裁決事例 裁決事例集 第135集
固定資産課税台帳に登録された価格のない土地に類似する不動産は存在せず、当該土地の登録免許税の課税標準たる価額は、当該土地を固定資産評価基準に定める評価方法に則して算定するのが相当であるとした事例(令和4年12月登記により納付された登録免許税に係る還付通知をすべき理由がない旨の通知処分・一部取消し)
裁決事例集 第135集
ポイント
本事例は、原処分庁が主張する固定資産課税台帳に登録された価格のない土地に類似する不動産は、当該土地に類似する不動産とは認められず、当審判所における調査の結果においても、当該土地に類似する不動産は存在しないため、当該土地の登録免許税の課税標準たる価額は、本件各土地を固定資産評価基準に定める評価方法に則して算定するのが相当であるとしたものである。
要旨
請求人は、所有権移転登記(本件登記)を受けた各土地(本件各土地)には、本件登記の時に固定資産課税台帳に登録された価格(台帳価格)があったとして、当該価格をもって登録免許税の課税標準たる価額とすべきである旨主張する。一方、原処分庁は、本件各土地には台帳価格がなく、登記官が登録免許税法施行令附則第3項の規定により、本件各土地に類似する不動産の台帳価格を基に算定した価額(本件登記官認定額)を登録免許税の課税標準たる価額としたことは適正である旨主張する。
しかしながら、本件登記の時に本件各土地の台帳価格はなく、請求人の認識には誤りがある。また、原処分庁が主張する本件各土地に類似する不動産は、本件各土地とは形状が大きく異なるほか、地積や接道状況等にも違いがあるため、本件各土地に類似する不動産とは認められないから、本件登記官認定額は、登録免許税法施行令附則第3項に規定する登記機関が認定した価額として適正なものとはいえない。そして、当審判所における調査の結果においても、本件各土地に類似する不動産は存在しないから、本件各土地の登録免許税の課税標準たる価額は、本件各土地を固定資産評価基準に定める評価方法に則して算定した台帳価格相当額とすべきである。
参照条文等
登録免許税法第10条、附則第7条 登録免許税法施行令附則第3項
参考判決・裁決
金地金が消費税法第36条第5項に規定する「棚卸資産」に該当するとした事例(令和3年3月1日から令和4年2月28日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第135集
ポイント
本事例は、金地金の売買が請求人の事業目的から離れたところで行われたものとはいえず、請求人が当該金地金を取得した時点においてこれを売却する方針を有していたことから、当該金地金は消費税法第36条第5項に規定する「棚卸資産」に該当すると判断したものである。
要旨
請求人は、金地金の売買を反復継続して行うものではないから、金地金の売買が請求人の営業に当たることはなく、請求人が消費税を納める義務が免除されることとなった課税期間の初日の前日において保有していた金地金(本件金地金)は消費税法第36条《納税義務の免除を受けないこととなった場合等の棚卸資産に係る消費税額の調整》第5項に規定する「棚卸資産」に該当しない旨主張する。
しかしながら、消費税法第36条第5項に規定する「棚卸資産」に該当するか否かについては、会計処理のみにより形式的に判断するのではなく、判断の対象とされている資産と事業者の属性及び事業目的との関係、当該資産の取得時の使用・収益・処分に係る方針等といった客観的な事実に基づき、事業者が、通常の営業過程、すなわち、その事業目的に係る業務の過程において売却することを目的として保有する資産に当たるといえるかどうかにより実質的に判断するのが相当である。そして、請求人が行う金地金の売買に係る取引額が、いずれも、請求人の事業規模に照らして大きなものである等、請求人の事業に及ぼす影響が大きいことからすると、請求人における金地金の売買は、補助ないし付随的な活動とはいえず、定款に明示的に掲げられた事業目的そのものではないとしても、事業目的から離れたところで行われているものとはいえないから、本件金地金は、請求人の事業目的に係る取引の客体にほかならないと認められる。また、本件金地金の取得から売却に至る経緯及び本件金地金を取得するための借入金を返済するためには本件金地金を売却する必要があったこと等からすると、請求人は、本件金地金を取得した時点において、将来、これを売却する方針を有していたと認められる。これらの事実に基づけば、請求人は、その事業目的に係る業務の過程において売却することを目的として本件金地金を保有していたものと認められるから、本件金地金は消費税法第36条第5項に規定する「棚卸資産」に該当する。
参照条文等
消費税の申告納税義務を免れることを積極的に意図し、収支内訳書等に過少な記載を行って免税事業者であると装い続けたことは仮装隠蔽行為に該当すると判断した事例( 平成27年1月1日から同年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の決定処分、 平成28年1月1日から令和元年12月31日までの消費税及び地方消費税の各決定処分、 平成27年1月1日から令和3年12月31日までの消費税及び地方消費税の重加算税の各賦課決定処分・ 一部取消し、 棄却)
裁決事例集 第135集
ポイント
本事例は、請求人による継続した収支内訳書等の過少記載行為は、消費税の申告納税義務を免れることを積極的に意図して免税事業者であることを装い続けたものであり、仮装隠蔽行為に該当するとしたものである。
要旨
請求人は、①請求人による消費税等の認識ある無申告は無申告行為そのものであることや、②何ら根拠のない収入金額及び必要経費の額を収支内訳書に記載することは、過少申告行為そのものであって、隠蔽行為又は仮装行為に該当せず、特段の行動に当たるとも評価できない旨主張する。
しかしながら、請求人は、何ら根拠のない収入金額等を収支内訳書に記載したのではなく、課税期間に係る基準期間の売上げが1,000万円以下となれば、消費税等の申告義務を負わないと認識した上で、平成25年以降比較的長期間にわたって、消費税等の申告納税義務を免れることを積極的に意図し、故意に事業所得の総収入金額が1,000万円を超えないように所得税等の確定申告書及び収支内訳書に過少な収入金額を記載して原処分庁に提出することで、課税標準等の計算の基礎となるべき事実である、基準期間中における課税資産の譲渡等の対価の額を故意に脱漏し、課税期間において消費税法上の免税事業者であることを装い続け、本件の各課税期間の消費税等の確定申告をしなかったのであるから、かかる行為は隠蔽又は仮装と評価すべき行為であり、単なる無申告行為や過少申告行為そのものと評価することはできない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成6年11月22日第三小法廷判決(民集48巻7号1379頁)
特定口座内で譲渡した上場株式等の取得費を概算取得費とすることはできないとした事例(令和元年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第135集
ポイント
本事例は、特定口座内で譲渡した上場株式等の取得費については、当該特定口座内における当該上場株式等の受入れに係る記録を基礎として金融商品取引業者等において当該上場株式に関する固有の計算方法により一元的に計算されることを予定しているのであって、納税者が申告するに当たり概算取得費とすることはできないとしたものである。
要旨
請求人は、①源泉徴収選択口座に係る特定口座内保管上場株式等の譲渡所得の金額を申告するに当たり、租税特別措置法第37条の11の3《特定口座内保管上場株式等の譲渡等に係る所得計算等の特例》第1項が特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額とそれ以外の株式等の譲渡による譲渡所得の金額とを区分して、これらの金額を計算する旨規定したのは、特定口座創設の趣旨等からすれば、投資家の所得計算の負担を軽減するために金融商品取引業者等が計算を代行したにすぎないから、納税者が確定申告において取得費等を含めて譲渡所得の金額を再計算することができる旨、②租税特別措置法関係通達(措置法通達)37の11の3-14《株式等に係る譲渡所得等の課税の特例に関する取扱い等の準用》は計算代行者である金融商品取引業者等の計算等に関する定めであって、納税者が概算取得費を譲渡所得に係る取得費として譲渡所得の金額を計算することは妨げられない旨それぞれ主張する。
しかしながら、①特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額の計算上取得費に算入する金額は、当該上場株式等の特定口座への受入れに係る記録を基礎として金融商品取引業者等が固有の計算方法により一元的に計算することが予定されており、②措置法通達37の11の3-14が、概算取得費による取得費を認める旨を定めた措置法通達37の10・37の11共-13《株式等の取得価額》を準用していないのは、特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額の計算に当たり、概算取得費を取得費とすることを認めない趣旨であると解すべきであるから、納税者が源泉徴収選択口座に係る特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額を申告するに当たり、概算取得費を取得費とすることはできない。
参照条文等
所得税法第48条第3項 所得税法施行令第118条第1項 租税特別措置法(令和2年法律第8号による改正前のもの)第37条の11の3第1項、第3項 租税特別措置法施行令(令和3年政令第119号による改正前のもの)第25の10の2第1項
他人による確定申告書の作成・提出について、国税通則法第24条の「納税申告書の提出があった場合」に該当するとした事例(平成28年分から令和2年分の所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第135集
ポイント
本件は、納税義務者以外の者による納税申告について、納税義務者が明示又は黙示に当該納税申告をする権限を与えていたとは認められないものの、納税義務者が、当該納税申告について追認していると認められるとしたものである。
要旨
請求人は、請求人名義の納税申告書は、他人が成りすまして提出されたものであり、当該納税申告は無効であるため、国税通則法第24条《更正》に規定する納税申告書を提出した場合に該当しない旨主張する。
しかしながら、納税義務者以外の者が申告書を作成及び提出した場合であっても、その者が納税義務者から明示又は黙示に当該申告行為をする権限を与えられている場合や、納税義務者が当該申告行為を追認した場合は、その納税申告は有効となると解されるところ、請求人は、明示又は黙示に当該納税申告をする権限を与えていたとは認められないが、権限なくされた他人による当該納税申告を当該納税申告書が提出された後に追認したと認められるから、当該納税申告は有効となり、当該納税申告書の提出は、同条の納税申告書を提出した場合に該当する。
参照条文等
参考判決・裁決
高松高裁昭和58年3月9日判決(税資129号467頁) 平成22年8月23日裁決(裁決事例集No.80)
事業協同組合の出資持分の価額は財産評価基本通達196に定める評価方法(純資産価額)に基づき評価するのが相当であるとした事例(平成29年4月相続開始に係る相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第135集
ポイント
本事例は、本件における事業協同組合の出資持分が究極的には当該組合の純資産価額を体現したものといえるものであり、評価に当たって財産評価基本通達196《企業組合等の出資の評価》の定めを適用することが合理的であると判断したものである。
要旨
請求人は、その主張する相続により取得した事業協同組合の出資持分(本件持分)の価額は、当該組合の定款(本件定款)に定める脱退組合員の払戻金を根拠として組合員の間でも適正価額として流通していたものであるから、当該価額をもって評価すべき旨主張する。
しかしながら、本件定款に当該組合を脱退した際の払戻金を定めていることを前提としても、当該組合の純資産価額を基礎とした持分の価額が出資額を上回っていれば、その差額は当該組合の内部に留保された状態であり、最終的に解散して清算することになれば、純資産価額に基づく財産が分配されることになるから、本件持分は究極的には当該組合の純資産価額を体現したものといえる。
したがって、本件持分の評価に当たっては、財産評価基本通達196《企業組合等の出資の評価》の定めを適用することが合理的であることに加え、本件持分の譲渡には当該組合の承諾が必要であり、市場を通じた不特定多数の当事者間の自由な取引が行われるものではなく、本件持分の価額が組合員の間において請求人が主張する価額と認識されていたとしても、その価額は当事者間において限定的に形成されたものであって、これを本件持分の時価と認めることはできない。
参照条文等
参考判決・裁決
名古屋高裁平成16年2月19日判決(税資254号順号9566) 平成14年12月16日裁決(裁決事例集No.64)
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