裁決事例 平成29年(2017年)
差押財産の公売において、買受勧奨がなかったことにより、最高価申込価額が差押財産の所有者等の期待する価額に達しなかったとしても、そのことによって最高価申込者の決定処分が違法となることはないとした事例(最高価申込者の決定処分・棄却)
裁決事例集 第109集
ポイント
本事例は、差押財産の公売において、買受勧奨がなかったことにより、最高価申込価額が差押財産の所有者等の期待する価額に達しなかったとしても、そのことによって最高価申込者の決定処分が違法となることはないとしたものである。
要旨
請求人は、原処分庁に対して公売財産の購入希望者の存在を伝えていたにもかかわらず、原処分庁が当該購入希望者に公売に参加するように連絡(買受勧奨)をしなかった結果、当該購入希望者が公売に参加せず、請求人の期待した価額より低廉な価額で最高価申込者の決定処分(本件最高価決定処分)がされたとして、当該決定処分は違法である旨主張する。
しかしながら、国税徴収法第104条《最高価申込者の決定》第1項は、徴収職員は、見積価額以上の入札者等のうち最高の価額による入札者等を最高価申込者として定めなければならない旨規定し、また、見積価額の決定につき、同法第98条《見積価額の決定》第1項は、国税局長は公売財産の価格形成上の事情を適切に勘案するとともに、差押財産を公売するためのものであることを考慮しなければならない旨規定しており、国税徴収法は、これらの規定をもって、最高価申込価額が時価と比し著しく低廉となることを防止し、もって最低売却価額を保障しようとしたものと解される。また、国税徴収法には、公売公告は国税局の掲示場その他国税局内の公衆の見やすい場所に掲示して行う旨の規定(国税徴収法第95条《公売広告》第2項)は存在するものの、買受勧奨に関する規定は存在しない。
これらのことからすると、最高価申込価額が時価より著しく低廉でない場合には、最高価申込価者の決定処分がその価額の点から違法になることはないから、買受勧奨がなかったことにより、最高価申込価額が公売財産の所有者等の期待する価額に達しなかったとしても、そのことによって最高価申込者の決定処分が違法となることはないと解される。したがって、買受勧奨の有無が、本件最高価決定処分の適法性に影響を及ぼすことはない。
参照条文等
滞納会社が行った生命保険の委託先代理店の変更が国税徴収法第39条の「第三者に利益を与える処分」に当たるとした事例(第二次納税義務の納付告知処分・一部取消し)
裁決事例集 第109集
ポイント
本事例は、滞納会社が行った生命保険の委託先代理店の変更により、代理店たる契約上の地位が滞納会社から請求人に譲渡された結果、請求人は滞納会社が行った保険募集業務に係る代理店手数料を受領することとなったことが認められ、当該代理店手数料相当額の利益を受けたと認められるとしたものである。
要旨
請求人は、生命保険の代理店業を営む滞納会社(本件滞納会社)には、保険会社との代理店業務委託契約における契約上の地位を第三者に譲渡する権限はないこと、代理店手数料は請求人自らが行った業務の対価として、請求人が受け取るべきものといえることなどを理由に、本件滞納会社から請求人への代理店の変更によって、本件滞納会社から国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に規定する利益は受けていない旨主張する。
しかしながら、本件滞納会社及び請求人による保険会社に対する代理店の継承に係る承認申請等(本件申請)は、代理店としての地位を譲渡する手続を履践する目的で行われたものと認められ、本件申請から保険会社による承認までの一連の行為(本件委託先代理店変更)によって、本件滞納会社の代理店たる契約上の地位(本件契約上の地位)が請求人に譲渡された結果、請求人が代理店手数料を受領することとなったことが認められる。また、代理店手数料は、保険募集業務の遂行に基づく保険契約の獲得がなければ発生しないものである一方、保険契約の締結に至った場合には、解約等の事象が発生しない限り、保険契約者は契約期間にわたって保険料を支払うこととなるのであるから、当該保険料に係る代理店手数料は、その発生について高度の蓋然性があるということができ、本件契約上の地位には財産的価値が認められる。
したがって、本件契約上の地位は、国税徴収法第39条の処分の対象たる積極財産に該当し、本件委託先代理店変更によって、請求人は、本件契約上の地位を本件滞納会社から無償で譲り受けた結果、本件契約上の地位の評価額に相当する利益を受けたといえることから、本件委託先代理店変更は、国税徴収法第39条に規定する第三者に利益を与える処分に該当するものと認められる。
ただし、原処分庁が算定した納付すべき限度の額の一部については、本件契約上の地位の内容には含まれていない月分の代理店手数料等を考慮して算定されており、当該金額については納付すべき限度の額に含めることはできない。
参照条文等
参考判決・裁決
東京地裁平成26年6月27日判決(訟月61巻2号477頁)
国税徴収法第35条の第二次納税義務の告知処分に係る限度額は、同族会社である請求人の発行する株式の適正な時価を反映して算出されたものではないとして、当該告知処分の全部を取り消した事例(第二次納税義務の納付告知処分・全部取消し)
裁決事例集 第109集
ポイント
本事例は、国税徴収法第35条の第二次納税義務の限度額の算定に当たっては、同族会社の直前の決算期の貸借対照表等の各勘定科目の中に、その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれる債権などのように、額面どおりの経済的価値があるとはいい難い資産や、その債務の発生が確実といえないような負債が含まれている場合には、貸借対照表等の金額に一定の修正を加えて客観的な時価を算出するのが相当であるとしたものである。
要旨
原処分庁は、国税徴収法第35条《同族会社の第二次納税義務》の規定に基づき、請求人の負うべき第二次納税義務の各限度額(本件各限度額)を、請求人の直前の決算期末の貸借対照表に記載されている簿価により算出したことは、国税徴収法基本通達第35条関係の13《資産及び負債の額の計算》に定める「特に徴収上支障がない」場合に該当することから、株式の適正な時価を反映させた適法なものである旨主張する。
しかしながら、当該通達が、特に徴収上支障がない場合には、直前の決算期の貸借対照表等を参考とすることを認めているのは、納付通知書を発した日の時価評価を簡便に行えるようにすることを企図するものである一方、国税徴収法第35条第2項の「当該会社の資産の総額から負債の総額を控除した額」は、同族会社に対し納付通知書を発する時の客観的な時価を標準として計算されるべきものであることを踏まえ、飽くまで「参考」とすることができるにとどめているものと解される。そうであるとすると、直前の決算期の貸借対照表等の各勘定科目の中に、その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれる債権などのように、額面どおりの経済的価値があるとはいい難い資産や、その債務の発生が確実といえないような負債が含まれている場合には、貸借対照表等の金額に一定の修正を加えて客観的な時価を算出するのが相当であり、本件各限度額は、請求人の発行する株式の適正な時価を反映して算出された適法なものとはいえない
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参照条文等
国税徴収法第35条 国税徴収法基本通達第35条関係13
相続により取得した土地(本件土地)の分離長期譲渡所得の計算上、控除する取得費は、被相続人が本件土地を取得した際の売主が作成した土地台帳に記載された金額であると判断した事例(平成25年分の所得税及び復興特別所得税の更正の請求に対してされた更正処分・一部取消し)
裁決事例集 第109集
ポイント
本事例は、分離長期譲渡所得の計算上、控除する取得費は、当審判所の調査により把握された、被相続人が土地(本件土地)を取得した際の売主が作成した土地台帳記載の金額によるべきであり、請求人の主張する地価公示価格から推計した金額や、原処分庁が主張する本件土地の譲渡に係る収入金額の100分の5に相当する金額によることはできないとして、原処分の一部を取り消したものである。
要旨
請求人は、本件土地の譲渡に係る分離長期譲渡所得の計算上控除される本件土地の取得費は、地価公示価格から推計した金額によるべきである旨主張し、原処分庁は、本件土地の取得に要した金額の実額は不明であるから、本件土地の譲渡に係る収入金額の100分の5に相当する金額(概算取得費)を本件土地の取得費とすべきであると主張する。
しかしながら、当審判所の調査により把握された、本件土地を被相続人が取得した際の売主が作成した土地台帳(本件土地台帳)の記載内容の信用性は高く、記載内容どおりの事実を認定することができるから、本件土地台帳に記載された金額を本件土地の取得費と認めるのが相当である。なお、請求人の主張する本件土地の取得費の金額は推計したものに過ぎないことから採用することはできない
。
参照条文等
不服申立ての期限の特例の適用がある換価代金等の配当処分に対する審査請求については、不服申立期間の延長を定めた国税通則法第77条第1項ただし書(正当な理由)の適用はないとした事例(換価代金等の配当処分・却下)
裁決事例集 第109集
要旨
国税徴収法第171条《滞納処分に関する不服申立て等の期限の特例》第1項第4号は、換価代金等の配当処分に関し欠陥があることを理由としてする不服申立ては、国税通則法第77条《不服申立期間》の規定にかかわらず、換価代金等の交付期日まででなければすることはできない旨規定しているところ、当該特例が定められた趣旨は、滞納処分手続の安定を図り、かつ、換価手続により権利を取得し、又は利益を受けた者の権利、利益を保護しようとすることにあるものと解される。
したがって、換価代金等の配当処分に関し欠陥があることを理由とする審査請求には、国税通則法第77条第1項ただし書(正当な理由があるとき)の適用はないと解するのが相当であり、本審査請求は、法定の不服申立てができる期限を経過した後にされた不適法なものである
。
本件機械装置は、本件販売者において使用されていたというべきであり、「その製作の後事業の用に供されたことのないもの」に該当しないとした事例(平成27年4月1日から平成28年3月31日までの事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分並びに平成27年4月1日から平成28年3月31日までの課税事業年度の地方法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第109集
ポイント
本事例は、租税特別措置法第42条の6第1項に規定する「その製作の後事業の用に供されたことのないもの」とは、その製作者及び取得した販売者において使用されたことのない、いわゆる新品であるものをいい、それに該当するかどうかは販売者等における業種、業態、その資産の構成及び使用の状況に係る事実関係を総合的に勘案して判断するとしたものである。
要旨
請求人は、租税特別措置法(平成28年法律第15号による改正前のもの)第42条の6《中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除》第1項に規定する「その製作の後事業の用に供されたことのないもの」とは、その製作の後、製作者又は製作者から取得した者の下で固定資産として使用されたことのないものをいうとして、請求人が取得した機械装置(本件機械装置)は、製作された後請求人が取得するまでの間、①その販売者(本件販売者)の固定資産として使用されたことはなく、また、棚卸資産として管理されていて資産価値の減少はないこと、②本件販売者による1年間の保証の下、新品として取得したものであることから、本件機械装置は同項に規定する「その製作の後事業の用に供されたことのないもの」に該当する旨主張する。
しかしながら、同項に規定する「その製作の後事業の用に供されたことのないもの」とは、その製作者及び取得した販売者(販売者等)において使用されたことのない、いわゆる新品であるものをいい、それに該当するかどうかは販売者等における業種、業態、その資産の構成及び使用の状況に係る事実関係を総合的に勘案して判断することとなる。本件機械装置は、製作された後、本件販売者において1年以上にわたり展示場での展示及び実演に供され、部品交換もされていたのであり、これらの事情を総合的に勘案すると、本件販売者において使用されていたというべきであり、「その製作の後事業の用に供されたことのないもの」に該当しない。
参照条文等
租税特別措置法(平成28年法律第15号による改正前のもの)第42条の6第1項
原処分庁による動産の差押処分が行われた時点において、当該動産は既に第三者へ譲渡されており、第三者対抗要件である引渡しも完了していたとして、当該差押えを取り消した事例(動産の差押処分・全部取消し)
裁決事例集 第109集
ポイント
本事例は、原処分庁が行った動産の差押処分につき、当該動産は差押処分の時点で既に第三者へ譲渡されていたところ、第三者対抗要件たる引渡しについては占有改定により完了していたと認定したものである。
要旨
原処分庁は、請求人と滞納法人との間で締結された合意書(本件合意書)には、建物(本件建物)の占有移転に係る記載はあるが、本件建物内にあった動産(本件動産)の占有移転に係る記載はなく、本件動産に対する差押処分(本件差押処分)時に、本件動産が請求人の所有物であったことを第三者が知り得るような明示もされていなかったことから、本件動産に係る占有改定の合意があったとはいえない上、本件建物の賃貸人は滞納法人が本件建物の賃借人であると認識していたことからしても、請求人は本件動産の引渡しを受けていない旨主張する。
しかしながら、そもそも動産の引渡しには第三者が知り得るような明示が必要であるとする民法の条文や判例は見当たらないところ、請求人と滞納法人は、関係者への影響を最小限にすべく、事業の承継に必要な本件建物と本件動産を滞納法人から滞りなく請求人に承継させることを企図していたことからすると、請求人と滞納法人が、この企図に反して本件動産のみの占有を移転しないことは考えられず、たとえ、本件合意書にそのことが明示的に記載されていなくとも、本件建物の占有の移転だけでなく、本件建物内に存する本件動産の占有の移転にも合意するとともに、本件動産が現実に引き渡されるまでは本件動産を請求人のために占有することに合意したものと解するべきであり、さらに本件動産の引渡し(占有改定)は、請求人及び滞納法人間でできるものであって、上記認定が賃貸人の認識により左右されるものではないことからしても、請求人は、本件差押処分の前に、占有改定により本件動産の引渡しを受けていたといえるから、原処分庁の主張は採用できない
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参照条文等
参考判決・裁決
大審院明治43年2月25日判決(民録16輯153頁)
国税を担保するために抵当権が設定された後に当該担保不動産上に築造された建物について原処分庁が行った差押処分は、国税通則法第52条第4項に規定する「なお不足があると認めるとき」にされたものではないとして取り消した事例(不動産の差押処分・全部取消し)
裁決事例集 第109集
ポイント
本事例は、国税を担保するために抵当権が設定された後に当該担保不動産上に築造された建物についての差押えは、国税通則法第52条第4項に規定する「なお不足があると認めるとき」の要件を充足する必要があるとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人の国税を担保するため抵当権が設定された各担保不動産(本件各担保不動産)上に、抵当権の設定後に築造された請求人の建物(本件建物)に対して行った国税徴収法第47条《差押の要件》第1項第1号に基づく差押処分(本件差押処分)は、国税通則法第52条《担保の処分》第4項に規定する「なお不足があると認めるとき」になされたものではないが、抵当権の設定後に抵当地に築造された建物を抵当地とともに競売できる旨を定めた民法第389条《抵当地の上の建物の競売》第1項の規定に照らせば、許容されるべきである旨主張する。
しかしながら、国税の担保の処分においても民法第389条第1項が適用されると解する余地はあるが、その場合であっても、抵当権の設定後に抵当地に築造された建物を抵当地とともに公売するための差押えは、担保権の実行である以上、国税通則法第52条第1項に基づく担保物処分のための差押えとして行うものであり、国税徴収法第47条第1項第1号に基づいてなされた本件差押処分は、国税通則法第52条第4項の「なお不足があると認めるとき」になされたものではないから、違法である。
参照条文等
民法第389条第1項 国税通則法第52条第4項第1号 国税徴収法第47条第1項第1号
請求人は、本件発注者に対して、工事完了年月日までに本件工事の全部を完了して引き渡したものと認められるから、本件工事の請負代金の額は、本件事業年度の益金の額に算入するのが相当であるとした事例( 平成26年7月1日から平成27年6月30日までの事業年度の法人税の更正処分、 平成26年7月1日から平成27年6月30日までの事業年度の法人税に係る過少申告加算税の賦課決定処分、 平成26年7月1日から平成27年6月30日までの消費税及び地方消費税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分、 延滞税・ 一部取消し、 棄却、 却下)
裁決事例集 第109集
ポイント
本事例は、本件工事には設置したバリケードの管理及び本件工事の施工区域の管理等は含まれておらず、請求人は、本件発注者に対して本件竣工届を提出して、工事完了年月日付で本件工事の請負代金の残額を請求したこと、本件発注者は、請求人に対して本件検査通知書を発行し、同日以降、設置したバリケードの管理及び本件工事の施工区域の管理等をしていたことからすると、請求人は、本件発注者に対して、同日までに本件工事の全部を完了して引き渡したものと認められるとしたものである。
要旨
請求人は、改修工事(本件工事)を請け負い、主要な工事を終えて発注者(本件発注者)に対し、竣工日を平成27年3月27日とする竣工届(本件竣工届)を提出し、本件発注者から工事完了年月日を同月31日とする工事検査通知書(本件検査通知書)を受領しているが、本件工事には、次期工事が開始されるまでの間、本件工事の完了箇所及び次期工事予定区域を囲うためにバリケードを設置して現場管理することが含まれ、それらを同年9月まで継続して行っていたのであり、本件工事は同年3月31日までに完了していなかったから、本件工事の請負代金の額は、同日を含む事業年度(本件事業年度)の益金の額に算入されない旨主張する。
しかしながら、本件工事には設置したバリケードの管理及び本件工事の施工区域の管理等は含まれておらず、請求人は、本件発注者に対して本件竣工届を提出して、同月31日付で本件工事の請負代金の残額を請求したこと、本件発注者は、請求人に対して本件検査通知書を発行し、同日以降、設置したバリケードの管理及び本件工事の施工区域の管理等をしていたことからすると、請求人は、本件発注者に対して、同日までに本件工事の全部を完了して引き渡したものと認められるから、本件工事の請負代金の額は、本件事業年度の益金の額に算入するのが相当である。ただし、本件事業年度の益金の額に算入される本件工事の請負代金の額には、請求人が設置したバリケードの使用料が含まれており、それに個別対応する原価であるバリケードの賃借料の一部を本件事業年度の損金の額に算入すべきところ算入されていなかったことから、原処分の一部を取り消すべきである。
参照条文等
法人税法第22条第2項 民法第624条、第633条 法人税基本通達2-1-5、2-1-6
期限後申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について決定があるべきことを予知してされたものでないとした事例( 平成23年分及び平成24年分の所得税に係る無申告加算税の各賦課決定処分、 平成25年分及び平成26年分の所得税及び復興特別所得税に係る無申告加算税の各賦課決定処分・ 全部取消し、 一部取消し)
裁決事例集 第108集
ポイント
本事例は、請求人が行った期限後申告書の提出は、調査の内容・進捗状況、それに関する請求人の認識、期限後申告に至る経緯、期限後申告と調査の内容との関連性の事情を総合考慮して判断した結果、国税通則法第66条《無申告加算税》第5項に規定する「決定があるべきことを予知してされたものでない」ことに該当するとしたものである。
要旨
原処分庁は、調査担当職員(本件調査担当職員)が、請求人の配偶者の所得税に係る調査(本件調査)において、請求人名義の不動産から生じる不動産所得が当該配偶者の所得として申告され、請求人が申告していない事実を把握し、請求人の所得税の課税標準等又は税額等を認定するために税理士(本件税理士)に質問を行ったのであるから、本件調査後の期限後申告書(本件期限後申告書)の提出は国税通則法第66条《無申告加算税》第5項(平成28年法律第15号による改正前のもの。)に規定する「決定があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当しない旨主張する。
しかしながら、「決定があるべきことを予知してされたものでない」ことは、調査の内容・進捗状況、それに関する納税者の認識、期限後申告に至る経緯、期限後申告と調査の内容との関連性の事情を総合考慮して判断すべきところ、請求人は、本件調査に応じた本件税理士を通じて請求人の所得税に係る調査を認識したものの、本件調査とは別の契機により不動産の名義どおりに申告をやり直したいとの申出を行い、期限後申告を行ったのであるから、本件期限後申告書の提出は「決定があるべきことを予知してされたものでない」ことに該当する。その結果、納付すべき税額に5%を乗じて計算した無申告加算税の額が5,000円未満となった年分は処分の全部を、その他の年分は上記5%相当額を超える部分につき処分の一部をそれぞれ取り消すことが相当である。
参照条文等
請求人の国外関連者に当たる子会社に対してされた米ドルの各貸付けにつき、その利息額の独立企業間価格の算定においては、各米国債の利率による方法が相当とした事例( 平成25年7月1日から平成26年6月30日までの事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、 平成26年7月1日から平成27年6月30日までの事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、 平成25年7月1日から平成26年6月30日までの課税事業年度の復興特別法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、 一部取消し、 全部取消し、平成29年9月26日裁決)
裁決事例集 第108集
ポイント
本事例は、米ドルの各貸付けに係る利息額の独立企業間価格の算定について、借り手の銀行調達利率による方法及び貸手の銀行調達利率による方法を採用することができないときは、各米国債の利率による方法を採用することが相当であるとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人の国外関連者に該当する子会社(本件子会社)に対して請求人が行った米ドルの各貸付け(本件各貸付け)につき、その利息額の独立企業間価格の算定については、独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法である貸手の銀行調達利率による方法(米ドルのスワップレートにスプレッドを加えた利率)によることが最も適切である旨主張する。
確かに、借手である本件子会社には非関連者である銀行等からの借入れの実績がなく、本件子会社が非関連者である銀行等から本件各貸付けと同様の状況の下で借り入れたとした場合に付されるであろう利率を見いだすことができないことから、借り手の銀行調達利率による方法を採用することはできない。
しかしながら、原処分庁が用いたスプレッドは、請求人が本件各貸付けと同様の状況で銀行等から借り入れた場合のスプレッドとして正確性を有するものとは認められず、当審判所の調査によっても他に請求人が非関連者である銀行等から本件各貸付けと同様の状況の下で借り入れたとした場合に付されるであろう利率を算定する適切な方法を見いだすことはできないことから、貸手の銀行調達利率による方法を採用することはできない。もっとも、本件各貸付けにおいては、発行日が本件各貸付けの貸付開始日と近接し、発行日から満期償還日までの期間が本件各貸付けの貸付期間に近似する各米国債(本件各米国債)が存在することが認められ、本件各米国債の利率は、本件各貸付けに係る資金を本件各貸付けと通貨、取引時期、期間等が同様の状況の下で国債等により運用した場合に得られるであろう利率に当たると認められることから、本件各米国債の運用利率による方法を採用することが相当というべきである。
参照条文等
租税特別措置法(平成26年法律第10号による改正前のもの)第66条の4 租税特別措置法関係通達(法人税編)66の4(7)-1、66の4(7)-4
価格が20万円を超える郵便物として資産を輸出した場合に消費税の輸出免税規定が適用されるには、税関長が証明した書類の保存を要するとした事例(平成23年10月1日から平成27年6月30日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに当該各課税期間のうち特定の課税期間を除く各課税期間の消費税及び地方消費税に係る過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却又は却下)
裁決事例集 第108集
ポイント
本事例は、関税法上の郵便物の輸出入に係る簡易手続を経て資産を輸出した場合であっても、その郵便物の現実の取引価格が20万円を超えるものである場合には、消費税の輸出免税規定の適用に当たり、税関長が証明した書類の保存が要件とされるとしたものである。
要旨
請求人は、その現実の取引価格が20万円を超えていた郵便物(本件郵便物)について、郵便発送伝票に20万円以下の金額が記載され、税関長の管理の下、何らの指摘もなく輸出されたものである以上、関税法第76条《郵便物の輸出入の簡易手続》第1項に規定する郵便物(簡易郵便物)として輸出されたものとして、消費税法施行規則第5条《輸出取引等の証明》第1項第1号に規定する輸出許可書等の保存がなくても、消費税法第7条《輸出免税等》第1項第1号の規定(輸出免税規定)が適用される旨主張する。
しかしながら、関税法第76条第1項に規定する「価格」とは、現実の取引価格であると解されることなどからすると、ある郵便物が簡易郵便物に該当するか否かは、当該郵便物の現実の取引価格を基準として判断されるべきであり、また、簡易郵便物として資産を輸出した場合に当たるか否かは、当該郵便物が簡易郵便物に該当するか否かにより判断されるべきである。本件郵便物は、現実の取引価格が20万円を超えていることから、簡易郵便物として輸出したことには該当せず、したがって、輸出許可書等の一定期間の保存がない限り、輸出免税規定の適用はない。
参照条文等
消費税法第7条第1項及び第2項 消費税法施行規則第5条第1項 関税法第76条第1項
内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律第6条第2項の規定は国税通則法第65条第5項の規定の適用がある修正申告書にも適用されるとした事例(平成26年分の所得税及び復興特別所得税に係る過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第108集
ポイント
本事例は、更正を予知せずにされた修正申告書であっても、内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律第6条第2項の規定に基づく過少申告加算税は課されるとしたものである。
要旨
請求人は、内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(国送法)第6条《国外財産に係る過少申告加算税又は無申告加算税の特例》第2項の規定は、国税通則法(通則法)第65条《過少申告加算税》第5項の規定が適用される請求人の修正申告書(本件修正申告書)には適用されない旨主張する。
しかしながら、国送法第6条第2項は、通則法第65条の規定の適用がある場合に過少申告加算税を加重する旨規定しており、同条第5項の規定の適用がある場合を除く旨規定しているものではない上、同項の規定の適用がある修正申告書にも国送法第6条第2項の適用があると解することは、同条第1項及び第2項の規定の趣旨とも整合する。したがって、国送法第6条第2項の規定は、通則法第65条第5項の規定の適用がある修正申告書にも適用されると解するのが相当であるから、本件修正申告書についても国送法第6条第2項の規定は適用される。
参照条文等
当初から所得を過少に申告する意図を有していたと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例( 平成22年分の所得税に係る過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、 平成23年分から平成26年分の所得税等に係る重加算税の各賦課決定処分、 平成22年1月1日から平成22年12月31日までの課税期間の消費税等に係る重加算税の賦課決定処分、 平成23年1月1日から平成26年12月31日までの各課税期間の消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分・ 全部取消し、 一部取消し)
裁決事例集 第108集
ポイント
本事例は、請求人が当初から所得を過少に申告する意図を有していたことを推認させるものとまではいえず、その他、請求人の上記意図を認めるに足りる証拠はないとして、重加算税の賦課要件を満たさないと判断したものである。
要旨
原処分庁は、請求人が、①特定の取引先(本件取引先)からの報酬等(本件収入)が請求人の事務所名義の預金口座(本件預金口座)に入金されていたと認識していたにもかかわらず、関与税理士に対し、本件預金口座に係る通帳(本件通帳)を提示しておらず、また、②調査担当職員から本件収入の申告漏れを指摘されるまで、調査担当職員に対して本件通帳を提示しなかったことからすると、請求人は、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたものと認められるから、重加算税の賦課要件を満たす旨主張する。
しかしながら、請求人は、①本件取引先が源泉徴収を行った後、本件収入は本件預金口座以外の預金口座に振り込まれているとの誤解の下、関与税理士に対し、手持ちの源泉徴収票及び支払調書に加えて本件通帳以外の通帳を提示することにより、本件収入についても適正に申告していると誤解していたものと考える余地があり、また、②調査担当職員に対して本件預金口座の存在を殊更隠ぺいしようとしたとは考え難く、本件通帳以外の通帳を提示すれば問題ないと考えて本件通帳を提示しなかったものとみる余地があるから、原処分庁が主張する事情は、請求人が当初から所得を過少に申告する意図を有していたことを推認させるものとまではいえず、その他、請求人の上記意図を認めるに足りる証拠もないから、重加算税の賦課要件を満たさない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
請求人は、特定株式の移転の日において、K国の居住者であり、当該特定株式の移転に係るみなし譲渡益は、日本国政府とK国政府との租税協定の規定により、K国に課税権があるとし所得税の更正の請求をしたのに対し、原処分庁がした更正をすべき理由はないとの通知処分は適法であるとした事例(所得税及び復興特別所得税の更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分・棄却)
裁決事例集 第108集
ポイント
本事例は、特定株式の移転に係るみなし譲渡益のうち、請求人が日本国の居住者であったときに、新株予約権を行使したことにより生じた権利行使益については、日本国政府とK国政府との租税協定による制限を受けず、国内法の規定により、国内源泉所得として課税を受けることとなると判断したものである。
要旨
請求人は、新株予約権の行使により取得した株式に係る租税特別措置法第29条の2《特定の取締役等が受ける新株予約権等の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等》第4項の規定により譲渡とみなされるもの(本件みなし譲渡)のうち、同条第1項に規定する経済的利益(本件権利行使益)については、本件みなし譲渡の全てが株式の保有によって生じた値上がり益、すなわち株式譲渡益と考えるのが相当であり、また、請求人は同条第4項に規定する特定株式の移転の日においてK国の居住者であるから、本件権利行使益は、日本国政府とK国政府との租税協定(本件協定)の規定が適用され、K国に課税権がある旨主張する。
しかしながら、本件みなし譲渡に係る譲渡所得は、所得税法第161条《国内源泉所得》第1号に規定する資産の譲渡により生ずる国内源泉所得であるから、租税特別措置法第37条の12《恒久的施設を有しない非居住者の株式等の譲渡に係る国内源泉所得に対する課税の特例》第1項の規定により、その全体について15%の税率を適用して分離課税の対象になるところ、この国内法上の課税関係が本件協定上受ける制限についてみると、本件みなし譲渡に係る譲渡所得のうち本件権利行使益は、請求人が内国法人であるF社から付与を受けた新株予約権を日本国の居住者である時に行使することにより生じたものであるから、本件権利行使益に係る日本国の課税権については、本件協定による制限を受けないことになり、同項に基づいて15%の税率で分離課税の対象となる。したがって、本件権利行使益については、国内法の規定により、国内源泉所得として日本国で課税を受けることになる。
請求人の行った土地の売買取引について、請求人と最終取得者との間で売買契約が成立しているとは認められないとした事例( 平成24年11月1日から平成25年10月31日までの事業年度の法人税の更正処分、 平成24年11月1日から平成25年10月31日までの事業年度の法人税に係る重加算税の賦課決定処分、 平成24年11月1日から平成25年10月31日までの課税事業年度の復興特別法人税の更正処分、 平成24年11月1日から平成25年10月31日までの課税事業年度の復興特別法人税に係る重加算税の賦課決定処分、 平成25年11月1日から平成26年10月31日までの事業年度の法人税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分、 平成25年11月1日から平成26年10月31日までの課税事業年度の復興特別法人税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分、 平成25年11月1日から平成26年10月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに重加算税の賦課決定処分・ 棄却、 一部取消し、 全部取消し)
裁決事例集 第108集
ポイント
本事例は、請求人と中間取得者は、当該土地について売買する旨合意し、売買契約を締結したと認められ、また、中間取得者と最終取得者の売買契約も有効に成立しているものと認められるから、本件土地取引は請求人と中間取得者との間で有効に成立しているとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人の行った土地の売買取引(本件土地取引)について、最終取得者の妻が中間取得者の担当者とは会っていない旨の申述をしていること等を理由として、請求人が中間取得者に売却した事実は認められず、最終取得者に対し売却されたものである旨主張する。
しかしながら、中間取得者には、本件土地取引について包括的に委任していた者がおり、同人主導の下、請求人と中間取得者は、当該土地について売買する旨合意し、売買契約を締結したと認められる。また、最終取得者は中間取得者を売買契約の相手方と認識し、かつ、当該土地の売買代金が中間取得者に支払われていることからすれば、中間取得者と最終取得者の売買契約は有効に成立しているものと認められる。したがって、本件土地取引は有効に成立しているから、原処分の一部を取り消すべきである。
参照条文等
請求人が行った商品券の販売は物品切手の譲渡に該当し、非課税取引に該当するとした事例(消費税及び地方消費税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第108集
ポイント
本事例は、請求人は、発行を受けた商品券の同一性を保持しつつ、顧客へ販売しているから、当該商品券の販売は、消費税法別表第一第4号ハに規定する物品切手の譲渡に該当し、当該取引は非課税取引であるとしたものである。
要旨
請求人は、①請求人の店舗のみで使用できる商品券(本件商品券)が、資金決済に関する法律(資金決済法)上の自家型前払式支払手段に該当し、②本件商品券は流通している商品券等には該当しないことなどから、本件商品券の発行者は請求人であり、請求人の本件商品券の顧客への販売は、消費税法別表第一第4号ハに規定する物品切手の譲渡に該当しない旨主張する。
しかしながら、請求人と本件商品券の発行会社との間で締結した本件商品券の発行及び販売に関する契約(本件契約)は、当該発行会社が本件商品券を作成・発行の上で請求人に券面金額で販売し、これを請求人が顧客に再販売するものとされていること、請求人が購入代金を支払うまで本件商品券の所有権は当該発行会社に留保されること、本件商品券の裏面に発行元は当該発行会社である旨表示されていることからすれば、当該発行会社が本件商品券を発行し、それを請求人に販売するものとして締結されたと認められる。そして、本件商品券は、資金決済法に規定する前払式支払手段に該当し、その発行者に義務付けられた手続を実際に行っていたのは当該発行会社であったことなどからすると、当該発行会社が資金決済法上の発行者として本件商品券の発行の業務を行っていたといえる。これらの事情から判断すると、本件商品券の発行者は当該発行会社であると認められ、請求人は当該発行会社から発行を受けた本件商品券につきその同一性を保持しつつ顧客へ移転させることにより、資産の譲渡を行ったものであるから、請求人が行った本件商品券の顧客への販売は、物品切手の譲渡に該当する。
ただし、請求人の課税売上割合及び控除対象仕入税額を再計算すると、原処分の一部を取り消すべきである。
参照条文等
消費税法第6条第1項、同法別表第一第4号ハ 消費税法基本通達6-4-5
FX取引に基因して生じた差損益金及びスワップポイントに係る収入の原因となる権利の確定時期は、ロールオーバーの時であるとした事例(平成25年分及び平成26年分の所得税等の各更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の各通知処分、平成24年分及び平成25年分の所得税等の各更正処分及び無申告加算税の各賦課決定処分、平成25年分及び平成26年分の所得税等の期限後申告に係る無申告加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第108集
ポイント
本事例は、FX取引に係る約款、契約締結前交付書面の記載によれば、本件における差損益金及びスワップポイントに係る収入の原因となる権利はロールオーバーの時点において確定し、当該時点において所得の実現があったと判断したものである。
要旨
請求人は、外国為替保証金取引において、未決済建玉の乗換えにより決済日を自動的に1営業日繰り延べる取引(本件ロールオーバー)により生じた差損益金及びスワップポイント(本件差損益金等)は、損益の見込額にすぎないから、本件ロールオーバーが行われた時点において本件差損益金等の収入の原因となる権利が確定したとはいえない旨主張する。
しかしながら、請求人の行う外国為替保証金取引では、本件ロールオーバーにより未決済建玉の約定価格が更新され、本件差損益金等が発生してその金額が確定し、発生後、直ちに預託保証金に加算又は減算されるほか、これと同時に本件差損益金等が反映された預託保証金は振替可能額の範囲内で証券総合口座への振替請求が可能となるとされており、これらによれば、本件差損益金等の収入の原因となる権利は、本件ロールオーバーが行われた時点で発生すると同時にこれを法律上行使することができるようになり、権利実現の可能性を客観的に認識することができる状態になったということができる。したがって、本件差損益金等の収入の原因となる権利は、本件ロールオーバーが行われた時に確定したと認められる。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和53年2月24日第二小法廷判決(民集32巻1号43頁)
歯科矯正治療費に係る事業所得の総収入金額に計上すべき時期について矯正装置装着時とするのが相当とした事例( 平成26年分の所得税及び復興特別所得税の更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分、 平成26年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分、 平成26年1月1日から平成26年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分、 平成26年1月1日から平成26年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・ 棄却、 一部取消し)
裁決事例集 第108集
ポイント
本事例は、歯科矯正治療費に係る事業所得の総収入金額に計上すべき時期について、請求人と患者との契約実態などを踏まえた上で矯正装置の装着時とするのが相当であるとしたものである。
要旨
請求人は、歯列矯正治療に係る治療費(矯正診療費)の事業所得に係る総収入金額の計上時期について、矯正装置の装着等の時に患者(本件各患者)に対し、治療費用等を請求する旨が記載された書面(本件書面)を交付しているものの、本件書面は、矯正診療費の総額などを示して患者の便宜を図るために交付するものにすぎず、本件各患者に対して矯正診療費の支払を請求するものではないことから、当該矯正診療費を一括又は分割により支払を受けたそれぞれの日である旨主張する。
しかしながら、歯列矯正治療は、通常数年の治療期間を要すること、請求人の歯列矯正治療に対応する中核的な治療は矯正装置の装着であることに照らすと、請求人と本件各患者との間の契約の実態も踏まえて、収入の原因となる権利の確定時期を決するべきであるところ、請求人は、本件各患者が矯正診療費の金額、予定治療期間及び治療上の注意事項を承諾した後に、本件各患者に対し矯正装置を装着していること、本件各患者の矯正診療費が治療開始後の本件各患者都合により返却されることはないことなどからすれば、請求人は、本件各患者の治療開始時、すなわち、矯正装置の装着時に本件各患者の矯正診療費の全額について請求する権利を有しているものと認められる。したがって、本件各患者に係る矯正診療費の事業所得の総収入金額に収入すべき時期は、矯正装置の装着時とするのが相当である。
なお、矯正診療費に係る収入すべき時期の認定に一部誤りがあったことから一部取消しとなった。
参照条文等
国税徴収法第153条第1項各号に該当する事実がいずれも認められないことから、滞納処分の停止の取消処分は適法であると認めた事例( 滞納処分の停止取消処分、 債権の差押処分・ 棄却)
裁決事例集 第108集
要旨
請求人は、原処分庁がした滞納処分の停止取消処分(本件停止取消処分)は、請求人には滞納処分の執行等をすることができる財産がなく、また、請求人の収入額は最低賃金にも満たないから、国税徴収法第153条《滞納処分の停止の要件等》第1項第1号及び同項第2号に該当する事実があるにもかかわらず行われた違法な処分である旨主張する。
しかしながら、請求人は、本件停止取消処分時において供託金払渡請求権(本件払渡請求権)を有していたと認められ、本件払渡請求権は差押えの対象となる将来生ずべき債権であると認められる以上、請求人に国税徴収法第153条第1項第1号に該当する事実はない。また、請求人は、妻の扶養親族であるが、自らも就労して収入を得ており、請求人の属する世帯は、それなりの収入がある一方、定期的に多額の支出があるとは認められず、生活が窮迫しているとは認められないことを考慮すると、本件払渡請求権に対して滞納処分を執行したとしても、生活保護法の適用を受けなければ生活を維持できない程度の状態に直ちに陥ることはないと認められ、請求人に国税徴収法第153条第1項第2号に該当する事実もない。
参照条文等
代表取締役が代表権のない取締役に分掌変更したことに伴って請求人が支給した金員について、実質的に退職したと同様の事情にあるとはいえず、法人税法上の損金算入することができる退職給与に該当しないとした事例(平成22年6月1日から平成23年5月31日までの事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、平成23年5月分の源泉徴収に係る所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第108集
ポイント
本事例は、分掌変更後も、請求人の経営ないし業務において主要な地位を占め、請求人の取締役として重要な決定事項に関与していたことが認められるから、当該取締役は、分掌変更により、実質的に退職したと同様の事情にあるとはいえないとしたものである。
要旨
請求人は、その代表者(本件役員)が代表取締役社長を辞任し、代表権のない取締役会長となったこと(本件分掌変更)に伴い、請求人が本件役員に対し支給した金員(本件金員)について、本件役員は本件分掌変更により本件役員の各業務に関する権限を他の役員等に移譲し、仕事量、質及び内容が大幅に縮小又は変更したため、請求人の役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあったといえるから、本件金員は法人税法上の退職給与に該当する旨主張する。
しかしながら、本件分掌変更に伴い、本件役員の地位や職務につき相当程度の変動が生じたことは認められるものの、本件役員は、本件分掌変更後も、請求人の経営ないし業務において主要な地位を占め、請求人の取締役として重要な決定事項に関与していたことが認められるから、本件役員は、本件分掌変更により、役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあるとはいえず、本件金員は法人税法上の損金算入することができる退職給与に該当しないものと認められる。
参照条文等
原処分庁が用いた同業者率による推計方法には合理性が認められるとした事例( 平成24年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、 平成25年分及び平成26年分の所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分、 平成22年1月1日から平成23年12月31日及び平成25年1月1日から平成26年12月31日の各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・ 棄却、 一部取消し)
裁決事例集 第107集
ポイント
本事例は、原処分庁が請求人の事業所得の金額等を類似同業者の平均必要経費率を用いて推計するに当たり、類似同業者を請求人の総収入金額の0.5倍以上2倍以下と設定するなどして、機械的に抽出しており、その抽出方法には合理性があると認められ、原処分庁が採用した推計の方法により請求人の事業所得の金額等を算定することが相当であるとしたものである。
要旨
請求人は、原処分庁の推計の方法では、請求人のように多額の経費や設備投資等の特別な支出がある者を対象とする場合には、事業所得の金額が過大に計算されてしまい、真実の事業所得の金額を大きく上回る旨主張する。
しかしながら、請求人が特殊事情として主張する諸事情は、いずれも適切な抽出基準及び抽出方法により選定された類似同業者の平均必要経費率を採用することにより、その平均値に吸収され捨象されるべき事情に当たるというべきであり、当審判所の調査の結果によっても、当審判所が選定した類似同業者の平均必要経費率を請求人に適用することの合理性を否定すべき特段の事情は認められない。
ただし、消費税の計算において、平成26年3月31日以前の課税資産の譲渡等と認定すべきものを、同年4月1日以降の課税資産の譲渡等と認定したことから、消費税率の適用誤りがあり、消費税等の更正処分が一部取消しとなった。
参照条文等
事業を行うために必要な準備行為を行った日の属する課税期間は「課税資産の譲渡等に係る事業を開始した日の属する課税期間」に当たるとした事例(平成26年1月1日から平成26年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第107集
ポイント
本事例は、新たに事業を開始した場合にはその事業を開始した日の属する課税期間の末日までに課税事業者選択届出書を提出すればその課税期間から課税事業者となるところ、請求人は、当該届出書を提出した課税期間の前年に新たに事業を行うための必要な準備行為を行っていることから、当該届出書は事業を開始した日の属する課税期間に提出されたものではあるとはいえず、本件課税期間は免税事業者となるとしたものである。
要旨
請求人は、消費税法施行令第20条《事業を開始した日の属する課税期間等の範囲》第1号に規定する「事業者が国内において課税資産の譲渡等に係る事業を開始した日の属する課税期間」の判断に当たっては、「事業を開始した日」について法令等に明確な規定がない以上、納税者の意思を尊重し、かつ、経済活動の実態に即した一般的な社会通念に沿って判断すべきであり、本件では、請求人が事業(本件事業)を開始したと認識し、個人事業開業届出書に本件事業を開始した日として記載した日の属する課税期間(本件課税期間)が同号に規定する「事業を開始した日の属する課税期間」に該当する旨主張する。
しかし、新たに事業を行うに当たり必要な準備行為を行った日の属する課税期間は、同号に規定する「事業を開始した日の属する課税期間」に当たると解するのが相当であり、本件において、請求人は、本件課税期間の前の課税期間中に請負契約を締結してその契約金を支払うなどしており、これらの行為は本件事業を行うために必要な準備行為と認められるから、本件課税期間は、同号に規定する「事業を開始した日の属する課税期間」には該当せず、請求人が本件課税期間中に提出した課税事業者選択届出書の効力は、本件課税期間の翌課税期間から生ずるため、本件課税期間について、請求人は消費税の免税事業者となる。
参照条文等
参考判決・裁決
平成24年6月21日裁決(裁決事例集No.87) 東京高裁平成16年8月31日判決(税資254号順号9731頁)
信用を出資の目的とした出資の額は消費税法上の出資の金額に含まれ、請求人は消費税法上の新設法人に該当するため消費税等を納める義務が免除されないとした事例(消費税及び地方消費税の更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分・棄却)
裁決事例集 第107集
ポイント
本事例は、信用を出資の目的とした出資の額は消費税法第12条の2《新設法人の納税義務の免除の特例》第1項に規定する「出資の金額」に該当するとしたものである。
要旨
請求人は、消費税法第12条の2《新設法人の納税義務の免除の特例》第1項に規定する「事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額」について、消費税法に定義規定が置かれていないから会社計算規則第30条《資本金の額》第1項の規定を借用すべきであり、これを借用すると信用を出資の目的とした出資(以下「信用出資」という。)は資本金概念に含まれないから、当該課税期間において消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)を納める義務はない旨主張する。
しかしながら、関係法令の規定からすると、請求人が受け入れた信用出資は消費税法第12条の2第1項に規定する「出資の金額」に該当するものと解され、当該信用出資の額は1千万円以上であることから、請求人は当該課税期間において消費税等を納める義務を免除されない。
参照条文等
消費税法第9条第1項、第12条の2第1項 行政書士法第13条の21第1項 会社法第580条第1項、第622条第1項、第666条 会社計算規則第30条第1項
相続税の法定申告期限までに判明した相続財産のみでも、遺産に係る基礎控除を超える場合には、その把握した相続財産に係る期限内申告書を提出しなかった場合、国税通則法第66条《無申告加算税》第1項ただし書に規定する「正当な理由」はないとした事例(平成27年9月相続開始に係る相続税の無申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第107集
ポイント
本事例は、相続税の法定申告期限までに判明した相続財産だけで遺産に係る基礎控除を超える場合、相続税の期限内申告書を提出しなければならないと解するのが相当であり、全ての相続財産を反映した相続税の申告書を作成できなかったとしても、「正当な理由」には該当しないと判断したものである。
要旨
請求人らは、期限内申告書を提出しなかったのは、法定申告期限において、被相続人が受け取るべき損害賠償金の額が確定しておらず、全ての相続財産を反映した相続税の申告書を作成することができなかったためであるから、国税通則法第66条《無申告加算税》第1項ただし書に規定する「正当な理由」がある旨主張する。
しかしながら、納税者が相続財産の全容を把握するため、種々の調査をし、情報入手の努力をした結果、法定申告期限までに相続財産の一部しか判明しなかったとしても、その判明した部分だけで遺産に係る基礎控除額を超える場合には、納税者は、判明した相続財産につき期限内申告書を提出しなければならず、納税者が、法定申告期限までに把握した相続財産の価額が遺産に係る基礎控除額を超えることによって相続税の申告書の提出を要すると認識し、又は認識し得た場合において、その把握した相続財産に係る期限内申告書を提出しなかった場合には、同項ただし書に規定する「正当な理由」があるとは認められないと解するのが相当であるところ、請求人らは、法定申告期限までに、相続税の申告について相談した税理士から相続税の申告が必要である旨の説明を受けるとともに、相続した土地の価額のみで基礎控除額を超えることを認識していたのであるから、相続税の申告が必要であることを認識していたものと認められる。したがって、請求人らが期限内申告書を提出しなかったことについて、同項ただし書に規定する「正当な理由」があるとは認められない。
参照条文等
参考判決・裁決
大阪高裁平成5年11月19日判決(税資199号834頁)
催告後6か月以内にされた承認によっても、民法第153条が規定する催告による時効中断効が生じるとした事例( 第二次納税義務の納付告知処分、 不動産の差押処分・ 棄却)
裁決事例集 第107集
ポイント
本事例は、催告後6か月以内にされた承認によっても、民法第153条が規定する催告による時効中断効が生じると解するのが相当であるとしたものである。
要旨
請求人は、滞納者(本件滞納者)の滞納国税(本件滞納国税)に係る債務の承認によって催告による時効中断の効力が生じるとする原処分庁の民法第153条《催告》の解釈は誤っており、本件滞納国税の徴収権の時効は中断していない旨主張する。
しかしながら、民法第153条は、債権者の催告について、債権者が正規の中断事由によって補強することにより時効中断の効力を認めるものであって、正規の中断手続をとるのが遅れることにより時効が完成するのを防ぐ便法として機能することを期待して定められたものと解され、債権者の催告について、債務者の行為による正規の中断事由である承認を、債権者の行為による正規の中断事由と区別する理由はないというべきであるから、催告後6か月以内にされた承認によっても、民法第153条が規定する催告による時効中断効が生じると解すべきである。
これを本件についてみると、本件滞納者の行った承認は、原処分庁が差押予告書(本件差押予告書)の送達によって行った本件滞納国税についての催告後6か月以内にされたものであるから、当該承認によって、本件差押予告書による催告の時効中断の効力が生じたものと認めるのが相当である。
参照条文等
国税通則法第72条第1項、第3項 民法第147条、第153条
参考判決・裁決
大阪高裁平成18年5月30日判決(判タ1229号264頁) 大審院昭和4年6月22日判決(民集8巻597頁) 最高裁昭和43年6月27日第一小法廷判決(民集22巻6号1379頁)
収入金額の一部が計上されていない試算表を作成した行為は、隠ぺい、仮装と評価すべき行為に該当するとは認められないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例( 平成25年分の所得税及び復興特別所得税の重加算税の賦課決定処分、 平成25年1月1日から平成25年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の重加算税の賦課決定処分・ 一部取消し)
裁決事例集 第107集
ポイント
本事例は、一部の業務に係る収入金額を除く一方当該業務に係る必要経費の一部を加えて作成された試算表は、確定申告義務が生じないことの説明資料として作成されたものとは認められないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、請求人は、建築設計業務のほか風俗業を営むことによって多額の利益が生じていることを認識しつつ、風俗業を行っていた複数の店舗のうちの一部の店舗に係る業務(本件独自業務)について、その収入金額を除く一方必要経費の一部を加えた試算表(本件試算表)を作成しているところ、本件試算表は、本件独自業務に係る収入金額を除外するともに、本件独自業務以外の業務において損失が生じているという虚偽の内容を記載することにより、所得金額が生じていないという状況を意図的に作出し、確定申告義務がないことの説明資料として作成されたものといえるから、請求人は、本件独自業務に基因する事業所得の金額を隠ぺいして確定申告書を提出しなかったものと認められる旨主張する。
しかしながら、本件試算表は、請求人が顧問契約の締結を検討していた税理士法人(本件税理士法人)によって作成されたものであるところ、請求人は、本件独自業務に係る売上げを記載した手帳の提示などをせず、本件税理士法人に試算表を作成させたと認められるものの、その後原処分調査までの間に、本件税理士法人に対して本件独自業務を行っていることを述べていることや、原処分調査の際、自ら進んで本件試算表を示して確定申告義務がないとの説明をしたこともなかったことなどを考慮すると、本件独自業務に係る収入金額を申告しないという意図を有していたとか、所得金額が生じない状況を意図的に作出したものとは認められず、本件試算表の作成は、請求人による隠ぺい、仮装と評価すべき行為に該当するとは認められない。
参照条文等
相続財産のうち一部の不動産については、財産評価基本通達によらないことが相当と認められる特別の事情があると認められることから、ほかの合理的な時価の評価方法である不動産鑑定評価に基づいて評価することが相当であるとした事例(平成24年6月相続開始に係る相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第107集
ポイント
本事例は、被相続人による各不動産の取得から借入れまでの一連の行為は、他の納税者との間での租税負担の公平を著しく害し、富の再分配機能を通じて経済的平等を実現するという相続税の目的に反するものであるから、各不動産について、財産評価基本通達に定める評価方法を画一的に適用するという形式的な平等を貫くことによって、かえって実質的な租税負担の公平を著しく害することが明らかであり、財産評価基本通達によらないことが相当と認められる特別の事情があると認められると判断したものである。
要旨
請求人らは、相続財産のうち一部の不動産(本件各不動産)については、財産評価基本通達(評価通達)に定める評価方法によらないことが相当と認められる特別の事情がないから、評価通達6《この通達の定めにより難い場合の評価》を適用することはできず、評価通達に定める評価方法により評価すべきである旨主張する。
しかしながら、被相続人による本件各不動産の取得から借入れまでの一連の行為は、被相続人が、多額の借入金により不動産を取得することで相続税の負担を免れることを認識した上で、当該負担の軽減を主たる目的として本件各不動産を取得したものと推認されるところ、結果としても、本件各不動産の取得に係る借入金が、本件各不動産に係る評価通達に定める評価方法による評価額を著しく上回ることから、本件不動産以外の相続財産の価額からも控除されることとなり、請求人らが本来負担すべき相続税を免れるものである。このような事態は、相続税負担の軽減策を採らなかったほかの納税者はもちろん、被相続人が多額の財産を保有していないために同様の軽減策によって相続税負担の軽減という効果を享受する余地のないほかの納税者との間での租税負担の公平を著しく害し、富の再分配機能を通じて経済的平等を実現するという相続税の目的に反するものであるから、本件各不動産について、評価通達に定める評価方法を画一的に適用するという形式的な平等を貫くことによって、かえって実質的な租税負担の公平を著しく害することが明らかであり、評価通達によらないことが相当と認められる特別の事情があると認められることから、ほかの合理的な時価の評価方法である不動産鑑定評価に基づいて評価することが相当である。
参照条文等
参考判決・裁決
東京地裁平成4年3月11日判決(判時1416号73頁、税資188号639頁) 東京地裁平成5年2月16日判決(判タ845号240頁、税資194号375頁) 東京高裁平成5年3月15日判決(行集44巻3号213頁、税資194号743頁)
ポイント
本事例は、法令解釈を基に、源泉徴収選択口座の制度を利用することを選択した者は、同制度において前提とされる計算と異なる日を選択して申告することは予定されていないと解すべきであると判断したものである。
要旨
請求人は、源泉徴収の選択をした特定口座(源泉徴収選択口座)を通じて行われた上場株式の譲渡(本件譲渡)について、本件譲渡に関する契約の効力発生の日(約定日)を本件譲渡に係る譲渡所得の収入すべき時期として申告を行うことは可能であると主張する。
しかしながら、源泉徴収選択口座の制度を利用することを選択した者は、譲渡をした日を基準に金融商品取引業者等が収入金額及び必要経費等の計算を行うことを前提に同制度を選択したものと解されるため、同制度において前提とされる計算と異なる日を選択して申告を行うことは予定されていないと解すべきであり、本件においては、特定口座内において処理される収入金額等の額が受渡日を基準に計算され、その状況により特定口座年間取引報告書も作成され請求人に報告されていること、また、特定口座源泉徴収選択届出書の提出期限が、特定口座内保管上場株式等の譲渡に係る決済日であること、さらに、本件譲渡に係る所得税等の源泉徴収は、受渡日に行われていることから、金融商品取引業者等は、受渡日を基準として所得計算等を行っていたといえ、金融商品取引業者等の行う所得計算等に基づき申告を行うことを選択した後において、約定日を本件譲渡に係る譲渡所得の収入すべき時期として申告することはできない。
参照条文等
租税特別措置法第37条の11の3第1項、第3項及び第7項、第37条の11の4第1項及び第2項 租税特別措置法通達(株式等譲渡所得等関係)37の10-1、37の11の3-14
請求人の代表取締役に対する役員給与の額のうち、同業類似法人の代表者に対する役員給与の額の最高額を超える部分の金額は不相当に高額な部分の金額であるとした事例( 平成25年8月1日から平成27年7月31日までの各事業年度の法人税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分並びに平成25年8月1日から平成26年7月31日までの課税事業年度の復興特別法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、 平成22年8月1日から平成25年7月31日までの各事業年度の法人税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分ほか・ 一部取消し、 棄却)
裁決事例集 第107集
要旨
原処分庁は、請求人の同業類似法人における代表者に対する役員給与の最高額と比較すると、請求人の代表取締役(本件代表者)に対する役員給与(本件役員給与)の額は、極めて高額であり、明らかに不相当に高額な部分があるから、当該最高額を本件代表者に対する役員給与相当額とし、本件役員給与の額のうち役員給与相当額を超える部分の金額は、不相当に高額な部分の金額として損金の額に算入されない旨主張し、請求人は、本件代表者の職務は格別であり、原処分庁が採用した同業類似法人の抽出基準は合理性を有するものではないから、本件役員給与の額について不相当に高額な部分の金額はない旨主張する。
しかしながら、審判所の調査の結果、本件代表者の職務の内容が特別に高額な役員給与を支給すべきほどのものとは評価し難く、原処分庁が採用した同業類似法人の抽出基準は合理性があるものと認められる。そして、本件代表者の職務内容に大きな変化はなく、請求人の収益の状況及び使用人給与の支給状況もおおむね一定であるところ、本件役員給与の額は同業類似法人の代表者に対する役員給与の額の最高額を上回るものであり、しかも当該最高額を支給する法人は、請求人よりも相当に経営状況が良好と評価される点を鑑みれば、本件役員給与の額のうち当該最高額を超える部分の金額は不相当に高額な部分の金額であるといえる。ただし、原処分庁が抽出した同業類似法人の中に、請求人とは業種の異なる法人が認められることから、同社を同業類似法人から除外した上で役員給与相当額を算定し、不相当に高額な部分の金額として損金の額に算入されない金額を計算すると、原処分の額を下回ることから、原処分の一部を取り消すのが相当である。
参照条文等
本件各土地は利用価値が著しく低下していると認められることから、財産評価額から10%を減額して評価すべきであり、本件意見価額は客観的な根拠が何ら示されておらず、請求人の主張には理由がないとした事例(平成26年7月相続開始に係る相続税の更正の請求に対する通知処分・一部取消し・平29年4月7日裁決)
裁決事例集 第107集
ポイント
本事例は、本件各土地の現況を的確に確認した上で、本件各土地は一体として利用されているとは認められず、畑と宅地ごとにそれぞれ一の評価単位として評価すべきであること、また、本件各土地は利用価値が著しく低下しているから、本件各土地の財産評価額から10%を減額して評価することが相当であるとしたものである。
要旨
請求人が、相続で取得した畑及び各宅地(本件各土地)の評価は不動産業者の作成した意見書による価額(本件意見価額)によるべきであるとして更正の請求をしたことに対し、原処分庁が、更正をすべき理由がない旨の通知処分をしたところ、請求人は、本件各土地の評価に当たって、本件各土地が無道路地であり、がけ地を含む上、公道から本件各土地まで重機が届かないという制約のために本件各土地の上の建物を取り壊すことができないなどの事情を考慮すべきであるから、本件意見価額を踏まえると、財産評価基本通達の定めにより算定した価額(財産評価額)からの減額割合を60%とすべきである旨主張する。
しかしながら、本件意見価額は、本件各土地の周辺の取引相場の裏付けを欠く上、具体的な数値や客観的な根拠が何も示されておらず、適正な時価を示しているとはいえないため、請求人の主張には理由がない。なお、本件各土地は、本件各土地の周辺の一連の土地との高低差を比較検討すると著しい高低差があり、その利用価値が付近にある他の土地の利用状況からみて著しく低下していると認められることから、国税庁ホームページのタックスアンサー「NO.4617利用価値が著しく低下している宅地の評価」の取扱いにより、本件各土地の財産評価額から10%を減額して評価するのが相当である。また、本件各土地は一体の土地として利用されているとは認められないことから、畑と宅地ごとにそれぞれ一の評価単位として評価すべきである。
参照条文等
請求人は、過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引につき、二個の貸付取引の存在を主張し、最初の過払金返還請求権について時効による消滅を主張しているが、その全体が一個の貸付取引であると認められ、過払金返還請求権の消滅時効は、本件取引の終了日である最終弁済日から進行するとして、請求人の主張を排斥した事例(第二次納税義務の納付告知処分・一部取消し)
裁決事例集 第106集
要旨
請求人は、国税の滞納者との間で行った金銭消費貸借取引(本件取引)は、本件取引1と本件取引2との二つに分かれており、前後二個の貸付取引が成立・存在するためには、原則として二個の基本契約の成立が要求されるところ、本件取引2においても、本件取引1とは法律的同一性を欠く基本契約が締結されていたものであり、本件取引1の終了時から10年を経過し、本件取引1に係る過払金返還債務は時効により消滅している旨主張する。
確かに、本件取引1における最終の弁済から本件取引2の最初の貸付までの期間は約1年11か月であり、本件取引1と本件取引2では、約定利率の変更がされるなどの事実が認められるが、本件取引2の開始日において、基本契約が締結され、契約書が取り交わされた事実は認められず、本件取引1の最終弁済後も、将来において取引を再開し、新たな借入金債務の発生が見込まれる状態にあったことに照らせば、本件取引は、その全体が本件取引に係る基本契約に基づく一個の貸付取引であると認めるのが相当である。過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては、同取引により発生した過払金返還請求権の消滅時効は、同取引が終了した時から進行するものとされており(最高裁平成21年1月22日判決)、したがって、一個の貸付取引である本件取引の終了日は、本件取引(本件取引2)の最終弁済日であり、過払金返還請求権の消滅時効は、同日から進行する。
参考判決・裁決
最高裁平成6年12月6日第三小法廷判決(民集48巻8号1451頁) 最高裁平成15年7月18日第二小法廷判決(民集57巻7号895頁) 最高裁平成19年6月7日第一小法廷判決(民集61巻4号1537頁) 最高裁平成19年7月13日第二小法廷判決(民集61巻5号1980頁) 最高裁平成21年1月22日第一小法廷判決(民集63巻1号247頁)
取引先から元代表者に支払われた金員は、請求人に帰属する収益とは認められないと認定した事例( 平成23年7月1日から平成24年6月30日までの事業年度の法人税の更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、 平成23年7月1日から平成24年6月30日まで及び平成25年7月1日から平成26年6月30日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・ 一部取消し、 棄却)
裁決事例集 第106集
ポイント
本事例は、取引先から請求人の元代表者に支払われた金員について、当該金員の支払に係る事実関係を総合すれば、元代表者個人に支払われたものとみるのが相当であり、請求人に帰属する収益と認めることはできないとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人の元代表者からの求めに応じて支払われた金員(本件金員)について、①元代表者が取引先に対して請求人の会長として振る舞っていたこと、②本件金員が請求人宛の支払明細書(本件支払明細書)に基づき支払われたこと、③本件金員の支払者が請求人との取引の継続を条件として支払っていたことから、本件金員は請求人に支払われたものである旨主張する。
しかしながら、当時、元代表者は請求人の役員や従業員ではなく、請求人が受注した工事に飽くまで仲介人として関与したにとどまることからすれば、元代表者の行為を請求人の行為と同視することはできない。また、本件支払明細書が請求人に送付されたと認めるに足る証拠はないから、本件支払明細書の記載をもって、本件金員が請求人に支払われたものとは認められず、さらに、請求人との取引の継続を目的として本件金員が支払われたことは、本件金員が請求人に支払われたことの決め手とはいえない。以上のことからすると、本件金員は、元代表者個人に支払われたものと認めるのが相当であり、請求人に帰属する収益とは認められない。
参照条文等
滞納者から請求人に譲渡された各診療報酬債権は、譲渡担保財産に当たらないと認定した事例( 譲渡担保権者の物的納税責任に関する告知処分、 債権の各差押処分、 平成28年2月17日付、平成28年2月23日付及び平成28年3月16日付でされた換価代金等の各配当処分、 平成28年3月23日付及び平成28年3月24日付でされた換価代金等の各配当処分・ 全部取消し、 却下)
裁決事例集 第106集
ポイント
本件における滞納者から請求人に対する診療報酬債権の譲渡契約を譲渡担保設定契約とみることは相当でない。
要旨
原処分庁は、滞納者(本件滞納者)が将来取得する診療報酬債権(本件各債権)を請求人に一括で譲渡した取引(本件取引)については実質的な買戻権が設定され、売渡担保に相当する法律関係にあると認められ、また、将来の集合債権の譲渡が売買又は譲渡担保のいずれの法的性質を有するかの判断については、契約条件、取引の経済的実質その他の要素を総合的に評価するなど、実質においても担保取引として扱われるべきものかを判断することとなるところ、本件取引における事情を考慮すると、譲渡担保であることが強く推認され、本件各債権は、国税徴収法第24条《譲渡担保権者の物的納税責任》第1項に規定する譲渡担保財産に当たる旨主張する。
しかしながら、譲渡担保設定契約は、法形式に着目すると、①金銭消費貸借契約などに基づく被担保債権が存在することが前提となる譲渡担保設定契約、②担保のための権利の移転につき売買の形式をとるもので、買戻特約付売買の形式をとる譲渡担保設定契約又は再売買の予約の形式をとる譲渡担保設定契約とに大別されるところ、本件取引においては、被担保債権は存在せず、本件取引に係る契約(本件契約)には、買戻特約又は再売買の予約は付されていないことから、本件取引は①及び②のいずれにも該当しない。また、本件契約には、本件滞納者が、第三債務者に信用不安等が生じた場合に請求人から本件各債権を買い戻す義務の定め及び請求人による本件各債権の処分を禁止又は制限する定めはなく、本件滞納者に本件各債権を買い戻す誘因も認められない。
したがって、本件各債権は譲渡担保財産には当たらない。
参照条文等
参考判決・裁決
大審院昭和8年4月26日判決(民集12巻767頁)
取引先から入金された金員が貸付金の返済であるとする請求人の主張を認めず、事業所得の収入金額に該当するとした事例( 平成20年分から平成24年分までの所得税の各決定処分及び重加算税の各賦課決定処分、 平成25年分から平成26年分までの所得税及び復興特別所得税の各決定処分並びに重加算税の各賦課決定処分、 平成22年1月1日から平成26年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各決定処分並びに重加算税の各賦課決定処分・ 一部取消し、 棄却)
裁決事例集 第106集
ポイント
本事例は、請求人が業者から受領した金員について当該業者の貸付金の返済に該当するものではなく、請求人と当該業者との間で締結した飲料水等の自動販売機設置契約に基づき、手数料として支払われたものと判断したものである。
要旨
請求人は、自動販売機設置業者から入金された金員(本件入金)が請求人の当該業者に対する貸付金の返済であり、当該貸付金の元本部分について所得税法第36条《収入金額》第1項の収入すべき金額ではない旨主張する。
しかしながら、本件入金は、請求人と当該業者との間で締結した契約に基づき、請求人が当該業者に飲料水等の自動販売機を設置させ、飲料水等を販売させることにより、当該業者から販売本数に応じた手数料として請求人に支払われたものであるから、外部からの経済的価値の流入である収入に該当し、その全額が請求人の収入すべき金額となる。また、請求人と当該業者との間で、当該契約以外に金銭授受を伴う契約が締結された事実は認められないことから、本件入金は、当該業者に対する貸付金の返済であるとは認められない。
参照条文等
法人税額から控除される所得税の額の計算において、配当の計算期間のうちにその元本を所有していた期間の占める割合を判断した事例( 平成24年12月1日から平成25年11月30日までの事業年度の法人税の更正処分、 平成25年12月1日から平成26年11月30日までの事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・ 棄却、 一部取消し)
裁決事例集 第106集
ポイント
本事例は、法人税法施行令第140条の2第2項に規定する判定対象配当等がその支払に係る基準日の1年前の日以前に設立された法人からその設立の日以後最初に支払われる剰余金配当等である場合において、法人税の額から控除される所得税の額について判断した事例である。
要旨
請求人が所有する関連会社の株式(本件株式)に対する配当(本件配当)について、本件配当の計算の基礎となった期間(配当計算期間)の月数のうちに請求人がその元本を所有していた期間(元本所有期間)の月数の占める割合(所有期間割合)の算定に当たり、原処分庁は、配当計算期間の月数は、平成25年6月1日から平成26年5月31日までの12か月であり、請求人の元本所有期間の月数は、本件株式を取得した日である同年3月18日から同年5月31日までの3か月であるから、法人税法施行令(平成25年政令第166号による改正前のもの)第140条の2《法人税額から控除する所得税額の計算》第2項の規定により所有期間割合(3か月/12か月)は0.250となる旨主張する一方、請求人は、配当計算期間の月数は、平成26年6月1日から当該関連会社の臨時株主総会における配当決議の日である同年9月18日までの4か月であり、請求人の元本所有期間の月数は、同年6月1日から同年9月18日までの4か月であるから、同項の規定により所有期間割合(4か月/4か月)は1.000となる旨主張する。
しかしながら、本件配当は、同項に規定する判定対象配当等がその1年前の日以前に設立された法人からその設立の日以後最初に支払われる剰余金配当等である場合に該当すると認められるから、配当計算期間の初日は、本件配当の支払に係る基準日である平成26年9月18日の1年前の日の翌日である平成25年9月19日となり、配当計算期間の月数は、同日から本件配当の基準日である平成26年9月18日までの12か月となる。そして、請求人の元本所有期間の月数は、本件株式を取得した日である同年3月18日から同年9月18日までの7か月と認められるから、同項の規定により所有期間割合(7か月/12か月)は0.584となる。したがって、これを前提に法人税額から控除される所得税等の額を計算すると、原処分の一部を取り消すべきである。
参照条文等
法人税法第68条 法人税法施行令(平成25年政令第166号による改正前のもの)第140条の2
土地上に建物を有していた被相続人が当該土地の所有者に対し地代として支払っていた金員は、当該土地の使用収益に対する対価であると認められないから、被相続人が当該土地上に借地権を有していたとは認めることはできないとした事例(平成24年10月相続開始に係る相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・全部取消し)
裁決事例集 第106集
ポイント
本事例は、土地上に建物を有していた被相続人が当該土地の所有者に対し地代として支払っていた金員が、当該土地の固定資産税等年税額を超えていたものの、その他の事実関係からすると、かかる事情のみでは、当該金員が本件土地の使用収益に対する対価であるとは認めるに足りないというべきであるとして、被相続人が当該土地上に借地権を有していたとは認めることはできないと判断したものである。
要旨
原処分庁は、①本件土地上に建物を有していた被相続人が、本件土地の所有者である請求人に対し地代として金員(本件金員)を支払っていたこと、②請求人は本件金員を不動産所得に係る地代収入として所得税の確定申告をしたこと、③本件土地に係る各年度の固定資産税相当額及び都市計画税相当額の合計額(固定資産税等年税額)は変動するにもかかわらず本件金員の額が一定であり、請求人と被相続人との間において本件土地に係る通常の必要費を負担することを約していたとは認められないこと、④本件金員の年額は、本件土地に係る相続開始年度の固定資産税等年税額に本件建物に係る被相続人の持分を乗じた金額を優に上回るから、使用貸借通達からも使用貸借とみる余地はないことなどを理由に、被相続人は本件土地上に借地権を有していた旨主張する。
しかしながら、①被相続人による本件土地の使用収益は、本件金員の支払が開始する以前(本件土地を請求人が被相続人の父から相続により取得したとき以前)においては使用貸借契約に基づくものであったと認められること、②本件金員の支払開始に当たり、請求人と被相続人との間で契約書が作成されたなどの事情は見当たらないこと、③本件金員の支払開始の経緯や本件金員の算定根拠も明らかではないこと、さらに、④被相続人と請求人は親子であり、本件金員の支払が開始された当時、請求人が未成年者であったことを併せ考慮すると、本件金員が本件土地の使用収益に対する対価であると認めるに足りないというべきであるから、被相続人による本件土地の使用収益は使用貸借契約に基づくものであったと認めるのが相当であり、被相続人が本件土地上に借地権を有していたとは認めることはできない。
参照条文等
民法第593条、第601条
参考判決・裁決
最高裁昭和35年4月12日第三小法廷判決(民集14巻5号817頁) 最高裁昭和41年10月27日第一小法廷判決(民集20巻8号1649頁) 平成8年3月29日裁決(裁決事例集No.51)
旧ゴルフ会員権と新ゴルフ会員権には資産としての同一性があるものとは認められないため、旧ゴルフ会員権の入会時に支払った預託金等は、新ゴルフ会員権の譲渡所得の計算上、取得費として控除することができないとした事例(平成25年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第106集
ポイント
本事例は、ゴルフ場経営会社に係る民事再生手続における再生計画及び営業譲渡契約において、①新運営会社は旧運営会社の債務及び旧会員契約を承継しないこと、②ゴルフ場施設の利用を希望する会員は、新たに会員契約を締結する必要があることが定められていることから、旧ゴルフ会員権の優先的施設利用権と預託金債権はいずれも消滅していると認められ、旧ゴルフ会員権と新ゴルフ会員権とは同一性があるものとは認められないと判断したものである。
要旨
請求人は、譲渡したゴルフ会員権(本件ゴルフ会員権)は、当初取得した旧運営会社のゴルフ会員権(旧ゴルフ会員権)が民事再生手続における再生計画(本件再生計画)に基づき、営業譲渡に際して新運営会社に預託金が減額されて引き継がれたものであり、本件ゴルフ会員権の譲渡所得の計算上、当初取得時に支払った登録料及び入会保証金(預託金等)は、取得費として控除することができる旨主張する。
しかしながら、譲渡所得の金額の計算上控除されるべき取得費は、譲渡資産と同一性が認められる資産の取得に要した金額をいうものと解されるところ、本件再生計画及び営業譲渡契約において、①新運営会社は旧運営会社の債務及び旧会員契約を承継しないこと、②ゴルフ場施設の利用を希望する会員は、新たに会員契約を締結する必要があることが定められていることからすると、旧ゴルフ会員権の優先的施設利用権と預託金債権はいずれも消滅していると認められ、旧ゴルフ会員権と本件ゴルフ会員権には資産としての同一性があるものとは認められない。したがって、請求人が入会時に支払った預託金等は、所得税法第33条《譲渡所得》第3項に規定する譲渡所得の計算上、取得費として控除することができない。
参照条文等
参考判決・裁決
東京高裁平成24年6月27日判決(税資262号順号11977) 平成24年8月2日裁決(裁決事例集№88)
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