適用される評価通達の定める評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的な合理性が失われているということはできないし、評価通達の定める評価方法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情があると認めることはできず、本件鑑定評価等には客観的合理性を直ちに肯定することができない部分があることからすれば、評価通達の定める評価方法により評価した原処分庁主張価額が時価を超え、過大に評価している違法はない。
参照条文等
参考判決・裁決
東京高裁平成27年12月17日判決(税資265号順号12771) 東京地裁平成27年6月25日判決(税資265号順号12683) 平成29年4月7日裁決(裁決事例集№107)
貸し付けている宅地の評価に当たって、借地権者が3棟の建物を建築しそれぞれ別の事業の用に供していたとしても、その土地全体が一人の借地権者に貸し付けられており、かつ分割されることなく相続されていることから、その土地全体を1画地の宅地として評価することが相当であるとした事例
裁決事例集 第55集 479頁
要旨
請求人は、本件土地は借地権者の所有するガソリンスタンド、パチンコ店及びボウリング場に係る建物の敷地として最有効使用されているものであるから、建物の事業の用に供されている状況ごとに区分し、それぞれを1画地として評価すべきである旨主張する。
しかしながら、本件土地はその全体が借地権者の事業に係る建物の敷地として一体として貸し付けられ、現実に借地権者の事業の用に供されていることが明らかであり、また、本件土地は分割されることなく、その全部を相続人が相続していることから、貸し付けられている土地全体を1利用単位、すなわち1画地の宅地と判断するのが相当である。
要旨
請求人らは、相続財産である貸付金債権について、①債務者である同族会社は、年商の約8倍もの銀行借入金を有していること、②返済期限の迫っている銀行借入金を返済する原資を有しておらず、賃貸用建物の売却代金をもってしてもなお銀行借入金を完済することができなかったこと等からして、当該会社の事業経営は、相続開始日において実質的に破綻しており、本件貸付金は回収不能債権であると認められる旨主張する。
しかしながら、①会社の借入金が多額であっても返済条件に従った返済がなされている限り、債権者がそれ以上の返済を求めることはなく、事業経営を継続することは可能であり、現に、会社の借入金については相続開始日において返済期限は到来しておらず、また、過去において返済が滞ったことはなく、銀行から臨時弁済を求められた事実もないこと等からすれば、借入れ金額が多額であることをもって事業経営が実質的に破綻しているとは言えず、②会社の収入は年々減少しているものの、相続開始後解散までの間は営業を継続しているから、収入が減少していることをもって事業経営が実質的に破綻しているともいえず、さらに、③本件において、相続開始後会社の賃貸用建物が請求人の一人に譲渡され、当該譲渡代金をもって銀行借入金が繰上げ返済され、その結果、会社の主たる資産及び収入の手段がなくなり、会社を解散するに至ったこと等を総合勘案すれば、相続開始日において、債務者である会社につき事業経営が破綻していることが客観的に明白であると認めることはできない。
要旨
贈与によって取得した本件土地は中古車の展示場及び駐車場として使用され、本件土地上に存する建物は借主が賃貸借契約書に定めるところにより上記目的に使用するための施設として取得したものと認められる等、本件土地上に建物の所有を目的とする借地権が存在するとは認められない。
本件土地の賃貸借関係については、賃借権についての登記がなく、相当な権利金の授受も行われていないので、本件土地の価額は、自用地としての価額から相続税法第23条の規定に基づいて計算される地上権等の価額の2分の1に相当する価額によって評価した賃借権の価額を控除して評価するのが相当である。
農業経営基盤強化促進法の規定による農用地利用集積計画により設定された賃貸借に基づき貸し付けられている農地の価額は、自用地としての価額からその価額に100分の5を乗じて計算した金額を控除した金額によって評価すべきであるとした事例
裁決事例集 第69集 288頁
要旨
請求人は、農業経営基盤強化促進法(旧農用地利用増進法)の規定による農用地利用集積計画により設定された賃貸借に基づき貸し付けられている農地について、評価基本通達41《貸し付けられている農地の評価》の(1)に定める耕作権の目的となっている農地にほかならないから、同通達に従い評価すべきであり、「農用地利用増進法等の規定により設定された賃貸借により貸し付けられた農用地等の評価について」通達(昭和56年直評10、以下「評価個別通達」という。)の適用が強制されるべきではない旨主張する。
しかしながら、農用地利用集積計画により設定された賃貸借により生ずる賃借権は、賃貸期間終了により離作料の支払もなく当然に農地が返還されるものであり、農地法の規定により強い保護を受け、また一定の価額で取引され離作料の対象となるいわゆる耕作権とはその性質が異なることから、同賃貸借により貸し付けられている農地については、評価基本通達41の定め(70%評価)によらず、評価個別通達により、その賃貸借の期間がおおむね10年以内であることから、相続税法第23条《地上権及び永小作権》の規定に照らし、その農地の自用地としての価額から、その価額に100分の5を乗じて計算した金額を控除した金額によって評価するのが相当であると解される。
医療法人の定款を変更し、退社時の出資の払戻額及び解散時の出資の払戻額を払込出資額に限る旨定めたとしても、出資持分の価額は、払込出資額により評価するのではなく、財産評価基本通達194-2の定めに基づき評価するのが相当であるとした事例
裁決事例集 第72集 589頁
要旨
請求人らは、医療法人E会は定款を変更し、出資額限度法人となったことから、定款の変更及び合併に伴う通常の出資持分の定めのある社団たる医療法人への移行(後戻り)は本件通知(平成16年8月13日付医政発第0813001号、「いわゆる『出資額限度法人』について」をいう。)により事実上禁止されており、県知事の認可を受けることはできないから、医療法人の出資の価額は、払込出資額により評価すべきである旨主張する。
しかしながら、本件通知には、出資額限度法人が通常の出資持分の定めのある社団たる医療法人へ移行(後戻り)することは適当でない旨の記載はあるが、禁止する旨の記載はなく、かえって、本件通知の基となった本件照会(厚生労働省医政局長から国税庁課税部長に対する平成16年6月8日付医政発第608002号「持分の定めのある医療法人が出資額限度法人に移行した場合等の課税関係について(照会)」をいう。)によれば、出資額限度法人が通常の出資持分の定めのある社団たる医療法人へ移行(後戻り)することができることを当然の前提としていると認められ、また、医療法その他関係法令上、これを禁止する規定がないことからすれば、定款変更により出資額限度法人が通常の出資持分の定めのある社団たる医療法人へ移行(後戻り)することが絶対的な拘束力を有して禁止されるものとは認めることができず、医療法第50条でその手続きが法令又は定款に違反しない限り定款の変更等も可能であると認められるから、出資額限度法人が通常の出資持分の定めのある社団たる医療法人へ移行(後戻り)することができないことを前提とする、医療法人の出資の価額を払込出資額で評価すべきとの請求人らの主張には理由がなく、また、医療法人の出資の価額を財産評価基本通達194-2に定める方法によって評価することが著しく不適当と認められる特段の事情も認められないから、原処分は適法である。
存続期間が100年を超える地上権の設定であっても、建物の所有を目的とする場合には借地法の法的保護の下にあるから、相続税法第23条“地上権及び永小作権の評価”の適用はないとした事例
裁決事例集 第43集 356頁
要旨
請求人は、[1]本件地上権の存続期間が通常の場合の3ないし6倍で、かつ、堅固な建物が建築されており、[2]登記された地上権は使用権利の中で最も強く、しかも本件宅地の固定資産税の負担者は地上権者であるから、相続税財産評価基準に定める借地権割合(70パーセント)でなく相続税法第23条に規定する場合(90パーセント)によるべきである旨主張するが、[1]建物所有を目的とする場合には、地上権と賃貸借は法的性格を異にするとしても経済的価値及び法的機能面で実体を同じくし、また、借地法による法的保護は期間の長短による差異はなく、[2]相続税財産評価基準で定めた借地権割合は状況類似地域ごとに売買実例等を基に実態に即して評価しているので合理性があるから、借地権割合は70パーセントとするのが相当である。
審判所認定地域が各土地に係る広大地通達に定める「その地域」に当たると判断した事例(平成24年5月相続開始に係る相続税の各更正の請求に対する各更正処分・全部取消し)
裁決事例集 第104集
ポイント
本事例は、各土地の地域に係る土地の利用状況及び周辺地域の状況等の事情を総合勘案して、審判所認定地域が各土地に係る広大地通達に定める「その地域」に当たると判断したものである。
要旨
原処分庁は、請求人らが相続(本件相続)により取得した各土地(本件各土地)の財産評価基本通達24-4《広大地の評価》(広大地通達)の適用につき、広大地通達に定める本件各土地の「その地域」は、原処分庁の主張する地域(原処分庁主張地域)は用途地域が工業地域に指定され、工場、事務所、戸建住宅及び駐車場等が混在する地域であるのに対し、その周囲は用途地域が第一種住居地域と指定されており、戸建住宅を中心とする地域であることから、本件各土地に係る「その地域」は原処分庁主張地域の用途地域、すなわち工業地域である旨主張する。
しかしながら、原処分庁主張地域において、①本件相続の開始前20年間に工場の新築はなく、工場として利用されている戸数の割合は僅かであること、②良好な住宅地としての発展等を目的とした土地区画整理事業が施行されたこと、③本件各土地の所在する地方自治体の都市計画の方針により、住居系の土地利用への誘導が図られていることを踏まえると、本件各土地の所在する地域(本件地域)における土地の標準的な使用は工場用地から住宅用地に移行しつつあるものと認められる。そして、④本件地域は戸建住宅や共同住宅の建築において用途制限に差のない第一種住居地域に定められた地域(本件周辺地域)に囲まれるように存しており、容積率及び建ぺい率も同一であること、⑤本件地域及び本件周辺地域(審判所認定地域)の東側には川幅約8mの川が流れており、これを境に土地の利用状況が異なることなどの事情を総合勘案すると、審判所認定地域が本件各土地に係る広大地通達に定める「その地域」に当たると認めるのが相当である。
参照条文等
有限会社の出資の評価に当たって、賃借人である評価会社が賃借建物に設置した附属設備は、工事内容及び賃貸借契約からみて有益費償還請求権を放棄していると認められるから、資産として有額評価することは相当でないとした事例
裁決事例集 第39集 380頁
要旨
有限会社の出資の評価に当たって、賃借人である評価会社が賃借建物(工場)に施した附属設備の工事内容は、壁及び床の断熱工事、塗装工事、電気工事、水道工事、ホイストのレール工事等であるが、これら附属設備は、賃借建物の従たるものとしてこれに付合したことが明らかであり、かつ、それ自体建物の構成部分となって独立した所有権の客体とならないから、評価会社の資産として計上することはできないというべきである。もっとも、そうすると本件建物の所有者は、本件附属設備相当額を不当利得する結果となるから、評価会社は、建物所有者に対し有益費償還請求権を有するはずである。本件賃貸借契約によれば、建物内部改造費、造作、模様替えについて、借主は貸主に対してその買取り請求を一切行わないこと、原状回復は借主の費用負担において行うことが定められているので、評価会社は、有益費償還請求権を放棄したといえるから、本件附属設備の相続税評価額の計算に当たり、有益費償還請求権を有額評価することは相当でない。
本件宅地がいわゆる大規模画地(面大地)であるとしても、所在近隣地域の同程度の面積の宅地の売買実例価額と比較してもその評価額は時価を上回るものではないとした事例
裁決事例集 第51集 548頁
要旨
請求人は、本件宅地が590平方メートルと近隣地域の標準的な宅地より広大であるから、評価基本通達の定めによらず、鑑定評価額により評価すべきであると主張するが、[1]本件宅地の周辺は、マンション敷地としての需要が定着しており、本件宅地のような地積の宅地の価額が低いとは認められず、[2]本件宅地の所在するP市内の地積が400平方メートル以上の土地の売買実例価額はその大部分が路線価を上回っていることが認められるから、請求人の主張する鑑定評価額が客観的交換価値を証明したものとはいえず、原処分の評価額が正当である。
相続財産である貸家の空室部分は、一時的に賃貸されていなかったものではないため、評価額の減額は認められないとした事例(平成21年8月相続開始に係る相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第95集
要旨
請求人らは、相続財産である貸家(本件各貸家)について、賃貸の意図をもって経常的に維持・管理を行い、賃借人の募集業務を継続して行っていることなどを理由に、相続開始日において現に賃貸されていない各独立部分(本件各独立部分)は、財産評価基本通達26《貸家建付地の評価》の(注)2に定める「課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められるもの」に該当するから、同通達に定める賃貸割合を100%として、本件各貸家及びその敷地を評価すべきである旨主張する。
しかしながら、相続税法第22条《評価の原則》に規定する時価とは、相続により財産を取得した日における客観的な交換価値をいうことからすれば、各独立部分を有する家屋の全部又は一部が貸し付けられているかどうかについては、課税時期の現況に基づいて判断するのが原則である。その上で、同通達26の(注)2が、例外として、賃貸割合の算出に当たり、賃貸されている各独立部分には、継続的に賃貸されていた各独立部分で、課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められるものを含むこととして差し支えない旨定めているのである。本件各独立部分については、相続開始日の前後の空室期間は、最も長いもので8年間、最短のもので4か月を超える期間に及んでいることから、「課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められるもの」に該当しない。したがって、同通達に定める賃貸割合を100%として、本件各独立部分及びその敷地を評価することはできない。
参照条文等
参考判決・裁決
東京地裁平成6年7月22日判決(税資205号209頁) 横浜地裁平成7年7月19日判決(税資213号134頁)
被相続人と請求人との間の土地の使用貸借契約は、宅地転用される前に解除されており、その後の土地の賃貸借契約における賃貸人は被相続人であるから、相続開始時には建物の所有を目的とする賃借権が存するものと認められるとして、借地権相当額を控除して評価するのが相当とした事例
裁決事例集 第65集 721頁
要旨
原処分庁は、P町宅地について、賃貸借契約に請求人が使用借権を有する立場で参加していること及び賃料を請求人が収受している実態があることをもって、利用関係は、請求人が被相続人から使用貸借により借地したものを他の者に転貸したものである旨、またK社使用宅地については被相続人が農業者年金を受給するため被相続人と請求人との間で使用貸借契約を締結していたことを主たる理由として、請求人が被相続人から使用貸借により借地し、それを賃借人に転貸していたものと主張する。
しかしながら、P町宅地の利用関係は、昭和56年2月20日に「農地法第3条による使用貸借解約による通知書」を提出した日までの間は、請求人を相手方として使用借権が設定されていたものと推認されるが、同日以後は、被相続人が農地法の手続を経た上で、これらの土地を宅地に転用し、被相続人が賃貸人となって、順次、賃借人に対して賃貸し、賃借人が建物を建築して利用していることが認められる。そして、P町宅地に係る本件土地賃貸借契約書には、賃貸人の承継人として請求人名が記載されているだけで、どのような権限を有することになるのかは明らかではないが、[1]賃貸人は被相続人と明記されていること及び[2]農地に関しての被相続人と請求人との間の使用貸借は宅地転用される前にすでに解除されていることから、当該記載をもって、原処分庁主張のとおりに解することはできないし、また、賃料を現実に享受している者が誰であるかのみによって同宅地の利用関係が決せられることにもならないので、原処分庁の主張には理由がない。
K社使用宅地については、請求人と被相続人との間の使用貸借契約が解除された経緯は、P町宅地と同様であると認められ、また、借地人である同族会社から無償返還届出書は提出されておらず、また、過去に借地権の認定課税が行われていないとしても、そのことが利用関係に影響して借地権の目的となっているか否かを左右するものでないことは明らかであるから、本件相続開始時において、同宅地は借地権設定の目的となっている宅地と認めるのが相当である。
以上から、いずれの宅地についても相続開始時において建物の所有を目的とする賃借権が存するものと認めるのが相当であり、自用地としての価額から借地権の価額を控除した金額によって評価するのが相当であるので、原処分庁の主張は採用できない。
親族の居住用家屋の敷地の用に供されていた宅地は使用借権の付着した宅地として、樹苗地として低い賃料で法人に賃貸されていた畑地は、賃借権の付着した雑種地として評価するのが相当とした事例
裁決事例集 第65集 671頁
要旨
請求人らは、本件土地には隣接土地に係る判決の効果が及び、借地法人が営業を継続する限り返還されることのない土地であるところ、財産評価基本通達にはこのような土地の評価方法の定めがないことから、財産評価基本通達によることのできない特別の事情があり、その価額は、収益還元法によって時価を算定した鑑定評価額によるべきである旨主張する。
しかしながら、本件土地と隣接土地とでは取得の経緯及びその占有者(借地法人)の使用権原を異にするものであるから、本件判決において判断された「遺産分割に当たって、家業の樹苗園が存続する限りは使用させるとの使用貸借契約が黙示的に成立した」との法律関係は本件土地には認められないので、財産評価基本通達により難い特別な事情があるとは認められない。
また、請求人の鑑定評価額を検討するに、収益還元法による価額を基礎とするところ、収益還元法には収益、還元率など算定が困難と認められる諸要素があり、また、前提となる土地の利用関係に誤認が認められるところから、請求人の主張する鑑定評価額は採用し難い。
請求人の家屋が建築されている宅地は、以前請求人が地上権を有していたが、その建築前に地上権は抹消登記されており、かつ、地代の支払もないから、その貸借は使用貸借と認められ、自用地としての価額により評価するのが相当であるとした事例
裁決事例集 第37集 218頁
要旨
請求人が相続により取得した宅地の上には、請求人の家屋が建築されているが、[1]請求人が本件宅地の上に有していた地上権は、本件家屋が建築される前に抹消登記されていること、[2]本件宅地の賃貸借としての地代の支払が行われていないこと、[3]相続開始数年前、請求人等が本件土地の持分を贈与により取得した際に、請求人等は、本件土地の持分を自用地としての価額により評価し、贈与税の申告書を提出していること等から、被相続人と相続人との本件宅地の貸借は、使用貸借によるものと認められるので、本件宅地の価額は、自用地としての価額により評価することが相当と認められる。
請求人及び原処分庁の行った両鑑定額とも採用できないとして、審判所において取引事例比較法による比準価格及び公示価格を規準とした価格により本件土地の価額を算定した事例
裁決事例集 第61集 579頁
要旨
請求人及び原処分庁とも、路線価が時価を上回るとして、これを採用しないことには争いがないが、本件土地の価額につき、請求人と原処分庁のそれぞれが鑑定評価額をもって本件土地の価額であると主張する。
しかしながら、審判所の調査によると、請求人と原処分庁のそれぞれが主張する鑑定額はいずれも採用できないから、当審判所において本件土地の価額を算定することとするが、開発法による価格は、その計算過程に想定部分も多く、合理性を欠くことも否定できないので、取引事例比較法による比準価格及び公示価格を規準とした価格により、本件土地の価額を算定するのが相当と認められる。
そこで、当審判所において採用した取引事例及び公示価格をもとに、当審判所においても相当と認める規準の一つである土地価格比準表に準じ、地域要因及び個別要因等の格差補正を行って本件土地の価額を算定したところ、請求人申告額を下回るので、本件更正処分はその全部を取り消すのが相当である。
貸付金債権の評価につき、その会社の資産状況及び営業状況等が破たんしていることが明白かつ債権の回収の見込みのないことが客観的に確実であるといい得る状況にあったとは認められないから、その一部を回収不能として減額することは認められないとした事例
裁決事例集 第77集 444頁
要旨
本件貸付金については、財産評価基本通達の定めに基づいて評価するのが、相当であるところ、本件会社について、同通達205の(1)から(3)までに該当する事由は認められないことから、本件貸付金の全部又は一部が、本件相続開始日において、同通達205に定める「その他その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき」に該当するか否かについて、本件会社の資産状況及び営業状況等に照らし判断すると、次のとおりである。
本件会社は、本件相続開始日以降、現在に至るまで存続し、従業員のうち障害者を関係グループ会社であるK社に出向させ、主にK社からの出向料及び国等からの助成金により、営業外収益を計上している。また、本件会社は、事業目的を不動産の売買等に拡大した後、平成14年7月期に地方裁判所の競争入札に参加していること、及び平成17年7月期において、不動産取引による売却益として39,120,000円を計上していることからすれば、本件会社の営業が停止していたとは認められない。
そして、本件会社は同族会社であり、関係グループ会社の代表者も本件相続人又はその親族らであり、本件会社の借入金債務は、K社、本件被相続人及びその親族からの債務が大半であって、返済期限等の定めがないため、直ちに返済を求められる可能性は極めて低く、金融機関等外部からの借入れに比べて有利といえ、現に、本件会社は、関係グループ会社との間で頻繁に貸借を行い、特にK社との間では、常時貸借が存在し、時々に応じて返済していた事実が認められる。
さらに、本件相続開始日において、本件会社のU銀行及びV銀行に対する借入金債務残高は零円となっている上、L銀行に対しては、月々500,000円の返済を続けており、同銀行は、返済期限をはるかに過ぎている債権であるにもかかわらず、積極的な債権回収の動きをしていない。本件被相続人からの借入金についても、本件相続開始日の直前に、合計約20,000,000円を返済している。
以上のことから、本件貸付金については、本件相続開始日において、財産評価基本通達205に定める「その他その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき」、すなわち、本件会社の事業経営が破たんしていることが客観的に明白であって、債権の回収の見込みのないことが客観的に確実であるといい得る状況にあったとは認められない。
農地法施行前に設定されていた農地の賃借権について、賃貸借の効力が生じており、農地法第20条《農地又は採草牧草地の賃借権の解約等の制限》第1項の規定の適用があるから、財産評価基本通達9の(7)の耕作権に該当するとした事例
裁決事例集 第71集 593頁
要旨
財産評価基本通達41の(1)は、耕作権の目的となっている農地については、その農地の自用地としての価額から、同通達42の定めにより評価した耕作権の価額を控除した金額によって評価することとし、耕作権については、農地法第20条第1項の規定の適用がある賃借権に限られるところ、本件農地の一部については、農地法施行(昭和27年10月21日)前から引き続き賃貸されていることが認められる。
農地法施行前における農地の賃借権の設定等に関しては、農地法の前身である農地調整法第5条及び第6条が昭和20年12月29日に改正(昭和21年2月1日施行)され、同法第5条は「農地ノ所有権、賃借権、地上権其ノ他ノ権利ノ設定又ハ移転ハ命令ノ定ムル所ニ依リ当事者ニ於テ地方長官又ハ市町村長ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ」と規定され、同法第6条第3号において、「農地ヲ耕作ノ目的ニ供スル為前条ニ掲グル権利ヲ取得スル場合」は前条の規定は適用しないとされた。次いで、農地調整法第5条及び第6条が、昭和21年10月21日に改正(昭和21年11月22日施行)され、同法第5条の「認可」が「許可」(地方長官)又は「承認」(市町村農業委員会)に改められ、同法第6条が削除されたことによって、以後、賃借権の設定等については許可又は承認が必要とされることとなったが、その施行前に開始された賃貸借は、同法上、この許可又は承認を要することなく有効に成立しているものと解されている。
そして、賃借権の設定等について許可又は承認が必要とされることとなった昭和21年11月22日前に賃貸借された農地の賃借人は、農地法施行後に改めて農地の賃借権の設定等に係る許可を要することはなく、又、その後賃借人に相続が開始した場合には、その相続人は、その賃借権を適法に承継したものと扱われることから、かかる賃借権は、その解約等を行う場合、農地法第20条第1項の規定により都道府県知事の許可が必要であることから、同法の保護を受ける賃借権、つまり、財産評価基本通達9の(7)の耕作権に該当することとなる。
したがって、昭和21年11月22日前に賃貸借が開始された農地については、自用地としての価額から財産評価基本通達に定める耕作権の価額を控除して評価するのが相当と認められる。
遺産分割の一部が財産評価基本通達7-2(1)注書に定める不合理分割に当たる場合には、その不合理分割に当たる部分のみ分割前の画地により評価単位を判定し、それ以外の部分は分割後の画地により評価単位を判定するのが相当であるとした事例
裁決事例集 第80集
要旨
請求人らは、相続開始前までは被相続人が一団の農地として利用していた本件各土地について、本件各土地の一部の遺産分割は財産評価基本通達7-2《評価単位》(1)注書に定める不合理分割に該当するから、同定めのとおり、分割前の利用の単位である本件各土地の全体を1つの評価単位として評価すべきである旨主張する。
しかしながら、財産評価基本通達7-2(1)注書の趣旨は、不合理分割された土地をそのまま評価した場合、実態に即した評価がなされないため、課税の公平に資する目的で評価単位を是正することにあると解されることからすると、遺産分割の一部が不合理分割である場合には、不合理分割に当たる部分についてのみ是正すれば足りるから、その部分のみ分割前の画地により評価単位を判定し、その余の部分については、分割後の画地により評価単位を判定するのが相当である。
参照条文等
倍率方式で評価する地域内に所在する市街地農地を評価するに当たり、当該農地が宅地であるものとした場合における固定資産税評価額が明らかな場合には、当該固定資産税評価額を基として当該農地が宅地であるものとした場合の価額を算定すべきであり、また、 控除すべき造成費に給水管等敷設費は含まれないとした事例
裁決事例集 第74集 357頁
要旨
1 財産評価基本通達40において、市街地農地の価額は、その農地が宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額から宅地に転用する場合に通常必要と認められる造成費に相当する金額を控除して評価することとしており、倍率方式によって評価する地域内に所在する場合には、その農地が宅地であるとした場合の価額の算定をどのように行うかが問題となるところ、財産評価基本通達では、その農地が宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額は、その付近にある宅地について同通達11に定める方式によって評価した1平方メートル当たりの価額を基とし、その宅地とその農地との位置、形状等の条件の差を考慮して評価するとして実務上の取扱いを定めている。
X市においては、市街化区域内に所在する田及び畑の固定資産税評価額は、その農地が宅地であるとした場合の価額から造成費相当額を控除することによって求められているから、原則として、市街化区域内に所在する農地の固定資産税評価額の算出過程においては、評価対象地が宅地であるとした場合の固定資産税評価額そのものが算定されていることになるのであり、評価対象地が宅地であるとした場合の固定資産税評価額そのものが算定可能である場合には、あえて付近の宅地の価額を基に算定するまでもなく、その固定資産税評価額を基に評価するのが相当である。
2 農地を宅地に転用するとは、農地を建築物の建築の用に供するためにその地面や地盤の変更を行うことをいうものと解されるが、実際にはその地域、土質、造成規模、造成目的などの条件によってその内容は種々異なることになる。その具体的な内容としては、宅地以外の土地を宅地化するために土地の形質を変更するために行われる整地、土盛り又は土止めに係る工事と、②造成の目的が、戸建住宅、アパート、マンション、工場、倉庫、構築物の敷地などの各用途の別により必要とされる個別の工事とが考えられる。このうち、②の造成工事については、その土地上にどのような建物等を建築するかの個別事情に左右される部分が大きいことから各建築物に附属する費用とも捕らえることができる。市街地農地を評価するに当たって造成費相当額を控除するのは、市街地農地の価額の形成要因が、農地としての利用ではなく宅地としての利用を前提としたものであり、その要因は近隣の更地である宅地と変わりがなく、また、更地である宅地との比較においては、宅地造成費相当額分だけの格差があるものと認められることによる。そのために通常必要とされる宅地造成費とは、どのような建築物が建築されるかにかかわらず必要とされる整地、土盛り又は土止めに要する金額を指すものと解するのが相当である。
この点について、請求人らは、宅地造成費に給水管等敷設費を含めているが、給水管等敷設費は、宅地を戸建住宅の敷地として利用するための個別の費用であり、このような費用は上記②の造成工事費に該当すると認められるから、宅地比準方式により土地を評価する上で控除の対象となる宅地に転用する場合において通常必要と認められる造成費には当たらないものと認められる。
要旨
被相続人が所有する取引相場のない株式につき、当該株式の発行会社に対して「退職した場合には、会社の指示に従い、額面価額をもって所有する株式を譲渡する」という誓約書を提出していること等から、相続人としてその誓約書どおりに額面価額により相続した当該株式を譲渡せざるを得ない状況にあったとしても、当該誓約は、会社と従業員という特定の関係にある当事者間の契約であり、当該契約による譲渡価額は、被相続人の自由意思により決定された額とは認められないから、仮に、額面価額が唯一の処分可能価額であったとしても、その価額は、当該株式の客観的交換価値を表した価額とは認められない。
相続税法第22条に規定する「時価」とは、利害関係のない当事者間における客観的交換価値と解されるから、当該制約された譲渡価額は、同条に規定する時価に当たらない。
本件株式については、被相続人及び請求人らの所有形態からみて、配当還元方式により評価するのが客観的で合理的である。
要旨
請求人は、本件土地は、その一部が過去の収用により買い取られたことに伴い、建物の一部が取り壊されており、当該収用後に未利用の状態であった空き地部分と建物の敷地として使用貸借していた部分との2つの利用単位からなっているので、それぞれ別の評価単位として評価すべきである旨主張する。
しかしながら、本件土地は、当該収用以前から1棟の建物の敷地として一体として利用されており、当該収用に伴い建物の一部が取り壊された後も、その利用状況及び権利関係に変化がないことからすれば、財産評価基本通達7-2《評価単位》の定めに基づき1つの評価単位(1画地)として評価すべきである。
参照条文等
本件各土地は利用価値が著しく低下していると認められることから、財産評価額から10%を減額して評価すべきであり、本件意見価額は客観的な根拠が何ら示されておらず、請求人の主張には理由がないとした事例(平成26年7月相続開始に係る相続税の更正の請求に対する通知処分・一部取消し・平29年4月7日裁決)
裁決事例集 第107集
ポイント
本事例は、本件各土地の現況を的確に確認した上で、本件各土地は一体として利用されているとは認められず、畑と宅地ごとにそれぞれ一の評価単位として評価すべきであること、また、本件各土地は利用価値が著しく低下しているから、本件各土地の財産評価額から10%を減額して評価することが相当であるとしたものである。
要旨
請求人が、相続で取得した畑及び各宅地(本件各土地)の評価は不動産業者の作成した意見書による価額(本件意見価額)によるべきであるとして更正の請求をしたことに対し、原処分庁が、更正をすべき理由がない旨の通知処分をしたところ、請求人は、本件各土地の評価に当たって、本件各土地が無道路地であり、がけ地を含む上、公道から本件各土地まで重機が届かないという制約のために本件各土地の上の建物を取り壊すことができないなどの事情を考慮すべきであるから、本件意見価額を踏まえると、財産評価基本通達の定めにより算定した価額(財産評価額)からの減額割合を60%とすべきである旨主張する。
しかしながら、本件意見価額は、本件各土地の周辺の取引相場の裏付けを欠く上、具体的な数値や客観的な根拠が何も示されておらず、適正な時価を示しているとはいえないため、請求人の主張には理由がない。なお、本件各土地は、本件各土地の周辺の一連の土地との高低差を比較検討すると著しい高低差があり、その利用価値が付近にある他の土地の利用状況からみて著しく低下していると認められることから、国税庁ホームページのタックスアンサー「NO.4617利用価値が著しく低下している宅地の評価」の取扱いにより、本件各土地の財産評価額から10%を減額して評価するのが相当である。また、本件各土地は一体の土地として利用されているとは認められないことから、畑と宅地ごとにそれぞれ一の評価単位として評価すべきである。
参照条文等
本件土地の価額は、相続後に本件土地を譲渡したときの価額の7割相当額によるか、又は公売価額を基準として算定した金額とすべきとの請求人の主張に対して、路線価は時価を上回っておらず、また、特殊性のある公売価額を客観的時価と認めることはできないとした事例
裁決事例集 第67集 589頁
要旨
請求人らは、本件土地の価額について、相続開始日における本件土地に係る路線価は、相続後に本件土地を譲渡した際の価額を上回っているから、当該譲渡価額を基に評価すべきであると主張する。
しかしながら、本件土地について、路線価を基礎として算定した評価額(単価)は、同じP市p町に位置し、都市計画法上の用途地域や建築基準法上の規制も同じである本件公示地の公示価格を基礎として算定した価格を下回っていることから、本件土地に係る路線価は本件土地の時価を上回っているとはいえない。
また、請求人らは、本件土地の価額は、本件譲渡価額の7割相当額とすべきである旨主張するが、評価水準は、課税行政庁内部において土地の評価に関する取扱いを統一するに当たり、評価の安全性にも配慮しながら均一な評価を効率的に行うために取り入れられているものであって、実務上少なくともこれを乗じた価額を下回ることは通常ないであろうと認めるところにより課税処分等をするための計算上の一要素にすぎないものであるから、土地の時価を個別の事情に基づき個々に求める場合に評価水準をしんしゃくすべき合理的な理由は全くなく、本件土地の価額は、本件譲渡価額の7割相当額とすべきであるとの請求人らの主張は採用できない。
さらに、請求人らは、以上の主張が認められないならば、本件土地の価額は、請求人らが把握している本件公売価額に基づき算定すべきであるとも主張するが、公売は、換金を目的とした強制売却であるという特殊性を有しており、その売却価額が客観的時価より低額であるのが通例であると認められること、また、本件公売地と状況が類似し、本件土地と同一区域内の土地の売買実例との比較においても、本件公売価額を本件土地の時価と認めることはできない。
本件土地は、土地区画整理法に基づく換地処分ではなく、換地処分前に当事者間で任意に交換したものであるから、従前の土地に存していた借地権は存せず、課税時期における現況、すなわち駐車場の敷地として賃貸している土地として評価すべきであるとした事例
裁決事例集 第55集 511頁
要旨
請求人らは、本件土地は、土地区画整理法に基づき甲土地との交換により取得したものであり、甲土地に存していた借地権は、同法の規定により本件土地に移行存続することから、本件土地の価額を財産評価基本通達25(貸宅地の評価)の(1)の定めにより評価すべきである旨主張するが、本件土地と甲土地の交換は土地区画整理法に基づく換地処分としてされたものではなく、土地区画整理事業における換地処分前に当事者間で任意にされたものである。
したがって、本件土地と甲土地の交換が土地区画整理法に規定する換地処分でない以上、甲土地に存していた借地権が本件土地に移行存続することはないから、本件土地の価額は、その土地の課税時期における使用の現況、すなわち駐車場の敷地として賃貸していることに基づき財産評価基本通達86(貸し付けられている雑種地の評価)の(1)の定めにより評価するのが相当である。
本件貸駐車場は、不整形地ではあるがその程度が比較的小さいので、不整形地補正は適用できず、また、本件賃貸マンションの敷地と一体利用とは認められないので、当該入居者の利用部分は貸家建付地の評価ができないとして請求人らの主張を排斥した事例
裁決事例集 第51集 575頁
要旨
請求人らは、本件貸駐車場用地(607平方メートル)は、[1]不整形地部分の面積82平方メートルについて、不整形地補正を適用して7パーセントの評価減及び[2]本件賃貸マンションの入居者が利用している部分は、当該マンションと一体利用であるから、貸家建付地として評価すべきである旨主張する。
しかし、不整形地の評価は、画地の形状が不整形であるため画地の全部が宅地としての機能を十分に発揮できない場合に、整形地と比較した場合の利用価値の低下を価額に取り込むのであるから、画地の形状が正方形等でないとしても、その画地の地積がおおむね適正規模以上で、かつ、不整形の程度が比較的小さい場合など、宅地としての利用に特に支障がないものは、不整形地補正を要しないと解するのが相当である。
本件貸駐車場は、その面積が適正規模で、不整形の程度が13パーセントと比較的小さいことから、その機能、便益が現在の地形をもって特に支障があるとは認められないので、不整形地補正を要しないのが相当である。
また、本件貸駐車場は、一画地全体がアスファルト舗装をした上で、隣接する本件賃貸マンションの敷地とフェンスにより区分され、33台の貸駐車場(15台はマンションの入居者が、残りの18台はそれ以外の者が利用)としており、更に、マンションの賃料と駐車場の利用料とが明確に区分されていることからみて、当該マンションの敷地と本件貸駐車場の利用が一体の状況にあるとは認められないので、当該貸駐車場を貸家建付地として評価することは相当でない。
被相続人と請求人との間における本件土地の貸借関係は賃貸借とはいえず使用貸借と認めるのが相当であるから、本件土地は自用地として評価すべきであるとされた事例
裁決事例集 第51集 601頁
要旨
請求人は、本件土地は請求人が貸家の敷地として固定資産税等の1.7倍以上の地代を支払って借りていたものであるから貸宅地として評価すべきであるが、貸借に当たって、権利金の授受もないことから評価基本通達26(貸家建付地の評価)に定める程度に評価すべきであると主張する。
ところで、土地の貸借に当たって、当該土地の公租公課を負担する程度のものは使用貸借であると解されているところ、請求人は、本件土地を借り受けるに当たり賃貸借契約及び地代の取決めをせず、領収書のただし書には「固資税、都計税、S町3-718、R町1-909分」等と記載されているのみで、本件土地地代とは記載されておらず、請求人の不動産所得の青色申告決算書に支払地代として計上することなく、公租公課と計上していることが認められ、また、請求人が支払った額が本件土地の固定資産税等の1.7倍となっているのは、被相続人から負担の要求をされた、請求人が相続する予定の本件土地及びその他の土地の固定資産税等の合計額が当該価額になっているにすぎず、本件土地の使用対価としての性格のものとは認められないので、本件土地の貸借は使用貸借と認めるのが相当である。
そうすると、使用貸借による敷地利用権は、権利性の薄弱なものであり、経済的価値を有しないものと解され、また、借家人の敷地利用権は、建物所有者の敷地利用権に従属して、その範囲内での権能にすぎないと解されているので、本件土地の価額は、自用地としての価額から控除すべき建物所有者の敷地利用権の価額はないものとして算定するのが相当である。
評価基本通達に定める路線価等を適用しないで土地の時価を算定するときは路線価の評価水準等を考慮する必要はなく、また、相続税法第17条に定めるあん分割合につき請求人らが申告に使用した端数処理の方法には合理性が認められないとした事例
裁決事例集 第62集 352頁
要旨
請求人らは、本件土地の価額は時価である取引価額に路線価の評価水準を乗じ、さらに、評価基本通達に定める各種減額を適用すべきである旨、また、原処分庁が更正する場合の相続税法第17条に規定するあん分割合は相続税法基本通達17-1の定めにより、請求人らが申告に使用した端数処理の方法を適用すべきである旨主張する。
しかしながら、評価基本通達に定める路線価等を適用しないで土地の時価を算定する場合に、路線価の評価水準を考慮する必要はなく、路線価等を基に画一的に時価を算定する場合に適用するものとしている各種の減額を適用する余地もない。
また、相続税法基本通達17-1は、合理的な端数処理を行っている場合には、納税者によって選択されたその端数処理によって相続税額を計算することができることとした取扱いであるが、本件は、請求人らが選択した端数処理の方法に明確な基準は見出せず、合理性があるものとは認められないから、原処分庁はその方法を選択できないのであって、相続税法17条の規定に基づいてした原処分庁のあん分割合に違法はなく、請求人の主張には理由がない。
要旨
本件取引相場のない株式(出資)の評価上、その発行法人(以下「評価会社」という。)が保有する本件土地使用権は、P国の土地○○法及び都市○○法の規定に基づき、評価会社の権益を保護するため、登記されたものと認められる。そして、土地○○法第○条は、法に従って登記された土地使用権は、法律の保護を受ける侵害できない権利である旨規定し、また、都市○○法第○条は、土地使用者が土地使用権の上に存する不動産を譲渡し、抵当に供する場合は、当該土地使用権を同時に譲渡し、又は抵当に供する旨規定していることからすれば、本件土地使用権は、譲渡及び抵当権の設定が可能な財産であると認められ、また、評価会社により工業用地として現に有効に利用されている。したがって、本件土地使用権は財産価値があると認められる。
そして、財産評価基本通達は土地の上に存する権利の評価方法について、いずれもその権利が設定されている土地の自用地の価額を基に評価する旨定めているものの、本件土地使用権に係る自用地の価額を明らかにすることができないから、これによることができず、さらに、土地使用権に係る売買実例価額、精通者意見価格等についても明らかにすることができないので、当該土地使用権の取得価額を基にP国における土地使用権の価格動向に基づき時点修正をして求めた価額により評価することとなるが、P国における土地使用権の価格動向については把握することができないことから、本件土地使用権の相続税評価額は、その取得時における時価を表していると認められる取得価額を基に時点修正して求めた価額、すなわち使用期間に応じて減価させた金額によることが相当である。評価会社の本件直前期末の貸借対照表に記載された土地使用権の金額は、その取得価額を基に使用期間に応ずる減価を反映したものとなっており、加えて、本件直前期末から本件受贈日までの間は6か月に満たないことから、評価会社の本件直前期末の貸借対照表に記載された土地使用権の金額を本件受贈日における相続税評価額とみても、これを不合理とする特段の事情は認められない。
要旨
原処分庁は、被相続人が有していたH(個人)に対する貸付金債権は相続開始日現在において存在しており、その評価額は貸付金元本とその遅延損害金の合計額となる旨主張する。
しかしながら、財産評価基本通達205《貸付金債権等の元本価額の範囲》は、貸付金債権等の評価を行う場合において、その債権金額の全部又は一部が「回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき」には、それらの金額は元本の価額に算入しない旨定めており、債務者が個人である場合には、債務超過の状況が著しく、その者の信用、才能等を活用しても、現にその債務を弁済するための資金を調達することができないだけでなく、近い将来においても調達することができる見込みがない場合がこれに該当すると解されるところ、本件においては、確かに、被相続人はHに対する貸付債権を有していた、つまり、Hは当該貸付金債権に対応する借入金を負っていたと認められるものの、Hの課税実績、不動産や預金の保有状況からすると、Hは著しい債務超過の状態にあり、当該借入金を返済するための資金を調達することは極めて困難であったと認められることなどに加え、当審判所における調査によっても、Hの具体的資力、返済能力を認めるに足りる証拠は見出せない。これらのことによれば、被相続人のHに対する貸付金債権は、「回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき」に該当するというべきであり、その評価額は零円となる。
参照条文等
貸宅地の評価においては、一般に借地権価額控除方式には合理性があり、また、請求人らが採用した収益還元方式の「純収益」や「還元率」は標準化されたものとは認められないとして、請求人らの主張する評価方式を排斥した事例
裁決事例集 第66集 265頁
要旨
財産評価基本通達では、貸宅地の価額は、借地権価額控除方式により評価するとしているが、この評価方法は、借地権の取引慣行のある地域では、底地価額は、単なる地代徴収権の価額にとどまらず、むしろ将来、借地権を併合して完全所有権とする潜在的価値に着目して価額形成されているのが一般的であると認められ、このような場合には、底地価額を借地権価額控除方式により評価するのが相当であると考えられることなどによるものであると解される。この評価方法は、相続税法第22条の趣旨及び財産評価基本通達の考え方に照らし、当審判所においても合理性を有するものと認められるから、請求人らの「宅地上の借地権の価額と貸宅地(底地)の価額との総和は自用地としての価額よりも低い水準にとどまるものであるから、評価基本通達が定める借地権価額控除方式により算定した価額を時価とするのは相当ではない」との主張は相当ではない。
また、請求人らは、本件鑑定評価が収益還元方式による収益価格と底地取引事例から決定した底地権割合により求めた試算価格を加重平均する評価方法が合理的な評価方法であると主張する。
しかしながら、収益還元方式は、標準化された適正な「純収益」を用いて、これを適正な「還元利率」で還元する必要があるところ、一般に、収益還元方式による土地の価額の測定においては、「純収益」の標準化や、「資本還元率」の設定に当たり、その客観的、理論的な算定方法も見いだし難い状況にあるものと認められ、本件鑑定評価においても、その根拠は示されていない。
さらに、借地権割合については、原処分庁において、長年にわたり、借地権の売買実例価額、精通者意見価額等を基として評定され、公開されているものであるから、一定の地域における借地権の実勢価額を反映しているものと考えられるが、本件鑑定評価において収集した取引事例には底地割合にかなりのばらつきがあるということから、取引事例から求められた底地割合が、その地域の底地の実勢価額を反映し得るほどの指標性をもつものとは認め難いと言わざるを得ない。
以上のことから、請求人らの主張する評価方法には、相続税法第22条の趣旨及び財産評価基本通達の考え方に照らして、いずれも合理性を有するものとは認めがたい。
A土地及びB土地の評価については、取引事例及び公示価格を基に土地価格比準表の地域格差及び個別格差の補正率を適用して算定し、また、X社の出資の評価については、評価差額に対する51パーセントの法人税等相当額が控除できないとした事例
裁決事例集 第53集 400頁
要旨
請求人は、[1]A土地及びB土地の鑑定評価額をもって課税価格とすべきであり、[2]X社の出資の評価に当たり、評価差額に対する51パーセントの法人税等相当額を控除すべきである旨主張する。
しかしながら、請求人の鑑定評価書には種々の問題があり、また、原処分庁の評価方法による価額は時価の証明にならないことから、審判所が、取引事例及び公示価格を基に土地価格比準表の地域格差及び個別格差の補正率を適用しA土地及びB土地の価額を算定すると、[1]A土地の標準的画地価格は、取引事例に基づく比準価格とA公示地を規準とした規準価格の平均額に街路条件等の個別格差率、地積及び持分を乗ずると3億6,349万円となり、[2]B土地の標準的画地価格は、取引事例に基づく比準価格とC公示地を規準とした規準価格の平均額に行政的条件等の個別格差率及び地積を乗ずると5億4,526万円となり、この額から借家人の権利21パーセントを控除すると4億3,075万円となることから、これらの価額は、更正処分の額を上回り、更正処分に違法は認められない。
また、出資の評価については、[1]現物出資により被相続人が取得したX社の出資400口を財産評価基本通達の純資産価額方式により評価すると、その価額は時価26億円のものを400万円(5万円×80口)で法人が受け入れた結果、多額の評価差額が生ずることとなり、[2]X社の出資の評価に当たり、評価差額に対する51パーセントの法人税等相当額が控除されることに着目して行われたことが容易に推認でき、[3]具体的には、X社の出資400口を13億円と評価し、その取得資金である借入金26億円を債務に計上すると、差額の約13億円が他の相続財産の価額から控除される結果、これらの行動を取らなかった者と相続税額の負担に多額の差が生ずることとなることから、し意的に作りだされた評価差額に対して51パーセントの法人税等相当額が控除できないとした更正処分は適法である。
出資持分の定めのない医療法人への組織変更の準備中に相続が開始した場合の医療法人の出資について、財産評価基本通達の定めにより評価することが相当であるとした事例
裁決事例集 第77集 413頁
要旨
医療法人X会がP県知事に対して定款変更に係る認可申請をしたのは、本件相続開始日より後の平成○年○月○日であり、同知事の定款変更に係る認可の通知は同月○日付で行われており、X会は、本件相続開始日においては、同知事による本件定款変更の認可は受けていないことから、X会は出資持分の定めのある社団医療法人であり、X会の出資者は、X会の財産的価値をその持分に応じて有していたこと、さらに、本件相続の開始日前におけるX会の出資者は、被相続人、N及びVの3名であり、被相続人が有していた出資持分(以下「本件出資持分」という。)のすべてをNが遺贈により取得したこと、並びに本件相続の開始直前及び開始直後におけるX会の社員全員が被相続人、N(被相続人の配偶者)、V(被相続人の次男)及びその親族であったことに照らせば、本件相続の開始した時において、社員総会において本件定款変更を行わない旨の決議をし、これまでどおり出資持分の定めのある医療法人として存在し続けること、また、N、U(被相続人の長男)、V及びY(被相続人の弟、X会理事長)は、X会の財産的価値を把握していたことからすると、出資者が社員総会の承認を受けてX会の出資持分を当該算出した額を基準として第三者に譲渡することも可能であったと考えられるし、X会を解散して、残余財産の分配を受けることも可能であったことなどからすれば、本件出資持分は、特別の放棄の意思決定及び特別の法定手続の拘束下にあるなどと請求人が主張する事情は、X会、Y、被相続人、N及びVが、将来にわたって存続し得るよう妥協を図ることを目的として、実質的にX会の分割を図りたいとのNその他関係者の主観的事情であって、客観的交換価値である相続税法第22条に規定する時価を算定する場合に、このような主観的事情を考慮することは相当ではない。
したがって、請求人の主張する事情は、本件出資持分の評価に当たり、財産評価基本通達194-2の定めによらないことが正当と認められるような特別な事情には該当しない。
本件においては、平成○年○月○日に開催されたX会の臨時社員総会において本件定款変更が決議され、その際に、出資者の一人であった被相続人も社員として本件定款変更の決議に加わり、被相続人は、本件定款変更によって自己の出資持分が消滅することを認識した上で当該決議に賛成したと認められるが、この意思表示により、被相続人に出資持分放棄の義務が生じたということはできず、その後、平成○年○月○日のP県知事に対する本件定款変更に係る認可申請書の提出を経て、同月○日付のP県知事の本件定款変更の認可があったことにより、Nが遺贈により取得した被相続人のX会に対する出資持分が消滅したのである。したがって、本件相続開始日において、「出資持分の放棄義務」という被相続人の債務は存在しないから、Nの相続税の課税価格の計算上、本件出資持分の価額と同額である○○○○円を本件出資持分の放棄義務として債務控除額に計上して控除することはできない。
要旨
請求人は、同族法人の株式の評価に当たり、当該同族法人の所有する本件土地の価額は、本件鑑定評価書を基に広大地補正率を適用して評価すべき旨主張し、これに対し、原処分庁は、当該土地の最有効利用は中高層の耐火共同住宅の敷地と認められ、戸建宅地開発を前提とする広大地補正率の適用はなく、路線価に基づき計算した当該土地の価額は、原処分庁が時価として試算した価額を下回るから適法である旨主張する。
しかしながら、双方が主張する価額は、いずれも相続税法第22条に規定する時価として採用することはできないので、当審判所が採用した近隣の取引事例の取引価格及び公示地の公示価格を基に、本件相続開始時における本件土地の時価を算出したところ、当該価額は、原処分庁が財産評価基本通達に基づいて評価した価額を下回ることから、原処分庁の評価に係る価額は時価を超えているものと認められるので、本件更正処分はその一部を取り消すべきである。
地方公共団体に貸し付けられている土地の価額について、何ら減損していないので借地権相当額を何ら減額すべき事由はなく、自用地としての価額と同額で評価するのが相当であるとした事例
裁決事例集 第67集 606頁
要旨
本件土地の賃貸借契約締結に際し、賃借人であるP市から賃貸人である被相続人に対し権利金等の一時金の授受がないこと、賃貸借契約の期間中であっても被相続人はP市に対して更地時価による本件土地の買取請求ができ、P市はその請求に対し異議なく応じる旨の特約があることは、P市は借地権者としての経済的利益について享受しないものとしたと認められるところであり、一方、本件土地の価額は、何ら減損することなく自用地と同額の価額として保証されているものと認められる。そうすると、P市及び被相続人は賃貸借契約において、本件土地における借地権の経済的価値を認識しない旨を定めたものというべきであるから、本件土地の評価に当たっては借地権相当額を何ら減額すべき事由はないのであって、自用地としての価額と同額で評価するのが相当である。
ポイント
本事例は、相続人の一人が遺産分割により取得した単独所有地及び共有地(いずれも立体駐車場の敷地)について、当該共有地が、遺産分割の前後を通じて当該単独所有地と同一の用途に供される蓋然性が高いと認められる場合には、共有地であることによる使用等の制約は実質的には認められないから、当該単独所有地と区分して評価する必要はないとしたものである。
要旨
①原処分庁は、請求人らが相続により取得した一団の雑種地(本件各雑種地)は、その一部について、共有者の有無及び共有持分の割合が異なるため、5区画に区分した評価単位により評価すべきとし、開発許可を要する面積の基準を上回る1区画のみを財産評価基本通達24-4《広大地の評価》に定める広大地として評価すべきである旨主張し、他方②請求人らは、本件各雑種地については、一部の雑種地が共有となっているものの、全体が同族法人に賃貸され、当該法人が立体駐車場の敷地として利用していた土地であることから、全体を一つの評価単位により評価すべきであり、広大地として評価すべきである旨主張する。
しかしながら、①本件各雑種地は、堅固な立体駐車場の敷地として一括で貸し付けられ、一括して貸付けの用に供されていたことなどから、当該相続に係る遺産分割後も同一の用途に供される蓋然性が高いと認められる状況にあり、一部が共有地であることによる使用、収益及び処分の制約が実質的にないものと認められ、その利用状況、権利関係等から、全体を一つの評価単位により評価すべきであるが、②本件各雑種地の属する幹線道路沿いの地域における標準的使用は、商業施設等の敷地であり、本件各雑種地を当該地域の標準的使用に係る敷地の地積に区分したとしても、開発行為を行うに際して公共公益的施設用地の負担が必要であるとは認められないことから、本件各雑種地は、広大地には該当しないものとして評価すべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
静岡地裁平成19年7月12日判決(税資257号順号10752) 平成22年7月22日裁決(裁決事例集No.80)
要旨
請求人らは、本件出資を純資産価額方式で評価するに当たっては、評価基本通達の定めに従って、法人税等相当額を控除して評価すべきであると主張するが、被相続人は全額借入金によりX社及びW社を設立し、W社を設立するに当たってX社の出資を著しく低額で現物出資することにより、相続税の課税価格を約9億円圧縮する結果を招いており、当該出資は、資産の運用により収益を得る目的でなされたものではなく、本件借入金と本件出資との差額に相当する課税価格を圧縮することにより、相続税の負担を不当に軽減する目的でなされたものと推認できるので、このような場合の出資の評価に当たっては、評価基本通達の定めによる法人税額等相当額を控除しないで行っても租税平等主義に反するものとはいえず、違法ではない。
被相続人は賃借していた土地の所有者に対して別途建物を賃貸しており、その建物の賃貸料が相場より低いのは、その低い分だけ土地の賃借料と相殺されているのであるから、この相殺部分の金額を土地の賃借料に加算すると土地の賃借料は相当地代に当たるので、被相続人の有する借地権の評価額は零であるとの請求人の主張が排斥された事例
裁決事例集 第57集 443頁
要旨
土地の賃貸借における実際の支払地代の額は、本件のように相互に資産の貸付けが行われている場合にあっては、各賃貸借が相互に関連があって一体不可分のものであり、かつ、各賃料の額の一定額が相殺関係にあることが契約上明示されているなど特段の事情がない限り現実に授受されるべき金員そのものの額によるのが相当である。
これを本件についてみると、[1]本件建物の賃貸借契約は、平成元年1月に約定され、本件土地の賃貸借契約は、平成元年10月に約定されたことが認められ、これらの契約は約定された時期が異なり、契約開始時期も異なること、[2]本件土地の賃貸借が開始されても、本件建物の家賃の額に変動はないこと、[3]請求人らからは、本件土地の地代の額を算定するについて、本件建物の家賃の額を考慮したとする具体的な証拠資料の提示がないことから、これらの契約は、一方が他方の条件となっていたり、あるいは前提となっているとは認められず、相互に関連はないというべきであり、一体不可分のものとは認められない。
したがって、被相続人が支払うべき地代の額と受け取るべき家賃の額との間には相関関係があり、互いに低い賃料を定める暗黙の合意が存したとする請求人らの主張は認められない。
ポイント
この事例は、評価対象地である市街地農地が宅地であるとした場合に「広大地」に該当するか否かについて、評価対象地の属する地域内の開発事例を詳細かつ具体的に調査し、その調査結果を評価対象地の状況と併せ検討することにより、公共公益的施設用地の負担の適否を判断し、評価対象地は「広大地」に該当するとしたものである。
要旨
原処分庁は、本件土地は、路地状開発によれば容積率及び建ぺい率の算定に当たって、路地状部分の地積もその算定の基礎とすることができること及び本件土地の属する地域(本件地域)内には路地状開発の事例が複数見受けられることから、路地状開発により戸建分譲を行うことが経済的に最も合理的な開発方法に当たると認めるのが相当で、開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担の必要は認められないから、財産評価基本通達40-2《広大な市街地農地》に定める広大な市街地農地として評価することはできない旨主張する。
しかしながら、本件地域内の開発状況を見ると、①本件土地と同規模程度の面積の土地で公共公益的施設用地の負担をしないで開発された事例がないこと、②周辺地域の路地状開発において見られる路地状敷地の数は2ないし4であり、原処分庁主張の開発想定図にある7つもの連続した路地状敷地を配置した開発事例はない。加えて、本件土地の形状、他の道路との接続状況及び面積等を総合的に勘案すると、本件土地は、道路を開設して開発するのが経済的に最も合理的な開発方法と認められる。
したがって、本件土地は、広大な市街地農地として評価するのが相当である。
参照条文等
請求人らが相続により取得した土地のうち、集合住宅の敷地の用に供されている土地は開発行為を了し、既に有効利用されていることから、財産評価基本通達24-4《広大地の評価》に定める広大地には該当しないが、被相続人の居宅の敷地の用に供されている土地は、開発行為を想定した場合、公共公益的施設用地の負担が必要と認められるから当該広大地に該当すると判断した事例(平成24年6月相続開始の相続税の各更正の請求に対する各更正処分・一部取消し)
裁決事例集 第112集
ポイント
本事例は、集合住宅の敷地の用に供されている土地については、集合住宅の入居率や利用可能期間からすれば、近い将来新たな開発行為を行う必要は認められず、集合住宅の敷地として既に有効利用されているといえるから広大地には該当せず、一方、被相続人の居宅の敷地の用に供されていた土地については、合理的な開発を行うことを想定した場合、公共公益的施設用地の負担が必要であると認められるから広大地に該当すると判断したものである。
要旨
請求人らは、相続により取得した集合住宅(本件集合住宅)の敷地の用に供されている土地(本件1土地)及び被相続人の居宅の敷地の用に供されていた土地(本件2土地)の所在する周辺地域における標準的使用は戸建住宅の敷地であるから、本件1土地及び本件2土地は財産評価基本通達24-4(平成29年9月20日付課評2-46ほかによる改正前のもの)《広大地の評価》に定める広大地(広大地)に該当する旨主張する。
しかしながら、本件1土地上に存する本件集合住宅は、入居率100%を実現していたと認められる上、今後相当の期間利用することができるものと認められることからすると、近い将来において新たな開発行為を行う必要があるなどの特段の事情は認められないから、本件1土地は本件集合住宅の敷地として現に有効に利用されているといえ広大地には該当しない。一方、本件2土地については、原処分庁が主張する開発想定図によれば、本件私道に隣接する各土地に道路を拡幅したとしても、①集合住宅の入居者の駐車場の移設が必要となること、②道路用地に本件土地を取得した相続人以外の相続人の所有権が及ぶこと、③借家人の立ち退きが必要となることなどが考えられ、これらの事情を考慮すると原処分庁の開発想定図は合理性があるものとは認められず、請求人らが主張する開発想定図は、本件土地の所有者以外の者の所有権や賃借権を侵害するような事情はないことなどを考慮すると、合理性があるものと認められ、本件土地を開発する場合、公共公益的施設用地の負担が必要であることから、本件2土地は広大地に該当する。
参照条文等
参考判決・裁決
要旨
請求人は、本件土地に関連会社の地上権が設定されているから、更地価格の10%の価額で評価すべきであると主張するが、被相続人と同社との間の本件土地の使用関係は、[1]貸借契約がないこと及び[2]権利金及び地代の授受の事実がないことから、当事者間における特殊な信頼関係に基づくものであって、本件土地について、同社が継続的に使用している事実は認められるものの、同社が当初から地上権行使の意思をもって使用していたと認めるに足る証拠はないので、結局、本件土地に同社の地上権の存在を認めることはできない。
また、同社に地上権が存在する旨の地裁判決については、当該訴訟の被告である請求人らが全く争わずに確定したものであり、請求人らが同社の意思決定権を有するものであることからすれば、時効取得という法的手段を用いて本件地上権の存在を確定させようとして、本件訴訟を同社に提起させ、被告が争わなかったことに起因するものであり、その訴訟を提起したこと自体が、相続税の軽減という動機を経済的、実質的に行為化したものと判断するのが相当である。
中古車展示場用地としての本件土地の賃貸借契約は、その土地使用の主たる目的がその地上に建物を建造し、所有することには当たらないとして、本件土地は、貸宅地として借地権を控除して評価することはできないとした事例
裁決事例集 第69集 264頁
要旨
請求人らは、本件土地の中古車展示場等の敷地としての賃貸借契約について、貸付けの際に建物の建築を承諾していたこと及び本件建物は堅固建物であり建物表示登記がされていることから、借地法の適用があり、本件土地は貸宅地として評価すべきと主張する。
しかしながら、借地法第1条にいう「建物ノ所有ヲ目的トスル」とは、土地賃借人の土地使用の主たる目的が、その地上に建物を築造し、これを所有することにある場合を指し、借地人がその地上に建物を築造し、所有する場合であっても、それが借地使用の主たる目的ではなく、その従たる目的にすぎないときはこれに該当しないと解されるところ、[1]本件建物等は、あくまでも本件土地の一部を占めるにすぎず、大部分は自動車展示場及び進入路として利用されていること、[2]賃貸借契約書では、本件土地の賃貸借の目的を、自動車展示場、自動車置場及び営業事務所の敷地とし、営業所の建物の建築は認めているものの、永久建造物とすることはできず、建物の表示登記及び保存登記を禁じていること、[3]本件建物等は、鋼板葺の軽量な屋根を支える簡易な構造の建物で堅固建築物とは認められず、その収去は借主の負担において行うとされていること、及び[4]賃貸借契約には権利金の取決めがなく、土地の賃借人は、土地の明渡しに際して立退料を請求しないと答述していることから、本件賃貸借は、本件建物等の所有を主たる目的とするものとは認められない。
ポイント
この事例は、最高裁判所平成22年7月16日第二小法廷判決(平成20年(行ヒ)第241号)の考え方を基に判断を行った最初の裁決事例である。
要旨
請求人らは、出資額限度法人(定款において退社・解散時に払込出資額を限度として払戻し・分配等を行うことを決めた社団医療法人)であるT会(本件法人)に対する出資持分(本件出資持分)の価額について、本件法人の定款(本件定款)には、払込出資額を超えて払戻しをしないこと、本件法人が解散した場合の残余財産は払込出資額を限度とすることが定められており、請求人らはいずれの場合においても、払込出資額を超えて払戻し等を受けることはできないから、相続税法第22条《評価の原則》の時価、すなわち、本件出資持分の客観的交換価値は、本件払込出資額を上回るものではない旨主張する。
しかしながら、本件法人は出資額限度法人であるが、出資持分の定めのある社団医療法人であり、また、本件定款には払戻し等に係る定めの変更を禁止する条項が存するが、法令において、定款の再度変更を禁止する定めがない中では、このような条項があるからといって、法的に当該変更が不可能になるものではない。そうすると、本件出資持分の権利の内容の範囲については、本件相続時における定款の定めに基づく出資の権利内容がその後変動しないと客観的に認めるだけの事情はないといわざるを得ず、ほかに財産評価基本通達194-2《医療法人の出資の評価》の定める方法で本件定款の下における本件法人の出資を適切に評価することができない特別の事情も認められないから、本件出資持分について、同通達の定める方法により評価した原処分は相当である。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成22年7月16日第二小法廷判決(判タ1335号57頁) 平成18年11月8日裁決(裁決事例集No.72・589頁)
審判所認定地域が各土地に係る広大地通達に定める「その地域」に当たると判断した事例(平成25年10月相続開始に係る相続税の更正の請求に対する更正処分・一部取消し)
裁決事例集 第113集
ポイント
本事例は、各土地の存する地域に係る土地の利用状況及び周辺地域の状況等の事情を総合勘案して、審判所認定地域が各土地に係る広大地通達に定める「その地域」に当たると判断したものである。
要旨
請求人は、相続した土地及び取引相場のない株式の発行会社の有する借地権(本件各土地等)について、①本件各土地等の存するその地域における標準的な宅地の使用は戸建住宅の敷地で、②その標準的な地積は110㎡ないし120㎡であり、③本件各土地等はその標準的な地積に比して著しく広大であり、戸建住宅の敷地として分割して使用する場合、いずれも潰れ地が生じることになるから、財産評価基本通達(平成29年9月20日付課評2-46ほかによる改正前のもの)24-4《広大地の評価》(広大地通達)に定める広大地に該当する旨主張し、原処分庁は、本件各土地等の存するその地域における標準的な宅地の地積は700㎡程度であり、本件各土地等の経済的に最も合理的な使用は、700㎡程度の工場等の敷地として使用することであるから、広大地通達に定める広大地に該当しない旨主張する。
しかしながら、広大地通達に定めるその地域とは、土地の利用状況の連続性や地域の一体性を分断して土地利用上の利便性や利用形態に影響を及ぼすことがあり得る客観的な事情を総合勘案し、利用状況、環境等がおおむね同一と認められる、ある特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域を指すものと解されるところ、本件各土地等の存する地域は、その利用状況及び環境等からみて、幅員の広い幹線道路沿いの地域(本件1地域)とそれ以外の地域(本件2地域)に区分され、本件1地域における標準的な使用は中小の工場の敷地であり、その標準的な地積は670㎡程度であると認められる。一方、本件2地域における標準的な使用は戸建住宅の敷地であり、その標準的な地積は110㎡程度であると認められる。そうすると、本件各土地等の属する地域のうち、本件1地域に存する土地については、地積及び位置等からみて、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく広大な土地とは認められず、広大地には該当しないが、本件2地域に存する土地については、経済的に最も合理的な使用は戸建住宅の敷地であり、標準的な地積に比して著しく広大な土地であって、その開発には潰れ地が生じることから、広大地に該当するものと認められる。
参照条文等
登記簿上、主たる建物及び附属建物と記載されているとしても、当該各建物の機能、配置及び貸付けの状況などから、当該各建物の敷地を区分して評価することが相当であるとした事例(平成22年4月相続開始に係る相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第93集
ポイント
本事例は、登記簿に主たる建物及び附属建物と記載されているとしても、当該各建物が、独立して機能すること、接していないこと及び別の第三者に貸し付けられていることからすると、当該各建物の敷地を区分し、2画地の宅地として評価すべきであるとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人Dと被相続人の共有であった家屋(本件家屋)の敷地(本件土地)の評価単位について、①本件家屋は、登記簿上、主である建物(本件主建物)を「共同住宅」、附属建物(本件附属建物)を「店舗・共同住宅」として記載されているので、本件附属建物は、効用上、本件主建物と一体のものとする登記がされていること、②住宅地図においては、本件主建物と本件附属建物は接していること、③請求人Dと被相続人は、本件家屋を共同住宅及び店舗として賃貸していることから、1画地の宅地として評価すべきである旨主張する。
しかしながら、1画地の宅地の判定は、その宅地を取得した者が、その宅地を使用、収益及び処分をすることができる利用単位又は処分単位であって、原則として、①宅地の所有者による自由な使用収益を制約する他者の権利(原則として、使用貸借による使用貸借権を除く。)の存在の有無により区分し、②他者の権利が存在する場合には、その権利の種類及び権利者の異なるごとに区分して行うものと解されるところ、本件主建物と本件附属建物は別棟で接しておらず、それぞれが独立して機能する建物と認められ、また、本件主建物は共同住宅として、本件附属建物は店舗付住宅として、それぞれ別の第三者に貸し付けられていたことから、本件主建物の敷地部分と本件附属建物の敷地部分は別の利用単位と認められるので、本件土地は、2画地の宅地として評価するのが相当である。
参照条文等
要旨
道路とは広く一般公衆の通行の用に供されている物的施設をいうものと解されるところ、それには法律上公物としての性質を認めて特殊の法的規制を加えた公道と、その開設、維持、管理等について若干の保護、助成等のための規制を設けられた私道、あるいは何らの規制を設けられていない私道が存在する。
建築基準法に規定する位置指定道路は道路交通法第2条に規定する「一般交通の用に供するその他の場所」に該当し、他の道路と等しく同法の適用を受け各種の規制を受けるとともに、敷地である土地について所有権の移転、抵当権の設定・移転のほかは、一般の交通を阻害するような方法で私権を行使することはできない。
本件土地は位置指定道路に間口距離4.2メートルで接しているから、財産評価基本通達に定める無道路地に該当しない。
被相続人は相続開始の8年前に本件土地についてその同族会社を借地人とする建物保有目的の借地権を設定したが、相続開始時には当該会社の建物はなく、当該会社の代表者である請求人の建物が存していたなどの事情に照らし、当該借地権は相続財産評価において借地権と評価する実質を欠いているとして、本件土地は自用地として評価すべきであるとした事例
裁決事例集 第75集 582頁
要旨
本件土地の上には(請求人所有の)本件建物が存するものの、本件法人自身は、本件土地の上に建物を所有していないことから、本件土地賃貸借契約により設定された借地権についてはいまだ対抗力を有していないのであり、仮に、底地である本件土地の所有権が第三者に譲渡された場合には、当該第三者に借地権を対抗できない関係にあり、このことは請求人に対する関係でも同様であり、本件土地の利用権について、本件法人は、建物を所有する請求人には自らの借地権を主張できない関係にたつものということができる。
加えて、財産評価基準書における借地権割合は、借地権の設定に当たり、一時金の支払慣行がある、あるいは、一時金の支払慣行がない場合であっても、借地権の売買が行われたり、また、土地の売買が借地権価額に相当する価額を控除したいわゆる底地価額によって行われたり、借地権の返還を受ける際にいわゆる立退料が支払われる慣行があると認められることに基づき定められているものであるが、本件の場合は、底地である本件土地が第三者に譲渡されれば、当該第三者に借地権を対抗することはできず、したがって、本件法人は対抗力を有しないために借地権が単独で売買される、又は土地の売買が借地権価額を控除した価額によって行われるとは認められず、また、本件土地の上には本件建物が存在しており、それを取得又は除去しない限り、本件法人による本件土地賃貸借契約に基づく建物所有目的は果たし得ない状況にあると認められ、本件土地賃貸借契約を継続する実益がないことから、借地権の返還に当たり立退料の支払を要しないと認められる。
そうすると、本件土地賃貸借契約によって設定された借地権は、本件土地の上に本件建物が存する状況の下においては、本件法人は建物所有目的で本件土地を利用できないほか、本件土地の利用権を実質的に支配しているということもできないし、借地権として評価すべきほどの資本投下もなされていないというべきであり、さらに、市場における流通も想定できないと認められることからすれば、かかる借地権を相続財産評価において借地権と評価するには、その実質を欠くものというべきである。
請求人が、相続により取得した土地及び建物の価額は、財産評価基本通達により評価すべきであり、請求人の主張する不動産鑑定評価額には合理性が認められないとした事例
裁決事例集 第68集 170頁
要旨
請求人は、相続により取得した土地及び建物の価額について、路線価は相続開始日現在までの地価下落が反映されておらず、実際の取引において路線価では売却できないこと、また、建物に居住するためには相当の修理費用が必要であること等から、財産評価基本通達によらず、不動産鑑定士による鑑定評価額により評価すべきであると主張する。
しかしながら、本件土地の所在する地域の地価は平成14年1月1日から相続開始日までの間に20%を超える下落があったものとは認められないなど、本件土地及び建物の価額については、財産評価基本通達を適用して評価することが著しく不適当と認められる特別の事情は認められず、更に、請求人提出の不動産鑑定士による鑑定評価書の評価額は適正な時価であるとはいえないことから、財産評価基本通達の定めに従って評価するのが相当である。
配当還元方式を利用することにより、相続税の負担の軽減を図る目的で本件株式を取得した本件のような場合には、実質的な租税負担の公平という観点から、配当還元方式を適用することはできないとした事例
裁決事例集 第54集 451頁
要旨
- 財産評価基本通達188-2に定める配当還元方式は、単に配当を期待する少数株主を対象とする特例的な評価方法であり、限定的に用いられるべき方法であるところ、請求人らの本件株式の取得から売却に至る一連の行為等から判断すれば、請求人らは、同基本通達で定める配当還元方式を利用することにより、相続税の負担の大幅な軽減を図る目的で本件株式を取得したものと推認されるので、このような場合には、実質的な租税負担の公平という観点から原処分庁が本件株式の価額の算定に当たり、配当還元方式が適用できないと判断したことは相当と認められる。
- 相続税法第22条に規定する時価とは、課税時期においてそれぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額であると解されるところ、本件株式の発行会社は、各月末において客観的な時価による純資産価額を基に自社株式の1株当たりの単価を算定して各出資者に通知し、また、同社の株式の売買もこの価額で行われていることから、当該単価は、同社に出資する場合に適用される一般的な価額と認められるので、本件株式の評価に当たっては、課税時期に最も近い時期における本件株式の客観的な時価による純資産価額の1株当たりの単価を基に算定すべきである。
医療法人の出資持分の評価に際し、相続開始時点において既に退社した社員が出資金払戻請求権を行使していない場合であっても、当該出資持分については、当該退社社員が退社する直前の出資持分の総口数から当該退社社員が有していた出資持分の口数を控除した後の口数を総口数として、財産評価基本通達194-2の定めにより評価するものとした事例
裁決事例集 第83集
要旨
原処分庁は、医療法人K会の出資持分(本件出資持分)について、本件相続開始時点で本件被相続人名義でないものも存するが、実質的に支配・管理していたのは本件被相続人であるから、同人に帰属するのは910口である旨主張する。
しかしながら、財産の帰属については、当該財産の名義のほか、運用状況・取得原資の出えん者と名義人及び管理運用する者との関係・贈与契約の有無等の諸要素を総合勘案して当該財産の実質的な帰属を判定すべきであり、私法上の行為によって当該財産の帰属が変更された場合、当該財産を取得した者は当該財産を自由に利用・処分することができるのであるから、総合勘案に当たっては、当該私法上の行為による担税力の変動を前提に課税関係を判定すべきであり、当事者の実体の伴わない意図で法律行為を行うなど、私法上も当該財産の帰属が変動しないと解すべき特段の事情のない限り、これを否定することは適切ではない。本件においては、K会の設立当初は、本件出資持分910口の全部が本件被相続人に帰属していたと認められるものの、その後、本件被相続人と各相続人との間で本件出資持分合計845口を贈与する旨の契約書が作成されており、当該契約書は真正に作成されたものと認められ、本件被相続人及び当該各相続人との間で実質的にも贈与契約に係る意思が存在していたと認められることから、当該贈与契約は有効に成立しているものと認められる上、当該贈与について社員総会の承認も得ていることからすると、本件出資持分845口については、当該各相続人に移転したと認めるのが相当である。これらのことからすると、本件相続開始時において本件被相続人に帰属する本件出資持分の口数は、65口(910口-845口)となる。
なお、K会の定款の定めによれば、出資持分を有する社員は、退社により社員たる地位を喪失し、K会に対する出資持分を失うとともに、払込済出資額を限度とする出資金払戻請求権を取得することになるところ、当該各相続人は、いずれの者も本件相続開始前に退社していることからすると、当該各相続人は、本件相続開始時において、K会に対する出資持分を失っていることとなるから、本件相続開始時におけるK会の出資持分の総数は、本件被相続人が保有する65口となる。したがって、本件出資持分の評価は、本件被相続人が保有する65口を総口数として、財産評価基本通達194-2《医療法人の出資の評価》の定めにより評価することとなる。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成22年7月16日第二小法廷判決(裁判所Web) 最高裁平成22年4月8日第一小法廷判決(民集64巻3号609頁)
商業施設の敷地等として一体で使用(又は潰れ地が発生しないように区分して使用)することが経済的に最も合理的であると認められるため、広大地に該当しないとした事例(平成26年3月相続開始に係る更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の各通知処分及び重加算税又は過少申告加算税の各賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第118集
ポイント
本事例は、本件地域に存する土地の経済的に最も合理的な使用は、幹線道路沿いの駐車場を備えた商業施設(いわゆるロードサイド店舗)の敷地としての使用であると認められ、A土地は、地積が大きく、駐車場を備えた商業施設の敷地として使用することが可能な土地であり、現に、相続前から駐車場を備えた商業施設の敷地として一体で使用されていることからすると、A土地の経済的に最も合理的な使用は駐車場を備えた商業施設の敷地として一体で使用することであり、潰れ地が生じない場合に該当すると判断したものである。
要旨
請求人らは、相続により取得したA土地及びB土地(本件各土地)について、いずれも財産評価基本通達(平成29年9月20日付課評2-46ほかによる改正前のもの)24-4《広大地の評価》(広大地通達)に定める広大地に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人らの主張する広大地通達に定める「その地域」は、交通量の多い幹線道路沿いの地域と当該道路沿いでない地域を一つの地域とし、また、用途地域、建蔽率及び容積率がいずれも異なる二つの地域を一つの地域としていることから、広大地通達の趣旨に照らして、ある特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域と認めることはできない。そして、当審判所が認定した「その地域」(本件地域)における宅地の標準的な使用である駐車場を備えた商業施設の敷地5画地の平均地積は1,190㎡程度であることからすると、本件地域における「標準的な宅地の地積」は1,190㎡程度であると認められるから、B土地(1,190.61㎡)は広大地通達に定める標準的な地積に比して著しく地積が広大な土地とは認められず、また、本件地域に存する土地の経済的に最も合理的な使用は、幹線道路沿いの駐車場を備えた商業施設(いわゆるロードサイド店舗)の敷地としての使用であると認められ、A土地(2213.77㎡)は、地積が大きく、駐車場を備えた商業施設の敷地として使用することが可能な土地であり、現に、相続前から駐車場を備えた商業施設の敷地として一体で使用されていることからすると、A土地の経済的に最も合理的な使用は駐車場を備えた商業施設の敷地として一体で使用することであり、潰れ地が生じない場合に該当する。したがって、本件各土地はいずれも広大地通達に定める広大地に該当しない。
なお、B土地の評価に当たり、適用する奥行価格補正率が誤っていたため、原処分の一部を取り消した。
参照条文等
所有する宅地とその宅地に隣接する相当の地代を支払って借り受けている借地権は、一体で評価することが相当であるとした事例(平成22年8月相続開始に係る相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第95集
ポイント
本事例は、所有する宅地に隣接する宅地を相当の地代を支払い借り受けている場合において、相当の地代を支払って借り受けている借地権の価額は零と評価されるが、当該借地権は土地を専属的に利用できる権利であるから、所有する宅地と当該借地権が一体で利用されている場合には、これらを併せた全体を評価単位(1画地の宅地)として一体で評価することが相当であるとしたものである。
要旨
請求人らは、相続により取得し、隣接する各借地(本件各借地)とともに貸家の敷地として利用していた宅地(本件宅地)の価額について、本件各借地に係る借地権は、相当の地代の支払により、その価額が零とされ財産的価値がないものであるから、財産的価値がない使用借権が設定された場合と同様に、本件宅地のみを財産評価基本通達7-2《評価単位》(1)に定める評価単位(1画地の宅地)として評価すべきと主張する。
しかしながら、本件各借地に係る借地権は、借地借家法上の借地権であり、被相続人は、本件各借地を継続的かつ専属的に利用できる権利を有し、相続開始日において、本件宅地と本件各借地を併せて、貸家の敷地としてその全体を一体として利用していたものであるから、借主の死亡が終了原因とされ、人的つながりのみを基盤とする使用借権が設定された場合と同一にみることはできないので、本件宅地の価額は、隣接する本件各借地と併せた全体を評価単位(1画地の宅地)として評価することが相当である。
参照条文等
相続税法第22条 財産評価基本通達7-2 昭和60年6月5日付直資2-58ほか「相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて」 昭和48年11月1日付直資2-189ほか「使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて」
参考判決・裁決
静岡地裁平成19年7月12日判決(税資257号順号10752) 千葉地裁平成15年4月22日判決(税資253号順号9330)
要旨
- 請求人らは、本件貸宅地については、財産評価基本通達(以下「評価通達」という。)に基づき算定した評価額は時価を超えている状態にあることから、評価通達によらず、他の合理的な方法に基づき時価を算定すべきであり、具体的には、R不動産鑑定士の鑑定評価額(以下「請求人ら鑑定額」という。)が時価である旨主張する。一方、原処分庁は、道路の用に供されている部分のある6区画については、L不動産鑑定士らの鑑定評価額(以下「原処分庁鑑定額」という。)を基としてその道路部分の鑑定額を補正した金額(以下「原処分庁評価額」という。)が、それ以外の2区画については原処分庁鑑定額が時価である旨主張する。
- しかしながら、時価とは、当該財産の客観的な交換価値をいうものと解されるところ、課税実務上、土地等の評価については、評価通達に定められた画一的な評価方法が採用されているが、これは、個別に評価する方法を採ると、その評価方式、基礎資料の選択の仕方等により、評価額に格差が生じることを避けがたく、また、課税庁の事務負担が重くなり、回帰的かつ大量に発生する課税事務の迅速な処理が困難となるおそれがあることなどから、課税の適正や納税者間の公平を図ることが合理的であるという理由によるものと解される。
ただし、評価通達に基づき算定された土地等の評価額が、客観的交換価値を上回るなど、評価通達に基づき評価することが著しく不適当と認められる特別な事情がある場合には、評価通達に基づく評価方法によらず、その他の合理的な評価方法により評価することができると解される。 - 本件貸宅地の評価額については、評価通達に基づき算定した評価額が、請求人ら鑑定額及び原処分庁評価額・原処分庁鑑定額のいずれをも上回っていることから、これらの鑑定額等について検討したところ、次のとおりである。
(1)請求人ら鑑定額
請求人ら鑑定額は、年間支払賃料を還元利回りで還元して算定した地代徴収権の価値と、更地価格を割引率で割り引いて算定した更地の復帰価値との合計額から、市場性の減退等を理由とした減額をして、底地価格を決定している。
しかしながら、地代の還元利回りと更地への復帰価値を算定するための割引率とは異なる性質のものであるにもかかわらず、特段の理由もなく同一の利率を採用していることから、その利率は適切なものとは認められない。また、更地の復帰価値の基準となる更地価格の決定に当たって、鑑定評価を行う場合に規準としなければならないとされている地価公示価格を、数値の具体的な算定根拠が明らかでない個別格差を乗じて調整しているなど、その更地価格は合理性が認められない。更に、市場性の減退を理由とした減額にも具体的な根拠が示されていない。
以上のことから、請求人ら鑑定額は採用することはできない。
(2)原処分庁評価額・原処分庁鑑定額
原処分庁鑑定額における底地価格の決定は、還元利回り、割引率、更地価格とも相当であり、請求人ら鑑定額に比べ合理性が認められる。
しかしながら、原処分庁評価額は、原処分庁鑑定額において判定された道路部分の価値率10%を、評価通達の定めを準用して0%に置き換え、同鑑定額を補正して算定しているが、評価通達によらず不動産鑑定評価基準により評価するものであるから、単に、評価通達における取扱いを根拠として、当該価値率を0%とすることは相当とは認められない。道路部分の価値率は、原処分庁鑑定額が採用した10%とするのが相当である。
請求人が相続により取得した土地の時価について、請求人の主張する不動産鑑定評価額には合理性が認められず、財産評価基本通達等により難い特別な事情は認められないから、一般的に合理性を有するものと解される財産評価基本通達等に基づき評価した評価額が相当であるとした事例
裁決事例集 第71集 505頁
要旨
本件各土地の時価について、請求人は、原処分庁評価額は、相続税法第22条に規定する時価を適正に反映しておらず、時価を超えており違法であるから請求人鑑定評価額である旨主張する。
ところで、財産評価基本通達及び同通達に基づき国税局長が定めた財産評価基準(以下、これらを併せて「評価通達等」という。)による評価は、一般的に合理性を有するものと解され、評価通達等を適用して評価することが著しく不適当と認められる特別な事情が存する場合、すなわち、評価通達等により算定される土地の評価額が客観的交換価値を上回る場合には他の合理的な評価方法により時価を求めるべきものと解されている。この場合の評価通達等により算定される土地の評価額が客観的交換価値を上回っているといえるためには、これを下回る不動産鑑定評価が存在し、その鑑定評価が一応公正妥当な鑑定理論に従っているというのみでは足りず、同一の土地について他の不動産鑑定評価があればそれとの比較において、また、周辺における公示価格や都道府県地価調査による基準地の標準価格の状況、近隣における取引事例等の諸事情に照らして、評価通達等により算定された土地の評価額が客観的交換価値を上回ることが明らかであると認められることを要するものと解されている。
これを本件についてみると、請求人鑑定評価額は、更地価格の算定に当たり、公示価格との規準による規準価格を採用せずに比準価格のみを採用し、規準価格との均衡を図っているとはいい難く相当ではないこと、また、請求人鑑定の個別格差補正等による減価に合理性は認められないこと等から、請求人鑑定評価額が時価であるとは認められない。
したがって、本件各土地について評価通達等により難い特別な事情は認められないから、本件各土地の評価額は、一般的に合理性を有するものと解されている評価通達等に基づき評価するのが相当である。
財産評価基本通達の定めにより配当還元方式で評価されることを利用して贈与税の負担の軽減を図る目的で取得した本件株式については、時価純資産価額を基に評価するのが相当であるとした事例
裁決事例集 第55集 533頁
要旨
贈与者が取引相場のない株式である本件株式を取得した目的は、事業から生じる配当を期待したものではなく、本件株式が財産評価基本通達の定めにより配当還元方式で評価されることを利用して贈与税の負担の軽減を図るものと解されるところ、かかる目的のために取得した本件株式については、単に配当を期待するにとどまる少数株主を対象とした特例的な評価方法である配当還元方式を適用すると実質的な租税負担の公平を著しく害することとなるから、本件株式の評価に当たっては、当事者等が客観的な交換価値と認識し、それが不特定多数の当事者間でも通常成立すると認められる価額である時価純資産価額を基に評価するのが相当である。
贈与財産である宅地について、借地権の存する土地として評価するのが相当とした事例( 平成21年分の贈与税の更正処分、 平成21年分の贈与税に係る過少申告加算税の賦課決定処分・ 一部取消し、 全部取消し)
裁決事例集 第95集
ポイント
本事例は、贈与により取得した土地について、当該土地には借地権があるため、自用地としての価額から借地権の価額を控除して評価すべきであるとの請求人の主張を認め、処分の一部を取り消したものである。なお、本事例は相続税法第21条の9《相続時精算課税の選択》第1項の適用事案である。
要旨
原処分庁は、請求人が母からの贈与(本件贈与)により取得した各土地(本件土地)について、請求人が代表者であるJ社が建築した建物(本件建物)は、本件贈与時前に滅失し、滅失後はJ社によって本件土地に建物は再建されていないことから、本件贈与時には、本件土地に係る借地権(本件借地権)は滅失している旨主張する。
しかしながら、借地法(大正10年法律第49号、平成4年8月1日廃止前のもの)第2条《借地権の存続期間》第1項ただし書は、建物がその期間満了前に朽廃したときは借地権は消滅する旨規定され、滅失はこれと区分され、建物が滅失したことのみをもって借地権は消滅しないと解されていることから、この点についての原処分庁の主張は採用できない。J社は、遅くとも昭和63年から本件贈与時まで、本件土地の地代を支払っていたことが認められ、また、母は、亡父から本件土地を相続してから本件贈与時までの間に、J社が本件土地の使用を継続することに対して何ら異議を述べておらず、一方、J社は本件土地を継続して使用していたことが認められることからすると、遅くとも昭和63年に、J社と亡父の間には、本件土地に係る本件建物の所有を目的とする賃貸借契約が成立するとともに、母が亡父から本件土地を相続してから本件贈与時まで、同契約は継続しているものと認められる。したがって、本件贈与時には本件借地権は存在したものと認められる。
参照条文等
参考判決・裁決
[1]評価対象地は当該地域の標準的な使用に供されているとはいえず、開発を了しているとはいい難いこと等から広大地に該当するとし、また、[2]無道路地の評価において、実際に利用している路線が二つある場合は、通路開設費用の価額の低い方の路線が利用通路であると解するのが相当であるとした事例
裁決事例集 第71集 533頁
要旨
- 原処分庁は、自治会の集会所敷地として使用され既に開発を了しており、隣接地と比較しても著しく広大な地積とは認められないから、広大地補正の適用は認められない旨主張する。
しかしながら、[1]当該地域の標準的な使用は戸建住宅地と認められるところ、本件土地は、自治会の集会所敷地として利用されているものの、半分以上が空閑地となっていることからすれば標準的な使用に供されているとはいえないので開発を了しているとはいい難いこと、及び、[2]当該地域内の標準的な宅地の5倍程度の地積を有し、また、戸建住宅とする場合には都市計画法第4条第14号に規定する道路の負担が必要と認められることからすれば、広大地に該当するものと解するのが相当であり、原処分庁の主張には理由がない。 - 財産評価基本通達(以下「評価通達」という。)20-2《無道路地の評価》は、通路開設費用は接道義務に基づき最小限度の通路を開設する場合のその通路に相当する部分の価額とする旨定めていることから、無道路地において、実際に利用している路線が二つある場合には、通路開設費用の価額の低い方の路線が利用路線であると解するのが相当である。
そうすると、本件においては、北側の道路も東側の道路も実際に利用されているが、北側の道路を利用路線とする方が必要となる地積が少ない結果、接続道路の価額が少ないこととなるので北側の道路が利用路線となる。
したがって、東側の道路を利用路線として通路開設費用を算定している請求人及び原処分庁の主張には理由がない。
取引相場のない株式を純資産価額によって評価する場合に、租税負担の公平の観点から特別な理由があると認められるときは、法人税額等相当額を控除せずに評価することが妥当であるとした事例
裁決事例集 第55集 556頁
要旨
被相続人が本件出資の取得に際し、著しく低額な価額で現物出資を行ったことは、多額の評価差額を創り出し、これを形式的に財産評価基本通達185を適用して法人税額等相当額を控除して計算することにより、相続税の負担の軽減を図るためのものであると推認されるところ、この場合に法人税額等相当額を控除して評価することは、他の納税者との間の実質的な租税負担の公平という観点からして看過ごし難いといわざるを得ず、加えて、税負担の累進性を補完するとともに富の再配分機能を通じて経済的平等を実現するという相続税法の立法趣旨からしても著しく不相当というべきであるから、本件には、財産評価基本通達に定める原則的な評価方法によらないことの特別な理由があると認められる。
したがって、本件出資は、法人税額等相当額を控除せずに評価することが妥当である。
土地上に建物を有していた被相続人が当該土地の所有者に対し地代として支払っていた金員は、当該土地の使用収益に対する対価であると認められないから、被相続人が当該土地上に借地権を有していたとは認めることはできないとした事例(平成24年10月相続開始に係る相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・全部取消し)
裁決事例集 第106集
ポイント
本事例は、土地上に建物を有していた被相続人が当該土地の所有者に対し地代として支払っていた金員が、当該土地の固定資産税等年税額を超えていたものの、その他の事実関係からすると、かかる事情のみでは、当該金員が本件土地の使用収益に対する対価であるとは認めるに足りないというべきであるとして、被相続人が当該土地上に借地権を有していたとは認めることはできないと判断したものである。
要旨
原処分庁は、①本件土地上に建物を有していた被相続人が、本件土地の所有者である請求人に対し地代として金員(本件金員)を支払っていたこと、②請求人は本件金員を不動産所得に係る地代収入として所得税の確定申告をしたこと、③本件土地に係る各年度の固定資産税相当額及び都市計画税相当額の合計額(固定資産税等年税額)は変動するにもかかわらず本件金員の額が一定であり、請求人と被相続人との間において本件土地に係る通常の必要費を負担することを約していたとは認められないこと、④本件金員の年額は、本件土地に係る相続開始年度の固定資産税等年税額に本件建物に係る被相続人の持分を乗じた金額を優に上回るから、使用貸借通達からも使用貸借とみる余地はないことなどを理由に、被相続人は本件土地上に借地権を有していた旨主張する。
しかしながら、①被相続人による本件土地の使用収益は、本件金員の支払が開始する以前(本件土地を請求人が被相続人の父から相続により取得したとき以前)においては使用貸借契約に基づくものであったと認められること、②本件金員の支払開始に当たり、請求人と被相続人との間で契約書が作成されたなどの事情は見当たらないこと、③本件金員の支払開始の経緯や本件金員の算定根拠も明らかではないこと、さらに、④被相続人と請求人は親子であり、本件金員の支払が開始された当時、請求人が未成年者であったことを併せ考慮すると、本件金員が本件土地の使用収益に対する対価であると認めるに足りないというべきであるから、被相続人による本件土地の使用収益は使用貸借契約に基づくものであったと認めるのが相当であり、被相続人が本件土地上に借地権を有していたとは認めることはできない。
参照条文等
民法第593条、第601条
参考判決・裁決
最高裁昭和35年4月12日第三小法廷判決(民集14巻5号817頁) 最高裁昭和41年10月27日第一小法廷判決(民集20巻8号1649頁) 平成8年3月29日裁決(裁決事例集No.51)
ポイント
本事例は、広大地の判定に当たり、開発許可面積基準を指標とすることに合理性はあるものの、当該基準を満たさないことをもって直ちに広大地に該当しないとすることはできず、評価対象地の経済的に最も合理的な使用は道路を開設して戸建住宅の敷地とする開発を行うことであるなどとして、評価対象地は広大地に該当すると判断したものである。
要旨
原処分庁は、財産評価基本通達24-4《広大地の評価》に定める広大地に該当するか否かの判定に当たり、①評価対象地(本件土地)は共同住宅の敷地として利用されており、現に有効利用されていること、②その地域における標準的な宅地の面積に比して著しく地積が広大かについては、指標となる各自治体が定める開発許可を要する面積基準(開発許可面積基準)を満たすか否かにより判断すべきであること、③本件土地は、路地状開発をすることができ、公共公益的施設用地の負担が必要とは認められないことから、本件土地は広大地に該当しない旨主張する。
しかしながら、①その地域における標準的な宅地の使用は、戸建住宅の敷地としての利用であるから、本件土地は、現に宅地として有効利用されているとは認められないこと、②広大地の判定に当たり、開発許可面積基準を指標とすることに合理性はあるものの、当該基準を満たさないことをもって直ちに広大地に該当しないとすることはできないこと、また、③本件土地の経済的に最も合理的な使用は、道路を開設して戸建住宅の敷地とする開発を行うことであると認められることから、広大地に該当する。
参照条文等
本件土地の賃貸借では権利金の授受に代えて相当の地代が授受されていたから、本件土地の評価において、財産評価基本通達25の定めによる借地権の価額は控除できないとした事例
裁決事例集 第79集
要旨
請求人は、相続により取得した貸宅地である本件土地について、財産評価基本通達25の定めに基づき、本件土地の自用地としての価額からその借地権の価額を控除した金額によって評価すべきである旨主張する。
しかしながら、貸宅地の評価において、借地権の価額を控除するのは、借地権の設定により、当該宅地の自用地としての価額のうち借地権部分に相当する経済的価値の地主から借地人への移転があり、借地人が経済的に相当の価額を有する借地権を取得したとみるべき経済的実態が存在するからであって、この場合、借地権部分に相当する経済的価値の移転の対価というべき権利金を授受することが広く行われていることからすると、借地権の設定に当たり権利金を授受する取引上の慣行があるにもかかわらず権利金を授受しなかった場合であっても、その土地の使用の対価として相当の地代を授受するときは、地主にとって経済的実態において自用地と異なることのない土地となることから、借地人への経済的価値の移転はなく、控除すべき借地権の価額もないこととなる。
これを本件についてみると、本件土地は、借地権の設定に際し、通常権利金を支払う取引上の慣行のある地域内にあるところ、本件土地の賃貸借契約は、権利金の授受に代えて相当の地代を授受する内容であったと認められることから、本件土地の借地権部分に相当する経済的価値の賃貸人から賃借人への移転があったとは認められず、また、本件相続開始日においても相当の地代を収受していたと認められる。
そうすると、本件土地の価額は、財産評価基本通達25の(1)の評価方法によることはできず、「相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて」の6の定めにより、本件土地の自用地としての価額の100分の80に相当する金額によって評価するのが相当である。
参照条文等
相続税法第22条 財産評価基本通達25 「相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて」1、3、6 法人税法施行令第137条 法人税基本通達13-1-2
請求人らが贈与により取得した中古マンションの評価に当たり、財産評価基本通達により難い特別の事情はなく、建替えが行われる蓋然性が極めて高い事情等を考慮していない鑑定評価額は採用できないとした事例
裁決事例集 第81集
要旨
請求人らは、贈与により取得したマンション住戸である本件各不動産について、建物の専有部分の床面積に対応するその敷地面積が広大であるから、本件各不動産の時価を財産評価基本通達の定めにより算定すると、売買の実態と乖離した高い評価額が算定されること及び本件各不動産は、住戸面積は狭く、建物等も老朽化していることなどの特別な事情があるから、本件各不動産の価額は鑑定評価額によるべきである旨主張する。
しかしながら、①本件各不動産の敷地部分について、本件贈与者の有する共有持分が他の区分所有者が有する共有持分と質的に異なることもないのであるから、建物の専有部分の床面積に対応するその敷地の共有持分が広大であれば、それに連動して本件各不動産の価額も上昇又は下落することになること、②財産評価基本通達においては、土地の形状等に応じて、奥行距離に応じた奥行価格補正率を適用したりするなどして、土地の減価要素を考慮した評価方法が採られていること、及び③同通達は、家屋の評価については、固定資産税評価額に1.0の倍率を乗じて計算した金額によって評価する旨定めており、この固定資産税評価額は、請求人らが主張する事情については、それを織り込んで評価していることからすれば、同通達の定めにより本件各不動産を評価した場合に、適正な時価が求められず、著しく課税の公平を欠くことが明らかな場合に当たるとはいえない。他方、本件各不動産の評価に際しては、贈与の日において建替えの蓋然性が極めて高く、その場合には敷地の持分価額に見合う既存建物の2倍以上の面積の建物を取得することが予定されていたことなどの事情を考慮して価額を算定すべきところ、請求人らの主張する鑑定評価額は、これらの事情が十分に考慮されておらず、不動産鑑定評価基準に定める予測の原則に基づく分析検討が客観的かつ十分にされていないといわざるを得ないから、本件各不動産の客観的な交換価値を表しているとは認められない。
したがって、本件各不動産の評価に当たり、財産評価基本通達の定めにより難い特別な事情は認められず、同通達の定めにより評価した価額をもって本件各不動産の時価と認めることが相当である。
参照条文等
財産評価基本通達24-4《広大地の評価》に定める「その地域における標準的な宅地の地積」については、 河川や山などの自然的状況、 行政区域、 都市計画法による土地利用の規制など公法上の規制等、 道路、 鉄道及び公園など、土地の使用状況の連続性及び地域の一体性を分断する場合がある客観的な状況を総合勘案し、利用状況、環境等が概ね同一と認められる、ある特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域における標準的な宅地の地積に基づいて判断するのが相当であるとした事例
裁決事例集 第72集 565頁
要旨
財産評価基本通達24-4《広大地の評価》(以下「本件通達」という。)を定めた趣旨は、評価の対象となる宅地の面積が、①当該宅地の価額の形成に関して直接影響を与えるような特性を持つ当該宅地の属する地域の標準的な宅地の面積に比して著しく広大で、②評価時点において、当該宅地を当該地域において経済的に最も合理的な特定の用途に供するためには、公共公益的施設用地の負担が必要な都市計画法に規定する開発行為を行わなければならない土地である場合にあっては、当該開発行為により土地の区画形質の変更をした際に、公園等の公共公益的施設用地としてかなりの潰れ地が生じ、このような土地の評価に当たっては、潰れ地が生じることを当該宅地の価額に影響を及ぼすべき客観的な個別事情として、価格が減少していると認められる範囲で減額の補正を行うこととしたものである。
このような本件通達を定めた趣旨等にかんがみれば、本件通達でいう評価宅地の属する「その地域」とは、①河川や山などの自然的状況、②行政区域、③都市計画法による土地利用の規制など公法上の規制等、④道路、⑤鉄道及び公園など、土地の使用状況の連続性及び地域の一体性を分断する場合がある客観的な状況を総合勘案し、利用状況、環境等が概ね同一と認められる、ある特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域を指すものと解するのが相当である。
これを本件についてみると、本件各土地が属する「その地域」とは、市道n線、市道k線、市道p線、及び県道m号線に囲まれた地域(以下「本件地域」という。)をいうものと解するのが相当であり、本件地域における宅地の利用状況は、一部は住宅用地として使用されているものの、大部分は、倉庫敷地、事務所敷地及び駐車場に利用されており、それらの地積の平均は、約1,970平方メートル程度であると認められるから、本件各土地は、本件地域の標準的な宅地の地積に比して著しく広大な宅地であるとはいえず、本件通達を適用することはできない。
青地(旧水路)により分断されている2つの土地についてその利用状況等から1つの評価単位とすると判断した事例(平成24年11月相続開始に係る相続税の再更正処分及び更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第105集
ポイント
本事例は、青地(旧水路)により分断されている2つの土地についてその利用状況等(物理的及び法的)から1つの評価単位として取り扱うのが相当であると判断した上で、各土地を評価するに当たっては、まず青地部分の土地を含む各土地全体の評価額を算出し、その後、当該評価額から青地部分の土地の価額を控除して評価するのが相当であると判断したものである。
要旨
原処分庁は、本件1土地(生産緑地)と本件2土地(生産緑地)は、市が所有する青地(旧水路)により分断されており、各土地は別個の評価単位として取り扱うべきである旨主張する。
しかしながら、相続開始日において、①本件1土地と本件2土地との間には青地が介在していたものの、当該青地は全て埋め立てられており、水路としての機能を失っていたこと、②本件1土地及び本件2土地は、青地部分の土地を含めて一体の畑として耕作されていたこと、③市は、本件1土地、本件2土地及び青地部分の土地を一体の生産緑地地区に定める都市計画を決定していたことなどの各事実が認められる。したがって、本件1土地及び本件2土地の各土地は、物理的にも法的にも分断されておらず、また、その利用も一体であったと認められるため、一団の生産緑地、すなわち1つの評価単位として取り扱うのが相当である。そして、本件1土地及び本件2土地の各土地を評価するに当たっては、まず青地部分の土地を含む各土地全体の評価額を算出し、その後、当該評価額から青地部分の土地の価額を控除して評価するのが相当であり、その場合、①当該青地部分の土地の売買が成立し得るのは請求人らと市の間に限定されること、②市が当該青地部分の土地を請求人らに売却した場合の売買代金である払下げ費用相当額は、国有財産評価基準によりその算定方法が画一的に決められていることからすると、青地部分の土地の価額については、相続開始日において当該青地が請求人らに払い下げられたとした場合の払下げ費用相当額とするのが相当である。
ポイント
本事例は、所有する土地(雑種地)の一部を自ら使用し、他の部分を使用貸借により宅地又は雑種地として貸し付けている場合に、地目が相違しても、その全体を一団の雑種地として評価するのが相当であると判断したものである。
要旨
請求人らは、テニスクラブ(本件テニスクラブ)の敷地の一部として利用している各土地の価額は、本相続財産以外の土地を含む本件テニスクラブの敷地として利用されていた土地全体を一つの「評価単位」として財産評価基本通達24-4《広大地の評価》(本件通達)に定める広大地補正率を適用すべきである旨、及びf市との締結に基づく各協定書において、開発行為を行おうとした場合に制約を受けたことを理由にその協定に関する区域を一つの評価単位として、居宅として利用されていた土地(本件B区画)及び駐車場として利用されていた土地(本件C区画)を評価する際に、本件通達に定める広大地補正率を適用して評価すべきである旨主張する。
しかしながら、土地の評価単位は、原則として、遺産分割後の取得者ごとに区分した後、利用の単位となっている土地ごとに判定した評価単位を基に評価すべきであり、本件の場合、取得者別、利用の単位別に区分した4区画の土地をもって、それぞれを一つの評価単位として評価すべきである。また、本件B区画及び本件C区画について、協定を締結したとの事実関係を前提としても、本件通達の定めに照らし、何ら影響を及ぼすものではない。したがって、請求人らの各主張は認めることはできない。
なお、本件に係る各相続財産の土地の評価単位の認定につき、当該土地の使用貸借に係る利用状況などに照らせば、使用貸借に基づく権利は、貸主、借主間の人的なつながりのみを基盤とするもので借主の権利が極めて弱いことから、自己の所有する雑種地の一部を自ら使用し、他の部分を使用貸借により宅地又は雑種地として貸し付けている場合には、たとえ地目が相違しても、その全体を一団の雑種地として評価するのが相当であり、また、同様に、自己の所有する宅地又は雑種地に隣接する宅地又は雑種地を使用貸借により借り受け、自己の所有する宅地又は雑種地と一体として利用している場合であっても、所有する宅地又は雑種地のみを1画地の宅地又は一団の雑種地として評価するのが相当である。
参照条文等
ポイント
この事例は、借地権の設定されている土地の評価に当たり、賃貸人と賃借人との間においては、借地権の価額についての認識のないことが明らかであることから、当該土地は、自用地としての価額により評価すべきであるとしたものである。
要旨
請求人は、請求人の父(本件被相続人)の相続(本件相続)により取得した土地(本件土地)を、本件相続開始の日において、図書館建物及び駐車場施設の敷地としてa市との間で賃貸借契約を締結し(本件賃貸借契約)、賃貸していたのであるから、本件土地の価額は、財産評価基本通達25《貸宅地の評価》の定めに従い、自用地としての価額から借地権の価額を控除した価額で評価すべきである旨主張する。
しかしながら、確かに、本件賃貸借契約に係る契約書(本件賃貸借契約書)の記載内容及びその解釈並びに本件土地の使用の主目的からすれば、本件土地には、当該図書館建物の所有を目的とする借地権の設定がされたものと認められるものの、①本件賃貸借契約書には、本件被相続人が本件土地の譲渡を希望するなどの場合には、賃借人であるa市は更地価格を意味する「適正価格」で買い取る旨が定められていること、②本件賃貸借契約における賃貸料の額からみて、本件土地上の借地権の価額については何ら考慮されていないこと、③a市が本件土地に係る鑑定評価を依頼した際に、a市は本件土地を買い取るに当たって考慮すべき借地権の価額は存在していなかったと認識していたものと認められ、また、実際にも本件土地は鑑定評価額に近似した価額で請求人からa市に譲渡されており、借地権の存在を考慮した価額で譲渡されたものではないことが明らかであることなどからすると、本件相続開始の日において、借地権が存した本件土地の自用地の価額から控除すべき借地権の価額はなかったと認められる。このような場合には、財産評価基本通達を形式的に適用すべきではなく、本件土地の評価に当たり、自用地としての価額から借地権の価額を控除しないこととするのが相当である。
参照条文等
借地借家法第2条 相続税法第22条
相続により取得した各土地は借地権の目的となっている宅地には該当しないと判断した事例(平成27年12月相続開始に係る相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第116集
ポイント
本事例は、相続により取得した各土地について、貸借関係における権利金の有無、支払地代の水準、貸主と借主との関係及びその契約の経緯や趣旨を総合的に考慮すると、使用貸借契約に基づくものと認めるのが相当であるため、当該各土地は借地権の目的となっている宅地には該当しないと判断したものである。
要旨
請求人らは、それぞれが相続した被相続人所有の土地(本件各土地)について、被相続人と請求人らとの間で本件各土地上の請求人らのそれぞれの建物の所有を目的とした各土地賃貸借契約(本件各土地契約)を締結していたところ、請求人らは本件各土地契約に基づく地代に係る金員(本件各支払金員)を被相続人に対してそれぞれ支払っており、その年額は本件各土地に係る固定資産税及び都市計画税(固定資産税等)の額をそれぞれ上回っていたのであるから、使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについての1《使用貸借による土地の借受けがあった場合》の定めによって、本件各土地契約は使用貸借に係るものではないなどとして、本件各土地は借地権の目的となっている土地である旨主張する。
しかしながら、①請求人らによる本件各土地の使用は、本件各支払金員の支払が開始する以前においては使用貸借によるものであって、その後においても、請求人らと被相続人との間で権利金の授受はないこと、②本件各支払金員の額は固定資産税等の額と同程度であること、③本件各支払金員の年額は被相続人が第三者に対して賃貸していた本件各土地の近隣の駐車場用地の賃料の年額に比して低廉であること、④被相続人と請求人らは親子関係にあることなどから客観的に判断すると、本件各支払金員は本件各土地の使用収益に対する対価であるとは認められず、請求人らは使用貸借契約に基づき使用収益したものと認めるのが相当であることから、本件各土地は借地権の目的となっている土地であると認めることはできない。
なお、本事例においては、一部の土地について、評価単位を見直したところにより評価したことに伴い、原処分の一部を取り消している。
参照条文等
相続税法第22条 「使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて」1 民法593条、601条
参考判決・裁決
最高裁昭和41年10月27日第一小法廷判決(民集20巻8号1649頁) 平成29年1月17日裁決(裁決事例集No.106) 平成13年9月27日裁決(裁決事例集No.62)
要旨
本件土地が属する地域は、①幹線道路沿であることから、規模に規制のない店舗等を許容する第二種住居地域に指定され、その結果、幹線道路の交通量を勘案して、沿道の後背地にある主に第一種中高層住居専用地域の住環境を保護する効果をもたらしている地域であり、②商業・文化機能等を強化した建造物の誘導等を推進する地域にあり、駅前商業地域に隣接して極めて交通の便も良く、中高層の集合住宅等のほか大規模な店舗や事務所の建築に適した地域で、③現に戸建住宅の他、アパート、マンション、店舗併用住宅などの中高層の集合住宅及び事務所、大規模な店舗などの商業施設が混在し、④加えて、建築物の建築をするために開発許可が必要となる地積500平方メートル以上の土地に係る建築物の建築状況をみると、集合住宅等や商業施設などが建築されている状況にあり、特に、本件土地と幹線道路を挟んで南側に位置する本件土地と規模、形状、接道状況が酷似する土地には、7階建ての分譲マンションが建築されている。
そうすると、本件土地は、社会的・経済的・行政的見地から総合的にみても、マンション適地等に該当するものと認められ、財産評価基本通達24-4に定める広大地には該当しない。
請求人が主張する本件土地の売却価額及び鑑定評価額をもって、本件土地の価額について、財産評価基本通達の定めによらないことが正当と認められる特別の事情があるとは認められないとした事例
裁決事例集 第88集
要旨
請求人は、相続財産である本件土地の価額について、①遺言(本件遺言)により換価による分割方法の指定及び遺言執行者の指定がされており、請求人が売却に参加できないという事情があり、また、本件土地の最有効使用が区画分譲地であって、購入者が不動産業者に限定されるという実情があり、当該換価による価額(本件換価価額)は、当該実情に合ったところで決定されたものであるから、相続税法第22条《時価》に規定する時価であること及び②本件換価価額が時価であることは、請求人の依頼に基づく不動産鑑定評価額(請求人鑑定額)からも明らかであることから、本件土地の価額は本件換価価額とすべきである旨主張する。
しかしながら、①相続税法第22条に規定する時価とは、「取得の時」における「不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額」を示すものであるから、「特定の者の間で限定的に行われた取引」における価額は、時価としての前提を欠くものであり、また、本件相続開始日の後にされた本件遺言に基づく換価による分割などが本件土地の価額を減ずる要因となるものでもない。そして、②請求人鑑定額は、その算定過程に不合理な点が認められ、本件換価価額が時価であることを明らかにしたものであるとは認められない。さらに、③異議審理庁が財産評価基本通達に基づいて算出した価額は、当審判所が近隣の地価公示地の公示価格に基づいて算出した本件土地の時価を超えるものではない。したがって、本件土地の価額について、財産評価基本通達の定めによらないことが正当と認められる特別の事情はないから、本件相続税の課税価格に算入されるべき本件土地の価額は、同通達の定めによる価額を基礎とすべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
東京高裁平成17年2月23日判決(税資255号順号9941) 東京高裁平成12年9月12日判決(税資248号711頁)
要旨
財産評価基本通達185のかっこ書に定める「通常の取引価額」について、原処分庁は、本件建物は相続開始日の約2年前に取得され取得価額が明らかであることから、この取得価額を基に減価償却費相当額を控除した金額、すなわち評価会社の帳簿価額により評価するのが相当である旨主張し、請求人は、請求人が求めた鑑定評価書の鑑定評価額によるべきである旨主張する。
しかしながら、本件鑑定評価額は、その価格時点を本件相続開始日とし本件建物の再調達原価を求めた上、これを減価修正し、更に借家権の割合を控除して貸家の用に供されているものとして算出されているところ、その鑑定根拠については当審判所が調査した結果、特に不相当と認められる要素はない。
そうすると、本件鑑定評価額は帳簿価額よりも時価を反映したものとして、これをもって財産評価基本通達185のかっこ書にいう「通常の取引価額」と認めるのが相当である。
同族会社が所有する建物の敷地について、当該会社の借地権が存すると判断した事例(平成26年4月相続開始に係る相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・全部取消し、一部取消し、棄却)
裁決事例集 第116集
ポイント
本事例は、同族会社が所有する建物の敷地(本件敷地)について、当該会社が医療法人からの転貸ではなく、直接被相続人らから借りていると認められること、また、将来、当該会社が本件敷地に係る借地権を無償で返還するというような特別な事情も存しないことから、当該会社の借地権が存すると認めたものである。
要旨
原処分庁は、被相続人らは、同族会社(本件会社)が所有する登記された建物の敷地(本件敷地)を含む全ての土地(本件土地)を医療法人に賃貸しているから、本件敷地は、医療法人が本件会社に更に賃貸(転貸)したものというべきであり、また、被相続人ら及び医療法人は、土地の無償返還に関する届出書を原処分庁へ提出しているから、本件敷地の評価は、自用地としての価額の80%で評価することとなる旨主張する。しかしながら、本件会社は、権利金の支払はしていないものの、本件敷地の上に、昭和55年8月に上記の建物を建築した後、直接被相続人らから無償又は有償で本件敷地を借りていたと認められ、また、本件会社が被相続人らに対し、将来、本件敷地に係る借地権を無償で返還するというような特別の事情も存しないことからすれば、本件敷地については、本件会社の借地権が存すると認めるのが相当である。
参照条文等
「相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて」(昭和60年6月5日付直資5-58ほか1課共同)8
参考判決・裁決
第三者に貸し付けられている被相続人と他の共同相続人との共有建物の敷地の評価に当たり、当該敷地には当該他の共同相続人の当該建物に係る地上権は存在しないとした事例
裁決事例集 第87集
ポイント
本事例は、親族間で土地の無償使用を許す関係を地上権の設定と認めるためには、当事者が何らかの理由で特に強固な権利を設定することを意図したと認めるべき特段の事情が存在することを必要とすべき旨示した最高裁判決に即して、建物の所有に係る共同相続人の評価対象地上の権利は、せいぜい使用貸借によるものとみざるを得ないと判断したものである。
要旨
請求人らは、相続した本件土地の上に、本件被相続人及び他の共同相続人ら(本件被相続人ら)が所有する本件建物が存しているところ、本件土地の使用料は無償であるものの、本件建物が存する権原は、本件建物の所有を目的とする地上権である旨主張する。
しかしながら、親族間で土地の無償使用を許す関係を地上権の設定と認めるためには、当事者が何らかの理由で特に強固な権利を設定することを意図したと認めるべき特段の事情が存在することを必要と解すべきであるところ、①本件建物を本件被相続人らの共有とした理由からすれば、わざわざ本件被相続人にとって著しい負担となる無償の地上権を設定する必要もないこと、②本件被相続人と当該他の共同相続人らとの間で、地上権を設定する場合に通常取るであろう行動が、取れたにもかかわらず、これを取っていないこと及び③本件においては上記特段の事情も見当たらないことからすると、本件建物の所有に係る当該他の共同相続人らの本件土地上の権利は、せいぜい使用貸借によるものとみざるを得ない。そして、本件建物の建築後、本件相続開始に至るまで、権利関係に変動があったことを認めるに足る証拠はないから、本件相続開始時点で、本件土地上に、当該他の共同相続人の地上権が存在していたとは認められない。
参照条文等
民法第265条、第593条 借地借家法第2条第1号、第10条第1項 財産評価基本通達25(1)
参考判決・裁決
最高裁昭和47年7月18日第三小法廷判決(集民106号475頁)
評価対象地につき、路地状開発により戸建分譲を行うことが経済的に最も合理性のある開発に当たる場合には、公共公益的施設用地の負担の必要性がないため、財産評価基本通達24-4(広大地の評価)の適用はないとした事例
裁決事例集 第74集 342頁
要旨
①本件土地は、路地状開発により、本件地域における標準的な宅地の地積に分割することが可能であり、②本件分割図による路地状開発が路地状部分の幅員を満たすなど都市計画法等の法令などに反しておらず、③容積率及び建ぺい率の算定に当たって、路地状部分の地積もその基礎とされ、さらに、④本件隣接地が道路を開設することなく路地状開発されているという各事実が認められることからすると、本件土地については、路地状開発により戸建分譲を行うことが経済的に最も合理性のある開発に当たると認めるのが相当であり、公共公益的施設用地の負担が必要と認められるものには該当しないから、財産評価基本通達24-4(広大地の評価)の定めの適用はない。
要旨
請求人らは、課税時期においては、本件合併契約は既に締結され、その後の合併諸手続を終え合併期日を待つ段階にあるから、本件株式の価額には合併という要素が反映されてしかるべきである旨主張する。
しかしながら、請求人らが本件株式を取得した課税時期においては、まだその合併の効力が生じておらず、また、本件合併契約が締結されたことによる影響を本件株式の評価に反映させるとする定めもないことから、本件株式の価額については、合併後の会社の株式の評価額に影響されることなく、課税時期現在における1株当たりの純資産価額により評価するのが相当である。
財産評価基本通達に定められた評価方法により算定される価額が時価を上回る場合、同通達の定めにより難い特別な事情があると認められることから、他の合理的な評価方法により評価することが許されるとした事例
裁決事例集 第91集
要旨
原処分庁は、請求人らが相続により取得した土地(本件土地)の相続開始時(本件相続開始時)における価額は、財産評価基本通達(評価通達)による評価額(原処分庁通達評価額)によるべきである旨主張し、請求人らは、本件土地の時価を評価するに当たり評価通達の定めにより難い特別な事情があることから、請求人らが依頼した不動産鑑定士による鑑定評価額(請求人鑑定評価額)によるべきである旨主張する。
しかしながら、本件の場合、請求人鑑定評価額は、開発法につき都市計画法第33条《開発許可基準》に関する審査基準(本件審査基準)を満たしていないなどの理由により、本件土地の本件相続開始時における時価とは認められないが、他方、本件土地の開発に際しては、袋路状道路の敷設は認められないなど特殊な制約が本件相続開始時にあったことから、当審判所において不動産鑑定士に鑑定評価を依頼し、その評価額(審判所鑑定評価額)を検討したところ、開発法につき本件審査基準を満たしているなどの理由により、本件相続開始時における時価として妥当なものと認められた。そして、評価通達に定められた評価方法により算定された価額が時価を上回る場合には、評価通達の定めにより難い特別な事情がある場合に該当するといえ、その場合には、他の合理的な評価方法により評価することが許されると解されるところ、原処分庁通達評価額は審判所鑑定評価額を上回るものであることからすると、本件土地の価額を評価するに当たっては、評価通達の定めにより難い特別な事情があると認められる。したがって、本件土地の本件相続開始時における価額は、審判所鑑定評価額とするのが相当である。
参照条文等
人格のない社団に対する出資の評価については、企業組合等の出資の評価に準じて純資産価額方式によるのが相当であり、その場合、評価差額に対する法人税等相当額の控除を行うのは相当でないとされた事例
裁決事例集 第58集 241頁
要旨
請求人らは、本件出資の評価について売買実例価額により評価すべきである旨主張するが、その価額は、譲渡人及び譲受人の双方が共に本件組合の組合員という限定された市場において成立した稀少な事例であり、しかも当該売買実例価額が客観的な交換価値を反映したものと認めるに足りる証拠もないので、この価額を本件出資の時価として採用することはできない。
本件組合は、人格のない社団としての実体を備えていると認められるところ、評価通達には、人格のない社団の出資の評価方法についての定めがないことから、同通達5の定めにより、同通達に定める評価方法に準じて評価することになる。
そこで、さらに具体的に本件出資の評価方法について検討すると、本件組合の財産及び債務は団体たる本件組合に帰属し、構成員たる組合員が個々の組合財産等について持分権や分割請求権を有していないことにかんがみると、本件出資の価額は、法人格を有する団体に係る株式や出資についての評価方法の定めを準用して評価するのが合理的であると認められる。
そうすると、法人格を有する団体に係る株式や出資の評価方法については、評価通達169ないし196に定められているが、本件組合の事業目的や各組合員の有する議決権数からみて、企業組合、漁業生産組合その他これに類似する組合等に対する出資の評価方法を定めた評価通達196の定め(純資産価額方式)を準用して評価するのが、本件組合の性格に照らして最も合理的な評価方法であると認められる。
なお、人格のない社団については、清算所得に対する法人税等の課税は行われないから、本件組合の純資産価額を計算するに当たっては、評価差額に対する法人税等相当額を控除することは相当でない。
土地区画整理事業地内の評価対象地につき、開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要とは認められないことから、財産評価基本通達24-4(広大地の評価)の適用はないとした事例
裁決事例集 第77集 383頁
要旨
財産評価基本通達24-4に定める「経済的に最も合理的な」開発については、①その地域の利用状況に合った宅地の地積に分割されること、②当該分割による開発が、都市計画法等の法令に反していないこと、③容積率及び建ぺい率も経済的に利用されることなどを考慮して判断すべきところ、本件甲土地及び本件乙土地のA路線の道路沿いは、一区画が600平方メートル以上の店舗等の商業施設の敷地、C路線の道路沿いは、一区画が150平方メートルから300平方メートル前後の戸建住宅の敷地としての、また、本件丙土地の近隣地域は、一区画が350平方メートルから700平方メートルの戸建住宅や中高層の共同住宅の敷地としての利用が、それぞれ本件区画整理地内における経済的に最も合理的であると認めるのが相当である。
本件各土地に、「経済的に最も合理的な」開発を行った場合、公共公益的施設用地の負担が必要かどうかについて検討すると、請求人は、戸建住宅分譲用地の開発では公共道路の取付けは必要であると主張し、本件各土地の開発を想定した土地利用計画図と題する資料を当審判所に提出しているが、当該資料は、本件各土地について、中央部分に幅員6メートルの道路を取り付け、本件甲土地は地積が3,013平方メートルのところ、一区画の地積217.4平方メートルの12区画で道路敷設地積を404.2平方メートル、また、本件乙土地は地積が1,719平方メートルのところ、一区画の地積177.2平方メートルの8区画で道路敷設地積を301.4平方メートル、さらに、本件丙土地は地積1,384平方メートルのところ、一区画の地積135.3平方メートルの8区画で道路敷設地積を301.6平方メートルとしたものであるが、このような開発は、近隣地域の利用状況に沿ったものであると考えるのは困難であり、また、本件区画整理地内には必ずしも道路を敷設しない開発も認められるところ、本件各土地について、道路を敷設し、殊更に細分化して開発する合理的な理由や必然性は見当たらないことから、請求人の主張する利用方法が経済的に最も合理的であると認めることはできない。
そこで、当審判所において、経済的に最も合理的であると認められる利用を前提とし、一区画の面積及び接道義務の基準、本件各土地の地形並びに本件区画整理地内の近隣地域の利用状況をしんしゃくして開発想定図を作成すると、本件各土地については、公共公益的施設として道路を敷設することなく開発することが経済的に最も合理的であると認められる。
そうすると、本件各土地の開発を行うとした場合に、公共公益的施設用地として道路が必要と認められないので、本件各土地の評価に当たって財産評価基本通達24-4の適用はできないこととなる。
請求人らの主張する鑑定評価額は、相続開始日現在の時価を表しているとは認められないことから、財産評価基本通達に定める評価方法により評価することが相当であるとした事例
裁決事例集 第92集
要旨
請求人らは、請求人らの一人が相続により取得した土地(本件土地)について、請求人らの依頼による鑑定評価額(本件鑑定評価額)は、本件相続開始日における本件土地の時価であり、財産評価基本通達(評価通達)による評価額は本件鑑定評価額を上回っているから、評価通達の定めによらないことが正当と認められる特別の事情があるので、本件土地の価額は、本件鑑定評価額に基づき評価すべきである旨主張する。
しかしながら、本件鑑定評価額は、開発法による価格を重視し、比準価格を比較考量して決定されているところ、①比準価格及び規準価格の試算において考慮されている減価40%(当該宅地の画地規模が大きいことに伴い市場参加者が限定されることによる減価)の必要性が認められないこと、②開発法による価格は上記①の減価40%を除いて試算した比準価格及び規準価格と大きく乖離することから、いずれの試算価格も合理性が認められないので、本件鑑定評価額は、本件相続開始日における本件土地の客観的交換価値を表しているとは認められない。したがって、本件土地の価額について、評価通達の定めによらないことが正当と認められる特別の事情はないといえるので、本件土地の価額は、評価通達に定められた評価方法により評価すべきである。
参照条文等
合併の際、被合併法人から上場株式を著しく低い価額で受入れ、作為的に評価差額を創り出した場合には、純資産価額方式による取引相場のない株式の評価上、その創り出された評価差額に対する法人税等相当額を控除することはできないとした事例
裁決事例集 第60集 546頁
要旨
- 被相続人らは、あらかじめA社の子会社であるB社の営業譲渡を行わせ、これにより形骸化した同社の株式すべてをを買収した上、C社を吸収合併する方法によってC社が保有する有価証券のうち、A社の株式を時価に比して著しく低い価額で受け入れ、もってA社の株式の帳簿価額をおよそ20分の1に圧縮し、評価通達に定める純資産価額計算上の評価差額を創り出したものである。
- このような特異な取引が行われたのは、被相続人らがD社の指導の下で、同社の企画を実行したもので、被相続人らの行為は、被相続人の保有するA社の株式についての相続対策を行う目的のみで行われたものであることは明らかである。
評価差額に対する法人税等相当額を控除するのは、個人事業者が個々の事業用資産を直接所有している場合と株式の保有を通じて会社の資産を間接的に保有している場合との均衡を図るものであるが、本件のように租税負担の軽減を図って作為的に評価差額を創り出した場合まで、当該評価差額に対する法人税等相当額を控除することは同通達の趣旨を著しく逸脱するものであって、このような保有形態を利用していない一般の納税者の租税負担を考慮すれば、課税公平の観点からみても、看過し難いものである。
そうすると、本件株式については、評価通達に定める方法によって評価することが著しく不適当となる特別の事情があると認められることから、評価通達6の定めにより合併によって創り出された評価差額に対する法人税等相当額を控除せずに計算した金額が相続税法22条の「時価」に当たると解するのが相当である。請求人らは、客観的価値としての株式の時価を算定するに当たって、法人税等相当額を控除するのは当然であると主張するが、評価差額に対する法人税等相当額を控除して評価するのは、むしろ特殊な条件下における価額を求めるものであるから、かかる事態を本件株式の評価上考慮すべき理由はない。
要旨
請求人らは、請求人らの一人が相続により取得した本件土地(1,075平方メートル)の最有効使用は、本件土地が存する本件地域の状況及び本件土地の個別的要因を考慮すると、中高層の集合住宅等の敷地として利用することなく、建築資金が小額でリスクの小さい戸建住宅の敷地として利用することである旨主張する。
しかしながら、本件地域では、①平成X年にその用途地域が住宅地域から近隣商業地域に変更され、建ぺい率は80%、容積率は300%と中高層の集合住宅等を建設することが可能であること、②平成X年以降、市に対して開発許可申請がなされていないことから、1,000平方メートル以上の土地について開発行為をした場合に公共公益的施設の負担が必要な開発は行われていないこと、③本件相続の開始以前10年間において、戸建住宅よりむしろ中高層の集合住宅等が多く建築されていることが認められる。次に、本件土地についてみると、本件土地の形状、接面道路の幅員、本件土地と接面道路との接する距離、接面道路と県道・国道との距離に加えて、容積率が300%と定められていることなどからしても、本件土地に中高層の集合住宅等を建築することに特段の支障を来す状況は見受けられない。なお、平成10年8月には、本件地域内の約830平方メートルの土地に11階建の事務所ビルが建築されており、本件土地と同規模の土地が細分化されることなく一体として利用されている。以上の事実を勘案すると、本件土地の最有効使用は、戸建住宅の敷地の用に供することではなく、中高層の集合住宅等の敷地の用に供することであると認められる。したがって、本件土地はマンション適地等に該当するので、財産評価基本通達24-4に定める広大地に該当するとして評価することはできない。
請求人らが、相続により取得した建物の価額は、固定資産評価基準を基に財産評価基本通達に従って評価すべきであり、請求人の主張する不動産鑑定評価額には合理性が認められないとした事例(平成27年12月相続開始に係る相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第114集
ポイント
本事例は、請求人が相続により取得した建物は、機能的、経済的観点から市場性が全く認められないため解体除去を要し、このことを前提として算定された不動産鑑定評価額が時価であるとの主張に対し、当該不動産鑑定評価額には合理性が認められないとした上で、固定資産評価基準が定める評価の方法によっては再建築費を適切に算定することができない特別の事情等は認められないから、同基準に従って決定した固定資産税評価額に依拠した相続税評価額は適正な時価であると判断したものである。
要旨
請求人らは、相続により取得した家屋(本件家屋)及びその敷地(本件土地)について、本件家屋は、大改修を行っても収益性回復は困難で、機能的、経済的観点から市場性が全く認められないため、解体除去が必要であるとして本件家屋及び本件土地(併せて本件不動産)の最有効使用を判定した不動産鑑定士による鑑定評価書(本件鑑定評価書)には合理性があり、本件鑑定評価書に基づく価額が時価である旨、また、本件家屋の固定資産税評価額は一般常識からかけ離れた評価がされている旨主張する。
しかしながら、本件家屋は、相続の開始時において、その一部が貸店舗や被相続人等の居宅として利用されていたことからすると、本件家屋には相応の経済価値があったと認められる。一方、本件鑑定評価書における最有効使用の判定に当たっては、不動産鑑定評価基準に定める現実の本件家屋の用途等を継続する場合の経済価値と本件家屋を解体除去した場合の解体除去費用等を適切に勘案した経済価値との十分な比較考量がされているとは認め難いことなどから、本件鑑定評価書に合理性があるとは認めるに足りず、本件土地の更地価格から本件家屋の解体除去費用を控除した本件鑑定評価書による価額が、本件不動産の時価を適正に評価したものであるとは認め難い。したがって、本件鑑定評価書に基づく請求人らの主張立証によって、財産評価基本通達の定めに従って評価した本件不動産の価額が時価であるとの事実上の推認を覆すには至らない。また、本件家屋の固定資産税評価額については、その価額を求めるに当たり、固定資産評価基準が定める評価の方法によっては再建築費を適切に算定することができない特別の事情又は固定資産評価基準が定める減点補正を超える減価を要する特別の事情は認められないから、固定資産評価基準に従って決定した固定資産税評価額が適正な時価であると推認される。ところで、当審判所の調査によると、本件家屋の固定資産税評価額は相続開始日前に遡及して一部減額されており、その減額前の固定資産税評価額に依拠した相続税評価額によりなされた原処分は、その一部を取り消すこととなる。
参照条文等
上場株式等の現物出資及びその低額受入処理という相続税回避行為に係る非上場株式を純資産価額方式により評価するに当たり法人税等相当額を控除することは相当でないとした事例
裁決事例集 第62集 380頁
要旨
請求人は、本件出資及び本件株式の純資産価額方式による評価について、評価基本通達の定めに従って、法人税額等相当額を控除して評価すべきである旨主張するが、本件のように、ことさら評価差額を人為的に作出して相続税の軽減を図っているような場合に、評価基本通達を形式的、画一的に適用し、法人税額等相当額を控除することは、評価基本通達の趣旨に沿わないのみならず、このような計画的な行為を行うことのない納税者との間での租税負担の公平を著しく害し、又、富の再分配機能を通じて経済的平等を実現するという相続税法の立法趣旨に反する著しく不相当な結果をもたらすこととなるから、評価基本通達によらないことが相当と認められる特別な事情があるとして、法人税額等相当額を控除しないで計算したものをもって当該出資及び当該株式の時価とみるのが相当である。
ポイント
この事例は、既に開発行為を了した共同住宅用地について、その共同住宅(建物)の状況から近い将来の開発行為を要しないこと及びその存する地域の標準的使用形態の一つに適合していることから、当該共同住宅用地は有効利用されているとして、「広大地」には当たらないと判断したものである。
要旨
請求人らは、相続により取得した各土地(本件各土地)は、賃貸マンションの敷地となっているところ、地価公示法によれば賃貸マンションを建築することが地域の標準的使用とはなり得ないこと及び本件各土地が所在する地域の近傍地域が一群の戸建住宅分譲用地へと移行しつつあることからすると、本件各土地は「現に宅地として有効利用されている建築物等の敷地」には該当しないなどと主張して、本件各土地は、財産評価基本通達24-4《広大地の評価》(広大地通達)に定める広大地に該当する旨主張する。
しかしながら、広大地通達の趣旨に照らすと、評価対象宅地につき、評価時点における当該宅地の属する地域の標準的使用に照らして、当該宅地を分割することなく一体として使用することが最有効使用であると認められる場合には、広大地に該当しないと解するのが相当であり、既に開発行為を了しているマンションなどの敷地や現に宅地として有効利用されている建築物の敷地用地などについては、特段の事情がない限り、広大地には該当しないものと解せられるところ、本件各土地は、既に開発行為を了した共同住宅の敷地として使用されており、本件各土地について、近い将来において新たな開発行為を行うべき事情も認められない上、本件各土地の存する地域においては、戸建住宅用地、共同住宅用地、法人等事業用地、倉庫・車庫・工場用地の各用途のいずれもが標準的な使用形態であると認められることからすると、本件各土地は、既に開発行為を了した共同住宅の敷地として、その周辺地域の標準的な使用状況に照らして有効に利用されているものと認められる。
したがって、本件各土地は、広大地には該当しないものと認めるのが相当である。
参照条文等
参考判決・裁決
東京地裁平成20年8月29日判決(税資258号順号11014) 東京地裁平成17年11月10日判決(税資255号順号10199)
請求人の主張する各種事情によっても、相続により取得した土地の財産評価基本通達の定めに従った原処分庁の評価額は時価であるとの推認を覆されないから、不動産販売業者が試算した価格によって評価することはできないとした事例
裁決事例集 第115集
ポイント
本事例は、評価通達の定めに従って相続財産を評価したものと認められる場合には、当該評価額は事実上の時価と推認され、請求人において当該評価額が当該財産の客観的交換価値を上回るものであることを主張立証するなどして、上記推認を覆すことがない限り、当該評価額を時価と認めるのが相当であると判断したものである。
要旨
請求人は、相続により取得した土地(本件土地)について、原処分庁が財産評価基本通達(評価通達)の定めに従って評価した価額(本件通達評価額)は、本件土地の客観的交換価値に影響を及ぼす各事情を看過しており、請求人が売買価格の見積りを依頼した不動産販売業者が試算した価格を上回ることから、時価を上回る違法がある旨主張する。
しかしながら、評価通達の定めに従って相続財産を評価したものと認められる場合には、当該評価額は事実上の時価と推認され、請求人において当該評価額が当該財産の客観的交換価値を上回るものであることを主張立証するなどして、上記推認を覆すことがない限り、当該評価額を時価と認めるのが相当である。この点、本件通達評価額は、評価通達の定めに従っており、時価と推認されるところ、請求人の主張する各事情は、本件土地の客観的交換価値に影響を及ぼす事情とは認められず、不動産販売業者の試算価格も本件土地の客観的交換価値とは認められないことからすれば、本件通達評価額が時価であることの推認は覆えることはなく、本件通達評価額に時価を上回る違法はないが、原処分庁のした過少申告加算税の賦課決定処分は、過少申告加算税の加重分の計算に誤りがあることから、その一部を取り消すべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成22年7月16日第二小法廷判決(集民234号263頁)
ポイント
この事例は、広大地通達の適用について、評価対象地の属する地域内の開発事例を詳細かつ具体的に調査し、その調査結果と評価対象地の状況とを併せ検討することにより、公共公益的施設用地の負担の要否を判断し、評価対象地は「広大地」に該当するとしたものである。
要旨
原処分庁は、本件土地が属する財産評価基本通達24-4《広大地の評価》(本件通達)に定める「その地域」(本件地域)の標準的な宅地の地積に基づき区画割をすると、本件土地は4区画に分割して路地状開発することが可能であること、路地状開発を行うとした場合は、路地状部分の土地は、通路に限らず駐車場として利用でき、建ぺい率・容積率の算定上道路を開設するよりも有利な点があること、また、本件地域に路地状開発の事例もあることから、路地状開発による開発が経済的に最も合理的な開発であるとして、本件土地は本件通達に定める広大地に当たらない旨主張する。
しかしながら、原処分庁の主張する本件地域の標準的な宅地の地積の算定は誤っており、正しい地積に基づき区画割をすると本件土地は4区画又は5区画に分割して開発するのが経済的に合理的であると認められる。また、本件地域においては、路地状開発による事例もみられるものの、当該事例は道路の開設による開発がもとより困難な土地の事例であり、本件土地とは条件を異にする。他方、本件地域において本件土地と地積、形状及び公道との接続状況及び面積等並びに本件地域における近年の土地の開発状況等からすれば、本件土地については、道路を開設して戸建住宅の敷地として分譲開発するのが経済的に最も合理的な開発方法であると認められる。
したがって、本件土地は、本件通達に定める広大地として評価するのが相当である。
参照条文等
財産評価基本通達188の規定に基づき株主区分の判定を行うに当たり、発行済株式数から控除する株式は、同188-3及び同188-4に定める株式に限られず、むしろ同188の定めにおける発行済株式数に、議決権を有しないこととされる株式及び議決権のない株式は、当然に含まれないとした事例
裁決事例集 第67集 633頁
要旨
請求人らは、取引相場のない株式の評価方法を財産評価基本通達188に基づいて判定(株主区分の判定)するに当たり、単位未満株式は、発行済株式数から控除すべき株式を定めた同188-3及び同188-4に含まれていないから、発行済株式数から単位未満株式を控除せずに、その判定をすべきである旨主張する。
しかしながら、株主区分の判定について、株式の保有割合を基とした会社支配の可否を基本的な考え方としているのは、商法第240条が株主総会の決議要件である発行済株式数に議決権のない株式等を算入しない旨を規定していることと符合させたものと解することが相当である。そうすると、同178における原則的な評価方法に対して設けられた同188の特例的評価方法についても、会社支配に関係する株式について比較すべきであり、株式の保有割合を判定する場合における発行済株式数についても、議決権を有しないこととされる株式及び議決権のない株式は、当然に含まれないと解すべきものである。
また、上記の商法の改正経緯と財産評価基本通達の整備状況から、限定的に財産評価基本通達188-3及び188-4が定められたと解することは相当ではなく、課税実務上、必要な範囲で発行済株式数から控除される株式を明示したものと解すべきである。
そうすると、株式の保有割合の判定において、発行済株式数に自己株式及び単位未満株式を含めることは、商法がこれらの株式について議決権を有しないこととした趣旨に照らしてみると、株主総会の決議における株主の議決権割合ともそごを来すことにもなり合理性が見出されないから、むしろ、同通達188-3及び188-4に定める株式と同様に、発行済株式数から控除することが相当であると認められる。
したがって、株主区分の判定において、単位未満株式については、議決権のない株式であることから発行済株式数から控除すべきであり、請求人らの主張は採用できない。
ポイント
この事例は、評価対象地が所在する町内の全建物の築年数及び種類を調査し、財産評価基本通達24-4にいう当該評価対象地が属する「その地域」とは、当該町内の西側部分であると判断したものである。
要旨
請求人は、①本件土地は、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく広大で、本件における経済的に最も合理的な開発行為である戸建分譲開発を行うとした場合には、公共公益的施設用地の負担が必要であること、②路線価方式による土地の評価は、更地として評価することを前提としており、公共公益的施設用地の負担の要否は、開発行為を行うとした場合に負担を要するか否かで判断すべきであり、本件土地の現状が賃貸マンションの敷地の用に供されていることのみをもって、財産評価基本通達24-4《広大地の評価》(広大地通達)の定めの適用を排除すべきではないことから、本件土地は、同通達に定める広大地に該当する旨主張する。
しかしながら、既に開発行為を了しているマンションなどの敷地用地や評価時点において宅地として有効利用されている建築物の敷地用地については、標準的な地積に比して著しく広大であっても、特段の事情のない限り、広大地通達に定める広大地に該当しないと解されるところ、本件土地の場合、開発行為を了した上、共同住宅の敷地として使用されており、近い将来において新たな開発行為を行うべき事情も認められず、本件土地の属する地域(本件地域)は、戸建住宅と共同住宅の混在する地域であって、これらの用途のいずれもが本件地域における標準的な利用形態と認められることからすれば、本件土地は、その周辺地域の標準的な利用状況に照らしても、共同住宅用地として有効に利用されていると認められる。したがって、本件土地について開発行為を行うとした場合における公共公益的施設用地の負担の要否について検討するまでもなく、本件土地は広大地通達にいう広大地には該当しない。
参照条文等
参考判決・裁決
取引相場のない株式の発行会社と店頭登録株式の発行会社との合併等の契約締結後、それぞれの期日までの間に課税時期がある場合において、取引相場のない株式についての評価額は、店頭登録株式の取引価格を合併比率等により調整した価額ではなく、財産評価基本通達に基づき評価した価額によるべきであるとした事例
裁決事例集 第67集 679頁
要旨
請求人は、相続開始時において、既に合併契約及び株式交換契約が締結されている非上場会社のB社株式及びC社株式(いずれも取引相場のない株式)の価額は、合併及び株式交換の相手会社のD社株式(店頭登録株式)の相続開始時の取引価格を基にそれぞれ合併比率及び株式交換比率を適用して合理的に算定することができるので、財産評価基本通達で定められた評価方式により難い特別の事情がある旨主張する。
しかしながら、一般に、合併若しくは株式交換の一方の当事者が非上場会社である場合、まず、当該取引相場のない株式の価額を算定した上で、相手会杜の市場価格(取引価格)と比較するなどして合併比率若しくは株式交換比率を算定することとなる。この場合に当該取引相場のない株式の価額を算定する目的は、客観的交換価値を算定するためのものではなく、あくまでも合併比率若しくは株式交換比率を算定するためのものであり、評価時点における当事者の思惑が介在する余地も考えられるから、このようにして算定された合併比率若しくは株式交換比率が必ずしも純粋に株式の時価を反映しているとはいえず、また、合併比率若しくは株式交換比率に沿った価額で株式の取引がなされるとも言い得ない。
本件において、合併比率若しくは株式交換比率を算定するに当たって採用した株式の評価方法は、評価時点や比準割合などに問題があり、算定された価額が適正に時価を示していると評価し得るか疑問があるから、これにより算定された本件合併比率及び本件株式交換比率も、適正に時価が反映されたものとも言い切れず、また、合併比率及び株式交換比率に基づく価格に市場価格が従うとも限らないと認められるから、請求人の主張する評価方式が、財産評価基本通達による以上の合理性があるとも、同通達により難い特別の事情があるとも認められない。
取引相場のない株式を純資産価額方式により評価する場合において、評価会社が負担した弔慰金については、相続財産とみなされず、実質上の二重課税とはならないので、負債に計上する必要はないとした事例
裁決事例集 第67集 696頁
要旨
取引相場のない株式の課税時期における1株当たりの純資産価額の計算を行う場合、退職手当金等も弔慰金も、課税時期において確定している債務ではないから、本来、評価会社の純資産価額を算定するについての負債とはならないものである。
しかしながら、退職手当金等については、相続税法第3条第1項第2号の規定により相続又は遺贈により取得したものとみなされ、相続税の課税価格に算入されて課税されるため、評価会社の純資産価額の計算において負債に計上しなければ、相続税において実質上の二重課税が生じることになるので、退職手当金等を負債として計上する必要があり、財産評価基本通達186において、負債に含まれるものとして取り扱われているものであり、この取り扱いは当審判所においても相当と認められる。
これに対して、相続税法基本通達3-18ないし3-23の区分により弔慰金とされたものについては、退職手当金等と異なり相続財産とはみなされず、実質上の二重課税とはならないので、弔慰金を負債に計上する必要はない。したがって、弔慰金を負債に計上することはできないと解するのが相当である。
また、請求人らは、株式の評価に当たり弔慰金を負債に計上しないと、弔慰金の給付を非課税としている労働者災害補償保険法等の法規との均衡を欠く旨主張するが、本件においては、弔慰金そのものを課税の対象としたものではなく、課税の対象となる株式の評価に当たり弔慰金に相当する金額を考慮して(相続する株式の価値を減少させて)算定するか否かという相続財産の評価の問題であるから、弔慰金を負債に計上せずに株式を評価することは、労働者災害補償保険法等の法規との均衡を欠くものとはいえない。
ポイント
この事例は、評価対象地(約1,100平方メートル)は国道沿線地域に所在し、その地域の標準的使用は、戸建住宅の敷地ではなく、1,000平方メートル以上の低層店舗等の敷地と認められ、標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大とは認められず、財産評価基本通達24-4に定める広大地に該当しないと判断したものである。
要旨
請求人は、本件土地を戸建住宅の敷地として分譲開発した場合に開発道路の設置という公共公益的施設用地の負担が必要であるから、本件土地が財産評価基本通達24-4《広大地の評価》(広大地通達)に定める広大地に該当する旨主張する。
しかしながら、本件土地は、その所在する地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大であるとは認められない。仮に、本件土地の地積が著しく広大であるとしても、①本件土地を低層店舗等の敷地として区画割する場合に公共公益的施設用地の負担が必要であるとは認められず、また、②本件土地を戸建住宅の敷地として分譲開発したとしても、公共公益的施設用地の負担が必要ではない路地状開発による区画割の方が、開発道路を設置する区画割に比べて経済的に合理的であると認められる。したがって、本件土地は、広大地通達に定める広大地には該当しない。
参照条文等
取引相場のない株式の評価を類似業種比準方式で行うに当たって、評価会社の1株当たりの配当金額及び利益金額を最大5年間までさかのぼって算定すべきである旨の請求人の主張を排斥した事例
裁決事例集 第70集 353頁
要旨
請求人は、財産評価基本通達(以下「評価通達」という。)は法律ではないから納税者を拘束するものではなく評価通達を基になされた本件更正処分は違法である、仮に評価通達によるとしても、利益、損失の変動の激しい法人においては、評価会社の業績を最大限5年間さかのぼって評価すべきである旨主張する。
しかしながら、評価通達に定められた相続財産評価の一般基準が合理的なものであり、かつ、評価通達により難い特別の事情が存しない限り、評価通達の定めるところにより相続財産を評価することが違法ということはできないというべきであり、請求人の主張には理由がない。また、評価通達における類似業種比準方式は、株式の価格形成の基本要素として考えられている3要素(配当金額、利益金額、純資産金額)を比準要素とし、標本会社の数値と評価会社の数値を同一の基準により算定するなど所定の措置を講じることにより、評価上の恣意性の排除、評価の統一性、画一性、安全性の担保に配意したものであるところ、評価会社の数値のみを課税時期の直前5年間の業績を基に算定するとすれば類似業種比準方式の合理性自体が失われるおそれがある等のため、請求人の主張には理由がない。
ポイント
この事例は、評価すべき財産(本件B土地)は、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大であるとは認められるものの、請求人が主張する建築基準法第42条第1項第5号に規定する「位置指定道路」の拡幅のための用地提供が、公共公益的施設用地の負担と認められるか否かにつき判断したものである。
要旨
請求人は、本件B土地において開発行為を行うとした場合に、本件B土地に接面する位置指定道路幅を拡幅する必要があり、当該拡幅のための用地提供は公共公益的施設用地の提供と同じであるので、本件B土地は、財産評価基本通達(評価通達)24-4《広大地の評価》(広大地通達)に定める広大地に該当する旨主張する。
しかしながら、広大地通達を定めた趣旨は、開発行為により当該開発区域内に道路や公園等の公共公益的施設用地の開設が必要な場合には、相当規模の潰れ地が生じることになり、評価通達15《奥行価格補正》から20-5《容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価》までに定める減額補正では十分とはいえないので、相当規模の潰れ地が生じることを当該宅地の価額に影響を及ぼすべき客観的な個別事情として減額補正することとしたものであるところ、請求人が主張する位置指定道路に係る拡幅部分の提供は、開発区域内に新たな道路を提供する場合とは異なり、評価通達15から20-5までに定める減額補正では十分とはいえないほどの規模の潰れ地が生じたとは認められず、公共公益的施設用地を負担したものとみることはできない。したがって、本件B土地は、広大地通達に定める広大地には該当しない。
参照条文等
取引相場のない株式の評価を純資産価額方式で行うに当たって、評価会社が土地収用に伴い取得した代替資産の価額は、圧縮記帳後の価額ではなく財産評価基本通達の定めにより評価した価額によるのが、また、評価会社が保有する上場会社が発行した非上場の優先株式の価額は、その上場会社の株式の価額ではなく払込価額により評価した価額によるのが相当であるとして、請求人の主張を排斥した事例
裁決事例集 第71集 606頁
要旨
請求人らは、相続により取得した取引相場のない株式の価額を純資産価額方式で算定するに当たって、評価会社が土地・建物等の収用等に伴って取得した代替資産については租税特別措置法第64条の2の規定を適用したことにより算出されるその資産の取得価額を、また、上場会社の発行した非上場の無額面株式(優先株式)についてはその上場会社の上場株式と同様に評価した価額を、それぞれ基として評価すべきであると主張する。
しかしながら、財産評価基本通達(以下「評価通達」という。)185は、1株当たりの純資産価額を課税時期において評価会社が所有する各資産を評価通達に定めるところにより評価した価額を基礎に計算する旨定めるとともに、この場合、評価会社が課税時期前3年以内に取得又は新築した家屋等の価額は、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価する旨定めている。この家屋等についての取扱いは、純資産価額の計算において、課税時期の直前に取得又は新築し、通常の取引価額が明らかなものについてまで、わざわざ、評価通達に基づく評価替えを行うことは時価の算定上、適切でないと考えられることによるものであり、当審判所においても相当と認められるところ、本件代替資産は新たに取得又は新築されたものであること及び租税特別措置法第64条の2の規定からすれば圧縮記帳後の価額は法人税法に関する法令の規定を適用する場合のものであることが認められ、これらのことからすれば、請求人らが主張する本件各代替資産の圧縮記帳後の価額をもって、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額である客観的な交換価額を示すものであると認めることはできない。
また、評価通達には、本件優先株式に直接適用できる評価方法は定められていないところ、評価通達5によれば、評価通達に定めのない場合は、類似する資産の評価方法に準じて評価することとしている。この点に関し、原処分庁は、本件優先株式は平成14年7月4日付国税庁課税部資産課税課情報第10号ほか1「資産税関係質疑応答事例について(情報)」(以下「本件情報」という。)に掲げた内容と同様のものであるから、本件情報に基づいて本件優先株式を評価していることが認められるところ、当審判所においてもこの本件情報に基づく評価方法を不相当とする理由があるとは認められないから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
ポイント
本事例は、相続により取得した土地は、いわゆるマンション適地等に該当するので、財産評価基本通達24-4に定める広大地に該当しない旨判断したが、財産評価基本通達15に定める奥行価格補正について、財産評価基本通達20の(2)ではなく(4)に基づき計算すべきであると判断して原処分の一部を取り消したものである。
要旨
請求人は、本件土地が財産評価基本通達24-4《広大地の評価》(本件通達)の適用がないとされる、いわゆるマンション適地等に当たるか否かについて、①本件土地の周辺地域の状況は戸建住宅とマンションが混在している地域であること、②専門家が本件土地は、マンションの敷地よりも戸建住宅の敷地に適しているとの意見を述べていることなどからすると、本件土地はマンション適地等に該当しない旨主張する。
しかしながら、マンション適地等であると認められる場合とは、本件通達に定める「その地域」におけるマンション等の建築の状況、用途地域・建ぺい率・容積率や地方公共団体の開発規制、また、交通、教育、医療等の公的施設や商業地への接近性等から判断して、評価対象地をマンション等の敷地とすることが経済的に最も合理的であると認められる場合を指すと解するのが相当であるところ、①本件土地の存する「その地域」は、マンション等の建築に係る規制が厳しくない地域であること、②本件土地は公共施設及び商業施設との接近性に優れていること、③「その地域」には複数のマンションが存すること、④「その地域」において、本件相続開始前10年間における500平方メートル以上の土地に係る建物の建築事例は2件あり、いずれもマンションの建築事例であること、⑤本件相続開始日後、現に本件土地上にマンションが建築されていることからすると、本件土地は明らかにマンション適地等に該当するものと認められる。
参照条文等
参考判決・裁決
評価対象地が存する「その地域」の周辺地域の開発状況に照らし、同土地につき開発を行うとした場合は公共公益的施設用地の負担が必要となるから、広大地に該当するとした事例
裁決事例集 第88集
要旨
原処分庁は、相続財産である本件土地の評価に当たり、財産評価基本通達24-4《広大地の評価》(本件通達)に定める「その地域」は甲地域であり、甲地域の標準的な宅地の地積に基づき区画割すると路地状開発することが可能であること、また、甲地域内における路地状開発の事例は数多く存在し、一般的に行われていることなどから、本件土地については、路地状開発による開発が経済的に最も合理的な開発であり、公共公益的施設用地の負担の必要はなく、本件通達に定める広大地に該当しない旨主張する。
しかしながら、本件通達に定める「その地域」は、本件土地と使用状況の連続性、地域の一体性が認められる丙地域と認めるのが相当であり、また、丙地域内においては、道路開設による開発事例と路地状開発事例とが存するものの、本件土地はいずれの事例の画地とも条件を異にするところ、丙地域は、将来、甲地域と同様な街並みになることが予想されることから甲地域における開発事例をみてみると、本件土地と類似する土地での路地状開発の事例はないことに加えて、本件土地において路地状開発を行うとする場合には原処分庁主張の開発想定図にある開発を行うことが想定されるが、その想定される路地の長さを有する開発事例もないことからすると、本件土地については、道路開設による開発を行うのが経済的に最も合理的な開発であると認められる。したがって、本件土地は、公共公益的施設用地の負担の必要があるものであり、本件通達に定める広大地として評価するのが相当である。
参照条文等
類似業種比準方式における1株当たりの利益金額の計算上、匿名組合契約に係る分配金は非経常的な利益ではないから法人税の課税所得金額から控除すべきではないとした事例
裁決事例集 第75集 594頁
要旨
類似業種比準方式における、匿名組合員である評価会社の「1株当たりの年利益金額」については、①評価通達が、「1株当たりの年利益金額」の計算を法人税の課税所得金額を基礎としていることについては合理性があること、②法人税の取扱いでは、匿名組合員が分配を受ける匿名組合営業について生じた利益の額又は損失の額は、匿名組合の営業者の計算期間の末日の属する匿名組合員の各事業年度の益金の額又は損金の額に算入されること、③匿名組合から分配を受ける損益は、匿名組合契約が継続する限り毎期発生することが予定されており、臨時偶発的に発生するものではないことからすると、「1株当たりの年利益金額」を計算する上で、匿名組合契約に係る損益の額を非経常的な損益として除外すべき理由は認められない。
そして、本件事業は航空機リース事業であって、本件A匿名組合契約に係る損益が、最終計算期間以外の計算期間については航空機の賃貸による損益であり、最終計算期間における分配金については、賃貸物件である航空機の売却による収益を含むというように、計算期間によって損益の発生の源泉が異なるという性質を持っているとしても、このようなリース事業は、リース物件の売却によってはじめて契約期間を通した収支が確定するものであり、そもそもリース物件の所有、賃貸及び売却が一体となった事業である。つまり航空機の売却は、K社をその優先的売却先として本件A匿名組合契約の締結時に予定されていたものであるから、一般的な固定資産の売却とは異なり、当該航空機の売却が臨時偶発的なものとは言い難い。また、本件A匿名組合契約に係る最終分配金額は、航空機の賃貸による収益と航空機の売却による収益という収益の発生の源泉が異なる部分により構成されているとしても、本件会社にとって匿名組合契約に係る出資に対する利益の分配という性格が異なるわけではないから、その利益の一部を取り出して非経常的な利益と判断すべき理由は認められない。
ポイント
本事例は、財産評価基本通達20の解釈等及び屈折路に内接する不整形地に係る想定整形地のとり方を、それぞれ初めて明らかにしたものである。
要旨
原処分庁は、屈折路に内接する本件土地について、財産評価基本通達20《不整形地の評価》(本件通達)に定める評価をするに当たって、整形地の想定方法として、本件土地の全域を含むく形のうち最も面積の小さいものとすべきであり、原処分庁の採用した想定方法はこれに該当するものである旨主張する。
本件通達の趣旨は、評価対象地が不整形の場合はその画地全部を宅地として十分に機能させることができず、整形地に比して利用価値が減少することを考慮して、利用価値が減少していると認められる範囲で補正するというものであり、この趣旨からすれば、整形地の想定方法が複数ある場合には、その想定方法自体が不合理なものでない限り、その想定されたもののうち、最も小さい面積のものを想定整形地として評価するのが合理的である。
しかしながら、本件土地についてみると、本件通達に定める想定整形地とは、評価対象地の画地全域を囲む正面路線に面する最小面積のく形となっているものをいうことからすると、請求人らの主張する想定整形地のとり方に不合理な点は認められないが、原処分庁の主張する想定整形地は、正面路線に面したく形ではないことから、本件通達に定める想定整形地そのものには当たらない。したがって、本件土地の整形地の想定方法は、請求人らの主張する方法によるべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
仙台高裁平成19年1月26日判決(税資257号順号10617)
贈与財産である取引相場のない株式を純資産価額方式で評価する場合において、当該株式の発行法人が有する営業権の価額は財産評価基本通達の規定により評価することが相当であるとした事例
裁決事例集 第76集 336頁
要旨
財産評価基本通達(以下「評価通達」という。)に定める営業権の評価方法の合理性について検討すると、まず、平均利益金額の算定に当たって、所得税法及び法人税法の定めに従って算出した「所得の金額」を基としているのは、各企業の主観に基づく会計処理基準によって算出された利益によることなく、各企業について統一的に所得金額の計算基準を定めている所得税法及び法人税法によって計算された所得によることとし、算定方法の客観性を確保するためと解される。次に、平均利益金額から一律50%減じることは、過去の収益に基づく平均利益金額から将来の収益を推算する方法を採用していることから、将来における競争相手の出現、需給の変化等の企業がもつ将来における危険率を見込んだ評価の安全性に対する配慮であると認められる。さらに、企業者報酬を減ずることは、企業の規模に応じて適当と認められる企業者報酬を控除することで、客観的に見て企業者の労力によってもたらされる収益を除外するものと解され、総資産価額に基準年利率を乗じた金額を控除することは、投下資本の働きによる収益を除外するためのものであるから、これによって算出された超過利益金額は、将来の超過収益力を示すものと認められる。したがって、この超過利益金額を、財産評価一般に採用される一般的な利回りである基準年利率を基に資本還元した価額は、営業権の価額を示すものと認められる。更に、課税時期を含む年の前年の所得の金額が低い場合には営業権の価額をこの金額により評価することとされており、評価の安全性に配慮していることが認められ、当審判所も評価通達に定める方法を相当と認める。
請求人らは、評価通達に定める営業権の評価方法は、その計算要素である①営業権の持続年数が異常に長いこと、②平均利益金額を求める期間が3年と短いこと、③総資産価額に乗ずる率が低いこと、④基準年利率を基とした複利年金現価率は妥当ではないことから、所要の補正を行った上で本件営業権の評価を行い、本件株式の時価を評価すると1株当たりの価額は1,817円となり、原処分庁算定の価額は時価を超えるから、本件の場合、評価通達により難い特別な事情がある旨主張する。しかしながら、本件営業権の評価に当たって、評価通達において定められた各計算要素について請求人らが主張する補正をすべき理由はなく、請求人らの主張する補正をして算出した価額が本件株式の時価であるとはいえない。したがって、評価通達の定めによらないことが正当と認められるような特別な事情がある場合とはいえず、請求人らの主張には理由がない。
請求人が相続により取得した取引相場のない株式は、「同族株主以外の株主等が取得した株式」には該当しないことから、配当還元方式で評価することはできないとした事例
裁決事例集 第84集
ポイント
本事例は、取引相場のない株式の評価に当たり、同族関係者の範囲について、法人税法施行令第4条第6項の規定の適用を受けることから、「同族株主以外の株主等が取得した株式」に該当しないと判断したものである。
要旨
請求人は、評価会社であるJ社は、同族株主がおらず、また、J社の株主であるK社は請求人の同族関係者ではないから、請求人とその同族関係者の議決権割合が15%未満となるので、請求人が本件被相続人からの相続により取得したJ社株式(本件株式)は、配当還元方式により評価すべきである旨主張する。
しかしながら、①K社の設立経緯、資産内容、人的・物的実体及び株主総会や取締役会の開催状況からすると、K社の出資者がJ社の経営や意思決定に関心や興味を有していたとは考え難く、また、②K社の出資者は、いずれもJ社の役員等であり、J社を退社した後は、K社の出資者たる地位を失うことになっていたこと並びにK社の出資者及び出資の譲受人は本件被相続人にその決定権があったものと認められることからすると、K社の出資者がJ社の代表取締役であった本件被相続人の意に沿った対応をすることが容易に認められること、③そして、K社は、本件被相続人死亡後開催されたJ社の取締役を選任する重要なJ社の株主総会において、K社が所有しているJ社の株式に係る議決権を、K社の出資者でも役員でもない請求人(本件被相続人の妻)に委任していることからすれば、K社は本件被相続人に代表されるJ社の創業家の強い支配下にあり、K社の出資者は、同社の意思決定を、いずれも、本件被相続人及び請求人に代表されるJ社の創業者一族の意思に委ねていたものと認められるから、K社の株主総会等における議決権の行使についても、J社の創業者一族の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意していた者と認めるのが相当である。そうすると、請求人は、法人税法施行令第4条《同族関係者の範囲》第6項の規定により、K社の株主総会において全議決権を有し、かつ、K社の唯一の出資者であるとみなされることから、同条第3項により、K社を支配していることとなって、同条第2項により、K社は請求人と特殊関係にある法人に該当するので、請求人の同族関係者に該当することとなる。そうすると、J社における請求人とその同族関係者の議決権割合は15%以上となるから、本件株式を配当還元方式で評価することはできない。
参照条文等
参考判決・裁決
東京高裁平成17年1月19日判決(訟月51巻10号2629頁)
請求人らが相続により取得した土地は、財産評価基本通達24-4に定める広大地に当たるとして処分の全部を取り消した事例(平成25年6月相続開始に係る相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・全部取消し)
裁決事例集 第102集
要旨
原処分庁は、請求人ら以外の第三者が所有する位置指定道路(本件位置指定道路といい、その所有者らを本件私道所有者らという。)に接する土地(本件土地)について、都市計画法第4条《定義》第12項に規定する開発行為(開発行為)を行うとした場合、本件私道所有者らの同意を要するとしても、そのような事情は本件土地自体に起因する客観的な事情ではないから財産の評価に当たって考慮されず、本件位置指定道路を利用した開発行為を行うことが経済的に最も合理的であり、当該開発行為においては、公共公益的施設用地の負担は必要ないので、本件土地は、財産評価基本通達24-4《広大地の評価》に定める広大地(広大地)に該当しない旨主張する。
しかしながら、本件位置指定道路は、本件私道所有者らが所有するもので、被相続人及び請求人らは本件位置指定道路に係る権利を何ら有していない。そのため、本件位置指定道路を利用した開発の可否は、本件私道所有者らの意向に左右されるものであるところ、本件土地については、請求人らの主張するように、本件土地の敷地内に新たな道路を開設して行う開発方法が想定でき、その開発の方法が十分合理性を有するものである以上、このような場合にまで、第三者の所有に係る土地を利用しての開発方法を想定することに合理性があるとはいえない。そして、請求人らの主張する開発方法においては、公共公益的施設用地の負担が必要であると認められるから、本件土地は広大地に該当する。
参照条文等
ポイント
本事例は、評価会社が保有する期限未到来のデリバティブ取引に係る債権・債務の性質を明らかにした上で、同社の1株当たりの純資産価額の計算上、当該債権・債務を考慮することはできないと、初めて判断したものである。
要旨
請求人は、贈与を受けた本件株式の評価に当たって、財産評価基本通達185《純資産価額》に定める純資産価額方式の計算上、本件株式の発行会社である本件評価会社が行っている、いわゆるスワップ取引及びオプション取引(本件各取引)のうち、直前期末現在において金利支払日又は権利行使期日が未到来の取引(本件未到来取引)に係る各取引額相当額を、本件評価会社の資産及び負債に計上すべきである旨主張する。
しかしながら、純資産価額方式の計算上、「評価会社の各資産」とは、課税時期において現実に評価会社に帰属していると認められる金銭に見積もることができる具体的な経済的価値を認識できる全てのものをいうと解され、また、「評価会社の各負債」とは、課税時期までに債務が成立し、その債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生しているものをいうと解されるところ、本件各取引は、各金利支払日が到来して、又は権利行使期日にオプションが行使されて初めて、取得する財物の価格より支払う対価の額が少なければ利益又は純資産として、その逆であれば損失又は負債として、個々の取引の経済的価値が認識されるものであることからすると、本件各取引は、本件評価会社が取得する資産が米ドルであることから、金利支払日又は権利行使期日が未到来の各取引についてその価値を認識しようとしても、その価値は、認識しようとした時点の為替レートに基づいて仮に決済又は取引が成立した結果の理論値(予測値)としていわば抽象的に認識されるにとどまるほかなく、具体的な経済的価値を認識した、あるいは、確実な債務であるということはできないから、本件株式の純資産価額の計算上、本件未到来取引に係る各取引額相当額を「評価会社の各資産」又は「評価会社の各負債」に計上することはできない。
参照条文等
請求人らが相続により取得した土地の一部は、財産評価基本通達24-4に定める広大地に当たるとして処分の一部を取り消した事例(平成23年4月相続開始に係る相続税の各更正処分(各更正の請求に対してされた各再更正処分をあわせ審理)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(各変更決定処分後のもの)・一部取消し・平成28年2月29日裁決)
裁決事例集 第102集
要旨
4区画の各土地(本件各土地)の財産評価基本通達24-4《広大地の評価》(本件通達)の適用につき、原処分庁は、本件各土地のうち3区画の各土地(本件1ないし3土地)の本件通達に定める「その地域」(本件地域)は、財産評価基本通達14-2《地区》(6)の中小工業地区として定められた地域(原処分庁主張地域)であり、本件1ないし3土地は、いずれも原処分庁主張地域の標準的な宅地の地積と同程度であるから、本件通達の適用はない旨主張し、請求人らは本件各土地の本件地域は、道路等の施設の状況等を勘案した住居表示を基本単位とする地域(請求人ら主張地域)であり、本件各土地は、いずれも、請求人ら主張地域の標準的な宅地の地積に比して広大な土地で、かつ、開発に当たっては公共公益的施設用地の負担が必要な土地であるから、本件通達の適用はある旨主張する。
しかしながら、本件各土地の本件地域は、本件1ないし3土地と同土地の以外の土地(本件4土地)で相違し、本件1ないし3土地の本件地域は、原処分庁主張地域を含んだより広範な地域(審判所認定地域①)であり、また、本件4土地の本件地域は、請求人ら主張地域のうち河川により分断された地域(審判所認定地域②)であると認められる。そして、本件1ないし3土地は、いずれも、審判所認定地域①の標準的な宅地の地積に比して広大な土地で、かつ、開発に当たっては公共公益的施設用地の負担が必要な土地であるから、本件通達の適用はある一方で、本件4土地は、審判所認定地域②の標準的な宅地の地積と同程度であるから、本件通達の適用はない。
参照条文等
参考判決・裁決
東京地裁平成24年2月10日判決(税資262号順号11876)
「相当の地代を収受している貸宅地の評価について」通達により、被相続人から土地を借り受けている同族法人の株式の評価上、純資産価額に計上される当該土地の価額の20%に相当する金額は、土地保有特定会社を判定する際の「土地等の価額」に含まれるとした事例
裁決事例集 第89集
ポイント
本事例は、「相当の地代を収受している貸宅地の評価について」通達に定める自用地としての価額の20%相当額が、土地保有特定会社の判定の際の「土地等の価額」に含まれることを初めて判断したものである。
要旨
請求人らは、借地権が設定されている土地について、「土地の無償返還に関する届出書」が提出されている場合には、「相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて」通達(相当地代通達)の5《「土地の無償返還に関する届出書」が提出されている場合の借地権の価額》により、当該土地に係る借地権の価額は零として取り扱われることとなるから、同通達の8《「土地の無償返還に関する届出書」が提出されている場合の貸宅地の評価》及び「相当の地代を収受している貸宅地の評価について」通達により、当該土地を借り受けている同族法人の株式の評価上、当該土地の価額の20%に相当する金額は、同法人の純資産価額に含められるとしても、それは借地権の価額ではなく、財産評価基本通達189《特定の評価会社の株式》の(3)のイに定める土地保有割合を算定する際の「土地等の価額」には該当しない旨主張する。
しかしながら、相当地代通達5及び8の取扱いは、借地権が設定されている土地を前提としており、設定された借地権の存在を否定することなく、課税の各場面における借地権の価額の多寡を定めているものであり、相当地代通達8により純資産価額に算入される自用地としての価額の20%に相当する金額を借地権以外の価額と解することはできず、また、当該20%に相当する金額を当該「土地等の価額」から除外するとの特段の定めもないことから、当該20%に相当する金額は、借地権の価額として当該「土地等の価額」に含まれるものと解するのが相当である。
参照条文等
「相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて」5、8 「相当の地代を収受している貸宅地の評価について」
本件土地の想定整形地の間口距離、奥行距離は、建築計画概要書の写しにある配置図によれば、原処分庁が主張するものとは異なるとした事例(平成24年4月相続開始に係る相続税の 各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分、 各更正処分・ 一部取消し、 棄却)
裁決事例集 第103集
要旨
原処分庁は、請求人らが相続により取得した東側と西側でそれぞれ道路に接する不整形な土地(本件土地)について、財産評価基本通達20《不整形地の評価》にいう「想定整形地」の間口距離は50.35m、奥行距離は35.0mであるから、本件土地の評価につき適用すべき同通達に定める不整形地補正率は0.98となる旨主張する。
しかしながら、建築計画概要書の写しにある配置図によれば、本件土地に係る想定整形地の間口距離は50.50m、奥行距離は35.28mであるから、本件土地の評価につき適用すべき同通達に定める不整形地補正率は0.97となる。
参照条文等
相当の地代を支払っている場合の借地権は、贈与財産である株式の純資産価額の計算上、株式の発行会社の資産の部に算入するとした事例(平成24年分贈与税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第98集
ポイント
本事例は、同族会社に土地を貸し付けている当該同族会社の同族関係者が、当該同族会社の株式を贈与した場合においても、相当地代通達6の注書の適用があるとしたものである。
要旨
請求人は、実父(父H)から贈与により取得した同族会社(本件同族会社)の株式(本件株式)の評価に当たり、「相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて」(昭和60直資2-58ほか)(60年通達)の6の注書及び「相当の地代を収受している貸宅地の評価について」(昭和43直資3-22ほか)は、いずれも相続税の課税上のみの取扱いであるから、20%の借地権相当額を本件同族会社の純資産価額に算入すべきではない旨主張する。
しかしながら、60年通達の6の注書は、生前贈与の場合にも及ぼすべきであると考えられるところ、より一般的にいうなら、同族会社の株式を贈与する同族関係者からみて、相当程度年下の第1順位の推定相続人が受贈者である場合には、当該会社に借地権が設定されている土地の所有者との関係次第で、60年通達の注書の取扱いにより借地権相当額を当該会社の純資産価額に算入すべき場合があるということになる。本件においては、本件株式の贈与者である父Hが所有する土地を、相当の地代を収受して父Hが同族関係者となっている本件同族会社に貸し付けている状況において、本件株式を同人の実子である請求人に贈与していることから、本件株式の評価に当たり、借地権の価額を本件同族会社の純資産価額に算入することは相当である。
参照条文等
「相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて」(昭和60直資2-58ほか) 「相当の地代を収受している貸宅地の評価について」(昭和43直資3-22ほか)
参考判決・裁決
福岡高裁宮崎支部平成19年2月2日判決(税資257号 順号10627) 平成26年4月22日裁決(裁決事例集№95)
評価対象土地はマンション適地と認められることから広大地には該当しないが、当該土地の評価に当たり控除すべき土壌汚染の浄化費用に相当する金額は、土壌汚染対策工事見積金額の80%とするのが相当であると判断した事例
裁決事例集 第117集
ポイント
本事例は、評価対象土地はマンション適地であると認められることから広大地には該当しないが、当該土地の評価に当たり控除すべき土壌汚染の浄化費用に相当する金額は、土壌汚染対策工事を単独で行うのではなく、当該土地に新築する建物の建築工事を並行して行うという事情の下における土壌汚染対策工事費用の金額とするのは相当ではなく、当該土地を評価するに際し減額すべき金額は、公正に算出された土壌汚染対策工事費用見積金額の80%相当額とすることが相当と認めたものでる。
要旨
請求人らは、その地域に存するマンションの棟数は少なく、マンション建築の進行度合いが遅いこと及び同地域におけるマンションの敷地の占有割合も大きくないことからすると、評価対象土地(本件土地)は、明らかにマンションの敷地に適しているとは認めらないから、マンション適地に該当しない旨主張する。
しかしながら、その地域における大規模な土地については、主としてマンションが建築されている上に、相続の開始時の前年にもマンションが建築されていること、本件土地はマンションの建築に係る規制が厳しくない地域に存し、都心への交通接近性、公共施設及び商業施設への接近性に優れていることなどからすると、本件土地はマンション適地であると認められる。
また、原処分庁は、本件土地の評価につき控除すべき土壌汚染の浄化費用に相当する金額は、請求人らが実際に負担した土壌汚染対策工事費用の金額の80%相当額とすべきであり、実額が明らかである以上、請求人らが主張する土壌汚染対策工事費用の見積金額の80%相当額を減額することは相当でない旨主張する。
しかしながら、当該実額は本件土地に新築する建物の建築業者に同建物の建築工事と本件土地の土壌汚染対策工事を並行して行わせることにより、重複工事部分の費用を節減させて行うという事情の下における土壌汚染対策工事費用の金額であるから、本件土地の評価につき、減額する金額として相当でない。そして、請求人らの主張する土壌汚染対策工事費用の見積金額は公正に算出された適正なものと認められるから、本件土地を評価するに際し減額すべき土壌汚染の浄化費用の金額は当該見積金額の80%相当額とすることが相当であって、原処分の一部を取消すべきである。
取引相場のない株式の価額を国税庁長官の指示を受けて評価した価額によるものとすることが租税法上の一般原則としての平等原則に違反するということはできないとした事例(平成29年7月相続開始に係る相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第134集
ポイント
本事例は、会社の事業年度の変更及び剰余金の配当が、請求人の相続税の負担を著しく軽減し、これを意図してされたものであり、財産評価基本通達の定める画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するため、当該評価による価額を上回る価額とすることに合理的な理由があると判断したものである。
要旨
請求人は、原処分庁が、財産評価基本通達(評価通達)6《この通達の定めにより難い場合の評価》の定めに基づき、請求人の祖母(本件被相続人)が保有していた取引相場のない株式(本件株式)の価額を評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額(原処分庁評価額)によるものとしたことが租税法上の一般原則としての平等原則に違反する旨主張する。
しかしながら、①本件株式を発行する会社(本件会社)の事業年度の変更及びその決算期中の剰余金の配当(本件各行為)を行ったことによって、請求人の納付すべき税額は、本件各行為が行われなかった場合に比べて、約50%もの減少となることから、請求人の相続税の負担は著しく軽減されたといえ、また、②請求人は、本件各行為が近い将来発生することが予想される本件被相続人からの相続において請求人の相続税の負担を減じさせるものであることを知り、かつ、これを期待して、本件各行為に係る各々の臨時株主総会を開催し、本件被相続人らと意思を相通じて賛成の議決権を行使したと推認できるから、本件各行為は請求人の租税負担の軽減をも意図して行われたものということができ、上記①及び②の事情の下においては、本件株式の価額について評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが、本件各行為のような行為をせず、又はすることのできない他の納税者と請求人との間に看過し難い不均衡を生じさせ、実質的な租税負担の公平に反するというべきであり、合理的な理由があると認められるから、本件株式の価額を国税庁長官の指示を受けて評価した価額によるものとすることが平等原則に違反するということはできない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁令和4年4月19日第三小法廷判決(民集76巻4号411頁)
ポイント
本事例は、騒音により利用価値が著しく低下している土地に該当するか否かの判断に当たり、評価上適用すべき路線価に騒音要因がしんしゃくされておらず、合理的と認められる方法に基づく騒音測定結果で相当程度の騒音が日常的に発生していることが明らかにされ、固定資産税の評価上も騒音による減価が行われていたことをもって、騒音により利用価値が著しく低下している土地に該当すると判断したものである。
要旨
原処分庁は、相続財産である土地(本件土地)について、請求人が行った列車走行による騒音測定では、騒音による取引金額への影響を確認できないから、国税庁ホームページのタックスアンサー「No.4617 利用価値が著しく低下している宅地の評価」において示された10%減額して評価する取扱い(本件取扱い)を適用することはできない旨主張する。
しかしながら、①本件土地の評価上適用すべき路線価には騒音要因がしんしゃくされていないこと、②本件土地において列車通過時に実際に騒音が生じていること、③本件土地の所在する自治体は、本件土地の固定資産税評価額の算定上、鉄道騒音補正を適用したことが認められるから、本件土地は、騒音により取引金額に影響を受ける宅地に該当すると認められる。したがって、これらを併せて判断すると、本件土地においては相当程度の騒音が日常的に発生し、騒音により取引金額に影響を受けていたと認めるのが相当であるから、本件土地は、騒音により利用価値が著しく低下している土地に該当するとして、本件取扱いを適用して評価すべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
東京高裁平成27年12月17日判決(判時2282号22頁)
事業協同組合の出資持分の価額は財産評価基本通達196に定める評価方法(純資産価額)に基づき評価するのが相当であるとした事例(平成29年4月相続開始に係る相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第135集
ポイント
本事例は、本件における事業協同組合の出資持分が究極的には当該組合の純資産価額を体現したものといえるものであり、評価に当たって財産評価基本通達196《企業組合等の出資の評価》の定めを適用することが合理的であると判断したものである。
要旨
請求人は、その主張する相続により取得した事業協同組合の出資持分(本件持分)の価額は、当該組合の定款(本件定款)に定める脱退組合員の払戻金を根拠として組合員の間でも適正価額として流通していたものであるから、当該価額をもって評価すべき旨主張する。
しかしながら、本件定款に当該組合を脱退した際の払戻金を定めていることを前提としても、当該組合の純資産価額を基礎とした持分の価額が出資額を上回っていれば、その差額は当該組合の内部に留保された状態であり、最終的に解散して清算することになれば、純資産価額に基づく財産が分配されることになるから、本件持分は究極的には当該組合の純資産価額を体現したものといえる。
したがって、本件持分の評価に当たっては、財産評価基本通達196《企業組合等の出資の評価》の定めを適用することが合理的であることに加え、本件持分の譲渡には当該組合の承諾が必要であり、市場を通じた不特定多数の当事者間の自由な取引が行われるものではなく、本件持分の価額が組合員の間において請求人が主張する価額と認識されていたとしても、その価額は当事者間において限定的に形成されたものであって、これを本件持分の時価と認めることはできない。
参照条文等
参考判決・裁決
名古屋高裁平成16年2月19日判決(税資254号順号9566) 平成14年12月16日裁決(裁決事例集No.64)
ポイント
本事例は、法令等により土壌汚染の除去等の措置を講ずる義務が生じていない評価対象地について、相続開始日において、土壌汚染対策法所定の基準を超える特定有害物質を地中に含有していたことが認められ、土壌汚染のある土地と認めるのが相当であるとして、当該評価対象地の評価に当たり、浄化・改善費用相当額を控除すべきとしたものである。
要旨
原処分庁は、評価対象地(本件各土地)は法令等により土壌汚染の除去等の措置を講ずる義務が生じておらず、本件各土地の価格形成に影響を及ぼすような土壌汚染は認められないから、本件各土地の評価に当たり、土壌汚染がないものとした場合の評価額から浄化・改善費用相当額を控除する必要はない旨主張する。
しかしながら、本件各土地は、相続開始日において、土壌汚染対策法所定の基準を超える特定有害物質を地中に含有していたことが認められ、土壌汚染のある土地と認めるのが相当であることから、本件各土地の評価に当たり、浄化・改善費用相当額を控除すべきである。そして、本件各土地及びその周辺の状況や土壌汚染の状況から、本件各土地について最有効使用ができる最も合理的な土壌汚染の除去等の措置は掘削除去であると認められるところ、請求人が主張する土壌汚染対策工事の各見積額(本件各見積額)の算定過程に特段不合理な点は見当たらず、浄化・改善費用の金額として相当であると認められるので、本件各土地の評価に当たり、土壌汚染がないものとした場合の評価額から、浄化・改善費用相当額として本件各見積額の80%相当額を控除して評価するのが相当である。
参照条文等
市街化調整区域内に所在する宅地について、「地積規模の大きな宅地」に準じて評価することはできないとした事例(令和2年8月相続開始に係る相続税の各更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の各通知処分・棄却)
裁決事例集 第134集
ポイント
本事例は、市街化調整区域のうち都市計画法第34条第12号の規定に基づき開発行為の対象となる宅地は、仮に宅地分譲に係る開発行為が可能な区域に所在していたとしても、財産評価基本通達20-2《地積規模の大きな宅地の評価》に定める「地積規模の大きな宅地」に準じて評価することはできないとしたものである。
要旨
請求人らは、相続により取得した各土地(本件各土地)は、市街化調整区域のうち都市計画法第34条第12号の規定に基づき宅地分譲に係る開発行為を行うことができる区域(12号区域)に所在しており、宅地の分割分譲が可能であって、分割分譲に伴う減価が発生する土地であるため、財産評価基本通達20-2《地積規模の大きな宅地の評価》(本件通達)に定める「地積規模の大きな宅地」に準じて評価することができる旨主張する。
しかしながら、本件通達に定める「地積規模の大きな宅地」は、「戸建住宅用地としての分割分譲が法的に可能であり、かつ、戸建住宅用地として利用されるのが標準的である地域に所在する宅地」の範囲をもって定められているところ、都市計画法第34条第12号に相当する開発行為としては、分家に伴う住宅、収用対象事業の施行による移転等による建築物、社寺仏閣、研究施設等の建築物の用に供するものが予定されているのであるから、同号の規定に基づく開発行為の対象となる宅地は、仮に宅地分譲に係る開発行為が可能な区域に所在していたとしても、本件通達が適用対象とする当該範囲に含むべきものではないとしたものと解するのが相当である。したがって、当該範囲に含まれるとする市街化調整区域のうち都市計画法第34条第10号及び第11号の各規定に基づき宅地分譲に係る開発行為を行うことができる区域に所在する宅地と当該範囲に含まれないとする12号区域に所在する宅地とで本件通達上異なる取扱いを定めていることは合理的なものであって、本件各土地を「地積規模の大きな宅地」に準じて評価することはできない。
参照条文等
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