裁決事例 裁決事例集 第78集
請求人について、「著しい損失」は認められないものの、売上金額は著しく減少し、赤字の状態に陥っているから、国税通則法第46条第2項第4号に掲げる事実に類する事実があるとした事例
裁決事例集 第78集 43頁
要旨
原処分庁は、①本件の調査期間と基準期間の損益及び売上げと②本件の特定調査期間と特定基準期間の損益及び売上げを比較すると、いずれも事業についての著しい損失及び著しい売上げの減少は認められないから、請求人には国税通則法第46条第2項第4号及び同号に掲げる事実に類する事実は認められない旨主張する。
しかしながら、請求人に取引先の都合による販売委託契約の解除という損失原因が認められ、当該損失原因が発生した日が特定できるから、請求人の猶予該当事実の有無を判断するために用いる調査期間及び基準期間は、本件特定調査期間及び本件特定基準期間とすることが相当である。
そこで、請求人が現金主義会計を採用し、決算期末に決算修正及び整理事項の調整を行っていることを考慮して、本件特定調査期間及び本件特定基準期間の経常損益等の金額を算出すると、請求人には、「著しい損失」は認められないものの、売上金額は著しく減少し、赤字の状態に陥っているから、請求人には国税通則法第46条第2項第4号に掲げる事実に類する事実があると認められる。
請求人が買い受けた不動産の売買代金の支払に代えて引き受けた債務の免除は、請求人の経済的利益に当たるから、不動産所得の総収入金額に算入するのが相当であるとした事例
裁決事例集 第78集 131頁
要旨
請求人は、債務者をT、連帯保証人を請求人及びSとした本件債務承認弁済契約が約定どおりに履行されなかった平成7年12月末日において、約定利率の年14%について契約変更があったと解すべきであり、このことは、その後の交渉において、R社から年5.7%、年1%の遅延損害金の利率が提示されていることからも明らかであること、そして、請求人とR社との交渉の結果、遅延損害金の額は最終的に1,000,000円で確定し、請求人はこれを支払っているから、債務免除による経済的利益は生じていない旨主張する。
しかしながら、本件債務承認弁済契約に係る遅延損害金の約定利率は、求償債務残元金が完済されるまで一貫して年14%であったことは明らかである。また、請求人がR社に1,000,000円を支払い、R社がTに対して有する遅延損害金の残額を免除したことにより、本件債務承認弁済契約上の債務者であるTの債務が消滅したものと認められる。そして、当該遅延損害金の債務免除によりTの債務が消滅すると、請求人が本件引受債務の履行を引き受けたことにより、Tに対して負っていた債務者の債務を履行するという債務も消滅することになり、債務者Tの債務を履行するという請求人の債務は、請求人の金銭的負担を必要とする債務であるから、この債務の消滅は請求人において経済的利益を受けたものと認められ、請求人が受けた経済的利益の額は、Tが免除された遅延損害金の額と同額である。
したがって、請求人がR社に1,000,000円を支払ったことにより、R社がTに対して有する遅延損害金の残額を免除し、これにより請求人にこれと同額の経済的利益が生じたことは明らかである。
そして、請求人が本件土地建物の売買代金の一部に代えて本件引受債務の履行を引き受け、その結果、経済的利益を受けたこと、請求人が本件建物を継続して賃貸の用に供していたことからすれば、請求人は不動産の貸付けに関連して当該経済的利益を享受していたと認められるから、当該経済的利益は不動産所得の付随収入として不動産所得の金額の計算上総収入金額に算入されることになる。
要旨
請求人らは、請求人らの一人が相続により取得した本件土地(1,075平方メートル)の最有効使用は、本件土地が存する本件地域の状況及び本件土地の個別的要因を考慮すると、中高層の集合住宅等の敷地として利用することなく、建築資金が小額でリスクの小さい戸建住宅の敷地として利用することである旨主張する。
しかしながら、本件地域では、①平成X年にその用途地域が住宅地域から近隣商業地域に変更され、建ぺい率は80%、容積率は300%と中高層の集合住宅等を建設することが可能であること、②平成X年以降、市に対して開発許可申請がなされていないことから、1,000平方メートル以上の土地について開発行為をした場合に公共公益的施設の負担が必要な開発は行われていないこと、③本件相続の開始以前10年間において、戸建住宅よりむしろ中高層の集合住宅等が多く建築されていることが認められる。次に、本件土地についてみると、本件土地の形状、接面道路の幅員、本件土地と接面道路との接する距離、接面道路と県道・国道との距離に加えて、容積率が300%と定められていることなどからしても、本件土地に中高層の集合住宅等を建築することに特段の支障を来す状況は見受けられない。なお、平成10年8月には、本件地域内の約830平方メートルの土地に11階建の事務所ビルが建築されており、本件土地と同規模の土地が細分化されることなく一体として利用されている。以上の事実を勘案すると、本件土地の最有効使用は、戸建住宅の敷地の用に供することではなく、中高層の集合住宅等の敷地の用に供することであると認められる。したがって、本件土地はマンション適地等に該当するので、財産評価基本通達24-4に定める広大地に該当するとして評価することはできない。
E国法人に対して支払ったゲームソフトの開発委託費は、国内源泉所得である著作権の譲渡等の対価に該当し、非居住者等に対する源泉所得税の課税対象となるとした事例
裁決事例集 第78集 208頁
要旨
請求人は、原処分庁がゲームソフトの開発委託契約(以下「本件開発委託契約」という。)に基づいて請求人がE国法人に支払った金員は国内源泉所得となる所得税法第161条第7号ロに規定する著作権の使用料又は譲渡の対価に該当するとして行った源泉所得税の納税告知処分等について、当該金員は開発委託に対する対価であるから源泉所得税の課税対象となる国内源泉所得に該当しない旨主張する。
しかしながら、本件開発委託契約の目的は、E国法人が保有する原著作物を基礎とした新たなゲームソフトの開発及び販売であり、その本体をなす合意は、E国法人から請求人に対する当該ゲームソフトの二次的著作物に係る著作権の譲渡又は使用許諾であるといえるから、本件開発委託契約に基づいて支払った金員は、当該二次的著作物に係る著作権の譲渡又は使用許諾の対価にほかならないから、源泉所得税の課税対象となる国内源泉所得に当たるとみるのが相当である。
年の中途で死亡した者の控除対象配偶者に該当するかどうかは、死亡時の現況により見積もったその年の1月1日から12月31日までの配偶者の合計所得金額により判定すべきであるから、配偶者控除は適用できないとした事例
裁決事例集 第78集 193頁
要旨
請求人らは、所得税法第85条第3項において、年の中途において死亡した居住者の配偶者がその居住者の控除対象配偶者に該当するかどうかの判定は、死亡の時の現況による旨規定しており、居住者が死亡の時まで配偶者を扶養していたか否かによって判断されるから、当該判定に係る配偶者の合計所得金額の計算期間はその年の1月1日からその居住者の死亡の日までとなる旨主張する。
しかしながら、合計所得金額を構成する所得税法第23条から第35条までの各種所得金額は、いずれも「その年中の」、すなわち、1月1日から12月31日までの収入金額又は総収入金額を基礎に計算されることから、それらの合計である合計所得金額についても1月1日から12月31日までの期間で計算されることとなる。そして、このことは、配偶者控除を受けようとする居住者が年中に死亡していたかどうかによって異なるものではない。
要旨
請求人は、A国での所得に係る税金を故意に逃れたわけではなく、A国での所得が日本で課税の対象となることを知らなかっただけであるから、所得税法第95条第7項に規定する「やむを得ない事情」があったといえる旨主張する。
しかしながら、所得税法第95条第7項に規定する「やむを得ない事情」とは、例えば、外国所得税を課されたことを証する書類を添付しようとしたが、外国政府の事務処理上の都合でこの書類の作成が遅れ、期限までに入手できず確定申告書に添付できなかった場合など、納税者の責めに帰すことのできない客観的事情をいい、納税者の法の不知や事実の誤認などの主観的事情はこれに当たらないと限定的に解するのが相当である。
本件の場合、請求人において、確定申告書に外国税額控除を受けるべき金額の記載及び外国税額控除に関する書類の添付のいずれもしなかったのは、同人がA国での所得が日本で課税の対象となることを知らなかったことに基因するものであるところ、このことは、請求人の税法の不知という主観的な事情によるものであるから、請求人の責めに帰すことのできない客観的事情によるものということはできない。
再生計画により免責された債務(部分)について、連帯保証人が保証債務を履行した場合でも、主たる債務者は連帯保証人に対し求償債務を負担しないことから、損金算入は認められないとした事例
裁決事例集 第78集 365頁
要旨
請求人は、本件再生計画に基づき免責されたC銀行及びE銀行からの債務については、既に債務免除益として請求人の所得金額の計算上、益金の額に算入しており、この債務免除益と裏腹な関係にある本件求償債務について、請求人の損失と認識し、損金の額に算入することは当然のことである旨主張する。
しかしながら、Dらは、C銀行に対する本件保証債務及びE銀行に対する本件保証債務のいずれに係る求償権についても、それを行使することはできないのであり、請求人において、その求償債務自体が発生していないところ、本件求償債務の存在を前提とする請求人の上記主張は、その前提において誤っており、その主張には理由がない。
解散による清算所得の金額の計算において、残余財産の価額から控除する利益積立金額等の金額がマイナスの場合には、これを零円として計算することはできないとした事例
裁決事例集 第78集 397頁
要旨
請求人は、利益積立金額等がマイナスの場合にその金額を零円として清算所得の金額を算定しないということは、過年度の損失であるマイナスの利益積立金に対し清算時に課税することといえ、これは、清算前の通常の事業年度でも課税しない損失に対して課税することを意味するものであり、また、資本金に対して課税することと同義であり、所得に対して課税するという法人税の根幹に反するものとなる旨主張する。
しかしながら、清算の過程で実現したいまだ課税されていない資産の含み益のうち、いわゆる累積欠損金に相当する金額について課税するかしないかは制度上の問題であり、現行法人税法上、清算所得の計算において解散の時におけるマイナスの利益積立金額を零円とする特段の規定は存在しないところ、この計算の下で算出された清算所得の金額は、いわば法人が解散するまでに稼得した部分の金額でいまだ課税されていない資産の含み益にすぎないのであるから、この含み益には株主からの投下資本に相当する部分は含まれていないと解するべきであり、請求人の主張には理由がない。
二以上の家屋が併せて一構えの家屋であると認められるか否かについては、まず、それぞれの家屋の規模、構造、間取り、設備、各家屋間の距離等の客観的状況によって判断すべきであり、個人及びその家族の使用状況等の主観的事情は二次的に考慮すべき要素にすぎないとした事例
裁決事例集 第78集 289頁
要旨
租税特別措置法施行令第20条の3第2項及び第23条第1項は、個人がその居住の用に供している家屋を二以上有する場合には、本件特例の適用対象となる家屋は、主としてその居住の用に供していると認められる一の家屋に限る旨規定しているところ、本件特例の適用対象となる家屋の判定に当たり、二棟以上の家屋が併せて一構えの家屋であるといえるか否かについては、まず、それぞれの家屋の規模、構造、間取り、設備、各家屋間の距離等の客観的状況によって判断すべきであり、個人及びその家族の使用状況等の主観的事情は二次的に考慮すべき要素にすぎないものと解するのが相当である。したがって、単にこれらの家屋がその者及びその者と同居することが通常である親族等によって機能的に一体として居住の用に供されているのみでは不十分であり、家屋の構造、規模、設備等の状況から判断していずれか又はそれぞれが独立の居住用家屋としては機能できないものでなければならない。そうすると、これらの家屋がそれぞれ独立の家屋としての機能を有する場合には、これらの家屋を併せて一構えの家屋であるとは認められず、その者が主としてその居住の用に供していると認められる一の家屋に限り、本件特例の適用対象となるというべきである。
本件家屋の規模、構造、間取り、設備、各家屋間の距離並びに通常考えられる用法及び機能等を考慮すれば、本件A家屋と、本件BC家屋とは、それぞれ別個独立の家屋であると認められ、これらの各家屋を併せて一構えの家屋であるということはできない。そして、請求人は、妻及び長男と共に本件A家屋で日常生活を営んでいたのに対し、本件BC家屋は、もともと飲食店の店舗等として使用し、廃業後は、一部に荷物等をおいて物置に使用していたにすぎないから、請求人が主として居住の用に供していた家屋は本件A家屋であると認められ、本件BC家屋は本件特例の適用対象となる居住用家屋には該当しない。また、租税特別措置法施行令第20条の3第2項及び第23条第1項は、家屋のうちにその居住の用以外の用に供している部分があるときは、その居住の用に供している部分に限り、本件特例の適用がある旨規定しているところ、本件A家屋の2階の3室のうち、Kに賃貸していた1室及びLに賃貸し、同人の退去後に使用していなかった1室は、本件譲渡の以前に貸室とされており、請求人がこれを居住の用に転用し、ある程度の期間継続して居住の用に供していたとは認められないから、当該部分は「居住の用に供している部分」に当たらない。
したがって、本件A家屋の1階の全部及び2階の1室並びに本件A家屋の敷地の用に供されている本件借地権のうちその居住の用に供していた部分に限り、本件特例を適用するのが相当である。
本件和解は、本件不動産の持分2分の1が被相続人の相続開始日にさかのぼって利害関係人に帰属することを認めたものと解する余地はなく、将来に向かって新たな権利関係等を創設する趣旨のものであることから、国税通則法第23条第2項第1号にいう「和解」に当たらないとした事例
裁決事例集 第78集 1頁
要旨
請求人らは、①本件和解調書には、利害関係人に対する本件死因贈与契約を無効である旨の一条項があるものの、実質的には本件不動産の持分2分の1が、相続人たる請求人らではなく、利害関係人に帰属することを認めたものというべきである、②仮に本件和解条項の文言のとおり、本件死因贈与契約が無効であるとしても、本件和解により請求人らが利害関係人に支払う解決金は、療養看護の対価であり、被相続人が負担すべき債務として相続開始日において存在したものというべきであると主張し、本件和解により、申告に係る課税標準又は税額の計算の基礎となった事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したと主張する。
しかしながら、本件和解条項は、本件死因贈与契約が無効であること及び本件不動産が請求人ら及び共同相続人Jに帰属することを確認したものであることが明確であり、これは、請求人らが申告の基礎とした事実と同一であり、本件和解条項を、本件不動産の持分2分の1が被相続人の相続開始日にさかのぼって利害関係人に帰属することを認めたものと解する余地はない。また、本件解決金は、請求人ら及び共同相続人Jが、利害関係人に対し、同人が被相続人の療養看護をしてきたことを認めて支払うことを合意したものであって、被相続人が、相続開始時において、利害関係人に支払うべきであったものとは認められない。したがって、本件和解により、申告に係る課税標準又は税額の計算の基礎となった事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとは認められない。
同族会社の判定の基礎となった株主が当該同族会社に無償で貸与していた不動産が、当該同族会社の事業の遂行に欠くことができない重要な財産に当たるとした事例
裁決事例集 第78集 509頁
要旨
国税徴収法第37条の「事業の遂行上欠くことのできない重要な財産」の範囲は、その事業の形態によりその財産が納税者の事業の遂行上果す役割いかんにより定まるので、これを一律に定めることはできないが、同条の趣旨に照らせば、その財産がないものとした場合において、その事業の遂行ができなくなるか又はできないおそれがある状態になると認められる程度に当該財産と事業が密接な関連性を有していれば、当該財産は、その事業の遂行に欠くことができない重要な財産に当たると解するのが相当である。
これを本件についてみると、本件滞納法人の事業は、もともと、自ら生産した原料鶏卵を自己の工場で液卵に加工してV社に販売するというものであったが、N社との取引を開始した後は、同社に原料鶏卵を卸す一方、同社から、原料鶏卵の重量に見合う液卵を、X社を介して仕入れ、V社に販売するようになったものであることが認められる。そうすると、原料鶏卵の生産と液卵の販売とは、別個独立の事業ではなく、相互に関連しており、鶏卵を取り扱う一体の事業であったというべきである。そして、本件各不動産が事業に供されていた期間はそれぞれ異なるものの、平成15年8月期及び平成16年8月期における原料鶏卵の売上げの90%以上は、N社に対するものであり、これらが本件各不動産から出荷されていることからすれば、本件各不動産がなければ、本件滞納法人は、上記事業を遂行できなくなるおそれがあったと認められるから、本件各不動産は、本件滞納法人の事業遂行上不可欠な重要財産に当たるというべきである。
要旨
宗教法人である請求人は、本件各土地は、宗教法人法第83条に規定する礼拝の用に供する建物の敷地に当たるから、差し押さえることができない旨主張する。
しかしながら、本件各土地は、主に葬儀会場及び法要会場等として使用されている本件建物と一体として使用されていると認められるところ、たとえこれらが同法に規定する境内地に当たるとしても、仏像、位牌、神体、仏具、神具等で現に信仰又は礼拝の対象となっているものとは異なり、寺院の本堂、庫裏などと同様に、礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物とは認められないから、国税徴収法第75条第1項第7号に規定する「その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物」には当たらず、また、その他の差押禁止財産にも当たらない。さらに、宗教法人法第83条は、私法上の金銭債権に関する規定であるところ、国税債権は私法上の金銭債権ではないから、同条の規定は、本件差押処分には適用されない。
要旨
請求人は、墓地の販売権すなわち永代使用権を譲渡したにすぎないから請求人の行為は収益事業に当たらない旨主張する。
しかしながら、請求人は、霊園売買契約書に基づき、県から開発行為の許可を取得し、多数の地権者から本件土地を購入し、当該土地を墓地に造成した上でこれを譲渡している。これらの請求人の行為は、住宅団地を造成し譲渡する行為や工業団地を造成し譲渡する行為などと同様に、土地を買収してこれを造成し譲渡するものであるから、一般私企業との間で競合関係を有する不動産販売業に当たり、さらに、継続して事業場を設けて営まれていたと認められるから、収益事業に当たるというべきである。
要旨
LLCの構成員である請求人は、オフショア投資ファンドから当該LLCに対して配分されたインセンティブ再配賦額につき請求人に配分されたインセンティブ配分額は当該LLCの内部計算にすぎず、配当支払請求権として独立した債権として成立するものではないから、当該インセンティブ配分額のうち現実に払戻しを受けた金額のみが請求人の配当所得の収入金額となる旨主張する。
しかしながら、①請求人はその年分に配賦を受けるインセンティブ配分額の見込額等につき毎年当該LLCの担当者から連絡を受けること、②通知されたインセンティブ配分額については、たとえ投資ファンドの成績が悪化したとしても返還する義務はないこと、③請求人は通知を受けたインセンティブ配分額について確定額の範囲内であれば払戻金額を自由に設定することができ、申し出る金額に上限はないこと、④請求人が払戻しを要求した額について送金に応じられなかったことはないことなどの事実が認められ、これらを併せかんがみれば、請求人には、当該インセンティブ配分額の全額について払戻しを受ける権利が生じたというべきである。
請求人が監査役に対して支出したとする役員報酬は、取締役に対する報酬を監査役に対する報酬と仮装して経理したと認められることから、損金算入は認められないとした事例
裁決事例集 第78集 349頁
要旨
請求人は、その監査役である代表者の父及び義姉に対する役員報酬について、両監査役が監査役として就任し登記されている以上、報酬の支給が行われて当然であり、両監査役は、商法上の責任の対価としても報酬を受給する権利があるから、当該報酬の額は損金の額に算入されるべきであり、また、当該報酬を代表者の妻である常務が費消していたのは、当該報酬の額の一部を常務を通じて実際に両監査役に対して支給し、その残額を両監査役から代表者が借り受けていたものである旨主張する。
しかしながら、監査役に対する報酬として請求人が支出した金員の全額について、常務は、現金で直接受領し、自己の預貯金口座に入金するなどして管理し、自らの支払に費消していたこと、本件金員は常務の意思により管理し自由に費消可能な状態にあったこと、代表者と両監査役との間に本件金員に関する金銭消費貸借の事実も認められず、両監査役が実際に監査業務に従事しておらず、常務が監査業務を行っていることなどの諸事情を併せ考慮すれば、本件金員が、常務に対して支給されたものであり、請求人から常務に対する報酬と認めるのが相当であり、また、本件金員を請求人が両監査役に対して支給したとしていたことは、常務に対する報酬を監査役に対する報酬に仮装して経理していたと認められる。
請求人について、売上げの減少や経費の増加の程度が著しいとは言い難く、利益については赤字の状態に陥ったとは認められないから、国税通則法第46条第2項第5号に規定する同項第4号に類する事実(事業についての著しい損失に類する事実)があったとは認められないとした事例
裁決事例集 第78集 30頁
要旨
請求人は、①国税庁が定める納税の猶予等の取扱要領(以下「猶予取扱要領」という。)第2章第1節1の(3)のヘの(ハ)では、「納税者に事業上の著しい損失に類する事実があったこと」とは、「従前に比べ売上げの減少等の影響を受けたこと」と定めているから、比較の対象は調査日前1年間(調査期間)の直前の1年間(基準期間)より広いことは明らかであり、売上げの減少等の程度が著しいことまでを要件とするものではないところ、②平成19年分と平成13年分を比較すると、売上金額及び粗利益金額が明らかに減少した事実があるので、国税通則法第46条第2項第5号に規定する同項第4号に類する事実(以下「5号該当(4号類似)事実」といい、第4号で規定する事実を「4号該当事実」という。)がある旨主張する。
しかしながら、猶予取扱要領にいう「従前」とは、4号該当事実の原則的な判定方法と例外的な判定方法の基礎となる期間を示していると解するのが相当であり、5号該当(4号類似)事実とは、自己の責に帰すことができないやむを得ない事由による著しい売上げの減少や著しい経費の増加をいい、利益の現象による5号該当(4号類似)事実があるというためには、著しい赤字の状態が生じたとまではいえないが、それに近い赤字の状態が生じていることが必要であると解されるところ、本件調査期間と本件基準期間を比較すると、売上げの減少や経費の増加の程度が著しいとは言い難く、利益については赤字の状態に陥ったとは認められないから、請求人には、5号該当(4号類似)事実があるとは認められない。
要旨
請求人は、本件家具等は、請求人が宗教活動の用に供するために取得し、装飾や請求人の来客用等として本件マンション内に設置され、直接的あるいは間接的に宗教活動の用に供されるものであって、代表者に貸与したものではない旨主張する。
しかしながら、本件マンションの間取りは居住用であり、代表者が一人で居住していることや宗教活動の用に供された事実がないことなどからすると、本件マンションは、その全体が専ら代表者の居住の用に供されていたと認められ、そうすると、本件マンション内に設置されている本件家具等は、請求人が、代表者が使用する目的で購入して代表者に貸与し、これを代表者が専属的に使用していたものと認めるのが相当である。
そして、代表者は、請求人に対し、本件家具等の使用料名目での金員の支払をしておらず、また、本件マンションの賃貸料にも、本件家具等の使用料は含まれていないというべきであるから、本件家具等は、請求人から代表者に対して無償で貸与されていると認められ、代表者はこれにより通常支払うべき対価に相当する利益、すなわち本件家具等の使用に係る経済的利益を享受しているというべきである。
建物賃貸借契約の合意解約に伴う残存期間賃料は、中途解約に伴う賃料収入に対する補償であり、不動産の貸付けにより生ずべき収入金額に代わる経済的利益と認められるから、不動産所得の総収入金額に当たるとした事例
裁決事例集 第78集 114頁
要旨
請求人は、本件建物を処分する方法として、本件建物を売却し、その敷地について利用権を設定するとともに、請求人が支払うべき敷金及び保証金の精算をするという一連の取引を、①本件合意解約、②本件借地権付区分所有建物売買契約、③本件土地賃貸借契約という3つに分割して行ったものであるから、上記各契約を独立した取引と解釈すべきではなく、一連の取引として一体として捉えるべきであり、そうすると、本件建物賃貸借契約の合意解約に伴い生じた本件残存期間賃料は譲渡所得と見るべきであり、不動産所得には該当しない旨主張する。
しかしながら、上記①ないし③の各契約はいずれも別個の契約であり、各契約を一個の契約であると認めるべき特段の事情があるとも認められない。本件残存期間賃料は、建物賃貸借期間を20年とし、賃貸借期間中は契約解除をなし得ない旨定めていた本件建物賃貸借契約につき、両当事者の合意により、賃貸借契約期間の満了を待たずして本件建物賃貸借契約を合意解約することに伴い、その合意解約の約定において確認された残存期間賃料に相当するものである。そうすると、本件残存期間賃料の性質は、中途解約に伴う賃料収入に対する補償であり、不動産の貸付けにより生ずべき収入金額に代わる経済的利益と認められるから、本件残存期間賃料は不動産所得に該当する。
本件家屋に賃借人が住んでおらず、家賃が未払等であっても、賃貸借契約は継続していると認められることから、本件家屋は貸家として評価すべきであるとした事例
裁決事例集 第78集 448頁
要旨
原処分庁は、本件家屋について①平成17年1月以降公共料金の使用実績がないこと、②賃料の支払を確認できないこと及び③請求人の被相続人の母親が死亡してからは貸しておらず空家であり、本件相続開始日において貸していない旨の原処分庁の調査担当者に対する申述をもって、賃貸されていたとは認められない旨主張する。
しかしながら、仮に賃借人が電気、ガス、水道を使用していなかったとしても、不在により使用がなかったにすぎず、本件家屋が賃貸借の目的となっていない理由とはならず、また、賃料の支払を確認できないことについては、確かに、平成10年1月以降支払われていないことが認められるが、被相続人が賃借人に対し借地借家法第26条第1項及び第27条第1項に規定する解約の申入れをした事実は認められず、借地借家法には賃料が未払である事実があれば解約されたものとみなす規定もないから家賃が未払になった後も賃貸借契約は継続していたというべきである。さらに、請求人の原処分庁の調査担当者への申述についても賃借人が平成9年7月以降平成21年4月ころまでの間も本件家屋に荷物を置いて同所を占有していたこと、賃借人が父親の死亡後に被相続人から本件家屋を賃借したものであり、請求人も平成21年4月ころ、賃借人から残置家財の放棄承諾書の送付を受けるなど同人の適法な占有を前提とする行為をもしていることと整合せず、本件家屋が本件相続開始日において賃貸の用に供されていないことを裏付けるに足りるものとはいえない。したがって、これらの原処分庁の主張は採用することはできず、本件家屋は相続開始日において賃貸借の目的となっている貸家であると認められる。
要旨
請求人は、確定申告において本件事業年度の決算月(12月)の給与計算期間の締切日後の期間(12月16日から同月31日)に係る期末未払給与の額は期中に債務として確定しているから、前事業年度の期末未払給与の額との差額(以下「本件期末未払給与差額」という。)を当事業年度の損金の額に算入すべきである旨主張する。
しかしながら、法人税法第22条第4項に収益の額及び損金の額は「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」(以下「公正処理基準」という。)に従って計算されるものとするとあるのは、法人が採用した会計処理の方法に客観的、常識的にみて規範性があり、これが公正処理基準に該当すると認められるものであれば、法人の会計がそれに従っている限り、それを認めていこうとする態度を明らかにしたものであると解するのが相当であるが、請求人が多年にわたり採用してきた経理慣行に従って、期末未払給与の額を現実に支払った日の属する事業年度の損金の額に算入することは、客観的、常識的にみて規範性があると認められ、また、企業会計原則に定める重要性の乏しいものは未払費用等として処理しないことができるとするいわゆる重要性の原則に照らしてみても公正処理基準に反するものということはできない。そして、法人税法第74条第1項において、確定した決算に基づき当該事業年度の課税標準である所得の金額又は欠損金額及び所得の金額に対する法人税額を記載した申告書を提出しなければならないと規定されており、確定申告後に確定申告の基礎とされた決算における会計処理の方法を変更することは原則として許されないものというべきであるところ、請求人が、多年にわたって採用してきた公正処理基準に反しない経理慣行に従って損益計算をし、これに基づいて確定申告をした後に至って、本件事業年度にさかのぼって会計処理の方法を変更し、改めて損益計算をして本件期末未払給与差額を本件事業年度の損金の額に算入することは認められず、請求人の主張には理由がない。
労働者派遣事業を営む審査請求人が派遣労働者に支払う金員は、雇用契約又はこれに類する原因に基づき、労務の対価として請求人から本件派遣労働者に支給されたものであり、所得税法第28条第1項に規定する給与等に該当するものと認められることから、 課税仕入れに当たらないとした事例
裁決事例集 第78集 488頁
要旨
請求人は、本件派遣労働者に対する業務上の指揮命令権はすべて本件派遣先にゆだねられており、また、労働者派遣法において派遣先にも一定の義務を課しているのは、請求人が本件派遣労働者に対してすべての責任を負うものではないことを裏付けたものであるから、請求人と本件派遣労働者との関係は、雇用として認識するより業務請負と考えるべきであり、本件金員は外注費(本件派遣労働者からのサービスの提供に対する対価)である旨主張する。
しかしながら、請求人と本件派遣労働者との間には雇用関係が成立しており、本件派遣労働者は、請求人との雇用関係の下に、請求人の指揮命令に従うほか、本件派遣先の指揮命令を受けて、当該派遣先のために労働に従事していたものと認められ、本件金員は、請求人と本件派遣労働者との雇用契約又はこれに類する原因に基づき、請求人の指揮命令に服して提供した労務の対価として請求人から本件派遣労働者に支給されたものであり、所得税法第28条第1項に規定する給与等に該当するものと認めるのが相当である。
したがって、本件金員を対価とする役務の提供を受けることは、消費税法第2条第1項第12号に規定する課税仕入れに当たらないので、同法第30条第1項に規定する課税仕入れに係る消費税額の控除をすることはできず、請求人の主張は、独自の見解というべきであって、採用することはできない。
職務発明に係る特許を受ける権利を勤務先に承継させた者の相続人が、特許を受ける権利の対価に係る訴訟上の和解により取得した金員は、その相続人の雑所得に該当するとした事例
裁決事例集 第78集 172頁
要旨
請求人は、E社との和解によって受領した金員は、請求人の死亡した子Dがした職務発明による特許を受ける権利のE社への承継に際し一時に受けるべき対価の修正追加支払額であることから、Dに帰属し、Dの当該権利の承継が行われた年分の譲渡所得であるので請求人には課税されない旨、及び、請求人に所得税が課税されるとしても、発明者の相続人である請求人にとっては対価性がなく、訴訟により請求人が獲得したもので継続性がないから、当該金員は一時所得に該当する旨主張する。
しかしながら、当該職務発明に係る対価請求権のうち、特許を受ける権利を使用者等に承継した後に支払われる不足額部分については、承継時には、対価の額は未実現(未確定)であるため、直ちにその全部について権利行使(権利の実現)することは困難であり、このような段階では、当該対価請求権は法的には発生していても、いまだ権利実現の可能性を客観的に認識することができるとはいえず、当該金員は、和解成立時に収入の原因となる権利が確定したと認められるから、請求人の平成19年分の所得とみるのが相当である。
また、対価性とは、専ら、当該給付が役務行為又は資産と対価性があるか否かによって定められるべきであり、当該役務行為又は資産の譲渡の主体が相続人たる請求人であるか被相続人であるかはその判断に影響を与えるものではない。
そうすると当該金員は、特許法第35条第3項の相当の対価の不足額を求めた訴訟により金額が確定した金員であり、特許を受ける権利を使用者に承継したことに伴い、使用者が当該権利を独占的に利用する権利を取得し、その金額は承継後に使用者が獲得した利益の実績に基づいて算定されるべきものであり、その実質は使用者に承継した特許を受ける権利の対価であることに疑いはないから、対価性があると認められ、これを一時所得と解することは相当でない。
したがって、当該金員は、利子所得ないし一時所得のいずれにも該当しない所得であるから、雑所得に該当する。
請求人がした国に対する土地の譲渡は、国からの買取り等の申出のあった日から6か月を経過した日までに行われたものではないので、収用交換等の場合の譲渡所得等の特別控除の特例は適用できないとした事例
裁決事例集 第78集 275頁
要旨
租税特別措置法第33条の4第3項第1号は、公共事業施行者から当該資産につき最初に買取り等の申出のあった日から6か月を経過した日までに当該資産が譲渡されなかった場合には、同法第1項に規定する特別控除の特例(以下「本件特例」という。)は適用されない旨規定しているが、これは、公共事業施行者の申出に応じて資産の早期譲渡に協力した者に対してのみ、その補償金等に対する所得税について特別の優遇措置を講じることにより、公共事業の円滑な施行を図ることとした趣旨であり、ここにいう「買取り等の申出のあった日」とは、原則として、公共事業施行者が、資産の所有者に対し、①買取り資産を特定し、②その対価を明示して、③その買取り等の意思表示をした日をいうものと解するのが相当である。
これを本件についてみると、本件公共事業施行者は、請求人に対し、本件買取り申出書面及び本件補償額明細書において、①買取り資産を特定し、②その買取り等の意思表示をし、請求人は、平成15年5月31日にこれを受け取ったことが認められるから、本件譲渡資産について買取り等の申出のあった日は平成15年5月31日であると認められる。そして、請求人が本件売買契約を締結したのは、平成16年3月29日である。そうすると、請求人は、本件譲渡資産を、最初に買取り等の申出のあった日から6か月を経過した日までに譲渡していないから、本件土地代金に係る譲渡所得の金額の計算上、本件特例を適用することはできない。
要旨
請求人は、在日A国大使館において外交官として勤務した期間中、専らA国において所得税を課せられ、日本において課税されていなかったこと、日○租税条約第○条及びウィーン条約第34条は、双方居住者としての二重課税を防止するために、派遣先国における居住者としての税務上の地位を排除していると解されることを理由に、所得税法第2条第1項第4号の「国内に住所又は居所を有していた期間」の判定に際し、当該期間を算入することは認められない旨主張する。
しかしながら、所得税法においては、外交官について、我が国の居住者として扱わない旨の規定はなく、所得税法第9条第1項第8号の規定及び所得税基本通達9-11の定めは、外交官がそれぞれの国の主権を代表する者である点を考慮し、国際慣例に従い、所得税の課税を免除する趣旨であり、外交官として本邦に赴任している期間中、これを居住者としないことまでを定めたものではない。
また、ウィーン条約第34条及び日○租税条約第○条は、外交官に対して、派遣先国内に源泉がある個人的所得等の特定の租税、賦課金を除き、派遣先国においてすべての賦課金及び租税を免除することを定めているにすぎず、外交官が派遣先国において居住者として扱われないことまで定めたものではない。
日本国籍を有しない居住者が非永住者に該当するか否かは、過去10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下であるか否かにより決するものであるところ、請求人は、本件勤務期間中、本邦に住所を有していたと認められ、当該期間は5年を上回るから、本件期間においては、非永住者以外の居住者と認められる。
消費税の控除対象仕入税額の計算方式について、一括比例配分方式を選択して申告した後に、更正の請求により個別対応方式に変更することはできないとした事例
裁決事例集 第78集 500頁
要旨
請求人は、①消費税の導入の趣旨に反して、消費税等相当額の負担を強いられていること、②一括比例配分方式は簡便法であって、個別対応方式こそが原則的な控除対象仕入税額の計算方法であること、③請求人の控除対象仕入税額は、本件税理士の責めに帰すべき事由により、請求人に不利な計算方法により算定されていることから、本件更正の請求において、控除対象仕入税額の計算方法を一括比例配分方式から個別対応方式へ変更することができる旨主張する。
しかしながら、納税者が消費税法第30条第4項の規定の適用を選択して一括比例配分方式により控除対象仕入税額を算定し確定申告をした場合には、更正の請求において、控除対象仕入税額の計算方法を一括比例配分方式から個別対応方式へ変更することはできないと解されるところ、請求人は、同項の規定の適用を選択して一括比例配分方式により控除対象仕入税額を算定し確定申告をしたものと認められることから、本件更正の請求において、控除対象仕入税額の計算方法を変更することはできない。
また、上記①については、請求人が、課税仕入れについて、用途区分を明らかにしてさえいれば、いずれの計算方法を選択するのが税負担の面で有利であるかは、法定申告期限までに容易に判明することであること、上記②については、本件両方式のいずれの計算方法により控除対象仕入税額を算定すべきかは、いずれの計算方法が原則的な計算方法であるかによって決せられるものではなく、請求人がいずれの計算方法により控除対象仕入税額を算定して確定申告をしたかによって決せられるものであること、上記③については、請求人は、自己の意思と責任において本件税理士に税務代理を委任したものである以上、受任者である本件税理士の行為は委任者である請求人の責任の範囲内の行為と認められることから、請求人の主張にはいずれも理由がない。
請求人が締結したビジネス専門学校との講師契約は、請負契約あるいはそれに類似する契約と認められるので、請求人が行った講義は消費税法に規定する「事業として」行われたことに該当するとした事例
裁決事例集 第78集 473頁
要旨
消費税法第2条第1項第9号は、「課税資産の譲渡等」とは、「資産の譲渡等のうち、同法第6条第1項の規定により消費税を課さないこととされるもの以外のものをいう」とし、同法第2条第1項第8号は、「資産の譲渡等」とは、「事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいう」と定義している。
そして、消費税法第2条第1項第8号に規定する「事業として」につき、消費税法基本通達5-1-1は、「対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供が反復、継続、独立して行われることをいう」と定めているところ、消費に広く負担を求める消費税法の趣旨・目的に照らして、当審判所においても、この解釈は妥当と認められる。
請求人は、本件講義を反復、継続して行っていたと認められる。また、本件講義については、請求人の裁量が広く認められており、本件講師契約の実質が雇用契約あるいはそれに類似するものではなく、請負契約あるいはそれに類似するものであることからすれば、請求人の役務の提供については消費税法における「事業」というに足りる独立性が認められるというべきである。
したがって、請求人が本件講義を行ったことは、消費税法基本通達5-1-1に定める対価を得て行われる役務の提供が反復、継続、独立して行われたことに該当するのであるから、消費税法第2条第1項第8号に規定する「事業として」行ったことに該当する。
解散が見込まれている関連会社に増資払込みを行い、同社の清算結了により当該払込金を投資損失として損金の額に算入した行為は、純経済人として不自然・不合理な行為であり、法人税を不当に減少させるものであるから、当該投資損失(清算配当金控除後)の金額は損金の額に算入されないとした事例
裁決事例集 第78集 376頁
要旨
請求人は、請求人が債務超過の状態にあるG社の増資(以下「本件増資」という。)を引受け、これに係る本件増資払込金を同社の清算結了により投資損失(以下「本件投資損失」という。)として処理したことについて、本件増資は株主の判断として通常なされる取引であり、また、請求人において発生が懸念される追加の損失や信用の失墜を最小限に食い止めるために行った本件投資損失の負担は経済的合理性があるから、本件増資払込金の支払は、法人税法第37条第7項に規定する寄附金に該当しないし、通常の経済人では行うことのない不自然、不合理な行為ではなく、法人税法第132条の同族会社の行為計算否認規定の適用はない旨主張する。
しかしながら、請求人は、G社が営業休止、解散に向けた事務処理を行っているにもかかわらず、特段の事情も無く、第三者割当による有償増資に応じていること、また、請求人と関連会社で代表者が共通しているものの、資本関係や資金融通関係も無く、取引も少額であり、請求人が増資を引き受けなければならない必要性も無いことから、請求人が本件増資払込金を支払ったことは、純経済人の行為として不合理、不自然なものであり、これを投資損失として処理し、清算配当金との差額を損金の額に算入して法人税の確定申告し、法人税を不当に減少させていると認められるから、法人税法第132条の同族会社の行為計算否認規定の適用により当該金額については損金の額に算入することは認められない。
要旨
平成16年9月13日から平成18年6月8日までの期間における請求人の日本への滞在は、月に1回程度の頻度、主として週末を含む1日間から5日間にすぎないものであり、P市S町(日本)に所在する家屋は、請求人の妻が勤務先から社宅として賃借していたものであって、生活用動産が運搬されていなかったのも、妻及び子らが同所での生活に必要であったためと推認されることなどを考慮すると、当該家屋の所在地が請求人の日本滞在中の生活拠点であったことは認められるものの、請求人の生活の本拠が当該所在地にあったものと直ちに判断することまではできない。
また、各コンサルティング契約はコンサルティング業務を国外に所在する事務所内で常勤で提供することを内容とするものであったこと、請求人は契約期間の大部分を国外で過ごしていることからすると、請求人は、主として国外において当該コンサルティング契約に係る業務を提供していたものと認めるのが相当であり、請求人が対外的に上記家屋内に事業所を置くコンサルタントであり事業主であるとしていたことをもって直ちに、請求人の職業的基盤が日本にあったとまで認めることはできない。
さらに、請求人と生計を一にする妻は勤務先を休業し、一定期間子らとともに国外に滞在し請求人と起居を共にしたが、妻らの国外滞在は一時的なものであったと認めるのが相当であるから、請求人は国内に生計を一にする親族を有していたというべきであるところ、妻が休業中においても上記家屋の貸与を受けそこに居住を続けたのは、飽くまで妻の従業員としての選択・判断であると認められ、その選択・判断が、上記期間における請求人の生活の本拠を確保することを目的としてなされたものと認められないから、妻らが日本国内に居住していたことが請求人の生活の本拠が当該家屋にあったことを裏付ける重要な事実であるとまでは認め難い。
また、請求人は現金及び銀行口座の預金を除き、日本国内に資産を保有していなかったところ、通常、預金口座を管理するために日本国内に生活の本拠を置く必要性はないことから、日本国内の資産の所在をもって、直ちに請求人の生活の本拠が上記所在地にあったとまでは認められない。
上記の各点を総合勘案すれば、上記期間において請求人の生活の本拠が上記家屋にあった、又は、当該家屋に相当期間継続して居住していたと認定するのは困難であり、請求人は、非居住者に該当するといわざるを得ない。
請求人の従業員が貯蔵品を売却したことによる収益は、取引を行った従業員の地位・権限などを総合考慮すれば、請求人の売上げとはいえないことから、請求人には帰属しないとした事例
裁決事例集 第78集 327頁
要旨
原処分庁は、請求人の元課長が、請求人の印刷用紙を売却した取引(以下「本件紙取引」という。)は、請求人の事業の一環として行われたものと認められるから、本件紙取引に係る収益は、請求人の売上げである旨主張する。
しかしながら、①元課長は、経営に従事する立場にはなく、また、本件紙取引の対象となった印刷用紙の払出しの指示を出す業務を行ってはいたものの、印刷用紙の保管及び管理に関する業務を遂行する職務及び権限を請求人から与えられておらず、印刷用紙を自己の判断で売却する権限を有していなかったこと、②本件紙取引は、元課長が、請求人から窃取した印刷用紙を、実在しない名義を使用して売却したものであること、③請求人は、印刷の請負及び製本紙器の製作等を目的とし、印刷用紙の販売を目的としていない上、本件各事業年度において、請求人が印刷用紙を他に販売した事実はなく、外注先に対し有償で支給した事実もなかったこと、④本件紙取引の相手方は、本件紙取引が請求人との取引であるとは認識していなかったことがそれぞれ認められるところ、以上のことを総合考慮すれば、本件紙取引に係る収益は、請求人の売上げとはいえないから、原処分は取り消すのが相当である。
無効な行為により生じた経済的成果がその行為の無効であることに基因して失われたことによる返還債務は、それが現実に返還されるまでは担税力があり、現実に返還したときに必要経費に算入されるとした事例
裁決事例集 第78集 152頁
要旨
請求人は、所得税法施行令第141条第3号の規定する「無効な行為により生じた経済的成果がその行為の無効であることに基因して失われ」とは、それまで正当な権利行使の結果として得ていたはずの経済的成果が無効の法理によって一転して不当利得であるとされ、不当利得返還義務が生じることを意味するから、現実に返還したときと解する余地はないと主張する。
しかしながら、事業所得に対する課税は納税者の担税力に着目してなされるものであるところ、当該所得が無効な行為により得られた利得であるときであっても、少なくともそれが現実に返還されるまでは担税力を有するものであり、その担税力が失われるまでは損失が生じたということはできないことから、上記の政令に規定する「無効な行為により生じた経済的成果がその行為の無効であることに基因して失われ」とは、それが現実に返還されたときと解するのが相当である。
融通手形の受取人の倒産による手形債務の負担が、請求人に帰責性があるということはできず、不測の事態によって資金繰りが困難になったという点で、売掛金等の回収が不能になった場合と同視できることから、国税通則法第46条第2項第1号に掲げる事実に類する事実に当たるとした事例
裁決事例集 第78集 15頁
要旨
国税通則法第46条第2項各号に掲げる事実(以下「猶予該当事実」という。)とは、納税者の責に帰すことのできない金銭納付を困難ならしめる事実をいうものと解するのが相当であるところ、請求人が取引先C社に対して振り出した本件各手形は、経営困難に陥った当該取引先の資金調達のため、請求人とC社との間で手形の原因行為なくして振り出されたいわゆる融通手形であると認められるものの、これは、請求人の主要な取引先であるC社が倒産すれば同社に対する売掛債権が全額回収できなくなることなどから、やむを得ず振り出したものと認められるので、本件各手形の振出し及びC社の倒産による手形債務の負担について、請求人に帰責性があるということはできず、不測の事態によって資金繰りが困難になったという点で、同項第1号に類する事実として納税の猶予等の取扱要領に例示されている売掛金等の回収が不能になった場合と同視できるので、猶予該当事実に当たると解するのが相当である。
質問検査に至る前段階として必要な情報収集の方法は、社会通念上相当な限度にとどまっていると認められるので、合理的な裁量の範囲を逸脱するような違法は認められないとした事例
裁決事例集 第78集 257頁
要旨
請求人は、原処分に係る調査を担当した職員が身分を明らかにせず客になりすまし請求人の承諾を得ることなく従業員に対して事業内容等を質問した行為は、所得税法第234条第1項及び同法第236条に違反し違法である旨主張する。
しかしながら、税務官署として更正・決定の場合のみならず、それ以外の場合にあっても、一定の処分をするか否かを認定判断する必要がある場合には、税務職員にはそのために必要な範囲内で質問検査によることなく職権による調査をすることもできると解されるところ、その具体的な手法は、その調査の必要性と相手方の私的利益との比較衡量において、質問検査に至らない範囲で、かつ、社会通念上相当な限度にとどまる限り、調査を担当する税務職員の合理的な裁量に任されているというべきであり、本件においては、調査担当職員は、請求人の経営する店舗に臨場する日の前に、客として同店舗に訪れ、従業員との話の中から1日の客数や従業員数等の業務様態についての情報等を収集したものであるが、これは調査担当職員が、請求人の正しい所得を把握するため、質問検査に至る前段階として、必要な情報を収集したというべきものであり、その情報収集の方法は、社会通念上相当な限度にとどまっていると認められ、これについて合理的な裁量の範囲を逸脱するような違法は認められないから、調査が違法であるとの請求人主張は採用できないというべきである。
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