裁決事例 収入金額
要旨
有限会社の減資の対償として交付を受けた資産(土地)について、当該会社の負債に係る抵当権が設定されていても、抵当権はその目的物の不動産等の担保価値を把握し、被担保債権の優先弁済を受けることを本質とするものであって、仮に、債権者による抵当権実行の段階に至っているとしても、譲受人としては抵当不動産の第三取得者として代位弁済(民法第500条)等の方法により、これを避けられるほか、譲渡人が担保的権利による制限がある場合の売主の担保責任(民法第567条)を負っており、いずれにしても譲渡人に対して求償権を有することとなるので、抵当権が設定されている当該資産の経済的価値には影響がないと解するのが相当である。
したがって、当該資産の交付によるみなし配当の収入金額を算定するに当たり、当該資産の時価から抵当権による被担保債権額を控除することはできない。
要旨
遺産分割が家事審判に基づく競売による価額分割の方法により行われ、当該分割の対象となった土地の競売代金のうちから取得した遺留分相当額の金員については、相続財産として取得したものであり、譲渡所得の課税対象とはならない旨の主張について、譲渡所得の課税は、譲渡所得の基因となる資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として、その資産の所有者の支配を離れて他に移転するのを機会にこれを清算して課税する趣旨のものであり、当該金員については、家事審判に基づく競売による価額分割がなされたことによって、その値上がり益の清算が行われたものと認められるから、所得税法第33条第3項に規定する譲渡所得に係る収入金額に該当するものであり、したがって、原処分は相当である。
共同宅地造成によって生じた面積の減少部分の土地は、公共用地として地方公共団体に無償で供与されたものであり、当該土地についての譲渡所得はないものと認定した事例
裁決事例集 第27集 100頁
要旨
共同宅地造成によって生じた面積の減少部分の土地は、公共用地として地方公共団体に無償で供与されたものであるが、地方公共団体が所有する公道等は私人としてこれを所有してもあまり意味のない無価値のものであって、仮に所有権の移転が行われたとしても対価として収入する金額はないものと考えられること、また、所有地の一部を無償で供与することによって、所有面積は減少しても、残地については反射的利益として公共用地の利用便益を享受することになり、その価値は高まるので、供与者としては減少する土地についての対価を得ようとの認識はないことから当該供与部分の土地については譲渡所得はないものと認めるのが相当である。
要旨
賃貸料の額に関する係争に起因する供託金の不動産所得の総収入金額の収入すべき時期に関して、当該供託金は、不法供託の上賃借人を被告とする貸料増額要求訴訟が解決するまで還付を受けることができない未確定債権であるから原処分の認定した収入時期には誤りがあるとの請求人の主張について、当該供託金は、請求人と貸借人との間においては、本件土地の賃貸借契約についての争いはなく、その賃貸料の増額について当事者間に協議が整わないことから、貸借人が供託したものであることが認められ、手続的には適法になされていることが認められること、また、請求人は当該供託金を当該訴訟係属中に還付を受けており、その際、供託所に対し供託金額を超える部分の賃料について留保の意思表示をしていることが認められること、しかし、土地等の賃貸借契約の存否については争わず、賃料の額の多寡についてのみ争われている場合の供託金については、その供託された賃貸料相当額に係る不動産所得の総収入金額の収入すべき時期は、[1]賃貸料の額として確定している部分の金額については契約等により支払日として定められている日、[2]不確定な部分の金額については賃借人が賃貸料の弁済のため供託した日と解されるから、原処分庁の認定した収入時期については誤りはない。
要旨
土地賃貸借契約の存否に係る裁判上の和解により請求人が受け取った慰謝料名義の金員は、賃借人が第一審で全面敗訴するなどしてきたにもかかわらず、賃貸人たる請求人が和解に応じて再び賃貸借契約を許諾したことから慰謝料名義としたもので、請求人がその契約に応諾をしなければ、取得できなかったものであるから、その実質は、貸地の権利金であると認められる。
要旨
裁判上の和解により、両当事者は譲渡所得課税(原処分)の基となった売買契約の無効を確認し、この和解条項のとおり、いったん受領した譲渡代金の返済、所有権移転登記の抹消をしているので、原処分を取り消すのが相当である。
外国為替証拠金取引における反対売買により決済が行われるまでの持高ないしは保有高について、営業日ごとの評価替により生じた為替差損益は、その時点で損益が確定するとした事例
裁決事例集 第77集 91頁
要旨
請求人は、本来、外国為替証拠金取引は、一定の証拠金を預託して外貨保有の権利を取得し、それを反対売買することにより損益が確定するものであるから、本件清算型ロールオーバーにより営業日ごとに生じる本件為替差損益は確定しておらず、当該損益は所得税法上実現した収益に該当しない旨主張する。
しかしながら、本件FX取引は、請求人の未決済ポジションにつき営業日ごとに評価替が行われ、当該評価替によって生じる本件為替差損益は本件取引口座において営業日ごとに清算がされ、営業日ごとに行われる本件清算型ロールオーバーにより、評価益が生じた場合には取引会社には評価益相当額の支払義務及び請求人には評価益相当額を受け取る権利が確定し、これとは逆に評価損が生じた場合には取引会社には評価損相当額の支払を受ける権利及び請求人には評価損相当額を支払う義務が確定することから、本件清算型ロールオーバーが行われた時点において、本件為替差損益が確定し、これについて現実に収入があった又は収入の原因たる権利が確定的に発生したというほかなく、そうすると、原処分庁の主張は理由があり、請求人の主張は採用することができない。
要旨
人的役務の提供による収入金額の収入すべき時期は、原則として人的役務の提供を完了した日であるが、弁理士業務のうち外国特許事務に係る報酬については、慣習として現地代理人を通じて出願事務を行い、現地代理人の諸経費をも含めて請求しているので、依頼者の検収が終了した時点において請求額が確定するものと解するのが妥当であり、また、請求人は継続してこの計算基準を採用しているので、その計算を認めるのが相当である。
要旨
弁護士報酬を土地で取得した場合、その評価の基準とすべき日は、当該土地につき再換地指定の効力が発生した日であり、地積は再換地後のものによるべきであって、また、その評価額は、本件土地に近接し、条件の類似すると認められる土地の取引価額に時点修正等を加味して評価するのが相当である。
要旨
時効の効果については、訴訟において時効の援用があって初めて時効による権利の取得を生ずるものと解せられるところ、請求人は土地所有権移転登記手続を求める訴訟の提起以前に時効を援用した事実はなく、訴状提出の日に初めて時効の援用をしたものと認められるから、取得時効により請求人が取得した土地に係る一時所得は、時効を援用した日の属する年分の所得とすべきである。
要旨
一般に相続財産は、相続人が数人いる場合には相続開始と共にその共有に属し、かつ、その共有持分は法定相続分によるものとされており、また、分割前の相続財産の処分については、他の相続人の同意が必要とされ、かつ、その同意を得て特定物を処分したときは、当該物件に対するそれぞれの法定相続分につきこれがなされたものと解されるところ、請求人は、本件処分の対象となった山林所得及び譲渡所得は未分割の相続財産の売却によるものであるから、その売却時においては請求人のこれらの所得に係る収入金額は確定していないと主張するが、請求人ら共同相続人が本件未分割財産を第三者に対して適法に売り渡している以上、請求人の法定相続分により、その売却時の年分において、これらの所得金額計算上の収入金額が確定しているものといわざるを得ない。
要旨
現物出資は金銭に代えて現物を提供して株式ないしは持分を得るという有償双務契約による譲渡であって、譲渡所得計算上の収入金額は、その資産の現物出資により取得した株式ないしは持分を時価とするのが相当である。
要旨
請求人(大学教員)の長男の入学金及び授業料等につき、大学に設けられている学費減免規定に基づき、減額免除されたことによる利益は、使用者である同大学から勤労者の地位にある請求人が受けた経済的利益であるから、当該経済的利益に係る所得は、所得税法第28条第1項にいう給与所得に該当する。
請求人が合名会社を退社するに当たり受領したみなし配当所得の収入すべき時期は、退社することについて総社員の同意があった日であり、年賦で支払われるものであっても、その全額が一括して課税されるとした事例
裁決事例集 第63集 123頁
要旨
請求人が合名会社を退社するに当たり受領したみなし配当所得の収入すべき時期について、請求人は、同社社員総会において退社に関する総社員の同意があった平成11年5月28日であると主張し、原処分庁は、請求人が平成10年8月4日に同社を退社した旨の変更登記がされていることから、退社の事実があった日は同日であると主張する。
ところで、請求人が同社代表社員との間で作成した公正証書には、請求人が平成10年7月2日付で同社を退社することについて総社員が同意した旨の記載があり、本件公正証書の記載内容は真正かつ有効なものと認められるから、本件総社員の同意があった日は、同日と認められる。
そうすると、請求人の退社事由は同社定款に定める総社員の同意に基づくものであることについては争いがなく、所得税基本通達36-4(3)イに定める請求人の退社の事実のあった日は、平成10年7月2日と認めるのが相当であり、同日が配当所得の収入すべき時期である。
請求人は、合名会社を退社するに当たり受領したみなし配当所得は、平成10年から同18年まで9年間の年賦で支払われる予定の収入であるから、みなし配当所得の金額を平成10年分の所得として一括課税することは違法である旨主張する。
しかしながら、所得税法第36条第1項に規定する「その年において収入すべき金額」とは、権利確定主義を原則としているところ、請求人の退社の日は平成10年7月2であり、この日に本件払戻金の額を受領する権利を確定的に取得したものと認めるのが相当であるから、本件みなし配当所得の金額が配当所得の収入すべき金額となり、平成10年分の所得として課税した原処分は相当である。
請求人が平成25年中に行った外国通貨建預金の払出しにより生じた為替差損益の金額は、同年分の収入すべき金額に該当するとした事例(平成25年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第103集
ポイント
本事例は、本件における為替差損益については、外国通貨を円貨に交換して口座から払い出した時に所得税法第36条《収入金額》第1項にいう収入すべき金額が実現したものとして所得を認識するとしたものである。
要旨
請求人は、平成25年分における請求人の外国通貨建預金(本件外貨預金)の払出しにより生じた為替差損益(本件為替差損益)の金額は、請求人名義の本件外貨預金の口座を開設した平成21年から最終払出日の平成25年までの間にわたり継続して行われた取引であるから、この期間を基礎として計算されるべきである旨主張する。
しかしながら、本件為替差損益については、外国通貨を円貨に交換して本件外貨預金の口座から払い出した時に所得税法第36条《収入金額》第1項にいう収入すべき金額が実現したものとして、所得を認識する必要がある。したがって、請求人の平成25年分の雑所得の金額の計算上総収入金額に算入すべき金額は、請求人が平成25年中に外国通貨を円貨に交換して本件外貨預金の口座から払い出した時に生じた各為替差損益の額の合計額とされるべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
東京地裁平成23年1月26日判決(税資261号順号11599)
要旨
請求人が取得した不動産については、その取得及び維持管理に関し配偶者の寄与、貢献があったとしても、当該不動産は名実ともに請求人の取得した財産であると認められているので、同人の特有財産であったというほかはない。
したがって、請求人が離婚に伴う財産分与の調停に基づく債務を履行するために、本件不動産の所有権を配偶者に移転したことは所得税法第33条第1項に規定する資産の譲渡に当たるとした原処分は相当である。
要旨
国家公務員共済組合法(以下「共済組合法」という。)による年金の受給権は、同法第41条第1項によりその権利を有する者が、年金受給権の確認を求める請求をし、その決定を経ることによって確定され、給与法の改訂がなされた場合の新給与法による年金増額改訂は、同法第73条第3項により当初決定額について所要の改定を行うことにより確定されるものである。
また、年金の支給時期は、同法第73条第4項によれば、毎年3月、6月、9月、12月にそれぞれ前月までの分を支給するものと定められている。そして、年金の収入金額の「収入すべき時期」は、所得税法第36条第1項の規定により収入すべき権利が確定した時と解すべきであって、本件においては、その年金の支給の基礎となる共済組合法により定められた支給日がそれに当たると解するのが相当である。したがって、たとえ増額改訂通知及び年金振込通知が翌年になされたとしても、請求人の退職年金について、支給対象月分の支給額が共済組合法に定める支給日に給与所得の収入すべき金額として確定するとした原処分は相当である。
要旨
請求人が株主たる地位に基づかないで増資新株の割当てを受けたことについては、当該新株につき額面金額による買戻しの約定又は譲渡制限があったとしても有利な発行価額による経済的利益の享受があったとみるべきであり、当該経済的利益の額の計算の基礎となる新株の価額については、本件株式の所有の実態からみて利益配当がどの程度期待できるかということが主要な価値的判断要素となるから、配当金を一定の利率で還元して元本たる株式の価額を求める配当還元方式により評価するのが客観的で合理的であると認められるところ、その配当率については、増資前2年間の平均175パーセントという高い配当率は、増資後もそのまま継続するという保証のないものであって適当でなく、増資後4年間の平均20パーセントという一般的で将来も期待し得る配当率によるのが相当である。
要旨
不動産の賃貸借契約に係る保証金のうち、当該契約の解除に伴い返還を要しないこととされた金額は、今後の家賃減収及び設備等の遊休陳腐化によって生ずる損失等を補てんするものであり、その実質は所得税法施行令第94条第1項第2号にいう不動産所得を生ずべき業務に係る収益補償類似のものであって、不動産所得の収入金額に該当するとともに、当該返還を要しないこととされた金額は、当該契約に基づく賃貸料月額とその契約解除後新たに締結した賃貸借契約に基づく賃貸料月額との差額の3年分以上であること等から、臨時所得に該当する。
要旨
譲受人が本件農地の開発許可を受けるに際し提出した書類には、請求人の同意書があり、その開発に当たり地目を宅地に変更する登記をしているから、本件土地は譲受人に引き渡され、所有権が完全に移転していると認められ、また、売買契約書に代替地提供を条件とする条項はなく、覚書には、代替地の提供ができない場合には売買代金と同額で売り戻すとされているから、請求人の譲受人に対する売買代金と同額の金員の支払は、売買契約の解除によるものではなく、再売買によるものであるという原処分について、前記覚書以外の覚書によると代替地の提供が売買契約の条件であったと認められ、その契約時には、所有権移転登記ではなく、譲受人を権利者とする所有権移転請求権仮登記がされているところからみて、譲受人が所有権を確定的に取得したことはなかったことが明らかであるから、仮登記の抹消とともになされた前記金員の支払は、当該土地の再売買によるものではなく、本件譲渡契約を解除したことに伴う返還であると認定するのが相当であるから、原処分は取り消されるべきである。
要旨
請求人と相手方との交換契約はその後仮換地の指定変更があったので、実質上は、仮換地指定後の土地の交換であると認められる。したがって、請求人が仮換地の指定変更に伴い相手方から収受した金銭については、名目上整地費、擁壁費となっていても、その実質は、交換差金と認められ、その所得は譲渡所得に該当するものと解するのが相当である。
勤務先の株式報酬制度に基づいて支給された株式に係る給与所得の収入すべき日は、当該報酬制度による株式を無償で取得する権利(アワード)に係る株式が口座に入庫された日が相当と判断した事例
裁決事例集 第88集
ポイント
所得税法第36条第1項は、現実の収入がなくても、その収入の原因となる権利が確定した場合には、その時点で所得の実現があったものとしてその権利確定の時期の属する年分の課税所得を計算するという建前(いわゆる権利確定主義)を採用したものと解される。
本事例は、株式報酬制度による株式を無償で取得する権利(アワード)に係る株式が口座に入庫された日において、権利が確定し、当該株式に係る株主としての地位を取得したと認められるから、アワードに係る利益の収入すべき日は入庫日とするのが相当と判断したものである。
要旨
原処分庁は、請求人が元勤務先の属する企業グループの株式報酬制度に基づき株式を無償で取得する権利(本件各アワード)を付与されたことによる利益の収入すべき日について、アワードステイトメントに本件各アワードのベスティング日が平成19年8月1日と記載され、元勤務先の税務の担当者の申述によれば、請求人が株式を受領する権利を得たのは同日であると認められることからすると、当該利益の収入すべき日は、同日である旨主張する。
しかしながら、請求人が最終的に支払を受けるのは株式の現物及び端株に相当する金額の金員であるところ、ベスティング日においては、請求人に実際に支給される株式の株数及び後日支給を受ける金員等の額は具体的に確定していないことに加え、請求人が当該株式の発行会社の株主としての地位を取得したことを裏付ける証拠も見当たらず、かえって当該株式が請求人の口座に入庫された日(平成19年8月17日)に株主としての地位を取得したと認められることからすれば、ベストされた本件各アワードの最初の決済日である入庫日に、現物株式を無償で取得したことによる利益及び金員の支給等を受ける権利が確定し、担税力のある所得が実現したとするのが相当である。
参照条文等
国が請求人所有土地を駐留軍用地として10年間強制使用するについて請求人に対し損失補償金として一括で支払われた10年間の地代の収入すべき時期は、収用裁決に基づく請求人所有土地明渡しの日及び損失補償金全額の受領の日の属する年分であるとした事例
裁決事例集 第41集 78頁
要旨
国が請求人所有土地を駐留軍用地として10年間強制使用するについて請求人に対して支払われた損失補償金の収入すべき時期について、請求人は、損失補償金は10年間の地代の一括前払であり前受収益に該当するものであるから、損失補償金を収受した昭和62年分の不動産所得の総収入金額とされる金額は収用裁決に基づく請求人所有土地明渡しの日である昭和62年5月15日から同年末までの期間に対応する金額とされるべきである旨主張するが、請求人は土地明渡しの時期において損失補償金の全額についてその支払を請求し得ることとなったものと認められ、また、請求人は、昭和62年3月25日、損失補償金の全額を受領したことから、請求人はその受領の時点で当該利得の全額を現実に支配管理し、自己のためにこれを享受しているというべきであり、したがって本件損失補償金はその全額が昭和62年分の不動産所得の総収入金額に算入されるべきである。
要旨
契約対象物件の全部の引渡しが完了していない場合における譲渡所得の課税に当たって、[1]契約対象物件の大部分の引渡しが行われていること、[2]引渡物件に見合う対価を収受し、請求人の事業資金等に使用されていること、[3]引渡未了物件は第三者所有の物件で、請求人がそれを取得して契約の相手方に引き渡すことは事実上不能であること、[4]契約対象物件の一部を引き渡さなかったことを原因とする当該契約の解除がなされた事実はないことからみると、本件売買契約は、黙示の合意による変更がなされ、当事者双方が履行をなしたところをもって契約の部分的完結がなされたものと認められるので、一部の引渡しを了していないので課税適状にはないという請求人の主張は相当でなく、また、引渡未了分を含めた売買契約書に基づき譲渡所得の金額を算定した原処分も相当でない。
店舗を立ち退く際に受領した立退料について、その支払者に精神的損害を補償する意思は認められず、また、資産損失を補償するものとは認められないことから、その全額が一時所得に係る収入金額に該当するとした事例
裁決事例集 第44集 97頁
要旨
請求人は、店舗を立ち退くに当たって受領した立退料の一部について、[1]所得税法施行令第30条第3号に規定する精神的慰謝料に該当するから非課税所得である、[2]顧客に係る営業権の滅失に伴い受け取ったものであり、所得税法第51条第1項の資産損失を補償するものであるから所得は生じない旨主張するが、当該立退料は総額で合意したものであり、[1]については、家主が請求人に対し精神的な損害を補償する意思を有していたものとは認められず、[2]については、有償で取得した営業権の存在は認められず資産損失の対象となる資産はないことになるので、請求人の受領した立退料の全部が一時所得に係る収入金額に該当する。
要旨
歯列矯正施術料の収入金額の計上について、請求人は、過去の診療実績に基づき3年間に配分すべきであると主張するが、本件矯正施術料は、請求人と患者との間において締結された治療契約により、歯列矯正装置を装着した時に患者に請求し、受領しているから、矯正装置を装着した時に収入すべき権利が確定したものと認めるのが相当である。
海外の顧客との商取引は請求人の売買取引ではないから、海外から送金を受けた金額は請求人の収入になるものではなく、コミッション相当額のみが収入金額であるとの請求人の主張が排斥された事例
裁決事例集 第35集 31頁
要旨
認定事実によれば、A社と請求人との間の仕入取引は通常の売買取引にほかならず、したがって、当該取引に係る商品(タイプライター)の所有権はA社から請求人に移転するものであり、次いで、請求人は、その所有権を取得した商品をD社等(外国法人)に送付するとともに、その対価として、D社等から、請求人において自由に設定した金額を記載したインボイス記載額の送金を受け、これにより多額の差益を得ていたものであり、しかも、請求人は、過大送金額を請求人個人の用途に費消したり、過大送金額の一部を請求人名義の定期預金にしたりするなど通常請求人の収入金額でなければできないようなことをしてきたものであって、請求人とD社等との間の取引も売買取引にほかならないということができ、したがって、請求人がインボイスに基づきD社等から送金された金額はすべて商品の輸出売上代金であって、その全部が請求人に帰属する収入金額であるというべきである。
要旨
請求人は、H社の企業年金プランのうち、米国内国歳入法第401条k項に規定する年金プランに加入し、掛金を拠出しているが、[1]当該掛金は、内国歳入法においては拠出時の給与の減額とされ、将来の年金受給時に課税されるものであること、[2]当該掛金は、請求人に現金等で支給されず、請求人が管理、支配できない給付に該当するものであること及び[3]請求人が将来米国の居住者として受給する年金の一部である掛金に課税することは、日米租税条約第23条(1)及び同条約の目的である「反二重課税」に反することから、我が国においては拠出時の給与として課税すべきではない旨主張する。
しかしながら、401kプランの掛金として拠出するか又は給与として現金で受け取るかは請求人の任意であること、更に401kプランの掛金とする場合であっても、拠出割合及び投資対象については請求人の判断と責任において選択することとされていることなどから判断すると、本件掛金は、請求人がH社の使用人としての地位に基づいて役務の提供の対価として受け取った給与を請求人の意思と判断により、401kプランの掛金として拠出したものと認めるのが相当であり、本件掛金相当額は、所得税法第36条の規定により、各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額に該当し、同法第28条第1項の規定により、給与所得に該当するものと認められる。
要旨
請求人は、L社との外国為替証拠金取引(本件FX取引)において円と外国通貨との金利差から生じる本件スワップポイントに係る収入金額を雑所得の金額の計算上総収入金額に算入すべき時期は、①本件スワップポイントが未実現評価損益と同様であること、②L社から請求人への支払は余剰の証拠金の返還であること、③スワップポイントに係る利益損失はFX取引が決済された時でなければ確定しないことから、本件FX取引が決済された時である旨主張する。
しかしながら、①請求人がL社との間で合意した約款には、L社に開設した請求人の本件取引口座が益勘定となった場合は、請求人がその利益金を預り証拠金に振り替えるか、請求人の指定銀行口座に振り込むかを選択をすることとなっていること、②L社の取引ガイドによれば、スワップポイントは、外貨と円との金利差であり、この金利差額が本件取引口座に積み立てられること、③L社のパンフレット及び商品取引概要には、1か月分のスワップポイントの合計額が翌月10日に顧客の口座に振り込まれることが記載されていたこと、④実際にも、本件スワップポイントの1か月分の合計額が、請求人に定期的に通知され、請求人の預金口座に振り込まれており、この事実は、上記のパンフレットや商品取引概要の内容に合致することからすると、本件FX取引の内容は、請求人がL社との間でFX取引を行い、その際、1日当たり一定の割合の本件スワップポイントの受払を合意し、日々計算された本件スワップポイントの額が本件取引口座に累積された後、請求人名義の銀行預金口座に振り込まれる内容の契約とみることが相当である。そうすると、本件スワップポイントに係る収入は、日々計算され本件取引口座に累積された時に確定的に生じたものと認められる。
以上のことから、本件スワップポイントについては、日々計算され本件取引口座に累積された時に収入の原因たる権利が確定したというべきであり、本件スワップポイントに係る収入金額を雑所得の金額の計算上総収入金額に算入すべき時期は、日々計算され本件取引口座に累積された時であると認めるのが相当である。
参照条文等
請求人は、株式譲渡契約に係る債務不履行を理由に約定解除権を行使した後、相手方との合意によりそれを撤回したと認められるから、その解除による違約金の取得に係る一時所得の収入すべき時期は、解除権行使の効力が生じた日であると判断した事例
裁決事例集 第62集 145頁
要旨
請求人は、本件解除通知書の送付後も、本件株式譲渡契約に係る交渉が譲受人との間で継続されていたもので、その後における、本件覚書の作成時に同契約を解除した旨主張する。
しかしながら、当該交渉は、本件株式譲渡契約の法律関係を維持するために継続されていたというよりも、新たな譲受人に本件株式を譲渡するための契約締結の準備行為として行われていたものと認められ、そして、本件覚書による合意は、請求人による解除権の行使及び違約金の取得が有効にされたことを前提として、双方の合意により、その解除の意思表示を撤回したものと認められるから、本件解除により取得した違約金は一時所得の収入金額に当たり、その収入すべき時期は、本件解除通知書が譲受人に到達した日(解除権行使の効力が生じた日)である。
要旨
請求人は、相続した本件土地を各共同相続人均等の相続登記をした上で譲渡したことについて、共同相続人間における遺産分割協議の内容は代償分割であり、当該譲渡により請求人が取得した代金には他の共同相続人から受け取るべき代償金が含まれているから、請求人の譲渡所得に係る総収入金額は、本件土地の譲渡代金に請求人の当該相続登記による持分を乗じて算定すべきであると主張するが、[1]共同相続人間において、被相続人の遺産は各共同相続人が全体として均等に分割することとし、本件土地は売却換価して、その代金を分割することに合意していること、[2]各共同相続人は、その合意事項に基づき本件土地の売買契約を締結し譲渡代金を確定させたこと、[3]譲渡代金の確定後、遺産分割協議により各相続人が具体的に受領する代金の額を定めており、当該遺産分割協議の内容は調停条項に反映されていること、[4]合意事項、遺産分割協議及び調停条項において、財産(現物)を取得した相続人が他の相続人に対して代償債務を負担するという合意はなされていないこと、及び[5]請求人以外の共同相続人は換価分割として譲渡価額を算定していることを総合すると、本件土地はいわゆる換価分割の方法により分割されたものと認められるから、請求人の譲渡所得に係る総収入金額は、同人が換価分割により取得した換価代金とすべきである。
要旨
請求人は、離婚に伴う財産分与として本件土地の所有権を被分与者に移転したことにつき、その実質は共有財産中の所有地を特定し、真正な登記名義を回復したにすぎず、仮に本件土地が請求人の特有財産であったとしても、財産分与は対価を伴わない無償譲渡であり、被分与者の潜在的持分に着目して共有財産を分割するという清算的性格を有するものであるから、財産分与に譲渡所得の概念を持ち込むことには無理がある旨主張するが、本件土地の取得について被分与者が何らかの形で貢献していることは否定できないとしても、そのことをもって本件土地が直ちに被分与者との共有になるものとはいい得ず、本件土地は、請求人の特有財産であったものと認められ、また、夫婦の一方がその特有財産である不動産を財産分与として他方に譲渡した場合、そこに資産の移転が存することは明らかであって、その譲渡は、分与義務の消滅という経済的利益の享受を伴うものであるから有償の譲渡と認めるのが相当であり譲渡所得課税の対象となる。
要旨
請求人が外交員として勤務する不動産販売会社を売主、請求人を買主とする本件売買契約書は、請求人がノルマを履行して高率の歩合の支給を受ける一方、同社も歩合は支給するものの本件土地の販売権限を請求人にゆだねる趣旨で作成されたものと解されるところ、請求人は、結局本件土地を顧客にあっせんすることができなかったのであるから、本件売買契約書の作成に伴って同社から請求人に支給された金員は、歩合の前払金であり、請求人の事業所得に係る収入金額とすることはできない。
要旨
二つの物件について、譲受人から一括しての買申込みがあったことに対し、請求人としてはその代金を一時に入手する必要がなく、かつ、税負担の考慮から譲渡年分を変えることとして、一つの物件については売買契約を締結し、他の一つ物件については売買予約の覚書を作成し、同覚書に基づき売買予約の仮登記をした場合に、請求人と譲受人との間においては、当該覚書作成の時において、既に、他の一つの物件の売買代金の額について合意が成立していて、譲受人は請求人からの要求に基づき、当該覚書作成の日の翌日にその売買代金の全額を支払うことによって買主としての義務を完全に履行しているから、本件土地に関する所有権移転の登記手続を翌年1月以降に行ったとしても、請求人には、前記目的以外にその所有権移転を直ちにすることができないとする事情は認められず、したがって、売買当事者間においては、譲受人が実質的にその売買代金の全額を請求人に支払った日において、その譲渡があったものと認定するのが相当である。
受領済の役員報酬につきそ及して減額する旨取締役会で決議したことにより、給与所得の収入金額が過大であるとしてされた更正の請求は、同決議に基づき受領済の報酬の一部を返還しても、請求人の既に確定した給与所得の収入金額には影響を及ぼさないから、更正をすべき理由がない旨の原処分は適法であるとした事例
裁決事例集 第56集 111頁
要旨
請求人は、[1]本件減額決議は、多額の累積欠損金を抱えたE社の再建を目的として、取締役全員の合意に基づいて行ったもので、同社は、平成8年9月に開催した定時株主総会において財務諸表の承認を得ていること、[2]役員と法人との間の委任契約は、当該委任契約の存する決算期間内であれば、そ及して変更することは可能であることから本件役員報酬の減額を認めるべきである旨主張する。
しかしながら、E社は請求人の役員報酬の金額(月額)及びその支給日を毎月20日と定めていたと認められ、請求人は平成7年においてその定めどおりに役員報酬を受領していたと認められるから、請求人の平成7年分の給与所得の収入すべき金額は請求人が確定申告をした金額になる。
また、本件減額決議をした本件取締役会及び株主総会を開催した日は、いずれも平成8年7月期の事業年度終了の日以後の請求人が現実に報酬を受領した後であり、その支払時点では経営委任の業務執行の対価として正当に支払われたものであり、請求人の平成7年分の給与所得の収入金額は、収入すべき時期である支給日において既に具体的に確定していたと認められるから、本件減額決議をした日に収入すべき金額が確定したとみることはできず、請求人が本件決議に基づいて受領済の役員報酬の一部を返還しても、請求人の給与所得の収入金額に何ら影響を及ぼすものではないと解するのが相当である。
したがって、更正すべき理由がないとした本件通知処分は適法である。
要旨
請求人名義の土地の譲渡を、たとえ、同人の子が無断で行ったものであるとしても、その後、当該土地の面積及び売買価額を改める変更契約書を請求人、買主及び当該子が協議して作成していることから、請求人は本件譲渡を追認していると認められること、請求人が無断譲渡に関して法的手段に出ていないこと、譲渡代金は当該子が受領済みであることなどから、請求人が本件土地を譲渡したものとして行った原処分は適法である。
要旨
請求人は、請求人が行った外国為替証拠金取引(本件各FX取引)により生じた利益及びスワップポイントについては、ロスカットを防止するため本件各FX取引の各取引口座から証拠金を出金することができなかったこと、また、本件各FX取引における未決済の取引については、評価損が評価益を上回っている状態にあったことから反対売買による差益を本件各FX取引の各取引口座から引き出す権利がなかったので、本件各FX取引については、本件各年分の年末において収入すべき金額が発生していない旨主張する。
しかしながら、所得税法第36条《収入金額》第1項が、その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において「収入すべき金額」とする旨規定しており、これは、現実に収入がない場合においても、その収入の原因となる権利が確定した場合、その時点で所得の実現があったものとして課税所得を計算するという、いわゆる権利確定主義を採用しているものと解されているところ、本件各FX取引におけるロスカットや請求人の出金可能額は、請求人と本件各FX取引の取引業者との間の取決めにすぎないから、本件各FX取引における反対売買による差損益及びスワップポイントについては、反対売買による決済をした時、又はロールオーバーがあった時に、それぞれ収入の原因となる権利が確定したこととなる。
要旨
本件土地は、建物建築の請負代金の現物決済として支払に充てられたものであるが、契約当時当事者双方とも土地価額の動向が予知できず、その現物決済として予定していた土地を当初予定の価額で他に転売することが不可能なことが明らかとなったので、請負人は請負に係る建物の質を下げて工事を施行せざるを得なかった事情があり、当該建物の新築工事は当初見積りのとおり施行されているとは認められない。したがって、当該現物決済に係る土地の譲渡所得の金額の計算上収入金額とすべき金額を請負契約書に記載された請負代金によるべきであるとした原処分は不相当であり、その金額は請求人が取得した建物の鑑定評価額によることが相当である。
要旨
原処分庁は、請求人が時効取得した各土地(本件各旧国有地)が譲渡されていることからすれば、本件各旧国有地を含む売買物件の各売買代金を基に面積按分により算出した金額が一時所得の収入金額(本件各旧国有地の時価)である旨主張する。
しかしながら、本件各旧国有地は公共用財産たる里道・水路等のうち、その機能を喪失したもの(旧法定外公共物)で、単独利用が困難な土地であるから、当該土地をその隣接所有者が時効取得した場合の時価については、当該土地を含む一団の土地としての価額を基礎として面積按分するだけでは十分な評価をしているとはいえず、また、単独利用が困難な旧法定外公共物については、原則として、隣接土地所有者に対してのみ随意契約により売却され、その売却価額が適正な対価(時価)を求めるための基準である国有財産評価基準に従って評価されることからすれば、私人間での取引事例が一般にほとんど見受けられないことに照らしても、本件各旧国有地の価額も同基準に準じて評価するのが相当であり、同基準に基づき評価した本件各旧国有地の価額が一時所得の収入金額と認められる。
参照条文等
要旨
請求人が調停離婚により前配偶者に分与した不動産は、その取得に関して前配偶者の協力があったとしても、当該不動産は名実ともに請求人の名で取得した財産であるから、同人の特有財産であったというほかなく、したがって、共有財産の譲渡には当たらないので、その資金の全部について請求人が譲渡したこととなる。
賃借人から土地賃貸借契約の終了に伴い原状回復費用名目で受領した金員は、その土地賃貸借契約の終了した日の属する年分の不動産所得の収入金額であると認定した事例
裁決事例集 第67集 264頁
要旨
請求人は、賃貸していた甲土地の原状回復工事については、本件合意書を交わすまでには賃借人であるB大学と何度も協議を重ね、解約に関する真意を基礎に本件合意書を交わしたものであり、B大学が甲土地の原状回復義務の履行を請求人に委任するに際し、本件合意金に過不足が生じたとしても精算を行わないこととしたのは、B大学側の諸般の事情及び強い意向を汲んで、請求人が承諾したものであり、本件合意金については、B大学が行うべき原状回復工事の費用を、同大学の都合から預ったものであるから、甲土地の原状回復工事が完了した平成14年7月31日までは、預り金とすべきであり、平成13年分の不動産所得に係る総収入金額とはならないと主張する。
しかしながら、請求人及びB大学が、保証金と本件合意金とを相殺し、請求人が同大学に対しその過不足額を支払ったことにより、B大学は、本件合意金の支払義務を履行したことが認められるが、本件合意書の内容によれば、本件合意金の支払義務履行によりB大学の原状回復義務は消滅し、請求人に対し甲土地を現況の状態に復し、返還したことになり、また、請求人とB大学との間には何らの債権債務も存しないのであるから、請求人には、本件合意金の返還義務はないことになる。
したがって、本件合意金をB大学からの預り金であるとするのは相当ではなく、平成13年中に確定したものとして、平成13年分の不動産所得に係る総収入金額として計上すべきものと認められる。
遅延損害金の定めのない貸付金にあっては、約定利率と同じ割合で遅延損害金が日々発生しているものと解すべきであり、本件はこれを新たに消費貸借の目的としたものと認められることから、当該遅延損害金が回収不能になったとしても所得税法第64条第1項の規定の適用はないとした事例
裁決事例集 第49集 34頁
要旨
- 遅延損害金の定めのない本件貸付金にあっては、約定利率と同じ割合である年8パーセントの利率による遅延損害金がその元本が返済されるまで日々発生し、発生と同時に弁済期が到来して収入すべき金額が確定するものと解すべきである。
- 平成3年8月16日に両者の間で、平成2年5月25日から平成3年8月16日までの利息額等についての金銭借用証書を取り交わしていることからすると、新たに両当事者間に準消費貸借契約が成立したものと認められる。そうすると、法律上、既存債権である本件利息及び遅延損害金に係る債権は消滅し、その額について消費貸借上の債権が新たに発生したことになるから、所得税法第64条第1項に規定する「各種所得の計算の基礎となる収入金額」は、法律上もはや存在せず、これに相当する金額が仮に一定の事由により回収不能になったとしても、同項の規定の適用はないと解すべきである。
遅延損害金債務の債務免除益について、「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」に該当しないとして、所得税基本通達36-17《債務免除益の特例》は適用されないとした事例
裁決事例集 第73集 127頁
要旨
所得税基本通達36-17にいう「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」とは、単に債務超過の状態にあるだけでは足りず、債務超過の状態が著しく、その者の信用、才能等を活用しても、現にその債務の全部を弁済するための資金を調達することができないのみならず、近い将来においても、調達ができないと認められる場合をいうものと解される。
これを本件についてみると、請求人は、債務免除の前後において安定的な賃貸収入を稼得し、上記借入金の弁済に充てており、しかも同借入金以外の債務についても、債務免除の前後において弁済をしていた。そして、請求人の収入から借入金の返済額その他の支出額を控除した請求人の生活費として消費可能な所得は、総務省の家計調査における一世帯当たりの年間消費支出を上回っていることなどからすれば、債務免除の時点において、現にその債務の全部を弁済するための資金を調達することができないとは認められない。
さらに、請求人の資産・負債の状況についてみても、請求人は、主要な資産である自宅及び賃貸用不動産を処分することなく保有しており、また、上記の請求人の支払能力からすれば、債務全額について弁済が不可能となるほどの著しい債務超過があったとはいえないから、「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」に該当するとは認められない。
適格退職年金制度の終了に伴い信託銀行が供託した年金基金の分配金として支払われる一時金に係る収入すべき時期は、当該制度の終了に関する裁判上の和解が成立した日ではなく、年金信託契約が解除された日であるとした事例
裁決事例集 第80集
要旨
請求人は、本件における年金受給権は、退職時点におけるH社との個別的な合意に基づいて発生したものであるが、H社が行った適格退職年金制度の終了及びこれに伴う措置は、H社と請求人との間の給付内容の変更であるから、請求人の同意がない限りその効力は発生しないところ、本件においては、請求人が平成19年3月○日に本件和解をした時点で初めて請求人が上記変更に同意をしたものと評価できるから、請求人に分配される一時金の受給権は平成19年に発生したものである旨主張する。
しかしながら、当該一時金は、適格退職年金制度の終了に伴って年金信託契約が解除されたことにより、当該年金信託契約に係る年金基金がH社における退職年金規定の定めに従って請求人に分配されたものであるところ、当該年金信託契約は、所得税法施行令第183条《生命保険契約等に基づく年金に係る雑所得の金額の計算上控除する保険料等》第3項第3号に規定する「退職年金に関する信託、生命保険又は生命共済の契約」に該当することから、当該一時金は、同条第2項に規定する生命保険契約等に基づく一時金に該当する。
したがって、当該一時金の収入すべき時期は、所得税基本通達36-13《一時所得の総収入金額の収入すべき時期》に定める「その支払を受けるべき事実が生じた日」である当該年金信託契約が解除された日、すなわち、平成17年4月1日であり、当該一時金は、請求人の平成17年分に帰属する所得であると認められる。
参照条文等
要旨
農地を2筆に分筆して同一人に対し昭和52年8月と昭和53年2月に売買契約を締結し、それぞれの売買契約が成立した日に譲渡があったかどうかについて、原処分庁は、農地の所有権の移転に係る農地転用届出の効力は他の財産上の手続に対し特別の地位にあることを理由に、その届出の効力が生じた昭和52年8月に本件農地が一の取引に基づいて一括して譲渡されたものと認定しているが、農地転用届出の受理は農地の所有権を移転する私法上の行為を補充してその法律上の効力を完成させるにすぎない行政行為であり、私法上の行為そのものの効力を確定させるものではないところ、本件土地及び隣接地の各売買契約は、[1]売買約書の内容、[2]譲渡代金の授受の状況、[3]不動産業者、司法書士等に対する仲介手数料、報酬の支払状況等の事実に照らし、昭和52年8月と昭和53年2月にそれぞれ時期を異にして別個独立に締結されたものと認められるから、原処分の一部を取り消すのが相当である。
医師の診療契約に基づく診療報酬債権は、患者に対して診療を行う都度、役務の提供が完了するものであり、医師が患者に対して診療を行った時期にその権利が確定すると解されるから、医師の事業所得の金額の計算上、診療報酬債権は、医師が診療を行った時期の属する年分の収入金額として計上すべきであるとした事例
裁決事例集 第67集 280頁
要旨
請求人は、労働災害の認定を申請している患者及び公務災害の療養補償の支払の一時差止め決定を受けている患者に対する診療報酬債権は、労働災害が認定され、又は、差止め決定が取り消されて療養補償の支払が再開されるまでは診療の対価を請求し得る状況になったとはいえず、診療行為時に確定しているとはいえないから、診療を行った時期の属する年分の収入金額に計上すべきでない旨主張する。
しかしながら、医師の診療契約に基づく診療報酬債権は、患者に対して診療を行う都度役務の提供が完了するものであり、医師が患者に対して診療を行うことにより、直ちに当該診療行為に相当する金額が定まる性質の権利、すなわち、役務の提供が完了した時点で当該役務に係る対価の額が確定し、それを請求することが可能となる権利であるから、診療行為時点で、医師が直ちに患者に対して診療報酬を請求するか否かによって、診療報酬債権の確定する時期が影響されるものではない。
したがって、医師の診療報酬債権は、診療行為が属する年分の収入に計上すべきものであるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
要旨
請求人は、商品取引上の損失についての支払のために、商品取引の委託を業とする会社に土地を譲渡する旨の契約を一度は締結したものの、当該土地の引渡し等に係る紛争についての訴訟上の和解の結果、請求人は、買受人に対し紛争解決金を支払って両者間の売買契約は実質的に解消されていること、本件土地の引渡し、所有権移転登記等が一度も行われないまま請求人がその所有権を確保していることに照らし、結果的に売買契約が法的に有効なものとしては存在しないことを確認したのと同様の内容の和解が成立したものと解されることから本件土地についての譲渡所得はないことになり、原処分を取り消すのが相当である。
外国法人から支払われる国外給与が外貨建て円払い取引に該当せず、円換算を要しないと判断した事例( 令和元年分から令和3年分の所得税及び復興特別所得税の各更正処分、 令和2年分から令和3年分の所得税及び復興特別所得税に係る過少申告加算税の各賦課決定処分・ 一部取消し、 棄却)
裁決事例集 第136集
ポイント
本事例は、雇用契約の定めに従って国外給与を日本円で支払うために作成された所得明細に基づいて日本円で送金された給与につき、当該所得明細に記載された支給総額を給与所得の収入金額とすることが相当であって、当該所得明細は日本円で表示されているから、当該国外給与の支給は外貨建て円払い取引には該当せず、その収入金額の算定に当たって円換算は要しないと判断したものである。
要旨
原処分庁は、外国法人が請求人に交付した税額計算書(本件計算書)には、請求人の給与(本件国外給与)が外国通貨で記載されており、本件国外給与が請求人の口座に日本円で入金されていることから、いわゆる外貨建て円払い取引に該当するとして、本件国外給与に係る給与所得の収入金額は、所得税基本通達57の3-2《外貨建取引の円換算》の注5の定めに基づき、外貨建取引に準じた方法で本件計算書の総支給額を円換算する必要がある旨主張する。
しかしながら、本件計算書は、外国法人が請求人から源泉徴収した税金を外国の国税当局に納付する際に使用する書類であって、外国法人は、請求人との雇用契約の定めに従い、請求人に本件国外給与を日本円で支払うため、日本円で算定した所得明細(本件所得明細)を請求人の給与明細として作成し、本件所得明細に基づき、本件国外給与を請求人の口座に日本円で送金していることから、本件国外給与の支給は外貨建て円払い取引には該当せず、本件国外給与の各月の収入金額は、日本円で算定された本件所得明細に記載の総支給額であることから、本件国外給与に係る給与所得の収入金額を算定するに当たり、円換算する必要はない。
参照条文等
要旨
長期間所有していた山林を宅地造成して譲渡した場合の譲渡所得の収入金額とすべき宅地造成着手前の土地の価額について、原処分においては、当該土地の近隣地域等に所在する土地の通常の取引価額に各種の地域要因等を参酌して算定(1平方メートル当たり3,333円)しているが、本件の場合は、本件共同造成地内の山林を宅地造成着手直前に売買した事例があるので、これにより、当該土地の価額を算定(1平方メートル当たり3,939円)することが合理的である。
請求人が、同人の母に対して、複数年の間に行った金銭の貸付けに係る利息について、その履行期の到来する平成23年において収入すべき金額は、平成23年分の期間に対応する部分の金額のみであるとした事例( 平成23年分の所得税の更正処分、 平成23年分の所得税の過少申告加算税の賦課決定処分・ 一部取消し、 全部取消し)
裁決事例集 第96集
要旨
原処分庁は、利息債権については、その履行期が到来すれば、権利が確定し、所得税法第36条《収入金額》第1項に規定する「収入すべき金額」に当たるものと解され、所得税基本通達36-8《事業所得の総収入金額の収入すべき時期》(7)(本件通達)における「その年に対応するもの」とは、同項の規定によりその年に権利が確定したものをいうとの解釈を前提として、請求人が母親に対して貸し付けた金銭の利息(本件利息)については、その履行期にその全額が確定したものであるから、本件通達により、同日が本件利息の全額の収入すべき時期となる旨主張する。
しかしながら、貸付金利息については、元本使用の対価であって、元本が返還されるまで日々発生するものであるから、特段の事情のない限り、現実の支払の有無を問わず、期間の経過により直ちに利息債権が発生し、収入の原因となる権利が確定するものと解するのが相当であり、また、本件通達は、期間対応計算を採用したものであるから、「その年に対応するもの」との文言については、その年における利息の計算期間の経過に対応するものと解するのが相当であり、本件利息に係る収入金額のうち、各年中の期間に対応する部分の金額に係る収入すべき時期は、それぞれの年の末日であり、貸付期間の終了した平成23年の期間に対応する部分の金額に係る収入すべき時期は、貸付期間の終了した平成23年である。
参照条文等
所得税法第35条第1項、第36条第1項 所得税基本通達36-5、36-8(7)、36-14(2)
参考判決・裁決
最高裁昭和49年3月8日第二小法廷判決(判タ309号255頁) 最高裁昭和53年2月24日第二小法廷判決(判タ361号210頁)
請求人がふるさと納税を行ったことにより各地方公共団体から送付を受けた各返礼品に係る経済的利益の価額は、当該各地方公共団体の評価額によるのが相当であるとした事例( 平成29年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、 平成30年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・ 棄却、 一部取消し、棄却)
裁決事例集 第126集
ポイント
本件は、ふるさと納税に係る経済的利益の額は、地方公共団体が謝礼として供与する経済的利益の額であるから、地方公共団体が謝礼のために支出した金額(返礼品調達価格)をその算定の基礎とすることが相当であるとしたものである。
要旨
請求人は、請求人の受けたふるさと納税の返礼品(本件各返礼品)について原処分庁が算定した経済的利益の価額(原処分庁認定額)は適正な金額ではなく、その収入すべき時期にも誤りが認められる旨、また、仮に一時所得の金額を計算するとしても、その経済的利益の価額は、事業の広告宣伝のための賞金を受けた場合の評価に関する課税実務上の取扱いに基づき原処分庁認定額に60%を乗じた価額とすべき旨主張する。
しかしながら、ふるさと納税をした個人は地方公共団体からの贈与により返礼品を取得すること、ふるさと納税制度における返礼品の提供が当該個人に対する謝礼であることからすれば、本件各返礼品に係る経済的利益の価額は、地方公共団体が謝礼(返礼品の調達・提供)のために支出した金額(返礼品調達価格)をその算定の基礎とすることが相当である。そして、通常、地方公共団体が返礼品等をその調達時における時価を超えて調達することはないと考えられ、また、本件において、本件各返礼品が不当に高額又は低額で取引されたといった事情は認められない。
これらのことからすると、返礼品調達価格は、地方公共団体が本件各返礼品を調達した時における返礼品の客観的交換価値を示すものと評価できるから、請求人は、本件各返礼品を取得することにより、本件各返礼品につき返礼品調達価格に相当する経済的利益を得たことになる。したがって、本件各返礼品に係る経済的利益の価額は、本件各返礼品の返礼品調達価格によるのが相当である。
この点、原処分庁認定額については、その価額及び収入すべき時期の認定に一部誤りがあると認められたものの、返礼品調達価格を基にして算定されたものであるから、原処分庁認定額が適正でない点に関する請求人の主張は理由がない。また、本件各返礼品はそもそも事業の広告宣伝のための賞品ではないから、当該賞品の評価に関する課税実務上の取扱いに基づいて本件各返礼品を評価すべき旨の請求人の主張を採用することはできない。
参照条文等
請求人が敷金を返還した事実は認められないから、当該敷金相当額は請求人の不動産所得の金額の計算上、総収入金額に算入すべきである旨の原処分庁の主張を排斥した事例
裁決事例集 第101集
要旨
原処分庁は、請求人が賃貸物件の賃借人から受け取った敷金(本件敷金)を返還した事実は認められないこと等から、本件敷金相当額は請求人の不動産所得の金額の計算上、総収入金額に算入すべきものである旨主張する。
しかしながら、本件敷金について、賃借人は、賃貸物件の賃料を滞納して請求人からその明渡し等を求められ、①賃貸借契約を合意解除すること、②所定の期限までに物件を明け渡すこと、③明渡し後の残置動産の処分には異議を申し立てないこと等を主な内容とし、他に何らの債権債務がないことを相互に確認する旨のいわゆる清算条項が付された和解に応じ、これにより請求人の賃借人に対する敷金返還債務は存在しないことが確認されているところ、当該和解の内容を考慮すると、本件敷金は、実質的には全て賃借人が負担すべき賃料、賃料相当損害金その他賃借人が負担すべき費用に充てられたものと認めることができ、本件敷金について、請求人に経済的利益はないから、総収入金額に算入すべきとはいえない。
参照条文等
利息制限法に定める制限利率を超える部分の利息及び遅延損害金は、現実の支払があった時点において事業所得の総収入金額に算入すべきであり、未収の場合には、制限利率の部分のみ総収入金額に算入すべきであるとした事例
裁決事例集 第85集
ポイント
この事例は、利息制限法に定める制限利率を超える利率(制限超過利率)による貸付金に係る利息、遅延損害金につき、これらが不法な利得であり私法上無効であっても、それが現実に利得者の管理支配下にある場合には、課税の対象となるべきことを示した最高裁判決に則して、その収入計上時期及び収入金額について判断したものである。
要旨
利息制限法による制限利率を超過する利率をもって金銭を貸し付け、利息、遅延損害金を収受している場合の収益計上について、現実に利息、遅延損害金が収受された場合には、当事者間において約定の利息、遅延損害金として授受され、貸主において当該制限超過部分が元本に充当されたものとして処理されることなく、依然として従前どおりの元本が残存するものとして取り扱っている以上、制限超過部分をも含めて、現実に収受された利息、遅延損害金の全部が貸主の所得として課税の対象となるものと解すべきである。
また、利息、遅延損害金が未収の場合には、利息制限法による制限利率の限度においてその約定の履行期が到来する年分の収益として計上し、当該制限利率を超過する部分については、現実に受領しない限り、収益計上をすることはできない。
なお、利息、遅延損害金が未収の場合において、それ以前に利息制限法による制限利率を超過する利息、遅延損害金の支払がされているときは、現実に元本に充当していたか否かに関わらず充当されたものとして、その残額(残元本)についてのみ利息、遅延損害金を生じることとなるのであって、当該残元本を基準にした制限利率の限度において収益計上をすることとなる。
参照条文等
所得税法第33条第2項第1号、第36条第1項、第156条 消費税法第6条第1項 消費税法施行令第8条 消費税法基本通達6-1-5 国税通則法第68条第1項、第2項、第70条第5項
参考判決・裁決
最高裁昭和46年11月9日第三小法廷判決(民集25巻8号1120頁)
要旨
請求人は、収用裁決は不当であるから、当該裁決は、所得税法施行令第95条に規定する「契約が成立しない場合に法令によりこれに代わる効果を認められる行政処分」に当たらないと主張するが、収用裁決が適法な手続によってなされている以上、たとえ収用裁決の取消しを求める訴訟が提起され、これが係属中であるとしても本件補償金は当該裁決の権利取得日の属する年分の譲渡所得の収入金額に当たる。
要旨
固定資産の交換は資産の譲渡に該当し、その譲渡益は譲渡所得の課税対象となり、この場合の収入金額は、交換により取得した資産の価額によるべきところ、その価額は所得税法第36条第2項の規定においてその資産の交換の時における価額とされており、その交換における価額とは、通常の売買価額、言い換えれば客観的交換価額をいうものと解される。本件の場合、交換先における交換取得土地の取得価額については、通常の取引価額よりある程度の買進みがあったと認められるので、本件譲渡収入金額は、交換先における交換取得土地の取得価額によるのは相当でなく、当該土地と価格事情がおおむね同一と認められる状況類似地域における当該年中の売買実例7件の売買価額の平均値に、本件交換の条件として交換先に負担させた土地埋立費用を交換差金と認めてこれを加算した価額とするのが相当である。
外貨建借入金の借換えの際に計算される為替差損益が単に評価上のものにとどまる場合には課税の対象となる収入として認識しないとした事例(平成23年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第104集
ポイント
本事例は、借換えの前後における外貨建借入金の内容に実質的な変化が生じていない場合、当該借換えの際に計算される為替差損益は単に評価上のものにすぎず、課税の対象となる収入として認識しないとしたものである。
要旨
請求人は、金融機関から外貨建借入金を借り入れ、当初の借入れから最終的な返済までの間に借換えを繰り返しているところ、最終的な返済時だけでなく、各借換え時において計算される為替差損益も課税の対象として認識すべきである旨主張する。
しかしながら、所得税法第36条《収入金額》第1項は、収入の原因たる権利が確定的に発生した場合に、その時点で所得の実現があったものとして課税所得を計算するという建前(いわゆる権利確定主義)を採用したものと解されており、収入という形態において実現した利得のみを課税の対象としているから、外貨建借入金の借換え時に計算される為替差損益が単に評価上のものにとどまる場合には、課税の対象となる収入として認識しないこととなる。本件においては、金融機関と請求人との間で貸付与信枠に係るファシリティー契約が結ばれ、同契約に定められた貸付与信限度額、金利の計算方法及び担保等の条件に基づき、同一支店から、同一の通貨で借換えが行われており、借換えに係る既存の借入金と新たな借入金の内容に実質的な変化が生じたとは認められない。そうすると、借換え時において、既存の借入金の返済により計算される為替差損益は、単に評価上のものにすぎないから、課税の対象となる収入として認識しないこととなる。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和49年3月8日第二小法廷判決(民集28巻2号186頁)
要旨
請求人は、平成2年分土地(P市R町241田2,840平方メートル)の買主はN社で、譲渡収入金額は1億4,604万円及び平成3年分土地(P市S町1893田168平方メートル)の買主はE社で、譲渡収入金額は969万円である旨主張する。
しかしながら、次の事実によれば、請求人は、平成2年分土地及び平成3年分土地をいずれもT社に3億68万円及び1,670万円で譲渡したと認めるのが相当である。
【平成2年分土地譲渡】
- T社は、[1]平成2年6月7日K銀行e支店から引き出した6,155万円により作成した保証小切手2,900万円、現金3,100万円及びX社(仲介業者)が用意した現金100万円により手付金6,100万円を、[2]同年10月11日同支店から引き出した2億3,963万円により作成した保証小切手1億2,263万円及び現金1億1,700万円により残金2億3,968万円を支払っていること。
- 上記[1]の保証小切手は請求人名義で裏書し、[2]の保証小切手はN社(平成元年2月6日銀行取引停止)名義で裏書してJ銀行a支店のN社名義の普通預金口座に入金された後、平成2年10月中にほぼ全額が引き出され、また、同普通預金口座の開設申込書(平成2年6月7日)には請求人の電話番号が記載されていること。
- N社の代表者は、調査担当者に[1]T社との売買契約書を作成したが、代金は受領しておらず、[2]売買交渉は請求人が行った旨申述していること。
- X社の代表者は、調査担当者に[1]平成2年6月8日に請求人とT社は、譲渡価額を3億68万円とする売買契約を締結して手付金を授受したが、[2]残金の決済時に売主名を請求人からN社への変更要望があり、[3]T社は渋ったが、平成3年分の土地の購入予定があったので、要望に応じた旨申述していること。
- X社の代表者は、審判所に[1]請求人が審判所に提出したX社の代表者に対する質問調書の内容は、請求人から何とか助けてくれとの依頼により署名押印したものであって、事実と異なる虚偽のものであること、[2]平成2年6月8日付の売主を請求人、買主をT社及び譲渡価額を3億68万円とする売買契約書は、平成2年10月12日の残金決済時にT社の代表者の目前で廃棄した旨答述していること。
- T社の代表者が審判所に提出した書面には、[1]X社を仲介業者として請求人と売買契約を締結し、手付金及び残金をいずれも請求人に支払い、領収書を受領したこと、[2]手付金を現金3,200万円、保証小切手2,900万円及び残金を現金1億1,700万円、保証小切手1億2,263万円としたのは、請求人からの強い要請によるものである旨記載されていること。
【平成3年分土地譲渡】
- T社は、平成3年12月18日K銀行e支店から引き出した1,670万円により土地代金を支払っていること。
- T社とX社との間で、[1]平成3年分土地の売買契約書の作成は、売主名が決まらないという請求人の事情により遅れていること、[2]売主名を空欄の重要事項説明書を送付するので、後日補完記載の上返送して欲しい旨の文書(平成4年1月14日付)があること。
- T社の代表者が審判所に提出した書面には、[1]平成3年分土地は、平成2年分土地に継続して請求人から購入したこと、[2]平成3年12月18日に売主を請求人、買主をT社及び譲渡価額を1,670万円とする売買契約を締結し、[3]同日全額現金で支払った旨記載されていること。
- X社の代表者は、調査担当者に[1]売主をE社、買主をT社とした売買契約書は、請求人から平成4年1月頃に売主名を請求人からE社に書き替えてほしい旨の要望があったので、[2]売主名を請求人からE社に書き替えた売買契約書をT社に郵送して差し替えた売買契約書である旨申述していること。
【重加算税】
請求人と同人が代表である法人との間で締結された請求人所有の土地の賃貸借契約について、契約書に記載された契約期間後まで契約書記載の賃料収入が維持されていたとは認められないとした事例
裁決事例集 第119集
ポイント
本事例は、請求人と同人が代表である法人との間で締結された請求人所有の土地の賃貸借契約について、当該契約に係る契約書に記載された契約期間後まで当該契約書記載の賃料収入が維持されていたとは認められず、請求人主張額の賃料収入があったと認めるのが相当であり、他方でこれを上回る賃料収入があったことを認めるに足る証拠はないとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人が同人が代表取締役である法人(本件法人)と過去に請求人所有の土地(本件土地)に係る賃貸借契約(本件契約)を締結し、本件契約に係る契約書に記載された契約期間(本件契約期間)後、本件法人が、本件土地を別法人に転貸する旨の契約を締結して賃料収入を得ていたことからすると、請求人と本件法人は本件契約を更新していたと推認することができるとして、請求人は、本件契約期間後も本件契約に定める賃料の金額を本件法人から賃料収入として得ていた旨主張する。
しかしながら、本件契約期間後の期間における契約書等の客観的証拠はなく、本件契約期間後の期間における契約が、賃料も含めて本件契約の条件と同一内容で更新されたものであったと認めることはできない一方、請求人は本件法人から得た本件土地の賃料収入について、その具体的金額等を当審判所に対し証拠として提出していることからすると、少なくとも同金額の賃料収入があったと認めるのが相当であり、他方で、これを上回る賃料収入があったことを認めるに足る証拠はない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和49年3月8日第二小法廷判決(民集28巻2号186頁) 最高裁昭和53年2月24日第二小法廷判決(民集32巻1号43頁)
FX取引に基因して生じた差損益金及びスワップポイントに係る収入の原因となる権利の確定時期は、ロールオーバーの時であるとした事例(平成25年分及び平成26年分の所得税等の各更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の各通知処分、平成24年分及び平成25年分の所得税等の各更正処分及び無申告加算税の各賦課決定処分、平成25年分及び平成26年分の所得税等の期限後申告に係る無申告加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第108集
ポイント
本事例は、FX取引に係る約款、契約締結前交付書面の記載によれば、本件における差損益金及びスワップポイントに係る収入の原因となる権利はロールオーバーの時点において確定し、当該時点において所得の実現があったと判断したものである。
要旨
請求人は、外国為替保証金取引において、未決済建玉の乗換えにより決済日を自動的に1営業日繰り延べる取引(本件ロールオーバー)により生じた差損益金及びスワップポイント(本件差損益金等)は、損益の見込額にすぎないから、本件ロールオーバーが行われた時点において本件差損益金等の収入の原因となる権利が確定したとはいえない旨主張する。
しかしながら、請求人の行う外国為替保証金取引では、本件ロールオーバーにより未決済建玉の約定価格が更新され、本件差損益金等が発生してその金額が確定し、発生後、直ちに預託保証金に加算又は減算されるほか、これと同時に本件差損益金等が反映された預託保証金は振替可能額の範囲内で証券総合口座への振替請求が可能となるとされており、これらによれば、本件差損益金等の収入の原因となる権利は、本件ロールオーバーが行われた時点で発生すると同時にこれを法律上行使することができるようになり、権利実現の可能性を客観的に認識することができる状態になったということができる。したがって、本件差損益金等の収入の原因となる権利は、本件ロールオーバーが行われた時に確定したと認められる。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和53年2月24日第二小法廷判決(民集32巻1号43頁)
要旨
請求人が、借地上にあった請求人の所有に係る本件貸家を地主に譲渡するとともに、本件借地権を返還し、他方、地主から本件譲受土地等を時価よりも相当低い価額で譲り受けた取引は、[1]双方の取引が同一時期に行われていること、[2]請求人が、本件借地権を無償で返還する特別な理由がないこと、[3]請求人は本件譲受土地に借地権を有していないにもかかわらず、その譲受価額は借地権を有していたと同様な低価額となっているところから、本件双方の取引は別個の贈与取引ではなく、それぞれの土地に係る借地権の価額相当額を相互に相殺した有償取引であると認めるのが相当である。
当初売買契約の対象物件である土地の一部を分筆して引き渡した土地に係る課税年分は、当初売買契約対象物件の引渡しが完了した日の属する年分ではなく、当該引渡しがあった日の属する年分であるとした事例
裁決事例集 第29集 20頁
要旨
原処分庁は、本件土地は当初契約に基づき一括して譲渡されたものであり、その譲渡対価の額はその引渡しの全部が完了した日の属する昭和56年分の譲渡所得の総収入金額とすべきものであって、昭和55年中における本件土地の一部(本件転売部分の土地)の引渡しは、当初契約による引渡義務の一部の履行としてみなされたものであると主張するが、本件転売部分の土地については、本件土地の売買代金の総額の支払がなければその所有権は移転しないという当初契約を買主の要望によって一部変更し、本件土地の一部を分筆してその引渡しと代金の受領がなされていることから、その譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は、その引渡しがあった日とするのが相当である。
要旨
原処分庁は、請求人が取引先に請負に係る報酬を請求した時に、収入すべき権利が確定したといえるから、請求人の事業所得の金額の計算上総収入金額に算入すべき金額は、その年中に請求人が取引先に請求した役務の提供に係る対価の合計額となる旨主張する。
しかしながら、請求人と取引先との間の請負契約は、請求人及びその従業員が、取引先から指示されたブロックの溶接等を行うというものであるから、物の引渡しを要しない役務の提供を内容とする請負契約であると認められる。そして、取引先は、請求人の報酬を日々の作業時間から算出していたこと、また、請求人は既に完了した溶接等の報酬の支払を随時請求することができたことからすれば、請求人と取引先は、日々の役務の提供が完了するごとに報酬請求権が発生、確定する旨の請負契約を締結していたと認めるのが相当である。そうすると、請求人が取引先との間で締結した請負契約に基づく報酬請求権の収入すべき時期は、その役務の提供が完了した日の属する年分となり、本件各年分の事業所得の金額の計算上総収入金額に算入すべき金額は、それぞれ暦年の1月1日から12月31日までになされた役務の提供に係る対価の合計額となる。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和53年2月24日第二小法廷判決(民集32巻1号43頁) 大阪地裁昭和38年3月19日判決(行集14巻3号480頁)
要旨
借地人以外の第三者が貸地の底地を買うことは、貸地の地代収受権を取得することにほかならないものであり、投資利回りの点からも有利でないことから取引事例は極めて少なく、底地の価額は低くなるものであるにもかかわらず、原処分庁がこれを借地人が底地を取得する場合と同様に考えて一般的な借地権割合を基にその底地価額を評価したことは適当でなく、借地人でない第三者に底地を譲渡する場合に通常成立すると認められる底地価額として不動産鑑定士が評価した価額を時価とするのが適当であって、所得税法第59条第1項第2号の規定に該当するものであるとした原処分は相当でない。
歯科矯正治療費に係る事業所得の総収入金額に計上すべき時期について矯正装置装着時とするのが相当とした事例( 平成26年分の所得税及び復興特別所得税の更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分、 平成26年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分、 平成26年1月1日から平成26年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分、 平成26年1月1日から平成26年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・ 棄却、 一部取消し)
裁決事例集 第108集
ポイント
本事例は、歯科矯正治療費に係る事業所得の総収入金額に計上すべき時期について、請求人と患者との契約実態などを踏まえた上で矯正装置の装着時とするのが相当であるとしたものである。
要旨
請求人は、歯列矯正治療に係る治療費(矯正診療費)の事業所得に係る総収入金額の計上時期について、矯正装置の装着等の時に患者(本件各患者)に対し、治療費用等を請求する旨が記載された書面(本件書面)を交付しているものの、本件書面は、矯正診療費の総額などを示して患者の便宜を図るために交付するものにすぎず、本件各患者に対して矯正診療費の支払を請求するものではないことから、当該矯正診療費を一括又は分割により支払を受けたそれぞれの日である旨主張する。
しかしながら、歯列矯正治療は、通常数年の治療期間を要すること、請求人の歯列矯正治療に対応する中核的な治療は矯正装置の装着であることに照らすと、請求人と本件各患者との間の契約の実態も踏まえて、収入の原因となる権利の確定時期を決するべきであるところ、請求人は、本件各患者が矯正診療費の金額、予定治療期間及び治療上の注意事項を承諾した後に、本件各患者に対し矯正装置を装着していること、本件各患者の矯正診療費が治療開始後の本件各患者都合により返却されることはないことなどからすれば、請求人は、本件各患者の治療開始時、すなわち、矯正装置の装着時に本件各患者の矯正診療費の全額について請求する権利を有しているものと認められる。したがって、本件各患者に係る矯正診療費の事業所得の総収入金額に収入すべき時期は、矯正装置の装着時とするのが相当である。
なお、矯正診療費に係る収入すべき時期の認定に一部誤りがあったことから一部取消しとなった。
参照条文等
社債と題する書面の額面金額と発行価額との差益は貸付金利息であると認められ、期間の経過により直ちに利息債権が発生し収入の原因となる権利が確定するものとした事例
裁決事例集 第115集
ポイント
本事例は、社債と題する書面の額面金額と発行価額との差益が貸付金利息であると認められ、期間の経過により直ちに利息債権が発生し収入の原因となる権利が確定するものと解されるから、当該差益のその年に対応するものについては、その年分の雑所得に係る総収入金額に算入すべきであるとしたものである。
要旨
請求人は、医療法人から発行を受けた社債と題する書面(本件債券)の額面金額と発行価額との差益(本件差益)について、本件債券の契約によると本件債券の償還日までは本件差益の支払を請求することができないから、本件差益の収入すべき時期は、本件債券の償還日である旨主張する。
しかしながら、本件債券の契約は、請求人と当該医療法人との間における当該償還日を弁済期として、請求人が払い込んだ金員(本件払込金)を貸し付けた契約(本件契約)であり、本件差益は、当該医療法人が本件契約成立時から弁済期までの間、本件払込金を使用することの対価、すなわち利息であると認められる。そして、貸付金利息は、元本利用の対価であって元本が返還されるまで日々発生するものであるから、特段の事情のない限り、現実の支払の有無を問わず、期間の経過により直ちに利息債権が発生し収入の原因となる権利が確定するものと解される。そうすると、本件差益のその年の1月1日から12月31日までの期間に対応する部分については、その年分の雑所得に係る総収入金額に算入すべきである。
なお、本件利息の計算に当たって、原処分庁は、一定の年複利率を用いて算出していないため、これにより当該総収入金額に算入すべき金額を計算すべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭53年2月24日第二小法廷判決(民集32巻1号43頁) 平成29年8月2日裁決(裁決事例集No.108) 平成26年9月1日裁決(裁決事例集No.96)
譲渡所得の帰属年分は、甲契約を締結した日の属する年分ではなく、甲契約を締結して代金全額を受領するとともに、所有権移転登記を了した日の属する年分であるとした事例
裁決事例集 第36集 11頁
要旨
請求人は、昭和54年に譲渡契約を締結し、手付金を受領しているので、本件譲渡所得は昭和54年分であると主張するが、[1]昭和54年の作成日付の契約書は信用できず、昭和60年の日付の契約書が真正なものと認められること、[2]昭和60年に譲渡代金を受領し、所有権移転の登記を了していること、[3]昭和54年以降も本件土地をF社に賃貸して、不動産所得の申告をしていること、[4]昭和54年分所得税の確定申告に当たり、本件譲渡所得について総収入金額に算入していないことなどから、本件譲渡所得は昭和60年分に帰属するとした原処分は相当である。
要旨
請求人は、本件不動産を譲渡契約の相手方A女に引き渡したのは平成2年3月末日であるから、本件譲渡所得は平成2年分に帰属する旨主張し、本件譲渡所得を平成元年分の所得としていた確定申告について更正の請求をしたのであるが、本件においては、[1]本件売買契約は平成元年6月16日に締結され、本件土地建物の所有権移転登記の手続は、同年6月29日に完了していること、[2]請求人は、平成元年中に本件譲渡代金のうち約77パーセントに相当する32,300,000円を受領していること、[3]譲渡の相手方であるA女は、本件不動産を平成元年6月29日に保証委託取引による債権の担保として提供していること及び[4]請求人は、本件不動産に係る平成元年7月から12月までの家賃相当額を事業所得の必要経費に算入していることを併せ考えると、本件不動産の所有権は平成元年中にA女に移転し、また、本件売買契約に基づく経済的利益も、同年中に発生しているというべきであって、このような場合に、請求人自身が譲渡に関する契約の効力発生の日を本件譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期と認識し、本件譲渡所得を平成元年分の所得として申告している以上、これを認めるのが相当であり、譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期が資産の引渡しの日であるという理由に基づく本件更正の請求は認められない。
更正請求期限後においては、更正請求書に記載しなかった事由を通知処分の違法事由として新たに主張することは許されないとした事例(平成23年分の所得税並びに平成23年課税期間の消費税及び地方消費税の各更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の各通知処分・棄却)
裁決事例集 第114集
ポイント
本事例は、更正の請求に対する通知処分の取消しを求める審査請求において、更正の請求期限である5年を経過した後に、更正請求書に記載しなかった事由を違法事由として新たに主張できないとしたものである。
要旨
請求人は、原処分庁の実地調査に基づき期限後申告した平成23年分の売上げのうちの特定のものについて、金額誤りや収入計上時期に誤りがあり同年分の収入金額が過大であるから更正の請求(本件更正の請求)は認められるべきである旨主張する。しかしながら、請求人が主張する上記金額誤りや収入計上時期に誤りがあるとは認められない。
また、請求人は、本件更正の請求において更正の請求事由としなかった上記特定の売上げ以外の他の収入についても収入金額が過大である旨を本審査請求において主張する。しかしながら、当該主張は、更正請求時には主張していなかった事由を審査請求において新たに主張するものであるところ、更正の請求が、法定申告期限から5年以内の請求期限を設け、その理由等を記載した更正請求書を課税庁に提出することを求めていることに鑑みれば、租税法律関係の早期安定及び税務行政の能率的な運営等を図る趣旨から、少なくとも更正請求期限を経過した後においては、更正請求書に記載しなかった事由を通知処分の違法事由として新たに主張することは許されないと解すべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和49年3月8日第二小法廷判決(民集28巻2号186頁) 最高裁昭和53年2月24日第二小法廷判決(民集32巻1号43頁)
要旨
保証債務に係る求償権を行使するため、その求償先である中間譲受人に相応の売却利益を得させる必要上、本件資産を中間譲受人に譲渡したと請求人は主張するが、[1]請求人自らが売買の一切を実行し、同人が得ることが可能な売却利益をあえて求償権の行使を前提として債務者を中間譲受人として介在させることにより債務者にも得させるという不自然なものであること及び[2]本件資産の譲渡代金は、最終譲受人から直接請求人が受け取っており中間譲受人との間で何らの清算もされていないこと等から、本件資産は請求人から直接最終譲受人に譲渡されたものと認められる。
土地の売買契約の締結日において、前受金等として売買代金の3分の2に相当する金額が授受され、所有権移転登記に必要な書類の全てが引き渡されるとともに、同日所有権移転登記もなされている本件において、土地の引渡しは同日になされているものと認められ、当該土地の譲渡所得は、同日に発生するとした事例
裁決事例集 第47集 148頁
要旨
請求人は、[1]売買契約締結日である平成2年11月28日に受領した金員は、売買代金15億円のうちの手付金3億円、前受金7億円の合計10億円で、取引の完了を表すものではなく、譲渡の日の判断要素にはならないこと、[2]本件契約書、収益の帰属、費用の負担及び危険負担に関する約定があるが、これは、残金を受領するまでは土地の引渡しをしないことを意味するものであること、[3]本件契約書に所有権移転の時期及び引渡しの日の約定があるが、相続人間で相続争いがあり訴訟となっていることから、訴訟遂行上のテクニックで表示したものにすぎないことを挙げ、残金を受領した平成3年3月29日が本件土地の引渡し日であると主張する。
ところで、譲渡所得に係る総収入金額の収入すべき時期は、引渡しの日とするのが合理的である。これを本件についてみると、[1]請求人は、約定に基づき、前渡金等と引換えに所有権移転登記に必要な書類を引き渡し、[2]買主は、同日所有権移転登記を了し、[3]買受人との間で引渡日を平成2年11月28日とする旨の合意が成立していると認められることから、平成2年11月28日が引渡しの日と認めるのが相当である。本件契約の上記約定が、請求人の訴訟上のテクニックによるものとしても、本件契約は当事者間で定められたものであるから、合意に影響するものではなく、また、危険負担等に関する約定をもって引渡し日に係る判断を左右するものではない。
要旨
請求人は、本件資産は、被相続人が中間譲受人に譲渡したもので、最終譲受人に譲渡したものではないと主張するが、最終譲受人が、買受代金として支払った金員を全額被相続人が収受していること及び最終譲受人に対して、被相続人の都合で売主を中間譲受人とした旨の念書が差し入れられていること等から、本件資産は、被相続人が直接最終譲受人に譲渡したものである。
要旨
原処分庁は、農地等の譲渡については、農地法の許可等のあった日又は農地等の引渡しのあった日のいずれか遅い日を譲渡の日と主張し、本件土地の譲渡所得の帰属年分について、代物弁済予約の完結権を行使したことによる所有権移転登記の原因日付が平成3年4月23日であり、本件土地の農地法第3条の規定による許可申請は平成3年3月30日にされ、同年4月23日付で許可を受けていることから、平成3年分であると主張する。
しかしながら、譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は、譲渡所得の基因となる資産の引渡しがあった日によるものと解されているところ、本件土地は和解により代物弁済として債権者委員会へ引き渡されたものであり、[1]債権者委員会は昭和61年11月7日に代物弁済予約仮登記をしていること、[2]請求人は、和解による1,200万円の支払期日である昭和61年12月31日までに当該金員を返済できず、翌日から本件土地を引き渡したと認識していたこと、[3]債権者委員会は、平成元年8月ごろに本件土地を譲渡していること等から、本件土地の支配管理は昭和62年1月1日請求人から債権者委員会へ移転したものと認められるので、同日が本件土地の引渡しの日と認められる。
譲渡所得に係る総収入金額の収入すべき時期は、農地法所定の手続にかかわらず、本件土地の実体的支配の移転があった時期(引渡しの日)によることを相当とする。
したがって、所得の帰属年分に誤りがあり、その他について判断するまでもなく、課税処分の全部を取り消すべきである。
買主が売主に交付する金銭の額と買主が負担する売主の譲渡所得税相当額との合計額をもって土地の売買価額とする旨の特約条項付の売買契約に係る「売買価額」を一定の算式により計算し、その計算後の価額が著しく低い価額の対価の譲渡に該当するとした事例
裁決事例集 第39集 18頁
要旨
買主が売主に交付する金銭の額と買主が負担する売主の譲渡所得税相当額との合計額をもって土地の売買価額とする旨の特約条項が付されている売買契約に係る当該譲渡資産の売買価額及び売主の短期譲渡所得の譲渡所得税額は、次の算式により計算される。
売買価格=交付する金銭の額+譲渡所得税額‥‥‥‥‥‥‥‥式1
譲渡所得税額=(売買価格-取得額-譲渡経費)×税率‥‥‥式2
式1を式2に代入すると、
譲渡所得税額=
| 交付する金銭の額-取得額-譲渡経費 | ×税率‥式3 |
| 1-税率 |
本件の場合、交付する金銭の額が取得費に満たないところから、式3の譲渡所得税額がマイナスとなり、交付する金銭の額に加算すべき金額と請求人が納付することとなる譲渡所得税額とが一致する数値は存在しないこととなる。
結局、式1の交付する金銭の額7,700,000円に加算すべき金額は零という結果になるから、本件土地の売買価額は、交付する金銭の額の7,700,000円ということになる。
他方、買主は、本件契約の日の3日後に、第三者に対し18,000,000円で本件土地を転売しており、その転売価額には特別な条件が付されているとは認められないこと等から、当該転売価額は、本件土地の客観的な交換価値を示すものということができ、本件土地の時価は、18,000,000円と認められる。
そうすると、本件土地の売買価額は、7,700,000円であり、その結果、当該売買価額は、時価18,000,000円の2分の1未満となるから、本件譲渡は、著しく低い価額の対価による譲渡に該当する。したがって、所得税法第59条第1項の低額譲渡の規定を適用した原処分は、相当である。
1. 現物出資により取得した出資の価額を純資産価額方式で算定する場合、会社が所有する土地の価額は相続税評価額ではなく通常取引される価額によるべきであるとした事例 2. 現物出資により取得した出資の価額を純資産価額方式で算定する場合、法人税等の税額に相当する金額を控除すべきでないとした事例
裁決事例集 第41集 53頁
要旨
- 現物出資により取得した出資の価額を相続税評価通達に定める純資産価額方式に準じて算定する場合、その算定の基礎となる会社が所有する土地の価額は、相続税評価額ではなく通常取引される価額によるべきである。
- 現物出資はもともと会社の事業活動の継続を前提として行われるのであるから、現物出資により取得した資産の価額を純資産価額方式で算定する場合、相続税評価通達186-2に定める「法人税等の税額に相当する金額」は控除すべきではない。
一団の土地を取得し、順次、同一人に譲渡する旨の契約に基づき土地を譲渡した場合で、約定土地のすべてを譲渡できないときは買主の要請により買戻義務が生ずる旨の特約があっても、棚卸資産である土地の譲渡に係る収入金額を計上すべき時期は、上記特約にかかわらず、当該土地の引渡しがあった日であるとした事例
裁決事例集 第49集 145頁
要旨
- 一団の土地を取得し、順次、同一人に譲渡する旨の契約に基づき土地を譲渡した場合で、約定土地のすべてを譲渡できないときは買主の要請により買戻義務が生ずる旨の特約があっても、棚卸資産である土地の譲渡に係る収入金額を計上すべき時期は、当該土地の引渡しがあった日であり、その引渡しの日がいつであるかは、売買代金の受領状況や移転登記時期等の諸事情を総合勘案して判断するのが相当である。
- 土地を購入する契約を締結して支払った本件手付金に係る損失については、請求人が契約の支払期日までに残金債務を履行しなかったため、本件手付金を没収されたものと認められるから、残金債務の支払期日である昭和63年12月7日ないし売主から契約破棄等の意思表示のされた同月9日に確定したものとするのが相当である。
- 本件株式の評価損については、本件株式の発行会社である各社が請求人の事業に係る取引先であることを認めるに足りる証拠はなく、本件株式が請求人の事業の用に供されたとはいえないから、本件株式の評価損が生じたとしても、それを必要経費に算入することはできない。
- 請求人は、事業廃止後の費用発生額を必要経費に算入すべき旨主張するが、所得税法第63条(事業を廃止した場合の必要経費の特例)の規定に該当する事実が発生した場合には、所得税法第152条の規定により、更正の請求をすることができる旨定められているのであるから、事業廃止後の費用発生額は、所得税法第152条の規定による更正の請求により処理すべきであると解するのが相当であり、更正の請求を経ていない本件においては、これを必要経費に算入することはできない。
調停に基づく離婚慰謝料として譲渡することとなったマンションの譲渡時期は、所有権移転登記のときではなく、当該マンションから請求人の資産を搬出し、当該マンションを相手方に引き渡したときであるとした事例
裁決事例集 第51集 113頁
要旨
昭和62年5月の調停に基づき離婚慰謝料として先妻にマンションを引き渡すこととなった請求人は、住所も1年以上前から他所に転出しており、翌6月中旬ころに同マンションの請求人の資産を搬出していたことが認められるので、そのころに同マンションを相手方に引き渡したものと認められるから、その時が同マンションの譲渡の時期であると解すべきである。
当該マンションの所有権移転登記が平成5年になされたのは、子供の成人を待つなどの事情があったからと認められ、かつ、請求人が当該譲渡所得について、平成5年分として申告したのは、原処分庁からの申告しょうように単純に応じたものと認められるから、いずれも当該譲渡所得が平成5年分として生じたことの理由とはならない。
要旨
譲渡収入金額のあん分の基礎となる底地割合について、請求人は、本件土地の取得(昭和62年9月)後2月経過後に締結した売買契約金額を更地価額として算定した割合を基とすべきであると主張するが、[1]当該売買契約は解除され成立していないこと、また[2]当該契約金額は本件土地を取得した後2月後の価額であるから本件土地の取得時における更地価額と認めるのは適当ではない。原処分庁が更地価額として採用した鑑定評価額は、請求人が本件土地の取得資金を借り入れる際に鑑定したもので、その鑑定に至った事情からみても当該鑑定価額を本件土地の更地価額と認めるのが相当である。
1. 借地権利金の全額を年内に受領している場合のその借地権利金を譲渡所得の収入金額にみなされるときにおける譲渡所得の収入すべき時期は、借地権利金の全額を受領した年分であるとした事例 2. 同族会社に支払った6億円の立退料は、譲渡費用に該当しないとした事例 3. 審査請求中に義務的修正申告書を提出しなかったことが国税通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」に該当するとした事例
裁決事例集 第53集 129頁
要旨
- 本件は、借地権利金が譲渡所得の収入金額にみなされる場合に該当するものであるところ、請求人は、A土地については、平成2年7月31日に賃貸借契約が成立しているが、B土地については、他社が使用収益中のため賃貸借契約が成立していないのであるから、同土地に係る借地権利金の収入すべき時期は、平成3年であると主張する。
しかしながら、[1]請求人は、平成2年7月31日までに両土地の借地権利金の97.5パーセントに相当する金員を受領し、同年8月10日までにはその全額を受領していること、[2]請求人及び賃借人の双方において両土地を一体のものとして取り扱っていること、[3]B土地に係る賃貸借契約が別途取り交わされていないこと、[4]B土地を使用している他社も平成2年7月31日の時点において平成3年3月31日に立ち退くことが確定していたことなどから、B土地についても平成2年7月31日の時点で賃貸借契約が成立しており、資産の増加益の利得が確定的に発生しているものと認められるから、同土地に係る借地権利金の収入すべき時期は、平成2年であると認めるのが相当である。 - 請求人は、同族会社との土地の賃貸借契約の解除に際して支払った6億円の立退料は当該土地の譲渡費用に該当すると主張するが、[1]当該土地は、当該同族会社の転貸先が建物、構築物のない状態で駐車場として使用していたこと、[2]当該同族会社から当該転貸先への立退料の支払がないこと、[3]当該同族会社に対する賃貸料の額が固定資産税相当額に近い額であり、実質的には使用貸借に近いものと認められることから、請求人が当該同族会社に対して立退料を支払う必要性は認められず、当該6億円全額を譲渡費用として控除することはできない。
- 租税特別措置法第37条の2(特定の事業用資産の買換えの場合の更正の請求、修正申告等)に規定するいわゆる義務的修正申告書を提出する場合に該当する本件の場合、当該修正申告書を提出すれば、納付すべき税額は増額された部分を含む全額が即時確定し、その限りで先になされた更正処分(原処分)は、当該修正申告に吸収されて消滅し、その存在意義を失うと解されていることから、更正処分について審査請求等の不服申立てをしている場合において、当該義務的修正申告書の提出を予定することは、法が不服申立てを認めた趣旨を結果的に没却することとなる。
したがって、このような場合において、当該義務的修正申告書を提出しなかったことについては、やむを得ない事由があったものと認められ、かかる理由は、国税通則法第65条(過少申告加算税)第4項に規定する正当な理由に該当するから、過少申告加算税の賦課決定処分はその一部を取り消すべきである。
要旨
譲渡所得の基因となる資産の現物出資により取得した株式等の評価は、現物出資が会社の事業活動の継続を前提としている以上、相続という包括的、かつ、無償な財産の承継を課税対象とするという相続税法における評価ではなく、現物出資した資産の評価額から、当該価額と会社の受入価額(帳簿価額)との評価差益に対する法人税等相当額を控除しない純資産価額によるのが相当である。
要旨
請求人は、譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は、その資産の支配の移転の事実に基づいて判定した当該資産の引渡しの時により判定すべきところ、①請求人は所有権移転登記に必要な書類を引き渡していないこと、②契約書上、売買代金の全額の支払いと同時に所有権移転及び引渡しを行うこととなっており、また、違約条項があることから契約破棄が理論上可能であることなどから、本件土地に係る譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は平成17年ではないと主張する。
しかしながら、その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額は、その年において収入すべき金額とされているところ、譲渡者による資産の引渡しがあれば、通常、所有権も移転しているものと考えられ、かつ、譲渡者が資産を引き渡した時には、相手方に対してその譲渡代金を請求できることが確定的となり、譲渡代金相当額を収入すべき金額と認識し得る状態とみることができるから、譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は、原則として、その所得の基因となる資産の引渡しがあった日によるものと解するのが相当である。
そして、その引渡しがあった日の判定に当たっては、必ずしも売買契約書上の引渡しの時期に関する文言にとらわれることなく、本件契約と別件契約はもともと一括の契約であるか否かなどの取引諸事情、契約内容及び買主がその資産の使用を開始した時期などを総合的にみて、実質的にその資産に対する支配管理の変動があった時期がいつかという観点から判断するのが相当である。
本件買受会社は、本件土地及び別件土地を一括して買い受け、本件開発区域の一団の土地の一部として、宅地造成をすることを予定していたと認められる。また、請求人は、本件買受会社の開発行為に全面的に協力する旨を約した上で契約し、本件契約の直後に同社に開発行為施行同意書を提出していること、仮登記以後の本件土地の危険負担等は、同社が負うことになっていることからすると、請求人と本件買受会社の間では、本件契約の締結時に本件土地の支配管理が請求人から本件買受会社に移転する旨の合意があり、本件買受会社は本件土地の使用収益が可能となったものと認められる。そして、本件開発区域の造成工事は、平成17年10月初旬に着工された上、請求人ら地権者の立ち入りもできなかったことから、本件買受会社が現実に使用収益を開始し、実質的に支配管理の移転があったと認められる。
以上のことからすると本件土地の譲渡の時期は平成17年10月初旬とするのが相当である。
請求人は、乙農地についてはB女の所有する丁農地と等価交換したものであると主張するが、実際は、交換取引が存在しないから、所得税法第58条の規定を適用することはできないとした事例
裁決事例集 第44集 181頁
要旨
請求人は、請求人所有の甲農地を乙農地と丙農地に分筆して、丙農地についてはC男に譲渡し、乙農地についてはB女の所有する丁農地と等価交換し、その後、B女が交換により取得した乙農地をC男に譲渡したものであると主張するが、[1]各譲渡代金の決済状況、[2]各関係人の答述、[3]仲介人D男の所有する各契約書等のメモ書、[4]農地法及び登記簿上の関係書類等を総合すると、実際は、請求人が甲農地をC男に譲渡し、B女から丁農地を譲り受けたものと認められ乙農地と丁農地の交換取引は存在しない虚偽の取引であるから、所得税法第58条の規定を適用することはできない。
本件有限会社に対する上場会社株式の現物出資に係る譲渡所得の収入金額は、その出資により取得した出資持分の価額であり、この価額は、本件有限会社の状況等に照らし、純資産価額によって評価するのが相当であるとした事例
裁決事例集 第47集 105頁
要旨
本件有限会社に対する上場会社株式の現物出資に係る譲渡所得の収入金額について、請求人は、本件現物出資により取得した出資持分の価額については、[1]収益力を基準とし財産評価通達に定める類似業種比準方式に準じて評価すべきで、[2]仮に、原処分庁が主張するように、純資産価額によって評価するとしても、課税時期において時価に評価換えした価額と帳簿価額との評価差額に対する法人税等相当額を控除すべきであり、更に、[3]仮に、純資産価額(法人税等相当額を控除しない価額)によって評価するとしても、本件現物出資資産の時価を超える部分は、旧出資持分の含み益相当額であるから、所得税法施行令第84条第1項の「株主等として与えられた場合」に該当するから、課税すべきでなく、上記時価を限度とすべきである旨主張する。
しかしながら、現物出資に係る譲渡所得の収入金額は、所得税法第36条第2項の規定により、その出資により取得した出資持ち分の価額となるが、[1]本件有限会社の状況に照らし、本件取得持分の評価に当たっては、会社資産の持分としての性格に重きが置かれるべきであって、純資産価額によることが相当であり、[2]会社の事業活動の継続を前提にしていると認められる現物出資に係る出資等の評価においては、会社の解散を前提として算定される処分価額によることは合理性がなく、簿価との評価差額に対する法人税等相当額を控除することは相当でない。また、[3]「株主等として与えられた場合」とは、株主等として付与された新株引受権に基づいて株式を引き受けた場合であり、請求人は、本件現物出資資産の所有者たる地位に基づいて本件取得持分を与えられたものであるから、その価額の全部が収入金額に算入されるべきである。
不動産の売買価格の認定において、原処分庁が根拠とした関係人の答述等は内容に不一致が多く信ぴょう性がないとし、請求人の答述を採用し、原処分の一部を取り消した事例
裁決事例集 第48集 54頁
要旨
請求人らは、本件物件の売買価格につき、真正の価格は57,000,000円であり、売買契約書上は5,000,000円を圧縮して52,000,000,円としたものであり、本件物件の賃貸に係る預り敷金の買主の引継分1,640,000円を加算した58,640,000円が本件物件の譲渡収入金額であると主張し、原処分庁は、請求人側の仲介人であるDホームのEの申述、買主側の仲介人とされているが真実の譲受人と認めるB社のFの作成したメモ等から、売買価額は85,000,000円であり、預り敷金4,040,000円を加算した89,040,000円が譲渡収入金額であると主張する。
DホームのEは、売主側の仲介人であるにもかかわらず、その答述はあいまい、かつ、一貫性を欠いており、売買において主要な役割を果たしたB社のFのみが取引経緯につき明確な答述をし、同人のメモには売買価額が85,000,000円と記載されている。
しかし、本件物件の実際の買主は売買契約書上のNではなく、B社のTと認められるところ、Fは、本件取引の架空の中間譲渡人Nを介在させたり、その後所在不明であるなど、Fの答述は信ぴょう性を欠き採用できない。また、売買代金の決済として85,000,000円を支払ったとする証拠書類は何ら存在せず、Fのメモも証拠として採用できない。
したがって、本件物件の売買価額は、請求人の答述した57,000,000円と認定せざるを得ず、また、本件物件の譲渡に伴って最終買主に引き継がれた預り敷金の額は1,640,000円と認められるから、これらの合計58,640,000円が譲渡収入金額と認定される。
本件土地について、賃貸借契約時に受領した金員は、借地権設定の対価ではなく、敷金であり、譲渡の和解時に土地の対価の一部に充当されたものであると認定した事例
裁決事例集 第48集 76頁
要旨
請求人は、P地裁において、本件土地を8、000万円でGに譲渡する平成2年12月18日付の和解が成立したが、受領した金額は、本件土地を昭和53年にGに賃貸したときに借地権の対価として受け取った3,000万円を差し引いた5,000万円であるから、本件土地の譲渡収入金額は8,000万円から3,000万円を控除した5,000万円であると主張するが、[1]昭和53年に作成された本件土地の賃貸借の覚書には敷金3,000万円を支払い、後日の本件土地の売買代金に充当する旨記載されており、[2]Gが所有している領収書には敷金である旨記載されており、[3]これが権利金であることを示す証拠書類がないところから、昭和53年に受領した3,000万円は借地権の設定の対価としての権利金とは認められず、敷金であったと認められるので、本件土地の譲渡収入金額は8,000万円である。
要旨
請求人は、本件不動産はHに譲渡したものであり、Hが所有権移転登記上の譲受人であるK株式会社に譲渡したものであると主張するが、[1]請求人が売却したと主張するHは所在が不明であること、[2]K株式会社の担当者は、本件不動産の売買には請求人が立ち会っており、Hを知らないと申述していること、[3]K株式会社は、本件不動産の取得代金を小切手で支払っており、当該小切手を現金化したのは、裏書人名、現金の使途及び預金等からみて請求人であると認められることから、本件不動産は請求人から直接K株式会社に譲渡されたものと認められる。
したがって、K株式会社の支払総額に基づき本件不動産の譲渡価額を認定すべきである。
喫茶店を経営していた土地建物の譲渡時に喫茶店の営業権等の売買も行われたとの請求人の主張に対し、営業権等は売買されていなかったと認定し、譲渡価額全額が土地建物の対価であるとした事例
裁決事例集 第49集 123頁
要旨
請求人は、本件土地建物の所在地域においては、飲食店等を譲渡する場合、その土地建物のほかに営業権の存在を認め、付随して譲渡する慣習があるとし、本件土地建物は、いわゆる「居抜き」と呼ばれるそのままの状態で譲渡したもので、売買当事者は請求人の喫茶店の営業に営業権を認めて、営業権の対価を含めて売買をしたとし、本件土地建物は180,000,000円、営業権は50,000,000円、什器備品等は20,000,000円で売買したものであると主張する。
しかしながら、売買価額が180,000,000円と記載された契約書(甲契約書)と同じく250,000,000円と記載された契約書(乙契約書)があるところ、次により、乙契約書に記載された内容が真正の契約と判断され、同契約書に記載された250,000,000円は、その全体が本件土地建物の譲渡の対価と推認される。
- 譲渡代金の総額が250,000,000円であるところ、甲契約書と営業権50,000,000円の領収書の金額を合計しても230,000,000円であるのに対し、乙契約書の金額は250,000,000円であること。
- 乙契約書には、売買物件として本件土地建物のみが表示されていること。
- 乙契約書が真正と異なるのであれば、仮に作り替えるという約束があったとしても、請求人が同契約書に署名押印することは不自然であること等。
譲渡の対価として代替地及び建物の交付の要求に対し、譲受人は代替地を購入して建物を建築して渡していることから、譲渡収入の金額は、代替地と建物建築価額の合計額になるとした事例
裁決事例集 第49集 202頁
要旨
請求人は、本件譲渡土地の収入金額は、M社に譲渡した際の売買契約書に記載した263,000,000円であり、この価額は不動産鑑定評価額271,841,000円に照らしおおむね妥当であるとし、また、代替資産の取得価額263,000,000円は、本件不動産鑑定評価額302,470,000円及び建物の建築価額97,349,000円の合計額399,810,000円に比べ開差はあるが、これは、取引上の駆け引きに請求人が秀でていたことによるものであり、正当な取引額というべきであると主張する。
しかし、請求人は、本件譲渡において、代替地の取得を希望したが、代替地を自分で直接購入することはせず、また、交渉の過程で代替地の面積が本件譲渡土地の面積より不足する分を別途建物を建築して引き渡すことを条件とし、さらに、金銭の負担を一切しないで本件代替資産を取得しており、このことは、本件譲渡土地の譲渡の対価として本件代替資産を取得したことにほかならない。
本件代替地の価額は、M社がB社から取得した価額455,300,000円とみるのが相当であり、本件建物の価額は設計料と建築費用の97,340,000円であるから、本件譲渡土地の譲渡収入金額は、この合計額の552,640,000円となる。
要旨
請求人は、本件土地を昭和62年10月8日Fに9,935万円で譲渡したにもかかわらず原処分庁は、請求人が同月31日G社に17,130万円で譲渡したとして収入金額を過大に認定しているので、本件更正処分及び重加算税の賦課決定処分は違法である旨主張する。
しかしながら、原処分関係資料等及び本件土地取引に関与した関係者の答述によれば、次の事実が認められる。
- 昭和62年10月8日の売買契約書に記載されている本件土地の地積は、同月10日に実測した面積であり、また、Fは、本件土地に係る短期譲渡所得の申告をしているものの、ごく一部しか納税しておらず、行方不明であること。
- [1]売主側の仲介業者であるLは、本件土地の隣接地が坪当たり1,100万円で売れたので売却を勧め、請求人の夫であるJとG社側の仲介業者であるEの間に入り4~5回交渉の上、坪当たり1,000万円と決めた。[2]Eは、Lからの依頼によりG社が坪当たり1,000万円で本件土地を購入する旨の売買契約を昭和62年10月10日W銀行の応接室で締結し、G社の代表者○○から受領した小切手8,265万円と現金8,865万円をKに渡した。[3]売買契約に立ち会った銀行員であるAは、昭和62年9月下旬にJから坪当たり1,000万円で売却するので、根抵当権の解除と売買契約時の立会いの依頼があり、立ち会った際に勘定した現金は1~2千万円程度の少額ではなく、小切手は預金、現金はJが持ち帰った旨答述していること。
以上の事実によれば、請求人は、Fを本件土地の買主として介在させ、更に、Fを売主とする虚偽の売買契約書を作成したのであるから、請求人がG社に本件土地を17,130万円で譲渡したと認めるのが相当であるので、本件更正処分等及び重加算税の賦課決定処分は正当である。
本件土地の譲渡収入金額は126,160千円であり、また、G社と本件土地の売買契約の事実がないので、当該契約解除に伴う違約金の支払いがないと認定した事例
裁決事例集 第50集 56頁
要旨
- 請求人は、F社から受領した123,372千円のうち、20,000千円はG社との売買契約の解除に伴う違約金であって、本件土地の譲渡収入金額ではない旨主張するが、[1]請求人とF社との間で作成された本件土地の売買価額を126,160千円とする契約書が存在すること、[2][1]の契約書は、請求人が内容を確認した上で署名・押印したものである旨答述していること、[3]請求人は、F社から123,372千円を受領したことを自認していること、[4]G社は、請求人から本件土地を購入したことも、違約金を受領したこともない旨答述していることから、本件土地の譲渡収入金額は126,160千円であり、また、G社と本件土地の売買契約の解除に伴う違約金の支払事実がないと認定して、分離短期譲渡所得金額を24,183千円とした本件更正処分は適法である。
- 原処分庁は、請求人が不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した借入金の支払利子のうち、平成2年4月に購入したP市S町所在の貸家(本件貸家)の使用開始までの期間の支払利子は、必要経費に算入できない旨主張するが、[1]請求人は、昭和62年頃から不動産賃貸業務を行っていること、[2]本件貸家の取得も不動産賃貸業務の遂行上行われていること、[3]借入金1億円は、本件貸家の取得のためと認められるので、本件貸家の使用開始までの支払利子5,630千円は、不動産所得の必要経費に算入するのが相当であり、不動産所得の金額は△5,766千円となる。
- 以上の結果、請求人の総所得金額は△1,504千円(事業所得4,262千円、不動産所得△5,766千円)となるから、課税短期譲渡所得金額は22,679千円となり、この金額は、本件更正処分額を下回るので、本件更正処分の一部を取り消すべきである。
要旨
原処分庁は、請求人が譲受人から売買代金とされる4,500万円を受領していることなどから、本件物件の譲渡価額が4,500万円であるとし、一方、請求人は当該金額の中には、過去の譲受人及び同人の父に対する貸付金の一部の返済金(500万円)が含まれている旨主張するので、当審判所が、本件物件が譲渡されるに至った経緯等を調査したところによれば、請求人が主張するとおり、当該金額の中には、過去の金銭貸借等の精算部分が含まれていると解釈せざるを得ないことから、本件物件の譲渡価額は、4,000万円であるとするのが相当であって、4,500万円であるとした原処分は、その全部を取り消すのが相当である。
本件土地の売買に際し、請求人は確定申告した売買代金以外にも金銭を受領した事実があるとしてなされた更正処分について、その事実を認めるに足りる証拠はないとして、その全部を取り消した事例
裁決事例集 第54集 180頁
要旨
原処分庁は、本件土地の売買に関する契約書として、売買価額を25,113,000円とする契約書(以下「甲契約書」という。)、売買価額を45,180,000円とする契約書(以下「乙契約書」という。)及び売買価額を60,240,000円とする契約書の3通が存在するが、本件土地の買受人の代理人の答述及び売買代金の支払等が記録されたメモ等の内容から、本件土地の売買価額は乙契約書に基づく45,180,000円と認めるのが相当である旨主張する。
しかしながら、次の事実等を照らし合わせると、乙契約書が真に本件土地の売買を表すものと認定することはできない。
- 乙契約書は、作成時期が明らかでない上、仲介手数料は異なった金額が二段書きされているなど不自然な箇所がある。
- 本件土地の買受人の代理人の答述等は、その時々により内容が異なっており信用ができず、また、提出されたメモ等の記載内容も真実のものか疑わしいと言わざるを得ない。
- 本件土地の売買代金について検証できる部分は、25,113,000円だけであり、現金で支払ったとされる20,067,000円については証拠がない。
以上から、請求人が本件土地の売買に際し、甲契約書記載の売買代金以外の金銭を受領した事実は認められず、また、ほかにもその受領の事実を認めるに足りる証拠はないので、本件土地の譲渡価額は、請求人が確定申告した25,113,000円であると認められる。
よって、請求人の平成2年分の分離短期譲渡所得の金額は、申告に係る分離短期譲渡所得の金額と同額であるから、本件更正処分はその全部を取り消すべきである。
土地建物の譲渡に際し、架空の中間譲渡人を介在させて譲渡収入金額の圧縮を計ったとして、最終買受人の購入価額を譲渡収入金額と認定した原処分を相当と認めた事例
裁決事例集 第55集 108頁
要旨
請求人は、本件土地建物を14,000,000円でG社に譲渡したものであり、さらに、G社がSに33,000,000円で譲渡したものである旨主張するが、[1]G社に譲渡したとする売買契約書は、後日、契約日付をさかのぼって作成されたものと認められること、[2]請求人がSから33,000,000円を受領した事実は明らかであり、その受領した金銭の全額を新たに取得した土地建物の取得資金に充てていることが認められることから、請求人は、G社を本件土地建物の中間譲渡人として介在させて、実体のない取引を仮装したものであり、実質は請求人が本件土地建物を33,000,000円でSに譲渡したものと認められる。
要旨
請求人は、土地の譲渡に際して買受人から収受した、売却後の期間に対応する未経過固定資産税等相当額について、固定資産税等が期間コストの性質を有することを前提に、収受した金員は、実質的には立替金の清算であり、担税力を有するものではなく、このことは、未経過固定資産税等相当額について不当利得返還請求権が発生することからも裏付けられるとして、譲渡所得の総収入金額に算入すべきでない旨主張する。
しかしながら、固定資産税等は、賦課期日である毎年1月1日現在において、固定資産台帳に所有者として登録されている者に対して課されるものであり、賦課期日後に所有者の異動が生じたからといって、課税関係に変動が生じるものではないから、賦課期日後に当該資産の所有者となった者は、固定資産税等の納税義務を負担するものではなく、また、譲渡人は、譲受人に対して未経過固定資産税等の求償権を取得するものでもない。そうすると、未経過固定資産税等相当名目での金員の授受は、当事者間の契約によって初めて生じる債権債務関係に基づいてなされるものであり、その性質は売買条件の一つにほかならず立替金の清算とはいい得ない。
また、当該資産の所有関係の変動が当事者間の契約に基づいて生じた場合に、固定資産税等名目の金員の授受について、何らの取決めもなされないのであれば、当事者の意思解釈としては、そのような名目での金銭のやり取りはしない趣旨であることが通常であると思われるから、そのような場合に、当事者の合理的意思解釈に反して、不当利得返還請求権が発生する余地はない一方、固定資産税等名目の金員の授受を行うとの取決めがなされるのであれば、その授受は、まさに契約に基づいて行われるものであるから、固定資産税等名目で譲渡の際に授受された金員の性質が不当利得返還請求権の性質を有することもありえない。
要旨
資産の譲渡とは、有償無償を問わず資産を移転させる一切の行為をいうものであり、売買のほか交換や代物弁済などによる資産の移転が含まれると解されるから、資産の交換は、譲渡所得の課税の対象となる。
資産の交換の場合、交換により取得した資産の額、すなわち交換に係る対価の額と交換により譲渡した資産の取得の時の価額との差額が、当該譲渡資産を所有していた間に生じた値上がり益となるから、当該譲渡資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会にその値上がり益について譲渡所得課税が行われるものであって、交換に係る対価が金銭であるかそれ以外のものであるかによってその結論が異なるものではない。
本件土地改良区の換地設計基準により土地評価処理要領に定める本件評定価格は、近傍類似の取引価格及び地域における農業収益価格を調査・検討し、農家への意向調査などをした上で算定されており、さらに、土地改良区によって一筆ごとに現地確認などの調査をした上で各土地の等位格付が定められたものであることが認められるから、その価格算定要素及び土地の個別事情が考慮された客観的かつ具体的なものということができる。
したがって、本件交換に係る譲渡所得の金額の計算上、総収入金額に算入すべき金額は、本件評定価格を基に算定するのが合理的である。
外国市場で売却した株式代金の売却約定時の邦貨換算は同日の対顧客電信買相場(TTBレート)により、代金決済時の邦貨換算は先物為替予約レートによるのが相当であるとした事例
裁決事例集 第65集 206頁
要旨
L証券が本件株式を外国証券会社に保護預かりしていないこと等から判断すると、L証券は本件株式の売却について委託の取次ぎ、委託の媒介及び代理を行ったとは認められない。同証券は本件株式に係る売却代金の受渡日の為替予約と売却代金の国内受入れから請求人の銀行口座への振込み並びに源泉分離課税の手続及び実行の国内事務を行っていたに過ぎない。
したがって、本件株式の売却に係る譲渡所得については、源泉分離課税の適用はできない。
外貨で表示されている上場株式等の譲渡の対価の額を邦貨換算するには、外貨の所有者にとってその外貨によって取得しえる邦貨の額であるとするのが妥当であるから、売却約定日時点におけるTTBレートによるのが相当である。一方、代金決済においては、請求人は実際に先物為替予約レートによって換金し、邦貨を得ているのであるから当該レートにより換算するのが相当である。
要旨
代償分割債務を履行するために資産を無償で交付した場合における譲渡所得の収入すべき金額は、その代償分割の目的となる資産を交付した時におけるその資産の価額によると解されるところ、その場合の価額は、その交付の時における客観的な交換価値、すなわち時価をいうものと解することが相当である。
請求人は、地価の下落を理由として修正した路線価を基に、本件土地の管理状況及び他の相続人への金銭債務の支払額を考慮して本件土地の価額を算定しているが、その算定方法は客観的な時価を求めるにおいて合理的な根拠を欠くものである。また、原処分庁が採用した公示地及び基準地は、その用途地域、建ぺい率及び容積率は本件土地と異なっていることが認められるから、本件土地の価額を求めるための基礎としては合理性を欠くものである。
よって、請求人及び原処分庁の主張する価額はいずれも時価であるということはできない。
そこで、当審判所が、取引内容が明確で、かつ、資料の正確性が確保されている3取引事例を選定し、これに相当と認められる不動産鑑定評価基準及び土地価格比準表等を参考として、不動産鑑定評価における取引事例比較法と同様の手法により価格を試算し、これらを平均した金額は本件土地の譲渡時における価額と認められるところ、当該価額を基に本件譲渡所得の金額を計算すると、本件更正処分の額を上回るので、本件更正処分は適法である。
未経過固定資産税等相当額は、譲渡所得の金額の計算上、総収入金額に算入されるとした事例( 令和3年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、 令和3年1月1日から令和3年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・ 棄却)
裁決事例集 第134集
ポイント
本事例は、不動産の譲渡に際して買主から売主に支払われた未経過固定資産税等相当額について、譲渡所得の課税の趣旨及び固定資産税等の納税義務者の規定内容から検討し、譲渡所得の金額の計算上、総収入金額に算入されるとしたものである。
要旨
請求人は、請求人が譲渡した土地建物(本件土地建物)に課された固定資産税及び都市計画税(固定資産税等)のうち本件土地建物の引渡日からその年の12月31日までの期間に対応する固定資産税等に相当する額(本件未経過固定資産税等相当額)は、売主である請求人に納税義務はなく、本来買主が負担すべきものを請求人が立て替えているにすぎないものであることなどから、譲渡所得の金額の計算上、総収入金額には算入されない旨主張する。
しかしながら、譲渡所得に対する課税の趣旨からすると、資産の譲渡の対価として収入すべき金額については、その名目いかんにかかわらず、譲渡所得の金額の計算上、総収入金額に算入されるべきであると解するのが相当である。また、固定資産税等は、その賦課期日である毎年1月1日現在における固定資産の所有者に対して課されるものであって、賦課期日後に当該固定資産の所有者に異動が生じたとしても、新たな所有者が当該固定資産のその年の固定資産税等の納税義務を負担するものではないから、本件土地建物の売買契約における固定資産税等の負担及び清算に関する定めは、新たな債権債務関係を発生させる合意内容の一つというべきである。したがって、当該合意に基づいて買主から請求人に支払われた本件未経過固定資産税等相当額は、本件土地建物の譲渡の対価の一部であると認められることから、請求人の譲渡所得の金額の計算上、総収入金額に算入されることとなる。
参照条文等
参考判決・裁決
東京高裁平成28年3月10日判決(訟月63巻1号70頁) 平成14年8月29日裁決(裁決事例集No.64)
【 税務法規集に掲載する法令等の情報に関する注意事項 】
- 本サービスは、デジタル庁が管理するe-Gov法令検索のデータ、国税庁がホームページを通じて提供する通達等の情報および国税不服審判所の公表裁決事例・裁決要旨を利用しています。
- 法律の専門家が分類・整理した情報を元に、プログラムで自動的に法令等を解析し、関連する情報を統合的に閲覧できるように再編集していますが法令等の内容については、明白な誤りや文字種の統一などの形式的な点を除き、変更しておりません。
- 各法令等の施行日等の情報は法令等の名称の横にある マークのボタンからご覧いただけます。また、当該法令の元データにもその情報表示部分からアクセスすることができます。
- 本サービスの提供者は、デジタル庁および国税庁とは関係がなく、またこれらの機関を代表するものでもありません。
- 本サービスの提供者は、表示される情報に誤りがないように努めていますが、利用者による本サービスの利用に関する結果に対して一切の責任を負いません。