裁決事例 平成18年12月15日裁決
住宅ローンの連帯債務者が、団体信用生命保険に加入していた他の連帯債務者の死亡により住宅ローン債務が消滅したことにより受けた経済的利益は、一時所得に当たるとした事例
裁決事例集 第72集 218頁
要旨
請求人は、請求人の父の死亡に伴い、G銀行との間で請求人及び父を連帯債務者とする住宅ローン契約(以下「本件ローン契約」という。)の締結の際にG銀行が加入した、G銀行を保険契約者及び保険金受取人、父を被保険者とする団体信用保険契約(以下「本件団信保険契約」という。)により、本件ローン契約に係る債務は消滅したが、請求人と父との連帯債務の負担割合は、父が10割、請求人が零であるとする暗黙の合意(特約)があったから、請求人が負担すべき債務は一切存在せず、請求人には経済的利益は全くなく、一時所得は発生しない旨主張する。
また、原処分庁は、①本件ローン契約により、請求人には負担すべき債務がある、②団体信用保険制度は、死亡事故を基因として、死亡時における賦払償還債務相当額の保険金が保険会社から債権者である金融機関に対して直接支払われるものであり、債務者が一旦保険金を受領し債務の返済に充てるものではないから、当該債務の消滅は債務の返済ではなく金融機関から債務免除を受けたものと解され、当該債務が連帯債務である場合には、被保険者を除く各連帯債務者が実質的に債務を負っている部分について債務免除を受けたことによる経済的利益(債務免除益)が生じたものとみるのが相当であるから、請求人がG銀行から受けた債務免除益相当額は、法人からの贈与により取得したものであり一時所得に該当する旨主張する。
しかしながら、①請求人と父との間の負担付贈与契約は、債権者であるG銀行は当該負担付贈与契約を了知していないことから免責的債務引受とみることはできず、請求人と父との間でのローン債務の負担割合を変更したにとどまると認められ、また、②G銀行は本件団信保険契約に係る保険料を全額負担していること、G銀行は受け取った保険金は必ず被保険者の債務に充当するとしていること、被保険者は保険料を負担せず死亡による保険金を受け取る権利を有していないことなどからすれば、本件団信保険契約はG銀行の確実な債権回収を目的とした保険であると認めるのが相当である。
したがって、被保険者の死亡時点における本件ローン契約の残債務全額に相当する経済的利益は、連帯債務であるという当該債務の性質により、各連帯債務者間における負担割合に応じて生じるものであって、債務免除によるものではなく、また、請求人は父の死亡時点において10割の負担割合を有する連帯債務者であると認められるから、請求人は本件ローン契約の残債務の全額に相当する経済的利益を享受したといえ、当該経済的利益は、営利を目的とする継続的行為から生じたものではなく、役務等の対価性もないから、一時所得に該当する。
負担付贈与された土地及び建物の価額は、土地については公示価格に基づいて算出する方法により、建物については再建築価格を基準とした価額から、建物の建築時からその経過年数に応じた減価又は償却費の額を控除して算出する方法によるのが相当であり、また、連帯債務に係る負担額は、債務者間に特約がなく、各債務者が実際に受けた利益の割合で連帯債務の負担をすることを認識していたと認められるから、その割合に応じた額になるとした事例
裁決事例集 第72集 218頁
要旨
「負担付贈与又は対価を伴う取引により取得した土地等及び建物等に係る評価並びに相続税法第7条及び第9条の規定の適用について」通達でいう「通常の取引価額」は、贈与があったとされる当時の課税の対象となる資産の現況を考慮し、最も合理的かつ適切な評価方法により当時の時価を見いだすべきであり、土地については公示価格に基づいて算出する方法により、また、建物については再建築価格を基準とした価額から、建物の建築時からその経過年数に応じた減価又は償却費の額を控除して算出する方法によるのが合理的かつ最も適切な評価方法であると認めるのが相当である。
そして、請求人は、取得した財産の価額から控除すべき住宅ローン契約(請求人及び請求人の父がG銀行との間で請求人及び父を連帯債務者として締結したもの。以下「本件ローン契約」という。)に係る連帯債務に関して、請求人と父との間で請求人の負担割合を零とする暗黙の合意(特約)があったから、控除すべき債務の額は、本件ローン契約の残債務の全額である旨主張するが、①本件ローン契約には、連帯債務者である請求人及び父の負担割合に関する定めはないこと、②請求人は、連帯債務に関する負担割合について合意(特約)があったことを証する証拠はない旨答述し、当審判所の調査によっても、連帯債務の負担割合を零とすべき合意(特約)があったと認める証拠はないこと、③請求人は、少なくとも平成7年1月から平成9年6月までの間、自ら負担すべき持分に応じた金額を毎月父の口座に送金していたと認められること等からすれば、請求人及び父が実際に受ける利益の割合である本件土地の持分に相当する負担割合で連帯債務を負うことを認識していたと認めるのが相当であるから、控除すべき債務の額は、負担付贈与契約時の本件ローン契約の残債務の額に、請求人らの土地の持分の合計に占める父の持分の割合を乗じて計算した額とするのが相当である。
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