裁決事例 平成18年7月12日裁決

裁決事例 平成18年7月12日裁決

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平成18年7月12日裁決

「滞納者の国税につき滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められる場合」に該当しないとする請求人の主張を排斥した事例

裁決事例集 第72集 633頁

要旨

 請求人は、滞納法人は評価額328百万円又は347百万円の貸付金を有しているところ、本件滞納国税は約260百万円であるから、本件告知処分は、第二次納税義務の要件である「徴収不足」を充足していない旨主張する。
 しかしながら、貸付債権を評価するに当たっては、一定利率の下で複利計算して一定期間後に一定額を受け取るために現在要する額を算出する方法によって得られた金額のみにとらわれることなく、国税債権の徴収確保という観点から、差し押さえた財産が公売によって国税債権額に見合う額で確実に回収できるものか否かという観点からも検討されてしかるべきであり、そのためには、貸付条件の内容等をも考慮に入れ、特定の者の主観的価値や愛着的価値によることなく、客観的な交換価値、すなわち市場性をもった交換価値であるか否かという総合的な見地から行うのが相当である。
 これを本件貸付金についてみると、その貸付金の第三債務者(同族法人)の営業収益等及び財務状態(①年平均営業利益は約860万円の赤字となっていること、②約定による弁済が不履行となっていること、③債務超過であること等)並びに本件貸付契約の内容(①貸付金が多額であるにもかかわらず無担保で連帯保証人もいないこと、②無担保であるにもかかわらず返済期間が長期で、かつ、低利であること、③返済期限が不確定要素を含み、かつ、債務不履行に関する約定がないこと)をもってすれば、社会通念上、本件貸付金は、同族法人グループ内でのみ通用するものであり、しかも、その市場性は限られたものとなり、公売を前提とした客観的な交換価値としての評価は極めて低い額になるものと思料される。さらに、本件貸付金については、返済期限が不確定要素を含んでいること及び債務不履行に関する約定がないことを併せて考慮すれば、むしろ市場性をもった交換価値を認めることはできず、公売財産として不適当なものというべきであるから、徴収不足の判定から除外するのが相当である。そうすると、滞納法人の財産は「徴収すべき額に不足する」状態であったとみるのが相当である。

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平成18年7月12日裁決

年金受給者が、厚生年金の給付水準の引下げに際し、将来の年金の総額に代えて受給した一時金は、勤務先を退職した年分の退職所得に当たるとした事例

裁決事例集 第72集 132頁

要旨

 所得税法第30条及び同法第31条の立法趣旨等を踏まえれば、厚生年金保険法第9章の規定により定められた厚生年金基金規約に基づき厚生年金基金から受ける一時金のうち、退職金としての性質を有している一時金、すなわち、①元の雇用主が払い込んだ掛金、保険料が給付の原資の大部分を占めているものであり、かつ、②退職金規程に定められた退職金に含まれる年金制度からの一時金であるなど、給与所得者であった者が退職日以後に過去の勤務に基づいて支給される一時金で加入員の退職に基因して支払われたと認められるものは、所得税法第31条第2号に規定する一時金で「加入員の退職に基因して支払われるもの」に該当し、税法上、退職所得として取り扱うと解するのが相当である。
 そして、厚生年金基金から支払われる年金のうち退職金としての性質を有している一時金に相当する部分(以下「一時金相当部分」という。)は、加入員、雇用主及び厚生年金基金の合意の下、一定年齢に達した際に、加入員の老後の生活の糧とするために、厚生年金基金に委託することにより、退職金の性質を持つ金員を年金という形式で加入員に分割して支払われるものとみることもできることから、一時金相当部分については、原則、退職時において退職所得としての権利が確定しているとして課税を行うべきものとみることもできるが、所得税法は、当事者の意思及び分割され年金として支払われる支払実態などにかんがみ、同法第35条第2項及び第3項の規定において公的年金等として雑所得である旨規定し、一時金相当部分は、それが分割され年金として支払われている限りは退職所得として課税せず、年金として支払われた年分において雑所得として課税するという、年金としての課税を行うものであると解される。
 そうすると、現に厚生年金基金から、退職金としての性質を有する一時金の一部を年金として支払を受けていた者が、自らの意思に基づき、今後年金として支払を受ける権利に代えて一時金として受け取ることを選択した場合にあっては、前述した老後の生活の糧とするために分割して受け取るという当事者の意思及び分割して支払われる支払実態など、年金として課税すべき考慮要素が消滅するから、当該一時金の本来の性質に基づき、退職所得として課税することが相当であると解される。
 したがって、所得税法第31条第2号に規定する「加入員の退職に基因して支払われるもの」とは、退職金としての性質を有する一時金が退職時に支払われた場合のみならず、この一時金の一部を年金として厚生年金基金から支払を受けていた年金受給者が、自らの意思により、今後年金として支払を受ける権利に代えて一時金として受け取った場合も含まれると解するのが相当である。
 本件の事実関係によれば、本件一時金は、A厚生年金基金規約に基づいてA厚生年金基金から支給される加算年金に対応する終身までの年金給付の総額に代えて支払われたものであり、また、加算年金の掛金は事業主が負担したものであり、さらに、本件一時金は、勤務先を退職し、加算年金の給付を受けている者しか受け取ることができず、請求人が自らの選択により一時金として受け取ったものと認められることからすれば、本件一時金は、所得税法第31条第2号に規定する退職手当等とみなすものとして、退職所得であると認めるのが相当である。
 そして、本件一時金は、請求人が平成7年にB社(現A社)を退職したことに伴い受け取った退職一時金と同一の勤務先における過去の勤務に基づいて支給されたものであり、一の支払者から二以上の退職手当等の支払を受けるのと同様の事情があると認められるから、同法施行令第77条の規定により、請求人の退職日の属する年分である平成7年分の退職所得と認めるのが相当である。

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