裁決事例 裁決事例集 第91集
要旨
請求人は、請求人が行った外国為替証拠金取引(本件各FX取引)により生じた利益及びスワップポイントについては、ロスカットを防止するため本件各FX取引の各取引口座から証拠金を出金することができなかったこと、また、本件各FX取引における未決済の取引については、評価損が評価益を上回っている状態にあったことから反対売買による差益を本件各FX取引の各取引口座から引き出す権利がなかったので、本件各FX取引については、本件各年分の年末において収入すべき金額が発生していない旨主張する。
しかしながら、所得税法第36条《収入金額》第1項が、その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において「収入すべき金額」とする旨規定しており、これは、現実に収入がない場合においても、その収入の原因となる権利が確定した場合、その時点で所得の実現があったものとして課税所得を計算するという、いわゆる権利確定主義を採用しているものと解されているところ、本件各FX取引におけるロスカットや請求人の出金可能額は、請求人と本件各FX取引の取引業者との間の取決めにすぎないから、本件各FX取引における反対売買による差損益及びスワップポイントについては、反対売買による決済をした時、又はロールオーバーがあった時に、それぞれ収入の原因となる権利が確定したこととなる。
ポイント
本事例は、請求人が行った社債の換金手続(redemption)は、目論見書の定めに基づいて行われたものであり、目論見書の定めから、社債の譲渡に当たらず、社債の償還と認めるのが相当であるとして、当該換金手続(redemption)による所得は、雑所得に該当すると判断したものである。
要旨
請求人は、保有する社債(本件社債)の換金手続(redemption)に係る請求人の申込みに基づく取引(本件取引)は、満期償還に伴う償還手続に従ってされたものではなく、請求人が、当該社債の発行会社のホームページに公表されている買入価格を基に売却の意思決定を行い、その旨の請求人の申出に同社が同意して行われたものであるとみることができるから、本件取引は、同社による社債の任意買入れにほかならず、租税特別措置法(平成22年法律第6号による改正前のもの)第37条の15《公社債等の譲渡等による所得の課税の特例》第1項第1号の社債の譲渡に当たる旨主張する。
しかしながら、本件取引は、本件社債の目論見書(本件目論見書)の定めに基づいて行われた社債の「redemption」であると認められるところ、本件目論見書の定めから、本件取引である「redemption」は社債の償還と認めるのが相当であり、また、本件目論見書には、社債保有者による譲渡に当たる場合を想定していたと認められる記載があるものの、本件取引がこの場合における取引ではないことが明らかであるから、社債の譲渡には当たらない。
参照条文等
所得税法第35条第1項 租税特別措置法(平成22年法律第6号による改正前のもの)第37条の15第1項第1号
要旨
原処分庁は、青色申告承認取消処分の理由として、請求人が外注費として計上したテレビ番組の制作費等の額は、実際には取引がないにもかかわらず、内容虚偽の請求書を取引先に作成させて取引があるかのように仮装して計上したものである旨主張する。
しかしながら、原処分庁が処分の根拠とした取引先の関係者の申述等には不自然な点が散見され、にわかに信用することができず、むしろ、当該申述等によれば、請求人は取引先との間で実際に取引を行ったものの、請求人が当該取引から何ら結果を出すことができなかったため、当該取引先が当該取引に係る受領額を別の取引の代金に充当することとしたと推認するのが合理的であり、請求人が内容虚偽の請求書の作成を取引先に対し依頼した事実を推認することはできないから、青色申告承認取消処分は、これを取り消すべきである。
参照条文等
ポイント
本事例は、吸収分割による事業の譲渡があった時とは、吸収分割の効力発生日であるから、その効力発生と同時に、納税者である吸収分割会社が吸収分割承継会社の発行済株式の100分の50を超える株式の交付を受けた場合には、当該吸収分割承継会社は国税徴収法第38条に規定する特殊関係者に該当すると判断したものである。
要旨
吸収分割により滞納会社(本件滞納会社)から事業を譲り受けた法人(本件法人)の権利義務の全部を数次の吸収合併によって承継した請求人は、当該吸収分割についての本件滞納会社の臨時株主総会による承認決議の時には本件法人は本件滞納会社の特殊関係者に該当しないから、国税徴収法第38条《事業を譲り受けた特殊関係者の第二次納税義務》に規定する第二次納税義務を負わない旨主張する。
しかしながら、国税徴収法施行令第13条《納税者の特殊関係者の範囲》第2項は、特殊関係者であるかどうかの判定は納税者がその事業を譲渡した時の現況による旨規定しているところ、吸収分割による事業の譲渡があった時とは、吸収分割による効力発生日であり、その効力発生と同時に吸収分割会社が吸収分割承継株式会社の株主になると解されるので、その時に吸収分割承継株式会社が吸収分割会社の特殊関係者に該当するかどうかを判定するのが相当である。そうすると、本件滞納会社は、本件吸収分割の効力が発生し、事業の譲渡が行われたのと同時に、本件法人の発行済株式の100分の50を超える株式の株主となったのであるから、本件法人は本件滞納会社の特殊関係者に該当する。
参照条文等
会社法第757条、第759条 国税徴収法第38条 国税徴収法施行令第13条
参考判決・裁決
平成20年10月1日裁決(裁決事例集No.76・573頁)
被相続人の全財産を書面によらない死因贈与により取得したとする請求人の権利は、和解成立前においては、法定相続人から撤回される可能性が極めて高く、極めてぜい弱なものであったといえることから、請求人が自己のために相続の開始があったことを知ったのは、和解により当該死因贈与契約の一部の履行が確定した日であると判断した事例
裁決事例集 第91集
要旨
《要旨》
原処分庁は、請求人と相続人との間に死因贈与(本件死因贈与)契約の効力に係る争いがあっても、相続税法上、租税債権の成立を妨げるものではなく、また、死因贈与の効力発生時期は贈与者の死亡時であり、死因贈与には民法第554条《死因贈与》により遺贈の規定が準用されることなどからすると、請求人が被相続人の死亡を知った日が、相続税法第27条《相続税の申告書》第1項に規定する「相続の開始があったことを知った日」であるので、請求人が提出した申告書(本件申告書)は期限後申告書である旨主張する。
しかしながら、本件死因贈与は、書面によらないものとみるのが相当であり、書面によらない贈与は、その履行が終わるまでは各当事者が自由に撤回することができる(民法第550条《書面によらない贈与の撤回》)ところ、実際、相続人は、請求人から相続人に対して被相続人の有していた預貯金の支払を求める訴訟(本件訴訟)において、本件死因贈与契約を撤回する旨主張していた。そうすると、本件訴訟に係る和解(本件和解(訴訟上の和解))の成立前の時点においては、被相続人の全財産を本件死因贈与により取得したとする請求人の権利は、極めてぜい弱なものであるといえることから、本件和解の成立前において請求人が自己のために相続の開始があったことを知ったものとは認められない。そして、本件和解により、請求人は預金の一部についてのみ本件死因贈与により取得することとなったものであるところ、このことは、相続人が、被相続人がその全財産を請求人に死因贈与する旨の本件死因贈与契約について、その一部を撤回したものとみるのが相当であり、本件和解により、当該一部撤回後の本件死因贈与の履行が確定したと認めるのが相当である。したがって、請求人が自己のために相続の開始があったことを知ったのは、その履行が確定した本件和解の日というべきであるから、本件和解の日の翌日から10日以内に提出された本件申告書は、期限内申告書である。
参照条文等
相続税法第27条 民法第550条、第554条
参考判決・裁決
大津地裁平成18年2月27日判決(税資256号順号10333) 東京地裁昭和55年5月20日判決(裁Web) 最高裁平成18年7月14日第二小法廷判決(裁Web)
納付済みであった登録免許税について、事後に震災特例法の規定による登録免許税の免税の特例に当たるとしてなされた還付通知をなすべき旨の請求が認められないとした事例
裁決事例集 第91集
ポイント
本事例は、震災特例法の登録免許税の免税規定の適用を受けるには、登記申請の際に法所定の書類の添付が必要であり、登記の際その添付がなかった場合には、既に確定した登録免許税を事後に免除することはできないとしたものである。
要旨
東日本大震災の被災者である請求人は、請求人が行った所有権移転登記及び抵当権設定登記(本件各登記)が、被災代替建物に係る土地の取得のために行ったものであり、東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律(震災特例法)第40条《東日本大震災の被災者等が被災代替建物に係る土地を取得した場合の所有権の移転登記等の免税》の規定(本件免税規定)に該当することから、登記申請の際に必要書類の添付がなくても本件免税規定の適用には問題がなく、本件各登記に係る登録免許税は過誤納となっている旨主張する。
しかしながら、登録免許税の納付及び納付すべき税額は、国税通則法第15条《納税義務の成立及びその納付すべき税額の確定》第2項第12号及び第3項第5号の規定により、登記の時に成立し、その成立と同時に特別の手続きを要しないで確定するのであり、登録免許税第31条《過誤納金の還付》第2項によれば、登録免許税の納付をした場合において過誤納が生じるのは、国税として納付された金員に対応する確定した登録免許税の額が、登記の申請書に記載した登録免許税の課税標準又は税額の計算が国税に関する規定に従っていないなどの場合であるところ、本件各登記に係る登録免許税は、登録免許税法等の規定に従って適正に算出されており過誤納は生じていない。また、所有権移転登記の申請書に、東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律施行規則第16条《東日本大震災の被災者等が被災代替建物に係る土地を取得した場合の所有権の移転登記等の免税》に規定する書類を添付しなかった場合について、既に確定した登録免許税を免除できる規定は存在しない。
参照条文等
東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律第40条 東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律施行規則第16条
参考判決・裁決
ポイント
本事例は、妻と使用人との労務提供の程度の差違が従事時間に現れる程度であり、これを前提に適正給与相当額を検討したところ、妻に対する青色専従者給与額は著しく高額であり、当該青色専従者給与額のうち適正給与相当額を上回る部分の金額は、事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないとしたものである。
要旨
請求人は、青色事業専従者である妻に対して支払った給与の金額(本件青色専従者給与額)は、妻の労務の性質及びその提供の程度からすれば、その全額が妻の労務の対価として相当額(適正給与相当額)であると認められるべきである旨主張する。
しかしながら、適正給与相当額として認められるためには、所得税法施行令第164条《青色事業専従者給与の判定基準等》第1項に規定する①労務に従事した期間、労務の性質及びその提供の程度、②その事業に従事する他の使用人が支払を受ける給与の状況及びその事業と同種の事業でその規模が類似するものに従事する者が支払を受ける給与の状況、③その事業の種類及び規模並びにその収益の状況の3つの要素を総合勘案して、青色事業専従者の労務の対価として相当であると客観的に認識できるものでなければならないところ、当審判所の調査の結果によれば、請求人の妻の労務の性質は、請求人の事業に従事する各使用人(本件各使用人)のそれと大きく異なるものではなく、妻の労務の提供の程度は本件各使用人のそれと従事時間に現れる程度の差異があったと認められるから、これを前提として、上記②の各方法により適正給与相当額を検討したところ、本件青色専従者給与額は、著しく高額であり妻の適正給与相当額であるとは認められない。そうすると、本件青色専従者給与額のうち適正給与相当額を上回る部分の金額は、事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。
参考判決・裁決
名古屋地裁平成13年5月30日判決(税資250号順号8910) 山口地裁平成7年6月27日判決(税資209号1167頁) 名古屋地裁平成5年11月19日判決(税資199号819頁)
財産評価基本通達に定められた評価方法により算定される価額が時価を上回る場合、同通達の定めにより難い特別な事情があると認められることから、他の合理的な評価方法により評価することが許されるとした事例
裁決事例集 第91集
要旨
原処分庁は、請求人らが相続により取得した土地(本件土地)の相続開始時(本件相続開始時)における価額は、財産評価基本通達(評価通達)による評価額(原処分庁通達評価額)によるべきである旨主張し、請求人らは、本件土地の時価を評価するに当たり評価通達の定めにより難い特別な事情があることから、請求人らが依頼した不動産鑑定士による鑑定評価額(請求人鑑定評価額)によるべきである旨主張する。
しかしながら、本件の場合、請求人鑑定評価額は、開発法につき都市計画法第33条《開発許可基準》に関する審査基準(本件審査基準)を満たしていないなどの理由により、本件土地の本件相続開始時における時価とは認められないが、他方、本件土地の開発に際しては、袋路状道路の敷設は認められないなど特殊な制約が本件相続開始時にあったことから、当審判所において不動産鑑定士に鑑定評価を依頼し、その評価額(審判所鑑定評価額)を検討したところ、開発法につき本件審査基準を満たしているなどの理由により、本件相続開始時における時価として妥当なものと認められた。そして、評価通達に定められた評価方法により算定された価額が時価を上回る場合には、評価通達の定めにより難い特別な事情がある場合に該当するといえ、その場合には、他の合理的な評価方法により評価することが許されると解されるところ、原処分庁通達評価額は審判所鑑定評価額を上回るものであることからすると、本件土地の価額を評価するに当たっては、評価通達の定めにより難い特別な事情があると認められる。したがって、本件土地の本件相続開始時における価額は、審判所鑑定評価額とするのが相当である。
参照条文等
要旨
原処分庁は、請求人が賃借する店舗及びその敷地(本件店舗等)の賃貸人が非居住者となった日以後に支払った賃借料についての源泉徴収に係る所得税(源泉所得税)を法定納期限後に納付したことについて、請求人には本件店舗等の賃借料の支払の都度、当該賃貸人が居住者か非居住者かを確認する義務があり、請求人は、単にその確認を怠ったものであると認められるから、国税通則法第67条《不納付加算税》第1項ただし書の「正当な理由があると認められる場合」には当たらない旨主張する。
しかしながら、不動産の賃貸借等において、賃借料の支払の都度、居住者・非居住者の別を確認することを義務付けた明文の規定はなく、また、本件のように、賃貸人等との接触をほとんど必要としない取引について、そのような煩雑な手続を採ることが必要であるとするのは合理的でないというべきであるところ、請求人は、本件店舗等の賃貸借に係る取引において、当該賃貸人が非居住者に該当することになったことを直ちに知り得る状況になかったと認められ、源泉所得税の納付が法定納期限後となった原因は、当該賃貸人からの連絡が遅れたためであると認められるから、請求人には、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があったというべきであり、源泉所得税を法定納期限までに納付しなかったことについて、「正当な理由があると認められる場合」に該当するとするのが相当である。
参照条文等
ポイント
本事例は、破産手続が異時廃止により終了したとしても、清算の目的の範囲内でその法人格は存続するから、破産手続廃止決定を受けた滞納法人を主たる納税義務者とする滞納国税の納税義務は存続しているとしたものである。
要旨
請求人は、滞納法人は費用不足で破産手続廃止となったことにより、その法人格が消滅し、その納税義務も消滅したから、請求人に対する第二次納税義務の納付告知処分、不動産の差押処分及び債権の差押処分は取り消されるべきである旨主張する。
しかしながら、滞納法人の破産手続は、破産法第220条《破産手続終結の決定》第1項が規定する配当等による終結ではなく、同法第217条《破産手続開始の決定後の破産手続廃止の決定》第1項が規定する異時廃止によって終了していることから、会社法第475条《清算の開始原因》に規定する清算が行われた場合と同じであるということはできず、そうすると、破産手続開始の決定による解散の効果として、同条第1号の規定により清算しなければならず、同法第476条《清算株式会社の能力》の規定により、清算の目的の範囲内で滞納法人の法人格は存続していることから、請求人の主張はその前提を欠くものであって採用できない。
参照条文等
会社法第471条、第475条、第476条 破産法第35条、第217条、第220条
要旨
原処分庁は、滞納者から請求人へ所有権移転の登記がされた各不動産が国税徴収法第24条《譲渡担保権者の物的納税責任》第1項に規定する譲渡担保財産であるとして、請求人に対し同条第2項の規定に基づき納付告知処分及び同条第3項の規定に基づき当該各不動産の差押処分を行った。
しかしながら、当該各不動産のうち代物弁済を原因とする所有権移転登記を経由した不動産については、登記の推定力の妨げとなる反証があったとはいえず、請求人は当該不動産を代物弁済により取得したと認められることから、当該不動産が譲渡担保財産であるということはできない。
参照条文等
県民住宅経営安定化促進助成制度に基づいて一括交付を受けた金員は、所得税法施行令第8条第2号に掲げる所得に類する所得に当たらず、臨時所得には該当しないとした事例
裁決事例集 第91集
要旨
請求人は、県民住宅経営安定化促進助成制度に基づいて一括交付を受けた金員(本件金員)は、不動産所得の必要経費(支払利息)を補填するために県優良民間賃貸住宅等利子補給制度に基づき交付を受けていた利子補給金の17年間分を一括で受けたものであるから、本件金員に係る所得は、所得税法施行令第8条《臨時所得の範囲》第2号に掲げる所得に類する所得に当たり、所得税法第2条《定義》第1項第24号に規定する臨時所得に該当する旨主張する。
しかしながら、本件金員は、賃借人である県住宅供給公社又は転借人である入居者に請求人の所有不動産を使用させることを約することにより受ける対価ではないところ、所得税法施行令第8条第2号に規定する資産を使用させることを約することにより受ける「対価」そのものではなく、また、当該「対価」としての性質を有するものでもないから、本件金員に係る所得は、同号に掲げる所得に類する所得に当たらない。したがって、本件金員に係る所得は、所得税法第2条第1項第24号に規定する臨時所得には該当しない。
参照条文等
ポイント
本事例は、請求人の事業所得の金額を推計により算定する場合において、原処分庁が採用した収入金額に進行年分の算出所得率(総収入金額に占める一般経費差引後の所得金額の割合)を乗じて計算した金額から提示された一部の領収証に基づく外注工賃のみを差し引いて算定するという推計方法は合理性がなく、常に外注工賃が存在すると認められる業態については、進行年分の外注工賃を考慮した所得率を用いるのが最も合理的な推計方法であるとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人が請け負っているソフトウェア等の開発業務(本件業務)について、本件各年分の収入金額に、進行年分の算出所得率(総収入金額に占める一般経費差引後の所得金額の割合)を乗じて計算した金額から、提示された一部の領収証に基づく外注工賃のみを差し引いて事業所得の金額を推計の方法で算定しているところ、本件各年分と進行年分における本件業務の内容には同一性があるとしつつ、請求人が、本件各年分の本件業務について、収支状況を明らかにする記帳をしておらず、提示した領収証以外の外注先及び支払金額等を明らかにしない以上、原処分庁の採用した推計方法は合理性がある旨主張する。
しかしながら、①本件各年分及び進行年分における本件業務の内容には同一性が認められること、②本件業務は、その内容、金額及び業務の期間等からみれば、到底請求人個人のみで行うことのできない規模であると認められること、③請求人は、本件業務を受注し預金口座に請負代金の振込みがあった都度、その振込金額の9割を超える金額を引き出しているところ、このうち進行年分については、当該引き出した金額が外注工賃の支払に充てられたことが、原処分庁の調査によって裏付けられていること、④請求人が本件業務の取引内容等について答述した内容は基本的に信用でき、これによれば、本件業務は、受注後、全てを外注し、外注先に完成品と引換えに外注工賃を支払う取引形態であったと認められることなどを総合すると、本件各年分においても、進行年分と同様に、外注工賃を支払っていたと推認することができる。そうすると、本件業務について、常に外注工賃が存在するという業態についても、本件各年分と進行年分とに同一性があると認められるから、本件各年分の本件業務に係る事業所得の金額の算定に当たっては、進行年分の外注工賃を考慮した所得率(総収入金額に占める一般経費及び外注工賃等差引後の所得金額の割合)を用いるのが、請求人の真実の所得の近似値を算定するに最も合理的な推計方法であるというべきである。
参照条文等
ポイント
本事例は、盗まれた普通預金通帳及び印鑑を使用して、預金者以外の者が行った不正な払戻しにより預金者が被った損失は、預金通帳等が窃取されたことに起因し、また、明らかに預金者の意思に基づかない事由によるのであるから、実質的にみて預金者の資産が「盗難」されたことにより生じた損失と評価し、雑損控除の対象となる「盗難」による損失に当たると解するのが相当としたものである。
要旨
請求人は、盗まれた普通預金通帳及び印鑑を使用して普通預金口座から金員が引き出されたことは盗難に該当するとして、預金通帳等が盗まれたことに伴う損失(本件損失)について雑損控除の適用をすべきであり、雑損控除を適用すれば課税所得はない旨主張する。
しかしながら、預金者以外の者が行った不正な払戻しにより預金者が被った損失は、預金通帳等が窃取されたことに起因し、また、明らかに預金者の意思に基づかない事由によるのであるから、実質的にみて預金者の資産が「盗難」されたことにより生じた損失と評価し、雑損控除の対象となる「盗難」による損失に当たると解するのが相当であるから、本件損失は雑損控除の対象となる「盗難」による損失に当たると認められるものの、当該損失の金額は、総所得金額の10分の1を超えないため、雑損控除の額は零円となる。
参照条文等
要旨
請求人は、請求人の父母が所有する土地(本件土地)及び本件土地上の請求人名義の建物(本件建物)に係る賃貸料収入について、平成16年までの賃貸借契約及び平成17年以降の賃貸借契約のいずれも賃貸借契約の目的物は本件土地であるから、当該各賃貸料収入は父母に帰属する旨主張する。
しかしながら、①平成16年までの賃貸借契約においては、賃借人は、本件建物を店舗として使用し、本件土地は、商品の展示場又は来客用駐車場として建物の使用に必要な限度で一体として使用されていることからすると、当該契約の目的物は本件建物と解するのが相当であり、また、②平成17年以降の賃貸借契約においては、本件土地に借地権を設定する旨記載されているものの、賃借人は、本件建物を改装して使用する一方、本件土地上の建物を所有していないことからすると、当該契約は、借地権の設定契約と解するのは相当ではなく、賃借人が、本件建物を事務所等として使用し、本件土地は、来客用駐車場として建物の使用に必要な限度で一体として使用されていることからすると、賃借人は、本件建物の使用を目的として賃借していると解するのが相当であり、当該賃貸借契約の目的物は本件建物となる。そうすると、本件建物の所有者は請求人であることから、本件建物に係る賃貸料収入は請求人に帰属する。
参考判決・裁決
ポイント
本事例は、所得税法第64条第2項に規定する保証債務の特例の適用要件の一つである譲渡者の保証債務の履行のための資産の譲渡とは、資産の譲渡による収入が保証債務の履行に充てられていたというけん連関係を要求するものであるから、その収入の一部が他の用途に充てられたといった事情が存したとしても直ちに当該要件を欠くことにはならないことなどを明らかにしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人の亡父(本件被相続人)による不動産(物件1)の譲渡は、本件被相続人の亡母の相続税の納税資金を捻出するための譲渡であり、その他の不動産(物件2)の譲渡は、その譲渡の時点において、本件被相続人が連帯保証債務を返還するのに十分な資金を既に保有していたので、両不動産(物件1及び物件2)の譲渡はいずれも保証債務の履行のために譲渡したものではないから、所得税法第64条《資産の譲渡代金が回収不能となった場合等の所得計算の特例》第2項に規定する特例(保証債務の特例)は適用されない旨主張する。
しかしながら、保証債務の特例を適用するためには、①債権者に対して債務者の債務を保証したこと、②上記①の保証債務の履行のための資産の譲渡であること、③上記①の保証債務を履行したこと、及び④上記③の履行に伴う求償権の全部又は一部を行使することができなくなったことの4つの実体的要件が必要であるところ、上記実体的要件の②は、資産の譲渡による収入が保証債務の履行に充てられたというけん連関係を要求するものと解され、資産の譲渡による収入の一部が保証債務の履行に充てられていないことをもって、直ちに上記②の実体的要件を欠くことになるものではない。また、譲渡者の資産の保有状況は、保証債務の特例の適用要件であるとは解されない。
参照条文等
参考判決・裁決
さいたま地裁平成16年4月14日判決(税資254号順号9625)
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