裁決事例 裁決事例集 第84集
還付申告書の提出による還付金を受け取っていない場合であっても、修正申告により還付金の額に相当する税額が減少する場合は過少申告加算税賦課の対象になるとした事例
裁決事例集 第84集
要旨
請求人は、還付申告書の提出による還付金を受け取っておらず、その後、修正申告により税額がマイナスから○○○○円になったにすぎないから、国税通則法第65条《過少申告加算税》第1項に規定する「納付すべき税額」は生じていない旨主張する。
しかしながら、国税通則法第65条第1項は、期限内申告書(還付請求申告書を含む。)が提出された場合において、修正申告書の提出があったときは、当該納税者に対し、その修正申告に基づき過少申告加算税を課する旨規定しているところ、同法第35条《申告納税方式による国税等の納付》第2項第1号の規定により、単に納付すべき税額が増加する場合に限らず、還付金の額に相当する税額が修正申告により減少する場合も、その減少する部分の税額について、過少申告加算税賦課の対象としていることが明らかであることから、請求人の主張は採用できない。
参照条文等
参考判決・裁決
大阪高裁平成16年9月29日判決(訟月51巻9号2482頁) 札幌地裁平成17年11月24日判決(税資255号順号10208) 平成22年1月7日裁決(裁決事例集No.79)
請求人が相続により取得した取引相場のない株式は、「同族株主以外の株主等が取得した株式」には該当しないことから、配当還元方式で評価することはできないとした事例
裁決事例集 第84集
ポイント
本事例は、取引相場のない株式の評価に当たり、同族関係者の範囲について、法人税法施行令第4条第6項の規定の適用を受けることから、「同族株主以外の株主等が取得した株式」に該当しないと判断したものである。
要旨
請求人は、評価会社であるJ社は、同族株主がおらず、また、J社の株主であるK社は請求人の同族関係者ではないから、請求人とその同族関係者の議決権割合が15%未満となるので、請求人が本件被相続人からの相続により取得したJ社株式(本件株式)は、配当還元方式により評価すべきである旨主張する。
しかしながら、①K社の設立経緯、資産内容、人的・物的実体及び株主総会や取締役会の開催状況からすると、K社の出資者がJ社の経営や意思決定に関心や興味を有していたとは考え難く、また、②K社の出資者は、いずれもJ社の役員等であり、J社を退社した後は、K社の出資者たる地位を失うことになっていたこと並びにK社の出資者及び出資の譲受人は本件被相続人にその決定権があったものと認められることからすると、K社の出資者がJ社の代表取締役であった本件被相続人の意に沿った対応をすることが容易に認められること、③そして、K社は、本件被相続人死亡後開催されたJ社の取締役を選任する重要なJ社の株主総会において、K社が所有しているJ社の株式に係る議決権を、K社の出資者でも役員でもない請求人(本件被相続人の妻)に委任していることからすれば、K社は本件被相続人に代表されるJ社の創業家の強い支配下にあり、K社の出資者は、同社の意思決定を、いずれも、本件被相続人及び請求人に代表されるJ社の創業者一族の意思に委ねていたものと認められるから、K社の株主総会等における議決権の行使についても、J社の創業者一族の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意していた者と認めるのが相当である。そうすると、請求人は、法人税法施行令第4条《同族関係者の範囲》第6項の規定により、K社の株主総会において全議決権を有し、かつ、K社の唯一の出資者であるとみなされることから、同条第3項により、K社を支配していることとなって、同条第2項により、K社は請求人と特殊関係にある法人に該当するので、請求人の同族関係者に該当することとなる。そうすると、J社における請求人とその同族関係者の議決権割合は15%以上となるから、本件株式を配当還元方式で評価することはできない。
参照条文等
参考判決・裁決
東京高裁平成17年1月19日判決(訟月51巻10号2629頁)
要旨
請求人は、相続財産である現金、貯金及び出資金の申告漏れについて、現金については相続税申告時に手元になく失念したためであり、また、貯金及び出資金については、その存在を知らなかったためであるから、隠ぺい又は仮装の行為はなかった旨主張する。
しかしながら、重加算税は、その制度の趣旨にかんがみれば、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要と解するのは相当でなく、納税者が当初から財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合には、重加算税の賦課要件が満たされるものと解すべきであるところ、請求人は、現金については、その保管状況等からみてその存在を認識していたものと認められるにもかかわらず、申告書作成の際に関与税理士に対してその存在を秘匿する虚偽の説明をしていること、また、貯金については、請求人の取引への関与の状況からしてその存在を認識していたものと認められるにもかかわらず、申告書作成の際に関与税理士から金融機関の残高証明書の入手依頼があったのに入手手続を行わず関与税理士にその存在を知らせなかったことからすれば、これらの財産の申告漏れについては、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からうかがい得る特段の行動をした上でその意図に基づく過少申告をしたものと認められるから、重加算税の賦課要件を満たしているといえる。一方、出資金の申告漏れについては、申告前に請求人がその存在を認識していたとまでは認められないから、重加算税の賦課要件を満たしているとはいえない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
ポイント
この事例は、職務発明をした従業員等が使用者等に特許を受ける権利等を承継させたときに保障される「相当の対価の支払を受ける権利」(特許法第35条第3項)に基づき、裁判上の和解により支払われた和解金の所得区分につき、請求人が、当該和解金のうち外国特許に係る部分は譲渡所得に該当すると主張したのに対し、特許を受ける権利が通常同一の職務発明から生じるものであることを説示した最高裁平成18年10月17日第三小法廷判決を参考に、この事例における社内規定の内容から、当該和解金の全部が譲渡所得には当たらない旨判断したものである。
要旨
請求人は、国内特許と外国特許とに係る相当の対価の支払を請求する権利は、それぞれ別個の請求権であって、F社から外国特許に係る承継の対価は一切受け取っておらず、F社に対し、在職中の職務発明について特許を受ける権利をF社に承継させたことにつき、特許法第35条《職務発明》第3項の規定に基づき、相当の対価の支払を求めて提起した訴訟において成立した訴訟上の本件和解によって得た本件和解金によって当該外国特許に係る承継の対価を初めて受け取ったのであるから、少なくともその部分に関しては譲渡所得に該当する旨主張する。
しかしながら、我が国又は外国の特許を受ける権利の基となる職務発明は、共通する一つの技術的創作活動の成果であり、当該職務発明については、その基となる雇用関係等も同一であって、これに係る国内外の特許を受ける権利は、社会的事実としては、実質的に1個と評価される同一の職務発明から生じたものということができ、そして、F社の発明考案取扱規定(本件規定)は、F社が日本国及び外国での職務発明に係る特許等を受ける権利等を承継する旨定めており、その趣旨は、国内外の特許を受ける権利の上記のような性格等に鑑み、当該権利の基となる職務発明をした従業者等とF社との間の当該発明に関する法律関係を一元的に処理しようとしたものであるということができる。このことに加えて、本件規定において、出願数は国内出願の件数により認定し、複数の出願に基づく国内優先権出願及び外国出願は全てこれを一つの出願とみなす旨規定していることを併せ考えると、本件規定が定める出願補償金、登録補償金及び実績報償金は、いずれも、国内における特許を受ける権利と外国における特許を受ける権利のいかんを問わず、本件規定の定める一つの出願に対するものとして規定されているものと解するのが相当である。そうすると、F社から請求人に対して支払われた出願補償金及び登録補償金は、職務発明に係る国外の特許を受ける権利の承継の対価を含むものというべきであるから、本件和解金に係る所得は譲渡所得には当たらない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成18年10月17日第三小法廷判決(民集60巻8号2853頁) 東京(知財)高裁平成21年2月26日判決(判時2053号74頁・判タ1315号198頁) 平成21年4月23日裁決(裁決事例集77号72頁) 平成21年10月9日裁決(裁決事例集78号172頁)
ポイント
この事例は、評価対象地が所在する町内の全建物の築年数及び種類を調査し、財産評価基本通達24-4にいう当該評価対象地が属する「その地域」とは、当該町内の西側部分であると判断したものである。
要旨
請求人は、①本件土地は、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく広大で、本件における経済的に最も合理的な開発行為である戸建分譲開発を行うとした場合には、公共公益的施設用地の負担が必要であること、②路線価方式による土地の評価は、更地として評価することを前提としており、公共公益的施設用地の負担の要否は、開発行為を行うとした場合に負担を要するか否かで判断すべきであり、本件土地の現状が賃貸マンションの敷地の用に供されていることのみをもって、財産評価基本通達24-4《広大地の評価》(広大地通達)の定めの適用を排除すべきではないことから、本件土地は、同通達に定める広大地に該当する旨主張する。
しかしながら、既に開発行為を了しているマンションなどの敷地用地や評価時点において宅地として有効利用されている建築物の敷地用地については、標準的な地積に比して著しく広大であっても、特段の事情のない限り、広大地通達に定める広大地に該当しないと解されるところ、本件土地の場合、開発行為を了した上、共同住宅の敷地として使用されており、近い将来において新たな開発行為を行うべき事情も認められず、本件土地の属する地域(本件地域)は、戸建住宅と共同住宅の混在する地域であって、これらの用途のいずれもが本件地域における標準的な利用形態と認められることからすれば、本件土地は、その周辺地域の標準的な利用状況に照らしても、共同住宅用地として有効に利用されていると認められる。したがって、本件土地について開発行為を行うとした場合における公共公益的施設用地の負担の要否について検討するまでもなく、本件土地は広大地通達にいう広大地には該当しない。
参照条文等
参考判決・裁決
請求人が管理業務を委託した同族会社は、請求人が必要経費に算入すべきと主張する管理費の額に見合う管理業務を行っていたと認められることから、その全額を必要経費に算入すべきであるとした事例
裁決事例集 第84集
ポイント
この事例は、請求人が同族会社に委託した管理業務のうち、当該同族会社が他社に再委託した業務以外の部分について、当該同族会社が行っていたことを認定し、必要経費に算入すべき金額の範囲を判断したものである。
要旨
原処分庁は、請求人が賃貸及び事業の用に供している建物等について、請求人らが役員を務める本件同族会社が管理業務を行っていたとする証拠がなく、仮に行っていたとしても請求人が主張する行為は管理業務とは評価できないから、請求人の不動産所得及び事業所得の必要経費に算入すべき管理費の額は、本件同族会社が再委託先に支払った再委託料の額の一部に限られる旨主張する。
しかしながら、本件同族会社は、自ら当該建物等の管理業務を行っていたと認められることから、請求人が本件同族会社に支払った管理費の額うち、必要経費に算入すべきと主張する額(請求人主張管理費額)は、その全額が、請求人の不動産所得及び事業所得に係る業務と直接の関係を持つ費用であり、かつ、本件同族会社の行った管理業務の内容からみて、各業務の遂行上必要な費用であると認められる。したがって、請求人主張管理費額は、請求人の不動産所得の金額及び事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである。
参照条文等
遺産分割協議時に、共同相続人間で分割協議対象財産として認識されていない財産があった場合には、遺産分割協議書に「本書に記載のない財産は特定の者に帰属する」旨の記載があったとしても、当該財産は未分割財産とみるのが相当であるとした事例
裁決事例集 第84集
ポイント
遺産分割協議書には、「本書に記載のない財産は特定の者に帰属する」旨の記載が一般的に見受けられるところであるが、本事例は、遺産分割協議書に当該記載はあるものの、被相続人からの贈与契約が履行されていない財産については、遺産分割協議時点において共同相続人間で分割協議対象財産として認識されていないから、未分割財産であると判定したものである。
要旨
請求人らは、本件被相続人がその預金原資を出捐した請求人らの名義の各定期預金(本件各定期預金)について、本件各定期預金に係る証書が本件被相続人の生前にそれぞれ各名義人へ手渡された時点で、本件被相続人からの贈与の履行が完了しているから、相続財産とはならない旨主張する。
しかしながら、確かに、本件被相続人と請求人らとの間で、本件各定期預金に関する書面によらない贈与契約がそれぞれ成立したものと認められるものの、書面によらない贈与は、その履行が終わるまでは当事者がいつでもこれを取り消すことができることから、その履行前は目的財産の確定的な移転があったということはできないので、この場合の贈与の有無、すなわち、目的財産の確定的な移転による贈与の履行の有無は、贈与されたとする財産の管理・運用の状況等の具体的な事実に基づいて、総合的に判断すべきである。
これを本件についてみると、定期預金を自由に運用するためにはその届出印が必要となるところ、本件各定期預金の届出印は、その保管状況・使用状況・各名義人の当該届出印に対する認識及び本件各定期預金に係る証書の改印状況などを勘案すると、相続開始時点においても本件被相続人が引き続き管理していたものと認められることから、本件各定期預金について、本件被相続人から各名義人へ確定的な移転があったとまではみることができない。したがって、本件各定期預金は、贈与によって請求人らが取得したものとは認めることができず、相続税の課税財産に該当する。
ただし、本件各定期預金は、遺産分割協議書に記載がなく、同書には「本書に記載のない遺産はすべて請求人Gが取得する」旨記載されているものの、請求人らの間において、当該遺産分割協議の時点で遺産分割対象財産として認識していなかったと解されることから、相続税法第55条《未分割遺産に対する課税》に規定する未分割財産であるとみるのが相当である。
請求人が損金の額に算入したグループ法人に対する業務委託料は、当該グループ法人に対する資金援助を仮装して計上されたものであり、対価性がなく寄附金の額に該当するとした事例
裁決事例集 第84集
ポイント
この事例は、グループ法人に対する各業務委託料は、当該各業務委託料に係る各契約に基づく役務提供が認められないこと及び委託先法人に対する貸付債権と相殺されていることから、グループ法人に対して債務を消滅させる経済的利益の無償の供与と判断し、グループ法人への貸付金には該当しないと判断したことにより、原処分のうち、貸付金としてその利息を計上すべきとした部分を取り消したものである。
要旨
請求人は、グループ法人との間で締結した各業務委託契約に基づく業務は行われているから、費用計上した各業務委託料は損金の額に算入されるべきである旨主張し、原処分庁は、当該契約は実体のない架空の業務委託契約であり、当該各委託料は請求人の会長が実質支配するグループ法人への貸付金等であるとした上、当該貸付けに係る利息相当額は益金の額に算入すべきである旨主張する。
当該各委託料は、①役務提供の有無にかかわらずに支払われている対価性のないものであること②当該各委託料がグループ法人に対する貸付債権と相殺されていることからすると、その計上額は、請求人がグループ法人に対して債務消滅という経済的利益を無償で供与したこととなり、法人税法第37条《寄附金の損金不算入》第7項に規定する寄附金の額に該当すると認めるのが相当である。
したがって、請求人の主張には理由がなく、また、当該各委託料が貸付金に当たるとして利息相当額を益金の額に算入すべきであるとする原処分庁の主張にも理由がない。
参照条文等
登録免許税の課税標準の額について、請求人が主張する鑑定評価額は合理的なものではなく、原処分庁が採用した近傍類似価格に所要の調整等を行って算定すべきであるとした事例
裁決事例集 第84集
ポイント
本事例は、固定資産課税台帳に登録された価格のない土地の課税標準の額を算定するに当たり、固定資産評価基準における「その他の宅地評価法」を用いることは相当であるものの、原処分庁の採用した近傍類似価格は当該土地の形状等に応じた所要の調整を行って算定されていないため、当該近傍類似価格をそのまま採用することはできないとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人が取得した本件土地の持分の登記に係る登録免許税の課税標準の額について、本件土地が固定資産課税台帳に登録された価格(台帳価格)のない私道の用に供されている宅地であることから、本件土地に係る固定資産評価証明書に記載された近傍類似価格(本件近傍類似価格)を基に、公衆用道路であることの補正のみを行って算定すべきである旨主張する。
しかしながら、台帳価格のない不動産の登録免許税の課税標準の額は、当該不動産に類似する不動産の適正な台帳価格を基礎として合理的に算定するのが相当であると解されるところ、本件近傍類似価格は本件土地の存する状況類似地区内の整形地である標準宅地の単位地積当たりの価額であるのに対し、本件土地は奥行の長大な不整形地であることからすると、本件土地の持分の課税標準の額は、本件近傍類似価格を基に、本件土地の形状等に応じて固定資産評価基準による所要の調整を行った上で、公衆用道路であることの補正を行って算定するのが相当である。
参照条文等
登録免許税法施行令附則第3項
要旨
原処分庁は、請求人の関連会社(H社)が請求人の取締役に対して「褒賞金」の名目で支払った金員(第一金員)は、賞与として経理処理されているものの、当該取締役には当該関連会社の従業員等としての勤務実態はなく、当該取締役が当該関連会社に対し何らかの役務提供等を行ったという事実も認められないことから、請求人が支払うべき取締役に対する給与を当該関連会社が負担したものである旨主張する。
しかしながら、当該取締役が当該関連会社に対して何らかの役務提供をしていないことは推認できるものの、請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によって認定できる一切の事実をもってしても、第一金員が当該関連会社の取締役の地位にあることを理由に支払われたとまでいうことはできない。したがって、請求人が負担すべき給与を当該関連会社が負担したとは認められないから、請求人に受贈益が生じたとする原処分庁の主張は採用できない。
一方、請求人は、請求人の各関連会社(L社及びK社)が請求人の各取締役に対して「永年勤続賞金」又は「褒賞金」の名目で支払った各金員(第二金員、第三金員及び第四金員)は、当該各関連会社と当該各取締役との間で交わした合意書(本件各合意書)に基づき、営業指導や情報提供を行ったことに対する対価として支払ったものであり、請求人が支払うべき給与を当該各関連会社が負担したものではない旨主張する。
しかしながら、①本件各合意書は調査時に提出されておらず、調査時におけるその存在又は成立に疑義があり、信用できないこと、②当該各取締役が提供した役務は、請求人の業務の一環としてなされたものであって当該各取締役が個人として提供したものとは認められないこと及び③当該各金員の支払が当該各取締役の請求人における永年勤続表彰に関して支払われていることなどを総合すると、当該各関連会社において当該各金員を支払う特段の理由はなく、請求人が支払うべき給与を当該各関連会社が支払ったものと認めるのが相当である。したがって、請求人には受贈益が生じたものと認められる。
参照条文等
ポイント
この事例は、財団不足の場合においても、破産手続によらずに、破産手続開始決定後に確定した還付金等を国税通則法第57条の規定により、財団債権である未納国税に充当することができるとしたものである。
要旨
請求人は、財団不足の場合に財団債権となる租税債権に還付金等の充当をすることは、財団債権者間の優先順位を変更することとなるので、最優先の財団債権である破産手続費用、破産管財人報酬の全額支払が確実になり、各財団債権者に対するあん分支払額が確定するまで還付を留保し、その後、破産管財人からあん分支払額が通知されてから、その通知額に従い充当処理を行うべきである旨主張する。
しかしながら、破産債権は、破産法に特別の定めがある場合を除き、破産手続によらなければ行使できないが、財団債権は、破産手続によらないで破産財団から随時弁済を受けることができる債権であり、破産債権に先立って弁済されるものであるから、破産債権に優先して満足を受けられる債権である。これに財団不足の場合であるか否かを問わず、破産債権となる租税債権に還付金等を充当することができることを併せて考えると、財団債権となる租税債権に還付金等を充当できると解するのが相当である。
ところで、委託納付とは、納税者が、税務署長等に対し、その受領すべき還付金等により未納の国税等の納付を委託したものとみなされ、同委託に基づき税務署長等が同還付金等を同未納国税等に収納する手続を行うことをいい、これにより、法律上当然にその委託納付に相当する額の還付及び納付があったものとみなされるところ、委託納付の効果は、法律上擬制される納税者自らの委託に基づくものであって、税務署長等による公権力の行使によるものではなく、「国税に関する法律に基づく処分」には該当しないことから、本件各委託納付に対する審査請求は不適法なものである。
参照条文等
国税通則法第57条第1項 地方税法附則第9条の10第1項 破産法第2条第7項、第100条第2項2号、第152条
参考判決・裁決
大阪地裁平成15年2月14日判決(税資253号順号9283)
事務所の移転に伴い受領した金員の一部は、請求人の事業所得に係る必要経費を補填する金額であると認められるものの、その余の部分は、事業所得の総収入金額に算入すべき金額ではなく、また、継続性及び対価性を有しないものであることから、一時所得に区分するのが相当であるとした事例
裁決事例集 第84集
要旨
請求人は、旧事務所の明渡しに際し受領した金員(本件受領金員)は、事業の遂行により生じた収入ではなく、収益補償的な意味も持たないものであって、また、継続性のない一時的な収入であるから、その全てが、事業所得の総収入金額ではなく、一時所得の総収入金額に算入すべきである旨主張する。
しかしながら、所得税法は、各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額については、それに対する補填の有無に関わらず、各種所得の金額の計算上、必要経費として控除できることとしていることに照らすと、事業所得に係る必要経費の補填金の支払を受けた場合には、その金額を事業所得の総収入金額に算入しなければ、担税力に応じた公平な課税を目的とする所得税法の立法趣旨を損なうこととなることから、事業所得に係る必要経費の補填金に相当する金額についても、事業所得の総収入金額に含まれると解するのが相当である。そして、本件受領金員の一部は、請求人の事業所得に係る必要経費を補填する金額であると認められることから、事業所得の総収入金額に算入すべき金額となり、その余の部分は、請求人の事業所得に係る収入金額又は必要経費を補填するために支払われたものであるとは認められず、また、継続性及び対価性を有しないものであるから、一時所得の総収入金額に算入すべき金額となる。
参照条文等
ポイント
資産負債増減法による推計において、その納税者と生計を一にする者がある場合には、両者の資産、負債及び処分(消費)した所得を区分せずに推計の基礎として、その納税者の所得の金額を算出する方法を採ることが合理的である。
この事例は、請求人と生計を一にする親族名義の預金口座であっても、生計を一にしない者に貸していたと認められるものについては、推計の基礎から除外するのが相当としたものである。
要旨
原処分庁は、資産負債増減法を用いた推計においては、請求人と世帯を一にする者がある場合、その世帯員の資産及び負債も推計の基礎に含めて純資産の増減額を算出し、その後に、世帯員の所得金額などの請求人の所得を源泉としない純資産の増加要因について、減算することになる旨主張する。
しかしながら、請求人と生計を一にする者名義の預貯金のうち、V銀行j支店及びW銀行j支店の子の妻名義の普通預金口座はいずれも同人の兄であるSに貸していたものであり、また、Sは請求人と生計を一にする者ではないと認められることから、これらの口座は推計の基礎から除外し、これらの口座を除く各口座に係る預貯金の全てを推計の基礎とするべきである。よって、これと一致する限度において、原処分に誤りはないが、これに反する部分は、誤りである。
参照条文等
ポイント
この事例は、請求人が同族会社に賃貸した土地で、その同族会社が①第三者に駐車場用地として転貸したもの、②第三者に賃貸するための倉庫・事務所用建物の敷地として使用したもの、③第三者に賃貸するための店舗・事務所・住居用建物の敷地として使用したものに係る賃料の額につき、所得税法第157条の規定の適用が認められるか否かを判断したものである。
要旨
請求人は、同族会社が請求人との間で合意した土地の賃貸借契約に係る賃料として収受した本件賃料額を容認しても、請求人の所得税の負担を不当に減少させる結果にはならない旨主張する。
しかしながら、所得税法第157条《同族会社等の行為又は計算の否認等》第1項の「所得税の負担を不当に減少させる結果となると認められる」かどうかは、当該行為又は計算が経済的合理性を欠くか否かにより判断すべきであり、「所得税の負担を不当に減少させる結果となる」とは、経済的合理性を欠いた行為又は計算の結果として所得税の負担が減少することをいうものと解すべきであって、土地の賃貸借契約に関していえば、立地条件、用途、規模などの貸付地の状況が類似する土地(比準貸付地)であれば、特別の事情がない限り、賃料の額は同程度となるといえるから、同族会社とその株主等との間で貸し付けられた土地と立地条件、用途、規模などが類似する比準貸付地を抽出し、その比準貸付地の平均賃料を用いて算定した適正賃料額と実際に株主等が同族会社から収受した賃料の額とを比較して、同族会社がその株主等と合意した賃料の額が経済的合理性を欠くか否かを判断することも許されるというべきである。本件賃料額は、本件各年分においていずれも適正賃料額を大きく下回り、これにより請求人の所得税の額も減少するのであるから、同族会社が請求人との間で合意した本件賃料額を容認した場合には請求人の所得税の負担を不当に減少させる結果になると認められる。
参照条文等
参考判決・裁決
浦和地裁平成13年2月19日判決(税資250号順号8839) 東京地裁平成9年4月25日判決(訟月44巻11号1952頁)
要旨
請求人は、連結加入直前事業年度において、債務超過となっている子会社の株式(時価評価資産)の時価評価額の算定に当たっては、債務超過に相当する金額をマイナス評価するのが相当である旨主張する。
しかしながら、仮に当該子会社の1株当たりの純資産価額等が零円を下回るとしても、強行規定である会社法第104条《株主の責任》によって請求人が追加的に出資を要求されることはなく、一方、将来的に当該子会社の業績によっては配当を得る可能性も残っており、当該子会社の株式が通常取引されると認められる価額は零円以上となると解されるから、請求人の連結加入直前事業年度終了の時において、当該子会社の株式の1株当たりの純資産価額等が零円を下回る場合の「1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」は、零円以上と認めるのが相当である。
参照条文等
法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの。)第2条第21号、第4条の3第10項、第61条の12第1項 法人税基本通達9-1-13、9-4-1、12の3-2-1
ポイント
この事例は、①使用人の詐取行為に係る損害賠償請求権は損失発生と同時に益金算入されるが(法法22)、②同人の隠ぺい、仮装行為は請求人の行為と同視できず、国税通則法第68条の適用はないとし、他方、③同人の行為は同法第70条第5項に規定する偽りその他不正の行為に該当することから同項が適用されるとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人の使用人が行った詐取行為における隠ぺい、仮装行為については、①当該使用人は勤務する工場の所属課において仕入先から発行される納品伝票の事務処理を事実上一任され、その事務処理をチェックする者が他におらず、当該使用人の指示に基づき仕入先から発行された虚偽の納品伝票の処理が請求人の会計処理として反映される状況にあったこと、②当該工場において、仕入先に対して購入した品名と異なる品名を記載した納品伝票を発行させるなど不適切な経理処理が慣行的に行われており、当該使用人による事務処理を請求人自身による処理としてみなさざるを得ない状況にあったものといえることから、当該使用人の隠ぺい、仮装行為は請求人の隠ぺい、仮装行為と同視することができる旨主張する。
しかしながら、①当該使用人は、当該工場の所属課に配属されて以後、退社するまで同課において職制上の重要な地位に従事したことがなかったこと及び請求人の経理帳簿の作成等に携わる職務に従事したこともなかったこと等から単に資材の調達業務を分担する一使用人であったと認められること、②当該詐取行為は、当該使用人の私的費用を請求人から詐取するために同人が独断で取引先に依頼して行ったものであることを総合考慮すると、請求人が取引内容の管理を怠り、請求人から隠ぺい仮装するための当該使用人の仮装行為を発見できなかったことをもって、仮装行為を請求人自身の行為と同視することは相当ではない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和62年5月8日第二小法廷判決(集民151号35頁) 東京高裁平成21年2月18日判決(訟月56巻5号1644頁)
ポイント
所得税法第8条において、非居住者から居住者になった場合など、個人が年の中途で納税義務者の区分に異動を生じた場合には、その者がその年においてそれぞれの納税義務者の区分であった期間に応じ、それぞれの期間内に生じた所得税法第7条第1項に掲げる所得に対し、所得税を課することとされている。
この事例は、国外勤務を終えて日本に帰国した社員の国外勤務中の給与に係る外国所得税額を請求人が負担したことによる経済的利益について、非居住者期間内と居住者期間内のいずれに生じた所得かが争われたものである。
要旨
請求人が国外勤務を終えて帰国した海外出向社員ら(本件海外出向社員ら)の外国所得税額(本件外国所得税額)をその帰国後に納付したことについて、原処分庁が居住者に対する給与等の支払に当たるとして、源泉所得税の納税告知処分等をしたのに対し、請求人は、海外出向社員の外国所得税額を請求人が負担することは海外勤務規定においてあらかじめ定められており、また、本件外国所得税額は、本件海外出向社員らが非居住者であった外国で勤務していた期間に支給された手取給与の額を基礎にグロスアップ計算されたものであり、当該手取給与と一体不可分であるから、所得税基本通達181~223共-4《源泉徴収の対象となるものの支払額が税引手取額で定められている場合の税額の計算》の考え方に従い、本件海外出向社員らの非居住者期間中に生じた所得として取り扱うべきである旨主張する。
しかしながら、請求人の海外勤務規定には、請求人が海外出向社員の外国所得税額を負担する時期についての規定はないところ、本件海外出向社員らは、使用者である請求人が同人らに代わって本件外国所得税額を納付した時に請求人から租税債務の消滅による経済的利益の供与を受けたものと認められ、また、当該納付が本件海外出向社員らの帰国後に行われていることからすれば、当該経済的利益は本件海外出向社員らが居住者となった以後の所得となる。
参照条文等
ポイント
この事例は、訴訟上の和解に基づき請求人が支払った和解金の性格について、訴訟の経緯、対立点及び和解において請求人が当該和解金を支払うに至った経過並びに和解調書の和解条項内容及び請求人の会計処理の事実から認定したものである。
要旨
請求人は、本件和解(訴訟上の和解)は、原告ら(L及びNら)の請求内容(出資持分の払戻請求及び退職金の支払請求)を認めた内容の和解ではなく、多様な意味合いを包含した金額面での和解であり、本件和解金からLの退職金を控除した金員(本件金員)は、経営上当然の経済行為に基づく支払金という性格を意味しており、出資持分があることを根拠として支払ったものではないから、本件金員の額からLの出資額などを控除した額(本件特別損失額)は本件事業年度の損金の額に計上できる旨主張する。
しかしながら、本件訴訟の経緯、対立点及び和解において請求人が本件和解金を支払うに至った経過並びに和解調書の和解条項内容及び請求人の会計処理の事実についてみると、請求人は、原告らに出資持分の払戻請求権相当の権利を認めるなど、本件和解金を支払うことで請求人と原告らの債権債務関係を消滅させたものと推認されることから、本件金員からNの退職金相当額を差し引いた金員は、出資者たる地位に基づき支払われた金員であるといえ、当該金員から請求人が資本金勘定から減額したLの出資金相当額などを控除した金員は、剰余金の分配に当たると認められるので、法人税法第22条《各事業年度の所得金額の計算》第5項に規定する資本等取引に該当する。また、平成8年3月期に請求人がNに対する役員退職金として支出した金員相当額が本件和解金の計算に含められた経緯等から判断すると、当該退職金相当額については、請求人が真に支払を受けた者に代わって仮払金・立替金の類として支払ったものであると考えるのが自然である。したがって、本件特別損失額は、法人税法第22条第3項の規定により本件事業年度の損金の額に算入することはできない。
参照条文等
参考判決・裁決
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