裁決事例 裁決事例集 第72集
要旨
譲渡担保財産である滞納者の居宅の公売公告処分に対し、譲渡担保権者である請求人は、本件滞納者の生活に係る事情を考慮すべきことを理由として、その取消しを主張する。
ところで、審査請求は、違法又は不当な処分によって侵害された不服申立人の権利利益の救済を図るものであることから、自己の法律上の利益に関係のない違法を審査請求の理由とすることはできないと解するのが相当である。
そして、請求人にとって本件滞納者の生活に係る事情は、請求人に何ら直接的な影響をもたらす事柄ではないから、請求人が当該事情の考慮を求めることは、自己の法律上の利益に関係のない違法を主張するものにほかならず、審査請求の理由とすることのできない理由を主張するものである。
借地権者の地位に変更がない旨の申出書を提出後その土地の所有権者が建物を建て替えた場合その借地権は所有権者に無償で返還され消滅している旨の請求人の主張を排斥した事例
裁決事例集 第72集 517頁
要旨
請求人らは、被相続人の借地権が存する土地の所有権を請求人Fが取得したことに伴い、借地権者の地位に変更がない旨の申出書(以下「本件申出書」という。)を提出した土地(以下「分筆前土地」という。)について、被相続人がその土地上に所有していた建物A及びBを老朽化のため取り壊した後の土地は、請求人Fが自由に使用収益してよいとする合意の下で、当該建物が取り壊されたことに伴い、本件借地権が被相続人から請求人Fに無償で返還されたものであるから、本件借地権は存在しない旨等主張する。
しかしながら、本件借地権が返還されたとする請求人らの主張は、請求人Fが被相続人から建物取壊し後の土地を自由に使用するよう言われたことに基づくもののみであって、具体的に明らかでなく、上記発言の内容からは、被相続人が本件土地の使用権利者(借地権者)であることを前提として、請求人Fに本件借地権を自由に利用してよいとも解されるから、被相続人は請求人Fに本件借地権を使用貸借により転貸する趣旨で発言したとも認めることができる。
また、本件申出書を提出していることから、その当時、被相続人及び請求人Fは、分筆前土地に係る借地権を移転する意思はなかったものと認められる上、建物が朽廃していない本件において、借地上の建物を親族間で所有名義を変えて建て替えた場合には、従前の借地権を維持するならばこの借地権を使用貸借により転貸したとみるのが一般的であるし、転貸が使用貸借である場合には、使用貸借通達2によって贈与税の課税も生じないのであるから、このように被相続人が請求人Fに本件借地権を使用貸借により転貸する行為は、親族である貸借当事者間での合理的な行為といえる。さらに、被相続人及び請求人Fは、分筆前土地上の建物Dを平成12年に取壊した後の土地の一部を譲渡したことによる譲渡所得の申告において、被相続人に借地権が存在していたとしている。
そうすると、被相続人が、請求人Fに対して本件借地権を返還するという意思があったとは認められず、また、本件借地権が返還されずに存在していたことを推認させる事実はあるが、本件借地権を返還したとみるべき事実は見当たらない。
そして、被相続人及び請求人Fは、連署で本件申出書を提出しているから、貸借当事者間で借地権が土地所有者に返還されたなどその借地権が存在しないとの主張が認められるのは、贈与税の申告又は借地権の消滅の対価を土地所有者が借地権者に支払った事実が存するなど、当該借地権が存在しないことを外形上明確に示す特段の行為の存在が立証されることが必要であると解すべきであるところ、請求人Fは建物A及びBの取壊し又は建物Cの建築を理由とした贈与税の申告をしておらず、その他本件借地権が存在しないことを外形上明確に示す特段の行為の存在を認定できる証拠もない。
以上のことからすると、本件相続開始日において、被相続人に係る相続財産として本件借地権が存在していたと認めるのが相当である。
要旨
請求人は、本件農地において米を栽培するため、Fに耕作及び収穫の作業を委託しているから、租税特別措置法(以下「措置法」という。)第25条《肉用牛の売却による農業所得の課税の特例》の規定による特例(以下「本件特例」という。)の適用要件である「農業を営む個人」に該当する旨主張する。
しかしながら、措置法第25条に規定する肉用牛を売却した個人が本件特例を適用するに当たっては、当該個人は「農業を営む個人」であることが要件とされているところ、「農業を営む個人」とは、自らが栽培の方法等を決定し、栽培し又は他人に栽培させ、その栽培に係る利益又は損失を自己に帰属することを継続的に行う者であると解するのが相当である。
これを本件についてみれば、①本件農地における米の栽培について、農作業の時期、栽培する米の銘柄、苗や肥料の購入及び出荷先等の重要な意思決定はFが自ら行っており、請求人が決定しているとは認められないこと、②本件農地における米の栽培に係る収入や経費については、請求人の各年分の所得金額の計算上一切計上されておらず、本件農地における米の栽培に係る収入や経費はすべて自分のものであるとのFの答述からしても、本件農地から収穫された米の収益及び当該米の栽培に係る費用は、Fに帰属しているものと認められること、そして、③本件農地における米の栽培はFが自ら栽培方法等を決定しており、同人は、請求人に対して、このこと及び収穫した米の数量等の報告は行っていないことなどから、請求人からの委託を受けて行っているものとは認められず、また、④上記のとおり、本件農地における米の栽培はFが自己の計算と危険において継続的に行っているものと認められ、請求人が各年分においてFから受け取った2俵の米は、本件農地の面積に相当するP市内における水稲の標準的な小作料と同程度であることから、当該2俵の米は、Fが請求人から本件農地において米を栽培するよう依頼を受け、その小作料として給付しているものと認められる。
以上を総合すれば、本件農地においては、Fが継続して米の栽培をし、その栽培に係る利益又は損失を自己に帰属させていると認められ、請求人は本件農地をFに貸し付けていると認められるから、請求人は本件農地において農業を営んでいないと認められる。
したがって、請求人は、本件特例の適用を受けるための要件である「農業を営む個人」には該当しないから、請求人に対して本件特例の適用を受けることはできないとした原処分は適法である。
住宅ローンの連帯債務者が、団体信用生命保険に加入していた他の連帯債務者の死亡により住宅ローン債務が消滅したことにより受けた経済的利益は、一時所得に当たるとした事例
裁決事例集 第72集 218頁
要旨
請求人は、請求人の父の死亡に伴い、G銀行との間で請求人及び父を連帯債務者とする住宅ローン契約(以下「本件ローン契約」という。)の締結の際にG銀行が加入した、G銀行を保険契約者及び保険金受取人、父を被保険者とする団体信用保険契約(以下「本件団信保険契約」という。)により、本件ローン契約に係る債務は消滅したが、請求人と父との連帯債務の負担割合は、父が10割、請求人が零であるとする暗黙の合意(特約)があったから、請求人が負担すべき債務は一切存在せず、請求人には経済的利益は全くなく、一時所得は発生しない旨主張する。
また、原処分庁は、①本件ローン契約により、請求人には負担すべき債務がある、②団体信用保険制度は、死亡事故を基因として、死亡時における賦払償還債務相当額の保険金が保険会社から債権者である金融機関に対して直接支払われるものであり、債務者が一旦保険金を受領し債務の返済に充てるものではないから、当該債務の消滅は債務の返済ではなく金融機関から債務免除を受けたものと解され、当該債務が連帯債務である場合には、被保険者を除く各連帯債務者が実質的に債務を負っている部分について債務免除を受けたことによる経済的利益(債務免除益)が生じたものとみるのが相当であるから、請求人がG銀行から受けた債務免除益相当額は、法人からの贈与により取得したものであり一時所得に該当する旨主張する。
しかしながら、①請求人と父との間の負担付贈与契約は、債権者であるG銀行は当該負担付贈与契約を了知していないことから免責的債務引受とみることはできず、請求人と父との間でのローン債務の負担割合を変更したにとどまると認められ、また、②G銀行は本件団信保険契約に係る保険料を全額負担していること、G銀行は受け取った保険金は必ず被保険者の債務に充当するとしていること、被保険者は保険料を負担せず死亡による保険金を受け取る権利を有していないことなどからすれば、本件団信保険契約はG銀行の確実な債権回収を目的とした保険であると認めるのが相当である。
したがって、被保険者の死亡時点における本件ローン契約の残債務全額に相当する経済的利益は、連帯債務であるという当該債務の性質により、各連帯債務者間における負担割合に応じて生じるものであって、債務免除によるものではなく、また、請求人は父の死亡時点において10割の負担割合を有する連帯債務者であると認められるから、請求人は本件ローン契約の残債務の全額に相当する経済的利益を享受したといえ、当該経済的利益は、営利を目的とする継続的行為から生じたものではなく、役務等の対価性もないから、一時所得に該当する。
負担付贈与された土地及び建物の価額は、土地については公示価格に基づいて算出する方法により、建物については再建築価格を基準とした価額から、建物の建築時からその経過年数に応じた減価又は償却費の額を控除して算出する方法によるのが相当であり、また、連帯債務に係る負担額は、債務者間に特約がなく、各債務者が実際に受けた利益の割合で連帯債務の負担をすることを認識していたと認められるから、その割合に応じた額になるとした事例
裁決事例集 第72集 218頁
要旨
「負担付贈与又は対価を伴う取引により取得した土地等及び建物等に係る評価並びに相続税法第7条及び第9条の規定の適用について」通達でいう「通常の取引価額」は、贈与があったとされる当時の課税の対象となる資産の現況を考慮し、最も合理的かつ適切な評価方法により当時の時価を見いだすべきであり、土地については公示価格に基づいて算出する方法により、また、建物については再建築価格を基準とした価額から、建物の建築時からその経過年数に応じた減価又は償却費の額を控除して算出する方法によるのが合理的かつ最も適切な評価方法であると認めるのが相当である。
そして、請求人は、取得した財産の価額から控除すべき住宅ローン契約(請求人及び請求人の父がG銀行との間で請求人及び父を連帯債務者として締結したもの。以下「本件ローン契約」という。)に係る連帯債務に関して、請求人と父との間で請求人の負担割合を零とする暗黙の合意(特約)があったから、控除すべき債務の額は、本件ローン契約の残債務の全額である旨主張するが、①本件ローン契約には、連帯債務者である請求人及び父の負担割合に関する定めはないこと、②請求人は、連帯債務に関する負担割合について合意(特約)があったことを証する証拠はない旨答述し、当審判所の調査によっても、連帯債務の負担割合を零とすべき合意(特約)があったと認める証拠はないこと、③請求人は、少なくとも平成7年1月から平成9年6月までの間、自ら負担すべき持分に応じた金額を毎月父の口座に送金していたと認められること等からすれば、請求人及び父が実際に受ける利益の割合である本件土地の持分に相当する負担割合で連帯債務を負うことを認識していたと認めるのが相当であるから、控除すべき債務の額は、負担付贈与契約時の本件ローン契約の残債務の額に、請求人らの土地の持分の合計に占める父の持分の割合を乗じて計算した額とするのが相当である。
複数の借入金がある場合において、当該各借入金が貸付金の原資となっていると認められるときは、当該各借入金の利率を加重平均した利率をもって当該貸付金に係る通常の利率とすることに合理性があるとした事例
裁決事例集 第72集 382頁
要旨
原処分庁は、所得税基本通達36-49《利息相当額の評価》について、個人の経済的利益を評価する際の定めであるから、法人の経済的利益を評価する際に直接適用することはできないが、当事者間で通常収受すべき利息相当額を計算するという目的からすれば、特段の事情のない限り、法人の経済的利益の評価に準用するのが相当であるとし、本件債権については、同通達の「その他の場合」の利率(利子税の特例基準割合と同率)を適用すべきである旨主張する。
しかしながら、金銭の貸付けに係る通常の利率については、貸主の借入状況や市中金利の動向等の事情を総合勘案して適正利率を算定することが原則であり、本件債権のように、借入金をもって貸し付けているが、いずれの借入金をもって貸し付けているか特定できず、かつ、借入金の利率が同一でないものについては、当該各借入金の借入利率に基づく平均借入利率をもって適正利率とすることに合理性があると解されるところ、当該各借入金の借入利率に基づいて算定した平均借入利率は、原処分庁が認定した利率を下回っている。したがって、原処分庁が適用した利率は採用できない。
要旨
請求人は、適格退職年金制度から確定拠出年金制度への移行に際し支払われた本件一時金は、①所得税基本通達30-2《引き続き勤務する者に支払われる給与で退職手当等とするもの》の(1)の定めは、内部積立方式による退職一時金制度を改廃した場合とは示していないから、適格退職年金制度を改廃したことによって引き続き勤務する従業員に対して支払われた本件一時金についても同通達を適用すべきであること、②転籍とは、請求人が籍を有していたA社と合併し存続会社となったB社との雇用関係を解消しC社との新たな雇用契約を結ぶということであり、A社の適格退職年金はC社へ継続されず、本件一時金はB社からの退職に基因して支払われたものであるから、所得税法第31条《退職手当等とみなす一時金》第3号の規定に該当すること、③過去の勤務期間が継続されない退職金前払い制度の選択により、勤務期間の通算の優遇措置がなくなることから、本件一時金は退職所得に当たる旨主張する。
しかしながら、①本件一時金は、外部拠出型の退職金制度から支払われたものであるため給与としての性質を有しておらず、所得税法第30条《退職所得》第1項に規定する「これらの性質を有する給与」に当たらないので、所得税基本通達30-2の(1)の適用はなく、退職所得とは取り扱われないと解されること、②C社は、同社への転籍前にB社の適格退職年金制度の加入者であった者については、B社の勤続年数を通算する旨を退職慰労金規定において定め、転籍者に係る同制度の年金資産を退職年金規約に基づきD信託銀行(運用機関)に移換しており、請求人には、転籍によるB社との雇用関係の解消は認められるが、B社の適格退職年金制度に基づいて支給を受ける一時金の受給権は発生せず、転籍後は、C社の適格退職年金制度が適用されることとなったことから、本件一時金は、転籍によるB社との雇用関係の解消に基因して支払われたものではないから、退職所得には当たらないこと、③本件一時金は、適格退職年金契約の解約に基づく分配金が退職金前払い制度を選択したことにより支払われたものであるから、退職所得には当たらないことから、請求人のいずれの主張にも理由がない。
以上のとおり、本件一時金は、請求人の退職により支給された分配金ではないから、所得税法第30条第1項及び同法第31条第3号の規定には当たらず、C社の適格退職年金契約の解約に伴い、D信託銀行から支払を受けたものであるから、所得税法第34条《一時所得》並びに同法施行令第183条《生命保険契約等に基づく年金に係る雑所得の金額の計算上控除する保険料等》第2項及び第3項第3号の規定により一時所得に該当する。
財産評価基本通達24-4《広大地の評価》に定める「その地域における標準的な宅地の地積」については、 河川や山などの自然的状況、 行政区域、 都市計画法による土地利用の規制など公法上の規制等、 道路、 鉄道及び公園など、土地の使用状況の連続性及び地域の一体性を分断する場合がある客観的な状況を総合勘案し、利用状況、環境等が概ね同一と認められる、ある特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域における標準的な宅地の地積に基づいて判断するのが相当であるとした事例
裁決事例集 第72集 565頁
要旨
財産評価基本通達24-4《広大地の評価》(以下「本件通達」という。)を定めた趣旨は、評価の対象となる宅地の面積が、①当該宅地の価額の形成に関して直接影響を与えるような特性を持つ当該宅地の属する地域の標準的な宅地の面積に比して著しく広大で、②評価時点において、当該宅地を当該地域において経済的に最も合理的な特定の用途に供するためには、公共公益的施設用地の負担が必要な都市計画法に規定する開発行為を行わなければならない土地である場合にあっては、当該開発行為により土地の区画形質の変更をした際に、公園等の公共公益的施設用地としてかなりの潰れ地が生じ、このような土地の評価に当たっては、潰れ地が生じることを当該宅地の価額に影響を及ぼすべき客観的な個別事情として、価格が減少していると認められる範囲で減額の補正を行うこととしたものである。
このような本件通達を定めた趣旨等にかんがみれば、本件通達でいう評価宅地の属する「その地域」とは、①河川や山などの自然的状況、②行政区域、③都市計画法による土地利用の規制など公法上の規制等、④道路、⑤鉄道及び公園など、土地の使用状況の連続性及び地域の一体性を分断する場合がある客観的な状況を総合勘案し、利用状況、環境等が概ね同一と認められる、ある特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域を指すものと解するのが相当である。
これを本件についてみると、本件各土地が属する「その地域」とは、市道n線、市道k線、市道p線、及び県道m号線に囲まれた地域(以下「本件地域」という。)をいうものと解するのが相当であり、本件地域における宅地の利用状況は、一部は住宅用地として使用されているものの、大部分は、倉庫敷地、事務所敷地及び駐車場に利用されており、それらの地積の平均は、約1,970平方メートル程度であると認められるから、本件各土地は、本件地域の標準的な宅地の地積に比して著しく広大な宅地であるとはいえず、本件通達を適用することはできない。
新築アパートに係る消費税及び地方消費税の還付申告に対し、課税売上げの基となった新築アパート完成見学会のための賃貸借契約は架空であるとしてなされた更正処分及び重加算税の賦課決定処分は適法であるとした事例
裁決事例集 第72集 605頁
要旨
請求人は、本件賃貸借契約は存在しており、それに基づき本件賃貸料を受領し領収証をF社の従業員Hに交付しているから、本件賃貸料は課税資産の譲渡等の対価の額として存在する旨主張する。
しかしながら、F社の備付け帳簿書類等には、本件建物の完成見学会が開催された旨や本件賃貸料が支払われた旨の記載はなく、また、本件賃貸借契約書は、本件建物の完成引渡し後に、請求人の関与税理士からの再三の申出により、Hが、請求人及びF社の記名・押印箇所に他の書類の記名・押印部分をコピーし、切り貼りするなどして作成した架空のものであることなどからすれば、本件賃貸借契約の締結、本件建物の完成見学会の開催及び本件賃貸料の授受の事実は認められないから、本件賃貸料は課税資産の譲渡等の対価の額として存在せず、本件課税期間の課税資産の譲渡等の対価の額及び消費税の課税標準額はいずれも零円となる。
また、本件課税期間の課税資産の譲渡等の対価の額は零円であるから、課税売上割合は零%となるところ、本件建物は、人の居住の用に供する住宅であると認められるから、本件建物の取得価額等は非課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れの額となり、個別対応方式又は一括比例配分方式のいずれの方式によって算定しても、本件課税期間の消費税の仕入税額控除額は零円となる。したがって、本件課税期間の消費税等の納付すべき税額を零円とした本件更正処分は適法である。
そして、上記のとおり、本件賃貸借契約の締結及び本件賃貸料の授受の事実が存在しないにもかかわらず、請求人は、Hに依頼して本件賃貸借契約書を作成させ、さらに、本件賃貸料を受領したかのように領収証を作成するなど、課税資産の譲渡等の対価の額を架空に作出したものであり、本件建物の取得価額等は、本来非課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れの額となるところ、請求人は、消費税等の還付を受けるため、あたかも本件賃貸借契約及びそれに係る金銭の授受が存在したかのごとく仮装した事実に基づいて、本件建物の取得価額等を課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れの額として本件課税期間の確定申告書を提出したと認められ、これら請求人の行為は、国税通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装行為に該当すると認められるから、重加算税の賦課決定処分は適法である。
年末調整を受けた給与所得者が、扶養親族に該当しない親族を給与等の支払者に扶養親族として届出て扶養控除の適用を受けていた場合において、当該給与所得者は納税申告書を提出する義務のある者には該当しないから、扶養控除を否認する決定処分は違法であるとした事例
裁決事例集 第72集 25頁
要旨
請求人は、請求人の母親は請求人とは同居していないが、請求人が母親に住宅を提供し、費用を負担していることは、請求人が母親に対して月額約10万円程度の家賃相当額を援助していることになり、母親は請求人の扶養親族として認められるべきであるから、本件決定処分は違法である旨主張する。
一方、原処分庁は、①請求人は、住宅の固定資産税及び火災保険料の負担はしているものの、生活費の送金は行っていないことから、請求人と母親とは生計を一にするものとは認められず、母親は請求人の扶養親族に該当しないこと、また、②請求人は平成17年2月にA社を退職しており、各年分の扶養控除誤りをA社において是正し、徴収不足税額を徴収することができず、この場合には所得税基本通達194~198共-2のただし書により、A社に徴収不足税額の徴収を強いて追求しないものと考えられることから、請求人は、国税通則法第25条に規定する「納税申告書を提出する義務があると認められる者が当該申告書を提出しなかった場合」に該当し、本件決定処分は適法である旨主張する。
しかしながら、所得税法第121条第1項には、その年中に支払を受けるべき給与等の額が2,000万円以下である給与所得を有する居住者で、一の給与等の支払者から給与等の支払を受け、かつ、当該給与等の全部について同法第183条又は同法第190条の規定による所得税を徴収された又はされるべき場合において、給与所得及び退職所得以外の所得金額が20万円以下であるときは、同法第120条第1項の規定にかかわらず同項の規定による申告書を提出することを要しない旨規定されている。
また、源泉所得税と申告所得税との各租税債権の間には同一性がなく、源泉所得税の納税に関しては、国と法律関係を有するのは支払者であって、国と受給者との間には直接の法律関係は生じないものとされており(最高裁平成4年2月18日判決)、源泉所得税の徴収、納付に不足がある場合には、税務署長は、所得税法第221条の規定に基づき源泉徴収義務者たる支払者からその不足分を徴収することになる。
なお、所得税基本通達194~198共-2のただし書の取扱いは、あくまでも扶養控除等申告書等の記載事項に誤りがあったことによる徴収不足額の強制徴収に関するものであって、同取扱いの適用を受けることをもって、上記の給与所得者について確定申告を要しない場合の規定が排除され、所得税法第120条の規定が代替的に適用されるものではない。
したがって、もともと所得税法第121条第1項の規定の適用を受ける者について国税通則法第25条を適用する余地はない。
これを本件についてみると、請求人の各年分における所得税については、所得税法第121条第1項に規定する確定申告を要しない場合に該当することから、請求人につき国税通則法第25条に規定する納税申告書を提出する義務があるとは認められず、同条を根拠とする決定処分を行うことはできない。以上のことから、請求人の母親が請求人の扶養親族に該当するか否かについて判断するまでもなく、本件決定処分は違法であり、いずれもその全部を取り消すべきである。
有料老人ホーム入居時点において入居者が有することとなる入居者の死亡又は入居契約の解約権の行使を停止条件とする金銭債権は相続財産に該当するとした事例
裁決事例集 第72集 495頁
要旨
請求人らは、被相続人が相続時点で有していた権利は、返還請求権を含む入居一時金ではなく、老人ホームの施設を終身利用できる権利であり、また当該権利は、相続も譲渡もできない権利であり、民法上の相続財産には該当しない一身専属権であるから、相続税法第2条に規定する本来の相続財産には該当しない旨主張する。
しかしながら、被相続人らが締結した老人ホーム入居契約は、入居者である被相続人らの自由な意思によりいつでも契約を解約でき、契約が解約された場合には返還金として契約に定める所定の金員を支払う特約付であったことが認められること、また、契約において入居一時金等の一部を返還することとしているのは、専用居室の家賃及び共用施設の利用料の前払分のほか各サービスの費用並びにサービスに要する事務費及び人件費の前払分として無利息の預り金としてN社(施設設置者)が受け取ったものであることにかんがみれば、被相続人らには、入居契約の締結日時点において、契約に定める老人ホームの居室等を終身にわたって利用し、各種サービスを享受する権利とともに、同人らの死亡又は解約権の行使を停止条件とする金銭債権が生じていると認めるのが相当である。
そして、当該金銭債権は、金銭に見積もることができる経済的価値のある権利として本来の相続財産に該当し、一身専属的権利とはいえないから、請求人らの主張は採用できない。
民事再生法に基づく再生計画により、預託金会員制ゴルフ会員権につきその預託金債権の全額が切り捨てられるとともに優先的施設利用権だけのゴルフ会員権を取得した場合、その優先的施設利用権だけのゴルフ会員権の取得価額はその取得時の時価であるとした事例
裁決事例集 第72集 169頁
要旨
請求人は、所有していた預託金会員制ゴルフ会員権(以下「本件旧会員権」という。)に係るゴルフ場の経営法人の民事再生法に基づく再生計画に従い、本件旧会員権に係る預託金債権の全額が切り捨てられるとともに付与された預託金債権のないゴルフ場施設の優先的施設利用権のみのゴルフ会員権(以下「本件新会員権」という。)を譲渡したが、その譲渡所得の金額の計算に当たって、本件旧会員権の取得に要した金額から再生計画により切り捨てられた預託金相当額を差し引いた価額を本件新会員権の取得に要した費用とすべき旨主張する。
しかしながら、所得税法第33条第1項の規定の内容及び譲渡所得課税の趣旨からすれば、資産の譲渡による譲渡所得の計算に当たっては、その譲渡時点と取得時点で資産の同質性が維持されている必要があり、譲渡所得の金額の計算上控除されるべき取得費とは、特段の定めがない限り、譲渡資産と同質性が維持された資産の取得に要した金額をいうものと解されるところ、預託金会員制ゴルフ会員権は、優先的施設利用権、預託金返還請求権及び年会費納入等の義務からなる契約上の地位を総称するものと解されることから、預託金会員制ゴルフ会員権の取得に要した金額が、その後のゴルフ会員権の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上取得費として控除されるには、取得時点における預託金会員制ゴルフ会員権としての上記の契約上の地位が、譲渡時点において維持されている必要があると解される。
そうすると、本件旧会員権は、優先的施設利用権及び預託金返還請求権を有する預託金会員制ゴルフ会員権であり、一方、本件新会員権は、優先的施設利用権のみで預託金返還請求権のないゴルフ会員権であることから、本件新会員権における契約上の地位(資産)は、本件旧会員権における預託金返還請求権を失ったことによりこれを要素とする契約上の地位(資産)としての同一性を失っているので、契約上の地位としての性質に変容があったものであり、本件旧会員権と本件新会員権は、別個の資産というべきである。そして、本件旧会員権の取得価額を本件新会員権の取得価額に引き継ぐ旨の所得税法上の規定もないことから、本件新会員権の譲渡所得の計算に当たって、本件旧会員権の取得価額を引き継いで計算することはできない。したがって、本件新会員権の取得価額は、その取得時の時価相当額とするのが相当である。
要旨
請求人は、事業協同組合の組合員の死亡脱退により、死亡した組合員の相続人が支払を受ける持分払戻金は、死亡退職金と同様、所得税を課税せずに相続税のみを課税する相続財産として取り扱われるべきであるから、原処分庁が、当該持分払戻金のうち、出資金額を超える部分についてみなし配当であるとして行った源泉所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分を取り消すべきである旨主張する。
しかしながら、本件の脱退組合員持分払戻金(以下「本件払戻金」という。)は、組合員D及びE(以下、DとEを併せて「本件各組合員」という。)が死亡によって請求人を脱退し、出資持分の払戻金として支払われたものと認められるが、死亡による脱退であっても社内に蓄積された利益積立金が払戻しにより社外に流出するという点では他の脱退の場合と同じであり、本件払戻金のうち本件各組合員の出資金の額を超える部分の金額(以下「本件金額」という。)は、「みなし配当」に当たると認めるのが相当である。
また、請求人の定款には、組合員が脱退したときには、組合の財産についてその出資口数に応じて算定した金額を限度として払い戻すものとする旨を定めていることから、本件各組合員の死亡時において、本件各組合員は組合を脱退し、出資持分に係る払戻しを受けることが確定するため、その時点において本件払戻金の払戻請求権(以下「本件払戻請求権」という。)が発生したと解するのが相当であるから、本件払戻金は出資者である本件各組合員に帰属すると認めるのが相当である。
なお、本件金額は、本来は「みなし配当」として本件各組合員に支払われるべきものであるが、本件各組合員の死亡によって本件払戻請求権が一旦本件各組合員に帰属し、その後遺産として本件各組合員の相続人に承継されたことにより、当該相続人に支払われたものであり、相続人の相続税と本件各組合員の所得税が二重課税になるというものではない。また、本件払戻金は、相続税法第3条第1項各号に規定する相続又は遺贈により取得したものとみなす財産のいずれにも該当しないから、相続税法上のみなす財産とされる死亡退職金等と同列の財産ということもできない。
要旨
請求人は、源泉徴収制度は、徴収義務者が一定の所得税額を天引徴収して納付する手続であり、源泉徴収によって納付された所得税は、原則的に確定申告によって清算され、給与等の支払者が誤って過大に徴収納付した金額は、所得税法第120条第1項第5号に規定する「源泉徴収をされた又はされるべき所得税の額」に含まれると解することに法文上の支障はなく、このように誤った徴収納付がされた場合には、納税義務者は確定申告において清算調整することができると解すべきである旨主張する。
しかしながら、源泉所得税と申告所得税との各租税債務の間には同一性がなく、源泉所得税の納税に関しては、国と法律関係を有するのは支払者のみで、受給者との間には直接の法律関係を生じないものとされていることからすれば、所得税法第120条第1項第5号の源泉徴収税額の控除の規定は、申告により納付すべき税額の計算に当たり、算出所得税額から源泉徴収の規定に基づき徴収すべきものとされている所得税の額を控除することとし、これにより源泉徴収制度との調整を図る趣旨のものと解されるのであり、その税額の計算に当たり、源泉所得税の徴収・納付における過不足の清算を行うことは所得税法の予定するところではない。のみならず、給与等の支払を受けるに当たり誤って源泉徴収をされた(給与等から不当に一部天引控除された)受給者は、その不足分を即時かつ直接に支払者に請求して追加支払を受ければ足りるのであるから、このように解しても、その者の権利救済上支障は生じない。
そうすると、所得税法第120条第1項第3号に掲げる算出所得税額から控除すべき同項第5号に規定する「源泉徴収をされた又はされるべき所得税の額」とは、所得税法の源泉徴収の規定に基づき、正当に徴収された又はされるべき所得税の額を意味するものであり、給与その他の所得についてその支払者がした所得税の源泉徴収に誤りがある場合に、その受給者が、所得税の確定申告の手続において、支払者が誤って徴収した金額を算出所得税額から控除し又は誤徴収額の全部若しくは一部の還付を受けることはできないと解するのが相当であり、この点に関する上記の請求人の主張は、独自の見解であって採用できない。
請求人が債権を放棄した時点において、債務者は70パーセント完成した建物を有しており、その処分につき請求人を含めて協議中であったから、当該債権が回収不能であったとは認められないとした事例
裁決事例集 第72集 410頁
要旨
請求人は、同人が放棄した債権(以下「本件債権」といい、本件債権の放棄を「本件債権放棄」という。)は、本件債権放棄の当時、回収不能であったといえるから、本件債権放棄に係る債権額は貸倒損失の額に該当する旨主張する。
しかしながら、本件債権の債務者が施主である本件建物は、約70%程度完成していて既に建物として成立し、何らの担保も設定されておらず、本件債権放棄の前後を通じ、その処分についての協議が請求人を交えて継続されていたことからすると、本件債権放棄の当時において、本件建物自体に資産価値がないことが最終的に明らかとはなっていなかったものということができ、そうすると、本件債権放棄の当時、本件債権の回収不能の事態が客観的に明らかであったということはできないから、同放棄に係る債権額は「寄附金の額」に当たる。
本件事業年度の損金の額に算入した過年度棚卸資産廃棄損は、本件事業年度前の仮装経理における棚卸資産過大計上額であって、本件事業年度において生じた損失ではないから、本件事業年度の損金の額には算入されないとした事例
裁決事例集 第72集 404頁
要旨
請求人は、本件事業年度において、民事再生法に基づく再生手続開始の申立てを行い、同法に基づく財産価額の評定の準備を始めていたのであるから、評価損として計上した過年度棚卸資産廃棄損の額を本件事業年度の損金の額に算入すべきである旨主張する。
しかしながら、過年度棚卸資産廃棄損の額は、請求人が本件事業年度前の各事業年度の棚卸資産に係る粉飾額を計上したものにすぎず、その全額が本件事業年度において生じたものでないことが明らかであるから、過年度棚卸資産廃棄損の額を本件事業年度の損金の額に算入することはできない。
相続税の申告に際して、相続財産である被相続人名義の投資信託を申告しなかった行為について、当初から相続財産を過少に申告することを意図した上、その意図を外部からもうかがい得る特段の行為をしており、重加算税の賦課要件を満たすとした事例
裁決事例集 第72集 41頁
要旨
納税者が申告に際し、自己が依頼した税理士に対して必要資料等を秘匿した場合も、「当初から財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をした場合」に当たると解される。
本件において、請求人は、相続税申告書の作成依頼先である税理士から資料の提出を指示されていたのであるから、同税理士に相続財産を示す適切な資料を提供するべき立場にあり、また、請求人は本件被相続人の相続財産として本件投資信託が存在したことを確実に認識していたと認められ、かつ、四半期ごとの本件投資信託の取引残高報告書の送付、本件投資信託の名義変更、遺産分割協議及び遺産分割協議書の作成という各出来事ごとに、同税理士に対して、本件残高証明書を渡す機会があったと認められるから、本件残高証明書を同税理士に渡さなかった請求人は、同税理士に提出した資料に係る財産が相続財産のすべてであり他にはないかのように装うことによって、同税理士をして本件投資信託を漏らして過少な相続税額が記載された本件当初申告書を作成させたものと認められる。
したがって、請求人は、当初から財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたものというべきであって、重加算税の賦課要件は充足されている。
医療法人の定款を変更し、退社時の出資の払戻額及び解散時の出資の払戻額を払込出資額に限る旨定めたとしても、出資持分の価額は、払込出資額により評価するのではなく、財産評価基本通達194-2の定めに基づき評価するのが相当であるとした事例
裁決事例集 第72集 589頁
要旨
請求人らは、医療法人E会は定款を変更し、出資額限度法人となったことから、定款の変更及び合併に伴う通常の出資持分の定めのある社団たる医療法人への移行(後戻り)は本件通知(平成16年8月13日付医政発第0813001号、「いわゆる『出資額限度法人』について」をいう。)により事実上禁止されており、県知事の認可を受けることはできないから、医療法人の出資の価額は、払込出資額により評価すべきである旨主張する。
しかしながら、本件通知には、出資額限度法人が通常の出資持分の定めのある社団たる医療法人へ移行(後戻り)することは適当でない旨の記載はあるが、禁止する旨の記載はなく、かえって、本件通知の基となった本件照会(厚生労働省医政局長から国税庁課税部長に対する平成16年6月8日付医政発第608002号「持分の定めのある医療法人が出資額限度法人に移行した場合等の課税関係について(照会)」をいう。)によれば、出資額限度法人が通常の出資持分の定めのある社団たる医療法人へ移行(後戻り)することができることを当然の前提としていると認められ、また、医療法その他関係法令上、これを禁止する規定がないことからすれば、定款変更により出資額限度法人が通常の出資持分の定めのある社団たる医療法人へ移行(後戻り)することが絶対的な拘束力を有して禁止されるものとは認めることができず、医療法第50条でその手続きが法令又は定款に違反しない限り定款の変更等も可能であると認められるから、出資額限度法人が通常の出資持分の定めのある社団たる医療法人へ移行(後戻り)することができないことを前提とする、医療法人の出資の価額を払込出資額で評価すべきとの請求人らの主張には理由がなく、また、医療法人の出資の価額を財産評価基本通達194-2に定める方法によって評価することが著しく不適当と認められる特段の事情も認められないから、原処分は適法である。
消費税等の確定申告書を法定申告期限(平成18年1月4日)の8日前である平成17年12月27日に宅配便業者の宅配便を利用して発送したところ、同宅配物が平成18年1月5日に到達したことにつき、「正当理由が認められる場合」に該当するとの請求人の主張を排斥した事例
裁決事例集 第72集 33頁
要旨
無申告加算税は、申告納税方式を採用する国税において、納税者が自己の判断と責任においてすべき確定申告が納税義務を確定させる重要な意義を有することから、期限内申告書が提出されなかった場合に、適法にこれを提出した者とこれを怠った者との間に生じる不公平を是正することにより、申告納税制度の信用を維持し、もって適正な期限内申告の実現を図ることを目的としたものと解される。このような無申告加算税の目的からすれば、国税通則法第66条第1項の期限内申告書の提出がなかったことについて「正当な理由があると認められる場合」とは、無申告加算税を課すことが不当又は酷と認められる特別な事情がある場合をいうものと解するのが相当である。
これを本件についてみると、請求人が本件宅配物の配達を依頼した平成17年12月27日は、年末年始の時期であるから、宅配物については、交通事情や予期されない集配量の増加等の要因により通常期よりも配達期間を要するなど、集配業務の遅れや混乱といった不測の事態が生ずる可能性があるが、こうした事情はいずれも利用者にとって相当程度知られていることである。しかも、税務署等の官公庁が12月29日から翌年1月3日までの間閉庁となるため、受取者の押印又はサインが得られなければ持ち帰ることになっている宅配物については、この間、税務署に配達しようとしても受領されることがないため、結局宅配物による提出物は収受されないことになる。
それにもかかわらず、請求人は、本件確定申告書の重要性及びこれが法定申告期限である平成18年1月4日までに必着すべきものであることを十分認識しながら、本件宅配物をA社の担当者に依頼する際に、特に配達日の指定や配達予定日の確認といった、自ら容易にすることができる注意や配慮をせず、漫然とこれを配達依頼し、本件宅配物が請求人の予期に反し、同月5日に配達されたものであるから(仮に本件宅配物に配達日指定シールが貼付された経緯が、A社側の事情によるとしても、それは、請求人が配達日の指定や配達予定日の確認等を容易に行えるにもかかわらず、本件宅配物が確実に配達される手立てをとらなかったことによるものである。)、法定申告期限までに本件確定申告書の提出がなかったことにつき、上記特別の事情があったとは認められず、したがって、「正当な理由があると認められる場合」には該当しないというべきである。
要旨
請求人は、①リース業を営むJ社から同社が顧客へリースしている物件をいったん買い取り、当該物件を直ちにJ社へリースする取引及び②試薬品販売業を営むK社から同社がL大学へリースしている物件をいったん買い取り、当該物件を直ちにK社へリースする取引について、このようなリースバック取引を行う当事者の意図はリース取引を行うことであり、当事者にとって合理的かつ効率的な取引で、リースバックする相当な理由があるから、法人税法施行令第136条の3第2項に規定する実質的に金銭の貸借であると認められるリース取引には当たらない旨主張する。
しかしながら、上記リースバック取引に関して、請求人がリースを行っているといえる実態は認められず、一方で、請求人から上記リース会社等にリース物件の購入代金として移転した金銭が当該リース物件のリース料として回収されている実態があるから、本件リースバック取引は、実質的に金銭の貸借であると認められる。
したがって、請求人の主張は採用できない。
債権差押処分の名あて人である請求人は不服申立適格を有するが、差押処分の対象となった債権が自己に帰属しない旨の主張は、自己の法律上の利益に関係のない違法をいうものであり理由がないとした事例
裁決事例集 第72集 70頁
要旨
国税通則法第75条に規定する国税に関する法律に基づく処分に不服がある者とは、その処分によって直接自己の権利又は法律上の利益を侵害された者であることを要すると解される。この点、請求人は、本件差押処分の名あて人であり、本件差押処分によりその法律上の効果を受ける者であるから、本件差押処分の取消しを求めることができることは明らかである。
しかしながら、審査請求が違法又は不当な処分によって侵害された不服申立人の権利利益の救済を図るものであることから、差押処分を違法とする理由が自己の法律上の利益に関係のない違法を理由とするものである場合は、かかる違法理由を審査請求の理由とすることはできないと解するのが相当である。
そうすると、請求人は、本件被差押債権が請求人ではなく第三者に帰属するものであるから本件差押処分が違法であると主張するが、仮にそのような事実があったとしても、本件差押処分によって不利益を受けるのは当該債権の真正な帰属者であるとされる第三者であって請求人ではなく、請求人は本件差押処分によって何らの影響も受けないのであるから、結局、請求人がかかる事実を違法であると指摘することは自己の法律上の利益に関係のない違法を主張するものにほかならない。
したがって、請求人の主張は、審査請求の理由とすることのできない理由を主張するものであるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
要旨
請求人は、請求人及びその長男の所有に係る各土地(以下「本件各土地」という。)を一括して売却(以下「本件売却」という。)し、手付金及び残代金を受領した際に作成して名あて人に交付した各領収証(以下「本件各領収証」という。)について、それぞれ印紙税を納付したが、本件各領収証は、印紙税法の別表第1の課税物件表第17号の非課税物件欄2の「営業に関しない受取書」に該当するから、印紙税の過誤納確認をしないことの通知処分は違法である旨主張する。
しかしながら、営業とは、一般に、利益を得ることを目的として同種の行為を反復継続することをいうものと解されており、「営業に関しない受取書」における営業についても、これと同旨に解すべきであるところ、請求人らは、本件各土地の駐車場等としての賃貸(以下「本件賃貸」という。)を本件各土地を相続により取得した以後継続して行い、現実に租税公課を含む必要経費の額を上回る賃料収入を得ていたことからすれば、本件賃貸は、利益を得ることを目的として、継続的に行われていたものと認められ、営業に該当する行為ということができる。そして、請求人らが現実に営業の用に供している資産を譲渡していることからすれば、本件売却は、営業用資産を売却した営業に関するものというべきであり、本件各領収証は「営業に関しない受取書」には該当しないものと認めるのが相当である。
要旨
請求人は、事業所得であるというためには、「給付」をなす者に対する「役務の提供」という対価関係があることが必要であるところ、本件援助金は、請求人と弁護士会の間に役務行為が存在しない対価性のない無償行為に対して支払われたものであるから、一時所得に該当する旨主張する。
ところで、所得税法第27条第1項に規定する事業とは、自己の計算と危険において利益を得ることを目的として継続的に行う経済活動のことをいうと解され、そして、同条項が事業所得を「事業から生ずる所得」と規定しているのは、事業が総合的な活動であることに着目して、本来の事業活動による収入のほかに、事業の遂行に付随して生ずる収入も事業所得の総収入金額に含める趣旨と解するのが相当である。
また、一般に弁護士の弁護士業務に係る所得区分は事業所得であると認められる。
これを本件援助金についてみると、①請求人は、国選弁護人として弁護士会の推薦を受け、裁判所から選任され、被告人の弁護活動を行うことでその支払を受けたこと、②請求人は、弁護士会に本件援助基金規則に基づき援助申請を行い、弁護士会の「刑事弁護援助基金支払証書」には「刑事被告人の弁護費用として金75万円支出する。」旨の記載があること、③弁護士会は、国選弁護人としての遵守事項を定め、また、当該事件についての報告を求めるなど、請求人が行った弁護活動について極めて密接な関係を持つものであることなどからすると、本件援助金は、弁護士活動に付随して生じた収入ということができ、事業所得の総収入金額に含まれると解するのが相当である。
したがって、本件援助金は、事業所得に該当すると認められることから、一時所得には該当しない。
要旨
請求人は、自身の資力からみて国税徴収法第153条に基づいて滞納処分の執行が停止されるべき状態にあることを理由として、本件差押処分の違法又は不当を主張する。
しかしながら、滞納処分の執行の停止は、国税徴収法第153条第1項に規定された一定の要件に基づき、税務署長又は国税局長の裁量によって行うものであって、これを行わない不作為に対する不服申立てに対する判断は、当審判所の権限に属するものではない。そして、同条第3項は、滞納処分の執行の停止をした場合においては差押えを解除しなければならない旨規定するが、本件においては、いまだ当該滞納処分の執行の停止はなされていないのであるから、差押えを解除しなければならない状態となっているわけでもなく、差押えを取り消す理由はない。
したがって、滞納処分の執行を停止すべきであることを理由として、本件差押処分の取消しを求める請求人の主張は失当である。
有価証券の売買契約において、条件付で売買価額を決定し、条件不成就ならば代金の一部を返還することとしている場合、条件不成就により返還された金員は、譲受人に発生した損害の補てん金ではなく、売買代金の返還であるとした事例
裁決事例集 第72集 325頁
要旨
原処分庁は、請求人が譲渡人との間で行った譲渡人保有株式の売買契約(以下、当該株式を「本件株式」といい、当該売買契約を「本件売買契約」という。)に基づき本件株式の売買代金の返還として譲渡人から受領した金員(以下「本件金員」という。)は、本件売買契約の締結時点ではその発生が不確実であった事象に基因して本件株式の価値が減少したことにより生じた損失に対する一種の補てんであり、受領した事業年度の益金の額に算入されるべきものである旨主張する。
しかしながら、本件売買契約については、本件株式の売買時点において、本件株式の発行会社の予想利益及び既存債権のデフォルト見込額につき当事者間で合意をすることができなかったことから、本件株式の発行会社が所定の予想利益を達成し、かつ、既存債権が約定どおりに回収されることを前提条件として売買価額を設定し、当該前提条件の一方又は双方が満たされなかった場合には当該売買代金を減額する条件が付されたことが認められる。そして、そのような条件を付すことは、それが違法行為等となる場合を除き、当事者間で自由に決定されるものである。また、本件金員は、本件売買契約に基づいて算出された本件株式の売買代金の返還額であると認められる。
したがって、本件金員が「損失に対する一種の補てん」であるとする原処分庁の主張は認められない。
要旨
本件株式は、請求人がD証券株式会社からA証券B支店に現物を持ち込み、保管委託されていたものが、特定口座の開設とともに同口座に移管されたものであるから、受入非特定上場株式等に該当し、本件株式の譲渡所得の計算上控除される取得価額は、みなし取得価額となる。
請求人は、実際の取得価額が認められないとすれば、当該譲渡により損をしているのに税金を支払わなければならず酷であるとして、みなし取得価額が適用される上場株式について実際の取得価額により所得計算をすべきである旨主張する。
しかしながら、請求人は自ら特定口座により株式等の譲渡所得の計算をすることを選択しているところ、A証券B支店は、特定口座の開設時に請求人に対し受入非特定上場株式等の取得価額がみなし取得価額になるということを説明しており、請求人は、本件株式の取得価額がみなし取得価額の適用を受けることを十分に知りえる状況にあったものと認められ、また、A証券は、平成16年末を期限に実際の取得価額への見直しが可能であるとして請求人に対し再点検をするよう通知していたにもかかわらず、請求人は、取得価額の見直しの申出を行っていないことが認められる。
これらの事情に照らせば、本件株式の譲渡所得の計算上、実際の取得価額が認められないからといって、酷であるとは認められないから、請求人の主張は採用できない。
租税特別措置法第66条の4第1項に規定する独立企業間価格を算定するために必要と認められる帳簿書類が原処分庁の要求後遅滞なく提出されておらず、原処分庁の行った独立企業間価格の推定も適法であるから、同条第7項の推定規定を適用して移転価格課税を行った原処分は適法であるとした事例
裁決事例集 第72集 424頁
要旨
請求人は、①租税特別措置法(平成16年法律第14号による改正前のもの。以下「措置法」という。)第66条の4第7項に規定する帳簿書類等とは我が国の納税者が作成・保管することを要求されているものをいい、我が国の納税者が保有していない外国で作成されている資料は、同条第8項に規定する帳簿書類等に該当し、あくまでも入手努力義務があるにすぎないこと、②国外関連者との取引価格の算定資料については、同社との取引を独立した第三者間の取引と認識しているため、見積書以外はないところ、当該資料は原処分庁に提出したから、提出すべき資料はすべて提出していること及び③請求人が再販売価格基準法及び取引単位営業利益法により算定した独立企業間価格によれば所得移転はないことから、帳簿書類等を請求人が提示又は提出しないことを理由として原処分庁が同条第7項の推定規定を適用して更正をしたことは違法である旨主張する。
しかしながら、原処分庁の調査担当職員が提示又は提出を求めた資料は国外関連者の財務諸表及び国外関連者との取引価格の算定資料であるところ、これらは、独立企業間価格の検討を行う上で基本となる資料であり、国外関連者が有する帳簿書類等であっても、措置法第66条の4第7項の帳簿書類等に含まれるものと認められるから、これらの独立企業間価格の算定に不可欠な帳簿書類等が遅滞なく提示又は提出されない場合には、同項の推定規定の要件を充足すると解される。また、請求人は、請求人が主張する再販売価格基準法が本件における独立企業間価格の算定方法として合理的であると主張するが、当該方法については、取引段階及び取引市場が国外関連取引とは異なっていることから、比較対象取引としての類似性を有するものとは認められず、請求人が加えた差異の調整も、当該差異の調整の算定根拠が不明で、その合理性が認められないから、請求人の主張は採用できない。さらに、請求人は、取引単位営業利益法により計算したところによれば所得移転はない旨主張するが、請求人が用いた方法は、比較可能性を検証する事項についての言及もないまま、単に請求人と国内関連企業2社の計3社の平均連結営業利益率と請求人が競合他社と認識している2社の営業利益率を比較しているものであり、合理性が認められないから、請求人の主張を採用することはできない。そうすると、原処分庁は、請求人から独立企業間価格の算定に必要な帳簿書類等の提示又は提出を受けることができず、他に比較対象取引となり得る取引も見出せなかったことから、本件国外関連取引に係る独立企業間価格の算定に当たって措置法第66条の4第2項第1号イ、ロ、ハ及びニに掲げる方法のいずれも適用することができなかったものであり、当審判所の調査の結果によっても、当該独立企業間価格の算定について当該各方法のいずれも適用することができないと認められる。
したがって、原処分庁が、本件調査により国外関連者の総原価の額を把握し、措置法第66条の4第7項の規定により独立企業間価格を推定したことは適法である。
要旨
請求人らは、F総合法律事務所は、会社法務に関する業務に対する高い評価と信頼は独占性をもった経営手腕、ノウハウとなっていること、長年にわたる人間関係の繋がりと業務遂行に対する高い評価により顧問先との強い信頼関係が構築され、請求人らの夫ないし父であるF弁護士が弁護士会等の要職を歴任し社会的信用及び知名度が高められてきたこと、さらに、F総合法律事務所の後継者であるG弁護士がFという名称を継続使用していることはF弁護士が蓄積した社会的信用等を継続使用する経済的・社会的価値を認めている証左であることから、これら経営手腕、ノウハウ並びにFという看板の信用度及び知名度こそが営業権に該当し、F弁護士が廃業に際しG弁護士から受領した金員(以下「本件金員」という。)は、営業権の譲渡の対価に当たる旨主張する。
ところで、営業権譲渡における営業とは、一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産をいうが、営業上のノウハウや暖簾、得意先関係等のいわゆる財産的価値のある事実関係は、常に譲渡の対象となる営業権となるものではなく、それが個々の主観的要素を離れて営業組織に客観的に結実した形で表象された場合にはじめて営業譲渡の対象となる。
そして、弁護士の業務は、個々の弁護士の経験、知識、法律的技能、また、依頼者との間の個々の信頼関係を基礎として成り立っているものであり、一身専属性の高いものであるから、このように、一身専属性の認められる弁護士業において、弁護士のノウハウ、依頼者との信頼関係等は、当該弁護士個人に帰属するものであり、当該弁護士を離れて営業組織に客観的に結実することにはなじまないものである。
本件においても、F弁護士の社会的信用やノウハウ等は、F弁護士個人に帰属するものであり、F総合法律事務所という組織として客観的に結実したものとは認められないから、営業権は存在しないと解するのが相当であり、この理は当事者の主観によって左右されるものではない。
したがって、本件金員は、営業権譲渡の対価であるとは認められない。
そして、本件金員のうち、賃借権の継承及び備品の引継ぎに係る部分以外の部分は、業務等の引継ぎの経緯等からすれば、F弁護士がG弁護士と共同経営していたF総合法律事務所の経営から離脱するに当たり、顧問先との契約のうちF弁護士の持分の清算金の趣旨であるものと認められるから、事業所得となる。
請求人の勤務する会社が属するグループを支配する外国法人から、請求人に無償で同法人の株式を取得できる権利が付与されたことに基づいて生じる経済的利益は、当該権利が確定する諮問委員会の決定日が収入すべき日であり、雇用契約又はこれに類する原因に基づき提供された非独立的な人的役務の提供の対価として給付されたものとして、給与所得に該当するとした事例
裁決事例集 第72集 89頁
要旨
(1) 請求人は、請求人の勤務する会社(内国法人)が属するグループを支配する法人であるH社(外国法人)から、同グループの従業員持株制度に基づき、請求人に無償でH社の株式を取得することができる権利(以下「本件アワード」という。)を付与されたことに基づいて生じる経済的利益(以下「本件経済的利益」という。)は、請求人が株式の売却申請を行った日に実現するから、当該売却申請を行った日が収入金額とすべき時期である旨主張する。
しかしながら、本件アワードは、請求人の年間給与金額などに応じてH社から請求人に無償で付与され、条件が満たされると、グループの従業員持株制度の実施と管理を行う諮問委員会が決定する日(以下「本件決定日」という。)に権利確定するとしており、同日以後においては、請求人は受益所有権を有するH社の株式(以下「本件株式」という。)をいつでも売却することができ、本件アワード付与の基準日である適格日から本件決定日までに係る配当が支払われ、本件決定日以後の配当を受ける権利及び本件株式に係る議決権を行使できる権利も請求人に移転することが認められることから、本件経済的利益は、本件決定日に権利が具体的に確定したと認めるのが相当である。
そして、請求人が本件決定日に得たものは、本件株式の同日における時価相当額の経済的利益(以下「本件権利確定益」という。)と認めるのが相当である。
なお、請求人が行った本件株式の売却申請は、本件決定日以後に請求人が有することとなった本件株式に関する各種の権利のうち、本件株式を処分できる権利について、請求人が自らの投資判断に基づき、これを行使すべく手続をしたものにすぎないから、請求人の主張は採用できない。
(2) 請求人は、H社との間に直接雇用又は委任の契約関係はなく、また、本件経済的利益の発生原因は株価の上昇によるものであり、請求人の精勤とH社の株価の上昇とは直接関係せず、偶発性を有することから、一時所得に該当する旨主張する。
しかしながら、①本件アワードは請求人がH社傘下のS社ないしはT社(以下「勤務会社」という。)の従業員等であることを理由に付与されたものであること、②本件アワードの権利確定は勤務会社の従業員等として一定期間の勤務をしたことによって可能となること、③本件アワードは請求人に対し付与されたものであり、他人に譲渡することは禁止されていることからすれば、請求人は、勤務会社の従業員等たる地位に基づき本件株式を取得することができる権利を付与され、勤務会社の従業員等として一定期間勤務することにより本件権利確定益を得たものと認められるから、本件権利確定益は、請求人が専ら勤務会社に勤務することに基づいて得られる経済的利益であり、請求人の非独立的ないし従属的な人的役務の提供の対価としての性質をもった所得と認められる。さらに、本件権利確定益は、勤務会社からではなくH社から与えられたものであるものの、本件アワードは、グループ各社の従業員等の意欲を引き出すことなどを企図して設けられており、H社は請求人が勤務会社において勤務しているからこそ、請求人に対して本件アワードを付与したものであって、本件権利確定益は、請求人が職務を遂行したことに対する対価としての性質を有する経済的利益であることは明らかというべきである。
したがって、本件権利確定益は、所得税法第28条《給与所得》第1項に規定する給与所得に該当するというべきである。
なお、経済的利益を受けた者と当該経済的利益を給付した者に直接の雇用関係又は委任の契約関係がないことのみをもって給与所得該当性が否定されるものではなく、また、給与所得該当性の判断における人的役務の提供の対価性の問題は、従業員等の地位又は職務に関連してその労務の提供の見返りとして経済的利益を受けたものとされる関係があれば足り、人的役務の提供の質や量と給付との間に数量的な相関関係があることまでを要するものではなく、請求人が得るべきこととなった経済的利益の多寡が人的役務の提供の内容と関係ない要素によって左右されたとしても、本件権利確定益の給与所得該当性を否定する事情とはならないから、請求人の主張は採用できない。
海外のF島に本店を置くG社が、0%から30%までの間の税率を選択できる制度を利用して26%の税率を選択して納付したF島の法人所得税については、法人税法第69条第1項に規定する外国法人税に該当せず、G社は租税特別措置法第66条の6第1項に規定する特定外国子会社等に該当するとした事例
裁決事例集 第72集 463頁
要旨
法人税法第69条第1項に規定する外国法人税の意義に照らして、G社が納付したF島の法人所得税(以下「本件法人所得税」という。)について審理したところ、次の①から③のとおり、本件法人所得税は当該外国法人税に該当せず、G社は租税特別措置法第66条の6第1項に規定する特定外国子会社等に該当すると解される。
① G社は、免税を選択すれば納付しなくてもよいこととなるものを、あえてF島当局に26%の税率の適用申請をして納付したということができ、本件法人所得税は極めて任意性の強い支出であり、また、発生の避けられない国際的二重課税の排除を目的とした外国税額控除制度の予定する外国法人税とはいえないものというべきである。
② 本件法人所得税は、税率を納税者側で選択してF島当局に申請して承認を受けるものであり、同一の所得に対して同一の税額が算出されるものではないため、納税者間の画一性(公平性)を維持するための強行性を維持するものであるとはいえず、我が国の法人税に相当する税の範疇を逸脱したものと認められる。
③ 本件法人所得税の納付の選択には、タックスヘイブン対策税制の適用(課税)回避以外に合理的理由がないと認められ、タックスへイブン対策税制の適用(課税)回避に資する本件法人所得税は我が国の租税本来の概念とは大きく乖離したものといえ、また、当該F島の税制はタックスへイブン対策税制の適用(課税)の回避を支援する国際的にも有害な税制であるとされていることからみても、このようなものを我が国の法人税に相当する税として取り扱うことは、税負担を著しく害するものとして許されないというべきである。
要旨
請求人は、滞納法人は評価額328百万円又は347百万円の貸付金を有しているところ、本件滞納国税は約260百万円であるから、本件告知処分は、第二次納税義務の要件である「徴収不足」を充足していない旨主張する。
しかしながら、貸付債権を評価するに当たっては、一定利率の下で複利計算して一定期間後に一定額を受け取るために現在要する額を算出する方法によって得られた金額のみにとらわれることなく、国税債権の徴収確保という観点から、差し押さえた財産が公売によって国税債権額に見合う額で確実に回収できるものか否かという観点からも検討されてしかるべきであり、そのためには、貸付条件の内容等をも考慮に入れ、特定の者の主観的価値や愛着的価値によることなく、客観的な交換価値、すなわち市場性をもった交換価値であるか否かという総合的な見地から行うのが相当である。
これを本件貸付金についてみると、その貸付金の第三債務者(同族法人)の営業収益等及び財務状態(①年平均営業利益は約860万円の赤字となっていること、②約定による弁済が不履行となっていること、③債務超過であること等)並びに本件貸付契約の内容(①貸付金が多額であるにもかかわらず無担保で連帯保証人もいないこと、②無担保であるにもかかわらず返済期間が長期で、かつ、低利であること、③返済期限が不確定要素を含み、かつ、債務不履行に関する約定がないこと)をもってすれば、社会通念上、本件貸付金は、同族法人グループ内でのみ通用するものであり、しかも、その市場性は限られたものとなり、公売を前提とした客観的な交換価値としての評価は極めて低い額になるものと思料される。さらに、本件貸付金については、返済期限が不確定要素を含んでいること及び債務不履行に関する約定がないことを併せて考慮すれば、むしろ市場性をもった交換価値を認めることはできず、公売財産として不適当なものというべきであるから、徴収不足の判定から除外するのが相当である。そうすると、滞納法人の財産は「徴収すべき額に不足する」状態であったとみるのが相当である。
要旨
所得税法第30条及び同法第31条の立法趣旨等を踏まえれば、厚生年金保険法第9章の規定により定められた厚生年金基金規約に基づき厚生年金基金から受ける一時金のうち、退職金としての性質を有している一時金、すなわち、①元の雇用主が払い込んだ掛金、保険料が給付の原資の大部分を占めているものであり、かつ、②退職金規程に定められた退職金に含まれる年金制度からの一時金であるなど、給与所得者であった者が退職日以後に過去の勤務に基づいて支給される一時金で加入員の退職に基因して支払われたと認められるものは、所得税法第31条第2号に規定する一時金で「加入員の退職に基因して支払われるもの」に該当し、税法上、退職所得として取り扱うと解するのが相当である。
そして、厚生年金基金から支払われる年金のうち退職金としての性質を有している一時金に相当する部分(以下「一時金相当部分」という。)は、加入員、雇用主及び厚生年金基金の合意の下、一定年齢に達した際に、加入員の老後の生活の糧とするために、厚生年金基金に委託することにより、退職金の性質を持つ金員を年金という形式で加入員に分割して支払われるものとみることもできることから、一時金相当部分については、原則、退職時において退職所得としての権利が確定しているとして課税を行うべきものとみることもできるが、所得税法は、当事者の意思及び分割され年金として支払われる支払実態などにかんがみ、同法第35条第2項及び第3項の規定において公的年金等として雑所得である旨規定し、一時金相当部分は、それが分割され年金として支払われている限りは退職所得として課税せず、年金として支払われた年分において雑所得として課税するという、年金としての課税を行うものであると解される。
そうすると、現に厚生年金基金から、退職金としての性質を有する一時金の一部を年金として支払を受けていた者が、自らの意思に基づき、今後年金として支払を受ける権利に代えて一時金として受け取ることを選択した場合にあっては、前述した老後の生活の糧とするために分割して受け取るという当事者の意思及び分割して支払われる支払実態など、年金として課税すべき考慮要素が消滅するから、当該一時金の本来の性質に基づき、退職所得として課税することが相当であると解される。
したがって、所得税法第31条第2号に規定する「加入員の退職に基因して支払われるもの」とは、退職金としての性質を有する一時金が退職時に支払われた場合のみならず、この一時金の一部を年金として厚生年金基金から支払を受けていた年金受給者が、自らの意思により、今後年金として支払を受ける権利に代えて一時金として受け取った場合も含まれると解するのが相当である。
本件の事実関係によれば、本件一時金は、A厚生年金基金規約に基づいてA厚生年金基金から支給される加算年金に対応する終身までの年金給付の総額に代えて支払われたものであり、また、加算年金の掛金は事業主が負担したものであり、さらに、本件一時金は、勤務先を退職し、加算年金の給付を受けている者しか受け取ることができず、請求人が自らの選択により一時金として受け取ったものと認められることからすれば、本件一時金は、所得税法第31条第2号に規定する退職手当等とみなすものとして、退職所得であると認めるのが相当である。
そして、本件一時金は、請求人が平成7年にB社(現A社)を退職したことに伴い受け取った退職一時金と同一の勤務先における過去の勤務に基づいて支給されたものであり、一の支払者から二以上の退職手当等の支払を受けるのと同様の事情があると認められるから、同法施行令第77条の規定により、請求人の退職日の属する年分である平成7年分の退職所得と認めるのが相当である。
河川法第24条の規定に基づく河川区域内の土地の許可占用権は相続税の課税財産に該当し、その価額は財産評価基本通達87-5により評価するのが相当であるとした事例
裁決事例集 第72集 534頁
要旨
河川法第24条の規定に基づく河川区域内の土地の占用許可は、特定人に対し、当該土地の本来の用法を超えて特別の継続的な使用権を設定するものであり、当該権利は、河川管理者との関係では公法上の債権の性格を持ち、また、その権利の実質からみると当該許可を受けた者の私的な経済的利益を満たすものであり、河川管理者の承認があれば移転性も認められるから、私法上の財産権としての性質を持ち、相続税法上の財産に該当すると認められる。
本件占用権は、河川法第24条に基づくものであり、また、許可する占用目的は造船施設等で工作物の設置を目的とするものであるから、財産評価基本通達9の(10)に定める占用権に該当し、占用権の評価方法を定める財産評価基本通達87-5の定めは相当であるところ、河川法第24条の河川区域内の土地とは、同法第6条《河川区域》第1項所定の河川区域内の土地であり、河川の流水が継続して存する土地、すなわち、河状を呈している土地を含むと考えるのが相当と認められるから、占用権の評価の基礎となる占用権の目的となっている土地等は、土地(河川敷)占用権及び流水面占用権の目的となっている土地全体が該当し、これを一画地として評価した上で、財産評価基本通達87-5(2)及び(3)を適用して占用権の価額を評価すべきものである。
要旨
請求人らは、相続回復請求権は実質的にみて被相続人の遺産であるから、請求人らが本件和解の成立時に現に取得した相続回復請求権の範囲内で課税すべきであって、本件和解の結果、回復できなかった相続回復請求権に相当する額について、相続税の課税標準等に異動が生じたといえるから、更正の請求を認めるべき旨主張する。
しかしながら、相続回復請求権の趣旨、請求人らの相続回復請求の訴えの内容からすれば、当該訴えは、相続人であった者(以下「僣称相続人」という。)が占有・管理している被相続人の遺産全部を請求人らに返還するよう求めたもので、遺産の帰属が争われているものではないこと、請求人らと僣称相続人との間の本件和解は、僣称相続人の資力等にかんがみ、相続回復請求権に基づいた和解金を超える請求権を和解期日以降放棄する旨のものであり、請求人らが相続開始時点に取得した相続財産を増減させるものでなく、単に相続回復請求権の一部を和解期日以降放棄したに過ぎない。そうすると、本件和解は、新たな権利関係等を創設する趣旨で行われたものと解するほかないから、これにより、請求人らが原処分庁に提出した相続税の申告書に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実関係にさかのぼって異動を来すものではないと認めるのが相当である。したがって、本件和解は、国税通則法第23条第2項第1号に規定する「和解」には該当しないというべきである。
要旨
請求人は、租税特別措置法第33条の4第3項第1号に規定する「公共事業施行者から最初に買取り等の申出のあった日」について、民間企業が事業認定を受けて行う事業の場合、当該民間企業は、事業認定を受け収用権が発生したことによって初めて同号に規定する公共事業施行者としての地位を得られるのであるから、本件における公共事業施行者は事業認定を受けた後のT社であって、本件土地の買取りの申出のあった日は平成14年8月30日であり、譲渡の日(同年9月20日)の6か月以内に買取りの申出があったことになるから、収用交換等の場合の5,000万円の特別控除の特例が適用できる旨主張する。
しかしながら、租税特別措置法第33条の4第3項第1号に規定する買取り等の申出の主体である公共事業施行者については、事業認定を要しない事業(いわゆる特掲事業)を施行する者も含まれており、また、事業認定を受けた後の事業者とは規定されていないことから、事業認定を受けた後の事業者が同号でいう公共事業施行者であると限定的に解することはできない。また、同号に規定する「買取り等の申出のあった日」とは、公共事業施行者が、資産の所有者に対し、買取り等の資産を特定し、対価を明示してその買取り等の意思表示をした日をいうものと解されるところ、本件についてみると、事業施行者であるT社が、請求人に対して、最初に買取りの意思表示を行ったのは、平成13年6月17日とするのが相当であり、本件土地はこの日から6か月以上経過した後において譲渡されているから、収用交換等の場合の5,000万円の特別控除の特例を適用することはできない。
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