裁決事例 贈与税の課税財産の範囲
要旨
請求人は債権回収の方法として、かねて抵当権を設定していた土地の譲渡を受けたのであるが、その土地の価額は、債権額を著しく超えているから、その差額に相当する部分について、請求人が贈与を受けたものとみなし、贈与税を課した原処分は相当である。
要旨
請求人は、本件定期預金は、養父より贈与を受けたものではなく、請求人が養父の事務所において特別な事務に従事したことに対する報酬に係る資金によって設定されたものであり、その報酬については事業所得として申告している旨主張するが、請求人が養父の事務所において特別な業務に従事していた事実は認められないこと、また、上記の報酬が請求人に支払われていたように供述を合わせていた事実は、養父に対する所得税法違反事件判決書等において認定されていることからみるとその主張には理由がない。しかも、本件定期預金は養父の資金によって請求人名義で設定されていると認められることから、請求人が養父から本件定期預金を贈与により取得したものであると認定した原処分は相当である。
要旨
新築された居宅について、建築確認申請書及び固定資産課税台帳の名義は被相続人と請求人との連名となっているが、本件居宅の建築に際しては、被相続人から直接建築業者に対して注文がなされ、建築業者が被相続人の確認を受けた上で設計及び費用が決定されたこと、建築確認申請を請求人と連名でしたのは被相続人が老齢であったためであること、建築費用の支払に対する領収書のあて名はすべて被相続人名義となっていること等が認められることから、被相続人から請求人に資金贈与がなされ、かつ、被相続人と請求人とが共同で建築した事実を認めるに足る証拠はない。また、請求人は相続税の申告に当たり、本件居宅のすべてを被相続人の相続財産としていることからも、被相続人と共同建築したとの認識はなかったものと認められ、被相続人が単独で建築したとみるのが相当である。
要旨
請求人は、本件現物出資により出資の価額は現物出資前より増加しているものの、その価額は実際の取得価額に満たないから、本件現物出資により利益を受けていない旨主張するが、時価より著しく低い価額で現物出資があった場合に利益を受けたか否かは、現物出資後における出資の価額とその前の価額との差額によって判断すべきである。
要旨
本件土地は、[1]祖父の死亡後に伯父、父及びその姉妹が集まって開いた親族会議において、伯父は独立して生計を立てており、父が祖父と生計を一にして家業(農家)を行っているので、父に家業を継がせることが確認された旨父の姉妹が証言していること、[2]父は祖父より家業を引き継ぎ、祭祀を行い、引き継いだ土地を支配管理し、使用収益及び一部を処分していること、[3]昭和44年12月23日に農地法第3条の規定に基づいて、伯父から父への農地の所有権移転の許可を受けていること及び[4]伯父の相続人らは、請求人に本件土地を贈与したとの認識はない旨答述していることから、祖父の死亡後その家督相続人たる伯父から父に贈与され、その後、父からの相続により請求人が取得したものと認めるのが相当である。
要旨
贈与税の課税価格の計算上、贈与財産の価額から控除すべき負担は、贈与時において負担すべき経済的な負担が具体的に確定していること、又はその確定が推認し得る状態にあることが必要であると解すべきところ、本件贈与の負担である債務保証は、主たる債務者が債務履行できない状態にあるとは認められず、今後、債務の履行ができない状態に至る可能性を推認し得る事情も全く認められないのであるから、課税価格の計算上贈与財産の価額から控除すべき負担に該当しない。
要旨
- 相続税法第7条の規定は、法律的には贈与契約によって財産を取得したものではないが、経済的には時価より著しく低い価額で財産を取得すれば、その対価と時価との差額について、実質的に贈与があったとみることができるので、この経済的実質に着目して、税負担の公平の見地から課税上は、これを贈与とみなす趣旨のものと解される
- このような規定の内容及び趣旨からすれば、被相続人の相続財産を不当に減少させることとはならないとしても、財産の取得が著しく低い対価によって行われた場合に、その対価と時価との差額については、実質的に贈与があったとみなして本規定が適用されることとなる。
- 本件取得日における本件土地の時価は、13,284千円であると認められ、請求人は本件解決金の額4,000千円を支払って本件土地を取得しているのであるから、請求人の土地の取得は「著しく低い価額で財産の譲渡を受けた場合」に該当し、請求人は、時価と本件解決金との差額9,284千円を本件相続人から贈与により取得したものとみなされることとなる。
要旨
原処分においては、兄が相続財産として取得した本件土地の2分の1を、その後、弟である請求人が贈与を受けたものと認定しているが、[1]本件土地について、兄を単独相続人とする旨記載した本件遺産分割協議書には、他に建物、借地権、山林、株式等があるにもかかわらず、本件土地と当該建物のみを遺産分割の対象物件とし、当該物件を相続しないものとした請求人に対して他の遺産を分割することを記載しないなどのその記載内容が極めて不自然であること、[2]本件遺産分割協議書が作成された当時、請求人は自己の実印を兄の経営する会社の金庫に預けており、兄はこれを容易に使用し得る立場にあったこと等が認められ、さらに、本件土地の相続を原因とする所有権移転登記に係る裁判(請求人からの訴えに基づくもの)における請求人、兄及び請求人の叔母の供述等を総合して考えると、本件遺産分割協議書は、兄が借入れの際本件土地に抵当権設定の必要が生じたため、請求人に無断でこれを作成したものであり、これにより本件土地につき兄名義で所有権移転登記をしたものというべきである。
したがって、兄は遺産分割により本件土地の全部を単独所有した事実はなく、その持分の2分の1を請求人に贈与した事実もあり得ないことになる。
要旨
請求人は、相続税法第8条(贈与又は遺贈により取得したものとみなす場合-債務免除等)ただし書に規定する資力喪失か否かの判定(所有財産の時価算定)に当たり、[1]株式は平成5年11月25日から30日までの終値の平均値、[2]本件宅地は平成6年分の路線価、[3]本件家屋は固定資産税評価額及び[4]母Kからの相続財産は遺留分によって計算すべきである旨主張する。
ところで、相続税法第8条ただし書は、第1号に規定する債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合においてその全部又は一部の免除を受けたときには、その債務を弁済することが困難である部分の金額を限度として、贈与税の課税対象から除外する旨規定しており、債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合とは、その者の債務額が積極財産の額を超えるときのように社会通念上支払不能と認められる場合をいうものと解されている。
そうすると、債務免除があった場合に、当該債務の免除が贈与に該当するか否かの判断は、債務者が債務免除を受けた時点において債務超過であったか否かによることが相当であると認められ、この場合、債務者の財産の価額又は債務額は、債務免除があった時の時価によるのが相当であると解される。
本件の場合、[1]請求人所有の株式の価額は、平成5年11月25日の終値(1億6,459万円)によるのが相当であり、また、買建ての信用取引の含み損失額は、買建ての約定金額から同日の終値と金利相当額を控除した金額(1億2,492万円)によるのが相当であること、[2]本件宅地の価額は、接面道路、面積及び用途地域が同一である公示地の平成5年及び平成6年の公示価格から比凖し、更に時点修正した価格が相当であり、これに地積と持分(3/4)を乗じた1億4,892万円となること、[3]昭和62年11月に新築した本件家屋の価額は、取得価格1億4,392万円から減価償却費相当額を控除した1億3,096万円が相当であること、[4]請求人が母Kから相続した財産は1億2,682万円、債務等は225万円、税額は1,966万円であることから、請求人が被相続人からa株式会社ほか2銘柄の本件株式の返還義務の免除を受けた平成5年11月25日における請求人の積極財産の額は6億2,905万円、債務等の額は4億5,343万円であり、差引1億7,562万円の超過となり、3,149万円の債務超過という請求人の主張は採用できない。
したがって、本件株式の返還義務免除7,848万円は、相続税法第8条ただし書に該当しないので、贈与により取得したとみなされるのが相当であり、同法第19条(相続開始前三年以内に贈与があった場合の相続税額)の規定により相続税の課税価格に加算されることとなり、請求人らの相続税の課税価格及び納付すべき税額は、いずれも異議決定を経た後の更正処分の金額と同額であるから、更正処分は適法である。
要旨
本件宅地について、贈与を原因として請求人に所有権移転登記がなされている事実を捕え、贈与があったものとした原処分に対し、数年来当該宅地上に請求人名義の居宅を建築し居住していたこと、贈与者である叔父名義に所有権が登記されていたのは、第2次大戦後の所有権認定に際し、法定家督相続人たる請求人が未成年者であったため、家産保護の立場からそうしたものであること等の事実が認められるから、真正な土地の所有者は請求人であり、登記事項の異動は、その実質が贈与行為によるものではなく、真正な所有者名義の回復を図るものであると解されるので、請求人の主張は相当である。
贈与財産は仮住まいの土地家屋と認められ、配偶者控除の適用はできず、また、実際の居住とは異なる住民登録をして、配偶者控除の適用要件を満たしているように仮装した行為は重加算税の適用対象になるとした事例
裁決事例集 第45集 267頁
要旨
請求人は、居宅新築資金に当てるため売却することとした貸家について、主たる居住用財産に見せかけ、夫より持分の贈与を受けて贈与税の配偶者控除の適用を受けるとともに、譲渡所得については、夫と共に居住用財産の売却の特別控除の適用を受けようとしたものであるが、本件資産は、電気の使用量等からみて、居宅完成までの仮住まいであったことは明らかであり、特例の受けられる居住用財産ではない。
請求人は、実際の居住とは異なる住民登録をし、本件資産に1年以上居住していたように仮装するとともに贈与を受けた翌年の3月15日まで居住したようにし、当該住民票を添付して贈与税の配偶者控除を適用して申告をしたが、この行為は国税通則法第68条第1項の重加算税の適用対象になる。
要旨
長期間にわたって実質的に離婚状態にあった夫から受領した金員については、婚姻関係が事実上破たんしていた特段の事情等から判断して、妻に対する長年にわたる悪意の遺棄に対する解決金であると認められるから、当該金員のなかには相当部分の慰謝料が含まれているものと認めるのが相当である。
要旨
本件Aハイツの建築資金には、請求人の夫が同人名義の不動産を担保に融資を受けた銀行借入金及び同人名義の預金が充てられており、当該Aハイツから生ずる収入金もすべて請求人の夫名義の預金に入金しているから、当該Aハイツの真の所有者は請求人の夫であり、当該建築資金の贈与を受けていない旨の主張について、[1]夫名義の口座にAハイツの収入金を入金しているのは銀行からの借入金の返済等のためにされたものと認められること、[2]建築工事請負契約及び建築確認申請書が請求人を含む受贈者3名の名義でなされていること、[3]固定資産税は請求人等に課税され、何の異議も述べていないこと等を総合勘案すると、請求人等は、請求人の夫から建築代金支払の都度、その資金の贈与を受けたと認めるのが相当であり、請求人等の各持分は、請求人等の間で何ら取決めがなく、かつ、持分登記がないので、民法第250条“共有持分の割合”の規定に基づき、各3分の1とするのが相当である。
要旨
同族会社の増資に当たり、取締役会の決議では新株について公募することとしながら、実際には同族関係者に新株引受権の割当てが行われ、かつ、請求人が増資による割当て分を超えて親族である他の株主の新株引受権の割当てを受けていることは、当該親族の新株引受権に相当する利益を享受したものと認めるのが相当である。
要旨
請求人は、居住用と居住用以外の建物の敷地となっている不動産につき持分で贈与を受けた場合には、贈与当事者の真意を汲んで配偶者の特別控除の特例の適否を判定すべきであると主張するが、当該特例は、生存配偶者の老後の生活安定に配慮する趣旨から、一生に一度限り、その取得した居住用財産の課税価格から2千万円を限度として控除することを、登記簿の謄本等の提出を要件として認める措置であり、その解釈は厳格にされるべきである。
したがって、本件においては、本件受贈財産のそのすべてが居住用家屋の敷地であるとはいえず、請求人の更正の請求には理由がない。
本件土地は、調停調書に記載の相続ではなく請求人が贈与により取得したもので、その価額は買収予定価額ではなく評価通達により評価した価額によるべきであり、また、その土地は最初に買取り等の申出を受けた者以外の者である請求人が譲渡しているので、収用交換等の場合の特別控除の特例の適用はないとした事例
裁決事例集 第75集 508頁
要旨
遺産分割は、被相続人が遺言で禁じた場合を除く外、何時でも、その協議で行うことができるところ、仮に、遺産分割調停申立て前までに共同相続人間で相続に係る遺産分割が成立していないとすれば、請求人は、相続の開始及び相続不動産の存在を了知しており、かつ、兄が本件被相続人の遺産のすべてを事実上取得していることにつき不満を有していたのであるから、例えば、姉が兄に対し相続財産である別件土地の所有権移転を要求した時などに共同相続人の間で協議による分割請求を行うのが合理的な行動であると考えられるのにもかかわらず、請求人は、姉から一緒に兄に対し一緒に財産分けの要求をしないかと相談されたもののこれを断るほか、別件土地の所有権移転がなされた事実を確認した後、共同相続人間で何らの協議もしないまま、当該調停の申立てを行うなどの行動をとっている。
これに加え、①共同相続人は、相続不動産のほとんどが農地であったために、農業を引き継ぐ長男である兄がすべての農地を含めて遺産を相続するものと認識しており、これは、被相続人の死亡の際には、生前に分与された残りの財産をすべて跡取りが相続するのが建前であったとされる本件相続開始当時における農家相続の実態調査等の結果にも合致するものであると認められること、②相続不動産の一部が兄により売却され、請求人が現金の分与がないことに不満を持っていたにもかかわらず、その売却代金の帰属につき何らの異議も申し立てていないこと、③相続開始後調停に基づく相続登記までの経過年数が41年11か月であるにもかかわらず、その間に一度も遺産の分割請求がなされないことは極めて不自然であると考えられることなどに照らせば、調停によって相続に係る遺産分割が成立したものとは認められず、かえって、遅くとも別件土地についての所有権移転の要求が姉から兄に対してなされた時までには、共同相続人間においては、相続不動産のすべてについて、兄が単独で相続することにつき黙示の合意があったと推認することができるというべきであるから、本件土地の所有権は、相続登記がなされているものの、請求人が兄から贈与により取得したものと認めるのが相当である。
そして、贈与により取得した財産の価額は、特別な事情がない場合には、財産評価基本通達により定められた評価方法によって画一的に財産の評価を行うのが相当であるところ、起業者による買取り等の申出に基づく売却予定価額は、贈与税の課税時期における時価としての客観的な交換価値が顕在化したものとまでは認め難く、また、財産評価基本通達により定められた評価方式で評価した場合の価額が買収予定価額に比べ著しく低額となることをもってしても特別の事情が存するとはいえないことに加え、当審判所の調査によっても、本件土地の評価に当たり、財産評価基本通達に定める評価方法を適用することが著しく不合理であるとする特別な事情があるとは認められないことからすれば、本件土地の価額は、評価基本通達によって評価した価額とするのが相当である。
要旨
請求人は、母から受領した金員は、亡父の遺産に係る代償金であるとし、その根拠として、母の売却した土地は亡父から母が相続したとする遺産分割協議につき、請求人はこの分割協議書を受領しておらず、かつ、この遺産分割協議書の印影の一部の相続人のものは印鑑登録がなく事実と相違しているから遺産分割は行われていない旨、また、本件金員を贈与として受領した旨記載した受領書は偽造されたものである旨主張する。
しかし、[1]本件遺産分割協議書に記載された内容によって現実に遺産の分割が行われており、その後20数年を経過していること、[2]本件遺産分割協議書及び本件金員の受領書には代償金であることが読み取れる文言の記載がないこと、[3]本件金員の受領書が偽造されたとする事実もないことから、本件金員を母から贈与と認定した原処分は相当である。
要旨
請求人は、J銀行a支店ほか2行の預金8,700万円のうち7,200万円は、夫から預かったものであり、父から贈与を受けたものではなく、仮に、贈与を受けたものであるとしても、贈与は平成3年1月1日であるから平成3年分の贈与である旨主張する。
しかしながら、次の事実によれば、平成2年分の贈与税の課税価格は7,260万円(8,700万円-1,500万円+60万円)となるので、本件決定処分は適法である。
- 平成2年12月31日に[1]K銀行c支店で、同支店及びd支店の父名義の普通預金口座から出金された3,800万円により、同支店の請求人名義の定期預金等3,800万円が開設、[2]L銀行e支店で、f支店及びg支店の父名義の普通預金口座から出金された3,300万円により、同支店の請求人名義の定期預金等3,300万円が開設、[3]J銀行a支店で、b支店の父名義の普通預金口座から出金された1,600万円は、同支店の請求人名義の普通預金口座に入金されていること。
- 平成3年3月4日にJ銀行a支店で、同支店の請求人名義の普通預金口座から出金された1,500万円は、b支店の父名義の普通預金口座に入金されていること。
- 請求人は、平成2年中に父から60万円の贈与を受けていること。
相続税対策スキームの一環として行った出資の売買は、課税庁からその売買価額が著しく低額と認定され買主に対し贈与税の課税処分がされたことから、相続税対策として意味をなさないものとなるので錯誤により無効となるとの請求人の主張を排斥した事例
裁決事例集 第56集 351頁
要旨
請求人は、本件決定処分の基となった出資の売買契約は、税理士等の勧める相続税対策スキームの一環として行われたものであるところ、買主に対して贈与税の課税処分がなされたことにより、本件スキームは相続税対策としては意味をなさないものとなるから、本件スキームに基づいて行われたすべての行為は錯誤により無効となるので本件贈与税の課税処分を取り消すべきである旨主張する。
しかしながら、請求人は、[1]本件出資を取得する目的で売買契約に係る売買代金を銀行から借り入れたこと、[2]その借入金を基に売買代金を支払って本件出資を取得したこと、[3]原処分庁に対して本件出資の売買等の認識がある旨申述していることからすると、本件売買契約によって生じた経済的成果を享受していることは明らかであるから、本件売買契約に基づいて課税することは当然である。また、仮に、本件売買契約が厳密な法令適用の面からは無効とみられるような場合であっても、本件決定処分がなされた時点において本件売買契約に基づく経済的成果が発生し、かつ、存続している以上、本件売買契約を基因としてされた本件決定処分を違法ということはできない。
そうすると、本件売買契約の無効を理由に本件決定処分の取消しを求める請求人の主張には理由がない。
要旨
本件土地は、請求人の亡父が生前に取得し、所有していたものであって形式上第三者である贈与者の名義にされていたものにすぎないから、請求人に対する名義変更登記の原因が贈与であるとしても、実体は相続により所有権を取得した請求人への真正な登記名義の回復登記であるとの主張について、亡父が本件土地を取得していたことを証明する証拠はなく、当該第三者が本件土地の取得時から請求人に贈与するまでの長期間自己のためにする意思をもって平穏、かつ公然に管理し、その一部は売却するなど使用収益していたこと、また、相続開始から贈与に至るまでの間当該第三者から請求人に本件土地の承継又は引渡しがなされたとする事実もないので、本件土地は贈与登記時に当該第三者から請求人に贈与されたものと認めるのが相当である。
請求人が父から売買契約により譲り受けた土地の対価は、当該土地の時価に比して著しく低い価額であると認められ、相続税法第7条の規定により贈与があったものとした事例
裁決事例集 第61集 533頁
要旨
相続税法第7条は、著しく低い価額で財産の譲渡を受けた場合においては、法律的には贈与といえないとしても、経済的には対価と時価との差額について実質的に贈与があったと同視することができるため、この経済的実質に着目して、課税負担の公平の見地からその差額について贈与があったものとみなして贈与税を課税する趣旨のものと解されるところ、請求人及び原処分庁の主張する時価額はいずれも採用できない。
そこで、当審判所において、公示価格を基に土地価格比準表に準じて地域要因及び個別的要因等の格差補正をして本件土地の時価額を算定したところ、その価額は45,661,363円と算定された。
そうすると、本件土地の時価と売買価額との差額は18,501,363円に達するものであることから、本件土地の売買価額は、相続税法第7条に規定する著しく低い価額の対価であると認めるのが相当である。
負担付贈与された土地及び建物の価額は、土地については公示価格に基づいて算出する方法により、建物については再建築価格を基準とした価額から、建物の建築時からその経過年数に応じた減価又は償却費の額を控除して算出する方法によるのが相当であり、また、連帯債務に係る負担額は、債務者間に特約がなく、各債務者が実際に受けた利益の割合で連帯債務の負担をすることを認識していたと認められるから、その割合に応じた額になるとした事例
裁決事例集 第72集 218頁
要旨
「負担付贈与又は対価を伴う取引により取得した土地等及び建物等に係る評価並びに相続税法第7条及び第9条の規定の適用について」通達でいう「通常の取引価額」は、贈与があったとされる当時の課税の対象となる資産の現況を考慮し、最も合理的かつ適切な評価方法により当時の時価を見いだすべきであり、土地については公示価格に基づいて算出する方法により、また、建物については再建築価格を基準とした価額から、建物の建築時からその経過年数に応じた減価又は償却費の額を控除して算出する方法によるのが合理的かつ最も適切な評価方法であると認めるのが相当である。
そして、請求人は、取得した財産の価額から控除すべき住宅ローン契約(請求人及び請求人の父がG銀行との間で請求人及び父を連帯債務者として締結したもの。以下「本件ローン契約」という。)に係る連帯債務に関して、請求人と父との間で請求人の負担割合を零とする暗黙の合意(特約)があったから、控除すべき債務の額は、本件ローン契約の残債務の全額である旨主張するが、①本件ローン契約には、連帯債務者である請求人及び父の負担割合に関する定めはないこと、②請求人は、連帯債務に関する負担割合について合意(特約)があったことを証する証拠はない旨答述し、当審判所の調査によっても、連帯債務の負担割合を零とすべき合意(特約)があったと認める証拠はないこと、③請求人は、少なくとも平成7年1月から平成9年6月までの間、自ら負担すべき持分に応じた金額を毎月父の口座に送金していたと認められること等からすれば、請求人及び父が実際に受ける利益の割合である本件土地の持分に相当する負担割合で連帯債務を負うことを認識していたと認めるのが相当であるから、控除すべき債務の額は、負担付贈与契約時の本件ローン契約の残債務の額に、請求人らの土地の持分の合計に占める父の持分の割合を乗じて計算した額とするのが相当である。
離婚成立前に登記原因を贈与とする所有権移転登記をした上で行った贈与税の申告について、その後裁判上の離婚をしたことを理由とする国税通則法第23条第2項による更正の請求を認めなかった事例
裁決事例集 第61集 550頁
要旨
請求人は、離婚を条件として前夫から取得することとなっていた土地について、離婚前に登記原因を贈与とする贈与税の申告をしたが、その後の裁判により離婚が確定したことをもって、当該土地は財産分与であるとして、国税通則法第23条第2項を適用して、更正の請求が認められる旨主張する。
しかしながら、請求人が当該土地の所有権移転登記をしたのは、裁判離婚を提訴する前で、婚姻状態が継続していたこと、また、提訴の内容は離婚を求めるものであり、財産分与の額を決定したものではないことから、当該土地の取扱いは、財産分与とは認められず、相続税法第9条の規定により、贈与として取り扱うのが相当であるから、更正の請求は認められない。
当初の遺産分割協議の錯誤無効を理由に行った再度の遺産分割協議に基づき取得した新たな財産は、当初の遺産分割協議に要素の錯誤があったとは認めることができないから贈与により取得したものと認められるとした事例
裁決事例集 第70集 259頁
要旨
請求人は、養親である祖父亡Gの後妻亡Hと養親子関係がないことを知らないで行った本件遺産分割は、法律行為の要素に錯誤があり、養親子関係がないことを知っていれば亡Hに亡Gの遺産を相続させる本件遺産分割を行うはずはなかったとして、本件遺産分割協議が錯誤により無効である旨主張する。
しかしながら、請求人と亡Hとの間に養親子関係があったとしても、請求人が主張するように、請求人が本件土地建物を亡Hから相続により取得することになるとは限らず、また、請求人が亡Hとの間に養親子関係がないことを知っていたとしても、請求人が主張するような遺産分割協議が成立するという必然性も認められない。そうすると、請求人の主張する「錯誤」は、遺産分割協議の動機に関するものであり、この動機が遺産分割協議の際に表示されていたとしても、本件遺産分割の内容と異なる内容の遺産分割協議がされたということにもならないから、民法第95条に規定する法律行為の要素の錯誤ということはできず、結局、請求人の思い違いないし勘違いにすぎないというほかはない。
したがって、本件遺産分割に要素の錯誤があったとは認めることはできないから、本件土地建物は、請求人が亡Hの相続人から贈与により取得したものと認めるのが相当である。
要旨
請求人は、その所有する競走馬が、故障馬でその価額が著しく低いものであることを認識していながら、親子という関係を利用して請求人の父に極めて高額で譲渡しているから、父が第三者に転売したときの価額を超える金額は父から贈与を受けたものと認めるのが相当である。
ポイント
本事例は、被相続人名義の口座に入金された金員の合計額の一部については、その原資は請求人らの亡父の預金口座から同人の意思に基づき出金された金員であると認められ贈与により取得した財産に当たるが、その余の金員の原資は請求人らの亡父に帰属していたとは認められず、贈与により取得した財産には当たらないと判断したものである。
要旨
原処分庁は、被相続人(本件被相続人)名義の口座(本件被相続人口座)に入金された金員の合計額(本件金員)は、請求人らの亡父が本件被相続人に贈与したものであるから、相続税法(平成27年法律第9号による改正前のもの)第2条の2《贈与税の課税財産の範囲》第1項に規定する贈与により取得した財産に当たる旨主張し、請求人らは、請求人らの亡父が本件被相続人に本件金員を贈与する旨の意思表示をしたとする客観的証拠はないことから、本件金員は、同項に規定する贈与により取得した財産に当たらない旨主張する。
しかしながら、本件金員の一部については、その原資が請求人らの亡父の預貯金から同人の意思に基づき出金された金員であり、本件被相続人口座に当該出金された金員と同額が入金された後に本件被相続人口座から本件被相続人の老人ホームの利用料が支払われていることなどから、同項に規定する贈与により取得した財産に当たるが、本件金員から左記の贈与により取得したと認められる金員を差し引いた残部については、その原資が請求人らの亡父に帰属していたと認めることはできないことから、同項に規定する贈与により取得した財産に当たらない。
請求人名義の預貯金口座への各入金の事実によって、その原資が請求人の母の預貯金口座からの各出金に係る金員であると推認することはできないから、当該各入金に係る金員は贈与により取得したとは認められないとした事例
裁決事例集 第90集
ポイント
本事例は、原処分庁が請求人の母と請求人との間で贈与があったことを示す証拠として主張するその母の相続に係る相続税の調査段階における請求人の申述又は提出資料の内容について、当該調査段階においてさえ変遷が認められる上、審判所の調査によっても、当該申述又は提出資料の内容を直接裏付けるような客観的な証拠や、当該変遷に合理的な理由があることをうかがわせる証拠の存在が見当たらないから、その信用性を認めることはできないと判断したものである。
要旨
原処分庁は、請求人の母名義の預貯金口座からの各出金に係る金員が請求人名義の預貯金口座への各入金に係る金員に対応する関係(本件対応関係)にあるとして、請求人が、母から、当該各出金に係る金員を取得した旨主張する。
しかしながら、①当該各出金日から当該各入金日までの間隔は、長いものでは約1年10か月もあいている上、②当該各出金に係る金員の管理・保管状況は明らかではなく、③当該各入金日と同日に、請求人名義の預金口座からそれぞれの日の入金額を上回る出金がされている場合もあることのほか、④本件対応関係にない請求人名義の預貯金口座への入金の事実があることも踏まえると、当該各入金の事実のみから、直ちにその原資の全てが当該各出金に係る金員であると推認することはできない。ところで、本件対応関係の存在を認めることができるか否かは、請求人の母の相続税の調査段階における請求人の申述又は提出資料の信用性を認めることができるか否かに帰着するが、当該調査段階における請求人の申述又は提出資料の内容は、そもそも当該調査段階においてさえ変遷がみられるものである上、当該申述又は提出資料の内容を裏付ける客観的な証拠や当該変遷に合理的な理由があることをうかがわせる証拠の存在は見当たらないから、原処分庁がその主張の根拠とした当該申述又は提出資料についてはその信用性を認めることはできず、本件対応関係の存在を認めることもできない。そして、当審判所の調査の結果によっても、他に母から請求人に対する金員の受渡しがされた事実を認めるに足りる証拠は見当たらない。したがって、請求人が母から当該各出金に係る金員を取得したとは認められない。
賃貸料が当該土地に係る固定資産税と同額であることなどから、請求人は、貸家建付地である当該土地を著しく低い価額の対価で譲り受けたと認められるとした事例
裁決事例集 第63集 508頁
要旨
請求人は、父から譲り受けた本件土地の持分部分(請求人の持分を除いたもの)には、父が所有し、請求人の夫が賃借している建物があること、請求人の所有持分について賃貸借契約を締結し、父が賃貸借料を支払っていることから、請求人が譲り受けたものは底地である旨主張する
しかしながら、本件土地の持分の譲渡者と本件建物の所有者とは同一人であるから、同部分に父が借地権を有していたとは認められず、また、請求人に支払われている賃貸借料は固定資産税額と同額であるから、請求人と父との間の貸借は使用貸借と解すべきである。
そして、本件土地は貸家の用に供されている土地であるから、その価額につき、国税局長が定める財産評価基準書で示されているその土地に係る借地権割合とその貸家の借地権割合との相乗積を当該更地価額に乗じて計算した金額を、その更地価額から控除した価額とすることを不相当とする理由は認められないから、これらを基に本件土地の貸家建付地価額を算定すると、本件譲受価額は当該貸家建付地価額に比して著しく低い価額の対価と認めるのが相当である。
要旨
原処分庁は、本件土地の譲受けは、相続税法第7条にいう「著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合」に該当すると主張するが、譲渡人(請求人の祖母)は高齢となり、借入金を弁済するために譲渡したものであり、一方、請求人は自身の将来のことを考えて金融機関から取得資金を借り入れて本件土地を取得したものであること、売買価額は固定資産税評価額を参考に、利用形態を考慮して決定したこと、譲渡人は本件土地を相続により取得し、長期間保有していたものであること、[4]建物の譲受対価の額と本件土地の譲受対価の合計額は、これらの不動産の相続税評価額の合計額を上回っていることを総合勘案すると、本件土地の譲受は相続税法第7条に規定する「著しく低い価額の対価」による譲受けには該当しないとするのが相当である。
無利息の金銭借入れにおいて、利息相当額の経済的利益の額を贈与により取得したとみなして贈与税の課税をすることは所得税との二重課税とならず適法であるとした事例
裁決事例集 第37集 241頁
要旨
請求人はその経営する自動車学校の運営資金に充てるため請求人の父から無利息の約定で昭和53年から昭和60年まで金銭を借り入れたが、当該利息相当額は、事業所得の計算上必要経費に算入しておらず、その額だけ事業所得の金額が多く算出された結果となっているから、利息相当額の経済的利益の額を贈与により取得したとみなして贈与税の課税をすることは所得税との二重課税となり違法である旨主張するが、贈与税は取得した財産を課税対象としており、資産の運用益等、すなわち、所得を課税対象とする所得税とはおのずからその課税対象を異にするものであり、また、本件経済的利益の額は事業所得の収入金額には加算されておらず、所得税は課税されていないのであるから、二重課税であるとの請求人の主張は採用できない。
請求人の名義で登録された車両は、請求人の父がその資金の全額を拠出しており、贈与に当たるとして行われた贈与税の決定処分について、請求人に対する贈与の事実はないとして、贈与税の決定処分の全部を取り消した事例(平成20年分贈与税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分・全部取消し)
裁決事例集 第100集
ポイント
本事例は、取得資金の拠出者以外の名義で登録された財産について、相続税法基本通達9-9に基づく贈与税課税の課否を問題としたものである。
要旨
原処分庁は、請求人の父(父)が請求人の名義で新たに購入した車両(本件車両)は、相続税法基本通達(相基通)9-9《財産の名義変更があった場合》により、原則として贈与として取り扱われるべきものである旨、及び本件車両の名義を請求人として登録したことが過誤に基づき、又は軽率にされたものであり、かつ、それが取得者等の年齢その他により当該事実を確認できるに足る証拠は認められないから、昭和39年5月23日付直審(資)22、直資68「名義変更等が行われた後にその取消し等があった場合の贈与税の取扱いについて」(本件通達)の5を適用することはできない旨主張する。
しかしながら、相基通9-9は、反証があれば、贈与として取り扱わない場合があるところ、本件においては、父は購入特典の利用のために、請求人の名義を使用したことが認められ、これに加えて、①父が本件車両を請求人に贈与する動機はなかったと認められること、②請求人への贈与の事実を疑わせる事情が存在すること、③父は、本件車両の取得資金を出捐し、売却に際してはその売却代金を自ら受領・費消するとともに、その間本件車両に係る維持管理費用を全て負担していたことなどの諸事情を総合すると、本件車両の贈与の不存在について反証がされているといえる。したがって、請求人は本件車両の贈与を受けたとは認められない。なお、本件通達は、相基通9-9の要件を満たしているにも関わらず課税庁の立場から贈与として取り扱わない場合を類型化したものにすぎず、相手方による反証はこれに限定されるものではないところ、本件においてはその反証がされている。
参照条文等
相続税法基本通達9-9 昭和39年5月23日付直審(資)22、直資68「名義変更等が行われた後にその取消し等があつた場合の贈与税の取扱について」
要旨
請求人は、①関係する法人に対する請求人の妻名義の貸付金の弁済金の一部を請求人の預金口座へ入金したこと、②請求人の妻名義の預金口座からの出金を、請求人名義の預金口座へ入金したこと及び請求人から関係会社の代表者への貸付けに充てたことについては、これらの請求人の妻名義の貸付金及び預金は、請求人の妻が請求人の預金を使い込んだという事実関係の下、請求人が請求人の妻の退職金により弁済を受けた金員が原資となっており、もともと請求人に帰属するものであるから、①②のいずれの資金の移動についても、相続税法第9条に規定する対価を支払わないで利益を受けた場合には該当せず、贈与により取得したとみなされることはない旨主張する。
しかしながら、請求人の妻が請求人の預金を使い込んだというのは請求人の憶測にすぎず、具体的な証拠書類も見当たらないことから、請求人の主張は採用することができない。
したがって、①②の資金移動は、相続税法第9条に規定する対価を支払わないで利益を受けた場合に該当し、贈与により取得したものとみなされる。
参照条文等
請求人の父(甲)の預金口座から請求人の預金口座に入金された資金は、請求人が甲の指示に基づき会議等に出席するための交通費等を支弁する目的のものであったと認められ、甲から請求人への贈与があったと認めることはできないと判断した事例
裁決事例集 第115集
ポイント
請求人の父(甲)の預金口座から請求人の預金口座への資金移動は、甲又は請求人の母が行っており、請求人は甲の指示に基づき、医療専門団体の会議等へ月1~2回程度出席していた旨申述し、会議に出席するための交通費等の支払が請求人の口座から支払われている等の事実からすれば、甲は甲の指示に基づき、請求人が会議に出席する際に要する交通費等の費用を支弁する目的で甲の預金口座から請求人の預金口座に資金を移動していたとみるのが自然であり、当該資金移動により、請求人が甲から贈与により財産を取得したものとは認められないと判断したものである。
要旨
原処分庁は、請求人の父(甲)の預金口座から出金された金銭が請求人の預金口座(本件請求人口座)に入金されたこと(本件資金移動)について、請求人と甲との間で金銭消費貸借契約が締結された事実及び請求人が主張する本来甲が従事すべき医療業務に請求人が代理人として従事した際に立て替えて支払った費用の精算等の事実は認められないから、請求人と甲との間には、民法第549条《贈与》に規定する贈与契約の要件事実について黙示の合意があったと認めるのが相当であり、請求人は、本件資金移動により、甲からの贈与により財産を取得したものといえる旨主張する。
しかしながら、本件資金移動について、請求人と甲との間で金銭消費貸借契約が締結されていた事実は認められないものの、本件資金移動に係る出金及び入金の各手続は、甲又は請求人の母により行われていると認められ、請求人は、原処分庁所属の調査担当職員に対して、甲の指示により月1回から2回程度の頻度で医療専門団体の会議に出席していた旨申述し、本件請求人口座から交通費等の支払がされていることなどを併せ考慮すれば、甲は、当該会議に出席した際の交通費等を支弁する目的で本件資金移動をしていたとみるのが自然であり、請求人に、本件資金移動によって贈与と同様の経済的利益が生じていたと認めることはできないから、請求人は甲からの贈与により財産を取得したと認めることはできない。
請求人らの母親の預金口座から出金された金員が請求人らの債務の返済に充てられているが、両当事者はその事実を知らなかったのであるから、請求人らが対価を支払わないで経済的利益を受けたとは認められないとした事例
裁決事例集 第89集
要旨
原処分庁は、請求人らの借入金の返済(本件返済)について、請求人らの兄が原処分庁にした申述に基づき、請求人らの資金援助の求めに応じて同兄が母親の預金口座から出金(本件出金)し、本件出金による金員により上記返済がされたとの事実を認定し、当該事実に基づいて、請求人らが本件返済により母親から相続税法第9条に規定する「対価を支払わないで・・・利益を受けた」と認められる旨主張する。
しかしながら、本件返済の経緯についての請求人らの兄の供述(原処分庁にした申述及び当審判所にした答述)は、曖昧であり、供述内容自体が客観的事実と矛盾し、あるいは客観的事実に基づいて通常人がとると考えられる行動に反する不合理なものであるから、これを信用することはできない。そして、本件においては、本件返済がされた当時、請求人らの母親が軽度の認知症の状態にあったと認められる上、当審判所の調査の結果によっても、他に請求人らが本件返済を認識し、事前事後に本件出金を承諾していたと認めるに足りる証拠も見当たらないから、結局、請求人らが本件返済により母親から実質的に贈与と同様の経済的利益を受けた事実を認めることはできない。したがって、本件においては、請求人らが本件返済により母親から「対価を支払わないで・・・利益を受けた」とは認められない。
参照条文等
要旨
請求人がその親族から本件土地及び本件建物を譲り受けたこと(本件譲受け)について、請求人は、本件譲受けの価額が時価であるから、本件譲受けは相続税法第7条《贈与又は遺贈により取得したものとみなす場合》に規定する「著しく低い対価」での譲受けに該当しない旨主張し、原処分庁は、本件土地及び本件建物の時価は、原処分庁の依頼に基づく鑑定評価額(原処分庁鑑定額)であり、原処分庁鑑定額と本件譲受けの価額を比較すると、本件譲受けは、同条に規定する「著しく低い対価」での譲受けに該当する旨主張する。
しかしながら、原処分庁鑑定額は、合理的に鑑定されたものとは認められないから、これを本件土地及び本件建物の時価と認めることはできない。他方、当審判所の依頼に基づく本件土地の鑑定評価額は合理的に鑑定されたものと認められるからこれを時価と認めるのが相当であり、また、本件建物については、一般的に合理性が認められる固定資産評価基準に従って算定された固定資産税価格が適正な時価と認められる。したがって、本件土地及び本件建物の時価はこれらの合計額であると認められ、当該合計額は原処分庁鑑定額を下回るものの、当該合計額と本件譲受けの価額とを比較すると、本件譲受けは、相続税法第7条に規定する「著しく低い対価」での譲受けに該当すると認めるのが相当である。
参照条文等
参考判決・裁決
東京地裁平成19年8月23日判決(判タ1264号184頁)
前住職から請求人への資金移動により相続税法第66条第4項に規定する贈与者である前住職の親族等の相続税の負担が不当に減少する結果になるとは認められないとした事例
裁決事例集 第123集
ポイント
本事例は、前住職から請求人への資金移動は、相続税法第66条第4項に規定する財産の贈与に該当すると認められるものの、前住職及びその親族が、請求人の業務運営、財産運用及び解散した場合の財産の帰属等を事実上私的に支配している事実は認められないことから、相続税法第66条《人格のない社団又は財団等に対する課税》第4項に規定する贈与者である前住職の親族等の相続税の負担が不当に減少する結果となるとは認められないとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人が相続税法施行令第33条《人格のない社団又は財団等に課される贈与税等の額の計算の方法等》第3項第1号ないし第3号の各要件をいずれも満たしていないことに加え、①前住職から請求人への資金移動(本件資金移動)の時点における請求人の役員の3分の2を前住職及びその親族(前住職ら)で占めており、請求人の業務を自由に裁量できる立場であったこと、②請求人は前住職らに対し、生活費の供与など特別の利益を与えていること、及び③請求人が解散した場合、前住職らに財産が帰属することなどを理由として、前住職から請求人への資金移動により相続税法第66条第4項に規定する贈与者である前住職の親族等の相続税の負担が不当に減少する結果となる旨主張する。
しかしながら、請求人は上記施行令の規定には該当しないものの、①前住職らによる請求人の業務運営及び財産管理については、請求人の総代が相当程度に監督しているものと認められるほか、前住職らが私的に業務運営や財産管理を行っていたとまでは認められないこと、②前住職らが、本件資金移動の時点において、請求人の財産から私的に生活費などの財産上の利益を享受した事実は見当たらないこと、及び③前住職らが恣意的に請求人を解散し、その財産を私的に支配することができるとはいえないことから、本件資金移動は、前住職から請求人への贈与に該当するとしても、本件資金移動により相続税法第66条第4項に規定する前住職の親族等の相続税の負担が不当に減少する結果となるとは認められない。
参照条文等
参考判決・裁決
東京高裁昭和49年10月17日判決(行集25巻10号1254頁) 東京高裁昭和50年9月25日判決(行集26巻9号1023頁) 昭和50年9月30日裁決(裁決事例集No.11)
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