裁決事例 平成22年6月22日裁決
調査開始前に、請求人から関与税理士に従業員の横領行為発覚に伴う修正申告書の作成を依頼し、調査初日、同税理士から調査担当者に対して事実関係を説明するなどした後の修正申告書の提出は、「更正があるべきことを予知してされた」修正申告書の提出には当たらないとした事例
裁決事例集 第79集
要旨
原処分庁は、第一次修正申告書の提出は、国税通則法第65条第5項に規定する「調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたものではないとき」には該当しない旨主張する。
しかしながら、①請求人は、請求人に対する税務調査の開始日の約4か月半前ころには、経理担当者による横領の事実を把握し、関与税理士に当該事実を報告し、その約半月後には当該横領に係る資料を当該関与税理士に提出して当該横領に関する修正申告書の作成作業を依頼するなどして、納税者本人において、その申告が不適正であることを発見しあるいはその端緒となるべき資料等を把握し、その後、②当該関与税理士は、事実関係の確認及び修正申告書の作成作業に時間を要していたところ、③当該関与税理士及び請求人代表者は、当該調査の開始日には、調査担当職員が帳簿調査を開始する前に、当該調査担当職員に対し、当該横領資料の写しを交付し、当該横領に係る事実関係を説明し、当該調査担当職員から当該横領の解明作業を当該関与税理士が行うことの了承を得たもので、税務当局の調査着手後、早期の段階において、納税者から修正申告書を提出する旨の申出がなされたということができる。一方、④当該調査担当職員は、当該調査の開始前において当該横領につながるような資料は保有しておらず、帳簿調査において、当該横領行為の一部について確認するにとどまり、その全容について確認していなかったところ、⑤当該調査により、当該横領に関する事実関係が新たに明らかになったものはなかったものと認められる。
以上によれば、上記申出を受けた当該調査担当職員は、当該申出に係る部分を除いて調査を行ったものであり、当該調査担当職員の調査により更正がなされることを予知されたと評価すべき事実を認めることはできず、第一次修正申告書は当該調査があったこととは別に自主的に提出されたものであり、調査があったことに基づいて提出されたと認められないことから、更正があるべきことを予知してされた修正申告書の提出には当たらない。
参照条文等
要旨
原処分庁は、請求人が本件各滞納法人の株主又は社員である旨主張する。
しかしながら、本件各滞納法人が所轄税務署長に提出した定款等の記載によれば、請求人が、本件各滞納法人の設立の際、本件各滞納法人に出資したとは認められず、直接的な資料により、請求人が本件各滞納法人の増資を引き受け、又は、出資を譲り受けた事実を認定することもできない。また、同族会社においては、所有と経営の分離が行われていない場合が多いから、役員等が会社を自由に操作している事実が認められる場合には、その事実は、当該役員等が当該会社の出資者であることをうかがわせる重要な間接事実となるが、請求人は、本件各滞納法人が経営する各店舗の売上金を集金した以外には、本件各滞納法人の経営に関与した事実は全く認められないから、請求人が本件各滞納法人を自由に操作していたということはできず、請求人が本件各滞納法人の実質的な出資者であると推認することもできない。さらに、本件各滞納法人が平成19年及び平成20年に提出した法人税申告書の別表二には、請求人が本件各滞納法人の株式又は出資を100%保有している旨記載されているが、本件各滞納法人が平成11年中に提出した法人税申告書の別表二には、株主として、請求人以外の者の氏名が記載され、平成12年から平成18年までの間に提出した法人税申告書の別表二には、請求人が本件各滞納法人の株主又は社員である旨の記載はないから、原処分庁が指摘する2年分の法人税申告書の別表二の記載のみから、請求人が本件各滞納法人の株主又は社員であったと認定することは到底できない。加えて、これら2年分の法人税申告書の決算業務を行った税理士法人の担当者は、だれが株主であるか分からなかったので、資産のオーナーである請求人を出資者とするのが妥当であると判断した旨の答述をするが、請求人が店舗不動産の登記名義人であるということと、本件各滞納法人の出資者がだれかということとは直接関係がないから、請求人が本件各滞納法人の出資者であることの根拠とはなり得ない。
以上のとおり、請求人が本件各滞納法人の同族会社の判定の基礎となる株主又は社員に該当すると認めるに足る証拠はないから、原処分は国税徴収法第37条第2号の要件を欠く違法な処分であるといわざるを得ず、その全部を取り消すのが相当である。
参照条文等
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