裁決事例 不動産所得
要旨
貸付不動産は遠隔地に散在し、賃貸料についても固定資産税、管理費、減価償却費等所要の経費を賄ってなお相当の利益が生ずるようになっており、賃貸料の集金、名義書換え及び契約更新の交渉等についても長年の経験と知識をもって専従者(母)が行っており、かつ、毎月収支明細表を作成し、資金の収支を整然めいりょうに記載する等財産的管理が十分に行われている状況からみて、不動産の貸付けが事業として行われているとみるのが相当である。
したがって、請求人の不動産所得の金額の計算上、青色事業専従者給与の金額の必要経費算入を否認した原処分は取り消すべきである。
不動産所得の基因となる資産の取壊しにより生じた損失の金額が、所得税法第51条第4項に該当し、本件損失を不動産所得の必要経費に算入しないで計算したところの不動産所得の金額を限度として必要経費に算入されるとした事例
裁決事例集 第61集 118頁
要旨
不動産の貸付けが不動産所得を生ずべき事業といえるか否かは、社会通念上、事業と言い得るか否かによって判断するのが相当と解されているところ、請求人の不動産貸付けは、[1]貸付物件は本件不動産のみで、その貸付先は請求人が主宰するK社のみであること、[2]本件不動産の賃貸料は請求人の預金口座に振込入金されており、賃貸料収入の受領等に係る役務の提供は極めてきん少であること、[3]本件建物の日常の清掃は、K社の従業員が行っていること、また、本件不動産に係る必要経費についても、本件建物の減価償却費以外には固定資産税があるのみで、その支払については、請求人の預金口座からの自動引き落としになっていることから、本件不動産に係る維持管理の程度は極めて低いと認められること、[4]本件建物の取壊しは、K社の営業方針に基づくものであると認められること、[5]請求人は生活の資金の大部分をK社の給与から得ていることなどを総合して判断すると、社会通念上、事業と称するに至る程度のものとは認められない。
したがって、その業務の用に供されていた本件建物の取壊しによる資産の損失の金額は、所得税法第51条第4項の規定が適用され、本件損失を不動産所得の必要経費に算入しないで計算したところの不動産所得の金額を限度として必要経費に算入される。
要旨
請求人は、請求人の父は所得を有し生活費も毎月負担しており、同人と生計を一にしていないから、父に支払った本件地代は、不動産所得の金額の計算上、必要経費として認められるべきである旨主張する。
しかしながら、請求人は、父と同一の家屋内に起居していること及び食事を共にするなど日常の生活を共にしていることからすれば、同人が所得を有し生活費を負担していたとしても、請求人と父が明らかに独立した生活を営んでいるとは認められず、また、本件全資料及び当審判所の調査によっても、請求人と父との間で家事上の共通経費について実費の精算が行われていること並びに事実上の支出に関して親族間における債権債務の発生及び決済の状況が明らかであることを認めるに足りる証拠資料はない。
そうすると、請求人と父は生計を一にしているとみるのが相当であるから、本件地代は、所得税法第56条の規定により不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入されないことになる。
要旨
請求人は、請求人が不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した本件ゴルフ代の支出に関し、賃貸物件の補修の必要性や家主である請求人に対するクレーム等を把握し、これらに対応することで、賃貸物件を優良なテナントに長く貸し付けることができるよう、テナントの代表者等に対するゴルフ接待を行うとともに、種々の情報を得て不動産の購入を容易にし、また、購入資金の融資の点でも有利になるよう、かつての勤務先である銀行の後輩等に対するゴルフ接待を行っていた旨主張する。
しかしながら、本件ゴルフ代についてみると、請求人が接待の相手方であると主張する者のうち、①請求人の主宰法人が所有する不動産のテナントについては、請求人の不動産所得に係る業務の遂行とは直接関係がなく、②請求人が所有する不動産のテナントの関係者についても、請求人が賃貸物件の補修の必要性や家主である請求人に対するクレーム等を把握するために、これらの者とゴルフをする必要があったとは認め難く、③かつての勤務先である銀行の後輩については、間接的に、請求人の不動産貸付業に有益な情報が得られる場合があるとしても、これらの者とゴルフをすることが、業務の遂行上直接必要であったとまではいい難く、さらに、④請求人はゴルフクラブの会員として、本件各年分を通じて、毎年相当の回数のプレーをしており、その大半を女子プロゴルファーと2人でプレーしている上、請求人が接待交際費に該当すると主張する上記各相手先とのゴルフについても、いずれも上記女子プロゴルファーを同伴させていることからすれば、本件ゴルフ代は、結局のところ、請求人の趣味・し好としてのゴルフプレーのために支出された家事上の経費であると評価せざるを得ず、家事費に該当するから、請求人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないというべきである。
参照条文等
要旨
請求人が所有する建物を賃貸した事情は、請求人が負担している保証債務を履行するための資金を得ることを目的としたものと認められるが、請求人の負担した保証債務は、当該不動産所得を生ずべき事業の遂行上生じたものではないから、保証債務の履行に伴う求償権の行使不能額は所得税法第51条第2項及び同法施行令第141条第2号に規定する必要経費には当たらない。
同族会社に対する本件委託業務は、不動産賃貸業の遂行上必要な業務とは認められず、かつ、同族会社が当該業務を履行したとする客観的な資料も認められないことから、請求人が本件契約に基づき不動産管理料を支払ったとしても、必要経費には算入されないとした事例
裁決事例集 第55集 43頁
要旨
本件契約業務の具体的内容を検討すると、[1]当初から不動産管理業務を委託している不動産管理会社との交渉業務等を含む経営全般に関する知的判断業務は、請求人個人の責任と判断において行うべき性質のものであり、同族会社であるH社が当該業務を履行したとする客観的な資料がないこと、[2]その他の業務については、不動産管理会社への委託業務において十分可能であり、当該業務をH社に委託する必要性があるとは認められず、また、H社においてこれらの業務を行ったと認めるに足りる証拠がなく、当該業務を履行するために要した費用の計上も認められないことから判断すると、H社との本件契約業務は本件不動産賃貸業の遂行上必要な業務とは認められず、かつ、履行したとする客観的な資料も認められないことから、請求人が本件契約に基づき本件管理料を支払ったとしても所得税法第37条第1項に規定する必要経費には算入されない。
要旨
請求人が不動産所得の基因となる土地を取得するために借り入れた資金の利子は、各年分の不動産所得の金額の計算上必要経費の額に算入するか、又は当該土地の取得価額に算入するかのいずれかによるべきであると解されるが、上記利子のうち当該土地がいまだ業務の用に供されていない期間に対応する支払利子については、当該期間における請求人の不動産所得の収入金額が皆無であるので必要経費の額に算入する余地はなく、当該土地の取得価額に算入するのが相当である。
したがって、当該土地を業務の用に供したその後の年分の不動産所得の金額の計算上、当該利子を必要経費に算入すべきであるとする請求人の主張は認められない。
物納した土地上の賃貸用建物に係る本件解約損害金及び本件取壊し費用は、不動産所得を生ずべき業務について生じた費用には該当せず、譲渡費用に該当するとした事例
裁決事例集 第57集 96頁
要旨
請求人は、物納した土地上の賃貸用建物に係る本件解約損害金及び本件取壊し費用は、本件賃貸借契約の解約及び本件建物の取壊しに要した費用で、不動産所得を生ずベき業務について生じた費用であるから、所得税法第37条第1項の規定により、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべきであり、また、本件資産損失についても、同法第51条第1項の規定により不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである旨主張する。
しかしながら、本件解約損害金及び本件取壊し費用が、その年分における不動産所得を生ずべき業務について生じた費用に当たるとするためには、請求人が本件各土地を当該業務の用に供する意図を有しているというだけでは足りず、近い将来において確実に当該業務の用に供されるものといえるような客観的な状態にあることを必要とするものと解されるところ、請求人は、従前建築された賃貸マンションと同様の建築計画及び資金計画で新たにビルを建築することを企図していたとはいえ、当該ビルの具体的な建築計画及び利用形態等を確定するには至らず、業者にその建築を打診することもなかったというものであって、これらの事情に照らすと、上記のような客観的な状態にあったとは認められず、本件解約損害金及び本件取壊し費用を不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべきであるとの請求人の主張には理由がない。
請求人は、物納の許可を受けるため、本件賃貸借契約を解約し、本件建物を取り壊して本件各土地を更地にしたもので、そのための費用は物納に直接必要なものと認められ、物納も公法上の代物弁済として譲渡の一態様であることに照らすと、本件解約損害金及び本件取壊し費用は、譲渡費用に該当すると解される。
要旨
請求人は、不動産貸付業及び農業の用に供されている本件土地の相続を原因とする所有権移転の登記に係る登録免許税は、課税の対象とされる収益を生ずる業務の用に供する資産に係るものであり、また、事業遂行上の第三者対抗要件を具備するためのものであるから必要経費に算入されるべきであると主張するが、本件土地は、相続により被相続人から承継したもので、本件登録免許税は、相続に伴い付随して生じたものにすぎず、単なる家事上の費用に属するものというべきであるから、所得税法第37条に規定する必要経費には当たらない。
請求人が耐用年数の短縮を求める理由は、本件建物自体の構造等に変化が生じて物理的、客観的に使用可能期間が短くなったという事由ではなく、取壊しの行われることが将来予定されているという本件契約当事者の取決めを理由とするものであるので、所得税法施行令第130条第1項に掲げる事由には該当しないとした事例
裁決事例集 第49集 100頁
要旨
請求人は、本件建物は、賃貸借期間が10年に限定され、賃貸借期間終了後取り壊されるものであることから、本件建物の耐用年数は、法定耐用年数の40年ではなく、賃貸借期間に応じた10年となるとして、耐用年数の短縮を承認すべきである旨主張するが、所得税法施行令第130条第1項が耐用年数の短縮を認める特別な事由を列挙しているのは、耐用年数の短縮は、減価償却資産の使用可能期間が法定耐用年数よりも物理的ないし客観的に短くなるという事由が現に発生しているような場合に限って認める趣旨によるものと解するのが相当である。
本件建物についてみると、請求人が耐用年数の短縮を求める理由としている「賃貸借期間(10年)満了に伴う本件建物の取壊し」は、本件建物自体の構造等に変化が生じて物理的、客観的に使用可能期間が短くなったという事由ではなく、取壊しの行われることが将来予定されているという本件契約当事者双方の取決めを理由とするものである。
当審判所の調査によっても、本件建物の構造その他からみて、本件建物について、所得税法施行令第130条第1項に掲げられている耐用年数の短縮を認めなければならない特別な事由があるとも認められないので、請求人の主張は採用することができない。
要旨
建物等の存する土地をその建物等と共に取得した場合において、その取得後おおむね1年以内に当該建物の取壊しに着手するなど、その取得が当初からその建物等を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるときは、当該建物等の取得に要した金額及び取壊しに要した費用の額の合計額は、当該土地の取得費に算入するものと解されているところ、請求人は昭和56年8月18日に本件土地建物を取得し、昭和57年6月21日付で9階建のビルの建築確認申請書を提出し、昭和57年9月27日に本件建物の賃貸借契約の解除を行って立退料を支払っており、建築確認申請書及び同付属書類によれば、本件土地の敷地を含めた土地全部が同ビルの建設予定敷地とされていること等からみて、請求人の本件土地建物の取得は、当初から本件建物を取り壊した上、本件土地をビルの敷地に供する目的であったといわざるを得ないから、本件立退料相当額は、不動産所得の必要経費ではなく、本件土地の取得費に算入すべきである。
要旨
土地の賃貸契約に係る紛争について和解が成立し、当該土地の明渡しを受けるために支払った金額は、損害賠償金ではなく借地権の買戻しと認められ、また、訴訟に要した弁護士費用もその価額に加算すべき性質のもので、いずれも所得税法上の資産の取得費であり、不動産所得の金額の計算上控除される必要経費とは認められない。
要旨
資本的支出と修繕費の区分は、支出金額の多寡によるのではなく、その実質によって判定するものと解されるところ、本件建物の外壁等の補修工事のうち、外壁等への樹脂の注入工事等は建物全体にされたものではなく、また、塗装工事等は建物の通常の維持又は管理に必要な修繕そのものか、その範ちゅうに属するものであるから、これらに要した費用は修繕費とするのが相当である。また、外壁天井防水美装工事は、補修工事に伴う補修面の美装工事であって、塗装材として特別に上質な材料を用いたものではないことが認められるから、これに要した費用も修繕費とするのが相当である。
要旨
請求人は某会社に勤務しながらアパートを所有し、その賃貸に係る不動産所得について青色申告書の提出をしているが、[1]本件アパートは、請求人の住居と同一の敷地内にあり、その規模は独立した部屋数が4で、入居者も3名程度の小規模な貸付けであること、[2]その貸付けから生ずる賃貸料は、固定資産税、管理費、減価償却費等所要の経費にも満たない金額であること、[3]請求人は某会社に勤務して安定収入を得、生活費の資の大部分は給与収入によって賄っていることから、本件アパートの貸付けは、社会通念上事業と称するに至る程度の規模とは認められず、したがって、本件アパートの貸付けによる不動産所得の計算上、請求人が青色事業専従者として請求人の妻に支払ったとする給与の額は所得税法第57条の規定による青色事業専従者給与の額に該当せず、必要経費に算入することができない。
要旨
請求人は、不動産の貸付先であり、請求人の弟が代表取締役である会社に対して有していた貸付金の貸倒れによる損失について、本件貸付金は、請求人が同社に対して賃貸している不動産を同社の仕入先に対する担保として提供していたところ、同社が倒産するおそれがあったため、賃貸不動産の維持確保を図るために同社に貸し付けたもので、不動産所得を生ずべき業務の遂行上貸し付けた貸付金であるから、その貸倒れによる損失は不動産所得の必要経費になると主張するが、同社に対する担保提供の経緯等からみて、当該担保提供は弟を援助する目的のものと認められ、また、賃貸料と貸付金の額との関係をみても、金銭の貸付けが不動産貸付業の遂行上必要であったとは認められないから、本件貸倒損失は不動産所得を生ずべき事業の遂行上生じたものとは認められず、したがって、本件貸倒損失は不動産所得に係る必要経費とは認められない。
同族会社に支払った不動産の管理料について、所得税法第157条《同族会社等の行為又は計算の否認》を適用せず、同族会社は管理行為を行っていないとして、所得税法第37条《必要経費》により、その全額の必要経費算入を認めなかった事例
裁決事例集 第71集 205頁
要旨
請求人は、所得税法第157条第1項の適用に当たっては、経済的合理性を欠く行為や異常な取引形式に基づき、所得税の負担を不当に減少させる結果となることが要件となるが、請求人が不動産の管理を本件不動産管理会社に委託した行為は経済的合理性を欠く行為でも異常な取引形式でもなく、また、本件管理料は、本件不動産管理会社に委託した管理業務の内容及び事業規模並びに収益の状況等個々の実態に応じて算定しており、恣意性が介入する余地はなく、不動産収入を得る上での役務の対価として相当な金額であるから、本件管理料は不動産所得の金額の計算上必要経費に算入されるべきである旨主張する。
これに対し、原処分庁は、請求人が本件不動産管理会社に管理を委託しているアパート及びマンション(以下「本件賃貸不動産」という。)に係る管理料は、委託する管理業務の程度が異なるにもかかわらず、全ての不動産に一律に不動産年間賃貸料の10%としているが、その算定根拠は明らかでなく、通常の商取引においては考えられない異常な取引形式であり、また、本件賃貸不動産については、M社等に管理を委託しているにもかかわらず、さらに本件不動産管理会社にも管理を委託する行為は、同社が同族会社であるがゆえになし得る行為であり、純経済人の行動としては極めて合理性を欠く行為であるから、所得税法第157条第1項が適用される旨主張する。
しかしながら、本件賃貸不動産については、[1]本件不動産管理会社の管理業務とされる定期的な清掃業務等は、別途、M社等の不動産管理会社に委託している管理業務と同一のものであり、M社等において本来の業務として行われていることから、当該管理業務を本件不動産管理会社に委託する客観的必要性は認められないこと、[2]本件賃貸不動産の敷地内の看板には、M社等の社名が明示されており、本件不動産管理会社が賃借人及び第三者の窓口等となっている事実は認められないこと、[3]本件不動産管理会社においては、管理業務を実施した記録がなく、同社が管理業務を実施したことを客観的に認めるに足る証拠は認められないことなどからすれば、同社が本件賃貸不動産に係る管理業務を行ったことを認めることはできない。
したがって、請求人が本件不動産管理会社に委託した業務は、いずれも請求人の不動産所得を生ずべき業務遂行上の必要性が認められず、また、本件不動産管理会社が管理委託契約に基づく業務について履行したことを客観的に認めるに足る証拠も認められないことから、本件管理料のうち、請求人の所得税法第37条第1項に規定する不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、○○○○円とすることが相当であり、所得税法第157条第1項の規定を適用する余地はなく、当事者双方の主張を採用することはできない。
要旨
借入金によって建築した賃貸用ビル(マンション)の一部が前年までに分譲され、この分譲代金収入と賃貸料収入とをもって借入金の一部が返済されている場合において、分譲代金収入と賃貸料収入との合計額に対する分譲代金収入の割合を返済された元本額に乗じて得た金額が、前記返済元本額のうち分譲した部分の建築資金に係る借入金の額を超えているところから、分譲代金収入によって前記分譲した部分の建築資金に係る借入金は返済済みであると解しても不相当ではないので、当年分に残存する借入金はすべて賃貸用部分の建築資金に係るものと解することができ、当年分の借入金利子のうち、たまたま請求人の個人の用とした一室の建築資金に係るものを除き、賃貸料収入による不動産所得の必要経費と認めるのが相当であって、原処分の全部を取り消すべきである。
要旨
所有不動産について負担する固定資産税等が、不動産所得を生ずべき業務について生じた費用となるためには、一般的には、当該不動産が貸し付けられ、不動産所得を生ずべき業務の用に供されていることを要するものというべきであるところ、本件土地は、貸付けに係る業務のために保有されているものとは認められず、新たに貸し付けるための準備等がされているにすぎないから、本件土地に係る固定資産税は不動産所得を生ずべき業務について生じた費用とはいえない。
税法の改正により減価償却資産の耐用年数が短縮された場合の減価償却費の処理方法については、明文の規定がなく理論により決するほかないとの請求人の主張が排斥した事例
裁決事例集 第62集 49頁
要旨
請求人は、税法の改正により減価償却資産の耐用年数が短縮された場合の減価償却費の処理方法については、明文の規定がなく理論により決するほかない旨主張する。
しかしながら、所得税法第49条、所得税法施行令第120条、第129条、第131条、耐用年数省令第1条、第4条及び平成10年改正省令附則第2項等の規定が存在するのであって、これらの規定によれば、税法に規定する耐用年数とは、その期間内で償却を完了させるということを意味するものではなく、減価償却費の額を算定するために必要な償却率を算出するための基礎となるものにすぎないと解するのが相当であり、このことは、税法の改正により耐用年数が短縮された場合においても何ら変わるものではないから、原処分庁が、本件建物の期首帳簿価額に、本件改正後の耐用年数に対応する償却率を乗ずることによって本件減価償却費の額を算定したことは適法である。
請求人が行った賃貸用マンションのシステムキッチン等の取替工事に係る費用は、当該マンションの価値を高め、その耐久性を増すことになると認められるから、修繕費ではなく資本的支出に該当するとした事例(平成21年分及び平成22年分の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第95集
ポイント
本事例は、新たなシステムキッチン及びユニットバスの取替えに要した費用が、賃貸用マンションの通常の維持管理のための費用、すなわち修繕費であるとは認められず、新たにシステムキッチン及びユニットバスを設置し、台所及び浴室を新設したことによって、当該マンションの価値を高め、又はその耐久性を増すことになると認められることから、その全額が資本的支出に該当するとしたものである。
要旨
請求人は、築17年を経過した賃貸用マンション(本件建物)の一部の住宅内の台所及び浴室の各設備等を取り壊し、新たなシステムキッチン及びユニットバスに取り替えた工事(本件各工事)について、居住用機能を回復させるために必要な工事であり、本件建物の規模からすれば、同建物の基礎及び柱等の躯体に影響を与えるものでなく、その価値を高めるものでもなく、その目的は現状維持することであるから、本件各工事に係る費用のうち新たなシステムキッチン及びユニットバスの取替えに要した費用(本件各取替費用)については、所得税法施行令第181条《資本的支出》に規定する金額及び所得税基本通達37-10《資本的支出の例示》の定めに例示された金額のいずれにも該当せず、修繕費に該当する旨主張する。
しかしながら、ある支出が修繕費又は資本的支出のいずれに当たるかは、その支出した金額の内容及び支出効果の実質によって判断するのが相当であるから、本件各工事によって本件建物の住宅の居住用機能を回復させる目的があったとしても、本件建物の規模との比較のみによって判断するものではない。そして、本件各工事は、単に既存の台所設備及び浴室設備の一部を補修・交換したものではなく、本件建物の各住宅内で物理的・機能的に一体不可分の関係にある台所及び浴室について既存の各設備等を全面的に取り壊し、新たにシステムキッチン及びユニットバスを設置し、台所及び浴室を新設したものであり、このことは、本件建物の各住宅を形成していた一部分の取壊し・廃棄と新設が同時に行われたとみるべきものである。そうすると、本件各取替費用は、修繕費とは認められず、台所及び浴室を新設したことによって本件建物の価値を高め、又はその耐久性を増すことになるものと認められるから、本件建物に対する資本的支出に該当する。
参照条文等
参考判決・裁決
東京高裁平成17年10月27日判決(税資255号順号10178) 広島地裁平成5年3月23日判決(税資194号867頁) 平成2年1月30日裁決(裁決事例集№39)
請求人は、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した一部の経費について、不動産賃貸業の遂行上直接必要であった部分を明らかにしていないことから、当該経費を必要経費に算入することはできないとした事例
裁決事例集 第82集
ポイント
この事例は、請求人が、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべきと主張する経費について、必要経費についての立証責任は、原則として原処分庁にあるとした上で、原処分庁が具体的な証拠に基づき一定額の経費の存在を明らかにし、これが収入との間に合理的対応関係を有すると認められる場合には、請求人は、経費の具体的内容を明らかにし、ある程度これを合理的に裏付ける程度の立証をしなければならない旨を明示したものである。
要旨
必要経費についての立証責任は、原則として原処分庁にあると解すべきであるが、一般に必要経費は請求人にとって有利な事柄であり、請求人の支配領域内のこととして証拠資料を整えておくことが容易であるから、原処分庁が具体的な証拠に基づき一定額の経費の存在を明らかにし、これが収入との間に合理的対応関係を有すると認められる場合は、これを超える額の必要経費は存在しないものと事実上推定され、請求人は、経費の具体的内容を明らかにし、ある程度これを合理的に裏付ける程度の立証をしなければ、上記推定を覆すことはできないと解されるところ、請求人が、飲食代及び交通費が必要経費に当たることについて、経費の具体的内容を明らかにし、ある程度、これを合理的に裏付ける程度の立証をしたと認めることはできないから、必要経費に算入することはできない。
参照条文等
参考判決・裁決
東京地裁平成5年10月4日判決(税資199号1頁)
土地の賃貸に当たって行われた造成工事等の費用を不動産所得の必要経費に算入することはできないとの原処分庁の主張を排斥した事例(平成24年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第102集
ポイント
本事例は、賃貸用土地の造成等の工事に係る費用が、当該土地の改良費として取得費に算入されるか、当該土地の賃貸業務に係る費用として必要経費に算入されるかについては、当該造成等の工事の具体的な内容に従って判断する必要があるとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人の所有する賃貸用土地(本件土地)に関して行われた造成等の工事(本件造成等工事)に係る費用は、その全てが改良費に該当し本件土地の取得費に算入すべきものであるから、請求人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないと主張する。
しかしながら、本件造成等工事の具体的な内容は、①外構造成工事(掘削、埋戻し、整地等)、②土留め工事(隣接地との境界ブロックの撤去及び積み直し)、③乗入側溝改修工事(本件土地に接する県道の歩道部分の切下げ、復旧等)、④境界等整備(隣地との境界の明確化等)、⑤土壌汚染調査(土壌内の有毒物質の有無の調査)に区分されるところ、それぞれについて検討すると次のとおりである。①外構造成工事は、本件土地の形質を変更し改良する工事であるから改良費に該当する。②土留め工事、④境界等整備及び⑤土壌汚染調査は、いずれも本件土地を改良したり、その価値を増加させるものではないから改良費には該当せず、不動産所得の必要経費に算入される。③乗入側溝改修工事は、請求人の所有する土地に係る工事ではないが、請求人は当該工事により便益を受け、その効果が費用の支出後1年以上に及ぶので、繰延資産に該当し、所定の償却費の額が必要経費に算入される。
参照条文等
居住用兼賃貸用資産の譲渡代金と借入金とをもって居住用兼賃貸用資産を取得した場合における借入金利子のうち、賃貸用部分に対応する金額は不動産所得の金額の計算上必要経費に該当するとした事例
裁決事例集 第22集 55頁
要旨
居住用兼賃貸用資産を譲渡し、その譲渡代金と借入金をもって居住用兼賃貸用(貸店舗)資産を取得した場合における当該借入金に係る支払利子については、請求人により特にその賃貸用部分の取得代金が借入金によって賄われたことが具体的に立証されない限り、その全額を不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできず、当該取得資産のうち賃貸用部分と居住用部分の占めるそれぞれの床面積の割合に基づいて支払利子をあん分し、そのうち賃貸用部分に対応する支払利子の金額のみを不動産所得の金額の計算上必要経費とするのが相当である。
要旨
請求人は、相続により取得した建物の減価償却費の計算について、所得税基本通達49-1において、所得税法施行令第120条第1項第1号に規定する「取得」には、相続による取得を含む旨定めているが、法律又は政令で明確に規定がない限り、その「取得」には相続による取得は含まないこと、所得税法第60条第1項は、相続により取得した資産の取得費について、その者が引き続きこれを所有していたものとみなす旨規定していることから、減価償却資産の償却の方法も承継が認められるべきである旨主張する。
しかしながら、不動産の取得とは、その所有権の取得にほかならず、民法は、その取得原因(取得方法)として、売買や贈与などの契約及び相続などの承継取得、また、時効取得などの原始取得についても規定していることから、相続についても売買等の契約と同様に取得原因になりうると解される。
また、所得税法第60条第1項の規定は、単純承認に係る相続による資産の移転について、被相続人がその資産を保有していた期間中に発生した値上がり益をその相続人の所得として課税しようとする趣旨のもので、その相続人の譲渡所得の金額の計算上控除すべき取得費について、被相続人がその資産を取得した時から相続人がその資産を所有していたものと擬制して取得費の計算を行うために設けられたものである。そして、減価償却資産の取得価額について規定した所得税法施行令第126条第2項において、相続により取得した減価償却資産の取得価額について、相続人が被相続人の取得価額を引き継ぐ旨規定しているが、その規定は、減価償却資産について、被相続人が選定していた償却の方法を相続人が引き継ぐことまで規定したものではなく、償却の方法については、同法施行令第120条に規定するとおりであるから、請求人の主張にはいずれも理由がない。
したがって、平成14年1月4日の相続により取得した本件建物の償却の方法については、所得税法施行令第120条第1項第1号ロの平成10年4月1日以後取得した建物に該当するので、本件建物の償却の方法は定額法となる。
要旨
請求人は、本件租税公課等は買換資産の取得価額に算入すべきである旨主張するが、個人の場合、その意思によりこれらの租税公課等の会計処理の選択を許すことは相当ではなく、これを業務上の必要経費とする所得税基本通達は合理的なものであるから、請求人の主張は採用できない。
請求人の子が代表取締役を務める法人は、賃貸の目的物に係る管理業務を行っているから、同法人に対して支払った管理費は、請求人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入されるとした事例
裁決事例集 第83集
ポイント
この事例は、請求人の子が代表取締役を務める法人の業務を認定し、請求人が当該法人に対して支払った管理料相当額の必要経費算入及び課税仕入れを認めたものである。
要旨
原処分庁は、店舗用建物たる本件建物及びその敷地たる本件各土地を併せた本件各土地建物に係る管理全般についてN社が行っており、請求人の子が代表取締役を務める本件法人は、請求人ら及びN社に対する金銭の支払行為を行っているものの、本件建物に係る共有持分(本件建物持分)及び本件各土地の一部である本件土地の管理業務を行っているとはいえないため、本件法人に請求人が支払った管理費相当額(本件管理費)は請求人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入できない旨主張する。
しかしながら、ある支出が不動産所得における必要経費に該当するためには、業務関連性がなければならないとともに、その必要性の判断においても、単に事業主の主観的判断のみによるものではなく、客観的に必要経費として認識できるものでなければならないと解されるところ、請求人の不動産所得の総収入金額に算入すべき金額は、賃借人をK社として本件建物を賃貸する旨の本件契約に係る賃料であることから、必要経費に算入すべき金額も本件契約に関して支出された費用に限られることとなる。そして、本件法人は、請求人らから本件建物持分及び本件土地の管理業務を受託し、本件契約の更新及び補修工事等に係る各種連絡を受けてK社及びN社と協議し、本件法人名議で本件契約に係る各種の支払を行うなどしてこれらに対処している事実が認められることから、本件建物持分及び本件土地に対する管理業務を行っているものと認められる。
そうすると、請求人から本件法人に対して支払われた本件管理費は、請求人のN社に対する本件建物持分の賃貸業務の遂行上必要な支出であると認められることから、請求人の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入されるものと認められる。
参照条文等
要旨
請求人は、不動産所得の金額の計算上、相続税の延納に係る利子税について、所得税の確定申告税額の延納に係る利子税及び延払条件付譲渡に係る所得税額の利子税を除き附帯税を必要経費として認めていないが、その目的及び趣旨は、附帯税でも罰則的なものとか家事関連的なものについては必要経費として認めないということであるから、事業に対応する利子税については必要経費として認めるべきであると主張するが、所得税法第45条(家事関連費等の必要経費不算入等)第1項第3号は、利子税のうち同法第131条(確定申告税額の延納に係る利子税)第3項又は同法第136条(延払条件付譲渡に係る所得税額の延納に係る利子税)に規定する利子税に限って例外的に必要経費への算入を認めているにすぎず、相続税の延納に係る利子税はこれに該当しないから、必要経費として認められない。また、相続税の延納に係る利子税は、相続に付随して生じたものであるから、業務の遂行ないしこれと直接の関連をもつものと解することはできない。
要旨
原処分庁は、租税特別措置法第37条の規定の適用に係る買換資産の取得資金はまず譲渡資産の譲渡代金が充てられたものとすべきであるから、当該買換資産を借入金により取得したとしても、その借入金の利子の全額を不動産所得の必要経費と認めることはできない旨主張するが、同条の適用に係る買換資産であるからといって、その取得資金には、まず譲渡代金が充てられたとみるべき理由はなく、買換資産の取得資金に借入金が充てられ、譲渡資金の譲渡代金が充てられないことが明らかな場合において、その買換資産を不動産所得の基因となる貸付けの業務の用に供しているときは、当該不動産所得の金額の計算上その借入金の利子は全額必要経費に算入すべきである。
要旨
請求人は、請求人が相続した本件各建物の取得日は、被相続人の取得日を引き継ぐべきものであるから、本件各建物の減価償却の方法は定率法によるべきである旨主張する。
しかしながら、[1]所得税法施行令第120条第1項第1号イにいう「取得」に、相続による承継取得が含まれない旨の明文の規定はなく、また、これが含まれないと解すべき合理的理由もないこと、[2]民法上、相続は不動産の取得原因の一つとされていることから、その「取得」は、文理解釈上、相続による承継取得は含むと解すべきである。
したがって、請求人は、本件各建物を平成10年4月1日以後に相続により取得しているから、所得税法施行令第120条第1項第1号ロの規定により、本件各建物の償却の方法として選定できるのは定額法のみである。
請求人が不動産所得の必要経費として主張する各支出に係る証拠書類等の提出は十分ではなかったものの、審判所の調査により追加で認容すべき必要経費の額を認めた事例( 平成23年分及び平成24年分の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分、 平成25年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・ 一部取消し)
裁決事例集 第105集
ポイント
本事例は、請求人が、原処分に係る調査においてそれを裏付ける証拠書類等の提示及び説明を行わず、審査請求においても証拠書類等の提出がほとんどなく、具体的な説明も行わなかったため、審判所において調査・審理を行ったところ、原処分において認定された金額のほかに追加認容すべき必要経費の額を認めたものである。
要旨
請求人は、修繕費等及び旅費・交通費等の各支出は、それぞれ不動産所得の金額及び雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである旨主張する。
しかしながら、請求人は、不動産所得について、主張を裏付ける証拠書類等の提示及び説明を原処分調査時及び異議調査時にもしておらず、また、当審判所の再三の求めにも応じず、主張を裏付ける証拠書類等をほとんど提出しなかった。このような状況の下、当審判所としては、修繕費等及び旅費・交通費等について各支出の事実の有無、当該各支出が請求人の不動産所得を生ずべき業務と直接の関係を持ち、かつ、業務の遂行上必要なものであるか否か、その他必要経費に算入すべき支出の有無について主に原処分関係資料に基づいてその適否を判断するほかないところ、これらの資料等を調査した結果、請求人の主張する各支出は、原処分額算定において誤りがあった一部を除き、必要経費に算入できない。また、雑所得の必要経費についても原処分庁認定額を不相当とする理由はない。
参照条文等
請求人が管理業務を委託した同族会社は、請求人が必要経費に算入すべきと主張する管理費の額に見合う管理業務を行っていたと認められることから、その全額を必要経費に算入すべきであるとした事例
裁決事例集 第84集
ポイント
この事例は、請求人が同族会社に委託した管理業務のうち、当該同族会社が他社に再委託した業務以外の部分について、当該同族会社が行っていたことを認定し、必要経費に算入すべき金額の範囲を判断したものである。
要旨
原処分庁は、請求人が賃貸及び事業の用に供している建物等について、請求人らが役員を務める本件同族会社が管理業務を行っていたとする証拠がなく、仮に行っていたとしても請求人が主張する行為は管理業務とは評価できないから、請求人の不動産所得及び事業所得の必要経費に算入すべき管理費の額は、本件同族会社が再委託先に支払った再委託料の額の一部に限られる旨主張する。
しかしながら、本件同族会社は、自ら当該建物等の管理業務を行っていたと認められることから、請求人が本件同族会社に支払った管理費の額うち、必要経費に算入すべきと主張する額(請求人主張管理費額)は、その全額が、請求人の不動産所得及び事業所得に係る業務と直接の関係を持つ費用であり、かつ、本件同族会社の行った管理業務の内容からみて、各業務の遂行上必要な費用であると認められる。したがって、請求人主張管理費額は、請求人の不動産所得の金額及び事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである。
参照条文等
要旨
請求人は、借入金で取得した土地のうち、未利用部分の土地は、貸付けし得る状態にあったものであるから、その部分に対応する借入金の利子は、必要経費に算入すべきであると主張するが、一般に、土地が貸付けし得る状態にあれば、それだけの理由でその土地の費用が必要経費となるものではないし、また、未利用部分の土地に隣接する部分の土地が現に貸農園として貸し付けられてはいるものの、その賃貸料は、固定資産税を賄う程度のものであること、貸農園としては、その土地に特別な施設等の設置を要しないものであることから、その貸付けは単なる空地利用の程度のものと認められるので、現に貸付けによる収入がない未利用地部分の土地の費用を必要経費に算入することは相当でない。
請求人が代表取締役を努める同族法人に対する建物の貸付けは、使用貸借であると認められることから、建物の貸付けによる所得には該当しないとして、本件建物に係る必要経費は認められないとした事例
裁決事例集 第63集 141頁
要旨
請求人は、自らが代表取締役を努める同族法人に対して本件建物を零円で貸し付けていることについて、原処分庁が使用貸借と認定した上で、不動産所得の金額の計算上、本件建物に係る租税公課及び減価償却費を否認した更正処分は、従来の経理慣行に反するものであり、実際に法人が店舗を使用しているのであるから、違法である旨主張する。
しかしながら、本件建物の貸付けについては、[1]賃料を零円にすることについて双方の合意が有り、平成6年7月以降、請求人は賃料を受け取っていないこと、[2]請求人は、各年分の確定申告において、賃料を不動産所得の総収入金額に計上していないこと、[3]当該同族法人は、平成7年6月期以後、賃料の支払がなく、未払金の計上も行っていないことから、各年分における本件建物の貸付けが無償で行われていることは明らかであり、使用貸借の状態にあったと認めるのが相当であるので、不動産の貸付けによる所得に該当しないため、本件建物に係る租税公課及び減価償却費を否認した更正処分は適法であり、請求人の主張には理由がない。
要旨
原処分庁は、請求人の賃貸している建物等(本件各物件)の管理業務を、請求人が代表取締役を務める法人(本件同族会社)に委任する旨の契約(本件契約)を締結しているが、他に同管理業務を網羅的に委託している法人があるから、同じ業務を本件同族会社に重複して委託する必要性がないこと、また、原処分に係る調査段階では、請求人から、本件同族会社が本件各物件の管理業務を行ったことを示す資料が一切提示されなかったことなどからすれば、本件同族会社による本件各物件の管理業務が日常的に行われていたとはいえないから、請求人が本件各物件の管理委託料として本件同族会社に支払った金額(本件金員)は、請求人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべきではない旨主張する。
しかしながら、証拠によれば、本件同族会社は、請求人から本件各物件の管理業務の委託を受けて、当該各物件に係る消防・防災設備の点検業務並びに給湯設備の修理及び取替工事の発注を行うなどした事実、また、本件同族会社は、当該工事等を委託又は依頼した各業者と連絡を取り合い、工事等の実施内容や状況等の報告を受けていた事実が認められる。さらに、本件同族会社の取締役であった請求人の亡妻が、同社の業務に係る出来事をノートに記載しており、そのノートによれば、同社は随時、上記の各業者等からの連絡等を受け付け、必要な対応等を行っていたものと認められる。以上を総合すれば、本件同族会社は、本件契約に基づき、請求人から委託を受けた本件各物件の管理業務を行っていたと認めるのが相当である。したがって、本件金員は、本件同族会社が行った本件各物件の管理業務の対価であると認められるから、請求人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
請求人らが賃貸の用に供していた土地の上に存する当該土地の賃借人所有の建物収去のための請求人らの支出は、客観的にみて、請求人らの不動産所得を生ずべき業務と直接関係し、かつ、業務の遂行上必要なものであったといえるから、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することができるとした事例(平成28年分所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・全部取消し)
裁決事例集 第116集
ポイント
本事例は、賃貸の用に供していた土地の上に存する当該土地の賃借人所有の建物収去のための請求人らの支出について、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入できると判断したものである。
要旨
原処分庁は、請求人らが賃貸していた土地(本件土地)は、賃貸借契約により請求人らの事業の用に供されていない資産であるから、本件土地の上に存する本件土地賃借人所有の各建物(本件各建物)を収去するため請求人らが支出した費用(本件各建物収去費)は、所得税法第45条《家事関連費等の必要経費不算入等》第1項の家事上の経費に該当し、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入できない旨主張する。
しかしながら、請求人らは、一連の法的手続を執ることにより賃料を支払わない賃借人から本件土地の明渡しを受け、それと並行して新たな賃借人への貸付けに取り掛かり、また、この間、本件土地を賃貸業務以外の用途に転用したことをうかがわせる事情も認められないことからすれば、本件土地の貸付けに係る業務は、賃貸借契約終了後、本件各建物の収去に至るまで継続していたものと認められる。加えて、請求人らは、本件土地から収益を得る業務を遂行するには、本件各建物を収去する必要があり、その費用について自らが負担することを想定して上記法的手続を遂行し、本件各建物収去費を支出したところ、実際にも、賃借人は無資力であり、当該支出の時点において、請求又は事後的に求償しても、およそ回収が見込めない状況にあったのであり、客観的にみても、本件各建物収去費は、請求人らにおいて、自ら負担するほかなかったものと認められる。そうすると、本件各建物収去費の支出は、客観的にみて、請求人らの不動産所得を生ずべき業務と直接関係し、かつ、業務の遂行上必要なものであったといえるから、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することができる。
参照条文等
譲渡契約の日以降も不動産所得を生ずべき業務の用に供される建物の未償却残高について、譲渡所得の計算上、取得費として既に必要経費に算入されていることから、譲渡の日以後生ずる不動産所得の計算上、減価償却費には算入されないとした事例
裁決事例集 第74集 66頁
要旨
請求人は、建物移転補償金は、実際に建物を取り壊したときに対価補償金に当たるものとして取り扱うことができることからすると、本件建物等移転料については、本件建物を取り壊した平成16年分の所得として申告すべきであり、平成14年には本件建物の譲渡所得の総収入金額は発生していないから、本件修正申告は、申告義務のない違法な申告であり、本件各土地及び本件建物等移転料に係るいずれの譲渡所得も平成16年分となるべきである旨主張する。
しかしながら、譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は、譲渡所得の基因となる資産の引渡しがあった日によるが、納税者が当該資産の譲渡に関する契約の効力発生の日により総収入金額に算入して申告があったときは、これを認めることと取り扱われている。
そして、一の契約において、2以上の資産の譲渡が行われた場合、一部の資産について、その引渡しがあった日を譲渡の日とし、他の資産について、契約の効力が発生した日を譲渡の日として申告することは、納税者の選択により、契約の効力発生の日を譲渡の日として選択することを認めた趣旨に合致しない不合理なものであることから、認められないと解すべきである。
これを本件についてみると、請求人は、本件建物等移転料については租税特別措置法通達33-14の定めに従い、本件修正申告において、これを対価補償金として申告することを選択しており、その後、本件建物は平成16年3月下旬に取り壊されている。
また、本件建物等移転料の支払いに係る契約は、本件各土地の譲渡と一体不可分の契約であると認められ、本件各土地の対価補償金と本件建物等移転料のいずれもがこの契約により平成14年において、収入すべきことが確定した金額であると認められる。
そして、少なくとも、本件建物等移転料を対価補償金として譲渡所得の総収入金額に算入することを選択した場合には、本件各土地の対価補償金と本件建物等移転料の収入すべき金額に係る譲渡所得の収入すべき時期については、同一の基準で判断すべきであると認められるところ、請求人は本件各土地の対価補償金、残地補償金及び建物等移転料について、契約の効力発生の日の属する平成14年分の譲渡所得の総収入金額として修正申告しており、これは適法な申告であると認められる。
加えて、請求人は、本件修正申告において、譲渡所得の金額の計算上、本件建物等移転料の対象となった本件建物について、平成14年9月末現在の未償却残高を取得費として控除していることが認められ、これは所得税法第38条の規定に照らして適正なものであると認められるから、本件建物の取得に要した金額のすべては、請求人の平成14年分までの不動産所得及び譲渡所得の所得金額の計算上、その各所得の総収入金額から控除されている。
したがって、平成15年分の所得税の不動産所得の金額の計算において、本件減価償却費を必要経費とすることは、本件建物の取得に要した金額を超える金額を、所得の計算上控除することとなり、すなわち、投下資本の回収部分を超える金額を控除することになるから、本件減価償却費を必要経費に算入することは認められない。
要旨
請求人は、[1]改正所基通37-5(平成17年6月24日付課個2-23ほかにより一部改正された後の所得税基本通達37-5《固定資産税等の必要経費算入》をいう。以下同じ。)の定めから、本件登記費用が不動産所得の金額の計算上必要経費になることは明らかである旨、[2]最高裁判所平成17年2月1日第三小法廷判決(平成13年(行ヒ)第276号所得税更正処分取消請求事件。以下「平成17年2月最高裁判決」という。)を受けて、所得税基本通達37-5の見直しが行われたのであるから、改正所基通37-5の遡及適用を制限する定めを設けることは違法である旨、及び[3]判例は新しいものが優先されるものであるから、最高裁判所平成12年7月17日第一小法廷判決(平成10年(行ツ)第122号更正処分等取消請求上告申立事件。以下「平成12年7月最高裁判決」という。)をもって贈与により取得した資産に係る登録免許税等が必要経費に該当しないとの判断が是認されたと主張することは的外れである旨主張する。
しかしながら、大阪高等裁判所平成10年1月30日判決(平成9年(行コ)第6号更正処分等取消請求控訴事件)においては、納税者が、被相続人から、同人が営む不動産賃貸事業の用に供していた土地の贈与を受け、不動産賃貸事業を営むようになった場合に、その土地の所有権移転登記を経由するに際し納付した登録免許税等は、所得税法第45条第1項第1号所定の家事上の経費に該当し、同法施行令第96条第1号及び第2号所定の業務の遂行上必要であった経費には該当しないと解するのが相当である旨が判断され、そして、その上告審である平成12年7月最高裁判決においてもこの判断は是認されているところ、これを本件についてみると、本件の事実関係において、本件登記費用は、所得税法第45条第1項第1号の家事上の経費に該当すると認めるのが相当であるから、請求人の平成15年分の所得税に係る不動産所得の金額の計算上、本件登記費用を必要経費に算入することはできない。
なお、平成17年2月最高裁判決は、所得税法第38条《譲渡所得の金額の計算上控除する取得費》及び同法第60条《贈与等により取得した資産の取得費等》の規定の解釈及び適用について判示したものであって、同法第37条《必要経費》及び第45条の規定の解釈及び適用について判示したものではなく、平成17年2月最高裁判決をもって、平成12年7月最高裁判決を判例変更したものということはできず、上記の請求人の主張は理由がない。
また、改正所基通37-5の改正の経緯及び理由によれば、相続等により取得した業務の用に供される資産に係る登記費用等は、事業活動と直接の関連をもつ事業の遂行上必要な費用ではなく、本来、必要経費には当たらないところ、平成17年2月最高裁判決の結果、業務の用以外の用に供される資産については、相続等により取得した場合と購入により取得した場合の登記費用等がいずれも取得費とされるのに対し、業務の用に供される資産については、相続等により取得した場合は取得費とされる一方、購入により取得した場合は必要経費に算入され、よって両者の場合の取扱いに差異が生じることとなるため、ある時期(平成17年1月1日)以降の相続等により取得した業務の用に供される資産に係る登記費用等を、購入により取得した場合の取扱いとのバランスに配慮して、必要経費に算入する取扱いにしたというものであるから、改正所基通37-5の定めを根拠にして請求人の本件登記費用が必要経費に当たるということはできない。
本件土地等は、貸付けの用に供されることが客観的に明らかとは認められないから、不動産所得を生ずべき業務の用に供されている資産には該当せず、本件土地等の取得に要した借入金利子等の額は、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないとした事例
裁決事例集 第49集 23頁
要旨
請求人は、請求人が取得した本件土地等に係る不動産取得税、登記費用、固定資産税、借入金利子及び保証料(以下、これらを併せて「本件借入金利子等」という。)の額については、不動産所得の金額の計算上必要経費の額に算入すべきである旨主張するが、請求人は、平成2年6月29日に本件土地等を取得して以来、これを利用するためにホテル等の建設を計画しその建物の設計図を作成するなど、本件土地を貸付けの用に供する意思を有していたことはうかがえるものの、いまだ計画した建物の建設着工がなされていないばかりか、本件土地の上に建物を建設するために必要な開発許可の申請や建物建設請負契約の締結、既存建物の取壊し等すら行われていないことからすれば、本件土地等については、貸付けの用に供されることが客観的に明らかであるとは認められない。
したがって、本件土地等は、不動産所得を生ずべき業務の用に供されている資産には該当しないものであり、本件借入金利子等の額は、請求人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。
ポイント
この事例は、請求人の配偶者が所有し、賃貸の用に供していた建物等を同人の死亡により請求人が相続し、これを賃貸の用に供して不動産所得を得ていたところ、当該不動産所得の金額の計算上必要経費に算入する減価償却費に係る当該建物等の耐用年数につき、いわゆる中古資産に係る簡便法による耐用年数が適用できるか否か判断したものである。
要旨
請求人は、所得税法第60条《贈与等により取得した資産の取得費等》等の取得には相続による取得が含まれることを当然の前提としている一方で、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(耐用年数省令)第3条《中古資産の耐用年数等》に規定する取得には相続を除く旨の明文の規定はないので、文言解釈の統一性の要請から、同条における取得にも相続による取得が含まれる旨主張する。
しかしながら、耐用年数省令第3条第1項は、所得税法施行令第126条《減価償却資産の取得価額》第1項の規定する取得時における当該減価償却資産の当該取得価額(購入対価等の額ないし時価相当額等)をその取得後における効用持続期間において費用化することを前提とする規定であるところ、減価償却資産を相続等により取得した場合については、所得税法第60条の規定を受けた所得税法施行令第126条第2項において、相続人等は、当該減価償却資産を被相続人等の前所有者からの取得価額により取得したものとし、相続人等と被相続人等との間でいわゆる取得価額の引継ぎを行うものとして償却費の額の計算をすることとされているのであるから、取得時における当該減価償却資産の当該取得価額をその取得後における効用持続期間において費用化することを前提とする耐用年数省令第3条第1項の規定を適用して相続等による取得後の当該減価償却資産に係る償却費の額の計算を行うことはできないというべきである。
参照条文等
貸金返済債務の遅延損害金支払債務は、弁済期を経過した日以後、日々経過するごとに必要経費に算入すべき金額が確定するとした事例( 平成28年分及び平成29年分の所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分、 平成30年分及び令和元年分の所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・ 一部取消し、 棄却)
裁決事例集 第130集
ポイント
本事例は、貸金返還債務が約定に従って弁済されない場合に生じる遅延損害金支払債務は、遅滞が生じた日以後、日々経過するごとに所得税基本通達37-2《必要経費に算入すべき費用の債務確定の判定》が定める要件の全てを満たすものと解するのが相当であり、約定に従った弁済がなされない日からその元本の弁済がされる日までの日数に応じて、約定に従った弁済がなされない貸金返還債務の金額に約定で定められた遅延損害金利率を乗じて計算した金額が、その年に債務が確定した遅延損害金支払債務の金額となるとした事例である。
要旨
請求人は、貸金返還債務の遅延損害金支払債務は、その弁済の時期や金額等の借主と貸主との合意内容によってその確定時期が左右され、分割払の合意がされた場合は、所得税基本通達37-2の2《損害賠償金の必要経費算入の時期》の注書や法人税基本通達2-1-43《損害賠償金等の帰属の時期》の趣旨に基づき、遅延損害金の必要経費算入時期は、支払った日の属する年となることから、未払遅延損害金の分割払の合意に基づき支払った金額は、当該年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額である旨主張する。
しかしながら、貸金返還債務の遅延損害金支払債務は、①その本質が債務不履行(履行遅滞)に基づく損害賠償債務であるから、債務自体は弁済期を経過した時点で成立するものの、②その元本の弁済がされるまで遅滞が積み重なることで日々給付の金額が増加することから、各日ごとに具体的な給付をすべき原因となる事実が発生しており、③遅延損害金利率と弁済期からの経過日数によりその金額が算出することができるから、遅滞が生じた日以後、日々経過するごとに所得税基本通達37-2《必要経費に算入すべき費用の債務確定の判定》の要件を全て満たすと解するのが相当である。したがって、約定に従った弁済がなされない日からその元本の弁済がされる日までの日数に応じて、約定に従った弁済がなされない貸金返還債務の金額に約定で定められた遅延損害金利率を乗じて計算した金額が、その年に債務が確定した遅延損害金支払債務の金額となり、当該年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額となるのであって、過年分に発生した遅延損害金支払債務について、弁済時期等の合意がされても、その確定時期は左右されず、弁済した年分の必要経費に算入することはできない。
参照条文等
一括して売買された土地及び建物の購入の対価は、合理的な基準によりあん分して算定すべきであるとされた事例(平成28年分から平成30年分までの所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第128集
ポイント
本事例は、土地と建物が一括して売買され、当該売買契約において定められた土地及び建物それぞれの価額がその客観的な価値と比較して著しく不合理なものである場合には、所得税法施行令第126条第1項第1号イにいう「当該資産の購入の代価」は、合理的な基準により算定するのが相当であると判断したものである。
要旨
請求人は、土地及び建物を一括で3物件(本件3物件)買い受けて貸付けの用に供したところ、各売買契約書に記載された土地及び建物の各価額(本件各内訳価額)は第三者間での相対の商取引において合意された価額であって合理的な価額といえるから、当該各建物に係る所得税法施行令第126条《減価償却資産の取得価額》第1項に規定する「当該資産の購入の代価」は、本件各内訳価額に基づいて算定すべきである旨主張する。
しかしながら、固定資産税評価額は一般的に適切な時価を反映しているといえるところ、本件3物件の各売買代金総額は各固定資産税評価額総額を上回るのに対し、各建物価額はその固定資産税評価額を大きく上回る一方、各土地価額はその固定資産税評価額と同様か又は下回っている。本件においてそのような評価とすべき事情は見当たらず、本件各内訳価額に係る各建物価額は、各売買代金総額から過剰に価額が配分されたものというべきであり、客観的な価値と比較して著しく不合理なものである。そして、売主が土地及び建物を一括して譲渡する場合、建物の購入の代価について、売買代金総額を土地及び建物の各固定資産税評価額の価額比によりそれぞれあん分して算定することは、一般的には合理的な基準による算定であるといえるところ、本件各内訳価額に係る各建物価額についてはいずれも上記の不合理な場合に該当し、また、本件3物件の各固定資産税評価額が適正な時価を反映しているとはいえないような事情もないから、本件3物件に係る各建物の購入の代価は、本件3物件の各売買代金総額を土地及び建物の各固定資産税評価額比によりそれぞれあん分して算定すべきである。
なお、本件3物件のうち2物件の各建物に係る取得価額に加算すべき仲介手数料の金額等及び本件3物件の各仲介手数料に係る繰延消費税額等について、いずれも計算誤りがあると認められるため、原処分はその一部を取り消すべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
大阪地裁令和2年3月12日判決(税資270号順号13395) 那覇地裁平成20年8月6日判決(税資258号順号11001) 那覇地裁平成16年9月21日判決(税資254号順号9752)
建物の取壊し費用などについて不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないとした事例(令和元年分から令和3年分の所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第139集
ポイント
本事例は、建物の取壊し費用などが当該建物の所有を目的とする借地権の取得費に算入されるものであり、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないとしたものである。
要旨
請求人は、自己の所有する土地に係る借地権(本件借地権)及び本件借地権上の建物(本件建物)を訴訟上の和解により取得しており、当該和解に伴う弁護士費用(本件弁護士費用)、本件建物の賃借人に対する移転補償料(本件移転補償料)、本件建物の取壊し費用(本件取壊し費用)及び本件建物の取壊しによる未償却残高は、いずれも不動産事業に係るものであるから、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入される旨主張する。
しかしながら、請求人は、当初から本件建物を取り壊して本件借地権を利用する目的で、本件建物及び本件借地権を訴訟上の和解により取得したことが明らかであると認められ、本件弁護士費用、本件移転補償料、本件取壊し費用及び本件建物の取壊しによる未償却残高は、いずれも本件借地権の取得に関連して発生した費用であるから、所得税法第38条《譲渡所得の金額の計算上控除する取得費》第1項の資産の取得に要した費用として本件借地権の取得費に算入されるものであり、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。
参照条文等
参考判決・裁決
仙台高裁令和3年9月30日判決(税資271号順号13610) 平成元年10月6日裁決(裁決事例集No.38) 昭和48年3月31日裁決(裁決事例集No.6)
一括して売買された土地及び建物の購入の対価は、合理的な基準によりあん分して算定すべきであるとされた事例( 平成28年分及び平成29年分の所得税及び復興特別所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分、 平成30年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・ 棄却、 一部取消し)
裁決事例集 第129集
ポイント
本事例は、土地と建物が一括して売買され、その土地及び建物の個別の購入の対価が明らかでない場合、所得税法施行令第126条第1項第1号イにいう「当該資産の購入の代価」は、合理的な基準により算定するのが相当であると判断したものである。
要旨
請求人は、国外において一括取得した賃貸用の土地及び建物(本件各物件)に係る売買契約書に売買代金総額しか記載がなかった場合、本件各物件における各土地及び各建物の購入の代価は、請求人が取得した不動産鑑定評価書における各鑑定評価額の割合で区分すべきであり、個別的な事情が捨象され、米国e州(現地)の法令等に反する方法で評価された現地の固定資産税評価額の割合で区分すべきではない旨主張する。
しかしながら、本件各物件については、建物の減価償却費の額の算出に当たり、合理的な方法によって本件各物件の土地及び建物の購入の代価を区分する必要があるところ、現地の固定資産税評価額は、同一の公的機関が同一時期に合理的な評価基準によって請求人が本件各物件の所有権を取得した時点の市場価値を評価したものであると推認され、かかる推認を妨げる特段の事情に当たると評価すべき事実があるとは認められない。したがって、本件各物件に係る建物の購入の対価を算定するに当たっては、現地の固定資産税評価額の割合によって区分して算定すべきである。
また、原処分庁は、本件各物件のうち平成30年に取得した物件の変更後の固定資産税評価額については、請求人が弁護士を通じて自身に有利になるよう査定官に働きかけ、故意に作出させた可能性が排除できないため、変更前の固定資産税評価額を用いるべき旨主張する。
しかしながら、現地では、固定資産の所有者がその固定資産税評価額に同意できない場合、その評価額の見直しを求める不服申立制度があり、一度評価された固定資産税評価額が事後に変更され得ることは予定されているため、査定官の職権により事後に変更されたことをもって故意に作出させたなどということができない。したがって、平成30年に取得した物件については、変更後の固定資産税評価額を用いるべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
東京地裁平成30年4月12日判決(税資268号順号13139)
【 税務法規集に掲載する法令等の情報に関する注意事項 】
- 本サービスは、デジタル庁が管理するe-Gov法令検索のデータ、国税庁がホームページを通じて提供する通達等の情報および国税不服審判所の公表裁決事例・裁決要旨を利用しています。
- 法律の専門家が分類・整理した情報を元に、プログラムで自動的に法令等を解析し、関連する情報を統合的に閲覧できるように再編集していますが法令等の内容については、明白な誤りや文字種の統一などの形式的な点を除き、変更しておりません。
- 各法令等の施行日等の情報は法令等の名称の横にある マークのボタンからご覧いただけます。また、当該法令の元データにもその情報表示部分からアクセスすることができます。
- 本サービスの提供者は、デジタル庁および国税庁とは関係がなく、またこれらの機関を代表するものでもありません。
- 本サービスの提供者は、表示される情報に誤りがないように努めていますが、利用者による本サービスの利用に関する結果に対して一切の責任を負いません。