裁決事例 申告及び納付

裁決事例 申告及び納付

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平成4年12月8日裁決

法定相続人である請求人が、自己のために相続の開始があったことを知った日は、遺留分減殺請求をした日ではなく、被相続人の死亡を知った日であるとした事例

裁決事例集 第44集 296頁

要旨

 請求人の場合、相続の開始があったことを知った日は平成2年7月8日の被相続人が死亡した日であり、また、同年10月29日に遺留分減殺請求権を行使し、同年11月28日には遺産分割の協議が成立するなどしており、遺産分割協議の成立後、法定申告期限までの期間は、一般的な相続税の申告に必要な準備期間に比し著しく短いとは認められず、法定申告期限である平成3年1月8日までに相続税の申告をすることが不可能であるとはいえない。

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昭和51年1月19日裁決

相続税法第32条第3号の「減殺の請求があったことを知った日」とは減殺の請求が調停、判決等で解決した場合にはその解決した日とした事例

裁決事例集 第11集 67頁

要旨

 相続税法第32条第3号に掲げる「遺留分による減殺の請求があったこと」について、遺留分権利者が受贈者に対し減殺の請求を行えば足りると解すると受贈者が直ちにその請求に応じた場合はともかく、相手方がその請求に応じない場合には、その争いのため更正の請求の期間の制限を超えることによって、同号の適用の余地がなくなる場合が生ずることとなる。
 同法第32条は一たび確定した課税価格等が新たに生じた事由に基づき過大となった者に更正の余地を与えようとする特別規定であることから、減殺の請求が調停、判決等によって解決した場合にはその調停等の時を受贈者が更正の請求ができる期間の始期と解するのが相当である。

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平成10年4月2日裁決

相続税法第34条第1項の連帯納付義務は、相続税徴収の確保を図るため、相互に各相続人に課した特別の責任であって、各相続人の固有の納税義務が確定すれば、他の共同相続人に徴収手続を行うことができ、滞納者に徴収手続を尽くした後でなければ、共同相続人に徴収手続を行えないというものではないとされた事例

裁決事例集 第55集 608頁

要旨

 相続税法第34条第1項の相続税の連帯納付義務は、相続税徴収の確保を図るため、相互に各相続人に課した特別の責任であって、各相続人の納税義務の確定という事実が発生していれば法律上当然に生ずるものであり、格別の確定手続を要するものではない。
 また、連帯納付義務は、民法上の連帯保証債務に類似するものと解するのが相当であり、滞納者に徴収手続を尽くした後でなければ、共同相続人に徴収手続を行うことができないというものではない。
 したがって、各相続人の一部にその相続税額を滞納した者がある場合には、国税徴収に当たる所轄庁は、その他の相続人に対して、その相続により受けた利益の価額に相当する金額を限度として連帯納付義務の履行を求めることができる

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平成13年2月27日裁決

相続人以外の者が市街化調整区域内の農地の特定遺贈を受けた場合において、受遺者の責めに帰さない事情により当該農地が非農地化されたときには、農地法上の許可を受けていなくても、非農地となった時点において所有権移転の効力が生ずるというべきであるから、受遺者については、その非農地化の事実を知った日をもって相続税法第27条第1項に規定する「相続開始があったことを知った日」と解すべきであるとした事例

裁決事例集 第61集 604頁

要旨

 農地法上の許可等は法定条件であるとはいえ、農地の場合、農地法上の許可等のない限り、所有権移転の効力は生じないのであるから、この意味においては、停止条件付遺贈と同様に考えることができるのであって、本件遺贈は、当該条件が成就したときからその効力が生じるというべきである。
 遺贈の目的である土地が農地であるか否かは、現況により判断すべきであることからすれば、少なくとも受遺者の責めに帰さない事情により非農地となった以上、農地法上の許可等を受けていなくても、非農地となった時に所有権移転の効力が生ずるというべきであり、同法に、違反転用に対する処分が規定されているからといって、所有権移転の効力が否定されるものではない。
 本件の場合、客観的な使用状況に照らすと、遅くとも平成3年2月15日までには非農地になっていたと考えられ、その経緯からすると、同日に所有権移転の効力が生じたというべきである。
 そして、請求人は、平成3年10月には非農地化した事実を知ったのであるから、請求人について相続税法第27条第1項に規定する「相続開始があったことを知った日」は、平成3年10月となる。
 そうすると、本件決定処分は、国税通則法第70条第3項に違反し、違法である。

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平成10年11月9日裁決

相続税法第34条第1項の連帯納付義務には、補充性がなく、告知は不要であり、本件連帯納付義務は徴収権の消滅時効等により消滅していないとされた事例

裁決事例集 第56集 396頁

要旨

 相続税法第34条第1項の連帯納付義務は、[1]格別の確定手続を要せず、納税の告知がないからといって、連帯納付義務が発生しないということにはならないこと、[2]本来の納税者と連帯納付義務者との間に生ずる求償関係が不可能であるか否かを考慮すべきものではないこと、[3]連帯の免除、更改により連帯納付義務が消滅したとの主張には理由がなく、また、[4]延納により徴収権の消滅時効は停止しているので、時効は完成していないこと等、請求人の主張がすべて排斥されたほか、[5]連帯納付義務の性質は民法の連帯債務と異なり、通則法第5条第3項の納付責任に類似すると解され、民法の連帯債務の規定をそのまま適用するのは妥当でない。

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平成10年8月6日裁決

遺産分割に係る訴訟上の和解が成立した場合において、相続税法第32条に規定する「事由が生じたことを知った日」は、当事者が合意して和解が成立した日と解するのが相当であるとした事例

裁決事例集 第56集 389頁

要旨

 請求人は、遺産分割に係る訴訟上の和解が成立した場合において、相続税法第32条に規定する「事由が生じたことを知った日」は、各当事者に対する和解調書の送達日であるから、その翌日から4月以内にした本件更正の請求は適法である旨主張する。
 しかしながら、訴訟上の和解とは、民事訴訟の継続中に裁判所で当事者が訴訟物である権利関係の主張について相互に譲歩することにより、訴訟を終了させることを約する民事訴訟法上の合意をいい、当事者双方が裁判官の面前で和解条項を確認し、これを双方が受け入れて、初めて成立するものである。そして、訴訟上の和解が成立すれば、これを調書に記載しなければならず、調書が作成されたときには確定判決と同一の効力が発生し、調書作成前に当事者が未だ調書が作成されていないことを理由に和解の効力発生前であるとして和解内容を変更することは許されていない。また、当事者に対する調書の正本の送達が意味をもつのは、具体的給付義務等が記載されているときに和解調書に基づき債権者が強制執行する場合であって、送達の有無は、和解の成立又は効力発生とは無関係といわざるを得ない。
 以上から、相続税法第32条に規定する「事由が生じたことを知った日」は、当事者が合意して和解が成立した日と解すべきであり、本件更正の請求は期限後になされた不適法なものである。

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平成10年10月21日裁決

相続税法第34条第2項の連帯納付義務には補充性は認められず、また、連帯納付義務者に対する差押処分は、財産の選択を誤った国税徴収法第49条に反するものとはいえないとされた事例

裁決事例集 第56集 435頁

要旨

 請求人は、本来の納税義務者に対して強制的な徴税の執行を行うことなく、自己の相続税を完納した請求人に対して本件差押処分を行ったことは、違法、不当である旨主張する。
 しかしながら、連帯納付義務は、相続税の徴収の確保を図るために相互に各相続人に課した特別の責任であり、その義務履行の前提条件をなす連帯納付義務の確定という事実に照応して法律上当然に生ずるものであるから、連帯納付義務につき格別の確定手続を要するものではなく、各相続人の固有の相続税の納税義務が確定すれば、国税の徴収に当たる所轄庁は直ちに連帯納付義務者に対して徴収手続を行うことができると解され、本来の納税義務についての履行責任を連帯納付義務者に補充的に負わせるものではない。
 また、請求人は、差押物件として未分割の相続財産を選択するよう要望していたが、原処分庁が事業用の貸駐車場を差し押さえたのは、裁量権の著しい濫用である旨主張する。
 しかしながら、原処分庁が本件差押物件の方が換価が容易であるとして行った原処分には合理性があり、事業用の貸駐車場を選択しなかった本件差押処分は、裁量権の著しい濫用とはいえない。

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平成15年4月24日裁決

相続開始後3年以内に遺産分割された土地について、租税特別措置法第69条の3(平成11年法律第9号改正前)の適用を受ける場合の更正の請求の期限は、当該土地の遺産分割の日から4か月以内であるとした事例

裁決事例集 第65集 788頁

要旨

 更正の請求による租税特別措置法第69条の3(平成11年法律第9号改正前)の適用は相続税法第32条の規定により、本件土地の遺産分割が行われた日の翌日から4か月以内になされる必要があるところ、本件の更正の請求はこの期限を経過した後になされたものであるから、不適法である。
 請求人は本件土地についての遺産分割の日から4か月以内に行った修正申告において同条の適用を失念したことは同条第6項に規定する「やむを得ない事情」に該当するものと解するべきである旨主張するが、この「やむを得ない事情」とは、例えば、災害、交通や通信の途絶等、納税者の責めに帰すことのできない客観的事情によるものをいい、本件のように請求人が同条の適用を失念したことはこれに当たらない。

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平成25年6月4日裁決

被相続人の全財産を書面によらない死因贈与により取得したとする請求人の権利は、和解成立前においては、法定相続人から撤回される可能性が極めて高く、極めてぜい弱なものであったといえることから、請求人が自己のために相続の開始があったことを知ったのは、和解により当該死因贈与契約の一部の履行が確定した日であると判断した事例

裁決事例集 第91集

要旨

要旨
 原処分庁は、請求人と相続人との間に死因贈与(本件死因贈与)契約の効力に係る争いがあっても、相続税法上、租税債権の成立を妨げるものではなく、また、死因贈与の効力発生時期は贈与者の死亡時であり、死因贈与には民法第554条《死因贈与》により遺贈の規定が準用されることなどからすると、請求人が被相続人の死亡を知った日が、相続税法第27条《相続税の申告書》第1項に規定する「相続の開始があったことを知った日」であるので、請求人が提出した申告書(本件申告書)は期限後申告書である旨主張する。
 しかしながら、本件死因贈与は、書面によらないものとみるのが相当であり、書面によらない贈与は、その履行が終わるまでは各当事者が自由に撤回することができる(民法第550条《書面によらない贈与の撤回》)ところ、実際、相続人は、請求人から相続人に対して被相続人の有していた預貯金の支払を求める訴訟(本件訴訟)において、本件死因贈与契約を撤回する旨主張していた。そうすると、本件訴訟に係る和解(本件和解(訴訟上の和解))の成立前の時点においては、被相続人の全財産を本件死因贈与により取得したとする請求人の権利は、極めてぜい弱なものであるといえることから、本件和解の成立前において請求人が自己のために相続の開始があったことを知ったものとは認められない。そして、本件和解により、請求人は預金の一部についてのみ本件死因贈与により取得することとなったものであるところ、このことは、相続人が、被相続人がその全財産を請求人に死因贈与する旨の本件死因贈与契約について、その一部を撤回したものとみるのが相当であり、本件和解により、当該一部撤回後の本件死因贈与の履行が確定したと認めるのが相当である。したがって、請求人が自己のために相続の開始があったことを知ったのは、その履行が確定した本件和解の日というべきであるから、本件和解の日の翌日から10日以内に提出された本件申告書は、期限内申告書である。

参照条文等

相続税法第27条 民法第550条、第554条

参考判決・裁決

大津地裁平成18年2月27日判決(税資256号順号10333) 東京地裁昭和55年5月20日判決(裁Web) 最高裁平成18年7月14日第二小法廷判決(裁Web)

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平成16年5月28日裁決

更正処分の取消訴訟が提起されても、行政事件訴訟法第25条第1項により処分の効力、執行等を妨げないから、遺産分割が確定したことによる更正の請求の基礎となる総遺産価額は、当該更正処分により確定した額によるとした事例

裁決事例集 第67集 707頁

要旨

 遺産分割の審判の決定により未分割財産が分割確定したことによる相続税法第32条1号に規定する更正の請求とは、同法第55条の規定により未分割財産を法定相続分の割合に従って課税価格を計算して確定した納付すべき税額が、その後の遺産分割の確定に伴い過大となるという後発的事由に基づいて相続税額の是正を求めるものであるから、この規定に基づく更正の請求の基礎となる財産の価額は、申告の後に更正があった場合には、その更正により確定した財産の価額を基礎とすることになる。
 請求人は、第一次更正処分について取消訴訟を提起し、その判断がなされていないから、本件更正の請求の基礎となる総遺産価額は、申告書に記載した総遺産価額によるべきである旨主張する。
 しかしながら、行政事件訴訟法第25条第1項には、行政事件の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行または手続の続行を妨げない旨規定され、行政処分の取消しを求める争訟があっても正当な権限に基づく取消しがない以上有効な行為としてその効力を否定することはできないとされているから、第一次更正処分が、取消訴訟で取消されていない以上、有効な行為としてその効力は否定されないので、本件更正の請求の基礎となる総遺産価額は、第一次更正処分により確定した総遺産価額を基礎とすることになる。

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令和2年12月14日裁決

死因贈与契約に基づき権利を取得した請求人らが、自己のために相続の開始があったことを知った日は、「相続債権者・受遺者に対する債権申出催告の公告に係る請求申出期間満了日」ではなく、「被相続人の死亡を知った日」であるとした事例

裁決事例集 第121集

ポイント

 本事例は、請求人らが被相続人と生前締結した死因贈与契約について、被相続人の相続開始日に、請求人らが死因贈与契約に基づく権利を取得することが確定していたので、請求人らが自己のために相続の開始があったことを知った日は、「(相続人が不存在であったために行われた相続財産管理人による)相続債権者及び受遺者への請求申出の催告に係る公告の請求申出期間満了日」ではなく、「被相続人の死亡を知った日」であるから、請求人らが提出した相続税の申告書は期限後申告書であるとしたものである。

要旨

 請求人らは、被相続人と生前締結した死因贈与契約について、相続人不存在の場合、相続債権者・受遺者に対する債権申出催告の公告に係る請求申出期間満了日以前は、当該契約に基づく権利は未確定であり、相続税法第27条《相続税の申告書》第1項に規定する「その相続の開始があったことを知った日」は当該催告期間満了日となるから、その翌日から10月を経過する日までに提出した相続税の申告書は期限内申告書である旨主張する。
 しかしながら、請求人らは、被相続人に係る相続開始日に、死因贈与契約に基づく権利を取得することが確定し、自己のために相続開始があったことを知ったのであるから、被相続人の死亡を知った日の翌日から10月を経過する日までに相続税の申告書を提出しなければならなかったところ、当該経過する日までに相続税の申告書を提出しなかったのであるから、請求人らが提出した相続税の申告書は期限後申告書である。

参照条文等

相続税法第27条

参考判決・裁決

大阪高裁平成5年11月19日判決(訟務月報41巻3号449頁) 平成25年6月4日裁決(裁決事例集 No.91)

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平成12年4月19日裁決

相続税法第34条第1項の連帯納付義務は、各相続人の固有の相続税の納付義務の確定に伴い法律上当然に確定し、直ちに連帯納付義務者に対し徴収手続を行うことができ、また、補充性が認められないから、本来の納税者に対する徴収手続を尽くさないでされた連帯納付義務についての督促は不当であるとの請求人の主張には理由がないとした事例

裁決事例集 第59集 344頁

要旨

 請求人は、原処分庁が滞納者に対する滞納処分を十分に行っておらず、誠実な職務を遂行しているとはいえないこと及び本件滞納国税の負担を請求人に一方的に求め、租税負担の公平性を阻害していることから、本件督促処分は不当である旨主張する。
 しかしながら、相続税法第34条第1項に定める連帯納付義務は、相続税の徴収の確保を図るために相互に各相続人に課した特別な責任であり、その確定は各相続人の固有の相続税の納付義務の確定という事実に照応して法律上当然に生じるものであるから、各相続人の固有の納税義務が確定すれば、直ちに連帯納付義務者に対して徴収手続を行うことができ、また、国税徴収法第32条以下に規定されている第二次納税義務のような、本来の納税義務者に対する滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められる場合に限って滞納国税の納税義務を負担するという補充的な性格を持つものではない。
 したがって、原処分庁が請求人に対し本件滞納国税に係る連帯納付義務の履行を求め徴収手続を進めたとしても、これが本来の納税者である滞納者に徴収手続を尽くした後でなければできないというものではないことから、請求人の主張には理由がない。

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平成14年5月10日裁決

相続税法34条4項の連帯納付義務は、受贈者の贈与税の納税義務の確定という事実に基づいて法律上当然に生じるもので、特別の確定手続を要するものではなく、その範囲は、受贈者が負っている本税及び延滞税のすべてについて、贈与した財産の価額を限度として負担すべきであるとした事例

裁決事例集 第63集 586頁

要旨

 相続税法第34条第4項の連帯納付義務は、贈与税の徴収確保を図るため、贈与者に課した特別の履行責任であって、受贈者の贈与税の納税義務の確定という事実に基づいて、法律上当然に生じるものであるから、特別の確定手続を要しない。また、連帯納付義務の範囲は、本来の納税者である受贈者が負っている本税及び延滞税のすべてについて、贈与した財産の価額を限度として負担すべきである。

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平成16年11月8日裁決

遺産分割審判に係る高裁決定を不服として許可抗告の申立て及び特別抗告が行われている場合における相続税法第32条の更正の請求をすることができる「事由が生じたことを知った日」は、当該高裁決定に係る文書が送達された日であるとした事例

裁決事例集 第68集 203頁

要旨

 請求人は、遺産分割に係る審判について即時抗告を行い、当該即時抗告に対する高裁決定を不服として許可抗告の申立て及び特別抗告を行ったものであるところ、許可抗告の申立て及び特別抗告には高裁決定の確定を遮断する効力はなく、当然の執行停止の効力もないことから、即時抗告に対する高裁決定により審判は確定し、審判の確定によって遺産分割の内容が終局的に定まることとなる。そして、即時抗告に対する高裁決定は、告知することによって効力を生じるから、この場合の相続税法第32条1号に規定する更正の請求をすることができる「事由が生じたことを知った日」は、即時抗告に対する高裁決定に係る文書が請求人に送達された日となる。

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平成15年7月3日裁決

相続税法第34条の連帯納付責任に基づく督促処分が適法であるとした事例

裁決事例集 第66集 289頁

要旨

  1.  請求人は、本来の納税義務者Aに対する延納許可から延納許可取消しまでの間に、原処分庁が適切な徴収手続をとらず、連帯納付義務者である請求人に多大な本税、利子税及び延滞税の負担を課していることは徴収権の濫用に当たる旨主張する。
     しかしながら、連帯納付義務は、相続税の徴収の確保を図るために課された特別の責任なのであるから、本来の納税義務者が現に十分な財産を有し、同人から固有の相続税の徴収を図ることが極めて容易であるにもかかわらず、原処分庁が同人又は第三者の利益を図り、あるいは、連帯納付義務者に損害を与える目的をもって、恣意的に、本来の納税義務者からの徴収を行わず、連帯納付義務者に対してその義務の履行を求めたという事情の存する場合には、徴収権の濫用があると評価できる余地もあると解されるが、延納の制度は、法が納税者の自発的な納税を本来の姿と考え、これを容易にするため当該措置を認めているものであり、延納等の措置を講ずることによって任意の納付の履行が期待できる限り原処分庁がこれを認めようとするのは当然のことである。
     したがって、延納を認めたことで結果的に本来の納税義務者の財産によって相続税の全てを納付することが不能になったとしても、そのことをもって原処分庁が故意に恣意的な徴収手続を行なったとまではいえず、原処分庁が請求人に対し連帯納付義務の履行を求めたとしても、徴収権の濫用に当たるとはいえない。
  2.  請求人は、原処分庁が連帯納付義務に係る賦課決定通知書を送付していないから、請求人の連帯納付義務は確定していない旨主張する。
     しかしながら、相続税法第34条第1項に規定される連帯納付義務は、相続税徴収の確保を図るため相互に各相続人等に課した特別の責任であり、各相続人等の固有の相続税の納税義務の確定という事実に照応して、法律上当然に生ずると解されているから、本件相続の共同相続人であるAの相続税の納税義務が有効に確定している以上、請求人の連帯納付義務は、格別の手続を要することなくAの納付義務の確定に照応して確定している。
  3.  請求人は、原処分庁が行ったAに対する延納の許可から延納許可の取消しまでの徴収手続に違法があるとして、請求人の連帯納付義務は消滅している旨主張する。
     しかしながら、延納の許可と連帯納付義務は異なる租税法規を根拠とするものである上、相続税法、国税通則法及び国税徴収法のいずれにも、請求人が主張するような延納の許可に関する違法等の存在によって連帯納付義務が消滅する旨を規定した条文は存在しない。
     むしろ、連帯納付義務は、法が相続税の徴収を確保するために各相続人等に課した特別の責任であること、延納の許可に当たって十分な担保を徴していても、担保価値の変動によって担保物を処分しても相続税が徴収できなくなる可能性があることを鑑みれば、原処分庁は、延納の許可の際に徴した担保を処分して徴収を確保する方法と、連帯納付義務者にその履行を求めて徴収を確保する方法を併存的に有していると解するのが相当である。
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平成17年6月24日裁決

調停により遺産分割が行われた場合における相続税法32条第1号の更正の請求ができる「事由が生じたことを知った日」は調停が成立した調停期日の日であるとした事例

裁決事例集 第69集 252頁

要旨

 請求人は、平成14年の調停期日では、遺産分割についての基本的な合意があっただけで、更正の請求のために相続税の課税価格を具体的に把握できるようになったのは調停調書が作成されてからであるから、相続税法第32条に規定する「事由が生じたことを知った日」は、調停調書の正本の作成日付である平成15年である旨主張する。
 しかしながら、家事調停手続きにより遺産分割がなされた場合には、[1]共同相続人間に遺産分割の調停が成立したことによって、課税価格は未分割のときのそれとは異なることになること、[2]調停期日において遺産分割の合意が成立したことによって、各相続人が取得する遺産の範囲が明らかになり、調停期日に出頭した各相続人はこれを認識し、分割後の課税価格が未分割のときのそれとは異なることとなったことを認識することからすれば、この場合の相続税法第32条に規定される「事由が生じたことを知った日」とは、特段の事情がない限り、遺産分割の合意が成立した調停期日の日と解するのが相当である。
 なお、家事審判法第21条第1項は、「調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したときは、調停が成立したものとし、その記載は、確定判決(審判)と同一の効力を有する。」と規定しているが、調停は、当事者間の合意によってなされるという私法行為としその性格とそれが裁判所においてなされ確定判決と同一の効力を有するという訴訟行為としての性格を併せ有するものと解されるから、当事者間の遺産分割の合意の内容が調停調書に記載される前においても、当事者間の合意が成立した調停期日の日には、相続税法第32条第1号に規定される当該財産の分割が行われて課税価格が相続分等の割合に従って計算された課税価格と異なることとなったということができる。

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平成17年6月27日裁決

相続税法第34条の連帯納付義務に基づく督促処分及び差押処分が適法であるとした事例

裁決事例集 第69集 300頁

要旨

 請求人は、相続税の連帯納付義務について、[1]請求人に対する時効中断措置が講じられていないから、徴収権の時効が完成していること、[2]連帯納付義務の通知を滞納発生から10年以上放置したこと、及びその間バブル崩壊により本来の納税義務者から徴収不能となったことの責任を請求人に転嫁するものであることから、連帯納付義務の督促処分及び差押処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、[1]相続税の連帯納付義務は、自らが負担すべき固有の相続税の納税義務のほかに負う特別の責任であり、国税通則法第8条の規定の適用はなく、本来の納税義務者に対する時効中断の効力は連帯納付義務者にも及ぶこと、[2]相続税の連帯納付義務について告知を要する旨の法令はなく、連帯納付義務に係る通知の遅延よって、請求人に対する処分が違法となるものではないことから、本件連帯納付義務の督促処分及び差押処分はいずれも適法である。

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平成20年1月31日裁決

遺産分割審判手続中に相続分放棄証明書及び脱退届出を家庭裁判所に提出した納税者は、他の共同相続人間において遺産分割が確定したことを知った日の翌日から4か月以内に相続税法第32条第1号の規定に基づき更正の請求をすることができるとした事例

裁決事例集 第75集 624頁

要旨

 本件のように相続税法第55条の規定に基づく相続税の申告書の提出後に共同相続人の一人が相続分放棄証書を添付して脱退届出書を家庭裁判所に提出し、その後他の共同相続人に対して審判の告知がされた場合において、相続税法第32条第1号に規定する「その後当該財産の分割が行われ、共同相続人が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従って計算されていた課税価格と異なることとなった」のがいつかを判断するに当たっては、上記の共同相続人の相続分放棄証書を添付した上での審判からの脱退届出書の家庭裁判所への提出行為の法的性質、法的効果のみならず、他の共同相続人についてはいつ最終的な遺産分割の合意が成立し、あるいはこれに代わる審判の効力が生じたか等を斟酌してなすのが相当であるところ、本件においては、請求人以外の共同相続人が複数であるとともに、審判の告知がなされるのは当該請求人以外の共同相続人に対してであること等を踏まえれば、たとえ共同相続人のうちの一人に相続分の放棄をした者があったとしても、他の共同相続人間で遺産分割が確定したときに、当該相続分の放棄をした者を含めて全体として最終的な遺産分割と同様の効果を生ずると判断するのが相当であり、本件において当該効果を生ずる事実が発生したのは、他の共同相続人に対して本件抗告の棄却決定がなされた時と解するのが相当である。

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平成20年10月29日裁決

更正の請求の直前における請求人の相続税の課税価格は相続税法第55条の規定に基づき民法の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って計算されていたものではないから、当該更正の請求は相続税法第32条第1号の要件を欠くものであるとした事例

裁決事例集 第76集 440頁

要旨

 相続税法第32条第1号は、同法第55条の規定により分割されていない財産について、民法(第904条の2を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って課税価格が計算されていたこと、及びその後当該財産の分割が行われたことをその要件としていることから、同号の規定に基づく更正の請求は、単に相続財産の分割が行われ、相続財産の分属が決まり、その結果に従って相続税の課税価格を計算すると申告又は更正若しくは決定に係る課税価格と異なることとなるというだけでは足りず、①当該分割が行われる前には遺産共有の状態にあった分割の対象とされた財産について、民法(第904条の2を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って課税価格が計算された申告又は更正若しくは決定が行われていること、及び②当該申告又は更正若しくは決定において未分割財産とされていた財産が分割されたことが必要であり、①の申告又は更正若しくは決定がなされていない場合には、同条第1号の更正の請求の要件を満たさないこととなる。
 本件においては、本件遺言が無効である旨の判決が確定した最高裁判決により、すべての相続財産は遺産共有の状態、すなわち未分割の状態にあることが明らかにされたものと認められ、その後、審判によりその未分割の状態にあった財産の分割が行われたのであるから、最高裁判決により未分割の状態にあることが明らかになった相続財産について、相続税法第55条の規定に基づく申告又は更正若しくは決定がなされていたかどうかで、本件更正の請求が同法第32条第1号の更正の請求の要件である「相続税法第55条の規定により分割されていない財産について民法(第904条の2を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って課税価格が計算されていたこと」を満たすか否かを判断すべきこととなる。この点、本件申告は、最高裁判決の前になされているものであって、本件更正の請求の直前における請求人の相続税の課税価格は、最高裁判決により未分割の状態にあった相続財産について相続税法第55条の規定に基づき民法の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って計算されていたものでないことは明らかである。したがって、本件更正の請求は、相続税法第32条第1号に規定する要件を欠くものである。

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平成18年6月26日裁決

相続により受けた利益の価額が確定していないから連帯納付義務はいまだ発生していないとする請求人の主張を排斥した事例

裁決事例集 第71集 626頁

要旨

 請求人は、遺留分減殺請求権を行使して本件土地建物の共有持分12分の1について所有権移転登記(以下「本件登記」という。)をしているが、[1]本件登記は、請求人が遺留分の権利保全を行ったにすぎず、具体的な遺留分額はいまだ確定していないから、本件相続によって請求人が受ける利益は確定しておらず、請求人には本件滞納国税に係る連帯納付義務はまだ発生していないこと、[2]仮に、本件登記をしたことが直ちに「相続等によって得た利益」であり、相当額の受けた利益の価額があるとしても、いまだ具体的遺留分額の最終確定と清算処理がなされていない現時点においては、少なくとも本件土地建物に設定された根抵当権に係る本件被相続人関連債務のうち請求人の法定相続分相当額は請求人の負担として債務控除がなされなければならず、かかる債務控除を一切行わないまま、単純に本件土地建物の持分価額をもって請求人の得た利益と即断して本件督促処分をしていることから、本件督促処分は違法であると主張する。
 しかしながら、遺留分減殺請求権の行使は、受贈者又は受遺者に対する裁判外の一方的な意思表示で可能であり、また、その意思表示がいったんなされた以上、法律上当然に減殺の効力が生じるものと解されるところ、本件においては、請求人が遺留分減殺請求権を行使したことにより、本件相続開始時にさかのぼって、本件土地建物の各12分の1の持分を取得したものと認められるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。次に、「相続により受けた利益の価額」とは、相続税法第34条第1項が相続税の徴収の確保を図るため、相互に各相続人等に課した特別の責任であるという趣旨に照らせば、相続又は遺贈により取得した財産の価額から相続税法第13条の規定による債務控除の額並びに相続又は遺贈により取得した財産に係る相続税額及び登録免許税額を控除した後の金額をいうと解するのが相当であり、また、相続税法第13条の規定による控除すべき債務は、同法第14条第1項の規定により確実と認められるものに限るとされているところ、本件においては、実際に請求人の負担に属する部分の債務の金額があるとする証拠はないことから、相続税法第13条の規定による確定した債務控除の額はないものと認められ、この点に関する請求人の主張には理由がない。

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平成23年12月6日裁決

「相続させる」旨の遺言の法的効果を前提として、未分割財産が分割されたことを事由とする相続税法第32条第1号の規定に基づく更正の請求は、その前提要件を欠くとした事例

裁決事例集 第85集

ポイント

 この事例は、遺産の全部を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言があった場合には、被相続人の死亡の時に直ちに遺産全部について分割の効果が発生し、当該遺産について再度の分割がなされる余地はないから、相続税法第32条第1号の規定の適用の前提を欠くと判断したものである。

要旨

 請求人らは、本件遺言は相続分の指定をしたものにすぎず、当初申告における課税価格は、相続税法第55条《未分割遺産に対する課税》の規定に基づき本件遺言による指定相続分に従って計算したものであるから、請求人らを被告とする遺留分減殺請求訴訟において成立した本件和解により遺産分割が確定したとして、同法第32条《更正の請求の特則》第1号に規定する事由が生じた旨主張する。
 しかしながら、遺産全部を一部の相続人に「相続させる」旨の遺言は、遺言書の記載からその趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情がない限り、遺産の分割の方法を定めた遺言であり、被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じた時)に直ちに遺産全部について分割の効果が発生し、もはや当該遺産について再度の分割がなされる余地はなく、また、当該相続人に法定相続分を超える遺産を相続させることになるから、遺産分割方法の指定と同時に相続分の指定がなされたものと解すべきであるところ、本件遺言では、不動産8件を個別に掲記した上で、それらを含む一切の財産を「請求人らに各2分の1の割合で相続させる」旨記載されていること、他の相続人らには財産を相続させない旨の被相続人の意思が明確に表示されていることからして、本件遺言は、遺産分割方法の指定と同時に相続分の指定をしたものと解すべきであり、そうすると、本件被相続人の死亡の時に遺産全部について直ちに分割の効果が発生し、当該遺産について再度の分割がなされる余地はない。
 したがって、相続税の申告書の提出時に本件被相続人の遺産の中に未分割のものはなく、相続税の課税価格が相続税法第55条の規定により計算されたものと認めるべき余地はないから、本件和解が、同条の適用があった場合に係る同法第32条第1号に規定する事由に該当しないことは明らかである。

参照条文等

相続税法第32条第1号第55条 民法第908条

参考判決・裁決

最高裁平成3年4月19日第二小法廷判決(民集45巻4号477頁)

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平成20年4月1日裁決

相続税の連帯納付義務についての督促処分前に行われた当該相続税を担保するための抵当権の抹消に当たり、その判断に誤りがあるとしても、当該督促処分が権利の濫用に当たるとはいえず、民法第504条の類推適用又は国税通則法第41条第2項の規定により連帯納付義務が免責されることもないとした事例

裁決事例集 第75集 633頁

要旨

 請求人は、本件相続税の延納担保であった本件担保不動産の売却代金から本件相続税を徴収することができたはずであるにもかかわらず、差替担保の設定や本件相続税の徴収をすることなく本件担保不動産に設定されていた本件抵当権を解約したことに重大な過失があるから、原処分庁が行った本件相続税の連帯納付義務についての本件督促処分は権利の濫用に当たると主張する。
  しかしながら、相続税の本来の納税義務者に対する徴収手続と連帯納付義務者に対する徴収手続が、本来的に別個独立の手続であることからすれば、国税当局が本来の納税義務者に対する徴収手続を適正に行わなかった結果、本来の納税義務者から徴収することができなくなったという事実があったとしても、その事実は相続税の連帯納付義務の存否又はその範囲に影響を及ぼすものではないから、国税当局が他の相続人等に対し連帯納付義務の履行を求めて徴収手続を進めたとしても、これをもって徴収権の濫用と評価することはできない。もっとも、相続税の連帯納付義務は、法が相続税の徴収を確保するために、相続人等に課した特別の責任であることからすれば、本来の納税義務者が現に十分な財産を有し、同人から滞納に係る相続税を徴収することが極めて容易であるにもかかわらず、国税当局が本来の納税義務者又は第三者の利益を図る目的をもって恣意的に本来の納税義務者からの徴収を行わず、相続税法第34条第1項の規定に基づき、他の相続人等に対して滞納処分を執行したというような場合には、他の相続人等に連帯納付義務の履行を求めることが形式的には租税法規に適合するものであっても、正義公平の観点からみて徴収権の濫用に当たると評価すべき場合もあり得ると解される。
  本件においては、本件相続税の滞納者又は第三者の利益を図る目的をもって、差替担保の提供を受けず、必要額の支払も受けずに、恣意的に抵当権の抹消手続を行ったと評価すべき事実は認められないから、仮に抵当権の抹消の際の判断に誤りがあり、請求人が主張するとおりの事実によって本件相続税の徴収が図られなくなったとしても、そのことをもって本件督促処分が権利の濫用に当たるものということはできない。
  請求人は、民法第504条の類推適用又は国税通則法第41条第2項の適用により、連帯納付義務が免責される旨主張するが、相続税法、国税通則法及び国税徴収法のいずれにも民法第504条の準用又は類推適用による相続税の連帯納付義務の消滅を根拠付ける趣旨は見当たらず、連帯納付義務者はその徴収手続において本来の納税義務者と別個独立した関係にある点からも、同条を連帯納付義務者に類推適用することは相当でなく、また、国税通則法第41条第2項は、納税者に代わって国税を納付した者はその取得した求償債権の限度で納付した国税の担保たる抵当権につき国に代位することができる旨を規定するだけで、国に対して抵当権の保存を義務付けるものと解することはできないから、請求人の主張には理由がない。

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平成26年6月25日裁決

相続税法第34条第6項に規定する連帯納付義務の納付通知処分が適法であるとした事例(連帯納付義務の納付通知処分・棄却)

裁決事例集 第95集

要旨

 請求人は、本来の納税義務者には滞納相続税を納付できる十分な資力等があり、同人から徴収することが極めて容易であるにもかかわらず、原処分庁が請求人に対して恣意的に相続税法第34条《連帯納付の義務等》第6項に規定する連帯納付義務の納付通知処分を行ったことは徴収権の濫用に当たる旨主張する。
 しかしながら、同法第34条第1項に規定する連帯納付義務は補充性を有しないのであって、連帯納付義務者は第二次納税義務等のように本来の納税義務者に滞納処分を執行しても徴収すべき額に不足すると認められる場合に限って納付義務を負担するというものではない。したがって、原処分庁が徴収手続を怠った結果、本来の納税義務者から滞納相続税を徴収することができなくなったという事実があったとしても、同人又は第三者の利益を図る目的をもって恣意的に当該滞納相続税の徴収を行わず、他の相続人に対して徴収処分をしたというような事情がない限り、徴収権の濫用には当たらない。本件の場合、このような事情は認められないことから、請求人の主張は採用することができない。

参照条文等

相続税法第34条

参考判決・裁決

最高裁昭和55年7月1日第三小法廷判決(民集34巻4号535頁)

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平成24年3月13日裁決

相続税法第35条第3項の規定に基づいて行われた増額更正処分は、その処分の前提となる更正の請求が同法第32条第1号の要件を満たしていないから違法であるとした事例

裁決事例集 第86集

ポイント

 この事例は、共同相続人の総意により特定非営利活動法人に寄附された遺産中の財産は、共同相続人間で法定相続分の割合で分割されたとみるのが相当であり、その分割の前後で更正の請求をした者の課税価格は異ならないことなどから、当該更正の請求は相続税法第32条第1号の要件を満たしておらず、これを前提とした同法第35条第3項の規定に基づいて行われた増額更正処分は違法であると判断したものである。

要旨

 原処分庁は、本件相続財産の遺産分割に係る和解成立を内容とする民事調停法上の決定(本件民事調停決定)がなされたことを基因として請求人以外の共同相続人から提出された各更正の請求(本件各更正の請求)は、相続税法第32条《更正の請求の特則》第1号の事由に該当する適法なものであるから、請求人に対して同法第35条《更正及び決定の特則》第3項の規定に基づき行った本件更正処分は適法なものである旨主張する。
 しかしながら、相続税法第35条第3項の規定に基づく更正処分が適法になされるためには、前提として、他の共同相続人につき、同法第32条の規定による適法な更正の請求に基づく(減額)更正処分が行われなければならず、当該更正の請求が同条第1号に基づくものである場合には、①まず、同条第55条《未分割遺産に対する課税》の規定に基づいて、未分割財産について、民法の規定による相続分の割合に従って課税価格が計算されていること、②次に、当該未分割財産が分割されたこと、③そして、当該分割の結果に従って相続税の課税価格を計算すると上記①の課税価格と異なることとなったこと、という要件をいずれも充足する必要があるところ、本件各更正の請求についてみると、本件相続財産のうち、本件民事調停決定によりW会が取得することとなった財産(W会財産)以外の財産については、そもそも同法第55条が適用されていないから上記①の要件を満たさず、また、本件相続財産のうちW会財産については、同条の規定に基づいて法定相続分で課税価格が計算されており、本件民事調停決定をもって分割されたと認められるから、上記①及び②の各要件を満たすものの、本件民事調停決定によって法定相続分で分割されたとみるのが相当であるから、上記③の要件を満たさない。したがって、本件各更正の請求は、相続税法第32条第1号の事由に該当しない不適法なものであるから、本件更正処分は、同法第35条第3項の要件を満たさない違法なものである。

参照条文等

相続税法第32条第35条第3項

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令和5年6月21日裁決

相続税法第34条第1項が規定する「相続等により受けた利益の価額に相当する金額」の算定に当たり、相続等により取得した財産の価額から控除すべき金額は、相続等により財産を取得することに伴って現実に支払義務が生じた金額と解することが相当であるとした事例(連帯納付義務の納付通知処分・棄却)

裁決事例集 第131集

ポイント

 本事例は、連帯納付責任限度額の算定において、相続登記に係る登録免許税は、連帯納付の通知処分時までに現実に納付した税額だけを相続等により取得した財産の価額から控除することが相当であることを明らかにしたものである。

要旨

 請求人は、原処分庁がした相続税の連帯納付義務の納付通知処分(本件通知処分)について、連帯納付責任の限度額の算定に当たり、相続等により取得した財産の価額から①相続財産の不動産登記を行う場合の司法書士報酬、登録免許税及び印紙税等の各見積額並びに②相続税申告等のための税理士報酬及び本件通知処分等に対応するための弁護士報酬の各負担額が控除されていないため違法である旨主張する。
 しかしながら、相続税法第34条第1項に規定する「相続等により受けた利益の価額に相当する金額」とは、相続人等が現実に取得した利益の価額に相当する金額であって、現実に支払義務が生じた金額を控除した後の金額と解するのが相当である。そして、相続税法基本通達34-1(本件通達)において、「相続等により受けた利益の価額」とは、相続等により取得した財産の価額から、相続税法第13条に規定する債務控除の額のほか、相続等により取得した財産に係る相続税額及び登録免許税額を控除した後の金額をいう旨定めているところ、①相続財産である不動産は、いずれも相続による権利の移転の登記がされていないため、司法書士報酬及び登録免許税等の各見積額は請求人に現実に支払義務が生じたものとは認められず、②税理士報酬等は、相続税額のように納税義務に基づいて当然に負担が生じるものではないし、登録免許税額のように一般的に生じるものとも言い難いものであり、本件通達に定める債務控除の額等のいずれにも該当しないことから、請求人の主張する各金額は、連帯納付責任限度額の算定に当たり相続等により取得した財産の価額から控除することはできない。

参照条文等

相続税法第34条第1項 相続税法基本通達34-1

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平成25年1月8日裁決

遺留分権利者が遺留分減殺を原因とする土地の共有持分移転登記請求訴訟によって同土地の共有持分権を取り戻したことは、遺留分義務者の相続税法第32条第3号の更正の請求事由に当たるとした事例

裁決事例集 第90集

ポイント

 本事例は、遺留分権利者が遺留分減殺請求の目的物について現物返還と価額弁償とを同時に求めていた場合において、遺留分義務者から現物返還が行われたことは、相続税法第32条第3号の更正の請求事由に当たることなどを初めて明らかにしたものである。

要旨

 原処分庁は、請求人以外の共同相続人ら(本件遺留分権利者ら)が、遺産である土地(本件土地)について、①請求人に対して、遺留分減殺請求訴訟において、価額弁償の請求をしながら、同時に、②本件土地について請求人の債務に係る譲渡担保権に基づき所有権移転登記を受けていたK社に対して、共有持分移転登記請求訴訟において、現物返還の請求として所有権一部移転登記手続の請求をしており、K社が当該請求を認諾(本件認諾)したという事実関係の下、請求人が本件認諾を事由としてした更正の請求(本件更正の請求)は、相続税法(平成18年法律第10号による改正前のもの)第32条《更正の請求の特則》第3号事由(遺留分減殺請求に基づき返還すべき又は弁済すべき額が確定したこと)に該当しないものである旨主張する。
 しかしながら、本件認諾は、K社が、本件土地に設定されていたK社の譲渡担保権に基づく所有権移転登記について、本件遺留分権利者ら各共有持分10分の1の所有権移転登記手続をすることを認めたものであり、また、本件認諾の前に、請求人が本件遺留分権利者らの遺留分割合が各10分の1であると認めていたことからすると、本件遺留分権利者らは、本件認諾により、本件土地の遺留分に係る各共有持分の登記を回復することができたものと認められる。そして、民法第1040条《受贈者が贈与の目的を譲渡した場合等》第1項本文の規定は、遺留分権利者が、遺留分減殺請求によって目的物を取り戻して登記を回復することができた場合に、これに加えて価額弁償の請求も認めるものと解することはできないことからすると、本件遺留分権利者らは、本件認諾の後本件土地に係る価額弁償を請求することはできないから、本件認諾の日に、本件土地について遺留分に相当する共有持分権を取り戻すことが確定し、これにより、請求人が遺留分減殺請求に基づき返還すべき又は弁償すべき額が確定したというべきである。したがって、本件更正の請求は、相続税法第32条第3号に規定する事由に該当するものである。

参照条文等

相続税法第32条第3号

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平成25年8月22日裁決

相続税法施行令第8条第1号に規定する判決は、請求人が訴訟当事者である判決に限られるとした事例

裁決事例集 第92集

要旨

 請求人は、共同相続人Eが原告となって提起した、相続財産として申告していた貸付金のうち原告の法定相続分に相当する金員の支払を求める貸金請求訴訟において、当該貸付金の存在を認めることはできないとして原告の請求を棄却する旨の判決(本件判決)が確定し、本件判決は相続税法施行令(平成17年政令第37号による改正前のもの)第8条《更正の請求の対象となる事由》第1号に規定する判決に該当するから、相続税法(平成16年法律第147号による改正前のもの)第32条《更正の請求の特則》第5号の規定に基づいて行った更正の請求を認めるべきである旨主張する。
 しかしながら、国税通則法第23条《更正の請求》第2項第1号は、判決が確定したことを要件としており、同号に規定する判決は、更正の請求をする者が訴訟当事者である判決に限られるものと解されるところ、相続税法施行令第8条第1号が、平成15年度税制改正により相続税法第32条の更正の請求の特則事由として追加された改正趣旨は、同号の事由が、国税通則法第23条第2項の規定により、期限なしに更正の請求ができる事由であることから、税額の減額には対応できるが、その影響で他の相続人の税額が増加することとなる場合の増額の処分を可能とする規定が国税通則法にはないため、相続税法第32条においてこれを更正の請求の特則事由として特記することにより、相続税法第35条《更正及び決定の特則》第3項の規定による他の相続人に対する増額処分も可能とするためであると解されることからすれば、相続税法施行令第8条第1号に規定する判決は、国税通則法第23条第2項第1号に規定する判決と同義のものといえるから、更正の請求をする者が訴訟当事者である判決に限られるものと解される。これを本件についてみると、本件判決は、共同相続人Eが提起した貸金請求事件の判決であり、請求人が訴訟当事者ではない判決であるから、請求人にとって相続税法施行令第8条第1号に規定する判決には該当しない。

参照条文等

相続税法第32条 相続税法施行令第8条第1号 民事訴訟法第115条

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令和5年6月21日裁決

相続税法第34条第1項が規定する「相続等により受けた利益の価額に相当する金額」の算定に当たり、相続等により取得した財産の価額から控除すべき金額は、相続等により財産を取得することに伴って現実に支払義務が生じた金額と解することが相当であるとした事例(連帯納付義務の各納付通知処分・棄却)

裁決事例集 第131集

ポイント

 本事例は、連帯納付責任限度額の算定において、相続登記に係る登録免許税は、連帯納付の通知処分時までに現実に納付した税額だけを相続等により取得した財産の価額から控除することが相当であることを明らかにしたものである。

要旨

 請求人らは、原処分庁がした相続税の連帯納付義務の各納付通知処分(本件各通知処分)について、連帯納付責任の限度額の算定に当たり、相続等により取得した財産の価額から①相続財産の不動産登記を行う場合の司法書士報酬、登録免許税及び印紙税等の各見積額並びに②相続税申告等のための税理士報酬及び本件各通知処分等に対応するための弁護士報酬の各負担額が控除されていないため違法である旨主張する。
 しかしながら、相続税法第34条第1項に規定する「相続等により受けた利益の価額に相当する金額」とは、相続人等が現実に取得した利益の価額に相当する金額であって、現実に支払義務が生じた金額を控除した後の金額と解するのが相当である。そして、相続税法基本通達34-1(本件通達)において、「相続等により受けた利益の価額」とは、相続等により取得した財産の価額から、相続税法第13条に規定する債務控除の額のほか、相続等により取得した財産に係る相続税額及び登録免許税額を控除した後の金額をいう旨定めているところ、①相続財産である不動産は、いずれも相続による権利の移転の登記がされていないため、司法書士報酬等の各見積額は請求人らに現実に支払義務が生じたものとは認められず、②税理士報酬等は、相続税額のように納税義務に基づいて当然に負担が生じるものではないし、登録免許税額のように一般的に生じるものとも言い難いものであり、本件通達に定める債務控除の額等のいずれにも該当しないことから、請求人らの主張する各金額は、連帯納付責任限度額の算定に当たり相続等により取得した財産の価額から控除することはできない。

参照条文等

相続税法第34条第1項 相続税法基本通達34-1

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