裁決事例 裁決事例集 第141集

裁決事例 裁決事例集 第141集

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令和7年10月29日裁決

相続税法第55条の規定に基づく申告等により確定した遺産の価額を前提としない更正の請求は、同法第32条第1項第1号に基づく更正の請求には該当しないと判断した事例(平成28年3月相続開始に係る相続税の各更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の各通知処分・棄却)

裁決事例集 第141集

ポイント

 本事例は、相続税法第55条の規定に基づく申告等により確定した遺産が先行相続の遺産分割によって減少したことを理由とする更正の請求について、当該申告等により確定した遺産の価額を前提とするものではないため、同法第32条第1項第1号に基づく更正の請求には該当しないとしたものである。

要旨

 請求人らは、相続税法第55条《未分割遺産に対する課税》の規定に基づく申告等(その後に更正があった場合にはその更正をいう。以下同じ。)により確定した二次相続(本件相続)に係る遺産が、一次相続に係る遺産分割により減少した場合であっても、相続税法第32条《更正の請求の特則》第1項第1号の規定は適用されると解釈すべきであり、同号に規定する事由を理由とした更正の請求ができる場合に該当する旨主張する。
 しかしながら、申告等により確定した遺産の価額を前提としない更正の請求は、相続税法第32条第1項第1号に基づく更正の請求に該当しないところ、請求人らは、相続に係る被相続人が一次相続に係る遺産を取得しないことなどを内容とする遺産分割の成立により、本件相続に係る遺産の総額が減少したという理由で更正の請求を行っているのであるから、同号に規定する事由に基づく更正の請求には該当しない。

参照条文等

相続税法第32条第1項第35条第3項第55条

参考判決・裁決

最高裁令和3年6月24日第一小法廷判決(民集75巻7号3214頁) 静岡地裁平成26年3月14日判決(税賄264号順号12431)

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令和7年10月23日裁決

不動産の贈与に係る第二次納税義務者の受けた利益の額の算定においては、公売財産の評価に準じて算定するのが相当であり、審判所による不動産鑑定評価を参考として判断した事例(第二次納税義務の納付告知処分・棄却)

裁決事例集 第141集

ポイント

 本事例は、国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》の第二次納税義務に規定する「受けた利益」の額の算定に当たり、請求人と原処分庁との間で10倍以上の開差が見られたことから、公売財産の評価に準じて算定するのが相当であるとして、国税不服審判所における不動産鑑定評価による認定額を参考として判断を行ったものである。

要旨

 請求人は、請求人が滞納者から受けた土地6筆(本件各土地)の贈与(本件贈与)に係る、国税徴収法(徴収法)第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に規定する「受けた利益」の額は、本件各土地の固定資産税評価額から算出される実勢価格又は請求人が依頼した不動産業者による査定額に基づくべきであり、原処分庁が判断した請求人の「受けた利益」の額は、当該金額が社会通念上不相当に高額で違法である旨、また、審判所において不動産鑑定士による本件各土地の鑑定評価を実施して、その鑑定評価額に基づいて算出される「受けた利益」の額を超える部分を取り消すべきである旨主張する。
 しかしながら、徴収法第39条に規定する「受けた利益」の額の算定に当たっては、公売財産の評価に準じて算定するのが相当であり、審判所において行った不動産鑑定士による鑑定評価に不合理な点はなく、同評価による鑑定評価額を本件贈与時における本件各土地の時価であると認めるのが相当であり、原処分庁の主張額は、当該鑑定評価による金額の範囲内であるから取り消すべき部分はない。

参照条文等

国税徴収法第39条 国税徴収法基本通達第39条関係12 国税徴収法基本通達第39条関係16

参考判決・裁決

令和元年6月4日裁決(裁決事例集No.115)

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令和7年10月20日裁決

請求人に重加算税の賦課要件を満たす行為があったとは認められないとした事例(①平成28年分及び平成29年分の所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに重加算税の各賦課決定処分、②平成30年分から令和3年分までの所得税及び復興特別所得税に係る重加算税の各賦課決定処分、③平成30年分から令和3年分までの所得税及び復興特別所得税の各更正処分、④令和元年分の所得税及び復興特別所得税に係る過少申告加算税の賦課決定処分、⑤令和4年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに無申告加算税の賦課決定処分、⑥平成31年1月1日から令和3年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各決定処分並びに重加算税及び無申告加算税の各賦課決定処分(重加算税の各賦課決定処分については、いずれも各変更決定処分により無申告加算税相当額を超える部分が取り消された後のもの)、⑦令和4年1月1日から令和4年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の決定処分並びに無申告加算税の賦課決定処分・①全部取消し、②一部取消し、③~⑦棄却)

裁決事例集 第141集

ポイント

 本事例は、原処分庁が国税通則法第68条《重加算税》第1項又は第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たすとして主張する事情によっては、請求人が、隠蔽又は仮装に該当する積極的な行為を行ったとは認められず、また、当初から過少申告等を意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき過少申告等をしたとも認められないとして、請求人に重加算税の賦課要件を満たす行為があったとは認められないとしたものである。

要旨

 原処分庁は、請求人が、①取引先(本件法人)からの売上げ(本件売上げ)を請求人の妻名義である預金口座(本件口座)に振り込ませていたこと、②本件売上げに係る手書きの請求書を作成していたこと、③実際の収入金額を把握しており、申告した収入金額がそれより少ないことを認識していたこと、④申告に当たっては、まず経費の合計額を算出し、当該合計額に所得控除額を加え、納税額が支払える金額になるように収入金額と所得金額を決めていたことからすれば、請求人には、隠蔽又は仮装に該当する積極的な行為がある、又は、請求人が、当初から過少申告等を意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき過少申告等をしたものと認められることから、国税通則法第68条《重加算税》第1項又は第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たす旨主張する。
 しかしながら、上記①についてみると、請求人の売上先は本件法人のみであり、請求人は本件口座に振り込まれた本件売上げについて過少であったとはいえ申告していたことからすると、上記①の行為により本件売上げの存在を隠蔽又は事実をわい曲したとはいえない。また、上記②ないし④については、請求人が意図的に過少申告をしたことを示す事情に該当すると認められるものの、請求人が何らの基準や根拠のない「支払える金額」を納税額として申告書に記載して過少申告をし続けたと評価できるにとどまる。したがって、請求人は、隠蔽又は仮装に該当する積極的な行為を行ったとは認められず、また、当初から過少申告等を意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき過少申告等をしたとも認められないことから、請求人に重加算税の賦課要件を満たす行為があったとは認められない。

参照条文等

国税通則法第68条第1項第2項

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令和7年10月15日裁決

無申告加算税賦課決定処分に理由不備はなく、期限後申告は同決定を予知したものではないときに該当しないとした事例(令和元年分から令和5年分の所得税及び復興特別所得税に係る無申告加算税の各賦課決定処分・棄却)

裁決事例集 第141集

ポイント

 本事例は、原処分庁が請求人に実地調査の事前通知をし、実地調査前に期限後申告がなされ、その後の実地調査を経て所得税等に係る無申告加算税賦課決定処分がなされたことに関し、原処分に理由不備はなく、期限後申告は同決定を予知したものではないときに該当しないとしたものである。

要旨

 ①請求人は、原処分に係る通知書に記載された理由には、実地の調査(本件実地調査)前に原処分庁が行ったとする調査内容の記載がないから、原処分の理由の提示には重大な瑕疵がある旨主張する。
 しかしながら、原処分の理由には、無申告加算税が賦課されることの基礎となる事実として、対象年分の所得税等の期限後申告書(本件各期限後申告書)の提出年月日、賦課決定の根拠となる法令及び無申告加算税の金額を挙げる等、原処分庁による判断結果並びにその基礎とされた根拠法令及び事実関係の内容が具体的に明示されており、行政庁の判断の慎重と合理性を担保して、その恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らしめて不服の申立てに便宜を与えるという行政手続法第14条《不利益処分の理由の提示》第1項の趣旨を充足する程度に具体的に明示されたものといえるから、原処分の理由の提示に不備はない。
 ②請求人は、本件実地調査に係る事前通知(本件事前通知)を受けた後、本件実地調査開始前に本件各期限後申告書を原処分庁に提出しており、原処分庁は、本件各期限後申告書が提出される前に請求人に対して課税標準等又は税額等について何ら示していないから、請求人の本件各期限後申告書の提出は、国税通則法(通則法)第66条《無申告加算税》第1項括弧書に規定する「調査があったことによりその申告に係る国税について決定があるべきことを予知してなされたものでないとき」に該当する旨主張する。
 しかしながら、原処分庁は、請求人に勤務先からの給与(本件給与)及び取引先からの報酬(本件報酬)が支払われていること及び請求人の本件各年分の所得税等の確定申告がされていないことを把握した上で、請求人に対して、本件報酬に係る資料を提出するよう依頼するとともに、質問調査等を実施するための日程調整等を行ったこと等からすれば、請求人が本件報酬について確定申告をしていない不適正なものであることが発覚し、決定に至るであろうということが客観的に相当程度の確実性をもって認められる段階に達していたというべきである。また、請求人は、同取引先に対する実地の調査に係る取引先調査において、税務署職員から、同取引先との取引状況等を聴取されていた上、原処分庁から本件事前通知を受けた際に、本件実地調査の目的が請求人の所得税等の納税義務の有無の確認であることの説明を受け、本件給与以外の所得の有無を問われていたこと等からすれば、やがて決定に至るべきことを認識した上で本件各期限後申告書を提出したものと認められる。よって、本件各期限後申告書の提出は、通則法第66条第1項に規定する「調査があったことによりその申告に係る国税について決定があるべきことを予知してなされたものでないとき」に該当しない。

参照条文等

行政手続法第14条第1項 国税通則法第66条第1項第1号

参考判決・裁決

最高裁昭和38年5月31日第二小法廷判決(民集17巻4号617頁) 最高裁平成23年6月7日第三小法廷判決(民集65巻4号2081頁) 東京高裁平成14年9月17日判決(訟月50巻6号1791頁) 令和5年12月7日裁決(裁決事例集No.133)

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令和7年10月1日裁決

国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に規定する利益が現に存する限度の額につき、金錢債権の評価に当たっては、債務者の資産状況、支払能力等の債務者側の事情を踏まえて算定するのが相当であるところ、本件債務者には本件求償債権の回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるような特別な事情があったと認められる等の理由から、その価額は零円と評価するのが相当とした事例(第二次納税義務の納付告知処分・全部取消し)

裁決事例集 第141集

ポイント

 本事例は、国税徴収法第39条に規定する利益が現に存する限度の額につき、求償債権に係る債務免除がされた時において予想される回収可能額によって評価することが相当であり、本件債務者には本件求償債権の全部又は一部の回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるような特別な事情があったと認めた結果、本件債務免除により受けた利益の額は現に存しないとしたものである。

要旨

 原処分庁は、債権者(本件債権者)から金銭を借り受けた債務者(本件債務者)の債務(本件債務)の連帯保証人であった本来の納税義務者(滞納者)が、自己所有土地を競売による売却手続によって売却されたことにより、滞納者が本件債務者に対する求償債権(本件求償債権)を取得し、その後、滞納者が本件債務者に対し本件求償債権を免除した(本件債務免除)という事実関係において(その後、請求人が本件債務者を吸収合併した。)、本件債務免除時に、本件債権者が滞納者に対し、本件求償債権を放棄するよう求めていた事情は存せず、本件求償債権の全部又は一部の回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるような特別な事情があったとは認められないことから、請求人が本件債務免除により受けた利益が現に存する限度の額は本件求償債権の額面上の金額と同額となる旨主張する。
 しかしながら、金銭債権の評価に当たっては、債務者の資産状況、支払能力等の債務者側の事情を踏まえて算定するのが相当であるところ、本件債務者は、本件債務免除当時、法的整理(再生手続、破産手続等)の開始決定や事業の休廃業等の事実はなかったものの、本件債務の弁済を差し置いて、本件債務者が保有する資産を換価するなどした上で、本件求償債権に対する弁済を行うことは、事実上不可能ないし著しく困難であったと認められる。そうすると、本件債務者には本件求償債権の全部又は一部の回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるような特別な事情があったと認められ、その支払能力等を考慮すると、本件債務免除時における本件求償債権の価額は零円と評価するのが相当であるから、本件債務者(本件債務者を吸収合併した請求人)が本件債務免除により受けた利益の額は現に存しない。

参照条文等

国税徴収法第39条 国税徴収法基本通達第39条関係14

参考判決・裁決

平成30年6月7日裁決(裁決事例集No.111) 東京高裁令和3年12月9日判決(裁判所Web)

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