裁決事例 裁決事例集 第140集
更正の請求ができる場合に当たらず、租税特別措置法第41条第10項に規定する省エネ住宅特別控除を適用することはできないとした事例(令和5年分の所得税及び復興特別所得税の更正をすべき理由がない旨の通知処分・棄却)
裁決事例集 第140集
ポイント
本事例は、請求人が租税特別措置法第41条第1項に規定する住宅借入金等特別控除を適用した確定申告書について、国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことには該当しないから、更正の請求ができる場合に当たらず、同条第10項に規定する省エネ住宅特別控除を適用できないとしたものである。
要旨
請求人は、租税特別措置法(令和6年法律第8号による改正前のもの)第41条《住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除》第1項に規定する住宅借入金等特別控除(一般の住宅借入金等特別控除)を適用した確定申告(本件確定申告)をしたものの、請求人が取得した家屋は同条第10項に規定するエネルギー消費性能向上住宅に該当するから、国税通則法第23条《更正の請求》に規定する更正の請求により、一般の住宅借入金等特別控除ではなく租税特別措置法第41条第10項に規定する住宅借入金等特別控除(省エネ住宅特別控除)を適用することができる旨主張する。
しかしながら、一般の住宅借入金等特別控除及び省エネ住宅特別控除の各要件をいずれも充足する場合には、そのいずれを適用するかを選択して確定申告をすることができるところ、本件確定申告の内容は、一般の住宅借入金等特別控除の適用要件を満たすものであり、その計算にも誤りがないことからすると、本件確定申告は、客観的にみれば税法の規定に従ったものであるから、国税通則法第23条の要件に該当せず、省エネ住宅特別控除を適用することはできない。
参照条文等
国税通則法第23条第1項 租税特別措置法(令和6年法律第8号による改正前のもの)第41条第1項、第10項
参考判決・裁決
東京高裁平成23年7月29日判決(税資261号順号11724)
請求人の代表者が故意に売上げの一部を除外した会計仕訳をしたり、当該売上げに係る資料を税理士法人に提出しなかったとは認められないとした事例(令和2年4月1日から令和3年3月31日まで及び令和3年4月1日から令和4年3月31日までの各事業年度の法人税に係る重加算税の各賦課決定処分、令和2年4月1日から令和3年3月31日まで及び令和3年4月1日から令和4年3月31日までの各課税事業年度の地方法人税に係る重加算税の各賦課決定処分、令和2年4月1日から令和3年3月31日まで及び令和3年4月1日から令和4年3月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分・一部取消し)
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ポイント
本事例は、請求人の代表者らと税理士法人の担当者らでなされたメールの内容等を踏まえると、請求人の代表者が故意に売上げの一部を除外した会計仕訳をしたり、当該売上げに係る資料を税理士法人に提出しなかったとは認められないとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人の古物等の売上げ(本件売上げ)について、請求人の代表者(本件代表者)が、自身で総勘定元帳の基となる会計仕訳を入力していたところ、本件代表者が、故意に、本件売上げの会計仕訳を入力せず、また、本件売上げに係る資料を請求人の確定申告書を作成した税理士法人(本件税理士法人)に渡さなかったのであるから、当該各行為は、国税通則法第68条《重加算税》第1項又は第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する旨主張する。
しかしながら、本件代表者が、本件売上げの会計仕訳をしなかったとまでは認められない。また、本件売上げに係る資料の一部は、請求人から本件税理士法人に提出されていると認められ、その余の提出された事実が明らかではないものについても、少なくとも本件代表者が故意に提出しなかったとは認められない。したがって、本件代表者が、故意に、本件売上げに係る会計仕訳を入力しなかったこと及び本件売上げに係る資料を本件税理士法人に渡さなかったことはいずれも認められないから、請求人に、同条第1項又は第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったとは認められない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁平成6年11月22日第三小法廷判決(民集48巻7号1379頁) 和歌山地裁昭和50年6月23日判決(税資82号70頁) 名古屋地裁昭和55年10月13日判決(税資115号31頁) 最高裁昭和62年5月8日第二小法廷判決(集民151号35頁) 令和6年3月25日裁決(裁決事例集№134)
取引相場のない株式の譲渡に係る所得税法第59条第1項の「その時における価額」につき、所得税基本通達59-6に定められた方法により算定した価額によることが相当であるとした事例(令和3年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
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ポイント
本事例は、発行法人(本件法人)の支配株主と厳しく対立していたとの請求人の主張する事情をもって、所得税基本通達59-6の定めに従った評価方法によっては、本件法人が発行した取引相場のない株式の時価を適正に算定することはできない特別の事情と認めることはできないとしたものである。
要旨
請求人は、取引相場のない株式(本件株式)の発行法人(本件法人)の支配株主と厳しく対立していたため、本件法人を支配していたとはいえず、支配力を制限された「中心的な同族株主」であって、所得税基本通達59-6《株式等を贈与等した場合の「その時における価額」》の定めによる評価方法では本件株式の客観的交換価値を適正に算定することのできない特別の事情があるから、当該評価方法によるべきではない旨主張する。
しかしながら、(同通達で借用されている)財産評価基本通達(評価通達)が「同族株主」あるいは「中心的な同族株主」の範囲を形式的に支配従属関係が及ぶとされる一定の範囲のものとし、画一的に同族関係者の範囲を定めることとしているのは、評価を行う者の恣意性の排除及び回帰的かつ大量に発生する課税事務上の迅速な処理の要請並びに課税の公平を確保するという観点からむしろ合理的であるというべきであり、請求人の主張する事情をもって、評価通達の定めに従った評価方法によっては本件株式の時価を適正に算定することのできない特別の事情と認めることはできない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和43年10月31日第一小法廷判決(集民92号797頁) 最高裁昭和47年12月26日第三小法廷判決(民集26巻10号2083頁) 最高裁令和2年3月24日第三小法廷判決(集民263号63頁) 東京高裁平成28年9月8日判決(税資266号順号12898) 東京高裁令和3年5月20日判決(税資271号順号13564)
請求人が自家栽培したさつま芋を干し芋に加工して販売する事業は、消費税法施行令第57条《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》第5項第3号に規定する第三種事業(製造業)に該当するとした事例(令和2年1月1日から令和4年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第140集
ポイント
本事例は、請求人が自家栽培したさつま芋を干し芋に加工して販売する事業は、日本標準産業分類の大分類「製造業」に分類されるから、当該事業は、簡易課税制度の適用において第三種事業に分類される製造業に該当するとしたものである。
要旨
請求人は、自家栽培したさつま芋を干し芋に加工して販売する事業(本件干し芋事業)は、日本標準産業分類の大分類に掲げる「農業」に該当するから、消費税法施行令第57条《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》第5項第3号に規定する第三種事業(製造業)に該当しない旨主張する。
しかしながら、消費税法施行令第57条第5項第3号の規定により第三種事業に該当することとされている事業の範囲は、おおむね日本標準産業分類の大分類に掲げる分類を基礎として判定することが合理的であるところ、日本標準産業分類の総説には、農家が自家栽培した原材料を使用して製造活動を行っている場合は原則として農業に分類されるが、①同一構内に工場、作業所とみられるもの(作業所等)があり、かつ、②その製造活動に専従の常用従業者がいる場合には農業には分類されず製造業に分類される旨が記載されている。そして、①請求人の自宅敷地内にある建物には、干し芋の加工のための機械等が設置され、作業所等の機能を有していたといえること、②請求人が干し芋の加工時期のみ雇用し、加工作業に従事している者は、雇用期間及び作業内容からすると、本件干し芋事業の製造活動に専従する常用従業者に該当することからすれば、本件干し芋事業は、日本標準産業分類の大分類に掲げる「製造業」に該当し、消費税法施行令第57条第5項第3号に規定する第三種事業(製造業)に該当する。
参照条文等
消費税法第37条(令和6年法律第8号による改正前のもの)第1項 消費税法施行令第57条第1項及び第5項 消費税法施行令等の一部を改正する政令(平成28年政令第148号)附則第11条の2第1項 消費税法基本通達(令和5年8月10日付課消2-9ほか5課共同による改正前のもの)13-2-4
請求人が行ったとしていた各仕入取引に係る資産の譲受け及び各販売取引に係る資産の譲渡は、請求人に帰属しないとした事例(令和2年10月課税期間から令和4年7月課税期間他の消費税等の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却)
裁決事例集 第140集
ポイント
本事例は、請求人は、各販売取引について資産の譲渡等に係る対価を享受していないことから、消費税法第13条《資産の譲渡等又は特定仕入れを行った者の実質判定》の規定に基づき、各仕入取引に係る資産の譲受け及び各販売取引に係る資産の譲渡は、請求人に帰属しないとしたものである。
要旨
請求人は、消費税法第13条《資産の譲渡等又は特定仕入れを行った者の実質判定》は、租税回避を目的とした事案への適用を想定した規定であり、独立した事業者間で締結された契約に沿って行われた取引に適用される余地はないところ、請求人が仕入先又は売上先との間の各契約の中で各取引に係る商品の種類、数量及び金額を定めていること、契約は当事者の自由な意思に基づいて結ぶことができ、当事者の意思どおりの効果が認められることなどから、請求人は、各販売取引に係る対価を売上先から享受し、課税仕入れに係る対価を仕入先に支出しており、各取引に同条は適用されない旨主張する。
しかしながら、消費税法第13条の趣旨は、資産の譲渡等の法形式上の帰属主体と法律的実質的な帰属主体が一致しない場合においては、後者すなわち実質的に資産の譲渡等に係る対価を享受する者を資産の譲渡等の帰属者とするものと解されるところ、法律的実質的にみて、請求人は、各販売取引について資産の譲渡等に係る対価を享受していないから、同条の規定に基づき、請求人以外の者が資産の譲渡をしたものとして同法を適用すべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
大阪地裁平成25年6月18日判決(税資263号順号12235) 津地裁令和2年10月1日判決(税資270号順号13457) 広島地裁平成18年6月28日判決(税資256号順号10436) 令和4年11月9日裁決(裁決事例集No.129) 平成28年8月22日裁決(裁決事例集No.104)
定年年齢を超えて勤務していた医師に支払った一時金は、退職を原因として給付されたものと認められるから、退職所得に該当するとした事例(令和4年3月分の源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分並びに令和4年12月分の源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の納税告知処分・全部取消し)
裁決事例集 第140集
ポイント
本事例は、病院等を運営する請求人が、雇用する医師の定年を定める旨の就業規則の改正を行い、当該改正時、既に定年に達していた医師らに対して退職金として支払った一時金について、所得税法第30条第1項に規定する退職手当等に該当するとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人が運営する病院等で勤務する医師ら(本件医師ら)に対し退職金の名目で支払った金員(本件一時金)について、請求人と本件医師らの間には、退職及び再雇用という実質がなく、従来の勤務関係がそのまま継続していたことが推測され、本件医師らは、再雇用とされた前後で賃金が同水準であり、その役職も変動がなかったと推認されること等から、勤務関係が終了したとも、勤務関係の性質、内容及び労働条件等において重大な変動があって、形式的には継続している勤務関係が実質的には単なる従前の勤務関係の延長とはみられないなどの特別の事実関係があったとも認められず、また、本件一時金が合理的な理由による退職金支給制度の実質的改変により精算の必要があって支給されたものとも認められないから、本件一時金は所得税法第30条《退職所得》第1項に規定する退職手当等に該当しない旨主張する。
しかしながら、請求人の理事を兼務する医師(本件兼務医師)を除く本件医師らについては、新たな雇用契約(本件各雇用契約)に至る経緯及び内容を踏まえると、雇用形態の法的性質は大きく異なっており、請求人を取り巻く状況などを踏まえると、本件各雇用契約の前後で業務内容及び賃金等の変動がないことをもって従来の勤務関係が終了していないとみるのは相当でなく、請求人の本件各雇用契約締結の目的も合理的な理由を有するから、従来の勤務関係の終了があったと認められる。また、本件兼務医師については、理事の身分に変更がないから請求人における勤務関係が終了したとはいえないが、使用人としては他の医師らと同様に従来の勤務関係が終了したと認められ、本件兼務医師に係る本件一時金は、理事としての職務に対するものではないこと等から、使用人としての関係においては、実質的にみて所得税法第30条第1項に規定する「退職により一時に受ける給与」というための各要件の要求するところに適合し、課税上、これと同一に取り扱うことが相当であり、同項に規定する「これらの性質を有する給与」に該当すると認められる。したがって、本件一時金は、所得税法第30条第1項に規定する退職手当等に該当する。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和58年9月9日第二小法廷判決(民集37巻7号962頁) 最高裁昭和58年12月6日第三小法廷判決(集民140号589頁)
原処分庁が行う配当処分による配当権者には該当しないとしても、当該配当処分に係る差押債権は自らに帰属する旨主張する第三者は、当該債権に係る換価代金等の交付が終了した後においても、審査請求を行うことができるとした事例(配当処分・全部取消し)
裁決事例集 第140集
ポイント
本事例は、換価された財産が滞納者に帰属していたことを前提にして配当処分がされているところ、同処分の対象となった財産が仮に第三者に帰属していた場合、当該配当処分は違法であり、第三者の基本的権利である財産権を直接的に侵害していることとなるから、処分の名宛人ではない第三者であっても国税通則法第75条第1項に規定する「不服がある者」に当たり、換価代金等の交付が終了した後においても不服申立ての利益が認められるとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人には、配当処分(本件配当処分)における配当権者となる事実が存在していないため、取消しを求める法律上の利益を有しておらず、審査請求は不適法である旨主張する。
しかしながら、滞納法人が有するとして原処分庁が差し押さえた支払請求権(本件債権)が仮に請求人に帰属していたとすると、請求人は、本件配当処分により自己の財産権を侵害され又は必然的に侵害されるおそれがある者に当たる。またその場合、帰属を誤った差押えによって原処分庁に生じた利得を保持すること自体が請求人の権利を侵害している状態を継続することにほかならず、原処分庁は当該利得を請求人に交付する必要があるほか、請求人は国に対する不当利得返還請求の前提として、本件配当処分の公定力を排除する必要があると解すべきである。したがって、請求人は、本件配当処分の効力が消滅した場合であっても、本件配当処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有するから、本件配当処分について、国税通則法第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第1項に規定する「不服がある者」に当たると認められ、審査請求は適法である。そして、本件債権は、請求人と第三債務者との間で成立したと認められる売買契約に基づいて発生したと認められるから、本件配当処分は、滞納者に帰属しない財産を換価した代金等を配当したものである。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和53年3月14日第三小法廷判決(民集32巻2号211頁) 最高裁令和2年6月26日第二小法廷判決(民集74巻4号759頁) 平成30年10月29日裁決(裁決事例集№113)
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