裁決事例 裁決事例集 第132集
公売公告処分は、原処分庁が分割納付誓約期間内に公売に付したという時期の判断において、その裁量権の行使が差押財産の換価に関する制度の趣旨・目的に照らして合理性を欠く不当な処分であると判断した事例(公売公告処分・全部取消し)
裁決事例集 第132集
ポイント
本事例は、請求人の自主納付の見込み、公売による換価額、差押財産の公売による請求人への影響等の諸般の事情をも考慮すると、公売に付した時期の判断において、その裁量権の行使が差押財産の換価に関する制度の趣旨・目的に照らして合理性を欠く不当な処分であると判断したものである。
要旨
原処分庁は、差押財産を公売に付すべき時期については、国税の徴収の所轄庁の合理的な裁量に委ねられていると解されており、請求人が所有する各不動産(本件各不動産)の公売公告処分(本件公売公告処分)は、公売に付すべき時期について裁量権の範囲内で合理的に行われたものであるから、違法又は不当な処分ではない旨主張する。ところで、換価に関する時期の判断に当たっては、滞納者の個々の実情を踏まえ、国税の効果的な徴収に向け、個々の滞納事案における自主納付の見込み、公売による換価額、差押財産の公売による滞納者への影響等諸般の事情をも考慮して判断することが相当と解されるところ、本件は、請求人には自主納付による完納の見込みがないこと、本件各不動産の換価額として相応の金額が見積もられていたこと、本件各不動産の公売が必ずしも請求人の事業の継続を不可能にするものではないことなどの事情があり、これらの事情を考慮すれば、本件各不動産を公売に付する時期について、原処分庁に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があったとは認められないから、本件公売公告処分は適法である。
しかしながら、原処分庁の裁量権の行使が、差押財産の換価に関する制度の趣旨・目的に照らし合理性を欠く場合には不当と判断すべきであるところ、本件は、請求人が提出した分割納付誓約書の誓約期間(本件分割納付誓約期間)内に、納付計画どおりの自主納付をする蓋然性が高く、また、本件分割納付誓約期間内に本件各不動産を直ちに換価することで、換価額の下落の回避又は換価額の相対的な価値の維持ができたなどの徴収上有利となる事情がない。また、原処分庁の徴収担当職員が、本件分割納付誓約期間内に本件各不動産が公売に付されることはないとの請求人の期待を排斥しなかったことにより、本件各不動産の代替土地を確保し得る機会及び期間が事実上なくなり、公売による請求人の事業に対する影響がより大きくなったことなどの事情があり、これらの事情を考慮すれば、本件公売公告処分は、公売に付する時期の判断において、その裁量権の行使が、差押財産の換価に関する制度の趣旨・目的に照らして合理性を欠く不当な処分であるといえる。
参照条文等
参考判決・裁決
東京地裁平成30年9月6日判決(金融法務事情2119号86頁)
源泉徴収に係る所得税の算出において、請求人が源泉徴収に係る所得税を負担することを合意したものとは認められないと判断した事例( 平成29年10月、平成30年3月、平成30年6月、平成30年7月、平成30年11月、平成31年1月から令和元年10月まで、令和元年12月から令和3年7月まで、令和3年9月、令和3年10月及び令和3年12月から令和4年3月までの各月分の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分及び不納付加算税の各賦課決定処分(平成30年6月、平成30年7月及び令和元年5月の各月分については各訂正告知処分及び不納付加算税の各変更決定処分後のもの) 平成30年1月及び令和元年11月の各月分の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分・ 一部取消し、棄却)
裁決事例集 第132集
ポイント
本事例は、請求人がインド法人に支払った金員は「技術上の役務に対する料金」と認められるものの、請求人と支払先法人との間で、請求人が源泉徴収に係る所得税を負担することを合意したものとは認められないとして、源泉徴収に係る所得税の算出においてグロスアップ計算を認めなかったものである。
要旨
請求人は、インドに所在する外国法人3社(J社、K社、L社)に対して支払った各金員(本件各支払金)について、①J社はインドの法律に基づき設立されたリミテッド・ライアビリティー・パートナーシップであるから請求人の支店的な存在であり、支払った金員は、J社の維持・管理に必要な資金の送金又は給与で、業務を委託した対価ではないこと、②請求人とK社との契約(本件K社契約)によれば、支払った金員はソフトウエアの譲渡対価であること及び③L社に支払った金員はウェブサイト及びアプリケーションのデザインの対価であり、デザインはコンピュータプログラムとは関係ないことから、それぞれ、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とインド共和国政府との間の条約(日印租税条約)第12条第4項に規定する「技術上の役務に対する料金」に該当しない旨主張する。
しかしながら、①インドの法律上、J社は、請求人とは別個の法的主体であり、かつ、請求人と協働でソフトウエア開発業務を行っていると認められることから、当該開発業務に係る役務は、日印租税条約第12条第4項に規定する「技術的性質の役務」に該当すること、②本件K社契約は、請求人がK社に対してソフトウエアの開発の支援を依頼し、K社は当該開発に関して定義された範囲の業務を行い、対価の最終支払までに当該定義された範囲の業務の全てを完了させ、当該開発に関する全てのソフトウエア等を請求人に引き渡す旨定めた契約であり、これらの業務に係る役務は、同項に規定する「技術的性質の役務」に該当することからソフトウエアの譲渡対価ではないと認められること、及び③同項は、「技術上の役務に対する料金」についてその範囲をプログラミングサービスの提供に限定しておらず、L社が行った役務は、同項に規定する「技術的性質の役務」に該当すると認められることから、本件各支払金は、同項に規定する「技術上の役務に対する料金」に該当する。
ただし、原処分庁は、K社に対する支払金の額について、源泉徴収の対象となるものの支払額が税引手取額で定められているものとして源泉徴収に係る所得税の額を算出する計算(グロスアップ計算)により当該所得税の額を算出しているところ、原処分庁がグロスアップ計算の根拠として掲げる本件K社契約の条項は、本件K社契約の履行に際し、契約違反や第三者からの訴訟等に備えて契約書に盛り込まれる条項であり、請求人が源泉徴収に係る所得税を負担することを合意したものとは認められないから、K社に対する支払金について当該所得税の額をグロスアップ計算により算出することは認められない。
参照条文等
所得税法第161条第1項、第162条第1項、第212条第1項 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とインド共和国政府との間の条約第12条
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