裁決事例 納付義務の確定
要旨
国税通則法第27条にいう当該職員の調査とは、特定の国税につき調査権限を与えられている職員の調査をいうのであり、現行制度上これに該当する職員としては、国税庁及び各国税局に置かれる国税調査官のみであるから、国税査察官の調査は、同条にいう「国税局の当該職員の調査」には該当しない。
要旨
請求人は、更正通知書の相続税の総額の計算明細に係る3年以内の贈与加算額の更正額に更正前の金額と同額を記載するという誤記があることから、更正を取り消すべきであると主張するが、本件更正通知書の、[1]納付税額の計算明細に係る課税価格及び納付税額の更正額は、正当な額が記載されていること、[2]相続税の総額の計算明細に係る課税価格の合計額及び相続税の総額の更正額は、正当な額が記載されていること、[3]農業投資価格に基づく相続税の総額の計算明細に係る3年以内の贈与加算額の更正額は、本件贈与加算額に対応するものであるところ、その金額は正当な額が記載されていること等から判断すると、本件更正通知書の誤記は、更正の手続上軽微なかしにとどまり、処分の効力に影響がないと認めるのが相当である。
要旨
請求人に係る法人税法犯則事件判決は、検察官が修正申告と同額で主張、立証した課税標準に対して判断がなされたものであるから、国税通則法第23条第2項第1号にいう「判決」に該当し、同項に規定する「次の各号の一に該当する場合」に当たるとの請求人の主張について、同判決は、法人税法違反被告事件に対する刑事判決であって、課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについてなされたものではなく、また、課税権の存否、範囲を確定する効力を有するものでもないので、同判決の理由で示された事実の認定が請求人が主張するような事情の下でなされたかどうかを判断するまでもなく、同項第1号にいう「判決」には該当しない。
要旨
請求人は、清算結了登記が行われ法人格が消滅した後にされた税務調査及び更正処分等は、責任を持って対応できる者がおらず調査自体に問題があり、更正処分等は無効である旨主張する。
しかしながら、会社法第476条《清算株式会社の能力》の規定により、清算をする株式会社(清算株式会社)に、課されるべき国税又は納付すべき国税債務などの租税債務が存在する場合は、清算事務は未だ終了しておらず、清算株式会社は清算の目的の範囲内においてなお存続し、その法人格は消滅しないというべきである。そして、請求人には、清算結了登記後においても、課されるべき国税又は納付すべき国税債務などの租税債務等が存在するので、清算の目的の範囲内において請求人はなお存続し、法人格は消滅していないと認めるのが相当である。また、清算事務が終了していない以上清算人の職務も完了していないと認められること、清算人には清算結了登記の時から10年間は清算株式会社の帳簿・書類を保存する義務があること及び清算人は代表清算人として登記されていることから請求人の清算人は請求人の税務調査について責任を持って対応できる者であると認められる。
したがって、更正処分時において請求人の法人格は消滅していたとは認められず、また、原処分庁は、請求人の清算人に対して質問検査権を行使して調査を行った上で本件更正処分等を行っていることから、本件更正処分等は無効であるとは認められない。
参照条文等
要旨
原処分庁の申告指導により、昭和52年分の分離短期譲渡所得の金額について、譲渡資産の取得に要した借入金の利子を取得費に算入しないで確定申告をしたところ、その後の通達の改正により当該借入金利子は取得費に算入することに変更されたことに伴い、当該確定申告は過誤のあるものとなったが、その過誤につき請求人に何らの過失はなく、したがって、本件更正の請求は国税通則法第23条第2項の規定に基づく適法なものであるとすべきであり、仮に、当該更正の請求が期限後によるもので不適法であるとしても、原処分庁には申告の過誤を是正すべき職責があり、これをしないのは違法又は不当である旨の主張について、請求人の主張するような抽象的な基準の変更等の場合は、同項各号に規定するいずれの事由にも該当しないものと解されるから、当該更正の請求は不適法というべく、また、職権による更正を求めることは請求人の権利ではなく、これに応じない場合であってもそれが著しく正義公平に反するものでなければ、その不作為をもって直ちに違法とすることはできないものと解すべきであり、原処分庁が行った申告指導は、その当時においては、その解釈、取扱いは多数の判例によって支持されていたところであり、また、その後の改正による通達も、「今後処理するものからこれによることとする。」と定めており、それ以前の解釈、取扱いについては、それなりに正当なものであるとして肯定しているところであるから、原処分庁が職権による更正をしないとしても著しく正義公平に反する場合に該当せず、違法又は不当ではない。
要旨
請求人が、固定資産の取得に係る固定資産税精算金を損金の額に算入して申告したところ、原処分庁は、同精算金は取得した固定資産の取得価額に算入すべきものであり、損金算入できないとして更正処分を行った。これに対して、請求人は、当該申告に際して本来損金算入できる登録免許税及び不動産取得税を固定資産の取得価額に算入したことは会計処理の選択誤りであったとして、当該登録免許税等の額のうち更正処分の額について損金算入を求める更正の請求をしたものである。
しかしながら、請求人は、登録免許税等を固定資産の取得価額に算入することを確定申告において選択しており、当該会計処理に誤りはなかったというべきであり、さらに、請求人が主張する会計処理の選択誤りは、国税通則法第23条第1項第1号により更正の請求が認められる場合に当たらないことは明らかであるから、いずれにしても請求人の主張には理由がないことになるから、当該更正の請求に対する更正すべき理由がない旨の通知処分は適法である。
繰越控除の対象となる青色欠損金額は各事業年度の欠損金額であって、誤って記載された申告書別表一(一)の翌期繰越欠損金欄の金額を基に控除することはできないとした事例
裁決事例集 第63集 1頁
要旨
請求人は、法人税申告書別表一(一)の翌期繰越欠損金欄の記載金額そのものが更正処分の対象となる純損失等の金額であるから、たとえ、誤って記載された金額であっても、それが更正されていなければ、翌期繰越欠損金として確定し、翌期以降の事業年度において、前期から繰り越された欠損金額として控除できる旨主張する。
しかしながら、更正の対象となる純損失等の金額とは、法人税の場合、その事業年度以前の法人税申告書別表一(一)の欠損金額欄に記載された金額のうち、法人税法の規定により、翌事業年度以後の事業年度分の所得の計算上順次繰り越して控除できる金額であり、その金額は翌期繰越欠損金欄の記載金額に影響されるものではないから、誤って記載された金額を基に控除することはできず、請求人の主張には理由がない。
なお、法人税法57条によれば、繰越控除の対象となる青色欠損金額を法人税申告書に記載することは、その適用要件とされておらず、当該金額は各事業年度の正当な欠損金額を基として算定されるものであり、翌期繰越欠損金欄の記載は以後の所得計算の便宜のものにすぎないと認められる。
要旨
過年度の益金の額に算入した受取利息のうち、制限超過利息を本件調停により残存元本に充当したことに伴い受取利息の額を減額したことが、国税通則法第23条第2項第1号に規定する更正の請求ができる後発的事由に該当する旨の主張について、同項の規定は国税一般についての更正の請求の手続を一般的に定めたものであり、同項各号の一に該当することを理由として更正の請求がなされた場合には、個々の税法の課税要件の実体規定に基づいて課税標準等の変動をどのように取り扱うことが法律の規定に合致するか、その内容をよく吟味して判断すべきであるところ、現行の法人税法は、期間損益課税を建前とし、同法第22条第4項の規定により、一般に公正妥当な会計処理の基準に従って各事業年度の所得の金額の計算をするものとされ、後発的事由が生じた場合には、その事由の発生した事業年度の特別損失として「前期損益修正」の項目で会計処理をすることになり、一般にこの処理が定着しているものとみられるから、このような会計慣行を前提とする法人税法においては、後発的事由が生じたとしても、過年度にさかのぼって所得の金額を修正すべきではないと解するのが相当である。
請求人は、特定株式の移転の日において、K国の居住者であり、当該特定株式の移転に係るみなし譲渡益は、日本国政府とK国政府との租税協定の規定により、K国に課税権があるとし所得税の更正の請求をしたのに対し、原処分庁がした更正をすべき理由はないとの通知処分は適法であるとした事例(所得税及び復興特別所得税の更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分・棄却)
裁決事例集 第108集
ポイント
本事例は、特定株式の移転に係るみなし譲渡益のうち、請求人が日本国の居住者であったときに、新株予約権を行使したことにより生じた権利行使益については、日本国政府とK国政府との租税協定による制限を受けず、国内法の規定により、国内源泉所得として課税を受けることとなると判断したものである。
要旨
請求人は、新株予約権の行使により取得した株式に係る租税特別措置法第29条の2《特定の取締役等が受ける新株予約権等の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等》第4項の規定により譲渡とみなされるもの(本件みなし譲渡)のうち、同条第1項に規定する経済的利益(本件権利行使益)については、本件みなし譲渡の全てが株式の保有によって生じた値上がり益、すなわち株式譲渡益と考えるのが相当であり、また、請求人は同条第4項に規定する特定株式の移転の日においてK国の居住者であるから、本件権利行使益は、日本国政府とK国政府との租税協定(本件協定)の規定が適用され、K国に課税権がある旨主張する。
しかしながら、本件みなし譲渡に係る譲渡所得は、所得税法第161条《国内源泉所得》第1号に規定する資産の譲渡により生ずる国内源泉所得であるから、租税特別措置法第37条の12《恒久的施設を有しない非居住者の株式等の譲渡に係る国内源泉所得に対する課税の特例》第1項の規定により、その全体について15%の税率を適用して分離課税の対象になるところ、この国内法上の課税関係が本件協定上受ける制限についてみると、本件みなし譲渡に係る譲渡所得のうち本件権利行使益は、請求人が内国法人であるF社から付与を受けた新株予約権を日本国の居住者である時に行使することにより生じたものであるから、本件権利行使益に係る日本国の課税権については、本件協定による制限を受けないことになり、同項に基づいて15%の税率で分離課税の対象となる。したがって、本件権利行使益については、国内法の規定により、国内源泉所得として日本国で課税を受けることになる。
要旨
昭和49年に行われた本件宅地の贈与は、受贈者が贈与者である養父と同居して扶養することを条件とし、かつ、その同居及び扶養をしなくなったときは、その贈与はいつでも解除することができるという解除権留保付きの贈与契約に基づいてなされたものであったところ、請求人がその同居及び扶養をしなくなったことから、当該契約に基づいて昭和59年に当該贈与契約が解除され、本件宅地は養父の相続人に返還されたものであるから、その解除を理由としてなされた贈与税の更正の請求には、国税通則法第23条第2項第3号に定めるやむを得ない理由がある。
要旨
法定申告期限前に提出された還付申告書に係る更正の請求については、法定申告期限前に提出された還付申告書以外の納税申告書に係る更正の請求の取扱い並びに国税通則法施行令第25条“延滞税の計算期間の起算日の特例”第3号及び第29条“還付金に係る決定等の期間制限の起算日”の各規定における還付申告書の取扱いとの均衡からみて、還付申告書以外の納税申告書の場合と同様に、法定申告期限から1年以内はこれを行うことができるものと解するのが相当である。
還付金の還付は公的見解の表示に当たらないから、本則課税による確定申告に係る還付金の還付後、簡易課税によるべきであるとした本件更正処分は信義誠実の原則に反せず、また、同申告に正当な理由があるということはできないとした事例
裁決事例集 第64集 17頁
要旨
請求人は、関与税理士の事務員が、請求人の消費税の申告方式について原処分庁に確認したところ、原処分庁の職員は本則課税である旨回答し、また、平成8年課税期間から平成11年課税期間の本則課税による確定申告が受理され、平成8年課税期間及び平成10年課税期間については、申告書に記載された還付金が還付されているなど、請求人の消費税の申告方式につき、原処分庁が本則課税であるとの公的見解を表示していたものであるから、本件更正処分は信義誠実の原則に反し、また、平成10年課税期間に係る申告(本件申告)には国税通則法第65条第4項所定の「正当な理由」がある旨主張する。
しかしながら、原処分庁が請求人に対してその主張するような回答を行ったことは認められず、還付金の還付についても、消費税の申告方式が簡易課税であることを看過してなされたものであり、それをもって、当該申告書の記載内容が適正であるとの公的見解の表示ということはできないため、本件更正処分は信義誠実の原則に反しない。
また、請求人は、平成元年課税期間から平成3年課税期間まで簡易課税を適用した確定申告書を提出しており、消費税の申告方式を十分熟知していたと推定され、そして、請求人の関与税理士の交代に際し、消費税の申告方式についての確認がされていないことなどからすると、請求人は、平成8年課税期間につき本則課税として申告し、消費税が還付されたことから、直ちにその申告方式が適正と認められたものと誤解し、平成9年課税期間以降も申告方式を誤ったまま申告したものと認めるのが相当であるため、本件申告に国税通則法第65条第4項所定の「正当な理由」があるとは認められない。
要旨
請求人は、確定申告書につき関与税理士が無断で作成し、提出したものであると主張するが、[1]当該関与税理士は、請求人から法人設立以来引き続き各事業年度の決算書及び法人税申告書の作成等を委任されている者であること、[2]当該関与税理士は、代表者に対し、当該確定申告書及びその申告書に係る決算書について説明し、一応納得させた上で、当該確定申告書を提出していること、[3]当該関与税理士は、当該確定申告書を提出した月の顧問料及び決算報酬を受領していること、[4]当該確定申告書に係る税額の全部を納付していること及び[5]更正の請求に際し、当該確定申告書について、特に虚偽の申告である旨の主張をしていないこと等の事実から、当該確定申告書は、請求人の意思に基づいて提出したものと認めるのが相当である。
要旨
請求人は、更正の申出に対してその更正をする理由がない旨のお知らせ(以下「更正の申出に対するお知らせ」という。)の取消しを求めて審査請求をしている。
しかしながら、更正の申出の手続は、更正の請求とは異なり、法令上の根拠に基づくものではないから、更正の申出に対するお知らせは、直接納税者の権利義務を形成し又はその範囲を確定するものではなく、単に、納税者からの減額更正を求める申出を契機として、税務署長が当該納税者の納税申告書に記載された課税標準等又は税額等を更正する理由がない旨を知らせるものに過ぎない。
したがって、更正の申出に対するお知らせは、国税通則法第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第1項に規定する「国税に関する法律に基づく処分」に該当せず、その取消しを求める本件審査請求は不適法である。
不動産賃貸借契約の合意解除は国税通則法施行令第6条第1項第2号に規定する「当該契約の成立後生じたやむを得ない事情によって解除されたこと」に該当せず、更正の請求をすることはできないとした事例
裁決事例集 第52集 1頁
要旨
国税通則法第23条第2項第3号を受けた同法施行令第6条第1項第2号に規定する「当該契約の成立後生じたやむを得ない事情」とは、法定の解除事由がある場合、事情の変更により契約の効力を維持するのが不当な場合(契約内容に拘束力を認めるのが不当な場合)、その他これに類する客観的理由がある場合を指すものと解されるところ、本件においては契約の効力を維持したとしても不当とはいえず、他に契約を合意解除せざるを得ない客観的理由があったとは認められないから、請求人の主張する合意解除の事情は、「当該契約の成立後生じたやむを得ない事情」に該当せず、国税通則法第23条第2項に基づく更正の請求をすることはできない。
原処分庁が請求人の所得区分及び必要経費を否認して更正処分をした事案について、必要経費性を否認する支出を特定していない理由の提示に不備があると判断した事例(平成21年分~平成23年分の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第96集
ポイント
本事例は、支出の必要経費性を否認して更正処分をする場合、更正通知書に記載する理由には、否認する支出を特定して記載しなければならないとしたものである。
要旨
原処分庁は、更正通知書に記載された処分の理由は行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与えるという行政手続法第14条《不利益処分の理由の提示》第1項本文の法の趣旨が求める程度に記載されていると認められるからその記載に不備はない旨主張する。
しかしながら、更正通知書に記載された必要経費該当性の判断に係る理由のうち旅費交通費及び新聞図書費の一部の費用が必要経費に該当しない旨の理由の記載については、当該必要経費として認められない費用がどの費用(あるいは費用の一部)であるかが特定されておらず、当該費用の内容すら理解できないものであって、要件該当性をおよそ判断できないものであり、摘示された事実からは更正の理由を検証し、その適否について検討することはできない。そうすると、上記記載が行政手続法第14条第1項の法の趣旨目的を充足する程度に具体的に根拠を明示したとは評価できないから、これらの理由の記載には不備がある。
参照条文等
行政手続法第14条
参考判決・裁決
最高裁平成23年6月7日第三小法廷判決(民集65巻4号2081頁) 最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決(民集39巻3号850頁) 最高裁昭和47年12月5日第三小法廷判決(民集26巻10号1795頁)
要旨
課税処分の適否は、客観的な課税標準等の額が原処分において認定した額を上回るか否かにあること、また、行政手続において証拠能力の制限規定が設けられていないこと等に照らすと、仮に原処分の認定根拠とした資料の収集過程に違法があったとしても、その違法が刑罰法規に抵触するなど、著しい違法性を有する場合はともかく、そうでない場合には課税処分を取り消す必要はないと解すべきであるところ、本件資料は、収税官吏が裁判官の許可状を得て行った国税犯則取締法に基づく強制調査により収集したものであって、その強制調査に当たって行ったガラス戸の破壊や警察官の立合い・援助等の行為は、同法に基づく臨検・捜索・差押に際しての正当な行為であると認められ、その他当該収税官吏の行為が著しい違法性を有するとする証拠は認められない。
要旨
請求人と買受人との間の本件土地売買契約は有効に成立し、履行され、更に買受人は、引渡しを受けた本件土地の造成工事を行っていることから、当該契約に関して取消し又は解除すべき事由は認められないので、本件土地売買契約を解約し、同時に再度売り渡す契約を締結する旨の請求人及び買受人間の訴訟上の和解の実質は、本件土地の売買を確認し、追加金を買受人が請求人に支払う合意が成立したものと解せられる。したがって、本件和解は本件土地譲渡所得金額の計算に影響を及ぼさない。
現金主義による所得計算の特例(所得税法第67条の2)を適用して事業所得の計算をした者が発生主義による所得計算と比較して税負担が不利益になるという理由による更正の請求をすることは認められないとした事例
裁決事例集 第33集 1頁
要旨
現金主義による所得計算の特例の制度は、小規模な個人事業者のうちには発生主義によって所得金額を計算することになじめない者が多く、青色申告の帳簿書類の簡素化とあいまって設けられたもので、納税者の税負担の軽減を目的としたものではない。また、同特例を選択することは納税者の任意であるが、所得税法施行令第197条第2項により、その適用を受けることをやめようとする場合には、その年の3月15日までにその旨の届出書を提出しなければならない旨規定されているから、同特例を選択した場合、その適用をやめる手続を踏まなければ発生主義による所得計算をすることができないところ、請求人は係争年分について上記手続をしていない。したがって、請求人が係争年分の事業所得の金額を現金主義により計算したことは、所得税法の規定に基づいた適法な計算であり、当該計算に誤りがあったことも認められないから、更正の請求には理由がない。
相続税法第32条第3号に規定する更正の請求をすることができる期間の起算日は、遺留分減殺請求訴訟の和解が成立した日であり、適法な期間内に提出された更正の請求を前提とした同法第35条第3項第1号の規定に基づく原処分も適法であるとした事例
裁決事例集 第54集 109頁
要旨
請求人は、相続税法第32条第3号に規定する更正の請求をすることができる期間の起算日は、同条に定める「遺留分による減殺の請求があったこと」を知った日であり、本件においては、既に期間が徒過してなされた違法な更正の請求であることから、このような違法な更正の請求を前提としてなされた原処分も違法である旨主張する。
しかしながら、同条に定める「遺留分による減殺の請求があったこと」を知った日の期間の起算日は、遺留分減殺請求訴訟の和解が成立した日と解されることから、本件更正の請求は適法な更正の請求であり、原処分庁が、本件更正の請求があったことにより相続税法第35条第3項第1号の規定に基づき原処分を行ったことは適法である。
要旨
請求人は帳簿の記帳及び決算、預貯金の管理等の経理事務を長年にわたって妻に委任しており、経理事務には関与していないので、所得税調査に基づく修正申告のしょうようの際、調査担当者からの在宅要請にもかかわらず、請求人は、事業所得の計算根基については私よりむしろ妻の方が熟知しており、妻に話をしてほしい旨を言って外出し、その場に同席せず、妻も私が話を聞く旨申し立てた。
そこで、調査担当者は、調査した結果を妻に十分説明して修正申告書の提出方のしょうようを行ったところ、妻はそれに応じて署名押印し修正申告書を提出している。
これらの事実を総合判断すると、修正申告書は、妻が提出したものであるが、妻は請求人の経理及び税務上の全般の事務の処理について請求人から任されている者であって、請求人に代わって作成、提出したものと認められるから、当該修正申告書を無効とする理由はなく、請求人の主張には理由がない。
裁判所の関与なくなされた当事者間の合意は、国税通則法第23条第2項第1号の更正の請求の事由(判決と同一の効力を有する和解その他の行為)には該当しないとした事例
裁決事例集 第42集 1頁
要旨
国税通則法第23条第2項第1号の「判決と同一の効力を有する和解その他の行為」とは、国家機関としての裁判所がする私人間の紛争の法律的解決のための民事訴訟手続等におけるものを意味し、かつ、これに限定されている。
請求人は国税通則法第25条に規定する納税申告書を提出する義務があると認められる者には該当せず原処分庁は同条を根拠とする決定処分を行うことはできないとした事例
裁決事例集 第63集 11頁
要旨
原処分庁は、本件決定処分は国税通則法第25条の規定に基づき行ったものである旨主張する。
しかしながら、国税通則法第25条には、税務署長は納税申告書を提出する義務があると認められる者が当該申告書を提出しなかった場合には、当該申告書に係る課税標準等及び税額等を決定する旨規定されており、また、所得税法第121条には、その年中に支払を受けるべき給与等の額が2,000万円以下である給与所得を有する居住者で、一の給与等の支払者から給与等の支払を受け、かつ、当該給与等の全部について同法第183条及び同法第190条の規定による所得税を徴収された又はされるべきものは、同法第120条第1項に規定された申告書を提出することを要しない旨規定されているところ、請求人は、所得税法第121条に規定された確定申告書の提出を要しない場合に該当し、国税通則法第25条に規定する納税申告書を提出する義務があると認められる者には該当しないことから、原処分庁は同条を根拠とする決定処分を行うことはできないので原処分は取り消すのが相当である。
要旨
請求人は、前回調査担当者の指導内容に反する本件更正処分は、信義則の適用により取り消されるべき旨を主張する。
しかしながら、課税処分について、信義則を適用し租税法規に適合する課税処分を違法なものとして取り消すのは、納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしても、納税者の信頼を保護しなければならないという特別な事情がある場合と解すべきところ、[1]本件更正処分は、消費税法に基づいた適正な処分であり、その結果、請求人は正当な税額を負担することになったにすぎないこと、[2]本件更正処分に伴う加算税の賦課決定処分は、前回調査担当者の指導に誤りがあったことを理由に取り消されていること、[3]仮に、本件更正処分を取り消した場合には、請求人だけが正当な課税を免れ、かえって租税平等の原則に反する不当な結果を生ずることとなることからみれば、本件においては、納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしても、納税者の信頼を保護しなければならないという特別な事情があるとは認められず、本件更正処分を、信義則の適用によって取り消すのは相当ではない。
前事業年度に係る更正処分について訴訟係属中であっても、当該更正処分が無効と認められる場合でない以上、当該更正処分の結果に基づきなされた本件更正処分は適法であるとした事例
裁決事例集 第68集 50頁
要旨
一般に行政処分に重大かつ明白な瑕疵があり、そのため行政処分が無効と認められる場合であれば格別、そうでない以上、たとえ瑕疵があっても行政処分の安定を図る意味から、同処分が取消権限のある行政庁又は裁判所によって取り消されるまでは有効なものとして扱われると解されている。
これを本件についてみると、前事業年度に係る更正処分については当審判所は裁決によって適法である旨の判断を既に示しているところであり、また、当該更正処分に係る訴訟は現在においても係属中で、当該更正処分の取消判決もなされていない。
よって、原処分庁が前事業年度の更正処分の結果に基づき本件更正処分を行ったことに何ら違法はない。
更正の請求を提出することができる者は、納税申告書を提出した者に限られ、第三者が債権者代位権又は取消権の行使として、更正の請求を提出することはできないとした事例(平成24年分贈与税に係る更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分・棄却)
裁決事例集 第111集
ポイント
本事例は、国税通則法第23条第1項は、更正の請求をすることができる者として、納税申告書を提出した者と規定しており、その趣旨は、申告納税方式では、納付すべき税額は課税要件に関する事実関係に最も通じている納税者自らの申告により確定することが原則とされており、その税額が過大であった場合の是正手続も、納税申告書を提出した納税者自らが行うことが申告納税方式に適合するからであると解されるとしたものである。
要旨
請求人らは、贈与税の申告書を提出した者に対し有する金銭債権を保全するため、債権者代位権又は取立権の行使として、更正の請求をすることができる旨主張する。
しかしながら、国税通則法(平成27年法律第9号による改正前のもの)第23条《更正の請求》第1項は、更正の請求をすることができる者として納税申告書を提出した者と規定しており、その趣旨は、申告納税方式では、納付すべき税額は課税要件に関する事実関係に最も通じている納税者自らの申告により確定することが原則とされており、その税額が過大であった場合の是正手続も、納税申告書を提出した納税者自らが行うことが申告納税方式に適合するからであると解される。また、納税者の債権者等の第三者が更正の請求をすることができるとすると、更正をした場合には納税者の課税標準等又は税額等に係る情報を当該第三者に知らせることになり、国税通則法第126条及び国家公務員法第100条《秘密を守る義務》第1項に規定する守秘義務に抵触することとなるが、その解除を規定した法令は存在しない。したがって、国税通則法は更正の請求をすることができる者を、納税申告書を提出した者に限定していると解するのが相当である。
参照条文等
期限内又は期限後申告にかかわらず、当初の申告書が提出された場合には、その後に帳簿書類が押収されたとしても、国税通則法施行令第6条第1項第3号に規定する「やむを得ない事情」に該当しないとした事例
裁決事例集 第53集 78頁
要旨
一般的に、国税通則法第23条(更正の請求)第2項第3号及び同法施行令第6条(更正の請求)第1項第3号は納税申告書を提出した者又は同法第25条(決定)による決定を受けた者が、帳簿書類の押収等の事情により、課税標準等又は税額等を計算することができなかった場合において、その後(ただし、納税申告書を提出した者については、同法第23条第1項所定の期間経過後に限る。なお、上記の者による上記期間経過以前の更正の請求は、同項によりすることができる。)、帳簿書類の押収等の事情が消滅した時は、同項の規定にかかわらず、上記事情消滅の時から2か月以内に更正の請求をすることができると規定しているのであって、上記規定は、納税申告書を提出した者については、その提出前に帳簿書類の押収等の事情が生じていたことを前提としており、その後(同法第23条第1項所定の期間経過後)、押収されていた帳簿書類の還付等により上記事情が消滅して、帳簿書類等に基づいて課税標準等又は税額等を計算することによって、帳簿書類に基づく計算をすることができなかった当初の申告に係る納付すべき税額が過大であったこと等が初めて判明した場合に、帳簿書類等に基づき計算した課税標準等又は税額等に従った更正の請求をすることを認めたものであり、期限内又は期限後申告にかかわらず、当初の申告書が提出された場合には、その後に帳簿書類が押収されたとしても、国税通則法施行令第6条第1項第3号に規定する帳簿書類の押収その他やむを得ない事情に該当しない。
要旨
本件和解は、申告に係る課税標準等又は税額等の基礎となる事実に異動が生じたといえる内容ではないから、国税通則法第23条第2項第1号に掲げる「和解」には該当しない。
租税特別措置法第35条の居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用を受ける旨の確定申告書を提出した者が、その後に、住宅取得等特別控除の適用を受けるため、居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用を受けない旨の修正申告書を提出することは認められないとした事例
裁決事例集 第50集 13頁
要旨
請求人は、租税特別措置法第35条の居住用財産の譲渡所得の特別控除を適用して確定申告書を提出したのは錯誤に基づくものであり、当該特別控除の適用を受けないこととした修正申告書は国税通則法第19条により適法であるから、翌年分の住宅取得等特別控除の適用を認めるべきである旨主張するが、請求人の居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用を受ける旨記載した確定申告書は、当該特別控除の適用要件を具備した適法なものであるから、その後において、修正申告書によってその適用を受けない旨に変更することはできず、当該確定申告書の提出に錯誤は認められないから、翌年分については、租税特別措置法第41条第6項の規定により住宅取得等特別控除の適用はない。
要旨
請求人は、昭和62年に調査を受けて、印刷設備の減価償却費の計算誤りがあったなどとして修正申告をしたが、その際、その時点における修正申告のしょうように関する具体的状況は明らかでなく、仮に、請求人の主張するとおりの指導があったとしても、修正申告のしょうようをもって、直ちに納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示したとはいえず、また、請求人がその後毎年提出した確定申告書が、原処分庁によって受理され、これまでの調査において中古の印刷設備の耐用年数について何ら是正を求められなかったからといって、原処分庁が請求人の減価償却費の計算方法について積極的に是認したとはいえず、信頼の対象となるべき公的見解が表示されたとも認められない。
さらに、本件各更正処分は、本件各中古印刷設備の耐用年数の適用誤りがあったことから行われた適正な課税処分であり、その結果、請求人は、法律の規定に従って正当な法人税額を負担することになったにすぎず、請求人が本件各更正処分を受けたことにより、特に経済的不利益を被ったとは認められない。
以上のことからすれば、本件各更正処分には、信義則に反するとして取り消すような違法は認められない。
要旨
請求人が更正の請求の根拠とする確定判決は、請求人の納税義務に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となる共有持分の範囲、譲渡の有効性、代金等について何ら判断していないことが明らかであり、国税通則法第23条第2項第2号に定める「判決」には当たらないから、更正の請求には理由がない旨の通知処分に違法はない。
課税土地譲渡利益金額の計算上控除される譲渡経費の算定方法につき、確定申告において概算法を採用したときには、後日、実額配賦法を採用して更正の請求をすることはできないとした事例
裁決事例集 第38集 1頁
要旨
請求人が、課税土地譲渡利益金額の計算上控除される譲渡経費の額の計算に当たって概算法又は実額配賦法のいずれの方法を用いて申告するかは、専ら請求人の自由な選択にゆだねられているところ、請求人は、確定申告時において概算法を選択しているのであるから、仮に、その後、実額配賦法の方が譲渡経費の額が多くなるとしても、概算法による計算に誤りがない以上、国税通則法第23条第1項第1号に規定する「課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと」又は「当該計算に誤りがあったこと」のいずれの要件にも該当せず、したがって、同条に定める更正の請求をすることはできない。
請求人が主張していない行政手続法第14条に基づく理由の提示につき、審判所の調査の結果、理由の提示に不備があったと認定した事例( 平18.9.1~平19.8.31までの事業年度以後の法人税の青色申告の承認の取消処分、 平19.9.1~平20.8.31、平21.9.1~平22.8.31、平23.9.1~平24.8.31の各事業年度の法人税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分、 平19.9.1~平20.8.31、平21.9.1~平22.8.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分、 平18.9.1~平19.8.31、平20.9.1~平21.8.31の各事業年度の法人税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分、平22.9.1~平23.8.31の事業年度の法人税の更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、 平18.9.1~平19.8.31、平20.9.1~平21.8.31、平23.9.1~平24.8.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分、平19.9.1~平20.8.31、平21.9.1~平22.8.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の重加算税の各賦課決定処分、平22.9.1~平23.8.31の課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分・ 棄却、 一部取消し)
裁決事例集 第97集
要旨
原処分庁は、所得の金額の計算上、法人税の確定申告書において損金の額に算入していた青色欠損金額(当期控除額)を加算されることが更正通知書(本件通知書)に示されていないことについて、当期控除額を加算する理由(本件理由)は、青色申告の承認の取消処分に伴うものであり、法文の規定上明らかであることから、請求人においても容易に認識でき、理由の提示不備の違法はない旨主張する。
しかしながら、行政手続法第14条《不利益処分の理由の提示》第1項本文が、不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは、名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解されることから、更正処分をする際は、当該更正通知書自体に法の要求する程度にその理由を示す必要がある。よって、本件通知書は、本件理由の提示がなく、本件通知書自体から当期控除額を所得金額に加算する旨を特定し得る程度の理由を示していないことは明らかであるから、本件理由の提示不備の違法があると判断するのが相当である。なお、本件通知書は、本件理由の提示のないことが更正処分全体の理由の提示を不備なものとする程度に至るとは認められず、また、他に更正処分に係る理由の提示に不備があるとも認められない。
参照条文等
行政手続法第14条
参考判決・裁決
最高裁平成23年6月7日第三小法廷判決(民集65巻4号2081頁)
請求人に対する決定処分は、違法な調査に基づいて行われたものではないとした事例(平成21年分所得税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分並びに平成25年分所得税及び復興特別所得税に係る無申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第103集
ポイント
本事例は、先物取引の差金等決済に係る損失の繰越しのみを求めるための申告書を提出できる期限は、その申告書を提出することができる日から5年を経過する日までとした申告指導等に誤りはないとしたものである。
要旨
請求人は、原処分庁の行った平成21年分の所得税の決定処分(本件決定処分)は、①国税通則法(通則法)第74条の11《調査の終了の際の手続》第2項に規定する調査結果の説明を口頭で行っていないなど、調査終了の際の手続が不十分であること、②平成20年分の所得税につき、少なくとも法定申告期限から7年間は期限後申告が可能であったにもかかわらず、原処分庁が請求人に対して、法定申告期限から5年間が期限後申告書を提出できる期限であるとの指導(本件申告指導)をし、請求人は、不当な本件申告指導により、平成20年分の所得税の期限後申告書の提出を制限され、結果、平成21年分の所得税において、前年分の先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除が不可能な状態を強いられ、その後に本件決定処分がなされたという事情があることから、通則法第25条《決定》に基づく適法な調査によるものとはいえず、取り消されるべきである旨主張する。
しかしながら、上記①の主張について、本件における調査手続には、課税処分を取り消すべき違法な点はなく、また、上記②の主張について、請求人の平成20年分の所得税の期限後申告書は、その申告書を提出できる日から5年を経過する日が提出できる期限であると解されるところ、本件申告指導を行った時点において、既に当該期限を経過していたのであるから、本件申告指導により平成20年分の期限後申告を行う権利を制限されたとする請求人の主張はその前提を欠く。したがって、本件決定処分は、通則法第25条に規定する「調査」に基づいて適法に行われたものであり、取り消すべき違法はない。
参照条文等
参考判決・裁決
富山地裁平成19年3月14日判決(税資257号順号10655) 名古屋高裁金沢支部平成19年9月12日判決(税資257号順号10773) 水戸地裁平成21年2月17日判決(税資259号順号11142)
不動産売買契約の解除に伴う損失は当該契約解除のあった日の属する事業年度の所得金額の計算上、損金の額に算入すべきものであって、国税通則法第23条第2項の規定により、そ及して所得金額を減額修正することはできないとした事例
裁決事例集 第46集 6頁
要旨
国税通則法第23条第2項の各号に該当する後発的事由が発生しても、個々の税法の課税要件の実体規定に基づき、課税標準等の変動をどう処理すべきかその内容を検討し判断すべきであり、後発的事由が同項の各号に該当することのみをもって当然に更正の請求ができると解すべきでない。
不動産売買契約の解除に伴う損失は、法人税法第22条第4項の規定による一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従い、当該契約解除のあった日の属する昭和54年4月期の所得金額の計算上、損金の額に算入すべきものであるから、国税通則法第23条第2項の規定を適用し、当該売買契約が締結された昭和49年4月期にそ及して所得金額を減額修正すべきものではない。
出資口の譲渡について、売買契約の要素に錯誤があるとして契約解除したことが、国税通則法第23条第2項に規定する「やむを得ない理由」に該当しないとした事例
裁決事例集 第65集 9頁
要旨
請求人は、保有していた同族会社の出資口の譲渡について、本件売買契約に当たっては、譲受人に新たな課税関係が生じないことが重要な要素となっていたのであるから、重要な要素に錯誤があり、当該契約を解除したことが国税通則法第23条第2項に規定する後発的な理由に該当し、更正の請求ができる旨主張する。
しかしながら、当該契約の要素の錯誤は、[1]当該契約は口頭で行なわれ、請求人の主張する事情が売買契約の条件として表示されていたものとは認められないこと、[2]当該契約の背景には次世代への事業承継及び経営基盤の安定があったものと認められること、[3]出資口の時価の算定方法は財産評価基本通達に明示されていることから、当該契約を成すに当たっての動機が民法第95条の規定により、当該契約の重要な要素として保護しなければならないものとまで解することはできない。そして、当事者の無効確認は、[1]価額があまりにも低いと贈与税等の問題が起きると認識しながらも財産評価基本通達によって評価をしていないのであるから、近隣の法人及び同業種の法人の株価などを参考にして実際の評価の7分の1の価格にしたことは評価方法の不知による個人的判断に基づく計算方法の誤りであって、[2]譲受人に新たな課税関係が発生しないことが本件売買契約の最重要な関心事であったとするならば不正確であることを自認しながら著しく低い価格で当該契約を成したのは法の不知であり、[3]原処分庁からの指摘後に当該契約無効の主張をしていることから、譲受人の贈与税の負担を免れるために行なわれた親族間における当事者の合意による契約解除であると認めるのが相当である。
そうすると、この合意解除は請求人の個人的、主観的な事由によるものであって、国税通則法施行令第6条第1項第2号に規定する「当該契約成立後生じたやむを得ない事情」に当たらない。したがって、国税通則法第23条第2項第3号に規定する「やむを得ない理由」には該当せず、更正の請求ができる場合には当たらない。
要旨
国税通則法第23条第2項第1号の「判決」は、申告等に係る課税標準又は税額等の計算の基礎となった事実についての、私法行為又は行政行為上の紛争を解決することを目的とする民事事件の判決を意味し、犯罪事実の存否範囲を確定するにすぎない刑事事件の判決は含まれない。
要旨
いわゆる少額配当等を有する者が、少額配当等に係る配当所得の金額を除外したところにより総所得金額を計算して所得税の確定申告書を提出している以上、租税特別措置法第8条の5“確定申告を要しない配当所得”第1項の規定を適用したものとして取り扱われることとなるから、請求人が確定申告において、少額配当等に係る配当所得の金額を失念して申告額に含めなかったことは、国税通則法第23条第1項に規定する「申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったこと」という場合には該当しないこととなる。
したがって、原処分庁が本件少額配当等に係る部分の配当について請求人からの更正の請求を認めなかったことは相当である。
帳簿を作成していない青色申告事業者に対する更正処分の理由付記の程度について、帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合に該当することから、理由付記制度の趣旨目的を充足する程度に記載すればよいとした事例( 平成17年分、平成19年分、平成22年分及び平成23年分の所得税の各更正処分並びに重加算税の各賦課決定処分、 平成18年分、平成20年分及び平成21年分の所得税の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、 平20.1.1~平20.12.31、平22.1.1~平23.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各決定処分並びに無申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第98集
要旨
請求人は、青色申告者である請求人に対する所得税の更正処分(本件所得税更正処分)に係る通知書(本件更正通知書)には、調査による計数上の記載や処分の結果のみが記載されているだけで、原処分庁の判断根拠が全く記載されておらず、本件更正通知書の理由付記には、本件所得税更正処分を取り消すべき不備がある旨主張する。
しかしながら、請求人は、請求人の事業所得を生ずべき業務について、集計表等を作成するだけで日々の取引を記録する帳簿を作成していないことから、本件所得税更正処分は、帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合に該当するところ、原処分庁は、本件更正通知書において、事業所得に係る総収入金額については取引先ごとに取引期間及び年間の売上金額を一覧表で明らかにしており、必要経費については計上漏れとして認定した仕入金額等の支払先及び年間の支払合計金額などを記載していることからすれば、本件更正通知書に記載された理由は、原処分庁の恣意抑制及び納税者の不服申立ての便宜という理由付記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的な記載がされていると認められることから、本件所得税更正処分を取り消すべき不備はない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決(民集39巻3号850頁) 最高裁昭和38年5月31日第二小法廷判決(民集17巻4号617頁) 最高裁平成23年6月7日第三小法廷判決(民集65巻4号2081頁) 平成26年9月1日裁決(裁決事例集No.96)
年末調整を受けた給与所得者が、扶養親族に該当しない親族を給与等の支払者に扶養親族として届出て扶養控除の適用を受けていた場合において、当該給与所得者は納税申告書を提出する義務のある者には該当しないから、扶養控除を否認する決定処分は違法であるとした事例
裁決事例集 第72集 25頁
要旨
請求人は、請求人の母親は請求人とは同居していないが、請求人が母親に住宅を提供し、費用を負担していることは、請求人が母親に対して月額約10万円程度の家賃相当額を援助していることになり、母親は請求人の扶養親族として認められるべきであるから、本件決定処分は違法である旨主張する。
一方、原処分庁は、①請求人は、住宅の固定資産税及び火災保険料の負担はしているものの、生活費の送金は行っていないことから、請求人と母親とは生計を一にするものとは認められず、母親は請求人の扶養親族に該当しないこと、また、②請求人は平成17年2月にA社を退職しており、各年分の扶養控除誤りをA社において是正し、徴収不足税額を徴収することができず、この場合には所得税基本通達194~198共-2のただし書により、A社に徴収不足税額の徴収を強いて追求しないものと考えられることから、請求人は、国税通則法第25条に規定する「納税申告書を提出する義務があると認められる者が当該申告書を提出しなかった場合」に該当し、本件決定処分は適法である旨主張する。
しかしながら、所得税法第121条第1項には、その年中に支払を受けるべき給与等の額が2,000万円以下である給与所得を有する居住者で、一の給与等の支払者から給与等の支払を受け、かつ、当該給与等の全部について同法第183条又は同法第190条の規定による所得税を徴収された又はされるべき場合において、給与所得及び退職所得以外の所得金額が20万円以下であるときは、同法第120条第1項の規定にかかわらず同項の規定による申告書を提出することを要しない旨規定されている。
また、源泉所得税と申告所得税との各租税債権の間には同一性がなく、源泉所得税の納税に関しては、国と法律関係を有するのは支払者であって、国と受給者との間には直接の法律関係は生じないものとされており(最高裁平成4年2月18日判決)、源泉所得税の徴収、納付に不足がある場合には、税務署長は、所得税法第221条の規定に基づき源泉徴収義務者たる支払者からその不足分を徴収することになる。
なお、所得税基本通達194~198共-2のただし書の取扱いは、あくまでも扶養控除等申告書等の記載事項に誤りがあったことによる徴収不足額の強制徴収に関するものであって、同取扱いの適用を受けることをもって、上記の給与所得者について確定申告を要しない場合の規定が排除され、所得税法第120条の規定が代替的に適用されるものではない。
したがって、もともと所得税法第121条第1項の規定の適用を受ける者について国税通則法第25条を適用する余地はない。
これを本件についてみると、請求人の各年分における所得税については、所得税法第121条第1項に規定する確定申告を要しない場合に該当することから、請求人につき国税通則法第25条に規定する納税申告書を提出する義務があるとは認められず、同条を根拠とする決定処分を行うことはできない。以上のことから、請求人の母親が請求人の扶養親族に該当するか否かについて判断するまでもなく、本件決定処分は違法であり、いずれもその全部を取り消すべきである。
要旨
請求人は、本件修正申告書は、原処分庁の度重なるしょうようによって、本件工事が個人的取引であると認識しつつも、請求人の無知によって誤って提出したものであるから無効である旨主張する。
しかしながら、本件工事に係る請求人の前代表者は本件調査に立ち会っており、また、修正申告のしょうようの際、原処分庁は現代表者と前代表者が同席しているところで、本件工事に係る売上及び原価が計上漏れとなっていることを指摘している事実が認められる。
さらに、本件修正申告書は調査終了後相当期間経過した日後に提出されていることから、請求人において十分に検討の上提出したものと認められる。
以上のとおり、請求人は、本件工事に係る売上及び原価が請求人に帰属することを十分認識して本件修正申告書を提出したものと認めるのが相当であり、本件修正申告書を提出したことについて明白かつ重大な錯誤があるとは認められないから、本件修正申告書は無効ではない。
ポイント
本事例は、請求人が確定申告書に記載した「還付される税金」を原処分庁が一旦還付した後に更正処分をしたことについて、当該申告書は請求人の妻が作成し、郵送で提出されていること及び税務官庁が当該申告書の作成を指導した事実が確認できないことから、当該申告書の作成について税務官庁が請求人に対して信頼の対象となる公的見解を表示したとは認められず、租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお当該更正処分に係る課税を免れしめて請求人の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情はないことから、信義則を適用する余地はないとしたものである。
要旨
請求人は、原処分庁が確定申告書(本件申告書)に記載された「還付される税金」と同額を還付しているなど、本件申告書の記載内容は適正であるとの公的見解を表示したものであるから、原処分庁の行った更正処分(本件更正処分)により新たに納付すべきことになった税額のうち、すでに還付した税額(本件還付金)に係る処分は信義誠実の原則(信義則)に反し違法であり、本件更正処分のうち本件還付金の部分は取り消されるべきである旨主張する。
しかしながら、本件申告書は、請求人の妻がパンフレットを見ながら作成し、郵送で提出されていること及び税務官庁が本件申告書の作成を指導した事実が確認できないことから、本件申告書の作成について税務官庁が請求人に対して信頼の対象となる公的見解を表示したとは認められない。また、原処分庁は、所得税法第138条《源泉徴収税額等の還付》第1項及び所得税法施行令第267条《確定申告による還付》第4項の規定に従い本件還付金を還付し、国税収納金整理資金に関する法律の規定に基づき国税還付金振込通知書を送付したに過ぎず、これらの事実をもって、税務官庁が請求人に対し本件申告書の記載内容は適正であるとの公的見解を表示したとは認められない。よって、請求人には、租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお本件更正処分に係る課税を免れしめて請求人の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情はなく、信義則を適用する余地はない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和62年10月30日第三小法廷判決(税資160号542頁)
免税事業者が控除不足額の記載をして提出した還付申告書は、国税通則法第24条に規定する納税申告書に該当し、かつ、課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったときに該当するものであるから、仕入れに係る消費税額の控除不足額がないものとしてされた更正処分は適法であるとした事例
裁決事例集 第79集
要旨
請求人は、課税事業者選択届出特例承認申請の却下通知処分が取り消されないのであれば、請求人は免税事業者であることになるから、申告そのものが認められないはずであり、本件更正処分がされること自体が誤りである旨主張する。
しかしながら、国税通則法第24条は、納税申告書(還付金の還付を受けるための申告書を含む。以下同じ。)の提出があった場合において、その納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったときは、当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正する旨規定している。
そして、免税事業者については、消費税法第30条第1項及び同法第52条第1項の規定の適用はなく、課税仕入れに係る消費税額を控除することはできないから、当該申告書に仕入れに係る消費税額の控除不足額の記載があっても、当該不足額に相当する消費税額の還付を受けることはできないところ、請求人が提出した本件還付申告書は、国税通則法第24条に規定する納税申告書に該当し、かつ、課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったときに該当するものであるから、仕入れに係る消費税額の控除不足額がないものとしてされた本件更正処分は適法である。
参照条文等
ポイント
本事例は、処分通知書に記載すべき理由は、行政庁の恣意の抑制及び処分の名宛人の不服申立ての便宜という理由提示の制度趣旨を充足する程度に記載すれば不備はないとしたものである。
要旨
請求人は、相続税の更正処分に係る通知書(本件通知書)に記載された処分理由には、課税価格に加算される本件他の相続人らの相続時精算課税適用財産及び歴年課税分の贈与財産(本件贈与財産)の価額のそれぞれの合計額が記載されているものの、その明細が記載されておらず、かかる記載内容では、処分の基礎となる具体的な事実を知りえず、不服申立ての便宜を図った行政手続法第14条《不利益処分の理由の提示》の理由提示の趣旨に反することから、原処分を取り消すべき違法がある旨主張する。
しかしながら、本件贈与財産の課税価格の合計額への加算に係る提示理由には、本件贈与財産について、それぞれ合計額が記載されているところ、本件贈与財産の合計額が分かれば、課税価格の合計額を算出することができるのであるから、当該記載により、原処分庁が相続税額を算出した過程を示したものといえる上に、そもそも、課税庁は、相続時精算課税適用財産の価額及び暦年課税分の贈与財産の価額を課税価格の合計額に加算するに当たっては、他の共同相続人等から提出された申告書の記載又は同人等に対する更正処分の内容等を基に相続税額の計算をするのであるから、この点に課税庁の恣意が入り込む余地は乏しく、合計額のみの記載であっても、行政庁の恣意抑制という見地から欠けるところはない。さらに、相続時精算課税適用財産の価額及び暦年課税分の贈与財産の価額については、それぞれの合計額が記載されていれば、納税者は課税価格の合計額を算出することが可能であり、記載された合計額と納税者が認識しているこれらの合計額とを比較して、不服申立ての要否を判断することが可能といえるから、処分の名宛人の不服申立ての便宜という見地からも欠けるところはない。したがって、本件通知書に記載された処分理由は、理由提示の趣旨目的を充足する程度に処分の理由を具体的に明示したものと認めることができ、行政手続法第14条第1項本文の要求する理由提示として不備はないから、原処分を取り消すべき違法はない。
参照条文等
行政手続法第14条
参考判決・裁決
最高裁平成23年6月7日第三小法廷判決(民集65巻4号2081頁) 東京地裁昭和48年2月20日判決(税資69号461頁)
分離長期譲渡所得等について、保証債務の履行のための譲渡に関する課税の特例を適用すべきであるとしてなされた更正の請求に対し、確定申告書にその旨の記載がなく、また、その旨の記載がなかったことについてやむを得ない事情があるとは認められないとして、当該特例を適用することはできないと判断した事例
裁決事例集 第68集 23頁
要旨
所得税法第64条第3項及び第4項によれば、同法第152条の規定による更正の請求をする場合を除き、確定申告書に保証債務の特例の適用を受ける旨の記載がある場合に限り本件特例の適用があり、確定申告書にその旨の記載がない場合にも、その旨の記載がなかったことについてやむを得ない事情があると認められるときは、本件特例を適用することができる。
これを本件についてみると、本件申告書に本件特例の適用を受ける旨の記載がなく、また、その旨の記載がなかったことについてやむを得ない事情があるとは認められないから、本件特例を適用することはできない。
そうすると、債務保証の事実、求償権行使不能の事実等の本件特例の適用を受けるための実体的要件の有無を判断するまでもなく、本件申告書に記載された課税標準等若しくは税額等の計算は、国税通則法第23条第1項第1号に規定する「国税に関する法律の規定に従っていなかったこと」又は「当該計算に誤りがあったこと」のいずれにも該当しないから、本件更正の請求には理由がない。
要旨
- 請求人は、本件更正の請求は、国税通則法第23条(更正の請求)第2項第1号及び相続税法第32条(更正の請求の特則)第1号の両規定に基づく請求であり、それらの請求ができることとなった日は本件和解の成立した日の翌日からであるから、その請求の期限は、国税通則法第23条第2項の規定によるのではなく、請求人の有利な相続税法第32条第1号の規定によるべきである旨主張する。
しかしながら、国税通則法第23条第2項第1号に規定する更正の請求事由と相続税法第32条第1号に規定する更正の請求事由は、その請求事由を異にしていることが認められ、また、相続税法第32条第1号に規定する更正の請求の特則は、相続税法特有の事由であることから、国税通則法第23条に規定する更正の請求の期限後においても後発的事由に基づき更正の請求を認めるために特例的に設けられた特別規定であることからみても、これらの規定は、それぞれ異なった事実関係において適用されるべきものであり、両規定に基づく更正の請求ができると解するのは相当といえない。 - 請求人は、本件土地を相続財産から除外すべきであると主張するが、本件土地を相続により取得した財産であるとした当初申告を是正するための更正の請求は、国税通則法第23条第2項第1号の規定に基づくものであり、本件更正の請求は、請求期限を徒過してなされた不適法なものであるから、相続税の課税価格の計算に当たっては、本件土地が相続により取得した財産であることを争い得なくなったことになる。
本件修正申告書は、原処分庁があらかじめ用意した修正申告書に押印を強要され、わずか30分程度の間に提出したもので、任意の意思に基づくものではない旨の請求人の主張を排斥した事例
裁決事例集 第65集 1頁
要旨
請求人は、本件各修正申告書は、原処分庁があらかじめ用意していた請求人の住所・氏名が記入された修正申告書に押印を強要され、わずか30分程度の間に提出したもので、請求人の任意の意思に基づくものではないことから、当該修正申告は無効である旨主張する。
しかしながら、調査担当職員の答述は、各認定事実から見ても、十分信ぴょう性が認められるから、請求人が調査担当職員の強要により本件各修正申告書を提出したという事実は認められず、請求人自らが当該修正申告書に署名、押印して、それを提出したと認めるのが相当である。また、これに反する証拠も認められないことから、請求人の主張は採用できない。したがって、請求人の本件各修正申告に係る納付すべき税額は、税法上有効に確定していることが認められる。
相続税の確定申告書において、租税特別措置法第69条の3の適用を受けるために、いったん宅地を適法に選択した以上、後日、他の宅地への選択替えを求めて更正の請求をすることはできないとした事例
裁決事例集 第46集 1頁
要旨
国税通則法第23条第1項第1号に規定する更正の請求は、納付すべき税額が、納税申告書に記載した課税標準等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと等により過大であるときになしうるものであるから、所得計算の特例等の規定で、納税者に一定事項の申告及び選択等を条件としてその規定の適用を受けることをゆだねている場合に、いったん自由な意思でこれらの規定に従い、かつ、適法な計算に基づいて申告書を提出し税額を確定させたものは、後日その一定事項の申告及び選択等の内容を変更することを理由に更正の請求をすることはできないと解すべきである。
したがって、相続税の確定申告書において、租税特別措置法第69条の3の適用を受けるために、いったん宅地を適法に選択した以上、後日、他の宅地への選択替えを求めて更正の請求をすることはできない。
請求人が収受した立退料等に関する納税申告の適否に端を発して関与税理士が請求人を相手として提起した慰謝料請求等事件に係る判決の言渡し(請求人敗訴)があったことを理由に、当該立退料等につき租税特別措置法第37条の適用があるとしてなされた更正の請求には、理由がないとした事例
裁決事例集 第47集 1頁
要旨
本件慰謝料請求等事件に係る控訴審判決は、請求人が収受した立退料等に関する納税申告の適否に端を発して、関与税理士が請求人を相手として提起した慰謝料請求等の訴訟に対する判決であるから、請求人の昭和59年分所得税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となった本件立退料等に係る和解の効力ないし本件立退料等の性格について判断しているものではなく、国税通則法第23条第2項第1号に定める「申告に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった訴えについての判決」に当たらない。
したがって、本件更正の請求には、理由がない。
不動産売買契約の和解に伴う損失は、当該和解のあった日の属する事業年度の所得金額の計算上、損金の額に算入すべきものであって、国税通則法第23条第2項の規定により、そ及して所得金額を減額修正することはできないとした事例
裁決事例集 第54集 46頁
要旨
法人の所得の計算につき、法人税法第22条第4項は法人の当該事業年度の収益の額及び費用、損失の額について、いわゆる権利確定主義を採っており、それが一般に公正妥当と認められる会計処理の基準であるから、法人の所得の計算については、当期において生じた損失は、その発生事由を問わず、当期に生じた益金と対応させて当期において経理処理すべきものであって、その発生事由が既往の事業年度の益金に対応するものであっても、その事業年度にさかのぼって損金として処理しないというのが一般的な会計処理であるということができる。
本件和解によって本件譲渡物件に係る譲渡代金が減額されたとしても、その損失額は、本件和解のあった日の属する平成7年10月31日から平成8年9月30日までの事業年度の損金の額に算入すべきものであり、本件事業年度の経理処理及び納税義務には何ら影響を及ぼさないことになるから、本件更正の請求は、課税標準等又は税額等が過大であるとの更正すべき実体要件を欠くものといわざるを得ない。
ポイント
この事例は、法人税の更正処分及び源泉所得税の納税告知処分が調査手続を欠く違法なものか否かが争われたところ、適法な調査手続に基づいて行われた処分であり違法はないと判断したものである。
なお、本件処分にはホステス報酬に係る納税告知処分が含まれており、ホステス報酬に係る源泉所得税額の計算については、最高裁平成22年3月2日第三小法廷判決が、所得税法施行令第322条《支払金額から控除する金額》にいう「当該支払金額の計算期間の日数」は当該期間に含まれるすべての日数を指すものと判断し、ホステスの実際の稼働日数を指すという課税庁の主張を退けたことから、この事例でも、これに従ってホステス報酬に係る源泉徴収税額を再計算し、納税告知処分の一部を取り消している。
要旨
請求人は、原処分庁が本件査察調査をもって請求人に対し調査をしたとし、改めて調査を行わなかったのであるから、調査をすることなく行った本件各告知処分等及び本件各再更正処分は、適正な手続を欠く違法なものである旨、また、一度減額したものをいかなる理由があろうとも再度増額の処分をすることは権利の濫用である旨主張する。
しかしながら、課税庁が内部において既に収集した資料を基礎として正当な課税標準を求めることも「調査」の範囲に含まれるものと解されるところ、本件各告知処分等及び本件各更正処分は、①請求人の源泉所得税について、当初告知処分に係る請求人の源泉徴収簿等の関係資料及び源泉所得税の納付事績等の既に収集した資料等を改めて照合及び検討した上で、また、②請求人の法人税について、当初減額更正処分の関係資料、法人税の確定申告書及び同付属書類等の既に収集した資料等を改めて照合及び検討した上で行われたものであるから調査手続を欠く違法な処分とは認められない。また、課税庁は、自ら行った処分に瑕疵を発見したときは、その瑕疵が実体的なものであれ、手続的なものであれ、適正な課税の確保実現を図るため、これを取り消して新たな処分をなし得るとものと解すべきであるから、原処分庁が国税通則法第36条《納税の告知》第1項第2号の規定に基づき請求人に対して本件各告知処分等を行ったことに違法は認められない。
参照条文等
参考判決・裁決
新潟地裁平成11年7月15日判決(税資256号12頁) 最高裁平成22年3月2日第三小法廷判決(民集64巻2号420頁)
各更正通知書に添付された各別表から算出される金額と当該各更正通知書に記載された金額とが不一致である場合において理由の提示に不備があると判断した事例(平成28年12月1日から平成29年11月30日まで、平成29年12月1日から平成30年11月30日まで、平成30年12月1日から令和元年11月30日まで及び令和元年12月1日から令和2年11月30日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・全部取消し)
裁決事例集 第133集
ポイント
本事例は、各更正通知書に添付された各別表から算出される控除対象仕入税額の減少額と当該各更正通知書に記載された控除対象仕入税額の減少額とが不一致である場合において、当該各別表に記載のどの部分が課税仕入れと認められなかったのかが判別できないことから、理由の提示に不備があると判断したものである。
要旨
原処分庁は、各更正通知書に記載された処分の理由には不利益処分の根幹部分をなす事実関係が明示されており、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与えるという行政手続法第14条《不利益処分の理由の提示》第1項本文の法の趣旨に反するものではないから、各更正処分の理由の提示に不備はない旨主張する。
しかしながら、当該各更正通知書に添付された各別表に記載された金額から算出される控除対象仕入税額の減少額と当該各更正通知書に記載された控除対象仕入税額の減少額とは一致しておらず(本件不一致)、本件不一致は当該各別表中の一部の取引について原処分庁が請求人の仕入税額控除の対象と認めた金額(本件差額)があるために生じたものであるところ、当該各更正通知書に、本件差額に係る記載がないことにより、当該各別表を含む当該各更正通知書の記載だけでは、請求人において本件差額の存在さえ知ることができず、また、当該各別表に記載のどの部分が課税仕入れとして認められなかったのか判別することもできないため、不服の有無を判断することができない。そうすると、当該各更正通知書は、各更正処分の全体について、原処分庁の判断過程を逐一検証し得る程度の更正の理由の記載があるとは認められず、原処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という趣旨目的を充足する程度に具体的に更正の根拠を明示したものと評価することはできないから、当該各更正処分は、その理由の提示に不備があり、違法である。
参照条文等
行政手続法第14条第1項、第3項
参考判決・裁決
最高裁平成23年6月7日第三小法廷判決(民集65巻4号2081頁) 東京高裁昭和50年6月27日判決(訟月21巻13号2799頁) 平成26年9月1日裁決(裁決事例集No.96)
土地の譲渡につき、当該土地の前所有者の買戻しの予約完結権を侵害したとして、損害賠償の訴えがあり、これを認める判決があっても、当該判決は、国税通則法第23条第2項に規定する「課税標準等又は税額等の基礎となった事実に関する訴えについての判決」には該当しないとした事例
裁決事例集 第47集 8頁
要旨
請求人は、本件土地をBから購入価額と同額での買戻し条件付で購入したにもかかわらず、本件土地をCに売却し、そのためBから本件訴訟を提起されたところ、裁判所において、請求人がBの予約完結権を侵害したとして、Bが予約完結権を行使した場合に得ることができた利益相当額(時価から購入価額を控除した額)の損害賠償金を支払う責めがあるとのBの請求を認める本件判決があったものである。
請求人は、本件判決により、損害賠償金を支払ったことにより、Cへの譲渡による利益を失ったのと同視すべきとして、国税通則法第23条第2項第1号に基づき更正の請求をした。
しかし、本件訴訟の請求の趣旨及び本件判決は、Cへの譲渡に何ら影響を及ぼすものではないから、国税通則法第23条第2項第1号に規定する「課税標準等又は税額等の基礎となった事実に関する訴えについての判決」に該当せず、更正の請求は要件を欠くものである。
要旨
請求人がいったん一括比例配分方式を選択適用して申告した場合には、仮に、その後において個別対応方式によって計算した仕入控除税額の方が一括比例配分方式によって計算した仕入控除税額を上回り、その結果、消費税の納付すべき税額が少なくなることが判明したとしても、請求人の本件申告書における仕入控除税額は、消費税法第30条(仕入れに係る消費税額の控除)の規定に従って誤りなく計算されたものである以上、国税通則法第23条(更正の請求)第1項第1号にいう「課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律に従っていなかったこと」又は「当該計算に誤りがあったこと」のいずれの要件にも該当せず、したがって、同条に定める更正の請求をすることはできない。
相続税の連帯納付義務を免れるためになされた遺産分割協議の合意解除は、後発的な更正の請求事由の一つである「やむを得ない事情によって解除」された場合には当たらないとした事例
裁決事例集 第86集
ポイント
この事例は、私法上、遺産分割協議の合意解除は認められているが、その目的が相続税の連帯納付義務を免れるためのものである場合には、後発的な更正の請求を認めた趣旨に照らして国税通則法施行令第6条第1項2号に規定する「やむを得ない事情」に当たるとは到底解することはできないと判断したものである。
要旨
請求人らは、被相続人に係る遺産について、代償分割の方法による当初の遺産分割協議(本件当初分割)を行い、代償財産を取得することとなったものの、代償債務を負う者がその債務の履行をせず、更に請求人らに当該代償債務を負う者に係る相続税の連帯納付義務が課されたことから、債務不履行解除の意思表示をして本件当初分割を解除(本件解除)した上で、再度の遺産分割協議を行った結果、請求人らは何らの財産も取得しないこととなったことからすると、本件解除は、国税通則法施行令第6条《更正の請求》第1項第2項に規定する「解除権の行使によって解除され」た場合又は「契約の成立後生じたやむを得ない事情によって解除され」た場合に該当するから、本件各更正の請求は、国税通則法第23条《更正の請求》第2項第3号に規定する事由に基づくものである旨主張する。
しかしながら、遺産分割協議は、債務不履行解除をすることができないから、本件解除は「解除権の行使によって解除され」た場合には該当しない。また、本件においては、本件当初分割を解除する合意と同時に再度の遺産分割協議を行ったということができるところ、本件解除は、請求人らにおいて、上記代償債務を負う者に係る相続税の連帯納付義務を免れることを目的としたものといわざるを得ず、このような合意をもって、国税通則法第23条第2項に規定する後発的な更正の請求が認められるならば、相続税の連帯納付制度そのものを否定するに等しいというべきであり、同項及び国税通則法施行令第6条が連帯納付義務を免れる目的でされた合意に基づく更正の請求を「やむを得ない事情によって解除」された場合として認めているとは到底解することはできないから、「契約の成立後生じたやむを得ない事情によって解除され」たものと認めることはできない。したがって、本件各更正の請求は、国税通則法第23条第2項第3号に規定する要件を満たさないものである
。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成元年2月9日第一小法廷判決(民集43巻2号1頁) 最高裁平成2年9月27日第一小法廷判決(民集44巻6号995頁) 東京地裁平成11年2月25日判決(税資240号902頁)
請求人は、確定申告に係る一連の手続について兄に包括的に委任していたというべきであり、その委任の効力は、その後の修正申告にも及ぶと解すべきであるから、当該確定申告及び当該修正申告は有効と認められるとした事例
裁決事例集 第80集
要旨
納税申告は、原則として納税義務者本人が申告書を提出して行うこととされているから、納税義務者以外の者が、本人の承諾なく勝手に納税義務者の申告書を作成し、提出した場合には、その納税申告は無効であると解される。もっとも、納税義務者以外の者が申告書を作成し提出した場合であっても、その者が、納税義務者から明示又は黙示に当該申告行為をする権限を与えられている場合は、その納税申告は有効であると解される。
請求人は、あらかじめ兄が用意し所得金額等が記載された本件確定申告書に自ら署名しており、本件確定申告書には、署名欄のすぐ上に、大きく「平成9年分の所得税の確定申告書」と印刷されていること、請求人が当時20歳で、意思能力等に問題があったことを窺わせる証拠がなく、請求人は、調査担当職員に、本件確定申告書は、自身で住所と名前を記載し提出した旨を説明していること、還付金の振込先として説明した口座が、還付金が振り込まれた口座と一致していることに照らすと、請求人は、自己が署名した書類が、所得税の確定申告書であることを認識していたものと認められ、また、本件確定申告書には、還付金の受取場所(振込先)として、請求人名義の口座が記載されていたと推認することができ、請求人は、その記載も認識していたと認めることができる。そして、請求人は、これら本件確定申告書の記載内容及びこれを提出することについて、何ら異議を述べていないことなどに照らすと、請求人は、本件確定申告に係る一連の手続について、兄に包括的に委任していたというべきであり、上記委任の効力は、その後の、本件確定申告の内容を是正する手続である本件修正申告にも及ぶと解すべきである。そうすると、請求人の兄が、本件確定申告書を提出し、また、本件修正申告書に請求人の氏名等を記載して提出したとしても、本件確定申告及び本件修正申告はいずれも有効というべきである。
参照条文等
国税通則法第17条第1項 民法第99条
共同して提出する申告書に署名した者又は記名された者に押印がない場合においては、その申告書がその提出時点において、署名した者又は記名された者の申告の意思に基づいて提出されたものと認められるか否かによって、押印のない者の申告の効力を判断すべきであるとした事例
裁決事例集 第80集
要旨
請求人は、請求人が法定申告期限までに申告の意思を有していたことを前提として、他の共同相続人が請求人の氏名を記名して提出した相続税の申告書(本件第1申告書)は、請求人の押印はされていないが、請求人の納税申告書としての形式的な記載要件を満たしているのであるから、請求人の申告の意思に基づく有効な申告書である旨主張する。
しかしながら、本件第1申告書が請求人の申告書であるといい得るためには、単に請求人が申告の意思を有していたのみでは足りず、本件第1申告書が申告の意思に基づいて提出されたものであるか否かの観点から判断すべきところ、本件第1申告書を作成した税理士は、他の共同相続人の依頼に基づきこれを作成し提出したものであり、その作成に関し請求人から依頼されていないこと及び請求人が、法定申告期限内に相続税の申告ができなかった理由を記載した書面を原処分庁に提出していることなどからすれば、本件第1申告書は請求人の意思に基づいて提出されたものとはいえない。
参照条文等
土地譲渡益重課制度の適用除外に該当する旨の申告をしなかった場合には、同制度を適用して法人税額を減額することを求める旨の更正の請求は認められないとした事例
裁決事例集 第55集 16頁
要旨
国税通則法第23条第1項第1号に規定する更正の請求は、納税申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと等により過大であるときになしうるものであるから、所得計算の特例等で、一定事項の申告等を条件に所得金額、税額の減免をすべきものとされているものについて、その申告等をしなかった者は、後日その特例の適用を求めるために更正の請求をすることはできないと解すべきである。
したがって、確定申告に際し、租税特別措置法第62条の3第4項又は第5項に規定する優良住宅地等のための譲渡等に対する土地譲渡益重課制度の適用除外に該当する旨の申告等をしなかった場合には、後日それらの規定を適用し、法人税額を減額すべきであるとする旨の更正の請求は認められない。
当該和解は、当事者間に権利関係の争いがあったことを起因としてなされたものではないから、国税通則法第23条第2項第1号に規定する「判決と同一の効力を有する和解」には当たらないとした事例
裁決事例集 第51集 489頁
要旨
請求人は、当初遺産分割協議に法律行為の要素に重要な錯誤があったので、本件起訴前の和解をしたのであるから、当該和解は、国税通則法第23条(更正の請求)第2項第1号に規定する「判決と同一の効力を有する和解」に該当するものであり、したがって、本件更正の請求は認められるべきであると主張するが、当初遺産分割協議は、請求人を含む相続人らの自由意思に基づき適正に行われたものと認められ、また、本件起訴前の和解は、もっぱら当初遺産分割協議後の当事者の事情によってなされたものであって、当事者間に権利関係の争いがあったことを起因としてなされたものではないことが認められるから、上記の条項に規定する「和解」には当たらない。
後発的事由(判決)に基づく更正の請求に対して、請求人が申告当時、課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に変更を来すことを予想し得たとして、重加算税の賦課決定処分を認容した事例
裁決事例集 第59集 1頁
要旨
国税通則法第23条第1項に規定する期限徒過後に、課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えに対する判決により当該事実が申告と異なることとなった場合、納税者において、申告当時に、課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に変更を来すことを予測し得た場合においては、同条第2項第1号に規定する判決には当たらないと解すべきである。
これを本件についてみると、請求人は、相続財産である宅地及び建物を単独相続するに当たり、未分割の相続財産である本件小作権を将来解約する場合には、これに係る本件補償金を相続人全員に分配することを他の相続人らに約束し、さらに本件補償金を受領した当時においては、これを他の相続人らに分配する意思があったにもかかわらず、それを誠実に履行しなかったために、他の相続人らから本件小作権に係る遺産分割の調停の申立て及び不当利得返還請求等各訴訟が順次提起され、本件判決が確定して、本件補償金のうちの他の相続人らの相続持分に相当する金員を支払ったものであると認められる。
そうすると、本件補償金に係る譲渡所得の確定申告時である平成3年3月の時点において、請求人は、本件補償金は他の相続人らにも分配しなければならないことをすでに認識していたこと及び本件小作権に係る訴訟が係争中であったことなどからみると、請求人は、本件補償金のうち、自己の相続持分に相当する金額のみが自己に帰属するものであることを十分に認識していた上、仮に、本件補償金の全額が自己に帰属するものとしてこれに係る譲渡所得の確定申告をすれば、後日、当該申告に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に変更を来すことを確定申告時には十分に予測し得たものと認められるから、本件判決は、国税通則法第23条第2項第1号に規定する判決には当たらないといわざるを得ない。
したがって、本件判決を理由として本件更正の請求はできないから、本件通知処分は適法である。
ポイント
本件は、納税義務者以外の者による納税申告について、納税義務者が明示又は黙示に当該納税申告をする権限を与えていたとは認められないものの、納税義務者が、当該納税申告について追認していると認められるとしたものである。
要旨
請求人は、所得税の更正処分に係る通知書(本件更正通知書)には、請求人が匿名組合契約の出資者である外国法人(本件外国法人)との間で締結した参加利益契約(本件参加利益契約)は配当を受ける旨を約す契約であり、請求人と本件外国法人との間の本件買戻合意(本件参加利益契約に基づく匿名組合契約に係る利益の分配を受ける権利を本件外国法人が買い戻すことなどの合意)は本件参加利益契約を解除する契約であると認定した根拠となる具体的な事実が摘示されておらず、また、原処分庁においてその法的評価の判断に至った過程自体を明示したものではないから、本件更正通知書に附記された理由は、更正処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由附記制度の趣旨から著しく逸脱した違法なものである旨主張する。
しかしながら、本件更正通知書には、更正処分の理由として、①本件参加利益契約は、請求人が本件外国法人に対して出資を行い、当該出資額に応じた配当を受ける契約であったと認められること、②本件買戻合意は、本件参加利益契約を解除するものであったと認められるとして、原処分庁において当該合意を権利の譲渡ではないと捉えていることが明らかであり、また、③請求人が本件参加利益契約に基づき支払った拠出金と本件買戻合意に基づき受領した金員との差額である損失額は、資産の譲渡により生じたものではないことが示されており、本件更正通知書には原処分庁の判断の過程が明示されており、同通知書に附記された更正処分の理由に不備はない。
参照条文等
国税通則法第74条の14第1項 行政手続法第14条
参考判決・裁決
最高裁平成23年6月7日第三小法廷判決(民集65巻4号2081頁)
無申告加算税賦課決定処分に理由不備はなく、期限後申告は同決定を予知したものではないときに該当しないとした事例(令和元年分から令和5年分の所得税及び復興特別所得税に係る無申告加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第141集
ポイント
本事例は、原処分庁が請求人に実地調査の事前通知をし、実地調査前に期限後申告がなされ、その後の実地調査を経て所得税等に係る無申告加算税賦課決定処分がなされたことに関し、原処分に理由不備はなく、期限後申告は同決定を予知したものではないときに該当しないとしたものである。
要旨
①請求人は、原処分に係る通知書に記載された理由には、実地の調査(本件実地調査)前に原処分庁が行ったとする調査内容の記載がないから、原処分の理由の提示には重大な瑕疵がある旨主張する。
しかしながら、原処分の理由には、無申告加算税が賦課されることの基礎となる事実として、対象年分の所得税等の期限後申告書(本件各期限後申告書)の提出年月日、賦課決定の根拠となる法令及び無申告加算税の金額を挙げる等、原処分庁による判断結果並びにその基礎とされた根拠法令及び事実関係の内容が具体的に明示されており、行政庁の判断の慎重と合理性を担保して、その恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らしめて不服の申立てに便宜を与えるという行政手続法第14条《不利益処分の理由の提示》第1項の趣旨を充足する程度に具体的に明示されたものといえるから、原処分の理由の提示に不備はない。
②請求人は、本件実地調査に係る事前通知(本件事前通知)を受けた後、本件実地調査開始前に本件各期限後申告書を原処分庁に提出しており、原処分庁は、本件各期限後申告書が提出される前に請求人に対して課税標準等又は税額等について何ら示していないから、請求人の本件各期限後申告書の提出は、国税通則法(通則法)第66条《無申告加算税》第1項括弧書に規定する「調査があったことによりその申告に係る国税について決定があるべきことを予知してなされたものでないとき」に該当する旨主張する。
しかしながら、原処分庁は、請求人に勤務先からの給与(本件給与)及び取引先からの報酬(本件報酬)が支払われていること及び請求人の本件各年分の所得税等の確定申告がされていないことを把握した上で、請求人に対して、本件報酬に係る資料を提出するよう依頼するとともに、質問調査等を実施するための日程調整等を行ったこと等からすれば、請求人が本件報酬について確定申告をしていない不適正なものであることが発覚し、決定に至るであろうということが客観的に相当程度の確実性をもって認められる段階に達していたというべきである。また、請求人は、同取引先に対する実地の調査に係る取引先調査において、税務署職員から、同取引先との取引状況等を聴取されていた上、原処分庁から本件事前通知を受けた際に、本件実地調査の目的が請求人の所得税等の納税義務の有無の確認であることの説明を受け、本件給与以外の所得の有無を問われていたこと等からすれば、やがて決定に至るべきことを認識した上で本件各期限後申告書を提出したものと認められる。よって、本件各期限後申告書の提出は、通則法第66条第1項に規定する「調査があったことによりその申告に係る国税について決定があるべきことを予知してなされたものでないとき」に該当しない。
参照条文等
行政手続法第14条第1項 国税通則法第66条第1項第1号
参考判決・裁決
最高裁昭和38年5月31日第二小法廷判決(民集17巻4号617頁) 最高裁平成23年6月7日第三小法廷判決(民集65巻4号2081頁) 東京高裁平成14年9月17日判決(訟月50巻6号1791頁) 令和5年12月7日裁決(裁決事例集No.133)
他人による確定申告書の作成・提出について、国税通則法第24条の「納税申告書の提出があった場合」に該当するとした事例(平成28年分から令和2年分の所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第135集
ポイント
本件は、納税義務者以外の者による納税申告について、納税義務者が明示又は黙示に当該納税申告をする権限を与えていたとは認められないものの、納税義務者が、当該納税申告について追認していると認められるとしたものである。
要旨
請求人は、請求人名義の納税申告書は、他人が成りすまして提出されたものであり、当該納税申告は無効であるため、国税通則法第24条《更正》に規定する納税申告書を提出した場合に該当しない旨主張する。
しかしながら、納税義務者以外の者が申告書を作成及び提出した場合であっても、その者が納税義務者から明示又は黙示に当該申告行為をする権限を与えられている場合や、納税義務者が当該申告行為を追認した場合は、その納税申告は有効となると解されるところ、請求人は、明示又は黙示に当該納税申告をする権限を与えていたとは認められないが、権限なくされた他人による当該納税申告を当該納税申告書が提出された後に追認したと認められるから、当該納税申告は有効となり、当該納税申告書の提出は、同条の納税申告書を提出した場合に該当する。
参照条文等
参考判決・裁決
高松高裁昭和58年3月9日判決(税資129号467頁) 平成22年8月23日裁決(裁決事例集No.80)
要旨
請求人らは、無道路地に誤って付された路線価に基づき相続税の申告をしたため納付すべき税額が過大となったのであるから、請求人がこの誤りを知ったことをもって通則法第23条第2項に規定する後発的事由による更正の請求を認めるべきである旨主張する。
しかしながら、通則法第23条第2項においては、第1号及び第2号で判決、和解、更正、決定といった外部的ないし客観的な事由を規定し、同項第3号の「やむを得ない理由があるとき」をこれらに類するものとしていることなどから、納税者の主観的な事由をもって、同項の後発的事由に該当すると解釈することはできないというべきである。したがって、「本件土地に平成9年分以降路線価が付されていないことを請求人が知った」という主観的な事由は、通則法第23条第2項のいう「後発的事由」に当たらないから、請求人の主張には理由がない。
要旨
請求人は、[1]代金請求時に重量計算の誤りがあり、代金の一部を返還したのであるから、更正の請求は認められるべきである、[2]原処分庁は法人税基本通達2-2-16を適用して更正をすべき理由がないとしているが、代金の返還は国税通則法施行令第6条第1項第2号に該当するから、更正の請求は認められるべきである旨主張する。
しかしながら、[1]返還金を支払うことを確定したのは翌事業年度であるから、返還金に相当する損失は翌事業年度の損金の額に算入すべきであり、更正の請求の要件を欠くこと、[2]法人税基本通達2-2-16は、当期に発生した損失は既往の事業年度の益金に対応するものであっても当期の損失に計上するという、一般に公正妥当な会計処理の基準の考え方を表したものであることから、更正の請求の要件を欠いており、請求人の主張には理由がない。
要旨
請求人は、自己が雑所得の金額の計算の基礎とした本件収入に関し、請求人の勤務先が法人税の課税標準の適否をめぐって提起した法人税更正処分等取消請求事件の訴訟において、本件収入は勤務先の取引先から同社が返還を受けたものと同視できるため、法人税の計算に当たっては同社の収入であると判示され本件判決が確定したことから、本件収入について請求人と勤務先との二重課税の状態を解消するため本件更正の請求をしたものであるが、国税通則法第23条第2項第1号に規定する判決とは、請求人の申告した課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実の得喪変更に関する訴訟に係る確定判決を意味するところ、本件判決は請求人の勤務先が提起した訴訟に係るものであるから、本件判決によって、請求人が本件収入について各年分の雑所得の金額の計算の基礎として申告している事実そのものが影響を受けるものではなく、同条の規定による更正の請求をすることはできない。
調査手続の違法は修正申告の効果に影響を及ぼさないと判断した事例( 平成20年分、平成21年分及び平成24年分の所得税に係る重加算税並びに平成19年分の所得税に係る過少申告加算税並びに平21.1.1~平21.12.31の課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分、 平成18年分~平成21年分、平成23年分及び平成24年分の所得税の各修正申告並びに平18.1.1~平18.12.31及び平21.1.1~平23.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各期限後申告・ 棄却、 却下)
裁決事例集 第98集
要旨
請求人は、原処分に係る調査担当職員(本件調査担当職員)が行った調査につき、①国税通則法第74条の9《納税義務者に対する調査の事前通知等》第1項に規定する調査対象期間の説明並びに同法第74条の11《調査の終了の際の手続》第2項及び第3項に規定する調査結果の内容の説明や法的効果の教示がなかったことから調査手続に違法があったこと及び②調査対象期間の説明及び調査結果の内容の説明がなかったため、どのような内容か分からない修正申告書及び期限後申告書(本件各修正申告書等)に署名押印して修正申告及び期限後申告(本件各修正申告等)をしたものであり錯誤があったことから、本件各修正申告等は調査手続の違法又は錯誤により無効である旨主張する。
しかしながら、そもそも調査手続の違法は、それのみを理由として修正申告及び期限後申告の有効性に影響を及ぼすものではないと解されるから、たとえ調査手続に違法があったとしてもそのことのみで修正申告及び期限後申告が無効となることはない。また、本件各修正申告書等には、請求人の署名押印がされていることから、本件各修正申告等が請求人の意思に基づいて行われたとの推定ができるところ、①修正申告書及び期限後申告書は具体的な納税義務を発生させるものであるから、内容を確認しないで署名押印をすることは通常あり得ないこと、②本件調査担当職員は調査期間中に調査対象となる税目と年分を請求人に伝えていると認められるから、請求人は調査対象期間を認識していたこと並びに③本件調査担当職員は請求人に調査結果の内容の説明を行ったと認められるから、請求人は調査結果の内容を知っていたと認められ、これらを総合すると、請求人は、税目、年分を認識した上で本件各修正申告書等に署名押印し提出したと認められるのであって、錯誤があったとは認められず、本件各修正申告等は無効とならない。
ゴルフ会員権を購入した者からの届出債権が破産債権として債権表に記載されたことは国税通則法第23条第2項第1号に該当するとしてなされた更正の請求につき、当該届出債権は不法行為に基づくものであるから、同号に規定する「課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決」には該当しないとした事例
裁決事例集 第61集 1頁
要旨
請求人(破産管財人)は、破産前の請求人(ゴルフ会員権販売代行業)を介して会員権を購入した会員がその購入代金相当額を裁判所に届け出、その届出債権が破産債権として確定した旨請求人及びゴルフ場経営会社双方の債権表に記載され、確定判決と同一の効力を有することになったこと(破産法第241条、第242条、第287条)は国税通則法第23条第2項第1号に規定する「課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決」に該当する旨主張するが、当該届出債権は会員からの不法行為による損害賠償に基づくものであるから、当該届出債権を裁判所に届け出た行為をもって、請求人と当該ゴルフ場経営会社との間で締結された会員募集業務委託契約等、課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実の存否、効力等を直接審判の対象とした訴えがされたと見ることはできないため、そもそも、その事実は国税通則法第23条第2項第1号に規定する「課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決」に該当せず、請求人の主張には理由がない。
平成8年分の所得税の確定申告において、措置法第36条の6第1項の特例の適用を受けた結果、8年分と10年分の所得税の合計額が、適用を受けなかった場合の合計額よりも過大になったとしても、更正の請求はできないとされた事例
裁決事例集 第60集 1頁
要旨
請求人は、平成8年分の所得税の確定申告において特定居住用財産の買換えの特例(以下「本件特例」という。)の適用を選択し、平成10年において本件特例の適用を受けた買換資産を譲渡したが、本件特例の適用を受けた場合の平成8年分と平成10年分の納付すべき税額の合計額が本件特例の適用を受けなかった場合の納付すべき税額の合計額に比較して過大となるから、更正の請求を認めるべきである旨主張するが、本件特例の適用を受けたことにより納付すべき税額が過大であったとしても、このことは、通則法第23条第1項第1号に規定する更正の請求事由に該当しない。
押印が漏れている相続税の申告書について、納税申告書としての効力が認められるとした事例(平成25年1月相続開始に係る相続税の無申告加算税の賦課決定処分・全部取消し)
裁決事例集 第99集
ポイント
本事例は、納税申告書としての他の要件を具備している限り、押印がないことのみをもって納税申告書としての効力がないものとはいえないとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人が法定申告期限内に提出した相続税の申告書(本件申告書)について、請求人の押印がなく国税通則法(通則法)第124条《書類提出者の氏名及び住所の記載等》第2項の規定を充足していないこと、加えて、本件申告書の書面等から請求人の申告の意思を認めることができず本件申告書が有効なものと認められないことから、通則法第17条《期限内申告》に規定する期限内申告書には該当しない旨主張する。
しかしながら、納税申告書の効力については、押印がない場合であっても、単なる押印漏れであることも考えられるので、納税申告書として他の要件を具備している限り、押印がないことのみをもってその効力がないものとはいえず、このような場合には、当該納税申告書が押印のない者の申告の意思に基づいて提出されたものと認められるか否かによって、その効力を判断すべきである。そして、申告の意思に基づいて提出されたものかどうかの判断に当たっては、納税申告書の作成経緯や原処分庁への納税申告書の提出状況及び納税の状況等を総合考慮すべきと考える。これを本件についてみると、①本件申告書は遺産分割協議で成立した内容を基に共同相続人の総意により作成されたものであること、②請求人は共同相続人である長女に本件申告書の原処分庁への提出を任せ、長女が現に提出したものであること、③請求人が申告納税義務を認識し相続税を納期限内に全額納付したことなどがそれぞれ認められることから、本件申告書は、請求人の意思に基づいて提出されたものと認めるのが相当である。また、本件申告書は、押印箇所を除き納税申告書としての要件を具備しているものと認められる。したがって、本件申告書に請求人の押印のないことについては、単なる押印漏れにすぎず、本件申告書の納税申告書としての効力には影響しないというべきであるから、本件申告書は、通則法第17条に規定する請求人の期限内申告書に該当する。
参照条文等
参考判決・裁決
遺贈の効力は認められるものの、請求人がその効力の有無について疑問を抱いたとしてもやむを得ない客観的な事情が認められるとして、遺贈に関する調停の成立により国税通則法第23条第2項第1号の規定による更正の請求を認めた事例
裁決事例集 第59集 14頁
要旨
- 本件遺言は、その文言からみる限りでは、[1]財産を与える旨の具体的な記載がないこと、[2]相続財産に属する特定の財産の処分でないこと、[3]本件遺言書の文言からみると継続的に金銭を給付する金銭債権の遺贈ともみられるが、必ずしも十分な記載がないこと、[4]仮に、継続的に金銭を給付する金銭債権の遺贈だとしても、いつまで金銭を交付すればよいのか、何ら給付期間に関する記載がないこと等遺贈としての効力を巡って、判断の分かれる余地が大きいものであると認めざるを得ない。
ところで、遺言の解釈に当たっての基本的な考え方(最判昭和58年3月18日)を踏まえて本件遺言に係る遺言者である被相続人の真意を推認すると、被相続人は、本件受遺者に恩義を感じ、感謝の気持ちから、本件受遺者に相当額の財産を遺贈する意思を有していたことは確実であり、本件遺言は、本件受遺者を信頼し、屋敷、墓等の管理を依頼するため、将来にわたり受遺者の生活を安定させ得る程度の金銭を取得させる意図の下に記載されたものと認めるのが相当である。
したがって、このような被相続人の真意を踏まえれば、本件遺言は、単なる被相続人の希望の表明と解するのは相当でなく、毎年金銭を継続的に給付することを内容とする金銭債権の遺贈と解するのが相当である - 請求人は、相続税の期限内申告の時点で既に承知していた本件遺言書の内容に基づき、本件受遺者に対して実現すべき金銭債権の相続開始時の価額を評価し、それを相続財産の価額から控除して課税価格を計算すべきであったにもかかわらず、これをしなかったにすぎないのであるから、本件調停の成立によりその具体的な内容が確定したことを理由として、当然に国税通則法第23条第2項第1号の規定による更正の請求ができると解するのは相当ではない。
しかしながら、遺言の解釈において、結果的には遺贈の効力を認めるべきではあるものの、納税者がその効力の有無につき疑問を抱いたとしてもやむを得ないと認められる客観的な事情が認められることにより、申告等の時点において、遺贈の実現義務の負担を確実には予想し得ず、相続財産の価額からその義務の金額を控除しないところにより課税価格を計算したことにつき納税者に責めを負わせることが酷と認められる事情が存する場合には、国税通則法第23条第2項第1号の規定による更正の請求を認めるのが相当である。
本件遺言については、文言からみる限りでは、遺贈としての効力を巡って、判断の分かれる余地の大きいものであると認められ、原処分庁も、不確実なもので、そもそも遺言としての効力はないとの判断にたっていることを踏まえれば、請求人が、期限内申告の時点において、遺贈の実現義務の負担を確実には予想し得なかったとしてもやむを得なかったものと認められる。
したがって、本件更正の請求は、国税通則法第23条第2項第1号に該当し、適法なものと解するのが相当である。
合併無効の判決が確定しても遡及効はないから当該合併により発生したみなし配当には何ら影響がなく、更正の請求の要件を充足していないとして、請求人の主張を排斥した事例
裁決事例集 第59集 28頁
要旨
商法第110条は、「合併を無効とする判決は合併後存続する会社又は合併に因りて設立したる会社、其の社員及第三者の間に生じたる権利義務に影響を及ぼさず」としており、合併無効の判決が将来に向かって合併を無効とする効力を有するに止まり、合併のときにさかのぼって合併を無効とするものではないことを規定している。
そして、当該判決によって、合併後存続する会社又は合併によって設立した会社は、無効判決確定のときに将来に向かって合併前の数社に分けられ、同時に合併により消滅した会社は、将来に向かって復活することになる。
また、上記規定は、商法第415条第3項において、株式会社に準用する旨規定しているから、ここにいう社員には株式会社における株主が含まれると解されている。
これを本件についてみると、本件合併は、本件判決により無効とされ、そのことが確定したのであるが、本件判決の確定日の前日である平成11年4月3日までは有効であったのと同様にその効力を保持していたものであり、当該確定日以後において、合併前の状態に回復され、解散会社も当該確定日から将来に向かって復活するにすぎないのである。
そうすると、本件合併は、合併の日にさかのぼって無効となるのではないから、当該合併に基づき行われた株式の割り当て交付及びそれによって発生した本件みなし配当には何ら影響がないといえる。
したがって、本件判決の確定は、国税通則法第23条第2項第1号にいう「その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定した」ことには該当せず、更正の請求の要件を充足していないというべきである。
要旨
請求人は、青色申告者からの更正の請求が認められない場合には、国税通則法第23条第4項及び所得税法第155条第2項の規定の精神を酌み、通知書に理由を附記すべきである旨主張する。
しかしながら、国税通則法第23条第4項によれば、税務署長は、更正の請求があった場合には、調査の結果、更正をすべき理由がないと判断したときは、請求者にその旨を通知すれば足り、更正をすべき理由がない旨の通知書に理由を附記すべきことを定めた法令の規定はないから、本件通知処分に係る通知書に理由の附記がないことに違法はない。また、本件通知処分は、所得税法第155条第2項が前提とする同条第1項の更正処分とは法的に全く異なり、実質的にみても、所得税法第155条第2項が青色申告書に係る更正処分に理由附記を要求している趣旨は、納税者が提出した申告書の誤りを税務署長が指摘するときに理由附記を義務付けることにより、その慎重な処分を期するとともに、不服申立てに際しての判断材料を与えようとする点にあると解されるところ、国税通則法第23条第4項に基づく更正をすべき理由がない旨の通知処分については、納税者の更正の請求に対する応答としてなされるものであるから、上記の趣旨が当てはまるものではないと解される。
したがって、請求人の主張は、法の要請を超える独自の見解であり、採用できない。
また、請求人は、住宅借入金等特別控除の適用要件を実質的に満たしているから、国税通則法第23条第1項にいう課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったことに該当する旨主張する。
しかしながら、申告納税方式における納税義務者は、申告行為によって具体的な租税債務を負担することになるが、納税者が申告をした後、その申告内容に変更を加える必要の生ずる場合があることは否定できず、このような場合にはその修正を認めるべきであるが、あらゆる場合にこれを自由に認めることは、申告の性格に照らして適当といえないのみならず、納税義務の具体的内容を不安定にさせ、行政を混乱に陥れる弊害もあるから、国税通則法第23条第1項は、これに一定の制限を加え、一定の期間内に限り特定の手続によってのみ是正することができるものとしたと解される。このような見地からすると、一定事項の申告等を条件に所得金額、税額の減免をすべきこととされているものについてその申告等をしなかった者が、後日その特例の適用を求めるために更正の請求をすることは、許されないと解することが相当である。それは、上記一定事項の申告等を付さないでした納税の申告といえども、法律の規定に従っていなかったり、計算に誤りがあったりしたわけではなく、実体的に不当であるとはいえないからである。
これを本件についてみるに、住宅借入金等特別控除は、申告等を条件に適用され、所得税額が減免される規定であるところ、請求人は、平成17年分の所得税の確定申告を行うに当たり、同控除の適用を申告しておらず、本件更正の請求は、申告後に同控除の実体的要件を満たしているとして、その適用を求めようとしているものであるから、国税通則法第23条第1項による更正の請求ができる場合に該当せず、その理由がないというべきである。
要旨
国税通則法第23条第2項第1号に規定する「判決」は、当事者間に権利関係の争いがあり、その後の判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により申告等があった当時の権利関係と異なった権利関係が生じたような場合の判決を指し、請求の認諾があった場合もそれが調書に記載されると確定判決と同一の効力を有するので同様であるが、請求の認諾による結果が訴訟当事者間で当初から予定されていたもので、専ら租税負担を回避する目的で実体とは異なる内容のものは含まれないと解されるところ、本件の請求の認諾は、本件贈与税更正処分により、請求人及び贈与者が贈与契約の際に予定していたものより重い納税義務が生ずることが判明したため、本件贈与を実質的に合意解除し、専ら租税負担を回避する目的で錯誤を理由とする本件の贈与の無効確認訴訟を提起したうえで得たもの、すなわち実体とは異なるものであると認めるのが相当であり、また、本件贈与により請求人に生ずることとなった賃貸収入等の経済的利益が請求の認諾があっても消滅していないことも踏まえれば、本件の請求の認諾は、国税通則法第23条第2項第1号に規定する「判決」に該当せず、本件の更正すべき理由のない旨の通知処分は適法である。
株主総会において支給が確定した退職金の一部を受領しなかったのは、相続人たる請求人らが退職金の支払義務の一部を免除したものであるから更正の請求は認められないとした事例
裁決事例集 第76集 1頁
要旨
請求人らは、相続税の課税財産として申告した退職手当金等について、その算定根拠に誤りがあったことから相続税の法定申告期限後に減額され、一部しか受領していない旨主張する。
しかしながら、株主総会における本件被相続人に係る退職金及び弔慰金の本件支給決議は、その議事録等から、定款の定めに従って満場一致で承認されていると認められる。また、取締役会議事録には本件被相続人に対する退職金の金額の計算根拠に誤りがあったと記載されているもののその誤りについて具体的な記載がなく、請求人らからも本件支給決議の際の意思表示に要素の錯誤があった等の主張はされておらず、当審判所の調査によっても、本件支給決議を無効ならしめるような事由は認められない。そうすると、D社が本件被相続人に係る退職金及び弔慰金を支給すること並びにその額は、本件支給決議によって確定したとするのが相当である。
そして、請求人らが退職金の一部しか受領しなかったことについて、請求人らによる債務免除の意思表示があったとすれば、いったん有効に確定した退職金を遡及的に訂正して減額するのではなく、新たな法律行為により請求人らがD社の退職金の支払義務の一部を免除したものであると解するのが相当である。
要旨
請求人は、請求人の贈与税及び相続税の申告書はいずれも請求人が関知しないものであるなどとして、これらの申告書による各申告は無効であるから、贈与税及び相続税の更正の請求を認めるべきである旨主張する。
しかしながら、贈与税及び相続税の更正の請求については、国税に共通の更正の請求の規定である国税通則法第23条第1項及び第2項と、贈与税及び相続税に特有の更正の請求の規定として相続税法第32条が規定されており、それ以外には規定はないところ、国税通則法第23条第1項各号に規定する更正の請求が認められる事由は、いずれも当該申告書に記載した、課税標準等若しくは税額等(第1号)、純損失等の金額(第2号)及び還付金の額に相当する税額(第3号)の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったこととされており、当該申告書及びその申告自体が無効であることは更正の請求の事由とされていない。
また、国税通則法第23条第2項各号に規定する事由も、その申告の基礎となった事実に関する訴えについての判決等により当該基礎となった事実が申告と異なることとなったこと等であり、いずれも、その申告自体が無効であることは更正の請求の事由とされていない。
さらに、相続税又は贈与税の申告書を提出した者に係る更正の請求の特則である相続税法第32条に規定する更正の請求が認められる事由も、同条各号のいずれかに該当する場合であって、かつ、その申告に係る課税価格及び相続税額又は贈与税額が過大となったときとされているので、その申告自体が無効であることは、更正の請求の事由とされていない。
したがって、請求人が主張する「申告の無効」はこれら更正の請求の事由には該当しないので、「申告の無効」を事由とした更正の請求はいずれも不適法であり、請求人の主張は採用することができない。
参照条文等
相続により取得した財産に係る相続開始前における賃借権の取得時効の完成、賃借権の取得という事実が判決により後発的に確定した場合、当該判決は、取得時効の完成の確定という意味において、国税通則法第23条第2項1号にいう「判決」に当たり、当該事情は当該財産の評価上、しんしゃくすべきであるとした事例
裁決事例集 第64集 1頁
要旨
本件において、請求人は、相続により取得した本件土地に係る立退請求訴訟において、同土地の耕作者から賃借権の取得時効を援用されたがそれを争い、同土地を何らの負担のない自用地として評価し、申告していたところ、相続開始前における賃借権の取得時効の完成を認定し、賃借権の取得を認容した本件判決が確定したものであるから、同判決は、請求人が申告に当たり本件土地の評価の基礎とした事実(何らの負担のない)と異なる事実、すなわち、相続開始時に取得時効が完成していたという事実が確定されたという意味において、国税通則法第23条第2項第1号にいう「判決」に当たり、そして、当該事情は、本件土地の評価上、しんしゃくされるべきであるから、本件判決が同号の「判決」に当たるとしてなされた本件更正の請求には、理由がある。
個別対応方式における用途区分の方法に誤りがあったとしてされた更正の請求について、確定申告において採用した用途区分の方法に合理性がある場合には、国税通則法第23条第1項第1号の適用はないとした事例
裁決事例集 第82集
要旨
請求人は、消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第2項第1号の規定(個別対応方式)の適用に当たり、医薬品の課税仕入れに係る消費税額の用途区分の方法について、課税資産の譲渡等と課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等に共通して要するものに区分すべきところ、課税仕入れの都度、課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等にのみ要するものに区分した上で、課税期間の末日の決算修正により、当該課税期間の医薬品に係る課税売上げの額に基づいて課税資産の譲渡等にのみ要するものと課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等にのみ要するものとに区分したために、納付すべき消費税及び地方消費税の額を過大に算定する誤りがあったのであり、国税通則法第23条《更正の請求》第1項第1号の規定の適用がある旨主張する。
しかしながら、個別対応方式が適用される場合に、用途区分の方法に誤りがあったとして同号の規定が適用される場合とは、申告当時に納税義務者が採用した用途区分の方法に合理性がなく、合理性のない用途区分の方法を採ることによって納付すべき消費税等の税額が過大となる場合をいい、他の合理的な用途区分の方法を採っていた場合と比較して単に納付すべき消費税等の税額が過大となる場合をいうものではないと解するのが相当であるところ、請求人が行っていた用途区分の方法は、医薬品の課税仕入れについて、その課税売上対応分を個別に把握可能な課税売上げに係る医薬品名及び数量又は金額を基準として、売上実績に基づいて区分する方法であり、合理性があると認められることから、国税に関する法律の解釈適用についての誤りがあった場合には該当せず、また、当審判所が請求人の納付すべき消費税等の税額を算出したところ、その計算過程に誤りがあった場合にも該当しない。したがって、国税通則法第23条第1項第1号の規定の適用はない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和62年11月10日第三小法廷判決(昭和60年(行ツ)第81号) 平成22年5月17日裁決(裁決事例集No.79)
株式の売買代金が時価相当額より低額であるとして類似業種比準価額方式により評価し、売主に対して所得税更正処分等、買主に対して法人税更正処分等がそれぞれなされた場合において、売主側が提起した所得税更正処分等取消訴訟において当該処分等の取消判決が確定しても、買主側は国税通則法第23条第2項第1号に基づく更正の請求をすることはできないとした事例
裁決事例集 第66集 9頁
要旨
請求人は、株式の売主側が提起した所得税更正処分等取消訴訟において株式の評価方法が否定されて取消判決(以下「本件判決」という。)が確定したことから、本件判決が国税通則法第23条第2項第1号に規定する判決に該当するとして本件更正の請求をしたものであるが、同項に規定する判決とは、申告等に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実の得喪変更に関する訴訟に係る判決を意味するところ、本件判決は、株式の売主側が提起した所得税更正処分等取消訴訟についてなされた判決であり、本件判決によって、株式の買主である請求人に対する法人税更正処分等に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実そのものを左右するものではないから、同項の規定による更正の請求をすることはできない。
要旨
原処分庁は、請求人が提示した書類等だけでは、社会保険労務士報酬(本件金員)が事業所得の総収入金額と給与所得の収入金額とに二重計上されていること、及び請求人の事業所得の金額がいくらであるかを認定することができないから、更正の請求は認められない旨主張する。
しかしながら、当審判所の調査の結果によれば、本件金員が事業所得の総収入金額と給与所得の収入金額とに二重計上されていること、及び本件金員が事業所得に係る収入金額であることが認められ、当審判所において請求人の総所得金額及び還付金の額に相当する税額を算定すると、総所得金額は更正の請求の額と同額となり、還付金の額に相当する税額は更正の請求の額を上回るから、本件通知処分はその全部を取り消すべきである。
参照条文等
社会福祉法人の理事が県等から不正受給した補助金の一部を当該法人からの賞与とした所得税の申告について、当該不正受給に係る刑事事件の判決の確定を理由として更正の請求をすることはできないとした事例
裁決事例集 第66集 19頁
要旨
A会の理事であった請求人は、請求人を被告とする刑事事件の判決が、請求人がA会の施設建設工事費を水増し請求し、県等から補助金を不正に受給した疑いについての審理を訴因とするものであり、原処分庁が当該補助金の一部を請求人が受領したことについて、賞与と認定したことと繋がるものであるから、当然に国税通則法第23条第2項第1号に規定する判決に該当するので、更正の請求を認めるべきである旨主張する。
また、請求人が補助金を不正に受給したことは、刑事事件の判決により公序良俗に反するもので無効であるとされ、それにより、請求人は、私的に受領した補助金の返還をA会から請求されているのであるから、正に請求人に行った本件不正受給等の経済的成果がその行為の無効であることに基因して失われたものであり、このことは、取り消すことのできる行為が取り消されたものでもあるから、所得税法施行令第274条第1号及び第2号に規定する事由が生じ、所得税法第152条に規定する更正の請求の特例に該当するので、更正の請求を認めるべきであると主張する。
しかしながら、国税通則法第23条第2項第1号にいう判決とは、申告等に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実についての私法行為又は行政行為上の紛争を解決することを目的とする民事事件の判決を意味し、犯罪事実の存否範囲を確定するに過ぎない刑事事件の判決はこれに含まれないと解するのが相当であるところ、本件判決は請求人を被告人とする刑事事件の判決であるから、同号に規定する判決には該当しないことは明らかである。
また、本件判決は、請求人の不正受給についての犯罪事実の存否範囲を判断したに過ぎず、認定賞与として課税した処分の計算の基礎となった事実である請求人の本件金員の受領について、民事上無効な行為であるか又は取り消すことができる行為であるかを判断したものではない。また、請求人は、A会から本件金員の返還を請求されているが、当審判所の調査の結果によっても、請求人が本件金員を返還した事実は認められないことから、請求人の本件金員の受領による経済的成果は未だ失われていないというべきである。しかも、同様に、請求人の本件金員の受領が取り消された事実も認められない。
したがって、所得税法施行令第274条第1号及び第2号に規定する事由が生じたとは認められないので、この点に関する請求人の主張には理由がない。
要旨
請求人らは、国税通則法第23条第2項第1号にいう「判決」をもって、いわゆる「主文」を指すものと限定的に解釈すべき必然性はなく、理由中において本件土地譲渡が無効であることを確認した本件判決も同号にいう判決に該当する旨主張する。
しかしながら、同号にいう判決とは、当事者間に権利関係の争いがあり、その後、判決により申告等があった当時の権利関係と異なる事実関係が生じた場合の判決をいうと解するのが相当である。
これを本件についてみると、土地譲渡の有効性については、既に当事者間で和解の成立により解決が図られており、また、本件判決の理由中において、土地譲渡の無効が確認されたとしても、そのことは、土地譲渡の当事者間の法律関係に何ら影響を及ぼし得ない以上、本件判決が同号にいう「判決」に当たるということはできない。
給与を返還した場合には源泉徴収の規定により正当に徴収された又はされるべき所得税等の額も減少するとした事例( 平成28年分の所得税及び復興特別所得税の更正の請求に対する理由なし通知処分、 平成29年分の所得税及び復興特別所得税の更正の請求に対する理由なし通知処分・ 一部取消し、 棄却)
裁決事例集 第131集
ポイント
本事例は、給与の返還に伴って源泉徴収の規定により正当に徴収された又はされるべき所得税等の額が減少した場合には、その減少後の正当に徴収された又はされるべき所得税等の額を超える金額を算出所得税額から控除し、又は還付を受けることはできないとしたものである。
要旨
請求人は、役員給与につき源泉徴収された所得税等(本件各源泉所得税)について、当該役員給与を一部返還したことにより過大となったにもかかわらず、源泉徴収義務者が源泉徴収税額の精算をしない場合には、源泉徴収義務者が請求人に役員給与を支払う際に徴収した源泉所得税を国は収納し利益を得ているのであるから、所得税法(平成31年法律第6号による改正前のもの)第120条《確定所得申告》第1項第5号の「源泉徴収された又はされるべき所得税の額」は、実際に源泉徴収された所得税等の額と解するのが相当であり、請求人は、本件の各更正の請求により本件各源泉所得税の額の還付を受けることができる旨主張する。
しかしながら、同号にいう「源泉徴収をされた又はされるべき所得税の額」とは、所得税法の源泉徴収の規定に基づき正当に徴収をされた又はされるべき所得税等の額を意味するものであり、役員給与が減額された以上、源泉徴収の規定により正当に徴収された又はされるべき所得税等の額も減少するのであるから、請求人が主張する事情があったとしても、請求人は、本件の各更正の請求において、本件各源泉所得税の額のうち、「正当に徴収された又はされるべき所得税等の額」を超える金額を算出所得税額から控除し、又は還付を受けることはできない。
なお、原処分庁は、請求人の源泉徴収による所得税等の額は原処分庁ではなく源泉徴収義務者が再計算すべきものであり、また、請求人は源泉徴収義務者が発行した訂正後の源泉徴収票又はこれに代わる書類を提出していないから、源泉徴収義務者によって再計算された請求人の給与所得に係る源泉徴収された所得税等の額や所得控除の額を確認することができない旨主張する。
しかしながら、所得税法第120条第1項第5号の「正当に徴収された又はされるべき所得税等の額」の意味を踏まえると、請求人が本件の各更正の請求に関して提出した資料から正当に徴収されるべき所得税等の額が計算できる場合には、その計算をした所得税等の額を基に確定申告書に記載された納付すべき税額が過大となっているか否かを判断することが相当である。
参照条文等
国税通則法第23条第1項 所得税法第120条第1項第5号(平成31年法律第6号による改正前のもの)
参考判決・裁決
最高裁平成4年2月18日第三小法廷判決(民集46巻2号77頁) 東京高裁昭和55年10月27日判決(訟月27巻1号211頁) 平成24年12月20日裁決(裁決事例集No.89)
国外居住親族に係る書類の添付等がなく扶養控除の適用がないとして更正の請求ができる場合に該当しないとした事例(平成29年分の所得税及び復興特別所得税の更正をすべき理由がない旨の通知処分・棄却)
裁決事例集 第137集
ポイント
本事例は、請求人が国外居住親族に係る送金関係書類を更正の請求書に添付等しておらず、当該親族に係る扶養控除の適用がないため、更正の請求ができる場合に該当しないとしたものである。
要旨
請求人は、国外に居住する請求人の母、叔母及び姉(本件各親族)が高齢や病気により銀行に行くことができないこと、また、一人一人に送金することによる銀行送金手数料を節約することができることから、請求人の兄らにまとめて送金をしていたにすぎず、当該送金が、本件各親族を含む国外に居住する親族全員の生活費及び医療費に充てることを目的とするものであることは明らかであり、本件各親族に係る扶養控除の適用が認められるべきであるから、国税通則法第23条《更正の請求》第1項第3号に規定する更正の請求ができる場合に該当する旨主張する。
しかしながら、国外に居住する親族に係る扶養控除の適用を受けるためには、所得税法施行令(令和2年政令第111号による改正前のもの)第262条《確定申告書に関する書類等の提出又は提示》第3項第2号に規定する書類(送金関係書類)を添付等しなければならないところ、請求人が提出した送金明細は、当該兄らを送金の受取人とするものであり本件各親族に係る送金関係書類とは認められず、請求人は本件各親族に係る送金関係書類を更正の請求書に添付等していないから、本件各親族に係る扶養控除の適用はない。したがって、国税通則法第23条第1項第3号に規定する更正の請求ができる場合に該当しない。
参照条文等
要旨
請求人らは、本件各執行不能調書をもって、国税通則法第23条第2項第1号に規定する「申告等に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決」に該当する旨主張するが、本件各執行不能調書は、民事執行規則第13条第1項第7号及び執行官規則第17条に基づくもので、民事訴訟に係る判決ではなく、当該調書について判決と同一の効力を有する旨の規定がなく、また、本件各執行不能調書に記載されている内容は、本件債務者等に対する強制執行の結果であり、申告等に係る課税標準等の基礎となる事実、すなわち、本件相続開始日における現況には変更がないのであるから、国税通則法第23条第2項第1号の判決又は判決と同一の効力を有する和解その他の行為には該当しないものと認められる。
更正の請求ができる場合に当たらず、租税特別措置法第41条第10項に規定する省エネ住宅特別控除を適用することはできないとした事例(令和5年分の所得税及び復興特別所得税の更正をすべき理由がない旨の通知処分・棄却)
裁決事例集 第140集
ポイント
本事例は、請求人が租税特別措置法第41条第1項に規定する住宅借入金等特別控除を適用した確定申告書について、国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことには該当しないから、更正の請求ができる場合に当たらず、同条第10項に規定する省エネ住宅特別控除を適用できないとしたものである。
要旨
請求人は、租税特別措置法(令和6年法律第8号による改正前のもの)第41条《住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除》第1項に規定する住宅借入金等特別控除(一般の住宅借入金等特別控除)を適用した確定申告(本件確定申告)をしたものの、請求人が取得した家屋は同条第10項に規定するエネルギー消費性能向上住宅に該当するから、国税通則法第23条《更正の請求》に規定する更正の請求により、一般の住宅借入金等特別控除ではなく租税特別措置法第41条第10項に規定する住宅借入金等特別控除(省エネ住宅特別控除)を適用することができる旨主張する。
しかしながら、一般の住宅借入金等特別控除及び省エネ住宅特別控除の各要件をいずれも充足する場合には、そのいずれを適用するかを選択して確定申告をすることができるところ、本件確定申告の内容は、一般の住宅借入金等特別控除の適用要件を満たすものであり、その計算にも誤りがないことからすると、本件確定申告は、客観的にみれば税法の規定に従ったものであるから、国税通則法第23条の要件に該当せず、省エネ住宅特別控除を適用することはできない。
参照条文等
国税通則法第23条第1項 租税特別措置法(令和6年法律第8号による改正前のもの)第41条第1項、第10項
参考判決・裁決
東京高裁平成23年7月29日判決(税資261号順号11724)
要旨
請求人らは、相続回復請求権は実質的にみて被相続人の遺産であるから、請求人らが本件和解の成立時に現に取得した相続回復請求権の範囲内で課税すべきであって、本件和解の結果、回復できなかった相続回復請求権に相当する額について、相続税の課税標準等に異動が生じたといえるから、更正の請求を認めるべき旨主張する。
しかしながら、相続回復請求権の趣旨、請求人らの相続回復請求の訴えの内容からすれば、当該訴えは、相続人であった者(以下「僣称相続人」という。)が占有・管理している被相続人の遺産全部を請求人らに返還するよう求めたもので、遺産の帰属が争われているものではないこと、請求人らと僣称相続人との間の本件和解は、僣称相続人の資力等にかんがみ、相続回復請求権に基づいた和解金を超える請求権を和解期日以降放棄する旨のものであり、請求人らが相続開始時点に取得した相続財産を増減させるものでなく、単に相続回復請求権の一部を和解期日以降放棄したに過ぎない。そうすると、本件和解は、新たな権利関係等を創設する趣旨で行われたものと解するほかないから、これにより、請求人らが原処分庁に提出した相続税の申告書に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実関係にさかのぼって異動を来すものではないと認めるのが相当である。したがって、本件和解は、国税通則法第23条第2項第1号に規定する「和解」には該当しないというべきである。
要旨
国税通則法第23条第2項第1号の規定は、納税者において、申告時には予測し得なかった事態が後発的に生じたため、課税標準等又は税額等の計算の基礎に変更をきたし、税額の減額をすべき場合に、法定申告期限から1年を経過していることを理由に更正の請求を認めないとすると、帰責事由のない納税者に酷な結果となることから、例外的に更正の請求を認めて納税者の保護を拡充しようとしたものと解される。上記規定の趣旨及び国税通則法第23条第2項各号の列挙事由の内容にかんがみれば、同項第1号の「判決」に基づいた更正の請求が認められるためには、判決を得るための訴訟が申告等に係る課税標準等又は税額等の基礎となった事実の存否、効力等を直接審判の対象とし、判決により課税標準等の基礎となった事実と異なることが確定されるとともに、納税者が申告時において、課税標準等の基礎となった事実と異なることを知らなかったことが必要であると解される。
これを本件についてみると、請求人は、被相続人が死亡するまで、V社の経営に全く関与しておらず、本件売買契約にも全く関与していなかったものと認められる。他に請求人が申告時までに本件土地の売買の目的や経緯、ないしは本件売買契約が仮装であること等を知っていたと認めるに足りる証拠はない。そうすると、請求人は申告時において本件売買代金債権が存在しなかったことを知っていたとは認められない。
相続により取得した財産に係る相続開始前における所有権の取得時効の完成、所有権の取得という事実が判決により後発的に確定した場合、当該判決は、国税通則法第23条第2項第1号にいう判決に当たり、当該事情を財産の価額に与える影響要因として考慮した場合には、その財産の価額は零円とみるのが相当とした事例
裁決事例集 第74集 1頁
要旨
請求人らは、本件相続に係る相続税の申告に当たり、本件相続開始日において、本件土地は相手方に対して使用貸借により貸し付けているという事実、換言すると、相手方による取得時効の完成が認められないという事実を基礎とし、そのため本件土地を自用地としての価額で評価して申告したが、その後の本件判決によって、本件相続開始日前には既に所有権の取得時効の期間が満了し、本件土地の取得時効は完成していたという事実が確定したものであり、このことは、申告の基礎とした事実と本件判決で確定した事実とに相違があるといえる。
また、本件判決で確定した事実は、本件相続開始日において、本件土地には、時効の援用以外の取得時効の要件が満たされており、請求人らの意思いかんにかかわらず、相手方の時効の援用があれば一方的に所有権を時効取得される状態にあったということであり、これは、本件土地の価額に影響を及ぼすべき事情として、相続税の課税標準、ひいては税額の計算に影響を与えるものといえる。
そして、その財産の評価に当たっては、その財産の価額に影響を及ぼすべきすべての事情を考慮するものであり、本件土地については、相続開始時において既に時効期間が経過しており、相続人にとっては、所有権を確保すべき攻撃防御方法がないために、相手方に時効を援用されれば所有権の喪失を甘受せざるを得ない状態の土地であることが本件判決の確定によって明らかとなったところ、このような状態の土地は、相続人が所有権を確保しようとすれば、時効を援用する相手方に対し、課税時期現在における当該土地の客観的交換価値に相当する金員の提供を要するのが一般的である土地ということができるから、そのことを価額に影響を与える要因として考慮すると、土地の価額と提供を要する金額が同額であるから、結局のところ、その財産の価額は零円になると理解するのが相当と認められる。
相続財産の一部は被相続人の遺産ではないこと及び被相続人と他の相続人との死因贈与契約は有効であるとした判決は、国税通則法第23条第2項第1号に規定する「判決」に該当するとした事例
裁決事例集 第75集 1頁
要旨
原処分庁は、請求人は本件被相続人の遺産として本件被相続人名義の土地及び本件被相続人名義の預金のうち59,055千円(本件被相続人名義の土地と併せて「本件H名義資産」という。)を申告しており、相続人Kの被相続人に係る相続税の申告内容からも、本件H名義資産が被相続人の遺産であることについては、共同相続人の間で争いがなかったものと認められる旨主張するが、請求人は、本件訴訟において本件H名義資産は亡き実父Gの遺産であると主張し、Kは、本件H名義資産はすべて本件被相続人の遺産であると主張しており、両者がこのような主張を行うのは、請求人にとっては本件H名義資産が本件被相続人の遺産であると認められると、死因贈与契約公正証書が有効であるとの前提にたてば当該資産はすべてKに死因贈与され、請求人の相続分がなくなることとなり、また、Kにとっては、本件H名義資産が実父Gの遺産であると認められると、当該遺産は実父Gの共同相続人間で分割することになるため、Kが一人で本件H名義資産を取得することができないこととなるからである。そうすると、本件H名義資産の帰属について争いがあったと認めるのが相当であり、本件判決は、馴れ合いによる判決ではないことが明らかであるので、その実質において、客観的、合理的根拠を欠くような判決ではないことが認められる。
原処分庁は、本件H名義資産の購入資金が実父Gから出えんされていることを請求人は知っていたものと認められることなどから、国税通則法第23条第1項の規定による更正の請求が可能であり、同条第2項による更正の請求をすることはできない旨主張するが、請求人は、本件H名義資産には亡き実父Gの遺産が含まれている可能性があると考える余地はあったものの、請求人が具体的にその確証を有していたとは認められず、本件H名義資産をその名義のとおり本件被相続人の遺産として申告したとしても何ら不自然なものではないとするのが相当であり、請求人の申告時には予測し得なかった事由が後発的に生じたと認めるのが相当である。
原処分庁は、本件訴訟については、本件H名義資産の購入資金及び原資の出えん者がだれであるかを争ったものであり、本件判決はこれが示されたものであるから、本件H名義資産の権利関係の帰属を明確にするものではない旨主張するが、本件判決により、本件H名義資産は実父の遺産であることが確認され、さらに本件被相続人の遺産としての預金債権の帰属についても併せて判示されているのであるから、本件判決は、本件被相続人の遺産の範囲を確認するための権利関係の帰属に関する判決であり、本件判決により確定した内容は、申告に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実と異なるものであることが認められる。
本件出資口数の売買契約が錯誤により無効である旨を確認した判決があったとしても、そのことにより国税通則法第23条第2項第1号に該当することとなったとは認められないとした事例
裁決事例集 第76集 15頁
要旨
請求人らは、別件判決(平成18年)において錯誤無効の主張が是認されたことから、国税通則法第23条第1項所定の期間内に更正の請求をしなかったことにつき「やむを得ない理由」があり、また、本件判決(平成19年)により本件売買契約が錯誤により無効であったことが確認されたのであるから、国税通則法第23条第2項第1号に規定する「更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決により、その事実が当該計算の基礎となったところと異なることが確定したとき」に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人らは、当該錯誤無効を理由に本件決定処分等及び別件通知処分に係る争訟手続を行い、外形的にも錯誤無効の主張に沿うようにB社の出資口○○○○口をAに戻すなどの原状回復を行っていることからすると、請求人らの間では平成13年当時において既に本件売買契約が無効であるという事実関係は形成されていたと認められ、また、本件訴訟においても請求人らの間に本件売買契約が錯誤無効であるとの事実関係の外形自体に争いはないことから、本件判決によって初めて本件売買契約が無効と確認され更正の請求の要件を満たすこととなったわけではないから、本件判決をもって、国税通則法第23条第2項第1号に規定する「課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとき」に該当するとは認められない。
本件和解は、本件不動産の持分2分の1が被相続人の相続開始日にさかのぼって利害関係人に帰属することを認めたものと解する余地はなく、将来に向かって新たな権利関係等を創設する趣旨のものであることから、国税通則法第23条第2項第1号にいう「和解」に当たらないとした事例
裁決事例集 第78集 1頁
要旨
請求人らは、①本件和解調書には、利害関係人に対する本件死因贈与契約を無効である旨の一条項があるものの、実質的には本件不動産の持分2分の1が、相続人たる請求人らではなく、利害関係人に帰属することを認めたものというべきである、②仮に本件和解条項の文言のとおり、本件死因贈与契約が無効であるとしても、本件和解により請求人らが利害関係人に支払う解決金は、療養看護の対価であり、被相続人が負担すべき債務として相続開始日において存在したものというべきであると主張し、本件和解により、申告に係る課税標準又は税額の計算の基礎となった事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したと主張する。
しかしながら、本件和解条項は、本件死因贈与契約が無効であること及び本件不動産が請求人ら及び共同相続人Jに帰属することを確認したものであることが明確であり、これは、請求人らが申告の基礎とした事実と同一であり、本件和解条項を、本件不動産の持分2分の1が被相続人の相続開始日にさかのぼって利害関係人に帰属することを認めたものと解する余地はない。また、本件解決金は、請求人ら及び共同相続人Jが、利害関係人に対し、同人が被相続人の療養看護をしてきたことを認めて支払うことを合意したものであって、被相続人が、相続開始時において、利害関係人に支払うべきであったものとは認められない。したがって、本件和解により、申告に係る課税標準又は税額の計算の基礎となった事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとは認められない。
被相続人の遺産を構成しないことを確認する和解は、国税通則法第23条第2項第1号に規定する判決等に当たるとした事例(平成21年11月相続開始に係る相続税の更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分・全部取消し)
裁決事例集 第95集
ポイント
本事例は、請求人が当事者となっている訴訟に関して成立した裁判上の和解が、いわゆる「馴れ合い訴訟」の結果であるとはいえないとしたものである。
要旨
原処分庁は、受遺者である請求人が被相続人から遺贈により取得したとして相続税の修正申告に計上した各土地(本件各土地)について、請求人、R社及び相続人の間で成立した、平成13年頃に被相続人からR社に譲渡されたもので被相続人の遺産を構成しない旨を確認した裁判上の和解(本件和解)は、当事者が租税回避目的等から馴れ合いと評価されるような和解をしたにすぎず、国税通則法第23条《更正の請求》第2項第1号かっこ書に規定する和解に該当しない旨主張する。
しかしながら、①本件各土地の一部には請求人の兄名義の居宅が存在すること、②平成13年にR社を権利者とする所有権移転請求権仮登記がされていること、③売買代金に相当する金員が貸付金名目でR社等から被相続人に交付されていることからすれば、本件各土地が、被相続人の遺産を構成しないことを確認した本件和解の内容について、証拠等からうかがわれる客観的事実関係に明らかに反していると認めるに足らない。そうすると、本件和解は、相続開始時に所有権の帰属に関して当事者間に争いのあった本件各土地について、平成13年頃に被相続人からR社に対して譲渡されていたことが相応の根拠をもって認められ、実質的にみても客観的、合理的根拠を欠くということはできない。したがって、本件和解は、国税通則法第23条第2項第1号かっこ書に規定する和解に該当するというべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
名古屋高裁平成2年7月18日判決(税資180号85頁)
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