裁決事例 無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務
要旨
請求人が滞納者から不動産の売買契約の不履行により、保証金を没収したことが国税徴収法第39条に規定する無償譲渡に該当するかどうかは、保証金と対価的関係に立つ請求人の給付の存否を確定することによって判定すべきであるところ、請求人は本件不動産の保全に要した資金に係る金利その他諸費用一切の負担をすることになっていて、これらの負担と対価的関係に立つ金員として保証金を取得したこと、かつ、没収されるべき保証金の額が当該給付の内容等に照らして不相当に高額でないことが認められるから、当該没収は無償譲渡に当たらず、したがって、原処分庁が同条の規定に基づいてなした第二次納税義務の告知処分は相当でない。
死亡した滞納者からその生前に無償譲渡等の処分により権利を取得した者は死亡後においても第二次納税義務を負うとされた事例(第二次納税義務の納付告知処分、納付催告書による督促処分・一部取消し)
裁決事例集 第114集
ポイント
本事例は、納税者の国税の法定納期限の1年前の日以後に同人がその財産につき無償譲渡等の処分を行い、その後死亡した場合には、死亡後の第二次納税義務を負わせるかどうかの判定をしようとする時の現況において、死亡により相続人に承継された国税につき滞納が生じており、滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められ、かつ、その不足することが当該無償譲渡等の処分に基因すると認められるときは、当該無償譲渡等の処分により権利を取得した者は第二次納税義務を負うと解するのが相当であるとしたものである。
要旨
請求人は、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》は、滞納者である主たる納税者が贈与等を行った場合の規定であるところ、被相続人から請求人への土地の贈与(本件贈与)は、請求人が被相続人(本件被相続人)から受けたものであって、相続人(本件相続人ら)から受けたものではないため、滞納者である主たる納税者(本件相続人ら)が請求人に対して贈与等を行った事実はなく、本件贈与は、本件被相続人の死亡後においては、国税徴収法第39条に規定する滞納者が行ったとの要件を満たさないから、滞納者であった本件被相続人が行った無償譲渡等の処分により権利を取得した請求人は、本件被相続人の死亡後においては、第二次納税義務を負わない旨主張する。
しかしながら、納税者の国税の法定納期限の1年前の日以後に同人がその財産につき無償譲渡等の処分を行い、その後死亡した場合には、死亡後の第二次納税義務を負わせるかどうかの判定をしようとする時の現況において、死亡により相続人に承継された国税につき滞納が生じており、滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められ、かつ、その不足することが当該無償譲渡等の処分に基因すると認められるときは、当該無償譲渡等の処分により権利を取得した者は第二次納税義務を負うと解するのが相当である。
ただし、本件各納付告知処分に係る納付すべき限度の額はそれぞれ○○○○円とされているところ、本件相続人らは、本件被相続人の死亡により本件被相続人の滞納国税の納付義務を承継している以上、当該納付すべき限度の額については、民法第900条及び第901条の規定によるその相続分によりあん分した額、すなわち、○○○○円を本件相続人らの相続分(2分の1)であん分して計算した額となる。そうすると、本件各納付告知処分に係る納付すべき限度の額は、それぞれ○○○○円となる。したがって、本件各納付告知処分は、納付すべき限度の額につき○○○○円を超える部分はいずれも違法となる。
参照条文等
滞納会社が行った生命保険の委託先代理店の変更が国税徴収法第39条の「第三者に利益を与える処分」に当たるとした事例(第二次納税義務の納付告知処分・一部取消し)
裁決事例集 第109集
ポイント
本事例は、滞納会社が行った生命保険の委託先代理店の変更により、代理店たる契約上の地位が滞納会社から請求人に譲渡された結果、請求人は滞納会社が行った保険募集業務に係る代理店手数料を受領することとなったことが認められ、当該代理店手数料相当額の利益を受けたと認められるとしたものである。
要旨
請求人は、生命保険の代理店業を営む滞納会社(本件滞納会社)には、保険会社との代理店業務委託契約における契約上の地位を第三者に譲渡する権限はないこと、代理店手数料は請求人自らが行った業務の対価として、請求人が受け取るべきものといえることなどを理由に、本件滞納会社から請求人への代理店の変更によって、本件滞納会社から国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に規定する利益は受けていない旨主張する。
しかしながら、本件滞納会社及び請求人による保険会社に対する代理店の継承に係る承認申請等(本件申請)は、代理店としての地位を譲渡する手続を履践する目的で行われたものと認められ、本件申請から保険会社による承認までの一連の行為(本件委託先代理店変更)によって、本件滞納会社の代理店たる契約上の地位(本件契約上の地位)が請求人に譲渡された結果、請求人が代理店手数料を受領することとなったことが認められる。また、代理店手数料は、保険募集業務の遂行に基づく保険契約の獲得がなければ発生しないものである一方、保険契約の締結に至った場合には、解約等の事象が発生しない限り、保険契約者は契約期間にわたって保険料を支払うこととなるのであるから、当該保険料に係る代理店手数料は、その発生について高度の蓋然性があるということができ、本件契約上の地位には財産的価値が認められる。
したがって、本件契約上の地位は、国税徴収法第39条の処分の対象たる積極財産に該当し、本件委託先代理店変更によって、請求人は、本件契約上の地位を本件滞納会社から無償で譲り受けた結果、本件契約上の地位の評価額に相当する利益を受けたといえることから、本件委託先代理店変更は、国税徴収法第39条に規定する第三者に利益を与える処分に該当するものと認められる。
ただし、原処分庁が算定した納付すべき限度の額の一部については、本件契約上の地位の内容には含まれていない月分の代理店手数料等を考慮して算定されており、当該金額については納付すべき限度の額に含めることはできない。
参照条文等
参考判決・裁決
東京地裁平成26年6月27日判決(訟月61巻2号477頁)
要旨
請求人は、滞納法人の滞納国税の徴収不足は、請求人が債権放棄を受けたことに基因するものではない旨主張するが、原処分庁が滞納法人に対し、差押え等の執行ができた昭和59年1月17日の時点における滞納法人の主な資産はB社に対する貸付金及び手形債権であったことが認められるけれども、当時、B社は、事実上の倒産状態にあり、その実質的な資力を喪失していたことが認められ、したがって、原処分庁が、滞納法人がB社に対して有する債権の差押えをしてもその回収が見込めず、本件滞納国税を徴収できなかったことは明らかであるし、また、徴収法第39条に規定する徴収不足と無償譲渡等との間の基因関係について、同条の解釈としては、当該無償譲渡等の処分がなかったならば、徴収不足を生じなかったであろうということができる場合には、基因関係を認めるのが相当であるとされているところ、B社に係る債権債務を除いた滞納法人の純資産は84,297,111円であるのに、滞納法人が行った債権放棄の金額は67,792,041円となることが認められ、この債権放棄がなければ本件滞納国税にかかる徴収不足は生じなかったであろうということがいえるから、本件債権放棄と本件滞納国税の徴収不足との間の基因関係を認めることができるというべきである。
訴訟上の和解における停止条件付の支払義務の免除も国税徴収法第39条に規定する「債務の免除」に含まれ、他に特別の事情も認められないことからすると、同条規定の「債務の免除」があったということができるとした事例(第二次納税義務告知処分・棄却)
裁決事例集 第102集
ポイント
本事例は、訴訟上の和解における停止条件付の支払義務の免除も国税徴収法第39条に規定する「債務の免除」に含まれると判断した事例である。
要旨
請求人は、原処分庁が滞納国税を徴するために請求人に対して行った国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に基づく納付告知処分は裁判上の和解(本件和解)で定められた条項に基づいて滞納法人から支払義務の免除(本件免除)を受けたことを同条に定める「債務の免除」とするものであるが、本件免除に係る本件和解上の条項は、請求人が滞納法人に支払うとされた金額の履行を確保するために設けられたものであり、請求人が期限の利益を喪失した場合を除いて何ら意味を持つものではないから、同条に定める「債務の免除」には該当しない旨主張する。
しかしながら、本件和解は、滞納法人が請求人に対して停止条件付で債務を免除する旨を合意した契約であり、このような契約による免除も国税徴収法第39条の「債務の免除」に含まれると解されるところ、本件免除は同条の制度趣旨に合致するといえるだけの実質を有するものと評価できることから、同条に定める「債務の免除」があったといえる。
参照条文等
国税徴収法第39条 民法第695条 民事訴訟法第267条
要旨
国税徴収法第39条に規定する「著しく低い額の対価」と認められるか否かは、結局、その財産の種類、数量の多寡、時価と対価との差額の大小、その他諸般の事情を総合的に考慮して、時価(通常の取引価格)に比較して社会通念上著しく低い額と認められるか否かにより判断するほかなく、不動産のように、時価が必ずしも明確でなく、人により評価を異にする値幅のある財産については、国税徴収法基本通達第39条関係6の注書の1に定めるように、時価のおおむね2分の1に満たない額をもって、著しく低い額による対価と解するのが相当である。
これを本件についてみると、本件不動産の譲渡時における時価は、当審判所の依頼した不動産鑑定士の鑑定の結果によれば165,000,000円と評価されており、その手法及び過程において特に不合理な点は認められないから、これと同額と認められ、他方その対価は100,000,000円であり、当該対価は時価の約61%とその2分の1を相当上回っている。その上、当審判所の調査によれば、請求人は、納税者から、このままでは税金の納付や借入金の支払ができないと懇請されて、やむを得ず、需要の低い転売の見込みもない本件不動産を譲り受けることとし、実際、現在にいたるまで転売もしていないのであって、このような状況を考えると、本件対価とその時価との差額が65,000,000円に及ぶからといって、請求人に補充的を負わせなければ公平の理念に反するとはいえない。また、原処分庁の主張するように当該譲渡につき詐害行為に該当する行為があるとしても、第二次納税義務は、詐害行為取消権と制度の趣旨及びその要件、効果を異にしているので、そうであるからといって当然に第二次納税義務を負うことにはならない。したがって、本件譲渡は「著しく低い額の対価による譲渡」に該当せず、請求人に対してなされた第二次納税義務告知処分は違法であるから、その全部を取り消す。
請求人と滞納会社が共同して売却した本件不動産(土地は各別に所有、建物は共有)の売却代金について、不動産の持分に応じて配分を受けるのが相当であるから、請求人は受けた利益を限度として滞納国税につき第二次納税義務を負うとした事例
裁決事例集 第55集 757頁
要旨
請求人は、[1]請求人所有の土地(以下「本件土地」という。)は滞納会社からの要請により購入したものであるが、通常の価額より高価で購入せざるを得なかったこと及び[2]共有建物(以下「本件建物」という。)にあった請求人の工場を閉鎖したことによる各損失の補てんを受けることを条件に滞納会社と共同での売却を承諾したものであり、当該損失補てんの額を売却代金の配分額に含めて受領したのであるから、合理的な理由があり、第二次納税義務を負うものではない旨主張する。
しかしながら、上記[1]については、本件土地を通常の価額より高額で購入せざるを得なかった理由が証拠上明らかでなく、また、仮に通常の価額より高額で取得した土地が売却時の通常の価額より高額で売却できなかったとしても、損失を被ったということはできないこと及び上記[2]については、利益が生じている工場を直ちに閉鎖することは通常の経済人の選ぶところではなく、また、売却前の年間利益の5年分の損失補てんを相当とする理由についての主張・立証もないことから、請求人の主張は採用することができない。さらに、請求人の代表者親子が請求人及び滞納会社の発行済株式又は出資金額の過半を占め、双方の役員を兼ね、滞納会社の代表者も請求人の役員を兼ねていたこと及び本件建物の増築が請求人の計算によりなされてきたことからみて、請求人と滞納会社とは独立の経済人として相対する状況にあったとは認められず、また、請求人が明確な根拠をもって上記損失の額を滞納会社に要求していたとは認められない。
したがって、請求人が配分を受けるべき金額は、本件土地の評価額及び本件建物の持分に応じた金額とするのが相当であり、それを超える金額について、請求人は滞納会社から無償による利益を受けたものと認められる。
要旨
遺産分割協議が国税徴収法第39条に規定する処分に該当するかどうかについては、遺産分割協議が、相続の開始によって共同相続人の共有となった相続財産の全部又は一部を各相続人の単独所有とし、又は新たな共有関係に移行させることによって、相続財産の帰属を確定させるものであることから、その法的性質は、財産権を目的とする法律行為であり、処分に該当すると解するのが相当である。
請求人らは、Kに対する立替金の返還を求めないことを対価として本件持分譲渡を受けたものであるから、国税徴収法第39条に規定する無償譲渡等の処分に該当せず、本件告知処分は違法である旨主張し、それを証明するものとして本件覚書を提出している。
しかしながら、請求人らが覚書を証拠として主張する立替金については、[1]その立て替えたとする金額が確定できないこと、[2]親子間に特有の資金交流と認められること、[3]金銭消費貸借契約書等の作成もないこと、[4]覚書は、審査請求の段階で初めてその存在が主張されたこと、及び、[5]請求人らは、審査請求前は上記主張とは別の説明をしていたことが認められる。そうすると、覚書は、その内容が実態を伴っておらず、滞納者と請求人らとの間で覚書記載のとおりの合意がされたものとは認められない。
したがって、本件持分譲渡は、国税徴収法第39条の規定する第二次納税義務の無償による譲渡等の処分に該当する。
要旨
請求人は、滞納法人は評価額328百万円又は347百万円の貸付金を有しているところ、本件滞納国税は約260百万円であるから、本件告知処分は、第二次納税義務の要件である「徴収不足」を充足していない旨主張する。
しかしながら、貸付債権を評価するに当たっては、一定利率の下で複利計算して一定期間後に一定額を受け取るために現在要する額を算出する方法によって得られた金額のみにとらわれることなく、国税債権の徴収確保という観点から、差し押さえた財産が公売によって国税債権額に見合う額で確実に回収できるものか否かという観点からも検討されてしかるべきであり、そのためには、貸付条件の内容等をも考慮に入れ、特定の者の主観的価値や愛着的価値によることなく、客観的な交換価値、すなわち市場性をもった交換価値であるか否かという総合的な見地から行うのが相当である。
これを本件貸付金についてみると、その貸付金の第三債務者(同族法人)の営業収益等及び財務状態(①年平均営業利益は約860万円の赤字となっていること、②約定による弁済が不履行となっていること、③債務超過であること等)並びに本件貸付契約の内容(①貸付金が多額であるにもかかわらず無担保で連帯保証人もいないこと、②無担保であるにもかかわらず返済期間が長期で、かつ、低利であること、③返済期限が不確定要素を含み、かつ、債務不履行に関する約定がないこと)をもってすれば、社会通念上、本件貸付金は、同族法人グループ内でのみ通用するものであり、しかも、その市場性は限られたものとなり、公売を前提とした客観的な交換価値としての評価は極めて低い額になるものと思料される。さらに、本件貸付金については、返済期限が不確定要素を含んでいること及び債務不履行に関する約定がないことを併せて考慮すれば、むしろ市場性をもった交換価値を認めることはできず、公売財産として不適当なものというべきであるから、徴収不足の判定から除外するのが相当である。そうすると、滞納法人の財産は「徴収すべき額に不足する」状態であったとみるのが相当である。
要旨
滞納会社が土地の譲渡代金の一部を同社の役員である請求人の債務の弁済に充当したことは、請求人が同社から利益を受けたものであると原処分庁は主張するが、請求人は滞納会社が本件土地を取得した際、その取得代金を滞納会社に立替えていて、当該立替えによる債権を有していたことから、滞納会社は当該立替金を請求人に返済したものと認められる。
したがって、請求人は滞納会社から利益を受けていないのであるから、請求人に対する第二次納税義務の告知処分は違法である。
担保権付不動産の贈与を受けた場合における国税徴収法第39条の第二次納税義務の限度額の算定に当たり、当該担保権の存在を減額要因として認めなかった事例
裁決事例集 第76集 542頁
要旨
請求人は、請求人が夫から贈与を受けた不動産には担保権が設定されており、いつ担保権を実行されるかもしれない状況にあったこと、また、その後、当該担保権の被担保債権について請求人が保証したことから、当該贈与時における当該不動産の価額は零円であり、したがって、国税徴収法第39条の受けた利益も零円となるから、請求人が負うべき第二次納税義務はない旨主張する。
しかしながら、贈与を受けた不動産に担保権が設定されていたとしても、一般に、担保権が実行されるか否かは不確実であり、また、担保権が実行されたとしても債務者に求償することが可能であるから、受贈者が贈与とともに債務を引き受けた場合や贈与を受けた時に債務者が弁済不能の状態にあるため担保権を実行されることが確実であり、かつ、債務者に求償しても弁済を受ける見込みがないという場合を除き、担保権が設定された贈与不動産の価額は、担保権が付されていないとした場合の不動産の時価によるべきところ、請求人及び夫にはこれらの事情が認められず、また、債務を保証したとしても、当然に債務を引き受けたことにはならないので、請求人が当該贈与により受けた利益の額は当該不動産の時価となり、その価額を財産評価基本通達により算定すると、請求人が贈与税の課税価額として申告した額と同額になる。そうすると、請求人は、贈与価額を限度として、夫の滞納国税に係る第二次納税義務を負うことになるから、請求人の主張には理由がない。
要旨
滞納会社の代表者である請求人は、同社の家賃収入計上漏れ等に係る金員を贈与により取得した事実はないことを理由に同社の滞納国税の第二次納税義務を負うものではない旨主張するが、請求人は同社の家賃収入計上漏れ等により生じた簿外の金員を取得しており、それは同社からの請求人に対する贈与であると認められ、また、当該滞納国税について同社に対する滞納処分を執行してもなお徴収不足を生じると認められることが、その国税の法定納期限の1年前の日以後に行われた当該贈与に起因すると認められる。
したがって、原処分庁が国税徴収法第39条の規定に基づき、滞納会社の特殊関係者である請求人に対し、当該贈与に係る金額を限度としてなした第二次納税義務の告知処分は相当である。
要旨
請求人は、原処分庁が請求人に対して行った第二次納税義務の納付告知処分(本件告知処分)について、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》の第二次納税義務を課すには詐害の意思が必要であるところ、滞納者が請求人に対して行った土地の持分の贈与(本件譲渡)には詐害の意思はないから、本件譲渡は無償譲渡等の処分に該当しない旨主張する。
しかしながら、同条の規定によれば、滞納者に詐害の意思のあることは同条所定の第二次納税義務の成立要件ではないと解されるから、本件譲渡に詐害の意思がないことを理由に、本件告知処分が違法であるということはできない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成21年12月10日第一小法廷判決(民集63巻10号2516頁)
請求人は、過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引につき、二個の貸付取引の存在を主張し、最初の過払金返還請求権について時効による消滅を主張しているが、その全体が一個の貸付取引であると認められ、過払金返還請求権の消滅時効は、本件取引の終了日である最終弁済日から進行するとして、請求人の主張を排斥した事例(第二次納税義務の納付告知処分・一部取消し)
裁決事例集 第106集
要旨
請求人は、国税の滞納者との間で行った金銭消費貸借取引(本件取引)は、本件取引1と本件取引2との二つに分かれており、前後二個の貸付取引が成立・存在するためには、原則として二個の基本契約の成立が要求されるところ、本件取引2においても、本件取引1とは法律的同一性を欠く基本契約が締結されていたものであり、本件取引1の終了時から10年を経過し、本件取引1に係る過払金返還債務は時効により消滅している旨主張する。
確かに、本件取引1における最終の弁済から本件取引2の最初の貸付までの期間は約1年11か月であり、本件取引1と本件取引2では、約定利率の変更がされるなどの事実が認められるが、本件取引2の開始日において、基本契約が締結され、契約書が取り交わされた事実は認められず、本件取引1の最終弁済後も、将来において取引を再開し、新たな借入金債務の発生が見込まれる状態にあったことに照らせば、本件取引は、その全体が本件取引に係る基本契約に基づく一個の貸付取引であると認めるのが相当である。過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては、同取引により発生した過払金返還請求権の消滅時効は、同取引が終了した時から進行するものとされており(最高裁平成21年1月22日判決)、したがって、一個の貸付取引である本件取引の終了日は、本件取引(本件取引2)の最終弁済日であり、過払金返還請求権の消滅時効は、同日から進行する。
参考判決・裁決
最高裁平成6年12月6日第三小法廷判決(民集48巻8号1451頁) 最高裁平成15年7月18日第二小法廷判決(民集57巻7号895頁) 最高裁平成19年6月7日第一小法廷判決(民集61巻4号1537頁) 最高裁平成19年7月13日第二小法廷判決(民集61巻5号1980頁) 最高裁平成21年1月22日第一小法廷判決(民集63巻1号247頁)
請求人を所有者とする不実の登記がなされている不動産を滞納法人が請求人に取得させた行為が、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》の第三者に利益を与える処分に該当するとしてされた納付告知処分について、当該不動産があたかも請求人所有の不動産であったかのような会計処理が行われていることをもって不動産の所有権を請求人に取得させたとは認められないと判断した事例
裁決事例集 第120集
ポイント
本事例は、請求人を買主として作成された不動産売買契約書について、処分証書ではないとして契約の成立を否認した上で、仮に契約が成立したと認められるとしても、内心の意思とは異なる意思表示について売主は悪意であったといえるから、民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)第93条《心裡留保》ただし書の規定により無効であるという判断をしたものであり、また、会計処理等によっては不動産の所有権移転が認められず、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》の第三者に利益を与える処分がされたとはいえないと判断したものである。
要旨
請求人は、買主を滞納法人とする4月付の売買契約(4月売買契約)は解除合意(本件解除合意)がされ、その後、買主を請求人とする5月付の売買契約(5月売買契約)が成立しており、これを無効とする事情はないから、5月売買契約に基づいて、請求人名義で不実の登記がなされた各不動産(本件各不動産)を取得した旨主張する。
しかしながら、事実関係からすれば、請求人が5月売買契約に係る契約書(5月売買契約書)を作成する意思は有していたとしても、その作成によって、本件各不動産を請求人が買い受ける旨の意思表示がされたものとは認められない。仮に5月売買契約書等の作成によって、請求人等がこれらの書面に記載されたとおりの意思表示をしたと認められるとしても、事実関係を前提とすれば、内心の意思とは異なる意思表示がされ、これを売主も認識していたといえるから、いずれにしても民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)第93条《心裡留保》ただし書の規定により、5月売買契約等は無効となる。
また、原処分庁は、請求人を所有者とする不実の登記がされた本件各不動産について、①本件各不動産の売買代金を仮払金として計上していた滞納法人が、売買後、これを請求人に対する貸付金に振り替え(本件会計処理)、請求人が、本件各不動産の賃料収入を売買時から遡って計上したこと、②滞納法人の代表者が請求人も支配できる立場にあり、税務調査を切り抜けるためにこれらの会計処理をしたこと等からすれば、本件会計処理の日に本件各不動産の所有権は滞納法人から請求人に移転している旨主張する。
しかしながら、滞納法人は、本件会計処理の日以降も本件各不動産の賃料収入を受領しており、その余の事情を考慮しても、本件各不動産の所有権が請求人に移転したと認めるに足りる証拠もないことから、本件会計処理の日に本件各不動産の所有権が滞納法人から請求人に移転したとは認められない。
参照条文等
国税徴収法第39条 民法第93条(平成29年法律第44号による改正前のもの)
国税徴収法第39条における債務免除により受けた利益の額は、債務免除の対象となった債権の額面上の金額と同額であるとした事例(第二次納税義務の納付告知処分・棄却)
裁決事例集 第111集
ポイント
本事例は、国税徴収法第39条における債務免除により受けた利益の額とは、債務免除がされた時における債権の客観的時価に相当する価額をいい、当該価額の算定に当たっては、債務者の資産状況、支払能力等の債務者側の事情を踏まえて算定するのが相当であるとしたものである。
要旨
請求人は、債務免除(本件債務免除)当時における請求人の財務状況等から、その時点で請求人が破産した場合、一般債権者への配当はなかったこと、また、債務免除前に、事実上支払停止に陥っており支払能力はなかったことを理由に、滞納者が債務免除をした貸付金(本件貸金債権)の本件債務免除の時の価額は零円であるから、請求人が本件債務免除により受けた利益の額は零円である旨主張する。
しかしながら、債権の評価に当たっては、債務者の資産状況、支払能力等の債務者側の事情を踏まえて算定するのが相当であるところ、請求人は、本件債務免除当時、①手形交換所における取引停止処分や法的整理(再生手続、破産手続等)の開始決定及び事業の休廃業等の事実はなく、②事業活動は継続されており、本件債務免除の前後において相当の売上高を計上していたこと、③本件貸金債権の額を大きく上回る流動資産を有していたこと、④本件債務免除は、主要取引銀行に対し、請求人の代表者である滞納者の経営責任を明確にするために行われたものであり、本件貸金債権の回収が不可能又は著しく困難であるとして債務免除が行われたものではないことからすると、本件貸金債権の全部又は一部の回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるような特別な事情があったとは認められないから、債務免除により請求人が受けた利益の額は、本件貸金債権の額面上の金額と同額であるとするのが相当である。
参照条文等
国税徴収法第39条 民法第95条
国税徴収法第39条の規定による第二次納税義務を負う受贈者が相続時精算課税制度を選択したことによって財産の贈与を受けた後に納付すべきこととなる相続税は、同条の受けた利益の額を算定するに当たって受益財産の価額から控除することはできないとした事例
裁決事例集 第77集 567頁
要旨
請求人は、特定贈与者から生前贈与を受けて相続時精算課税を選択していた場合、国税徴収法第39条の規定により受贈者が負う第二次納税義務の限度となる「受けた利益の限度」を算定するに当たっては、相続時精算課税による相続税額を控除すべきであると主張する。
しかしながら、同条にいう「受けた利益の限度」の額は、同条が滞納者の親族その他の特殊関係者に、その受けた利益が後に現存しなくてもなお受けた利益の限度において第二次納税義務を負担させていることからすれば、その算定上受益財産の価額から控除すべき対価及び費用は、当該受益の時においてその存否及び数額が法律上客観的に確定しているものであることを要すると解するのが相当であるところ、贈与税の申告に当たって相続時精算課税を選択した相続時精算課税適用者がその後納付する相続税額は、特定贈与者の死亡による相続開始の時に、当該贈与により取得した財産と相続又は遺贈により取得した財産とを合計した価額から、相続債務や葬式費用、基礎控除等を控除した価額を基に相続税額を計算した上、既に支払った贈与税額を控除して算出するものであり、贈与によって取得した財産の価額のみならず、当該贈与から特定贈与者の死亡までの財産の得喪及び債務の増減、相続開始日までの推定相続人の人数の増減、当該贈与を受けた者が相続又は遺贈によって取得した財産の価額や相続債務等により、その存否又は納付すべき税額が決定されるのであるから、受益の時においてその存否及び数額が法律上客観的に確定しているとはいえない。
したがって、当該相続税は、国税徴収法第39条の「受けた利益の限度」の額の算定に当たり、受益財産の価額から控除することができないと解するのが相当である。
要旨
滞納者(会社)は、土地を譲渡した後代金の一部60,000,000円を第三者(2名)に対する債務の弁済の名目で流出し、これを当該第三者名義の預金に預け入れており、更にその資金が請求人(滞納者の代表取締役の妻が代表取締役である会社)に対し貸付金の名目で移動している。
しかし、[1]滞納者の帳簿には、当該第三者からの借入金の記載はなく、[2]当該第三者は、請求人の代表者の実弟(大学生)又は滞納者の代表者の娘婿であるところ、いずれも滞納者に対する債権及び請求人に対する債権の存在を否定していること等から、当該金員は、実質的には滞納者から請求人に直接渡ったものと認めるのが相当である。
また、請求人から滞納者に対する何らの反対給付もないことから、原処分庁がこの金員の範囲内である58,000,000円の限度で贈与と認定したことは相当である。
そうすると、滞納者についての徴収不足は、上記金員の贈与に基因すると認められるから、国税徴収法第39条に基づく第二次納税義務の告知処分は適法である。
要旨
原処分庁は、離婚9か月前にした請求人(滞納者の妻)に対する本件土地建物の贈与は国税徴収法第39条に規定する無償譲渡に該当するとして同人に第二次納税義務を課したが、[1]贈与当時、既に請求人は滞納者に対し離婚を申し出ており、その後も離婚の協議が継続していたこと、[2]離婚の協議が成立した際、滞納者と請求人との間で本件土地建物の贈与は離婚に伴う財産分与又は慰謝料の支払としての意味をもつものであることの了解があったこと、[3]離婚の原因が滞納者の家庭生活の放棄にも等しい行為に起因していることなどから、本件土地建物の贈与は、離婚に伴う財産分与又は慰謝料の支払の趣旨でなされたものであり、必要かつ合理的な理由があったものと認められるから、国税徴収法第39条に規定する無償譲渡には該当しない。
要旨
原処分庁は、本件不動産を滞納者が前所有者から購入し請求人に無償譲渡したとして、請求人に対し国税徴収法第39条の規定に基づいて第二次納税義務の告知をしたが、①滞納者は、本件不動産を購入する資金を有していたとは認められないこと及び②本件不動産は、請求人が自己資金により購入したものと認められることから、本件不動産の取得者は請求人とみるのが相当であり、原処分は取り消すべきである。
要旨
滞納会社の所有する本件土地持分を請求人が利用する場合の法律関係について、請求人は、使用貸借であって借地権の無償設定ではない旨主張するが、滞納会社の所有する本件土地持分の利用関係が無償のものであるからといって、直ちにこれを単なる使用貸借と即断することは相当ではなく、右土地持分の利用関係は、請求人らによる本件建物の新築によって開始されたもので少なくとも本件建物を長期間にわたって使用することが予定されたものであり、また、本件土地の共有者である滞納会社の代表取締役は、請求人の夫の父であり、同社の発行済株式の80パーセントに相当する株式は当該代表取締役の親族によって所有されていることからみて、滞納会社が請求人らに対して滞納会社の所有する本件土地持分の返還を求めるようなことは実際上ほとんど考えられないから、請求人らの、滞納会社の所有する本件土地持分の利用関係は、事実上、権利性のかなり強いものであって、税法上はこれを借地権と評価するのが相当である。
したがって、請求人らの本件建物の新築に際し、滞納会社の所有する本件土地持分につき無償で借地権が設定された事実が認められるので、請求人は、借地権の無償設定により、国税徴収法第39条にいう利益を受けたものというべきである。
第二次納税義務の納付告知処分の「受けた利益の限度」の額は、譲り受けた財産等の価額から無償譲渡等の処分と直接対価性のある支出又は負担を控除した残額であることを明らかにした事例
裁決事例集 第96集
要旨
請求人は、原処分庁が納税者(本件滞納者)の滞納国税を徴収するために、請求人に対して行った第二次納税義務の納付告知処分の「受けた利益の限度」の額について、請求人は本件滞納者から売掛金債権(本件売掛金債権)を譲り受けたが、請求人が本件滞納者に支出した香典代等(本件香典代等)は、請求人が本件滞納者に利益を与える行為であるから、「受けた利益の限度」の額の算定上、本件香典代等を控除すべきである旨主張する。
しかしながら、第二次納税義務の制度の趣旨に鑑みれば、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に規定する「受けた利益の限度」の額については、譲り受けた財産の額、免れた債務の額、又は享受した利益の額から、これらと直接の対価関係にあると認められる支出又は負担を控除した残額をいうところ、本件香典代等の支出は、本件売掛金債権の譲渡と直接の対価関係にあるとは認められないことから、請求人の主張には理由がない。
参照条文等
国税徴収法第39条が規定する「受けた利益」が取引相場のない株式である場合において、同条の第二次納税義務の限度額の算定に当たり、原処分庁がディスカウント・キャッシュ・フロー法と時価純資産法を併用して当該株式を評価したことに不合理な点は認められないとした事例
裁決事例集 第101集
要旨
原処分庁は、滞納法人が同社の100%子会社の株主総会において第三者割当増資による新株の発行に係る議案について議決権を行使したことにより、滞納法人の代表者である請求人が著しく低い価額で当該子会社の新株(本件新株式)を取得したことは、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に規定する「その他第三者に利益を与える処分」に該当するとして、請求人に第二次納税義務の納付告知処分をした。
これに対して、請求人は、原処分庁が本件株式の評価に当たって、一般に用いられる相続税の評価方法を準用せず、ディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)を加味して評価したことには合理性がなく、そもそも、本件株式の取得価額は時価相当額であるから、本件株式を取得したことによって「受けた利益」(時価相当額と取得価額との差額)は生じていない旨主張する。
しかしながら、国税徴収法第39条の第二次納税義務の限度額について、「受けた利益」が金銭以外のものであるときの財産の評価方法として、同法上、相続税の評価方法を適用又は準用する旨の規定はなく、取引相場のない株式の評価に当たり、DCF法と時価純資産法の併用を採用した原処分庁の評価方法に不合理な点は認められず、請求人には本件株式を取得したことによって「受けた利益」が生じている。
参考判決・裁決
最高裁平成18年1月24日第三小法廷判決(集民219号285頁)
滞納者が請求人に対してした離婚に伴う財産分与及び子の監護費用分担額の一時の支払につき、不動産を給付した上で保有し得た財産の2分の1に相当するまでの金額については、不相当に過大と認めることはできないが、これを超える部分については、不相当に過大なものとして国税徴収法第39条に規定する無償譲渡等処分に該当するとした事例
裁決事例集 第49集 606頁
要旨
請求人は、本件不動産等の譲受け及び本件金員(60,000,000円)の受領は、離婚に伴う財産分与及び慰謝料として相当であり、国税徴収法第39条に規定する無償の譲受けには当たらないので、第二次納税義務を負うべき理由はない旨主張するが、請求人には本件調停当時の滞納者の総財産の価額(一応の算出価額201,458,153円)の過半に達する本件不動産等(同134,344,915円)の給付がされていること並びに請求人の離婚後扶養料及び子の監護費用分担額等の金額を踏まえて判断すると、本件金員に関しては、滞納者が本件不動産等を請求人に給付した上で保有し得た財産の2分の1に相当するまでの金額については、不相当に過大とまで認めることはできず、他方、これを超える部分については、不相当に過大なものと認めることができるから、請求人はこの金額の限度において、本件滞納国税の第二次納税義務を負うことになる。
要旨
原処分庁は、滞納者から請求人に支払われた本件金員は相続分の前渡しないし将来の生計の資本とした贈与に当たると主張するが、滞納者には請求人との間に締結した農地使用の契約違反があり、したがって、請求人に損害賠償請求訴訟等の取下げを義務付ける合意に基づいて支払われたという必要かつ合理的な理由が存在することから、本件金員は和解による示談金と認められる。
よって、本件金員の授受は贈与によるものであると認定した原処分は相当ではなく、国税徴収法第39条の規定を適用した第二次納税義務の告知は取り消されるべきである。
要旨
原処分庁は、建物賃貸人である審査請求人が建物賃借人である滞納者から建設協力金等の残額の返還債務の免除を受けたことが国税徴収法第39条に規定する債務の免除に該当すると主張する。しかしながら、国税徴収法第39条にいう無償譲渡等の処分とは、経済的合理性を欠き広く第三者に不相当な利益を与える処分をいい、その態様に制限はないと解するのが相当である一方、その行為が経済的合理性を欠き第三者に不相当な利益を与えるものでない限り、同条にいう無償譲渡等の処分に該当しないと解するのが相当であるところ、敷金については、未払賃料と明渡し費用に充てられた結果、その返還請求権は発生しなかったと認められ、建設協力金については、建物賃貸借契約に定められた「賃借人の都合による中途解約の場合、賃借人が当該契約と同等以上の条件で新たな賃借人を斡旋し、新たな契約が締結されない限り、賃借人は敷金及び建設協力金の残額の返還請求権を放棄する。」との条項が、滞納者の都合によって賃貸借契約が中途解約された場合に生ずる請求人の損害の賠償に代えて、建設協力金の残額の返還請求権を放棄し、その後請求人に生じた損害の多寡を問わず精算しないこととしたものと解されるから、建設協力金の残額の返還請求権の放棄は、賃貸借契約の中途解約によって請求人に生じることが予想される損害の賠償に代えて行われる違約金債務の弁済と同視することができ、本件建設協力金の額が本件建物の工事代金以下で不相当に高額とはいえず、また、その返済期間が建物の賃貸借期間と同期間で不相当に長期間であるともいえないことからすれば、請求人に対して一方的に不相当な利益を与えるものとはいえず、国税徴収法第39条に規定する無償譲渡等の処分に当たるということはできない。
滞納会社が売上除外金から取締役に支出した金員は、社員総会において承認の決議を受けた損益計算書には計上されていないことから、職務執行の対価としての役員報酬には当たらず、国税徴収法第39条に規定する無償譲渡に当たるとした事例
裁決事例集 第50集 265頁
要旨
請求人は、滞納会社が売上除外金から請求人に支出した金員(本件金員)の性格は職務執行の対価たる役員報酬であると主張するが、滞納会社では社員総会決議によって役員報酬の総額が定められており、社員総会で承認された損益計算書に計上されている金額が役員報酬となるところ、本件金員は、社員総会において承認の決議を受けた損益計算書には計上されていないことから、職務執行の対価としての役員報酬には当たらない。
そうすると、本件金員の授受は滞納会社から請求人への贈与であり、国税徴収法第39条に規定する無償譲渡に該当する。
重加算税の賦課決定処分は課税面の処分であり、徴収面の第二次納税義務に係る告知処分とは全く別の処分であって、国税通則法第102条(裁決の拘束力)第1項の規定には抵触しないから、本件金員を賦課決定の審査請求では役員賞与と認定し、第二次納税義務に係る告知処分では贈与と認定しても違法ではない。
第二次納税義務の受けた利益の額の算定において、無償譲渡した不動産を財産評価通達を参考にして評価することは妥当とはいえないとして、納付告知処分の一部を取り消した事例
裁決事例集 第115集
ポイント
本事例は、国税徴収法第39条の第二次納税義務における受けた利益の額は、財産処分時等の現況に応じて、客観的な交換価値である通常の取引価額により算出するものとして、国税不服審判所における不動産鑑定評価による認定額を用いて審理をしたものである。
要旨
請求人らは、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》の受けた利益の限度の算出に当たり、①仮に、本件贈与者が本件各係争不動産を贈与したこと(本件各贈与)がなかったならば、本件各係争不動産は別件各公売不動産と一緒に公売されていたと想定されるから、広大地評価による減価を考慮して算定すべきである旨、また、②本件建物1は、その贈与当時、賃貸されていたが、耐用年数が経過していることから、建物の取壊費用相当額を減額すべきである旨主張する。
しかしながら、請求人らの主張は、①本件各贈与がなかったという仮定に基づくものにすぎず、実際には本件各贈与が行われており、前提を欠き、②本件建物1の経済的残存耐用年数は6年だったこと、賃貸としての利用が最有効使用であること等から、価額の算定に際し、更地価額から建物の取壊費用相当額を減額するのは合理的ではない。一方、原処分庁は、譲受財産の価額を財産評価基本通達(評価通達)により算定することは特段不合理ではない旨主張する。
しかしながら、評価通達は、相続税等の課税価格計算の基礎となる財産の評価を定めたものであり、譲受財産の価額の算定に評価通達を適用すべきとする法令等の規定は存在せず、本件では、当審判所が原処分庁とは異なる算定をした本件各係争不動産のうち、建物の一部が隣接地との境界を越えて建っていること、一部の土地上に経済的合理性を有しない賃貸用建物が存在すること、建物の所有者に使用借権があること、一部の土地が共有関係にあることなどを考慮して算定する必要があるにもかかわらず、原処分庁が算定した価額では、これらの事情が適切に考慮されていないから、これらの価額の算定に際して評価通達を参考にするのは妥当とはいえない。
参照条文等
国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に規定する利益が現に存する限度の額につき、金錢債権の評価に当たっては、債務者の資産状況、支払能力等の債務者側の事情を踏まえて算定するのが相当であるところ、本件債務者には本件求償債権の回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるような特別な事情があったと認められる等の理由から、その価額は零円と評価するのが相当とした事例(第二次納税義務の納付告知処分・全部取消し)
裁決事例集 第141集
ポイント
本事例は、国税徴収法第39条に規定する利益が現に存する限度の額につき、求償債権に係る債務免除がされた時において予想される回収可能額によって評価することが相当であり、本件債務者には本件求償債権の全部又は一部の回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるような特別な事情があったと認めた結果、本件債務免除により受けた利益の額は現に存しないとしたものである。
要旨
原処分庁は、債権者(本件債権者)から金銭を借り受けた債務者(本件債務者)の債務(本件債務)の連帯保証人であった本来の納税義務者(滞納者)が、自己所有土地を競売による売却手続によって売却されたことにより、滞納者が本件債務者に対する求償債権(本件求償債権)を取得し、その後、滞納者が本件債務者に対し本件求償債権を免除した(本件債務免除)という事実関係において(その後、請求人が本件債務者を吸収合併した。)、本件債務免除時に、本件債権者が滞納者に対し、本件求償債権を放棄するよう求めていた事情は存せず、本件求償債権の全部又は一部の回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるような特別な事情があったとは認められないことから、請求人が本件債務免除により受けた利益が現に存する限度の額は本件求償債権の額面上の金額と同額となる旨主張する。
しかしながら、金銭債権の評価に当たっては、債務者の資産状況、支払能力等の債務者側の事情を踏まえて算定するのが相当であるところ、本件債務者は、本件債務免除当時、法的整理(再生手続、破産手続等)の開始決定や事業の休廃業等の事実はなかったものの、本件債務の弁済を差し置いて、本件債務者が保有する資産を換価するなどした上で、本件求償債権に対する弁済を行うことは、事実上不可能ないし著しく困難であったと認められる。そうすると、本件債務者には本件求償債権の全部又は一部の回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるような特別な事情があったと認められ、その支払能力等を考慮すると、本件債務免除時における本件求償債権の価額は零円と評価するのが相当であるから、本件債務者(本件債務者を吸収合併した請求人)が本件債務免除により受けた利益の額は現に存しない。
参照条文等
国税徴収法第39条 国税徴収法基本通達第39条関係14
参考判決・裁決
平成30年6月7日裁決(裁決事例集No.111) 東京高裁令和3年12月9日判決(裁判所Web)
国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分の効力発生時期につき、請求人が父から贈与された農地については所有権移転に係る農地法上の許可を受けていないことから、その他の不動産等については贈与された時若しくは請求人がその不動産等に係る第三者対抗要件を具備した時のいずれに解しても、同条の「国税の法定納期限の1年前の日以後に無償譲渡等の処分が行われたこと」という要件が充足されていないとした事例
裁決事例集 第80集
要旨
本件告知処分が適法であるとするためには、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受等の第二次納税義務》の無償譲渡等の処分の効力が、本来の納税者である請求人の父が納付すべき国税(本件国税)の法定納期限の1年前の日以後に発生していることが要件となるが、父から請求人へ贈与された不動産等(本件贈与不動産等)のうち農地法上の農地については、所有権を移転する場合には、農地法第3条《農地又は採草放牧地の権利移動の制限》又は第5条《農地又は採草放牧地の転用のための権利移動の制限》の規定により、農業委員会又は都道府県知事の許可を受けなければならず、この許可は農地の所有権移転についての効力発生要件と解されているところ、これらの不動産については、農地法が定める所有権移転のための許可を得ていないのであるから、本件告知処分時においてこれらの不動産について無償譲渡等の処分の効力が発生したということはできない。
また、その他の不動産等についてみると、請求人が父から不動産等を贈与されたのは、本件国税の法定納期限の1年前の日よりも前であること、更に、不動産のように、第三者に対する対抗要件として登記を要するものについては、第三者対抗要件を具備したときに無償譲渡等の処分の効力が発生すると解したとしても、本件国税の法定納期限の1年前の日から本件告知処分時までの間において、請求人は、本件贈与不動産等につき第三者対抗要件を具備していないから、「国税の法定納期限の1年前の日以後に無償譲渡等の処分が行われたこと」という国税徴収法第39条の適用要件を欠くこととなる。
なお、原処分庁は、無償譲渡等の処分の効力の発生時期に関し、本件贈与不動産等につき、贈与を原因とする請求人への所有権移転登記手続を命ずる判決の確定によって、請求人は当該不動産についての所有権移転登記手続をなし得る権利を取得したのであり、同判決の確定がなければ請求人は第三者対抗要件を具備することはできないのであるから、本件においては同判決の確定をもって国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分の効力が発生したと解するのが相当である旨主張するが、同判決の確定によってはじめて贈与による所有権移転の効果が生じるものではなく、同判決を債務名義として請求人が単独で所有権移転登記手続をなし得るとしても、同判決の確定によって請求人が第三者対抗要件を具備したことにならないことは明らかであるから、原処分庁の主張には理由がない。
参照条文等
要旨
国税徴収法第39条の無償譲渡とは、民法上の贈与等を指すものと解され、課税庁が利益の配当として法人及びその株主等に対し課税した場合であっても、それが法人のその株主等に対する会社資産の無償譲渡に当たる場合には、同一の資産の譲渡が、一方では国税徴収法第39条の無償譲渡に該当し、他方では利益の配当として課税所得の計算の対象に該当することになんら矛盾はないというべきである。
また、請求人が主張する法人税等は、当該財産の取得による所得のみならず、その年中に生じた他の所得及び損失等との関連において課税標準及び税額が異動するものであって、受益の時においてはその納税義務の存否及び数額を法律上客観的に確定することができないものであるから、受けた利益の現存する限度額の算定に当たり控除すべき費用等には該当しない。
不動産の贈与に係る第二次納税義務者の受けた利益の額の算定においては、公売財産の評価に準じて算定するのが相当であり、審判所による不動産鑑定評価を参考として判断した事例(第二次納税義務の納付告知処分・棄却)
裁決事例集 第141集
ポイント
本事例は、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》の第二次納税義務に規定する「受けた利益」の額の算定に当たり、請求人と原処分庁との間で10倍以上の開差が見られたことから、公売財産の評価に準じて算定するのが相当であるとして、国税不服審判所における不動産鑑定評価による認定額を参考として判断を行ったものである。
要旨
請求人は、請求人が滞納者から受けた土地6筆(本件各土地)の贈与(本件贈与)に係る、国税徴収法(徴収法)第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に規定する「受けた利益」の額は、本件各土地の固定資産税評価額から算出される実勢価格又は請求人が依頼した不動産業者による査定額に基づくべきであり、原処分庁が判断した請求人の「受けた利益」の額は、当該金額が社会通念上不相当に高額で違法である旨、また、審判所において不動産鑑定士による本件各土地の鑑定評価を実施して、その鑑定評価額に基づいて算出される「受けた利益」の額を超える部分を取り消すべきである旨主張する。
しかしながら、徴収法第39条に規定する「受けた利益」の額の算定に当たっては、公売財産の評価に準じて算定するのが相当であり、審判所において行った不動産鑑定士による鑑定評価に不合理な点はなく、同評価による鑑定評価額を本件贈与時における本件各土地の時価であると認めるのが相当であり、原処分庁の主張額は、当該鑑定評価による金額の範囲内であるから取り消すべき部分はない。
参照条文等
国税徴収法第39条 国税徴収法基本通達第39条関係12 国税徴収法基本通達第39条関係16
参考判決・裁決
要旨
原処分庁は、請求人と本件滞納法人との間における不動産の売買を仲介した仲介業者が、請求人分の仲介手数料(本件仲介手数料)として金員を受領し、請求人あての領収証が発行されているところ、当該金員は本件滞納法人が自ら調達した金員により支払われたものであるから、請求人に本件滞納法人に対する本件仲介手数料に相当する債務が発生し、同時に、本件滞納法人が当該債務を免除した旨主張する。
しかしながら、上記不動産の売買契約においては、請求人が支払わなければならない当該不動産の代価や仲介手数料を含む売買に関して生ずる請求人が負担すべき一切の費用は、請求人が上記不動産の購入資金として借り入れた金員から賄われるべきものであったと認めるのが相当であり、本件滞納法人が本件仲介手数料を自ら調達した金員で支払ったのは、請求人が上記不動産の購入資金として借り入れた金員の中から本件仲介手数料が支払われるべきところ、請求人が当該不動産の購入資金として借り入れた金員から借入れに伴う事務手数料や登記費用等を控除した金額の全額が請求人の普通預金口座から上記不動産の抵当権者の普通預金に直接振り替えられたため、本件仲介手数料の支払に充てることができなくなったことによるものと認められる。
したがって、請求人が負うべき本件仲介手数料の支払債務を本件滞納法人が履行したと認めることはできず、そうすると、本件滞納法人には請求人に対する本件仲介手数料に相当する額の返還請求権は発生せず、それを無償放棄することもあり得ないのであるから、請求人が本件滞納法人から本件仲介手数料に相当する債務の免除を受けたと認めることはできない。
参照条文等
要旨
- 相続税法第34条の連帯納付義務については補充性がないことから、連帯納付義務は、第二次納税義務のように本来の納税義務者に対する滞納処分を執行しても徴収すべき額に不足すると認められる場合に限って、納税義務を負担するものではない。すなわち、本来の納税義務者に対する徴収手続と連帯納付義務者に対する徴収手続は本来的には別個の手続である。
そうすると、仮に、税務署長が、本来の納税義務者に対する滞納処分等の徴収手続を適正に行っておれば、本来の納税義務者から滞納に係る相続税を徴収することが可能であったにもかかわらず、税務署長が徴収手続を怠った結果、本来の納税義務者から相続税を徴収することができなくなったという事実があったとしても、その事実は、相続税法第34条第1項の規定によって、各相続人に課されている連帯納付義務の存否又はその範囲に影響を及ぼすものではなく、また、税務署長が、各相続人に対して、連帯納付義務の履行を求めて徴収手続を進めたとしても、これをもって違法ということはできない。 - 請求人らは、国税の徴収について、民法第504条の規定を準用又は類推適用すべきであると主張するが、相続税法、国税通則法、国税徴収法のいずれにおいても、民法第504条を準用すべきものであるとする規定もなく、類推適用を根拠付ける規定もない。
- 相続税の連帯納付義務の性格については、その性格を民法上の連帯保証債務に類似するものと解し、本来の納税義務についての時効中断の効力は附従性により連帯納付義務にも及ぶと解するのが相当である。これを本件について見ると、本来の納税義務者Kの国税の徴収権の消滅時効はいまだ完成していないから、連帯納付義務者Lの国税の徴収権の消滅時効も完成しておらず、請求人らの主張には理由がない。
- Kは、Lの連帯納付義務を承継した納税義務者でもあり、連帯納付義務と本来の納付義務が同一人に帰することになる。しかしながら、本来の納付義務と重複することとなった連帯納付義務が当然に消滅すると解すべき実定法上の根拠はない。また、本来の納付義務と連帯納付義務が同一人に帰した場合に、連帯納付義務が消滅する場合があり得るとしても、Lの連帯納付義務は、第二次納税義務の基因となる納付義務であり、Lの連帯納付義務を存続させる実益があることからすると、当該連帯納付義務が消滅すると解するのは相当ではない。
- 国税徴収法第39条の徴収不足が無償譲渡等の処分に「基因する」とは、広く、その処分がなかったならば、徴収不足を生じなかったであろうことをいい、損害賠償請求の場合における「直接の因果関係」よりも広い概念として、当該基因関係を認めるのが相当と解され、また、徴収不足の判定は、第二次納税義務の告知処分をするときの現況によるべきものと解される。
これを本件について見ると、本件贈与がなければ、本件贈与により受けた利益の金額の総額を承継後の滞納国税に充てることが可能であったといえる。そうすると、本件贈与と徴収不足との間に基因関係を認めることができるから、請求人のこの点に関する主張は採用できない。 - 本件納付通知書の納税者欄には、第二次納税義務の基因となった納付義務を負う者の氏名が記載されるところ、Lは既に死亡しており、Lの連帯納付義務はKに承継されていることから、納付通知書の納税者欄にKの氏名を記載したことは、国税徴収法第32条第1項に照らして適法であり、無効とする重大な瑕疵があるとはいえない。
- 国税徴収法第39条の規定は、主たる納税者の租税の納期限が経過したこと及び滞納処分を執行しても徴収不足を生じると認められることを第二次納税義務の要件としているものの、主たる納税者に対して実際に徴収手続に着手することを要件とするものではないと解される。
したがって、第二次納税義務の基因となった連帯納付義務について、国税徴収法第39条に規定する要件を満たせば、督促の有無にかかわらず、第二次納税義務者である請求人らに対して、本件告知処分を行うことができることとなる。 - 登記は、制度上その手続において、真正な、すなわち有効に存立する実質的な関係に基づくものであることが前提とされ、かつ、公の機関によって管理されているから、登記上の所有名義人は反証がない限り当該不動産の所有者と推定することが相当である。本件居宅は、[1]相続により贈与者へ所有権移転登記がされていること、[2]請求人らへ贈与により所有権移転登記がされていることから、被相続人から相続した上で、請求人らに贈与したと認めるのが相当である。
これに対して、請求人は、自らが本件居宅を建築したと主張するが、遺産分割協議書及び本件相続に係る相続税の申告書において、本件居宅は妻が相続する旨の記載があること、請求人らは、本件贈与について贈与税の申告をしていること、並びに請求人が建築したとする請負契約書や新築及び改築費用の資金出所を明らかにする領収書等の証拠書類を提出しないことからすると、本件居宅が請求人に帰属すると認めることはできない。
債権譲渡の債務者対抗要件が具備されていないから、無価値の債権の代物弁済により債務が消滅したとして国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分があったとはいえないとした事例
裁決事例集 第82集
ポイント
この事例は、請求人が滞納法人に負っていた借入金債務の支払に代えて返済資力のない債務者に対する請求人の債権を代物弁済したことにより請求人が利益を受けたとして、原処分庁がした国税徴収法第39条の第二次納税義務の納付告知処分等の適否が争われたところ、代物弁済の目的とされた債権の一部は、債務者対抗要件を欠いており、いまだ滞納法人に帰属しているとみることができるから、その部分については無償譲渡等の処分があったとは認められないとしたものであり、過去にこのような事例について判断した裁判例や裁決例はなく、先例となるものである。
要旨
請求人が有していた各貸金債権の代物弁済によって本件滞納法人の請求人に対する短期貸付金(本件短期貸付金)の消滅の効果が発生するためには、代わりの給付を現実に行うことが必要であるところ、当該各貸金債権の一部については、債権譲渡の第三者対抗要件が具備され、代わりの給付が現実にされたということができるとともに、主債務者及び保証人に資力がなく弁済を受けることが事実上不可能なものであるから、無価値物による代物弁済として国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》の無償譲渡等の処分があったといえる。
しかしながら、他の貸金債権については、債務者対抗要件である債務者への通知を欠いており、代わりの給付が現実になされたとはいえず、本件短期貸付金のうち、当該貸金債権の代物弁済によって消滅したとされる部分は、いまだ消滅せず、本件滞納法人に帰属しているとみることができるから、国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分があったとは認められない。
参照条文等
国税徴収法第39条 民法第467条
請求人が受領した滞納会社の売掛金のうち、滞納会社の従業員に対する給与に充てられた部分以外の部分は、国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分によるものであるとした事例
裁決事例集 第75集 760頁
要旨
請求人と滞納会社との間では、滞納会社の取引先との取引の継続を目的として、請求人に滞納会社の工場と従業員を引き継ぎ、当該取引先との取引を継続することについての合意が成立したものと認められるが、本件売掛債権が発生する前にその旨の合意が成立したと認めることはできないから、本件売掛債権はもともと滞納会社に帰属していたと認めるのが相当であり、また、請求人は、滞納会社が負っていた従業員に対する給与の支払債務の弁済資金を確保するために本件売掛債権を譲り受けたものと認められるから、当該給与支払債務相当額部分については、国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分により請求人が利益を受けたということはできないものの、その余の部分については、請求人が滞納会社に返還した形跡を認めることができず、滞納会社も請求人に請求した事実が認められないことからすれば、同条の無償譲渡等の処分により請求人が利益を受けたものと認めるのが相当である。
請求人の預金口座に入金された滞納者が受領すべき譲渡代金の一部については、当該預金口座の入出金状況等から当該金員が請求人の処分権限内に移転したとはいえず、滞納者から請求人への財産の無償譲渡があったということはできないとした事例
裁決事例集 第82集
要旨
原処分庁は、本件滞納者が受領すべき譲渡代金の一部が、本件滞納者が代表取締役を務めていた法人の普通預金口座から請求人の普通預金口座(本件請求人口座)に振り替えられたことにより、当該振替金(本件振替金)は本件滞納者から請求人の処分権限内に移り、本件振替金が本件滞納者に還流した事実も本件滞納者に対する対価等の支払の事実も認められないから、本件振替金は、本件滞納者から請求人に無償で譲渡された旨主張する。
しかしながら、本件請求人口座については、本件振替金の入金当時、本件滞納者の子であり請求人の配偶者であるEにおいて自由に出金できる状態にあり、入出金のすべてをEが行っているだけでなく、その口座の動向について、請求人が何ら把握していないのであって、引き出された金員が請求人個人の用途に使用されたことを認めるに足りる証拠がないだけでなく、かえって出金のあった日にE名義の預金口座に相応額の入金があるという同人のために費消されたことをうかがわせる事実が認められるのであり、Eが請求人の配偶者であることを併せて考えると、本件請求人口座が請求人に帰属すると認定することはできず、同口座はEの管理下にあったいわゆる借名口座であるとみるのが相当である。そうすると、本件請求人口座に本件振替金が入金されたことをもって、請求人の処分権限内に本件振替金が移転したとはいえないから、本件滞納者から請求人への財産の無償譲渡があったということはできず、ほかにこれを認めるに足りる証拠もない。
参照条文等
貸金業を営む請求人の貸金債権についての保証業務を行っていた滞納法人が業務を廃止したことに伴い、請求人が滞納法人から収受したといえる業務廃止日現在の累計保証料相当額から貸倒額を控除した部分は、国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分によるものであるとした事例
裁決事例集 第76集 521頁
要旨
請求人の顧客の請求人に対する債務について保証する本件滞納法人がその業務を廃止した場合に、その廃止日における累計保証料相当額を請求人がすべて収受する旨を定めた本件契約第9条の規定は、本件滞納法人が業務を廃止したときは、本件滞納法人による保証債務が履行されないこととなり、請求人に損失が生じることとなる一方、本件滞納法人としては、保証していた請求人の貸金債権の履行期限が到来するまで業務を廃止できないとすると、円滑に業務廃止の手続を進めることができなくなることから、本件滞納法人の業務廃止後における損害賠償債務又は保証債務の履行に代えて、本件滞納法人が累計保証料相当額の金員を請求人に交付することとし、その後の清算を要しないこととしたものと解され、本件累計保証料相当額の債務の履行により、本件滞納法人の業務廃止後における損害賠償債務又は保証債務が消滅するので、本件累計保証料相当額の債務が履行されたことによって、直ちに国税徴収法第39条に規定する無償譲渡等の処分があったということはできない。
しかしながら、同条にいう無償譲渡等の処分が広く第三者に利益を与える行為をいうものと解されることからすれば、本件滞納法人の業務廃止後における損害賠償債務又は保証債務の履行に代えて、本件滞納法人が請求人に対して支払うべきものとして必要な範囲を超えて履行された部分は、同条の無償譲渡等の処分によるものと解するのが相当であり、その必要な範囲は、本件滞納法人の業務廃止時における請求人の貸金残高に予想される貸倒率を乗じて算出される額とするのが相当である。もっとも、本件滞納法人の業務廃止に伴って請求人に生じた貸倒れの額が具体的に明らかである場合には、その額までの部分がその必要な範囲と認めることが相当であるから、本件滞納法人が請求人に対して負っていた本件累計保証料相当額の支払債務と請求人の本件滞納法人に対する借入金債務との相殺によって、請求人が本件滞納法人から債務の履行を受けたと同視できる額から本件滞納法人の業務廃止によって生じた請求人の貸金債権についての貸倒損失の額を控除した部分については、請求人が本件滞納法人から国税徴収法第39条に規定する無償譲渡等の処分により利益を受けたというべきである。
滞納者を契約者兼被保険者とし、保険金受取人を請求人とする生命保険契約に基づいて死亡保険金を受領した請求人は、国税徴収法第39条の規定により、滞納者が払込みをした保険料相当額の第二次納税義務を負うとした事例
裁決事例集 第79集
要旨
保険契約者が保険金の受取人を第三者とするいわゆる他人のための生命保険契約に基づく保険料の払込みは、保険会社に対して生命保険契約に基づく義務を履行するものではあるが、保険事故が発生したときに当該第三者に利益を与える目的を達成するために、自己の積極財産を減少させる行為であるから、保険金受取人は、保険事故が発生した場合、保険契約者の行った保険料の払込みという積極財産を減少させる行為によって、無償で保険金支払請求権を取得し、利益を受けたということができる。
そして、保険金の支払請求権は、保険事故の発生により、保険金受取人が原始取得するものであり、保険金は滞納者である保険契約者からではなく保険会社から支払われるものであるから、滞納者である保険契約者が保険金受取人に対して直接財産処分行為をしたとはいえないが、国税徴収法第39条の条文からすれば、滞納者の財産処分行為と保険金受取人の受けた利益との間に基因関係が認められれば足り、滞納者が保険金受取人に対して直接財産処分行為を行っていることまで要するものではないと解するのが相当である。
もっとも、国税徴収法第39条が、国税債権の確保のための詐害行為取消権の行使による逸出財産の取戻しを行うのと同様の効果を得ようとするものであること、同条にいう「無償譲渡等の処分」が、第三者に異常な利益を与える積極財産の減少行為をいうものと解され、本件のような被保険者が死亡した場合にその遺族に保険金が支払われる生命保険契約が、被保険者の死亡後における遺族の生活を保障するために締結されるものであり、保険料の払込みが当該契約に基づく債務の履行にすぎないことからすれば、保険契約者の職業や地位、資力、遺族の人数・年齢、国税の納付・徴収と保険料の払込みとの関係等を総合的に考慮して、当該保険料の払込みと保険事故発生後の保険金の支払が保険金受取人に異常な利益を与えるものであるといえない限り、保険料の払込みが国税徴収法第39条の「無償譲渡等の処分」に当たらないと解するのが相当である。
これを本件についてみると、本件滞納者は、滞納国税のほか多額の債務を抱えていた状況の下で、本件各滞納国税のうち法定納期限が最も古い国税の法定納期限の1年前の日以後本件滞納者が死亡するまでの納付回数は6回にとどまる一方、国税の月平均納付額の倍以上の保険料を毎月継続的に払い込んだこと、請求人が受領した死亡保険金の総額が極めて多額であって、遺族が請求人と成人していた子であることからすれば、本件滞納者が請求人とともに事業を営み、相当の収入を得ていたこと、また、一般的には遺族を受取人とする生命保険契約が、被保険者の死亡後における遺族の生活を保障するために締結されるものであり、本件においても、本件滞納者の死亡後における請求人と子の生活を保障するものとして締結されたものであると考えられることを考慮しても、本件各生命保険契約に基づいて本件滞納者がした保険料の払込みは、請求人に異常な利益を与えるための積極財産の減少行為として、国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分に当たるといわざるを得ない。
そうすると、請求人は、本件滞納者が本件各生命保険契約に基づいてした保険料の払込みという無償譲渡等の処分により、本件滞納者の積極財産の減少額である払込保険料と同額の利益を受けたものと認められる。
参照条文等
要旨
原処分庁は、請求人が、請求人所有の建物の賃借人(本件滞納法人)からの申出により、賃貸借契約(本件賃貸借契約)を賃貸借期間の途中で解約するに当たり、本件滞納法人との間でした、本件滞納法人が請求人に対して敷金(本件敷金)の返還請求権(本件敷金返還請求権)を放棄する旨の合意(本件合意)に基づき、その放棄を受けたことは、本件滞納法人による国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に規定する「債務の免除」に該当する旨主張する。
しかしながら、国税徴収法第39条にいう債務の免除とは、広く第三者に利益を与えるものというと解されるところ、本件合意は、本件滞納法人がその賃借する建物を本件合意で定めたとおり明け渡すことを条件として、本件賃貸借契約の解約によって発生する損害賠償の額を予定し、その損害賠償請求権と本件敷金返還請求権等とを相殺することを定めたものであり、社会通念上、損害賠償の額を予定し、相殺することについて合理的な期待を有すると認められる範囲内にあるから、本件合意による約定は有効と認められ、これにより請求人の損害賠償の額が本件敷金等に相当する額に制限された上、その損害賠償請求権と本件敷金返還請求権等とが相殺されて消滅することとなることからすると、本件合意により請求人が利益を受けたということはできない。
参照条文等
滞納者が受け取るべき信託受益権の譲渡代金の残余金等のうち、滞納者の債務を弁済した後に生じた余剰金は、実質的に滞納者から請求人に対する無償譲渡と認められるとした事例
裁決事例集 第82集
ポイント
この事例は、滞納者と滞納者が主宰する法人が共有していた財産の譲渡代金が当該法人の預金口座に振り込まれた後、その一部が滞納者名義の預金口座、請求人名義の預金口座、請求人の妻名義の預金口座を経由して請求人の定期預金等の財産となったところ、滞納者は上記譲渡代金から自己及び上記法人の債務を弁済して余剰が出た場合には、請求人に贈与する意思を有し、当該余剰の交付や返還を求めていないから、実質的に滞納者の財産が無償譲渡されたと認定したものであり、また、その額が原処分の限度を超えるから、原処分は適法であるとしたものである。
要旨
請求人は、本件滞納者と本件滞納者が代表取締役を務めていた本件法人の双方から、両者が共有していた不動産の信託受益権の譲渡代金の残余金等(本件残余金等)の管理処分を任され、本件残余金等が振り込まれた本件法人の預金口座をはじめ、本件滞納者、請求人及び請求人の妻名義の預金口座のすべてを請求人の管理下に置いて入出金を行っていた。また、本件滞納者は、上記譲渡代金によって、自己及び本件法人の債務を弁済して余剰が出た場合には、請求人に贈与する意思を有し、請求人に対し、当該余剰の交付や返還を求めていないところ、本件残余金等のうち本件滞納者が取得すべき額の金員が、本件法人の取得すべき額の金員とともに本件法人の預金口座に振り込まれ、その後、その一部が、請求人の管理下にあった本件滞納者名義の預金口座、請求人名義の預金口座及び請求人の妻名義の口座に振り替えられ、さらに、請求人名義の定期預金等として請求人の管理下に移転したと認められる。
このような一連の事実経過をみると、実質的に、本件滞納者の財産が請求人に対して無償譲渡されたと認められ、その額は原処分の限度を超えるから、原処分は適法である。
参照条文等
滞納者の預金口座から出金された金銭が請求人の預金口座に入金されたことは、国税徴収法第39条の無償譲渡には該当しないとした事例(第二次納税義務の納付告知処分・全部取消し)
裁決事例集 第94集
要旨
原処分庁は、原処分庁が主たる納税者(本件滞納者)の滞納国税を徴収するために請求人に対して行った第二次納税義務の納付告知処分(本件納付告知処分)について、請求人と本件滞納者との間に債権債務関係はなく、本件滞納者の預金口座から出金された金銭(本件金員)が、請求人の預金口座(本件請求人口座)に入金されていたことから、請求人は本件滞納者から本件金員を無償で譲り受けており、本件納付告知処分は適法である旨主張する。
しかしながら、本件金員が本件請求人口座に入金された後、請求人が本件請求人口座の預金を費消等することはなく、本件金員と同額の金員が、本件請求人口座から出金され、本件滞納者の代表取締役が実質的に支配する別法人(本件関連法人)の預金口座に入金された後、同代表取締役が所有していた自宅不動産の競落資金に充てられたことなどからすると、本件金員の請求人口座への入金は、本件関連法人によって競落資金として利用されるまでの資金移動の一過程であったというべきであり、請求人が本件滞納法人から金銭を無償で譲り受けたとは認められないことから、本件納付告知処分はその全部を取り消すべきである。
参照条文等
滞納者が自己の債務弁済に係る事務を請求人に委任していたことからすると、滞納者の預金口座から請求人の預金口座への振込入金は、当該委任に係る事務に関連して行われたものというべきであるから、当該入金をもって国税徴収法第39条が規定する無償譲渡等の処分があったということはできないとした事例(第二次納税義務の納付告知処分・全部取消し)
裁決事例集 第103集
ポイント
本事例は、争点の判断に当たり、審理の範囲を原処分庁が主張する間接事実の有無のみに絞ることなく、原処分庁が主張していない間接事実を認定し、当該認定事実から課税等要件の充足を否定したものである。
要旨
原処分庁は、滞納者の自宅売却代金(本件売却代金)の一部が滞納者の預金口座から請求人の預金口座に振込入金(本件入金)されたところ、①滞納者が請求人に対して本件入金に係る金員の返還を求める意思を示していないこと、②請求人が本件入金を自宅のリフォーム費用に充てていることなどから、本件入金は、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》が規定する無償譲渡等の処分に該当する旨主張する。
しかしながら、滞納者が本件売却代金を原資とする滞納者の債務弁済に係る事務を請求人に委任していた事実(本件委任)が認められることからすると、本件入金は、請求人が本件委任に係る事務に関連して行ったものというべきであるから、本件入金をもって国税徴収法第39条が規定する無償譲渡等の処分があったということはできない。
参照条文等
要旨
参照条文等
参考判決・裁決
東京高裁昭和57年10月18日判決(行集33巻10号2065頁)
請求人が滞納者から財産分与により取得した財産の価額は不相当に過大ではないから無償譲渡等の処分があったとは認められないとして、国税徴収法第39条の第二次納税義務の告知処分の全部を取り消した事例(第二次納税義務の納付告知処分・全部取消し)
裁決事例集 第110集
ポイント
本事例は、離婚に伴う財産分与が民法第768条の規定の趣旨に反して不相当に過大であるか否かは、財産の額や婚姻期間中の状況等の諸事情を考慮して、清算的要素、扶養的要素及び慰謝料的要素に相当する額をそれぞれ算定した上で判断するのが相当であるところ、請求人が滞納者から財産分与により取得した財産の価額は、上記要素に基づき算定した財産分与相当額を下回るものであり、不相当に過大ではないから、国税徴収法第39条に規定する無償譲渡等の処分があったとは認められないとしたものである。
要旨
原処分庁は、滞納者(請求人の元夫)から請求人に対する預金債権及び生命保険契約等に係る解約返戻金の支払請求権(本件各債権)の譲渡は、滞納者が営んでいた事業(本件事業)の請求人への引継ぎに伴い無償で譲渡されたものであり、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に規定する「無償又は著しく低い額の対価による譲渡、債務の免除その他第三者に利益を与える処分」(無償譲渡等の処分)に該当する旨主張する。
しかしながら、本件事業の引継ぎに伴い、滞納者から請求人に対し本件各債権の無償による譲渡があったとは認められず、滞納者と請求人の離婚協議の場で作成された合意書その他の状況等を踏まえると、本件各債権は離婚に伴う財産分与により滞納者から請求人に譲渡されたものと認めることが相当である。そして、離婚に伴う財産分与が民法第768条《財産分与》の規定の趣旨に反して不相当に過大であるか否かは、財産の額や婚姻期間中の状況等の諸事情を考慮して、清算的要素、扶養的要素及び慰謝料的要素に相当する額をそれぞれ算定した上で判断するのが相当であるところ、請求人が滞納者から財産分与により取得した財産の価額は、上記要素に基づき算定した財産分与相当額を下回るものであり、不相当に過大ではないから、無償譲渡等の処分があったとは認められない。
参照条文等
国税徴収法第39条 民法第768条
参考判決・裁決
最高裁昭和58年12月19日第二小法廷判決(民集37巻10号1532頁) 平成25年7月4日裁決(裁決事例集No.92)
要旨
請求人は、離婚に伴い滞納者である夫から財産分与(本件財産分与)として不動産(本件分与財産)を譲り受けたが、本件財産分与は不相当に過大ではないから、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二納税義務》が規定する「無償又は著しく低い額の対価による譲渡」に該当しない旨主張する。
しかしながら、離婚における財産分与が同条の「無償又は著しく低い額の対価による譲渡」等の処分に当たるか否かは、夫婦間における諸事情を考慮して清算的要素、扶養的要素及び慰謝料的要素を算定した上で当該財産分与が不相当に過大か否かを判断するのが相当であるところ、本件分与財産の価額は、財産分与相当額の8倍以上であるから、本件財産分与は、国税徴収法第39条が規定する「無償又は著しく低い額の対価による譲渡」に該当する。
参照条文等
民法第768条 国税徴収法第39条
参考判決・裁決
最高裁昭和58年12月19日第二小法廷判決(民集37巻10号1532頁) 最高裁昭和62年10月30日第三小法廷判決(集民152号93頁)
ポイント
本事例は、滞納会社が請求人に役員退職慰労金として支給した金額は、請求人の当該会社における役員としての職務執行及び功労との対価的均衡を著しく欠くものであり、その支給は、国税徴収法第39条に規定する無償譲渡等の処分に該当するとしたものである。
要旨
請求人は、原処分庁がした第二次納税義務の納付告知処分について、①過去に、滞納会社(本件滞納会社)から役員退職慰労金として支給を受けた不動産(本件不動産)を本件滞納会社に売却したことにする売買契約(本件売買契約)をしたのは、帳簿上、本件滞納会社の使途不明金を請求人に対する役員貸付金に振り替えた残高を消し込むためであり、本件不動産の所有権は請求人が有したままであったから、本件不動産は、退職慰労金として請求人に譲渡された財産ではない旨、また、②滞納会社が請求人に本件不動産や生命保険契約(本件保険契約)の契約上の地位等を役員退職慰労金として支給したこと(本件支給)は、請求人の役員退職慰労金として相当と認められる金額の範囲内であり、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に規定する無償譲渡等の処分には該当しない旨主張する。
しかしながら、上記の役員貸付金及びこれと相殺された本件売買契約に基づく売買代金には、いずれも実体があったというべきであることや、本件滞納会社が本件売買契約に沿って、本件不動産の所有権を取得した買主として振る舞っていたことなどからすれば、本件売買契約は、実体のない仮装売買であったとはいえない。
また、国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分に該当するかどうかは、平均功績倍率法によって求めた相当とされる役員退職給与の金額と実際に支給された役員退職給与の金額の乖離の程度に加えて、当該役員の職務又は功労の内容、程度、勤務年数のほか当該役員退職給与が支給されるに至った具体的事情等をも考慮した上で判断するのが相当であるところ、本件支給の額は、平均功績倍率法により求められる請求人の役員退職慰労金として相当と認められる金額の7倍を超え、その乖離の程度が大きいことに加え、請求人の主な業務は社員教育であり、本件滞納会社の経営を担っていたとはいえないことや本件支給の決議当時の状況等に鑑みれば、本件支給がされたのは、本件滞納会社が滞納国税の徴収などを回避するためであり、本件支給の額は、本件不動産及び本件保険契約を請求人に得させるために設定されたもので、請求人の職務及び功労と役員退職慰労金の金額との対価的均衡を考慮した上で決定されたものではなかったと認められるから、本件支給は、同条に規定する無償譲渡等の処分に該当する。
参照条文等
参考判決・裁決
東京地裁平成9年8月8日判決(判タ977号111頁) 東京地裁令和2年3月24日判決(税資270号13403頁)
滞納法人の売上げを譲り受けたことによる国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に基づく第二次納税義務の納付告知処分の取消請求において、請求人が受けた利益の一部は滞納法人に係る売上げではないとした事例
裁決事例集 第120集
ポイント
滞納法人の売上除外等に加担した法人の口座へ売上金を振り込ませた後、請求人に当該売上金を現金又は振込みにより無償譲渡したとして告知処分された第二次納税義務について、請求人及び関係者らの答述等の信用性を検討した上で、上記加担した法人の口座に振り込まれた金員の一部は、滞納法人に係る売上げではないとして、当該第二次納税義務の一部を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、滞納法人が各取引先から受け取るべき売上金が、請求人の指示の下、請求人の知人が主宰する法人を発行元とした各請求書に基づき、請求人に交付されたことについて、請求人、滞納法人の代表者及び請求人の知人(請求人ら)が認めていることから、滞納法人から請求人に対して、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に規定する無償の譲渡があった旨主張する。
しかしながら、一部の取引先について、請求人らから、滞納法人に帰属する売上げを請求したものであるとの具体的な申述はなく、当該取引先から原処分庁への回答書にも、滞納法人に帰属する売上げであるなどの具体的な記載もない。また、本件の全証拠を検討しても、滞納法人に係る売上げであると断定するに足りる証拠は認められない。
参照条文等
ポイント
本事例は、生活費及び学資の前払としての送金が、社会通念上相当と認められる範囲の金銭の交付とは認められないとしたものである。
要旨
請求人は、滞納者(本件亡滞納者)が、生前に請求人に対し行った請求人名義口座への振込みによる金銭の交付(本件金銭交付)は、別居していた請求人に対する将来の生活費及び医学部に進学する子のための学資等である婚姻費用の前払であり、社会通念上相当と認められる範囲の金銭の交付であるから、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に規定する無償による譲渡に該当しない旨主張する。
しかしながら、本件亡滞納者は、請求人に対し、本件金銭交付に先立ち、相当程度に高額な金銭を送金し、本件金銭交付後も生活費として毎月一定額の送金を継続していること、本件金銭交付に係る金員が、将来的には、子の学資等の原資となるとしても、本件金銭交付の時点においては、学資等として具体的な支払の予定があったとはいえないことからすると、請求人親子と本件亡滞納者が別居し、請求人に収入がなかったために、本件亡滞納者において婚姻費用あるいは生活費及び学資等を負担する必要があったとしても、その前払として本件金銭交付をすべき必要があったとは認められない。したがって、本件金銭交付は、生活費及び学費等に充てるためにした社会通念上相当と認められる範囲の金銭交付に該当せず、無償による譲渡に該当する。
また、請求人は、本件亡滞納者の各滞納国税(本件各滞納国税)に係る第二次納税義務の納付告知処分(本件納付告知処分)について、本件亡滞納者が、株式の売却代金や相当程度の給与収入を得ていたことからすると、原処分庁が遅滞なく滞納処分を行っていれば、徴収不足を生じることはなかったにもかかわらず、原処分庁が換価の猶予を行って本件亡滞納者の財産の散逸を見過ごしたために徴収不足となったのであるから、本件各滞納国税の徴収不足は、本件金銭交付に基因しない旨主張する。
しかしながら、徴収不足が認められる場合とは、第二次納税義務に係る納付告知処分時の現況において、本来の納税義務者の財産で滞納処分により徴収することのできるものの価額が、同人の滞納国税の総額に満たないと客観的に認められる場合をいうものと解され、さらに、徴収不足が無償譲渡等の処分に基因すると認められるときとは、当該無償譲渡等の処分がなかったならば当該納付告知処分時現在の徴収不足を生じなかったであろうということができる場合をいうものと解するのが相当であるところ、本件各滞納国税の納付義務を承継した相続財産法人は、本件納付告知処分時において徴収不足であると認められ、本件金銭交付に係る金額は、本件各滞納国税の金額を上回ることからすると、本件金銭交付がなかったならば本件納付告知処分時の徴収不足を生じなかったであろうということができるから、本件各滞納国税の徴収不足は本件金銭交付に基因すると認められる。
参照条文等
参考判決・裁決
東京地裁昭和45年11月30日判決(行集21巻11・12号1392頁) 東京高裁昭和52年4月20日判決(訟月23巻6号1117頁)
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