裁決事例 裁決事例集 第110集
当初から相続税を過少に申告する意図を有していたと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例( 平成26年2月相続開始に係る相続税の各修正申告に係る重加算税の各賦課決定処分、 平成26年2月相続開始に係る相続税の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、 平成26年2月相続開始に係る相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、 全部取消し、 一部取消し、 棄却)
裁決事例集 第110集
ポイント
本事例は、請求人らが当初から相続税を過少に申告する意図を有していたとか、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとは認められないとして、重加算税の賦課要件を満たさないと判断したものである。
要旨
原処分庁は、請求人らは、請求人らが相続開始直前に被相続人名義の預貯金から引き出した金員(本件金員)について、相続財産であることを十分認識していながらこれを遺産分割協議書に記載せず、また、相続税の申告書(本件申告書)を作成した税理士(当初申告代理人)に対し、被相続人名義の預貯金通帳の提示等をすることなく、本件申告書に記載された各預金口座の残高証明書のみを提示することにより、過少な相続税額が記載された本件申告書を作成させてこれを提出したものと認められるから、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づく過少申告をしたと認められる旨主張する。
しかしながら、請求人らが、本件金員が被相続人の財産であることを十分認識していたと認めるのは困難である上、当該遺産分割協議書及び本件申告書の作成に当たり、当初申告代理人に対し、被相続人名義の預金口座の残高証明書のみを提示したのは、当初申告代理人から預貯金通帳の提示や本件相続開始前後の入出金についての説明を求められなかったからであり、このことにより、過少な相続税額が記載された本件申告書を作成させたとは認められず、原処分庁の主張を根拠付ける証拠も見当たらない。そうすると、請求人らが、当初から過少に申告する意図を有していたとか、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとは認められず、その他、当審判所の調査によっても、請求人らについて、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する隠ぺい又は仮装の行為があったとは認められない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
設備を事業の用に供していなかったことから損金不算入額となった償却費は償却超過額には該当せず、翌事業年度において損金経理額に含まれないとした事例(平成26年4月1日から平成27年3月31日まで及び平成27年4月1日から平成28年3月31日までの各事業年度の法人税の各更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の各通知処分、平成26年4月1日から平成27年3月31日まで及び平成27年4月1日から平成28年3月31日までの各事業年度の法人税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分、平成27年4月1日から平成28年3月31日までの課税事業年度の地方法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第110集
ポイント
本事例は、事業年度終了時において事業の用に供されていない資産について、当該事業年度において償却費として損金経理した金額が損金不算入額となった場合、それは法人税法上の減価償却資産に該当しない資産に係るものであるから、当該事業年度の償却超過額には該当せず、翌事業年度の損金経理額に含まれないとしたものである。
要旨
請求人は、太陽光発電設備を取得した事業年度において、同設備に係る償却費の額を損金の額に算入して法人税の確定申告をした後、同設備を当該事業年度内に事業の用に供していなかったとして当該償却費の額を償却超過額として修正申告したところ、当該事業年度の翌事業年度に電力の供給を開始して同設備を事業の用に供したことから、当該翌事業年度の法人税について、同設備に係る償却費の額を損金の額に算入すべきである旨主張する。
しかしながら、同設備は当該事業年度終了時においては事業の用に供されていないから、法人税法上の減価償却資産に該当しない。そして、当該事業年度において償却費として損金経理をしていたとしても、それは法人税法上の減価償却資産に該当しない資産に係るものであって、法人税法第31条《減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法》第1項に規定する償却費として損金経理をした金額(損金経理額)に該当せず、また、法人税法上の減価償却資産に係る償却超過額にも当たらない。そうすると、請求人が当該事業年度に償却超過額とした金額は、当該翌事業年度において、同条第4項に規定する当該償却事業年度前の各事業年度における当該減価償却資産に係る損金経理額のうち当該償却事業年度前の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されなかった金額(償却超過額)には該当せず、当該翌事業年度の損金経理額に含まれないから、当該翌事業年度の損金の額に算入することはできない。
参照条文等
馬券の的中によって得た払戻金に係る所得について、請求人の一連の馬券購入行為をもって一体の経済活動の実態を有するものとはいえないから、営利を目的とする継続的行為から生じた所得とは認められず、一時所得に該当するとした事例( 平成24年分の所得税の更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分、 平成25年分及び平成26年分の所得税及び復興特別所得税の各更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の各通知処分・棄却)
裁決事例集 第110集
要旨
請求人は、競馬の勝馬投票券(馬券)の的中によって得た払戻金に係る所得(本件競馬所得)は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得として雑所得に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人は、馬券を自動的に購入するソフトを使用してインターネットを介して多数回かつ頻繁に馬券を購入していたと認められるものの、請求人による一連の馬券の購入行為は、その損益の状況をみると、確定申告をした各年で大きく変動しているのみならず、そのうちの1年は損失が発生しており、また、請求人は、的中確率が低い反面、一口で高額の払戻金が得られる可能性のある五重勝単勝式勝馬投票法に係る馬券を多数回購入し、その的中による利益が当該損益の額に一定割合を占めるなどしていることからすると、その期間、頻度、購入規模の大きさなどの点を考慮してもなお、客観的にみて多額の利益が恒常的に上がると期待し得る行為であったとは認められない。加えて、個々の購入馬券の種類やその金額の全てが明らかにされていない以上、請求人が主張する独自の条件設定と計算式に基づき個々の馬券の的中に着目しない網羅的な購入をしていたものと認めることはできない。したがって、請求人による一連の馬券の購入行為をもって一体の経済活動の実態を有するとまではいえないから、本件競馬所得は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるとは認められず、また、労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないから、一時所得に該当する。
参考判決・裁決
最高裁平成27年3月10日第三小法廷判決(刑集69巻2号434頁)
原処分庁が認定した登録免許税の課税標準たる土地の価額は、当該土地に類似する不動産の固定資産課税台帳の登録価格を基礎としたものということはできないとした事例(登録免許税の還付通知をすべき理由がない旨の通知処分・一部取消し)
裁決事例集 第110集
ポイント
本事例は、平成27年中にした平成26年12月31日現在の固定資産課税台帳に登録された価格(台帳登録価格)がない土地(本件各土地)の所有権移転登記に係る登録免許税の課税標準について、本件各土地の周辺で、本件各土地と不動産の形状、地積、間口、奥行き、利用状況及び接道状況、土地利用に係る行政上の規制等の内容や固定資産評価に適用される路線価等が類似すると認められる土地の台帳登録価格の1平方メートル当たりの価格を基礎として、本件各土地の価額を算定するのが相当であるとしたものである。
要旨
請求人は、平成27年中にした固定資産課税台帳に登録された価格(台帳登録価格)がない土地(本件各土地)の所有権移転登記(本件登記)に当たり、原処分庁が、登録免許税法施行令附則第3項の規定に基づき近傍宅地(本件近傍宅地:面積が150平方メートル程度の画地)の価格から認定した価額(登記官認定価額)は過大であり、平成28年度台帳登録価格が、本件登記時の正当な価額であるから、納付した登録免許税は過大になっている旨主張する。
しかしながら、本件各土地に係る登記申請は、平成27年中になされており、用いるべき台帳登録価格は平成26年12月31日現在のものであって、これと異なり、平成28年1月1日を基準日とする平成28年度台帳登録価格を用いる請求人の主張額は、同項第1号の規定に反しており、また、登記官認定価額は、単に本件近傍宅地の固定資産評価の路線価に雑種地等補正をして算定されただけであることがうかがわれ、不動産の形状、地積等の異なる本件各土地に類似する不動産の台帳登録価格を基礎としたものということはできない。したがって、当審判所が認定した、本件登記の嘱託の日において、本件各土地の周辺で、本件各土地と不動産の形状、地積、間口、奥行き、利用状況及び接道状況、土地利用に係る行政上の規制等の内容や固定資産評価に適用される路線価等が類似すると認められる土地の台帳登録価格の1平方メートル当たりの価格を基礎として、本件各土地の価額を算定するのが相当である。
参照条文等
登録免許税法第10条 登録免許税法附則第7条 登録免許税法施行令附則第3項
参考判決・裁決
東京地裁平成23年8月23日判決(訟月59巻5号1299頁) 平成28年4月7日裁決(裁決事例集No.103) 平成28年9月28日裁決(裁決事例集No.104)
支払った金員に係る領収証の名目を書き直させた行為は、当該金員が譲渡費用に該当しないことを認識していたと認めるに足りる証拠はないから隠ぺい又は仮装をしたものとはいえないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例( 平成26年分の所得税等の修正申告に係る重加算税の賦課決定処分、 平成26年分の所得税等の更正処分、 平成26年分の所得税等の重加算税の賦課決定処分・ 一部取消し、 棄却)
裁決事例集 第110集
ポイント
本事例は、請求人が農地の借主(本件借主)に支払った金員(本件金員)について、譲渡費用に該当しないことを認識していたことを認めるに足りる証拠はないから、本件借主に本件金員に係る領収証の名目を離農補償金と書き直させたことは、隠ぺい又は仮装をしたものとはいえないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、請求人が農地の借主(本件借主)に支払った金員(本件金員)について、譲渡費用にならないことを認識しながら、領収証の名目を離農補償金と書き直させたことは、国税通則法第68条《重加算税》第1項にいう隠ぺい、仮装に当たると主張する。
しかしながら、請求人が本件借主に農地法上の耕作権がないことを知っていたとしても、そのことをもって直ちに、本件借主との間の貸借状態解消のために支払った本件金員が譲渡費用にならないことまで認識していたとはいい難い。また、その他、請求人が本件金員が譲渡費用に該当しないことを認識していたことを認めるに足りる証拠はないから、請求人が同項にいう隠ぺい又は仮装をしたものとはいえない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成23年6月7日第三小法廷判決(民集65巻4号2081頁) 最高裁平成18年4月20日第一小法廷判決(集民220号141頁) 最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁) 最高裁昭和41年10月27日第一小法廷判決(民集20巻8号1649頁) 東京地裁平成17年9月9日判決(訟月52巻7号2349頁)
消費税法第9条の2第1項及び第3項の規定により、基準期間がない場合でも請求人の消費税の納税義務は免除されないとした事例(平成26年4月1日から平成27年3月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の決定処分並びに無申告加算税の賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第110集
ポイント
本事例は、消費税法第9条の2第1項に規定する「法人のその事業年度の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である場合」には、「その事業年度の基準期間がない」場合が含まれるとしたものである。
要旨
請求人は、消費税法第9条の2《前年又は前事業年度等における課税売上高による納税義務の免除の特例》第1項の規定は「法人のその事業年度の基準期間の課税売上高が1,000万円以下である場合において」と限定されており、同項の規定を条文に沿って解釈すれば、その事業年度の基準期間がない場合には同項の適用はないところ、請求人の場合、同項の規定の適用はなく、また、同法第12条の2《新設法人の納税義務の免除の特例》第1項の規定の適用もないから、同法第9条《小規模事業者に係る納税義務の免除》第1項本文の規定により、消費税の納税義務はない旨主張する。
しかしながら、消費税法第9条第1項本文に規定する「事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が1,000万円以下である者」には、当然に「その事業年度の基準期間がない法人」も含まれ、同法第9条の2第1項に規定する「法人のその事業年度の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である場合」についても、同様に「その事業年度の基準期間がない」場合が含まれる。また、同法第12条の2第1項の括弧書において、同条の適用がある法人の課税期間から同法第9条の2第1項の規定により納税義務が免除されないこととなる課税期間が除かれていることからすると、同法第12条の2第1項は、同法第9条の2第1項の規定の適用対象に「その事業年度の基準期間がない法人」が含まれていることを前提に規定されており、このことをみても、同法第9条の2第1項の規定の適用対象に「その事業年度の基準期間がない法人」が含まれることは明らかである。以上のことから、消費税法第9条の2第1項の規定は、その事業年度の基準期間がない場合についても適用があり、同項の規定の適用がある場合、同法第12条の2第1項の規定の適用はないことから、同法第9条の2第1項及び第3項の規定により、請求人の消費税の納税義務は免除されない。
参照条文等
当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったことをうかがわせる事情は見当たらないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例(平成27年5月相続開始に係る相続税の重加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第110集
ポイント
本事例は、請求人らが、相続手続等を依頼した弁護士に対し、法定申告期限前に相続財産の内容等が記録されているUSBメモリを交付していたと認められるなどとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、請求人らは、有価証券及び現金預貯金等を相続財産として申告しなければならないことを十分認識していたにもかかわらず、相続手続等を依頼した弁護士(本件弁護士)に対し、相続税を安くする目的で相続財産の内容等が記録されているUSBメモリ(本件USBメモリ)を交付せず、また、請求人らが相続開始直前に被相続人の預金口座から出金した現金(本件現金)の存在も伝えなかったのであり、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づき過少申告をしたものと認められるから、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たす旨主張する。
しかしながら、請求人らは、本件弁護士に対して法定申告期限前に本件USBメモリを交付していたものと認められ、また、本件現金の存在を本件弁護士に秘匿するためにその事実を伝えなかったと評価することはできず、その他、当審判所の調査及び審理の結果によっても、請求人らに、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったことをうかがわせる事情は見当たらないから、同項に規定する重加算税の賦課要件は満たさない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁) 平成27年10月2日裁決(裁決事例集No.101)
請求人が支出した自動車関係費等は、不動産貸付業務の遂行上必要であった部分を明らかにすることができないから、必要経費の額に算入することはできないとした事例( 平成24年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、 平成25年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分、 平成26年分の所得税及び復興特別所得税の更正の請求に対してされた更正処分、 平成24年1月1日から平成26年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに平成25年1月1日から平成25年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税にかかる過少申告加算税の賦課決定処分・ 一部取消し、 棄却)
裁決事例集 第110集
ポイント
本事例は、請求人が支出した固定資産税、自動車関係費用及び接待交際費を不動産貸付業務の必要経費に算入するためには、当該費用が、客観的にみて、当該業務と直接の関係を持ち、かつ、当該業務の遂行上必要な支出であると認められることが必要であるとしたものである。
要旨
請求人は、賃貸している駐車場に係る固定資産税等(本件租税公課)、自動車関係費用(本件自動車関係費用)及び接待交際費(本件接待交際費)について、いずれも不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額に該当する旨主張する。
しかしながら、このうち、本件自動車関係費用は、請求人が取引の記録等に基づき、業務の遂行上直接必要な部分を明らかにしているとはいえず、使用自動車が客観的にみて、業務に供されていたとも認められない。また、本件接待交際費は、その具体的な支出先等の合理的な説明や証拠の提出もなく、客観的にみて、業務と直接の関係を持ち、業務の遂行上必要な支出とは認められない。したがって、本件自動車関係費用及び本件接待交際費は、いずれも不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額に該当せず、他方で、請求人が賃貸している駐車場は家事用ではなく、賃貸専用で使用していると認められることから、本件租税公課は、請求人の業務の遂行上必要なものであり、請求人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額に該当する。
参照条文等
税理士交付用として相続財産の一覧表を作成した行為は隠ぺい又は仮装の行為に当たらないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例(平成26年5月相続開始に係る相続税の重加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第110集
ポイント
本事例は、相続税の申告に当たり請求人が税理士へ交付した相続財産の一覧表は、あえて相続財産の一部を記載せずに作成されたものと推認することはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、請求人は、相続財産を正確に把握していたにもかかわらず、あえて一部の保険金(本件各無申告保険金)及び遺族一時金(本件遺族一時金)を記載せずに相続財産の一覧表(本件税理士提出用一覧表)を作成し、相続税の申告に当たってこれを税理士に交付したものであり、請求人が本件税理士提出用一覧表を作成した行為は、国税通則法第68条《重加算税》第2項に規定する隠ぺい行為に当たる旨主張する。
しかしながら、本件各無申告保険金及び本件遺族一時金が振り込まれた請求人名義の各口座は、いずれも原処分庁においてその存在を容易に把握し得るものであることに加え、本件税理士提出用一覧表は上書入力を繰り返し行ったために本件遺族一時金の記載が消えてしまった旨の請求人の説明は、一応合理的であることなどからすれば、請求人が、あえて本件各無申告保険金及び本件遺族一時金を記載せずに本件税理士提出用一覧表を作成したとの事実を推認することはできず、ほかにこの事実を認めるに足りる証拠はない。したがって、請求人が本件税理士提出用一覧表を作成した行為は、同項に規定する隠ぺい又は仮装の行為に当たらない。
参照条文等
このまま申告しなければやがて決定されるであろうとの認識の下で期限後申告書を提出したとは認められないとして、無申告加算税の賦課決定処分を取り消した事例(平成26年12月相続開始に係る相続税の無申告加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第110集
ポイント
本事例は、請求人が、相続税の申告及び納付を決意した後、原処分庁所属の職員との申告相談を経て期限後申告書を提出したものと認められるとして、無申告加算税の賦課決定処分の一部を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、原処分庁所属の職員(本件職員)は、請求人に対し、相続税に係る調査の事前通知をした上で当該調査を行う旨説明したほか、調査結果の内容の説明とともに期限後申告を勧奨しており、請求人は、調査があったことを認識し、期限後申告をしなければやがて決定されるであろうことを認識することができたものと認められるから、請求人が提出した期限後申告書(本件期限後申告書)は、国税通則法第66条《無申告加算税》第5項に規定する「決定があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当しない旨主張する。
しかしながら、請求人は、請求人の母と本件職員との間で行われた請求人の相続税に関する相談結果を契機として、相続税の申告及び納付を決意し、その後、本件職員との申告相談を経て本件期限後申告書を提出したものと認められるから、請求人が、このまま申告しなければやがて決定されるであろうとの認識の下で本件期限後申告書を提出したとは認められず、そもそも本件期限後申告書の提出に至るまで、相続税に関する調査を受けていたとの認識を有していたとも認められない。したがって、本件期限後申告書の提出は、同項に規定する「決定があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当する。
参照条文等
租税特別措置法第25条第1項の規定の適用について、免税対象となる所得金額の計算方法が争われた事例(平成25年分から平成27年分の所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第110集
ポイント
本事例は、租税特別措置法第25条《肉用牛の売却による農業所得の課税の特例》第1項の規定の適用に当たり、売却損が生じた肉用牛を除外して免税対象飼育牛の売却に係る所得の金額を計算することは許されないとしたものである。
要旨
請求人は、租税特別措置法(平成29年法律第4号による改正前のもの)第25条《肉用牛の売却による農業所得の課税の特例》第1項に規定する課税の特例(本件特例)の適用に当たり、免税の対象となる事業所得の金額は、売却損の生じた免税対象飼育牛(売却損牛)を含めずに計算すべきである旨主張する。
しかしながら、同項の規定の文理に照らし、同項に規定する「その売却により生じた事業所得」の金額の計算上、売却損牛に係る収入金額及び必要経費を除外してこれを計算することが許容されていると解する余地はなく、したがって、当該事業所得の金額を計算するに当たっては、個々に売却損が生じたか否かにかかわらず、全ての免税対象飼育牛が対象とされるべきである。
参照条文等
キャストに支払った金員は給与等に該当するとした事例( 平成26年4月、平成26年10月、平成26年12月、平成27年3月から平成27年5月まで及び平成27年7月の各月分の源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の各納税告知処分並びに平成26年10月分の重加算税の賦課決定処分、 平成26年4月1日から平成27年3月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の賦課決定処分、 平成26年3月、平成26年5月から平成26年9月まで、平成26年11月、平成27年1月、平成27年2月及び平成27年6月の各月分の源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の各納税告知処分並びに平成26年3月から平成26年9月まで及び平成26年11月から平成27年7月までの各月分の不納付加算税及び重加算税の各賦課決定処分並びに平成26年10月分の不納付加算税の賦課決定処分、 平成25年4月1日から平成26年3月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の賦課決定処分、 平成23年4月1日から平成24年3月31日まで、平成24年4月1日から平成25年3月31日まで、平成25年4月1日から平成26年3月31日まで及び平成26年4月1日から平成27年3月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の各通知処分・ 一部取消し、 ~ 棄却)
裁決事例集 第110集
ポイント
本事例は、給与所得とは雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいい、とりわけ、給与所得については、給与支給者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、その対価として支給されるものであるかどうか、いわゆる労務の提供等の従属性が重視されなければならないとして判断したものである。
要旨
請求人は、請求人が営むキャバクラ店において接客業務に従事する女性(キャスト)は請求人から時間的、空間的な拘束を受けておらず、営業で必要な費用(携帯電話代金等)を負担しているから、キャストへの支給額(本件支給額)は所得税法第27条《事業所得》第1項に規定する事業所得に該当する旨主張する。
しかしながら、キャストは接客業務に従事するに当たり、請求人との間で、給与体系、勤務時間及び店舗規則などの勤務条件について合意していたこと、請求人はキャストの勤務時間又は接客時間を管理していたこと、キャストは指名客以外の客に対しても店長の指示により接客していたことが認められるから、キャストは入店から退店までの間は請求人の管理下にあったと認められ、請求人から空間的、時間的な拘束を受け、継続的又は断続的に労務又は役務の提供をしていたとみることができる。そして、キャストが営業のために必要な費用の一部を負担しているとの請求人の主張を考慮しても、本件支給額は接客時間等を基準に各種手当て及びペナルティの有無を勘案して算出されていること、採用後1、2か月間は一定の時給が保証されていること、キャストは客に対する売掛金を回収する責任を負っていなかったことからすれば、キャストは自己の計算と危険において独立して事業を営んでいたものとみることはできない。以上によれば、本件支給額は、キャストと請求人との雇用契約に基づき、請求人の指揮命令に服して提供した労務の対価であるから、所得税法第28条《給与所得》第1項に規定する給与等に該当する。ただし、本件支給額に係る源泉所得税の額の計算等に誤りが認められるから、納税告知処分及び重加算税の賦課決定処分の一部を取り消すべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和56年4月24日第二小法廷判決(民集35巻3号672頁)
当初から申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかったものと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例(平成27年分の所得税及び復興特別所得税に係る重加算税の賦課決定処分・一部取消し)
裁決事例集 第110集
ポイント
本事例は、請求人が、換地不交付に対する清算金を受領した事実を秘匿するため、あえて当該清算金に係る書類を確定申告会場へ持参しなかったとの事実を認めることはできないなどとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、請求人が、土地区画整理組合から受領した換地不交付に対する清算金(本件清算金)について、確定申告をしなければならないことを十分認識していたにもかかわらず、原処分に係る調査において、本件清算金を受領した事実を秘匿するためにあえて本件清算金に係る書類を確定申告会場へ持参しなかった旨申述していることなどからすれば、当初から課税標準等及び税額等を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかったものと認められる旨主張する。
しかしながら、請求人の当該申述の内容は、合理性、具体性に乏しく、審判所の調査及び審理の結果によってもこれを裏付ける客観的な証拠は認められず、請求人が本件清算金を受領した事実を秘匿するためにあえて本件清算金に係る書類を確定申告会場へ持参しなかったとの事実を認めることはできないなど、請求人が、当初から申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかったものと認めることはできない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
請求人が滞納者から財産分与により取得した財産の価額は不相当に過大ではないから無償譲渡等の処分があったとは認められないとして、国税徴収法第39条の第二次納税義務の告知処分の全部を取り消した事例(第二次納税義務の納付告知処分・全部取消し)
裁決事例集 第110集
ポイント
本事例は、離婚に伴う財産分与が民法第768条の規定の趣旨に反して不相当に過大であるか否かは、財産の額や婚姻期間中の状況等の諸事情を考慮して、清算的要素、扶養的要素及び慰謝料的要素に相当する額をそれぞれ算定した上で判断するのが相当であるところ、請求人が滞納者から財産分与により取得した財産の価額は、上記要素に基づき算定した財産分与相当額を下回るものであり、不相当に過大ではないから、国税徴収法第39条に規定する無償譲渡等の処分があったとは認められないとしたものである。
要旨
原処分庁は、滞納者(請求人の元夫)から請求人に対する預金債権及び生命保険契約等に係る解約返戻金の支払請求権(本件各債権)の譲渡は、滞納者が営んでいた事業(本件事業)の請求人への引継ぎに伴い無償で譲渡されたものであり、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に規定する「無償又は著しく低い額の対価による譲渡、債務の免除その他第三者に利益を与える処分」(無償譲渡等の処分)に該当する旨主張する。
しかしながら、本件事業の引継ぎに伴い、滞納者から請求人に対し本件各債権の無償による譲渡があったとは認められず、滞納者と請求人の離婚協議の場で作成された合意書その他の状況等を踏まえると、本件各債権は離婚に伴う財産分与により滞納者から請求人に譲渡されたものと認めることが相当である。そして、離婚に伴う財産分与が民法第768条《財産分与》の規定の趣旨に反して不相当に過大であるか否かは、財産の額や婚姻期間中の状況等の諸事情を考慮して、清算的要素、扶養的要素及び慰謝料的要素に相当する額をそれぞれ算定した上で判断するのが相当であるところ、請求人が滞納者から財産分与により取得した財産の価額は、上記要素に基づき算定した財産分与相当額を下回るものであり、不相当に過大ではないから、無償譲渡等の処分があったとは認められない。
参照条文等
国税徴収法第39条 民法第768条
参考判決・裁決
最高裁昭和58年12月19日第二小法廷判決(民集37巻10号1532頁) 平成25年7月4日裁決(裁決事例集No.92)
徴収担当職員から、再三再四、預金通帳の提示を求められたにもかかわらず、請求人が預金通帳を一切提示しなかったことは、帳簿書類その他の物件の検査を拒んだものと認められるとして、納税の猶予の不許可事由に該当するとした事例(納税の猶予不許可処分、督促処分・棄却)
裁決事例集 第110集
要旨
請求人は、請求人がした納税の猶予の申請(本件猶予申請)につき、原処分庁が、国税通則法第46条の2《納税の猶予の申請手続等》第10項第2号に該当する事実があるとして不許可処分をしたのに対し、徴収担当職員から提示を求められた預金通帳については元関与税理士法人から返却されなかったため提示できなかったものであって、徴収担当職員の検査を拒んだり、妨げたり、忌避したりしてはいない旨主張する。
しかしながら、原処分庁は、本件猶予申請に係る事項を明らかにするため、預金口座の状況を調査する必要があったと認められるところ、請求人は、徴収担当職員から、再三再四、預金通帳の提示を求められたにもかかわらず、預金通帳を一切提示しなかったのであり、請求人は、徴収担当職員による帳簿書類その他の物件の検査を拒んだものと認められる。また、仮に、請求人が主張するように、元関与税理士法人が請求人の所有する預金通帳を返却していないとしても、請求人は、預金通帳を発行した金融機関に対して、預金通帳の再発行の手続や預金口座の異動履歴状況の分かるものの発行の手続をすれば、預金通帳その他預金口座の状況を証する書類を容易に取得できるのであるから、所有する預金通帳の提示を求められた請求人が、上記各手続をせずに、預金通帳その他預金口座の状況を証する書類の提示をしないことは、徴収担当職員の検査を拒んだものといわざるを得ない。
参照条文等
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