裁決事例 裁決事例集 第119集
譲渡した土地上に存する2棟の家屋は独立しており、租税特別措置法第35条第1項に規定する特例対象土地は、家屋の建築面積に近似する床面積で按分した居住用家屋の敷地部分に限られるとした事例
裁決事例集 第119集
ポイント
本事例は、譲渡した土地上の2棟の家屋が2階部分で接合されていたとしても、それぞれ独立した居住用家屋であり、併せて一構えの一の家屋であるとは認められない。本件特例の対象となる土地に係る譲渡所得の金額は、譲渡した土地の譲渡所得の収入金額に、各家屋の建築面積に近似する床面積の合計に占める本件甲家屋(請求人が所有し居住用に供していた家屋)の建築面積に近似する床面積の割合を乗じて算出することが合理的としたものである。
要旨
請求人は、譲渡した土地上に、請求人が所有し居住用に供していた家屋(本件甲家屋)と子が所有する家屋(本件乙家屋)の2棟が存するが、これらの家屋は併せて一構えの一の家屋と認められるから、いずれの家屋の敷地も租税特別措置法第35条《居住用財産の譲渡所得の特別控除》第1項の規定(本件特例)の適用がある旨主張する。
しかしながら、各家屋は、それぞれ、玄関、台所、風呂及び便所を備え、電気、ガス、水道及び固定電話回線の各設備を有し、その規模、構造、間取り、設備等の状況からすれば、各家屋はそれぞれ独立した居住用家屋であることから、併せて一構えの一の家屋であるとは認められず、本件乙家屋敷地について本件特例を適用することはできない。
そして、本件特例の対象となる土地(本件甲家屋の敷地)に係る譲渡所得の金額は、譲渡した土地の譲渡所得の収入金額に、各家屋における各階の登記上の床面積のうち、建築面積に近似する最も広い床面積を、両家屋の各建築面積として用いるのが合理的であり、各家屋の建築面積に近似する床面積の合計に占める本件甲家屋の建築面積に近似する床面積の割合を乗じて算出することが合理的である。
ポイント
本事例は、騒音により利用価値が著しく低下している土地に該当するか否かの判断に当たり、評価上適用すべき路線価に騒音要因がしんしゃくされておらず、合理的と認められる方法に基づく騒音測定結果で相当程度の騒音が日常的に発生していることが明らかにされ、固定資産税の評価上も騒音による減価が行われていたことをもって、騒音により利用価値が著しく低下している土地に該当すると判断したものである。
要旨
原処分庁は、相続財産である土地(本件土地)について、請求人が行った列車走行による騒音測定では、騒音による取引金額への影響を確認できないから、国税庁ホームページのタックスアンサー「No.4617 利用価値が著しく低下している宅地の評価」において示された10%減額して評価する取扱い(本件取扱い)を適用することはできない旨主張する。
しかしながら、①本件土地の評価上適用すべき路線価には騒音要因がしんしゃくされていないこと、②本件土地において列車通過時に実際に騒音が生じていること、③本件土地の所在する自治体は、本件土地の固定資産税評価額の算定上、鉄道騒音補正を適用したことが認められるから、本件土地は、騒音により取引金額に影響を受ける宅地に該当すると認められる。したがって、これらを併せて判断すると、本件土地においては相当程度の騒音が日常的に発生し、騒音により取引金額に影響を受けていたと認めるのが相当であるから、本件土地は、騒音により利用価値が著しく低下している土地に該当するとして、本件取扱いを適用して評価すべきである。
参照条文等
参考判決・裁決
東京高裁平成27年12月17日判決(判時2282号22頁)
ポイント
本事例は、原処分庁が、請求人が取引先の法人から軽種馬を購入する取引に係る売買契約は、通謀虚偽表示により無効であるとして、請求人の課税仕入れに係る支払対価の額の一部を認めない旨の更正処分をしたところ、本件における売買契約は、契約内容のとおり履行されており、また、請求人と当該法人との間に通謀虚偽表示を行う十分な動機があったとまでいえない上、これを基礎付ける証拠もないから、通謀虚偽表示により無効であると認めることはできないと判断して、原処分を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、請求人が取引先の法人(本件法人)から軽種馬(本件軽種馬)を購入する取引(本件各取引)に係る売買契約は、通謀虚偽表示により無効であり、実体は、請求人が軽種馬生産に関する農業協同組合を通じて直接本件軽種馬を購入したものであるから、本件法人が当該農業協同組合から落札し購入した金額と、本件各取引に係る売買金額の差額分に相当する金額(本件各差額)は、請求人の課税仕入れに係る支払対価の額に該当しない旨主張する。
しかしながら、本件各取引に係る売買契約については、契約内容のとおり履行されており、また、請求人と本件法人との間に通謀虚偽表示を行う十分な動機があったとまでいえない上、これを基礎付ける証拠もないから、通謀虚偽表示により無効であると認めることはできない。したがって、本件各差額は課税仕入れに係る支払対価の額に該当する。
ポイント
本事例は、原処分庁が、請求人を名宛人とする外国からの郵便物に添付された税関告知書記載の価格に基づき消費税の課税標準を算出するなどした上で、請求人に消費税等の賦課決定処分を行ったところ、当該郵便物の内容品の価格は、請求人が購入した商品の価格であると認められ、当該税関告知書に記載された価格は誤りであると判断して、原処分を取り消したものである。
要旨
原処分庁は、外国から発送された請求人を名宛人とする郵便物(本件郵便物)の内容品の価格は、税関告知書に記載された金額(本件金額)と認められることから、関税定率法(定率法)第4条の6《航空運送貨物等に係る課税価格の決定の特例》第2項の適用がある場合における本件郵便物の課税価格は本件金額に基づいて算出すべきである旨主張する。
しかしながら、請求人は中古のミニカー1個(本件商品)を購入していたところ、①請求人による本件商品の発注から本件郵便物の受取までを一連の手続としてみた場合に時系列の点で矛盾点がなく、かつ、不自然な点がないことに加え、請求人と本件商品の譲渡人との電子メールの件名や添付された画像データからも、本件郵便物の内容品は本件商品であったと考えるのが自然であること、②本件郵便物の内容品及び本件商品の原産国や重量などをみても、本件郵便物の内容品は本件商品であったと考えるのが自然であること、③請求人と本件商品の譲渡人との電子メールでのやり取りから、本件郵便物の内容品が本件商品以外の別の貨物である可能性は極めて低いことを総合勘案すると、本件郵便物の内容品は本件商品であったと認められる。したがって、本件郵便物の課税価格を本件金額に基づいて算出した賦課決定処分はその全部を取り消すべきである。
請求人と同人が代表である法人との間で締結された請求人所有の土地の賃貸借契約について、契約書に記載された契約期間後まで契約書記載の賃料収入が維持されていたとは認められないとした事例
裁決事例集 第119集
ポイント
本事例は、請求人と同人が代表である法人との間で締結された請求人所有の土地の賃貸借契約について、当該契約に係る契約書に記載された契約期間後まで当該契約書記載の賃料収入が維持されていたとは認められず、請求人主張額の賃料収入があったと認めるのが相当であり、他方でこれを上回る賃料収入があったことを認めるに足る証拠はないとしたものである。
要旨
原処分庁は、請求人が同人が代表取締役である法人(本件法人)と過去に請求人所有の土地(本件土地)に係る賃貸借契約(本件契約)を締結し、本件契約に係る契約書に記載された契約期間(本件契約期間)後、本件法人が、本件土地を別法人に転貸する旨の契約を締結して賃料収入を得ていたことからすると、請求人と本件法人は本件契約を更新していたと推認することができるとして、請求人は、本件契約期間後も本件契約に定める賃料の金額を本件法人から賃料収入として得ていた旨主張する。
しかしながら、本件契約期間後の期間における契約書等の客観的証拠はなく、本件契約期間後の期間における契約が、賃料も含めて本件契約の条件と同一内容で更新されたものであったと認めることはできない一方、請求人は本件法人から得た本件土地の賃料収入について、その具体的金額等を当審判所に対し証拠として提出していることからすると、少なくとも同金額の賃料収入があったと認めるのが相当であり、他方で、これを上回る賃料収入があったことを認めるに足る証拠はない。
参照条文等
参考判決・裁決
最高裁昭和49年3月8日第二小法廷判決(民集28巻2号186頁) 最高裁昭和53年2月24日第二小法廷判決(民集32巻1号43頁)
相続放棄の申述をした請求人に対して、原処分庁が相続放棄の無効を前提として行った不動産の差押処分について、相続人である請求人の口座に振り込まれた被相続人の顧問料相当額を引き出した事実は法定単純承認事由となる相続財産の処分に該当しないとした事例
裁決事例集 第119集
ポイント
本事例は、法定単純承認事由となる相続財産の処分がされたか否かについて、請求人及び関係者の答述並びに帳簿等の広範囲な証拠に基づき、請求人が相続財産を費消(処分)したと認められるか否か、総合的かつ慎重に認定し、相続放棄の申述が有効であると判断したものである。
要旨
原処分庁は、①請求人名義の金融機関の口座(本件口座)に振り込まれた金員(本件金員)は、請求人の配偶者(本件被相続人)と本件金員の支払者との間の委任契約(本件委任契約)に基づき、本件被相続人に対する未払報酬が請求人名義の本件口座に振り込まれたもので、相続財産に該当するところ、請求人が本件金員を受領、出金及び返納した行為は、いずれも民法第921条《法定単純承認》第1号に規定する相続財産の「処分」に該当する旨、②請求人名義の土地及び建物(本件各不動産)の取得資金は、本件被相続人が出捐し、又は本件被相続人の意思により関係会社等が支出していることから、本件各不動産は本件被相続人に帰属する財産であり相続財産に該当するところ、請求人が本件各不動産について、同条第3号に規定する「隠匿」及び同条第1号に規定する「処分」に該当する行為をしている旨、上記①及び②の事実は法定単純承認事由に該当するから、請求人の相続放棄は認められず、請求人は本件被相続人の納付義務を承継する旨主張する。
しかしながら、①については、本件金員が相続財産に該当することが認められるものの、本件金員が本件委任契約に基づいて本件口座に振り込まれたものにすぎず、請求人が出金した本件金員を一部でも費消した事実は認められないこと、請求人が振込名義人あてに送金したのは相続放棄の申述が受理された後であることから、これらはいずれも相続財産の処分には該当しないこと、②については、本件各不動産が本件被相続人に帰属する財産であることを認めるに足りる証拠はなく、相続財産に該当すると認められないことから、本件金員及び本件各不動産について、請求人に法定単純承認事由に該当する事実はなく、請求人の相続放棄の申述は有効であり、請求人は本件被相続人の納付義務を承継しない。
参照条文等
国税通則法第5条第1項、第2項 民法第921条第1号、第3号、同法第938条、同法第939条、家事事件手続法第201条第5項、第7項
参考判決・裁決
最高裁昭和42年4月27日第一小法廷判決(民集21巻3号741頁) 大審院昭和5年4月26日判決(大審民集9巻427頁)
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