裁決事例 裁決事例集 第63集
要旨
請求人は、子会社であるH社に対する債権放棄につき、銀行から同社の債務超過の解消を求められ、それができないとすると、同社の銀行借入金の返済を請求人が肩代わりしなければならないという状況の中で、合理的な再建計画に基づいてなされたもので、その負担をしなければより多くの金銭的負担をしなければならないことはもとより、グループ企業全体への信用収縮という重大な結果を招き、請求人がより大きな損失を被ることが明らかであるから、本件債権放棄は寄附金に該当しない旨主張する。
しかしながら、銀行がH社の債務超過の解消を求められていた事実は認められず、むしろ、H社自身の判断により請求人に本件債権放棄を要請していたこと、請求人は、翌期において、1億4,000万円をH社に貸付けており、H社が資金ショートにより倒産する状況にあったとは認められないこと、請求人がH社に対する貸付金の元本の返済猶予と金利の棚上げを行った場合と本件債権放棄を行った場合とで、H社の資金効果は何ら異ならないこと、H社は、請求人及び銀行からの金利減免を受け、再建に係るリストラ等の自助努力を推進することにより、自力再建が可能であると認められること等からすれば、本件債権放棄は、H社の倒産を防止するためにやむを得ず行われたものであるとか、合理的な再建計画に基づいてなされたものと認められないため、その放棄した額は寄附金に該当する。
要旨
請求人は、他会計からの繰入金の使途を特定した文書がないとしても、消費税法及び消費税法基本通達によりその使途を明らかにできるから、その使途は特定されていることになる旨主張するが、消費税法第60条第4項及び消費税法施行令第75条第1項第6号イ・ロ並びに消費税法基本通達16-2-2は、使途の特定について、文書によるべきこととしているから、請求人の主張には理由がない。
要旨
協業組合の出資の評価方式について、請求人は、払込済出資価額に相当する金額又は配当還元方式により評価すべきである旨主張し、原処分庁は、財産評価基本通達196の定めを適用して純資産価額を基として評価すべきである旨主張する。
しかしながら、協業組合の活動実態は、企業組合など他の営利事業を営む中小企業等協同組合と異なり、むしろ合名会社に近いと認められることから、税法の解釈適用にも要請される租税負担公平の原則に照らし、合名・合資会社の出資に適用される収益性が法人の規模に応じて反映される併用方式(財産評価基本通達179)によって評価することが相当である。
ただし、協業組合においては、議決権等の配分が各組合員相互間の平等を原則とされていることから、零細株主等に適用される特例的な評価方式である配当還元方式及び財産評価基本通達185に定める20%評価減の特例を採用することはできない。
要旨
請求人は、本件延納許可取消処分に係る通知書に記載の金額にそごがあり、納税者の死命を制する重要な法定文書である本件延納許可取消通知書はずさんなものであるから本件延納許可取消処分は違法である旨主張する。
確かに本件取消し処分に係る通知書の一部に誤りが認められるところ、記載全体に照らせば、上記金額も単なる記載誤りであるこことは明らかであり、当該通知書により通知すべき「延納許可取消額」を含むその他の事項は正しく認識することができると認められるから、当該通知書に上記のような記載誤りがあったとしても、本件取消処分を取り消すほどの重大な瑕疵があったとはいえない。
請求人は、現在のようにバブル崩壊後の地価の大幅な下落の時期に、滞納を理由に延納許可を取消しすることは、過酷な処分であり、税務署長に許容される裁量権の範囲を逸脱した著しく不合理なものである旨主張する。
しかしながら、本件延納許可取消処分に手続上の瑕疵は存しないところ、原処分庁が、請求人からの弁明を受けて、分納税額を早期に完納する見込がないと認定し、本件取消処分を行ったことは相当である。
確かに、請求人の納税のための資金繰りが困難な事情は認められないわけではないが、原処分庁は、これらの事情を考慮して、請求人からの延納条件変更申請に対し、分納期限の延長、再延長又は再々延長の措置をそれぞれ講じていることが認められることから、原処分庁が請求人の資金繰りの実情を無視した過酷な処分を行ったとする請求人の主張には理由がない。
要旨
原処分庁は、請求人が取締役会長に支払った役員報酬の額及び退職給与の額につき、同人は長期入院のため通常の勤務ができなかったものであり、非常勤取締役と認められ、そして、類似法人の非常勤取締役に対する役員報酬の支給状況によると、同人に対する適正報酬額は50万円と認められるから、それを超える部分は、法人税法第34条第1項に規定する「不相当に高額な部分の金額」に当たるため損金の額に算入できず、また、退職給与の額のうち、この適正報酬額を基礎として算定した金額を超える部分も、法人税法第36条に規定する「不相当に高額な部分の金額」に当たるため、損金の額に算入できない旨主張するが、取締役会長は、入退院を繰り返しているものの、相当程度の頻度で請求人の職務に従事していたもので、同人は常勤の取締役と認められ、そして、類似法人の常勤取締役会長に対する役員報酬の支給状況等に基づき検討すると、同人に対する役員報酬の額が不相当に高額であるとは認められないから、原処分庁の主張は採用できない。
他方、請求人は、取締役会長に支払った見舞金につき、合理的な社内規定に基づくものであり、その全額が福利厚生費に該当する旨主張するが、類似法人の役員に対する見舞金の支給状況によると、福利厚生費としての見舞金の上限は入院一回当たり5万円と認められるから、当該金額を超える部分は取締役会長に対する賞与に該当する。
要旨
請求人は、確定申告書に添付した買換承認申請書の提出をもって、やむを得ない事情がある場合の延長承認申請書の提出があったものとみなすべきであるから、租税特別措置法第37条の5《既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え及び交換の場合の譲渡所得の課税の特例》に規定する課税の特例の適用を受けることができる旨主張する。
しかしながら、買換承認申請書を延長承認申請書とみなすことができる規定はなく、請求人が提出した買換承認申請書には延長承認申請書に記載すべき所定の事項の記載もないのであるし、また、請求人が提出した延長承認申請書は、その提出期限後に提出されているから適法なものと認めることはできないのであり、そうすると、請求人は、買換資産を買換承認申請書による取得期限までに取得していないから、租税特別措置法第37条の5の適用を受けることはできない。
要旨
請求人は、相続税の滞納国税に係る差押処分は、相続税法が相続財産に担税力を求めて立法されたものであるから、相続財産の範囲で行うべきであり、請求人の固有財産にまで及ぶ本件差押処分の一部を取り消すべきである旨主張するが、原処分庁が請求人の固有財産にまで及ぶ本件差押処分をしたのは、相続開始時から本件差押処分時までの間の地価の下落を原因とする担保不足によるもので、本件先行差押物件の処分代金を本件滞納国税に充ててもなお不足があると認められるからであり、相続税法の立法趣旨とは何ら関係はなく、また、相続税の滞納国税を相続財産から徴収しなければならないとする法令上の規定はないから、請求人の主張には理由がない。
要旨
預金債権の帰属の認定に当たっては、特段の事情のない限り、出捐者、すなわち、預金に係る資産を現実に拠出した者に預金債権が帰属すると解されるところ、[1]本件預金口座は、請求人が、本件任意整理の業務を遂行するための資金を管理するために開設したものであること、[2]本件預金口座の入出金は、滞納法人の売掛債権の回収又は債務の弁済という専ら滞納法人関連のものであること、[3]請求人が、本件預金口座に係る通帳及び届出印の保管、入出金等の管理を行っていたのは、同人にとってこれらの行為が本件任意整理の業務を遂行する上で必要であったからにほかならないこと、[4]本件預金口座の名義人は、社会通念上滞納法人であると解されるところ、請求人であると解する特段の事情が存すると認められないこと等を併せ考えると、本件預金口座の預金者は、その出捐者である滞納法人であるというべきであり、したがって、本件預金債権は滞納法人に帰属すると認めるのが相当である。
要旨
固定資産税課税台帳に登録された価格(以下「台帳価格」という。)のない本件土地の登録免許税の課税標準の額及び税額の算定について、原処分庁は、本件土地の分筆及び合筆前の土地を本件土地の類似土地(以下「本件比準地」という。)とし、その土地の1平方メートル当たりの台帳価格に、本件土地の地積を乗じた額を本件土地の価額と認定しているが、本件土地と本件比準地を比較すると、その規模、立地条件及び利用条件等において明らかに異なるから、本件比準地を本件土地の類似土地とは認められず、また、請求人の主張する本件土地の台帳価額は平成13年度の価額であることから採用できない。
そこで、当審判所が調査した近傍の土地は、その規模、立地条件及び利用条件等から本件土地に類似する土地(以下「近傍類似地」という。)とするのが相当であり、その土地の台帳価格の基礎となる平成12年1月1日現在の路線価を基に、本件土地の形状等を考慮した上で、算定するのが相当である。
したがって、本件土地の価額は、近傍類似地の平成12年1月1日現在の基準路線価に、市が本件土地の平成13年度の修正後の台帳価格の計算に用いた補正率等を乗じて算定した額とするのが相当であるから、原処分庁が認定した登録免許税に係る課税標準の額及び登録免許税の額は、その一部を取り消すべきである。
要旨
請求人は、本件土地に係る貸借は民法に規定する使用貸借ではないから、租税特別措置法第70条の6第7項に規定する相続税の納税の猶予に係る期限の確定事由には当たらない旨主張し、一方、原処分庁は、農業委員会からの「農地等の異動事実の通知書」を原処分庁が収受した日が使用貸借のあった日である旨主張する。
しかしながら、請求人の主張には理由がなく、また、収受した日をもって本件土地につき使用貸借があった日とすることには何ら根拠がないことであるといわざるを得ないから、この点に関する原処分庁の主張は採用できない。
そこで、当審判所は倉庫の建築工事に着工した日に使用貸借の設定があったものと認定し、その認定した猶予期限に基づき利子税の額を計算すると、その額は本件督促処分に係る利子税の額に満たないことになるから、原処分はその一部を取消すべきである。
要旨
請求人は、本件仕入れ等は事実であり修正申告書を提出したのは本意でなく、隠ぺい又は仮装により課税仕入れに計上したとする重加算税等の賦課決定処分は取り消すべきであると主張する。
しかしながら、本件仕入れ等の仕入先は請求人の代表者が実質的に経営していた法人であり、仕入を計上した時点でその仕入先は営業を停止し同社の工場も閉鎖されていたこと、仕入先の元従業員は、同工場が閉鎖された際に請求人の代表者が仕入先の重要書類や機械等を持ち出したと申述していることからすると、請求人が本件仕入れ等をするのが不可能であったと認められ、請求人は架空の本件仕入れ等を記載した納品書等をもって課税仕入れに計上し、消費税等の還付を受けたものと認められる。
原処分庁の採用した独立企業間価格の算定方式は採用できないが、銀行が行っている保証の保証料率を比較対象として独立企業間価格を算定するのは、独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法であり相当であるとした事例
裁決事例集 第63集 454頁
要旨
原処分庁は、格付会社が公表する格付け及びデフォルト確率によって請求人が外国子会社に対して行った保証取引及び保証類似取引の保証料率を求め、同料率によって請求人の保証取引等の保証料の独立企業間価格を算定する方法は、独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法に当たるので原処分は相当であると主張し、請求人は、同方法は市場のコンセンサスを得られていたとはいえないので相当でないと主張する。
確かに、原処分庁の採用した方法は、審判所の調査によっても審査請求事業年度において金融市場の参加者が保証料率の算定に使用されていたとはいえず、同方法が合理的であるとするに足りる証拠は認められないので採用できないが、銀行が行っている保証取引の保証料率を比較対象として採用して請求人の保証取引等の保証料の独立企業間価格を算定する方法は、独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法に該当するので、同方法により算定した独立企業間価格と原処分庁の認定した価格との差額を取り消すのが相当である。
なお、本件各保証予約念書の差入れ及び本件各経営指導念書の差入れは、各金融機関が行っている保証と同等の法的責任を負っているということはできないので、これを保証取引とみなして独立企業間価格を算定することは相当でない。
土地の売買契約と家屋の請負契約は措置法施行令第26条第7項第5号の要件を満たさないから、請求人の借入金は住宅借入金等特別控除の対象とならないとした事例
裁決事例集 第63集 255頁
要旨
請求人は、[1]本件土地の売買契約と本件家屋の請負契約は、同時に同じ場所で締結されており、当該売買契約は租税特別措置法施行令第26条第7項第五号の要件(建築条件付契約)を満たすものであり、また、[2]本件借入金の保証人との保証契約により本件家屋を目的とする抵当権は実質的に設定されており、本件借入金は同項第六号の要件(抵当権の設定)を満たすものであるから、本件借入金の金額のうち本件土地の取得に要した資金に充てた部分の金額は、租税特別措置法第41条第1項に規定する住宅借入金等に該当する旨主張する。
しかしながら、当該請負契約と別個の契約である当該売買契約が租税特別措置法施行令第26条第7項五号の要件を満たさないのは明らかであり、また、本件家屋を目的とする抵当権は、本件年分の翌々年において設定されていることが認められるから、請求人の主張には理由がない。
請求人が専従者給与を支給したとして事業所得の金額の計算上必要経費に算入したことに隠ぺい・仮装の事実があったとして行った重加算税の賦課決定処分は適法であるとした事例
裁決事例集 第63集 63頁
要旨
請求人は、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する仮装、隠ぺいの事実は全くなく、重加算税の賦課決定処分は違法であり取り消されるべきである旨主張する。
しかしながら、請求人の妻が本件期間において請求人の事業に従事した時間がきん少であったことは、配偶者である請求人にとって明白な事実であり、請求人は、請求人の妻が専ら請求人の事業に従事していないこと及び本件専従者給与が本来請求人の妻に支給されるものではないことを十分認識した上で、請求人自身が開設したと認められる同人の管理する請求人の妻名義の預金口座に専従者給与相当額を振込み、請求人の妻に本件専従者給与を支払ったとして請求人の事業の必要経費に算入して所得金額を過少に計算し、確定申告を行ったものというべきであり、このことは、租税を不当に免れる目的をもって、故意に課税標準額等の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装したことに該当することは明らかである。
また、請求人が請求人の妻に支払ったとする本件専従者給与は、支給された側の請求人の妻自身も知らないものであり、請求人の妻の知らない口座に振り込むなどして請求人が実質的に預金等を管理し、運用を図っていたものと認められることからしても、請求人の妻への仮装の本件専従者給与の支給を作出したものであることは明らかである。
したがって、原処分庁が、国税通則法第68条第1項の規定に基づき行った各年分の所得税に係る重加算税の賦課決定処分は適法である。
要旨
請求人(旅行業者)は、自ら主催する旅行において、目的地への運行を依頼したバス会社の乗務員に対して支払った心付けにつき、[1]旅行パンフレット等に旅行代金に心付けが含まれている旨記載されていること、[2]心付けの金額は内規的に設けられた一定の基準を基礎として、あらかじめ旅行原価の中に見積もり、当該金額を旅行費用の一部として見積書を作成していることから、旅行客から預かって支払ったものであると主張する。
しかしながら、[1]旅行パンフレット等には心付けの金額が記載されておらず、また、[2]見積書は社内用に作成されたものであり、旅行客は当該見積書に記載された心付けの金額を確認することができないことからすれば、本件心付けの金額は旅行客の具体的な意思によって決定されるのでなく、請求人の判断と責任において決定されるというべきであり、さらに、請求人は、旅行客から本件心付けに相当する金額を別に預かるような手続をしておらず、旅行客からの預り金として実質的に管理していたと認められないから、本件心付けは旅行客が支払ったものでなく、請求人が、他の旅行原価と同様、旅行客から受取った旅行代金の中から支払ったものと認められる。
そして、本件心付けは、事業に関係のある者に対して支払われ、何らかの収益効果を期待して支払ったものでもなく、請求人が主催旅行における旅程の管理の一環として、当該旅行を円滑に進行させるための謝礼金として支払った金員と認められることから、租税特別措置法第61条の4《交際費の損金不算入》第3項に規定する交際費等に当たる。
要旨
請求人は、無認可保育所も児童福祉法にいう保育所に該当するから、無認可の保育施設が行う資産の譲渡等は消費税法施行令(平成11年施行令第262号により改正前のもの)第14条の2第1号に規定する児童福祉施設が行う資産の譲渡等に該当し、非課税である旨主張するが、児童福祉法では、国、都道府県及び市町村以外の者については、知事の許可を得て保育所を設置することができる旨規定し、また、保育所と目的を同じくする施設であっても、知事等の認可を受けていない施設については「保育所」といっていないから、児童福祉法にいう「保育所」には無認可の保育施設は含まれないと解するのが相当である。したがって、請求人が経営する無認可保育所の事業として行われた資産の譲渡等には消費税法第6条《非課税》の適用がない、とした原処分は適法である。
要旨
請求人は、相続税法第7条及び所得税基本通達40-2の取扱いを引用し、本件株式の時価と譲受価額との差額は「著しく低い」に該当しないから、受贈益が発生しない旨主張する。
しかしながら、法人がある資産を時価より低額で譲受けた場合、時価と譲受価額との差額については無償による財産の取得があったものと考えられ、これを放置することは租税負担の公平を失することになるから、その差額について、法人税法第22条第2項により各事業年度の所得の計算上益金の額に算入すべきであり、この点において、法人税法と相続税法等との間に考え方の差異があるとしても、各々の租税の性質、目的等が異なる以上、やむを得ないものである。
したがって、本件株式の時価と譲受価額との差額を益金の額に算入した原処分は、相当である。
相続税法34条4項の連帯納付義務は、受贈者の贈与税の納税義務の確定という事実に基づいて法律上当然に生じるもので、特別の確定手続を要するものではなく、その範囲は、受贈者が負っている本税及び延滞税のすべてについて、贈与した財産の価額を限度として負担すべきであるとした事例
裁決事例集 第63集 586頁
要旨
相続税法第34条第4項の連帯納付義務は、贈与税の徴収確保を図るため、贈与者に課した特別の履行責任であって、受贈者の贈与税の納税義務の確定という事実に基づいて、法律上当然に生じるものであるから、特別の確定手続を要しない。また、連帯納付義務の範囲は、本来の納税者である受贈者が負っている本税及び延滞税のすべてについて、贈与した財産の価額を限度として負担すべきである。
請求人らが同族会社から受け取る土地建物管理運営契約に基づく賃貸料につき、所得税法第157条を適用した更正処分は適法であり、同条の適用に当たっては請求人らの役員報酬を考慮する必要はないとした事例
裁決事例集 第63集 171頁
要旨
請求人らは、請求人らと同族会社との間の土地建物管理運営契約書に基づく行為又は計算は、所得税法第157条第1項が適用される著しく異常な取引といえない旨主張するが、同族会社が第三者に本件賃貸物件を転貸して得る賃貸料収入と請求人らが同族会社から受け取る地代家賃との差額は適正管理料相当額をはるかに超える異常なものと認められること、及び同族会社が請求人らに支払う地代家賃は年一回の清算で同族会社の当期利益が黒字になるように決められていることからすると、請求人らと同族会社との間の土地建物管理運営契約書に基づく行為又は計算は、請求人らが出資者かつ代表取締役あるいは取締役という関係にあるがゆえに可能な行為又は計算であり、純経済人として、不自然、不合理なものといわざるを得ない。
請求人らは、所得税法第157条第1項の適用に当たっては、同族会社から請求人らに支払われた役員報酬を考慮すべきである旨主張するが、請求人らの役員報酬は、代表取締役及び取締役としての役務の提供の対価として支給されるものであって、所得税法第157条第1項を適用した請求人らの不動産所得とは所得の発生根拠を異にする別個のものであり、同条同項の適用に当たり、請求人らの役員報酬を考慮する必要はない。
請求人らは、請求人らが法人を設立せず、個人の不動産所得として申告した場合と比較すると、本件更正処分は本来生じようもない所得に課税している旨主張するが、現行の租税法の下においては、事業者が選択した企業形態に応じてそれぞれ税法が適用され、租税額が決定されるのであって、その選択のいかんによって事業者が納付すべき租税額が異なってくることは法が当然に予定していることである。
また、「所得税の負担を不当に減少させている」との要件の判断に当たっては請求人らが選択していない企業形態によった租税額と対比、考慮する必要はない。
被相続人が所得金額をことさら過少に申告した行為が国税通則法第70条第5項及び同法第68条第1項に該当し、被相続人の国税の納付義務を承継した請求人らが更正処分及び重加算税の賦課決定処分の対象となることを認めた事例
裁決事例集 第63集 86頁
要旨
請求人らは、被相続人には偽りその他不正の行為は存在しないから法定申告期限から3年を経過して行われた更正処分は違法であり、また、被相続人には仮装、隠ぺいの事実はないから重加算税の賦課決定処分は違法である旨主張する。
しかしながら、被相続人は、各月分の収入金額等を記載した書類から真実の所得金額を申告すべきことを十分認識しながら、当初からこれを過少に申告する意図の下、同書類上に印をするなどして特定した月分の合計金額のみを収入金額として記載した確定申告書を提出し、真実の所得金額の大部分を申告しなかったものと認められ、被相続人のこの行為は、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行為をした上、その意図に基づき所得金額をことさら過少にした内容虚偽の確定申告書を提出した場合に該当するから、被相続人の国税の納付義務を承継した請求人らに対する更正処分及び重加算税の賦課決定処分は適法である。
相続税の納税猶予の特例の適用を受け、その後特定転用の承認の対象となった建物について、納税猶予の期限を確定させることとなる建物の譲渡の事実があったとした事例
裁決事例集 第63集 620頁
要旨
請求人は、相続税の納税猶予の特例の適用を受けていた本件建物を譲渡した事実はないから、納税猶予の期限は確定していない旨主張する。
しかしながら、本件建物については、[1]請求人は資産譲渡の申告を行い、他方、譲渡先法人において資産計上した申告を行っていること、[2]本件建物を含む他の譲渡物件と一括して対価の支払いの事実があったと認められること、[3]本件建物を含む他の譲渡物件に係る収益及び費用は譲渡先法人が一括計上し、その状態が長期間継続していること、[4]譲渡先法人の設立目的(請求人の節税目的)等を総合勘案すると、他の物件と同様に譲渡先法人に対して譲渡されたものと認められる。
したがって、租税特別措置法の一部を改正する法律附則(平成9年法律第22号による改正前のもの)第19条8項第4号に該当し、租税特別措置法70条の6第7項の規定により、納税猶予の期限は確定したと認められる。
要旨
被相続人が同族法人に対して有していた本件債権(未収入金及び貸付金)について、請求人は消滅時効の完成により消滅していること及び同族法人に対する請求権が存在しないことを遺産分割調停調書により当事者相互間で確認しており、相続人全員がこの内容に同意していることから、相続開始時に本件債権が存在するとして更正した原処分は違法である旨主張する。
しかしながら、本件債権が発生した時期及び請求人が時効の起算日とするいずれの時期においても被相続人は同族法人の代表社員の地位にあり、退社するまでの間、業務執行社員として同族法人の決算書類の作成に関与し、その内容について承知し得る立場にあったこと、また、同族法人の社員はすべて親族によって構成され経営されてきたことが認められることから、このような事情の下では被相続人と同族法人との間では毎期、決算書類の作成により本件債権の存在が相互に確認され、同族法人は債務を承認する事実行為を行ったものと認められる。
そうすると、本件債権に係る消滅時効は少なくとも、毎期、決算書類の作成により中断されており、相続開始時において債権の消滅時効はその要件を具備していないことから、本件債権は消滅時効を完成しておらず、本件債権は存在すると認められるから請求人の主張は採用できない。
また、調停において当事者は当事者の自由な意思により任意に、真実の権利関係とは異なる権利関係を進めることができるから、相続開始後、各相続人間において成立した調停において、本件債権は消滅時効により消滅し、同族法人に対する請求権が存在しない旨相続人間で確認している事実をもって、本件債権が消滅時効により消滅したので相続開始時には存在しなかったということにはならない。
仕入税額控除に係る請求書等には、真実の仕入先の氏名等が記載されておらず、また、その仕入先が真実であると信じざるを得ない状況にはなかったとして仕入税額控除を否認した事例
裁決事例集 第63集 653頁
要旨
請求人は、[1]本件仕入取引はいずれもMから持ち込まれたもので、請求書等に記載された仕入先(以下「本件各仕入先」)が真実のものと判断して取引を開始し、本件各仕入先の納品書、請求書及び領収書を収受していること、[2]本件仕入取引は現金取引であり、請求書等の氏名等が真実であるか否かは重要な意味を持つものでなく、その実在を徹底的に追及することが商取引の実態にそぐわないことからすれば、本件各仕入先が真実の取引先であったことは明らかであるか、請求人としては、本件各仕入先を真実の仕入先と信じることに相当の理由があったから、仕入税額控除が認められるべきである旨主張する。
しかしながら、本件仕入取引については、請求人の社長がMに商品を発注し、Mから納品があった際、A氏に代金を支払うという流れであり、M以外の者が関わっていた事実はなく、本件各仕入先は存在しないか、存在しても請求人と取引があったとは認められないことからすると、本件仕入取引はMが虚偽の名義を使用して行ったものと認められ、したがって、帳簿等に真実の取引先の氏名等が記載されているとはいえない。
また、社長をはじめ請求人の社員等は、本件各仕入先の所在や業態等をMに確認することなく、当該取引を継続して行っていたものであるから、請求人が、本件各仕入先を真実の取引先であると取り扱わざるを得ない状況であったとか、そのように信じざるを得ない状況であったとは言えないため、本件各仕入先の氏名等を真実と信ずべき相当な理由があったとは認められない。
請求人は国税通則法第25条に規定する納税申告書を提出する義務があると認められる者には該当せず原処分庁は同条を根拠とする決定処分を行うことはできないとした事例
裁決事例集 第63集 11頁
要旨
原処分庁は、本件決定処分は国税通則法第25条の規定に基づき行ったものである旨主張する。
しかしながら、国税通則法第25条には、税務署長は納税申告書を提出する義務があると認められる者が当該申告書を提出しなかった場合には、当該申告書に係る課税標準等及び税額等を決定する旨規定されており、また、所得税法第121条には、その年中に支払を受けるべき給与等の額が2,000万円以下である給与所得を有する居住者で、一の給与等の支払者から給与等の支払を受け、かつ、当該給与等の全部について同法第183条及び同法第190条の規定による所得税を徴収された又はされるべきものは、同法第120条第1項に規定された申告書を提出することを要しない旨規定されているところ、請求人は、所得税法第121条に規定された確定申告書の提出を要しない場合に該当し、国税通則法第25条に規定する納税申告書を提出する義務があると認められる者には該当しないことから、原処分庁は同条を根拠とする決定処分を行うことはできないので原処分は取り消すのが相当である。
請求人が合名会社を退社するに当たり受領したみなし配当所得の収入すべき時期は、退社することについて総社員の同意があった日であり、年賦で支払われるものであっても、その全額が一括して課税されるとした事例
裁決事例集 第63集 123頁
要旨
請求人が合名会社を退社するに当たり受領したみなし配当所得の収入すべき時期について、請求人は、同社社員総会において退社に関する総社員の同意があった平成11年5月28日であると主張し、原処分庁は、請求人が平成10年8月4日に同社を退社した旨の変更登記がされていることから、退社の事実があった日は同日であると主張する。
ところで、請求人が同社代表社員との間で作成した公正証書には、請求人が平成10年7月2日付で同社を退社することについて総社員が同意した旨の記載があり、本件公正証書の記載内容は真正かつ有効なものと認められるから、本件総社員の同意があった日は、同日と認められる。
そうすると、請求人の退社事由は同社定款に定める総社員の同意に基づくものであることについては争いがなく、所得税基本通達36-4(3)イに定める請求人の退社の事実のあった日は、平成10年7月2日と認めるのが相当であり、同日が配当所得の収入すべき時期である。
請求人は、合名会社を退社するに当たり受領したみなし配当所得は、平成10年から同18年まで9年間の年賦で支払われる予定の収入であるから、みなし配当所得の金額を平成10年分の所得として一括課税することは違法である旨主張する。
しかしながら、所得税法第36条第1項に規定する「その年において収入すべき金額」とは、権利確定主義を原則としているところ、請求人の退社の日は平成10年7月2であり、この日に本件払戻金の額を受領する権利を確定的に取得したものと認めるのが相当であるから、本件みなし配当所得の金額が配当所得の収入すべき金額となり、平成10年分の所得として課税した原処分は相当である。
賃貸料が当該土地に係る固定資産税と同額であることなどから、請求人は、貸家建付地である当該土地を著しく低い価額の対価で譲り受けたと認められるとした事例
裁決事例集 第63集 508頁
要旨
請求人は、父から譲り受けた本件土地の持分部分(請求人の持分を除いたもの)には、父が所有し、請求人の夫が賃借している建物があること、請求人の所有持分について賃貸借契約を締結し、父が賃貸借料を支払っていることから、請求人が譲り受けたものは底地である旨主張する
しかしながら、本件土地の持分の譲渡者と本件建物の所有者とは同一人であるから、同部分に父が借地権を有していたとは認められず、また、請求人に支払われている賃貸借料は固定資産税額と同額であるから、請求人と父との間の貸借は使用貸借と解すべきである。
そして、本件土地は貸家の用に供されている土地であるから、その価額につき、国税局長が定める財産評価基準書で示されているその土地に係る借地権割合とその貸家の借地権割合との相乗積を当該更地価額に乗じて計算した金額を、その更地価額から控除した価額とすることを不相当とする理由は認められないから、これらを基に本件土地の貸家建付地価額を算定すると、本件譲受価額は当該貸家建付地価額に比して著しく低い価額の対価と認めるのが相当である。
要旨
請求人は、甲土地については、傾斜度が30度を超える土地であることから評価通達に定める方式ではなく個別評価が相当であり、評価額はゼロである旨、乙土地については、不動産業者の買取見積り価額1億円による評価が相当である旨主張する。
しかしながら、甲土地はその形状等により、宅地開発する場合には多額の造成費を要すると見込まれ、仮に宅地に転用したとしても十分な地積を確保することができず、宅地としての客観的交換価値があると認めることはできない。そうすると宅地比準方式により甲土地を評価することは、その結果において適正な客観的交換価値と乖離する価額を導くことになるから、評価通達を適用して評価することには特に不都合と認められる特段の事情があると解するべきである。そして、甲土地の価額は、甲土地とその状況が類似する土地で本件相続開始日に近い時点において売買された土地の正常価格がその客観的な交換価値を正しく示すものと解すべきところ、本件譲渡土地の1平方メートルあたりの価額983円に甲土地の地積124平方メートルを乗じた価額である121,892円とするのが相当である。
乙土地については、評価通達の定めを適用して評価することに特に不都合と認められる特段の事情は認められないから、[1]正面路線価、[2]広大地及び有効宅地化率、[3]宅地造成費、[4]不整形地補正率のそれぞれについて評価通達の定めを適用して乙土地の価額を算定すると、102,594,240円となる。
要旨
請求人は、本件普通預金からの払戻金の使途は、請求人の代表者Gに対する借入金の返済である旨主張するが、[1]Gが請求人の代表者としてその経営の全般を掌握していること、[2]G自らが本件普通預金を管理して預入、払戻しを行っていたこと及び[3]請求人の帳簿に本件普通預金に係る入出金が記載されておらず、本件普通預金の払戻金をGからの借入金の返済に当てたとする経理処理をしていないことなどの事実から、給与等の支払いとしてなされたものと解するのが相当である。
要旨
請求人は、滞納会社から提出された「売掛代金債権担保差入書」には、「債務の根担保として譲渡した」旨の記載があるが、法律行為の解釈は、単なる文言のみによってなされるものではなく、当該法律行為がされた経緯、当事者の意思、効果などを総合考慮してなされるものであるから、本件担保差入書に「貴行において、本件債権の取立ての上は、滞納会社の債務の期限のいかんにかかわらず、ただちに債務の弁済に充当されても異議がありません」と記載されていること及び融資実行の経緯などから明らかなように、本件の債権譲渡は、担保のためではなく、弁済のためにされたものであるから、本件告知処分は違法である旨主張する。
しかしながら、法律行為の意思表示の解釈に当たっては、意思の表示が一義的であり、しかも意思の表示に関し、表意者と相手方以外の者の利害がかかわる場合には、当事者の意思表示が一義的に合致していること、表示された意思どおりの効果が発生するとの第三者の信頼を保護すべきことに鑑み、表示された意思に基づいて意思表示を解釈し、表示どおりの効果を認めるべきであると解されるところ、これを本件についてみると、債権譲渡に係る担保差入書及び債権譲渡承諾依頼書には「担保とするため」「担保として」譲渡した旨が記載されており、一義的に担保である旨の意思表示がされていると認められ、また、本件債権譲渡は、定型的な処理が要求されている銀行取引の一環として行われており、第三者である原処分庁は本件債権を差し押さえて利害関係を有しているから、本件債権譲渡は、担保の設定として行われたものと認めるのが相当である。
また、請求人は、国税徴収法第24条の譲渡担保財産には指名債権は含まれない旨も主張するが、同条の担保財産とは、納税者がその所有する財産を債権者又は第三者に譲渡し、その譲渡により、自己又は第三者の債務の担保の目的となっている財産をいい、動産、有価証券、債権、不動産、無体財産権等のほか、法律上まだ権利と認められていないものであっても、譲渡できるもの(手形を除く)は、譲渡担保の目的物とすることができると解されているから、請求人の主張には理由がない。
繰越控除の対象となる青色欠損金額は各事業年度の欠損金額であって、誤って記載された申告書別表一(一)の翌期繰越欠損金欄の金額を基に控除することはできないとした事例
裁決事例集 第63集 1頁
要旨
請求人は、法人税申告書別表一(一)の翌期繰越欠損金欄の記載金額そのものが更正処分の対象となる純損失等の金額であるから、たとえ、誤って記載された金額であっても、それが更正されていなければ、翌期繰越欠損金として確定し、翌期以降の事業年度において、前期から繰り越された欠損金額として控除できる旨主張する。
しかしながら、更正の対象となる純損失等の金額とは、法人税の場合、その事業年度以前の法人税申告書別表一(一)の欠損金額欄に記載された金額のうち、法人税法の規定により、翌事業年度以後の事業年度分の所得の計算上順次繰り越して控除できる金額であり、その金額は翌期繰越欠損金欄の記載金額に影響されるものではないから、誤って記載された金額を基に控除することはできず、請求人の主張には理由がない。
なお、法人税法57条によれば、繰越控除の対象となる青色欠損金額を法人税申告書に記載することは、その適用要件とされておらず、当該金額は各事業年度の正当な欠損金額を基として算定されるものであり、翌期繰越欠損金欄の記載は以後の所得計算の便宜のものにすぎないと認められる。
要旨
請求人は、原処分庁が青色申告の承認取り消し理由としてあげた各事実は、元専務取締役が個人的利益を図るために行ったものであり、請求人はまったく関与していないから、法人税127条1項3号に規定する青色申告の承認取り消しは誤りである旨主張する。
しかしながら、[1]Mに対して架空売上を計上していた事実、[2]R及びSに対して架空仕入れを計上していた事実、[3]元専務取締役がMから簿外で回収した金員とMの担当者に返還した金員の差額を収入から除外した事実、[4]元専務取締役がMの担当者から再バックを受けた金員を収入から除外した事実が認められるところ、上記[1]から[4]の各事実について代表者の認識の有無及び承認した事実の存否は必ずしも明らかではないが、帳簿書類の正確な記帳を推進するとの青色申告制度の趣旨にかんがみれば、仮装隠蔽行為が代表者によってなされたか、あるいは代表者が知っていた場合に限定されるものと解すべきではなく、当該法人のために働く従業員が代表者の承認を得ずに行った場合でも該当するものと解するのが相当であり、請求人の記帳は法人税法第127条第1項第三号に規定する要件に該当し、原処分庁が行った青色申告の承認取り消し処分は適法である。
要旨
請求人は、水害により被災した請求人所有の自動車(以下「本件車両」という。)について、これを主として遠隔地の中学校に通学していた子供の送迎に使用していたから、「生活に通常必要な動産」に該当するとして、その損失の金額を雑損控除の対象とすべきである旨主張する。
しかしながら、「生活に通常必要な動産」とは「家具、じゅう器、衣服」及びこれらに類似する生活用資産であって、通常の社会生活を営むのに必要とされる資産をいうものと解するのが相当であるところ、請求人の子は請求人の妻の実家から歩いて中学校に通学していたことが認められるから、本件車両は通学の際の送迎に使用されていたとする請求人の主張を採用することはできない上、本件車両が通勤用に使用されていないこと、請求人の住所地は市の中心に位置し交通の便が特に悪いとも認められないことなどを総合的に判断すると、本件車両が通常の社会生活を営むのに必要なものであるとはいえず、本件車両は「生活に通常必要な動産」ということはできない。
要旨
請求人は、相続税の申告に当たり同族法人に対する貸付金を相続財産として申告していたが、これを相続税の申告期限前の当該法人の決算時において一部受贈益として確定させたものであるから、この部分に関してはその回収が不可能なことは動かしがたい事実である旨主張するが、債務者が弁済不能の状態にあるか否かは、一般には、破産、和議、会社更生あるいは強制執行等の手続開始を受け、又は事業閉鎖、行方不明、刑の執行等により、債務超過の状態が相当期間継続しながら、他から融資を受ける見込みがなく、再起の目途が立たないなどの事情により、事実上債権の回収が不可能又は著しく困難な状況であるこが客観的に認められるか否かにより判断すべきところ、当該法人は、本件相続開始日当時、赤字申告が続いていた事実は認められるが、債務超過の状態が継続していた事実は認められず、事業活動を継続しており、事業閉鎖等の事実、会社更生又は強制執行の申立て等を受けた事実はなく、弁済不能の状態にあったとは認められない。
また、回収不能の判断時期は、相続開始時であるから、本件相続の開始時点において、貸付金の回収が不可能又は著しく困難な状況であると認められない以上、相続開始後に起きた事実等に基づいて、貸付金の価額の評価が左右されるものではない。
弁護士である破産管財人に支払われた破産管財人報酬は、所得税法第204条第1項第二号に規定する弁護士の業務に関する報酬に該当し、破産者の源泉徴収義務及び納付義務に関する手続は破産管財人が負うものとした事例
裁決事例集 第63集 212頁
要旨
請求人は、破産管財業務が弁護士法第3条に規定する官公署の委嘱に基づく法律事務に該当しないので、破産管財人報酬は所得税法第204条第1項第2号に規定する弁護士の業務に関する報酬ではない旨主張する。
しかしながら、もともと破産管財業務には法律的判断を伴う事務を行うことが予定されている上、本件破産事件において破産管財人に選任された請求人自身弁護士であり、かかる破産管財人には弁護士の中から選任されているのが破産実務の現状であること、本件破産管財業務をみると、売掛金請求訴訟や集合債権譲渡担保権者に対する否認権行使訴訟を提起するなど法律行為が含まれていることなどを総合考慮すると、請求人が行った破産管財業務は弁護士法第3条第1項に規定する官公署の委嘱に基づく法律行為に該当するものであるから、かかる破産管財人報酬は弁護士の業務に関して支払われた報酬であると認めるのが相当である。
請求人は、破産管財人報酬は共益費用の性質を有する上、破産者は破産財団に属する財産に対して何ら権利を有しないことから、破産者に源泉徴収義務はない旨主張する。
しかしながら、破産管財人の報酬は、財団債権として破産財団から支払われるが、この破産財団は破産者の財産であることには変わりがないことから、破産管財人の報酬の支払に伴う経済的出捐の効果が最終的に帰属する者は破産者であり、この意味において所得税法204条1項にいう支払をする者とは、破産者を指すものといわざるを得ない。ただ、破産宣告により破産財団に対する管理処分権は破産管財人に専属することになるところ、租税の申告納付は破産財団の管理処分の一環とみることができるのであるから、破産者の源泉徴収義務及び納付義務に関する手続は、破産管財人が負うものと解するのが相当である。
請求人は、異議決定により本件納税告知処分の原因である「給与」の支払がないとされたのであるから、本件納税告知処分は違法である旨主張する。
ところで、国税通則法36条2項は、納付すべき税額、納期限及び納付場所を納税告知書に記載すべきものとするにとどまり、受給者名、支払年月日など個々の源泉所得税を識別するに足りる事項の記載までは要求していないから、たとえ法定納期限、所得の種類等に誤りがあったとしても、告知額が正当であるときは、それだけの理由で当該納税告知処分が違法となるものではないと解すべきである。ただ、当該納税告知処分が源泉所得税の納税義務の履行を求めるものであることからすれば、当該納税告知書に記載された所得の種類、法定納期限、年月ごとの本税額等の事項から、客観的にこれに包含されるものと認識できる範囲(同一性が認められる範囲)を超えることは許されないと解するのが相当である。本件について判断すると、本件管財人報酬という同一の支払に係る同一の法定納期限の未納の源泉所得税が告知処分時に客観的に存在しており、所得の種類及び告知額の記載事項に誤りがあるものの、異議決定により減額された本税額等は再納税告知処分等の告知額の範囲内であることなどを考慮すると、本件においては、客観的にその対象となる支払が包含されているものと認識できる範囲(処分の同一性の範囲)にあると認められるから、請求人の主張は採用できない。
要旨
請求人は、本件修正申告書の提出が国税通則法第65条第5項に規定する「調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当する旨主張するが、原処分に係る調査担当者が請求人の申告内容を精査検討の結果、請求人の関与税理士に対して、電話により質問及び指摘しており、その後に本件修正申告書が提出されていることからすれば、本件修正申告書の提出は、調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたというべきであり、過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。
原処分庁が差し押さえた滞納者が裁判上請求している貞操侵害を理由とする慰謝料請求権は、差押えの時点においては、いまだ行使上の一身専属性が失われたとはいえないから、差押えの対象とすることができない財産に当たるとして、差押処分を取り消した事例
裁決事例集 第63集 718頁
要旨
原処分庁は、請求人が加害者を被告として提起していた損害賠償請求訴訟の第1審において認容された「貞操を侵害されたことにより請求人が被った精神的苦痛に対する慰謝料請求権」を、判決の言い渡しの日に差押さえた処分は、慰謝料請求権が差押禁止財産に当たらないから適法である旨主張する。
しかしながら、貞操を侵害されたことを理由とする被害者の慰謝料請求権は、被害者が慰謝料請求権を行使する意思を表示しただけでいまだその具体的な金額が当事者間において客観的に確定しない間は、被害者がなおその請求意思を貫くかどうかをその自律的判断に委ねるのが相当であるから、なお行使上の一身専属性を有するものというべきであって、被害者の債権者はこれを差押えの対象とすることはできないものと解される。
これを本件についてみると、本件慰謝料請求権については、加害者が控訴して、その後において裁判上の和解がされているから、差押処分の時点においては行使上の一身専属性が失われたとはいえないから、差押えの対象とすることができないものというべきである。
よって、本件差押処分は、違法であるといわざるを得ない。
法定申告期限から3年を経過した後に提出された修正申告書は、更正があるべきことを予知して提出されたものでないとして、過少申告加算税の賦課決定処分の全部を取り消した事例
裁決事例集 第63集 20頁
要旨
原処分庁は、請求人が調査により修正申告が必要であることを指摘されて本件各修正申告書を提出したものであり、過少申告加算税を賦課したことに違法はない旨主張する。
しかしながら、本件修正申告書は法定申告期限から3年を経過した後に提出され、原処分庁において「偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れた」ことの立証がされなければならないところ、原処分庁からはこの点について具体的な主張がなく、証拠資料の提出もない。
したがって、本件修正申告書の提出は、国税通則法第65条第5項に規定する「更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当すると認められ、過少申告加算税の賦課決定処分については、その全部を取り消すのが相当である。
相続土地に係る賃借関係の実態は使用貸借と解するのが相当であると認定し、また、相続財産を売却して弁済に充てることを予定している被相続人の保証債務は相続税の債務控除の対象にならないとした事例
裁決事例集 第63集 523頁
要旨
請求人らは、本件土地に係る貸借関係は建物の所有を目的とする賃貸借であるから、借地権の目的となっている貸宅地として評価すべきである旨主張するが、被相続人と本件土地を利用する団体とは、被相続人が団体の役員という特殊関係にあり、本件土地の貸借関係は、被相続人の好意及び両者の信頼関係を基盤としたもので、その実態は使用貸借と解するのが相当である。
請求人らは、相続開始時点で、相続人が相続財産の売却により代位弁済を予定している保証債務の額は債務控除の対象とすべき旨主張するが、課税時期において、主たる債務者が債務を弁済不能の状態にあるとは認められず、また、保証人である被相続人が本件保証債務を履行しなければならない状況にあったものとも認められず、本件保証債務は相続税法第14条第1項に規定する「確実と認められるもの」には当たらない。
要旨
請求人は、信用保証協会からの債務免除益につき、同協会が代位弁済した日の翌日以後の損害金は仮計算によって算出されたものであるから、債務免除益に該当しない旨主張する。(請求人は、この免除損害金を雑収入としたところで、確定申告を行なっていた。)
しかしながら、損害金は本件委託契約書第6条(求償権の範囲)に基づいて計算され、かつ、残高通知書に損害金残高として記載されて請求人に通知され、請求人は、各事業年度の決算に当たり、残高通知書の総求償権残高により借入金を計上し、また、損害金を支払割引料として損益計算書に計上していたと認められる。そして、一般に、債務の免除は、債務者の意思にかかわりなく、債権者の債務者に対する一方的な意思表示によってなされるものであり、当該意思表示が相手方に到達したときに効力を生ずるものであるから、信用保証協会が損害金残高から本件土地の譲渡代金のうち元金の弁済に充てた後の残高を控除した金額を減免額として請求人に通知し、これを請求人において受領した以上、この部分は債務免除益となるものである。
要旨
原処分庁は、請求人が本件家具はブローカーを通じて仕入れたものであり正当であると主張しているのに対して、保存する仕入れの証憑の仕入先はK社であり、帳簿に記載した仕入先はM社であることから請求人の計上した仕入れは架空であると認定し、正しい本件家具の仕入金額は、輸入代行業者が税関に提出した輸入申告書に添付したインボイスの金額に諸費用を加算した金額であると主張する。
しかしながら、同インボイスの金額が請求人の正しい商品純仕入高であるというためには、少なくとも請求人が同輸入代行業者に輸入代行を委託していることが前提であるが、この点を証明し得る証拠はない。一方、同入代行業者は、ブローカーと推認される業者から輸入代行手数料を収入していることが認められ、さらに、請求人が計上した家具の仕入金額は、同業他社の家具の仕入価格の水準と同程度であるところ、請求人の主張には、一定の信ぴょう性があるので、原処分は相当でない。
要旨
請求人は、小児科医開院に際して受領した祝金は、個人又は法人からの贈与であり、非課税所得又は一時所得に該当する旨主張する。しかしながら、民法は私人間の法律関係を規律するという見地に基づいた定めであるのに対し、租税法は、収入の経済的実質を重視し、担税力に応じた課税の実現を期するものであることから、租税法上の贈与の概念は民法上の贈与の概念とは別異に解すべきであるところ、本件祝金は、請求人が新たに事業として医療保健業を開業したことに伴い、請求人の事業関係者から受領したものであることから、経済的実質からみれば事業の遂行に付随して生じた収入というべきであり、租税法上、このような収入についてまで贈与と解するのは担税力に応じた公平な税負担の見地からも相当でなく、請求人の主張する非課税所得又は一時所得には該当せず、事業所得に該当するから、事業所得とした原処分は相当である。
請求人が代表取締役を努める同族法人に対する建物の貸付けは、使用貸借であると認められることから、建物の貸付けによる所得には該当しないとして、本件建物に係る必要経費は認められないとした事例
裁決事例集 第63集 141頁
要旨
請求人は、自らが代表取締役を努める同族法人に対して本件建物を零円で貸し付けていることについて、原処分庁が使用貸借と認定した上で、不動産所得の金額の計算上、本件建物に係る租税公課及び減価償却費を否認した更正処分は、従来の経理慣行に反するものであり、実際に法人が店舗を使用しているのであるから、違法である旨主張する。
しかしながら、本件建物の貸付けについては、[1]賃料を零円にすることについて双方の合意が有り、平成6年7月以降、請求人は賃料を受け取っていないこと、[2]請求人は、各年分の確定申告において、賃料を不動産所得の総収入金額に計上していないこと、[3]当該同族法人は、平成7年6月期以後、賃料の支払がなく、未払金の計上も行っていないことから、各年分における本件建物の貸付けが無償で行われていることは明らかであり、使用貸借の状態にあったと認めるのが相当であるので、不動産の貸付けによる所得に該当しないため、本件建物に係る租税公課及び減価償却費を否認した更正処分は適法であり、請求人の主張には理由がない。
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