裁決事例 贈与財産の範囲

裁決事例 贈与財産の範囲

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平成12年6月29日裁決

調停調書に基づき解決金の支払により土地を取得した場合であっても解決金の金額がその土地の時価より著しく低いときには低額譲受に当たるとした事例

裁決事例集 第59集 226頁

要旨

  1.  相続税法第7条の規定は、法律的には贈与契約によって財産を取得したものではないが、経済的には時価より著しく低い価額で財産を取得すれば、その対価と時価との差額について、実質的に贈与があったとみることができるので、この経済的実質に着目して、税負担の公平の見地から課税上は、これを贈与とみなす趣旨のものと解される
  2.  このような規定の内容及び趣旨からすれば、被相続人の相続財産を不当に減少させることとはならないとしても、財産の取得が著しく低い対価によって行われた場合に、その対価と時価との差額については、実質的に贈与があったとみなして本規定が適用されることとなる。
  3.  本件取得日における本件土地の時価は、13,284千円であると認められ、請求人は本件解決金の額4,000千円を支払って本件土地を取得しているのであるから、請求人の土地の取得は「著しく低い価額で財産の譲渡を受けた場合」に該当し、請求人は、時価と本件解決金との差額9,284千円を本件相続人から贈与により取得したものとみなされることとなる。
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平成9年3月31日裁決

請求人は、資力を喪失していないので、相続税法第8条ただし書の適用ができないとした事例

裁決事例集 第53集 356頁

要旨

 請求人は、相続税法第8条(贈与又は遺贈により取得したものとみなす場合-債務免除等)ただし書に規定する資力喪失か否かの判定(所有財産の時価算定)に当たり、[1]株式は平成5年11月25日から30日までの終値の平均値、[2]本件宅地は平成6年分の路線価、[3]本件家屋は固定資産税評価額及び[4]母Kからの相続財産は遺留分によって計算すべきである旨主張する。
 ところで、相続税法第8条ただし書は、第1号に規定する債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合においてその全部又は一部の免除を受けたときには、その債務を弁済することが困難である部分の金額を限度として、贈与税の課税対象から除外する旨規定しており、債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合とは、その者の債務額が積極財産の額を超えるときのように社会通念上支払不能と認められる場合をいうものと解されている。
 そうすると、債務免除があった場合に、当該債務の免除が贈与に該当するか否かの判断は、債務者が債務免除を受けた時点において債務超過であったか否かによることが相当であると認められ、この場合、債務者の財産の価額又は債務額は、債務免除があった時の時価によるのが相当であると解される。
 本件の場合、[1]請求人所有の株式の価額は、平成5年11月25日の終値(1億6,459万円)によるのが相当であり、また、買建ての信用取引の含み損失額は、買建ての約定金額から同日の終値と金利相当額を控除した金額(1億2,492万円)によるのが相当であること、[2]本件宅地の価額は、接面道路、面積及び用途地域が同一である公示地の平成5年及び平成6年の公示価格から比凖し、更に時点修正した価格が相当であり、これに地積と持分(3/4)を乗じた1億4,892万円となること、[3]昭和62年11月に新築した本件家屋の価額は、取得価格1億4,392万円から減価償却費相当額を控除した1億3,096万円が相当であること、[4]請求人が母Kから相続した財産は1億2,682万円、債務等は225万円、税額は1,966万円であることから、請求人が被相続人からa株式会社ほか2銘柄の本件株式の返還義務の免除を受けた平成5年11月25日における請求人の積極財産の額は6億2,905万円、債務等の額は4億5,343万円であり、差引1億7,562万円の超過となり、3,149万円の債務超過という請求人の主張は採用できない。
 したがって、本件株式の返還義務免除7,848万円は、相続税法第8条ただし書に該当しないので、贈与により取得したとみなされるのが相当であり、同法第19条(相続開始前三年以内に贈与があった場合の相続税額)の規定により相続税の課税価格に加算されることとなり、請求人らの相続税の課税価格及び納付すべき税額は、いずれも異議決定を経た後の更正処分の金額と同額であるから、更正処分は適法である。

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平成13年4月27日裁決

請求人が父から売買契約により譲り受けた土地の対価は、当該土地の時価に比して著しく低い価額であると認められ、相続税法第7条の規定により贈与があったものとした事例

裁決事例集 第61集 533頁

要旨

 相続税法第7条は、著しく低い価額で財産の譲渡を受けた場合においては、法律的には贈与といえないとしても、経済的には対価と時価との差額について実質的に贈与があったと同視することができるため、この経済的実質に着目して、課税負担の公平の見地からその差額について贈与があったものとみなして贈与税を課税する趣旨のものと解されるところ、請求人及び原処分庁の主張する時価額はいずれも採用できない。
 そこで、当審判所において、公示価格を基に土地価格比準表に準じて地域要因及び個別的要因等の格差補正をして本件土地の時価額を算定したところ、その価額は45,661,363円と算定された。
 そうすると、本件土地の時価と売買価額との差額は18,501,363円に達するものであることから、本件土地の売買価額は、相続税法第7条に規定する著しく低い価額の対価であると認めるのが相当である。

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平成13年3月30日裁決

離婚成立前に登記原因を贈与とする所有権移転登記をした上で行った贈与税の申告について、その後裁判上の離婚をしたことを理由とする国税通則法第23条第2項による更正の請求を認めなかった事例

裁決事例集 第61集 550頁

要旨

 請求人は、離婚を条件として前夫から取得することとなっていた土地について、離婚前に登記原因を贈与とする贈与税の申告をしたが、その後の裁判により離婚が確定したことをもって、当該土地は財産分与であるとして、国税通則法第23条第2項を適用して、更正の請求が認められる旨主張する。
 しかしながら、請求人が当該土地の所有権移転登記をしたのは、裁判離婚を提訴する前で、婚姻状態が継続していたこと、また、提訴の内容は離婚を求めるものであり、財産分与の額を決定したものではないことから、当該土地の取扱いは、財産分与とは認められず、相続税法第9条の規定により、贈与として取り扱うのが相当であるから、更正の請求は認められない。

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平成17年12月15日裁決

当初の遺産分割協議の錯誤無効を理由に行った再度の遺産分割協議に基づき取得した新たな財産は、当初の遺産分割協議に要素の錯誤があったとは認めることができないから贈与により取得したものと認められるとした事例

裁決事例集 第70集 259頁

要旨

 請求人は、養親である祖父亡Gの後妻亡Hと養親子関係がないことを知らないで行った本件遺産分割は、法律行為の要素に錯誤があり、養親子関係がないことを知っていれば亡Hに亡Gの遺産を相続させる本件遺産分割を行うはずはなかったとして、本件遺産分割協議が錯誤により無効である旨主張する。
 しかしながら、請求人と亡Hとの間に養親子関係があったとしても、請求人が主張するように、請求人が本件土地建物を亡Hから相続により取得することになるとは限らず、また、請求人が亡Hとの間に養親子関係がないことを知っていたとしても、請求人が主張するような遺産分割協議が成立するという必然性も認められない。そうすると、請求人の主張する「錯誤」は、遺産分割協議の動機に関するものであり、この動機が遺産分割協議の際に表示されていたとしても、本件遺産分割の内容と異なる内容の遺産分割協議がされたということにもならないから、民法第95条に規定する法律行為の要素の錯誤ということはできず、結局、請求人の思い違いないし勘違いにすぎないというほかはない。
 したがって、本件遺産分割に要素の錯誤があったとは認めることはできないから、本件土地建物は、請求人が亡Hの相続人から贈与により取得したものと認めるのが相当である。

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平成14年3月28日裁決

賃貸料が当該土地に係る固定資産税と同額であることなどから、請求人は、貸家建付地である当該土地を著しく低い価額の対価で譲り受けたと認められるとした事例

裁決事例集 第63集 508頁

要旨

 請求人は、父から譲り受けた本件土地の持分部分(請求人の持分を除いたもの)には、父が所有し、請求人の夫が賃借している建物があること、請求人の所有持分について賃貸借契約を締結し、父が賃貸借料を支払っていることから、請求人が譲り受けたものは底地である旨主張する
 しかしながら、本件土地の持分の譲渡者と本件建物の所有者とは同一人であるから、同部分に父が借地権を有していたとは認められず、また、請求人に支払われている賃貸借料は固定資産税額と同額であるから、請求人と父との間の貸借は使用貸借と解すべきである。
 そして、本件土地は貸家の用に供されている土地であるから、その価額につき、国税局長が定める財産評価基準書で示されているその土地に係る借地権割合とその貸家の借地権割合との相乗積を当該更地価額に乗じて計算した金額を、その更地価額から控除した価額とすることを不相当とする理由は認められないから、これらを基に本件土地の貸家建付地価額を算定すると、本件譲受価額は当該貸家建付地価額に比して著しく低い価額の対価と認めるのが相当である。

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平成15年6月19日裁決

土地建物の譲受価額が相続税法第7条に規定する「著しく低い価額の対価」に当たるとしてなされた原処分は違法であるとした事例

裁決事例集 第65集 576頁

要旨

 原処分庁は、本件土地の譲受けは、相続税法第7条にいう「著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合」に該当すると主張するが、譲渡人(請求人の祖母)は高齢となり、借入金を弁済するために譲渡したものであり、一方、請求人は自身の将来のことを考えて金融機関から取得資金を借り入れて本件土地を取得したものであること、売買価額は固定資産税評価額を参考に、利用形態を考慮して決定したこと、譲渡人は本件土地を相続により取得し、長期間保有していたものであること、[4]建物の譲受対価の額と本件土地の譲受対価の合計額は、これらの不動産の相続税評価額の合計額を上回っていることを総合勘案すると、本件土地の譲受は相続税法第7条に規定する「著しく低い価額の対価」による譲受けには該当しないとするのが相当である。

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平成22年4月22日裁決

資金の移動が、相続税法第9条に規定する対価を支払わないで利益を受けた場合に該当するとした事例

裁決事例集 第79集

要旨

 請求人は、①関係する法人に対する請求人の妻名義の貸付金の弁済金の一部を請求人の預金口座へ入金したこと、②請求人の妻名義の預金口座からの出金を、請求人名義の預金口座へ入金したこと及び請求人から関係会社の代表者への貸付けに充てたことについては、これらの請求人の妻名義の貸付金及び預金は、請求人の妻が請求人の預金を使い込んだという事実関係の下、請求人が請求人の妻の退職金により弁済を受けた金員が原資となっており、もともと請求人に帰属するものであるから、①②のいずれの資金の移動についても、相続税法第9条に規定する対価を支払わないで利益を受けた場合には該当せず、贈与により取得したとみなされることはない旨主張する。
 しかしながら、請求人の妻が請求人の預金を使い込んだというのは請求人の憶測にすぎず、具体的な証拠書類も見当たらないことから、請求人の主張は採用することができない。
 したがって、①②の資金移動は、相続税法第9条に規定する対価を支払わないで利益を受けた場合に該当し、贈与により取得したものとみなされる。

参照条文等

民法第549条、第643条、第703条 相続税法第7条第9条

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平成24年11月7日裁決

請求人らの母親の預金口座から出金された金員が請求人らの債務の返済に充てられているが、両当事者はその事実を知らなかったのであるから、請求人らが対価を支払わないで経済的利益を受けたとは認められないとした事例

裁決事例集 第89集

要旨

 原処分庁は、請求人らの借入金の返済(本件返済)について、請求人らの兄が原処分庁にした申述に基づき、請求人らの資金援助の求めに応じて同兄が母親の預金口座から出金(本件出金)し、本件出金による金員により上記返済がされたとの事実を認定し、当該事実に基づいて、請求人らが本件返済により母親から相続税法第9条に規定する「対価を支払わないで・・・利益を受けた」と認められる旨主張する。
 しかしながら、本件返済の経緯についての請求人らの兄の供述(原処分庁にした申述及び当審判所にした答述)は、曖昧であり、供述内容自体が客観的事実と矛盾し、あるいは客観的事実に基づいて通常人がとると考えられる行動に反する不合理なものであるから、これを信用することはできない。そして、本件においては、本件返済がされた当時、請求人らの母親が軽度の認知症の状態にあったと認められる上、当審判所の調査の結果によっても、他に請求人らが本件返済を認識し、事前事後に本件出金を承諾していたと認めるに足りる証拠も見当たらないから、結局、請求人らが本件返済により母親から実質的に贈与と同様の経済的利益を受けた事実を認めることはできない。したがって、本件においては、請求人らが本件返済により母親から「対価を支払わないで・・・利益を受けた」とは認められない。

参照条文等

相続税法第9条

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平成24年8月31日裁決

譲り受けた土地建物の時価について請求人及び原処分庁が算定した価額は採用できないとして、審判所が依頼した鑑定価額等を基に土地建物の時価を算定した事例

裁決事例集 第88集

要旨

 請求人がその親族から本件土地及び本件建物を譲り受けたこと(本件譲受け)について、請求人は、本件譲受けの価額が時価であるから、本件譲受けは相続税法第7条《贈与又は遺贈により取得したものとみなす場合》に規定する「著しく低い対価」での譲受けに該当しない旨主張し、原処分庁は、本件土地及び本件建物の時価は、原処分庁の依頼に基づく鑑定評価額(原処分庁鑑定額)であり、原処分庁鑑定額と本件譲受けの価額を比較すると、本件譲受けは、同条に規定する「著しく低い対価」での譲受けに該当する旨主張する。
 しかしながら、原処分庁鑑定額は、合理的に鑑定されたものとは認められないから、これを本件土地及び本件建物の時価と認めることはできない。他方、当審判所の依頼に基づく本件土地の鑑定評価額は合理的に鑑定されたものと認められるからこれを時価と認めるのが相当であり、また、本件建物については、一般的に合理性が認められる固定資産評価基準に従って算定された固定資産税価格が適正な時価と認められる。したがって、本件土地及び本件建物の時価はこれらの合計額であると認められ、当該合計額は原処分庁鑑定額を下回るものの、当該合計額と本件譲受けの価額とを比較すると、本件譲受けは、相続税法第7条に規定する「著しく低い対価」での譲受けに該当すると認めるのが相当である。

参照条文等

相続税法第7条

参考判決・裁決

東京地裁平成19年8月23日判決(判タ1264号184頁)

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