裁決事例 裁決事例集 第73集
要旨
同族会社であるG社は、請求人から賃借している本件各土地をH社に転貸するなどし、それに伴う業務及び経済的負担を負うとともに、本件各土地転貸料を得ているのであるから、実質的にみれば、本件各土地転貸料と本件各土地賃料との差額が、G社が請求人から取得する本件各土地の管理の対価、すなわち管理料相当額とみることができる。
したがって、本件各土地賃料の額が不当に低額であるか否かは、当該管理料相当額が適正か否かを基準に判断すべきである(以下、この基準により適正賃料を算定する方法を「適正管理料置換方式」という。)。
そこで、審判所において選定した比準同業者の賃貸料収入の額に占める管理料の割合の平均値をもって適正管理料割合とし、当該適正管理料割合を本件各土地転貸料に乗じることにより本件各土地に係る適正管理料を算定した。
そして、適正管理料置換方式は、土地賃貸借契約を管理委託契約という契約形式に置き換えるものであるから、適正管理料の算定に当たっては、管理委託契約では生じない土地賃貸に係る保証金の差し入れを加味するのが相当であり、請求人は、G社から本件各土地賃貸借契約に基づき定期借地権の設定による保証金(2億円)を受領していることから、当該保証金の運用益相当額を算定して本件土地転貸料から控除するのが相当である。
そこで、当該保証金に係る運用益相当額を保証金の経済的利益の課税に当たって適正な利率として用いられている10年長期国債の年平均利率を用いて算定した。
以上のことから、適正管理料置換方式による本件各土地に係る適正賃料(審判所認定適正賃料)の額は、本件各土地転貸料の額から本件適正管理料の額及び本件運用益相当額を控除した後の金額であり、本件各年分に係る審判所認定適正賃料の額を本件各土地賃料の額と比較すると、後者は著しく低額であることが明らかであることから、本件各賃貸借契約は請求人が当該同族会社の株主・代表取締役という関係でなければ結ばれ得ないものであり、客観的にみて経済的に合理性を欠き、不自然・不合理であるといわざるを得ない。
なお、本件においては、G社は、請求人から賃借している本件各土地を転貸して、本件各土地転貸料を得ているところ、原処分庁においては、本件各土地の近隣において、請求人と類似の条件で土地を貸し付けていると認められる者を比準同業者として選定し、当該比準同業者の平均賃料を適用する方法により、本件各土地に係る適正賃料を算定しているので、原処分庁の主張する適正賃料に合理性を認めることはできない。
要旨
原処分庁は、本件贈与証明書の「3」の記載に基づき2回目の贈与が死因贈与に該当すると解しているが、5,000万円を贈与することについて、その「1」及び「2」の記載において具体的に定められていると認められ、被相続人が死亡しなくてもDは贈与を受けることができるのであり、また、本件贈与証明書の「3」の記載は、年明けまでに被相続人が死亡した場合に、滞りなく贈与が実行されるよう翌年1月1日の履行時期を待たずしてその履行を早める旨を定めたもので、単に贈与の履行時期の特約に過ぎないものと認められるから、2回目の贈与は贈与者の死亡により効力が生ずる民法第554条の死因贈与に該当しないものと解するのが相当である。
さらに、R弁護士の答述によれば、本件贈与証明書の作成経緯は、被相続人がDに1億円を遺贈したいとする意向から、確実に5,000万円を贈与するため本件贈与証明書を作成することに変更したことが認められ、同証明書は、5,000万円を贈与することについて節税を考慮しその履行の具体的方法が記載されていることからすれば、被相続人がその作成に当たり、「自分が死んだら贈与する(死ななければ贈与しない。)。」という意思表示を示したとは到底認められない。
したがって、Dに対する2回目の贈与について死因贈与と判断して行った原処分は、本件贈与証明書による2回目の贈与についての法的見解を誤ってなされたものであって、その点において違法といわざるを得ない。
遅延損害金債務の債務免除益について、「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」に該当しないとして、所得税基本通達36-17《債務免除益の特例》は適用されないとした事例
裁決事例集 第73集 127頁
要旨
所得税基本通達36-17にいう「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」とは、単に債務超過の状態にあるだけでは足りず、債務超過の状態が著しく、その者の信用、才能等を活用しても、現にその債務の全部を弁済するための資金を調達することができないのみならず、近い将来においても、調達ができないと認められる場合をいうものと解される。
これを本件についてみると、請求人は、債務免除の前後において安定的な賃貸収入を稼得し、上記借入金の弁済に充てており、しかも同借入金以外の債務についても、債務免除の前後において弁済をしていた。そして、請求人の収入から借入金の返済額その他の支出額を控除した請求人の生活費として消費可能な所得は、総務省の家計調査における一世帯当たりの年間消費支出を上回っていることなどからすれば、債務免除の時点において、現にその債務の全部を弁済するための資金を調達することができないとは認められない。
さらに、請求人の資産・負債の状況についてみても、請求人は、主要な資産である自宅及び賃貸用不動産を処分することなく保有しており、また、上記の請求人の支払能力からすれば、債務全額について弁済が不可能となるほどの著しい債務超過があったとはいえないから、「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」に該当するとは認められない。
本件ゴルフ会員権は、その譲渡の時点において優先的施設利用権が消滅していたとは認められないから、譲渡所得の基因となる資産に該当し、その譲渡による損失は他の各種所得と損益通算ができるとした事例
裁決事例集 第73集 197頁
要旨
ゴルフ場経営会社F社は、ゴルフ場施設を所有するE社との間で、本件ゴルフクラブの経営並びにこれに関連する業務の一切を受託すること等を内容とする本件委任契約を締結し、ゴルフ場の経営を行っていたところ、E社が所有するゴルフ場施設用地及び建物の一部(本件競売不動産)について担保権の実行として不動産競売開始決定がなされ、K社を買受人とする売却許可決定がなされ、また、別の一部用地等(本件売却不動産)は、E社からV社に任意に売却された。
しかし、本件売却不動産についてはF社とV社の間の黙示の使用貸借契約によりF社が引き続き使用することができたと認められ、F社としては、これと森林組合等から借り受けている土地を引き続き使用することにより、本件ゴルフクラブを構成していた3つのコースのうち2コースの利用を会員に提供できたものと認められ、これら2コースを会員の利用に供すれば、社会通念上ゴルフ会員権の目的を達成することができるといえる。
そして、本件ゴルフクラブの営業は、平成17年1月○日に閉鎖されるまでの間続けられていたとの事実に照らすと、本件ゴルフ会員権の譲渡の時点(平成16年12月5日)でも、F社は、社会通念上ゴルフ場施設の利用というゴルフ会員権の目的を達成できる程度にまでゴルフ場施設をその利用に供することができていたと認められる。
さらに、本件委任契約において、F社は、E社の所有する不動産等だけではなく、自ら賃借した土地をも使用して本件ゴルフクラブを経営することが予定されていたと認められるから、本件競売不動産及び本件売却不動産の所有名義が第三者に移転し、かつ、F社において本件競売不動産の使用ができなくなったとしても、F社が第三者から土地を賃借して本件ゴルフクラブの営業を経営することが可能である以上、本件委任契約の目的が不可能になったとはいえず、また、本件委任契約には契約の終了に関する特約はなく、民法上の委任契約の終了事由も見当たらない。
また、本件ゴルフ会員権について、預託金返還請求権及び年会費納入等の義務のいずれもが、譲渡時点で消滅していたとは認められない。
以上のとおり、本件ゴルフ会員権の譲渡の時点において、預託金会員制ゴルフ会員権の内容である優先的施設利用権、預託金返還請求権及び年会費納入等の義務のいずれかが消滅し、その同質性を喪失したとは認められないから、当該ゴルフ会員権の譲渡は所得税法第33条第1項に規定する譲渡所得の基因となる資産の譲渡に該当する。
そうすると本件ゴルフ会員権の譲渡により生じた損失は、所得税法第69条第1項の規定により他の所得と通算することができるというべきであり、これを認めなかった原処分は違法であるから取り消されるべきである。
所得税の重加算税の賦課決定について、納税申告書の提出等の時点において、納税者が課税庁等に対し、自己が行った隠ぺい又は仮装の事実を知らせていたとしても、重加算税の課税要件には何ら影響しないとした事例
裁決事例集 第73集 64頁
要旨
請求人及び請求人の親族が本件物件を居住の用に供していないにもかかわらず、請求人は本件特例を適用する意図を持って、本件物件に居住しているAらの住民登録のみを異動させた旨自認し、また請求人及びEの住民登録を本件住所に異動し、住民票の除票等を本件確定申告書に添付することにより、本件物件を自己の居住用と仮装したことが認められ、これらの行為は、国税通則法第68条第1項に規定する「隠ぺい又は仮装」に該当する。
なお、請求人は、本件譲渡所得に関する相談の際に、Eが本件相談担当者に対し、請求人及び請求人の親族が本件物件に居住していなかったこと及び本件特例を適用するために請求人及びEの住民登録を本件住所に異動したことを説明しているから、国税通則法第68条第1項に規定する「隠ぺい又は仮装」の事実はこの時点でなくなったものであると主張する。
しかしながら、重加算税については、「隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出した」という国税通則法第68条第1項所定の課税要件を充足することにより成立するのであり、たとえ、納税申告書の提出時点において、納税者が課税庁等に対し、その隠ぺい又は仮装の事実を知らせていたとしても、重加算税の課税要件に何ら影響を与えるものではないから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
請求人の多忙及び共同相続人の通院加療等を理由に、請求人が行った相続税の申告期限から3年以内に遺産が分割されなかったことについてのやむを得ない事由の承認申請を却下した処分が適法であるとした事例
裁決事例集 第73集 483頁
要旨
請求人は、本件特例の適用を受けようとする遺産が未分割であることについて、①相続人が関係していた法人と原処分庁との間の訴訟が係属中であること、②請求人は、自ら当事者となっている訴訟事件7件、雑事件10件、その他9件を抱えて多忙であったこと、③遺産の一部については分割を了するなど、請求人は分割協議の完了に努力していること及び④共同相続人のうちの1名が病気のため通院加療中であったことから同人に配慮する必要があったこととのやむを得ない事由が存在するので、原処分は違法であると主張する。
しかしながら、請求人が主張する事由は、いずれも租税特別措置法施行令第40条の2第12項で準用する相続税法施行令第4条の2第1項第1号ないし第3号に規定する本件相続に関する訴えの提起、和解、調停の申立て等の事由には該当しない。また、同項第4号に規定する「税務署長においてやむを得ない事情がある場合」については、個々の具体的事例に即し、税務署長が客観的な事実に基づいて認定することとなり、その判断のよりどころとして相続税法基本通達19の2-15(以下「本件通達」という。)において例示を掲げているところ、その取扱いは相当であると認められるので、請求人が主張する上記事情について、これに照らして判断すると次のとおりである。
①ないし③の事情は、当該事情が未分割の前提としてあったとしても、いずれも本件通達に定めるような客観的に遺産分割ができないと認められる事情には該当しない。
また、④の事情は、共同相続人のうちの1名が病気療養中であったとはいえ精神的又は身体の重度の障害疾病のため遺産分割ができなかったとはいえず、本件通達に定めるような客観的に遺産分割ができないと認められる事情には該当しない。
以上のとおり、本件特例の適用を受けようとする遺産が未分割であることについて、相続税法施行令第4条の2第1項各号に規定するやむを得ない事情があったとは認められないから、本件却下処分に違法はない。
無利息の預り保証金及び敷金に係る債務控除額は、その元本価額から、通常の利率による返還期までの間に享受する経済的利益の額を控除した額によるのが相当であるとした事例
裁決事例集 第73集 442頁
要旨
控除すべき債務が弁済すべき金額の確定している金銭債務の場合であっても、その弁済すべき金額が当然に当該債務の相続開始時における消極的経済的価値を示すものとして課税価格算出の基礎となるものではなく、金銭債務について、その権利の具体的内容によって時価を評価するのと同様に、金銭債務についてもその利率や弁済期等の現況によって控除すべき金額を個別的に評価しなければならないのであり、控除すべき債務の金額は必ずしも常に当該債務の金額と一致するものではない。
無利息で預託されている金銭債務(以下「無利息債務」という。)であれば、これを承継した相続人は、通常の利率による利息相当額の経済的利益を弁済期が到来するまでの期間享受することになり、その享受する経済的利益の相続開始時における現在価値に相当する額だけ相続又は遺贈により取得した経済的価値の減殺要因が小さくなることから、無利息債務の相続開始時の評価額は、通常の利率と弁済期までの年数から求められる複利現価率を用いて相続開始時現在の経済的利益の額を計算し、無利息債務の元本額からこの経済的利益の額を控除した金額とするのが相当である。
要旨
請求人は、本件サービス業務の未精算費用があった旨主張する。
しかしながら、本件サービス業務に関する料金及び支払条件は、本件旧契約に準じて、その都度、両当事者間で検討及び合意されていたと認められ、K社は、本件事業年度における本件サービス業務の精算として、既に毎月ごとに精算金を受領している。
また、請求人は、本件見直しを行った結果、本件サービス業務の未精算費用があった旨主張するが、一般の取引通念に照らせば、取引上、未精算費用があった場合には、会社間で当該未精算費用の額、支払方法等についての検討や話し合いがされてしかるべきであり、その結果を両社ともに文書で記録しておくのが通常である。
ところが、本件の場合、本件調査担当職員が、M課長に対して本件金員の計算根拠について説明を求めても具体的な計算根拠の説明及び資料の提出はなく、また、T部長は、本件サービス業務の未精算費用は積み上げて計算したものではなく、具体的に計算した資料はない旨答述しており、両社間で当該未精算費用の額、支払方法等について具体的に検討などをした事実は認められない。
そして、本件金員の支払原因については、M課長の各メールの記載内容の信用性は、その作成時期等から極めて高く、それに加えて、K社の各事業年度の決算状況、本件業績レビューの記載内容及びM課長の答述からすると、①K社は、設立以来3期連続欠損の状況にあり、平成15年3月期の決算も○○○○ドルの欠損が見込まれたため、これを解消し単年度でいわゆる黒字化するための方策として、請求人が業務委託費を支払うことで支援することとし、②幹部職員の話し合いで、当該業務委託費を○○○○円とすることに決まり、本件新契約書が作成され、請求人が本件金員を支払ったものと認められる。
そうすると、本件サービス業務の未精算費用があったとは認められず、本件金員の支払原因は、K社の欠損を補てんするために援助としてされた金銭の贈与であると認められる。
以上、検討の結果、本件金員を支払った行為は、金銭の贈与に該当するというべきであるから、本件業務委託費は法人税法第37条第7項に規定する寄附金に該当する。
要旨
請求人は、原処分庁が被差押債権は滞納会社に帰属するものであるとして行った債権差押処分に対して、自社が被差押債権の帰属主体であることを主張する。
しかしながら、会社が法令の規定に準拠して比較的容易に設立され得ることに乗じ、取引の相手方からの債務履行請求手続を誤らせ時間と費用とを浪費させる手段として、旧会社の営業財産をそのまま流用し、商号、代表取締役、営業目的、従業員などが旧会社のそれと同一の新会社を設立したような場合には、形式的には新会社の設立登記がなされていても、新旧両会社の実質は前後同一であり、新会社の設立は旧会社の債務の免脱を目的としてなされた会社制度の濫用であって、このような場合、会社は、この取引の相手方に対し、信義則上、新旧両会社が別人格であることを主張できず、相手方は、新旧両会社のいずれに対しても上記債務についてその責任を追及することができると解されている。
したがって、いわゆる支配要件と目的要件の2つの要件を満たした場合には、信義則上、新会社は、債権者に対して旧会社とは別人格であることを主張できないと解するのが相当である。
そして、本件においては、請求人について上記2つの要件をいずれも満たすと認められることから、請求人は、原処分庁に対して、信義則上、請求人が本件滞納会社とは別異の法人格であることを主張し、本件各債権を自己の財産であって本件滞納会社の財産ではないと主張することは許されないというべきである。
売買契約の買手である審査請求人が金銭を受領することなく当該売買契約に係る権利義務の一切を第三者に移転した取引について、売買契約に係る買主の権利義務を一体として移転したものであって、代金支払債務の引受けを対価として目的物引渡請求権を譲渡したものとは認められないから、対価を得て行われた資産の譲渡等に該当しないとした事例
裁決事例集 第73集 495頁
要旨
請求人は、本件基準期間において、E社に特注した機器に係る代金支払債務の引受けを見合いとして当該機器の引渡請求権をF社に譲渡しており、当該機器の引渡請求権の譲渡は課税売上げに該当するから、本件課税期間については課税事業者に当たる旨主張する。
しかしながら、本件引受書によれば、請求人、F社及びE社の間で、当該機器に係る請求人のE社に対する権利義務を一体としてF社に移転する合意があったものと認められるところ(以下、当該合意に基づく当該権利義務の移転を「本件取引」という。)、本件引受書には、当該権利義務の移転の対価として収受すべき金額の記載がなく、当審判所が本件引受書以外の資料を調査したところによっても、本件取引について対価が授受されたことを示すものは見当たらない。そうすると、本件取引は、対価を得て行われた資産の譲渡等に該当しないから、課税売上げに当たらない。
したがって、請求人は、本件課税期間については課税事業者に該当しない。
なお、本件取引は、契約から生じる個々の債権債務のみならず当該契約の取消権や解除権も包括的に移転する取引で、単なる債権譲渡や債務引受とはその本質を異にするものと認められ、本件取引に係る対価についても個々の債権債務その他の付随的権利関係を一体として評価することが相当であるから、請求人の主張には理由がない。
賃貸借契約の中途解約に伴い賃借人に対し返還不要となった敷金及び建設協力金に係る所得は、3年以上の期間の不動産所得の補償に当たらないから臨時所得に該当せず、平均課税は適用されないとした事例
裁決事例集 第73集 265頁
要旨
請求人は、解約合意書に補償対象期間の具体的な記載はないものの、賃貸借契約書には契約期間が明記されていることから賃貸借契約の終期までの残存期間である9年9か月を本件返還不要敷金等が補償の対象としているとみるべきである旨主張する。
しかしながら、臨時所得の範囲として、所得税法施行令第8条第3号は、不動産貸付業務に係る「3年以上の期間の不動産所得の補償として受ける補償金に係る所得」と規定しているところ、所得の補償とは、中途解約に伴い生じた逸失利益、すなわち不動産貸付業務を継続すれば得られたであろう所得の額を補償するものであり、その所得を得るために継続して生ずる費用、例えば、減価償却費、租税公課等の費用の額を併せて補償することが必要であると解するのが相当であるから、所得の額と費用の額の合計額、すなわち収入金額に相当する金額を補償して初めて所得の補償といえる。
これを本件についてみると、本件返還不要敷金等は、違約金名目ではあるが、その実質は、①解約後の収益補償として支払われるもの及び②解約に伴う諸費用の実費弁償として支払われるものから成っていると考えられるから、本件返還不要敷金等に係る所得が、臨時所得となる3年以上の期間の補償に該当するか否かを判断するためには、本件返還不要敷金等の金額のうち、上記①に係る金額について、1年当たりの収入金額に相当する金額で除して補償対象期間を算定するのが合理的であると認められる。
そこで、本件返還不要敷金等の金額の全額を上記①に係る金額と仮定して、本件返還不要敷金等の金額(18,111,800円)を1年当たりの収入金額に相当する金額(9,864,792円(中途解約時の月額賃貸料822,066円×12月))で除して補償対象期間を計算すると、約1年10か月となり、3年以上の期間の不動産所得の補償には当たらない。
したがって、本件返還不要敷金等に係る所得は臨時所得に該当しないことになるため、平均課税の方法により所得税の額を計算することはできない。
要旨
請求人は、N社が施行した建築工事等に係る本件建物附属設備等の見積金額を同社から調達する器具・備品等の見積金額に上乗せさせる方法で、リース取引の目的とする資産の全てが器具・備品等であるかのように事実を仮装した内容のリース会社用各見積書等を同社に作成させることにより、リース不適格資産(リース取引により売買があったものとされる資産)をリース適格資産(リース取引により賃貸借があったものとされる資産)に仮装し、その内容で各リース会社とリース契約を締結してリース料を損金の額に算入し、また、消費税の仕入税額控除をしていたものである。
したがって、請求人の行為は、国税通則法第68条第1項にいう「課税標準の計算の基礎となる事実に一部を仮装した」ことに該当するというべきである。
また、請求人は、リース取引の目的とした資産の金額に本件建物附属設備等の金額が含まれていること等を知りながら損金算入や仕入税額控除に及んだのであって、隠ぺい又は仮装の故意があることは明らかであり、それ以上に請求人が過少申告を行うことの認識まで有していることは重加算税の賦課要件ではないから、税金を不当に軽減する意図はなかったから故意がないとする旨の請求人の主張には理由がない。
要旨
請求人は、①請求人自身も共同相続人の一人であると信じたことにより他の相続人である滞納者の相続税の延納につき請求人所有不動産を担保提供することに承諾する意思表示をしたこと、②しかしながら、被相続人と請求人との養子縁組が訴訟により無効とされ遡及的に相続人ではなかったことになったこと、③したがって、その担保提供を承諾する意思表示は動機の錯誤により無効であることを主張して、原処分庁がした請求人所有不動産に対する担保物処分のための差押えの取消しを求めている。
しかしながら、請求人の養子縁組の効力については請求人が担保提供に同意する以前から争いがあったことなどの事実の下においては、請求人は、少なくとも、担保提供の承諾の時において自己の相続人としての地位がその争いの帰趨によっては失われる可能性があることを認識していたものと推認するのが合理的である。また、請求人と被相続人との関係が、実体上、養親子関係にないことは、そもそも請求人自身において当然に熟知していたものというべきである。
そうすると、請求人は、本来は相続人でないところ、担保提供の承諾をした当時、相続人でないことの可能性は十分に認識していたというべきであるから、相続人でないのに相続人であると認識していたというような動機の錯誤があったとまでは認めることができないというべきである。したがって、請求人の主張には理由がない。
請求人の平成17年分の所得税の確定申告につき期限後申告となったのは、請求人が平成18年3月9日から同月19日まで入院中であったためであり、「正当な理由」があるとの主張を排斥した事例
裁決事例集 第73集 56頁
要旨
国税通則法第66条第1項に規定する無申告加算税は、納税申告制度の秩序を維持するためには、納税者により期限内に適正な申告が自主的になされることが不可欠であることにかんがみて、申告書の提出が期限内になされなかった場合の行政上の措置として課されるものであるから、同項ただし書きの「正当な理由」とは、例えば、災害、交通・通信の途絶など、期限内に申告できなかったことについて納税者に責められる事由がなく、このような行政上の措置を課することが不当又は酷となるような真にやむを得ない事情をいうものと解するのが相当である。
これを本件についてみると、請求人が会計事務所に本件確定申告書の作成を依頼したのは平成18年2月ころであり、そして、入院の翌日である同年3月10日ころには、本件確定申告書ができあがっていたこと、請求人の入院は、突発的な事態によるものでなく、毎年定期的に受けていた術後検査を受けるためのものであり、実際にも入院中は、定期的に血液、肝機能等の身体全般の検査を受けるという状況にあったこと、入院期間は予め一週間ないし10日程度と見込まれていたもので、同月19日に退院していること、請求人は、本件確定申告書の作成を本件会計事務所に依頼していたことから、計算過程などについては確認することなく、納税額を確認したところで本件確定申告書に押印していること、請求人は、請求人が代表取締役を務めるC社の経理課長から、法定申告期限が平成18年3月15日であることを知らされた際、申告期限にはこだわらず、本件確定申告書を退院後に提出する意思を有していたことが認められる。
これらのことからすると、請求人が本件確定申告書の期限内提出の必要性ないし重要性を十分に認識していたとすれば、請求人は、平成18年3月9日から入院することになるという事情を本件会計事務所に説明して本件確定申告書の作成を早め、入院する前に本件確定申告書の内容を確認することに支障はなかったということができ、さらには、入院中において、請求人は「納税額」の確認ができないほどの病状下にはなかったもので、上記経理課長から電話があった際(同月10日ころ)、請求人が確認を要すると考えていた納税額を同人に尋ね、それを確認することは容易なことであったと認めるのが相当である。
したがって、請求人が本件確定申告書を法定申告期限までに提出できなかったことについて国税通則法第66条第1項ただし書きに規定する正当な理由があったとは認められない。
信用保証料は、一定の契約に従い継続して役務の提供を受けるために支出した費用に当たるというべきであり、事業年度末において未経過の保証期間に対応する額は、前払費用とすることが相当であるとした事例
裁決事例集 第73集 353頁
要旨
本件各信用保証は、請求人が本件銀行から融資を受けるに際し、信用保証協会に信用保証を委託し、同協会が本件銀行に信用保証書を交付することにより成立したものであり、保証債務の履行は保証期間が満了するまでの間は有効に成立している。そして、本件各信用保証料の額は、それぞれ、保証金額、保証期間(日数)、保証料率及び分割返済回数別係数を基に算定されている。
これらの事実を総合考慮すれば、本件各信用保証料が、本件各信用保証の保証期間の始期から満了時までの費用であることは明らかであるから、本件各信用保証料は、一定の契約に従い継続して役務の提供を受けるために支出した費用に当たるというべきである。
また、信用保証協会による本件各信用保証は、融資実行時に本件銀行に対して保証承諾をすることのみではその役務の提供は終了しておらず、本件銀行からの融資が実行された後も、その融資が継続している全期間にわたって信用保証を行うという役務を提供しているのであるから、「本件各信用保証料は、保証の承諾をしたことに対する対価で一時に損金の額に算入すべきである」とする請求人の主張は採用できない。
以上のとおり、本件各信用保証料は一定の契約に従い継続して役務の提供を受けるために支出した費用に当たるところ、本件各信用保証料には、本件各事業年度末において未経過の保証期間に係るものがあるので、未経過期間に対応する額は、前払費用として経理処理することが相当である。
なお、原処分庁は、前期に繰上完済した場合に返済を受ける信用保証料の額と当期に繰上完済した場合に返済を受ける信用保証料の額との差額を当期の損金の額に算入すべき費用の額と算定しているが、その算定方法は合理的であると認められる。
そうすると、本件各事業年度の所得金額及び納付すべき税額は、いずれも原処分の額と同額となる。
海外子会社から○○用器具を購入する審査請求人の取引について移転価格税制を適用し、当該取引は利益分割法により算定した独立企業間価格で行われたものとみなされるとしてされた更正処分等は適法であるとした事例
裁決事例集 第73集 376頁
要旨
本件審査請求における各争点については、次のとおりであるが、当審判所の調査によれば、移転価格税制を適用すべき取引は、原処分と異なり、平成13年3月期の「b製品」並びに平成14年3月期の「a製品」、「b製品」及び「d製品」の各取引のみと解するのが相当である。
しかしながら、当該各取引に係る当審判所認定の国外移転所得金額は、いずれの事業年度も原処分額を上回ることとなるから、本件更正処分は適法というべきである。
租税特別措置法関係通達66の4(4)-1は、利益分割法において分割対象とされる租税特別措置法施行令第39条の12第8項第1号に規定する「所得」は、原則として、売上総利益や当期純利益ではなく、事業活動の直接の結果を示す営業利益を用いることが合理的であることを明らかにしたものであって、営業損失を分割の対象から排除すべきか否かについて直接言及したものではない。当該所得とは、本件国外関連取引に参加したすべての関連者に生じた当該取引に係る損益(原則として営業損益)の総和をいうと解するのが相当であり、当該所得には、営業損失も含まれるというべきであり、請求人の主張は採用できない。
また、財務会計上、為替相場の変動による所得とは、取引発生時と決算時又は決済時という2つの時点における為替相場の変動による換算レートの差から算出されるいわゆる為替差損益をいうのであり、財務会計上の営業外損益に属するものである。これに対し、請求人の予算レート(予算策定や事業計画を立てる際に使用するためにあらかじめ定めた円換算レート)と社内レート(外貨建取引を会計帳簿に記録する際の円換算レート)との差により算出される金額は、営業外損益となる為替差損益などではなく、当該所得に含まれるもの(当該所得の計算において除外すべきものではない)というべきであり、請求人の主張は採用できない。
L部門に属する本件国外関連取引とM部門に属するC研究所の業務内容とは、事業セグメントを異にするというべきであり、同研究所の販売費及び一般管理費は、利益分割法の適用に当たり、本件国外関連取引に関連して支出された費用とみるべきではなく、原処分庁の主張は採用できない。
一方、D研究所の研究開発業務には、L部門に属する業務が含まれていたものと認められ、同研究所の販売費及び一般管理費は、利益分割法の適用に当たっては、本件国外関連取引に関連して支出された費用とみて、分割対象利益及び分割要因を計算することが相当であるから、請求人の主張は採用できない。
要旨
請求人は、戸籍法上婚姻はしていないが事実婚をして離婚しており、所得税法第2条が規定する寡婦の定義には戸籍法のことは書かれておらず、また、母子法、生活保護法には事実婚を認める規定もあるから、寡婦控除は認められるべきである旨主張する。
しかしながら、所得税法(平成16年法律第14号による改正前のもの。以下同じ。)第2条第1項第31号によれば、「夫と死別し若しくは夫と離婚した後婚姻をしていない者又は夫の生死の明らかでない者」、あるいは「夫と死別した後婚姻をしていない者又は夫の生死の明らかでない者」に該当することが「寡婦」たる要件の一つとされているところ、ここでいう「夫」の意義については、所得税法及び租税特別措置法(平成16年法律第14号による改正前のもの。)において格別の定義規定が設けられていないことからすれば、身分法の基本法たる民法が定める婚姻関係(以下「法律婚」という。)にある男子を意味するものと解するのが相当である。
また、母子及び寡婦福祉法第6条第1項及び生活保護法による保護の実施要領には、事実婚の配偶者を法律婚の配偶者と同様に取り扱うものとする旨が定められているが、これらは、事実婚と法律婚とを同様に取り扱うこととする特別の定めであるから、それらの定めが存在することをもって、請求人が主張するように解することはできない。
したがって、請求人の主張は採用できない。
請求人が開業費として計上した平成10年1月~5月の地代家賃等は、平成10年1月の開業後に支出したものであるから、平成15年分の事業所得の計算上当該開業費の償却費を必要経費に算入することはできないとした事例
裁決事例集 第73集 148頁
要旨
請求人は、平成9年中に行った各種の届出等は形骸的なものであって、請求人の真の開業時期は平成10年6月ころであるから、本件費用は開業費であり、開業費の償却費として平成15年分の事業所得の計算上必要経費に算入されるべきである旨主張する。
しかしながら、請求人は、平成9年末に、本件クリニックの賃貸借契約、医療機器のリース契約等の名義を請求人に変更し、平成10年1月以降、本件クリニックの看板を付け替えた上で、本件クリニックに係る社会保険診療報酬及び自由診療収入を請求人名義の預金口座に入金させるなどするとともに、平成10年分の所得税について平成10年1月診療分以後の収入及び支出を確定申告していることからすれば、遅くとも平成10年1月には、請求人自身の計算と危険において独立して、本件クリニックに係る事業を実質的に開始したものと認められる。
そうすると、本件費用は、いずれも本件クリニックに係る事業を開始した後に発生した費用であるから、所得税法施行令第7条第1項に規定する「事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用」である開業費には該当せず、また、本件費用の内訳は、地代家賃、修繕費及び消耗品費であり、その支出の効果が翌年以降に及ぶものであるとは認められず、所得税法施行令第7条第1項に規定する開業費以外の繰延資産にも該当しない。
要旨
請求人は、青色申告者からの更正の請求が認められない場合には、国税通則法第23条第4項及び所得税法第155条第2項の規定の精神を酌み、通知書に理由を附記すべきである旨主張する。
しかしながら、国税通則法第23条第4項によれば、税務署長は、更正の請求があった場合には、調査の結果、更正をすべき理由がないと判断したときは、請求者にその旨を通知すれば足り、更正をすべき理由がない旨の通知書に理由を附記すべきことを定めた法令の規定はないから、本件通知処分に係る通知書に理由の附記がないことに違法はない。また、本件通知処分は、所得税法第155条第2項が前提とする同条第1項の更正処分とは法的に全く異なり、実質的にみても、所得税法第155条第2項が青色申告書に係る更正処分に理由附記を要求している趣旨は、納税者が提出した申告書の誤りを税務署長が指摘するときに理由附記を義務付けることにより、その慎重な処分を期するとともに、不服申立てに際しての判断材料を与えようとする点にあると解されるところ、国税通則法第23条第4項に基づく更正をすべき理由がない旨の通知処分については、納税者の更正の請求に対する応答としてなされるものであるから、上記の趣旨が当てはまるものではないと解される。
したがって、請求人の主張は、法の要請を超える独自の見解であり、採用できない。
また、請求人は、住宅借入金等特別控除の適用要件を実質的に満たしているから、国税通則法第23条第1項にいう課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったことに該当する旨主張する。
しかしながら、申告納税方式における納税義務者は、申告行為によって具体的な租税債務を負担することになるが、納税者が申告をした後、その申告内容に変更を加える必要の生ずる場合があることは否定できず、このような場合にはその修正を認めるべきであるが、あらゆる場合にこれを自由に認めることは、申告の性格に照らして適当といえないのみならず、納税義務の具体的内容を不安定にさせ、行政を混乱に陥れる弊害もあるから、国税通則法第23条第1項は、これに一定の制限を加え、一定の期間内に限り特定の手続によってのみ是正することができるものとしたと解される。このような見地からすると、一定事項の申告等を条件に所得金額、税額の減免をすべきこととされているものについてその申告等をしなかった者が、後日その特例の適用を求めるために更正の請求をすることは、許されないと解することが相当である。それは、上記一定事項の申告等を付さないでした納税の申告といえども、法律の規定に従っていなかったり、計算に誤りがあったりしたわけではなく、実体的に不当であるとはいえないからである。
これを本件についてみるに、住宅借入金等特別控除は、申告等を条件に適用され、所得税額が減免される規定であるところ、請求人は、平成17年分の所得税の確定申告を行うに当たり、同控除の適用を申告しておらず、本件更正の請求は、申告後に同控除の実体的要件を満たしているとして、その適用を求めようとしているものであるから、国税通則法第23条第1項による更正の請求ができる場合に該当せず、その理由がないというべきである。
いわゆる個別対応方式により課税仕入れに係る消費税額を計算する場合における「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」、「その他の資産の譲渡等にのみ要するもの」及び「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」の区分は個々の課税仕入れについて行う必要があるとした事例
裁決事例集 第73集 536頁
要旨
請求人が、本件不動産を信託財産とする信託受益権を取得し、本件不動産の取得に係る本件付随費用の消費税額について、個別対応方式により仕入控除税額を計算するに当たり、本件付随費用の総額を、本件不動産を構成する本件個々の資産の取得価額の比で本件個々の資産に配賦し、本件個々の資産の取得目的に応じ「課税対応」及び「共通対応」に区分したところ、原処分庁は、本件付随費用はいずれも「共通対応」に区分すべきであるとして消費税等の更正処分を行った。
これに対し、請求人は、消費税の課税対象となる一の取引金額の内訳又は複数の取引金額の合計の内訳について、個別対応方式における対応区分が明らかにされていれば、その明らかとなっている区分に応じて対応関係を判定すべきであり、本件付随費用は本件個々の資産にそれぞれの取得価額の比で配賦されているから、個別対応方式における区分は明らかである旨主張する。
しかしながら、課税仕入れとは、「事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供を受けること」のそれぞれの取引を指すことから、消費税法第30条第2項第1号に規定する「課税仕入れにつきその区分が明らかにされている場合」とは、課税仕入れである個々の取引についての対応区分が明らかにされている必要があるものと解される。
そうすると、請求人は、本件付随費用について、その総額を一つの単位とし、各付随費用の合計額を本件個々の資産の取得価額により按分した結果をもって「課税対応」及び「共通対応」に係る課税仕入れの額として集計したに過ぎず、個々の課税仕入れにつきその区分を判定していないことは明らかであるから、請求人の主張は採用できない。
雑所得の基因となった金融商品を外貨で取得するに当たり支出した金額のうち、通貨交換の際に適用された電信売相場と電信売買相場の仲値との差額に相当する部分の金額は、雑所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないとした事例
裁決事例集 第73集 216頁
要旨
請求人は、本件差額相当額は、円をドルに交換するために銀行に支払った手数料であり、商品Dを取得するために必要な費用であるから、本件利息収入を得るための必要経費に算入されるべきである旨主張する。
しかしながら、所得税法第37条第1項に規定する必要経費とは、売上原価等の直接の費用はもとより、販売費や一般管理費等の間接の費用もこれに含まれるが、それはあくまでも費用に限定されるのであって、費用に当たらない支出は、必要経費に含まれない趣旨と解すべきであるところ、本件差額相当額は、商品Dを取得する際の投資金額の一部分であって、当該投資金額は満期時に返金される金員であるから、同相当額は商品D取得時に費消されておらず、それを費用ということはできない。
また、通貨交換を行う金融機関にとっては、本件差額相当額が手数料としての性格を有するものであるとしても、顧客が円をドルに交換する際には、あくまでも電信売相場が適用されるのであって、電信売買相場の仲値が適用されるのではないから、同相当額の部分のみをとらえて手数料に当たるというのは相当ではない。
したがって、本件差額相当額は、本件利息収入に係る雑所得の必要経費には当たらない。
要旨
請求人は、原処分庁がした「相続税延納取消しに対する弁明を求めるためのお知らせ」(以下「本件通知書」という。)の差置送達が効力が生じていないこと理由として弁明の機会が付与されていない旨を主張する。
しかしながら、①原処分庁は、請求人に弁明の機会を与えるために平成16年6月8日付で第1回通知を請求人の自宅にあてて送付したが、受取人不在による保管期間満了を理由に返送されたこと、②そのため、原処分庁は、同月23日及び同年8月18日の二度にわたり、請求人の自宅を訪れたものの、いずれも請求人は不在であったことが認められ、当該事実は、国税通則法第12条第5項第2号に規定する書類の送達を受けるべき者等が送達すべき場所にいない場合に該当すると認められる。
そうすると、本件通知書は、適法に差置送達されたものというべきであり、請求人は、これに対して弁明の期限までに弁明をしなかったのであるから、本件における弁明手続は適法にされたというべきである。
建物等の譲渡に当たって当事者間で引渡しの日を定めていたとしても、当該建物等の売買契約を締結した日に代金決済及び所有権移転登記等が完了しているのであれば、当該売買契約を締結した日が当該建物等の譲渡の時期であるとした事例
裁決事例集 第73集 519頁
要旨
請求人は、本件建物等の課税仕入れの時期について、①消費税法基本通達9-1-13ただし書において、事業者が建物その他の固定資産の譲渡に関する契約の効力発生の日を資産の譲渡の時期としているときはこれを認める旨定めていること及び②ビジネスホテル業は関係諸官庁の営業許可なしでは営業できないことから、本件建物等の引渡しの日については、本件確認書及び本件合意書で定めた日である旨主張する。
しかしながら、①請求人は、本件売買契約書を締結した日に本件不動産(上記建物及びその敷地)の売買代金の全額を売主へ支払い、同日、所有権移転登記を了しているばかりか、本件不動産の購入資金の借入先(債権者)との間において債務者及び根抵当権設定者をいずれも請求人とする根抵当権設定契約書兼代物弁済予約証書を作成するとともに本件不動産に根抵当権の設定登記を行っていることが認められること及び②本件売買契約書、本件確認書及び本件合意書のいずれにも旅館業の営業許可が下りなければ契約の効力が生じないとする旨の約定がなく、本件売買契約が旅館業の営業許可を受けることを停止条件とする契約であるとは認められないことから、本件不動産の引渡しは、本件売買契約書の契約日に完了していると認めるのが相当である。
また、本件合意書記載の合意が当事者間において真意でなされたとしても、前述した本件事実関係の下においては、本件不動産は、本件合意書に記載された引渡しの期日よりも前に引渡しが完了していることが認められることから、本件のように引渡しの日について合理的と認められる日が存在している場合には、本件不動産の引渡しの時期についての当事者間の合意があるからといって課税仕入れの時期を左右し得ないものというべきである。
二以上の家屋が併せて一構えの一の家屋であると認められるか否かについては、まず、それぞれの家屋の規模、構造、間取り、設備、各家屋間の距離等客観的状況によって判断すべきであり、個人及びその家族の使用状況等主観的事情は二次的に参酌すべき要素にすぎないものと解するのが相当であるとした事例
裁決事例集 第73集 326頁
要旨
請求人は、本件Y家屋の敷地は、隣接する本件X家屋の敷地と地続きであり、また、本件Y家屋は、その設備状況からして、独立した1棟の居住用家屋としての機能を有していなかった上、主として居室としての用途で利用していたものであるから、一体として居住の用に供していた本件X家屋及び本件Y家屋(以下、これらを併せて「本件各家屋」という。)は、一構えの一の家屋として、それらの敷地とともに本件特例が適用されるべきである旨主張する。
ところで、二以上の家屋が併せて一構えの一の家屋であると認められるか否かについては、まず、それぞれの家屋の規模、構造、間取り、設備、各家屋間の距離等客観的状況によって判断すべきであり、個人及びその家族の使用状況等主観的事情は二次的に参酌すべき要素にすぎないものと解するのが相当である。
したがって、単にこれらの家屋がその者及びその者と同居することが通常である親族等によって機能的に一体として居住の用に供されているのみでは不十分であり、家屋の構造、規模、設備等の状況から判断していずれか又はそれぞれが独立の居住用家屋としては機能できないものでなければならない。
そうすると、これらの家屋がそれぞれ独立の家屋としての機能を有する場合には、これらの家屋を併せて一構えの一の家屋であるとは認められず、その者が主としてその居住の用に供していると認められる一の家屋に限り、本件特例の適用対象となるというべきである。
これを本件についてみると、本件各家屋の規模、構造、間取り、設備、両家屋間の距離並びに通常考えられる用法及び機能等を考慮すれば、本件各家屋は、それぞれ独立して居住の用に供し得る機能を有する居住用家屋であることは明らかであり、本件各家屋を併せて一構えの一の家屋であると認めることはできない。
また、請求人が本件Y家屋の台所や風呂を老朽化を理由として使用せず、一方、居室については修繕を行って使用していたのは、そもそも請求人の本件Y家屋の使用目的が、居室としてのみ利用することにあったためであり、請求人の主観的事情にすぎないというべきである。
そうすると、請求人の主観的事情は二次的に参酌すべき要素にすぎないから、本件各家屋を機能的に一体として利用していたことをもって、本件各家屋が併せて一構えの一の家屋であると認めることはできない。よって、請求人の主張には理由がない。
そして、本件特例の適用対象となる家屋は、租税特別措置法施行令第23条第1項の規定により、その者が主として居住の用に供していると認められる一の家屋に限られるところ、主として居住の用に供していた家屋は、本件X家屋と認められることから、本件特例の適用対象となるのは、本件X家屋及びその敷地である本件X土地に限られる。
中小企業者について同族会社の留保金課税が不適用となる要件である「自己資本比率(前事業年度終了の時における総資産の額に占める自己資本の額の割合)50%以下」という基準の判定に当たり、貸借対照表に注記された受取手形割引高は、「前事業年度終了の時における総資産の額」の算定上加算することはできないとした事例
裁決事例集 第73集 363頁
要旨
請求人は、手形割引は消費貸借であるから、前事業年度終了の時における受取手形割引高(以下「本件割引高」という。)は資産として認識し、租税特別措置法第68条の2第1項第4号に規定する自己資本比率の計算において、貸借対照表の資産の部の合計額に加算して計算すべきである旨主張する。
しかしながら、租税特別措置法第68条の2第1項第4号及び同法施行令第39条の34の2第8項によれば、自己資本比率の算定上、「前事業年度終了の時における総資産の額」とは、請求人の前事業年度の確定した決算に基づく貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額の合計額とされているところ、本件の手形取引は、手形割引すなわち手形の売買であり、割引された受取手形は請求人からA銀行に所有権が移転しており、請求人の資産を構成するものではなく、本件割引高を資産と認識すべきであるとする請求人の主張には理由がない。また、請求人は本件割引高を貸借対照表の資産の部にも計上していない。
そうすると、本件割引高は資産の部の合計額に加算することはできず、これに基づき自己資本比率を計算すると100分の50を超えることから、本件において、租税特別措置法第68条の2の規定は適用されない。
要旨
請求人は、本件担保申請物件に係る処分禁止の仮処分の登記は所有権の4分の1のみについてされたにすぎず、その余の4分の3に係る価額でも担保価値としては十分であるから、担保として適格である旨主張する。
しかしながら、相続税の延納担保として提供される財産は、その担保に係る相続税額を確実に徴収することができる金銭的価値を有するものでなければならず、かつ、延納許可が取り消された場合に、滞納処分の例により換価することが困難と考えられる事情を有する財産は、延納の担保としては適当でないと解するのが相当である。
これを本件についてみると、本件担保申請物件には処分禁止の仮処分の登記があるところ、仮に、当該仮処分権者が保全すべき登記請求権に係る登記をした場合には、原処分庁のした抵当権の設定登記又は延納が不履行になって公売した場合の買受人の所有権移転の登記は抹消されることになることから、抵当権も所有権も権利の実現が不確実で不安定な状態にあると認められる。
したがって、たとえ数額上担保価値の算出が可能であり、当該仮処分の登記が所有権の一部のみについてされていたものであったとしても、本件担保申請物件は、事実上極めて換価が困難な財産といわざるを得ないから、担保物件として不適当なものである。
要旨
異議申立てが不服申立期間を徒過してなされていることについて、請求人は、本件充当処分には重大かつ明白な瑕疵があって無効であり、無効な行政処分は時間が経過しても無効のまま瑕疵が治癒されないから、本件異議申立ては、不服申立期間の制限を受けない旨主張する。
しかしながら、国税通則法上の不服申立てにおいては、納税者が処分の無効を理由として課税処分や徴収処分の取消しを求めた場合であっても、同法の不服申立手続に則っていることが前提となるというべきであるから、同法第77条第1項に規定する不服申立期間を遵守せずにされた異議申立ては、原則として不適法であり、これが適法となるのは、同条第3項に規定する天災その他その不服申立期間内に不服申立てをしなかったことについてやむを得ない理由があり、かつ、その理由がやんだ日から7日以内に審査請求をした場合に限られる。
そうすると、不服申立期間を徒過してなされた本件異議申立ては、その期間内に異議申立てをしなかったことについてやむを得ない理由があるとは認められないから、不適法なものである。
要旨
国税通則法第23条第2項第1号の規定は、納税者において、申告時には予測し得なかった事態が後発的に生じたため、課税標準等又は税額等の計算の基礎に変更をきたし、税額の減額をすべき場合に、法定申告期限から1年を経過していることを理由に更正の請求を認めないとすると、帰責事由のない納税者に酷な結果となることから、例外的に更正の請求を認めて納税者の保護を拡充しようとしたものと解される。上記規定の趣旨及び国税通則法第23条第2項各号の列挙事由の内容にかんがみれば、同項第1号の「判決」に基づいた更正の請求が認められるためには、判決を得るための訴訟が申告等に係る課税標準等又は税額等の基礎となった事実の存否、効力等を直接審判の対象とし、判決により課税標準等の基礎となった事実と異なることが確定されるとともに、納税者が申告時において、課税標準等の基礎となった事実と異なることを知らなかったことが必要であると解される。
これを本件についてみると、請求人は、被相続人が死亡するまで、V社の経営に全く関与しておらず、本件売買契約にも全く関与していなかったものと認められる。他に請求人が申告時までに本件土地の売買の目的や経緯、ないしは本件売買契約が仮装であること等を知っていたと認めるに足りる証拠はない。そうすると、請求人は申告時において本件売買代金債権が存在しなかったことを知っていたとは認められない。
要旨
請求人は、請求人が従事する業務は、いずれも夫の営む事業に包含される業務であるから、請求人は「居住者の営む事業に従事するもの」に当たり、請求人の年間従事日数及び年間従事時間は、夫の所属事務所の従業員のそれらの2分の1をはるかに超えており、かつ「その年を通じて6月を超える」こととなるから、請求人は「専ら夫の事業に従事する者」に該当するにもかかわらず、原処分庁が、請求人が従事する各業務について「夫婦間の相互扶助の範囲内のもの」とすることは、青色事業専従者給与を規定する法の沿革にも、労働には当然に報酬が支払われるべきだとする現今の社会常識にも、はたまた憲法感覚にも馴染まない違法で誤った考え方であり、このことは請求人の幸福追求権、勤労の権利、基本的人権を侵害するもので、憲法に反し違法である旨主張する。
しかしながら、原処分庁の主張は、請求人は夫の業務に従事しているが、それは「夫婦間の相互扶助の範囲内のもの」であるから無償であるべきであるという趣旨ではなく、所得税法第57条第1項及び同法施行令第165条に基づいて「専らその居住者の営む事業に従事」したか否かを判定するに際して、請求人の労務の提供は、労務の内容、所要時間ないし頻度からすれば、社会通念上、夫婦の相互扶助の範囲内の行為あるいは日常生活の一環としての行為であり、「夫の事業に専ら従事するものではない」とするものであるから、請求人の主張は前提を誤るものである。仮に請求人の主張が、そのような法令の規定自体が憲法に違反するという趣旨であるとすれば、その判断は当審判所の権限外のことであり、審理の限りではない。
そして、請求人が従事する労務の内容ないし態様、要する期間ないし時間及び頻度を見ると、請求人が主張する各業務のうち、試算表の作成等及び銀行に出向いて各種手続を行うこと以外の業務については、これに従事しているとは認められないものであり、また、試算表の作成等及び銀行に出向いて各種手続を行うことについては、請求人がこれを行っていたとしても、その労務は一時的ないし臨時的なものであって、請求人が夫の事業に専ら従事する期間がその年を通じて6月を超えるとは認められない。
したがって、請求人は、青色事業専従者とは認められない。
要旨
請求人は、源泉徴収義務者が源泉所得税を徴収しなかったとしても、受給者がその所得を確定申告し、納税すれば源泉所得税相当額が国庫に歳入される以上、その時点で源泉徴収義務は消滅する旨主張する。
しかしながら、源泉所得税の納税義務を負う者は、源泉徴収の対象となるべき所得の支払者であって(所得税法第183条第1項、第204条第1項)、その納税義務は、その所得の受給者に係る所得税の納税義務とは別個のものとして成立、確定し、これと並存するものであり(国税通則法第15条)、所得税法第221条、第222条及び国税通則法第36条の各規定からしても、源泉所得税の納税に関し、国と法律関係を有するのは徴収義務者のみで、その所得の受給者との間には直接の法律関係を生じない。
また、「源泉徴収をされた又はされるべき所得税額」がある場合には、所定の税率を適用して算出された所得税の額からこれを控除した金額が所得税の確定申告書の記載事項(所得税法第120条第1項)とされているところ、この「源泉徴収された又はされるべき所得税額」については、所得税法の源泉徴収の規定に基づき正当に徴収された又はされるべき所得税の額を意味するものであって、確定申告の際に、源泉所得税自体の過不足額の精算を行うことを予定しておらず、その所得の受給者が徴収されるべき源泉所得税を確定申告により納税することはできない。
したがって、受給者の確定申告によって請求人の源泉徴収義務が消滅することはない。
扶養親族に該当するための所得要件である合計所得金額の計算においては、租税特別措置法第37条の12の2《上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除》第1項の規定は適用されないとした事例
裁決事例集 第73集 250頁
要旨
請求人は、租税特別措置法(平成17年法律第21号による改正前のものをいい、以下「措置法」という。)第37条の12の2第4項は、同条第1項の規定(以下「本件繰越控除規定」という。)の適用がある場合における、同法第37条の10(第7項以外)の規定による「株式等に係る譲渡所得等の金額」は、本件繰越控除規定の適用(控除)後の金額であることを明確にしたものであって、原処分庁が主張するような、「合計所得金額」を計算する際に総所得金額等に加算する「株式等に係る譲渡所得等の金額」の計算に当たり本件繰越控除規定の適用の排除を意味するものではないから、適法に繰り越した「上場株式等に係る譲渡損失の金額」を有する場合における「合計所得金額」を計算する際には、本件繰越控除規定が適用され、当年分の「株式等に係る譲渡所得等の金額」から適法に繰り越した「上場株式等に係る譲渡損失の金額」を控除することは明らかである旨主張する。
しかしながら、措置法第37条の12の2第4項において、第1項の規定の適用がある場合の、第37条の10及び第37条の11の各規定(第37条の10においては第7項を、第37条の11においては第4項をそれぞれ除く。)の適用に当たっては、それぞれの第1項の「計算した金額」をいずれも「計算した金額(第37条の12の2第1項の規定の適用がある場合には、その適用後の金額)」と読み替えて適用する旨規定しており、措置法第37条の10第7項又は同法第37条の11第4項の各規定の適用(合計所得金額の計算)の場面においては、各条第1項の規定は上記のとおり読み替えられずに適用されることになる。
また、前年から繰り越された「上場株式等に係る譲渡損失の金額」を有する場合の「株式等に係る譲渡所得等の金額」については、「課税標準」の計算の場面においては本件繰越控除規定を適用して計算し、扶養親族の所得要件となる「合計所得金額」の計算の場面においては本件繰越控除規定を適用しないものとして計算することになる。
すなわち、居住者が、所得税額の計算上、本件繰越控除規定を適用して控除すべき「上場株式等に係る譲渡損失の金額」を有しているとしても、その「合計所得金額」の計算に当たっては、本件繰越控除規定を適用して、「株式等に係る譲渡所得等の金額」を計算することができないことは、法律上明らかである。
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