裁決事例 相続税の課税財産の範囲
要旨
請求人は、本件定期貯金は被相続人の孫のものであり、その資金源は孫の母が毎月1~2万円の積立貯金をしてその満期時の昭和58年4月11日に本件定期貯金を設定したものである旨主張するが、本件定期貯金は同日以前からあった定期貯金が継続されているもので、また、主張する積立金額では孫の年齢からして、到底本件定期貯金の基となった定期貯金の額に達しないので、その主張は失当といわざるを得ない。
[1]被相続人名義の他の定期貯金と本件定期貯金の届出住所、届出印鑑及び申込書の筆跡が同一であること、[2]本件定期貯金の利息と被相続人名義の定期貯金の利息とを合わせて別段預金とした上で現金にしているが、これに使用された印鑑がすべて同一であること、[3]被相続人には、本件定期貯金の基となった定期貯金と被相続人名義の定期貯金を設定した頃、土地譲渡代金が入金していたこと等からすると、本件定期貯金の資金源は譲渡代金と認められ、被相続人が非課税貯蓄に着目して孫の名義を使用して、本件定期貯金を設定したものと推認することができ、原処分は相当である。
要旨
被相続人が売主となって生前に取り交わした売買契約書には「売買不動産の所有権は、農地転用許可申請が許可になると同時に売主より買主に移転する」旨定められており、農地の所有権移転については、農地の転用許可が先決要件となっている。
農地の転用許可書が申請人に到達したのは相続開始後であり、当該農地は相続人がすでに相続したものであるから、被相続人の譲渡資産ではなく、相続財産として相続税課税価格を算定したことは相当である。
支給を受けた死亡退職金の一部を返還したとしても、相続税法第3条第1項第2号に規定する死亡退職金の額には影響を及ぼさないとして請求人らの主張を排斥した事例
裁決事例集 第51集 504頁
要旨
請求人らは、K社から支給を受けた死亡退職金1億400万円のうち4,400万円を返還したので、死亡退職金の額は6,000万円である旨主張する。
ところで、相続税法第3条(相続又は遺贈により取得したものとみなす場合)第1項第2号は、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定した死亡退職金の支給を受けた者は、当該退職金を相続により取得したものとみなす旨規定されており、また、次の事実によれば、平成4年11月24日の臨時社員総会議事録(乙議事録、死亡退職金の額を1億400万円から6,000万円に変更)は、真正に作成されたものと認められず、他に死亡退職金の変更決議がされたことを認めるに足りる証拠も存在しないことから、請求人らが返還した4,400万円は、K社を救済するための資金供与とみるのが相当であるから、更正をすべき理由がない旨の通知処分は正当である。
(1)K社の代表社員及び請求人らは、平成4年6月9日の臨時社員総会議事録(甲議事録1億400万円の死亡退職金の支給決議)に署名押印しているが、乙議事録に署名押印した代表社員及び請求人らの筆跡及び印影は同一であること。
(2)K社の代表社員であるLは、審判所に対し[1]K社は、甲議事録に基づき請求人らに1億400万円の死亡退職金を支給したが、[2]法人税の調査の結果、7,400万円の過大退職金に係る修正申告の納付税額が約4,400万円と分かったので、会社を救済するため平成4年11月20日請求人から4,400万円の返還を受け、延滞税節約のため同日納税し、[3]乙議事録は、平成5年1月頃M税理士に依頼して作成した旨答述していること。
本件金地金について、相続開始日に本件被相続人の相続財産として存在したと認めるには十分とはいえないことなどから、請求人が取得した相続財産であるとは認められないとした事例(平成23年9月相続開始に係る相続税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分・全部取消し)
裁決事例集 第99集
要旨
原処分庁は、本件被相続人が金地金を取得した以後、①相続開始日の3年前頃には本件被相続人の下に多数の金地金が保有されていたこと、②調査した金地金取扱業者等に対する売却の事実がないこと、③相続人等への金地金の贈与の事実がないことから、相続開始日において、本件被相続人又は本件被相続人の委任を受けた請求人の管理下に同人の相続財産として申告された金地金以外の金地金(本件金地金)が存在したと主張する。
しかしながら、上記①から③までの事情は、相続開始日に本件金地金が本件被相続人の相続財産として存在したと認めるには十分とはいえず、他に原処分庁の主張事実を認めるに足りる証拠はないから、本件金地金は、請求人が取得した相続財産であるとは認められない。
参照条文等
参考判決・裁決
名古屋高裁平成15年12月25日判決(税資253号順号9500)
要旨
本件有価証券の証書の支配管理の状況並びに本件有価証券の運用の状況及び設定又は取得資金の状況等、いずれの点からみても本件有価証券は被相続人に帰属する財産と認められ、したがって、本件有価証券は相続財産となる。
要旨
相続人らの名義の株式について、被相続人が生前配当金等の法定果実を収受していたこと、各名義人の印鑑が被相続人自身の取引に使用されていた印鑑と同一であること、及び各名義人はこれらの株式等の取得の時期に取得資金を有していたとは認め難いことから、被相続人の財産と認めるのが相当である。
要旨
被相続人が相続開始日直前4日間に銀行の普通預金口座から引き出した現金(40,000,000円)については、被相続人の死亡直前の状況により、資産の取得、債務の返済、その他費消等のために支出された事実が認められないことから、当該現金は、相続開始時の手持現金と認めるのが相当である。
税務署長に対し底地の取得者と借地権者との連署による借地権者の地位に変更がない旨の申出書を提出している場合において、底地の取得者である相続人が借地権者である被相続人の建物を取り壊して建物を新築しても被相続人の借地権者の地位に変更はないというべきであり、借地権は相続開始まで被相続人に留保されたものと認められるとした事例
裁決事例集 第39集 369頁
要旨
借地権の目的となっている土地(底地)を借地権者以外の者が取得し、地代の授受が行われないこととなった場合において、地代の授受が行われなくなった理由が使用貸借に基づくものでないとして、土地(底地)取得者と借地権者との連署による借地権者の地位に変更がない旨の申出書の提出があったときは、借地権は従来どおり存在するものとし、その借地権者が死亡したときにその相続財産を構成するものとする取扱いは、その申出に即したものであり、当事者の意思を尊重した合理的な取扱いと認められる。
この申出書の提出がされ、その12日後に借地権者たる被相続人の建物が取り壊され、翌年に土地(底地)取得者たる相続人の建物がその土地に新築された場合は、申出書の提出時点で既に建物の取壊しと新築が予定されていたものと認められるから、当事者間では、取壊し後も引続き被相続人の借地権者としての地位に変更はない旨の了解があったと認められる。被相続人は、取壊し後も借地権を留保することを前提として、相続人がその土地に建物を新築することを認めたものとみるのが相当であり、借地権は、相続開始まで被相続人に留保されたものと認められるから、本件借地権が相続財産を構成するものであるとした原処分は相当である。
要旨
被相続人のゴルフ会員権については、相続人から会員資格の承継手続がなされていないが、本件会員権は、被相続人に専属するプレー利用権だけのものではなく、それ自体財産的価値を有するものであって、相続による承継手続を経ないで随時相続人において譲渡することができるものであるから、相続財産に含まれるべきものである。
要旨
乳業会社の専務取締役であった被相続人が、業界代表として会議に出席中死亡したことについて、被相続人がとりわけ強度の精神的緊張、興奮を強いられたものとは推測できないことから、同会議への出席が死亡の起因とは認められず、また被相続人の死亡前約4か月間の業務が被相続人にとって肉体的、精神的に過重な負担となり、それにより過度の疲労、心労が蓄積していたとも認められないので、結局、被相続人は業務の遂行に直接起因して健康を害し又は潜在していた疾病が発病して死亡したものとは認められず、被相続人の死亡は、業務上の死亡に該当しない。
したがって、弔慰金の額は被相続人の死亡当時における普通給与の半年分に相当する金額と認定するのが相当である。
被相続人の雇用主である会社が契約した生命保険契約による支払を受けた保険金について、相続税法第3条第1項第1号に規定する保険金に該当するものとした事例
裁決事例集 第21集 180頁
要旨
被相続人を被保険者とする団体定期生命保険契約に基づき保険金受取人である請求人が受け取った保険金につき、これを弔慰金と解し退職手当金等とすべきであるとする旨の請求人の主張について、被相続人の雇用主が当該契約を締結し、かつ、保険料を負担していたとしても、社内規程、就業規則、労働協約等において当該保険金を退職手当金等として支給する旨の関係者の意思が明白に表示されている場合に限り、退職手当金等に該当すると解すべきであること、また、雇用主は従業員の生存中に保険契約を締結し、保険料を負担するのみで、本件保険金の受取りについては何らの権利がなく、被相続人の死亡により請求人は当然に本件保険金を取得したものであることから、本件保険金は相続税法第3条第1項第1号に規定する生命保険金に該当するとした原処分は相当である。
要旨
本件貸金債権は、被相続人が生前において回収不能を理由として40,000,000円の全額を放棄したものであるから、本件貸金債権は本件相続開始時には存在しない旨の主張については、[1]債務者はいずれも被相続人に対して借入金債務のあることを認識していること、[2]本件貸金債権を放棄する旨の意思表示が、被相続人をはじめ当該債権の処分権限を有する者から、本件債務者に対し、本件相続開始前にはなされていないことが認められ、他にこの点に関する主張を認めるべき資料はなく、本件貸金債権に係る回収状況について調査したところによれば、32,500,000円の貸金債権が本件相続開始時において存在していたものと認めるのが相当である。
要旨
請求人は、本件事業用資産は相続財産ではなく、自己の固有財産であるとし、その理由として20年ほど前の親族会議の結果被相続人から酒類販売業の承継を受けたこと、被相続人は病気がちで営業に従事していなかったこと及び金融機関との取引も近時は請求人名義で行っていること等を主張する。しかしながら、上記親族会議についての確認書において事業用資産を請求人に贈与する旨が明記されていないこと、主たる取引は被相続人名義でなされていたこと及び酒類販売業の免許人は、被相続人であること等が認められるから、本件事業用資産は被相続人に帰属していたものとするのが相当であり、これを相続財産を構成する財産であるとした原処分は妥当である。
香港に所在する財産について、相続税の課税財産と認定するとともに、その時価を香港政庁に提出された遺産宣誓書に記載されている各財産の価額の邦貨換算額により評価した原処分を相当と認めた事例
裁決事例集 第56集 291頁
要旨
請求人は、香港に所在するとされている財産について全く承知しておらず、また、その確認もできない旨主張するが、以下の理由により原処分庁の処分は相当であると認められる。
- 共同相続人が香港政庁に提出した遺産宣誓書には本件財産が記載されていることから、相続開始日において少なくとも本件財産が被相続人の遺産として香港に存在していたと認めるのが相当である。
- 被相続人は、日本から香港に10億円を超える送金をしていること、その送金理由として不動産の取得目的がうかがわれること及び請求人自身が香港政庁に申告された財産は過少であると申述していることからすれば、遺産宣誓書に記載された内容及び遺産税の納付額を基に相続税の課税価格及び納付税額を算定することには相当の合理性があると認められる。
- 香港の遺産税法は、財産評価の一般原則として、遺産税が課税される財産の価額は公開市場で死亡日に売却される価額であると定めている。
そうすると、相続税法第22条に規定する「時価」及び香港の遺産税法に定める「公開市場で売却される価額」は、共に自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額を指向しているものと解することができるから、公開市場で死亡日に売却される価額をもって相続税の課税価格に算入する価額とすることを不相当とする理由は認められない。
要旨
請求人が被相続人から相続により取得したと主張する農地については、昭和47年6月20日付の売買契約がなされ、同年8月31日までに代金の全額が支払われている事実が認められるが、農地法上の権利移転についての許可は相続開始の日である昭和47年9月4日より後の昭和48年6月11日付でなされているから、相続開始の日において被相続人が当該農地の所有権を取得していないことは明らかである。
この場合において、被相続人は既に支払済みの本件農地の代金の額及び仲介手数料の額に相当する債権を有していたことになるから、相続財産は農地ではなくて本件農地に係る前渡金であるとするのが相当である。
要旨
[1]本件有価証券は、本件覚書により被相続人から被相続人が会長であったE社に贈与されており、請求人らの相続財産となるものではない旨、及び[2]被相続人のF社に対する本件貸付金債権は、本件覚書により被相続人がF社に対して放棄しているので、請求人らの相続財産となるものではない旨の請求人らの主張について、認定事実に基づき判断すると、[1]本件有価証券は、被相続人がその配当金を受領していることから、相続開始前においては被相続人により管理運用されていたものであり、本件有価証券中、(a)請求人が相続開始前に売却した贈与株式は、当初覚書(本件覚書が作成される前に作成されたもの)の記載等から、同人が被相続人から贈与により取得した後に売却したものと認めるのが相当であって、贈与株式の価額は、相続税法第19条“相続開始前3年以内に贈与があった場合の相続税額”の規定により請求人が取得した相続財産に加算すべきであり、また、(b)遺贈株式は、当初覚書の文面等から、被相続人と請求人A男及びB女(A男とB女を併せて「分家」という。)間において遺贈株式は被相続人の相続開始後分家の所有とする旨の合意がなされていると認められるので、A男及びB女に対し死因贈与がなされたと認めるのが相当であり、[2]本件貸付金債権は、相続開始日現在F社の借入金勘定に計上されていること及び当初覚書にはその帰属配分についての記載がないことから、請求人らに対する未分割の相続財産とするのが相当である。
要旨
未成年者である請求人が受け取った保険金については、[1]その保険契約を被相続人が親権者として代行し、保険料の支払に当たっては、その都度被相続人が自己の預金を引き出して、これを請求人名義の預金口座に入金させ、その預金から保険料を払い込んだものであること、[2]保険料は、被相続人の所得税の確定申告において生命保険料控除をしていないこと、[3]請求人は、贈与のあった年分において贈与税の申告書を提出し納税していることから、請求人は贈与により取得した預金をもって保険料の払込みをしたものと認められるので当該保険金を相続財産とした更正は取消しを免れない。
要旨
請求人らは、被相続人(母)名義の宅地について、請求人A男が遺贈によって父から相続したものであり、居宅改築資金ねん出のために一時的に被相続人名義としたものであるから、請求人A男固有の財産であると主張するが、父の相続に関する遺産分割協議書作成前には遺贈の放棄権の放棄を行ったと認めるに足る証拠がないから、当該遺産分割協議書自体が無効でない限り、被相続人(母)の財産とするのが相当である。
要旨
被相続人が同族法人に対して有していた本件債権(未収入金及び貸付金)について、請求人は消滅時効の完成により消滅していること及び同族法人に対する請求権が存在しないことを遺産分割調停調書により当事者相互間で確認しており、相続人全員がこの内容に同意していることから、相続開始時に本件債権が存在するとして更正した原処分は違法である旨主張する。
しかしながら、本件債権が発生した時期及び請求人が時効の起算日とするいずれの時期においても被相続人は同族法人の代表社員の地位にあり、退社するまでの間、業務執行社員として同族法人の決算書類の作成に関与し、その内容について承知し得る立場にあったこと、また、同族法人の社員はすべて親族によって構成され経営されてきたことが認められることから、このような事情の下では被相続人と同族法人との間では毎期、決算書類の作成により本件債権の存在が相互に確認され、同族法人は債務を承認する事実行為を行ったものと認められる。
そうすると、本件債権に係る消滅時効は少なくとも、毎期、決算書類の作成により中断されており、相続開始時において債権の消滅時効はその要件を具備していないことから、本件債権は消滅時効を完成しておらず、本件債権は存在すると認められるから請求人の主張は採用できない。
また、調停において当事者は当事者の自由な意思により任意に、真実の権利関係とは異なる権利関係を進めることができるから、相続開始後、各相続人間において成立した調停において、本件債権は消滅時効により消滅し、同族法人に対する請求権が存在しない旨相続人間で確認している事実をもって、本件債権が消滅時効により消滅したので相続開始時には存在しなかったということにはならない。
被相続人が相続開始後認知された子Mに渡した小切手(額面45,000千円)は、預け金ではなく、Mに贈与されたものであり、相続財産に属さないと認定した事例
裁決事例集 第47集 379頁
要旨
原処分庁は、被相続人が相続開始後判決により認知された子であるMに渡した本件小切手は、自ら本件宅地を取得する意思をもって、その購入のためMに預けたものであるとし、本件小切手の返還請求権は相続財産に属するとして原処分をした。
しかし、被相続人が本件宅地を取得するために仲介業者に渡した買付証明書は、発行後7日目に返却を受けており、それから2か月後に交付された本件小切手は、本件宅地を取得するためのものとは認められず、一方、本件小切手を受け取ったMは、小切手を自己の預金口座に入金した後、40,000千円を4行へ送金し、それぞれ10,000千円の自己名義の定期預金を設定していること及び被相続人から本件小切手をMの妻に手渡すことを指示された者は、被相続人からMの不動産の取得資金として交付するように言いつけられたと答述していることなどから、本件小切手はMに贈与されたものと認められるので、相続財産から除外するのが相当である。
要旨
金銭貸借に関する書類の作成はないものの、[1]相続人には現に譲渡等の収入があって税金等を差し引いても貸付けの額はあったと認められ、[2]被相続人には開業医として相当の収入があって、現に借入金の一部を返済している事実からみて返済の意思があったと認められるから、被相続人の株式売却代金を原資として設定された相続人名義預金のうち、相続人が保険医年金制度に加入した際に被相続人に立て替えてもらった掛金相当額等は相続人固有の財産であり、贈与されたものはその残額とするのが相当である
要旨
本件において、売買契約書上所有権移転の時期を売買代金完済の時と定めており、残代金の支払及び所有権移転登記申請手続は、被相続人の死亡の時にはまだ行われていなかったのであるから、買主である被相続人は、その死亡の時までに本件土地の所有権を取得していたということはできず、本件売買契約により本件土地の所有権移転請求権を取得していたにすぎない。
したがって、請求人は、本件相続により本件土地の所有権を取得したのではなく、本件売買契約に基づいて本件土地の所有権移転請求権を取得したとするのが相当である。
所得税の課税処分取消訴訟継続中に被相続人が死亡した場合、相続人である請求人は訴訟上の権利、すなわち過納金の還付を求める権利を相続により取得したとした事例
裁決事例集 第69集 217頁
要旨
請求人は、更正処分の公定力を前提とする限り、請求人が所得税還付請求権を「相続により取得した」ものではなく、課税処分取消訴訟の判決が確定した時に初めて所得税還付請求権が確定したものであり、そのときに所得税還付請求権を請求人自らの財産権として取得したものであるから、その権利が発生していない相続開始時に存在していたとして、還付請求権が相続財産を構成することはあり得ない旨主張する。また、仮に、所得税還付請求権が「訴訟中の権利」に該当するとしても、その評価は、財産評価基本津通達210によることとなり、課税処分取消訴訟の相手方は、更正処分を行った原処分庁であり、原処分庁は、当該訴訟の対象である所得税の更正処分等を適法として長年にわたり争い、裁決でも適法として判断しているのであるから、所得税等の納付額に相当する価額が、係争中の所得税還付請求権の時価であると評価することは不可能である旨主張する。
しかしながら、被相続人は、課税処分取消訴訟を提起し、その訴訟を通じて過納金の還付を受けるべき旨を主張していたと認められるところ、訴訟継続中に被相続人が死亡したため、相続人である請求人が被相続人から相続により訴訟上の地位を承継したものであり、この場合の訴訟上の地位とは、一身専属的なものではなく、財産的性格をもつもの、すなわち、過納金の還付を求める権利であると解されるから、過納金の還付を求める権利は、請求人が被相続人から相続により取得した財産であるということができる。また、[1]課税処分取消訴訟は、被相続人等に係る所得税の更正処分等取消訴訟であり、この訴訟を通じて過納金の還付を求めていること、[2]課税処分取消訴訟に係る判決の確定により更正処分等の全部が取り消され、具体的に還付金の金額が確定していることからすれば、過納金の還付を求める権利の価額は、還付金相当額と同額として評価するのが相当である。
したがって、これらの点に関する請求人の主張は採用することができない。
要旨
請求人は、本件土地は昭和58年に死亡した父に係る第一次相続において請求人が相続したものの、誤って平成6年3月に死亡した被相続人である母が相続する旨の遺産分割協議及び相続登記をしたため、所有権更正登記をした旨主張するが、[1]第一次相続に係る遺産分割協議は、相続人の合意の下に行われていること、[2]当該相続に係る相続税の申告においては、被相続人は配偶者に対する相続税の軽減の規定を適用しており、また、当該申告は、上記遺産分割協議に基づいて行われていることなどからすると、当該遺産分割協議の内容に錯誤はないものと認められ、所有権更正登記は、請求人が、本件土地を本件相続に係る相続財産ではないかのように仮装するために行ったものと認めるのが相当である。
本件株式は、すべて被相続人固有の資金によって取得され、かつ、すべて同人名義で保護預かり又は登録されていることから、被相続人に帰属するものと認められるとした事例
裁決事例集 第44集 271頁
要旨
本件株式は、被相続人名義ではあるが請求人に帰属する金員を被相続人に預託し、被相続人が運用した結果形成された請求人固有の財産であり相続財産ではない旨主張するが、本件株式の取得資金は、被相続人が所有していた土地及び建物の売却代金を原資としており、また、請求人が預託したとする金員の一部は、請求人名義の貸付信託に充てられていることから、当該株式は相続財産であると認められる。
相続人又はその家族名義の預金、株式及び割引債について、生前贈与された資金の運用により取得されたものではなく、被相続人が請求人に指示して管理運用していたもので、その一部を除き相続財産であると認定した事例
裁決事例集 第48集 357頁
要旨
請求人は、相続人又はその家族の名義による株式、定額郵便貯金及び債権について、被相続人から贈与をうけた現金を資金運用して取得したものであり、請求人固有の財産であって相続財産ではないと主張する。
しかしながら、[1]相続人が請求人に対し、当該現金を贈与したと認定できる証拠がないこと、[2]毎年計画的に贈与されている現金については、贈与税の申告がされているが、請求人の主張する贈与については申告がされていないこと、[3]被相続人が請求人に対し資金の運用を指示し、請求人がその指示により管理運用していたことが認められることから、その結果形成された上記の株式等の財産は被相続人に帰属すると認めるのが相当である。
ところで、上記の財産の形成中に、明らかに被相続人以外の財産も組み込まれたことが認められるから、この組み込まれた被相続人以外の部分の財産に係る評価額を控除して相続財産としての評価をするのが相当であるので、原処分の一部は取り消すべきである。
要旨
原処分庁は、[1]被相続人とその妻には退職までほぼ同等の収入があったこと、[2]請求人等が金融機関に提出した相続関係届出書に使用した印鑑と預金証書の印鑑が異なること、[3]本件全定期預金の満期日が同一日であること、[4]金融機関職員の申述によると、被相続人の妻が本件全定期預金の印鑑を所有しており、この妻のみに会って、その指示の下で取引をしていたこと、[5]本件全定期預金は、出金されることはほとんどなく、請求人らがその資金を提供したり、あるいはその一部を費消したことを裏付ける事実はないこと、[6]相続人の申述によると、被相続人の妻が請求人らの名義を自由に使用し、本件定期預金をすべて一体のものとして管理していたことなどから、本件全定期預金は贈与前にすべて被相続人及びその妻に帰属していた旨主張する。
しかしながら、[4]及び[5]の事実は、本件全定期預金がすべて被相続人の妻に帰属することの根拠にはなり得ても、被相続人に帰属することの根拠とはならないし、[5]の事実は、本件全定期預金が請求人らに帰属するものではないことを推測させる一事情にすぎず、被相続人に帰属することを推測させる理由とはならない。
また、被相続人とその妻には退職までほぼ同等の収入があったことは、両者にそれぞれ固有の財産形成があったことを推測させる事実ではあるが、そのことのみをもって、本件全定期預金の具体的な帰属を推測することはできない。
雇用主が契約した生命保険契約に基づき保険金受取人である被相続人の遺族が取得すべき死亡保険金の一部を雇用主が遺族から贈呈を受けた場合に、その残額はみなし課税財産である退職手当金等に当たるとする請求人の主張がしりぞけられた事例
裁決事例集 第60集 491頁
要旨
- 雇用主が、その従業員や役員のために、これらの者を被保険者とする生命保険契約の保険料を負担している場合において、被保険者の死亡によりその相続人等が死亡保険金を取得したときには、雇用主の負担した保険料はその従業員や役員が負担したものと解し、死亡保険金は相続税の対象とするのが相当である。(相続税法第3条第1項第一号)
しかし、雇用主が、その死亡保険金を退職手当金等として支給することとしている場合には、その死亡保険金は退職手当金等に当たるものと解するのが相当であるが、その判断は、雇用主である企業の定款、株主総会、社内規程、就業規則、労働協約等において、その死亡保険金が退職手当金等として支給されるものである旨の意思が明らかにされているか否か等を考慮して行うのが相当である。 - ところで、J社においては、取締役の退職慰労金について、定款で、株主総会の決議により定める旨規定し、また、役員退職慰労金内規で、その金額は、株主総会において承認された金額又は株主総会の決議に従い取締役会において決定した金額とする旨規定されているにもかかわらず、本件被相続人に対する退職慰労金の支給については、株主総会において何ら決議されておらず、また、本件死亡保険金を退職手当金等として支給する旨の定めもない。
このことからすれば、請求人が本件生命保険契約に基づき取得した死亡保険金は、退職手当金等としては認められないというべきである。 - そして、雇用主たるJ社は、被相続人の生存中に本件生命保険契約を締結し、その保険料を支払うのみで、本件死亡保険金については何ら権利はなく、請求人は、被相続人の死亡により、当然に本件死亡保険金を取得することができるのであるから、請求人が取得した死亡保険金は、その全額が生命保険金として相続税の課税対象となる。
要旨
- 登記については判例において公信力を認めないと解されているところ、登記は、制度上その手続において、真正な、すなわち有効に存立する実質的な関係に基づくものであることが保障され、かつ、公の機関によって管理されており、登記がなされているとこれに対応する実質的関係の存在が推定されることから、登記上の所有名義人は反証がない限り当該不動産の所有者と推定することが相当である。
- 本件土地の帰属について上記1を踏まえて検討すれば、本件土地については、Hの相続において、E以外の相続人が家庭裁判所に相続を放棄する旨の申述を行ったとする証拠の提出がないこと、当該相続において遺産分割協議を行ったことを直接証明する証拠書類の提出がないため、E以外の相続人が本件土地の相続権を放棄した事実を確認することができないこと、登記に要する時間の長短を理由として真実の所有者でない者の名義とすることは不合理であり、Eの単独登記としなかった理由としては、相当ではないこと、本件土地についての所有権移転登記は、昭和35年から平成10年に至るまでに、数回にわたって行われているのであり、この間において請求人らが主張する実体に合致した登記をする機会が十分にあったと思われるのに、それがされていないこと等から、Hの共同相続人が登記簿の記載どおり法定相続分に従い共有持分権を取得したとの事実を覆すに足りる資料はなく、この点に関する請求人の主張を採用することはできないから、Gは、Hの相続によって登記簿の記載どおりの共有持分権を取得したものと認められる。
- 本件建物の帰属について、建築資金を負担していない者が新築された建物の所有者となることができないという法律上の規定はなく、当該資金を負担していない者に贈与税の課税問題が生じることはあっても、それのみで当該登記は無効なものとなるものではない。
有料老人ホーム入居時点において入居者が有することとなる入居者の死亡又は入居契約の解約権の行使を停止条件とする金銭債権は相続財産に該当するとした事例
裁決事例集 第72集 495頁
要旨
請求人らは、被相続人が相続時点で有していた権利は、返還請求権を含む入居一時金ではなく、老人ホームの施設を終身利用できる権利であり、また当該権利は、相続も譲渡もできない権利であり、民法上の相続財産には該当しない一身専属権であるから、相続税法第2条に規定する本来の相続財産には該当しない旨主張する。
しかしながら、被相続人らが締結した老人ホーム入居契約は、入居者である被相続人らの自由な意思によりいつでも契約を解約でき、契約が解約された場合には返還金として契約に定める所定の金員を支払う特約付であったことが認められること、また、契約において入居一時金等の一部を返還することとしているのは、専用居室の家賃及び共用施設の利用料の前払分のほか各サービスの費用並びにサービスに要する事務費及び人件費の前払分として無利息の預り金としてN社(施設設置者)が受け取ったものであることにかんがみれば、被相続人らには、入居契約の締結日時点において、契約に定める老人ホームの居室等を終身にわたって利用し、各種サービスを享受する権利とともに、同人らの死亡又は解約権の行使を停止条件とする金銭債権が生じていると認めるのが相当である。
そして、当該金銭債権は、金銭に見積もることができる経済的価値のある権利として本来の相続財産に該当し、一身専属的権利とはいえないから、請求人らの主張は採用できない。
要旨
相続開始直前にされた被相続人名義の本件株式の売買については、[1]売買に伴い作成された覚書によれば、譲受人は、被相続人から買戻しの申出があれば、直ちに応じなければならないとされていること、[2]譲受人は、請求人(相続人)の知人であり、本件株式の取得代金を請求人から無利息で借り入れており、事実上何らの負担もないこと、[3]株式の引渡しが行われていないこと、[4]売買単価が額面価額であり、過去の被相続人から請求人への譲渡の際の価額からみても不自然であることなどから、相続税を不当に軽減させる目的のため、被相続人、請求人及び譲受人の三者が通謀して行った仮装の取引と認められ、本件株式は相続財産に属する。
ポイント
本事例は、相続開始数日前に相続人によって引き出された50,000,000円もの金員の使途について、相続人は不自然、あいまいな申述をするのみで、不明のままであったが、被相続人が費消等した事実は認められなかったために、被相続人の相続財産であると認定したものである。
要旨
請求人らは、相続開始の数日前に被相続人名義の預金から相続人が出金した50,000,000円(本件金員)について、出金された当日に被相続人に引き渡され、相続開始日までに被相続人によって費消されて存在していなかったから、本件相続に係る相続財産ではない旨主張する。
しかしながら、被相続人が、50,000,000円という高額な金員を家族に知られないまま費消することは通常であれば考えられないことに加え、本件金員をギャンブル等の浪費によってすべて費消するには相続開始前の数日間では短すぎるのであって、被相続人の消費傾向に照らしても、本件金員がすべて費消されたとは考え難く、また、被相続人自身、数日後に死亡するとは考えておらず、多額の費用が必要な手術の準備をしていた時に、本件金員を引き出す直前の預貯金残高の8割を超え、総所得金額の2倍以上に相当する50,000,000円もの金員が、そのような短期間で軽々に費消されたとも考え難い。さらに、原処分庁及び当審判所の調査の結果によっても、本件金員が、相続開始日までに、他の預金等に入金された事実、債務の返済や貸付金に充てられた事実、資産の取得又は役務の提供の対価に充てられた事実、その他何らかの費用に充てられた事実はなく、家族以外の第三者に渡されたような事実もない。以上のとおり、通常想定し得る金員の流出先についてみても、本件金員が費消等された事実はなかったのであるから、本件金員は被相続人によって費消等されなかったと認めることができ、ほかにこれを覆すに足りる証拠はない。したがって、本件金員は、本件相続の開始時点までに被相続人の支配が及ぶ範囲の財産から流出しておらず、本件相続に係る相続財産であると認められる。
参考判決・裁決
要旨
請求人は、本件土地については、被相続人と請求人の二男((被相続人の孫)(売買については二男夫婦))との間で、昭和54年に賃貸借契約が、昭和61年に売買契約が成立しているから、相続財産ではないと主張する。
しかし、本件賃貸借契約書が作成された事実は外形的に認められるものの、[1]それに記載された約定は遵守されていず、[2]当該契約は祖母と孫という特殊な親族関係を基にして何ら第三者の目に触れることなく存在したものであり、その効果の発生が確認できないから、本件土地に係る賃貸借が成立していたとは認められない。
また、本件売買契約書が作成された事実は外形的に認められるものの、[1]当事者間に本件土地が孫夫婦のものとする認識も認められず、[2]その契約書に記載された条項も約定どおり履行されていないから、契約の効力の発生を確認することもできず、[3]被相続人の死亡後その事実が他の相続人に露見するなど、当該契約は、祖母と孫という特殊な親族関係を基にして何ら第三者の目に触れることなく存在したものであると認められる。
したがって、本件土地の所有者は名義人である被相続人と認められ、孫は本件土地を使用貸借により使用していたと認めるのが相当である。
金融機関が行った貸付債権と預金の相殺は、民法第506条第2項の規定により双方の債権が相殺適状を生じた時まで遡及するが、相続開始日はそれ以前であるから、当該預金は相続財産を構成するとした事例
裁決事例集 第68集 144頁
要旨
民法第506条第2項は、相殺は双方の債権が相殺適状を生じた時に遡及して効力を生ずる旨を規定しており、これを本件についてみると、本件手形借入債務は、その返済期限が相殺適状を生じた日となることから、本件相殺の効力は、同日に遡及し、同日より前には遡及しない。したがって、本件定期預金は本件相続開始日に本件被相続人の預金として存在する。
借地権等の売買契約中に売主である被相続人に相続が開始した場合における相続財産は、当該借地権等ではなく、当該売買契約に係る残代金請求権であり、また、既に受領した手付金及び中間金は相続税の計算上債務には当たらないとした事例
裁決事例集 第53集 334頁
要旨
請求人らは、本件売買契約において売買代金の全額を受領した時点において買主に引き渡す旨の約定があり、また、本件建物には当該建物の買主への所有権移転登記後も被相続人等が居住及び米穀販売業の会社に賃貸しており、さらに、相続開始後も相続人等が買主に地代を支払いながら居住していたのであるから、相続開始時点においては、本件借地権等は買主に引渡しを了していなかったので、売買契約締結後に売主である被相続人に相続が開始した場合の相続財産は、本件借地権等であると主張する。
しかしながら、[1]本件建物の買主に対する所有権移転登記が本件相続開始前に行われていること、[2]その時点において、売主である被相続人は、本件売買契約代金の約7割を受領していること等の事実から判断すれば、本件相続開始時において、本件借地権等は既に買主に引き渡されたものと認めるのが相当であり、また、相続人らは当該売買契約に係る譲渡所得が被相続人に帰属するとして同人の所得税の修正申告を行い、かつ、当該譲渡所得に係る所得税相当額を本件相続税の計算上の債務として計上すべきとする更正の請求をしていることを総合するならば、請求人らが本件相続により取得した財産は、当該売買契約に係る残代金請求権であると認めるのが相当である。
なお、請求人らが本件借地権等を明け渡すまでの間に買主に支払った金員は、借地権が買主に移転した以後は家賃に実質的に変化したものと認めるのが相当であるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
本件被相続人の被相続人である母の相続に係る遺産分割協議書は真正に成立したものと推定されるから、請求人は、この遺産分割協議書に基づき本件被相続人が相続した本件土地を、本件被相続人に係る遺産分割協議書に基づき相続したものと認めるのが相当であるとした事例
裁決事例集 第61集 473頁
要旨
請求人は、本件被相続人の被相続人である母親の相続に係る遺産分割協議書は、分割の対象となる相続財産の記載に誤りがあるほか、共同相続人の一人であった本件被相続人が詐術により共同相続人に白紙に署名押印させた上これに分割内容を記載して作成したものである等の理由により無効であるから、この遺産分割協議書により本件被相続人が取得したとされる本件土地を遺産に含めた本件被相続人に係る遺産分割協議書も無効であり、本件被相続人から請求人は本件土地を相続により取得していない旨主張する。
しかしながら、本件被相続人の被相続人である母親の相続に係る遺産分割協議書は、本件被相続人を含めその共同相続人全員が署名押印しており、特段の反証のない限り真正に成立したものと推定され、この推定を動揺させる事実は認められないから、この遺産分割協議は真正に成立したものと認められる。
そうすると、この遺産分割協議書に基づき本件被相続人は本件土地を取得したのであり、請求人は、本件被相続人に係る遺産分割協議書に基づき本件被相続人から本件土地を相続により取得したものと認めるのが相当であるから、請求人の主張には理由がない。
要旨
原処分庁は、請求人名義の株式は請求人の父である被相続人が亡母(請求人の祖母)の相続により取得したものであることから、被相続人の相続財産である旨主張する。
しかしながら、本件株式は、祖母が被相続人らのために相続財産として残す意図はなかったものとうかがえるところ、請求人の陳述及びxの答述によれば、祖母は請求人に対して本件株式の購入目的を告げており、死期の近づいた祖母は、購入していた本件株式等を4つに分け、請求人ら自分の孫にあててxに預けたこと、そして、xは祖母の死亡後1か月を経過したころ、請求人に引き渡したことが認められたことからすると、遅くともその時までに、祖母と請求人との間において、祖母が死亡したら本件株式を贈与する旨の死因贈与契約が成立していたと認めるのが相当であり、本件株式は、請求人の固有財産となる。
したがって、本件株式が被相続人の相続財産に当たるとした原処分庁の認定には事実誤認があることから、本件株式の価額を相続財産の課税価格から差し引くべきである。
相続人名義預金に入金された資金及び上場株式の購入資金の運用から生じた化体財産は、過去に被相続人から相続人に贈与があったと認められるため、これらの資金に相当する預け金返還請求権は相続財産には当たらないとした事例(平成26年12月相続開始に係る相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・全部取消し)
裁決事例集 第112集
ポイント
本事例は、被相続人から相続人名義の銀行口座に入金された資金及び上場株式の購入資金の合計(本件資金)について、その化体財産が過去に被相続人から相続人に贈与により移転したものとみるのが相当であることからすると、被相続人は、相続開始日において、相続人に対して本件資金相当額の預け金返還請求権を有しているとは認められないため、相続財産に当たらないと判断したものである。
要旨
原処分庁は、相続人(本件相続人)名義の銀行口座(本件預金口座)に入金された資金及び上場株式の購入資金の合計(本件資金)について、本件資金の原資(本件資金となる直前の財産)は、被相続人(本件被相続人)に帰属するものと認められ、本件被相続人と本件相続人との間で、贈与やその他の債権債務関係があったとは認められないことからすると、本件被相続人は、本件相続人に対し、本件資金相当額の預け金返還請求権を有している旨主張する。しかしながら、①本件資金及び本件資金の原資の管理運用は、本件被相続人が行っていたものであり、そうであれば、本件資金を本件預金口座に入金したり、その後、本件相続人名義の上場株式の購入資金に充てたりしたことは、財産の管理運用の一環として、本件相続人の名義で本件被相続人が実質的に行っていたものと認められること、②平成18年頃に本件資金の運用から生じた化体財産は本件被相続人から本件相続人に贈与されていたことからすれば、そもそも本件資金相当額の預け金返還請求権の存在はおろか発生していたとすらいえない。したがって、本件被相続人は、相続開始日において、本件相続人に対し、本件資金相当額の預け金返還請求権を有しているとは認められない。
参照条文等
相続税の申告書に計上された預貯金口座から出金された現金並びに配偶者名義及び次男名義の預貯金は、いずれも被相続人に帰属する相続財産とは認められないとした事例(平成30年2月相続開始に係る相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・全部取消し)
裁決事例集 第126集
ポイント
本事例は、相続税の申告書に計上された預貯金の口座から出金された現金並びに配偶者名義及び次男名義の預貯金について、いずれも被相続人の収入を原資とするものと断定することができないことなどを理由として、被相続人に帰属する相続財産とは認められないとしたものである。
要旨
原処分庁は、相続税の申告書(本件申告書)に計上されていない現金(本件現金)、被相続人の配偶者(本件配偶者)名義及び次男名義の預貯金(本件預貯金)は、出捐者や被相続人及び本件配偶者の収入比率などからその帰属を判断すると、いずれも被相続人に帰属する財産である旨主張する。
しかしながら、①本件現金の出金元である本件申告書に計上された預貯金口座で管理運用されていた預貯金の原資が特定できないことや、本件配偶者も収入を得ていたと認められることなどからすると、本件現金には被相続人及び本件配偶者の収入が混在している可能性を否定できない中、審判所においても、被相続人及び本件配偶者の収入比率等により本件現金を合理的にあん分することもできず、また、②本件預貯金についても、本件現金と同様、それらの原資を特定することができず、本件配偶者が管理運用しており、被相続人の収入が混在している可能性を否定できない中、被相続人及び本件配偶者の収入比率等により合理的にあん分することができないのであるから、本件申告書に計上された預貯金及び現金の額を超えて、本件現金、本件預貯金が被相続人に帰属する相続財産として存在していたと断定することはできない。
参考判決・裁決
東京高裁平成21年4月16日判決(税資259号順号11182) 平成31年4月19日裁決(裁決事例集No.115)
要旨
請求人らは、本件預貯金等のうち、①妻名義のものは、妻が被相続人との婚姻前から保有していた預貯金及び妻固有の収入並びに生活費を節約して貯めたヘソクリを原資として形成されたものである、②子名義のものは、子が両親との同居期間中に子固有の収入から生活費として家計に入れていた金員等を原資として形成されたものである、また、③一部のものについては被相続人から生前に贈与を受けたものである旨主張する。
しかしながら、①本件預貯金等のうち妻及び子名義の郵便貯金の一部については、「郵便貯金メモ」等により被相続人が管理しており、被相続人がその処分権を有していたと認められること、②本件預貯金等のうち①以外の預貯金等についても原資は被相続人が出捐したものであり、その管理も被相続人により行われていたと認められること、③妻の固有収入は本件預貯金等以外の預金に化体しており、本件預貯金等の原資たり得ないこと、④子が固有収入を生活費として家計に入れていた事実を認めるに足る客観的証拠はないこと、⑤生前に贈与を受けたと請求人らが主張する預貯金等について妻は贈与を受けたことはない旨答述している上、贈与されたと主張する預貯金等の管理運用は被相続人が行っており、贈与の事実は認められないこと等から判断すると本件預貯金等は相続財産であると認めるのが相当であり、請求人らの主張は採用できない。
なお、妻名義の普通預金1口については、原資が不明である上、口座開設時の印鑑届の筆跡も妻であり相続財産とは認められないから、原処分はその一部を取り消すべきである。
要旨
公図は一般に土地の面積、形状を必ずしも正確に表現しているとはいえないが、公図上の本件土地と、現実に存在する「A土地」との位置関係を道路との関係において比較すると、明らかに一致しておらず、かつ、その不一致は無視できないほど顕著であるといわざるを得ない。
さらに、被相続人作成の遺言公正証書等の記載から、被相続人らは、「A土地」が地番「727番1」の土地の一部であり、本件土地は所在不明である旨の認識を有していたことがうかがわれ、そうした認識は、P市が本件土地の評価を留保していること等に照らすと、客観的な根拠のないものと断じることはできない。
また、直ちに「A土地」が、地番「727番1」の土地の一部でないと断ずることもできない。
以上のことから、「A土地」が本件土地であるとする事実を認めることはできず、むしろ「A土地」は地番「727番1」の土地の一部と認めるのが相当であり、本件土地は、現時点においてその存在を確定できないから、相続財産には含まれないと解するのが相当である。
被相続人の家族名義の預貯金等について、その管理状況、原資となった金員の出捐者及び贈与の事実の有無等を総合的に勘案したところ、被相続人に帰属する相続財産とは認められないとした事例(平成21年12月相続開始に係る相続税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分・全部取消し)
裁決事例集 第93集
要旨
原処分庁は、請求人ら及びその家族の名義の預貯金等(本件預貯金等)について、請求人らの申述及び代理人から提出された本件預貯金等に関する金額の移動状況等を記載した資料に基づき、その管理・運用状況、原資となった金員の出捐者及び贈与の事実等を総合的に勘案すると被相続人の相続財産に該当する旨主張する。
しかしながら、原処分庁は、本件預貯金等の使用印鑑の状況や保管場所などの管理状況について何ら具体的に主張立証を行わず、また、その出捐者についても、相続開始日前3年間の被相続人の収入が多額であることなどを挙げるのみで、具体的な出捐の状況について何ら主張立証を行わない。そして、当審判所の調査の結果によっても、被相続人、請求人ら及びその家族の名義で取引先の金融機関に提出された印鑑届等の筆跡並びに印影から、本件預貯金等は各名義人が管理・運用していたと推認されるものの、本件預貯金等の出捐者については、誰であるか認定することはできず、また、被相続人から請求人らに対する贈与の事実の有無については、贈与がなかったと認めるには至らなかった。したがって、本件預貯金等の管理・運用の状況、原資となった金員の出捐者及び贈与の事実の有無等を総合的に勘案しても、本件預貯金等がいずれに帰属するのかが明らかでなく、ひいては、本件預貯金等が被相続人に帰属する、すなわち、相続財産に該当すると認めることはできない。
参考判決・裁決
東京地裁平成20年10月17日判決(税資258号順号11053) 平成19年10月4日裁決(裁決事例集No.74)
要旨
- 請求人ら名義の関係会社の株式は、[1]株式の取得資金のすべてを被相続人が負担していること、[2]株式申込証に押印されている印影は、毎回同じで、その印影に係る印章は、被相続人が普段所持し使用していたものであること、[3]株式の配当金は、被相続人が受け取っていたことが認められることから、被相続人に帰属する株式と認めるのが相当である。
- 請求人ら名義の定期預金は、[1]被相続人は、本件定期預金を請求人らに贈与する意思があったと推認されること、[2]本件定期預金にほぼ見合う金額の贈与税の申告と納税がなされていること、[3]請求人らは、贈与税の申告等について少なからず承知していたこと、[4]請求人らは、相続開始前に被相続人から本件定期預金の通帳を受け取っていると推認されることからすれば、本件定期預金の贈与がなかったとまではいえない。
要旨
原処分庁は、土地の売買契約締結後、同契約完了までの間に売主に相続が発生した場合、その相続税の課税財産は売買残代金請求権であり、その価額は債権として評価すべきである旨主張する。確かに、当該売買契約に係る、売主及び買主双方の義務が、各々誠実に履行され、同債権が確定的に被相続人に帰属していることを肯定できる場合であれば、そのように解釈すべきである。
しかしながら、本件の場合、本件農地に係る不動産売買契約については、売主である被相続人側の責めに帰すべき理由が何等ないにもかかわらず、もっぱら買主側の事情により履行が遅延し、契約締結後2年8か月経過した相続発生の日においても遅延状態にあり、最終的にも、契約締結後約4年4か月、予定された契約履行の日から約3年4か月、相続開始から約1年7か月経過後に解除されたことからすれば、本件相続開始時点において、同契約に係る売買残代金請求権が確定的に被相続人に帰属していたことを肯定できないため、その課税財産は本件農地と認めるのが相当である。
遺産分割協議書に相続財産として記載された現金について、前回相続に係る納税や残余財産の清算といった客観的状況から相続財産に該当しないとした事例(令和3年6月相続開始に係る相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・全部取消し)
裁決事例集 第139集
ポイント
本事例は、母の相続(本件相続)に係る遺産分割協議書に相続財産として記載された現金について、その現金は、以前に行われた父の相続(亡父相続)に係る相続税の調査において、亡父相続に係る相続財産として相続税の修正申告の対象とされた貯金を原資とするもので、当該貯金が現金出金された後、その相続に係る納税や残余財産の清算が行われたことが認められ、このような客観的状況を踏まえると、請求人がその現金を本件相続により取得したものとは認められないから、その現金は、本件相続に係る相続財産に該当しないとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人の母(本件被相続人)の相続(本件相続)に係る遺産分割協議書に相続財産として記載された現金(本件金員)は、請求人が管理・所有し、当該遺産分割協議書の記載のとおり請求人が本件相続により取得したものと認められるから、本件相続に係る相続財産に該当する旨主張する。
しかしながら、本件金員の原資は本件被相続人名義の口座の各貯金であるところ、当該各貯金は、以前に行われた請求人の父の相続(亡父相続)に係る相続税の調査において、亡父相続に係る相続財産として当該相続税に係る修正申告の対象とされたもので、当該各貯金が現金出金された後、本件被相続人及び本件相続に係る共同相続人は、当該修正申告に伴う納税や残余財産の清算を協議し、その協議に沿って納税や残余財産の清算が行われたことが認められる。このような客観的状況を踏まえると、請求人が本件金員を本件相続により取得したものとは認められないから、本件金員は、本件相続に係る相続財産に該当しない。
参照条文等
借地権者の地位に変更がない旨の申出書を提出後その土地の所有権者が建物を建て替えた場合その借地権は所有権者に無償で返還され消滅している旨の請求人の主張を排斥した事例
裁決事例集 第72集 517頁
要旨
請求人らは、被相続人の借地権が存する土地の所有権を請求人Fが取得したことに伴い、借地権者の地位に変更がない旨の申出書(以下「本件申出書」という。)を提出した土地(以下「分筆前土地」という。)について、被相続人がその土地上に所有していた建物A及びBを老朽化のため取り壊した後の土地は、請求人Fが自由に使用収益してよいとする合意の下で、当該建物が取り壊されたことに伴い、本件借地権が被相続人から請求人Fに無償で返還されたものであるから、本件借地権は存在しない旨等主張する。
しかしながら、本件借地権が返還されたとする請求人らの主張は、請求人Fが被相続人から建物取壊し後の土地を自由に使用するよう言われたことに基づくもののみであって、具体的に明らかでなく、上記発言の内容からは、被相続人が本件土地の使用権利者(借地権者)であることを前提として、請求人Fに本件借地権を自由に利用してよいとも解されるから、被相続人は請求人Fに本件借地権を使用貸借により転貸する趣旨で発言したとも認めることができる。
また、本件申出書を提出していることから、その当時、被相続人及び請求人Fは、分筆前土地に係る借地権を移転する意思はなかったものと認められる上、建物が朽廃していない本件において、借地上の建物を親族間で所有名義を変えて建て替えた場合には、従前の借地権を維持するならばこの借地権を使用貸借により転貸したとみるのが一般的であるし、転貸が使用貸借である場合には、使用貸借通達2によって贈与税の課税も生じないのであるから、このように被相続人が請求人Fに本件借地権を使用貸借により転貸する行為は、親族である貸借当事者間での合理的な行為といえる。さらに、被相続人及び請求人Fは、分筆前土地上の建物Dを平成12年に取壊した後の土地の一部を譲渡したことによる譲渡所得の申告において、被相続人に借地権が存在していたとしている。
そうすると、被相続人が、請求人Fに対して本件借地権を返還するという意思があったとは認められず、また、本件借地権が返還されずに存在していたことを推認させる事実はあるが、本件借地権を返還したとみるべき事実は見当たらない。
そして、被相続人及び請求人Fは、連署で本件申出書を提出しているから、貸借当事者間で借地権が土地所有者に返還されたなどその借地権が存在しないとの主張が認められるのは、贈与税の申告又は借地権の消滅の対価を土地所有者が借地権者に支払った事実が存するなど、当該借地権が存在しないことを外形上明確に示す特段の行為の存在が立証されることが必要であると解すべきであるところ、請求人Fは建物A及びBの取壊し又は建物Cの建築を理由とした贈与税の申告をしておらず、その他本件借地権が存在しないことを外形上明確に示す特段の行為の存在を認定できる証拠もない。
以上のことからすると、本件相続開始日において、被相続人に係る相続財産として本件借地権が存在していたと認めるのが相当である。
家族名義預金の一部は相続財産に当たらないと判断した事例(平成24年2月相続開始に係る相続税の 各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分、 決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分・ 棄却・一部取消し、 一部取消し)
裁決事例集 第105集
ポイント
本事例は、相続財産と認定された家族名義預金の一部については、その原資、管理及び運用の実態から相続財産に当たらないと判断したものである。
要旨
原処分庁は、被相続人の子(P1)の配偶者(P5)名義の各貯金(P5名義各貯金)及びP1とP5の子(P10)名義の各定期預金(P10名義定期預金1及びP10名義定期預金2)について、P5及びP10に当該各預貯金を形成する資力があったとは認められず、また、当該各預貯金の管理及び運用は、被相続人及び被相続人の配偶者が共同して行っていたと認められ、そのほかに贈与があったと認められる事実もないことから、当該各預貯金は被相続人に帰属する相続財産である旨主張する。
しかしながら、P5名義各貯金及びP10名義定期預金1の原資は、いずれもP5名義の普通預金口座(P5名義口座)から引き出された金員、又はP5名義口座から引き出された金員を原資とする貯金の払戻金であると認められるところ、①P5名義口座においては、公共料金等の支払のほか小口の入出金が大半を占めていること、②当該口座はP1とP5が婚姻後早々に設定されたものであり、その印鑑票の筆跡はP5のものであること、③P1が生活費等の名目で受け取った金員はP5が管理していたこと及び④当該口座の通帳はP5が管理していたことなどの事実に照らせば、P5名義口座の預金はP5又はP1に帰属する財産であると認められ、P5名義口座から引き出された金員を原資とするP5名義各貯金及びP10名義定期預金1の出捐者が被相続人であるとは認められない。また、P10名義定期預金2については、P1を受取人とする保険の満期保険金を原資とするものであり、当該満期保険金をP1以外の者が受け取ったと認めるに足る事情や証拠資料もない以上、当該定期預金の出捐者はP1であると認められる。そうすると、P5名義各貯金、P10名義定期預金1及びP10名義定期預金2の出捐者が被相続人であるとは認められず、他に当該各預貯金について、被相続人に帰属する財産であることを裏付ける事情や証拠資料も存しないから、P5名義各貯金、P10名義定期預金1及びP10名義定期預金2は本件相続に係る相続財産と認めることはできない。
被相続人は、生前、不動産を売却していないから、当該売却に係る代金債権は発生していないと判断した事例(平成23年3月相続開始に係る相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・全部取消し)
裁決事例集 第103集
ポイント
本事例は、不動産に係る親子間の売買契約書は存在するが、当該売買契約書は、実体を伴わない架空の内容を記載した契約書であると認めるのが相当であり、当該売買に係る代金債権は発生していないと判断したものである。
要旨
原処分庁は、被相続人は、生前、子に対して、不動産(本件不動産)を売却しているところ、相続開始時点において、本件不動産の売買に関する契約書(本件売買契約書)記載の代金が支払われていなかったことから、被相続人は、上記代金に相当する債権(本件代金債権)を有していた旨主張する。
しかしながら、本件売買契約書は存在するものの、本件売買契約書の作成に、買主とされる子が関与していないこと、本件売買契約書において、所有権移転登記手続は、売買代金全額の支払と引替えに行うとされているが、現在に至るまで売買代金は全く支払われておらず、そうであるのに、所有権移転登記が完了しているのは不自然であること、子が請求人との間で作成した金銭消費貸借契約書記載の金員を受け取っておらず、当該金員の返済もしていないこと、請求人及び子の間では、本件不動産の子の所有名義は便宜上のものであり、真実は請求人が所有者であることを確認する旨の合意書が作成されていること、子が本件不動産の所有者としてこれを管理、支配している形跡がうかがわれないことの事情に照らせば、本件売買契約書は、実体を伴わない架空の内容を記載した契約書であるものと認めるのが相当であり、したがって、本件代金債権は発生していないというべきである。
参照条文等
相続税法第2条 民法第555条
貸金庫内に保管されていた株券は、貸金庫の開閉状況、株券の管理・処分の決定方法等の状況からみて、本件被相続人名義分も含めて、その全部が、本件被相続人の被相続人である父親の未分割遺産であるから、そのうち本件被相続人の法定相続分相当のみが本件被相続人の相続財産であると認定した事例
裁決事例集 第61集 496頁
要旨
原処分庁は、貸金庫内に保管されていた甲社株券のうち、本件被相続人の父母名義分に係る本件被相続人の法定相続分相当及び本件被相続人名義の全部は、本件被相続人の相続財産であるから、請求人が本件被相続人から遺贈により取得した財産である旨主張する。
しかしながら、貸金庫内に保管されていた甲社株券は、貸金庫の開閉状況、貸金庫内に甲社株券とともに保管されていた甲社株券以外の株式の売却譲渡及びその代金の帰属先の決定が、相続人の協議により行われており、当該株式名義人単独では行われていないこと、本件被相続人が貸金庫保管の株券については自由に出し入れを行えなかったこと等を総合すると、本件被相続人名義分も含めて、その全部が本件被相続人の被相続人である父親に係る未分割遺産と認めるのが相当である。
そうすると、請求人は、名義いかんを問わず、貸金庫内に保管されていた甲社株券のうち、本件被相続人の父親の相続に係る本件被相続人の法定相続分相当のみを本件被相続人から遺贈により取得したものと認められる。
河川法第24条の規定に基づく河川区域内の土地の許可占用権は相続税の課税財産に該当し、その価額は財産評価基本通達87-5により評価するのが相当であるとした事例
裁決事例集 第72集 534頁
要旨
河川法第24条の規定に基づく河川区域内の土地の占用許可は、特定人に対し、当該土地の本来の用法を超えて特別の継続的な使用権を設定するものであり、当該権利は、河川管理者との関係では公法上の債権の性格を持ち、また、その権利の実質からみると当該許可を受けた者の私的な経済的利益を満たすものであり、河川管理者の承認があれば移転性も認められるから、私法上の財産権としての性質を持ち、相続税法上の財産に該当すると認められる。
本件占用権は、河川法第24条に基づくものであり、また、許可する占用目的は造船施設等で工作物の設置を目的とするものであるから、財産評価基本通達9の(10)に定める占用権に該当し、占用権の評価方法を定める財産評価基本通達87-5の定めは相当であるところ、河川法第24条の河川区域内の土地とは、同法第6条《河川区域》第1項所定の河川区域内の土地であり、河川の流水が継続して存する土地、すなわち、河状を呈している土地を含むと考えるのが相当と認められるから、占用権の評価の基礎となる占用権の目的となっている土地等は、土地(河川敷)占用権及び流水面占用権の目的となっている土地全体が該当し、これを一画地として評価した上で、財産評価基本通達87-5(2)及び(3)を適用して占用権の価額を評価すべきものである。
被相続人以外の者の名義である財産について、その財産の原資の出捐者及び取得の状況、その後の管理状況等を総合考慮して、相続開始時において被相続人に帰属するものと認定した事例
裁決事例集 第83集
ポイント
ある財産が被相続人以外の者の名義となっていたとしても、当該財産が相続開始時において被相続人に帰属するものであったと認められるものであれば、当該財産は、相続税の課税対象となる。
この事例は、被相続人以外の者の名義である財産が相続開始時において被相続人に帰属するものであったか否かについて、その名義のみならず、当該財産又はその購入原資の出捐者、当該財産の管理及び運用状況、当該財産から生ずる利益の帰属者、被相続人と当該財産の名義人並びに当該財産の管理及び運用をする者との関係等を総合考慮して判断したものである。
要旨
請求人らは、請求人ら名義の各有価証券及び各預貯金等(本件請求人ら名義財産)について、これらの全部が請求人ら固有の財産である旨主張する。
しかしながら、預貯金や有価証券等の財産の帰属を判断するためには、その名義が重要な要素となることはもちろんであるが、それら原資の負担者、取引や口座開設の意思決定を行った者、その手続を実際に行った者、その管理又は運用による利得を収受している者などの諸要素、その他名義人と管理又は運用をしている者との関係等を総合的に考慮すべきであるところ、本件請求人ら名義財産については、本件被相続人の妻である請求人G名義の一部の財産を除き、①原資の負担者は、本件被相続人であったと認めるのが相当であること、②取引や口座開設等の手続の遂行者は、実質的に本件被相続人であったと認めるのが相当であること、③本件被相続人自身又は本件被相続人が請求人Gを通じて、管理していたと認めるのが相当であること、④本件請求人ら名義財産の基となった財産の運用については、本件被相続人の指図によって行われていたとみるのが相当であること及び⑤本件請求人ら名義財産の基となった請求人らの名義の上場株式のうち、配当金に係る利得を享受し得る立場にあったのは、本件被相続人であったと認められることからすれば、いずれも本件被相続人の相続財産と認めるのが相当である。ただし、本件請求人ら名義財産のうち請求人G名義の一部の財産については、同人の所得から形成されたものと認められ、また、同人によって運用されていたものと認められるから、請求人G固有の財産であると認めるのが相当である。
参考判決・裁決
東京地裁平成18年9月22日判決(税資256号順号10512) 千葉地裁平成8年7月15日判決(税資220号91頁)
ポイント
本事例は、被相続人名義の預貯金の相続開始時における帰属について、その名義のみならず、当該預貯金の原資の出捐者、管理及び運用状況等を総合考慮して判断したものである。
要旨
請求人は、亡母名義の預貯金(本件預貯金)について、請求人が亡母(本件被相続人)に預けた金員を原資として運用し形成されたものであり、請求人の固有財産である旨主張する。
しかしながら、①本件預貯金の名義は、いずれも本件被相続人であること、②本件被相続人が、各口座を開設し、各金融機関への届出住所等の変更手続を行い、各口座で使用された印鑑を管理していたと認められること、③本件被相続人が負担すべき公租公課等が口座振替により支払われていること及び④本件預貯金の金融機関の窓口での入出金手続は本件被相続人によりされているなどからすれば、各口座の管理運用は本件被相続人が行っていたと認められる。また、⑤本件各預貯金の原資は、大部分が本件被相続人の別の預金、共済の満期金、公的年金等であること、⑥請求人の主張の根拠となる証拠は、請求人の答述しかなく、他にこれを裏付ける証拠は存在しないことを考え併せれば、本件預貯金は請求人の固有財産ではなく、本件被相続人に帰属する相続財産であると認められる。
なお、相続開始時において、本件被相続人が所有していた不動産に係る未納となっていた固定資産税額があり、これは相続税法第13条第1項第1号に規定する相続財産の価額から控除される本件被相続人の債務に該当すると認められたため、原処分の一部を取り消した。
参照条文等
参考判決・裁決
東京地裁平成27年2月27日判決(税資265号12614)
共同相続人間等で争われた株主権確認請求訴訟に係る控訴審判決の理由中の判断で示された事実等に基づき被相続人が相続開始日現在において有していた出資口数を認定した事例
裁決事例集 第87集
ポイント
本事例は、報告文書の中でも実質的証拠力が高いとされている領収書等について、それに記載されたとおりの事実が存在しない理由を説示した上で、当該領収書等の実質的証拠力を否定したものである。
要旨
本件有限会社の出資(本件出資)のうち被相続人が有していた口数につき、請求人らは、被相続人は当初500口を有しており、その後、被相続人の先妻の有していた300口のうち150口を法定相続し、さらに、二女に50口を譲渡した結果、被相続人が相続開始時に有していたのは600口であった旨主張し、他方、原処分庁は、本件有限会社の定款及び家庭裁判所に提出された後見事務報告書等によれば、被相続人が相続開始時に有していたのは900口である旨主張する。
しかしながら、真正に成立したと認められる被相続人の先妻の遺産に係る遺産分割協議書によれば、被相続人の先妻が有していた本件出資は330口であり、この全部を被相続人が相続したものと認められること、また、旧有限会社法第19条《持分の譲渡、社員の先買権》第2項によれば、社員がその持分の全部又は一部を社員以外の者に譲渡する場合には社員総会の承認が必要であって、この手続を欠く譲渡は無効であるところ、請求人らの主張する上記譲渡の当時、二女は当該会社の社員ではなく、また、同社において社員総会の承認がなされたと認めるに足りる証拠は見当たらないことからすれば、被相続人が二女から50口分の金員を受領した旨の記載のある領収証の存在をもって、被相続人が二女に50口を譲渡したと認めることはできない。他方、原処分庁が主張する定款及び後見事務報告書等に記載されている900口には、被相続人が請求人らから70口を譲り受けたとする口数が含まれていると認められるところ、当該譲受けを認めるに足りる証拠はない。以上によれば、相続開始時において被相続人が有していた本件出資の口数は、当初有していた500口と先妻から相続した330口の合計830口と認められる。
ポイント
本事例は、被相続人が、毎年一定の金額を当時未成年であった嫡出でない子(長女)に贈与する旨を記した贈与証を作成した上で、長女の唯一の法定代理人である母を介し、長女名義の普通預金口座に毎年入金していたことにつき、当該母が、その贈与証に基づく贈与を受諾し、入金していたものであるから、当該口座に係る預金は長女に帰属する財産であり、相続財産には含まれないと認定したものである。
要旨
原処分庁は、請求人の亡夫(被相続人)が、毎年一定の金額を当時未成年であった被相続人の嫡出でない子(長女)に贈与する旨を記した贈与証(本件贈与証)を作成した上で、長女の母を介し、長女名義の普通預金口座(本件預金口座)に平成13年から平成24年までの間、毎年入金していたことについて、長女の母は、本件贈与証の具体的内容を理解しておらず、被相続人の指示に従い本件預金口座に入金していたにすぎず、当該入金が長女へ贈与されたものとは認識していないから、被相続人から長女への贈与は成立しておらず、本件預金口座に係る預金は被相続人の相続財産に含まれる旨主張する。
しかしながら、本件贈与証の内容は、その理解が特別困難なものとはいえない上、長女の母は、本件贈与証を預かるとともに、被相続人の依頼により本件預金口座へ毎年入金し、本件預金口座の通帳等を口座開設当時から管理していたことからすれば、平成13年当時、長女の唯一の親権者であった長女の母は、長女の法定代理人として、本件贈与証による贈与の申込みを受諾し、その履行として本件預金口座へ毎年入金していたと認めるのが相当であり、また、本件預金口座には、利息を除き、毎年の入金以外に入金はないから、本件預金口座に係る預金は、平成13年の口座開設当初から長女に帰属するものであって、相続財産には含まれない。
ポイント
本事例は、被相続人が、毎年一定の金額を当時未成年であった嫡出でない子(長女)に贈与する旨を記した贈与証を作成した上で、長女の唯一の法定代理人である母を介し、長女名義の普通預金口座に毎年入金していたことにつき、当該母が、その贈与証に基づく贈与を受諾し、入金していたものであるから、当該口座に係る預金は長女に帰属する財産であり、相続財産には含まれないと認定したものである。
要旨
原処分庁は、請求人の亡父(被相続人)が、毎年一定の金額を当時未成年であった被相続人の嫡出でない子(長女)に贈与する旨を記した贈与証(本件贈与証)を作成した上で、長女の母を介し、長女名義の普通預金口座(本件預金口座)に平成13年から平成24年までの間、毎年入金していたことについて、長女の母は、本件贈与証の具体的内容を理解しておらず、被相続人の指示に従い本件預金口座に入金していたにすぎず、当該入金が長女へ贈与されたものとは認識していないから、被相続人から長女への贈与は成立しておらず、本件預金口座に係る預金は被相続人の相続財産に含まれる旨主張する。
しかしながら、本件贈与証の内容は、その理解が特別困難なものとはいえない上、長女の母は、本件贈与証を預かるとともに、被相続人の依頼により本件預金口座へ毎年入金し、本件預金口座の通帳等を口座開設当時から管理していたことからすれば、平成13年当時、長女の唯一の親権者であった長女の母は、長女の法定代理人として、本件贈与証による贈与の申込みを受諾し、その履行として本件預金口座へ毎年入金していたと認めるのが相当であり、また、本件預金口座には、利息を除き、毎年の入金以外に入金はないから、本件預金口座に係る預金は、平成13年の口座開設当初から長女に帰属するものであって、相続財産には含まれない。
ポイント
本事例は、被相続人が、毎年一定の金額を当時未成年であった嫡出でない子(長女)に贈与する旨を記した贈与証を作成した上で、長女の唯一の法定代理人である母を介し、長女名義の普通預金口座に毎年入金していたことにつき、当該母が、その贈与証に基づく贈与を受諾し、入金していたものであるから、当該口座に係る預金は長女に帰属する財産であり、相続財産には含まれないと認定したものである。
要旨
原処分庁は、請求人の亡父(被相続人)が、毎年一定の金額を当時未成年であった被相続人の嫡出でない子(長女)に贈与する旨を記した贈与証(本件贈与証)を作成した上で、長女の母を介し、長女名義の普通預金口座(本件預金口座)に平成13年から平成24年までの間、毎年入金していたことについて、長女の母は、本件贈与証の具体的内容を理解しておらず、被相続人の指示に従い本件預金口座に入金していたにすぎず、当該入金が長女へ贈与されたものとは認識していないから、被相続人から長女への贈与は成立しておらず、本件預金口座に係る預金は被相続人の相続財産に含まれる旨主張する。
しかしながら、本件贈与証の内容は、その理解が特別困難なものとはいえない上、長女の母は、本件贈与証を預かるとともに、被相続人の依頼により本件預金口座へ毎年入金し、本件預金口座の通帳等を口座開設当時から管理していたことからすれば、平成13年当時、長女の唯一の親権者であった長女の母は、長女の法定代理人として、本件贈与証による贈与の申込みを受諾し、その履行として本件預金口座へ毎年入金していたと認めるのが相当であり、また、本件預金口座には、利息を除き、毎年の入金以外に入金はないから、本件預金口座に係る預金は、平成13年の口座開設当初から長女に帰属するものであって、相続財産には含まれない。
ポイント
本事例は、被相続人が、毎年一定の金額を当時未成年であった請求人に贈与する旨を記した贈与証を作成した上で、請求人の唯一の法定代理人である母を介し、請求人名義の普通預金口座に毎年入金していたことにつき、当該母が、その贈与証に基づく贈与を受諾し、入金していたものであるから、当該口座に係る預金は請求人に帰属する財産であり、相続財産には含まれないと認定したものである。
要旨
原処分庁は、請求人の亡父(被相続人)が、毎年一定の金額を当時未成年であった請求人に贈与する旨を記した贈与証(本件贈与証)を作成した上で、請求人の母を介し、請求人名義の普通預金口座(本件預金口座)に平成13年から平成24年までの間、毎年入金していたことについて、請求人の母は、本件贈与証の具体的内容を理解しておらず、被相続人の指示に従い本件預金口座に入金していたにすぎず、当該入金が請求人へ贈与されたものとは認識していないから、被相続人から請求人への贈与は成立しておらず、本件預金口座に係る預金は被相続人の相続財産に含まれる旨主張する。
しかしながら、本件贈与証の内容は、その理解が特別困難なものとはいえない上、請求人の母は、本件贈与証を預かるとともに、被相続人の依頼により本件預金口座へ毎年入金し、本件預金口座の通帳等を口座開設当時から管理していたことからすれば、平成13年当時、請求人の唯一の親権者であった請求人の母は、請求人の法定代理人として、本件贈与証による贈与の申込みを受諾し、その履行として本件預金口座へ毎年入金していたと認めるのが相当であり、また、本件預金口座には、利息を除き、毎年の入金以外に入金はないから、本件預金口座に係る預金は、平成13年の口座開設当初から請求人に帰属するものであって、相続財産には含まれない。
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