裁決事例 平成23年(2011年)

裁決事例 平成23年(2011年)

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平成23年12月14日裁決

見積価額の低廉性は公売公告処分の違法事由には当たらないとした事例

裁決事例集 第85集

ポイント

 この事例は、見積価額の低廉性は公売公告処分の取消原因にはならないと解するのが相当であり、また、公売財産の所有者等は、見積価額が低廉であることを理由に、その後の売却決定の取消しを求める不服申立てをすることを妨げられないので、公売財産の所有者等の権利が害されるともいえないと判断したものである。

要旨

 請求人は、国税徴収法第95条《公売公告》第1項に規定されている公売公告すべき事項に見積価額の決定が含まれていないとしても、原処分庁は、公売公告と見積価額の公告を同日、一体のものとして実施しており、実務上も両者は一体のものとして扱われているから、見積価額が著しく低廉である場合には、公売公告処分の違法事由となる旨主張する。
 しかしながら、税務署長は、差押財産を公売に付するときは、公売の日の少なくとも10日前までに公売公告しなければならないとされ、公売財産が不動産であるときは、税務署長は、公売の日から3日前までに見積価額を公告しなければならないとされているが、公売財産の見積価額は、公売公告事項とされていない。このことからすれば、見積価額公告は、公売公告の後にされることが予定されているということができ、見積価額の決定も公売公告の前に予定されていると解することはできない。そして、後にされた行政行為に何らかの瑕疵があったとしても、そのことゆえに先行の行政行為が違法となることはないと解されるから、見積価額が仮に低廉であったとしても、そのことが公売公告処分の取消原因にはならないと解するのが相当であり、また、そのように解したとしても、公売財産の所有者等は、見積価額が低廉であることを理由に、その後の売却決定の取消しを求める不服申立てをすることを妨げられないので、公売財産の所有者等の権利が害されるともいえない。

参照条文等

国税徴収法第95条第1項第98条第99条第1項

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平成23年12月13日裁決

軽油引取税の特別徴収義務者ではない者から軽油を引き取る者が支払う軽油引取税相当額は、課税仕入れに係る支払対価の額に該当するとした事例

裁決事例集 第85集

ポイント

 軽油引取税は、特約業者等(地方税法第144条に規定する特約業者又は元売業者をいう。)から軽油を引き取る者に対し課される税であり、当該特約業者等が特別徴収の方法により、当該引き取る者から徴収することとなっている税であるところ、この事例は、軽油取引税名目の支払額につき、軽油の販売業者が特約業者等であるか否かによって、消費税法上の課税仕入れに係る支払対価の額に該当するか否かを判断したものである。

要旨

 納税義務者の租税の支払は、課税仕入れに係る支払対価の額には該当しないから、軽油引取税を納税義務者として支払う場合には、軽油引取税に相当する金額は課税仕入れに係る支払対価の額には該当しないと解するのが相当である。
 軽油引取税に関する地方税法の規定によれば、軽油引取税の特別徴収義務者である特約業者等又は特約業者等との間で委託販売契約を締結した受託販売業者から軽油を引き取る者が、当該特約業者等又は受託販売業者に支払う軽油引取税相当額は、納税義務者としての租税である軽油引取税の支払であるから課税仕入れに係る支払対価の額には該当せず、一方、当該特約業者等又は受託販売業者ではない者から軽油を引き取る者が支払う軽油引取税相当額は、課税仕入れに係る支払対価の額に該当すると解するのが相当である。
 請求人の取引先の一については、上記特約業者等又は受託販売業者ではない者であり、請求人が支払う軽油引取税相当額は課税仕入れに係る支払対価の額に当たるが、他の取引先については、軽油引取税の特別徴収義務者である特約業者等に該当することから、請求人が納税義務者として軽油取引税を支払うことになり、課税仕入れに係る支払対価の額には当たらない。

参照条文等

消費税法第2条第1項第12号第30条 地方税法第144条第1項第144条の2第144条の13第144条の14

参考判決・裁決

平成9年5月28日裁決(裁決事例集No.53・477頁)

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平成23年12月8日裁決

年の中途で死亡した被相続人に係る納付すべき所得税の額のうち、請求人が承継する納付すべき税額は、遺留分減殺請求により修正された相続分によりあん分して計算した額であるとした事例

裁決事例集 第85集

ポイント

 この事例は、本件遺言(相続させる旨の遺言)は、遺言書に請求人の相続分に関する記載がないものの、請求人の相続分を零と定めたものと解するのが相当であり、また、本件遺言により指定された請求人の相続分は、遺留分減殺請求により修正されたと解されるから、請求人が承継する納付すべき税額は、被相続人に係る納付すべき所得税の額のうち、当該修正された相続分によりあん分して計算した額であると判断したものである。

要旨

 請求人は、本件遺言により遺産の割当てから完全に排除されているから、当該遺言は、請求人の相続分を零とする指定もされたものと解すべきであるとし、被相続人に係る納付すべき所得税の額のうち請求人が承継する納付すべき税額は零円であり、原処分はその全部が取り消されるべきである旨主張する。
 また、原処分庁は、本件遺言は、特定の財産を請求人以外の他の各相続人に対して相続させる趣旨のものであるから、相続分の指定をしたものではなく、被相続人に係る納付すべき所得税の額のうち請求人が承継する納付すべき税額は、請求人の法定相続分(10分の1)によりあん分して計算した額であり、原処分は適法である旨主張する。
 しかしながら、本件遺言は、被相続人が自己の所有する財産全部について、請求人を除く他の各相続人のいずれかの者に確定的に帰属させるという遺産の分割の方法を定めるとともに、当該他の各相続人に対し、法定相続分とは異なる相続分を定めたものと解するのが合理的であり、遺言書に請求人の相続分に関する記載はないものの、被相続人が、請求人の相続分を零と定めたものと解するのが相当である。そして、請求人は、自らの遺留分が侵害されたとして、他の各相続人に対し遺留分減殺請求をしたのであるから、当該減殺請求により、自らの侵害された遺留分の限度(20分の1)で被相続人の残した財産に関する持分を取得し、その結果、本件遺言により指定された請求人の相続分は20分の1に修正されたと解される。
 したがって、被相続人に係る納付すべき所得税の額のうち、請求人が承継する納付すべき税額は、本件遺言により指定された相続分(20分の1)によりあん分して計算した額であるから、原処分は、その一部を取り消すべきである。

参照条文等

所得税法第125条 所得税法施行令第263条 所得税法施行規則第49条 国税通則法第5条第1項第2項第25条 民法第900条~第902条、第908条、第1028条

参考判決・裁決

最高裁昭和41年7月14日第一小法廷判決(民集20巻6号1183頁) 最高裁昭和51年8月30日第二小法廷判決(民集30巻7号768頁) 最高裁昭和58年3月18日第二小法廷判決(最高裁判所裁判集民事138号277頁) 最高裁平成3年4月19日第二小法廷判決(民集45巻4号477頁)

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平成23年12月6日裁決

「相続させる」旨の遺言の法的効果を前提として、未分割財産が分割されたことを事由とする相続税法第32条第1号の規定に基づく更正の請求は、その前提要件を欠くとした事例

裁決事例集 第85集

ポイント

 この事例は、遺産の全部を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言があった場合には、被相続人の死亡の時に直ちに遺産全部について分割の効果が発生し、当該遺産について再度の分割がなされる余地はないから、相続税法第32条第1号の規定の適用の前提を欠くと判断したものである。

要旨

 請求人らは、本件遺言は相続分の指定をしたものにすぎず、当初申告における課税価格は、相続税法第55条《未分割遺産に対する課税》の規定に基づき本件遺言による指定相続分に従って計算したものであるから、請求人らを被告とする遺留分減殺請求訴訟において成立した本件和解により遺産分割が確定したとして、同法第32条《更正の請求の特則》第1号に規定する事由が生じた旨主張する。
 しかしながら、遺産全部を一部の相続人に「相続させる」旨の遺言は、遺言書の記載からその趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情がない限り、遺産の分割の方法を定めた遺言であり、被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じた時)に直ちに遺産全部について分割の効果が発生し、もはや当該遺産について再度の分割がなされる余地はなく、また、当該相続人に法定相続分を超える遺産を相続させることになるから、遺産分割方法の指定と同時に相続分の指定がなされたものと解すべきであるところ、本件遺言では、不動産8件を個別に掲記した上で、それらを含む一切の財産を「請求人らに各2分の1の割合で相続させる」旨記載されていること、他の相続人らには財産を相続させない旨の被相続人の意思が明確に表示されていることからして、本件遺言は、遺産分割方法の指定と同時に相続分の指定をしたものと解すべきであり、そうすると、本件被相続人の死亡の時に遺産全部について直ちに分割の効果が発生し、当該遺産について再度の分割がなされる余地はない。
 したがって、相続税の申告書の提出時に本件被相続人の遺産の中に未分割のものはなく、相続税の課税価格が相続税法第55条の規定により計算されたものと認めるべき余地はないから、本件和解が、同条の適用があった場合に係る同法第32条第1号に規定する事由に該当しないことは明らかである。

参照条文等

相続税法第32条第1号第55条 民法第908条

参考判決・裁決

最高裁平成3年4月19日第二小法廷判決(民集45巻4号477頁)

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平成23年12月6日裁決

建物の一部が収用に伴い取り壊された前後を通じて、評価対象地の利用状況及び権利関係に変化がなかったことから、評価単位は1つとすべきとした事例

裁決事例集 第85集

要旨

 請求人は、本件土地は、その一部が過去の収用により買い取られたことに伴い、建物の一部が取り壊されており、当該収用後に未利用の状態であった空き地部分と建物の敷地として使用貸借していた部分との2つの利用単位からなっているので、それぞれ別の評価単位として評価すべきである旨主張する。
 しかしながら、本件土地は、当該収用以前から1棟の建物の敷地として一体として利用されており、当該収用に伴い建物の一部が取り壊された後も、その利用状況及び権利関係に変化がないことからすれば、財産評価基本通達7-2《評価単位》の定めに基づき1つの評価単位(1画地)として評価すべきである。

参照条文等

相続税法第22条 財産評価基本通達7-2

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平成23年12月6日裁決

戸建住宅の敷地として分譲開発した場合に公共公益的施設用地の負担は必要ないことから広大地には該当しないとした事例

裁決事例集 第85集

ポイント

 この事例は、評価すべき財産(本件B土地)は、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大であるとは認められるものの、請求人が主張する建築基準法第42条第1項第5号に規定する「位置指定道路」の拡幅のための用地提供が、公共公益的施設用地の負担と認められるか否かにつき判断したものである。

要旨

 請求人は、本件B土地において開発行為を行うとした場合に、本件B土地に接面する位置指定道路幅を拡幅する必要があり、当該拡幅のための用地提供は公共公益的施設用地の提供と同じであるので、本件B土地は、財産評価基本通達(評価通達)24-4《広大地の評価》(広大地通達)に定める広大地に該当する旨主張する。
 しかしながら、広大地通達を定めた趣旨は、開発行為により当該開発区域内に道路や公園等の公共公益的施設用地の開設が必要な場合には、相当規模の潰れ地が生じることになり、評価通達15《奥行価格補正》から20-5《容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価》までに定める減額補正では十分とはいえないので、相当規模の潰れ地が生じることを当該宅地の価額に影響を及ぼすべき客観的な個別事情として減額補正することとしたものであるところ、請求人が主張する位置指定道路に係る拡幅部分の提供は、開発区域内に新たな道路を提供する場合とは異なり、評価通達15から20-5までに定める減額補正では十分とはいえないほどの規模の潰れ地が生じたとは認められず、公共公益的施設用地を負担したものとみることはできない。したがって、本件B土地は、広大地通達に定める広大地には該当しない。

参照条文等

相続税法第22条 財産評価基本通達24-4

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平成23年12月6日裁決

評価対象地は、標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大とは認められないから広大地に該当しないとした事例

裁決事例集 第85集

ポイント

 この事例は、評価対象地(約1,100平方メートル)は国道沿線地域に所在し、その地域の標準的使用は、戸建住宅の敷地ではなく、1,000平方メートル以上の低層店舗等の敷地と認められ、標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大とは認められず、財産評価基本通達24-4に定める広大地に該当しないと判断したものである。

要旨

 請求人は、本件土地を戸建住宅の敷地として分譲開発した場合に開発道路の設置という公共公益的施設用地の負担が必要であるから、本件土地が財産評価基本通達24-4《広大地の評価》(広大地通達)に定める広大地に該当する旨主張する。
 しかしながら、本件土地は、その所在する地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大であるとは認められない。仮に、本件土地の地積が著しく広大であるとしても、①本件土地を低層店舗等の敷地として区画割する場合に公共公益的施設用地の負担が必要であるとは認められず、また、②本件土地を戸建住宅の敷地として分譲開発したとしても、公共公益的施設用地の負担が必要ではない路地状開発による区画割の方が、開発道路を設置する区画割に比べて経済的に合理的であると認められる。したがって、本件土地は、広大地通達に定める広大地には該当しない。

参照条文等

相続税法第22条 財産評価基本通達24-4

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平成23年12月2日裁決

相続により取得した土地に係る譲渡所得につき、その土地の値上がり益のうち相続時までの増加額という経済的価値が相続税の課税対象額とされていたとしても、その増加額を含めて所得税の課税対象額とすることは許されるとした事例

裁決事例集 第85集

ポイント

 この事例は、相続時までの土地の値上がり益という同一の経済価値に対する相続税と所得税の課税(譲渡所得課税)が容認されるか否かにつき判断したものである。

要旨

 請求人は、相続により取得した土地の値上がり益のうち相続時までの増加額という経済的価値については、相続税の課税対象額とその後の譲渡所得の課税対象額に二度含まれることになり、同一の経済的価値に対する相続税と所得税の二重課税が生じることとなるから、所得税法第9条《非課税所得》第1項第15号により非課税とされるところ、非課税所得に該当した場合は、税法の適用上その所得がないものと同等に扱われるべきであるから、これを譲渡所得の収入金額に含めるべきではない旨主張する。
 しかしながら、所得税法第60条《贈与等により取得した資産の取得費等》第1項は、居住者が同項第1号所定の相続(限定承認に係るものを除く。)により取得した資産を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算について、その者が引き続き当該資産を所有していたものとみなす旨規定し、いわゆる取得価額引継方式を採用しているところ、同条により、相続後に相続人が当該資産を譲渡した場合には、当該資産の譲渡による収入金額から被相続人の取得費を控除したいわゆる値上がり益について所得税が課されることになり、この値上がり益には、被相続人が当該資産を取得してから相続開始に至るまでの値上がり益部分も含まれていることからすれば、同条第1項は、当該値上がり益部分についてもまた、所得税を課すことを容認しているものと認めるのが相当である。

参照条文等

所得税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)第9条第1項第15号、第60条第1項

参考判決・裁決

最高裁平成22年7月6日第三小法廷判決(民集64巻5号1277頁) 最高裁平成17年2月1日第三小法廷判決(訟月52巻3号1034頁) 最高裁平成4年11月16日第一小法廷判決(判時1441号66頁)

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平成23年12月1日裁決

利息制限法に定める制限利率を超える部分の利息及び遅延損害金は、現実の支払があった時点において事業所得の総収入金額に算入すべきであり、未収の場合には、制限利率の部分のみ総収入金額に算入すべきであるとした事例

裁決事例集 第85集

ポイント

 この事例は、利息制限法に定める制限利率を超える利率(制限超過利率)による貸付金に係る利息、遅延損害金につき、これらが不法な利得であり私法上無効であっても、それが現実に利得者の管理支配下にある場合には、課税の対象となるべきことを示した最高裁判決に則して、その収入計上時期及び収入金額について判断したものである。

要旨

 利息制限法による制限利率を超過する利率をもって金銭を貸し付け、利息、遅延損害金を収受している場合の収益計上について、現実に利息、遅延損害金が収受された場合には、当事者間において約定の利息、遅延損害金として授受され、貸主において当該制限超過部分が元本に充当されたものとして処理されることなく、依然として従前どおりの元本が残存するものとして取り扱っている以上、制限超過部分をも含めて、現実に収受された利息、遅延損害金の全部が貸主の所得として課税の対象となるものと解すべきである。
 また、利息、遅延損害金が未収の場合には、利息制限法による制限利率の限度においてその約定の履行期が到来する年分の収益として計上し、当該制限利率を超過する部分については、現実に受領しない限り、収益計上をすることはできない。
 なお、利息、遅延損害金が未収の場合において、それ以前に利息制限法による制限利率を超過する利息、遅延損害金の支払がされているときは、現実に元本に充当していたか否かに関わらず充当されたものとして、その残額(残元本)についてのみ利息、遅延損害金を生じることとなるのであって、当該残元本を基準にした制限利率の限度において収益計上をすることとなる。

参照条文等

所得税法第33条第2項第1号第36条第1項第156条 消費税法第6条第1項 消費税法施行令第8条 消費税法基本通達6-1-5 国税通則法第68条第1項第2項第70条第5項

参考判決・裁決

最高裁昭和46年11月9日第三小法廷判決(民集25巻8号1120頁)

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平成23年11月25日裁決

申告されなかった相続人名義の預金等について、被相続人の財産であるとの明確な認識はなかったことなどから、相続税法第19条の2第5項に規定する「隠ぺい仮装行為」はないとした事例

裁決事例集 第85集

要旨

 原処分庁は、被相続人の配偶者である請求人Fが相続税の申告をするに際し、相続人名義の預金等(本件預金等)を相続財産に含めずに過少申告したことについて、請求人Fには、相続税法第19条の2《配偶者に対する相続税額の軽減》第5項に規定する隠ぺい仮装行為がある旨主張する。
 しかしながら、相続税法第19条の2第5項の趣旨が、相続税の申告に当たり、相続財産につき隠ぺい仮装という不正手段を用いていた場合には、その相続財産に係る相続税については、配偶者といえども他の相続人と同様に相続税を負担することとなることによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な課税の実現を確保しようとするところにあると解されることからすると、当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行為をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合には、同項に規定する隠ぺい仮装行為の要件が満たされると解すべきであるところ、本件の場合、請求人Fは、本件預金等が被相続人に帰属するものであることを相続税の法定申告期限までに明確に認識していたとまでは認められず、また、相続税の調査の際、調査担当者に対して虚偽答弁を行ったと評価できる事実もないことからすると、請求人Fにおいて、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたということはできない。

参照条文等

相続税法第19条の2第5項

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平成23年11月25日裁決

請求人が給与の名目で受領した金員は、請求人が営む代理店業務の収入と認められるから、その金額を給与所得の収入金額から減算すべきであるとした事例

裁決事例集 第85集

要旨

 原処分庁は、請求人の取引先である冠婚葬祭業者の関連組合から請求人に対して給与として支払われた金員(本件金員)があり、給与所得の課税は適法である旨主張する。
 しかしながら、本件金員は、請求人が葬祭業務を行うに際し、寝台車を運転するためには社会保険の加入が必要であったため、請求人の代理店収入の一部の金額を取引先が差し引き、この金額に相当する金額を取引先の関連組合を経由して請求人に給与という名目で支払うという形式を採ったものであると認められ、他方、請求人と同関連組合の間において、雇用契約その他これに類する契約の締結及び労務その他役務提供が行われた事実は認められず、また、請求人が葬祭業務を行うに当たって、同関連組合から具体的に指示を受けた事実も認められないから、本件金員は、給与所得としての要素を有するものとは認められず、その実質は取引先からの代理店収入の一部と認めるのが相当である。
 したがって、原処分庁の主張には理由がなく、取引先からの代理店収入の一部の金額を給与所得として課税したことは相当ではない。

参照条文等

所得税法第15条第16条第28条第1項第156条 消費税法第20条第21条第30条 国税通則法第30条

参考判決・裁決

最高裁昭和56年4月24日第二小法廷判決(民集35巻3号672頁) 最高裁平成4年2月18日第三小法廷判決(民集46巻2号77頁)

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平成23年11月25日裁決

非居住者である請求人が行うインターネット販売において、輸入した商品の発送業務等を行うアパート及び倉庫は恒久的施設に当たるとした事例

裁決事例集 第85集

ポイント

 非居住者が日本国内で行う事業から生じた所得には、国内に恒久的施設がない限り日本における所得税は課されない。
 この事例は、非居住者である請求人が行うインターネット販売において、輸入した商品の発送業務等を行うアパート及び倉庫が恒久的施設に当たるか否かが争われたものである。

要旨

 請求人は、請求人が事業の用に供していた本件アパート及び本件倉庫は、在庫商品を保管し、倉庫業務を行うとともに、発送業務を行うことのみを目的とした「準備的又は補助的な性格の活動」を行う場所であるから、恒久的施設に該当しない旨主張する。
 しかしながら、請求人が行う輸入販売の取引は、顧客の注文に応じてその都度商品を仕入れて輸入販売する形態のものではなく、あらかじめ輸入しておいた在庫商品を顧客の注文に応じて販売する形態のものであるところ、請求人が本件アパート又は本件倉庫を賃借してまで上記のような在庫販売形態を採用したのは、そうすることによって顧客の発注から納品までの期間を短縮させて顧客の需要に応えるとともに、輸入配送費用を節減することにあったものと認められるから、本件アパート及び本件倉庫は、事業の遂行及びこれによる利得の実現にとって不可欠の機能を果たすものであったということができるとともに、顧客に発送すべき商品に日本語版取扱説明書等の添付という経済的付加価値を付与する機能を有するということからすると、これらは、顧客に販売するための商品の在庫の保管という単なる倉庫の機能に留まるものではなく、事業の遂行による利得の実現にとって重要かつ必要不可欠の機能を有しているということができるのであって、本件アパート及び本件倉庫において行われる活動の全体は、本件事業にとって準備的又は補助的な範囲を超えるものというべきであるから、恒久的施設に該当する。

参照条文等

所得税法第164条第1項第1号第165条第168条 日S租税条約第1条、第5条、第7条

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平成23年11月17日裁決

借地権の設定されている土地の評価に当たり、自用地としての価額から控除すべき借地権の価額はないとした事例

裁決事例集 第85集

ポイント

 この事例は、借地権の設定されている土地の評価に当たり、賃貸人と賃借人との間においては、借地権の価額についての認識のないことが明らかであることから、当該土地は、自用地としての価額により評価すべきであるとしたものである。

要旨

 請求人は、請求人の父(本件被相続人)の相続(本件相続)により取得した土地(本件土地)を、本件相続開始の日において、図書館建物及び駐車場施設の敷地としてa市との間で賃貸借契約を締結し(本件賃貸借契約)、賃貸していたのであるから、本件土地の価額は、財産評価基本通達25《貸宅地の評価》の定めに従い、自用地としての価額から借地権の価額を控除した価額で評価すべきである旨主張する。
 しかしながら、確かに、本件賃貸借契約に係る契約書(本件賃貸借契約書)の記載内容及びその解釈並びに本件土地の使用の主目的からすれば、本件土地には、当該図書館建物の所有を目的とする借地権の設定がされたものと認められるものの、①本件賃貸借契約書には、本件被相続人が本件土地の譲渡を希望するなどの場合には、賃借人であるa市は更地価格を意味する「適正価格」で買い取る旨が定められていること、②本件賃貸借契約における賃貸料の額からみて、本件土地上の借地権の価額については何ら考慮されていないこと、③a市が本件土地に係る鑑定評価を依頼した際に、a市は本件土地を買い取るに当たって考慮すべき借地権の価額は存在していなかったと認識していたものと認められ、また、実際にも本件土地は鑑定評価額に近似した価額で請求人からa市に譲渡されており、借地権の存在を考慮した価額で譲渡されたものではないことが明らかであることなどからすると、本件相続開始の日において、借地権が存した本件土地の自用地の価額から控除すべき借地権の価額はなかったと認められる。このような場合には、財産評価基本通達を形式的に適用すべきではなく、本件土地の評価に当たり、自用地としての価額から借地権の価額を控除しないこととするのが相当である。

参照条文等

借地借家法第2条 相続税法第22条

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平成23年11月17日裁決

課税処分の取消訴訟が係属中であっても、課税処分の効力は妨げられず滞納処分は続行されるとともに、課税処分と滞納処分はそれぞれ目的を異にする別個独立した行政処分であるから、違法性は承継されないとした事例

裁決事例集 第85集

ポイント

 この事例は、滞納処分の前提となった課税処分に係る取消訴訟の裁判が係属している中で、滞納処分の取消しを求めて審査請求がされた場合において、いわゆる「執行不停止」の原則に従い、取消訴訟が係属中であっても滞納処分の執行・手続の続行は妨げられず、また、先行する課税処分が重大かつ明白な瑕疵により無効であるか、違法を理由として権限ある機関によって取り消された場合でない限り、先行する課税処分の違法性を理由として滞納処分の取消しを求めることはできないと判断したものである。

要旨

 請求人は、本件差押処分の前提となった加算税の各賦課決定処分(本件各賦課決定処分)の取消訴訟の裁判が係属中で、いずれも違法な処分であるため、裁判で取り消されることが明らかであり、①本件各賦課決定処分を前提とした、形式的な国税徴収法に基づく本件差押処分は、原処分庁の権限の濫用であり、不当な手続であるとともに、②本件差押処分は、本件各賦課決定処分と密接に関連し、不可分の関係であることから、前提となる本件各賦課決定処分の違法性が承継され、本件差押処分も違法となる旨主張する。
 しかしながら、行政事件訴訟法第25条《執行停止》第1項の規定により、本件各賦課決定処分の取消訴訟が係属中であっても、本件各賦課決定処分の効力は妨げられず、本件各賦課決定処分に係る納付すべき税額に基づき、滞納処分は続行されることとなるところ、原処分庁は、督促に係る国税が完納されておらず、裁判所からの執行停止命令もなされていないことから、滞納国税につき督促手続を経て国税徴収法第47条《差押の要件》第1項第1号の規定に基づき本件差押処分を行ったものである。
 また、課税処分は、国税の納税義務を具体化し、その納付すべき税額を確定させることを目的とする処分であり、滞納処分は、既に具体的に確定した税額が納期限までに完納されない場合に、国税債権の強制的実現を目的とする徴収手続であって、両者はそれぞれ目的を異にする別個独立した行政処分であるから、違法性は承継されず、課税処分が重大かつ明白な瑕疵により無効であるか、違法を理由として権限ある機関によって取り消された場合でない限り、先行する課税処分の違法性を理由として滞納処分の取消しを求めることはできないと解するのが相当であるところ、先行する本件各賦課決定処分には重大かつ明白な瑕疵はなく、また、違法を理由として権限ある機関によって取り消された事実もないので、本件各賦課決定処分の違法性を前提とした請求人の主張はその前提を欠くものである。

参照条文等

国税通則法第105条第1項 行政事件訴訟法第25条

参考判決・裁決

平成14年12月11日裁決(裁決事例集No.64・126頁)

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平成23年11月15日裁決

国税通則法第46条第2項第4号の「事業につき著しい損失を受けたこと」に該当する事実の有無は、一定期間における損益計算を行うことにより判定することが相当であり、生活費等を控除して利益金額を算定すべきとする請求人の主張は採用できないとした事例

裁決事例集 第85集

ポイント

 この事例は、国税通則法第46条第2項第4号の「事業につき著しい損失を受けたこと」に該当する事実の有無の判定において、納税の猶予は納税者を救済するものであるが、徴収手続における他の納税者との公平の観点から、当該事実の有無は、一定期間における損益計算を行うことによって判定することが相当であり、所得金額が生活費等すら捻出できない利益金額に落ち込んでいる場合には納税の猶予の要件に該当するとの請求人の主張は、法令上の根拠がなく採用できないと判断したものである。

要旨

 請求人は、請求人の各年分の所得金額及び青色事業専従者給与の金額の合計額から生活費等を差し引いた利益金額がいずれも赤字となるから国税通則法第46条《納税の猶予の要件等》第2項第4号で規定する事実(4号該当事実)がある旨主張するが、請求人の所得金額及び青色事業専従者給与の金額の合計額から生活費等を差し引くという法令上の根拠がなく、独自の見解というべきである。
 また、請求人は、昭和51年6月3日付徴徴3-2・徴管2-32「納税の猶予等の取扱要領の制定について」(猶予取扱要領)は、国税通則法第46条第2項第5号で規定する事実(5号該当(4号類似)事実)の有無を判定する比較期間を「従前に比べ」と定めているから、納税の猶予の始期の前日である調査日前1年間(調査期間)の直前の1年間(基準期間)に限定すべきではなく、平成21年分の売上金額は、平成13年分の売上金額と比べて減少した旨主張する。
 しかしながら、猶予取扱要領は、4号該当事実の有無の原則的な判定方法として、調査期間と基準期間の損益を比較して判定する旨定め、例外的に、調査期間以内において、資材の高騰等の損失原因があり、損失原因の発生した日の特定ができる場合には、その日以降調査日までの間に生じたと認められる損失金額と基準期間の利益金額のうち損失原因の生じた日以降調査日までの期間に対応する期間の利益金額又は損失金額とを比較して判定しても差し支えない旨定め、これを受けて、5号該当(4号類似)事実について、「従前」と比べて判定する旨定めているのであるから、ここでいう「従前」とは、4号該当事実の原則的な判定方法と例外的な判定方法の基礎となる期間を示していると解するのが相当である。そして、4号該当事実に該当する損失とは、単なる利益の減少ではなく、赤字が生じていると認められる場合のことをいい、5号該当(4号類似)事実とは、著しい損失に類似する事実をいうのであるから、5号該当(4号類似)事実としての売上げの減少等とは、著しい損失と同視できるような売上げの減少等をいい、売上げの減少等があれば全てが5号該当(4号類似)事実に当たるということはできない。また、平成21年分の売上金額の減少については、調査期間の売上金額は基準期間の売上金額より減少しているが、その減少の程度が著しいとは言い難い。

参照条文等

国税通則法第46条第2項 昭和51年6月3日付徴徴3-2・徴管2-32「納税の猶予等の取扱要領の制定について」

参考判決・裁決

名古屋高裁平成23年5月26日判決(裁Web) 平成22年11月18日裁決(裁決事例集No.81)

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平成23年10月24日裁決

請求人の生活の本拠はG国の居宅ではなく日本の居宅にあったとした事例

裁決事例集 第85集

ポイント

 この事例は、1年間に延べ半年近くにわたりG国に滞在し取締役社長として業務を行うなどしていた請求人の生活の本拠について、請求人の国内外での①滞在日数、②生活場所及び同所での生活状況、③職業及び業務の内容・従事状況、④生計を一にする親族の居住地、⑤資産の所在、⑥生活に関わる各種届出状況等を総合的に勘案し、日本の居宅にあったと判断したものである。

要旨

 請求人は、G国に設立されたH社の取締役社長として同国に長期間滞在し同社の業務に従事しているから、平成21年においては、請求人がG国で起居していたd居宅が生活の本拠である旨主張する。
 しかしながら、①請求人は、平成21年中はほぼ毎月日本に入国し、その都度、半月程度又は1か月程度滞在し、年間の日本での滞在日数はG国での滞在日数を上回っている。②請求人の生活場所及び同所での生活状況を比較すると、請求人が日本での滞在中に起居していた請求人所有のb町居宅は、請求人が日本へ入国した際のH社の業務や通院のために滞在する場所であるとともに、生計を一にする妻と同居して過ごす家庭生活を営む唯一の場所でもあり、請求人の全生活との関連が深い場所であるのに対し、G国のd居宅は、請求人が同国で業務を行う都合上滞在する場所であり、b町居宅と比べて請求人の全生活との関係は希薄である。③請求人は、平成21年中延べ半年以上も日本に滞在しH社の業務を行っており、請求人のH社での業務はG国及び日本の双方で行っていたものである。④請求人の妻は継続してb町居宅に居住し同所を住民登録地としている。⑤請求人は、日本において居住用資産であるb町居宅を所有しているが、G国には不動産は所有していない。⑥請求人は住民登録地をb町居宅の所在地とし、自身の公的年金等の各支払者に対して自己の住所を同所在地として届け出ているほか、日本国内で生活する上で有用な健康保険の被保険者の資格を保有し続けている。
 以上の諸事情を総合すると、客観的に請求人の平成21年中の生活の本拠(全生活の中心)たる実体を具備していたのは、G国にあるd居宅ではなく日本のb町居宅であったと認定するのが相当である。

参照条文等

所得税法第2条第1項第3号第5号第5条第1項 民法第22条

参考判決・裁決

最高裁昭和29年10月20日大法廷判決(民集8巻10号1907頁) 最高裁昭和32年9月13日第二小法廷判決(裁Web、最高裁判所裁判集民事27号801頁) 最高裁昭和35年3月22日第三小法廷判決(民集14巻4号551頁) 最高裁平成23年2月18日第二小法廷判決(判時2111号3頁)

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平成23年10月17日裁決

新たに建築された家屋は、登記上、増築を原因としているものの、既存家屋の残存部分とは別棟であり、既存家屋と一体となっているとは認められないことから、新築住宅として住宅借入金等特別控除の適用を受けることができるとした事例

裁決事例集 第85集

ポイント

 租税特別措置法第41条に規定する「新築」に該当するか否かについて、登記簿その他の関係書類に記載された内容が実情にそぐわない場合には、建築家屋の現況及び建築経過等を総合し、判断するべきである。
 この事例は、新たに建築した家屋は、増築が登記原因となっているものの、既存家屋の残存部分と一体となったものではなく、新たに建築した家屋と既存家屋の残存部分とを事後的に廊下により接合したものであることから、新築住宅と認めるのが相当としたものである。

要旨

 原処分庁は、新たに建築された家屋(本件建築家屋)は、既存家屋の一部に増築したものであるとして建築確認申請及び登記がされているだけではなく、本件建築家屋と既存家屋の残存部分は、木製廊下を介して建物内部の移動ができる一体的な構造であり、また、請求人が本件建築家屋に居住を開始した時点においては、木製廊下が建築されていなかったとする事実は確認できないことから、本件建築家屋は新築でなく増築に当たる旨主張する。
 しかしながら、新たに建築された家屋は、家屋として、請求人夫妻とその子、両親及び祖母の全員が十分生活できる設備が整っている一方、既存家屋の残存部分は、居住に必要な設備として電灯設備及びトイレがあるだけで、既存家屋の残存部分のみで生活ができる設備が整っているとはいえない。また、①本件建築家屋と既存家屋の残存部分の梁は一体となっていないこと、②木製廊下と本件建築家屋の床の高さは約18センチメートルの段差が生じていることからみても、本件建築家屋は木製廊下によって既存家屋の残存部分とつながっているものの、本件建築家屋と既存家屋の残存部分とは、構造的に一体となっているとは認めらない。すなわち、本件建築家屋は、既存家屋の残存部分とは別棟であり、これは正に新築住宅にほかならない。

参照条文等

租税特別措置法第41条

参考判決・裁決

東京高裁平成14年2月28日判決(訟月48巻12号3016頁) 昭和57年8月10日裁決(裁決事例集No.24・173頁)

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平成23年10月14日裁決

既存住宅の取得の日とは、当該住宅の引渡しを受けた日であるとした事例

裁決事例集 第85集

ポイント

 この事例は、住宅借入金等特別控除の対象となる既存住宅(いわゆる中古住宅)は取得の日から6月以内に居住の用に供したものに限るという要件における「取得の日」とは、既存住宅の引渡しを受けた日か、その既存住宅の引渡し後に行われた改装工事等の完了の日かが争われたものである。

要旨

 請求人は、請求人が居住の用に供した既存住宅(本件建物)の取得の日は、本件建物の改装工事及び外装工事並びに追加変更工事の完了の日である旨主張する。
 しかしながら、住宅借入金等特別控除の適用要件とされる家屋の取得の日とは、居住の用に供することが可能となったと認められる日、すなわち、その家屋の所有者が住宅としての機能を有する状態でその家屋の引渡しを受けた日を指すものと解するのが相当であるところ、本件建物は既存住宅であるから、請求人が住宅借入金等特別控除の適用を受けるためには、本件建物を、その取得の日から6月以内に請求人の居住の用に供していなければならないが、請求人が本件建物を取得した日は、上記各工事が完了した日ではなく、本件建物の引渡しを受けた日であり、請求人が本件建物を居住の用に供した日は、取得した日から9月を経過した日であるから、請求人は、住宅借入金等特別控除の規定を適用することはできない。

参照条文等

租税特別措置法(平成22年法律第6号による改正前のもの)第41条第1項

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平成23年10月12日裁決

公売公告を行う際の調査不足及び財産調査の手続違法は、公売公告処分の取消事由には当たらないとした事例

裁決事例集 第85集

ポイント

 この事例は、主たる主張として国税徴収法第95条第1項に規定する公売公告において「第三者が使用している」旨を記載したことの適否が争われたものであるが、その他に、権利関係の調査が不十分であること、また、調査手続に違法があるとして公売公告処分の取消しが求められ、それに対して財産調査が公売公告処分の要件とはならないことを理由に違法はないと判断したものである。

要旨

 国税徴収法第95条《公売公告》第1項が公売に先立って公売公告事項を公告しなければならない旨規定している趣旨は、公売に先立って、公売財産(公売に付す差押財産)を特定するとともに、売却決定日時や公売保証金の要否、買受代金の納付期限及び公売財産の権利関係などの買受人の負担等を広く周知することによって、公売財産の需要を喚起し、高価での買受申込みを誘引するとともに、買受希望者に対して入札するか否かの判断資料を提供することにあると解される。
 本件においては、公売財産上の賃借権等の権利の内容として、「第三者が使用している」旨の記載の程度については、本件公売公告処分の時点において、複数の第三者が本件各不動産の一部をそれぞれ使用しており、土地の所有権の移転について、第三者の一人は農地法第3条《農地又は採取放牧地の権利移動の制限》の許可を得ているにも関わらず、所有権の移転登記が経由されておらず、登記簿上の所有者は請求人のままであること、また、賃借権の設定について農地法第3条の許可がされていることからすれば、原処分庁は本件各不動産を使用する権原が明らかでなかったことにより「第三者が使用している」と記載したものと考えられ、その記載の程度が公売公告事項として適切でないということはできない。そうすると、その他の公売公告事項についても国税徴収法第95条第1項の規定に基づき適切に記載されていることから、本件公売公告処分に記載不備の違法はない。

参照条文等

国税徴収法第95条

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平成23年10月6日裁決

請求人が審査請求において新たに主張した建物の取得費について、その一部を認容した事例

裁決事例集 第85集

要旨

 原処分庁は、請求人が譲渡した土地(本件土地)及び各建物(本件各建物)の各持分の取得費の額は譲渡代金の100分の5に相当する金額(本件概算取得費額)とするのが相当であって、請求人が本件審査請求に至り明らかにした各証拠をもって直ちに取得費の額と判断することはできない旨主張する。
 しかしながら、本件土地については、当該各証拠により明らかとなる金額が譲渡代金の100分の5に相当する金額を下回るから、確かに、本件概算取得費額が取得費の額となるものの、本件各建物については、当該各証拠のうち、領収書等の一部は、その宛名や作成時期が他の客観的証拠と符合することからすると、当該一部の領収書等に記載された各金額は、本件各建物の建築のために支払われたものと認められること及び当該各金額の合計額は本件概算取得費額を上回ることからすると、当該各金額の合計額をもって、本件各建物の取得費とするのが相当である。

参照条文等

所得税法第38条 租税特別措置法第31条の4 租税特別措置法関係通達31の4-1

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平成23年9月30日裁決

還付申告書の提出による還付金を受け取っていない場合であっても、修正申告により還付金の額に相当する税額が減少する場合は過少申告加算税賦課の対象になるとした事例

裁決事例集 第84集

要旨

 請求人は、還付申告書の提出による還付金を受け取っておらず、その後、修正申告により税額がマイナスから○○○○円になったにすぎないから、国税通則法第65条《過少申告加算税》第1項に規定する「納付すべき税額」は生じていない旨主張する。
 しかしながら、国税通則法第65条第1項は、期限内申告書(還付請求申告書を含む。)が提出された場合において、修正申告書の提出があったときは、当該納税者に対し、その修正申告に基づき過少申告加算税を課する旨規定しているところ、同法第35条《申告納税方式による国税等の納付》第2項第1号の規定により、単に納付すべき税額が増加する場合に限らず、還付金の額に相当する税額が修正申告により減少する場合も、その減少する部分の税額について、過少申告加算税賦課の対象としていることが明らかであることから、請求人の主張は採用できない。

参照条文等

国税通則法第16条第19条第65条

参考判決・裁決

大阪高裁平成16年9月29日判決(訟月51巻9号2482頁) 札幌地裁平成17年11月24日判決(税資255号順号10208) 平成22年1月7日裁決(裁決事例集No.79)

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平成23年9月28日裁決

請求人が相続により取得した取引相場のない株式は、「同族株主以外の株主等が取得した株式」には該当しないことから、配当還元方式で評価することはできないとした事例

裁決事例集 第84集

ポイント

 本事例は、取引相場のない株式の評価に当たり、同族関係者の範囲について、法人税法施行令第4条第6項の規定の適用を受けることから、「同族株主以外の株主等が取得した株式」に該当しないと判断したものである。

要旨

 請求人は、評価会社であるJ社は、同族株主がおらず、また、J社の株主であるK社は請求人の同族関係者ではないから、請求人とその同族関係者の議決権割合が15%未満となるので、請求人が本件被相続人からの相続により取得したJ社株式(本件株式)は、配当還元方式により評価すべきである旨主張する。
 しかしながら、①K社の設立経緯、資産内容、人的・物的実体及び株主総会や取締役会の開催状況からすると、K社の出資者がJ社の経営や意思決定に関心や興味を有していたとは考え難く、また、②K社の出資者は、いずれもJ社の役員等であり、J社を退社した後は、K社の出資者たる地位を失うことになっていたこと並びにK社の出資者及び出資の譲受人は本件被相続人にその決定権があったものと認められることからすると、K社の出資者がJ社の代表取締役であった本件被相続人の意に沿った対応をすることが容易に認められること、③そして、K社は、本件被相続人死亡後開催されたJ社の取締役を選任する重要なJ社の株主総会において、K社が所有しているJ社の株式に係る議決権を、K社の出資者でも役員でもない請求人(本件被相続人の妻)に委任していることからすれば、K社は本件被相続人に代表されるJ社の創業家の強い支配下にあり、K社の出資者は、同社の意思決定を、いずれも、本件被相続人及び請求人に代表されるJ社の創業者一族の意思に委ねていたものと認められるから、K社の株主総会等における議決権の行使についても、J社の創業者一族の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意していた者と認めるのが相当である。そうすると、請求人は、法人税法施行令第4条《同族関係者の範囲》第6項の規定により、K社の株主総会において全議決権を有し、かつ、K社の唯一の出資者であるとみなされることから、同条第3項により、K社を支配していることとなって、同条第2項により、K社は請求人と特殊関係にある法人に該当するので、請求人の同族関係者に該当することとなる。そうすると、J社における請求人とその同族関係者の議決権割合は15%以上となるから、本件株式を配当還元方式で評価することはできない。

参照条文等

相続税法第22条 法人税法施行令第4条第6項 財産評価基本通達188

参考判決・裁決

東京高裁平成17年1月19日判決(訟月51巻10号2629頁)

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平成23年9月27日裁決

相続財産の申告漏れの一部について、請求人がその存在を認識していたとまでは認められず、重加算税の賦課要件を満たしているとはいえないとした事例

裁決事例集 第84集

要旨

 請求人は、相続財産である現金、貯金及び出資金の申告漏れについて、現金については相続税申告時に手元になく失念したためであり、また、貯金及び出資金については、その存在を知らなかったためであるから、隠ぺい又は仮装の行為はなかった旨主張する。
 しかしながら、重加算税は、その制度の趣旨にかんがみれば、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要と解するのは相当でなく、納税者が当初から財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合には、重加算税の賦課要件が満たされるものと解すべきであるところ、請求人は、現金については、その保管状況等からみてその存在を認識していたものと認められるにもかかわらず、申告書作成の際に関与税理士に対してその存在を秘匿する虚偽の説明をしていること、また、貯金については、請求人の取引への関与の状況からしてその存在を認識していたものと認められるにもかかわらず、申告書作成の際に関与税理士から金融機関の残高証明書の入手依頼があったのに入手手続を行わず関与税理士にその存在を知らせなかったことからすれば、これらの財産の申告漏れについては、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からうかがい得る特段の行動をした上でその意図に基づく過少申告をしたものと認められるから、重加算税の賦課要件を満たしているといえる。一方、出資金の申告漏れについては、申告前に請求人がその存在を認識していたとまでは認められないから、重加算税の賦課要件を満たしているとはいえない。

参照条文等

国税通則法第68条第1項

参考判決・裁決

最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)

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平成23年9月22日裁決

請求人が裁判上の和解により取得した職務発明に係る和解金は、譲渡所得ではなく、雑所得に該当するとした事例

裁決事例集 第84集

ポイント

 この事例は、職務発明をした従業員等が使用者等に特許を受ける権利等を承継させたときに保障される「相当の対価の支払を受ける権利」(特許法第35条第3項)に基づき、裁判上の和解により支払われた和解金の所得区分につき、請求人が、当該和解金のうち外国特許に係る部分は譲渡所得に該当すると主張したのに対し、特許を受ける権利が通常同一の職務発明から生じるものであることを説示した最高裁平成18年10月17日第三小法廷判決を参考に、この事例における社内規定の内容から、当該和解金の全部が譲渡所得には当たらない旨判断したものである。

要旨

 請求人は、国内特許と外国特許とに係る相当の対価の支払を請求する権利は、それぞれ別個の請求権であって、F社から外国特許に係る承継の対価は一切受け取っておらず、F社に対し、在職中の職務発明について特許を受ける権利をF社に承継させたことにつき、特許法第35条《職務発明》第3項の規定に基づき、相当の対価の支払を求めて提起した訴訟において成立した訴訟上の本件和解によって得た本件和解金によって当該外国特許に係る承継の対価を初めて受け取ったのであるから、少なくともその部分に関しては譲渡所得に該当する旨主張する。
 しかしながら、我が国又は外国の特許を受ける権利の基となる職務発明は、共通する一つの技術的創作活動の成果であり、当該職務発明については、その基となる雇用関係等も同一であって、これに係る国内外の特許を受ける権利は、社会的事実としては、実質的に1個と評価される同一の職務発明から生じたものということができ、そして、F社の発明考案取扱規定(本件規定)は、F社が日本国及び外国での職務発明に係る特許等を受ける権利等を承継する旨定めており、その趣旨は、国内外の特許を受ける権利の上記のような性格等に鑑み、当該権利の基となる職務発明をした従業者等とF社との間の当該発明に関する法律関係を一元的に処理しようとしたものであるということができる。このことに加えて、本件規定において、出願数は国内出願の件数により認定し、複数の出願に基づく国内優先権出願及び外国出願は全てこれを一つの出願とみなす旨規定していることを併せ考えると、本件規定が定める出願補償金、登録補償金及び実績報償金は、いずれも、国内における特許を受ける権利と外国における特許を受ける権利のいかんを問わず、本件規定の定める一つの出願に対するものとして規定されているものと解するのが相当である。そうすると、F社から請求人に対して支払われた出願補償金及び登録補償金は、職務発明に係る国外の特許を受ける権利の承継の対価を含むものというべきであるから、本件和解金に係る所得は譲渡所得には当たらない。

参照条文等

所得税法第33条第35条 所得税基本通達23~35共-1

参考判決・裁決

最高裁平成18年10月17日第三小法廷判決(民集60巻8号2853頁) 東京(知財)高裁平成21年2月26日判決(判時2053号74頁・判タ1315号198頁) 平成21年4月23日裁決(裁決事例集77号72頁) 平成21年10月9日裁決(裁決事例集78号172頁)

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平成23年9月5日裁決

共同住宅の敷地として利用されている評価対象地は、その周辺地域の標準的な利用状況に照らしても有効利用されていることから、広大地には当たらないとした事例

裁決事例集 第84集

ポイント

 この事例は、評価対象地が所在する町内の全建物の築年数及び種類を調査し、財産評価基本通達24-4にいう当該評価対象地が属する「その地域」とは、当該町内の西側部分であると判断したものである。

要旨

 請求人は、①本件土地は、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく広大で、本件における経済的に最も合理的な開発行為である戸建分譲開発を行うとした場合には、公共公益的施設用地の負担が必要であること、②路線価方式による土地の評価は、更地として評価することを前提としており、公共公益的施設用地の負担の要否は、開発行為を行うとした場合に負担を要するか否かで判断すべきであり、本件土地の現状が賃貸マンションの敷地の用に供されていることのみをもって、財産評価基本通達24-4《広大地の評価》(広大地通達)の定めの適用を排除すべきではないことから、本件土地は、同通達に定める広大地に該当する旨主張する。
 しかしながら、既に開発行為を了しているマンションなどの敷地用地や評価時点において宅地として有効利用されている建築物の敷地用地については、標準的な地積に比して著しく広大であっても、特段の事情のない限り、広大地通達に定める広大地に該当しないと解されるところ、本件土地の場合、開発行為を了した上、共同住宅の敷地として使用されており、近い将来において新たな開発行為を行うべき事情も認められず、本件土地の属する地域(本件地域)は、戸建住宅と共同住宅の混在する地域であって、これらの用途のいずれもが本件地域における標準的な利用形態と認められることからすれば、本件土地は、その周辺地域の標準的な利用状況に照らしても、共同住宅用地として有効に利用されていると認められる。したがって、本件土地について開発行為を行うとした場合における公共公益的施設用地の負担の要否について検討するまでもなく、本件土地は広大地通達にいう広大地には該当しない。

参照条文等

相続税法第22条 財産評価基本通達24-4

参考判決・裁決

平成23年4月21日裁決(裁決事例集No.83)

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平成23年9月2日裁決

請求人が管理業務を委託した同族会社は、請求人が必要経費に算入すべきと主張する管理費の額に見合う管理業務を行っていたと認められることから、その全額を必要経費に算入すべきであるとした事例

裁決事例集 第84集

ポイント

 この事例は、請求人が同族会社に委託した管理業務のうち、当該同族会社が他社に再委託した業務以外の部分について、当該同族会社が行っていたことを認定し、必要経費に算入すべき金額の範囲を判断したものである。

要旨

 原処分庁は、請求人が賃貸及び事業の用に供している建物等について、請求人らが役員を務める本件同族会社が管理業務を行っていたとする証拠がなく、仮に行っていたとしても請求人が主張する行為は管理業務とは評価できないから、請求人の不動産所得及び事業所得の必要経費に算入すべき管理費の額は、本件同族会社が再委託先に支払った再委託料の額の一部に限られる旨主張する。
 しかしながら、本件同族会社は、自ら当該建物等の管理業務を行っていたと認められることから、請求人が本件同族会社に支払った管理費の額うち、必要経費に算入すべきと主張する額(請求人主張管理費額)は、その全額が、請求人の不動産所得及び事業所得に係る業務と直接の関係を持つ費用であり、かつ、本件同族会社の行った管理業務の内容からみて、各業務の遂行上必要な費用であると認められる。したがって、請求人主張管理費額は、請求人の不動産所得の金額及び事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである。

参照条文等

所得税法第37条

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平成23年8月26日裁決

遺産分割協議時に、共同相続人間で分割協議対象財産として認識されていない財産があった場合には、遺産分割協議書に「本書に記載のない財産は特定の者に帰属する」旨の記載があったとしても、当該財産は未分割財産とみるのが相当であるとした事例

裁決事例集 第84集

ポイント

 遺産分割協議書には、「本書に記載のない財産は特定の者に帰属する」旨の記載が一般的に見受けられるところであるが、本事例は、遺産分割協議書に当該記載はあるものの、被相続人からの贈与契約が履行されていない財産については、遺産分割協議時点において共同相続人間で分割協議対象財産として認識されていないから、未分割財産であると判定したものである。

要旨

 請求人らは、本件被相続人がその預金原資を出捐した請求人らの名義の各定期預金(本件各定期預金)について、本件各定期預金に係る証書が本件被相続人の生前にそれぞれ各名義人へ手渡された時点で、本件被相続人からの贈与の履行が完了しているから、相続財産とはならない旨主張する。
 しかしながら、確かに、本件被相続人と請求人らとの間で、本件各定期預金に関する書面によらない贈与契約がそれぞれ成立したものと認められるものの、書面によらない贈与は、その履行が終わるまでは当事者がいつでもこれを取り消すことができることから、その履行前は目的財産の確定的な移転があったということはできないので、この場合の贈与の有無、すなわち、目的財産の確定的な移転による贈与の履行の有無は、贈与されたとする財産の管理・運用の状況等の具体的な事実に基づいて、総合的に判断すべきである。
 これを本件についてみると、定期預金を自由に運用するためにはその届出印が必要となるところ、本件各定期預金の届出印は、その保管状況・使用状況・各名義人の当該届出印に対する認識及び本件各定期預金に係る証書の改印状況などを勘案すると、相続開始時点においても本件被相続人が引き続き管理していたものと認められることから、本件各定期預金について、本件被相続人から各名義人へ確定的な移転があったとまではみることができない。したがって、本件各定期預金は、贈与によって請求人らが取得したものとは認めることができず、相続税の課税財産に該当する。
 ただし、本件各定期預金は、遺産分割協議書に記載がなく、同書には「本書に記載のない遺産はすべて請求人Gが取得する」旨記載されているものの、請求人らの間において、当該遺産分割協議の時点で遺産分割対象財産として認識していなかったと解されることから、相続税法第55条《未分割遺産に対する課税》に規定する未分割財産であるとみるのが相当である。

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平成23年8月23日裁決

請求人が損金の額に算入したグループ法人に対する業務委託料は、当該グループ法人に対する資金援助を仮装して計上されたものであり、対価性がなく寄附金の額に該当するとした事例

裁決事例集 第84集

ポイント

 この事例は、グループ法人に対する各業務委託料は、当該各業務委託料に係る各契約に基づく役務提供が認められないこと及び委託先法人に対する貸付債権と相殺されていることから、グループ法人に対して債務を消滅させる経済的利益の無償の供与と判断し、グループ法人への貸付金には該当しないと判断したことにより、原処分のうち、貸付金としてその利息を計上すべきとした部分を取り消したものである。

要旨

 請求人は、グループ法人との間で締結した各業務委託契約に基づく業務は行われているから、費用計上した各業務委託料は損金の額に算入されるべきである旨主張し、原処分庁は、当該契約は実体のない架空の業務委託契約であり、当該各委託料は請求人の会長が実質支配するグループ法人への貸付金等であるとした上、当該貸付けに係る利息相当額は益金の額に算入すべきである旨主張する。
 当該各委託料は、①役務提供の有無にかかわらずに支払われている対価性のないものであること②当該各委託料がグループ法人に対する貸付債権と相殺されていることからすると、その計上額は、請求人がグループ法人に対して債務消滅という経済的利益を無償で供与したこととなり、法人税法第37条《寄附金の損金不算入》第7項に規定する寄附金の額に該当すると認めるのが相当である。
 したがって、請求人の主張には理由がなく、また、当該各委託料が貸付金に当たるとして利息相当額を益金の額に算入すべきであるとする原処分庁の主張にも理由がない。

参照条文等

法人税法第22条第37条

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平成23年8月2日裁決

登録免許税の課税標準の額について、請求人が主張する鑑定評価額は合理的なものではなく、原処分庁が採用した近傍類似価格に所要の調整等を行って算定すべきであるとした事例

裁決事例集 第84集

ポイント

 本事例は、固定資産課税台帳に登録された価格のない土地の課税標準の額を算定するに当たり、固定資産評価基準における「その他の宅地評価法」を用いることは相当であるものの、原処分庁の採用した近傍類似価格は当該土地の形状等に応じた所要の調整を行って算定されていないため、当該近傍類似価格をそのまま採用することはできないとしたものである。

要旨

 原処分庁は、請求人が取得した本件土地の持分の登記に係る登録免許税の課税標準の額について、本件土地が固定資産課税台帳に登録された価格(台帳価格)のない私道の用に供されている宅地であることから、本件土地に係る固定資産評価証明書に記載された近傍類似価格(本件近傍類似価格)を基に、公衆用道路であることの補正のみを行って算定すべきである旨主張する。
 しかしながら、台帳価格のない不動産の登録免許税の課税標準の額は、当該不動産に類似する不動産の適正な台帳価格を基礎として合理的に算定するのが相当であると解されるところ、本件近傍類似価格は本件土地の存する状況類似地区内の整形地である標準宅地の単位地積当たりの価額であるのに対し、本件土地は奥行の長大な不整形地であることからすると、本件土地の持分の課税標準の額は、本件近傍類似価格を基に、本件土地の形状等に応じて固定資産評価基準による所要の調整を行った上で、公衆用道路であることの補正を行って算定するのが相当である。

参照条文等

登録免許税法施行令附則第3項

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平成23年8月2日裁決

請求人が負担すべき給与を関連会社が負担したとは認められないことから、請求人に受贈益が生じていないとした事例

裁決事例集 第84集

要旨

 原処分庁は、請求人の関連会社(H社)が請求人の取締役に対して「褒賞金」の名目で支払った金員(第一金員)は、賞与として経理処理されているものの、当該取締役には当該関連会社の従業員等としての勤務実態はなく、当該取締役が当該関連会社に対し何らかの役務提供等を行ったという事実も認められないことから、請求人が支払うべき取締役に対する給与を当該関連会社が負担したものである旨主張する。
 しかしながら、当該取締役が当該関連会社に対して何らかの役務提供をしていないことは推認できるものの、請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によって認定できる一切の事実をもってしても、第一金員が当該関連会社の取締役の地位にあることを理由に支払われたとまでいうことはできない。したがって、請求人が負担すべき給与を当該関連会社が負担したとは認められないから、請求人に受贈益が生じたとする原処分庁の主張は採用できない。
 一方、請求人は、請求人の各関連会社(L社及びK社)が請求人の各取締役に対して「永年勤続賞金」又は「褒賞金」の名目で支払った各金員(第二金員、第三金員及び第四金員)は、当該各関連会社と当該各取締役との間で交わした合意書(本件各合意書)に基づき、営業指導や情報提供を行ったことに対する対価として支払ったものであり、請求人が支払うべき給与を当該各関連会社が負担したものではない旨主張する。
 しかしながら、①本件各合意書は調査時に提出されておらず、調査時におけるその存在又は成立に疑義があり、信用できないこと、②当該各取締役が提供した役務は、請求人の業務の一環としてなされたものであって当該各取締役が個人として提供したものとは認められないこと及び③当該各金員の支払が当該各取締役の請求人における永年勤続表彰に関して支払われていることなどを総合すると、当該各関連会社において当該各金員を支払う特段の理由はなく、請求人が支払うべき給与を当該各関連会社が支払ったものと認めるのが相当である。したがって、請求人には受贈益が生じたものと認められる。

参照条文等

法人税法第22条

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平成23年8月2日裁決

財団不足の場合においても、財団債権である未納国税に対して破産手続開始決定後に確定した還付金等を充当することができるとした事例

裁決事例集 第84集

ポイント

 この事例は、財団不足の場合においても、破産手続によらずに、破産手続開始決定後に確定した還付金等を国税通則法第57条の規定により、財団債権である未納国税に充当することができるとしたものである。

要旨

 請求人は、財団不足の場合に財団債権となる租税債権に還付金等の充当をすることは、財団債権者間の優先順位を変更することとなるので、最優先の財団債権である破産手続費用、破産管財人報酬の全額支払が確実になり、各財団債権者に対するあん分支払額が確定するまで還付を留保し、その後、破産管財人からあん分支払額が通知されてから、その通知額に従い充当処理を行うべきである旨主張する。
 しかしながら、破産債権は、破産法に特別の定めがある場合を除き、破産手続によらなければ行使できないが、財団債権は、破産手続によらないで破産財団から随時弁済を受けることができる債権であり、破産債権に先立って弁済されるものであるから、破産債権に優先して満足を受けられる債権である。これに財団不足の場合であるか否かを問わず、破産債権となる租税債権に還付金等を充当することができることを併せて考えると、財団債権となる租税債権に還付金等を充当できると解するのが相当である。
 ところで、委託納付とは、納税者が、税務署長等に対し、その受領すべき還付金等により未納の国税等の納付を委託したものとみなされ、同委託に基づき税務署長等が同還付金等を同未納国税等に収納する手続を行うことをいい、これにより、法律上当然にその委託納付に相当する額の還付及び納付があったものとみなされるところ、委託納付の効果は、法律上擬制される納税者自らの委託に基づくものであって、税務署長等による公権力の行使によるものではなく、「国税に関する法律に基づく処分」には該当しないことから、本件各委託納付に対する審査請求は不適法なものである。

参照条文等

国税通則法第57条第1項 地方税法附則第9条の10第1項 破産法第2条第7項、第100条第2項2号、第152条

参考判決・裁決

大阪地裁平成15年2月14日判決(税資253号順号9283)

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平成23年7月21日裁決

事務所の移転に伴い受領した金員の一部は、請求人の事業所得に係る必要経費を補填する金額であると認められるものの、その余の部分は、事業所得の総収入金額に算入すべき金額ではなく、また、継続性及び対価性を有しないものであることから、一時所得に区分するのが相当であるとした事例

裁決事例集 第84集

要旨

 請求人は、旧事務所の明渡しに際し受領した金員(本件受領金員)は、事業の遂行により生じた収入ではなく、収益補償的な意味も持たないものであって、また、継続性のない一時的な収入であるから、その全てが、事業所得の総収入金額ではなく、一時所得の総収入金額に算入すべきである旨主張する。
 しかしながら、所得税法は、各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額については、それに対する補填の有無に関わらず、各種所得の金額の計算上、必要経費として控除できることとしていることに照らすと、事業所得に係る必要経費の補填金の支払を受けた場合には、その金額を事業所得の総収入金額に算入しなければ、担税力に応じた公平な課税を目的とする所得税法の立法趣旨を損なうこととなることから、事業所得に係る必要経費の補填金に相当する金額についても、事業所得の総収入金額に含まれると解するのが相当である。そして、本件受領金員の一部は、請求人の事業所得に係る必要経費を補填する金額であると認められることから、事業所得の総収入金額に算入すべき金額となり、その余の部分は、請求人の事業所得に係る収入金額又は必要経費を補填するために支払われたものであるとは認められず、また、継続性及び対価性を有しないものであるから、一時所得の総収入金額に算入すべき金額となる。

参照条文等

所得税法第27条第2項第34条第1項第36条第1項 所得税法施行令第94条第1項第2号

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平成23年7月8日裁決

原処分庁が用いた資産負債増減法による推計において、推計の基礎とされた資産及び負債の認定に誤りがあるとした事例

裁決事例集 第84集

ポイント

 資産負債増減法による推計において、その納税者と生計を一にする者がある場合には、両者の資産、負債及び処分(消費)した所得を区分せずに推計の基礎として、その納税者の所得の金額を算出する方法を採ることが合理的である。
 この事例は、請求人と生計を一にする親族名義の預金口座であっても、生計を一にしない者に貸していたと認められるものについては、推計の基礎から除外するのが相当としたものである。

要旨

 原処分庁は、資産負債増減法を用いた推計においては、請求人と世帯を一にする者がある場合、その世帯員の資産及び負債も推計の基礎に含めて純資産の増減額を算出し、その後に、世帯員の所得金額などの請求人の所得を源泉としない純資産の増加要因について、減算することになる旨主張する。
 しかしながら、請求人と生計を一にする者名義の預貯金のうち、V銀行j支店及びW銀行j支店の子の妻名義の普通預金口座はいずれも同人の兄であるSに貸していたものであり、また、Sは請求人と生計を一にする者ではないと認められることから、これらの口座は推計の基礎から除外し、これらの口座を除く各口座に係る預貯金の全てを推計の基礎とするべきである。よって、これと一致する限度において、原処分に誤りはないが、これに反する部分は、誤りである。

参照条文等

所得税法第156条

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平成23年7月8日裁決

請求人が同族会社に賃貸した土地の賃料の額を容認した場合には、請求人の所得税の負担を不当に減少させる結果になるとした事例

裁決事例集 第84集

ポイント

 この事例は、請求人が同族会社に賃貸した土地で、その同族会社が①第三者に駐車場用地として転貸したもの、②第三者に賃貸するための倉庫・事務所用建物の敷地として使用したもの、③第三者に賃貸するための店舗・事務所・住居用建物の敷地として使用したものに係る賃料の額につき、所得税法第157条の規定の適用が認められるか否かを判断したものである。

要旨

 請求人は、同族会社が請求人との間で合意した土地の賃貸借契約に係る賃料として収受した本件賃料額を容認しても、請求人の所得税の負担を不当に減少させる結果にはならない旨主張する。
 しかしながら、所得税法第157条《同族会社等の行為又は計算の否認等》第1項の「所得税の負担を不当に減少させる結果となると認められる」かどうかは、当該行為又は計算が経済的合理性を欠くか否かにより判断すべきであり、「所得税の負担を不当に減少させる結果となる」とは、経済的合理性を欠いた行為又は計算の結果として所得税の負担が減少することをいうものと解すべきであって、土地の賃貸借契約に関していえば、立地条件、用途、規模などの貸付地の状況が類似する土地(比準貸付地)であれば、特別の事情がない限り、賃料の額は同程度となるといえるから、同族会社とその株主等との間で貸し付けられた土地と立地条件、用途、規模などが類似する比準貸付地を抽出し、その比準貸付地の平均賃料を用いて算定した適正賃料額と実際に株主等が同族会社から収受した賃料の額とを比較して、同族会社がその株主等と合意した賃料の額が経済的合理性を欠くか否かを判断することも許されるというべきである。本件賃料額は、本件各年分においていずれも適正賃料額を大きく下回り、これにより請求人の所得税の額も減少するのであるから、同族会社が請求人との間で合意した本件賃料額を容認した場合には請求人の所得税の負担を不当に減少させる結果になると認められる。

参照条文等

所得税法第157条

参考判決・裁決

浦和地裁平成13年2月19日判決(税資250号順号8839) 東京地裁平成9年4月25日判決(訟月44巻11号1952頁)

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平成23年7月7日裁決

純資産価額が零円を下回る場合の株式の価額を零円以上とした事例

裁決事例集 第84集

要旨

 請求人は、連結加入直前事業年度において、債務超過となっている子会社の株式(時価評価資産)の時価評価額の算定に当たっては、債務超過に相当する金額をマイナス評価するのが相当である旨主張する。
 しかしながら、仮に当該子会社の1株当たりの純資産価額等が零円を下回るとしても、強行規定である会社法第104条《株主の責任》によって請求人が追加的に出資を要求されることはなく、一方、将来的に当該子会社の業績によっては配当を得る可能性も残っており、当該子会社の株式が通常取引されると認められる価額は零円以上となると解されるから、請求人の連結加入直前事業年度終了の時において、当該子会社の株式の1株当たりの純資産価額等が零円を下回る場合の「1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」は、零円以上と認めるのが相当である。

参照条文等

法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの。)第2条第21号、第4条の3第10項、第61条の12第1項 法人税基本通達9-1-139-4-1、12の3-2-1

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平成23年7月6日裁決

使用人の詐取行為における隠ぺい、仮装行為について、請求人自身の行為と同視することはできないとした事例

裁決事例集 第84集

ポイント

 この事例は、①使用人の詐取行為に係る損害賠償請求権は損失発生と同時に益金算入されるが(法法22)、②同人の隠ぺい、仮装行為は請求人の行為と同視できず、国税通則法第68条の適用はないとし、他方、③同人の行為は同法第70条第5項に規定する偽りその他不正の行為に該当することから同項が適用されるとしたものである。

要旨

 原処分庁は、請求人の使用人が行った詐取行為における隠ぺい、仮装行為については、①当該使用人は勤務する工場の所属課において仕入先から発行される納品伝票の事務処理を事実上一任され、その事務処理をチェックする者が他におらず、当該使用人の指示に基づき仕入先から発行された虚偽の納品伝票の処理が請求人の会計処理として反映される状況にあったこと、②当該工場において、仕入先に対して購入した品名と異なる品名を記載した納品伝票を発行させるなど不適切な経理処理が慣行的に行われており、当該使用人による事務処理を請求人自身による処理としてみなさざるを得ない状況にあったものといえることから、当該使用人の隠ぺい、仮装行為は請求人の隠ぺい、仮装行為と同視することができる旨主張する。
 しかしながら、①当該使用人は、当該工場の所属課に配属されて以後、退社するまで同課において職制上の重要な地位に従事したことがなかったこと及び請求人の経理帳簿の作成等に携わる職務に従事したこともなかったこと等から単に資材の調達業務を分担する一使用人であったと認められること、②当該詐取行為は、当該使用人の私的費用を請求人から詐取するために同人が独断で取引先に依頼して行ったものであることを総合考慮すると、請求人が取引内容の管理を怠り、請求人から隠ぺい仮装するための当該使用人の仮装行為を発見できなかったことをもって、仮装行為を請求人自身の行為と同視することは相当ではない。

参照条文等

国税通則法第68条第70条第5項 法人税法第22条 法人税基本通達2-1-43

参考判決・裁決

最高裁昭和62年5月8日第二小法廷判決(集民151号35頁) 東京高裁平成21年2月18日判決(訟月56巻5号1644頁)

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平成23年7月6日裁決

海外出向者の帰国後に、当該海外出向者の国外勤務中の給与に係る外国所得税の額を請求人が負担したことについて、居住者に対する経済的利益の供与に当たるとした事例

裁決事例集 第84集

ポイント

 所得税法第8条において、非居住者から居住者になった場合など、個人が年の中途で納税義務者の区分に異動を生じた場合には、その者がその年においてそれぞれの納税義務者の区分であった期間に応じ、それぞれの期間内に生じた所得税法第7条第1項に掲げる所得に対し、所得税を課することとされている。
 この事例は、国外勤務を終えて日本に帰国した社員の国外勤務中の給与に係る外国所得税額を請求人が負担したことによる経済的利益について、非居住者期間内と居住者期間内のいずれに生じた所得かが争われたものである。

要旨

 請求人が国外勤務を終えて帰国した海外出向社員ら(本件海外出向社員ら)の外国所得税額(本件外国所得税額)をその帰国後に納付したことについて、原処分庁が居住者に対する給与等の支払に当たるとして、源泉所得税の納税告知処分等をしたのに対し、請求人は、海外出向社員の外国所得税額を請求人が負担することは海外勤務規定においてあらかじめ定められており、また、本件外国所得税額は、本件海外出向社員らが非居住者であった外国で勤務していた期間に支給された手取給与の額を基礎にグロスアップ計算されたものであり、当該手取給与と一体不可分であるから、所得税基本通達181~223共-4《源泉徴収の対象となるものの支払額が税引手取額で定められている場合の税額の計算》の考え方に従い、本件海外出向社員らの非居住者期間中に生じた所得として取り扱うべきである旨主張する。
 しかしながら、請求人の海外勤務規定には、請求人が海外出向社員の外国所得税額を負担する時期についての規定はないところ、本件海外出向社員らは、使用者である請求人が同人らに代わって本件外国所得税額を納付した時に請求人から租税債務の消滅による経済的利益の供与を受けたものと認められ、また、当該納付が本件海外出向社員らの帰国後に行われていることからすれば、当該経済的利益は本件海外出向社員らが居住者となった以後の所得となる。

参照条文等

所得税法第183条第1項

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平成23年7月5日裁決

和解金の支払が剰余金の分配と認められ資本等取引に該当するとして損金の額に算入できないとした事例

裁決事例集 第84集

ポイント

 この事例は、訴訟上の和解に基づき請求人が支払った和解金の性格について、訴訟の経緯、対立点及び和解において請求人が当該和解金を支払うに至った経過並びに和解調書の和解条項内容及び請求人の会計処理の事実から認定したものである。

要旨

 請求人は、本件和解(訴訟上の和解)は、原告ら(L及びNら)の請求内容(出資持分の払戻請求及び退職金の支払請求)を認めた内容の和解ではなく、多様な意味合いを包含した金額面での和解であり、本件和解金からLの退職金を控除した金員(本件金員)は、経営上当然の経済行為に基づく支払金という性格を意味しており、出資持分があることを根拠として支払ったものではないから、本件金員の額からLの出資額などを控除した額(本件特別損失額)は本件事業年度の損金の額に計上できる旨主張する。
 しかしながら、本件訴訟の経緯、対立点及び和解において請求人が本件和解金を支払うに至った経過並びに和解調書の和解条項内容及び請求人の会計処理の事実についてみると、請求人は、原告らに出資持分の払戻請求権相当の権利を認めるなど、本件和解金を支払うことで請求人と原告らの債権債務関係を消滅させたものと推認されることから、本件金員からNの退職金相当額を差し引いた金員は、出資者たる地位に基づき支払われた金員であるといえ、当該金員から請求人が資本金勘定から減額したLの出資金相当額などを控除した金員は、剰余金の分配に当たると認められるので、法人税法第22条《各事業年度の所得金額の計算》第5項に規定する資本等取引に該当する。また、平成8年3月期に請求人がNに対する役員退職金として支出した金員相当額が本件和解金の計算に含められた経緯等から判断すると、当該退職金相当額については、請求人が真に支払を受けた者に代わって仮払金・立替金の類として支払ったものであると考えるのが自然である。したがって、本件特別損失額は、法人税法第22条第3項の規定により本件事業年度の損金の額に算入することはできない。

参照条文等

法人税法第22条第3項第5項

参考判決・裁決

平成20年1月23日裁決(裁決事例集No.75・78頁)

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平成23年6月30日裁決

台帳価格のない建物の登録免許税の課税標準について登記機関が認定した価額が類似する建物の台帳価格を基礎として算定されていない場合は、客観性が認められる当該建物の建築価額によるのが相当であるとした事例

裁決事例集 第83集

要旨

 原処分庁は、請求人が所有権保存登記を受けた倉庫(本件倉庫)は、新築されたものであり、いわゆる台帳価格のない不動産であるから、その課税標準の額の算定に当たっては、認定基準表によるべきである旨主張する。
 しかしながら、登記機関が、台帳価格のない建物について認定基準表に基づき認定する価額は、認定基準表の作成に当たり選定した類似する建物の台帳価格を基礎として合理的に算定されたものであれば適法と解されるものの、台帳価格のない建物が、認定基準表の作成に当たり選定された建物の状況と類似しているとは認められず、認定基準表に基づき認定された価額が、登録免許税法施行令附則第3項に規定する「類似する不動産で台帳価格を基礎として登記機関が認定した価額」を表していない場合には、登記申請人は、当該建物と類似する近傍の建物の台帳価格があればその台帳価格を基にして求めた価額を、当該建物と類似する近傍の建物の台帳価格がなければ他の方法により求めた不動産の価額(時価)を採用できると解するのが相当である。本件倉庫については、一般的な倉庫に比して簡易な仕様・構造の建物であり、認定基準表の作成に当たり選定された建物の状況と類似していないことは明らかであるから、認定基準表に基づく本件倉庫の価額は、「類似する不動産の台帳価格を基礎として登記機関が認定した価額」を表しているとは認められず、また、本件倉庫に類似する建物は、本件倉庫の登記の申請の年の前年12月31日現在において認められないことからすると、請求人は、本件倉庫の課税標準の額の算定に当たり、他の方法により求めた本件倉庫の価額(時価)を採用することができることとなる。そこで、本件倉庫の価額(時価)を検討すると、建築価額(工事費及び設計監理料の合計額)によるのが相当と認められるから、本件倉庫の課税標準の額は、当該建築価額とするのが相当である。

参照条文等

登録免許税法第10条、附則第7条 登録免許税法施行令附則第3項

参考判決・裁決

平成14年11月22日裁決(裁決事例集No.64・565頁)

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平成23年6月30日裁決

請求人が第一種事業として主張する廃油回収販売業は、第一種事業、第四種事業及び第五種事業から成る事業に該当するとした事例

裁決事例集 第83集

ポイント

 簡易課税制度において、2種類以上の事業を営む事業者が控除対象仕入税額を計算する場合は、課税売上高をそれぞれの事業ごとに区分する必要がある。
 この事例は、請求人の売上げに係る取引の形態に応じ、日本標準産業分類の分類を基礎として事業の範囲を判定し、その事業区分に応じたみなし仕入率の適用を判断したものである。

要旨

 請求人は、廃油の回収形態(有償、無償及び処分料を受領の別)にとらわれず、物(廃油)の流れを重要視して事業区分を判断すべきであり、回収した廃油をそのままの状態で販売していることから、当該廃油を事業者に販売する本件事業は卸売業に該当する旨主張する。
 しかしながら、請求人の売上げに係る取引の形態に応じて事業区分を判断すると、本件事業のうち、処分料を徴して廃油を収集する取引及び廃油の収集・運搬業務の委託取引は、消費税法施行令第57条《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》第5項に規定する第五種事業に、無償又は処分料を徴して収集した廃油を販売する取引は、同項に規定する第四種事業に該当する。

参照条文等

消費税法第37条第1項 消費税法施行令第57条第4項第5項

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平成23年6月28日裁決

医療法人の出資持分の評価に際し、相続開始時点において既に退社した社員が出資金払戻請求権を行使していない場合であっても、当該出資持分については、当該退社社員が退社する直前の出資持分の総口数から当該退社社員が有していた出資持分の口数を控除した後の口数を総口数として、財産評価基本通達194-2の定めにより評価するものとした事例

裁決事例集 第83集

要旨

 原処分庁は、医療法人K会の出資持分(本件出資持分)について、本件相続開始時点で本件被相続人名義でないものも存するが、実質的に支配・管理していたのは本件被相続人であるから、同人に帰属するのは910口である旨主張する。
 しかしながら、財産の帰属については、当該財産の名義のほか、運用状況・取得原資の出えん者と名義人及び管理運用する者との関係・贈与契約の有無等の諸要素を総合勘案して当該財産の実質的な帰属を判定すべきであり、私法上の行為によって当該財産の帰属が変更された場合、当該財産を取得した者は当該財産を自由に利用・処分することができるのであるから、総合勘案に当たっては、当該私法上の行為による担税力の変動を前提に課税関係を判定すべきであり、当事者の実体の伴わない意図で法律行為を行うなど、私法上も当該財産の帰属が変動しないと解すべき特段の事情のない限り、これを否定することは適切ではない。本件においては、K会の設立当初は、本件出資持分910口の全部が本件被相続人に帰属していたと認められるものの、その後、本件被相続人と各相続人との間で本件出資持分合計845口を贈与する旨の契約書が作成されており、当該契約書は真正に作成されたものと認められ、本件被相続人及び当該各相続人との間で実質的にも贈与契約に係る意思が存在していたと認められることから、当該贈与契約は有効に成立しているものと認められる上、当該贈与について社員総会の承認も得ていることからすると、本件出資持分845口については、当該各相続人に移転したと認めるのが相当である。これらのことからすると、本件相続開始時において本件被相続人に帰属する本件出資持分の口数は、65口(910口-845口)となる。
 なお、K会の定款の定めによれば、出資持分を有する社員は、退社により社員たる地位を喪失し、K会に対する出資持分を失うとともに、払込済出資額を限度とする出資金払戻請求権を取得することになるところ、当該各相続人は、いずれの者も本件相続開始前に退社していることからすると、当該各相続人は、本件相続開始時において、K会に対する出資持分を失っていることとなるから、本件相続開始時におけるK会の出資持分の総数は、本件被相続人が保有する65口となる。したがって、本件出資持分の評価は、本件被相続人が保有する65口を総口数として、財産評価基本通達194-2《医療法人の出資の評価》の定めにより評価することとなる。

参照条文等

財産評価基本通達194-2

参考判決・裁決

最高裁平成22年7月16日第二小法廷判決(裁判所Web) 最高裁平成22年4月8日第一小法廷判決(民集64巻3号609頁)

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平成23年6月28日裁決

海外勤務者の帰国後に請求人が負担した外国所得税について、支払事務が国外において行われていたとして所得税の源泉徴収を要しないとした事例

裁決事例集 第83集

ポイント

 この事例は、所得税法183条に規定する「国内において給与等の支払をする」の解釈を示したものである。

要旨

 原処分庁は、請求人の海外事業所に勤務していた海外勤務者本人が納付すべき外国所得税について、請求人が当該海外勤務者の帰国後に同人らに代わり納付したことは、当該海外勤務者に経済的利益の供与(給与等の支払)をしたものであり、当該海外勤務者の海外事業所勤務期間中の所属先が請求人のa本社であったことからすれば、a本社において外国所得税の納付(給与等の支払)事務を行っていたことになるから、支払が国内において行われたこととなり、請求人には源泉徴収義務がある旨主張する。
 しかしながら、当該外国所得税の納付に関しては、①当該海外事業所あるいは当該海外事業所からその事務を委託された現地の会計事務所が、当該海外勤務者の所得税額の計算及び申告・納税の手続を行っていたこと、②当該海外事業所の所長が納付すべき税額の確認及び支出の決定を行っていたこと、③当該海外事業所が当該外国所得税の納税の資金手当を行っていたことからすると、当該外国所得税に係る支払事務は当該海外事業所で行われていたと認めるのが相当である。そうすると、当該外国所得税の納付(給与等の支払)事務は国外において行われていたと認められるから、請求人に源泉徴収義務はないというべきである。

参照条文等

所得税法第183条第1項

参考判決・裁決

東京地裁平成18年1月24日判決(訟月54巻2号531頁) 東京地裁昭和59年10月16日判決(訟月31巻6号1448頁、行集35巻10号1636頁)

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平成23年6月24日裁決

原処分庁は、各店舗の水道光熱費を基礎として同業者比率法により各店舗ごとの所得金額を算定しているが、各店舗の水道光熱費の合計金額を基礎とする推計方法がより合理的であるとした事例

裁決事例集 第83集

ポイント

 請求人が原処分庁と異なる推計方法を主張した場合には、裁決において、いずれがより合理的な推計方法であるかを判断し、他に、より合理的な推計方法があればそれを採用することとしているところ、この事例は、請求人が主張する推計方法により所得金額が算定できるか否か、また、どのような推計方法(何を推計の基礎とするか)がより合理的であるかを判断したものである。

要旨

 請求人は、所得金額の推計方法は資産負債増減法によるべき旨主張し、一方、原処分庁は、請求人と同業種であると認められる個人事業者のうち、水道光熱費の金額が請求人の各店舗ごとに0.5倍以上、2倍以下である青色申告者を類似同業者として抽出し、当該類似同業者の水道光熱費の総収入金額に占める割合の平均値(平均水道光熱費率)を求め、請求人のそれぞれの店舗ごとの水道光熱費の金額を平均水道光熱費率で除して店舗ごとの総収入金額を算出し、さらに類似同業者の所得率の平均値(平均所得率)を乗じて算出する方法によるべきである旨主張する。
 しかしながら、請求人から提出された貸借対照表は請求人の資産をすべて網羅したものであるとは認められないから、当該貸借対照表に基づいた資産負債増減法による推計の方法を採用することはできない。
 また、原処分庁は、店舗ごとに水道光熱費を推計の基礎として所得金額を算出して合計する方法を採っているが、請求人は、近接する地域内の各店舗において「スナック」という同一の業種を営んでいるから、請求人が営む事業全体を事業規模の判断要素とし、それとの近似性という観点から、各店舗の水道光熱費の合計金額を基礎として、これにより「スナック」を営む同業者の中から類似同業者を選定し、当該類似同業者の平均水道光熱費率及び平均所得率を適用して、請求人の総収入金額及び事業所得の金額を算定する方法がより合理的である。

参照条文等

所得税法第156条

参考判決・裁決

東京地裁昭和61年5月26日判決(税資152号192頁)

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平成23年6月23日裁決

外国為替証拠金取引の取扱業者らの不法行為により請求人の資産である金銭等に加えられた損害に基因して支払を受けた損害賠償金は非課税所得に当たるとした事例

裁決事例集 第83集

ポイント

 所得税法は、不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金であっても、課税されるべき所得に係る収入金額に代わる性質を有する休業補償や収益補償等を非課税所得から除くこととし、それ以外の本来課税することが適当でない実損害を補てんするための損害賠償金を非課税所得としている。
 この事例は、外国為替証拠金取引の取扱業者らから支払われた金員が、当該取扱業者らの不法行為により、請求人に相当額の実損害を被らせたことにより支払われた損害賠償金であるか否かが争われたものである。

要旨

 原処分庁は、本件金員(請求人が、外国為替証拠金取引の取扱業者らに対し、不法行為による損害賠償金の支払を求める訴訟を提起し、同訴訟の裁判上の和解により得た金員)は、本件FX取引(請求人が行った店頭外国為替証拠金取引(店頭FX取引)及び取引所FX取引)による売買損益を補てんする機能を有するものであるから、雑所得に係る総収入金額に算入すべきものである旨主張する。
 しかしながら、所得税法第9条第1項第16号《非課税所得》及び所得税法施行令第94条《事業所得の収入金額とされる保険金等》第1項第2号は、不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金について、課税されるべき所得に係る収入金額に代わる性質を有する休業補償や収益補償等以外の本来課税することが適当でない「実損害を補てんするための損害賠償金」を非課税所得としているところ、本件FX取引においては、説明義務違反及び誠実義務違反というH社らの不法行為により請求人の資産に損害が加えられたものと認めるのが相当であることからすると、本件金員は、H社らの不法行為により請求人の資産に加えられた実損害(本件FX取引において証拠金として預託した金銭の一部を失った損害)を補てんするために支払を受けた損害賠償金、つまり「実損害を補てんするための損害賠償金」に該当するものと認められる。したがって、本件金員は非課税所得に該当するから、これを雑所得に係る総収入金額に算入すべきとする原処分庁の主張は、採用できない。

参照条文等

所得税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)第9条第1項第16号 所得税法施行令(平成22年政令第50号による改正前のもの)第30条第2号、第94条第1項第2号

参考判決・裁決

名古屋高裁平成22年6月24日判決(先物取引裁判例集60号40頁) 福岡高裁平成22年10月12日判決(先物取引裁判例集61号59頁)

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平成23年6月23日裁決

請求人の事業所得の金額を推計により算定する際に用いた同業者率の算定が合理的でないとした事例

裁決事例集 第83集

ポイント

 この事例は、同業者比率法による推計課税において、損失の金額が生じている同業者の所得率につき、原処分庁がこれをゼロとして計算したことには合理性がなく、当該同業者については損失率をそのまま用いて計算することが合理的であるとしたものである。

要旨

 原処分庁は、①営業を開始した平成17年分ないし平成20年分のいずれの年分についても、本件店舗事業に係る売上原価の額を、同業者13件の収入金額に対する売上原価の額の割合の平均値で除して収入金額を算定し、②当該収入金額に同業者13件の収入金額に対する青色申告特別控除前の所得金額の割合(同業者所得率)の平均値を乗じて本件店舗事業に係る所得金額を算定する方法が合理的である旨主張する。
 しかしながら、原処分庁が同業者所得率の算定に当たり採用した同業者のうちの一部の者について、所得金額がマイナス(すなわち、損失の金額が生じている。)であるにもかかわらず、推計の過程においてこれをゼロとしているところ、特にこれらの同業者の所得金額がマイナスとなっていることが、特殊な事情に基づくものであると認めるに足りる証拠はないことから、推計の過程においてはこれらのマイナスの所得金額はそのまま適用するのが合理的である。

参照条文等

所得税法第156条

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平成23年6月21日裁決

被相続人の相続開始数日前に相続人によって引き出された多額の金員は、被相続人によって費消等された事実はないことから相続財産であると認定した事例

裁決事例集 第83集

ポイント

 本事例は、相続開始数日前に相続人によって引き出された50,000,000円もの金員の使途について、相続人は不自然、あいまいな申述をするのみで、不明のままであったが、被相続人が費消等した事実は認められなかったために、被相続人の相続財産であると認定したものである。

要旨

 請求人らは、相続開始の数日前に被相続人名義の預金から相続人が出金した50,000,000円(本件金員)について、出金された当日に被相続人に引き渡され、相続開始日までに被相続人によって費消されて存在していなかったから、本件相続に係る相続財産ではない旨主張する。
 しかしながら、被相続人が、50,000,000円という高額な金員を家族に知られないまま費消することは通常であれば考えられないことに加え、本件金員をギャンブル等の浪費によってすべて費消するには相続開始前の数日間では短すぎるのであって、被相続人の消費傾向に照らしても、本件金員がすべて費消されたとは考え難く、また、被相続人自身、数日後に死亡するとは考えておらず、多額の費用が必要な手術の準備をしていた時に、本件金員を引き出す直前の預貯金残高の8割を超え、総所得金額の2倍以上に相当する50,000,000円もの金員が、そのような短期間で軽々に費消されたとも考え難い。さらに、原処分庁及び当審判所の調査の結果によっても、本件金員が、相続開始日までに、他の預金等に入金された事実、債務の返済や貸付金に充てられた事実、資産の取得又は役務の提供の対価に充てられた事実、その他何らかの費用に充てられた事実はなく、家族以外の第三者に渡されたような事実もない。以上のとおり、通常想定し得る金員の流出先についてみても、本件金員が費消等された事実はなかったのであるから、本件金員は被相続人によって費消等されなかったと認めることができ、ほかにこれを覆すに足りる証拠はない。したがって、本件金員は、本件相続の開始時点までに被相続人の支配が及ぶ範囲の財産から流出しておらず、本件相続に係る相続財産であると認められる。

参考判決・裁決

昭和54年6月21日裁決(裁決事例集No.18・97頁)

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平成23年6月17日裁決

請求人の売上金額を割箸の仕入本数から推計により算定することは必ずしも合理的であるとはいい難いとした事例

裁決事例集 第83集

ポイント

 この事例は、割箸の仕入本数を推計の基礎項目とする原処分庁主張の推計方法が必ずしも合理的とはいい難いとして、水道光熱費の金額を推計の基礎項目とし、事業所得の収入金額及び課税資産の譲渡等の対価の額を推計したものである。

要旨

 原処分庁は、焼肉店を営む請求人の事業所得の収入金額を推計する方法として、割箸の年間仕入本数から客数への反映のない本数を5%として控除した本数を推定客数とし、客1人当たりの平均単価を乗じて算定する方法が合理的である旨主張する。
 確かに、来客数が増加すれば、割箸の消費量も増加し、それに伴い収入金額も増加することから、店舗で費消された割箸と当該店舗の収入金額には、一定の相関関係があるといえる。このことから、推計課税において割箸を効率項目として用いる計算方法は、一応の合理性が認められる。
 しかしながら、原処分庁が採用したロス率(5%)それ自体について合理的な算定根拠を確認することができないのみならず、割箸の仕入れの態様等にもかんがみると、ある年における割箸の実際の費消本数とその年の割箸の年間仕入本数(1,000本単位での仕入れがされている。)との間の相関関係は概括的、近似的にしか把握し得ないのが通常であると考えられるから、割箸の年間仕入本数のうちその年の客数に反映しない本数を当該年間仕入本数に基づいて割合的に把握する推計方法自体が必ずしも合理的とはいい難い。
 飲食店営業の場合、類似同業者にあっては、特段の事情がない限り、同程度の水道光熱費の割合に対し、同程度の収入を得、同程度の収入に対し、同程度の所得を得るのが通例であり、請求人の営む事業についても上記特段の事情はうかがわれないことからすれば、請求人の事業所得の金額を算定するに当たっては、請求人の水道光熱費の金額を類似同業者の収入金額に対する水道光熱費の金額の占める割合の平均値で除すことにより、収入金額を算定し、同業者所得率を乗じる方法が、他により合理的な推計の方法が見当たらない本件においては合理的であるということができる。

参照条文等

所得税法第156条

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平成23年6月14日裁決

旅行者に対して行われる日本国内での飲食、宿泊、輸送等の役務の提供は、非居住者である外国法人に対する販売であっても、輸出免税取引に該当しないとした事例

裁決事例集 第83集

ポイント

 この事例は、旅行会社等が企画、手配するいわゆるパック旅行等における日本国内での飲食、宿泊、輸送等の役務提供は、販売先が国内に支店又は出張所を有しない外国法人であっても、当該旅行の参加者が国内において直接便益を享受する取引に当たる場合には、輸出免税取引に該当しないとしたものである。

要旨

 請求人は、請求人が旅行業を営む非居住者である外国法人に対して販売した国内パッケージツアーは、請求人が国内の各種サービス提供機関から、ホテル、レストラン、バス等の利用につき購入して作成した国内旅行を販売(本件取引)しているものであり、当該外国法人に対して飲食、宿泊、輸送等の役務の提供をしていないこと、また、当該外国法人は飲食、宿泊、輸送等の役務を国内において直接享受するものではないことから、消費税法施行令第17条《輸出取引等の範囲》第2項第7号のロ又はハに該当せず、消費税法第7条《輸出免税等》第1項に規定する輸出免税取引に該当し、原処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、請求人が当該外国法人から受領する本件取引に係る対価の額には、旅行者が各種サービス提供機関から直接便益を享受する飲食、宿泊、輸送等の役務の提供の対価に相当する金額が含まれていると認められるところ、当該旅行者が飲食、宿泊、輸送等について国内において直接便益を享受していることは、消費税法施行令第17条第2項第7号のロ又はハに該当する輸出免税の対象となるものから除かれる非居住者に対する役務の提供に当たる。したがって、本件取引に係る対価の額のうち請求人が支払った飲食、宿泊、輸送等の役務提供に係る対価の額に相当する金額は、輸出免税取引の対価の額には該当しない。

参照条文等

消費税法第7条第1項第5号 消費税法施行令第17条第2項 消費税法基本通達7-2-16

参考判決・裁決

平成15年4月24日裁決(裁決事例集No.65・864頁)

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平成23年6月10日裁決

被相続人が配偶者のために負担した有料老人ホームの入居金は、贈与税の非課税財産に該当しないから、当該入居金は相続開始前3年以内の贈与として相続税の課税価格に加算する必要があるとした事例

裁決事例集 第83集

ポイント

 被相続人が配偶者のために負担した有料老人ホームの入居金が贈与税の非課税財産(相続税法第21条の3第1項第2号)に該当するか否かについて、平成22年11月19日裁決(裁決事例集No.81)では非課税財産に該当すると判断したのに対し、本事例は、非課税財産に該当しないと判断したものである。

要旨

 請求人は、請求人及び本件被相続人が本件相続開始の約2か月半前に入居した老人ホーム(本件老人ホーム)の入居金(本件入居金)を本件被相続人が支払ったことについて、本件入居金の性質は終身利用権の対価であり、請求人は本件被相続人から終身利用権を死因贈与により取得したことになるところ、終身利用権は一身専属権であって贈与税の対象とはならないから、相続開始前3年以内の贈与として本件相続税の課税価格に加算されない旨主張する。
 しかしながら、本件被相続人は、自らに支払義務のない請求人に係る入居金のうちの一部に相当する金額を支払ったものであり、これによって請求人は、入居金全額の支払によって初めて取得することのできる施設利用権を、低廉な支出によって取得したものと認められることからすると、請求人は著しく低い対価で本件老人ホームの施設利用権に相当する経済的利益を享受したものということができ、本件被相続人と請求人との間に実質的に利益の移転があったことは明らかであるから、相続税法第9条により、請求人は、その利益を受けた時における当該利益の価額に相当する金額を本件被相続人から贈与により取得したものとみなすのが相当である。また、本件入居金は極めて高額であり、請求人に係る居室面積も広く、本件老人ホームの施設の状況等をかんがみれば、本件老人ホームの施設利用権の取得のための金員は、社会通念上、日常生活に必要な住の費用であるとは認められないから、相続税法第21条の3《贈与税の非課税財産》第1項第2号の規定する「生活費」には該当せず、贈与税の非課税財産に該当しない。したがって、贈与により取得したものとみなされた金額は、相続開始前3年以内の贈与として本件相続税の課税価格に加算されることとなる。

参照条文等

相続税法第21条の3第1項第2号第19条第1項 相続税法基本通達21の3-321の3-6

参考判決・裁決

平成22年11月19日裁決(裁決事例集No.81)

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平成23年6月9日裁決

原処分庁が用いた同業者比率法による推計において、同業者の選定漏れがあったとした事例

裁決事例集 第83集

ポイント

 裁決においては、請求人が特に推計方法に合理性がない旨を主張していない場合であっても、必ずその合理性につき判断することとしているところ、この事例は、争点とはなっていなかったが、同業者比率法による推計の合理性について審理し、原処分庁の選定した類似同業者以外にも、請求人の事業所得の金額を推計する際に選定されるべき類似同業者の存在を認めたものである。

要旨

 原処分庁は、請求人の本件各年分の事業所得の金額を、総収入金額に類似同業者の平均特前所得率(類似同業者の青色申告特典控除前の事業所得の金額を総収入金額で除した数値の平均値)を乗じて推計の方法により算定しているところ、およそ業種、業態に類似性のある同業者にあっては、特段の事情がない限り、同程度の収入に対して同程度の所得を得るのが通例であり、このことは請求人の営む事業の場合にあっても例外ではなく、かつ、請求人に特段の事情があるとは認められないから、原処分庁の用いた推計方法には合理性があると認められる。
 ところで、原処分庁は、国税局管内に事業所を有し、請求人と同業種の者で、かつ、その年分の総収入金額が請求人のそれの0.5倍以上2倍以下であるなど事業規模の類似する事業を営む青色申告者を類似同業者として、本件各年分について各5件を選定しているところ、原処分庁の類似同業者の選定方法についてその適否を審理した結果、類似同業者の選定漏れが平成18年分については1件、平成19年分及び平成20年分については各6件認められることから、本件各年分の平均特前所得率を再計算すると、いずれも原処分庁の主張する率を下回ることとなる。

参照条文等

所得税法第156条

参考判決・裁決

東京地裁昭和61年5月26日判決(税資152号192頁)

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平成23年6月7日裁決

派遣医に支払う給与等の源泉徴収につき、勤務した日ごとに定額の給与を支給していた場合であっても、月間の給与総額をあらかじめ定めておき、これを月ごとに又は派遣を受ける都度分割して支払うこととするものとして月額表の乙欄に掲げる税額を源泉徴収すべきとした事例

裁決事例集 第83集

ポイント

 所得税法上、居住者に対し支払う給与等につき源泉徴収すべき税額を求める際に適用すべき税額表は、支給期が毎月、毎半月、毎旬及び月の整数倍ごとと定められているものは月額表、支給期が毎日と定められているものは日額表とされており、求めるべき税額は、扶養控除等申告書の提出の有無に応じ、それぞれ、甲欄、乙欄に掲げる税額とされている。また、労働した日又は時間によって算定され、かつ、労働した日ごとに支払われる給与等で一定のものは、日額表の丙欄に掲げる税額とされている。
 この事例は、いわゆる派遣医に対して支払う給与について、派遣医との契約内容等に応じ、月額表又は日額表の乙欄、あるいは日額表丙欄が適用されると判断したものである。

要旨

 原処分庁は、請求人に大学から派遣される医師(大学派遣医)及び請求人と医師個人との契約等により勤務する医師(個人契約医)に請求人が支払う給与について、源泉徴収税額表の日額表が適用される旨主張し、これに対し請求人は月額表が適用される旨主張するところ、大学派遣医については、大学との間で勤務1回当たりの額という形で給与の額を定め、勤務予定については四半期ないし半年という期間ごとに一応決定されていたものの、実際に勤務する医師が誰であるか勤務直前になるまで分からないのであるから、勤務回数が一定の期間で何回になるか事前に確定しているとはいえない。したがって、勤務した日ごとに支払っている大学派遣医の給与は、勤務した日ごとに定められているということができ、「給与等の支給期が毎日と定められている場合」に該当すると認められるから、日額表の乙欄に掲げる税額を源泉徴収すべきである。
 また、勤務日を毎週木曜日として1年間継続して請求人に勤務する旨の契約を取り交わし、その後勤務を続け、平成17年3月から同年12月までの間は、継続して第2及び第4木曜日に勤務していた個人契約医は、請求人との間において、毎月一定日数勤務することをあらかじめ取り決めてあったということができ、同人の給与については、「月間の給与総額をあらかじめ定めておき、これを月ごとに又は派遣を受ける都度分割して支払うこととするもの」と認められるから、月額表の乙欄に掲げる税額を源泉徴収すべきである。
 一方、請求人の病院に継続して勤務する取決めはなく、請求人の依頼に基づいて臨時的に勤務していた個人契約医は、勤務1回当たりの給与についてもその都度取り決めていたというのであるから、日日雇い入れられる者に対して労働した日によって算定した額を労働した日ごとに支払っている給与であると認められるので、日額表の丙欄に掲げる税額を源泉徴収すべきである。

参照条文等

所得税法第185条第1項 所得税法施行令第309条

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平成23年6月7日裁決

私道の評価において、一方が行き止まりのいわゆる袋小路であるにもかかわらず、不特定多数の者が通行の用に供されているとした鑑定評価額は採用できず、財産評価基本通達に定める評価額が適当であるとした事例

裁決事例集 第83集

ポイント

 この事例は、評価対象地の地目は公衆用道路であるとしても、当該評価対象地は、道路交通法による位置指定道路(その維持管理は原則として所有者に任され、処分権が所有権に属し、抵当権の設定等も可能)であり、不特定多数の者の通行の用に供されていない部分の評価額は零円とはならないと判断したものである。

要旨

 請求人らは、本件土地について不動産鑑定士が作成した不動産鑑定評価書(本件鑑定書)における鑑定評価額は零円(本件鑑定評価額)であって、この価額が本件土地の客観的な交換価値を示すものであるから、本件土地の価額は、本件鑑定評価額を基礎とすべきである旨主張する。
 しかしながら、本件鑑定書においては、本件土地が不特定多数の者の通行の用に供されている私道であることを前提に鑑定評価が行われているが、本件土地の大部分は一方が行き止まりのいわゆる袋小路であり、専ら本件土地に隣接する土地上の居宅及びアパートの居住者という特定の者の通行の用に供されているものと認められることからすると、本件鑑定書は本件土地を評価する上で前提となる事実の評価を誤ったものであり、その内容に合理性があると認めることはできず、本件鑑定評価額が本件土地の客観的な交換価値を示しているということはできない。また、ほかに本件土地の価額を評価するに当たって財産評価基本通達の定めによることが著しく不適当と認められる特別な事情があるとは認められないから、本件土地の価額は同通達の定めにより算定される評価額をもって時価とすることが相当である。
 なお、本件土地の一部については、不特定多数の者の通行の用に供されているものと認められるから、その部分の価額は評価しない。

参照条文等

財産評価基本通達24

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平成23年6月7日裁決

請求人の子が代表取締役を務める法人は、賃貸の目的物に係る管理業務を行っているから、同法人に対して支払った管理費は、請求人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入されるとした事例

裁決事例集 第83集

ポイント

 この事例は、請求人の子が代表取締役を務める法人の業務を認定し、請求人が当該法人に対して支払った管理料相当額の必要経費算入及び課税仕入れを認めたものである。

要旨

 原処分庁は、店舗用建物たる本件建物及びその敷地たる本件各土地を併せた本件各土地建物に係る管理全般についてN社が行っており、請求人の子が代表取締役を務める本件法人は、請求人ら及びN社に対する金銭の支払行為を行っているものの、本件建物に係る共有持分(本件建物持分)及び本件各土地の一部である本件土地の管理業務を行っているとはいえないため、本件法人に請求人が支払った管理費相当額(本件管理費)は請求人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入できない旨主張する。
 しかしながら、ある支出が不動産所得における必要経費に該当するためには、業務関連性がなければならないとともに、その必要性の判断においても、単に事業主の主観的判断のみによるものではなく、客観的に必要経費として認識できるものでなければならないと解されるところ、請求人の不動産所得の総収入金額に算入すべき金額は、賃借人をK社として本件建物を賃貸する旨の本件契約に係る賃料であることから、必要経費に算入すべき金額も本件契約に関して支出された費用に限られることとなる。そして、本件法人は、請求人らから本件建物持分及び本件土地の管理業務を受託し、本件契約の更新及び補修工事等に係る各種連絡を受けてK社及びN社と協議し、本件法人名議で本件契約に係る各種の支払を行うなどしてこれらに対処している事実が認められることから、本件建物持分及び本件土地に対する管理業務を行っているものと認められる。
 そうすると、請求人から本件法人に対して支払われた本件管理費は、請求人のN社に対する本件建物持分の賃貸業務の遂行上必要な支出であると認められることから、請求人の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入されるものと認められる。

参照条文等

所得税法第37条第1項

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平成23年6月3日裁決

請求人は、当初から課税標準等及び税額等を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたものといえるので、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかったことにつき、重加算税の賦課要件を満たすとした事例

裁決事例集 第83集

ポイント

 この事例は、無申告加算税に代えて課される重加算税につき、最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決と同様の法令解釈を行うとともに、法定申告期限までに納税申告書を提出しなかった請求人の行動を総合勘案し、その賦課要件を満たすと判断したものである。

要旨

 請求人は、法定申告期限までに所得税並びに消費税及び地方消費税(消費税等)の各確定申告書を提出しなかったことについて、所得税については申告する意思があってその準備をしていた、消費税等については、経理業務の委託先が申告してくれるものと誤認していた、などとして、重加算税の賦課要件を満たさない旨主張する。
 しかしながら、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在しない場合であっても、納税者が、当初から課税標準等及び税額等を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかった場合には、重加算税の賦課要件が満たされるものと解するのが相当であるところ、請求人は、法定申告期限から7年を経過すれば所得税等の納付から免れることができるとの認識を持った上、請求人の経理業務の委託先から確定申告手続の税理士への委任の要否を問われて、これを断り、連年にわたり多額の収入金を得ていながら無申告を続けていたことなど、当初から課税標準等及び税額等を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたものといえるから、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかったことについては、国税通則法第68条《重加算税》第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たすというべきである。

参照条文等

国税通則法第68条第2項

参考判決・裁決

最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)

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平成23年5月31日裁決

契約期間を満了して退職する期間契約社員に対し慰労金名目で支給された金員は、退職により一時に受ける給与というための要件を満たしているから、退職所得に該当するとした事例

裁決事例集 第83集

ポイント

 この事例は、契約期間を満了して退職する期間契約社員に対し支給された慰労金名目の金員につき、その支払者が給与所得に該当するとして所得税の源泉徴収をしたものの、その支給基準、支給実態からみて、最高裁昭58.9.9第二小法廷判決(民集37巻7号962頁)で示された、退職所得に当たるというための三つの要件を満たしていると判断したものである。

要旨

 原処分庁は、F社の期間契約社員就業規則によると、F社は、期間契約社員に対する退職金を支給しないこととされていることなどから、慰労金名目で支払われた金員(本件慰労金)に係る所得は給与所得に該当する旨主張する。
 しかしながら、ある金員が、「退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与」に当たるというためには、それが、①退職、すなわち勤務関係の終了という事実によって初めて給付されること、②従来の継続的な勤務に対する報償ないしその間の労務の対価の一部の後払の性質を有すること、③一時金として支払われることの各要件を備えることが必要であると解されるところ、本件慰労金のうち、労働慰労金として支給された金員は、請求人が契約期間を満了して退職するという事実によって支給され、請求人が契約期間における出勤すべき日数の90パーセント以上を出勤し、勤務成績が良好な者に該当するとして、契約期間における勤務日数に応じて一時に支給されたこと、有給休暇手当金として支給された金員は、請求人が契約期間を満了して退職するという事実によって支給され、契約期間中に生じる有給休暇について請求人がこれを取得しなかったことを支給の根拠として一時に支給されたことからすると、本件慰労金は上記①ないし③の各要件をいずれも満たすものと認められることから、退職所得に該当する。

参照条文等

所得税法第30条

参考判決・裁決

最高裁昭58.9.9第二小法廷判決(民集37巻7号962頁)

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平成23年5月30日裁決

法人税法施行令第136条の4第1項の規定は、新たに設立された医療法人がその設立について贈与を受けた場合の課税関係について定めた規定であり、定款変更の方法により組織変更した場合には適用されないとした事例

裁決事例集 第83集

ポイント

 この事例は、定款変更の方法により、社団である医療法人で出資持分の定めのあるものから定めのないものへ組織変更したことが、法人税法施行令第136条の4第1項に規定する「設立」に当たるか否かが争われたものである。

要旨

 請求人は、定款を変更して組織変更し、社団である医療法人で持分の定めのあるものから持分の定めのないものになったことは、事実上、持分の定めのある医療法人が清算され、持分の定めのない医療法人として請求人が設立されたものといえることから、定款変更による組織変更の際に贈与を受けた土地(本件各土地)の価額は、法人税法施行令第136条の4第1項に規定する「医療法人がその設立について贈与を受けた資産の価額」に該当し、当該贈与があった事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入されない旨主張する。
 しかしながら、法人税法施行令第136条の4第1項の規定は、社団である医療法人については、新たに設立された医療法人がその設立について贈与を受けた場合の課税関係について定めた規定であると解されるところ、請求人は、医療法施行規則第30条の39《持分の定めのある医療法人から持分の定めのない医療法人への移行》第1項の規定に基づき、定款変更の方法により持分の定めのない医療法人へ組織変更したものであり、従前の医療法人の解散、清算に係る各手続を経た上で新たに設立されたものではないから、本件各土地の価額は、法人税法施行令第136条の4第1項に規定する「医療法人がその設立について贈与を受けた資産の価額」には該当しない。

参照条文等

法人税法施行令第136条の4第1項 医療法施行規則第30条の39第1項

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平成23年5月23日裁決

いわゆる振り込め詐欺の被害に遭い、だまし取られた金額分の損失は、雑損控除の対象となる災害又は盗難若しくは横領による損失には当たらないとした事例

裁決事例集 第83集

ポイント

 所得税法第72条に規定する雑損控除は、同条第1項により、「居住者又はその者と生計を一にする配偶者その他の親族で政令に定めるものの有する資産について災害又は盗難若しくは横領による損失が生じた場合において」適用するものである。
 この事例は、いわゆる振り込め詐欺の被害に遭い、だまし取られた金額分の損失が、雑損控除制度の趣旨・目的に照らし「災害又は盗難若しくは横領」による損失に当たるか否か、又は「災害」による損失、「盗難」による損失若しくは「横領」による損失のいずれかの損失に当たるか否かが争われたものである。

要旨

 請求人は、いわゆる振り込め詐欺の被害に遭い、だまし取られた金額分の損失(本件損失)が、雑損控除制度の趣旨・目的に照らせば所得税法第72条《雑損控除》第1項に規定する「災害又は盗難若しくは横領」による損失、又は「災害」による損失、「盗難」による損失若しくは「横領」による損失のいずれかの損失に当たる旨主張する。
 しかしながら、「災害」、「盗難」及び「横領」はいずれも別個の概念であること、また、①上記詐欺の犯人が指定した口座に3回にわたり振込送金した請求人の行為(本件各振込み)自体が、請求人の意思に基づいてなされているから、本件損失は「災害」による損失に当たらないこと、②「盗難」の意義は「財物の占有者の意に反する第三者による当該財物の占有の移転」と解されるところ、本件各振込みが請求人の意思に基づいてなされているから、本件損失は「盗難」による損失に当たらないこと、③「横領」の意義は「他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をすること」と解されるところ、請求人が振り込んだ金銭に対する所有権は本件各振込みを終えた時点で、当該金銭に対する占有とともに上記詐欺の犯人側へ移転したと認められ、当該犯人はそもそも請求人の物の占有者ではないから、本件損失は「横領」による損失に当たらないことから、本件損失は、所得税法第72条第1項に規定する「災害又は盗難若しくは横領による損失」には当たらない。

参照条文等

所得税法第2条第1項第27号第72条第1項 所得税法施行令第9条

参考判決・裁決

最高裁平成19年4月17日第三小法廷判決(民集61巻3号1026頁) 京都地裁平成8年6月7日判決(税資216号511頁) 最高裁昭和24年3月8日第三小法廷判(刑集3巻3号276頁) 大審院明治42年8月31日判決(刑録15輯1097頁) 平成21年2月16日裁決(裁決事例集No.77)

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平成23年5月18日裁決

営業譲渡契約による包括的な指名債権の移転を第三者に対抗するためには、民法第467条が規定する方法により、第三者対抗要件を具備する必要があるとした事例

裁決事例集 第83集

要旨

 請求人は、原処分庁が、滞納者が第三債務者に対して債権を有するとして当該各債権(本件各債権)を差し押さえたことに対し、本件各債権は、請求人と滞納者との間の営業譲渡契約により、包括的に請求人に移転しており、このような包括的な移転については民法第467条《指名債権譲渡の対抗要件》の適用がないから、同条第2項が規定する第三者対抗要件を具備しなくても、本件各債権の移転を原処分庁に対抗することができる旨主張する。
 しかしながら、営業譲渡契約により譲受人に承継されることとなった指名債権について二重譲渡や差押えとの競合が生じることは通常の債権譲渡の場合と同様であることからすれば、営業譲渡契約による指名債権の移転を第三者に対抗するためには、民法第467条が規定する方法により第三者対抗要件を具備する必要があると解されるのであり、本件各債権の移転については、いずれも第三者対抗要件を具備していないから、請求人は、本件各債権の移転を原処分庁に対抗することはできない。

参照条文等

民法第467条第2項

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平成23年5月16日裁決

被相続人以外の者の名義である財産について、その財産の原資の出捐者及び取得の状況、その後の管理状況等を総合考慮して、相続開始時において被相続人に帰属するものと認定した事例

裁決事例集 第83集

ポイント

 ある財産が被相続人以外の者の名義となっていたとしても、当該財産が相続開始時において被相続人に帰属するものであったと認められるものであれば、当該財産は、相続税の課税対象となる。
 この事例は、被相続人以外の者の名義である財産が相続開始時において被相続人に帰属するものであったか否かについて、その名義のみならず、当該財産又はその購入原資の出捐者、当該財産の管理及び運用状況、当該財産から生ずる利益の帰属者、被相続人と当該財産の名義人並びに当該財産の管理及び運用をする者との関係等を総合考慮して判断したものである。

要旨

 請求人らは、請求人ら名義の各有価証券及び各預貯金等(本件請求人ら名義財産)について、これらの全部が請求人ら固有の財産である旨主張する。
 しかしながら、預貯金や有価証券等の財産の帰属を判断するためには、その名義が重要な要素となることはもちろんであるが、それら原資の負担者、取引や口座開設の意思決定を行った者、その手続を実際に行った者、その管理又は運用による利得を収受している者などの諸要素、その他名義人と管理又は運用をしている者との関係等を総合的に考慮すべきであるところ、本件請求人ら名義財産については、本件被相続人の妻である請求人G名義の一部の財産を除き、①原資の負担者は、本件被相続人であったと認めるのが相当であること、②取引や口座開設等の手続の遂行者は、実質的に本件被相続人であったと認めるのが相当であること、③本件被相続人自身又は本件被相続人が請求人Gを通じて、管理していたと認めるのが相当であること、④本件請求人ら名義財産の基となった財産の運用については、本件被相続人の指図によって行われていたとみるのが相当であること及び⑤本件請求人ら名義財産の基となった請求人らの名義の上場株式のうち、配当金に係る利得を享受し得る立場にあったのは、本件被相続人であったと認められることからすれば、いずれも本件被相続人の相続財産と認めるのが相当である。ただし、本件請求人ら名義財産のうち請求人G名義の一部の財産については、同人の所得から形成されたものと認められ、また、同人によって運用されていたものと認められるから、請求人G固有の財産であると認めるのが相当である。

参考判決・裁決

東京地裁平成18年9月22日判決(税資256号順号10512) 千葉地裁平成8年7月15日判決(税資220号91頁)

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平成23年5月11日裁決

相続税の申告に当たり、相続財産の一部について、相続人がその存在を認識しながら申告しなかったとしても、重加算税の賦課要件は満たさないとした事例

裁決事例集 第83集

ポイント

 この事例は、相続税の申告に当たり、相続財産の一部である被相続人名義の株式について、請求人がその存在を認識しながら申告に至らなかった事情について個別に検討したところ、請求人が当初から相続財産を過少に申告することを意図した上、その意図を外部からうかがい得る特段の行動をしたとまでは認められないとしたものである。

要旨

 原処分庁は、請求人が、当初申告において計上していなかった被相続人名義の株式(本件株式)を相続財産であると認識していたにもかかわらず、関与税理士に対しその存在を秘匿し、過少な申告額を記載した本件相続税の申告書を作成させ、これを原処分庁に提出したものであるから、当初から相続財産を過少に申告することを意図した上、その意図を外部からうかがい得る特段の行動をしたもので、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する隠ぺい又は仮装の行為に当たる旨主張する。
 しかしながら、確かに、請求人は、法定申告期限前に本件株式の存在を相続財産として認識していたと推認できるものの、原処分庁の主張する①請求人が関与税理士から証券会社の残高証明書を入手するように指示されたにもかかわらず、それに従わなかったこと、②請求人が関与税理士から申告書案記載の財産について個々に説明を受けていたにもかかわらず、本件株式の記載漏れを指摘しなかったこと、③本件相続税の調査の際、請求人が虚偽答弁を行ったことについては、それぞれ、①請求人が、本件相続税の申告に当たって、関与税理士が本件株式を把握するために必要な資料を既に所持しており、改めて提出する必要がないと考えた可能性を否定しえないこと、②請求人は、関与税理士から申告書案記載の財産について個々に説明を受けていたとは認められず、また、申告書案に本件株式が相続財産として当然記載されていると誤認したまま、記載内容を十分に確認せず、その誤りに気付かなかったという可能性を否定しえないこと、③請求人が虚偽答弁を行ったと認めるに足りる証拠がないことから、これらのことをもって、請求人が当初から相続財産を過少に申告することを意図した上、その意図を外部からうかがい得る特段の行動をしたとまでは認められない。

参照条文等

国税通則法第68条

参考判決・裁決

最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)

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平成23年5月11日裁決

請求人による修正申告書の提出は、自発的な決意を有していたことが客観的に明らかであるから、更正があるべきことを予知してなされたものではないとした事例

裁決事例集 第83集

ポイント

 この事例は、元事務員による給与支給額の水増しを把握した請求人が、原処分庁に事前説明に赴いたことを契機として税務調査がされ、修正申告に至ったことについて、請求人の具体的な事前説明に、請求人が自発的に修正申告を提出する決意を有していたと認めることができると判断して、加算税の賦課決定処分を取り消したものである。

要旨

 原処分庁は、本件修正申告書は、調査において調査担当職員が請求人の元事務員による給料支給額の水増し(本件水増し)を確認した結果判明した横領の事実に基づき提出されたものであり、また、調査に先立つ事前説明時には請求人が横領の事実を確定的に認識していたとは認められず自発的に提出されたものではないから、国税通則法第65条《過少申告加算税》第5項に規定する「調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」には該当しない旨主張する。
 しかしながら、請求人は、少なくとも事前説明時までに本件水増しのすべてを把握して修正申告をする決意をし、事前説明の際には面談職員らに対して本件水増しについて説明した上で調査を求めており、それに基づいて調査が行われたと認められることから、請求人は自発的に修正申告書を提出する決意を有しており、その決意は事前説明において客観的に明らかになったものということができる。そうすると、本件修正申告書の提出は、調査があったことにより更正があるべきことを予知してされた修正申告書の提出には当たらない。

参照条文等

国税通則法第65条第5項

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平成23年5月9日裁決

評価対象地は、道路を開設するなどした開発を行うことが最も合理的であり、「広大地」として評価するのが相当であるとした事例

裁決事例集 第83集

ポイント

 この事例は、広大地通達の適用について、評価対象地の属する地域内の開発事例を詳細かつ具体的に調査し、その調査結果と評価対象地の状況とを併せ検討することにより、公共公益的施設用地の負担の要否を判断し、評価対象地は「広大地」に該当するとしたものである。

要旨

 原処分庁は、本件土地が属する財産評価基本通達24-4《広大地の評価》(本件通達)に定める「その地域」(本件地域)の標準的な宅地の地積に基づき区画割をすると、本件土地は4区画に分割して路地状開発することが可能であること、路地状開発を行うとした場合は、路地状部分の土地は、通路に限らず駐車場として利用でき、建ぺい率・容積率の算定上道路を開設するよりも有利な点があること、また、本件地域に路地状開発の事例もあることから、路地状開発による開発が経済的に最も合理的な開発であるとして、本件土地は本件通達に定める広大地に当たらない旨主張する。
 しかしながら、原処分庁の主張する本件地域の標準的な宅地の地積の算定は誤っており、正しい地積に基づき区画割をすると本件土地は4区画又は5区画に分割して開発するのが経済的に合理的であると認められる。また、本件地域においては、路地状開発による事例もみられるものの、当該事例は道路の開設による開発がもとより困難な土地の事例であり、本件土地とは条件を異にする。他方、本件地域において本件土地と地積、形状及び公道との接続状況及び面積等並びに本件地域における近年の土地の開発状況等からすれば、本件土地については、道路を開設して戸建住宅の敷地として分譲開発するのが経済的に最も合理的な開発方法であると認められる。
 したがって、本件土地は、本件通達に定める広大地として評価するのが相当である。

参照条文等

財産評価基本通達24-4

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平成23年4月27日裁決

請求人の青色申告書は、その提出期限後に提出されたものであるから、これに記載された純損失の金額は、翌年に繰り越すことができないとした事例

裁決事例集 第83集

ポイント

 所得税法第70条第1項及び第4項の規定によれば、総所得金額の計算上純損失の金額を控除するには、純損失の金額が生じた年分において、青色申告書をその提出期限内に提出しなければならないとされているところ、第4項かっこ書において、やむを得ない事情があると認められる場合には、その提出期限後に提出した場合を含むとされている。
 この事例は、青色申告書を提出期限までに提出しなかった請求人の事情がこの「やむを得ない事情」に当たるか否かが争われたものである。

要旨

 請求人は、平成20年分の所得税の青色の確定申告書をその提出期限後に提出したのは、顧問税理士の業務用パソコンが故障したことに基因しており、このような事情は所得税法第70条《純損失の繰越控除》第4項の「やむを得ない事情」に該当する旨主張するが、「やむを得ない事情」とは、天災、交通や通信の途絶等、納税者の責めに帰すことができない外的事情など、その提出期限までに確定申告書を提出することを不可能とする真にやむを得ない客観的事情をいうものであり、請求人が主張するパソコンの故障は、請求人及び顧問税理士の個人的事情又は主観的事情にとどまるものであって、その提出期限までに確定申告書を提出することを不可能とする真にやむを得ない客観的事情には該当しないというべきである。

参照条文等

所得税法第70条第1項第4項

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平成23年4月21日裁決

評価対象地は、既に開発行為を了した共同住宅の敷地として有効に利用されていることから、「広大地」には当たらないとした事例

裁決事例集 第83集

ポイント

 この事例は、既に開発行為を了した共同住宅用地について、その共同住宅(建物)の状況から近い将来の開発行為を要しないこと及びその存する地域の標準的使用形態の一つに適合していることから、当該共同住宅用地は有効利用されているとして、「広大地」には当たらないと判断したものである。

要旨

 請求人らは、相続により取得した各土地(本件各土地)は、賃貸マンションの敷地となっているところ、地価公示法によれば賃貸マンションを建築することが地域の標準的使用とはなり得ないこと及び本件各土地が所在する地域の近傍地域が一群の戸建住宅分譲用地へと移行しつつあることからすると、本件各土地は「現に宅地として有効利用されている建築物等の敷地」には該当しないなどと主張して、本件各土地は、財産評価基本通達24-4《広大地の評価》(広大地通達)に定める広大地に該当する旨主張する。
 しかしながら、広大地通達の趣旨に照らすと、評価対象宅地につき、評価時点における当該宅地の属する地域の標準的使用に照らして、当該宅地を分割することなく一体として使用することが最有効使用であると認められる場合には、広大地に該当しないと解するのが相当であり、既に開発行為を了しているマンションなどの敷地や現に宅地として有効利用されている建築物の敷地用地などについては、特段の事情がない限り、広大地には該当しないものと解せられるところ、本件各土地は、既に開発行為を了した共同住宅の敷地として使用されており、本件各土地について、近い将来において新たな開発行為を行うべき事情も認められない上、本件各土地の存する地域においては、戸建住宅用地、共同住宅用地、法人等事業用地、倉庫・車庫・工場用地の各用途のいずれもが標準的な使用形態であると認められることからすると、本件各土地は、既に開発行為を了した共同住宅の敷地として、その周辺地域の標準的な使用状況に照らして有効に利用されているものと認められる。
 したがって、本件各土地は、広大地には該当しないものと認めるのが相当である。

参照条文等

財産評価基本通達24-4

参考判決・裁決

東京地裁平成20年8月29日判決(税資258号順号11014) 東京地裁平成17年11月10日判決(税資255号順号10199)

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平成23年4月19日裁決

免税事業者であるにもかかわらず課税事業者であるかのように装い、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えている旨の虚偽の記載をして修正申告書を提出した行為は、重加算税の賦課要件である「隠ぺい又は仮装の行為」に当たるとした事例

裁決事例集 第83集

ポイント

 この事例は、重加算税の賦課要件である「隠ぺい又は仮装の行為」の該当性の判断に当たり、平成12年7月3日付課消2-17ほか5課共同「消費税及び地方消費税の更正等及び加算税の取扱いについて(事務運営指針)」の第2のⅣの5の趣旨を明確にした上で、その該当性を認めたものである。

要旨

 請求人は、基準期間の課税売上高は、当該課税期間の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実ではないから、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えているかのように装った同期間の修正申告書を提出した行為は、重加算税の賦課要件である隠ぺい又は仮装行為に当たらず、また、平成12年7月3日付課消2-17ほか5課共同「消費税及び地方消費税の更正等及び加算税の取扱いについて(事務運営指針)」の第2のⅣの5の定め(本件留意事項)に準じて解釈すれば、本件は「重加算税を課すべきこととならない」ときに該当するから、重加算税の賦課決定処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する事実の隠ぺいとは、売上除外、証拠書類の廃棄等、課税要件に該当する事実の全部又は一部を隠すことをいい、事実の仮装とは、架空仕入れ、架空契約書の作成、他人名義の利用等、存在しない課税要件事実が存在するように見せかけることをいうと解するのが相当であるところ、請求人が免税事業者であるか課税事業者であるかは、消費税等の納税義務者に該当するか否かという課税要件事実そのものであり、不正に消費税の還付を受けるため、免税事業者であるにもかかわらず課税事業者であるかのように装って確定申告書を提出した行為は、重加算税の賦課要件を充足する。
 なお、本件留意事項は、基準期間の隠ぺい又は仮装行為が、客観的にみて課税期間の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の隠ぺい又は仮装行為と評価できない場合には、重加算税の賦課要件を満たさないことに留意すべき旨を定めたものにすぎないと解すべきであり、基準期間の課税売上高の仮装行為が、課税期間の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の仮装に該当すると評価できる本件は、本件留意事項が定める場合とは前提を異にするというべきである。

参照条文等

国税通則法第68条第1項 平成12年7月3日付課消2-17ほか5課共同「消費税及び地方消費税の更正等及び加算税の取扱いについて(事務運営指針)」

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平成23年4月18日裁決

平成18年分については、請求人が養育費の送金は行っておらず長男と「生計を一にするもの」には該当しないことから、また、平成19・20年分については、元妻が請求人より先に勤務先に対し長男を扶養親族とする旨の扶養控除等申告書を提出していることから、いずれの年分も請求人において長男を扶養親族とする扶養控除の適用は認められないとした事例

裁決事例集 第83集

ポイント

 所得税法第2条第1項第34号に規定する「生計を一にするもの」とは、一般に親族が同一の生活共同体に属して日常生活の資を共通にしていることをいうものと解される。また、所得税法施行令第219条第1項は、二以上の居住者の扶養親族に該当する者があるときは、その所属は原則として居住者の自由な選択に委ね、いずれの居住者の扶養親族であるか定まらない場合には同条第2項により、いずれの居住者の扶養親族であるかを決することとしている。
 この事例は、離婚後、元妻と同居している長男について、請求人と生計を一にしているか、また、元妻が請求人に先立って長男を扶養親族とする扶養控除等申告書を勤務先に提出している場合に請求人の扶養親族となるか否かが争われたものである。

要旨

 請求人は、裁判により本件養育費の債務を負うことが確定していることから、送金がなくても、長男は請求人と「生計を一にするもの」に該当する旨主張するが、「生計を一にするもの」とは、常に生活費等の送金が行われている場合のように、日常生活の資を共通にしているものをいうと解すべきところ、請求人が平成18年中に本件養育費を送金していない以上、長男が請求人と日常生活の資を共通にしているとはいえない。
 また、請求人は、裁判離婚した元妻との間には相互に意思の連絡がないから、所得税法施行令第219条《二以上の居住者がある場合の扶養親族の所属》第2項第1号は適用されず、同項第2号を適用すべきである旨主張するが、二以上の居住者の間に意思の連絡があるか否かによって同項第1号の適用が左右されるものではない。そして、本件では、平成19年分及び平成20年分とも、元妻が、請求人より先に、勤務先に対し、長男を扶養親族とする旨の扶養控除等申告書を提出しているから、所得税法施行令第219条第2項第1号により、長男は元妻の扶養親族に該当することとなり、同項第2号が適用される余地はない。

参照条文等

所得税法第2条第1項第34号 所得税法施行令第219条

参考判決・裁決

徳島地裁昭和59年5月30日判決(税資136号594頁) 平成20年10月29日裁決(裁決事例集No.76) 平成元年1月12日裁決(裁決事例集No.37)

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平成23年4月1日裁決

評価対象地は、道路を開設するなどした開発を行うことが最も合理的であり、広大な市街地農地として評価するのが相当であるとした事例

裁決事例集 第83集

ポイント

 この事例は、評価対象地である市街地農地が宅地であるとした場合に「広大地」に該当するか否かについて、評価対象地の属する地域内の開発事例を詳細かつ具体的に調査し、その調査結果を評価対象地の状況と併せ検討することにより、公共公益的施設用地の負担の適否を判断し、評価対象地は「広大地」に該当するとしたものである。

要旨

 原処分庁は、本件土地は、路地状開発によれば容積率及び建ぺい率の算定に当たって、路地状部分の地積もその算定の基礎とすることができること及び本件土地の属する地域(本件地域)内には路地状開発の事例が複数見受けられることから、路地状開発により戸建分譲を行うことが経済的に最も合理的な開発方法に当たると認めるのが相当で、開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担の必要は認められないから、財産評価基本通達40-2《広大な市街地農地》に定める広大な市街地農地として評価することはできない旨主張する。
 しかしながら、本件地域内の開発状況を見ると、①本件土地と同規模程度の面積の土地で公共公益的施設用地の負担をしないで開発された事例がないこと、②周辺地域の路地状開発において見られる路地状敷地の数は2ないし4であり、原処分庁主張の開発想定図にある7つもの連続した路地状敷地を配置した開発事例はない。加えて、本件土地の形状、他の道路との接続状況及び面積等を総合的に勘案すると、本件土地は、道路を開設して開発するのが経済的に最も合理的な開発方法と認められる。
 したがって、本件土地は、広大な市街地農地として評価するのが相当である。

参照条文等

財産評価基本通達40-2

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平成23年3月30日裁決

請求人が提示した出面帳に記載された事項のうち、法定記載要件を具備している部分については、課税仕入れ等の税額に係る帳簿に該当するとして、消費税の納付すべき税額の計算上、当該部分に係る仕入税額控除の適用を認めた事例

裁決事例集 第82集

ポイント

 消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第1項は、国内において行う課税仕入れについては、課税標準額に対する消費税額から課税仕入れに係る消費税額を控除する旨規定しているところ、同条第7項において、第1項の規定は、事業者が課税仕入れの税額に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れに係る課税仕入れの税額については、適用しない旨規定している。そして、消費税法第30条第8項第1号においては課税仕入れに係る帳簿の記載事項を、また、同条第9項第1号及び第2号においては請求書等の記載事項をそれぞれ規定しているところである。
 この事例は、請求人が職人に支払った対価が課税仕入れに係る支払対価に該当し、課税仕入れに係る消費税額の控除が認められるか否か等が争われたものであり、請求人の出面帳が上記消費税法第30条第8項第1号の法定記載事項を具備したものか否か、また、当該出面帳に基づく課税仕入れに係る消費税額の控除の範囲を判断したものである。

要旨

 原処分庁は、本件出面帳について、その大半につき、消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第8項第1号に規定する法定記載事項のうち課税仕入れに係る支払対価の額の記載がないことから、法定記載事項が記載された法定帳簿の保存を定めた同条第7項の趣旨に照らして、これを法定帳簿と認める余地はない等と主張する。
 確かに、法定帳簿については、課税仕入れに係る①相手方氏名等、②課税仕入れの年月日、③その役務等の内容及び④支払対価の額の法定記載事項の各記載が必要であり、これらの要件を欠く帳簿は法定帳簿として認めることはできないものの、本件出面帳の記載内容等を法定帳簿の保存を法が定めた趣旨に照らせば、本件出面帳のうち、法定記載事項のすべてを満たしていると認められる部分のみを法定帳簿と認めることが法定帳簿の保存を定めた法の趣旨に反するとはいえない。したがって、当該原処分庁の主張を採用することができない。

参照条文等

消費税法第30条第1項第7項第8項第9項

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平成23年3月28日裁決

請求人が舗装路面等(構築物)を設置し月ぎめ駐車場としていた土地を賃貸し、賃借人がこれを改修して無人時間貸駐車場にしたとしても、駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合に当たるとした事例

裁決事例集 第82集

ポイント

 消費税法第6条《非課税》第1項及び同法別表第1第1号は、土地の譲渡及び貸付は非課税である旨規定しているが、同号かっこ書において「一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合を除く」とし、これを受けた消費税法施行令第8条《土地の貸付けから除外される場合》は、「土地の貸付けに係る期間が1月に満たない場合及び駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合とする」と規定しているため、この場合には非課税から除外されることとなる。
 この事例は、請求人が月ぎめ駐車場としていた土地を賃貸し、賃借人がこれを改修して無人時間貸駐車場(コインパーキング)とした場合に、この「駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合」に該当するか否かにつき判断したものである。

要旨

 請求人は、たまたまアスファルトを敷設した土地をL社等に一時使用駐車場用地(土地)として貸し付けたものであり、L社等が、当該土地を無人時間貸駐車場(コインパーキング)として使用するに当たり、当該土地を改修して使用しており、貸し付ける直前の当該土地の形状をそのまま使用したものでないことなどを理由に、当該土地の貸付けは、消費税法上の非課税の土地の貸付けに該当する旨主張する。
 しかしながら、消費税法施行令第8条《土地の貸付けから除外される場合》は、土地の貸付けが消費そのものではなく、単なる資本の振替ないし移転であると考えられることから、原則として非課税取引とするものの、「駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合」は、土地そのものの貸付けではなく、駐車場その他の施設の利用に消費としての性格が認められることから、課税取引としたものであると解されるところ、請求人は、L社等との一時使用駐車場用地賃貸借契約(本件各契約)の締結前も駐車場として利用していたアスファルト舗装等の減価償却資産(構築物)が存する土地につき、L社等との間において、当該土地に無人時間貸駐車場の運営上必要な施設が追加された上で、無人時間貸駐車場として利用されることを認識しながら、当該土地上の駐車場として利用可能なアスファルト舗装等の減価償却資産(構築物)が存するまま貸与する旨合意し、実際に貸与したものであるから、本件各契約に基づく賃貸借は、いずれも単なる「土地の貸付け」ではなく、駐車場としての機能を備えた施設の利用に伴って土地が使用される場合に該当するものと認めるのが相当である。

参照条文等

消費税法第6条第1項、別表第1第1号 消費税法施行令第8条

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平成23年3月25日裁決

出版業者が書店等から返品された雑誌等は棚卸資産であり、陳腐化の事実が生じ、かつ、損金経理によりその帳簿価額を減額した場合でない限り期末評価損は認められないとした事例

裁決事例集 第82集

要旨

 請求人(月刊誌等の出版業)は、棚卸資産のうち、書店等から返品された雑誌等については、古紙としての価値があるにすぎないから、評価損の計上が認められるべきである旨主張する。
 しかしながら、棚卸資産について評価損が認められるのは、陳腐化等の事実が生じ、かつ、損金経理によりその帳簿価額を減額した場合であるところ、請求人の棚卸資産については評価損の計上が認められる状態にあったと認めるに足る証拠はなく、損金経理により棚卸資産の帳簿価額を減額した事実も認められないから、請求人は、当該雑誌等について、その評価損を損金の額に算入することはできない。
 一方、原処分庁は、平成20年12月期の請求人の棚卸資産の期首計上額が過少であると認めるに足る証拠の提出がされなかったことを理由に、売上原価が過少となっているとの請求人の主張は認められない旨主張する。
 しかしながら、請求人から提出された証拠資料によれば、棚卸資産の期首計上額が過少であると認められ、これにより過少となった売上原価の額を損金に算入して請求人の所得金額を再計算すると、更正処分の金額を下回ることから、更正処分はその一部を取り消すべきである。

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平成23年3月25日裁決

請求人は、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した一部の経費について、不動産賃貸業の遂行上直接必要であった部分を明らかにしていないことから、当該経費を必要経費に算入することはできないとした事例

裁決事例集 第82集

ポイント

この事例は、請求人が、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべきと主張する経費について、必要経費についての立証責任は、原則として原処分庁にあるとした上で、原処分庁が具体的な証拠に基づき一定額の経費の存在を明らかにし、これが収入との間に合理的対応関係を有すると認められる場合には、請求人は、経費の具体的内容を明らかにし、ある程度これを合理的に裏付ける程度の立証をしなければならない旨を明示したものである。

要旨

必要経費についての立証責任は、原則として原処分庁にあると解すべきであるが、一般に必要経費は請求人にとって有利な事柄であり、請求人の支配領域内のこととして証拠資料を整えておくことが容易であるから、原処分庁が具体的な証拠に基づき一定額の経費の存在を明らかにし、これが収入との間に合理的対応関係を有すると認められる場合は、これを超える額の必要経費は存在しないものと事実上推定され、請求人は、経費の具体的内容を明らかにし、ある程度これを合理的に裏付ける程度の立証をしなければ、上記推定を覆すことはできないと解されるところ、請求人が、飲食代及び交通費が必要経費に当たることについて、経費の具体的内容を明らかにし、ある程度、これを合理的に裏付ける程度の立証をしたと認めることはできないから、必要経費に算入することはできない。

参照条文等

所得税法第26条第1項第37条第1項第45条第1項第1号第57条第1項第155条第2項

参考判決・裁決

東京地裁平成5年10月4日判決(税資199号1頁)

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平成23年3月23日裁決

滞納者が受け取るべき信託受益権の譲渡代金の残余金等のうち、滞納者の債務を弁済した後に生じた余剰金は、実質的に滞納者から請求人に対する無償譲渡と認められるとした事例

裁決事例集 第82集

ポイント

 この事例は、滞納者と滞納者が主宰する法人が共有していた財産の譲渡代金が当該法人の預金口座に振り込まれた後、その一部が滞納者名義の預金口座、請求人名義の預金口座、請求人の妻名義の預金口座を経由して請求人の定期預金等の財産となったところ、滞納者は上記譲渡代金から自己及び上記法人の債務を弁済して余剰が出た場合には、請求人に贈与する意思を有し、当該余剰の交付や返還を求めていないから、実質的に滞納者の財産が無償譲渡されたと認定したものであり、また、その額が原処分の限度を超えるから、原処分は適法であるとしたものである。

要旨

 請求人は、本件滞納者と本件滞納者が代表取締役を務めていた本件法人の双方から、両者が共有していた不動産の信託受益権の譲渡代金の残余金等(本件残余金等)の管理処分を任され、本件残余金等が振り込まれた本件法人の預金口座をはじめ、本件滞納者、請求人及び請求人の妻名義の預金口座のすべてを請求人の管理下に置いて入出金を行っていた。また、本件滞納者は、上記譲渡代金によって、自己及び本件法人の債務を弁済して余剰が出た場合には、請求人に贈与する意思を有し、請求人に対し、当該余剰の交付や返還を求めていないところ、本件残余金等のうち本件滞納者が取得すべき額の金員が、本件法人の取得すべき額の金員とともに本件法人の預金口座に振り込まれ、その後、その一部が、請求人の管理下にあった本件滞納者名義の預金口座、請求人名義の預金口座及び請求人の妻名義の口座に振り替えられ、さらに、請求人名義の定期預金等として請求人の管理下に移転したと認められる。
 このような一連の事実経過をみると、実質的に、本件滞納者の財産が請求人に対して無償譲渡されたと認められ、その額は原処分の限度を超えるから、原処分は適法である。

参照条文等

国税徴収法第39条

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平成23年3月23日裁決

請求人が取得した建物及び水道施設利用権に係る個別対応方式における課税仕入れの用途区分について、それぞれ取得の日の状況で判断した事例

裁決事例集 第82集

ポイント

 個別対応方式により仕入れに係る消費税額を計算する場合において、課税仕入れを課税資産の譲渡等にのみ要するもの、その他の資産の譲渡等のみに要するもの及び課税資産とその他の資産の譲渡等に共通して要するものに区分する場合の当該区分(用途区分)は、課税仕入れを行った日の状況により行うこととなる。
 この事例は、マンションの取得に際し、建物部分と水道施設利用権をそれぞれ別の時期に取得していたことから、それぞれ取得の日の状況で用途区分を判断したものである。

要旨

 請求人は、本件建物の取得目的がF社に対して本件建物及びこれに付属する機械式駐車場(本件マンション)に係る信託受益権を売買することにあり、また、本件建物の取得に係る課税仕入れのあった日において、F社との間の信託受益権売買契約の法的な解除やテナントとの間の賃貸借契約の締結がされていなかったとして、本件建物及び本件水道施設利用権の取得に係る課税仕入れが課税資産の譲渡等にのみ要するもの(課税用)に該当する旨主張し、一方、原処分庁は、本件マンションの取得目的は販売及び住宅として貸し付けることであったことから本件建物及び本件水道施設利用権の取得に係る課税仕入れは課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの(共通用)に該当する旨主張する。
 請求人は、本件建物の取得に係る課税仕入れのあった日において、F社による信託受益権の売買残代金の支払が事実上不可能で、F社との間の信託受益権売買契約を解消することとなり、同契約において予定されていた日に信託受益権の譲渡が行われないとの認識を有していたといえ、さらに、請求人は、F社が破産手続開始の決定を受ける以前に、本件マンションの新たな売却先を探すため、L社に本件マンションの再査定を依頼したことが認められ、本件マンションの売却先及び売却時期が未定の状況下で、請求人自らがH社との間で本件マンションの管理委託契約を締結し、入居者の募集を開始したという賃料収入を得ることを前提とした行為をしていることを考え併せると、本件建物の取得に係る課税仕入れのあった日において、請求人は、本件マンションの新たな売却先が見つかるまでの間、本件マンションを住宅として貸し付け、これによる賃料収入を得ることを予定していたと認めることができる。そうすると、本件建物の取得に係る課税仕入れを本件信託受益権の売買にのみ要する課税仕入れとして、課税用として区分したことには合理性がないというべきであり、本件建物の取得に係る課税仕入れは、共通用に該当すると認めるのが相当である。
 一方、本件水道施設利用権の取得に係る課税仕入れのあった日においては、請求人に帰属すべき賃料収入が生ずる可能性は、具体的なものではなかったというべきであり、同日における状況からすれば、請求人に賃料収入が帰属することが予定されていたということはできず、本件水道施設利用権の取得に係る課税仕入れを信託受益権の売買にのみ要する課税仕入れとして、課税用として区分したことが不合理な区分とまではいうことはできないから、本件水道施設利用権の取得に係る課税仕入れは、課税用と認めるのが相当である。

参照条文等

消費税法第30条第2項

参考判決・裁決

平成18年2月28日裁決(裁決事例集No.71・719頁)

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平成23年3月23日裁決

請求人の預金口座に入金された滞納者が受領すべき譲渡代金の一部については、当該預金口座の入出金状況等から当該金員が請求人の処分権限内に移転したとはいえず、滞納者から請求人への財産の無償譲渡があったということはできないとした事例

裁決事例集 第82集

要旨

 原処分庁は、本件滞納者が受領すべき譲渡代金の一部が、本件滞納者が代表取締役を務めていた法人の普通預金口座から請求人の普通預金口座(本件請求人口座)に振り替えられたことにより、当該振替金(本件振替金)は本件滞納者から請求人の処分権限内に移り、本件振替金が本件滞納者に還流した事実も本件滞納者に対する対価等の支払の事実も認められないから、本件振替金は、本件滞納者から請求人に無償で譲渡された旨主張する。
 しかしながら、本件請求人口座については、本件振替金の入金当時、本件滞納者の子であり請求人の配偶者であるEにおいて自由に出金できる状態にあり、入出金のすべてをEが行っているだけでなく、その口座の動向について、請求人が何ら把握していないのであって、引き出された金員が請求人個人の用途に使用されたことを認めるに足りる証拠がないだけでなく、かえって出金のあった日にE名義の預金口座に相応額の入金があるという同人のために費消されたことをうかがわせる事実が認められるのであり、Eが請求人の配偶者であることを併せて考えると、本件請求人口座が請求人に帰属すると認定することはできず、同口座はEの管理下にあったいわゆる借名口座であるとみるのが相当である。そうすると、本件請求人口座に本件振替金が入金されたことをもって、請求人の処分権限内に本件振替金が移転したとはいえないから、本件滞納者から請求人への財産の無償譲渡があったということはできず、ほかにこれを認めるに足りる証拠もない。

参照条文等

国税徴収法第39条

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平成23年3月16日裁決

出資額限度法人の出資持分の価額は、財産評価基本通達による評価額によるべきであるとした事例

裁決事例集 第82集

ポイント

 この事例は、最高裁判所平成22年7月16日第二小法廷判決(平成20年(行ヒ)第241号)の考え方を基に判断を行った最初の裁決事例である。

要旨

 請求人らは、出資額限度法人(定款において退社・解散時に払込出資額を限度として払戻し・分配等を行うことを決めた社団医療法人)であるT会(本件法人)に対する出資持分(本件出資持分)の価額について、本件法人の定款(本件定款)には、払込出資額を超えて払戻しをしないこと、本件法人が解散した場合の残余財産は払込出資額を限度とすることが定められており、請求人らはいずれの場合においても、払込出資額を超えて払戻し等を受けることはできないから、相続税法第22条《評価の原則》の時価、すなわち、本件出資持分の客観的交換価値は、本件払込出資額を上回るものではない旨主張する。
 しかしながら、本件法人は出資額限度法人であるが、出資持分の定めのある社団医療法人であり、また、本件定款には払戻し等に係る定めの変更を禁止する条項が存するが、法令において、定款の再度変更を禁止する定めがない中では、このような条項があるからといって、法的に当該変更が不可能になるものではない。そうすると、本件出資持分の権利の内容の範囲については、本件相続時における定款の定めに基づく出資の権利内容がその後変動しないと客観的に認めるだけの事情はないといわざるを得ず、ほかに財産評価基本通達194-2《医療法人の出資の評価》の定める方法で本件定款の下における本件法人の出資を適切に評価することができない特別の事情も認められないから、本件出資持分について、同通達の定める方法により評価した原処分は相当である。

参照条文等

相続税法第22条 財産評価基本通達194-2

参考判決・裁決

最高裁平成22年7月16日第二小法廷判決(判タ1335号57頁) 平成18年11月8日裁決(裁決事例集No.72・589頁)

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平成23年3月8日裁決

外注費として支出した工事代金等につき対価性がなく寄附金に該当するとした原処分の一部を取り消した事例

裁決事例集 第82集

ポイント

 一般に、会計帳簿は業務上の金員の動きがそのまま記載されるものであるから、特段の事情のない限り、会計帳簿に記載されたとおりの事実を認めることができるところ、原処分庁が会計帳簿に記載された事実(費用)について対価性がないと認定する場合には、原処分庁がその立証責任を負うことになる。
 この事例では、請求人が会計帳簿に記載された事実と異なる事実を主張したことから、請求人において、かかる事実の存在や異なる事実を会計帳簿に記載することとなった事情などの特段の事情を立証する必要があるとしたものである。

要旨

《裁決の要旨》
 請求人は、各事業年度に追加の外注費として支出し損金の額に算入した金員(本件支出金)は、①過去に施工された工事に係る追加の支払を現場名を付け替えて支出したもの、及び②実際の工事対価の支払として支出したものであり、対価性があることから、法人税法第37条《寄附金の損金不算入》第7項に規定する寄附金には当たらない旨主張し、一方、原処分庁は、本件支出金にはいずれも対価性がなく寄附金に当たる旨主張する。
 上記①に係る本件支出金については、請求人の会計帳簿等に記載された現場と関係がない上、請求人が主張する追加支払に合理的理由や支払うべき特段の事情があったとはいえず、対価性のない支出であると認められることから寄附金に該当する。一方、②に係る本件支出金については、実際に工事が行われており、当該工事に係る対価であると認められることから寄附金に該当しない。

参照条文等

法人税法第37条第7項

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平成23年3月8日裁決

稲作の休作期間中に売却を目的として整地工事をした土地の譲渡は、事業の用に供していた資産の譲渡として、「資産の譲渡等」に該当するものとした事例

裁決事例集 第82集

ポイント

 資産の譲渡等には、事業活動の一環として又はこれに関連して行われる資産の譲渡を含み、事業の用に供している土地等の譲渡は、事業に付随して対価を得て行われる資産の譲渡に該当するものと解される。
 この事例は、秋の収穫後の冬季の休作期間に売却を目的として整地工事をした稲作農地であった土地につき、売却時点において、事業の用に供する資産に当たるか否かが争われたものである。

要旨

 請求人は、稲作農地であった本件土地は、宅地に整地した時点で稲作ができなくなり、その時点で家庭用資産になったのであるから、本件土地の譲渡は「資産の譲渡等」に当たらない旨主張する。
 しかしながら、本件土地は稲作農地として請求人の事業の用に供されていた土地であって、例年どおり冬季の休作状態にあった時期に、本件土地の売却の話があり、それを受けて宅地に整地するための工事が行われたことからすれば、当該工事は、請求人の事業用資産である本件土地の売却を目的として行われたものにすぎず、事業用資産としての性格を失わせる事情にはならない。また、他に本件土地の事業用資産としての性格を失わせる事情は認められないことを併せて考えると、本件土地は、売却時点において、請求人が営む事業の用に供していた資産であったと認めるのが相当であり、本件土地の譲渡は、請求人の事業活動に関連して行われる資産の譲渡であって、「資産の譲渡等」に該当するものと認められる。

参照条文等

消費税法第2条第1項第8号 消費税法施行令第2条第3項

参考判決・裁決

富山地裁平成15年5月21日判決(税資253号9349)

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平成23年3月7日裁決

被相続人の遺言内容は、遺言書作成時に各人名義であった預貯金等を遺贈する趣旨であるから、同預貯金等を相続開始時までに換価した現金は各名義人に遺贈されたものであると認定した事例

裁決事例集 第82集

ポイント

 この事例は、被相続人の遺言書に「不動産以外の財産は請求人及び二男に相続させる。ただし、預貯金等で私の名義になっていないものはそれぞれその名義人の所有である」旨記載されていたことから、このただし書の解釈が問題となったものである。

要旨

 原処分庁は、本件遺言書記載の各相続人名義の預貯金等(本件預貯金等)が、本件相続開始日現在では請求人によって換金されて現金として保管されていたという事実の下、本件遺言書は、不動産以外の財産については、請求人及び二男に相続させることを原則とする趣旨であると解される旨主張する。
 しかしながら、本件遺言書第4項ただし書には、預貯金等で本件被相続人名義になっていないものは、各名義人の所有である旨記載されているところ、①当該記載及び追加遺言書に「三女がこのお金をおろす時は」と記載されていることからすると、本件被相続人は、本件預貯金等については、各名義人以外の者がこれを換金することは予定しておらず、本件相続開始日まで本件預貯金等がそのまま維持されていることを想定していたものと認められること、②本件預貯金等は、本件被相続人が亡夫から相続したものであり、本件被相続人の意思で各人名義の預貯金等としたものであること、③本件預貯金等の換金は請求人が行ったことであり、本件被相続人は当該換金の事実を知らなかったことを併せかんがみれば、本件遺言書第4項ただし書は、同書作成時に本件被相続人が各人名義で預貯金等としていたものは、換金のいかんにかかわらず、これを各名義人に遺贈する趣旨であると認めるのが相当である。

参照条文等

相続税法第1条の3第2条

参考判決・裁決

最高裁昭和58年3月18日第二小法廷判決(判時1075号115頁)

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平成23年3月1日裁決

個別対応方式における用途区分の方法に誤りがあったとしてされた更正の請求について、確定申告において採用した用途区分の方法に合理性がある場合には、国税通則法第23条第1項第1号の適用はないとした事例

裁決事例集 第82集

要旨

 請求人は、消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第2項第1号の規定(個別対応方式)の適用に当たり、医薬品の課税仕入れに係る消費税額の用途区分の方法について、課税資産の譲渡等と課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等に共通して要するものに区分すべきところ、課税仕入れの都度、課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等にのみ要するものに区分した上で、課税期間の末日の決算修正により、当該課税期間の医薬品に係る課税売上げの額に基づいて課税資産の譲渡等にのみ要するものと課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等にのみ要するものとに区分したために、納付すべき消費税及び地方消費税の額を過大に算定する誤りがあったのであり、国税通則法第23条《更正の請求》第1項第1号の規定の適用がある旨主張する。
 しかしながら、個別対応方式が適用される場合に、用途区分の方法に誤りがあったとして同号の規定が適用される場合とは、申告当時に納税義務者が採用した用途区分の方法に合理性がなく、合理性のない用途区分の方法を採ることによって納付すべき消費税等の税額が過大となる場合をいい、他の合理的な用途区分の方法を採っていた場合と比較して単に納付すべき消費税等の税額が過大となる場合をいうものではないと解するのが相当であるところ、請求人が行っていた用途区分の方法は、医薬品の課税仕入れについて、その課税売上対応分を個別に把握可能な課税売上げに係る医薬品名及び数量又は金額を基準として、売上実績に基づいて区分する方法であり、合理性があると認められることから、国税に関する法律の解釈適用についての誤りがあった場合には該当せず、また、当審判所が請求人の納付すべき消費税等の税額を算出したところ、その計算過程に誤りがあった場合にも該当しない。したがって、国税通則法第23条第1項第1号の規定の適用はない。

参照条文等

国税通則法第23条第1項 消費税法第30条第2項

参考判決・裁決

最高裁昭和62年11月10日第三小法廷判決(昭和60年(行ツ)第81号) 平成22年5月17日裁決(裁決事例集No.79)

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平成23年2月23日裁決

所得を過少に申告するという確定的な意図について、請求人には外部からもうかがい得る特段の行動があったとは認められないから、隠ぺい又は仮装があるとはいえず重加算税を賦課することは相当でないとした事例

裁決事例集 第82集

要旨

 原処分庁は、請求人が本来行うべき仮受金勘定から売上勘定への振替処理を行っていなかったことについて、①税理士から仮受金勘定の増加原因の解明を求められながらこれを行わなかったこと、②現金出納帳に虚偽の記載をしたり、同税理士にあえて説明しなかったこと及び③同税理士に特定の帳簿を提出しなかったことなどからすると、この行為は隠ぺい若しくは仮装に当たる又は所得を過少に申告する確定的な意図を外部からうかがい得る特段の行動であるなどとして、請求人の経理処理が隠ぺい又は仮装に当たる旨主張する。
 しかしながら、③同税理士に特定の帳簿を提出しなかったとしても、そのことを容易に知り得るだけの資料を提出していたこと、②請求人が取引内容の具体的説明を同税理士にしなかったからといって、それが故意の隠ぺい又は仮装の行為であるなどとはいえないこと、①仮受金勘定の増加原因の解明について同税理士と請求人との間に認識の相違や意思疎通の欠如があったとしても、請求人が積極的な意思をもってあえて適正な経理処理を行うことなくこれを放置したとまで認めるに至らなかったこと等からすれば、請求人に故意の隠ぺい又は仮装の行為や過少申告の確定的意図を外部からうかがい得る特段の行動があったとまではいうことはできない。したがって、重加算税を賦課することは相当ではない。

参照条文等

国税通則法第68条第1項

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平成23年2月18日裁決

債権譲渡の債務者対抗要件が具備されていないから、無価値の債権の代物弁済により債務が消滅したとして国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分があったとはいえないとした事例

裁決事例集 第82集

ポイント

 この事例は、請求人が滞納法人に負っていた借入金債務の支払に代えて返済資力のない債務者に対する請求人の債権を代物弁済したことにより請求人が利益を受けたとして、原処分庁がした国税徴収法第39条の第二次納税義務の納付告知処分等の適否が争われたところ、代物弁済の目的とされた債権の一部は、債務者対抗要件を欠いており、いまだ滞納法人に帰属しているとみることができるから、その部分については無償譲渡等の処分があったとは認められないとしたものであり、過去にこのような事例について判断した裁判例や裁決例はなく、先例となるものである。

要旨

 請求人が有していた各貸金債権の代物弁済によって本件滞納法人の請求人に対する短期貸付金(本件短期貸付金)の消滅の効果が発生するためには、代わりの給付を現実に行うことが必要であるところ、当該各貸金債権の一部については、債権譲渡の第三者対抗要件が具備され、代わりの給付が現実にされたということができるとともに、主債務者及び保証人に資力がなく弁済を受けることが事実上不可能なものであるから、無価値物による代物弁済として国税徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》の無償譲渡等の処分があったといえる。
 しかしながら、他の貸金債権については、債務者対抗要件である債務者への通知を欠いており、代わりの給付が現実になされたとはいえず、本件短期貸付金のうち、当該貸金債権の代物弁済によって消滅したとされる部分は、いまだ消滅せず、本件滞納法人に帰属しているとみることができるから、国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分があったとは認められない。

参照条文等

国税徴収法第39条 民法第467条

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平成23年2月16日裁決

分筆及び合筆された土地については、課税台帳に登録された価格のない土地に該当し、登記機関が認定した価額が登録免許税法附則第7条に規定する政令で定める価額であるとした事例

裁決事例集 第82集

ポイント

 この事例は、課税台帳に登録された価格のない不動産の価額について登記官が認定した価額が妥当とはいえないものであったことから、審判所において価額の認定を行った上で、登記官の認定した価額は過大とはいえないとしたものである。

要旨

 請求人は、分筆登記により分筆された土地又は分筆登記により分筆された土地が合筆登記により合筆された14筆の土地(本件各土地)には、分筆前の台帳価格(本件分筆前台帳価格)があることから、所有権移転を目的とする本件各登記に係る登録免許税の課税標準の額は、本件分筆前台帳価格を基に算定した価額によるべきである旨主張する。
 しかしながら、不動産の価額は、登記申請の日がその年の4月1日から12月31日までの期間内であるものは、その年の1月1日現在において課税台帳に登録された不動産の価額を基礎として計算した金額に相当する価額とするとされているところ(登録免許税法附則7、登録免許税法施行令附則3前段)、本件各土地は、平成21年2月の分筆登記により分筆された土地又は同日の分筆登記により分筆された複数の土地が同年5月の合筆登記により合筆された土地であることから、本件各登記がされた平成21年6月においては、平成21年度の台帳価格がなかったと認められる。そうすると、台帳価格のない不動産の価額は、当該不動産の登記の申請の日において当該不動産に類似する不動産で台帳価格のあるものの価額を基礎として、登記機関が認定した価額とするとされていることから(登録免許税法施行令附則3後段)、本件各土地の価額は、それらの近傍類似の土地で平成21年度の台帳価格のあるものの当該台帳価格を基礎として登記機関が認定した価額となる。ところで、本件各土地のうち12筆の土地(本件12筆土地)の価額の認定に当たり、その近隣類似の土地の平成21年度の台帳価格を基礎とするところ、本件登記官がその基礎とした比準宅地は、三角形状の不整形地であり、ほぼ長方形状の本件12筆土地と形状の類似性を著しく欠くなど、適切な比準宅地とはいえない。そこで、本件12筆土地の価格形成に影響を与えるような特性を有する地域の中から、本件12筆土地と近傍の分譲住宅地に所在する宅地(本件認定宅地)を選定し、本件認定宅地の平成21年度台帳価格を基に、地価下落率、画地条件及び場所的条件の格差を考慮して本件12筆土地の価額を算定し、認定したところ、本件12筆土地の本件各登記に係る登録免許税の課税標準の額は、本件登記官の認定した課税標準の額を上回ることから、本件登記官の認定した課税標準の額は過大とはいえない。

参照条文等

国税通則法第15条第36条 登録免許税法第9条第10条第28条第29条第31条、附則第7条 登録免許税法施行令附則第3項

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平成23年2月14日裁決

原処分は適法な調査手続に基づいて行われたものであり、違法は認められないとした事例

裁決事例集 第82集

ポイント

 この事例は、法人税の更正処分及び源泉所得税の納税告知処分が調査手続を欠く違法なものか否かが争われたところ、適法な調査手続に基づいて行われた処分であり違法はないと判断したものである。
 なお、本件処分にはホステス報酬に係る納税告知処分が含まれており、ホステス報酬に係る源泉所得税額の計算については、最高裁平成22年3月2日第三小法廷判決が、所得税法施行令第322条《支払金額から控除する金額》にいう「当該支払金額の計算期間の日数」は当該期間に含まれるすべての日数を指すものと判断し、ホステスの実際の稼働日数を指すという課税庁の主張を退けたことから、この事例でも、これに従ってホステス報酬に係る源泉徴収税額を再計算し、納税告知処分の一部を取り消している。

要旨

 請求人は、原処分庁が本件査察調査をもって請求人に対し調査をしたとし、改めて調査を行わなかったのであるから、調査をすることなく行った本件各告知処分等及び本件各再更正処分は、適正な手続を欠く違法なものである旨、また、一度減額したものをいかなる理由があろうとも再度増額の処分をすることは権利の濫用である旨主張する。
 しかしながら、課税庁が内部において既に収集した資料を基礎として正当な課税標準を求めることも「調査」の範囲に含まれるものと解されるところ、本件各告知処分等及び本件各更正処分は、①請求人の源泉所得税について、当初告知処分に係る請求人の源泉徴収簿等の関係資料及び源泉所得税の納付事績等の既に収集した資料等を改めて照合及び検討した上で、また、②請求人の法人税について、当初減額更正処分の関係資料、法人税の確定申告書及び同付属書類等の既に収集した資料等を改めて照合及び検討した上で行われたものであるから調査手続を欠く違法な処分とは認められない。また、課税庁は、自ら行った処分に瑕疵を発見したときは、その瑕疵が実体的なものであれ、手続的なものであれ、適正な課税の確保実現を図るため、これを取り消して新たな処分をなし得るとものと解すべきであるから、原処分庁が国税通則法第36条《納税の告知》第1項第2号の規定に基づき請求人に対して本件各告知処分等を行ったことに違法は認められない。

参照条文等

国税通則法第24条第26条第36条

参考判決・裁決

新潟地裁平成11年7月15日判決(税資256号12頁) 最高裁平成22年3月2日第三小法廷判決(民集64巻2号420頁)

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平成23年2月8日裁決

従業員及び常務取締役が行った売上除外に係る法人税の更正処分等について、横領損失と損害賠償請求権に係る収益は同一事業年度に計上すべきであるとした事例

裁決事例集 第82集

ポイント

 この事例は、いわゆる横領損失に係る損害賠償請求権に係る収益計上時期、重加算税の適用に係る「隠ぺい・仮装」の行為者及び更正の期間制限における「偽りその他不正の行為」該当性が主要な争点となったものであり、この事例では、経営に参画する常務取締役も横領行為者と認められること等から、これらの争点については原処分庁の主張を認めている。
 なお、更正の期間制限により消費税の更正処分がされなかったことにより、清算されずに残った仮受消費税等の法人税における収益計上時期も争点となったが、この事例では、消費税を納付しなくてよくなったこと(債務免除益)が確定した事業年度に益金の額に算入すべきとの判断から、原処分庁が仮受消費税等の計上事業年度にこれを益金の額(雑収入)に算入して行った原処分を取り消している。

要旨

 請求人は、会計帳簿の記載の基礎となる売上伝票の一部を抜き取るなどして行った売上除外(本件不正行為)は従業員R及びJ常務の個人的な不正行為であるから、①これに係る損害賠償請求権に係る収益は、権利確定主義により請求人が本件不正行為を把握した事業年度に計上すべきである旨、②本件不正行為を請求人の行為と同視して重加算税を課することはできない旨、③請求人に税額を免れる意図はないから偽りその他不正の行為はない旨主張する。
 しかしながら、①不法行為による損失の発生と損害賠償請求権の発生、確定は、原則として、これを同時に損金と益金とに計上すべきであるところ、請求人の経営に参画する常務取締役が本件不正行為の事実を把握していたのであり、通常人を基準とすると、請求人において、本件損害賠償請求権の存在、内容等を把握し得ず、権利行使を期待できないといえるような客観的状況にあったということはできず、権利の行使を期待することができないような場合にも当たらないから、本件損害賠償請求権の額は、本件不正行為による損失の発生した日の属する各事業年度の益金の額に算入され、②J常務の行為は請求人の行為と同視できるから、請求人に重加算税を課することができ、③本件不正行為は「偽りその他不正の行為」に当たるというべきである。

参照条文等

法人税法第22条 国税通則法第68条第1項第70条第5項

参考判決・裁決

東京高裁平成21年2月18日判決(訟月56巻5号1644頁) 東京高裁平成18年1月18日判決(税資256号10265)

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平成23年2月3日裁決

利息制限法所定の制限利息を超える額の利息を支払ったことによる過払金返還請求権は、その利息を支払った時に発生し、既に発生した債権は弁済期が未到来であっても差押えの対象となること及び一身専属権であると認めることはできないとした事例

裁決事例集 第82集

ポイント

 この事例は、利息制限法所定の制限利息の額を超える利息を支払ったことによる過払金返還請求権の発生時期や差押財産該当性について判断したものであり、先例となるものである。

要旨

 請求人は、本件の金銭消費貸借取引は、過払金充当合意のある基本契約に基づく一体の継続的取引であり、契約終了時までは過払金返還請求権は不確定な債権であって、債権の帰属も確定しないから、差押えの対象とすることができない旨主張するが、過払金返還請求権の法的性質が不当利得に基づく返還請求権である以上、過払金返還請求権が発生するのは、本件滞納者を借主、請求人を貸主とする金銭消費貸借契約に基づいて本件滞納者が利息制限法所定の制限利息を超える額の利息又は損害金を支払った時点、すなわち、各過払金発生時と解するのが相当であり、その時に本件滞納者が過払金返還請求権を取得すると解するのが相当であって、既に発生した債権は、弁済期が未到来であっても差押えの対象になるから、差押手続に違法はなく、したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
 また、請求人は、過払金返還請求権は、取引終了時になって初めて行使することが可能であるところ、いつ取引を終了させるかは専ら借主たる本件滞納者の意思によるものであり、一身専属権と認められるから、差押禁止財産となる旨主張するが、過払金返還請求権は、身分法上の非財産的権利ではなく、通常の金銭債権であり、これを差し押さえることを禁止する規定はなく、同請求権の性質からこの差押えを禁止すべきとも解されないから、過払金返還請求権を一身専属権であると認めることはできず、したがって、この点に関しても請求人の主張には理由がない。

参照条文等

国税徴収法第62条

参考判決・裁決

最高裁平成18年1月13日第二小法廷判決(民集60巻1号1頁)

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平成23年2月2日裁決

保証債務の特例を適用するに当たり、土地の譲渡代金が主債務者を経由して債務の返済に充てられている場合など、形式的には保証債務の履行といえない場合は、実質的にみて保証債務の履行であることが客観的に明らかであることが必要であるとした事例

裁決事例集 第82集

ポイント

 所得税法第64条《資産の譲渡代金が回収不能となつた場合等の所得計算の特例》第2項に規定する保証債務の特例を適用するためには、原則として、その譲渡代金をもって主たる債務者の債務の返済に充てられることが必要であるところ、この事例は、請求人が譲渡した土地の譲渡代金が主債務者の口座に入金された後、同口座から金融機関に返済されるなど、形式的には保証債務の履行とはいえない場合において、実質的にみて保証債務の履行といえるか否かを、土地譲渡の経緯、譲渡代金の流れ、金融機関の処理状況等から判断したものである。

要旨

 請求人は、物上保証していた土地の譲渡代金をいったん主債務者の口座に入金したが、その後直ちに当該口座から同額が金融機関に返済されているから、当該返済は実質的に請求人が保証債務を履行したものである旨主張する。
 しかしながら、主債務者の口座へ入金された資金は、請求人からの借入金と経理処理された上、主債務者から金融機関へ返済していることから、当該返済は形式的には請求人による保証債務の履行ではなく、これが実質的にみて保証債務の履行であるといえるためには、保証債務の履行であることが客観的に明らかであることが必要であると解されるところ、土地譲渡の経緯、譲渡代金の流れ、金融機関の処理状況等からみて、請求人が保証債務を履行したことが客観的に明らかであったとは認められず、また、主債務者の資力、債務の返済状況等からすると、返済時点において保証債務を履行する必要性が客観的に明らかであったとも認めることができない。
 したがって、当該返済は、形式的・実質的ともに請求人による保証債務の履行であるとは認められない。

参照条文等

所得税法第64条第152条 《参考判例・裁決》 平成16年5月17日裁決(裁決事例集No.67・383頁)

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平成23年2月2日裁決

転貸の目的となった建物の賃貸借契約の終了に伴い生じた債務免除益について3年以上の期間の不動産所得の補償であるか否かを判断するに当たり、その転貸に係る賃貸人の地位を承継する場合は、その賃貸借契約終了前後の1年当たりの賃貸料の額と新たに負担することとなる修繕費の額を基礎として判断するのが相当とした事例

裁決事例集 第82集

ポイント

 臨時所得となる3年以上の期間の補償に該当するか否かについて、補償の期間が契約等で示されていない場合などは、補償に至った各種事情等を総合的にみて、補償に係る金額の算定の基礎とされるべき内容及びその金額に基づき判定するのが相当と解される。
 この事例は、建物の賃貸借契約の終了後も一定の賃料収入が保証された上で生じた債務免除益が3年以上の期間の補償に該当するか否かにつき、判断の基礎となる1年当たりの減収額を、当該賃貸借契約終了前の1年当たりの賃貸料の額(収入していた金額の全部)とすべきか、同契約終了前後の1年当たりの賃貸料の額の差額に、新たに負担することとなる修繕費の額を加味した額(収入していた金額の一部)とすべきかが争われたものである。

要旨

 原処分庁は、債務免除により補償されたのは請求人らがF支社から受領する年間賃貸料であり、そうすると債務免除益は3年以上の期間の不動産所得の補償には当たらない旨主張する。
 しかしながら、補償に係る契約等において、補償に係る金額が3年以上の期間の補償に該当するか否かの判定について、賃借人が賃借物件を転貸しており、賃貸人との賃貸借契約期間の満了後は、賃貸人が、転借人との間で新たに賃貸借契約を結び、転貸人の地位を承継することに伴い補償されたような場合で、その内容が不動産貸付業務の形態の転換に伴い減少することとなる収入の額又は新たに負担することとなる費用の額を考慮した補償と認められる場合であれば、補償に係る金額が、減少することとなる収入の額又は新たに負担することとなる費用の額の3年以上の期間に相当する金額であるか否かで、臨時所得の要件である3年以上の期間の補償に該当するのかを判定するのが相当である。
 したがって、賃貸借契約の終了に伴い、賃貸住宅に係る賃貸人たる地位を承継し、賃貸借契約終了前の賃借人(転貸人)に代わって賃貸住宅の入居者から賃貸料収入を得ることができた請求人らに係る1年当たりの減収額は、請求人らの所有する住宅の賃借料の額と転貸人が入居者から受領していた賃貸料の額から転貸人が負担していた修繕費の額を控除した額との差額とするのが相当であり、そうすると、F支社が請求人らに対して行った債務免除に係る補償の期間は3年以上の期間の不動産所得の補償に該当する。

参照条文等

所得税法第2条第1項第24号第90条 所得税法施行令第8条第3号

参考判決・裁決

昭和59年1月24日裁決(裁決事例集No.27・63頁)平成19年3月12日裁決(裁決事例集No.73・265頁)平成20年4月15日裁決(裁決事例集No.75・260頁)

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平成23年2月1日裁決

請求人が在職中に勤務先の親会社から同社のリストリクテッド・シェア(譲渡等制限付株式)を付与されたことによる所得は、退職所得ではなく、給与所得に当たるとした事例

裁決事例集 第82集

ポイント

 請求人に付与されたリストリクテッド・シェア(譲渡等制限付株式)とは、その付与日に議決権及び配当受領権を取得するものの、株券の受渡しは行われず、売却、名義書換、譲渡及び担保への差入れができないという譲渡等制限が付されたものであり、一定期間の勤務又は一定期間の勤務後退職し、かつ、勤務先グループの業務と競合する業務等を行わないという条件を満たした場合にその譲渡等制限が解除されるが、条件に反した場合には没収されるというものである。
 この事例は、在職中に上記リストリクテッド・シェアを付与された請求人が、その後退職し、譲渡等制限が解除されたという事実関係の下で、このリストリクテッド・シェアに係る所得の区分及び収入計上時期につき判断したものである。

要旨

 請求人は、勤務先の親会社から在職中に当該親会社のリストリクテッド・シェア(譲渡等制限付株式)を付与されたことによる本件所得について、①特別な退職に際してのみ株式を支給するものであるから、本来退職しなかったとしたならば支払われなかったものであること、②勤務年数及び年齢を支給基準としており、永年の勤務に対する報奨としての意図が明白であること、及び③退職後は同業他社で働かないという条件を課すことで、実質的に引退することを強いており、請求人は現実に退職したことにより株式を支給されたのであるから、生活保障的な最後の所得でもあること等を理由として、退職後の年分の退職所得に該当する旨主張する。
 しかしながら、請求人が付与されたリストリクテッド・シェアは、①退職の事実の有無にかかわらず請求人が在職期間中に付与されたものであり、請求人が、仮に退職しなかったとしても条件を満たせば、没収されることなく本件所得を得ることができたことからすると、本件所得は、退職という事実によって初めて給付されたものとは認められず、また、②親会社が、請求人の前年の業績に応じて賞与の一部として付与したものであり、請求人の継続的な勤務に対する報償ないしその間の労務の対価の一部の後払の性質を有するものとみることもできないから、本件所得は退職所得には該当せず、給与所得に該当する。
 なお、本件所得の収入計上時期については、親会社がリストリクテッド・シェアを没収しないことを決定してその権利を確定し、譲渡等制限を解除した日において、請求人の株主としてのすべての権利が確定するから、その日の属する年分となる。

参照条文等

所得税法第28条第1項第30条第1項第36条第1項第2項

参考判決・裁決

最高裁昭和56年4月24日第二小法廷判決(民集35巻3号672頁)、最高裁昭和58年9月9日第二小法廷判決(民集37巻7号962頁)、最高裁昭和53年2月24日第二小法廷判決(民集32巻1号43頁)

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平成23年1月25日裁決

会社員である請求人が、勤務の傍ら個人的に行った取引に係る事業所得の申告を怠ったことに関して、当初から当該事業所得を申告しないとの意図を外部からもうかがい得る特段の行動は認められないとした事例

裁決事例集 第82集

要旨

 会社員である請求人が、勤務の傍ら個人的に行った取引に係る事業所得があるとして、所得税の期限後申告書を提出したところ、原処分庁は、請求人が当初から当該事業所得を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づき法定申告期限までに申告しなかったものであり、国税通則法第68条《重加算税》第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たす旨主張する。
 しかしながら、原処分庁が上記「特段の行動」に当たるとした、①請求人は、勤務先等に当該取引が露見しないようにするため、取引先の従業員に対して、リベートと称する金員を支払ったこと、②請求人は、勤務する営業所の売上げを記載した「請求書明細」を週1回本社に報告する際に、当該取引を記載せずに報告したことについては、請求人が当該取引を秘匿することを意図して行ったものとはいえず、ほかに請求人が当該取引及びこれに係る事業所得を隠ぺい又は仮装したと評価すべき事実は認められないことから、原処分については、無申告加算税相当額を超える部分の金額を取り消すのが相当である。

参照条文等

国税通則法第68条第2項 《参考判例・裁決》 最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)

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平成23年1月25日裁決

役員給与の減額理由が業績悪化改定事由に該当しないから減額後の定期給与の額を超える部分は定期同額給与とはいえず損金の額に算入することができないとした事例

裁決事例集 第82集

ポイント

 役員給与のうち、定期同額給与、事前確定届出給与及び利益連動給与のいずれにも該当しないものの額は、損金の額に算入されないこととされている。このうち、定期同額給与とは、各支給時期における支給額が同額である定期給与のほか、支給額の改定があった場合において一定の要件を満たす定期給与をいう。
 この事例は、請求人における役員給与の減額改定につき、業績悪化改定事由の存否を判断したものである。

要旨

 請求人は、決算月(平成20年7月)の2か月前において、経常利益が対前年比で6%減少している状況から、代表取締役の給与を減額改定したことは、法人税法施行令第69条《定期同額給与の範囲等》第1項第1号ハに規定する役員給与の減額に係る業績悪化改定事由に該当する旨主張する。
 しかしながら、法人税法施行令第69条第1項第1号ハに規定する業績悪化改定事由とは、法人の経営状況の著しい悪化その他これに類する理由によりやむを得ず役員給与の額を減額せざるを得ない事情があることをいうのであり、本件は、①本件事業年度の売上高、経常利益は過去の業績と比べて何らそん色がないこと、②請求人が設定した業務目標を達成できなかったことが減額の理由であること等からすれば、業績悪化改定事由があるとは認められず、また、上記理由以外に役員給与を減額せざるを得ない特段の事情が生じていたと認めるに足る事実はない。

参照条文等

法人税法第34条第1項第1号 法人税法施行令第69条第1項第1号ハ 法人税基本通達9-2-13

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