裁決事例 裁決事例集 第38集
要旨
[1]本件簿外売上げを行った請求人の取締役は、木製建具部門の責任者であり、代表取締役の父であること、[2]本件簿外売上げに係る取引のすべてが請求人名義で行われていること、[3]取引先も請求人を取引の相手方と認識していることが認められ、これらを総合して判断すると、当該取締役の行為は請求人の行為と同視すべきものであり、本件簿外売上げに係る行為は、請求人の行為に当たるとみるのが相当であるところ、請求人が本件簿外売上げに係る収益の額を所得金額の計算上益金の額に算入しなかったことにより、法人税の税額の全部又は一部を免れたことは、国税通則法第70条第5項に規定する「偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れた場合」に該当する。
租税特別措置法第58条の3第1項に規定する「新鉱床探鉱費の額」とは、現に支出した新鉱床探鉱費の額から新鉱床の探査のため受け入れた補助金の額に相当する金額を控除した額によるべきであるとした事例
裁決事例集 第38集 233頁
要旨
租税特別措置法第58条の3第1項に規定する「新鉱床探鉱費の額」の算定に当たり、新鉱床の探査のために受け入れた補助金の額に相当する金額を控除すべきか否かについては、[1]新鉱床探鉱費の特別控除の制度が探鉱準備金の制度と連動していることから、その計算に当たっても採掘所得金額を計算する場合と同様、補助金の額を控除することが相当であること、[2]補助金交付の実質が国自ら新鉱床探鉱費を支出したことと変わらないことから、補助金によって補てんされた部分についてまで免税効果を与えることは不合理であること、[3]新鉱床探鉱費の額の算定に当たって補助金の額を控除する経理処理は、当該業界における公正妥当な会計処理の基準として定着していることから、新鉱床探鉱費の額は、補助金の額に相当する金額を控除して算定するのが相当である。
要旨
遺言執行者の指定は、要式行為であって遺言によることを要し、生前において被相続人がA弁護士に遺言の執行を依頼し、かつ、一定の報酬を支払う旨の合意をしたとしても、かかる合意は、遺言執行者の指定を内容とする有償の委任契約としての効力を有しないところ、遺言は、遺言執行者を指定した部分を含め、遺言者の死亡の時に初めてその効力を生ずるのであるから、被相続人がA弁護士との間の合意によって、被相続人が生前において本件債務を負うことはあり得ないというべきである。むしろ、遺言執行者に関しては委任に関する規定が準用され、遺言執行者と相続人の関係は、委任に準じた法律関係により律せられるというべきであるから、本件債務を負担するのは請求人ら相続人であるというべきである。
したがって、本件債務は、被相続人の債務とはいえず、本件債務を請求人が相続により取得した財産の価格から控除することはできない。
要旨
遺留分減殺請求に基づく遺留分権利者に対する価額弁償が遺産の譲渡代金でされた場合、受遺者は減殺の結果生じた現物の返還業務を免れ、遺留分の減殺請求の目的物に係る受遺者の所有権は遺留分権利者に移転しなかったことになると解されているから、譲渡所得があるとして遺留分権利者に対して所得税を課税した原処分は違法であり、取消しを免れない。
要旨
一定の具体的取引行為が「事業所得を生ずべき事業」に該当するか否かは、結局一般社会通念に照らし当該取引が事業として行われているか否かによって決せられるべきものであるが、有価証券の売買及び商品先物取引は投機性の強いものであるから、その判断においては、単に当該取引の営利性、有償性、継続性及び反復性の有無のみならず、事業としての客観性の有無が問題とされるべきであり、この観点からは、当然にその取引のための人的・物的設備の有無、資金調達方法、取引に費やした精神的、肉体的労力の程度、その者の職歴、社会的地位などのほか、当該取引によって相当期間継続して安定した収益を得られる可能性があるかどうかについて考察せざるを得ないものというべきである。
本件において、請求人が、長期間にわたって有価証券の売買及び商品先物取引を大規模、かつ、継続的に反復して行っていたことが認められ、取引に費やした精神力、肉体的労力の程度も軽視し難いものがあったことは認められるものの、請求人は大規模な病院を経営し、その傍ら本件有価証券の売買及び商品先物取引を行っていたものであり、結局、請求人の趣味と実益を兼ねた投機により損失を被ったにすぎないから、本件有価証券の売買及び商品先物取引は、いまだ社会通念上事業と認められるに足りるものとはいえず、所得税法上の事業には該当しないものというべきであり、したがって、本件有価証券の売買及び商品先物取引から生じた損失を雑所得を生ずべき業務から生じた損失の額と認定した原処分は適法である。
要旨
本件役員退職給与99,000,000円については、税引後手取額が退職役員名義預金に預け入れられた後に、62,102,000円(振込手数料を含む)が外国関連会社に送金されているが、その送金額は、外国親会社及び外国関連会社が退職役員の出向期間中退職役員のために立て替えて支払ってきた年金掛金相当額を返済したものであって、これがためその送金額相当分を架空の退職給与とはいえない。
外国法人からの仕入れ取引は円建てで行われたと認められるから、当該取引の決済により生じた為替差益相当額を過大仕入れによる寄付金と認定した原処分は相当でないとした事例
裁決事例集 第38集 156頁
要旨
本件取引については、[1]請求人の仕入先である外国法人の委託を受け、商品代金の請求及び回収等の業務を行っている会社が実在していること、[2]甲期間(昭和58年9月30日以前)は、実質外貨建て取引を行っていたものであるが、乙期間(昭和58年10月1日以後)においてはこれを廃止し円建て取引となったと認められること、[3]外貨建て取引から円建て取引になっても関係帳票及びその表示方法を変える必要はなかったものと認められることから、たとえ原処分庁からみて不合理な結果(為替差益の流出)が生じたとしても、このことのゆえに当該契約が仮装による無効なものと判断することはできないので、当該取引が実質外貨建て取引であることを前提として為替差益相当額を過大仕入による寄付金であるとする原処分庁の主張は採用できない。
地方公共団体に対する寄付金として支出した金員は、請求人が建設を予定しているゴルフ場の開発行為に伴う実質的な負担金であるから、繰延資産に該当するとした事例
裁決事例集 第38集 177頁
要旨
請求人は、本件金員は地方公共団体に対する純然たる寄付金であって、負担金ではないから、法人税法第37条第3項第1号の規定により全額損金算入が認められるべきであると主張するが、本件金員の支出が本件ゴルフ場の開発行為の許可のための条件とされており、当該市長は本件金員を開発等指導要綱に基づく本件ゴルフ場の開発行為に係る水道布設工事の負担金として採納することとしていたことが認められるから、請求人は、本件ゴルフ場の開発行為に起因して本件金員を支出し、これによってその許可を得るという特別の利益を受けたことになるので、当該市長が本件金員を寄付金として採納したとしても、これを地方公共団体に対する純然たる寄付金とする余地はない。
そして、上記水道布設工事は、本件ゴルフ場の開発行為に起因して着工されたものであること及び請求人が上記水道布設工事により布設された導水管を現に利用していること、また、本件金員を支出した効果が1年以上に及ぶことは明らかであるから、本件金員は、繰延資産に該当する。
課税土地譲渡利益金額の計算上控除される譲渡経費の算定方法につき、確定申告において概算法を採用したときには、後日、実額配賦法を採用して更正の請求をすることはできないとした事例
裁決事例集 第38集 1頁
要旨
請求人が、課税土地譲渡利益金額の計算上控除される譲渡経費の額の計算に当たって概算法又は実額配賦法のいずれの方法を用いて申告するかは、専ら請求人の自由な選択にゆだねられているところ、請求人は、確定申告時において概算法を選択しているのであるから、仮に、その後、実額配賦法の方が譲渡経費の額が多くなるとしても、概算法による計算に誤りがない以上、国税通則法第23条第1項第1号に規定する「課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと」又は「当該計算に誤りがあったこと」のいずれの要件にも該当せず、したがって、同条に定める更正の請求をすることはできない。
使用貸借により長男の事業兼居住の用に供していた建物及びその敷地を譲渡する場合に支払った立退料等のうち、長男が建物に投下した建物改造費用の現存価額並びに閉店及び移転に要した費用は、譲渡費用に当たるとした事例
裁決事例集 第38集 72頁
要旨
請求人は、使用貸借により長男が事業兼居住の用に供していた建物及びその敷地を譲渡する際、その建物から長男を立ち退かせるために立退料等の金員を支払ったが、使用貸借においては借主に借家権があるとは認められないので、本件立退料のうち借家権の消滅の対価の額に相当する金員については、これを支払う理由はなく、譲渡費用に該当しない。しかし、借主が借受物件に投下した有益費については、使用貸借においても借主が借受物件を返還する際に、貸主は償還業務を負うとされており、その有益費の額は現存価額とされているところ、本件においては、借主である長男は、建物改造費用を負担していることが認められるから、本件立退料のうちその残存価額に相当する部分の金額については譲渡費用とするのが相当である。また、営業補償名義の金員については、長男がチラシ、ポスター等の作成費用等閉店のために支出した費用の実費を補てんするため、請求人が長男に支払ったものと認められるから、これを譲渡費用とするのが相当である。
要旨
請求人が居住用財産であると主張する本件家屋は、[1]請求人が本件家屋に転居した目的が、本件家屋内の古い家財道具を処分し、また、本件家屋に居住していた請求人の母らの転居準備を手伝うためであると認められること、[2]請求人と生計を一にする妻子は、請求人が本件家屋に転居した後も、本件家屋に転居するための何らの準備もせず、請求人が転居する以前に居住していた家屋に居住していたこと、[3]請求人は、本件家屋から会社へ通勤していたとはいえ、土曜日及び日曜日はほとんど毎週、それ以外の日も必要に応じて、妻子の居住する家屋に戻って生活していたことなどを総合すると、主として居住の用に供していた一の家屋ということはできないから、本件家屋は租税特別措置法第35条第1項に規定する居住用財産に該当しない。
要旨
マンション建築用地の開発に当たり、都市計画法等の関係法令及び市の指導要綱に基づき、本件土地を無償提供しているが、土地の無償提供が本件開発行為における実質的な許可条件とされており、また、請求人が本件土地を提供したことにより開発行為の許可を受けられること自体、所得税法第78条第2項第1号かっこ書所定の「特別の利益がその寄付をしたものに及ぶ」と認められる場合に該当するから、本件土地の無償提供は、所得税法第78条第2項に規定する地方公共団体等に対して特定寄付金を支出した場合に当たらない。
海外に送金した事業資金の一部をドル預金に設定し又は為替の売買等に運用し、その収益を会社益金に計上しなかったことは、事実の隠ぺい又は仮装に該当するとした事例
裁決事例集 第38集 7頁
要旨
請求人が仮払金として海外に送金した多額の資金は事業資金等であって、代表者が管理・運用しており、請求人は、仮払金に係る運用収益が発生していることを十分に承知していたにもかかわらず、運用収益の発生事実を帳簿上明らかにせずに、これをあたかも代表者個人に帰属するものであるかのごとく処理して、当期の収益に計上していないのであるから、重加算税を賦課したことは相当である。
要旨
資本的支出と修繕費の区分は、支出金額の多寡によるのではなく、その実質によって判定するものと解されるところ、本件建物の外壁等の補修工事のうち、外壁等への樹脂の注入工事等は建物全体にされたものではなく、また、塗装工事等は建物の通常の維持又は管理に必要な修繕そのものか、その範ちゅうに属するものであるから、これらに要した費用は修繕費とするのが相当である。また、外壁天井防水美装工事は、補修工事に伴う補修面の美装工事であって、塗装材として特別に上質な材料を用いたものではないことが認められるから、これに要した費用も修繕費とするのが相当である。
ビル内貸店舗の賃貸借に当たり収受される保証金のうち、賃貸借期間満了時に返還を要しない、いわゆる保証金償却額は、賃貸借契約の締結時の収益であるとした事例
裁決事例集 第38集 147頁
要旨
ビル内貸店舗の賃貸借に当たり収受される保証金のうち、賃貸借期間満了時に返還を要しない、いわゆる保証金償却額については、本件各賃貸借契約によれば、請求人が各賃借人にこれを返還すべき事由は一切生じないから、その経済的実質は権利金であり、本件賃貸借契約が締結された時にその返還を要しないことが確定したものと認められる。したがって、本件保証金償却額の収益計上時期は、その返還を要しないことが確定した本件各賃貸借契約が締結された本件各事業年度となる。
また、契約期間満了前に本件保証金償却額を権利金として認定した場合には、本件保証金が譲渡性を有する財産権(借家権)の性格を持つことになるから、各賃借人がそのような譲渡を自由にできなくするために、契約期間満了の日まで本件保証金を預かっている旨請求人は主張するが、借家権の譲渡性は、その権利を設定するに当たって権利金を支払うことにより当然に付与されるものではなく、賃借人が借家権の転貸又は譲渡をする場合には、権利金の支払とは別に賃貸人の承諾を要するものと解される。そうすると、本件保証金償却額を権利金と認定しても、借家権に譲渡性が付与されることにはならないと解すべきである。
要旨
青色申告に係る年分の所得金額の更正を行う場合における、更正の理由付記の程度としては、納税者の申告のいかなる点にどのような誤りがあり、また、更正された数値がどのようにして算定されたものであるかが理解できる程度であれば足り、それ以上に事実関係の細部にわたり法的評価及び判断の根拠となった事実関係までも記載することは要しないものと解されるところ、本件においては、原処分庁は、請求人が同族会社に支払った本件建物の賃料の額及び医薬品の仕入れ金額の支払事実を否認して更正したものでなく、その支払金額が極めて高額であり、これらの行為又は計算に基づいて事業所得の金額を計算することは、請求人の所得税の負担を不当に減少させるものであると認定した上、所得税法第157条の規定を適用してその一部請求人のを事業所得の金額の計算上必要経費の額に算入することができないとしたものである旨を付記しており、処分の内容は特定され、その金額及びその金額の計算根拠も明示されているのであるから、請求人は、処分の理由を具体的に知ることができるものであって、本件更正通知書の理由付記の程度は、更正の理由付記として十分なものと認められる。
要旨
法人税法施行令第5条第2項第1号に規定する「その事業がこれらの者の生活の保護に寄与しているもの」とは、その事業が営利を目的とせず、従事する身体障害者等の生活の保護に寄与することを主目的として行われていると認められる場合がこれに該当すると解すべきであり、具体的には当該事業に係る収入金額又は収益金額の相当部分を身体障害者等に給与等として支給しているか否かによって判断すべきものと解される。
しかるに、本件事業において従事する者の全員に支給した給与の額の収入金額又は利益金額に占める割合は、身体障害者等の生活の保護に寄与している事業と認めるには余りにも低率であるから、本件事業は、これらの者の生活の保護に寄与しているものとは認められず、したがって、法人税法第7条“内国公益法人等の非収益事業所得等の非課税”の規定は適用されない。
相当の地代を収受して貸し付けていた土地を貸付先である請求人の役員に更地価額より低い価額で譲渡したことは、時価と譲渡価額との差額相当額の役員賞与を支給したことに当たるとした事例
裁決事例集 第38集 188頁
要旨
本件土地の賃貸借契約に当たり、権利金に代えて相当の地代を収受することとし、それを地価の上昇に応じて増額しているから、借地権の経済的価値は零と評価されるところ、請求人は、請求人の役員である当該土地の賃借人に対し、時価を大きく下回る価額で本件土地を譲渡し、その下回ったことについて特段合理的な理由は認められず、むしろ、譲受人が請求人の取締役であるがゆえに、かかる価額で譲渡が行われたものであると認められるから、譲渡時における時価と請求人の譲渡価額との差額は、当該役員に対し実質的に贈与したものと認めるのが相当であり、役員賞与に該当する。
要旨
所得税法第157条にいう「所得税の負担を不当に減少させる結果となる」か否かは、同族会社の行為又は計算に基づいて算出された税額と通常あるべき行為又は計算に引き直して算定された税額とのかい離によって判断すべきであり、また、その判断に際しては、納税者が当該同族会社の役員として受領した報酬額及び当該同族会社の法人税の額を考慮すべきものではないと解されるところ、認定によれば、原処分庁の算定した同業者の不動産管理料割合は適正と認められ、これを基に算出された適正管理料の額に基づいて計算した請求人の所得税額は請求人の申告所得税の額に比べ著しくかい離していることが明らかであり、本件不動産管理委任契約に基づく行為又は計算は、請求人の所得税の負担を不当に減少させる結果となっていると認められるから、請求人の不動産所得の金額を所得税法第157条の規定を適用して算定した原処分は相当である。
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