裁決事例 裁決事例集 第95集
要旨
請求人は、本来の納税義務者には滞納相続税を納付できる十分な資力等があり、同人から徴収することが極めて容易であるにもかかわらず、原処分庁が請求人に対して恣意的に相続税法第34条《連帯納付の義務等》第6項に規定する連帯納付義務の納付通知処分を行ったことは徴収権の濫用に当たる旨主張する。
しかしながら、同法第34条第1項に規定する連帯納付義務は補充性を有しないのであって、連帯納付義務者は第二次納税義務等のように本来の納税義務者に滞納処分を執行しても徴収すべき額に不足すると認められる場合に限って納付義務を負担するというものではない。したがって、原処分庁が徴収手続を怠った結果、本来の納税義務者から滞納相続税を徴収することができなくなったという事実があったとしても、同人又は第三者の利益を図る目的をもって恣意的に当該滞納相続税の徴収を行わず、他の相続人に対して徴収処分をしたというような事情がない限り、徴収権の濫用には当たらない。本件の場合、このような事情は認められないことから、請求人の主張は採用することができない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和55年7月1日第三小法廷判決(民集34巻4号535頁)
請求人の事業所得の金額等を類似同業者の平均売上原価率を用いて推計する方法には合理性があるとした事例( 平成21年分以後の所得税の青色申告の承認の取消処分、 平成21年分から平成23年分の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分、 平21.1.1から平21.12.31の課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、 平22.1.1から平23.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・ 棄却、 一部取消し)
裁決事例集 第95集
ポイント
本事例は、原処分庁が請求人の事業所得の金額等を類似同業者の平均売上原価率等を用いて推計するに当たり、類似同業者を請求人の売上原価の0.5倍以上2倍以下であるなど、機械的に抽出しており、その抽出方法には合理性があると認められるものの、原処分庁が選定した類似同業者のうちに、立地条件等からみて必ずしも請求人と業態が類似するとは認められない者が含まれていることから、この者を類似同業者から除外して、原処分庁が採用した推計の方法により請求人の事業所得の金額等を算定することが相当であるとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人と事業内容・規模等が類似すると認められる青色申告者(平成21年分7件、平成22年分4件、平成23年分5件)の平均的な売上原価率(総収入金額に対する売上原価の割合)に基づいて、請求人の事業所得の金額及び消費税の課税標準額を推計の方法により算定しており、原処分庁の推計の方法には合理性がある旨主張する。
原処分庁は、請求人が営む店舗の所在地を管轄する税務署管内に事業所を有し、同税務署長に対し青色申告書を提出する者で、請求人と業種、業態及び事業内容が類似し、かつ、売上原価が請求人の売上原価の0.5倍以上2倍以下であるなど事業規模が類似する者を、類似同業者として機械的に抽出しており、このような抽出の方法については合理性があると認められるものの、原処分庁が選定した類似同業者のうち平成21年分の1件については、立地条件等からみて必ずしも請求人と業態が類似するとは認められないから、この者を類似同業者から除外することが相当である。
参照条文等
請求人らが土地の譲渡に際して支払ったコンサルタント料等は、譲渡所得の計算上譲渡費用に当たらないとした事例(平成23年分の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第95集
要旨
請求人らは、共同住宅(本件建物)の敷地の用に供していた土地(本件土地)を譲渡した際に、親族が主宰する不動産仲介業等を営む法人(本件法人)にコンサルタント料として支払った金員(本件金員)は、当該法人が、①本件土地の取得に反対していた請求人らの親族の説得、②本件土地を譲渡するために取り壊した本件建物の長期にわたる改良行為、③トラブルが予想される賃借人への対応等、④請求人らの本件土地の譲渡先選定に関する助言等の諸行為に係る対価であるため、本件土地の譲渡に係る譲渡所得の取得費又は譲渡費用に該当する旨主張する。
しかしながら、①本件土地の取得のための親族の説得行為は、その取得自体に必要なものであったということはできず、取得のための付随費用ともいえないから本件土地の取得費には該当しない。また、②請求人主張の本件法人が行ったとする本件建物の各種改良行為は一般の修善又は維持管理行為と認められること、③本件建物の賃借人への各種対応は、本件土地を譲渡した6年以上前のことであること、④譲渡先選定に関する本件法人の助言によって、本件土地の譲渡先が決定されたものではないことなどからすると、このような各行為に係る対価は、本件土地の譲渡を実現するために必要な費用とは認められない。よって、本件金員は本件土地の譲渡費用に該当しない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成18年4月20日第一小法廷判決(裁Web)
請求人が建物補償金などの名義で取得した金員の一部について、収用等の場合の課税の特例を適用することはできないとした事例(平22.4.1~平23.3.31までの事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第95集
要旨
請求人は、請求人の建物の敷地として賃借していた土地の一部(本件土地)の公共用地の買取りに伴い起業者(本件起業者)から取得した補償金(本件建物補償金)について、①租税特別措置法関係通達(措置法通達)64(2)-3《対価補償金等の判定》の定めにより本件起業者の判断が尊重されるところ、本件起業者が請求人に交付した「公共事業用資産の買取り等の証明書」に「買取」と記載されていること、また、②本件建物補償金の算定根拠となった建物の庇部分を取り壊していることからすると64(2)-8《ひき(曳)家補償等の名義で交付を受ける補償金》の各定めに該当又は類似し、本件建物補償金の全額が、租税特別措置法第65条の2《収用換地等の場合の所得の特別控除》第1項の規定による所得の特別控除の特例(本件特例)の対象となる補償金に該当する旨主張する。
しかしながら、①措置法通達64(2)-3は、交付の目的が明らかでない補償金について、対価補償金、収益補償金、経費補償金、移転補償金又はその他対価補償金たる実質を有しない補償金のいずれに該当するかの判定が困難な場合に、課税上弊害がない限り、起業者が証明するところによる旨定めているのであって、請求人は、本件起業者から本件建物補償金の算定資料の交付を受けており、本件建物補償金については、その算定の内訳等が明らかであり、いずれの補償金に該当するかが判断できる。また、②請求人が本件起業者から交付を受けた本件建物補償金の算定資料によれば、本件建物補償金のうち、本件土地の買取りによって減少する展示場及び駐車場の代替として本件土地の外に立体駐車場を設置する費用の補償及び当該立体駐車場を設置する際に支障となる建物の移転に要する費用の補償の各金額は、いずれも本件土地の上に存する資産に係るものではないから、措置法通達64(2)-8の定めに該当しない。
参照条文等
租税特別措置法第65条の2 租税特別措置法関係通達64(2)-3、64(2)-8
参考判決・裁決
平成21年5月25日裁決(裁決事例集№77) 福井地裁平成15年12月3日判決(税資253号順号9482)
共同相続人や遺産の範囲は確定しており、客観的に遺産分割ができ得る状態であったから、請求人が行った相続税の申告期限から3年以内に遺産が分割されなかったことについてのやむを得ない事由の承認申請を却下した処分は適法であるとした事例(平成21年4月相続開始に係る相続税について遺産が未分割であることにつきやむを得ない事由がある旨の各承認申請の各却下処分・棄却)
裁決事例集 第95集
要旨
請求人らは、本件相続に係る財産が本件相続に係る申告期限の翌日から3年を経過する日(本件申告期限3年経過日)までに分割されなかったことにつき、租税特別措置法施行令(平成22年3月政令第58号による改正前のもの)第40条の2《小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例》第11項の規定により準用される相続税法施行令第4条の2《配偶者に対する相続税額の軽減の場合の財産分割の特例》第1項第4号に規定する「税務署長においてやむを得ない事情があると認められる場合」に該当する旨主張する。
しかしながら、同号に規定する「税務署長においてやむを得ない事情があると認められる場合」に該当するか否かは、相続に係る財産が当該相続に係る相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日において、客観的に遺産分割ができないと認められる状態にあったといえるか否かにより行うことが相当であるところ、本件申告期限3年経過日の前に本件相続に係る共同相続人の範囲や本件相続に係る遺産の範囲は確定していたことが認められ、また、請求人らの遺産分割協議において協議された事項は、①別件第一次相続により取得した預金の一部に係る返済の問題、②本件相続に係る遺産のうち賃貸不動産からの収入の清算等の問題、③本件相続に係る代償金の額の問題(本件相続に係る代償金の額の決定に当たり、その対象不動産の評価額は算定されていたにもかかわらず、当該価額に納得しない者がいた。)であったと認められる。そうすると、本件においては、本件申告期限3年経過日において、客観的に遺産分割ができないと認められる状態にあったとはいえないから、本件申告期限3年経過日までに分割されなかったことにつき、同号に規定する「税務署長においてやむを得ない事情があると認められる場合」には該当しない。
参照条文等
租税特別措置法(平成22年3月法律第6号による改正前のもの)第69条の4第4項 租税特別措置法施行令(平成22年3月政令第58号による改正前のもの)第40条の2第11項 相続税法施行令第4条の2第1項第4号 相続税法基本通達19の2-15
参考判決・裁決
ライブチャットサービス業務を行う請求人が主張する各費用のうち、少なくともパソコン等の購入費及びインターネット接続料金については必要経費に算入するのが相当であるとした事例(平成19年分~平成23年分の所得税の各決定処分及び無申告加算税の各賦課決定処分・一部取消し・平26年5月22日裁決)
裁決事例集 第95集
要旨
請求人は、インターネットのウェブサイト上で、当該サイトの男性会員にウェブカメラで撮影した映像を見せながら会話を行う等のいわゆるライブチャットサービス(本件業務)を行って報酬を得ていたところ、本件業務に使用するパソコン、ウェブカメラ、衣服、水着、ソファー、カーテン等を購入した費用及び美容費は、全て本件業務の遂行上必要なものであるから、必要経費に算入されるべきものである旨主張する。
ところで、請求人がいかなる態様で本件業務を行っていたとしても、少なくともパソコン及びウェブカメラを使用し、インターネットへ接続することは本件業務の遂行上必要不可欠なことと認められるから、請求人が本件業務の用に供したパソコン及びウェブカメラの購入費並びにインターネット接続料金については、減価償却費、消耗品費、備品費又は通信費として必要経費にそれぞれ算入するのが相当である。
しかしながら、上記各費用のうちパソコンの購入費等以外の各費用については、請求人から本件業務をどのように行っていたのかを明らかにする動画や静止画等の客観的な証拠の提出はなく、当審判所の調査の結果によっても、これを確認することはできない。そうすると、請求人の当該各費用の必要経費該当性については、業務関連性に関する各答述等から合理的に判断していくほかないところ、各答述は、総じて終始場当たり的で一貫せず、不自然かつ不合理な内容や本件業務に無理に関連づけて述べるものと認められるから信用できない上、請求人が提出した当該各費用に関する書類の内容及び本件業務との関連性を記載したメモ書き等からみても、いずれの費用も客観的にみて本件業務と直接の関係を有し、かつ、本件業務の遂行上必要なものとは認められない。
参照条文等
請求人が不動産を実体的に所有するとともに、その利得を支配管理し、自己のために享受していると認められるから、当該不動産の賃貸に基因する所得は請求人に帰属するとした事例(平成21年分の所得税の更正処分及び無申告加算税の賦課決定処分並びに平成22年分及び平成23年分の所得税の各決定処分及び無申告加算税の各賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第95集
要旨
請求人は、各不動産の賃貸に基因する所得は実父に帰属する旨主張する。
しかしながら、請求人は、①各不動産のうち一部を夫と持分2分の1ずつで共有しているほかはその余の不動産を単独で所有し、登記に係る所有名義もその所有の実態に即していること、②各不動産の賃借人は、請求人が所有する口座等に賃借料を振り込む方法で支払っていること、③建物の管理費のほか、不動産に係る固定資産税や管理費などの経費と認められる金額を請求人名義の口座から振替により支払っていること、④請求人の実父は、同人名義で賃貸借契約が締結されている事情を知らず、請求人らから各不動産の賃貸に係る収支又は損益に係る説明を受けていないこと、加えて、⑤結局、請求人の実父は、請求人から各不動産の賃貸に基因する所得の分配を受けたことがなく各不動産の賃貸業に何ら関係していないことが認められる。以上のことから、請求人が各不動産(ただし、夫と共有のものについては、その2分の1)を実体的に所有するとともに、本件各年分において、現に、実父名義等で賃貸借契約がされたものを含めてその利得を支配管理し、自己のためにそれを享受していると優に認めることができるから、本件各年分の各不動産の賃貸に基因する所得は、請求人に帰属すると認めるのが相当である。
参照条文等
使用人等に対する食事の支給による経済的利益の供与について、「使用人が購入して支給する食事」として評価するのが相当であるとした事例(平成20年1月~平成22年10月の各月分の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分及び不納付加算税の各賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第95集
ポイント
本事例は、請求人が使用人等に提供した食事については、請求人が給食委託業者に支払った委託料等を加算したところにより評価すべきであるとして請求人の主張を排斥しているものの、原処分庁における経済的利益及び源泉所得税額の算定に一部誤りがあったため、原処分の一部を取り消したものである。
要旨
請求人は、請求人が給食業者(本件受託業者)に委託して調理させ従業員等に対して支給した食事は、所得税基本通達36-38《食事の評価》(1)に定める「使用者が調理して支給する食事」として食事の材料費相当額により評価すべきである旨主張する。
しかしながら、当該食事の材料は本件受託業者が調達しており、請求人はこれらの材料の明細及び内容を関知しておらず、その在庫を請求人の帳簿書類にも記載していなかったことに鑑みれば、自己の計算に基づき材料の調達及び管理を行っていたのは本件受託業者であるということができるから、請求人が材料を提供し当該食事の調理のみを委託していたとみることはできない。また、請求人は従業員等から徴収した食券代金を集計し本件受託業者に支払っていたところ、当該金額は、あらかじめ本件受託業者との間で定めたメニューごとの材料費相当額に基づき計算されてはいたものの、食事の材料費そのものとはいえないから、請求人が材料費を負担していたとみることもできない。そして、請求人は、従業員等が購入した食券代金を従業員等の給与から差し引いて預り金として経理し、本件受託業者に支払う際には預り金勘定から減額処理をしていたことからすると、請求人は本件受託業者が従業員等から直接受領すべき食事代金を本件受託業者に代わって徴収していたと認められ、請求人が本件受託業者に対して毎月一定額の給食業務委託料及び副食費を支払っていた事実を併せ考慮すると、請求人は、従業員等が本件受託業者から食事を安価で購入できるよう、給食業務委託料等を負担し、食事の購入代金の補助をしていたとみるのが相当である。したがって、当該食事は所得税基本通達36-38(2)に定める「使用者が購入して支給する食事」と同様に、食券代金、副食費及び給食業務委託料の合計額をもって評価するのが相当である。
参照条文等
被相続人の遺産を構成しないことを確認する和解は、国税通則法第23条第2項第1号に規定する判決等に当たるとした事例(平成21年11月相続開始に係る相続税の更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分・全部取消し)
裁決事例集 第95集
ポイント
本事例は、請求人が当事者となっている訴訟に関して成立した裁判上の和解が、いわゆる「馴れ合い訴訟」の結果であるとはいえないとしたものである。
要旨
原処分庁は、受遺者である請求人が被相続人から遺贈により取得したとして相続税の修正申告に計上した各土地(本件各土地)について、請求人、R社及び相続人の間で成立した、平成13年頃に被相続人からR社に譲渡されたもので被相続人の遺産を構成しない旨を確認した裁判上の和解(本件和解)は、当事者が租税回避目的等から馴れ合いと評価されるような和解をしたにすぎず、国税通則法第23条《更正の請求》第2項第1号かっこ書に規定する和解に該当しない旨主張する。
しかしながら、①本件各土地の一部には請求人の兄名義の居宅が存在すること、②平成13年にR社を権利者とする所有権移転請求権仮登記がされていること、③売買代金に相当する金員が貸付金名目でR社等から被相続人に交付されていることからすれば、本件各土地が、被相続人の遺産を構成しないことを確認した本件和解の内容について、証拠等からうかがわれる客観的事実関係に明らかに反していると認めるに足らない。そうすると、本件和解は、相続開始時に所有権の帰属に関して当事者間に争いのあった本件各土地について、平成13年頃に被相続人からR社に対して譲渡されていたことが相応の根拠をもって認められ、実質的にみても客観的、合理的根拠を欠くということはできない。したがって、本件和解は、国税通則法第23条第2項第1号かっこ書に規定する和解に該当するというべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
名古屋高裁平成2年7月18日判決(税資180号85頁)
贈与財産である宅地について、借地権の存する土地として評価するのが相当とした事例( 平成21年分の贈与税の更正処分、 平成21年分の贈与税に係る過少申告加算税の賦課決定処分・ 一部取消し、 全部取消し)
裁決事例集 第95集
ポイント
本事例は、贈与により取得した土地について、当該土地には借地権があるため、自用地としての価額から借地権の価額を控除して評価すべきであるとの請求人の主張を認め、処分の一部を取り消したものである。なお、本事例は相続税法第21条の9《相続時精算課税の選択》第1項の適用事案である。
要旨
原処分庁は、請求人が母からの贈与(本件贈与)により取得した各土地(本件土地)について、請求人が代表者であるJ社が建築した建物(本件建物)は、本件贈与時前に滅失し、滅失後はJ社によって本件土地に建物は再建されていないことから、本件贈与時には、本件土地に係る借地権(本件借地権)は滅失している旨主張する。
しかしながら、借地法(大正10年法律第49号、平成4年8月1日廃止前のもの)第2条《借地権の存続期間》第1項ただし書は、建物がその期間満了前に朽廃したときは借地権は消滅する旨規定され、滅失はこれと区分され、建物が滅失したことのみをもって借地権は消滅しないと解されていることから、この点についての原処分庁の主張は採用できない。J社は、遅くとも昭和63年から本件贈与時まで、本件土地の地代を支払っていたことが認められ、また、母は、亡父から本件土地を相続してから本件贈与時までの間に、J社が本件土地の使用を継続することに対して何ら異議を述べておらず、一方、J社は本件土地を継続して使用していたことが認められることからすると、遅くとも昭和63年に、J社と亡父の間には、本件土地に係る本件建物の所有を目的とする賃貸借契約が成立するとともに、母が亡父から本件土地を相続してから本件贈与時まで、同契約は継続しているものと認められる。したがって、本件贈与時には本件借地権は存在したものと認められる。
参照条文等
参考判決・裁決
米軍基地内における資産の譲渡等は非課税取引に該当するとした事例(平22.5.1~平24.4.30の各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第95集
要旨
請求人は、在日米軍基地内の営業店舗におけるアメリカ合衆国軍隊の構成員等に対する物品の販売(本件米軍基地内取引)については、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(日米地位協定)第15条の規定により消費税法が適用されないから、消費税法上の「国内において行った資産の譲渡等」に該当せず、また、消費税法別表第一にも掲げられていないため、課税売上割合の計算において分母及び分子のいずれにも算入されない旨主張する。
しかしながら、消費税法第2条《定義》第1項第1号が「国内」を「この法律の施行地」と定義しており、在日米軍基地が日本の領土内にあることは明らかであるから、本件米軍基地内取引は、消費税法上の国内における資産の譲渡等に該当する。そして、条約である日米地位協定は国内法である消費税法に優先して適用されることになるところ、本件米軍基地内取引は、日米地位協定第15条第2項前段に規定する諸機関による商品等の販売に該当し消費税が課されないが、本件米軍基地内取引に係る商品の購入については、同項後段の規定により消費税が課されることとなる。ところで、仕入税額控除の制度は、多段階課税である消費税の累積を避けるため仕入れに含まれている消費税額を控除するという制度であるから、消費税が課されない売上げに対応する課税仕入れに係る消費税は本来的に仕入税額控除の対象とはなり得ないものであるところ、日米地位協定第15条第2項が「諸機関による商品及び需品の日本国内における購入」には日本の租税である消費税を課する旨規定していることからすると、本件米軍基地内取引は、消費税法における仕入税額控除に関する規定の適用上、同法別表第一に掲げられているか否かとは関わりなく、国内において行った資産の譲渡等には該当するものの、国内において行った課税資産の譲渡等には該当しないものと取り扱うのが相当であり、その対価の額は課税売上割合の計算において分母に算入され、かつ、分子に算入されないこととなる。
参照条文等
消費税法第30条 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第15条
参考判決・裁決
神戸地裁平成14年7月1日判決(税資252号順号9154)
新賃借人が旧賃借人の敷金を承継することを賃貸人が承諾した等の特段の事情がある場合、敷金返還請求権は新賃借人に承継され、新賃借人が目的物を明け渡した時に、新賃借人に対する被担保債権を控除した残額について発生するところ、原処分庁は敷金返還請求権の取立てを完了していることから、差押処分は消滅しているとした事例(各敷金返還請求権の各差押処分・却下)
裁決事例集 第95集
要旨
原処分庁が行った各敷金返還請求権(本件各敷金返還請求権)の各差押処分(本件各差押処分)について、本件各敷金返還請求権は、旧賃借人である滞納法人から新賃借人である請求人に承継することを賃貸人が承諾した等の特段の事情があることから、滞納法人から請求人に承継され、請求人が目的物を明け渡した時に、請求人の被担保債権を控除した残額につき発生するものである。そして、本件各敷金返還請求権は、既に原処分庁が取立てを完了していることが認められ、本件各差押処分はその目的を完了して消滅している。ところで、行政処分の取消しを求めるについて、その取消しを求める処分の効力が現に存在していることが必要であるところ、本件各差押処分は上述のとおりその目的を完了して消滅している。したがって、請求人には、本件各差押処分の取消しを求める法律上の利益はなく、本件各差押処分に対する審査請求は、請求の利益を欠く不適法なものである。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和48年2月2日第二小法廷判決(民集27巻1号80頁) 最高裁昭和53年12月22日第二小法廷判決(民集32巻9号1768頁)
所有する宅地とその宅地に隣接する相当の地代を支払って借り受けている借地権は、一体で評価することが相当であるとした事例(平成22年8月相続開始に係る相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第95集
ポイント
本事例は、所有する宅地に隣接する宅地を相当の地代を支払い借り受けている場合において、相当の地代を支払って借り受けている借地権の価額は零と評価されるが、当該借地権は土地を専属的に利用できる権利であるから、所有する宅地と当該借地権が一体で利用されている場合には、これらを併せた全体を評価単位(1画地の宅地)として一体で評価することが相当であるとしたものである。
要旨
請求人らは、相続により取得し、隣接する各借地(本件各借地)とともに貸家の敷地として利用していた宅地(本件宅地)の価額について、本件各借地に係る借地権は、相当の地代の支払により、その価額が零とされ財産的価値がないものであるから、財産的価値がない使用借権が設定された場合と同様に、本件宅地のみを財産評価基本通達7-2《評価単位》(1)に定める評価単位(1画地の宅地)として評価すべきと主張する。
しかしながら、本件各借地に係る借地権は、借地借家法上の借地権であり、被相続人は、本件各借地を継続的かつ専属的に利用できる権利を有し、相続開始日において、本件宅地と本件各借地を併せて、貸家の敷地としてその全体を一体として利用していたものであるから、借主の死亡が終了原因とされ、人的つながりのみを基盤とする使用借権が設定された場合と同一にみることはできないので、本件宅地の価額は、隣接する本件各借地と併せた全体を評価単位(1画地の宅地)として評価することが相当である。
参照条文等
相続税法第22条 財産評価基本通達7-2 昭和60年6月5日付直資2-58ほか「相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて」 昭和48年11月1日付直資2-189ほか「使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて」
参考判決・裁決
静岡地裁平成19年7月12日判決(税資257号順号10752) 千葉地裁平成15年4月22日判決(税資253号順号9330)
請求人が行った賃貸用マンションのシステムキッチン等の取替工事に係る費用は、当該マンションの価値を高め、その耐久性を増すことになると認められるから、修繕費ではなく資本的支出に該当するとした事例(平成21年分及び平成22年分の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第95集
ポイント
本事例は、新たなシステムキッチン及びユニットバスの取替えに要した費用が、賃貸用マンションの通常の維持管理のための費用、すなわち修繕費であるとは認められず、新たにシステムキッチン及びユニットバスを設置し、台所及び浴室を新設したことによって、当該マンションの価値を高め、又はその耐久性を増すことになると認められることから、その全額が資本的支出に該当するとしたものである。
要旨
請求人は、築17年を経過した賃貸用マンション(本件建物)の一部の住宅内の台所及び浴室の各設備等を取り壊し、新たなシステムキッチン及びユニットバスに取り替えた工事(本件各工事)について、居住用機能を回復させるために必要な工事であり、本件建物の規模からすれば、同建物の基礎及び柱等の躯体に影響を与えるものでなく、その価値を高めるものでもなく、その目的は現状維持することであるから、本件各工事に係る費用のうち新たなシステムキッチン及びユニットバスの取替えに要した費用(本件各取替費用)については、所得税法施行令第181条《資本的支出》に規定する金額及び所得税基本通達37-10《資本的支出の例示》の定めに例示された金額のいずれにも該当せず、修繕費に該当する旨主張する。
しかしながら、ある支出が修繕費又は資本的支出のいずれに当たるかは、その支出した金額の内容及び支出効果の実質によって判断するのが相当であるから、本件各工事によって本件建物の住宅の居住用機能を回復させる目的があったとしても、本件建物の規模との比較のみによって判断するものではない。そして、本件各工事は、単に既存の台所設備及び浴室設備の一部を補修・交換したものではなく、本件建物の各住宅内で物理的・機能的に一体不可分の関係にある台所及び浴室について既存の各設備等を全面的に取り壊し、新たにシステムキッチン及びユニットバスを設置し、台所及び浴室を新設したものであり、このことは、本件建物の各住宅を形成していた一部分の取壊し・廃棄と新設が同時に行われたとみるべきものである。そうすると、本件各取替費用は、修繕費とは認められず、台所及び浴室を新設したことによって本件建物の価値を高め、又はその耐久性を増すことになるものと認められるから、本件建物に対する資本的支出に該当する。
参照条文等
参考判決・裁決
東京高裁平成17年10月27日判決(税資255号順号10178) 広島地裁平成5年3月23日判決(税資194号867頁) 平成2年1月30日裁決(裁決事例集№39)
相続財産である貸家の空室部分は、一時的に賃貸されていなかったものではないため、評価額の減額は認められないとした事例(平成21年8月相続開始に係る相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第95集
要旨
請求人らは、相続財産である貸家(本件各貸家)について、賃貸の意図をもって経常的に維持・管理を行い、賃借人の募集業務を継続して行っていることなどを理由に、相続開始日において現に賃貸されていない各独立部分(本件各独立部分)は、財産評価基本通達26《貸家建付地の評価》の(注)2に定める「課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められるもの」に該当するから、同通達に定める賃貸割合を100%として、本件各貸家及びその敷地を評価すべきである旨主張する。
しかしながら、相続税法第22条《評価の原則》に規定する時価とは、相続により財産を取得した日における客観的な交換価値をいうことからすれば、各独立部分を有する家屋の全部又は一部が貸し付けられているかどうかについては、課税時期の現況に基づいて判断するのが原則である。その上で、同通達26の(注)2が、例外として、賃貸割合の算出に当たり、賃貸されている各独立部分には、継続的に賃貸されていた各独立部分で、課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められるものを含むこととして差し支えない旨定めているのである。本件各独立部分については、相続開始日の前後の空室期間は、最も長いもので8年間、最短のもので4か月を超える期間に及んでいることから、「課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められるもの」に該当しない。したがって、同通達に定める賃貸割合を100%として、本件各独立部分及びその敷地を評価することはできない。
参照条文等
参考判決・裁決
東京地裁平成6年7月22日判決(税資205号209頁) 横浜地裁平成7年7月19日判決(税資213号134頁)
請求人が、法定申告期限までに相続税の申告書を提出しなかったことについて、国税通則法第68条第2項の重加算税の賦課要件を満たしているとはいえないとした事例(平成23年4月相続開始に係る相続税の重加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第95集
ポイント
本事例は、請求人は相続財産を過少に記載したお尋ね書の回答を提出しているものの、そのことのみをもって、「相続財産について申告をしない意図を外部からもうかがい得る特段の行動」と評価することはできないとして、重加算税の賦課要件を満たさないとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人が、基礎控除額を超える相続財産の存在を認識しながら、「相続についてのお尋ね」(お尋ね書)に一部の財産のみを記載し、遺産総額が基礎控除額以下であるから、申告は不要と思っているとして、お尋ね書を原処分庁に対して提出したことは、「隠ぺい、仮装と評価すべき行為」又は「相続財産を申告しないとの意図を外部からもうかがい得る特段の行動」と認められる旨主張する。
しかしながら、お尋ね書の提出は、相続税の申告をすべきことを知りながらこれをしなかったこと(認識ある無申告)と同等の行為と評価することができ、無申告行為そのものとは別に、「隠ぺい、仮装と評価すべき行為」をしたものと認めることはできない。また、お尋ね書は、課税庁が、申告の要否を確認する趣旨で、納税者に対して提出を求める書面であるところ、お尋ね書には金額の記載のないものを含めれば、基礎控除額を超える相続財産の記載があり、原処分庁として、請求人が申告義務を有することを十分に予想することができたものといえるから、お尋ね書を提出したことをもって、「相続財産を申告しないとの意図を外部からもうかがい得る特段の行動」と評価することはできない。
参照条文等
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