裁決事例 国税徴収法関係

裁決事例 国税徴収法関係

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平成11年7月14日裁決

バブル崩壊による担保不足を請求人の責任として差押処分等をすることは不合理である等の請求人の主張が排斥された事例

裁決事例集 第58集 339頁

要旨

 請求人は、[1]原処分庁が延納担保物件を適当と認めて延納許可をしたにもかかわらず、バブル崩壊による担保不足を請求人の責任として差押処分等をすることは不合理である、[2]請求人の財産について早期に滞納処分ができたにもかかわらず、請求人の指定した土地以外の土地を参加差押処分したことは不当である、[3]公売された場合に配当が見込めない土地に行った参加差押処分は無益な処分であり不当である、[4]公売物件の見積価額を算定する場合は十分審査して、公売予定価額を決定すべきである旨主張する。
 しかしながら、[1]担保財産について延納税額を担保できなくなる事態の生じることは法律上予定されているものであって、担保評価額の下落の原因に関係なく、担保不足分を徴収するため他の財産の差押処分等を執行したとしても、その処分に違法又は不当な点は認められないこと、[2]請求人の所有する財産のうち、いかなる財産を差し押さえるか又は参加差押えをするかは、国税徴収法等に定めた手続によるほかは、徴収職員の合理的な裁量に委ねられており、請求人の要望に沿って相当の換価努力をした後に当該処分を行っていることから、その時期について特に不当な点は存しないこと、[3]本件参加差押処分は、法定の要件を充たす処分であって、交付要求としての効力を有するから、無益な処分ということはできないこと、[4]見積価額は、売却予定価額ではなく、これを下回る価額での売却は許されないという最低公売価額の性質を有する法定売却条件であって、適正な売却価額を担保するものにすぎず、かつ、公売物件という特殊性を考慮した減価がされるべきものであり、本件公売物件の見積価額は、客観的な時価に比して著しく低簾とは認められないことから、原処分庁が差押物件の評価額では滞納国税等を十分に担保していないとして、差押処分及び参加差押処分を執行したことに違法な点は認められず、差押物件の評価額が低廉であるとの理由もない。

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昭和56年10月23日裁決

不動産の売買契約の不履行により保証金を没収したことが国税徴収法第39条の無償譲渡に該当しないとした事例

裁決事例集 第23集 207頁

要旨

 請求人が滞納者から不動産の売買契約の不履行により、保証金を没収したことが国税徴収法第39条に規定する無償譲渡に該当するかどうかは、保証金と対価的関係に立つ請求人の給付の存否を確定することによって判定すべきであるところ、請求人は本件不動産の保全に要した資金に係る金利その他諸費用一切の負担をすることになっていて、これらの負担と対価的関係に立つ金員として保証金を取得したこと、かつ、没収されるべき保証金の額が当該給付の内容等に照らして不相当に高額でないことが認められるから、当該没収は無償譲渡に当たらず、したがって、原処分庁が同条の規定に基づいてなした第二次納税義務の告知処分は相当でない。

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昭和51年4月30日裁決

中間省略登記の合意があっても、中間取得者に代位して原処分庁がした移転登記及び差押登記は適法であるとした事例

裁決事例集 第12集 47頁

要旨

 滞納者である請求人は本件田地等をAから取得し、それをBに譲渡したが、農地売買契約公正証書によれば、AはBの請求により仮登記に応ずる旨が規定されており、請求人とA、Bとの間に中間省略登記の合意が成立していることがうかがわれるが、中間省略登記の合意が成立している場合の中間者の登記請求権及び中間者の債権者による代位登記については、中間者は当然に登記請求権を失わず、中間者の債権者による代位登記は許されると解されているから、債権者たる原処分庁が請求人に代位してAから所有権移転登記承諾書の交付を受けて、停止条件付所有権移転仮登記を法務局出張所に嘱託の上、それについて差押処分を行ったことは適法である。

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平成2年6月29日裁決

主たる納税義務が存続する限り、第二次納税義務がこれと別個に独立して時効により消滅することはないとした事例

裁決事例集 第39集 445頁

要旨

 第二次納税義務の本質は、主たる納税義務者に対する徴収処分の延長あるいは一段階として捕らえるべきものであるから、第二次納税義務は、主たる納税義務の存否と運命を共にするものと考えるのが相当であって、主たる納税義務が存続する限り、第二次納税義務がこれと別個に独立して時効により消滅することはないものと解すべきであるところ、本件納税者に対する納税義務については、昭和59年8月27日に督促状が発付されたことにより同年9月6日に時効が中断され、同日より5年以内である平成元年4月10日に請求人に対する第二次納税義務の告知が行われた事実が認められるから、請求人の第二次納税義務は時効により消滅していないというべきである。

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平成3年12月6日裁決

他人の依頼を受けて請求人の所得としてした確定申告に係る滞納国税について請求人の財産に対して行った差押えは違法ではないとした事例

裁決事例集 第42集 249頁

要旨

 請求人は、滞納国税が譲渡所得に起因するものであるところ、本件譲渡所得を請求人の所得として確定申告したのは、本件譲渡所得の真の所得者であるA男からの依頼があったためであり、本件滞納国税はA男から徴収すべきであるから、請求人の財産に対して行った差押えは違法である旨主張するが、所得税は、申告納税方式をとっているところ、申告納税制度における課税標準、税額等の申告は、納税者たる私人のする行為であるが、これに対しては、納付すべき税額の確定等公法上の法律効果が付与されており、したがって、納税義務者が第三者に帰属する所得を自己の名義で納税申告することは法の全く予定していないところであり、納税申告は、外観上一見して当該納税義務者本人のものでないと判断できるような場合でない限り、当該納税義務者本人に対して、納税義務の確定という公法上の法律効果を及ぼすものであって、その他の第三者に納税義務が生じることはないし、また、滞納処分は、それに先行する確定申告に係る行為とは別個独立の行政処分であるから、当該納税義務者に係る税額が確定申告により一応形式的に確定している場合には、確定申告書の記載内容のかしが客観的に明白、かつ、重大である場合を除いては、当該確定申告に、仮にかしが存するとしても、滞納処分が違法となることはないと解するのが相当であるところ、本件滞納国税が本件譲渡所得に起因するものであり、仮に、本件譲渡所得がA男に帰属すべきものであったとしても、本件申告書に重大かつ明白なかしがない以上、請求人以外の第三者であるA男が本件申告書により確定した税額の納税義務者となることはあり得ないのであるから、請求人の財産に対して行った差押えは違法である旨の請求人の主張には理由がない。

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平成25年6月5日裁決

会社法第757条の規定に基づく吸収分割によって滞納法人の事業を承継した請求人は国税徴収法第38条の規定による第二次納税義務を負うとした事例

裁決事例集 第91集

ポイント

 本事例は、吸収分割による事業の譲渡があった時とは、吸収分割の効力発生日であるから、その効力発生と同時に、納税者である吸収分割会社が吸収分割承継会社の発行済株式の100分の50を超える株式の交付を受けた場合には、当該吸収分割承継会社は国税徴収法第38条に規定する特殊関係者に該当すると判断したものである。

要旨

 吸収分割により滞納会社(本件滞納会社)から事業を譲り受けた法人(本件法人)の権利義務の全部を数次の吸収合併によって承継した請求人は、当該吸収分割についての本件滞納会社の臨時株主総会による承認決議の時には本件法人は本件滞納会社の特殊関係者に該当しないから、国税徴収法第38条《事業を譲り受けた特殊関係者の第二次納税義務》に規定する第二次納税義務を負わない旨主張する。
 しかしながら、国税徴収法施行令第13条《納税者の特殊関係者の範囲》第2項は、特殊関係者であるかどうかの判定は納税者がその事業を譲渡した時の現況による旨規定しているところ、吸収分割による事業の譲渡があった時とは、吸収分割による効力発生日であり、その効力発生と同時に吸収分割会社が吸収分割承継株式会社の株主になると解されるので、その時に吸収分割承継株式会社が吸収分割会社の特殊関係者に該当するかどうかを判定するのが相当である。そうすると、本件滞納会社は、本件吸収分割の効力が発生し、事業の譲渡が行われたのと同時に、本件法人の発行済株式の100分の50を超える株式の株主となったのであるから、本件法人は本件滞納会社の特殊関係者に該当する。

参照条文等

会社法第757条、第759条 国税徴収法第38条 国税徴収法施行令第13条

参考判決・裁決

平成20年10月1日裁決(裁決事例集No.76・573頁)

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平成10年4月13日裁決

先の差押調書謄本が送達されたと認定し、これにより滞納国税の徴収権の消滅時効が中断され、その後に行われた差押処分が適法であるとされた事例

裁決事例集 第55集 787頁

要旨

 請求人は、土地権利証と白紙委任状を友人に渡したため、本件土地を譲渡されてしまったが、当該友人を刑事告発はしておらず、かつ、その代償の一部として金銭を受領しており、本件譲渡を事後において容認したものと認められ、課税処分は適法である。したがって、課税処分の違法を理由として本件差押処分の取消しを求めることはできない。
 なお、電話加入権の差押調書謄本は請求人の住所地に適法に送達されたと認められ、滞納国税の徴収権は消滅時効により消滅しておらず、また、請求人が滞納国税を納付しなかったため、原処分庁が本件差押処分を行ったものであり、原処分は適法である。

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昭和57年3月31日裁決

公売の通知を欠いたことを理由として後続する最高価申込者の決定を取り消した処分を違法とした事例

裁決事例集 第23集 222頁

要旨

 原処分庁は、滞納者への公売の通知を欠いた公売は無効であるとして請求人に対する最高価申込者の決定を取り消したが、公売の通知は滞納者等に事前に権利行使の機会を与えるため法定されたものであるから、公売の通知を欠いたかしは公売手続を当然に無効とする程度のものと解すべきでなく、ある場合にはその効力が取り消されることがある程度のものと解すべきところ、本件においては滞納者への通知は正しいあて先に送られ、公売の日までに返戻を受けていなかったこと及び滞納者は公売公告により公売通知の内容を事前に予知していて、公売通知がなかったことに対して異議申立てをしていないことが認められ、したがって、本件のような公売通知に係る形式的な方法を欠いたにとどまる軽微なかしを理由として善意の第三者たる請求人に対する最高価申込者の決定を取り消した原処分は違法である。

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平成23年2月3日裁決

利息制限法所定の制限利息を超える額の利息を支払ったことによる過払金返還請求権は、その利息を支払った時に発生し、既に発生した債権は弁済期が未到来であっても差押えの対象となること及び一身専属権であると認めることはできないとした事例

裁決事例集 第82集

ポイント

 この事例は、利息制限法所定の制限利息の額を超える利息を支払ったことによる過払金返還請求権の発生時期や差押財産該当性について判断したものであり、先例となるものである。

要旨

 請求人は、本件の金銭消費貸借取引は、過払金充当合意のある基本契約に基づく一体の継続的取引であり、契約終了時までは過払金返還請求権は不確定な債権であって、債権の帰属も確定しないから、差押えの対象とすることができない旨主張するが、過払金返還請求権の法的性質が不当利得に基づく返還請求権である以上、過払金返還請求権が発生するのは、本件滞納者を借主、請求人を貸主とする金銭消費貸借契約に基づいて本件滞納者が利息制限法所定の制限利息を超える額の利息又は損害金を支払った時点、すなわち、各過払金発生時と解するのが相当であり、その時に本件滞納者が過払金返還請求権を取得すると解するのが相当であって、既に発生した債権は、弁済期が未到来であっても差押えの対象になるから、差押手続に違法はなく、したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
 また、請求人は、過払金返還請求権は、取引終了時になって初めて行使することが可能であるところ、いつ取引を終了させるかは専ら借主たる本件滞納者の意思によるものであり、一身専属権と認められるから、差押禁止財産となる旨主張するが、過払金返還請求権は、身分法上の非財産的権利ではなく、通常の金銭債権であり、これを差し押さえることを禁止する規定はなく、同請求権の性質からこの差押えを禁止すべきとも解されないから、過払金返還請求権を一身専属権であると認めることはできず、したがって、この点に関しても請求人の主張には理由がない。

参照条文等

国税徴収法第62条

参考判決・裁決

最高裁平成18年1月13日第二小法廷判決(民集60巻1号1頁)

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平成5年3月15日裁決

原処分庁が差し押さえた滞納会社名義の普通預金は、滞納会社から任意整理の委任を受けた請求人に帰属する債権であるとの主張を退け、滞納会社に帰属するとした原処分に違法はないとした事例

裁決事例集 第45集 285頁

要旨

 請求人は、原処分庁が差し押さえた普通預金は、滞納法人から任意整理の委任を受けた請求人がその業務遂行上の財産として管理しているものであるから請求人に帰属する債権であること、また、仮に、それが認められない場合においても、差押え以前に滞納法人から譲り受けたものであるから請求人に帰属する債権である旨主張する。しかし、業務遂行上の財産として管理している請求人の行為は、いずれも請求人が委任された範囲内の行為であるから、請求人に帰属するとは認められない。また、本件普通預金の譲渡契約により滞納法人の債務者に対する通知又は債務者の承諾がなされたとは認められず、また、譲渡契約後においても、請求人は、譲渡されたとする財産を法人の財産として取り扱っている事実が認められるから、民法第467条《指名債権譲渡の対抗要件》の規定により、請求人は、当該譲渡契約をもって差押債権者たる原処分庁に対抗することはできない。

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平成10年11月6日裁決

原処分庁の公売財産の見積価額を適正であると認定した上、見積価額が低廉であるとする請求人の主張がすべて排斥された事例

裁決事例集 第56集 443頁

要旨

 原処分庁の見積価格の決定に当たって基礎とした鑑定評価額は、[1]不動産鑑定基準により、本件土地の地域要因及び指定容積率から、中層ビルが標準的使用であること、[2]近隣地域における中層ビル敷地としての標準画地に、本件土地の間口、奥行、地積の個別格差率の相乗積を採用して算定していること、[3]地下鉄敷設による地上権阻害率を適用して算定していること、[4]借地権の付着する土地として、収益方式及び借地権相応分控除方式により算出した底地価格の平均値で底地価格を算定しており、それぞれ減価要因を考慮したものである。
 そして、本件鑑定評価額は、近隣地域4件の売買実例に基づく比準価格を算出し、市場動向や収益性の調整率を乗じて計算した標準画地価格から、上記減価要因となる金額を控除して算出されており、また、公売の特殊性を控除した見積価額であり、適正であると認められる。
 なお、[1]適正価格は2億4千万円であること、[2]隣接地の平方メートル当たりの単価は1千万円であること、及び[3]過去の鑑定評価等から見て安価である、とする請求人の主張はすべて認められない。

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平成21年11月13日裁決

同族会社の判定の基礎となった株主が当該同族会社に無償で貸与していた不動産が、当該同族会社の事業の遂行に欠くことができない重要な財産に当たるとした事例

裁決事例集 第78集 509頁

要旨

 国税徴収法第37条の「事業の遂行上欠くことのできない重要な財産」の範囲は、その事業の形態によりその財産が納税者の事業の遂行上果す役割いかんにより定まるので、これを一律に定めることはできないが、同条の趣旨に照らせば、その財産がないものとした場合において、その事業の遂行ができなくなるか又はできないおそれがある状態になると認められる程度に当該財産と事業が密接な関連性を有していれば、当該財産は、その事業の遂行に欠くことができない重要な財産に当たると解するのが相当である。
 これを本件についてみると、本件滞納法人の事業は、もともと、自ら生産した原料鶏卵を自己の工場で液卵に加工してV社に販売するというものであったが、N社との取引を開始した後は、同社に原料鶏卵を卸す一方、同社から、原料鶏卵の重量に見合う液卵を、X社を介して仕入れ、V社に販売するようになったものであることが認められる。そうすると、原料鶏卵の生産と液卵の販売とは、別個独立の事業ではなく、相互に関連しており、鶏卵を取り扱う一体の事業であったというべきである。そして、本件各不動産が事業に供されていた期間はそれぞれ異なるものの、平成15年8月期及び平成16年8月期における原料鶏卵の売上げの90%以上は、N社に対するものであり、これらが本件各不動産から出荷されていることからすれば、本件各不動産がなければ、本件滞納法人は、上記事業を遂行できなくなるおそれがあったと認められるから、本件各不動産は、本件滞納法人の事業遂行上不可欠な重要財産に当たるというべきである。

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平成11年7月1日裁決

国税徴収法第38条の第二次納税義務の告知処分に至る手続に違法があり、また、納付相談の要請を了解したにもかかわらず、この了解事項を一方的に破棄して告知処分を行ったことは、信義則に反するとの請求人の主張が排斥された事例

裁決事例集 第58集 324頁

要旨

 請求人は、本件告知処分は、滞納会社に対する滞納処分の手続が十分に行われていたとはいえず、法律的な瑕疵があり、また、徴収担当職員は納付相談の要請を了解していたにもかかわらず、原処分庁がこの了解事項を一方的に破棄し、本件告知処分を行ったことは信義誠実の原則に反する旨主張する。
 しかしながら、国税徴収法第38条に規定する第二次納税義務の告知処分は、同条に規定する第二次納税義務のいずれの要件にも該当する場合に成立するとされており、また、滞納会社が原処分庁と納付相談中である場合あるいは原処分庁の滞納会社に対する徴収手続が尽くされた後でなければ第二次納税義務を課すことができない旨を定めた法令上の規定はなく、請求人は、同条に規定する第二次納税義務を負うこととなる。
 また、請求人の納付相談に応じてほしい旨の要請に対し、原処分庁がこれを容認した事実は認められず、請求人が徴収担当職員から拒否されなかったことをもってこの要請を了解していた旨の請求人の主張は、請求人の一方的な理解にすぎない。そうすると、原処分庁が公的見解を表示した事実は認められず、租税法規の適用における納税者間の平等、公平を犠牲にしても、なお請求人の信頼、利益を保護しなければ正義に反するというような特別の事情があるとは認められない。

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平成19年11月28日裁決

差し押さえられている自宅建物についての任意売却の申出を認めずに公売公告処分を行ったことが権利の濫用に当たるとはいえないとした事例

裁決事例集 第74集 491頁

要旨

 請求人は、原処分庁が任意売却の申出を認めずに請求人の居住用財産である本件建物の公売処分を強行したことは、権利の濫用に当たる旨主張する。
 しかしながら、差押財産を換価するときは、公売によって行うこととされており、納税者の居住用財産を換価する場合に、納税者の事情を考慮した換価手続を行わなければならない又は公売以外の方法により換価しなければならないとする法令上の規定は存在しない。そして、公売は、差し押さえた財産を買受希望者の自由競争に付し、その結果形成される最高価額により売却価額及び買受人となる者を決定するための一連の手続であり、強制換価手続である国税滞納処分の手続の公正を維持しながらも、なるべく高価で納税者に有利な売却を行うことをある程度まで制度的に保障しようとする手続であると解される。本件において、原処分庁が請求人からの任意売却の申出を認めずに公売を行ったことは、法令上の規定に従ったものであり、また、請求人の申出に係る任意売却による買受希望者が公売に参加し最高価で入札することもできたのであるし、さらに、強制換価手続において納税者の権利利益も保護しようとする上記の公売の趣旨及び目的に反する事実は見当たらないから、本件公売公告処分が権利の濫用に当たり違法又は不当ということはできない。

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昭和58年4月11日裁決

差押えに係る債権の譲渡は第三者たる原処分庁に対抗できないとした事例

裁決事例集 第26集 175頁

要旨

 差押えに係る本件債権の譲渡については、譲渡人たる請求人と債務者との間で民法第467条の規定による確定日付のある証書による通知又は承諾が行われておらず、請求人は本件債権の譲渡を理由として第三者たる原処分庁に対抗できないものであるから、差押えに係る債権が第三者に帰属するとの請求人の主張には理由がない。

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昭和57年6月4日裁決

差押処分が超過差押え又は無益な差押えに該当しないとした事例

裁決事例集 第24集 165頁

要旨

 請求人の滞納国税を徴収するため差し押さえた不動産の価額がその滞納国税の額を超過しても、請求人が当時他に本件滞納国税の額に見合う適当な財産を所有していない上、本件不動産について不動産登記手続上これを分割して差し押さえることができないものであるから、直ちに超過差押えということはできず、また、本件差押処分当時本件不動産上に本件滞納国税より優先する他の国税、地方税、その他の債権について差押処分若しくは担保権の設定行為等がなされておらず、本件不動産の処分予定価額が本件差押処分に係る滞納処分費を超える見込みがないものとは到底考えられないから、本件差押処分は無益な差押えに該当しない。

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平成18年9月8日裁決

差押処分の取消しを求める理由として滞納処分の停止事由に該当する旨の請求人の主張を排斥した事例

裁決事例集 第72集 679頁

要旨

 請求人は、自身の資力からみて国税徴収法第153条に基づいて滞納処分の執行が停止されるべき状態にあることを理由として、本件差押処分の違法又は不当を主張する。
 しかしながら、滞納処分の執行の停止は、国税徴収法第153条第1項に規定された一定の要件に基づき、税務署長又は国税局長の裁量によって行うものであって、これを行わない不作為に対する不服申立てに対する判断は、当審判所の権限に属するものではない。そして、同条第3項は、滞納処分の執行の停止をした場合においては差押えを解除しなければならない旨規定するが、本件においては、いまだ当該滞納処分の執行の停止はなされていないのであるから、差押えを解除しなければならない状態となっているわけでもなく、差押えを取り消す理由はない。
 したがって、滞納処分の執行を停止すべきであることを理由として、本件差押処分の取消しを求める請求人の主張は失当である。

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平成20年12月3日裁決

役員報酬が国税徴収法第76条に規定する給料等に該当するとした事例

裁決事例集 第76集 612頁

要旨

 原処分庁は、役員報酬は、取締役と会社との委任関係に基づいて支払われるものであるから、国税徴収法第76条第1項に規定する給料等には該当しない旨主張する。
 しかし、国税徴収法第76条第1項が規定する給料等の差押禁止規定は、給料等がその受給者とその家族が生計を維持するための唯一ないし最重要な収入であり、その全額が差し押さえられた場合には、直ちにその受給者とその家族の生計の維持が困難になることを考慮し、健康で文化的な最低限度の生活を保障するという社会政策的な観点から、一定の範囲で差押えを禁止したものであり、同項は、給料等について、歳費まで例示しているから、同項にいう給料等とは、雇用契約に基づいて支給されるものに限定されず、雇用契約又はこれに類する関係その他一定の勤務関係に基づき、使用者の指揮命令又は所属する組織の規律に服してその使用者又は組織に対して提供した労務又は職務遂行の対価としてその使用者又は組織から継続的に受ける又は受けることが予定されている給付をいうものと解するのが相当であるところ、取締役の役員報酬は、取締役の任期中、会社との任用契約による勤務関係に基づき、その会社の機関又は機関の構成員として会社の規律に服し、その職務を行った対価として、その会社から継続的に報酬を受けるものであるから、国税徴収法第76条第1項が規定する給料等に含まれると解するのが相当である。

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平成12年2月9日裁決

株式に根質権を設定した後、質権者がその株券を質権設定者に返還し、改めて預金債権に質権を設定した場合に、その預金の差押えに係る配当において、株券の質権設定日と法定納期限等とで優劣を決すべきであるとの請求人の主張が排斥された事例

裁決事例集 第59集 427頁

要旨

 債権に質権が設定されたのは、滞納国税の法定納期限等の後となり、この質権については国税徴収法第15条1項は適用されず、本件取立金は、同法8条の規定により、質権により担保される請求人の債権に優先して、滞納国税に配当されることになり、配当処分は適法である。
 また、民法第350条において準用する同法第304条1項は、質権はその目的財産の売却、賃貸、滅失又は毀損によって質権設定者が受けるべき金銭その他の物に対しても行うことができる旨規定し、質権の効力は、質権の目的財産だけでなく、異体化した当該財産の交換価値にも及ぶとしている。そして、この規定の趣旨からすれば、「売却、賃貸、滅失又は毀損」は例示で、交換も含まれると解される。
 しかし、請求人は、株式を根質権の目的財産から除外し根質権を解除した上で、滞納会社が第三債務者に金銭を預け入れることにより生じた預金債権に質権を設定したのであり、預金債権は、株式との交換によって根質権の設定者である滞納会社が受けるべき金残その他の物に該当しないことは明らかである。
 したがって、根質権の効力は預金債権に及ばないというべきであり、請求人の主張には理由がない。

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平成31年3月18日裁決

死亡した滞納者からその生前に無償譲渡等の処分により権利を取得した者は死亡後においても第二次納税義務を負うとされた事例(第二次納税義務の納付告知処分、納付催告書による督促処分・一部取消し)

裁決事例集 第114集

ポイント

 本事例は、納税者の国税の法定納期限の1年前の日以後に同人がその財産につき無償譲渡等の処分を行い、その後死亡した場合には、死亡後の第二次納税義務を負わせるかどうかの判定をしようとする時の現況において、死亡により相続人に承継された国税につき滞納が生じており、滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められ、かつ、その不足することが当該無償譲渡等の処分に基因すると認められるときは、当該無償譲渡等の処分により権利を取得した者は第二次納税義務を負うと解するのが相当であるとしたものである。

要旨

 請求人は、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》は、滞納者である主たる納税者が贈与等を行った場合の規定であるところ、被相続人から請求人への土地の贈与(本件贈与)は、請求人が被相続人(本件被相続人)から受けたものであって、相続人(本件相続人ら)から受けたものではないため、滞納者である主たる納税者(本件相続人ら)が請求人に対して贈与等を行った事実はなく、本件贈与は、本件被相続人の死亡後においては、国税徴収法第39条に規定する滞納者が行ったとの要件を満たさないから、滞納者であった本件被相続人が行った無償譲渡等の処分により権利を取得した請求人は、本件被相続人の死亡後においては、第二次納税義務を負わない旨主張する。
 しかしながら、納税者の国税の法定納期限の1年前の日以後に同人がその財産につき無償譲渡等の処分を行い、その後死亡した場合には、死亡後の第二次納税義務を負わせるかどうかの判定をしようとする時の現況において、死亡により相続人に承継された国税につき滞納が生じており、滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められ、かつ、その不足することが当該無償譲渡等の処分に基因すると認められるときは、当該無償譲渡等の処分により権利を取得した者は第二次納税義務を負うと解するのが相当である。
 ただし、本件各納付告知処分に係る納付すべき限度の額はそれぞれ○○○○円とされているところ、本件相続人らは、本件被相続人の死亡により本件被相続人の滞納国税の納付義務を承継している以上、当該納付すべき限度の額については、民法第900条及び第901条の規定によるその相続分によりあん分した額、すなわち、○○○○円を本件相続人らの相続分(2分の1)であん分して計算した額となる。そうすると、本件各納付告知処分に係る納付すべき限度の額は、それぞれ○○○○円となる。したがって、本件各納付告知処分は、納付すべき限度の額につき○○○○円を超える部分はいずれも違法となる。

参照条文等

国税徴収法第39条 国税通則法第5条

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昭和49年9月27日裁決

法人税法上役員賞与としたものを無償譲渡と認めて第二次納税義務を課しても矛盾がないとした事例

裁決事例集 第9集 31頁

要旨

 法人税法上の役員賞与とは、役員に対する給与のうち、臨時的に不定期で支給されるもので、退職給与以外のものをいい、債務の免除等による経済的利益をも含むものとされ、会社の役員に対する贈与等とみられる場合であっても、役員賞与となるものと解される。また、国税徴収法第39条の「無償による譲渡」とは民法上の贈与等を指すものと解すべきである。したがって法人税法上役員賞与としたものを国税徴収法第39条にいう無償譲渡と認めて第二次納税義務を課しても何ら矛盾するものではない。

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平成3年12月18日裁決

源泉所得税の納税告知等の違法を理由として差押えの取消しを求めることはできないとした事例

裁決事例集 第42集 245頁

要旨

 納税告知は、既に確定した納付すべき源泉所得税の額を明らかにするとともに納税義務を履行するよう請求する処分であり、不納付加算税の賦課決定は同税の納税義務の確定を目的とする処分であるのに対し、差押えは既に確定している納税義務の強制的な履行を目的とする処分であるから、本件納税告知等と本件差押えとは、それぞれ別個の法律効果を目的とする独立した行政処分であり、したがって、仮に本件納税告知等に違法があったとしても、当該納税告知等が無効となるような重大かつ明白なかしがない限り、そのことにより本件差押えが違法となるものではないと解すべきであるところ、請求人は、本件滞納国税の額の確定に誤りがあり、これに基づく本件納税告知等が違法であることを理由として本件差押えの取消しを主張するが、本件納税告知等に重大かつ明白なかしはなく、かつ、その取消しもなされていないことが認められ、また、本件差押え自体については、国税徴収法第47条及び第73条の規定に基づいて適法になされていることが認められるから、本件納税告知等の違法を理由として本件差押えの取消しを求める請求人の主張は、失当である。

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平成29年12月14日裁決

滞納会社が行った生命保険の委託先代理店の変更が国税徴収法第39条の「第三者に利益を与える処分」に当たるとした事例(第二次納税義務の納付告知処分・一部取消し)

裁決事例集 第109集

ポイント

 本事例は、滞納会社が行った生命保険の委託先代理店の変更により、代理店たる契約上の地位が滞納会社から請求人に譲渡された結果、請求人は滞納会社が行った保険募集業務に係る代理店手数料を受領することとなったことが認められ、当該代理店手数料相当額の利益を受けたと認められるとしたものである。

要旨

 請求人は、生命保険の代理店業を営む滞納会社(本件滞納会社)には、保険会社との代理店業務委託契約における契約上の地位を第三者に譲渡する権限はないこと、代理店手数料は請求人自らが行った業務の対価として、請求人が受け取るべきものといえることなどを理由に、本件滞納会社から請求人への代理店の変更によって、本件滞納会社から国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に規定する利益は受けていない旨主張する。
 しかしながら、本件滞納会社及び請求人による保険会社に対する代理店の継承に係る承認申請等(本件申請)は、代理店としての地位を譲渡する手続を履践する目的で行われたものと認められ、本件申請から保険会社による承認までの一連の行為(本件委託先代理店変更)によって、本件滞納会社の代理店たる契約上の地位(本件契約上の地位)が請求人に譲渡された結果、請求人が代理店手数料を受領することとなったことが認められる。また、代理店手数料は、保険募集業務の遂行に基づく保険契約の獲得がなければ発生しないものである一方、保険契約の締結に至った場合には、解約等の事象が発生しない限り、保険契約者は契約期間にわたって保険料を支払うこととなるのであるから、当該保険料に係る代理店手数料は、その発生について高度の蓋然性があるということができ、本件契約上の地位には財産的価値が認められる。
 したがって、本件契約上の地位は、国税徴収法第39条の処分の対象たる積極財産に該当し、本件委託先代理店変更によって、請求人は、本件契約上の地位を本件滞納会社から無償で譲り受けた結果、本件契約上の地位の評価額に相当する利益を受けたといえることから、本件委託先代理店変更は、国税徴収法第39条に規定する第三者に利益を与える処分に該当するものと認められる。
 ただし、原処分庁が算定した納付すべき限度の額の一部については、本件契約上の地位の内容には含まれていない月分の代理店手数料等を考慮して算定されており、当該金額については納付すべき限度の額に含めることはできない。

参照条文等

国税徴収法第39条

参考判決・裁決

東京地裁平成26年6月27日判決(訟月61巻2号477頁)

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平成20年8月4日裁決

滞納処分の停止後に資力が回復した事実はないとの請求人の主張を排斥した事例

裁決事例集 第76集 618頁

要旨

 請求人は、H社からの給料の手取額から、F県での勤務のための新幹線代金やホテル代のほか、地方税の滞納分及び保証人としての代位弁済金を支払う必要があり、これらを支払った後の残額は国税徴収法第153条第1項第2号に規定する「滞納処分を執行することによって、その生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき」に該当する旨主張する。
 しかしながら、給与等に係る差押禁止額を超える部分を差し押さえる場合は、国税徴収法第153条第1項第2号に規定する「その生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき」に該当しないと解されるところ、請求人に対して支払われた給料等の額が給料等に係る差押禁止額を超えることは明らかであり、また、請求人が主張するような支出を給料等に係る差押禁止額の計算上考慮するとした規定もないから、この点に関する請求人の主張には理由がない。

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平成14年6月11日裁決

滞納国税である相続税を徴収するために行った相続人の固有財産の差押えが適法であるとした事例

裁決事例集 第63集 739頁

要旨

 請求人は、相続税の滞納国税に係る差押処分は、相続税法が相続財産に担税力を求めて立法されたものであるから、相続財産の範囲で行うべきであり、請求人の固有財産にまで及ぶ本件差押処分の一部を取り消すべきである旨主張するが、原処分庁が請求人の固有財産にまで及ぶ本件差押処分をしたのは、相続開始時から本件差押処分時までの間の地価の下落を原因とする担保不足によるもので、本件先行差押物件の処分代金を本件滞納国税に充ててもなお不足があると認められるからであり、相続税法の立法趣旨とは何ら関係はなく、また、相続税の滞納国税を相続財産から徴収しなければならないとする法令上の規定はないから、請求人の主張には理由がない。

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平成3年3月29日裁決

滞納法人が行った債権放棄と同法人の滞納国税の徴収不足との間に基因関係が認められるとした事例

裁決事例集 第41集 339頁

要旨

 請求人は、滞納法人の滞納国税の徴収不足は、請求人が債権放棄を受けたことに基因するものではない旨主張するが、原処分庁が滞納法人に対し、差押え等の執行ができた昭和59年1月17日の時点における滞納法人の主な資産はB社に対する貸付金及び手形債権であったことが認められるけれども、当時、B社は、事実上の倒産状態にあり、その実質的な資力を喪失していたことが認められ、したがって、原処分庁が、滞納法人がB社に対して有する債権の差押えをしてもその回収が見込めず、本件滞納国税を徴収できなかったことは明らかであるし、また、徴収法第39条に規定する徴収不足と無償譲渡等との間の基因関係について、同条の解釈としては、当該無償譲渡等の処分がなかったならば、徴収不足を生じなかったであろうということができる場合には、基因関係を認めるのが相当であるとされているところ、B社に係る債権債務を除いた滞納法人の純資産は84,297,111円であるのに、滞納法人が行った債権放棄の金額は67,792,041円となることが認められ、この債権放棄がなければ本件滞納国税にかかる徴収不足は生じなかったであろうということがいえるから、本件債権放棄と本件滞納国税の徴収不足との間の基因関係を認めることができるというべきである。

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昭和54年7月31日裁決

滞納者への所有権移転登記の無効の主張について、民法第94条第2項の規定により原処分庁に対抗できないとした事例

裁決事例集 第18集 117頁

要旨

 差押えに係る建物の実質的な所有者は、登記簿上の所有者たる滞納者ではなく、請求人であるとする主張について、所有者名義が滞納者となっているのは、請求人が債権者からの追求を免れるために通謀して行った虚偽の意思表示に基づくものであるとしても、[1]原処分庁が本件物件の所有者が外形と異なるかどうかについて関係者等を調査したのは原処分を行った後であること、[2]請求人が本件不動産の譲受けの対価の支払調書の照会に対して何らの回答もしていないこと等から、原処分庁は原処分当時に請求人等の真意につき悪意であったとは認められず、したがって、民法第94条第2項の規定により、滞納者への所有権移転登記の無効の主張は、これをもって原処分庁に対抗できず、本件差押処分に影響を及ぼすものではない。

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平成9年7月1日裁決

生命保険契約に基づく解約返戻金の支払請求権を差押え、解約権を行使してその給付を受け、配当処分を行う一連の滞納処分手続に違法はないとした事例

裁決事例集 第54集 505頁

要旨

  1.  異議審理庁は、異議申立ての趣旨等が不明であることを理由に却下の決定をしているが、審判所の調査の結果、異議申立てに不適法とするほどのかしは認められないから、本件審査請求は適法と認められる。
  2.  差押えに係る債権が請求人の母に帰属するのであれば、本件債権の差押え及び配当処分は請求人に不利益を及ぼさないから、本件配当処分の取消しを求める請求人の主張は理由がないこととなるが、当審判所が調査したところ次のとおりである。
     本件生命保険契約の契約者は、保険契約書上は請求人本人であり、その保険料は、請求人の勤務するJ有限会社の給料から毎月5,604円が差し引かれ、請求人本人が負担していたことが認められる。したがって、本件債権は請求人に帰属すると認めるのが相当である。
  3.  本件滞納国税の納付について、月々の支払可能額を納付する旨の申し出があったとしてもこれを徴収職員が承諾したとは認められず、また、徴収職員は滞納国税が完納されるまでは滞納処分手続を続行できるものと解されるから、原処分庁の一連の滞納処分に違法はない。
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平成15年6月19日裁決

生命保険契約に基づく解約返戻金支払請求権が差し押さえられた後、約10年6か月後になされた取立権の行使及び配当処分の手続は適法であるとした事例

裁決事例集 第65集 1115頁

要旨

 請求人は、会社倒産後は生命保険料の支払もできない状態になり、生命保険会社が未払いの保険料を立て替えていたにもかかわらず、差押えた本件債権を10年余りも解約執行せず放置したことから、解約返戻金が減少することとなったものであり、差押え直後に解約返戻金を滞納税額に充当しておれば、これほどの滞納税額にならなかったことから、本件配当処分を取り消し、差押え時点に遡って解約権を行使し配当処分をすべきである旨主張する。
 しかしながら、本件生命保険契約は、65歳の保険料払込満了後になっても、請求人が死亡した場合には、死亡保険金受取人からの普通死亡保険金支払請求ができる契約となっており、原処分庁は、解約権を行使して取立てを行う行為は、将来発生すると予測される受取人の普通死亡保険金支払請求の権利を奪うこととなり、受取人に影響を及ぼすおそれがあったことから慎重に行うこととし、請求人自らが円満に納付できるよう努力を行っていたにもかかわらず、請求人が原処分庁に連絡した事実はない。
 また、本件生命保険契約の解約返戻金が減少した理由は、請求人が保険料の支払いを怠ったためであり、その責任は請求人にあると言わざるを得ない。
 さらに、原処分庁が行った一連の徴収手続に違法性はなく、差し押さえた債権の取立てをしなければならない期間について規定した法律はないことから、請求人の主張には理由はない。

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平成15年4月23日裁決

相続税の延納担保財産の差押えが適法であるとした事例

裁決事例集 第65集 1089頁

要旨

 請求人らは、滞納者Jは延納担保として提供していた本件不動産より容易に換価可能な財産を所有しており、請求人らが、このことを指摘しているのであるから、このような場合には、本件不動産について差押えをする前に、まず、J所有の財産を差し押さえるべきであり、原処分庁が本件不動産の換価を急ぐのは合理性を欠く旨主張する。
 しかしながら、請求人らは、本件不動産をJの滞納国税の担保として提供しているいわゆる物上保証人であるところ、物上保証人は、民法第453条に規定するいわゆる検索の抗弁権を有しない。
 また、国税通則法第52条第1項は、延納を取り消したときは、その担保として提供された財産を滞納処分の例により処分して、その国税及び当該財産の処分費に充てる旨を、同条第4項は、同条第1項の場合において、担保として提供された財産の処分の代金を同項の国税及び処分費に充ててなお不足があると認めるときは、税務署長は、滞納者の他の財産について滞納処分を執行する旨規定している。したがって、仮に、滞納者Jが本件不動産より容易に換価可能な財産を所有しているとしても、まず、担保として提供された財産である本件不動産を処分しなければならないのであり、原処分は、上記法令の規定に従った合理的な処分であるから、請求人らの主張には理由がない。

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昭和55年7月9日裁決

相続財産について破産宣告がなされたとしても相続により承継した国税の納付義務は消滅しないとした事例

裁決事例集 第20集 267頁

要旨

 相続財産について破産の宣告がなされても、相続人が承継した国税の納付義務は破産管財人に承継されるものでないから、請求人の承継した納付義務は消滅せず、また、請求人は単純承認による相続をしているので、請求人が承継した国税の納付義務は無限に納付する責任を負っている。したがって、請求人が相続によって承継した国税を滞納している以上、請求人の固有財産に対してなされた差押処分は相当である。

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昭和56年12月28日裁決

破産宣告後に土地を譲渡したことに係る土地重課税は破産法第47条第2号に規定する破産財団に関して生じたものに該当するとした事例

裁決事例集 第23集 214頁

要旨

 請求人は、土地重課は国の土地政策の一環として設けられたもので、破産債権者にとって共益的な支出に当たらないから財団債権に当たらないと主張するが、破産法第47条第2号に規定する「破産財団に関して生じたる」租税債権とは、破産財団を構成する各個の財産のそれぞれからの収益そのものに対して課せられる租税と解されるところ、本件土地重課は、破産財団を構成していた土地の譲渡収益に対して課税されるものであるから、土地重課により生じた本件租税債権は、まさに「破産財団に関して生じたる」財団債権に該当する。

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令和7年6月16日裁決

確定した主たる納税義務の無効は第二次納税義務の納付告知の効力に影響を及ぼすものであり、第二次納税義務者は本来の納税義務者と同様の立場で確定した主たる納税義務の無効を主張して本来の納税義務者の申告自体を争うことができるが、請求人が主張する主たる納税義務は、客観的に明白かつ重大な錯誤があったとは認められず、無効ではないとした事例(第二次納税義務の納付告知処分及び不動産の差押処分・棄却)

裁決事例集 第139集

ポイント

 本事例は、第二次納税義務者が本来の納税義務者と同様の立場で確定した主たる納税義務の無効を争うことができ、申告書の記載内容の過誤の是正については、客観的に明白かつ重大で錯誤がある場合に認められるとしたものである。

要旨

 請求人は、原処分庁が行った国税徴収法第36条《実質課税額等の第二次納税義務》に基づく第二次納税義務の納付告知処分に対し、主たる納税者(本件滞納者)の法人税等の各期限後申告(本件各期限後申告)は、本件滞納者が、所有していた不動産(本件各不動産)から生じた賃料や不動産売却益が自らに帰属するとした、調査担当職員の誤った指導などによる錯誤に基づいてしたのである旨、本件各期限後申告に係る事業年度において、本件滞納者は実質的に廃業状態にあり、そして、本件各不動産の所有権の登記名義は本件滞納者から請求人にしており、本件各不動産から生ずる賃料は請求人に帰属することから、本件滞納者に対する課税は、実質所得者課税の原則の適用を誤っており、錯誤が客観的に明白かつ重大である旨、また、本件滞納者が本件各期限後申告をしたことは、法定の方法以外にその是正を許さないならば、納税義務者の利益を著しく害すると認められる「特段の事情がある場合」に該当する旨主張する。
 しかしながら、本件各期限後申告は、不動産の賃料の帰属について、その事情を最も認識している本件滞納者が行ったものであり、本件滞納者は、本件各期限後申告に係る更正の請求をせず、本件各期限後申告に係る重加算税の各賦課決定処分に対する不服申立てもしていない。そして、請求人は、本件各期限後申告が本件滞納者の錯誤に基づいてしたものであることを裏付ける具体的な証拠を提出していない等の事実関係を併せ考えると、本件各期限後申告をした時点において、本件滞納者が本件各不動産から生じた賃料や不動産売却益の帰属主体であるとして、実質所得者課税の原則に基づき本件各期限後申告をしたものと推認され、その推認を覆す事情は見当たらないことから、本件各期限後申告は、客観的に明白かつ重大な錯誤は認められず、無効ではない。

参照条文等

国税徴収法第36条 民法第95条

参考判決・裁決

最高裁昭和50年8月27日第二小法廷判決(民集29巻7号1226頁) 最高裁昭和40年9月10日第二小法廷判決(民集19巻6号1512頁) 最高裁昭和45年3月26日第一小法廷判決(民集24巻3号 151頁) 最高裁昭和39年10月22日第一小法廷判決(民集18巻8号1762頁) 最高裁平成18年1月19日第一小法廷判決(民集60巻1号 65頁)

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昭和56年3月20日裁決

職務に直接関与しない清算人に対する第二次納税義務の告知処分について適法であるとした事例

裁決事例集 第21集 231頁

要旨

 清算人としての職務に関知していないことを理由に第二次納税義務の告知処分の取消しを求める旨の主張について、滞納会社の解散に関する事務手続に清算人が直接関与せず他に委任している事実を認めることができるとしても、正規の手続に基づく清算報告書が作成されている以上、同報告書に記載された残余財産の分配に係る金額が単に形式的に算出されたものとは到底いえないことなどから、当該滞納会社の租税債務を履行せずに残余財産の分配をした清算人に対する原処分庁のした第二次納税義務の告知処分は適法である。

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平成15年10月9日裁決

自動車共済契約に係る対人賠償共済金支払請求権の差押えが適法であるとした事例

裁決事例集 第66集 382頁

要旨

  1.  請求人は、原処分庁が原処分を行うにつき何ら催告等をせず、請求人の財産調査もしない旨主張するが、差押処分を行うに当たって事前連絡や財産調査をしなければならない旨定めた法令の規定はなく、事前連絡や財産状況の調査をしなかったことをもって、原処分が違法、不当となるということはできない。
  2.  請求人は、原処分庁が差し押さえた共済金支払請求権以外にも求償債権を有していることから当該債権を差し押さえるべきであると主張するが、原処分は、国税徴収法第47条《差押の要件》第1項第1号の規定に基づき適法に行われており、また、滞納者の所有する財産のうち、いかなる財産を差し押さえるかは、徴収職員の合理的な裁量にゆだねられていると解されるところ、原処分が合理的な裁量の範囲を逸脱したものと認めるに足りる証拠はないから、本件差押処分を不当とすることはできない。
  3.  請求人は、原処分庁が差し押さえた自動車共済に係る対人賠償共済金支払請求権が差押禁止財産に当たる旨主張するが、当該請求権は、自動車損害賠償保障法第18条に定めるところの差押禁止財産である直接請求権には該当せず、また、国税徴収法第75条の一般の差押禁止財産ないし同法第78条の条件付差押禁止財産及び差押禁止財産を定めた他の法律のいずれにも該当しないことから、原処分は適法である。
  4.  請求人は、請求人の家族は生活保護を受けているから国税徴収法第153条第1項第2号に該当するので、滞納処分の執行を停止し、差押えを解除すべきである旨主張するが、請求人は、[1]相当程度の稼動能力を有していること、[2]取立てには困難性がうかがわれるものの約4,100万円の求償債権を有していること等を考慮すると、原処分庁が国税徴収法第1項第2号に基づく滞納処分の執行停止をしなかったことには裁量権の逸脱はないと認められるので、原処分が違法であるとはいえない。
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平成28年1月15日裁決

訴訟上の和解における停止条件付の支払義務の免除も国税徴収法第39条に規定する「債務の免除」に含まれ、他に特別の事情も認められないことからすると、同条規定の「債務の免除」があったということができるとした事例(第二次納税義務告知処分・棄却)

裁決事例集 第102集

ポイント

 本事例は、訴訟上の和解における停止条件付の支払義務の免除も国税徴収法第39条に規定する「債務の免除」に含まれると判断した事例である。

要旨

 請求人は、原処分庁が滞納国税を徴するために請求人に対して行った国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に基づく納付告知処分は裁判上の和解(本件和解)で定められた条項に基づいて滞納法人から支払義務の免除(本件免除)を受けたことを同条に定める「債務の免除」とするものであるが、本件免除に係る本件和解上の条項は、請求人が滞納法人に支払うとされた金額の履行を確保するために設けられたものであり、請求人が期限の利益を喪失した場合を除いて何ら意味を持つものではないから、同条に定める「債務の免除」には該当しない旨主張する。
 しかしながら、本件和解は、滞納法人が請求人に対して停止条件付で債務を免除する旨を合意した契約であり、このような契約による免除も国税徴収法第39条の「債務の免除」に含まれると解されるところ、本件免除は同条の制度趣旨に合致するといえるだけの実質を有するものと評価できることから、同条に定める「債務の免除」があったといえる。

参照条文等

国税徴収法第39条 民法第695条 民事訴訟法第267条

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平成12年5月31日裁決

請求人が納税者から不動産を譲り受けたことが、国税徴収法第39条に規定する「著しく低い額の対価による譲渡」に当たらないとした事例

裁決事例集 第59集 435頁

要旨

 国税徴収法第39条に規定する「著しく低い額の対価」と認められるか否かは、結局、その財産の種類、数量の多寡、時価と対価との差額の大小、その他諸般の事情を総合的に考慮して、時価(通常の取引価格)に比較して社会通念上著しく低い額と認められるか否かにより判断するほかなく、不動産のように、時価が必ずしも明確でなく、人により評価を異にする値幅のある財産については、国税徴収法基本通達第39条関係6の注書の1に定めるように、時価のおおむね2分の1に満たない額をもって、著しく低い額による対価と解するのが相当である。
 これを本件についてみると、本件不動産の譲渡時における時価は、当審判所の依頼した不動産鑑定士の鑑定の結果によれば165,000,000円と評価されており、その手法及び過程において特に不合理な点は認められないから、これと同額と認められ、他方その対価は100,000,000円であり、当該対価は時価の約61%とその2分の1を相当上回っている。その上、当審判所の調査によれば、請求人は、納税者から、このままでは税金の納付や借入金の支払ができないと懇請されて、やむを得ず、需要の低い転売の見込みもない本件不動産を譲り受けることとし、実際、現在にいたるまで転売もしていないのであって、このような状況を考えると、本件対価とその時価との差額が65,000,000円に及ぶからといって、請求人に補充的を負わせなければ公平の理念に反するとはいえない。また、原処分庁の主張するように当該譲渡につき詐害行為に該当する行為があるとしても、第二次納税義務は、詐害行為取消権と制度の趣旨及びその要件、効果を異にしているので、そうであるからといって当然に第二次納税義務を負うことにはならない。したがって、本件譲渡は「著しく低い額の対価による譲渡」に該当せず、請求人に対してなされた第二次納税義務告知処分は違法であるから、その全部を取り消す。

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平成10年2月26日裁決

請求人と滞納会社が共同して売却した本件不動産(土地は各別に所有、建物は共有)の売却代金について、不動産の持分に応じて配分を受けるのが相当であるから、請求人は受けた利益を限度として滞納国税につき第二次納税義務を負うとした事例

裁決事例集 第55集 757頁

要旨

 請求人は、[1]請求人所有の土地(以下「本件土地」という。)は滞納会社からの要請により購入したものであるが、通常の価額より高価で購入せざるを得なかったこと及び[2]共有建物(以下「本件建物」という。)にあった請求人の工場を閉鎖したことによる各損失の補てんを受けることを条件に滞納会社と共同での売却を承諾したものであり、当該損失補てんの額を売却代金の配分額に含めて受領したのであるから、合理的な理由があり、第二次納税義務を負うものではない旨主張する。
 しかしながら、上記[1]については、本件土地を通常の価額より高額で購入せざるを得なかった理由が証拠上明らかでなく、また、仮に通常の価額より高額で取得した土地が売却時の通常の価額より高額で売却できなかったとしても、損失を被ったということはできないこと及び上記[2]については、利益が生じている工場を直ちに閉鎖することは通常の経済人の選ぶところではなく、また、売却前の年間利益の5年分の損失補てんを相当とする理由についての主張・立証もないことから、請求人の主張は採用することができない。さらに、請求人の代表者親子が請求人及び滞納会社の発行済株式又は出資金額の過半を占め、双方の役員を兼ね、滞納会社の代表者も請求人の役員を兼ねていたこと及び本件建物の増築が請求人の計算によりなされてきたことからみて、請求人と滞納会社とは独立の経済人として相対する状況にあったとは認められず、また、請求人が明確な根拠をもって上記損失の額を滞納会社に要求していたとは認められない。
 したがって、請求人が配分を受けるべき金額は、本件土地の評価額及び本件建物の持分に応じた金額とするのが相当であり、それを超える金額について、請求人は滞納会社から無償による利益を受けたものと認められる。

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令和4年12月9日裁決

請求人には国税を一時に納付することにより、その事業の継続を困難にするおそれがあるとは認められないとした事例(換価の猶予不許可処分・棄却)

裁決事例集 第129集

ポイント

 本事例は、当座資金の額から納付すべき国税の金額を控除した残額はつなぎ資金の額を上回るため、国税を一時に納付することにより事後の決済資金に不足を生じると認められないのであるから、国税徴収法第151条の2第1項に規定する事業の継続を困難にするおそれがあるとは認められないとしたものである。

要旨

 請求人は、原処分庁が行った換価の猶予不許可処分に対し、コロナ禍が長期間にわたっているため、つなぎ資金の額を1年間の収支状況で考慮すると、国税徴収法第152条《換価の猶予に係る分割納付、通知等》第1項に規定する納付を困難とする金額が算定され、納付すべき国税を一時に納付することにより事業の継続を困難にするおそれがあると主張する。
 しかしながら、申請による換価の猶予は納税者救済のための例外的な制度であるから、つなぎ資金は必要最小限度の期間を基礎として計算するものであり、1年間の収支状況を考慮すべきではない。そして、同法第151条の2第1項に規定する事業の継続を困難にするおそれがあると認められる場合とは、事業に不要不急の資産を処分するなど事業経営の合理化を行った後においても、なお国税を一時に納付することにより事後の決済資金に不足を生じ、その結果、滞納者がその事業を休廃止せざるを得ない状態に至るおそれがあると認められる場合をいうものと解されるところ、本件では当座資金の額から納付すべき国税の金額を控除した残額はつなぎ資金の額を上回ることから、国税を一時に納付することにより事後の決済資金に不足が生じるとは認められない。したがって、請求人には国税を一時に納付することにより、その事業の継続を困難にするおそれがあるとは認められない。

参照条文等

国税徴収法第151条の2第1項

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昭和51年4月26日裁決

譲渡制限の存する信用組合の組合員の持分に対する差押えを適法とした事例

裁決事例集 第12集 51頁

要旨

 請求人である信用組合は、中小企業等協同組合法に基づくものであって、その組合員の持分の譲渡出資口数の減少については、組合の承諾を要する旨、その定款に規定されている。しかし、その持分は金銭的価値を有する財産権であり、その投下資本の回収ができることが認められたものであり、持分の譲渡について組合の承諾が必要であるとした趣旨は、本来譲渡性を有する持分の性格と人的結合体としての組合の閉鎖性との調和を図ったにすぎないものであって、持分の譲渡性を完全に否定したものとは解されない。
 したがって、滞納者が請求人に対して有する持分は国税徴収法第73条の「合名会社の社員の持分その他第三債務者等がある財産」に該当するので、本件持分に対する差押えは適法である。

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昭和57年11月26日裁決

譲渡担保権者に対する納税告知は債権者による譲渡担保財産の処分時前にされたものであるから適法であるとした事例

裁決事例集 第27集 237頁

要旨

 譲渡担保の実行方法として債権者(請求人)が譲渡担保物件を第三者に売却し、その換価代金をもって清算する旨の特約に基づき債権者が第三者との間に本件財産の売買契約を成立させた後に、税務署長による債権者に対する国税徴収法第24条第2項の規定による告知処分がなされ、さらに、その後に債権者は第三者から代金の支払を受けて、同人への所有権の移転登記を了した場合において、本件財産は売買契約締結後であっても代金完済、所有権移転の時期までは譲渡担保財産である性質を失うものではないと解すべきであるので本件財産に係る告知処分は適法である。

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令和6年10月28日裁決

超過差押えを禁止する国税徴収法第48条第1項の規定は、参加差押えには適用又は準用されないとした事例(不動産の参加差押処分・棄却)

裁決事例集 第137集

ポイント

 本事例は、参加差押えは、先行する差押えが解除されない限り交付要求としての効力を有するにすぎず、先行する差押えが進行している限り滞納者に新たな負担を課すものではなく、交付要求及び参加差押えに国税徴収法第48条第1項の規定が準用されるとした規定もないとしたものである。

要旨

 請求人は、原処分庁が行った不動産の参加差押処分(本件参加差押処分)は、滞納国税を徴収するために必要な範囲を超えた違法な処分である旨主張し、これは、本件参加差押処分は、国税徴収法(徴収法)第48条《超過差押及び無益な差押の禁止》第1項が規定する超過差押えに当たるというものであるといえる。
 しかしながら、参加差押えは、滞納者の財産について、既に強制換価手続である滞納処分による差押えがされている場合に、その差押えをした行政機関等に対して交付要求をするものであり、その先行する差押えが解除されたときは、参加差押通知書が滞納者に送達された時に遡って差押えの効力が生ずるものであるから、先行する差押えが解除されない限り、その先行する差押えをした行政機関等に対して配当を求める交付要求としての効力を有するにすぎないというべきであり、このような参加差押えの効力からすると、参加差押えは、強制換価手続である滞納処分による差押えが先行し、これが進行している限り、滞納者に処分制限等の新たな負担を課すものではないし、徴収法第48条第1項の規定が準用されるとした規定もないから、同項の規定は、参加差押えには適用又は準用されない。したがって、本件参加差押処分には、超過差押えに係る規定は適用又は準用されないから、本件参加差押処分が滞納国税を徴収するために必要な範囲を超えた違法な処分ということはできない。

参照条文等

国税徴収法第87条第1項第48条第1項

参考判決・裁決

東京高裁平成30年3月7日判決(租税関係行政・民事判決集(徴収関係判決)平成30年1月~12月順号2018-10)

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平成15年5月12日裁決

遺産分割協議により自己の相続分を超える不動産の持分を取得したことが国税徴収法第39条の第二次納税義務の規定に該当するとした事例

裁決事例集 第65集 1047頁

要旨

 遺産分割協議が国税徴収法第39条に規定する処分に該当するかどうかについては、遺産分割協議が、相続の開始によって共同相続人の共有となった相続財産の全部又は一部を各相続人の単独所有とし、又は新たな共有関係に移行させることによって、相続財産の帰属を確定させるものであることから、その法的性質は、財産権を目的とする法律行為であり、処分に該当すると解するのが相当である。
 請求人らは、Kに対する立替金の返還を求めないことを対価として本件持分譲渡を受けたものであるから、国税徴収法第39条に規定する無償譲渡等の処分に該当せず、本件告知処分は違法である旨主張し、それを証明するものとして本件覚書を提出している。
 しかしながら、請求人らが覚書を証拠として主張する立替金については、[1]その立て替えたとする金額が確定できないこと、[2]親子間に特有の資金交流と認められること、[3]金銭消費貸借契約書等の作成もないこと、[4]覚書は、審査請求の段階で初めてその存在が主張されたこと、及び、[5]請求人らは、審査請求前は上記主張とは別の説明をしていたことが認められる。そうすると、覚書は、その内容が実態を伴っておらず、滞納者と請求人らとの間で覚書記載のとおりの合意がされたものとは認められない。
 したがって、本件持分譲渡は、国税徴収法第39条の規定する第二次納税義務の無償による譲渡等の処分に該当する。

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昭和60年3月11日裁決

配当計算書の更正がなされている場合における配当処分に対する不服申立ては不服申立期限を徒過した不適法なものであるとした事例

裁決事例集 第29集 182頁

要旨

 配当計算書の配当金額を更正した場合には、請求人主張のとおり、配当処分に対する不服申立期限となる換価代金の交付期日を併せて更正すべきであるとしても、当該更正後の換価代金の交付期日は、国税徴収法第132条第2項の規定により、配当計算書更正通知書を発送した日から起算して7日を経過した日である昭和59年3月26日になるところ、請求人が異議申立書を提出したのは同年4月5日であるから、いずれにしても、請求人の異議申立ては、不服申立ての期限後になされたものであることになり、また、本件配当手続の終了後になされたものであるから、不当利得返還請求訴訟を提起するのはともかく、異議申立ての利益を欠く不適法なものといわざるを得ない。
 したがって、異議申立てが不適法である以上、本件審査請求は不適法なものとなる。

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平成18年7月12日裁決

「滞納者の国税につき滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められる場合」に該当しないとする請求人の主張を排斥した事例

裁決事例集 第72集 633頁

要旨

 請求人は、滞納法人は評価額328百万円又は347百万円の貸付金を有しているところ、本件滞納国税は約260百万円であるから、本件告知処分は、第二次納税義務の要件である「徴収不足」を充足していない旨主張する。
 しかしながら、貸付債権を評価するに当たっては、一定利率の下で複利計算して一定期間後に一定額を受け取るために現在要する額を算出する方法によって得られた金額のみにとらわれることなく、国税債権の徴収確保という観点から、差し押さえた財産が公売によって国税債権額に見合う額で確実に回収できるものか否かという観点からも検討されてしかるべきであり、そのためには、貸付条件の内容等をも考慮に入れ、特定の者の主観的価値や愛着的価値によることなく、客観的な交換価値、すなわち市場性をもった交換価値であるか否かという総合的な見地から行うのが相当である。
 これを本件貸付金についてみると、その貸付金の第三債務者(同族法人)の営業収益等及び財務状態(①年平均営業利益は約860万円の赤字となっていること、②約定による弁済が不履行となっていること、③債務超過であること等)並びに本件貸付契約の内容(①貸付金が多額であるにもかかわらず無担保で連帯保証人もいないこと、②無担保であるにもかかわらず返済期間が長期で、かつ、低利であること、③返済期限が不確定要素を含み、かつ、債務不履行に関する約定がないこと)をもってすれば、社会通念上、本件貸付金は、同族法人グループ内でのみ通用するものであり、しかも、その市場性は限られたものとなり、公売を前提とした客観的な交換価値としての評価は極めて低い額になるものと思料される。さらに、本件貸付金については、返済期限が不確定要素を含んでいること及び債務不履行に関する約定がないことを併せて考慮すれば、むしろ市場性をもった交換価値を認めることはできず、公売財産として不適当なものというべきであるから、徴収不足の判定から除外するのが相当である。そうすると、滞納法人の財産は「徴収すべき額に不足する」状態であったとみるのが相当である。

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平成4年5月29日裁決

不動産に係る建築資金の負担割合により滞納者の共有持分を認定した上、その認定に基づいてした差押えは相当であるとした事例

裁決事例集 第43集 427頁

要旨

 請求人は、原処分庁が差し押さえた不動産には滞納者の共有持分はない旨主張するが、[1]滞納者は請負契約の注文者及び建築申請の建築主であり、かつ、不動産の引渡しを受けていると認められることから、不動産に係る法律上の一切の権利義務は滞納者に帰属すること、[2]滞納者が請求人の建築資金を立て替えた事実が認められないこと、[3]請求書及び領収書が滞納者あてになっていること及び[4]滞納者に対し固定資産税及び不動産取得税が課税されていることを総合すると、不動産の建築資金100,000,000円の負担額を滞納者分は5,000万円と認定した上、不動産に係る滞納者の共有持分を10分の5と認定したことは相当である。

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平成19年12月17日裁決

不動産の差押処分が差押財産の選択を誤ったものとはいえず、超過差押えにも当たらないとした事例

裁決事例集 第74集 478頁

要旨

 請求人は、滞納国税を徴収できるC社からの家賃債権の差押え及びD社に対する貸付金を有している事実の確認を原処分庁が怠っていることから、本件各不動産の差押えは差押財産の選択を誤った不当な処分であると主張するともに、滞納税額と本件各不動産の評価額からみて、過大な差押えであると主張する。
 しかしながら、滞納者に属する財産のうち、いかなる財産を差し押さえるかについては徴収職員の合理的裁量に委ねられていると解されるところ、原処分庁所属の徴収担当職員は、請求人から当該家賃収入は全額銀行借入れの返済に充てられ手元に残らない旨の説明を受けたことから、当該家賃収入を差し押さえなかったものと認められ、また、徴収職員が差押処分をするに当たり滞納者の全財産を把握しなければならない旨の法令上の規定はないのであるから、本件各不動産の差押処分が、差押財産の選択についての徴収職員の合理的な裁量の範囲を逸脱したものとは認められない。さらに、原処分庁は、地価公示法により公示された標準地の価額を基に差し押さえた宅地の処分予定価額を算出するとともに、固定資産税評価額を基に差し押さえた建物の処分予定価額を算出しているところ、これらの処分予定価額は客観的な時価から借地権や借家権等による減額調整や公売の特殊性による減額調整を行って算出されたものであるから、相当であると認められ、これらの処分予定価額から滞納国税に優先する被担保債権額を控除した価額は、滞納国税に満たないと認められるから、超過差押えにも該当しない。

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平成20年8月11日裁決

不動産の差押処分が無益な差押えに当たるとした事例

裁決事例集 第76集 583頁

要旨

 公売の特殊性に伴う減価割合を仮に10%として差押処分時における本件テナントビルの処分予定価額を算出すると、その価額は○○○○円となる。一方、本件テナントビルについては本件滞納国税に優先する第1抵当権と第2抵当権が設定されているので、本件テナントビルの差押処分が国税徴収法第48条第2項にいう無益な差押えに当たるか否かを判断するためには、差押処分時におけるこれらの被担保債権の額と上記処分予定価額を比較する必要があるが、差押処分時における本件第1抵当権の被担保債権の額は○○○○円であり、本件第2抵当権の被担保債権の額は○○○○円である。そうすると、本件第1抵当権の被担保債権の額が弁済などによって減少する可能性があることを考慮しても、本件テナントビルの処分予定価額が本件第1抵当権の被担保債権の額を超える見込みのないことが一見して明らかであるといわざるを得ない。

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平成21年5月11日裁決

中小企業を倒産させないことが国の方針であるとしても、租税の徴収手続において、中小企業の倒産を防止するためにその手続を制限する法令上の定めがない以上、これを裁量判断の基礎とすることができないとした事例

裁決事例集 第77集 593頁

要旨

 請求人は、本件差押処分は、中小企業を倒産させないとする国の方針と異なり不当な処分であると主張する。
 しかしながら、中小企業を倒産させないことが国の方針であるとしても、その方針に基づき、いかなる場合に差押処分ができないとするかについての法令の定めはなく、また、法は、納税者の権利及び利益の保護並びに生計及び事業の維持の観点から、滞納処分を一定の範囲で制限しているのであるから、滞納処分を制限した法令の定めに反しない差押処分を違法ということはできず、加えて、租税の徴収手続において、中小企業の倒産を防止するためにその手続を制限する法令の定めがない段階で、中小企業を倒産させないという観点のみから、法律に基づいて課された租税を裁量で徴収しないことは、かえって租税負担の公平を阻害することになり、さらに、差押処分によって、事業の継続が困難となる事実上の影響が反射的に生ずるとしても、その影響を考慮して差押処分をしないこととした場合には、国税債権を確実に徴収するために、徴収職員に対して早期に滞納者の財産を保全することを求めた国税徴収法第47条第1項第1号の趣旨が没却されることになる。そうすると、租税の徴収手続において、法令上の根拠のない中小企業の倒産を防止するという要素を裁量判断の基礎とすることはできないというべきである。

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昭和58年10月4日裁決

供託金の取戻請求権及び供託金利息の支払請求権は供託書上の供託者である滞納者に帰属するとした事例

裁決事例集 第26集 181頁

要旨

 請求人は、差し押さえられた供託金の取戻請求権及び供託金利息の支払請求権が、当該供託金の出捐者及び実質上の供託者である請求人に帰属すると主張するが、供託法上は第三者供託の手続を経ない限り、供託名義人が本件請求権を有するものと解されるところ、供託書によれば供託名義人は滞納者であって、請求人による第三者供託はなされていないこと及び滞納者が本件請求権を原処分庁により差し押さえられる前に、請求人に対し譲渡した事実は認められないことなどから、本件請求権は滞納者に帰属するものと認定するのが相当である。

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昭和58年10月31日裁決

債務の弁済を滞納会社から受けたことについて、同社からの利益の享受に当たらないとした事例

裁決事例集 第26集 163頁

要旨

 滞納会社が土地の譲渡代金の一部を同社の役員である請求人の債務の弁済に充当したことは、請求人が同社から利益を受けたものであると原処分庁は主張するが、請求人は滞納会社が本件土地を取得した際、その取得代金を滞納会社に立替えていて、当該立替えによる債権を有していたことから、滞納会社は当該立替金を請求人に返済したものと認められる。
 したがって、請求人は滞納会社から利益を受けていないのであるから、請求人に対する第二次納税義務の告知処分は違法である。

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平成21年6月10日裁決

債権を目的とする質権の設定承諾請求書に当該債権の債務者が記名押印して承諾したことは認められるものの、当該請求書に確定日付が付されていないから、質権者である請求人は当該債権を差し押さえた原処分庁に対抗することができないとした事例

裁決事例集 第77集 543頁

要旨

 本件質権により担保される請求人の債権が本件滞納国税に優先するには、請求人が原処分庁に対し、国税徴収法第15条第2項に規定する方法により、本件質権が本件滞納国税の法定納期限等以前に設定されたことを証明する必要があり、指名債権に対する質権が滞納国税の法定納期限等以前に設定されたことが証明されたといい得るためには、第三債務者に対する質権設定の通知又は第三債務者による質権設定の承諾が確定日付のある証書によって行われることを要し、かつ、当該証書に付された確定日付が滞納国税の法定納期限等以前のものであることを要するところ、本件の第三債務者が本件質権の設定の通知を受け、これを承諾した本件質権設定承諾請求書には確定日付が付されておらず、請求人は、本件質権の設定を第三者である原処分庁に対抗することができないから、本件滞納国税の法定納期限等以前に本件質権が設定されたことが証明されたということはできない。
 これに対し、請求人は、第三債務者が本件質権の設定を承諾した証書には確定日付が付されていないが、本件生命保険証券には質権設定を第三債務者が承認する旨の裏書があり、かつ、確定日付が付されているので、両証書を一体とみなし得る事情が存在し、本件質権は上記確定日付の年月日に設定されたものとみなされるから、本件質権は本件滞納国税の法定納期限等以前に設定されたことが証明されたものといえる旨主張する。
 しかしながら、上記裏書事項は、第三債務者が保険金支払請求権上に質権が設定されることを承認するということが記載されているにすぎず、その文言からは、請求人が質権者であることも、設定される質権により担保される債権が本件被担保債権であることもうかがうことはできず、まして、これを質権設定契約書とみることもできないのであるから、本件生命保険証券に確定日付が付されていることをもって、第三債務者の承諾が確定日付のある証書によってなされたものとみることはできない。また、請求人の主張を認めると、質権が設定される債権の債権者と債務者が共謀して、質権設定日をさかのぼらせ、第三者の権利を害することが可能となり、承諾が第三者に対する対抗要件足り得るためには、確定日付のある証書をもってすることを必要としている法の趣旨を没却してしまうことになりかねない。そうすると、本件質権が第三者である原処分庁に対する対抗要件を備えていない以上、本件質権は、本件滞納国税の法定納期限等以前に設定されたことが証明されたものということはできないから、この点に関する請求人の主張には理由がない。

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平成12年3月31日裁決

公売手続の取消しを求める本件審査請求は、国税徴収法第171条第1項第3号に規定する不服申立期間を徒過しているが、公売通知書に不服申立期間の教示を欠いたため瑕疵があり救済されるべきであるとの主張が排斥された事例

裁決事例集 第59集 461頁

要旨

 請求人らは、公売通知書及び最高価申込者決定通知書に不服申立ての期間等の教示をしなかったから、国税徴収法第171条1項第3号の期限を徒過しても本件審査請求は適法である旨主張する。
 しかしながら、[1]公売通知はそれ自体として納税者の権利義務その他法律上の地位に影響を及ぼすものではないから、行政処分には当たらないと認められること。[2]最高価申込者の決定処分自体は公売の場所で終了し、かつ出席している関係人に口頭で告知されているのであって、滞納者等に対する通知は、納税者に対し、原処分庁が買受け適格のある申込者に最高価申込者の決定をしたという事実行為を通知したものにすぎないこと。したがって、これらは、行政不服審査法第57条第1項に規定する行政処分を書面ですることが要求されている場合に当たらないから、教示の必要はない。

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平成14年7月11日裁決

再公売に係る公売財産の見積価額の決定は適正であるとした事例

裁決事例集 第64集 611頁

要旨

 請求人は、再公売に係る公売財産の見積価額が不当に低い価額となっている旨主張する。
 しかしながら、原処分庁が、先行公売に際して見積価額の決定に当たり基礎とした不動産鑑定士による鑑定評価額は、評価時点における客観的時価として適正であり、その後2回の公売が入札者がなく不成立となったことから、減価要因として時点修正及び新たに把握した個別要因等による減額を、鑑定評価額から控除したことは相当である。
 そして、これら減価額を控除した後の金額は、本件公売時点における客観的時価として適正であって、これから公売の特殊性を考慮して20%を控除した本件見積価額は相当であると認められる。

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平成3年1月29日裁決

同族会社の判定の基礎となった株主が、その同族会社の滞納国税の内容及び発生過程を知らされていなくとも、国税徴収法第37条に規定する第二次納税義務は成立するとした事例

裁決事例集 第41集 335頁

要旨

 同族会社の判定の基礎となった株主である請求人は、第二次納税義務の告知の原因となった同社の滞納国税について、その内容及び発生過程を全く知らされていないため、右告知は納得できない旨主張するが、国税徴収法第37条の規定によれば、納税者(滞納会社)が同族会社で、その判定の基礎となった株主が当該納税者の事業の遂行に欠くことができない重要な財産を有し、かつ、当該財産に関して生ずる所得が当該納税者の所得となっている場合において、当該納税者がその供されている事業に係る国税を滞納し、その国税につき滞納処分をしても、なおその徴収すべき額に不足すると認められるときは、当該株主は、当該財産を限度として、その滞納に係る国税の第二次納税義務を負うものとされ、当該第二次納税義務を負うこととなる者が、第二次納税義務の告知の原因となった滞納国税について、その内容及び発生過程を知り得たか否かをその成立要件としているものではないと解されるところ、本件告知は、国税徴収法第37条の規定に従い適法に行われていることが認められ、したがって、この点に関する請求人の主張は失当である。

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平成19年12月21日裁決

営業譲渡代金の一部から株式譲渡代金名下で個人株主に金員を交付したことが、法人の解散を前提とする残余財産の分配に当たるとした事例

裁決事例集 第74集 465頁

要旨

 請求人は、本件営業譲渡日に滞納法人の個人株主Bらが受領した金員は、滞納法人の株式の譲渡代金であるとともに、同日は滞納法人の解散決議前であるから、当該金員は国税徴収法第34条の「残余財産の分配」によるものではないと主張する。
 しかしながら、①本件滞納法人は、本件営業譲渡日に、本件滞納法人の代表者である請求人とその親族が全株式を所有する本件滞納法人の筆頭株主であるC社に対する債務を除き、資産・負債のすべてをD社に譲渡するとともに、従業員もD社に引き継いでいること、②D社は、当該金員を営業譲渡代金の一部と認識し、その旨の経理をしていること、③本件営業譲渡日において本件滞納法人は債務超過と認められ、その株式に経済的価値はなく、D社が当該株式を取得する経済的合理性も必要性も認められないこと、④本件滞納法人の株式の譲渡に必要な取締役会の承認がなされていないこと、⑤請求人は本件営業譲渡に際し、Bら個人株主を含む従業員に迷惑を掛けたくないと考えていたこと、⑥Bら個人株主が受領した金員は、本件滞納法人への出資相当額であること、⑦本件滞納法人は、本件営業譲渡日から解散決議に至るまで何ら資産を有せず、事業活動も行っていないことからすると、本件営業譲渡は解散を前提として行われたものと認められ、Bら個人株主が受領した金員は、株式譲渡代金ではなく、本件営業譲渡の対価の一部を分配したものと認められるから、当該金員の交付は、国税徴収法第34条に規定する「法人が解散した場合における残余財産の分配」に当たり、請求人はその価額を限度として同条の第二次納税義務を負うこととなる。

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平成23年5月18日裁決

営業譲渡契約による包括的な指名債権の移転を第三者に対抗するためには、民法第467条が規定する方法により、第三者対抗要件を具備する必要があるとした事例

裁決事例集 第83集

要旨

 請求人は、原処分庁が、滞納者が第三債務者に対して債権を有するとして当該各債権(本件各債権)を差し押さえたことに対し、本件各債権は、請求人と滞納者との間の営業譲渡契約により、包括的に請求人に移転しており、このような包括的な移転については民法第467条《指名債権譲渡の対抗要件》の適用がないから、同条第2項が規定する第三者対抗要件を具備しなくても、本件各債権の移転を原処分庁に対抗することができる旨主張する。
 しかしながら、営業譲渡契約により譲受人に承継されることとなった指名債権について二重譲渡や差押えとの競合が生じることは通常の債権譲渡の場合と同様であることからすれば、営業譲渡契約による指名債権の移転を第三者に対抗するためには、民法第467条が規定する方法により第三者対抗要件を具備する必要があると解されるのであり、本件各債権の移転については、いずれも第三者対抗要件を具備していないから、請求人は、本件各債権の移転を原処分庁に対抗することはできない。

参照条文等

民法第467条第2項

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平成29年7月25日裁決

国税徴収法第153条第1項各号に該当する事実がいずれも認められないことから、滞納処分の停止の取消処分は適法であると認めた事例( 滞納処分の停止取消処分、 債権の差押処分・ 棄却)

裁決事例集 第108集

要旨

 請求人は、原処分庁がした滞納処分の停止取消処分(本件停止取消処分)は、請求人には滞納処分の執行等をすることができる財産がなく、また、請求人の収入額は最低賃金にも満たないから、国税徴収法第153条《滞納処分の停止の要件等》第1項第1号及び同項第2号に該当する事実があるにもかかわらず行われた違法な処分である旨主張する。
 しかしながら、請求人は、本件停止取消処分時において供託金払渡請求権(本件払渡請求権)を有していたと認められ、本件払渡請求権は差押えの対象となる将来生ずべき債権であると認められる以上、請求人に国税徴収法第153条第1項第1号に該当する事実はない。また、請求人は、妻の扶養親族であるが、自らも就労して収入を得ており、請求人の属する世帯は、それなりの収入がある一方、定期的に多額の支出があるとは認められず、生活が窮迫しているとは認められないことを考慮すると、本件払渡請求権に対して滞納処分を執行したとしても、生活保護法の適用を受けなければ生活を維持できない程度の状態に直ちに陥ることはないと認められ、請求人に国税徴収法第153条第1項第2号に該当する事実もない。

参照条文等

国税徴収法第153条第154条第76条

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平成21年6月22日裁決

国税徴収法第38条にいう「譲受財産」とは、積極財産のみをいい、消極財産を含まないと解するのが相当であるとした事例

裁決事例集 第77集 582頁

要旨

 請求人は、事業譲渡に係る財産には資産及び負債の双方が含まれることが前提であるから、国税徴収法第38条にいう「譲受財産」には、積極財産のみならず消極財産を含む旨主張するとともに、仮に、同主張が認められないとしても、請求人が本件滞納者から譲り受けた財産のうち、本件告知処分の日現在で実質的に残存している財産の額を限度として第二次納税義務を負うに過ぎないと主張する。
 しかしながら、国税徴収法第38条の趣旨は、事業の譲渡が行われるときは、通常、その事業用資産だけでなく、その事業に係る債務も譲受人に移転されるので、譲渡人の債権者が当該事業譲渡によって不利益を受けることはないが、租税債務については私人間の合意によって譲受人に移転させることができないので、譲渡人が納付すべき国税を譲受人から強制的に徴収することができず、また、事業の譲渡に伴ってそれまで滞納処分の引き当てとなっていた財産が譲受人に移転することによって、仮に譲受人から譲渡人に対して相応の対価が支払われたとしても滞納処分が困難となる結果、国税の確保に支障が生じることとなる一方、事業の譲渡に際しては、通常、譲受人から譲渡人に対して相応の対価が支払われるので、譲受人に対して譲渡人の国税についての第二次納税義務を負わせることが酷に過ぎることも考慮し、事業の譲受人が譲渡人の特殊関係者である場合に限って、譲受人に譲渡された財産を限度として、譲受人に対して譲渡人の国税についての納税義務を二次的に負わせることにより、国税の確保を図ることとしたものと解される。すなわち、同条は、事業の譲渡に伴い、譲渡人の国税の引き当てとなっていた財産が譲受人に譲渡されたことによって、国税の確保に支障が生じることから、譲受人が譲渡人の特殊関係者である場合に限り、その譲受人に対し、譲渡人の国税の引き当てとなっていた譲受財産を限度として、二次的に譲渡人の国税についての納税義務を負わせることとしたものと解されるのであるから、同条にいう「譲受財産」は、滞納処分の対象となっていた積極財産をいい、消極財産を含まないと解するのが相当である。
 また、国税徴収法第38条が第二次納税義務の責任の範囲として「譲受財産を限度」とする旨規定しているところ、同条は「譲受財産」という財産自体を限度としているのであって、財産の価額を限度とする規定ではなく、また、同条にいう「譲受財産」には、その財産の異動により取得した財産及びこれらの財産に基因して取得した財産が含まれ、さらに、同条は、第二次納税義務の限度を同法第39条のような「現に存する限度」としていないのであるから、同法第38条の規定による第二次納税義務の限度を「譲受財産」のうち第二次納税義務の納付告知処分時点において残存しているもののみを限度とするものと解することはできない。

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平成22年2月18日裁決

売却決定日時及び買受代金の納付期限を変更する旨の公売公告処分に違法な点はないとした事例

裁決事例集 第79集

要旨

 国税通則法第105条第1項ただし書は、国税に関する法律に基づく処分に対する不服申立てがあったときは、その国税の徴収のため差し押さえた財産の滞納処分による換価は、その財産の価額が著しく減少するおそれがあるとき、又は不服申立人から別段の申出があるときを除き、その不服申立てについての決定又は裁決があるまで、することができない旨規定しているところ、本件では、原処分庁が当初ないし第4次の各公売公告において、売却決定の日時を定めたのに対し、その都度請求人から不服申立てがなされ、同不服申立てについての決定又は裁決がなされる前に、予定されていた売却決定の日時が経過したため、売却決定が行われなかったものであり、その過程に何ら違法な点はない。そして、本件公売公告は、第4次公売公告等に対する不服申立手続についての裁決がなされた後、売却決定の日時等を変更する旨を公告したものであるから、適法である。
 これに対し、請求人は、異議申立てにより前回までの売却決定が中止されたことから、本件公売公告も違法であると主張するが、本件不動産の売却決定が行われなかったのは、上記のとおり、国税通則法第105条第1項ただし書の規定によるのであって、公売処分に違法性があるためではない。また、請求人は、前回までの売却決定の中止決定等がなされていないとも主張するが、このような場合に中止決定等をしなければならない旨の規定はない。
 また、請求人は、見積価額が低廉であるから本件公売公告が違法であるとも主張するが、本件見積価額公告及び決定処分はいずれも適法なものとして存在しているところ、本件公売公告は、売却決定の日時及び買受代金の納付期限を変更したものであり、見積価額の適否は、本件公売公告の適否に影響しない。

参照条文等

国税徴収法第95条第1項 国税通則法第105条第1項

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平成13年12月19日裁決

差押調書の滞納税額の記載の一部に誤りがあっても差押処分が無効であるということはできないとした事例

裁決事例集 第62集 513頁

要旨

 請求人は、差押調書に記載された滞納税額に誤りがあるので、差押調書に瑕疵があり、瑕疵ある差押調書に基づいて行われた差押処分は無効である旨主張する。
 しかしながら、数個の租税債権を差押債権として行われた差押処分は、各租税債権ごとに数個の差押処分が競合するものではなく、差押処分は1個であり、従って、原因となった租税債権の一部に数額の誤りがあっても、そのことによって、直ちに差押処分の効力が左右されるものではないと解されるところ、本件については、本件差押調書に記載された滞納国税の合計額は、その誤りが特に大きいとはいえないこと、及び滞納税額に誤りがなければ本件差押物件を差し押さえなかったであろう特段の事情があるとは認められないことからすれば、本件差押調書の滞納税額の記載の一部に誤りがあったというだけで、本件差押処分が無効ということはできない。

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平成29年12月20日裁決

差押財産の公売において、買受勧奨がなかったことにより、最高価申込価額が差押財産の所有者等の期待する価額に達しなかったとしても、そのことによって最高価申込者の決定処分が違法となることはないとした事例(最高価申込者の決定処分・棄却)

裁決事例集 第109集

ポイント

 本事例は、差押財産の公売において、買受勧奨がなかったことにより、最高価申込価額が差押財産の所有者等の期待する価額に達しなかったとしても、そのことによって最高価申込者の決定処分が違法となることはないとしたものである。

要旨

 請求人は、原処分庁に対して公売財産の購入希望者の存在を伝えていたにもかかわらず、原処分庁が当該購入希望者に公売に参加するように連絡(買受勧奨)をしなかった結果、当該購入希望者が公売に参加せず、請求人の期待した価額より低廉な価額で最高価申込者の決定処分(本件最高価決定処分)がされたとして、当該決定処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、国税徴収法第104条《最高価申込者の決定》第1項は、徴収職員は、見積価額以上の入札者等のうち最高の価額による入札者等を最高価申込者として定めなければならない旨規定し、また、見積価額の決定につき、同法第98条《見積価額の決定》第1項は、国税局長は公売財産の価格形成上の事情を適切に勘案するとともに、差押財産を公売するためのものであることを考慮しなければならない旨規定しており、国税徴収法は、これらの規定をもって、最高価申込価額が時価と比し著しく低廉となることを防止し、もって最低売却価額を保障しようとしたものと解される。また、国税徴収法には、公売公告は国税局の掲示場その他国税局内の公衆の見やすい場所に掲示して行う旨の規定(国税徴収法第95条《公売広告》第2項)は存在するものの、買受勧奨に関する規定は存在しない。
 これらのことからすると、最高価申込価額が時価より著しく低廉でない場合には、最高価申込価者の決定処分がその価額の点から違法になることはないから、買受勧奨がなかったことにより、最高価申込価額が公売財産の所有者等の期待する価額に達しなかったとしても、そのことによって最高価申込者の決定処分が違法となることはないと解される。したがって、買受勧奨の有無が、本件最高価決定処分の適法性に影響を及ぼすことはない。

参照条文等

国税徴収法第95条第98条第104条

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平成20年10月22日裁決

担保権付不動産の贈与を受けた場合における国税徴収法第39条の第二次納税義務の限度額の算定に当たり、当該担保権の存在を減額要因として認めなかった事例

裁決事例集 第76集 542頁

要旨

 請求人は、請求人が夫から贈与を受けた不動産には担保権が設定されており、いつ担保権を実行されるかもしれない状況にあったこと、また、その後、当該担保権の被担保債権について請求人が保証したことから、当該贈与時における当該不動産の価額は零円であり、したがって、国税徴収法第39条の受けた利益も零円となるから、請求人が負うべき第二次納税義務はない旨主張する。
 しかしながら、贈与を受けた不動産に担保権が設定されていたとしても、一般に、担保権が実行されるか否かは不確実であり、また、担保権が実行されたとしても債務者に求償することが可能であるから、受贈者が贈与とともに債務を引き受けた場合や贈与を受けた時に債務者が弁済不能の状態にあるため担保権を実行されることが確実であり、かつ、債務者に求償しても弁済を受ける見込みがないという場合を除き、担保権が設定された贈与不動産の価額は、担保権が付されていないとした場合の不動産の時価によるべきところ、請求人及び夫にはこれらの事情が認められず、また、債務を保証したとしても、当然に債務を引き受けたことにはならないので、請求人が当該贈与により受けた利益の額は当該不動産の時価となり、その価額を財産評価基本通達により算定すると、請求人が贈与税の課税価額として申告した額と同額になる。そうすると、請求人は、贈与価額を限度として、夫の滞納国税に係る第二次納税義務を負うことになるから、請求人の主張には理由がない。

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平成4年3月25日裁決

更正の違法を理由として参加差押えの取消しを求めることはできないとした事例

裁決事例集 第43集 434頁

要旨

 請求人は、本件更正等には、請求人に不動産所得があるとされている相続財産の持分割合等及び受贈財産の貸借関係について訴訟中であるから収入すべき金額が未確定であるのに、原処分庁がその訴訟の一方当事者の申立てだけを採用してこれを確定したものとしている違法があり、したがって、このような違法な課税処分に基づく本件参加差押えは違法である旨主張するが、課税処分と滞納処分とは、それぞれその目的及び効果を異にする別個の独立した行政処分であるから、これらが先行処分と後行処分の関係にある場合においても、課税処分にこれを無効といい得るかしが存するか、又はそれが権限ある機関によって取り消された場合でない限り、当該課税処分のかしは滞納処分の効力には影響を及ぼさないというべきである。また、課税処分が無効となるのは、その処分に重大かつ明白なかしが存する場合に限られるが、当審判所の調査の結果及びその他の全資料によっても、本件更正等に重大かつ明白なかしがあるとは認められず、また、本件更正等が取り消された事実も認められないので、請求人の主張は採用できない。

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平成12年4月11日裁決

滞納会社に対する滞納処分として差し押さえられた請求人名義の定期預金の払戻請求権について、預金の原資となっている滞納会社から振り込まれた金員は請求人に対する役員報酬ということはできないこと等から、滞納会社に帰属すると認めるのが相当であるとした事例

裁決事例集 第59集 450頁

要旨

 請求人は、同人名義の本件定期預金口座に係る払戻請求権は請求人に帰属しており、これが滞納会社に帰属するものとしてなされた本件差押処分は違法である旨主張する。
 本件定期預金口座は、滞納会社から請求人名義の普通預金口座(以下「本件普通預金口座」という。)に振り込まれた金員(以下「本件金員」という。)により開設されたものであることから、まず、本件普通預金口座の預金者について検討すると、[1]請求人は、本件金員は請求人が滞納会社から支給を受けた役員報酬である旨主張するが、請求人が滞納会社に対し役員としての役務を提供した事実は認められず、本件金員が役員報酬であると認められないから、本件普通預金口座は、滞納会社の出捐によって開設されたものというべきであり、また、[2]本件普通預金口座の開設手続等は、滞納会社の実質的経営者の指示でその社員が行っていたこと及び本件普通預金口座の届出印は滞納会社によって管理保管していたことが認められることから、本件普通預金口座は、滞納会社が自らの預金とする意思で開設したものというべきであり、したがって、本件普通預金口座の預金者は請求人ではなく滞納会社というべきである。
 次に、本件定期預金口座の預金者について検討すると、本件定期預金口座の届出印には請求人の印章が用いられており、このことからは、本件定期預金口座は請求人が自らの預金とする意思で開設したとみる余地もある。しかしながら、その原資となった本件普通預金口座の預金者は元々請求人ではないし、本件定期預金口座の開設に当たり、滞納会社が請求人に対し本件普通預金口座に係る払戻請求権を譲渡した事実も、請求人が本件普通預金口座から払戻を受けた金員を自己のものとした上、自らの預金とする意思で本件定期預金口座に入金したなどの特段の事情も認められないことから、本件定期預金口座の預金者は、やはり滞納会社というべきである。
 したがって、本件定期預金の払戻請求権は、請求人ではなく、滞納会社に帰属するものであり、請求人の主張には理由がない。

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昭和60年1月31日裁決

滞納会社の家賃収入計上漏れ等により生じた簿外の金員を取得した代表者に対する第二次納税義務の告知処分は相当であるとした事例

裁決事例集 第29集 157頁

要旨

 滞納会社の代表者である請求人は、同社の家賃収入計上漏れ等に係る金員を贈与により取得した事実はないことを理由に同社の滞納国税の第二次納税義務を負うものではない旨主張するが、請求人は同社の家賃収入計上漏れ等により生じた簿外の金員を取得しており、それは同社からの請求人に対する贈与であると認められ、また、当該滞納国税について同社に対する滞納処分を執行してもなお徴収不足を生じると認められることが、その国税の法定納期限の1年前の日以後に行われた当該贈与に起因すると認められる。
 したがって、原処分庁が国税徴収法第39条の規定に基づき、滞納会社の特殊関係者である請求人に対し、当該贈与に係る金額を限度としてなした第二次納税義務の告知処分は相当である。

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平成27年1月19日裁決

滞納者の詐害の意思の有無は、国税徴収法第39条の第二次納税義務の成立要件ではないとした事例(第二次納税義務の納付告知処分・棄却)

裁決事例集 第98集

要旨

 請求人は、原処分庁が請求人に対して行った第二次納税義務の納付告知処分(本件告知処分)について、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》の第二次納税義務を課すには詐害の意思が必要であるところ、滞納者が請求人に対して行った土地の持分の贈与(本件譲渡)には詐害の意思はないから、本件譲渡は無償譲渡等の処分に該当しない旨主張する。
 しかしながら、同条の規定によれば、滞納者に詐害の意思のあることは同条所定の第二次納税義務の成立要件ではないと解されるから、本件譲渡に詐害の意思がないことを理由に、本件告知処分が違法であるということはできない。

参照条文等

国税徴収法第39条

参考判決・裁決

最高裁平成21年12月10日第一小法廷判決(民集63巻10号2516頁)

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平成22年9月29日裁決

申告相談時の事情や、事前に差押えをする旨の話がなかったことをもって分割納付継続中に行われた差押処分が違法又は不当であるとはいえないとした事例

裁決事例集 第80集

要旨

 請求人は、申告に先立ち申告相談をした際に、当初、原処分庁所属の職員が税金はかからないと言ったのに、申告時には税金がかかることになった事情及び滞納国税の分割納付を約10年間継続して行い、その間、差押えの話もないまま一方的に差押えが行われた事情をもって、本件差押処分は信義則に反して違法又は不当である旨主張する。
 しかしながら、本件差押処分は、国税徴収法第47条《差押の要件》に基づき適法に行われており、また、原処分庁が請求人に対して差押処分をしないことを公的見解として表示したなど、租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお本件差押処分を取り消して請求人の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情は認められない。
 更に、請求人は分割納付を継続してはいるものの、納付計画に従ったものではなく、その納付状況や滞納国税の額に照らせば、滞納国税の完納までに相当期間が必要であり、本件差押処分の直後に自主納付により滞納国税が完納される可能性は著しく低かったといわざるを得ないから、請求人の財産を保全する必要性があったということができ、そうすると、本件差押処分の実施時期の判断については差押処分の趣旨及び目的に沿った合理的なものということができる。
 また、納税者の財産保全が差押処分の目的であり、差押えについて予告することはその目的の達成を不可能にするおそれがある行為であるから、事前に差押えの話をしないことは、このような差押処分の目的に反するものではなく、差押処分を不当とする理由にはなり得ない。

参照条文等

国税徴収法第47条第1項第1号

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令和6年10月28日裁決

納付すべき国税を一時に納付することにより、生活の維持を困難にするおそれがあったと認められないとした事例(換価の猶予不許可処分・棄却)

裁決事例集 第137集

ポイント

 本事例は、合理性を有する猶予取扱要領の定めに基づき、請求人について納付困難な額が算定されないことから、請求人の国税を一時に納付することにより、その生活の維持を困難にするおそれがあったとは認められず、換価の猶予の申請を不許可とした処分は適法であるとしたものである。

要旨

 請求人は、売上げの減少により納税資金を捻出することが困難であるとして原処分庁に対し行った換価の猶予申請(本件猶予申請)について、原処分庁が、請求人は申請に係る国税を一時に納付することにより生活の維持を困難にするおそれが認められないとして不許可処分を行った(本件不許可処分)ところ、請求人の毎月の収支状況はマイナスであること、資産は資金収支のマイナスを補填するための借入金を原資とするものであることから、本件猶予申請において納付することができる金額の算定に当たっては、納税の猶予等の取扱要領第7章の納付能力調査によらず、相続税の延納と同様に、債務額を財産から控除した純資産で判定すべきである旨、及び事業が好転しなければ今後返済不能となることを考慮して判断すべきである旨主張する。
 しかしながら、国税徴収法施行令第53条《換価の猶予の申請手続等》第3項は、国税徴収法第152条《換価の猶予に係る分割納付、通知等》第1項に規定する納付を困難とする金額の算定に当たっては、滞納者が有する現金、預貯金その他換価の容易な財産から生活維持費等を控除した残額を、納付すべき国税の額から控除する旨規定していること、及び本件猶予申請において検討したつなぎ資金では上記納付を困難とする金額は算定されず、請求人には、納付すべき国税を一時に納付することによりその事業の継続又はその生活の維持を困難にするおそれがあったとは認められないことから、本件不許可処分を不相当とする理由は認められない。
 また、審査請求によって行政処分の取消しを求めるには、当該処分の取消しによって回復すべき法律上の利益が存在していることが必要であるところ、請求人が取消しを求めている債権の差押処分(本件差押処分)は、原処分庁が、差し押さえた債権の一部を取り立てるとともに、取立て後の残額に係る差押えを解除したことによって、その効力が消滅しており、請求人には、本件差押処分の取消しによって回復すべき法律上の利益は存在しないから、本件差押処分の取消しを求める本審査請求は不適法なものである。

参照条文等

国税徴収法第151条の2第1項第152条第1項第67条第1項

参考判決・裁決

令和4年12月9日裁決(裁決事例集No.129)

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昭和60年9月10日裁決

課税処分の違法を理由として差押処分の取消しを求めることはできず、本件差押処分は超過差押えとはならないとした事例

裁決事例集 第30集 181頁

要旨

 請求人は、本件差押処分について、請求人が審査請求中である違法な本件課税処分に対応する部分は違法であること及びその結果、本件課税処分に対応する部分以外の部分については国税徴収法第48条第1項に規定する超過差押えに該当することから、本件差押処分はその全部を取り消すべきであると主張するが、課税処分が当然無効である場合又は違法を理由として取り消された場合は、これに基づく差押処分の違法を招来するものであるところ、本件課税処分について重大かつ明白なかしがあるとは認められず、また、本件課税処分は取り消されていないから、本件課税処分に係る滞納国税に対する差押処分の取消しを求める請求人の主張には理由がなく、また、それを前提として超過差押えとなるという請求人の主張にも理由がない。

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平成22年6月22日裁決

請求人が滞納法人の株主又は社員と認めるに足る証拠はないとして、国税徴収法第37条の規定に基づく第二次納税義務の納付告知処分を取り消した事例

裁決事例集 第79集

要旨

 原処分庁は、請求人が本件各滞納法人の株主又は社員である旨主張する。
 しかしながら、本件各滞納法人が所轄税務署長に提出した定款等の記載によれば、請求人が、本件各滞納法人の設立の際、本件各滞納法人に出資したとは認められず、直接的な資料により、請求人が本件各滞納法人の増資を引き受け、又は、出資を譲り受けた事実を認定することもできない。また、同族会社においては、所有と経営の分離が行われていない場合が多いから、役員等が会社を自由に操作している事実が認められる場合には、その事実は、当該役員等が当該会社の出資者であることをうかがわせる重要な間接事実となるが、請求人は、本件各滞納法人が経営する各店舗の売上金を集金した以外には、本件各滞納法人の経営に関与した事実は全く認められないから、請求人が本件各滞納法人を自由に操作していたということはできず、請求人が本件各滞納法人の実質的な出資者であると推認することもできない。さらに、本件各滞納法人が平成19年及び平成20年に提出した法人税申告書の別表二には、請求人が本件各滞納法人の株式又は出資を100%保有している旨記載されているが、本件各滞納法人が平成11年中に提出した法人税申告書の別表二には、株主として、請求人以外の者の氏名が記載され、平成12年から平成18年までの間に提出した法人税申告書の別表二には、請求人が本件各滞納法人の株主又は社員である旨の記載はないから、原処分庁が指摘する2年分の法人税申告書の別表二の記載のみから、請求人が本件各滞納法人の株主又は社員であったと認定することは到底できない。加えて、これら2年分の法人税申告書の決算業務を行った税理士法人の担当者は、だれが株主であるか分からなかったので、資産のオーナーである請求人を出資者とするのが妥当であると判断した旨の答述をするが、請求人が店舗不動産の登記名義人であるということと、本件各滞納法人の出資者がだれかということとは直接関係がないから、請求人が本件各滞納法人の出資者であることの根拠とはなり得ない。
 以上のとおり、請求人が本件各滞納法人の同族会社の判定の基礎となる株主又は社員に該当すると認めるに足る証拠はないから、原処分は国税徴収法第37条第2号の要件を欠く違法な処分であるといわざるを得ず、その全部を取り消すのが相当である。

参照条文等

国税徴収法第37条

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平成29年3月24日裁決

請求人は、過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引につき、二個の貸付取引の存在を主張し、最初の過払金返還請求権について時効による消滅を主張しているが、その全体が一個の貸付取引であると認められ、過払金返還請求権の消滅時効は、本件取引の終了日である最終弁済日から進行するとして、請求人の主張を排斥した事例(第二次納税義務の納付告知処分・一部取消し)

裁決事例集 第106集

要旨

 請求人は、国税の滞納者との間で行った金銭消費貸借取引(本件取引)は、本件取引1と本件取引2との二つに分かれており、前後二個の貸付取引が成立・存在するためには、原則として二個の基本契約の成立が要求されるところ、本件取引2においても、本件取引1とは法律的同一性を欠く基本契約が締結されていたものであり、本件取引1の終了時から10年を経過し、本件取引1に係る過払金返還債務は時効により消滅している旨主張する。
 確かに、本件取引1における最終の弁済から本件取引2の最初の貸付までの期間は約1年11か月であり、本件取引1と本件取引2では、約定利率の変更がされるなどの事実が認められるが、本件取引2の開始日において、基本契約が締結され、契約書が取り交わされた事実は認められず、本件取引1の最終弁済後も、将来において取引を再開し、新たな借入金債務の発生が見込まれる状態にあったことに照らせば、本件取引は、その全体が本件取引に係る基本契約に基づく一個の貸付取引であると認めるのが相当である。過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては、同取引により発生した過払金返還請求権の消滅時効は、同取引が終了した時から進行するものとされており(最高裁平成21年1月22日判決)、したがって、一個の貸付取引である本件取引の終了日は、本件取引(本件取引2)の最終弁済日であり、過払金返還請求権の消滅時効は、同日から進行する。

参考判決・裁決

最高裁平成6年12月6日第三小法廷判決(民集48巻8号1451頁) 最高裁平成15年7月18日第二小法廷判決(民集57巻7号895頁) 最高裁平成19年6月7日第一小法廷判決(民集61巻4号1537頁) 最高裁平成19年7月13日第二小法廷判決(民集61巻5号1980頁) 最高裁平成21年1月22日第一小法廷判決(民集63巻1号247頁)

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令和2年7月28日裁決

請求人を所有者とする不実の登記がなされている不動産を滞納法人が請求人に取得させた行為が、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》の第三者に利益を与える処分に該当するとしてされた納付告知処分について、当該不動産があたかも請求人所有の不動産であったかのような会計処理が行われていることをもって不動産の所有権を請求人に取得させたとは認められないと判断した事例

裁決事例集 第120集

ポイント

 本事例は、請求人を買主として作成された不動産売買契約書について、処分証書ではないとして契約の成立を否認した上で、仮に契約が成立したと認められるとしても、内心の意思とは異なる意思表示について売主は悪意であったといえるから、民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)第93条《心裡留保》ただし書の規定により無効であるという判断をしたものであり、また、会計処理等によっては不動産の所有権移転が認められず、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》の第三者に利益を与える処分がされたとはいえないと判断したものである。

要旨

 請求人は、買主を滞納法人とする4月付の売買契約(4月売買契約)は解除合意(本件解除合意)がされ、その後、買主を請求人とする5月付の売買契約(5月売買契約)が成立しており、これを無効とする事情はないから、5月売買契約に基づいて、請求人名義で不実の登記がなされた各不動産(本件各不動産)を取得した旨主張する。
 しかしながら、事実関係からすれば、請求人が5月売買契約に係る契約書(5月売買契約書)を作成する意思は有していたとしても、その作成によって、本件各不動産を請求人が買い受ける旨の意思表示がされたものとは認められない。仮に5月売買契約書等の作成によって、請求人等がこれらの書面に記載されたとおりの意思表示をしたと認められるとしても、事実関係を前提とすれば、内心の意思とは異なる意思表示がされ、これを売主も認識していたといえるから、いずれにしても民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)第93条《心裡留保》ただし書の規定により、5月売買契約等は無効となる。
 また、原処分庁は、請求人を所有者とする不実の登記がされた本件各不動産について、①本件各不動産の売買代金を仮払金として計上していた滞納法人が、売買後、これを請求人に対する貸付金に振り替え(本件会計処理)、請求人が、本件各不動産の賃料収入を売買時から遡って計上したこと、②滞納法人の代表者が請求人も支配できる立場にあり、税務調査を切り抜けるためにこれらの会計処理をしたこと等からすれば、本件会計処理の日に本件各不動産の所有権は滞納法人から請求人に移転している旨主張する。
 しかしながら、滞納法人は、本件会計処理の日以降も本件各不動産の賃料収入を受領しており、その余の事情を考慮しても、本件各不動産の所有権が請求人に移転したと認めるに足りる証拠もないことから、本件会計処理の日に本件各不動産の所有権が滞納法人から請求人に移転したとは認められない。

参照条文等

国税徴収法第39条 民法第93条(平成29年法律第44号による改正前のもの)

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昭和63年7月8日裁決

譲渡担保契約は処分清算型と認められるから債権者による譲渡担保財産の換価前にされた差押処分は適法であるとした事例

裁決事例集 第36集 173頁

要旨

 請求人は、譲渡担保契約は、処分清算型から流質型に変更されたから、譲渡担保財産は請求人に帰属していると主張するが、変更に関する合意書の内容、その後の担保財産の管理方法からみて、引き続き処分清算型であると認められ、また、担保財産の評価額が合意書作成日現在における被担保債権残額を上回らないとはいえず、本件担保財産の所有権が確定的に請求人に帰属したとは認められないから、請求人が担保財産を換価する前に行った差押処分は正当である。

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平成7年2月20日裁決

賦課処分と滞納処分とは、それぞれその目的を異にする独立の行政処分であるから、課税処分が取り消されるか無効でない限り、課税処分の違法を理由として、交付要求の取消しを求めることは出来ないとした事例

裁決事例集 第49集 624頁

要旨

 請求人は、本件課税処分が違法であるから、当該処分を前提としてなされた本件交付要求も違法で取り消すべきであると主張するが、賦課処分と滞納処分とは、それぞれその目的を異にする独立の行政処分であるから、課税処分が無効であるか、又は違法を理由として取り消された場合には当該処分を前提とした交付要求の違法を招来するものの、課税処分に存する違法が単に取り消し得べき瑕疵にすぎないときには、それが取り消されない限り課税処分は依然として有効であって、当該処分の違法性を理由として交付要求の取消しを求めることは出来ない。
 本件についてみると、本件課税処分が取り消されたという事実はなく、また、本件課税処分を無効ならしめるような重大かつ明白な瑕疵があると認めるに足る証拠もないから、本件課税処分に係る違法を理由として本件交付要求の取消しを求めることはできない。

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平成11年2月19日裁決

遺産分割の調停で、他の相続人が延滞税を負担することとされたにもかかわらず、本件公売代金をこの延滞税に配当したのは違法である等との請求人の主張が排斥された事例

裁決事例集 第57集 583頁

要旨

  1.  請求人は、本件調停条項を根拠として、延滞税は他の相続人が負担すべきものであるから、本件公売代金を当該延滞税に配当したことは違法である旨主張するが、本件調停条項の文言によれば、国に対する乙及び丙の延滞税の納税義務を甲が引き受けるという趣旨ではなく、延滞税相当額の金員を甲(L)から乙(M)及び丙(請求人)に支払うという趣旨にすぎないと解するのが相当であり、また、仮に国に対する乙(M)及び丙(請求人)の納税義務を甲(L)が引き受けるという趣旨であるとしても、納税義務の存否は法律の規定により定まるものであるところ、遺産分割調停における調停条項のような私人問の合意により納税者の国に対する納税義務が消滅すると解すべき法律の規定は存在しないから、請求人の主張には理由がない。
  2.  本件公売処分に係る公売通知及び不動産等の最高価申込者決定通知自体は、滞納者の権利義務その他法律上の地位に影響を及ぼすものではなく、国税に関する法律に基づく処分に当たらないというべきであるから、本件審査請求は、その対象となる処分を欠く不適法なものである。
     なお、本件審査請求が本件公売通知及び本件最高価申込者決定通知自体の取消しを求めるものではなく、これらの通知の対象となった本件公売処分及び本件最高価申込者の決定処分の取消しを求める趣旨であるとしても、本件公売処分の換価財産の買受代金の納付の期限は、平成9年9月16日午後3時00分とされており、本件審査請求書が提出された日は平成9年9月22日であるから、不服申立ての期限を徒過しており、やはり不適法なものである。
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平成8年10月2日裁決

遺産分割協議の無効確認を求めて訴訟中であることを理由に、当該遺産分割に基づく相続税の滞納のためにした請求人の固有財産に対する差押処分の取消しを求めることはできないとした事例

裁決事例集 第52集 163頁

要旨

  1.  請求人が、本件相続税申告の基礎となった遺産分割協議の無効確認を求めて訴訟を提起していることは認められるが、当該遺産分割に基づきされた相続税の申告と本件差押処分とは、それぞれ別個の法律効果の発生を目的とする独立した手続であり、結合して単一の法律効果を生ずるものではないから、本件申告に外形上客観的に一見して看取し得る程度の重大かつ明白な瑕疵があると認められない以上、差押処分の取消しを求めることはできない。
  2.  請求人は、本件訴訟の判決確定まで本件差押処分を看過すれば請求人の固有財産が公売に付されることとなり、本件訴訟の実益を確保できなくなるばかりか、回復不可能な損害を被ることになると主張する。
     しかしながら、差押処分は租税債権の強制履行を目的とする滞納処分の一環であるが、その執行に当たっては、超過差押え及び無益な差押えの禁止の規定(国税徴収法第48条)、相続があった場合の差押えに関する規定(国税徴収法第51条)、滞納処分による財産の換価の猶予の規定(国税徴収法第151条)等により、差押処分が滞納者に過酷にならないように措置されていることが認められる。
     一方、相続税の滞納により滞納者の固有財産に対する差押処分を禁止し又は猶予する旨の規定は存在しないから、原処分庁が本件差押処分をしたこと及びこれを維持していることに違法、不当な点があるとは認められない。
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平成18年5月9日裁決

配当処分に係る審査請求は、不服申立期限である換価代金等の交付期日を徒過してなされたものであるが、換価代金等の交付期日について原処分庁がその期間を短縮したことは適法とはいえないとして、配当計算書謄本受領後早期になした審査請求を適法なものとして扱うのが相当であるとした事例

裁決事例集 第71集 767頁

要旨

 本件配当処分は平成17年11月7日に行われているところ、換価代金等の交付期日は国税徴収法(以下「徴収法」という。)第132条第2項ただし書の規定に基づき平成17年11月7日に短縮されている。したがって、本件配当処分に係る審査請求は、同法第171条第1項第4号に規定する換価代金等の交付期日後の同月10日であることから、不服申立ての期限を徒過している。
 しかし、徴収法第132条第2項ただし書が期間の短縮を認めているのは、配当を受ける者等が差押権者、交付要求権者及び滞納者のみである場合には、特に異議を申し立てるのに必要な事項を調査するための期間をおく必要がないことから、行政庁の裁量によりその期間を短縮することを認めることとしたものであり、交付要求権者や滞納者の不服申立ての機会を奪うものではない。したがって、その短縮する期間は、これらの者が不服申立てをするのに必要な期間が保障されていることを要すると解するべきである。
 これを本件についてみると、配当計算書の作成日と同日を換価代金等の交付期日としていることから、その交付期日は、滞納者の不服申立ての機会を奪うものといわざるを得ず、徴収法第132条第2項の趣旨からもはや適法な短縮とはいいがたく、手続的違法が認められる。そして、審査請求人は、配当計算書の謄本を受領後、早期に審査請求をしていることが認められる。
 したがって、本件配当処分に対する審査請求は、これを適法なものと扱うのが相当である。

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平成9年2月18日裁決

1. 遺産の審判分割を原因とする本件各課税処分に重大かつ明白な瑕疵が存在するとは認められず、当然無効でない以上、課税処分とは別個独立の行政処分である本件差押処分の取消しを求めることはできない。 2. 相続財産である本件株券は適法、有効に発行されたものと認められるところ、原処分庁は、その交付請求権の差押権者として取立権を行使し、給付を受けて有価証券として差押処分をしたものであり、本件差押処分は適法、有効である。 3. 公売期日に公売が実施されず、その期日が経過しており、本件公売処分は不存在であるから、審査請求はその対象を欠く不適法なものとして却下すべきある。

裁決事例集 第53集 507頁

要旨

  1.  本件各課税処分は、家庭裁判所の審判により未分割の遺産に係る分割が確定し、共同相続人において修正申告書の提出又は更正の請求がされ、請求人に対し更正処分が行われたものであり、本件各課税処分に請求人の主張する重大かつ明白な瑕疵が存在するとは認められず、他に本件各課税処分を当然に無効とすべき特段の事由も認められない。
     課税処分と差押処分とは、それぞれ目的及び効果を異にする別個の手続による行政処分であって、本件各課税処分が当然無効でない以上、差押処分の取消しを求めることはできない。
  2.  本件株券は、商法第225条に規定する記載事項を具備していること、H株式会社はその定款に株券の発行に関し株主総会又は取締役会の決議を要する旨の定めをしていないこと等、その発行は適法、有効と認められ、また、原処分庁は、国税徴収法第67条(差し押えた債権の取立)第1項の規定に基づき、本件株券交付請求権の差押権者としてその取立権を行使し、H株式会社から株券の給付を受けたものであり、取り立てた本件株券を同条第2項の規定に基づき有価証券として同法第56条(差押の手続及び効力発生時期等)の規定に従い差し押さえたのであるから、請求人の主張する本件株券の無効、差押処分の取消しの請求には理由がない。
  3.  本件公売処分は、原処分庁の平成7年9月20日付の公売中止通知書をもって中止する旨が請求人に通知され、上記公売期日には公売は実施されず、その期日が経過したことが認められる。また、公売に関する各規定によれば、公売を中止した後、再びその財産を公売する場合には改めて公売期日を定め、公売広告以下の手続を踏まなければならないことは明らかである。
     公売期日に公売が実施されず、その期日が経過したことは、公売処分は不存在ということになるから、審査請求はその対象を欠く不適法なものとして却下すべきである。
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平成17年11月4日裁決

「公売中止申立書」は、公売通知の取消しを求める異議申立書として取り扱うことが相当であるとした事例

裁決事例集 第70集 413頁

要旨

 原処分庁は、本件公売中止申立書は単に公売を中止してほしいとの申立てであり、これを異議申立書と解することはできない旨主張する。
 しかしながら、請求人らは、当審判所に対し、本件公売中止申立書は異議申立書である旨の意思表示をしていることから、本件公売中止申立書を異議申立書として取り扱うことが相当と認められる。
 そして、本件公売中止申立書は、国税通則法第81条第1項に規定する記載事項のうち、「異議申立てに係る処分」、「異議申立てに係る処分があったことを知った年月日」及び「異議申立ての趣旨及び理由」についての記載がなされていないことから、当審判所において、異議申立ての対象とする処分等について、請求人らに対して補正を求めたところ、請求人らは、本件公売通知に対する本件公売処分の執行の中止の申立てである旨回答しており、この回答内容から、本件公売中止申立ては、本件公売通知に対してその取消しを求めるものと解される。

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平成29年12月6日裁決

不服申立ての期限の特例の適用がある換価代金等の配当処分に対する審査請求については、不服申立期間の延長を定めた国税通則法第77条第1項ただし書(正当な理由)の適用はないとした事例(換価代金等の配当処分・却下)

裁決事例集 第109集

要旨

 国税徴収法第171条《滞納処分に関する不服申立て等の期限の特例》第1項第4号は、換価代金等の配当処分に関し欠陥があることを理由としてする不服申立ては、国税通則法第77条《不服申立期間》の規定にかかわらず、換価代金等の交付期日まででなければすることはできない旨規定しているところ、当該特例が定められた趣旨は、滞納処分手続の安定を図り、かつ、換価手続により権利を取得し、又は利益を受けた者の権利、利益を保護しようとすることにあるものと解される。
 したがって、換価代金等の配当処分に関し欠陥があることを理由とする審査請求には、国税通則法第77条第1項ただし書(正当な理由があるとき)の適用はないと解するのが相当であり、本審査請求は、法定の不服申立てができる期限を経過した後にされた不適法なものである 。

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平成7年5月19日裁決

代物弁済を原因とする不動産の所有権移転登記について、その実質は譲渡担保契約に基づくものであるとみるのが相当であり、清算手続がとられていない以上、被担保債権が消滅したものとみることはできないとして、国税徴収法第24条の譲渡担保権者の物的納税責任に関する告知処分が適法であるとした事例

裁決事例集 第49集 575頁

要旨

 代物弁済を原因とする本件財産の所有権移転登記は、本件貸付元本等を担保するためのものであり、このことは当事者双方共に了解の上であることが認められ、本件財産の所有権移転登記は正に譲渡担保契約に基づくものであるとみるのが相当である。
 請求人は、たとえ買戻特約付の契約であっても、本件財産の所有権は代物弁済を原因として、請求人に移転しているのであるから、既に被担保債権は消滅しており、被担保債権のない譲渡担保契約はありえない旨主張するが、本件財産の所有権移転登記は、請求人の債権確保を確実にするために債権担保の目的で行ったものと認められるから、その実質は譲渡担保契約に基づくものであるとみるのが相当であり、清算手続がとられていない以上、本件貸付元本等の被担保債権が消滅したものとみることはできない。

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昭和61年1月24日裁決

企業組合が理事会の承認を受けることなく退任理事に譲渡した協同組合の組合員の持分は企業組合の所有に帰するとしてした差押処分が適法であるとした事例

裁決事例集 第31集 185頁

要旨

 請求人は、本件差押処分の対象となった協同組合の組合員の持分は、請求人が企業組合の理事を辞任した後、企業組合の専務理事の承認を受け組合から譲り受けており、本件差押処分時には、請求人の所有となっていたものであると主張するが、請求人が企業組合の理事を辞任した結果、組合の定款に定めた理事の定数を欠くことになり、請求人は、中小企業等協同組合法第42条の規定により理事辞任後もなお理事としての権利義務を有していたものと解され、したがって、同法第38条の規定により組合の理事会の承認を受けないでした協同組合の組合員の持分の譲渡契約は無効となることから、請求人の主張には理由がない。

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平成14年11月8日裁決

公売不動産の見積価額を減額する改訂は適正であるとした事例

裁決事例集 第64集 623頁

要旨

(1)本件見積価額と前回見積価額との開差は、原処分庁が本件公売財産を適正に評価した結果によって生じたものと認められる。
イ 本件の時点修正額は、本件公売財産の近隣にある本件公示地の価格を基準として、それぞれの算定時点の間における下落率(価額変動率)を基に算定されていることから、合理的かつ適正に求められた金額であり、原処分庁がこれを控除したことは相当である。
ロ 敷金の返還額は、本件公売財産の買受人の債務負担額となるから、これを控除したことは相当である。
ハ [1]本件土地については、第三者所有の建物があり、土地の利用、用途等が制約されるなど特殊な要因を含んだ市場性に極めて乏しい物件であると認められ、[2]過去10回の公売を実施し、見積価額を2度見直したにもかかわらず入札者がなかったことも、特殊な要因が影響したものと考えられることから、原処分庁が、これらの特殊な要因を考慮し、市場性減価額を控除したことは、合理的かつ適正なものといえる。
ニ 公売に当たっては、財産の所有者が任意に処分する場合よりも、市場性が極めて制限され、見積価額が低廉となるのが通例であるから、原処分庁が公売の特殊性を考慮したことは相当である。
なお、原処分庁は、公売の特殊性による減価率を前回見積価額の算定時の20%から30%に変更しているが、これは評価通達に定めた公売の特殊性の調整限度の範囲内において減額したものと認められる。
(2)請求人は、原処分庁が本件公売通知書に不適切な記載をしたために、過去10回の公売において入札者がいないという結果となったのであるから、これを根拠に本件公売財産を市場性に極めて乏しい物件であると判断したのは誤りであると主張する。
しかしながら、本件公売通知書は、本件公売財産の概要及び利用状況等を正確に記載していると認められるから、誤認等の生じる余地はないと考えられる。
(3)請求人は、原処分庁の見積価額の決定に係る評価算定基準に問題があるから、公売の特殊性を参酌する必要は認められない旨主張する。
しかしながら、原処分庁が決定した本件見積価額は、不動産鑑定士によって算定された本件鑑定価額を参考としており、請求人が主張する算定方法によって算定された評価額を基礎としたものといえる。そして、本件見積価額の算定に当たり、本件鑑定評価額から減価額を控除したことは、前記のとおり適正であるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(4)当審判所が、財産評価基本通達に定める路線価の下落率を用いて、本件土地の公売時点の時価を算定すると、17,115,837円となる。そして、この金額は、本件見積価額の算定過程において原処分庁が算出した本件土地の時価、すなわち、本件鑑定評価額から時点修正額、本件敷金及び市場性減価額を控除した後の金額(公売の特殊性による減価額を控除する前の金額)である16,950,000円とほぼ同額となる。
このことは、本件見積価額が本件土地の公売時の時価を反映し、同時に、原処分庁の本件公売財産の算定が適正に行われていたことを裏付けるものであるといえる。

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平成23年10月12日裁決

公売公告を行う際の調査不足及び財産調査の手続違法は、公売公告処分の取消事由には当たらないとした事例

裁決事例集 第85集

ポイント

 この事例は、主たる主張として国税徴収法第95条第1項に規定する公売公告において「第三者が使用している」旨を記載したことの適否が争われたものであるが、その他に、権利関係の調査が不十分であること、また、調査手続に違法があるとして公売公告処分の取消しが求められ、それに対して財産調査が公売公告処分の要件とはならないことを理由に違法はないと判断したものである。

要旨

 国税徴収法第95条《公売公告》第1項が公売に先立って公売公告事項を公告しなければならない旨規定している趣旨は、公売に先立って、公売財産(公売に付す差押財産)を特定するとともに、売却決定日時や公売保証金の要否、買受代金の納付期限及び公売財産の権利関係などの買受人の負担等を広く周知することによって、公売財産の需要を喚起し、高価での買受申込みを誘引するとともに、買受希望者に対して入札するか否かの判断資料を提供することにあると解される。
 本件においては、公売財産上の賃借権等の権利の内容として、「第三者が使用している」旨の記載の程度については、本件公売公告処分の時点において、複数の第三者が本件各不動産の一部をそれぞれ使用しており、土地の所有権の移転について、第三者の一人は農地法第3条《農地又は採取放牧地の権利移動の制限》の許可を得ているにも関わらず、所有権の移転登記が経由されておらず、登記簿上の所有者は請求人のままであること、また、賃借権の設定について農地法第3条の許可がされていることからすれば、原処分庁は本件各不動産を使用する権原が明らかでなかったことにより「第三者が使用している」と記載したものと考えられ、その記載の程度が公売公告事項として適切でないということはできない。そうすると、その他の公売公告事項についても国税徴収法第95条第1項の規定に基づき適切に記載されていることから、本件公売公告処分に記載不備の違法はない。

参照条文等

国税徴収法第95条

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平成14年2月8日裁決

原処分庁が差し押さえた滞納者が裁判上請求している貞操侵害を理由とする慰謝料請求権は、差押えの時点においては、いまだ行使上の一身専属性が失われたとはいえないから、差押えの対象とすることができない財産に当たるとして、差押処分を取り消した事例

裁決事例集 第63集 718頁

要旨

 原処分庁は、請求人が加害者を被告として提起していた損害賠償請求訴訟の第1審において認容された「貞操を侵害されたことにより請求人が被った精神的苦痛に対する慰謝料請求権」を、判決の言い渡しの日に差押さえた処分は、慰謝料請求権が差押禁止財産に当たらないから適法である旨主張する。
 しかしながら、貞操を侵害されたことを理由とする被害者の慰謝料請求権は、被害者が慰謝料請求権を行使する意思を表示しただけでいまだその具体的な金額が当事者間において客観的に確定しない間は、被害者がなおその請求意思を貫くかどうかをその自律的判断に委ねるのが相当であるから、なお行使上の一身専属性を有するものというべきであって、被害者の債権者はこれを差押えの対象とすることはできないものと解される。
 これを本件についてみると、本件慰謝料請求権については、加害者が控訴して、その後において裁判上の和解がされているから、差押処分の時点においては行使上の一身専属性が失われたとはいえないから、差押えの対象とすることができないものというべきである。
 よって、本件差押処分は、違法であるといわざるを得ない。

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平成30年6月7日裁決

国税徴収法第39条における債務免除により受けた利益の額は、債務免除の対象となった債権の額面上の金額と同額であるとした事例(第二次納税義務の納付告知処分・棄却)

裁決事例集 第111集

ポイント

 本事例は、国税徴収法第39条における債務免除により受けた利益の額とは、債務免除がされた時における債権の客観的時価に相当する価額をいい、当該価額の算定に当たっては、債務者の資産状況、支払能力等の債務者側の事情を踏まえて算定するのが相当であるとしたものである。

要旨

 請求人は、債務免除(本件債務免除)当時における請求人の財務状況等から、その時点で請求人が破産した場合、一般債権者への配当はなかったこと、また、債務免除前に、事実上支払停止に陥っており支払能力はなかったことを理由に、滞納者が債務免除をした貸付金(本件貸金債権)の本件債務免除の時の価額は零円であるから、請求人が本件債務免除により受けた利益の額は零円である旨主張する。
 しかしながら、債権の評価に当たっては、債務者の資産状況、支払能力等の債務者側の事情を踏まえて算定するのが相当であるところ、請求人は、本件債務免除当時、①手形交換所における取引停止処分や法的整理(再生手続、破産手続等)の開始決定及び事業の休廃業等の事実はなく、②事業活動は継続されており、本件債務免除の前後において相当の売上高を計上していたこと、③本件貸金債権の額を大きく上回る流動資産を有していたこと、④本件債務免除は、主要取引銀行に対し、請求人の代表者である滞納者の経営責任を明確にするために行われたものであり、本件貸金債権の回収が不可能又は著しく困難であるとして債務免除が行われたものではないことからすると、本件貸金債権の全部又は一部の回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるような特別な事情があったとは認められないから、債務免除により請求人が受けた利益の額は、本件貸金債権の額面上の金額と同額であるとするのが相当である。

参照条文等

国税徴収法第39条 民法第95条

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平成21年4月7日裁決

国税徴収法第39条の規定による第二次納税義務を負う受贈者が相続時精算課税制度を選択したことによって財産の贈与を受けた後に納付すべきこととなる相続税は、同条の受けた利益の額を算定するに当たって受益財産の価額から控除することはできないとした事例

裁決事例集 第77集 567頁

要旨

 請求人は、特定贈与者から生前贈与を受けて相続時精算課税を選択していた場合、国税徴収法第39条の規定により受贈者が負う第二次納税義務の限度となる「受けた利益の限度」を算定するに当たっては、相続時精算課税による相続税額を控除すべきであると主張する。
 しかしながら、同条にいう「受けた利益の限度」の額は、同条が滞納者の親族その他の特殊関係者に、その受けた利益が後に現存しなくてもなお受けた利益の限度において第二次納税義務を負担させていることからすれば、その算定上受益財産の価額から控除すべき対価及び費用は、当該受益の時においてその存否及び数額が法律上客観的に確定しているものであることを要すると解するのが相当であるところ、贈与税の申告に当たって相続時精算課税を選択した相続時精算課税適用者がその後納付する相続税額は、特定贈与者の死亡による相続開始の時に、当該贈与により取得した財産と相続又は遺贈により取得した財産とを合計した価額から、相続債務や葬式費用、基礎控除等を控除した価額を基に相続税額を計算した上、既に支払った贈与税額を控除して算出するものであり、贈与によって取得した財産の価額のみならず、当該贈与から特定贈与者の死亡までの財産の得喪及び債務の増減、相続開始日までの推定相続人の人数の増減、当該贈与を受けた者が相続又は遺贈によって取得した財産の価額や相続債務等により、その存否又は納付すべき税額が決定されるのであるから、受益の時においてその存否及び数額が法律上客観的に確定しているとはいえない。
 したがって、当該相続税は、国税徴収法第39条の「受けた利益の限度」の額の算定に当たり、受益財産の価額から控除することができないと解するのが相当である。

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令和元年7月2日裁決

売却決定処分に係る見積価額が時価より著しく低廉であり違法であるとの請求人の主張に対し、売却決定価額と時価(基準価額)とを比較し、低廉ではないと判断した事例(不動産の売却決定処分・棄却)

裁決事例集 第116集

ポイント

 本事例は、売却決定価額の低廉性の判断においては、売却決定価額と時価(基準価額)を比較するのが相当であり、見積価額の低廉性の主張に対しても、結果として売却決定価額が著しく低廉でない限り、低廉による違法の認定はないと判断したものである。

要旨

 請求人は、請求人が所有する土地(本件土地)の時価については、少なくとも不動産販売会社による簡易査定価格を下回らないから、本件土地の見積価額(本件見積価額)は時価より著しく低廉であり、時価より著しく低廉な見積価額で公売された場合の売却価額は、見積価額が時価相当額であった場合と比べて当然に低廉となる旨主張する。
 しかしながら、公売財産の見積価額は、その財産の時価に相当する基準価額を求めた上、公売の特殊性を考慮し、基準価額からそのおおむね30%程度の範囲内の公売特殊性減価を行い算定することから、時価を相当に下回るのが通常であるところ、公売財産の見積価額が時価より著しく低廉であり、その結果、売却価額も時価より著しく低廉となった場合には、見積価額の決定が最低売却価額の保障をすることにあるという趣旨に反することとなるから、この場合の売却決定処分は違法になると解すべきである。本件では、本件土地の基準価額に公売特殊性減価(減価率20%)をした額を本件見積価額として決定し、本件土地の売却価額は、本件土地の時価と認められる本件土地の基準価額の約85%に相当する価額であったことから、時価より著しく低廉でないと認められる。

参照条文等

国税徴収法第98条 国税徴収法第113条第1項

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平成21年11月10日裁決

宗教法人が所有し、主に葬儀会場及び法要会場等として使用されている建物の敷地が差押禁止財産に当たらないとした事例

裁決事例集 第78集 536頁

要旨

 宗教法人である請求人は、本件各土地は、宗教法人法第83条に規定する礼拝の用に供する建物の敷地に当たるから、差し押さえることができない旨主張する。
 しかしながら、本件各土地は、主に葬儀会場及び法要会場等として使用されている本件建物と一体として使用されていると認められるところ、たとえこれらが同法に規定する境内地に当たるとしても、仏像、位牌、神体、仏具、神具等で現に信仰又は礼拝の対象となっているものとは異なり、寺院の本堂、庫裏などと同様に、礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物とは認められないから、国税徴収法第75条第1項第7号に規定する「その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物」には当たらず、また、その他の差押禁止財産にも当たらない。さらに、宗教法人法第83条は、私法上の金銭債権に関する規定であるところ、国税債権は私法上の金銭債権ではないから、同条の規定は、本件差押処分には適用されない。

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平成20年2月19日裁決

差押不動産の売買契約における買主は滞納者であり、その購入資金である住宅ローンの返済は滞納者が行い、差押え前に請求人が差押不動産の共有持分を取得した事実は認められないことからすれば、差押不動産の取得に滞納者の妻であった請求人の協力、寄与が認められたとしても、差押不動産は夫婦共有財産ではなく、その所有権を有しているのは滞納者であるとした事例

裁決事例集 第75集 779頁

要旨

 民法は、夫婦間の財産関係について夫婦別産制(同法第762条第1項)を採用し、婚姻費用の分担(同法第760条)及び日常家事債務の連帯責任(同法第761条)の両規定をもって婚姻共同生活に対して配慮するとともに、離婚の場合につき財産分与請求権(同法第768条)を認めていることからすれば、婚姻生活中に形成された財産について、直ちに物権としての共有持分を認めているとは解されない。そうすると、婚姻生活中に夫婦の一方が対外的にその者の名義をもって取得した財産について、その取得に他方の配偶者の協力があったからといって、直ちにその者に物権としての共有持分を認めるのは相当でなく、その者のその財産に対する権利は飽くまで潜在的な権利にすぎないと解され、離婚に至って初めて、潜在的な権利の具現化としての財産分与により、物権としての権利を取得するものと解するのが相当である。
  請求人は、本件不動産の購入資金は、夫婦共有財産から支出されたものであるから、本件不動産の取得時より共有持分を有しており、物権を取得し得ない差押債権者は民法第177条の第三者に該当しないのであるから、本件差押処分は違法である旨主張する。
  しかしながら、上記のとおり、本件不動産の取得に当たり、請求人の協力、寄与が認められたとしても、請求人に直ちに物権としての共有持分が認められているとは解されず、本件不動産の売買契約における買主が本件滞納者であること、その購入資金である住宅ローンの返済は本件滞納者が行っていたこと、本件不動産の管理費は本件滞納者が負担していたことからすれば、実体的にも本件滞納者が本件不動産の所有権の全部を取得し、保有していたことが認められ、本件差押処分前に請求人が本件不動産の共有持分を取得した事実は見当たらず、財産分与を原因として請求人への所有権移転登記手続を命ずる本件差押処分後の家裁判決に当たり請求人が本件不動産の所有権を取得したものというのが相当である。したがって、本件差押処分時の本件不動産の所有権を有しているのは滞納者であり、原処分庁は、本件滞納者に帰属する本件不動産を差し押さえたのであるから、民法第177条に係る検討を行うまでもなく、本件不動産を本件滞納者に帰属するものとして行われた本件差押処分に違法な点は見当たらないというべきである。

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平成27年6月1日裁決

差押処分の直後に自主納付により滞納国税が完納される可能性は著しく低く、請求人の財産を早期に保全する必要性があったと認められることからすると、差押処分に係る徴収職員の裁量権の行使は差押処分の趣旨及び目的に反して不合理なものであったとはいえず、差押処分は不当なものではないとされた事例(債権の差押処分・棄却)

裁決事例集 第99集

要旨

 原処分庁が、請求人の滞納国税(本件滞納国税)を徴収するために債権の差押処分(本件差押処分)をしたことに対し、請求人は、原処分庁との納付相談において請求人の申し出た分割納付が認められたと理解して分割納付をしていたにもかかわらず、また、分割納付を依頼する各種事情を説明したにもかかわらず、これらの事情を一切考慮せずに行った本件差押処分は不当である旨主張する。
 しかしながら、本件滞納国税の納付状況等からすると、本件差押処分の直後に自主納付により本件滞納国税が完納される可能性は著しく低かったといわざるを得ず、請求人の財産を早期に保全する必要性があったと認められるから、本件差押処分に係る裁量権の行使は、差押えの趣旨及び目的に反して不合理なものであったとはいえず、本件差押処分は不当なものではない。

参照条文等

国税徴収法第47条第1項第1号 行政事件訴訟法第30条 行政不服審査法第1条第1項

参考判決・裁決

平成21年5月11日裁決(裁決事例集No.77) 平成22年9月29日裁決(裁決事例集No.80)

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平成18年4月19日裁決

換価代金等の交付期日を原処分庁が2日短縮した配当処分に手続上違法な点はなく、配当処分時に延滞税が滞納国税として存在しているから、その延滞税を徴収するためにした原処分は適法であるとした事例

裁決事例集 第71集 755頁

要旨

 請求人は、[1]換価代金等の交付期日の期間の短縮を定めた国税徴収法(以下「徴収法」という。)第132条《換価代金等の交付期日》第2項は、不服申立ての権利を奪うものであり、日本国憲法第11条に違反するので、同条項に基づいてされた配当処分は違法であること、[2]配当を受ける国税である延滞税は、本件更正処分が行われた日に確定し、国税通則法(以下「通則法」という。)第61条《延滞税の額の計算の基礎となる期間の特例》第1項の規定が適用され、そうすると、延滞税額は収納等の額を下回ることから配当処分時には存在しないことを主張する。
 しかしながら、[1]請求人の徴収法第132条第2項の規定が憲法に違反する旨の主張については、当審判所は、処分の基となった法令自体の適否を判断することはその権限に属さないことであるから、審理の限りではない。なお、徴収法第132条第2項は、配当計算書の謄本の交付を受けた滞納者等は、換価代金等の配当に関する異議がある場合は、換価代金等の交付期日までに申し出なければならないことから、異議申出に必要な事項を調査するために要すると思われる期間を定めることで利害関係人の保護を図るとともに、利害関係人が配当を受けない場合には、そうした保護の要請が働かないことから迅速な換価代金等の交付を可能とするために、上記期間を短縮することができるとしたものと解される。本件では、配当計算書を発送した日から起算して7日を経過した日が平成17年5月4日であるところ、その換価代金等の交付期日を5月2日として2日短縮したこととなるが、本件差押処分は、利害関係人がいなかったのであるから、本件配当処分は手続上違法な点はない。次に、[2]延滞税が存在しない旨の主張については、延滞税は通則法第60条第1項所定の事由に該当する場合に法律上当然に発生し、その成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定するものであり、国税に関する法律に基づく処分によって確定するものではない。そして、更正処分は、更正処分により減少した税額に係る部分以外の部分の国税の納税義務に影響を及ぼさず、また、通則法第60条第1項及び同法第61条第1項に規定する更正による納付すべき国税には、減額更正処分は含まれない。そうすると、これらのことを前提に延滞税を計算すると、本件配当処分時には延滞税が存在したこととなるから、請求人の主張には理由がない。

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平成20年9月19日裁決

残余財産の分配の事実を認めることができないとした事例

裁決事例集 第76集 497頁

要旨

 原処分庁は、本件滞納会社の清算人であった請求人が行った本件滞納会社の元代表者亡Cと内縁関係にあったWに対する支払、本件滞納会社の元役員Bに対する支払、Yに対する支払及びZに対する支払は、本件滞納会社の債務の弁済ではなく、Cの死亡により本件滞納会社に対するCの出資持分を承継したCの相続人のために、C個人の債務を弁済したことにほかならず、その使途が明らかでないものを含めた○○○○円が国税徴収法第34条にいう残余財産の分配又は引渡しに当たると主張する。
 しかしながら、本件滞納会社の解散時における出資者はCの相続人だけであると認められるところ、Cの相続人に交付された本件滞納会社の財産は、本件滞納会社の債務の弁済資金としてCの妻に交付された金員だけであると認められ、原処分庁が主張する他の支払も、Cの相続人のために残余財産の分配に代えて行われたものと認めることはできず、その使途が明らかでないものについても、これがCの相続人に交付されたともC個人の債務の弁済に充てられたとも認めることができないから、請求人が本件滞納会社の社員に対して残余財産の分配等を行ったと認めることはできない。

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平成14年5月31日裁決

滞納会社の任意整理を受任した滞納会社代理人(弁護士)名義の預金が滞納会社に帰属するとした事例

裁決事例集 第63集 728頁

要旨

 預金債権の帰属の認定に当たっては、特段の事情のない限り、出捐者、すなわち、預金に係る資産を現実に拠出した者に預金債権が帰属すると解されるところ、[1]本件預金口座は、請求人が、本件任意整理の業務を遂行するための資金を管理するために開設したものであること、[2]本件預金口座の入出金は、滞納法人の売掛債権の回収又は債務の弁済という専ら滞納法人関連のものであること、[3]請求人が、本件預金口座に係る通帳及び届出印の保管、入出金等の管理を行っていたのは、同人にとってこれらの行為が本件任意整理の業務を遂行する上で必要であったからにほかならないこと、[4]本件預金口座の名義人は、社会通念上滞納法人であると解されるところ、請求人であると解する特段の事情が存すると認められないこと等を併せ考えると、本件預金口座の預金者は、その出捐者である滞納法人であるというべきであり、したがって、本件預金債権は滞納法人に帰属すると認めるのが相当である。

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令和6年10月4日裁決

滞納処分において相続財産管理人の報酬が国税債権に優先することが自明の理であるとはいえず、また、差押財産の選択等に関する判断は不合理とは認められないとした事例(債権の差押処分・棄却)

裁決事例集 第137集

ポイント

 本事例は、差押処分時において被差押債権について国税に優先する債権は確認できなかったことから、無益な差押えに該当せず、また、差押えに至る経緯によれば、差押財産の選択等に関する判断は法や制度の趣旨及び目的に照らして不合理とは認められないことから、差押えは不当な処分であるとはいえないとしたものである。

要旨

 請求人は、①民法第885条《相続財産に関する費用》本文の「費用」には相続財産管理人(管理人)の報酬や立替経費が含まれ、管理人が同法第929条《公告期間満了後の弁済》ただし書の「優先権を有する債権者」に該当すること、②相続財産の清算手続は破産手続に類似し、国税徴収法(徴収法)第9条《強制換価手続の費用の優先》の準用又は類推適用により、管理人の報酬債権が国税に優先するとした上で、管理人の予定報酬額は、管理人名義預金口座(本件預金口座)の残高を上回ることから、本件預金口座の残高の一部の払戻請求権を差し押さえた(本件差押処分)ことは、無益な差押えに当たり徴収法第48条《超過差押及び無益な差押の禁止》第2項に反する旨主張する。
 しかしながら、①相続財産法人に対する債権者は、相続財産法人について管理人による清算が行われている場合であっても、強制執行や滞納処分を行うことが妨げられないところ 、滞納処分においては、徴収法第8条《国税優先の原則》により、徴収法第2章《国税と他の債権との調整》に別段の定めがある場合を除き国税は他の債権に優先すると規定されているのであるから、上記民法の規定は管理人の報酬が国税に優先することの根拠となるものではなく、②破産手続では国税債権者は滞納処分の執行が制限される一方で破産管財人に交付要求手続を行うことで破産財団から随時弁済や配当を受けることができるのに対し、相続財産の清算手続では、滞納処分の執行は制限されないことや、相続財産をもって相続債権者等に対する債務を完済することができないと認めるときには管理人は破産手続開始の申立てができることに鑑みれば、管理人による清算手続は、破産手続とその性質を異にするものであって、強制換価手続に相当するものとはいえないから、徴収法第9条は準用又は類推適用されない。したがって、管理人の報酬債権は国税に優先せず、他に被差押債権につき国税に優先する債権は確認できなかったから、本件差押処分は無益な差押えに該当しない。
 また、請求人は、管理人の報酬額が差押財産の価額を上回るにもかかわらず滞納処分による差押えを行うという運用が認められてしまうと、管理人の役職を引き受ける者がいなくなるという不当な状況に陥る可能性があり、また、原処分庁は、回収の努力もせずに、管理人の努力の結果集められたものを横取りしているに等しいことなどを理由として、本件差押処分は不当であると主張する。
 しかしながら、請求人は、国税通則法第5条《相続による国税の納付義務の承継》の規定により、被相続人が納付すべきであった滞納国税を納める義務を承継しているところ、本件差押処分までの2年以上の間、原処分庁から複数回の催告を受けたにもかかわらず、国税に充てる金額は残っていないとして当該滞納国税を自主納付しなかったことからすると、当該滞納国税について自主納付による完納の見込みがあったとはいえなかったのであるから、原処分庁としては、当該滞納国税を徴収するためには、財産の差押えによって回収を図らざるを得なかったというべきであり、また、公売手続に時間を要する不動産ではなく預金債権を差押えの対象とした判断が、法や制度の趣旨及び目的に照らして不合理とは認められず、本件差押処分が不当な処分であるとは認められない。

参照条文等

国税徴収法第48条第2項第47条第1項第1号

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平成4年4月8日裁決

滞納処分により債権差押えをする場合、全額差押えを原則としており、被差押債権の範囲を一部とするか否かは徴収職員の裁量に任されていて、その濫用が認められない限り、債権の全額差押えは違法とはいえないとした事例

裁決事例集 第43集 439頁

要旨

 請求人は、原処分庁が第三債務者に対して、請求人が有する株式全部についての株券交付請求権を差し押さえたことは、滞納国税の額をはるかに上回る差押えであり、このことは、国税徴収法第63条ただし書の規定を無視した違法、不当なものである旨主張するが、本件株式については、請求人と第三債務者の間で株券が発行済みか否か訴訟系属中であり、同株券が原処分庁へいつ交付可能となるのか、その時期が特定できない状況からすると、原処分庁が国税徴収の確実を期するため、徴収すべき滞納国税の額にかかわらず株券交付請求権の全部を差し押さえたとしても、違法とはいえない。

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平成2年6月26日裁決

滞納者から金銭の贈与を受けたことを理由とする国税徴収法第39条に基づく第二次納税義務の告知処分は相当であるとした事例

裁決事例集 第39集 459頁

要旨

 滞納者(会社)は、土地を譲渡した後代金の一部60,000,000円を第三者(2名)に対する債務の弁済の名目で流出し、これを当該第三者名義の預金に預け入れており、更にその資金が請求人(滞納者の代表取締役の妻が代表取締役である会社)に対し貸付金の名目で移動している。
 しかし、[1]滞納者の帳簿には、当該第三者からの借入金の記載はなく、[2]当該第三者は、請求人の代表者の実弟(大学生)又は滞納者の代表者の娘婿であるところ、いずれも滞納者に対する債権及び請求人に対する債権の存在を否定していること等から、当該金員は、実質的には滞納者から請求人に直接渡ったものと認めるのが相当である。
 また、請求人から滞納者に対する何らの反対給付もないことから、原処分庁がこの金員の範囲内である58,000,000円の限度で贈与と認定したことは相当である。
 そうすると、滞納者についての徴収不足は、上記金員の贈与に基因すると認められるから、国税徴収法第39条に基づく第二次納税義務の告知処分は適法である。

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平成15年6月26日裁決

相続税法第34条の連帯納付義務者から金銭の贈与を受けた者に対する国税徴収法第39条の第二次納税義務の告知処分が適法であるとした事例

裁決事例集 第65集 1024頁

要旨

  1.  国税徴収法第39条と詐害行為取消しとの関係
     国税徴収法第39条の第二次納税義務は、滞納者の悪意を要件としていないものと解されていることに加えて、無償譲渡等の処分のみを対象としていること、無償譲渡等の処分が国税の法定納期限の1年前の日以後にされたものであること、特殊関係者を除き、利益が現に存する限度に限られること、訴訟手続は要しないことなどの点において詐害行為取消しとは法律的構成を異にしている。また、国税通則法第42条は民法第424条の準用規定であるにもかかわらず、それとは別に国税徴収法第39条が設けられていることなどを考えれば、この制度の目的は、徴税手続の合理化及び効率化を図ることにあると解すべきである。
     そうすると、国税徴収法第39条の適用においては、無償譲渡等の行為が詐害行為等に該当するか否かの判断まで求められるものではなく、同条が明文で規定するすべての要件を充足すれば当然に適用が可能であると解するのが相当である。
  2.  合理的理由に基づく贈与と国税徴収法第39条との関係
     請求人は、無償譲渡等の処分に関し、東京地裁昭和45年11月30日判決を引用して、贈与が合理的な理由に基づく場合には国税徴収法第39条を適用すべきでない旨主張する。
     しかしながら、請求人が引用する同判決は、金銭の授受に対価性があると認定された事例であって、本件とは前提を異にするし、本件贈与が請求人のいう「子あるいは血縁の者や親交の深い者に対して贈与税を支払った上でなされた一般的な形態」のものであるならば、正に国税徴収法第39条に規定する無償譲渡等の処分に該当することとなるのであるから、この点についての請求人の主張は採用できない。
  3.  「法定納期限の1年前の日」の解釈
     国税徴収法第39条の「法定納期限の1年前の日」については、請求人が主張するように解すべき法令上の規定はなく、本件の場合、A(第二次納税義務の主たる納税義務者、相続税の連帯納付義務者)の法定納期限は、B(相続税の本来の納税義務者)の法定納期限である平成4年1月20日と同一と解されるところ、その1年前の日の平成3年1月20日が「法定納期限の1年前の日」に当たると解するのが相当である。
     なお、請求人のいう不合理は、徴収不足と無償譲渡等との基因関係の問題で処理されるべきものであって、本件の場合とは前提を異にし、また、お知らせ文書や督促状を受けてから8年以上も遡って第二次納税義務を負うという異常な結果を招来するという指摘については、第二次納税義務に除斥期間はなく、無償譲渡等後8年経過していたとしても、それをもって第二次納税義務の対象としないということはできない。
     おって、請求人は、相続税法第34条第1項の連帯納付義務についても告知が必要である旨主張するが、国税通則法第36条第1項が納税の告知を要する場合として列挙する各号は限定的なものと解されており、また、相続税法第34条第1項について告知を要する旨を定めた法令上の規定はないことから、採用できない。
  4.  第二次納税義務の補充性
     国税徴収法第39条に規定する「徴収すべき額に不足すると認められる場合」とは、納付通知書を発する時の現況において、納税者に帰属する財産で滞納処分により徴収できるものの価額が、滞納国税の総額に満たないと認められることをいうと解されるところ、補充性の判断においては、納税者に帰属する財産の減価理由までも要求するものではないことは明らかであるし、また、第二次納税義務者に対し、主たる納税義務者である相続税法第34条第1項に基づく連帯納付義務者のその本来の納税義務者に係る延納の担保の内容等を明らかにすべき旨を定めた法令上の規定はなく、この点についての請求人の主張は採用できない。
     なお、請求人は、Aが「相続により受けた利益の価額」は、取得した財産の価額から相続税法第19条の2規定の適用前の相続税額を控除した額であると主張するが、取得した財産の価額から控除するのは現に納付すべき相続税であると解するのが相当である。
  5.  Aの連帯納付義務
     第二次納税義務の納付告知を受けた者は、主たる納税義務が不存在又は無効でない限り、当該納付告知の取消しを求める訴えにおいて、主たる納税義務の存否又は数額を争うことはできないと解されており、また、相続税法第34条第1項の連帯納付義務は、相続税の徴収を確保するため、相互に各相続人等に課した特別の責任であって、その義務履行の前提条件をなす連帯納付義務の確定は、各相続人等の固有の相続税の納税義務の確定という事実に照応して、法律上当然に生ずるものであると解されている。
     これを本件についてみると、主たる納税義務の不存在又は無効とは、主たる納税義務が相続税法第34条第1項の連帯納付義務の場合、連帯納付義務の不存在又は無効の判断は、本来の納税義務が不存在又は無効であるかにより判断すべきところ、Bの申告手続に無効となるべき重大かつ明白な瑕疵は認められないことから、Aの連帯納付義務の違法等を理由に本件告知処分は違法であるとする請求人の主張は採用できない。
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平成9年6月19日裁決

破産宣告後の更正処分により確定した本件消費税は、破産財団に関して生じたもので財団債権に該当し、したがって、破産管財人に対する本件消費税の滞納を理由とする交付要求処分の取消しを求める審査請求は、不適法なものであるとした事例

裁決事例集 第53集 522頁

要旨

  1.  消費税は、破産宣告後の原因に基づくものであっても「破産財団に関して生じたもの」として財団債権に当たるところ、本件消費税は破産宣告前の原因に基づくものであるから、いずれにしても、財団債権に該当する。
  2.  破産管財人に対する滞納国税の交付要求は、破産管財人に対し既に発生している納税義務について、その弁済を催告するものにすぎないというべきであり、交付要求によって新たに権利義務は発生せず、何ら国民の地位、権利義務に変動を生じさせるものではないことは明らかであるから、本件交付要求は、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為に該当せず、したがって、その取消しを求める審査請求は不適法なものである。
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平成25年12月2日裁決

第二次納税義務に係る租税債務が成立した時点において無限責任社員であった者は第二次納税義務を負うと解するのが相当であるとした事例(不動産の差押処分・棄却)

裁決事例集 第93集

要旨

 請求人は、原処分庁が、主たる納税者(本件滞納法人)の滞納国税(本件滞納国税)を徴収するために、請求人の所有する不動産の差押処分(本件差押処分)を行ったことに対し、本件差押処分の前提となる国税徴収法(徴収法)第33条《無限責任社員の第二次納税義務》に基づきなされた第二次納税義務の納付告知処分(本件納付告知処分)は、請求人が本件納付告知処分時には既に本件滞納法人の無限責任社員ではないことから無効であり、これを前提として行われた本件差押処分も無効又は違法なものとして取り消されるべきである旨主張する。
 しかしながら、徴収法第33条の趣旨からすると、会社法が規定する無限責任社員の責任は私法上の債務だけでなく公法上の債務にも適用されると解され、無限責任社員の弁済責任が会社債務の発生と同時に生じることからすると、会社債務の発生時、すなわち第二次納税義務に係る租税債務が成立した時点において無限責任社員であった者は、第二次納税義務を負うと解するのが相当である。これを本件についてみると、本件滞納国税が成立した時点において、請求人は、滞納法人の無限責任社員であったと認められることから、本件滞納国税について第二次納税義務を負うこととなり、本件納付告知処分は無効ではない。したがって、本件納付告知処分の無効を前提とする請求人の主張には理由がない。

参照条文等

会社法第580条 国税徴収法第33条

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平成13年7月6日裁決

請求人の被相続人が提出した確定申告書は、被相続人が現処分庁所属の担当職員の言われるままに署名押印し、その内容について納得せずに提出したものであり無効であるから、無効な確定申告により確定した滞納国税を徴収するため行われた差押処分も違法であるとの主張を排斥した事例

裁決事例集 第62集 505頁

要旨

 請求人は、請求人の被相続人が原処分庁へ提出した確定申告書は、請求人の被相続人が原処分庁所属の担当職員に言われるままに署名押印し、その内容について納得せずに提出したものであり、無効であるから、無効な確定申告書に係る滞納国税を徴収するため行われた差押処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、担当職員が、被相続人の申立てに基づき確定申告書の金額欄に記載し、被相続人本人が確定申告書に署名押印した事実は認められるものの、担当職員が請求人の被相続人の意思に反して確定申告書の提出を強要したとする事実は認められない。
 また、請求人の被相続人は当時年齢82歳と高齢ではあるものの、原処分庁所属の徴収担当職員と再三にわたり滞納国税の納付について相談を行い、納付の意思を示していたことなどから、確定申告書の内容について納得していたと認めるのが相当である。
 なお、確定申告書の記載内容の過誤の是正については、錯誤が客観的に明白かつ重大であって、法が定めた方法以外に是正を許さないならば納税義務者の利益を著しく害すると認められる特段の事情がある場合でなければ錯誤の主張が許されないと解されているところ、本件についてはこれに該当する事実は無いと認められるから、その是正は更正の請求により行うべきである。
 以上のとおり、請求人の主張には理由がなく、差押処分は適法に行われていると認められるから、原処分は適法である。

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昭和60年4月17日裁決

離婚9か月前にした妻に対する土地建物の贈与が国税徴収法第39条に規定する無償譲渡に該当しないとした事例

裁決事例集 第29集 177頁

要旨

 原処分庁は、離婚9か月前にした請求人(滞納者の妻)に対する本件土地建物の贈与は国税徴収法第39条に規定する無償譲渡に該当するとして同人に第二次納税義務を課したが、[1]贈与当時、既に請求人は滞納者に対し離婚を申し出ており、その後も離婚の協議が継続していたこと、[2]離婚の協議が成立した際、滞納者と請求人との間で本件土地建物の贈与は離婚に伴う財産分与又は慰謝料の支払としての意味をもつものであることの了解があったこと、[3]離婚の原因が滞納者の家庭生活の放棄にも等しい行為に起因していることなどから、本件土地建物の贈与は、離婚に伴う財産分与又は慰謝料の支払の趣旨でなされたものであり、必要かつ合理的な理由があったものと認められるから、国税徴収法第39条に規定する無償譲渡には該当しない。

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平成7年6月19日裁決

「一括支払システムに関する契約書(代金債権担保契約書)」第3条の2(国税徴収法第24条の規定に基づく譲渡担保権者に対する告知が発せられたときは、当座貸越債権は何らの手続を要せず弁済期が到来するものとし、同時に担保のため譲渡した代金債権は当座貸越債権の代物弁済に充当されるとするもの)の効力について、かかる変動を認めることは国税徴収法第24条による物的納税義務の規定が機能しなくなることを意味するのであるから、国税徴収法第24条の規定が、このような擬制による権利変動を保護しているとは解されないとした事例

裁決事例集 第49集 585頁

要旨

 本件条項の下においては、告知が発せられた時に担保権が実行されたことになるが、告知が発せられたかどうか、いつ発せられたかは、告知書を受領して初めて知ることができるのである。そうすると、譲渡担保財産は、譲渡担保権者と同設定者が認識しない間に、正確にはいつの時点か不明であるが、ともかく告知書が到達する前に、担保権の実行により代物弁済に充てられて、その確定的権利が変動したことになる。
 このような変動は、もっぱら国税債権者に対し譲渡担保権の消滅を主張するために当事者間で存在したこととされたものであり、かかる変動を認めることは国税徴収法第24条による物的納税義務の規定が機能しなくなることを意味するのであるから、国税徴収法第24条の規定が、このような擬制による権利変動を保護しているとは解されず、同条の規定の適用上、担保権の実行は同条第2項による告知の告知書が到達した後に行われたものとして取り扱われるべきである。

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平成26年2月19日裁決

価額弁済者も特段の事情のない限り、差押処分をした国に対し登記なくして対抗することができないことを明らかにした事例(不動産の各差押処分・棄却)

裁決事例集 第94集

要旨

 請求人らは、原処分庁が、被相続人から請求人らが承継した滞納国税を徴収するため、請求人らが相続によって取得した各不動産の各共有持分を差し押さえた(本件各差押処分)のに対し、当該各不動産の各共有持分は、民法第932条《弁済のための相続財産の換価》ただし書に基づく価額弁済(本件価額弁済)により請求人らのうちの1人が固有財産として取得していることから、本件各差押処分は財産の帰属を誤ってなされた違法又は不当な処分である旨主張する。
 しかしながら、民法第177条《不動産に関する物権の変動の対抗要件》は、不動産に関する物権の得喪及び変更について、登記をしなければ、第三者に対抗することができない旨規定しており、滞納処分による差押えの関係においても同条の適用があり、価額弁済者も特段の事情がない限り、差押処分をした国に対し、登記なくして不動産を取得したことを対抗することができないものと解するのが相当である。もっとも、本件価額弁済の公示に当たっての登記手続において、価額弁済者以外の共同相続人の持分については、価額弁済者へ持分移転登記手続が可能であるが、価額弁済者の持分については、相続人本人が価額弁済をしたことになり、価額弁済者の固有財産に切り替わったことを公示する手段がないが、価額弁済者以外の共同相続人の持分の移転登記を経由することで、価額弁済者の固有財産へと切り替わったことを第三者からみて推測可能なように公示できる以上、移転登記がされていない本件価額弁済に関し、固有財産として取得したことを対抗できないとしても民法第177条の趣旨に反するとまではいうことはできない。以上のとおりであるから、本件各差押処分が財産の帰属を誤った違法又は不当な処分であるということにはならない。

参照条文等

民法第177条、第932条

参考判決・裁決

最高裁昭和31年4月24日第三小法廷判決(民集10巻4号417頁)

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平成11年6月2日裁決

国が担保として徴していた不動産抵当権の一部解除をした場合において、当該物件に抵当権を設定した請求人の強制換価手続に対しては、信義則上、国が交付要求することは許されないとの請求人の主張が排斥された事例

裁決事例集 第57集 568頁

要旨

 請求人は、[1]国税徴収法第85条第1項第2号に該当する事由の有無の判断は、信義則の法理に従い、抵当権設定時を基準とすべきである、[2]請求人の抵当権設定に何ら落ち度はないから、同条の立法趣旨に照らして当然保護されるべきである、[3]滞納国税は法定納期限から16年も経過しているから、その間徴税を放置したことは職務怠慢であり、また、本件交付要求は権利の濫用であると主張する。
 しかしながら、[1]国税徴収法第85条第1項第2号の交付要求解除請求の要件の判断時点は、当該交付要求解除請求のときと解するのが相当であり、また、原処分庁が抵当権の一部を抹消したことをもって、請求人に対し、以後交付要求を行わない旨の公的な見解を表示したものとはいえず、信義則の法理を適用する特別の事情が存在したとは認められないこと、[2]同条は、一定の要件を充足した場合に債権者を保護する規定であり、請求人に落ち度がないことをもって本件交付要求解除請求を認めることはできないこと、[3]原処分庁は、納税猶予を認め、猶予期限の確定後は原処分庁において担保物処分の手続を経た上で本件交付要求に至ったことが認められ、交付要求に至る徴収手続に職務怠慢があったとは認められないことから、請求人の主張に理由がない。

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平成13年8月8日裁決

土地と建物の差押えが超過差押えに該当しないとした事例

裁決事例集 第62集 521頁

要旨

 請求人は、原処分庁は滞納国税を相当額上回る価額の土地3筆と建物を差し押さえたのであるから、国税徴収法第48条《超過差押及び無益な差押の禁止》第1項に規定する超過差押えに該当する旨主張する。
 しかしながら、当審判所の調査によれば、請求人は本件差押財産のほかに換価できる財産を有しておらず、差押財産である土地と建物は一体として請求人の居住の用に供されており、また、これらの全部に差押国税に優先する根抵当権が設定されていると認められるところ、仮に、原処分庁が差押財産のうちの一部の財産を差し押さえるとすると、分割することによって差押財産の経済的価値が害されることになり相当ではない。
 以上のことからすれば、原処分庁のした差押処分は、差押財産の担保価値の維持、有効利用の見地、優先債権者への配当等を考慮した妥当なものといえるから、国税徴収法第48条第1項に規定する超過差押えには該当しない。

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平成4年5月29日裁決

妻名義で購入した不動産は、自己資金により購入した固有財産であると認定することにより無償譲渡に該当しないとした事例

裁決事例集 第43集 399頁

要旨

 原処分庁は、本件不動産を滞納者が前所有者から購入し請求人に無償譲渡したとして、請求人に対し国税徴収法第39条の規定に基づいて第二次納税義務の告知をしたが、①滞納者は、本件不動産を購入する資金を有していたとは認められないこと及び②本件不動産は、請求人が自己資金により購入したものと認められることから、本件不動産の取得者は請求人とみるのが相当であり、原処分は取り消すべきである。

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平成25年12月9日裁決

新株発行による増資は差押処分の処分禁止効には抵触しないとして、増資後の株式総数を基に第二次納税義務の限度額を算定するとした事例(第二次納税義務の納付告知処分・一部取消し)

裁決事例集 第93集

ポイント

 本事例は、増資によって株式の価額が減少したことは、発行済株式の総数と資産の額に変動が生じた結果にすぎず、そのことを捉えて増資が被差押財産である株式そのものに対する処分であるということはできないとしたものである。

要旨

 原処分庁は、主たる納税者(本件滞納会社)の滞納国税を徴収するために、請求人に対して国税徴収法第35条《同族会社の第二次納税義務》に基づきなされた第二次納税義務の限度額について、当該限度額は滞納者が所有する株式の価額であり、その株式の価額は納付通知書を発する時における同族会社の資産から負債の総額を控除した額をその株式の数で除した額を基礎として計算した額によると規定されているところ、請求人が発行した株式(本件株式)は原処分庁が差し押さえていることから、本件滞納会社が請求人に新株を発行させたこと(本件増資)は、本件株式の価値を減少させる行為であり、請求人は原処分庁に対し新株発行の効力を主張できず、本件株式の価額は本件増資前の株式の総数を前提に計算するべきである旨主張する。
 しかしながら、そもそも差押処分による処分禁止効とは、被差押財産そのものに対する処分を禁止する効力をいい、本件増資は、被差押財産である本件株式そのものに対しての処分ではないことから、本件株式の価額は、本件増資後の発行済株式の総数をもって評価すべきである。したがって、請求人は当該評価額を限度として第二次納税義務を負うべきであり、この額を超えて請求人に負わせた原処分庁の第二次納税義務は違法であるから、その一部を取り消すべきである。

参照条文等

国税徴収法第35条

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平成25年9月25日裁決

残余財産の分配後に成立した国税が国税徴収法第34条第1項に規定する「法人に課されるべき、又はその法人が納付すべき国税」に該当するとした事例

裁決事例集 第92集

要旨

 請求人は、請求人が株主である解散した法人(本件滞納法人)から残余財産の分配を受けたときには、本件滞納法人は国税を滞納しておらず正当かつ適法に残余財産の分配をしたものであるから、国税徴収法第34条《清算人等の第二納税義務》第1項の要件に該当しない旨主張する。
 しかしながら、国税徴収法第34条第1項に規定する「法人に課されるべき、又はその法人が納付すべき国税」とは、法人が結果的に納付しなければならないこととなる全ての国税をいい、解散の時又は残余財産の分配若しくは引渡しの時に成立していた国税に限られないところ、本件滞納法人は、請求人に対し残余財産の分配をしたものと認められ、第二次納税義務の納付告知処分時に国税を滞納していたのであるから、国税徴収法第34条第1項の要件に該当し、請求人は第二次納税義務を負う。

参照条文等

国税徴収法第34条第1項

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平成2年7月31日裁決

滞納会社の所有する土地持分の上に請求人が建物を新築するに当たり、借地権の無償設定によって国税徴収法第39条にいう利益を受けたものと認定した事例

裁決事例集 第40集 247頁

要旨

 滞納会社の所有する本件土地持分を請求人が利用する場合の法律関係について、請求人は、使用貸借であって借地権の無償設定ではない旨主張するが、滞納会社の所有する本件土地持分の利用関係が無償のものであるからといって、直ちにこれを単なる使用貸借と即断することは相当ではなく、右土地持分の利用関係は、請求人らによる本件建物の新築によって開始されたもので少なくとも本件建物を長期間にわたって使用することが予定されたものであり、また、本件土地の共有者である滞納会社の代表取締役は、請求人の夫の父であり、同社の発行済株式の80パーセントに相当する株式は当該代表取締役の親族によって所有されていることからみて、滞納会社が請求人らに対して滞納会社の所有する本件土地持分の返還を求めるようなことは実際上ほとんど考えられないから、請求人らの、滞納会社の所有する本件土地持分の利用関係は、事実上、権利性のかなり強いものであって、税法上はこれを借地権と評価するのが相当である。
 したがって、請求人らの本件建物の新築に際し、滞納会社の所有する本件土地持分につき無償で借地権が設定された事実が認められるので、請求人は、借地権の無償設定により、国税徴収法第39条にいう利益を受けたものというべきである。

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平成6年11月18日裁決

滞納処分により差し押さえられた滞納会社の代表者名義の預託金制ゴルフ会員権につき、取得資金の全額が滞納会社の資金により支払われていること、滞納会社の決算報告書に本件会員権が資産として計上されていること等から、滞納会社に帰属すると認めるのが相当である等とした事例

裁決事例集 第48集 489頁

要旨

 原処分庁は、滞納会社の滞納国税を徴収するため、同社の代表者名義のゴルフ会員権(「本件会員権」)を差し押さえるとともに、本件会員権の会員証書(「本件会員証書」)を占有している貸金業者である請求人に対し、本件会員証書の引渡命令をした。
 請求人は、差し押さえられた本件会員権は、仮にその購入資金が滞納会社から出捐されていたとしても、それは代表者と滞納会社の内部関係にとどまり、本件会員権は代表者とゴルフ場の契約によって代表者個人の権利として生じたものであり、請求人は、差押え前に代表者から譲渡担保設定契約により適法に本件会員権の譲渡を受けていると主張し、本件会員権の法律上の権利者でない滞納会社の滞納による差押えは違法であって、違法な差押えには民法第467条の指名債権譲渡の対抗要件は不要である等と主張する。
 しかし、預託金制ゴルフ会員権は、債権的法律関係を包含しているところ、名義人以外に実質的権利者がいる場合には、当該権利者に帰属する財産として滞納処分を行い得ることは当然である。
 本件会員権については、[1]その取得資金の全額が滞納会社の資金により支払われていること、[2]取締役会の承認を経た滞納会社の決算報告書に本件会員権が資産として計上されていること及び[3]本件会員権の名義人である個人が滞納会社の代表取締役の地位にあり、取締役会で異議なく滞納会社の当該決算報告書を承認していたこと等からすると、滞納会社に帰属すると認めるのが相当であるから、差押えに違法な点はない。
 なお、(仮に滞納会社が代表者に本件会員権の処分権を与えていたとしても)預託金制ゴルフ会員権の譲渡をもって第三者に対抗するためには、指名債権譲渡の対抗要件である確定日付のある証書による譲渡通知又は承認が必要であるところ、請求人が第三者対抗要件を備えたのは、差押え後であることが明らかであるから、請求人は、本件会員権の譲渡を受けたことをもって差押債権者たる原処分庁に対抗できない。
 また、本件会員証書は、有価証券ではなく単なる証拠証券であるから、本件会員権の権利者と認められない以上、本件会員証書自体の占有をもって何ら権利を取得したことにはならず、さらに、本件会員証書自体につき、独立して民法第192条の規定による即時取得をすることもない。

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平成12年10月20日裁決

相続税の納税義務が不存在であることを理由として差押えの取消しを求めることはできないとした事例

裁決事例集 第60集 605頁

要旨

 請求人らは、相続財産が存在しないのにもかかわらず行われた相続税の決定処分等は無効であり、相続税の納税義務はないから、これに基づいてされた不動産の差押処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、被相続人に相続財産があることが登記簿上推認され、かつ、相続税の決定処分等について異議申立てもされていないのであるから、同処分等は適法に確定しており、さらに、仮にこれに瑕疵があったとしても、当該課税処分の瑕疵が重大かつ明白で当然無効であるか、権限のある者によって取り消されない限り、滞納処分に影響を及ぼすものではないと解されるところ、本件においては、このような特段の事情は認められないから、請求人の主張には理由がない。

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平成25年5月21日裁決

破産手続が異時廃止により終了したとしても、それによって破産法人の法人格は消滅せず、清算の目的の範囲内で、その法人格は存続しているとした事例

裁決事例集 第91集

ポイント

 本事例は、破産手続が異時廃止により終了したとしても、清算の目的の範囲内でその法人格は存続するから、破産手続廃止決定を受けた滞納法人を主たる納税義務者とする滞納国税の納税義務は存続しているとしたものである。

要旨

 請求人は、滞納法人は費用不足で破産手続廃止となったことにより、その法人格が消滅し、その納税義務も消滅したから、請求人に対する第二次納税義務の納付告知処分、不動産の差押処分及び債権の差押処分は取り消されるべきである旨主張する。
 しかしながら、滞納法人の破産手続は、破産法第220条《破産手続終結の決定》第1項が規定する配当等による終結ではなく、同法第217条《破産手続開始の決定後の破産手続廃止の決定》第1項が規定する異時廃止によって終了していることから、会社法第475条《清算の開始原因》に規定する清算が行われた場合と同じであるということはできず、そうすると、破産手続開始の決定による解散の効果として、同条第1号の規定により清算しなければならず、同法第476条《清算株式会社の能力》の規定により、清算の目的の範囲内で滞納法人の法人格は存続していることから、請求人の主張はその前提を欠くものであって採用できない。

参照条文等

会社法第471条、第475条、第476条 破産法第35条、第217条、第220条

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平成26年9月9日裁決

第二次納税義務の納付告知処分の「受けた利益の限度」の額は、譲り受けた財産等の価額から無償譲渡等の処分と直接対価性のある支出又は負担を控除した残額であることを明らかにした事例

裁決事例集 第96集

要旨

 請求人は、原処分庁が納税者(本件滞納者)の滞納国税を徴収するために、請求人に対して行った第二次納税義務の納付告知処分の「受けた利益の限度」の額について、請求人は本件滞納者から売掛金債権(本件売掛金債権)を譲り受けたが、請求人が本件滞納者に支出した香典代等(本件香典代等)は、請求人が本件滞納者に利益を与える行為であるから、「受けた利益の限度」の額の算定上、本件香典代等を控除すべきである旨主張する。
 しかしながら、第二次納税義務の制度の趣旨に鑑みれば、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に規定する「受けた利益の限度」の額については、譲り受けた財産の額、免れた債務の額、又は享受した利益の額から、これらと直接の対価関係にあると認められる支出又は負担を控除した残額をいうところ、本件香典代等の支出は、本件売掛金債権の譲渡と直接の対価関係にあるとは認められないことから、請求人の主張には理由がない。

参照条文等

国税徴収法第39条

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平成26年8月21日裁決

見積価額が低廉であることを理由として公売公告処分の取消しを求めることはできないとした事例( 公売公告処分、 見積価額公告・ 棄却、 却下)

裁決事例集 第96集

要旨

 請求人は、原処分庁が行った公売公告処分(本件公売公告処分)について、当該公売に係る公売財産(本件公売財産)の見積価額が低廉であるから、本件公売公告処分は比例原則に違反し違法である旨主張する。
 しかしながら、見積価額公告は、法令上、公売公告処分の後にされることが予定されているところ、かかる見積価額公告の内容いかんによって公売公告処分の適否が左右されることはないと解され、見積価額の適否は、公売公告処分の取消しを求める審査請求において取消理由となり得ない。したがって、請求人は、本件公売財産の見積価額が低廉であることを理由として本件公売公告処分の取消しを求めることはできない。

参照条文等

国税徴収法第95条第1項第99条第1項

参考判決・裁決

最高裁昭和39年10月29日第一小法廷判決(民集18巻8号1809頁)

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平成16年11月24日裁決

見積価額は適正に算定されており、また、公売の通知は不服申立ての対象となる処分には当たらないとした事例

裁決事例集 第68集 285頁

要旨

 請求人は、[1]本件公売財産の見積価額は低廉であり、本件見積価額の決定(公告)処分は違法、不当であること、[2]本件公売通知は、滞納国税の一部納付後の残額を免除するという徴収担当職員の約束があったにもかかわらず、何ら免除されないままなされたこと、及び請求人の意思を確認することなく一方的になされたことから、違法、不当であること、を主張する。
 しかしながら、原処分庁が本件公売財産の見積価額の算定の基礎とした本件鑑定評価額は、取引事例比較法により査定した本件土地の更地価格から本件建物の取壊し等費用相当額を控除して算定しており、この評価方法を不相当とする理由があるとは認められない。また、原処分庁が本件鑑定評価額から10%の減額をしたのは、本件鑑定評価額の鑑定時と公売予定月とに隔たりがあり、その間に価格変動があったため、本件鑑定評価額を公売予定月の価格に時点修正したものであると認められるから時点修正による減額は相当である。さらに、本件鑑定評価額から上記時点修正による減額をした後の金額から、更にその20%を減額しているが、これは公売の特殊性に伴う調整として行われたものと認められ、この調整を不相当とする理由があるとは認められない。したがって、本件公売財産の見積価額は適正に算定されたものと認めるのが相当である。
 そして、請求人はその主張する売却価額について具体的な説明及びこれを証する証拠を提出していないことから、その売却価額は請求人の希望する価額に過ぎないと認めるのが相当であり、また、公売財産の見積価額は客観的な時価を下回るのが通例であることからすれば、低廉であることをもって本件公売財産の見積価額を直ちに違法であるとすることはできないところ、上記のとおり本件公売財産の見積価額は適正なものと認めるのが相当である。
 また、公売の通知は、国税局長が公売した場合において、滞納者に対して最後の納付の機会を与えるため、公売の日時、場所、公売保証金の金額、買受代金の納付の期限等、公告すべき事項等を通知するものにすぎず、それ自体として納税者の権利義務その他法律上の地位に影響を及ぼすものではなく、行政処分には当たらないと解されており、本件公売通知は国税通則法第75条第1項に規定する国税に関する法律に基づく処分に該当しない。

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平成10年2月27日裁決

一括支払システム契約における代物弁済条項の国税債権者に対する効力が否定され、譲渡担保権者である銀行が国税徴収法第24条の物的納税責任を負うとされた事例

裁決事例集 第55集 719頁

要旨

 請求人は、本件代金債権が一括支払システムに基づく譲渡担保財産であることを知りながら滞納者の財産として差し押さえた本件差押えは違法・無効であり、したがって本件告知処分も無効である旨主張するが、本件代金債権は請求人等から提示を受けた書類等から滞納者の財産と認定して差し押さえたものであり、譲渡担保財産と知りながら差し押さえたものとは認められないことから、本件差押処分は適法である。
 また、請求人は、[1]原処分庁が国税徴収法第55条に基づく通知をした日現在、滞納会社に本件代金債権を担保として同額の貸付金を有していたところ、本件通知が発せられた時に請求人の滞納会社に対する貸金債権は何らの手続を要せずに弁済期が到来し、同時に担保のため譲渡した代金債権は貸金債権に充当される旨の一括支払システム契約の特約の効力により、本件代金債権は貸金債権の弁済に充当されたこと及び[2]仮にそうでないとしても、本件告知がされた時に本件特約の効力により本件代金債権は消滅している旨主張する。
 しかしながら、本件特約によると、請求人に告知等が到達した時には常にその譲渡担保権の実行が完了していることになり、常に告知等の要件である譲渡担保財産の存在が欠けることになるから、譲渡担保が国税の法定納期限等の後に設定され、国税に劣後している場合であっても、徴収職員が国税徴収法第24条に基づき、当該譲渡担保財産から国税を徴収する機会を事実上全く奪ってしまうことになる。このことは、法の規定にかかわらず、私人間の合意により、滞納処分の対象とならない譲渡担保財産を作り出すことにほかならず、国税徴収法第24条第5項及び第6項の規定の趣旨を完全に没却するものであるから、本件特約について、当事者間においてその効力を認めることはともかくとして、原処分庁に対しては、請求人は本件代金債権が譲渡担保財産でなくなったことを理由に、同条に基づく物的納税責任の追及を免れることはできないと解するのが相当である。

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平成14年12月17日裁決

交付要求が失効しているとして審査請求を却下した事例

裁決事例集 第64集 607頁

要旨

 請求人は、原処分庁が行った交付要求及び交付要求の解除請求に対する解除拒否通知は、違法・不当な処分であり、その全部の取消しを求める旨主張する。
 しかしながら、交付要求に係る執行機関である裁判所が競売手続の取消しを決定し、それに対する請求人の執行抗告も棄却されたことにより、取消決定が確定し、裁判所の差押えも抹消登記され、事件の終了も裁判所から請求人に通知されていることから、本件交付要求及び交付要求解除拒否通知は、その効力を失っており、本件審査請求は、その対象となる処分を欠く不適法なものである。

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平成15年3月24日裁決

共同相続人の相続税の申告は錯誤に基づく無効な申告であるとは認められないから、相続税法第34条に基づく差押処分は適法であるとした事例

裁決事例集 第65集 993頁

要旨

 相続税について、その申告書の記載内容について錯誤があるときには、錯誤による無効を主張できる場合があり得るが、それは、相続税法の定める申告及び修正申告、更正の請求等の制限の趣旨を考慮すると、当該錯誤が客観的に明白かつ重大であって、国税通則法等に定める是正方法以外にその是正を許さないとすると、納税義務者の利益を著しく害すると認められる特段の事情がある場合に限り許されるものと解すべきである。
 請求人は、Bが提出した本件申告書は、Bの錯誤に基づく無効なものであるから、本件申告に基づき確定した本件相続税額は不存在というべきであり、本件差押処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、[1]Bは法定相続分である7分の1の割合で遺産を取得した旨を本件申告書に記載していること、[2]被相続人の遺産のほとんどをKに取得させる旨記載された遺言書と題する書面があること、[3]Bは本件申告書に係る相続税の納付をしていないことが認められるものの、他方で、Bは当該書面の内容を争い、遺産の一部の帰属についての訴訟が係属中であることに照らすと、これら[1]ないし[3]の事情が認められるからといって、直ちにBの申告について客観的に明白かつ重大な錯誤がある場合に該当するとはいえず、また、他に納税義務者の利益を著しく害すると認められる特段の事情があるとは認められないから、請求人の主張には理由がない。

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平成29年12月13日裁決

国税徴収法第35条の第二次納税義務の告知処分に係る限度額は、同族会社である請求人の発行する株式の適正な時価を反映して算出されたものではないとして、当該告知処分の全部を取り消した事例(第二次納税義務の納付告知処分・全部取消し)

裁決事例集 第109集

ポイント

 本事例は、国税徴収法第35条の第二次納税義務の限度額の算定に当たっては、同族会社の直前の決算期の貸借対照表等の各勘定科目の中に、その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれる債権などのように、額面どおりの経済的価値があるとはいい難い資産や、その債務の発生が確実といえないような負債が含まれている場合には、貸借対照表等の金額に一定の修正を加えて客観的な時価を算出するのが相当であるとしたものである。

要旨

 原処分庁は、国税徴収法第35条《同族会社の第二次納税義務》の規定に基づき、請求人の負うべき第二次納税義務の各限度額(本件各限度額)を、請求人の直前の決算期末の貸借対照表に記載されている簿価により算出したことは、国税徴収法基本通達第35条関係の13《資産及び負債の額の計算》に定める「特に徴収上支障がない」場合に該当することから、株式の適正な時価を反映させた適法なものである旨主張する。
 しかしながら、当該通達が、特に徴収上支障がない場合には、直前の決算期の貸借対照表等を参考とすることを認めているのは、納付通知書を発した日の時価評価を簡便に行えるようにすることを企図するものである一方、国税徴収法第35条第2項の「当該会社の資産の総額から負債の総額を控除した額」は、同族会社に対し納付通知書を発する時の客観的な時価を標準として計算されるべきものであることを踏まえ、飽くまで「参考」とすることができるにとどめているものと解される。そうであるとすると、直前の決算期の貸借対照表等の各勘定科目の中に、その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれる債権などのように、額面どおりの経済的価値があるとはいい難い資産や、その債務の発生が確実といえないような負債が含まれている場合には、貸借対照表等の金額に一定の修正を加えて客観的な時価を算出するのが相当であり、本件各限度額は、請求人の発行する株式の適正な時価を反映して算出された適法なものとはいえない 。

参照条文等

国税徴収法第35条 国税徴収法基本通達第35条関係13

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平成27年10月28日裁決

国税徴収法第39条が規定する「受けた利益」が取引相場のない株式である場合において、同条の第二次納税義務の限度額の算定に当たり、原処分庁がディスカウント・キャッシュ・フロー法と時価純資産法を併用して当該株式を評価したことに不合理な点は認められないとした事例

裁決事例集 第101集

要旨

 原処分庁は、滞納法人が同社の100%子会社の株主総会において第三者割当増資による新株の発行に係る議案について議決権を行使したことにより、滞納法人の代表者である請求人が著しく低い価額で当該子会社の新株(本件新株式)を取得したことは、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に規定する「その他第三者に利益を与える処分」に該当するとして、請求人に第二次納税義務の納付告知処分をした。
 これに対して、請求人は、原処分庁が本件株式の評価に当たって、一般に用いられる相続税の評価方法を準用せず、ディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)を加味して評価したことには合理性がなく、そもそも、本件株式の取得価額は時価相当額であるから、本件株式を取得したことによって「受けた利益」(時価相当額と取得価額との差額)は生じていない旨主張する。
 しかしながら、国税徴収法第39条の第二次納税義務の限度額について、「受けた利益」が金銭以外のものであるときの財産の評価方法として、同法上、相続税の評価方法を適用又は準用する旨の規定はなく、取引相場のない株式の評価に当たり、DCF法と時価純資産法の併用を採用した原処分庁の評価方法に不合理な点は認められず、請求人には本件株式を取得したことによって「受けた利益」が生じている。

参考判決・裁決

最高裁平成18年1月24日第三小法廷判決(集民219号285頁)

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平成15年4月7日裁決

差押不動産は一筆の土地で分割できないものであり、滞納国税の額に比較して差押不動産の処分予定価額が合理的な裁量の範囲を超え著しく高額であるとは認められないから、超過差押えに当たらないとした事例

裁決事例集 第65集 1095頁

要旨

 請求人は、差押処分の対象となった自宅底地以外に不動産を所有していたので当該不動産を差し押さえるべきであったと主張する。しかしながら、差押財産の選択については、徴収職員の合理的判断にゆだねられているところ、請求人が差し押さえるべきであったと主張する不動産は換価に不適又は不便な財産であるから、本件自宅底地の差押えには合理性を欠いた点はなく、違法ではない。
 国税徴収法第48条第1項が規定する超過差押えとなるか否かを判断する場合、一般的には、差押財産の処分予定価額と徴収すべき滞納国税(延滞税等の附帯税も含む。)の額とを比較して判定すべきものであるとしても、差押財産の処分予定価額が滞納国税の額を超過した場合に、直ちに当該差押えが超過差押えとして違法となるものではなく、他に滞納国税を満足できる換価に見合う財産があるにもかかわらず、滞納国税の額に比較して差押財産の処分予定価額が合理的な裁量の範囲を超え著しく高額であると認められるような財産を差し押さえたというような特段の事情がある場合に、初めて当該差押えが違法となるものと解される。
 また、複数の財産を差し押さえた場合において、そのうちの一部の差押えによって国税徴収の目的が十分達成できるにもかかわらず、あえて他の財産も差し押さえたときは、超過差押えとなる余地もあり得るが、差押えに係る財産が法律上分割できない場合、あるいは分割することはできるが、分割することにより物の経済的価値を著しく害する場合には、たとえその財産の価額の合計額が滞納国税の額を超過したとしても違法とはならないと解される。
 原処分時の本件差押自宅敷地の処分予定価額は、処分予定価額が上回っているが、本件差押自宅敷地は一筆の土地で分割できないものであり、本件滞納国税の額に比較して本件差押自宅敷地の処分予定価額が合理的な裁量の範囲を超え著しく高額であるとは認められない。

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平成7年3月30日裁決

滞納者が請求人に対してした離婚に伴う財産分与及び子の監護費用分担額の一時の支払につき、不動産を給付した上で保有し得た財産の2分の1に相当するまでの金額については、不相当に過大と認めることはできないが、これを超える部分については、不相当に過大なものとして国税徴収法第39条に規定する無償譲渡等処分に該当するとした事例

裁決事例集 第49集 606頁

要旨

 請求人は、本件不動産等の譲受け及び本件金員(60,000,000円)の受領は、離婚に伴う財産分与及び慰謝料として相当であり、国税徴収法第39条に規定する無償の譲受けには当たらないので、第二次納税義務を負うべき理由はない旨主張するが、請求人には本件調停当時の滞納者の総財産の価額(一応の算出価額201,458,153円)の過半に達する本件不動産等(同134,344,915円)の給付がされていること並びに請求人の離婚後扶養料及び子の監護費用分担額等の金額を踏まえて判断すると、本件金員に関しては、滞納者が本件不動産等を請求人に給付した上で保有し得た財産の2分の1に相当するまでの金額については、不相当に過大とまで認めることはできず、他方、これを超える部分については、不相当に過大なものと認めることができるから、請求人はこの金額の限度において、本件滞納国税の第二次納税義務を負うことになる。

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平成23年12月14日裁決

見積価額の低廉性は公売公告処分の違法事由には当たらないとした事例

裁決事例集 第85集

ポイント

 この事例は、見積価額の低廉性は公売公告処分の取消原因にはならないと解するのが相当であり、また、公売財産の所有者等は、見積価額が低廉であることを理由に、その後の売却決定の取消しを求める不服申立てをすることを妨げられないので、公売財産の所有者等の権利が害されるともいえないと判断したものである。

要旨

 請求人は、国税徴収法第95条《公売公告》第1項に規定されている公売公告すべき事項に見積価額の決定が含まれていないとしても、原処分庁は、公売公告と見積価額の公告を同日、一体のものとして実施しており、実務上も両者は一体のものとして扱われているから、見積価額が著しく低廉である場合には、公売公告処分の違法事由となる旨主張する。
 しかしながら、税務署長は、差押財産を公売に付するときは、公売の日の少なくとも10日前までに公売公告しなければならないとされ、公売財産が不動産であるときは、税務署長は、公売の日から3日前までに見積価額を公告しなければならないとされているが、公売財産の見積価額は、公売公告事項とされていない。このことからすれば、見積価額公告は、公売公告の後にされることが予定されているということができ、見積価額の決定も公売公告の前に予定されていると解することはできない。そして、後にされた行政行為に何らかの瑕疵があったとしても、そのことゆえに先行の行政行為が違法となることはないと解されるから、見積価額が仮に低廉であったとしても、そのことが公売公告処分の取消原因にはならないと解するのが相当であり、また、そのように解したとしても、公売財産の所有者等は、見積価額が低廉であることを理由に、その後の売却決定の取消しを求める不服申立てをすることを妨げられないので、公売財産の所有者等の権利が害されるともいえない。

参照条文等

国税徴収法第95条第1項第98条第99条第1項

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平成30年10月22日裁決

見積価額の適否は、公売公告処分の適法性には影響しないとした事例(公売公告処分・棄却)

裁決事例集 第113集

ポイント

 本事例は、見積価額は、公売公告事項ではなく、公売公告とは別個独立に公告されることが予定されている上、見積価額の公告は、公売公告がされた後においてもすることができることとされていることから、見積価額の適否は、公売公告処分の適法性には影響しないと判断したものである。

要旨

 請求人は、公売財産に係る見積価額が低廉であるから、公売公告処分(本件公売公告処分)は違法であり取り消されるべきである旨主張する。
 しかしながら、見積価額は、徴収法第95条《公売公告》第1項に規定する公売公告事項ではなく、公売公告とは別個独立に公告されることが予定されている上、見積価額の公告は、公売公告がされた後においてもすることができることとされている。この点、本件公売公告処分と見積価額公告は同時にされたことが認められるものの、徴収法の定めに鑑みると、法的には、別個独立の公告が同時にされたものと評価するほかないものである。そうすると、見積価額の適否は、徴収法上、見積価額公告の後に行われることとなっている最高価申込者の決定処分又は売却決定処分の違法事由を構成し得るものの、公売公告処分の適法性には影響せず、本件公売公告処分の違法事由を構成し得ないというべきである。したがって、請求人は、公売財産に係る見積価額が低廉であることを理由として本件公売公告処分の取消しを求めることはできない。

参照条文等

国税徴収法第95条第1項第99条第1項

参考判決・裁決

東京高裁平成28年1月14日判決(裁web)

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平成4年8月31日裁決

贈与があったことを前提としてなされた第二次納税義務告知は、受領した金員の性質を誤認したものであり、取り消しするのが相当であるとした事例

裁決事例集 第44集 305頁

要旨

 原処分庁は、滞納者から請求人に支払われた本件金員は相続分の前渡しないし将来の生計の資本とした贈与に当たると主張するが、滞納者には請求人との間に締結した農地使用の契約違反があり、したがって、請求人に損害賠償請求訴訟等の取下げを義務付ける合意に基づいて支払われたという必要かつ合理的な理由が存在することから、本件金員は和解による示談金と認められる。
 よって、本件金員の授受は贈与によるものであると認定した原処分は相当ではなく、国税徴収法第39条の規定を適用した第二次納税義務の告知は取り消されるべきである。

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平成10年4月15日裁決

預託金会員制ゴルフクラブの会員権証書の担保権者に対する引渡命令が適法であるとされた事例

裁決事例集 第55集 798頁

要旨

 預託金会員制ゴルフクラブの会員権証書は、商法第519条の有価証券には当たらないことから、本件ゴルフ会員権に対する質権設定を第三者に対抗するためには、民法第364条第1項に規定する指名債権質の対抗要件に基づき、質権設定者が確定日付ある証書によりこれをゴルフ場経営会社に通知し又は同社が確定日付ある証書によりこれを承諾することを要する。
 しかしながら、請求人及び滞納者は、これらの手続を経ていないことから、差押債権者たる原処分庁に対抗できず、原処分庁が請求人に対して行った本件会員証書の引渡命令は適法である。

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平成20年12月3日裁決

不動産賃貸業を営む請求人が賃借人から敷金及び建設協力金の返還義務を免除されたことが、国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分に当たらないとした事例

裁決事例集 第76集 555頁

要旨

 原処分庁は、建物賃貸人である審査請求人が建物賃借人である滞納者から建設協力金等の残額の返還債務の免除を受けたことが国税徴収法第39条に規定する債務の免除に該当すると主張する。しかしながら、国税徴収法第39条にいう無償譲渡等の処分とは、経済的合理性を欠き広く第三者に不相当な利益を与える処分をいい、その態様に制限はないと解するのが相当である一方、その行為が経済的合理性を欠き第三者に不相当な利益を与えるものでない限り、同条にいう無償譲渡等の処分に該当しないと解するのが相当であるところ、敷金については、未払賃料と明渡し費用に充てられた結果、その返還請求権は発生しなかったと認められ、建設協力金については、建物賃貸借契約に定められた「賃借人の都合による中途解約の場合、賃借人が当該契約と同等以上の条件で新たな賃借人を斡旋し、新たな契約が締結されない限り、賃借人は敷金及び建設協力金の残額の返還請求権を放棄する。」との条項が、滞納者の都合によって賃貸借契約が中途解約された場合に生ずる請求人の損害の賠償に代えて、建設協力金の残額の返還請求権を放棄し、その後請求人に生じた損害の多寡を問わず精算しないこととしたものと解されるから、建設協力金の残額の返還請求権の放棄は、賃貸借契約の中途解約によって請求人に生じることが予想される損害の賠償に代えて行われる違約金債務の弁済と同視することができ、本件建設協力金の額が本件建物の工事代金以下で不相当に高額とはいえず、また、その返済期間が建物の賃貸借期間と同期間で不相当に長期間であるともいえないことからすれば、請求人に対して一方的に不相当な利益を与えるものとはいえず、国税徴収法第39条に規定する無償譲渡等の処分に当たるということはできない。

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平成10年3月30日裁決

債権譲渡の通知がされた債権を差し押さえた後、譲渡担保財産であるとして譲渡担保権者に対してした告知処分が適法とされた事例

裁決事例集 第55集 742頁

要旨

 請求人と滞納会社の間で締結された運賃等売掛債権の譲渡契約に基づく債権譲渡の通知は、これを第三債務者に通知することによって、担保のため譲渡された債権が特定され、対抗要件が具備されることになるものの、これをもって譲渡担保権の実行が完了したということにはならず、差押処分の時点において本件債権は譲渡担保財産として存在していたと認められる。
 そこで、滞納国税の法定納期限等と本件契約による譲渡担保設定の時期について、その先後を検討すると、譲渡担保設定の日はいずれも滞納国税の法定納期限等の日に後れており、本件差押処分の時点において本件債権が譲渡担保財産として存在する限り、国税が優先することとなる。
 国税徴収法第24条第1項に規定する「国税に不足するとき」とは、同条第2項の通知を発するときの現況において納税者に帰属する財産で滞納処分により徴収できるものの価額が納税者の国税の総額に満たないと認められることをいい、その判定は、滞納処分を現実に執行した結果に基づいてする必要はないと解するのを相当とする。
 滞納会社が、平成8年11月11日に2回目の手形不渡事故を起こして事実上倒産したことは当事者双方に争いのないところであり、その事実からすれば、国税徴収法第24条第1項に規定する要件を満たすから、本件差押処分は同条第5項に規定する「前項の規定の適用を受ける差押」に該当する。

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平成10年8月25日裁決

債権譲渡は民法第467条第2項に規定する第三者対抗要件を具備しておらず、債権譲渡の効力を差押債権者である国に対して主張できないとされた事例

裁決事例集 第56集 427頁

要旨

 差押えに係る賃料請求権は、請求人の滞納者に対する貸金を回収するため、合意契約により譲渡したものと認められるが、本件合意契約書には確定日付が附されていないから、本件債権譲渡は第三者対抗要件を具備していないものであり、第三者である国に対抗することができないので、本件差押処分時における本件賃料請求権は、滞納者に帰属するとしてされた本件差押処分は適法である。

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令和5年8月21日裁決

公売公告処分は、原処分庁が分割納付誓約期間内に公売に付したという時期の判断において、その裁量権の行使が差押財産の換価に関する制度の趣旨・目的に照らして合理性を欠く不当な処分であると判断した事例(公売公告処分・全部取消し)

裁決事例集 第132集

ポイント

 本事例は、請求人の自主納付の見込み、公売による換価額、差押財産の公売による請求人への影響等の諸般の事情をも考慮すると、公売に付した時期の判断において、その裁量権の行使が差押財産の換価に関する制度の趣旨・目的に照らして合理性を欠く不当な処分であると判断したものである。

要旨

 原処分庁は、差押財産を公売に付すべき時期については、国税の徴収の所轄庁の合理的な裁量に委ねられていると解されており、請求人が所有する各不動産(本件各不動産)の公売公告処分(本件公売公告処分)は、公売に付すべき時期について裁量権の範囲内で合理的に行われたものであるから、違法又は不当な処分ではない旨主張する。ところで、換価に関する時期の判断に当たっては、滞納者の個々の実情を踏まえ、国税の効果的な徴収に向け、個々の滞納事案における自主納付の見込み、公売による換価額、差押財産の公売による滞納者への影響等諸般の事情をも考慮して判断することが相当と解されるところ、本件は、請求人には自主納付による完納の見込みがないこと、本件各不動産の換価額として相応の金額が見積もられていたこと、本件各不動産の公売が必ずしも請求人の事業の継続を不可能にするものではないことなどの事情があり、これらの事情を考慮すれば、本件各不動産を公売に付する時期について、原処分庁に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があったとは認められないから、本件公売公告処分は適法である。
 しかしながら、原処分庁の裁量権の行使が、差押財産の換価に関する制度の趣旨・目的に照らし合理性を欠く場合には不当と判断すべきであるところ、本件は、請求人が提出した分割納付誓約書の誓約期間(本件分割納付誓約期間)内に、納付計画どおりの自主納付をする蓋然性が高く、また、本件分割納付誓約期間内に本件各不動産を直ちに換価することで、換価額の下落の回避又は換価額の相対的な価値の維持ができたなどの徴収上有利となる事情がない。また、原処分庁の徴収担当職員が、本件分割納付誓約期間内に本件各不動産が公売に付されることはないとの請求人の期待を排斥しなかったことにより、本件各不動産の代替土地を確保し得る機会及び期間が事実上なくなり、公売による請求人の事業に対する影響がより大きくなったことなどの事情があり、これらの事情を考慮すれば、本件公売公告処分は、公売に付する時期の判断において、その裁量権の行使が、差押財産の換価に関する制度の趣旨・目的に照らして合理性を欠く不当な処分であるといえる。

参照条文等

国税徴収法第95条第1項第96条

参考判決・裁決

東京地裁平成30年9月6日判決(金融法務事情2119号86頁)

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平成30年5月29日裁決

国税徴収法第35条の第二次納税義務の納付告知処分に係る限度額は、同族会社である請求人の発行する株式の適正な時価を反映して算出されたものではないとして、当該納付告知処分の一部が取り消された事例(第二次納税義務の納付告知処分・一部取消し)

裁決事例集 第111集

ポイント

 本事例は、国税徴収法第35条の第二次納税義務の限度額の算定に当たっては、同族会社の直前の決算期の貸借対照表等の各勘定科目の中に、納付通知書を発した日における金額が明らかとなっている資産又は負債が含まれている場合等には、貸借対照表等の金額に一定の修正を加えて客観的な時価を算定するのが相当としたものである。

要旨

 原処分庁は、国税徴収法第35条《同族会社の第二次納税義務》の規定に基づき、請求人が負うべき第二次納税義務の限度となる株式(本件株式)の価額を、請求人に納付通知書(本件納付通知書)を発する日の直前の決算期末の貸借対照表(本件貸借対照表)に記載されている金額により算定したことは、国税徴収法基本通達第35条関係の13《資産及び負債の額の計算》に基づいて本件株式の適正な時価を反映させた適法なものである旨主張する。
 しかしながら、当該通達が、特に徴収上支障がない場合には、直前の決算期の貸借対照表等を参考とすることを認めているのは、納付通知書を発した日の時価評価を簡便に行えるようにすることを企図するものである一方、飽くまで「参考」とすることができるにとどめているのは、国税徴収法第35条第2項の「当該会社の資産の総額から負債の総額を控除した額」は、同族会社に対し納付通知書を発する時の客観的な時価を標準として計算されるべきものであることを踏まえたものと解され、納付通知書を発する日の直前の決算期の貸借対照表等の各勘定科目の中に、納付通知書を発した日における金額が明らかになっている資産又は負債が含まれている場合や、具体的な経済的価値を有しているとはいい難い資産や、その債務の発生が確実といえないような負債が含まれている場合には、貸借対照表等の金額に一定の修正を加えて、納付通知書を発した日における客観的な時価を算定するのが相当である。本件においては、現金や預金など本件納付通知書を発した日における金額が明らかとなっている資産等があると認められる以上、一定の修正を加えて本件株式の客観的な時価を算定するのが相当であり、原処分庁が本件貸借対照表に記載されている金額をそのまま用いて算定した本件株式の価額は、適正な時価を反映して算出された適法なものとはいえない。

参照条文等

国税徴収法第35条 国税徴収法基本通達35条関係13

参考判決・裁決

平成29年12月13日裁決(裁決事例集№109)

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令和元年9月19日裁決

当初の基準価額から再公売による市場性減価及び公売特殊性減価の上算出した見積価額による最高価申込者決定処分について、減価は徴収法基本通達の範囲内で行われており、合理性を欠くものとは認められないことから、見積価額が時価より著しく低廉であるとは認められず、最高価申込者決定処分も違法なものとはいえないとした事案(最高価申込者決定処分・棄却)

裁決事例集 第116集

要旨

 請求人は、請求人が所有する土地(本件土地)の最高価申込価額(本件最高価申込価額)は、請求人が任意売却を申し入れた際の金額や本件土地の近隣の土地の販売価格よりも低廉であるため、最高価申込者決定処分は違法である旨主張する。しかしながら、本件最高価申込価額と同額の公売時見積価額は、国税徴収法(平成30年3月法律第7号による改正前のものをいう。)第98条《見積価額の決定》第1項や国税徴収法基本通達第98条関係2《公売財産の評価》、同3《見積価額の決定》、同通達第107条関係1-2《見積価額の変更》を根拠として、不動産鑑定士による鑑定評価額を基に、期間経過に伴う価格変動を時点修正し、公売において需要がなく公売が不成立となった事実を根拠に市場性減価し、公売が強制売却であること等による公売特殊性減価した上で算出されたものであり、算出過程に不合理な点は認められないから、本件最高価申込価額も公売財産の時価より著しく低廉であるとは認められない。

参照条文等

国税徴収法第98条第104条第1項第107条第1項 国税徴収法基本通達第98条関係2、3 国税徴収法基本通達第107条関係1-2

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平成7年11月17日裁決

滞納会社が売上除外金から取締役に支出した金員は、社員総会において承認の決議を受けた損益計算書には計上されていないことから、職務執行の対価としての役員報酬には当たらず、国税徴収法第39条に規定する無償譲渡に当たるとした事例

裁決事例集 第50集 265頁

要旨

 請求人は、滞納会社が売上除外金から請求人に支出した金員(本件金員)の性格は職務執行の対価たる役員報酬であると主張するが、滞納会社では社員総会決議によって役員報酬の総額が定められており、社員総会で承認された損益計算書に計上されている金額が役員報酬となるところ、本件金員は、社員総会において承認の決議を受けた損益計算書には計上されていないことから、職務執行の対価としての役員報酬には当たらない。
 そうすると、本件金員の授受は滞納会社から請求人への贈与であり、国税徴収法第39条に規定する無償譲渡に該当する。
 重加算税の賦課決定処分は課税面の処分であり、徴収面の第二次納税義務に係る告知処分とは全く別の処分であって、国税通則法第102条(裁決の拘束力)第1項の規定には抵触しないから、本件金員を賦課決定の審査請求では役員賞与と認定し、第二次納税義務に係る告知処分では贈与と認定しても違法ではない。

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令和元年6月4日裁決

第二次納税義務の受けた利益の額の算定において、無償譲渡した不動産を財産評価通達を参考にして評価することは妥当とはいえないとして、納付告知処分の一部を取り消した事例

裁決事例集 第115集

ポイント

 本事例は、国税徴収法第39条の第二次納税義務における受けた利益の額は、財産処分時等の現況に応じて、客観的な交換価値である通常の取引価額により算出するものとして、国税不服審判所における不動産鑑定評価による認定額を用いて審理をしたものである。

要旨

 請求人らは、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》の受けた利益の限度の算出に当たり、①仮に、本件贈与者が本件各係争不動産を贈与したこと(本件各贈与)がなかったならば、本件各係争不動産は別件各公売不動産と一緒に公売されていたと想定されるから、広大地評価による減価を考慮して算定すべきである旨、また、②本件建物1は、その贈与当時、賃貸されていたが、耐用年数が経過していることから、建物の取壊費用相当額を減額すべきである旨主張する。
 しかしながら、請求人らの主張は、①本件各贈与がなかったという仮定に基づくものにすぎず、実際には本件各贈与が行われており、前提を欠き、②本件建物1の経済的残存耐用年数は6年だったこと、賃貸としての利用が最有効使用であること等から、価額の算定に際し、更地価額から建物の取壊費用相当額を減額するのは合理的ではない。一方、原処分庁は、譲受財産の価額を財産評価基本通達(評価通達)により算定することは特段不合理ではない旨主張する。
 しかしながら、評価通達は、相続税等の課税価格計算の基礎となる財産の評価を定めたものであり、譲受財産の価額の算定に評価通達を適用すべきとする法令等の規定は存在せず、本件では、当審判所が原処分庁とは異なる算定をした本件各係争不動産のうち、建物の一部が隣接地との境界を越えて建っていること、一部の土地上に経済的合理性を有しない賃貸用建物が存在すること、建物の所有者に使用借権があること、一部の土地が共有関係にあることなどを考慮して算定する必要があるにもかかわらず、原処分庁が算定した価額では、これらの事情が適切に考慮されていないから、これらの価額の算定に際して評価通達を参考にするのは妥当とはいえない。

参照条文等

国税徴収法第39条 国税徴収法第32条 国税徴収法基本通達第39条関係12 国税徴収法基本通達第39条関係16

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平成22年2月16日裁決

裁決により第二次納税義務の限度額の一部が取り消されることによって超過差押えになるとしても、審判所は差押処分を取り消すことはできないとした事例

裁決事例集 第79集

要旨

 本件各預貯金の差押時点において、本件各差押財産の処分予定価額の合計額は滞納額を下回っていたと認められるが、本件納付告知処分の一部が取り消されることによって、本件各差押財産の処分予定価額が第二次納税義務の限度額を超過する状態になると認められる。
 ところで、先行する課税処分と後続の徴収処分との関係については、課税処分が租税確定手続であり、後者が租税徴収手続であって、両者は別個の法律的効果の発生を目的とする別個独立の行為であるから、前者の違法は後者に承継されないと解するのが相当であり、第二次納税義務の徴収手続の場合も同様に、先行する納付告知処分に違法があったとしても、その違法性は当該第二次納税義務に係る国税を徴収するための滞納処分には直ちに承継されないと解するのが相当であるから、第二次納税義務に係る納付告知処分の一部が取り消されたとしても、そのことをもって直ちに当該第二次納税義務に係る国税を徴収するための滞納処分を違法ということはできない。
 そして、国税徴収法第79条第2項第1号は、差押えに係る国税の一部の納付、充当、更正の一部の取消し、差押財産の値上りその他の理由により、その価額が差押えに係る国税及びこれに先立つ他の国税、地方税その他の債権の合計額を著しく超過すると認められるに至ったときは、差押財産の全部又は一部について、その差押えを解除することができる旨規定しており、後発的事由により超過差押えとなった場合の違法状態の是正措置が設けられているところ、同号の規定により差押えを解除するか否か、また、解除する場合に、どの財産の差押えを解除するかは徴収職員の合理的な裁量にゆだねられていると解されることからすれば、後発的事由により超過差押えとなった場合に、審判所が差押えを取り消す財産を選択し、当該財産の差押えを取り消すことは許されないと解される。
 また、差押えの解除と取消しの法律的効果の相違も考慮すれば、後発的事由により超過差押えとなったとしても、審判所は差押処分の取消しをすることはできないと解される。
 したがって、本件納付告知処分は一部を取り消すべきであるものの、これを理由として本件各差押処分の一部又は全部を取り消すことはできない。

参照条文等

国税徴収法第48条第1項第79条第2項第1号

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平成23年11月17日裁決

課税処分の取消訴訟が係属中であっても、課税処分の効力は妨げられず滞納処分は続行されるとともに、課税処分と滞納処分はそれぞれ目的を異にする別個独立した行政処分であるから、違法性は承継されないとした事例

裁決事例集 第85集

ポイント

 この事例は、滞納処分の前提となった課税処分に係る取消訴訟の裁判が係属している中で、滞納処分の取消しを求めて審査請求がされた場合において、いわゆる「執行不停止」の原則に従い、取消訴訟が係属中であっても滞納処分の執行・手続の続行は妨げられず、また、先行する課税処分が重大かつ明白な瑕疵により無効であるか、違法を理由として権限ある機関によって取り消された場合でない限り、先行する課税処分の違法性を理由として滞納処分の取消しを求めることはできないと判断したものである。

要旨

 請求人は、本件差押処分の前提となった加算税の各賦課決定処分(本件各賦課決定処分)の取消訴訟の裁判が係属中で、いずれも違法な処分であるため、裁判で取り消されることが明らかであり、①本件各賦課決定処分を前提とした、形式的な国税徴収法に基づく本件差押処分は、原処分庁の権限の濫用であり、不当な手続であるとともに、②本件差押処分は、本件各賦課決定処分と密接に関連し、不可分の関係であることから、前提となる本件各賦課決定処分の違法性が承継され、本件差押処分も違法となる旨主張する。
 しかしながら、行政事件訴訟法第25条《執行停止》第1項の規定により、本件各賦課決定処分の取消訴訟が係属中であっても、本件各賦課決定処分の効力は妨げられず、本件各賦課決定処分に係る納付すべき税額に基づき、滞納処分は続行されることとなるところ、原処分庁は、督促に係る国税が完納されておらず、裁判所からの執行停止命令もなされていないことから、滞納国税につき督促手続を経て国税徴収法第47条《差押の要件》第1項第1号の規定に基づき本件差押処分を行ったものである。
 また、課税処分は、国税の納税義務を具体化し、その納付すべき税額を確定させることを目的とする処分であり、滞納処分は、既に具体的に確定した税額が納期限までに完納されない場合に、国税債権の強制的実現を目的とする徴収手続であって、両者はそれぞれ目的を異にする別個独立した行政処分であるから、違法性は承継されず、課税処分が重大かつ明白な瑕疵により無効であるか、違法を理由として権限ある機関によって取り消された場合でない限り、先行する課税処分の違法性を理由として滞納処分の取消しを求めることはできないと解するのが相当であるところ、先行する本件各賦課決定処分には重大かつ明白な瑕疵はなく、また、違法を理由として権限ある機関によって取り消された事実もないので、本件各賦課決定処分の違法性を前提とした請求人の主張はその前提を欠くものである。

参照条文等

国税通則法第105条第1項 行政事件訴訟法第25条

参考判決・裁決

平成14年12月11日裁決(裁決事例集No.64・126頁)

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平成31年3月26日裁決

事業の譲受人である請求人は滞納者と同一とみられる場所において事業を営んでいるとした事例(第二次納税義務の納付告知処分・棄却)

裁決事例集 第114集

ポイント

 本事例は、タクシー事業における車庫は、タクシー事業を営む者が事業活動を行っていくために、運行管理業務等を行う営業所と同視できる程度に重要かつ必要不可欠な場所であると認められることから、滞納者が車庫として使用していた場所を営業所としてタクシー事業を営んでいる請求人は社会通念上同一の場所と認められる場所で事業を営んでいると認められるとしたものである。

要旨

 請求人は、国税徴収法(平成28年法律第15号による改正前のもの。徴収法)第38条《事業を譲り受けた特殊関係者の第二次納税義務》に規定する「事業を営んでいる場所」とは、タクシー事業においては、道路運送法第5条《許可申請》第1項第3号に規定する営業所を指すと解するべきであり、車庫は営業所には含まれないから事業を営んでいる場所には当たらず、請求人は同一の場所で事業を営んでいるとはいえない旨主張する。
 しかしながら、徴収法第38条の「同一とみられる場所」とは、同一の場所のほか、社会通念上同一の場所と認められる場所をいうと解するのが相当であるところ、請求人は、第二次納税義務の納付告知処分時において、滞納法人が車庫として使用していた場所を営業所としてタクシー事業を営んでおり、同営業所は滞納法人の営業所とは地理的に異なった場所であるが、タクシー事業における車庫は、その確保が事業許可の要件となっているだけでなく、その場所についても営業所と近接していなければならないという制限があるなど、営業所と相互に密接に関連付けて利用・管理され、有機的一体として機能する財産の一部であり、また、車庫に保管されている営業用車両が収益を生み出す基礎となるというタクシー事業の特質に鑑みると、車庫は、タクシー事業を営む者が事業活動を行っていくために、運行管理業務等を行う営業所と同視できる程度に重要かつ必要不可欠な場所であると認められる。加えて、請求人の営業所は、滞納法人の営業所と、物理的に異なる場所とはいえ県道を挟んだ斜め向かいに位置し、いずれも当該県道に面しているほか、直線距離で42メートルしか離れていないことも踏まえると、請求人の事業と滞納法人の事業は外形的に同一性を有するということができるから、請求人の事業は社会通念上同一の場所と認められる場所で営まれているものと認められる。

参照条文等

国税徴収法第38条

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令和6年3月11日裁決

公売公告処分は、原処分庁が公売に付した時期の判断において、租税公平主義に反する違法はないと判断した事例(公売公告処分・棄却)

裁決事例集 第134集

ポイント

 本事例は、公売実施の判断について、滞納整理の経緯、納付状況、差押財産の換価の見込額等を考慮すると、その裁量権の行使が租税公平主義に反しているとは認められないと判断したものである。

要旨

v請求人は、原処分庁がした公売公告処分(本件公売公告処分)について、同処分に先行して行われた差押処分(本件差押処分)に違法があるから、本件公売公告処分に係る財産のうち、買受申込みがないまま買受申込期間が満了した財産又は買受申込期間満了後に最高価申込者が買受申込みの取消しをした財産についても、当該処分の取消しを求める請求の利益がある旨主張する。
 しかしながら、これらの各財産を再び公売するには改めて買受申込期間を定めて公売公告以下の公売手続を踏まなければならないから、本件公売公告処分に係る財産のうち、当該各財産に係る部分はその法的効果を失い、その取消しを求める法律上の利益は消滅したものというべきである。
 また、請求人は、徴収法第48条《超過差押及び無益な差押の禁止》第2項の無益な差押えとは、差押時における対象財産の処分予定価額が滞納処分費及び優先債権額の合計額を超える見込みがない場合だけでなく、差押財産の見積価額が分割納付額に満たない場合も含むと広く解釈されるべきであり、そうすると本件差押処分は無益な差押えの禁止に反し違法であるから、これに続く本件公売公告処分は取り消されるべきである旨主張する。
 しかしながら、差押えの対象となる財産の価額がその差押えに係る滞納処分費及び優先債権額の合計額を超える見込みのないことが一見して明らかでない限り、直ちに当該差押えが違法となるものではないと解するのが相当であるところ、本件差押処分当時、その対象となる財産の処分予定価額が滞納処分費及び優先債権額の合計額を超える見込みのないことが一見して明らかではないことから、本件差押処分に無益な差押えの禁止に反する違法はない。
 おって、請求人は、徴収法に公売をしなければならない旨の規定があるが、実際にそのとおりに行われているわけではなく、滞納国税を完納する目途が立っている場合には公売をしないという基準があるはずであるから、本税が完納となっており、延滞税等も最長でも6年以内の完納の目途が立っていたにもかかわらず行われた本件公売公告処分は、この基準に反し、租税公平主義に反する違法がある旨主張する。
 しかしながら、公売の実施については、滞納整理の経緯、納付状況、差押財産の換価の見込額等を踏まえた上での税務署長等の合理的な裁量に委ねられているから、差押財産について公売が一律に実施されるわけではない。加えて、換価事務提要において、本税が完納で延滞税等も完納の目途が立っている場合には公売をしないという基準は存在せず、本件公売公告処分に関する原処分庁の判断は、換価事務提要の合理性を有する定めに従ったものであるから、租税公平主義に反するものではない。

参照条文等

国税徴収法第48条第2項第95条第1項第96条

参考判決・裁決

高松高裁平成11年7月19日判決(租税判例年報11・791頁) 東京地裁平成30年9月6日判決(金法2119号86頁) 東京地裁平成28年12月21日判決(租税関係行政・民事判決集(徴収関係)平成28年1月~平成28年12月順号28-42) 名古屋地裁平成25年4月26日判決(税資(徴収関係判決)平成25年順号25-17)

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平成11年9月2日裁決

国税徴収法第24条の規定に基づく譲渡担保権者に対する告知処分が適法と認められた事例

裁決事例集 第58集 301頁

要旨

 本件譲渡担保は、帰属清算型であるとの判断の下に、[1]告知処分がされた時点においては、未だ利息の返済期限が到来しておらず履行遅滞となっていないこと、[2]請求人から提出された各種書面及び関係者からの答述によっても、譲渡担保権の実行がされたとは認められないこと、更には、[3]代物弁済の合意があったとも認められないことから、告知処分時には譲渡担保財産は確定的に請求人に移転していたとする請求人の主張には理由がなく、本件告知処分は国税徴収法第24条第1項第2項及び第6項の規定に基づいて適法に行われている。

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令和7年10月1日裁決

国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に規定する利益が現に存する限度の額につき、金錢債権の評価に当たっては、債務者の資産状況、支払能力等の債務者側の事情を踏まえて算定するのが相当であるところ、本件債務者には本件求償債権の回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるような特別な事情があったと認められる等の理由から、その価額は零円と評価するのが相当とした事例(第二次納税義務の納付告知処分・全部取消し)

裁決事例集 第141集

ポイント

 本事例は、国税徴収法第39条に規定する利益が現に存する限度の額につき、求償債権に係る債務免除がされた時において予想される回収可能額によって評価することが相当であり、本件債務者には本件求償債権の全部又は一部の回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるような特別な事情があったと認めた結果、本件債務免除により受けた利益の額は現に存しないとしたものである。

要旨

 原処分庁は、債権者(本件債権者)から金銭を借り受けた債務者(本件債務者)の債務(本件債務)の連帯保証人であった本来の納税義務者(滞納者)が、自己所有土地を競売による売却手続によって売却されたことにより、滞納者が本件債務者に対する求償債権(本件求償債権)を取得し、その後、滞納者が本件債務者に対し本件求償債権を免除した(本件債務免除)という事実関係において(その後、請求人が本件債務者を吸収合併した。)、本件債務免除時に、本件債権者が滞納者に対し、本件求償債権を放棄するよう求めていた事情は存せず、本件求償債権の全部又は一部の回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるような特別な事情があったとは認められないことから、請求人が本件債務免除により受けた利益が現に存する限度の額は本件求償債権の額面上の金額と同額となる旨主張する。
 しかしながら、金銭債権の評価に当たっては、債務者の資産状況、支払能力等の債務者側の事情を踏まえて算定するのが相当であるところ、本件債務者は、本件債務免除当時、法的整理(再生手続、破産手続等)の開始決定や事業の休廃業等の事実はなかったものの、本件債務の弁済を差し置いて、本件債務者が保有する資産を換価するなどした上で、本件求償債権に対する弁済を行うことは、事実上不可能ないし著しく困難であったと認められる。そうすると、本件債務者には本件求償債権の全部又は一部の回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるような特別な事情があったと認められ、その支払能力等を考慮すると、本件債務免除時における本件求償債権の価額は零円と評価するのが相当であるから、本件債務者(本件債務者を吸収合併した請求人)が本件債務免除により受けた利益の額は現に存しない。

参照条文等

国税徴収法第39条 国税徴収法基本通達第39条関係14

参考判決・裁決

平成30年6月7日裁決(裁決事例集No.111) 東京高裁令和3年12月9日判決(裁判所Web)

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平成22年8月6日裁決

国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分の効力発生時期につき、請求人が父から贈与された農地については所有権移転に係る農地法上の許可を受けていないことから、その他の不動産等については贈与された時若しくは請求人がその不動産等に係る第三者対抗要件を具備した時のいずれに解しても、同条の「国税の法定納期限の1年前の日以後に無償譲渡等の処分が行われたこと」という要件が充足されていないとした事例

裁決事例集 第80集

要旨

 本件告知処分が適法であるとするためには、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受等の第二次納税義務》の無償譲渡等の処分の効力が、本来の納税者である請求人の父が納付すべき国税(本件国税)の法定納期限の1年前の日以後に発生していることが要件となるが、父から請求人へ贈与された不動産等(本件贈与不動産等)のうち農地法上の農地については、所有権を移転する場合には、農地法第3条《農地又は採草放牧地の権利移動の制限》又は第5条《農地又は採草放牧地の転用のための権利移動の制限》の規定により、農業委員会又は都道府県知事の許可を受けなければならず、この許可は農地の所有権移転についての効力発生要件と解されているところ、これらの不動産については、農地法が定める所有権移転のための許可を得ていないのであるから、本件告知処分時においてこれらの不動産について無償譲渡等の処分の効力が発生したということはできない。
 また、その他の不動産等についてみると、請求人が父から不動産等を贈与されたのは、本件国税の法定納期限の1年前の日よりも前であること、更に、不動産のように、第三者に対する対抗要件として登記を要するものについては、第三者対抗要件を具備したときに無償譲渡等の処分の効力が発生すると解したとしても、本件国税の法定納期限の1年前の日から本件告知処分時までの間において、請求人は、本件贈与不動産等につき第三者対抗要件を具備していないから、「国税の法定納期限の1年前の日以後に無償譲渡等の処分が行われたこと」という国税徴収法第39条の適用要件を欠くこととなる。
 なお、原処分庁は、無償譲渡等の処分の効力の発生時期に関し、本件贈与不動産等につき、贈与を原因とする請求人への所有権移転登記手続を命ずる判決の確定によって、請求人は当該不動産についての所有権移転登記手続をなし得る権利を取得したのであり、同判決の確定がなければ請求人は第三者対抗要件を具備することはできないのであるから、本件においては同判決の確定をもって国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分の効力が発生したと解するのが相当である旨主張するが、同判決の確定によってはじめて贈与による所有権移転の効果が生じるものではなく、同判決を債務名義として請求人が単独で所有権移転登記手続をなし得るとしても、同判決の確定によって請求人が第三者対抗要件を具備したことにならないことは明らかであるから、原処分庁の主張には理由がない。

参照条文等

国税徴収法第39条

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平成25年2月19日裁決

源泉徴収に係る所得税の納税告知処分の違法性は滞納処分に承継されないとした事例

裁決事例集 第90集

要旨

 請求人は、債権の差押処分等(本件各滞納処分)に係る国税の一部について、その前提となる源泉徴収に係る所得税の納税告知処分(本件告知処分)が違法であるから、本件各滞納処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、請求人が違法であると主張する本件告知処分については、その処分に重大かつ明白な瑕疵があったとは認められず、また、違法を理由として権限ある機関によって取り消された事実もないと認められることから、請求人の主張には理由がない。

参考判決・裁決

最高裁昭和45年12月24日第一小法廷判決(民集24巻13号2243頁) 平成3年12月18日裁決(裁決事例集No.42・245頁)

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平成11年4月23日裁決

滞納法人がその構成員である組合員に対して行った賦課金の返還行為が、国税徴収法第39条の無償譲渡等に当たるとされた事例

裁決事例集 第57集 553頁

要旨

 国税徴収法第39条の無償譲渡とは、民法上の贈与等を指すものと解され、課税庁が利益の配当として法人及びその株主等に対し課税した場合であっても、それが法人のその株主等に対する会社資産の無償譲渡に当たる場合には、同一の資産の譲渡が、一方では国税徴収法第39条の無償譲渡に該当し、他方では利益の配当として課税所得の計算の対象に該当することになんら矛盾はないというべきである。
 また、請求人が主張する法人税等は、当該財産の取得による所得のみならず、その年中に生じた他の所得及び損失等との関連において課税標準及び税額が異動するものであって、受益の時においてはその納税義務の存否及び数額を法律上客観的に確定することができないものであるから、受けた利益の現存する限度額の算定に当たり控除すべき費用等には該当しない。

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平成12年11月27日裁決

滞納者に対する滞納処分として差し押さえられた滞納者名義の養老生命共済に係る満期共済金の支払請求権及び解約返戻金の支払請求権について、滞納者の父である請求人がした自己に帰属する旨の主張を排斥した事例

裁決事例集 第60集 612頁

要旨

 請求人は、本件養老生命共済契約は滞納者の父である請求人が滞納者の名義を借りて契約したものであり、また、共済掛金も請求人が支払っていることから、本件債権(滞納者が契約した養老生命共済に係る満期共済金の支払請求権及び解約返戻金の支払請求権)は請求人に帰属する旨主張する。
 しかしながら、当該共済約款によればいずれも滞納者に帰属するものと認められるのであり、仮に請求人主張のものであっても、請求人には虚偽の外形を自己の意思で作出したことが認められることから、民法第94条第2項の類推適用により、請求人は本件債権が請求人に帰属することをもって善意の第三者である差押処分庁に対抗することはできない。
 したがって、この点に関する請求人の主張は採用することができない。

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令和7年10月23日裁決

不動産の贈与に係る第二次納税義務者の受けた利益の額の算定においては、公売財産の評価に準じて算定するのが相当であり、審判所による不動産鑑定評価を参考として判断した事例(第二次納税義務の納付告知処分・棄却)

裁決事例集 第141集

ポイント

 本事例は、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》の第二次納税義務に規定する「受けた利益」の額の算定に当たり、請求人と原処分庁との間で10倍以上の開差が見られたことから、公売財産の評価に準じて算定するのが相当であるとして、国税不服審判所における不動産鑑定評価による認定額を参考として判断を行ったものである。

要旨

 請求人は、請求人が滞納者から受けた土地6筆(本件各土地)の贈与(本件贈与)に係る、国税徴収法(徴収法)第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に規定する「受けた利益」の額は、本件各土地の固定資産税評価額から算出される実勢価格又は請求人が依頼した不動産業者による査定額に基づくべきであり、原処分庁が判断した請求人の「受けた利益」の額は、当該金額が社会通念上不相当に高額で違法である旨、また、審判所において不動産鑑定士による本件各土地の鑑定評価を実施して、その鑑定評価額に基づいて算出される「受けた利益」の額を超える部分を取り消すべきである旨主張する。
 しかしながら、徴収法第39条に規定する「受けた利益」の額の算定に当たっては、公売財産の評価に準じて算定するのが相当であり、審判所において行った不動産鑑定士による鑑定評価に不合理な点はなく、同評価による鑑定評価額を本件贈与時における本件各土地の時価であると認めるのが相当であり、原処分庁の主張額は、当該鑑定評価による金額の範囲内であるから取り消すべき部分はない。

参照条文等

国税徴収法第39条 国税徴収法基本通達第39条関係12 国税徴収法基本通達第39条関係16

参考判決・裁決

令和元年6月4日裁決(裁決事例集No.115)

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平成13年1月24日裁決

滞納処分により差し押さえた預託金会員制ゴルフ会員権の換価(取立て)等のため必要があるとして、譲渡担保契約に基づき同会員権に関する入会保証金証書を占有する請求人に対してされた同証書の引渡命令は適法であるとした事例

裁決事例集 第61集 735頁

要旨

 請求人は、本件ゴルフ会員権は請求人が滞納者から譲り受けた財産であるから、請求人は滞納者の財産を占有する第三者には当たらないこと、また、債権証書の取上げができる場合は差押えのため必要があるときであるところ、引渡命令が出された当時既に本件差押処分がされていたから、必要があったとはいえないことから、同会員権に関する入会保証金証書についての本件引渡命令処分は違法である旨、さらには、そもそも本件ゴルフ会員権は、請求人が滞納者から譲り受けた譲渡担保財産であるので、請求人に対して国税徴収法第24条“譲渡担保権者の物的納税責任”第4項に規定する告知がされなければならないにもかかわらず、これを欠いていることから本件差押処分は違法であり、本件差押処分を前提としてされた本件引渡命令処分は違法である旨を主張する。
 しかしながら、預託金会員制ゴルフ会員権の譲渡については、当該譲渡をもってゴルフ場経営会社以外の第三者に対抗するためには、民法第467条に規定する指名債権の譲渡の場合に準じて、譲渡人が確定日付のある証書によりこれをゴルフ場経営会社に通知し、又は確定日付のある証書によりゴルフ場経営会社がこれを承諾することを要し、これと滞納処分による差押えとが競合した場合の優劣は、確定日付の譲渡通知書がゴルフ場経営会社に到達した日時(又は確定日付のあるゴルフ場経営会社の譲渡の承諾の日時)と、差押通知書がゴルフ場経営会社に到達した日時との先後により決せられるところ、本件においては、譲渡通知書より先に差押通知書がゴルフ場経営会社に到達しており、請求人は譲渡担保契約に基づく譲渡担保権の設定をもって差押権者に対抗することができないから、国税徴収法第24条の規定を適用する余地はなく告知をする必要がないというべきであり、また、本件入会保証金証書を占有する請求人は、国税徴収法第58条に規定する滞納者の財産を占有する第三者に該当することになる。
 また、国税徴収法第65条に規定する債権証書の取上げができる場合の「差押えのため必要があるとき」には、その債権の取立て、換価、権利の移転及び配当等のため必要と認められるときも含まれると解される。
 したがって、本件引渡命令処分は適法である。

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平成22年11月25日裁決

請求人が滞納法人から、不動産売買に係る仲介手数料に相当する債務の免除を受けたとは認められないとした事例

裁決事例集 第81集

要旨

 原処分庁は、請求人と本件滞納法人との間における不動産の売買を仲介した仲介業者が、請求人分の仲介手数料(本件仲介手数料)として金員を受領し、請求人あての領収証が発行されているところ、当該金員は本件滞納法人が自ら調達した金員により支払われたものであるから、請求人に本件滞納法人に対する本件仲介手数料に相当する債務が発生し、同時に、本件滞納法人が当該債務を免除した旨主張する。
 しかしながら、上記不動産の売買契約においては、請求人が支払わなければならない当該不動産の代価や仲介手数料を含む売買に関して生ずる請求人が負担すべき一切の費用は、請求人が上記不動産の購入資金として借り入れた金員から賄われるべきものであったと認めるのが相当であり、本件滞納法人が本件仲介手数料を自ら調達した金員で支払ったのは、請求人が上記不動産の購入資金として借り入れた金員の中から本件仲介手数料が支払われるべきところ、請求人が当該不動産の購入資金として借り入れた金員から借入れに伴う事務手数料や登記費用等を控除した金額の全額が請求人の普通預金口座から上記不動産の抵当権者の普通預金に直接振り替えられたため、本件仲介手数料の支払に充てることができなくなったことによるものと認められる。
 したがって、請求人が負うべき本件仲介手数料の支払債務を本件滞納法人が履行したと認めることはできず、そうすると、本件滞納法人には請求人に対する本件仲介手数料に相当する額の返還請求権は発生せず、それを無償放棄することもあり得ないのであるから、請求人が本件滞納法人から本件仲介手数料に相当する債務の免除を受けたと認めることはできない。

参照条文等

国税徴収法第39条

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平成19年3月30日裁決

請求人は、原処分庁に対して、信義則上、請求人が滞納会社と別異の法人格であることを主張して被差押債権の帰属を争うことができないとした事例

裁決事例集 第73集 565頁

要旨

 請求人は、原処分庁が被差押債権は滞納会社に帰属するものであるとして行った債権差押処分に対して、自社が被差押債権の帰属主体であることを主張する。
 しかしながら、会社が法令の規定に準拠して比較的容易に設立され得ることに乗じ、取引の相手方からの債務履行請求手続を誤らせ時間と費用とを浪費させる手段として、旧会社の営業財産をそのまま流用し、商号、代表取締役、営業目的、従業員などが旧会社のそれと同一の新会社を設立したような場合には、形式的には新会社の設立登記がなされていても、新旧両会社の実質は前後同一であり、新会社の設立は旧会社の債務の免脱を目的としてなされた会社制度の濫用であって、このような場合、会社は、この取引の相手方に対し、信義則上、新旧両会社が別人格であることを主張できず、相手方は、新旧両会社のいずれに対しても上記債務についてその責任を追及することができると解されている。
 したがって、いわゆる支配要件と目的要件の2つの要件を満たした場合には、信義則上、新会社は、債権者に対して旧会社とは別人格であることを主張できないと解するのが相当である。
 そして、本件においては、請求人について上記2つの要件をいずれも満たすと認められることから、請求人は、原処分庁に対して、信義則上、請求人が本件滞納会社とは別異の法人格であることを主張し、本件各債権を自己の財産であって本件滞納会社の財産ではないと主張することは許されないというべきである。

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令和6年9月25日裁決

請求人は差押通知を受けるべき者に当たらず、また、借地権に関する記載が不十分であるとは認められないことから、公売公告処分は違法又は不当ではないとした事例(公売公告処分・棄却)

裁決事例集 第136集

ポイント

 本事例は、請求人は、借地権者ではあるが借地上の建物に所有権の登記をしていないことから、差押通知を受けるべき者に当たらず、また、請求人の借地権については、公売の買受人がこれを引き受けないから、公売公告において、土地上に借地権を主張する者がいること等の記載をもって、買受人がその現況を把握できる程度に記載されたものということができるとした事例である。

要旨

 原処分庁は、請求人が借地権(本件借地権)を有する土地(本件土地)について、請求人は本件借地権の登記をしておらず、また、本件土地上に請求人名義で登記されている不動産を所有したこともないことから、このように借地権についての対抗要件を具備していない請求人は、そもそも権利を保護するに値しないのであり、公売公告処分(本件公売公告処分)により、直接自己の権利又は法律上の利益を侵害されることはないから、本件公売公告処分について、不服申立てをすることができる者に当たらない旨主張する。
 しかしながら、請求人は、本件公売公告処分に基づく公売の結果、本件借地権を失うことになることから、自己の権利を侵害されるおそれのある者というべきであり、したがって、請求人は、本件公売公告処分について不服申立てをすることができる者に該当する。
 請求人は、請求人が本件借地権を有する本件土地について、原処分庁が差押処分をした際に、国税徴収法第55条《質権者等に対する差押えの通知》の規定による通知を受けておらず、また、本件土地の公売公告において、本件借地権の目的となっていることが明確に記載されていないことから、請求人に不利な内容となっており、本件公売公告処分は違法又は不当である旨主張する。
 しかしながら、請求人は、本件借地権の登記をしておらず、また、本件土地上に請求人名義で登記されている不動産を所有したこともなく、対抗要件を具備していないことからすると、国税徴収法第55条の規定による通知を受けるべき者には当たらず、また、本件借地権に関する記載が不十分であるとは認められないことから、本件公売公告処分は違法又は不当ではない。

参照条文等

国税通則法第75条第1項 国税徴収法第55条第95条第1項

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平成15年4月16日裁決

連帯納付義務者Lから不動産の贈与を受けた者に対して行われた国税徴収法第39条の規定に基づく第二次納税義務の告知処分が適法であるとした事例

裁決事例集 第65集 1068頁

要旨

  1.  相続税法第34条の連帯納付義務については補充性がないことから、連帯納付義務は、第二次納税義務のように本来の納税義務者に対する滞納処分を執行しても徴収すべき額に不足すると認められる場合に限って、納税義務を負担するものではない。すなわち、本来の納税義務者に対する徴収手続と連帯納付義務者に対する徴収手続は本来的には別個の手続である。
     そうすると、仮に、税務署長が、本来の納税義務者に対する滞納処分等の徴収手続を適正に行っておれば、本来の納税義務者から滞納に係る相続税を徴収することが可能であったにもかかわらず、税務署長が徴収手続を怠った結果、本来の納税義務者から相続税を徴収することができなくなったという事実があったとしても、その事実は、相続税法第34条第1項の規定によって、各相続人に課されている連帯納付義務の存否又はその範囲に影響を及ぼすものではなく、また、税務署長が、各相続人に対して、連帯納付義務の履行を求めて徴収手続を進めたとしても、これをもって違法ということはできない。
  2.  請求人らは、国税の徴収について、民法第504条の規定を準用又は類推適用すべきであると主張するが、相続税法、国税通則法、国税徴収法のいずれにおいても、民法第504条を準用すべきものであるとする規定もなく、類推適用を根拠付ける規定もない。
  3.  相続税の連帯納付義務の性格については、その性格を民法上の連帯保証債務に類似するものと解し、本来の納税義務についての時効中断の効力は附従性により連帯納付義務にも及ぶと解するのが相当である。これを本件について見ると、本来の納税義務者Kの国税の徴収権の消滅時効はいまだ完成していないから、連帯納付義務者Lの国税の徴収権の消滅時効も完成しておらず、請求人らの主張には理由がない。
  4.  Kは、Lの連帯納付義務を承継した納税義務者でもあり、連帯納付義務と本来の納付義務が同一人に帰することになる。しかしながら、本来の納付義務と重複することとなった連帯納付義務が当然に消滅すると解すべき実定法上の根拠はない。また、本来の納付義務と連帯納付義務が同一人に帰した場合に、連帯納付義務が消滅する場合があり得るとしても、Lの連帯納付義務は、第二次納税義務の基因となる納付義務であり、Lの連帯納付義務を存続させる実益があることからすると、当該連帯納付義務が消滅すると解するのは相当ではない。
  5.  国税徴収法第39条の徴収不足が無償譲渡等の処分に「基因する」とは、広く、その処分がなかったならば、徴収不足を生じなかったであろうことをいい、損害賠償請求の場合における「直接の因果関係」よりも広い概念として、当該基因関係を認めるのが相当と解され、また、徴収不足の判定は、第二次納税義務の告知処分をするときの現況によるべきものと解される。
     これを本件について見ると、本件贈与がなければ、本件贈与により受けた利益の金額の総額を承継後の滞納国税に充てることが可能であったといえる。そうすると、本件贈与と徴収不足との間に基因関係を認めることができるから、請求人のこの点に関する主張は採用できない。
  6.  本件納付通知書の納税者欄には、第二次納税義務の基因となった納付義務を負う者の氏名が記載されるところ、Lは既に死亡しており、Lの連帯納付義務はKに承継されていることから、納付通知書の納税者欄にKの氏名を記載したことは、国税徴収法第32条第1項に照らして適法であり、無効とする重大な瑕疵があるとはいえない。
  7.  国税徴収法第39条の規定は、主たる納税者の租税の納期限が経過したこと及び滞納処分を執行しても徴収不足を生じると認められることを第二次納税義務の要件としているものの、主たる納税者に対して実際に徴収手続に着手することを要件とするものではないと解される。
     したがって、第二次納税義務の基因となった連帯納付義務について、国税徴収法第39条に規定する要件を満たせば、督促の有無にかかわらず、第二次納税義務者である請求人らに対して、本件告知処分を行うことができることとなる。
  8.  登記は、制度上その手続において、真正な、すなわち有効に存立する実質的な関係に基づくものであることが前提とされ、かつ、公の機関によって管理されているから、登記上の所有名義人は反証がない限り当該不動産の所有者と推定することが相当である。本件居宅は、[1]相続により贈与者へ所有権移転登記がされていること、[2]請求人らへ贈与により所有権移転登記がされていることから、被相続人から相続した上で、請求人らに贈与したと認めるのが相当である。
     これに対して、請求人は、自らが本件居宅を建築したと主張するが、遺産分割協議書及び本件相続に係る相続税の申告書において、本件居宅は妻が相続する旨の記載があること、請求人らは、本件贈与について贈与税の申告をしていること、並びに請求人が建築したとする請負契約書や新築及び改築費用の資金出所を明らかにする領収書等の証拠書類を提出しないことからすると、本件居宅が請求人に帰属すると認めることはできない。
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平成23年2月18日裁決

債権譲渡の債務者対抗要件が具備されていないから、無価値の債権の代物弁済により債務が消滅したとして国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分があったとはいえないとした事例

裁決事例集 第82集

ポイント

 この事例は、請求人が滞納法人に負っていた借入金債務の支払に代えて返済資力のない債務者に対する請求人の債権を代物弁済したことにより請求人が利益を受けたとして、原処分庁がした国税徴収法第39条の第二次納税義務の納付告知処分等の適否が争われたところ、代物弁済の目的とされた債権の一部は、債務者対抗要件を欠いており、いまだ滞納法人に帰属しているとみることができるから、その部分については無償譲渡等の処分があったとは認められないとしたものであり、過去にこのような事例について判断した裁判例や裁決例はなく、先例となるものである。

要旨

 請求人が有していた各貸金債権の代物弁済によって本件滞納法人の請求人に対する短期貸付金(本件短期貸付金)の消滅の効果が発生するためには、代わりの給付を現実に行うことが必要であるところ、当該各貸金債権の一部については、債権譲渡の第三者対抗要件が具備され、代わりの給付が現実にされたということができるとともに、主債務者及び保証人に資力がなく弁済を受けることが事実上不可能なものであるから、無価値物による代物弁済として国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》の無償譲渡等の処分があったといえる。
 しかしながら、他の貸金債権については、債務者対抗要件である債務者への通知を欠いており、代わりの給付が現実になされたとはいえず、本件短期貸付金のうち、当該貸金債権の代物弁済によって消滅したとされる部分は、いまだ消滅せず、本件滞納法人に帰属しているとみることができるから、国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分があったとは認められない。

参照条文等

国税徴収法第39条 民法第467条

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平成14年3月15日裁決

債権譲渡の通知がされた債権を差し押さえた後、譲渡担保財産であるとして譲渡担保権者に対してした告知処分は適法であるとした事例

裁決事例集 第63集 703頁

要旨

 請求人は、滞納会社から提出された「売掛代金債権担保差入書」には、「債務の根担保として譲渡した」旨の記載があるが、法律行為の解釈は、単なる文言のみによってなされるものではなく、当該法律行為がされた経緯、当事者の意思、効果などを総合考慮してなされるものであるから、本件担保差入書に「貴行において、本件債権の取立ての上は、滞納会社の債務の期限のいかんにかかわらず、ただちに債務の弁済に充当されても異議がありません」と記載されていること及び融資実行の経緯などから明らかなように、本件の債権譲渡は、担保のためではなく、弁済のためにされたものであるから、本件告知処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、法律行為の意思表示の解釈に当たっては、意思の表示が一義的であり、しかも意思の表示に関し、表意者と相手方以外の者の利害がかかわる場合には、当事者の意思表示が一義的に合致していること、表示された意思どおりの効果が発生するとの第三者の信頼を保護すべきことに鑑み、表示された意思に基づいて意思表示を解釈し、表示どおりの効果を認めるべきであると解されるところ、これを本件についてみると、債権譲渡に係る担保差入書及び債権譲渡承諾依頼書には「担保とするため」「担保として」譲渡した旨が記載されており、一義的に担保である旨の意思表示がされていると認められ、また、本件債権譲渡は、定型的な処理が要求されている銀行取引の一環として行われており、第三者である原処分庁は本件債権を差し押さえて利害関係を有しているから、本件債権譲渡は、担保の設定として行われたものと認めるのが相当である。
 また、請求人は、国税徴収法第24条の譲渡担保財産には指名債権は含まれない旨も主張するが、同条の担保財産とは、納税者がその所有する財産を債権者又は第三者に譲渡し、その譲渡により、自己又は第三者の債務の担保の目的となっている財産をいい、動産、有価証券、債権、不動産、無体財産権等のほか、法律上まだ権利と認められていないものであっても、譲渡できるもの(手形を除く)は、譲渡担保の目的物とすることができると解されているから、請求人の主張には理由がない。

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令和6年9月25日裁決

公売公告処分は、差押通知を欠いたまま行われ、また、公売公告処分に、「公売に関し重要と認められる事項」に係る記載が漏れていることから、公売公告処分には取り消し得べき瑕疵があるとした事例(公売公告処分・全部取消し)

裁決事例集 第136集

ポイント

 本事例は、事前手続である差押通知を欠いたまま後続処分である公売公告処分がされた場合には、同処分には取り消し得べき瑕疵があり、また、公売対象の土地上に買受人が引き受けるべき借地権が存在する場合には、公売公告において、借地人が対抗要件を備えていることを記載することを要するとした事例である。

要旨

 原処分庁は、請求人が借地権(本件借地権)を有する土地(本件土地)について、請求人は本件借地権の登記をしておらず、また、本件土地上に請求人名義で登記されていた不動産は、公売公告処分(本件公売公告処分)より前に取り壊された上、滅失登記がされているところ、その後、借地借家法第10条《借地権の対抗力》第2項が規定する掲示等による対抗措置をしていないことから、このように借地権について対抗要件を具備していない請求人は、そもそも権利を保護するに値しないのであり、本件公売公告処分により直接自己の権利又は法律上の利益を侵害されることはないから、本件公売公告処分について、不服申立てをすることができる者に当たらない旨主張する。
 しかしながら、請求人は、原処分庁が行った本件土地の差押処分に際して、本件土地の借地権者として国税徴収法(徴収法)第55条《質権者等に対する差押えの通知》の規定による通知を受けるべき者に該当するにもかかわらず、当該通知を受けておらず、また、請求人は、徴収法第50条《第三者の権利の目的となっている財産の差押換》の規定による差押換請求権を有する者であるにもかかわらず、差押換えを請求できる機会を与えられなかったことから、本件公売公告処分について、不服申立てをすることができる者に該当する。
 また、原処分庁は、請求人が本件借地権を有する本件土地の差押処分に際して、請求人は徴収法第55条に規定する通知を受けるべき者に当たらず、また、公売公告には、徴収法第95条《公売公告》第1項各号所定の事項が不備なく記載されており、賃貸借契約の内容として賃貸借契約書を添付していることから、本件公売公告処分は適法であり、不当でもない旨主張する。
 しかしながら、請求人は徴収法第55条に規定する通知を受けるべき者に該当するところ、当該通知の趣旨は、利害関係人に滞納処分が開始されたことを了知させ、徴収法第50条の規定による差押換請求権を行使する機会を与えることにあり、利害関係人の権利を保護するための重要な意義を有しているにもかかわらず、本件公売公告処分は、当該通知を欠いたまま行われており、また、本件借地権は買受人に対抗することができる権利であるにもかかわらず、公売公告にはその旨が明記されておらず、よって、徴収法第95条第1項第9号の「公売に関し重要と認められる事項」に係る記載が漏れていることから、本件公売公告処分には取り消し得べき瑕疵がある。

参照条文等

国税通則法第75条第1項 国税徴収法第55条第95条第1項

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平成22年6月10日裁決

差し押さえた株券に係る権利が滞納者に帰属するとの推定を覆す事実は認められず、また、当該株券に係る権利の取得につき滞納者に悪意又は重過失があったことを認めるべき証拠もないとして、当該権利が自己に帰属する旨の請求人の主張を排斥した事例

裁決事例集 第79集

要旨

 滞納者の子である請求人は、原処分庁が差し押さえた株券に係る株式についての真の権利者は請求人である旨主張し、請求人の祖母が請求人に当該株式に係る株券を引き渡した旨記載されている文書が存在する。
 ところで、当該原処分庁が差し押さえた株券は、請求人の祖母が、当該株式に係る株券についての除権判決を得るとともに、当該株式を滞納者に譲渡することについて、その発行会社であるC社の取締役会の承認を経た上で再発行された株券が滞納者に交付された後、滞納者が当該再発行株券のすべてを亡失したとして、C社に対してなされた平成20年4月23日付の株券喪失登録の申請に基づき、同社が滞納者に対して発行し、滞納者のために保管していたものであるところ、原処分庁所属の徴収職員が、滞納者がC社に対して有する当該株式に係る株券の再発行請求権を差し押さえた上で、C社が滞納者に対し発行し、滞納者に交付すべきものとして保管していた再発行株券を占有して差し押さえたものである。
 そうすると、商法(平成17年法律第87号による改正前のもの。)第205条第2項の規定により、上記再発行株券が滞納者に交付された時点で、滞納者が当該再発行株券に係る株式についての権利を有すると推定され、また、会社法第131条第1項の規定により、当該株式についての権利は滞納者に帰属すると推定されることから、この推定を覆す事実が認められない限り、差押処分に当該株式についての権利の帰属を誤った違法があるということはできないこととなる。しかるに、滞納者が当該株式を祖母から譲り受けたこと及びその後における滞納者による株券喪失登録の申請に不自然な点は見当たらず、滞納者が当該株式についての権利が祖母から請求人に移転していることを知りながら、あるいは、重大な過失によってそのことを知らないままに、当該再発行株券の交付を受けたと認めるべき証拠も見当たらない上、請求人が当該株式についての権利を有していたことをうかがわせる証拠もないから、当該株式についての権利が滞納者に帰属するとの推定を覆す事実は認められず、したがって、請求人が当該株式の真の権利者である旨の請求人の主張には理由がない。

参照条文等

国税徴収法第56条第1項 商法(平成17年法律第87号による改正前のもの。)第205条 会社法第128条、第131条、第228条

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平成20年6月30日裁決

請求人が受領した滞納会社の売掛金のうち、滞納会社の従業員に対する給与に充てられた部分以外の部分は、国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分によるものであるとした事例

裁決事例集 第75集 760頁

要旨

 請求人と滞納会社との間では、滞納会社の取引先との取引の継続を目的として、請求人に滞納会社の工場と従業員を引き継ぎ、当該取引先との取引を継続することについての合意が成立したものと認められるが、本件売掛債権が発生する前にその旨の合意が成立したと認めることはできないから、本件売掛債権はもともと滞納会社に帰属していたと認めるのが相当であり、また、請求人は、滞納会社が負っていた従業員に対する給与の支払債務の弁済資金を確保するために本件売掛債権を譲り受けたものと認められるから、当該給与支払債務相当額部分については、国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分により請求人が利益を受けたということはできないものの、その余の部分については、請求人が滞納会社に返還した形跡を認めることができず、滞納会社も請求人に請求した事実が認められないことからすれば、同条の無償譲渡等の処分により請求人が利益を受けたものと認めるのが相当である。

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平成23年3月23日裁決

請求人の預金口座に入金された滞納者が受領すべき譲渡代金の一部については、当該預金口座の入出金状況等から当該金員が請求人の処分権限内に移転したとはいえず、滞納者から請求人への財産の無償譲渡があったということはできないとした事例

裁決事例集 第82集

要旨

 原処分庁は、本件滞納者が受領すべき譲渡代金の一部が、本件滞納者が代表取締役を務めていた法人の普通預金口座から請求人の普通預金口座(本件請求人口座)に振り替えられたことにより、当該振替金(本件振替金)は本件滞納者から請求人の処分権限内に移り、本件振替金が本件滞納者に還流した事実も本件滞納者に対する対価等の支払の事実も認められないから、本件振替金は、本件滞納者から請求人に無償で譲渡された旨主張する。
 しかしながら、本件請求人口座については、本件振替金の入金当時、本件滞納者の子であり請求人の配偶者であるEにおいて自由に出金できる状態にあり、入出金のすべてをEが行っているだけでなく、その口座の動向について、請求人が何ら把握していないのであって、引き出された金員が請求人個人の用途に使用されたことを認めるに足りる証拠がないだけでなく、かえって出金のあった日にE名義の預金口座に相応額の入金があるという同人のために費消されたことをうかがわせる事実が認められるのであり、Eが請求人の配偶者であることを併せて考えると、本件請求人口座が請求人に帰属すると認定することはできず、同口座はEの管理下にあったいわゆる借名口座であるとみるのが相当である。そうすると、本件請求人口座に本件振替金が入金されたことをもって、請求人の処分権限内に本件振替金が移転したとはいえないから、本件滞納者から請求人への財産の無償譲渡があったということはできず、ほかにこれを認めるに足りる証拠もない。

参照条文等

国税徴収法第39条

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平成22年6月16日裁決

請求人は、差し押さえられた債権に付されていた譲渡禁止特約につき悪意の譲受人と認められるから、滞納者から請求人への当該債権の譲渡は無効であり、当該債権が請求人に帰属することを前提に当該債権の差押処分の取消しを求める請求人の主張は、その前提を欠き採用できないとした事例

裁決事例集 第79集

要旨

 請求人は、原処分庁が差し押さえた各債権は、当該差押処分の前に、滞納者から譲渡担保として譲り受け、債権譲渡登記により第三者対抗要件を具備したものとみなされたから、当該各債権は請求人に帰属する旨主張する。
 しかしながら、原処分庁が差し押さえた各債権の一部については、原処分庁の取立て、差押えの解除、消滅、不存在により、差押えの効力が消滅したか生じなかったのであるから、請求人は、その部分についての差押えの取消しを求める法律上の利益を有せず、他の債権については、譲渡禁止特約が付されているところ、滞納者と請求人との間で交わされた集合債権譲渡契約書の「譲渡禁止特約の有・無」欄の「有」に丸印が付されていることからすれば、請求人は当該譲渡禁止特約につき悪意の譲受人と認められることから、滞納者から請求人への当該債権の譲渡は無効であり、当該債権が請求人に帰属することを前提に当該債権の差押処分の取消しを求める請求人の主張は、その前提を欠き採用できない。

参照条文等

国税徴収法第24条 民法第466条

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平成20年10月27日裁決

貸金業を営む請求人の貸金債権についての保証業務を行っていた滞納法人が業務を廃止したことに伴い、請求人が滞納法人から収受したといえる業務廃止日現在の累計保証料相当額から貸倒額を控除した部分は、国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分によるものであるとした事例

裁決事例集 第76集 521頁

要旨

 請求人の顧客の請求人に対する債務について保証する本件滞納法人がその業務を廃止した場合に、その廃止日における累計保証料相当額を請求人がすべて収受する旨を定めた本件契約第9条の規定は、本件滞納法人が業務を廃止したときは、本件滞納法人による保証債務が履行されないこととなり、請求人に損失が生じることとなる一方、本件滞納法人としては、保証していた請求人の貸金債権の履行期限が到来するまで業務を廃止できないとすると、円滑に業務廃止の手続を進めることができなくなることから、本件滞納法人の業務廃止後における損害賠償債務又は保証債務の履行に代えて、本件滞納法人が累計保証料相当額の金員を請求人に交付することとし、その後の清算を要しないこととしたものと解され、本件累計保証料相当額の債務の履行により、本件滞納法人の業務廃止後における損害賠償債務又は保証債務が消滅するので、本件累計保証料相当額の債務が履行されたことによって、直ちに国税徴収法第39条に規定する無償譲渡等の処分があったということはできない。
 しかしながら、同条にいう無償譲渡等の処分が広く第三者に利益を与える行為をいうものと解されることからすれば、本件滞納法人の業務廃止後における損害賠償債務又は保証債務の履行に代えて、本件滞納法人が請求人に対して支払うべきものとして必要な範囲を超えて履行された部分は、同条の無償譲渡等の処分によるものと解するのが相当であり、その必要な範囲は、本件滞納法人の業務廃止時における請求人の貸金残高に予想される貸倒率を乗じて算出される額とするのが相当である。もっとも、本件滞納法人の業務廃止に伴って請求人に生じた貸倒れの額が具体的に明らかである場合には、その額までの部分がその必要な範囲と認めることが相当であるから、本件滞納法人が請求人に対して負っていた本件累計保証料相当額の支払債務と請求人の本件滞納法人に対する借入金債務との相殺によって、請求人が本件滞納法人から債務の履行を受けたと同視できる額から本件滞納法人の業務廃止によって生じた請求人の貸金債権についての貸倒損失の額を控除した部分については、請求人が本件滞納法人から国税徴収法第39条に規定する無償譲渡等の処分により利益を受けたというべきである。

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平成14年10月25日裁決

集合債権譲渡担保契約に基づき譲渡された債権は譲渡担保財産として存続しているとして、国税徴収法第24条の譲渡担保権者に対する告知処分が適法であるとした事例

裁決事例集 第64集 593頁

要旨

 請求人は、債権の譲渡担保契約においては、契約時点で確定的に譲渡債権が譲渡担保権者に帰属し、第三者対抗要件を備えた時点、あるいは遅くとも担保権の実行通知をした時点で「譲渡担保財産」でなくなったとの主張をするが、いわゆる集合債権譲渡担保契約において、その担保権の実行方法や実行完了時期について特段の合意がない場合には、譲渡担保権者が譲渡債権を現実に第三債務者から取り立てて被担保債権の弁済に充当するまでは担保権の実行は完了しないと解され、その時点までは担保とされた譲渡債権は国税徴収法第24条にいう「譲渡担保財産」として存続すると解するのが相当である。

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平成15年8月8日裁決

告知処分時において譲渡担保権の実行は完了しておらず、被担保債権は消滅していないから、譲渡担保権者の物的納税責任に関する告知処分は適法であるとした事例

裁決事例集 第66集 363頁

要旨

 請求人は、本件債権につき、第三債務者に対し、債権譲渡通知及び担保権の実行を通知するとともに、登記事項証明書を送付していることから、本件債権は、告知処分の時点において、既に請求人に移転し、滞納会社に復帰する可能性はなく、担保の目的たる財産でなかった旨主張するが、本件債権は、告知処分の時点において、いまだ第三債務者から請求人への支払いがなされておらず、請求人の滞納会社に対する被担保債権が消滅していないことから、譲渡担保権財産であると認められる。
 請求人は、譲渡担保契約について、請求人と滞納会社Gの破産管財人との間で破産法の否認権行使の対象となるか否かの訴訟が係属中にもかかわらず、その判決の出る前に請求人に対してなされた告知処分は不当である旨主張するが、当該告知処分は、国税徴収法に基づき適法になされたものであり、また、否認権行使の効果は、否認の対象となった債権譲渡行為が破産管財人と請求人との間でさかのぼって無効となるにすぎず、そうすると、否認権訴訟の裁判の結果が原処分庁の行った告知処分の適法性に影響を及ぼすものではない。
 請求人は、滞納会社Gの破産管財人が裁判所に提出した財産報告書によれば、告知処分の時点において、滞納会社Gには相当の財産があると思われることから、当該告知処分は国税徴収法第24条第1項に規定する要件を満たしていない旨主張するが、当審判所の調査によると、仮に請求人の主張する財産の価額を滞納会社Gから徴収できる価額とみても、告知処分時の同社の滞納国税の総額はそれを上回ることが認められる。したがって、滞納会社Gの財産につき滞納処分により徴収できるものの価額が滞納国税の総額に満たない(いわゆる徴収不足)と認められることから、請求人の主張には理由がない。

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平成22年3月9日裁決

滞納者を契約者兼被保険者とし、保険金受取人を請求人とする生命保険契約に基づいて死亡保険金を受領した請求人は、国税徴収法第39条の規定により、滞納者が払込みをした保険料相当額の第二次納税義務を負うとした事例

裁決事例集 第79集

要旨

 保険契約者が保険金の受取人を第三者とするいわゆる他人のための生命保険契約に基づく保険料の払込みは、保険会社に対して生命保険契約に基づく義務を履行するものではあるが、保険事故が発生したときに当該第三者に利益を与える目的を達成するために、自己の積極財産を減少させる行為であるから、保険金受取人は、保険事故が発生した場合、保険契約者の行った保険料の払込みという積極財産を減少させる行為によって、無償で保険金支払請求権を取得し、利益を受けたということができる。
 そして、保険金の支払請求権は、保険事故の発生により、保険金受取人が原始取得するものであり、保険金は滞納者である保険契約者からではなく保険会社から支払われるものであるから、滞納者である保険契約者が保険金受取人に対して直接財産処分行為をしたとはいえないが、国税徴収法第39条の条文からすれば、滞納者の財産処分行為と保険金受取人の受けた利益との間に基因関係が認められれば足り、滞納者が保険金受取人に対して直接財産処分行為を行っていることまで要するものではないと解するのが相当である。
 もっとも、国税徴収法第39条が、国税債権の確保のための詐害行為取消権の行使による逸出財産の取戻しを行うのと同様の効果を得ようとするものであること、同条にいう「無償譲渡等の処分」が、第三者に異常な利益を与える積極財産の減少行為をいうものと解され、本件のような被保険者が死亡した場合にその遺族に保険金が支払われる生命保険契約が、被保険者の死亡後における遺族の生活を保障するために締結されるものであり、保険料の払込みが当該契約に基づく債務の履行にすぎないことからすれば、保険契約者の職業や地位、資力、遺族の人数・年齢、国税の納付・徴収と保険料の払込みとの関係等を総合的に考慮して、当該保険料の払込みと保険事故発生後の保険金の支払が保険金受取人に異常な利益を与えるものであるといえない限り、保険料の払込みが国税徴収法第39条の「無償譲渡等の処分」に当たらないと解するのが相当である。
 これを本件についてみると、本件滞納者は、滞納国税のほか多額の債務を抱えていた状況の下で、本件各滞納国税のうち法定納期限が最も古い国税の法定納期限の1年前の日以後本件滞納者が死亡するまでの納付回数は6回にとどまる一方、国税の月平均納付額の倍以上の保険料を毎月継続的に払い込んだこと、請求人が受領した死亡保険金の総額が極めて多額であって、遺族が請求人と成人していた子であることからすれば、本件滞納者が請求人とともに事業を営み、相当の収入を得ていたこと、また、一般的には遺族を受取人とする生命保険契約が、被保険者の死亡後における遺族の生活を保障するために締結されるものであり、本件においても、本件滞納者の死亡後における請求人と子の生活を保障するものとして締結されたものであると考えられることを考慮しても、本件各生命保険契約に基づいて本件滞納者がした保険料の払込みは、請求人に異常な利益を与えるための積極財産の減少行為として、国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分に当たるといわざるを得ない。
 そうすると、請求人は、本件滞納者が本件各生命保険契約に基づいてした保険料の払込みという無償譲渡等の処分により、本件滞納者の積極財産の減少額である払込保険料と同額の利益を受けたものと認められる。

参照条文等

国税徴収法第39条

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平成24年7月3日裁決

自動車の差押処分について、その財産の帰属を誤ったとした事例

裁決事例集 第88集

要旨

 原処分庁は、原処分庁が行った第三者名義で登録されていた自動車(本件自動車)に対する差押処分(本件差押処分)は、その所有権が滞納法人にあるのだから適法である旨主張する。
 しかしながら、本件自動車は、本件差押処分の前に、請求人が滞納法人に対する貸付金の代物弁済として、滞納法人からその所有権を取得したものである。また、請求人は審査請求中に自己の所有権に基づき本件自動車の登録を行っており、それに対して原処分庁は本件自動車について差押えの登録を行っていないから、請求人は、登録を行うことにより本件自動車の所有権を確定的に取得したことになり、その反面で滞納法人はその所有権を確定的に喪失したことに帰着するので、本件差押処分は違法な処分として取り消されるべきである。

参照条文等

国税徴収法第47条第1項第71条

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平成25年3月27日裁決

請求人が賃借人から敷金の返還義務を免除されたことが、国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分に当たらないとした事例

裁決事例集 第90集

要旨

 原処分庁は、請求人が、請求人所有の建物の賃借人(本件滞納法人)からの申出により、賃貸借契約(本件賃貸借契約)を賃貸借期間の途中で解約するに当たり、本件滞納法人との間でした、本件滞納法人が請求人に対して敷金(本件敷金)の返還請求権(本件敷金返還請求権)を放棄する旨の合意(本件合意)に基づき、その放棄を受けたことは、本件滞納法人による国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に規定する「債務の免除」に該当する旨主張する。
 しかしながら、国税徴収法第39条にいう債務の免除とは、広く第三者に利益を与えるものというと解されるところ、本件合意は、本件滞納法人がその賃借する建物を本件合意で定めたとおり明け渡すことを条件として、本件賃貸借契約の解約によって発生する損害賠償の額を予定し、その損害賠償請求権と本件敷金返還請求権等とを相殺することを定めたものであり、社会通念上、損害賠償の額を予定し、相殺することについて合理的な期待を有すると認められる範囲内にあるから、本件合意による約定は有効と認められ、これにより請求人の損害賠償の額が本件敷金等に相当する額に制限された上、その損害賠償請求権と本件敷金返還請求権等とが相殺されて消滅することとなることからすると、本件合意により請求人が利益を受けたということはできない。

参照条文等

国税徴収法第39条

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平成24年12月6日裁決

債権の差押処分について、その財産の帰属を誤ったとした事例

裁決事例集 第89集

ポイント

 本事例は、会社分割(新設分割)の対象とされた敷金返還請求権の帰属を、新設会社である請求人にあるとしたものである。

要旨

 原処分庁は、会社分割(新設分割)の対象とされた敷金返還請求権(本件債権)には、賃貸借契約において譲渡禁止の特約が定められている上、第三債務者は本件債権の承継について承諾していないことからすれば、本件債権は滞納法人に帰属する財産である旨主張する。
 しかしながら、譲渡禁止特約のある指名債権を譲受人が特約の存在を知って譲り受けた場合でも、債務者がその譲渡について承諾を与えたときは、当該債権譲渡は譲渡の時に遡って有効となると解されるところ、滞納法人は、第三債務者に対し本件債権を請求人に承継した旨の通知を行い、第三債務者は原処分庁の行った債権差押え(本件差押処分)より前に、本件債権が滞納法人から請求人に承継されたことについて書面による承諾をしたものと認めるのが相当である。したがって、本件差押処分は本件債権の移転に劣後しているので、本件差押処分は請求人に帰属する財産に対してなされた違法な処分である。

参照条文等

国税徴収法第62条

参考判決・裁決

最高裁昭和52年3月17日第一小法廷判決(民集31巻2号308頁)

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平成23年3月23日裁決

滞納者が受け取るべき信託受益権の譲渡代金の残余金等のうち、滞納者の債務を弁済した後に生じた余剰金は、実質的に滞納者から請求人に対する無償譲渡と認められるとした事例

裁決事例集 第82集

ポイント

 この事例は、滞納者と滞納者が主宰する法人が共有していた財産の譲渡代金が当該法人の預金口座に振り込まれた後、その一部が滞納者名義の預金口座、請求人名義の預金口座、請求人の妻名義の預金口座を経由して請求人の定期預金等の財産となったところ、滞納者は上記譲渡代金から自己及び上記法人の債務を弁済して余剰が出た場合には、請求人に贈与する意思を有し、当該余剰の交付や返還を求めていないから、実質的に滞納者の財産が無償譲渡されたと認定したものであり、また、その額が原処分の限度を超えるから、原処分は適法であるとしたものである。

要旨

 請求人は、本件滞納者と本件滞納者が代表取締役を務めていた本件法人の双方から、両者が共有していた不動産の信託受益権の譲渡代金の残余金等(本件残余金等)の管理処分を任され、本件残余金等が振り込まれた本件法人の預金口座をはじめ、本件滞納者、請求人及び請求人の妻名義の預金口座のすべてを請求人の管理下に置いて入出金を行っていた。また、本件滞納者は、上記譲渡代金によって、自己及び本件法人の債務を弁済して余剰が出た場合には、請求人に贈与する意思を有し、請求人に対し、当該余剰の交付や返還を求めていないところ、本件残余金等のうち本件滞納者が取得すべき額の金員が、本件法人の取得すべき額の金員とともに本件法人の預金口座に振り込まれ、その後、その一部が、請求人の管理下にあった本件滞納者名義の預金口座、請求人名義の預金口座及び請求人の妻名義の口座に振り替えられ、さらに、請求人名義の定期預金等として請求人の管理下に移転したと認められる。
 このような一連の事実経過をみると、実質的に、本件滞納者の財産が請求人に対して無償譲渡されたと認められ、その額は原処分の限度を超えるから、原処分は適法である。

参照条文等

国税徴収法第39条

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平成26年1月7日裁決

滞納者の預金口座から出金された金銭が請求人の預金口座に入金されたことは、国税徴収法第39条の無償譲渡には該当しないとした事例(第二次納税義務の納付告知処分・全部取消し)

裁決事例集 第94集

要旨

 原処分庁は、原処分庁が主たる納税者(本件滞納者)の滞納国税を徴収するために請求人に対して行った第二次納税義務の納付告知処分(本件納付告知処分)について、請求人と本件滞納者との間に債権債務関係はなく、本件滞納者の預金口座から出金された金銭(本件金員)が、請求人の預金口座(本件請求人口座)に入金されていたことから、請求人は本件滞納者から本件金員を無償で譲り受けており、本件納付告知処分は適法である旨主張する。
 しかしながら、本件金員が本件請求人口座に入金された後、請求人が本件請求人口座の預金を費消等することはなく、本件金員と同額の金員が、本件請求人口座から出金され、本件滞納者の代表取締役が実質的に支配する別法人(本件関連法人)の預金口座に入金された後、同代表取締役が所有していた自宅不動産の競落資金に充てられたことなどからすると、本件金員の請求人口座への入金は、本件関連法人によって競落資金として利用されるまでの資金移動の一過程であったというべきであり、請求人が本件滞納法人から金銭を無償で譲り受けたとは認められないことから、本件納付告知処分はその全部を取り消すべきである。

参照条文等

国税徴収法第39条

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平成17年4月1日裁決

譲渡担保権者に対する告知処分及び譲渡担保財産につきした差押処分は、国税徴収法第24条第1項ないし第3項の規定に従って適法になされているとした事例

裁決事例集 第69集 437頁

要旨

 請求人は、告知処分について、[1]徴収不足であることを請求人に明らかにしないでなされたものであり違法であること、[2]延納の担保権設定順位に瑕疵があること、[3]徴収不足となったのは、延納の担保権設定後の経済情勢の変動により担保不足となったことによるものであるから、このような徴収不足は原処分庁の責任で処理すべきこと、[4]請求人が譲渡担保権の実行を猶予していたのは、譲渡担保財産が滞納者の生活維持に不可欠であるという事情からであり、したがって、告知処分は不適切であること、また、差押処分について、[5]滞納者について滞納処分の停止に該当する事由があるから、差押処分は違法であることなどを主張する。
 しかしながら、[1]国税徴収法施行令第8条には、徴収すべき国税に不足すると判断した根拠は記載事項とされていないことから、当該根拠の記載の有無が本件告知処分の適法性に影響を及ぼすものではないこと、[2]そもそも、延納許可は滞納者に対してなされたものであり、請求人に対してなされたものではないことから、延納許可に伴う担保権設定順位に係る瑕疵を請求人は主張できる立場にはないこと、[3]原処分庁が、延納担保物件を換価しても経済情勢により滞納国税の額に対してなお徴収不足となることに責任をとらなければならないとする法令等による規定はないこと、[4]譲渡担保権者に対する物的納税責任は、国税徴収法第24条第1項及び第6項に規定する要件を満たすことで必然的に負うことになるものであり、仮に、請求人が人道的見地から担保権の実行を猶予していたと主張するような事情があったとしても、それが告知処分の違法性に影響を及ぼすものではないこと、[5]国税徴収法第153条第1項の規定は、差押えの制限についての規定ではないことから、告知処分及び差押処分の適法性及び妥当性に影響を及ぼすものではないこと、また、国税徴収法第153条の規定に基づく滞納処分の停止は、税務署長等の職権により行われ、たとえ同条第1項各号所定の要件に該当する場合であっても、その停止をするかどうかは税務署長等の裁量に委ねられていると解され、当審判所が滞納者の生活状況及び所有財産等を調査した限りにおいて、原処分庁が滞納処分の停止をしていないことについて、裁量権の逸脱は認められないこと、等から請求人の主張は採用することはできない。

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平成29年10月18日裁決

原処分庁による動産の差押処分が行われた時点において、当該動産は既に第三者へ譲渡されており、第三者対抗要件である引渡しも完了していたとして、当該差押えを取り消した事例(動産の差押処分・全部取消し)

裁決事例集 第109集

ポイント

 本事例は、原処分庁が行った動産の差押処分につき、当該動産は差押処分の時点で既に第三者へ譲渡されていたところ、第三者対抗要件たる引渡しについては占有改定により完了していたと認定したものである。

要旨

 原処分庁は、請求人と滞納法人との間で締結された合意書(本件合意書)には、建物(本件建物)の占有移転に係る記載はあるが、本件建物内にあった動産(本件動産)の占有移転に係る記載はなく、本件動産に対する差押処分(本件差押処分)時に、本件動産が請求人の所有物であったことを第三者が知り得るような明示もされていなかったことから、本件動産に係る占有改定の合意があったとはいえない上、本件建物の賃貸人は滞納法人が本件建物の賃借人であると認識していたことからしても、請求人は本件動産の引渡しを受けていない旨主張する。
 しかしながら、そもそも動産の引渡しには第三者が知り得るような明示が必要であるとする民法の条文や判例は見当たらないところ、請求人と滞納法人は、関係者への影響を最小限にすべく、事業の承継に必要な本件建物と本件動産を滞納法人から滞りなく請求人に承継させることを企図していたことからすると、請求人と滞納法人が、この企図に反して本件動産のみの占有を移転しないことは考えられず、たとえ、本件合意書にそのことが明示的に記載されていなくとも、本件建物の占有の移転だけでなく、本件建物内に存する本件動産の占有の移転にも合意するとともに、本件動産が現実に引き渡されるまでは本件動産を請求人のために占有することに合意したものと解するべきであり、さらに本件動産の引渡し(占有改定)は、請求人及び滞納法人間でできるものであって、上記認定が賃貸人の認識により左右されるものではないことからしても、請求人は、本件差押処分の前に、占有改定により本件動産の引渡しを受けていたといえるから、原処分庁の主張は採用できない 。

参照条文等

民法第178条、第182条、第183条 国税徴収法第47条第56条第60条

参考判決・裁決

大審院明治43年2月25日判決(民録16輯153頁)

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平成28年5月10日裁決

滞納者が自己の債務弁済に係る事務を請求人に委任していたことからすると、滞納者の預金口座から請求人の預金口座への振込入金は、当該委任に係る事務に関連して行われたものというべきであるから、当該入金をもって国税徴収法第39条が規定する無償譲渡等の処分があったということはできないとした事例(第二次納税義務の納付告知処分・全部取消し)

裁決事例集 第103集

ポイント

 本事例は、争点の判断に当たり、審理の範囲を原処分庁が主張する間接事実の有無のみに絞ることなく、原処分庁が主張していない間接事実を認定し、当該認定事実から課税等要件の充足を否定したものである。

要旨

 原処分庁は、滞納者の自宅売却代金(本件売却代金)の一部が滞納者の預金口座から請求人の預金口座に振込入金(本件入金)されたところ、①滞納者が請求人に対して本件入金に係る金員の返還を求める意思を示していないこと、②請求人が本件入金を自宅のリフォーム費用に充てていることなどから、本件入金は、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》が規定する無償譲渡等の処分に該当する旨主張する。
 しかしながら、滞納者が本件売却代金を原資とする滞納者の債務弁済に係る事務を請求人に委任していた事実(本件委任)が認められることからすると、本件入金は、請求人が本件委任に係る事務に関連して行ったものというべきであるから、本件入金をもって国税徴収法第39条が規定する無償譲渡等の処分があったということはできない。

参照条文等

国税徴収法第39条

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平成20年3月3日裁決

滞納者の破産手続開始決定後に行われた滞納者を譲渡担保設定者とする譲渡担保債権についての滞納処分が破産法第43条第1項の規定に反しないとした事例

裁決事例集 第75集 725頁

要旨

 譲渡担保の目的とされた将来生ずべき債権については、遅くともそれが発生したときに譲渡担保権者に移転すると解されるところ、本件譲渡担保債権は、滞納法人についての破産手続開始決定前に発生し、債権譲渡登記により債権譲渡の対抗要件を備えていたことからすれば、本件譲渡担保債権は破産財団を構成しないものと認められる。
  また、譲渡担保財産は完全に譲渡担保権者に移転するのではなく、譲渡担保設定者にも一定の物権が帰属するとの理論に立脚したとしても、破産手続において譲渡担保権は別除権と同様に取り扱われるものと解されていることからすれば、譲渡担保の被担保債権の弁済期が経過した後に設定者について破産手続が開始された場合、破産管財人は担保権者による別除権の行使としての譲渡担保権の実行を受忍する立場に立たされるものと解され、また、別除権者が法律に定められた方法によらないで別除権の目的財産を処分する権利を有するときは、裁判所は破産管財人の申立てによって別除権者がその処分をすべき期間を定めることができ、当該期間内に別除権者が目的財産を処分しないときに別除権者の処分権が失われることからすれば、譲渡担保の被担保債権の弁済期が到来した後に設定者について破産手続が開始された場合、その目的財産についての担保権者の処分権が失われるまでは、その目的財産の管理処分権が破産管財人に専属することはないと解されるのであるから、当該財産は破産財団を構成しないものと解される。さらに、国税徴収法第24条の規定は、すべての担保制度が租税の徴収の面からはできるだけ同一の取扱いを受けることが望ましいとの観点に立って設けられたものであり、その趣旨は、滞納者について破産手続開始の決定があった場合にも尊重されなければならないところ、別除権の実行が民事執行法その他の強制執行の手続に従って行われるときは、交付要求をすることによって国税が別除権の被担保債権に優先して配当を受けることになるが、譲渡担保の場合は、別除権の実行が私的実行の方法によって行われ、交付要求ができないため、破産手続開始後における譲渡担保財産に対する滞納処分が許されないとすれば、滞納者について破産手続が開始されたことによって、本来、国税に劣後して配当を受けるべきであった別除権の被担保債権が国税に優先して配当を受けるという極めて不合理な結果をもたらすことになるのであるから、破産手続開始後であっても譲渡担保財産に対する滞納処分は許容されると解される。
  これを本件についてみると、本件債権譲渡担保契約に係る被担保債権は、滞納法人についての破産手続開始の申立てによって弁済期が到来し、請求人が本件譲渡担保債権の第三債務者に対して債権譲渡登記がされている旨を通知したことにより、譲渡担保権の実行を開始したと認められるのであるから、本件譲渡担保債権は、破産財団を構成するものではないと解され、原処分庁がした滞納処分は国税徴収法第24条の趣旨に沿ったものと認められるから、破産法第43条の規定に反しないというべきである。
  なお、破産法第43条第1項にいう国税滞納処分とは、国税の徴収に従事する職員が自ら強制換価手続を行って国税の徴収を図る手続をいうのであるから、国税徴収法第24条第2項の告知処分が同条の国税滞納処分に当たらないことは明らかである。

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平成24年4月6日裁決

財団法人に対する寄附は、国税徴収法第39条に規定する無償譲渡等に当たるとした事例

裁決事例集 第87集

要旨

 請求人は、財団法人に対する寄附については、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に規定する無償譲渡等の処分に該当しない旨主張する。
 しかしながら、国税徴収法第39条に規定する無償譲渡等の処分は、国及び法人税法第2条《定義》第5号に規定する公共法人以外のものに対する処分に限られるところ、請求人は、国及び同号に規定する公共法人のいずれにも該当しない財団法人であることから、請求人に対する寄附は、国税徴収法第39条に規定する無償譲渡等の処分に該当する。

参照条文等

法人税法第2条第5号 国税徴収法第39条 国税徴収法施行令第14条

参考判決・裁決

東京高裁昭和57年10月18日判決(行集33巻10号2065頁)

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平成20年4月7日裁決

告知処分時において譲渡担保の目的とされた債権が譲渡担保財産として存続していたとした事例

裁決事例集 第75集 745頁

要旨

 一般に、譲渡担保権は、弁済や担保権の実行による被担保債権の消滅に伴い消滅すると解されており、国税徴収法第24条第7項の規定からすると、同条も通常は被担保債権が消滅した場合に譲渡担保権が消滅し、譲渡担保財産が存在しなくなることを前提に規定されているものと解されるから、譲渡担保権者がその意思表示により担保権の実行を開始しても、当該実行が完了するまで、すなわち、譲渡担保財産の適正な評価又は換価をした上で被担保債権の清算等を行い、消滅する被担保債権の額が確定して消滅するまでは譲渡担保権は消滅せず、譲渡担保権の設定された財産は、譲渡担保財産として存続するものと解され、この理は譲渡担保財産が債権である場合にも当てはまると考えられる。そして、譲渡担保財産が債権の場合、譲渡担保権者としては担保権の実行として現実に譲渡債権から回収した金額と同額の被担保債権を消滅させるというのが通常の意思であることからすると、当事者間でこれと異なる特段の合意をしない限り、譲渡担保権者が第三債務者から現実に譲渡債権を取り立てて被担保債権の弁済に充当するまでは被担保債権は消滅しないから、その時点までは担保権の実行は完了せず、国税徴収法第24条第1項にいう譲渡担保財産として存続すると解するのが相当である。
  本件においては、本件滞納者と請求人との間に、第三債務者から現実に譲渡債権を取り立てて被担保債権の弁済に充当する以前に譲渡債権をその券面額で被担保債権の弁済に充当して被担保債権を消滅させるなど通常の意思と異なる特段の合意があったことは認められず、請求人の譲渡担保に係る本件各債権の回収状況をみると、本件告知処分前に請求人が本件各債権を現実に取り立てて被担保債権の弁済に充当し、被担保債権が消滅して担保権の実行が完了したということもできないから、本件各債権は、本件告知処分時において、国税徴収法第24条第1項の規定に係る譲渡担保財産に該当する。

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令和元年7月8日裁決

差押処分の前に差押財産を商品売買契約により取得し、引渡しを受け対抗要件を備えたとの請求人の主張について、商品売買契約書により売買の意思表示は認められるものの、売買の意思表示が同契約書作成時にされたとは認められないとした事例(動産の差押処分・棄却)

裁決事例集 第116集

ポイント

 本事例は、直接証拠として提出された商品売買契約書について、その証拠力の適切な検討を踏まえて、請求人と滞納法人との商品売買契約の成否について、当事者の真意を事実認定のプロセスに則り適切に認定し、書証の区分による判断の枠組みに従い適切な法的構成により判断したものである。

要旨

 請求人は、原処分庁が差し押さえた各動産のうち動産1(動産1)の所有権は、請求人が徴収職員に提示した商品売買契約書(本件商品売買契約書)による契約(本件商品売買契約)により当該各動産の各差押処分時(本件各差押処分時)までに、滞納法人から請求人に移転している旨主張する。
 しかしながら、①本件商品売買契約書によって本件商品売買契約が本件各差押処分より前に成立しているとは認められないこと、②本件商品売買契約書に滞納法人の代表取締役として記名のある者は、本件商品売買契約時において滞納法人の業務について執行する権限を有していないこと、③本件商品売買契約に基づき滞納法人から請求人に対し本件各差押処分より前に動産1の引渡し(占有改定)が行われていたと認められないこと、以上から、本件商品売買契約により本件各差押処分時までに、動産1の所有権が滞納法人から請求人に移転していたとは認められない。
 また、請求人は、原処分庁が差し押さえた各動産のうち動産2(動産2)は、請求人から滞納法人に販売を委託したものであるとも主張するが、この主張を認めるに足りる証拠はないことから、本件各差押処分時における、動産2の所有者は滞納法人であると認められる。

参照条文等

民法第186条 国税徴収法第56条第1項 会社法第363条第1項 会社法第362条第2項第3号、第3項

参考判決・裁決

民法第186条 最高裁昭和41年12月20日第三小法廷判決(民集20巻10号2160頁)

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平成30年1月11日裁決

請求人が滞納者から財産分与により取得した財産の価額は不相当に過大ではないから無償譲渡等の処分があったとは認められないとして、国税徴収法第39条の第二次納税義務の告知処分の全部を取り消した事例(第二次納税義務の納付告知処分・全部取消し)

裁決事例集 第110集

ポイント

 本事例は、離婚に伴う財産分与が民法第768条の規定の趣旨に反して不相当に過大であるか否かは、財産の額や婚姻期間中の状況等の諸事情を考慮して、清算的要素、扶養的要素及び慰謝料的要素に相当する額をそれぞれ算定した上で判断するのが相当であるところ、請求人が滞納者から財産分与により取得した財産の価額は、上記要素に基づき算定した財産分与相当額を下回るものであり、不相当に過大ではないから、国税徴収法第39条に規定する無償譲渡等の処分があったとは認められないとしたものである。

要旨

 原処分庁は、滞納者(請求人の元夫)から請求人に対する預金債権及び生命保険契約等に係る解約返戻金の支払請求権(本件各債権)の譲渡は、滞納者が営んでいた事業(本件事業)の請求人への引継ぎに伴い無償で譲渡されたものであり、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に規定する「無償又は著しく低い額の対価による譲渡、債務の免除その他第三者に利益を与える処分」(無償譲渡等の処分)に該当する旨主張する。
 しかしながら、本件事業の引継ぎに伴い、滞納者から請求人に対し本件各債権の無償による譲渡があったとは認められず、滞納者と請求人の離婚協議の場で作成された合意書その他の状況等を踏まえると、本件各債権は離婚に伴う財産分与により滞納者から請求人に譲渡されたものと認めることが相当である。そして、離婚に伴う財産分与が民法第768条《財産分与》の規定の趣旨に反して不相当に過大であるか否かは、財産の額や婚姻期間中の状況等の諸事情を考慮して、清算的要素、扶養的要素及び慰謝料的要素に相当する額をそれぞれ算定した上で判断するのが相当であるところ、請求人が滞納者から財産分与により取得した財産の価額は、上記要素に基づき算定した財産分与相当額を下回るものであり、不相当に過大ではないから、無償譲渡等の処分があったとは認められない。

参照条文等

国税徴収法第39条 民法第768条

参考判決・裁決

最高裁昭和58年12月19日第二小法廷判決(民集37巻10号1532頁) 平成25年7月4日裁決(裁決事例集No.92)

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平成25年7月4日裁決

離婚に伴う財産分与が不相当に過大であるとして国税徴収法第39条に規定する「無償又は著しく低い額の対価による譲渡」があったとした事例

裁決事例集 第92集

要旨

 請求人は、離婚に伴い滞納者である夫から財産分与(本件財産分与)として不動産(本件分与財産)を譲り受けたが、本件財産分与は不相当に過大ではないから、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二納税義務》が規定する「無償又は著しく低い額の対価による譲渡」に該当しない旨主張する。
 しかしながら、離婚における財産分与が同条の「無償又は著しく低い額の対価による譲渡」等の処分に当たるか否かは、夫婦間における諸事情を考慮して清算的要素、扶養的要素及び慰謝料的要素を算定した上で当該財産分与が不相当に過大か否かを判断するのが相当であるところ、本件分与財産の価額は、財産分与相当額の8倍以上であるから、本件財産分与は、国税徴収法第39条が規定する「無償又は著しく低い額の対価による譲渡」に該当する。

参照条文等

民法第768条 国税徴収法第39条

参考判決・裁決

最高裁昭和58年12月19日第二小法廷判決(民集37巻10号1532頁) 最高裁昭和62年10月30日第三小法廷判決(集民152号93頁)

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令和7年3月17日裁決

引渡命令処分の対象となった動産は、同処分時において滞納者の所有財産であったと認められるとした事例(財産の引渡命令処分・棄却)

裁決事例集 第138集

ポイント

 本事例は、引渡命令処分の対象となった動産は、滞納者が取得したものと認められ、その後、第三者に譲渡したとは認められないから、同処分時において滞納者の所有財産であったと認められるとしたものである。

要旨

 請求人は、原処分庁が行った国税徴収法第58条《第三者が占有する動産等の差押手続》第2項の規定に基づく動産(本件動産)の引渡命令処分(本件処分)について、本件動産は、請求人が寄託契約に基づき参加人から寄託を受けて保管していることからすると、参加人の所有財産である可能性がある旨主張する。
 しかしながら、本件動産は、滞納者が取引先から購入して所有権を取得したと認められ、その後、滞納者が本件処分までの間に、参加人を含む第三者に所有権を移転したとは認められないから、本件動産は、本件処分時において滞納者の所有財産であったと認められる。

参照条文等

国税徴収法第58条第1項第2項

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令和5年12月14日裁決

役員退職給与の不相当に高額な部分が国税徴収法第39条に規定する無償譲渡等の処分に該当するとした事例(第二次納税義務の納付告知処分・棄却)

裁決事例集 第133集

ポイント

 本事例は、滞納会社が請求人に役員退職慰労金として支給した金額は、請求人の当該会社における役員としての職務執行及び功労との対価的均衡を著しく欠くものであり、その支給は、国税徴収法第39条に規定する無償譲渡等の処分に該当するとしたものである。

要旨

 請求人は、原処分庁がした第二次納税義務の納付告知処分について、①過去に、滞納会社(本件滞納会社)から役員退職慰労金として支給を受けた不動産(本件不動産)を本件滞納会社に売却したことにする売買契約(本件売買契約)をしたのは、帳簿上、本件滞納会社の使途不明金を請求人に対する役員貸付金に振り替えた残高を消し込むためであり、本件不動産の所有権は請求人が有したままであったから、本件不動産は、退職慰労金として請求人に譲渡された財産ではない旨、また、②滞納会社が請求人に本件不動産や生命保険契約(本件保険契約)の契約上の地位等を役員退職慰労金として支給したこと(本件支給)は、請求人の役員退職慰労金として相当と認められる金額の範囲内であり、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に規定する無償譲渡等の処分には該当しない旨主張する。
 しかしながら、上記の役員貸付金及びこれと相殺された本件売買契約に基づく売買代金には、いずれも実体があったというべきであることや、本件滞納会社が本件売買契約に沿って、本件不動産の所有権を取得した買主として振る舞っていたことなどからすれば、本件売買契約は、実体のない仮装売買であったとはいえない。
 また、国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分に該当するかどうかは、平均功績倍率法によって求めた相当とされる役員退職給与の金額と実際に支給された役員退職給与の金額の乖離の程度に加えて、当該役員の職務又は功労の内容、程度、勤務年数のほか当該役員退職給与が支給されるに至った具体的事情等をも考慮した上で判断するのが相当であるところ、本件支給の額は、平均功績倍率法により求められる請求人の役員退職慰労金として相当と認められる金額の7倍を超え、その乖離の程度が大きいことに加え、請求人の主な業務は社員教育であり、本件滞納会社の経営を担っていたとはいえないことや本件支給の決議当時の状況等に鑑みれば、本件支給がされたのは、本件滞納会社が滞納国税の徴収などを回避するためであり、本件支給の額は、本件不動産及び本件保険契約を請求人に得させるために設定されたもので、請求人の職務及び功労と役員退職慰労金の金額との対価的均衡を考慮した上で決定されたものではなかったと認められるから、本件支給は、同条に規定する無償譲渡等の処分に該当する。

参照条文等

国税徴収法第39条

参考判決・裁決

東京地裁平成9年8月8日判決(判タ977号111頁) 東京地裁令和2年3月24日判決(税資270号13403頁)

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令和2年7月9日裁決

滞納法人の売上げを譲り受けたことによる国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に基づく第二次納税義務の納付告知処分の取消請求において、請求人が受けた利益の一部は滞納法人に係る売上げではないとした事例

裁決事例集 第120集

ポイント

 滞納法人の売上除外等に加担した法人の口座へ売上金を振り込ませた後、請求人に当該売上金を現金又は振込みにより無償譲渡したとして告知処分された第二次納税義務について、請求人及び関係者らの答述等の信用性を検討した上で、上記加担した法人の口座に振り込まれた金員の一部は、滞納法人に係る売上げではないとして、当該第二次納税義務の一部を取り消したものである。

要旨

 原処分庁は、滞納法人が各取引先から受け取るべき売上金が、請求人の指示の下、請求人の知人が主宰する法人を発行元とした各請求書に基づき、請求人に交付されたことについて、請求人、滞納法人の代表者及び請求人の知人(請求人ら)が認めていることから、滞納法人から請求人に対して、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に規定する無償の譲渡があった旨主張する。
 しかしながら、一部の取引先について、請求人らから、滞納法人に帰属する売上げを請求したものであるとの具体的な申述はなく、当該取引先から原処分庁への回答書にも、滞納法人に帰属する売上げであるなどの具体的な記載もない。また、本件の全証拠を検討しても、滞納法人に係る売上げであると断定するに足りる証拠は認められない。

参照条文等

国税徴収法第39条第141条 国税徴収法施行令第14条第1項

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平成21年1月16日裁決

酒類を譲渡担保の目的財産とする譲渡担保設定契約が無効又は課税庁に対して相対的に無効ということはできないから、譲渡担保財産となっていた酒類が滞納者に帰属するとしてした差押処分は違法であり、したがって、当該差押処分に続く配当処分において滞納国税に配当された金額は、残余金として譲渡担保権者である請求人に交付すべきであるとした事例

裁決事例集 第77集 552頁

要旨

  1.  酒税法は、酒税の適正かつ確実な賦課徴収を図る観点から、酒類の製造と業として行う酒類の販売について免許を必要とする旨定めたものであって、酒類の製造免許又は販売業免許を有していない者が行う酒類の譲渡そのものを禁止したものではなく、酒税法及び他の法令においても酒類を譲渡担保の対象にすることを禁止した規定はないから、譲渡担保権者が酒類の製造免許又は販売業免許を有していないという理由のみで、酒類の譲渡担保設定契約が無効又は課税庁に対して相対的に無効であるということはできない。
     また、酒税は、その製造場から酒類が移出された場合にその製造者に課されるものであり、譲渡担保権の実行によってその製造場から酒類が移出された場合もその製造者に酒税が課されることになるが、そのことから直ちに、酒類を譲渡担保の目的とすることが移出酒税そのものを譲渡担保の目的にしているとは解し難く、一定の財産的価値を有し、譲渡できるものはすべて譲渡担保財産とすることができるところ、酒類を譲渡担保財産とすることは法令上禁止されておらず、譲渡担保権の実行による酒類の売却代金がすべて譲渡担保の被担保債権の弁済に充てられた場合には、移出酒税の納付・徴収が困難になることが考えられるものの、製造者が酒税を滞納した場合、製造者の総財産が滞納処分の対象となることを考えれば、酒類を譲渡担保の目的としたことによって酒税の徴収が全く不可能になるとは考えられないから、本件譲渡担保設定契約が詐害性や反社会性を有するとは認められず、たとえ移出酒税が酒類の販売価額の一部を構成しているとしても、本件酒類を譲渡担保の目的としたことが公序良俗に反するとはいえない。
  2.  先に行われた処分と後に行われた処分が相結合して一つの法律的効果の実現を目指し、これを完成させるものであるときは、原則として違法性が承継されると解されるところ、滞納処分における差押処分や公売処分、配当処分は、滞納となった国税債権の強制的実現という同一目的のために段階的に行われるものであるから、差押処分の違法性は、その後の公売処分や配当処分に承継されることとなる。そして、不動産等についての差押えに欠陥があることを理由とする不服申立てはその公売期日までにしなければならない旨を定めている国税徴収法第171条第1項第2号の規定は、差押処分の違法性がその後の公売処分や配当処分に承継されることを前提として、滞納処分手続の安定や換価手続により権利を承継した者等の権利利益の保護を図るため、不服申立てについて制限を定めたものと解されるところ、酒類のような動産については、このような不服申立てについての制限を定めた規定はないのであるから、動産の差押処分の違法性は配当処分にも承継され、したがって、請求人は、本件差押処分の欠陥を理由として、本件各配当処分の取消しを求めることができると解される。
     そして、国税徴収法第129条第1項は、配当を受ける債権の範囲を限定列挙したものと解されるから、本件譲渡担保の被担保債権は、同項に規定する債権には該当しないものの、本件差押処分は財産の帰属を誤った違法な差押えであり、本件差押処分の違法性は本件各配当処分に承継され、本件滞納国税は配当を受ける資格を有しないので、本件滞納国税に配当された金額は、残余金として請求人に交付すべきである。
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令和6年1月29日裁決

滞納者から請求人に対する振込みによる送金は、国税徴収法第39条に規定する無償による譲渡に該当するとした事例(第二次納税義務の納付告知処分・棄却)

裁決事例集 第134集

ポイント

 本事例は、生活費及び学資の前払としての送金が、社会通念上相当と認められる範囲の金銭の交付とは認められないとしたものである。

要旨

 請求人は、滞納者(本件亡滞納者)が、生前に請求人に対し行った請求人名義口座への振込みによる金銭の交付(本件金銭交付)は、別居していた請求人に対する将来の生活費及び医学部に進学する子のための学資等である婚姻費用の前払であり、社会通念上相当と認められる範囲の金銭の交付であるから、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に規定する無償による譲渡に該当しない旨主張する。
 しかしながら、本件亡滞納者は、請求人に対し、本件金銭交付に先立ち、相当程度に高額な金銭を送金し、本件金銭交付後も生活費として毎月一定額の送金を継続していること、本件金銭交付に係る金員が、将来的には、子の学資等の原資となるとしても、本件金銭交付の時点においては、学資等として具体的な支払の予定があったとはいえないことからすると、請求人親子と本件亡滞納者が別居し、請求人に収入がなかったために、本件亡滞納者において婚姻費用あるいは生活費及び学資等を負担する必要があったとしても、その前払として本件金銭交付をすべき必要があったとは認められない。したがって、本件金銭交付は、生活費及び学費等に充てるためにした社会通念上相当と認められる範囲の金銭交付に該当せず、無償による譲渡に該当する。
 また、請求人は、本件亡滞納者の各滞納国税(本件各滞納国税)に係る第二次納税義務の納付告知処分(本件納付告知処分)について、本件亡滞納者が、株式の売却代金や相当程度の給与収入を得ていたことからすると、原処分庁が遅滞なく滞納処分を行っていれば、徴収不足を生じることはなかったにもかかわらず、原処分庁が換価の猶予を行って本件亡滞納者の財産の散逸を見過ごしたために徴収不足となったのであるから、本件各滞納国税の徴収不足は、本件金銭交付に基因しない旨主張する。
 しかしながら、徴収不足が認められる場合とは、第二次納税義務に係る納付告知処分時の現況において、本来の納税義務者の財産で滞納処分により徴収することのできるものの価額が、同人の滞納国税の総額に満たないと客観的に認められる場合をいうものと解され、さらに、徴収不足が無償譲渡等の処分に基因すると認められるときとは、当該無償譲渡等の処分がなかったならば当該納付告知処分時現在の徴収不足を生じなかったであろうということができる場合をいうものと解するのが相当であるところ、本件各滞納国税の納付義務を承継した相続財産法人は、本件納付告知処分時において徴収不足であると認められ、本件金銭交付に係る金額は、本件各滞納国税の金額を上回ることからすると、本件金銭交付がなかったならば本件納付告知処分時の徴収不足を生じなかったであろうということができるから、本件各滞納国税の徴収不足は本件金銭交付に基因すると認められる。

参照条文等

国税徴収法第39条

参考判決・裁決

東京地裁昭和45年11月30日判決(行集21巻11・12号1392頁) 東京高裁昭和52年4月20日判決(訟月23巻6号1117頁)

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平成22年4月13日裁決

譲渡担保の目的とされた債権の譲渡に係る第三者対抗要件が滞納国税の法定納期限等以前に具備されていた事実は認められないから、当該債権が国税の法定納期限等以前に譲渡担保財産となったということはできないとした事例

裁決事例集 第79集

要旨

 国税の法定納期限等以前に、将来発生すべき債権を目的として、債権譲渡の効果の発生を留保する特段の付款のない譲渡担保契約が締結されたとしても、国税の法定納期限等以前に債権譲渡登記や国税徴収法第15条第2項各号に掲げる書類によって債権譲渡の第三者対抗要件が具備されていない限り、同法第24条第1項の適用は妨げられないと解されるところ、本件譲渡担保契約は、本件滞納国税の法定納期限等以前に締結されていることは認められるものの、第三者対抗要件が具備されたのは、本件滞納国税の法定納期限等後であるから、本件債権が本件滞納国税の法定納期限等以前に譲渡担保財産となっているとはいえず、よって、本件については、同法第24条第8項の規定により同条第1項を適用することができないということはできない。

参照条文等

国税徴収法第24条

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平成25年5月8日裁決

譲渡担保権者の物的納税責任に係る納付告知処分及び譲渡担保財産に対する差押処分について、その一部は譲渡担保財産ではないとした事例

裁決事例集 第91集

要旨

 原処分庁は、滞納者から請求人へ所有権移転の登記がされた各不動産が国税徴収法第24条《譲渡担保権者の物的納税責任》第1項に規定する譲渡担保財産であるとして、請求人に対し同条第2項の規定に基づき納付告知処分及び同条第3項の規定に基づき当該各不動産の差押処分を行った。
 しかしながら、当該各不動産のうち代物弁済を原因とする所有権移転登記を経由した不動産については、登記の推定力の妨げとなる反証があったとはいえず、請求人は当該不動産を代物弁済により取得したと認められることから、当該不動産が譲渡担保財産であるということはできない。

参照条文等

国税徴収法第24条

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平成29年3月3日裁決

滞納者から請求人に譲渡された各診療報酬債権は、譲渡担保財産に当たらないと認定した事例( 譲渡担保権者の物的納税責任に関する告知処分、 債権の各差押処分、 平成28年2月17日付、平成28年2月23日付及び平成28年3月16日付でされた換価代金等の各配当処分、 平成28年3月23日付及び平成28年3月24日付でされた換価代金等の各配当処分・ 全部取消し、 却下)

裁決事例集 第106集

ポイント

 本件における滞納者から請求人に対する診療報酬債権の譲渡契約を譲渡担保設定契約とみることは相当でない。

要旨

 原処分庁は、滞納者(本件滞納者)が将来取得する診療報酬債権(本件各債権)を請求人に一括で譲渡した取引(本件取引)については実質的な買戻権が設定され、売渡担保に相当する法律関係にあると認められ、また、将来の集合債権の譲渡が売買又は譲渡担保のいずれの法的性質を有するかの判断については、契約条件、取引の経済的実質その他の要素を総合的に評価するなど、実質においても担保取引として扱われるべきものかを判断することとなるところ、本件取引における事情を考慮すると、譲渡担保であることが強く推認され、本件各債権は、国税徴収法第24条《譲渡担保権者の物的納税責任》第1項に規定する譲渡担保財産に当たる旨主張する。
 しかしながら、譲渡担保設定契約は、法形式に着目すると、①金銭消費貸借契約などに基づく被担保債権が存在することが前提となる譲渡担保設定契約、②担保のための権利の移転につき売買の形式をとるもので、買戻特約付売買の形式をとる譲渡担保設定契約又は再売買の予約の形式をとる譲渡担保設定契約とに大別されるところ、本件取引においては、被担保債権は存在せず、本件取引に係る契約(本件契約)には、買戻特約又は再売買の予約は付されていないことから、本件取引は①及び②のいずれにも該当しない。また、本件契約には、本件滞納者が、第三債務者に信用不安等が生じた場合に請求人から本件各債権を買い戻す義務の定め及び請求人による本件各債権の処分を禁止又は制限する定めはなく、本件滞納者に本件各債権を買い戻す誘因も認められない。
 したがって、本件各債権は譲渡担保財産には当たらない。

参照条文等

国税徴収法第24条

参考判決・裁決

大審院昭和8年4月26日判決(民集12巻767頁)

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