裁決事例 裁決事例集 第48集
要旨
原処分庁は、農地等の譲渡については、農地法の許可等のあった日又は農地等の引渡しのあった日のいずれか遅い日を譲渡の日と主張し、本件土地の譲渡所得の帰属年分について、代物弁済予約の完結権を行使したことによる所有権移転登記の原因日付が平成3年4月23日であり、本件土地の農地法第3条の規定による許可申請は平成3年3月30日にされ、同年4月23日付で許可を受けていることから、平成3年分であると主張する。
しかしながら、譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は、譲渡所得の基因となる資産の引渡しがあった日によるものと解されているところ、本件土地は和解により代物弁済として債権者委員会へ引き渡されたものであり、[1]債権者委員会は昭和61年11月7日に代物弁済予約仮登記をしていること、[2]請求人は、和解による1,200万円の支払期日である昭和61年12月31日までに当該金員を返済できず、翌日から本件土地を引き渡したと認識していたこと、[3]債権者委員会は、平成元年8月ごろに本件土地を譲渡していること等から、本件土地の支配管理は昭和62年1月1日請求人から債権者委員会へ移転したものと認められるので、同日が本件土地の引渡しの日と認められる。
譲渡所得に係る総収入金額の収入すべき時期は、農地法所定の手続にかかわらず、本件土地の実体的支配の移転があった時期(引渡しの日)によることを相当とする。
したがって、所得の帰属年分に誤りがあり、その他について判断するまでもなく、課税処分の全部を取り消すべきである。
要旨
請求人は、その事業は、他の事業者から購入した塗料を、性質及び形状を変更せずに、特定の事業者に販売するものであるから、卸売業に該当する旨主張するが、請求人の事業は、塗料を材料として得意先から預かった家具に塗装する家具の塗装業であり、塗料それ自体を商品として販売する事業とはいえないから、卸売業には該当しない。
請求人が主張する本件旅費交通費等は、簿外経費に係るものであり、また、請求人が提出した本件説明資料は請求人の記憶のみに基づくもので、他に同資料を裏付ける領収書等の証拠資料の提示がないことから、本件旅費交通費等の存在を認めることはできないとした事例
裁決事例集 第48集 19頁
要旨
請求人は、原処分庁が認定した簿外の旅費交通費、接待費及び慶弔費以外に、更に多額の簿外の本件旅費交通費等及び本件利子割引料を支払っているから、本件旅費交通費等及び本件利子割引料も事業所得の金額の計算上、必要経費に算入すべきである旨主張するが、本件旅費交通費等は、簿外経費であること、また、原処分庁が認定した旅費交通費等の経費率が類似同業者の平均に比し既に極めて高いことに加え、本件旅費交通費等の額は、著しく高額であることからみて、本件旅費交通費等の存在を認めるためには、請求人が資料等を提示して合理的な説明をし、その存在を明らかにする必要があるというべきである。
しかるに、請求人が提示した説明資料については、その内容に不自然、不合理な点が認められ、また、請求人は当該説明資料は請求人の記憶のみに基づくものであると自認し、他に同資料を裏付ける領収書等の証拠資料を一切提示しないことから、本件旅費交通費等の存在を認めることはできない。
また、本件借入金は、請求人の事業経理に係る帳簿に記載されていないこと等から、本件借入金が事業の用に供されたと認め難いところ、請求人は、本件借入金を事業の用に供したと認めるに足りる証拠資料を提示しないのであるから、本件借入金に係る本件利子割引料を必要経費に算入すべきであるという請求人の主張は、採用することができない。
青色申告書に係る更正の理由附記に不備はなく、また、医療機器の支払リース料について、所得税法第157条“同族会社等の行為又は計算の否認”を適用して更正処分をしたことは相当とした事例
裁決事例集 第48集 119頁
要旨
- 原処分庁は、請求人(医院)の同族会社に対するリース料(「本件リース料」)の支払につき、所得税法第157条を適用して更正処分をした。
- 請求人は、更正通知書に附記された理由は、「適正な償却費」とは具体的に何を意味しているか不明であり、その額が「所得税の負担を不当に減少させる」こと、「リース料の妥当性」及び「適正なリース料の算定」とどう関係するのか、その判断過程が具体的に示されていず、不備である旨主張する。
ところで、附記された文章の表現をみると、請求人の主張するように、用語の意味及び文章の前後の関連性にやや明確性に欠ける点も認められるが、理由附記が適切であるか否かは、記載された理由全体をみて判断すべきであって、個々の用語又は文章の表現のみによって判断すべきものではない。
そうすると、本件更正の附記理由では、原処分庁が、どのような資料に基づき、どのような理由で課税処分をしたのか、その根拠、判断過程とも明らかにされているというべきであり、理由附記に不備はない。 - 各年分の適正リース料の額は、比準会社のリース料倍率を適用して算定していることが認められる。そのリース料倍率は、比準会社が、医院等を営む者に対し、リース期間5年でリースしている物件を選定して算定したものであり、その算定の基礎とした比準会社は適正に選定されており、リース料倍率及び適正リース料の額の計算過程のいずれにも誤りはない。
請求人は、比準会社の規模に類似性がない旨主張するが、本件においては、リース会社がリース物件をリースするに当たって、医院等を営む者に対し、通常行われているリース取引に係るリース料の額、つまり取引内容の類似性を判断すれば足りるのであって、リース会社の規模の類似性についてまで判断要素とする必要は認められない。
したがって、本件リース料の額の支払に関する請求人の行為又は計算が、所得税法第157条に規定する請求人の所得税の負担を不当に減少させる結果となると認定した本件更正処分は相当であり、本件リース料の額のうち、各年分の適正リース料の額を超える部分の金額は、各年分の事業所得の金額の計算上、必要経費の額に算入することはできない。
住宅取得等特別控除の適用に当たり、事務所等兼用住宅については、床面積240平方メートル以下の要件は、居住の用に供する部分のみでなく、一棟の家屋全体の床面積で判定すべきであるとした事例
裁決事例集 第48集 147頁
要旨
請求人は、本件家屋の居住専用部分の床面積が213.39平方メートルであるとして、自らの持分である6分の5について住宅取得等特別控除を適用し、平成5年分の所得税の確定申告をしたところ、原処分庁は、本件家屋の床面積は244.41平方メートルであり、租税特別措置法施行令第26条第1項に規定する家屋に当たらないので、住宅取得等特別控除の適用は受けられないとして更正処分をした。
請求人は、本件家屋について、その居住の用に供する部分の床面積をもって、措置法施行令第26条第1項第1号に規定する「一棟の家屋で床面積が、240平方メートル以下」の判定をすべきであると主張するが、事務所等兼用住宅について、住宅取得等特別控除の対象となる家屋に該当するためには、その家屋の床面積の2分の1以上の部分が専ら居住の用に供されている必要があることのほか、事務所等の部分を含めたところの一棟の家屋全体の床面積が240平方メートル以下で、かつ、50平方メートル以上であることが必要であると解するのが相当である。
要旨
- 原処分庁は、請求人の前代表取締役が代表取締役を退任後(退任後は単なる日常業務に従事する取締役)に行った個人名義の取引について、同人が請求人のただ一人の常勤取締役として、日常の業務をゆだねられ、請求人の実質的な代表取締役として、その業務を行っていたと認定し、同人が取得した金員は、請求人が隠れた利益処分として同人に対し賞与を支給したものと経済的実質において変わりがなく、当該取得した金員は、請求人から同人に対し賞与として支給されたものと認められるとして更正処分した。
- [1]当該前代表取締役は、代表取締役退任後は、請求人の経理及び資金管理には関与せず、会社の運営は後任の代表取締役が行っていたこと、[2]当該前代表取締役は、請求人の給与の支給に関する権限を有していないこと及び[3]同人は、新代表取締役に隠れて取引をしたものと認められることから、当該前代表取締役が、代表取締役を退任後も請求人の実質的な代表取締役としての業務を行っていたとは認められず、請求人の給与の支給に関する権限を持たない同人の行為をもって、同人が取得した金員について、請求人が同人に対し賞与として支給したものと認めることはできない。
また、上記金員に関し、請求人と当該前代表取締役との間には、金銭消費貸借契約が締結されているとは認められないから、上記金員を同人に対する貸付金であると認定することはできない。
しかし、上記取引は、当該前代表取締役が役員の業務として行ったものであるから、請求人に帰属すると認められ、当該前代表取締役が新代表取締役に隠れて上記取引に係る金員を取得していることからすれば、請求人は、当該前代表取締役に対し同人が取得した金員に相当する債権を有しているというべきである。
絵画美術品の仕入先元帳等に記載された取引の相手方の氏名又は名称について、その氏名又は名称が虚偽のものと推定されるとして、消費税の仕入税額控除を適用することはできないとした事例
裁決事例集 第48集 424頁
要旨
- 請求人は、次のとおり主張する。
- 請求人の保存する帳簿及び請求書等には、消費税法第30条第8項又は第9項に定める事項のすべてが記載されている。原処分庁は、仕入先の実在の確認とその特定が当該帳簿及び請求書等によって可能でない限り、課税仕入れに係る消費税額の控除は認められないとして原処分を行ったもので、これは、法令の規定によらない違法な処分である。
- 請求人には、取引の相手方の氏名等が真正なものであるか否かを相手方に問いただす法律上の権限は付与されておらず、請求人の取引先は遠隔地に所在するものも多いことから、請求人は、仕入先の実在の確認も特定も行い得る環境にはないというべきである。
- 請求人は、仕入れにおける後日のトラブルに備えて、当該絵画等の真実の所有者と推認される者の氏名等及び当該絵画等を持ち込んだ者と受領した領収証等の氏名等が相違する場合当該持ち込んだ者の氏名等を記載した手帳(「本件手帳」)を保有しているにすぎない。
- 原処分庁は、次のとおり主張する。
- 消費税法は帳簿方式を採っているから、帳簿によりその取引につきデータを保存し申告や調査の際に資することを求めているのは当然のことであり、その記載内容が真実であって、かつ、「課税仕入れの相手方の氏名又は名称」についても、住所等を記載するなどの方法により、相手方を具体的に特定できる状態におくことが不可欠である。
- 本件取引については、取引の相手方の実在すら確認ができず、課税仕入れの相手方の真正な氏名又は名称が記載されているとは認められないから、消費税法第30条第8項及び第9項の記載要件を具備していず、仕入税額控除をすることはできない。
- 審判所の判断は、次のとおりである。
- 仕入税額控除に関する消費税法第30条第1項の規定が適用されるためには、保存されている帳簿又は請求書等に、真実の課税仕入れの相手方の氏名又は名称が記載されていることを要し、ただ単に課税仕入れの相手方ないし書類作成者の氏名又は名称として何らかの氏名又は名称と覚しきものが形式的に記載されていれば足りるというものではないことは、明らかである。
もっとも、取引の相手側に立って交渉その他の取引に関連する行為を実際に行う者が、相手方本人なのか、その代理人にすぎないのかが判然としない場合もあり、かかる場合でやむを得ないときにおいては、取引の相手側に立って実際に行動する者の氏名又は名称の記載をもって、要件を満たすものと解し得ると認められる。 - 消費税第30条第1項の適用除外事由である法定の要件を具備した帳簿又は請求書等を保存していない事実については、事業者側が、まず、帳簿又は請求書等に課税仕入れの相手方の氏名又は名称として記載されているものが、真実の相手方のそれであることを、相当の根拠、資料に基づいて明らかにする必要があり、事業者がこれを果たさない場合には、当該課税仕入れにつき法定の要件を具備した帳簿又は請求書を保存していないことが、事実上推認されるというべきである。
- 取引の経緯等から、相手側に立って実際に行動する者から交付される請求書等に、真実の取引の相手の氏名又は名称が記載されているか否か、社会通念上要求されるところの注意の範囲内で相当程度疑われるにもかかわらず、あえて、これを確認しようとせず、漫然と当該請求書等を保存し、あるいは、当該請求書等に基づいて帳簿に記載するにとどまるときは、真実の相手方のそれであることを明らかにする必要を果たしたということはできない。
- 他方、原処分庁の主張が、相手方の氏名又は名称のみならず、その住所又は所在地も帳簿又は請求書等自体に記載されていない限り、消費税法第30条第8項、第9項の要件を充足しないというものであるとすれば、これは、明文の規定に反する解釈といわなければならない。真実の相手方の氏名又は名称の記載であることは、帳簿又は請求書以外の資料によっても明らかにし得るものであるからである。
- 本件取引については、請求人は、[1]直接請求人と接触して売買の手続を行う者(「本件持込人等」)が取引対象物件の真正の所有者である場合とない場合とが混在していることを認識しており、また、[2]本件持込人等が記載等した領収書等の書類により取引の相手方の氏名又は住所を本件仕入先元帳に記載していることを自認しているものと認められる。
- もっとも、上記Eの[2]のとおり記載していた場合でも、これが必ずしも真正でない可能性があることを考慮して、本件持込人等の氏名等を記載した書類を別途作成し、保存していた(税務職員の求めに応じて提示することを含む。)ときには、当該書類は、一種の補助帳簿として位置づけられ、帳簿に記載等をした氏名等が真正のものでないと認定された場合でも、当該書類の保存によって、仕入税額控除の適用をすることができるというべきである。
- [1]本件取引において本件仕入先元帳及び本件請求書等に記載されている住所等については、請求人もこれが真偽不明と認識しており、[2]本件持込人等が自身の氏名等を明らかにされることを回避しようとしている以上、経験則上、本件持込人等が記載した氏名等が真正の所有者等の氏名又は名称であるとは考え難く、加えて、[3]請求人は本件手帳を作成し、保管していながら、原処分の調査担当職員、異議担当職員及び当審判所のいずれにも本件手帳を提出しないとしていることが認められるから、上記記載の氏名等は真正の取引の相手先の氏名等ではないと推定され、かつ、本件持込人等の真正の氏名等でもないと推定される。
- そうすると、請求人は、当該事業を営む上で社会通念上要求されるところの相当の注意の範囲で、相手方の氏名等が必ずしも真正なものでないことを認識していたにもかかわらず、本件持込人等が記載等した氏名等を仕入先元帳に記載し、調査担当職員の要求にもかかわらず本件持込人等の氏名等を記載した手帳を提示せず、かつ、相手方の氏名又は名称は虚偽と認定されるのであるから、当該氏名等は、消費税法第30条第8項第1号イ又は同条第9項第1号イの「氏名又は名称」ということはできない。
したがって、同条第7項の「課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合」に該当し、同条第1項の規定による仕入税額控除を適用することはできない。 - 請求人は、仕入先の真正な氏名の記載がないことをもって、当該仕入れを否定することはできないと主張するが、上記判断は、本件仕入先元帳等が消費税法第30条第7項ないし第9項の帳簿又は請求書等に該当しないと判断したものであり、当該仕入れが同条第1項の課税仕入れに当たらないと判断したものではない。たとえ、同条第1項の課税仕入れに当たっても、同条第7項の要件を満たさなければ仕入税額控除はできない。
しかし、たとえ帳簿等に記載された相手方の氏名等が虚偽の場合であっても、当該事業者がこれを真正と信ずべき相当な理由があり、そのため当該帳簿等が消費税法第30条第7項の帳簿又は請求書等として保存されていると認められる場合には、同条第1項の仕入税額控除は適用される。
- 仕入税額控除に関する消費税法第30条第1項の規定が適用されるためには、保存されている帳簿又は請求書等に、真実の課税仕入れの相手方の氏名又は名称が記載されていることを要し、ただ単に課税仕入れの相手方ないし書類作成者の氏名又は名称として何らかの氏名又は名称と覚しきものが形式的に記載されていれば足りるというものではないことは、明らかである。
要旨
請求人は、本件不動産はHに譲渡したものであり、Hが所有権移転登記上の譲受人であるK株式会社に譲渡したものであると主張するが、[1]請求人が売却したと主張するHは所在が不明であること、[2]K株式会社の担当者は、本件不動産の売買には請求人が立ち会っており、Hを知らないと申述していること、[3]K株式会社は、本件不動産の取得代金を小切手で支払っており、当該小切手を現金化したのは、裏書人名、現金の使途及び預金等からみて請求人であると認められることから、本件不動産は請求人から直接K株式会社に譲渡されたものと認められる。
したがって、K株式会社の支払総額に基づき本件不動産の譲渡価額を認定すべきである。
本件土地について、賃貸借契約時に受領した金員は、借地権設定の対価ではなく、敷金であり、譲渡の和解時に土地の対価の一部に充当されたものであると認定した事例
裁決事例集 第48集 76頁
要旨
請求人は、P地裁において、本件土地を8、000万円でGに譲渡する平成2年12月18日付の和解が成立したが、受領した金額は、本件土地を昭和53年にGに賃貸したときに借地権の対価として受け取った3,000万円を差し引いた5,000万円であるから、本件土地の譲渡収入金額は8,000万円から3,000万円を控除した5,000万円であると主張するが、[1]昭和53年に作成された本件土地の賃貸借の覚書には敷金3,000万円を支払い、後日の本件土地の売買代金に充当する旨記載されており、[2]Gが所有している領収書には敷金である旨記載されており、[3]これが権利金であることを示す証拠書類がないところから、昭和53年に受領した3,000万円は借地権の設定の対価としての権利金とは認められず、敷金であったと認められるので、本件土地の譲渡収入金額は8,000万円である。
請求人は本件譲渡代金のうち少なからぬ部分を債務の弁済に充てていない上、相当の価値を有する不動産等を所有しており、資力喪失に伴う資産の譲渡とはいえないが、隠ぺい仮装の故意は認められないとした事例
裁決事例集 第48集 7頁
要旨
請求人は、[1]本件譲渡代金は全額請求人の借入金の返済に充てられており、[2]本件譲渡時の請求人の財産は無価値であること、[3]他に3,000万円の債務を有しており、高齢で他に収入の当てもないとして、本件譲渡に係る所得は所得税法第9条第1項第10号、同法施行令第26条の規定に該当する非課税所得であると主張する。
ところで、所得税法施行令第26条の要件としては、[1]資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であること、[2]放っておけば強制執行が避けられない状態にあること及び[3]その譲渡に係る対価が債務の弁済に充てられたことが規定されている。
これを本件譲渡についてみると、強制換価手続の執行が避けられないと認められる場合における譲渡には該当するが、譲渡代金から、借入金及び譲渡費用を支払った残額約430万円は債務の弁済に充てたとは認められないから、上記[3]の要件に当たらない。また、請求人には、他に債務はなく、一方、不動産及び債権を有しており、この点からも所得税法施行令第26条の要件に当たらない。
しかし、請求人には、所得税法第9条第1項第10号に規定する非課税所得に該当しないことを認識していたと認めるまでの証拠はなく、隠ぺい仮装の故意はなかったというべきであり、重加算税は過少申告加算税の額を超える部分につき取り消すことが相当である。
破産法人の清算中の事業年度の予納申告の課税の計算において、利子に対する源泉所得税の額を更正処分に係る法人税の額から控除することは、破産法第104条に規定する相殺には該当せず適法であるとした事例
裁決事例集 第48集 236頁
要旨
請求人は、利子に対する源泉所得税の額を更正処分に係る法人税の額から控除することは、破産法第104条に規定する相殺に該当し、違法である旨主張する。
ところで、破産法人には、法人税法第102条“清算中の所得に係る予納申告”の規定が適用され、清算中の事業年度の予納申告の税額の計算については、同条第1項第2号の規定により、法人税額から利子に対する源泉所得税の額を控除して納付すべき税額が算定されることとされている。この清算中の事業年度の予納申告の税額の計算において、利子に対する源泉所得税の額を控除することは、租税債権・債務が成立する以前の理論的な計算過程の一環としてされているのにすぎないのであるから、上記の法人税の額及び利子に対する源泉所得税の額については、いまだ債権・債務が成立していず、上記計算をもって法的な相殺ということはできない。
したがって、破産法第104条に抵触する旨の請求人の主張は、その前提を欠くものである。また、利子に対する源泉所得税の額を更正処分に係る法人税の額から控除することは、法人税法の規定に従ったものであるから適法である。
売上金額について主張、立証せず、一般経費についてのみ実額を主張しても、これを採用することはできないとした事例 また、売上原価から売上金額を推計するに当たり、6か月のみの本人比率によることは合理的ではないとした事例
裁決事例集 第48集 246頁
要旨
- 原処分庁は、請求人の各事業年度の売上金額は、各事業年度の売上原価の額を平成4年3月期の下半期(「本件下半期」)の売上原価率で除して算定し、一般経費の額は、売上金額に類似同業者の平均一般経費率を乗じて認定しているのに対し、請求人は、上記売上原価率には合理性がないとして売上金額を争うとともに、一般経費の額については取引金額により算定すべきであると主張する。
- 請求人は、自ら売上金額については主張、立証せず、各事業年度の一般経費の額については取引金額により算定すべきであるとして、当審判所に対し平成4年3月期の売掛帳納品書(控)及び買掛帳の各写し並びに各事業年度の人件費以外の一般管理費に係る領収証写しをそれぞれ提出した。
しかしながら、請求人の営む婦人ブラウス卸売業にあっては、一般経費の額は売上金額と密接な関係ないし対応関係を有するものと認められるから、請求人が一般経費について取引金額を主張する以上、一般経費の支出の事実及び支出の内容を証拠資料等によって明らかにするだけでなく、売上金額についても同様に明らかにすべきである。
したがって、請求人の一般経費に係る取引実額の主張は、請求人が提出した証拠資料等の信ぴょう性を検討するまでもなく、これを採用することができないから、当審判所においても各事業年度の一般経費の額を推計の方法により算定せざるを得ない。 - 当審判所の調査によれば、請求人の営む事業にあっては、各事業年度相互間においてはその売上原価率に著しい変動があるとは認められないものの、請求人について1年を半期単位でみた場合には、請求人の取り扱う商品の性格からその売上原価率は、上半期と下半期とではこれを異にするがい然性が高いものと認められる。このため、原処分庁が請求人の本件下半期の取引に係る係数を基に算定した売上原価率は、本件にあっては、必ずしも合理的な数値とはいえず、平成4年3月期の1年間の計数に基づいてこれを算定することが合理的であり、相当であると認められる。
- 原処分庁が行った類似同業者の選定は、合理的な方法によっているものと認められ、これに基づいて算出された平均一般経費率を適用して請求人の一般経費の額を算定することに合理性があると認められる。
帳簿等には、仕入先としてその氏名の氏に相当する部分が記載されているのみであり、また、請求人は、本件調査の際に本件仕入先を明らかにして記載不備を補完しようとしなかったことから、帳簿又は請求書等の保存がない場合に該当するとして、仕入税額控除の適用は認められないとした事例
裁決事例集 第48集 411頁
要旨
- 請求人は、[1]本件帳簿等は、消費税法第30条第8項及び第9項に規定する記載要件を充足し、かつ、それを保存しているのであるから、同条第7項に規定する仕入税額控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合には該当しない、また、[2]請求人は、本件取引の際に、仕入先に消費税を支払ったのであるから、仕入税額控除を認めるべきである旨主張する。
- 審判所の判断は、次のとおりである。
- 本件帳簿等には、仕入先としてその氏名の氏に相当する部分が記載されているのみで、住所、電話番号等の記載もないため、本件帳簿等から仕入先を特定することはできない。消費税法第30条第8項第1号のイは、明確に「課税仕入れの相手方の氏名又は名称」を記載することと規定しているのであるから、当該記載が同項の帳簿としては不備なものであることは明らかである。
- 原処分に係る調査(「本件調査」)の際に、調査担当職員が、請求人に仕入先を特定できない場合には仕入税額控除が適用できない旨説明し、本件取引の仕入先を特定するよう求めたにもかかわらず、請求人が本件仕入先を明らかにして記載不備を補完しようとしなかったことが認められるから、その時点において保存されている帳簿等は、記載不備な状態における本件帳簿等のみであることになる。
- 請求人は、当審判所に対して、仕入先が特定できるものがあっても、仕入先を明らかにすると取引ができなくなるおそれがあるため明らかにすることはできない旨答述しているが、これをもって請求人が適法な帳簿又は請求書等を保存しないことにつき災害その他やむを得ない事情がある旨主張していると解しても、そのような主張は仕入先の相手方の氏名又は名称を記載した帳簿等の保存を求める消費税法第30条第7項ないし第9項の規定の趣旨とまったくあいいれないところであるから、このような理由をもってしては、同条第7項の「その他やむを得ない事情」に該当するとはいえない。
- 本件帳簿等に記載された氏の真偽について検討するまでもなく、本件取引については、消費税法第30条第7項に規定する仕入税額控除に係る帳簿又は請求書等の保存がない場合に該当し、同条第1項の規定による仕入税額控除を適用することはできない。
- 本件取引については、消費税法第30条第7項の規定により、同条第1項の仕入税額控除の規定は適用することができないのであるから、本件取引に係る仕入れの存否、その支払対価の額、消費税相当額の仕入先への支払の有無について検討するまでもなく、仕入税額控除をすることはできない。
課税土地譲渡利益金額の計算に関し、請求人が提出した物件調査等手数料及び外注工事費に関する関係書類は証拠として認められず、また、これらの支出先であるとする3社の経理事務は、いずれも請求人の本社事務所において請求人の経理課長の責任管理の下で行われている等から、物件調査等手数料及び外注工事費は、そのいずれも支払っていなかったと認めるのが相当であるから、土地等の譲渡原価としては認められないとした事例
裁決事例集 第48集 278頁
要旨
請求人は、課税土地譲渡利益金額の計算上、物件調査等手数料(「本件手数料」)及び外注工事費(「本件外注費」)を譲渡原価として認めるべきである旨主張するが、本件手数料及び本件外注費に関して異議調査時に提出された仕訳日記帳は、本件手数料及び本件外注費の発生のみを記帳したものであり、証拠としては認められない。さらに、本件手数料及び本件外注費の支払先であるとするA株式会社、B株式会社及び株式会社Cの経理事務は、請求人の本社事務所において、請求人の経理課長の責任管理の下で行われており、その会社印等も請求人の管理の下に保管されていることが認められる。
また、[1]本件手数料については、請求人が原処分庁に対して提出した売買契約書に記載されている仲介業者名は、請求人自ら記入したことを自認していることから、当該売買契約書は仲介業者の関与を裏付ける証拠とはならず、また、本件手数料に係る領収書は、請求人が審査請求後に初めて提出したものであること等から、支払を裏付ける証拠とはいえない。[2]本件外注費については、審査請求に至って提出された見積書及び工事図面に記載の有限会社Iは、昭和50年以降無申告で、所在地には存在した形跡が認められないこと及び土地の前所有者の申述等から、造成工事が行われたと認めるのは、あまりにも不合理である。
以上を総合して判断すると、本件手数料及び本件外注費は、いずれも支払っていなかったと認めるのが相当であるから、譲渡原価としては認められない。
タクシーによる旅客運送業を営む法人について、休日乗務手当、嘱託乗務員の乗務手当の源泉徴収につき、支給額等を認定し、適用税率を是正し、税額を算定した事例
裁決事例集 第48集 335頁
要旨
請求人は、[1]原処分庁は、[イ]請求人の源泉徴収税額の計算の基礎とした各月分の給与の額には、社員乗務員に支給した休日乗務手当の額及び嘱託乗務員に支給した乗務手当の額を除外するという誤りがあり、また、[ロ]他にも源泉徴収税額に誤りがあるとして納税告知等をしたが、[2]処分庁の計算等は誤っており、特に上記[ロ]については請求人に誤りはなく、納税告知等は一部取り消すべきであると主張する。
当審判所が検討したところ、[1]上記[イ]については、原処分庁及び請求人の計算にはいずれも誤りがあり是正する必要があり、[2]上記[ロ]については請求人の主張は相当である。
また、適用税率表等を是正して、各月分の源泉徴収税額を計算すると、いずれも原処分に係る額を上回るから、原処分は適法である。
支払能力・意思のない者に対し、これを知らず、土地を売却し、当該土地の転売後において、残代金の回収不能を知り、売買契約を取り消した上、不法行為による損害賠償の判決を得た場合につき、当該損害賠償請求権は実質的に土地の譲渡の対価と評価されるから、譲渡所得がなかったことにはならず、また、非課税所得にも該当しないが、債務者には弁済能力はなく、回収は事実上不可能と認められるので、所得税法第64条第1項を適用すべきであるとした事例
裁決事例集 第48集 100頁
要旨
請求人は、Aとの間で、本件土地につき本件売買契約を締結し、手付金を受領した上、所有権移転登記に必要な登記委任状及び印鑑証書等をAに交付し、同日残代金として白地小切手を受領したが、Aは残代金を支払う意思も能力もなかったにもかかわらず、これを秘し請求人を誤信させたことが認められる。
Aは、本件土地につき、登記を自己に移転した上、第三者に譲渡し、登記も移転した。請求人は、Aに対し、本件売買契約を取り消す旨の意思表示をし、次いで、損害賠償請求訴訟を提訴した結果、売買残代金相当額の支払(「本件損害賠償請求権」)の判決を得た。
以上により判断すると、本件売買契約の取消しにより、本件土地の売買はなかったことになるが、本件損害賠償請求権の取得は実質的には本件土地の譲渡の対価と評価されるから、譲渡所得がなかったことにはならず、また、本件損害賠償請求権は、所得税法第9条第1項の非課税所得にも該当しない。
しかし、Aは、詐欺罪で服役中であり、資産もない等の事実が認められる。資産の譲渡代金が回収不能であるというためには、法律上債権が消滅した場合がそれに当たることは当然であるが、所得税法が実質的な担税力に着目して課税要件を定めていることに照らせば債務者の資産状況、支払能力等からみて債権の回収が事実上不可能である場合もこれに該当するというべきである。
請求人が、不法行為に基づく損害賠償として取得した売買残代金相当額の本件損害賠償請求権については、請求人が本件損害賠償請求権を放棄していないことから、同請求権は法律上消滅したということはできないが、Aには同請求権を弁済する能力はなく、同請求権の回収は事実上不可能と認めるのが相当である。
したがって、本件の所得計算においては、所得税法第64条第1項の規定を適用し、当該金額はなかったものとみなし、原処分の一部を取り消すのが相当である。
滞納処分により差し押さえられた滞納会社の代表者名義の預託金制ゴルフ会員権につき、取得資金の全額が滞納会社の資金により支払われていること、滞納会社の決算報告書に本件会員権が資産として計上されていること等から、滞納会社に帰属すると認めるのが相当である等とした事例
裁決事例集 第48集 489頁
要旨
原処分庁は、滞納会社の滞納国税を徴収するため、同社の代表者名義のゴルフ会員権(「本件会員権」)を差し押さえるとともに、本件会員権の会員証書(「本件会員証書」)を占有している貸金業者である請求人に対し、本件会員証書の引渡命令をした。
請求人は、差し押さえられた本件会員権は、仮にその購入資金が滞納会社から出捐されていたとしても、それは代表者と滞納会社の内部関係にとどまり、本件会員権は代表者とゴルフ場の契約によって代表者個人の権利として生じたものであり、請求人は、差押え前に代表者から譲渡担保設定契約により適法に本件会員権の譲渡を受けていると主張し、本件会員権の法律上の権利者でない滞納会社の滞納による差押えは違法であって、違法な差押えには民法第467条の指名債権譲渡の対抗要件は不要である等と主張する。
しかし、預託金制ゴルフ会員権は、債権的法律関係を包含しているところ、名義人以外に実質的権利者がいる場合には、当該権利者に帰属する財産として滞納処分を行い得ることは当然である。
本件会員権については、[1]その取得資金の全額が滞納会社の資金により支払われていること、[2]取締役会の承認を経た滞納会社の決算報告書に本件会員権が資産として計上されていること及び[3]本件会員権の名義人である個人が滞納会社の代表取締役の地位にあり、取締役会で異議なく滞納会社の当該決算報告書を承認していたこと等からすると、滞納会社に帰属すると認めるのが相当であるから、差押えに違法な点はない。
なお、(仮に滞納会社が代表者に本件会員権の処分権を与えていたとしても)預託金制ゴルフ会員権の譲渡をもって第三者に対抗するためには、指名債権譲渡の対抗要件である確定日付のある証書による譲渡通知又は承認が必要であるところ、請求人が第三者対抗要件を備えたのは、差押え後であることが明らかであるから、請求人は、本件会員権の譲渡を受けたことをもって差押債権者たる原処分庁に対抗できない。
また、本件会員証書は、有価証券ではなく単なる証拠証券であるから、本件会員権の権利者と認められない以上、本件会員証書自体の占有をもって何ら権利を取得したことにはならず、さらに、本件会員証書自体につき、独立して民法第192条の規定による即時取得をすることもない。
収用等に伴う代替資産の取得の特例の適用に関し、代替資産である賃貸用ビル等の建物は、建物本体と電気、給排水、昇降機等の各設備が一体となってその効用を有する不可分一体のものとみるべきで、一個の代替資産とみるのが相当であるとして、原処分庁の主張を退けた事例
裁決事例集 第48集 295頁
要旨
請求人は、ダム建設事業に伴い土地、立木等を譲渡し、その対価補償金をもって賃貸用ビルを取得し、租税特別措置法第64条“収用等に伴い代替資産を取得した場合の特例”第1項等を適用し、ビルを1個の代替資産として圧縮限度額を計算し、申告した。
原処分庁は、請求人が経理処理上ビルを建物及び付属設備等の複数の資産に区分していることから、個々の代替資産ごとに圧縮限度額を計算すべきである等として更正処分をした。
しかし、代替資産の範囲に関する原則規定である租税特別措置法施行令第39条第2項は、代替資産として「建物(その付属設備を含む。)又は建物に付属する大蔵省令で定める構築物」と規定していることから、代替資産の区分としては付属設備はすべて「建物」に含まれる資産と解していることが明らかであり、同条第4項についても同様に解すべきである。
請求人が、経理処理の各段階でビルを複数の資産に区分したことは原処分庁の主張のとおりであるが、これは、減価償却費の額の計算のための区分に過ぎず、代替資産として区分することを自認したということはできない。
したがって、原処分庁の主張はいずれも採用できず、一方、賃貸用ビル等の建物は、建物本体と電気、給排水、昇降機等の各設備が一体となってその効用を有する不可分一体のものとみるべきであり、これを一個の代替資産とみるのが相当である。
海砂を採取する権利の取得に際し、利害関係のある漁業協同組合の同意を得るために支払った漁場迷惑料は、仕入税額控除の対象となる課税仕入れの対価とはならないとした事例
裁決事例集 第48集 391頁
要旨
請求人は、A漁業協同組合に漁場迷惑料を支払ったことについて、海砂を採取する権利である資産の取得であるから、消費税法第2条第1項第12号に規定する課税仕入れに該当し、同迷惑料は課税仕入れに係る支払対価の額に該当すると主張する。
しかし、請求人が、海砂採取の許可の申請に当たり、県の指導方針により、A漁業協同組合の同意を得るため漁場迷惑料を支払った事実はあるが、海砂は国有財産であり、A漁業協同組合は海砂の所有権又は海砂を採取し若しくはこれを認める独立の法律上・慣習上の権利等を有していないと認められ、また、A漁業協同組合の有する漁業権には海砂採取及びそれに関する作業を行う権利は含まれていない。したがって、請求人が、利害関係者の同意を得るため何らかの金員を支払うことが実際上必要であるとしても、A漁業協同組合の地位は上記のとおりであるから、当該金員について、資産の譲受けの対価又は借受けの対価に該当するということはできず、仕入税額控除を適用することはできない。
一般貨物自動車運送事業の許可(青ナンバー権)を有する会社の売買に関し、当該会社が存続し、営業していること等から、買主に支払ったのは、会社の社員持分権の対価であって、営業権の対価ではなく、その支払額につき営業権として減価償却することはできないとした事例
裁決事例集 第48集 155頁
要旨
請求人は、昭和59年に有限会社Gの代表者から、同社の有する一般貨物自動車運送事業の許可(いわゆる青ナンバー権)を売買により取得したとし、当時の有限会社Gは、運送用車両はもとより、従業員もなく、事業を行っていなかったのであるから、その当時、有限会社Gで唯一評価できるのは、青ナンバー権であり、請求人の支払った対価の対象目的物は、同社の有する青ナンバー権そのものであるので、これが営業権に該当することは明らかであると主張し、減価償却資産である営業権として経理したこと及び上記の額を減価償却費として損金の額に算入したことは、正当な会計処理である旨主張する。
ところで、法人が他の者から青ナンバー権を有償で承継取得し、これを自らの事業の用に供している事実があれば、適正な価格で営業権として資産計上すること及び任意償却をすることも当然認められる。
しかし、[1]有限会社Gは、解散等の事実はなく、現在まで継続している法人であること、[2]有限会社Gの出資金900万円の全部を請求人が有していること、[3]請求人は、有限会社Gに対し、所有していた貨物自動車を売却するほか、請求人の運送事業に係る顧客を移管し、同社は、運送事業を営んでいるが、請求人は、運送事業を営んでいる事実はないこと等が認められるのであるから、上記の売買の価格は有限会社Gの社員の持分の実勢価額と認められ、請求人は同社の社員の持分のすべてを取得したことにより、結果的に同社の青ナンバー権を支配しているに過ぎないのであるから、売買価額の全額が社員の持分の取得の対価として投資有価証券勘定に計上すべきものであり、その一部につき営業権の減価償却として損金の額に算入することはできない。
要旨
所得税法第140条第1項は、青色申告書を提出する居住者は、その年において生じた純損失の金額がある場合には、当該申告書の提出と同時に、所得税の還付を請求することができる旨規定し、この規定に関し、基本通達140・141-3では、還付請求書が青色申告書と同時に提出されなかった場合でも、同時に提出されなかったことについて税務署長においてやむを得ない事情があると認めるときは、これを同時に提出されたものとして所得税法第140条第1項の規定を適用して差し支えない旨定めている。
この通達にいう「やむ得ない事情」とは、納税者の責めに帰すことのできないような特別な事情により、青色申告書の提出と同時に還付請求をなし得なかったと合理的に認められるような例外的な場合をいうのであって、いわゆる法の不知を含まないものと解するのが相当である。
ところで、請求人は、[1]純損失の繰戻しによる還付請求が可能な期間を5年間であると考えていたことを及び[2]平成3年12月26日から平成4年4月上旬までA国に滞在していたため、平成3年分の確定申告期間中は日本国内にいなかったことから、還付請求書を同時に提出できなかったのであり、基本通達にいう「やむ得ない事情」に該当すると主張する。
しかしながら、還付請求が可能な期間を5年間であると考えていたという請求人の法の不知は、上記のとおり「やむ得ない事情」に当たらず、また、上記の期間A国に滞在していたため、平成3年分の確定申告期間中は日本国内にいなかったという事情についても、請求人は、長男Cから純損失の繰戻しによる還付の制度があること、また、その制度の適用を受けるためには確定申告と同時に還付請求書を提出しなければならない旨の連絡を受けていながら、何らの確認や問い合せもしなかったことが認められるから、請求人の責めに帰すことのできないような特別な事情とは認められない。
相続人又はその家族名義の預金、株式及び割引債について、生前贈与された資金の運用により取得されたものではなく、被相続人が請求人に指示して管理運用していたもので、その一部を除き相続財産であると認定した事例
裁決事例集 第48集 357頁
要旨
請求人は、相続人又はその家族の名義による株式、定額郵便貯金及び債権について、被相続人から贈与をうけた現金を資金運用して取得したものであり、請求人固有の財産であって相続財産ではないと主張する。
しかしながら、[1]相続人が請求人に対し、当該現金を贈与したと認定できる証拠がないこと、[2]毎年計画的に贈与されている現金については、贈与税の申告がされているが、請求人の主張する贈与については申告がされていないこと、[3]被相続人が請求人に対し資金の運用を指示し、請求人がその指示により管理運用していたことが認められることから、その結果形成された上記の株式等の財産は被相続人に帰属すると認めるのが相当である。
ところで、上記の財産の形成中に、明らかに被相続人以外の財産も組み込まれたことが認められるから、この組み込まれた被相続人以外の部分の財産に係る評価額を控除して相続財産としての評価をするのが相当であるので、原処分の一部は取り消すべきである。
貸倒れに係る消費税額の控除について、消費税につき無申告の請求人が、原処分調査において、貸倒れの事実が生じたことを調査担当職員に説明せず、これを証する書類を提示しなかったことをもって、同控除の適用は認められないとした事例
裁決事例集 第48集 458頁
要旨
消費税法第39条の貸倒れに係る消費税額控除の適用を受けるためには、法定申告期限を経過した日から7年間、適法な税務調査に際し、調査担当職員から帳簿又は請求書等の提示を求められたときにはこれに応じ、当該帳簿又は請求書等を当該調査担当職員が閲覧検査できる状態に置くべきことも含め、その保存を継続しなければならないと解される。
なお、確定申告書に記載があるなど明らかな場合以外は一般的に貸倒れの有無を推測することは困難であることからも、事業者がその事実を調査担当職員に説明し、これを証する書類を提示することを要すると解される。
請求人は、調査担当職員が、再三にわたり、課税標準に係る書類等及び帳簿又は請求書等の提示を求めたにもかかわらず、一切の必要書類を提示せず、また、当該期間分の消費税確定申告書を提出していない上、調査担当職員に貸倒れの事実が生じた旨の説明もしていないことが認められる。
したがって、請求人が本件調査の際に貸倒れの事実が生じたことを調査担当職員に説明せず、また、これを証する書類を提示しなかった時点において、当該書類の保存が継続していなかったといわざるを得ず、その後に至り、審判所に当該書類を提出したからといって、貸倒れに係る消費税額の控除の適用が受けられると解することはできない。
簡易課税制度選択届出書の提出は錯誤によるものであるとして、本則課税を適用し、仕入税額控除をすべきとしてされた更正の請求につき、同届出書の提出は無効でなく、請求は認められないとした事例
裁決事例集 第48集 405頁
要旨
請求人は、消費税法に基づき簡易課税制度選択届出書を提出した上で、当期につき簡易課税に基づいて算出した消費税の確定申告書を提出した。
その後、請求人は、簡易課税制度選択届出書の提出は錯誤によるものであり、本則課税により仕入税額控除を適用すべきとして更正の請求をした。
請求人は、簡易課税制度選択届出書の提出は錯誤に基づくもので無効であると主張するが、同届出書の提出による簡易課税の選択が錯誤により無効となるのは、請求人の錯誤が客観的に明白かつ重大なものである場合に限られると解すべきである。請求人が提出した簡易課税制度選択届出書は、法令の規定に従い記載し提出されており、その記載には明らかな誤りは認められず、仮に請求人に錯誤があったとしても、同届出書上錯誤が表れているとはいえないから、客観的に明白かつ重大な錯誤が存在したと認定することはできない。
したがって、簡易課税制度選択届出書の提出による簡易課税の選択が無効であるという請求人の主張は採用することができず、更正の請求に理由がないとした原処分は相当である。
不動産の売買価格の認定において、原処分庁が根拠とした関係人の答述等は内容に不一致が多く信ぴょう性がないとし、請求人の答述を採用し、原処分の一部を取り消した事例
裁決事例集 第48集 54頁
要旨
請求人らは、本件物件の売買価格につき、真正の価格は57,000,000円であり、売買契約書上は5,000,000円を圧縮して52,000,000,円としたものであり、本件物件の賃貸に係る預り敷金の買主の引継分1,640,000円を加算した58,640,000円が本件物件の譲渡収入金額であると主張し、原処分庁は、請求人側の仲介人であるDホームのEの申述、買主側の仲介人とされているが真実の譲受人と認めるB社のFの作成したメモ等から、売買価額は85,000,000円であり、預り敷金4,040,000円を加算した89,040,000円が譲渡収入金額であると主張する。
DホームのEは、売主側の仲介人であるにもかかわらず、その答述はあいまい、かつ、一貫性を欠いており、売買において主要な役割を果たしたB社のFのみが取引経緯につき明確な答述をし、同人のメモには売買価額が85,000,000円と記載されている。
しかし、本件物件の実際の買主は売買契約書上のNではなく、B社のTと認められるところ、Fは、本件取引の架空の中間譲渡人Nを介在させたり、その後所在不明であるなど、Fの答述は信ぴょう性を欠き採用できない。また、売買代金の決済として85,000,000円を支払ったとする証拠書類は何ら存在せず、Fのメモも証拠として採用できない。
したがって、本件物件の売買価額は、請求人の答述した57,000,000円と認定せざるを得ず、また、本件物件の譲渡に伴って最終買主に引き継がれた預り敷金の額は1,640,000円と認められるから、これらの合計58,640,000円が譲渡収入金額と認定される。
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