裁決事例 裁決事例集 第131集
一括取得した土地及び建物について、各資産の取得価額等の算定に当たり、不動産鑑定評価における積算価格比によりあん分するのが合理的であるとした事例( 平成30年3月1日から平成31年2月28日まで及び平成31年3月1日から令和2年2月29日までの各事業年度の法人税の各更正処分並びに令和2年3月1日から令和3年2月28日までの事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、 令和2年3月1日から令和3年2月28日までの課税事業年度の地方法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、 平成30年3月1日から平成31年2月28日まで及び平成31年3月1日から令和2年2月29日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・ 一部取消し、棄却 一部取消し)
裁決事例集 第131集
ポイント
本事例は、請求人が一括取得した土地及び建物について各資産の取得価額等を算定するに当たり、建物の価値を増加させると認められる改修工事が行われていた建物及びこれと一括取得した土地については、当該価値の増加が反映されていないと認められる固定資産税評価額の比ではなく、不動産鑑定評価における積算価格比によりあん分するのが合理的であると判断した事例である。
要旨
請求人は、売買により一括取得した土地及び建物について、まず当該土地の路線価に地積を乗じることにより当該土地の売買代金相当額を算出し、これを売買代金の総額から差し引くことにより当該建物の売買代金相当額を算出する方法(本件差引法)により算出すべきである旨主張する。
しかしながら、本件差引法を用いて土地及び建物の売買代金相当額を区分した場合、土地の売買代金相当額に反映されるべき価額が反映されず、土地の売買代金相当額が客観的な時価に比して低額になる一方、当該価額が建物の売買代金相当額に転嫁され、建物の売買代金相当額が客観的な時価に比して高額になるという看過し難い不均衡が生じるから、本件差引法は合理的とは認められない。
一方、原処分庁は、当該土地及び建物の各売買代金相当額は、土地及び建物の売買代金総額を各資産の固定資産税評価額比によりあん分する方法(固定資産税評価額比あん分法)により算出すべきである旨主張するところ、確かに、固定資産税評価額比は、土地及び建物の価額比を推認する手がかりとして一般的な合理性を有するものであるから、固定資産税評価額比あん分法は、一般的には合理的な算定方法であると認められる。
しかしながら、本件の一部の建物には時価を増加させると認められる改修工事が実施されていたにもかかわらず、当該建物の固定資産税評価額にはこれらの時価の増加が反映されていない。
他方、当該一部の建物及びこれと一括取得された土地について請求人が提出した不動産鑑定評価書における土地及び建物の積算価格の比は、土地及び建物の時価の価額比を推認する手がかりとして一定の合理性が認められる上、改修工事の実施を踏まえたものであり、当該一部の土地・建物については、固定資産税評価額比あん分法よりも当該積算価格比によりあん分する方法を用いることがより合理的であると認められる。
したがって、当該一部の土地・建物については当該積算価格比によりあん分する方法を、他の土地・建物については、固定資産税評価額比あん分法を用いるのが相当である。
参照条文等
相続税法第34条第1項が規定する「相続等により受けた利益の価額に相当する金額」の算定に当たり、相続等により取得した財産の価額から控除すべき金額は、相続等により財産を取得することに伴って現実に支払義務が生じた金額と解することが相当であるとした事例(連帯納付義務の各納付通知処分・棄却)
裁決事例集 第131集
ポイント
本事例は、連帯納付責任限度額の算定において、相続登記に係る登録免許税は、連帯納付の通知処分時までに現実に納付した税額だけを相続等により取得した財産の価額から控除することが相当であることを明らかにしたものである。
要旨
請求人らは、原処分庁がした相続税の連帯納付義務の各納付通知処分(本件各通知処分)について、連帯納付責任の限度額の算定に当たり、相続等により取得した財産の価額から①相続財産の不動産登記を行う場合の司法書士報酬、登録免許税及び印紙税等の各見積額並びに②相続税申告等のための税理士報酬及び本件各通知処分等に対応するための弁護士報酬の各負担額が控除されていないため違法である旨主張する。
しかしながら、相続税法第34条第1項に規定する「相続等により受けた利益の価額に相当する金額」とは、相続人等が現実に取得した利益の価額に相当する金額であって、現実に支払義務が生じた金額を控除した後の金額と解するのが相当である。そして、相続税法基本通達34-1(本件通達)において、「相続等により受けた利益の価額」とは、相続等により取得した財産の価額から、相続税法第13条に規定する債務控除の額のほか、相続等により取得した財産に係る相続税額及び登録免許税額を控除した後の金額をいう旨定めているところ、①相続財産である不動産は、いずれも相続による権利の移転の登記がされていないため、司法書士報酬等の各見積額は請求人らに現実に支払義務が生じたものとは認められず、②税理士報酬等は、相続税額のように納税義務に基づいて当然に負担が生じるものではないし、登録免許税額のように一般的に生じるものとも言い難いものであり、本件通達に定める債務控除の額等のいずれにも該当しないことから、請求人らの主張する各金額は、連帯納付責任限度額の算定に当たり相続等により取得した財産の価額から控除することはできない。
参照条文等
相続税法第34条第1項が規定する「相続等により受けた利益の価額に相当する金額」の算定に当たり、相続等により取得した財産の価額から控除すべき金額は、相続等により財産を取得することに伴って現実に支払義務が生じた金額と解することが相当であるとした事例(連帯納付義務の納付通知処分・棄却)
裁決事例集 第131集
ポイント
本事例は、連帯納付責任限度額の算定において、相続登記に係る登録免許税は、連帯納付の通知処分時までに現実に納付した税額だけを相続等により取得した財産の価額から控除することが相当であることを明らかにしたものである。
要旨
請求人は、原処分庁がした相続税の連帯納付義務の納付通知処分(本件通知処分)について、連帯納付責任の限度額の算定に当たり、相続等により取得した財産の価額から①相続財産の不動産登記を行う場合の司法書士報酬、登録免許税及び印紙税等の各見積額並びに②相続税申告等のための税理士報酬及び本件通知処分等に対応するための弁護士報酬の各負担額が控除されていないため違法である旨主張する。
しかしながら、相続税法第34条第1項に規定する「相続等により受けた利益の価額に相当する金額」とは、相続人等が現実に取得した利益の価額に相当する金額であって、現実に支払義務が生じた金額を控除した後の金額と解するのが相当である。そして、相続税法基本通達34-1(本件通達)において、「相続等により受けた利益の価額」とは、相続等により取得した財産の価額から、相続税法第13条に規定する債務控除の額のほか、相続等により取得した財産に係る相続税額及び登録免許税額を控除した後の金額をいう旨定めているところ、①相続財産である不動産は、いずれも相続による権利の移転の登記がされていないため、司法書士報酬及び登録免許税等の各見積額は請求人に現実に支払義務が生じたものとは認められず、②税理士報酬等は、相続税額のように納税義務に基づいて当然に負担が生じるものではないし、登録免許税額のように一般的に生じるものとも言い難いものであり、本件通達に定める債務控除の額等のいずれにも該当しないことから、請求人の主張する各金額は、連帯納付責任限度額の算定に当たり相続等により取得した財産の価額から控除することはできない。
参照条文等
実地の調査に係る手続に原処分を取り消すべき違法又は不当は認められないとした事例( 平成26年分から令和2年分までの所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに重加算税の各賦課決定処分、 平成26年1月1日から平成30年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに重加算税の各賦課決定処分、 平成31年1月1日から令和2年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分・ 棄却)
裁決事例集 第131集
ポイント
本事例は、原処分庁が、その保有する情報及び請求人の確定申告書の記載内容から売上除外を想定し、原始記録及び帳簿書類等の保全のために国税通則法第74条の10《事前通知を要しない場合》に規定する事前通知を要しない場合に該当すると判断したことに、裁量権の逸脱又はその濫用は認められないことから、違法又は不当はないとしたものである。
要旨
請求人は、原処分庁が国税通則法第74条の10《事前通知を要しない場合》に規定する要件に該当しないにもかかわらず、請求人に対して無予告無通知で調査を行ったことから、原処分を取り消すべき違法又は不当がある旨主張する。
しかしながら、原処分庁は、把握していた情報及び請求人の確定申告書の記載内容から売上除外等が想定され、事前通知をすることで請求人が売上げに係る原始記録及び帳簿書類等を破棄するなど不正取引の把握を困難にするおそれがあると認められたため事前通知を要しない場合に該当すると判断したものであり、その判断に全く事実に基づかず明白に合理性に欠けるなど裁量権の範囲を超え、又はその濫用があったとは認められないことから、事前通知をしなかったことに違法又は不当はない。
また、請求人は、請求人から国税通則法第74条の11《調査の終了の際の手続》第2項に規定する調査結果の内容の説明(調査結果説明)を受けることについての同意を受けた代理人税理士(本件税理士)に調査結果説明を行えなかったのであれば、原処分庁は、他の代理人税理士に調査結果説明をすべきであり、調査結果説明がないまま行われた原処分には取り消すべき違法がある旨主張する。
しかしながら、原処分庁は、本件税理士に対して相当の回数、調査結果説明をするために連絡を試みており、本件税理士がこれに応じなかったことは、その機会を自ら放棄したものと認められることから、調査結果説明がなかったことについて、原処分の取消事由となる違法があるとは認められない。
参照条文等
参考判決・裁決
東京高裁平成3年6月6日判決(訟月38巻5号878頁) 平成27年7月21日裁決(裁決事例集No.100) 平成27年5月26日裁決(裁決事例集No.99)
相続開始時に共同住宅の貸室の一部が空室であったことは、一時的に賃貸されていなかったものとは認められないため、その敷地の当該空室に対応する部分は、貸付事業用宅地等に該当せず、小規模宅地等の特例の適用はないとした事例(令和元年10月相続開始に係る相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第131集
ポイント
本事例は、共同住宅の貸室のうち、相続開始の時に5部屋が空室であったところ、うち3室は、その状態が長期にわたっており、残る2室についても積極的に新たな入居者を募集していたとはいえないことなどから、賃貸されていたのと同視し得る状況にはなく、一時的に賃貸されていなかったものとは認められないと判断したものである。
要旨
請求人は、相続開始の直前において、被相続人が所有していた建物(本件共同住宅)の8部屋あるうち5部屋が空室(本件各空室部分)であったが、被相続人は、本件共同住宅を貸付事業以外の用に供さず維持管理を行い、インターネットサイトで本件各空室部分の入居者の募集をしていたことから、その敷地(本件宅地)の全てが貸付事業の用に供されていたとして、本件宅地の全てに租税特別措置法第69条の4《小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例》第1項に規定する特例(本件特例)の適用がある旨主張する。
しかしながら、本件各空室部分のうち3部屋については、相続開始の時に長期にわたって空室の状態が続き、客観的に空室であった期間だけみても、相続開始の時に賃貸されていたのと同視し得る状況になく、一時的に賃貸されていなかったものとは認められない。また、本件各空室部分のうち残る2部屋については、相続開始の時に空室であった期間は長期にわたるものではなく、インターネットサイトに入居者を募集する旨の広告が掲載されていたものの、①その問合せ先である被相続人と一般媒介契約を締結していた不動産業者は本件共同住宅に関して入居者を仲介した実績がないこと、②当該不動産業者は被相続人と連絡が取れなかったことにより平成27年以降の本件共同住宅の空室の状況を把握していなかったこと、③当該不動産業者ではオーナーから広告の掲載を取りやめたい旨の申出がない限りその掲載を継続する扱いをしていたことからすれば、被相続人が上記一般媒介契約及び上記広告を放置していたにすぎず、積極的に新たな入居者を募集していたとはいえないし、現に相続税の申告期限までの期間をみても、新たな入居者はなく、空室のままだったものである。したがって、当該2部屋についても、相続開始の時に賃貸されていたのと同視し得る状況になく、一時的に賃貸されていなかったものとは認められない。以上のとおり、本件各空室部分は、被相続人の貸付事業の用に供されていたとは認められないから、本件宅地のうち、本件各空室部分に対応する部分に本件特例の適用はない。
参照条文等
租税特別措置法第69条の4第1項、第3項第4号イ 租税特別措置法施行令第40条の2第4項 租税特別措置法通達69の4-24の2
参考判決・裁決
東京地裁平成6年7月22日判決(税資205号209頁) 大阪地裁平成28年10月26日判決(税資266号順号12923)
給与を返還した場合には源泉徴収の規定により正当に徴収された又はされるべき所得税等の額も減少するとした事例( 平成28年分の所得税及び復興特別所得税の更正の請求に対する理由なし通知処分、 平成29年分の所得税及び復興特別所得税の更正の請求に対する理由なし通知処分・ 一部取消し、 棄却)
裁決事例集 第131集
ポイント
本事例は、給与の返還に伴って源泉徴収の規定により正当に徴収された又はされるべき所得税等の額が減少した場合には、その減少後の正当に徴収された又はされるべき所得税等の額を超える金額を算出所得税額から控除し、又は還付を受けることはできないとしたものである。
要旨
請求人は、役員給与につき源泉徴収された所得税等(本件各源泉所得税)について、当該役員給与を一部返還したことにより過大となったにもかかわらず、源泉徴収義務者が源泉徴収税額の精算をしない場合には、源泉徴収義務者が請求人に役員給与を支払う際に徴収した源泉所得税を国は収納し利益を得ているのであるから、所得税法(平成31年法律第6号による改正前のもの)第120条《確定所得申告》第1項第5号の「源泉徴収された又はされるべき所得税の額」は、実際に源泉徴収された所得税等の額と解するのが相当であり、請求人は、本件の各更正の請求により本件各源泉所得税の額の還付を受けることができる旨主張する。
しかしながら、同号にいう「源泉徴収をされた又はされるべき所得税の額」とは、所得税法の源泉徴収の規定に基づき正当に徴収をされた又はされるべき所得税等の額を意味するものであり、役員給与が減額された以上、源泉徴収の規定により正当に徴収された又はされるべき所得税等の額も減少するのであるから、請求人が主張する事情があったとしても、請求人は、本件の各更正の請求において、本件各源泉所得税の額のうち、「正当に徴収された又はされるべき所得税等の額」を超える金額を算出所得税額から控除し、又は還付を受けることはできない。
なお、原処分庁は、請求人の源泉徴収による所得税等の額は原処分庁ではなく源泉徴収義務者が再計算すべきものであり、また、請求人は源泉徴収義務者が発行した訂正後の源泉徴収票又はこれに代わる書類を提出していないから、源泉徴収義務者によって再計算された請求人の給与所得に係る源泉徴収された所得税等の額や所得控除の額を確認することができない旨主張する。
しかしながら、所得税法第120条第1項第5号の「正当に徴収された又はされるべき所得税等の額」の意味を踏まえると、請求人が本件の各更正の請求に関して提出した資料から正当に徴収されるべき所得税等の額が計算できる場合には、その計算をした所得税等の額を基に確定申告書に記載された納付すべき税額が過大となっているか否かを判断することが相当である。
参照条文等
国税通則法第23条第1項 所得税法第120条第1項第5号(平成31年法律第6号による改正前のもの)
参考判決・裁決
最高裁平成4年2月18日第三小法廷判決(民集46巻2号77頁) 東京高裁昭和55年10月27日判決(訟月27巻1号211頁) 平成24年12月20日裁決(裁決事例集No.89)
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