裁決事例 平成20年(2008年)

裁決事例 平成20年(2008年)

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平成20年12月25日裁決

家族を外国に居住させ、自らは国内に住民票を置き、出入国を繰り返している請求人代表者を所得税法第2条第1項第3号の「居住者」に該当すると判断した事例

裁決事例集 第76集 228頁

要旨

 請求人は、請求人代表者が、家族をD国に居住させ、自らも同国での住所を有したまま、同国での勤務に加え日本での勤務も行い、D国と日本を行き来する生活を送っていることから、その住所地は、所得税基本通達3-1に定める船舶又は航空機の乗組員の住所の判定と同様に、「その者の配偶者その他生計を一にする親族の居住している地」、すなわちD国にあり、代表者は、所得税法第2条第1項第5号に規定する「非居住者」に当たると主張する。
 しかしながら、請求人代表者は、出入国を繰り返しているものの、日本国内における居住地以外に、生活の本拠としての実態がある場所もなく、請求人の代表者として活動していることからも、請求人を中心とするグループ企業の実権を掌握し、その地位に照らしても相当期間にわたり国内に存在することを必要としていたもので、その住所は国内にあり、所得税法第2条第1項第3号に規定する「居住者」に当たる。

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平成20年12月18日裁決

当初から所得を過少に申告するとの意図を外部からうかがい得るような特段の行為をしたとまでいうことはできないとして重加算税の賦課要件を満たさないとした事例

裁決事例集 第76集 42頁

要旨

 原処分庁は、FX取引に係る所得の申告義務等については、FX取引先の顧客に対する周知状況からみて、請求人は認識し得る状況にあったこと、FX取引に係る雑所得の金額が、請求人の各年分の給与所得の金額の約14倍から16倍と請求人にとって多額の金額となること、及び請求人は平成18年分の給与所得者に係る年末調整に際し、住宅借入金等特別控除申告書の「年間所得の見積額」欄を空欄のまま勤務先に提出していることなどの一連の行為をもって、請求人が、本件FX取引に係る真実の所得金額を隠ぺいすることを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行為をし、その意図に基づいた過少申告をしたとし、これらの行為を総合勘案すれば、重加算税の課税要件を充足している旨主張する。
 しかしながら、請求人はFX取引に係る所得の申告義務について、FX取引先からの利用マニュアル及びホームページ上において知ることが可能であったこと、また、請求人のパソコンでFX取引事績を確認すれば売買損益を知ることができたことから、FX取引に係る所得の申告義務及び多額の所得があったことについては認識していたのではないかという疑いも存するものの、FX取引に係る税務上の取扱いについて、請求人が税理士等の専門家に相談したといった事実は認められず、また、当審判所の調査等により把握した本件事実関係の下においては、当初申告当時、請求人は、FX取引に係る所得について、株式の売買等の場合と同様に、源泉分離課税であると誤解していた可能性も否定できず、請求人が当初から所得を過少に申告する意図を明らかに有していたことまでは認められない。
 また、請求人が、年末調整に際し、住宅借入金等特別控除申告書の「年間所得の見積額」欄を空欄のまま勤務先に提出した行為についても、仮に請求人がFX取引に係る所得が源泉分離課税であると誤解していたとすれば、同欄を空欄にして提出する可能性もあり得るのであり、そのような事実をもって、当初から所得を過少に申告するとの意図を外部からうかがい得るような特段の行為をしたとまでいうことはできない。
 そのほか、請求人には、原始資料等をあえて散逸したり、虚偽の答弁、虚偽資料を提出するなど調査に非協力であったという事実もないことからすれば、原処分庁が主張する事実をもって、直ちに、請求人が当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行為をした上で、その意図に基づいて過少申告をしたものということはできない。
 さらに、当審判所の調査その他本件に関する資料をもってしても、請求人に真実の所得を隠ぺい又は仮装したものと評価すべき行為や事実の存在があったものと認めることはできず、他にこれと異なる認定をするに足る証拠もない。
 したがって、請求人が、国税通則法第68条第1項に規定する「国税の課税標準等又は税額の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出」した場合には該当しないというべきである。

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平成20年12月15日裁決

個人事業者の法人成りに際して事業用資産の当該法人への引継ぎは、現物出資ではなく、負債の引受けを対価とした課税資産の譲渡であるとした事例

裁決事例集 第76集 475頁

要旨

 請求人は、自己が営む個人事業を法人組織とするに当たり、まず金銭の出資により法人を設立し、その後、個人事業に係る資産及び資産と同額の負債を当該法人に引き継いだところ、原処分庁が、本件法人成りは「対価を得て行われる課税資産の譲渡」であるとして消費税等の更正処分をしたのに対し、本件法人成りは、「営業」という組織的有機的一体物の譲渡であるから「営業」それ自体を一個の資産ととらえて課税すべきである。したがって、原処分庁が、かかる「営業」を資産と負債に分離・分解した上で、負債の引受額を消費税法上の資産の譲渡等の反対給付と認定し課税したのは違法である。すなわち、本件法人成りの実態は現物出資と同様であるから、消費税法の適用においても現物出資に準じて取り扱うべきで、そうすると、その対価となるべき取得する株式がない本件法人成りにおいて消費税額は発生しない旨主張する。
 しかしながら、消費税の課税対象は、「国内において事業者が事業として対価を得て行われる資産の譲渡等」と解されるところ、消費税法において、資産(非課税取引を含む)及び負債が一体となった「営業」それ自体を一つの課税客体ととらえて課税対象とする規定は存在せず、譲渡された資産の相手勘定を負債とした法人における仕訳処理は、本件法人成りにおいて負債の引受けが資産の引受けの反対給付である証であり、請求人は、資産の譲渡の対価として法人から金銭を収受する代わりに負債を引き受けさせ、債務の支払義務の消滅という経済的利益を得たものであるから、当該負債の引受額は消費税法における資産の譲渡の対価の額に相当する。

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平成20年12月9日裁決

還付加算金に係る雑所得の金額の計算上、課税処分の取消訴訟に要した費用等は必要経費に該当しないとした事例

裁決事例集 第76集 161頁

要旨

 請求人は、本件訴訟に係る判決の確定に伴い受領した本件各還付加算金は、不当利得に対する損害賠償金的性格を有し、本件各過納金と一体不可分のものであること、また、本件訴訟費用等及び本件借入金利息等は投下資本に該当することは明らかであり、原資の維持に必要な部分として、所得を構成しないことから、本件訴訟費用等は、本件各還付加算金を得るために直接要した費用として必要経費に算入できる旨主張する。
 しかしながら、本件訴訟は本件各還付加算金を得るために提起されたものではなく、本件訴訟の結果として本件各還付加算金が発生したにすぎないことから、本件各還付加算金が本件各過納金と一体不可分のものとはいえず、また、還付加算金は、過納金の発生の原因にかかわらず支払われるものであって、過納金に付される一種の利子であることから、損害賠償の性格を有していない。
 また、本件において、還付加算金を得るための行為は、請求人にとって業務とはいえず、所得を生ずべき業務について生じた費用ともいえないから、本件訴訟費用等は雑所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。

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平成20年12月3日裁決

不動産賃貸業を営む請求人が賃借人から敷金及び建設協力金の返還義務を免除されたことが、国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分に当たらないとした事例

裁決事例集 第76集 555頁

要旨

 原処分庁は、建物賃貸人である審査請求人が建物賃借人である滞納者から建設協力金等の残額の返還債務の免除を受けたことが国税徴収法第39条に規定する債務の免除に該当すると主張する。しかしながら、国税徴収法第39条にいう無償譲渡等の処分とは、経済的合理性を欠き広く第三者に不相当な利益を与える処分をいい、その態様に制限はないと解するのが相当である一方、その行為が経済的合理性を欠き第三者に不相当な利益を与えるものでない限り、同条にいう無償譲渡等の処分に該当しないと解するのが相当であるところ、敷金については、未払賃料と明渡し費用に充てられた結果、その返還請求権は発生しなかったと認められ、建設協力金については、建物賃貸借契約に定められた「賃借人の都合による中途解約の場合、賃借人が当該契約と同等以上の条件で新たな賃借人を斡旋し、新たな契約が締結されない限り、賃借人は敷金及び建設協力金の残額の返還請求権を放棄する。」との条項が、滞納者の都合によって賃貸借契約が中途解約された場合に生ずる請求人の損害の賠償に代えて、建設協力金の残額の返還請求権を放棄し、その後請求人に生じた損害の多寡を問わず精算しないこととしたものと解されるから、建設協力金の残額の返還請求権の放棄は、賃貸借契約の中途解約によって請求人に生じることが予想される損害の賠償に代えて行われる違約金債務の弁済と同視することができ、本件建設協力金の額が本件建物の工事代金以下で不相当に高額とはいえず、また、その返済期間が建物の賃貸借期間と同期間で不相当に長期間であるともいえないことからすれば、請求人に対して一方的に不相当な利益を与えるものとはいえず、国税徴収法第39条に規定する無償譲渡等の処分に当たるということはできない。

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平成20年12月3日裁決

役員報酬が国税徴収法第76条に規定する給料等に該当するとした事例

裁決事例集 第76集 612頁

要旨

 原処分庁は、役員報酬は、取締役と会社との委任関係に基づいて支払われるものであるから、国税徴収法第76条第1項に規定する給料等には該当しない旨主張する。
 しかし、国税徴収法第76条第1項が規定する給料等の差押禁止規定は、給料等がその受給者とその家族が生計を維持するための唯一ないし最重要な収入であり、その全額が差し押さえられた場合には、直ちにその受給者とその家族の生計の維持が困難になることを考慮し、健康で文化的な最低限度の生活を保障するという社会政策的な観点から、一定の範囲で差押えを禁止したものであり、同項は、給料等について、歳費まで例示しているから、同項にいう給料等とは、雇用契約に基づいて支給されるものに限定されず、雇用契約又はこれに類する関係その他一定の勤務関係に基づき、使用者の指揮命令又は所属する組織の規律に服してその使用者又は組織に対して提供した労務又は職務遂行の対価としてその使用者又は組織から継続的に受ける又は受けることが予定されている給付をいうものと解するのが相当であるところ、取締役の役員報酬は、取締役の任期中、会社との任用契約による勤務関係に基づき、その会社の機関又は機関の構成員として会社の規律に服し、その職務を行った対価として、その会社から継続的に報酬を受けるものであるから、国税徴収法第76条第1項が規定する給料等に含まれると解するのが相当である。

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平成20年12月1日裁決

評価対象会社の出資を純資産価額方式で評価するに当たり、当該会社が有する国外の土地に係る使用権を貸借対照表価額に基づき評価した事例

裁決事例集 第76集 368頁

要旨

 本件取引相場のない株式(出資)の評価上、その発行法人(以下「評価会社」という。)が保有する本件土地使用権は、P国の土地○○法及び都市○○法の規定に基づき、評価会社の権益を保護するため、登記されたものと認められる。そして、土地○○法第○条は、法に従って登記された土地使用権は、法律の保護を受ける侵害できない権利である旨規定し、また、都市○○法第○条は、土地使用者が土地使用権の上に存する不動産を譲渡し、抵当に供する場合は、当該土地使用権を同時に譲渡し、又は抵当に供する旨規定していることからすれば、本件土地使用権は、譲渡及び抵当権の設定が可能な財産であると認められ、また、評価会社により工業用地として現に有効に利用されている。したがって、本件土地使用権は財産価値があると認められる。
 そして、財産評価基本通達は土地の上に存する権利の評価方法について、いずれもその権利が設定されている土地の自用地の価額を基に評価する旨定めているものの、本件土地使用権に係る自用地の価額を明らかにすることができないから、これによることができず、さらに、土地使用権に係る売買実例価額、精通者意見価格等についても明らかにすることができないので、当該土地使用権の取得価額を基にP国における土地使用権の価格動向に基づき時点修正をして求めた価額により評価することとなるが、P国における土地使用権の価格動向については把握することができないことから、本件土地使用権の相続税評価額は、その取得時における時価を表していると認められる取得価額を基に時点修正して求めた価額、すなわち使用期間に応じて減価させた金額によることが相当である。評価会社の本件直前期末の貸借対照表に記載された土地使用権の金額は、その取得価額を基に使用期間に応ずる減価を反映したものとなっており、加えて、本件直前期末から本件受贈日までの間は6か月に満たないことから、評価会社の本件直前期末の貸借対照表に記載された土地使用権の金額を本件受贈日における相続税評価額とみても、これを不合理とする特段の事情は認められない。

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平成20年11月14日裁決

役員報酬の金額のうち、請求人と同種の事業を営み事業規模が同程度の類似法人の適正報酬額を超える部分の金額は不相当に高額であるから損金の額に算入されないとした事例

裁決事例集 第76集 285頁

要旨

 請求人は、請求人の代表者の妻である役員Hは、請求人の重要な職務に常に従事し、請求人の業績に多大な貢献をしており、常勤役員に該当する旨主張する。
 しかしながら、①Hの職務内容及び役員報酬の支給状況、②請求人の売上高及び収益の状況、③請求人の使用人に対する給料の支給状況、④類似法人の役員報酬の支給状況等をみると、Hは、特に重要な職務には従事しておらず、その従事日数も1か月のうち2日から3日と職務の従事程度が低いにもかかわらず、その報酬額は、請求人の売上高及び収益並びに使用人給与に比し相当高い伸び率を示しており、さらに、類似法人の平均役員報酬額に比しても極めて高額であることから、類似法人の平均役員報酬額を超える金額は、法人税法第34条第1項に規定する「不相当に高額な部分の金額」に該当する。

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平成20年10月30日裁決

新株予約権の行使に伴い生じた経済的利益は雑所得に該当し、また、新株予約権の取得についての情報提供者に支出した手数料は雑所得の金額の計算上必要経費に算入されるとした事例

裁決事例集 第76集 136頁

要旨

 請求人は、民法上の組合を通じて取得した新株予約権の行使による経済的利益は一時所得に該当する旨主張する。しかしながら、新株予約権を有利発行した法人は、その新株予約権の発行に当たり、事業拡大等のための資金調達のほか、投資家による新規事業への支援も計画し、これらの確実な実現を図るために本件組合を引受先とし、また、本件組合の出資者の投資リスク等も考慮して有利発行したものと認められることから、当該経済的利益は出資の対価としての性質を有しているといえる。したがって、当該経済的利益は、対価性が認められることから一時所得には当たらないことになり、また、請求人は、当該法人の役員等でもないことから給与所得にも当たらず、営利を目的とする継続的行為から生じた所得ではないから事業所得にも当たらず、さらには利子所得、配当所得、不動産所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得のいずれにも当たらないので、雑所得となる。
 また、原処分庁は、請求人が本件組合を通じた新株予約権の取得についての情報提供者に支出した手数料は、株式の譲渡と密接に関連した費用であり、上場株式等の譲渡所得の金額の計算上、譲渡費用となる旨主張する。しかしながら、請求人が本件手数料を支払わなければ、当該株式の売却ができなかったわけではなく、また、情報提供者において、当該株式の売却に関与した事実も認められないことから、本件手数料は、請求人にもたらされた投資情報に基づき、当該組合に対する出資により、結果的に、請求人が得た経済的利益について生じた費用であると解するのが相当である。そして、当該経済的利益は雑所得に区分されるから、本件手数料は、雑所得の金額の計算上必要経費に算入される。

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平成20年10月29日裁決

扶養控除に関する事項を記載した損失申告書を提出したことによって扶養親族の所属を選択したものとした事例

裁決事例集 第76集 196頁

要旨

 請求人は、所得税法第84条の規定は、所得を有する居住者を対象とする規定であり、請求人の夫については、本件各年分において所得を有していなかったから、同条の適用はなく、同条の適用を前提とする所得税法施行令第219条を適用する余地もなく、同人が提出した本件各年分の確定申告書の所得控除の記載は何らの記載もされていないとみるべきであり、少なくとも、平成15年分及び平成16年分について、請求人の夫は請求人の控除対象配偶者であって、請求人に養われているものが子らを扶養していると解することはできないから、請求人の夫の平成15年分及び平成16年分の所得税の申告については、所得税法第84条の規定の適用はないなどとして、本件各確定申告書の提出により、請求人が子らを扶養親族とすることを選択したことになる旨主張する。
 しかしながら、所得税法第84条第1項は、「居住者が扶養親族を有する場合には」扶養控除の適用を受けることができる旨規定しており、居住者の所得金額の多寡や一方が他方の控除対象配偶者であるか否かによって同条の適用を受けることができなくなるものでないことは文理上明らかである。確かに所得控除前の所得金額の合計額が零円であれば、扶養控除の適用を受ける必要は直ちには生じないものであるが、その後に増額更正や修正申告により所得金額が増加し、それによって扶養控除の適用を受けることもあり得るのであり、そのような場合に備えて、あらかじめ扶養親族の所属を確定させることには意味があるから、所得税法第123条に規定する確定申告書において、その第二表の「所得から差し引かれる金額に関する事項」の「配偶者(特別)控除・扶養控除」欄に子らの氏名、続柄、生年月日及び控除額を記載したことが無意味であるとして何らの記載がないものとみることはできない。

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平成20年10月29日裁決

更正の請求の直前における請求人の相続税の課税価格は相続税法第55条の規定に基づき民法の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って計算されていたものではないから、当該更正の請求は相続税法第32条第1号の要件を欠くものであるとした事例

裁決事例集 第76集 440頁

要旨

 相続税法第32条第1号は、同法第55条の規定により分割されていない財産について、民法(第904条の2を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って課税価格が計算されていたこと、及びその後当該財産の分割が行われたことをその要件としていることから、同号の規定に基づく更正の請求は、単に相続財産の分割が行われ、相続財産の分属が決まり、その結果に従って相続税の課税価格を計算すると申告又は更正若しくは決定に係る課税価格と異なることとなるというだけでは足りず、①当該分割が行われる前には遺産共有の状態にあった分割の対象とされた財産について、民法(第904条の2を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って課税価格が計算された申告又は更正若しくは決定が行われていること、及び②当該申告又は更正若しくは決定において未分割財産とされていた財産が分割されたことが必要であり、①の申告又は更正若しくは決定がなされていない場合には、同条第1号の更正の請求の要件を満たさないこととなる。
 本件においては、本件遺言が無効である旨の判決が確定した最高裁判決により、すべての相続財産は遺産共有の状態、すなわち未分割の状態にあることが明らかにされたものと認められ、その後、審判によりその未分割の状態にあった財産の分割が行われたのであるから、最高裁判決により未分割の状態にあることが明らかになった相続財産について、相続税法第55条の規定に基づく申告又は更正若しくは決定がなされていたかどうかで、本件更正の請求が同法第32条第1号の更正の請求の要件である「相続税法第55条の規定により分割されていない財産について民法(第904条の2を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って課税価格が計算されていたこと」を満たすか否かを判断すべきこととなる。この点、本件申告は、最高裁判決の前になされているものであって、本件更正の請求の直前における請求人の相続税の課税価格は、最高裁判決により未分割の状態にあった相続財産について相続税法第55条の規定に基づき民法の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って計算されていたものでないことは明らかである。したがって、本件更正の請求は、相続税法第32条第1号に規定する要件を欠くものである。

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平成20年10月27日裁決

請求人は事業として山林業を営んでいたとは認められないことから、譲渡した山林素地は事業用資産とはいえず、特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例は適用できないとした事例

裁決事例集 第76集 270頁

要旨

 請求人は約○○ヘクタールの山林素地を所有していたが、過去7年間において、請求人に山林の伐採又は譲渡による所得があったのは、平成15年分、平成17年分及び平成18年分の3年分であり、いずれも森林組合又は下草刈りを行う業者からの依頼に応じて山林を伐採したことによる所得である。そして、山林所得がある各年分でいずれも山林所得の金額の計算上損失が生じており、収入金額を見ても、平成15年分は約○○○○円あるものの、平成17年分は約○○○○円、平成18年分は○○○○円と僅少であるから、請求人が、営利を目的として反復継続して、山林の伐採又は譲渡を行っていたとはいえない。
 さらに、請求人は、山林素地を遅くとも平成3年1月までには取得しており、その所有期間は長期間に及んでいたにもかかわらず、その間、新たな植林をしていないと認められる。したがって、請求人が植林を計画的に企画遂行していたともいえない。
 以上のとおり、請求人は、営利を目的とした山林の伐採又は譲渡を反復継続して行っておらず、長期間にわたって植林をしていないから、請求人が下草刈りなどの山林の管理を行っていたとしても、これに費やす労務もまた僅少であったと認められる。加えて、請求人には、平成18年分の所得税の確定申告において、事業所得(農業)、不動産賃貸による不動産所得、給与所得を申告したことに照らすと、山林所得の基因となる業務は従たる経済活動であったとみるべきである。
 そうすると、山林の伐採又は譲渡の反復継続性及びその金額、植林の計画的な企画遂行、さらに、これらに費やす労務の程度、社会的地位などのいずれの観点から見ても、請求人が、本件譲渡の当時において、自己の計算と危険において独立して、営利性、有償性を有し、かつ、反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる山林業を営んでいたとはいえない。
 したがって、請求人が事業として山林業を営んでいたとは認められないから、本件山林素地は、事業の用に供する資産とはいえず、本件譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上、特定事業用資産の買換えの特例を適用することはできない。

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平成20年10月27日裁決

貸金業を営む請求人の貸金債権についての保証業務を行っていた滞納法人が業務を廃止したことに伴い、請求人が滞納法人から収受したといえる業務廃止日現在の累計保証料相当額から貸倒額を控除した部分は、国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分によるものであるとした事例

裁決事例集 第76集 521頁

要旨

 請求人の顧客の請求人に対する債務について保証する本件滞納法人がその業務を廃止した場合に、その廃止日における累計保証料相当額を請求人がすべて収受する旨を定めた本件契約第9条の規定は、本件滞納法人が業務を廃止したときは、本件滞納法人による保証債務が履行されないこととなり、請求人に損失が生じることとなる一方、本件滞納法人としては、保証していた請求人の貸金債権の履行期限が到来するまで業務を廃止できないとすると、円滑に業務廃止の手続を進めることができなくなることから、本件滞納法人の業務廃止後における損害賠償債務又は保証債務の履行に代えて、本件滞納法人が累計保証料相当額の金員を請求人に交付することとし、その後の清算を要しないこととしたものと解され、本件累計保証料相当額の債務の履行により、本件滞納法人の業務廃止後における損害賠償債務又は保証債務が消滅するので、本件累計保証料相当額の債務が履行されたことによって、直ちに国税徴収法第39条に規定する無償譲渡等の処分があったということはできない。
 しかしながら、同条にいう無償譲渡等の処分が広く第三者に利益を与える行為をいうものと解されることからすれば、本件滞納法人の業務廃止後における損害賠償債務又は保証債務の履行に代えて、本件滞納法人が請求人に対して支払うべきものとして必要な範囲を超えて履行された部分は、同条の無償譲渡等の処分によるものと解するのが相当であり、その必要な範囲は、本件滞納法人の業務廃止時における請求人の貸金残高に予想される貸倒率を乗じて算出される額とするのが相当である。もっとも、本件滞納法人の業務廃止に伴って請求人に生じた貸倒れの額が具体的に明らかである場合には、その額までの部分がその必要な範囲と認めることが相当であるから、本件滞納法人が請求人に対して負っていた本件累計保証料相当額の支払債務と請求人の本件滞納法人に対する借入金債務との相殺によって、請求人が本件滞納法人から債務の履行を受けたと同視できる額から本件滞納法人の業務廃止によって生じた請求人の貸金債権についての貸倒損失の額を控除した部分については、請求人が本件滞納法人から国税徴収法第39条に規定する無償譲渡等の処分により利益を受けたというべきである。

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平成20年10月24日裁決

退職年金に係る債権は譲渡されているからその所得は請求人に帰属しないとした事例

裁決事例集 第76集 97頁

要旨

 原処分庁は、請求人の破産手続によって、役員退職年金に係る債権が債権回収会社へ債権譲渡されたとしても、当該年金に係る所得は請求人に帰属する旨主張する。
 しかしながら、本件退職年金における債権は、差押禁止財産に該当せず、請求人における破産財団に属する債権であるところ、本件退職年金について定めた内規には、本件退職年金の譲渡を禁止する特約等はなく、管理処分権を有する破産管財人から債権回収会社へ適法に譲渡されていること、また、本件退職年金は役員としての功労に対する報賞の性格を有するものであって、労働の対償として支払われるものではないから、労働基準法第11条に規定する「賃金」には該当せず、同法第24条第1項の賃金等の労働者への直接払の義務規定も適用されないことから、請求人の本件退職年金に係る債権は、本件譲渡により失ったものと解され、当該年金に係る所得は全額が請求人に帰属しないから、原処分の一部は取り消されるべきである。

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平成20年10月23日裁決

贈与財産である取引相場のない株式を純資産価額方式で評価する場合において、当該株式の発行法人が有する営業権の価額は財産評価基本通達の規定により評価することが相当であるとした事例

裁決事例集 第76集 336頁

要旨

 財産評価基本通達(以下「評価通達」という。)に定める営業権の評価方法の合理性について検討すると、まず、平均利益金額の算定に当たって、所得税法及び法人税法の定めに従って算出した「所得の金額」を基としているのは、各企業の主観に基づく会計処理基準によって算出された利益によることなく、各企業について統一的に所得金額の計算基準を定めている所得税法及び法人税法によって計算された所得によることとし、算定方法の客観性を確保するためと解される。次に、平均利益金額から一律50%減じることは、過去の収益に基づく平均利益金額から将来の収益を推算する方法を採用していることから、将来における競争相手の出現、需給の変化等の企業がもつ将来における危険率を見込んだ評価の安全性に対する配慮であると認められる。さらに、企業者報酬を減ずることは、企業の規模に応じて適当と認められる企業者報酬を控除することで、客観的に見て企業者の労力によってもたらされる収益を除外するものと解され、総資産価額に基準年利率を乗じた金額を控除することは、投下資本の働きによる収益を除外するためのものであるから、これによって算出された超過利益金額は、将来の超過収益力を示すものと認められる。したがって、この超過利益金額を、財産評価一般に採用される一般的な利回りである基準年利率を基に資本還元した価額は、営業権の価額を示すものと認められる。更に、課税時期を含む年の前年の所得の金額が低い場合には営業権の価額をこの金額により評価することとされており、評価の安全性に配慮していることが認められ、当審判所も評価通達に定める方法を相当と認める。
 請求人らは、評価通達に定める営業権の評価方法は、その計算要素である①営業権の持続年数が異常に長いこと、②平均利益金額を求める期間が3年と短いこと、③総資産価額に乗ずる率が低いこと、④基準年利率を基とした複利年金現価率は妥当ではないことから、所要の補正を行った上で本件営業権の評価を行い、本件株式の時価を評価すると1株当たりの価額は1,817円となり、原処分庁算定の価額は時価を超えるから、本件の場合、評価通達により難い特別な事情がある旨主張する。しかしながら、本件営業権の評価に当たって、評価通達において定められた各計算要素について請求人らが主張する補正をすべき理由はなく、請求人らの主張する補正をして算出した価額が本件株式の時価であるとはいえない。したがって、評価通達の定めによらないことが正当と認められるような特別な事情がある場合とはいえず、請求人らの主張には理由がない。

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平成20年10月22日裁決

担保権付不動産の贈与を受けた場合における国税徴収法第39条の第二次納税義務の限度額の算定に当たり、当該担保権の存在を減額要因として認めなかった事例

裁決事例集 第76集 542頁

要旨

 請求人は、請求人が夫から贈与を受けた不動産には担保権が設定されており、いつ担保権を実行されるかもしれない状況にあったこと、また、その後、当該担保権の被担保債権について請求人が保証したことから、当該贈与時における当該不動産の価額は零円であり、したがって、国税徴収法第39条の受けた利益も零円となるから、請求人が負うべき第二次納税義務はない旨主張する。
 しかしながら、贈与を受けた不動産に担保権が設定されていたとしても、一般に、担保権が実行されるか否かは不確実であり、また、担保権が実行されたとしても債務者に求償することが可能であるから、受贈者が贈与とともに債務を引き受けた場合や贈与を受けた時に債務者が弁済不能の状態にあるため担保権を実行されることが確実であり、かつ、債務者に求償しても弁済を受ける見込みがないという場合を除き、担保権が設定された贈与不動産の価額は、担保権が付されていないとした場合の不動産の時価によるべきところ、請求人及び夫にはこれらの事情が認められず、また、債務を保証したとしても、当然に債務を引き受けたことにはならないので、請求人が当該贈与により受けた利益の額は当該不動産の時価となり、その価額を財産評価基本通達により算定すると、請求人が贈与税の課税価額として申告した額と同額になる。そうすると、請求人は、贈与価額を限度として、夫の滞納国税に係る第二次納税義務を負うことになるから、請求人の主張には理由がない。

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平成20年10月21日裁決

無申告加算税を賦課決定すべきところ誤って過少申告加算税を賦課したため、これを零円とする変更決定処分をした後、改めて無申告加算税の賦課決定処分を行った場合に、変更決定前の過少申告加算税の賦課決定処分について異議申立てがされているときには、無申告加算税の賦課決定処分について異議申立てをせずに審査請求をすることができる「正当な理由」があるとした事例

裁決事例集 第76集 60頁

要旨

 請求人は、異議審理庁の担当職員による異議申立ての補正要求に従い、平成17年分の贈与税に係る無申告加算税の賦課決定処分に該当する箇所に丸を付し、異議申立ての補正をしたことが認められ、本件審査請求の前置である異議申立ての当初の段階から本件決定処分に基づく加算税の賦課決定処分に不服があることが明らかで、当該補正の時点において、第1次賦課決定処分に対する異議申立ては適法に行われたものと認めるのが相当である。原処分庁は、第1次賦課決定処分の加算税の表記に係る瑕疵の是正を図るべく、請求人に対し当該加算税の額を零円とする変更決定をし、第1次賦課決定処分を取り消した上、新たに加算税の額を第1次賦課決定処分のそれと同額とする第2次賦課決定処分を形式的には別個の処分として請求人に課したが、その実質は、「過少申告」から「無申告」への表記変更を行ったものにすぎず、先行の第1次賦課決定処分と後行の第2次賦課決定処分とは事実上同視できるものといえるものであり、争点が共通することは明らかで、その証拠資料の共通性及び判断の斉一性という観点からして、請求人において異議申立てをする必要がないと判断してもやむを得ない面があるといえる。さらに、原処分庁の一連の手続により、請求人には第1次賦課決定処分という不服申立ての対象がなくなる一方、原処分庁が新たに第2次賦課決定処分を課したものの、請求人はこれに対する異議申立てをしなかったことから、結果として本件第2次賦課決定処分に対する審査請求が異議申立前置手続を欠くに至ったもので、かかる結果に至ったのには、原処分庁の行為等がその一因となっているものということができる。以上のとおり、第2次賦課決定処分に対する審査請求については、請求人が異議申立てをせず直接審査請求をしてきたとしても、実質的には異議申立てをしていたのであるから、改めて異議申立てを前置させる必要はなく、原処分庁の行為等がかかる事態を生じさせた一因となっていることからすれば、国税通則法第75条第4項第3号に規定する「正当な理由があるとき」に該当すると解するのが相当であり、原処分庁の主張を採用することはできない。

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平成20年10月3日裁決

○○等の製造ノウハウ等の実施権許諾の対価として支払う使用料に新日米租税条約を適用してその支払の際に源泉徴収を行わなかったことについて、同条約の適用は、当該使用料の実際の支払が行われた日を基準にするのではなく、当該使用料の契約上の支払期日を基準にするとした事例

裁決事例集 第76集 212頁

要旨

 請求人は、請求人が平成16年7月23日に米国のグループ企業に支払った製造ノウハウ等の使用料のうち、平成16年1月分ないし5月分の各使用料については、現実の支払の時期によって租税条約の適用の有無を判断すべきであり、新日米租税条約第12条第1項が適用されるから、所得税の源泉徴収義務はないと主張する。
 しかしながら、新日米租税条約第30条第2項(a)(i)(aa)は、日本国において源泉徴収される租税に関しては、平成16年7月1日以後に租税を課される額に同条約を適用する旨規定しており、同条の「租税を課される額」とは租税を課される者にとっての課税標準と解され、これを使用料についてみると「支払を受けるべき額」を意味すると解され、これを所得の支払者(源泉徴収義務者)側からみれば源泉所得税の算出の基礎となる「支払うべきことが確定した額」と解される。そうすると、上記平成16年1月ないし5月分の各使用料は、毎暦月末を経過した時点で確定する債務であり、それらの支払期日はいずれも同年6月30日までに到来しており、その支払うべきことが確定したのは平成16年6月30日以前となるから、これに新日米租税条約は適用されず、旧日米租税条約第14条第1項が適用されるから、請求人には上記平成16年1月ないし5月分の各使用料に係る所得税の源泉徴収義務がある。

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平成20年10月2日裁決

被相続人の老人ホームへの入所は一時的なものとはいえないから、入所前に居住していた家屋の敷地は居住の用に供されていた宅地等には該当せず、小規模宅地等の特例の適用対象とはならないとした事例

裁決事例集 第76集 450頁

要旨

 小規模宅地等の特例の適用対象となる租税特別措置法第69条の4第1項に規定する被相続人等の居住の用に供されていた宅地等とは、相続開始の直前において、被相続人等が現に居住の用に供していた宅地等をいうものと解され、当該特例対象宅地等を敷地とする建物が現に存在し、これを居住の用に供している場合がこれに当たると解される。
 ただし、被相続人の相続開始直前に当該建物を居住の用に供していない場合であっても、当該建物が一時的に空き家になっていると認められる客観的事情、例えば、相続開始前に病気療養のため入院していたなどの事情があれば、その建物が入院後他の用途に供されているなど、空き家を再び居住の用に供する予定がなかったと認めるに足る特段の事情がない限り、社会通念上、被相続人の生活の拠点がなおその建物に置かれていたと解することができ、当該建物を居住の用に供していると認めるのが相当である。
 本件被相続人の相続開始直前において、被相続人は本件家屋を現に居住の用に供していなかったので、本件老人ホームへの入所が本件家屋を空き家にしていたのが一時的であるとする客観的事情に該当するかを検討すると、まず、本件老人ホームへの入所目的は、被相続人が日常生活動作について介護を必要とし、要介護認定を受けており、同居していない請求人ら親族において介護することが困難であったことから、本件被相続人の介護を目的としたものであったと認められるが、本件老人ホームは、要介護1から5の介護が必要な者でも終身入居可能な介護付終身利用型有料老人ホームであり、入所者は、終身にわたって十分な広さと生活に必要な施設を完備した専用居室を利用でき、食事、家事、健康管理などに関するサービス、生活全般にわたる介護サービスの提供を受けることができたのであるから、本件被相続人は本件老人ホームで終身生活することが可能であったということができ、また、本件被相続人は、入所の対価として、3年間で○○○○円全額が償却される預り金を入所時に支払っており、その他月額利用料は、介護保険等からの給付金及び年金で賄うことができたから、経済的にも終身にわたって本件老人ホームを利用することが可能であり、しかも、実際に、本件被相続人は、相続開始まで本件老人ホームから、入院治療を受けた以外に外出したことはなく、同ホームで生活していた。
 そうすると、本件被相続人は、終身の介護を受けることを前提として、本件老人ホームに入所したものといわざるを得ず、本件老人ホームへの入所は、客観的に見て一時的なものであったとはいえない。したがって、本件相続開始の直前において、本件被相続人が本件家屋を居住の用に供していたとはいえず、本件宅地について小規模宅地等の特例を適用することはできない。

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平成20年9月29日裁決

自動車検査証が返付された時点で自動車重量税は納付済みであるとの主張を認めなかった事例

裁決事例集 第76集 485頁

要旨

 請求人は、自動車重量税が未納付であるとして行われた納税告知処分に対し、同税を含む金員を車検代行業者に支払ったことで納税を履行していること、自動車検査登録事務所から原処分庁に対する自動車重量税納付不足額通知書による通知が偽造印紙の使用された時から4年以上経過してなされたことは、遅滞なく通知しなければならない旨規定している自動車重量税法第13条第1項の規定に反するから、納税告知処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、自動車重量税の納付は、納税者が自動車重量税印紙を所定の書類にはり付けることによりなされるところ、納税者が自動車重量税相当額を含む金員を車検代行業者等に交付したという場合においては、当該業者等が納税者から受任した義務を履行して自動車重量税印紙を所定の用紙にはり付けた場合には納付がなされたということができるが、印紙が適正なものでなかった等の理由により、納付が有効なものではない場合には、納税者と当該業者等の間に金員の授受があったとしても自動車重量税の納税がされたとはいえないから、なお未納である同税の納税義務は、依然、請求人にあるといえる。
 また、自動車重量税法第13条第1項に規定する通知は、国土交通大臣等が確認した自動車重量税の納付不足額を所轄税務署長に知らせ、その徴収を促すために行う国の行政機関相互の行為にすぎないことから、当該通知がいつ行われたかによって、当該通知が違法となるものでも効力を失うものでもないから、同税を徴収するためなされた納税告知処分は適法である。

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平成20年9月25日裁決

周知の埋蔵文化財包蔵地については発掘調査費用の額の80%相当額を控除して評価することが相当であるとした事例

裁決事例集 第76集 307頁

要旨

 本件各土地は、周知の埋蔵文化財包蔵地に該当すると認められるJ貝塚の区域内に所在し、実際にその一部に貝塚が存在していることから、宅地開発に係る土木工事等を行う場合には、文化財保護法第93条の規定に基づき、埋蔵文化財の発掘調査を行わなければならないことが明らかである。しかも、その発掘調査費用は、その所有者(事業者)が負担することになり、その金額も、発掘調査基準に基づき積算したところ約○億円もの高額になる。そうすると、上記宅地開発における埋蔵文化財の発掘調査費用の負担は、一般的利用が宅地であることを前提として評価される本件各土地において、その価額(時価)に重大な影響を及ぼす本件各土地固有の客観的な事情に該当すると認められ、本件各土地に接面する路線に付されている路線価は、周知の埋蔵文化財包蔵地であることを考慮して評定されたものとは認められず、また、財産評価基本通達上に発掘調査費用の負担に係る補正方法の定めも認められないことから、本件各土地の評価上、当該事情について、所要の検討をするのが相当である。そして、周知の埋蔵文化財包蔵地についての発掘調査費用の負担は、土壌汚染地について、有害物質の除去、拡散の防止その他の汚染の除去等の措置に要する費用負担が法令によって義務付けられる状況に類似するものと認められる。土壌汚染地の評価方法については、課税実務上、その土壌汚染がないものとして評価した価額から、浄化・改善費用に相当する金額等を控除した価額による旨の国税庁資産評価企画官情報に基づく取扱いをしているところ、これは、土壌汚染地について、土壌汚染対策法の規定によってその所有者等に有害物質の除去等の措置を講ずる必要が生じその除去等の費用が発生することなどの要因が、当該土壌汚染地の価格形成に影響を及ぼすことを考慮したものであり、この取扱いは当審判所においても相当と認められる。そこで、本件各土地に存する固有の事情の考慮は、類似する状況における土地評価方法についての取扱いを明らかにした本件情報に準じて行うものとし、本件各土地は、本件各土地が周知の埋蔵文化財包蔵地ではないものとして評価した価額から、埋蔵文化財の発掘調査費用の見積額の80%に相当する額を控除した価額により評価することが相当と認められる。

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平成20年9月25日裁決

土地の譲渡人は土地の譲渡代金が支払われた時に国内に住所を有していたとは認められないので、非居住者に該当するとした事例

裁決事例集 第76集 244頁

要旨

 請求人は、本件譲渡人が国内に住所を有していることは、当該土地等の売買契約書に添付された本件譲渡人の印鑑登録証明書により確認しているから居住者である旨主張する。
 しかしながら、本件譲渡人の住民票(除票)の内容及び出入国状況によれば、本件譲渡人は、本件不動産売買契約に際して平成16年8月○日に帰国する直前まで国外に住所を有していたと認められる。また、本件譲渡人の住民票(除票)及び印鑑登録証明書は、同日に帰国し契約交渉後に出国するまでの滞在期間における本件譲渡人の住所が住民票記載地であったことを示す内容となっているが、実際には本件譲渡人は、当該滞在期間中、ホテルにて宿泊しており、住民票記載地において生活していたことをうかがわせる証拠はない上、本件譲渡人が住民票記載地を住所として届け出たことは、当該土地等の売買契約の締結のための一時的な事情によるものであったと認められる。さらに、本件譲渡人は、平成16年9月○日に出国するとともに、住民票も国外に転出させている。
 これらの事実によれば、本件土地等の譲渡による対価が支払われた平成16年10月○日において、本件譲渡人が国内に住所を有していたとは認められない。
 また、本件譲渡人は、本件売買代金が支払われた平成16年10月○日以前1年以上の間には、平成15年9月○日に日本国を出国後、再び日本国に滞在した期間は本件滞在期間(16日間)のみであることから、当該土地等の譲渡による対価が支払われた日まで引き続いて1年以上居所を有していたとは認められない。

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平成20年9月19日裁決

残余財産の分配の事実を認めることができないとした事例

裁決事例集 第76集 497頁

要旨

 原処分庁は、本件滞納会社の清算人であった請求人が行った本件滞納会社の元代表者亡Cと内縁関係にあったWに対する支払、本件滞納会社の元役員Bに対する支払、Yに対する支払及びZに対する支払は、本件滞納会社の債務の弁済ではなく、Cの死亡により本件滞納会社に対するCの出資持分を承継したCの相続人のために、C個人の債務を弁済したことにほかならず、その使途が明らかでないものを含めた○○○○円が国税徴収法第34条にいう残余財産の分配又は引渡しに当たると主張する。
 しかしながら、本件滞納会社の解散時における出資者はCの相続人だけであると認められるところ、Cの相続人に交付された本件滞納会社の財産は、本件滞納会社の債務の弁済資金としてCの妻に交付された金員だけであると認められ、原処分庁が主張する他の支払も、Cの相続人のために残余財産の分配に代えて行われたものと認めることはできず、その使途が明らかでないものについても、これがCの相続人に交付されたともC個人の債務の弁済に充てられたとも認めることができないから、請求人が本件滞納会社の社員に対して残余財産の分配等を行ったと認めることはできない。

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平成20年9月19日裁決

請求人が代表取締役である法人の従業員が、請求人の定期預金の一部を払い戻し、費消したことは横領に当たらず、その損害は雑損控除の対象となる損失に該当しないとした事例

裁決事例集 第76集 169頁

要旨

 請求人は、平成16年から平成17年までの間に、銀行の貸金庫に保管していた現金を、請求人が代表取締役を務める法人の従業員に窃盗されたが、当該損失は、その事実が発覚した平成17年分の損失であり、平成17年分の雑損控除の対象となる旨主張する。そして、原処分庁は、平成17年末の時点において、請求人は当該従業員に対して損害賠償請求権を行使しておらず、当該従業員から回収できる損害賠償額が確定していないので、雑損失の額が確定していないから、平成17年分において雑損控除の対象となる盗難による損失が生じたこととはならない旨主張する。
 しかしながら、所得税基本通達72-6において準用する同通達51-7によれば、損失の金額から控除すべき損害賠償金等が確定していない場合には、当該損害賠償金等の見積額に基づき損失が生じた年分の確定申告に反映させることとしており、後日、当該損害賠償金等の確定額と見積額が異なった場合には、そ及してこれを訂正する旨定めているところ、この取扱いは、損害賠償金等の確定の有無にかかわらず、損失が生じた年分において雑損控除を適用すべきであることを定めたものであり、当審判所においても、相当と認められる。したがって、盗難又は横領による損失については、損失が生じたそれぞれの年分において雑損控除を適用すべきであるから、この点に関する請求人の主張には理由がなく、当該従業員から回収できる損害賠償額が確定していない場合であっても、盗難又は横領による損失が生じた年分において雑損控除を適用するのが相当であるから、この点に関する原処分庁の主張には理由がない。
 また、請求人は、請求人名義の定期預金の更新手続を請求人が代表取締役を務める法人の従業員に任せていたところ、当該従業員が本件定期預金の一部を請求人に無断で解約し、これを横領されたから、請求人には雑損控除の対象となる損失が生じた旨主張する。
 しかしながら、所得税法第72条《雑損控除》第1項が規定する「横領」の概念について、所得税法に規定はなく、刑法上の横領罪にいう横領と同一のものと解するのが相当であり、本件定期預金の更新手続には、①本件定期預金の通帳、②銀行届出の印章及び③定期預金の払戻請求書が必要であるところ、本件定期預金を払い戻すために最も重要な銀行届出の印章は請求人自身が持ち歩き、本件定期預金の通常の更新手続においては請求人が更新手続後の利率を確認した上で払戻請求書に銀行届出の印章を押印していたことが認められること及び請求人が当該従業員に本件定期預金を払い戻して現金を引き出す権限を与えていたとは認められないことからすれば、請求人は当該従業員に本件定期預金の管理を任せていたとは認められないから、本件定期預金について、請求人と当該従業員との間に横領の前提となる委託信任関係が認められず、当該従業員が本件定期預金の一部を払い戻し、これを費消した行為は横領には当たらないと判断するのが相当である。したがって、請求人の主張には理由がない。

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平成20年9月16日裁決

利益の発生が期待できない不動産の貸付けであっても不動産所得を生ずべき業務に該当することから「新たに業務を開始した場合」に該当しないとした事例

裁決事例集 第76集 258頁

要旨

 請求人は、請求人が貸し付けている不動産は貸付けを目的として取得したものではなく当初から利益の発生が期待できないものであり、当該不動産の貸付けは所得税法第143条に規定する不動産所得を生ずべき業務に当たらないから、平成18年10月に請求人が個人事業を開始した事実は同法第144条に規定する「新たに業務を開始した場合」に該当する旨主張する。
 しかしながら、所得税法第26条及び第37条第1項の規定からすると、同法第26条第2項は、不動産の貸付けによる所得の金額はその年中の不動産の貸付けに係る総収入金額から不動産の貸付けに係る総収入金額を得るために直接に要した費用の額及びその年中における不動産の貸付けによる所得を生ずべき業務について生じた費用の額を控除した金額と解される。そうすると所得税法における「不動産所得を生ずべき業務」とは、不動産の貸付けによる所得を生ずべき業務、すなわち、不動産の貸付けをいうものと解するのが相当であって、このほかに、同法には「不動産所得を生ずべき業務」に該当しない不動産の貸付けが存することをうかがわせる規定はなく、また、同法第26条第1項は、不動産所得は不動産の貸付けによる所得とのみ規定し、同法には不動産の貸付けに至った事情又はその利益の有無によって、所得の種類等が左右されるとする規定もないから、請求人が行う不動産の貸付けは、当該貸付けが当初から利益の発生が期待できない貸付行為であったとしても、同法第143条に規定する「不動産所得を生ずべき業務」に該当し、請求人が個人事業を開始した事実は同法第144条に規定する「新たに業務を開始した場合」に該当しない。したがって、請求人の主張には理由がない。
 また、請求人は、請求人の青色申告の承認申請について、平成18年12月31日までに承認又は却下の通知がなかったのであるから、所得税法第147条の規定により青色申告の承認があったものとみなされる旨主張する。
 しかしながら、所得税法第144条に規定する青色申告の承認申請書の提出期限は、青色申告の承認の申請の適法要件であるので、同法第146条及び第147条に規定する青色申告承認申請書の提出があった場合とは、文理上、青色申告承認申請書が法定の提出期限内に提出された場合と解するのが相当であり、青色申告承認申請書が法定の提出期限に遅れた場合には、同法第146条及び第147条の適用の余地はないというべきであるところ、請求人が提出した青色申告の承認申請書は、その法定の提出期限である平成18年3月15日までに提出されていないから、同法第147条の規定により青色申告の承認があったとものとはみなされない。したがって、請求人の主張には理由がない。

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平成20年9月9日裁決

税務職員の誤指導、その後の誤った申告書の受理は、公の見解の表示に当たらないとして信義則違反を理由とする課税処分の取消しを認めなかった事例

裁決事例集 第76集 23頁

要旨

 請求人は、昭和62年に調査を受けて、印刷設備の減価償却費の計算誤りがあったなどとして修正申告をしたが、その際、その時点における修正申告のしょうように関する具体的状況は明らかでなく、仮に、請求人の主張するとおりの指導があったとしても、修正申告のしょうようをもって、直ちに納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示したとはいえず、また、請求人がその後毎年提出した確定申告書が、原処分庁によって受理され、これまでの調査において中古の印刷設備の耐用年数について何ら是正を求められなかったからといって、原処分庁が請求人の減価償却費の計算方法について積極的に是認したとはいえず、信頼の対象となるべき公的見解が表示されたとも認められない。
 さらに、本件各更正処分は、本件各中古印刷設備の耐用年数の適用誤りがあったことから行われた適正な課税処分であり、その結果、請求人は、法律の規定に従って正当な法人税額を負担することになったにすぎず、請求人が本件各更正処分を受けたことにより、特に経済的不利益を被ったとは認められない。
 以上のことからすれば、本件各更正処分には、信義則に反するとして取り消すような違法は認められない。

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平成20年8月21日裁決

航空機リース事業に係る匿名組合の組合員に配分されたとする損失は出資額の減少にすぎず、その所得区分は雑所得に該当するとした事例

裁決事例集 第76集 110頁

要旨

 請求人は、営業者と請求人との間の匿名組合契約の営業者の事業が航空機リース事業であり、所得税法第26条の不動産所得(損失)に該当するから、請求人の所得も営業者と同じ不動産所得(損失)である旨主張する。
 しかしながら、本件匿名組合契約により営業者から請求人に配分される損益の内容を吟味すると、請求人が自ら又は営業者と共同して主体的に本件航空機を賃貸していたとか、それによる収益の稼得や費用の負担を行っていたとはいえず、請求人は、本件航空機リース事業に対する単なる出資者という立場で、本件匿名組合契約に基づいて営業者から損益の配分を受けるものであると認められる。そうすると、営業者から請求人に配分される損益は、営業者への出資に対するもので、請求人が不動産等を利用に供したことにより生じる所得であるとはいえないから、不動産所得に該当するものではなく、また、利子所得、配当所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しないことから、雑所得に該当する。
 次に、請求人が本件各年分の確定申告において本件航空機リース事業に係る不動産所得の損失としている金額は、営業者から送付された本件各期間の会計報告書の記載に基づくものであって、本件航空機リース事業に係る損失について、本件匿名組合契約に基づき、請求人が分担するものとして出資割合に応じて配分されたものである。そして、ここでいう損失とは、本件各期間における本件匿名組合契約の各年分における財産の減少額のことであり、損失の分担があることによって、請求人の営業者に対する出資額が計算上その分担する損失の額だけ減少することを意味しているにすぎず、現実の支払によってこれを補てんするものではない。そうすると、請求人に配分された損失は、現実の負担ではなく計算上のものであり、課税上は、本件各年分においていまだ確定しているとはいえないから、請求人の本件各年分の雑所得とすべき金額はない。

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平成20年8月11日裁決

不動産の差押処分が無益な差押えに当たるとした事例

裁決事例集 第76集 583頁

要旨

 公売の特殊性に伴う減価割合を仮に10%として差押処分時における本件テナントビルの処分予定価額を算出すると、その価額は○○○○円となる。一方、本件テナントビルについては本件滞納国税に優先する第1抵当権と第2抵当権が設定されているので、本件テナントビルの差押処分が国税徴収法第48条第2項にいう無益な差押えに当たるか否かを判断するためには、差押処分時におけるこれらの被担保債権の額と上記処分予定価額を比較する必要があるが、差押処分時における本件第1抵当権の被担保債権の額は○○○○円であり、本件第2抵当権の被担保債権の額は○○○○円である。そうすると、本件第1抵当権の被担保債権の額が弁済などによって減少する可能性があることを考慮しても、本件テナントビルの処分予定価額が本件第1抵当権の被担保債権の額を超える見込みのないことが一見して明らかであるといわざるを得ない。

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平成20年8月6日裁決

株主総会において支給が確定した退職金の一部を受領しなかったのは、相続人たる請求人らが退職金の支払義務の一部を免除したものであるから更正の請求は認められないとした事例

裁決事例集 第76集 1頁

要旨

 請求人らは、相続税の課税財産として申告した退職手当金等について、その算定根拠に誤りがあったことから相続税の法定申告期限後に減額され、一部しか受領していない旨主張する。
 しかしながら、株主総会における本件被相続人に係る退職金及び弔慰金の本件支給決議は、その議事録等から、定款の定めに従って満場一致で承認されていると認められる。また、取締役会議事録には本件被相続人に対する退職金の金額の計算根拠に誤りがあったと記載されているもののその誤りについて具体的な記載がなく、請求人らからも本件支給決議の際の意思表示に要素の錯誤があった等の主張はされておらず、当審判所の調査によっても、本件支給決議を無効ならしめるような事由は認められない。そうすると、D社が本件被相続人に係る退職金及び弔慰金を支給すること並びにその額は、本件支給決議によって確定したとするのが相当である。
 そして、請求人らが退職金の一部しか受領しなかったことについて、請求人らによる債務免除の意思表示があったとすれば、いったん有効に確定した退職金を遡及的に訂正して減額するのではなく、新たな法律行為により請求人らがD社の退職金の支払義務の一部を免除したものであると解するのが相当である。

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平成20年8月4日裁決

本件出資口数の売買契約が錯誤により無効である旨を確認した判決があったとしても、そのことにより国税通則法第23条第2項第1号に該当することとなったとは認められないとした事例

裁決事例集 第76集 15頁

要旨

 請求人らは、別件判決(平成18年)において錯誤無効の主張が是認されたことから、国税通則法第23条第1項所定の期間内に更正の請求をしなかったことにつき「やむを得ない理由」があり、また、本件判決(平成19年)により本件売買契約が錯誤により無効であったことが確認されたのであるから、国税通則法第23条第2項第1号に規定する「更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決により、その事実が当該計算の基礎となったところと異なることが確定したとき」に該当する旨主張する。
 しかしながら、請求人らは、当該錯誤無効を理由に本件決定処分等及び別件通知処分に係る争訟手続を行い、外形的にも錯誤無効の主張に沿うようにB社の出資口○○○○口をAに戻すなどの原状回復を行っていることからすると、請求人らの間では平成13年当時において既に本件売買契約が無効であるという事実関係は形成されていたと認められ、また、本件訴訟においても請求人らの間に本件売買契約が錯誤無効であるとの事実関係の外形自体に争いはないことから、本件判決によって初めて本件売買契約が無効と確認され更正の請求の要件を満たすこととなったわけではないから、本件判決をもって、国税通則法第23条第2項第1号に規定する「課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとき」に該当するとは認められない。

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平成20年8月4日裁決

滞納処分の停止後に資力が回復した事実はないとの請求人の主張を排斥した事例

裁決事例集 第76集 618頁

要旨

 請求人は、H社からの給料の手取額から、F県での勤務のための新幹線代金やホテル代のほか、地方税の滞納分及び保証人としての代位弁済金を支払う必要があり、これらを支払った後の残額は国税徴収法第153条第1項第2号に規定する「滞納処分を執行することによって、その生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき」に該当する旨主張する。
 しかしながら、給与等に係る差押禁止額を超える部分を差し押さえる場合は、国税徴収法第153条第1項第2号に規定する「その生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき」に該当しないと解されるところ、請求人に対して支払われた給料等の額が給料等に係る差押禁止額を超えることは明らかであり、また、請求人が主張するような支出を給料等に係る差押禁止額の計算上考慮するとした規定もないから、この点に関する請求人の主張には理由がない。

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平成20年8月4日裁決

非永住者の課税所得に含まれる国外源泉所得について、国外から送金を受けた金額から国外へ返金した金額を控除することは認められないとした事例

裁決事例集 第76集 77頁

要旨

 請求人は、所得税法第7条第1項第2号に規定する国外源泉所得で国外から送金されたものの金額の算定に当たっては、非永住者が国外から送金された金額をその年中に国外に返金した場合、当該返金額を控除すべきである旨、また、仮に控除が認められないとしても、その翌年において、再度、当該返金額を国外から送金した場合、当該返金額が二重に課税所得の対象とされることになるから、当該送金額のうち、当該返金額に達するまでの金額は国外源泉所得に係る所得を送金したとはいえない旨主張する。
 しかしながら、所得税法第7条第1項第2号の規定が、国内で支払われ、又は国外から送金されたことを、非永住者の国外源泉所得を課税所得とするための要件としているのは、送金を課税権を行使する契機としたものというべきであり、さらに、所得税法施行令第17条第1号の規定が送金の内容に特段の限定を付していないことにも照らせば、いったん国外払の所得が国外から国内に送金された事実があれば、特段の限定なくこれらの規定による送金があったということができるというべきである。非永住者であっても、国外源泉所得自体を課税所得とする点では、非永住者以外の居住者と変わりはないのであって、請求人が主張するように、同一年中に送金額を返金した場合は、これを送金額から控除できると解すべき理由はない。また、国外からの送金額を返金し、再度、その翌年に当該返金額を送金したとしても、当該送金額は国外から送金されたものとして、その翌年の課税所得の対象となることに対し、請求人は当該返金額が二重に課税所得の対象とされることになると主張するが、その年とその翌年の各年分の国外源泉所得に課税したものであって、同一の所得に二重に課税したものではないから、請求人の主張には理由がない。

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平成20年7月24日裁決

法人税基本通達14-1-1の2ただし書が適用されると誤解して申告したことにつき国税通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」はないとした事例

裁決事例集 第76集 29頁

要旨

 請求人は、E社が発行する株式及び新株予約権等に投資することを目的とする民法上の組合である本件組合の非業務執行組合員であるが、本件組合契約における出資金1口当たりの単価は、本件組合が新株予約権の発行に際して払い込みをなすべき額と、その行使に際し払い込みをなすべき額との合計額と同額であり、一方請求人を含む各組合員は、当初本件組合に払い込むべき出資金を払い込み、その後各組合員が個々に新株予約権の行使を希望する都度に残額を払い込むことが求められ、さらに、本件組合は、出資金の全額が払い込まれた場合には、組合財産の運用、組合財産の分配についての業務執行組合員の判断にかかわらず、新株予約権を直ちに行使し、発行された株式を当該組合員に現物分配することとされ、実際にもそのように現物分配していることからすれば、本件組合への新株予約権の割り当て時点において、事実上その出資口数に応じた新株予約権にかかる権利義務が請求人に帰属したものと認められる。
 新株予約権の取得に係る利益は、既に確定している請求人の出資口数に相当する新株予約権と一体となった利益で、請求人に帰属する固有の利益であり、本件組合からの分配を経由しない利益として法人税法第22条第2項に基づき益金の額に算入すべきであり、法人税基本通達14-1-1の2が定める組合事業に関する利益金額又は損失金額のうち分配割合に応じて利益を受けるべき金額又は損失の負担をすべき金額(帰属損益額)に該当するものではない。
 したがって、新株予約権の取得に係る利益について、法人税基本通達14-1-1の2ただし書きが適用される余地はなく、請求人が同通達ただし書きの適用があると理解し、当該利益を新株予約権を取得した事業年度の益金の額に算入せず確定申告をしたことは、税法の不知や法令解釈の誤解など請求人自身の事情に基づくものであるから、国税通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」があるとは認められない。

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平成20年7月4日裁決

自動販売機の販売手数料は毎月の締切日が課税資産の譲渡等の時期であるとした事例

裁決事例集 第76集 465頁

要旨

 請求人は、賃貸アパートを取得すると同時に、飲料の自動販売機を設置し、販売した飲料に係る販売手数料を受領したことについて、当該手数料は、自動販売機による飲料の販売本数に対して支払われるから、飲料を販売するたびに生じるものであるところ、当該アパートを取得した課税期間にも飲料は販売されていることから、当該課税期間の課税売上割合は100%となり、当該アパートの取得に係る消費税等は仕入税額控除できる旨主張する。
 しかしながら、当該手数料は、自動販売機の設置場所の提供、電気の供給及び人的役務の提供が一体となった課税資産の譲渡等の対価である。消費税法上、課税資産の譲渡等の時期についての規定はなく、その時期は、個人事業者の場合には所得税の所得金額を計算する際の収益の認識基準によりこれを把握することとなるが、所得税法第36条で規定する、その年分において収入すべき金額とは、その年において収入すべきことが確定し、相手方にその支払を請求し得ることとなった金額、すなわち、収入すべき権利の確定した金額であると解されるところ、自動販売機の設置に係る協定書に当該手数料の支払条件は、毎月20日締切りの翌月10日振込みとする旨定めていることからすると、毎月20日に収入すべき権利が確定するとみるのが相当であるから、課税資産の譲渡等の時期も毎月20日であり、当該課税期間には、当該締切日が到来しておらず、当該課税期間の課税売上げとはならない。

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平成20年6月30日裁決

請求人が受領した滞納会社の売掛金のうち、滞納会社の従業員に対する給与に充てられた部分以外の部分は、国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分によるものであるとした事例

裁決事例集 第75集 760頁

要旨

 請求人と滞納会社との間では、滞納会社の取引先との取引の継続を目的として、請求人に滞納会社の工場と従業員を引き継ぎ、当該取引先との取引を継続することについての合意が成立したものと認められるが、本件売掛債権が発生する前にその旨の合意が成立したと認めることはできないから、本件売掛債権はもともと滞納会社に帰属していたと認めるのが相当であり、また、請求人は、滞納会社が負っていた従業員に対する給与の支払債務の弁済資金を確保するために本件売掛債権を譲り受けたものと認められるから、当該給与支払債務相当額部分については、国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分により請求人が利益を受けたということはできないものの、その余の部分については、請求人が滞納会社に返還した形跡を認めることができず、滞納会社も請求人に請求した事実が認められないことからすれば、同条の無償譲渡等の処分により請求人が利益を受けたものと認めるのが相当である。

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平成20年6月30日裁決

請求人が行った屋号による取引は仮名取引であり、当該取引を収入金額とせず過少に納税申告書を提出していた事実は、重加算税の賦課要件を満たすとした事例

裁決事例集 第75集 105頁

要旨

 請求人は、K等の屋号による取引については自分の取引であると認めていない旨主張するが、ダンボール箱の仕入数量と請求人屋号での使用数量の開差からして請求人が請求人屋号以外で露地果物Uの取引を行っていることは明らかであり、請求人屋号による取引に係る出荷伝票とK等の屋号の取引に係る出荷伝票の筆跡は同一であると認められるほか、請求人はM社からの仕入口座を2口座に分けて取引を行っている理由について合理的な説明をしないこと及び請求人は、当審判所に対して、仮名取引はないとはいえない旨答述していることなどを総合して判断すると、K等の屋号による取引は請求人が行った取引であると認められる。
  そうすると、K等の屋号による取引は請求人が行った仮名による取引と認められ、その売上げを請求人の収入金額とせず、過少に納税申告書を提出していた事実は国税通則法第68条第1項及び第2項に規定する課税標準等又は税額等の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときに該当する。

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平成20年6月27日裁決

店長が保持していたノートに基づき一定期間のバスタオルの売上金額を算定して調査対象期間の売上除外額を推計するという方法は合理性があるとした事例

裁決事例集 第75集 381頁

要旨

 請求人は、原処分庁が請求人の特殊事情を斟酌しないまま、水道使用量を基に推計していることなどから、原処分庁が行った推計方法には合理性がない旨主張する。
 この点、原処分庁が採用した推計方法は、店長が保持していたノートと平成19年1月の月計表及び請求人が提示した各月計表を基にして、平成18年10月から平成19年1月までの客数の圧縮割合及び売上金額を算定し、当該金額及び当該対応する期間の水道使用量から水道使用量1リットル当たりの売上金額を算定した上で、これに本件各事業年度の水道使用量を乗じて本件各事業年度の売上金額を算定しているところ、請求人の営む店舗型性風俗特殊営業では、特段の事情がない限り、同程度の水道使用量に対し同程度の収入を得るのが通例であることから、当該推計方法には合理性があると認められ、また、請求人の主張によっても、原処分庁が採用した推計方法自体を不合理ならしめる程度の特段の事情があるとは認められない。
 しかしながら、原処分庁がその算定の基とした請求人が提示した各月計表は作為的に作成されたものと認められ、当該各月計表をその算定の基とするよりも平成19年1月の月計表のみを基に算定するのがより合理的であると認められるところ、水道使用量は2か月単位であるから、平成19年1月の水道使用量を合理的に算定することは困難である。
 他方、請求人が営む店舗型性風俗特殊営業では、客及びコンパニオンは必ずバスタオルを使用し、客数に応じてバスタオルの使用枚数も増減すると認められるから、相当程度の期間をとって比較すれば、客数とバスタオルの使用枚数によって推計する方法には合理性があると認められるところ、請求人についてもバスタオルの納入期間は相当程度の期間といえることから、本件各事業年度の売上金額を、バスタオルの使用枚数によって推計する方法が合理的であると認められる。

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平成20年6月27日裁決

被相続人は相続開始の8年前に本件土地についてその同族会社を借地人とする建物保有目的の借地権を設定したが、相続開始時には当該会社の建物はなく、当該会社の代表者である請求人の建物が存していたなどの事情に照らし、当該借地権は相続財産評価において借地権と評価する実質を欠いているとして、本件土地は自用地として評価すべきであるとした事例

裁決事例集 第75集 582頁

要旨

 本件土地の上には(請求人所有の)本件建物が存するものの、本件法人自身は、本件土地の上に建物を所有していないことから、本件土地賃貸借契約により設定された借地権についてはいまだ対抗力を有していないのであり、仮に、底地である本件土地の所有権が第三者に譲渡された場合には、当該第三者に借地権を対抗できない関係にあり、このことは請求人に対する関係でも同様であり、本件土地の利用権について、本件法人は、建物を所有する請求人には自らの借地権を主張できない関係にたつものということができる。
  加えて、財産評価基準書における借地権割合は、借地権の設定に当たり、一時金の支払慣行がある、あるいは、一時金の支払慣行がない場合であっても、借地権の売買が行われたり、また、土地の売買が借地権価額に相当する価額を控除したいわゆる底地価額によって行われたり、借地権の返還を受ける際にいわゆる立退料が支払われる慣行があると認められることに基づき定められているものであるが、本件の場合は、底地である本件土地が第三者に譲渡されれば、当該第三者に借地権を対抗することはできず、したがって、本件法人は対抗力を有しないために借地権が単独で売買される、又は土地の売買が借地権価額を控除した価額によって行われるとは認められず、また、本件土地の上には本件建物が存在しており、それを取得又は除去しない限り、本件法人による本件土地賃貸借契約に基づく建物所有目的は果たし得ない状況にあると認められ、本件土地賃貸借契約を継続する実益がないことから、借地権の返還に当たり立退料の支払を要しないと認められる。
  そうすると、本件土地賃貸借契約によって設定された借地権は、本件土地の上に本件建物が存する状況の下においては、本件法人は建物所有目的で本件土地を利用できないほか、本件土地の利用権を実質的に支配しているということもできないし、借地権として評価すべきほどの資本投下もなされていないというべきであり、さらに、市場における流通も想定できないと認められることからすれば、かかる借地権を相続財産評価において借地権と評価するには、その実質を欠くものというべきである。

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平成20年6月26日裁決

請求人が有する売掛債権は、その債権が消滅した事業年度の貸倒損失となるとした事例

裁決事例集 第75集 314頁

要旨

 請求人は、破産法人の破産について疑念を持ち、最後配当がされた後も売掛債権の回収を図ろうとし、最終的に当事業年度において回収不能と判断したことから、当事業年度の貸倒損失である旨主張する。
  しかしながら、破産法人に係る破産手続はすべて適法に行われ、破産手続の終結決定があった日に法人格が消滅したものと認められることから、請求人が有する破産法人に対する売掛債権は当該終結決定の日に消滅したと認められる。そうすると、本件売掛債権は、当該終結決定の日を含む事業年度における貸倒損失であり、当事業年度の貸倒損失とすることはできない。

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平成20年6月26日裁決

請求人は被相続人と生計を一にしていた親族とは認められないから、請求人が相続により取得した請求人の居宅の敷地は小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の対象とはならないとした事例

裁決事例集 第75集 645頁

要旨

 本件被相続人の生活の本拠は本件被相続人の居宅であり、また、請求人は請求人居宅を建築した後は請求人居宅に居住しており、請求人の答述のとおり、請求人と本件被相続人は、請求人居宅を建築した後は別居し、それぞれ独立した生活を営んでいたと認められることから、請求人が本件被相続人と別居してから同人がC病院に入院するまでの間、請求人と被相続人が生計を一にしていたと認めることはできない。
 そして、本件被相続人はC病院に入院後は複数の病院を転院しながら入院生活を継続しており、本件相続の開始の直前においても、請求人と本件被相続人は別居していたものと認められるところ、同人に係る入院費の支払状況及び同人名義の普通預金口座の出金状況に照らせば、請求人の答述のとおり、本件被相続人に係る入院費は同人名義の普通預金口座から出金された金員で支払われたものと推認することができ、また、本件被相続人居宅に係るガス料金等は、同人名義の預貯金口座から引き落とされていることからすれば、請求人と本件被相続人は、本件相続の開始の直前において、日常生活に係る費用の全部又は主要な部分を共通にしている関係にはなく、請求人が本件被相続人の「生計を一にしていた」親族であると認めることはできない。

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平成20年6月26日裁決

類似業種比準方式における1株当たりの利益金額の計算上、匿名組合契約に係る分配金は非経常的な利益ではないから法人税の課税所得金額から控除すべきではないとした事例

裁決事例集 第75集 594頁

要旨

 類似業種比準方式における、匿名組合員である評価会社の「1株当たりの年利益金額」については、①評価通達が、「1株当たりの年利益金額」の計算を法人税の課税所得金額を基礎としていることについては合理性があること、②法人税の取扱いでは、匿名組合員が分配を受ける匿名組合営業について生じた利益の額又は損失の額は、匿名組合の営業者の計算期間の末日の属する匿名組合員の各事業年度の益金の額又は損金の額に算入されること、③匿名組合から分配を受ける損益は、匿名組合契約が継続する限り毎期発生することが予定されており、臨時偶発的に発生するものではないことからすると、「1株当たりの年利益金額」を計算する上で、匿名組合契約に係る損益の額を非経常的な損益として除外すべき理由は認められない。
 そして、本件事業は航空機リース事業であって、本件A匿名組合契約に係る損益が、最終計算期間以外の計算期間については航空機の賃貸による損益であり、最終計算期間における分配金については、賃貸物件である航空機の売却による収益を含むというように、計算期間によって損益の発生の源泉が異なるという性質を持っているとしても、このようなリース事業は、リース物件の売却によってはじめて契約期間を通した収支が確定するものであり、そもそもリース物件の所有、賃貸及び売却が一体となった事業である。つまり航空機の売却は、K社をその優先的売却先として本件A匿名組合契約の締結時に予定されていたものであるから、一般的な固定資産の売却とは異なり、当該航空機の売却が臨時偶発的なものとは言い難い。また、本件A匿名組合契約に係る最終分配金額は、航空機の賃貸による収益と航空機の売却による収益という収益の発生の源泉が異なる部分により構成されているとしても、本件会社にとって匿名組合契約に係る出資に対する利益の分配という性格が異なるわけではないから、その利益の一部を取り出して非経常的な利益と判断すべき理由は認められない。

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平成20年6月25日裁決

被相続人の損害賠償債務は、制限納税義務者である請求人の相続税の課税上、控除すべき債務には当たらないとした事例

裁決事例集 第75集 531頁

要旨

  1.  本件取得不動産には、被相続人に対する損害賠償請求権を保全するための仮差押えがされているのみであって、本件相続開始日現在、本件債務に係る留置権、特別の先取特権、質権又は抵当権は成立しておらず、したがって、本件債務は、相続税法第13条第2項第2号に掲げる「その財産を目的とする留置権、特別の先取特権、質権又は抵当権」によって担保される債務には該当しない。
     なお、請求人は、相続税法第13条第2項第2号の規定は、制限的ではなく、実質的に解釈して拡大適用する余地があり、本件債務は、本件取得不動産が仮差押えされ、弁済を迫られた結果としての債務であり、同号に掲げる債務と同様の負の効果を有しているのであるから、同号を拡大適用すべき旨主張するが、相続税法第13条第2項の規定は、制限納税義務者が相続又は遺贈により取得した財産から控除できる債務を限定的に列挙したものであるから、同項第2号の規定は、拡大適用すべきでなく、この点に関する請求人の主張を採用することはできない。
     また、本件債務は、請求人がG社に対して支払義務を認めた被相続人の損害賠償債務であることから、本件取得不動産に係るその財産の未払取得代金、未払修繕費及び未払管理人賃金などその財産の取得、維持又は管理のために生じた債務には当たらず、相続税法第13条第2項第3号に掲げる債務にも該当しない。
     請求人は、本件債務は、仮差押えされた本件取得不動産を財産として維持するための債務であり、同項第3号に掲げる債務に該当する旨主張するが、同号に掲げる債務とは、その財産の未払取得代金、未払修繕費及び未払管理人賃金など、その財産そのものの取得、維持又は管理のために生じた債務をいうものであるところ、本件債務は、本件取得不動産そのものの取得、維持又は管理のために生じた債務とは認められないことから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
  2.  本件弁護士費用の内訳は、①「本件損害賠償請求権査定申立の件」、②「債務弁済契約公正証書作成の件」及び③「不動産売却に関するアドバイス」に関するものであり、本件取得不動産そのものの取得、維持又は管理のために生じた債務とは認められないことから、相続税法第13条第2項第3号に掲げる債務には該当しない。
     なお、請求人は、本件弁護士費用は、被相続人が生前に、自己の財産を維持し、保全するために要した費用に係る債務であり、請求人にとっても、同様に、相続した本件取得不動産を完全に自己のものとして維持し、保全するためのいわゆるひも付の債務であるから、仮差押えされた本件取得不動産を財産として維持し、保全するために生じた債務であり、相続税法第13条第2項第3号に掲げる債務に該当する旨主張するが、同号に掲げる債務とは、その財産の未払取得代金、未払修繕費及び未払管理人賃金など、その財産そのものの取得、維持又は管理のために生じた債務をいうものであるところ、本件弁護士費用は、本件取得不動産そのものの取得、維持又は管理のために生じた債務とは認められないことから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
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平成20年6月19日裁決

人材派遣会社から支払われた給与のうちの通勤費相当額は非課税所得に該当しないとした事例

裁決事例集 第75集 176頁

要旨

 人材派遣業を営むA社の派遣社員である請求人は、同社から支払われた給与のうち、請求人が負担した自宅から派遣先までの通勤費相当額は、非課税とすべき旨主張する。
  しかしながら、A社は、請求人に対して通勤手当を給与に加算して別途支給しておらず、請求人に所得税法第9条第1項第5号にいう「通常の給与に加算して受ける通勤手当」に該当するものがあるとは認められない。この他、請求人が負担した通勤費相当額を非課税所得とする規定はないから、これを非課税所得として、各年分の給与所得の金額の計算上、給与等の収入金額から除外することはできないとした本件各更正処分はいずれも適法である。

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平成20年6月12日裁決

確定申告期限以前において判断能力がなかったとは認められないから、納税者の責めに帰すことができない客観的事情は認められないとした事例

裁決事例集 第75集 61頁

要旨

 請求人らは、被相続人は○○症という病にり患しており、本件修正申告書等を提出した平成18年11月15日には既に判断能力がなかったと思われるから、同申告書等を提出した行為そのものが無効であると主張する。しかしながら、たとえ○○症であったとしても、そのことだけで意思能力が直ちに失われるものではなく、本件調査における調査担当者への質問に対する被相続人の回答・対応に異常は認められず、「聴取書」の作成に当たっても、その内容に不自然不合理な点も見受けられない。また、本件調査に基づいて行った修正申告は、調査担当者が実額及び一部推計で算出した所得と同額であり、その内容が理解できずに実際の所得金額と異なる不合理なものであったということもできない。これらを総合して判断すると、被相続人が、本件修正申告書等を提出した当時に興奮状態ないし幻聴などの症状により、本件修正申告書等の内容を認識し、判断できる能力を欠いていたと認めることはできない。
 また、請求人らは、被相続人が○○症を発病した以降においては、国税通則法第65条第4項及び同第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由がある場合」に該当する旨主張する。しかしながら、「正当な理由がある場合」とは、真に納税者の責めに帰すことのできない客観的な事情があり、加算税の趣旨に照らしても、なお、納税者に加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうのであって、加算税が、当初から適法に申告し納税した者との不公平を是正し、適正な申告納税の実現を図り、納税の実を挙げようとする行政上の措置であることからすれば、これらの正当な理由とは、当該加算税に係る本税の確定申告期限までに存在した事情であることが必要であり、被相続人においては、上述のとおり本件修正申告書等の提出時において判断能力がないとはいえず、このことは確定申告期限以前においても同様と認められる。また、その他、審判所の調査においても納税者の責めに帰すことのできない客観的な事情は認められないことから、請求人らの主張は採用できない。

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平成20年6月5日裁決

外国船籍の船舶の乗組員であっても、住所は国内にあると認められるから居住者に該当するとした事例

裁決事例集 第75集 155頁

要旨

 請求人は、外国法人が運航する遠洋鮪漁船に1年を超えて乗り組む乗船員であり、所得税法施行令第15条の規定により非居住者である旨主張する。
  しかしながら、外国航路に就航している船舶の乗組員にとって、その乗船する船舶は単なる勤務場所にすぎないと解されることから、これらの者については、その生活の本拠はその者の配偶者その他生計を一にする親族の居住している地あるいはその者が勤務外の期間中通常滞在する地にあるところ、請求人の場合、配偶者が居住している地、勤務外の期間中通常滞在する地のいずれも国内であることから、請求人の住所は国内であると認められ、居住者に該当する。

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平成20年5月30日裁決

同族会社が請求人の父から借地権の無償設定を受けたことにより出資者である請求人が利益を受けた時期は、土地賃貸借契約で定められた賃貸借の始期であるとした事例

裁決事例集 第75集 481頁

要旨

  1.  賃貸借契約は、民法第601条において、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことによって、その効力を生ずる契約である旨規定されており、両当事者の合意によって成立する。そして、土地の賃貸借契約が成立した場合には、特段の事情のない限り、当該契約成立の時に借主が借地権の設定を受けたとみるのが相当である。
     これを本件についてみると、Y社は請求人の父Eとの間で、平成13年5月24日に土地賃貸借契約を締結し、当該契約に基づき、平成13年6月分から、Y社はEに賃料の支払いを開始している。一方、当該契約の締結前に本件土地に係る賃料の授受がなされたことはなく、Y社とEとの間で、当該契約の締結前に土地賃貸借契約に係る基本的な事項である賃料の支払の有無、支払う場合におけるその金額、賃貸借する土地の面積及び賃貸借の期間等について、具体的に合意に至っていたとの事実は認められない。
     また、建物の保有を目的とする土地の賃貸借に当たり、権利金の授受を行うか否か及び授受を行う場合におけるその金額については、通常、賃貸借契約時までに両当事者間で取り決められるところ、本件においては、当該契約書に権利金授受に関する規定はなく、また、当該契約締結時までに、権利金の授受をしないとの取決めがあったと認められる証拠はない。しかしながら、権利金の授受について具体的な取決めをしないことは、本件が同族会社とその代表取締役の父との間の土地の貸借に係るものであることに照らせば、当該契約締結時までに権利金の授受を行うか否かについての取決めがなかったとしても何ら当事者に不都合はなく、特に不自然なものとも考えられない。
     そうすると、土地賃貸借契約書に権利金の授受の条項を設けない土地賃貸借契約を締結したことにより、権利金の授受をしないこと、すなわち、Y社がEから無償で借地権の設定を受けることが明確にされたと考えるのが相当である。
     以上のことから、本件土地に係る賃貸借契約が成立したのは、Y社とEとの間において当該契約を締結した平成13年5月24日と考えるのが相当であり、本件借地権は、本件土地賃貸借契約書における賃貸借期間の開始の日である平成13年6月1日に無償で設定されたということができ、この日が、請求人がEから贈与を受けたとみなされる日となる。
  2.  財産評価基本通達185のかっこ書きの趣旨が、評価する会社が課税時期の直前に取得し価額が明らかになっている土地等については、純資産価額の計算上、その価額で行うことが合理的であるということに照らせば、少なくとも課税の基因となった無償移転に係る土地等について同かっこ書きを適用することは予定されていないと解されること、また、同かっこ書きは、「評価会社が課税時期前3年以内に取得した土地及び土地の上に存する権利等」と限定しており、会社に対し無償で財産の提供があった時に贈与があったとみなされ当該提供のあった日が課税時期となる本件のような場合においては、課税時期が同かっこ書きにおける課税時期前に含まれないことは文理上も明らかであることから、同かっこ書きは、本件のような課税時期において無償取得された財産については適用されないと解することが相当である。
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平成20年5月30日裁決

死亡保険金から支払義務を負う遺族補償金の最低限度である死亡保険金の50%相当額は、死亡保険金を受け取った事業年度において損金の額に算入されるとした事例

裁決事例集 第75集 327頁

要旨

 原処分庁は、本件傷害保険契約締結に関する本件同意書には従業員の死亡により受け取った保険金の50%以上を遺族補償に充てる旨記載されているが、本件同意書には具体的な金額は記載されておらず、また、遺族に対して具体的な支払金額を提示していないから、遺族補償金を受け取った事業年度の損金の額に算入することはできない旨主張する。
 しかしながら、①本件同意書は、従業員に対する災害補償規定を兼ねており、雇用者である請求人は従業員に対して保険死亡事故が生じた場合に死亡保険金の50%以上の金額を遺族補償として支払う旨を保証したものと認められ、(保険事故の発生に伴い)遺族補償金を支払う債務が成立していること、②本件傷害保険契約の被保険者である従業員Mは、平成17年7月に交通事故により死亡しており、本件傷害保険契約に基づき遺族に対して具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること、③死亡保険金の請求に際し傷害保険金請求書兼同意書の「受給者(法定相続人)」欄に、死亡したMの法定相続人の親権者の署名押印があることから、被保険者の遺族は少なくとも本件同意書に基づき死亡保険金の50%以上を請求する権利を有していると推認され、具体的に死亡保険金の50%相当額は算定できることから、死亡保険金を受け取る事業年度において当該保険金の50%相当額は損金の額に算入されるべきである。

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平成20年5月29日裁決

遺産分割協議において寄与分に応ずる財産が具体的に定められるとともに、一部の財産が協議の対象から漏れていた場合において、相続税法第55条の規定により相続税の課税価格をいわゆる穴埋方式で計算するときには、当該寄与分に応ずる財産の価額は各共同相続人の未分割財産の取得可能額の計算の基礎となる財産の価額から除外されるとした事例

裁決事例集 第75集 546頁

要旨

 相続税法第55条においては、民法の規定による相続分の割合について、同法第904条の2を除く旨規定しているが、その趣旨は、寄与分は、具体的には共同相続人間の協議又は家庭裁判所における審判によって初めて明らかになるのが一般的であることから、遺産が未分割である場合には寄与分も具体的に定まっていないことが多いことを踏まえ、相続税法第55条に規定する相続税の課税価格の計算ができなくなることを防ぐことにあることからすれば、同条の規定は、寄与分に応ずる取得財産が具体的に定められている場合について、これを相続分の算定に反映させることを排除する趣旨とまで解することはできない。また、同条にいう「相続分の割合」とは「共同相続人が他の共同相続人に対しその権利を主張できる持分的な権利の割合」をいうところ、先行する遺産分割により、寄与分に応ずる取得財産が具体的に定められている場合には、当該取得財産額については、穴埋方式による共同相続人の未分割財産の取得可能額の計算の基礎となる財産の価額から除外される(ただし、当該除外された寄与分に応ずる取得財産額は、寄与相続人の課税価格に加算されて、同人の具体的な課税価格が算定されることになる。)と解しても、共同相続人が他の共同相続人に対してその権利を主張できる持分的な権利の割合を適正に計算することの妨げとはならないとともに、それは寄与分に関する民法の定めや共同相続人の意思にも沿うものであり、その解釈は、同条の趣旨に照らしても合理的なものというべきである。
  そうすると、本件相続において共同相続人の寄与分として具体的に確定している財産の価額は、穴埋方式による未分割遺産に係る各共同相続人の取得可能財産額の計算の基礎となる財産の価額から除外して計算するのが相当である。

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平成20年5月19日裁決

国税通則法第70条第2項による法人税の純損失等の金額に係る更正は、納税者の有利なものか不利なものかにかかわらず、法定申告期限から7年を経過する日まですることができるとした事例

裁決事例集 第75集 147頁

要旨

 請求人は、国税通則法第70条第1項が、法人税に係る更正について、法定申告期限から5年を経過した日以後においてはすることができない旨規定しているのは、法定申告期限から5年を経過した事業年度における税法上の過誤処理に起因して、租税債務が増加することはないという保証を納税者に付与するものであり、同条第2項の規定の適用にあたっても納税者の権益として保護されるべきであるから法人税の法定申告期限から5年を経過した日以後において、同条第2項第3号に規定する更正をすることができるのは、納税者有利になる場合に限られる旨主張する。
  しかし、平成16年度税制改正により、国税通則法第70条第2項第3号が改正され、法人税の純損失等の金額に係る更正の期間制限が5年から7年に延長されたが、これは、法人税に係る欠損金の繰越期間が5年から7年に延長されたことに伴い、繰越期間内の欠損金額に誤りがあれば更正できるようにするために、法人税の純損失等の金額に係る更正の期間制限も5年から7年に延長することとされたものであり、その更正が納税者にとって有利になるか不利になるかにかかわらず、法定申告期限から7年を経過する日まですることができる。

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平成20年5月19日裁決

特例上場株式等の特定口座への受入れの際に、証券会社に対し実際の取得価額を証明する取引報告書を提出していないことから、実際の取得価額に基づいて株式等に係る譲渡所得の金額の計算上控除すべき取得費を計算することはできないとした事例

裁決事例集 第75集 215頁

要旨

 請求人は、本件株式の実際の取得価額(以下「本件実際取得価額」という。)を証明できる取引報告書を所持しているから、たとえ本件株式がA証券会社の特定口座にみなし取得価額で受け入れられていても、本件実際取得価額を取得費として認めるべきである旨主張するが、特定口座に受け入れられる特例上場株式等の取得価額を本件実際取得価額とするためには、当該取引報告書を証券会社に提出して営業所の長の確認を受ける必要があるところ、請求人は当該取引報告書を証券会社に提出していない。そうすると、請求人は、当該取引報告書を所持しているものの、同報告書に基づいて本件実際取得価額で特定口座に受入れをするための手続を履行しなかったのであるから、本件実際取得価額に基づいて本件株式に係る譲渡所得の金額の計算上控除すべき取得費を計算することはできないというべきである。
  上場株式等の譲渡を行う個人投資家の特定口座制度の利用等については、その個人投資家の自由な判断にゆだねられており、請求人は、特定口座を利用せず、あるいは特定口座を設定しても本件株式を特定口座に保管の委託をせずに本件株式を譲渡することにより本件実際取得価額をもって本件株式の譲渡に係る譲渡所得の金額を計算することもできたところ、請求人が自由な判断に基づいて、特定口座制度の利用を選択し、かつ、本件株式を当該口座へ保管の委託をしたものというべきであるから、国の制度変更により本件実際取得価額に基づいて本件株式に係る譲渡所得の金額を計算することができなくなったということはできない。

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平成20年5月13日裁決

市が国民健康保険の被保険者の健康の保持増進を目的とする施策により、施術料の一部を負担している鍼灸師が行う施術は、消費税法施行令第14条第19号に規定する「医療及び療養」に該当しないとした事例

裁決事例集 第75集 680頁

要旨

 請求人は、A市の本件施設利用規則の定めに基づく負担金はいわゆる「公費負担」に該当し、また、鍼灸師が行う施術は医療であり、本件施術は消費税法施行令第14条第19号に規定する医療及び療養に該当する旨主張するが、本件施術に係る負担金は、A市の施策に基づきその要する費用の一部をA市が負担しているものであるが、①国民健康保険法の規定に基づく療養費の支給が行われるものではなく、また、②保険者であるA市が、本件条例及び本件施設利用規則に基づき療養費を支給している事実は認められず、さらに、③当該施策は、本件条例、本件施設利用規則などによれば、A市が被保険者の健康の保持増進を目的として行う国民健康保険法第82条の規定に基づく保健事業であると認められることから、本件施術は、国又は地方公共団体の施策に基づく「療養又は医療の給付に係る療養又は医療」及び「療養費又は医療費等の支給に係る医療又は療養」とは認められず、消費税法施行令第14条第19号に規定する「医療及び療養」には該当しないことから、原処分は相当である。

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平成20年5月13日裁決

請求人と雇用関係にない会社から付与された新株予約権の行使に係る経済的利益は、一時所得ではなく雑所得と認めた事例

裁決事例集 第75集 229頁

要旨

 請求人は、請求人と雇用関係がないA社から付与された本件新株予約権の行使に係る本件権利行使益は、役務その他の労務の対価ではなく、一時的、偶発的な所得であるから、一時所得に該当する旨主張する。
 しかしながら、本件新株予約権の付与に当たって、具体的な役務の提供が明示的に合意されていたとはいえないとしても、請求人は、A社に対する社外協力者として同社の必要に応じて協力し、仮に、将来転職する場合には同社への入社を優先するなどの義務を負う社外協力者としての地位にあり、同社は、このような義務を伴う地位に就いていることを継続することの見返りとして本件各新株予約権を付与ないし割り当てたものということができる。
 そして、本件新株予約権については、その権利を譲渡し又は処分等することはできないものとされており、請求人は、これを行使することによって、初めて経済的利益を受けることができるものとされているのであるから、A社は、請求人に対し、本件新株予約権に係る付与契約により本件新株予約権を付与し、その約定に従って所定の権利行使価格である株式を取得させたことによって、本件権利行使益を得させたものということができる。
 したがって、本件権利行使益は、A社から請求人に与えられた給付に当たるものというべきで、本件各新株予約権を行使して得た本件権利行使益は、労務その他の役務の提供の対価としての性質を有するというべきである。
 以上によると、本件権利行使益は、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得のいずれにも該当せず、また、労務その他の役務の対価として供与されたものであるから、一時所得には該当せず、雑所得に該当する。

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平成20年5月12日裁決

原処分時において資料の提出がないため納付困難であるか否かの判断ができなかったとしても、審判所の調査によって納付困難な税額が算定され、国税通則法施行令第15条第2項第3号に規定する場合でないことは明らかであるから、納税の猶予申請書の納付計画欄の記載は納税の猶予申請手続の必須条件とはいえないとした事例

裁決事例集 第75集 50頁

要旨

 原処分庁は、請求人から聴き取った内容を裏付ける資料の提出がなかったことから、納付困難であるか否かの判断ができなかった旨主張するが、当審判所の調査によれば、猶予該当事実に基づく納付困難な税額が算出されるのであるから、納税の猶予不許可処分は違法であり、取り消すべきである。
また、原処分庁は、納税の猶予申請書の「納付計画」欄の記載がなく、その後も請求人は納付計画を明示していないことをもって納税の猶予申請は認めることができない旨主張するが、国税通則法施行令第15条第2項第3号は、分割納付の方法により当該猶予を受けようとする場合には、納付計画を記載することとなっているが、本件はそのような場合でないことは明らかであるから、納付計画の記載が納税の猶予申請手続の必須条件とはいえない。

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平成20年5月8日裁決

土地とともに取得した建物の課税仕入れに係る支払対価の額は売買契約書に記載された建物の価額によるべきとした事例

裁決事例集 第75集 711頁

要旨

 請求人は、土地とともに取得した建物の取得価額は、時価により合理的に算定すべきであるから、売買契約書に記載された建物の価額によらず、売買代金総額を土地及び建物の各固定資産税評価額の価額比であん分して算定した価額によるべきであり、また、本件建物の課税仕入れに係る支払対価の額も、消費税法施行令第45条第3項及び租税特別措置法関係通達62の3(2)-3の規定等の趣旨に照らし、上記の方法により合理的に算定すべきである旨主張する。
 しかしながら、本件の売買契約は、請求人及びA社が、契約当事者として本件契約書に記載された内容で合意し、本件契約の締結に至ったものと認められ、両者の間に、同族会社であるなど特殊な利害関係あるいは租税回避の意思や脱税目的等の下に故意に実体と異なる内容を契約書に表示したなどの事情は認められず、また、本件契約書に記載された本件建物の価額は、売主が不動産売買の仲介業者に本件土地建物の売却価額の査定を依頼し、その報告書を参考に決定したものであって、当審判所の調査によっても特段不合理なものとは認められないから、本件建物の減価償却に係る取得価額は、本件契約書に記載された本件建物の価額を基に算定するのが相当である。
 また、本件建物の課税仕入れに係る支払対価の額も、本件契約書に記載された本件建物の価額が、契約当事者双方の契約意思を表示するものであり、本件契約書に実体と異なる内容を表示したなどの特段の事情もなく、また、その価額に特段不合理な点が認められないから、本件契約書に記載された本件建物の価額を基に算定するのが相当である。

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平成20年4月25日裁決

○○教室を営む請求人が、卒業式において供した昼食等に係る費用は、交際費等に該当しないとした事例

裁決事例集 第75集 401頁

要旨

 原処分庁は、請求人が本件各卒業式において供する昼食費用は、「卒業祝賀パーティー」と称して、出席者に酒食の提供が行われており、請求人が出席者との親睦を深めることなどを目的に酒食のもてなし、すなわち、供応、接待のために行われているものと認められるから、租税特別措置法第61条の4第3項に規定する交際費等に該当する旨主張する。
 しかしながら、請求人は全国に約数千の○○校にて○○教室を営む法人であり、本件各卒業式は、①所定の授業課程を修了した者が、請求人における講師の資格を取得して今後受講生を指導する立場になることについての区切りの行事として、免状授与式を中心に行われること、②規模の拡大等に伴いホテルを会場とするに至ったこと、③請求人の教室が全国に存在し、遠距離から出席する者もいることを考慮して開始時間及び終了時間が設定されていることに併せて、卒業式が長時間に及ぶため、昼食時間帯をまたがって行われていること、及び④供与される食事は、社会通念上供与されると認められる通常の昼食の範囲内にあり、酒類は、儀礼的な乾杯のためにのみ供与されていること等の事情を総合的に判断すると、免状を本件卒業生に授与することを目的とした区切りの行事であり、本件各卒業式の中間に出席者に昼食等を供与する行為は、本件各卒業式の式次第を構成する一要素にすぎないというべきであり、本件各卒業式において昼食等を供与する目的は、事業関係者等との間の親睦の度を密にして取引関係の円滑な進行を図ることにあるとは認められない。
 したがって、本件各卒業式の昼食費用等は、租税特別措置法第61条の4第3項に規定する交際費等には該当しないものと認められるから、本件更正処分についてはその全部を取り消すべきである。

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平成20年4月25日裁決

相続財産の一部は被相続人の遺産ではないこと及び被相続人と他の相続人との死因贈与契約は有効であるとした判決は、国税通則法第23条第2項第1号に規定する「判決」に該当するとした事例

裁決事例集 第75集 1頁

要旨

 原処分庁は、請求人は本件被相続人の遺産として本件被相続人名義の土地及び本件被相続人名義の預金のうち59,055千円(本件被相続人名義の土地と併せて「本件H名義資産」という。)を申告しており、相続人Kの被相続人に係る相続税の申告内容からも、本件H名義資産が被相続人の遺産であることについては、共同相続人の間で争いがなかったものと認められる旨主張するが、請求人は、本件訴訟において本件H名義資産は亡き実父Gの遺産であると主張し、Kは、本件H名義資産はすべて本件被相続人の遺産であると主張しており、両者がこのような主張を行うのは、請求人にとっては本件H名義資産が本件被相続人の遺産であると認められると、死因贈与契約公正証書が有効であるとの前提にたてば当該資産はすべてKに死因贈与され、請求人の相続分がなくなることとなり、また、Kにとっては、本件H名義資産が実父Gの遺産であると認められると、当該遺産は実父Gの共同相続人間で分割することになるため、Kが一人で本件H名義資産を取得することができないこととなるからである。そうすると、本件H名義資産の帰属について争いがあったと認めるのが相当であり、本件判決は、馴れ合いによる判決ではないことが明らかであるので、その実質において、客観的、合理的根拠を欠くような判決ではないことが認められる。
 原処分庁は、本件H名義資産の購入資金が実父Gから出えんされていることを請求人は知っていたものと認められることなどから、国税通則法第23条第1項の規定による更正の請求が可能であり、同条第2項による更正の請求をすることはできない旨主張するが、請求人は、本件H名義資産には亡き実父Gの遺産が含まれている可能性があると考える余地はあったものの、請求人が具体的にその確証を有していたとは認められず、本件H名義資産をその名義のとおり本件被相続人の遺産として申告したとしても何ら不自然なものではないとするのが相当であり、請求人の申告時には予測し得なかった事由が後発的に生じたと認めるのが相当である。
 原処分庁は、本件訴訟については、本件H名義資産の購入資金及び原資の出えん者がだれであるかを争ったものであり、本件判決はこれが示されたものであるから、本件H名義資産の権利関係の帰属を明確にするものではない旨主張するが、本件判決により、本件H名義資産は実父の遺産であることが確認され、さらに本件被相続人の遺産としての預金債権の帰属についても併せて判示されているのであるから、本件判決は、本件被相続人の遺産の範囲を確認するための権利関係の帰属に関する判決であり、本件判決により確定した内容は、申告に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実と異なるものであることが認められる。

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平成20年4月17日裁決

本件相続によりF国で課された相続税額のうち相続税法第20条の2の規定により控除できるのは、F国内に所在する相続財産に対応する部分の税額であり、これを超える部分の税額については控除できないとした事例

裁決事例集 第75集 566頁

要旨

 相続税法第20条の2の規定(以下「本件規定」という。)は、無制限納税義務者が相続により国外財産を取得した場合、国外財産についてその国外財産の所在地国の法令により相続税に相当する税が課されたときには、その国外財産について、日本とその国外財産の所在地国の両国において二重に相続税が課税されることとなることから、その所在地国の法令により相続税に相当する税額を、当該無制限納税義務者の相続税額から控除することにより国際間の二重課税の調整を図ることにあると解される。
  そして、この二重課税の調整がどこまで及ぶかについては、本件規定が「当該国外財産についてその地の法令により相続税に相当する税が課せられたときは」と規定していることからすると、この規定は財産の所在地国の法令により相続税に相当する税が課されたときの二重課税の調整をその対象とするものであって、財産の所在地国以外の国の法令により相続税に相当する税が課されたときの二重課税の調整についてまでその対象とするものではないと解されている。
  本件の場合、本件被相続人は相続開始日においてF国に住所を有しており、F国の相続税は、相続開始日に被相続人の住所がF国内にある場合には全世界課税を採用していることから、本件相続に係る相続財産(F国、R国、S国、T国に所在)のすべてがF国の相続税の課税対象となっており、これを上記の本件規定の解釈にあてはめてみると、日本の相続税額の計算上、F国で課された相続税額のすべてが税額控除の対象となるものではなく、F国で課された相続税額のうちF国に所在する財産に対応する部分についてのみ税額控除の対象とされるものと解するのが相当である。
  また、本件規定以外に相続税額の二重課税を調整するための法令の規定はなく、日本とF国との間には、二重課税を回避するための相続税に関する租税条約の規定もないので、F国で課された相続税額のうちF国所在財産に対応する部分を超える部分の税額については、相続税額の計算上、税額控除の対象とすることはできない。

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平成20年4月15日裁決

賃借人が預託していた保証金で返還不要とされた金員は臨時所得に該当しないとした事例

裁決事例集 第75集 260頁

要旨

 請求人は、賃借人が請求人に預託していた保証金で返還不要とされた本件返還不要保証金は臨時所得に該当するから、平均課税の適用が認められるべきである旨主張する。
  しかしながら、本件返還不要保証金は、3年以上の期間の不動産所得の補償に当たるとは認められないことから、臨時所得に該当しない。また、本件申告書には平均課税の適用を受ける旨の記載等がなく、当該記載等がないことについて、やむを得ない事情は認められない。
  したがって、請求人の場合、平均課税の適用を受けるために必要な要件を欠いているから、更正の請求の要件である「申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより、同申告書の提出により納付すべき税額が過大である場合」には当たらないことになる。

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平成20年4月7日裁決

告知処分時において譲渡担保の目的とされた債権が譲渡担保財産として存続していたとした事例

裁決事例集 第75集 745頁

要旨

 一般に、譲渡担保権は、弁済や担保権の実行による被担保債権の消滅に伴い消滅すると解されており、国税徴収法第24条第7項の規定からすると、同条も通常は被担保債権が消滅した場合に譲渡担保権が消滅し、譲渡担保財産が存在しなくなることを前提に規定されているものと解されるから、譲渡担保権者がその意思表示により担保権の実行を開始しても、当該実行が完了するまで、すなわち、譲渡担保財産の適正な評価又は換価をした上で被担保債権の清算等を行い、消滅する被担保債権の額が確定して消滅するまでは譲渡担保権は消滅せず、譲渡担保権の設定された財産は、譲渡担保財産として存続するものと解され、この理は譲渡担保財産が債権である場合にも当てはまると考えられる。そして、譲渡担保財産が債権の場合、譲渡担保権者としては担保権の実行として現実に譲渡債権から回収した金額と同額の被担保債権を消滅させるというのが通常の意思であることからすると、当事者間でこれと異なる特段の合意をしない限り、譲渡担保権者が第三債務者から現実に譲渡債権を取り立てて被担保債権の弁済に充当するまでは被担保債権は消滅しないから、その時点までは担保権の実行は完了せず、国税徴収法第24条第1項にいう譲渡担保財産として存続すると解するのが相当である。
  本件においては、本件滞納者と請求人との間に、第三債務者から現実に譲渡債権を取り立てて被担保債権の弁済に充当する以前に譲渡債権をその券面額で被担保債権の弁済に充当して被担保債権を消滅させるなど通常の意思と異なる特段の合意があったことは認められず、請求人の譲渡担保に係る本件各債権の回収状況をみると、本件告知処分前に請求人が本件各債権を現実に取り立てて被担保債権の弁済に充当し、被担保債権が消滅して担保権の実行が完了したということもできないから、本件各債権は、本件告知処分時において、国税徴収法第24条第1項の規定に係る譲渡担保財産に該当する。

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平成20年4月3日裁決

いわゆる連担建築物設計制度における余剰容積移転の対価として受領した金員は譲渡所得とは認められないとした事例

裁決事例集 第75集 198頁

要旨

 請求人は、余剰容積移転のための対価として受領した金員について、所得税法第33条第1項の資産の譲渡に該当することから、譲渡所得として課税されるべきである旨主張する。
  しかしながら、余剰容積移転の対価は、土地所有権の一部譲渡を意味するものではなく、移転側が、移転を受ける側に対して自己の土地を建築上利用させるために、その土地における建築上の利用制限を受けることに対する対価であると解するのが相当であることから、「土地を使用させる行為」に当たり、原則不動産所得に該当し、所得税法第33条かっこ書及び所得税法施行令第79条第1項に該当する場合に限り、譲渡所得として課税されることになる。
  そうすると、本件余剰容積利用権は、建築基準法第86条第2項に規定する連担建築物設計制度の適用により容積率が事実上緩和されたことに基づいて発生したものであり、私法上の契約形態としては不作為地役権を設定する方式によっていることから、所得税法第33条かっこ書及び所得税法施行令第79条第1項のいずれにも該当せず、不動産所得と解するのが相当である。

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平成20年4月2日裁決

請求人が行ういわゆるエアー・オンチケットと称する格安国際線航空券に係る取引は、取次ぎという役務の提供取引ではなく、国際線航空券の売買取引であると認められ、航空券は消費税第6条第1項に規定する別表第1第4号ハに掲げる物品切手等に該当することから当該取引は非課税取引であるとした事例

裁決事例集 第75集 659頁

要旨

 請求人は、外国航空会社のチャーター便取引は、国際航空券を一便ごとに一括で仕入れ、包括旅行を企画する旅行業者に販売しているものであり、当該取引は国際航空券の売買である旨主張する。しかしながら、請求人は、外国航空会社とのチャーター便販売契約の○○地域における代理店として、①包括旅行を企画する旅行会社に対してチャーター便販売の営業活動を行い、②外国航空会社(運航者)と日本における総代理店G社(用機者)との「航空機貸切契約書」には立会人として署名し、③チャーター便の出発までの各種手配等を行い、「チャーター便販売契約附則」に基づき一定の料率で販売手数料の金額が計算されていることからすると、請求人は、外国航空会社の日本総代理店G社からチャーター便の販売を委託され、当該販売業務の対価として手数料を得ていたものと認められる。そうすると、請求人は、外国航空会社の日本総代理店G社に対し、国内において役務の提供を行い、その対価として手数料を得ていたとみることが相当であり、請求人の行ったチャーター便取引は、課税取引に該当すると認められる。
 また、原処分庁は、請求人が行う航空券だけ(エアー・オンリー)で取引される本件国際航空券に係る取引は、国際航空券の取次ぎという役務提供であり、売上価格と仕入価格の差額に相当する額が、当該役務提供の対価であると主張する。しかしながら、請求人は、国際航空券の予約申込みを行う本件旅行業者に本件国際航空券を引き渡し、これに対して、本件各旅行業者が請求人の提示した価格表に基づいた金員を支払っている事実が認められる。また、請求人と本件各旅行業者の間では、本件国際航空券販売に関する取次ぎという役務の提供に対する対価を支払う旨の契約等は認められず、本件国際航空券の航空運賃及び航空運送にかかわる諸費用に相当する金額の合計額を取引金額としており、それ以外に本件国際航空券に係る手数料、報酬それらこれに類するものを支払う合意があったと認めるに足る事実は認められない。そうすると、本件国際航空券取引は、本件各旅行業者が請求人に対して、請求人の提示した価格表に基づいた金員を代金として本件国際航空券を購入することを申し込み、請求人がこれを承諾したことにより、請求人と本件各旅行業者との間で本件国際航空券の売買契約が成立したとみるのが相当であり、当該取引は、消費税法上、航空券という物品切手等の譲渡に該当し、非課税取引と認められる。

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平成20年4月1日裁決

相続税の連帯納付義務についての督促処分前に行われた当該相続税を担保するための抵当権の抹消に当たり、その判断に誤りがあるとしても、当該督促処分が権利の濫用に当たるとはいえず、民法第504条の類推適用又は国税通則法第41条第2項の規定により連帯納付義務が免責されることもないとした事例

裁決事例集 第75集 633頁

要旨

 請求人は、本件相続税の延納担保であった本件担保不動産の売却代金から本件相続税を徴収することができたはずであるにもかかわらず、差替担保の設定や本件相続税の徴収をすることなく本件担保不動産に設定されていた本件抵当権を解約したことに重大な過失があるから、原処分庁が行った本件相続税の連帯納付義務についての本件督促処分は権利の濫用に当たると主張する。
  しかしながら、相続税の本来の納税義務者に対する徴収手続と連帯納付義務者に対する徴収手続が、本来的に別個独立の手続であることからすれば、国税当局が本来の納税義務者に対する徴収手続を適正に行わなかった結果、本来の納税義務者から徴収することができなくなったという事実があったとしても、その事実は相続税の連帯納付義務の存否又はその範囲に影響を及ぼすものではないから、国税当局が他の相続人等に対し連帯納付義務の履行を求めて徴収手続を進めたとしても、これをもって徴収権の濫用と評価することはできない。もっとも、相続税の連帯納付義務は、法が相続税の徴収を確保するために、相続人等に課した特別の責任であることからすれば、本来の納税義務者が現に十分な財産を有し、同人から滞納に係る相続税を徴収することが極めて容易であるにもかかわらず、国税当局が本来の納税義務者又は第三者の利益を図る目的をもって恣意的に本来の納税義務者からの徴収を行わず、相続税法第34条第1項の規定に基づき、他の相続人等に対して滞納処分を執行したというような場合には、他の相続人等に連帯納付義務の履行を求めることが形式的には租税法規に適合するものであっても、正義公平の観点からみて徴収権の濫用に当たると評価すべき場合もあり得ると解される。
  本件においては、本件相続税の滞納者又は第三者の利益を図る目的をもって、差替担保の提供を受けず、必要額の支払も受けずに、恣意的に抵当権の抹消手続を行ったと評価すべき事実は認められないから、仮に抵当権の抹消の際の判断に誤りがあり、請求人が主張するとおりの事実によって本件相続税の徴収が図られなくなったとしても、そのことをもって本件督促処分が権利の濫用に当たるものということはできない。
  請求人は、民法第504条の類推適用又は国税通則法第41条第2項の適用により、連帯納付義務が免責される旨主張するが、相続税法、国税通則法及び国税徴収法のいずれにも民法第504条の準用又は類推適用による相続税の連帯納付義務の消滅を根拠付ける趣旨は見当たらず、連帯納付義務者はその徴収手続において本来の納税義務者と別個独立した関係にある点からも、同条を連帯納付義務者に類推適用することは相当でなく、また、国税通則法第41条第2項は、納税者に代わって国税を納付した者はその取得した求償債権の限度で納付した国税の担保たる抵当権につき国に代位することができる旨を規定するだけで、国に対して抵当権の保存を義務付けるものと解することはできないから、請求人の主張には理由がない。

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平成20年4月1日裁決

輸出予定先の事情により売買契約書どおりの船積みができなかった本件取引は、国内において引渡しが行われていたことから輸出免税は適用できないとした事例

裁決事例集 第75集 693頁

要旨

 請求人は、本件機械はいまだ国内に存しているものの輸出される予定であり、契約にある本件機械の指定港までの輸送、その輸出手続及び船積みが履行されていないことから、本件取引は、今現在(審判所調査時点)輸出途上にあるものであり、消費税法第7条第1項第1号に規定する輸出取引に該当する旨主張する。
  しかしながら、請求人において、R社との契約にある指定港までの輸送、輸出手続及びR社が手配した船舶への船積みが、輸出先予定のK国の事情によりできなかったとしても、①本件機械は製造が完了し、販売先であるR社の検収も了していること、②請求人はR社が検収した本件機械の一時保管を依頼され、保管料を受領して日本国内の倉庫に保管していること、③請求人とR社との間で交わされた交渉記録には引渡が行われた旨記載されていること、④請求人は本件機械の対価を事業年度末において売上げに計上していることから、本件取引は、国内において行われた課税資産の譲渡等に該当する。また、消費税法第7条第1項第1号に規定する「本邦から輸出として行われる資産の譲渡」とは、資産の譲渡取引のうち、当該資産を外国に仕向けられた船舶又は航空機に積み込むことによって当該資産の引渡しが行われるものをいうのであるから、本件取引はこの輸出取引に該当せず、輸出免税の適用はないため、請求人の主張には理由がない。

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平成20年3月28日裁決

本件土地は、調停調書に記載の相続ではなく請求人が贈与により取得したもので、その価額は買収予定価額ではなく評価通達により評価した価額によるべきであり、また、その土地は最初に買取り等の申出を受けた者以外の者である請求人が譲渡しているので、収用交換等の場合の特別控除の特例の適用はないとした事例

裁決事例集 第75集 508頁

要旨

 遺産分割は、被相続人が遺言で禁じた場合を除く外、何時でも、その協議で行うことができるところ、仮に、遺産分割調停申立て前までに共同相続人間で相続に係る遺産分割が成立していないとすれば、請求人は、相続の開始及び相続不動産の存在を了知しており、かつ、兄が本件被相続人の遺産のすべてを事実上取得していることにつき不満を有していたのであるから、例えば、姉が兄に対し相続財産である別件土地の所有権移転を要求した時などに共同相続人の間で協議による分割請求を行うのが合理的な行動であると考えられるのにもかかわらず、請求人は、姉から一緒に兄に対し一緒に財産分けの要求をしないかと相談されたもののこれを断るほか、別件土地の所有権移転がなされた事実を確認した後、共同相続人間で何らの協議もしないまま、当該調停の申立てを行うなどの行動をとっている。
  これに加え、①共同相続人は、相続不動産のほとんどが農地であったために、農業を引き継ぐ長男である兄がすべての農地を含めて遺産を相続するものと認識しており、これは、被相続人の死亡の際には、生前に分与された残りの財産をすべて跡取りが相続するのが建前であったとされる本件相続開始当時における農家相続の実態調査等の結果にも合致するものであると認められること、②相続不動産の一部が兄により売却され、請求人が現金の分与がないことに不満を持っていたにもかかわらず、その売却代金の帰属につき何らの異議も申し立てていないこと、③相続開始後調停に基づく相続登記までの経過年数が41年11か月であるにもかかわらず、その間に一度も遺産の分割請求がなされないことは極めて不自然であると考えられることなどに照らせば、調停によって相続に係る遺産分割が成立したものとは認められず、かえって、遅くとも別件土地についての所有権移転の要求が姉から兄に対してなされた時までには、共同相続人間においては、相続不動産のすべてについて、兄が単独で相続することにつき黙示の合意があったと推認することができるというべきであるから、本件土地の所有権は、相続登記がなされているものの、請求人が兄から贈与により取得したものと認めるのが相当である。
  そして、贈与により取得した財産の価額は、特別な事情がない場合には、財産評価基本通達により定められた評価方法によって画一的に財産の評価を行うのが相当であるところ、起業者による買取り等の申出に基づく売却予定価額は、贈与税の課税時期における時価としての客観的な交換価値が顕在化したものとまでは認め難く、また、財産評価基本通達により定められた評価方式で評価した場合の価額が買収予定価額に比べ著しく低額となることをもってしても特別の事情が存するとはいえないことに加え、当審判所の調査によっても、本件土地の評価に当たり、財産評価基本通達に定める評価方法を適用することが著しく不合理であるとする特別な事情があるとは認められないことからすれば、本件土地の価額は、評価基本通達によって評価した価額とするのが相当である。

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平成20年3月25日裁決

被相続人が宗教法人の敷地に接する市道の改修工事に係る費用を負担したことは、宗教法人に対する寄付に当たり、市に対する寄付に当たらないとして寄付金控除の適用を認めなかった事例

裁決事例集 第75集 243頁

要旨

 請求人は、市職員の指導誤りにより本件承認申請の名義が宗教法人D寺になったこと、本件決定に係る通知書には、本件工事で設置された工作物等が市に帰属する旨明記されていること、本来、工事費用はP市が負担すべきであること等から、特定寄付金に該当するのは明らかである旨主張する。
  しかしながら、道路法第24条は、私人などが自らの必要に基づいて道路に関する工事又は維持を行う必要が生じた場合、道路管理上支障がなければそれを許可することができるようにするために設けられた規定であり、このように道路管理者の積極的な意思に基づかず、第三者が自己の利便のために行う工事等であるから、道路法第57条は、承認を受ける第三者にその費用負担を義務付けたものである。
  そして、本件決定の承認条件として、道路敷に設けた工作物及び施設が、工事完了検査後市に帰属する旨定められた理由について、P市の担当課長は、「本件工事後の工作物等は道路の従物であり、工事費用を負担した者の所有のままにしておくと、その後の道路管理に支障を来たすため市に帰属させる必要があることから、『市に帰属する』という条件を付したもので、市が寄付を受けるとの意味ではない。」旨回答しており、工作物等をP市に帰属させることで、道路管理に支障が生じないように、D寺に義務として課したものであるということができる。
  したがって、本件工事の費用負担、本件工事により設けられた工作物及び施設をP市に帰属させることのいずれもが、本件決定で承認を受けた者に課せられた義務であるから、それを履行したことが、国等に対する寄付に該当するとはいえない。このことは、仮に被相続人が本件承認申請をしたとしても同様である。

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平成20年3月24日裁決

請求人は、競売により取得した本件建物を当初から利用する計画もなく、取り壊して跡地を利用する目的であったと認められることから、本件建物の取得価額及び解体費等は本件土地の取得価額に算入すべきとした事例

裁決事例集 第75集 342頁

要旨

 請求人は、本件建屋は改装して製造工場として利用する目的で取得したもので、初めから取壊しをする予定はなかったから、本件建屋の取得価額は、本件土地の取得価額には含まれない旨主張する。
  しかしながら、原処分関係資料及び当審判所の調査において、その意思決定を示す具体的資料はなく、競売に係る評価書によれば本件建屋は従前工場として有害物質が使用されていた旨記載されており、そして、請求人の監査役が本件土地及び本件建物等を取得する直前に土壌汚染の調査方法等についてP県保健福祉環境事務所に相談していることからすれば、請求人は、競売に参加する時点において、本件建屋が従前工場であり有害物質が使用されていたことを承知しており、本件建屋が食品物の製造に適さない可能性があることを想定した上で、本件土地及び本件建物等を取得したものと認められる。
  また、本件土地及び本件建物等の競売価格はその固定資産税評価額の約5分の1の金額であることからみて、本件建屋を取り壊しても、その跡地を利用する価値があったからこそ競売への参加を決定したものと認められる。
  そして、請求人は、稟議書の記載内容から、平成16年12月の時点では本件建屋を解体して、新工場を建設することを決めていたものと認められ、平成16年10月から平成17年8月にかけて、本件排水施設及び本件建屋を順次取り壊し、その後、その跡地を利用して平成18年1月に本件社屋を増築するとともに、同年2月に別棟を新築取得していることから、取得後1年以内に本件建屋の取壊しに着手したと認められ、また、取得後に事情変更等があったとは認められない。
  これらを総合すれば、請求人は、当初から本件建屋を利用する計画はなく、それを取り壊して、その跡地を利用する目的であったと認められ、法人税基本通達7-3-6の「その取得後おおむね1年以内に当該建物等の取壊しに着手する等、当初からその建物等を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかである」と同視しうる状況にあったものと認められる。
  そうすると、本件では、本件建屋の取得価額を本件社屋の取得価額に含めて減価償却を行っているが、上記のとおり、本件建屋は取得後事業の用に供されることなく取り壊されているので、本件建屋の取得価額に係る減価償却費は損金の額に算入することは相当ではなく、また、本件建屋の取得価額は、本件社屋の取得価額とは別に、本件排水施設解体費等とともに本件土地の取得価額に算入するのが合理的であるというべきである。
  また、本件タンク設備等についても、食品製造工場として利用できるものではなく、平成17年6月までに取り壊されており、本件タンク設備等撤去工事費は、本件タンク設備等を取り壊して、本件土地を使用するために要した費用であると認められることから、本件土地の取得価額に算入すべきである。
  以上のことから、本件建屋の帳簿価額及び本件解体工事費等は、本件各事業年度の損金の額に算入することはできず、本件土地の取得価額に算入すべきである。

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平成20年3月14日裁決

繰越欠損金額の損金算入の要件である「連続して確定申告書を提出している場合」に当たるかどうかは、繰越欠損金額を損金の額に算入しようとする事業年度の確定申告書提出時の現況によるとした事例

裁決事例集 第75集 370頁

要旨

 請求人は、本件事業年度の所得の金額の計算上、繰越欠損金額を損金の額に算入して、法人税の確定申告書を提出し、その後、本件更正処分前に、欠損金額が生じた事業年度後の事業年度で無申告であった事業年度に係る確定申告書を提出しているのであるから、法人税法(平成19年法律第6号による改正前のもの。以下同じ。)第57条第10項に規定する「その後において連続して確定申告書を提出している場合」に該当する旨主張する。
  ところで、法人税の確定申告書の提出は、各事業年度の所得の金額等を確定する行為であるところ、法人税法第57条第1項の規定は、各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入すべき金額に係る別段の定めとして、一定の条件のもとに繰越欠損金額を損金の額に算入することとした規定である。このことから、各事業年度の所得の金額の計算上繰越欠損金額を損金の額に算入するかどうかは、遅くとも、内国法人が当該各事業年度に係る確定申告書を提出する時までに定まっていなければならない。そうすると、法人税法第57条第1項の適用要件を規定する同条第10項にいう「その後において連続して確定申告書を提出している場合」に該当するかどうかも、当該各事業年度に係る確定申告書の提出時までに定まっていなければならないことになる。
  したがって、法人税法第57条第10項に規定する「その後において連続して確定申告書を提出している場合」とは、繰越欠損金額を損金の額に算入しようとする事業年度に係る確定申告書の提出時において、欠損金額が生じた事業年度後の各事業年度について確定申告書が提出済みである場合をいうものと解される。
  これを本件についてみると、請求人が本件事業年度に係る法人税の確定申告書を提出した時点において、欠損金額が生じた事業年度後に無申告の事業年度があり、請求人が、その後に、無申告であった事業年度に係る確定申告書を提出したとしても、繰越欠損金額が生じた事業年度から連続して確定申告書を提出していることにはならない。
  したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

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平成20年3月11日裁決

使用人兼務役員として勤務する会社の適格退職年金制度の廃止に伴い、年金信託契約の受託者から受領した一時金は、所得税法第31条に規定する退職手当等とみなす一時金ではなく一時所得に該当するとした事例

裁決事例集 第75集 183頁

要旨

 60歳定年後も引き続き、使用人兼務役員として勤務していた請求人が、勤務先の適格退職年金制度が確定拠出年金(企業型年金)制度に移行する際、新制度に移換されなかった請求人に対して支給された本件一時金は、定年に達した後引き続き勤務する使用人に対し、その定年に達する前の勤務期間に係る退職手当等として支払われた給与であるから、所得税基本通達31-1の(3)が引用する同通達30-2の(4)に掲げる事由に該当し、所得税法第31条第3号に規定するみなし退職所得に該当すると主張する。
  しかしながら、所得税法第31条第3号は、みなし退職所得となる企業年金等から支給される一時金を「加入者の退職により支払われるものその他これに類する一時金として政令に定めるもの」に限定している。また、所得税基本通達31-1の(3)は、適格退職年金契約に基づいて支払われる退職一時金等のうち、同通達30-2の(2)及び(4)から(6)までに掲げる退職に準じた事実等が生じたことに伴い加入員としての資格を喪失したことを給付事由として支払われる一時金も、みなし退職所得となる旨定めている。これを本件についてみると、請求人は、本件一時金の支給後も本件労働契約に基づき使用人兼務役員として本件会社に勤務しており、退職の事実はなく、本件一時金は所得税法第31条第3号には該当しない。また、本件一時金は本件年金信託契約が解除されたことにより、本件旧年金規程第24条に基づき信託財産の残余金が分配されたものであって、加入者としての資格を喪失したことを給付事由として支払われたものではないから、所得税基本通達31-1の(3)にも該当しない。

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平成20年3月11日裁決

受取配当等の額から控除する負債の利子の額の計算においては、無配の関係法人株式等の帳簿価額も法人税法施行令第22条第2項第2号に規定する関係法人株式等の帳簿価額に含まれるとした事例

裁決事例集 第75集 297頁

要旨

 請求人は、受取配当等の益金不算入額を算出する際に受取配当等の額から控除する負債の利子の額について、請求人が実際に受領した配当等に係る関係法人株式等の帳簿価額と総資産の帳簿価額との割合を負債の利子の額に乗じて計算すべきである旨主張する。
  しかしながら、昭和40年の税制改正により、請求人が主張するひも付計算は廃止されており、現行法においては、期末に保有する全部の関係法人株式等の帳簿価額と総資産の帳簿価額との割合を負債の利子の額に乗じて計算することとされている。したがって、請求人の主張には理由がない。

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平成20年3月11日裁決

土地の譲渡が「収用の対償に充てるために買い取られる場合」に該当しないとして、租税特別措置法第34条の2の規定の適用が認められないとした事例

裁決事例集 第75集 274頁

要旨

 県企業局も県農林水産部も、それぞれの設置の根拠法令は異なるものの、いずれも県知事の管轄下にある補助機関であり、県の行政組識の一構成機関であると認められる。そうすると、県企業局がその事業の用に供するために、県農林水産部が管理・使用している事業用地を自らの管理下に移転させる場合には、財産管理者である県農林水産部との間で管理換えの手続を取ることとなる。そして、本件においても当該管理換えの手続が取られたものであり、そのことは、本件管理換え協定書からも明らかである。さらに、県農林水産部から県企業局への管理換えがあった平成17年2月7日の前後を通じ、本件事業用地の所有者がA県となっていることからも、収用又は買取りがなされたものではないことが認められる。
  以上のことから、県企業局への本件事業用地の管理の移転は、土地収用法等による収用でもなければ、資産についての買取りの申出を拒むときは収用されることとなる場合の買取り、すなわち収用権を背景とした買取りでもないこととなる。
  租税特別措置法第34条の2第1項は、個人の有する土地等を特定住宅地造成事業等のために譲渡した場合には、一定の要件の下に譲渡所得の金額の計算上1,500万円が控除される旨を規定しており、この特例(以下「本件特例」という。)の対象となる譲渡として、同条第2項第2号において「(措置法)第33条第1項第1号に規定する土地収用法等に基づく収用(同項第2号の買取り‥‥‥を含む。)を行う者若しくはその者に代わるべき者として政令で定める者によって当該収用の対償に充てるため買い取られる場合」が規定されている。
  このような譲渡が本件特例の対象とされているのは、公共事業の施行者が土地等を収用等により円滑に取得するためには、事業用地の譲渡者に対して代替地を提供することが必要不可欠である場合もあることから、公共事業の施行者が代替地として提供するために必要な土地、すなわち対償地を容易に取得できるようにとの趣旨からであると解され、同法第34条の2第1項の規定は、税負担の軽減の特例又は例外規定であって、その解釈及び適用は厳格でなければならないというべきである。
  本件についてみると、上記のとおり本件事業用地の管理換えは、収用又は収用権を背景とした買取りではないから、県企業局は、同法第34条の2第2項第2号に規定する収用を行う者若しくはその者に代わるべき者として政令で定める者には該当せず、また、本件譲渡物件の県農林水産部への提供についても、同号に規定する収用の対償に充てるために買い取られる場合に該当しない。よって本件土地の譲渡については、本件特例を適用することはできない。

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平成20年3月10日裁決

残高不足により本税が口座振替によって納付されなかった場合に、納付すべき延滞税の額の計算の始期を口座振替日の翌日ではなく法定納期限の翌日として算出した当該本税に係る延滞税の督促処分を適法とした事例

裁決事例集 第75集 37頁

要旨

 請求人は、残高不足により口座振替納付日に振替できなかったからといって法定納期限にさかのぼって延滞税が課されるのは納得できず、当該延滞税により行った督促処分は、違法である旨主張する。
  しかしながら、延滞税は、私法上の遅延利息ないしは遅延損害金の性質を有し、法定納期限内に納付すべき国税が完納されなかった場合に、その納税者にこれを負わせることにより、法定納期限までに国税を完納した者との権衡を図るとともに、もって国税の期限内における適正な納付を担保しようとするものであると解され、納付遅延行為に対する制裁的意味合いが認められるとしても、そのことのみによって延滞税の制度が設けられていると解することはできない。また、口座振替納付の方法は、納税者が預貯金先に出向いてその払戻しを受け、その金銭を再び国税として金融機関に提出するという二重の手数を省略するという便利な方法であるが、納付する国税の納期限が申告期限と同一日である場合は、税務署長による金融機関への納付書の送付、金融機関における振替手続等に要する日時を考慮すれば、実際問題として期限内に口座振替納付ができないことになるので、国税通則法第34条の2第1項は、このような国税について口座振替期日に口座振替納付がされた場合には、口座振替期日が納期限後であっても、特に期限内納付とみなすこととしているものと解される。したがって、納税者の事情で預金不足等により振替不能となったときは、この特例の適用はなく、原則どおり期限内納付した者との権衡を図るため、本来の納期限から完納される日までの間、延滞税が課されることになるものと解するのが相当である。これを本件についてみると、請求人が納付すべき税額は、口座振替の手続が行われたものの、請求人が指定した預金残高が当該税額に不足していたことから振替納税がされなかったため、後日、請求人が自ら納付したものであり、国税通則法第34条の2第2項により、口座振替を選択している者において振替納付期日に口座振替による納付が行われなかった場合には、法定納期限後に自ら納付したとしても、法定納期限に納付されたとみなされないことから、請求人は、法定納期限の翌日から自ら納付した期間に応じた本件延滞税を納付しなければならないこととなる。

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平成20年3月3日裁決

滞納者の破産手続開始決定後に行われた滞納者を譲渡担保設定者とする譲渡担保債権についての滞納処分が破産法第43条第1項の規定に反しないとした事例

裁決事例集 第75集 725頁

要旨

 譲渡担保の目的とされた将来生ずべき債権については、遅くともそれが発生したときに譲渡担保権者に移転すると解されるところ、本件譲渡担保債権は、滞納法人についての破産手続開始決定前に発生し、債権譲渡登記により債権譲渡の対抗要件を備えていたことからすれば、本件譲渡担保債権は破産財団を構成しないものと認められる。
  また、譲渡担保財産は完全に譲渡担保権者に移転するのではなく、譲渡担保設定者にも一定の物権が帰属するとの理論に立脚したとしても、破産手続において譲渡担保権は別除権と同様に取り扱われるものと解されていることからすれば、譲渡担保の被担保債権の弁済期が経過した後に設定者について破産手続が開始された場合、破産管財人は担保権者による別除権の行使としての譲渡担保権の実行を受忍する立場に立たされるものと解され、また、別除権者が法律に定められた方法によらないで別除権の目的財産を処分する権利を有するときは、裁判所は破産管財人の申立てによって別除権者がその処分をすべき期間を定めることができ、当該期間内に別除権者が目的財産を処分しないときに別除権者の処分権が失われることからすれば、譲渡担保の被担保債権の弁済期が到来した後に設定者について破産手続が開始された場合、その目的財産についての担保権者の処分権が失われるまでは、その目的財産の管理処分権が破産管財人に専属することはないと解されるのであるから、当該財産は破産財団を構成しないものと解される。さらに、国税徴収法第24条の規定は、すべての担保制度が租税の徴収の面からはできるだけ同一の取扱いを受けることが望ましいとの観点に立って設けられたものであり、その趣旨は、滞納者について破産手続開始の決定があった場合にも尊重されなければならないところ、別除権の実行が民事執行法その他の強制執行の手続に従って行われるときは、交付要求をすることによって国税が別除権の被担保債権に優先して配当を受けることになるが、譲渡担保の場合は、別除権の実行が私的実行の方法によって行われ、交付要求ができないため、破産手続開始後における譲渡担保財産に対する滞納処分が許されないとすれば、滞納者について破産手続が開始されたことによって、本来、国税に劣後して配当を受けるべきであった別除権の被担保債権が国税に優先して配当を受けるという極めて不合理な結果をもたらすことになるのであるから、破産手続開始後であっても譲渡担保財産に対する滞納処分は許容されると解される。
  これを本件についてみると、本件債権譲渡担保契約に係る被担保債権は、滞納法人についての破産手続開始の申立てによって弁済期が到来し、請求人が本件譲渡担保債権の第三債務者に対して債権譲渡登記がされている旨を通知したことにより、譲渡担保権の実行を開始したと認められるのであるから、本件譲渡担保債権は、破産財団を構成するものではないと解され、原処分庁がした滞納処分は国税徴収法第24条の趣旨に沿ったものと認められるから、破産法第43条の規定に反しないというべきである。
  なお、破産法第43条第1項にいう国税滞納処分とは、国税の徴収に従事する職員が自ら強制換価手続を行って国税の徴収を図る手続をいうのであるから、国税徴収法第24条第2項の告知処分が同条の国税滞納処分に当たらないことは明らかである。

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平成20年2月28日裁決

FX取引のうち店頭金融先物取引に係る所得については、租税特別措置法に規定する分離課税及び損失の繰越控除が認められないとした事例

裁決事例集 第75集 288頁

要旨

 差金等決済に係る先物取引による雑所得等については、平成17年度の税制改正において、租税特別措置法第41条の14及び同法第41条の15の規定が改正され、先物取引に係る雑所得等の分離課税の適用及び先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除の適用について、その対象に、平成17年7月1日以後に行う取引所金融先物取引の差金等決済に係る雑所得等が追加されている。
  請求人が行ったFX取引は、金融商品取引業者との間で相対で行った金融先物取引法第2条第4項に規定する「店頭金融先物取引」であり、金融先物取引所の開設する金融先物市場において行う「取引所金融先物取引」には該当しないのであるから、租税特別措置法第41条の14第1項の規定を適用する余地のないことは、法文に照らし明らかであり、請求人の各年分のFX取引に係る所得は、他の所得と区分して課税されるものではなく、他の所得と総合して課税されることとなるものである。
  また、租税特別措置法第41条の15第1項に規定する先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除については、同法第41条の14第1項各号に掲げる先物取引の差金等決済に係る損失に限定してその適用を認めているところ、上記のとおり、請求人の行ったFX取引は取引所金融先物取引には該当しないことから、同法第41条の15第1項の規定は適用されない。
  さらに、金融先物取引に係る損失の繰越控除は、平成17年7月1日以後に行う取引所金融先物取引の差金等決済に係る損失に限られるところ、請求人の平成14年分ないし平成16年分に生じたFX取引に係る損失は、平成17年7月1日以後に行われた取引に係る損失ではないことから、FX取引が店頭金融先物取引に該当するか取引所金融先物取引に該当するかにかかわらず租税特別措置法第41条の15第1項の規定を適用する余地はなく当該損失の繰越控除は認められない。

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平成20年2月20日裁決

外国子会社合算税制の適用除外要件である所在地国基準の適用に当たり、特定外国子会社等はその事業を主として本店所在地国で行っていると認定した事例

裁決事例集 第75集 415頁

要旨

 原処分庁は、請求人がL国M区に有する子会社J社について、その主たる事業は製造業であると認められるところ、L国P市に所在するL国工場で主として製造行為を行っており、その事業を主として本店の所在地であるM区において行っているとはいえないから、外国子会社合算税制の適用除外要件である所在地国基準を満たさないと主張する。
  しかしながら、J社は、M区の下請業者に委託して原材料を半製品に加工製造させ、その半製品をL国工場において組立加工していることから、J社は、M区においても製造行為を行っていると認められる。またM区における半製品の製造費用の額が製造費用の総額の過半を占めていることからすると、J社は、製造行為を主としてM区で行っていると認められる。
  そうすると、J社については、外国子会社合算税制の適用除外要件である所在地国基準を満たすことになり、他の適用除外要件も満たしていることから、外国子会社合算税制は適用されない。

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平成20年2月19日裁決

差押不動産の売買契約における買主は滞納者であり、その購入資金である住宅ローンの返済は滞納者が行い、差押え前に請求人が差押不動産の共有持分を取得した事実は認められないことからすれば、差押不動産の取得に滞納者の妻であった請求人の協力、寄与が認められたとしても、差押不動産は夫婦共有財産ではなく、その所有権を有しているのは滞納者であるとした事例

裁決事例集 第75集 779頁

要旨

 民法は、夫婦間の財産関係について夫婦別産制(同法第762条第1項)を採用し、婚姻費用の分担(同法第760条)及び日常家事債務の連帯責任(同法第761条)の両規定をもって婚姻共同生活に対して配慮するとともに、離婚の場合につき財産分与請求権(同法第768条)を認めていることからすれば、婚姻生活中に形成された財産について、直ちに物権としての共有持分を認めているとは解されない。そうすると、婚姻生活中に夫婦の一方が対外的にその者の名義をもって取得した財産について、その取得に他方の配偶者の協力があったからといって、直ちにその者に物権としての共有持分を認めるのは相当でなく、その者のその財産に対する権利は飽くまで潜在的な権利にすぎないと解され、離婚に至って初めて、潜在的な権利の具現化としての財産分与により、物権としての権利を取得するものと解するのが相当である。
  請求人は、本件不動産の購入資金は、夫婦共有財産から支出されたものであるから、本件不動産の取得時より共有持分を有しており、物権を取得し得ない差押債権者は民法第177条の第三者に該当しないのであるから、本件差押処分は違法である旨主張する。
  しかしながら、上記のとおり、本件不動産の取得に当たり、請求人の協力、寄与が認められたとしても、請求人に直ちに物権としての共有持分が認められているとは解されず、本件不動産の売買契約における買主が本件滞納者であること、その購入資金である住宅ローンの返済は本件滞納者が行っていたこと、本件不動産の管理費は本件滞納者が負担していたことからすれば、実体的にも本件滞納者が本件不動産の所有権の全部を取得し、保有していたことが認められ、本件差押処分前に請求人が本件不動産の共有持分を取得した事実は見当たらず、財産分与を原因として請求人への所有権移転登記手続を命ずる本件差押処分後の家裁判決に当たり請求人が本件不動産の所有権を取得したものというのが相当である。したがって、本件差押処分時の本件不動産の所有権を有しているのは滞納者であり、原処分庁は、本件滞納者に帰属する本件不動産を差し押さえたのであるから、民法第177条に係る検討を行うまでもなく、本件不動産を本件滞納者に帰属するものとして行われた本件差押処分に違法な点は見当たらないというべきである。

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平成20年2月6日裁決

請求人の各E国子会社は、個々の法人としての実体を有していることから、当該各子会社の損益を請求人の所得金額と合算して申告することは認められず、また、当該各子会社は、租税特別措置法第66条の6第1項に規定する特定外国子会社等に該当するから、同項の適用があるとした事例

裁決事例集 第75集 447頁

要旨

 請求人は、①各E国子会社を設立した目的は租税回避目的ではないこと、②各E国子会社は実体を有さず単なる名義人であり請求人がその損益を請求人の損益と合算経理して申告しており各E国子会社には未処分所得はないこと、③租税特別措置法第66条の6の規定は合算経理を禁じたものではなく法人税法第11条の規定により各E国子会社の実質所得者は請求人であると自認して合算申告していることを否定する理由はないこと、④租税特別措置法第66条の6の規定が法人税法第11条の特別法として優先的に適用される関係にはないこと等から、租税特別措置法第66条の6の規定は適用されない旨主張する。
  しかしながら、各E国子会社は、契約上の地位を有し、自ら船舶を所有して定期傭船契約を結び収益を得るなど個々の法人としての実体を有していると認められるので、法人税法第11条の規定を適用して当該各会社の損益を請求人の所得金額と合算して申告することは認められず、また、当該外国法人は租税特別措置法第66条の6に規定する特定外国子会社等の所定の要件を満たすことから、原処分は適法である。
  また、請求人は、確定申告書に添付した「減価償却費明細書」に誤りがあったとして減価償却費の総額は変更せずに個々の船舶の償却費を加減算した訂正後の「減価償却費明細書」を提出し、特定外国子会社等の課税対象留保金額の算定に当たっては当該訂正後の「減価償却費明細書」に基づくべきである旨主張する。
  しかしながら、その後の事業年度の確定申告書に添付された「減価償却費明細書」をみると、確定申告書に添付された「減価償却費明細書」との連続性があること、さらに、請求人は租税特別措置法第66条の6の規定を適用して更正処分が行われることを前提に個々の船舶の償却費の訂正を求めていることからしても、確定申告書に添付された「減価償却費明細書」の記載内容には誤りはなかったものと認められ、各船舶の減価償却費の計算は確定申告書に添付された「減価償却明細書」に記載された金額に基づき行われることとなる。

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平成20年1月31日裁決

遺産分割審判手続中に相続分放棄証明書及び脱退届出を家庭裁判所に提出した納税者は、他の共同相続人間において遺産分割が確定したことを知った日の翌日から4か月以内に相続税法第32条第1号の規定に基づき更正の請求をすることができるとした事例

裁決事例集 第75集 624頁

要旨

 本件のように相続税法第55条の規定に基づく相続税の申告書の提出後に共同相続人の一人が相続分放棄証書を添付して脱退届出書を家庭裁判所に提出し、その後他の共同相続人に対して審判の告知がされた場合において、相続税法第32条第1号に規定する「その後当該財産の分割が行われ、共同相続人が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従って計算されていた課税価格と異なることとなった」のがいつかを判断するに当たっては、上記の共同相続人の相続分放棄証書を添付した上での審判からの脱退届出書の家庭裁判所への提出行為の法的性質、法的効果のみならず、他の共同相続人についてはいつ最終的な遺産分割の合意が成立し、あるいはこれに代わる審判の効力が生じたか等を斟酌してなすのが相当であるところ、本件においては、請求人以外の共同相続人が複数であるとともに、審判の告知がなされるのは当該請求人以外の共同相続人に対してであること等を踏まえれば、たとえ共同相続人のうちの一人に相続分の放棄をした者があったとしても、他の共同相続人間で遺産分割が確定したときに、当該相続分の放棄をした者を含めて全体として最終的な遺産分割と同様の効果を生ずると判断するのが相当であり、本件において当該効果を生ずる事実が発生したのは、他の共同相続人に対して本件抗告の棄却決定がなされた時と解するのが相当である。

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平成20年1月28日裁決

既に妻の扶養親族となっている子らについて、国税通則法第23条第1項に基づく更正の請求によって、請求人の扶養親族に変更することはできないとした事例

裁決事例集 第75集 254頁

要旨

 請求人は、妻の扶養親族となっている子らについて、妻の所得控除の合計額が総所得金額を大きく上回っており、実質的に妻の総所得金額から扶養控除の額が控除されていないから、子らを請求人の扶養親族として、請求人の総所得金額から子らに係る扶養控除を控除すべき旨の更正の請求には理由がある旨主張する。
 しかしながら、所得税法施行令第219条第1項は、納税者の意思を尊重してその年分に係る同令第218条第1項に規定する申告書等における納税者の選択により扶養親族の所属を決定できることとし、また、扶養親族の所属の変更する方法を、当該申告書等に後続する申告書等に限定しており、更正請求書による扶養親族の変更を認めていない。そうすると、既に妻に所属する扶養親族として適法に確定している子らを請求人の扶養親族に変更することができないから、たとえ請求人の主張するような事情があるとしても、子らを請求人の扶養親族として扶養控除すべき旨の請求人の主張には理由がない。

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平成20年1月23日裁決

被相続人の共同相続人の1人に対する「相続させる旨」の遺言には、同人に、請求人に対し5,000万円の代償金の支払債務を負担させる旨の記載があり、請求人は、当該遺言によって代償金の支払請求権を相続により取得したものと認められるから、期限後申告書に記載された課税価格のうち当該部分については、期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があるとは認められないとした事例

裁決事例集 第75集 78頁

要旨

 和解調書には、他の共同相続人の一人が請求人に対して遺留分の価額弁償金として本件金員を支払う旨及び請求人が本件金員を受領する一方、その他の請求を放棄する旨記載されており、一見、遺言に基づく代償金の請求を放棄するとも読み取れるものの、請求人及び他の共同相続人の一人の供述にもあるように、請求人が本件和解前に本件代償金の支払請求を放棄した事実も本件訴訟において本件代償金の存在が否定された事実もない状況において、本件代償金を超える本件金員が支払われるということからは、本件金員の一部をもって本件代償金の支払がなされたと認めるのが相当であって、本件金員は、本件相続の開始により本件遺言書に基づき請求人が取得した代償財産(本件代償金)5,000万円に加え、本件和解の成立により遺留分に対する価額弁償金として1,500万円を取得したものであり、結果として本件和解により本件相続税における請求人の取得財産が5,000万円から6,500万円に増加したものであると解するのが相当である。
  そうすると、請求人は、本件被相続人の死亡と同時に相続により本件代償金を取得したことにより、本件法定申告期限までに期限内申告書を提出しなければならない者に該当するから、本件和解の成立により新たに相続税法第27条第1項に規定する申告書を提出すべき要件に該当することとなった者には当たらず、本件期限後申告書は、同法第30条第1項の規定による期限後申告書には該当しないとともに、本件代償金は遺留分減殺請求に基づく価額弁償金の確定に伴い取得したものではなく、請求人が本件相続により取得したものであり、本件法定申告期限までに申告すべきものであるから、本件期限後申告書に記載された課税価格のうち5,000万円の部分については、国税通則法第66条第1項ただし書に規定する「期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があると認められる場合」に該当して申告されたものとは認められない。

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平成20年1月11日裁決

委託した工事が課税期間中に完了していないことを認識していたにもかかわらず、工事業者に対して課税期間中の請求書の発行を依頼した上、工事が課税期間中にあったものとして消費税等の納付すべき税額を算出していた場合に、税額の基礎となる事実を仮装していたものと認定した事例

裁決事例集 第75集 93頁

要旨

 請求人が工事業者に依頼した請求書は納品書を兼ねていること、請求人において契約した工事は、通常、完了する前に当該工事に係る請求書を受け取ることはないことなどを併せ考えれば、本件各請求書については、請求人における経理処理上、単に工事業者に対する金銭の支出の基準となる書類であるのみならず、本件各工事が完了したかどうかの判定の基準となる書類、すなわち、消費税の課税仕入れの帰属時期を確定する際の必要かつ重要な証ひょう類でもあったと認められる。
  請求人の本件各現場担当者が本件各工事の担当者に本件各請求書の発行を依頼した目的は、請求人における経理処理上、本件各工事の完了時期の判定基準となる書類である本件各請求書を平成17年3月31日までに徴することにより、同日までに本件各工事を完了したものとして処理し、請求人の平成16年4月1日から平成17年3月31日までの事業年度における本件各工事に係る予算を消化することにあったと容易に推認できる。
  これらのことからすると、本件各現場担当者が、本件各工事が明らかに完了していないことを認識していたにもかかわらず、本件各工事業者に対し、本件課税期間中の日付の請求書の発行を本件各工事に係る予算を本件事業年度内に消化させようとする明確な意図に基づいて依頼したことは、本件各工事が平成17年3月31日までに完了してなかった事実を同日までに完了したごとく仮装したものと認めるのが相当である。
  そして、請求人は、受領した本件各請求書が本件各工事の完了日を仮装したものであるとの認識のもと、これに基づき本件各工事について課税仕入れを行った日が本件課税期間中にあったものとして消費税等の納付すべき税額を算出し、過少申告となる本件確定申告書を提出したものと認められる。

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