裁決事例 無申告加算税
要旨
受遺者の一人が遺贈の一部を放棄したことによって、相続人たる請求人が相続財産を取得し、相続税の申告書を提出した場合には、その申告書に記載された相続税の課税価格のうち、受遺者が遺贈の一部を放棄したことによって初めて取得したと認められる部分については、相続税法第30条に規定する期限後申告書の性格を有しているものと認めるのが相当であり、請求人には当該部分を申告期限内に申告すべき義務はなかったというべきであるから、期限内申告書の提出がなかったことについて国税通則法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由があると認められる場合に該当する。
要旨
外部から認識することのできる面接調査等が行われておらず、申告案内書及び申告書用紙の送付を受けたにとどまる請求人の期限後申告書の提出は、「調査があった」ことにより決定があることを予知してなされたものであるとすることはできない。
要旨
請求人は、無申告加算税の賦課決定に当たって国税通則法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由に該当するかどうかの調査が行われていないと主張するが、同項ただし書の規定は、期限内に申告書の提出がなかったにもかかわらず無申告加算税を課さない例外的規定であるから、無申告加算税の賦課決定に当たって正当な理由の存否の調査は要しないと解される。
要旨
請求人が他の相続人との間で共有持分確認請求訴訟の維持に追われていたために申告書の提出が期限内にできなかったこと及び原処分庁が申告期限までの間に申告手続についての連絡をしなかったことは、国税通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由がある場合」には当たらない。
過去5年以内に国税通則法第66条第6項の適用を受けていることを知らなかったとしても、同項に規定する「期限内申告書を提出する意思があつたと認められる場合」には該当しないとした事例
裁決事例集 第79集
要旨
請求人は、平成18年分の所得税の確定申告書の提出について国税通則法第66条第6項の規定が適用され、無申告加算税が課されなかったことを知らなかったから、平成20年分の所得税の確定申告書の提出について、「期限内申告書を提出する意思があつたと認められる場合」に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人は、平成20年分の所得税の確定申告書が提出された日(平成21年3月18日)の前日から起算して5年前の日(平成16年3月18日)までの間において、平成18年分の所得税の確定申告書に係る所得税について国税通則法第66条第6項の規定の適用を受けているから、平成20年分の所得税の確定申告書の提出について国税通則法第66条第6項に規定する「期限内申告書を提出する意思があつたと認められる場合」には該当せず、同項の規定は適用されない。
また、「期限内申告書を提出する意思があつたと認められる場合」に該当するかどうかは、国税通則法施行令第27条の2第1項の各要件を満たすかどうかによって決せられ、請求人が平成18年分の所得税の確定申告書の提出について国税通則法第66条第6項の規定が適用されていた事実を知っていたか否かはその判断を左右するものではない。
参照条文等
1月4日は国税通則法第10条第2項に規定する「その他一般の休日」に該当しないとして、審査請求人の年始の営業開始日である平成12年1月5日(水曜日)に提出された消費税及び地方消費税の確定申告書は期限後申告に該当するとしてなされた無申告加算税の賦課決定処分を適法と認定した事例
裁決事例集 第62集 16頁
要旨
請求人は、請求人をはじめとする出版業界では、年始の1月4日までを休日としており、1月4日は一般国民が慣行上休日としている一般の休日に該当するので、平成12年1月5日に提出した本件確定申告書は期限内申告である旨主張する。
しかしながら、一般の休日とは、日曜日、国民の祝日以外の全国的な休日をいい、1月2日及び3日は、この一般の休日に該当すると解されるが、1月4日については、年始の休日としている企業等が見受けられるとしても、行政機関及び金融機関等においては必ずしも休日とはされていないのであり、一般国民の慣行上の休日には当たらないと解されるので、国税通則法第10条第2項に規定する一般の休日には該当しないというべきである。
したがって、本件確定申告書の法定申告期限は、消費税法第45条第1項及び通則法第10条第2項の規定により、平成12年1月4日であるから、同月5日に提出された本件確定申告書は期限後申告書に該当する。
原処分庁が法定申告期限内に地価税の申告書が提出されていないことを内部資料によって確認した上、請求人の関与税理士事務所員に対し電話で問い合わせた直後に地価税申告書が提出された場合は、国税通則法第66条第3項にいう「調査があったことにより決定があるべきことを予知してされたものではないとき」に該当せず、同条第1項に規定する「納付すべき税額」とは法定申告期限後に提出された申告書に記載された納付すべき税額を指し、税の納付とは直接関係がなく、無申告加算税の基礎となる税額の計算において法定申告期限内に納付された税額を控除すべきではないとした事例
裁決事例集 第54集 72頁
要旨
国税通則法第66条第3項にいう「調査」とは、実地調査等の納税者に対する直接的かつ具体的な、いわゆる外部調査はもちろんのこと、申告指導のような納税者が課税庁における検討を認識することができる程度の手続も調査の範囲に含まれ、「決定があるべきことを予知してされたものではないとき」に当たるためには、課税庁の調査を納税者が認識できる以前に自発的な意思に基づいて期限後申告書を提出した場合をいうものと解するのが相当である。
請求人は、請求人関与税理士が法定申告期限前に作成した平成7年分の地価税の申告書について、内容を了解した上で記名押印して本件地価税申告書の作成を了し、提出方を請求人関与税理士に依頼して交付しており、当該申告書に係る地価税額の全額を法定納期限内に納付しているものの、原処分庁は、請求人の同年分の地価税の課税価格を請求人に係る資料等から算定した結果、申告義務があると見込まれたことから法定申告期限前に地価税の申告書等の用紙を請求人に送付し、法定申告期限内に同年分の地価税の申告書が提出されていないことを内部資料によって確認した上、請求人関与税理士事務所員に対し電話で同年分の地価税について申告書の作成を請求人から委任されているか、また地価税の申告書を提出しているか問い合わせを行っており、本件地価税申告書が提出されたのは、原処分庁から請求人関与税理士が当該問い合わせを受けた直後であることからすると、「調査があったことにより決定があるべきことを予知してされたものではないとき」に該当せず、「予知してされた」と認められる。
国税通則法第66条第1項によれば、期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があると認められる場合以外は、無申告加算税が賦課されることとされており、無申告加算税は納税申告書を法定申告期限までに提出しなかった者に対する行政制裁であるから、同条の規定は納付すべき税額が法定申告期限内に納付されていたとしてもその適用が左右されるものではなく、同条の規定する「納付すべき税額」とは、法定申告期限後に提出された申告書に記載された納付すべき税額を指し、税の納付とは直接関係がなく、無申告加算税の基礎となる税額の計算において法定申告期限内に納付された税額を控除すべきではないと解するのが相当である。
要旨
請求人は、法人税について法人税法第75条の2の申告書提出期限の延長の特例を受けており、消費税についても消費税法第45条による提出期限までに決算が確定しないから、[1]この状況で確定申告書を提出すると、決算確定後、修正申告又は更正の請求等事務負担が増加することになり、また、[2]法定申告期限内に納付税額を納付しているから、期限内申告できないことについて無申告加算税を賦課しないこととする正当な理由が存すると主張する。
しかし、消費税の納税義務は、課税資産の譲渡等の時に成立しており、継続して事業を行っている事業者は、その課税期間を通じて各日ごとに取引があり、その取引ごとに消費税相当額を受領し、消費税を転嫁しているのであるから、確定した決算に基づくことは、消費税の確定申告書を提出する上での要件となるものではなく、消費税法にも提出期限の延長を認める旨の規定は設けられていない。また、法人税の申告期限の延長の適用の有無が消費税の確定申告期限に影響を及ぼすものではない。
したがって、決算が確定していないことは、真にやむを得ない理由に該当せず、国税通則法第66条“無申告加算税”に規定する期限内申告書の提出がなかったことについて、正当な理由があると認められる場合には該当しない。
また、請求人主張の[1]、[2]の理由は、いずれも、真にやむを得ない理由に該当しない。
原処分庁が、請求人自身の面接を経ずに無申告加算税の賦課決定処分をした事案について、国税通則法第66条第5項の「調査」は、机上調査も含む広い概念であることを明らかにした事例
裁決事例集 第96集
ポイント
本事例は、国税通則法第66条《無申告加算税》第5項に規定する「その提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について…決定があるべきことを予知してされたものでないとき」の「調査」の意義について明らかにしたものである。
要旨
請求人は、国税通則法(通則法)第66条《無申告加算税》第5項に規定する「調査」とは、外部から認識することができる面接調査、すなわち質問検査権の行使をすることであり、部内資料の収集のような手続は「調査」には当たらない旨、また、この点をおくとしても、原処分庁の担当職員(本件担当者)は、請求人の代わりに税務署を訪れた税理士(本件税理士)に税務代理権限証書を提出させていないので、面接時には、本件税理士が請求人に代理して本件担当者の質問調査権の行使を受けたことにならないから、請求人に対する「調査」があったとは認められない旨主張する。
しかしながら、通則法第66条第5項に規定する「調査」とは、課税庁が行う課税標準等又は税額等を認定するに至る一連の判断過程の一切を意味し、課税庁の証拠書類の収集、証拠の評価あるいは経験則を通じての課税要件事実の認定、租税法その他の法令の解釈適用を経て決定に至るまでの思考、判断を含む包括的な概念であり、税務調査全般を指すものと解されるところ、①原処分庁の職員は、署内資料の検討等により、請求人の贈与税の申告が必要であると見込まれると判断していること、②本件担当者は、請求人の贈与税の申告について、本件税理士に面談し、資料の交付や説明をしていることなどが認められるから、これら一連の行為は、課税庁が行う課税標準等又は税額等を認定するに至る一連の判断過程であると認められる。また、面接時には、本件税理士が請求人に代理して本件担当者の質問調査権の行使を受けたことにならないという点については、請求人の本件税理士への連絡、本件税理士と本件担当者の面接の状況等からすると、少なくとも、本件税理士が、請求人に係る贈与税の申告の要否についての税務署での面接において、請求人に代理又は代行して応答し、面接の内容を請求人に報告するという内容の委任契約が成立していたものと認められる。以上のことから、本件においては、通則法第66条第5項に規定する「調査」があったと認められる。
参照条文等
参考判決・裁決
東京高裁平成17年4月21日判決(訟月52巻4号1269頁)
要旨
請求人は、[1]本件確定申告書が期限後申告となったのは、税務職員の誤指導によるものであるから、国税通則法第66条第1項ただし書の「正当な理由」に該当する、[2]期限後申告が誤指導によるものであり、本件消費税等の税額を法定申告期限内に納付していることを考慮すれば、無申告加算税を課することは、請求人に酷すぎるものであり、同項ただし書の「正当な理由」に該当する、[3]本件消費税等の税額を法定申告期限内に納付しているのであるから、租税債権として確定することが可能であり、無申告加算税を賦課することは申告の適正を担保し申告納税制度を確保するために行政上の制裁として設けられた制度の趣旨からも不当である旨主張する。
しかしながら、請求人が主張するような誤指導の客観的な事実を認めることができないこと、期限後申告となったのは、請求人が税務申告を委託した会計事務所職員が消費税について申告期限延長制度がないことを知らず、請求人の法人税の申告期限の延長が承認されていることから消費税等についても申告期限延長制度があるものと誤認していたためであり、消費税法の不知又は誤認であることから、「正当な理由」に該当しない。
また、申告納税方式においては、確定申告書の提出が納税義務を確定させるために重要な意義を有することから、納税者の法定申告期限内の申告書提出義務の不履行に対して、同項の規定により、行政上の措置として、一律に無申告加算税が賦課されるものであり、当該申告書に係る税額が法定申告期限内に納付されたか否かにより、同項の規定の適用が左右されるものではない。
納税申告書をその法定申告期限に郵便ポストに投函して郵送したが、郵便の取り集め時間後であったため納税申告書の通信日付が翌日となり、期限後申告となった場合は、国税通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由」がないとした事例
裁決事例集 第53集 88頁
要旨
本件納税申告書は、平成8年3月29日には作成されており、法定申告期限内に税務署に提出できる状況下にあったにもかかわらず、[1]請求人の代表者から本件納税申告書を提出するよう指示を受けた使用人が、職務多忙のため提出することを失念していたこと、[2]請求人は、従来どおり、郵便局から書留扱いで郵送するべきところを失念し、本件ポストに表示されていた郵便物の取り集め時間の確認もしなかったこと、[3]郵便局における郵便物の平日の窓口引受時間は午後7時、速達便に限り同8時であること、[4]本件納税申告書を事務所から距離的に本件ポストと変わらない郵便局から郵送することに何の支障もなかったにもかかわらず、本件ポストに投函して郵送したこと等の状況から判断すると、本件納税申告書が期限後申告書となった事情は、請求人が、本件納税申告書を提出するに当たり当然払うべき注意義務を怠ったことによって生じたものであり、真にやむを得ない事情は認められず、国税通則法第66条(無申告加算税)第1項ただし書に規定する「正当な理由」があるとは認められない。
要旨
請求人は、原処分が違法である理由として、[1]本件各申告書をその法定申告期限内にA社に引き渡しているのであるから、本件各申告書は期限内申告書であること、[2]国税通則法第66条の規定の趣旨は、納税者に正しい税額の計算と期限内納税を行わせるためのものであるところ、請求人は本件各申告書に記載した納付すべき税額を法定期限内に完納していること、しかも、同条の規定自体が、納税額がある者だけに課されるなど不合理なものであり法改正されてしかるべきであること、を主張する。
しかしながら、納税者から納税申告書が提出された場合、いつの時点をもって提出日とするかについては、原則として申告書が税務官庁に到達した日(到達主義)と解されており、また、この到達主義の例外として、国税通則法第22条は、納税申告書が郵便又は信書便により提出された場合には、その通信日付印により表示された日に提出されたとみなす旨規定しているところ、本件各申告書の提出日については法定申告期限の翌日に原処分庁に到達していることが認められ、また、A社は信書便事業者ではないので信書便により提出された場合に該当しないことから、本件各申告書を法定申告期限内に提出したとする請求人の主張には理由がない。
次に、無申告加算税の規定は、納税申告書の提出が期限内にされなかった場合の行政上の制裁として設けられたものであるから、納税申告書に記載された納付すべき税額が法定納期限内に完納されたか否かということで、その適用が左右されるものではなく、この点に関する請求人の主張は採用できない。
なお、国税通則法第66条の規定は合理性がないもので法改正されてしかるべきものである旨の主張については、当審判所の権限外のことであり審理の限りでない。
期限後申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について決定があるべきことを予知してされたものでないとした事例( 平成23年分及び平成24年分の所得税に係る無申告加算税の各賦課決定処分、 平成25年分及び平成26年分の所得税及び復興特別所得税に係る無申告加算税の各賦課決定処分・ 全部取消し、 一部取消し)
裁決事例集 第108集
ポイント
本事例は、請求人が行った期限後申告書の提出は、調査の内容・進捗状況、それに関する請求人の認識、期限後申告に至る経緯、期限後申告と調査の内容との関連性の事情を総合考慮して判断した結果、国税通則法第66条《無申告加算税》第5項に規定する「決定があるべきことを予知してされたものでない」ことに該当するとしたものである。
要旨
原処分庁は、調査担当職員(本件調査担当職員)が、請求人の配偶者の所得税に係る調査(本件調査)において、請求人名義の不動産から生じる不動産所得が当該配偶者の所得として申告され、請求人が申告していない事実を把握し、請求人の所得税の課税標準等又は税額等を認定するために税理士(本件税理士)に質問を行ったのであるから、本件調査後の期限後申告書(本件期限後申告書)の提出は国税通則法第66条《無申告加算税》第5項(平成28年法律第15号による改正前のもの。)に規定する「決定があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当しない旨主張する。
しかしながら、「決定があるべきことを予知してされたものでない」ことは、調査の内容・進捗状況、それに関する納税者の認識、期限後申告に至る経緯、期限後申告と調査の内容との関連性の事情を総合考慮して判断すべきところ、請求人は、本件調査に応じた本件税理士を通じて請求人の所得税に係る調査を認識したものの、本件調査とは別の契機により不動産の名義どおりに申告をやり直したいとの申出を行い、期限後申告を行ったのであるから、本件期限後申告書の提出は「決定があるべきことを予知してされたものでない」ことに該当する。その結果、納付すべき税額に5%を乗じて計算した無申告加算税の額が5,000円未満となった年分は処分の全部を、その他の年分は上記5%相当額を超える部分につき処分の一部をそれぞれ取り消すことが相当である。
参照条文等
要旨
請求人は、本件相続税の法定申告期限の数か月前には、相続税の基礎控除額を超える財産を把握しており、しかも、本件相続財産のほぼ全容を知っていたのであるから、本件相続財産の内容を知ったのは法定申告期限の前日であったとの請求人の主張に理由がなく、請求人は相続財産の全容を把握していない以上、期限内申告書を提出できないと認識していたとも考えられるが、そうだとしても、請求人は法定申告期限の数か月前には、相続税の基礎控除額を超える財産を把握していたのであるから、少なくともこれらの財産を基に期限内申告書を提出することは十分可能であったといえるから、期限内申告書の提出がなされなかったことについて国税通則法第66条(無申告加算税)第1項ただし書に規定する「正当な理由」があるとはいえない。
このまま申告しなければやがて決定されるであろうとの認識の下で期限後申告書を提出したとは認められないとして、無申告加算税の賦課決定処分を取り消した事例(平成26年12月相続開始に係る相続税の無申告加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第110集
ポイント
本事例は、請求人が、相続税の申告及び納付を決意した後、原処分庁所属の職員との申告相談を経て期限後申告書を提出したものと認められるとして、無申告加算税の賦課決定処分の一部を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、原処分庁所属の職員(本件職員)は、請求人に対し、相続税に係る調査の事前通知をした上で当該調査を行う旨説明したほか、調査結果の内容の説明とともに期限後申告を勧奨しており、請求人は、調査があったことを認識し、期限後申告をしなければやがて決定されるであろうことを認識することができたものと認められるから、請求人が提出した期限後申告書(本件期限後申告書)は、国税通則法第66条《無申告加算税》第5項に規定する「決定があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当しない旨主張する。
しかしながら、請求人は、請求人の母と本件職員との間で行われた請求人の相続税に関する相談結果を契機として、相続税の申告及び納付を決意し、その後、本件職員との申告相談を経て本件期限後申告書を提出したものと認められるから、請求人が、このまま申告しなければやがて決定されるであろうとの認識の下で本件期限後申告書を提出したとは認められず、そもそも本件期限後申告書の提出に至るまで、相続税に関する調査を受けていたとの認識を有していたとも認められない。したがって、本件期限後申告書の提出は、同項に規定する「決定があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当する。
参照条文等
要旨
請求人は、ゆうメールにより提出した所得税の確定申告書(本件確定申告書)について、国税通則法第22条《郵送等に係る納税申告書等の提出時期》の規定が適用される旨主張する。
しかしながら、租税法が私法上の概念を特段の定義なく用いている場合には、私法上の概念と同じ意義に解することが、租税法律主義や法的安定性の確保に資するところ、国税通則法第22条は、「郵便」及び「郵便物」と規定し、同法上にその定義規定を置いておらず、郵便法上の「郵便」及び「郵便物」と別意に解すべきことが国税通則法の明文又はその趣旨から明らかであるなどの事情も認められない。かえって、国税通則法第22条は、郵便及び信書便が郵便法又は信書便法の規定に従って配達されるため紛失する可能性が低いことなどの事情を考慮し、また、納税者と関係税務官庁との地理的間隔の差異に基づく不公平を是正する必要性も勘案して、特に郵便又は信書便により提出された納税申告書等については、民法上の到達主義の原則を緩和するものであることなどに照らせば、国税通則法第22条の「郵便」及び「郵便物」は、郵便法上の「郵便」及び「郵便物」と同じ意義に解するのが相当である。そして、郵便法第68条《郵便約款》に基づき定められた内国郵便約款及びゆうメールについて定めるポスパケット約款によれば、ゆうメールによる役務の提供は、荷物の運送であって、郵便法上の「郵便」には該当しない。したがって、ゆうメールによる本件確定申告書の提出について、国税通則法第22条の規定は適用されない。
要旨
請求人は、消費税及び地方消費税の確定申告書を法定申告期限内に提出しなかった事情として、[1]原処分庁が申告書用紙を送付せず、申告の必要性を知らせなかった、[2]課税事業者の届出書は原処分庁の指導に従っただけであり、その内容を理解していなかった、[3]前年の課税売上高3,000万円以下で無税であったので、本年の課税売上高も3,000万円以下であったため申告の必要がないと考えていたと主張する。
しかしながら、事業者は、消費税法第45条に規定するとおり消費税及び地方消費税については税務署長からの通知、案内等の有無に関わりなく、税額等を記載した申告書を法定申告期限内に提出しなければならないものであり、申告書用紙の送付がないことをもって法定申告期限内に申告書を提出できなかったことの正当な理由にはならないし、課税事業者の届出書の内容を理解せず原処分庁の指導に従って提出したとの主張も正当な理由にはならない。
また、期限後申告書は原処分庁が提出をしょうようした後に提出されたものであるから、「決定があるべきことを予知してされたものではないとき」にも該当しない。
外国子会社合算税制に係る所得が無申告であった者に対する無申告加算税の賦課決定処分において、内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律第6条《国外財産に係る過少申告加算税又は無申告加算税の特例》第2項を適用したことを適法とした事例
裁決事例集 第122集
ポイント
本事例は、請求人が、外国子会社合算税制に係る所得の基因となる外国子会社の株式を記載した国外財産調書を提出していなかった場合において、原処分庁が、当該所得に係る無申告加算税の賦課決定処分を行う際に内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律第6条第2項の加重措置を適用したことは適法と判断したものである。
要旨
請求人は、平成27年12月31日、平成28年12月31日及び平成29年12月31日において、その価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有していたと認められるから、平成27年分から平成29年分までにつき、内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(国送法)第5条《国外財産調書の提出》第1項本文に規定する国外財産調書の提出義務があったにもかかわらず、これらをいずれも法定提出期限内に提出しなかったと認められる。
したがって、上記各年分の無申告加算税の金額につき、国税通則法第66条《無申告加算税》並びに国送法第6条《国外財産に係る過少申告加算税又は無申告加算税の特例》第2項の規定に基づいて計算すると、いずれも原処分の各金額と同額となるから、本件の無申告加算税の各賦課決定処分は、いずれも適法である。
参照条文等
内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律第2条第7号、第5条第1項、第6条第1項、第2項、同法施行令第11条、同法施行規則第13条
要旨
請求人は、[1]消費税等の確定申告についても、法人税と同様に確定申告期限までに請求人の決算が確定しないし、法人税と消費税等の確定申告相互間には両輪若しくは一体の概念があることから、法人税の確定申告書の提出期限の延長が認められた以上、消費税等の確定申告書の提出期限も延長されるべきであり、[2]本件納付税額は、法定申告期限内に納付しており、国に何らの損害も与えていないし、[3]原処分庁は、請求人が法人税の確定申告書の提出期限延長に関する指導を受けた際、消費税等に関連した説明を何ら行っておらず、また、本件納付税額を納付した際においても、原処分庁は納付の事実をもって確定申告書との照合が可能であり、照合の結果、本件確定申告書がその時点で提出されていないのであるから、期限内に提出するよう指導すべきであったにもかかわらず、何らの指導も行っておらず、原処分は信義誠実の原則に反し、不当な処分である旨主張する。
しかし、[4]消費税の納税義務は、課税資産の譲渡等の時に成立しており、確定した決算に基づくことは、消費税等の確定申告の要件とはなっておらず、また、消費税法には、確定申告書の提出期限の延長を認める旨の規定も設けられていない。さらに、法人税法と消費税法とは別個の規定であるから、法人税の確定申告書の提出期限の延長適用の有無が、消費税等の確定申告書の提出期限に影響を及ぼすものでもない。
また、[5]申告納税方式を採用する国税においては、納税申告が納税義務を確定させる重要な意義を有することから、国税通則法第66条第1項の規定は、申告の適正を担保し申告納税制度を確保するために、納税義務者に課せられた税法上の義務の不履行に対する行政上の措置として無申告加算税を課すものであり、このことは、納付すべき税額が法定納期限内に納付されたことにより左右されるものではない。さらに、[6]請求人は、原処分庁が消費税等に関しては確定申告書の提出期限の延長はない等の適切な指導を行っておれば、本件確定申告書を法定申告期限内に提出しており、原処分を避けることができた旨主張するが、申告納税制度の下における確定申告は、本来、納税者自身の判断と責任においてなされるべきであることから、指導がなかったとしても原処分を違法とすることはできない。租税法規に適合する課税処分について法の一般原理である信義誠実の原則の法理の適用により課税処分を取り消すことができる場合があるとしても、租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては、信義誠実の原則の法理の適用については慎重でなければならず、信義誠実の原則に反するというには、租税法規の適用における納税者間の公平平等という要請を犠牲にしても、なお当該課税処分を免れさせて、納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合でなければならないと解される。
これを本件についてみると、請求人の主張をもって、上記した特別な事情が存するとは認められない。
したがって、原処分が信義誠実の原則に反し不当であるということはできない。
年の中途で死亡した被相続人の所得税の確定申告書を、相続人がその法定申告期限までに提出しなかったことについて、国税通則法第66条第1項に規定する「正当な理由」があるとは認められないとした事例
裁決事例集 第66集 40頁
要旨
請求人らは、所得税法第125条の規定により所得税の確定申告書を提出すべき被相続人が年の中途で死亡した場合の申告期限が相続開始を知った日の翌日から4か月以内であることを知らなかったことは税務官庁の広報不足によるものであることから、無申告加算税を賦課しない場合の「正当な理由」に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人らの主張は、税法の不知を理由とするものであるから、国税通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由」があると認められる場合には該当せず、また、申告は、本来、納税義務のある者が自らの判断と責任においてなすべきものであるから、無申告加算税を賦課しない場合の正当な理由があると認められるか否かが税務官庁の広報活動の有無により左右されるものではない。
そして、本件申告書が法定申告期限後に提出されるに至ったのは、相続人の一人が法定申告期限を誤解していたことによるものと推認されるから、「正当な理由」があると認められないことは明らかである。しかも、原処分庁には、確定申告の期限が掲載された各種の広報資料なども常備されており、請求人らにおいて申告等に疑問な点があれば,最寄りの税務官庁に問い合わせることもできたものである。
以上のことからすると、請求人らの主張する当該事情は、「正当な理由」があると認められる場合に該当しない。
請求人は、法定申告期限内に相続財産の把握に努めていれば、その全容を把握できたと認められるところ、そのために必要な調査を尽くしていないから、相続財産の額が基礎控除額を上回ると認識していなかったことについて「正当な理由があると認められる場合」に該当しないとして、無申告加算税の賦課決定処分が適法であるとした事例
裁決事例集 第67集 33頁
要旨
請求人は、本件相続税の申告書を法定申告期限までに提出できなかったのは、他の共同相続人が相続財産の内容を明らかにせず、遺産を調査する術がなかった事情によるものであるから、国税通則法第66条第1項ただし書きに規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当する旨主張する。
しかしながら、同項ただし書きに規定する「正当な理由があると認められる場合」とは、無申告加算税を課することが不当または酷と認められる特別な事情、例えば、災害、交通・通信の途絶等、納税者の責めに帰することができない外的事情によるなど、法定申告期限内の提出を不可能にするもので真にやむを得ない理由がある場合がこれに該当するものと解されている。
相続税法第27条第1項の規定に基づき適正な申告をするためには、相続財産の全容を正確に認識していることが前提となるが、その全容が把握できない場合においても、直ちに法定申告期限内に申告できなかったことにつき真にやむを得ない理由があるとはいえず、相当の努力を払って調査しても基礎控除額を上回る額の相続財産を把握することができなかったと認められる場合に初めて国税通則法第66条第1項ただし書きにいう「正当な理由があると認められる場合」に該当すると解するのが相当である。
本件において、請求人は、相続開始後の財産整理等を通して相続財産である預金や自宅マンション以外の不動産の存在を認識し得たとみるのが相当であり、また、法定申告期限内に相続財産の全容を解明する努力をしておらず、相続財産の額が基礎控除額を上回ると認識していなかったことについても、必要な調査を尽くさなかった結果であるというべきであるから、国税通則法第66条第1項ただし書きに規定する「正当な理由があると認められる場合」には該当しない。
期限内申告書の提出がなかったことについて、申告書を提出できないほどの病状等にあったとは認められず、国税通則法第66条第1項に規定する「正当な理由があると認められる場合」には該当しないと判断した事例
裁決事例集 第67集 46頁
要旨
請求人は、[1]退院後も意思能力、判断能力のない状態が続いていたので、相続の開始があったことを知ったのは被相続人死亡後3年余を経過した日であること、[2]相続税法第27条第1項に規定する「相続の開始があったことを知った日から10月以内」の期間には意思能力、判断能力が停止していた期間を控除すべきであること、[3]本件申告書を法定申告期限内に提出できなかったのは、意思能力、判断能力が停止していたためであり、国税通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当すること、[4]本件申告書は自主的に提出したものであるから、国税通則法第66条第3項の規定に該当すると主張する。
しかしながら、[1]請求人は、被相続人の死亡から1月以内までに、被相続人から遺贈を受けた不動産の移転登記手続を遺言執行者Eに自ら依頼していることから、それまでには、被相続人の死亡事実と自己が受遺者となったことを認知していたものと認められる。また、[2]請求人が手術後の経過や後遺症のため通院、加療していたことは認められるが、請求人は移転登記手続を依頼するに当たり普通どおりの受け答えができる状態であったとのEの答述や、法定申告期限までの間において請求人自ら預金取引を継続して行っていた事実によれば、請求人は法定申告期限までに本件申告書を提出できないほどの病状にあったとか、あるいは、同居中の長女Gや税理士等に申告を依頼するなどの意思表示すらできない状態にあったとも認められない。そして、他に法定申告期限までに本件申告書の提出を不可能にするような特段の事情も認められず、単に請求人の失念や税法の不知や誤解に基づき期限後申告となったものと認められる。よって、期限内申告書の提出がなかったことについて、正当な理由があると認められる場合には該当しない。
また、本件申告書は、調査担当職員による調査及び申告のしょうように基づき提出されたものであることは明らかであり、請求人自身がその調査を契機とせず、自発的に提出したものであるとは認められない。
被相続人の死亡を保険事故とする生命保険金の支払が確定していなかったため相続税の期限内申告書を提出しなかったことについて「正当な理由」があるとはいえないとした事例
裁決事例集 第71集 29頁
要旨
請求人は、本件相続税の法定申告期限において、本件各保険会社に対する保険金請求訴訟が係属中で支払が確定していなかった本件各生命保険金を相続財産として申告しなかったことは、国税通則法第66条第1項の「正当な理由」に当たる旨主張する。
しかしながら、同項にいう「正当な理由」とは、例えば災害、交通・通信の途絶など、期限内申告ができなかったことについて納税者の責めに帰すことができない外的事情など、無申告加算税を賦課することが不当又は酷と考えられる真にやむを得ない理由をいい、相続財産に属するとみなされる特定の財産を相続税の計算の基礎としないがゆえに期限内に申告をしなかった場合において、当該財産が相続財産に属するとみなされないか又は属するとみなされる可能性が小さいことを客観的に裏付けるに足りる事実を認識して期限内に申告書を提出しなかったことを納税者が主張立証したときは、「正当な理由」があると解すべきところ、[1]請求人は、被相続人の死亡により、本件各保険金請求権を取得していること、[2]請求人は、各保険会社に対し本件相続開始後まもなく生命保険金の支払請求をしていること、[3]本件各生命保険金と保険事故事由を同じくする3件の生命保険金は、被相続人死亡後まもなく支払われていること、[4]本件各保険会社は、被相続人の行為の公序良俗違反等を理由に本件各生命保険金の支払を拒絶したため、請求人は、同理由が抽象的で、確たる証拠を欠き推測の域を出ないものでしかないとして、本件各訴訟を提起していること、[5]本件各訴訟において、請求人の本件各生命保険金の請求を認容する判決が確定していることが認められ、これらの本件相続の発生から各訴訟の確定までの一連の推移を総合考慮すると、請求人が、本件において、本件各生命保険金が相続財産に属するとみなされないか又は属するとみなされる可能性が小さいことを客観的に裏付けるに足りる事実を認識して期限内申告書を提出しなかったとは認められず、請求人に「正当な理由」があったとはいえないといわざるを得ない。
消費税等の確定申告書を法定申告期限(平成18年1月4日)の8日前である平成17年12月27日に宅配便業者の宅配便を利用して発送したところ、同宅配物が平成18年1月5日に到達したことにつき、「正当理由が認められる場合」に該当するとの請求人の主張を排斥した事例
裁決事例集 第72集 33頁
要旨
無申告加算税は、申告納税方式を採用する国税において、納税者が自己の判断と責任においてすべき確定申告が納税義務を確定させる重要な意義を有することから、期限内申告書が提出されなかった場合に、適法にこれを提出した者とこれを怠った者との間に生じる不公平を是正することにより、申告納税制度の信用を維持し、もって適正な期限内申告の実現を図ることを目的としたものと解される。このような無申告加算税の目的からすれば、国税通則法第66条第1項の期限内申告書の提出がなかったことについて「正当な理由があると認められる場合」とは、無申告加算税を課すことが不当又は酷と認められる特別な事情がある場合をいうものと解するのが相当である。
これを本件についてみると、請求人が本件宅配物の配達を依頼した平成17年12月27日は、年末年始の時期であるから、宅配物については、交通事情や予期されない集配量の増加等の要因により通常期よりも配達期間を要するなど、集配業務の遅れや混乱といった不測の事態が生ずる可能性があるが、こうした事情はいずれも利用者にとって相当程度知られていることである。しかも、税務署等の官公庁が12月29日から翌年1月3日までの間閉庁となるため、受取者の押印又はサインが得られなければ持ち帰ることになっている宅配物については、この間、税務署に配達しようとしても受領されることがないため、結局宅配物による提出物は収受されないことになる。
それにもかかわらず、請求人は、本件確定申告書の重要性及びこれが法定申告期限である平成18年1月4日までに必着すべきものであることを十分認識しながら、本件宅配物をA社の担当者に依頼する際に、特に配達日の指定や配達予定日の確認といった、自ら容易にすることができる注意や配慮をせず、漫然とこれを配達依頼し、本件宅配物が請求人の予期に反し、同月5日に配達されたものであるから(仮に本件宅配物に配達日指定シールが貼付された経緯が、A社側の事情によるとしても、それは、請求人が配達日の指定や配達予定日の確認等を容易に行えるにもかかわらず、本件宅配物が確実に配達される手立てをとらなかったことによるものである。)、法定申告期限までに本件確定申告書の提出がなかったことにつき、上記特別の事情があったとは認められず、したがって、「正当な理由があると認められる場合」には該当しないというべきである。
請求人の平成17年分の所得税の確定申告につき期限後申告となったのは、請求人が平成18年3月9日から同月19日まで入院中であったためであり、「正当な理由」があるとの主張を排斥した事例
裁決事例集 第73集 56頁
要旨
国税通則法第66条第1項に規定する無申告加算税は、納税申告制度の秩序を維持するためには、納税者により期限内に適正な申告が自主的になされることが不可欠であることにかんがみて、申告書の提出が期限内になされなかった場合の行政上の措置として課されるものであるから、同項ただし書きの「正当な理由」とは、例えば、災害、交通・通信の途絶など、期限内に申告できなかったことについて納税者に責められる事由がなく、このような行政上の措置を課することが不当又は酷となるような真にやむを得ない事情をいうものと解するのが相当である。
これを本件についてみると、請求人が会計事務所に本件確定申告書の作成を依頼したのは平成18年2月ころであり、そして、入院の翌日である同年3月10日ころには、本件確定申告書ができあがっていたこと、請求人の入院は、突発的な事態によるものでなく、毎年定期的に受けていた術後検査を受けるためのものであり、実際にも入院中は、定期的に血液、肝機能等の身体全般の検査を受けるという状況にあったこと、入院期間は予め一週間ないし10日程度と見込まれていたもので、同月19日に退院していること、請求人は、本件確定申告書の作成を本件会計事務所に依頼していたことから、計算過程などについては確認することなく、納税額を確認したところで本件確定申告書に押印していること、請求人は、請求人が代表取締役を務めるC社の経理課長から、法定申告期限が平成18年3月15日であることを知らされた際、申告期限にはこだわらず、本件確定申告書を退院後に提出する意思を有していたことが認められる。
これらのことからすると、請求人が本件確定申告書の期限内提出の必要性ないし重要性を十分に認識していたとすれば、請求人は、平成18年3月9日から入院することになるという事情を本件会計事務所に説明して本件確定申告書の作成を早め、入院する前に本件確定申告書の内容を確認することに支障はなかったということができ、さらには、入院中において、請求人は「納税額」の確認ができないほどの病状下にはなかったもので、上記経理課長から電話があった際(同月10日ころ)、請求人が確認を要すると考えていた納税額を同人に尋ね、それを確認することは容易なことであったと認めるのが相当である。
したがって、請求人が本件確定申告書を法定申告期限までに提出できなかったことについて国税通則法第66条第1項ただし書きに規定する正当な理由があったとは認められない。
被相続人の共同相続人の1人に対する「相続させる旨」の遺言には、同人に、請求人に対し5,000万円の代償金の支払債務を負担させる旨の記載があり、請求人は、当該遺言によって代償金の支払請求権を相続により取得したものと認められるから、期限後申告書に記載された課税価格のうち当該部分については、期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があるとは認められないとした事例
裁決事例集 第75集 78頁
要旨
和解調書には、他の共同相続人の一人が請求人に対して遺留分の価額弁償金として本件金員を支払う旨及び請求人が本件金員を受領する一方、その他の請求を放棄する旨記載されており、一見、遺言に基づく代償金の請求を放棄するとも読み取れるものの、請求人及び他の共同相続人の一人の供述にもあるように、請求人が本件和解前に本件代償金の支払請求を放棄した事実も本件訴訟において本件代償金の存在が否定された事実もない状況において、本件代償金を超える本件金員が支払われるということからは、本件金員の一部をもって本件代償金の支払がなされたと認めるのが相当であって、本件金員は、本件相続の開始により本件遺言書に基づき請求人が取得した代償財産(本件代償金)5,000万円に加え、本件和解の成立により遺留分に対する価額弁償金として1,500万円を取得したものであり、結果として本件和解により本件相続税における請求人の取得財産が5,000万円から6,500万円に増加したものであると解するのが相当である。
そうすると、請求人は、本件被相続人の死亡と同時に相続により本件代償金を取得したことにより、本件法定申告期限までに期限内申告書を提出しなければならない者に該当するから、本件和解の成立により新たに相続税法第27条第1項に規定する申告書を提出すべき要件に該当することとなった者には当たらず、本件期限後申告書は、同法第30条第1項の規定による期限後申告書には該当しないとともに、本件代償金は遺留分減殺請求に基づく価額弁償金の確定に伴い取得したものではなく、請求人が本件相続により取得したものであり、本件法定申告期限までに申告すべきものであるから、本件期限後申告書に記載された課税価格のうち5,000万円の部分については、国税通則法第66条第1項ただし書に規定する「期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があると認められる場合」に該当して申告されたものとは認められない。
要旨
請求人は、本件申告書を法定申告期限までに提出しなかったのは、①消費税等に係る申告義務等については知らなかった、②原処分庁へ赴き、担当職員から本件開業届出書などを提出するよう指導を受け、それぞれ提出したが、その際、請求人の本件課税期間に係る消費税等の申告に関する説明は全くなかった、③原処分庁が事前に消費税等の申告書用紙を送付すべきであったのにこれを行わなかったことによるものであり、これらのことはいずれも国税通則法第66条第1項ただし書にいう「正当な理由があると認められる場合」に該当する旨主張する。
しかしながら、国税通則法第66条第1項ただし書にいう「正当な理由があると認められる場合」とは、災害、交通・通信の途絶など、期限内に申告ができなかったことについて、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、無申告加算税の趣旨に照らしても、なお、納税者に無申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当であるところ、①納税者が税法を知らなかったことや誤解していたことに基づく場合など納税者自らの責任によるものはもちろんのこと、②原処分庁の担当職員が請求人に対し消費税等の説明をしなかったこと、③申告書用紙の送付がなかったことをもって、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情がある場合に当たるとすることはできない。したがって、請求人が本件申告書を法定申告期限までに提出しなかったことについて、国税通則法第66条第1項ただし書にいう「正当な理由があると認められる場合」に該当するとは認められない。
参照条文等
一人の扶養親族につき、重複して扶養控除を受けている事実を知ることができなかったとしても、それは請求人の単なる主観的な事情であるから、国税通則法第66条第1項の正当な理由があると認められる場合に当たらないとした事例
裁決事例集 第87集
要旨
給与所得者である請求人は、同じく給与所得者である請求人の元妻と重複して、同人らの長女について扶養控除を受けていたことから、この重複を解消するための確定申告書を提出したところ、無申告加算税の賦課決定処分がなされたことについて、請求人の元妻と別居して完全に連絡が途絶えており、元妻と重複して扶養控除を受けていることを知ることができなかったのであるから、国税通則法第66条《無申告加算税》第1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人が元妻と別居して完全に連絡が途絶え、元妻と重複して扶養控除を受けていることを知ることができなかったとしても、それは、請求人の単なる主観的な事情に基づくものであり、請求人が長女を扶養控除の対象としない旨の確定申告書を提出するのであれば、その法定申告期限までに提出しなければならないのであって、真に請求人の責めに帰することのできない客観的な事情があるとはいえず、無申告加算税の趣旨に照らしても、なお、請求人に無申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合とはいえないから、「正当な理由があると認められる場合」に該当しない。
参照条文等
被相続人の妻が被相続人の財産内容を開示しなかった等の事情は、相続人間の主観的事情にすぎないから、期限内申告書の提出がなかったことについて、国税通則法第66条第1項ただし書の「正当な理由」があるとは認められないと認定した事例(平成20年3月相続開始に係る相続税の無申告加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第97集
要旨
請求人は、亡弟(本件被相続人)の相続(本件相続)に係る亡父の相続税の納付義務を承継しているところ、①亡父は、本件被相続人の相続財産の全てを管理していた本件被相続人の妻に対して、相続税法第3条《相続又は遺贈により取得したものとみなす場合》第1項各号に規定する財産(みなし相続財産)を含む相続財産の全容を把握するための明細の提示を依頼したが応じてもらえず、また、②本件被相続人の妻が申し立てた遺産分割調停に係る遺産目録等にはみなし相続財産が記載されていなかったが、記載された財産等に基づいて本件相続に係る相続税の課税価格を計算すると課税価格は基礎控除額を下回ることとなったことから、亡父が相続税の期限内申告書を提出しなかったことについて、国税通則法第66条《無申告加算税》第1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人が主張する上記①の事情は、相続人相互の人間関係に基因する事情であり、また、上記②の事情は、相続人相互の人間関係によりみなし相続財産の確認ができなかったが、亡父がみなし相続財産を課税価格に加えないことを自己判断して課税価格を計算した結果、課税価格が基礎控除額以下になったというものであるから、相続人相互の人間関係を前提とした亡父の自己判断に係る事情といえる。そうすると、請求人が主張する事情は、亡父を含む相続人間の主観的事情にすぎず、亡父が相続税の期限内申告書を提出しなかったことについて、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があったということはできないから、国税通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当しない。
参照条文等
参考判決・裁決
大阪高裁平成5年11月19日判決(裁Web)
相続税の法定申告期限までに判明した相続財産のみでも、遺産に係る基礎控除を超える場合には、その把握した相続財産に係る期限内申告書を提出しなかった場合、国税通則法第66条《無申告加算税》第1項ただし書に規定する「正当な理由」はないとした事例(平成27年9月相続開始に係る相続税の無申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第107集
ポイント
本事例は、相続税の法定申告期限までに判明した相続財産だけで遺産に係る基礎控除を超える場合、相続税の期限内申告書を提出しなければならないと解するのが相当であり、全ての相続財産を反映した相続税の申告書を作成できなかったとしても、「正当な理由」には該当しないと判断したものである。
要旨
請求人らは、期限内申告書を提出しなかったのは、法定申告期限において、被相続人が受け取るべき損害賠償金の額が確定しておらず、全ての相続財産を反映した相続税の申告書を作成することができなかったためであるから、国税通則法第66条《無申告加算税》第1項ただし書に規定する「正当な理由」がある旨主張する。
しかしながら、納税者が相続財産の全容を把握するため、種々の調査をし、情報入手の努力をした結果、法定申告期限までに相続財産の一部しか判明しなかったとしても、その判明した部分だけで遺産に係る基礎控除額を超える場合には、納税者は、判明した相続財産につき期限内申告書を提出しなければならず、納税者が、法定申告期限までに把握した相続財産の価額が遺産に係る基礎控除額を超えることによって相続税の申告書の提出を要すると認識し、又は認識し得た場合において、その把握した相続財産に係る期限内申告書を提出しなかった場合には、同項ただし書に規定する「正当な理由」があるとは認められないと解するのが相当であるところ、請求人らは、法定申告期限までに、相続税の申告について相談した税理士から相続税の申告が必要である旨の説明を受けるとともに、相続した土地の価額のみで基礎控除額を超えることを認識していたのであるから、相続税の申告が必要であることを認識していたものと認められる。したがって、請求人らが期限内申告書を提出しなかったことについて、同項ただし書に規定する「正当な理由」があるとは認められない。
参照条文等
参考判決・裁決
大阪高裁平成5年11月19日判決(税資199号834頁)
e-Taxにより確定申告データを法定申告期限内に送信しておらず期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由はないとした事例(令和4年分の所得税及び復興特別所得税に係る無申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第137集
ポイント
本事例は、請求人がe-Taxにより確定申告データを法定申告期限内に送信しておらず期限内申告書を提出しなかったことについて、国税通則法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由があると認められる場合に該当しないとしたものである。
要旨
請求人は、国税電子申告・納税システム(e-Tax)により確定申告書及び財産債務調書等(本件調書)のデータを送信するつもりであったが、結果として本件調書のデータしか送信できておらず、このような誤操作が生じてしまうe-Taxにはシステム上の問題があるといわざるを得ないこと、上記送信後に完了画面が表示されたことにより、請求人が確定申告書のデータも正常に送信できたと認識したことはやむを得ないことから、期限内申告書の提出がなかったことについて、国税通則法(令和4年法律第4号による改正前のもの)第66条《無申告加算税》第1項ただし書に規定する正当な理由があると認められる場合に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人の期限内申告書の提出がなかったのは、請求人がe-Taxの操作を誤って本件調書のデータの送信しか行っていなかったにもかかわらず、本件調書のデータの即時通知を見て、確定申告書のデータも送信されたと誤って認識したという請求人自身の主観的な事情によるものにほかならない。したがって、期限内申告書の提出がなかったことについて、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があったとはいえず、無申告加算税の趣旨に照らしても、なお、納税者に無申告加算税を課することが不当又は酷になる場合に当たるとはいえないから正当な理由があると認められる場合には該当しない。
参照条文等
相続財産の総額を確定できなかったことが無申告加算税の正当な理由に当たらないとした事例(令和3年2月4日相続開始に係る相続税の無申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第138集
ポイント
本事例は、相続税において通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」とは、通常の納税者を基準として、課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額を超えない又は超える可能性が極めて小さいことを客観的に裏付けるに足りる事実を認識して期限内申告書を提出しなかった事実が認められる場合をいうとしたものである。
要旨
請求人は、贈与者である被相続人(本件被相続人)から金員(本件金員)の死因贈与を受けただけであり、本件被相続人の法定相続人ではないことから、相続財産の総額を知ることはできず、本件被相続人の相続人ら(本件相続人ら)から相続財産の総額の回答を拒否されており、相当の努力を払って調査しても遺産に係る基礎控除額を超える額の相続財産を把握することができなかったのであるから、請求人が法定申告期限までに本件被相続人に係る相続税の申告書(本件申告書)を提出しなかったことに、国税通則法(令和4年法律第4号による改正前のもの)第66条《無申告加算税》第1項ただし書に規定する正当な理由がある旨主張する。
しかしながら、請求人は、本件被相続人の職業などを踏まえると、本件被相続人には請求人が管理している本件被相続人の預金口座以外にも預貯金や不動産などの財産があったと認識できたと推認される。また、請求人が、上記推認を妨げる、本件相続人らがそれぞれ取得する財産が、本件金員よりも少ない可能性があると認識していたと認めるべき特段の事情は認められず、請求人は、本件被相続人の相続財産に係る課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額を超えると認識できたと認められる。そうすると、通常の納税者を基準として、請求人において、本件被相続人の相続財産に係る課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額を超えない又は超える可能性が極めて小さいことを客観的に裏付けるに足りる事実を認識して期限内申告書を提出しなかったとは認められず、請求人が法定申告期限までに本件申告書を提出しなかったことにつき、国税通則法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由があるとはいえない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成11年6月10日第一小法廷判決(判タ1010号233頁) 最高裁平成18年4月20日第一小法廷判決(民集60巻4号1611頁) 大阪高裁平成5年11月19日判決(税資199号順号334) 広島地裁平成2年2月28日判決(税資175号順号943) 神戸地裁平成26年1月28日判決(税資264号順号12398) 東京地裁平成31年2月1日判決(判タ1474号210頁) 平成29年6月15日裁決(裁決事例集№107) 平成26年11月7日裁決(裁決事例集№97)
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