裁決事例 平成11年(1999年)
公的年金等に係る雑所得の金額を算出するに際し、いわゆる「雑所得速算表」を誤認した結果、所得税の確定申告が過少申告となった場合において、誤認したのは請求人の過失によるものと認められ、また、原処分庁から指摘があれば訂正するつもりで法定申告期限前に申告書を郵送したところ、期限内に指摘されなかったとしても、国税通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」に当たらないとした事例
裁決事例集 第58集 1頁
要旨
請求人は、公的年金等に係る雑所得の金額を算出する際に、「所得税の確定申告の手引き」に記載されている公的年金等に係る雑所得の速算表(以下「雑所得速算表」という。)を誤認しただけであり、このような単純な誤りについては過少申告加算税を課すべきではない旨主張する。
しかしながら、雑所得の金額を算出するに当たって、雑所得速算表を用いて計算する場合、同表には具体的な計算方法も例示されており、請求人が通常の注意を払えばその計算方法を認識できたと認められ、雑所得の計算方法を誤認したのは請求人の過失によるものであるから、当初申告が過少となったことについて真にやむを得ない理由があったとは認められない。
また、申告納税制度の下での所得税の確定申告は、本来納税者自身の判断と責任において法定申告期限までに提出されるものであるから、原処分庁が法定申告期限内に雑所得の金額の誤りを指摘しなかったからといって、そのことを理由に不当とすることはできない。
したがって、原処分庁の行った過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。
要旨
請求人は、振興協会に対する出捐金について、[1]振興協会は請求人らが便益を受けるために出捐金を支出して設立した財団法人であること、[2]振興協会の事業のすべてが請求人らが便益を受ける事業であり、振興協会が存続する限り、その事業から、請求人らは便益を受けるものであることから、本件出捐金は自己が便益を受けるために支出する費用で、その支出の効果が支出の日以後1年以上に及ぶものと認められるので、繰延資産に該当する旨主張する。
しかしながら、本件出捐金は、請求人の臨時総会の決議を経て任意に拠出されたものであること、一定の公益目的のために提供される財産である公益法人の基本財産とすることを指定して拠出され、基本財産として組み入れられていることが認められる。
さらに、振興協会の基本財産は、原則として処分し、又は担保に供することができず、解散時においても請求人に返還されないこと、振興協会の行う事業は、基本財産以外の財産である運用財産によって運営されることが認められる。また、請求人が本件出捐金の拠出によって振興協会から特別の利益を受けるとも認められない。
したがって、本件出捐金の拠出は、請求人から振興協会に対してなされた金銭の贈与に当たり、本件出捐金は法人税法第37条第6項に規定する寄付金となり、繰延資産には該当しない。
外注費として計上された本件利益金は、工事受注の際のいわゆる降り賃として、共同企業体の入札を有利に進めるための請託に関連して支出された談合金等であるから、交際費等の額に該当するとの原処分庁の主張が排斥された事例
裁決事例集 第58集 188頁
要旨
原処分庁は、3社共同企業体の構成員である請求人がJ社に支出した本件利益金は、本件工事の受注の際のいわゆる降り賃として、本件共同企業体の工事の入札を有利に進めるための請託に関連して支出された談合金等であって、本件外注費は交際費等の額に該当する旨主張する。
しかしながら、[1]J社は、本件共同企業体の運営委員会等に社員を出席させ、本件共同企業体の意思決定及び現場の業務運営に参加している事実があること、[2]J社は本件工事の瑕疵に対して責任割合相当の負担をしている事実があることを総合すれば、本件工事は、J社を加えた実質4社の共同企業体によって施工されたものであり、J社に支出した外注費は、J社が実質4社の共同企業体の構成員たる地位に基づいて得た利益金の分配であるとするのが相当である。
したがって、3社共同企業体がJ社に支出した金額のうち、その構成員たる請求人がその出資割合に応じて負担した金額を交際費等の額に当たるとして損金不算入とした原処分は、その全部を取り消すべきである。
個人事業主の死亡は当然に雇用契約の終了事由、事業廃止原因であるから、従業員に支給する退職金の必要経費算入を認めるべきであるとの請求人の主張が排斥された事例
裁決事例集 第58集 36頁
要旨
請求人らは、工具類販売業を営んでいた被相続人の所得税の事業所得の金額の計算に当たり、個人事業主の死亡は当然に雇用契約の終了事由、事業廃止原因であり、退職金規程に事業主死亡が退職金支給事由として明記されていなくとも退職金支給債務が発生したとして、従業員6名に対する退職金の必要経費への算入を認めるべきである旨主張する。
しかしながら、被相続人の事業は被相続人の一身に専属する性質のものではなく、相続の対象となり、雇用契約は相続人に承継されるから、被相続人の死亡は雇用契約の終了原因にはならない。
また、当該従業員らは被相続人死亡後も引き続き勤務し、勤務条件、勤務内容に重大な変更はなく、被相続人の事業は、相続人に承継されており廃止されていないから、雇用契約は終了していない。
したがって、本件退職金は確定した債務とはいえず、請求人らの主張には理由がない。
要旨
請求人は、長男の交通事故を基因とした自動車総合保険契約に基づく死亡保険金を取得したが、当該保険契約に係る保険料は、請求人の給料から天引きされて支払われているものの、死亡した長男の手帳等の記載内容からみて、長男が全額を負担していたことが認められることから、本件死亡保険金は、一時所得ではなく、みなす相続財産に該当する旨主張する。
そこで、長男の手帳等の記載内容、長男の資力及び保険契約の経緯等を総合的に判断したところ、支払った保険料のうち一部については長男が負担したと認められ、本件死亡保険金のうち長男が負担していた保険料に対応する部分は、みなし相続財産に該当するから、原処分はその一部を取り消すべきである。
なお、一時所得の金額の計算上控除する保険料の金額は、請求人が負担していた保険料のうち一時所得の収入金額に対応する部分の金額となる。
請求人らが限定承認により相続した不動産を債務弁済のために譲渡したところ、原処分庁が所得税法第59条第1項の規定を適用して被相続人についてみなし譲渡所得の課税を行った処分が適法なものとされた事例
裁決事例集 第58集 97頁
要旨
請求人らは、限定承認により相続した不動産を債務弁済のために譲渡したところ、原処分庁は、所得税法第59条第1項の規定を適用し、被相続人についてみなし譲渡所得の課税を行った。
請求人らは、本件においては、本件譲渡に係る譲渡所得課税のみを行うこととするほうが本件共同相続人の利益になることから、相続人の保護という限定承認の趣旨に立ち返って本件法規定を解釈し、被相続人に係るみなし譲渡所得課税は行われるべきではない旨主張する。
しかしながら、本件法規定は、被相続人の所有期間中における資産の値上がり益を被相続人の所得として課税し、これに係る所得税額を債務として清算することにより、限定承認をした相続人が相続財産を超えて負担することがないように規定されているものであり、本件法規定にいう限定承認の意義については民法の規定と同義に解することが相当であって、請求人らは限定承認によって本件不動産を取得しているのであるから、被相続人についてみなし譲渡所得課税が行われたのである。
なお、請求人らは、本件法規定が適用される結果、適用されない場合よりも納付すべき税額の点で不利益となり、限定承認により保護される相続人の利益が保護されないこととなるとも主張するが、限定承認の制度は、被相続人の債務等の額自体を縮減することによってではなく、相続によって得た財産の限度において当該債務等の弁済の責任を負わせることにより、相続人の保護を図ろうとするものであって、納付すべき税額の多寡は限定承認の機能とは別個のものであるから、請求人らの主張には理由がない。
次に、請求人らは、仮に本件法規定が文言のとおり適用されるとしても、本件譲渡は、相続債権者への公告及び催告もせず、また、民法が定める換価手続である競売にもよらずに譲渡している上、譲渡代金のうち債務弁済後の残額を自己のために消費しているので、民法第921条第3項に規定する「私にこれを消費」に該当し、単純承認したものと見なされるから本件法規定を適用することはできない旨主張する。
しかしながら、競売によらずに任意売却等したとしても、これらは単に手続違反にとどまり、限定承認の効力には影響を及ぼさないものと解されており、また、本件譲渡は債務弁済のために行った正当なものであって、債務弁済後の残額を共同相続人間で分配したものであるから、「私にこれを消費」したことには該当しないと解され、請求人らの主張は採用することができない。
人格のない社団に対する出資の評価については、企業組合等の出資の評価に準じて純資産価額方式によるのが相当であり、その場合、評価差額に対する法人税等相当額の控除を行うのは相当でないとされた事例
裁決事例集 第58集 241頁
要旨
請求人らは、本件出資の評価について売買実例価額により評価すべきである旨主張するが、その価額は、譲渡人及び譲受人の双方が共に本件組合の組合員という限定された市場において成立した稀少な事例であり、しかも当該売買実例価額が客観的な交換価値を反映したものと認めるに足りる証拠もないので、この価額を本件出資の時価として採用することはできない。
本件組合は、人格のない社団としての実体を備えていると認められるところ、評価通達には、人格のない社団の出資の評価方法についての定めがないことから、同通達5の定めにより、同通達に定める評価方法に準じて評価することになる。
そこで、さらに具体的に本件出資の評価方法について検討すると、本件組合の財産及び債務は団体たる本件組合に帰属し、構成員たる組合員が個々の組合財産等について持分権や分割請求権を有していないことにかんがみると、本件出資の価額は、法人格を有する団体に係る株式や出資についての評価方法の定めを準用して評価するのが合理的であると認められる。
そうすると、法人格を有する団体に係る株式や出資の評価方法については、評価通達169ないし196に定められているが、本件組合の事業目的や各組合員の有する議決権数からみて、企業組合、漁業生産組合その他これに類似する組合等に対する出資の評価方法を定めた評価通達196の定め(純資産価額方式)を準用して評価するのが、本件組合の性格に照らして最も合理的な評価方法であると認められる。
なお、人格のない社団については、清算所得に対する法人税等の課税は行われないから、本件組合の純資産価額を計算するに当たっては、評価差額に対する法人税等相当額を控除することは相当でない。
個人年金保険契約の解約に伴い支払われた解約返戻金等を他の年金保険契約の保険料に充てた場合、その解約返戻金等が一時所得の総収入金額に算入されるか否かが争われた事例
裁決事例集 第58集 71頁
要旨
請求人は、本件解約返戻金は生命保険会社の年金契約を解約し郵便局の年金契約へ契約替えした結果生じたにすぎない等の理由から課税されない旨主張するが、所得税法施行令第183条第2項の規定により本件解約返戻金等が一時所得に該当することは明らかであり、また、現に生命保険会社から本件解約返戻金等の支払いを受けているのであるから、それを郵便局の年金保険の原資として払い込んだとしても所得が実現したことには変わりがないこと等から、請求人の主張には理由がない。
請求人が、出向契約に基づいて支払った本件業務分担金は、消費税法第2条第1項第12号のかっこ書に規定する「給与等を対価とする役務の提供によるもの」に該当するから、仕入税額控除の対象にはならないとした事例
裁決事例集 第58集 265頁
要旨
請求人は、本件出向契約の実質は業務委託契約であり、請求人と本件従業員の間に雇用関係はなく、本件業務分担金は業務委託契約に基づく役務提供の対価であるから課税仕入れに該当し、したがって、仕入税額控除は認められるべきである旨主張する。
しかしながら、出向契約等に基づき支払われる分担金等であっても、その実質が出向先事業者において支払うべき給与に相当するものである場合には、当該出向先事業者における仕入税額控除の対象とはならない。本件出向契約の契約事項及び労務提供の状況等を見ると、[1]本件従業員は、業務に必要な機械及び器具の自己負担はないこと、[2]請求人の定める勤務時間内において請求人の指揮監督の下に労務を提供していること、[3]請求人は、本件従業員を請求人の従業員であるとして労災保険に加入し、給付手続きを行っていることが認められ、これらを総合すると、本件従業員は、請求人の指揮命令に服して、非独立的に労務、役務を提供しているといえるから、請求人と本件従業員との間には雇用関係があると認めるのが相当である。
したがって、本件業務分担金は、その実質が請求人と本件従業員との間の雇用関係に基づき支払われた給与に相当する金額と認められ、消費税法第2条第1項第12号のかっこ書に規定する給与等を対価とする役務の提供によるものに該当するから、仕入税額控除の対象とはならない。
1. 請求人が架空の必要経費を計上し、多額の所得金額を脱漏したばかりか、調査担当職員に帳簿書類の保存がない等の虚偽の答弁をしたことは、国税通則法第68条第1項に規定する「隠ぺい又は仮装」に当たるとされた事例 2. 更正処分により賦課される事業税の額を見込額で必要経費に算入すべきとの請求人の主張が排斥された事例 3. 請求人が会計データを保存していたフロッピーディスクに不具合が生じ、出力不可能となったこと等を理由に帳簿書類等を提示しなかったことは、青色申告承認取消事由に当たるとされた事例
裁決事例集 第58集 107頁
要旨
請求人は、税理士でありながら、総勘定元帳・決算書に虚偽の記載をして架空の必要経費を計上し、多額の所得金額を脱漏したばかりか、その能力を有しながら帳簿書類の備付け等をせず、また、原処分庁の調査担当職員に対し帳簿書類の保存はない等の虚偽の答弁をし、さらに、異議審理庁による調査の際にも虚偽の資料を提出するなどしている事実が認められる。これらの事実に照らすと、請求人は、課税標準又は税額等の計算の基礎となる事実を仮装し確定申告書を提出したというべきであり、また、少なくとも申告当初から、真実の所得金額を隠ぺいしようという確定的な意図の下に、必要に応じ事後的に隠ぺいすることをも予定しつつ、多額の所得金額を脱漏し、所得金額をことさら過少に記載した内容虚偽の確定申告書を提出したというべきであって、本件確定申告書の提出は、単なる過少申告行為にとどまるものではなく、国税の課税標準等の計算の基礎となる事実について、隠ぺいしたところに基づき確定申告書を提出した場合に該当するから、原処分庁が国税通則法第68条第1項に基づいてした重加算税の賦課決定処分は適法である。
要旨
請求人と請求人が雇用されている会社との給与に関する契約は年俸契約であり、単身赴任手当や通勤手当等は一切支給されていないところ、請求人は、単身赴任費相当額又は通勤費相当額は所得税法第9条第1項第5号の課税されない通勤手当に類するものであるから、給与所得の金額は、これらの金額を給与等の金額から控除した後の金額を基礎として算出すべきである旨主張する。
しかしながら、所得税法第9条第1項第5号は、給与所得を有する者で通勤するものがその通勤に必要な交通機関の利用又は交通用具の使用のために支出する費用に充てるものとして通常の給与に加算して受ける通勤手当(これに類するものを含む。)のうち、一般の通勤者につき通常必要であると認められる一定の部分を非課税所得とする旨規定しており、この規定の「これに類するもの」とは、現金支給に代えて支給される通勤用定期乗車券の現物等がこれに当たるものと解されているところ、請求人にあっては、給与等のほかに通常の給与に加算して受けるものは一切なく、本件非課税規定による通勤手当は存在しないのであるから、請求人の主張には理由がない。
なお、給与所得の金額の計算上収入金額から控除すべき金額は、所得税法第28条の規定による給与所得控除額及び所得税法第57条の2の規定による特定支出の額の合計額が給与所得控除額を超えたときの超えた部分の金額とされているところ、本件単身赴任費相当額は、特定支出の控除の対象となる特定支出とは認められず、本件において給与所得の収入金額から控除できる金額は、給与所得控除額のみである。
消費税の課税仕入れの時期は、建物建築契約にあっては目的物たる建物の引渡日と、また、建物建設に関するコンサルタント契約にあっては役務の全部の提供を受けるのが完了した日と解するのが相当とされた事例
裁決事例集 第58集 276頁
要旨
請求人は、本件課税期間に支払った建物建設工事に係る工事着手金及び当該建物建設工事に係るコンサルタント契約に基づいて支払った契約金等については、請求人において本件課税期間中に「建設仮勘定」に経理しており、このような経理を行った場合の消費税の課税仕入れの時期は当該建設仮勘定に経理した日と解すべきである旨主張する。
しかしながら、請負契約の内容が建築工事等の物の引渡しを要するものであるときの課税仕入れを行った日とは、当該建築工事等の目的物を相手方から引渡しを受けた日と解すべきであり、また、請負契約の内容が設計、作業管理、その他の役務の提供を行うことを目的とするような物の引渡しを要しないものであるときの課税仕入れを行った日とは、当該請負契約で約した役務の全部の提供を受けるのが完了した日と解するのが相当である。
本件建物建築工事の目的物たる建物の引渡しの日及び本件コンサルタント契約に基づく役務の全部の提供を受けるのが完了した日は、いずれも本件課税期間の翌課税期間に属する日と認められ、また、いずれの契約においても部分引渡しや報酬が役務の内容ごとに区分されその支払もそれぞれの部分ごとに完了した都度支払いをするなどとする契約も存しないことから、本件課税仕入れ額は本件課税期間に係る課税仕入れには該当しない。
要旨
本件譲渡担保は、帰属清算型であるとの判断の下に、[1]告知処分がされた時点においては、未だ利息の返済期限が到来しておらず履行遅滞となっていないこと、[2]請求人から提出された各種書面及び関係者からの答述によっても、譲渡担保権の実行がされたとは認められないこと、更には、[3]代物弁済の合意があったとも認められないことから、告知処分時には譲渡担保財産は確定的に請求人に移転していたとする請求人の主張には理由がなく、本件告知処分は国税徴収法第24条第1項、第2項及び第6項の規定に基づいて適法に行われている。
要旨
請求人は、租税特別措置法第41条第3項に規定する「増改築等」には、既に所有している家屋に係る増改築のみならず、増改築後に当該家屋を取得するに至った場合も含まれると解すべきである旨主張するが、同条項は「当該居住者が所有している家屋につき増築、改築その他政令で定める工事」と規定しており、増改築時点で当該家屋を所有していることが適用要件と解されることから、請求人の見解は現行法上採り得ない。
また、請求人は、以前に行ったリフォームにより共有状態となった旨、増改築の計画段階で父から2分の1の持分を譲り受けた旨主張するが、請求人は主張を裏付ける的確な証拠を提出しておらず、また、他人所有の不動産を増改築した場合には、原則として、その増改築部分の建物の所有権は建物に附合し建物本体の所有者の所有に帰することとなるのであるから、リフォームあるいは増改築を行ったこと自体から当然に請求人に共有持分が発生すると解することはできない。
請求人が取得した事業用建物は、主要構造体である耐力壁が鉄筋コンクリートで造られていることから、耐用年数省令の別表一に掲げられている「鉄筋コンクリート造のもの」に該当するされた事例
裁決事例集 第58集 161頁
要旨
請求人は、取得した事業用建物(以下「本件建物」という。)の減価償却費の計算に当たり、本件建物は、不動産登記簿上鉄筋コンクリート造となっているが、いわゆる総鉄筋と言われるものではなく、鉄筋コンクリート造となっているのは外壁及び内壁の一部だけであり、その他は木造で、その構造様式は鉄筋コンクリート造と木造の折衷様式であるから、このような構造の建物は、耐用年数省令の別表一に掲げる「鉄筋コンクリート造のもの」に該当せず、耐用年数の短縮の承認申請を却下した原処分は違法である旨主張する。
しかしながら、[1]税法上、建物の法定耐用年数の算定において、その骨格的存在とも考えられる構成部分(構造体)が中核となっているので、構造様式の判定においてもその構造体に着目して判定するのが相当であること、[2]社会通念上、建物の構造様式は、主要構造部により判定することとされていることからすれば、本件建物は、屋根を含め内部構造には木造が主体となっていることが認められるものの、主要構造体である耐力壁が鉄筋コンクリートで造られていることから、耐用年数省令の別表一に掲げられている「鉄筋コンクリート造のもの」に該当するというべきである。
そうすると、本件建物の耐用年数は、法定耐用年数を適用すべきであり、本件耐用年数の承認申請を却下した原処分は適法である。
夫婦の財産関係についていわゆる別産制を前提とする場合、夫婦が婚姻中に相互の協力、寄与等によって得た資産であっても、いずれか一方の名義となっている財産は、単なる名義貸しによるものであることが明らかである場合を除き、当然に共有とはならず、その名義人を所有者として取り扱うのが相当であるとした事例
裁決事例集 第58集 47頁
要旨
請求人らは、本件不動産の所有権は、被相続人とその妻であるHの離婚前においてその全部若しくは2分の1がHに帰属している旨主張する。
ところで、民法第762条によれば、夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中に自己の名で得た財産はその特有財産とし、夫婦のいずれかに属するか明らかでない財産はその共有に属するものと推定する旨規定されており、夫婦の財産関係について、いわゆる別産制をとっていると解されるから、夫婦が婚姻中に得た所得やそれによって取得した財産の全てが、当然に夫婦の共有となるものではない。
そうすると、夫婦が婚姻中に相互の協力、寄与によって得た資産であっても、いずれか一方の名義となっている場合には、その取得資金の拠出等の事実に基づき、他方の特有財産であることが明らかであるとき若しくは夫婦の共有財産であることが明らかであるときなど、当該名義が単なる名義貸しによるものであることが明らかである場合を除き、その名義人を当該資産の所有者として取り扱うのが相当である。
これを本件についてみると、請求人の提出資料からは、Hが本件不動産の取得資金の全部又は一部を拠出した事実若しくは被相続人からHに事業を引き継いだ時点で本件不動産の所有権がHに移転している事実を認定することはできず、また、原処分関係資料及び当審判所の調査によっても同様である。
したがって、本件不動産は、被相続人が婚姻中に自己の名義で取得しているのであるから、民法第762条の規定により被相続人の特有財産であり、被相続人とHの共有となるものではないところ、その名義が被相続人名義となっていることについて、単なる名義貸しによるものであることが明らかであるとは認定できず、Hに所有権が移転したとする事実も認められないことから、被相続人をその所有者として取り扱うのが相当である。
要旨
請求人は、[1]原処分庁が延納担保物件を適当と認めて延納許可をしたにもかかわらず、バブル崩壊による担保不足を請求人の責任として差押処分等をすることは不合理である、[2]請求人の財産について早期に滞納処分ができたにもかかわらず、請求人の指定した土地以外の土地を参加差押処分したことは不当である、[3]公売された場合に配当が見込めない土地に行った参加差押処分は無益な処分であり不当である、[4]公売物件の見積価額を算定する場合は十分審査して、公売予定価額を決定すべきである旨主張する。
しかしながら、[1]担保財産について延納税額を担保できなくなる事態の生じることは法律上予定されているものであって、担保評価額の下落の原因に関係なく、担保不足分を徴収するため他の財産の差押処分等を執行したとしても、その処分に違法又は不当な点は認められないこと、[2]請求人の所有する財産のうち、いかなる財産を差し押さえるか又は参加差押えをするかは、国税徴収法等に定めた手続によるほかは、徴収職員の合理的な裁量に委ねられており、請求人の要望に沿って相当の換価努力をした後に当該処分を行っていることから、その時期について特に不当な点は存しないこと、[3]本件参加差押処分は、法定の要件を充たす処分であって、交付要求としての効力を有するから、無益な処分ということはできないこと、[4]見積価額は、売却予定価額ではなく、これを下回る価額での売却は許されないという最低公売価額の性質を有する法定売却条件であって、適正な売却価額を担保するものにすぎず、かつ、公売物件という特殊性を考慮した減価がされるべきものであり、本件公売物件の見積価額は、客観的な時価に比して著しく低簾とは認められないことから、原処分庁が差押物件の評価額では滞納国税等を十分に担保していないとして、差押処分及び参加差押処分を執行したことに違法な点は認められず、差押物件の評価額が低廉であるとの理由もない。
公益法人である請求人が債権未確定であるとして収益に計上しなかった本件賃貸料収入について、賃貸借契約が有効に成立していること等から収益に計上すべきであるとして請求人の主張を斥けるとともに、原処分庁が本件賃貸料収入を収益事業以外の事業のために支出したみなし寄附金に該当するとして行った更正処分について、本件賃貸料収入は収益事業以外の事業に支出したとする経理がなされていないので、原処分庁がみなし寄附金として所得金額を計算したのは誤りであるとした事例
裁決事例集 第58集 149頁
要旨
公益法人である請求人は、本件賃貸料について、[1]賃借人は請求人の請求に対して、文書でその支払を拒否したこと、[2]請求人の所管行政庁は、賃借人の所管行政庁と協議しなければ本件賃貸料の支払について解決しない旨明言しており、その所管行政庁が賃借人を事実上経営、運営しているから賃借人は当事者能力がないこと、[3]請求人は、文書で本件賃貸借契約を解除する旨賃借人に通知したことから債権として法的に確定していないので、実際に収受するまでは課税対象とはならない旨主張する。
しかしながら、[1]請求人と賃借人は、賃貸料の額を改定し又は新たに取り決めるなどして賃貸借契約書を作成したこと、[2]賃借人の理事会は本件賃貸料の支払を承認したこと、[3]賃借人は当該土地を事業用地として実際に使用していること、[4]平成8年3月期には一部ではあるが賃貸料の授受が行われ、その後も請求人は賃借人に対し本件賃借料を再三請求していることが認められることから本件賃貸借契約は有効に成立していると認められ、請求人のその他の主張には理由がないので、本件賃貸料は本件事業年度の益金の額に算入すべきである。
なお、請求人は、本件事業年度の収益事業に係る確定決算において、本件賃貸料の額を収益事業以外の事業に属するものとして区分経理をしなかったのであるから、原処分庁が、本件賃貸料の額をみなし寄附金の額として法人税法第37条第2項の規定を適用して所得金額を計算したのは誤りである。
しかしながら、同項の規定を適用しないで計算した本件事業年度の所得金額は、本件更正処分の額を上回ることから本件更正処分は適法である。
消費税につき提出した「簡易課税制度選択届出書」の効力は、課税期間の基準期間における課税売上高が3,000万円以下となった場合に提出することとされている「納税義務者でなくなった旨の届出書」の提出によっては、失効しないとされた事例
裁決事例集 第58集 292頁
要旨
請求人は、消費税法第57条第1項第2号に規定する「納税義務者でなくなった旨の届出書」を提出することにより、それまでに提出していた「簡易課税制度選択届出書」の効力も同時に失効するので、その後に提出される消費税の確定申告については、簡易課税が適用される余地はなく、本則課税方式による仕入税額控除が適用されるべきである旨主張する。
しかしながら、「簡易課税制度選択届出書」の効力は「簡易課税制度選択不適用届出書」を提出しなければ失効せず、「納税義務者でなくなった旨の届出書」は、基準期間の課税売上高が3,000万円以下となったことによりその基準期間に係る課税期間について消費税の納税義務者でなくなった旨を税務署長に届出するもので「簡易課税制度選択不適用届出書」とはその目的を異にし、また、「納税義務者でなくなった旨の届出書」の提出により当然に「簡易課税制度選択届出書」の効力が失効することを定めた法令の規定も存しないことから、請求人の主張には理由がない。
国税徴収法第38条の第二次納税義務の告知処分に至る手続に違法があり、また、納付相談の要請を了解したにもかかわらず、この了解事項を一方的に破棄して告知処分を行ったことは、信義則に反するとの請求人の主張が排斥された事例
裁決事例集 第58集 324頁
要旨
請求人は、本件告知処分は、滞納会社に対する滞納処分の手続が十分に行われていたとはいえず、法律的な瑕疵があり、また、徴収担当職員は納付相談の要請を了解していたにもかかわらず、原処分庁がこの了解事項を一方的に破棄し、本件告知処分を行ったことは信義誠実の原則に反する旨主張する。
しかしながら、国税徴収法第38条に規定する第二次納税義務の告知処分は、同条に規定する第二次納税義務のいずれの要件にも該当する場合に成立するとされており、また、滞納会社が原処分庁と納付相談中である場合あるいは原処分庁の滞納会社に対する徴収手続が尽くされた後でなければ第二次納税義務を課すことができない旨を定めた法令上の規定はなく、請求人は、同条に規定する第二次納税義務を負うこととなる。
また、請求人の納付相談に応じてほしい旨の要請に対し、原処分庁がこれを容認した事実は認められず、請求人が徴収担当職員から拒否されなかったことをもってこの要請を了解していた旨の請求人の主張は、請求人の一方的な理解にすぎない。そうすると、原処分庁が公的見解を表示した事実は認められず、租税法規の適用における納税者間の平等、公平を犠牲にしても、なお請求人の信頼、利益を保護しなければ正義に反するというような特別の事情があるとは認められない。
請求人が経営するパチンコ店のフロアー責任者及び経理責任者として実質的に経営に参画していた従業員が行った売上除外による隠ぺい行為について、それが横領目的であったとしても請求人の行為と同視すべきであるとして、重加算税の賦課決定処分を認容した事例
裁決事例集 第58集 9頁
要旨
重加算税の賦課要件たる隠ぺい又は仮装の行為者は、納税義務者たる法人の代表者に限定されるものではなく、その役員又は従業員等で経営に参画していると認められる者が隠ぺい又は仮装をし、かつ、代表者がそれに基づき過少申告した場合は、当該法人が重加算税の負担を受けるべきであり、このことは、当該法人の代表者が納税申告するに当たり、隠ぺい又は仮装行為を知っていたか否かによって左右されるものではない。
ところで、売上データを改ざんし、売上金の除外をした本件従業員は、請求人が経営するパチンコ店のフロアー責任者として、同店のコンピュータの操作、台の入替え、景品の管理、従業員の採用及び給与の計算等の一切を任され、確定申告書等の「経理責任者自署押印」欄に記名・押印していること、請求人の代表者はP市内在住の医師であって、パチンコ業については全くの素人であり、同店所在のQ市には年に1ないし2回程度しか来ていないことが認められる。
以上のことから、本件従業員は経理責任者等として請求人の経営に参画していたものと認められ、このような地位にあった従業員が売上金等の管理を担当し、故意に売上金の一部を除外したものである以上、それが同人の私的利益を図るために行われたものであり、また、それを代表者が知らなかったとしても、当該従業員の行為は、請求人の行為と同一視すべきであって、請求人に対して重加算税を賦課した原処分は適法である。
不採算又は事業後継者難の特約店4社に対して、請求人が行った売掛金の減額処理は、請求人の経営遂行上真にやむを得ない費用であるから寄付金課税の対象にはならないとされた事例
裁決事例集 第57集 357頁
要旨
原処分庁は、法人税法第37条第6項に規定する寄付金とは、どのような名義をもってするかに関係なく、対価性のない金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与とされているところ、請求人の行った売掛金の減額処理は、廃業等の諸費用を支援するためであり、また、その算出根拠も明確でなく、対価性がない利益の無償供与にすぎないことから、同項に規定する寄付金に該当する旨主張する。
しかしながら、[1]石油業界における石油卸業者の特約店は、縦の取引で系列以外の商品は扱えない仕組みとなっているところ、特約店の営業状態が悪化すれば将来、請求人に負担が掛かることは社会通念上当然のことであり、業界紙等からも石油業界の経営は今後一段と厳しく、石油スタンドの統廃合は必然的な状況にあることは十分うかがえること、[2]本件特約店4社の平成9年3月を含む事業年度の所得金額はいずれも欠損であり、うち3社は売上、所得とも毎期減少し、平成9年中に実際に廃業等の事実があること、[3]本件売掛金の減額処理の決定は、当事者間でそれぞれ経済的折衝を経て確定したものであり、金額も本件特約店ごとに個々に算定したものであること、[4]請求人は本件特約店と資本系列等特殊な関係になく、経営支配権も有していないこと等から、請求人が将来の石油業界の経済環境等を踏まえ、特約店側の事情というより、請求人における総合的経営戦略として、不採算特約店に対して行ったこれらの行為は、経営遂行上、真にやむを得ないものであり、客観的にみて経済的合理性を有し、社会通念上も相当な処理と認められる。また、請求人は支援の方法として売掛金の減額処理の方法を採ったもので、実質的には債権放棄と認められ、その債権放棄をしなければ、今後より大きな損失を蒙ることが予想され、債権放棄したことによって請求人もメリットがあると判断できる。
したがって、本件売掛金の減額処理は、請求人自らの経営改善策の一方策であり、事業遂行上、真にやむを得ない費用であるから、寄付金には該当しないものと認められる。
事業開始前に事業の用に供する資産を借入金によって取得した場合において、事業開始前に支出した当該借入金の利子は繰延資産である開業費には該当しないとされた事例
裁決事例集 第57集 138頁
要旨
請求人が事業を開始するに当たり借入金を原資として事業用の本件建物等を取得し、事業開始前に支払った当該借入金に係る本件利子について、請求人は、所得税法施行令第126条に規定する付随費用には含まれず、同条に規定する減価償却資産の取得価額を構成しない等の理由から、所得税法施行令第7条第1項かっこ書きに規定する「資産の取得に要した金額とされるべき費用」に該当しないので同項第1号に規定する開業費に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人は本件建物等の工事代金の支払のため銀行から借入れを行い、本件利子を支払っており、本件利子は、請求人が本件建物等を取得することを基因として支出したものと認められること、及び固定資産の取得のための借入金の利子で事業開始前の期間に対応するものは、当該固定資産の取得価額に算入するという所得税基本通達38-8の定めは相当と解されることから、本件利子は所得税法施行令第7条に規定する「資産の取得に要した金額とされるべき費用」に該当すると認められので同条に規定する開業費には当たらず、本件建物等の取得価額に算入すべきである。
期末現在において未収になっている工事代金等は、損害賠償請求権を行使し、その支払いを受けるべきことが確定した事業年度の益金ではなく、請負工事の完了した日の属する事業年度の収益であるとされた事例
裁決事例集 第57集 287頁
要旨
請求人は、本件請負工事等を発注したF遺跡調査会は本件請負工事代金等を支払わないまま解散しており、請求人が本件請負工事代金等相当額を得るためには、F遺跡調査会に工事等を委託していたP市又はF遺跡調査団の調査主任であったHに対して損害賠償をするしかないことからすると、本件請負工事代金等相当額の収益計上時期は、工事等を行った事業年度ではなく法人税基本通達2-1-37に規定するように、損害賠償金の支払いを受けるべきことが確定した日又はその支払いを受けた日を含む事業年度である旨を主張する。
しかしながら、[1]本件請負工事等は、いずれも請求人において本件事業年度中に実際に施工等が行われ、完了し、引渡しを了していること、[2]本件請負工事等に係る原価が、本件事業年度の請求人の所得の金額の計算上損金の額に算入されていること、[3]本件請負工事等については、出来高払いの契約であったと認められること、[4]本件工事等のうち請求人において収益に計上済の工事もあるが、それらはいずれも月単位で請求され月単位で収益に計上されており、また、請求人が請け負った他の工事についても月単位で計算する商慣習となっていたことが認められることからすれば、本件請負工事代金等相当額が請求人のもとに入金されていたかどうかにかかわらず、本件請負工事代金等は、本件請負工事等の完了した日の属する本件事業年度の収益と解するのが相当である。
被相続人は賃借していた土地の所有者に対して別途建物を賃貸しており、その建物の賃貸料が相場より低いのは、その低い分だけ土地の賃借料と相殺されているのであるから、この相殺部分の金額を土地の賃借料に加算すると土地の賃借料は相当地代に当たるので、被相続人の有する借地権の評価額は零であるとの請求人の主張が排斥された事例
裁決事例集 第57集 443頁
要旨
土地の賃貸借における実際の支払地代の額は、本件のように相互に資産の貸付けが行われている場合にあっては、各賃貸借が相互に関連があって一体不可分のものであり、かつ、各賃料の額の一定額が相殺関係にあることが契約上明示されているなど特段の事情がない限り現実に授受されるべき金員そのものの額によるのが相当である。
これを本件についてみると、[1]本件建物の賃貸借契約は、平成元年1月に約定され、本件土地の賃貸借契約は、平成元年10月に約定されたことが認められ、これらの契約は約定された時期が異なり、契約開始時期も異なること、[2]本件土地の賃貸借が開始されても、本件建物の家賃の額に変動はないこと、[3]請求人らからは、本件土地の地代の額を算定するについて、本件建物の家賃の額を考慮したとする具体的な証拠資料の提示がないことから、これらの契約は、一方が他方の条件となっていたり、あるいは前提となっているとは認められず、相互に関連はないというべきであり、一体不可分のものとは認められない。
したがって、被相続人が支払うべき地代の額と受け取るべき家賃の額との間には相関関係があり、互いに低い賃料を定める暗黙の合意が存したとする請求人らの主張は認められない。
要旨
請求人の元理事長が請求人の営む事業に係る人件費及び給食材料費等を架空又は水増し計上するなどの方法によりねん出した資金を簿外口座預金に預け入れた後、当該口座から元理事長名義預金に入金した金員、並びに元理事長の個人的費用に充てるための資金を立替金勘定に計上した後、雑費勘定に振替計上した金員について、請求人は、元理事長がその地位を利用して請求人の資金を不正に引き出したものであり、請求人が賞与として支給したものではない旨主張する。
さらに請求人の元専務理事が、転換社債等を換金して同人名義の預金口座に入金した金員について、請求人は、元専務理事が請求人の資金を不正に引き出したものであるから、請求人が退職金として支給したものではない旨主張する。
しかしながら、元理事長は請求人の設立者として理事長に就任し、退任後も自ら会長と称していたこと、また、自らの親族等を理事長等の役員に就任させていたことからすれば、設立以来、請求人の全運営についての権限を有しその地位等を利用してねん出した簿外資金を簿外口座で管理し、本件簿外口座から元理事長名義預金口座に入金した金員について、元理事長個人の借入金の返済資金等に支出されたと認められるほか、請求人の事業遂行のために使用されたとする証拠もないことからすれば、これを個人的費用に費消していたと認められる。また、雑費勘定に振替計上した金員は、元理事長が個人的な目的のために費消していたことは明らかである。仮に、本件金員及び本件立替金が不正に引き出されたとしても、所得税基本通達36-1が給与所得として収入すべき金額は、その収入の基因となった行為が適法であるかどうかを問わない旨定めており、その取扱いが相当であること、返還義務があるとしても所得税法上の所得とは、これを専ら経済的面から把握すべきであると解されるところ、実際に返還されない限り本件金員及び本件立替金は所得を構成するのであるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
そうすると、これらの金員は所得税法第28条に規定する給与(賞与)所得と認められるので、請求人は、同法第183条第1項に規定する所得税の源泉徴収義務がある。
また、請求人の元専務理事は、[1]平成5年3月31日に請求人を退職したこと、[2]長年にわたり請求人において理事として経理責任者であったこと及び[3]転換社債等を換金した金員を一時金として退職日の直前に受け取っていたことが認められるから、当該金員は退職所得に該当し、当該所得に対する源泉徴収義務者は請求人であると認定するのが相当である。
そして、仮に転換社債等を換金した金員が不正に引き出されたとしても、元専務理事が現実に支配管理しているのであるから、所得税基本通達36-1が退職所得の金額の計算上収入すべき金額は、その収入の基因となった行為が適法であるかどうかを問わない旨定めているのであるから、請求人の主張には理由がない。
そうすると、これらの金員は所得税法第30条に規定する退職所得と認められるので、請求人は、同法第199条第1項に規定する所得税の源泉徴収義務がある。
要旨
請求人は、請求人の父は所得を有し生活費も毎月負担しており、同人と生計を一にしていないから、父に支払った本件地代は、不動産所得の金額の計算上、必要経費として認められるべきである旨主張する。
しかしながら、請求人は、父と同一の家屋内に起居していること及び食事を共にするなど日常の生活を共にしていることからすれば、同人が所得を有し生活費を負担していたとしても、請求人と父が明らかに独立した生活を営んでいるとは認められず、また、本件全資料及び当審判所の調査によっても、請求人と父との間で家事上の共通経費について実費の精算が行われていること並びに事実上の支出に関して親族間における債権債務の発生及び決済の状況が明らかであることを認めるに足りる証拠資料はない。
そうすると、請求人と父は生計を一にしているとみるのが相当であるから、本件地代は、所得税法第56条の規定により不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入されないことになる。
更正の理由の「加算」欄に記載された文言からは、なぜ寄付金に当たると判断したのか具体的な理由の記載が認められず、その理由を知ることができないので、本件更正処分に係る理由附記は法人税法第130条第2項に規定する要件を満たさない不適法なものであるとされた事例
裁決事例集 第57集 371頁
要旨
法人税法第130条第2項において、青色申告に係る法人税につき更正をする場合に更正の理由を附記すべき旨規定している趣旨は、処分庁の判断の慎重及び合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由をその相手方である納税者に知らせて不服申立てに便宜を与えることにあると解されている。
この趣旨からすると、処分の理由は、他の事情から納税者がこれを了知していたか否かに関わりなく、更正の通知書に附記された更正の理由の文面から明らかであることが必要であり、記載すべき理由附記の程度は、事実に対する法的評価の相違による更正処分の場合には帳簿書類以上に信ぴょう力のある資料を摘示する必要はないにしても、なぜそのような判断に至ったかという原処分庁の判断過程については、これを省略することなく、具体的に記載する必要があると解するのが相当である。
これを本件理由附記についてみると、更正の理由の「加算」欄に記載された文言からは、原処分庁が当初修正申告書に係る寄付金の損金算入額の計算が正当であるとの結論に至った判断過程、すなわち、なぜ本件支給金額が寄付金に当たると判断したのか具体的な理由の記載が認められず、その理由を知ることができないので、本件理由附記は、法人税法第130条第2項に規定する要件を満たさない不適法なものといわざるを得ない。
国が担保として徴していた不動産抵当権の一部解除をした場合において、当該物件に抵当権を設定した請求人の強制換価手続に対しては、信義則上、国が交付要求することは許されないとの請求人の主張が排斥された事例
裁決事例集 第57集 568頁
要旨
請求人は、[1]国税徴収法第85条第1項第2号に該当する事由の有無の判断は、信義則の法理に従い、抵当権設定時を基準とすべきである、[2]請求人の抵当権設定に何ら落ち度はないから、同条の立法趣旨に照らして当然保護されるべきである、[3]滞納国税は法定納期限から16年も経過しているから、その間徴税を放置したことは職務怠慢であり、また、本件交付要求は権利の濫用であると主張する。
しかしながら、[1]国税徴収法第85条第1項第2号の交付要求解除請求の要件の判断時点は、当該交付要求解除請求のときと解するのが相当であり、また、原処分庁が抵当権の一部を抹消したことをもって、請求人に対し、以後交付要求を行わない旨の公的な見解を表示したものとはいえず、信義則の法理を適用する特別の事情が存在したとは認められないこと、[2]同条は、一定の要件を充足した場合に債権者を保護する規定であり、請求人に落ち度がないことをもって本件交付要求解除請求を認めることはできないこと、[3]原処分庁は、納税猶予を認め、猶予期限の確定後は原処分庁において担保物処分の手続を経た上で本件交付要求に至ったことが認められ、交付要求に至る徴収手続に職務怠慢があったとは認められないことから、請求人の主張に理由がない。
要旨
請求人は、本件各貨物は原油であり、揮発油に該当しないことに取り扱うこととされている軽質原油に当たるから、本件各貨物を課税物件として扱った本件揮発油税更正処分等は違法である旨主張する。
しかしながら、原油に該当するか否かは、本件各貨物が天然の産品である原油としての性質を有しているか否かが判断の基準となるところ、サンプル分析の結果によれば、天然の産品である原油が有する特徴的な属性を有していない上、請求人は、産出油田名や引取り後の製造工程等について合理的な説明をしておらず、その信用性には疑問がある。本件各貨物が揮発油に該当することは争いないところ、上記のとおり、原油ではないから、揮発油に該当しないことに取り扱うこととされている軽質原油には当たらず、本件各更正処分は適法である。
いわゆる超過物納に係る還付金相当額について譲渡所得の金額を計算する場合において、その物納許可に基づく物納財産の収納が相続税の法定申告期限から2年経過後であっても、本件譲渡が本件特例の適用期間を経過した後にされたものである以上、租税特別措置法第39条第1項の適用はないとされた事例
裁決事例集 第57集 278頁
要旨
- 請求人は、相続の開始があったことを平成3年8月27日に知ったと認められるから、相続税の申告期限は平成4年2月27日となる。そうすると、本件の場合、租税特別措置法第39条第1項の規定による特例を適用することができる譲渡は、平成3年8月28日から平成6年2月27日までの間に行われたものでなければならないところ、本件不動産が国に収納され、還付金が生じて譲渡となったのは、平成8年10月15日で、特例適用期間経過後のことであるから、譲渡所得の計算上、本件特例は適用できないことになる。
- 請求人は、特例の適用期間内に物納申請に対する許可及び本件不動産の収納が行われなかったのは、国税局の事務処理の遅延によるものであって、請求人の落ち度ではないから、本件特例は認められるべきである旨主張するが、同特例は、本来課されるべき税額を政策的見地から特に軽減するものであるから、租税負担公平の原則に照らし、その解釈は厳格になされるべきところ、租税特別措置法第39条第1項が特例の適用期間の徒過について格別の救済措置を設けていないから、上記適用期間について例外を認めることは、法が予定していないことである。
遺留分減殺請求権を行使して取得した宅地を譲渡しても、その譲渡が相続税の法定申告期限の翌日以後2年経過後である場合には、相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例の適用がないとした事例
裁決事例集 第57集 267頁
要旨
請求人は、遺留分減殺請求権を行使して本件宅地を取得したものであるが、遺留分を侵害していた者が相続税法第32条に規定する更正の請求をしたため、遺留分権利者たる請求人も同法第30条に規定する期限後申告を余儀なくされ、その相続税を納付するために本件宅地を譲渡したのであるから、租税特別措置法第39条第1項にいう相続税法第27条第1項の「相続の開始があったことを知った日」は、遺留分減殺請求訴訟の判決が確定した日」と読み替えて租税特別措置法第39条第1項を適用すべきであると主張する。
ところで、相続税法(平成4年法律第16号による改正前のもの。)第27条第1項は、「相続又は遺贈により財産を取得した者は、・・・その相続の開始があったことを知った日の翌日から6月以内」に申告書を提出しなければならないと規定しているところ、この「相続の開始があったことを知った日」とは、相続人が被相続人の自然死又は擬制死亡を覚知することにより、自己のために被相続人の権利義務を包括的に承継し得る地位を取得したことを知った日であり、相続の単純又は限定の承認を行って相続人の地位を確定的に取得した日、あるいは、遺産分割の協議又は調停の成立若しくは審判により、相続人が具体的に相続財産の全部又は一部を取得した日ではないと解されている。
そして、遺留分権利者は、一般の法定相続人と同じく相続の開始により相続財産の一定額を不可侵的に取得し得る地位に立つものであるから、遺留分権利者の相続税の提出期限の起算日についても、一般の相続の場合と同様に考えるべきである。
したがって、遺留分権利者について、相続税法第27条第1項の「相続の開始があったことを知った日」とは、自然死又は擬制死亡を覚知することにより、相続財産の一定額を不可侵的に取得しうる地位に立ったことを知った日と解するのが相当であり、自ら遺留分減殺請求を行ってその遺留分を確定的に確保した日、あるいは、遺留分減殺請求に係る判決が確定しそのことによって具体的な相続財産を取得した日と解するのは相当でない。
本件譲渡は相続税の申告書の提出期限の翌日以後2年(平成6年法律第22号による改正後の措置法では3年。)を経過する日までの間の譲渡に該当しないので、租税特別措置法第39条第1項の適用はない。
本件相続開始直後、請求人自らが被相続人名義の証書式定額郵便貯金を解約して、新たに開設した請求人ら名義の通常郵便貯金口座に預入し、その存在を確知しているにもかかわらず、後に開設した相続財産管理口座には被相続人名義の通帳式郵便貯金を解約した金額のみを預入し、証書式定額郵便貯金を除外して相続税の確定申告をした請求人の行為は、事実を隠ぺいした場合に該当するとした事例
裁決事例集 第57集 36頁
要旨
請求人は、被相続人名義の証書式定額郵便貯金(以下「本件定額貯金」という。)が申告漏れとなったのは単純なミスによるものであって、隠ぺいしたものではない旨主張する。
しかしながら、請求人は、[1]本件相続開始後に自ら本件定額貯金を解約し、その存在を確知していること、[2]本件定額貯金の解約を一両日中に実行したにもかかわらず、5箇所の郵便局で解約手続をとっていること、[3]被相続人名義の通帳式郵便貯金(以下「本件通帳式貯金」という。申告済み分。)の一部払戻金額に一致させた金額2,310,000円を新たに開設した請求人ら名義の通常郵便貯金口座から払い戻し、それを相続財産管理口座に預入していること、[4]同様の6,556,456円を請求人ら名義の上記口座から払い戻し、それを相続財産管理口座へ預入していること、[5]それ以外の請求人ら名義の上記口座からの払戻金は相続財産管理口座へ預入せず、うち、2,543,192円については費消していること、[6]本件申告をするに際して、本件通帳式貯金についてはその金額を相続財産として本件申告書に記載したが、本件定額貯金については記載しなかったことが認められる。
加えて、請求人ら名義の通常郵便貯金は、それらの貯金の利息を除けば本件定額貯金と本件通帳式貯金の解約金のみをその預入源泉としており、請求人が相続財産を集約し、整理しようとするのであれば請求人ら名義の通常郵便貯金口座の全額を払い戻して残さず相続財産管理口座へ預入するのが簡単かつ自然であるにもかかわらず、上記のとおり、本件通帳式貯金の払戻金額に一致させた金額だけを請求人ら名義の通常郵便貯金口座から払い戻して相続財産管理口座に預入している。
さらに、請求人は、請求人らに対する税務調査の際には本件通帳式貯金以外の郵便貯金の存在を否定し、後日になってそれを認めている。
以上の事実からすれば、請求人は本件定額貯金について秘匿することを意図し、その意図に基づいて過少申告したことが認められ、請求人のかかる行為は、重加算税の賦課要件たる事実の隠ぺいに該当する。
要旨
国税徴収法第39条の無償譲渡とは、民法上の贈与等を指すものと解され、課税庁が利益の配当として法人及びその株主等に対し課税した場合であっても、それが法人のその株主等に対する会社資産の無償譲渡に当たる場合には、同一の資産の譲渡が、一方では国税徴収法第39条の無償譲渡に該当し、他方では利益の配当として課税所得の計算の対象に該当することになんら矛盾はないというべきである。
また、請求人が主張する法人税等は、当該財産の取得による所得のみならず、その年中に生じた他の所得及び損失等との関連において課税標準及び税額が異動するものであって、受益の時においてはその納税義務の存否及び数額を法律上客観的に確定することができないものであるから、受けた利益の現存する限度額の算定に当たり控除すべき費用等には該当しない。
ビール、飲料水メーカーの特約店及び容器問屋に容器を納入する本件取引は、単なる役務の提供ではなく、自己の計算において容器等を売買しているものであるから、特約店等から受領する容器等保証金相当額は、消費税の課税資産の譲渡等の対価の額に該当するとされた事例
裁決事例集 第57集 529頁
要旨
請求人は、ビール及び飲料水メーカーの特約店等との間における容器等に係る取引において、特約店等から容器等保証金と容器等の納入手数料を併せて収受しており、容器保証金については、消費税法基本通達5-2-6で資産の譲渡等の対価の額に該当しないものと取り扱われているのであるから、容器等がどのような流通過程を経ようとも容器等の所有権がメーカーにある以上容器等保証金としての性格が変わるものではなく、流通過程により消費税の取扱いが異なることとなるのは不合理である旨主張する。
しかしながら、本件取引においては、回収先である酒類小売店等から納入先を指定されることもなく、又納入先である特約店等から回収先を指定されることもないこと及び請求人が酒類小売店等に支払う金額、又は特約店等が請求人に支払う金額は、各当事者間において自由に決定していることなどからすると、請求人は酒類小売店等や特約店等からも独立した事業者として酒類小売店等から容器等を買い取り、これを特約店等に売却しているものと認めるのが相当であり、請求人は自己の判断において任意の酒類小売店等から容器等を引き取って、これを自己の判断において任意の特約店等に納入しているのであるから、単なる役務の提供をしているのではなく、自己の計算において容器等の売買をしているのである。
よって、本件取引は、本件通達の適用対象外の取引であり、受領する総額が消費税の課税対象となる。
要旨
- 請求人ら名義の関係会社の株式は、[1]株式の取得資金のすべてを被相続人が負担していること、[2]株式申込証に押印されている印影は、毎回同じで、その印影に係る印章は、被相続人が普段所持し使用していたものであること、[3]株式の配当金は、被相続人が受け取っていたことが認められることから、被相続人に帰属する株式と認めるのが相当である。
- 請求人ら名義の定期預金は、[1]被相続人は、本件定期預金を請求人らに贈与する意思があったと推認されること、[2]本件定期預金にほぼ見合う金額の贈与税の申告と納税がなされていること、[3]請求人らは、贈与税の申告等について少なからず承知していたこと、[4]請求人らは、相続開始前に被相続人から本件定期預金の通帳を受け取っていると推認されることからすれば、本件定期預金の贈与がなかったとまではいえない。
要旨
請求人は、請求人が取得した鋳型造型機及びその附属機器等について、その全てが租税特別措置法第42条の5に規定する特別償却の対象になると主張するが、平成4年3月の通産省告示第145号の別表一では、鋳型造型機本体が租税特別措置法第42条の5の特別償却の対象となる減価償却資産として定められており、その附属機器等については定められていない。
したがって、請求人が取得した附属機器等については、租税特別措置法第42条の5の特別償却の対象とはならない減価償却資産であると解するのが相当である。
要旨
請求人らは、課税時期においては、本件合併契約は既に締結され、その後の合併諸手続を終え合併期日を待つ段階にあるから、本件株式の価額には合併という要素が反映されてしかるべきである旨主張する。
しかしながら、請求人らが本件株式を取得した課税時期においては、まだその合併の効力が生じておらず、また、本件合併契約が締結されたことによる影響を本件株式の評価に反映させるとする定めもないことから、本件株式の価額については、合併後の会社の株式の評価額に影響されることなく、課税時期現在における1株当たりの純資産価額により評価するのが相当である。
原処分庁が、請求人が租税特別措置法(平成7年法律第55号による改正前のもの。)第70条の10第8項第1号の規定による取下書を提出しない時期に、請求人が相続税の本税として納付した額を、請求人にまったく連絡することなく、相続税に係る利子税に充当したのは違法であるとして、充当処分が取り消された事例
裁決事例集 第57集 21頁
要旨
請求人が特例物納の一部取下書を提出したことから、第2回分納税額の納期限(当初納期限平成6年6月10日)及び第3回分納税額の納期限(当初納期限平成7年6月12日)は、租税特別措置法第70条の10第8項の規定により本件一部取下書を提出した平成9年7月8日の翌日から起算して1月を経過する日まで延長され、いずれも平成9年8月8日となる。
一方、請求人が平成8年4月15日付で納付した相続税は過誤納金となるため、第2回及び第3回の分納税額にそれぞれ充当する場合の充当適状日は、当該過誤納金の生じた平成8年4月15日と当該分納税額の納期限である同9年8月8日のいずれか遅い日であるから、同9年8月8日となる。
そうすると、原処分庁が平成8年4月15日を充当適状日とした当該充当処分は、充当適状日が法令の規定のとおり処理されていないこととなり、違法であるから取り消すことが相当である。
また、請求人が平成9年7月15日付で納付した相続税は過誤納金となるため、第2回の分納税額に充当する場合の充当適状日は、同9年8月8日となる。
そうすると、原処分庁が平成9年7月15日を充当適状日とした当該充当処分は、充当適状日が法令の規定のとおり処理されていないこととなり、違法であるから取り消すことが相当である。
借地権の更新料が土地の時価の10分の5以下である場合には、当該更新料が地代の年額の20倍に相当する金額を超えるとしても、譲渡所得には該当しないとされた事例
裁決事例集 第57集 75頁
要旨
請求人は、本件土地の借地権の更新料は、当該土地の地代の年額の20倍に相当する金額を超えるものであるから、所得税法施行令第79条第3項の規定により譲渡所得の収入金額に該当する旨主張する。
ところで、所得税法施行令第79条第1項では、借地権の設定のうち、当該設定が建物若しくは構築物の所有を目的とする借地権等の設定である場合において、当該設定の対価として支払をうける金額がその土地の更地価額の10分の5に相当する金額を超えるときは、当該設定行為を資産の譲渡とみなす旨規定している。同条第3項では、その設定により受ける金額が、その設定により支払を受ける地代の年額の20倍に相当する金額以下である場合には、資産の譲渡には当たらないものと推定する旨規定しているが、この規定は、同条第1項にいう資産の譲渡とみなされる行為に当たるか否かを判定する上での推定規定であるから、当該行為が資産の譲渡に当たるか否かを同項により判定した場合には、同条第3項の規定を適用する余地はないものと解される。
そこで、本件土地の更地価額と借地権の更新料を検討すると、本件更新料は土地の更地価額の10分の5以下であると認められることから、当該更新料の金額が地代の年額の20倍に相当する金額を超えていたとしても、本件更新料は不動産所得の総収入金額に算入されるべきものである。
診療所開設遅延に係る本件和解金は、請求人の心身、資産に加えられた損害を補てんする性質のものではなく、本来所得となるものや得べかりし利益を喪失した部分を受領したもので、請求人の業務の遂行により生ずべき事業所得に係る収入金額に代わる性質を有するものと認められるとした事例
裁決事例集 第57集 127頁
要旨
請求人は、請求人を開設者とする診療所の開設が遅延した場合にはGが請求人に損害賠償金を支払う旨の合意書に基づき、請求人が和解により受領した本件和解金は、請求人の精神的苦痛及び肉体的苦痛に対する対価として算定されたものであるから、所得税法第9条第1項第16号及び同法施行令第30条の規定により非課税とされる損害賠償金に該当する旨主張する。
しかしながら、本件合意書に定める損害賠償金の積算根拠は、[1]本件診療所の開設に伴う医療機器のリース料及び借入金の元利返済金、[2]光熱費、修繕補修費、家具及び看護婦・医師等の人件費並びに[3]請求人の得べかりし収入及び税金負担分であり、請求人は、本件訴訟において、この損害賠償金の積算根拠及び本件診療所に代えて第三者を開設者とする診療所を開設せざるを得なかったことによる医療収入の実際の損害の内容を明らかにし、これに基づいて和解したものと認められ、請求人の答述及び和解金の支払者の申述からも精神的苦痛及び肉体的苦痛の対価として和解したとは認められず、また、これを証する証拠書類の提出もないことから、本件和解金は、請求人の心身、資産に加えられた損害を補てんする性質のものではなく、本来所得となるものや得べかりし利益を喪失した部分を受領したもので、請求人の業務の遂行により生ずベき事業所得に係る収入金額に代わる性質を有するものと認めるのが相当である。
多額の不動産所得を申告すべきことを認識しながら、関与税理士に資料を提出せず、かつ、虚偽の説明をするなどして、過少な申告書を作成させて提出した行為は、重加算税の賦課要件に該当するとともに更正等の期間制限に係る偽りその他不正の行為に該当するとした事例
裁決事例集 第57集 50頁
要旨
請求人は、多額の不動産所得を申告すべきことを認識しながら、関与税理士から不動産所得の金額について質問を受け、資料の提示を求められたにもかかわらず、同席者の虚偽の説明をあえて否定せず、あるいは自ら前年と同様である旨虚偽の説明をし、また、何らの資料も提示しないで多額の不動産所得のあることを秘匿し、税理士に過少な申告を記載した確定申告書を作成させて提出し、真実の所得金額の大部分を申告しなかったことが認められる。
このことは、請求人が当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行為をした上、所得金額をことさら過少にした内容虚偽の確定申告書を提出した場合に該当し、請求人の行為は、国税通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺい及び同法第70条第5項に規定する偽りその他不正の行為をした場合に当たる。
譲渡した土地及び建物は、請求人の生活の本拠ではなく、居住用財産の譲渡とは認められず、請求人が住民票を異動したことは、特例の適用を受けるための事実を仮装するために行ったものであるから、重加算税の賦課決定処分は適法であるとした事例
裁決事例集 第57集 224頁
要旨
- 請求人が、本件家屋及び長男家族の家財道具の管理等のために、昭和63年頃から本件家屋を譲渡した直前までにおいて、時折本件家屋に住んでいたことを否定することはできないが、[1]請求人の住所が本件家屋の所在地となっているものは、平成7年8月10日から同年9月29日までの住民登録及び本件売買契約書の請求人の住所のみで、他はすべてS町の家屋の所在地であったこと、[2]本件家屋における水道及び電気の使用量並びに電話の利用料金は、長男家族が帰省したお盆、正月の時期等はそれなりに使用されていたことは認められるが、その他の月のこれらの使用量及び利用料金は僅少又は使用されていなかった月があること、[3]本件家屋及びS町の家屋の近隣住民等の申述からすれば、請求人は、S町の家屋を生活の本拠としていたことがうかがえること、[4]仏壇は、生活の本拠である家屋に置き、先祖を供養するのが一般的であるが、請求人は、S町の家屋に置いていたことが認められ、これらを総合すると、請求人は、本件家屋及び長男家族の家財道具の管理等のために本件家屋を一時的に利用したにすぎず、請求人の生活の本拠はS町の家屋と認められる。
- 請求人が住民登録を本件家屋所在地に転居の届出をしたときは、すでに本件譲渡資産を譲渡する認識をもっていたとみるのが相当であり、請求人が、本件家屋を真に居住の意思をもって、生活の本拠として居住していたという事実及び請求人の住民登録の住所を異動しなければならなかった合理的な理由が認められない以上、この届出は、本件特例の適用を受けるための事実を仮装するためにあえて届出したものと認められ、この事実に反する住民票の写しを本件申告書に添付して提出したことは、国税通則法第68条第1項の課税標準の基礎となるべき事実を仮装し隠ぺいしたことに該当する。
請求人の代理店は、請求人との販売委託契約書に基づき請求人の扱っている商品について、請求人と顧客との販売契約の申込みの勧誘等の業務委託を受け、請求人と顧客との売買契約の締結を媒介する役務を請求人に提供していることから、所得税法第204条に規定する外交員に該当するとした事例
裁決事例集 第57集 206頁
要旨
請求人は、請求人の代理店は、[1]自己の責任で顧客との契約を行っていること、[2]自己が負担すべき車代、本代及びアルバイト代等を負担していること及び[3]一定の期間において継続して請求人の扱う商品の販売活動を行っている者はほとんどいないことから、代理店は独立した営業者であり、外交員には該当しない旨主張する。
しかしながら、外交員とは、事業主の委託を受け、継続的に事業主の商品等の購入の勧誘を行い、購入者と事業主との間の売買契約の締結を媒介する役務を自己の計算において事業主に提供し、その報酬が商品等の販売高に応じて定められている者をいうと解されている。
これを本件についてみると、[1]請求人と代理店との間で本件販売委託契約が締結されていること、[2]請求人の仕入先との本件販売契約書において顧客との取引がクーリングオフされた場合には、請求人が責任をもってその処置に当たることとされていること、[3]クレジット申込書の販売店欄に請求人の別称の記載がされていることからすれば、本件商品の顧客との売買契約の当事者となるのは、代理店ではなく請求人と認められ、代理店はその当該契約の媒介を行っているものと認められる。
また、本件販売委託契約書の内容に照らせば、代理店は本件販売委託契約書に基づき、請求人から請求人の扱う商品について、請求人と顧客との間の売買契約の申込みの勧誘及び媒介業務の委託を受け、請求人と顧客との間の売買契約の締結を媒介する役務を請求人に提供しているものと認められる。
さらに、代理店が請求人から受領する本件委託販売手数料は、代理店が販売した商品ごとにあらかじめ手数料率に基づき売上金額に応じて算定されており、本件販売委託契約書には契約期間の定めがあることから、代理店は請求人とその契約期間内において継続的な関係を有しているものと認められる。
そうすると、代理店は、請求人との本件販売委託契約書に基づき、請求人の指定する商品について請求人との間の売買契約の申込みの勧誘及び媒介業務の委託を受け、本件経費相当額を負担して継続的に請求人と顧客との商品の売買契約を媒介する役務の提供を行っているものであり、その役務の提供に対する対価の額は、販売した商品ごとに請求人があらかじめ定めた手数料率に基づき、売上金額に応じて支払われていることが認められるから、これらの事実によれば、代理店は外交員に該当し、本件委託販売手数料は外交員報酬に該当するものと認められるから、請求人には所得税法第204条第1項に規定する所得税の源泉徴収義務があると解するのが相当である。
なお、平成8年3月分の源泉所得税の額に誤りが認められるので、当該部分に係る納税告知処分はその一部を取り消すべきである。
所得税法第64条第1項に規定する資産の譲渡代金が回収不能となった事実は、後発的事由を理由とする更正の請求をした日の2か月以上前に生じており、更正の請求は認められないとした事例
裁決事例集 第57集 181頁
要旨
請求人は、本件農地を譲渡した相手方であるHが本件覚書に基づく代替農地の提供を履行しないで行方不明になったことから、同人の所在及び所有財産の調査を行い、本件譲渡代金の一部が回収不能となった事実が生じたことを平成9年10月9日に確認したのであるから、更正の請求は、所得税法第152条で規定する期限内に提出されている旨主張する。
ところで、所得税法第64条第1項で規定する資産の譲渡代金の一部が回収不能となった事実が生じた日がいつであるかの判定は、客観的にみて当該譲渡に係る債権の回収の見込みがないことが確実となった日をもって判定すべきであるから、請求人の行った債務者の調査及び確認の作業が終了した日をもって、本件土地の譲渡代金が回収不能となった事実が生じた日に当たるとすることは相当でなく、本件にあっては、本件契約において請求人の本件譲渡に係る所得税はHが負担することになっていたのを平成9年4月25日に当該所得税を請求人自らが納付せざるを得なくなった段階で、請求人は、Hが請求人に対する債務を履行する資力がないと自認したものと認められるから、同日以前に回収見込みがないことが確実になったというべきである。
そうすると、本件の更正の請求は、本件譲渡代金の一部が回収不能となった事実が生じた日の翌日から二月を経過してなされたことは明らかであるから所得税法第152条の適用は認められない。
要旨
請求人は、[1]代金請求時に重量計算の誤りがあり、代金の一部を返還したのであるから、更正の請求は認められるべきである、[2]原処分庁は法人税基本通達2-2-16を適用して更正をすべき理由がないとしているが、代金の返還は国税通則法施行令第6条第1項第2号に該当するから、更正の請求は認められるべきである旨主張する。
しかしながら、[1]返還金を支払うことを確定したのは翌事業年度であるから、返還金に相当する損失は翌事業年度の損金の額に算入すべきであり、更正の請求の要件を欠くこと、[2]法人税基本通達2-2-16は、当期に発生した損失は既往の事業年度の益金に対応するものであっても当期の損失に計上するという、一般に公正妥当な会計処理の基準の考え方を表したものであることから、更正の請求の要件を欠いており、請求人の主張には理由がない。
本件建物の2階を居住用とし、1階を店舗工場として同族会社に賃貸していた請求人が、当該同族会社の倒産後において1階部分を居住用に改装した事実はなく、また、居住用として利用する必然性も認められないので、1階部分については、居住用財産の課税の特例の適用はできないとした事例
裁決事例集 第57集 239頁
要旨
請求人は、本件建物の1階は賃貸していた同族会社の倒産後は空家同然となったので、同社所有の備品等を整理して、車庫、倉庫及び物干し場等居住用としての利用をしていたのであるから、本件建物の全部について居住用財産の譲渡所得の特別控除等の特例の適用が認められるべきである旨主張する。
しかしながら、本件建物2階は、家族構成からみても一般家庭の居宅としての広さや設備を十分備えた構造となっており、同族会社の倒産後に1階を居住の用に供さなければならないという特段の事情は認められず、また、1階部分を家族が起居するために改装した事実は認められない。
また、請求人は、賃貸していた同族会社の倒産後は1階を生活の拠点として利用していた旨主張するが、[1]2階には台所があるにもかかわらず、その機能のない店舗工場を台所として使用することは考えにくいこと、[2]金融機関から倒産会社の保証債務の履行を迫られている中で、本件建物を相続すれば債務の弁済をしなければならず、他方、相続登記をしなければ譲渡することができないという状況にあって、本件建物を相続すると同時に譲渡をする必要があったものと認められることからすれば、相続後に本件建物の1階を居住用として利用する必然性はなく、例え生活用資産を保管していたとしても、それは一時的なものであり、居住用とは認められないことから、本件建物の1階部分について本件特例を適用することはできない。
請求人が貸付債権の担保として根抵当権を設定していた土地を、自ら競売の申立てを行い、客観的価額を大幅に上回る貸付債権相当額で落札・取得して譲渡した場合において、当該落札による価額は、譲渡所得の金額の計算上控除する資産の取得に要した金額には当たらないとした事例
裁決事例集 第57集 169頁
要旨
請求人は、競売に付された不動産を取得しようとする者が、どうしてもその物件を手に入れたいと思えば競売価額は時価よりも高額になるのはやむを得ないことであり、仮に時価を上回る金額が取得費を構成しないとしても、本件落札価額でなければ本件土地を確実に取得できないと判断したのであるから、当然に譲渡所得の計算上控除される取得に要した金額に含めるべきであることは所得税法の規定からも明らかである旨主張する。
しかしながら、請求人が貸付債権の担保として根抵当権を設定していた本件土地に係る競売において、入札したのは請求人のみであり、しかも落札価額は貸付債権額と同額であること、競売に際しH地方裁判所が決定した本件土地の最低売却価額は、105,000円であり本件落札価額はその約230倍であること、また、落札により取得してから約半年後に113,000円で譲渡したことには経済的合理性が認められないこと等から、本件土地の譲渡所得の金額の計算上、収入金額から控除される取得価額は、請求人が主張する落札価額ではなく、取得時の客観的価額とするのが相当である。
要旨
請求人は、本件事業年度において有価証券売却損を計上したのは、過年度の事業年度に生じた本件有価証券売却損の額について仮装経理(いわゆる粉飾経理)を行ったものを、正常に戻すための修正経理を行ったものであり、損失を仮装計上したものではない旨主張する。
しかしながら、請求人が行った会計処理は、過年度の事業年度において仮装経理した損失を消去するための独自の解釈による処理であり、税法で定められた修正経理とは認められず、本件事業年度の有価証券売却損は架空の損失の計上であると認められることから、原処分庁が行った更正処分は相当である。
借地人に対する立退料支払債務は、確実と認められる債務といえ、債務控除の対象になると認められるが、借地権の引渡請求権(立退料の金額と同額)が相続財産となるので相続税の課税価格は減額されないとした事例
裁決事例集 第57集 429頁
要旨
本件土地については、合意契約により同土地についての賃貸借契約を解除し、借地権を買い戻すことが合意されたのは相続開始より前であること及び相続開始の時点において、合意契約による立退料の全額が未払いであったことがそれぞれ認められる。
そうすると、合意契約による借地権の買戻しの対価としての性格を有するところの立退料は、相続開始の時点までに成立し、それが未払いであり、かつ、当該債務について具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していたというべきであるから、確実と認められる債務に該当するといえる。
一方、被相続人は、本件土地に係る借地権の引渡請求権を有していたと認められ、請求人は、本件土地の底地及び借地権の引渡請求権を相続したものといえる。そして、借地権の引渡請求権の価額は、合意契約において定められた借地権の代価の額(立退料の額)とするのが相当である。
したがって、合意契約による立退料支払債務が債務控除されたとしても、借地権の引渡請求権が相続財産となるので、本件相続に係る課税価格は減額されない。
遺産分割の調停で、他の相続人が延滞税を負担することとされたにもかかわらず、本件公売代金をこの延滞税に配当したのは違法である等との請求人の主張が排斥された事例
裁決事例集 第57集 583頁
要旨
- 請求人は、本件調停条項を根拠として、延滞税は他の相続人が負担すべきものであるから、本件公売代金を当該延滞税に配当したことは違法である旨主張するが、本件調停条項の文言によれば、国に対する乙及び丙の延滞税の納税義務を甲が引き受けるという趣旨ではなく、延滞税相当額の金員を甲(L)から乙(M)及び丙(請求人)に支払うという趣旨にすぎないと解するのが相当であり、また、仮に国に対する乙(M)及び丙(請求人)の納税義務を甲(L)が引き受けるという趣旨であるとしても、納税義務の存否は法律の規定により定まるものであるところ、遺産分割調停における調停条項のような私人問の合意により納税者の国に対する納税義務が消滅すると解すべき法律の規定は存在しないから、請求人の主張には理由がない。
- 本件公売処分に係る公売通知及び不動産等の最高価申込者決定通知自体は、滞納者の権利義務その他法律上の地位に影響を及ぼすものではなく、国税に関する法律に基づく処分に当たらないというべきであるから、本件審査請求は、その対象となる処分を欠く不適法なものである。
なお、本件審査請求が本件公売通知及び本件最高価申込者決定通知自体の取消しを求めるものではなく、これらの通知の対象となった本件公売処分及び本件最高価申込者の決定処分の取消しを求める趣旨であるとしても、本件公売処分の換価財産の買受代金の納付の期限は、平成9年9月16日午後3時00分とされており、本件審査請求書が提出された日は平成9年9月22日であるから、不服申立ての期限を徒過しており、やはり不適法なものである。
要旨
請求人は、請求人がゴルフ会員権をK社に売却し、K社が本件会員権を同日に同額でL社に売却し、請求人が4日後に本件会員権を同額でL社から買い戻したことにより、請求人の所得税が軽減されることは請求人にとって経済的合理性を有するものであり、合理的な方法によって支払税額の軽減を図ることは国民の権利として当然許容されるべきであるとともに、有価証券市場において認められる翌日買戻取引が、ゴルフ会員権の売買において認められないということは考えがたく、一般的にゴルフ会員権の売買における翌日買戻取引は不自然な取引ではないとみなされるべきであり、本件会員権の譲渡は譲渡所得に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人は[1]本件取引の約定を行うとともに本件売却計算書が発行された日のわずか4日後に本件買戻しの約定を行い、[2]本件取引の売買代金を受け取った翌日に本件買戻しに係る売買代金を支払っているが、[3]それらの代金の額は同額であり、[4]当該代金は2日の間にK社から請求人及びL社を経てK社に還流しており[5]本件一連の取引に伴う本件各会員権の名義変更ができず、あるいはそれを行っておらず、[6]請求人が手数料を負担したことを除けば本件一連の取引の前後の状況に変わりなく、[7]本件一連の取引は本件各会員権の譲渡損失を作り出すことを目的としたものと認められる。
したがって、本件一連の取引は形式的な取引であって、実体の伴わないものであり、真に売買があったと認めることができないので、本件取引は所得税法第33条第1項に規定する資産の譲渡があったことにはならない。
請求人が非上場株式を関係会社の代表者に対して額面金額で譲渡した価額は、通常取引価額に比べ低額であるから、その価額と譲渡価額との差額は寄付金であると認定した事例
裁決事例集 第57集 342頁
要旨
請求人が自己の所有する関係会社の非上場株式を同社の代表取締役に1株当たりの額面金額で譲渡した価額は、法人税基本通達9-1-15を援用し評価通達の例により計算した通常取引価額に比べ低額であるから、その価額と譲渡価額との差額は寄付金であるとした原処分に対し、請求人は、本件株式の通常取引価額を単純に純資産価額方式により算定することは、実態認識を誤るものであり、法人税基本通達の本旨にもとり極めて不合理であるから、本件株式の通常取引価額は、将来の配当期待権の価値を資本還元した価額に重点をおき、市場流通性を考慮した純資産価額方式との併用により算定すべきであると主張する。
しかしながら、請求人の主張する算定方式には合理性が認められず、また、取引相場のない株式の価額を定める評価通達は、当該株式の価額を合理的、かつ、その実態に即して評価し得るものと認められ、実務上定着しているので一般的に妥当性と合理性を有するものであるから、当該通達により算定された通常取引価額と譲渡価額との差額は寄付金に当たるとした原処分は相当である。
要旨
請求人は、自己が雑所得の金額の計算の基礎とした本件収入に関し、請求人の勤務先が法人税の課税標準の適否をめぐって提起した法人税更正処分等取消請求事件の訴訟において、本件収入は勤務先の取引先から同社が返還を受けたものと同視できるため、法人税の計算に当たっては同社の収入であると判示され本件判決が確定したことから、本件収入について請求人と勤務先との二重課税の状態を解消するため本件更正の請求をしたものであるが、国税通則法第23条第2項第1号に規定する判決とは、請求人の申告した課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実の得喪変更に関する訴訟に係る確定判決を意味するところ、本件判決は請求人の勤務先が提起した訴訟に係るものであるから、本件判決によって、請求人が本件収入について各年分の雑所得の金額の計算の基礎として申告している事実そのものが影響を受けるものではなく、同条の規定による更正の請求をすることはできない。
物納した土地上の賃貸用建物に係る本件解約損害金及び本件取壊し費用は、不動産所得を生ずべき業務について生じた費用には該当せず、譲渡費用に該当するとした事例
裁決事例集 第57集 96頁
要旨
請求人は、物納した土地上の賃貸用建物に係る本件解約損害金及び本件取壊し費用は、本件賃貸借契約の解約及び本件建物の取壊しに要した費用で、不動産所得を生ずベき業務について生じた費用であるから、所得税法第37条第1項の規定により、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべきであり、また、本件資産損失についても、同法第51条第1項の規定により不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである旨主張する。
しかしながら、本件解約損害金及び本件取壊し費用が、その年分における不動産所得を生ずべき業務について生じた費用に当たるとするためには、請求人が本件各土地を当該業務の用に供する意図を有しているというだけでは足りず、近い将来において確実に当該業務の用に供されるものといえるような客観的な状態にあることを必要とするものと解されるところ、請求人は、従前建築された賃貸マンションと同様の建築計画及び資金計画で新たにビルを建築することを企図していたとはいえ、当該ビルの具体的な建築計画及び利用形態等を確定するには至らず、業者にその建築を打診することもなかったというものであって、これらの事情に照らすと、上記のような客観的な状態にあったとは認められず、本件解約損害金及び本件取壊し費用を不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべきであるとの請求人の主張には理由がない。
請求人は、物納の許可を受けるため、本件賃貸借契約を解約し、本件建物を取り壊して本件各土地を更地にしたもので、そのための費用は物納に直接必要なものと認められ、物納も公法上の代物弁済として譲渡の一態様であることに照らすと、本件解約損害金及び本件取壊し費用は、譲渡費用に該当すると解される。
要旨
請求人らは、公示価格から推定した本件土地の公示価格水準の額に80パーセントを乗じた額により本件土地の価額を算定すべきである旨主張するが、公示価格水準の額に80パーセントを乗じることは、課税庁内部の時価の評価に関する取扱いを統一するに当たり、評価上の安全性等を考慮して取り入れられているのであって、課税庁が実務上少なくともこれを乗じた額を下回ることは通常ないであろうと認めるところにより、課税処分等をするための計算過程上の一要素にすぎないものである。
一方、請求人らの主張する公示価格から推定した本件土地の価額は、公示価格との均衡を考慮しつつ、本件土地の特殊性をしんしゃくした上で求めた価額であるとするならば、これに80パーセントを乗じる理由はなく、また、そうしなければ課税の公平の原則に反するともいえないから、請求人らの主張は採用できない。
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