裁決事例 裁決事例集 第32集
要旨
請求人は、貸店舗併用住宅の譲渡をし、その譲渡について特定の事業用資産の買換えの特例と居住用財産を譲渡した場合の特別控除の特例の適用を併せて受ける場合に、その貸店舗の賃借人を立ち退かせるために支払った立退料は、建物全体の立退きのために支払ったものであるから、譲渡資産のうち事業用部分(貸店舗部分)と居住用部分の双方に配賦すべきであると主張するが、所得税法上資産を譲渡するための立退料は譲渡費用に該当するものの、それが事業用資産に係るものか、他の資産に係るものかについてはその支払の基因となった資産が事業の用に供されているかどうかによって判定し、仮に支払の間接的効果が他に及ぶとしても、その間接的効果は判定上格別の考慮を要せず、本件立退料が不動産貸付業の用に供されている資産について支払われたものであるから、全額事業用部分のみに配賦すべきものである。
経営不振のため、支払債務の発生事業年度に損金に算入しなかった借入金の利息を経営好転後に支払っても、その支払の日の属する事業年度の損金には算入されないとした事例
裁決事例集 第32集 204頁
要旨
請求人は、本件支払利息に係る元本は、請求人が経営不振の時に親会社から受けた借入金であり借入当時には利息を支払える状況になく、本件利息の支払は免除されるものと考えて発生各事業年度の損金の額に算入しなかったものであるが、その後、経営状況が好転したので、親会社と具体的支払期日を定める覚書を取り交わし、それに基づいて本件事業年度に支払ったものであるから本件各事業年度の損金の額に算入されるべきであると主張するが、本件支払利息は、金銭消費貸借契約に基づく借入金の利息であるから、その元本の利用期間に応じて発生し、同時に債務として確定したものと認められるので、その債務の確定した各事業年度の損金とすべきであり、支払った日の属する事業年度の損金に算入することはできない。
要旨
請求人は、借入金で取得した土地のうち、未利用部分の土地は、貸付けし得る状態にあったものであるから、その部分に対応する借入金の利子は、必要経費に算入すべきであると主張するが、一般に、土地が貸付けし得る状態にあれば、それだけの理由でその土地の費用が必要経費となるものではないし、また、未利用部分の土地に隣接する部分の土地が現に貸農園として貸し付けられてはいるものの、その賃貸料は、固定資産税を賄う程度のものであること、貸農園としては、その土地に特別な施設等の設置を要しないものであることから、その貸付けは単なる空地利用の程度のものと認められるので、現に貸付けによる収入がない未利用地部分の土地の費用を必要経費に算入することは相当でない。
要旨
プラント契約上の契約当事者は、国内商社と外国の公団であるが、本件プラント取引の実態をみると、国内商社は、商社金融、輸出入手続等の総合商社機能を担当し、請求人は、プラント機器の調達と契約プラントの企画、設計から連続運転までの各段階での総合的技術供与(総合エンジニアリング)を担当したとみるのが相当であり、請求人の履行すべき業務が、国内商社に対する機器類の引渡しでもっていったん終了したと考えることは取引実態に適合しているとはいい難く、請求人の調達した機器類が製造プラントとして所定の性能を発揮しはじめて本件プラント取引が終了したとみるべきであるから、当該機器類の販売に係る収益の計上時期は、請求人が契約プラントを完成して外国の公団に引き渡した日とするのが相当である。
輸出取引に係る収益計上基準として船荷証券引渡基準(荷為替取組日基準)は公正妥当な会計処理の基準として相当なものとはいえず、船積日基準によるのが相当であるとした事例
裁決事例集 第32集 170頁
要旨
請求人は、船荷証券は商品を表象する有価証券であって、その引渡しによって商品の所有権が移転するものであるから、船荷証券を荷為替手形に添付して銀行に引き渡す日を商品の引渡しの日とする船荷証券引渡基準は法人税基本通達に定める引渡基準に該当すると主張するが、船荷証券引渡基準は、貿易慣習における所有権及び危険負担の移転時期に合致しない基準であり、また、売主は荷為替手形を銀行に売り渡すことにより、初めて輸出商品に対する所持・支配を失うものでなく、しかも、引渡しの時期を比較的自由に決定できるし意性が入り込む余地があるものであるから、公正妥当な会計処理の基準として相当とはいえない。
結局、商品の占有移転の時期及び経理実務の慣習からみて、輸出取引の収益計上基準としては、船積日基準によるのが相当である。
要旨
請求人は、本件旅行は、役員相互間の意思疎通を図るとともに採石場の視察及び取引先等の事業関係者にも該当する役員の接待を行い事業の円滑化に資する目的で行ったものであるから、本件旅行費用は業務遂行上必要なものであり交際費に該当すると主張するが、本件旅行において、採石場の視察を行ったとの事実は認められず、取引先等の事業関係者という者は役員の立場にある者であることなどから取引関係者の接待ということもいえず、また、旅行中に役員間の意見対立の調整等が図られたという事実も認められないので、本件旅行は役員のみで行われた観光目的の旅行であり、その費用は業務遂行上必要なものと認められず、役員賞与に該当する。
要旨
被相続人が相続人たる請求人に使用貸借により貸し付け、請求人が賃貸建物の敷地として利用していた本件宅地の価額は、一般に土地使用借人の敷地利用権が権利性の薄弱なることを理由に零と評価され、借家人の敷地利用権が土地使用借人の敷地利用権に従属し、その範囲内の権能にすぎないところから、本件宅地が自用のものであるとした場合の価額により評価するのが相当である。
交換により取得した土地は、交換の相手方が取得してから事業の用に供した事実もなく、交換のために取得したと認められるから、交換の特例は適用されないとした事例
裁決事例集 第32集 254頁
要旨
本件取得資産は、交換取引の相手方が取得してから交換の時まで1年以上経過しており、その間請求人に賃貸していたので、同社が本件取得資産を交換目的で取得したと断定することができないと請求人は主張するが、同社が本件取得資産を取得して1か月未満という極めて短期間のうちに、本件取得資産と請求人が所有する本件譲渡資産との交換の覚書を取り交わすと同時に、両物件について相互に賃貸し合う旨の不動産賃貸契約を締結したのは、実質的に不動産の賃貸を目的としたものではなく、あくまでも便宜的、形式的措置であり、他に同社が本件取得資産を事業の用に供した事実もなく、地域開発のコンサルタントという同社の事業内容等も勘案するとき、本件取得資産を同社が交換のために取得したと認めるのが相当であるから、法人税法第50条第1項本文かっこ書により交換の特例の適用はない。
要旨
請求人は、特定の政治団体の中傷行為等を排除するためにやむなく支出した金員は、その支出の経緯や当該政治団体が請求人の事業関係者等に当たらないことから、寄付金や交際費等に該当しないと主張するが、一般に寄付金とは、金銭その他資産の贈与又は経済的な利益の供与のうち、事業の遂行に直接関係のあるもの以外のもの、すなわち、事業の遂行に直接関係ないもの及び事業の遂行との関係が明らかでないものと解され、特定の政治団体に対する本件支出金は、請求人の事業遂行に直接関係ないものであるので寄付金に該当すると認めるのが相当である。
要旨
本件保険契約は、万一の場合の保障と貯蓄との二面性のある養老保険契約であって、保険金受取人である従業員は、保険事故の発生又は保険期間の満了の際には当然に保険契約上の利益、すなわち保険金請求権を自己固有の権利として原始的に取得するものであり、請求人はその報酬として保険者に対し本件保険料を支払い損金に算入していることから、当該従業員は本件保険料相当額の経済的利益を亨受していると認めるのが相当であり、本件保険料の額を給与所得の収入金額と認定し、源泉所得税の納税告知をした原処分は違法とはいえない。
譲渡担保として提供していた土地の受戻しは、資産の取得に該当しないので、その土地を受け戻すために要した和解の費用及び弁護士費用は、土地の取得費に当たらないとした事例
裁決事例集 第32集 67頁
要旨
一般に、債務者が自己所有の物件を譲渡担保に供した場合には、債権者は当該物件の担保的価値を把握するにとどまり、同物件についてその他の権能は引き続き譲渡担保設定者が保有しているのであるから、譲渡担保権の実行により目的物件が確定的に債権者に帰属する前に設定者が同物件の受戻しをしたときは、これをもって所得税法にいう資産の取得があったということはできないし、それゆえ、その受戻しをするために設定者が支払った金員は、たとえそれが何らかの事情により本来弁済すべき被担保債務額を超えて支払うことを余儀なくされたものであっても、これを資産の取得に要した費用とみることはできない。
本件の和解に基づき支払った金員及び弁護士に支払った金員は、いずれも請求人において譲渡担保に供していた土地を自己に受け戻すために要した費用であることが明らかであるから、所得税法第38条第1項所定の資産の取得に要した金額に当たらない。
要旨
請求人が、市長が亡父を特別養護老人ホームに収容を委託したことに伴い、請求人が老人福祉法第28条の規定により扶養義務者として負担した措置費の一部負担金は所得税法第73条に規定する医療費に該当すると主張するが、当該負担金は、亡父が特別養護老人ホームで受けた措置とは無関係に、市長が扶養義務者費用徴収基準によりその負担能力に応じて請求人から徴収したものであって、当該負担金のうちには、医師等により診療等の費用等に相当するものは含まれていないので、医療費控除の対象となる医療費には該当しない。
要旨
山砂採取跡地の埋戻し費用について、原処分庁は、契約上、埋戻し期限の定めがなく、かつ、埋戻し作業も行われていないことから、埋戻し義務は債務として確定していないので本件事業年度の損金の額に算入することは認められないと主張するが、請求人と土地所有者との間の埋戻し契約によって、埋戻し義務はその契約上の業務内容が客観的、一義的に明白であり、費用を見積もることができる程度に特定されているので対外的に債務として確定しており、また、この点を否定する格別な事情も存しないと認められるので、本件事業年度の山砂採取量に対応する埋戻し費用の適正見積金額は、原価として損金の額に算入するのが相当である。
要旨
請求人の関係する会社が刑事訴迫を受けるおそれがあったため、請求人が帳簿書類を破棄したことは、青色申告者たる請求人が負っている帳簿書類の備付け、記録又は保存を免責させるような特段の事由には該当しない。
要旨
相続によって取得した本件土地と県道との間には請求人所有の土地が存し、本件土地に直接沿接する道路は存しないが、本件土地と県道との間にある請求人所有の土地とは相続開始以前から請求人が一体として利用しており、本件土地が道路に直接接していないことによる利用価値の低下があるとは認められないから、本件土地は無道路地として評価額を減額すべきものには当たらない。
要旨
請求人は、借入金による所得税等の納付は、事業資金として保有している預金によって本件所得税等を納付し、借入金をもって当該預金を補てんした場合と実質的には異ならないから、本件借入金を事業上の借入金とみて本件借入金の利子を事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである旨主張するが、本件借入金の使途は、本件所得税等の納付に充てられており、本件所得税等は所得税法第37条第1項の別段の定めに当たる同法第45条1項第2号及び第4号に規定されているとおり、必要経費とすることのできないものである。また、これらの号において、必要経費に算入しないとしているのは、当然のことを確認する意味から規定しているもので、同条の規定がなくとも所得税等を必要経費に算入することはできないものと解される。
したがって、本件借入金が必要経費とすることができないものに充てられていることから、本件借入金の利子を事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。
要旨
請求人の退任役員に対する退職給与の額は、功績倍率法により算出した金額と1年当たり平均額法により算出した金額とのうち、いずれか高い金額を超える部分の金額を不相当に高額な部分の金額とすべきであるとの請求人の主張について、原処分庁は1年当たり平均額法は役員退職給与の額の算定の重要な要素である最終報酬月額が考慮されていないため、功績倍率法に比べて合理性を欠くので、採用できないとしたが、最終報酬月額が役員の在職期間を通じての会社に対する貢献を適正に反映したものでないなどの特段の事情があり低額であるときは、最終報酬月額を基礎とする功績倍率法により適正退職給与の額を算定する方法は妥当でなく、最終報酬月額を基礎としない1年当たり平均額法により算定する方法がより合理的である。
主たる債務者はいまだ求償権を行使しても回収の見込みのないことが確実な状況にまで立ち至ったとは認められないので保証債務の履行に伴い求償権が行使できない場合に該当しないとした事例
裁決事例集 第32集 86頁
要旨
保証債務の履行に係る求償権の放棄について、主たる債務者は、[1]経営の合理化と銀行側の協力とによって引き続きその事業を継続していること、[2]借入金の残高は年々減少していること、[3]本件求償権を放棄した直後の決算期には利益金を計上していること、[4]債務免除を受けたのは本件求償権だけであることなどから、請求人が求償権を行使しても直ちにこれに応ずることができない状況にあったとしても、いまだ求償権を行使しても回収の見込みのないことが確実な状況にまで立ち至ったとは認められないので、本件求償権の放棄はその行使ができないために行ったものと認めるのは相当でない。
代物弁済によって取得した土地の取得費は、代物弁済によって消滅した債権金額がその取得時における時価相当額を著しく超えるときは、その時価相当額にとどまるとした事例
裁決事例集 第32集 59頁
要旨
代物弁済により資産を取得した場合には、その弁済により消滅した債権の額がその資産の取得に要した金額となるのであるが、その代物弁済により消滅した債権の額が代物弁済により取得した資産の価額を大幅に超えることとなる場合において、その超える部分の金額について債権者がその弁済を求めないこととしたときは、当事者の認識又は契約にかかわらず、その超える部分の金額についてその債務を免除し、又は債務の弁済が不能であると判断したものと解すべきであるから、これに当たる部分の金額には資産の取得費性はなく、したがって、代物弁済により取得した資産の取得に要した金額とはならず、当該資産の代物弁済時の時価をもって取得に要した金額とすべきである。
土地建物の譲渡の日について、買受人が分譲マンションの建築をするために建物の解体工事に着手した日とするとともに、収益の額に買受人が支払うべき理由のない立退料等を含めるべきであるとした事例
裁決事例集 第32集 119頁
要旨
請求人は、土地及び建物の譲渡について、[1]収益計上の時期は、売買契約書等に所有権移転の日を定めており、かつ、売買代金は売買契約締結時に20パーセント相当額を受領しただけで残額は当該所有権移転の日に支払われているので、当該所有権移転の日であり、また、[2]収益の額は、売買契約書に記載された金額であり、買受人が借家人等に支払った立退料等は買受人がそれぞれの取引に基づいて支払ったもので収益の額でないと主張する。しかしながら、[1]収益計上の時期は、買受人が当該所有権移転の目前に本件建物を解体して使用しており、かつ、売買代金のうち売買契約時に受領した金額以外の部分の金額については地代等の名目で実質的に金利が支払われているので、買受人が本件建物の解体工事に着手した日であり、また、[2]収益の額は、売買契約書記載金額に、買受人が借家人等に立退料等の名義で支払った実質的に本件土地及び建物の譲渡の対価と認められる金額を加えた金額である。
要旨
請求人(委託者)は、本件委託販売取引に係る収益は、でんぷん年度(その年10月1日から翌年9月30日まで)終了後、協同組合(受託者)から清算書が到達した日の属する事業年度に計上すべきであると主張するが、請求人が委託販売の目的となったでんぷんをすべて保管し、かつ、協同組合からの出荷指図に従って請求人が販売先に直接出荷しており、しかも本件取引は船積みと同時にその危険負担及び所有権が買主に移転するいわゆるFOB取引であって、請求人が直接売買契約を締結する場合と何ら異ならないから、本件委託販売取引に係る収益は、請求人が当該でんぷんを販売先に直接出荷した日、すなわち船積日の属する事業年度に計上すべきである。
要旨
請求人は、必要経費の計算について、青色申告書以外の申告書の提出者(いわゆる白色申告者)との権衡上、実額計算が可能である場合であっても、白色申告者に適用される経費率による推計計算が有利であると認めるときは、その選択により、推計計算が許されるべきであると主張するが、所得税法では、実額計算が原則であり、推計計算は実額計算ができない場合にやむを得ず許される補完的な計算方法であるから、実額計算が可能である場合には、推計計算は許されない。
したがって、請求人は、青色申告者であり、事業所得に関する所定の帳簿書類を備え、継続記録を有しており、事業所得の金額計算について実額計算が可能であるから、請求人の主張は採用できない。
要旨
請求人は帳簿の記帳及び決算、預貯金の管理等の経理事務を長年にわたって妻に委任しており、経理事務には関与していないので、所得税調査に基づく修正申告のしょうようの際、調査担当者からの在宅要請にもかかわらず、請求人は、事業所得の計算根基については私よりむしろ妻の方が熟知しており、妻に話をしてほしい旨を言って外出し、その場に同席せず、妻も私が話を聞く旨申し立てた。
そこで、調査担当者は、調査した結果を妻に十分説明して修正申告書の提出方のしょうようを行ったところ、妻はそれに応じて署名押印し修正申告書を提出している。
これらの事実を総合判断すると、修正申告書は、妻が提出したものであるが、妻は請求人の経理及び税務上の全般の事務の処理について請求人から任されている者であって、請求人に代わって作成、提出したものと認められるから、当該修正申告書を無効とする理由はなく、請求人の主張には理由がない。
要旨
請求人は、買換資産の取得期間延長承認申請書の提出について、原処分庁の指導や所定の用紙の送付がなかったため、法定の提出期限内に事業の遅延状況を記載した法人の事業概況説明書を提出した後、所定の取得期間延長承認申請書を提出したので、課税の特例の適用を認めるべきであると主張するが、買換資産の取得期間の延長承認申請は、請求人の判断と責任において、法定事項を記載した申請書を法定提出期限までに提出すべきであり、事業の遅延状況を記載した法人の事業概況説明書は、取得期間延長承認申請書とは認められないから、特定の資産の譲渡に伴い特別勘定を設けた場合の課税の特例の適用は認められない。
要旨
請求人の香港にある特定外国子会社(租税特別措置法(昭和60年法律第7号による改正前のもの)第66条の6第1項に規定する特定外国子会社をいう。)は、業務執行に関する重要な意思決定機関である取締役会は、すべて請求人の本店所在地である○○(国内)で行われていること、自ら取引の当事者となり貿易業を営んでいるにもかかわらず、取引の基本的事項は請求人により決定され、請求人から指示された業務を行っているにすぎないこと等からすると、貿易取引の支配、管理及び運営を香港において自ら行っているものとは到底認められないから、同項に規定する課税対象留保金額に相当する金額を請求人の各事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入した原処分は相当である。
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