裁決事例 裁決事例集 第82集
請求人が提示した出面帳に記載された事項のうち、法定記載要件を具備している部分については、課税仕入れ等の税額に係る帳簿に該当するとして、消費税の納付すべき税額の計算上、当該部分に係る仕入税額控除の適用を認めた事例
裁決事例集 第82集
ポイント
消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第1項は、国内において行う課税仕入れについては、課税標準額に対する消費税額から課税仕入れに係る消費税額を控除する旨規定しているところ、同条第7項において、第1項の規定は、事業者が課税仕入れの税額に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れに係る課税仕入れの税額については、適用しない旨規定している。そして、消費税法第30条第8項第1号においては課税仕入れに係る帳簿の記載事項を、また、同条第9項第1号及び第2号においては請求書等の記載事項をそれぞれ規定しているところである。
この事例は、請求人が職人に支払った対価が課税仕入れに係る支払対価に該当し、課税仕入れに係る消費税額の控除が認められるか否か等が争われたものであり、請求人の出面帳が上記消費税法第30条第8項第1号の法定記載事項を具備したものか否か、また、当該出面帳に基づく課税仕入れに係る消費税額の控除の範囲を判断したものである。
要旨
原処分庁は、本件出面帳について、その大半につき、消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第8項第1号に規定する法定記載事項のうち課税仕入れに係る支払対価の額の記載がないことから、法定記載事項が記載された法定帳簿の保存を定めた同条第7項の趣旨に照らして、これを法定帳簿と認める余地はない等と主張する。
確かに、法定帳簿については、課税仕入れに係る①相手方氏名等、②課税仕入れの年月日、③その役務等の内容及び④支払対価の額の法定記載事項の各記載が必要であり、これらの要件を欠く帳簿は法定帳簿として認めることはできないものの、本件出面帳の記載内容等を法定帳簿の保存を法が定めた趣旨に照らせば、本件出面帳のうち、法定記載事項のすべてを満たしていると認められる部分のみを法定帳簿と認めることが法定帳簿の保存を定めた法の趣旨に反するとはいえない。したがって、当該原処分庁の主張を採用することができない。
参照条文等
請求人が舗装路面等(構築物)を設置し月ぎめ駐車場としていた土地を賃貸し、賃借人がこれを改修して無人時間貸駐車場にしたとしても、駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合に当たるとした事例
裁決事例集 第82集
ポイント
消費税法第6条《非課税》第1項及び同法別表第1第1号は、土地の譲渡及び貸付は非課税である旨規定しているが、同号かっこ書において「一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合を除く」とし、これを受けた消費税法施行令第8条《土地の貸付けから除外される場合》は、「土地の貸付けに係る期間が1月に満たない場合及び駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合とする」と規定しているため、この場合には非課税から除外されることとなる。
この事例は、請求人が月ぎめ駐車場としていた土地を賃貸し、賃借人がこれを改修して無人時間貸駐車場(コインパーキング)とした場合に、この「駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合」に該当するか否かにつき判断したものである。
要旨
請求人は、たまたまアスファルトを敷設した土地をL社等に一時使用駐車場用地(土地)として貸し付けたものであり、L社等が、当該土地を無人時間貸駐車場(コインパーキング)として使用するに当たり、当該土地を改修して使用しており、貸し付ける直前の当該土地の形状をそのまま使用したものでないことなどを理由に、当該土地の貸付けは、消費税法上の非課税の土地の貸付けに該当する旨主張する。
しかしながら、消費税法施行令第8条《土地の貸付けから除外される場合》は、土地の貸付けが消費そのものではなく、単なる資本の振替ないし移転であると考えられることから、原則として非課税取引とするものの、「駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合」は、土地そのものの貸付けではなく、駐車場その他の施設の利用に消費としての性格が認められることから、課税取引としたものであると解されるところ、請求人は、L社等との一時使用駐車場用地賃貸借契約(本件各契約)の締結前も駐車場として利用していたアスファルト舗装等の減価償却資産(構築物)が存する土地につき、L社等との間において、当該土地に無人時間貸駐車場の運営上必要な施設が追加された上で、無人時間貸駐車場として利用されることを認識しながら、当該土地上の駐車場として利用可能なアスファルト舗装等の減価償却資産(構築物)が存するまま貸与する旨合意し、実際に貸与したものであるから、本件各契約に基づく賃貸借は、いずれも単なる「土地の貸付け」ではなく、駐車場としての機能を備えた施設の利用に伴って土地が使用される場合に該当するものと認めるのが相当である。
参照条文等
消費税法第6条第1項、別表第1第1号 消費税法施行令第8条
出版業者が書店等から返品された雑誌等は棚卸資産であり、陳腐化の事実が生じ、かつ、損金経理によりその帳簿価額を減額した場合でない限り期末評価損は認められないとした事例
裁決事例集 第82集
要旨
請求人(月刊誌等の出版業)は、棚卸資産のうち、書店等から返品された雑誌等については、古紙としての価値があるにすぎないから、評価損の計上が認められるべきである旨主張する。
しかしながら、棚卸資産について評価損が認められるのは、陳腐化等の事実が生じ、かつ、損金経理によりその帳簿価額を減額した場合であるところ、請求人の棚卸資産については評価損の計上が認められる状態にあったと認めるに足る証拠はなく、損金経理により棚卸資産の帳簿価額を減額した事実も認められないから、請求人は、当該雑誌等について、その評価損を損金の額に算入することはできない。
一方、原処分庁は、平成20年12月期の請求人の棚卸資産の期首計上額が過少であると認めるに足る証拠の提出がされなかったことを理由に、売上原価が過少となっているとの請求人の主張は認められない旨主張する。
しかしながら、請求人から提出された証拠資料によれば、棚卸資産の期首計上額が過少であると認められ、これにより過少となった売上原価の額を損金に算入して請求人の所得金額を再計算すると、更正処分の金額を下回ることから、更正処分はその一部を取り消すべきである。
請求人は、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した一部の経費について、不動産賃貸業の遂行上直接必要であった部分を明らかにしていないことから、当該経費を必要経費に算入することはできないとした事例
裁決事例集 第82集
ポイント
この事例は、請求人が、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべきと主張する経費について、必要経費についての立証責任は、原則として原処分庁にあるとした上で、原処分庁が具体的な証拠に基づき一定額の経費の存在を明らかにし、これが収入との間に合理的対応関係を有すると認められる場合には、請求人は、経費の具体的内容を明らかにし、ある程度これを合理的に裏付ける程度の立証をしなければならない旨を明示したものである。
要旨
必要経費についての立証責任は、原則として原処分庁にあると解すべきであるが、一般に必要経費は請求人にとって有利な事柄であり、請求人の支配領域内のこととして証拠資料を整えておくことが容易であるから、原処分庁が具体的な証拠に基づき一定額の経費の存在を明らかにし、これが収入との間に合理的対応関係を有すると認められる場合は、これを超える額の必要経費は存在しないものと事実上推定され、請求人は、経費の具体的内容を明らかにし、ある程度これを合理的に裏付ける程度の立証をしなければ、上記推定を覆すことはできないと解されるところ、請求人が、飲食代及び交通費が必要経費に当たることについて、経費の具体的内容を明らかにし、ある程度、これを合理的に裏付ける程度の立証をしたと認めることはできないから、必要経費に算入することはできない。
参照条文等
参考判決・裁決
東京地裁平成5年10月4日判決(税資199号1頁)
滞納者が受け取るべき信託受益権の譲渡代金の残余金等のうち、滞納者の債務を弁済した後に生じた余剰金は、実質的に滞納者から請求人に対する無償譲渡と認められるとした事例
裁決事例集 第82集
ポイント
この事例は、滞納者と滞納者が主宰する法人が共有していた財産の譲渡代金が当該法人の預金口座に振り込まれた後、その一部が滞納者名義の預金口座、請求人名義の預金口座、請求人の妻名義の預金口座を経由して請求人の定期預金等の財産となったところ、滞納者は上記譲渡代金から自己及び上記法人の債務を弁済して余剰が出た場合には、請求人に贈与する意思を有し、当該余剰の交付や返還を求めていないから、実質的に滞納者の財産が無償譲渡されたと認定したものであり、また、その額が原処分の限度を超えるから、原処分は適法であるとしたものである。
要旨
請求人は、本件滞納者と本件滞納者が代表取締役を務めていた本件法人の双方から、両者が共有していた不動産の信託受益権の譲渡代金の残余金等(本件残余金等)の管理処分を任され、本件残余金等が振り込まれた本件法人の預金口座をはじめ、本件滞納者、請求人及び請求人の妻名義の預金口座のすべてを請求人の管理下に置いて入出金を行っていた。また、本件滞納者は、上記譲渡代金によって、自己及び本件法人の債務を弁済して余剰が出た場合には、請求人に贈与する意思を有し、請求人に対し、当該余剰の交付や返還を求めていないところ、本件残余金等のうち本件滞納者が取得すべき額の金員が、本件法人の取得すべき額の金員とともに本件法人の預金口座に振り込まれ、その後、その一部が、請求人の管理下にあった本件滞納者名義の預金口座、請求人名義の預金口座及び請求人の妻名義の口座に振り替えられ、さらに、請求人名義の定期預金等として請求人の管理下に移転したと認められる。
このような一連の事実経過をみると、実質的に、本件滞納者の財産が請求人に対して無償譲渡されたと認められ、その額は原処分の限度を超えるから、原処分は適法である。
参照条文等
ポイント
個別対応方式により仕入れに係る消費税額を計算する場合において、課税仕入れを課税資産の譲渡等にのみ要するもの、その他の資産の譲渡等のみに要するもの及び課税資産とその他の資産の譲渡等に共通して要するものに区分する場合の当該区分(用途区分)は、課税仕入れを行った日の状況により行うこととなる。
この事例は、マンションの取得に際し、建物部分と水道施設利用権をそれぞれ別の時期に取得していたことから、それぞれ取得の日の状況で用途区分を判断したものである。
要旨
請求人は、本件建物の取得目的がF社に対して本件建物及びこれに付属する機械式駐車場(本件マンション)に係る信託受益権を売買することにあり、また、本件建物の取得に係る課税仕入れのあった日において、F社との間の信託受益権売買契約の法的な解除やテナントとの間の賃貸借契約の締結がされていなかったとして、本件建物及び本件水道施設利用権の取得に係る課税仕入れが課税資産の譲渡等にのみ要するもの(課税用)に該当する旨主張し、一方、原処分庁は、本件マンションの取得目的は販売及び住宅として貸し付けることであったことから本件建物及び本件水道施設利用権の取得に係る課税仕入れは課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの(共通用)に該当する旨主張する。
請求人は、本件建物の取得に係る課税仕入れのあった日において、F社による信託受益権の売買残代金の支払が事実上不可能で、F社との間の信託受益権売買契約を解消することとなり、同契約において予定されていた日に信託受益権の譲渡が行われないとの認識を有していたといえ、さらに、請求人は、F社が破産手続開始の決定を受ける以前に、本件マンションの新たな売却先を探すため、L社に本件マンションの再査定を依頼したことが認められ、本件マンションの売却先及び売却時期が未定の状況下で、請求人自らがH社との間で本件マンションの管理委託契約を締結し、入居者の募集を開始したという賃料収入を得ることを前提とした行為をしていることを考え併せると、本件建物の取得に係る課税仕入れのあった日において、請求人は、本件マンションの新たな売却先が見つかるまでの間、本件マンションを住宅として貸し付け、これによる賃料収入を得ることを予定していたと認めることができる。そうすると、本件建物の取得に係る課税仕入れを本件信託受益権の売買にのみ要する課税仕入れとして、課税用として区分したことには合理性がないというべきであり、本件建物の取得に係る課税仕入れは、共通用に該当すると認めるのが相当である。
一方、本件水道施設利用権の取得に係る課税仕入れのあった日においては、請求人に帰属すべき賃料収入が生ずる可能性は、具体的なものではなかったというべきであり、同日における状況からすれば、請求人に賃料収入が帰属することが予定されていたということはできず、本件水道施設利用権の取得に係る課税仕入れを信託受益権の売買にのみ要する課税仕入れとして、課税用として区分したことが不合理な区分とまではいうことはできないから、本件水道施設利用権の取得に係る課税仕入れは、課税用と認めるのが相当である。
参照条文等
参考判決・裁決
請求人の預金口座に入金された滞納者が受領すべき譲渡代金の一部については、当該預金口座の入出金状況等から当該金員が請求人の処分権限内に移転したとはいえず、滞納者から請求人への財産の無償譲渡があったということはできないとした事例
裁決事例集 第82集
要旨
原処分庁は、本件滞納者が受領すべき譲渡代金の一部が、本件滞納者が代表取締役を務めていた法人の普通預金口座から請求人の普通預金口座(本件請求人口座)に振り替えられたことにより、当該振替金(本件振替金)は本件滞納者から請求人の処分権限内に移り、本件振替金が本件滞納者に還流した事実も本件滞納者に対する対価等の支払の事実も認められないから、本件振替金は、本件滞納者から請求人に無償で譲渡された旨主張する。
しかしながら、本件請求人口座については、本件振替金の入金当時、本件滞納者の子であり請求人の配偶者であるEにおいて自由に出金できる状態にあり、入出金のすべてをEが行っているだけでなく、その口座の動向について、請求人が何ら把握していないのであって、引き出された金員が請求人個人の用途に使用されたことを認めるに足りる証拠がないだけでなく、かえって出金のあった日にE名義の預金口座に相応額の入金があるという同人のために費消されたことをうかがわせる事実が認められるのであり、Eが請求人の配偶者であることを併せて考えると、本件請求人口座が請求人に帰属すると認定することはできず、同口座はEの管理下にあったいわゆる借名口座であるとみるのが相当である。そうすると、本件請求人口座に本件振替金が入金されたことをもって、請求人の処分権限内に本件振替金が移転したとはいえないから、本件滞納者から請求人への財産の無償譲渡があったということはできず、ほかにこれを認めるに足りる証拠もない。
参照条文等
ポイント
この事例は、最高裁判所平成22年7月16日第二小法廷判決(平成20年(行ヒ)第241号)の考え方を基に判断を行った最初の裁決事例である。
要旨
請求人らは、出資額限度法人(定款において退社・解散時に払込出資額を限度として払戻し・分配等を行うことを決めた社団医療法人)であるT会(本件法人)に対する出資持分(本件出資持分)の価額について、本件法人の定款(本件定款)には、払込出資額を超えて払戻しをしないこと、本件法人が解散した場合の残余財産は払込出資額を限度とすることが定められており、請求人らはいずれの場合においても、払込出資額を超えて払戻し等を受けることはできないから、相続税法第22条《評価の原則》の時価、すなわち、本件出資持分の客観的交換価値は、本件払込出資額を上回るものではない旨主張する。
しかしながら、本件法人は出資額限度法人であるが、出資持分の定めのある社団医療法人であり、また、本件定款には払戻し等に係る定めの変更を禁止する条項が存するが、法令において、定款の再度変更を禁止する定めがない中では、このような条項があるからといって、法的に当該変更が不可能になるものではない。そうすると、本件出資持分の権利の内容の範囲については、本件相続時における定款の定めに基づく出資の権利内容がその後変動しないと客観的に認めるだけの事情はないといわざるを得ず、ほかに財産評価基本通達194-2《医療法人の出資の評価》の定める方法で本件定款の下における本件法人の出資を適切に評価することができない特別の事情も認められないから、本件出資持分について、同通達の定める方法により評価した原処分は相当である。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成22年7月16日第二小法廷判決(判タ1335号57頁) 平成18年11月8日裁決(裁決事例集No.72・589頁)
ポイント
一般に、会計帳簿は業務上の金員の動きがそのまま記載されるものであるから、特段の事情のない限り、会計帳簿に記載されたとおりの事実を認めることができるところ、原処分庁が会計帳簿に記載された事実(費用)について対価性がないと認定する場合には、原処分庁がその立証責任を負うことになる。
この事例では、請求人が会計帳簿に記載された事実と異なる事実を主張したことから、請求人において、かかる事実の存在や異なる事実を会計帳簿に記載することとなった事情などの特段の事情を立証する必要があるとしたものである。
要旨
《裁決の要旨》
請求人は、各事業年度に追加の外注費として支出し損金の額に算入した金員(本件支出金)は、①過去に施工された工事に係る追加の支払を現場名を付け替えて支出したもの、及び②実際の工事対価の支払として支出したものであり、対価性があることから、法人税法第37条《寄附金の損金不算入》第7項に規定する寄附金には当たらない旨主張し、一方、原処分庁は、本件支出金にはいずれも対価性がなく寄附金に当たる旨主張する。
上記①に係る本件支出金については、請求人の会計帳簿等に記載された現場と関係がない上、請求人が主張する追加支払に合理的理由や支払うべき特段の事情があったとはいえず、対価性のない支出であると認められることから寄附金に該当する。一方、②に係る本件支出金については、実際に工事が行われており、当該工事に係る対価であると認められることから寄附金に該当しない。
参照条文等
ポイント
資産の譲渡等には、事業活動の一環として又はこれに関連して行われる資産の譲渡を含み、事業の用に供している土地等の譲渡は、事業に付随して対価を得て行われる資産の譲渡に該当するものと解される。
この事例は、秋の収穫後の冬季の休作期間に売却を目的として整地工事をした稲作農地であった土地につき、売却時点において、事業の用に供する資産に当たるか否かが争われたものである。
要旨
請求人は、稲作農地であった本件土地は、宅地に整地した時点で稲作ができなくなり、その時点で家庭用資産になったのであるから、本件土地の譲渡は「資産の譲渡等」に当たらない旨主張する。
しかしながら、本件土地は稲作農地として請求人の事業の用に供されていた土地であって、例年どおり冬季の休作状態にあった時期に、本件土地の売却の話があり、それを受けて宅地に整地するための工事が行われたことからすれば、当該工事は、請求人の事業用資産である本件土地の売却を目的として行われたものにすぎず、事業用資産としての性格を失わせる事情にはならない。また、他に本件土地の事業用資産としての性格を失わせる事情は認められないことを併せて考えると、本件土地は、売却時点において、請求人が営む事業の用に供していた資産であったと認めるのが相当であり、本件土地の譲渡は、請求人の事業活動に関連して行われる資産の譲渡であって、「資産の譲渡等」に該当するものと認められる。
参照条文等
参考判決・裁決
富山地裁平成15年5月21日判決(税資253号9349)
被相続人の遺言内容は、遺言書作成時に各人名義であった預貯金等を遺贈する趣旨であるから、同預貯金等を相続開始時までに換価した現金は各名義人に遺贈されたものであると認定した事例
裁決事例集 第82集
ポイント
この事例は、被相続人の遺言書に「不動産以外の財産は請求人及び二男に相続させる。ただし、預貯金等で私の名義になっていないものはそれぞれその名義人の所有である」旨記載されていたことから、このただし書の解釈が問題となったものである。
要旨
原処分庁は、本件遺言書記載の各相続人名義の預貯金等(本件預貯金等)が、本件相続開始日現在では請求人によって換金されて現金として保管されていたという事実の下、本件遺言書は、不動産以外の財産については、請求人及び二男に相続させることを原則とする趣旨であると解される旨主張する。
しかしながら、本件遺言書第4項ただし書には、預貯金等で本件被相続人名義になっていないものは、各名義人の所有である旨記載されているところ、①当該記載及び追加遺言書に「三女がこのお金をおろす時は」と記載されていることからすると、本件被相続人は、本件預貯金等については、各名義人以外の者がこれを換金することは予定しておらず、本件相続開始日まで本件預貯金等がそのまま維持されていることを想定していたものと認められること、②本件預貯金等は、本件被相続人が亡夫から相続したものであり、本件被相続人の意思で各人名義の預貯金等としたものであること、③本件預貯金等の換金は請求人が行ったことであり、本件被相続人は当該換金の事実を知らなかったことを併せかんがみれば、本件遺言書第4項ただし書は、同書作成時に本件被相続人が各人名義で預貯金等としていたものは、換金のいかんにかかわらず、これを各名義人に遺贈する趣旨であると認めるのが相当である。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和58年3月18日第二小法廷判決(判時1075号115頁)
個別対応方式における用途区分の方法に誤りがあったとしてされた更正の請求について、確定申告において採用した用途区分の方法に合理性がある場合には、国税通則法第23条第1項第1号の適用はないとした事例
裁決事例集 第82集
要旨
請求人は、消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第2項第1号の規定(個別対応方式)の適用に当たり、医薬品の課税仕入れに係る消費税額の用途区分の方法について、課税資産の譲渡等と課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等に共通して要するものに区分すべきところ、課税仕入れの都度、課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等にのみ要するものに区分した上で、課税期間の末日の決算修正により、当該課税期間の医薬品に係る課税売上げの額に基づいて課税資産の譲渡等にのみ要するものと課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等にのみ要するものとに区分したために、納付すべき消費税及び地方消費税の額を過大に算定する誤りがあったのであり、国税通則法第23条《更正の請求》第1項第1号の規定の適用がある旨主張する。
しかしながら、個別対応方式が適用される場合に、用途区分の方法に誤りがあったとして同号の規定が適用される場合とは、申告当時に納税義務者が採用した用途区分の方法に合理性がなく、合理性のない用途区分の方法を採ることによって納付すべき消費税等の税額が過大となる場合をいい、他の合理的な用途区分の方法を採っていた場合と比較して単に納付すべき消費税等の税額が過大となる場合をいうものではないと解するのが相当であるところ、請求人が行っていた用途区分の方法は、医薬品の課税仕入れについて、その課税売上対応分を個別に把握可能な課税売上げに係る医薬品名及び数量又は金額を基準として、売上実績に基づいて区分する方法であり、合理性があると認められることから、国税に関する法律の解釈適用についての誤りがあった場合には該当せず、また、当審判所が請求人の納付すべき消費税等の税額を算出したところ、その計算過程に誤りがあった場合にも該当しない。したがって、国税通則法第23条第1項第1号の規定の適用はない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和62年11月10日第三小法廷判決(昭和60年(行ツ)第81号) 平成22年5月17日裁決(裁決事例集No.79)
所得を過少に申告するという確定的な意図について、請求人には外部からもうかがい得る特段の行動があったとは認められないから、隠ぺい又は仮装があるとはいえず重加算税を賦課することは相当でないとした事例
裁決事例集 第82集
要旨
原処分庁は、請求人が本来行うべき仮受金勘定から売上勘定への振替処理を行っていなかったことについて、①税理士から仮受金勘定の増加原因の解明を求められながらこれを行わなかったこと、②現金出納帳に虚偽の記載をしたり、同税理士にあえて説明しなかったこと及び③同税理士に特定の帳簿を提出しなかったことなどからすると、この行為は隠ぺい若しくは仮装に当たる又は所得を過少に申告する確定的な意図を外部からうかがい得る特段の行動であるなどとして、請求人の経理処理が隠ぺい又は仮装に当たる旨主張する。
しかしながら、③同税理士に特定の帳簿を提出しなかったとしても、そのことを容易に知り得るだけの資料を提出していたこと、②請求人が取引内容の具体的説明を同税理士にしなかったからといって、それが故意の隠ぺい又は仮装の行為であるなどとはいえないこと、①仮受金勘定の増加原因の解明について同税理士と請求人との間に認識の相違や意思疎通の欠如があったとしても、請求人が積極的な意思をもってあえて適正な経理処理を行うことなくこれを放置したとまで認めるに至らなかったこと等からすれば、請求人に故意の隠ぺい又は仮装の行為や過少申告の確定的意図を外部からうかがい得る特段の行動があったとまではいうことはできない。したがって、重加算税を賦課することは相当ではない。
参照条文等
債権譲渡の債務者対抗要件が具備されていないから、無価値の債権の代物弁済により債務が消滅したとして国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分があったとはいえないとした事例
裁決事例集 第82集
ポイント
この事例は、請求人が滞納法人に負っていた借入金債務の支払に代えて返済資力のない債務者に対する請求人の債権を代物弁済したことにより請求人が利益を受けたとして、原処分庁がした国税徴収法第39条の第二次納税義務の納付告知処分等の適否が争われたところ、代物弁済の目的とされた債権の一部は、債務者対抗要件を欠いており、いまだ滞納法人に帰属しているとみることができるから、その部分については無償譲渡等の処分があったとは認められないとしたものであり、過去にこのような事例について判断した裁判例や裁決例はなく、先例となるものである。
要旨
請求人が有していた各貸金債権の代物弁済によって本件滞納法人の請求人に対する短期貸付金(本件短期貸付金)の消滅の効果が発生するためには、代わりの給付を現実に行うことが必要であるところ、当該各貸金債権の一部については、債権譲渡の第三者対抗要件が具備され、代わりの給付が現実にされたということができるとともに、主債務者及び保証人に資力がなく弁済を受けることが事実上不可能なものであるから、無価値物による代物弁済として国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》の無償譲渡等の処分があったといえる。
しかしながら、他の貸金債権については、債務者対抗要件である債務者への通知を欠いており、代わりの給付が現実になされたとはいえず、本件短期貸付金のうち、当該貸金債権の代物弁済によって消滅したとされる部分は、いまだ消滅せず、本件滞納法人に帰属しているとみることができるから、国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分があったとは認められない。
参照条文等
国税徴収法第39条 民法第467条
分筆及び合筆された土地については、課税台帳に登録された価格のない土地に該当し、登記機関が認定した価額が登録免許税法附則第7条に規定する政令で定める価額であるとした事例
裁決事例集 第82集
ポイント
この事例は、課税台帳に登録された価格のない不動産の価額について登記官が認定した価額が妥当とはいえないものであったことから、審判所において価額の認定を行った上で、登記官の認定した価額は過大とはいえないとしたものである。
要旨
請求人は、分筆登記により分筆された土地又は分筆登記により分筆された土地が合筆登記により合筆された14筆の土地(本件各土地)には、分筆前の台帳価格(本件分筆前台帳価格)があることから、所有権移転を目的とする本件各登記に係る登録免許税の課税標準の額は、本件分筆前台帳価格を基に算定した価額によるべきである旨主張する。
しかしながら、不動産の価額は、登記申請の日がその年の4月1日から12月31日までの期間内であるものは、その年の1月1日現在において課税台帳に登録された不動産の価額を基礎として計算した金額に相当する価額とするとされているところ(登録免許税法附則7、登録免許税法施行令附則3前段)、本件各土地は、平成21年2月の分筆登記により分筆された土地又は同日の分筆登記により分筆された複数の土地が同年5月の合筆登記により合筆された土地であることから、本件各登記がされた平成21年6月においては、平成21年度の台帳価格がなかったと認められる。そうすると、台帳価格のない不動産の価額は、当該不動産の登記の申請の日において当該不動産に類似する不動産で台帳価格のあるものの価額を基礎として、登記機関が認定した価額とするとされていることから(登録免許税法施行令附則3後段)、本件各土地の価額は、それらの近傍類似の土地で平成21年度の台帳価格のあるものの当該台帳価格を基礎として登記機関が認定した価額となる。ところで、本件各土地のうち12筆の土地(本件12筆土地)の価額の認定に当たり、その近隣類似の土地の平成21年度の台帳価格を基礎とするところ、本件登記官がその基礎とした比準宅地は、三角形状の不整形地であり、ほぼ長方形状の本件12筆土地と形状の類似性を著しく欠くなど、適切な比準宅地とはいえない。そこで、本件12筆土地の価格形成に影響を与えるような特性を有する地域の中から、本件12筆土地と近傍の分譲住宅地に所在する宅地(本件認定宅地)を選定し、本件認定宅地の平成21年度台帳価格を基に、地価下落率、画地条件及び場所的条件の格差を考慮して本件12筆土地の価額を算定し、認定したところ、本件12筆土地の本件各登記に係る登録免許税の課税標準の額は、本件登記官の認定した課税標準の額を上回ることから、本件登記官の認定した課税標準の額は過大とはいえない。
参照条文等
国税通則法第15条、第36条 登録免許税法第9条、第10条、第28条、第29条、第31条、附則第7条 登録免許税法施行令附則第3項
ポイント
この事例は、法人税の更正処分及び源泉所得税の納税告知処分が調査手続を欠く違法なものか否かが争われたところ、適法な調査手続に基づいて行われた処分であり違法はないと判断したものである。
なお、本件処分にはホステス報酬に係る納税告知処分が含まれており、ホステス報酬に係る源泉所得税額の計算については、最高裁平成22年3月2日第三小法廷判決が、所得税法施行令第322条《支払金額から控除する金額》にいう「当該支払金額の計算期間の日数」は当該期間に含まれるすべての日数を指すものと判断し、ホステスの実際の稼働日数を指すという課税庁の主張を退けたことから、この事例でも、これに従ってホステス報酬に係る源泉徴収税額を再計算し、納税告知処分の一部を取り消している。
要旨
請求人は、原処分庁が本件査察調査をもって請求人に対し調査をしたとし、改めて調査を行わなかったのであるから、調査をすることなく行った本件各告知処分等及び本件各再更正処分は、適正な手続を欠く違法なものである旨、また、一度減額したものをいかなる理由があろうとも再度増額の処分をすることは権利の濫用である旨主張する。
しかしながら、課税庁が内部において既に収集した資料を基礎として正当な課税標準を求めることも「調査」の範囲に含まれるものと解されるところ、本件各告知処分等及び本件各更正処分は、①請求人の源泉所得税について、当初告知処分に係る請求人の源泉徴収簿等の関係資料及び源泉所得税の納付事績等の既に収集した資料等を改めて照合及び検討した上で、また、②請求人の法人税について、当初減額更正処分の関係資料、法人税の確定申告書及び同付属書類等の既に収集した資料等を改めて照合及び検討した上で行われたものであるから調査手続を欠く違法な処分とは認められない。また、課税庁は、自ら行った処分に瑕疵を発見したときは、その瑕疵が実体的なものであれ、手続的なものであれ、適正な課税の確保実現を図るため、これを取り消して新たな処分をなし得るとものと解すべきであるから、原処分庁が国税通則法第36条《納税の告知》第1項第2号の規定に基づき請求人に対して本件各告知処分等を行ったことに違法は認められない。
参照条文等
参考判決・裁決
新潟地裁平成11年7月15日判決(税資256号12頁) 最高裁平成22年3月2日第三小法廷判決(民集64巻2号420頁)
ポイント
この事例は、いわゆる横領損失に係る損害賠償請求権に係る収益計上時期、重加算税の適用に係る「隠ぺい・仮装」の行為者及び更正の期間制限における「偽りその他不正の行為」該当性が主要な争点となったものであり、この事例では、経営に参画する常務取締役も横領行為者と認められること等から、これらの争点については原処分庁の主張を認めている。
なお、更正の期間制限により消費税の更正処分がされなかったことにより、清算されずに残った仮受消費税等の法人税における収益計上時期も争点となったが、この事例では、消費税を納付しなくてよくなったこと(債務免除益)が確定した事業年度に益金の額に算入すべきとの判断から、原処分庁が仮受消費税等の計上事業年度にこれを益金の額(雑収入)に算入して行った原処分を取り消している。
要旨
請求人は、会計帳簿の記載の基礎となる売上伝票の一部を抜き取るなどして行った売上除外(本件不正行為)は従業員R及びJ常務の個人的な不正行為であるから、①これに係る損害賠償請求権に係る収益は、権利確定主義により請求人が本件不正行為を把握した事業年度に計上すべきである旨、②本件不正行為を請求人の行為と同視して重加算税を課することはできない旨、③請求人に税額を免れる意図はないから偽りその他不正の行為はない旨主張する。
しかしながら、①不法行為による損失の発生と損害賠償請求権の発生、確定は、原則として、これを同時に損金と益金とに計上すべきであるところ、請求人の経営に参画する常務取締役が本件不正行為の事実を把握していたのであり、通常人を基準とすると、請求人において、本件損害賠償請求権の存在、内容等を把握し得ず、権利行使を期待できないといえるような客観的状況にあったということはできず、権利の行使を期待することができないような場合にも当たらないから、本件損害賠償請求権の額は、本件不正行為による損失の発生した日の属する各事業年度の益金の額に算入され、②J常務の行為は請求人の行為と同視できるから、請求人に重加算税を課することができ、③本件不正行為は「偽りその他不正の行為」に当たるというべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
東京高裁平成21年2月18日判決(訟月56巻5号1644頁) 東京高裁平成18年1月18日判決(税資256号10265)
利息制限法所定の制限利息を超える額の利息を支払ったことによる過払金返還請求権は、その利息を支払った時に発生し、既に発生した債権は弁済期が未到来であっても差押えの対象となること及び一身専属権であると認めることはできないとした事例
裁決事例集 第82集
ポイント
この事例は、利息制限法所定の制限利息の額を超える利息を支払ったことによる過払金返還請求権の発生時期や差押財産該当性について判断したものであり、先例となるものである。
要旨
請求人は、本件の金銭消費貸借取引は、過払金充当合意のある基本契約に基づく一体の継続的取引であり、契約終了時までは過払金返還請求権は不確定な債権であって、債権の帰属も確定しないから、差押えの対象とすることができない旨主張するが、過払金返還請求権の法的性質が不当利得に基づく返還請求権である以上、過払金返還請求権が発生するのは、本件滞納者を借主、請求人を貸主とする金銭消費貸借契約に基づいて本件滞納者が利息制限法所定の制限利息を超える額の利息又は損害金を支払った時点、すなわち、各過払金発生時と解するのが相当であり、その時に本件滞納者が過払金返還請求権を取得すると解するのが相当であって、既に発生した債権は、弁済期が未到来であっても差押えの対象になるから、差押手続に違法はなく、したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
また、請求人は、過払金返還請求権は、取引終了時になって初めて行使することが可能であるところ、いつ取引を終了させるかは専ら借主たる本件滞納者の意思によるものであり、一身専属権と認められるから、差押禁止財産となる旨主張するが、過払金返還請求権は、身分法上の非財産的権利ではなく、通常の金銭債権であり、これを差し押さえることを禁止する規定はなく、同請求権の性質からこの差押えを禁止すべきとも解されないから、過払金返還請求権を一身専属権であると認めることはできず、したがって、この点に関しても請求人の主張には理由がない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成18年1月13日第二小法廷判決(民集60巻1号1頁)
保証債務の特例を適用するに当たり、土地の譲渡代金が主債務者を経由して債務の返済に充てられている場合など、形式的には保証債務の履行といえない場合は、実質的にみて保証債務の履行であることが客観的に明らかであることが必要であるとした事例
裁決事例集 第82集
ポイント
所得税法第64条《資産の譲渡代金が回収不能となつた場合等の所得計算の特例》第2項に規定する保証債務の特例を適用するためには、原則として、その譲渡代金をもって主たる債務者の債務の返済に充てられることが必要であるところ、この事例は、請求人が譲渡した土地の譲渡代金が主債務者の口座に入金された後、同口座から金融機関に返済されるなど、形式的には保証債務の履行とはいえない場合において、実質的にみて保証債務の履行といえるか否かを、土地譲渡の経緯、譲渡代金の流れ、金融機関の処理状況等から判断したものである。
要旨
請求人は、物上保証していた土地の譲渡代金をいったん主債務者の口座に入金したが、その後直ちに当該口座から同額が金融機関に返済されているから、当該返済は実質的に請求人が保証債務を履行したものである旨主張する。
しかしながら、主債務者の口座へ入金された資金は、請求人からの借入金と経理処理された上、主債務者から金融機関へ返済していることから、当該返済は形式的には請求人による保証債務の履行ではなく、これが実質的にみて保証債務の履行であるといえるためには、保証債務の履行であることが客観的に明らかであることが必要であると解されるところ、土地譲渡の経緯、譲渡代金の流れ、金融機関の処理状況等からみて、請求人が保証債務を履行したことが客観的に明らかであったとは認められず、また、主債務者の資力、債務の返済状況等からすると、返済時点において保証債務を履行する必要性が客観的に明らかであったとも認めることができない。
したがって、当該返済は、形式的・実質的ともに請求人による保証債務の履行であるとは認められない。
参照条文等
転貸の目的となった建物の賃貸借契約の終了に伴い生じた債務免除益について3年以上の期間の不動産所得の補償であるか否かを判断するに当たり、その転貸に係る賃貸人の地位を承継する場合は、その賃貸借契約終了前後の1年当たりの賃貸料の額と新たに負担することとなる修繕費の額を基礎として判断するのが相当とした事例
裁決事例集 第82集
ポイント
臨時所得となる3年以上の期間の補償に該当するか否かについて、補償の期間が契約等で示されていない場合などは、補償に至った各種事情等を総合的にみて、補償に係る金額の算定の基礎とされるべき内容及びその金額に基づき判定するのが相当と解される。
この事例は、建物の賃貸借契約の終了後も一定の賃料収入が保証された上で生じた債務免除益が3年以上の期間の補償に該当するか否かにつき、判断の基礎となる1年当たりの減収額を、当該賃貸借契約終了前の1年当たりの賃貸料の額(収入していた金額の全部)とすべきか、同契約終了前後の1年当たりの賃貸料の額の差額に、新たに負担することとなる修繕費の額を加味した額(収入していた金額の一部)とすべきかが争われたものである。
要旨
原処分庁は、債務免除により補償されたのは請求人らがF支社から受領する年間賃貸料であり、そうすると債務免除益は3年以上の期間の不動産所得の補償には当たらない旨主張する。
しかしながら、補償に係る契約等において、補償に係る金額が3年以上の期間の補償に該当するか否かの判定について、賃借人が賃借物件を転貸しており、賃貸人との賃貸借契約期間の満了後は、賃貸人が、転借人との間で新たに賃貸借契約を結び、転貸人の地位を承継することに伴い補償されたような場合で、その内容が不動産貸付業務の形態の転換に伴い減少することとなる収入の額又は新たに負担することとなる費用の額を考慮した補償と認められる場合であれば、補償に係る金額が、減少することとなる収入の額又は新たに負担することとなる費用の額の3年以上の期間に相当する金額であるか否かで、臨時所得の要件である3年以上の期間の補償に該当するのかを判定するのが相当である。
したがって、賃貸借契約の終了に伴い、賃貸住宅に係る賃貸人たる地位を承継し、賃貸借契約終了前の賃借人(転貸人)に代わって賃貸住宅の入居者から賃貸料収入を得ることができた請求人らに係る1年当たりの減収額は、請求人らの所有する住宅の賃借料の額と転貸人が入居者から受領していた賃貸料の額から転貸人が負担していた修繕費の額を控除した額との差額とするのが相当であり、そうすると、F支社が請求人らに対して行った債務免除に係る補償の期間は3年以上の期間の不動産所得の補償に該当する。
参照条文等
参考判決・裁決
昭和59年1月24日裁決(裁決事例集No.27・63頁)、平成19年3月12日裁決(裁決事例集No.73・265頁)、平成20年4月15日裁決(裁決事例集No.75・260頁)
請求人が在職中に勤務先の親会社から同社のリストリクテッド・シェア(譲渡等制限付株式)を付与されたことによる所得は、退職所得ではなく、給与所得に当たるとした事例
裁決事例集 第82集
ポイント
請求人に付与されたリストリクテッド・シェア(譲渡等制限付株式)とは、その付与日に議決権及び配当受領権を取得するものの、株券の受渡しは行われず、売却、名義書換、譲渡及び担保への差入れができないという譲渡等制限が付されたものであり、一定期間の勤務又は一定期間の勤務後退職し、かつ、勤務先グループの業務と競合する業務等を行わないという条件を満たした場合にその譲渡等制限が解除されるが、条件に反した場合には没収されるというものである。
この事例は、在職中に上記リストリクテッド・シェアを付与された請求人が、その後退職し、譲渡等制限が解除されたという事実関係の下で、このリストリクテッド・シェアに係る所得の区分及び収入計上時期につき判断したものである。
要旨
請求人は、勤務先の親会社から在職中に当該親会社のリストリクテッド・シェア(譲渡等制限付株式)を付与されたことによる本件所得について、①特別な退職に際してのみ株式を支給するものであるから、本来退職しなかったとしたならば支払われなかったものであること、②勤務年数及び年齢を支給基準としており、永年の勤務に対する報奨としての意図が明白であること、及び③退職後は同業他社で働かないという条件を課すことで、実質的に引退することを強いており、請求人は現実に退職したことにより株式を支給されたのであるから、生活保障的な最後の所得でもあること等を理由として、退職後の年分の退職所得に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人が付与されたリストリクテッド・シェアは、①退職の事実の有無にかかわらず請求人が在職期間中に付与されたものであり、請求人が、仮に退職しなかったとしても条件を満たせば、没収されることなく本件所得を得ることができたことからすると、本件所得は、退職という事実によって初めて給付されたものとは認められず、また、②親会社が、請求人の前年の業績に応じて賞与の一部として付与したものであり、請求人の継続的な勤務に対する報償ないしその間の労務の対価の一部の後払の性質を有するものとみることもできないから、本件所得は退職所得には該当せず、給与所得に該当する。
なお、本件所得の収入計上時期については、親会社がリストリクテッド・シェアを没収しないことを決定してその権利を確定し、譲渡等制限を解除した日において、請求人の株主としてのすべての権利が確定するから、その日の属する年分となる。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和56年4月24日第二小法廷判決(民集35巻3号672頁)、最高裁昭和58年9月9日第二小法廷判決(民集37巻7号962頁)、最高裁昭和53年2月24日第二小法廷判決(民集32巻1号43頁)
会社員である請求人が、勤務の傍ら個人的に行った取引に係る事業所得の申告を怠ったことに関して、当初から当該事業所得を申告しないとの意図を外部からもうかがい得る特段の行動は認められないとした事例
裁決事例集 第82集
要旨
会社員である請求人が、勤務の傍ら個人的に行った取引に係る事業所得があるとして、所得税の期限後申告書を提出したところ、原処分庁は、請求人が当初から当該事業所得を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づき法定申告期限までに申告しなかったものであり、国税通則法第68条《重加算税》第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たす旨主張する。
しかしながら、原処分庁が上記「特段の行動」に当たるとした、①請求人は、勤務先等に当該取引が露見しないようにするため、取引先の従業員に対して、リベートと称する金員を支払ったこと、②請求人は、勤務する営業所の売上げを記載した「請求書明細」を週1回本社に報告する際に、当該取引を記載せずに報告したことについては、請求人が当該取引を秘匿することを意図して行ったものとはいえず、ほかに請求人が当該取引及びこれに係る事業所得を隠ぺい又は仮装したと評価すべき事実は認められないことから、原処分については、無申告加算税相当額を超える部分の金額を取り消すのが相当である。
参照条文等
国税通則法第68条第2項 《参考判例・裁決》 最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
ポイント
役員給与のうち、定期同額給与、事前確定届出給与及び利益連動給与のいずれにも該当しないものの額は、損金の額に算入されないこととされている。このうち、定期同額給与とは、各支給時期における支給額が同額である定期給与のほか、支給額の改定があった場合において一定の要件を満たす定期給与をいう。
この事例は、請求人における役員給与の減額改定につき、業績悪化改定事由の存否を判断したものである。
要旨
請求人は、決算月(平成20年7月)の2か月前において、経常利益が対前年比で6%減少している状況から、代表取締役の給与を減額改定したことは、法人税法施行令第69条《定期同額給与の範囲等》第1項第1号ハに規定する役員給与の減額に係る業績悪化改定事由に該当する旨主張する。
しかしながら、法人税法施行令第69条第1項第1号ハに規定する業績悪化改定事由とは、法人の経営状況の著しい悪化その他これに類する理由によりやむを得ず役員給与の額を減額せざるを得ない事情があることをいうのであり、本件は、①本件事業年度の売上高、経常利益は過去の業績と比べて何らそん色がないこと、②請求人が設定した業務目標を達成できなかったことが減額の理由であること等からすれば、業績悪化改定事由があるとは認められず、また、上記理由以外に役員給与を減額せざるを得ない特段の事情が生じていたと認めるに足る事実はない。
参照条文等
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