裁決事例 取得費
一括して支払った本件土地の取得費のうち、その内容が明らかでない部分についても、本件土地の当時の状況等を総合的に判断すると、取得のために支出したものと推認されるとした事例
裁決事例集 第43集 142頁
要旨
本件譲渡に係る取得費は、①本件土地の当時の状況が、建物の撤去及び埋土等の造成工事が必要であったこと並びに②仲介業者が介入しており、その費用に充てる必要があったことなどから、複数の契約により総額を一括して支払い、これを青色申告の帳簿に計上していたものと認められ、本件取得費のうちその内容が明らかでない部分は、取得費として認められないとした原処分は、その全部を取り消すべきである。
代物弁済によって取得した土地の取得費は、代物弁済によって消滅した債権金額がその取得時における時価相当額を著しく超えるときは、その時価相当額にとどまるとした事例
裁決事例集 第32集 59頁
要旨
代物弁済により資産を取得した場合には、その弁済により消滅した債権の額がその資産の取得に要した金額となるのであるが、その代物弁済により消滅した債権の額が代物弁済により取得した資産の価額を大幅に超えることとなる場合において、その超える部分の金額について債権者がその弁済を求めないこととしたときは、当事者の認識又は契約にかかわらず、その超える部分の金額についてその債務を免除し、又は債務の弁済が不能であると判断したものと解すべきであるから、これに当たる部分の金額には資産の取得費性はなく、したがって、代物弁済により取得した資産の取得に要した金額とはならず、当該資産の代物弁済時の時価をもって取得に要した金額とすべきである。
協議離婚無効確認請求訴訟に係る弁護士費用として支払った金員は、当該訴訟に関してなされた和解に基づいて、妻と共有する土地から分割して取得した土地の譲渡による所得金額の計算上控除すべき取得費に当たらないとした事例
裁決事例集 第37集 80頁
要旨
請求人は、本件土地は請求人の提起した協議離婚無効確認請求訴訟に係る和解に基づいて妻との共有土地から分割し、請求人固有の財産となったものであるから、当該訴訟に係る弁護士費用として支払った金員は、本件土地の譲渡所得の金額の計算上控除すべき取得費に該当すると主張するが、当該訴訟の本来の目的は、協議離婚を前提とした上で妻の提起した財産分与請求に対抗して自己の財産を防御するにあったというべきであるところ、共有土地の請求人の持分も財産分与の請求の対象とされ、請求人の持分を妻に財産分与しなければならない可能性があったこと、また、当該訴訟において、財産分与の請求の対象となった財産をどのように分与するかといった紛争があったことは否定できないとしても共有土地の所有権等の帰属に関する紛争はなかったことが明らかであり、請求人は、当該和解に基づいて共有土地を分割し、請求人の持分に対応する本件土地を確保したにすぎないものというべきで、請求人は何ら資産を取得したものとはいえないので、本件弁護士費用は取得に関し争いのある資産につき所有権等を確保するために直接要した訴訟費用等とはいえず、したがって、本件弁護士費用は譲渡所得の金額の計算上控除すべき資産の取得費には該当しない。
要旨
市の宅地開発指導要綱に基づく開発負担金は、現実に開発された宅地等の売買契約成立の時に市に納入されるものであるが、開発された宅地等を将来使用するものが恩恵を受けるべき公共施設の整備に要する資金に充てられるべきものであるから、当該宅地等の経済的価値に付加されるべきものであると認められる。したがって、これを譲渡費用とすべき理由はなく、原処分庁がこれを本件宅地の開発に付随する改良費に当たるものとしてその取得費に含めたことは相当である。
期末にたな卸しすべき株式の評価に当たり、信用取引の決済に充てられるべき株式の買付けについては、期中の他の株式の取得に関係させることなく、個別に当該買付け株式の取得に要した金額により評価すべきものとした事例
裁決事例集 第40集 56頁
要旨
請求人は、期末に有する有価証券(株式)の評価額の計算につき、総平均法に基づく低価法によるべき旨主張するが、請求人は期末直前において現物株式の買付けの約定とあわせて、同一銘柄の株式の同株数、同価格の信用売付けの約定をし、さらに現株渡しによる決済の約定をしているところ、所得税法施行令第119条の規定によれば、信用取引等の方法による株式の売買にあっては、1個の買付けと売付けを単位として個別に期末評価額を算定すべきことになる。
これを本件に即していえば、信用取引の決済手段に充てられるべき期末買付け株式のうち、期末においてその決済期日が到来していないものは、信用取引の未決算勘定の一つとして、期中に売買が完了した株式とは別個に、当該買付け株式の取得に要した金額により評価するのが相当である。
要旨
請求人は、本件建物等の譲渡所得の金額の計算上取得費から控除する償却費の額の累積額には、不動産所得の金額の計算上必要経費の額に算入された新築貸家住宅等の割増償却費の額は含まれないと解すべきであると主張するが、所得税法第38条第2項第1号の規定により、譲渡所得の取得費の計算上控除される資産の売却費の累積額には、その資産の減価償却費の額の計算について租税特別措置法第14条第1項の規定により割増償却の適用を受けている場合には、同項の規定の適用を受けた期間に係る割増償却費の累積額が含まれると解するのが相当である。
特定口座内で譲渡した上場株式等の取得費を概算取得費とすることはできないとした事例(令和元年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第135集
ポイント
本事例は、特定口座内で譲渡した上場株式等の取得費については、当該特定口座内における当該上場株式等の受入れに係る記録を基礎として金融商品取引業者等において当該上場株式に関する固有の計算方法により一元的に計算されることを予定しているのであって、納税者が申告するに当たり概算取得費とすることはできないとしたものである。
要旨
請求人は、①源泉徴収選択口座に係る特定口座内保管上場株式等の譲渡所得の金額を申告するに当たり、租税特別措置法第37条の11の3《特定口座内保管上場株式等の譲渡等に係る所得計算等の特例》第1項が特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額とそれ以外の株式等の譲渡による譲渡所得の金額とを区分して、これらの金額を計算する旨規定したのは、特定口座創設の趣旨等からすれば、投資家の所得計算の負担を軽減するために金融商品取引業者等が計算を代行したにすぎないから、納税者が確定申告において取得費等を含めて譲渡所得の金額を再計算することができる旨、②租税特別措置法関係通達(措置法通達)37の11の3-14《株式等に係る譲渡所得等の課税の特例に関する取扱い等の準用》は計算代行者である金融商品取引業者等の計算等に関する定めであって、納税者が概算取得費を譲渡所得に係る取得費として譲渡所得の金額を計算することは妨げられない旨それぞれ主張する。
しかしながら、①特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額の計算上取得費に算入する金額は、当該上場株式等の特定口座への受入れに係る記録を基礎として金融商品取引業者等が固有の計算方法により一元的に計算することが予定されており、②措置法通達37の11の3-14が、概算取得費による取得費を認める旨を定めた措置法通達37の10・37の11共-13《株式等の取得価額》を準用していないのは、特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額の計算に当たり、概算取得費を取得費とすることを認めない趣旨であると解すべきであるから、納税者が源泉徴収選択口座に係る特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額を申告するに当たり、概算取得費を取得費とすることはできない。
参照条文等
所得税法第48条第3項 所得税法施行令第118条第1項 租税特別措置法(令和2年法律第8号による改正前のもの)第37条の11の3第1項、第3項 租税特別措置法施行令(令和3年政令第119号による改正前のもの)第25の10の2第1項
要旨
既に取得した資産について、その登記名義を真正な所有権者の名義に変更するための訴訟費用を支払うために借り入れた借入金の利子は、間接的には資産の所有権を確保するための支出であっても、資産を取得するために直接要した費用ではないから、所得税法第38条に規定する資産の取得費に含めることはできない。
譲渡担保として提供していた土地の受戻しは、資産の取得に該当しないので、その土地を受け戻すために要した和解の費用及び弁護士費用は、土地の取得費に当たらないとした事例
裁決事例集 第32集 67頁
要旨
一般に、債務者が自己所有の物件を譲渡担保に供した場合には、債権者は当該物件の担保的価値を把握するにとどまり、同物件についてその他の権能は引き続き譲渡担保設定者が保有しているのであるから、譲渡担保権の実行により目的物件が確定的に債権者に帰属する前に設定者が同物件の受戻しをしたときは、これをもって所得税法にいう資産の取得があったということはできないし、それゆえ、その受戻しをするために設定者が支払った金員は、たとえそれが何らかの事情により本来弁済すべき被担保債務額を超えて支払うことを余儀なくされたものであっても、これを資産の取得に要した費用とみることはできない。
本件の和解に基づき支払った金員及び弁護士に支払った金員は、いずれも請求人において譲渡担保に供していた土地を自己に受け戻すために要した費用であることが明らかであるから、所得税法第38条第1項所定の資産の取得に要した金額に当たらない。
農地の一部を宅地に造成し分譲した際に取り付けた公衆用道路の取得費(道路用地の取得費及び工事費)は、分譲宅地に係る譲渡所得の金額の計算上、総収入金額から控除する取得費に該当するとした事例
裁決事例集 第39集 81頁
要旨
一団地の宅地を造成して分譲する場合、団地経営に必要な道路等は、現実には地方公共団体に容易に採納されず、分譲したものが名目的に所有せざるを得ないことが多く見受けられる。このような場合、その道路等の経済的価値は、すべて分譲された土地の効用に吸収されているとみることができ、その費用は、その道路等が地方公共団体に寄付されたと同様に、分譲宅地の取得費に算入すべきであると解される。
本件道路は、本件分譲宅地に不可欠かつ必要最小限のものであり、公衆用道路として一般通行の用に供されるものであって、これを譲渡し、その取得費を回収することが期待できない点を考慮すると、その経済的価値は、分譲宅地の効用に吸収されたというべきであり、地方公共団体に寄付したと同様に、本件道路の取得費は、分譲宅地の取得費に算入するのが相当である。
また、本件道路は、分譲宅地の価値を高めていると同時に、残地たる農地の価値をも高めているから、本件道路の取得費は、分譲宅地及び残地の面積比に応じてあん分すべきであるとの原処分庁の主張については、本件残地は、宅地転用の予定のない農地であり、現に耕作されていること、残地と公道との間には農道があること等を考慮すると、本件道路の設置により本件残地の価値が高められたとしても、それは本件宅地造成により付随的にもたらされたものにすぎす、その取得費を本件残地に配賦すべき理由に乏しく、採用することはできない。
要旨
相続により取得した資産は、所得税法第60条第1項の規定により相続人が引き続き所有していたものとみなされるから、当該資産について譲渡所得の金額の計算上控除される取得費は、被相続人がその資産を取得したときの購入代金及び取得に要した費用等の合計額である。
したがって、遺産分割に関する調停の結果、相続財産の分割に代え、他の共同相続人に対し債務を負担することによって相続財産を取得する代償分割の場合においても、その取得資産は相続によって取得したものにほかならないから、当該資産の譲渡による譲渡所得の金額の計算上、他の共同相続人に対して負担した債務をその資産の取得費に算入すべきであるとする請求人の主張には理由がない。
要旨
請求人は、本件土地の取得費は、昭和55年12月20日に支払った600万円だけではなく、この価額に昭和56年1月28日に支払った600万円を加えた1,200万円であると主張し、その理由として、[1]昭和56年1月28日に600万円を支払ったことは登記原因の日付が昭和56年1月28日となっていることからも明らかであり、[2]本件土地の取得に当たっての譲渡代金を600万円とする売買契約書は、印章の押印がなく、売買契約書としての効力がなく、請求人が保管していた前所有者自筆の売渡契約書こそ印章の押印もあり、真実の書類であって、[3]隣接地が昭和61年5月に坪当たり5万円で売買されていることからみて、本件土地の昭和55年頃の坪当たり単価は約4万円が相当であると主張する。
しかしながら、[1]登記原因の日付が昭和56年1月28日となったのは農業委員会の所有権移転の許可が昭和56年1月27日であったことからと認められ、登記原因の日が残金の支払いの証拠とはいえず、[2]売買契約書には契約の日付の記載がなく、買主欄に請求人の押印はないものの、2か所の訂正箇所には売主、買主双方の押印がされていることからすると、実態を反映しないものとは認められず、昭和56年1月28日に600万円を支払ったことを証明する領収書はなく、請求人が自ら原処分庁に600万円で買い入れたと回答していることなどから売渡契約書が真実の契約書であるとの請求人の主張は採用できず、更に、[3]請求人の売買事例は取得から5年以上経過後のもので、物件の形状なども異なっており事例として不適当であり、地価事情が類似し、かつ、取引年月日が近い売買実例価額は、1平方メートル当たり5,952円であることなどから、本件土地の取得費は600万円と認めるのが相当である。
土地取得後これを利用することなく譲渡した場合には、その土地の取得に要した借入金の利子及び抵当権設定費用等は当該土地の取得費に算入すべきであるとした事例
裁決事例集 第17集 27頁
要旨
- 資産の利用を目的として資産を取得した場合におけるその資産の取得のための借入金の利子の性格は、当該資産を供した利用目的のための費用と観念するのが通常であって、その利用によって収入を得た場合においては、当該利子は、不動産所得の金額の計算上控除すべき必要経費に該当し、他方、資産を譲渡することにより値上がり益を得ることを目的として資産を取得した場合においては、資産取得のための借入金の利子のうち、譲渡の日までの部分に対応する金額は、譲渡収入を得るための通常、かつ、必要な費用と考えられ、資産の取得に要した金額に該当するものと解される。
- 資産の取得の目的は、取得者の内心に係る事柄であり、第三者がその真意を知ることは困難であること及び取得時の取得目的がその後において変更されることが少なくないことを考慮すると、資産の種類、性質、形状その他外形的に判断できる利用の結果等からみて、客観的にその目的及び目的の変更を認定するのが合理的であるから、たとえ個人がその内心においては業務の用又は居住等の用に供する目的で資産を取得した場合であっても、何らの用に供することなく譲渡した場合には、当初から値上がり益を得ることを目的として取得したものとして、取得のために要した借入金の利子は取得費に算入し、また、内心においては値上がり益を得る目的で資産を取得した場合であっても、その後において目的を変更して業務の用又は居住等の用に供した場合には、その時以後の期間に対応する借入金の利子は、業務上の必要経費又は家事費に当たると解するのが、それぞれ租税負担の合理性、衡平性の観点からみて相当である。
- 借入金の担保のための抵当権設定費用及び借入金債務返済契約の公正証書作成費用は、借入金債務に付随する費用であって借入金利子と同性質のものであるから、借入金利子が資産の取得費を構成するのと同様の理由によって資産の取得費に含まれると解するのが相当である。
請求人が売却した車両は「使用又は期間の経過により減価する資産」に該当するとした事例(令和元年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第139集
ポイント
本事例は、請求人の売却した車両の価値が、その属する類型の資産に求められる本来的な目的・効用とは異なる面に置かれていることが社会通念上確立しているといえるような例外的な場合には該当しないから、当該車両が「使用又は期間の経過により減価する資産」に該当するとしたものである。
要旨
請求人は、①売却した車両(本件車両)は、請求人が専ら観賞用に取得し、メンテナンスをせずに製造当時の状態のまま保管していたことなどから、自動車の本来の効用を果たさなかったことが客観的に明らかであること、②本件車両は、希少価値を有し、かつ、代替性のないものであること及び③本件車両のようなスーパーカーはその希少性に基づく価格がその価値として定着し、著しく高い価格で取引されることが社会通念化していることから、本件車両は、所得税法第38条《譲渡所得の金額の計算上控除する取得費》第2項に規定する「使用又は期間の経過により減価する資産」に該当しない旨主張する。
しかしながら、①車両の機能は、経年や使用によって一般的・類型的に逓減すること、②本件車両の価格は、その希少性だけでなく自動車本来の機能にも価値が置かれて形成されていることは明らかであること及び③本件車両は製造から28年程度しか経過しておらず、本件車両と同種の車両の価格推移は未だ不確定な面があることからすると、鑑賞以外の実用的な目的又は機能が想定される本件車両が、「骨とう」に類するといえる程度の長期間を経てもなお確立した高い価値を維持しているような場合に当たると解することはできず、その価値が、当該類型の資産に求められる本来的な目的・効用とは異なる面に置かれていることが社会通念上確立しているといえるような例外的な場合には該当しないから、本件車両は「使用又は期間の経過により減価する資産」に該当する。
参照条文等
参考判決・裁決
東京地裁令和5年3月9日判決(訟月70巻11号1255頁) 東京高裁令和5年11月30日判決(訟月70巻11号1223頁)
遺産の代償分割に当たり他の相続人に支払った金額は、当該代償分割によって取得した資産の譲渡所得の金額の計算上、譲渡資産の取得費の額に算入できないとした事例
裁決事例集 第21集 72頁
要旨
いわゆる代償分割の方法により遺産分割を了して相続した資産を譲渡した場合、その代償分割に際して負担することとなる債務は、相続人相互における各取得財産の価額を調整する目的で負担するものであって、その相続により取得した資産の取得代価として負担したものではないから、その債務の額を譲渡所得の金額の計算上取得費の額に算入することはできない。
要旨
所得税法第38条第1項に規定する「資産の取得に要した金額」には、当該資産の客観的価格を構成すべき取得代金の額のほか、登録免許税、仲介手数料等の当該資産を取得するために通常必要と認められる付随費用の額も含まれると解するのが相当であり、当該資産の維持管理に要する費用その他日常的な生活費ないし家事費に属するものはこれに含まれないと解するのが相当である。
そして、居住者が相続により取得した資産を譲渡したことにより、所得税法第60条第1項を適用して譲渡所得の金額を計算する場合において、相続人が当該資産を取得するために通常必要と認められる費用、例えば、相続の場合の被相続人から相続人への名義変更に係る不動産登記費用も、同法第38条第1項に規定する「資産の取得に要した金額」に該当すると解される。
もっとも、遺産分割の際に支出した訴訟費用、弁護士費用等は、一般には相続人間の紛争を解決するための費用であることから、相続人が当該資産を取得するために通常必要と認められる費用とはいえない。したがって、遺産分割の際に支出した訴訟費用、弁護士費用等は、所得税法第38条第1項に規定する「資産の取得に要した金額」に含まれる付随費用には該当しない。
本件弁護士費用は、本件共同相続人が本件相続に係る遺産分割を求めて申し立てた本件各遺産分割事件において、被相続人の代理人を務めた弁護士に対し、委任契約の報酬として支払われたものの一部である。
そうすると、本件弁護士費用は、遺産分割の際に支出した弁護士費用であるから、被相続人が本件土地を取得するために通常必要と認められる費用とはいえず、所得税法第38条第1項に規定する「資産の取得に要した金額」には該当しない。
要旨
請求人が支払った代償金は遺産分割調整金債務であって、被相続人の他の債務が相続税の課税価格の計算上控除されるので相続財産の取得費を構成しないのと同様、消極財産(遺産債務)として調整済みであるから、譲渡所得の計算上取得費の額に算入できない。
また、代償金の原資となった借入金に係る支払利息も同様である。
請求人が貸付債権の担保として根抵当権を設定していた土地を、自ら競売の申立てを行い、客観的価額を大幅に上回る貸付債権相当額で落札・取得して譲渡した場合において、当該落札による価額は、譲渡所得の金額の計算上控除する資産の取得に要した金額には当たらないとした事例
裁決事例集 第57集 169頁
要旨
請求人は、競売に付された不動産を取得しようとする者が、どうしてもその物件を手に入れたいと思えば競売価額は時価よりも高額になるのはやむを得ないことであり、仮に時価を上回る金額が取得費を構成しないとしても、本件落札価額でなければ本件土地を確実に取得できないと判断したのであるから、当然に譲渡所得の計算上控除される取得に要した金額に含めるべきであることは所得税法の規定からも明らかである旨主張する。
しかしながら、請求人が貸付債権の担保として根抵当権を設定していた本件土地に係る競売において、入札したのは請求人のみであり、しかも落札価額は貸付債権額と同額であること、競売に際しH地方裁判所が決定した本件土地の最低売却価額は、105,000円であり本件落札価額はその約230倍であること、また、落札により取得してから約半年後に113,000円で譲渡したことには経済的合理性が認められないこと等から、本件土地の譲渡所得の金額の計算上、収入金額から控除される取得価額は、請求人が主張する落札価額ではなく、取得時の客観的価額とするのが相当である。
譲渡所得の計算上、資産の取得のための借入金の利子のうち、当該資産を居住のために使用開始した日の後の期間に対応する部分の金額は、資産の取得費に該当しないとした事例
裁決事例集 第47集 160頁
要旨
居住のために使用する資産を取得するための借入金の利子のうち、その借入れの日から当該資産を居住のために使用開始する日までの期間に対応するものは、資産の取得に要した金額に該当し、当該資産を居住のために使用開始した日後当該資産を譲渡する日までの期間に対応するものは、資産の取得に要した金額に該当しないと解するのが相当である。
本件についてみると、請求人が本件物件を居住のために使用開始した日は、昭和57年4月2日であると認めるのが相当であり、本件利子のうち昭和57年4月3日以後の期間に対応する部分の金額は、日常的な生活費ないし家事費にすぎないものと解されることから、資産の取得に要した金額に該当しない。
ゴルフ会員権の平日会員権から正会員権に転換するための資金の借入金利子は、本件転換に必要な準備費用に該当するものとして、使用開始の日までの期間に対応する部分について取得費に該当するとした事例
裁決事例集 第56集 121頁
要旨
ゴルフクラブの会員資格が平日会員から正会員に転換することは、従前の平日会員のゴルフ場の施設を利用する権利の範囲が拡大することである。
そうすると、本件転換を行うための本件追加金は、当該拡大した部分を取得するために要した費用であり、客観的価格を構成すべき取得代金として認められ、本件譲渡所得の金額の計算上控除される取得費に算入することは相当である。
したがって、本件借入れは本件追加金を支払うために行ったものであり、これに伴う本件借入金利子は、本件転換に必要な準備費用に該当するものとして、使用開始の日までの期間に対応する部分について、本件平日会員権のゴルフ場の施設を利用する権利の拡大した部分の取得費に該当するものと認められる。
本件の使用開始の日は、本件正会員権の本件追加金の払込日の翌日とみるのが相当である。
なお、本件抵当権設定費用は、本件借入れの担保提供に係るものであり、取得費に算入するのが相当であり、本件抵当権抹消費用は、本件借入れに伴う借入金を返済したことに基づく抵当権抹消登記の手続費用であるから、借入金返済後の担保資産の管理費用であると認められ、取得費に該当するとは認められない。
土地・建物を一括して譲渡した場合において、それぞれの取得価額が不明なときには、[1]先ず建物の取得費をN調査会が公表している着工建築物構造単価から算定し、[2]次いで土地の取得費は、譲渡価額の総額から建物の取得費を控除し、土地の譲渡価額を算定した上で、譲渡時に対する取得時の○○価格指数(住宅地)の割合を乗じて算定した事例
裁決事例集 第60集 208頁
要旨
請求人は、分離の課税長期譲渡所得金額の計算上、本件建物と本件宅地を一括して譲渡し、そのいずれの取得価額も不明である場合の取得日の算定について、次の通り主張する。
本件建物、本件土地及び農地を一括して3,000万円で取得したが、本件建物は老朽化と傷みによってその価値はなく、また農地も利用価値に乏しい無価値のものであり、よって取得価額の全てが本件宅地の価額である。
しかしながら、当審判所の調査によれば、本件建物のうち昭和55年に建設された新建物については、築後4年の経過で損傷もさほど認められないから、価値は現存し、大正6年に建築された旧建物は価値はないが、一部改築部分については、改築を請け負った工務店の金銭出納帳に記載された金額が取得費の額と認められる。
なお、請求人が主張する本件宅地の取得費は、その支払先・支払金額を確認することができず、請求人の主張は認められない。
これらのことから、本件建物の取得費は、取得時期は判明しているが取得価額が不明なもの(新建物)については、N調査会(以下「調査会」という。)が公表している着工建築物構造単価から算定する。また、本件宅地については、譲渡価額の総額から建物の取得費を控除して宅地の譲渡価額を算定したうえで、譲渡時に対する取得時の六大都市を除く市街地価格指数(住宅地)の割合を乗じて算定する。
上記の算定方法は、調査会が公表した数値であり、市場価格を反映した近似値の取得費が計算でき、合理的であると認められる。
請求人は、本件宅地を売買により取得した旨主張するが、売買ではなく贈与により取得したと認めるのが相当であるから、分離長期譲渡所得の金額の計算上、収入金額から控除する取得費を当該収入金額の100分の5に相当する金額で算定して原処分は相当であるとした事例
裁決事例集 第44集 174頁
要旨
請求人は、本件土地の譲渡に係る分離長期譲渡所得の金額の計算上控除される取得費について、本件土地の取得時の登記原因が売買となっていること等を理由に、売買による取得価額2,524,000円とすべきであると主張するが、売買契約書もなく代金の授受もないこと及び取得時に贈与税の申告をしていることから、贈与により取得したと認めるのが相当である。
請求人の主張する取得費は、贈与税の課税価格を取得費としたものであって、本件取得費には当たらず、所得税法第60条第1項及び措置法(平成3年法律第16号による改正前のもの)第31条の5第1項を適用して取得費を算定した原処分は相当である。
要旨
請求人は、相続した本件土地の持分の譲渡代金から支払った本件調整金は、本件土地の換価分割による支払であるから請求人の譲渡代金から控除すべきであると主張するが、[1]請求人は、相続税の修正申告において本件調整金を代償分割に基づく債務として控除していること、[2]他の相続人らは、当該金員を譲渡収入金額に含めないで確定申告していること、[3]請求人は請求人の長女の確定申告書の作成に当たって親権者として関与し、その内容を熟知しているにもかかわらず[2]と同様の申告をしていること、[4]遺産分割協議書等によれば、本件土地について各相続人の持分を定めた上で、別途、調整金として他の相続人らは各500万円の相続をすることとし、この金員は請求人の持分に相当する譲渡代金のうちから支払うこととなっており、また、被相続人のその他の財産の全部を請求人が相続することになっていたことからみれば、本件調整金は、請求人から他の相続人らへの代償分割による代償債務のための支払と認めるべきである。
したがって、本件調整金相当額を請求人の譲渡収入金額から控除することはできない。
請求人から、その主張する本件譲渡土地の取得に係る裏金の支払事実を確認できる資料の提出がないとして、前所有者が有していた同土地に係る請求人との売買契約書及び確定申告額等に基づいて取得費の額を算定した原処分は適法であるとした事例
裁決事例集 第61集 190頁
要旨
請求人は、譲渡した各土地(6筆)の取得に当たって、原処分庁が認めた裏代金以外に多額の裏代金及び造成費の支払があった旨主張し、裏代金の支払いについては、請求人からそれを明らかにする証拠書類の提出があって初めてその事実を確認できるところ、請求人は、本件税務調査に際し、F土地(裏代金の支出を認めたもの)に係る領収証以外の本件土地に係る売買契約書等を提出せず、また、当審判所に対しても、その主張する裏代金及び造成費の内訳を明らかにする証拠書類を提出しないため、請求人の主張は採用できない。
譲渡した土地が使用貸借により親の居宅の敷地として利用されていた場合における当該土地の所得税基本通達38ー8に定める「使用開始の日」は、両親が当該居宅に居住を開始した日であるとした事例
裁決事例集 第70集 122頁
要旨
譲渡した土地の取得費に算入される借入金の利子は、取得目的に応じた使用又は処分がされた日までの期間に対応する借入金の利子とされているが、土地の取得目的は主観的には一応定まっていても、潜在的な他の目的を排除し難い場合が多く、かつ、当初の取得目的がその後変更されることも少なくないことを考慮すると、土地の地目、形状等に照らし、客観的にみて使用の事実があったと判断されるときに、取得目的に応じた使用があったと認めるのが相当である。請求人は、親子という生活共同体の構成員として両親が居住するための建物の建築用地として本件土地を取得したものであり、本件土地は本件家屋の敷地の用に供されていることから、本件においては、請求人の両親が本件家屋を居住の用に供した日をもって本件土地を使用開始したとするのが相当である。
本件譲渡資産は、換価分割により取得したものではなく、代償分割により取得したものであるから、他の相続人に支払った代償金は譲渡所得の計算における取得費には該当しないとした事例
裁決事例集 第54集 210頁
要旨
請求人は、本件譲渡資産は、家庭裁判所の調停案のとおり、他の相続人らが相続し、これを直ちに請求人が6,000万円で買い取る旨の遺産分割の合意を見るに至ったものであるから、他の相続人らからの取得額6,000万円を本件譲渡所得における取得価額とすべきであると主張する。
しかしながら、上記の調停案は請求人が提案したものにすぎず、他の相続人らは一貫して金銭による分割を要求していたことからも係る調停案に合意していたとは認められない。
かえって、最終調停期日に作成された調停調書によれば、請求人は、被相続人の遺産のすべてを単独取得し、その代償として他の相続人らに対し、6,000万円の支払義務があることを認める旨の調停が成立したことが認められるのであるから、請求人の本件遺産分割が換価分割であるとの主張は採用できず、代償分割によるものであるとして、譲渡所得の金額の計算上、本件代償金6,000万円を取得費の額に算入しなかった原処分は相当である。
民事再生法に基づく再生計画により、預託金会員制ゴルフ会員権につきその預託金債権の全額が切り捨てられるとともに優先的施設利用権だけのゴルフ会員権を取得した場合、その優先的施設利用権だけのゴルフ会員権の取得価額はその取得時の時価であるとした事例
裁決事例集 第72集 169頁
要旨
請求人は、所有していた預託金会員制ゴルフ会員権(以下「本件旧会員権」という。)に係るゴルフ場の経営法人の民事再生法に基づく再生計画に従い、本件旧会員権に係る預託金債権の全額が切り捨てられるとともに付与された預託金債権のないゴルフ場施設の優先的施設利用権のみのゴルフ会員権(以下「本件新会員権」という。)を譲渡したが、その譲渡所得の金額の計算に当たって、本件旧会員権の取得に要した金額から再生計画により切り捨てられた預託金相当額を差し引いた価額を本件新会員権の取得に要した費用とすべき旨主張する。
しかしながら、所得税法第33条第1項の規定の内容及び譲渡所得課税の趣旨からすれば、資産の譲渡による譲渡所得の計算に当たっては、その譲渡時点と取得時点で資産の同質性が維持されている必要があり、譲渡所得の金額の計算上控除されるべき取得費とは、特段の定めがない限り、譲渡資産と同質性が維持された資産の取得に要した金額をいうものと解されるところ、預託金会員制ゴルフ会員権は、優先的施設利用権、預託金返還請求権及び年会費納入等の義務からなる契約上の地位を総称するものと解されることから、預託金会員制ゴルフ会員権の取得に要した金額が、その後のゴルフ会員権の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上取得費として控除されるには、取得時点における預託金会員制ゴルフ会員権としての上記の契約上の地位が、譲渡時点において維持されている必要があると解される。
そうすると、本件旧会員権は、優先的施設利用権及び預託金返還請求権を有する預託金会員制ゴルフ会員権であり、一方、本件新会員権は、優先的施設利用権のみで預託金返還請求権のないゴルフ会員権であることから、本件新会員権における契約上の地位(資産)は、本件旧会員権における預託金返還請求権を失ったことによりこれを要素とする契約上の地位(資産)としての同一性を失っているので、契約上の地位としての性質に変容があったものであり、本件旧会員権と本件新会員権は、別個の資産というべきである。そして、本件旧会員権の取得価額を本件新会員権の取得価額に引き継ぐ旨の所得税法上の規定もないことから、本件新会員権の譲渡所得の計算に当たって、本件旧会員権の取得価額を引き継いで計算することはできない。したがって、本件新会員権の取得価額は、その取得時の時価相当額とするのが相当である。
賦払の契約により購入した固定資産に係る購入代価と賦払期間中の利息及び賦払金の回収費用等に相当する金額とが明らかに区分されている場合に該当するとして、当該固定資産の使用開始後の期間に係る利息等相当部分は取得費に当たらないとした事例
裁決事例集 第71集 273頁
要旨
請求人は、本件契約書に記載された譲渡代金の額(以下「本件譲渡代金の額」という。)は、区分できない一単位の譲渡対価であり、その額には利息は存在せず、所得税基本通達38―8の「購入代価と賦払期間中の利息及び賦払金の回収費用等に相当する金額とが明らかに区分されている場合」に該当しないことなどを理由として、本件譲渡代金の額をすべて支払った場合には、本件譲渡代金の額の全額が本件マンションの取得費に当たる旨主張する。
しかしながら、[1]本件マンションは、即金譲渡価格が31,600,000円であると認められること、[2]本件契約書の別紙に記載されている割賦金は、本件案内書の即金譲渡価格31,600,000円、一時金3,000,000円のタイプの割賦金の額と一致することが認められること、[3]本件マンションの購入代価は、即金譲渡価格31,600,000円であると認められること、[4]本件譲渡代金の額に係る利息等相当部分は、本件譲渡代金の額のうち、購入代価31,600,000円を除いた52,911,100円であると認められることから、本件マンションの購入代価及び利息等相当部分が具体的な金額として区分されており、賦払の契約により明らかに区分されている場合に当たると認められる。したがって、本件マンションの購入代価及び利息等相当部分が具体的な金額として区分されており、賦払の契約により明らかに区分されている場合に当たると認められ、本件マンションの使用開始の日後の期間に係る利息等相当部分は取得費に当たらない。
単純承認により相続した土地(買換資産)を譲渡した場合の譲渡所得の金額の計算において、控除できる土地の取得費は、租税特別措置法第37条の3《買換えに係る特定の事業用資産の譲渡の場合の取得価額の計算等》の規定に基づき算定した取得価額によることが相当であるとした事例
裁決事例集 第65集 228頁
要旨
請求人は、請求人の母(被相続人)が租税特別措置法第37条第1項の規定を適用して取得した買換資産について、母から相続した後に譲渡したものであるから、所得税法第60第1項の規定が適用され、母の購入金額等が取得価額となると主張する。また、租税特別措置法第37条の3に規定する「適用を受けた者」とは、買換資産を取得した被相続人であることから、請求人に適用されるものではない旨主張する。
所得税法第60条第1項は、相続等により取得した資産の取得費等の計算においては、その相続した者が引き続きこれを所有していたものとみなすと規定し、取得時期及び取得価額を引き継ぐこととしており、取得価額は、別段の定めがあるものを除き、被相続人が取得に要した同法38条に規定する「資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額」となる。
ところで、請求人が譲渡した資産は、被相続人が生前において租税特別措置法第37条第1項を適用して取得した買換資産であり、これを単純相続により取得した後に請求人が譲渡したものであるから、この場合の取得価額についても、所得税法第60条第1項の規定が適用され、被相続人の取得価額が引き継がれることとなるところ、買換資産の取得価額にかかる租税特別措置法37条の3の規定は、所得税法38条に規定する「別段の定め」に該当するものであるから、被相続人の取得価額は、租税特別措置法37条の3の規定により計算された価額となり、請求人は、この価額を所得税法60条1項の規定により、被相続人の取得価額として引き継ぐこととなる。
したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
特例上場株式等の特定口座への受入れの際に、証券会社に対し実際の取得価額を証明する取引報告書を提出していないことから、実際の取得価額に基づいて株式等に係る譲渡所得の金額の計算上控除すべき取得費を計算することはできないとした事例
裁決事例集 第75集 215頁
要旨
請求人は、本件株式の実際の取得価額(以下「本件実際取得価額」という。)を証明できる取引報告書を所持しているから、たとえ本件株式がA証券会社の特定口座にみなし取得価額で受け入れられていても、本件実際取得価額を取得費として認めるべきである旨主張するが、特定口座に受け入れられる特例上場株式等の取得価額を本件実際取得価額とするためには、当該取引報告書を証券会社に提出して営業所の長の確認を受ける必要があるところ、請求人は当該取引報告書を証券会社に提出していない。そうすると、請求人は、当該取引報告書を所持しているものの、同報告書に基づいて本件実際取得価額で特定口座に受入れをするための手続を履行しなかったのであるから、本件実際取得価額に基づいて本件株式に係る譲渡所得の金額の計算上控除すべき取得費を計算することはできないというべきである。
上場株式等の譲渡を行う個人投資家の特定口座制度の利用等については、その個人投資家の自由な判断にゆだねられており、請求人は、特定口座を利用せず、あるいは特定口座を設定しても本件株式を特定口座に保管の委託をせずに本件株式を譲渡することにより本件実際取得価額をもって本件株式の譲渡に係る譲渡所得の金額を計算することもできたところ、請求人が自由な判断に基づいて、特定口座制度の利用を選択し、かつ、本件株式を当該口座へ保管の委託をしたものというべきであるから、国の制度変更により本件実際取得価額に基づいて本件株式に係る譲渡所得の金額を計算することができなくなったということはできない。
譲渡した土地には建物が存するが、建物の使用が主な目的でないこと及び建物が建築されている部分は極めて僅かであること等から、所得税基本通達38-8の2の(1)のハの定めにより使用開始の日を判定することが相当であるとした事例
裁決事例集 第92集
要旨
請求人は、土地を譲渡したことによる分離長期譲渡所得の金額の計算上、当該土地(本件各土地)の上に存する建物(本件各建物)を事業の用等に供したことはないから、所得税基本通達38-8の2《使用開始の日の判定》の(1)のロの定めにより、本件各土地の取得のための借入金(本件借入金)の利子(本件借入金利子)の全額が本件各土地の取得費に該当する旨主張し、他方、原処分庁は、本件各土地には本件各建物が存するものの、本件各土地に占める本件各建物の床面積の割合は僅かであり、所得税基本通達38-8の2の(1)のロ及びハの定めにより判定することに合理性は認められないので、本件各土地の使用開始の日がいつであるかは、資産の種類、性質、形状その他外形的に判断できる利用の結果等客観的な事実に基づき総合的に判断すべきであるところ、本件借入金の借入れの日には既に本件各土地は使用されていたのであるから、本件借入金利子は本件各土地の取得費に該当しない旨主張する。
しかしながら、本件各土地は、放牧、牧草栽培を用途にしている土地であり、本件各建物の使用が主な用途であるとは認められないこと及び本件各土地の地積のうち本件各建物が建築されている部分は極めて僅かであることからすると、本件各土地は、所得税法基本通達38-8の2の(1)のハに定める建物等の施設を要しないものに該当すると認められることから、同ハの定めにより使用開始の日を判定するのが相当である。
参照条文等
要旨
原処分庁は、請求人が譲渡した土地(本件土地)及び各建物(本件各建物)の各持分の取得費の額は譲渡代金の100分の5に相当する金額(本件概算取得費額)とするのが相当であって、請求人が本件審査請求に至り明らかにした各証拠をもって直ちに取得費の額と判断することはできない旨主張する。
しかしながら、本件土地については、当該各証拠により明らかとなる金額が譲渡代金の100分の5に相当する金額を下回るから、確かに、本件概算取得費額が取得費の額となるものの、本件各建物については、当該各証拠のうち、領収書等の一部は、その宛名や作成時期が他の客観的証拠と符合することからすると、当該一部の領収書等に記載された各金額は、本件各建物の建築のために支払われたものと認められること及び当該各金額の合計額は本件概算取得費額を上回ることからすると、当該各金額の合計額をもって、本件各建物の取得費とするのが相当である。
参照条文等
所得税法第38条 租税特別措置法第31条の4 租税特別措置法関係通達31の4-1
請求人は、所得税法第58条第5項に規定する「第1項の規定の適用を受けた居住者」に該当することから、本件土地の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上控除すべき取得費の額は、所得税法第58条第5項及び所得税法施行令第168条第3号の規定を適用して計算した金額になるとした事例( 平成23年分の所得税の更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分、 平成23年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第99集
要旨
請求人は、平成8年分の所得税の申告において、請求人の借地権(本件借地権)と相手方所有の土地(本件土地)の交換(本件交換)による本件借地権の譲渡に係る譲渡所得について、本件交換時の交換対象資産の各価額の差額を計算すると当該差額が多い方の価額の20%を超えることなどから、所得税法第58条《固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例》第1項に規定する特例(本件特例)の適用を受けていたとは認められないので、請求人は同条第5項に規定する「第1項の規定の適用を受けた居住者」に該当せず、したがって、原処分庁が、平成23年の本件土地の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上控除すべき取得費の額について、所得税法施行令第168条《交換による取得資産の取得価額等の計算》第3号の規定を適用して計算したことは誤りである旨主張する。
しかしながら、所得税法が採用する申告納税方式の下では、居住者が固定資産を交換した日の属する年分の所得税につき確定申告書に本件特例の適用を受けようとする旨を記載するなどして申告をした場合には、その申告により本件特例の適用を前提として計算された税額は確定し、修正申告又は更正により本件特例の適用が否定されない限り、そのような居住者は所得税法第58条第5項に規定する「第1項の規定の適用を受けた居住者」に該当すると解される。本件においては、請求人は、本件交換による本件借地権の譲渡に係る譲渡所得について本件土地を交換取得資産として本件特例の適用を受けようとする旨の平成8年分の所得税の申告をしたものと認められ、その後は、請求人が修正申告をした事実、あるいは原処分庁が更正処分をした事実はいずれも認められない。したがって、請求人は、所得税法第58条第5項に規定する「第1項の規定の適用を受けた居住者」に該当することとなるから、本件土地の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上控除すべき取得費の額は、所得税法第58条第5項及び所得税法施行令第168条第3号の規定を適用して計算した金額によるべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
東京地裁平成15年9月19日判決(税資253号順号9443)
旧ゴルフ会員権と新ゴルフ会員権には資産としての同一性があるものとは認められないため、旧ゴルフ会員権の入会時に支払った預託金等は、新ゴルフ会員権の譲渡所得の計算上、取得費として控除することができないとした事例(平成25年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第106集
ポイント
本事例は、ゴルフ場経営会社に係る民事再生手続における再生計画及び営業譲渡契約において、①新運営会社は旧運営会社の債務及び旧会員契約を承継しないこと、②ゴルフ場施設の利用を希望する会員は、新たに会員契約を締結する必要があることが定められていることから、旧ゴルフ会員権の優先的施設利用権と預託金債権はいずれも消滅していると認められ、旧ゴルフ会員権と新ゴルフ会員権とは同一性があるものとは認められないと判断したものである。
要旨
請求人は、譲渡したゴルフ会員権(本件ゴルフ会員権)は、当初取得した旧運営会社のゴルフ会員権(旧ゴルフ会員権)が民事再生手続における再生計画(本件再生計画)に基づき、営業譲渡に際して新運営会社に預託金が減額されて引き継がれたものであり、本件ゴルフ会員権の譲渡所得の計算上、当初取得時に支払った登録料及び入会保証金(預託金等)は、取得費として控除することができる旨主張する。
しかしながら、譲渡所得の金額の計算上控除されるべき取得費は、譲渡資産と同一性が認められる資産の取得に要した金額をいうものと解されるところ、本件再生計画及び営業譲渡契約において、①新運営会社は旧運営会社の債務及び旧会員契約を承継しないこと、②ゴルフ場施設の利用を希望する会員は、新たに会員契約を締結する必要があることが定められていることからすると、旧ゴルフ会員権の優先的施設利用権と預託金債権はいずれも消滅していると認められ、旧ゴルフ会員権と本件ゴルフ会員権には資産としての同一性があるものとは認められない。したがって、請求人が入会時に支払った預託金等は、所得税法第33条《譲渡所得》第3項に規定する譲渡所得の計算上、取得費として控除することができない。
参照条文等
参考判決・裁決
東京高裁平成24年6月27日判決(税資262号順号11977) 平成24年8月2日裁決(裁決事例集№88)
相続により取得した土地(本件土地)の分離長期譲渡所得の計算上、控除する取得費は、被相続人が本件土地を取得した際の売主が作成した土地台帳に記載された金額であると判断した事例(平成25年分の所得税及び復興特別所得税の更正の請求に対してされた更正処分・一部取消し)
裁決事例集 第109集
ポイント
本事例は、分離長期譲渡所得の計算上、控除する取得費は、当審判所の調査により把握された、被相続人が土地(本件土地)を取得した際の売主が作成した土地台帳記載の金額によるべきであり、請求人の主張する地価公示価格から推計した金額や、原処分庁が主張する本件土地の譲渡に係る収入金額の100分の5に相当する金額によることはできないとして、原処分の一部を取り消したものである。
要旨
請求人は、本件土地の譲渡に係る分離長期譲渡所得の計算上控除される本件土地の取得費は、地価公示価格から推計した金額によるべきである旨主張し、原処分庁は、本件土地の取得に要した金額の実額は不明であるから、本件土地の譲渡に係る収入金額の100分の5に相当する金額(概算取得費)を本件土地の取得費とすべきであると主張する。
しかしながら、当審判所の調査により把握された、本件土地を被相続人が取得した際の売主が作成した土地台帳(本件土地台帳)の記載内容の信用性は高く、記載内容どおりの事実を認定することができるから、本件土地台帳に記載された金額を本件土地の取得費と認めるのが相当である。なお、請求人の主張する本件土地の取得費の金額は推計したものに過ぎないことから採用することはできない
。
参照条文等
請求人が相続により取得した上場株式の譲渡所得に係る取得費は、当該株式の被相続人への名義書換日を取得時期とし、その時期の相場(終値)によって算定することも合理的な取得費の推定方法であると判断した事例
裁決事例集 第117集
ポイント
本件は、請求人が相続により取得した上場株式の譲渡所得の計算上、控除する取得費に算入する金額は、当該株式の被相続人への名義書換日を確認し、当該名義書換日の終値により算定することも合理性を有する取得価額の把握方法であると判断したものである。
要旨
原処分庁は、請求人が相続により取得した上場株式(本件株式)の取得費について、できる限りの調査を尽くしたものの、有償で取得した上場株式等はごく一部であり、大部分の上場株式等の実際の取得価額は判明しなかった旨主張する。
しかしながら、名義書換日が判明している株式については、当該名義書換日を取得時期とし、その時期の相場(終値)で取得価額を算定することも、明確かつ簡便な推定方法として合理的であると解されるから、本件株式の取得費は概算取得費によらず、総平均法に準ずる方法により算定すべきである。
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