裁決事例 平成18年11月29日裁決

裁決事例 平成18年11月29日裁決

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平成18年11月29日裁決

年末調整を受けた給与所得者が、扶養親族に該当しない親族を給与等の支払者に扶養親族として届出て扶養控除の適用を受けていた場合において、当該給与所得者は納税申告書を提出する義務のある者には該当しないから、扶養控除を否認する決定処分は違法であるとした事例

裁決事例集 第72集 25頁

要旨

 請求人は、請求人の母親は請求人とは同居していないが、請求人が母親に住宅を提供し、費用を負担していることは、請求人が母親に対して月額約10万円程度の家賃相当額を援助していることになり、母親は請求人の扶養親族として認められるべきであるから、本件決定処分は違法である旨主張する。
 一方、原処分庁は、①請求人は、住宅の固定資産税及び火災保険料の負担はしているものの、生活費の送金は行っていないことから、請求人と母親とは生計を一にするものとは認められず、母親は請求人の扶養親族に該当しないこと、また、②請求人は平成17年2月にA社を退職しており、各年分の扶養控除誤りをA社において是正し、徴収不足税額を徴収することができず、この場合には所得税基本通達194~198共-2のただし書により、A社に徴収不足税額の徴収を強いて追求しないものと考えられることから、請求人は、国税通則法第25条に規定する「納税申告書を提出する義務があると認められる者が当該申告書を提出しなかった場合」に該当し、本件決定処分は適法である旨主張する。
 しかしながら、所得税法第121条第1項には、その年中に支払を受けるべき給与等の額が2,000万円以下である給与所得を有する居住者で、一の給与等の支払者から給与等の支払を受け、かつ、当該給与等の全部について同法第183条又は同法第190条の規定による所得税を徴収された又はされるべき場合において、給与所得及び退職所得以外の所得金額が20万円以下であるときは、同法第120条第1項の規定にかかわらず同項の規定による申告書を提出することを要しない旨規定されている。
 また、源泉所得税と申告所得税との各租税債権の間には同一性がなく、源泉所得税の納税に関しては、国と法律関係を有するのは支払者であって、国と受給者との間には直接の法律関係は生じないものとされており(最高裁平成4年2月18日判決)、源泉所得税の徴収、納付に不足がある場合には、税務署長は、所得税法第221条の規定に基づき源泉徴収義務者たる支払者からその不足分を徴収することになる。
 なお、所得税基本通達194~198共-2のただし書の取扱いは、あくまでも扶養控除等申告書等の記載事項に誤りがあったことによる徴収不足額の強制徴収に関するものであって、同取扱いの適用を受けることをもって、上記の給与所得者について確定申告を要しない場合の規定が排除され、所得税法第120条の規定が代替的に適用されるものではない。
 したがって、もともと所得税法第121条第1項の規定の適用を受ける者について国税通則法第25条を適用する余地はない。
 これを本件についてみると、請求人の各年分における所得税については、所得税法第121条第1項に規定する確定申告を要しない場合に該当することから、請求人につき国税通則法第25条に規定する納税申告書を提出する義務があるとは認められず、同条を根拠とする決定処分を行うことはできない。以上のことから、請求人の母親が請求人の扶養親族に該当するか否かについて判断するまでもなく、本件決定処分は違法であり、いずれもその全部を取り消すべきである。

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平成18年11月29日裁決

有料老人ホーム入居時点において入居者が有することとなる入居者の死亡又は入居契約の解約権の行使を停止条件とする金銭債権は相続財産に該当するとした事例

裁決事例集 第72集 495頁

要旨

 請求人らは、被相続人が相続時点で有していた権利は、返還請求権を含む入居一時金ではなく、老人ホームの施設を終身利用できる権利であり、また当該権利は、相続も譲渡もできない権利であり、民法上の相続財産には該当しない一身専属権であるから、相続税法第2条に規定する本来の相続財産には該当しない旨主張する。
 しかしながら、被相続人らが締結した老人ホーム入居契約は、入居者である被相続人らの自由な意思によりいつでも契約を解約でき、契約が解約された場合には返還金として契約に定める所定の金員を支払う特約付であったことが認められること、また、契約において入居一時金等の一部を返還することとしているのは、専用居室の家賃及び共用施設の利用料の前払分のほか各サービスの費用並びにサービスに要する事務費及び人件費の前払分として無利息の預り金としてN社(施設設置者)が受け取ったものであることにかんがみれば、被相続人らには、入居契約の締結日時点において、契約に定める老人ホームの居室等を終身にわたって利用し、各種サービスを享受する権利とともに、同人らの死亡又は解約権の行使を停止条件とする金銭債権が生じていると認めるのが相当である。
 そして、当該金銭債権は、金銭に見積もることができる経済的価値のある権利として本来の相続財産に該当し、一身専属的権利とはいえないから、請求人らの主張は採用できない。

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平成18年11月29日裁決

民事再生法に基づく再生計画により、預託金会員制ゴルフ会員権につきその預託金債権の全額が切り捨てられるとともに優先的施設利用権だけのゴルフ会員権を取得した場合、その優先的施設利用権だけのゴルフ会員権の取得価額はその取得時の時価であるとした事例

裁決事例集 第72集 169頁

要旨

 請求人は、所有していた預託金会員制ゴルフ会員権(以下「本件旧会員権」という。)に係るゴルフ場の経営法人の民事再生法に基づく再生計画に従い、本件旧会員権に係る預託金債権の全額が切り捨てられるとともに付与された預託金債権のないゴルフ場施設の優先的施設利用権のみのゴルフ会員権(以下「本件新会員権」という。)を譲渡したが、その譲渡所得の金額の計算に当たって、本件旧会員権の取得に要した金額から再生計画により切り捨てられた預託金相当額を差し引いた価額を本件新会員権の取得に要した費用とすべき旨主張する。
 しかしながら、所得税法第33条第1項の規定の内容及び譲渡所得課税の趣旨からすれば、資産の譲渡による譲渡所得の計算に当たっては、その譲渡時点と取得時点で資産の同質性が維持されている必要があり、譲渡所得の金額の計算上控除されるべき取得費とは、特段の定めがない限り、譲渡資産と同質性が維持された資産の取得に要した金額をいうものと解されるところ、預託金会員制ゴルフ会員権は、優先的施設利用権、預託金返還請求権及び年会費納入等の義務からなる契約上の地位を総称するものと解されることから、預託金会員制ゴルフ会員権の取得に要した金額が、その後のゴルフ会員権の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上取得費として控除されるには、取得時点における預託金会員制ゴルフ会員権としての上記の契約上の地位が、譲渡時点において維持されている必要があると解される。
 そうすると、本件旧会員権は、優先的施設利用権及び預託金返還請求権を有する預託金会員制ゴルフ会員権であり、一方、本件新会員権は、優先的施設利用権のみで預託金返還請求権のないゴルフ会員権であることから、本件新会員権における契約上の地位(資産)は、本件旧会員権における預託金返還請求権を失ったことによりこれを要素とする契約上の地位(資産)としての同一性を失っているので、契約上の地位としての性質に変容があったものであり、本件旧会員権と本件新会員権は、別個の資産というべきである。そして、本件旧会員権の取得価額を本件新会員権の取得価額に引き継ぐ旨の所得税法上の規定もないことから、本件新会員権の譲渡所得の計算に当たって、本件旧会員権の取得価額を引き継いで計算することはできない。したがって、本件新会員権の取得価額は、その取得時の時価相当額とするのが相当である。

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