裁決事例 分割財産に係る課税価格
代償分割により取得した代償金について相続税の課税価格に算入すべき価額は、代償分割時における代償財産の通常取引される価額と相続税評価額の比により圧縮するのが相当であるとした事例
裁決事例集 第41集 302頁
要旨
代償分割の方法により遺産の分割が行われ、代償財産として金銭が交付された場合、代償財産の交付を受けた者及び代償財産の交付をした者の相続税の課税価格の計算については、[1]相続開始の時と代償分割の時との間に遺産の価額が著しく変動しており、[2]その代償分割が裁判所における審判・調停・和解等により行われ、かつ、[3]代償分割の対象となった財産及びその財産の代償分割の時における通常取引される価額がすでに明らかになっており、その価額を明確に把握することができるときは、その相続開始の時における代償債権の価額を求める方法としては、次の算式によるのが相当である。
| 交付される金銭の額 | × | 当該金銭の交付者が遺産分割により取得した財産で代償分割 の対象となったものの相続開始時の価格(相続税評価額) |
| 当該金銭の交付者が遺産分割により取得した財産で代償分割 の対象となったものの代償分割時の通常取引価額 |
要旨
被相続人の特別縁故者が、家庭裁判所の審判により民法第958条の3の規定による相続財産の分与を受けた場合の相続税の課税時期は、裁判所の審判確定時ではなく、相続開始の日と解すべきである。また、本件財産分与においては、審判確定に至るまで相当長期間を要し、このため弁護士費用等の分与を受けるための諸経費も相当額を要したことはうかがえるが、分与財産の価額は、相続税法第3条の2において「その与えられた時における当該財産の時価に相当する金額」と規定されているから、分与財産の価額の算定における分与を受けるための諸経費を考慮する余地はない。
被相続人の遺言内容は、遺言書作成時に各人名義であった預貯金等を遺贈する趣旨であるから、同預貯金等を相続開始時までに換価した現金は各名義人に遺贈されたものであると認定した事例
裁決事例集 第82集
ポイント
この事例は、被相続人の遺言書に「不動産以外の財産は請求人及び二男に相続させる。ただし、預貯金等で私の名義になっていないものはそれぞれその名義人の所有である」旨記載されていたことから、このただし書の解釈が問題となったものである。
要旨
原処分庁は、本件遺言書記載の各相続人名義の預貯金等(本件預貯金等)が、本件相続開始日現在では請求人によって換金されて現金として保管されていたという事実の下、本件遺言書は、不動産以外の財産については、請求人及び二男に相続させることを原則とする趣旨であると解される旨主張する。
しかしながら、本件遺言書第4項ただし書には、預貯金等で本件被相続人名義になっていないものは、各名義人の所有である旨記載されているところ、①当該記載及び追加遺言書に「三女がこのお金をおろす時は」と記載されていることからすると、本件被相続人は、本件預貯金等については、各名義人以外の者がこれを換金することは予定しておらず、本件相続開始日まで本件預貯金等がそのまま維持されていることを想定していたものと認められること、②本件預貯金等は、本件被相続人が亡夫から相続したものであり、本件被相続人の意思で各人名義の預貯金等としたものであること、③本件預貯金等の換金は請求人が行ったことであり、本件被相続人は当該換金の事実を知らなかったことを併せかんがみれば、本件遺言書第4項ただし書は、同書作成時に本件被相続人が各人名義で預貯金等としていたものは、換金のいかんにかかわらず、これを各名義人に遺贈する趣旨であると認めるのが相当である。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和58年3月18日第二小法廷判決(判時1075号115頁)
遺留分減殺請求により、価額弁償金を受領した場合の相続税の課税価格に算入すべき価額は、相続税法基本通達11の2-10(2)に定める要件を充足した場合には、同(2)に定める計算方法を準用して評価することが相当であるとした事例
裁決事例集 第92集
要旨
原処分庁は、請求人が提起した遺留分減殺請求訴訟(本件訴訟)の判決(本件確定判決)において、①価額弁償の対象となった不動産(本件分割対象不動産)は特定されているが、②価額弁償金の額は、価額弁償の時ではなく、相続開始日における本件分割対象不動産の通常の取引価額を基に決定されていることから、相続税法基本通達11の2-10《代償財産の価額》(2)の定めは適用できない旨主張する。
しかしながら、遺留分減殺請求訴訟において、受贈者又は受遺者が遺留分権利者に対し事実審口頭弁論終結前に裁判所が定めた価額により民法第1041条《遺留分権利者に対する価額による弁償》の規定による遺留分の価額の弁償をなすべき旨の意思表示をした場合、相続税法基本通達11の2-10 (2)を準用する際に用いる上記②の「価額弁償の時」とは、「事実審口頭弁論終結の時」と解されるところ、本件確定判決において、本件分割対象不動産の価額につき、「この価額は、請求人提出の相続開始日を価格時点とする不動産鑑定評価書等における価額であり、現時点で、同価額と異なる証拠はないことから、同証拠により価額を認定する」旨判示されていることからすると、本件確定判決において認定された「現時点」の価額は、本件訴訟の控訴審の口頭弁論終結の時を基準日とする価額であると認められ、また、その価額は、その基準日における通常の取引価額であると認められる。そうすると、本件確定判決は、価額弁償の対象となった財産の価額弁償の時における通常の取引価額を基に価額弁償金の金額を決定しているということができるから、相続税法基本通達11の2-10(2)の定めを適用することが相当である。
参照条文等
相続税法第11条の2 民法第1036条、1041条
参考判決・裁決
最高裁昭和51年8月30日第二小法廷判決(民集30巻7号768頁) 平成4年6月22日裁決(裁決事例集No.43・336頁)
ポイント
本事例は、共同相続人の間で相続税の取得財産の価額に算入又は控除する遺留分減殺請求に基づく価額弁償金の金額について、相続税法基本通達11の2-10《代償財産の価額》(1)ではなく、同通達(2)に定める方法により計算すべきであると判断したものである。
要旨
原処分庁は、遺留分減殺請求訴訟の和解(本件和解)の際に、共同相続人の間で相続税の取得財産の価額に算入又は控除する価額弁償金(本件価額弁償金)の金額について何らかの合意があったと考えるのが自然であるとして、請求人の相続税の取得財産の価額に算入する本件価額弁償金の金額は、相続税法基本通達11の2-10《代償財産の価額》(本件通達)(1)の要件を満たしており、本件通達(2)によるべきとする更正の請求は認められない旨主張する。
しかしながら、訴訟中から申告までの間に直接やり取りをしていた訴訟代理人間において、本件価額弁償金をいくらとして申告するかについて協議がされていないことについては、同人らを含む関係者の答述が一致しており、訴訟中から申告に至るまでの経緯等に照らしても、本件価額弁償金については、その申告額を具体的に協議した事実は認められず、他に申告額についての具体的な協議の事実が認められるような事情もないことからすれば、その協議はなかったと認められるから、本件通達(1)の場合には該当しない。そして、本件価額弁償金の金額は、対象財産が特定され、かつ、本件和解時に合意された当該対象財産の通常の取引価額を基として決定されたものであるから、本件通達(2)の場合に該当するので、請求人の相続税の取得財産の価額に算入する金額は、本件通達(2)に定める方法により計算すべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
相続の開始後に認知によって相続人となった者が価額弁償により取得した本件価額弁償金について相続税の課税価格に算入すべき価額は、価額弁償の対象になった財産の価額弁償時における通常取引される価額と相続開始時の価額(相続税評価額)の比により圧縮するのが相当であるとした事例
裁決事例集 第43集 336頁
要旨
民法第910条“分割後の被認知者の請求”に基づく価額弁償の請求の調停により価額弁償金が交付された場合、当該弁償金の交付を受けた者及び交付をした者の相続税の課税価格の計算に当たっては、[1]相続開始時と価額弁償時との間の遺産の価額が著しく変動しており、[2]その価額弁償が裁判所における判決、和解、調停等により行われ、かつ、[3]価額弁償の対象となった財産及びその財産の通常取引価額が既に明らかになっており、その価額弁償時の価額を明確に把握することができる場合は、次の算式により、価額弁償金の額を圧縮計算するのが相当と認められる。
| 価額弁償金の額 | × | 価額弁償金の交付者が遺産分割により取得した財産で代価額弁 償の対象となったものの相続開始時の価格(相続税評価額) |
| 価額弁償金の交付者が遺産分割により取得した財産で代価額弁 償の対象となったものの価額弁償時の通常取引価額 |
被相続人の先代の相続財産の遺産分割について、家裁の調停が成立し、代償分割による代償金を請求人らが受領したことは、被相続人が先代から相続により取得した代償債権を請求人らが本件相続により取得したと解するのが相当であるとした事例
裁決事例集 第55集 452頁
要旨
請求人らは、被相続人の先代の相続財産の遺産分割について、家庭裁判所の調停が成立し、代償分割による代償金を受領したことは、既に本件相続に係る相続税の申告に含め課税された不動産に係る持分権の一部を失う代わりに、先代の共同相続人の一人から代償金を受領したものであるから、代償金は持分権の譲渡代金であって相続財産ではなく、また、これにより生じた所得は、所得税法第9条第1項第15号により非課税となる旨主張する。
しかしながら、請求人らは、本件調停によって被相続人に代位して代償金を取得したのであり、このことは、被相続人が先代から相続により取得した代償債権を、被相続人の死亡を原因として、請求人らが被相続人から取得したと解するのが相当であるので、本件相続開始日における代償債権の価額を評価して、当該価額を本件相続税の課税価格とすることが相当である。
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