裁決事例 平成19年(2007年)
要旨
請求人は、本件営業譲渡日に滞納法人の個人株主Bらが受領した金員は、滞納法人の株式の譲渡代金であるとともに、同日は滞納法人の解散決議前であるから、当該金員は国税徴収法第34条の「残余財産の分配」によるものではないと主張する。
しかしながら、①本件滞納法人は、本件営業譲渡日に、本件滞納法人の代表者である請求人とその親族が全株式を所有する本件滞納法人の筆頭株主であるC社に対する債務を除き、資産・負債のすべてをD社に譲渡するとともに、従業員もD社に引き継いでいること、②D社は、当該金員を営業譲渡代金の一部と認識し、その旨の経理をしていること、③本件営業譲渡日において本件滞納法人は債務超過と認められ、その株式に経済的価値はなく、D社が当該株式を取得する経済的合理性も必要性も認められないこと、④本件滞納法人の株式の譲渡に必要な取締役会の承認がなされていないこと、⑤請求人は本件営業譲渡に際し、Bら個人株主を含む従業員に迷惑を掛けたくないと考えていたこと、⑥Bら個人株主が受領した金員は、本件滞納法人への出資相当額であること、⑦本件滞納法人は、本件営業譲渡日から解散決議に至るまで何ら資産を有せず、事業活動も行っていないことからすると、本件営業譲渡は解散を前提として行われたものと認められ、Bら個人株主が受領した金員は、株式譲渡代金ではなく、本件営業譲渡の対価の一部を分配したものと認められるから、当該金員の交付は、国税徴収法第34条に規定する「法人が解散した場合における残余財産の分配」に当たり、請求人はその価額を限度として同条の第二次納税義務を負うこととなる。
要旨
請求人は、本件各更正処分が調査を行わずになされた違法な処分である旨主張する。
しかしながら、原処分庁は、査察調査の過程において把握された課税資料と部内資料等とを照合し、その検討結果に基づいて請求人の本件各事業年度の法人税の所得金額及び納付すべき税額を算出して本件各更正処分を行ったと認められるところ、当該課税資料は、適法に行われた査察調査の過程で把握された事実及び証拠等に基づいて作成されたものであり、当該課税資料を本件各更正処分に活用したことに違法はないと解される。また、原処分庁が当該課税資料を基として本件各更正処分をするに至るまでの判断及び認定過程が国税通則法第24条の規定する調査に含まれると解されることから、本件各更正処分は同条が規定するところの調査に基づいて行われたものであると認められる。したがって、本件各更正処分が調査を行わずになされたものである旨の請求人の主張には理由がない。
要旨
請求人は、滞納国税を徴収できるC社からの家賃債権の差押え及びD社に対する貸付金を有している事実の確認を原処分庁が怠っていることから、本件各不動産の差押えは差押財産の選択を誤った不当な処分であると主張するともに、滞納税額と本件各不動産の評価額からみて、過大な差押えであると主張する。
しかしながら、滞納者に属する財産のうち、いかなる財産を差し押さえるかについては徴収職員の合理的裁量に委ねられていると解されるところ、原処分庁所属の徴収担当職員は、請求人から当該家賃収入は全額銀行借入れの返済に充てられ手元に残らない旨の説明を受けたことから、当該家賃収入を差し押さえなかったものと認められ、また、徴収職員が差押処分をするに当たり滞納者の全財産を把握しなければならない旨の法令上の規定はないのであるから、本件各不動産の差押処分が、差押財産の選択についての徴収職員の合理的な裁量の範囲を逸脱したものとは認められない。さらに、原処分庁は、地価公示法により公示された標準地の価額を基に差し押さえた宅地の処分予定価額を算出するとともに、固定資産税評価額を基に差し押さえた建物の処分予定価額を算出しているところ、これらの処分予定価額は客観的な時価から借地権や借家権等による減額調整や公売の特殊性による減額調整を行って算出されたものであるから、相当であると認められ、これらの処分予定価額から滞納国税に優先する被担保債権額を控除した価額は、滞納国税に満たないと認められるから、超過差押えにも該当しない。
毎月の役員報酬の一部を未払計上し、当該未払額を使用人の賞与の支給時期に支払った場合に、当該未払額は法人税法第35条に規定する役員賞与に当たるとした事例
裁決事例集 第74集 133頁
要旨
法人税法第35条第4項に規定する「臨時的な給与」の意義については、法令に格別の規定はないが、同項が、「毎年所定の時期に定額を支給する旨の定めに基づいて支給される給与」も「臨時的な給与」に含まれ得ることを前提として、「他に定額の給与を受けていない者」に対し支給したものについてこれを「臨時的な給与」のうちから除外していること並びに社会通念によって考えれば、単に当該給与の支給時期又は支給額が予め定められているか否かのみによって一律に決まるものではなく、その支給時期、支給回数及び支給の趣旨等を、年間のその他の給与の支給状況全体との関連において考察し、これによって当該給与が経常性のない一時的なものと認められるときは、同項に規定する「臨時的な給与」に該当するものと解するのが相当である。
これを本件についてみると、①本件未払金勘定貸方計上額は、その支給時期及び支給回数が使用人の賞与の支給日及び支給回数と同じであることからすると、その全額が経常性のない一時的なものと認めるのが相当であること、②平成17年7月計上額は、その計上日にその全額が各役員に対し支給されているところ、同人らに対する同月の前3か月及び後4か月の各支給額が、それぞれ定額であることからすると、同人らに対する各支給額のうち当該各定額を超える額は、支給状況全体との関連から、経常性のない一時的なものと認めるのが相当であること、③平成17年12月計上額のうちHに係る計上額は、その計上日にその全額が同人に対し支給されているところ、同人に対する同月の前後3か月の各支給額が定額であることからすると、同人に対する支給額のうち当該定額を超える額は、支給状況全体との関連から、経常性のない一時的なものと認めるのが相当であること、④平成17年12月計上額のうちE、G及びFに係る各計上額は、その計上日にその全額が同人らに対し支給されているところ、同人らに対する同月の前4か月の各支給額が上記②のとおり定額であり、また、同人らに対する同月の後7か月の各支給額も、それぞれ定額であることからすると、同人らに対する各支給額のうち上記各定額(同月の後7か月の各支給額)を超える額は、支給状況全体との関連から、経常性のない一時的なものと認めるのが相当であり、比較する各定額が平成17年12月の後7か月の各支給額ではなく、同月の前4か月の各支給額であることについては、これを認めるに足る証拠はないのであるから、比較する各定額は同月の後7か月の各支給額とするのが相当であることから、本件未払金勘定貸方計上額並びに上記②、③及び④の各超過額は、法人税法第35条第4項に規定する「臨時的な給与」すなわち役員賞与に該当し、本件各事業年度の損金の額に算入することはできない。
建物貸付けは、同族会社2社及び親族に対する限定的かつ専属的なものであり、貸付けに係る維持管理等の程度が実質的には相当低いとして、不動産所得を生ずべき事業に当たらないとした事例
裁決事例集 第74集 37頁
要旨
請求人は、①資産の取得に係る投資額(借入金)の多寡を重要視すべきであること、②事業とは、社会通念に照らして事業と認められるものすべてを含み、事業所及び人的・物的要素を結合した経済的組織を必ずしも必要とせず、本件貸付けは十分に自己の危険を持ち得る事業といえること、また、③総合ビジネスを視野においた事業を行うという計画を基に建築、事業経営を行っているという現状にかんがみると、本件貸付けは不動産所得を生ずべき事業に該当すること、さらに、④東京高裁平成13年7月11日判決の中で挙げられている事業規模の判断基準に照らし合わせた場合、本件貸付けは事業に該当するとも主張する。
しかしながら、不動産貸付けが不動産所得を生ずべき事業に該当するか否かは、①営利性・有償性の有無、②継続性・反復性の有無、③自己の危険と計算における事業遂行性の有無、④取引に費やした精神的・肉体的労力の程度、⑤人的・物的設備の有無、⑥取引の目的、⑦事業を営む者の職歴・社会的地位・生活状況などの諸点を総合して、社会通念上事業といい得るか否かによって判断するのが相当と解される。
本件貸付けについては、営利性、継続性、人的・物的設備など部分部分としてみた場合は直ちに事業ではないということはできない要素も認められるが、本件貸付けは、本件同族会社2社及び親族に対する限定的かつ専属的なものであり、平成5年借入金は、請求人の税理士事務所等として使用することを目的とした本件建物の建設資金等であったこと及び本件借入金の年間返済額は、本件貸付けの年間賃貸料収入を上回っており、本件貸付けに係る賃貸料収入以外の収入も原資となっていること、また、本件同族会社2社の賃貸料は、それぞれの法人の収入及び人員割合が計算の根拠となっていることからすると、請求人における事業遂行上その企画性は乏しく、危険負担も少ないと認められる。また、本件建物は、その構造からみて他に賃貸が可能である等の汎用性が少ないなど、これらの点における請求人の自己の危険と計算による事業遂行性は希薄であると認められる。
さらに、本件建物の設備等の管理・修理点検等は請求人が行っているものの、清掃及び冷暖房設備点検、ビルの防犯・火災のセキュリティ契約等は本件同族会社2社が行っていること、賃貸料の集金等はインターネットバンキングにより振替処理されていること、また、本件貸付物件は本件同族会社2社及び親族に継続して貸し付けられていることから、請求人にとって賃借人の募集等をする必要はなく、賃貸料の改定交渉等の業務の煩雑さもなく、ビル管理業務等の負担も軽微であることから、本件貸付けに費やす精神的・肉体的労力の程度は、実質的には相当低いと認められる。
これらの諸点を総合勘案すると、本件貸付けは、社会通念上事業と称するに至る程度のものとは認められないと判断するのが相当である。
所得税法第90条に規定する平均課税を適用せずに確定申告が行われた後、平均課税の適用を求めてなされた国税通則法第23条第1項に基づく更正の請求が認められないとした事例
裁決事例集 第74集 88頁
要旨
請求人は、国税通則法第23条に規定する更正の請求は確定申告書の誤りを申告後に変更するための制度であり、確定申告書自体を訂正する意味を持つため、本件規定を適用せずに本件確定申告書を提出しても、本件更正の請求により本件規定の適用が認められるべきである旨主張する。
しかしながら、本件規定の適用を受けるには、所得税法第90条第4項において確定申告書に本件規定の適用を受ける旨及び平均課税の計算明細を記載することが要件とされているところ、本件確定申告書にはこれらの記載はなく、請求人は本件規定を適用せずに税額計算を行ったということとなる。そうすると、本件確定申告書において本件規定を適用せずに税額計算を行ったことは、そのこと自体法律の規定に反するものではなく、また、その計算に誤りはないと認められることから、本件確定申告書には、国税通則法第23条第1項に規定する課税標準等若しくは税額等の計算が国税の法律に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったとは認められないため、請求人の主張には理由がない。
要旨
請求人は、原処分庁が任意売却の申出を認めずに請求人の居住用財産である本件建物の公売処分を強行したことは、権利の濫用に当たる旨主張する。
しかしながら、差押財産を換価するときは、公売によって行うこととされており、納税者の居住用財産を換価する場合に、納税者の事情を考慮した換価手続を行わなければならない又は公売以外の方法により換価しなければならないとする法令上の規定は存在しない。そして、公売は、差し押さえた財産を買受希望者の自由競争に付し、その結果形成される最高価額により売却価額及び買受人となる者を決定するための一連の手続であり、強制換価手続である国税滞納処分の手続の公正を維持しながらも、なるべく高価で納税者に有利な売却を行うことをある程度まで制度的に保障しようとする手続であると解される。本件において、原処分庁が請求人からの任意売却の申出を認めずに公売を行ったことは、法令上の規定に従ったものであり、また、請求人の申出に係る任意売却による買受希望者が公売に参加し最高価で入札することもできたのであるし、さらに、強制換価手続において納税者の権利利益も保護しようとする上記の公売の趣旨及び目的に反する事実は見当たらないから、本件公売公告処分が権利の濫用に当たり違法又は不当ということはできない。
要旨
請求人は、請求人が行った絵画の譲渡は、その売却資金をすべて宗教活動の資金としている等、宗教法人である請求人の宗教活動の一環として行われたものであること、また、単発的な取引であり、消費税法第2条第1項第8号に規定する「事業として」行われたものに該当しないことから、消費税等の課税対象とはならない旨主張する。
しかしながら、宗教法人が宗教活動の一環として行った資産の譲渡等について消費税等を課税しないとする法令上の規定はなく、また、法人はそれ自体が事業を行う目的で設立されることからすれば、法人が行う資産の譲渡等は、そのすべてが事業として行われたものに該当することになると解されるから、法人である請求人が行う絵画の譲渡は、事業として行われたものに該当することになる。したがって、請求人の主張には理由がない。
破産会社が関係会社の負債の弁済義務を負うとした判決に基づき支払われた弁済額は、もはや関係会社に対して求償権を行使できない状況にあるから、支払った事業年度の損金の額に算入することができるとした事例
裁決事例集 第74集 125頁
要旨
原処分庁は、本件判決の確定により、破産会社が本件遅延損害金の支払義務を負うことが確定したとしても、仮に破産会社がA社に本件遅延損害金を弁済すると、破産会社は関係会社に対して求償債権を取得するから、最終的な破産会社の負担額は確定していない。また、仮に関係会社に対する求償債権が事実上貸倒れにあり、回収することができない状態にあったとしても、貸倒損失を損金の額に算入するためには損金経理をしておく必要があるが、破産会社は、本件遅延損害金につき損金経理をしていないから、貸倒損失を計上することができない旨主張する。
この点について、本件判決が確定しただけでは、破産会社が本件遅延損害金の全額を負担することが確定したということはできないから、本件判決の確定のみをもって、本件遅延損害金を、法人税法第22条第3項第2号の費用として、本件事業年度の損金の額に算入することはできない。
しかしながら、A社は、本件事業年度内において、地裁等から強制管理に係る本件配当金を受領してこれを全額貸金債権の元本に充当しているところ、その時点で破産会社は関係会社に対する当該配当金相当額の求償債権を有することになるが、破産会社が上記貸金債権の弁済責任を負うに至った経過や関係会社の財産状況等から、破産会社が当該配当金相当額の最終的な負担者となることは明らかであったと認められるから、そのような求償債権を、形式上、資産として計上しなければならないとすることは相当ではなく、破産会社は、当該配当金相当額を、法人税法第22条第3項第3号の損失として、本件事業年度の損金の額に算入することが許されるというべきである。
要旨
請求人は、法人税法第36条及び法人税法施行令第72条に規定する適正役員退職給与の額の具体的な判断基準としていわゆる功績倍率法を用いることについて争いはないが、原処分庁が類似比較法人として選定した会社は不明であり、その数も少ないこと、代表取締役と取締役の功績倍率が同じというのは不自然であり、社会通念上も余りに低率であること、Fは創業以来の代表取締役であること、Hは創業者の妻であり創業以来の取締役であること、裁判事例や裁決事例でも功績倍率が3.3~3.6倍というのは定着していることなどからすると、Fの功績倍率を3.6、Hの功績倍率を3.3とするのが相当である旨主張する。
原処分庁は、功績倍率を求めるために、請求人の類似比較法人として4社を選定しているところ、その抽出基準は請求人の事業内容や事業規模等を反映させたものであって合理的なものと認められ、実際に比較法人を抽出するに当たって、し意的に抽出した等の事情は認められない。
ただし、比較法人のうち、a法人については、資金繰りのために役員退職給与規定に定められた功績倍率より大幅に低率の功績倍率に基づいて算定した退職給与を支給したとの特殊な事情があり、実際に支給された金額も他の3社に比べて大幅に低いものであることに照らすと、比較法人からa法人を除外した3社を比較法人として、功績倍率を算定するのが相当である。そうすると、平均功績倍率は1.9となる。
確かに、平均功績倍率を算出するに当たっては、比較法人の数が多いことは望ましいが、その数が少ないことのみをもって、算出された平均功績倍率が相当性を欠くということはできず、上記の事情によれば、比較法人を3社として平均功績倍率を算出したことに合理性がないとはいえない。
また、功績倍率を定めるに当たっては、代表取締役か取締役か、また、創業以来の役員であるかどうかなどの名目だけではなく、会社への実際の貢献度等の実質も考慮されるべきであるところ、当審判所の調査によっても、上記の平均功績倍率を本件に当てはめることが相当性を欠くと認められるほどに、F及びHの請求人への貢献度が高かったことを裏付ける事情は認められない。
さらに、本件に関する具体的事情を考慮せず、裁判事例や裁決事例と異なるというだけで、上記の平均功績倍率が社会通念上不相当に低率であるということもできない。
要旨
請求人は、譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は、その資産の支配の移転の事実に基づいて判定した当該資産の引渡しの時により判定すべきところ、①請求人は所有権移転登記に必要な書類を引き渡していないこと、②契約書上、売買代金の全額の支払いと同時に所有権移転及び引渡しを行うこととなっており、また、違約条項があることから契約破棄が理論上可能であることなどから、本件土地に係る譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は平成17年ではないと主張する。
しかしながら、その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額は、その年において収入すべき金額とされているところ、譲渡者による資産の引渡しがあれば、通常、所有権も移転しているものと考えられ、かつ、譲渡者が資産を引き渡した時には、相手方に対してその譲渡代金を請求できることが確定的となり、譲渡代金相当額を収入すべき金額と認識し得る状態とみることができるから、譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は、原則として、その所得の基因となる資産の引渡しがあった日によるものと解するのが相当である。
そして、その引渡しがあった日の判定に当たっては、必ずしも売買契約書上の引渡しの時期に関する文言にとらわれることなく、本件契約と別件契約はもともと一括の契約であるか否かなどの取引諸事情、契約内容及び買主がその資産の使用を開始した時期などを総合的にみて、実質的にその資産に対する支配管理の変動があった時期がいつかという観点から判断するのが相当である。
本件買受会社は、本件土地及び別件土地を一括して買い受け、本件開発区域の一団の土地の一部として、宅地造成をすることを予定していたと認められる。また、請求人は、本件買受会社の開発行為に全面的に協力する旨を約した上で契約し、本件契約の直後に同社に開発行為施行同意書を提出していること、仮登記以後の本件土地の危険負担等は、同社が負うことになっていることからすると、請求人と本件買受会社の間では、本件契約の締結時に本件土地の支配管理が請求人から本件買受会社に移転する旨の合意があり、本件買受会社は本件土地の使用収益が可能となったものと認められる。そして、本件開発区域の造成工事は、平成17年10月初旬に着工された上、請求人ら地権者の立ち入りもできなかったことから、本件買受会社が現実に使用収益を開始し、実質的に支配管理の移転があったと認められる。
以上のことからすると本件土地の譲渡の時期は平成17年10月初旬とするのが相当である。
修正申告のしょうように至るまでの過程において、原処分庁が当初保有していた情報とは異なる申告漏れが判明した事情がある場合において、修正申告は更正があるべきことを予知してなされたものであると認めた事例
裁決事例集 第74集 27頁
要旨
課税庁が申告内容について調査を行い、その結果に基づき修正申告のしょうようをした後に、修正申告書の提出があった場合には、自発的な修正申告があったとはいえないから、かかる修正申告書の提出は国税通則法第65条第5項に規定する「更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に当たらない。
本件では、①原処分庁は請求人の所得税に関する調査を行うために呼び出したこと、②その日に請求人に対する調査が行われたこと、③その結果、その場で配当所得の申告漏れになっていた正しい事実が明らかになったこと、④調査担当職員が調査の経過に照らし、上記配当所得以外の申告漏れは見込まれないと判断したことが認められ、修正申告のしょうようがあったものといえる。
そして、原処分庁は、本件調査日以前に何度か請求人に対してC社との取引内容を明らかにする文書を提出するように求め、当初入手情報の存否の当否を確認するよう努めており、また、調査担当者は、本件調査日において、D社の株式に係る配当金が本件取引口座に入金されているにもかかわらず、当該収入が申告されていなかったという正確な情報を把握した上で修正申告をしょうようしたのであるから、請求人の主張は前提を欠いており理由がない。
譲渡契約の日以降も不動産所得を生ずべき業務の用に供される建物の未償却残高について、譲渡所得の計算上、取得費として既に必要経費に算入されていることから、譲渡の日以後生ずる不動産所得の計算上、減価償却費には算入されないとした事例
裁決事例集 第74集 66頁
要旨
請求人は、建物移転補償金は、実際に建物を取り壊したときに対価補償金に当たるものとして取り扱うことができることからすると、本件建物等移転料については、本件建物を取り壊した平成16年分の所得として申告すべきであり、平成14年には本件建物の譲渡所得の総収入金額は発生していないから、本件修正申告は、申告義務のない違法な申告であり、本件各土地及び本件建物等移転料に係るいずれの譲渡所得も平成16年分となるべきである旨主張する。
しかしながら、譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は、譲渡所得の基因となる資産の引渡しがあった日によるが、納税者が当該資産の譲渡に関する契約の効力発生の日により総収入金額に算入して申告があったときは、これを認めることと取り扱われている。
そして、一の契約において、2以上の資産の譲渡が行われた場合、一部の資産について、その引渡しがあった日を譲渡の日とし、他の資産について、契約の効力が発生した日を譲渡の日として申告することは、納税者の選択により、契約の効力発生の日を譲渡の日として選択することを認めた趣旨に合致しない不合理なものであることから、認められないと解すべきである。
これを本件についてみると、請求人は、本件建物等移転料については租税特別措置法通達33-14の定めに従い、本件修正申告において、これを対価補償金として申告することを選択しており、その後、本件建物は平成16年3月下旬に取り壊されている。
また、本件建物等移転料の支払いに係る契約は、本件各土地の譲渡と一体不可分の契約であると認められ、本件各土地の対価補償金と本件建物等移転料のいずれもがこの契約により平成14年において、収入すべきことが確定した金額であると認められる。
そして、少なくとも、本件建物等移転料を対価補償金として譲渡所得の総収入金額に算入することを選択した場合には、本件各土地の対価補償金と本件建物等移転料の収入すべき金額に係る譲渡所得の収入すべき時期については、同一の基準で判断すべきであると認められるところ、請求人は本件各土地の対価補償金、残地補償金及び建物等移転料について、契約の効力発生の日の属する平成14年分の譲渡所得の総収入金額として修正申告しており、これは適法な申告であると認められる。
加えて、請求人は、本件修正申告において、譲渡所得の金額の計算上、本件建物等移転料の対象となった本件建物について、平成14年9月末現在の未償却残高を取得費として控除していることが認められ、これは所得税法第38条の規定に照らして適正なものであると認められるから、本件建物の取得に要した金額のすべては、請求人の平成14年分までの不動産所得及び譲渡所得の所得金額の計算上、その各所得の総収入金額から控除されている。
したがって、平成15年分の所得税の不動産所得の金額の計算において、本件減価償却費を必要経費とすることは、本件建物の取得に要した金額を超える金額を、所得の計算上控除することとなり、すなわち、投下資本の回収部分を超える金額を控除することになるから、本件減価償却費を必要経費に算入することは認められない。
倍率方式で評価する地域内に所在する市街地農地を評価するに当たり、当該農地が宅地であるものとした場合における固定資産税評価額が明らかな場合には、当該固定資産税評価額を基として当該農地が宅地であるものとした場合の価額を算定すべきであり、また、 控除すべき造成費に給水管等敷設費は含まれないとした事例
裁決事例集 第74集 357頁
要旨
1 財産評価基本通達40において、市街地農地の価額は、その農地が宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額から宅地に転用する場合に通常必要と認められる造成費に相当する金額を控除して評価することとしており、倍率方式によって評価する地域内に所在する場合には、その農地が宅地であるとした場合の価額の算定をどのように行うかが問題となるところ、財産評価基本通達では、その農地が宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額は、その付近にある宅地について同通達11に定める方式によって評価した1平方メートル当たりの価額を基とし、その宅地とその農地との位置、形状等の条件の差を考慮して評価するとして実務上の取扱いを定めている。
X市においては、市街化区域内に所在する田及び畑の固定資産税評価額は、その農地が宅地であるとした場合の価額から造成費相当額を控除することによって求められているから、原則として、市街化区域内に所在する農地の固定資産税評価額の算出過程においては、評価対象地が宅地であるとした場合の固定資産税評価額そのものが算定されていることになるのであり、評価対象地が宅地であるとした場合の固定資産税評価額そのものが算定可能である場合には、あえて付近の宅地の価額を基に算定するまでもなく、その固定資産税評価額を基に評価するのが相当である。
2 農地を宅地に転用するとは、農地を建築物の建築の用に供するためにその地面や地盤の変更を行うことをいうものと解されるが、実際にはその地域、土質、造成規模、造成目的などの条件によってその内容は種々異なることになる。その具体的な内容としては、宅地以外の土地を宅地化するために土地の形質を変更するために行われる整地、土盛り又は土止めに係る工事と、②造成の目的が、戸建住宅、アパート、マンション、工場、倉庫、構築物の敷地などの各用途の別により必要とされる個別の工事とが考えられる。このうち、②の造成工事については、その土地上にどのような建物等を建築するかの個別事情に左右される部分が大きいことから各建築物に附属する費用とも捕らえることができる。市街地農地を評価するに当たって造成費相当額を控除するのは、市街地農地の価額の形成要因が、農地としての利用ではなく宅地としての利用を前提としたものであり、その要因は近隣の更地である宅地と変わりがなく、また、更地である宅地との比較においては、宅地造成費相当額分だけの格差があるものと認められることによる。そのために通常必要とされる宅地造成費とは、どのような建築物が建築されるかにかかわらず必要とされる整地、土盛り又は土止めに要する金額を指すものと解するのが相当である。
この点について、請求人らは、宅地造成費に給水管等敷設費を含めているが、給水管等敷設費は、宅地を戸建住宅の敷地として利用するための個別の費用であり、このような費用は上記②の造成工事費に該当すると認められるから、宅地比準方式により土地を評価する上で控除の対象となる宅地に転用する場合において通常必要と認められる造成費には当たらないものと認められる。
相続により取得した財産に係る相続開始前における所有権の取得時効の完成、所有権の取得という事実が判決により後発的に確定した場合、当該判決は、国税通則法第23条第2項第1号にいう判決に当たり、当該事情を財産の価額に与える影響要因として考慮した場合には、その財産の価額は零円とみるのが相当とした事例
裁決事例集 第74集 1頁
要旨
請求人らは、本件相続に係る相続税の申告に当たり、本件相続開始日において、本件土地は相手方に対して使用貸借により貸し付けているという事実、換言すると、相手方による取得時効の完成が認められないという事実を基礎とし、そのため本件土地を自用地としての価額で評価して申告したが、その後の本件判決によって、本件相続開始日前には既に所有権の取得時効の期間が満了し、本件土地の取得時効は完成していたという事実が確定したものであり、このことは、申告の基礎とした事実と本件判決で確定した事実とに相違があるといえる。
また、本件判決で確定した事実は、本件相続開始日において、本件土地には、時効の援用以外の取得時効の要件が満たされており、請求人らの意思いかんにかかわらず、相手方の時効の援用があれば一方的に所有権を時効取得される状態にあったということであり、これは、本件土地の価額に影響を及ぼすべき事情として、相続税の課税標準、ひいては税額の計算に影響を与えるものといえる。
そして、その財産の評価に当たっては、その財産の価額に影響を及ぼすべきすべての事情を考慮するものであり、本件土地については、相続開始時において既に時効期間が経過しており、相続人にとっては、所有権を確保すべき攻撃防御方法がないために、相手方に時効を援用されれば所有権の喪失を甘受せざるを得ない状態の土地であることが本件判決の確定によって明らかとなったところ、このような状態の土地は、相続人が所有権を確保しようとすれば、時効を援用する相手方に対し、課税時期現在における当該土地の客観的交換価値に相当する金員の提供を要するのが一般的である土地ということができるから、そのことを価額に影響を与える要因として考慮すると、土地の価額と提供を要する金額が同額であるから、結局のところ、その財産の価額は零円になると理解するのが相当と認められる。
要旨
請求人は、リースにより賃借した本件各減価償却資産が、①剛性のある物体から構成されている、②一定の相対運動をする機能を持っている、③それ自体が仕事をする、という機械の判定要件である三つを満たすものであり、法人税法施行令《減価償却資産の範囲》第13条第3号に規定する「機械及び装置」に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人の主張する三つの要素は、機械及び装置の一般的な要素とはいえるものの、法人税法施行令第13条第3号に規定する「機械及び装置」というためには、複数のものが設備を形成して、その設備の一部としてそれぞれのものがその機能を果たしていなければならないと認められるところ、本件各減価償却資産は、①検査、分析、判定、測定等を行うことにより、その工程が全て終了するものであること、②それ自体単体で個別に作動するものであり、他の機器と一体となって機能を発揮するものではないことなどの性質を有していることから、上記の要件を満たしているものということはできないので、同号に規定する「機械及び装置」には該当しない。
また、本件各減価償却資産は、それ自体で固有の機能を果たし、独立して使用されるものであるので、法人税法施行令第13条第7号に規定する「器具及び備品」に該当するが、租税特別措置法第42条の6《中小企業者等が機械等を取得した場合等の特別償却又は法人税額の特別控除》第3項の適用対象となる器具及び備品は、事務処理の能率化に資するものとして財務省令に定めるものに限定されているところ、本件各減価償却資産の機能からすれば、同項に規定する「器具及び備品」にも該当しないので、同項の規定は適用できない。
可分債権である貸付金債権については、可分債権であることをもって分割の対象とならない財産とみるのは相当ではなく、 共同相続人間で実際に分割が行われた場合、 実際に分割が行われないまでも、相続分に応じて取得する旨の共同相続人全員の合意がされた場合、 一部の相続人が可分債権に対する自己の相続分相当の権利を行使した場合など、明らかにその全部又は一部の帰属が確定している場合を除き、他の未分割財産と一体として取り扱うのが相当であるとした事例
裁決事例集 第74集 274頁
要旨
本件は、原処分庁が申告漏れ財産が存在するとして第一次更正処分を行うとともに、遺産の一部未分割の場合には、分割済財産を特別受益と同じように考慮に入れ、いわゆる穴埋方式により課税価格を計算すべきであるとして第二次更正処分を行ったところ、請求人が、①遺産の一部未分割の場合の課税価格は、分割済財産を考慮することなく、いわゆる積上方式で課税価格を計算すべきである、②関係法人に対する貸付金債権(以下「本件貸付金債権」という。)の評価額は○○○○円である等として、原処分の全部の取消しを求めている事案であり、争点は、次の5点である。
① 未分割財産がある場合の相続税の課税価格の計算方法
② 本件貸付金債権の評価額
③ 土地の評価額(広大地評価の適用の有無)
④ 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の適用の有無
⑤ 第二次賦課決定処分の適否
最高裁判決によれば、相続人が数人ある場合において、相続財産中に金銭その他の可分債権があるときには、その債権は法律上当然に分割され、各相続人がその相続分に応じて権利を取得するものと解される。
しかしながら、遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをするとされるところ、金銭等の可分債権については、その他の財産の分配における過不足を調整させる意味合いから、一般的には、これらを一体と捕らえた遺産分割が行われているところであり、また、家庭裁判所の実務においても、最高裁判決を前提としながらも、遺産を総合的に分割するためには、預金等を含めた方が合理的であり、その実際的必要性が高いため、預金等の可分債権を遺産分割の対象にしている例が多いと認められる。
このような実体を相続税賦課の観点からみるときは、最高裁判決を前提として相続財産が可分債権であることを考慮に入れてもなお、当該財産をもって分割の対象とはならない財産とみることは相当ではないから、当該可分債権について、①共同相続人間で実際に分割が行われた場合、②実際に分割が行われないまでも、相続分に応じて取得する旨の共同相続人全員の合意がされた場合、③一部の相続人が可分債権に対する自己の相続分相当の権利を行使した場合など、明らかにその全部又は一部の帰属が確定している場合を除き、他の未分割財産と一体として取り扱うのが相当である。
要旨
国税通則法第46条第2項の規定に基づく納税の猶予制度は、一定の事由により納付困難となった納税者を救済するものであるとしても、それは他の一般の納税者との租税負担の公平の実現の上において認められる納税者救済制度であるから、納税の猶予を申請した納税者が、他の一般の納税者からみても、納税の猶予を相当とする程度の状態にあることが必要であると解するのが相当であり、同項第4号が「著しい損失を受けたこと」と規定していることも併せ考えると、同項第5号に規定する「第4号に該当する事実に類する事実」について定めた猶予取扱要領の第2章第1節1の(3)のヘの(ハ)にいう「売上げの減少等」とは、その売上げの減少等が著しい状態にあることが必要と解される。
これを本件についてみると、原処分庁における審査過程において、請求人の妻は原処分庁に対し、平成17年1月から平成18年3月までの各月別の売上金額に関する資料を提出しているが、平成16年分の売上金額に関する資料は提出していないことから、原処分庁は、提出された資料では売上金額が前年より減少した事実を確認することができないので、同項第4号に類する事実がないと判断したものであり、その判断は当審判所においても相当と認められる。
また、請求人から当審判所に提出された資料によれば、売上金額は前年より増加しており、売上げが減少している事実が認められない以上、猶予取扱要領の第2章第1節1の(3)のヘの(ハ)にいう「売上げの減少等の影響を受けた」と認めることはできない。
「○○」取引を行う特定外国子会社等について、その主たる事業は「卸売業」に当たらず、その事業を主として本店所在地国において行っている場合にも該当しないとした事例
裁決事例集 第74集 226頁
要旨
請求人は、同人の特定外国子会社等に該当するL区の子会社が行う事業(以下「本件事業」という。)は、自らは製造を行わないで、自己の所有に属する原材料をK国の企業に支給して製品を造らせ、これを自己の名称で販売するものであり、日本標準産業分類上卸売業に分類される「製造問屋」であるから、租税特別措置法第66条の6第3項第1号に規定する「卸売業」に該当する旨主張する。
しかしながら、当該製品の製造に係る費用を同子会社が負担していることなどからすると、同子会社は、自己の計算において原材料を仕入れ、加工等をして製品を完成させ、最終消費者以外の事業者に販売する事業を行っていたと認められるところ、同号に規定する「卸売業」とは、有体的商品を仕入れ、物理的又は化学的な変化を加えずに、最終消費者以外の事業者に販売する事業をいうから、本件事業は、同号に規定する卸売業には該当しないと認められる。また、外国子会社合算税制の適用除外要件を適用するために行う事業区分の判定は、租税特別措置法第66条の6第3項各号の立法趣旨・目的等も勘案して判定すべきものであり、必ずしも日本標準産業分類の分類どおりに判定するものではないと解される上、その事業内容の実態に照らしても、本件事業は同項第1号に規定する「卸売業」には該当しないと認められるから、請求人の主張は採用できない。
要旨
請求人らは、相続財産である貸付金債権について、①債務者である同族会社は、年商の約8倍もの銀行借入金を有していること、②返済期限の迫っている銀行借入金を返済する原資を有しておらず、賃貸用建物の売却代金をもってしてもなお銀行借入金を完済することができなかったこと等からして、当該会社の事業経営は、相続開始日において実質的に破綻しており、本件貸付金は回収不能債権であると認められる旨主張する。
しかしながら、①会社の借入金が多額であっても返済条件に従った返済がなされている限り、債権者がそれ以上の返済を求めることはなく、事業経営を継続することは可能であり、現に、会社の借入金については相続開始日において返済期限は到来しておらず、また、過去において返済が滞ったことはなく、銀行から臨時弁済を求められた事実もないこと等からすれば、借入れ金額が多額であることをもって事業経営が実質的に破綻しているとは言えず、②会社の収入は年々減少しているものの、相続開始後解散までの間は営業を継続しているから、収入が減少していることをもって事業経営が実質的に破綻しているともいえず、さらに、③本件において、相続開始後会社の賃貸用建物が請求人の一人に譲渡され、当該譲渡代金をもって銀行借入金が繰上げ返済され、その結果、会社の主たる資産及び収入の手段がなくなり、会社を解散するに至ったこと等を総合勘案すれば、相続開始日において、債務者である会社につき事業経営が破綻していることが客観的に明白であると認めることはできない。
外国に所有するマンションに係る譲渡所得を申告しなかったため平成16年分の所得税の更正処分を受けた請求人が外国税額控除の適用があるとして同処分の取消しを求め、また、外国税額控除が平成16年分の所得税において適用されないなら、平成17年分において適用すべきとの主張を排斥した事例
裁決事例集 第74集 98頁
要旨
請求人は、A国に所在する不動産を平成16年に譲渡した所得は日本とA国の両方で課税対象となっており、二重課税の状況にあることから平成16年分の所得税において外国税額控除を適用すべきであり、また、平成16年分の所得税において外国税額控除が適用されないのであれば、平成17年分の所得税において外国税額控除を適用すべきであるから、請求人の更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消すべきである旨主張する。
しかしながら、請求人の場合、A国で納付すべき外国所得税の額が確定したのは平成17年中であり、平成16年中に納付する外国所得税の金額はないから、平成16年分の所得税額の計算において外国税額控除の適用を認める余地はなく、平成16年分の所得税の更正処分は適法である。
また、請求人が提出した平成17年分の所得税の確定申告書及びこれに添附された外国税額控除に関する明細書には、適法に計算された金額が記載されているから、更正の請求に理由がないとする当該通知処分は適法である。
要旨
請求人らは、本件預貯金等のうち、①妻名義のものは、妻が被相続人との婚姻前から保有していた預貯金及び妻固有の収入並びに生活費を節約して貯めたヘソクリを原資として形成されたものである、②子名義のものは、子が両親との同居期間中に子固有の収入から生活費として家計に入れていた金員等を原資として形成されたものである、また、③一部のものについては被相続人から生前に贈与を受けたものである旨主張する。
しかしながら、①本件預貯金等のうち妻及び子名義の郵便貯金の一部については、「郵便貯金メモ」等により被相続人が管理しており、被相続人がその処分権を有していたと認められること、②本件預貯金等のうち①以外の預貯金等についても原資は被相続人が出捐したものであり、その管理も被相続人により行われていたと認められること、③妻の固有収入は本件預貯金等以外の預金に化体しており、本件預貯金等の原資たり得ないこと、④子が固有収入を生活費として家計に入れていた事実を認めるに足る客観的証拠はないこと、⑤生前に贈与を受けたと請求人らが主張する預貯金等について妻は贈与を受けたことはない旨答述している上、贈与されたと主張する預貯金等の管理運用は被相続人が行っており、贈与の事実は認められないこと等から判断すると本件預貯金等は相続財産であると認めるのが相当であり、請求人らの主張は採用できない。
なお、妻名義の普通預金1口については、原資が不明である上、口座開設時の印鑑届の筆跡も妻であり相続財産とは認められないから、原処分はその一部を取り消すべきである。
要旨
請求人は、零細企業で、賞与を支給できる財務内容ではなく、請求人の代表者(以下「本件代表者」という。)が自由に費消できる資金などは全くないこと、また、請求人には本件代表者に対して賞与を支給する意思はなく、同人も賞与を受けた認識はないことから、請求人が仕入れ等のために振り出した小切手を本件代表者が現金化し、同人が所持していた現金(以下「本件各現金」という。)を本件代表者への賞与とする納税告知処分は取り消されるべきである旨主張する。
しかしながら、①本件代表者は、請求人の事業経営及び経理の実権を有する唯一の者であると認められること、②請求人は、青色申告法人であり、取引に関係する帳簿の記録及び資料の保存が必要であるところ、本件各現金の使途を明らかにする帳簿の記録や資料等の保存が一切なく、当該小切手を現金化した後の本件各現金の使途が不明であること、及び③本件代表者が、当該小切手を現金化した後に本件各現金に相当する金員を会社のために支出した事実が認められないことからすれば、本件各現金は、本件代表者が取得したとみるほかなく、請求人から本件代表者に対して支給された臨時的な給与、すなわち役員賞与に当たるものと認められる。したがって、本件各現金を本件代表者に対する賞与とした原処分は適法である。
税務調査において消費税法第30条第7項に規定する課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等の提示がされなかったとして仕入税額控除の適用が認められないとした事例
裁決事例集 第74集 450頁
要旨
請求人は、帳簿を保存していたのに、調査担当者が第三者の立会い排除要求に請求人が応じないことを理由に帳簿を確認せず仕入税額控除を否認したのは違法である旨主張する。
しかしながら、消費税法第58条は事業者に課税仕入れ等に関する帳簿等の保存を義務付け、同法第62条は税務職員にこれらの帳簿等を検査することを認めている。このように課税仕入れ等に係る帳簿等が税務職員による検査の対象となることを前提に、同法第30条第7項は、事業者が課税仕入れ額に係る帳簿等の保存をしている場合において、税務職員がこれらの帳簿等を検査することができるときに限り、同条第1項の仕入税額控除を適用できる旨明らかにしたものである。
この趣旨からすれば、事業者が仕入税額控除の適用を受けるには、法が定める帳簿等を整理し、これらを所定の期間及び場所において、税務職員による検査に当たり適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存することを要し、事業者がこれを行っていなかった場合には、仕入税額控除は適用されないというべきである。
これを本件についてみると、調査担当者は再三にわたって、帳簿等の提示がない場合には仕入税額控除の適用が認められない旨の説明をした上で、第三者を退席させた上で帳簿等を提示することを求めていたところ、これらの提示要求に違法な点は認められない。そして、請求人が専ら立会いなしでは調査に応じられないという理由で帳簿等の提示を拒んでいたことに照らすと、請求人は、帳簿等の提示要求に応じ難いとする格別な理由がなかったにもかかわらず提示しなかったというべきである。
これらから判断すると、本件は同法第30条第7項に規定する「事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合」に当たり、原処分庁が同条第1項の規定を適用せず仕入税額控除を否認した更正処分は適法である。
要旨
審査請求によって処分の取消しを求めるには、請求人にその取消しを求める利益があることが必要であるところ、本件国税の本税は既にその全額が納付されている上、延滞税についても、本件換価の猶予によって、納税の猶予が許可されたとした場合の免除額に相当する額が免除されていることから、請求人には原処分の取消しを求める利益はないといわざるを得ず、したがって、本件審査請求は請求の利益を欠く不適法なものである。
親会社からの劣後特約付借入れが法人税の負担を不当に減少させる行為に当たるとして、当該借入れに係る支払利息の額のうち適正利率により計算した額を超える部分の損金算入を否認した事例
裁決事例集 第74集 197頁
要旨
請求人は、親会社からの劣後特約付の借入れ(本件借入れ)は、①請求人の組織再編に伴うメーカーや卸業者からの保証金差し入れ要求に備えるため、②設備投資(リース)及び新店舗の展開を行うため、並びに③請求人の財務体力・信用力の維持を同時に実現するために行ったのであるから、合理性があった旨主張する。
しかしながら、請求人は、本件借入れ時点において十分な事業資金を有しており、請求人には劣後特約を付した高率の利息を支払ってまで借入れを行う必要性は全く認められないことからすれば、請求人が本件借入れを行ったことは、通常の経済人を基準にすれば、経済的合理性のない不自然・不合理な行為と認められ、結果的に法人税の負担を不当に減少させるものと認められる。したがって、法人税法第132条の規定を適用して劣後特約を否認し、通常あるべき行為(劣後特約の付されていない借入れ)に引き直すと、本件借入れの適正な利率は、請求人の当時の取引銀行からの平均調達金利とするのが相当であるから、それを超える支払利息は、何ら対価性がなく、法人税法第37条第7項に規定する寄附金と認めるのが相当である
要旨
本件土地が属する地域は、①幹線道路沿であることから、規模に規制のない店舗等を許容する第二種住居地域に指定され、その結果、幹線道路の交通量を勘案して、沿道の後背地にある主に第一種中高層住居専用地域の住環境を保護する効果をもたらしている地域であり、②商業・文化機能等を強化した建造物の誘導等を推進する地域にあり、駅前商業地域に隣接して極めて交通の便も良く、中高層の集合住宅等のほか大規模な店舗や事務所の建築に適した地域で、③現に戸建住宅の他、アパート、マンション、店舗併用住宅などの中高層の集合住宅及び事務所、大規模な店舗などの商業施設が混在し、④加えて、建築物の建築をするために開発許可が必要となる地積500平方メートル以上の土地に係る建築物の建築状況をみると、集合住宅等や商業施設などが建築されている状況にあり、特に、本件土地と幹線道路を挟んで南側に位置する本件土地と規模、形状、接道状況が酷似する土地には、7階建ての分譲マンションが建築されている。
そうすると、本件土地は、社会的・経済的・行政的見地から総合的にみても、マンション適地等に該当するものと認められ、財産評価基本通達24-4に定める広大地には該当しない。
評価対象地につき、路地状開発により戸建分譲を行うことが経済的に最も合理性のある開発に当たる場合には、公共公益的施設用地の負担の必要性がないため、財産評価基本通達24-4(広大地の評価)の適用はないとした事例
裁決事例集 第74集 342頁
要旨
①本件土地は、路地状開発により、本件地域における標準的な宅地の地積に分割することが可能であり、②本件分割図による路地状開発が路地状部分の幅員を満たすなど都市計画法等の法令などに反しておらず、③容積率及び建ぺい率の算定に当たって、路地状部分の地積もその基礎とされ、さらに、④本件隣接地が道路を開設することなく路地状開発されているという各事実が認められることからすると、本件土地については、路地状開発により戸建分譲を行うことが経済的に最も合理性のある開発に当たると認めるのが相当であり、公共公益的施設用地の負担が必要と認められるものには該当しないから、財産評価基本通達24-4(広大地の評価)の定めの適用はない。
要旨
同族会社であるG社は、請求人から賃借している本件各土地をH社に転貸するなどし、それに伴う業務及び経済的負担を負うとともに、本件各土地転貸料を得ているのであるから、実質的にみれば、本件各土地転貸料と本件各土地賃料との差額が、G社が請求人から取得する本件各土地の管理の対価、すなわち管理料相当額とみることができる。
したがって、本件各土地賃料の額が不当に低額であるか否かは、当該管理料相当額が適正か否かを基準に判断すべきである(以下、この基準により適正賃料を算定する方法を「適正管理料置換方式」という。)。
そこで、審判所において選定した比準同業者の賃貸料収入の額に占める管理料の割合の平均値をもって適正管理料割合とし、当該適正管理料割合を本件各土地転貸料に乗じることにより本件各土地に係る適正管理料を算定した。
そして、適正管理料置換方式は、土地賃貸借契約を管理委託契約という契約形式に置き換えるものであるから、適正管理料の算定に当たっては、管理委託契約では生じない土地賃貸に係る保証金の差し入れを加味するのが相当であり、請求人は、G社から本件各土地賃貸借契約に基づき定期借地権の設定による保証金(2億円)を受領していることから、当該保証金の運用益相当額を算定して本件土地転貸料から控除するのが相当である。
そこで、当該保証金に係る運用益相当額を保証金の経済的利益の課税に当たって適正な利率として用いられている10年長期国債の年平均利率を用いて算定した。
以上のことから、適正管理料置換方式による本件各土地に係る適正賃料(審判所認定適正賃料)の額は、本件各土地転貸料の額から本件適正管理料の額及び本件運用益相当額を控除した後の金額であり、本件各年分に係る審判所認定適正賃料の額を本件各土地賃料の額と比較すると、後者は著しく低額であることが明らかであることから、本件各賃貸借契約は請求人が当該同族会社の株主・代表取締役という関係でなければ結ばれ得ないものであり、客観的にみて経済的に合理性を欠き、不自然・不合理であるといわざるを得ない。
なお、本件においては、G社は、請求人から賃借している本件各土地を転貸して、本件各土地転貸料を得ているところ、原処分庁においては、本件各土地の近隣において、請求人と類似の条件で土地を貸し付けていると認められる者を比準同業者として選定し、当該比準同業者の平均賃料を適用する方法により、本件各土地に係る適正賃料を算定しているので、原処分庁の主張する適正賃料に合理性を認めることはできない。
要旨
原処分庁は、本件贈与証明書の「3」の記載に基づき2回目の贈与が死因贈与に該当すると解しているが、5,000万円を贈与することについて、その「1」及び「2」の記載において具体的に定められていると認められ、被相続人が死亡しなくてもDは贈与を受けることができるのであり、また、本件贈与証明書の「3」の記載は、年明けまでに被相続人が死亡した場合に、滞りなく贈与が実行されるよう翌年1月1日の履行時期を待たずしてその履行を早める旨を定めたもので、単に贈与の履行時期の特約に過ぎないものと認められるから、2回目の贈与は贈与者の死亡により効力が生ずる民法第554条の死因贈与に該当しないものと解するのが相当である。
さらに、R弁護士の答述によれば、本件贈与証明書の作成経緯は、被相続人がDに1億円を遺贈したいとする意向から、確実に5,000万円を贈与するため本件贈与証明書を作成することに変更したことが認められ、同証明書は、5,000万円を贈与することについて節税を考慮しその履行の具体的方法が記載されていることからすれば、被相続人がその作成に当たり、「自分が死んだら贈与する(死ななければ贈与しない。)。」という意思表示を示したとは到底認められない。
したがって、Dに対する2回目の贈与について死因贈与と判断して行った原処分は、本件贈与証明書による2回目の贈与についての法的見解を誤ってなされたものであって、その点において違法といわざるを得ない。
遅延損害金債務の債務免除益について、「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」に該当しないとして、所得税基本通達36-17《債務免除益の特例》は適用されないとした事例
裁決事例集 第73集 127頁
要旨
所得税基本通達36-17にいう「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」とは、単に債務超過の状態にあるだけでは足りず、債務超過の状態が著しく、その者の信用、才能等を活用しても、現にその債務の全部を弁済するための資金を調達することができないのみならず、近い将来においても、調達ができないと認められる場合をいうものと解される。
これを本件についてみると、請求人は、債務免除の前後において安定的な賃貸収入を稼得し、上記借入金の弁済に充てており、しかも同借入金以外の債務についても、債務免除の前後において弁済をしていた。そして、請求人の収入から借入金の返済額その他の支出額を控除した請求人の生活費として消費可能な所得は、総務省の家計調査における一世帯当たりの年間消費支出を上回っていることなどからすれば、債務免除の時点において、現にその債務の全部を弁済するための資金を調達することができないとは認められない。
さらに、請求人の資産・負債の状況についてみても、請求人は、主要な資産である自宅及び賃貸用不動産を処分することなく保有しており、また、上記の請求人の支払能力からすれば、債務全額について弁済が不可能となるほどの著しい債務超過があったとはいえないから、「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」に該当するとは認められない。
本件ゴルフ会員権は、その譲渡の時点において優先的施設利用権が消滅していたとは認められないから、譲渡所得の基因となる資産に該当し、その譲渡による損失は他の各種所得と損益通算ができるとした事例
裁決事例集 第73集 197頁
要旨
ゴルフ場経営会社F社は、ゴルフ場施設を所有するE社との間で、本件ゴルフクラブの経営並びにこれに関連する業務の一切を受託すること等を内容とする本件委任契約を締結し、ゴルフ場の経営を行っていたところ、E社が所有するゴルフ場施設用地及び建物の一部(本件競売不動産)について担保権の実行として不動産競売開始決定がなされ、K社を買受人とする売却許可決定がなされ、また、別の一部用地等(本件売却不動産)は、E社からV社に任意に売却された。
しかし、本件売却不動産についてはF社とV社の間の黙示の使用貸借契約によりF社が引き続き使用することができたと認められ、F社としては、これと森林組合等から借り受けている土地を引き続き使用することにより、本件ゴルフクラブを構成していた3つのコースのうち2コースの利用を会員に提供できたものと認められ、これら2コースを会員の利用に供すれば、社会通念上ゴルフ会員権の目的を達成することができるといえる。
そして、本件ゴルフクラブの営業は、平成17年1月○日に閉鎖されるまでの間続けられていたとの事実に照らすと、本件ゴルフ会員権の譲渡の時点(平成16年12月5日)でも、F社は、社会通念上ゴルフ場施設の利用というゴルフ会員権の目的を達成できる程度にまでゴルフ場施設をその利用に供することができていたと認められる。
さらに、本件委任契約において、F社は、E社の所有する不動産等だけではなく、自ら賃借した土地をも使用して本件ゴルフクラブを経営することが予定されていたと認められるから、本件競売不動産及び本件売却不動産の所有名義が第三者に移転し、かつ、F社において本件競売不動産の使用ができなくなったとしても、F社が第三者から土地を賃借して本件ゴルフクラブの営業を経営することが可能である以上、本件委任契約の目的が不可能になったとはいえず、また、本件委任契約には契約の終了に関する特約はなく、民法上の委任契約の終了事由も見当たらない。
また、本件ゴルフ会員権について、預託金返還請求権及び年会費納入等の義務のいずれもが、譲渡時点で消滅していたとは認められない。
以上のとおり、本件ゴルフ会員権の譲渡の時点において、預託金会員制ゴルフ会員権の内容である優先的施設利用権、預託金返還請求権及び年会費納入等の義務のいずれかが消滅し、その同質性を喪失したとは認められないから、当該ゴルフ会員権の譲渡は所得税法第33条第1項に規定する譲渡所得の基因となる資産の譲渡に該当する。
そうすると本件ゴルフ会員権の譲渡により生じた損失は、所得税法第69条第1項の規定により他の所得と通算することができるというべきであり、これを認めなかった原処分は違法であるから取り消されるべきである。
所得税の重加算税の賦課決定について、納税申告書の提出等の時点において、納税者が課税庁等に対し、自己が行った隠ぺい又は仮装の事実を知らせていたとしても、重加算税の課税要件には何ら影響しないとした事例
裁決事例集 第73集 64頁
要旨
請求人及び請求人の親族が本件物件を居住の用に供していないにもかかわらず、請求人は本件特例を適用する意図を持って、本件物件に居住しているAらの住民登録のみを異動させた旨自認し、また請求人及びEの住民登録を本件住所に異動し、住民票の除票等を本件確定申告書に添付することにより、本件物件を自己の居住用と仮装したことが認められ、これらの行為は、国税通則法第68条第1項に規定する「隠ぺい又は仮装」に該当する。
なお、請求人は、本件譲渡所得に関する相談の際に、Eが本件相談担当者に対し、請求人及び請求人の親族が本件物件に居住していなかったこと及び本件特例を適用するために請求人及びEの住民登録を本件住所に異動したことを説明しているから、国税通則法第68条第1項に規定する「隠ぺい又は仮装」の事実はこの時点でなくなったものであると主張する。
しかしながら、重加算税については、「隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出した」という国税通則法第68条第1項所定の課税要件を充足することにより成立するのであり、たとえ、納税申告書の提出時点において、納税者が課税庁等に対し、その隠ぺい又は仮装の事実を知らせていたとしても、重加算税の課税要件に何ら影響を与えるものではないから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
請求人の多忙及び共同相続人の通院加療等を理由に、請求人が行った相続税の申告期限から3年以内に遺産が分割されなかったことについてのやむを得ない事由の承認申請を却下した処分が適法であるとした事例
裁決事例集 第73集 483頁
要旨
請求人は、本件特例の適用を受けようとする遺産が未分割であることについて、①相続人が関係していた法人と原処分庁との間の訴訟が係属中であること、②請求人は、自ら当事者となっている訴訟事件7件、雑事件10件、その他9件を抱えて多忙であったこと、③遺産の一部については分割を了するなど、請求人は分割協議の完了に努力していること及び④共同相続人のうちの1名が病気のため通院加療中であったことから同人に配慮する必要があったこととのやむを得ない事由が存在するので、原処分は違法であると主張する。
しかしながら、請求人が主張する事由は、いずれも租税特別措置法施行令第40条の2第12項で準用する相続税法施行令第4条の2第1項第1号ないし第3号に規定する本件相続に関する訴えの提起、和解、調停の申立て等の事由には該当しない。また、同項第4号に規定する「税務署長においてやむを得ない事情がある場合」については、個々の具体的事例に即し、税務署長が客観的な事実に基づいて認定することとなり、その判断のよりどころとして相続税法基本通達19の2-15(以下「本件通達」という。)において例示を掲げているところ、その取扱いは相当であると認められるので、請求人が主張する上記事情について、これに照らして判断すると次のとおりである。
①ないし③の事情は、当該事情が未分割の前提としてあったとしても、いずれも本件通達に定めるような客観的に遺産分割ができないと認められる事情には該当しない。
また、④の事情は、共同相続人のうちの1名が病気療養中であったとはいえ精神的又は身体の重度の障害疾病のため遺産分割ができなかったとはいえず、本件通達に定めるような客観的に遺産分割ができないと認められる事情には該当しない。
以上のとおり、本件特例の適用を受けようとする遺産が未分割であることについて、相続税法施行令第4条の2第1項各号に規定するやむを得ない事情があったとは認められないから、本件却下処分に違法はない。
無利息の預り保証金及び敷金に係る債務控除額は、その元本価額から、通常の利率による返還期までの間に享受する経済的利益の額を控除した額によるのが相当であるとした事例
裁決事例集 第73集 442頁
要旨
控除すべき債務が弁済すべき金額の確定している金銭債務の場合であっても、その弁済すべき金額が当然に当該債務の相続開始時における消極的経済的価値を示すものとして課税価格算出の基礎となるものではなく、金銭債務について、その権利の具体的内容によって時価を評価するのと同様に、金銭債務についてもその利率や弁済期等の現況によって控除すべき金額を個別的に評価しなければならないのであり、控除すべき債務の金額は必ずしも常に当該債務の金額と一致するものではない。
無利息で預託されている金銭債務(以下「無利息債務」という。)であれば、これを承継した相続人は、通常の利率による利息相当額の経済的利益を弁済期が到来するまでの期間享受することになり、その享受する経済的利益の相続開始時における現在価値に相当する額だけ相続又は遺贈により取得した経済的価値の減殺要因が小さくなることから、無利息債務の相続開始時の評価額は、通常の利率と弁済期までの年数から求められる複利現価率を用いて相続開始時現在の経済的利益の額を計算し、無利息債務の元本額からこの経済的利益の額を控除した金額とするのが相当である。
要旨
請求人は、本件サービス業務の未精算費用があった旨主張する。
しかしながら、本件サービス業務に関する料金及び支払条件は、本件旧契約に準じて、その都度、両当事者間で検討及び合意されていたと認められ、K社は、本件事業年度における本件サービス業務の精算として、既に毎月ごとに精算金を受領している。
また、請求人は、本件見直しを行った結果、本件サービス業務の未精算費用があった旨主張するが、一般の取引通念に照らせば、取引上、未精算費用があった場合には、会社間で当該未精算費用の額、支払方法等についての検討や話し合いがされてしかるべきであり、その結果を両社ともに文書で記録しておくのが通常である。
ところが、本件の場合、本件調査担当職員が、M課長に対して本件金員の計算根拠について説明を求めても具体的な計算根拠の説明及び資料の提出はなく、また、T部長は、本件サービス業務の未精算費用は積み上げて計算したものではなく、具体的に計算した資料はない旨答述しており、両社間で当該未精算費用の額、支払方法等について具体的に検討などをした事実は認められない。
そして、本件金員の支払原因については、M課長の各メールの記載内容の信用性は、その作成時期等から極めて高く、それに加えて、K社の各事業年度の決算状況、本件業績レビューの記載内容及びM課長の答述からすると、①K社は、設立以来3期連続欠損の状況にあり、平成15年3月期の決算も○○○○ドルの欠損が見込まれたため、これを解消し単年度でいわゆる黒字化するための方策として、請求人が業務委託費を支払うことで支援することとし、②幹部職員の話し合いで、当該業務委託費を○○○○円とすることに決まり、本件新契約書が作成され、請求人が本件金員を支払ったものと認められる。
そうすると、本件サービス業務の未精算費用があったとは認められず、本件金員の支払原因は、K社の欠損を補てんするために援助としてされた金銭の贈与であると認められる。
以上、検討の結果、本件金員を支払った行為は、金銭の贈与に該当するというべきであるから、本件業務委託費は法人税法第37条第7項に規定する寄附金に該当する。
要旨
請求人は、原処分庁が被差押債権は滞納会社に帰属するものであるとして行った債権差押処分に対して、自社が被差押債権の帰属主体であることを主張する。
しかしながら、会社が法令の規定に準拠して比較的容易に設立され得ることに乗じ、取引の相手方からの債務履行請求手続を誤らせ時間と費用とを浪費させる手段として、旧会社の営業財産をそのまま流用し、商号、代表取締役、営業目的、従業員などが旧会社のそれと同一の新会社を設立したような場合には、形式的には新会社の設立登記がなされていても、新旧両会社の実質は前後同一であり、新会社の設立は旧会社の債務の免脱を目的としてなされた会社制度の濫用であって、このような場合、会社は、この取引の相手方に対し、信義則上、新旧両会社が別人格であることを主張できず、相手方は、新旧両会社のいずれに対しても上記債務についてその責任を追及することができると解されている。
したがって、いわゆる支配要件と目的要件の2つの要件を満たした場合には、信義則上、新会社は、債権者に対して旧会社とは別人格であることを主張できないと解するのが相当である。
そして、本件においては、請求人について上記2つの要件をいずれも満たすと認められることから、請求人は、原処分庁に対して、信義則上、請求人が本件滞納会社とは別異の法人格であることを主張し、本件各債権を自己の財産であって本件滞納会社の財産ではないと主張することは許されないというべきである。
売買契約の買手である審査請求人が金銭を受領することなく当該売買契約に係る権利義務の一切を第三者に移転した取引について、売買契約に係る買主の権利義務を一体として移転したものであって、代金支払債務の引受けを対価として目的物引渡請求権を譲渡したものとは認められないから、対価を得て行われた資産の譲渡等に該当しないとした事例
裁決事例集 第73集 495頁
要旨
請求人は、本件基準期間において、E社に特注した機器に係る代金支払債務の引受けを見合いとして当該機器の引渡請求権をF社に譲渡しており、当該機器の引渡請求権の譲渡は課税売上げに該当するから、本件課税期間については課税事業者に当たる旨主張する。
しかしながら、本件引受書によれば、請求人、F社及びE社の間で、当該機器に係る請求人のE社に対する権利義務を一体としてF社に移転する合意があったものと認められるところ(以下、当該合意に基づく当該権利義務の移転を「本件取引」という。)、本件引受書には、当該権利義務の移転の対価として収受すべき金額の記載がなく、当審判所が本件引受書以外の資料を調査したところによっても、本件取引について対価が授受されたことを示すものは見当たらない。そうすると、本件取引は、対価を得て行われた資産の譲渡等に該当しないから、課税売上げに当たらない。
したがって、請求人は、本件課税期間については課税事業者に該当しない。
なお、本件取引は、契約から生じる個々の債権債務のみならず当該契約の取消権や解除権も包括的に移転する取引で、単なる債権譲渡や債務引受とはその本質を異にするものと認められ、本件取引に係る対価についても個々の債権債務その他の付随的権利関係を一体として評価することが相当であるから、請求人の主張には理由がない。
賃貸借契約の中途解約に伴い賃借人に対し返還不要となった敷金及び建設協力金に係る所得は、3年以上の期間の不動産所得の補償に当たらないから臨時所得に該当せず、平均課税は適用されないとした事例
裁決事例集 第73集 265頁
要旨
請求人は、解約合意書に補償対象期間の具体的な記載はないものの、賃貸借契約書には契約期間が明記されていることから賃貸借契約の終期までの残存期間である9年9か月を本件返還不要敷金等が補償の対象としているとみるべきである旨主張する。
しかしながら、臨時所得の範囲として、所得税法施行令第8条第3号は、不動産貸付業務に係る「3年以上の期間の不動産所得の補償として受ける補償金に係る所得」と規定しているところ、所得の補償とは、中途解約に伴い生じた逸失利益、すなわち不動産貸付業務を継続すれば得られたであろう所得の額を補償するものであり、その所得を得るために継続して生ずる費用、例えば、減価償却費、租税公課等の費用の額を併せて補償することが必要であると解するのが相当であるから、所得の額と費用の額の合計額、すなわち収入金額に相当する金額を補償して初めて所得の補償といえる。
これを本件についてみると、本件返還不要敷金等は、違約金名目ではあるが、その実質は、①解約後の収益補償として支払われるもの及び②解約に伴う諸費用の実費弁償として支払われるものから成っていると考えられるから、本件返還不要敷金等に係る所得が、臨時所得となる3年以上の期間の補償に該当するか否かを判断するためには、本件返還不要敷金等の金額のうち、上記①に係る金額について、1年当たりの収入金額に相当する金額で除して補償対象期間を算定するのが合理的であると認められる。
そこで、本件返還不要敷金等の金額の全額を上記①に係る金額と仮定して、本件返還不要敷金等の金額(18,111,800円)を1年当たりの収入金額に相当する金額(9,864,792円(中途解約時の月額賃貸料822,066円×12月))で除して補償対象期間を計算すると、約1年10か月となり、3年以上の期間の不動産所得の補償には当たらない。
したがって、本件返還不要敷金等に係る所得は臨時所得に該当しないことになるため、平均課税の方法により所得税の額を計算することはできない。
要旨
請求人は、N社が施行した建築工事等に係る本件建物附属設備等の見積金額を同社から調達する器具・備品等の見積金額に上乗せさせる方法で、リース取引の目的とする資産の全てが器具・備品等であるかのように事実を仮装した内容のリース会社用各見積書等を同社に作成させることにより、リース不適格資産(リース取引により売買があったものとされる資産)をリース適格資産(リース取引により賃貸借があったものとされる資産)に仮装し、その内容で各リース会社とリース契約を締結してリース料を損金の額に算入し、また、消費税の仕入税額控除をしていたものである。
したがって、請求人の行為は、国税通則法第68条第1項にいう「課税標準の計算の基礎となる事実に一部を仮装した」ことに該当するというべきである。
また、請求人は、リース取引の目的とした資産の金額に本件建物附属設備等の金額が含まれていること等を知りながら損金算入や仕入税額控除に及んだのであって、隠ぺい又は仮装の故意があることは明らかであり、それ以上に請求人が過少申告を行うことの認識まで有していることは重加算税の賦課要件ではないから、税金を不当に軽減する意図はなかったから故意がないとする旨の請求人の主張には理由がない。
要旨
請求人は、①請求人自身も共同相続人の一人であると信じたことにより他の相続人である滞納者の相続税の延納につき請求人所有不動産を担保提供することに承諾する意思表示をしたこと、②しかしながら、被相続人と請求人との養子縁組が訴訟により無効とされ遡及的に相続人ではなかったことになったこと、③したがって、その担保提供を承諾する意思表示は動機の錯誤により無効であることを主張して、原処分庁がした請求人所有不動産に対する担保物処分のための差押えの取消しを求めている。
しかしながら、請求人の養子縁組の効力については請求人が担保提供に同意する以前から争いがあったことなどの事実の下においては、請求人は、少なくとも、担保提供の承諾の時において自己の相続人としての地位がその争いの帰趨によっては失われる可能性があることを認識していたものと推認するのが合理的である。また、請求人と被相続人との関係が、実体上、養親子関係にないことは、そもそも請求人自身において当然に熟知していたものというべきである。
そうすると、請求人は、本来は相続人でないところ、担保提供の承諾をした当時、相続人でないことの可能性は十分に認識していたというべきであるから、相続人でないのに相続人であると認識していたというような動機の錯誤があったとまでは認めることができないというべきである。したがって、請求人の主張には理由がない。
請求人の平成17年分の所得税の確定申告につき期限後申告となったのは、請求人が平成18年3月9日から同月19日まで入院中であったためであり、「正当な理由」があるとの主張を排斥した事例
裁決事例集 第73集 56頁
要旨
国税通則法第66条第1項に規定する無申告加算税は、納税申告制度の秩序を維持するためには、納税者により期限内に適正な申告が自主的になされることが不可欠であることにかんがみて、申告書の提出が期限内になされなかった場合の行政上の措置として課されるものであるから、同項ただし書きの「正当な理由」とは、例えば、災害、交通・通信の途絶など、期限内に申告できなかったことについて納税者に責められる事由がなく、このような行政上の措置を課することが不当又は酷となるような真にやむを得ない事情をいうものと解するのが相当である。
これを本件についてみると、請求人が会計事務所に本件確定申告書の作成を依頼したのは平成18年2月ころであり、そして、入院の翌日である同年3月10日ころには、本件確定申告書ができあがっていたこと、請求人の入院は、突発的な事態によるものでなく、毎年定期的に受けていた術後検査を受けるためのものであり、実際にも入院中は、定期的に血液、肝機能等の身体全般の検査を受けるという状況にあったこと、入院期間は予め一週間ないし10日程度と見込まれていたもので、同月19日に退院していること、請求人は、本件確定申告書の作成を本件会計事務所に依頼していたことから、計算過程などについては確認することなく、納税額を確認したところで本件確定申告書に押印していること、請求人は、請求人が代表取締役を務めるC社の経理課長から、法定申告期限が平成18年3月15日であることを知らされた際、申告期限にはこだわらず、本件確定申告書を退院後に提出する意思を有していたことが認められる。
これらのことからすると、請求人が本件確定申告書の期限内提出の必要性ないし重要性を十分に認識していたとすれば、請求人は、平成18年3月9日から入院することになるという事情を本件会計事務所に説明して本件確定申告書の作成を早め、入院する前に本件確定申告書の内容を確認することに支障はなかったということができ、さらには、入院中において、請求人は「納税額」の確認ができないほどの病状下にはなかったもので、上記経理課長から電話があった際(同月10日ころ)、請求人が確認を要すると考えていた納税額を同人に尋ね、それを確認することは容易なことであったと認めるのが相当である。
したがって、請求人が本件確定申告書を法定申告期限までに提出できなかったことについて国税通則法第66条第1項ただし書きに規定する正当な理由があったとは認められない。
信用保証料は、一定の契約に従い継続して役務の提供を受けるために支出した費用に当たるというべきであり、事業年度末において未経過の保証期間に対応する額は、前払費用とすることが相当であるとした事例
裁決事例集 第73集 353頁
要旨
本件各信用保証は、請求人が本件銀行から融資を受けるに際し、信用保証協会に信用保証を委託し、同協会が本件銀行に信用保証書を交付することにより成立したものであり、保証債務の履行は保証期間が満了するまでの間は有効に成立している。そして、本件各信用保証料の額は、それぞれ、保証金額、保証期間(日数)、保証料率及び分割返済回数別係数を基に算定されている。
これらの事実を総合考慮すれば、本件各信用保証料が、本件各信用保証の保証期間の始期から満了時までの費用であることは明らかであるから、本件各信用保証料は、一定の契約に従い継続して役務の提供を受けるために支出した費用に当たるというべきである。
また、信用保証協会による本件各信用保証は、融資実行時に本件銀行に対して保証承諾をすることのみではその役務の提供は終了しておらず、本件銀行からの融資が実行された後も、その融資が継続している全期間にわたって信用保証を行うという役務を提供しているのであるから、「本件各信用保証料は、保証の承諾をしたことに対する対価で一時に損金の額に算入すべきである」とする請求人の主張は採用できない。
以上のとおり、本件各信用保証料は一定の契約に従い継続して役務の提供を受けるために支出した費用に当たるところ、本件各信用保証料には、本件各事業年度末において未経過の保証期間に係るものがあるので、未経過期間に対応する額は、前払費用として経理処理することが相当である。
なお、原処分庁は、前期に繰上完済した場合に返済を受ける信用保証料の額と当期に繰上完済した場合に返済を受ける信用保証料の額との差額を当期の損金の額に算入すべき費用の額と算定しているが、その算定方法は合理的であると認められる。
そうすると、本件各事業年度の所得金額及び納付すべき税額は、いずれも原処分の額と同額となる。
海外子会社から○○用器具を購入する審査請求人の取引について移転価格税制を適用し、当該取引は利益分割法により算定した独立企業間価格で行われたものとみなされるとしてされた更正処分等は適法であるとした事例
裁決事例集 第73集 376頁
要旨
本件審査請求における各争点については、次のとおりであるが、当審判所の調査によれば、移転価格税制を適用すべき取引は、原処分と異なり、平成13年3月期の「b製品」並びに平成14年3月期の「a製品」、「b製品」及び「d製品」の各取引のみと解するのが相当である。
しかしながら、当該各取引に係る当審判所認定の国外移転所得金額は、いずれの事業年度も原処分額を上回ることとなるから、本件更正処分は適法というべきである。
租税特別措置法関係通達66の4(4)-1は、利益分割法において分割対象とされる租税特別措置法施行令第39条の12第8項第1号に規定する「所得」は、原則として、売上総利益や当期純利益ではなく、事業活動の直接の結果を示す営業利益を用いることが合理的であることを明らかにしたものであって、営業損失を分割の対象から排除すべきか否かについて直接言及したものではない。当該所得とは、本件国外関連取引に参加したすべての関連者に生じた当該取引に係る損益(原則として営業損益)の総和をいうと解するのが相当であり、当該所得には、営業損失も含まれるというべきであり、請求人の主張は採用できない。
また、財務会計上、為替相場の変動による所得とは、取引発生時と決算時又は決済時という2つの時点における為替相場の変動による換算レートの差から算出されるいわゆる為替差損益をいうのであり、財務会計上の営業外損益に属するものである。これに対し、請求人の予算レート(予算策定や事業計画を立てる際に使用するためにあらかじめ定めた円換算レート)と社内レート(外貨建取引を会計帳簿に記録する際の円換算レート)との差により算出される金額は、営業外損益となる為替差損益などではなく、当該所得に含まれるもの(当該所得の計算において除外すべきものではない)というべきであり、請求人の主張は採用できない。
L部門に属する本件国外関連取引とM部門に属するC研究所の業務内容とは、事業セグメントを異にするというべきであり、同研究所の販売費及び一般管理費は、利益分割法の適用に当たり、本件国外関連取引に関連して支出された費用とみるべきではなく、原処分庁の主張は採用できない。
一方、D研究所の研究開発業務には、L部門に属する業務が含まれていたものと認められ、同研究所の販売費及び一般管理費は、利益分割法の適用に当たっては、本件国外関連取引に関連して支出された費用とみて、分割対象利益及び分割要因を計算することが相当であるから、請求人の主張は採用できない。
要旨
請求人は、戸籍法上婚姻はしていないが事実婚をして離婚しており、所得税法第2条が規定する寡婦の定義には戸籍法のことは書かれておらず、また、母子法、生活保護法には事実婚を認める規定もあるから、寡婦控除は認められるべきである旨主張する。
しかしながら、所得税法(平成16年法律第14号による改正前のもの。以下同じ。)第2条第1項第31号によれば、「夫と死別し若しくは夫と離婚した後婚姻をしていない者又は夫の生死の明らかでない者」、あるいは「夫と死別した後婚姻をしていない者又は夫の生死の明らかでない者」に該当することが「寡婦」たる要件の一つとされているところ、ここでいう「夫」の意義については、所得税法及び租税特別措置法(平成16年法律第14号による改正前のもの。)において格別の定義規定が設けられていないことからすれば、身分法の基本法たる民法が定める婚姻関係(以下「法律婚」という。)にある男子を意味するものと解するのが相当である。
また、母子及び寡婦福祉法第6条第1項及び生活保護法による保護の実施要領には、事実婚の配偶者を法律婚の配偶者と同様に取り扱うものとする旨が定められているが、これらは、事実婚と法律婚とを同様に取り扱うこととする特別の定めであるから、それらの定めが存在することをもって、請求人が主張するように解することはできない。
したがって、請求人の主張は採用できない。
請求人が開業費として計上した平成10年1月~5月の地代家賃等は、平成10年1月の開業後に支出したものであるから、平成15年分の事業所得の計算上当該開業費の償却費を必要経費に算入することはできないとした事例
裁決事例集 第73集 148頁
要旨
請求人は、平成9年中に行った各種の届出等は形骸的なものであって、請求人の真の開業時期は平成10年6月ころであるから、本件費用は開業費であり、開業費の償却費として平成15年分の事業所得の計算上必要経費に算入されるべきである旨主張する。
しかしながら、請求人は、平成9年末に、本件クリニックの賃貸借契約、医療機器のリース契約等の名義を請求人に変更し、平成10年1月以降、本件クリニックの看板を付け替えた上で、本件クリニックに係る社会保険診療報酬及び自由診療収入を請求人名義の預金口座に入金させるなどするとともに、平成10年分の所得税について平成10年1月診療分以後の収入及び支出を確定申告していることからすれば、遅くとも平成10年1月には、請求人自身の計算と危険において独立して、本件クリニックに係る事業を実質的に開始したものと認められる。
そうすると、本件費用は、いずれも本件クリニックに係る事業を開始した後に発生した費用であるから、所得税法施行令第7条第1項に規定する「事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用」である開業費には該当せず、また、本件費用の内訳は、地代家賃、修繕費及び消耗品費であり、その支出の効果が翌年以降に及ぶものであるとは認められず、所得税法施行令第7条第1項に規定する開業費以外の繰延資産にも該当しない。
要旨
請求人は、青色申告者からの更正の請求が認められない場合には、国税通則法第23条第4項及び所得税法第155条第2項の規定の精神を酌み、通知書に理由を附記すべきである旨主張する。
しかしながら、国税通則法第23条第4項によれば、税務署長は、更正の請求があった場合には、調査の結果、更正をすべき理由がないと判断したときは、請求者にその旨を通知すれば足り、更正をすべき理由がない旨の通知書に理由を附記すべきことを定めた法令の規定はないから、本件通知処分に係る通知書に理由の附記がないことに違法はない。また、本件通知処分は、所得税法第155条第2項が前提とする同条第1項の更正処分とは法的に全く異なり、実質的にみても、所得税法第155条第2項が青色申告書に係る更正処分に理由附記を要求している趣旨は、納税者が提出した申告書の誤りを税務署長が指摘するときに理由附記を義務付けることにより、その慎重な処分を期するとともに、不服申立てに際しての判断材料を与えようとする点にあると解されるところ、国税通則法第23条第4項に基づく更正をすべき理由がない旨の通知処分については、納税者の更正の請求に対する応答としてなされるものであるから、上記の趣旨が当てはまるものではないと解される。
したがって、請求人の主張は、法の要請を超える独自の見解であり、採用できない。
また、請求人は、住宅借入金等特別控除の適用要件を実質的に満たしているから、国税通則法第23条第1項にいう課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったことに該当する旨主張する。
しかしながら、申告納税方式における納税義務者は、申告行為によって具体的な租税債務を負担することになるが、納税者が申告をした後、その申告内容に変更を加える必要の生ずる場合があることは否定できず、このような場合にはその修正を認めるべきであるが、あらゆる場合にこれを自由に認めることは、申告の性格に照らして適当といえないのみならず、納税義務の具体的内容を不安定にさせ、行政を混乱に陥れる弊害もあるから、国税通則法第23条第1項は、これに一定の制限を加え、一定の期間内に限り特定の手続によってのみ是正することができるものとしたと解される。このような見地からすると、一定事項の申告等を条件に所得金額、税額の減免をすべきこととされているものについてその申告等をしなかった者が、後日その特例の適用を求めるために更正の請求をすることは、許されないと解することが相当である。それは、上記一定事項の申告等を付さないでした納税の申告といえども、法律の規定に従っていなかったり、計算に誤りがあったりしたわけではなく、実体的に不当であるとはいえないからである。
これを本件についてみるに、住宅借入金等特別控除は、申告等を条件に適用され、所得税額が減免される規定であるところ、請求人は、平成17年分の所得税の確定申告を行うに当たり、同控除の適用を申告しておらず、本件更正の請求は、申告後に同控除の実体的要件を満たしているとして、その適用を求めようとしているものであるから、国税通則法第23条第1項による更正の請求ができる場合に該当せず、その理由がないというべきである。
いわゆる個別対応方式により課税仕入れに係る消費税額を計算する場合における「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」、「その他の資産の譲渡等にのみ要するもの」及び「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」の区分は個々の課税仕入れについて行う必要があるとした事例
裁決事例集 第73集 536頁
要旨
請求人が、本件不動産を信託財産とする信託受益権を取得し、本件不動産の取得に係る本件付随費用の消費税額について、個別対応方式により仕入控除税額を計算するに当たり、本件付随費用の総額を、本件不動産を構成する本件個々の資産の取得価額の比で本件個々の資産に配賦し、本件個々の資産の取得目的に応じ「課税対応」及び「共通対応」に区分したところ、原処分庁は、本件付随費用はいずれも「共通対応」に区分すべきであるとして消費税等の更正処分を行った。
これに対し、請求人は、消費税の課税対象となる一の取引金額の内訳又は複数の取引金額の合計の内訳について、個別対応方式における対応区分が明らかにされていれば、その明らかとなっている区分に応じて対応関係を判定すべきであり、本件付随費用は本件個々の資産にそれぞれの取得価額の比で配賦されているから、個別対応方式における区分は明らかである旨主張する。
しかしながら、課税仕入れとは、「事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供を受けること」のそれぞれの取引を指すことから、消費税法第30条第2項第1号に規定する「課税仕入れにつきその区分が明らかにされている場合」とは、課税仕入れである個々の取引についての対応区分が明らかにされている必要があるものと解される。
そうすると、請求人は、本件付随費用について、その総額を一つの単位とし、各付随費用の合計額を本件個々の資産の取得価額により按分した結果をもって「課税対応」及び「共通対応」に係る課税仕入れの額として集計したに過ぎず、個々の課税仕入れにつきその区分を判定していないことは明らかであるから、請求人の主張は採用できない。
雑所得の基因となった金融商品を外貨で取得するに当たり支出した金額のうち、通貨交換の際に適用された電信売相場と電信売買相場の仲値との差額に相当する部分の金額は、雑所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないとした事例
裁決事例集 第73集 216頁
要旨
請求人は、本件差額相当額は、円をドルに交換するために銀行に支払った手数料であり、商品Dを取得するために必要な費用であるから、本件利息収入を得るための必要経費に算入されるべきである旨主張する。
しかしながら、所得税法第37条第1項に規定する必要経費とは、売上原価等の直接の費用はもとより、販売費や一般管理費等の間接の費用もこれに含まれるが、それはあくまでも費用に限定されるのであって、費用に当たらない支出は、必要経費に含まれない趣旨と解すべきであるところ、本件差額相当額は、商品Dを取得する際の投資金額の一部分であって、当該投資金額は満期時に返金される金員であるから、同相当額は商品D取得時に費消されておらず、それを費用ということはできない。
また、通貨交換を行う金融機関にとっては、本件差額相当額が手数料としての性格を有するものであるとしても、顧客が円をドルに交換する際には、あくまでも電信売相場が適用されるのであって、電信売買相場の仲値が適用されるのではないから、同相当額の部分のみをとらえて手数料に当たるというのは相当ではない。
したがって、本件差額相当額は、本件利息収入に係る雑所得の必要経費には当たらない。
要旨
請求人は、原処分庁がした「相続税延納取消しに対する弁明を求めるためのお知らせ」(以下「本件通知書」という。)の差置送達が効力が生じていないこと理由として弁明の機会が付与されていない旨を主張する。
しかしながら、①原処分庁は、請求人に弁明の機会を与えるために平成16年6月8日付で第1回通知を請求人の自宅にあてて送付したが、受取人不在による保管期間満了を理由に返送されたこと、②そのため、原処分庁は、同月23日及び同年8月18日の二度にわたり、請求人の自宅を訪れたものの、いずれも請求人は不在であったことが認められ、当該事実は、国税通則法第12条第5項第2号に規定する書類の送達を受けるべき者等が送達すべき場所にいない場合に該当すると認められる。
そうすると、本件通知書は、適法に差置送達されたものというべきであり、請求人は、これに対して弁明の期限までに弁明をしなかったのであるから、本件における弁明手続は適法にされたというべきである。
建物等の譲渡に当たって当事者間で引渡しの日を定めていたとしても、当該建物等の売買契約を締結した日に代金決済及び所有権移転登記等が完了しているのであれば、当該売買契約を締結した日が当該建物等の譲渡の時期であるとした事例
裁決事例集 第73集 519頁
要旨
請求人は、本件建物等の課税仕入れの時期について、①消費税法基本通達9-1-13ただし書において、事業者が建物その他の固定資産の譲渡に関する契約の効力発生の日を資産の譲渡の時期としているときはこれを認める旨定めていること及び②ビジネスホテル業は関係諸官庁の営業許可なしでは営業できないことから、本件建物等の引渡しの日については、本件確認書及び本件合意書で定めた日である旨主張する。
しかしながら、①請求人は、本件売買契約書を締結した日に本件不動産(上記建物及びその敷地)の売買代金の全額を売主へ支払い、同日、所有権移転登記を了しているばかりか、本件不動産の購入資金の借入先(債権者)との間において債務者及び根抵当権設定者をいずれも請求人とする根抵当権設定契約書兼代物弁済予約証書を作成するとともに本件不動産に根抵当権の設定登記を行っていることが認められること及び②本件売買契約書、本件確認書及び本件合意書のいずれにも旅館業の営業許可が下りなければ契約の効力が生じないとする旨の約定がなく、本件売買契約が旅館業の営業許可を受けることを停止条件とする契約であるとは認められないことから、本件不動産の引渡しは、本件売買契約書の契約日に完了していると認めるのが相当である。
また、本件合意書記載の合意が当事者間において真意でなされたとしても、前述した本件事実関係の下においては、本件不動産は、本件合意書に記載された引渡しの期日よりも前に引渡しが完了していることが認められることから、本件のように引渡しの日について合理的と認められる日が存在している場合には、本件不動産の引渡しの時期についての当事者間の合意があるからといって課税仕入れの時期を左右し得ないものというべきである。
二以上の家屋が併せて一構えの一の家屋であると認められるか否かについては、まず、それぞれの家屋の規模、構造、間取り、設備、各家屋間の距離等客観的状況によって判断すべきであり、個人及びその家族の使用状況等主観的事情は二次的に参酌すべき要素にすぎないものと解するのが相当であるとした事例
裁決事例集 第73集 326頁
要旨
請求人は、本件Y家屋の敷地は、隣接する本件X家屋の敷地と地続きであり、また、本件Y家屋は、その設備状況からして、独立した1棟の居住用家屋としての機能を有していなかった上、主として居室としての用途で利用していたものであるから、一体として居住の用に供していた本件X家屋及び本件Y家屋(以下、これらを併せて「本件各家屋」という。)は、一構えの一の家屋として、それらの敷地とともに本件特例が適用されるべきである旨主張する。
ところで、二以上の家屋が併せて一構えの一の家屋であると認められるか否かについては、まず、それぞれの家屋の規模、構造、間取り、設備、各家屋間の距離等客観的状況によって判断すべきであり、個人及びその家族の使用状況等主観的事情は二次的に参酌すべき要素にすぎないものと解するのが相当である。
したがって、単にこれらの家屋がその者及びその者と同居することが通常である親族等によって機能的に一体として居住の用に供されているのみでは不十分であり、家屋の構造、規模、設備等の状況から判断していずれか又はそれぞれが独立の居住用家屋としては機能できないものでなければならない。
そうすると、これらの家屋がそれぞれ独立の家屋としての機能を有する場合には、これらの家屋を併せて一構えの一の家屋であるとは認められず、その者が主としてその居住の用に供していると認められる一の家屋に限り、本件特例の適用対象となるというべきである。
これを本件についてみると、本件各家屋の規模、構造、間取り、設備、両家屋間の距離並びに通常考えられる用法及び機能等を考慮すれば、本件各家屋は、それぞれ独立して居住の用に供し得る機能を有する居住用家屋であることは明らかであり、本件各家屋を併せて一構えの一の家屋であると認めることはできない。
また、請求人が本件Y家屋の台所や風呂を老朽化を理由として使用せず、一方、居室については修繕を行って使用していたのは、そもそも請求人の本件Y家屋の使用目的が、居室としてのみ利用することにあったためであり、請求人の主観的事情にすぎないというべきである。
そうすると、請求人の主観的事情は二次的に参酌すべき要素にすぎないから、本件各家屋を機能的に一体として利用していたことをもって、本件各家屋が併せて一構えの一の家屋であると認めることはできない。よって、請求人の主張には理由がない。
そして、本件特例の適用対象となる家屋は、租税特別措置法施行令第23条第1項の規定により、その者が主として居住の用に供していると認められる一の家屋に限られるところ、主として居住の用に供していた家屋は、本件X家屋と認められることから、本件特例の適用対象となるのは、本件X家屋及びその敷地である本件X土地に限られる。
中小企業者について同族会社の留保金課税が不適用となる要件である「自己資本比率(前事業年度終了の時における総資産の額に占める自己資本の額の割合)50%以下」という基準の判定に当たり、貸借対照表に注記された受取手形割引高は、「前事業年度終了の時における総資産の額」の算定上加算することはできないとした事例
裁決事例集 第73集 363頁
要旨
請求人は、手形割引は消費貸借であるから、前事業年度終了の時における受取手形割引高(以下「本件割引高」という。)は資産として認識し、租税特別措置法第68条の2第1項第4号に規定する自己資本比率の計算において、貸借対照表の資産の部の合計額に加算して計算すべきである旨主張する。
しかしながら、租税特別措置法第68条の2第1項第4号及び同法施行令第39条の34の2第8項によれば、自己資本比率の算定上、「前事業年度終了の時における総資産の額」とは、請求人の前事業年度の確定した決算に基づく貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額の合計額とされているところ、本件の手形取引は、手形割引すなわち手形の売買であり、割引された受取手形は請求人からA銀行に所有権が移転しており、請求人の資産を構成するものではなく、本件割引高を資産と認識すべきであるとする請求人の主張には理由がない。また、請求人は本件割引高を貸借対照表の資産の部にも計上していない。
そうすると、本件割引高は資産の部の合計額に加算することはできず、これに基づき自己資本比率を計算すると100分の50を超えることから、本件において、租税特別措置法第68条の2の規定は適用されない。
要旨
請求人は、本件担保申請物件に係る処分禁止の仮処分の登記は所有権の4分の1のみについてされたにすぎず、その余の4分の3に係る価額でも担保価値としては十分であるから、担保として適格である旨主張する。
しかしながら、相続税の延納担保として提供される財産は、その担保に係る相続税額を確実に徴収することができる金銭的価値を有するものでなければならず、かつ、延納許可が取り消された場合に、滞納処分の例により換価することが困難と考えられる事情を有する財産は、延納の担保としては適当でないと解するのが相当である。
これを本件についてみると、本件担保申請物件には処分禁止の仮処分の登記があるところ、仮に、当該仮処分権者が保全すべき登記請求権に係る登記をした場合には、原処分庁のした抵当権の設定登記又は延納が不履行になって公売した場合の買受人の所有権移転の登記は抹消されることになることから、抵当権も所有権も権利の実現が不確実で不安定な状態にあると認められる。
したがって、たとえ数額上担保価値の算出が可能であり、当該仮処分の登記が所有権の一部のみについてされていたものであったとしても、本件担保申請物件は、事実上極めて換価が困難な財産といわざるを得ないから、担保物件として不適当なものである。
要旨
異議申立てが不服申立期間を徒過してなされていることについて、請求人は、本件充当処分には重大かつ明白な瑕疵があって無効であり、無効な行政処分は時間が経過しても無効のまま瑕疵が治癒されないから、本件異議申立ては、不服申立期間の制限を受けない旨主張する。
しかしながら、国税通則法上の不服申立てにおいては、納税者が処分の無効を理由として課税処分や徴収処分の取消しを求めた場合であっても、同法の不服申立手続に則っていることが前提となるというべきであるから、同法第77条第1項に規定する不服申立期間を遵守せずにされた異議申立ては、原則として不適法であり、これが適法となるのは、同条第3項に規定する天災その他その不服申立期間内に不服申立てをしなかったことについてやむを得ない理由があり、かつ、その理由がやんだ日から7日以内に審査請求をした場合に限られる。
そうすると、不服申立期間を徒過してなされた本件異議申立ては、その期間内に異議申立てをしなかったことについてやむを得ない理由があるとは認められないから、不適法なものである。
要旨
国税通則法第23条第2項第1号の規定は、納税者において、申告時には予測し得なかった事態が後発的に生じたため、課税標準等又は税額等の計算の基礎に変更をきたし、税額の減額をすべき場合に、法定申告期限から1年を経過していることを理由に更正の請求を認めないとすると、帰責事由のない納税者に酷な結果となることから、例外的に更正の請求を認めて納税者の保護を拡充しようとしたものと解される。上記規定の趣旨及び国税通則法第23条第2項各号の列挙事由の内容にかんがみれば、同項第1号の「判決」に基づいた更正の請求が認められるためには、判決を得るための訴訟が申告等に係る課税標準等又は税額等の基礎となった事実の存否、効力等を直接審判の対象とし、判決により課税標準等の基礎となった事実と異なることが確定されるとともに、納税者が申告時において、課税標準等の基礎となった事実と異なることを知らなかったことが必要であると解される。
これを本件についてみると、請求人は、被相続人が死亡するまで、V社の経営に全く関与しておらず、本件売買契約にも全く関与していなかったものと認められる。他に請求人が申告時までに本件土地の売買の目的や経緯、ないしは本件売買契約が仮装であること等を知っていたと認めるに足りる証拠はない。そうすると、請求人は申告時において本件売買代金債権が存在しなかったことを知っていたとは認められない。
要旨
請求人は、請求人が従事する業務は、いずれも夫の営む事業に包含される業務であるから、請求人は「居住者の営む事業に従事するもの」に当たり、請求人の年間従事日数及び年間従事時間は、夫の所属事務所の従業員のそれらの2分の1をはるかに超えており、かつ「その年を通じて6月を超える」こととなるから、請求人は「専ら夫の事業に従事する者」に該当するにもかかわらず、原処分庁が、請求人が従事する各業務について「夫婦間の相互扶助の範囲内のもの」とすることは、青色事業専従者給与を規定する法の沿革にも、労働には当然に報酬が支払われるべきだとする現今の社会常識にも、はたまた憲法感覚にも馴染まない違法で誤った考え方であり、このことは請求人の幸福追求権、勤労の権利、基本的人権を侵害するもので、憲法に反し違法である旨主張する。
しかしながら、原処分庁の主張は、請求人は夫の業務に従事しているが、それは「夫婦間の相互扶助の範囲内のもの」であるから無償であるべきであるという趣旨ではなく、所得税法第57条第1項及び同法施行令第165条に基づいて「専らその居住者の営む事業に従事」したか否かを判定するに際して、請求人の労務の提供は、労務の内容、所要時間ないし頻度からすれば、社会通念上、夫婦の相互扶助の範囲内の行為あるいは日常生活の一環としての行為であり、「夫の事業に専ら従事するものではない」とするものであるから、請求人の主張は前提を誤るものである。仮に請求人の主張が、そのような法令の規定自体が憲法に違反するという趣旨であるとすれば、その判断は当審判所の権限外のことであり、審理の限りではない。
そして、請求人が従事する労務の内容ないし態様、要する期間ないし時間及び頻度を見ると、請求人が主張する各業務のうち、試算表の作成等及び銀行に出向いて各種手続を行うこと以外の業務については、これに従事しているとは認められないものであり、また、試算表の作成等及び銀行に出向いて各種手続を行うことについては、請求人がこれを行っていたとしても、その労務は一時的ないし臨時的なものであって、請求人が夫の事業に専ら従事する期間がその年を通じて6月を超えるとは認められない。
したがって、請求人は、青色事業専従者とは認められない。
要旨
請求人は、源泉徴収義務者が源泉所得税を徴収しなかったとしても、受給者がその所得を確定申告し、納税すれば源泉所得税相当額が国庫に歳入される以上、その時点で源泉徴収義務は消滅する旨主張する。
しかしながら、源泉所得税の納税義務を負う者は、源泉徴収の対象となるべき所得の支払者であって(所得税法第183条第1項、第204条第1項)、その納税義務は、その所得の受給者に係る所得税の納税義務とは別個のものとして成立、確定し、これと並存するものであり(国税通則法第15条)、所得税法第221条、第222条及び国税通則法第36条の各規定からしても、源泉所得税の納税に関し、国と法律関係を有するのは徴収義務者のみで、その所得の受給者との間には直接の法律関係を生じない。
また、「源泉徴収をされた又はされるべき所得税額」がある場合には、所定の税率を適用して算出された所得税の額からこれを控除した金額が所得税の確定申告書の記載事項(所得税法第120条第1項)とされているところ、この「源泉徴収された又はされるべき所得税額」については、所得税法の源泉徴収の規定に基づき正当に徴収された又はされるべき所得税の額を意味するものであって、確定申告の際に、源泉所得税自体の過不足額の精算を行うことを予定しておらず、その所得の受給者が徴収されるべき源泉所得税を確定申告により納税することはできない。
したがって、受給者の確定申告によって請求人の源泉徴収義務が消滅することはない。
扶養親族に該当するための所得要件である合計所得金額の計算においては、租税特別措置法第37条の12の2《上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除》第1項の規定は適用されないとした事例
裁決事例集 第73集 250頁
要旨
請求人は、租税特別措置法(平成17年法律第21号による改正前のものをいい、以下「措置法」という。)第37条の12の2第4項は、同条第1項の規定(以下「本件繰越控除規定」という。)の適用がある場合における、同法第37条の10(第7項以外)の規定による「株式等に係る譲渡所得等の金額」は、本件繰越控除規定の適用(控除)後の金額であることを明確にしたものであって、原処分庁が主張するような、「合計所得金額」を計算する際に総所得金額等に加算する「株式等に係る譲渡所得等の金額」の計算に当たり本件繰越控除規定の適用の排除を意味するものではないから、適法に繰り越した「上場株式等に係る譲渡損失の金額」を有する場合における「合計所得金額」を計算する際には、本件繰越控除規定が適用され、当年分の「株式等に係る譲渡所得等の金額」から適法に繰り越した「上場株式等に係る譲渡損失の金額」を控除することは明らかである旨主張する。
しかしながら、措置法第37条の12の2第4項において、第1項の規定の適用がある場合の、第37条の10及び第37条の11の各規定(第37条の10においては第7項を、第37条の11においては第4項をそれぞれ除く。)の適用に当たっては、それぞれの第1項の「計算した金額」をいずれも「計算した金額(第37条の12の2第1項の規定の適用がある場合には、その適用後の金額)」と読み替えて適用する旨規定しており、措置法第37条の10第7項又は同法第37条の11第4項の各規定の適用(合計所得金額の計算)の場面においては、各条第1項の規定は上記のとおり読み替えられずに適用されることになる。
また、前年から繰り越された「上場株式等に係る譲渡損失の金額」を有する場合の「株式等に係る譲渡所得等の金額」については、「課税標準」の計算の場面においては本件繰越控除規定を適用して計算し、扶養親族の所得要件となる「合計所得金額」の計算の場面においては本件繰越控除規定を適用しないものとして計算することになる。
すなわち、居住者が、所得税額の計算上、本件繰越控除規定を適用して控除すべき「上場株式等に係る譲渡損失の金額」を有しているとしても、その「合計所得金額」の計算に当たっては、本件繰越控除規定を適用して、「株式等に係る譲渡所得等の金額」を計算することができないことは、法律上明らかである。
【 税務法規集に掲載する法令等の情報に関する注意事項 】
- 本サービスは、デジタル庁が管理するe-Gov法令検索のデータ、国税庁がホームページを通じて提供する通達等の情報および国税不服審判所の公表裁決事例・裁決要旨を利用しています。
- 法律の専門家が分類・整理した情報を元に、プログラムで自動的に法令等を解析し、関連する情報を統合的に閲覧できるように再編集していますが法令等の内容については、明白な誤りや文字種の統一などの形式的な点を除き、変更しておりません。
- 各法令等の施行日等の情報は法令等の名称の横にある マークのボタンからご覧いただけます。また、当該法令の元データにもその情報表示部分からアクセスすることができます。
- 本サービスの提供者は、デジタル庁および国税庁とは関係がなく、またこれらの機関を代表するものでもありません。
- 本サービスの提供者は、表示される情報に誤りがないように努めていますが、利用者による本サービスの利用に関する結果に対して一切の責任を負いません。